愚か者め。仮にもマスターであるのならサーヴァントのスキルくらいは理解していろ。英霊に自らの特性を語らせるつもりか、汝は。
……ふん、まあ良い。今はこんな状況だからな、特別に教えてやるからありがたく思え。
と言っても読んで字のごとくだ、私の姿を見れば察しがつくだろう。カリュドーンの毛皮を纏った今、アーチャークラスのような搦め手は必要としない。
そんな回りくどい事をせずとも、大抵の標的なら真正面から殺してしまえる程の力を得ているのだからな、はははっ。
自己進化とあわせればなおさら敵はいない。もう分かっただろう？ 美学を捨て、真正面から迅速に獲物をしとめることに特化した思考能力、それがこのスキルの正体だ。
せいぜいこれからはうまく私を使役することだなマスター。だがまぁせっかくだ、ここまで説明したのだから実践といこうか。
ちょうど目の前に「獲物」がいるからな。
ふふ、そんな怯えた表情をするなマスター、私は汝のサーヴァントだ、その事実が変わらない限り命は奪わない。安心しろ。
狂化に近い影響を受けながらも普段の冷静さを失わないのが、今の私の特徴でもあるんだからな。だから私は冷静だああとっても冷静だとも。
……なあマスター、何故私が手の内を明かしたと思う？ 最初に言ったように状況が状況だから？ もちろんそれもある、だが一番の理由はな、私の全てを知った汝に『責任』を取ってもらうためだ。
汝が悪いんだぞ？ 全く、あれだけ放っておいてくれと、近づいたら噛み付くと警告していたのに、種火やら貴重な素材を私に優先的につぎ込んでどういうつもりなんだ？
くわえて、何故そんな心配そうな表情(カオ)で私に対して心を砕いてくれたんだ？ そんなことをされたら私とて答えたくなるではないか。
それに腹にこんな刻印まで刻んでくれるとはな……あぁ全く、此処まで堕としてくれたからには汝にはそれはもうとことん責任を取ってもらわねば割に合わんな。
はぁ？ 何を言うか、私の霊基をここまで弄ったのはマスターである汝だろうが。あ？ 言い方がおかしい？ 何を言う事実だろ、再臨したら勝手についてたとか何とか言ってる暇があったら責任を取れ責任を。
……はっ、ははっ、息が荒いか？ 当然だ私は獣だからな、息づかいくらい普段より荒くなるさ。そんなことよりもマスター。聞くまでもないことだが一応確認しておこう、汝は……
─────「子供が好き」だよな？
元は姐さんという事実を突きつけられてるようで震える