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この優秀な仲間と冒険を!【このすばSS】
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「お願いがあるんだ」
とある日。
俺が暇を持て余してギルドを訪れていると、クリスが声をかけてきた。
ちなみにアクアは昨日小遣い欲しさにバイトに行って珍しくキッチリと労働に勤しんだ反動で今日は暖炉の前でだらける駄目人間と化しており、めぐみんは日課にダクネスを付き合わせてお出かけ中である。
「プロポーズですか?気持ちは嬉しいんですが…」
「違うよ!?キミはあたしに対してとりあえずそういうことを言わないといけないルールでもあるの!?しかもなんで断ろうとしてるのさ!」
ギルド内の酒場に着席した俺たちだったが、クリスがバンバンとテーブルを叩きながら抗議したため他の客たちが不審な表情でこちらを見た。
その視線にペコペコ頭を下げながら再び座った彼女は、やや小さめの声で話を続けた。
「そうじゃなくて…一緒にダンジョンに潜ってほしいんだ」
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「ダンジョンに?」
これはちょっと珍しい。盗賊職であり基本的にソロでの活動が多く、パーティーを組むにしても大抵人手が足りないところへ助っ人として入るようなスタイルのクリスがそんなお願いをしてくるとは。
「何か割のいいクエストでもあるんですか?」
正直金には困ってないが、それはそれとして儲け話なら聞いて損はない。
「だったら良かったんだけど…残念ながら今回のこれはクエストじゃないんだ。正確には『まだ』クエストじゃない、だけど」
「どういうことですか?」
「クエストになる前に片付けないといけない案件なのさ」
聞けば、最近エリス教の教会に熱心に通いつめている女性がいるらしく、どうもその理由が彼女の母の形見であるネックレスをモンスターに奪われてしまったのでそれを取り返してほしい、というものなのだとか。
「その人は貴族なんだけど…王都から自分の街へ戻る際にモンスターに襲われたらしくて。命は助かったけどネックレスは…って感じらしいんだ。で、しかもそのモンスターがこの町近くのダンジョンを根城にしてて」
なるほどねぇ…しかし、そうなると。
「それこそギルドに依頼を出すべき案件じゃないんですか?なんでわざわざ教会に?」
クリスは俺の質問に困ったような表情をしつつ、顔を寄せてさらに小さな声で話を続けた。
「そのネックレス、曰く付きの魔道具なんだ。正式にギルドに依頼することを躊躇われるような」
「…なるほど」
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なんでもそのネックレスは一定の魔力を吸収するとそれを放出し、近くにいる人間に呪いをかけてしまうらしい。
「その呪いは運のステータスが高ければまずかからないんだ。あたしやキミにはうってつけでしょ?」
「確かに…ちなみにその呪いは具体的にどんなもんなんですか?」
話を聞く限りでは俺たちがその呪いを食らう可能性は低いが、そこは運の高さに反して景気よく死ぬことに定評のある俺である。万が一のことを考えて情報を得ておくに越したことはないだろう。
「確か…呪いを受けた人が持つ欲求をランダムでひとつ無理矢理引き出す、だったかな」
「へぇ…」
欲求…欲求か。ふむ。
「何さ、その考え込むような表情は」
「いや、万が一お頭がその呪いを受けた場合、俺が乱暴されるんじゃないかと」
「しないよ!?人を何だと思ってるの!?」
クリスはそう言うが、どうにもこの人は『女の子らしいこと』に憧れている節がある。そこには恋愛的なものも含まれるわけで、そこから発展するとそういう行為に至るわけで…。
「……」
「ちょっと、本気で疑ってませんか!?セクハラも大概にしてくださいカズマさん!」
口調がエリスになってきたのでこれ以上の追及は断念することにした。ウチにいるバカはともかく、こちらの女神様とは懇意にしておきたいし。
「しかし…そんな危なっかしいもん、持ち主に返していいんですか?」
「そこはもちろん回収した後で無力化させるから大丈夫、彼女はそもそもあれが魔道具だってことも知らなかったみたいだしね。まぁ本当は破壊した方がいいんだけど…」
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複雑そうな表情を浮かべるクリス。この世界を守る女神としては、そんな危険な代物は跡形もなく消し去った方が手間もリスクもないだろう。だが、同時に律儀で心優しい彼女は、自分の信徒の想いも蔑ろにはできない。
と、なれば。
「話は分かりました。で、いつ行きます?早い方がいいんですよね?」
厄介なモンスターが町の近くに住み着いたとなれば、ネックレスを奪われたその女性が依頼を出さなくともすぐに討伐クエストとしてギルドから冒険者への依頼が出るだろう。そうなればネックレスは他の冒険者の手に渡るか、あるいは破壊されてしまう可能性がある。最初にクリスが言った通り、そうなる前にさっさと片付けなければなるまい。
「引き受けてくれるの?報酬は出ないし、あたしも一杯奢るくらいのお礼しかできないけど…」
「ま、いつもの仮面盗賊団の活動のひとつと思えば。金には困ってないですし。俺の総資産教えましょうか?」
