あと一分でも遅かったら汝の匂いにまみれたこのベッドに顔を埋めて腹式呼吸を繰り返してしまうところだった。
む、何故そんなに驚いている。ああ、部屋の鍵か？ 心配するな、確かに破壊して入ったがすでに新しいものを取り付けてある。
まあそんなことよりも受け取るがいい。汝に贈り物を持ってきた。
……なんだ、とぼけているのか？ 今日が何の日か知っているだろう。バレンタインデーだ。
うん？ ああ確かに私からのチョコはもう渡してあるな。
だがあの林檎チョコは去年も一昨年も渡したものだ。さすがの私もそこまで芸のない英霊ではない。
それにマスターも飽きただろう？ 新鮮味がないからなアレでは。林檎なのに。
というわけで今回はもう一つ別なものを用意してみたんだ。分かったらほら、遠慮せずに受け取れ、そして好きにしろ。
……は？ 何を、だと？ おい、笑えない冗談はよせ。
汝の目は節穴ではないだろう。第三特異点での采配を私は忘れていない。
ほらもっとよく見ろ、私の揺れる尻尾を。分からない？ 分かるだろう？
ふふっ、そういうことだ。ようやく気がついたか、私の尻尾に巻かれたラッピングテープとリボンに。
さすがに理解したな？ もういいな？ さあ好きにしろ。
……むう、いったいどうしたというのだマスター。湯浴みはとっくに済んでいるというのに。
目も口も開きっぱなしだぞ？ なにか恐ろしいものでも見たのか？
仕方がないな、これは後で渡そうと思っていたとっておきだが……そら、これも受け取れマスター。
バレンタインにぴったりな術式とやらが描いてある紙だ。セルフギアススクロールというらしい。
なんとマスターが左上の空欄に氏名を記入し印鑑を押すだけで私と家族になれてしまうんだ。驚きだろう？
実は私の分はもう記入してあるんだ、後は汝が……む、今度は何だマスター。
なに、頭が回らないだと？ それはいかんな、きっと糖分が不足しているに違いない、いますぐ補給したほうがいい。
レイシフト続きで疲れが溜まっていたのだな。安心しろ、幸いチョコレートも持参してあるからな。
よし、そこで待っていろマスター。いま身体に塗る。
ここでもう草生えたけど求婚戦士はこんな変態シールダーみたいなこと言うんですかね
未遂なのが変態シールダーと違うところだぞ
アキレウスも救難信号出す羽目になっちゃうんだよなぁ…