■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
【ポケモン】プテラとユレイドル
-
〜古代〜
ザザ〜ン…。
今日も“彼女”は、延々と…同じ場所に留まっている。
ユレイドル(…はぁ。)
種族名は、ユレイドル。
彼女は、“あること”に…憧れていた。
"
"
-
現代にも進化前のアノプスにその名残が残っているが、この時代のユレイドルは…他の場所に自力で移動することはできない。
自身の持つ吸盤の所為である。
吸盤は地面の養分を吸い取り、彼女はそうやって今まで成長をしてきたのだ。
ただ、最近…思うことがある。
“空を、飛びたい”。
それが、彼女の願いであった。
-
ユレイドル(なんで私は、よりによって…ユレイドルなんかに生まれてきたのかしら…。)
自分の存在意義に、悩んでいた。
見上げれば眼前に広がる青き大空。
あの果てしなき空間に飛び立つことができれば、現状の自分を打破できるかもしれないが…。
前述の通り、彼女はユレイドルである。
ジレンマであった。
-
ごめん、>>2のアノプスはリリーラの間違い
-
〜大空〜
バッサ、バッサ。
???「クエ~ッ!」
今日も“彼”は、獲物を捉え…それに襲いかかる。
…生まれつき得た先天的な力。
それを少し奮えば…食糧を容易く手に入れることができる。
──彼の名は、プテラ。
当時の大空の…王であった。
"
"
-
ユレイドル(もしかしたら、自分の子孫は移動能力を手に入れられるのかもしれない。
…しかし、それはまだまだ先のことだろう。)
“私”は、これまでも、そして、これからも…ここに留まって、一生を終えるのだ。
──憂鬱であった。
ユレイドル「ハァ…。」
…………………………
プテラ「ハァ…。」
大空の王、プテラ。
彼もまた…嘆いていた。
プテラ(自分はいつまで、このような生活を続けるのだろうか?
いい加減に落ち着きたい。しかし、腹は減る。
不器用な自分は、こんなやり方でしか食糧を得ることができない。
彼もまた、己の生き方について…苦悩していたのである。
-
〜数日後〜
プテラ「ふぅ〜っ…。」
彼は、つかの間の休息を傍受していた。
プテラ(一息ついたら、また獲物刈りかぁ。)
…。
プテラ(うん?
なんだ、あれは…?)
へば〜っ…。
彼が見つけたのは…へばっていた、ユレイドルの姿であった。
-
プテラ「おい。」
ユレイドル「…。」
プテラ「…おい。」
ユレイドル「……。」
プテラ「…おいぃっ!?」
ユレイドル「…!」ビクッ
ようやく、気付いたようである。
-
プテラ「お前、ポケモンだよな…?
…なんで、へばってたんだ?」
ユレイドル「…。」カアァッ
プテラ「ん、どうした…?」
言葉が詰まった。
他のポケモンに話し掛けられることなど、初めての経験であったからだ。
プテラ「お前、そこが目だったんだな。」
ユレイドル「…ぁの、その…。」
プテラ「なんだぁ〜っ!?
聞こえん。」
ユレイドル「だから、その…。」
聞くところによると、最近この辺りの土地が枯れていき、養分を得ることができなくなっていったのだという。
-
プテラ「ふ〜ん、そうだったのか。
空にいる俺は、知らなかったな。」
ユレイドル「…この急激な土地の枯渇。
とても予想だにしていませんでした。何か…嫌な予感すらします…。」
プテラ「…見てられねぇな。」
ユレイドル「すぃませ〜ん…。」
衰弱が激しかった。
プテラ「よし、わかった。
俺が…食べる物を取ってきてやるっ!!」
ユレイドル「…えっ?」
予想外の、言葉であった。
-
プテラ「お前の種族は吸盤による養分摂取の他にも、捕食ができる筈だ。試してみろ。」
ユレイドル「えっ?」グチュチュ
プテラ「お、おいっ!
待て…俺で試すんじゃないっ!!」
ユレイドル「あっ、駄目でしたか…?」
プテラ「…俺、気まぐれで変な奴に関わってしまったのかもしれねぇ。
まぁいい、約束したんだ。
…すぐ、取ってきてやるっ!!」
バササッ…。
プテラは、空に飛び立っていった。
-
ユレイドル「…凄い。」
彼女は、目を奪われた。
華麗に飛び立ち機敏な動きで獲物を捕らえるその勇姿。
私にはとてもできないものだ、と感じた。
それと同時に…“憧れ”も抱いた。
…………………………
プテラ「…なんか。」
なんか見られてるな…。
彼は、そう思った。
怖れられるのならわかるが、その視線は憧れと羨望の意を含んでいたのだから、戸惑う。
こんな感覚…初めてだ。
-
〜空のどこか〜
アーケオス「…生意気じゃな。」
かつての空の王、アーケオス。
自分が最古よりの天空の支配者であると言うのに、最近現れたプテラとか抜かす青臭い新参者。
偉い顔をし出し、我が領空にて好き勝手に暴れ呆けている。
若さに嫉妬しているのではない。
単純に、気に喰わないのだ。
だが、自分は年老いた身。まともに殺り合えば負けはしないだろうが…苦戦は必須であろう。
──どうするべきか。
-
──そして。
プテラ「お〜い、取ってきたぞ〜。」
ユレイドル「わぁっ。
…うわぁ。」
よくわからないもの『キイィ〜ッ!』
えたいのしれないもの『ギャアァ〜スッ!』
…気持ちは嬉しかった。
-
ユレイドル「」パクパク
プテラ「…結局食うんだな、お前。」
ユレイドル「」パクパク
プテラ「夢中で聞いちゃいねぇ、か。」
──その時。
タタッ。
プテラの元へ、二匹のポケモンたちが駆けつけた。
オムスター「兄貴〜。」
カブトプス「お帰り〜。」
プテラ「おう、お前たちか。」
彼らは、プテラを兄貴と慕っているポケモンたちである。
-
オムスター「兄貴…そこにいる、緑のポケモンは誰ですか?」
