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こち亀×ウマ娘SS『アグネスタキオンの検証』

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:16:22 5oTHLVVA
両津「何ぃっ!?ワシがウマ娘のトレーナーにだってぇ!」
理事長「肯定!先日の合宿引率で評判も良い君をなんとかスカウトしたい」
中川「…でも先輩はトレーナー資格もないですよ」
理事長「不問!両津くんはトレーナー資格を持っているはずだ、トレーナー名鑑にも名前があるし登録もされているぞ」
両津「そう言えば前に色々資格取った時にウマ娘トレーナーもあったような」
麗子「忘れちゃってたの…」
中川「ほら、先輩の左脳は休み休み使ってるから…」
麗子「あぁ…なるほどね」
両津「やかましい!何がなるほどだ」
理事長「というわけで、色良い返事をしているからな!それでは!」
両津「うーむ…」
中川「先輩、本当にやるんですか?」
両津「副業にしても1人に3年近くも必要なんだぞ?流石に難しいだろ」
部長「…お前はまた業務中にくだらん事を企んどるのか?」
両津「げっ!部長!」
部長「署へ直接依頼があったよ、トレセン学園からな」
両津「もうバレてる…」
部長「学園の理事長と署長が懇意にしてるらしくてな、署としても無碍には出来んからお前が行くなら所属はここのまま、トレセン学園の特別警備として出向という形になった」
両津「根回しが良すぎるぞ、あそこのとんでもない闇を見た気がする…」
中川「トレセン学園は政治も絡んだところですからね」
麗子「下手したら本当に両ちゃんでも島流しにされちゃうわよ」
両津「うーん、行くのが怖くなってきたぞ」


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:17:26 5oTHLVVA
両津「さて、トレーナーがついていないなら相手を自由に選んでいいとは言われたが…」
両津「それにしても顔の良い子ばかりだな、上位種族と巷で言われるだけはある…」
両津「しかし、給料が歩合制とはな、本署からの給料もあるとは言え、あまり弱い子でも割に合わんぞ…しかも今日中に相方を決めろなぞ、無理だろう」
両津「これはあの理事長に体よくハメられたのかも知れんな…」
両津「しかし…この学園はなんだか、駅かデパートみたいな構造しとるな…洒落たもんだ…」
両津「シリウスの奴らはトレーナーが居るしなぁ、他に伝手もないし、スカウトからとはなぁ…」
両津「ん…?」
トレーナー1「またアグネスタキオンは欠場か…」
トレーナー2「あぁ、これでトライアルは全部未出場だ」
トレーナー1「超光速も出場しなけりゃ意味ないよなぁ」
両津「ほう…超光速、か…」
両津「名鑑名鑑……ア、アグ、アグネスタキオン…っとあった、あった…なるほど、入学試験で爆発的な末脚で脚光を浴びたウマ娘で、その後デビューもせず、トライアルも出ていない、と…」
両津「ふむ…試走にも顔を出して居らず、トレーナーも未決定、素行不良と問題行動で退学も直近にあると」
両津「ふふ、転がっているもんだなぁ」


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:17:58 5oTHLVVA
両津「アグネスタキオンとかいうのはどいつだ!」ドカァ
カフェ「貴女、呼ばれてますよ」
タキオン「いいよ、どうせ爆発で吹き飛ばした教室とかの事だろう?」ズズ
タキオン「ところで、カフェ…」
カフェ「いやです」
タキオン「えっーー!!」
両津「お前だな、アグネスタキオンとかいうやつは」ドカドカ
タキオン「いかにも、私がアグネスタキオンだ」
両津「お前、ワシと組め」
タキオン「断る、名も知らない者と組むほどトレーナーに不自由はしていないからね」
両津「そ、それは悪かったな、ワシは両津、両津勘吉だ、一応こうしてトレーナー資格もある」
タキオン「なるほど、偽物ではないようだ」
タキオン「しかし、断る」
両津「何ぃっ!」
タキオン「私は自分なりにトレーニングして満足いく結果を出しているし、自分の時間の邪魔になるトレーナーは不要だ」
両津「な、なんと…とりつく島もないな…」
タキオン「新人トレーナーくんには悪いが、他を当たってくれたまえよ」
カフェ「私にはトレーナーが既にいます」
両津「まだ何も言ってないだろっ!」


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:18:32 5oTHLVVA
両津「参ったな、金の卵を見つけたと思ったんだが…」
両津「そんな都合よく話しは進まないか…」
ピンポンパンポーン
校内放送「ジュニア級のアグネスタキオンさん、アグネスタキオンさん、至急職員室まで来なさい、繰り返します…」
両津「アイツか…教室を爆破したとか言っていたが、ワシの学生時代と同じかそれ以上だぞ…」

タキオン「ほう、『皇帝』自ら併走の申し出とは」
ルドルフ「何も出来なかった私からのせめてもの手向けだよ」
両津「お、おい、どうしたんだ?」
タキオン「あぁ、また君か…」
ルドルフ「誰だ?この警官は…」
タキオン「私をスカウトしに来た変わった名の新人トレーナーさ」
ルドルフ「あぁ、例の警察官兼トレーナーとかいう妙な肩書きの…両津某だったか…」
両津「あぁ、そうだよ、で、どうしたんだ?」
タキオン「なぁに、私の退学が決まったところさ、最後通牒無視、故の、さ」
両津「何ぃ!?」
タキオン「だからまぁ、残念だね、新人トレーナーくん、他の子をあたってくれたまえ」
両津「な、なんてこった…」
ルドルフ「……両津トレーナー、これから私と彼女で併走をする、というのは聞いたな?」
両津「あ、あぁ…」
ルドルフ「それのタイム測定をお願いする」
両津「あぁ、ちょうど暇してるし、構わんのだが…」
タキオン「何やら話しが進んでいるようだが、別に併走をすると決まったわけではないのでは?会長殿?少なくとも私は承伏していないが」
ルドルフ「私も君のためにそれなりに動いたのを忘れてはいまい?その返礼と思えば安いものではないか?」
ルドルフ「それに、世界挑戦を視野に入れるのであれば世界レベルというのを知っておくのも悪くないだろう?」
タキオン「…わかったわかった、そこまで言われて邪険にするのも悪いし、一走お手合わせ願おうじゃないか」


