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こち亀×ウマ娘SS「秋の無人島キャンプ」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:26:49 x6suKPKg
船上
両津「あー、海はいいなぁ、まるでワシの休みだ、わはは」
ゴルシ「一朱のおっちゃん!マスト登っていいか!?」
両津「おう、いいぞ、落ちんなよ、腰に命綱つけろよー」
ゴルシ「よっしゃ!行くぞパエリア!」
ライスシャワー「あの、ライスです…」
マックイーン「…すみません、御不浄は…おトイレは…」
両津「吐くなら船尾でいいぞ、トイレ汚れるし、余計気持ち悪くなるぞ」
マックイーン「あ、ありがとうございます…」
両津「まったく…騒がしい奴らだ…」
両津「船旅のロマンってのを理解しとらん」


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:27:12 x6suKPKg
両津「えぇっ!ワシがウマ娘の引率ですか!?」
部長「あぁ、毎年トレセン学園の秋の短期合宿は地元の町内会が斡旋しとるんだが、引率の方がインフルになってしまってな」
部長「葛飾署に応援要請が来たんだが、無人島であるガボテン島での引率となるとお前しかおらん」
中川「先輩は生き様がサバイバルですからね…」
麗子「両ちゃん以上の適任はいないわね…」
両津「やかましい!」
両津「ボルボもいるでしょう、サバイバルなら」
部長「アイツはダメだ、女の子に囲まれたら上がって使い物にならん」
部長「つべこべ言わずに行って来い!これは命令だ!」
両津(おかしい…普段の部長ならワシに『お前が女に囲まれたら何をするかわからん!』とでも言いそうなものなのに…)
両津「…部長、町内会から何か貰ってません?」
部長「えっ」ギクッ
両津「やっぱりそうだ!リベート貰ったんだ!」
部長「な、何を言う!私はそんな物貰ってない!」タラタラ
両津「嘘だっ!どうせ時代演劇のチケットなりなんなりもらったからワシを追い出したいんだ!」
部長「な、何を言ってるのかなぁ、両津くんは…そ、そうだ、出張手当に一万円、一万円払うから…」ダラダラ
麗子「当たりみたいね」
中川「動物的勘がするどすぎるよ…」


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:27:31 x6suKPKg
両津「出張という形で来たはいいが、ワシはウマ娘の現代トレーニングなんぞ知らんぞ」
ライスシャワー「あ、あの…」
両津「うん?どうした?」
ライス「こ、今回は『名目は短期合宿だけど、レース前の休暇旅行だから怪我だけしないようにしてくれればいい』ってうちの理事長が言ってました」
両津「おーそうか、説明ありがと、安心したぞ…えっと、名前なんだっけ?」
ライス「ライスシャワーです」
両津「お、おう、わかった、ありがとよ」
ライス「はい、両津さん」

会社員「今更弱ったなぁ」
両津「うん?旅行会社のお前らどうしたんだ?」
旅行会社社員1「バイトの人員調整が難航してまして」
社員2「料理とか掃除とかの日雇いですよ」
社員1「1日3万で3人1週間来ますから1人21万で払いはいいんですが、拘束が長いのと無人島での生活は嫌だと言われちゃいまして…」
両津「3人で合計63万だと…!」
社員2「賃上げ要求の声が今更になって上がって来ちゃいまして…」
両津(ワシなんか出張命令書1枚なのにバイトは3万も貰えるなんて…)
両津「引率はワシの役目だ!ワシが全部やる!だから人件費全部もらうぞ!」
社員達「えぇ!!」
両津「いいか?町内会にも署にも学園にも余計なことは言うなよ?」
社員1「わ、わかりました」


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:27:59 x6suKPKg
ゴルシ「おぉい!四分銀のおっちゃーん!」
両津「なんだー!?」
ゴルシ「陸地が見えて来たぞー!」
両津「ボートを下ろすから降りてこーい!」
ゴルシ「合点!」
両津「しつこく言うがわかったか?」
社員1「は、はい」
社員2「あの人ならほんとにやりそうだ…」
両津「今夜はバーベキューだぞ!」
ゴルシ「やったぜぇ!」
マックイーン「初日からお肉ですか…」
両津「肉は腐りやすいからな、早めに食べるのが良いんだ」

両津「マックイーン、ライスシャワー、ゴールドシップ…よし、全員いるな!」
マックイーン「4人しかいませんし、ワザワザ点呼とるほどでは…」
両津「ダメだ、ここは無人島なんだぞ?どっかで動けなくなっても他の人間が通りかかって助けてもらえるとは思わんことだ」


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:28:33 x6suKPKg
両津「まずは発電機にガソリン入れて…っと、アースも取れてるな、よし」
マッククイーン「アース?」
両津「この棒だ、ざっくり言うと余計な電気を地中に流す役目がある」
ゴルシ「棒の周りの白い粉は?」
両津「接地抵抗減剤だ、塩と石灰の粉で、アースを取りやすくするんだよ」
両津「地面に電気を流れやすくする薬だ、舐めるんじゃないぞ」
ゴルシ「舐めねーよ…」

両津「移動の前にまずはコレを着けろ」
マックイーン「なんですの…?これは…」
ゴルシ「でっけ〜トンボのブローチか?」
ライス「ちょっと、リアルで気持ち悪い、かも…」
両津「オニヤンマだ、目のとこが鈴になってて動物避けと虫除けになる」
両津「さっき猪の足跡を見つけたからな、スズで自分がいる事を知らせるんだよ」
マックイーン「い、猪!?」
両津「あぁ、だから食い残しは埋めたり焼いたりしないと襲われる可能性上がるからな、その辺に捨てるなよ」
ゴルシ「捕まえて牡丹鍋にしようぜ!」
両津「ガハハ、それも良いな!」
ライス「トンボの形なのはどんな意味があるの…?」
両津「あぁ、ブヨとかアブ、スズメバチはトンボが天敵だからな、付けとくと虫に刺されにくい」
マックイーン「便利なアイテムですのね…」


