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( ^ω^)ブーンは闇に染まるようです
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それは、自分達にとってあまりにも普通で、あまりにも変哲のない、そんな日だった。
なんとなく講義を休み、なんとなく友人を招き、なんとなくゲームをやっていた、そんな日。
変化は、あまりにも唐突に、あまりにも普通な表情で、やって来る。
変わらない日など無い。日常は常に変化の繰り返し。そんな簡単な事に気がつくまでには、時間を要した。
( ^ω^)「ドクオ、ドクオ。ここの攻略教えてくれお。先に進めないんだお」
('A`)「あ? ここは一旦戻ってスイッチ押してこねぇと先には行けねーよ。……そうそう、その裏にある」
( ^ω^)「さすがドクオだお、なんでも知ってるお」
('A`)「まあ、お前よりは知ってるかもな」
そう言ってドクオはまた自分のゲームへと戻った。コントローラーの小気味よい音がリズムを刻んでいる。
-
( ^ω^)「この調子でテストの解答も教えてほしいお」
(;'A`)「いきなりブーンが満点取ったら、カンニングだろって問いつめられるぞ」
( ^ω^)「さすがドクオ、余裕の満点かお」
小学生の頃から、ドクオがテストで満点以外を取っているのを見た事がない。
自分にもなにか特技があれば、などと考えて楽器を始めたりもしたが、やはり才能は無い様だった。
また何か新しい事を始めてみようか、などと考えていると、ゲームの音だけが虚しく鳴っている部屋に、乾いたノック音が響いた。
('A`)「おい、ブーン。誰か来たみたいだぞ」
( ^ω^)「お、誰かお? ヘルスは頼んでないお?」
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玄関まで小走りで向かうと、ドアの向こう側からも、誰かが走り去っていく様な音が聞こえた。
( ^ω^)「お待たせしましたお……、お?」
ドアを開けたはいいが、そこに人はおらず、代わりに大きなダンボールが二つ置かれていた。
( ^ω^)(宅配便かお? 何か注文した記憶も無いし、宅配便にしては雑だお……)
とりあえず自分宛で間違いないであろうダンボールを抱えようとするが、いかんせん想像していたよりも重い。
ドクオに協力要請して、ダンボールを小汚いワンルームへと運び込む。
-
('A`)「こりゃ……宅配便じゃなさそうだな」
( ^ω^)「やっぱりそう思うかお?」
('A`)「受け取りのサインをしなかったとしても、宅配伝票が付いてない。そもそも、宅配ボックスならまだしも、玄関先に置いていくなんてあり得るはずがない」
ドクオの言う通りだった。あまりにも、不自然。誰だって、不審に思うだろう。自分もドクオがいなかったら、大家さんに連絡するか、しばらく玄関先に置いたままにしておくだろう。
('A`)「爆弾でも入ってるのか?」
(;^ω^)「そそ、そんなまさか……。ブーンはまだ生きてたいお」
(;'A`)「俺だって死にたくはねぇよ。でも確認してみたい気持ちもあるな……」
それは自分も同じだった。だから部屋まで持ち込んだのだ。
-
( ^ω^)「……。よし、開けるお」
('A`)「おお、とりあえずそのでかいのから開けてみろよ」
カッターを引き出しから取り出し、その鋭い刃で慎重にテープを切っていく。
恐る恐る蓋を開けると、何やら厳重そうに保護されている“何か”があった。
( ^ω^)「破っちゃうかお」
そう言って、保護ビニールや発泡スチロールを乱暴に取り出していく。
そうしてやっと見えたものは、黒くて長い、現実では見慣れない物だった。
(;^ω^)「どど、ドクオ、これって…!?」
(;'A`)「ああ……これは……」
(;^ω^)「何かお?」
('A`)「……」
ドクオの呆れたような視線が、痛く感じた。
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('A`)「まあわからなくても仕方ないな。こいつは組み立てないと……」
そう言ってドクオは、その黒くて長い何かを、なれた手つきで組み立て始めた。
('A`)「しかしよく出来てるなこれ……一体どういう……」
ほんのわずか数十秒で、それは完成した。今度こそ、自分にもそれが何なのか理解できた。
(;^ω^)「スナイパーライフル……?」
('A`)「正解だ。よく出来たモデルガンだが……、一体どこのメーカーだ?」
ドクオは一体どこでこれの組み立て方を覚えたのか、という疑問は浮かばなかった。ただただ、脳内では“なぜこんな物が”と繰り返し考えていた。
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( ^ω^)「ほぇー、本当によく出来てるお」
重たいスナイパーライフルを抱えて、舐めるように見回した。仕組みはよくわからないが、弾を込めて、引き金を引けば撃てる事はわかる。もっとも、これは撃てないようになっているのだと思うが。
( ^ω^)「こんなよく出来た偽物もあるのかお……」
(;'A`)「ブーン……これを見ろ……!」
( ^ω^)「お?」
ドクオが慌てた顔つきで見せてきたのは、両手に抱えた拳銃。それともう一つのダンボールに入っていた、銃弾。数は����、数え切れないだろう。
( ^ω^)「弾も拳銃もあるのかお! 早速コスプレして写真撮影を����」
(;'A`)「違うんだブーン、違うんだ。よく聞け、これは恐らく……」
(;'A`)「全部本物だ……」
放り投げられた携帯ゲーム機から鳴るBGMもいつしか聞こえなくなり、自分の脳内は、静寂に包まれた。
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(;^ω^)「な、何かの冗談だお? 本物の銃なんて、この国にあるわけないお」
あるわけない、は言い過ぎだ。自分で言っておきながら、そう思った。この国、エレキ国の法律では銃の所持は規制されているが、警察は軍は本物の銃を持っているし、きっと闇に包まれた危険な人達も頻繁に使っているだろう。
だが、自分の様な人間の目の前に、本物の銃がある事など、ありえないと思ったのだ。いや、そう思っていた。
(;'A`)「いや、多分間違いないな……。バラせばわかるが、モデルガンにしては、発砲するための構造が完成されすぎてる……。それにこの弾の量、おもちゃにしては用意しすぎだ」
(;^ω^)「嘘だお……」
ドクオが言うなら間違いない、そう思ってはいる。だが、理解が追いつかないのだ。誰が、何のために、こんなものを、自分に。
いや、自分でなくとも、こんな不自然な方法で渡さなきゃいけない理由とは一体何だ。
-
(;^ω^)「と、とりあえず警察に電話するお……!」
('A`)「警察!? 何言ってんだ! 警察なんかに言ったら、聴取されて取り上げられてハイ終了だぞ?」
(;^ω^)「わ、わかってるお! それ以外にどうするんだお!」
('A`)「……、使うんだよ」
����何かの聞き間違いか。そう思った。しかしすぐに気がついた。聞き間違いなんかではない。ドクオは確かに、使うんだ、と言ったのだ。
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('A`)「こんなチャンス、二度と来ないぞ。俺の……俺達の人生を大きく変える、引き金になるんだ」
(;^ω^)「何言ってんだお、そんなの、捕まっちゃうお」
('A`)「逃げればいいさ。捕まるまで、逃げ続けるんだ」
(;^ω^)「そんな……、人生、めちゃくちゃになっちゃうお」
('A`)「何言ってんだ? これまでの人生を振り返ってみろよ。めちゃくちゃにしてやりたくなるぞ、俺は」
……これまでの人生。振り返ってみると、確かに、何も無い。何も無さすぎた。
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ーー小学生時代ーー
(;'A`)「む、無理だよ。食べられないよ」
(メ”Д”)「うるせぇ。早く食えよ。食わねぇとその爪剥がすぞ」
ドクオが複数の男の子に、自分の上履きを食べるように強要されている。その現場を、たまたま目撃したのだ。
ここは別棟の奥にあるトイレ。別棟は物置にしか使われておらず、生徒はもちろん、先生も足を踏み入れる事がほとんど無い。
自分は学校で大便をする事が恥ずかしく、時々ここに訪れて、用を足していたのだ。今回も、その予定だった。
そこで目撃した、いじめ。
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( ^ω^)「な、ななな何やってんだお!」
(;'A`)「!?」
(;メ”Д”)「な、なんだお前! 何の用だ!」
( ^ω^)「うんこだお! うんこしにきたんだお! お前らが邪魔でうんこ出来ないお!」
(メ”Д”)「はっ……そうかそうか。じゃあこうしよう。お前はここでうんこしろ。そのうんこを、ドクオに食べてもらおう」
(;'A`)「そっ、そんなの無理だよ!」
(メ”Д”)「うるせぇ!」
いじめっ子大将と思われる男が、床に這いつくばっているドクオに鋭い蹴りを入れた。ドクオはうずくまって唸っている。
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(#^ω^)「……それでいいお。うんこするお。だから道を空けてくれお」
(メ”Д”)「ははっ、よかったなぁドクオ! お前のあったかい昼飯を用意してくれるってよ!」
(;'A`)「そんな……」
トイレの個室へと入り、大きな屁と共に、大きな大便を放出した。我ながら、立派な大便だと思った。
そしてそれを素手で掴み、個室のドアを開ける。
(;メ”Д”)「きっ、きたねぇ!」
(#^ω^)「お前のあったかい昼飯だお」
(;メ”Д”)「なっ……!? モガッ!」
その臭い立つ大便を、いじめっ子大将の口へ、押し込んだ。
-
(;メ”Д”)「おっ、オェェェェ」
(#^ω^)「後ろのお前らの分もあるお。食いたくなかったらとっとと逃げるんだお!」
そう言うと、後ろの取り巻きはすぐに逃げ出していった。残された、いじめっ子大将。
(;メ”Д”)「オエェェ……オェッ……」
(#^ω^)「お前もいつまでここにいるんだお! 早く帰れお!」
(;メ”Д”)「ヒッ、ヒィィィッ」
いじめっ子大将は叫び声を上げながら、吐瀉物と大便まみれの格好で、走り去っていった。
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('A`)「……」
( ^ω^)「……大丈夫かお?」
('A`)「う、うん……ありがとう」
( ^ω^)「いいんだお。ほら、手貸すお」
差し出した右手。それを握り返すドクオの右手。
(;'A`)「う、うわっ! うんこついてる!」
(;^ω^)「おっおっ、忘れてたお。ごめんだお。でもブーンのうんこは綺麗だお」
('A`)「うんこが綺麗なわけないよ!」
( ^ω^)「綺麗だお! 昨日は野菜ばっか食べたお!」
(*'A`)「プッ……あははっ、何それ」
(*^ω^)「おっおっ、笑ったお」
別に笑わせようとしたわけではない。ただ、笑ってくれればいいな、と思っていたのは確かだった。
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('A`)「君、名前はなんていうの?」
( ^ω^)「ブーンは、ブーンだお。君は……ドクオだったかお?」
('A`)「そうだよ! よろしくね、ブーン」
( ^ω^)「よろしくだお、ドクオ」
再び、大便で汚れた手を握り直した。
数日後、ブーンもいじめの対象となり、直接は何もしてこないものの、上履きや鞄にいたずらされる事が何度もあった。
しかし、ドクオと二人でうんこを片手にいじめっ子大将を追いかけ回すと、次の日からはいじめも無くなった。
お互い、友達がいなかった。かけがえの無い友達を得た、と思った。
-
ーー現在ーー
( ^ω^)「ドクオといじめっ子大将を退治したのを思い出したお。ブーンの人生の中で、ドクオとの出会いは、大きな変化だったお」
( ^ω^)「でも……他に何かあったかお……」
いくら振り返っても、いくら遡っても、何もない。
学校へ行き、時には休み、ゲームをし、学校へ行き……。
そんな生活を、今もまだ続けているのだ。
それを当たり前だと思ってしまっては、いけないのだ。
変化が欲しい。そのチャンスが、目の前にある。それは触れてはいけない物かもしれない。
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( ^ω^)「だけど、二人なら怖くないお……」
言葉に出ていた。文脈のよくわからない発言だったが、ドクオは気にする様子もない。
('A`)「俺は、変えてやる。このくそったれの人生を。刺激に満ちた物に」
ドクオは立ち上がってそう言った。そして、右手を自分へと差し出して、もう一度口を開いた。
('A`)「ブーン、お前も一緒にどうだ?」
気づくと、自分はその手を握り返していた。
掌が熱い。これが、自分の熱なのかドクオの熱なのか、それとも全然違う物なのか、わからなかった。
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第1話、以上になります。
初投下でした。
週に一回か二回、気楽に投下したいと考えています。
よろしくお願いします。
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よく見たらダッシュが文字化けしちゃってますね。お許しください。
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面白そう
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なるほど、ダッシュだったのか
乙、懐かしいブーン系のにほい
期待
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( ^ω^)「とりあえず、撃ってみたいお」
('A`)「そうだな、山奥にでも行かないと……。そうだ、お前確か、ベース持ってたよな?」
( ^ω^)「お? 多分クローゼットに入ってるお」
少しかび臭いクローゼットを開けると、散乱した荷物の中に、黒いベースケースが見えた。それを引きずり出して、ドクオに渡すと、不敵な笑みを浮かべて、ベースを取り出した。
(;^ω^)「べ、ベース弾くのかお?」
('A`)「弾かねーよ。中身には興味ねーんだ。重要なのはこっち」
そういって、ベース本体をベッドの上に置いて、ベースケースに入っている他の物も全部取り出した。
そして、そのベースケースに、スナイパーライフルを入れた。
('A`)「……よし、丁度いいな」
(*^ω^)「おお……! なんか殺し屋っぽいお!」
('A`)「アンプもあるんだろ? そっちも貸してくれ」
( ^ω^)「おっおっおっ、いいお」
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小さめのアンプも手渡すと、すぐさまドライバーで分解し、スピーカーを取り出した。そして空っぽになった中身に、銃弾を詰めていった。
('A`)「こんなもんか」
ドクオがベースケースとアンプを担いでそう言いながら、誇らしげな顔をした。
いや、実際には表情を変えてはいないのだが、自分にはそう見えた。
('A`)「さて、山奥に向かうとするかね」
( ^ω^)「いくお!」
二人で原付を飛ばし、遠くの山へと向かう。あまり人のいなさそうな、山奥へ。
うだるような暑さも、風を切って走ると、すぐに消え去った。
(;'A`)「二時間も原付乗ってると疲れるな……」
(;^ω^)「ほんとだお……」
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隣のネック県まで移動し、なんとか到着した山奥。昔ここの川で遊んだ事があったのを思い出したが、さほど楽しくもなかったと気づくと、すぐに忘れてしまった。
ドクオが200mくらいから練習しようと言い出したので、家で印刷してきたターゲットをちょうどいい場所に設置し、いよいよ準備ができた。
('A`)「やっと撃てるな……、待ちに待ったぜ」
( ^ω^)「頑張れドクオ、応援してるお!」
('A`)「いくぜ」
そこから数十秒の沈黙。ドクオは真剣な表情で、ターゲットを見つめている。
ドクオが呼吸を止めているからか、自分まで息を吐き出すのをためらってしまう。
('A`)「――ッ!」
鋭い音が、山中に響き渡った。
('A`)「……いっ、いってぇぇ!!」
ドクオはライフルから手を離し、うずくまって悶えている。
一部始終を見ていたが、ドクオは発砲の反動を抑えきれず、ライフルが暴れていた。
恐らくその衝撃と、慣れない事をやった事で身体が追いつかなかった事もあって、痛みを訴えているのだろう。
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('A`)「なんだよなんだよこれ、ゲームと違うじゃんかよぉ!」
( ^ω^)「……」
当たり前だ、と思った。ここまでいい調子だったので、いざ撃つ時もすごいのだろうと思っていたので、少しだけがっかりした。
しかし、本当にライフルは本物だったのだ。ドクオはわかりきっていたようだが、自分としては、やはり衝撃だった。
('A`)「いてーよ、ちょっと休憩。しかも当たってねーし。ブーン、お前やってくれ」
(;^ω^)「お!? ブーンが撃つのかお!?」
自分が撃つ事になるのは、想定外だった。自分は銃器に詳しくもないし、おもちゃの銃を撃ったことすらろくに無いのだ。
('A`)「ま、試しにな、試しに」
(;^ω^)「い、いっかいだけだお」
持ち方くらいは自分でもわかる。今だってドクオの姿を見ていた。試しに構えて見ても、ドクオには何も指摘されなかった。
(;^ω^)「ターゲットが見つからないお」
('A`)「スコープの倍率を下げてみろ。見つけたら少しずつ上げていけばいい」
( ^ω^)「おっ、なるほど」
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ダイヤルを捻ると視野が広くなる。そうして見つけたターゲットに照準を合わせ、またダイヤルを捻って拡大していく。
(;^ω^)「こんなもんかお……」
あとは引き金を引くだけ。それはわかっていても、躊躇ってしまうのは何故だろうか。
しかし考えていても時間の無駄だと気づいて、すぐに頭を切り替えた。
( ^ω^)「当たる気がしないけど、撃つお」
('A`)「ああ、やっちまえ」
( ^ω^)(ちょっと風が強いお……それも考慮して見るかお)
深呼吸をし、そのまま息を止める。手ぶれを最小限に抑えるためだが、精神的な意味でも、呼吸を止める事で落ち着くような気がした。
そして、引き金を、優しく引いた。
( ^ω^)「……ッ!」
鋭い轟音と眩い光が頭の中に駆け抜けた。
反動は予想を超えるほどのものでは無かった。最小限に、抑え込めた。
( ^ω^)「ど、どうだお?」
(;'A`)「いや見えねーよ。自分で確認してくれ」
それもそうだ、と思いながらもう一度スコープを覗く。低倍率でターゲットに照準を合わせて、少しずつ拡大していく。
そして見えたものは――。
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(;^ω^)「おっ!?」
('A`)「!? どうした!?」
(;^ω^)「みみ、見てくれお!」
すぐさまライフルから離れて、ドクオに交代する。ドクオも同じようにターゲットに照準を合わせていく。
(;'A`)「なっ……えっ……?」
(;'A`)「ど、ど真ん中かよ……」
――銃弾は、ターゲットの中心を貫いていたのだった。
夕暮れになった頃、自分達は自宅へ帰っていた。
200m先のターゲットの中心を撃ち抜いたあと、何度やっても中心以外に当たることはなかった。
500m、800mと距離を伸ばしてみたところ、中心への命中率は下がったが、それでも中心付近を確実に撃ち抜いた。
('A`)「まさか、ブーンに狙撃の才能があるなんてな……」
( ^ω^)「ブーンもびっくりだお……」
未だによくわからない。狙って撃つだけなのに、どうしてドクオとはこうも違うのか。
-
('A`)「明らかに筋肉が足りなかったな、俺は」
確かに、ドクオは華奢な身体をしている。銃を身に着けるのはあまり似合わないと思った。
('A`)「でも狙撃は、知識の方が重要だと思ってたんだけどな」
( ^ω^)「知識かお?」
('A`)「ああ。風向きやその強さ、気温を考え、計算して、着弾地点を予測するんだ」
( ^ω^)「風向きならブーンも考慮したお!」
('A`)「ああ、そうだろうな。だけどそれを勘でやってのけるのが凄いんだよ。普通は経験を積んで身に着くもんだが……、才能があるってのは、そういう事だ」
(*^ω^)「ちょっと嬉しいお」
自分にも何かの才能があったのだと思うと、ちょっとどころではなく、舞い上がってしまうような嬉しさがある。が、ドクオに気を使ってあまり表には出さないでいた。
('A`)「この様子なら、すぐに実行できるな」
( ^ω^)「実行? 何をだお?」
('A`)「何って……、暗殺だよ」
(;^ω^)「あっ、暗殺!?」
驚愕のあまり、思わず立ち上がってしまった。
暗殺とは、つまり、人を殺すのだ。
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('A`)「当たり前だろ。……お前、何を狙撃するつもりだったんだ?」
(;^ω^)「競技にでも出るのかと……」
('A`)「それじゃ何も面白くねーだろ。大体お前、捕まっちゃうおー、って言ってたじゃねーか。わかってたのかと思ったぜ」
(;^ω^)「ブーンの想像力に期待しちゃダメだお」
('A`)「……それもそうだな。まあいいさ。俺の意志は固いんだ。付き合ってもらうぞ」
なんて軽いんだ、と思った。こんなにもあっさりと人を殺す気になるのか、と恐怖も覚えた。
しかし、ドクオの言う事が間違っていたことはない。いつも、自分達にとっての最善を口に出すのだ。
たまに冒険に出てしまうような癖があるが、それでも大きく失敗したような事はなかった。
( ^ω^)「……わかったお。ドクオについていくお。どこまでも」
(*'A`)「ほんとか……! よし、早速だが、計画を話すぞ」
(*^ω^)「もう計画を立ててるのかお! さすがドクオ、頼もしいお」
自分の人生をこれほどまでに変えるチャンスは、もう二度と来ないだろう。ならば、それを逃す手はは無い。そう思っているのもあった。
なんでもいいから、縋り付きたかったのだ。
自分を、変えてみせる。そう心に誓った。
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スナイパーライフルを手に入れてから、二週間が経った。
ドクオの計画を実行する、その日である。
自分とドクオは、原付である場所に移動していた。スナイパーライフルを抱えて。
(;^ω^)(あれだけ練習したんだお……失敗するわけがないお……)
この二週間の間、大学へしっかり通いながら、狙撃の訓練に力を入れた。ライフルは、以前よりも身体に馴染んだように感じている。
クリーニングなどはさっぱり覚えられず、ドクオに任せっきりになっているが、手分けして計画を進められているとも感じた。
('A`)「ここだ。原付を予定の場所に停めるぞ」
到着したのは、この街の中でも一番の高層ビル。どんな場所からでも、このビルを目視することができるほどに、大きかった。
('A`)「顔はできるだけ伏せておけ。帽子も深く被れ。カメラに顔を撮られないようにな。あと手袋も忘れるなよ」
ドクオに言われた通り、帽子をもう一度深く被り直し、滑り止め付きの軍手をはめた。
来客用の駐車場に原付を停め、社員用の裏口へと回る。
ここで、第一の関門が待っていた。
-
(警・i・)「失礼、あなた方は?」
ドクオの予想通り、警備員に声をかけられる。特に怪しんでいる様子もなく、片耳にイヤホンをつけたまま、今まで読んでいた物であろう小説を片手に、椅子から立ち上がった。
('A`)「宅配便を届けに参りました」
(警・i・)「ああ、そうですか、どうぞお通りください」
( ^ω^)(おっ……、よかったお)
特に何か咎められる事もなく、警備員はまた椅子へと戻っていった。
予め、ライフルはベースバッグごと大きなダンボールに入れてきておいた。アンプも同様、もうひとつのダンボールに入れてある。それを二人で一つづつ抱えている。
服装も、既製品の作業着に、有名な宅配業者のロゴを印刷したワッペンをつけたものを着ておいた。何らおかしくはないのだ。
安心して、二人でまた足を踏み出した。
(警・i・)「ちょっと待ってください」
(;^ω^)「!?」
-
油断していた所で、引き止められてしまった。焦りが震えとなって、身体中を襲う。
(警・i・)「どなた様宛で?」
足が地面に貼り付いた様に、重い。振り返る事すらままならない。
しかし、ドクオがすぐ様振り返り、警備員に向かって、口を開いた。その表情は、落ち着いていた。
('A`)「ニダー様宛と、記載されてますが」
(;警・i・)「に、ニダーさんですか。いいですよ、行ってください」
警備員は先程とは打って変わって、引き攣った顔でまた椅子へと戻っていった。
よくわからないが、大丈夫だったようだ。
地面に貼り付いていた足を引き剥がして、まっすぐエレベーターへと向かう。
( ^ω^)「なんで通れたんだお……?」
('A`)「ああ、ニダーはここの代表取締役だ。偏屈な奴で有名だよ。警備員も、わざわざ関わりたくないんだろうな」
( ^ω^)「なるほど……、予習しておいたのかお、すごいお」
自分かあまり役に立っていない様に感じて、少しだけ寂しくなったが、自分のこの後の役目を思い出して、その寂しさもすぐに忘れた。
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エレベーターに乗り込み、最上階へと向かう。想像していたよりもずっと早く、昇っているようだった。
最上階へ到着し扉が開くと、すぐに左手の階段を駆け上がり、更に上の屋上への出口に到着した。
そしてそのドアノブを、捻る。
――が、そのドアは開かない。
(;^ω^)「あ、開かないお!」
('A`)「あー、開いてりゃ楽だったんだがな……。まあいい、ちょっと時間はかかるが、なんとかする」
ドクオはそう言って、アンプの入っているダンボールを開けて、中から小さな工具箱を取り出した。その工具箱から取り出したのは、ドライバー。
(;^ω^)「ど、ドライバーで何するんだお!? ピッキングするんじゃないのかお!?」
('A`)「ピッキングも出来なくはないが、経験不足だからな。時間がかかりすぎる。だったら、この窓を外した方が早いだろ」
ピッキングも出来るのか、と少し驚いた。が、ドアに付いている窓を外せることの方が驚いた。
なんてことはない、外から枠を当ててネジ止めしてあるだけの、簡単な作りのようだ。
ドクオと手分けして、ネジを全部抜き、窓枠ごと取り外した。
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( ^ω^)「ブーンでもぎりぎり通れそうだお」
('A`)「だな、助かったぜ。先通ってくれよ。荷物渡すからよ」
ドクオに半ば押しこまれるように、隙間を通り抜ける。
屋上は、あまり清掃が行き届いていないようだった。
荷物を全てドクオから受け取って、自分は早速狙撃の準備に取り掛かった。その間に、ドクオはこちら側へと来て、自分の準備を手伝ってくれた。
手袋を外し、バイポッドを立て、ライフルを構え、スコープを確認する。何も問題はない。
('A`)「見えるか? あそこの壇上だ」
ドクオは双眼鏡で遠くを眺めながらそう言った。
自分もマガジンを装填して、セーフティをかけたまま、目標が現れる位置を確認する。
( ^ω^)「……確認できたお」
広い舞台が用意されている。その中心にマイクが設置された机がある。あそこに、彼は立つ。
すでに舞台の正面には、スーツを着た複数のカードマンと、鉄製のバリケード、そしてさらに大勢の人々。今か今かと、彼の登場を待っているようだ。
-
('A`)「狙撃されるなんて、思ってもいないだろうな」
( ^ω^)「そう見えるお……。そうじゃなきゃ、こんな外でやるわけないお」
('A`)「この国が、平和すぎたのさ。その平和ボケが、油断を産み出したんだ」
ドクオがタバコに火をつけて、吸い込む。そして、真っ白な煙を吐き出す。
タバコを吸う余裕があるという事は、つまりまだ時間があるという事だ。
('A`)「あのガードマン達は、狙撃された時の対応も全て教えこまれているだろうな。それは警察も同じだ。だが、実績の無い事件の対応なんて、まともに統率も取れないだろうな」
('A`)「だから、オレたちは捕まらない。この一回だけなら、ほぼ確実にな」
-
二回目があるのかどうかは、わからない。だが、たとえ二回目があったとしても、ドクオは確実に捕まらないよう計画を練るだろう。
ドクオがイヤホンを手渡してくる。小型のラジオに繋がっているようだ。
そのイヤホンから聞こえる、アナウンサーの声。やがて、舞台横に控えた司会の音声に切り替わった。
そしてその声が、彼の登場を促した。
('A`)「――ついに来たか」
ドクオはタバコを携帯灰皿に詰め込み、もう一度双眼鏡を覗いた。
自分は、照準をぶらさない。
( ^ω^)「ついに来たお」
( ^ω^)「――荒巻国王が」
その男は、大勢の人々の拍手に招かれて、壇上へと立った。
-
第2話、以上になります。
レスありがとうございました。とても励みになります。
続きも書いてあるので投下したくてうずうずしてるのですが、ゆっくりお付き合い頂けたら幸いです。
よろしくお願いします。
-
ゆっくりで良い。楽しみにしてる
-
乙
続きが気になるな
-
音はどうなるんだ
-
おもしれえええええええええ
-
レスありがとうございます。恥ずかしい話ですが、嬉しくて何度もレスを読んでしまいます。
>>41
音に関しては第5話で軽く触れますので、それまでお待ちください……。
では3話の投下をはじめます。
-
荒巻国王。この国の最高権威者であり、最高権力者である。温厚な人柄で、国民の信頼も厚い。
そんな人物が、両手を振り上げて壇上へ現れる。狙撃してくれ、と言わんばかりに。
彼はきっと、この国に憂いているのだ。もう自分には耐えきれない、そう思っているのだろう。だから、自分に殺されたいと願っている。そうに違いない。
そう考えることで、固まっていた右手の人差し指を柔らかくした。
/ ,' 3『大変お待たせいたしました。今日は日差しの強い中、お越しいただきありがとうございます』
イヤホンから聞こえる聞き慣れた声。大きな拍手も聞こえてくる。
今からこの会場に、悲鳴とどよめきを与えるのは、自分が放つ弾丸だ。
('A`)「……いいんじゃないか、そろそろ」
( ^ω^)「わかったお」
瞬きを一回。深呼吸を一回。息を止め、セーフティを外す。
人差し指は、軽い。この指先一つで彼の命を左右するのだ。なんて軽い命なんだ、と思った。
( ^ω^)「……」
( ^ω^)(さよならだお)
そう思って、引き金を引く。
-
(;^ω^)「!?」
全身が、震える。今まで経験したことのないような、小刻みな震えだ。
恐怖からか? 抵抗からか? 答えはわからない。
(;'A`)「ブーン、どうした!?」
よくわからない。
命なんて、軽いものじゃないか。
しかしそのあまりにも呆気ない命の軽さが、震えを呼んでいるのはわかる。
(;^ω^)「簡単すぎるんだお……! こんなにも、簡単なんだお! ブーンが指を動かせば、国王はすぐに死ぬんだお!」
('A`)「……そうだな、その通りだ」
('A`)「命は軽すぎる。今俺がお前をちょっと押せば、ビルから落ちてお前は死ぬ。そんな紙一重を、皆生き抜いているんだ」
('A`)「すごい事だよ。皆、その紙一重を回避して、人を殺さずにいるんだ。だから、皆生きているんだ」
('A`)「それを、自由にする力が、お前にはあるんだ」
力。今までの自分に、そんな物があっただろうか。いや、無かったはずだ。
選択する力がなかった自分は、かろうじて残された一つの道を誰かに歩かされているような、そんな気がしていた。
-
('A`)「もう強制はしない。自由に、好きな方を選んでくれ。お前がどちらを選択しても、否定はしないよ」
('A`)「お前を一番尊敬している、親友だからな」
震えが、止まった。
合わなかったはずの照準が、もう一度ぴったりと、国王に重なった。
( ^ω^)「ブーンも、ドクオを尊敬してるお」
そう言って、息を吸い込み、再び止める。
そのまま、羽を持ち上げるような優しさで、人差し指を動かした。
( ^ω^)「ッ!」
心地よく感じられる、手応え。
放たれた弾丸は、まっすぐに国王へと向かう。
一瞬で照準を戻し、再び国王を見つめる。
/ ,' 3『いつか遠い先の未来には、きっと����』
そこからは、沈黙だった。
国王の頭は弾け、赤い霧を後方へとばら撒いて、やがて崩れ落ちた。
( ^ω^)「殺したお……」
( ^ω^)「殺したお……!」
-
>>46 また「――」を文字化けさせてしまいました。失礼しました。
-
全身が粟立つのを感じた。血液が逆流しているような、冷たい点滴が流れ込むような、感覚。
射精した時の感覚にも似ている。
('A`)「流石だよ。お前、すげえよ。一発で、仕留められた」
ドクオは、喜んでいるようだった。自分も、似たようなものだと思った。
('A`)「だが、余韻に浸っている時間はない。誰かが音で気づいたかもしれない。急いで帰るぞ」
ドクオがラジオと双眼鏡、潰したダンボールを大きな鞄に仕舞い込み、抱えて立ち上がる。
自分も、ライフルをベースバッグに入れて、立ち上がった。
ドクオが、反対側の隅へ向かって歩き出す。
(;^ω^)「ど、どこへ行くんだお!? ドアはあっちだお……って、あれ?」
ドアを見ると、外したはずの窓がしっかりと戻されている。
(;^ω^)「ど、どういうことだお!? 内側からしか戻せないはずだお!?」
('A`)「ああ、接着剤で戻しておいた。ネジ穴も、うまく誤魔化してな」
(;^ω^)「そんな……それじゃ帰れないお!?それともまさか、そこから降りる気じゃ……」
('A`)「事前に話しただろうが。そのまさかだよ」
-
そういえば、確かにそんな話を聞いたような気がする。しかし正直に言って、自分は狙撃の事で頭がいっぱいだったのだ。計画も、あまり頭に入っていなかった。
(;^ω^)「で、でもどうやって降りるんだお!? すごい高さだお!?」
('A`)「これだよ。雨水を流す、排水パイプさ。
一番下までつながってる。対面のビルのこっち側には、でこぼこガラス以外の窓がない。つまり、下から見上げない限り見えないのさ」
なるほど、と思った。だが、まだ腑に落ちない。
(;^ω^)「エレベーターで降りたほうが早いんじゃないかお?」
('A`)「また警備員の前を通るのか? 配達に来た業者が、違う荷物を持って帰ったらおかしいだろ」
(;^ω^)「じゃあじゃあ、ダンボールに戻せばいいお! 受取拒否されたって言えば……」
('A`)「これ以上、カメラに映るリスクを増やしてどうする。それにもう、窓は外れねーんだ。どの道、ここから降りるしかないんだよ」
(;^ω^)「おっ……」
先ほどの選択の自由はどこへ行ったのか。突っ込みはしなかった。
-
('A`)「まあ、ここで死ぬくらいの運しか持ち合わせてないんなら、生き残ったって待ってるのは死刑台だろうよ」
('∀`)「そして何より、こっちの方が面白いじゃねーか」
ドクオの言葉は、妙な説得力がある。そして、知能も持ち合わせている。道を間違えなければ、政治家や大企業の社長にもなれただろう。
ドクオもそれをわかっているはずだ。だが、この道を選択したのだ。それが、ドクオの決意の固さを表している。
(;^ω^)「おっおっ、じゃあ頑張るお……」
ドクオが先に、パイプに掴まって、するすると降りていく。
自分も手袋をはめて、後を追うように降りた。
(;^ω^)「ドクオ、怖いお」
('A`)「お前が落ちたら俺にぶつかって俺も落ちるんだ。だから絶対に落ちるなよ」
(;^ω^)「そんな事言われたら余計に緊張するだけだお」
('A`)「何言われたって緊張は治まんねーだろ。だったら、震えさせてるより奮い立たせた方がいい」
さすがドクオだ。言う事が全てかっこいいのだ。顔はともかく。
緊張は解けないが、恐怖心は少しだけ拭えた気がする。
-
思ったより、簡単に降りれる。これが昇りだったら、こうはいかないだろう。
上から見たらとてつもない高さに見えたが、降りてみると意外にも遠くない。
やがて地面が近づいてきた事で、緊張もほとんど無くなった。その時だった。
(;'A`)「!? ブーン、ちょっと待て」
(;^ω^)「おっ!?」
下を見ると、裏口から出てきた一人の男が、タバコに火をつけたのが見えた。
先程会話した、警備員だった。
(警・i・)「ふふーんふふー♪」
警備員は、鼻歌を歌いながらタバコを吹かしている。
(;^ω^)「やばいお腕がしんどいお」
(;'A`)「オレもだよ……」
(;^ω^)「どうするんだお……」
(;'A`)「耐えるしかないだろ……」
恐らく休憩に入ったのだろう。だとしたら、一体何分ここに留まるのだろうか。
腕の筋肉が、小刻みに震える。こんな事がなければ、楽なはずだった。
やがて、脚の筋肉も震えだした。動かし続けていればあまりに気ならないものの、静止し続けるというのは、思いの外苦痛だった。
そんな時。
-
(;^ω^)「おっ!?」
(;'A`)「デカい声出すなバカ。 どうした?」
(;^ω^)「スマホが……ポケットから落ちそうだお……!」
(;'A`)「なっ……なんでそんなもんポケットに入れてんだよ。早く戻せ」
(;^ω^)「む、無理だお! 手なんか離せないお……おっ!?」
(;'A`)「!?」
スマートフォンが、自分のポケットから姿を表した。やがてそれは、真っ逆さまに地面に向かって落ちていく。
(;^ω^)「おおおっ!?」
だが、片手も離せない。筋肉には自身のある方だったが、自分の体重を支えるのに精一杯だったのだ。
スマートフォンは自分の足元を通過して、ドクオの元へ向かっていく。
(;'A`)「くそっ!」
その時。
ドクオが両手をパイプから離したのだった。
なんて事だ。スマートフォンを救うために自分の命を投げ出す人間がいるだろうか。
いるわけがない。だが、ここにいた。
-
(;^ω^)「どどど、ドクオ!」
ドクオは、落ちてきたものを掴むのにはリスクが高すぎると判断したのだろう。確かに、落下速度を合わせて掴んだ方が確実だ。多少の誤差は出るかもしれないが、この場合はあまり関係がなかった。
予想通り、ドクオはスマートフォンを掴み取り、すぐにポケットへ入れた。
(;^ω^)「さ、さすがだお」
だが、リスク回避できたのはそこまでだ。
ドクオはすぐさまパイプに掴みかかり、落下速度を落とし始めた。
そして鳴り響く、高音。
(;^ω^)「!?」
それは、手袋の滑り止めゴムとパイプの擦れる音だった。
やがてドクオは遥か下方で停止したが、恐らく警備員がこちらを見てしまう。
(;^ω^)(お、おわったお……)
そう思った。今ここで見つかってしまっては、すぐに通報されてしまう。そうなると、後が危うい。
しかし、ドクオは安堵した表情をこちらに向けている。
警備員がこちらに気づくという事にまで頭が回っていないのか? いや、ドクオに限ってそれはありえない。
だとすると、絶対に大丈夫だという確信があるのか。
-
(;^ω^)「……」
緊張の一瞬だった。世界が停止したような、そんな気がするほど、長い時間に感じた。
――いや、そうではない。実際に、もうすでに一分以上経過しているのだ。
警備員は、先程の音になど全く気づいていない様子で、やがてタバコを捨てて裏口へと戻っていった。
(;^ω^)「よ、よかったお……でも、なんでだお?」
('A`)「俺には確信があったんだ。あの警備員は、絶対に音には気づかないという確信がな」
また下に向かってゆっくりと降りながら、ドクオからその内容を聞いた。
('A`)「覚えてるか? 俺達が裏口から入った時の警備金の格好を」
(;^ω^)「お? 確か、イヤホンを付けてて、小説を片手に持ってたお」
('A`)「その通りだ。つまり休憩中も、イヤホンを付けてたから、聞こえなかったんだ」
(;^ω^)「おっおっ? でも、片耳しかない無線のイヤホンじゃないのかお?」
('A`)「ああ、最初は俺もそう思った。だがよく見てみると、あれはこの国で一番売れているスマートフォンの付属イヤホンだったんだ」
-
('A`)「そして休憩中は、鼻歌を歌っていただろ?」
( ^ω^)「じゃあつまり、両耳にイヤホンをしていると、確信めいたものを感じたのかお……」
('A`)「そういう事だ」
という事は、あの警備員は音楽を聴きながら仕事をしていたのだろうか。少し考えたが、そんなことは関係がなかったので、考えるのをやめた。
( ^ω^)「でももし片耳にしかつけてなかったらどうする気だったんだお?」
('A`)「その時はその時だ。でも、スマホを地面に叩きつけるよりはよっぽどマシだ。音だけなら、上からかどうかわからない可能性もある。気にしない可能性もある。だろ?」
(;^ω^)「その通りだお……迷惑かけたお……」
自分の雑さを、恨んでしまう。もしドクオがパイプをつかめずに落ちていたら、間違いなく死んでいただろう。
( ^ω^)「それにしてもよく落ちながらパイプ掴めたお」
(;'A`)「あれに関しては賭け要素が強かったな。でもまあ、荷物もそんな重くないしな。結果的に掴まれたからよかったよ」
-
会話をしていたら、あっという間に地面に到着していた。
急いで原付を走らせ、風を切る。
これで、終わったのだ。
自分の部屋に到着すると、疲労感が雪崩のように押し寄せてきた。
ハプニングもあった。しかし、結果的には全て計画通り進んだのだ。もっとも、自分は計画をあまり覚えていなかったのだが。
( ^ω^)「終わったお」
('A`)「ああ、終わったな」
なんだろうか、この感情は。後悔とも違う。達成感とも違う。
自慰行為を終えた後のような、やるせなさや悟りに近い感覚と似ている気がした。
( ^ω^)「ブーンはもう眠いお」
('A`)「俺もだ。今日は泊まってく。なんならもう寝る」
テレビからは、アナウンサーが国王暗殺について長々と語っている。
警察は早くも特別捜査本部を設けたようだ。異例の早さだろう。
国王暗殺自体が、異例の出来事だからだ。
( ^ω^)「ドクオ……これからもよろしく頼むお」
返事は無い。ふとドクオを見ると、もうすでに眠りについていた。
自分も眠りにつこう。明日の講義は、午前中からだったか。
人の……それも国王を永眠させておいて、自分も眠りにつくとは、不思議な感覚だ。
( ^ω^)「おやすみだお……」
意識は海底に沈んでいくように、安らかな感覚を残しながら、眠りの底へと落ちていった。
-
第3話、以上になります。
次回は今週中には投下します。
よろしくお願いします。
-
おつ
-
乙
ゆっくりでもいいから完結させてくれよな
-
おつありがとうございます…!
完結までのプロットは大体出来上がっているのですが、途中が抜けてたりするのでゆっくりやる事になりそうです。
-
乙
-
クッソ面白いぞ
乙
-
レスありがとうございます。
今までは小説を書いても途中で投げ出してたのですが、誰かに読んでもらえるというだけでやる気が保たれています…!
では、第4話の投下を始めます。
-
翌日、また大学へ足を運んだ。前日も来たのに、何故だかとても久方ぶりのような気分だ。
それほどまでに、自分はこの世界から遙か遠くへ離れてしまったのだろうか。
だが、こうして変わらず講義を受けることで、自分はまだこの世界に存在してもいいのだと思えてくる。
講義が終わって、椅子から立ち上がって退室の準備をしていると、誰かが自分のもとへやってきた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ぶ、ブーン? ブーンだよね?」
( ^ω^)「おっ、ツンかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「怖い顔してるから別人かと思ったじゃない」
何故か疑問符を投げてきた少女は、高校で仲良くなったツンだ。縦ロールの金髪が特徴的な、顔立ちのいい少女だった。
自分より一歳年下であり、今年入学したばかりで現在大学一年生になる。
自分が大学に入ってから連絡が途絶えてしまっていたが、一ヶ月ほど前に偶然にも同じ教室で再会したのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「……で? どうしてそんな怖い顔してたわけ?」
教室から退室し、ロビーに置かれた椅子へと移動して、改めてツンの疑問を聞くことにした。
-
( ^ω^)「お? そんな怖い顔してたかお? 顔だけに“かお”、なんつって」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(;^ω^)「睨まないでほしいお」
本当に怖い顔をしていたというなら、誤魔化さなければならない。そう思って必死で絞り出した冗談だったが、どうやら逆効果だったようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「あんたそんな冗談言わないでしょ普段。やっぱ様子おかしいわよ」
( ^ω^)「うーん……そんなことないお。ブーンだけに“うーん”、なんつって」
ξ゚⊿゚)ξ「私は真剣に聞いてるのよ」
(;^ω^)「ご、ごめんだお」
怒らせるとわかっていてもふざけたくなる。ツンはそういう相手なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、もしかして国王が暗殺された事件の事……?」
案外的を射ている、と思った。ツンと自分とでは、意味合いが大きく違ってくるが。
-
( ^ω^)「それについて考えてたんだお。ちょっと、びっくりというか」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりか。そうね……私もショックよ」
やはり皆、ショックなのだろうか。だとしたら、やった甲斐があったとも言える。政府が大騒ぎしたところで、国民が皆無関心では、意味がないように感じるのだ。
しかしこの話を続けていてもあまり良い気分ではない。せっかく普通の世界にいるのだから、普通の生活を送りたい。
( ^ω^)「ツン、付き合ってくれないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「は!?」
ξ////)ξ「そ、そそそれはつまりえっと……ぶ、ブーンは私の事……すす……」
( ^ω^)「今日ブーンの部屋でドクオとピザパーティやるんだお。それに付き合って欲しいんだお」
ξ*゚⊿゚)ξ「……」
ξ////)ξ「な、ななななーんだ、そういうことね! べべ別に私はブーンの事なんてなんとも思ってないんだからね!」
ξ////)ξ「で、でもそれくらいは付き合ってあげない事もないわよ!」
-
(;^ω^)「お、落ち着いてくれおツン、何言ってるのかよくわかんないお」
話が噛み合っていないようだった。ツンが何を喋っているのか、まるでわからなかった。
ξ*゚⊿゚)ξ「なんでもないわよ! なんでピザパーティなのかは疑問を感じるけど、行くわ」
('A`)「なんの話だ?」
同じく講義を終えて来たのであろうドクオがやってきて、もう一つの椅子に腰掛けた。
ドクオの許可は取っていないが、特に嫌がる事もないだろう。高校の頃はこの三人でよく遊んだのだ。
( ^ω^)「今日のピザパーティ、ツンも呼んだお。構わないお?」
('A`)「おお、歓迎だ。なんたって今日は、ピザ食い放題だからな」
(*'A`)「ピザ……早く食いたいな。こうしちゃおれん、もう宅配予約しておこう!」
(*^ω^)「おっおっ、ブーンにも見せてほしいお」
ドクオと自分は、ピザが好物だった。特に、薄いクリスピー生地のピザには目がない。
-
ξ゚⊿゚)ξ「でもなんでパーティなのよ。何かの打ち上げ?」
('A`)「まあそんなとこだ。撃ち上げちまったのさ」
ξ゚⊿゚)ξ「……? ドクオの言い回しはよくわからないわいつも」
( ^ω^)「無駄に格好つけるからだお。でもそれが似合ってるのもすごいお。さすがドクオだお」
('A`)「ま、俺にかかればそんなもんだ。それより、早くピザ選んでくれよ! 俺はもう我慢できねえんだ!」
(;^ω^)「我慢しきれなくてキャンパスに届けさせるのだけはやめてほしいお」
('A`)「その手があったか! ええい、前夜祭だ」
ξ゚⊿゚)ξ「もう当日、そしてまだ午前よ、午前」
普通の大学生活というのは、きっとこういう物なのだろう。
自分は、この生活に不満を感じていたのだろうか?
