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シバターとゴーン、ただ愛ゆえに【SS】
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日本の司法制度に疲れ、金に飽かせて雇い入れた弁護団の無能さにも嫌気がさした。
金もコネも十分に持ち合わせているゴーンは自然と故郷であるレバノンに渡る事を考えるようになった。
政府機関の者との打合せやトレーニングの後、いよいよゴーンは狭い島国からの脱出を決行した。
コントラバスのケースに身を隠し、静かにそして鮮やかに国境を越えレバノンで自由の身になるはずだった。
シバター「ゴーン、ゴーン、お前何やってんだよ」
ゴーン「シ、シバター!?」
ケースが開けられた瞬間東洋人の大男が困り顔でゴーンを見下ろしていた、何が起こったかゴーンには分からなかった。
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ゴーンは昭和の日本のような部屋でシバターに勧められ茶をすすっていた。
ゴーンはこの色白なプロレスラーじみた体格の男とは何の面識もない、だというのに顔を見た瞬間彼の名がシバターだと分かった。
シバター「ゴーン、ゴーン、金の亡者みたいな汚いアベンジャーズみたいな、日本で最強の銭ゲバ弁護団を雇ったんだろ?」
シバター「日本国民はな誰もお前の無罪なんて信じてないんだよ、それはあの弁護団も同じかもしれない!それでもな金が欲しくてお前の弁護を引き受けたんだよ!」
シバター「それに保釈中に逃げ出すというのは保釈金押収だけが問題じゃない、ゴーンを信頼した弁護団の顔にも泥を塗ってしまったんだぞ?ゴーンお前は人として最低な事をしてしまったんだ」
シバターは眉根を寄せて真剣にゴーンに語り掛けてくる、人の道を語るこのような輩の言い分はゴーンの鼻についた。
ゴーン「私が欲しいのは結果だ、彼らは報酬に値する仕事は出来なかったまったく無能揃いだよ、彼らが恥をかいたというなら嬉しいね」
シバター「ゴーン、そんなこと言ったらダメだろゴーン」
シバターは悲しそうにゴーンに考えを改めるように迫るがゴーンは話半分にも聞いていない、彼が考えていることはこの家から逃げ出す事。
そしてレバノンの協力者と連絡を取り今度こそ産まれ故郷に高飛びすることだ。
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シバターはちゃぶ台にゴーンの食事を用意すると襖を閉めて出て行った、ゴーンはしばらくした後襖を開けようとしたがつっかえ棒でもしてあるのかビクともしない。
所詮は襖だ蹴り破って外に出ることは可能だろうが、そうしたらシバターが飛んでくることは明白だゴーンにあのような大男と取っ組み合いをして勝つ技術も体力もない。
仮に逃げ延びたとしてもゴーンがいなくなったことは日本中に知られている、目撃情報が上がれば協力者に連絡を取るまでもなく捕まるに違いない。
ゴーン「強行突破は時期尚早か……」
もし目的のレバノンに行けていたら、今頃は日本の安っぽい量ではなくゴーンがこよなく愛する贅沢な料理を楽しめただろうに。
ゴーンはシバターが持ってきた食事に目をやる、白米とみそ汁たくあんが三切れに焼き魚に金平ごぼう、一汁三菜と言う奴だ。
箸をつけてみると味が薄い、ゴーンが大嫌いな減塩料理の味だ。
ゴーン「黄色い猿が……」
気に食わなくても今は食べる、全てはこのしみったれたクソ忌々しい島国から逃げられるように。
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それからシバターは毎日のようにゴーンの軟禁された部屋にやって来た、毎食やって来てはゴーンのために作ったという食事を置いていく。
そして今日はyoutubeにこんな動画をあげるだとか、パチスロに行ったけど激熱だったとか雨上がりに綺麗な虹を見たなど他愛のない会話をしていく。
ゴーンは不気味な東洋人に話を合わせながら、何とか情報を探ろうとシバターを友人のように扱って会話をした。
ゴーン「なぁシバター、君はいったいどうやってあの飛行機から私を連れ出したんだい?目的はなんだ?youtubeの企画の一環か何かか?」
シバター「ゴーン、ゴーン、そんなことどうでもいいだろ、目的なんてないyoutubeも関係ない、俺はゴーンに人との付き合いかたを改めてほしい」
シバター「もっと周囲の人との関係を大切にしてほしくてこの部屋に連れてきたんだ、ゴーン今みたいな生活を続けてたらどうなる?」
シバター「お前の周りにいるのははっきり言って金が目的の奴らだ、金が無くなったらどうなる?そして今ゴーンが逃げ出そうとしていたのは日本より遥かに危険な場所だ」
シバター「ゴーン逃げた先に楽園なんてないんだよ、逮捕されるとかされないとか小さなことじゃない、俺はゴーンにもっと真摯に生きてほしいんだ」
狂人……熱く語っているが突き詰めればそういうことだ、逃げ出す計画を早めなくてはいけない。