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:19:05 5oTHLVVA
タキオン「何やら本格的だねぇ、会長、ゲートまで用意させるとは」
ルドルフ「なに、そこの男が居たからな、簡単なことさ」
両津「…はぁはぁ、絶対一人で運ぶもんじゃないぞ、これは…」
ルドルフ「無駄口はいい、それでは始めるぞ、計測を頼む、距離は芝2000m、中山レース場を模したコースになっている、本気で来い、皇帝を見せてやる」
タキオン「胸を借りるとするよ…」
両津「もういいのか?」
ルドルフ「始めてくれ」
両津「位置について、ヨーイ…」ガシャ
……
 シンボリルドルフの走りは、本気そのものだった。
 昨年、クラシック三冠を征した豪脚が芝を駆け抜ける。
 だが、それを追走するアグネスタキオンとの差は開かない、否、一度はアグネスタキオンが追い越すほどのキレを見せる。
 しかし、残り1ハロンで始動した皇帝はついに僅かずつ差を広げていく。
 タイム、2分01秒0。
 アグネスタキオンはわずか1バ身届かず敗れた。


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:19:47 5oTHLVVA

両津「凄まじいな…」
ルドルフ「あぁ、とてもジュニア級とは思えんよ、さすがだよ、超光速のプリンセスは伊達ではないね」
タキオン「それは勝者が敗者にかける言葉ではないね、皇帝殿、だが、受け取っておこう」
両津「…惜しいなぁ、本当に辞めてしまうのか?」
タキオン「仕方ないさ、今日でトライアルは締切だし、トレーナーも未決定だ、どうしようもないよ」
ルドルフ「タイムなら今のがあるだろう?」
タキオン「なんだと…?」
ルドルフ「今の記録は、公式トレーナーによって計測され、規定距離を規定タイム未満で走った記録となった、何も問題あるまい」
タキオン「……やられた、謀ったね」
ルドルフ「あぁ、計らせてもらった。後は君次第だ、好きにするがいい、私に出来るのはこれくらいだ」
タキオン「とは言え、トレーナーが…」
ルドルフ「そこにちょうど暇しているのがいるだろう」
両津「なんだ?ワシの話しか?」
タキオン「私にはトレーナーは不要だ、必要なトレーニングは自分で判断出来るし、研究の邪魔をされたくない」
タキオン「そうだねぇ…モルモットとしてなら一人飼うのはやぶさかではないが…」
両津「も、モルモット…」
タキオン「どうしても、というならコレを飲んでみたまえ、出来るのであればトレーナーに君を指名しよう」
両津「…あぁ、構わんぞ」
タキオン「へ…?お、おい!君…」
両津「…まずい、なんだこれは、炭酸が抜けてルートビアの臭いのするレッドブルみたいな味だな…」
タキオン「身体に変化は…無いようだね、おかしいな…」
両津「そんなにいきなり変わるわけないだろ、学生が作ったサプリ程度で」
タキオン「それはまぁ、そうなんだが…手足が新たに生えたりとかはないかい?」
両津「何を馬鹿な事を…」
タキオン「むっ……君の身体は異常だな…筋肉も元から異常に強そうだし、調べがいがある…」
両津「そりゃ、昔から丈夫ではあるが…」
タキオン「よし、決めた、私は君をトレーナーにして調査するぞ」
両津「なっ、か、解剖とかか?」
タキオン「アッハッハ、流石にそこまではしないよ、生きていて貰わねば困るからね」
ルドルフ「どうやら話しはまとまったようだな、それでは両津トレーナー、トレーナー契約書を…」
両津「あ、あぁ、さっきもらったやつだな、待て待て」
タキオン「ここにサインでいいんだな?なんだ、この字は、君は字が下手すぎる、左脳を全く使ってないんじゃないのか?」
両津「うるさいな、いいんだよ、読めれば」
タキオン「それが読めないから言っているんだが…」
そんなこんなで両津のタキオンとのトレーナー生活はスタートした。


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:23:50 5oTHLVVA
両津「タキオンのやつはどこだぁ!」
カフェ「研究すると言って空き教室に……」
両津「そうか、わかった」
カフェ「諦めた方がいいですよ、あの人、トレーニングは自己流以外しませんし」
両津「アイツにはトウィンクルシリーズである程度結果を出して貰わんとワシの割りがあわんからサボられてもワシが困る」
カフェ「割りに合わないとは?」
両津「他のトレーナーと違ってワシは担当ウマ娘の成績による歩合制なんだよ」
カフェ「なるほど……」


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:24:27 5oTHLVVA
両津「いたいた、こんなところに」
タキオン「なんだい?モルモットくん、今日は研究があるからトレーニングは休むと言っただろう」
両津「ワシはトレーニングに関してはど素人だがまるまる1週間も休まれてはこっちの立つ背がないぞ」
タキオン「なるほどね、体面というやつか…そこに関しては問題ないよ、必要な負荷と時間は確実に掛けているからね、トレーニングとは人に言われてするものではないというのが私の持論だ」
両津「そ、それなら構わんが…」
タキオン「それに私は私のためにトレーニングしている、私が必要かつ実施可能なトレーニングを毎日欠かさず行うのが私の矜持でもある、不満はあるのかな?」
両津「サボってないならいい」
タキオン「理解してくれて嬉しい、ところで、この間君にもらった体細胞を分析したのだが…」
両津「あぁ、頬の裏側からもぎ取ったのと血を抜かれたあれか」
タキオン「君の体細胞は異様に強すぎる、白血球も異常に攻撃性が強く、ありとあらゆる外敵への侵入を拒む、まさに狂犬のような身体だ」
両津「そ、そんなにか」
タキオン「破傷風菌や数種類の真菌、狂犬病ウィルスまで完全に退治するし、変異した細胞を別の細胞が駆逐するし、プリオンにまで免疫がある、クロイツフェルトヤコブ病やクールー病には一生かからないだろうね…」
両津「全く意味がわからんが丈夫な身体という事か、ワハハ」
タキオン「全血輸血などしたら君の場合、輸血患者が死んでしまうだろうねぇ…」
両津「うぅむ、署でノルマはあったが心配になるな…」
タキオン「それと先日摂取した薬品があったろう?」
両津「あぁ、あの味のない緑色のお粥みたいないなやつか」
タキオン「その後の検査の結果、君の身体はあの薬品を完全分解して吸収していることが判明した」
両津「ちゃんと意味あることしてたんだな、お前…」
タキオン「しかもある程度毒素を入れていたんだが、それも完全に分解、中和したようだ」
両津「ブーッ!な、なんてものを飲ませるんだ、お前は!」
タキオン「汚いなぁ……大丈夫だ、致死量でもないし問題ない、ジャガイモの芽くらいのものだよ、度合い的にはね」
両津「大有りだぞ、全く…まぁ、腹を壊してもないし大丈夫なんだろうが」
タキオン「それから唾液の成分が非常に酵素の働きが強くてね」
タキオン「はっきり言えば異常に強い、通常の人間男性の1/10程度の唾液で炭水化物を分解している、つまり、糖の体内精製比が非常に優秀だ」
両津「どういう意味だ?」
タキオン「ほんとに君は人間なのかい?UMAとかそういう類ではないのかい?」
両津「怒るぞ、コラ」


