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この聖なる日に逢い引きを!【このすばSS】
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「あたし、デートってしたことないんだよねー」
とある日、とある夜。
銀髪盗賊団としての活動を華麗に終えた帰り道。潜入した貴族の屋敷からの追っ手がないことを確認しつつ歩いていると、クリスがそんなことを言い出した。
「はい?」
「はい?じゃなくてさ、どう思う助手君?これでも乙女なのにさ、デートのひとつもしたことないって」
…ふむ。
明らかに口に出している言葉以上の意図が含まれているのを感じた俺は、
「そっすか、大変ですね。じゃ、俺こっちなんで。お疲れーっす」
さっさと帰ることにした。
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「待って!なんで今日に限ってそんなにすぐ帰ろうとするの!?」
そんな俺の腕をガシッと掴むクリス。おおう、いつになく必死だ。
「こっちの道からでも帰れるでしょ!?ほら、せっかくだからもうちょっと話していこう!ね!?」
勢いに若干引きつつも、俺は身体をクリスの方へ向け直すと、
「…やれやれ、構いませんけど高いですよ?」
と、冗談めかして言ってみる。まぁあまりいじめるのも可哀想だしそろそろ…。
「…仕方ない。じゃあこのマジックダガーでなんとか」
「すみません冗談です。しまってくださいそんな高いもん」
確か相当な業物とか言ってたはずのマジックダガーをこちらに差し出そうとする彼女にストップをかける。ダメだ、冗談がまったく通じねぇ。思った以上に今日のクリスは余裕がないらしい。
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「…で、お頭は俺とデートがしたいってことでいいんですね?」
「い、いや…あたしはただデートしたことないなーって言っただけで…別にキミとしたいとは…」
ゴニョゴニョと目線を逸らしながら言う…面倒くせえなこの人。そっちがその気なら俺にも考えがあるぞ。
「そうですか。じゃ、俺はこのへんで…」
「すみませんデートしたいです!他に頼める人がいないんです!!」
俺の塩対応に再び必死で引き留めようとするクリス…やっといてなんだが、この姿は女神としてどうなんだろう。
童貞って端から見たらこんな感じなのかもしれない。まぁ俺が言えた立場じゃないんですがね。
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「…しかし、なんで急に?」
この人が日頃からそういう『普通の女の子』っぽいことに憧れているのは知っていたが、何故今になってその願望が丸出しになっているのだろうか。
「う…えっと、ほら、もうすぐさ?あたしのアレだから…せっかくだしデートくらいって…」
「ああ、生理ですか」
「違うよ!?あとそれセクハラだし!それ以上からかうと天罰ですよカズマさん!そうじゃなくて誕生日です!私の!!」
なんかだんだんエリスとクリスの口調が混ざってきた。っていうか女神に生理ってあるんだろうか?
知的探求心は尽きないが、さすがに話が進まないので真面目に話すことにする。
「まぁクリスマスでしかも誕生日ってなったら独り身には辛いですよね」
俺も日本にいた頃はクリスマスへの憎悪を募らせたもんだ。
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>>3
お前スレンダーなお頭に喧嘩売ってんのか!謝って、胸のこと気にしてるお頭に謝って!
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「…いや、その通りなんだけどさ。そこまで直球で言うことないじゃん…」
肩を落とすクリス。分かりやすいな、おい。
「いいですよ、暇だし。行きましょうか、誕生日デート」
「!ホント!?」
パッと顔を上げ、花が咲くような笑顔を見せる。うん、かわいい。どこかの憎たらしく汚い笑顔ばかり振り撒く駄女神にも見習ってほしい。
「もちろんですよ。俺が嘘つくと思います?」
「助手君は一度自分を見つめ直した方がいいと思う」
失敬な。おっしゃる通りですが。
「とりあえず…25日の朝に広場に集合、って感じでどうですか?」
「うん、デートっぽくていいね!それでいこう!頑張っておめかししてくるよ!」
すっかりテンションの上がったクリスは、そう意気込むと「じゃ、また当日に!」と言ってタタタッと走り去ってしまった。
「…さて、と」
凡百の鈍感主人公ならここで「みんな一緒の方が楽しいよな!」とかなんとか言って他のヒロインに声をかけたりするのだろう。
だがこの俺、佐藤和真は一味違うぜ?
