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この幸運の女神の祝福を!【このすばSS】
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※17巻微ネタバレ注意
「こんちわーっす」
「はい、こんにちは……もうご近所みたいな気軽さでここに来てますね、カズマさんは」
俺の極めてフランクな挨拶に、呆れたような、それでいて少しだけ楽しそうな表情で銀髪の女神──エリスが返事をした。
言うまでもなくここはいつもの白い部屋。例によってテレポートでやって来た俺を、エリスは椅子に座るよう促してくれた。
以前ならここに来る=死だったので精神的にキツい部分も少なくなかったが、今となっては特にリスクもなく一瞬で来れる。それこそエリスが言ったように近所の友達を訪ねるくらいのノリだ。
「最近はどうです?その、仕事の方は」
「そんな不器用なお父さんみたいに聞かれても……おかげさまで割と暇ですよ。モンスターが弱体化したのはやはり大きいですね」
「そりゃ良かった」
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俺が華麗に魔王討伐を成し遂げたことにより、世界中のモンスターが弱体化した。俺自身は最近クエストにも行っていないので今いちピンと来ないのだが、他の冒険者から聞く話では討伐が格段にやりやすくなったようだ。
……もっとも、そのせいで報酬の相場が低下傾向にあったり、そもそも依頼自体が少なくなっているらしいが。
「でも暇ならまたお頭モードで町に来てくださいよ。いい加減ダクネスが捜索の旅に出かねない感じになってるので」
「それは……うーん……」
どうもダクネスはエリスとクリスの関係についてうっすらだが勘づいているらしい。
エリスもその辺りを分かっているからこそホイホイと会いに行っていいものか悩んでいるのだろう。
まぁあの時エリスの状態で無理矢理地上に引っ張って来てアイツに会わせた俺のせいなんですが。
「どうせいつかは正体を明かすつもりだったんでしょ?ならいいじゃないですか」
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「うぅ……でも、心の準備が……これまでみたいに親友でいられなくなっちゃうかもしれないし」
肩を落としながらエリスが言う。
話題のためか若干口調がクリスに寄ってきている気がする。
うーん、まぁ不安なのも分からんでもないし、あんまり急かすのも酷な気がしてきた。
「……分かりました。じゃ、その心の準備が出来るまでもう少し俺が誤魔化しておきますよ。その代わりいつか必ずアイツとまた会うって約束してください」
「助手君……!」
エリスが感動したような声を漏らす。
あ、どうしよう、なんか恥ずかしい。
何やら俺が苦手なタイプの空気になりつつあるこの場を変えるべく、新たな話題を振ってみることにする。
「えっと、話は変わるんですけど、前からエリス様に聞きたいことがあって」
「ふふ……はい。私に答えられることでしたら」
露骨な話題転換だったがエリスは微笑みながら応じてくれた。
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「エリス様って人間で言うと年齢はいくつ」
と、そこまで言いかけた俺の顔のすぐ横を、
「ゴッドストレートッッッ!!!」
とてつもない速さの拳が通過した。
「うぉっ!?ちょ、ちょっと!何するんですか!」
椅子から落ちそうになりながら抗議する俺。
緊急回避のスキルが発動した様子はない。どうやらわざと外したらしい。
「カズマさん?よく覚えておいてください。神だろうと人だろうと女性に年齢を聞くのは大変な悪手だと」
右拳を突き出したままの姿勢で、ニッコリと微笑みながら言う。
年齢の話をしてもアクアはここまでキレなかったとか、女神は全員謎のパンチ技を持っているのかとか、色々言いたいことはあったが。
「はい。すみませんでした」
俺は魔王との戦闘以来久しぶりに感じた命の危機を前に、我ながら美しい土下座を決めたのだった。
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───
──
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「さて、と。俺はそろそろ帰りますね」
その後も地雷を踏まないよう気をつけながらエリスとおしゃべりしていたのだが、頃合いを見て椅子から立ち上がった。ここは彼女の職場だし、あまり長居をしても悪いだろう。ならそもそも遊びに来るなって話だが。
「あ、そ、そうですね……そろそろ帰らないとですよね」
どこか残念そうにエリスが言う。おいおいやめてくれよ、帰りたくなくなっちゃうじゃん。