その疑問に対する答えを探すのは、今はやめておく事にした。
その答えから導かれる結末は、自分が望んでいるような物ではないという確信があったからだ。
そんな考えも、夜を迎え、宅配で届けられた大量のピザを目の当たりにした時には、すでに忘れていた。
-
(*'∀`)「これだこれ。バジルソースがたまんねぇ」
(*^ω^)「熱々のピザ、久々に食べたお」
ξ*゚⊿゚)ξ「やだ、結構美味しいじゃないこれ……」
皆それぞれが好んで注文した物も、分け合って食べている。他にも、定番のメニューや新メニューなどもいくつか注文しておいた。
とても三人で食べ切れる量には見えない。
ξ゚⊿゚)ξ「思えば、三人でこうやってご飯食べるの久々ね」
( ^ω^)「確かにそうだお……。ドクオとブーンは家が近いからよく遊んでたけど、ツンは寮だから仕方ないお」
('A`)「門限、厳しいのか? 大学生にもなってそりゃねぇだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「さすがに門限があるわけじゃないけど、帰宅が遅くなるのがあまり高頻度だと、良くはないわね」
どこも大体、そういう物だろう。注意こそされないが、控えめにするのが暗黙の了解らしい。
親が心配してわざわざ寮生活をさせているのだから、当然といえば当然だった。
('A`)「まあ、たまには来いよ。汚くて狭い部屋だけどよ」
(#^ω^)「ここはブーンの部屋だお、汚くて狭いは余計だお」
-
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、そうするわ。せっかく同じ大学に入ったんだし」
( ^ω^)「偶然じゃなかったのかお?」
ξ*゚⊿゚)ξ「なっ……ぐ、偶然に決まってるでしょ!? 何言ってんのよ! ブーンがどこの大学に入ったかなんて覚えてなかったわよ!」
( ^ω^)「そうかお、まあそれはそれでいい事だお」
('A`)「……」
三人にとって久々の宴も、やがて終わりを迎える。
ドクオとツンを家まで送り届けて、一人で暗い夜道を歩いていた。
足音一つ一つが、気持ちのいいリズムを刻んでいる。
やがてその足音は、二重に、影を引き連れて歩きだした。
「動かないでほしい」
(;^ω^)「!?」
突然現れた声に、背中に硬い物を押し付けられた。カチリ、という小気味のいい音が耳まで届いてきた。
「まずは、よくやってくれた。予想通り……いや、予想を遥かに上回る出来に、感謝の言葉もない」
(;^ω^)「だ、誰だお!? なんの話だお!?」
-
「そうだな……バーボンと名乗っておこう。君達を、ずっと見ていた」
君達。確かにこの男はそう言ったのだ。話の流れから察するに、この男は間違いなくスナイパーライフルを届けた人物だ。
「今日はただの挨拶だ。ついでに報酬の一部を置いておこう。残りは、これからの活動次第でまた渡そう。これからもよろしく頼むよ」
何かを地面に置いた音が聞こえた。その瞬間、背中にあった異物感がなくなり、走り去っていく足音が聞こえた。
(;^ω^)「ま、待ってくれお!」
咄嗟に振り返るが、見えたのは街灯に僅かに照らされた青いズボンだけだった。
足元を見ると、異様なほど大きく膨らんだ封筒が置かれている。それを拾い上げて中身を取り出した。
(;^ω^)「なっ……嘘だお……!?」
男は報酬と言っていた。確かに報酬には違いない。中身は金だった。
しかし、その金額が問題だったのだ。
(;^ω^)「一千万はあるお……」
札束を目の前にして目が眩むというのは、こういう事を言うのだろうか。
いや、本当に目が眩んでいる。
膝の震えが止まらない。それはやがて、地面にキスをした。
-
(;'A`)「一千万だと……」
翌日の夕方、ドクオを自分の部屋に呼んで現金を見せた。
これが報酬の一部だというのだから、恐ろしい。
(;'A`)「これ、偽札なんじゃねーの?」
(;^ω^)「わ、わかんないお……。でも、たとえ偽札でもこの出来とこの量はやばいお」
恐らく、本物なのだろう。本物と見比べても、違和感は何も感じられなかった。もっとも、素人目では、の話だが。
('A`)「……まあでも、国王暗殺の報酬が一千万じゃあ安すぎるくらいか。残りが幾らなのかわからんが」
( ^ω^)「でもお金がもらえるなんて思ってもいなかったお」
('A`)「そのバーボンとかいう男も、まさかいきなり国王を殺すとは思ってもいなかっただろうな」
('A`)「報酬を用意しておいたという事は、いずれそういった人達を暗殺するよう仕向けるつもりだったんだろうが……」
あの謎の男は、これからもよろしく頼む、と言っていた。つまり、この暗殺を続けてほしいということだ。
次の事なんか、まだ考えてはいない。警察の特別捜査本部がどう動いてくるかまだわからないからだ。
-
('A`)「そういや、これを見て欲しいんだ」
( ^ω^)「なんだお?」
ドクオは鞄からノートパソコンを取り出し、何やら操作して、こちらに向けた。
画面に映し出されているのは、一つの動画だった。
( ^ω^)「記者会見、かお?」
('A`)「そうだ。真ん中のデカい奴が、特別捜査本部の管理官……要するにリーダーの、ショボンだ」
(;^ω^)「なんか顔の割に怖いオーラが出てるお……」
('A`)「こいつについて調べ上げたんだが、ポジション警察署の署長らしい。ポジション警察署に特別捜査本部が置かれたから、そこで管理官になったってわけだ」
-
(;^ω^)「よくわかんないお」
('A`)「まあそうだろうな。で、こいつの実績がすごいんだ。フレット大学を首席で卒業、警察ではなかなかのスピードで出世してる。ちなみに、こいつの関わった事件の犯人逮捕率は100%だ」
フレット大学といえば、ここ首都フレットにある、この国で一番と言われている大学だ。
そこを首席で卒業となれば、ドクオと同等かそれ以上だろう。
ドクオは目立たないように生活しているが、本当はそれほどまでにすごいのだ。
('∀`)「滾るぜ、燃えるぜ。俺を楽しませてくれそうな相手が現れたわけだ」
ドクオは、不敵な笑みを浮かべて、またパソコンを操作し始めた。最近は、以前に比べてとても楽しそうに見える。
( ^ω^)「なにしてるんだお?」
('A`)「ああ、捜査本部のコンピューターをハッキングしたんだ」
-
(;^ω^)「なっ、ブーンの回線で何してるんだお!」
('A`)「足はつかねーよ、大丈夫だって。それよりも見てくれよこれ」
そう言って、またノートパソコンをこちらに向けてくる。が、文章ばかりで自分にはあまりよくわからなかった。
(;^ω^)「口で説明してくれお」
('A`)「しょうがねぇなぁ……。捜査本部は、早くも狙撃場所の特定が出来たみたいだ」
(;^ω^)「ま、まじかお。顔とかばれてないかお」
('A`)「さあな。今日その捜査に入るらしい。ま、結果はお楽しみって事だ」
ドクオは余裕そうな表情で、またパソコンを操作し始めた。
自分は、緊張で胸のあたりに重たい鉛を抱えたような気分になってしまった。
早く結果を出してくれ。そして、何も有力な手がかりが見つからないでくれ。そう祈るばかりだった。
-
第4話、以上になります。
次回の投下は来週の火曜あたりまでを予定してます。大体5日以内で……。
よろしくお願いします!
-
乙
-
乙 期待
-
おつおつ
ピザ食いてぇな
-
乙
-
おつおつ
-
乙ありですピザ食べたいです。
睡眠時間を取るのに精一杯になってあまり進んでいないけれど、第5話投下します。
-
����ニダーコーポレーションビル����
( ・∀・)「わざわざ管理官が現場に出向かなくても」
(´・ω・`)「いいんだ。俺がそうしたいんだ。この方が、状況がわかりやすいしな。それと、管理官はよしてくれ」
確かに、わざわざ自分が出向く必要はない。捜査本部も、使えない人間ばかりではないのだ。
だが、いつもそうしていた。この事件に限っては、特にそうしたかったのだ。
( ・∀・)「そうですか、ではショボン警視と呼ばせていただきます」
(´・ω・`)「その方がしっくりくる。俺がいては、捜査がしづらいか? モララー警部」
( ・∀・)「いえ、決してそのような事は。心強いです」
( ・∀・)(やりづらいに決まってるだろうが。あんたは椅子に座って指揮取ってりゃいい物を、いつもでしゃばりやがる。おかげで俺も警部止まりだ)
モララー警部は出世欲の強いタイプの男だ。自分の存在を疎ましく思っているのは、間違いないだろう。
-
あっ、一行目またダッシュが……。出落ちですねすみません。
――ニダーコーポレーションビル――
です。
-
(´・ω・`)「まあ、お前達の邪魔はしないさ。モナー警部はどこにいる」
( ・∀・)「モナー警部は監視カメラの映像をチェックしています。犯人と思われる人物二人を見つけましたが、画像が荒く、顔までは割り出せそうにないと」
(´・ω・`)「そうか。角度から身長を割り出すように伝えておいてくれ」
( ・∀・)「了解です」
自分は、現場が好きだった。警視まで昇格して、現場に出向く機会が減ってしまったため、こういった大きな事件を待ち望んでいたのだ。
特にこの事件は、自分を大いに楽しませてくれるだろう。そう思っていた。
胸ポケットの中にある、ICレコーダーのスイッチを入れる。帰ってから現場の状況を明確に思い出すための、癖だった。
聞き込みにも役に立つ。
(´・ω・`)「狙撃場所はここか」
( ・∀・)「そうですね。周りに邪魔なものが一切無いので、誰でもここを選ぶでしょう。だからこそ、場所の特定も楽でしたが」
銃弾は、国王の頭を貫通し、壇上のセットに入り込んでいた。その角度から見ても、ここ以外の場所はありえなかったのだ。
-
(´・ω・`)「上手い場所があったものだな。会場まで一直線に、邪魔がない」
( ・∀・)「そうですね。ですが、未然に防げたとは思えません」
(´・ω・`)「そうだな。危機感が足りなかった。国王暗殺は、この国で初めての事だ」
自分ですら、想像もしなかった。恐らく、誰も考えもしなかっただろう。だからこそ成し遂げられたのだ。
(´・ω・`)「発砲音については、どうだ?」
( ・∀・)「ここの社員の話によると、一度大きな音が聞こえたため、一応屋上まで確認しに来たらしいのですが、人影もなく通報もしなかったとの事です」
(´・ω・`)「ふむ……すぐに逃走したか」
( ・∀・)「そのようですね。一発で国王の頭を撃ち抜いたとなると、相当な腕の持ち主でしょうね」
(´・ω・`)「そうだろうな……。軍人か、或いは類稀なる才能の持ち主か」
( ・∀・)「才能と銃を両方持ち合わせている事自体が、恐ろしいですよ」
その通りだ、と思って、深くうなずいた。
この国でそういった人物を探そうとしても、滅多にいないだろう。
-
(´・ω・`)「指紋は出たか?」
( ・∀・)「いえ、怪しい物は一切。ですが、薬莢が残されていました。恐らく指紋も検出されるでしょう」
(´・ω・`)「ほう。大きなミスだな」
( ・∀・)「ええ。だからこそ、怪しいとも思えますが」
モララーは頭の回る男だ。捜査本部の中では、自分に次いでいるだろう。自信家で扱いにくいところもあるが、自分の命令には従ってくれた。
(´・ω・`)「ドアの窓を外して屋上に出たのはわかる……が、何故もう一度ネジで取り付けなかったんだ?」
( ・∀・)「不可解なんですよね、それが」
-
(´・ω・`)「考えられるとしたら……、カメラに映るリスクを極力減らすために、直接屋上から降りたか」
( ・∀・)「いやぁ、いくらなんでもそれは……」
(´・ω・`)「冗談ではないぞ、モララー」
そう言うと、モララーは少しだけ眉を潜めたが、それを悟られないように顔を下に向け、もう一度口を開いた。
( ・∀・)「……すみません。だとしたら、雨水用の排水パイプでしょうか」
(´・ω・`)「だろうな。まあ、手がかりは何もないだろうが……」
だが、わざわざ命をかけてまで、監視カメラに映るリスクを回避する必要があるのだろうか。
この推理が間違っているのか、それとも犯人の頭がおかしいのだろうか。
……いや、こうやって自分の頭を悩ませる事が一番の目的と言えるかもしれない。
( ´∀`)「ショボン警視」
(´・ω・`)「モナーか。どうした」
( ´∀`)「例のカメラの映像は署に持ち帰って調べてみます。それと、事件当日に犯人と思われる男二人と接触したという警備員がやってきまして」
(´・ω・`)「ほう、なら俺が直接話を聞こう」
-
一階の警備室前に戻ると、一人の男が他の警官と何やら話をしていた。
(´・ω・`)「すみません、ちょっといいですか」
(警・i・)「あ、はい」
(´・ω・`)「当日、例の二人とどのような会話を?」
(警・i・)「会話といいますか……細身の男が宅配業者を名乗り、私は通過を許可しただけでして」
(´・ω・`)「もう一人の人物は」
(警・i・)「そっちは特に何も……、ただやたら大きい荷物を抱えていただけでした」
(´・ω・`)「ほう。年齢と性別はわかりそうですか」
(警・i・)「割と若かったように思います。二十代から三十代くらいの男性、でしょうか」
(´・ω・`)「なるほど。では、後はこちらの警官に話をお願いします」
-
あまり有力な情報は手に入りそうにない、と思った。
唯一、年齢と性別だけが捜査の参考になる。
だが、犯人を絞り込むにも、情報が足りなさすぎる。これでは、全国のアリバイのない二十代男性全てが容疑者になってしまう。
カメラの映像からも、あまり大した手がかりは出ないだろう。
思っていた以上に、犯人は頭の良い人物だ。
(´・ω・`)(頭のいい人物か……)
自分にも匹敵するような頭脳の持ち主であれば、絞り込む事は可能だ。それも、極僅かに。
あまりこういった遠回しな捜査はしたくないが、意味のない事にも思えなかった。
(´・ω・`)(リストアップするだけしてみるか)
現場にはこれ以上いても仕方がない。署に戻って、犯人のプロファイリングに移った方が良さそうだと判断した。
署に戻ると、何やら騒然としていた。部下が自分を見つけると、すぐに駆け寄ってきた。
( ^Д^)「ショボン警視」
(´・ω・`)「どうしたんだ。やけに騒がしいが」
声をかけてきた男は、プギャー。まだ若いが、それなりに役に立つ存在だ。成長が楽しみだった。
-
( ^Д^)「それが……、国王暗殺に使われた銃弾の線条痕を調べた結果、この警察署の所持する銃のものだとわかりまして」
(;´・ω・)「なっ……それは本当か」
(;^Д^)「倉庫からは、一丁のスナイパーライフル、二丁の拳銃、及びそれぞれの弾がなくなっていました。なので、恐らく……」
(´・ω・`)「この署内の人間による犯行か、もしくは協力者がいると見て間違いないようだな……」
今まで銃がなくなっていたことに気が付かなかったという事は、恐らく盗んだ犯人の特定をすることは難しいだろう。
これでは、捜査がやりづらくなってしまう。
(´・ω・`)「マスコミにはバレるまで伏せておけ。厄介な事になりかねん」
よもや、自分の署でこのような事態が起こるとは。
怒りと悔しさが、同時にこみ上げてきた。
-
――ブーンの部屋――
(;'A`)「うっかりしてた……。なんでこんなミスを……」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
(;'A`)「薬莢だ。現場に薬莢を残してきちまった」
(;^ω^)「おっ……ブーンもうっかりしてたお……」
結果は最悪だった。現状は自分達に結びつける証拠にはならないものの、ドクオの指紋が間違いなく記録されてしまったのだ。
もし、ドクオの指紋が取られるような事があれば、犯人だと決定づける証拠となってしまうのだ。言い逃れは、許されない。
('A`)「まあ、指紋が取られるような事態にならなきゃいい話だ。後悔したって遅い。先の事を考えよう」
(;^ω^)「切り替えが早いお」
('A`)「仕方ねーだろ。俺もお前も気づかなかったんだ。こうなる運命だったんだよ」
-
('A`)「そして次に、変わった情報だ。俺達の使っている銃が、ポジション警察署の物だという事だ」
(;^ω^)「なっ……どういう事だお!?」
('A`)「署内の誰かが盗んだんだよ。となると、バーボンと名乗ったあの男は、警察内部の人間である可能性が高い」
( ^ω^)「まじかお……! それなら心強いお!」
('A`)「いや、そうとも言い切れない。ショボンの近くにいるという事は、その分リスクも高いわけだ。もしそいつが捕まったりしたら、俺達もすぐに捕まっちまうだろう」
('A`)「まあもっとも、ショボンが謎の男だったのなら心強いがな」
ドクオの言う通りだ。それだけ捜査本部の近くにいれば、その分危険性も増す。
いや、もしかすると捜査本部の一人かもしれない。だとしたら、尚の事危険だ。
-
('A`)「だが、いい情報もある」
( ^ω^)「おっおっ、まじかお」
('A`)「ああ。監視カメラからは、顔は割り出せなかったらしい」
顔は割り出せなかった。何よりも聞きたかった情報だ。安心して外を歩けるという事だ。
(*'A`)「これなら安心してピザ屋にも行けるな」
(*^ω^)「おっ、ブーンもピザ食べたいお」
('A`)「なんてな。行くわけねーだろ。今から、次の計画を話す」
(;^ω^)「おっおっ、ピザ食べたかったお……」
結局、宅配ピザを注文しようと言い出したのは、ドクオだった。
-
ドクオの次の計画を聞いてから、一週間が過ぎた。
捜査本部の記録を見ている限り、自分達に結びつく有力な手がかりは未だ見つかっていないようだった。
この一週間、狙撃の訓練からは離れ、拳銃の扱い方を練習していた。
('A`)「これなら俺でも撃てるな。だが、お前は拳銃ですら上手いんだな……ちょっとショックだぜ」
(;^ω^)「なんかごめんだお」
('A`)「いや気にするな。心強いさ」
銃弾の数は限られている。だが、自分はあまり練習しなくても十分なほど、扱いに長けているらしい。
('A`)「まあ次の計画に重要なのは、射撃じゃない。度胸だ」
度胸。それは自分に一番足りてないと思える物だ。
こればかりは、鍛えようがない。経験によって身につくものだと、ドクオも言っていた。
( ^ω^)「努力するお……」
('A`)「ああ。俺もついてる。だから大丈夫だ」
ドクオには、その身体の小ささとは似つかない程の度胸がある。これほど心強い事は無かった。
-
('A`)「荷物は、拳銃とスマホだけでいい。他に必要な物は俺が持つ」
ドクオから渡されたヘッドセット。インターネットで購入した、耳に装着するタイプの物だ。
スマホにペアリングし、記録の残らない通話アプリを介して会話する事ができる。
自分達で持ち寄った黒い服を身に纏い、目出し帽をポケットに入れた。この時期に長袖や目出し帽は暑苦しいが、あまり気にしていられる状況でもなかった。
原付を止め、そこから数分歩いた先に、その建物はあった。
自分では一生住むことも出来ないような、大きな家だ。
( ^ω^)「これが首相公邸かお……」
その存在は知っていた。だが、実際に目にする機会など、自分にあるはずがなかった。写真すら、見たことが無い。
('A`)「ブーン、お前は定位置についてくれ。通話を繋ぐぞ」
スマートフォンの通話ソフトを起動し、ドクオと繋いだ。
自分はドクオの指示通り、近くの川へと降りた。
川へ降りようにも、ガードレールや木が邪魔して中々入れない。ガードレールの下から匍匐前進で入り込んだ。
-
ここからドクオを見ることは出来ないが、公邸の入り口はよく見る事ができる。入り口には、二人の警官が立っていた。
('A`)『開始する』
ヘッドセットから聞こえたドクオの声。同時に、一台のラジコンカーが、公邸の入り口へと走っていくのが見えた。
( ∵)「ちっ、いたずらか。捕まえるぞ」
警官二人がラジコンカーを追いかけ回す。が、意外にも素早く動くラジコンカーに、振り回されている。
( ∵) 「くそっ……。おい、誰か来てくれ」
警官が無線で連絡をすると、塀の周りを巡回していた警官二人が走ってやってきた。
だが、ラジコンカーを捕まえられない。
('A`)『ははっ、見ろよあいつら。下手なタンゴを踊ってやがる。ネットで安いストリップ見てる方がよっぽどマシだぜ』
それも全て、ドクオの操作が上手いからだった。ゲームなどで慣れているからだろうか。この暗闇であれだけのコントロールが出来るのは、純粋にすごいと思えた。
やがてラジコンはこちらへ向かって一直線に走り出した。警官も二人追いかけてくる。
自分は木の影に隠れて、待機する。
-
( ∵)「 ああっ、くそっ、川に落ちてったぞ」
ラジコンはガードレールの下を上手いことくぐり抜け、そのまま川の方へと飛び込んで、姿が見えなくなった。
( ∵) 「駄目だなこりゃ。後で人呼んで見に来るか」
そう言って、警官二人は入り口の方へと戻っていった。
('A`)『ラジコンカーを回収して、こっちに来てくれ』
( ^ω^)「了解だお」
自分は急いでラジコンカーを回収し、ドクオの元へと走った。
('A`)「あー、超面白かった」
ラジコンカーをドクオに渡すと、バックパックに詰め込んで、口角を吊り上げた。
('A`)「塀の周りの警備が薄い今だ、走れ」
入り口から少し離れた場所へ走り、警官のいない塀に近寄って、一気によじ登る。
塀を越えたところの植木に隠れて、建物を見渡す。
-
( ^ω^)「あれが裏口かお?」
少し明るいドアの前に、警官二人が立っている。
自分達を倒せばここから入れますよ、と言っているような物だ。そう思った。
('A`)「この距離ならいける」
( ^ω^)「ブーンも大丈夫だお」
('A`)「なら、構えてくれ。お前は左だ」
上着の内ポケットから、サイレンサー付きの拳銃を取り出し、裏口前の二人のうちの左側を狙う。
('A`)「3,2,1,ドン、で行くぞ」
(;^ω^)「本番かと思って撃ちそうになったお」
(;'A`)「悪い悪い。次こそ本番だ。3,2,1……」
小さな破裂音が、両耳に届いた。それと同時に倒れる、警官二人。
誰かが近づいてくる様子もない。
( ^ω^)「行くお」
そう言って立ち上がるが、ドクオはまだ座り込んでいる。
-
( ^ω^)「どうかしたのかお?」
(;'A`)「……いや、なんでもない。大したことじゃない、大したことじゃ。ゲームと、一緒だ」
そこで気がついた。ドクオは自分の手で初めて人を殺したのだ。自分は二回目で、あまり気にならなかったが、初めてだとそうはいかないだろう。
(;'A`)「……だめだ、足が、動かねえよ……。なんでだ、もっと簡単だと思ってたのに……」
( ^ω^)「ドクオ……」
(;'A`)「俺は、もっと強い人間だと思っていたのに……なんだよこの有様は……」
( ^ω^)「ドクオ。強い人間なんて、いないんだお。みんな、強がって、誤魔化して、自分を奮い立たせているだけだお。だから、気にすることないんだお」
自分は、昔からそう思っていた。そう思う事自体、弱い自分を隠す、強がりの現れなのかもしれない。
('A`)「……ブーン、ありがとな。俺はまだ、こんな所で止まれないんだ。だから、行こう」
立ち上がったドクオの脚は、震えている。それでも、確実な一歩を踏み出した。
-
裏口の鍵は締まっていたが、屍となった警官の持っていた鍵で簡単に開いた。
公邸の中は、既に電気一つついていない。それが何よりの救いだった。
国王が殺されたというのに、こんなに甘い警備で大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫ではなかった。
当然電気をつけるわけにはいかず、手探りで首相の寝室を探した。
どこに警官がいるかわからない。ドクオと会話するすることもしなかった。
やがて、室内の暗闇に目が慣れてきた頃、廊下に警官が立っているのを発見した。
(;^ω^)「いたお。多分あそこだお」
('A`)「ああ。あいつ一人みたいだな。なら……」
ドクオが小声でそう言うと、すぐに拳銃を取り出して、その警官の頭を撃ち抜いた。
(;^ω^)「!?」
警官は、音もなく崩れ落ちる。
あまりに一瞬の出来事で、理解が及ぶまで時間を要した。
-
('A`)「なんだ、意外と簡単じゃねーか。ま、初めてってのは誰でも緊張するもんだよな」
強がりではない。誤魔化しでもない。ドクオの表情は、冷静そのものだ。
('A`)「ぱっぱと済ませるぞ。ブーン」
(;^ω^)「おっ……」
自分も同じはずだ。しかし何故か、怖いと感じてしまった。何故なのかは、わからなかった。
ドアを開けると、そこには大きなベッドと、それに寝転ぶ二人。首相と、首相夫人だ。
(,,-Д-)「すー……すー……」
首相は寝息を立てて、自分達に死が迫ろうとは気づきもしない様子だ。
('A`)「ブーン、お前やれよ」
(;^ω^)「おっ!?」
この場合、むしろドクオが自身の手で殺したがるのかと思っていた。
しかし、こう言われてしまうと避けられない。
やるしかない、と思わせるだけのオーラが、ドクオにはあった。
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「さよならだお……」
-
小さく、しかし確実に、右手の拳銃は音を鳴らして銃弾を射出した。
首相の頭に、小さな穴が空いたのが見えた。
('A`)「……、違うな……違う」
('A`)「やっぱ自分でやらなきゃダメだ」
ドクオが突然拳銃をしっかりと握り締め、首相夫人の頭を、容易く撃ち抜いた。
('∀`)「これだ、これ」
ドクオは、笑った。
口角を吊り上げ、歯をむき出しにして、笑っていた。
(;^ω^)「なっ……なんで、夫人まで……」
('A`)「なんだよ、なんか問題あるのか?」
(;^ω^)「問題って……。いや、なんでもないお……」
('A`)「なら、とっとと帰るぞ」
ドクオは、このたった一時間程で、変わってしまった。
その後、ドクオが警官を皆殺しにした事も、どうやって帰ったのかも、忘れてしまう程の衝撃だった。
-
第5話、以上になります。
今回はちょっとだけ長めでした。
次回は土曜日までに投下します!
-
乙!
-
悪質化してるな。乙
-
おはようございます、夜勤明けです。
第6話、投下します。
-
首相暗殺から、一週間が過ぎた。
自分は大学には通っているものの、ドクオのことを避けていた。
なんとなく、関わりたくなかったのだ。
( ^ω^)「ドクオ……」
人を殺して笑っていたドクオを、受け入れられなかった。
親友なら、何もかも受け入れるべきなのか。
いやそれは違う、と心は答える。
世間は、国王暗殺と首相暗殺の話題で埋め尽くされている。
首相暗殺の時にあえて残しておいた薬莢から指紋が検出され、国王暗殺の犯人と同一人物だと発覚したのだから、尚更だった。
やるせない気分でニュースを垂れ流し見ていると、扉をノックする音が聞こえた。
誰だろうか。ドクオだったらどうしようか。そんな事を考えながら、扉へと向かった。
( ^ω^)「お待たせしましたお……おっ!?」
川゚ -゚)「すまんな突然。ちょっといいか」
-
扉を開けた先に立っていたのは、長い黒髪が特徴的な女性、クーだった。
同じ大学、同じ学科、同じ年齢で、ドクオが密かに想いを寄せている人だった。
中に招き入れてお茶を出すと、クーは用件を話し始めた。
川゚ -゚)「いやすまない突然」
(;^ω^)「暇だったからいいお……でもなんで家知ってるんだお」
川゚ -゚)「後をつけたからな」
(;^ω^)「そ、そうですかお」
ちょっと変わった人だ、と思った。いや、変わった人などいくらでもいる。が、口調が特に変わっている、と思ったのだ。
……いや、自分の言えたことではないか。
川゚ -゚)「君と話すのは初めてだったか」
(;^ω^)「いや、ゼミで一度話してるお」
川゚ -゚)「そうか、なら自己紹介も必要ないな」
川゚ -゚)「実はな、君の友人のドクオに、告白されたんだ」
( ^ω^)「おっ、ついにドクオも告白かお……」
(;^ω^)「おっ!?」
-
ドクオが、クーに告白した。それがどれだけ信じがたい事か。
女性恐怖症で、会話する事もままならないあのドクオが、告白をするなど、信じられるはずもなかった。
ツンだけは、長年一緒にいた事もあってか、普通に会話することができるが。
(;^ω^)「どういう事だお」
川゚ -゚)「いや私が聞きたい」
(;^ω^)「それもそうかお……。いや、ブーンにもさっぱりだお」
川゚ -゚)「頼りにならんな」
(;^ω^)「ボロクソ言い過ぎだお」
一体何がどうして、告白したのだろうか。
本来なら喜ぶべき所だが、状況が悪い。
川゚ -゚)「やたら吃ってて、なんて言っているのか聞き取るだけで疲れてしまったよ」
(;^ω^)「そこは変わらないのかお……」
( ^ω^)「まあいいお、それで何を聞きたいんだお?」
-
川゚ -゚)「単刀直入に言おう、私は彼が嫌いじゃない」
(;^ω^)「おっおっ!?」
川゚ -゚)「かわいい顔をしているじゃないか。前から気になっていたんだ。なんなら好きだ」
(;^ω^)「もう帰ってくれお」
川゚ -゚)「そりゃあんまりだ」
テーブルに置かれたお茶を一気に飲み干して、一息つく。
なんて事だ。ドクオとクーが、付き合うだなんて。理解が追いつかない。
川゚ -゚)「だが、返事は保留にしておいた」
( ^ω^)「えっ……なんでだお?」
川゚ -゚)「いや、彼のことをよく見ていたのでわかるんだが、とても私に告白するようなタイプに見えなかったんでな。突然過ぎて、逆に不安になったんだ」
( ^ω^)「なるほど……それでブーンを訪ねてきたのかお」
川゚ -゚)「そういう事だ。どうなんだ、彼に何かあったのか? ここのところ、君は一緒にいないようだが」
-
どれだけドクオの事を見ているのだろうか。
一緒にいないのは、ここ一週間の事だというのに。
( ^ω^)「……ちょっと、喧嘩したんだお」
川゚ -゚)「ほう」
( ^ω^)「ドクオはブーン意外に友達がほとんどいないから、寂しかったんだお、きっと。それが引き金になって、クーさんに告白する勇気が出たんだお」
川゚ -゚)「……ほう」
精一杯の嘘だった。
ドクオは、全能感でいっぱいになって、勢いで告白しただけに違いない。
恐らく、全てを変えたかったのだ。
川゚ -゚)「なるほどな。理解できたよ。だが……」
( ^ω^)「だが?」
川゚ -゚)「やはり、告白は受けられんな」
(;^ω^)「おっ!? どうしてだお!?」
-
川゚ -゚)「動機があまりにも気持ちとかけ離れすぎている。愛はもっと、真っ直ぐじゃないとな。寄り道しているようじゃ、届かないんだ」
( ^ω^)「おっ……」
意外にもロマンチストだ、と思った。恋愛に対して、さっぱりしているのかと思っていた。
この様子なら、ドクオともいつか上手く行くかもしれない。
川゚ -゚)「さて、用件も済んだことだし、この汚い部屋からとっとと退散するとしよう」
クーがそう言って立ち上がった。と同時に、銃声のような轟音を立てて、玄関の扉が開かれた。
('A`)「俺を避けてたと思ったら、そういう事か」
そしてそこには、今まさに話題となっていたドクオが、あまりにも不自然なほどの無表情を貼り付けて、立っていた。
-
('A`)「俺がクーさんの事が好きだとわかってて……お前は……」
(;^ω^)「ちょっ、ドクオ! 勘違いしてるお!」
('A`)「二人で俺の事を嘲笑ってたってのか? はっ、まったく……何も信じられないな、もう」
(;^ω^)「違うんだお!クーさんは、ドクオの事を……」
('A`)「殺してやる。二人とも、殺してやる」
ドクオはそう言って、鞄に手を突っ込んだ。
何をしようとしているのか、すぐに理解できた。だが、身体が追いつかない。止めに入ることができない。
(;^ω^)「やめるんだお――」
自分がそう叫んだのよりも早く、クーがドクオの元へ駆け出し、鞄から出そうとした腕を抑えた。
-
(;'A`)「!?」
川゚ -゚)「殺したいほど愛してるか?」
(;'A`)「な……えっ……」
川゚ -゚)「足りんな、それでは。私を愛するには、いささか不十分だ」
横から見える、クーの表情。それは、一週間前に見たドクオの物よりも、狂気に満ちていた。
川゚ -゚)「君が何を取り出そうとしたのかはあえて聞かん。だが、たとえ何を持っていようと、それで何をしていようと、私は気に留めない」
(;'A`)「くっ……」
クーは、気づいたのだろうか。ドクオが拳銃を持っている事を。そして、それで何をしてきたのかを。
川゚ -゚)「勘違いするな。私は、ブーンに相談していただけだ。君の親友、ブーンにな。ドクオに告白されたが、どうしたらいいかと」
(;'A`)「そそっ……そう……なのか……?」
-
(;^ω^)「そうだお! クーさんと話したのはまだ二回目だお! 家を知っていたのは、後をつけたかららしいお!」
(;'A`)「なっ、なんだ……そうだったのか……」
クーがドクオの腕を離したと同時に、ドクオは床へへたり込んだ。
その無表情から、僅かに安堵が汲み取れた。
川゚ -゚)「すまない、邪魔をしたな」
そう言って、クーは開け放たれた扉から出ていった。
室内は、静寂に包まれた。
(;'A`)「すまん、ブーン。俺は、とんだ勘違いを……」
( ^ω^)「ほんとだお! 何しようとしてんだお! ブーンはともかく、クーさんまで殺そうとするなんて、びっくりだお!」
(;'A`)「ああ……ここのところ、どうかしてたんだ。つい、感情的になっちまって……」
( ^ω^)「まあいいお。とりあえず、お茶でも飲めお。クーさんの飲み残しだお」
('A`)「なっ……まじかよ!? 飲むぞ!? だだ、誰も見てないよな!?」
(;^ω^)「ブーンが見てるお……」
-
一息入れて、ドクオがタバコに火をつけた所で、また会話が始まった。
('A`)「ブーン……俺、クーさんにふられちまったよ……」
( ^ω^)「盛大にふられてたお」
(*'A`)「でも聞いたか? “殺したいほど愛してるか? 足りんな、それでは。私を愛するには、いささか不十分だ”だってよ。かっこよすぎるぜ」
(;^ω^)「ブーンはちょっと怖かったお……」
(*'A`)「そうかぁ? 俺はむしろ惚れ直しちまったよ。手まで握ってくれてよ……」
手を握ってはいない。腕を掴まれただけだ。
( ^ω^)「でもブーンはちょっと気になってるお」
('A`)「なにがだ?」
( ^ω^)「ドクオが銃を持っている事に気づいたような、あの言い方だお……」
('A`)「……ああ、そうだったな……」
あの様子では、間違いなく気づいている。だが、確認しなかったのはなぜだ。
-
('A`)「あの人、小説ばかり読んでるからな。昼休みはいつも図書室にいるし、休日はいつも図書館にいるし。その影響で、そんなセリフが言いたかったんじゃないか?」
(;^ω^)「そこまで知ってるとか、ストーカーだお……」
本当に、ドクオの言う通りだったらいい。
だが、あの表情はなんだ。やたらと胸に引っかかったが、今は収めておくことにした。
今は何より、元通りのドクオが見られたことが嬉しかった。
それだけでいい。他は何とかなる。そう思えた。
('A`)「それより、次の計画を立てたんだ」
( ^ω^)「まじかお!? 早いお、さすがドクオだお」
('A`)「これを見てくれ。捜査本部の一員に、面白い奴がいたんだ」
( ^ω^)「おっ……おおっ、これはすごいお……」
四日後、自分達は今までとはやり方がまるで違う計画を実行することとなった。
-
第6話、以上になります。
短めでしたがお許しください。
次回は木曜日までに投下します。
おやすみなさい!
-
乙! 面白かったよ!
-
おつ
-
乙
ドクオから狂気が滲み出て来たな
-
自分の言えることではないかでワロタ
-
おはようございます。レスありがとうございます!
第7話、投下します。
-
――四日後――
(#・∀・)「あー、クソったれ」
空になったグラスをテーブルに叩きつけるように置き、マスターに手で合図をする。
( ・∀・)「もう一杯、くれ」
今夜は潰れるほど飲みたい気分だった。
何故だろうか。いや、理由はわかっていた。
(#・∀・)「ショボンのやつめ……あいつさえいなければ、今頃俺は警視正にもなってただろうに……」
自分より年下の男が、今や自分の上司になっている。
そして自分は、そいつに敬語を使わなければいけない。それが何よりも悔しかった。
自分の才能は、ショボンには劣るかもしれないが、優れた物のはずだ。それは自分でもわかっていた。
運動も、勉強も、周りの誰よりも優れていた。
キャリア組として警察官になって、明るい未来が待っていたはずなのだ。それなのに、何故だ。
(#・∀・)「こんな事なら、あのまま野球選手になればよかったんだ……」
-
小学生の頃から高校生まで続けていた野球。ピッチングもバッティングも、国内の誰よりも上手かった。
どうしてあの時の俺は、そのまま野球選手にならなかったのか。
( ・∀・)「戻れるなら戻りてぇぜ、あの頃に……」
自分ほどの人間が、過去の栄光にすがるなど、情けない。情けないとわかっていても、やめられないほど悔しいのだ。
マスターがジンの入ったグラスをテーブルに置いた。そしてそれを一気に呷る。
今だけが心地良い時間だった。
そんな時、不意に後ろから声をかけられた。
( ^ω^)「あの……すみません。モララーさんですかお……?」
( ・∀・)「あ? なんだ急に。なんで俺の名前を知ってるんだ」
('A`)「や、やっぱり……! あの、僕達高校野球が好きでして、昔の全国大会のビデオもよく見るんですが、見た事がある顔だと思って……!」
( ・∀・)「なっ……俺を、知ってるのか!?」
-
('A`)「ええ、マニアの中では特に有名ですよ!僕もファンの一人でして……県大会の映像も必死で探して、全部見ましたよ!」
(*・∀・)「そ、そうなのか……!」
まさか、自分の高校時代を知っている人がいるとは。
見たところ、年齢は若い。対して自分はもう三十五歳になる。相当なマニアでないと知る由もない。
(*^ω^)「あの……よかったら、サインいただけますかお?」
(*・∀・)「おお、いいぞ! まあ立ち話もあれだ、隣座れよ!」
過去の栄光は、過去の物では無かったようだ。
こんな気分の悪い日に、なんてついてるんだろう。そう思えた。
高校の頃に遊びで練習したサインを、二人の大学ノートに書いた。実際に人に書いてくれと頼まれたのは、これが初めてだった。
(*・∀・)「いやー、思い出すなあの頃」
( ^ω^)「どうしてやめちゃったんですかお? 絶対、プロでも大活躍できたはずですお……」
( ・∀・)「うーん、あの頃は、警官になるのが夢だったんだよ。野球も好きだったけど、勉強も好きだった。そして何より、警察が好きだったんだ」
-
('A`)「えっ、じゃあ今は警官に……?」
( ・∀・)「ああ。キャリア組のくせに、警部止まりだけどな。今は国王暗殺の捜査本部の一員だ」
(*^ω^)「いやでも夢を叶えたなんて、すごいですお」
(*'A`)「しかも捜査本部の一員だってよ……なんかかっこいいぜ……」
(*・∀・)「おいおい、そんな褒めても何も出ねぇぞ? おーいマスター、こいつらになんか作ってくれ」
マスターに声をかけると、すぐに作業に入った。おすすめのカクテルでも出してくれるだろう。
(*^ω^)「おっおっ、出ちゃってますお」
('A`)「おいおい、あんま失礼なこと言うなよ」
(*・∀・)「気にすんな気にすんな。一人で飲むよりよっぽど酒が美味いぜ」
ああ、いい夜だ。こんなに楽しいのはいつ以来だろうか。そんな事を考えながら、一時間近く二人と話をしていた。
(*・∀・)「あー、だいぶ酒も回ってきたぜ。よし、公園で野球でもするか!」
( ^ω^)「おっ!? こんな時間にですかお!?」
-
( ・∀・)「別にいいだろ? 家は近くなんだ、バットとボールとグローブくらい持ってるぜ。だいぶ古くなっちまったが」
(*'A`)「いいっすね! やりましょう!」
( ・∀・)「よし! マスター、会計を頼む」
公園に着いた時は、既に一時を回っていた。
頼りない電灯の下で、自分はボールを握っている。
( ・∀・)「行くぞ!」
久々に握ったボール。今でも、よく手に馴染む。
それを振り上げて、一気に振り下ろす。
(;^ω^)「ッ!」
キャッチャーをしていた若い男は、ボールがしっかりと見えていたようだ。自分から放たれたボールを、グローブの真ん中で受け止めていた。
(;^ω^)「痛っ! 速っ!」
(;'A`)「なっ……打てるわけないっしょ……」
思っていた以上に、球速は衰えていない。
コントロールは以前と比べ物にならないが、社会人野球でも十分に通用する球だ、と我ながら思えた。
-
( ^ω^)「交代! 交代するお!」
一人の若い男がそう言って、バットをもう一人の男に手渡す。
('A`)「まじかよ。まあいい、あれは打てんぞ」
気づけばそれから一時間も、野球を続けていた。
(*・∀・)「ああ、最高の夜だった!」
身体中が悲鳴をあげている。だが、それも心地よく感じた。
( ^ω^)「あんなの打てませんお……」
('A`)「結局、ボールはモララーさんのホームランでどっかいっちゃいましたし」
( ・∀・)「いやーすまんな。久々にやったらつい本気が出ちゃって」
自分のファンだと言ってくれる人が現れた事。まさに、奇跡だと思えた。
そしてその人達が、自分の野球魂にまた火をつけてくれた。
( ・∀・)「また、野球やるかな。草野球でも」
-
('A`)「本当ですか! 絶対見に行きますよ!」
( ・∀・)「ああ。どんなチームでもいい。野球ができれば、それでいい」
( ^ω^)「嬉しいですお……応援しますお!」
( ・∀・)「そりゃありがてぇ。お前らのおかげだぜ、ほんと」
感謝してもしきれない。こんなに熱い気持ちになったのは、久々だ。
警察では得られなかった、情熱だ。
( ・∀・)「そんじゃまあ、帰るかな」
思ったよりも時間が遅くなってしまった。明日の仕事に響いてしまうだろう。だが、今はそんな事もどうでも良くなっていた。
( ・∀・)「俺はよくあのバーにいるからよ、また遊ぼうぜ」
( ^ω^)「はいですお!」
('A`)「またいつか会いましょう」
( ・∀・)「じゃあな」
そう言って、二人に背を向ける。
足取りは軽い。気分は高まっている。
人生で最高の一日だった。
――そう思っていた。
( ・∀・)「ぐはっ……」
-
何かが、背中から腹にかけて突き抜けていった。
血が、溢れ出す。
膝から崩れ落ち、地面に横たわった。
( ・∀・)「なっ……なにが……」
必死で身体をよじらせて、上を向く。
その時目に写ったのは――。
('A`)「すみませんね、ほんと」
( ^ω^)「……」
先ほどまで、共に笑い合っていた二人だった。
二人共、拳銃を片手に、こちらを見ている。
(;・∀・)「どっ……どういう事だ……」
('A`)「国王、首相……、その次はあなただったって事ですよ」
(;・∀・)「なっ……?」
そんな、まさか。
この二人が、今まさに追いかけていた犯人だと言うのか。
( ^ω^)「あんまり、殺したくはなかったんですお」
(;・∀・)「じゃあ……なんでだ……」
-
('A`)「人を殺す時の情をなくす、そういう訓練だったんです。その為には、あなたみたいな単純な人がやりやすかった。それだけです」
なんだ、その理由は。そう思った。何も理解できなかった。
今までのは、全て演技だったとでも言うのか。
( ^ω^)「すごく、楽しかったですお。本当に、殺したくないくらいですお」
('A`)「でも、だからこそ殺さなきゃならなかったんです。僕等が、前に進むためには」
頭がおかしいのだ、この二人は。理解など、出来るはずがない。
(;・∀・)「はは……そうかよ……」
ショボン、お前を散々恨んできたが、頼みがある。こいつらを殺してやってくれ。救ってやってくれ。
そんな事を考えながら、目を閉じた。
( ^ω^)「楽しかったですお、本当に」
( ∀ )「……いい夢見れたぜ」
そう呟いた時には、既に鉛が頭を貫いていた。
もう、夢を見る事は、できない。
-
――ポジション警察署――
(#´・ω・)「クソッ!」
捜査本部の一員が、国王暗殺の犯人によって殺された。それも、よりによってモララーが。
モララーは、自分の部下の中では一番使える人間だった。そんな人間が殺されたのは、捜査本部にとって、痛手だった。
(;´∀`)「困ったことになりましたね……」
(´・ω・`)「捜査本部の人間が殺される事も考えてはいたが、まさかこんなに早くとはな」
(;´∀`)「我々の警戒心が足りなかったのも原因かと」
(´・ω・`)「その通りだな。今となっては遅いかもしれんが、プライベートも注意して生活しないとならん」
自分は、いつ襲われてもいいように、常に警戒を怠ってはいない。だが、捜査本部の人間全員がそうとは限らなかった。
(´・ω・`)「事件が増えれば手がかりも増える。捜査にはより一層力を入れるぞ。モララーの無念を晴らすんだ」
モララーがいなくなった今、最も使えるのはモナーだ。
少し頼りなく感じるが、これを機に成長してくれるかもしれない。
-
(´・ω・`)「期待してるぞ、モナー」
( ´∀`)「……、頑張りますモナ」
モナーは頭を下げて、自分の机へと戻っていく。
やはりどこか頼りない。だが、今はどうしようもなかった。
プギャーという、優秀な若手もいる。二人の成長に期待するしかなかった。
モララーが殺された時に残された手がかりは、一つある。殺される前に寄っていたという、近くのバーだ。
マスターの話によると、二十代の男二人と会話をし、何やら野球をやりに公園へ向かったらしい。
顔までははっきりと覚えていないようだが、三十代に見えなかったというだけでも、十分な手がかりになる。
公園で野球をした後、後ろから撃たれて殺されたようだ。しかし、現場にはバットやボールなどは残っていなかった。恐らく、犯人が持ち帰ったのだろう。
これだけでは、犯人に結びつかない。
( ^Д^)「ショボン警視、現場付近で聞き込みをしていた所、夜中にボールが飛んできたとの情報がありまして……」
(´・ω・`)「それは本当か。そのボールはどうした?」
-
( ^Д^)「一応持ち帰り指紋を調べたところ、モララー警部の物と、犯人一人の物と、もう一つ、不明な物がありました。恐らく……」
(´・ω・`)「もう一人の犯人の物か……」
また一つ、有力な手がかりが見つかった。それだけでも、モララーの死は役に立ったと言えるだろう。
(´・ω・`)「わかった。聞き込みを続けてくれ」
( ^Д^)「了解しました」
この調子で行けば、必ず犯人に辿り着く。
その為には、必ずと言っていいほど犠牲が必要になってしまう。
だが、正義の為には仕方がない。
正義の為には。
-
――ブーンの部屋――
( ^ω^)「……」
('A`)「何ぼーっとしてんだよ」
( ^ω^)「おっ……いや、なんでもないお」
何も考えていなかった。自分が呆けてる事にすら気がついていなかった。ドクオに注意されて、初めて気がついたのだ。
('A`)「モララーの事か?」
( ^ω^)「……多分、そうだお」
あれ以来、ずっとこんな調子だった。
あの時の事ばかり思い出してしまうのだ。
('A`)「そこを、割り切るための訓練だったんだ。乗り越えなきゃなんねぇよ。お前も、俺もな」
( ^ω^)「やっぱりドクオも、気になってるのかお……?」
('A`)「そりゃあな……。俺は、本当にファンだったんだぞ」
確かにそう言っていた。だが、殺した時の様子からは、そうは見えなかったのだ。
-
('A`)「でも、割り切るしかねぇんだ。割り切れたその時には、次の計画に移るぞ」
( ^ω^)「しばらくはおやすみかお」
('A`)「疲れたよ、ここ最近は忙しかった。せっかく夏休みになったんだ、少しくらい何もしない日があってもいい」
( ^ω^)「ブーンもそう思うお」
いくらスリル満点の楽しい遊びでも、立て続けでは疲れてしまう。
それに今回は、あまり楽しいと言える内容ではなかった。
休息も必要なのだ。
('A`)「なんか楽しい事ねーかな……」
ドクオがスマートフォンを操作しながら、そう呟いた。
その時、扉をノックする音が部屋に響いた。
急いで扉を開けると、そこには意外な人物がいた。
-
川゚ -゚)「ブーン、ドクオはいるか」
(;^ω^)「ドクオがここにいると決めつけてやって来るのはどうかと思うお……」
川゚ -゚)「なんだ、いないなら仕方ない。ドクオの連絡先を教えてくれ」
(;^ω^)「いや、いるお。ドクオー、お客さんだお!」
クーを玄関まで招き入れて、ドクオを呼ぶ。
ドクオは誰が来たのかわかったのか、急いでやってきた。
(;'A`)「く、くくクーさん」
川゚ -゚)「やあドクオ。ちょっとデートしないか」
(;'A`)「!?」
川゚ -゚)「まだお互いの事をよく知らんだろう。それに、君はどうも女性と話すのが苦手なようだしな。交際する前に、慣れることも重要だ」
(*'A`)「でで、デート……! 行きます!」
( ^ω^)「お前ら死ねお」
-
('A`)「すまんな、そういう事で、俺は帰る」
( ^ω^)「まあ頑張れお」
ドクオは早くも帰り支度をし始めた。
川゚ -゚)「君も、あのたまに一緒にいる女の子とデートすればいいじゃないか」
( ^ω^)「ツンの事かお? ツンは……そんなんじゃないお」
川゚ -゚)「そうか? あの子は……、まあいい、余計な事は言わない方がいいな」
意味深な事を言われて少し戸惑ったが、クーの事だ、特に深い意味も無いような気もしてくる。
('A`)「お、おまたせ」
川゚ -゚)「というわけで、邪魔したな」
( ^ω^)「はいだお」
そうしてドクオとクーは、自分の部屋から出ていった。
大したことじゃない。ドクオが幸せなら、それでいいじゃないか。
そう自分に言い聞かせながら、パソコンの前へと戻った。
-
( ^ω^)「……」
掲示版を巡回する。こういう時に限って、面白いスレッドが見つからない。
( ^ω^)「暇だお」
大学生の夏休みだ。時間なんて死ぬほどある。
暇なのも当然、と思える。
だが、いつもとは少し違う気分だった。
気づいた時には、翌日だった。
パソコンの前に座ったまま、眠ってしまったらしい。
自分が寝ている間にも、掲示版は動いている。
( ^ω^)「……お?」
スマートフォンの画面の上に付いているランプが、点滅している。
画面を付けると、ドクオからメールが届いていた。昨日の晩に届いた物のようだ。
そこには、ドクオにしては珍しく、感嘆符の多い文章が並んでいた。
上手く行ったようだ。それを知って、少し安心しながらも、心の何処かに重たい物を抱えたような気分になる。
-
( ^ω^)「さすがドクオだお…」
今日は、昼前にドクオが遊びに来て、昨日のデートの話を延々と聞かされるだろう。
だが、それでもいい。
幸せそうなドクオなんて、滅多に見られる物じゃない。
そう思っていたが、ドクオは遊びに来なかった。
よくある事だ。元々、いつ遊ぶかなんて決めていないのだ。お互い暇だから、好きな時に好きなだけ遊んでいたのだ。
来ると思っていたが来なかった事なんて、いくらでもある。
晩になると、またスマートフォンのランプが点滅していたが、自分は確認せずに眠りについた。
-
第7話、以上になります。
次回は月曜日までに投下します。
よろしくお願いします!
-
乙!
-
乙乙
ブーンとドクオ達の気楽なノリが気味悪くて好き
-
おつおつ
-
乙ありがとうございます!
