ついつい呑み過ぎてしまったもので、そうそう生中ですとも生中！
今宵ついにありつけたのです！ いや〜あれは良きものですね、生中！
肴には困りませんでしたのでそれはもう浴びるほど馳走になりましたとも！
古今東西の変人……ではなく英傑たちが集う酒宴！ 何が起こるかわからない混沌の渦！
あなたという楔がなければいくつの首が飛び交っていたのでしょう、本当に面白きところですね此処(カルデア)は！
しかしながら私にとって最も面白きものは目の前にあるのです、ええそなたですよそなた。
見るに今日もまた苦戦を強いられたようで。その生傷、昨日は付いておりませんでしたよね？ まったく私を連れて行けば斯様な目に合わずに済んだものを。
……ああ、また、その顔をする。何故そなたはそう笑っていられるのでしょうか？
皆が無事だったから？ はあ、分かりませんね。そなたは我らにとっての庇護対象、それ以上でも以下でもないでしょう。
そも英霊とは諸人の願いのために身を消費する存在、仮初の命。役目が終われば消える存在。
其れを理解しながらも、嘘偽りなく純粋に、安心しきった表情で……己より皆の心配？
分かりませんね、分からない分からない分からない分からない分からない。
ああでも一番不可解なのはそのような傲慢で、憐れで、優しいだけの笑顔を見ることに……
嫌悪の情を抱かぬばかりか、むしろ奇妙な安らぎすら覚えてしまった……
私自身、ですね。
おっかしいなぁ、分からないなぁ、あはっ、はははははははははは！
はい、というわけですので今宵、教えてもらおうかと思いまして！
えっ、何をって？ 決まっているじゃありませんか！
そなたの矛盾と我が霊基の内に起こった軋みの謎を、そのお身体に、ですよ。
ふふふ、よく言うでしょう？ 「身体に直接聞く」と。
人間は身を重ねることでより深く相互理解を果たすとも聞きますし、ああ、心配しなくとも床での作法くらい私もありますからご安心を！
見たところ今宵は「楔」もないようですからね！
……ええ。先ほど「苦戦を強いられた」と解したのはその生傷だけではないのです。
随分と綺麗ですね、右手の甲。いつもなら紅々とした痣が、我らの楔が、そこにあるというのに……
ああ、元々、そなたには楔として巧く扱えないのでしたか？
あっはははははっ、本当に何と矮小なお人でしょう何故斯様なお人の事で私の頭は満たされてしまったのでしょう何故私は全く嫌悪感を抱かないのでしょう！分かりません！全く分かりません！
これはもはや遠慮はいりませんね！ にゃーーー！
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しかも上手くてたまげたなぁ…