オムスターが、プテラに尋ねる。
プテラ「ああ、コイツはな…。
俺もたった今知り合ったばっかりなんだが…。
でもって、少し変わり者で食いしん坊な野郎なんだが…。」
ユレイドル「なんか酷いことを言ってるってことはわかります。
あと、私は女です。」
プテラ「種族名はユレイドルと言って…この海岸を住処としている奴だ。
まぁ、お前たちとは当然初対面だろうがな。」
ユレイドル「こんにちは〜。」
プテラ「おいお前、こいつらは食べないでくれよ?いくら食い意地張ってるとは言え。」
ユレイドル「食べたくもないです。」
-
プテラ「まぁ、もっと食べる物を持ってきてやるから…ここで待っとけよ。
てか、待つことしかできないだろ?」
バササッ。
再び、プテラは空へと飛び立つ。
ユレイドル(…申し訳ないです。)
ユレイドルも、本当はプテラに申し訳なく思っていた。
しかし、この状況では致し方がない。
食べなければ死んでしまう。それは当然の摂理。
しかし、その食べる物も無いのだから、必然的に…彼、プテラに頼むしかないのだ。
──再び大空へ消えてゆくプテラの様子を、重い首を上げながら黙視していた。
-
プテラが飛び去ってから、ユレイドルとカブトプスたちは…いつの間にか、意気投合を果たしていた。
カブトプス「プテラ兄貴とは、どこで知り合ったんスか?」
ユレイドル「なんかチャラい雰囲気だね。
えぇと…海岸で私がへばっていたところを、偶然彼が通りかかったの。」
カブトプス「へー。あのですね、一つ言いますよ。
あのプテラ兄貴が出会い頭のポケモンに心を許すなんて、本当に…滅多にないことなんスよ!」
ユレイドル「え、そ、そうなの〜?」
オムスター「そっスよ。意外意外。」
カブトプス「その“グウゼン”を、神様に感謝しなきゃいけないっスねっ!!」
ユレイドル「フフ…。
…確かに、そーね。」
-
ユレイドル「…今日は良い日だ。」
オムスター「え?」
ユレイドル「こうして海岸にぽつんとしてた私に、話しかけてくれた“友だち”ができた。
『私ってなんなんだろ』って思っていた時によ。」
カブトプス「な、なんか照れるッスよ〜、
姉貴。」
ユレイドル「ア…“アネキ”?」
カブトプス「そっス、プテラの兄貴が兄貴だから、ユレイドルの姉貴は姉貴って呼ぶっスっ!!」
ユレイドル「…言い回しが変だけど、気持ちは伝わるよ。」
オムスター「ユレイドル姉貴…俺らも姉貴に協力するっス!
土地の枯渇が治まるまで、俺らも姉貴に食べ物を持って来るっス!!
…いつ治まるのかは、わからないっスけどっ!!」
ユレイドル「み、みんな…。
あ、ありがとう…!!」グチュグチュ
オムスター「わわっ、何俺を食べようとしてるんスか!」
ユレイドル「えっ、いやこれはその…感謝の意を伝えたくて…。」
カブトプス「アハハ。不器用なんっスね、姉貴。
そこもまた、なんか兄貴に似てるような気がします。」
-
…バササッ。
やがて、プテラが帰って来た。
プテラ「ふ〜、疲れた。」
ユレイドル「あ、あの…。」
プテラ「なんだ?」
ユレイドル「良かったら、また…。
…来てください。」
プテラ「…食べ物が欲しいからか?」
ユレイドル「い、いえ、違います!
ただ…。」
プテラ「ただ、なんなんだ?」
ユレイドル「…。」カアァッ
プテラ「…うん、変わった奴だ。」
また、言葉に詰まった。
こうして、プテラとユレイドルの交流は、持ちず持たれず続いていくことになる。
-
──それから、幾ばくかの月日が過ぎ去った。
プテラ「今日もアイツのために、食糧を狩ってこないとな。」
オムスター「…兄貴。」
プテラ「なんだ、オムスター?」
オムスター「俺らは、かつて行き倒れたところを兄貴に救われ、それ以来…兄貴のことを慕い続けています。
でも、最近の兄貴は勢力を拡大することに血眼になっていて、俺らを助けた時のような感情は…もう残ってはいないのかと思っていました。」
プテラ「急になんだというんだ、お前たち?」
カブトプス「けれども今回のユレイドル姉貴の件で、まだ兄貴にはそういった感情が残っているんだってことを…再確認しましたっス。
やっぱり、兄貴は兄貴だったんスッ!!」
プテラ「フフ、よせよ…照れくさい。」
カブトプス「ハハハハ。」
──そんな時。
プテラ「…ん。」
プテラは、いち早く…その“気配”に気づいた。
-
プテラ「…おい。」
カブトプス「な、なんスか、兄貴?」
プテラ「いや、お前たちじゃない。それより、コソコソしてないで早いところ出てきたらどうだ?
なぁ、そこの物陰に潜んでる奴よっ!!」
オムスター「なっ…!!」
そして、物陰より声が響いた。
???「…お見事、と言ったところだな。
流石はこの時代の空を統べる王。
私としても…そうこなくては張り合いがない。」
プテラ「貴様…一体何者だ?」
-
???「良いだろう。私も正体を現し、正々堂々とお前を倒すことを宣言しよう。」
そして、物陰より一体のポケモンが姿を現した。
プテラ「…貴様は…。」
ゲノセクト「ゲノゲノ、私は未来の化学兵器…ゲノセクト。
とあるポケモンの命により、貴様を抹殺する!!」
プテラ「なにっ…!」
その姿はポケモンと言うよりは、この時代には存在などしない筈である…“機械”によく似通っていた。
カブトプス「な…ミライ、カガクヘイキ…。
…トアルポケモンッ!?
さ、さっぱり訳がわからんぞっ!!?」
事実、その通りであった。
-
ゲノセクト「貴様には、用はない…。
…ふんっ!」バシィッ
カブトプス「うわっ…。」
ゲノセクトは、カブトプスの身体を掴み上げ…勢い良く投げ飛ばした。
カブトプス「…ゲホッ!」
プテラ「…カブトプスッ!!」
ゲノセクト「どうだ?