急に夜勤から外されて生活リズムがぐちゃぐちゃです。
第8話、投下します。
-
( ^ω^)「……」
クーが家にやってきたあの日から、四日が経った。
相変わらず、ドクオは遊びには来ない。
( ^ω^)「あまりに暇すぎるお」
暇な事は嫌いじゃない。それなのに、なぜだか寂しく思える。
今日も変わらず、掲示版を眺め続ける。
そんな時、不意にスマートフォンが光った。
( ^ω^)「ドクオかお?」
そう思って画面をつけるが、違った。
メールの送信者は、ツンだった。
-
――二時間後――
( ^ω^)「おいすー」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……あんた、お風呂入ってるの?」
ツンが自分の部屋にやってきた。
出会い頭に、酷い事を言われてしまった。
(;^ω^)「に、臭うかお」
ξ゚⊿゚)ξ「冗談よ、冗談。何そんな暗い顔してるのよ」
( ^ω^)「おっ……暗い顔してたかお……?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、なんとなくだけどね」
先の冗談は、自分の表情が暗かったから言ったのだろうか。
態度からはわかりづらいが、根は優しい女の子だ。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオは?」
( ^ω^)「ドクオは……最近、クーさんと遊んでるみたいだお。なんだか、女性慣れするためだとか言ってたお……」
-
テーブルの上にグラスを置いて、麦茶を注ぐ。
氷が浮き上がってくる時に、小気味いい音を立てた。
ξ゚⊿゚)ξ「さっき言ってたクーさんって、あのクーさん? 黒髪ロングの」
( ^ω^)「そうだお。ドクオ、クーさんに告白してふられたんだお」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、告白したの? しかもふられたのになんで遊んでるのよ」
( ^ω^)「あんまりよくわかんないけど、クーさんもドクオの事嫌いじゃないらしいお」
( ^ω^)「お互いの事をよく知ってから、付き合うかどうか考えるみたいな感じらしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……」
ツンは何かを考えるような素振りをしながら、テーブルに置かれたグラスをとって、顔に当てた。
よっぽど暑いのだろう。汗も少し滲んでいる。
( ^ω^)「これ使っていいお 」
自分はタオルを持ってきて、ツンに手渡した。
ξ*゚⊿゚)ξ「あ……、うん、使うわ」
-
暑さで赤くなっている顔をタオルで覆い、汗を拭っている。
やがてさっぱりした表情を浮かべたかと思いきや、今度は気難しいような顔をこちらに向けた。
ξ*゚⊿゚)ξ「わ……私達も、お互いの事をよく知ってるわよね……」
( ^ω^)「そう思うお。それなりに長い付き合いになるお」
ξ*゚⊿゚)ξ「つつ、付き合い!? 私達、まだそんな……!?」
(;^ω^)「何言ってんだお……知り合ってから、三年は経つお」
ξ*゚⊿゚)ξ「へっ!? あっ……そうね」
ツンはもう一度、タオルで顔を覆った。
汗が拭いきれなかったのだろうか。
ξ*゚⊿゚)ξ「私達も……さ、……どう?」
( ^ω^)「どうって……なにがだお?」
ξ////)ξ「その……あれよ……あれ」
-
あれ、と言われただけではわからない。
ツンはよく、そうやって誤魔化しながら、遠回しに伝えて来ることが多かった。
( ^ω^)「いいお」
ξ゚⊿゚)ξ「へっ?」
( ^ω^)「ドクオ達みたいに外に遊びに行きたいんだお? いいお」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ*゚⊿゚)ξ「そうね。水族館でも、行く?」
違ったのだろうか。
しかし、別に嫌というわけでは無いようだった。
気づいてやれなかった事に少し申し訳なく思ったが、そうやって少しずつ理解していこうと思った。
ξ*゚⊿゚)ξ(馬鹿ね……ほんとに……)
その日は、いつもよりも短い一日だった。
-
水族館から帰り、家の近くのファミリーレストランで夕食を取った。
ツンも自分も、ドリンクバーを頼んで、長時間居座ってしまうタイプの人間だ。
時間が遅くなってきた事に気がついて、会計を済ませて外に出た。
( ^ω^)「寮まで送っていくお」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ? いいわよ、大した距離じゃないし」
( ^ω^)「こんな夜中に女の子一人で歩いたら危ないお」
ξ*゚⊿゚)ξ「なっ……そ、そう。勝手にすれば?」
( ^ω^)「そうするお」
そうして寮まで送り届ける間、ツンは一言も喋らなかった。自分も、同様だった。
ξ゚⊿゚)ξ「今日は、それなりに楽しかったわ」
( ^ω^)「ブーンも楽しかったお!」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
寮の玄関の電灯が、ツンの表情を照らす。
何か少し考えたような素振りをして、もう一度口を開いた。
-
ξ*゚⊿゚)ξ「さっきの話なんだけど……、私の事、女として見てるってこと……?」
( ^ω^)「何言ってんだお、当たり前だお?」
その時はまだ、ツンがどういう意味でそう聞いてきたのか、理解してはいなかった。
ξ゚ー゚)ξ「……そっか。じゃあ、また暇な時、連絡するからね」
( ^ω^)「いつでもいいお。おやすみだお!」
ξ゚ー゚)ξ「おやすみ、ブーン」
ξ゚ー゚)ξ(今はまだ、これでいいか……)
ツンは玄関を通り、光の中へ消えていく。
自分は光から離れて、闇の中へ消えていく。
今日は本当に楽しかった。
こういう気分になったのも、久々だ。
そして気がついた。
そうか、きっと自分は――
――こんな日常が、嫌いだったのだ。
.
-
それから一週間もすると、ドクオはまた今までのように家にやってきた。
クーさんと毎日のように会話し続けた結果、話をするくらいなら出来るようになってきたらしい。
('A`)「でもまあ、あの人は変わってるな」
( ^ω^)「クーさんの事かお?」
('A`)「ああ。俺の事を何もかも見透かしているようでいて、何も知らないフリをしている。そんな感じだ」
( ^ω^)「なるほどだお……」
きっと、自分達の事は全てわかっているのだろう。
何を持ち、何をしてきたのか。そして、これからもそれを続けていく事を。
それを知りながら、何もしないのだ。
それどころか、ドクオとの親交を深めようとしている。
だからこそ、何か不安なのだ。
しかしそんな事を、ドクオに言えるはずもなかった。
-
('A`)「ま、何かあれば言ってくるっしょ。あの人の性格なら」
( ^ω^)「まあ、そうかもしれないお……」
とりあえず、そういった不安だけ抱えておこう。それだけでも、何かあった時に対応しやすい。
何もなければ、それでいい。
そう思ってからは、考える事をしなかった。
( ^ω^)「それよりドクオ、聞いてほしいお」
('A`)「ん? 何をだ?」
( ^ω^)「次の計画についての、提案だお」
('A`)「提案? お前から言い出すなんて珍しいな。何かあったのか?」
( ^ω^)「……」
少し考えて、それも意味のない事だと気づくと、すぐに言葉を続けた。
( ^ω^)「特に何もないお」
('A`)「……、そうか。じゃあ、聞かせてくれ。その提案とやらを」
-
それから二週間。
自分達は、毎日を計画の為の準備に費やした。
警察は、未だ自分達に結び付く証拠を手に入れていない。
あるとすれば、モララーのボールから検出された、自分の指紋だ。
そのくらいなら、逮捕されるような事がない限り、問題はない。
('A`)「いよいよだな」
自分たちが用意したのは、水筒や薬品や、時計。
全て、バーボンという男から報酬でもらった一千万で買ったものだ。
足がつきにくくするために、ネットや隣のネック県まで遠出をし、一番売れている物を買い集めた。
そこからの作業は、主にドクオが担当した。
( ^ω^)「ついに、決行かお?」
('A`)「ああ。午前八時、この時間帯ならちょうどいい」
( ^ω^)「じゃあ、もうそろそろで個人行動かお……」
('A`)「そうだな。忙しいだろうから、連絡は出来る時だけでいい」
-
手元にある水筒は全部で十個。本当ならもっと多く持ってきたかったが、一度に持ち運べる量は一人五個が限界だった。
('A`)「無理はするな。無理だと思ったらやめろ。そして、八時四十分までには必ず、ここポジション駅北口に集合だ。俺が予め決めた通りに動けば、問題ない」
( ^ω^)「わかったお」
不安はない。ドクオの決めた通りに動けば、必ずここまで戻って来れる。
('A`)「それじゃ、出発だ。幸運を祈る」
( ^ω^)「がんばるお!」
ドクオは原付に跨り、隣の駅まで走り出した。
自分は急いで自動改札機を通り、目的の電車へと向かった。
八時六分発。それが最初の電車だ。
一分ほど待つと、その電車は到着した。
-
(;^ω^)(すごい人混みだお……)
ここポジション駅は、降りる人も乗り込む人も最も多い駅だ。
殆どの人が、ここを乗り換えに使っているのだろう。
その人の波に流されながら、電車内へと入る。
想像していた以上だった。
車内で動く事すらも、難しい。
身体をよじるようにして、肩にかけたバッグから水筒を一つ取り出した。
誰にも見られていない。周りの人は、自分のスペースを確保し、スマートフォンを操作するので精一杯のようだ。
そしてその水筒を、足元にゆっくりと下ろしていく。
これで終わりだ。
大したことではない。後は次の駅で降りるだけだ。
そう思っていた。
ポジション駅を出てから五分後、次の駅へ到着した。
やがて扉は開かれる。
だが、誰も動かないのだ。
-
(;^ω^)(ちょっ……動けないお)
誰も、この駅で降りようとしない。
正直それは予想していなかった。
しかし、あまり目立つ行動はできない。
(;^ω^)(頼む、もうちょっと開いててくれお……!)
人を掻き分けるように進む。中には退いてくれる人もいたが、ほとんどが動こうとしない。
やがて、扉はゆっくりと閉まっていく。
(;^ω^)(おおおおっ!?)
そして、閉まりかけたその扉に、腕を挟んだ。
扉が閉まらなければ、電車が進むこともない。
もう一度扉は開かれた。
( ^ω^)(よかったお……)
ぎりぎりの所で、電車を降りることが出来た。
ここでミスをしていたら、後に差し支えてしまうところだった。
( ^ω^)(おっ、ゆっくりしている時間はないお!)
急いで、次の電車へと駆け出した。
-
その後、残りの四個の設置は問題なく進み、ポジション駅の隣の駅の改札を出た。
ここは、ドクオが原付で向かったあの駅だ。
ここからはそれほど焦る必要もない。歩いて駐輪場へと向かった。
駐輪場には見慣れた原付があり、予め預かっておいたスペアキーを差し込んでエンジンをかける。
そして何食わぬ顔で、駅を後にした。
ポジション駅の北口にある駐輪場に到着すると、自分の原付の前にドクオが立っていた。
自分もドクオの原付から降りて、隣へ駐車する。
('A`)「時間通りだな」
( ^ω^)「なんとかなったお」
('A`)「上手くいったか?」
( ^ω^)「一応、全部予定通りの電車に置いたお」
('A`)「ならいいんだ」
ドクオはそう言うと、鞄からタバコを一本取り出して、火をつけた。
表情は全く変えないが、どうやら、満足そうだ。
-
( ^ω^)「……ブーンにも、一本くれお」
('A`)「えっ? お前、吸わないんじゃなかったか? 前に吸った時、むせてただろ」
( ^ω^)「そういう、気分なんだお」
('A`)「……わかってきたな、お前も」
ドクオが取り出した、赤地に白抜きされた横文字が目立つ白い箱。その中からタバコを一本取り出して、自分に手渡す。
それを咥えると、ドクオがオイルライターで火をつけてくれた。
( ^ω^)「……」
煙を深く吸い込み、やがて口からタバコを離し、もう一度息を深く、深く吸い込んで吐き出す。
( ^ω^)「ケホッ……おっ……」
軽く咳き込む。そして、目眩がする。
初めて吸った時と同じだ。あの時は、何がいいのかわからなかった。
( ^ω^)「おいしくないお……こんなの……」
('A`)「ま、最初はそんなもんさ。いずれわかる」
( ^ω^)「でも……」
('A`)「?」
-
( ^ω^)「いい気分だお……」
そう言うと、ドクオも吸い込んだ煙を吐き出して、口元を緩ませた。
('∀`)「はっ、そうだな」
そして、時は満ちた。
時刻は八時四十五分。
耳を劈くような轟音が、人々の悲鳴が、あたり一面を津波のように飲み込んだ。
('∀`)「最高の気分だ」
原付を走らせて、街へと駆り出した。
心臓が張り裂けそうな程の鼓動が、耳まで届く。
緊張からか、高まりからか、ひょっとしたらタバコのせいかもしれない。
しかし気分は、最高だった。
-
第8話、以上になります。
次回は金曜日辺りまでに投下したいのですが、多少前後するかもしれません。遅れるくらいなら早めに投下したいです。
よろしくお願いします!
-
おつ!
百物語スレでやってた10分絵祭りで3つくらいこの作品の支援絵が投下されてたよと一応報告
-
おつ
-
支援絵、気づかなかったです…。
あっちに書いていいのか悩んだので、こちらに書かせていただきます。
もう死ぬほど嬉しいです。3つとも自分の中のイメージそのものです。怖いしかっこいいしお洒落だし。
ありがとうございました!
-
このままだと明日以降になりそうなので、ゆっくりでも今日中に第9話投下します。
-
( ´∀`)「爆破された車両は全部で十両、一部は脱線にも繋がり、死傷者は三千人にも及びます」
(´・ω・`)「そうか……」
ついに、市民にまで被害が及んでしまった。
この犯人が、国王暗殺の犯人と同一人物かはわからない。しかしもし違ったとしても、このタイミングでは、同一犯として見るのが妥当だ。よって捜査は自分達が進めている。
( ´∀`)「犯人は爆発物を車両に持ち込み、人混みに紛れてそれを設置し、逃走した模様です」
( ´∀`)「そしてその爆発物の一部と見られる破片が見つかりました。そこから国王暗殺の犯人と同じ指紋が検出されました」
(´・ω・`)「……やはりそうか」
特に驚きもない。これ程肝の座った芸当が出来る人間が、他にもいるとは思えないのだ。
( ´∀`)「そしてこれが、爆破された車両のリストとダイヤグラムです」
(´・ω・`)「貸してくれ」
-
犯人二人のうち一人は、ポジション駅から乗車しているだろう。
ポジション駅八時六分発のものから四つ乗り継いで、隣のナット駅で降りたと考えるのが妥当か。
しかし、ダイヤグラムというものは複雑に入り組んでいる。いくつものパターンを割り出せるため、犯人の行動を簡単に読めるものでは無い。
(´・ω・`)「監視カメラの映像を」
( ´∀`)「こちらです」
モナーは即座にノートパソコンを見せる。
少しはモナーも使えるようになってきたか。そう思った。
監視カメラは車両内にまで設置されていない。あるのは、ホームだけだ。
そして、乗り込む人が多すぎる。映像も荒れている。これでは検討もつかない。
しかし、目立つ人物がいた。
ポジション駅八時六分発の電車から、隣のナット駅で降りた数少ない人のうちの、一人。
閉まりかかった扉に、腕を挟んで強引に車両から出てきたのだ。
マスクを着けていて、顔まではわからない。だが、その体格はニダーコーポレーションビルの監視カメラに映っていた一人と、よく似ている。
そしてその人物は、大きな鞄を抱えている。
-
(´・ω・`)(間違いない、こいつだ)
そう確信した。
それからはその人物に焦点を当てて、映像を追った。
(´・ω・`)(やはり、最初に考えた通りの乗り継ぎをしているな)
最後には、またナット駅のホームに降り、そのまま改札を出ている。
そのまま逃走したようだ。
(´・ω・`)(……となると、もう一人はナット駅から改札に入っているな)
移動手段が車かバイクかはわからないが、もう一人がナット駅まで乗ってきた乗り物で、逃走したのだろう。もう一人の人物も、同じ事をしたはずだ。
ポジション駅とナット駅の駐車場のカメラを見るが、先程の人物は映らない。となると、駐輪場だ。
しかし、駐輪場にはカメラがない。どんなものに乗っているかまで、確認はできなかった。
それに、徒歩の可能性も否定できない。出来るだけ手がかりを残さないように考慮すれば、ありえる事だ。
(´・ω・`)(今回の事件も、あまり有力な手がかりは無さそうだ……)
やはり、違う方向から犯人を探してみるべきかも知れない。
机の隅に置かれたリストを手に取った。
-
――ブーンの部屋――
それは、自分を驚かせるには十分すぎるほどの現実だった。
(;´ω`)「そんな……嘘だお……」
その報せが入ったのは、電車を爆破してから二日が経った今だ。
(;'A`)「どういう事だよ……」
ツンの母親が、死んだのだ。
二日前、夏休みを迎えたツンの寮へと向かうために乗りこんだ電車で、爆発に巻き込まれて。
(;´ω`)「……」
冗談じゃない。どうして、よりにもよってあの日に、あの電車に乗っていたんだ。
ツンやクーが乗らない事をわかっていたから実行したというのに、その親族が乗っていようとは、想定もしていなかった。
(;'A`)「……後悔は……してないぞ……」
ドクオは、声量は小さくも、強くそう言った。
しかし、自分はどうだろうか。
ツンに、どんな顔をして会えばいいのだ。
('A`)「……今日は帰るわ」
気づいた時には、ドクオはもう部屋にはいなかった。
炭酸の抜けたコーラだけが、残されていた。
-
――ドクオの帰り道――
('A`)「……」
タイミングが、悪かった。
事故と同じだ。
運悪く、死んでしまったのだ。
自分に、殺されたわけではない。
なのに何故だ。
('A`)「鬱だ……」
何故、こんな気分になるのだ。
鳩尾に重たい一撃を食らったような、感覚。
胸の奥に黒い何かが溜まったような、感覚。
後悔なんて、するつもりなかったのに。
しばらく歩いて自分の住むアパートが見えてくると、その前に誰かが立っているのが、暗闇でも見えた。
その男の前を通過しようと足を進めていると、案の定、声をかけられてしまった。
(´・ω・`)「君、ちょっといいか」
('A`)「はぁ……って、あなたは……!」
-
声をかけてきた男をよく見ると、テレビや雑誌、ネットで何度も見た事のある、垂れ下がった眉の特徴的な小太りの男、ショボンだった。
(´・ω・`)「連続殺人事件特別捜査本部の管理官をやっている、ショボンだ。君はドクオだな?」
('A`)「えっ……ああ、そうですが……。何か?」
どういう事なのか、いくら考えても答えには辿り着かなかった。
ショボン一人でここにいるという事は、自分を逮捕しに来たわけではなさそうだ。
(´・ω・`)「君の噂は聞いているよ。全国模試で何度も一位を取り続けていたそうだな」
('A`)「ま、まあそうですが……偶然ですよ」
(´・ω・`)「偶然という事はありえないだろう。まあもっとも、それが偶然だとしても構わないんだ。俺はその君の“可能性”に協力してもらいたいんだよ」
('A`)「協力……ですか?」
(´・ω・`)「捜査の、だ。いや、実際に捜査に参加してもらおうというわけではないんだが、知恵を貸して欲しいんだ」
-
何を言っているのだ。まるで予想もつかないような事を言われて、たじろいでしまう。
市民が警察に捜査協力するのはわかるが、ショボンが言っているのはそういう意味ではない。実質、捜査本部の一員になってくれ、と言っているようなものだ。
('A`)「ま、待ってください。俺に出来る事なんてありませんよ。捜査なんて、ショボンさんがいれば問題ないでしょう。あなたの実績は有名ですよ」
(´・ω・`)「まあまあ。今すぐ決めて欲しいというわけではないんだ……」
ショボンは何かを考えるように頭を軽く掻き、こう言った。
(´・ω・`)「バーボン……」
('A`)「!?」
(´・ω・`)「ああいや、父親がバーボンハウスというバーを経営しているんだ。良かったらそこで飲みながら、話を聞いてくれないか? もちろん、おごりだ」
今、バーボンと言ったのか。
バーボンという名が外に漏れているわけがない。
いやしかし、ショボンは捜査本部の管理官、過去の実績からしても知っている可能性はある。0%とは言い切れない。
-
それともまさか、ショボンがバーボン本人だというのか。それを遠回りに教えたつもりなのだろうか。
そもそも、バーボンの名を知っているのなら、自分に繋がる証拠も入手しているだろう。それなら、こんな回りくどい方法を取る必要もない。
となると、 後者の方が信憑性が高いが、どちらも確信には程遠い。
('A`)「……」
考えても無駄だ、と思った。
('A`)「まあ、聞くだけですよ」
(´・ω・`)「そうか、それならよかった。一緒に酒を飲む友人もいないんでな。酒を飲みたいだけ、というのもあるんだ」
ショボンに連れられて辿り着いたバー『バーボンハウス』。
外観はそれほど目立ったものでも無く、自分でも立ち寄りやすい印象だ。
(´・ω・`)「ちょっとここで待っててくれ。一分ほどしたら、入ってきていいぞ」
('A`)「へ? はあ……」
それが何を意図しているのかはわからない。
だが、どうせ大したことではない。従う以外になかった。
-
約一分経った頃に、入り口の扉を開ける。
来客を知らせる鈴の音が、小気味よい。
(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ」
(;'A`)「!?」
(´・ω・`)「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」
(;'A`)「!?」
何事か、と思った。
咄嗟に拳銃を取り出しそうになったほどだ。
いや、普段は拳銃など持ち歩いていないのだが。
(´・ω・`)「はは、すまんな。この店の決まり文句なんだ。学生の頃は、こうやってお客さんを出迎えたもんだ」
('A`)「は、はあ……」
(´・ω・`)「まあ、とりあえずこれを飲んで座ってくれ」
ショボンはそう言うと、テキーラのショットグラスを手渡してくる。
それを一気に飲むと、喉に火がついたような感覚を覚えた。
いつもならかっこよく決める所だが、これは中々、つらい。
まだ二十歳になったばかりだ。理解できなくても当然、とも言えるが。
-
(´・ω・`)「大学はまだ夏休みなのか?」
タバコに火をつけながら、ショボンは自分にそう問いかける。
('A`)「ええ。もうそろそろ、講義も始まりますけど」
(´・ω・`)「そうか。単位は……聞くまでもないか」
('A`)「とりあえず、取れるだけ取ってます」
(´・ω・`)「さすがだな」
ショボンはタバコの煙を深く吸い込み、それを一気に吐き出す。
自分もタバコを取り出して、遠慮せずに火をつける。
(´・ω・`)「しかし君ほどの男が、なぜポジション大学なんだ? 君ならフレット大学も余裕で入れただろう」
('A`)「ああ……それは……」
そこで、ある人物の顔を思い出す。
優しく、面白く、しかしどこか頼りない。そんな人物。
('A`)「……友達が、ポジション大学に行くって言ったんです」
-
(´・ω・`)「ほう、なるほど。将来の就職の事を考えればふざけた理由だとも言えるが……、俺みたいになってしまうな、それでは」
一緒に酒を飲む友人もいない、と言っていたのを思い出した。
ショボンはフレット大学を卒業している。あそこは“キャンパスライフ”などという言葉とは程遠く、勉強以外に何もないと言われている大学だ。
友達も、本当にいなかったのだろう。
(´・ω・`)「君は俺と似ていると思ったが、そこだけは明確に違ったようだな。俺ももう少し、よく考えて生きるべきだったかもしれない」
('A`)「みんなそんなもんですよ、きっと。俺だって、将来後悔するかもしれないですし」
(´・ω・`)「まあ、過去は変えられんな」
ショボンは笑って、ウィスキーの入ったグラスを傾けた。
(´・ω・`)「本題に戻ろうか。俺はこうやって飲みながら、君の推理を聞きたいと思っているのだが、どうだ?」
('A`)「推理ですか……」
-
ショボンが本当に、自分の推理を参考にしたいと考えているのであれば、断る理由などない。上手く扱える。
だが、もしも自分を疑っていてこういう手段を取っているのなら、話は別だ。関わりを持つことで、余計に疑いが深まる可能性もある。
('A`)「申し訳ないですけど、やっぱり俺にはちょっと」
答えは決まっていた。
リスクは避けて通るべきだ。わざわざ賭けに出る必要はない。
ショボンの頭脳が自分の予想を上回っていたら、勝ち目はないのだ。
(´・ω・`)「君は将来、なりたいものとかないのか?」
ショボンは自分の返答に反応せず、さらに問いを投げてきた。
('A`)「……父さんが警官だったんで、昔は自分も警官になりたかったんですけど、今は特に」
(´・ω・`)「懐かしいな。君のお父さんには、お世話になったよ。頭のいい人だった」
('A`)「えっ……、知ってるんですか?」
(´・ω・`)「ああ。そうじゃなきゃ、君に声をかける事もなかったかもしれん」
-
自分の父親は、ポジション警察署の警部だったのだ。自分とは違って、熱血という言葉が似合うような人間だった。
(´・ω・`)「俺がまだ入ったばかりの頃、いろいろ教えてくれてな。今の俺のやり方は、君のお父さんを少し倣っていてな」
('A`)「そうだったんですね……」
ショボンは、あまり熱血という風には見えない。だが、それはあくまで見た目の話だ。実際に関わりを深くしていかないと、見えないものもあるのだろう。
(´・ω・`)「しかし何故、今は警官を目指さないんだ。俺の父親も昔は警官だったんだ。親子二代で警官というのも、多いしな。もし今でも目指しているのだったら、俺も君を説得しやすかったのだが」
('A`)「……俺の両親は、もういないんですよ」
(´・ω・`)「!?」
('A`)「父さんがある事件を追っていた時、母さんが病気で死んだんです。俺は数ヶ月、学校にも行けないほど苦しかったんですけど、父さんは何事もなかったかのように仕事をしていました」
今でもよく覚えている。
自分がまだ、ブーンと知り合う前の事だ。
-
('A`)「いや、父さんも辛かったのかもしれないです。けど、苦しんでるのは自分一人じゃない事を、わかってなかったんですかね。苦しみを分かち合えれば、少しは違っただろうと思いますよ」
朝早くに出勤し、夜遅くに帰ってきては、風呂に入って寝るだけ。そんな生活を、父親は繰り返していた。
自分は、宅配ピザを毎日のように注文し、テーブルの上に置かれた金をドライバーに渡していた。
('A`)「俺とは飯を一緒に食う事も無かったです。正義の為だ、なんていつも言ってましたけど、家族より……愛より大切な正義って、なんなんですかね」
正義とは、なんなのだろうか。自分には、それがわからなかった。
愛とは、なんなのだろうか。それすらも、わからなくなっていった。
('A`)「結局父さんは、突然何処かへ蒸発してしまいました」
(´・ω・`)「蒸発……? 辞めたわけではなかったのか?」
('A`)「いや、きっと仕事はちゃんと辞めてたんでしょう。でも、俺の前から忽然と姿を消しました」
父親も母親もいなくなった自分は、母方の祖母に引き取られて生活していた。
正義の味方に裏切られた。愛する家族に裏切られた。そんな気持ちに押しつぶされていた。
-
('A`)「この世の正義なんて、大多数が納得するように叩いて広げて伸ばしただけの物ですよ。本当の正義なんてどこにもありはしない」
('A`)「神に祈れば何かが変わるかと思いきや、この国の神はホームレス生活で自分が生き延びるのに精一杯ときた。こいつは一体なんの冗談ですかね?」
この国の人々のほとんどが、宗教を信仰していない。
神の存在を肯定はしないが、否定もしない。
そんな国で自分が縋り付くものは、何もありはしなかった。
そんな時に現れた、ブーン。自分は彼を崇めはしないが、尊敬していた。
その振る舞いを。その在り方を。
(´・ω・`)「……すまないな。話していて、あまり気持ちのいいものでは無かっただろう」
('A`)「いいんですよ。少しすっきりしました」
ショボンはタバコを灰皿に押し付けて、視線を下に落とす。
ウィスキーの入ったグラスは、ほとんど減っていなかった。
-
(´・ω・`)「正義の在り方について、俺も悩んでいるんだ。ずっとな。だが未だに答えは見つからん。そんな状態で、今までずっと正義を執行してきたわけだ」
('A`)「……答えなんて、無いのかもしれないですね」
(´・ω・`)「……そうかもしれんな」
グラスに入ったジントニックを胃に流し込む。程よい炭酸の刺激と柑橘系の香りが、心地よかった。
('A`)「今日は、帰ります」
空になったグラスをテーブル置いて、タバコの火をもみ消す。
せっかくバーに来たのだから食事もしていけば良かった、と少し後悔しながら、椅子から立ち上がった。
(´・ω・`)「名刺を渡しておこう。もし、気が変わったら連絡をくれ」
('A`)「わかりました。あと、ごちそうさまでした」
(´・ω・`)「気にするな」
-
入り口まで向かうと、ショボンが先回りして扉を開けてくれた。
生温い風が、店内に入り込んでくる。
('A`)「……いい店ですね、ここは」
(´・ω・`)「……そうだろう。また来てくれ」
軽く頭を下げて、店を後にする。
足取りはいつもと変わらない。
それどころか、少し軽くなったような気さえする。
今日ショボンと会った事は、ブーンには言わない方がいいのかも知れない。
今ただでさえブーンは、追い詰められてしまっているだろう。追い打ちをかけるような事は、避けたい。
何故だか今日は、月が明るい。その月明かりが、地面に自分の影を作る。
自分の進むべき道は、ここしかない。
後戻りなんて出来ない。いや、する気もない。
前に進み続けよう。そう、深く決心した。
-
第9話、以上になります。
気づいたら、第1話から一ヶ月経ってました。
レスやイラストありがとうございます!
次回は水曜日までに投下します。
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乙!
-
おつ!
ショボンの正体狙いが掴めないな……
-
(´・ω・`)「……」
長い事考えていた。
ドクオのことだ。
自分に匹敵するほどの頭脳を持ち合わせた、二十代の男性をまとめたリストの中の、一人。
リストの他の人間も、優れている。作文や論文が評価されたなど、功績を残した者が多い。
その中でもドクオは、目立たない方だった。
特に何か功績を残したわけではない。ただ頭が良いというだけだった。
しかし、それが逆に興味を引いたのだ。
そして自分が世話になった人の息子となれば、なおさらだ。
(´・ω・`)(昨日話してみた様子では、過去の不幸を抱えた普通の大学生にしか見えなかったが……)
もしも、昨日の発言も演技だとしたら。
自分だったら、あの程度の演技は容易い。
しかし、演技にしてはいささか臭すぎる。
-
……いや、自分を追いつめようとしてくる人間を騙すためとなれば、少し臭い演技になってしまってもおかしくは無い。
それくらいの方が、よりリアリティが増す。
(´・ω・`)(……疑い過ぎるのは、悪い癖か)
疑えば疑うほど、疑わしくなる。当たり前の事だ。何もかもが嘘に見えてくる
だが捜査という点においては、重要な事だった。
信じるべきものは、自分だけだ。仲間ですら、信じてはならない。
(´・ω・`)(……、警察署内部の共犯か……)
署内倉庫のスナイパーライフルを持ち出す。内部の人間でなければ、それを成し得るのは不可能だ。
署内でも、警戒を怠ってはならない。何が起こるかわからない。
常に、疑い続けなければ。
-
――ポジション市内――
( ^ω^)「美味しかったお」
('A`)「そうだな」
夕食を取るべく、市内に出来た新しいピザ屋へ足を運んで、一時間。自分達は家へと帰りながら、何かを誤魔化すように言葉を交わしていた。
電車を爆破してから、二週間が経った。
ツンの母親が亡くなった報せを聞いて以降、彼女とは連絡を取っていない。
夏休みが終わり大学にも通い始めたが、顔を合わせることも無かった。
それがツンに取って良くない事だということは、わかっていた。
ツンは自分自身の本当の気持ちを、素直に表せない。そのせいで、こういう時に頼れる友人がいても、彼女から頼る事は出来ないのだろう。
だから、本当なら自分から彼女を支えてあげるべきなのだ。
しかし、それも出来ない。ツンに、合わせる顔がなかった。
自分がツンの母親を殺したのだ。
ツンはそれを知らない。それが尚更自分を苦しめた。
-
( ^ω^)(あんな日常が、嫌いだったんじゃなかったのかお……)
当たり前すぎる毎日。それなりに楽しかったのかもしれない。
しかしもっと楽しい事を見つけてしまったら、当たり前の楽しさに、興味なんて持てるはずもなかった。
しかしどうだろうか。
自分は、失敗したのだ。好き放題ゲームをしていたら、最低スコアでFランクを取ってしまったようなものだ。
結果は、最悪だ。
どうしたらいいのか、まるでわからない。暗闇で、真っ直ぐに歩けなかった。
( ^ω^)「……?」
そんな時、気がついた。
先程から自分達の後をつけている、誰かに。
尾行の対象は自分だろうか、ドクオだろうか。もしくは、自分達二人を尾行しているのか。
真相を確かめるべく、行動を起こした。
( ^ω^)「……ドクオ、用事思い出しちゃったお。今日は帰ってくれお」
-
('A`)「えっ? なんだ、ピンサロでも行くのか?」
(;^ω^)「なっ、そんなんじゃないお!ちょっと個人的に買い物があるだけだお!」
('A`)「あーそうかい。まあいいや、眠いし帰るわ。また連絡くれ」
そう言って、ドクオは一人で歩き出す。
自分は、横道に入って少しだけ歩く。
……後をつけられてはいない。
いや、警戒して距離を取ったのだろうか。
確認するべく、一周回ってドクオと別れた道へと戻ってきた。
やはり、自分を尾行していたわけではなさそうだ。
今からならまだ、ドクオに追いつける。
走りながら、ドクオにメールで尾行されている旨を伝えた。
-
少し走ると、ドクオの姿が薄っすらと確認できた。
そしてその手前には、ドクオを尾行する人物が。
なんて容易いんだ、と思った。
それと同時に疑った。尾行していたのは本当に一人だったのか。今も自分は尾行されていないだろうか。
しかし、それも無さそうだ。
自分は今走ってきたのだ。後をつける人物も走らなくてはならない。そんな目立つような事をしていたら、自分がすぐに気づくだろう。
それならば、安心して行動できる。
自分は、ドクオを尾行している人物に、少しずつ近づいた。
尾行の尾行、と考えると間抜けな話だ。そんな事を思いながら、やがてドクオを尾行している人物の真後ろまで辿り着いた。
( ^ω^)「動くなお」
(;^Д^)「!?」
ドクオを尾行していた男の腰に、スマートフォンの角を押し当てる。
男からは何が押し当てられているのかわからない。恐らく拳銃か何かだと思うだろう。拳銃なんてあり得ないと思っても、もしも本当にそうだったら、と考えると、動くことは出来ないはずだ。
-
( ^ω^)「なぜ、彼を尾行しているんだお」
(;^Д^)「そっ、それは……」
男は動揺している。脚も震えているようだ。これなら、扱いやすい。
('A`)「俺にも教えてくれよ、理由を」
(;^Д^)「ッ!」
動揺のあまり、自分が尾行していたはずの人物が近づいてきた事にも気付かなかったようだ。
(;^Д^)「……」
('A`)「まあ、何も言わないんじゃあ仕方ないな」
そう言って、ドクオは恐怖に震えている男が持つ鞄を奪い取って、中身を漁った。
('A`)「……ほう、ポジション警察署のプギャー巡査か」
( ^ω^)「……ポジション警察署!?」
('A`)「そうらしいぜ。……ったく、どういう事だ?」
(;^Д^)「それは……その……」
( ^ω^)「特別捜査本部の一員かお?」
(;^Д^)「……そうだ」
-
なんて事だ。特別捜査本部は、すでにドクオに目をつけていたという事なのか。
(;^Д^)「上司の命令で、あんたを尾行しろと……」
('A`)「……なるほどな。じゃあ、俺らが一体どういう人物なのか、もうわかったな?」
(;^Д^)「……国王暗殺の犯人だろ……?」
('A`)「察しが良くて助かるよ。ところで、モララーのようになりたいか?」
(;^Д^)「なっ……! た、頼む、殺さないでくれ! なんでもする! なんでもするから!」
( ^ω^)「なんでも……かお。じゃあ、ショボンを殺してくれお」
(;^Д^)「!? さ、さすがにそれは……」
('A`)「出来ないか。まあ、ショボンに本当の事を言われちまったら、俺らが困るしな。じゃあこうしよう」
-
ドクオはそう言うと、ノートパソコンを取り出して何やら操作している。数分後、やっと続きを話し始めた。
('A`)「娘さんはナット小学校の二年三組か」
(;^Д^)「なっ!? や、やめろ! それだけはやめてくれ!」
('∀`)「やめてください、だろ?」
ドクオは、口角を引きつらせて、笑った。
その顔が月明かりに照らされて、一層恐ろしく見えた。
(;^Д^)「や……やめてください……」
( ^ω^)「ショボンを殺したら、だお」
(;^Д^)「ぐっ……わかった、なんとかするから、娘だけは……」
('A`)「おいおい、受け入れるの早すぎだろ。ショボンに真相を話そうってんじゃないだろうな?」
(;^Д^)「いや、そんなつもりは……!」
('A`)「残念だが、ポジション警察署には共犯がいるからな。お前らの行動は筒抜けだぞ」
(;^Д^)「……わかってる、わかってるさ」
-
ドクオは満足そうな表情を浮かべて、ノートパソコンを鞄の中にしまった。
( ^ω^)「三日やるお。三日間、お前らと娘さんを監視し続けるお。もし、ショボンを殺さなかったら……」
('A`)「どうなるか、わかってるな」
(;^Д^)「わかった……。絶対に殺す……。だから、娘は……」
('A`)「しつこいな。お前の、行動次第だ」
(;^Д^)「ああ……」
プギャーは膝から崩れ落ちて、地面にへたり込んだ。
抵抗の意思は見られない。自分達は、プギャーを置いて自分の部屋へと帰った。
-
自分の部屋に到着し、冷蔵庫から取り出したビールをドクオに手渡す。
栓を開ける音が、言葉を発するきっかけとなった。
('A`)「ブーン、お前……やるじゃん」
( ^ω^)「おっ? なにがだお?」
('A`)「いや、尾行に感づいたのもあるし、俺の話に上手く合わせただろ? すごいぜ」
( ^ω^)「……それは、なんとなくだお。なんとなく尾行に気づいて、なんとなく話を合わせただけだお」
('A`)「……まあ、そうか」
本当に、なんとなくだった。
流れ作業のように、身体がそうしていたのだ。
('A`)「でもまさか、捜査本部に尾行されてるとはな」
( ^ω^)「ちょっとびっくりだお。捜査本部のデータにはそんな事……」
('A`)「ああ、書いてなかったな。書くまでもないと判断したのか、ハッキングを疑っているのかはわからんが」
-
( ^ω^)「後は、プギャーが上手くやってくれればいいお」
('A`)「期待しないようにしておくよ」
少しずつだが確実に、追い詰められている。
だが、不思議と焦りはない。むしろ高揚している。
( ^ω^)「タバコ、くれお」
('A`)「勝手に持ってけ」
以前タバコを吸い始めてから、ドクオにもらって吸うことが増えた。
そろそろ自分で買うべきかもしれない。そんな事を考えながら、タバコに火をつけた。
期限は三日。その間、プギャーの娘と警察署内を監視すると言ったが、はったりだ。
そんな事に時間を使う暇はない。大学生活も、しっかりと送らなければならない。
逃亡犯として、逃げ続けるためには必要な事だった。
特に、ショボンに疑われているとなれば尚更だ。プギャーの件が終わるまで、変な行動は起こせない。
-
――ポジション警察署――
(´・ω・`)「ドクオはどうだ?」
( ^Д^)「……」
プギャーをデスクに呼びつけ、小さめの声で問いかける。彼は何かを考えるようにして、しばらくしてから口を開いた。
( ^Д^)「ここ数日、特に目立った行動は無いですね。昨日も、講義が終わると友達と夕食を食べて真っ直ぐ帰っていきました」
(´・ω・`)「そうか……」
今のところは、白か。いや、疑っているのだから、灰色と言ったほうが正確か。
それがどちらかに染まるまで、自分は戦い続けなければならない。
(´・ω・`)「今日もうちの店に来るか? 今後について相談もしたいしな」
-
( ^Д^)「えっ……ああ、ぜひお邪魔します」
(´・ω・`)「わかった」
( ^Д^)「では失礼します」
ドクオの尾行については、プギャー以外の誰にも話していない。
ドクオを疑っていることは、あくまで自分の勘による物だ。
しかしいくら勘とはいえ、国王暗殺の犯人ほどの凶悪さを持った人物と疑っているドクオを尾行させるというのは、あまりにも危険だからだ。
もしもの事があった時に、責任を取れない。
他の者に知られていなければ、プギャーの独断か単なる偶然で済ませる事も容易い。
(´・ω・`)(プギャーには申し訳ないがな)
お前にしかできない。そうプギャーに伝えたら、あっさりと引き受けてくれた。単純な男だ。
もしも犠牲になる事があっても、正義の為には仕方のない事だ。
-
――バーボンハウス――
(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ」
(´・ω・`)「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」
( ^Д^)「あ、どうも……」
ショボン警視から、テキーラの入ったショットグラスを受け取り、一息に飲む。
ショボンはグラスを回収して、一度カウンターに入ると、違うグラスを二つ持って席についた。
(´・ω・`)「君はビールでよかったよな?」
( ^Д^)「は、はい。ビールで」
(´・ω・`)「ならよかった」
そう言って、黒ビールの入ったグラスを自分の前においた。
ビールの黒と泡の白のコントラストが、まるで今の自分の心のようだと思い、早く飲み干してしまいたかった。
(´・ω・`)「実はドクオともこうやって話してな。彼は一緒に酒を飲むには悪くない相手だった。本音で語っているように思えたんだ」
( ^Д^)「そうだったのですか」
-
そんな話、ショボン警視もドクオも言っていなかった。だが、聞いていたとしても、自分はショボン警視の頼みを断らなかっただろう。
(´・ω・`)「君も、酒を飲むにはいい相手だ。少し畏まりすぎだがな。仕事じゃないんだ、もう少し砕けても大丈夫だ」
( ^Д^)「まあ、ショボン警視がそう言うのでしたら……」
バーボンハウスに来てから一時間が経った頃、自分は十杯目のグラスを空にしていた。
(*^Д^)「いやいや俺は酔って無いですって〜!」
(´・ω・`)「そうは見えんぞ。顔が真っ赤だ」
(*^Д^)「ショボン警視が強すぎるんですよ!」
自分は、酒を飲むとすぐに顔が赤くなる。だが、いくら飲んでも意識は正常に保たれている。
先輩や上司と酒を飲む時、酔っ払った演技をするのが大変だったが、それも慣れてしまった。
(*^Д^)「……ふーっ。そろそろ、外でちょっと酔いを覚ましません?」
(´・ω・`)「ああ、そうだな。父さん、会計」
ショボン警視がそう呼ぶと、ショボン警視の父親がやってきた。自分のビールのお金を手渡して、店を後にする。
-
夜風が頬を撫でる。熱くなった身体には心地がいい。
バーボンハウスは、裏道を入った目立たない所にある。ここから駅まで歩くにも、裏道を通っていかなければならない。
ショボン警視は無言で前を歩いている。
やるなら今しかない。
――やらなければならないのだ。娘のため、自分のために。
ポケットからナイフを取り出し、ショボン警視の背中に向けて、走り出す。
体重を乗せた重い一突きを、その大きな背中に。
月明かりに煌めくナイフは、ショボン警視の身体を――、
――すり抜けた。
-
(;^Д^)「ッ!?」
世界が、視界が、回った。
ショボン警視の背中を見つめていたはずの瞳は、夜空と月と、逆光で陰ったショボン警視の顔を映す。
同時に背中に叩きつけられた、大きな何か。
いや、違う。自分が背中から地面に叩きつけられたのだ。
(;^Д^)「ガハッ……!」
呼吸ができない。頭が回らない。
世界が、静止する。
両手に持っていたナイフは、すでに自分の手から消えていた。
そしてショボン警視の手に握られた何かが、月明かりを反射させて自分の顔を照らした。
そしてやっと気がついた。
自分は、失敗したのだ――。
-
第10話、以上になります。
気づいたらもう10話でちょっとびっくりです。ちなみに書き溜めは16話まで完成してます。
書き溜めに追いつかない程度にがんばります…!
-
乙!
-
おつおつ
デスノートみたくなって来たな
-
乙!
続きが気になる
-
おつおつ
すげえ面白いぞ
-
乙っつ
-
このままバレてしまうんだろうか心配だ
-
次回は日曜日までに投下します、と言い忘れてました。
当初ショボンは探偵という設定で考えていたり、デスノートに似てる…と自分でも気づいて捜査本部の管理官にしました。
真似してないつもりでも、似ちゃうことってありますね…。
-
待ってる
ショボン探偵も悪くないと思うの
-
たくさんのレスありがとうございます!
