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轟焦凍(5) 「家出する」

1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:02:03 kXiI3ZMM
轟「母さんがおかしくなったのはおまえのせいだ」

轟「こんな家今すぐ出てってやる!」ダッ

エンデヴァー「焦凍!」

エンデヴァー「……馬鹿息子が」

使用人「よろしいのですか?」

エンデヴァー「放っておけ。どうせすぐに戻ってくる」

エンデヴァー「あいつは俺の子だからな」


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2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:05:31 kXiI3ZMM
隣人「あら坊ちゃん、一人でお出かけ?」

轟「……はい」

隣人「ひどい火傷。大変だったわね、あの母親のせいで……」

轟「母さんを悪く言うな!」

隣人「ご、ごめんね」

隣人(あんな目に遭っても母親のことを慕っているんだわ。可哀想に……)


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:09:09 kXiI3ZMM
轟(家を出たのはいいけど、どこに行こう?)

轟(……とりあえず、駅に行ってみよう)


ザワザワ…

轟(人が多いな)

子供「パパー! ママー! はやくはやく!」

轟(とくに家族連れが多い)

轟(……)


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:13:07 kXiI3ZMM
お茶子父「次の電車に乗ろう」

お茶子母「また来ような、お茶子!」

お茶子「うん!」

轟(旅行に来てたのか)

轟(最後に家族で出かけたのはいつだろう)

轟(そもそも、みんなで遊んだことなんか……)

轟(……いや、おれには関係ないことだ)


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:17:30 kXiI3ZMM
お茶子「あ!」フワフワ

お茶子「風船が浮いちゃった。かいじょ、かいじょ」ピタ

お茶子「お母さん、風船もどってこないよ?」

お茶子母「あら、手を離しちゃったんやね」

お茶子父「また買ってやるから」ヨシヨシ

お茶子「うん……」ウツムキ

轟「……」


"
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6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:23:57 kXiI3ZMM
轟(これくらいの高さならいけるな)パキパキ

お茶子「氷だ!」

轟「ちょっと待ってろ」ヨジノボリ

轟「ほらよ」スッ

お茶子「ありがとう!」

お茶子母「よかったね、お茶子!」

お茶子父「小さなヒーローだな!」

clap clap

お茶子「お礼にアメあげる!」スッ

轟「……ああ」

轟(ほめられるって、変な感じだ)


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:32:15 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

轟(ここで降りよう)

轟(初めて来る町だ。ここでは誰もおれのことを知らない……)

飯田「兄さん! おかえりなさい!」

轟(飯田……テレビで見たことある。確かヒーロー一家だ)

飯田兄「ただいま、天哉」ニコニコ

飯田「今日、学校では何があったんですか?」キラキラ

轟「……」

轟(おれの家とはぜんぜん違う)

轟(……別に、うらやましくなんかない)


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:38:14 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

勝己「無個性のデクが! 調子のんな!」ボカッ

デク「いたいよぉ」グスグス

悪ガキ「だっせー!」ケラケラ

勝己「デクなんかほっといて、遊びに行こうぜ!」

悪ガキ「さんせー!」ダッ

デク「うぅ……」イテテ

轟「立てるか?」スッ

デク「うん、大丈夫……」


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:46:32 kXiI3ZMM
轟「イヤならイヤだと言えばいいんだ。なさけないやつだな」

デク「うん……僕は弱いから」

デク「でも僕の大好きなヒーローは、苦しいときにもずっと笑っているんだ」

デク「僕もそんなヒーローになれたらなあ……」

轟(ヒーローか……)

轟「バカにされたくないなら強くなるしかない」

轟「でも、そんなに甘いもんじゃないぞ」

轟「死ぬほどつらい目に遭うかもしれないんだ」


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:49:54 kXiI3ZMM
轟「なのに……」

轟「それなのに! お前は、おれは、なんで……」

デク「……」

デク「どうして、泣いてるの?」

轟「え……?」

轟「ちがう」ゴシゴシ

デク「でも……」

轟「泣いてなんかない!」ダッ

デク「うん……?」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:53:45 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

轟(寒くなってきたな)

ポツポツ ザーザー

轟(急に降り出した! どこかで雨宿りしよう)

上鳴「うぇーい! 雨だ雨だー!!」

轟(バカなやつ)

ピカッ ゴロゴロ

轟「危ないぞ。カミナリが鳴ってる」

上鳴「え、何でオレの名前知ってるんだ?」

轟「え?」


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 16:56:50 kXiI3ZMM
ドーン

上鳴「うわあああああ!!!!」ビリビリ

上鳴「」ドサッ

轟「おい! 大丈夫か!?」

上鳴「なーんてね!」ムクッ

轟「!?」

上鳴「電気……効かない体質なんだよね、オレ! 電気だけに!」

轟(何言ってんだこいつ)


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:02:45 kXiI3ZMM
轟「なあ、ヒザすりむいてるぞ」