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そんなこんなでデート当日。
「うっし、行くか」
自室の鏡の前で身だしなみをチェックし、気合いを入れる。屋敷の中は至って静かだ。
それもそのはず、今この中にいるのは俺だけである。
アクアは年末セールの売り子のバイト。
ダクネスはパーティーに参加するために親父さんと一緒に王都へ。
そしてめぐみんは紅魔の里に里帰り中だ。
「意外と上手くいったなぁ」
はい、全部俺が誘導しました。
アクアはまぁ、そのまま割のいいバイトを紹介してやっただけだ。何か怪しい気配のする店だったが、まぁ大丈夫だろう。
ダクネスの件に関してはコネの活用である。クレアとレイン宛にこんな手紙を送った。
『私の友人であるララティーナ嬢が、最近貴族らしい華やかなパーティーに参加できずに寂しそうにしております。どうかあなた方の催しに参加させてやってはくれないでしょうか?できれば25日あたりだと都合が良さそうなのでよろしくお願いいたします。
追伸、私はひとつとしてあの日の出来事を忘れてはおりません。』
そりゃあもうものすごいスピードで返事が来ましたとも。っていうかレインが直接ダスティネス家まで招待状を持ってやって来たらしい。なぜだろうね、不思議だね。
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そして最後にめぐみん。コイツもダクネスのときと同じだ。頻繁に里とアクセルの町を行き来しているゆんゆんに頼み、ちょっとした包みを持っていってもらった。宛先は言うまでもなくめぐみんの実家、もっと言えば妹のこめっこ宛だ。
手紙の内容は至極単純。
『このお菓子は必ず家族4人で、家の中で食べてください。カズマお兄ちゃんより』
これで食い意地が張りつつも律儀なこめっこは意地でもめぐみんを実家へと連れていくだろうと踏んだのだが、予想通りとなった。
…なんだか上手く行き過ぎて死亡フラグにすら感じるが、気にしたら負けだ。
「あんまりお頭を待たせても悪いし、とっとと行くか」
頭を掠める不安から目を逸らし、俺は待ち合わせ場所へと向かった。
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「あ、あの!女神エリス様…ですよね!?」
「い、いえ…人違いです…」
「しかしそのお姿…どう見ても」
「ええと、他人の空似で」
「もうご本人でなくてもいいです!握手してください!!」
「は、はあ…」
「……」
おかしいな、何故か待ち合わせ場所に女神が降臨しているぞ?人だかりも出来てるぞ?
「なるほど、おめかしってこういうことか」
クリスの姿も十分に美少女ではあるが、女の子らしさという点ではエリスの方が上と言える。
うーん、まさに一張羅。いやはや一本取られたなー。
…いやいやいや!なにしてくれてんだあの人!?
「…あっ!カズマさーん!」
俺に気付いたエリスがホッとしたような表情で手を振ってくる。
「何ぃ!?カズマ!?」
「またアイツか!」
「ふざけんなよザコマ!」
まぁ必然的にこうなるわけで。群衆の注目がこちらに向けられ、それらはすぐに殺気に変わった。
「…あーもう!しょうがねぇなあああああ!!」
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「ひゃっ!?か、カズマさん!?」
人の合間を抜けて全力でエリスのもとへ向かい、そのまま手を引っ張って全力で離脱する。
「畜生、待ちやがれ!」
「…くっ!この位置じゃエリス様がいて魔法が撃てねぇ!」
「野郎、女神まで盾にするなんて本物のクズだな!」
後ろから心外な言葉が投げ掛けられる。違うのに!たまたまそんな感じの位置関係になってるだけなのに!
