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('A`)青空の下、さよならバスのようです
-
瞼を開けると、青空が広がっていた。
雲一つ無い、吸い込まれてしまうような青空だった。
浮遊感。
――空を見上げると、こんな感覚を覚えるのか。
自分は初めてそれを知った。
同時に、悪くないと思った。
('A`)青空の下、さよならバスのようです
.
-
ここは、どこだろうか。
身体を起こして周りを見渡してみるが、一面草原だ。
自分は、唯一の道――とは言っても、舗装もされてない土と砂利で出来たものなのだが――に寝転んでいたようだ。
(;'A`)「なんでこんな場所にいるんだ」
不可解だった。
ここに来るまでの記憶は無い。
誰かに連れてこられたか、単に忘れているのか。
いや、そのどちらでも無いのかもしれない。
困惑はしたが、不思議と焦りはなかった。
(;'A`)「誰かいないのか……?」
遠くを眺めるが、人影はなかった。
だが、道の続く先に人では無い何かがあるのが見えた。
(;'A`)「くそ、とりあえず歩くか……」
不思議と足取りは軽い。
俺はまっすぐ、この道を歩き始めた。
('A`)「日差しが暑いな……」
歩き続けて、やがてはっきりと見えてくるもの。
それは、大きなバスだった。
-
バスなら、どこか人が住んでいるような場所に着くだろう。
そう思うと、自分の歩調は少しずつ上がっていった。
しかし、やがて数メートル手前にまでたどり着いた時、バスは動き出した。
ゆっくりと、自分とは真逆の方向へ。
(;'A`)「ちょっ、運転手さん!!俺も乗っけてくれ!!」
自分から離れていくバスに、必死で走りながらそう叫んだ。
その声が聞こえたのか、バスはブレーキランプを点灯しながらゆっくりと停車した。
車両前方のドアが開き、自分は息を切らしながらそこからバスへと乗りこんだ。
エアコンがついていて、涼しかった。
( <●><●>)「…………」
運転席には、真っ黒な瞳で自分を見つめる運転手が座っていた。
('A`)「あ、あの……このバス、どこ行きですか?」
地名を聞いたところでわからないような気がしたが、ただ見つめられているのは気まずく感じたので、そう聞いてみた。
-
( <●><●>)「あなたの行きたいところへ」
('A`)「えっ……?」
( <●><●>)「わかってます、あなたの行きたいところは」
('A`)「は、はぁ……」
返ってきた言葉は意外なものだったが、正直なところ、行き先はどこでも良かった。
どうせ家まで送り届けてくれるわけではないのだ。どこか違うところへ連れてってくれればそれで良かった。
それよりも、今は重要な事があった。
('A`)「そうだ、金……!」
当然ながら、持ち合わせがあるはずもなかった。
そう思ったのだが、意外な事はまだ続いた。
ポケットの中に、小銭が入っていたのだ。
('A`)「いくらですか?」
自分は、小銭の数を確かめながらそう聞いた。
( <●><●>)「持っているだけでいいです」
運転手はそう答えた。
-
('A`)(なんだよそれ……このバス大丈夫か……?)
そう思ったのだが、この際気に留めている余裕は無い。
自分の持っていた小銭はあまりにも少なく、合計で220円だった。
バスの運賃としては、なんとか足りる程度だろうか。
そう思って、小銭を全て運転手に手渡した。
( <●><●>)「…………、どうぞお席へ」
運転手は小銭の数を確かめるようにその目で見つめると、席に座るよう手で合図をした。
運賃は十分だったのだろうか。
('A`)(ま、いいか)
言われた通りに、俺は後ろの座席へと向かった。
この時初めて気がついたのだが、このバスには自分以外の乗客がいなかった。
('A`)(まあこんな田舎だしな……)
これほど何もないような場所に用がある人など、いるとは思えなかった。
――だとしたら、何故バスが?