上鳴「えっ!? うわホントだ! 痛ぇ!」

轟「止血しといてやる」パキパキ

上鳴「冷てっ! サンキューな」

上鳴「お礼にこれやるよ。ドッキリマンチョコのレアなやつ」

轟「いらない」

上鳴「いらなくてもやる!」

轟「……ああ」

轟(ヘンなやつ)


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:07:35 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

八百万(図書館で本を読んでたら遅くなってしまいましたわ)

八百万「あら?」

轟(カミナリはおさまったけど、しばらく止みそうにないな)

八百万「どうしてこんな雨の中、傘も差さずに歩いているのですか?」

轟「……傘、持ってないんだ」

八百万「それは困りましたわね。少し待ってください……」

八百万「はい、どうぞ」スッ


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:12:32 kXiI3ZMM
轟「いい。大丈夫だ」

八百万「風邪を引いてからでは遅いですわ」

轟「……分かった。ありがとう」

轟「お礼に家まで送る。一人じゃ危ないだろ」

八百万「ずいぶんと大人びた方ですこと!」

轟「おまえに言われたくない」


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:18:14 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

轟(風が強くなってきた)

ゴウゴウ ビュービュー

轟「ぐっ……しまった!」

轟(傘が飛ばされた……!)ダッ

轟「あ」ズルッ

轟(川の流れが速い! 水を凍らせないと……)

轟(だめだ……俺の力じゃ足りない!)

轟(流され、る……)

??「危ない!」

轟「!?」


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:22:07 kXiI3ZMM
轟「ん……」パチ

梅雨「気が付いたようね」

轟「あんたが助けてくれたのか……?」

梅雨「ええ。こう見えて泳ぎは得意なのよ」

轟「こう見えてって、どう見てもカエルだぞ」

轟「でも、ありがとう。お礼にドッキリマンチョコのレアシールをやるよ」

梅雨「いらないわ」

轟「じゃあこのアメをやる」

梅雨「ありがとう」


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:24:24 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

轟(すっかり暗くなってきた)

轟(寒い……)ブルブル

轟(炎を使えばあったかいかもしれない)

轟(いや、もう使わないって決めたんだ)ブンブン

轟(とりあえず、今日寝るところを探そう)

轟「へっくし!」

轟(寒くない、寒くない……)ブルブル

?「風邪ひくぞ」


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:27:40 kXiI3ZMM
轟「だれだ!!」

?「別に怪しい奴じゃない。お前も良く知ってるはずだ」

轟「おれもよく知ってる……?」

?「そんな恰好じゃ寒いだろ」ボウッ

轟「炎だ……」

?「どうかしたか?」

轟「おれ、炎は嫌いなんだ。嫌なやつが使ってるから」

?「……」

轟「でも、この炎はあったかいから好きだ」


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:32:42 kXiI3ZMM
轟「ありがとう、おかげでもう寒くない。お礼に……」

轟「ごめんな、今これしか持ってないんだ。ドッキリマンチョコのレアシール」スッ

?「ありがとな」

轟「……なあ」

?「なんだ?」

轟「また会えるかな?」

?「ああ、必ず」

?「今日はもう遅いから、早く家に帰れよ」

轟「……うん」


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:40:03 kXiI3ZMM
ガタンゴトン…

轟「……ただいま」ガチャ

エンデヴァー「遅かったな」

轟「……」

轟「おれはおまえを許さない」

エンデヴァー「それがどうした?」

轟「おまえなんかすぐに超えてやる。今に見てろ」

轟「NO.1ヒーローになるのはおれだ」

エンデヴァー「当たり前だ。そのためにお前をつくったんだからな」

轟「でも、おまえの汚い炎は使わない」

エンデヴァー「……なんだと?」

轟(あの人みたいな、あったかい炎がいつかおれにも……)


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:42:41 kXiI3ZMM
十年後 現在

轟「……」

上鳴「おっ! それドッキリマンチョコのレアなやつじゃねーか、懐かしーな」

上鳴「俺もそれ集めてたんだよなー、誰かにあげちまったけど」

上鳴「あれ、誰だったっけ……? 見たことないやつだったな」

轟「上鳴、これやるよ」

上鳴「え? いやいいって! 今更いらねーし」

轟「いらなくてもやる」

上鳴「お、おう……?」


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 17:45:16 kXiI3ZMM
上鳴「なんだあいつ?」

切島「お、懐かしいなそれ」

上鳴「切島もこれ集めてたのか?」

上鳴「そういやお前、ガキの頃どんな感じだったんだ?」

切島「え?」

切島「……」

切島「まあ、人生いろいろあるよな!」

上鳴「はぁ? 何だそりゃ? 余計気になるじゃねーか」

切島「絶対教えねえ!」


おしまい


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/05/15(金) 21:49:23 mrgzjXSU
おつ
すき


"
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