なお本作品に関する全債権債務がトモくんこと長谷川智志氏（名古屋市天白区野並二丁目）に属することをあらかじめ宣言ならびに承諾します
今日は司法試験予備試験短答式試験の当日。
つまり、法律家への関門の第一歩を踏む日である。
里士は最近ストレスに苛まれていた。
この試験は今まで三回受けて三回不合格だったのである。
この事実は10年をかけて入学したとはいえ、日本一の難関である東大法学部第一類の学生だった里士にとっては不本意極まりないことであった。
予備試験の成績ほどではないにせよ、大学の成績も今ひとつであったが、高齢で文句の多い学生は教授陣にとっても面倒なものだったらしく、無理矢理に卒業させられて田舎の親元に帰ってきたのだ。
毎日のように家族から、地域住民から浴びせられる軽蔑と嫉妬の視線が痛い。
そんな毎日を送っていた里士だったが、個人輸入で入手したデパスを普段の三倍量でキメたところ、すっきりとよく眠れたのだった。
マニアのように難関大学や難関資格に執着して、膨大な時間を浪費していることに対してすっかり醒めて非協力的になっている家族は、もちろん彼を起こしに行ったりはしない。
彼はすっかり出遅れた形で、その田舎町の試験場である車道に向かうのだった。
とはいえ、地下鉄桜通線で一本で行ける。
彼は缶コーヒーを一本手にして駅に走った。
ホームに駆け下りて、重力を殺さないようにブザーを鳴らしている列車に飛び乗ろうとした。
目の前に浅黒い女が立ちはだかっていた。
里士は女にぶつかり、思わぬ手をかけたのがスカートとTバックのスキャンティであった。
女の尻があらわになり、里士の人差し指は肛門、中指は秘部に触れた。
日曜日朝の車内に女の金切り声が響いた。
ちなみにこの女性はブラジル人
続きはまた後日。
それを部活に向かう髄陵高校の学生達が聞いた。
中年の小太りの男がスレンダーな30歳前後のブラジル人女性のパンツを脱がしていた。
「おい」
義憤に溢れる髄陵生が吠える。
髄陵高校は旧制中学時代からの伝統校だった。
市内にはさらに高い内申点や入試得点を要する夕日丘高校や暗和高校、私立の東悔高校があるのだが、それでも過去に東大法学部第一類を卒業した人間が在籍していたことがある名門校である事実には一点の曇りもない。
その人間は髄陵高校の風土になじめないと嘯いて中退し、その後10年かけて東大に入学した里士本人であるが、瑞陵生の心の中では顔のない便利なレジェンドとして認識されていた。
つまり、髄陵に入れた自分たちには東大に入れるチャンスが残されている、さらに10年かけた奴よりは自分たちの方が上だと、二重の意味で自分を慰めることが出来たのだった。そんな彼らの中には結局、夕日丘高校や暗和高校に入れずに、リベンジしたいという気持ちが強かったのである。
電車の中で痴漢を取り押さえるという、合法的な加害が出来るのみならず、英雄になれる行為に彼らが興味を持たないはずはなかった。
「おい」「おい」
なぜかそれ以外の言葉を発することもなく、集団は里士を取り押さえた。
「おい」
「ベンチ…うっ！」
里士は強引に手をねじり上げられた。車掌室へ蹴られながら連行される。
「し、し、試験に遅れるだろ…うが。ハナセ…ウッ！」
「何言ってるんだ、こいつ。痴漢したくせに！」
そのとき、ブラジル人女が破れた短パンを押さえながら声を発した。
「マテクダサイ。ソノヒトワルクアリマセン。」
続きはまた後日。
これは「ベンチプレス90キロ、パンチ力180キロの俺に通用するか」と言うつもりだったが相手の方が強かった。
他人に向かって死ねと言った報いで明日は眠くて試験にならず。