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:28:55 x6suKPKg
両津「水場はこっちだ」
ライスシャワー「あ、川がある…」
両津「そのままでも飲めるが何かあると良くないからこの浄水器を通して飲めよ」
ライスシャワー「冷たくて美味しい…」
両津「100%天然水だ、硬度も低いから腹を下す心配もない」
マックイーン「あの、おトイレってアレですの?」
両津「おう、川に直接流せ、水場の下流側だからな、上流でするなよ」
ゴルシ「ゲロゲロだなぁ」
両津「水場とトイレの間で水浴びしろよ?間違っても知らんぞ」
マックイーン「あの、他に誰も居ないとはいえ、流石にこのままだと恥ずかしいんですが…」
両津「後でシーツでカーテンつけといてやるよ」

両津「で、コッチが釣り場だ」
ゴルシ「腕がなるぜぇ!」
両津「ライフジャケットはここにある…こいつの着方は、こうだ」
マックイーン「は、早い」
両津「最初は遅くても良いから面倒でもちゃんと着ろよ、あと釣り用の長靴もあるからな」
ゴルシ「へーい」
ライス「はーい」
マックイーン「はーい」
両津「ここに親綱があるからロープをここに結んで腰に巻いておけば波に攫われても自力で戻って来れるからな」
両津「あぁ、それからこの先にウロが出来てて、クレバスになってるから気をつけろよ」
ライス「クレバス?」
両津「波の侵食で穴が空いてその上が裂けて穴になってるみたいだな」
両津「そういう穴は表面がツルツルしてるから這い出るのは難しいぞ?ワシでも無理だ」
ゴルシ「オッちゃんの凄さがわかんねー」
両津「まぁ人間なら無理って事だ、ウマ娘でも力をかけられないから1人じゃ上がれんよ」


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:29:49 x6suKPKg
両津「さて、だいたい危ないとこと危険な場所はわかったな…」
マックイーン「…歩いたらお腹が空きましたね…」
ライス「ライスも…」
ゴルシ「腹ぺっちゃだなぁ…」
両津「それじゃ火を起こすか、せっかくキャンプに来てガスじゃ味気ないだろ」
ゴルシ「オッちゃん、さっき言われた松ぼっくりと松の葉ってこんなもんでいいか?」
両津「おー、大量だな…」
マックイーン「こんな物何に使うんですの?」
ライス「まさか、食べるんじゃ…」
両津「ワハハ、流石のワシもこんなもんは食わんよ、これは着火剤だ」
両津「バーナーじゃ味気ないからな、こうやって鉄の鍋に敷き詰めて、マグネシウム粒乗せて、火打ち石を擦ってやると…」ボワッ
ゴルシ「おわっ!スゲー…」
両津「松脂がついてるから長時間燃えるし松ぼっくりに火がつけば火を移すのも簡単だ、やってみろ、髪に火がつかないように後ろで縛っとけよ」
ライス「えぃっ!…わぁ点いたぁ…」
両津「なっ?簡単だろう?」


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:30:15 x6suKPKg
ゴルシ「焼きそばだぁ!」
両津「うまいもんだ…」
マックイーン「ほんとに美味しいです…」
両津「この焼きそば、焼いてあるのがすごいな…」
ライス「…?焼きそばだから当たり前じゃないの?」
両津「焼きそばってのは大概、水をかけて蒸し焼きにするのが普通なんだが…」
両津「これは一本一本きちんと麺が焦げないように焼いてある…職人技だな…」
両津「ソースも直接かけず、傍にかけて水分を飛ばしながら絡めてあるからベチャベチャ感のない風味の強い焼きそばに仕上がってる…何気にすごい技術だ…」
ゴルシ「へへーん、スゲーだろ」
両津「ただのお騒がせかと思ったが、お前すごいな…」
ゴルシ「おっちゃーん、そりゃないぜ〜」
マックイーン「ふふ、両津さんにかかればあの子もかたなしですわね」
ライス「なんだか波長があってるみたい…」

そして、夜
両津「やっぱり東京とは星の見え方が違うなぁ…」
マックイーン「綺麗…」
ライス「ねぇねぇ、シリウスはどれ?」
ゴルシ「おおいぬ座は冬だからまだ見えねーぜ?」
両津「そうだな、12月くらいしないと季節じゃないな」
ゴルシ「おおいぬ座が真東にくると新年になるってのがエジプトの暦の基本なんだぜ?」
両津「お前、詳しいなぁ…」
ゴルシ「雑学なら負けねーよ?」
両津「レースでも負けるなよ」


