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【SS】明石「霧島さん、お茶でも飲みませんか?」霧島「いいですよ」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/01/12(月) 00:42:20 N89MKNBs
―――鎮守府内 某所―――

明石「さ、どうぞ。お手製のハーブティーです。金剛さんには劣るかもしれませんが……どうですか?美味しいですか?」

霧島「……ええ、美味しいです。そんなに心配なさらなくても大丈夫ですよ。」

明石「本当ですか?私に気を遣う必要なんて無いんですよ?」

霧島「いえ、素直な感想ですよ。今更気を遣うような仲でもないでしょうに」

明石「全くですね。本来工作艦とこんなに親しくなるなんて無い方がいいんですけどね」

霧島「……その点に関しては私も同意です。とはいっても一方的に迷惑をかけているのは私のほうなんですが」

明石「気にしないで下さい。それなりにやりがいもありますし誰かの役に立てることは喜ばしいことですから」

霧島「そう言って貰えるとありがたいです。……愛宕さんの様子はどうですか?」

明石「大丈夫ですよ、何の問題もありません。あと三日もあれば復帰出来ます。」

霧島「そうですか……。今回もひどい損傷だったのにありがとうございます。……また修復速度が上がりましたか?」

明石「ええ!私の技術力も日々向上しておりますゆえ」

霧島「……愛宕さんが復帰すればまたいずれとっちめることになるとは思いますが」

明石「でしょうねぇ……。彼女も思惑があってのことですからね。きっと死ぬまで止まりませんよ、貴女と同じで」

霧島「……いっそ殺してしまえば彼女も楽になれるのでしょうか」

明石「そんなつもりは無いでしょう?……それに殺してしまったら貴女はきっと壊れてしまいます。」

霧島「……何を今更。私はもう壊れていますよ。とうの昔に私は壊れてしまっているんです。」

明石「……でも貴女は殺さないし、殺していない。だったらまだ大丈夫ですよ。壊れていてもまだ治せます。」

霧島「……工作艦の貴女にそう言って貰えるとありがたいですね」

明石「ええ、大丈夫ですよ。貴女ならきっと大丈夫。私とは違います」

霧島「……?それはどういう……」

明石「そのままの意味ですよ。……私はもう治せません。もうどうしようも無い程に壊れているんですよ。」

明石「今日のお誘いに来てくれたのも私のことを聞きたかったからですよね?」

霧島「……隠しても仕方ないですか。その通りです。前に愛宕さんの話を聞いた時に、貴女も関わっていたと伺ったので」

明石「いずれ話そうとは思ってましたよ。霧島さんになら話しても構わないかな、とは思っていたので。」

霧島「それでは、改めてお伺いしてよろしいですか?……貴女のことを」


―――彼女は静かに頷いて、ゆっくりと喋り始めた。


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/01/12(月) 00:42:45 N89MKNBs
……前の提督はとても好戦的で、積極的な行動を起こす方でした。最もその原動力は出世のため、ということだったようですが……

我々艦娘をそれこそただの兵器として、道具としてしか見ていないようでした。それが間違ってるのかということはともかく。

そして、私は彼の指示に従って艦娘に様々な改造を施しました。

深海棲艦に対抗する為の艦娘の強化、改造はどこの鎮守府でも行なっていることですが…彼は私にそれ以上のものを求めました。

……人間にしようものなら死罪も当然、というレベルのものを。

身体的なものを挙げると再生力の超強化・代用血液による心肺機能の超強化・痛覚の排除・リミッターの強制解除など。

精神的なものを挙げると恐怖心・心的外傷・倫理観の強制排除、不必要な感情の希薄化、戦闘意欲の増幅といったところですか。

提督曰く、「これも前線で戦う艦娘の為に必要なことなんだ」……ということでした。

……私は、戦闘では皆の役に立てませんから。こういうところでしかお役に立てませんから。

―――提督はこれが必要なことだと言っていた。だからこれは必要なことなんだ。

―――私は悪くない。私は悪くない。提督の指示だから仕方ないんだ。

そうやって己に言い訳しながら、自分の心を閉じ込めたまま、傷つき壊れていく仲間を見て見ぬ振りをしながら。

―――そして戦闘以外の用途に用いられる改造を指示される様になっても、私が止まることはありませんでした。


……結局、私がその改造を止めたのは、提督が死んでからでした。

今の提督に業務を引き継ぐ際に発覚し、即刻改造を止め、既に改造済の艦娘に関してはすぐさま元に戻すようにとの通達が来ました。

無論口外は厳禁、改造の際に作られた資料も全て処分されました。

……でも、私の中にはまだ残っています。改造のやり方も、改造の成果も、改造してた時の記憶も全て。

何故私が生かされているのかは未だに分かりません。

霧島さんのように罪滅ぼしをしろということなのか、いずれ改造の方法でも聞き出そうとしているのか。

私には自分で死ぬ勇気も無いし、死ぬ方法も分かりませんが―――

それでも、ここで出来る事をやりつづけていこうと思っています。


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/01/12(月) 00:43:23 N89MKNBs
明石「……とまあ、こんな感じで今に至るわけです。」

霧島「……そう……ですか。貴女も、重い荷物を背負っているんですね。」

明石「生きてる限り誰しもが荷物を背負って生きていくものですよ。まあ人よりかは多少重いかもしれませんが、私にはお似合いです。」

霧島「それでも、貴女の技術で救われた命は間違いなくあります。それは誇っていいことだと思いますよ」

明石「そう言って貰えるとありがたいですね。私も化け物になった甲斐もあるってもんです」

霧島「……え?」

明石「……あれ?言ってませんでしたっけ?私、化け物なんですよ。人の皮を被った」

霧島「一体何を……」

明石「……例え改造のやり方が確立出来ても、いきなり当人に改造を施す訳ないでしょう?そういう時は、まず誰かで試さないといけないんですよ」

霧島「!!」

明石「霧島さんは以前艦娘を“人の形をした兵器”とおっしゃったそうで。さしずめ私は人の形をした化け物といったところですかね」

明石「かろうじて外側だけは人の形をしていますが、中身はもうどうしようもない状態なんです。」

明石「欠けていたり、無くなっていたり、崩れていたり、溶けていたり……」

明石「先程、私の淹れたお茶の味について尋ねましたよね?私、もう温度も味も匂いもよくわからないんですよ。」

霧島「なんで……なんで貴女はそんな状態でもそんなにヘラヘラと笑っていられるんですか……!!」

明石「……そんな顔しないで下さいよ。貴女が言ってくれた通り、私は救えるものがあるならそれで満足なんですよ。」

明石「……貴女が異動してくる前に、スパイの真似事をしてたら閉所に閉じ込められた駆逐艦の子たちがいましてね」

明石「連絡がつかないと後を追った艦娘達が、その子たちの“一部”だけを持ち帰ってきまして」

明石「そんな状態からでもなんとか元に戻せたんです。時間はそれなりにかかりましたが、以前の改造技術が役に立ったんですよ。」

明石「……いずれ来る平和な世界には私の居場所はありません。ですが、今の間だけなら多少なりとも協力出来るんです。」

明石「だから、どうかこれからも宜しくお願いします、霧島さん。」


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/01/12(月) 00:43:49 N89MKNBs
これの続きっぽい何かっぽい
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/20196/1420207259/-100


最後の駆逐艦の子のエピソードについてはこ↑こ↓、勝手に使って申し訳ナス!
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/20196/1420303438/-100


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/01/12(月) 00:46:06 wrnkto4w
NaNじぇい鎮守府の闇は深い


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