第11話、投下します。
-
(´・ω・`)「どういう了見だ、プギャー」
銀色に輝くナイフを握ったショボン警視が、自分を見下ろしてそう問いかける。
(´・ω・`)「貴様が、署内の共犯か」
先程までの温厚な口調とは違う。言葉だけでどんな人間も怯んでしまうような、威圧感。
背中から叩きつけられたからなのか、恐怖からなのかはわからないが、言葉が出なかった。
(´・ω・`)「まさか貴様に刃を向けられるとはな。油断したぞ」
油断。あれが油断していた人間の反応なのか。
後ろを振り返る事も無く、殺気だけで攻撃を回避する。そんな事が可能なのか。
(´・ω・`)「なに、大したことじゃない。月明かりによる影が見えただけだ。もうちょっと場所が違えば、刺されていたかもな」
心が読まれたのか、と思った。
たとえ本当に影に気づいたのだとしても、それだけの注意力を持っていたという事か。
油断させるために酔っ払ったふりをしたというのに、何も意味をなさなかったのか。
(´・ω・`)「どうした、喋れんのか」
(;^Д^)「……ッ!」
-
少しずつ、呼吸が回復していく。
だが、何も言えなかった。
息が苦しいからではない。純粋な恐怖と、迷いがあるからだ。
ショボン警視を殺せなかった。今抵抗したところで、殺せないだろう。
しかしこのままでは、娘が殺されてしまう。
何か方法を考えるしかなかった。
考えるために、喋ることをしなかった。
(;^Д^)「……?」
ふと、思い出した。
先程ショボン警視は、“貴様が署内の共犯か”と言っていた。
これを、利用すれば。
(;^Д^)「あんたを……あんたを殺さなきゃ……大義は成し得ないんだ……」
(´・ω・`)「大義だと……? 貴様、一体どういう……」
(;^Д^)「あんたの言った通りさ……。俺が……スナイパーライフルを盗んだんだ……」
(´・ω・`)「……ほう」
(;^Д^)「だからここで、あんたを殺す……!」
痛みに悲鳴を上げる身体を強引に起こす。
まだ呼吸も苦しい。だが、やらなければ。
-
(#^Д^)「うおおおおおおお!」
ショボン警視の持つナイフに向かって手を伸ばす。
当然、ショボン警視はナイフを離そうとはしない。
――だが、それでいい。
強引に身体を押し込むように、ナイフを自分の腹へと突き刺した。
(;^Д^)「あがっ……!」
(;´・ω・)「!?」
想像以上の激痛が、神経を駆け巡って全身に伝える。痛みで思うように動けない。
とても立っていられない。膝は震え、やがて地面に崩れ落ちた。
(;^Д^)「ぐっ……ぐおお……」
呻き声しか発することができない。
だがそれでいいのだ。
余計な事は喋ってはならない。自分を悪人に仕立て上げるためには。
もしもまともに喋れたら、呼んでしまうだろう。
娘の名を。
-
(´・ω・`)「……、残念だ……」
(;^Д^)「……ぐっ……」
意識が、遠のいていく。
これで、終わりか。
娘は、殺されずに済むだろうか。
きっと大丈夫だろう。
自分が余計な事を言っていないのは、本物の共犯がドクオ達に伝えてくれるはずだ。
目はつぶっておこう。
少しでも、潔く死にたい。
( Д )(さよなら……)
視界は白く、意識は透明に、光の中へと溶け込んでいった。
-
――二日後・ポジション警察署――
(´・ω・`)「――という事だ」
捜査本部にて緊急会議を開いた。
プギャーと自分の間で起きた内容を、皆に直接伝えるためだ。
現場に居合わせたのは自分一人。実際に何が起きたのか、証明するには自分の言葉しかない。
しかしそれでは、信用には足らない。いや、仮に信用されたとしても、納得がいかない。
だから、あの日プギャーに会う前に、予めスイッチを入れておいたICレコーダーに録音された音声を聞かせたのだ。
(´・ω・`)(こんな形で役に立つとはな……)
ICレコーダーを持ち歩き、様々な場面で録音するのは自分の癖だ。
役に立つかはわからない。いや、そんな事まで考えてスイッチを押す事の方が少ない。本当に、癖でしかなかった。
-
(´・ω・`)「それともう一つ、大事な話だ。今からちょうど二十年前だが、警官の子供を狙った誘拐や殺人が連続して起きた、未だに未解決な事件がある」
(´・ω・`)「同一犯と見られる証拠はいくつも上がったが、犯人逮捕にまで至らなかった。俺も当時は十歳だ。この事件を知らない人も少なくないだろう」
それは自分にとって、大きな別れ道となった出来事だ。
自宅に突然現れて、殺害。誘拐して身代金を手に入れ、殺害。
犯人は何が目的だったのか、結局わからぬままだ。
(´・ω・`)「なぜ今この話をしたのかというと……、この事件の犯人は、警察署のコンピューターをハッキングする事で、警官の個人情報を盗んでいたんだ」
(´・ω・`)「それ以降、警察全体のネットワークセキュリティ強化に務めたらしいが、俺は不安でな。モララーが殺された件もある。今俺達が追っている事件は、卑劣で奸智に長けている。つまり……」
そこまで言ったが、それ以上は言わなかった。
言いたくなかったのだ。心の中の引っ掛かりが、そうさせた。
だが、ここまで言えば皆も理解しただろう。
(´・ω・`)「そこで、捜査本部のデータを全て削除する提案をしたところ、承諾してもらえた」
-
会議室が、どよめく。しばらくして、自分が喋らなくなった事に気がついたのか、再び会議室は静寂に包まれた。
(´・ω・`)「これからは、捜査記録はすべて書面で行う。ネットワークに接続していないコンピューターに限り、使用を許可する。手間は増えるが、これも皆の為だ。理解してくれ。以上だ」
反論は無い。当然だ。皆の家族の身を守るためには、必要な事だからだ。
会議が終わると、真っ直ぐ自分に向かってやってくる人物がいた。
モナーだ。
( ´∀`)「お疲れ様です」
(´・ω・`)「ああ。色々と、疲れた」
( ´∀`)「まさかプギャーが共犯だったとは、驚きです」
(´・ω・`)「そうだな……。あいつの家族は何も知らなかったようだ。これから大変だろうが……仕方がないな……」
( ´∀`)「そうですね……」
自分を殺そうとした人間の家族まで、構っていられない。今はそれよりも、懸念すべき事がある。
-
(´・ω・`)「捜査本部の中で優秀な人間が、二人いなくなった。これは由々しき事態だ」
( ´∀`)「モララーにプギャー、どちらも捜査本部の中では特に秀でてましたね」
(´・ω・`)「今俺が最も期待しているのは、君だ。まだ力を出し切っていないように見えるぞ」
( ´∀`)「そんなつもりは……」
どこか力が抜けたような雰囲気。それがそう見せているだけなのかもしれない。
( ´∀`)「しかし、警視がそう仰るのでしたら、今以上に気合を絞り出してみます」
(´・ω・`)「まあ、力みすぎるのも良くないからな、適度に頼むぞ」
( ´∀`)「はい。では」
モナーが書類を持ち直し、デスクへと戻っていく。
捜査本部の体制が、大きく変わった。
優秀な人間が二人いなくなっただけでなく、捜査記録を書面で行う。
これは非常に手間だ。しかし、必要なのだ。
――もう二度と、あのような事件を起こさないために。
-
――二十年前――
(´・ω・`)「……」
自分には、友達がいなかった。
(´・ω・`)(……今日も騒がしい)
ホームルーム中に騒ぎ立てるような低能とは、付き合いたく無かったのだ。
そんな自分の考えをクラスメイトも理解していたのか、浮いている自分と関わりを持とうとしないだけなのかはわからないが、自分も避けられていた。
(´・ω・`)(マシな人間は、いないのか……)
そんな事を考えるだけの時間が、毎日繰り返されていた。
しかし、その日は少し違った。
( ><)「転校生を紹介するんです! 入ってきてほしいんです!」
先生の甲高い声に呼ばれて、扉から入ってきた一人の少年が黒板の前へと立った。
( ><)「み、みんな静かにして欲しいんです! 自己紹介してもらいたいんです!」
そんな先生の声も聞こえていないかのように、クラスは更に騒がしくなった。
-
しかしそれをいとも簡単に黙らせた、少年の拳。
黒板に裏拳を叩きつけ、思わず耳を塞ぎたくなるほどの大きな音を響かせた。
_
( ゚∀゚)「おい、なんだここは。動物園か? 大人しくしてろよ、お前らが人間だって証明したいならな」
誰も、何も言わなかった。
自分ですら、この少年の迫力に飲み込まれてしまっていた。
( ゚∀゚)「俺は、ジョルジュだ。どうやらお前らも人間だったみたいだな。これからよろしく頼む」
ジョルジュと名乗った少年は、そう言うと頭を下げて、一番後ろにある空席に座った。
(;´・ω・)(な、なんなんだ彼は……)
黒板を殴るような問題児かと思いきや、頭を下げて挨拶をする礼儀もあるようだ。もっとも、挨拶とは言えないような皮肉が混ざっていたが。
彼とはあまり関わらないほうがいい、心も脳もそう判断を下した。
――そのはずだった。
( ゚∀゚)「おいおい、このクラスはどうなってんだ? なんでお前だけ一人で飯食ってんだよ。一緒に食うぞ」
-
給食が配膳されて、それを今まさに食べ始めようとしたその時。
ジョルジュは両手で持ったトレーを自分の机に強引において、近くにあった椅子を引き寄せた。
(´・ω・`)「……えっ?」
唐突すぎて、理解が追いつかなかった。
( ゚∀゚)「えっ? じゃねーよ。一緒飯食おうって言ってんだ」
(´・ω・`)「……僕と?」
( ゚∀゚)「俺は今誰と話してんだ」
(´・ω・`)「……ああ、僕か」
( ゚∀゚)「お前面白いキャラしてんな」
いや、何を言っているんだ。自分は、低能な人間と付き合いたくなんて無いんだ。
断ろう。そう思って、口を開いた。
(´・ω・`)「僕、一人で――」
( ゚∀゚)「――お前、頭の悪い人間とは関わりたくないとか思ってんだろ」
(;´・ω・)「!?」
-
心を読まれたのか、と思った。いやそれはない、そう頭では理解していても、そう思えてしまうほどのタイミングだった。
( ゚∀゚)「見りゃわかるぜ。まあ気持ちもわからなくもないけどよ、俺が低能かどうかは判断するにはまだ早いだろ」
( ゚∀゚)「それによ、低能な人間と付き合うのも悪くないもんだぜ。まあ、それはそのうちわかるさ」
(´・ω・`)「……」
ジョルジュの勢いに、圧倒されてしまう。自分が口を挟む暇もない。その気もなくしてしまう。
納得せざるを得ない。その迫力にも言葉にも、それだけの説得力があった。
この喋り方だけを取っても、頭のいい人間だと思った。
(´・ω・`)「……僕は、ショボン。よろしく」
( ゚∀゚)「今朝も言ったが、俺はジョルジュだ。よろしくなショボン」
クラスメイトに、初めて名前を呼ばれた。
それが、自分とジョルジュの出会いだった。
-
それから数ヶ月。
気がつくと自分は、彼の事を誰よりも信頼し、尊敬していた。
初めて出来た、友達だった。
自分達は毎日のように遊んでいた。
時にはボードゲームをしたり、時には勉強をしたり、時にはキャッチボールをしたり。
その日は、たまたま自分の家でチェスをしていたのだった。
午後一時。自分達はまだ遊び始めたばかりだ。
( ゚∀゚)「俺、弟ができるんだ」
(´・ω・`)「へえ、それはめでたいな。いつ頃産まれるんだい?」
( ゚∀゚)「さあなぁ。今日か明日か一週間後か……、まあそろそろって感じだ」
(;´・ω・)「そんな唐突な」
( ゚∀゚)「いやー、産まれてから言えばいいかと思ってな。しかし楽しみでつい漏らしちまった」
(´・ω・`)「楽しみなのはいい事だね。産まれたら写真見せてね」
( ゚∀゚)「ああ、真っ先にな」
-
真っ先に。そう言ってくれるのが嬉しかった。
純粋に、ただ純粋にジョルジュの弟を見てみたかった。
( ゚∀゚)「しかしよぉ……、どうしても勝てねーんだよなぁ」
気づけば、自分はジョルジュのキングをナイトで刺していた。
(´・ω・`)「いや、ジョルジュは前に比べて強くなったよ」
( ゚∀゚)「そうかぁ? わかんねーもんだな」
ジョルジュがチェスを始めてからまだ数ヶ月。対して自分は数年。その自分に追いつこうとするその成長のスピードは、まさに才能と言える。
(´・ω・`)「僕、ちょっとトイレに行ってくるよ」
( ゚∀゚)「おう」
彼はそのうち、自分よりも上手くなるだろう。その時が来るのが楽しみだとも思い、その時が来てしまうのが悔しいとも思った。
便器の上に座って用を足していると、不意に玄関のチャイムが鳴った。
-
(´・ω・`)「しまった……まだ出そうだ……」
急いで尻を拭った所で、立ち上がったら漏らしてしまいそうだ。この勢いのまま、全てを出し切りたい。
そう思っていると、扉の向こう側からジョルジュの声がした。
( ゚∀゚)「俺が出てくるぜ。お前はそこで神に祈りながら糞でもしてろ」
(´・ω・`)「祈りたくなるほどの激痛に悩まされてはいないけど……お願いするよ」
( ゚∀゚)「任せとけ糞野郎」
糞野郎には違いない。そんな事を考えながら、残りの便を捻り出す。
しばらく経ってもジョルジュは戻ってこない。
自分はすぐに尻を拭い、トイレから出て玄関へと向かった。
一体誰が来たのだろう――
――そんな考えは、世界の音と共に、一瞬にして消え去った。
残ったのは、戸惑いだけ。
(;゚∀゚)「ぐ……あ…………」
ジョルジュが、大量の血を流して倒れていた。
-
(;´・ω・)「ジ、ジョルジュ!?」
すぐにジョルジュのもとに駆け寄る。腹を数ヶ所、ナイフで刺されたようだ。
(;´・ω・)「何が……一体何が!?」
(;゚∀゚)「し……知るかよ……ぐっ……」
(;´・ω・)「救急車を……!」
そう言ってすぐに立ち上がろうとする。しかし、ジョルジュの手が、自分の腕を掴んで離さない。
いや、そのジョルジュの力は、振りほどこうと思えば簡単な程に、か弱い。しかし自分にはそんな事が出来なかった。
(;゚∀゚)「待てよ……どうせ間に合わねぇ……。隣に居てくれ……」
(;´・ω・)「で、でも……!」
(;゚∀゚)「いいんだよ……それより俺は……お前と最期に話をしてぇ……」
(;´・ω・)「……ジョルジュ……」
ジョルジュの顔は、血色を失って真っ白になっている。
ジョルジュはこのまま死んでしまうんだ、と冷静な思考が働いた事に、心の何処かで嫌悪感を抱いた。
-
(;゚∀゚)「ああ……夢も叶わなかったな……」
(;´・ω・)「夢? 夢ってなんだい?」
(;゚∀゚)「……警官に、なる事さ……。正義の味方に憧れてたんだよ……」
意外だった。ジョルジュは、警官よりはチンピラになるようなタイプだと思っていた。
しかし、何故だか警官になったジョルジュの姿が安易に想像できる。そしてそれが、似合っていると思った。
(;´・ω・)「正義の味方……?なぜ、正義の味方に……?」
(;゚∀゚)「さあな……忘れちまったよ……。でも、正義の為に戦うのって……かっこいいじゃねーか……」
(;´・ω・)「正義って……なんなの……?」
(;゚∀゚)「正義か……。自分が信じる道の事だと、思ってるぜ……」
(;´・ω・)「信じる道……? 僕には無いよ……そんなの」
何も、信じてはいなかった。この世の在り方も、道徳も、価値も、自分の存在も。
ただ一つあるとすれば、それは自分の初めての友達以外にありえなかった。
-
(;゚∀゚)「……信じる道が無いのなら……自分が信じてる人に教われば……いいんじゃないか……?」
(;´・ω・)「信じてる人……」
――その時初めて、自分にしか出来ない事を見つけた。
(´・ω・`)「ジョルジュ……僕が……、いや違う……」
(;゚∀゚)「……?」
――自分の存在価値が、生まれた。
(´;ω;`)「……“俺”が必ず、君の夢を叶えてみせる……」
( ゚∀゚)「……そうか……。そりゃあ……よかった……」
そう言うとジョルジュは、ゆっくりと瞼を閉じながら、もう一度口を開いた。
( ∀ )「よろしくな……ショボン……」
(´;ω;`)「任せろ……ジョルジュ……」
ジョルジュの中から何かが抜けていくのが、はっきりとわかった。
ジョルジュは、二度と自分の名前を呼ぶことはなかった。
-
――現在――
(´・ω・`)(ジョルジュ……俺は、お前の夢を叶えられたのだろうか……)
後から判明した事だが、ジョルジュは、当時警官だった自分の父の子供だと勘違いされて、刺されたのだ。
あの時ちゃんと自分が玄関に向かっていれば。
ジョルジュが死ぬことはなかったのだ。
何度も後悔し、その度に何度も泣いた。
しかし、後悔しても意味がないことはわかっていた。自分に出来る事、自分のしたい事、自分がすべき事は、ジョルジュの夢を叶える事だけだった。
そうして今、ここにいる。
(´・ω・`)(答えはどこにあるんだ……ジョルジュ……)
降りしきる雨の中、傘の下で一本のタバコに火を付けた。
-
第11話、以上になります。
タバコがよく登場しますが、喫煙者の方にとってタバコのお供になればと思います。
そうでない方も、暇つぶしに読んでもらえていたらありがたいです。
次回は金曜日までに投下します!
-
おつ
プギャーかわいそすぎワロタ
-
プギャーが機転利かしててワロタ
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プギャー腹決めててワロタ
-
プギャー話題になりすぎワロタ
第12話、投下します。
-
――ブーンの部屋――
('A`)「プギャーの奴……ショボンは殺せなかったみてーだな」
( ^ω^)「そうみたいだお……」
テレビからは、ニュースキャスターが事実のみを淡々と述べる声が聞こえる。
捜査本部内に、国王暗殺の共犯がいた事。スナイパーライフルを盗み出した事。そして、死んだ事。
('A`)「……あいつが、バーボンな訳はねぇ」
( ^ω^)「ブーンもそう思うお。声も全然違ったお」
('A`)「となると、土壇場で嘘をついたんだろうな……、自分が共犯だって」
( ^ω^)「じゃあ、余計な事は漏らしてないのかお……?」
('A`)「まあそうだろうな。漏らしてたら、俺はとっくに留置所行きだ」
( ^ω^)「なら娘さんは……」
('A`)「殺さねーよ。というか、元々殺す気なんてねーよ」
( ^ω^)「おっおっ、そうだと思ったお」
-
結果的にはよかった、と思った。
プギャーをこの手で殺さずに済み、警察署内の共犯の存在を消すことができた。バーボンとしては、その方が助かるだろう。
もっとも、バーボンが自分たちにとって味方なのか敵なのか、わからないが。
スナイパーライフルが署内から消えた事実は、今日初めて公表された。
警察の立場が危うくなるのを想定して、犯人逮捕までは隠し通すつもりだったのだろう。
しかし、署内から共犯が現れ、死亡したとなれば話は別だ。
公表せざるを得なかった、というわけだ。
('A`)「こうなりゃ、捜査本部の士気もだだ下がりだな。世間からの批判も殺到だろうよ」
( ^ω^)「署長かつ管理官のショボンの立場も危うくなるお」
('A`)「まあ、ショボンはその程度じゃ揺るがないだろうけどな」
( ^ω^)「……? そんなもんかお……?」
ショボンの事をよく知っているような口ぶりで、ドクオはそう言った。
いや、ドクオの事だ。ショボンについてプロファイリングしているのかもしれない。
('A`)「まあ、なんとなくな。それより、ツンと連絡は取ったのか?」
あの日以来、連絡を取ったのは一度だけだ。
ツンは、今までと変わらず接してくれた。
-
( ^ω^)「一回だけ、電話したお」
('A`)「……そうか」
ドクオはそう言うと、スマートフォンを操作し始めた。
('A`)「……よし、飯食いに行くぞ」
( ^ω^)「おっ? 誰か誘ったのかお?」
('A`)「ああ。ツンと、クーだ」
いつの間にか、クーさんの呼び方が呼び捨てになっている。自分の知らない間にも、クーさんとの関係は進んでいるようだ。
三十分後、二人は部屋にやってきた。
ξ゚⊿゚)ξ「……久しぶり」
( ^ω^)「……おいすー……」
ξ゚⊿゚)ξ「……なによ、そんなに顔見て」
( ^ω^)「……、なんでもないお」
気にするな。
気を使っては駄目だ。
ツンもそれを望んではいないだろう。
-
川゚ -゚)「まるでお通夜だな」
そんな雰囲気をぶち壊す、クーの一言。
(;'A`)「……あちゃー……」
自分とドクオは、気まずさに何も言えなくなってしまった。
暫くの沈黙。それを破ったのは、意外にもツンだった。
ξ*゚⊿゚)ξ「ぷっ、あははは! クーさん、天然みたいで可愛いなー。髪も綺麗だし。はじめまして、ツンです」
川゚ -゚)「よろしくな。ドクオの友達なのだろう? 敬語である必要はない。それと私は天然ではない。人によって造られた人工物だ。……いや、人を自然と捉えるなら、天然といえるのだろうか……?」
('A`)「そういう所が天然なんだよ……かわいいぜちくしょー」
川゚ -゚)「褒めるな、ドクオ程じゃない」
(*'A`)「クー……」
(#^ω^)「人の部屋でラブコメやめろお」
ξ*゚⊿゚)ξ「……いいなー……」
-
ここ最近の緊迫感がまるで嘘のような平穏。
まるで休息のようだ、と感じてしまっている自分がいるのに、気づいてしまった。
……いや、自分はそういう人間じゃない。
こういう平穏な日常が嫌いなのだ。
必死でそう言い聞かせた。
ワンコインで一枚食べられるピザ屋に到着して、自分達はドクオから衝撃的な話を聞いた。
('A`)「――ってなわけで、オレとクーは付き合う事になった」
( ^ω^)「おっ……」
ξ*゚⊿゚)ξ「……ドクオが……すごいわ……」
ツンの言う通りだ。このドクオが、クーのような黒髪ロング美人と付き合う事になるとは。
……いや、いずれそうなる事はわかっていた。だがそれでも、実際に耳にすると衝撃的だった。
ξ*゚⊿゚)ξ「うらやましいなー……」
( ^ω^)「おっ? ドクオと付き合いたかったのかお?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「いやそれはない」
('A`)「……おい」
ドクオは、不細工な顔をさらに不細工に歪めた。
なんて不細工なんだろう。自分はその不細工な顔を眺めながら、あまりの不細工さを不憫に思った。
ξ゚⊿゚)ξ「単純に、乙女心っていうやつよ……」
川゚ -゚)「なんだ、ツンはブーンと付き合ってるわけじゃないのか」
ξ*゚⊿゚)ξ「えっ!? そっそそ、そんなわけないじゃない!」
('∀`)「付き合っちゃえよ〜」
ξ//⊿//)ξ「〜〜ッ!」
( ^ω^)「ピザ美味いお〜」
ξ#゚⊿゚)ξ「おいコラ」
ツンの拳が、自分の肩にめり込んだ。
-
一時間も経った頃、自分は三人を家まで送り届けた。
一人の帰り道。自分で買ったタバコに火を付けて、さっきまでの事を振り返った。
ツンは、何も知らないのだ。
自分が、世間で騒がれている殺人犯だという事を。
自分が、ツンの母親を殺した事を。
だからツンは、今までと変わらず接してくれている。
もしも知ったら、どんな反応をするのだろうか。
( ´ω`)「……」
苦しい。
胸の奥が、万力で押し潰されているような気分だ。
自分は、こんな気持ちを抱えながら生きていくのか。
こんな気持ちを抱えながら、死んでいくのか。
耐えられない、と思った。
馬鹿げている。自分で選択した道だ。
後悔なんて――。
タバコを地面に擦りつけて火を消すと、不意に後ろから足音がした。
はっとした。奴だ。バーボンだ。
振り返ってはならない。顔を見てしまったら、殺されてしまうような気がしたからだ。
「久しぶりだな」
-
腰に、何かを押し当てられる。間違いない。この声はバーボンだ。
「すごいじゃないか。首相に限らず、捜査本部のモララーに、大勢の市民までもな……。プギャーを使って私の存在を隠した時は、流石に驚愕したよ」
プギャーのあれは、副産物のようなものだ。元々は、ショボンかプギャーのどちらかが消えればそれで良かったのだ。
「そんなわけで、残りの報酬だ」
何かが地面に落ちる音がする。封筒か、鞄か。その辺りだろう。
「またそう遠くないうちに、会う事になるかもな」
腰に当てられた物が離れる。振り返るが、すでにそこには誰もいなかった。
(;^ω^)「……今度はいくらかお……」
足元に落ちている鞄を手に取り、中を見る。
その中には、一千万の束が四つ。
報酬は全部で五千万というわけだ。
( ^ω^)「こんなの……」
(#^ω^)「こんなのどうしろっていうんだお……!」
火を付けて燃やしてしまいたい。そんな事を思った。
闇は、自分を蝕んでいく。
-
翌日、ドクオのパソコンに、衝撃的なものが映し出された。
(;'A`)「データが……データがねえぞ……」
捜査本部のコンピューターのデータが、無くなっているのだ。
捜査記録から捜査本部のメンバーのデータまで、何一つ残っていないのだ。
(;'A`)「いや待てよ……このディレクトリの奥底に何かあるみたいだ」
ドクオが何をしているのかはあまり理解できなかったが、おそらくフォルダの深くまで入り込んでいるのだろう。
その先にあったものは。
('A`)「ショボンの……データだ」
何故か一つだけ残されていた、ショボンのデータ。
('A`)「ショボンの個人情報と……」
( ^ω^)「“俺を殺してみろ”……?」
そこには、そう書かれていた。
自分達への、メッセージのつもりだろうか。
('A`)「馬鹿にしやがって……」
-
ドクオはそう言った。
だが、表情は怒りのそれとは正反対のものに変わった。
('∀`)「お前を殺すのは、まだだ」
( ^ω^)「……」
おそらくいつか、ショボンを殺す時が来るだろう。
それほど遠くない気がした。
もし自分達が逮捕されれば、待っているのは死刑台だろう。
ショボンか自分達のどちらかが死んだ時、勝負は決する。
ショボンのいない捜査本部など、相手にならないとすら思えた。そうなれば、自分たちの勝利だ。
だが、勝って何が得られるというのか。
――いや、元々欲する物などなかったのだ。興奮さえあれば、それでよかった。
では、ショボンを殺したその先に、興奮は待っているのだろうか。
今はまだ、わからなかった。
( ^ω^)「……次は、どうするかお……」
('A`)「うーん、そうだな。アジトが欲しい。足がつかなくて、人気もないアジトが。廃屋や古い工場なんかがベストかもな」
-
(;^ω^)「そんなん、どうやって見つけるんだお……」
('A`)「こればっかりはコネが無いとなぁ……。誰か紹介してくれねーかな」
( ^ω^)「そんな都合の良いコネなんてないお……。走り回って廃屋を探すしかないお」
('A`)「だな。そうと決まれば外出だ!」
――二時間後――
('A`)「――と意気込んでみたものの……」
(;^ω^)「良さそうなところがないお」
原付で走り回ってみたが、古い工場や廃屋らしいものはあまり見つからなかった。
('A`)「使ってない工場とかでも、いつ管理してる人が来るかと思うと中々踏み切れねぇ……」
廃屋でも、必ず誰かが所持している物だ。定期的に見回りに来る可能性も否めない。
そう思うと、やはりどうしようもなかった。
('A`)「仕方ねぇな……アジトは諦めか……」
( ^ω^)「仕方ないお……」
-
そんな事を話しながら、原付を停めて路肩でタバコを吸っていると、見覚えのある人物が歩いてきた。
(;^ω^)「おっ!?」
('A`)「……おいおい、マジか」
(メ”Д”)「……」
その人物とは、小学生の頃にドクオをいじめていた、いじめっ子大将だった。
頬に残ったの大きな傷痕が、昔と変わっていなかった。
('A`)「おい、マゼンタだろ」
(;メ”Д”)「……!? どっ、ドクオか……!?」
( ^ω^)「懐かしいお」
(;メ”Д”)「お、お前は確か……“糞投げのブーン”……!?」
(#^ω^)「なんだおその通り名」
ひどい通り名を付けられたものだ、と思った。
もっとも、自分達も“いじめっ子大将”と呼んでいたわけだが。
(メ”Д”)「なんだよお前ら、何の用だよ」
('A`)「いや、懐かしい顔だと思ってな。お前、今何やってんの? 大学生か?」
-
(メ”Д”)「何って……ちょっとした商売やってんだよ。そうだ、お前らにもこのサンプルやるからよ、もし気に入ったら俺に連絡くれよ。特別に安く売ってやるから」
そう言ってマゼンタが鞄から取り出した、小さな袋。中には白い粉状の物が入っている。表面には電話番号も書かれていた。
(;^ω^)「ちょっ……これって……」
(メ”Д”)「大丈夫だ、変な薬じゃねぇよ。鼻から吸い込めばちょっと気分がよくなるから、オナる時にはもってこいだぜ?」
('A`)「……ほう、これがお前の商売か」
(メ”Д”)「ああ、まあまあ儲かってんだ。あんまり出回ってはくれねぇが、そのくらいの方が安全だしな。生きていく分の金にはなる」
鞄の中に、同じ袋が大量に入っているのが見えた。
一体、どこから仕入れているのだ。
そう考えていたのは、自分だけではなかった。
('A`)「……これ、誰に頼まれて売ってんだ? 良ければ紹介して欲しいんだが」
(メ”Д”)「は? いや……流石にそれはできねぇな。信頼できねー」
('A`)「お前が持ってる分、全部買ってやる」
(;メ”Д”)「…………えっ?」
-
('A`)「俺を信頼出来なくても、金を信用する事は出来るだろ?」
ドクオが鞄から取り出した財布。異様なほど膨れ上がっている。中には万札が何十枚と入っている事だろう。
(;メ”Д”)「ぜ、全部で二十万だ。本気で買うのか?」
('A`)「じゃあこれだけあれば足りるだろ」
ドクオが手渡した万札の束。マゼンタはそれを受け取ると、焦った手つきで数え始めた。
(;メ”Д”)「……十枚多いぞ」
('A`)「……気のせいだろ」
(メ”Д”)「……わかった、紹介してやる。何が目的だか知らんが……とりあえずこれは受け取れ」
マゼンタはそう言ってドクオに鞄をまるごと手渡した。その表情は少しだけ満足そうだ。
(メ”Д”)「ついてこい。連れてってやる。すぐ近くだ」
原付は路肩に停めたまま、マゼンタの後をついていく。
-
5分も歩いた先にある、小さなビル。その三階にある事務所に、マゼンタの雇い主がいるらしい。
(メ”Д”)「ちょっと待ってろ。話をつけてくる」
入り口の前に立たされ、マゼンタだけ扉の向こうへ。
しばらくすると扉を開けて、中へ入るように促してきた。
(メ”Д”)「こいつらが、俺の旧友でして……。持ってた薬、全部買ってくれましたよ」
旧友、だなんて。思わず噴き出しそうになってしまった。
なんとか笑いを顔にも出さないようにして、マゼンタの雇い主に軽く頭を下げた。
( ゚д゚ )「話は聞いたぞ。俺はミルナだ。ま、仕事は言わんでもわかるだろう」
('A`)「俺はドクオです。こっちはブーン。ちょっとした相談がありまして」
( ゚д゚ )「相談、か。高い金を出してまで相談したい事とは、一体どんな内容なんだ」
( ^ω^)「物件を、探してるんですお」
( ゚д゚ )「物件? おいおい、下の不動産屋と間違えてるんじゃないだろうな。仮に俺が不動産屋だとしても、学生がルームシェアするような部屋は扱ってない」
-
ミルナという男は、椅子に座ったまま口角を上げて笑った。
だが、自分とドクオの表情は変わらない。
('A`)「俺達、国王と首相を殺したんですよ」
(;メ”Д”)「!?」
壁際に立っていたマゼンタは驚愕の表情を浮かべた。だが、ミルナさんの表情は打って変わって、真剣そのものになった。
( ゚д゚ )「……それは本当なのか? なかなか興味深いが、証明できるのか」
('A`)「いや……生憎何も証明する手段はありません。こんな物を持っているくらいで」
ドクオはそう言って、鞄の中から拳銃を取り出して、ミルナさんに渡した。
警戒心が足りない、と思うだろうが、今は自分も銃を持っている。
もしミルナさんがこちらに銃を向けるような事があれば、すぐに自分がミルナさんの頭を撃ち抜くだろう。
ドクオもそれをわかっているのだ。
( ゚д゚ )「……まあ、ただの学生じゃない事は確かなようだな。いいだろう、どんな物件だ?」
期待通り、ミルナさんは何かしら物件を所持しているようだ。
ドクオはミルナさんが返してきた拳銃を受け取って、その内容を話した。
-
('A`)「自分達の活動の拠点になる、基地が欲しいんです。古い工場か廃屋のような場所がいいのですが」
( ゚д゚ )「工場か……、一箇所だけあるな」
( ^ω^)「本当ですかお!」
( ゚д゚ )「ああ。周りに人気はあまりない。少し歩いた先にマンションがあるくらいか。ここから2kmほど行ったところなんだが……」
('A`)「いくらです?」
ドクオは、ミルナさんの言葉を遮るようにそう言った。
( ゚д゚ )「……四千五百万だ」
('A`)「……三千五百万で」
( ゚д゚ )「おいおい、子供の遊び場じゃないんだぞ。四千三百万だ」
('A`)「三千七百万で」
( ゚д゚ )「四千二百万だ。これ以上は負からんぞ」
('A`)「……四千万なら買います」
( ゚д゚ )「……ったく、生意気なガキだ」
ミルナさんは頭を掻いて、机の中から何やら一枚の紙を取り出した。
-
( ゚д゚ )「いいだろう、四千万だ。これに住所と地図が書いてある。早速使ってくれて構わない。金は後で受け取りに行くが」
そう言って、ミルナさんはドクオに一枚の紙と鍵を手渡した。
('A`)「ありがとうございます。じゃあ、二時間後くらいでいいですか?」
( ゚д゚ )「ああ、俺が直接出向こう」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
( ゚д゚ )「……お前ら、本当に国王を殺したのか? そうは見えないんだがな。特に、こっちのは」
ミルナさんはそう言って自分を指差す。
('A`)「こいつが、国王も首相も直接殺したんですよ。俺は、ほとんど計画を立てただけです」
( ゚д゚ )「……人は見かけによらんな」
タバコに火をつけたミルナさんはもう一度こっちを見て、なにか納得したような表情を浮かべたが、何も言わなかった。
-
('A`)「じゃあとりあえず、また後でお願いします」
( ゚д゚ )「ああ。マゼンタ、お客様がお帰りだ」
(メ”Д”)「は、はい」
マゼンタはそう言われると、すぐに自分達より先回りをして、扉を開けた。
('∀`)「また、な」
(;メ”Д”)「……」
ドクオは広角を吊り上げて、笑いながらそう言った。
それが何を意図しているのかはわからない。だが、マゼンタは多少なりとも恐怖しただろう。
恐らくそれだけが目的なのだ。特に意味なんてないと思える。
( ^ω^)(やったお……)
思ったよりも簡単に、アジトが手に入ってしまった。
何もかも上手くいく気がしてしまう。
これからどうなっていくのか。ドクオの計画が楽しみで仕方なくなった。
――そんな事を考えていられただけ、この時の自分は救われていた。
-
第12話、以上になります。
なんか進捗すごいので、次回は日曜あたりまでに投下するかもです。
よろしくお願いします!
-
おつ
-
おつおつ
俺的にミルナがなんか信用出来なくて怖いな
-
乙乙
最近で楽しみな現行の一つ
-
おつ
自分には先が読めない…だが続きは楽しみ
-
乙。
久しぶりに創作きたがこんな良スレが立っているとわ。面接もこの作者か。今一番先が知りたいスレです。
内容も面白いし、投下速度も速くていうことなし。期待してるので完結までこのまま突っ走ってくれ!!!
-
この人が面接書いてたのか
面白かった
-
面接と同一人物…だと…
これは松しかない
-
竹も梅もあるかもしれんぞ
-
たくさんのレスありがとうございます!
第13話、投下します。
-
('A`)「きたねぇな、この工場……」
ミルナさんから渡された地図を頼りに、自分達は工場へとたどり着いた。
鍵を開けて中に入ってみたものの、埃やら蜘蛛の巣やらで、汚れきっていた。
(;^ω^)「まずは掃除かお」
('A`)「そうだな……。ま、それ程広くもないし、一日で終わるだろ」
広くはないとはいえ、これを掃除するとなると、気が遠くなりそうだった。
掃除用具を買いに行って、一時間ほど掃除をしていると、外に一台の車がやってきた。その車から降りてきたのはミルナさんだった。
いつの間にか約束の時間が来ていたようだ。
( ゚д゚ )「まるで清掃業者だな」
(;^ω^)「大変ですお」
( ゚д゚ )「管理する金がもったいなかったからな、こればっかりは申し訳ない」
(;'A`)「いいですよ……俺は運動不足なんで」
ドクオは既に疲れ切っているようだった。自分はまだまだ体力が余っている。
-
( ゚д゚ )「疲れているとこすまないが、金は用意してあるか」
(;'A`)「ああ、今持って来ます」
( ^ω^)「ドクオはちょっと休憩してていいお。ブーンが行くお」
悪いな、とドクオは言って床に座り込んだ。
床も埃まみれだが、それも気にならないほど疲れているようだ。
工場の隅に置いた大きな鞄を開けて、中身を確認する。先日バーボンから受け取った時のままだ。四千万がきっちりと揃っている。
( ^ω^)「お待たせしましたお」
( ゚д゚ )「確認する」
ミルナさんはそう言うと、一千万束をわざわざ解いて、一枚一枚確認を始めた。
……まさか、四千枚全部確認するつもりだろうか。
( ゚д゚ )「……これは、なんだ?」
(;^ω^)「おっ……? 何かありましたかお……?」
まさか、偽札だったというのか?
ミルナさんなら、それを判別する事も出来るだろう。
もし偽札だったのなら、このアジトは手に入らない。
-
( ゚д゚ )「……血だな」
(;^ω^)「……ほぇ?」
( ゚д゚ )「血が付着している。しかも、相当古い血だな……。外側は早めに拭き取って綺麗にしたんだろうが、中の札はいくつか染みている」
偽札、という事では無いようだ。それがわかって少しだけ安心した。
だが、なぜ血が付着しているのだろうか。
( ゚д゚ )「この金は、どうした」
(;^ω^)「それは……ブーン達の雇い主……みたいな人から貰った報酬ですお。貰った時のまま、ミルナさんに渡しましたお」
( ゚д゚ )「そうか、ならお前達がこの血について知っているという事はないか。まあこんな事に使われる金だ、血の一つや二つ、付いていてもおかしくは無い」
そう言って、ミルナさんはまた一枚ずつ、確認を始めた。
十分もすると、ミルナさんは確認を終えた様子で、再び鞄の中に札を入れた。
( ゚д゚ )「問題ない。この工場はお前達の物だ」
-
( ^ω^)「よかったお……ありがとうございますお!」
('A`)「ありがとうございます」
( ゚д゚ )「もしまた何か頼みがあればいつでも言ってくれ。金は払ってもらうがな」
ミルナさんはそう言うと、鞄を抱えて踵を返す。しかしドクオの言葉がその足を止めさせた。
('A`)「あっ、ひとつ聞きたいんですけど」
( ゚д゚ )「なんだ?」
('A`)「ここの正式な所有者ってどうなってるんです?」
( ゚д゚ )「……それについては、俺もわからん。俺がここを買ったのも、五年ほど前になるな。その前にも誰か別の人間の物だったようだ」
( ゚д゚ )「元を辿れば誰かに行き着くだろう。だが、おそらくその人も正式な所有権は持っていないはずだ。かといって、国の所有物でもない」
('A`)「……どういう事ですか?」
( ゚д゚ )「誰の物でもないのさ。そんな物件は、探せば結構あるものだぞ。国の管理が行き届いていないという事だ」
そんな事があるのか、と関心した。
確かに全ての土地を管理するのは、データ量にしてもあまりに膨大すぎる。現状は、むしろ良く出来てる方だと思える。
-
( ゚д゚ )「まあ、安心して使えばいいさ。いらなくなったら俺に売ってくれてもいい。じゃあ、また会おう」
('A`)「はい、また」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
ミルナさんは、高級車の後部座席に乗り込んで、すぐに工場前から去っていった。
( ^ω^)「無事買えてよかったお」
('A`)「ああ、そうだな。……それにしても、二人組の凶悪犯がアジトを構えるってのは、なかなかかっこいいな」
( ^ω^)「ドクオは相変わらずだお」
('A`)「なんだよそりゃー。お前だって、ちょっとくらい思うだろ?」
思うに決まっている。そう考えたが、口には出さなかった。
( ^ω^)「……それより、掃除の続きだお! 日が暮れるまでやるお!」
('A`)「えー、もう少し休もうぜ……」
その後、太陽が沈むまで自分達は掃除を続けた。
-
――三日後・ブーンの部屋――
( ^ω^)(掃除も終わったし……後は荷物を運ぶだけだお……)
アジトの掃除を終え、鍵も交換し、もうすぐにでも使える状態になった。
主な使用用途は不明だが、アジトがあるだけでもやる気は上がる。
ふと、部屋の片隅に置かれたベースバッグを見た。
( ^ω^)(明日はこれを運ぶかお……)
今日は掃除の疲れを癒やすために、ドクオと会う予定はない。
賞味期限切れの牛乳を飲みながら、インターネットの掲示版を眺めていた。
( ^ω^)(……こんな日もいいお)
やりたい事がある、というのはとてもありがたい事だ。だが、休息を取るのもいいと感じていた。
( ^ω^)(だけど、暇だお……。おっ?)
なんて都合のいいスマートフォンだろうか。暇だ、と感じた瞬間に、誰かから連絡が来た。
すぐに画面をつけて、メールを開く。
メールの送信者は、ツンだった。
-
( ^ω^)「ナイスタイミングだおツン」
内容は、今から自分の部屋に来るというものだった。
断る理由もない。すぐに了承の返事を送信した。
それから数十分後、ノックの音を響かせて、ツンが部屋にやってきた。
( ^ω^)「おいすー」
ξ゚⊿゚)ξ「やほー。わー涼しい部屋……」
( ^ω^)「九月でもエアコンつけてないと死ぬお」
ツンが靴を脱ぎながら、汗で滲んだ首筋を手で扇いでいた。
ξ゚⊿゚)ξ「外はまだ地獄よ。お菓子は買ってきたけど、何か飲み物あるー?」
( ^ω^)「お茶でいいかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「氷入れてちょうだい……!」
( ^ω^)「もちろんだお」
ソファに腰掛けたツンにグラスを手渡すと、すぐに中身を飲み干してしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「ぷはー、生き返る……」
(;^ω^)「おっおっ、追加するかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「あーうん、お願い」
-
ツンのグラスに再びお茶をいれる。
自分もツンの対面に座り込んで、牛乳を飲んだ。
ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇ」
( ^ω^)「お?」
グラスをテーブルに置いて一息ついてると、ツンが声をかけてきた。
その表情は、真剣だった。
ξ゚⊿゚)ξ「三年前の今日、何があったか覚えてる…?」
( ^ω^)「三年前……?」
記憶を振り返る。三年前といえば、自分は高校二年生で、ツンは高校一年生だ。
そして、夏休み明け。
思い出せるのは、一つしかなかった。
( ^ω^)「ツンと初めて会った日かお……?」
ξ*゚⊿゚)ξ「なんだ……覚えてたのね」
( ^ω^)「覚えてるお。忘れるわけがないお」
夏休みが明け、憂鬱な気分で学校に通っていたあの日。よく覚えている。
-
――三年前――
('A`)「まじで難しいわあのゲーム。フラグどこで立てりゃいいのかさっぱりだよ」
( ^ω^)「ドクオでも難しいとか……ブーンには絶対クリア出来ないお……」
食堂で牛丼を購入した自分達は、日の当たらない席を探していた。
('A`)「ま、お前じゃ無理かもな。……おっ、あそこの席でいいか」
( ^ω^)「おっおっ、あそこなら日陰だお……おっ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「きゃっ!」
よそ見をしていた。自分の前を横切る少女がいた事に気がつけなかった。
結果、その少女と衝突してしまった。抱えていたお盆からは、牛丼が落下して少女の身体に降り注いだ。
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと! 前見て歩きなさいよ! あーもう最悪……」
(;^ω^)「ご、ごめんだお! 今すぐ布巾持ってくるお!」
ξ#゚⊿゚)ξ「はやくしてよね」
-
なんて事だ。
ここ最近は特につきが回って来ないと感じる。
いい事なんて何もありやしない。
そんな事を頭の中で繰り返し考えながら、布巾を持って少女の元へと戻った。
ξ#゚⊿゚)ξ「遅いわよ」
(;^ω^)「おっ……全力ダッシュしたお……」
('A`)「散々だな……」
ξ#゚⊿゚)ξ「何よあんたは」
(;'A`)「えっ!? あっ、いや、その……なな、なんでもないです……」
少女の制服は、丼の底に溜まっていた牛丼のつゆで湿っている。
スカートから覗いた太腿に、少しだけ緊張した。
ξ#゚⊿゚)ξ「責任取ってよ。誠意を見せなさいよ」
(;^ω^)「おっ……じゃあ何でも好きなもの奢るお……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ほんと? じゃあ駅前のカフェの1800円のプリンがいいわ」
(;^ω^)「おっ!? 食堂じゃないのかお!? しかも1800円って高すぎだお!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「なによ、何でもって言ったのあんたじゃない。じゃ、放課後ここで待ちあわせね。来なかったら許さないから」
そう言うと、少女は布巾を置いて食堂の出口へと歩いていった。
(;^ω^)「ちょっ……おっ……まじかお……」
('A`)「散々だなほんと……」
( ^ω^)「ドクオも放課後ついてこいお!」
('A`)「やだよあのゲームの続きやるもん。デート楽しんでこいよ」
(;^ω^)「ひどいお……」
――放課後――
ξ゚⊿゚)ξ「あれ、ちゃんと来てるじゃない。約束は守るのね」
(;^ω^)「来なかった時の事考えると、来ないわけにはいかなかったお……」
ξ゚⊿゚)ξ「何よその言い方。それより行くわよ。早くしないと混んじゃうから」
(;^ω^)「おっ、了解だお」
-
学校から駅まで行くには、徒歩かバスしかない。
それほど距離もないので、バスを待つことはせずに歩く事にした。
ξ゚⊿゚)ξ「私はツンよ、一年三組」
( ^ω^)「ブーンはブーンだお。……って一年?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだけど……もしかしてあんた年上?」
( ^ω^)「そうだお。二年二組だお」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ……。その見た目だと、彼女もいなさそうね」
(#^ω^)「それは失礼だお」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ、じゃあいるわけ?」
(;^ω^)「……いないお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね」
自分が歳上だからといって、気を使ってくる事は無いようだった。
自分としてはその方がありがたかった。
( ^ω^)「ツンもその性格だと彼氏いなさそうだお」
ξ#゚⊿゚)ξ「なによ失礼ね」
-
( ^ω^)「じゃあいるのかお?」
ξ#゚⊿゚)ξ「いないわよ」
(*^ω^)「おっおっ同レベルだお」
ξ#゚⊿゚)ξ「うっさいわ!」
歩きながら、片足を蹴られた。
女子のものとは思えない強さで、あまりの痛みに悶絶してしまった。
十分程歩くと、目的のカフェへ到着した。
お洒落な店内で、自分には似つかわしくないと思った。
ξ゚⊿゚)ξ「特製プリンとショートケーキとモンブランとキャラメルフラペチーノください」
(;^ω^)「おっ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「……何?」
ツンの鋭い眼光が、自分に突き刺さった。
とてもじゃないが、何も言い返せない。
(;^ω^)「……何でもないですお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。ほら、あんたも頼みなさいよ」
(;^ω^)「……ブレンドコーヒー、くださいお……」
自分には、一番安いもの以外の選択肢が無かった。
-
――一時間後――
ξ゚⊿゚)ξ「すごく美味しかったわ」
(;^ω^)「美味しかったお」
結局、自分はコーヒーしか飲んでいない。
だがそれが美味しかったのは事実だ。
( ^ω^)「今日は……ほんとにごめんだお。制服も汚しちゃったお……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、いいのよ。もう気にしてないわ。制服は洗えばいいし。プリンもケーキも奢ってもらったしね」
( ^ω^)「それならよかったお!」
とりあえず、許してもらえたようだ。それがわかって、少し安心した。
( ^ω^)「……じゃあブーンはそろそろ帰るお」
ξ*゚⊿゚)ξ「あっ……」
( ^ω^)「おっ?」
店先から駅の方へと歩きだそうかと思った所で、ツンが何かを言いかけた。
ツンの表情は、少しだけ赤らんでいた。夕日のせいだろうか。
-
ξ*゚⊿゚)ξ「あの……さ」
( ^ω^)「なんだお?」
ξ*゚⊿゚)ξ「あんた、彼女もいなくて暇でしょ? だったら……また私が遊んであげるわよ! それだけよ!」
( ^ω^)「おっ……」
ドキン、と一度だけ、鼓動が高鳴った。
( ^ω^)「じゃあ、また付き合ってもらうお!」
ξ*゚ー゚)ξ「……うん」
この感情は、なんだろうか。
自分の知らない物が、脳に、心に、染み渡っていくのを感じた。不思議と心地が良かった。
ξ*゚⊿゚)ξ「じゃあね、ブーン」
( ^ω^)「さよならだお、ツン!」
夏休み明けの憂鬱が、心にかかっていた雲が、晴れていくのを感じた。
気づいた時には、両腕を広げて、駅の方まで駆けていた。
-
――現在――
( ^ω^)「あの日の事を忘れるわけがないお」
ブーンは、そう言った。
自分にとって、それがどれだけ嬉しい事か。ブーンにはきっと伝わらない。
けれど、それでもよかった。
ξ゚ー゚)ξ「……そっか、それならよかった」
(*^ω^)「おっおっ、ツンが笑うと嬉しいお」
ξ*゚⊿゚)ξ「わ、笑ってないわよ!」
(*^ω^)「笑ってたお!」
(;^ω^)「おっ!?」
ブーンが、急にお腹を抱えてうずくまった。
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、どうしたの?」
(;^ω^)「お、お腹がやばいお……トイレ行くお……」
ξ゚⊿゚)ξ「何よそれ。早く行って来なさい」
(;^ω^)「ごめんだお……!」
そう言い残して、ブーンはトイレへと駆けていった。
面白くてつい、笑ってしまった。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……」
自分しかいない部屋。
グラスの中の氷が傾く音がした。それが部屋の静けさを表していた。
ξ゚⊿゚)ξ(楽しいな……ほんと)
心の中では、素直にそう言えた。
ξ゚⊿゚)ξ「……、あれ?」
ふと目に入った、部屋の片隅の大きなバッグ。
ξ゚⊿゚)ξ「あいつ、楽器なんてやってたっけ?」
ギターかベースか、詳しい事は自分にはわからないが、それが楽器のケースである事はわかった。
ξ゚⊿゚)ξ「どんなものなんだろ……」
自分は、興味本位でそれに近づき、中身を見るべく開けた。
ξ゚⊿゚)ξ「…………、えっ……?」
その中身が一体なんなのか、すぐに理解できた。
理解できたが、わからなかった。
-
――五分後――
( ^ω^)「遅くなったお、牛乳に当たっちゃったみたいだお……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ツンは、何も言わない。表情は固く、目は虚ろだ。
(;^ω^)「ど、どうしたんだお……? おっ……!?」
部屋の片隅に置かれたベースケース。その存在に今やっと気がついた。
全身が粟立つ。
まさか――。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……あんた、あの連続殺人犯なの……?」
――その、まさかだった。
( ^ω^)「……」
何も、言えなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、答えてよ」
( ^ω^)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……あれがなんなのか、見ればわかるわ。スピーカーには弾がいっぱい入ってたし……」
-
見られてしまったのだ。
スナイパーライフルを見たツンが、自分を国王暗殺の犯人だと疑うのは不思議なことではない。
テレビでは、毎日のようにそのニュースや特集番組が放送されている。
国民誰もが、スナイパーライフルを見たらその事を一番に思い出すだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ……あんたの……あんたの口から聞きたいのよ……。お願い……否定して……嘘だと言って……」
( ^ω^)「……」
しかし、何も言えなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「……何も言わないなら、私はここを出ていくわ……」
駄目だ。このまま帰してはいけない。
いずれきっとぶつかる壁だったのだ。
ここでそれを乗り越えるしかないのだ。
そんな事を考えながら、自分はやっと口を開いた。
-
( ^ω^)「……そうだお……ブーンが、皆を、殺したんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……本当なの……?」
( ^ω^)「……そうだお……」
声こそは小さかったが、強く、たしかにそう言った。
その言葉を聞いたツンは、今までの落ち着きが嘘のように、取り乱した。
ξ;゚⊿゚)ξ「うそ、うそよ……嫌……そんな馬鹿な事が……」
ξ;゚⊿゚)ξ「国王も、首相も……私のお母さんも……みんなブーンが殺したの……!?」
(;^ω^)「いや、ツンのお母さんを殺すつもりは……なかったんだお――」
ξ;⊿;)ξ「いや! 来ないで!」
自分がツンに近寄ろうとすると、ツンは大粒の涙を零しながら、近くにあった食器を投げてきた。自分はそれを掴みとり、床に落とす。
ξ;⊿;)ξ「嘘よ……信じたくない……」
やがてツンは膝から崩れ落ち、床に小さな水溜りを作った。
( ^ω^)「……」
-
ぶつかった壁は、乗り越えさせてくれない。
破壊することしか、出来なかった。
しばらく泣き続け、嗚咽が治まってきた頃、ツンはまた口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……私も……殺されるの……?」
( ω )「……ツンが……受け入れられないと言うのなら……」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……そうね……無理よ、こんな事……」
返事は、想像していたのと同じ物だった。
どうしてこんな事になってしまったのか。初めて、自分のやった事に後悔をした。
あの時、スナイパーライフルなんて、手に入れなければ。
あの時、軽い気持ちで決意しなければ。
あの時、国王を殺さなければ。
自分は、神の描いたストーリーの上を辿っているのだと、確信した。
避けられない運命だったのだ。
そして今も。
-
( ω )「今思えば、本当に楽しかったお……ツンと過ごした日々」
( ω )「学校で出会って、一緒に勉強して、カラオケ行って、ゲームして、遊園地行って……」
( ω )「そんな当たり前が、本当は好きだったのかも知れないお……」
( ω )「きっとあのままだったら、ブーンは、ツンと……」
それ以上は、言わない。
ツンも、わかっているのだろう。
引き出しから、拳銃を取り出した。
( ω )「ツン…………愛してるお……」
ξ゚⊿゚)ξ「……私も愛してるわ……ブーン」
撃鉄を、起こす。
ダブルアクションの拳銃で、撃鉄を起こすことに意味はない事は知っている。
だが、ツンに伝えたかったのだ。これが最期の言葉だと。
ξ゚⊿゚)ξ「さよなら」
( ω )「さよならだお」
ξ゚ー゚)ξ「――またいつか」
引き金を引いた時、ツンは笑っていた。
あの頃の笑顔だ。変わらない、笑顔だ。
その笑顔に飛び散る鮮血が、何故だかとても美しく思えた。
( ;ω;)「おっ……おっ……」
( ;ω;)「うわぁぁぁぁあああああああああ!」
-
自分の叫び声が、室内で反響した。
どんな静寂よりも、静かだった。
( ;ω;)「ツン! 起きろお! 起きてくれお! そんな……! そんな……」
( ;ω;)「ブーンは……ブーンは……」
きっと、ツンだけが自分の光だったのだ。
もうその光は、灯らない。
そしてやっと本当の気持ちに気がついた。
そうか、きっと自分は――
――あんな日常が、大好きだったのだ。
自分の心が闇に染まっていくのを感じた。
-
第13話、以上になります。
次回は水曜日までに投下したいです。
よろしくお願いします!