-
そんな疑問は浮かんだが、今考えても仕方が無かった。
ここがどこなのかがわかれば、答えも見えてくるだろう。
もしかしたら、観光地なのかもしれない。
('A`)(席はどこでもいいか)
誰もいないのだから、座る場所に気を使う必要もなかった。
自分はすぐ近くにあるベンチ状の横向きシートに座った。
それを見た運転手は、やがてドアを閉めてバスをゆっくりと動かし始めた。
正面の窓から、景色を眺める。
想像していたより、何も無い。
この道以外は草原なのではないか、と思える。
('A`)(この国にこんな場所があるのか……)
自分の知らない世界がそこにはあった。
何も無いというのに、確かにあった。
バスは少しずつ、自分を目的地へと運んで行く。
行き先がどこなのかは、知らないのだが。
-
('A`)(……?)
不意に、音楽が流れ始めた。
この曲は知っている。
今日のような天気のいい日には、よく似合っている。
('A`)(雰囲気にぴったりだな。しかし、音楽を流すバスとは……珍しいもんだ)
そんな事を考えていられるだけ、自分の心には余裕があるようだ。
我ながら呑気なものだ、と思った。
目が覚めたら、わけの分からない場所にいたというのに。
('A`)(まあ、どうでもいいな……)
とりあえず、なんとかなればいい。
そんな考えで、ずっと生きてきたのだ。
音楽が終わった頃、バスはゆっくりと速度を落とし、やがて停車した。
そして開かれるドア。
早くも目的地に着いたのかと思い外を見るが、景色はさっき見たものとさほど変わっていなかった。
('A`)(えっ、何……?)
なんで停車したのか数秒ほど考えていると、前方のドアから一人の少女が乗り込んできた。
それは、自分がこれまでの人生で最も印象強く覚えている少女だった。
-
川゚ -゚)「…………」
('A`)「えっ……クー??」
思わず声に出してそう呼んでしまった。
川゚ -゚)「……君は、ドクオか……?」
この長い黒髪。整った顔立ち。
見間違いではなかった。
自分の事を覚えている事が、衝撃だった。
('A`)「なんで君がこんな所に……」
川゚ -゚)「いや、君の方こそ。ちょっとびっくりしたぞ」
('A`)「そんなにか」
川゚ -゚)「ああ。まあ、意外というわけでもないか……」
クーの中で、意外かどうかの判断が出来るほど自分の事を覚えていてくれた事が、少しだけ嬉しかった。
('A`)「どういう意味だ? ってか、ここどこなんだ?」
川゚ -゚)「……? なんだ、まさか何も聞いていないのか?」
-
('A`)「いやだって、起きたらこんな所にいたし、周りに誰もいないし」
川゚ -゚)「……、運転手さん、彼はもしかして……」
クーは目の前にいる運転手に視線を移して、そう尋ねた。
どうやら運転手とクーは、顔見知りのようだ。
( <●><●>)「ええ、そうですよ」
運転手は考えるような時間も取らず、そう答えた。
川゚ -゚)「……そうか」
('A`)「……おいおい、なんの話をしてるんだよ」
川゚ -゚)「まあまあ、ゆっくり話そうじゃないか。運転手さん、私は今日で最後なので」
( <●><●>)「わかってます」
クーは、右手に持っていた封筒を運転手に差し出した。
随分と分厚い封筒だ。運転手はそれを受け取ると、中身を一瞥してすぐに鞄に入れた。
川゚ -゚)「さて……君とはいつ以来だったかな、ドクオ」
クーは運転手に軽く頭を下げて、やがて自分の隣へと座った。
同時に、バスはゆっくりと動き始めた。
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('A`)「……中学の卒業式だろ」
そう。
クーと最後に顔を合わせたのは、もう二年も前になる。
川゚ -゚)「懐かしいな。君とは三年間同じクラスだったか」
('A`)「そうだな」