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:30:54 x6suKPKg
深夜
両津「ふぅ…ようやく寝たか…パワフルな奴らだ…これで酒が飲める…」
両津「キャンプはいいなぁ…火を見てるだけで癒される…」
マックイーン「あの、両津さん?よろしいですか…?」
両津「おぉ、どうかしたか?」
マックイーン「まずお礼を、と思いまして…今日はありがとうございました」
両津「律儀だなぁ、いいんだよ、ワシの休暇みたいなもんだし、金ももらってるし」
マックイーン「でも、今日で色々な事を教えていただきましたし…頑張ればここでしばらく生活できるくらいの経験は出来ましたけど…でもそれってこのキャンプの趣旨からは少し外れてるな、と思ったもので…」
両津「うん?まぁそうだな…」
マックイーン「余計なお手間をかけてしまったのではないかと…」
両津「あぁ、そういう事か…心配要らんよ、そんなことは」
両津「…もし仮にワシが猪なり野生動物に食べられても迎えがくるまでは過ごせるように、って教えたかっただけだし」
マックイーン「な、何をおっしゃいますの」
両津「マックイーン、お前が一番落ち着いてるから、真面目な話だが…」
両津「お前らと比べればワシの仕事なんて屁みたいなもんだ」
両津「お前らの仕事は…とんでもない事をやろうとしてる、日本一、全国の頂点に立とうという無茶な仕事だ…」
マックイーン「仕事だなんて…」
両津「走って歌って、ファンサービスをする、ウマドルってのは仕事じゃないのか?」
マックイーン「それは…そうですが…」
両津「少なくともワシには出来んし、真似事にもならん」
両津「そういう子達を預かるんだ、少しはもしもの時の事を教えておかんとな」
マックイーン「ふふ、顔に似合わない事をおっしゃいますのね」
両津「顔に似合わないは余計だよ」
マックイーン「ふふふ…」
両津「なんか食うか?ホルモンとかしか残ってないが」
マックイーン「ふふ、いただきます」
両津「お前ら、いいとこのお嬢さんなんだろ?こんなんで大丈夫か?」
マックイーン「ええ、食べ物に貴賎はありませんわ」
両津「確かに、美味いまずいは値段じゃないな、高けりゃ美味くて当然だが」
マックイーン「このレバー美味しいです…ちょっと苦手なんですけど、これなら食べられますわ」
両津「それはこっちに来る前に下拵えしておいたやつだ」
マックイーン「なんでも出来るんですのね」
両津「食えるものは大概調理できる程度には仕込まれてるからな、レバーは牛乳に漬けて臭み取りしたりとか、焼くときに軽くワイン振ったりとかで臭みが消えるから家でやってみるといいぞ」
マックイーン「…家ではシェフが作ってくれるので…」
両津「そんなんじゃ嫁入りの時に大変だぞ?」
マックイーン「婿を取りますから」
両津「そうなるよなぁ、金持ちははいつもそれだ」
マックイーン「あら、どなたかお金持ちの方でお知り合いが?」
両津「あぁ、いるぞ、中川財閥の御曹司と秋本財閥の一人娘が同僚に」
マックイーン「えぇ!?」
両津「そりゃ知ってるよなぁ、金持ちは横の繋がりも広いし、そいつらと同じ派出所に勤めとるんだ、楽しいが世間ズレが酷くてな…」
マックイーン「えぇ、一度会食でお会いさせていただきましたけど」
両津「特に秋本の令嬢なんか外面の良さと美人だけど高ビーでさぁ」
両津「頭も良くて金持ちで鼻持ちならないしイヤミなやつなんだよ」
マックイーン「は、はぁ…」
両津「でも時々思うんだよ、アイツがもしワシと同じく下町の生まれだったら、切符のいい品のある下町娘でもっと仲良くやれたんじゃないかって…」
マックイーン「…好きなんですか、その人の事」
両津「好きとはまた違うかな、腐れ縁だし、好みの顔ではあるけど、何度か縁談話に乗ったこともあるが、上手くはいかなかったし」
マックイーン「ふふ、すごいですね」
両津「その点で言えばイヤミじゃないよな、マックイーンは」
マックイーン「えぇ!?もしかして口説かれてます!?」
両津「バカもの、そんなんじゃないよ」
マックイーン「ふふふ、冗談です」
両津「まったく、大人を揶揄うんじゃないよ…」
マックイーン「ウフフ」
両津「明日は朝から食材探しをしないとならんから早く寝ろよ」
マックイーン「はーい…おやすみなさい、両津さん…」


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:31:24 x6suKPKg
次の日
両津「自分で食う物は自分で取れ!」
ゴルシ「サー!イエッサー!」
マックイーン「釣りですわね」
ライス「ライスは生き餌が嫌だからルアーにするね…」
ゴルシ「旦那、旦那!早速ヤベーのが釣れた!」
両津「アンコウかよ、とんでもないヤツだな、お前…」
ゴルシ「コイツは食えるやつか?」
両津「ホンアンコウだから捌くのが面倒だが、食えるぞ」
ゴルシ「よっしゃあ!朝飯ゲットぉ!」
両津「歯が鋭いから締めるまで少し待て」
ゴルシ「うぉっ!旦那のも引いてるぞ!」
両津「何ぃ!釣っといてくれ」
ゴルシ「旦那!鯛だ!鯛が釣れたぞ!」
両津「陸釣りでクロダイまで釣れるなんてこの海はどうなってんだ…」
マックイーン「こっちもかかりました!」
ゴルシ「旦那ァ!オコゼだ!」
両津「背ビレと尾ビレが毒あるから、棒で殴って締めろ!」
ゴルシ「よし来たぁ!」
ライス「ひゃぁあぁ〜!!ら、ライスのも引いてる!」
両津「忙しすぎるぞ…山にすれば良かった」


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:32:05 Wr6fWrCE
両津「アンコウに捨てるところ無し!」
ゴルシ「まさか旦那が吊るし切り出来るなんてなぁ…」
両津「お前が知ってる方が怖いぞ…」
マックイーン「なかなか絵面が酷いですわ…」
ゴルシ「旦那は顔が酷いからなぁ」
両津「お前は黙ってれば美人なのにな」
ライス「あはは、言い返されちゃったね」
ゴルシ「う、うるせぇぞ、ササニシキ」

両津「それにしても朝からアンコウ鍋と寿司とはなかなかに豪勢だな…」
ゴルシ「アンキモがうめぇ…」
マックイーン「アンコウの出汁が効いて美味しいですわ、パクパクですわ、毎日コレでもいいですわ、身と肝とお寿司の無限ループですわ」
ライス「オコゼも美味しい、鯛のお寿司も美味しい」
両津「本当は締めてから2,3時間冷蔵庫に入れといたほうが美味いんだけどな」
ゴルシ「旦那、旦那、さっき芋掘ったんだけどコレ食えねぇか?」
両津「自然薯じゃないか…トロロでも作るか?」
ゴルシ「賛成〜!ゴルシちゃんも握っていい?」
両津「出来んのか?」
ゴルシ「ったりめぇよー、ホレ」
両津「ふむ…シャリとネタの大きさはちょうどいいが…固いな」
ゴルシ「マジで?」
両津「形もよく見ると不揃いだ、口に入る量が一定になるようにシャリは横から見ると扇形にするのが基本だ」
マックイーン「そこまで考えてるんですの…」
両津「寿司握るなら基本だ、硬過ぎず、柔らか過ぎないように握るのがコツだぞ」
ゴルシ「顔に似合わず細かい男だ…」
……
両津「それ、トロロ軍艦巻き」
ゴルシ「うーん、歯触りがいいなぁ」
両津「すりおろすよりも棒で叩きながら潰すと歯応えが残って美味いぞ」
 本職の板前である両津の料理は評判も良かった。