-
( ;ω;)「乙……乙……うわぁぁぁぁあああああああああ!」
-
>>294
くそこんなので
-
ドクオが知ったら恐れるだろうな
-
うわああああたあたあああああああたあたたあああおああああたた
-
乙
エアガンとか言って誤魔化せないのかな?
-
抑揚の付け方が上手くて脱帽
とにかく乙だ 応援してる
-
ここでツンが死んだか
作者のやる気と書きたい気持ちが伝わってきて応援したくなるな
フヒヒ…水曜日が楽しみだ。乙乙
-
応援ありがとうございます!
最終話までまだ先なのに、既に終わらせたくない気持ちでいっぱいに…
でも完結させたいので一応書き溜めのバックアップとっておきます。
では、第14話投下します。
-
川゚ -゚)「……これはさすがの私も驚いたな……」
(;'A`)「なっ……えっ……どういう事だよ……ブーン……」
自分は、叫び声をあげて泣いていた。
気づいた時には、部屋の中にドクオとクーが入ってきていた。
( ;ω;)「おおおっ……うう……」
(;'A`)「おい、ブーン……お前がやったのか……」
上手く、言葉が出ない。
(;'A`)「嘘だろ……ツン……」
ドクオがツンの横で立ちすくむ。
自分は、ただへたり込んで涙を流していた。
しばらくして、自分の涙も止まり、嗚咽も無くなった。
……自分は、何故泣いていたのだ?
-
(;'A`)「ブーン、大丈夫か……?」
( ^ω^)「……大丈夫だお? どうしたんだお、いつの間に来てたんだお?」
(;'A`)「ッ……」
気がついたら、ドクオが横に座っていた。後ろにはクーもいる。
川゚ -゚)「おいブーン、何があったんだ?」
( ^ω^)「ほぇ? 何もないお?」
川゚ -゚)「…………」
(;'A`)「お前……」
何を言っているのだ、この二人は。
自分は今まで寝ていたのだ。何もわかるはずがない。
( ^ω^)「おっ?」
よく目の前を見たら、ツンが寝ていた。
あまり覚えていないが、ツンが遊びに来て、二人で寝てしまったのだろうか。
自分が泣いていたのは、嫌な夢でも見ていたからなのだろうか。
( ^ω^)「ツン、こんなとこで寝てちゃダメだお」
ツンの肩を揺する。
だが、ツンは目を覚まさない。
-
('A`)「……ブーン、ツンは……死んでるんだよ……」
( ^ω^)「お? 何言ってるんだお、二人で寝てたんだお。大体なんでツンが死ぬんだお」
('A`)「お前が、殺したんだ」
ドクオが、不可解な事を言っている。
まだ夢の続きなのではないか、そう思った。
( ^ω^)「ブーンがツンを殺すわけないお。ツン、起きろおー」
(#'A`)「……、いい加減にしろよ……!」
突然、ドクオの拳が自分の顔に強くめり込んだ。
(#^ω^)「痛いお! 何するんだお!」
(#'A`)「死んでんだよ、ツンは! お前がその拳銃で殺したんだよ! よく見ろ!」
( ^ω^)「おっ……」
ツンの、顔を見た。
その笑顔には大量の血がついており、額には大きな穴が空いている。
( ^ω^)「おっ……」
――そうだった。
自分が殺したのだ。
-
( ω )「そうだお……ブーンが……殺したんだお……」
('A`)「……そうか……」
( ω )「スナイパーライフルを見られて……それで……」
('A`)「……仕方なかったんだろ……」
( ω )「……」
言葉に詰まる。
何か、解決策があったのではないか。
嘘でもいいから、否定すれば良かったのではないか。
……いや、きっと嘘をついたところで、ツンは自分の元から離れていくだろう。
考えても無駄だ。過ぎた事だ。
川゚ -゚)「この際だから聞くが、君達は国王を殺した犯人というわけか」
( ^ω^)「……そうだお」
川゚ -゚)「なるほど。まあそんなところだとは思っていた。この前のドクオの行動からもな」
('A`)「やっぱり気づいてたのか……」
川゚ -゚)「気づいてた、と言うよりは勘でしかなかったがな」
-
川゚ -゚)「まあなんだ、私は君達が連続殺人犯だとしても、何も思わんよ。ドクオはドクオだ。ブーンはブーンだ。本質的には何も変わらない」
( ^ω^)「……本気で言ってるのかお?」
川゚ -゚)「私がそんな嘘をついて何の意味がある。一緒にいても、私に害を及ぼすわけでもあるまい。逆に通報なんかした方がよっぽど怖いな」
それもそうだ。クーが受け入れるというのなら、自分達はクーに何もしない。むしろ、ドクオにとっては喜ばしい事だろう。
('A`)「……よかったぜ」
川゚ -゚)「とか言いつつ、本当はわかっていだろう? 私が受け入れる事を」
('A`)「……まあ、な」
ドクオの事だ。きっと前々からそう思っていたのだろう。
クーが拳銃に感づいたのではないか、と自分が疑った時も、あえて否定したのだろう。そうする事で、自分を安心させたかったのだ。
川゚ -゚)「さて……、ツンをどうするんだ?」
( ^ω^)「……アジトの駐車場に埋めるお」
-
('A`)「……それでいいのか?」
( ^ω^)「いいお。その方が、近くにいてくれる気がするお」
近くにいてくれる、だなんて、あまりにも自分勝手だと思った。
ツンは受け入れられなかったのだ。こんな自分を。
その現実を、受け止めきれていなかった。
( ^ω^)「……ドクオ」
('A`)「なんだ?」
( ^ω^)「この前の爆弾、また用意してくれお」
('A`)「あれを? なんのために」
( ^ω^)「それはわかんないお……。けど、何か暴れたい気分だお」
('∀`)「はっ……そうかよ」
ツンの死体に布団を被せて、もう一度だけ涙を落とした。
-
――一ヶ月後――
大学では、ツンが行方不明になった事が騒ぎになった。
しかしそれも二週間程度の事で、一ヶ月も過ぎると誰も口にしなくなった。
行方不明者など、数え切れないほどいる。いちいち一人のために、警察は捜索もしない。
自分達に及ぶ影響は、何もなかった。
この一ヶ月間、自分達は爆弾の製作に取り掛かっていた。
前回と同じだけの量を作るとなると、それなりの期間が必要になった。
('A`)「ここをこうして、入るわけだ」
自分達はアジトに来ていた。
ドクオとクーは、パソコンに向かって何やら作業をしている。自分は、最後の爆弾を組み立てていた。
川゚ -゚)「なるほど……意外と簡単だな」
(;'A`)「いや、クーの覚えが早すぎるんだよ」
川゚ -゚)「そうか? まあ、これなら本番も大丈夫だろう」
(;'A`)「結構大変だぞ? どれくらいの量かもわからないし……」
川゚ -゚)「なんとかなるさ、この数のパソコンがあればな」
(;'A`)「そういう問題かい」
-
机の上には、ノートパソコンが四台設置されている。インターネットには、ドクオの持ってきた小型の機械で接続しているようだ。
( ^ω^)「後は蓋をしめて……できたお!」
自分は、ようやっと最後の爆弾を組み立て終わった。
明日の昼に計画を実行するというのに、結局前日の夜まで片付かなかったのは、自分の覚えが悪かったせいだ。
クーが計画に協力するというのは、昨日決まった事だ。
ドクオも自分と行動するため、パソコンに向かっている時間があまりないというからだ。それでも、もしもクーが駄目なようなら、自分で何とかするしかなかった。
( ^ω^)「これで明日は大丈夫かお」
('A`)「ああ。クーもオッケーだし、きっと成功する」
川゚ -゚)「後は、休む事だな。明日に備えよう」
( ^ω^)「わかったお。じゃあ、また明日十一時に集合だお」
('A`)「ああ。それじゃあな」
-
ドクオとクーが荷物を抱えて、扉から出ていく。
自分も荷物をまとめると、アジトの電気を消して外へと出た。
アジトの駐車場。その隅に植えられた花のそばまで行き、座り込む。
ここは、ツンの死体を埋めた場所だ。
( ω )「ツン……。ブーンはもう、おかしいお…………」
( ω )「自分がなんなのか、わからないお…………」
涙は流さない。
( ω )「もう……どうしたらいいんだお……」
しばらくの間、自分はそこに座り込んでいた。
ただ、座り込んでいた。
-
翌日の午前十一時、自分とドクオはアジトに停めておいた車に乗り込んで、出発した。
この車はミルナから購入した物だ。おかげで、車体番号から足がつく事もない。
ナンバープレートは偽物のため、堂々と街を走るには少しばかり度胸が必要だ。
黒のジャケットに黒のズボン、そして黒の目出し帽。それらを身に纏っている。
荷物は、大きめの鞄の中に全て詰め込んだ。中には、爆弾や拳銃が入っている。
クーはアジトで待機中だ。パソコンの準備をしていることだろう。
クーとドクオとは、左耳につけた小型のヘッドセットですぐに通話ができる。計画は、綿密に組んである。
( ^ω^)「もうつくお。ついたらすぐに入るお」
('A`)「ああ」
車を運転しているのは自分だ。
やがて目的地が見えてきた。車を路肩に寄せて、停車した。
( ^ω^)「さて、パーティの始まりだお」
('∀`)「おうよ」
目出し帽の上からでも、ドクオが笑っているのがわかった。
-
車から降りて、後部座席の鞄を抱える。重たいはずだが、緊張とスリルであまり気にならなかった。
“ポジション銀行”と書かれたガラス製の自動ドアをくぐり抜け、自分達は拳銃を抜いた。
まず、一発の銃声。
ドクオによるものだ。
('A`)「全員動くな!その場に伏せろ!抵抗したら――」
二発目の銃声。
ドクオが、近くにいた男の頭を撃ち抜いた。
('A`)「――こうなるぞ」
そして、銃声に負けない悲鳴が銀行内に響き渡った。
( ^ω^)「騒ぐなお!」
もう一度、銃声。
今度は自分によるものだ。
銃弾は、天井に小さな穴を空けた。
( ^ω^)「殺されたいのかお? 全員殺してもいいんだお?」
そう言うと、先程までの騒ぎが嘘のような静寂に変わった。
誰一人、声を上げない。
-
( ^ω^)「支店長は両手を上げて出てこいお!」
受付の女性の頭に銃を向けると、奥にいた男が、恐る恐る両手を上げて、こちらへ向かってきた。
(;-_-)「……私が支店長……です」
( ^ω^)「お前かお。まずは店のシャッターを閉めろお。入り口の鍵もだお」
(;-_-)「……はい……」
支店長が受付近くのボタンを押すと、窓のシャッターが自動で閉まっていく。
同時に、入り口と裏口の鍵も締まったようだ。
( ^ω^)「じゃあ金庫を開けるお。開け方を教えろお」
(;-_-)「はっ……はい……」
ドクオには人質をまとめてもらい、自分は金庫を開けに行く。
支店長の後をついていくように、金庫へと向かった。
見えてきたのは巨大な鉄の扉。
正しいやり方以外では絶対に開けられない、と思える程の、頑丈そうな見た目だ。
(;-_-)「わ、私の胸ポケットのカードを……」
( ^ω^)「これかお?」
-
(;-_-)「そ、それを機械に通してください……」
扉の横に設置された小さな機械。その端にある溝にカードを通した。
( ^ω^)「パスワードは?」
(;-_-)「6420と3152……です……」
二つの暗証番号を順に入力する。すると、扉の中で何かが動く音がした。
しばらくして、その音は止まった。
(;-_-)「鍵は開きました……、真ん中のバルブを回せば扉が開きます……」
( ^ω^)「お前がやれお」
(;-_-)「……」
支店長に拳銃を向けて、撃鉄を起こす。
この男は、抵抗する気もないが、さほど恐怖心もないように見える。人生に絶望した、そんな表情だ。
支店長がバルブを回すと、何かが外れるような音が聞こえ、扉が開いた。
拳銃を傾けて中に入るように促し、その後をついていった。
中を見ると、小さなコンテナが積まれている。そしてその中には、現金が。
( ^ω^)「用済みだお」
(;-_-)「――ッ!?」
-
右手の人差し指を、引いた。
瞬間、金庫の床は真っ赤に染まり、支店長は崩れ落ちる。
( ^ω^)「おっおっ、ここはまた後で来るかお」
死体に一瞥をくれる事もなく、自分はすぐに金庫を後にした。
('A`)「死にたくなければとっとと集まれ。携帯を床に置いてな。後で持っているのを見つけたら殺す」
受付に戻ると、ドクオが銀行の壁際に人質を集めていた。
皆それぞれ、携帯電話を取り出しては捨てている。
('A`)「……おいおい、誰だよ通報したのは」
外にはすでに数台のパトカーが到着していた。
いや、非常ベルを押す勇気も与えず、携帯電話も取り上げた所で、通報されないとは限らない。
銀行の入り口近くに不自然に駐車された車。営業時間に閉められたシャッター。これらを見て誰かが通報するのは不思議なことではない。
('A`)「警官が近づいてくるな……。おい、お前」
ドクオが、自分の近くにいた男に拳銃を向ける。
男は竦み上がっていたが、強引に引っ張り、入り口へ引きずっていく。
-
('A`)「わりぃ、死んでくれ」
外の警官が入り口に近づいてきた時、ドクオは男に突きつけていた拳銃の引き金を引いた。
それを見た警官は、その場に立ち止まってそれ以上近づいてくることはしなかった。
('∀`)「ふはっ」
圧倒的な、力。
かつての自分達には、絶対に得ることの出来なかった、力。
弱い人間が持つ強大な力は、圧倒的だ。
( ^ω^)「ピザでも頼むかお」
('∀`)「いいなそれ、賛成だ。クリスピー生地でカントリースペシャルピザを頼んでくれ」
受付のパソコンから、宅配ピザ店のホームページを開く。そこから大量のピザとサイドメニューを選択し、この銀行宛てに注文した。
それから一時間もすると、銀行の外には数台のパトカーと、大きめの車両が並んでいた。そして、機動隊が銃を構えてこちらに向いている。
警察からの接触はまだない。もうしばらくすれば、電話があるだろう。
人質は恐怖に怯えている。容赦なく人を殺す所を見せつけたからか、皆自分達には逆らうなどという気は無いようだ。
('A`)「おいおい、見ろよあれ」
外を見ていると、二台のバイクが警察に止められている。
そうか、あれは――。
――ピザだ。
-
('∀`)「来たか」
バイクから降りた二人が、大量の箱を抱えてこちらに近づいてくる。後ろには警官が同行しているようだ。
ドクオは入り口の鍵を開けた。
('A`)「警官は帰れよ! 俺はその二人を招待してんだ!」
ドクオはピザ屋の二人に銃を向けて、そう叫んだ。
警官はたじろいで、ゆっくりと下がっていった。
ピザ屋の二人は、恐怖で進めないようだ。
('A`)「おい、中まで運んでくれりゃいいんだ。金渡して帰してやるからよ。ピザとピザ屋は悪くねえ。俺の味方だ」
銃口は向けたままだが、ドクオはそういった。ピザ屋の二人は、恐る恐る近づいて、やがて入り口の扉をくぐった。
('∀`)「やーやー、すまんな。そこに置いてくれ。これは金だ」
ドクオが鞄から取り出したのは、札束。五十万はあるだろうか。
('∀`)「釣りは貰っとけよ。そんじゃまあ気をつけてな」
ドクオは相変わらず銃を向けたままだが、二人が金を受け取って帰っていくのを、ただ眺めているだけだった。
そして、二人が出ていくとすぐに扉の鍵を締めた。
-
( ^ω^)「やっとピザだお!」
('∀`)「ああ。ほら、お前らも食えよ!」
( ^ω^)「飲み物もあるお!」
ピザの入った箱を十個程、そして缶の飲み物がいくつも入った袋を三つ、人質の方へ放り投げた。
人質は、呆然としている、
('A`)「なんだよ、俺達の飯が食えねえってのか?」
ドクオは機嫌を損ねたのか、銃口を人質に向けた。
( ^ω^)「まあまあ、そんなの向けられたら食べれないお。みんな遠慮しないで食べるお。今日はピザパーティだお」
自分がそう言うと、ドクオは拳銃を降ろした。
やがて人質の一人がその箱を広げる。それを見ている自分達が何もしないのを確認すると、他の人質達もピザや飲み物に手を伸ばした。
('A`)「さて、俺達も食うかね。……おい、聞こえるか?」
ドクオが、スマホを操作しながらそう言うと、耳に付けた小型のヘッドセットから、ドクオとクーの声が聞こえた。
-
川゚ -゚)『良好だ』
('A`)「よし。銀行のカメラを制御してくれ。今の映像が残らないようにな。過去のデータも消してくれ」
川゚ -゚)『了解した』
ドクオがクーにそう伝えてから数分後、受付に置かれた監視カメラの映像を映すモニターは、ブラックアウトした。
川゚ -゚)『現在の記録は残らない。過去の記録も消しておいた』
('A`)「早くて助かる。一応バックアップも探しておいてくれ」
川゚ -゚)『把握した。何かあればまた連絡してくれ』
クーがそう言うと、通話が切れた。
('A`)「さーて、待たせたなピザちゃんよ」
( ^ω^)「やっと食えるお!」
自分達は、目出し帽を鼻の辺りまで持ち上げて、ピザを口の中に放り込んでいく。
ああ、美味い。
ピザを食べるのも、久々な気がする。
( ^ω^)「お前らちゃんと食べてるかお?」
人質に向かってそう聞く。返事はないが、ピザも飲み物も全員に渡っているようだ。
( ^ω^)「逆らわなければ殺さないお」
銃を掲げて、そう言った。
ドクオがそれを見て、ピザを咥えながら笑った。
そしてそれを邪魔するように、銀行の電話が鳴り響いた。
-
第14話、以上になります。
>>310の分をコピーしようとして消してしまって、必死で書き直すという……
やっぱバックアップしないとですね……怖い……
次回は金曜日あたりまでに投下します!
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超大胆犯罪(笑)
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古き良きブーン系の香り
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お口調でバレそう
乙
-
乙
面白いなこれ
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小物臭がしてきてるのが不安だ
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ちょっ、フライング投下!?( `Д´)プンプン
まだまだ続くのは予想外だ。ツンを殺したからてっきり終わりが近いのかと思っていたが…
それにしてもブーンも殺しに一切ためらいが無くなったな。ツンの件で吹っ切れたか
ブンドクはこれからどう動くんだ?
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おつ
銀行に凸ってピザとは驚いた
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いい感じにイカれてきたね
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世界の方がイカれてきてんな
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ピザ屋でバイトしてる俺はワロエない
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語尾って相当致命的なのでは
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沢山のレスありがとうございます!
第15話投下します。
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( ^ω^)「……なんだお」
ピザを片手に持ちながら、鳴り響いた電話の受話器を取って、ボイスチェンジャー越しにそう言った。
受話器の向こうからは、警官と思われる男の声がした。
( ^ω^)「突入したら、人質は全員殺すお」
そう言うと、人質達は小さく声を上げた。だが、すぐにそれも収まった。
( ^ω^)「人質は順に解放する予定だお。だから、お前らはただ見てろお。指示があれば言うお」
そう言って、受話器を置く。
用があれば、着信履歴からかけ直すつもりだ。
警察との、正面からの戦いだ。
自分たちにとって、初めての事だ。
緊張もする。だが、それ以上に高まる物を感じている。
-
('A`)「しばらくしたら、決行だな」
( ^ω^)「みんながピザを食べ終わるまでは、待つかお」
そう言いながら、自分達もコーラでピザを胃の中へと流し込んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「すみません……」
( ^ω^)「お?」
ピザを咀嚼していると、人質の中から、一人の少女が手を上げてそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「あの……トイレに……」
( ^ω^)「おーそうかお、両手を上げてこっちに来いお」
ζ(゚ー゚*ζ「は、はい」
その少女が、両手を頭より高く上げて立ち上がる。
(;^ω^)「おっ……」
セーラー服を着たその少女。
茶色い髪が顔の両横で縛ってあり、ウェーブがかかっている。
そんな姿にどこかなんとなく、高校生だった頃のツンの面影を感じてしまった。
( ^ω^)(……動揺するなお。彼女は何でもない。ただの人質だお)
頭を切り替えるんだ。
自分は強盗、この少女は人質だ。
-
ζ(゚ー゚*ζ「……」
少女を前に歩かせ、トイレへ向かう。
銃はしっかりと向けている。
女性用トイレでも、構わず入った。
そして個室のドアの前まで来て、少女は足を止めた。
ζ(゚ー゚*ζ「あの……扉は……」
( ^ω^)「開けたままだお」
ζ(゚ー゚*ζ「……ですよね……」
目の前で、少女が下着を下ろす。自分はそれを眺めても、何も感じなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……どうして……こんな事を……?」
用を足すのが恥ずかしいからか、吹っ切れてしまったからか、少女は便座に座ってそんな事を問いかけてきた。
( ^ω^)「……どうしてかわかんないお」
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたは、あっちの人とは違う……優しい人に見えるんです……」
( ^ω^)「……優しくなんて……ないお」
ζ(゚ー゚*ζ「で、でも――」
(#^ω^)「――うるさいお!」
ζ(゚ー゚*;ζ「ッ!」
-
つい、声を荒げてしまった。
ツンの面影のせいだろうか?
ドクオが悪く言われている気がしたからだろうか?
( ^ω^)「君は黙って従うんだお。さもないと――」
個室の中に入り、少女の目の前に立つ。少女は、突然の事で驚いた顔をしている。
そして、拳銃を頭に突き付けた。
( ^ω^)「――殺すお?」
ζ(゚ー゚*;ζ「――ッ!!」
少女の下で、水が跳ねる音がする。
ここがトイレで良かっただろう。服も汚れずに済んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「……す……すみません……」
身体を震わせ、竦み上がる少女は、そう言った。
自分は拳銃を下ろして、個室の外に出た。
( ^ω^)「…………びっくりさせてごめんだお。君の震えが止まったら、戻るお」
ζ(゚ー゚*ζ「は、はい……」
しばらくして少女が落ち着きを取り戻し、トイレを後にした。
-
( ^ω^)「……」
本当に、殺したくなった。
なぜだろうか。
殺意が、簡単に芽生えてしまう。
力を手に入れたせいか?
いや、そうだったら、もっと早くからこうなっていたはずだ。
だとしたら、やはり。
( ^ω^)(ツン……)
先程の少女の後ろ姿に、ツンを連想させてしまう。
愛する人を、自らの手で殺した。
それが自分を、根っ子の部分まで殺人鬼に変えてしまう要因となったのか。
('A`)「……そろそろ、やるか」
( ^ω^)「……いいお」
今考えたところで、無駄だ。
きっといつ考えたって、何も生まれない。
自分は、目出し帽越しに顔を叩いて、気持ちを入れ替えた。
着信履歴から先程の電話番号を選択し、受話器を取る。
通話はすぐに繋がった。
( ^ω^)「まずは人質を解放するお。そのための条件があるお」
『……その前に質問させてください』
受話器から聞こえた返事は、意外なものだった。
-
( ´∀`)『君達は、何者なんですか?』
( ^ω^)「……」
自分達は、何者か。
恐らく、国王暗殺の犯人かどうかを聞きたいのだろう。
自分は、そう答えるべきなのだろうか。
( ^ω^)「……今この国で、最も有名な二人組だお」
( ´∀`)『……そうですか、わかりました』
二人組の犯行グループといえば、誰だって自分たちを連想する。
答えを言っているような物だが、それでよかった。
その方が、警察側も指示に従ってくれるだろう。
( ^ω^)「条件は一つ。ここポジション銀行を経由するバスを、全て通常通り運行して欲しいんだお」
( ´∀`)『……それだけですか?』
( ^ω^)「それだけだお。確認が取れたら、人質を数名解放するお」
( ´∀`)『……掛け合ってみましょう』
( ^ω^)「また連絡するお」
受話器を叩きつけるようにして、通話を切る。
そんなちょっとした動作ですら、人質達はびっくりしている。
('A`)「どうだ?」
( ^ω^)「多分、指示通りやってくれるお」
('∀`)「そいつぁよかった」
ドクオは、最後の一枚となったピザを咥えて、笑った。
自分もテーブルの上に置かれた缶コーラを飲み干して、タバコに火をつけた。
-
――一時間後・ポジション銀行前――
( ´∀`)「来ましたか」
運行を通常通りに再開したバスが、銀行前へ停車する。
ここで乗り降りする人間はいないが、どこかから聞きつけた野次馬や普通の利用者が数名乗り込んでいるようだ。
運行を再開してもらうには、手間取った。
警察の上層部の人間の許可や、バス会社の承諾が必要となったからだ。
それらを得る為に提案したのが、車内にカメラを設置する事と、警官が私服で乗り込む事だ。
幸い、この路線は環状に組まれており、同じバスが行き来するため、全部で二十台のバスにそれらを設けるだけで済んだ。
( ´∀`)(これになんの意味があるのか……)
犯人が何を狙って再開させたのかは、今はまだわからない。
そのバスが銀行前を発車してから数分後、銀行の入り口のドアが開かれた。
恐らく、人質の解放だろう。
( ´∀`)「恐らく人質です、保護をお願いします」
近くの機動隊にもそう伝えて、人質の保護に向かわせる。
人質は全部で五人。全員、鞄を肩に下げている。
その全員が、手を上げる機動隊員に向かって歩いてくる。
-
(;´∀`)「!?」
――いや、その五人は途中で別れ、一人一人が別の方向へ向かって歩き始めた。
それぞれ、警官や機動隊が集まっている場所へ。
(;´∀`)(これは一体……なんの意味が……!?)
必死で脳を回転させる。
何か嫌な予感がする。
何かが。
こうして考えている間にも、人質は警官の方へ近づいてくる。
そして、ある事を思い出した。
(;´∀`)「はっ!? 皆さん伏せてくださ――」
人質がそれぞれ、警官に保護されたその瞬間。
自分はそう叫んだ。いや、そう叫びかけた。
(;´∀`)「――ッ!!」
同時に、閃光。
それは大きな衝撃と轟音と共に、辺りを包み込むように広がった。
五人の人質、多くの警官、近くのパトカー全てが、その衝撃に巻き込まれた。
(;´∀`)「なっ……!」
-
遅かった。
人質は、爆弾を持たされていたのだ。
恐らく『警官に渡して、安全な所まで離れたら爆発させる』などという条件付きで、解放されたのだ。
もし本当にそうなって、警官も爆弾だとわかれば、すぐに人質を離すだろう。
リスクはあるが、監禁されているよりはよっぽどいい、と思った人間は少なくなかったのだろう。
だが実際は、人質ごと吹き飛ばした。
自分が巻き込まれなかったのは、偶然に過ぎない。
(;´∀`)「救急車を!」
救急車は既に数台用意しておいたが、これではとても足りない。
爆破まで想定していなかったからだ。
電車で起きた爆破事件をもっと早くに思い出していれば、対処できたのではないだろうか。
考えても無駄だ。結果は最悪の形で出てしまっている。
頭を切り替えて、負傷者の救護に向かった。
-
――ポジション銀行内――
('A`)「言うとおりにしねーから悪いんだ」
タブレットを操作して爆弾を作動させたドクオがそう言う。
人質達は、爆破に巻き込まれた他の人質を見て震えている。
三十分ほど前に人質達の中から、解放されたい人を選んだ。
当然、全員解放されたいに決まっている。だから、条件を付けた。
爆弾を、爆弾だと悟られないように警察に渡せ、と。
悟られないようにするのは難しいだろう。しかしそれでも解放を望む人はいた。
その五人に爆弾を持たせ、解放した。
しかし、警察に悟られようが悟られまいが、どっちでも良かったのだ。
いずれにせよ、人質ごと爆破させる予定だった。
それを、ここに残った人質達にはわからないように、嘘をついただけだ。
('A`)「まあ、こういう事だ。俺達の言う通りにできなきゃ、お前達は死ぬ」
人質達は、ビクッと身体を震わせる。
これで今までよりも、従順になるだろう。
-
('A`)「そんなに怯えんなよ。言う事聞いてりゃ殺さねーよ。ほら、ジュースでも飲んでろ」
ドクオは袋に入ったジュースを、二つほど投げる。人質達はそれにすら怯え、震えている。
自分はそれを見て、何も思わなかった。
( ^ω^)「次はどうするかお」
('A`)「あー、まあ準備するか?」
( ^ω^)「それでもいいお」
('A`)「ならそうするか。……さてお前ら、これを被れ」
そう言いながらドクオは、大きな鞄から取り出した物を人質に投げつける。
それは、自分たちが被っているものと同じ、目出し帽だ。
人質達は困惑していたが、自分達がそれをただ眺めていると、しばらくして全員がそれを頭に被った。
('A`)「お前とお前、こっちにこい」
ドクオが拳銃で指したのは、痩せ型な男性二人。
拳銃で指されたのもあってか、二人は身体を震わせて、恐る恐るドクオに近づいた。
('A`)「俺の前を歩け」
ドクオは二人を銃口で脅かしながら、金庫の方へと歩かせた。
-
( ^ω^)「……」
やがて、ドクオの姿も見えなくなる。
自分は、拳銃を片手に持ったまま、電話の受話器を持ち上げた。
発信先は当然、一時間前にも会話した警官だ。
( ^ω^)「……人質を全員解放するお」
(;´∀`)『は……!? それはどういう……?』
( ^ω^)「少人数ずつ解放して、それぞれ順に違うバスに乗せるお。それが条件だお」
(;´∀`)『……なるほど……』
( ^ω^)「問題なければ、すぐにでも準備するお」
(;´∀`)『……そうですね、解放していただけるのであれば……』
その言葉を聞いて、すぐに受話器を置いた。
今のところは問題ない。そう思った。
ドクオの方は、そろそろだろうか。
そう思った瞬間、金庫の方から一発の銃声が響いてきた。
人質達が小さく声を上げる。連れて行かれたどちらか二人が殺された、と思ったのだろう。
タバコに火をつける。吸い込んだ煙が、快感のように自分を満たした。
-
しばらくして、金庫の方から足音がする。
戻ってきたのは、先程ドクオが連れて行った痩せ型の二人だ。
そこに、ドクオの姿はなかった。
それを見た他の人質達は、驚いている。
しかし、自分は何も驚かない。
これでいいのだ。
( ^ω^)「二人共、戻れお」
そう言うと、二人は他の人質達の所へと戻っていった。
自分は立ち上がって、鞄から水筒を取り出す。
( ^ω^)「お前ら全部で二十五人いるお。五人ずつ、グループを作って別れろお」
そう言った。が、人質達は困惑して、なかなかグループができない。
( ^ω^)「……お前とお前、そこのお前とお前とお前はこっちだお。Aグループとするお」
適当に、銃口を向けて選択した。
人質も直接指示されたほうが動きやすいようだ。すぐに集まって、床に座り込んだ。
次のBグループには、先程ドクオが連れて行った二人と、他の適当な三人を選択した。
-
CグループとDグループには、適当な十人を選別した。
最後のEのグループには、残った比較的体格のいい男性二人と、他の適当な二人と、もう一人。
( ^ω^)「……お前もEグループだお」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい」
自分がトイレに連れて行った少女がEグループに入るよう、残しておいた。
( ^ω^)「お前らには、これを持ってバスに乗車してもらうお」
先程鞄から取り出した水筒。全部で五つ、それぞれ別のグループの一人に、それを渡した。
( ^ω^)「まあ見ればわかると思うお。それは爆弾だお」
そう言うと人質達は皆、肩を震わせた。
――二人を除いて。
それは、先程ドクオが連れて行った二人のうちの一人と、自分がトイレに連れて行った少女だ。
男はただ、他の男が持っている爆弾を見つめている。
少女は、どこを見ているのだろうか。
目出し帽から覗く瞳は、光を取り込まずどこか虚ろだ。
自分の言葉すら、聞こえていなかったのではないか。
-
( ^ω^)(……なんだか目立つお)
もはや恐怖にも震えないその姿は、明らかに浮いていた。
しかし他の人質達は、そんな事には気が付かない。自分の事で精一杯なのだろう。
( ^ω^)(……、今は考えるのをやめるお)
銃身で額を掻く。それが拳銃だと気づいて、すぐに降ろした。
( ^ω^)「バスに乗車したら、その爆弾を座席に置いて、あとは好きなバス停で降りればいいお」
そう言うと、少しだけ安心したのか、人質達の表情が和らいだように見えた。いや、実際は目出し帽で表情など見えないのだが。
( ^ω^)「それと、そこの二人はこっちにこいお」
そう言って拳銃で指したのは、Eグループの体格のいい男性二人。
二人は困惑しつつも、立ち上がってこちらに来た。
( ^ω^)「自分達は金庫に行くお。ただし、その隙にお前らが逃げ出そうとしたら、監視カメラを見てる他の仲間がすぐにそれを作動させるお 」
( ^ω^)「戻ってきたら、Aグループから順にバスに乗り込めお。Bグループは、次のバスに乗るんだお」
人質達は何も言わない。何も言わないが、了承しているようだ。
-
( ^ω^)「じゃあ、二人は前を歩けお」
少しの距離を取って、二人に前を歩かせる。
そして、他の人質達を置き去りにして金庫へと向かった。
金庫へと向かう道程で、一人の男が口を開いて話しかけてきた。
(;ФωФ)「……何故、このような事を」
( ^ω^)「おっ? ……さあ、なんとなくだお」
(;ФωФ)「あなたは国王や首相を殺した犯人であろう。そして目立った証拠も見つからず、あのままなら恐らく犯人逮捕には至らなかった」
(;ФωФ)「それをわかっていながら、何故にこのような大胆な行動を。金が必要、という単純な理由だとは思えないのである」
思っていたよりも随分と、踏み込んだ質問をしてくる。
大した度胸だ、と思った。
( ^ω^)「……いい線ついてるお。君は一歩間違えていたら、自分達と同じ道を歩んでいたかもだお」
( ФωФ)「……我輩には、それに至る為の強大な力がなかったのであろう。あなたの持つ、それのような」
-
恐らく、この拳銃の事を言っているのだ。
力とは、己の持つ心の強さではない。
能力や武器、兵器など、己の心を支える物の事を言う。
弱い者ほど、力を手にした反動は大きい。
心の強さなど、不要だ。
( ^ω^)「……楽しい話は終わりだお」
やがて、金庫に到着する。
金庫の中には、血で赤く染まった一つの死体がある。服は着ておらず、目出し帽もつけていない。
その死体は、ドクオではない。
( ^ω^)「さっきのお前、服を脱げお」
(;ФωФ)「!?」
( ^ω^)「脱ぐんだお」
銃口を向ける。男は、怯えた様子でYシャツを脱ぎ始めた。
(;ФωФ)「下着も……であるか?」
( ^ω^)「下着はいらないお。脱いだ服はこっちに投げろお」
-
スーツやYシャツ、目出し帽など、それぞれをまとめて受け取った。
下着姿となった男は、微かに膝が震えている。
それを見たもう一人の男は、たじろいでいる。
(;ФωФ)「……そういう事であるか」
( ^ω^)「だお。……殺す前に、名前を聞いておくお」
銃口を向け、撃鉄を起こした。
( ФωФ)「……。我輩はロマネスクである。以後、お見知り置きを」
( ^ω^)「いい名前だお。さよならだお」
そして、人差し指に力を込めて引き金を引く。
ロマネスクの頭に、小さな穴が空いた。
やがてその身体は、床へ崩れ落ちていった。
もう一人の男は、目の前で人が殺されるのを見て、小さく声を上げた。
しかし、自分が近くのコンテナに拳銃を置くと、安心したようにため息を吐いた。
自分は、服を脱ぎながらその男に言った。
( ^ω^)「安心したかお? 自分じゃなくて良かった、って思ったかお? 人が目の前で殺されて、喜んだのかお?」
-
上着を脱ぎ捨て、ロマネスクのYシャツに着替える。
ズボンのベルトを外しながら、その男を見た。
絶望したような、表情だ。
いや、目出し帽で表情など見えないが、その瞳は確かに、絶望していた。
( ^ω^)「それでいいお。自分の代わりに殺された人の顔を、名前を、頭に焼き付けて死ぬまで悔やめばいいお」
着替え終わって、タバコに火をつけた。
それを男の足元に放り投げる。
( ^ω^)「吸えお。いい気分だお」
もう一本、タバコに火をつける。
それを咥えて、煙を深く吸い込んだ。
拳銃を握ると、男も焦ったようにタバコを拾い上げて、口に咥えた。
どうやら吸い慣れているようだ。
煙を吐き出した時の瞳は、どこか儚げに見えた。
-
第15話、以上になります。
進捗あまり良くありません……が、次回は月曜日までに投下したいと思います。
よろしくお願いします!
-
おつー
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チルドレン
-
乙!!!
次の話も期待してる
-
('∀`)┓「さあ、はやく続きを投下する作業に戻るんだ!!さもなくば……………
俺は死ぬ」
-
ブーンとドクオにそろそろ制裁ほしいところだな
-
ドクオはともかくブーンは自分から痛い目にあっていると思うが
スレタイ通り闇に染まりつつある
-
元々「ブーンは暗殺を繰り返すようです」というタイトルにしようと思ってたんですが、暗殺だけはなぁ…と思って今のになりました。
こっちの方が良い気がします。
突然ですがおまけ投下します。
-
――中学生時代――
( ^ω^)「おいすー」
('A`)「おー来たか」
夕方、自分はドクオの家へと遊びに来た。
ドクオは両親がいない。ここは、母方の祖母の家らしい。
過去の事はあまり話したがら無いが、いつかドクオが話したければ話してくれればいい。
ドクオの過去の事など、自分はあまり興味がなかった。自分は、“今”のドクオと友達なのだ。
('A`)「これ見ろよ」
( ^ω^)「なんだお?」
ドクオから渡された一枚の紙。
それには、数十種類のピザの写真が載せられていた。
('A`)「宅配ピザの、チラシだ」
( ^ω^)「おっおっ、美味そうだお〜」
(*'A`)「今日はこれを注文する!」
(*^ω^)「まじかお!」
('A`)「……、一枚だけな」
( ^ω^)「おっおっ……」
-
('A`)「ま、足りない分はばーちゃんの飯で」
(*^ω^)「おっ、それも嬉しいお〜」
何故かはわからないが、ドクオが急に“飯を食いに来い”と言ったのだ。
ドクオの家に遊びに来たのは、これが初めてだった。
('A`)「ばーちゃん、こいつが友達のブーン」
( ^ω^)「どうもですお」
ドクオがそう紹介すると、おばあさんは嬉しそうに笑った。
――もしかしたら、ドクオの友達が遊びに来たのは初めての事なのかもしれない。
ドクオが学校で自分以外の人と話をしてるところを見た事が無いからだ。
('A`)「よかった、ばーちゃんも喜んでくれて」
( ^ω^)「優しそうなおばあさんだお」
('A`)「まあな。……って、お前はばーちゃんいないんだっけか」
( ^ω^)「まあ……いない事はないお。ただ、カーチャンがちょっと……」
('A`)「……。大変そうだな」
-
( ^ω^)「……」
('A`)「……っといけねぇ、早くピザ注文しねーと」
ドクオはもう一度チラシを広げて、一つのピザを指さした。
('A`)「これがおすすめだ。これでいいか?」
( ^ω^)「おっ、美味そうだお。それでいいお!」
('A`)「了解」
ドクオが電話をかけてから一時間もしないうちに、原付の音と共にピザが届いた。
いい匂いが、部屋中に広がった。
( ^ω^)「お〜、これが宅配ピザかお!」
('A`)「いやいや普通のピザだろ。……えっ、もしかして食った事ねーの?」
( ^ω^)「……、多分ないお?」
('A`)「マジかよ、人間かお前」
(;^ω^)「ホモサピエンスである事を否定しないでほしいお」
-
('A`)「いや本当に人生損してるぜ。家で待ってるだけでこんな美味いもんが食えるんだぞ? まあ金はかかるが――」
( ^ω^)「確かに美味いお!」
('A`)「てめぇ勝手に食ってんじゃねーよ! 俺がピザ語りを始めようって時によぉ!! …………ああ、うめぇな……」
直径三十センチもないピザを、自分たちはあっという間に平らげてしまった。
( ^ω^)「おばあさんのご飯美味しいですお!」
('A`)「ばーちゃん、こいつにおかわりしてやって」
ドクオが残した分のおかずも、自分が全て食べてしまった。
それほどに、美味しかった。
( ^ω^)「また来ますお」
ドクオのおばあさんにそう言うと、笑って“また来てね”と言ってくれた。
少し、嬉しかった。
('A`)「遅くなっちまったけど大丈夫か? お前の母さん……」
( ^ω^)「……大丈夫だお」
-
('A`)「そうか。まあ、気をつけて帰れよ」
( ^ω^)「おっおっ、また明日だお!」
食後にドクオとゲームをしていたら、ついつい遅くなってしまった。
カーチャンに、何か言われるだろうか。
両手を広げて、走って帰った。
( ^ω^)「……ただいまだお……」
玄関を開けて、そう言った。
それを聞いて、大きな足音と共に母がやってきた。
J( 'ー`)し「何時だと思ってるの!?」
( ´ω`)「ごめんだお……」
J( 'ー`)し「八時には帰る約束だったでしょ!? もう十時よ!?」
( ´ω`)「……」
J( 'ー`)し「早く上がりなさい!」
そう言われて、靴を脱ぐ。
すると突然、頬を叩かれた。
-
J( 'ー`)し「一週間、学校以外の外出は禁止よ!いいわね!?」
( ´ω`)「……わかったお」
母は、怒るとすごかった。
別人なのではないかと思うくらい、豹変した。
普段は、優しい。
――いや、優しいと言うべきなのだろうか。
過剰すぎるほどの、過保護なのだ。
二人分の愛情を注がれているかのような、過保護。
いやもしかしたら、愛情ですらないのかもしれない。
依存に近い、何かを感じていた。
授業参観で手を振らなければ、“母さんが嫌いなの!?”と怒られる。
送迎を断れば、“母さんが見られるのが嫌なの!?”と怒られる。
自分が遅刻した事を先生から聞くと、逆に先生に怒り出す。
母が、よくわからなかった。
-
隠していた成人向雑誌を全て捨てられていたこともある。
成人向サイトを見ていた履歴を消し忘れて、パソコンを破壊された事もある。
自分が風呂に入っていると、“何故かタイミング悪く”カーチャンも入ってくる。
自分が寝ている間に、“寝汗をかいていた”と着替えさせられたこともあった。
母が、自分をどう思っているのか、わからなかった。
( ´ω`)「……」
思春期の自分には、耐え難かった。
父は、そんな母にも自分にも無関心だ。
父がそんなだから、母の依存は自分に向いているのではないだろうか。そんな事を思った。
それでも母親だから、と自分をなだめて、毎日を過ごしていた。
早く明日になって、学校に行ってしまいたかった。
-
――クーの日常――
川゚ -゚)(ドクオが来たか)
三限の講義が始まるまで、まだ時間がある。
私はドクオを眺めるために、いち早く一番後ろの席を確保していた。
川゚ -゚)(今日もかわいいな)
まだ、ドクオとは一度も話した事がない。
会話から、ドクオという名前を知ったくらいだ。
川゚ -゚)(まあ、私から話しかける事は当分ないだろうな)
自分で、そう思った。
いつか、ドクオの方から話しかけてくる時があればいい、そう思っていた。
川゚ -゚)(ドクオ……かわいい)
もしペットに出来たら、嫌がられるほど撫で回すだろう。
鎖に繋いで、絶対に逃げられないようにするだろう。
その上でまた、撫で回すだろう。
そんな事を考えていたら、いかにも頭の悪そうな男に声をかけられた。
-
「ねー君、講義終わったら遊びに行かない?」
川゚ -゚)「黙れ」
「……」
ドクオを眺める時間を邪魔された。
本当なら、八つ裂きにしてかまどで焼いてやりたいところだが、今は時間がもったいない。
川゚ -゚)(……?)
