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轟焦凍(5) 「家出する」
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轟「母さんがおかしくなったのはおまえのせいだ」
轟「こんな家今すぐ出てってやる!」ダッ
エンデヴァー「焦凍!」
エンデヴァー「……馬鹿息子が」
使用人「よろしいのですか?」
エンデヴァー「放っておけ。どうせすぐに戻ってくる」
エンデヴァー「あいつは俺の子だからな」
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隣人「あら坊ちゃん、一人でお出かけ?」
轟「……はい」
隣人「ひどい火傷。大変だったわね、あの母親のせいで……」
轟「母さんを悪く言うな!」
隣人「ご、ごめんね」
隣人(あんな目に遭っても母親のことを慕っているんだわ。可哀想に……)
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轟(家を出たのはいいけど、どこに行こう?)
轟(……とりあえず、駅に行ってみよう)
ザワザワ…
轟(人が多いな)
子供「パパー! ママー! はやくはやく!」
轟(とくに家族連れが多い)
轟(……)
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お茶子父「次の電車に乗ろう」
お茶子母「また来ような、お茶子!」
お茶子「うん!」
轟(旅行に来てたのか)
轟(最後に家族で出かけたのはいつだろう)
轟(そもそも、みんなで遊んだことなんか……)
轟(……いや、おれには関係ないことだ)
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お茶子「あ!」フワフワ
お茶子「風船が浮いちゃった。かいじょ、かいじょ」ピタ
お茶子「お母さん、風船もどってこないよ?」
お茶子母「あら、手を離しちゃったんやね」
お茶子父「また買ってやるから」ヨシヨシ
お茶子「うん……」ウツムキ
轟「……」
"
"
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轟(これくらいの高さならいけるな)パキパキ
お茶子「氷だ!」
轟「ちょっと待ってろ」ヨジノボリ
轟「ほらよ」スッ
お茶子「ありがとう!」
お茶子母「よかったね、お茶子!」
お茶子父「小さなヒーローだな!」
clap clap
お茶子「お礼にアメあげる!」スッ
轟「……ああ」
轟(ほめられるって、変な感じだ)
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ガタンゴトン…
轟(ここで降りよう)
轟(初めて来る町だ。ここでは誰もおれのことを知らない……)
飯田「兄さん! おかえりなさい!」
轟(飯田……テレビで見たことある。確かヒーロー一家だ)
飯田兄「ただいま、天哉」ニコニコ
飯田「今日、学校では何があったんですか?」キラキラ
轟「……」
轟(おれの家とはぜんぜん違う)
轟(……別に、うらやましくなんかない)
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ガタンゴトン…
勝己「無個性のデクが! 調子のんな!」ボカッ
デク「いたいよぉ」グスグス
悪ガキ「だっせー!」ケラケラ
勝己「デクなんかほっといて、遊びに行こうぜ!」
悪ガキ「さんせー!」ダッ
デク「うぅ……」イテテ
轟「立てるか?」スッ
デク「うん、大丈夫……」
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轟「イヤならイヤだと言えばいいんだ。なさけないやつだな」
デク「うん……僕は弱いから」
デク「でも僕の大好きなヒーローは、苦しいときにもずっと笑っているんだ」
デク「僕もそんなヒーローになれたらなあ……」
轟(ヒーローか……)
轟「バカにされたくないなら強くなるしかない」
轟「でも、そんなに甘いもんじゃないぞ」
轟「死ぬほどつらい目に遭うかもしれないんだ」
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轟「なのに……」
轟「それなのに! お前は、おれは、なんで……」
デク「……」
デク「どうして、泣いてるの?」
轟「え……?」
轟「ちがう」ゴシゴシ
デク「でも……」
轟「泣いてなんかない!」ダッ
デク「うん……?」
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ガタンゴトン…
轟(寒くなってきたな)
ポツポツ ザーザー
轟(急に降り出した! どこかで雨宿りしよう)
上鳴「うぇーい! 雨だ雨だー!!」
轟(バカなやつ)
ピカッ ゴロゴロ
轟「危ないぞ。カミナリが鳴ってる」
上鳴「え、何でオレの名前知ってるんだ?」
轟「え?」
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ドーン
上鳴「うわあああああ!!!!」ビリビリ
上鳴「」ドサッ
轟「おい! 大丈夫か!?」
上鳴「なーんてね!」ムクッ
轟「!?」
上鳴「電気……効かない体質なんだよね、オレ! 電気だけに!」
轟(何言ってんだこいつ)
