■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
【SS】舞台は東京、2400m
-
トゥインクルシリーズともドリームトロフィーとも違う、もう一つのビッグレース。
GIレースが行われるコースと同じシチュエーション、ファン投票で選ばれた2人が1対1で勝者を争う通称「夢のVS」
今回選ばれた2人は…
初めて無敗で3冠を達成した「皇帝」シンボリルドルフ
名門「シンボリ一族」に生まれ、当初ルナと呼ばれた彼女は、幼少のころから英才教育を叩き込まれ、その期待に応えるべく勝ち抜いていった。
-
ジュニアBクラスではトントン拍子に快勝し、無敗のまま迎えたクラシック挑戦の年、初戦に弥生賞を選択し同じく無敗だったウマ娘とどちらが強いのか注目を集めた。
しかし、「どちらが強いかという次元ではない。問題なく私のほうが強い」と言ってのけ、その言葉通りに完勝、その後の皐月賞も同じく完勝して見せた。
彼女のレーススタイルは基本的に終盤まで先団に取り付き、ラスト150mから他のウマ娘を突き放す。そのライバルを見下したような走りは、何人もの心をへし折っていった。
迎えたジュニアCクラス最大のタイトル日本ダービー、彼女はいつもの先団から勝負するスタイルではなく、直線まで中団に位置していたが、最終的にはきっちり全員差し切って完勝した。
いつものレーススタイルではなく、なかなか動こうとしなかったため周囲からは不安の声も出たが、「ペースが速かったのでこの位置からでも十分差し切れると思った」とコメントし、周囲を感心させた。
-
菊花賞も難なく勝って3冠を達成するも迎えたジャパンカップ、シンボリ一族として一番取りたかったタイトルではあったものの3着となり初の敗戦を喫する。
しかしながら次走の有馬記念…
そのジャパンカップでルドルフ以下を振り切った勝者、残り150mまで彼女に執拗に張り付いた挙句…
彼女を一睨みすると、その後は彼女を見向きもせず、突き放してしまった。
その後も彼女は勝ち続け、ただ1度、天皇賞秋の敗戦を挟むも、次走のジャパンカップにて前走と昨年の借りをまとめて返してしまった。
そうして淡々と、無慈悲に勝ちを積み重ねる彼女はいつしか「レースに絶対はないが、ルドルフには絶対がある」と言われるほどになっていた
-
そしてもう一人のウマ娘は…
2人目の無敗の3冠ウマ娘「英雄」ディープインパクト
どこにでもいる普通のウマ娘として生を授かった彼女は、小柄でおとなしい性格ということ以外、特筆すべきことはなかった。
ただひとつ、走ることを除いては。
ひとたび芝の上に立ったら、目の色を変えて走り、走り、走りまくった。
足を血まみれにしても気づかずに走り続けることも一度や二度ではなかった。
なぜそこまでして走るのか、そこには理由などなく、ただ楽しいから、走るのが好きだから、それだけだった。
-
そんなランニングジャンキーともいえる話を耳にした観客は、当然のように新馬戦で彼女をファン投票1番人気に支持した。
ランニングジャンキーと言えば、思い出されるのは超快速ウマ娘のサイレンススズカ
このレースでデビュー迎える彼女もスズカのような強烈な逃げを見せてくれるのか…観衆は大いに期待した。
しかし、彼女はスタートに出遅れると道中は後方を追走するのみ。
ランニングジャンキーという噂は、所詮噂でしかなかったのか。
しかし、1分後に彼らは度肝を抜かれることになる。
最後の直線に向いた瞬間、あっという間に先頭に立ち、そのまま圧倒的な差をつけて1着にゴールインしてみせた。
王道の中長距離を勝ち抜くため、自分を抑えるすべを身に着けただけで、走りの能力、そして走りへの思いは観衆が思っていた通り、いや、思っていた以上のものであった。
-
そして無敗のままクラシックロードに挑んだ彼女
最初の皐月賞はスタートでつまづいたものの終わってみれば楽勝。この走りは、のちに「飛んでいる」と称されるようになる
