友希那「何を、って」ﾓｺﾞﾓｺﾞ
友希那「わざわざ説明する必要があるかしら？ 今しがた、この場で起こっていたことを、見たのかと聞いているのよ」ｷﾘｯ
友希那「は？ 見てない？」
友希那「本当に？ 本当に、見てないの？ タイミング的にそんなはずはないと思うのだけれど」
友希那「いや、だからそれは……その、つまり」
友希那「……」ｲﾗｯ
友希那「だからっ！ 私が猫ちゃんの群れに向かって『おいしいかにゃー』と猫なで声を出しながら猫用ささみを与えていた現場を見たか、と聞いているの！」
友希那「……」
友希那「……」
友希那「……」
友希那「は、謀ったわね……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ
友希那（セルカークレックス……スフィンクス……スノーシュー……）
リサ「あっはは！ わかるわかる！ そういうとこだよねー♪」
友希那（あら？ あれはリサと……彼？）
リサ「お、友希那じゃーん。どしたの変な顔して。また猫の種類で脳内しりとりでもしてた？」
友希那「……してないわよ」
リサ（してたな……）
友希那「そっちこそどうしたの。珍しい組み合わせじゃない」
リサ「そうかな？ 前は確かにいろいろあったけども……」
友希那（いろいろ……？）
リサ「最近は解釈の一致を見たからさー、時々こうして盛り上がってるんだよね」
友希那「なによ、解釈って」
リサ「友希那はかわいいなぁ、って。彼とアタシで完全に解釈が一致しました」ｹﾗｹﾗ
友希那「は？」
友希那「……」
友希那「は？」
友希那（シンガプーラ……ラパーマ……マンクス……）
燐子「はい……技術、という以前にその心構えから、尊敬すべき方だと……」
友希那「！ 燐子、その男から離れなさい」
燐子「ゆ、友希那さん？」
友希那「その男、人畜無害な顔をしておいてかなりの食わせ者よ。以前も私に……」
燐子「私に……？」
友希那「……」
燐子「……」
友希那「とにかく。Roseliaの大事なメンバーである、あなたの隣に立つのに相応しい男ではないわ」
燐子「は、はあ（今の間はなんだったんだろう……？）」
友希那「……ちなみに、何の話をしていたのかしら？」ﾁﾗｯ
燐子「あ、はい。友希那さんがいかにミュージシャンとして、ボーカリストとして素晴らしい方かというのを」
燐子「この方が、それはもう熱く語ってくださるので、私もつい……ふふっ」
友希那「は？」
燐子「えっ」
友希那（コラット……トンキニーズ……スコティッシュフォールド……）
あこ「そーなんですよ〜！ あれにはビックリしちゃったな〜！」
友希那（っ。またあの男……今度はあこと？ なんて節操のない人なのかしら）
あこ「本当にカッコよかったなー」
友希那（どうせまた、私に聞かせることを前提で、私の話をしているんでしょう）
あこ「神がかった演出でしたよね〜」
友希那（手口はもう読めているわ。そう何度も同じ手にかかるものですか）
あこ「まさに深淵の闇より覗く昏き炎の……炎の……ビューン、ドガーン！ って感じで！！」
友希那（冷静に、クールに、何食わぬ顔で。スルーするのよ、友希那）
あこ「ほんっっっと最高だった！！ ネクロマンサーの新奥義！！！」
友希那「私の話をしなさいよ！」
あこ「えっ」
友希那「あっ」
友希那（アメリカンショートヘア……アメリカンワイヤーヘア……あ、あ……アメリカンカール、あっ）
友希那（……このルールだと「る」は「ん」に等しいのよね）
友希那（今日は調子がイマイチだわ。それもこれもあの男のせい）
友希那（しょうがないわ。またいつもの公園に行きましょう）
友希那（これは重要なことなの。今の私にはにゃーんちゃんが必要なのよ）
紗夜「ええ、ええ。それには同意します」
友希那（出た……しかも今度は紗夜と……）ｲﾗｯ
紗夜「可愛らしいですものね。癒しをもらえます」
友希那（いいえ、あんな男、私には関係ないわ。それより猫……猫……にゃー……）
紗夜「いいですよね、ワンちゃん」
友希那「この裏切り者！！！ そういう男だったのねあなたは！」
紗夜「湊さん！？ 急にどうしたの！？」
前にも立てましたが続きが浮かんでしまったので
ノンケ部は丁重に保護しよう
友希那「ほら、おいで、おいで」
友希那「今日は煮干しよ、たんとお食べ？」
友希那「にゃーん、にゃーん。ふふっ」
友希那「……ちょっと」
友希那「なぜここにいるのかしら？ もうここには来ないでと」
友希那「えっ？」
友希那「……言ってないわね、そういえば。あの後、忘れろとは言った気がするけど」
友希那「ここで起こったことはもう忘れた。だから、来ない理由もない、と」
友希那「ハー……」