 めんどくさがりの両津であったが、趣味のキャンプが楽しめる事と現金総取りの為に頑張るのであった。


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:32:42 Wr6fWrCE
カランカラン
ライス「な、何っ!?」
両津「お、仕掛けといた罠になんかかかったな…」
……
両津「ワハハ!猪が取れたぞー!」
ゴルシ「牡丹鍋か!なぁ、牡丹鍋か!?」
両津「あぁ、それでもいいが、せっかくだしアレやってみるか…」
ライス「アレ?」
……
マックイーン「まさか丸焼きとは…」
両津「腹に焼き石詰めてから焼いたからそろそろいいだろ」
ゴルシ「皮がうめぇ!」
両津「砂糖水かけながら炙ったからな、北京ダックの要領だ」
ライス「ちょっと可哀想だけどごめんね、いただきます」
マックイーン「両津さん、両津さん、このクーラーボックスのはなんですの?」
両津「開けるなよ、猪の頭と腸が入ってるんだ、タンと脳みそと目玉が美味いから後で食おうと思ってな、絵面が最悪だから見せないようにしまってあるんだ」
マックイーン「開けなくて良かったですわ…」
両津「ライスが見たら泣き出しかねんからな…」


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:33:21 Wr6fWrCE
深夜
両津「さてさて、そろそろ大人な時間にするかな…っと…」
ゴルシ「よっ、旦那、起きてるか?」
両津「おう、見りゃわかんだろ、これから酒飲みながら明日の下拵えすんだよ」
ゴルシ「アタシも食ってもいいか?」
両津「いいぞ、多少グロテスクだが我慢しろよ」
ゴルシ「目玉と脳みそがあるんだろ?食わしてくれよ」
両津「まったく、タンを食いたいのかと思ったがそっちか…」
ゴルシ「食べられる事は知ってても食べた事はないんだよねぇ…」
両津「食材としちゃ珍しいからな」
ゴルシ「しかし、旦那はすげーな、どこでこんなに料理覚えたんだ?」
両津「同僚の、又従姉妹なんだが、そいつの家が寿司屋でな、謹慎中にバイトして魚はあらかた捌かせてもらったし日本料理もだいぶ叩き込まれてな」
両津「猪とかはキャンプが好きでな、たまに元傭兵と山に籠るうちに覚えちゃったよ」
ゴルシ「すげーなぁ…世の中にはそういう生活もあるんだよなぁ」
両津「大した事じゃないがな、ホレ、猪と鯛の目玉入り鯛の吸い物だ」
ゴルシ「おう、ありがとな…あぁ、釣られなければこうしてアタシと鯛と猪の目と目が合う事も無かったと思うと泣けるぜぇ」
両津「熱いうちに気をつけて食えよ」
ゴルシ「うわ、めちゃくちゃ美味いな、これ…」
両津「鯛の目の周りは食通がこぞって食うと呼ばれるくらい美味いからな、一緒に目のプルプル感も楽しめる、なかなか食べれんぞ、そいつは」
ゴルシ「旦那がトレーナーだったら美味いものに事かかねぇな」
両津「ダメダメ、ワシなんかがやっても勝たせられやしないよ」
両津「せいぜい料理人くらいだな、アハハ」
ゴルシ「警察クビになったら学園行きなよ、すぐ採用だって」
両津「うーむ…考えておくよ…」ゴクッ
ゴルシ「なぁ、旦那…」
両津「酒ならやらんぞ」
ゴルシ「なんだよー、ケチー」
両津「ワシは警官だぞ?未成年に飲ませられるか」
ゴルシ「そう言って日本酒をコップに一杯注いでくれる両津なのであった」
両津「へんなナレーションをつけんでいい、それだけだぞ?」
ゴルシ「はいはい…」
ゴルシ「ん、これ飲みやすい感じのやつ?」
両津「そうだな、甘口なやつだ」
ゴルシ「吸い物との食い合わせがいいなぁ…」
両津「あまりゴクゴクやるなよ、同じ量の水を飲まないと二日酔いで苦しむことになるからな、水も飲んどけよ」
ゴルシ「悪いことしてる時の食べ物の味ってなんで美味いんだろ…」
両津「背徳は蜜の味、と言うからな」
ゴルシ「ふふふ…」
両津「ほれ、イノタンの脳みその味噌和え乗せ」
ゴルシ「あー…これ、あー…旨味で脳味噌殴られる…」
両津「ふふふ」
ゴルシ「あー、犯罪の味がする、あー犯罪バンバンバンバンジー」
両津「何を言ってんだ、お前は」
ゴルシ「大人はこんな楽しみ方できるのか、ずりーわ」
両津「いずれお前も2,3年したら大っぴらにやれるようになるよ」
……
ゴルシ「そろそろコテージに戻るぜ」
両津「おう、転ぶなよ」
ゴルシ「大丈夫大丈夫!」
両津「まったく、結局ワシのツマミ半分近く食ってからに…」
両津「と言いつつ、ぐふふ、この血の腸詰には気づかなかったな、甘いやつめ…一度やってみたかったんだ」
両津「明日は何食わしてやるかなぁ…」


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:33:56 Wr6fWrCE
ライス「あ、両津さん、おはようございます」
両津「おう、おはよう、こんな早くから自主トレか?精が出るな」
ライス「はい、次のレース相手はすごく強いので…」
両津「そうか、無理はすんなよ、遊びに来て怪我なんか勿体ないからな」
ライス「はい、両津さん」