「……」
「誤解ですから!そんなドン引きな目で見ないでください!っていうかそもそもエリス様のせいだし!ああもうなんでこうなるんだよおおおおお!!」
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「ごめん」
「大丈夫ですよ、アクアよりはマシです」
「何の慰めにもならない評価だね…」
潜伏スキルその他を駆使してなんとか追っ手を振り切った俺達は、町の中心からやや外れたエリアを歩いていた。
隣を歩くのは女神エリス…ではなく、盗賊クリスである。
どうやってるのかはいまだに分からないが、少しの間物陰に引っ込んだと思ったらこちらの姿になって出てきた…全力での逃走のせいで覗く元気すらなかったことが悔やまれる。
さすがに浮かれたあまりのこのやらかしは彼女的にも堪えたらしく、すっかり肩を落としている。
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「せっかくの初デートだと思って気合い入れてたんだけど…」
「入れすぎて空回った、と」
「…うん」
今日に至るまでソワソワと過ごしていただろう彼女の姿は想像するだけで癒される絵面だ…まぁ、なので。
「さて、まずはどこに行きます?もうあの連中も諦めて解散しただろうし、どこでもいいですよ」
「えっ?…いいの?」
俯いていたクリスが驚いたように顔を上げた。
「こんな迷惑かけちゃったのに…」
「さっきも言ったじゃないですか、アクアよりマシですって。トラブルにも含まれませんよ、このぐらいの騒ぎ」
そう言いながら今はバイトに精を出しているだろうあの駄女神との日々を思い出す。
「じょ、助手君?泣いてるの…?」
おっと、気付かぬうちに辛い過去のせいで男泣きしてしまったようだ。
「俺の心の汗は気にしないでください。それより行き先を決めましょうよ」
「う、うん…じゃあ…」
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かわいい
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「ありがとう。今日はすごく楽しかったよ」
「そりゃ良かった」
ニコニコと笑いながらクリスが言う。あの後はふたりでクレープを食べたり、女の子らしい服が欲しいと言うので服屋に行ったり…と、まさに王道のデート、といった内容だった。途中さっきの騒ぎの残党に追いかけ回されたりもしたけど。
「…でも、せっかく買ったこの可愛い服、いつ着ようかな?さすがにこれでクエストはムリだし」
「まぁ、それは次のデートの時にでも着ればいいんじゃないですかね」
次にクリスが誰とデートするかはわからないが。
「そっか、そうだね」
納得したようにクリスが頷く…うーむ、しかしそう考えると心にモヤモヤとしたものが。
俺にちょくちょくある『別に付き合ってないし好きとかでもないけど、仲の良い異性が他の男と仲良くしているのが気に入らない』的な感情が湧いてしまう。おのれ、まだ見ぬクリスの彼氏め…!
