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【ウマ娘SS】白い雲のように

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:07:44 SD9WfM.k
暇だ。
ベッドの上で携帯をいじりながらそんなことを考える。
今日はトレーニングもないし、昼寝でもしようかとも思ったがなぜだか寝付けなかった。
だからといって釣りをする気分にもなれず、こうして仕方なく携帯をいじっていたがさすがに飽きてしまった。
窓の外を見つめると清々しいほどの青空が広がっている。
せっかくだし散歩にでも行こうか。そう思った私はクローゼットから適当にパーカーとジーパンを引っ張り出し、外に出ることにした。


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:08:37 SD9WfM.k
寮を出て近くの河川敷へ足を運ぶ。
少し前まで桜が咲いていて綺麗だったのにすっかり散ってしまってなんだか寂しい。
儚いからこそ綺麗なのかな?なんて思っていると、私と同じように歩いているウマ娘を見つけた。
ヒラヒラとした『ザ・お嬢様』という服を着こなし、後ろ姿からも勝気な雰囲気を醸し出している。
キングヘイロー。自信家だけど努力家で、負けず嫌いで優しくて、お嬢様だけど泥臭い。
そんな、私の同期でライバルは、『一流』を証明するために走っている。偉大な、自身の母親を越えるために。
入学した当初は「お堅いお嬢様で苦手だな〜」と思っていたけれど、それが面倒見の良さだと気が付いた時から見方が変わった。
本人は否定しているけど、後輩ちゃんの勉強を見たり相談に乗ったりしていることを私は知っている。
そんな素直じゃないところをからかうと面白いし、意外とノリがいいから楽しいのだ。


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:10:54 SD9WfM.k
よし、ちょっと驚かせてやろう。
気付かれないようにキングとの距離をゆっくり詰めていく。
「キーンーグ!」
「きゃあ!?」
背後から声を掛けると耳と尻尾をピーンと伸ばして驚いていた。
「ス、スカイさん!いきなりなんなのよ!?」
「いや〜、キングがいたから声掛けただけだよ〜」
「だったら普通に言えばいいでしょ!びっくりしたじゃない!」
「まぁまぁ、そんな怒らないでよ。ところでキングも散歩?」
「露骨に話をそらしたわね…まぁ、そんなところよ」
「じゃあさ、一緒に歩かない?天気もいいしさ」
一人で歩くのも嫌いじゃないけど、せっかくだったら誰かと一緒にいるほうが楽しい。
「仕方ないわね…キングと散歩をする権利をあげるわ!」
「ワーイ、ウレシイナー」
「全然嬉しそうじゃないわね!?」
私がふざけると彼女がツッコミを入れてくれる。それがなんだか面白くて自然と笑みがこぼれた。


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:12:42 SD9WfM.k
それから二人して話しながら歩いていると、そういえば、彼女とこうやって親しく話し始めたのはいつぐらいだったかなとふと思った。
たしか、日本ダービー前、キングがスパイしている時に話したのがきっかけだったと思う。
スペちゃんやエルちゃんの練習を偵察した後、私のところに来て聞いてきたんだ。
「ダービーに向けて何をしているの」って。
最初は直球だなぁ、なんて思ったけど、あの時の真剣な顔は忘れられない。
勝ちたい、という執念の炎が瞳の奥で確かに燃えていた。
彼女が珍しく本音を話してくれたからだろうか、その質問に私も本音で答えていた。
「私だって、余裕なんてないよ」
懐かしいなぁ、なんて思っているとキングがこちらを見ていることに気が付いた。


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:14:12 SD9WfM.k
「ちょっと、なに笑っているの?」
「いや〜、ごめんごめん。思い出し笑いがね〜」
「思い出し笑い?」
「キングがダービー前にスパイしてたこと」
「ちょっと!?何で今思い出すのよ!」
「こうやって話し始めるきっかけだったからかな」
「何よ、それ…」
彼女も思うところはあるようだ。呆れているようで、微かに笑みがこぼれている。


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:17:49 SD9WfM.k
「最初はキングのこと苦手だったんだよね〜。お堅い感じがしてさ」
「私もよ。最初は苦手、というか信じられなかったわ。やる気が全然感じられなかったから。でも…」
「でも?」
「あなたと走って分かったわ。真剣で、速くて、結構負けず嫌いよね」
「え〜、何それ」
キングにそう思われていたことが嬉しかったけど、なんだか照れくさくて、ついはぐらかしてしまう。
「そうやってすぐはぐらかすところも…まぁ、あなたらしいといえばそれまでだけど。もう少し素直になったら?」
「キングにだけは言われたくないなぁ〜」
おっと、思わず口に出てしまった。


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:18:52 SD9WfM.k
「何か言いまして?」
「何も〜?」
「あなたねぇ…」
ふぅ、とため息をついていたけれど、その目は優しかった。
「まぁ、私はこれからもゆるっとやらせてもらうよ」
青空に浮かぶ雲のように、ね。



白い雲のように。
(自由気ままに、どこまでも)


〜Fin〜


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:22:47 BogciJ.2
早くウンス育てて黄金世代5人をエースにしたチーム組みたいけどな〜俺もな〜


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:42:22 v3PEh7NA
いいゾ〜これ


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:45:24 xHp7MrUI
猿岩石イイっすね〜


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 13:51:16 .9Pp9j7Q
その目は優しかった


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2021/04/11(日) 23:38:10 URgiKQEo
セイウンスカイ育てたい


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