私の力…これで十分に伝わったかな?」
オムスター「アワワ…。」
プテラ「き、貴様…許せんっ!
俺が、今すぐに…貴様を料理してやるっ!!」
ゲノセクト「そう来なくては面白味がないからな。
さあ…全力で来い!!」
かくして、プテラとゲノセクトの戦闘が…幕を開けた。
-
プテラ「うおぉぉっ!!
いわ…なだれえぇぇぇっ!!」ドドドド
ゲノセクト「…。」
間髪入れず、プテラは自身の得意技を放つ。
シュウゥゥ…。
オムスター「や、やっぱ凄い、兄貴!
これはやった…。」
しかし。
ゲノセクト「なにが、『やった』んだ…?」
シュウゥゥゥ…。
プテラ「…!」
彼は、プテラの攻撃を…完璧に防御していたのだ。
-
プテラ「そ、そんな馬鹿な…。
う、うおぉぉぉぉぉぉっ!!」ドガァッ
ゲノセクト「…ふん。」
キィ、キイィン…。
しかしゲノセクトは、プテラの攻撃を容易に全て受け止める。
プテラ「な、なぜ、なぜなんだ…。」
ゲノセクト「やれやれ、これでは勝負ではなく…一方的な虐めだな。
私の気配を察した時は、そこそこやれるかと期待したのだが…この時代のポケモンは、やはりこんな野蛮な攻撃しかできないか。」
プテラ「こ、この…“時代”、だと…?」
プテラは、その“違和感”を察知した。
-
プテラ「貴様、何者だ…?
この世界の出身では、ないというのか…?」
ゲノセクト「いや、確かに私はこの世界の…この『時代』で産まれ落ちた。
懐郷の念すら感じる程だ。」
プテラ「では、なぜ“ミライ”だの“カガクヘイキ”だの…先刻語ったのだ?
…この時代の出身と言うのなら、明らかにつじづまが合わないことになるが。」
ゲノセクト「…貴様が知る必要はなかろう。
ここで、貴様は私に倒され…滅する。死にゆく者にそのようなことを話して、どうなると言うのだ。」
プテラ「思い上がるなよ…。
踏み潰される…虫如きがっ!!」
ゲノセクト「その虫が、今こうして食物連鎖の上位に立つ貴様を打ち倒そうとしている。
…皮肉なことだ。
クク、精神的に動揺している貴様など…もう既に私の敵に非ず、だからな。」
プテラ「貴様っ…!!」
-
確かに…彼は“動揺”をしていた。
…無理もない。
今までに自身の攻撃が通用しなかった相手など…存在しなかったのだから。
──そして。
ゲノセクト「…。」スタン
プテラ「なっ…。」
なんと、突然…ゲノセクトは屈み込んでしまったのだ。
戦闘では油断は死へと直結する。
だからこそ、彼にはこの行為の意味が全く理解できなかった。
今踏み込めば…間違いなく勝利を収めることができるのであろう。
…しかし、これは何かの“策”なのかもしれない。
「「う…うおぉぉぉぉぉぉ〜っ!!!!」」
数秒の間迷った挙句、プテラはゲノセクトの身体へと突っ込むことになるのだが…。
──たかが数秒、されど、数秒。
…少々、判断が遅かった。
-
ゲノセクト「…気付かなかったか…?」
プテラ「…なに…?」
ゲノセクト「私の背中には…砲台が装着されていたということにっ!!」
プテラ「ほ、ほーだい…!?」
『砲台』
古代に生きるプテラには、その単語の意味がわからなかった。
プテラ「な、き、貴様…もしや…!?」
ゲノセクト「例え意味こそはわからなくとも、流石に戦闘の勘が働くか!
そうだ、既に…発射準備は整ったっ!!」ウィーン
プテラ「な、なんだとっ!?」
ゲノセクト「そして、喰らうが良い…。
我が…最大最凶奥義っ!
『テクノ・バスター』ッ!!」
プテラ「…!」
-
そして、ゲノセクトは自身の最大の技…。
砲台からエネルギー弾を放出する、『テクノバスター』を繰り出した。
ズガガァン…。
カブトプス「兄貴…危ないっ!!」
ボシュゥ…。
カブトブス「…うおぉぉ!」
プテラ「ぐっ、ぐはぁ…。」
カブトプス「あ、兄貴っ!!」
…………………………
モクモクと、白煙が立ち込む。
──やがて…。
ゲノセクト「ほう、これは…。」
-
ゲノセクト「穴…。」
プテラが居た場所には、深き穴が広がっていた。
ゲノセクト(あのカブトプス、まだ生きていたか。
奴らを連れ、穴を掘り…どこぞやへと落ち延びたようだな。)
…。
ゲノセクト(フフ、面白い。
穴の先へと渡り、追うのは簡単だが…それでは、楽しめない。)
ゲノセクト(…焦ることはない。いずれまた、相まみえることへとなるだろう。
その時こそ…始末してやることにしよう。
ゲノゲノ。)
…………………………
プテラ「あ、あぐ、げほっ…。」
カブトプス「あ、兄貴ィ…大丈夫ですかぁ!?
くそ、勢いで来たのはいいが、ここは…。
…!
そ、そうだ、ここなら!!
…ここ、ならばっ!!」
-
偶然か必然か、彼らが辿り着いたのは…。
…ユレイドルの棲む、海岸であったのだ。
カブトプス「あ、姉貴〜っ!!」
ユレイドル「ん、どうしたの…?
カブトプス、オムスター。そんなに慌てて。
今日は…プテラは一緒じゃなかったの?」
オムスター「それが…今すぐ来てくださいっ!
あ、無理でしたね…。
とにかく、今運んで来ます。
…兄貴が重症なんですっ!!」
ユレイドル「えっ…?