友希那「あなたって本当に、屁理屈を言わせれば一級品ね。呆れたわ」
友希那「それで？ 犬派の裏切り者が、猫好きの聖地たるこの公園に、何の御用かしら？」
友希那「ええ、開き直ってるわよ、悪い？」
友希那「なっ。え、は？」ｶｧ
友希那「……あ、そ、そう。猫ね」
友希那「猫は、そう、かわいいわね、かわいい。宇宙の真理だわ」
友希那「って、話を逸らさないで。犬派のくせに何を白々しいことを……」ｷｯ
友希那「え？」
友希那「それは……言われてみれば、そうね」
友希那「犬派だからといって、紗夜に含むところなんて私にはないわ」
友希那「だいたい紗夜は猫も好きだし。ええ、あなたがそうでも、なんの不思議もないわよね……」
友希那（……？ すると私は、どうしてこの間）
友希那（あんなにも、声を荒げたのかしら……？）
友希那「あら。それは、猫用ブラシね」
友希那「好きにすればいいでしょう。別に、私の猫というわけじゃないのだから」ﾂﾝ
友希那「え？ そんなこと、わかってるわ」
友希那「この餌はちゃんと、然るべきところに許可をもらってあげてるものよ」
友希那「野良ちゃんに無暗に餌をあげるのは、良くないことだわ」
友希那「……ちょっと、何を本気で驚いた顔をしているのかしら」
友希那「あなた、人のことを猫が絡むと一切の理性が働かなくなるポンコツだとでも思ってるんじゃないでしょうね？」
友希那「……」
友希那「一発引っぱたかせなさい。私にはその権利があるわ……！」ﾌｼｬｰ
友希那「はぁ……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「なんだかあなたの前では、調子が狂いっぱなしだわ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「猫のことはどうでも……どうでもよくはないけど、今はいいの」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「燐子にもあこにも紗夜にも、それはもう驚かれてしまったわよ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「私自身、ああも声を荒げたことは、ほとんど記憶にないし」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「リサだけ訳知り顔をしてるのがある種腹立たしいのだけれど」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「はい。交代よ、猫ちゃん」
友希那「トゥンク……コホンコホン。ごめんね、もう次の子の番だから」
友希那「……あなた、結構猫を撫でるの上手いわね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「えっ？」
友希那「す、好きにすれば、いいでしょう？」
友希那「別に、私だけの場所じゃあ、ないのだから」
友希那「……ふふっ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「またあなたなの？ 物好きな人ね」
友希那「そうね。お互い様ではあるわ」
友希那「あとでブラシ、貸してもらえるかしら。その代わり、こちらは餌を出すわ」
友希那「これでフェア、貸し借りはなし……っ、と」
友希那「にゃぁ、ちょっと待っててね。今日はカリカリよ」
友希那「にゃー、にゃー。ふふっ」
友希那「……」
友希那「ねえ」
友希那「好きよ」
友希那「……」
友希那「もちろん、猫の話よ」
友希那「少しは驚いた？ たまにはからかわれる方の身にもなってみなさい」ｸｽ
友希那「これに懲りたら今度から」
友希那「……えっ」
友希那「ちょ、ちょっと。何を、本気で照れているの？」
友希那「そんな、まるで」
友希那「私を……みたいな……」
友希那「……」
友希那「えっ」
友希那「え、え」
友希那「えっ？」
友希那「……」
友希那「っ、あ。ご、ごめんなさいね。ほらお食べ」
友希那「……」ﾎﾟｰ
友希那「あ。そう、ね。ブラシ」
友希那「そう、ブラシ、そうだったわ。貸してもらえる、かしら」
友希那「ありがとう……」ﾋﾟﾄｯ
友希那「！！！！」ﾊﾞｯ
友希那「……ご、ごめんなさい」
友希那「にゃー、にゃー……にゃーぁおん……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那「ふぅ……ふぅぅ……」
友希那「ねえ、なにか、言わないの？」
友希那「……」
友希那「それは、猫をよね？」
友希那「……こんな時だけ、なにも言わないのは、ズルいと思うわ」