「引き受けてありがたいし嬉しいけどいよいよキミが悪役に見えてきたよ。あと銀髪盗賊団ね」
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「…しかしダンジョンとなると、めぐみんは連れていっても意味ないですね」
ウチの爆裂娘は閉所ではただの置物と化す。しかも呪いのアイテム的なものに妙な興味を示す場合があるので、今回は声をかけないでおいた方が賢明だろう。
「うん、あとできればアクア先輩とダクネスにも内緒にしておきたいんだけど…」
「?アクアは分かりますけど、なんでダクネスにも?」
運のステータスがブッチ切りで低い駄女神は今回いても足を引っ張るだけだろうが、壁役のダクネスはある程度役に立ってくれそうなもんだが。
「実は、ネックレスの持ち主がダスティネス家とあんまり折り合いが良くない貴族でね。可能な限り巻き込みたくないんだ」
「あー、そのパターンですか」
たまに盗賊団としての活動でも発生するヤツだ。
「まぁあの変態の欲求がうっかり解放されたらどうなるか分かったもんじゃないし、どっちみち連れていかない方がいいでしょうね」
「どうしよう、親友なのに否定できないよ」
とはいえ、どうしたもんか。
俺とクリスの二人で達成できないこともないとは思うが、何せ場所がダンジョンで相手はモンスター。基本的に不意打ちや搦め手を得意とする俺たちだけでは想定外の事態も起こり得る。そう考えると、いざという時のサポート役が欲しいところだ。
クリスも俺と同じ考えなのか、腕を組んで唸っている。
「う〜ん、呪いは運が高くなくても、高位の魔法防御力があるなら防げるはずなんだよね。だからそっち系の職業の人がいいんだけど…」
「クルセイダーかアークウィザード、アークプリースト、ですか」
どれも一つ屋根の下で暮らしている該当者がいるのだが、残念ながら今回はそのポンコツさや家庭の事情でいつにも増して役に立たない。
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「あ、あの魔道具店の店主さんならどうかな?えーっと、ウィズさん、だっけ?強力な魔法を使えるって聞いたけど」
アカン。
「ダメですよお頭。あの店は個人商店ですよ?仕入れ以外で店を空けるのはよろしくないはずです。人のいい彼女の善意に甘えちゃいけない。だからやめときましょう」
「な、なんで急にそんな真剣な顔で止めるの?分かったよ、分かったから!」
うっかりウィズがリッチーだとバレようものなら、アンデッドや悪魔に一切容赦のないこの人はノータイムで滅ぼしにかかるだろう。というか今あの店には着ぐるみことゼーレシルトがいる。すでに悪魔と知られていてエリスのターゲットになっているあいつが見つかれば、それだけで速攻で芋づる式にウィズもバニルも…ということになりかねない。あの店には何かと世話になっているし、それだけは阻止すべきだろう。
「でも、ならどうするのさ?そもそもこの町には高位の魔法系職業の冒険者なんてほとんどいないし、まして無報酬となると…」
「それは…」
一瞬、王都のレインを手紙で呼び出して…という手段も考えたが、これはアイリスに迷惑がかかりそうなのでやめておく。しかし、ウィズたちを守るためにもなにか代替案を出さなくては…ん?
「ウィズの店…アークウィザード…そうか!」
連想ゲームのようにその答えに行き着く。そうだよ、無報酬で嬉々として協力してくれそうなアークウィザードがいるじゃないか!
「なになに?誰か思い付いたの?」
身を乗り出して聞いてくるクリスに、俺はサムズアップとともに答える。
「いますよ、俺の知る中でもトップクラスに適任な人材が」
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「行きます」
アクセルの町の外れにある図書館にやって来た俺とクリスは、大人しく本を読んでいたお目当ての人材こと、ゆんゆんに声をかけた。
結果は予想通り瞬時に快諾である。
「なるほどね、ゆんゆんとは盲点だったよ…でもいいの?改めて言うけど報酬はないんだけど」
「全然いりません。私しか頼れる人がいないんですよね?行きます、超行きます。全部私に任せてください」
「そ、そう?」
ゆんゆんの勢いに軽く引いているクリス。
俺としてはこうなるだろうと思って声をかけたので引きはしないが、この娘大丈夫だろうかという気持ちになってきてしまう。マジで悪い男に騙されないか心配だ、ダストとかバニルとか。
「ま、まぁこの3人なら大丈夫だね!よし、早速準備してダンジョンに向かおう!」
中身が女神の盗賊と、アークウィザードとしても一流の力を持つ紅魔族、そして何人もの魔王軍幹部を相手にしてきた俺。うん、完璧な布陣のはずだ。
はずなんだが…なんだろう、何故か妙に嫌な予感が…。
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「着いたね、ここだよ」
ウィズのところではない普通の道具屋で回復薬などのアイテムを揃えた俺たちは、クリスの案内でそのモンスターが棲み着いているというダンジョンにやって来た。そこはアクセルの町の近隣にいくつかある初心者向けダンジョンのひとつだ。
「ここかぁ。前に俺たちも来たことがあるな」
「あ、やっぱり?」
「やっぱり?」
「前に下調べに来たとき、不自然にアンデッドも下級悪魔も全然いなかったからさ」
「あー」
なるほど。