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:27:16 5oTHLVVA
 そんなこんなで彼女の研究とトレーニングは続いた。
タキオン「アッハッハッハ、君は本当にすごいな!…ウェイトリフトスクワットで500キロとは…」
両津「ぬ、ぬぬぬぬ」
……
タキオン「アッハッハッハ、芝2000mを2分10秒だと、アッハッハッハ!君は最高だ、最高に面白い!」
両津「ゼーハー、ゼーハー…」
……
タキオン「アッハッハッハ、それ、次で遠泳15万メートル達成だ、頑張ってくれたまえ、モルモットくんっ!」
両津「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:38:03 5oTHLVVA
……
両津「なんでワシばかりトレーニングするんだ!」
タキオン「今更ではないのかね?」
タキオン「楽しんでいたようだし、問題ないと思ったんだが…」
両津「楽しんで居たのはお前だけだよ、全く、サドの気でもあるんじゃないか…」
タキオン「いやいや、君がいとも簡単に人間の限界を越えるものでね、つい楽しくなってしまったよ」
両津「…で、お前の研究とやらは進んだのか?」
タキオン「もちろん、コレが君の血液を血清にしたものだ、今はまだラットに重い反応が出ているが、コレが成功すれば…」
両津「すれば?」
タキオン「私の夢に一歩近づく」
両津「遠回しな言い方だな、何が起きるんだよ」
タキオン「…ざっくりといえば、私の脚を治せる」
両津「お前のことだからドーピングみたいの作ってるの思ってたが、怪我か…大丈夫か?」
タキオン「私はドーピング反対派だよ、脚の具合は今のところは大丈夫さ、すぐにどう、こうと言うものではないよ」
タキオン「私は、この脚の実力が発揮出来ればそれでいいのさ」
両津「そうか…悪かったな」
タキオン「なに、構わないよ、実直な言い回しの話しは好ましい」
タキオン「というわけで、次はウェイトを背負っての遠泳だ、モルモットくん!150キロもあれば十分かな?」
両津「そんなの背負って泳いだら死んじゃうだろ!」


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:38:56 5oTHLVVA
……
両津「ほう、それが勝負服か…」
タキオン「ようやく届いてね、これから着てみるところだよ」
両津「…意外と重たいな、こんな重くて走りにくくないのか?」
タキオン「重さは決められているからね、一応」
タキオン「こうしてインナーベストにおもりを追加すれば追加で12キロくらいは乗せられるよ」
両津「全部合わせると総装備で60キロか」
タキオン「あぁ、ただ、袖が長いな…」
両津「ぶかぶかだな…」
タキオン「袖の長さは調整可能だが…なんだいこれは、フリー丈か?袖の処理もされてないじゃないか」
両津「袖口くらいならワシがやろうか?」
タキオン「出来るのかい?」
両津「GIジョーのまだ作られてない迷彩パターンの戦闘服を個人カスタムで売る時に生地からスクラッチするからミシンは慣れたもんさ、貸してみろ」
タキオン「多趣味な男だな、君は…」
両津「この生地なら90番、いや、勝負服だから60にして、色付きで小洒落た感じの方が…」
……
両津「どうだ?」
タキオン「ほう…洒落てるね」
両津「ダブルカフスにして大きめのボタンで止めるように変えてみた」
タキオン「だが……見ろ、長すぎるぞ、トレーナーくん、これじゃあ何のために袖を調整したんだね?」
両津「まぁ、それ自体も悪くはないと言うか…独特の良さがあるとワシは思うが」
両津「なんだね、ん?トレーナーくんはこう言うのが好きなのかな?」
両津「好きとまでは言わんが悪くはない、と思うぞ」
タキオン「んー?素直になりたまえよ、あんまり煮え切らないと袖を切ってしまうよ?ほれほれ」
両津「わぁぁ!やめないか、まったく…」
タキオン「アッハッハッハ、君の新しい面を見つける事が出来たよ!」


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:39:48 5oTHLVVA
……
両津「いよいよデビュー戦か」
タキオン「心配かい?」
両津「いや、試走タイムでも人気でもお前がダントツだ、問題ないよ」
タキオン「得てしてそういう時に不運は起きるからねぇ」
両津「2000mしかないんだ、出遅れは洒落にならんぞ、集中してけ」
タキオン「君とは思えないほど殊勝だね、モルモットくん、何か悪いものでも食べたかな?」
両津「そうだとしてもお前の作ったまずい薬の所為だよ、今朝のはなんだ」
タキオン「なぁに、ただの野菜ジュースだよ、味はね」
両津「どこが野菜ジュースだ……いや、待て、何を入れたんだ!」
タキオン「アッハッハッハ、後で教えてあげよう、このレースが終わったらね!」
両津「まったく、なんてやつだよ」

……
両津「勝ったな、おめでとう」
タキオン「なんだい?もっと喜んでくれると思ったのに」
両津「先程も言ったが試走でも状態もお前がダントツで良かったからな、当然の結果だと思ってるよ」
タキオン「つれないなぁ、モルモットくんは…」
タキオン「それでは、答え合わせをしようか?」
両津「なんのだ?」
タキオン「今朝の飲み物に入っていたものだよ、まずはセロリとニンニクの芽と…」
両津「やめろーー!聞かせるんじゃ無ーい!」