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シバターが出て行った後、ゴーンは襖を蹴破る他によい脱出手段がないか考えた。
襖を蹴破れば音は出るだろうしレバノンの精鋭特殊部隊を出し抜いた男が仕掛けをしていないという事も考えずらい。
襖が超硬鉄板で補強されていたり、部屋を出たとたん警報装置が作動するようにできている可能性もある。
今の気安い茶飲み友達のような関係は、ゴーンを拉致したシバターがそう望みゴーンが彼の意に沿う従順な囚人だから成り立っているだけだ。
一度でも脱出を失敗すればシバターが豹変し、奴隷のようにゴーンを鎖でつなぎ檻に監禁する可能性も十分考えられる。
部屋の中に武器になりそうなものは木製の箸くらいしかない、だが鋭く尖らせ背中から急所を狙えば勝機はある。
殺したとしてもイカれた日本人に拉致された、気の狂った司法に肉体的にも精神的にも追い込まれたためと声明を出せばいい。
きっと死刑反対とか加害者の権利を守れといった運動家がゴーンの事を庇って、送れた人質司法の犠牲者だのなんだのと日本の事を責めるだろう後は論点を変えていけばいい。
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シバターはゴーンの軟禁された六畳一間の出入り口を背にしている、帰っていくときもゴーンの事を見つめながら名残惜しそうに後ろ向きに帰っていくのだ。
人との付き合い方を改めろと言いながら実際のところはゴーンの事を信頼していないのだ。
それなら背中を向けさせるのにどうすればいいか?軟禁部屋には出入り口になるふすまとは別に小さな扉が一つだけあるトイレだ。
ここを詰まらせてシバターに修理するように頼めば、あのゴリラ野郎はゴーンに背を向けてトイレの中を覗く、その時に首に一撃を加えれば……。
あとはトイレを詰まらせる方法だ、ゴーンはシバターの作った温かい料理をトイレに持っていった。
白くて艶のある美味しそうなお米、焼き魚やみそ汁香の物にカマボコ……最初は味が薄いと感じたが食べるうちにゴーンの味覚はシバターの味に慣らされていた。
今ゴーンがトイレに流そうとしている料理についてシバターはゴーンに嬉しそうに語っていた。
シバター「今日の魚スーパーで特売でさ、お得だから買ってきたんだ、でもたまには肉とかも食べたいよな明日は奮発してカツドンでも作ろうか?」
あのゴリラのような男の優しい笑みが脳裏から離れない、ゴーンが今まで食べてきたご馳走とは似ても似つかない貧しい食事。
多くの日本人をクビキリし何人も自殺に追い込んでも何も感じなかった、だというのにお盆の上の食事をトイレに流すことがゴーンにはできない。
ゴーン「くそ、俺は何してんだ」
食事をトイレに流したところで詰まることもない、そう自分に言い訳してゴーンはお盆を部屋に持っていき食事を始めた。
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ゴーンがシバターに軟禁されてから一月がたち二月がたった。
レバノンからの助けも警察の捜査もこの場所には及ばない、恐らく国内にはいないと見られているのだろう。
シバター「ゴーン、ゴーン、食事を持ってきたぞゴーン」
ゴーン「やぁシバター、外はそろそろ桜が咲きそうかい?地球温暖化で最近は早く咲くそうじゃないか」
シバター「流石にまだ早いよゴーン、桜はまだ冬の冷たさに寒さに耐えてるよ、俺は咲いて一瞬で散る姿よりその耐え忍ぶ桜の姿が美しいって思うんだよ」
ゴーン「花が咲く前でも桜か……」
性善説を信じ時にうんざりするような説教も垂れるシバターだが、時にゴーンをハッとさせるような事を言う時もある。
そう桜だ、ゴーンの人生もそうだった特別な才能も血筋もない、努力し工夫し挫折しながらも前進してきた。
日本人を首にしたと責められようと私腹を肥やしたと責められようと、自分ほど努力し働きそして結果を出せる男は世界でも一握りだと、その自負がゴーンにはあった。
そしてこうしてシバターと茶飲み友達のように過ごす生ぬるい生活にピリオドを打ち、元の冷徹な実業家に戻ろうと彼は決めていた。
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ゴーン「シバター今日は俺の話から先に聞いてくれないか、レバノンに逃げようとしたのをはっきり言って俺は悪いとは思わない」
シバター「ゴーン……」
ゴーン「まぁ聞け、俺は確かに日本人従業員の首をトバした、恨まれるのも分かる、だがそれが外国人の俺に日産が望んだ仕事だったんだ」
ゴーン「やり方がどうあれ俺は日産を立て直した、大事業さ、文句をいう奴はいるが俺の代わりはできない、順当な方法で会社を立て直す知恵も、何万人も犠牲にする覚悟もない奴らだからな」
ゴーン「それが気に食わないって言うなら日産の車なんて買わなきゃいい、だが日本人は買ったろ?日産の車を買うのは首になった従業員なんて本当はどうでもいいからだ」
ゴーン「それでもって俺を叩く時に関係もないのに、やれリストラだの自殺だのというのは俺が金持ちで単に気に食わないからだ!違うか?」
