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少女「私が欲しかった物はこんな物なはずがない……」
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私の名前は『北野 葉瑠』。 私は生まれつき『感情』と言う物をほとんど所持していない
だから私は、『嬉しい』『恥ずかしい』『寂しい』『楽しい』などの基本的な感情から、『好き』『嫌い』『苦しい』などの感情も持ち合わせていない。
私が感じることのできる感情はただ一つ……
『悲しい』だけだ
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私は『悲しい』と言うことしか感じることができない。 つまり、この世の中は私にとっては生きる地獄に等しい
『楽しい』と感じることは無い癖に、『悲しい』と感じる。
『嬉しい』と感じない癖に、『悲しい』と感じる。
私は『楽しい』や『嬉しい』が、どれだけ素晴らしい感情なのか、わからない。
『好き』や『嫌い』がどんな物なのかも、わからない。
こんな私を、初めて見た人はみんなこう言う『感情が無いってどんな感じなの?』と……
その時、私はいつも決まってこう言う
「私は、感情が無いから、わからない」と
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だけど彼だけは違った。 彼だけは私に
「感情なんて要らないさ、必要ない」
って言った。私は彼の言っている意味がわからなかった。 私には感情がないから、なんとも思わないだけなのかもしれない。 彼はこの言葉に続けて
「僕のがあげられるなら、君にあげたいよ……」
と言った。 私は
「……ならちょうだい」
と欲しいと言う感情が無い癖に言った。
「じゃあ君に、僕の感情をあげよう」
と彼は言った
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その日から、私は彼と一番長く行動した。 お昼を食べるにも、帰るにも、どこに行くのにもいつも一緒に行動した。 彼が言った通りなのかどうかわからないが、私は感情と言う物が、できてきた。
初めて『楽しい』と思った時は、とても楽しいと思ったし
『嬉しい』と思った時は、とても嬉かった。
『楽しい』や『嬉しい』が、こんな素晴らしい感情だったのか!!!と気づいた時は『幸せ』と感じた
感情は連鎖のように沸き上がって来た。中には『持ってない方が良かったな』と言う感情もあった。
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私は彼と出会って、感情をほぼ全て取り戻した。と言うよりかは『手に入れた』と言った方が正しいのかな?
とにかく、私はほぼ全ての感情を経験した。 灰色だった人生が、彼のおかげで虹色に変わった。 私に感情を与えてくれた彼は、私にとって命を救ってくれた人よりも、恩を感じる。
私は彼が本当に感情を、くれたのかと思った。 でもそれは違った。 彼の感情は、消えることは無かった。
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私はまだ経験していない『恋愛』と言う感情に興味があった。 マンガを読むと、『恋愛』と言う感情は、とても素晴らしい物のようだ。 彼もまだ『恋愛』と言う物を体験したことがないらしい。
『恋愛』とはどのような物なのか……
私は、これを考えて一年が経過した。
彼は「警察官になる」と言う夢を実現し、今警察官として働いている。
私は彼が私の側に居なくなって初めて気がついた
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私は彼に『恋愛』つまり『恋い』をしていることに気がついた。 私は彼を見ると、とても胸の鼓動が早くなり、ろれつが回らなくなり、しまいには彼の前だと顔が熱くなってしまう。 私はこれが『恋愛』と言う感情だと気づいたのは、最近のことだ。 私が今まで体験したかった最後の『感情』は、最悪の物だった。
彼のことを考えると、胸が苦しくてつらい。 夜も眠れないし、食事もできない。
私が求めていた感情《物》はこんなに苦しく、つらい感情《物》のはずでは無かったんだ……
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こうして私は……
全ての感情を取り戻した。
だけどなんでだろうか?
私は、手に入れたばかりの感情を『要らない』と思ってしまう……
こんなにつらいとわかっていたら、こんな感情《物》なんて彼から貰わなかっただろう……
私は今、彼が前に言っていた
『感情なんて要らないさ、必要ない』
と言うことが良くわかった
そして私は、その彼と同じ道を進むことにした
こんな感情《物》を捨てる方法を彼と探す為に……
〜fin〜
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10レス行かなかった……
これでこのSSは終わりです。
読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
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短かったけど良かった
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>>10 ありがとうございます。 次はもう少し長い物を書けるようにがんばります
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おつおつ
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乙
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神様の方も読んできたよ 短いけどそれがまたいい
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>>14 ありがとうございます!!! この書き方は、読む人のことを考えるとあまり長くできないんですよね〜
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>>15 酉ミスです
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