確かに以前ここに来た際、アクアが大ハッスルしアンデッドや悪魔を片端から浄化させていた。以前のバニルの件があったので結界は張らせなかったのだが、アイツに恐れをなして寄り付かなくなったのだろうか。
なんにせよ、そのアクアがいない以上そういう系統の敵がいないのはありがたい。俺たちは早速ダンジョンに突入することにした。
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「…そういえば、どういうモンスターなんですか?そのネックレスを奪ったっていうのは」
ダンジョンの階段を降りながら、ゆんゆんが聞いてきた。ちなみに今は千里眼スキルを持つ俺が先頭になり、その後ろをゆんゆん、そのまた後ろにクリス、という感じで移動している。まぁまだ入口付近だしモンスターはいないだろうが。
そういえば俺はゆんゆんに会いに行く道すがらクリスに今回のターゲットについて説明を受けていたが、ゆんゆんにはまだ伝えていなかったな。
クリスがその質問に答える。
「シーフライガーっていうヤツだよ。その名の通り人間が持っている武器や装飾品を奪う習性があるのさ」
「へぇ…初めて聞きましたけど強いモンスターなんですか?」
「それほど強力ではないんだけど、知能が高いのが厄介でね。奪ったものを活用して攻撃してくることがあるんだ」
「なるほど…」
「しかも警戒心が強く気配に敏感で、潜伏スキルも結構な確率で見破ってくるときた。この辺があたしたちだけじゃ不安だった理由だよ」
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二人の会話を聞きながら、俺は頭の中で考えを巡らせる。
恐らくそのシーフライガーとやらは、ダンジョンの最深部を根城にしていると見ていいだろう。そもそも初心者向けと言われるだけあって、このダンジョンはそこまで広くない。厄介なアンデッドや悪魔がいないのなら、そこまで苦労なく辿り着けるはず。問題はその後だ。
潜伏スキルが通用しない可能性がある以上、やはり不意打ちは無理と思っておいた方がいい。
そうなるとゆんゆんの魔法に頼りたいところだが、あまり高火力なものではダンジョンが崩落しかねないし、何より肝心のネックレスまで破壊してしまうかもしれない。かといって威力のあまりに足りない攻撃では戦闘が無駄に長引く恐れがある。そうなるとステータスの低い俺がうっかり死にかねない。
「(つまり理想は、ライガーを俺とクリスが拘束した後、ゆんゆんがヤツをギリギリ一撃で倒せる程度の魔法を確実にヒットさせるということになるな)」
まぁ加減というものを知らない我が家の欠陥花火と違って、ゆんゆんはその辺の調整は問題なくやってくれるだろう。故に、俺とクリスが最初にやるべきは、ゆんゆんが魔法を当てられるように『バインド』をライガーにかけることだ。
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「(!いやがった…!)」
ダンジョンの最深部に近付くと、案の定敵感知スキルに反応があった。ここまでほとんどモンスターと出会わなかったことからも、コイツが本命と見て間違いないだろう。
振り返ると、クリスがコクリと頷きを返してきた。ゆんゆんも俺たちの様子から状況を察したのか、緊張した表情で口を閉じている。
「(よし…)」
事前に作戦は二人に伝えてあるので、予定通り俺とクリスが先行することをアイコンタクトでゆんゆんに伝える。彼女はすでにワンドを手に構えており、いつでも魔法発動の準備ができる状態だ。
「(どこまで気付かないでいてくれるか…)」
クリスの情報が正しいなら、今一応使用している潜伏スキルも気休め程度にしかならない。あとはどれだけ素早く、かつ正確に『バインド』を食らわせられるかが鍵だ。初手で『スティール』という手も考えたが、こっちは盗めるものがランダムである以上、ライガーの溜め込んだ他のアイテムを引き当ててしまう恐れがあるので却下。動きを止めることを最優先とした。
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「(行くぞ!)」
意を決し、シーフライガーの潜む大広間へとクリスと同時に飛び込む。
「!」
俺たちの侵入に早々に気付き、こちらへ目を向け咆哮するライガー。
「くそ、やっぱり潜伏スキルは通用しねぇ!」
「仕方ない、助手君!作戦通りいこう!」
「了解!」
俺とクリスはそれぞれ広間の左右の端の壁を沿うように走り、最奥部のど真ん中にいるライガーに向けスキルを発動する。
「「『バインド』!!」」
俺のワイヤーとクリスのロープがライガーへと殺到する。別方向から同時に放たれたそれらは回避不能なはずだ!
…が。
「!?弾かれた!?」
俺たちの『バインド』はライガーに到達する直前で壁か何かに阻まれたように無力化された。
「そんな!?」
「!お頭!アイツの前足!」
「えっ!?」
俺は千里眼スキルのおかげで早々に気付いたが、ライガーの右の前足のあたりに、何かが砕けたような破片が落ちていた。
「多分スキルを無効化する使いきりのアイテムだ!野郎…毛の中に隠してやがったか!」
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「そんな真似まで…思った以上に知能が高い!助手君、気をつけて!まだ何か隠しているかもしれない!」
ライガーは俺たちの驚愕を嘲笑うかのように一声鳴くと、一気に駆け出してきた!