一年の頃。
初めて入った教室で、生徒たちが友達を作ろうと必死になっていた時、クーは一人で本を読んでいた。
自分はそれをよく覚えている。
そして、その美しさに惹かれたのだ。
('A`)「休みがちだったな」
川゚ -゚)「ああ、病気でな。体育祭も球技大会も、見学しているだけだったな」
(;'A`)「見学って……。ずっと本読んでただろ」
川゚ -゚)「なんだ、気づいてたのか」
(;'A`)「みんなブツブツ言ってたぞ」
川゚ -゚)「そうだったか」
-
みんな、とは言っても、自分には友達が殆どいなかった。
クラスメイトの会話を盗み聞きしていただけだ。
川゚ -゚)「高校はどうだ?」
('A`)「ッ……ああ……高校ね……」
ここ数週間、高校には行っていなかった。
何故なら、何も楽しくないからだ。
友達はいない。勉強はついていけない。
おまけに家から遠い。一時間もかけて自転車で通っていると、馬鹿らしくなる。
しかし家にいても、楽しくはなかった。
趣味もない。夢もない。やりたい事など、何もなかった。
('A`)「……まあ、ぼちぼちやってるよ」
川゚ -゚)「……そうか。ならよかった」
('A`)「クーは?」
川゚ -゚)「私か? 私は、一年の時に病気で通えなくなってな。通っていた高校は辞めてしまったよ」
('A`)「……そうだったのか……」
高校に受かったことは知っていたが、辞めてしまったことまでは知らなかった。
聞くべきではなかったと、少しだけ後悔した。
-
川゚ -゚)「しかし便利なものだな、通信というものは。家でも病院でも、勉強さえしていれば、高卒学歴をもらえるんだからな」
('A`)「へぇ、そうなのか……すごいな」
川゚ -゚)「年に二回だけ、学校に行けば済むんだ。まあもっとも、高卒学歴があったところで、その先どうなるかはわからないがな」
('A`)「まあ、無いよりはあったほうがいいのかもな」
川゚ -゚)「生きてく上では、な」
('A`)「…………」
中学生の頃はクーとあまり会話をしたことが無かったが、改めて話を聞いてみると、思っていたよりも自虐的な発言を頻繁にするようだ。
自分も人の事を言えないが、病気のようなネガティブ要素を抱えていると、そのネガティブさが表に出てしまうものなのか。
いやあるいは、ただそういう性格なだけなのかもしれない。詳しい事は、心理学の専門家にでも問い合わせてみればいいだろうか。
川゚ -゚)「そういえば、君はよくあの友達と一緒にいなかったか? ちょっと小太りの……」
('A`)「ああ、ブーンか。懐かしいな」
-
ブーンもまた中学生の頃の友達だ。クーと同じく、三年間自分と同じクラスだった。
一年生の頃、自分の後ろがブーンの席だった事をきっかけに、よく話すようになったのだ。
彼が、自分の唯一の友達だった。
川゚ -゚)「そうだ、ブーンだ。彼は今どうしてるんだ?」
('A`)「ああ……どうなんだろうな。俺もわかんねぇや」
中学の卒業式の日。ブーンは親に携帯を買ってもらったらしく、自分のメールアドレスを教えておいた。
ブーンとは違う高校になってしまったが、メールを使えば連絡が取れる。そんな事を嬉しく思ったのを覚えている。
しかし、それ以来メールは一度たりとも来ていなかった。
自分にとってブーンは唯一の友達だったとしても、彼にとって自分はそうではない。
それだけの話だ。
川゚ -゚)「なんだ、連絡も取ってないのか」
('A`)「連絡先知らないんだよ。って言っても、あいつは俺の連絡先を知ってるんだけどな。まああいつから連絡が来ないんじゃ、どうしようもないって事だ」
-
川゚ -゚)「……ふむ、そうだったか……」
('A`)「まあ高校やあいつの話なんていいんだよ。それより、教えてくれないか。ここがどこなのか」
川゚ -゚)「本当に何も知らないんだな」