……


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:45:41 5oTHLVVA
……
タキオン「やぁ、モルモットくん、おはよう……」
両津「どうしたんだよ、グロッキー過ぎだぞ…」
タキオン「なぁに、ちょっと5食ほど食事を摂るのを忘れていてね、おかげで研究が捗ったよ、ハッハッハ」
両津「笑ってる場合かよ!……ようするに腹ペコか、なんか食いたいものあるか?」
タキオン「2日近く何も食べてないからね、消化にいいもの…出来れば流動食のような胃に負担のないものがいい…」
両津「わかった!お粥だな!食堂で作ってやるから運ぶぞ!」
タキオン「元気だねぇ、君は…」
……
タキオン「ふむ……美味いな、なかなかのものだよ」
両津「中華風干しエビ粥だ」
タキオン「あちち…ハフっ……うん、染み入る感じがとてもいいねぇ…」
両津「ワハハ、これでも板前だからな、材料と時間があればこれよりマシなものは毎日でも食わせてやるぞ」
タキオン「ふむ…毎食でもいいかい?」
両津「珍しいな、お前からそういうリクエストとは」
タキオン「信頼の証とでも思ってくれていいよ、自分が摂取するものの安全性は確保しておきたい」
両津「ワシの摂取するものにも安全性は確保してくれ…交渉してここの調理場を借りられるようにしておく、それならいつも清潔だからな」
両津「食えないものとかはあるか?好きなものとか」
タキオン「苦味の強すぎるものは苦手だ、コーヒー一口で調子が悪くなる、苦いものはやめてくれ」
両津「ふむ、甘いものは?」
タキオン「甘いものは助かるね、糖分は脳が活性化する」
タキオン「欲を言えば食べる時間を短縮したい、極力箸がなくても食べられるものが多いと助かる」
両津「ワシは和食メインだからな…ナマ物とかアレルギーは?」
タキオン「私は問題ないが、受け取ってから食べるまで時間がかかる場合がある、長持ちするものだけにしてくれ」
両津「わかった、最低限4時間は持つものにするよ」
タキオン「助かるね、それを3食分で私の1日の平均消費カロリーである5000から5500キロカロリーを基準にしてくれたまえ」
両津「間食はするのか?」
タキオン「見てのとおり、紅茶に砂糖を入れて飲むくらいかな、ドバドバと」
両津「わかった、その分は引いて計算しておくぞ」
タキオン「顔に似合わずきめ細かい男だねぇ、君は」
両津「顔は余計だよ、今日の夜からでいいか?」
タキオン「頼めるかい?…あぁ夜と朝は座って食べられる程度には時間を作るから箸を使うものでも構わないよ」
両津「そういうのは先に言え…よし、こんなもんか…あと、好きなものは?」
タキオン「私もウマ娘の例外に漏れず…」
両津「にんじんか」
タキオン「グラッセで付けてくれると嬉しいが」
両津「OK、やってやるよ」
タキオン「悪いね、色々と」
両津「構わんぞ、どうせ暇しとるんだ、体調管理ぐらいはやらないとバチがあたるよ」
両津「弁当作りは慣れてるからな、苦にもならんさ」
タキオン「誰かに作っているのかい?」
両津「バイト先の娘だ、園児だが味覚が鋭くてな、手抜きができんから上達したぞ」
タキオン「ふぅん…」


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:46:51 5oTHLVVA
……
両津「おう、呼び出しで悪いな、寮が男子禁制じゃなかったら部屋まで持っていったんだが…」
タキオン「いや、こちらこそすまないね、説明不足だった」
両津「学校の食堂は使わんのか?この時間ならまだやっているだろう」
タキオン「食べに行くのが面倒なんだ、どのくらい面倒かと言うと買ってきた食材をミキサーに入れて飲むのが私のメインの食料なくらい時間に囚われるのも嫌いなんだ」
両津「ワシが言うのもなんだが、悪食過ぎるぞ」
タキオン「必要な栄養素を短時間で摂るのに形に構ってられないのさ、時間は有限だからね」
両津「…コイツをミキサーにかけて食ったりするなよ?」
タキオン「貰ったものにするほど礼儀知らずではないさ」
両津「…今、いくつだっけ?」
タキオン「自分の担当の歳くらい把握するべきだぞ、これでも16だ」
両津「確認しただけだ、ワシが16の頃だったらご馳走だったものくらいは用意してやれるよ」
タキオン「…そうか、ありがとうな、トレーナーくん」
両津「おう、ちゃんと食って、ちゃんと寝ろよ」


15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:50:06 5oTHLVVA
……
両津「おはよう」
タキオン「おはよう、トレーナーくん」
タキオン「まずは弁当箱を返しておこう…なかなか美味しかった、君、顔に似合わずファンシーなものを作るね…」
両津「元は園児に渡してるものを調整したもんだからな」
タキオン「ハート形の弁当箱は心臓に悪いよ」
両津「昨日は急ぎだったからそれしか無かったんだよ」 
タキオン「中身については…美味しかったよ、彩りも豊かで見目麗しい、味付けも程よく塩味が効いてご飯が進んだよ」
両津「彩りが良ければ栄養バランスは大体良くなるからな」
タキオン「にんじんが無かったのが残念だったが」
両津「海老しんじょうのウサギにきちんと入れておいたぞ」
タキオン「な、なんだって!?あれにかい?……気づかなかった…」
両津「そぼろにも混ぜ込んだし、揚げ物にも絡ませておいたんだが…」
タキオン「たしかにいつもより箸が進んだよ…なるほど、そう言うカラクリか…」
両津「食が細くなるとよくないからな、食欲が増すようにしてみたんだが」
タキオン「あ、あぁ、どれも悪くなかったよ、良いアイディアだ」
両津「形はそのまま残した方が良かったか?」
タキオン「食感などを含めて好みではあるからね…」
両津「……食事に興味ないとか言ってた割には細かいな」
タキオン「上を見ればキリがないのにそんな時間をかけている暇はないからね、まぁ下を見れば栄養が手早く摂れることだから最悪味は気にしないよ」
両津「良い食文化に触れる事は脳の活性化や情緒に反映されるんだそうだ」
タキオン「覚えておこう…これは朝ごはんかい?」
両津「朝練の後に食えよ、朝だからある程度消化にいいように作ってあるがそれでもそれなりに重たいからな」
タキオン「ありがとう、助かるよ」


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 13:56:36 5oTHLVVA
……
ゴルシ「おっ、あれ、両津の旦那じゃねーか?」
ライス「あっ、本当だ…おじさまー!」
マックイーン「お久しぶりです、両津さん」
両津「おっ、久しぶりだなー」
ゴルシ「やっぱり警察クビになったのか?」
両津「違うよ、理事長からの署への依頼でトレーナーやってみないかって言われて学園に出向になったんだ…というか、やっぱりとはなんだ」
ゴルシ「へー…またなんか美味いもの作ってんだろ?」
両津「あぁ、今は担当に弁当渡してきたところだよ」
ライス「えっ、担当って誰…?」
両津「あぁ、この前デビューしたアグネスタキオンだよ」