「クソッ!こっちに来やがった!」
迷いなく俺の方へ向かってくるライガー。俺の恐ろしさを察知して先に潰しに来たか!
「やっぱり弱いから簡単に仕留められると思って助手君を狙ってきたか…!『ワイヤートラップ』!」
失礼なことを言いながらクリスがスキルを発動し、俺とライガーの間にワイヤーで編み込まれた蜘蛛の巣状の罠が形成される。ライガーはブレーキを駆けるが勢いを殺しきれず罠の中心へとまんまと飛び込んでいった。
「ゆんゆん!」
「はいっ!」
俺の呼び声に応じてゆんゆんが広間へ入ってくる。彼女の手元は発光しており、すでに魔力はチャージ済みのようだ。
「一時的に動きを止めたけど長くは保たないよ!」
「分かってます!カズマさん、例の目印を!」
「おう!」
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今ライガーがもがいているのは広間の入り口から見て右側の壁付近、部屋の半分よりやや奥くらいの位置だ。ゆんゆんの手元から漏れ出る光は届かない。
ここまでは俺の千里眼と潜伏で来ており、灯りの類いは使用していない。
これはライガーが昼行性であるためだ。一応視覚に加え嗅覚を封じるために俺たちは全員匂いを消す特殊なポーションを使用しているが、スキルや魔法を使うにはどうしても発声が必要なので、聴覚まではどうしようもなかった。ライガーは案の定、俺たちの声を頼りに狙ってきたのだろう。
「おらよっ!」
俺は懐から取り出した小石ほどの大きさの結晶をライガー目掛けてぶん投げる。
これは一定の衝撃を加えると発光する性質を持った鉱石だ。光る時間はさほど長くないが、すでにチャージを終えたゆんゆんがそれを頼りに狙いをつけて魔法を放つには十分のはず!
俺が投げた鉱石はライガー目掛けて飛んで行き──ポスン、という音とともに、
その毛皮に埋まって見えなくなった。
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「…あれ?」
「助手君!?そろそろ限界なんだけど!合図はどうしたの!?」
「カズマさん!早くしないと!」
うん、どうやら俺の腕力が足りなくてぶつかった衝撃がライガーの毛皮に殺されたみたいです。当然、発光なんてするわけがない。
「…作戦変更おおお!!」
「「ええっ!?」」
俺の突然の号令にクリスとゆんゆんの驚愕の声が重なった。だってしょうがないじゃん!光らないんだから!店に在庫がなかったから1個しか持ってきてないし!
「ゆんゆんっ!ライガーは俺の真正面にいる!俺の声の方に魔法を撃て!」
「助手君!?」
「で、でも!それじゃカズマさんを巻き込んじゃうかも…!」
ライガーの野郎は鳴き声を上げるどころかもがくのも抑え始めている。音を出せば狙い撃ちされることを理解しているんだろう。
「俺は不本意ながら死にかけるのも死ぬのも馴れてるっ!遠慮せずやっちまえ!」
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「助手君!なにバカなこと言ってるの!?今はアクアさんがいないんだよ!?ここは残念だけど一度撤退を…」
「バカ言うなっ!男にはやらなきゃならない時があるんです!さぁやれゆんゆんっ!俺に構わず!」
ここで退けば、次の挑戦への対策のためにも、なぜ目印を出せなかったのかを問われるだろう。そうなれば俺の貧弱さに二人がドン引きすることになる。さすがにそれは恥ずかしすぎる。
いかに恥の多い人生とはいえ、回避できるものは回避しなければ…!
