彼らの純粋無垢な笑顔に満ち溢れた素晴らしい祭日だ。うん、実に良い。
……しかし、その割に……汝は表情が優れないな。いやいいんだ、なんとなく分かるから。
私も現代のハロウィン事情を聞くまでは、あの竜の娘が増える日としか認識していなかったからな。もしくは城が積み重なる日か────。
……そうだな、今年も十中八九なにかあるのは想像に難くない。だが思い返して見ろ、汝はピラミッドの時もヒメジジョウの時も、なんだかんだと場を治め、無事カルデアに帰還したではないか。
無論、斜に構えろとは言うまい。だが、たまには厄介ごとを片付けた後に思いを馳せてみても良いのではないか？ せっかくの祭りなのだからな。
どうだろうマスター。今年は私と共に仮装でもしてみないか？ ふふ、現代においては大人も仮装するのだろう？ たまには童心に帰ってみるのも一興だろうよ。
それにマスターである汝が仮装するとなれば、カルデアも大いに盛り上がろう。ジャックたちも大喜びだ。
ん？ 私は狼女の仮装でもするのかって？ ……あのなマスター、確かに獣の耳と尾は生えているがそんなものでは捻りがないだろうが。
そもカルデアには狼女なぞより恐ろしい者が多々いるわけだし。下手に子供たちを怖がらせる格好よりかは、少しでも華やかで、目立つ仮装をしたほうがよかろう。
うん、というわけでだ、私はこれを着込もうと思う。純白の花嫁皇帝ネロ・ブライド(第三再臨)の衣装だ。こすぷれという奴だな。夏のサバフェスでも行われていたが、ハロウィンでも仮装の延長として積極的に行われているのだろう？ そうさな、せっかくだし今着替えて見せてやろう、サーヴァントは自在に衣服を変えられるからな。で、どうだマスター。汝が瞬きする間に着込んでみたが似合っているか？ちゃんと尻尾を出せるように改造してあるし、頭の月桂樹の冠は林檎の樹をつかったモノに変更しておいた。凝っているだろ？我流アレンジというやつだな。ふふ、どうしたんだそんなに唖然として、本番はこの衣装に合わせて汝も仮装するのだから良く見て欲しいものだな。ああ、ついでに汝がしっかり菓子を渡せるかどうかも練習しておこうか、私がこうして仮装しているわけだしな。……こほん。
さてマスター、「トリックオアトリート」。
菓子をくれねば────悪戯するぞ？