17 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:08:59 5oTHLVVA
ゴルシ「昔、旦那っぽい浅草の悪ガキですげーのが居たって噂をうちのトレーナーがしててさ、その名前が両津って言うのは聞いた、珍しい苗字だし」
両津「全部事実なのが何も言えんぞ…」
ライス「えーっ!ほんとの話しだったの…?」
マックイーン「流石に尾鰭が付いてるものだと思ってました…」
ゴルシ「旦那、アンタの人生、面白すぎるよ」
両津「お前らそんな目で見るな!まったく…」
マックイーン「それで、アグネスタキオンさんのトレーニングはいかがですか?何か困った事とかは…」
両津「ワシはトレーナーとしては素人だからな、むしろアイツに教えられとるよ、ワシが今してるのは弁当作りとアイツの作る妙なサプリとドリンクの実験台だ」
ライス「えぇー!おじさま大丈夫?」
ゴルシ「大丈夫か、旦那、新しい手足が生えて来たりしてねーか?」
マックイーン「どこか緑色に発光とかしてませんか?」
両津「待て待て待て、そこまで心配するような事はないだろ、所詮学生の作ったサプリメント程度だぞ」
ゴルシ「だってよー、なぁ?」
ライス「…あんまりいい噂は聞かないし」
マックイーン「…まぁ、両津さんが大丈夫と言うなら大丈夫なのでしょう」
ゴルシ「旦那はクラゲに刺されてもピンピンしてたからなぁ」
ライス「フグでも大丈夫そう…」
両津「お前ら、終いには怒るぞ」
ゴルシ「わりーわりー、ま、アタシらが暇な時にはタキオンのやつとのトレーニングにも付き合うからそれで埋め合わせてくれよ」
マックイーン「私も今はわりと時間空いてますので…」
両津「そう言ってもらうと助かるよ、ワシは伝手がないし、アイツもそれほど交友は広くないみたいだからな…」
……


18 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:10:04 5oTHLVVA
両津「なぁ、お前、親御さんはどうしてるんだ?デビュー戦にも来てなかったが…」
タキオン「うちの両親は放任主義でね、好きにやらせてもらってるのさ」
両津「そうか…いや、なに、娘さんを預かってるのに一度も会ってないのも変な話しだと思ってな」
タキオン「ウマ娘はそういうものさ、トレセンへ入学すれば実家に帰るのは長期休みくらいなものでね、テレビで元気な姿でも見せれば十分なのさ」
両津「過酷というか、なんというか…」
タキオン「私の場合は母方がウマ娘の家系だからね、その辺はまぁ、それなりに弁えているのさ」
両津「まったく、親元恋しい年頃に…なんて世界だよ」
タキオン「普通の人間でもそういう風に若くして親元を離れる道を歩む者もいるだろう?」
両津「まぁ…それは否定はしないが…」
タキオン「何も特別ではないよ、多少珍しいだけさ」
両津「お前は珍しすぎるぞ」
タキオン「アッハッハッハ、否定はしないよ」


19 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:10:49 5oTHLVVA
……

タキオン「…ついに、身体を若返らせる薬が出来たよ」
両津「…そんな馬鹿な」
タキオン「本当さ、細胞分裂回数を回復させた君の体細胞とその暴食性を利用した体細胞置換によって肉体を若返らせる効果があるのさ」
両津「なんでそんなものが作れたんだ?」
タキオン「君の体細胞の異常な回復力をベースにしてアポトーシスの機能を抑制することに成功したのさ」
タキオン「しかも同時にエントーシスを増大させるから細胞が増えすぎる事もない」
両津「まるで意味がわからんが、それを試せと言う事だな」
タキオン「その通り!これが証明されれば私の研究は飛躍的に進捗すると言えよう」
両津「そのろう付けピストルみたいなのに入ってるわけか?」
タキオン「無針注射器でね、インスリン注射に使うものと似たようなものさ…人に打つと医療行為となってしまうから自分で打ってくれ、二の腕あたりが適切だよ」
両津「まったく……打てばいいんだろ、打てば…」
タキオン「あぁ、そう、どうやら身体の痒みなどの副反応が…あっ」
両津「なんだって?」パシュン
タキオン「モルモットくん」
両津「なんだ?」
タキオン「急いで服を脱ぐ事と川かシャワー室に行くことをオススメするよ」
両津「藪から棒にどうした?」
タキオン「いいから急いで川にダッシュだ!」
両津「う、裏の川かっ!」
両津「ぜ、全身が、か、痒い!」
タキオン「飛び込む前に服を脱ぐんだ!」
両津「うおぉぉぉぉ!」バッシャーン
両津「か、痒くてたまらん!」
タキオン「どうだい?モルモットくん?」
両津「髪も皮膚もドンドン剥けていくぞ、なんだこれは!」
タキオン「新陳代謝がものすごーく活発になっているんだ、君、体の垢がとんでもないことになっているぞ」
両津「どわぁぁぁぁぁぉ!」
……
タキオン「さて、調子はどうだい?」
両津「見てわかるだろ、身体が1/3は無くなった気分だ…ベルトがスカスカでズボンもパンツもずり落ちそうだぞ」
タキオン「ふむ…アンチエイジングというよりはダイエットといった感じだろうか?」
両津「一生分の垢が出た気がするよ…」
タキオン「悪いがちょっと離れてくれないか…」
両津「お前がやったんだぞ…それでその扱いはワシでも傷つくぞ…」
両津「確かに身体は若返ったというか、体重以上に軽くなった気はするな…昔、左肩のところにした怪我の痕も消えとる…」
タキオン「ほう、古傷も消えたのか…なるほど、なるほど…肌は…まるで20代のような張りだね」
タキオン「その傷はどんな具合だ?怪我の後遺症とかは…?」
両津「あぁ、ガキの頃に船のプロペラに巻き込まれて出来た傷でそのせいで左肩を回すと突っ張った感じだったが…今はなんともないな」
タキオン「ほう…良かったじゃないか」
タキオン「実験は大成功と言っていいねぇ、効果は予想の3倍ほど発揮されているが…」
両津「まったく、成功したからいいものを失敗したらどうなっていたんだ?」
タキオン「老廃物にまみれて死ぬか何も起きなかったろうねぇ…」
両津「コラ!そんな二択を人に使うな、まったく…」


20 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:11:25 5oTHLVVA
タキオン「まぁ元は君の細胞だから悪いことにはならないとは思っていたからね」
タキオン「君、気づいていないかもしれないが、髪が全部抜けてまた生えているから坊主頭になっているぞ」
両津「禿げて光ってないだけマシだよ」

タキオン「さて、今までの実験結果からすると、君は薬の分解力が非常に高く、有効作用をとても引き出しやすい肉体である事が証明されたわけだ」
タキオン「しかも、自分の体に毒である物質はほぼ完全に無毒化する能力まで兼ね揃えているとは…」
タキオン「君は本当に人間なのか?」
両津「ワシの両親はどっちも普通の下町のジジババだよ」
タキオン「もしくは、我々と同じようにある種の突然変異として産まれたのかも知れないね…」
両津「我が事ながらそう言われると自信ないぞ…」
タキオン「しかし、この試薬、名付けてKRV1は素晴らしい効能があるな、そのまま使うには作用が強すぎるが」
両津「何の略だ、それは」
タキオン「カンキチリョーツウィルスだが?」
両津「人を病原菌扱いしやがってからに…」
タキオン「そのまま使えないから効力を落として使うからワクチンのようなものだが…」
タキオン「正確に言えばワクチンとは効力を弱めたウィルスで免疫にその性質を覚えさせる事が目的だがね」
タキオン「それと、ウィルスと菌はまったく別物だよ」
両津「やかましい、そんな話しはしとらん!」
両津「まったく、人のいないとこで使うなよ、危なすぎるぞ」
タキオン「あぁ、約束するよ、君がいる時にだけ使うよ」