「バカ言ってるのはキミでしょ!?なんでこんな場面で男らしくなるの!?ゆんゆん、従ったらダメ──」
「か、カズマさん…!うぅ、紅魔族の血がそのカッコいい感じのセリフに反応してしまう…!分かりました!カズマのことは絶対忘れません!『ライト・オブ・セイバー』!!」
「ゆんゆん!?じょ、助手君ー!!」
クリスの叫びと同時に、以前見たときのものよりは威力を抑えているのだろう光の剣がこちらへまっすぐに飛んでくる。
「間に合えっ!『ウインドブレス』!」
俺はその光を視認したと同時に、横に飛びながら自分の身体へと、魔法で生み出した風を全力でぶつけた。
光は俺のさっきまでいた場所を通過し、
「───!!」
そのまま、シーフライガーへと突き刺さった。
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「いやー、今回は死なずに済んで良かった良かった」
「平気な顔で言うことじゃないからね!?改めて間近で見て思ったけどやっぱりキミの作戦はおかしいよ!」
シーフライガーがゆんゆんの魔法で跡形もなく吹き飛んだのを確認し、ゆんゆんに火をつけてもらった松明を持ちながら一息ついた俺にクリスが食って掛かる。
「いやいや、平気じゃないですって。めちゃくちゃビビってましたから」
「だったらなおさらあんな事しないでよ!」
ごもっとも。
ただまぁ一応言い訳するなら、土壇場の行動とはいえ生き残る算段はちゃんとあった。
以前にも見たことがあったおかげで、ゆんゆんの『ライト・オブ・セイバー』の軌道やスピードはある程度分かっていたので、自分が比較的体重が軽いこともあって回避行動に『ウインド』を合わせればギリギリ避けきれる、と踏んだわけだ。
多少感覚が麻痺してはいるが、俺だってちゃんと死ぬのは嫌だと思っている。
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「わ、私…勢いでなんてことを…!」
ゆんゆんは紅魔族特有のノリと勢いでうっかり俺を殺しかけたことに対して遅れて恐怖が来たようで、カタカタと震えている。
「気にしないでいいって。俺が撃てって言ったんだから」
「でも…」
「むしろゆんゆんの魔法が威力も狙いも正確だったおかげで俺もなんとか回避できたんだし、俺としちゃ今後も何かあったらゆんゆんに頼りたいくらいだ。いい友達を持ったよ、俺は」
あの状況は並の魔法使いじゃ打破できなかった。まぁ俺が恥をかき捨て撤退すりゃ良かったって話ではあるが。
「カズマさん…!はい!こんな私ですけど、どんどん頼ってください!友達ですから!」
キラキラとした目でいい返事をしてくるゆんゆん。友達というワードを使ったのも良かったんだろうが…正直ちょっと罪悪感が。
「あたしはまだキミの無茶を許してないからね?…っと、あったあった。良かった、ネックレスは無事だよ」
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さっきまでライガーがいた辺りに、ヤツが収集していたのだろうアイテムやその残骸が散らばっており、松明片手にそこを漁っていたクリスがお目当ての品を見つけたらしい。
彼女が手に取ったネックレスは、なるほど呪いのアイテムらしく、美しくも妖しい輝きを放っていた。
「無傷で回収できて良かったよ。正直呪いを抜きにしても簡単に修理できるような装飾じゃないからね、これ」
そう言いながらクリスがネックレスをこちらへ見せてくる。ふむ、確かによく見ると細やかな装飾が施されており、またそれらが欠けている様子もなかった。
「おぉ…」
「欲しい、とか言うなよ?」
「い、言いませんよ!」
なにやらネックレスを見て感嘆の声をあげるゆんゆんに釘をさす。危ねぇ、この娘も紅魔族なんだった。めぐみんよりははるかに常識的な感性とはいえ、やはり根っこは似たり寄ったりらしく、この手の中二的アイテムには惹かれるものがあるらしい。
「…ところでお頭は何を?」
目的であるネックレスの回収は済んだにも関わらず、いまだになにやらゴソゴソと同じ場所を漁っているクリスに声をかける。
「いや、他に何かいいお宝はないかなーって思ったんだけど…ダメだね。あとは残骸ばっかりだ」
「仕方ないでしょ、あんだけライガーが景気よく消し飛んだんだから。ネックレスだけでも無傷で回収できたのが奇跡みたいなもんですよ」
「それはそうなんだけどさー」
…ん?あれ?
なんだろう、何か違和感が…何か重大な見落としがあるような気がしてきた。
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「ま、いいや。助手君、ゆんゆん、町に帰ろうか。今日は協力してくれてありがとね」
「いえいえ、友達ですから…あ、そういえば」
「ん?どうかした?」
「どうしてお二人は『お頭』『助手君』って呼び合ってるんですか?」
「「あ」」
やっべ。
めぐみんとダクネスに知られているから油断したが、そういえばゆんゆんは俺たちが盗賊団だって知らないんだった。
まずい、何か言い訳せねば…!
「こ、これはだな、俺とクリスのプレイの一環で…」
「えぇっ!?」
「何その斜め上の最悪な理由!?ゆんゆん、違うから!だからそんな顔を赤らめながらあたしたちを交互に見ないで!」
必死になって誤解を解こうとするクリスだが、元々嘘があまり上手くないためになかなか思い通りにいかないらしい。ゆんゆんはさらに頬を紅潮させている。
「なんでちょっと離れた位置で他人事みたいな顔してんの!?助手君のせいでこんな──ん?」
「あれ?」
クリスとゆんゆんが突然疑問の声とともに天井を見上げた。
「?どうしたんだ、二人とも?」
「いや、なんか上から落ちてきて…砂?」
「その割には何かキラキラしてるような…あ、あそこに大きめの隙間がありますね。あそこから落ちてきたんでしょうか?」
と、会話をしていると、ゆんゆんが指差していた天井の隙間から、
何かがものすごい勢いで流れ込み、クリスとゆんゆんの頭上から降り注いだ。
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「「きゃあっ!?」」