プテラが…重体…!?」
想定外の事態に、彼女は慄くことになる。
-
プテラ「う、うぅ…。」
ユレイドル「…!
なんて、酷い傷なの…。
あのプテラが、一体…誰に…?」
オムスター「実は…。」
彼らは、ユレイドルにこれまで起こった全ての事情を打ち明けた。
ユレイドル「そんな、ことが…。」
オムスター「何とかなりませんでしょうか。アイツが居る以上、むこうには渡れねぇ。」
カブトプス「…姉貴がもう、唯一の頼み綱なんです。
無理を言っていることは、重々理解しているつもりです。」
ユレイドル「…。」
-
ユレイドル「…プテラを救う術、ないこともないわ。」
カブトプス「えっ、なにか方法があるんですか!?
兄貴を救う…術がっ!!」
オムスター「さすが、姉貴っス!!」
一同は、思わず感激する。
ユレイドル「二匹共、ちょっと黙ってて。」
オムスター「は、はい。」
ユレイドル「私はプテラに限りない恩がある。その恩をここで返せること…とても嬉しく思うわ。」
カブトプス「…姉貴?」
ユレイドル「じゃあ、いくわよ。
…プテラ、私の力を…あなたにわけるわ。」
-
ユレイドル「っ…!」ボコッ
カブトプス「えっ?」
オムスター「あ、姉貴っ!?」
なんとユレイドルは、自身の吸盤を一つ…地中より無理やりに引っ剥がしたのだ。
オムスター「姉貴、なんてことを!
そんなことをしたら、姉貴がどうなるか…わかってるんですかっ!?」
カブトプス「姉貴は、生命エネルギーを吸盤を通して地中から取り入れ…生命活動を続けている。
一歩、間違えれば…。」
ユレイドル「いいから、早くプテラの口に私の吸盤を含ませてっ!!」
カブトプス「え、姉貴…なにを?」
-
ユレイドル「私の吸盤には、今まで培ってきた栄養分が含まれている。
だから、プテラにその栄養分をわけることさえできれば、彼はなんとか持ちこたえることができると思うわ。」
オムスター「しかしこれは、姉貴にとって諸刃の剣とも言えます。
先ほど俺たちが言ったように、姉貴は地中のエネルギーを頼りに今まで生きてきた。」
カブトプス「だから、少しでもタイミングが遅れてしまうと、地中から得た姉貴自身の栄養源が切れてしまうと…。」
オムスター「恐らく…姉貴は成すすべなしに、死んでしまうことになるっ!!
なぜ、命を張ってまで…兄貴に、そこまでのことを…?」
ユレイドル「借りを返すのは、建前かもね。
本当は、単に…嬉しかったからよ。」
カブトプス「う、嬉しかった?」
-
ユレイドル「…今は、良いわ。
さぁ、早く…プテラに私の吸盤を!」
オムスター「へ、へぃっ!!」
キュプ。
彼らは、プテラの口に彼女の吸盤を含ませた。
ゴキュ、ゴキュ。
カブトプス「おぉ、これは…姉貴が兄貴に対して栄養分を送り込ませているんですね!」
ユレイドル「う、うぅ…。」
オムスター「あ、姉貴…大丈夫ですか?」
ユレイドル「だ、大丈夫…。
慣れないことでちょっと目眩がしただけよ。」
──そして。
-
プテラ「う、うぅっ…。」
オムスター「あ、兄貴っ!」
カブトプス「よかったぁ、姉貴!
兄貴が…兄貴が目覚めましたぁっ!!」
ユレイドル「よ、良かったぁ…。」グッタリ
プテラ「…お前が助けてくれたのか。
ありがとう…恩に切るよ。」
ユレイドル「うぅん。私は一つ、借りを返しただけよ。」
プテラ「ここは、海岸…か。
俺は、俺は…敗れたと、いうのか…。
戦闘で敗れたこと、今まで負けたことなんか、なかったと、いうのに…。」
カブトプス「兄貴…。」
ユレイドル「…悲しまないで、プテラ。」
プテラ「…?」
オムスター「姉貴…?」
-
ユレイドル「私は、初めてあなたに会ってから…ずっと、あなたに憧れていた。」
オムスター「姉貴?」
プテラ「…敗者への慰めのつもりか?
お前。」
ユレイドル「…慰めなんかじゃ、ないっ!」
プテラ「なんだと…。」
ユレイドル「私はこの場を動くことすらできない孤独の身。
先の見えきったこの先の生活、自身の存在意義、疎外感、全てにうち潰されそうで…とても怖かった。」
カブトプス「姉貴…。」
ユレイドル「だけどそんな時に、私は…あなたに出会ったのよ。」
プテラ「だから…なにが、言いたいんだ?」
-
ユレイドル「あなたに出会ったことで、私の心に一筋の光が差し込んだ。私にも友だちができたという、希望の光が。
私の中の“闇”は、“光”へと、変わった。」
プテラ「…。」
ユレイドル「あなたと話していると、心が安らいだ。あなたの大空を飛ぶ姿を眺めていると、私まで空を舞っているような感覚を覚えた。」
カブトプス(姉貴…。
…そこまで、兄貴のことを…。)
ユレイドル「つまり、あなたは私にとって、掛け替えのない…とても大切な存在なの。
だから…。」
プテラ「だから、戦闘で敗れ去ったからって…それでも良いとでも言いたいのかっ!?」
ユレイドル「…プテラ。
違う、そうじゃないっ!!」
-
オムスター「兄貴、なにも姉貴はそんなつもりで言ったわけじゃ…。」
プテラ「お前たちは黙っていろっ!!」
カブトプス「は、はいぃっ。」
ユレイドル「プテラ。私は、ただ…。
ずっと、私の側に…居てもらいたいだけなの…。」
プテラ「俺の命を救ってもらったことには感謝する。お前と出会えて本当に良かったと思っている。
だが…これでお前との関係は、もうご破産だな。」
ユレイドル「プ、プテラ…!?」
-
プテラ「じゃあな、今まで楽しかったぜ。
…もう、会うこともないだろうがな。」
バササッ…。
プテラはそう言い残し、空へと飛び去って行った。
ユレイドル「プ、プテラ…。
…どうして…。」
オムスター「…兄貴自身、感情の整理ができていないのかもしれません。」
ユレイドル「ど、どういうこと…?
