よかろう、他に適役がいるようにも思えるが、この私にできる限りの事はしてみよう。
いいや気にするな。汝が「ただの人間」であることは吾らが一番良く知っている。
過酷な戦いの日々を送っているのだ。人並みの安らぎを求めてしまうのは当たり前の事だからな。
よしマスター、さっそくだがそこのベッドに横になってくれ。
疲弊したときは何はともあれ身体を寝かせることが大切だからな。
うんそれでいい、ともかく今は自分をリラックスさせることだけを考えるといい。私はそのための手助けをしてやろう。
では、そのまま全身の力をすーっと抜いてくれ。両手両足の力を抜いてだらんと……そうだ。
次はゆっくりとまぶたを閉じてくれ。耳だけに、意識を集中させる感じでな。
……続いて、「私の声」に合わせて深呼吸をするんだ。……良いか？
はい、吸ってー、吐いてー…ふふっ良いぞ、そのまま続けよう。今度は少しペースを遅くしてみようか。……そう、ゆっくり、ゆっくりとだ。
だいぶ落ち着いてきたな。どうだ、「私の声だけ」を聞いていれば「気分が良くなってくる」だろう？
まるで痛みなど知らぬ、「幼子」に戻ったかのように……な？
……そう、マスターは今、幼子なんだ。精神だけが幼子に回帰した状態なんだ。だから何も気にせず、心地良い感覚に身を任せていても、咎める大人など誰一人いないんだぞ？
うん、本当だ。安心してくれ。あ、でも、マスターは「良い子」だから、私の言うことはちゃんと聞けるよな？
よしよし。じゃあマスター、私と一緒に少し遊ぼうか。
うむ、遊びだ。この林檎をマスターが投げて、それを私がキャッチする……とっても簡単だろ？できるよな？
じゃあほら、この金ぴかの林檎を右手に持って…………むッ！？
……この気配、嗅ぎ付けてきたか、これだから牛だの蛇だのは過敏で困る。
あ、ああ、すまぬすまぬ。不安にさせたなマスター。どうやら少し野暮用ができてしまったようなんだ。いや、そのまま力を抜いたままでいてくれ、すぐに戻るからな。あ、そうだ、それまでの間、私がなんとなく録音していたこの音源を聞いていてくれ、私の声だからな、きっと安心できるぞ？……そう、お姐ちゃんの声だ、ふふっ、では行ってくるな、マスター。
ファミパン聖女と高速詠唱で感覚が鈍磨してましたけど、
よくよく考えるとかなりのパワーワードですね…