そして続く日本ダービーではコースレコードタイ記録で圧勝。ちなみに2着のウマ娘はレースを離れた後に世界中を放浪した挙げ句歌手に転身したが、それはまた別の話。
三冠最後のレース、菊花賞ではゴールを1周分勘違いしてしまい、早々にスパートをかけてしまうというポカをやらかすも、全く問題なく圧勝。史上2人目の無敗での3冠を手にした。
次走の有馬記念で不覚を取り敗れるも、その後は再び連勝街道を邁進し続けた。
-
彼女の走りに、観衆は熱狂した。
圧倒的な強さもさることながら、最後方から先頭へという見てて分かりやすい迫力、そしてクールな出で立ちからの愛嬌たっぷりのふるまいというギャップも彼女の人気に拍車をかけた。
彼女なら、日本のウマ娘の悲願である凱旋門制覇を叶えてくれる。日本中が信じて疑わなかった…
しかし、そんな彼女の栄光に暗い影を落とす事件が発生した。
絶対的人気を背負って挑んだ凱旋門賞は3着、さらに直前まで服用していた風邪薬の化学物質がフランスの規定に引っかかってしまい、失格となってしまった。
この事件に日本は大きく揺れた。当時その風邪薬は日本では認められていた(のちに日本でも禁止)上に、故意ではなかったことは明白だが、これまでのディープの経歴や圧倒的な走りに疑いを持つものも決して少なくはなかった。
帰国初戦のジャパンカップは、そんな疑念の声をどう払拭するのか、この一点に注目された
-
この最強のウマ娘2人、過去の接触は1度だけあった。それはディープインパクトの風邪薬問題が発覚した直後のことだった。
============================
「今日ここに呼び出したのは他でもない。一連の事件の処分についてだが…」
「悪意を持ってやったわけではないことはわかるが、国際的な大舞台でこのような事態を起こしたことを看過するわけにはいかない。よって1か月間のレース出走、およびチームでの練習を禁ずる。異論はないな」
「はい…本当に申し訳ございません…」
これが2人の唯一のコンタクトである。
ちなみに、ディープインパクトが会長室を出た後、側近であるエアグルーヴとのやり取りで…
「会長、いくら国民的人気のディープインパクトとはいえ、今回の処分は軽すぎる気がしますが…」
「ウマ娘たるもの、失った信頼は走りで取り戻すしかあるまい。それに…私は彼女の走りが好きなんだ…」
「ま、まさかそんな個人的な理由で処分を軽くしたのですか!?」
「そ、そんなわけはないだろう!あくまで厳正に処分内容を決めた結果だ!妥当な線だ!」
「まぁ…分かりました」
==========================
-
>>7と>>8の間に
彼女の選んだポジションはいつものレーススタイルである後方だった。しかしながらレースは追い込み系のウマ娘には不利とされているスローなペース、これは凱旋門賞に続いて屈辱を味わうことになるのか、彼女の経歴はやはり偽りのものだったのか…
そんな不安は、最後の直線で歓喜に変わった。
ラスト200m付近で先頭に立つとあとは突き放すのみ。前年度の有馬で敗れたハーツクライなどをちぎり捨て勝利。雑音を自らねじ伏せた。
次走の有馬記念も圧勝し、敗れた相手と敗れたレース、2戦続けてのリベンジを果たした。
そしてこの2人、「勝利よりたった数度の敗北を語りたくなるウマ娘」と、「敗北など考えられないウマ娘」が東京2400mで激突する。
-
ウマ娘は復活するんだ
-
---夢のVS当日----
トレセン学園史上最強と称される2人のウマ娘の直接対決。これまでのVSシリーズとは比較にならないほどの人で溢れ返り、投票券もこれまでで1番の売り上げを記録した。
場内のボルテージは、最高潮に達していた。
「久しぶりだなディープ。こうして君と競走することをずっと楽しみにしていた」
「私も、憧れのルドルフさんと一緒に走ることができて、光栄です!」
そうして2人は、隣り合ったゲートに入った。
-