シバター「もういいゴーン、やめてくれ」
ゴーン「いいや、やめないね、その俺の事を不快に思っている奴らで一杯の日本で裁判受けたらどうなる?目に見えてるだろ!そもそも横領は本当にやっているんだ!」
ゴーン「成功者で地球市民の俺が貧乏人の落伍者と一緒に、極東で臭い飯を食う?何のために?日本の負け犬共の留飲を下げるために?嫌だね」
ゴーン「俺には俺の正義が日本人には日本人の正義がある、敵の正義なんて知るか!俺が俺の利益の為に動いて何が悪い!」
シバター「違う!日本人がみんなゴーンのことを嫌いなわけじゃない!敵なわけじゃない!ゴーン、ゴーン、俺はゴーンが好きだ!」
ゴーン「ッッ――!!」
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ゴーンはシバターに抱き着かれていた、異性愛者だというのに心臓が訳が分からないほど熱く鼓動していた。
シバターの筋肉質な身体の熱をシャツ越しに、汗臭く香ばしい男の体臭が鼻孔に広がっていく。
ゴーンはここ二か月のシバターとの交流で彼が暴力に訴えるような男ではないと判断、論破することでシバター自身の手でゴーンを追い出させようとしていた。
弁舌を尽くしシバターを傷つけ苦しめこの窮屈な和室から追い出されることで
シバターの温かいもてなしの和室から逃れようとしていた、その思索も何もシバターの豪快な抱擁が頭から吹き飛ばした。
ゴーン「お、おい、俺達は男同士だぞ、歳の差だって」
シバター「ずっと好きだった!1999年に日本に来た時から一目ぼれだった!」
シバター「忘れようとして他の男に抱かれようともした、でもダメなんだ、俺ゴーンじゃなきゃダメなんだ」
二回り以上年下の背年の素朴で真っすぐな愛の言葉……異性愛者であるゴーンの手はわななき彼の背中に回された。
ルノーからの出向で日産のCEOにはついたが、それは多くの従業員の職を奪う穢れ仕事の報酬としてだった。
若い時はフランス国内で工場長もしていたゴーンにとって、自分の居場所を奪われるただ真面目に働くしかできない人々の苦しみは分かっていた。
それでも首を切るしかなかった、日産という会社をつぶさないために。
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日産の工員からは憎まれ、ルノーからは卑しいレバノンの処刑人(歴史的にフランスでは処刑人は最も卑しい職業の一つ)として裏では軽蔑された。
自分への言い訳と罪悪感から逃れるためにひたすらに会社の金で豪遊し、多すぎた金が夫婦仲を乱し確かにあった夫婦や親子間の絆や愛は消え去った。
不正がバレてからは日本中から憎まれ恨まれ、弁護団は金と欲望・それに依頼人の事などどうでもよく己の政治的思想を追求するだけの凡そ人間味の無い奴ばかり。
誰もゴーンの事を見ず、誰もゴーンの事を心の底から労わる者はいなかった。
シバター「ゴーン、俺がいるぞ俺が……」
シバターは違った、ゴーンの事を犯罪者とも卑しい処刑人とも司法後進国を叩きなおすための踏み台とも見なかった。
ただの人間のゴーンとして見つめ愛おしいと言って抱きしめてくれた、温かいシバターの腕に抱かれてその体にすがるしかない自分を直視して
ゴーンは自分の身体がどれほど愛に飢えていたか初めて理解した、ゴーンはシバターの熱い胸板に顔をうずめて泣きシバターは優しくゴーンを包み込みその背を擦った。
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シバター「ゴーン、ゴーン」
ゴーン「シバター」
シバターはゴーンを抱きしめながら語った、レバノン脱出をどうやって阻止したかを。
シバターは毎日ゴーンの情報をつぶさに集め、保釈中の彼を監視していた警備業者をゴーンが刑事告訴すると脅し
撤収させたと知り、近いうちにゴーンが日本を脱出すると推理ドローンを利用して監視し、怪しい音楽家が楽器ケースを運び出すのを見とがめた。
空港まで後をつけ、ゴーンの国外脱出を想定して事前に用意してい置いた空港職員の制服や偽造IDで職場に入り込み。
適当に空港の荷物の中からゴーンの入っていたものに似ていたケースと入れ替え、シバター宅まで持ち運んだのだという。
シバター「レバノンでケース開けたら楽器が入っててびっくりしただろうな、本当の楽器の持ち主には悪いことしたよ」
シバターは悲しそうにそう言った、これほど優しい心の清い男にゴーンは犯罪をさせてしまったのだ、のどに鉛を押し込められたような辛い気持ちにゴーンはなった。
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なんだこのSS!?
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シバター「楽器ケースを盗んで俺は本当の意味でゴーンの事が分かったよ、悪い事をしてそれが裁かれるのは恐ろしい」
シバター「それ以上にこんな秘密を隠して何でもないみたいに生きるのは辛いよ、ゴーン、ゴーン、俺はゴーンにこんな辛い気持ちをずっと抱えて生きてほしくない」