クーは顔にかかる長い髪を手で除けながら、言葉を続けた。
川゚ -゚)「君はまだ、知らなくてもいい場所さ」
('A`)「……なんだよそれ。気づいたらいきなりこんな所にいてびっくりしてるんだよ。教えてくれよ」
川゚ -゚)「びっくり? その割に冷静そうに見えるがな」
('A`)「……まあ何とかなるだろ、って思ってたからだよ」
川゚ -゚)「じゃあ、何とかなるさ」
('A`)「……あのなぁ……」
意地でも教えるつもりはない様子だった。
しかし、このバスにクーも乗っているという事は、いずれ自分の知っている場所へと辿り着くのだろう。
('A`)「じゃあこれは教えてくれよ。クーはなんでこのバスに乗ってるんだ? こんな場所になんの用があったんだよ」
-
川゚ -゚)「……それは……」
クーは少しだけ考えるような素振りをして、また口を開いた。
川゚ -゚)「……まあ、息抜きのようなものだ。仕事ばかりしていたら、有給を取ってハワイにも行きたくなる。そんな感じだ」
('A`)「……はぁ……」
川゚ -゚)「入退院を繰り返す生活は、なかなか疲れるものでな。何度か来たことのあったこの場所に、また来たくなったんだよ」
確かに、息抜きには悪くない場所だと思える。
どこか、自分の住む世界とは違う場所に来たような感覚に陥る事ができる。
('A`)「よく来てたのか?」
川゚ -゚)「ああ、まあな。悪くない場所だよ」
クーは窓から見える外の風景を眺めながら、そう言った。
自分も真似をするように、外を見る。
――しかし自分の目に映ったのは、先程とはまるで違う風景だった。
川゚ -゚)「気づいたらこんな場所か」
(;'A`)「えっ……いつの間に……」
-
川゚ -゚)「君の街だろう、ここは」
(;'A`)「ああ、そうだけど……」
見慣れた風景だ。知っている建物すらあった。
話に夢中になって、思ったよりも時間が経過していたのかもしれない。
川゚ -゚)「ボタン、押し忘れるなよ」
('A`)「……そうだな」
自分はそう言いながら、手摺に付いているボタンを押した。
赤いランプが、わずかに光りだした。
('A`)「…………」
もうこれで、クーとの時間が終わってしまう。
少しだけ寂しく思った。
しばらくして、バスがゆっくりと停車した。
同時に、後ろのドアが開く。
('A`)「…………」
しかし自分は、立ち上がれないでいた。
川゚ -゚)「どうした?」
('A`)「……俺……」
-
ここで別れたら、次はいつ会えるのだろうか。
もしかしたら、もう二度と会うことはないのかもしれない。
胸が、張り裂けそうになった。
('A`)「……君のこと……ずっと好きだったんだ……」
血圧も脈拍も、いま測定したらこれまでの人生で最も高い数値になるだろう。
自分の鼓動の音が、耳まで届いていた。
川゚ -゚)「……ふふ、面白いやつだな、君は」
(;'A`)「……面白いって……」
川゚ -゚)「したらば病院の、305号室だ」
('A`)「へ?」
川゚ -゚)「……私の、病室だよ。そこに来れば、恐らくまた会えるさ」
('A`)「……そうか」
口には出さない。
だがまた会えると思うと、嬉しく感じた。
('A`)「……じゃ、帰るわ」
ゆっくりと座席から立ち上がり、ドアへと向かった。
階段を一段降り、クーに手を振った。
その時だった。
-
川゚ -゚)「……君の事、嫌いじゃないぞ」
('A`)「っ……」
クーが手を振り返して、そう言った。
もちろん、飛び跳ねたくなるくらいに嬉しかった。
しかし自分はあくまで平静を装い、ゆっくりと地面に降りた。
(;'A`)「――うおっ!?」
地面に降りたと同時に、自分は激しい目眩に襲われた。
視界が、身体が、揺れる。
(;'A`)「な……ん……」
自分は崩れるように地面に倒れ、そのまま意識を失った。
.