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轟「なあ、ヒザすりむいてるぞ」
上鳴「えっ!? うわホントだ! 痛ぇ!」
轟「止血しといてやる」パキパキ
上鳴「冷てっ! サンキューな」
上鳴「お礼にこれやるよ。ドッキリマンチョコのレアなやつ」
轟「いらない」
上鳴「いらなくてもやる!」
轟「……ああ」
轟(ヘンなやつ)
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ガタンゴトン…
八百万(図書館で本を読んでたら遅くなってしまいましたわ)
八百万「あら?」
轟(カミナリはおさまったけど、しばらく止みそうにないな)
八百万「どうしてこんな雨の中、傘も差さずに歩いているのですか?」
轟「……傘、持ってないんだ」
八百万「それは困りましたわね。少し待ってください……」
八百万「はい、どうぞ」スッ
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轟「いい。大丈夫だ」
八百万「風邪を引いてからでは遅いですわ」
轟「……分かった。ありがとう」
轟「お礼に家まで送る。一人じゃ危ないだろ」
八百万「ずいぶんと大人びた方ですこと!」
轟「おまえに言われたくない」
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ガタンゴトン…
轟(風が強くなってきた)
ゴウゴウ ビュービュー
轟「ぐっ……しまった!」
轟(傘が飛ばされた……!)ダッ
轟「あ」ズルッ
轟(川の流れが速い! 水を凍らせないと……)
轟(だめだ……俺の力じゃ足りない!)
轟(流され、る……)
??「危ない!」
轟「!?」
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轟「ん……」パチ
梅雨「気が付いたようね」
轟「あんたが助けてくれたのか……?」
梅雨「ええ。こう見えて泳ぎは得意なのよ」
轟「こう見えてって、どう見てもカエルだぞ」
轟「でも、ありがとう。お礼にドッキリマンチョコのレアシールをやるよ」
梅雨「いらないわ」
轟「じゃあこのアメをやる」
梅雨「ありがとう」
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ガタンゴトン…
轟(すっかり暗くなってきた)
轟(寒い……)ブルブル
轟(炎を使えばあったかいかもしれない)
轟(いや、もう使わないって決めたんだ)ブンブン
轟(とりあえず、今日寝るところを探そう)
轟「へっくし!」
轟(寒くない、寒くない……)ブルブル
?「風邪ひくぞ」
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轟「だれだ!!」
?「別に怪しい奴じゃない。お前も良く知ってるはずだ」
轟「おれもよく知ってる……?」
?「そんな恰好じゃ寒いだろ」ボウッ
轟「炎だ……」
?「どうかしたか?」
轟「おれ、炎は嫌いなんだ。嫌なやつが使ってるから」
?「……」
轟「でも、この炎はあったかいから好きだ」
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轟「ありがとう、おかげでもう寒くない。お礼に……」
轟「ごめんな、今これしか持ってないんだ。ドッキリマンチョコのレアシール」スッ
?「ありがとな」
轟「……なあ」
?「なんだ?」
轟「また会えるかな?」
?「ああ、必ず」
?「今日はもう遅いから、早く家に帰れよ」
轟「……うん」
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ガタンゴトン…
轟「……ただいま」ガチャ
エンデヴァー「遅かったな」
轟「……」
轟「おれはおまえを許さない」
エンデヴァー「それがどうした?」
轟「おまえなんかすぐに超えてやる。今に見てろ」
轟「NO.1ヒーローになるのはおれだ」
エンデヴァー「当たり前だ。そのためにお前をつくったんだからな」
轟「でも、おまえの汚い炎は使わない」
エンデヴァー「……なんだと?」
轟(あの人みたいな、あったかい炎がいつかおれにも……)
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十年後 現在
轟「……」
上鳴「おっ! それドッキリマンチョコのレアなやつじゃねーか、懐かしーな」
上鳴「俺もそれ集めてたんだよなー、誰かにあげちまったけど」
上鳴「あれ、誰だったっけ……? 見たことないやつだったな」
轟「上鳴、これやるよ」
上鳴「え? いやいいって! 今更いらねーし」
轟「いらなくてもやる」
上鳴「お、おう……?」
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上鳴「なんだあいつ?」
切島「お、懐かしいなそれ」
上鳴「切島もこれ集めてたのか?」
上鳴「そういやお前、ガキの頃どんな感じだったんだ?」
切島「え?」
切島「……」
切島「まあ、人生いろいろあるよな!」
上鳴「はぁ? 何だそりゃ? 余計気になるじゃねーか」
切島「絶対教えねえ!」
おしまい
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おつ
すき
"
"
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