21 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:12:53 5oTHLVVA
……
ホープフルステークス当日
両津「流石にG1となると緊張するなぁ」
タキオン「落ち着きたまえよ、トレーナーくん」
両津「なんでお前の方が落ち着いていられるんだよ…」
タキオン「なに、試走タイム、私の2000mの平均タイム、今日のメンバーの実力と考えうる作戦についてはリサーチ済みだからね、私が問題なく走れれば何の問題もない、安心したまえよ」
両津「それならいいがな…」
タキオン「予想外の事は想定しているさ、問題はその時に自分の走りに自信が持てるか、自分の走りに殉じられるかどうか、と言ったところかな?」
両津「…信頼しとるよ、無理するな、ジュニア級なんだ、本番はまだまだ先だしな」
タキオン「縁起でもない事を言うのはやめたまえよ、さっ、検証開始だ」
両津「…よし、行ってこい」

タキオン「ふふ、どうだったかな?」
両津「正直言ってお前がどこまで速く走れるのか想像つかんよ」
タキオン「ふふ、半分は君のおかげかな?」
両津「ワシは何もしとらんぞ」
タキオン「ふふふ…そんな事はないよ、はっきり言って、非常に美味で栄養価の高い食事と実験が思う存分出来ることでここ最近はフラストレーションが全くないからね」
両津「あぁ、ワシは貯まる一方だがな」
タキオン「ふふふ、それでは私の勝利でそれをカタルシスに変えてあげるとしよう」
両津「期待しとるよ…」


22 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:13:28 5oTHLVVA
タキオン「しかし、君のお弁当は毎食凝っているねぇ…」
両津「あぁ、最低でも1月分のローテーションは確保しているからな」
タキオン「飽きると言う事が無いのは素晴らしい、君はいつも同じようなものばかり食べているのに」
両津「いいんだよ、ワシのは」
タキオン「ところで、このハート形の卵焼き、これはどうやって作るんだい?」
両津「簡単だよ、中に具を入れて厚焼きを作って、熱いうちに巻き簾で形を変えるんだ」
両津「厚焼きは寿司職人の基本だからな、冷えるとその形で固まるからそれを冷やしてから切ればそうなる」
タキオン「器用だねぇ…」
両津「ほかの形はある程度抜き型を使ったりもしてるし、細工切りは得意だからな、苦にもならんよ」
タキオン「この蝶の形のにんじんなどはよく出来てるね、煮崩れせずよくもまぁ…」
両津「それは細工した後に蒸して後から味付けしとる、他の煮物とは別に作ってるんだ」
タキオン「この煮物も味がよく染みていいね、レンコンも歯応えが残っていて…」
両津「煮染めは歯応え、風味、味わいがそれぞれ違うのが面白さでもあるからな、別々に煮るもんなんだ」
タキオン「君は拘りがすごいねぇ…この産毛の生えた豆はなんだい?」
両津「それは今日の弁当の中で一番手がかかっとる、茶センを使って甘納豆に飴を絡ませるんだが極細の飴細工だから水分を含むと溶けてしまうからな、紙包で別の容器にいれたんだよ…」
タキオン「菓子はあまり入れない君が珍しいね…うむ、飴の産毛がシャクっとして、サッと溶けて柔らかい甘納豆に絡んでホクホクとした甘みと混ざっていく…実に美味だ…」
両津「気付いてなかったか?」
タキオン「何がだね?」
両津「今日はひな祭りだ」
タキオン「…あぁ、それでおにぎりが卵の茶巾で包んで2個並んでたのかい?」
両津「季節感も大事な要素だからな」
タキオン「正直、食事には気を使わない質だったが、君のおかげで目と舌が肥えてしまったよ」
両津「ワハハ、そう言われると腕のふるいがいもあるってもんだ」
タキオン「今度、君の握る寿司も食べてみたいね」
両津「寿司は弁当にするとなると押し寿司になってしまうからなぁ、よし、今度店に呼んでやるよ」
タキオン「楽しみだねぇ」


23 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:14:00 5oTHLVVA
……
皐月賞
タキオン「さぁ、トレーナーくん、証明の時間だよ」
両津「これがクラシックレースか、外から見るのと熱気の伝わり方が全く違うな…」
タキオン「君は初めての体験だろうね」
両津「そう言うお前こそ、そうだろ」
タキオン「そりゃそうだ、なんと言っても一生に一度の大舞台だからね!」
両津「気負うなよ、お前ならやれるよ」
タキオン「そうは言ってもね、この高揚感は如何ともし難い」
両津「勝つための情熱は誰にでもある、しかし、勝つ準備のための情熱は殆どの者が持っていない、だそうだ」
タキオン「含蓄のある言葉だねぇ」
両津「お前の情熱は本物だ、他の誰にも負けてない、特に準備ではな」
タキオン「……あぁ、さぁ、実地試験といこうじゃないか!」

勝ちタイム 2:00:3
2位とは1と半バ身さの完勝であった。
タキオン「ふぅ…流石に疲れたね」
両津「よくやった、いい走りだったぞ」
タキオン「流石にアガってしまってね、途中ペース運びを間違えたのに気づいたときはヒヤヒヤしたよ」
両津「全くそうは見えなかったが…」
タキオン「上がりは意地というやつだね」
両津「まったく、お前はどこまで走っていけるんだろうな…」
タキオン「…さぁてね、私の脚は私にもわからないよ」
両津「違いない、よし、お疲れのところ悪いがライブだ、お客さんをもう一度沸かして来い」
タキオン「あぁ、歌でも魅せてあげるとするよ」


24 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:14:26 5oTHLVVA
……その夜
ジリリンジリリン
両津「…ん、タキオンからか?」
両津「こんな時間にどうした?昂って眠れんわけでもないだろ?」
タキオン「…すまないね、トレーナーくん、頼みがある、私の研究室まで来てくれないか?」
両津「構わないが、急ぎか?」
タキオン「あぁ、頼むよ」
両津「珍しいな…この時間に呼び出しは…」