-
次に気がついた時、自分は見た事のない天井を見上げていた。
('A`)「…………」
ここは、どこだろうか。
口には酸素マスクのようなものが付けられている。
恐らく、病院だろう。
倒れている自分を見て、誰かが救急車を読んでくれたのだろうか。
J(;'ー`)し「ドクオ!?」
不意に自分を呼ぶ声がした。
声の主は、母親だった。
J( 'ー`)し「よかった……本当に良かった……」
母は今にも泣き出しそうな顔で、そう言った。
('A`)(……それほど重症じゃないだろ……)
地面に頭を打ち付けた記憶もない。
ただその場に倒れただけの話だ。
それなのに母は、まるで死人が生き返ったかのような反応をしている。
J( 'ー`)し「……どうして……あんな事を……」
('A`)(あんな事……?)
('A`)(ッ……!!)
――そうだ。なぜ忘れていた。
自分は不意に思い出した。
忘れていた事の方が不思議なくらい、重要な出来事を思い出した。
――自分は、自殺したのだ。
-
こんな面白くもない世界から逃げ出すために、学校の屋上から飛び降りたのだ。
('A`)(……じゃあ……クーと会ったのは……夢か……)
酷い夢を見たものだ。
クーが自分の事を、嫌いじゃないだなんて。言うはずがない。
自分は、誰よりも嫌われてきた人間だというのに。
('A`)(しっかし……生き延びちまうとはな……)
もっと高い場所を選べばよかった。
この母親の泣き顔を見るなんて、気分が悪い。
J( 'ー`)し「お母さんがついてるからね……ドクオ……」
何もわかってないくせに。
そう思いながら、自分はなんとか動く右手で、酸素マスクを外した。
('A`)「……ちょっと一人にしてくれないかな」
J(;'ー`)し「えっ、ご……ごめんね。じゃあ私、ちょっと売店に行ってくるわ」
J(;'ー`)し「あ……でも、お友達が外で待ってるのよ……」
('A`)「……友達??」
冗談じゃない。自分に友達なんているはずがないんだ。
どうせ、クラス委員の誰かだろう。
-
('A`)「……帰ってもらって」
J(;'ー`)し「でも……ずっと待ってるのよ……」
('A`)「……わかったよ。とりあえず中に入れて」
今までの会話もした事がない人だ。気まずくなってすぐに帰るだろう。
J( 'ー`)し「うん、わかった。じゃあ、またしばらくしたら戻ってくるからね」
('A`)「…………」
自分が何も言わずとも、母は病室から出ていった。
しばらくして、それまで静かだった病室にノックの音が響いた。
扉を開けて中に入ってきたのは、意外すぎる人物だった。
(;^ω^)「……ドクオ……」
(;'A`)「えっ……ブーン……!?」
何故だ。
なぜブーンが、ここにいる。
(;'A`)「どうして……お前が……」
-
( ^ω^)「……ドクオのお母さんから電話が来たんだお。中学の連絡簿、取っておいたみたいだお」
('A`)「連絡簿……」
なるほどそういう物もあったか、と母の行動に素直に感心した。
しかしもし自分がその存在に気がついたとしても、ブーンの自宅に電話をかけることはしなかっただろう。そう思うと、何故だか安心した。
( ^ω^)「……なんで自殺なんかしたんだお……」
('A`)「別にいいだろ、お前には関係ねーよ」
ブーンが来てくれた事は嬉しかった。
しかし、何故だか冷たく当たってしまっていた。
(;^ω^)「そんな……、メールしなかった事気にしてるのかお?」
('A`)「……別に……」
(;^ω^)「あれは、もらったメモを失くしちゃったんだお。自宅の番号も家の場所も知らなかったから、聞きようがなかったんだお……」
('A`)「……え?」
-
(;^ω^)「それにドクオって、他に友達いないから誰にも聞けないし……」
(;'A`)「う、うるせーな」
――なんだ、理由があったのか。
そう思うと、胸のあたりに溜まっていた重たい何かが抜け落ちたような感覚を覚えて、少しだけ目頭が熱くなった。
( ^ω^)「……よかったお。生きてて」
('A`)「……そう、思うか?」
( ^ω^)「ドクオはそう思わなくても、ブーンはそう思うお。ドクオは大切な友達だお」