両津「朝のうちに罠を仕掛けて置いたから今日は釣りしなくても朝飯にありつけるかもしれないぞ」
ゴルシ「何っ、いつの間に!?」
両津「朝の4時くらいだな、3時間経ったしもういいだろ」
ライス「すごい早起き…」
両津「魚河岸は3時には開くからその時間にはいつも起きとるよ」
両津「お、イワシにマルアジも獲れてるな…」
両津「下手に手を加えるよりも刺身と串焼きで食うか…」
ゴルシ「そうしようぜ〜」
ライス「イワシのお刺身?」
両津「足が早いから獲れたてじゃないと食えんぞ」
ゴルシ「ライス、イワシ食うと足が早くなるぞ」
ライス「い、いっぱい食べる…」
両津「腐りやすいって意味だぞ、身も崩れやすいし」
マックイーン「鰯の頭も信心から、と言いますし、いいんじゃないですか?」
両津「腐っちゃダメだろ…」


15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:34:24 Wr6fWrCE
マックイーン「……若干の手持ち無沙汰ですわね」
両津「海と山しかないからな…釣りも釣れ過ぎて落ち着かないし」
ライス「泳ぐのもビーチバレーもやり尽くしたね…」
マックイーン「4人ですからねぇ…UNOもトランプも夜にやってますし」
両津「麻雀セット持ってくればよかったかな…」
マックイーン「うら若い少女に何を覚えさせますの…」
ゴルシ「お宝でも探しに行きてぇ…」
両津「山でも登りに行くか…」
マックイーン「山ですか」
ライス「山…」
ゴルシ「山かぁ、いいじゃん!」
両津「そんなに高くないし、ピクニックだな」
マックイーン「キャンプからピクニックってどういう事ですの…」


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:34:49 Wr6fWrCE
ライス「あ、暑い…」
マックイーン「りょ、両津さん、お水いただけます?」
両津「あぁ、ホレ」
マックイーン「…ふぅ、助かります」
両津「しかし、こんなところで休憩してたら危なくてしょうがないぞ、ガンガン登ってしまおう」
ライス「そんな事言っても…」
マックイーン「ウマ娘は平地を走るものでロッククライミングは専門外でしてよ」
ゴルシ「旦那は人間としても規格外すぎるぞ…」
両津「1000mもない山だが道が無いから仕方ない」
ライス「なんで登山グッズなんて持ってるんだろう…」
ゴルシ「それは、あれ、旦那は変態だから」
ライス「変態さん…」
両津「やめろ、ライスに変態と言われると変な気分になる」
マックイーン「やっぱり…」
両津「やめないか!」
……
両津「ゴールドシップ、メットとゴーグルは外すな、落石来たら一発でお釈迦だぞ」
ゴルシ「汗が滲んで目が霞むんだよぉ…」
両津「ライスでもホールド出来るように動いとるからワシの手足と同じように動かせばいい、でなけりゃ瞬きで我慢しないと危ないぞ」
マックイーン「つ、辛いですわ」
ライス「こ、根性っ…!」
両津「ナッツが足りるか不安になってきたが、上まで一枚岩(スラブ)も無いしトラバースもせずに行けそうだな、あと2ピッチだ」
ゴルシ「用語がわかんねーよ!」
……
両津「はぁ…はぁ…流石に疲れたな…」
ゴルシ「どうだ、旦那?」
両津「稜線に出たぞ、上がって来い」
マックイーン「うわぁー…」
ライス「こんなにちっちゃい島だったんだね…」
ゴルシ「これがテッペンか…」
両津「ちょっと西側の雲が怪しいな、荒れる前に飯だ、飯」
ゴルシ「余韻台無しだ」
マックイーン「ですわね…」
……
両津「山頂で握り飯はやっぱりいいもんだなぁ…」
ゴルシ「ん、旦那は三角なんだな、おにぎり」
マックイーン「そう言えばそうですわね」
両津「握り飯は家庭の味が出るよなぁ」
ライス「ライスの家は俵形だよ」
ゴルシ「うちはまんまるな記憶があるな…」
マックイーン「というか、お弁当とかもシェフが作って持たせてくれるので…」
両津「中川と麗子の方が話が合うかも知れんな…」


17 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:35:30 Wr6fWrCE
両津「地図には載ってなかったが、反対側は森になってるから多少キツイが崖を降りなくても済みそうだな」
両津「下り用に置いといたハーケンとナッツが勿体無いが、下りる方が危ないからな」
ゴルシ「でも森だぜ?獣とかいるんじゃねーの?」
両津「歌でも歌ってれば向こうから避けてくれるよ」
ライス「襲いに来ないの?」
両津「獣だって人間は怖がる、怖がるから逃げる、怖いから立ち向かうのは人間達だけだ、普通は逃げる」
ゴルシ「死んだふり〜」
マックイーン「熊は死肉も食べますわ」
両津「そうだな、幸い、熊の糞はないから熊はいないようだが、猪はいるがな」
ライス「まだいるの…」
両津「まったく…お前らが本気で殴ったら猪にだって勝てるよ」

両津「下りはつっかえが効かんからな、ザイルで固定しつつゆっくり降りるぞ」
ゴルシ「黒雲が出てきたなぁ」
両津「一振り来るなぁ、これは」
マックイーン「テント持って来てよかったですね」
両津「島の天候はバラつくからな」
ゴルシ「テントで一晩でもいいけど、早いに越したことはないな…」
ライス「焦ったら危ないよ…」
両津「そうだな、確実に降りるぞ」
ゴルシ「テントで夜を越す方が危なそうな気もするけどな…」
……
両津「ふぅ、なんとか事故もなく降りられて良かったな」
マックイーン「暇つぶしがとんだ大冒険になっちゃいましたね」
ゴルシ「楽しかったからゴルシちゃん的にはオールオッケー」
両津「ワシは晩飯の支度でもするからそれまで遊んでな、雨が来そうだから海には行くなよ」
マックイーン「はーい」