両津「タキオンっ!どうした?」
両津「っ、おいっ!ど、どうしたんだ!?」
タキオン「や、やぁ、トレーナーくん…」
両津「おいおい、何がどうなっとる、何をしたんだ!?」
タキオン「まだしてないよ…左脚、脚がついに痛くてたまらなくなってね…」
両津「脚?脚だと!?」
タキオン「乙女の素足をいきなり晒すのは感心しないなぁ…」
両津「言ってる場合か!なんだ、どうすりゃいいんだ!」
タキオン「そこのKRV、今日、ようやく出来上がったんだ…」
両津「これか!あの薬か!」
タキオン「そうだ…これを使うから、君に、そばにいてほしくてね」
両津「あ、あぁ、1人では使うなと言ったからな」
タキオン「成功すれば、この脚の因縁ともおさらばさ」
両津「お、おい、大丈夫かっ!」
タキオン「見てくれ、これを、打つよ、見てくれたまえ、私の、私達の研究成果を…!」プシュン
両津「お、おい」
タキオン「う、うお……」
両津「おい、大丈夫か…!クソ!なんでワシの細胞なんか使ったんだ、おい!」
タキオン「君の人間離れした、凄まじい細胞の、力に、惹かれたのさ、これならと思ってね……」
タキオン「ぐっ、痛みがすごいな…患部と、あ、頭を冷やしたい…」
両津「アイシングだな!」
タキオン「あ、脚がっ、脚が痛いよ、両津くん…」
両津「今、氷を出すからな、冷やすから待て!」
タキオン「がっ、がぁぁぁああぁぁぁ!」
両津「熱がすごいぞ!大丈夫なわけないぞ、これは…」
タキオン「はっ、発熱は、予想していたさ、問題ない、これは我々の身体の、生理反応だ、からね…ぐっ!」
両津「おい!おい、しっかりしろ!」
タキオン「す、凄まじい、痛みだ、これは…い、いしきが…」
両津「タキオン、おい!」
タキオン「あ、頭の熱をとってやれば、大丈夫だ…頼むよ」
両津「わ、わかった!」
タキオン「そ、そばにいてくれよ、両津くん」
両津「安心しろ、ちゃんといるからな」


25 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:15:19 5oTHLVVA
……
タキオン「ふぅ……やぁ、おはよう、トレーナーくん」
両津「よう、良く寝れたか?もう大丈夫なのか?」
タキオン「あぁ、昨日はあまりの痛みに錯乱しそうだったが、どうやら今は、おさまったようだよ」
両津「まったく、一時はどうなるかと思ったよ…」
タキオン「うら若き乙女の寝顔を一晩観察とは、人が聞いたらなんて言うかな?」
両津「…へいへい、どうせワシは変態ですよ」
タキオン「目が赤いよ、寝ていないのかい?」
両津「当たり前だろう、最悪、呼吸でも止まったら医者に駆け込まなくちゃならんからな…」
タキオン「世話をかけるねぇ…医者に見せたところでどうなるものでもないかも知れないが、お礼を言っておくべきかな?」
両津「構わんよ、コレもワシの仕事だ、立てるか?」
タキオン「正直、怖いね、失敗すれば碌に歩けもしなくてなりかねないからね…」
両津「ワシにつかまれ…ゆっくり、ゆっくりな…」
タキオン「ふ、ふふ…まるで幼児のようだね、さしずめ、君はお父さんかな?」
両津「アホゥ…ふざけとらんで、ゆっくり、歩けよ…」
タキオン「う、うん…」
両津「ど、どうやら歩くのは問題ない、ようだな…」
タキオン「フフフ…」
両津「手を離すぞ?平気か?」
タキオン「アッーハッハッハ!成功だ、やったぞ、トレーナーくん!私は私を乗り越えたぞ!」
両津「お、おい、落ち着け!」
タキオン「これが落ち着けるものかい!私は、私に勝利した!この因縁を断ち切ったぞ!」
両津「だからと言って飛び跳ねるな!危ないだろ!」
タキオン「あぁ、高揚感でついに錯乱してしまうところだったよ、トレーナーくん」
両津「あぁ、見たことのないテンションで驚いたぞ」
タキオン「アーハッハッハッハ……あぁ、しかし…」
両津「どうした…?」
タキオン「アレだな、うん…あぁ、済まないが、突然で悪いが、トレーナーくん、ちょっと離れてくれるか…?」
両津「なんだ、どうした?何か問題でもあるのか?」
タキオン「あ、あぁ…その、前に君に君に試してもらった薬と同じ成分だろ…?」
両津「あぁ、前にワシが使ったやつだろ?」
タキオン「その…だな…、新陳代謝が活発で…その…老廃物の、排出が活発なんだよ」
両津「まさか、汗臭いのを気にしとるのか?」
タキオン「こっちがせっかく遠回しに言っているのに、君ってやつは!」
両津「わ、悪い悪い、とりあえずシャワーだな、着替えは…」
タキオン「この際だししょうがない、ジャージで我慢するよ」
両津「いきなりお年頃の娘みたいな事を言いだすなぁ、お前」
タキオン「私はいつも年頃の娘だよ」
両津「はいはい…」


26 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:16:00 5oTHLVVA
……
両津「さっぱり出来たか?」
タキオン「あぁ、君ほどではないが、大量の垢が出るのは気分の良いものではなかったがね…」
両津「…脚はどうだ?走れるのか?」
タキオン「これからそれをレントゲンとMRIで確認をしに行きたいのだが、病院まで連れて行ってくれるかな?」
両津「あぁ、それくらいなら構わんよ、タクシーを呼ぼう」


27 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:16:24 5oTHLVVA
医者「こちらが、アグネスタキオンさんの脚のレントゲンになります」
両津「ほう、こんなにくっきり出るんだな…」
タキオン「君も自分の骨くらい見たことあるだろうに」
両津「多少の怪我で病院通いなぞせんからな、ほとんど見たことないよ、トラックに轢かれても擦りむいただけで済んだし」
タキオン「…君の生命力は化け物じみてるな」
タキオン
医者「MRIの結果はこちらに」
両津「ワシが見てもちんぷんかんぷんなんだが…」
医者「こちらが以前に撮ったMRI写真です」
タキオン「ここを見たまえ、トレーナーくん」
両津「何がなんだかわからんぞ」
タキオン「…この変色している左脚の大腿筋が私の、ここが筋肉腫だ」
両津「お、おい、筋肉腫と言えば…」
医者「ざっくり言えば、筋肉の癌です」
タキオン「その通りだ」
両津「なんでそれを早く言わなかった!」
タキオン「そう怒鳴るものでもないだろう、悪性とは言え、まだ転移の可能性も少ないと聞いていたからね、大腿筋の多くを切除しなくてはならないのは我々レーサーウマ娘にとっては死に値するだろう?」
医者「私どもも悪化する前に入院を強く勧めたのですが…」
タキオン「そうしたら、出られないだろう?トゥインクルシリーズには、2度とさ」
両津「まったく…お前と言うやつは…」
医者「こちらの、今撮影したMRIとの比較になりますが……信じがたい事ですが、完全に肉腫が消えて新しい筋肉が形成されています、正直言ってこんな例は初めてです」
タキオン「あぁ、そうだろうね…」
両津「まったくお前と言うやつは…」
タキオン「なんだね?」
両津「大したもんだよ、本当に」
タキオン「アッハッハッハ、そうだろう、そうだろうとも!」
両津「誰も褒めてないぞ…」
タキオン「トレーナーくん!喜びたまえ!コレで私はどこまでも走れるよ!あぁ、素晴らしい!私は今まさに生まれ変わった、最高の気分だっ!」
両津「そりゃ良かったよ、ワシが死因など夢見が悪すぎるからな」