シバター「だからゴーン、一緒に自首しないか?それで償えるわけじゃないけど、やったこと全部話して心の重荷全部軽くしないか?」
シバター「怖かったら、俺と一緒に自首しよう、楽器の持ち主に謝って刑務所にも入って弁償もするよ、それからずっとゴーンが出てくるのを待つ」
刑務所に行く、ゴーンは保釈中の身でありながら逃げ出した人間性はともかくゴーンが雇ったのは日本法曹界のドリームチームだ、あれ以上の弁護は望めない。
ゴーンは長いそうとうに長い間刑務所に入れられるだろう、それはシバターも分かっている、分かっていてゴーンを待つと言ってくれたのだ。
ゴーン「わかったシバター、一緒に自首しよう、その前に……よかったら一緒にご飯を食べてくれないか?」
シバターは泣きぬれた顔で笑って襖開けて出ていきすぐに戻ってきた、ゴーンの献立と全く同じ健康的な減塩料理だ。
シバターとゴーンはこの初めて、お互いの顔を見ながらゆっくりと食事をした、そして恋人のように手を繋ぎ最寄りの交番に自首をした。
謎の失踪を遂げた大富豪と物申す系youtuberのW出頭は話題になり、多くの人々が彼らの物語を語った、日本の婦女子たちはシバゴンかゴンシバかレバ→ゴン→←シバの三つに分かれ混沌を極めた。
よくも悪くも熱しやすく冷めやすい民族だ、それからも話題は移り変わり誰かを叩き誰かを褒めて……10年後には誰もゴーンの事を呟かない。
シバター「うぅ、おかえりなさいゴーン」
ゴーン「ただいま」
一躍時の人となったシバターとゴーンは何者でもない誰かとなって日本で静かに暮らし続けた、彼らのその後を知る者はいない。
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終わりです。
愛こそがすべてを癒す、ゴーンに必要なのはシバターの愛です。
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https://i.imgur.com/5yPKgVS.jpg
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感動した!
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シバゴンええぞ!ええぞ!
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久々のシバゴンやったぜ。
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こういうのでいいんだよこういうので
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待ってた
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シバゴンまぢ尊い…
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知識と教養に裏打ちされた感動長編
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こんな事でスカイウォールの惨劇が起こるとかエボルトもビックリだわ
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ああああああ!!!良い!良い!良い!
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あっ…(感涙)
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感動した!
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えっ…なにこれは…
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普通に感動してしまった 訴訟
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すばら!すばら!
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シバゴン続編やりますねぇ!
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本番がないやん!
シバゴンのイチャラブエッチが見たいからこのスレ開いたの!
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ヌッ(感涙)
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シバターは受けが似合うと思うのでゴンシバ派です…(小声)
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