「まぁ、また来ますよ。今度はアクアが隠し持ってる高い酒を手土産に」
「それは後で私が酷い目に遇いそうなので出来ればやめてほしいんですが……」
頬を掻きながら言うエリス。来ちゃダメ、とは言わない辺り俺の来訪は天界的にも黙認されてるのかもしれない。
「……あ、そういえば」
「はい?」
テレポートを発動しようとしたところで、ふと、もうひとつエリスに聞きたかったことがあったのを思い出した。
「最近、たまに俺のところに余所者の冒険者が来るんですよ。どうも俺を倒して名を上げよう、みたいな連中が」
魔王を倒した猛者である俺に勝つことで昨今の冒険者に訪れた不況を乗り切ろうってハラらしい。
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「それは物騒ですね」
「でしょ?で、まぁ当然俺はそいつらを華麗に撃退してるわけなんですが」
具体的な方法はプライバシー保護の観点から伏せさせていただきます。
エリスは特にその辺りにはつっこまず黙って話を聞いている。
「なんかそいつらがみんな行方不明みたいになってるらしいんですよ」
大抵の奴らは俺という大物を逃がしたくないからか、一回撃退したくらいでは諦めずに俺を探し回るのだが、そうした連中が翌日には忽然といなくなるそうだ。
アクセルの町は治安がいいとは言え警察が定期的に巡回しているし、町の出入口にもほとんど24時間体制で見張りがいる。にも関わらず、誰もそいつらがどこへ行ったのかを見ていないという。
「基本、アクセルって余所者がウロウロしていれば目立つじゃないですか。なのに影も形もないってのは妙だなーって」
俺としてはいなくなってくれる方がいいのだが、これはこれでどうも気味が悪い。
「で、地上を見ているエリス様なら何か知らないかと思ったんですけど」
エリスは頬を掻きながら、
「残念ながら……私も常に見張っているわけではありませんので」
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まぁそりゃそうか。監視カメラに張り付いてる警備のバイトじゃないんだし。
「そうですか……分かりました。変なこと聞いてすみません」
とりあえずバニル辺りにも聞いてみるかと考えていると、エリスが不意に続けた。
「でも」
「?でも?」
エリスはニッコリと微笑みながら、
「そんな悪い人たちには、天罰が下ってしまったのかもしれませんね」
と、なんでもないことのように言った。
……えっ?
「えっと……それはどういう」
俺が聞いてもエリスは微笑んだままで、
「いえ、別に?ただ、そうかもなーって思っただけです」
とだけ答えた。
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「ほらほら、それよりそろそろ帰らないと。先輩たちが心配しちゃいますよ?」
「は、はい」
背中に何故か冷たいものを感じながら、俺はエリスに背を向けてテレポートを発動する。
これは不味い。何故かはわからないが多分不味い。修羅場を潜り抜けてきた俺の直感が、これ以上ここにいるべきではないと告げていた。
「行ってらっしゃいませ!──大丈夫ですよ、カズマさん」
「え?」
最後にかけられた言葉に振り向くと、
「あなたには、幸運の女神がついていますから」
慈愛と──それ以外の何かを含んだ笑顔を、銀髪の女神は浮かべていた。
END
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エリス様好き
ゴッドレイプしてないエリス様大好き
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このあとめちゃくちゃゴッドセックスした
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このエリス様はカズマさんが天寿を全うするまで待ってそう
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ギャップ萌ってやつかな?
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エリスから見てカズマは
自分が担当しているいつ死んでもおかしくない厳しい異世界に転生してきてくれて、天界では何度も話し相手になってくれて、地上では大切な友人をパーティーに入れてくれたり、お頭と助手の関係で盗賊活動を手伝ってくれて、さらに長い間そのままだった魔王軍の幹部達を退け、遂には魔王の討伐を成し遂げ世界を救った勇者様
特別な感情を抱かない方が無理がありますね
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