それ──何かの粒子らしきものは、あっという間に二人の足元に山を作ってしまった。
「お、おい!大丈夫か!?」
慌てて近寄ると、さっきゆんゆんが言っていた通り、粒子はキラキラと輝いていた…この輝き、どこかで…。
「うぅ…ぺっぺっ!あービックリした…口にも入っちゃうし。あたしは大丈夫だけど、ゆんゆんは平気?」
「は、はい。粒子が髪とか服の中に入っちゃいましたけど…」
「ダメだよ、そういうことを助手君の前で言うとセクハラが…あれ、助手君?」
クリスとゆんゆんの会話をまるっきりスルーしていた俺は、彼女にひとつの問いかけをする──最悪の予感を抱えながら。
「…お頭、この粒子の輝き、見覚えありませんか?」
「えっ?見覚えって…」
降り注いだ粒子によって二人の松明は消えてしまったので、俺のもので彼女らの足元辺りを照らす。ゆんゆんは「何かの結晶の粒ですか?」と首を傾げているが、クリスは俺の言いたいことを理解したようで、僅かな灯りに照らされた顔がどんどん青ざめていった。
「ま、まさかこれ…『魔王の血』の…!」
「やっぱりそう思いますか」
「な、なんですか『魔王の血』って?なんだかまた紅魔族の血が騒いで来たんですけど!」
-
ゆんゆんが聞いてくるが、俺たちに返事をする余裕はなかった。
『魔王の血』。それは以前アクセルの町でクリスが発見した呪いの宝石で、所有者の運のステータスを大きく低下させる効果を持つ。今クリスとゆんゆんに降り注いだ粒子は、まさにそれと同じ輝きを放っていた。
「な、なんで…いや、それよりまずいよ!こんなのを大量に被った状態でネックレスの呪いが発動したら…!」
「落ち着いてください!俺は被ってませんから、とりあえずそのネックレスをこっちに…」
「う、うん」
クリスから差し出されたネックレスを受け取ろうとした、その時。
「う〜ん、暗くてよく見えない…『ティンダー』!」
「「あ」」
自分の持っている棒に火をつけようとしたのだろうゆんゆんの魔法が、ネックレスに吸い込まれた。
直後、ネックレスから物凄い光が溢れ出す。
「まずいよコレ明らかに発動してるよコレ!!」
「クソッ!やっぱりさっきの『ライト・オブ・セイバー』も吸ってやがったか!」
「えっ?えっ?」
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やがて光がおさまり、ホワイトアウトした視界が回復する。
…とりあえず自覚する範囲では俺に異常はない。運の高さのおかげだろうが…。
「お〜い、二人とも…大丈夫か…?」
「「……」」
恐る恐る声をかけてみるが、俯いたままで返事はない。
「(確か呪いの効果は…『欲求の解放』だったか)」
この二人が抱えてる欲求、か。
食欲や睡眠欲ならまだいいが、ないとは思うが暴力系だったらどうしよう。クリスはさっき俺に怒ってたし、ゆんゆんもちょくちょく俺の行動にドン引きしている。呪いでそれらの感情が増幅されたとしたら…。
「と、とりあえず解呪のポーションを…」
もしもの時のために持ってきたものだが、果たして効くのだろうか。俺がごそごそとポーションを取り出そうと懐を漁っていると、
「へ?」
ガシッと、両肩を掴まれた。
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「あ、あの…お二人さん?」
「「……」」
俺の問いかけに二人は答えず、
「うおっ!?」
そのまま俺をダンジョンの床へと押し倒した。
「はぁ…はぁ…助手君…♡」
荒い息づかいのクリスが俺の上半身に跨がり、顔を近付けてきた。
「お、お頭!落ち着…んむっ!?」
「ん…んんぅ…♡」
そのまま俺の唇を奪い、躊躇なく舌を入れてくる。
「(おいおい、マジで性欲かよ!?)」
ヤバい、これはヤバい。
何がヤバいって対処の仕方がさっぱり分からない。
俺がひたすらにテンパっている間にもクリスは俺の口内を蹂躙し続け、さらに下半身に何かが触れた。
「(!?ゆんゆん!?)」
クリスが跨がっているのでよく見えないが、おそらくゆんゆんが俺のズボンをパンツごと脱がそうとしているらしい。
「少しだけ…少しだけ…♡」
呟くように言いながら手は止めないゆんゆん。少しだけってなんだよ、先っちょだけだからってヤツか?
ああ、なんかもう、いいや。
だって俺のステータスじゃ抵抗なんてしても無意味だもん。下手に暴れて怪我させても悪いし。
「(快楽堕ちするヒロインって、こんな気持ちなのかなぁ)」
諦めの境地に至った俺は、考えることをやめた。
-
───
──
─
「「すみませんでしたっ!!」」
「……」
あれからどれぐらいの時間が経ったのだろうか。どうやら途中で失神したらしく、記憶が抜け落ちている。
ダルい身体を起こすと、目の前でクリスとゆんゆんが綺麗な土下座を敢行していた。
「(…服着てるな、俺)」
確かゆんゆんが俺の下を脱がそうとしていたはずだが。ついでに口の周りがクリスの唾液でベッタベタだったのに、すっかり綺麗になっている。おそらくゆんゆんが魔法で水を出して洗ったのだろう。
「呪いのせいとはいえとんでもないことをしてしまいました!反省してます!!」
「そもそも私の魔法のせいなので…本当にごめんなさい!!」
「……」
まぁこの二人の謝りっぷりから、俺があの後どうなったかは想像がつく。
二人が壁にかけたらしい松明の灯りが床に額を擦り付けんばかりの姿を照らしていた。
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「…お頭」
「ひゃいっ!」
俺に呼ばれたクリスが勢いよく身体を起こし、正座の姿勢になる。ゆんゆんも釣られてか同じような体勢を取った。
「ここに来る前の説明だと、その呪いってかけられた人の欲求を増幅させる、って感じだったと思うんですが」
「う、うん。その通りだけど…」
「ってことはお頭とゆんゆんは、実は俺を…こうしたいって欲求を普段から持っていたってことですよね?」
「「すみませんでしたっ!!」」
俺の問いに再度の土下座と謝罪で答える二人。
そりゃ俺だって正直、アクア以外の周囲の女性にそういうアレを抱いたりしているし、サキュバスにそんな感じの夢を頼むこともあるよ?