「さあ始まりました夢のVSシリーズはここ東京2400m!ともに無敗で3冠レースを制し、トレセン学園史上最強のウマ娘との呼び声高い2人がついに初対決となります!」
「果たして勝利するのは『皇帝』シンボリルドルフか、あるいは『英雄』ディープインパクトか!ついにゲートが開きました!いつも通りルドルフはいいスタート、そしてディープもいつも通りやや出遅れてスタートします」
「さぁここは予想通りルドルフが逃げの形をとるのか…おっとディープインパクト、第1コーナーで早くもルドルフに並ぼうという格好です」
-
戦前誰しもが「先行脚質のルドルフが直線まである程度ディープを引き離すだろう」と思っていたのだが…予想に反し、第1コーナー、第2コーナーを通過してもぴったりと並走したままだった…
「さぁここまで意外や意外、2人が並走しています。これはディープ、ルドルフ、どちらのペースなのか今最初の1000mを通過しました!時計は1分3秒ジャスト!かなり遅い時計となりました。これは間違いなくディープのペースにルドルフが合わせています」
「一体どうしたんだ、いくら会長とはいえ、直線の末脚勝負ではディープの方が有利なんじゃ…」
そう困惑するエアグルーヴだったが…
「流石ルドルフ、えげつなさすぎる…」
「あ、あなたは一体…」
-
「私はビゼンニシキ、ルドルフの同期で彼女の恐ろしさを一番よく知っているウマ娘の一人だと自負している」
「会長の恐ろしさ…」
「アナタは彼女のことを厳しくも情に厚い立派な会長だと思っているでしょう」
「まぁ…そうですが。私だけではなく、学園の全員がそう思っています」
「確かにそれは正解。ただし…レースの外ではの話」
「え?」
「レースに入ったら、情もへったくれもない、向かってきた相手を絶対的に屈服させ、敗北を与えるだけのウマ娘。それがルドルフ、いや、暴君ルナのもう一つの顔…」
「ということは、ディープに並走しているのも…」
「おそらくは、完全にディープを屈服させるためでしょうね」
- - - - -
- - -
-
-
「さぁ大ケヤキを通過しましたがが未だに両者並走の状態、なかなかペースは上がってきません」
スローペースで進む一騎打ち、先に言葉を発したのはルドルフの方であった
「……私がもっと引き離してくれると思っていただろう?」
「…」
「君の速さ、強さは私はよく知っている。だが…これはデュエル、その時に早くゴールしたものが勝者であり、強者だ」
「…」
「君は絶対に私に先んじることはできない、たとえ君がどんなにいい"風邪薬"を使っていてもな」ギロッ
「…」
-
「第4コーナーを通過してルドルフがここで加速、ディープを引き離す、ディープ追いつけるか!」
「負けた最初の有馬記念と凱旋門賞、それに勝ったとはいえ苦戦した弥生賞、どちらにも共通するのが”他のウマ娘と並走していたこと”」
「つまり、会長はそれを分かってディープのペースに合わせていた、と」
「いつも一人でストレスなく走っていたディープもあそこまで執拗に並ばれると、最後の末脚も不発に終わるでしょうね。そしてここからはどれだけディープの心をへし折れるか。正直この先を見るのは辛い。私と同じになりそうで…」
「それだったら、心配はいりませんよ」
「君は…」
-
エアグルーヴとビゼンニシキの会話に割って入ったのはディープインパクトの同期、アドマイヤジャパンであった。
「私が出走した弥生賞、知っての通りディープが1着とはいえ小差でした。ただ私はゴール直前、あの子のとんでもない一言を聞いてしまいました」
「それはどういう…」
「『あ、ヤバ、レース終わる!』と言って最後の数十mで私を交わしました。そして2着の私にこう言ったのです」
『あ〜危なかった。でも一緒に走るのって楽しいね!』
「私は全力で走ってたのに…ディープに勝つことだけ考えてたのに…あの子が勝敗のことを考えてたのはたった数秒だけ。心をへし折ってくるって意味では会長にも負けてないですよ」
「あんなにおとなしくていい子そうなのに、か?」