不意に、机の上に置かれたスマートフォンが振動した。
ある人からの、電話だ。
川゚ -゚)「もしもし。……はい、大丈夫です。……えっ、彼……ですか……? ……はい…………わかりました……」
川゚ -゚)「……失礼します」
スマートフォンの画面をタップし、通話を切る。
同時に講師が室内に入ってきて、講義が開始されようとしていた。
-
川゚ -゚)(……そんな……)
偶然なのか、必然なのか。自分にはわからなかった。
これほどまでに自分を悩ませるような事態は、今までにあっただろうか。
川゚ -゚)(……悩んでも、仕方がないか)
スマートフォンを鞄の中に入れて、ノートを取り出した。
シャープペンシルの頭を押して、芯を出す。
必死で、頭を切り替えようとしていた。
川゚ -゚)(はぁ……ドクオ……かわいいな……)
ドクオの横顔を見ていると、心が落ち着く。
自分は講義内容をしっかりとノートに取りつつ、ドクオを眺め続けた。
-
――ショボンの休暇――
(´・ω・`)「……ふぅ」
吸い込んだタバコの煙を、一気に吐き出す。
室内は、タバコの煙で白く靄がかかっている。
(´・ω・`)「どうしたものか」
自分は、人生最大の危機に直面していた。
DVDプレイヤーが、動かないのだ。
いや、厳密には動いている。
だが、ディスクを読み込んでくれなかった。
(´・ω・`)「これでは、休暇を取った意味がない」
盤面を拭いてみても、読み込まない。
試しにディスクトレイの中に息を吹きかけてみるが、効果はない。
(´・ω・`)「貴様も休暇を取っているつもりか」
プレイヤーに話しかけても、返事はない。
(´・ω・`)「いい加減にしろ。何のために海外ドラマをまとめて借りてきたと……。貴様の手助けが無くては見れんじゃないか」
足元には、DVDケースが12枚。
2クール分、休暇で全て見てしまおうと思っていたのだ。
-
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
思わず、拳を叩きつけてしまいそうになった。寸での所で手を止めたが、少しだけ当たってしまった。
衝撃で、テレビ台からプレイヤーが少し飛び出してくる。
(´・ω・`)「……!?」
プレイヤーの後ろ。
そこに挿さっているはずのケーブルが、無い。
(´・ω・`)「なんという事だ……」
――うっかりしていた。
そういえば昨日、掃除のためにプレイヤーを動かしたのだった。
(´・ω・`)「まあいい。これを繋げば貴様も働かざるを得ない……」
(´・ω・`)「休暇を取ったのは貴様ではない。このショボン様さ!!」
いざ、ケーブルを繋ぐ。
――だが。
(´・ω・`)「映らない……だと……!?」
結局自分がDVDを見られたのは、それから四時間後のことだった。
-
――小学生時代――
('A`)「父さん、夕飯は?」
ゲームをやめて、父の部屋の扉を開けてそう言った。
「…………」
('A`)「父さんってば」
「……俺は仕事がある。これで何か食べろ」
父から渡された金。一人が一食口にするには多すぎるだけの金だ。
('A`)「……わかったよ」
扉を閉めて、キッチンへと向かった。
金を、強く握りしめながら。
二ヶ月前に母が死んでから、父はずっとあの調子だ。
('A`)「なんか出前でも頼もうかな……」
キッチンに置かれた出前のチラシをめくる。寿司やラーメン、蕎麦など様々な物があった。
その中で目に止まった、一枚。
('A`)「……ピザかあ」
一食分にしては高すぎる値段。だが、自分が持っている金なら十分払える額だ。
-
('A`)「たまには、食べてみようかな」
そう決意すると、メニューの中で一番美味しそうなものを選んで、電話をかけた。
('A`)「……はい、えと、カントリースペシャルピザで……」
('A`)「えっ、サイズ?」
メニュー表をよく見ると、サイズがMとLの二種類あることに気がついた。
('A`)(Mってどんなもんなんだろ……足りるかな……)
ひたすら思考するが、もしも足りなかった時の事を考えると、不安で仕方がなくなった。
('A`)「Lサイズで」
('A`)「えっ、生地?」
もう一度メニュー表を見る。どうやら、生地の種類も三つほどあるようだ。
('A`)「お、オススメで」
('A`)「……あ、あとコーラください。ポテトも。ああ、チキンも食いたいな……」
('A`)「チキンもお願いします」
頼みすぎてしまっただろうか。
いや、この位なら食べ切れるだろう。
――そう思っていた。
-
('A`)「でかっ!」
宅配ドライバーからピザを受け取った時、ついそう叫んでしまった。
ドライバーは、苦笑いを浮かべている。
(;'A`)「あ、すいません……これで」
皺だらけになったお札を渡す。ドライバーはお釣りを自分に渡すと、すぐに帰っていった。
ピザの上にポテトとチキンの箱を載せて、自分の部屋へと向かった。
(;'A`)「これは……」
(;'A`)「食べ切れないな……」
箱を広げてベッドの上に並べてみたが、一人で食べ切れるような量ではない。
Mサイズにして、ポテトとチキンは頼まなければよかった。
('A`)「とりあえず食うか……」
ピザを切れ目に沿って切り離していく。具がいくつか落ちたが、気にせずに食べた。
(*'∀`)「うまっ!!」
――衝撃だった。
こんなに美味しいもの、食べた事があるだろうか。
いや恐らく、今までには一度足りとも無かったはずだ。
-
('∀`)「なんだよこれ……うま……」
そうなるともう、手が止まらなかった。
途中にポテトやチキンを挟みつつ、ひたすらピザを口に放り込んだ。
だが。
(;'A`)「やっぱ食べ切れないわ……」
いくら美味しい物でも、胃の容量には限界がある。
半分ほど食べたあたりで、もう受け付けてはくれなかった。
('A`)「仕方ない……残すか……」
ピザを皿に移して、ラップを巻いて冷蔵庫に入れる。
我ながら手慣れたものだ、と思った。
('A`)(父さん……何も食べてないよな……)
一言だけ声をかけておこう。そう思って、また父の部屋の扉を開けた。
('A`)「……父さん、冷蔵庫にピザ入ってるから」
「……そうか」
('A`)「……俺、風呂はいるね」
「……ああ」
ただ、それだけの会話。自分はゆっくりと扉を閉め、風呂場へと向かった。
食べてくれればいいな、そんな事を思いながら湯船に浸かった。
-
めっちゃピザ食いたくなってきた
ショボンのおまけもネタ入ってて面白い
-
翌日の朝、冷蔵庫の中にはピザの姿が無かった。
('A`)「……食べてくれたのか……」
その事実に、少しだけ嬉しく思った。
いつか、いつの日かきっと、また元通りになる。
そう信じて、毎日を過ごした。
――そう信じていた。
('A`)「……父さん……」
それから三ヶ月。
父はもう一ヶ月近く、自分の前に姿を表していない。
「ドクオは、おばあちゃんの家で暮らすんだよ」
母方の祖母が、優しい瞳で自分にそう言った。
('A`)「なんで? 父さんは?」
「……お父さんとは、もう会えないのよ」
('A`)「……どうして」
「…………」
( A )「…………どうしてだよ……」
――自分はまた、信じられる人を失った。
-
おまけ、以上になります。
本編に書けない、書かないシナリオをおまけとして書きました。
お腹空いてきて後悔してます。
第16話は、明日投下したいです(希望)
-
おもしろかった乙
-
乙!
-
ピザ食いたくなってきた
-
おまけの続きを所望する!
-
乙
-
レスありがとうございます。
第16話、投下します。
-
( ^ω^)「…………」
自分達が入り口の方へと戻っても、人質達は大して驚きもしなかった。
戻ってきた二人のうちのどちらかが犯人だ、とわかっているのだろう。
自分達はCグループへと戻り、順番が来るまで待機していた。
Aグループは、警察に最も警戒されるだろう。また、自分とドクオが同時にバスから降りるのは目立ってしまう。
そして、自分かドクオのどちらかが、最後まで人質達を監視しなくてはならない。
その為、ドクオはBグループ、自分はEグループにした。
人質達がバスの到着を確認すると、Aグループが立ち上がって入り口から外へ歩いていった。
誰一人として走り出したりしない。
皆、まっすぐにバスへと向かっている。
バスも人質達を待っているようだ。やがて五人が乗り込むと、バスは走り出した。
-
恐らく、バスの中にはカメラが仕掛けてある。
もしかしたら、私服の警官も乗り込んでいるかもしれない。
警官はどうしようもないが、カメラの対策は打ってある。
予め、クーに指示しておいたのだ。
恐らく、もうすでにカメラは機能していないだろう。
( ^ω^)(他にもまだ……)
もう一つ、対策しなければならない事があった。
それはマスコミだ。
マスコミが生中継しているカメラ全てに入り込み、生中継はもちろん、カメラ内にデータの保存もされないように対処しなければならない。
こればかりは、クーも自信がなさそうだった。
全て対処できるかわからない。
( ^ω^)(クーには重荷を背負わせちゃったお……)
マスコミだけでなく野次馬もいるだろう。そこまでは手が回らない。
だが、残される記録は極力減らしておきたかった。
クーはもうすでに作業に取り掛かっているだろう。
しばらくして、次のバスが到着した。
ドクオのいるBグループが立ち上がり、Aグループと同じようにバスへと向かっていった。
自分達の順番が回ってくるまでは、まだ遠い。
それまで、ひたすら頭の中で考え事をしているしかなかった。
-
――ポジション銀行前――
(;´∀`)「そうですか……」
部下から伝えられたのは、バス内に仕掛けたカメラと、マスコミの中継が止まったという事。
犯人の仕業に間違いなかった。
二つ目のグループが乗りこんだバスが発車してから、しばらく経つ。
犯人は、この人質達の中に混ざっているのだろうか。
そう考えるのが妥当だろう。なぜなら、人質達は全員、目出し帽をかぶっているからだ。
しかし、その区別がつかない。
人質達は皆、普通の服装をしており、荷物も大して持っていない。
どれも同じに見えてしまう。
人質が普通にまとめて解放され、その中に混ざっているというのなら、全員から聴取するだけで犯人が割り出せるだろう。
しかし、この場合はそれが出来ない。
人質がどこのバス停で降りるかもわからない。
たとえ全てのバス停で待機していても、目出し帽を外されてしまっては、どれが人質かもわからない。
唯一それがわかるのがバスに乗りこんだ警官だけだが、たった一人で人質全員に聴取するなど、危険すぎる。
乗りこんだ警官には、人質達の降りた駅と顔を記憶してもらうしかない。
(;´∀`)(なにか方法は無いのですか……)
ひたすら考えるしかない。もう自分には、それしか出来ないのだ。
-
――ポジション銀行内――
( ^ω^)(もうすぐかお……)
Aグループがバスに乗り込んでから、三十分が経った。すでにDグループもバスに乗り込み、後は自分達のEグループだけが残された。
耳に付けた小型のヘッドセットに、クーからの連絡も入った。どうやらハッキングの方も問題なく進んでいるようだ。
ぼんやり外を眺めていると、不意にヘッドセットから声が聞こえた。
('A`)『無事に降りたぜ』
それはドクオからの連絡だった。
('A`)『尾行の可能性も考慮して、適当に寄り道していく。終わったらアジトに集合だ。幸運を祈るぜ』
ただそれだけ伝えて、通話は切れた。
たったそれだけだが、安心した。
後は自分が無事に戻るだけだ。
そっと拳を握りしめて、また視線を外へと移した。
すると、バス停に自分達が乗り込むバスが到着した。
グループの先頭にいる男が立ち上がると、他の人質や自分も立ち上がった。
-
先頭の男が開けた扉をくぐる。
外では、数十人の警官と機動隊がこちらを取り囲んでいる。それを横目に通り過ぎ、自分達はバスへと乗りこんだ。
( ^ω^)(五人……これだけいれば十分だお)
バスの中には、すでに五人の乗客がいた。
恐らくこの中の一人が警官だ。二人以上ということは無いだろう。
一番後ろの窓側の座席に一人座っている。自分は、その目の前の座席に座った。
バスが走り出す。まだ、誰も目出し帽を取らない。
しばらくして、前の方に座っていた人質が目出し帽を外した。それを見て、他の人質の一人も目出し帽を外す。
自分と他の二人は、目出し帽を取らない。一人は自分と金庫へ行った体格のいい男だ。もう一人は、自分がトイレに連れて行った少女だ。
少女は、ただバスに揺られている。
制服を着て目出し帽を被った女子高生がバスに乗っているというのはシュールな光景だ、と思った。
-
目出し帽を外した男が、水筒を横の座席に置いたのが見えた。
警官はどこにいるかわからない。気づかれただろうか。
いや、ひょっとしたら他のグループが置いた水筒がとっくに見つかっているかもしれない。だとしたら、気づいていようとあまり関係がなかった。
銀行から二つ目のバス停で、目出し帽を外した男が立ち上がった。ここで降りるつもりなのだろう。
その男を眺めていると、不意に後ろから大声が聞こえた。
( ゚∋゚)「全員動くな!!」
(;^ω^)「!?」
自分の真後ろに座っていた、男。
その男が、拳銃を握って、そう叫んでいた。
そんな、まさか。
(;^ω^)(このタイミングでバスジャックかお……?)
何かがおかしい。
警察に包囲された銀行から、目出し帽を被った人が五人も乗りこんだのだ。
それを知っていて、バスジャックを実行する人間などいるだろうか。
そんな事を考えながら、男を見つめた。
( ^ω^)(……! あの銃は……!)
-
男が持っている銃は、自分の使っている銃と同じ物だった。
それは、警察が使っている銃と同じ物だという事を意味する。
( ^ω^)(なるほど……こいつが私服で乗りこんだ警官かお……)
随分と頭が回る警官だ、と思った。
たった一人では、全員を捕まえるのは無理だ。
この中から犯人を見つけ出す事も難しい。
バスの中には爆弾が持ち込まれている。
最後のグループには、恐らく犯人が乗っている。
それを逃したら、犯人を捕まえることは出来ない。
先に拳銃を出してしまえば、犯人が拳銃を出すのは難しい。
恐らくそんな事を考えて、バスジャックという手段を取ったのだ。
これなら人質を一人も降ろさず、全員の顔や所持品を確認できる。
こんな手があったとは。思いもよらなかった。これでは――
――全員殺せ、と言っているようなものだ。
-
男はまず、自分の頭に拳銃を突きつけた。
( ゚∋゚)「お前、それを外せよ。他の奴もだ、外せ!」
そう言われて、自分と他の人質も目出し帽を外した。
男は右の通路に立っている。ヘッドセットは左耳につけている。とても小型の物だ。気づかれることは無いだろうが、気づかれたところで大した問題ではない。
( ゚∋゚)「それでいい。おい運転手、バス停には止まるな! とりあえず適当に走れ!」
男がそう叫ぶと、バスは扉を閉じてまた走り出した。
( ゚∋゚)「お前、荷物を全部出せ」
男はまた自分に拳銃を突きつけて、そう言った。
持っているのは、自分が殺した男が持っていた鞄と、スマートフォンだけだ。
拳銃は、太腿に括りつけてある。
これさえ気づかれなければ、問題ない。
自分は、男にかばんを差し出した。
( ゚∋゚)「これだけか?」
男はそう言いながら、鞄の中を見る。
財布やノートなどしか入っていない事を確認すると、鞄を閉じた。
-
( ゚∋゚)「他にもあるだろ?」
そう聞いてくると思って、あえてスマートフォンは出さなかった。
遅れてスマートフォンだけ出す事によって、相手の警戒心は薄れるだろう。
躊躇う必要もないが、恐る恐るスマートフォンを差し出した。
( ゚∋゚)「やっぱりあるじゃねーか。先に出しとけよ」
男はそう言うと、スマートフォンを鞄の中にしまって、通路を前に進んで自分の元から離れていった。
(*^ω^)(おっおっ、簡単すぎるお)
思わず声に出して笑いそうになった。
それを抑えるが、口元は緩んでしまった。だが、男に気づかれる事はなかった。
男が次の乗客に拳銃を突きつけている。
自分は窓側の席だ。下半身は男から死角になっている。
おもむろにベルトを外して、ズボンを下ろした。
そして、セロテープで太腿に固定されている銃を外して、またズボンを履いた。
後は、どう楽しむか。この小さな箱を、どう彩らせるか。それだけだ。
-
自分は立ち上がって、叫んだ。
( ^ω^)「そこのニワトリ頭! パーティの始まりだお!」
( ゚∋゚)「ッ!?」
天井に銃弾を一発。
同時に、乗客の悲鳴が耳へと刺さる。
(;゚∋゚)「き、貴様ッ!」
男が自分に向かって、拳銃を向けようと右手を上げる。
しかし、自分が男に拳銃を向ける方が、一秒近く速かった。
自分は握った拳銃で、男の右肩を撃ち抜いた。
(;゚∋゚)「ぐッ……!」
男の右手から、拳銃が落ちる。
それが床にぶつかる前に、左肩も撃ち抜いた。
(;゚∋゚)「ぐぉぉ……」
呻き声を上げた男は、両腕を垂らし、床に膝をついた。
( ^ω^)「身体検査もしないなんて、甘すぎるお。ちょっとは頭の回る奴だと思ったけど、こんなもんかお」
(;゚∋゚)「くっ……お前、まさか……俺の事が……」
( ^ω^)「わかってるお。あんた警官だお? 拳銃を見てピンときたお」
-
(;゚∋゚)「……そうか……」
( ^ω^)「銃をこっちに蹴れお。そしてこっちに座れお」
男に向けた銃口は動かさず、首を振って後部座席を指した。
男は抵抗する事もなく、ゆっくりと立ち上がって銃をこちらへと蹴った。
自分がそれを受け取ると、通路をこちらにゆっくりと歩いて、やがて後部座席へ座った。
( ^ω^)「そこで見学してろお」
そう言って、男の両膝を撃ち抜いた。
(;゚∋゚)「ぐっ!!」
男は椅子に座ったまま、悶え苦しんでいる。
これで、動く事もままならないだろう。
拳銃を握った両手を掲げ、振り返った。
( ^ω^)「諸君、パーティの始まりだお」
笑顔を、乗客に向ける。
そして、左手の拳銃を通路の中央に放り投げた。
( ^ω^)「とある一人を殺したら、ここから逃がしてやるお。答えは……このノートにでも書いておくかお」
先程男に取られた鞄からノートを取り出し、文字を書く。
-
( ^ω^)「さあ、正解がわかった奴はさっさと殺せお」
暫しの沈黙。誰も動こうとしない。
一人の命で他の人命が助かるのだ。
後は答えさえわかればいい。
( ^ω^)「早くしないと、みんな殺すお?」
そう言うと、近くの男が拳銃を掴み取り、こちらに向ける。
しかしその銃口は、自分ではなく、自分の後ろにいる男に向いていた。
(;゚∋゚)「なっ……!?」
男が声を上げた瞬間、拳銃は火を吹いた。
放たれた鉛は、男に向かって真っ直ぐ進み、やがて男の胸を貫いた。
(;゚∋゚)「うっ……」
どうやら、即死はしなかったようだ。
だがこの状態では、すぐ死に至るだろう。
(*^ω^)「……まあそうなると思ってたお」
伏せたノートを、上に掲げる。書いた文字が乗客に見えるように。
-
(*^ω^)「残念、答えはブーンでしたお」
そのノートには、“僕”、と大きく書かれている。
( ^ω^)「まあそりゃあ、犯人であるブーンを殺せばここから逃げられるお」
( ^ω^)「でも、あんたらじゃ殺せないお。ブーンは、あんたらより力の使い方を知ってるからだお」
そう言って、拳銃を持っている男の頭を撃ち抜いた。
悲鳴が上がる。
それを心地よく感じた自分がここにいた。
( ^ω^)「不正解だったのでもう終わりですおー」
次々と、正確に乗客の頭を撃ち抜いていく。
弾が切れたら、男が持っていた拳銃に持ち替えて、また殺した。
それでもバスは、変わらず走っている。
( ^ω^)「運転手はバス止めてこっちこいお!」
そう叫ぶと、バスは急いで車線変更し、路肩に停車した。
やがて、運転手は席を離れ、こちらに顔を出した。
顔が見えた瞬間、それを撃ち抜いた。
-
( ω )「やっとだお……」
拳銃をおろす。
銃口からは、僅かに煙が上がっている。
( ω )「これでやっと二人きりだお……」
( ω )「……ツン……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
自分の瞳は、唯一殺す事のなかった少女を見つめていた。
( ^ω^)「ツン……また会えて嬉しいお」
ζ(゚ー゚*ζ「……何を……言ってるんですか……?」
( ^ω^)「……? ツンこそ何を言っているんだお」
少女は澄み切った瞳で、自分をしっかりと見つめている。
お互い、視線をずらす事はない。
ζ(゚ー゚*ζ「……私は、ツンじゃないです。デレといいます」
(;^ω^)「おっ……?」
-
ζ(゚ー゚*ζ「誰かはわかりませんが、私に出来ることがあれば……」
少女は立ち上がって、ゆっくりと自分に近づいてきた。
そして両手を広げて、自分の背中に手を回した。
優しく、自分を抱きしめた。
( ω )「は……」
(#゚ω゚)「離せお!!」
誰だ、この女は。
こんな女、ツンじゃない。
ツンの皮を被った、偽物だ。
ζ(゚ー゚*;ζ「きゃっ!」
背中に回された手を振りほどいて、少女を突き飛ばした。
(#^ω^)「お前は誰だお……」
ζ(゚ー゚*;ζ「わ……私は……デレです……」
(#^ω^)「……、そうかお」
拳銃の撃鉄を、起こす。
倒れている少女に、銃口を向ける。
-
そうされても、恐怖に怯えないその表情。
自分は、それを知っている。
あの時、ツンも同じ表情をしていた。
( ^ω^)「…………ブーンは、君に感謝すべきなのかもしれないお」
ζ(゚ー゚*;ζ「へ……?」
( ^ω^)「もう一度会わせてくれて、ありがとだお」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい」
確かな笑顔を、こちらに向けた。
何故、笑っていられるのだろうか。
今、自分は君を殺そうとしているのに。
( ^ω^)「ツン、さよならだお」
ζ(゚ー゚*ζ「さよなら、ブーン」
名前を呼ばれ、それに応えるように、引き金を引いた。
確かな手応えがあった。それだけで、自分の心は幸福のようなもので満たされた。
-
第16話、以上になります。
次回は木曜日あたりに投下します。
よろしくお願いします!
-
乙。楽しみにしてる
-
乙
ちょっとご都合っぽくなってきたのが残念だ
-
ご都合……自分もこの話は特にそう感じてます。
楽しくてつい話を膨らませ過ぎたのが原因ですね…。
-
取り敢えず乙!!
ある程度設定が固まるとストーリーを作るのは作者じゃなくなってくるよ
ストーリーを作るのは登場人物の心情だったり、周りの状況だったりする
それを作者の都合でストーリーを好きに決めると、違和感になると思う
-
>>405
まさにその通りですね…、気づけませんでした。
勉強になります。
とりあえず、この先の展開はもう殆ど出来上がっているので、完結までがんばります!
-
創作物にご都合でない展開なんてあるわけないんだから一々気にすんなって
-
なら最初はご都合じゃなかったのかと問いたい
-
乙!
引き込まれる面白さがあるよ!
次の投下を楽しみにして待ってる!
-
確かに今回はちょっと無理があったかなー
それでも十分面白いぞ
まだ話は続くんだしこれからの展開を無理矢理にならないように気をつけてくれ
次も楽しみにしてるぞ。乙乙
-
一気読みしてしまった
なんだこれ...
-
乙。こまけぇことは(ry
-
最初だってただの大学生にいきなり銃送られてきてしかも偶然ブーンには狙撃の才能があったんだぞ
ご都合主義なんて最初からだ
だがそれがいい
-
すまんご都合って言い方に間違いがあった
ただデレの人格にちょっと違和を感じただけなんだ
-
レスありがとうございます。
第17話、投下します。
-
その後、自分はバスを降りて近くのポジション駅へと向かった。
不自然な場所に停車したバスを、通行人も不思議に思っただろう。
停車してからそれほど経っていなかったからか、通報まではされていなかったようだ。
自分は、返り血も浴びていない。
バスから降りた自分を見た人が通報したとしても、捕まるはずがなかった。
見た目は、スーツを着たどこにでもいる男性だ。
尾行もされていなかった。
ポジション駅からストリング駅まで電車に乗り、予め止めておいた原付に乗ってアジトへ向かった。
原付に乗りながら吸うタバコは、過燃焼のせいかいつもより辛く感じた。
そして今、ようやくアジトへ到着した。
-
(*'∀`)「ブーン! 遅かったな!」
アジトの扉を開けると、ドクオが笑顔で出迎えてくれた。
(*^ω^)「おっおっ、遅くなっちゃったお」
アジトの扉を閉めて、小さなソファに身体を投げ出した。
川゚ -゚)「無事だったようで何よりだ」
( ^ω^)「ありがとだお! 無事だったけどいろいろあったお……」
クーは表情こそ変えないが、自分の無事を喜んでいてくれているようだった。
自分は二人に、バスの中で起きた事すべてを話した。
-
――三十分前・ポジション銀行内――
(;´∀`)「やはりいませんか……」
人質を開放し終えた後、機動隊と共に銀行内へ突入した。
しかしどこを探しても、銀行内はもぬけの殻だ。
やはり、人質と共に逃走したのだろう。
完全に、してやられた。
(;´∀`)「しかしこれは、どういう事ですか……?」
扉の開かれた金庫。その中には遺体が二つ。
しかしおかしいのは遺体ではない。現金の入ったコンテナが、遺体の横に置いてあるのだ。
(;´∀`)「まさか、強盗目的ではないとでも……?」
いや、実際に数えてデータと照らし合わせないとわからないだろう。だが、そんな予感がしたのだ。
解放された人質の中にも、大きな鞄を抱えた人などいなかった。いたら目立って覚えているはずだ。
本部に連絡をしよう。そう思っていた矢先、何故か本部の方から連絡が入った。
嫌な予感がした。
(;´∀`)「ば……バスが全て爆破された……!?」
案の定、嫌な予感は的中した。
それでは、バスに元々設置されていたカメラのデータが読み込めるかも怪しくなってくる。
あまりにも念入りに、あまりにも徹底した犯罪。
その事実が、自分を深く追い詰めた。
-
――ポジション警察署――
(;´∀`)「自分が指揮を取っていながら、このような失態を……。大変申し訳ありません」
(´・ω・`)「もう謝るな。俺が指揮を取っていても、結果は同じだっただろう」
自分は他の事件の捜査に取り掛かっていた。その為、モナーが今回の事件の指揮を取ってくれた。
それを責める必要もない。いや、起きてしまった結果だけ見れば責め立てたい所だが、自分が指揮を取っていても同じ事になっていた気がして、責められなかった。
マスコミや警察内部にまでハッキングの手が回るなど、普通では考えられない事だ。
ましてや、逃走に使われたバスの爆破。その徹底した姿勢に、思わず鳥肌が立ってしまう。
(´・ω・`)「人質だと名乗る人間は、まだ現れんか」
(;´∀`)「そうですね……未だ誰一人として現れません」
(´・ω・`)「どういう事だ……」
-
解放された人質は全部で二十五人。
殺されたのは、バスの爆破に巻き込まれた人も含め二十三人。
それがすべて、人質というわけではない。当然ながら、バスを利用しようとした普通の乗客もいたはずだ。
となると、あまりに少なすぎる。
人質の多くは、生きているはずだ。
それなのに、未だ現れないとは。
(´・ω・`)「銀行の利用客はわからんが、職員ならわかるからな。そっちに聴取をするぞ」
問題なのは、ポジション銀行の職員ですら警察に連絡をしてこない事だ。
誰が働いていたのかは、すぐにわかる事だというのに。それでも自ら連絡をしようという意志がないのは、どういう事だろうか。
不意に、ストックホルム症候群の事を思い出す。
いやまさか、あの数時間でそれはないだろう。そう考えるのだが、断定出来なかった。
国王暗殺、首相暗殺。そしてその事件の捜査本部の一員の殺害。大規模な電車の爆破事件。
今では、インターネット上にこれらを詳しくまとめたサイトが多くある。それも、熱狂的な信者が運営する物が多かった。
-
誰もが、心の何処かでスリルを求めるという。
非日常的な日常が、非現実的な現実が、すぐそこにあったら惹かれてしまう。火事を見物するのと同じだ。
人間とは、そういうものだ。
(´・ω・`)「ここまでとは思わなかったな」
(;´∀`)「ええ、正直これほど徹底してくるとは……」
(´・ω・`)「いや、そうじゃない」
(;´∀`)「……と、言いますと?」
(´・ω・`)「奴らのカリスマ性さ」
( ´∀`)「……」
モナーの表情が、一瞬だけ固まったように見えた。
(;´∀`)「私もそう思います……。正直、手がつけられなくなるのではと……」
(´・ω・`)「馬鹿を言うな。我々が……、我々だけはそう思ってはならない」
(;´∀`)「……そうですね、失言でした。より気を引き締めて、捜査に取り掛かります」
そう言って、モナーはハンカチで汗を拭いながら自分の机へと戻っていった。
-
――アジト――
(;'A`)「な……なんだって……?」
( ^ω^)「……、顔と名前を知られた相手を、殺さなかったんだお……」
そう、自分は殺さなかったのだ。
デレという、少女を。
('A`)「どうしてだよ」
あの時。自分は確かに引き金を引いた。
しかし銃口から放たれた弾丸は、デレの顔の数センチ横を通り過ぎて、バスの床に突き刺さった。
何故だろうか。
誰かに邪魔されたわけではない。
自分で、腕を微かに横に動かしたのだ。
殺したくなかったのだ。
( ^ω^)「……わかんないお」
(#'A`)「わかんないじゃねーよ!」
ドクオは、怒りを拳で机にぶつけていた。
( ^ω^)「でもきっと……大丈夫だお」
('A`)「……? どういう事だよ」
-
( ^ω^)「……彼女は多分、誰にも言わないお」
('A`)「……ケッ、どんな自信だよ」
( ^ω^)「……クーみたいなもんだお」
小さく、そう言った。
クーに聞こえないくらいに。
('A`)「……そうかよ」
納得したのか、投げやりなのかはわからなかったが、ドクオはそう言って荷物の整理を始めた。
自分も、着替えて帰ろう。
荷物を整理し着替え終わると、自分は二人に声をかける事もなくアジトを後にした。
自分の部屋に着いた頃には、十七時を回っていた。
計画を開始した時から、六時間が経過している。
講義を休んでまで実行したのだが、講義よりもずっと長く感じた一日だった。
( ^ω^)「……もう……寝るかお……」
服を脱ぎ捨て、ベッドに置かれたジャージに着替える。そのまま、勢い良くベッドに倒れ込んだ。
明日も大学だ。でも、行かなくてもいいか。
そんな事を考えているうちに、自分の意識は深い闇に落ちていった。
-
翌日、目が覚めたのは十時を過ぎた頃だった。
(;^ω^)「十七時から十時って……寝過ぎだお……」
講義はすでに始まっている。同じ講義をドクオも取っているはずだが、ドクオからの連絡はない。
床に放り投げられた服を見て、面倒だなと思いながら洗濯機に放り込む。起き上がったついでに冷蔵庫を開けるが、胃に詰め込めるような物は何も無かった。
( ^ω^)「……ピザ、食いたいお……!」
身体が、心が、細胞一つ一つがピザを欲している。
さっくりとした生地の上に彩られたトマトソースやチーズ、ミートやオニオンを想像するだけで、唾液が溢れて止まらない。
オリーブオイルをかけて、バジルも乗せようか。
そんな事ばかり考えていると、いつの間にか自分の身体は電車に乗ってポジション駅まで向かっていた。
ポジション駅近くの、マーティというピザ屋に入る。
ここは入り口を見ただけで入りづらくなるような洒落た店ではなく、店頭の看板に“ピザ”と書かれただけの、小さな店だ。
売りにしているのもトマトやチーズがメインの物ではなく、ビーフやチキンなどをたっぷり使った、脂肪分の多いジャンキーなピザがメインとなっている。
-
女性の店員に連れられ席につくと、小さなメニュー表を渡された。
自分はそれを見る事もなく、こう言った。
( ^ω^)「マーティ・スペシャル、Lサイズをナポリ風生地で。トッピングにバジルとオリーブオイルくださいお」
( ^ω^)「フライドチキンも三本。ハッシュドポテトも。あ、裏メニューのイカゲソの唐揚げもくださいお。レモンはかけないでほしいですお」
( ^ω^)「あとコーラ二つくださいお。あ、こっちはレモン入りでお願いしますお」
店員は、必死でメモを取っている。
書き終わり、それを復唱して問題ないことを確認すると、キッチンへと入っていった。
最初に出されたのは、コーラだ。二本の大きなグラスが、テーブルの上に置かれた。
その一つを掴み取り、ストローを咥えて一気に飲み干す。炭酸の刺激とレモンの酸味に喉と舌をやられたが、むしろそれくらいが良いと思えた。
炭酸が胃に入ると、胃液と化学反応を起こして急速に炭酸ガスを放出する。それだけで胃が膨れてしまうので、自分はすぐにげっぷを出してしまう。
だが、ここは店内だ。周りの人を気遣って、堂々とげっぷを出す事はできない。
-
その対策として特訓した、特殊なげっぷ。
それは、音量を極限まで抑えて絞り出すようにげっぷを出し続ける、というものだ。
( ^ω^)「……げーーーー……」
恐らく、自分以外の人には聞こえてはいないだろう。
時間にして十数秒、自分はげっぷを出し続けた。
( ^ω^)「ふぅ、すっきりしたお」
胃の中の軽い圧迫感のようなものから解放され、いつでも食事に入れる万全の状態となった。
そこでやってきた、フライドチキンとハッシュドポテト。
( ^ω^)「来たお来たお〜」
おしぼりで手を拭き、綺麗になった両手でフライドチキンを掴んだ。
指に、油がつく。
そんな事も気にせず、自分はチキンに齧り付いた。
歯が食い込んだ所から溢れ出す肉汁。それは口の中にも、口の外にも、滴り流れていく。
( ^ω^)「おっ……うまいおおお……」
手が、口が、止まらない。
気づいた時には、三本目のチキンに齧り付いていた。
-
( ^ω^)「おっといけない……ポテトを放置してたお」
皿に乗っている二枚のハッシュドポテト。このまま食べても美味しいが、ケチャップを付けるのも良いだろう。
三本目のチキンを一度皿に戻し、ハッシュドポテトを手にとった。
そして、それを一口で食べる。
( ^ω^)「ん〜」
咀嚼しながら、思わず唸ってしまう。
( ^ω^)「サクサクなのに柔らかくて、中はホクホク。たまらんお〜」
もう一枚はケチャップに付けて、先程と同じように一口で食べてしまった。
( ^ω^)「おっおっ……ジャンキーだお」
自分の身体は、ジャンクフードによってか多少の脂肪が付いている。
食生活が荒れているのは、ずっと前からだった。
思えば、親の作るご飯をまともに食べていなかったような気がする。
( ^ω^)「……忘れろお」
-
父親は仕事一筋。そんな父親を見てか、母親は自分へ依存していた。
母親の過度な愛情。過度な期待。
小さい頃は気にもしなかったが、成長した自分にとって、それがどれだけ苦痛だったか。
高校に上がる頃には母親の異常性に気づき、家で夕食を取らなくなった。
一人で大学に行くと決めた時、当然母親は発狂した。だが意外にも、父親が興味を示してくれた。今まで一度も自分に興味を示さなかった、父親が。
結果、父親に金銭面のサポートをしてもらい、今大学に通っていられるのだ。
( ^ω^)「何を思い出してるんだお……」
頬を叩いて、気分を戻す。
自分は、大学をサボって一人でピザ屋に来ているんだ。こんなに楽しい事があるか。
食べかけのチキンをもう一度掴み、骨までしゃぶりつくした。
皿の上に骨を置くと、同時に店員がやってきた。
ついに、来たのだ。
――熱々のピザが。
-
(*^ω^)「待ってましたお!」
自分がそう叫ぶと、店員は苦笑いをこちらに向けて、キッチンへと戻っていった。
周りの客も、チラチラと横目で自分を見ている。
誰にどんな反応をされようが構わない。自分は、自分だけの時間を楽しまなければ。
(*^ω^)「まずは上手にカットして……」
ピザカッターを握りしめ、ゆっくりと落ち着いて切っていく。
ピザの耳は硬くて切りづらい。だが、本当に大変なのは中心部だ。
具をしっかり切らなければ、落ちてしまうこともある。切れ目が集中するため、生地が曲がりやすいのでなおさらだ。
数分かけて切り終える。一枚一枚を少しだけ離してみるが、つながっている部分はない。
いよいよ、食べられる。
(*^ω^)「じゃあ、いただきますかお……!」
ピザの耳の端と端を親指と中指で掴む。薬指と小指で、生地を下から支える。人差指は、耳に添えるだけ。
飛び出た先端を、噛み切った。
-
(*^ω^)「〜〜ッ!」
トマトソースの酸味とチーズのまろやかさに、肉の旨味が加わる。これは、偉大だ。
一口噛めば、オニオンの歯応えと辛さが、歯と舌を刺激する。
もうやめられない。自分は手に持った一切れを、あっという間に耳まで食べてしまった。
直径三十センチのLサイズピザを八等分。残りは、七切れだ。
( ^ω^)「あと七切れしかないお……」
名残惜しい気持ちはあったが、一切れずつゆっくり食べる事はせず、熱いうちに食べきってしまった。
最後の一切れだけ、味わうようにじっくりと楽しみながら食した。
(*^ω^)「幸せだお……」
自分にもそんな感情がまだ残っていたのかと思うと、笑えてくる。
どうやらまだ、人間でいられるようだ。
そんな事を考えながら、会計を済ませて外へと出た。
( ^ω^)(とりあえず喫煙所に向かうかお)
タバコを吸い始めてから間もないが、既に食後の一服が欠かせなくなっていた。
喫煙者独特の欲求が、押し寄せていた。
ポジション駅の外にある、喫煙所。今では喫煙者は疎まれていて、駅の喫煙所はどこも囲いが施されている。
そのガラス張りの中に入り、タバコにガスライターで火を付けた。
-
( ^ω^)(そういえばドクオはオイルライター使ってたお……)
いつか自分もオイルライターが欲しい、と思った。思っただけで、実際に買う日は来ないだろう。
( ^ω^)「……」
喫煙所から、駅を眺める。
この時間帯は、朝や夕方ほど人の出入りもないようだ。
( ^ω^)(人間観察とか……中二病みたいだお)
そんな事を思ったが、やめようとはしなかった。他にタバコを吸いながらやる事もなかったからだ。
行き交う人々を眺めていると、記憶に新しい服装をした人物を見かけた。
もう一度探す。すると人影から、その人物は姿を表した。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
それは、昨日自分が殺さなかった少女、デレだった。
( ^ω^)(もう帰宅時間かお……)
そう思ったが、そんなはずがない。まだ、十二時になったばかりだ。昼休みに駅から出てくるというのも、おかしい。
他に制服を着た高校生もいない。
何故だかとても、気になってしまった。
――いや、例えこの時間でなくても、気になっていただろう。
まだ吸い始めたばかりのタバコを灰皿に押し付け、自分は喫煙所を後にした。
-
第17話、以上になります。
ここ最近全く書けていないので、次回は火曜日までに投下します。
よろしくお願いします!
-
うむ
やっぱり食事のシーンが魅力的な作品は良作率高いんだよな
無理しなくてもいいぞ
他の作品に比べれば十分投下は速いんだ。いや、速すぎるくらいだ……
火曜日待ってるぞ。おつー
-
おつ
ストックホルム症候群ググッたわ
-
人質が犯人に同調しちゃうやつだっけ?踊る大捜査線であったな
-
乙
次も期待してる
-
一日遅れてしまいました。申し訳ない。
第18話、投下します。
-
デレの後をつけ始めてから、四時間が経った。
これまでの間、デレはポジション駅の近くにある大きなゲームセンターに入ったきり、出ていかなかった。
自分も中に入って監視を続けていたが、あまりお金は使っていないようだった。
そしてようやく今、デレはゲームセンターの外に出ていった。
( ^ω^)(いよいよ家に帰るのかお……?)
ポジション駅から電車に乗り、ストリング駅で降りてから、数分歩き続ける。
そして入っていった、一軒家。ここが、デレの自宅のようだ。
アジトから、そう遠くない場所だ。
( ^ω^)(普通の家……だお)
どこにでもある、目立たない普通の家だ。
家庭状況は、問題なさそうに見える。
( ^ω^)(なんで、学校をサボってるんだお?)
考えてみれば、昨日のあの時間にポジション銀行にいた事もおかしい。
昨日も今日も、平日だ。制服姿で銀行にいたという事は、連日家族に無断で休んでいるという事だろう。
もしかしたら、明日も休むのかもしれない。
( ^ω^)(……また明日、来るかお)
今日はとりあえず帰ろう。
また明日の七時過ぎに来れば、後をつけられるだろう。
何故後をつけたいのかは自分でもわからないが、そんな事は考えても仕方がない。
やりたいようにやればいい。
-
翌日、朝の七時前に部屋を後にした。
デレの家の近くについたのは、七時半前だった。
そこから十分ほど待っていると、玄関の扉が開かれた。
出てきたのは、デレだ。
ζ(゚ー゚*ζ「行ってきます」
この距離でも、かすかに聞き取れたデレの声。
デレは玄関を閉め、ストリング駅の方へと歩きだした。
自分もある程度の距離をとって、デレの後をつけた。
デレは、細い道を好んで歩いているように見えた。
これでは、隠れにくい。
そう思っていた矢先だった。
ζ(゚ー゚*ζ「もう、姿を見せてもいいと思うよ」
デレが、こちらを向いてそう言った。
気づかれていたのか。
( ^ω^)「……いつから気づいてたんだお」
バレているのなら、躊躇う必要もない。堂々と顔を出して、そう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「昨日、ゲームセンターから帰る時ぐらいから。いつからつけてたのかは、わからないけど……」
-
( ^ω^)「駅からゲーセンに向かう所からだお」
ζ(゚ー゚*ζ「そっか。じゃあ、随分待たせちゃったんだね」
( ^ω^)「まあ……」
ゲームセンターで、三時間以上待った。
金は余るほどあったので、ずっと格闘ゲームをプレイしていたのだが。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、どっかお店でも行く? 私、あなたの話聞きたいの」
( ^ω^)「お店? じゃあピ……喫茶店でも行くかお」
つい、ピザ屋と口にしそうになった。
こんな朝早くから、しかも女子高生とピザ屋に行くというのは、流石に抵抗がある。
そもそも、お店がやってないだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「この時間からやってる喫茶店なら……あそこかな」
デレに連れられて向かったのは、ストリング駅。 駅から一分ほど歩いたところにある、喫茶店に着いた。
それは、自分を困惑させるには充分すぎた。
(;^ω^)「おっ……!?」
見た事のある看板。
何故この店が、こんな場所にあるのだ。
-
(;^ω^)「つ……ツン……」
この店は、ツンと初めて行った喫茶店と同じ店なのだ。
(;^ω^)「なんで、なんでこれがここに……」
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、知ってるの? 先月オープンしたばかりだよ」
高いが美味しいプリンがある事で後々有名になったのは知っていたが、チェーン展開したのだろうか。
――いや、そんな事はどうだっていい。
今、自分が困惑しているのはそんな事が原因なのではない。
ツンに似ているデレが、自分をここに連れてきたという事実が、原因だ。
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、入ろ?」
(;^ω^)「……」
落ち着け。
デレはツンじゃない。
自分にそう言い聞かせた。
( ^ω^)「……入るお」
店内に足を踏み入れる。
洒落た店だ。やはり、自分には似つかわしくない。
だが、不思議と心地は良かった。
-
ζ(゚ー゚*ζ「喫煙席でお願いします……、で良かったよね?」
( ^ω^)「おっ、わざわざありがとうだお」
店員に案内されて席につく。
二人がけの、小さなテーブルだ。
ζ(゚ー゚*ζ「プリン……どうしようかなぁ……」
( ^ω^)「注文するといいお。ブーンのおごりだお」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ、いやいやそれは悪いよ……!」
( ^ω^)「……そうしたいんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「……そっか。じゃあ、お言葉に甘えて」
店員に注文を告げると、数分しないうちにコーヒーとプリンが運ばれてきた。
コーヒーから、白い湯気が漂っている。
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたは一体、何者なの?」
コーヒーが届いてから最初に口を開いたのは、デレだった。
( ^ω^)「うーん……ただの大学生だお」
ζ(゚ー゚*ζ「大学生なんだ。じゃあ、それほど歳も離れてないのかな?」
-
( ^ω^)「ブーンは二十歳だお」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ三歳差だね」
という事は、十七歳で高校二年生か三年生だろう。
高校生活なんて、随分と昔の事に思える。
ζ(゚ー゚*ζ「……あんまり大きな声で言えないけど、今話題になってる二人組の一人なんだよね。この前、銀行で電話しながらそう言ってたし」
( ^ω^)「まあ、そういう事になるお。国王も首相も、警官も電車も、ブーンと親友の二人でやったんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ……すごいな」
( ^ω^)「すごい? どういう意味だお?」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ? なんていうか……そういう力があるのって、羨ましい」
羨ましい。そんな事を言われるとは思ってもいなかった。
この子の考え方は、そこら辺の女子高生とは少し違うようだ。
( ^ω^)「デレも、力があれば使ってたのかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん、どうだろ。例えあっても、使う勇気がないかも」
-
( ^ω^)「じゃあ、ブーンがやってあげるお」
ζ(゚ー゚*ζ「……えっ?」
( ^ω^)「デレがして欲しいこと、やってあげるお」
そう言うと、デレは少し考えるような素振りをしながら、カプチーノを口にした。それを一口飲むと、また口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「私ね、お母さんの再婚相手に、虐待されてるの」
(;^ω^)「ぎ、虐待?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、虐待。お母さんがパートに出てる時とか、いつもそういう相手をさせられてて……」
そういう相手、というのは、つまり性行為の相手という事だろう。
母親の再婚相手に犯される女子高生というのは、いかにも成人向漫画にありそうなシチュエーションだと思った。そう思ったが、すぐにそれを後悔した。
ζ(゚ー゚*ζ「殺したいと思った事は何度もあるけど、殺しちゃったら私が捕まっちゃうかもしれないし。不意をついても多分勝てないし」
( ^ω^)「ブーンが殺してやるお」
すぐに、殺してやりたくなった。気づいた時には、そう返事をしていた。
-
ζ(゚ー゚*ζ「……できるの?」
( ^ω^)「首相を殺すよりは簡単だお」
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあ……お願い、しようかな」
デレは、思っていたよりも躊躇わずにそう言った。
それほど、殺してしまいたかったのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「いつ、やるの?」
( ^ω^)「今夜。デレのお母さんとその男が寝静まった頃に」
ζ(゚ー゚*ζ「早いね……。多分、夜中の二時くらいがいいと思うよ」
( ^ω^)「わかったお。家の鍵は、開けといてもらえるかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん、わかった」
あまりにも簡単に、殺しの計画が出来上がった。
デレがプリンを食べ始めたのをきっかけに、自分はタバコに火をつけた。
ζ(゚ー゚*ζ「すごく美味しいな、これ」
( ^ω^)「それならよかったお」
ツンにおごったあの頃とは違って、今の自分はお金が随分と余っている。
いつか底をつく日が来るのだろうか。
-
夜中の二時を過ぎたくらいに、自分はデレの家の前に待機していた。
部屋の電気は一時間も前から消えている。デレが家の鍵を開ける音も聞いた。
( ^ω^)(そろそろ、行くかお)
後は侵入して殺すだけだ。自分はタバコを吸い終えると、吸殻を携帯灰皿に押し込んで、玄関へと歩きだした。
静かに扉を開ける。既に目も暗闇に慣れていて、部屋の間取りもよくわかる。靴のまま上がって、正面にある階段を登った。
階段を登り終えて左手にある扉を、静かに開く。蝶番が軋む音が聞こえたが、躊躇わずに続けた。
( ^ω^)(あれかお)
扉に入るとすぐ、大きなベッドが目に入った。
そこには、男と女が二人で寝ているのが見えた。
自分は、ゆっくりとベッドに足を乗せ、男のもとへと近寄った。
ベッドが軋む。その音を聞いてか、女が寝返りを打った。
( ^ω^)「…………」
――躊躇ってはならない。このまますぐに、殺そう。
胸の内ポケットに入れたナイフを取り出し、月明かりに照らす。
そしてゆっくりと男の胸に狙いを定め、勢い良く振りかぶった。
-
「ぐっ……!」
ナイフを突き刺すと、男が呻き声を上げた。すぐに目を開けてこちらを見ると、声こそ出さないが、少しだけ抵抗の意思を見せた。
男の手が自分の手を掴む。だが、それも直ぐに弱まった。
やがて、その手はベッドへと崩れ落ちた。
( ^ω^)(……やったかお)
少し、音を立てすぎた。
男が動いた時にベッドが軋んで、隣の女が目を覚まさないか心配だった。
だが、大丈夫そうだ。
そう思っていた。
「……どうしたの?」
ナイフを引き抜いた時、女がこちらを見て、そう言った。
まだ、意識が薄いうちにやらなければ。
自分の身体は、その女を殺すためだけに動き出していた。
男の死体を踏み越え、一気に、ナイフを振り下ろした。
女は呻き声を上げることもせず、ただゆっくりと死んでいった。
今度こそ、終わった。
-
( ^ω^)「……おっ!?」
そして、気がついた。
自分は、デレの母親まで殺してしまったのだと。
デレは、何と言うだろうか。
小学校で先生に呼び出された時のような、焦りを感じていた。
そんな時、後ろから小さな声がした。
ζ(゚ー゚*ζ「……終わった?」
その声は紛れもなくデレのものだった。
( ^ω^)「……終わったお」
声を下げることもせず、はっきりとそう言った。
それを聞くとデレは、静かにこちらに歩いてきた。
ζ(゚ー゚*;ζ「……えっ?」
( ^ω^)「……」
デレは、男の死体などお構いなしに、ベッドに登って母親の元へと駆け寄った。
-
ζ(゚ー゚*;ζ「う……うそ……なんで……」
ζ(゚ー゚*;ζ「なんでお母さんも殺したの!?」
思っていた通りの反応だった。
自分の中の後ろめたさのようなものが、ゆっくりと、何かに覆い隠されていくのを感じた。
( ω )「……」
ゆっくりと、ゆっくりと蝕んでいった。
( ω )「……ツンは……ツンはブーンとだけ一緒にいればいいんだお」
自分ではない何かが――いや、本当の自分なのだろうか――そう言っているのを、ただ聞いていた。
浮遊感のような何かに、包まれていた。
ζ(゚ー゚*;ζ「私は……私はツンじゃない! 私のどこを見てるの……!?」
(;^ω^)「おっ……」
不意に、意識がはっきりとする。
今のは何だったのだろうか。初めての事ではないような気がした。
ζ(゚ー゚*;ζ「私には……お母さんしかいなかったのに……」
-
母親の事だけは、信頼していたのだろうか。
いや、自分にはそうは思えなかった。
ただ、誰かに依存していたかっただけのように思えた。
それが良いか悪いかなどはわからない。
だが、それを奪ってしまった事は、事実だった。
( ^ω^)「……デレ……ごめんだお……」
すぐ隣にいたデレに手を伸ばして、そっと抱き寄せた。
自分には、そんな事しかできなかった。
ζ( ー *ζ「どうしたら……どうしたらいいの……」
( ^ω^)「……」
デレの言葉に、自分は何も返せなかった。
小さく震えるデレを、ただ抱きしめることしかできなかった。
デレが落ち着いた頃に、自分は部屋を物色し始めた。
金目のものは殆ど、バッグの中に詰め込んだ。
単純だが、偽装工作のためだ。
最後に外から窓ガラス一面にガムテープ貼り付け、ナイフの柄で割って、デレの家を後にした。
-
それから毎日、朝八時にあの喫茶店に足を運んだ。
コーヒーを飲みながら、スマートフォンのテレビ機能で地方局のニュースを眺めていた。
どうやら目論見通り、強盗殺人として捜査が進められているようだった。
あの日から一週間が経った今日も、自分は喫茶店に来ていた。
今日も一時間だけここにいよう。そう考えていた時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「……ブーン」
デレが、やってきた。
今日は制服姿ではない。
( ^ω^)「……来ると思ってたお」
ζ(゚ー゚*ζ「私も、いると思ってたの」
デレは、自分の正面の椅子へと腰掛けて、カフェラテを注文した。
ζ(゚ー゚*ζ「大変だったんだからね」
( ^ω^)「……ごめんお」
男だけを殺したのであれば、理由はなんとでもなる。
だが、母親も殺されてデレだけが生き残ったとなると、デレに疑いの目が行ってしまう。
色々と追求された事だろう。
-
ζ(゚ー゚*ζ「今のところ証拠不十分で私が殺した事にはならなかったけど、共犯だとは思われてるかも」
( ^ω^)「まあ、そうなるかお……」
何も手を出してないとはいえ、事実共犯なのだ。
そればかりは、仕方がなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「でも……安心した」
( ^ω^)「……?」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンにまた会えて、良かった」
デレは、テーブルに置かれた自分の手を握って、そう言った。
自分はどう反応していいのかわからず、何気なく手を引いてタバコを取り出した。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、どっか遊びに行こ?」
タバコの煙をゆっくりと吐き出していると、デレがそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「大学、行かなくても大丈夫でしょ?」
( ^ω^)「……大丈夫だお」
大丈夫だろうか。いや、まだ後期は始まったばかりで、取り返しはつく。
それに今更一日休んだところで、さほど大差は無い。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃ、行こっか」
デレが立ち上がるのにつられて、自分も席を立つ。
タバコをポケットに仕舞って、自分達は喫茶店を後にした。
-
――五時間後――
ζ(゚ー゚*ζ「あー、楽しかった!」
自分達は、ゲームセンターや小さな遊園地など、様々な場所に遊びに行った。
遊ぶ場所に困らないのは、首都フレットならではだった。
そしてまた、自分達はストリング駅へと戻ってきていた。
(;^ω^)「ブーンは疲れたお」
ζ(゚ー゚*ζ「えー、楽しくなかった?」
(;^ω^)「いやもちろん楽しかったお! でも元気すぎだお……」
ζ(゚ー゚*ζ「そうかなー。でも私も疲れちゃったな」
時刻は十七時を回っている。そろそろ、解散となるのだろうか。
少しだけ、名残惜しかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ、次は……あそこ行ってみない?」
( ^ω^)「お?」
まだ一緒にいられるのだろうか。そう思うと、少し嬉しくなった。
-
――しかし、デレが指さした先は、想像していたような物とは遥かに違った。
(;^ω^)「ら……ラブホ……!?」
いつの間にか、自分達はホテル街を歩いていたようだ。
何も不自然ではない。ここは、ちょっと道を逸れれば風俗店やホテルの多い場所に出てしまうのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっと疲れたし、休憩がてらに、ね!」
(;^ω^)「わ、わかったお……」
噂では、カラオケや映画も楽しめるという。ルームサービスなども充実していて、休憩するにはもってこいの場所には間違いなかった。
自分は流されるままに、ラブホテルの中に連れられていった。
-
――ストリング駅付近――
('A`)「けっ、駄目だな今日も」
ここ数日、大学を休んでパチンコ店に足を運んでいた。
別に金なら余るほどある。だが、金を賭けるという点でゲームセンターよりは楽しめそうだと思ったから、パチンコをしていたのだ。
結局、連敗続きだった。
('A`)「つまんねー」
パチンコ店の前の喫煙所で、タバコに火をつける。
秋になってから急に日が落ちるのが早くなった、などとどうでもいい事を考えていた、その時。
('A`)「……ブーン?」
遠くを歩く、体格のいい男。横顔が見えたが、間違いなくブーンだった。
しかし――。
('A`)(女連れ……?)