それって、どういうことなの…?」
そして彼らは、ユレイドルに語りかける。
-
ポケダンで脳内再生される
-
カブトプス「兄貴は、こんなに他ポケモンに頼られたことは初めてなんです。
俺らに対しても当初はそっけなかった兄貴、その兄貴がここまで心を開くのは…今までに、決してなかったことでした。」
オムスター「だから、俺たちは思うんです。
兄貴も本当は、姉貴のことが好きで好きで堪らないはずだって。」
ユレイドル「!」
オムスター「だったら、どうしてか。
そこなんです。兄貴はきっと…かつての自分を捨て切れていない。
頼られている今の自分、最凶の存在だったかつての自分、どちらの“自分”にも…甘んじてしまっている。」
オムスター「どっちつかずなんです。本当に不器用なんです。だから、あんな行動に出てしまった。
兄貴に…悪気はないんです。」
ユレイドル「プテラが、不器用…。」
-
カブトプス「今は、兄貴の心が落ち着くのを待ちましょう。
あんなことを言いましたが…きっと、兄貴は戻って来る。俺たちは、そう確信しています。
そうだろ、オムスター?」
オムスター「あ、あぁっ、そうだぜ!!」
ユレイドル「カブトプス、オムスター…。」
オムスター「元気出してください、姉貴。
俺たちが、付いてます…。
あっ、お腹が空いたからと言って…俺を食べないで下さいね。アハハハッ!!」
-
──その頃
ゲノセクト(先程の攻撃で体力を消耗してしまった。
なにか取り入れなければ、栄養を…補給しなくては…。)
…。
…“あのポケモン”が良いな…。
ゲノゲノ…。
──悪夢は、再び現れることになる。
-
〜大空〜
プテラ「…。」
(俺は、これまでどう生きてきたっけな。そして、これから一体自分をどうしたいんだ?)
今までも、これからも、ずっと同じ様に生きていくつもりだったのに…。
…アイツと出会ってから…。
そうだ、アイツと出会ってからだ!
プテラ(アイツと出会ってから、俺は、俺は…。
『自分らしく』生きることが、できなくなってしまったんだっ!!)
プテラ「…糞っ!」
俺は、俺は…俺はっ!!
-
プテラは、苦悩していた。
己の生き方に、己の有り方に。
自分を慕ってくれる兄弟分も彼女も、単なる仲間としか思ってはいない。
馴れ合いを通じ、変化を恐れていたのだ。
絶対的な王者で有り続けるのか、それとも…。
ヒュウゥゥ…。
風が、寒くなってきた。
少々…地響きもしたようだ。
ここ数日に渡り、それは続いている。
…………………………
そして、“それ”は…数日後のことであった。
-
プテラ「お、お前…!」
カブトプス「う、うぅっ…。」
プテラの元へ、傷ついたカブトプスが訪れた。
プテラ「ど、どうしたんだ、カブトプス…そのボロボロの姿は…。
そ、それに…その、手に持っている傷だらけの殻は…。」
カブトプス「…。」
カブトプスは、重い表情を浮かべ俯いた。
プテラ「おい、オムスターの姿が見えないぞ。
オムスターは…オムスターはどうしたんだっ!?」
カブトプス「…オムスターは死にました。
…『奴』に喰われて、です。」
プテラ「!」
カブトプス「今から、俺たちに起こった全てのことを話します。
このままでは…兄貴が危ないんですっ!!」
-
数時間前、カブトプスとオムスターは例のゲノセクトの襲来にあった。
ゲノセクトは…腹を空かせていたのである。
彼らは対抗したのだが、あえなく撃沈。
オムスターは捕食され、カブトプスは命からがら逃れたのだ。
オムスターを捕食したことにより力を蓄えたゲノセクトは、今度こそプテラを仕留めるべく…こちらへと向かって来るであろう。
…道中、更にポケモンを捕食しながら。
-
プテラ「…まさか。」
カブトプス「奴は俺が喰い止めます、兄貴は、ここから逃れて下さい!
もう…仲間を失うのは、嫌なんですっ!!」
…。
プテラ「…そうだな、カブトプス。仲間を失うのは、嫌なことだよな。
俺…馬鹿だな。失って、初めて…そのことに、気付かされるなんて…。」
カブトプス「兄貴。」
プテラ「…本当に馬鹿だよな、俺。
あんなことを言ってしまったが…。
“アイツ”は…許してくれるのだろうか。」
カブトプス「ア、アイツって、もしかして…。
姉貴の、ことですか…?」
プテラ「『自分らしく生きられなくなった』とか最もらしくほざいたが…なんのことはない。
…俺にはそもそも、『自分』が本当はなんなのかと言うことも…理解できていなかったのかもしれないな。」
カブトプス「あ、兄貴…?」
-
プテラ「カブトプス…お前はここに隠れているんだ。
お前の気持ちは嬉しいが…俺はどうしても、行かなくてはならない。」
カブトプス「え、兄貴…まさか…!
『奴』と、ゲノセクトと…戦うつもりなのですか…!?」
プテラ「それが、落とし前って奴だ。」
カブトプス「厶、無茶だっ!
だって、兄貴は現に一度…アイツに敗北しているんですよ…!?」
プテラ「過去がそうだったからと言って、今もそうとは限らない。
…それに、“仲間”を救いたいんだ…俺は。
だから、カブトプス…止めてはくれるな。」
カブトプス「…。」
プテラ「わかってくれ、カブトプス。」
カブトプス「…わ、わかりました。
兄貴がそこまで言う以上、俺は止めません。
例え止めようとしても…不可能なのでしょう…?」
プテラ「フフ、俺のこと…。
俺以上に、よくわかっているじゃあないか。」
-
プテラ「カブトプス…また、会えたら…。
その時は…一緒に温泉でも浸かろうか。それとも、腹一杯御馳走を喰らおうか?