18 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:35:58 Wr6fWrCE
両津「さて、なんか獲れてるかな…、ん?」
両津「網が流されてるな…回収せんと…」
両津「ぬおっ!す、滑る…」
両津「ぐぬぬ…い、いかんっ!」
両津「うわぁぁぁぁぁぁ!」ドボーン
……
ライス「…っ?両津さん?」
ゴルシ「どうしたんだ?」
ライス「両津さんの声が…」ガタ
マックイーン「なんですって…」ガチャ
ゴルシ「そんなん聞こえなかったぞ」
マックイーン「イヤホンしてるからです」
……
ライス「両津さーん!…返事がない…」
ゴルシ「だんなーーー!!……ほんとだ」
マックイーン「まさか、海にっ!?」
ゴルシ「お、おい、海には行くなって言われただろ」
マックイーン「そんな事言ってる場合ですか!」
……
ライス「両津さーーーん!」
両津「おおー、ワシはここだーー!」
ライス「両津さん、両津さん!」
両津「危ない!穴に顔を出すな!濡れてて滑るぞ!」
ゴルシ「良かった、生きてたか」
マックイーン「ろ、ロープを持って来ました」
ゴルシ「ナイス、マックイーン!」
ライス「両津さん!今ロープを下ろして引き上げるから!」
両津「おおー!わかったー!落ちるなよー!」
ゴルシ「私が根元抑えるからライスとマックイーンで垂らしてくれ、周りに木とかが無ぇ!」
ライス「はい!」
マックイーン「ヨーイショ!ヨーイショ!」
……
両津「はー、流石のパワーだな、ありがとう、死ぬかと思ったぞ」
ゴルシ「ふぅ、引率に死なれたら元も子も無いぜぇ…」
両津「たはは、不甲斐ない」
ライス「心配したんだよ…」
両津「お、おいおい、泣くんじゃないよ…」
ゴルシ「旦那ぁ、なんであんなとこにいたんだよ…」
両津「網が流されててな、それを探してるうちに落ちてしまったよ」
マックイーン「もう、網くらい後でもいいじゃないですか」
両津「やはりここは危ないな、ロープで縄張りしとこうか…」


19 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:36:24 Wr6fWrCE
両津「さっきの礼と言ってはなんだが、今晩は寿司三昧だっ!」
ゴルシ「おぉ、スゲー!」
マックイーン「このマグロっぽい魚はなんですか?まさか本当にマグロなわけでもないと思いますけど…」
両津「流石にホンマグロは釣れないからな、この辺りじゃ、代わりにキハダマグロだ、脂身が少ないけどちゃんと締めればかなり美味いぞ」
ライス「この白身も初めて食べるけど美味しい、なんだろう」
両津「そりゃクエとウツボだよ」
ライス「ひゃぁあぁ〜!?」
マックイーン「…たしかにコレは、初めて食べる味です」
ゴルシ「イカがスゲーよ、弾力が」
両津「ははは、新鮮そのものだからな」
ゴルシ「卵寿司が薄焼卵になってる…でもこれ関西のやつだろ?旦那の店って江戸前じゃねーのか?」
両津「お前ほんとよく知っとるな…ワシの店だと厚焼きに鰻のすり身を入れたりするが流石に鰻はないし、代用も出来なかったから、こっちにしたんだ」
ゴルシ「なるほどなぁ…」
ライス「これ、魚で丸い花になってる…」
両津「菊玉造りというんだ、白身が余ったからな、手慰みで作って見たよ」
マックイーン「顔に似合わず器用ですわねぇ…」
両津「顔に似合わずは余計だっての」


20 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:36:51 Wr6fWrCE
深夜
両津「よし、明日の仕込みはこんなもんでいいかなぁ…酒でも飲んで寝るか…」
ライス「あの…両津さん」
両津「ガハッ!ゲッホゲッホ!…驚かせるな、むせてしまったぞ」
ライス「ごめんなさい……今日はお疲れ様でした」
両津「おう、今日は助かったよ、最初にライスが気づいてくれたんだって?」
ライス「ウマ娘は耳がいいから…」
両津「それに助けられたよ…なんか食うか?」
ライス「ううん、大丈夫、たくさん食べたから…」
両津「…どうかしたか?なんか不安でもあるのか?」
ライス「ううん…」
両津「そうは言っても顔に出とるぞ…レースの技術みたいな話し以外なら、話しくらいなら聞くだけ聞いてやれるが」
ライス「……両津さんに悪いよ」
両津「……まぁ、そうだな」
両津「まぁ、これはお前に話すわけでもない独り言だから聞かなくてもいいが…」
ライス「……」
両津「三冠ってのは、獲らせてもらっちゃ意味ないもんなんだ、力づくで奪ってこそ意味があるんだ」
ライス「……えっ」
両津「十何人のうち、一人しか勝てないから一つ一つの勝利が価値があるんだよ」
両津「ワシも昔、ウマ娘の子と話しをした事がなくも無いがな、みんな似たような事で悩んで、勝ちたいと思っても勝てない子もいれば勝つ事を恐れる子もいるんだな、と思ったよ」
ライス「ど、どうして……?」
両津「一応、お前らの戦績と次のレースくらいは目を通してあるよ、コレでも」
両津「…勝つのが怖い、ってのはベジタリアンの生き方みたいなもんだ」
両津「命をいただく、誰かから勝利を奪う、同じことだよ」
両津「食って消化して身にする以外ワシらには出来ないのに罪悪感で絶食したがるのはアホみたいだろ?」
ライス「……今日、ライスはたくさんお寿司食べちゃった」
両津「そうだ、だからと言ってお前が殺したわけじゃない、お前が食わなくてもワシが食った」
両津「そんなもんだよ、誰かが食うならお前が食ったっていいだろ?そうやって大人になってくんだ」
両津「まだまだライスだって子どもなんだから食いたいもの食べて大人になってけばいいんだよ」
両津「深く考え過ぎると頭悪くなっちまうぞ、ワシのように」
ライス「ふふ、両津さんが書いたメモいっつも漢字間違えてるものね…」
両津「言わんでいいよ、ワシがアホなのはわかっとるから」
ライス「ねぇ、両津さん…わがまま聞いてもらってもいい?」
両津「なんだ?ワシに出来る事であれば大概はやるぞ」
ライス「あのね、両津さんのこと、おじさま、って呼んでもいいかな?」
両津「……なんだと?」
ライス「あの、おじさま、って呼びたいの…」
両津「……構わんぞ、なんならオッちゃんでオッサンでもなんでも」
ライス「ふふ、良かったぁ……」
両津「なんだかむず痒いな……イカ焼きくらいしかないが、食ってけ」
ライス「うわぁー、美味しそう…」
両津「この味と香りを出すのがなかなか大変でな……」
……
ライス「ご馳走様でした」
両津「おう、気をつけて戻れよ」
ライス「おやすみなさい、おじさま」
両津「……ふぅ、アレはなんだか変な気分にさせられるなぁ、まいるよ」