( A )「ッ……、そういう事を恥ずかしげもなく言うなよ……」
ブーンという男は、昔からこうだった。今も何も変わってはいない。
素直なところは、自分とは真逆だ。それが居心地の良さに拍車をかけているのかもしれない。
( ^ω^)「身体はどうだお?」
('A`)「……さあな。詳しい話はまだ聞いてねーけど……ってて……」
ゆっくりと身体を起き上がらせてみると、肋骨や足が悲鳴を上げた。
耐え難いほどの痛みではない。これまで味わってきた苦痛に比べれば、物理的な痛みなど大したことはなかった。
-
('A`)「ああ……まあ、これぐらい起き上がってるほうがいいな」
( ^ω^)「ベッド、起こしてあげるお」
ブーンはベッドの脇にあるリモコンを操作した。ゆっくりと起き上がってくるベッドに背中を預けると、身体の痛みも幾らか楽になった。
('A`)「……さっき、変な夢を見たんだ」
( ^ω^)「夢……? どんな夢だお?」
('A`)「ずっと同じクラスだった、クーって覚えてるか?」
( ^ω^)「……おっおっ、ドクオがよく見てた人かお。覚えてるお」
(*'A`)「べべ、別に好きじゃねーし!」
(;^ω^)「好きなんて言ってないお……」
(;'A`)「あっ……」
自分が自ら墓穴を掘ったことに気がついて少し恥ずかしくなるが、よく見ていたことに気がついていたのだったら、もはや好意を隠す必要もないと思った。
('A`)「……そのクーが出てきたんだよ。……最初は、よくわからない田舎で目が覚めて、ちょっと歩いた先にバスがあったんだ」
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('A`)「急いでそれに乗ったら、運転手が“行き先は貴方の行きたい所”なんて言ってよ。まあどっか知ってる場所に着くだろって思いながら乗ったら…………って、どうした?」
(;^ω^)「…………」
ブーンが汗を流しながら、焦ったように携帯電話を取り出して何かを調べはじめた。
(;^ω^)「……やっぱり……」
('A`)「なんだよ」
(;^ω^)「……それ、都市伝説の“さよならバス”にそっくりだお……」
('A`)「……さよならバス?」
都市伝説。テレビやネットなどでよく見かける単語だが、自分はよく知らなかった。
ただ、“言い伝え”のような物であることは知っている。
(;^ω^)「運転手は、どんな人だったんだお……?」
('A`)「……ギョロ目で、なんか不気味な奴だったな……」
(;^ω^)「……やっぱりかお……」
('A`)「……おい、どういう都市伝説なんだよ」
そこまで似ていると言われると、それがどういう物なのか聞きたくて仕方がなくなった。
-
(;^ω^)「…………死者が乗る、天国か地獄行きのバスだお……」
(;'A`)「ッ……!」
(;^ω^)「天国に行くか地獄に行くかは神様の気分次第らしいけど、神様に賄賂を渡すと天国に連れてってくれるとか……」
(;'A`)「……冗談……だろ……?」
――ふざけた話だ。それが事実なら、クーはどうなる。
クーが運転手に渡していた分厚い封筒が、神様への賄賂だというのか。
('A`)「……なあ。ここ……なんて病院だ?」
( ^ω^)「……したらば病院だお?」
('A`)「……ッ。車椅子……持ってこい……」
( ^ω^)「おっ?」
('A`)「車椅子だ! 305号室に連れてけ!」
(;^ω^)「おっ、わ、わかったお!」
嘘だと言ってくれ。
都市伝説なんて、ただの伝説だ。
-
ブーンが運んできた車椅子に乗り、自分は305号室へと向かった。
( ^ω^)「……ここだお」
('A`)「…………」
305号室の名札には、“クーさん”と書かれていた。
間違いなく、クーはここにいる。
('A`)(きっと大丈夫だ……クーは生きている……。俺と同じように、戻ってきたんだ)
意を決して、車椅子の上から手を伸ばしてゆっくりとドアを開けた。
ζ(゚ー゚*ζ「……どうかしましたか?」
しかしそこにいたのは、一人の看護師だった。
(;'A`)「……あの……クーさんは……」