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「その時は助手君もお洒落してきてよね。今回やらかしたあたしが言うのもなんだけどさ」
「へいへい…ん?」
ふと彼女の言葉に違和感を覚える。あれ?なんか次のデートも俺が相手って決まってるかのような…。
「あ、そうだ!その時に今度はキミの服を買うのもいいかもね!男性の服を選ぶっていうのもデートっぽいし!」
俺が口を挟む間もなく話が進んでいく。
こっちとしては、誕生日の今回限りお試しデート的なもののつもりだったんだが…。
「次はいつにしようか?助手君の誕生日…は、ちょっと遠いか。うーん」
ま、でも。
「いつでもOKですよ。お頭のお好きな時で」
俺も楽しかったし、きっと次も楽しくなるだろうし。
「ホント?じゃあ…」
だから別にいいか。うん。
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「おいカズマ、貴様本当に王都で何をやらかしたんだ!?王宮の衛兵たちやアイリス様の側近のふたりが、お前がいないか何度も何度も怯えた様子で確認してきたぞ!アイリス様には『お兄様はいらっしゃらないのですか…はぁ』となにやらガッカリされてしまうし…!今回のパーティーも何か裏があるんじゃないだろうな!?」
「おい、人の妹を勝手に餌付けするのはやめてもらおうか!珍しくこめっこに請われて帰ってみたら『姉ちゃんがいないとおかしが食べれないから仕方なく』とか言われた私の気持ちが分かりますか!?あ、お菓子は美味しかったです!ご馳走さまでした!」
「謝って!私におかしな店を紹介したことを謝って!!張り切って売り子してたら警察が来て密輸がどうとか許可がこうとか話しててそのうち店の人みんな連れて行かれちゃったんですけど!私?私は全力で土下座ながら『私はただのバイトで無関係です』って言い続けてたら許してもらえたわ!」
「ちょっ、お前ら落ち着けって!」
その日の夜。
屋敷に帰ると我が家の3バカがいきなり食ってかかってきた。
しかし他二人はともかくダクネスは帰ってくるのが早すぎないか?まさか文句を言うためにすっ飛んで来たのだろうか。
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「…待ってください、二人とも。この男、間違いなく何か隠していますよ。わざわざ私達全員を同時に遠ざけるなんて」
ちっ、鋭い。
その無駄に高い知能で真相に近付くめぐみんにどう言い訳しようかと考えていると、バァン!と勢いよく屋敷の扉が開かれた。
「じょ、助手君!今日デートで買った服の包みの中に高そうなアクセサリーが入ってたんだけど!」
ノックもなしに扉を開けて入ってきたクリスが叫んだ。
「これキミが買って入れてくれたんだよね!?いつの間にこんな乙女心を掴むようなテクニック身につけたのさ!?もしかしてこれって今度こそ本気のプロポーズなの!?気持ちは嬉しいけどあたしにも心の準備が!いやもちろん嫌ってわけじゃないんだけどさ!むしろ嬉しいんだけどさ!」
「「「「……」」」」
一人盛り上がるクリスと、沈黙する俺含む四人。
あれは別にそんな深い意味のあるものじゃない。ただ一応用意した誕生日プレゼントを正面から渡すのが恥ずかしかったってだけだ。本当に。
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「…カズマ、デートとはどういうことだ」
「なんですか包み中にプレゼントって。そんな私にもしたことない小粋なことを?しかもプロポーズ?」
「…ダクネスもめぐみんも怖いんですけど。っていうかそれより私は今日私が働いた分のバイト代がどうなるかが気になるんですけど」
「……」
しかしそんな俺の真意などこの状況で説明しても信じてもらえるとは思えない。
無言で天を仰ぐと、俺は一言呟くように答えた。
「黙秘で」
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終わり
エリス様&クリスさんお誕生日おめでとうございます。
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こういうのでいいんだよ、こういうので
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小説やパンツ裁判ゲームのクリスルートからネタを拾ってきたり愛が溢れる小説だなと思いました。
クリス&エリス様オメシャス!
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したらばってたまになつめ先生が沸くよな
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好き
誕生日おめシャス!
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逆レイプしないエリス様はやっぱりいい
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オメシャス!
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>>24
しててもかわいいだろ!
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>>26
したら駄女神になってしまう…
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僕は逆レエリス様の方が好きです
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>>27
ならないんだよなぁ
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>>28
そうだよ(便乗)
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腹上死はちょっと……(冷静)
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>>31
死んでもずっと一緒にいられるから安心!
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>>32
死んでもずっとレイプされるとか地獄かな?
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>>33
天国なんだよなぁ
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こういうのはこういうのでいいけど余計な事を言った>>24が悪い
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>>33
どう考えても天国だろ!いい加減にしろ!
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この後めちゃくちゃ逆レされてクリエイトベイビーする展開オナシャス!
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1月1日に発売されるこのすば短編集「この素晴らしい世界に祝福を! よりみち!」に混ざっててもおかしくないクオリティ
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とてもよかった
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