21 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:37:21 Wr6fWrCE
ゴルシ「旦那、今日の朝飯は!?」
両津「スタンダードに焼き魚と卵焼きだよ、って開口一番がそれか…」
マックイーン「うぅ、そろそろ紅茶が飲みたいですわ…」
両津「残念ながら緑茶とかコーヒーしかないぞ」
マックイーン「両津さんなら紅茶か!ヨシ作ろうって言ってくださると思いましたのに…」ズズ
ゴルシ「番茶とか緑茶のパック発酵させて紅茶したらどうだ?」
両津「何日かかるんだよ…それに緑茶発酵させても黒茶になるだけだぞ」
マックイーン「大丈夫ですわ、我慢できます、コーヒーでも」
両津「濃いめの緑茶の方がいいんじゃないか?」
マックイーン「いえ、出されたものは飲みます」
ゴルシ「ライスは?」
両津「自主トレして水浴びするって言ってたぞ」
ゴルシ「ひぇ〜頑張るなぁ」
両津「休むのもアスリートには大事な事だからな、ただでさえレース前はプレッシャーかかってるんだし」
ゴルシ「そうだぞ、だから旦那、もっと労われよ」
両津「ワシにどれだけ尽くさせるつもりだ、お前は…」
ゴルシ「無論、死ぬまで」
両津「専属トレーナーかよ」
マックイーン「放っておくくらいがちょうどいいですよ、両津さん」
両津「そうするよ…」


22 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:37:43 Wr6fWrCE
ゴルシ「マックイーン、遠泳勝負だ!」
マックイーン「いいでしょう、負けませんわ」
両津「あの離れ島までが約2キロだな…途中で島を横切る海流が流れとるからな、十分注意しろよ」
ライス「ライスはおじさまと応援してるね〜」
ゴルシ「なんだよー、旦那はもうライスとそんな関係かよー」
両津「茶化すんじゃないよ、まったく」

両津「ワシらはボートで追いかけるから何かあったら助けるから安心して泳げ」
マックイーン「離されたらどうします?」
両津「ワシは津軽海峡くらいなら渡れる、心配するな」
ゴルシ「規格外すぎるだろ、旦那は」
両津「ん……」
ゴルシ「どうしたんだ?」
両津「おい、やっぱり、遠泳はやめだ、陸に戻ろう、風が出てきた」
ゴルシ「ええー!」
両津「嵐が来るぞ、こいつは」
ゴルシ「マジかよ…こんな晴れてんのに?」
両津「南西の雲が黒い、台風だな…」
マックイーン「た、大変じゃないですか!」

両津「よし、荷物はケースにしまって飛ばされないようにバンガローと倉庫に片付けるんだ」
ライス「おじさまー!ボートはどこに置けば…?」
両津「飛ばされないようにバンガローのここら辺にロープで縛っておこう……ん?」
両津(よく見ると…バンガローにフサコケが生えてるじゃないか……水がここまで来たな……)
両津「よし、お前らコレから忙しくなるぞ!」


23 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:38:08 Wr6fWrCE
部長「何!?ガボテン島に台風が直撃コースだと!?」
中川「そうなんです、先輩達のいる島がちょうどこれから暴風域に入るみたいで」
部長「旅行会社の人間には連絡したのか!?」
麗子「それが、両ちゃん1人で行ってるらしくて、無線とかも置いてっちゃったみたいらしくて…」
部長「あのバカタレが…」
中川「今、避難用に全天候型のヘリを手配したのですぐ現地に行けます」

部長「す、すごい風だな!」
中川「ぶ、部長!この荒れ模様では大型ヘリも出せません!嵐が収まってからでないと…!」
部長「くそ!遅かったか!」
麗子「両ちゃん1人なら安心なんだけどねぇ…」
部長「将来を有望視されているウマ娘達も一緒だからな…」
中川「高波が心配ですね…」

翌朝
部長「中川、早くヘリを出せっ!」
中川「もう準備出来てます!」
麗子「早く両ちゃん達を迎えに行ってあげましょっ!」

部長「うおっ、キャンプ場が…」
中川「高波で流されてる…」
麗子「バンガローも無いわ…」
中川「これは…流石の先輩も…」
麗子「バカな事言わないの!」
部長「あのバカだけは例え流されても死なんから大丈夫だ」


24 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:38:33 Wr6fWrCE
中川「うわっ、コレは酷いね…」
麗子「キャンプ場のバンガローが全部無くなってるわ…倉庫も…」
部長「おおい!両津ーー!」