色々考えてしまうな。ハハ、全く。」
カブトプス「兄貴…。
俺は、いや、俺たちは…兄貴に助けられたこと、決して…忘れません。」
プテラ「…じゃあな。
…俺のかけがえのない、“友だち”。」
バササッ…。
カブトプス(兄貴…。)
──プテラは、こうしてカブトプスの元を去って行ってしまった。
-
〜海岸〜
ユレイドル(プテラ…。)
彼女は、未だ彼のことを気にかけていた。
自分の有りのままの心情。
…それをベラベラと語ってしまったことが、彼の気を損ねてしまった。
最初から、他のポケモンのことなど思わなければ良かった。
所詮…自分は一人なのだ。
後悔していた。
同時に、悲しみに溢れ得ていた。
ゲノセクト「…。」
そんな彼女を…物陰で狙うポケモンが一匹。
-
ユレイドル「ハァ…。」
全ては、元に戻るのかもしれない。
プテラに出会う前の日々に。孤独だった日々へと。
だけど、自分にはそれがお似合いなのだと思う。
ユレイドル「ん…?」
そんな、矢先。
ゲノセクト「…。」
ユレイドル「え、あ、あなた…誰なの…?」
──彼女の前に、“悪夢”が訪れた。
-
ユレイドル「あなたは?」
──その時、彼女の前へと見知ったポケモンが駆け出して来た。
カブトプス「ハァ、ハァ…。」
ユレイドル「カ、カブトプス。
あなた、このポケモンさんと知り合いなの?」
カブトプス「気を付けて下さい、姉貴!
そいつが…例のゲノセクトなんですっ!!」
ユレイドル「え…?」
カブトプス「兄貴は、ゲノセクトが道中に海岸を通過するのを察知したんだ。だから、兄貴は姉貴の元へと飛び出した。
けれど、未だに兄貴はここにはやって来ていない。なにかあったとしか思えないが、だったら俺の使命はただ一つ。
兄貴に変わって、姉貴をお守り…。」バギャッ
ユレイドル「…!」
…ゲノセクトの攻撃により、カブトプスの身体はゴナゴナに吹き飛んだのだ。
ゲノセクト「長々と、うるさい奴だったな。
次はお前だ。お前は中々美味そうだ。
お前を捕食し…エネルギーを頂くぞ。」
ユレイドル「う、嘘…でしょ…?
カブトプス…そ、そして…私を、食べる…?」
-
ゲノセクト「ゲノ…ゲノォ〜ッ!!!」ババッ
ユレイドル「だ、誰か…。」
自分を助けてくれるであろうポケモンなど、最早存在しないはずだった。
カブトプス…いや、カブトプスはもう…。
オ、オムスター…でも、あの子の実力じゃ、無理だ…。
お、お父さん、お母さん…。
…馬鹿だ、私。私が物心付く前に、もう死別してる…。
ものの数秒で、彼女の脳内はめまぐるしく働く。
ユレイドル(…。)
そして、彼女が最後に祈ったポケモンは…。
…あの、ポケモンであった。
-
<font color="000000">
お願い…。
…助けて…。
… プ テ ラ ッ ! !
</font>
-
──次の瞬間。
「「…待てっ!!」」
ガキィン…。
ゲノセクト「…!」ビリビリ
ゲノセクトの身体を、静止させる者が一匹。
ユレイドル「え、そ…その、声…は…!!」
そう、その…ポケモンとは。
プテラ「…フフッ。」
ユレイドル「プ…プテラッ!!」
そう…プテラで、あった。
-
プテラ「ユレイドル、この前は色々心にもないことを言ってしまい…悪かったな。
…助けに来たぜ。」
ユレイドル「プ…プテラ。
そ、その、担いでいるポケモンは一体…?」
プテラは、とある年老いたポケモンを抱えていたのだ。
プテラ「…こいつの名はアーケオス。
落ちぶれた、かつての空の王さ。」
アーケオス「ワ、ワシが、こんな小童にぃ…。」
プテラ「かつての栄光など見る影もない。老いたお前など、俺に勝てる訳がないのだ。
お前はさしずめ…『夢追い爺さん』だ。」
アーケオス「ワシは…ワシは…。」
プテラ「仕入れた情報によると、コイツは出しゃばり出た俺を始末したかったらしいな。しかし、当然ながらコイツは俺には敵わない。
だから、コイツは…ある行動に出た。」
アーケオス「…グウゥゥ。」
ユレイドル「ある、行動…?」
-
プテラ「1000年に一度目覚めるとされる、ジラーチの力を用いたのだ。
ジラーチは…あらゆる願いを叶えることのできる能力を持つ。」
ユレイドル「…ジラーチ…。」
ゲノセクト「…。」
プテラ「今年はちょうどジラーチが目覚める年。
そこに目を付けたアーケオスの『私の代わりにプテラを倒してくれ』という願いは、ジラーチを通し遥か未来のそこのゲノセクトと接触し、ジラーチの力で増長され…ゲノセクトを現代へと呼び寄せた。」
アーケオス「うぅ…。」
プテラ「そのゲノセクトはこの時代で生まれたが、未来にて化石で発見された後…何者かに改造強化され、凶悪兵器として復活を遂げた。
そして、ゲノセクトは再び元の時代へと帰って来たということだ。」
ユレイドル「そんな、ことが…。」
プテラ「来な、ゲノセクト。今度は前のようにはいかねぇ。ぶっ倒してやる。」
ゲノセクト「フン、以前とは何かが違うようだ。私をガッカリさせるなよ。
…行くぞっ!!」
-
ttp://3step.me/3amv
-
ゲノセクト「…ふん。」ウィーン
プテラ「!」
ゲノセクトは身体を折り畳み、飛行に特化した姿へと…フォルムチェンジを遂げた。
プテラ「なるほど、てめぇも空を飛べるって訳か。」
アーケオス「ゲ、ゲノセクト…そいつをやってしまえっ!