28 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:16:48 5oTHLVVA
……
2年後
両津「ずいぶん長いこと、走ってきたもんだな…」
タキオン「あぁ、まったくだ」
両津「よかったよ、お前が無事に大学入れて」
タキオン「危うく落ちかけたがね」
両津「面接に寝坊したせいだろ、ワシが自転車でかっ飛ばさなかったら間に合わんかったぞ」
タキオン「何度も言うが君が起こしてくれないからだぞー」
両津「ワシだって眠かったんだよ…あの頃は連日の実験に付き合ってるんだし」
タキオン「それはまぁ感謝してるさ」
両津「あの薬はどうだ?使えそうなのか?」
タキオン「君の体細胞の暴食性と代謝の急激な増大がネックでね、やはり認可は難しそうだよ、抗癌剤としては何年とかかるだろうね、汎用化と実用化の研究費用も馬鹿にならないし」
両津「ワシの知り合いに中川財閥の御曹司がいるからソイツに掛け合ってみようか?」
タキオン「あぁ、ただ難しいかも知れないね、君の細胞との相性もあるから」
両津「ワハハ、違いない」
タキオン「私にたまたま適合したのは、やはり運命だったかな?」
両津「恥ずかしくなるような事を言うんじゃない」
タキオン「あの時点では失敗する確率の方が高かったんだぞ、それが完治してここまで来れたんだ、こう言った言い回しは本来は嫌いなのだが……私は運が良かったよ」
両津「まったく、お前ときたらワシよりギャンブラーだ」
タキオン「だがね、私は成功すると確信していたんだよ、あの日に完成した事も含めてね、今日失敗したら私の挑戦はすべて嘘になると思ったんだよ」
タキオン「あの日、君がもし電話に出てくれなかったら、多分実験は失敗していたと思う」
両津「…お前はロマンチストだよ、ほんとはさ」
タキオン「だが他人に使わせられないね、何せ君の細胞だからね、無論、危険という意味でだ」
両津「ぬかせ…」
タキオン「君はこの後はどうするんだい?」
両津「あぁ、こっちに来る前に決めてきたよ、お前の卒業に合わせて正式にトレーナーを専業にする事にした、どうやらこっちが向いてるみたいだしな」
タキオン「…長年勤めた公務員を辞めてトレーナーか…君もなかなかのもんだねぇ」
両津「ワハハ、お前のトレーナーだからな、兼業じゃどうしようもないさ」
タキオン「…ちがいない」
両津「なぁ、タキオン」
タキオン「なんだね?トレーナーくん」
両津「ワシがトレーナーで良かったか?」
タキオン「まったく、君ってやつは何を今更……」
タキオン「これからそれを、私達の、最後の証明をしにいくんだ、結果を見て君が決めたまえよ」
両津「あぁ、そうだったな、よし、行ってこい、アグネスタキオン」
タキオン「あぁ、もちろんさ、日本に帰ったら特上寿司が待ってるからね」
両津「おう、腕によりをかけて何人前でも握ってやるよ」

 花火が上がる、彼女が夢見た可能性の領域は遠い砂の国で世界の目をくらませる超高速として、ついに観測された。
 彼女の残した記録は、伝説となった。
 少女の夢は、神話になった。
 そこには、その傍に居た男の名も共に記されている。


29 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:18:46 5oTHLVVA
おしまい


30 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:19:26 5oTHLVVA
反省!と言い訳
・終わり方が唐突すぎでは?
→デバフ解除イベントほどのイベントを用意できなかったので、後は蛇足になると判断しました
山場にしたかったので引きはあっさりの方がいいかと判断
・なんでここで終わった?
→これ以上は長くなりすぎるし、彼女のその後は皆さんの夢の中で走っていただければそれほど嬉しい事はありません(OOSGKTO)
・口調違わない?あと変なところない?特に両津の
→ダメ避け少し弄りました、>>16>>17の合間にシリウスのメンバーと話してる内容が何回やってもダメだったので省略してます
・ドバイWCに出るのはアカンのでは?
→オールウェザーだし、ダートじゃないし、ウィニングポストはいつになったらオールウェザー適正作るんだ?スピードの速い産駒多いしダート馬も居るし、きっと適応出来たよ、多分
・ダービー以降は?
→全部勝った!
・両津が警察辞めたらどうしようもなくない?
→いいんだよ!どうせパラレル世界でのクロスオーバーなんだから!
・筋肉腫の治療はやりすぎでは?
→ほかに良さそうな病気を知らなかったんだよ!屈腱炎っぽい人間の病気がわからなかったんだよ!
・両津の細胞強すぎない?
→両津だから救えた、という要素を加えるにあたってそういうことにしといた
 本編では感情の動きに重きを置いていたのでそれとは違う方向にしたかったので
 あとリョーツGRXの存在にタキオンが気づかないはずがないと思ったので
・他のウマ娘は?
→両津の異常性をタキオンが放っておくはずがない、という話しで始めたので今のところ他の子は書く気力もネタもありません
・ネタ切れしてない?
→蘊蓄語るキャラ同士だとどうしてもどっちかが聞き役になってしまうのでもっと趣味について語る両津を書きたかった
・余談
→気性難が多いSS血統と気性難の両津を合わせたら何が起きるかな?と思ったんですが、両津のツッコミ適正も割と高くてこうってしまいました
→最初はマリアが出てきて両サマー!してタキオンがスゴイショック受けてる見てコイツは男だー!からのそう言う趣味だったとは、付き合わせてごめん、落ち着け!ワシはホモじゃない!って言うトホホ落ちにする予定だったんですけど、思いの外しんみり系に落ち着いたのでカット
→途中薬で若返って1日同世代くらいにしてみようかと思ったんですがちょっと書いて重すぎたのでカットしてます
・誤字脱字
→申し訳ありません


31 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 14:20:27 7AAPirTw
乙シャス
こち亀だけのSSかウマ娘だけのSSも見てみたい
(我儘)


32 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/20(木) 18:39:51 NqbwT/lA

改行があった方が見やすいかも


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