両津「はーーーい!なんですか、部長ーーー!」
部長「ど、どこだ!」
両津「ここですよー!上、上!」
部長「あっ、こ、これは…っ!」
中川「ツリーハウスとは…!」
麗子「すごーい…」
両津「やぁやぁ皆さんお揃いで…」
中川「心配したんですよ、無線持っていって無いもんだから…」
両津「機材のケースに入ってると思ったんだが、入って無かったんだよ、迎えはちゃんと来るって言ってたし」
麗子「この家、どうしたの?」
両津「バンガローをバラして組み直したんだよ」
部長「あ、危なくないのか?」
両津「この木はヒッコリーで丈夫なんですよ、幸い、上に上げるのに滑車作る程度の資材はありましたし」
両津「組み立て式のバンガローでよかった、ほとんどはバラバラで運べたし、ウマ娘のパワーで苦労せず組めましたよ」
両津「周りの木が風除けになって全然揺れないし平和なもんでしたよ」
部長「そ、そうだ!ウマ娘のみんなは!?」
両津「上に居ますよ、今トランプやってたんで…おおい!お前らー!降りてこーい!」

両津「はい、3人とも無事ですよ」
マックイーン「お久しぶりです、中川様、秋本様」
中川「あ、あぁ、お久しぶり」
麗子「ご無沙汰ね、メジロのお嬢さん」
マックイーン「若輩者で、こうしてトレーニングが忙しく、顔をお見せ出来ず申し訳ありません」
中川「いやいや、気になさらず…」
部長「しっかりした娘だな…」
両津「あれがメジロの御令嬢ですよ」
……
ゴルシ「帰りはヘリかぁ…」
両津「もう少し楽しみたかったが台風が続けて発生しとるらしいからな、戻れるうちに戻るに越したことははいよ」
マックイーン「…あっという間でしたわね」
ライス「楽しいお休みだったね…」
両津「もう島が見えなくなってしまったな……」
……
両津「それじゃ、ワシらは帰るぞ」
マックイーン「りょ、両津さん」
両津「どうした?」
マックイーン「また、お会い出来ますか?」
両津「おう、こういうので良ければいつでも呼んでくれよ」
ゴルシ「またな、旦那」
両津「おう、お前も達者でな」
ライス「…応援来てね」
両津「もちろんだ、次はレース場で見つけてくれよ」
 こうして、チームシリウスの短い秋の合宿は終わった…。

……
中川「あれ?先輩は?」
麗子「今日は例のウマ娘の子が走るからレース場に行ってるわ」
部長「今回は正式にトレセン学園から招待されとるからな、止められんよ」


25 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:38:55 Wr6fWrCE
ライス「あ、おじさまー!」
両津「おう、お疲れさん、レース良かったぞ」
ライス「はい、おじさまのおかげで思い切り走れたよ…」
両津「次も頑張れよ」
ライス「はーい!」
……
レポーター「それでは、クラシックウマ娘となったライスシャワーさんにインタビューしてみましょう…」
中川「あ、あの子じゃないですか、今日、先輩が応援しに行ったの」
麗子「へぇ、勝ったみたいね」
部長「ほう…三冠阻止したのか…すごいな…」 
ライス「はい、ブルボンさんに引け目はあったんですけど…」
ライス「おじさまにたくさんの事を教えてもらって、少し大人になれたのが勝因だと思います!」
部長「ぶほっ!」
麗子「ま、まぁ!」
中川「まさか先輩が…いや、でも…」
……
麗子「お疲れねぇ、両ちゃん」
両津「…記者には質問攻めにあうし、部長には絞られるし、結局旅行会社からのバイト代も没収されるし散々だよ」
中川「…誤解が解けて良かったですね」
両津「本当だよ、危なく逮捕だ」
???「あっ、いたいた!」
トレーナー「今回の合宿が非常に好評でして、他のチームも両津さんにサバイバル合宿を引率していただきたいんですが…」
両津「勘弁してくれぇー!もうただ働きは嫌だよー!」

おしまい


26 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 04:43:32 Wr6fWrCE
読了いただきありがとうございます

以下、反省点と言い訳
・秋の合宿は調整休みとは言えトレーナー同行させた方が良かったのでは?
 →めんどくさいし、トレーナーとの絡みが面倒だし
・オチが弱かったのでは?
 →しんみり系は前やったのでギャグオチの方が自然な感じで収まりそうだと思ったので
・甘いもの食べるマックイーンは?
 →合間にオヤツでチョコ食ってんだよ!
・ゴルシとマックイーンのその後は?
 →レース毎にオチが必要になっちゃうから辞めた
・登場したアイテムは?
 →ホームセンターかスポーツ用品店で買える、オニヤンマくんは今買い占めが起きるくらい人気商品
・なんで崖登ったの
 →崖登りイベント作りたかっただけだよ
・ゴルシの両津への呼び方は?
 →両津→両ツー→両2→二両という連想ゲームで変な呼び方させてる
 考えるのめんどくさくなったので途中から呼び方統一した、慕ってくれるようになったっぽくなったし
・両津のバイト代なんで没収されたの?
 →多分そうなるだろうな、というノリ
・飯ばっか食ってね?
 →ほんわかイベント起こすしにくいしガチキャンプテクを次々出してもつまらなくなりそうだったので飯食わしといた
・罠猟は禁止では?
 →免許取ったんだよ、両津は資格マニアだし
・ウィンチケは?
 →加入前、正直に言えば絡みを書きにくかったのでリストラ
・呼称違くない?
 →ウマ娘はゲームしかやってないからそこら辺曖昧なんだよ!
・長くない?
 →本当は18p読切風にするはずだったけど書いてるうちに伸びてしまった
・ライスが両津といちゃついてるのムカつくんだけど
 →俺もその予定は無かったんだよ
・誤字脱字
 →申し訳ありません


27 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 05:52:29 JOP1RIGI
両津のバカはどこだ!が好きだけどこういうのも有りだよ


28 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 07:50:21 hvFXimQ.
いいSSだ��


29 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 09:10:38 p2kYi19E
両さんが目を点にしてアゴ突き出しながら作業と蘊蓄語る姿が見える見える


30 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 09:33:54 8.offS5U
今回も楽しかった
崖登りはアイドルの嗜みだからしょうがないね


31 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/05/11(火) 12:22:19 9x6sqxO6
すごく面白かった(konami)


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