でもなんかこう…女の子の方もそうだったっていうのは、妙にショッキングである。逆レイプなんてエロ漫画とかAVとかの中だけのものだと思っていたが、現実は童貞の想像を遥かに越えていた。あ、もう童貞じゃないか。
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「いやその、あたしはほら、身近な男の子がキミくらいだからさ…って言ってもアレだよ?別に普段からそういうこと考えてるわけじゃなくてね?今回は本当たまたまね?」
早口で捲し立てるクリス。なんだろう、見た目のボーイッシュさもあってエロ本が見つかった男子中学生みたいに見えてきた。
「私もそんな感じで…」
「ゆんゆんはダストとかバニルとかとつるんでるじゃん」
「怒れる立場じゃないって分かってますけどやめてください!あの人たちは本当にそういうんじゃないんです!カズマさん以外でそういうことを考えたことなんてないですから!!」
「お、おう」
これはある意味告られてるんだろうか。もうなんだか分からなくなってきた。
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「…はぁ。二人とも、もういいから。呪いのせいなんだしお互い忘れるようにしよう」
いい加減収集がつかなくなりそうなので、ここらで話を終わらせることにする。
「ほ、本当に…?」
「いいんですか?」
「だってしょうがないじゃん。はい、この話は終わり!とっとと町に帰るぞ!」
俺はパンパンと手を打って二人に帰り支度を促す。もうさっさと帰って寝たい。そして今日という日を過去にしてしまいたい。
「「はいっ!」」
俺の言葉にクリスとゆんゆんは立ち上がる。松明はあるが、帰りも俺が先頭でいいだろう。というか、正直二人をあまり視界に入れたくない。嫌悪とかではなく、気まずいというかなんというか。
松明片手に歩き出した俺の後に二人が続く。俺の水に流すという宣言で落ち着いたのか、いつも通りの調子を取り戻しつつあるようだ。
「…でも初めてが痛いって本当だったんだね。幸い最後の方は気持ちよくなれたけど…回復薬がこんな形で役立つとは思わなかったよ」
「カズマさんのが意外と大きかったっていうのもあるかもしれませんね。めぐみんが『聖剣エクスカリバー』とか言ってたけど案外嘘じゃなかったみたいで驚きました」
こいつら、本当に反省してるんだろうか。
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町に着く頃には、辺りはすっかり黄昏時となっていた。クリスはネックレスの呪いを解除してから持ち主に返すために足早に去っていき、ゆんゆんもまた自分の宿へと帰っていった。
「…ああもう、超疲れた…」
普段とは違い、有能なメンバーとパーティーを組んだはずなのにコレだ。『魔王の血』じゃないが、いい加減俺も自分の運を疑いたくなってくる。
「やっぱり俺にはあいつらと組んでる方があってるのかもなぁ…」
肉体と精神に多大な疲労を感じながら、妙に恋しくなっていた屋敷に帰ると、
「やめ、やめろぉ!その手を放してもらおう!せっかく近くのダンジョンで『魔王の血』の鉱脈が見つかったという情報が入ったんですよ!その証拠にアクアが結晶を手に入れてます!これが行かずにいられますかっ!あとアクアはそれを私に渡してください!」
「だからあれは危険だと言っているだろう!あのダンジョンはこれからやって来る王都の調査隊の探索の後で封鎖される!大人しくここにいるんだ!…ああこら、アクアを追いかけ回そうとするな!アクアもそれをこちらに渡せ!」
「わああああああーっ!カズマさん!カズマさーん!!さっきからめぐみんとダクネスが私の拾った高そうな宝石を奪おうとするんですけど!!やめて!これはもう私の財産なんだからやめて!」
俺はウィズの店に泊めてもらうことにした。
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「この前はありがとう」
後日。
例によって町をブラついていた俺に、クリスが声をかけてきた。
「あのネックレスは無事に?」
「うん、持ち主の彼女の家にこっそり置いてきた。ちゃんと手に取っているのまで確認済みだよ」
「そりゃなにより」
これで晴れて一件落着、ってわけだ。まぁクリスのことだから上手くやるだろうとは思っていたので、あの後のことは心配していなかったが。
「俺も操を散らした甲斐があったってもんですよ」
「う…そ、それなんだけどさ」
冗談半分で言ったのだが、何やらクリスは顔を赤くしてモジモジしはじめてしまった。
「トイレならあそこの店で借りられますよ」
「違うよ!なんでキミはあたしにだけデリカシーがないの!?」
「失敬な。アクアとかめぐみんとかダクネスとかに対してもあんまりありません」
「『親しき仲にも礼儀あり』ってキミの国の言葉だったよね!?」
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ゼーゼーと息を切らすクリス。女神がこんなにイジり甲斐があるってどうなんだろうか。
息を整えると、改めて話しはじめた。
「この間の…その、あたしがキミをアレしちゃった件だけどさ…あれから考えたんだけど」
すぅ、と深呼吸をして、意を決したように言う。
「やっぱり責任は取るべきだな、って!」
「はぁ…」
責任、とはなんぞや。慰謝料でも支払ってくれるのか?逆レイプの慰謝料の相場なんて知らないぞ?