ブーンの横を歩く、少女。
どこかツンに似た後ろ姿だと思った。
-
('A`)(なにしてんだあいつ…………、ッ!?)
少女がブーンの手を引いて、ビルの中への歩いていく。
そのビルの看板には、ピンク色の文字で“ホテルプラグ”と書かれていた。
(;'A`)「えっあっ、ええええ……」
(;'A`)(嘘だろあいつがまさか俺よりも先に……嘘だろ嘘だろ……)
しかし二人は、間違いなくそのビルの中へと入っていった。
見間違いなんかでは無かった。
('A`)「…………鬱だ…………」
どす黒く汚れた何かが、自分の心を蝕んでいくのを感じた。
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第18話、以上になります。
いつの間にか第1話から二ヶ月経ってました。支援ありがとうございます…。
次回は月曜日までに投下したいです。
よろしくお願いします!
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ドクオ理不尽すぎワロタ
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乙
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乙
母親を殺して「小学校で先生に呼び出された」程度の焦りしか覚えないってのが、もうね……
改めてブーンの倫理観ブチ壊れてるのを感じる
月曜も楽しみだ
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もう登場人物全員なんかわけわからん
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闇に染まってるんだろ
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これ位じゃまだ薄い
子供が無邪気にバッタやアリの足を引き千切るレベル
一瞬でも後悔なんて思わない感じないぐらいに染まらないとまだまだ足りない、ただのサイコパス程度でしかない
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ガソリンの味知ってそう
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なんかデレが一番理解不能で怖い。二人きりになったら復讐って考えてるならまだ理解できるんだけど
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あいつを殺してからが本番だろう
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デレは依存の対象が母からブーンに変わっただけな気がする
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うーん、これからどうなるんだろう
俺がドクオの立場なら、ブーンとの関係性を考えると、デレを殺しちゃうけどな
このドクオはどんな選択をするのかな?
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ハイオクの味とか知らんだろ?
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ワクワク
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明日だと思ってうっかりしてました!
第19話、投下します!
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(;^ω^)「……」
想像していたよりも、綺麗な一室。
こういうホテルは、インテリアにこだわっているのだろうか。
テーブル、ソファ、ベッド、照明。全てが、お洒落だった。
ζ(゚ー゚*ζ「わぁ、すごーい!!」
デレも喜んで、勢い良くベッドに飛び込んでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「来て来て、ベッドふかふか!」
(;^ω^)「おおっ? ちょ、ちょっとそれは」
ζ(゚ー゚*ζ「来ないの? もったいなーい」
流石に、抵抗があった。
そんな軽い気持ちで、少女と同じベッドに寝転べるわけがない。
自分は、ソファにゆっくりと腰をおろした。
ζ(゚ー゚*ζ「ほんとに来ないのかぁ、つまんないのー」
(;^ω^)「……わかったお」
仕方がない。どうせ、横に寝転ぶだけだ。
それに、ベッドの感触も気になっていた。
自分も、恐る恐るベッドに寝転んだ。
-
( ^ω^)「おおっ!?」
正直、甘く見ていた。随分と寝心地のいいベッドだ。
柔らかすぎず硬すぎず、ちょうどよい寝心地だった。
( ^ω^)(やわらか過ぎたら、やりにくそうだお)
下らないが、そんな事を思った。
これ位なら、動きやすそうだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ……」
( ^ω^)「おっ?」
ふと、横にいるデレを見る。
デレの表情は、これまでに見たこともない、色気に溢れたものだった。
ζ(゚ー゚*ζ「私……ブーンとなら……したいな……」
(;^ω^)「おっ!?」
やはり、そうくるか。
自分は、童貞だ。当然興味はある。
だが、今デレとしてもいいのかと言われれば――。
( ^ω^)「……やっぱ、ソファに座るお」
ζ(゚ー゚*;ζ「えっ……?」
-
自分は身体を起こして、そう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「どうして!? 私の事、嫌いなの!?」
違う。
ζ(゚ー゚*ζ「私……初めてじゃないけど……、好きだと思える人とはしたことないよ……!?」
そうじゃない。
ζ(゚ー゚*ζ「……私……私は……」
――自分は、どうなんだ。
いや、考えずともわかっていた。
デレとすると、きっと自分はデレに依存してしまう。
それではダメなのだ。
( ω )「…………そうじゃないお!!」
ζ(゚ー゚*;ζ「ッ!?」
――いや、そうじゃないんだ。
――自分の事なんて、何もわかってはいないじゃないか。
依存したくない、だなんて大した理由じゃない。
重要なのは、何故依存したくないか、だ。
自分はただ、今でもツンが好きなのだ。
ツンの代わりなんて、いるわけがない。
ツンに似ていて、可愛くて、自分を好いてくれているデレでもだ。
-
( ^ω^)「大きい声出しちゃって、ごめんだお……」
( ^ω^)「ブーンは、デレが好きだお。でも今は、デレとそういう事をする段階じゃないと思うんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「……そっか……」
デレは顔を俯けて、しばらくしてから言葉を続けた。
ζ(゚ー゚*ζ「……私……もうどうしたらいいのか……わかんないよ……」
( ^ω^)「……ブーンにも、わかんないお……」
ζ(゚ー゚*ζ「私には、もうブーンしかいないのに……」
( ^ω^)「……」
自分が、奪ったのだ。
デレが依存していた、母親を。
ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ、一緒に死のう?」
(;^ω^)「おっ!?」
ζ(゚ー゚*ζ「もう……生きててもしょうがないよ」
(;^ω^)「おっ……」
-
それは、デレだけの話だ。
自分はまだ、やりたい事がある。
それを一緒にやる友達がいる。
ζ(゚ー゚*ζ「――ツンさんも、いるんでしょう?」
( ^ω^)「……おっ……」
( ω )「…………、ツン……」
そうか。
死んでしまえば、ツンの元に行けるのだ。
何故、気が付かなかったのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「一緒に、会いに行こう? 私も、会ってみたいし」
( ω )「…………」
( ^ω^)「……そう……するかお……」
生きていたって、また人を殺すだけだ。
これ以上、人を殺してどうする。
楽しいから、殺すのか?
――いや、そんなことはどうだっていい。
ただ一つ思った。
最後に殺すのが自分だなんて、最高にクールじゃないか、と。
-
気づけば、自分達は大量の睡眠薬を手のひらに広げていた。
ζ(゚ー゚*ζ「……私、夜眠れないんだよね」
夜眠れないだけなら、持ち歩いている必要はない。
元々、こうするつもりだったのだろう。
冷蔵庫から取り出した緑茶を、一口飲む。
何故だか、喉がやたらと乾く。緊張しているのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ……私は飲むね……」
デレはそう言うと、手のひらの上の薬を口に放り込み、緑茶で一気に飲み込んだ。
もう、後には引けない。
自分もデレの真似をするように、薬を舌の上に乗せて、緑茶で飲み込んだ。
( ^ω^)「……飲んだお」
ζ(゚ー゚*ζ「……そっか」
デレは、一言だけそう言った。
自分はそれ以上何も言わず、デレの横に寝転んだ。
しばらくすれば、眠りにつく。
そして知らない間に死んでいるのだ。
自分が殺してきた人達も、苦しくなかっただろうか。
いやそんなはずはない。
背中を撃たれたモララーは、痛かったはずだ。
銀行やバスで殺した人達は、怖かったはずだ。
自分は、なんて自分に甘いんだろう。
そんな事を思った――。
-
――ストリング駅付近――
ブーンがホテルに入ってから、三十分が経った。
ホテルに入っていった二人の事を考えながら、タバコを七本も吸っていた。
そして今、八本目のタバコの火を消した。
(#'A`)「やっぱり許せねぇ!」
理不尽な怒りなのは、わかっている。
だが、自分より先にブーンが初体験を済ませるのが、我慢ならなかった。
普段なら、これほどまでには気にならなかったはずだ。
ここ最近、ブーンに苛ついてたからだろうか。
パチンコで、負け続きだったからだろうか。
とにかく、自分はブーンの邪魔をしてやりたかった。
('A`)「すいません!」
入り口に入ったが、誰もいない。ボタンを押してしばらく待つと、扉から男が出てきた。
(´・_ゝ・`)「どうしました?」
(;'A`)「あの……僕の妹が変な男と入っていくのを見まして……!」
(´・_ゝ・`)「はぁ……そう言われましてもねぇ。電話で確認して、お客様の了承が得られない限りは鍵を開けることは出来ませんので」
-
(;'A`)「まだ未成年なんです! もし何か問題があったら、どうしてくれるんですか!?」
(´・_ゝ・`)「なっ……、うーむ……」
我ながら、迫真の演技だと思った。
モララーを殺した時の経験が、活かされたような気がした。
(´・_ゝ・`)「……本当はダメなんですよ、本当は。もし事件とかになったら、脅されたことにしますからね」
('A`)「ありがとうございます!!」
想像以上に、簡単だった。演技さえ上手く行けば、何とでもなるのだと知った。
(´・_ゝ・`)「最後に来店した人の部屋でいいんですかね」
('A`)「はい!」
(´・_ゝ・`)「じゃ、今鍵開けましたんで。304号室です」
('A`)「すいません、わざわざ……!」
(´・_ゝ・`)「事件だけは起こさないでくださいよ」
急いで、エレベータに駆け込む。
-
扉を開けて、なんて言ってやろうか。
楽しくなってきている自分がいた。
三階の一番奥に、304号室はあった。
取手に手をかけ、ゆっくりと扉を開く。
音を立てないようにゆっくりと、部屋の奥に進んだ。
(;'A`)「……あれ?」
二人が、寝ている。
初体験は、どうしたのだ?
('A`)「おいブーン、起きろ」
肩を揺するが、目を覚まさない。
ふと、枕元に何かが落ちているのを見つけた。
('A`)「……薬……?」
(;'A`)「なっ、まさか……!?」
服薬自殺。
薬を見てすぐにそんな事を想像したのは、人の死を多く見てきたからだろうか。
すぐにゴミ箱を探す。ベッドの横にあったそれをひっくり返し、ゴミを数えた。
飲んだのは、二人でせいぜい四十錠か。
パッケージの裏面には、ジフェンヒドラミン酸塩が一錠に20mgと記載されている。
一人二十錠飲んだとしても、致死量には足りなさすぎる。
-
('A`)「知識無しでの自殺未遂かよ……。って、そんなこと言ってる場合じゃねぇ。おい、起きろブーン!!」
ブーンの頬を何度か叩く。すると、ブーンは少しだけ呻き声のようなものを上げた。
( -ω-)「ううん……?」
('A`)「起きろってんだよ!」
( -ω-)「……ドクオ……?」
目はまだ、開かない。だが、自分の声を認識したようだ。
('A`)「ああ、そうだ。自殺は失敗だ」
( -ω-)「……おっ……そうかお……」
('A`)「ったくよ……。ほら、トイレ行くぞ」
( -ω-)「トイレ……?なんでだお……?」
('A`)「いいからこい!」
半ば引きずるようにして、まだ目もまともに開けていないブーンをトイレに連れて行った。
-
(;゚ω゚)「オエェェェェ……」
('A`)「吐けたな。 ほら、茶飲んでもう一回吐け」
(;´ω`)「も、もう勘弁してほしいお……」
('A`)「お前だけでもちゃんと目ぇ覚ましてもらわねーと困るんだよ」
ペットボトルの緑茶を手渡すと、ブーンは肩を落としてそれを飲んだ。
(;゚ω゚)「オエッ……オェェェ……ゲホッ……」
(;´ω`)「……も、もういいかお……?」
('A`)「……まあいいだろ」
( ´ω`)「よかったお……」
胃に残っている薬は殆ど出した。
しばらくすれば、ブーンの眠気も覚めてくるだろう。
('A`)「口直しだ」
自分は、冷蔵庫から取り出したコーラをブーンに渡した。
ブーンは栓を開けると、それを口の中に行き渡らせるようにして飲んだ。
-
('A`)「ほんと、勘弁してくれよな」
( ^ω^)「ごめんだお……」
時刻は十八時を回っていた。
外は少しずつ、薄暗くなっているようだ。
('A`)「大体よ、なんでたったの二十錠なんだよ。少なすぎるとは思わなかったのか?」
( ^ω^)「おっ……睡眠薬を二十錠も飲んだら死にそうなイメージがあったんだお……」
('A`)「……この睡眠薬だと、百五十錠飲んでやっと死ねるかも、くらいのもんだぞ」
(;^ω^)「ひゃ、百五十!?」
('A`)「市販薬だしな」
CMや薬局でもよく見かける、有名な睡眠薬だ。
有名過ぎるが故に、簡単には死なない物だと知らずに選んでしまったのだろう。
( ^ω^)「そうだったのかお……。じゃあ、デレも大丈夫かお……?」
('A`)「デレ? ああ、この子か。まあそのうち起きるだろ」
( ^ω^)「それなら、よかったお……」
ブーンは、安心したような表情を浮かべた。
無事だと知って安心するくらいなら、初めからやらなければよかったのだ。
-
('A`)「ずっとここにいるのもあれだし、アジトから車持ってきてやるよ。外は暗くなってきたし、出口には人もいねーし、その子を抱えて出ても問題ないだろ」
( ^ω^)「おっ、ありがとだお」
そう言って、自分はフロントに電話をした。
自動精算機付きのラブホテルのドアは、精算しない限り開かないのだ。
('A`)「すいません、解決したんで僕だけ帰りたいんですけど……」
(´・_ゝ・`)『えっ? 解決??』
('A`)「はい……その……妹じゃ無かったです」
(´・_ゝ・`)『ああなんだ、そうだったんですか。ほんと勘弁してくださいよ』
('A`)「すみません……」
(´・_ゝ・`)『まあいいや、そっち行って鍵あけますんでお待ちください』
('A`)「お願いします」
しばらくして、フロントの男がやってきた。
自分は扉をくぐって、アジトへ向かった。
-
――四時間後・ブーンの部屋――
ζ(-、-*ζ「う……うん……?」
デレが首を動かしながら、小さく声を出した。
( ^ω^)「デレ、起きたかお」
ζ(-、-*ζ「……ブーン……?」
( ^ω^)「そうだお」
ζ(゚ー゚*ζ「おはよ……。なんだ、ブーンの方が早かったのか……」
デレは目を開けて自分の顔を確認すると、そう言った。
(;^ω^)「どういうことだお……?」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、元々死ぬつもりなんて無かったし……。あの量じゃ死なないこと、わかってたから」
( ^ω^)「……そうだったのかお……」
自分はデレに騙されたのだ。
しかし、そんな事は気にならなかった。
心配してくれたドクオを見て、自分はやっぱりまだ死にたくないと思えたからだ。
ζ(゚ー゚*ζ「でも嬉しかったな。ブーンが私と死んでくれようとして」
-
( ^ω^)「……」
別に、デレと死にたかったわけではない。
自分は、ツンに会いたかっただけなのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンの事、もっと好きになっちゃったな」
( ^ω^)「……そうかお……」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンは……どうなの……?」
自分は、どう思っているのか。
いや、どう思ったのか。
答えは、はっきりと出ていた。
( ^ω^)「ブーン達は……一緒にいちゃダメなんだお」
ζ(゚ー゚*;ζ「ッ!?」
デレは立ち上がって、自分の腕を掴んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「どうして……!? 私は、こんなにあなたが好きなのに……」
( ^ω^)「君は、ブーンに依存してるだけだお」
ζ(゚ー゚*ζ「ッ……」
-
デレは、言葉を詰まらせた。
自分はデレを待つ事もせず、言葉を続けた。
( ^ω^)「一方的に依存されるのは、辛いんだお。ブーンは、それをよく知ってるお」
ζ(゚ー゚*ζ「でも……ブーンだって、私の事をツンさんの代わりだと思ってるんでしょ!?」
( ^ω^)「……確かに、ブーンはデレをツンの代わりだと思ってるお……」
( ^ω^)「でも、ブーンはやっぱり、ツンが好きなんだお。デレの事は、ちゃんと見つめてあげられないお……」
ζ(゚ー゚*ζ「それでもいい、それでもいいからあなたと一緒にいさせて……!」
( ^ω^)「いい加減にするんだお!」
自分は、デレの手を払って立ち上がった。
( ^ω^)「言うこと聞けないのなら、殺すお」
ポケットから取り出した、小さなバタフライナイフ。軽く回すと、小気味いい音を立てて刃が剥き出しになった。
ζ(゚ー゚*ζ「…………、じゃあ、殺して」
-
デレは、一歩前に出た。
自分の持つナイフの切っ先が、首筋に当たるくらいまで。
ζ(゚ー゚*ζ「私にはもう、あなたしかいないの。だから、あなたが殺して……」
( ^ω^)「……」
思わず、気圧されてしまう。だが、ナイフを持つ手を下げる事はしなかった。
だがその直後、自分は更に圧倒されてしまった。
(;^ω^)「……!?」
突然の事に、戸惑いを隠せなくなった。
なぜだ。
不可解だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……もう、終わりにして」
自分の目の前に、ツンがいる。
( ^ω^)「……ツン……!?……ツンなのかお……!?」
思わず、そう聞いてしまった。
自分がこの目で見ている少女は、紛れもなくツンそのものだというのに。
ツンの制服姿が、出会った時を思い出させる。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……もう……だめなんだね……」
ツンは、その細い両手で。
しっかりと、自分の手を握り。
自らの首筋へ、引き寄せた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……うっ……く……」
自分の握っていたナイフは、ツンの首筋にしっかりと突き刺さり、やがてツンの両手によって引き抜かれた。
ξ ⊿ )ξ「……」
ツンの首筋から、血が閃光のように溢れ出す。
やがて崩れ落ちる、ツンの身体。
それを見て、自分は。
( ^ω^)「……」
泣く事も、笑う事も、しなかった。
-
第19話、以上になります。
次回は土曜日あたりまでに投下します!
よろしくお願いします!
-
乙!
-
かなしいなぁ
-
デレを殺ったのもあるけど自殺の際にクールさを感じてるからブーンはサイコキラーとしてほぼ完成してるな
-
レスありがとうございます!
第20話、投下します。
-
部屋のカーペットに血のシミを作ったのは、二度目だ。
一度目は、ツンを殺した時。
二度目は、デレを殺した時。
デレは、自分が殺したというべきなのだろうか。
いや恐らく、そうなんだろう。
( ^ω^)「…………」
シミを作ったのは、カーペットだけじゃない。
自分自身もそうだ。
足元から、ゆっくりと身体と心を蝕む闇。
自分は、いずれ全身が闇に染まるようだ。
('A`)「……おい、どうした?」
( ^ω^)「おっ?」
('A`)「話聞いてたなかったろ」
(;^ω^)「ご、ごめんだお。最初から頼むお」
('A`)「大事な話なんだからよ、頼むぜほんと」
デレの死体は、アジトのツンの死体が埋まっている近くに埋めた。
あの日から、既に一週間が経過していた。
-
('A`)「ショボンだよ、ショボンを殺す計画だ」
( ^ω^)「ついにショボンかお……」
(;^ω^)「おっ!?」
(;'A`)「お前よくその反応するよな……」
理解が及ぶ前に返事をしてしまうのは自分の癖だ。
こればかりは、どうしようもない。
('A`)「俺がまず上手いこと言って、ショボンを一人でアジトに呼び出す。そしたら、スナイパーライフルでドンだ」
(;^ω^)「よ、よくまあ簡単そうに言うお……」
('A`)「流石にスナイパーに狙われてたら、避けられねーだろ。後ろから銃で狙ったくらいじゃ、反撃されそうだがな」
( ^ω^)「そうかお……? でも、ショボンを一人で呼び出せるかお?」
(;'A`)「え? あ、ああ……それなら何とかなる。何とかする」
( ^ω^)「……? それならいいお」
-
ドクオが少しだけ焦ったように見えたが、気のせいだろうか。
まあ、この計画で一番大変そうなのは一人で呼び出すことだ。ドクオも悩むのだろう。
('A`)「思い立ったが吉日、今夜決行だ」
(;^ω^)「今夜!? 随分と急だお……」
('A`)「デレやデレの家族の事から出来るだけ日をあけたくねーんだよ。ショボンに関連性を疑われたらお前が危ないぞ」
('A`)「ホテルや喫茶店とやらから、お前とデレが一緒にいた証拠がわんさか出てくるだろうな」
(;^ω^)「な、なるほどだお……」
('A`)「ってなわけで、ここがお前の配置な」
そう言ってドクオは一枚の紙を広げた。
それは、アジトの見取り図だった。
('A`)「お前は、この中二階からアジトの真ん中を狙え。俺が入り口からショボンと入って、ここまで誘導する」
( ^ω^)「了解だお」
-
('A`)「何かあった時は中二階のこの扉から外に出て、階段を降りればいい。お前の原付も、この先にあるマンションにでも止めておくべきだな」
( ^ω^)「何言ってんだお。何もないお」
('A`)「ま、俺もそう思うけどな」
それでも一応、準備だけはしておこう。
念には念を入れるのが、ドクオのやり方だ。
('A`)「午後十時には、配置についていてくれ」
( ^ω^)「わかったお!」
とりあえず、ドクオの指示通りに動けば問題はないはずだ。
それだけドクオのことを信頼していた。
('A`)「そんじゃま、俺は一旦帰るわ。ショボンに電話して大丈夫そうなら、また連絡する」
( ^ω^)「了解だお」
ドクオが立ち上がって、玄関へ向かう。
――何故だか、ドクオがどこか遠くへ行ってしまうような、そんな気がした。
-
――アジト・二十二時――
自分は、アジトの中二階でスナイパーライフルを構えて待機していた。
ドクオとショボンが、そろそろ来る頃だ。
自分はタバコの火を消して、吸い殻を携帯灰皿の中に入れた。
( ^ω^)(久しぶりのスナイパーライフル……緊張するお……)
国王を狙撃して以来、使う事のなかったスナイパーライフル。
ちゃんと撃てるだろうか。
( ^ω^)(まだかお……)
四時間ほど前ドクオから、ショボンをうまく呼び出せそうだ、との連絡が入った。
ドクオのことだ。心配せずとも、やり遂げてくれるのはわかっていた。
( ^ω^)(おっ……?)
入り口の重たい扉が開く音。
微かに、人の声が聞こえる。
二人が来たようだ。
(´・ω・`)「ここか……」
-
ショボンの声だ。
月明かりが作り出した影が、アジトの中へと伸びていた。
('A`)「鍵、かけてないみたいなんです」
ショボンがアジトの中に入ると、後ろからもう一人、姿を表した。
暗くてはっきりとは見えないが、それがドクオだという事はわかる。
(´・ω・`)「ふむ……まあこんなボロい建物、鍵をかけずとも誰も入りたがらないだろうな」
そう言って、ショボンとドクオは少しずつ前へと進む。
('A`)「一人で中を見るのは怖くて……すみません」
(´・ω・`)「いや、いいんだ。むしろ助かる。それよりも、以前会った時は嫌がっていたのに、なぜ急に……?」
――以前会った時?
ドクオは、以前にもショボンと接触していたというのか?
だとしたら、それを自分に言わなかったのは何故だ。
('A`)「あの日以来、なんとなく気になっちゃって。自分なりに調べてみようと思って」
ドクオはそう言った。
間違いなく、以前二人は会っているようだ。
-
(;^ω^)(どういう事だお……)
よくわからない不安が、自分を襲った。
(´・ω・`)「そうか、まあ興味を持ってくれたならよかった。さて、懐中電灯を貸してくれるか」
('A`)「あ、どうぞ」
ドクオが懐中電灯のスイッチを入れると、アジトの中が少しだけ明るくなった。
ショボンがそれを受け取ると、自分にもショボンの顔がぼんやりとと見えるようになった。
(´・ω・`)「なかなか広いな……」
('A`)「みたいですね……」
(´・ω・`)「……あれは、パソコンか?」
ふと、ショボンが懐中電灯でアジトの中心にあるデスクを照らした。
それがパソコンである事が視認できるようになると、ショボンは歩きだした。
(´・ω・`)「ふむ……これは後で調べなくてはな……」
('A`)「そうですね……。それにしても、なんでこんなにパソコンが……」
-
(´・ω・`)「わからん。だが、犯人はパソコンの知識にも長けているようだからな。この量のパソコンがあれば、先日の銀行強盗の時に起きたハッキングの説明がつく……」
(´・ω・`)「そうだろう、ドクオ」
('A`)「えっ? ああ、そうですね……。となると、共犯がいたとしか思えません」
(´・ω・`)「当然捜査本部も、他に共犯がいると見ている」
わかってはいたが、もう一人がリアルタイムでハッキングをしていた事は気づかれているようだ。
だが、それがクーであると知られなければ、問題はない。
(´・ω・`)「……ここは俺が、改めて調べてみよう。他にもあるんだろ?」
('A`)「……他に……そうですね……」
自分は、照準をショボンの頭に合わせた。
いつでも、撃てる。
('A`)「あんたの、敗北さ」
ドクオが、そう言った。
それを聞いて自分は、引き金に人差し指をかけた。
-
(´・ω・`)「敗北……? どういう意味だ、ドクオ」
('A`)「俺があんたの追う、犯人さ。…………やれ!」
ドクオのその声に合わせて、もう一度照準を合わせる。そして、引き金を――。
(´・ω・`)「――お前はハメられたんだ、まだ気づかないのか?」
('A`)「!?」
引き金を引く指が、止まった。
自分は気づいたのだ。
この廃屋を取り囲む気配に。
(;'A`)「なっ……なるほどな……そういう事か」
ポジション警察の機動隊が、自分達に牙を向けている。
裏の裏を、取られた。
全身から汗が湧き出る。
酷く冷たい、汗だ。
(´・ω・`)「残念だったなぁ、ドクオ。お前を連続殺人事件の容疑者として、逮捕する」
(;'A`)「くっ……、おい! ショボンを撃つんだ!」
ドクオの声で、はっとした。
まだ負けてはいない。ショボンだけでも、負かす事はできる。
今この引き金を引けば。
-
(´・ω・`)「俺を狙っているのが誰だか知らないが、お前はドクオに騙されているぞ」
(;^ω^)「!?」
(´・ω・`)「ドクオと俺は、八月の時点で既に会っていてな。お前を騙していたんだ」
(;'A`)「いや待て! お前を騙してなんかいない!」
(´・ω・`)「ドクオはとっくに逮捕されていてもおかしくなかったんだが……、お前も捕まえれば、ドクオは減刑されるという条件で、泳がせておいた。そういうわけだ」
(;^ω^)「ッ…………」
――嘘だ。信じたくない。
だが、以前会った事があるのは間違いない。
何故それを隠していたのだ。
動揺が、不安が、手を震えさせる。
(;'A`)「お前を追い詰めたくなかっただけなんだ! だから言わなかったんだ! 俺を信用しろ!!」
(´・ω・`)「無駄だ、お前達はもう終わりだ」
――気づいた時には、機動隊が廃屋の中へ突入していた。
自分は、取り押さえられるドクオを、スコープ越しに眺めている事しか出来なかった。
-
(;'A`)「逃げろ! お前だけでも逃げるんだ!」
そんなドクオの声を叫び声を聞いて、自分は酷く冷静になった。
この状況では、もうドクオを助ける事はできない。
いや、助けるべきなのかもわからない。
今は逃げるしかない。自分だけでも。
(;^ω^)「おおおっ!!」
スナイパーライフルを投げ捨て、急いで後ろの扉に向かって走り出す。
自分は連続殺人犯だ。発砲許可は出ていてもおかしくない。
今殺されたくはない。走り続けるしかなかった。
扉を開けて、外の中二階へと出た。
階段を降りる時間なんてない。地面まで伝わっている排水パイプに飛びついて、急降下した。
懐かしい感覚だ。国王を殺したあの日も、こうやって逃走した。
しかしあの日は、追われてなどいなかった。
排水パイプから手を離し、地面に着地する。
裏だ、回り込め。そんな声が響いた。
すぐそこまで、迫っている。
-
⊂二二二(;^ω^)二⊃「おおおおおっ!!」
腕を広げ、全力で走り抜けた。
工場やビルの隙間を走り抜ける。複雑に入り組んだ道を、ジグザグに。
その先のマンションに停めてある原付。
いつでも走り出せるような向きで駐車してある。
それに飛び乗って、エンジンをかける。
――いや、エンジンがかからない。
何故だ。そう考え始めて一秒、すぐに気がついた。
……キーを挿していなかったのだ。
(;^ω^)「ブーンはバカだお!」
急いでキーを差し込んでエンジンをかける。今度はすぐに、排気がマフラーを震わせた。
安心して、アクセルを捻って出発しようとしたその瞬間――。
――銃声が響いた。
いや、銃声が聞こえるよりも速く、銃弾は自分に向かって飛来していた。
月明かりを反射して煌めきながら接近するそれを、自分はこの目ではっきりと見ることができた。
自分に、直撃するだろうか。
そんな事を考えるだけの時間しかなかった。
-
(;^ω^)「おおおっ!?」
同時に走り出した原付。
銃弾は、僅かに自分の後頭部を掠めて、髪の毛を落とした。
そのまま、勢いを殺さずに原付は走り続ける。
もう少しで、死ぬところだった。
(´・ω・`)「外したか……」
横目に見えたもの。
それは、拳銃を構えていたショボンだった。
やがてそれも見えなくなる。
なんとか、逃げられた。
原付に付けてあるナンバーも、紙に印刷したものを貼り付けただけの偽物だ。一見騙される程度の物だが、効果はあるだろう。
ある程度離れた所で、その紙を剥がしてライターで燃やした。
あとはゆっくり、素知らぬ顔で家に帰ろう。
タバコに火を付けて、胸の奥に溜まった不安を、煙と共に吐き出した。
-
三十分後、自分は疲れた身体を引きずるようにして、部屋へと戻った。
( ´ω`)「…………」
何故、ショボンだけでも、撃たなかったのだ。
ドクオは、“ショボンを撃て”と言っていた。
もしドクオが、本当に減刑のために自分を騙していたのなら、ショボンを殺す理由はない。
考えればわかる事だった。
しかし、動揺してしまった。
ショボンという男の冷静さが、自分を震わせたのだ。
( ´ω`)「負けた……のかお……」
ショボンに負けてしまった。
原因は、ドクオの慢心だ。自分の言葉を信頼してショボンが一人で来たと信じ込んでしまい、“自分が犯人”などと言ってしまったからだ。
――いや、ドクオがそう言う前に、自分が撃ってしまえばよかったのか。
いやそもそも、ショボンを呼び出さずに違う方法で殺せばよかったのだ。
考えれば考えるほど、改善点が見つかる。
( ω )「今日はもう……眠るかお……」
服を着替える気にもならず、そのままベッドに寝転んだ。
久々に全力で走ったせいか、脚が重たい。ベッドに吸い込まれていくような錯覚を味わい、そのままいつの間にか眠りについていた。
-
第20話、以上になります。
書き溜めの方は、ついに最終話の執筆に入りました……。
次回は木曜日までに投下します。
どうか最後までよろしくお願いします!
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惨たらしい最期を迎えてほしい
乙
-
乙
最初の調子がどんどん零落していくのがたまらない
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これからブーンは一人でどう立ち回るのだろうか
おつ
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今気づいたけどこのショボンの顔微妙にテンプレと違うのな
http://i.imgur.com/oz0Yk9G.jpg←こんな感じで本っ当に微妙な違いだけど
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>>513
伏線だったりして…
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さあ後はエンディングまでジェットコースターか、まだ一山あるか…
乙!
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最終話、たった今書き終えました。
気分が高まっててつい報告したくなりました。それだけです…。
あとは別の短編でも書きながら、ペースを上げて残りを投下していきたいと思います!
ではおやすみなさい…。
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おつおつ
楽しみにしてる
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やったぜ。超楽しみにしてる
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これで終わるドクオじゃないはず…
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スレタイ的にドクオはおまけ程度の存在で読んでるわ
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たくさんのレスありがとうございます…!
第21話、投下します。
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( <●><●>)「いい加減、知っている事を話していただけますかね」
('A`)「…………」
自分は、何も言わなかった。
随分とぬるい尋問だ。そう思った。
( <●><●>)「まあいいでしょう。あなたの自宅から拳銃が一丁見つかりました。そして、線条痕が犯行に使われた物と一致しました」
( <●><●>)「あなたの指紋も、国王暗殺に使われた銃の薬莢についていた指紋と一致。既に、あなたが犯人である事はわかってます」
もう、どうしようもなかった。
自分が犯人である事が知られてしまった以上、例え逃げ出せたとしても、堂々と街を歩く事は出来ないのだ。
( <●><●>)「在籍した学校に問い合わせて、あなたの交友関係もすでにわかってます」
('A`)「……」
( <●><●>)「あなたは随分と友人が少ないようですね。小学校から大学まで同じだったブーン、それと高校からの知り合いであるツン。そのうち、ツンの行方はわからなくなっている」
('A`)(既に、そこまで捜査が進んでるのか……)
-
まだ逮捕されてから、二日しか立っていない。
ショボンは、自分の想像よりもよっぽど手強い相手だったのだ。
('A`)(もう、ダメだなこりゃ……)
自分の心が諦めに向かっていたその時、取調室の扉が開かれた。
(´・ω・`)「待たせたな、ワカッテマス。様子はどうだ?」
現れたのは、ショボンだった。
ワカッテマスと呼ばれた刑事は、ショボンに軽く頭を下げて、口を開いた。
( <●><●>)「何も言いません」
(´・ω・`)「そうか……。後は俺が話す。ワカッテマスは引き続き情報を集めてくれ」
そう言われると、ワカッテマスは無言で取調室から出ていった。
ショボンが、自分の対面に置かれたパイプ椅子に勢い良く座った。
(´・ω・`)「ドクオ、どうしてお前が犯人だとわかったか、聞きたいか?」
ショボンは手に持っていた手帳をテーブルに置いて、そう言った。
自分は、何も言わない。
-
(´・ω・`)「まあいい、勝手に話そう。俺は自分の勘に頼って捜査を進めることが多くてな。いつもはそれで犯人を捕まえてきたんだ」
(´・ω・`)「国王が殺された時、やり方がどうも普通じゃないと感じた。特に、排水パイプから逃走したあたりがな」
確かに、普通ならやらないだろう。
どうせなら派手にしたい、そんな思いからできた計画だ。
(´・ω・`)「念入りに計画を立てたかと思いきや、変なことをする。それが、捜査を撹乱させようとしているかと思ってな。その慎重さと大胆さが、自分に似ていると感じたんだ」
(´・ω・`)「そして、頭の良い人間だけをまとめたリストを作った。その中にいたのが、お前だ。その中では特に目立たない奴だと思ったよ。だが、自分が世話になった人の息子となればな……」
そういえば、以前ショボンに会った時にそう言われた。
やはり、疑われていたのだ。自分が犯人だと。
(´・ω・`)「しかし会った時はまだ、確信を抱けなかったんだ。演技にしてはあまりにも臭すぎてな。それでプギャーに尾行をさせたら、翌日に殺されかけた。まさか署内の共犯だったとはな……。お前との関連性を疑ったよ」
-
(´・ω・`)「そして先月、ニダーコーポレーションビルに行ったんだ。あの警備員にお前の写真を見せたよ。そしたら、似ていると言われた」
(´・ω・`)「後は、証拠集めさ。なかなか上手くは行かなかったが、昨日お前からアクションを起こしてくれたのはありがたい限りだ」
('A`)「……」
完敗だ。
勘で自分に辿り着いたというあたり、勝ち目はなかったのだ。
どう足掻いても、犯行を続けていけば間違いなく捕まっていただろう。
もっと早く、ショボンを殺すべきだった。
美味しい物は最後に食べよう、だなんて考えなければ。
('A`)「……?」
ふと、ショボンの話を振り返る。
プギャーが、署内の共犯……つまりバーボンだと、勘違いしたままなのか?
まだバーボンは、署内にいる。ショボンはそれを知らない。
バーボンさえ協力してくれれば、まだチャンスはある。
-
('A`)(いや待て……ショボンがバーボンだという線を忘れてたな)
ありえない話ではない。自分が泳がせた犯人を捕まえて手柄にする。それを楽しんでいる可能性もある。
この男なら、やりかねない。
('A`)(バーボンには、期待できないか……)
だが、まだブーンがいる。
ブーンがなんとかしてくれるかもしれない。
自分には、ただ黙秘を続ける事しかできないことを知って、虚しさを覚えた。
-
――ポジション警察署――
(´・ω・`)(なかなか口を割らないか……。まあそれでいい)
ドクオが何も言わずとも、捜査は滞りなく進む。
一人捕まえただけでも十分すぎる。
( <●><●>)「すみませんショボン警視」
不意に横から声をかけられた。
彼はワカッテマス巡査。署内で新たに捜査本部に加わった一人だ。
プギャーやモララーを失った捜査本部にとって、役に立つと思える人物だった。
( <●><●>)「ドクオと面会したいという人物が現れまして」
(´・ω・`)「面会だと? ドクオは国を震わせた殺人鬼だぞ? 親であろうと面会なんてできるわけがないだろう」
( <●><●>)「ドクオの親友だと言っているんです。彼がブーンである事はわかってます」
(´・ω・`)「……!」
なるほど。ブーンが来たか。
苦し紛れの打開策……とも思えるが、そうではないだろう。ブーンなりの考えがあって、直接出向いたのだ。
しかし、その考えが読めない。
(´・ω・`)「いいだろう、第二取調室に連れて行け。まず俺が話そう」
ドクオと会わせて平気かどうかは、自分が判断したいと思った。
-
――第二取調室――
警官に連れられて、自分は取調室のパイプ椅子に座っていた。
しばらく待っていると、扉が開かれた。
(´・ω・`)「待たせたな」
( ^ω^)「……! あなたは……」
振り返ると、そこにいたのはショボンだった。
ここにドクオが連れてこられるはずが無いことはわかっていたが、まさかショボンがやってくるとは。
(´・ω・`)「俺の事は、知っているか?」
( ^ω^)「もちろんです。捜査本部のリーダー、ショボンさん。テレビで見たことあります……ケホッケホッ……」
(´・ω・`)「そうか。それはありがたい事だ」
ショボンは椅子に座ることもせず、扉の前に立ったまま話を続けた。
( ^ω^)「あなたと話せるのは光栄ですが……ケホッ……。ブーンは、ドクオと話がしたいと言ったはずです」
自分がそう言うと、ショボンは何か考えるような素振りを見せてから答えた。
-
(´・ω・`)「その事についてなんだが……ドクオは少し取り乱しててな……。とても人に会わせられる状態じゃないんだ」
ドクオに限って、取り乱しているはずはない。
自分の目的を探るための嘘だろう。
( ^ω^)「だったら尚の事、会わせて欲しいです。ブーンなら、ドクオを落ち着かせる事ができると思います」
(´・ω・`)「……ふむ……それもそうか……」
ショボンはまた、何かを考えるように右手を口元に運んだ。
今度は考えるフリでは無さそうだ。
(´・ω・`)「……ダメそうならすぐに止めさせるが、それで構わないか?」
( ^ω^)「構いません。ケホッ……」
(´・ω・`)「なんだ、風邪でも引いてるのか?」
( ^ω^)「ええ、ちょっと咳が……」
(´・ω・`)「そうか。季節の変わり目だからな、体調に気をつけた方がいい。そんな事より、ついてきてくれ」
-
そう言うとショボンは再び扉を開けた。自分が椅子から立ち上がると、ショボンは扉から出ていった。
ショボンの後をついていく。何回か扉をくぐると、面会室に辿り着いた。
(;'A`)「ぶ、ブーン!? てっきりばーちゃんかと……」
( ^ω^)「ケホッケホッ……。ドクオ、大丈夫か? 取り乱してるって聞いたから余計に心配になったよ」
('A`)「あ、ああ……。大丈夫だ」
( ^ω^)「ならよかった」
自分は、ドクオの対面にある椅子に座った。
ガラス越しに見えるドクオ。見たところ、乱暴な取り調べはされていないようだ。
( ^ω^)「……ドクオ。ブーンは、びっくりだよ。どうしてドクオがこんな……」
('A`)「……うるせーな。説教がしたいなら帰れよ」
(;^ω^)「そっ、そんなつもりじゃ……。ブーンは、ドクオに話しておきたい事があったんだよ」
('A`)「……なんだ」
お互いの、アドリブによる演技が交わる。
俳優かお笑い芸人にでもなったような気分だ。
( ^ω^)「ブーンは今でも変わらず、ドクオの事を友達だと思ってる、って」
('A`)「…………」
-
( ^ω^)「覚えてるかな……中学生の頃、ドクオの家でピザを食べて、お婆さんのご飯食べて、ゲームして……」
('A`)「……ああ、覚えてる」
ドクオが、軽く頷く。だが、視線は合わせようとしない。
それでいい。アイコンタクトなど取る必要もない。
( ^ω^)「いつか……いつかの話だけど……」
( ^ω^)「あの頃みたく……ケホッ、また遊べたらなんて思っちゃったりもするんだ」
('A`)「……そうだな」
( ^ω^)「ブーンは、ドクオの事を本当の親友だと思ってるよ。家族もいるけれど……友情には勝てない」
拳を、握りしめる動作をする。
ドクオは目に涙を浮かべていた。
( ^ω^)「友情が、何よりも大事……ケホッ……大事だとおもってるんだ」
(;A;)「……ああ……そうだな……」
そしてその涙が、零れた。
一度流れてしまうと、それは止まる事をしなかった。
-
( ^ω^)「今はもう、ドクオがブーンの事を親友だと思っていなくても……」
( ^ω^)「たとえそ……ケホッ……そうだとしても、ブーンはドクオを親友だと思ってるよ」
(;A;)「ああ……オレだって……オレだって……」
ドクオはそう言いながら、涙を腕で拭った。
( ^ω^)「ドクオには時間が必要だと……ケホッケホッ……思うんだ」
( ^ω^)「ドクオは時間をかけて罪を償うんだ。そしていつか、またブーンと遊んでほしいんだ。ゆっくり時間をかけて、人生をやり直そう」
( ^ω^)「それで……ケホッ、それでもいいと、ドクオも思うだろ?ケホッ……」
自分は喋り終えると、大きく咳込んだ。
ドクオは何も言わない。手錠の繋がった両手で、涙を隠しながら深く頷くだけだ。
それからしばらくの間、沈黙が続いた。
-
(´・ω・`)「……そろそろ時間だ」
沈黙を破ったのは、ショボンだった。
自分はそれに反応して、立ち上がった。
( ^ω^)「また、会いに来るよ」
そう言うと、ショボンが扉を開けた。
俯いているドクオを一瞥し、自分は振り返って歩きだした。
('A`)「ブーン!!」
不意に呼ばれて、立ち止まってしまった。
('A`)「また……な」
だが、振り返る事はしなかった。
( ^ω^)「……、また」
また、ゆっくりと歩き出す。
扉が閉ざされる音が、長い廊下に響いていた。
-
――留置所――
('A`)「…………」
何か。
何かを伝えたかったはずだ。
自分は吹き込む風を凌ぐために毛布に包まり、ベッドの縁に座って、何時間もブーンとの会話を振り返っていた。
('A`)(喋り方がおかしかった……)
ブーンは、語尾に“お”をつけていなかった。
あの場でそれがわかるのは、自分だけだ。
('A`)(語尾を繋げて読むのか……?)
一字一句、間違いなく思い出せる。
だが、たとえ語尾を繋げて読んでも、意味のない言葉になってしまう。
('A`)(何が言いたかったんだ……?)
ヒントがあるはずだ。なぞなぞのような、ヒントが。
そういうヒントは、大抵最初か最後にある。
一番最初に言った言葉は、
“ドクオ、大丈夫か? 取り乱してるって聞いたから余計に心配になったよ”
だ。
-
('A`)(いや……これは、ここに来る前にショボンと話をした、と伝えたかっただけだ)
恐らくショボンと話をした時も、語尾に“お”をつけなかったのだろう。
自分が口調を不審に思わぬよう、予め釘を刺したのだ。
そこがヒントではないとしたら、一体どこに。
('A`)(……!)
違う。一番最初は、言葉ではなかった。
咳だ。
('A`)(咳を基準に、語尾を繋げるのか……!?)
試しに並べてみないとわからない。
自分は、頭の中で会話を振り返った。
次に咳をしたのは、
“あの頃みたく……ケホッ”
だ。
この場合は“く”が一文字目になるのだろう。
二文字目は、
“友情が、何よりも大事……ケホッ”
の“じ”だ。
-
頭の中で、全てを並べてみる。
“たとえそ……ケホッ”
“ドクオには時間が必要だと……ケホッケホッ”
“それで……ケホッ”
“それでもいいと、ドクオも思うだろ?ケホッ”
咳をしたのは、この六回だ。
その直前の語尾を並べると。
('A`)(“くじそとでろ”……)
('A`)(九時外出ろ、か……!?)
なんて間抜けな暗号だ、と思った。思わず声に出して笑いそうになった。
だがブーンなりに努力した結果だろう。今はそれでもありがたかった。
しかしもう、九時を過ぎているのではないだろうか。そう思ってベッドから立ち上がり、鉄格子の方へと駆け寄る。
遠くに見える、時計。
その二本の針は、二十時四十分をさしていた。
大丈夫だ、まだ間に合う。
だが。
(;'A`)(どうやって、出るんだよ……!!)
部屋には窓もない。
鉄格子には、鍵がかかっている。
鉄格子の向こうには、警官がいる。
どうやったって、二十一時までにここから出ることは出来ない。
-
(;'A`)(考えろ俺……! ブーンが何も考え無しにこんなアホみたいな暗号を使って伝えるはずがない……!)
何か脱出の方法があるはずだ。
ベッドの近くで辺りを見回す。
弱い風が吹き込んで、足が冷えてしまった。
('A`)(……風?)