若造の思い上がりごと、粉々にしてしまえぇっ!!」
バサッ…。
二匹は、空へと舞い上がった。
かくして今ここに…闘いの火蓋が、切って落とされたのだ。
-
プテラ「…ふんっ!」
ゲノセクト「…ゲノゲノ〜っ!」
キィン、キィン…。
両者の身体がぶつかりあい、火花が飛び散る。
プテラ「…オラァッ!!」ヒュヒュン
プテラは自身の翼を広げ、ゲノセクトに体当たりを仕掛けるが。
ゲノセクト「ゲノゲノ…舐めるなよ…。
効くかぁ、こんな…ものぉぉっ!!」
ガシィ。
プテラ「ぐっ…。」
ゲノセクトは、それを容易く受け止める。
-
──動揺した隙を、見逃さない。
ゲノセクト「ゲノ〜っ!!」ドガッ
プテラ「うぉっ…。」
プテラは思わず、よろけてしまうことになる。
ユレイドル「プ、プテラァ〜、頑張って〜っ!
そんなポケモンになんか…あなたが負けるはずがないんだからあぁぁぁぁ〜っ!!」
ユレイドルは、彼女なりに彼を応援していた。
プテラ(ア、アイツ…。
…フフ。)
-
プテラ「…うおぉぉっ!!」ガシィッ
プテラは、なおゲノセクトへと突っかかる。
ユレイドル(プテラ…!)
ゲノセクト「つっ…!」
アーケオス「どうした、ゲノセクト!
お前の力は…そんなものじゃないはずだろおぉっ!?」
ゲノセクト「そ、そうだ…。
私は未来の最凶兵器。まだこんな程度で、やられる筈が…ないのだぁっ!!
…ゲノゲノォォォォ!!」ガシイッ
プテラ「…!」
二匹の攻防の応酬は、停滞することはなかった。
-
ユレイドル(プテラ…。)
争う二匹の姿を、ユレイドルは恐れはしなかった。
ただ、奇妙な感覚が彼女には湧いていた。
『憧れ』とも言うべき感情。
空を自在に舞う二匹の勇姿に…それを重ねていたのだ。
どちらが勝とうが負けようが…彼女は、“運命”に身を委ねる気でいたのだ。
──そして、決着の瞬間は、静かに訪れる。
-
ゲノセクト「テクノ…。」
その“瞬間”を、見逃さなかった。
プテラ「いわ…なだれえぇぇっ!!」ドガガガ
ゲノセクト「なっ…!!」
彼が岩礫を打った、その方向とは。
アーケオス「な、一体どこに向かって打ってやがるんだっ!?
ハハハ、若造…耄碌しやがったなぁっ!!」
ユレイドル「いや、違うわ!」
アーケオス「え?」
ユレイドル「プテラは、最初からこれを狙っていたのよ。
…見て、彼が岩礫を打った…その方向をっ!!」
アーケオス「あっ!
ま…まさか…!?」
-
カポッ…。
ゲノセクト「し、しまった…。」
アーケオス「あぁ、ま、まさかぁっ!?」
ユレイドル「そう、プテラの目的は…!」
ボガァンッ。
ゲノセクト「ゲ…ゲノラァ〜っ!?」
プテラ「岩礫をお前の砲台にはめ込み、テクノバスターを暴発させるのが目的!
自身の必殺技が…己を穿つとはな!!
そして…。」
ボオォォ…。
プテラは、自身の牙に炎を纏わせる。
ゲノセクト「や、やめろぉぉぉぉっ!!」
-
プテラ「ほのおの…。」
ゲノセクト「う、うおぉぉぉぉっ!!」
…その時、であった。
ゴゴゴゴ…。
地面が…大きく揺れ始めたのだ。
プテラ「…キバアァッ!!」ボオォォ
ガシイィッ…。
ゲノセクト「ゲ…ゲグラァ〜ッ!!?」
-
ドサァ…。
断末魔をけたたましく上げ、未来の兵器…ゲノセクトは地に伏し、敗北を遂げた。
今ここに、勝負が決したのである。
プテラ「ハァ、ハァ…。」
ユレイドル(プ、プテラが…。
勝った…。)
…しかし。
-
ボゴォン…。
プテラ「な、なんだぁ…!?」
なんと、突如上空より…隕石群が降り注いたのだ。
アーケオス「…。」
アーケオスは、既に息絶えていた。
…流れ石を受けてしまったのである。
プテラ「せめて、かつての栄光を抱えて…安らかに、眠れ。
それより、あいつは、どこに…。」
プテラ(…!)
ユレイドル「うっ、げほっ…。
ハァ…ハァ…。」
プテラ「ユ、ユレイドル…。
…ユレイドルウゥゥゥゥッ!!!」
-
大地が裂け、吸盤ごとユレイドルは放り出されてしまっていたのだ。
…このままでは、長くは持たない。
ゲノセクト「ゲ、ゲノゲノ…。」
プテラ「ゲ、ゲノセクト…ユレイドルを助けるのを、手伝ってくれっ!!」
──だが。
ボコォッ…。
プテラ「なっ…。」
隕石の影響で大地が盛り上がり、そのまま…ゲノセクトの身体を飲み込み始めたのだ。
ゲノセクト「さ、さらばだ、“好敵手”…。」
バゴォン…。
そのまま、ゲノセクトは地中へと…飲み込まれていった。
-
プテラ「くっ…。
オムスター、カブトプス、アーケオス、ゲノセクト…皆、死んじまったっ!
この様子では、他のポケモンたちも…。」
ユレイドル「プ、プテラ…。」
プテラ(…もうどうにも、ならないのかっ!?