「まぁキミにはまだ魔王討伐とか神器の回収とかお願いしたいことがいくつかあるし、あたしも立場上その辺りのことに対応しなきゃだからすぐに、とはいかないけど…」
再びモジモジしながら話すクリスだが、俺はイマイチ話についていけていない。
「でも、必ずキミを幸せにするから!きっかけが呪いのアイテムっていうのはアレだけど、元々あたしはキミのこと──」
クリスが最後まで言い切るのを待たずに、
「カズマ!何をこんなところで油を売ってるんですか!」
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「あ、めぐみん」
「あ、じゃありませんよ!なんでさっさと来てくれないんですか!」
そうそう、俺はあの後無理矢理ダンジョンへ行こうとして警察のお世話になっためぐみんの身元引受に行く途中だった。
「ていうか何でお前出てきてんの?脱獄は罪が重くなるだけだって知ってるだろ」
「脱獄なんてしてませんよ!ただ約束の時間になってもカズマが来ないんで警察の人が『まぁめぐみんさんですし…いいですよもう帰って』と特別に帰る許可を出してくれたんです」
ドヤ顔で言っているが、どう考えても『付き合ってられない』というニュアンスだろう。ただでさえしょっちゅう問題を起こす常習犯だ。
今回はそれほど大きな問題にならなかったし、ダスティネス家の令嬢と懇意にしている相手をいつまでも勾留しておきたくはなかったに違いない。
「や、やぁめぐみん!」
「おや、クリスもいましたか…どうしたんです?何やら落ち着かない様子ですが」
「いやぁ別に!?ちょ、ちょっと助手君…」
「はい?」
チョイチョイと手招きするクリスに顔を近付けると、
「ごめん、めぐみんにはまた今度ちゃんと伝えるよ。今はまだ心の準備が…」
と、耳打ちしてきた。
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「何をコソコソ話してるんです?…はっ!もしや銀髪盗賊団に関わることですか!?」
「ま、まぁそんなところかな!?おっと急用を思い出しちゃったよ!じゃあまた今度!」
シュタッと手を上げそう言うと、クリスはあっという間にどこかへと去って行ってしまった。
俺の隣ではめぐみんが、
「はぁ…さすがの身のこなし。一流の盗賊はやっぱり違いますね…」
と、感嘆の声を漏らしていた。
そんな俺たちに、また別方向から、
「あっ!カズマさー…げっ!め、めぐみん!?」
と声がかかった。
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「げっ、とはなんですか、ゆんゆん。本来なら丁重に無視してあげるところですが…今の私は割と機嫌がいいので許してあげます。あ、何なら勝負してあげてもいいですよ?」
シャバに出た解放感からか、あるいはクリスの盗賊らしい動きを見れたことからか、めぐみんは鼻歌交じりに杖をゆんゆんへと向ける。
が、この珍しい態度のめぐみんに対してゆんゆんは、
「今日はあんたに用はないのよ!むしろカズマさんに大事な話があるの!責任のこととか将来のこととか…だからめぐみんは邪魔だし帰ってほしいんだけど…」
と、これまた珍しい返しをした。
「じゃ、邪魔!?ゆんゆんの分際で私を邪魔と言いましたか!?私だけ帰らせてカズマに何をしようと言うんですか!人の男に目の前でちょっかいをかけようとはいい度胸ですね!!」
「わ、私の勝手でしょ!?大体付き合ってもいないのにカズマさんを自分のものみたいに言わないでよ!私だって…!」
ヒートアップする二人のやり取りを眺めながら俺は、
「そういや、お礼に一杯奢るって話はどうなったんだ?」
と、どうでもいいことを考えていた。
終わり
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終わった後にごめんなさいのある逆レいいぞ
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ここちょっと消えてますね
24.5番というえっちほんへのレスがあったんですけど
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レイプした後はやっぱりごめんなさいだよね
乙
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優しい世界
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こういうのでいいんだよこういうので
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毎度なつめ先生を降霊させるカズマ×クリスSS兄貴ほんとすき
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長編いいゾ〜これ
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所々本編の小ネタも拾ってて良いと思いました(小並感)
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「大体付き合ってもいないのにカズマさんを自分のものみたいに言わないでよ!私だって…!」
カズマさん呑気に考え事してるけどゆんゆんが経緯を説明したら修羅場になるんじゃ…
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