ζ(゚ー゚*ζ「…………クーさんは、お亡くなりになりました」
(;'A`)「……ッ…………」
嘘では、なかった。
自分が見たのは、ただの夢ではない。
都市伝説なんかでもない。
あそこで会ったクーは、天国へ行ったのだ。
-
霊安室には、クーの遺体があった。
それはとても儚く、美しく、とても死んでいるとは思えなかった。
( ^ω^)「……ドクオ……」
('A`)「…………」
('A`)「…………俺……クーの事……好きだった」
( ^ω^)「…………」
('A`)「……伝えたんだよ、バスの中で」
( ^ω^)「…………」
('A`)「クーはなんて言ったと思う?」
(;A;)「……クーは…………」
どうしてクーは、自分にあんな言葉を言ったのだ。
どうして、“君の事、嫌いじゃないぞ”だなんて言ったのだ。
未練が残ってしまうだけじゃないか。
いっその事自分も死んでいれば、一緒にいられたのではないか。
( ^ω^)「……死にたい、かお?」
( A )「……うるせーな……」
-
( ^ω^)「……クーは多分、天国へ行ったんだお」
( A )「……ああ……運転手に、たんまり渡してたからな……」
( ^ω^)「……ドクオに払えるのかお? そんな大金……。自殺じゃ、天国なんて行けるはずがないお……」
( A )「…………」
払えるわけがない。
クーは何かしらの手段でお金を用意したのだろうが、自分にはそんな手段がない。
( ^ω^)「……死ぬまで、稼げお……」
( A )「…………」
( ^ω^)「……死ぬ気で……死ぬ気で稼いで、やっと死んだ時に渡せばいいお……」
( A )「……ふざけんなよ……なんだよそれ……」
( ^ω^)「……きっとクーも、待っててくれるお」
( A )「……ふざけんなよ……本当によぉ……」
( ^ω^)「……わかってるお」
本当にふざけた話だ。
まるで冗談みたいな話だ。
でも俺は――。
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数年が過ぎて、季節は春を迎えていた。
自分は安いスーツに身を包み、ネクタイを占め直しながらビルの中へと入っていった。
( ・∀・)「あー、君がドクオ君ね。よろしく」
('A`)「はい、よろしくお願いします」
( ・∀・)「俺はモララー。まあ一応君の先輩だな」
モララーというその男は、両手で抱えた書類をデスクの上に置いてそう言った。
( ・∀・)「俺が君の指導担当。ここ、君のデスクね。で、これが今日片付ける書類」
(;'A`)「こ、これですか」
デスクの上に積まれた書類は、十センチ程の高さがある。
何百枚の紙が、ここにあるのだろう。
( ・∀・)「……帰りたい?」
('A`)「…………いや……」
――俺は、決めたんだ。
('A`)「死ぬ気でやります!」
.
-
('A`)青空の下、さよならバスのようです
以上になります。
この小説は、THE BLUE HEARTSの「青空」という曲を元に書きました。
とてもいい曲ですので、是非とも聴いてみてください。
https://youtu.be/v1sJ9Pfm9qk
ありがとうございました!
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ワシコレスキ
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乙乙
これはハッピーエンドなのか……?
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ちょっとファミレスのコーヒー飲みたくなった
乙
-
いい話だった乙
>>19の読んでくれたって所と>>30の占め直しながらって所は誤字かね
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ええやん
-
おつおつ
こういう爽やかな話好き
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