友希那「む……それは、そうかもしれないわね」
友希那「悪趣味な冗談だったことは、確かに認めるわ」
友希那「だったら。改めて、言わせてもらうけれど」
友希那「……すぅ」
友希那「好きよ。愛してる」
友希那「……」
友希那「それは、想像にお任せするわ」ｸｽ
友希那（ふふ。不思議ね、なんだか清々しい気分）ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那（今までの溜飲を下げてやった、ということもあるのでしょうけど）ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那（歌以外で、メンバー以外の誰かと心が通じ合ったのは、初めてかもしれない）ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
友希那（ああ。願わくば、この時間がいつまでも……）
リサ「……」ﾆﾔﾆﾔ
燐子「……」ﾄﾞｷﾄﾞｷ
あこ「……」ｷﾗｷﾗ
紗夜「……」ﾁﾗﾁﾗ
友希那「えっ」
友希那「……」
友希那「えっ」
リサ「うーん女を見せたねぇ友希那〜♪」
友希那「」ﾊﾟｸﾊﾟｸ
紗夜「その。私は、一応、止めましたからね？」
友希那「あ、あなたたち、いったいいつから……？」
燐子「えっと、彼が『先に主語を省いたのはそっち』と言った、少し前ぐらいでしょうか……」
友希那「！？」
あこ「そしてその直後、天に導かれたかの如く友希那さん渾身の告白が炸裂！！ もーあこドキドキしちゃいましたー！！！」
友希那「……」
友希那「……」
友希那「……」
友希那「は、謀ったわね……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ
紗夜「あら、あなた。奇遇ですね」
燐子「はい……今日は練習じゃないんですが、軽く打ち合わせで……」
あこ「今は友希那さん待ちでーす♪」
リサ「いや〜……それにしてもキミ、キミ」ｸﾞｲｯ
リサ「よくもまぁ、あの友希那を落とせたよね〜！」ﾜｲﾜｲ
あこ「どーやったんですかお兄さん！ 尊敬しちゃいます！」ｷｬｲｷｬｲ
紗夜（個人的には今井さんを先に押さえておいたのが勝因だったと思うのですが）ﾋｿﾋｿ
燐子（将を射んと欲すればまず馬を射よ、ですね……）ﾎﾞｿﾎﾞｿ
友希那「……」
あこ「あ、友希那さーん！」
リサ「どうしたのー？ そんなとこいないでこっちに」
友希那「」ｽﾞﾝｽﾞﾝｽﾞﾝ
燐子「えっ」
友希那「」ｶﾞｼｯ
紗夜「えっ」
友希那「これ、ちょっと借りてくわよ」ｽﾀｽﾀｽﾀ
3人「「「」」」ﾎﾟｶｰﾝ
リサ「……別に返さなくてもいいよ〜♪」
友希那「……」ｽﾀｽﾀ
友希那「」ﾋﾟﾀｯ
友希那「どうせ私は、リサみたいに垢抜けてないし、人に好かれるような性格でもないわ」
友希那「紗夜みたいに綺麗じゃないし、あこみたいに可愛くもないし、燐子みたいに女らしくもない」
友希那「音楽しか、歌しか誇るもののない、何の面白みもない女よ」
友希那「ッ。ええ、そうよ、悪い？」
友希那「嫉妬してるのよ。みっともなく拗ねてるのよ。悪いっ？」
友希那「ふぅ、はぁ、はぁ……」
友希那「っ、あ」
友希那「……」
友希那「あなた、本当に」
友希那「撫でるの、上手いわね……」
友希那「ええ、ええ」
友希那「うん……」ｳｯﾄﾘ
友希那「……」
友希那「うん……？」
友希那「待ちなさい。少し待ちなさい。やや待ちなさい」
友希那「今のあなたの言い草を総括すると」
友希那「私は見てて全く飽きの来ない、面白み満開の女である、という風に聞こえたのだけれど」
友希那「……」
友希那「そう」
友希那「……」
友希那「フシャー！（迫真）」
友希那「はぁ。あなたって本当に、信じられない物好きね」
友希那「……こんな女の何がいいのか、正直私には、未だによくわからないのだけれど」
友希那「見ていて飽きないんだったら、見ていて」
友希那「他の子なんか、見ないで」
友希那「私を――私だけを、見ていて？」
友希那「……」
友希那「こういう、時にだけ、真面目くさった顔をするのは」
友希那「ズルいと、思っ」
友希那「……ぁ」ｷﾞｭｯ
友希那「ん……」
友希那「……………………ごろにゃー」ｽﾘｽﾘ
友希那「……」
友希那「……」
友希那「……」
友希那「忘れなさい」ﾎﾟｶ
友希那「お願い、本当に」ﾎﾟｶﾎﾟｶ
友希那「……忘れて」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ
Roseliaは全体的に重そうな子が多くて最高だと思います
ノンケ部をすこれ
保護しなきゃ…