エアグルーヴはアドマイヤジャパンに聞き返した
「はい、しかも無自覚な分、会長よりもタチが悪いかもですよ。私たちのディープは」
-
「スゴイ…私、会長と一緒に走れてる。って待ってくださいよ、せっかくですしもっと一緒に走りましょうよ〜」
「おっとディープが迫ってきた、残り300mで再び2人が並びました」
ルドルフは、ディープが今まで戦ってきた相手とは全く異質であることに困惑していた。
(終始並走状態になると100の力を出せない、という私の読みは間違っていないはずだ。ならば…)
(本当は併走が苦手なのではなく、併走の楽しさに気を取られているだけだと、つまり私との勝敗など眼中にないというのか…)
「ククククク…ハッハッハッハッハ、面白い!それでこそ私が惚れたウマ娘だ!だが、それでも勝つのは…私だ!」
-
「のこり200mを切りました、ディープか、ルドルフか、このレースの結末はどうなるんだ!」
「ここからの50m、これが私の真骨頂だ!お前に付いてこれるかな?」グオオオオッ
「再びルドルフ!再びルドルフが前に出た!」
「ずっとルドルフさんと走っていたい…だけど、これはレース。ルドルフさん、私、このレースに勝ちます!」ギュイイイイン
「再びディープが差し返す!再びディープが差し返す!並んだ並んだ並んだ…」
- - - - -
- - -
-
-
写真判定にはならなかった。
ラスト50m付近で作られたディープインパクトのリードは、そのまま縮まることなく決着がついた。そして…
\ディープ/\ディープ/\ディープ/\ディープ/
\カイチョー/\カイチョー/\カイチョー/\カイチョー/
熱いレースを展開した2人に、万感の拍手が送られた。
-
「おめでとうディープ。今日は私の完敗だ」
「ルドルフさん…」
「負けたら悔しさしか残らない、そう思ってずっと走ってきた。だが、初めて負けてこんなに晴れやかな気持ちになった」
「私も、レースに勝ちたいって気持ちがこんなに大きくなったのははじめてです!」
「どうやら私は一緒に走ってみて、ますます君の走りが好きになってしまったようだ。だから、いつかもう一度、私と走ってくれないか」
「はい!もちろんです!」
- - - - - - -
「あちゃー、これ次ディープやばいよ」
「先着を許した相手には10倍にして返すのがルドルフだからねぇ、あたしらのときみたいにさ」
「まぁ、でもディープなら分からんよ」
「だね。ルドルフの話聞いてなかったっぽいし」
彼女たちのリマッチを1番楽しみにしているのは、1度はルドルフを出し抜き、そして次のレースで完敗を喫した2人かもしれない。
- - - - - - -
「さぁ、ライブの時間だ。しっかりやれるな」
「はい!…ってあれ?」
-
「離せー!ティライミにもライブさせろー!」ジタバタ
「突然日本に帰ってきたと思ったら何言ってるんですか!」
「ライブさせろー!ティライミのライブだぞ!あの世界的サッカー選手を熱狂させたんだぞ!」ジタバタ
「どうみても顔が死んでたじゃないですかあのサッカー選手。とにかくダメです、これからルドルフさんとディープさんのライブなんだから!」
「じゃあ前座でいいから!とにかくティライミにライブさせろー!」ジタバタ
「…ディープ、あれは君の同期ではないのか?」
「…いえ、知らない子です」
-おわり-
-
みなさんご存知元ネタです
https://youtu.be/fNtyk4DiGBk
元々はダービーのためのCMだけど同じ東京2400mだしどっちもJC勝ってるからいいよねって言うことで書きました。
-
オツシャス!
-
ディープインパクトってウマ娘では最初いたけど色々あって出せなくなった勢だっけ
-
玉も竿もでけぇなお前(褒めて伸ばす)
-
ウマ娘は生き続けるんだ
-
乙
ダービーでディープの2着だった馬をネタに昇華してくるとはたまげたなぁ
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■