だったら俺一匹が、なんとかしてや…。)
──その時。
「「無駄だよ。」」
プテラ「!」
突如、謎の一つの声が響いたのだ。
-
プテラ「お、お前は…。
…そうか、お前が…そうなのか。」
声の主は、ジラーチであった。
ジラーチ「この星は隕石の襲来により、大幅な地殻変動が置き、大規模な氷河期へと突入するんだよ。
これは運命。運命には逆らえないんだ。
例え、僕の能力であったとしてもね…。」
ヒュンッ…。
そう言い残し、ジラーチは消え去っていった。
プテラ「そうか、運命には、逆らえないのか…。」
…。
プテラ「…おい、ユレイドル。」
ユレイドル「え…?」
-
プテラ「お前を助けることは、すまない、無理だ…。」
ユレイドル「いいのよ、ありがとう…。」
プテラ「そしてもう一つ、俺はお前に謝らなければならないことがあるんだ。」
ユレイドル「え…?」
プテラ「あの時俺をお前が助けてくれた時、本当は…とても、嬉しかったんだ。
カブトプスたちもまだまだ弱くて、今まで俺を助けてくれようなんて奴、他に居なかったからな。」
ユレイドル「…。」
プテラ「今まで俺は、“自分”を捨てきれなかった。粗暴に、本能のままに生きてきた自分を捨ててしまえば、もう俺には…なにも残らないんじゃないかって。」
ユレイドル「プテラ…。」
プテラ「…でも、もう、皆…居なくなった。
この世界には、俺とお前…二匹が残された。
だから、もう…“嘘”は付かない。」
ドゴォン…。
隕石群は、更に降り注ぐ。
プテラ「ユレイドル…。
お前に、最後の罪滅ぼしをさせてくれ。」
-
ドサッ…。
ユレイドル「あ…。」
プテラは、ユレイドルを己の背中へと載せたのだ。
プテラ「お前、いつか言ってたよな…?
『空を飛びたい』って。
その願い、叶えさせてやる。
…最期までな…。」
ユレイドル「プテラ…。」
バササッ…。
“二匹”は、荒れ狂う上空へと飛び立った。
-
バササッ、バサ。
ユレイドル(これが…。)
プテラ「へへっ、どうだ…ユレイドル?」
ユレイドル(ああ、これこそが…。)
生まれて初めて感じる感覚。
これが、空を飛ぶことなんだ。
私が憧れていたものは…これだったのか。
…残された時間、ずっとこの感覚を味わっていたかった。
──永遠に、忘れたくなどなかった。
-
──やがて…。
ユレイドル「…うっ。」
プテラ「…ユレイドル?」
ユレイドル「ごめん、プテラ…。
どうやらもう、あなたとお別れするときが来たみたい。」
プテラ「ユレイドル、縁起でもないことを言うな。
お前はずっと…俺と一緒に居るんだっ!!」
ユレイドル「だけど、一つ…言っておきたいことがあるの。」
プテラ「ユレイドル…。
そ、それは、なんだ…?」
-
ユレイドル「私は今、とても嬉しいのよ。
プテラ…あなたは今、私のことを、呼んでくれている。…『ユレイドル』って。
今まで頑なに“アイツ”とか“お前”って呼んでたのに、今、あなたは私のことをとても思ってくれている。
それだけなのに、とても…。」
プテラ「ユレイドル…!!」
ユレイドル「うれ、しい…。」
プテラ「おい、ユレイドル…ユレイドルッ!!」
ユレイドル「…。」
しかし、もはや…彼女の口は開くことはなかった。
「「ユレイドルウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」」
-
ゴゴゴゴ…。
プテラ「ふっ、一時代もこれで終わりってか。」
プテラが見上げた先には、この星全体をも包み込もうとする巨大な隕石。
彼は、自身の生命の終わりを…。
自らが築き上げた時代の終わりを悟った。
…。
ボオォォ…。
プテラ(思えば…色々なことがあった。)
-
プテラ(…ああ。)
一瞬にして、様々な記憶が駆け巡った。
生まれた時。
やんちゃしてた幼少期。
空の王と上り詰めるべく暴れ回った血気盛んな若き時。
命を助け、自身を慕ってくれた二匹のポケモン。
ふとしたきっかけで知り合ったユレイドルのこと。
ゲノセクトとの交戦。
仲間の死。
そして…。
-
プテラ(なあ、ユレイドル。)
俺は、誰かと一緒に死を迎えるなんて考えたこともなかった。
死ぬ時は一人だと思っていたからな、俺は…。
だけど、もう、違う。
俺には良き仲間、いや…『友だち』ができたんだ。
やっと、そのことに気づけた。
本当に、馬鹿だよな、俺…。
馬鹿で、不器用で、どうしようもない俺だけど…。
…。
最後に一つぐらい、言える権利はあるはずだ。
プテラ(父さん、母さん、カブトプス、オムスター。…ユレイドル。
本当に、本当に…。)
-
<font color="000000">
…ありがとう。
</font>
-
ドゴォン…。
──巨大隕石が、今…この星全体を包み込んだ。
-
〜数億年後〜
かつての大幅な氷河期もとうに終焉を迎え、新たなる時代では…。
ポケモンと、当時は存在しなかった人間と言う種が共存を果たしていた。
人は、ポケモンをペットとしたり、仕事仲間としたり、時には戦わせながら、今日もまた良きパートナーであり続ける。
──そして、ここはとある地方、とある発掘現場。
この地で、数人の作業員たちが…“なにか”を見つけたようだ。
-
作業員「おい、ポケモンの化石が見つかったぞ!」
作業員「本当だ、しかもこれは…。
ひみつのコハクと、ねっこのかせきだな。
しかもこの化石…折り重なっているぞ。何だか、微笑ましいな。」
作業員「よし、さっそく復元させてみようか。古代の情報が、なにかわかるかもしれない。」
作業員たちは、この発見を心から喜んだ。
-
時代は移れど、思いは消えず。
プテラとユレイドル 〜完〜
-
これにて完結です
他掲示版で投稿したものを、加筆修正を行い投稿しました
トリップを変えましたが、本人です
稚拙な表現やお見苦しい描写がありましたら、すみません
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました
-
乙
プテラカッコいいよね
-
おつ
俺もサファイアでユレイドル加えてた
-
イイハナシダナー
乙
-
しくじり先生
urx.mobi/sCIF
-
おつかれ
"
"
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■