そういえば、ここに来てから風が気になっていた。
季節も秋に変わり、寒いと感じていたのだ。
('A`)(窓もないのに風……通風口があるのか?)
見える所には、そんなものは無かった。
唯一隠れている場所。それは、ベッドの下だ。
急いで下を覗いた。
('A`)(あれか!)
鉄格子の張られた、長方形の穴。
自分の体格なら充分通れそうだ。
早速鉄格子を動かしてみようと、ベッドの下に入ろうとしたその時。
後ろから足音がした。
(;'A`)(まずい!)
-
自分は急いでベッドに座った。
しばらくすると、鉄格子越しに警官の姿が見えた。
見回りをしているようだ。
('A`)(弱ったな……いつ見周りに来るかわかったもんじゃない)
ベッドに座って、考える。
今からでは、警官の見回りのパターンを把握する時間もない。
どうしたものか。
そんな事を考えていると、遠くから声が聞こえた。
「すみません、ちょっといいですか」
誰か別の警官がやって来たようだ。
「あーはい、今行きます」
その言葉に答えて、見回りをしていた警官が声の方へと小走りで駆けていく。
しばらくすると、その姿は見えなくなった。
だが、遠くから二人が会話している声が聞こえた。
('A`)(……今のうちだ!)
急いでベッドの下に潜り込む。
鉄格子を近くで見ると、小さな赤いリボンの様なものが括りつけられていた。
-
逃走経路の目印だろうか。
証拠は残さないほうがいい。自分は、それを解いて、ポケットの中に入れた。
いざ、鉄格子を掴む。
するとそれは、難なく外れてしまった。
('A`)(呆気ねえ……)
('A`)(鉄格子あけた、あっけないなあ。ってか。ぶはは)
('A`)(…………)
そんな事はどうでもいい。
鉄格子を静かに床に置いて、匍匐前進で通風口に入る。
中は想像以上に暗い。他の部屋から射し込む僅かな光だけが頼りだ。
(;'A`)(匍匐って大変だな……)
曲がり角はあったが、大きな別れ道は無かった。自分は、腕と脚を動かしてひたすら進み続けた。
('A`)(この部屋も違うか……)
赤いリボンがついていない鉄格子は外れなかった。
どこかに赤いリボンのついた鉄格子があるはずだ。
('A`)(あった……!)
-
逃走経路の目印だろうか。
証拠は残さないほうがいい。自分は、それを解いて、ポケットの中に入れた。
いざ、鉄格子を掴む。
するとそれは、難なく外れてしまった。
('A`)(呆気ねえ……)
('A`)(鉄格子あけた、あっけないなあ。ってか。ぶはは)
どうでもいい。
鉄格子を静かに床に置いて、匍匐前進で通風口に入る。
中は想像以上に暗い。他の部屋から射し込む僅かな光だけが頼りだ。
(;'A`)(匍匐って大変だな……)
曲がり角はあったが、大きな別れ道は無かった。自分は、腕と脚を動かしてひたすら進み続けた。
('A`)(この部屋も違うか……)
赤いリボンがついていない鉄格子は外れなかった。
どこかに赤いリボンのついた鉄格子があるはずだ。
('A`)(あった……!)
-
小さなリボンが括りつけられた鉄格子。
まだ外さずに、ゆっくりと外の様子を確かめた。
('A`)(……一人いるな)
見たところ、休憩室か何かのようだ。
一人の男が紙コップで何かを飲みながら新聞を読んでいた。
二分ほど待つと、男は紙コップを捨てて部屋から出ていった。
('A`)(……よし)
リボンを外し、鉄格子を握る。
やはり、簡単に外れた。
鉄格子をゆっくりと床に置き、外へと出た。
('A`)(次のリボンは……!?)
鉄格子を元に戻して、部屋を見回す。他に通風口のようなものは見当たらない。
('A`)(どこだ……)
ふと、天井を見ると正方形の鉄枠があった。天井裏で作業する時のための入り口だろう。
その鉄枠から、赤いリボンが少しだけ垂れ下がっていた。
('A`)(よし……!!)
いざ、机に足をかけて上ろうとした、その時。
(;'A`)「……ッ!」
「やべー、忘れ物……」
そんな声と共に、先程の男が部屋の中に入ってきたのだった。
-
第21話、以上になります。
全力でミスしました…。
次回は土曜辺りまでに投下します!
よろしくお願いします!!
-
乙
出所祝いはピザだな
-
話の切れ方が変だなw
-
乙
-
乙!
未だに掴めぬバーボンの正体……
-
乙!
-
全裸待機
-
全裸のまま大変お待たせしました……
第22話、投下します。
-
男は、扉を閉めると同時に自分の存在に気がついたようだ。
自分は、どうすればいいのかわかっていた。
まるで物が飛んできた時に目を瞑る反射のように、自分の身体は、相手が気がつくよりも早く動き出していた。
机の上に転がっていたボールペンを右手に握る。そして男に駆け寄りながら、ペン先を出す。
身構える時間も与えず、左手で男の髪の毛を掴み、後ろに引っ張る。
そして、剥き出しになった首に、ボールペンを突き刺した。
「ぐっ……」
確かに刺さった感触があった。実際、六センチほど刺さっていた。
だが、足りない。
自分は何度も何度も、ボールペンを引き抜いては突き刺した。
「……」
やがて、男は糸の切れた操り人形のように重力に身を任せた。
片手で支え切れなくなった身体は、手を離すとゆっくりと床に崩れ落ちた。
-
(;'A`)「はぁ……はぁ……」
返り血が、自分の服を真っ赤に染めていた。
男は確かに死んだようだ。
(;'A`)(休んでる暇はねぇ!)
男のポケットからスマートフォンを取り出して、時間稼ぎのために扉の鍵をしめた。
急いで机にのぼり、天井のリボンを外して鉄枠部分を押し込んだ。
だが。
(;'A`)(……無理だ……もう腕が……)
匍匐を続けていたせいか、腕が重い。とても、腕の力だけで自分の身体を持ち上げることは出来そうにない。
仕方なく、机の上に椅子を置いてゆっくりとのぼった。
思った通り、天井裏は通風口よりも暗かった。
先程持ってきたスマートフォンのライトを点け、辺りを見回す。
すると足元に、赤いリボンがあった。
それはある方向に伸びていて、自分はそれを辿って進み続けた。
やがてリボンが途切れた場所。そこの足元から、僅かに光が漏れていた。
先程のような入り口があるのだろう。
-
忘れないように、リボンをすべて回収する。
そして取っ手らしき物を掴んで、ゆっくりと持ち上げた。
話し声は聞こえない。
恐る恐る中を覗くが、人は居ないようだ。
(;'A`)(怖え……けど……行かねーと……)
賭けに出るしかない。
自分はゆっくりと、身体を降ろした。
手を離して床に着地する。
辺りを見回すが、誰も居ない。
(;'A`)「よかった……」
一息ついて、もう一度見回す。
この部屋には、窓があった。そしてその窓に、赤いリボンが挟まっているのが見えた。
('A`)(あそこだ!!)
走って駆け寄る。窓から外を見ると、フェンスの向こう側に街灯を反射させる何かが見えた。
一台の、黒い車だ。
もう躊躇う必要はない。
自分は直ぐにリボンを引き抜いて、窓を開けた。
――その時、不意に後ろから物音がした。
-
(´・ω・`)「やはりここか……ドクオ……」
(;'A`)「――ッ!!」
勢い良く扉を開けたショボンが、そこにいた。
瞬間、自分は目で周囲を確認するよりも早く、記憶を頼りに周囲の状況を思い出す。が、武器になるような物は無かった。
あったとしても、この距離では抵抗されてしまう。
車まではあと数メートルだ。下手な事をするより逃げた方がいい。
自分は直ぐに身を乗り出し、窓から飛び降りた。
(´・ω・`)「ドクオが逃げたぞ!! 外へ回れ!!」
地面に着地した時、そんな声が聞こえた。
それに反応するかのように、自分の身体はフェンスに向かっていた。
(;'A`)「うおおぉぉぉ!!」
フェンスを掴み、必死でよじ登る。重たかったはずの腕は、何故か動いている。
細い針金が指に食い込む。だがそんな痛みは、アドレナリンによってかき消されていた。
何故か自分の登っている場所だけ、フェンスの上に有刺鉄線が張られていない。
予め切られていたようだ。
-
フェンスの上に到達した時、左右から声が聞こえた。
警官数名が、駆け寄って来ているようだ。
それを視認する事もせず、フェンスから飛び降りた。
地面に着地した自分の目の前には、黒い車。
そのガラス越しに薄っすらと見えたのは、ブーンの姿だった。
急いで車のドアを開け、身体を車内に投げ込んだ。
(*'A`)「ブーン!!」
(*^ω^)「時間通りだお、ドクオ!!」
ブーンがそう言った瞬間、車は一気に走り出した。
右手の拳をブーンに向けると、ブーンも右手をハンドルから離し、自分の拳に合わせてきた。
('A`)「お前ほんと最高だよ!!」
( ^ω^)「知ってるお!! ……でもまだうかうかしてられないお……!」
後ろを振り返ると、遠くに一台のパトカーが、サイレンを鳴らして追いかけてくるのが見えた。
-
車通りの少なく、暗い道路。そこをライトも付けずに走る自分たちの車。
いくら車通りが少なくても、危険だ。
だが、逃げる為には極力目立たない方がいい。
(;'A`)「パトカー速いな……追いつかれるぞ……!」
( ^ω^)「わかってるお!」
ブーンもアクセルを踏み込む。
たまに前を走る車がいたが、二車線を縫うようにして追い越した。
(;'A`)「おい、もう後ろまで来てんぞ!」
(;^ω^)「おおおおおおっ!?」
(;'A`)「えっ!?」
ブーンが突然、そう叫んだ。それを聞いて自分は前を見た。
その目前に迫っていた、一台の黒い車。
路肩に寄せて駐車されているようだ。
(;'A`)「――ぶつかるッ!!」
自分たちの車は真っ直ぐに、黒い車に向かっていた。
身体がもうダメだと判断したのか、両腕で頭を覆うように隠してしまった。
その時、車のスピードが少しだけ遅くなった。
そして黒い車の手前で、一気に右へと曲がった。
-
車体が左に傾く。右側が浮いてしまったようだ。
だがこの程度なら横転しないことはすぐにわかった。
間一髪、車を避けられた。
そう思ったのもつかの間、目の前には次の障害物が迫っていた。
中央分離帯だ。
(;^ω^)「おおおおおおっ!!」
車は、スピードを緩めることなく中央分離帯へと激突した。
――いや、激突はしていなかった。
自分達の車は、上手いこと中央分離帯を乗り越え、飛んでいた。
(;'A`)「ええええええええ!?」
わずか数十センチ程の高さだが、確かに空を飛んでいた。
思わず叫び声を上げてしまう展開だった。
パトカーが駐車されていた車に激突している所が、サイドミラー越しに見えた。
-
(*'A`)(すげえ……!)
飛んでいる車。そして後ろでは、パトカーが事故を起こしている。そんな状況に、自分は思わず感動してしまった。
しかし、まだ問題があった。
中央分離帯を飛び越えたこの車は、真っ直ぐに反対車線側の建物に向かっていた。
ガラス張りの、衣料品店のような建物に。
車が着地した時には、建物は目前まで迫っていた。
流石にもう、避けられない。
車は確かに、その衣料品店のガラスへと追突した。
('A`)「…………うぅ……」
追突したと同時にブレーキがかかり、車は店内で停車した。
エアバッグも出ていない。
自分達は、意識を保っていた。
(;^ω^)「いたた…………。ど、ドクオ、急いで降りるお」
(;'A`)「……あ、ああ……」
ブーンにつられて、自分も車から降りた。
色々な場所にぶつけたせいか、身体中が悲鳴を上げている。
額から血も出ているようだ。だが生きていただけ良かった、と思った。
-
(;^ω^)「こっちだお!」
そう言うと、ブーンは店の奥へと駆けていった。
自分もなんとか身体を動かし、後を追いかける。
長い廊下の突き当たりにある、鉄の扉。ブーンがそれを開けると、そこは外だった。どうやら店の裏口のようだ。
道路に、数台の車が駐車されている。ブーンは迷う事なくその中の一台のガラスを割り、鍵をあけて乗りこんだ。
(;'A`)「えっえっ」
わけがわからなかったが、取りあえず自分も助手席に乗り込む。するとブーンが無理やりエンジンをかけ、車はすぐに走り出した。
(;^ω^)「……ふぅ、なんとかなったお」
(;'A`)「…………、お前……いつの間にそんなに……」
ブーンの判断力、適応力が今までとは大違いに見える。
自分は焦ってばかりだったのに、ブーンは焦りながらも必死で模索していた。
(;^ω^)「なんの事だお?」
(;'A`)「……いや、なんでもねえ。とりあえず、ありがとうな」
-
( ^ω^)「いいんだお。ショボンの裏をかけたみたいでちょっと嬉しいお」
('∀`)「ああ、あの暗号か? ありゃひでぇな、若手芸人の漫才でも見てる方かよっぽどマシだぜ」
(;^ω^)「ドクオもやっぱそう思うかお」
('A`)「結局ショボンにもバレてたしな」
なぜ、ショボンは自分があそこにいると気づいたのだろうか。
ブーンの暗号を解読したのだろうか。
しかしそれでは、場所まで特定できるはずがない。
単なる勘か、元々知っていたか。
('A`)「そういや、あの逃走経路って誰が……」
( ^ω^)「バーボンが協力してくれたんだお。昨日の夜、手伝ってやるって言ってきたお」
('A`)「やっぱ、そうか」
バーボンは一体、何者なのか。
ショボンがバーボンだというのなら、逃走中の自分を見つけても不思議ではない。
その正体を明かすまで、自分はこんな事を続けるのだろう。そう思った。
('A`)「……で、今どこに向かってんの?」
( ^ω^)「……アジトだお」
('A`)「……アジト? あそこはもう使えねーだろ」
( ^ω^)「新しい、アジトだお。ブーン達は、そこで寝泊まりするんだお」
-
( ^ω^)「いいんだお。ショボンの裏をかけたみたいでちょっと嬉しいお」
('∀`)「ああ、あの暗号か? ありゃひでぇな、若手芸人の漫才でも見てる方がよっぽどマシだぜ」
(;^ω^)「ドクオもやっぱそう思うかお」
('A`)「結局ショボンにもバレてたしな」
なぜ、ショボンは自分があそこにいると気づいたのだろうか。
ブーンの暗号を解読したのだろうか。
しかしそれでは、場所まで特定できるはずがない。
単なる勘か、元々知っていたか。
('A`)「そういや、あの逃走経路って誰が……」
( ^ω^)「バーボンが協力してくれたんだお。昨日の夜、手伝ってやるって言ってきたお」
('A`)「やっぱ、そうか」
バーボンは一体、何者なのか。
ショボンがバーボンだというのなら、逃走中の自分を見つけても不思議ではない。
その正体を明かすまで、自分はこんな事を続けるのだろう。そう思った。
('A`)「……で、今どこに向かってんの?」
( ^ω^)「……アジトだお」
('A`)「……アジト? あそこはもう使えねーだろ」
( ^ω^)「新しい、アジトだお。ブーン達は、そこで寝泊まりするんだお」
-
(;'A`)「なっ……そんな金無かったろ!? もう五百万も無かったはずじゃ……」
( ^ω^)「それも昨日、バーボンから追加報酬としてもらったんだお。五千万だお」
更に五千万とは。
自分達の残りの持ち金を知っているかのようなタイミングだ。
( ^ω^)「……お、そろそろ着くお」
そう言ってから一分程して、ブーンは車をガレージの中へ駐車した。
想像していたよりも、立派な家だ。ガレージのシャッターも閉められるようで、ブーンが車から降りると、力任せに引っ張っていた。
車から降りてガレージの奥の扉を開ける。そこから住居スペースである二階に向かった。
そこに、自分が最も会いたかった人物がいた。
川゚ -゚)「ドクオ、待ってたぞ」
(*'A`)「……クー……!!」
思わず飛びついてしまいそうになったが、流石にそこまでの度胸はなかった。理性が身体を静止させた。
川゚ -゚)「心配したぞ」
(*'A`)「とか言って、本当は心配なんかしてないだろ?」
川゚ -゚)「まあな。心配せずとも、君は戻ってくると思っていた」
-
(*'A`)「だろうな……。ただいま」
川゚ -゚)「ああ。おかえり」
そうは言っても、クーが自分を待っていてくれた事が嬉しかった。
( ^ω^)「おっおっ。取りあえず、ピザ食うかお?」
(*'A`)「えっ、ピザ!?」
川゚ -゚)「ああ。ドクオが戻ってくる前に買いに行ってきたんだ。カントリースペシャルも缶コーラもあるぞ」
( A )「…………、お前ら…………」
ピザが食べられる嬉しさはもちろんだが、自分はもっと別の物に喜びを感じた。
(;A;)「……ありがとな……本当に……」
気づいた時には、涙が零れていた。
(;^ω^)「おっおっ、泣くなお」
川゚ -゚)「可愛い顔が台無しだぞ。まあ、泣き顔も可愛いが」
いい仲間を持った、と感じた。
死ぬ時は、共に死にたい。
そんな事を、考えた。
-
――ポジション警察署――
(´・ω・`)「見つからんか……」
ドクオが脱走してから、一週間が経過した。
ドクオを逮捕した翌日から、国中――もとい世界中で、その事実が報道された。
しかしさらにその翌日、ドクオが脱走。世界中で大騒ぎとなっていた。
しかし未だ、有力な情報もない。
(´・ω・`)「どこに潜んでいるのかはわからんが、極力外出はしていないだろうな」
( <●><●>)「ええ。ですが、時間の問題です。ドクオの顔は、今や国中の誰もが知っているでしょう」
(´・ω・`)「時間の問題、か……。その間に、また事件を起こされてはたまったものではない」
( <●><●>)「わかってます。だからこうして、私達も全力で手掛かりを捜索しているのです」
ワカッテマスは、時折腹の立つような物言いをする。
だが、有能である事は間違いない。
いちいち一人の部下の言葉遣いを注意する時間ももったいない。
彼はこういう人間なのだ、と自分に言い聞かせた。
-
しえんしえん
-
(´・ω・`)「モナー、お前は変わらずブーンの捜索を頼む」
( ´∀`)「はい。今のところは、行方が掴めておりませんが……」
このタイミングで行方がわからないとなると、共犯である事を認めているようなものだ。
だがそれでいい。ブーン以外有り得ないのだ。証拠は無いが、捜査本部の全員がそう考えている。
(´・ω・`)「見つけ次第、尾行しろ。危険かも知れないが、やむを得ん。接触するよりはましだ」
( ´∀`)「わかりました」
もっと早いうちに、ブーンについて調べていれば。
証拠はなくとも、ドクオのように裏をかけたかも知れない。
(´・ω・`)(後悔しても仕方がないな)
まだ、負けてはいない。
いや、負けてはならないのだ。
-
――アジト――
('A`)「なあ、ブーン」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
時刻は二十一時。
自分とブーンは一週間アジトに引き篭もり、ひたすらゲームをしていた。
('A`)「これじゃ、刑務所と大して変わんねーぞ」
(;^ω^)「…………」
('A`)「黙るなよ」
(;^ω^)「……ブーンもそう思うお」
(;'A`)「……おいおい、脱走してからの事、何も考えてねーのかよ」
( ^ω^)「……ごめんだお」
ブーンは、少しだけ落ち込んだような表情を見せた。
コントローラーを握る手も、止まっている。
('A`)「……まあいいよ、気にすんな。それよりクーは?」
( ^ω^)「クーならドクオが起きる前に買い出しに行ってくれたお。そろそろ戻ってくると思うお」
-
('A`)「そうか。……って、噂をすればだな」
階段を上がってくる足音が聞こえた。
ゆったりとしたテンポで、正確なリズムを刻んでいた。
川゚ -゚)「すまんな、遅くなった」
('A`)「クー、おかえり」
川゚ -゚)「起きてたか。適当な食材と冷凍食品を買ってきた。コンビニは便利なものだな。……今何か作ってやろう」
('A`)「あー、まだいいや。お腹減ってないんだわ」
川゚ -゚)「なんだ、そうなのか。なら、手料理はまた明日とするか」
クーの表情は何も変わらないが、少しだけ残念そうに見えた。
クーの手料理を食べるのは初めての事では無いが、自分も少しだけ残念だった。
川゚ -゚)「じゃあ私は帰るとするか」
( ^ω^)「わざわざありがとうだお」
川゚ -゚)「気にするな、君のためじゃない」
(*^ω^)「おっおっ、じゃあ尚更ありがとうだお」
川゚ -゚)「気持ち悪いな、なんとかしてくれドクオ」
('A`)「…………」
-
川゚ -゚)「なんだ、私とブーンが冗談を言うような間柄になっていて拗ねてるのか?」
拗ねてる、と言われると否定したくなる。図星だからだろうか。
('A`)「別に」
川゚ -゚)「……全く、世話の焼ける奴だな。かわいいな。よし、今日は特別に私の家に招待してやろう」
('A`)「……へ?」
今、何と言ったのだ。
川゚ -゚)「なんだ、来たくないのならいいんだぞ?」
(*'A`)「行きます!」
(*^ω^)「行くお!」
川゚ -゚)「君はここで寝てろ」
('A`)「お前は黙って糞でもしてろ」
( ^ω^)「ぶーん……」
クーの家に行くのは初めての事だ。
このアジトから出るのも初めてだが、それに対する緊張は全く無かった。
こんな夜中に、彼女の家に行くなんて。
童貞の自分には、刺激が強すぎる。
緊張が、久々に脚を震わせた。
-
第22話、以上になります。
投下中の支援嬉しいです。ありがとうございました!
次回は火曜日までに投下します。
よろしくお願いします。
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しえ
-
うお、終わってた
乙
-
おつ
そういえばクーの顔もテンプレと違うけど仕様なんだろか
-
おわってた、おつおつ
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ごめん酉外し忘れた、おつです
-
おつ
バーボンってまさか……
-
乙
-
バーボンって名前から判断するとあいつなんだけどなぁ
-
>>572
うわー気づかなかったです、完全にミスです……
この際なので言ってしまいますが、ショボンのも単なるミスです、見づらくてすみません…。
この作品は、最後までこれで行きたいと思います。
-
デレの所でダレたけど、また盛り返してきてるな
ブーンが短い間に急成長しててwktkだわ
次回でクーの目的なんかも判明するのだろうか?
乙
-
レスありがとうございます!
第23話、投下します。
-
扉を開けると、広く長い廊下があった。
廊下と言うべきなのか迷う程、無駄な広さだ。
川゚ -゚)「無駄に広いだろう?」
電気のスイッチを押したクーが、靴を脱ぎながらそう言った。
自分も靴を脱ごうと座り込んだが、ポケットの中の財布が邪魔をする。取り出して床に置き、もう一度座り込んだ。
(;'A`)「……一人暮らしなのか?」
川゚ -゚)「いや、実家だ」
(;'A`)「ちょっ、ご両親は?」
靴を脱いで上がったは良いが、実家と聞いて足が止まってしまった。
川゚ -゚)「……両親は海外で働いているんだ。数ヶ月滞在して、戻ってきて、数ヶ月後にはまた海外。その繰り返しだ」
('A`)「そうなのか……。いや、随分金持ちなんだろうなと思ってな」
川゚ -゚)「……まあな。金はあっても家族が殆どいないのでは、寂しいものだぞ」
('A`)「……そうか」
-
クーの家庭の事情を知る事が出来て、それだけでもいい機会だったと思える。
――いや、正直に言えばまだ物足りないのだが。
川゚ -゚)「ここが私の部屋だな」
('A`)「おお……」
(;'A`)「……何もねぇ……!」
川゚ -゚)「ああ、シンプルでいいと思うんだがな」
広い部屋を見渡すが、テーブルやベッド、本棚以外の不要なものは何も無かった。
いや、ぬいぐるみなどが大量に置かれていても衝撃だが。
川゚ -゚)「まあくつろいでくれ。座布団に座るのも微妙だろう、ベッドに座ってくれて構わないからな」
(;'A`)「そ、そうか……?」
川゚ -゚)「……と、その前に私はシャワーを浴びるか。ドクオはどうする?」
('A`)「ああ、俺は起きた時に浴びてきちまったよ」
川゚ -゚)「そうか、なら一人で浴びてこよう」
('A`)「……」
(;'A`)(待てよ、今もし“俺も”と返事をしたら一緒入れたのか……!?)
-
川゚ -゚)「適当に待っててくれ。ちょっと行ってくる」
(;'A`)「お、おう」
クーが扉を開けて、部屋から出ていった。
自分は一人、クーの部屋に取り残されてしまった。
(;'A`)(俺はバカだ俺はバカだ……!! せっかくのチャンスを……!!)
後悔しても、遅い。
何故もっと早く気が付かなかったのだ。
('A`)(……なに後悔してんだ俺……。まだチャンスはある……!)
シャワーを浴びるという事は、つまりその後何かがある、と捉える事もできる。
急に現実味が増してきて、緊張で手が震えている。
(;'A`)(落ち着け俺……! こういう時は拳銃を分解するんだ……!)
座布団に正座し、テーブルの上に鞄から取り出したタオルを敷く。同じく鞄から取り出した拳銃をタオルの上に置いて、じっくりと眺める。
(;'A`)「……ふーっ……」
(;'A`)(落ち着け……落ち着け……。震えた手では分解できない……)
ゆっくりと、拳銃に手を伸ばす。そしてかすかに震える指先で、マガジンを取り出した。
-
――ポジション警察署――
( <●><●>)「ショボン警視、見ていただきたいものが」
(´・ω・`)「なんだ?」
自分のデスクの前に現れ、ノートパソコンをこちらに向けるワカッテマス。
極力パソコンの使用は控えてもらっているが、何かしらのデータを扱う時はオフラインの物を使うしかない。
( <●><●>)「銀行の、カメラの映像です」
(´・ω・`)「ほう、再生してくれ」
ワカッテマスがエンターキーを押すと、動画が再生された。
その動画に映る、目出し帽を被った二人組。
(´・ω・`)「この痩せ型の男が、ドクオだろうな」
( <●><●>)「そうでしょうね。そしてもう一人の顔が、ここで」
ワカッテマスがもう一度エンターキーを押した。
画面に映るのは、ピザを食べるために目出し帽を鼻のあたりまで持ち上げた男の顔。
(´・ω・`)「……ほう。目まで見えないのは残念だが、これは……」
-
( <●><●>)「どう見てもブーンでしょうね」
(´・ω・`)「ああ」
見覚えのある顔だ。手元にあるブーンの顔写真と見比べても、殆ど間違いないと思える。
( <●><●>)「証拠としては、不十分でしょうか」
(´・ω・`)「一応、科捜研に回してくれ。この前ブーンが来た時の映像もだ。骨格が一致すれば、十分だろう」
( <●><●>)「だと思いました」
(´・ω・`)「……ところでこれは、どうやって手に入れた?」
科捜研に任せても復旧できなかったデータだ。そう簡単に手に入れられる物でもないだろう。
( <●><●>)「……私はコンピューターが得意でして、独断でやらせていただきました」
(´・ω・`)「……ふむ。まあいい、報告書は出せよ」
( <●><●>)「わかってます」
ワカッテマスの言う事が本当なら、他の映像の復旧も望めるかもしれない。
科捜研の報告を待っている間に、また任せてみたいと思った。
-
( <●><●>)「……それと、もう一つ」
(´・ω・`)「なんだ、まだあるのか」
( <●><●>)「ええ。頼まれていたものです」
ワカッテマスに渡された、一枚の紙。
それは、ブーンに関する資料だった。
(´・ω・`)「ああ、すまないな」
( <●><●>)「ではこれで」
家族構成や、出身校などが簡単に書かれていた。
至って普通のものだ。そう思ったのだが、一つだけ気になる箇所があった。
(´・ω・`)「……ちょっと待てワカッテマス」
( <●><●>)「はぁ、なんでしょう」
(´・ω・`)「この人物の詳細を持ってきてくれ」
ブーンの家族構成の、一番下に書かれている部分。
そこを指差しながら、そう言った。
( <●><●>)「……? ですが、これは……」
(´・ω・`)「いいから、至急頼む」
( <●><●>)「はぁ、わかりました」
自分の予想が当たっていれば。
いや、ほぼ間違いないのだが、確認せずにはいられなかった。
-
――クーの家――
川゚ -゚)「いい湯だった」
(;'A`)「シャワーだろ」
川゚ -゚)「湯には変わりない」
(;'A`)「どっちでもいいよ」
組み立て直した拳銃を鞄に仕舞っていると、クーがバスローブを纏って部屋に戻って来た。
やたらと大きいせいか、胸元が少しはだけている。それを見て、自分はすぐに目を逸らした。
川゚ -゚)「なんだ、目を逸らす事もないだろう。明るいうちしか見えんぞ」
('A`)「えっ?」
川゚ -゚)「こういう事だ」
そう言うとクーは、明かりを消した。
(;'A`)「ちょっ、えっ? ……うわっ!」
暗闇の中、自分はベッドへと押し倒された。
クーの手によって。
(;'A`)「え、えええあのええええ」
川゚ -゚)「そんなに焦るなよ、恥ずかしくなってくるだろう」
-
月明かりで微かに見えるクーの姿。
そして混乱しているうちに、自分は服を脱がされていった。
(;'A`)(ここ、これは……間違いない……)
とても冷静になどなれなかったが、自分の状況を少しずつ理解していった。
やがて、自分は全裸となっていた。
(;'A`)「お、おれ、初めてなんだ……」
川゚ -゚)「それくらい、わかっている。私だって。初めての事だ」
(*'A`)「そ、そうなのか……!」
そう言われて、少し嬉しくなった。
クーほどの美貌を持っていれば、寄ってくる男はいくらでもいただろうに。
(*'A`)「ここ、コンドーム、持ってくる」
川゚ -゚)「コンドームか。ああ、避妊も大切だな」
クーが、自分の上から降りた。
自分はベッドから立ち上がって鞄の中を探すが、財布が無い。
(;'A`)(やべっ、玄関か?)
そこで思い出した。財布は玄関に置いたままだったのだ。
-
(;'A`)「ごめん、財布を玄関に置いてきちまった。すぐ取ってくる」
川゚ -゚)「……そうか、わかった」
急いで扉を開けて、玄関へと駆けていく。
('A`)(雰囲気ぶち壊しだな……。まあ、俺らしいか)
そんな事を考えながら、玄関に落ちていた財布を拾って、また部屋へと引き返す。
小走りしながらコンドームを一つ取り出して、扉を開けた。こんな時のために買っておいて良かった、と思った。
('A`)「すまん、待たせ――――!?」
川゚ -゚)「――なあ、人を殺すのって、どんな気持ちなんだ?」
暗闇の中。
クーはベッドの上で、鞄に入れておいたはずの自分の拳銃を片手にそう言った。
(;'A`)「なな、なんだよ……急にどうしたんだよ?」
川゚ -゚)「ふと気になってな。それより、どうなんだ?」
何を、言っているんだ。
先程までの雰囲気は、どこへ行ったのだ。
-
(;'A`)「どうって……、俺は、気持ちいいって感じるが……」
川゚ -゚)「ほう……気持ちいいか。セックスよりも、興味深いな」
クーの様子を見る限り、もはやセックスをする気など毛ほども無いようだ。どうしてかはわからない。
だが、クーの行動が予測できないのはいつもの事だ。
川゚ -゚)「……よし、試してみるか。すまないが、私に殺されてくれ、ドクオ」
('A`)「……」
(;'A`)「なっ!?」
クーは、その無表情を崩すことの無いまま、銃口をこちらに向けた。
そしてその引き金を引いた。躊躇いなど、感じられなかった。
(;'A`)「くっ!!」
空気の抜けるような音が聞こえた。その音が聞こえた時には、銃弾は既に自分の顔の真横を通過して、後ろの壁へとめり込んでいた。
咄嗟に横へ逃げたのだ。だが自分の足に躓いて、床へ転んでしまった。
-
理解できない。いや、理解はできても、わからない。
クーが、自分を撃ったのだ。避けなければ、銃弾は間違いなく自分の頭を貫いていた。
本気で、自分を殺すつもりで撃ったのだ。
川゚ -゚)「すごいな、避けるなんて」
ベッドが軋む音が聞こえる。見上げると、クーは窓から漏れる月明かりを背景に、もう一度銃口を自分へと向けていた。
川゚ -゚)「だが、次はそうはいかないだろう」
小さく、しかし確かに、撃鉄を起こす音が聞こえた。
(;'A`)「う、うわぁぁぁぁああああ!!」
脚が、手が、震える。
本当に、殺されるのだ。
自分が愛した女性に。
川゚ -゚)「……せっかく一度は生き延びた命だ。最期の言葉くらい聞いてやる」
(;'A`)「…………」
これが、最期なのか。
その言葉を発すれば、クーは引き金を引く。
何故なのか。いくら考えても、わからない。
わかったところで、クーは自分を殺すのだ。
――もう、腹を括るしかない。
-
(;'A`)「たっ……頼みが……ある」
川゚ -゚)「頼み? ふむ、聞くだけ聞いてやろう」
(;'A`)「俺は本当に、お前が好きだったんだ……。だからせめて死ぬ前に、キスをさせてくれ……」
川゚ -゚)「……ほう、キスか。私はそれも経験した事が無かったな」
そう言うとクーは少し考えるような素振りを見せて、もう一度口を開いた。
川゚ -゚)「それくらいならいいだろう。ただ、銃は降ろさんぞ」
特に驚いた様子はない。予想していたのだろうか。
いや、クーは驚く事自体、しないのだろう。
クーは自分に近づいて、銃を側頭部に突きつける。目は開けたままだが、自分が来るのを待っているのだろう。
――ならば。
川;゚ -゚)「ぐっ!?」
クーの顔に、頭突きを入れた。
痛みからか、とっさの判断からかは分からないが、クーは引き金を引いた。
銃口から射出された弾丸は、自分の後頭部を掠めて、髪の毛を落としていった。
-
一か八かの賭けだった。銃を突きつけられたのが側頭部でなければ、今頃自分の身体は鉛で貫かれているだろう。
川゚ -゚)「くそっ!」
クーは咄嗟に体制を立て直そうとする。が、腹部に入る自分の容赦ない拳に、抗えなかった。
川;゚ -゚)「うっ……」
そしてクーは銃を握ったまま、うずくまった。自分は脚でその手を蹴り、勢い良く落ちた銃を奪い取って、クーの頭へと向けた。
川゚ -゚)「…………」
('A`)「…………なぁ……教えてくれよ」
クーは、抵抗する気も無いようだ。いや、もしかしたらそう見せてるだけなのかもしれない。
念を入れて、少し距離を取る。
('A`)「俺の事が好きだって言ったあの言葉は……嘘なのか?」
川゚ -゚)「ふふっ……なんだ、そんな事を聞くのか?」
クーは余裕そうな表情をこちらに向け、もう一度笑った。
川゚ -゚)「私は、君が好きだ。それは変わらないさ」
('A`)「じゃあなんでだ!?」
川゚ -゚)「たとえ好きでも、私はドクオを殺さなきゃならないのさ。そういう命令なんだ」
-
('A`)「命令……? どういう事だよ、誰に命令されたんだよ!」
川゚ -゚)「言えんな、それは。その人の命がおびやかされるような事があったら、私がここで死ぬ意味もなくなってしまう」
何か弱みをにぎられている。それは間違いないようだった。
('A`)「死ななくても……俺を殺さなくても……俺がなんとかしてやる! だから……」
川゚ -゚)「駄目なんだ。ドクオを殺すか、ドクオに殺されるか、それが条件なんだ。私の死体を、外にでも放り投げておいてくれればいい」
どういう事だ。
自分を殺す目的じゃないのなら、一体なぜこんな事を。
安っぽい悲劇でも見ているような気分だ。
川 - )「――頼む、早くしてくれ。早くしないと、君を殺してしまう」
川 - )「もう、そんな事はさせないでくれ」
クーは、本気だ。
きっと俺を殺す逆転の方法もあるのだろう。だがそれをしないのは、愛情からか。
( A )「なんでだよ……なんで……」
川゚ -゚)「…………」
-
クーは、何も言わない。
しばらくの間、自分は拳銃を降ろすことなく、心の中で繰り返しクーの名を呼んだ。
( A )「…………楽しかった。お前と一緒にいるのは」
川゚ -゚)「……そうか」
( A )「俺は、お前が好きだ」
川゚ -゚)「私も君が好きだ」
( A )「だから……お前を救うために、お前を殺す」
川゚ -゚)「ああ、それでいい」
川 - )「……それで、いいんだ……」
銃を握り直し、撃鉄を起こす。
クーはしっかりと、自分の顔を見つめている。
( A )「――愛してるよ」
川 - )「愛してる」
引き金を引いた時、クーは何かを言いかけた。
俺は指を止めることもできず、銃弾はクーの頭を貫いた。
その言葉に返してやる事はできなかった。
クーはこう言ったのだ。“いつかキスを――”と。
-
第23話、以上になります。
次回は、木曜日辺りまでに投下します!
よろしくお願いします。
-
乙
-
乙
こういう時は拳銃を分解するんだ……!で吹いた
-
乙
悲しいな
-
乙
-
マジかよおいおい
-
お、来てた
これは予想GUYだった
-
俺もGuyだった
-
俺はgayだった
-
全裸待機
-
投下は23時くらいになります…!
-
お待たせしました、第24話投下します。
-
ドクオがアジトに戻ってきたのは、二時間後の事だった。
自分は、一人で長い事ゲームをしていた。
( ^ω^)「おっ? なんで戻ってきたんだお?」
('A`)「…………」
(;^ω^)「……ドクオ……?」
ドクオは、今までに一度も見た事がないような暗い顔つきになっていた。
嫌な予感がする。そう感じさせる程に、酷い顔だった。
('A`)「……死んだ……」
(;^ω^)「……な、何言ってんだお?」
('A`)「……クーが、死んだ」
(;^ω^)「おっ……!?」
突然の事に驚いて、コントローラーを手から離してしまった。
だがわかっていた。
今クーが死ぬなんて、ドクオが殺した以外に有り得ないと。
-
( ^ω^)「なんで……殺したんだお……?」
('A`)「……殺されそうになったんだ。クーに……」
(;^ω^)「おっ……」
自分の嫌な予感が、的中したと言うのか。
('A`)「俺を殺すか、俺に殺されるか、そのどちらかじゃないとダメらしくて……それで……」
( A )「よくわかんねぇけど……クーは殺されたがってたんだよ……」
( ^ω^)「……そうかお……」
ドクオはゆっくりと床に座り込んだ。
何も言わずに、ただ下を見つめながら。
('A`)「……バーボンだ」
( ^ω^)「バーボン?」
('A`)「ああ……。あいつ以外、考えられねぇ。あいつが、クーを脅したんだ……」
( ^ω^)「……なるほどだお……」
-
詳しい事はわからない。ドクオに聞いても、恐らくわからないと答えるだろう。
クーは誰かに脅されていた。それが事実なのかどうかもわからない。
いや、この場合は事実かどうかなどあまり関係がなかった。
重要なのは、クーがドクオを殺そうとした事と、ドクオがクーを殺した事だけだ。
('A`)「……決着をつけてやる……こんな事……」
( ^ω^)「…………」
( A )「殺してやる……」
ドクオの拳が、強く握られたのが見えた。
それが、ドクオの決意の固さを表していた。
-
――一週間後――
十九時を過ぎた頃。
街が明るいせいか、空を見上げても星を見る事はできない。
( ^ω^)「……明るいのに、真っ暗だお」
('A`)「……ああ」
空には雲一つなかった。
ただ、何もない闇が広がっていた。
( ^ω^)「……火、貸してくれお」
タバコを取り出して一本だけ咥えたが、どうやらライターをアジトに置いてきてしまったようだった。
('A`)「ほらよ。これ、お前にやるよ」
ドクオが手渡してきたオイルライター。
自分が、前から欲しいと思っていた物だ。
( ^ω^)「おっ……もらっていいのかお……?」
('A`)「ああ。まだ、クーから貰ったやつがあるんだよ。そいつはもういらねーから……さ」
( ^ω^)「おっおっ、ありがとだお」
ドクオからタバコ以外の何かを貰ったのは、恐らく初めての事だ。
素直に、嬉しく思った。
早速そのライターでタバコに火をつけて、胸ポケットに入れた。
-
しえ
-
( ^ω^)「……これで、終わりなのかお?」
('A`)「……何がだ?」
( ^ω^)「ブーン達の、全てだお」
('A`)「……さあな。考えてみりゃ、終わりなんてねーんじゃねぇかな」
( ^ω^)「どういう事だお?」
自分がそう聞き返すと、ドクオはタバコを咥えて煙を吸い込み、それを吐き出しながら続けた。
('A`)「俺達のやってきた事は、人々の記憶から、記録から、消える事はねえ。……まあ別に、誰かに伝えたい事とかねーけどな」
('A`)「それに、決着はつけても終わらせたくねー。お前もそう思うだろ?」
( ^ω^)「そりゃ当たり前だお。まだまだ、ドクオと遊んでたいお」
('∀`)「はっ、違いねぇ。まだまだ遊び足りねーってな」
ドクオは笑って、タバコを地面に落とした。
携帯灰皿を持っているのを思い出したが、自分も真似をして、吸殻を靴底で踏み潰した。
('A`)「そんじゃま、行くか」
( ^ω^)「おっおっ、行くかお」
自然と、ドクオと拳を合わせていた。
息は合っている。これなら、きっと大丈夫だ。そう感じた。
-
歩き出した先には、ポジション警察署。
腰には、拳銃と小型の爆弾を隠してある。
( ^ω^)「無理に頭は狙わなくていいお」
('A`)「わかってるって。お前は頭を狙うんだろうけどな」
( ^ω^)「外すわけがないお」
('A`)「ああ、そうだな」
( ^ω^)「おっおっ。パーティの始まりだお」
駐車場を歩くと、入り口の前に一人の警官が立っていた。
それが自分達の存在に気がつくよりも早く、自分はそれの頭を撃ち抜いた。
('A`)「さすが、痺れるねぇ」
( ^ω^)「まだまだこれからだお」
扉を開けて中を見渡すが、ここには人があまりいないようだった。
受付のような場所へ向かうと、自分の存在に気づいた警官が立ち上がってこちらに向かってきた。
ハハ ロ -ロ)ハ「……君達は…………ドクオ!?」
('A`)「遅いぞ」
-
自分達が誰なのかに気づいた時には、ドクオの持つ拳銃が警官に向いていた。
距離は近い。だが、ドクオは頭ではなく胸を狙っていた。そして引き金を引くと、空気の抜けるような音が聞こえて、男が床に崩れ落ちた。
それに気がついた他の二人が、焦ったように机に隠れはじめた。
だが一人は勇敢に、受話器を握ってボタンを押していた。
( ^ω^)「ドーン」
サイレンサーのおかげで、実際に発砲音は響かない。代わりに、口でそう言った。
頭に穴を作り、倒れる警官。
机の影では、誰かが非常用のスイッチを押したようだ。
サイレンが、大きすぎない音で鳴り響いた。
('A`)「面倒くせえなもう」
ドクオがそう言うと同時に、机の影から透明の盾に隠れた警官が出てきた。
試しに一発撃つが、弾は貫通しなかった。
どうやらこちらの状況を確認し、連絡を取っているようだ。
( ^ω^)「これならどうだお?」
('A`)「おいおい、いきなりそれかよ」
-
自分は腰からトラベルマグを取り外して、蓋を少しだけ回して警官に向かって投げた。
数秒後、響いた轟音。
周りの机や警官が盾ごと吹き飛ばされていた。
(;^ω^)「ち、小さい割に結構な威力だお」
('A`)「俺を誰だと思ってんだよ。ああもったいねーなぁ」
( ^ω^)「まあまだ一個あるお」
('A`)「使いどころに気をつけねーとな」
受付の中で床に這いつくばっている警官の頭を撃ち抜きながら、自分達は階段へと向かった。
( ^ω^)「首都の割にザル警備だお……」
('A`)「前に言ったろ? 平和ボケさ。危機感が足りてねーんだよ、この国は」
( ^ω^)「改めてそう感じるお」
階段を登りながら、マガジンに弾を数発詰め直した。
弾は余るほどあっても、マガジンは一つしかないのだ。時間がある時に出来る限りリロードしておかなければならない。
階段を登っていると、踊り場に気配を感じた。
ドクオも同じように感じたらしく、拳銃を握り直していた。
-
足を止めて、その場で待つ。
待ちきれなくなった方の負けだ。
三分ほど経つと、小さく足音が聞こえた。
その足音が止まったと同時に、影から男の顔が見えた。
( ^ω^)「ッ!」
自分達はそれを見逃すはずがなかった。
二人で同時に引き金を引くと、発射された弾丸は警官の額を貫いた。
('A`)「……たったの一人か」
気配が消えた。だが警戒は怠らず、ゆっくりと階段を登った。
階段の先には、左に続く薄暗い廊下があった。
その廊下の一番右、ちょうど階段の目の前にある扉が、開いている。中は明るいが、人影はなかった。
( ^ω^)「……武器、持ってると思うかお?」
('A`)「さあな。拳銃と盾くらいは、もう用意してるかもな」
( ^ω^)「……面倒だお」
('A`)「おいおい、あれ使うなよ?」
( ^ω^)「おっおっ」
-
ドクオの言葉も聞かず、自分は扉の中へトラベルマグを投げ入れた。
('A`)「ったくよー。まあいいけどな」
数秒後に爆発し、扉の付近には煙が広がった。
自分達は左に続く廊下を警戒しながら、扉の中へと入った。
扉のすぐ近くには警官が二人倒れていた。
恐らく、扉の影に隠れていたところを爆発に巻き込まれたのだろう。
室内は広いオフィスだった。
衝立が多く、しっかりとは見渡せない。
しかし顔を見せている警官は三人いた。その一人一人を、ドクオと共に素早く撃ち抜いていく。
三人は呆気なく倒れていった。
だが、衝立から顔を出した警官がドクオに銃を向けていた。
(#´_ゝ`)「ドクオォ!」
(;'A`)「クソッ!」
ドクオの身体に向かって発射された弾丸。
それをドクオは躱して机に隠れた。
躱したように見えた。
-
(;'A`)「ぐっ……いてぇ……」
左手を抑えながら座り込むドクオ。
それを見て、自分もすぐに机の影に隠れた。
(;^ω^)「腕、かお」
(;'A`)「ああ……左でよかったぜ……」
傷口を見るが、どうやら弾は貫通したようだ。
すぐにでも止血させたいが、先に警官を殺さなくては。
( ´_ゝ`)「当たったな、ドクオ。どうだ、痛いか?」
奥から、先程の警官の声がする。
('A`)「……クソッ……」
ドクオは痛みに耐えながら、奥歯を噛み締めていた。
拳銃は、手から離れて床に落ちている。
( ^ω^)「ブーンが殺してやるお……ちょっと休んでろお」
マガジンに弾を数発入れて、拳銃を握り直す。
殺してやる。そう強く思った。
-
――ポジション警察署・二階――
( ´_ゝ`)(これこそまさに……俺の求めていたもの……!)
警察署への襲撃。
銃撃戦。
まさに自分が夢見ていたものだった。
このために警官になったと言っても過言ではない。
犯罪など、無いに越したことはない。秩序を保つための法の番人が警察だ。
だが自分は、そうは思っていなかった。
( ´_ゝ`)(殺してやる……。奴らなら、殺しても咎められることはない)
死刑の少ないこの国でも、間違いなく極刑を言い渡されるであろう二人だ。
ここで殺せば、むしろヒーローとして讃えられるだろう。
( ´_ゝ`)「ドクオ……それと、ブーンだったか。お前らに、相応の報いを与えてやる」
机の影に隠れながらそう言った。
向こうからは、小さく話し声が聞こえる。
( ´_ゝ`)(ふっ……今更何を相談しても無駄だ……)
-
そう、自分には絶対に勝てる自信がある。
当然、自信を裏付ける秘策があった。
だが、それ相応のリスクが伴う。
( ´_ゝ`)(これを、使うしかないな)
机に立てかけてある、ポリカーボネート製の盾。拳銃程度なら防げる。
左手でその取っ手を握って、深く息を吸った。
( ^ω^)「出てこいお。殺してやるお」
( ´_ゝ`)(イカれてるな……。ふっ、言われなくとも出てやろう)
自分は盾を構えて、ゆっくりと立ち上がった。
( ´_ゝ`)「ここで終わりだ、ブーン!!」
ブーンの姿ははっきりと視認できた。彼が構える拳銃の位置から考えても、射線に自分の身体は出ていない。
自分は拳銃を盾の横に構えて、ブーンの身体をしっかりと狙った。
-
――ポジション警察署・二階――
男は、盾を構えてゆっくりと立ち上がった。
身体全体が盾の中に隠れている。
この位置からでは、男に銃弾を当てることはできない。
( ^ω^)(…………)
だが、大した問題ではない。
“撃たれる”前に、“撃て”ばいいだけの話だ。
張り詰めた空気の中。
男が、盾の横に拳銃を構えたその時だった。
(´<_` )「おっと、銃を降ろすんだなブーン」
(;^ω^)「!?」
――後ろから、声が聞こえた。
恐る恐る振り返ると、煤で汚れ爆発で拉げた扉の前に、男が立っていた。
手に持った拳銃を、ドクオの頭に向けて。
-
( ´_ゝ`)「オトジャ、待ってたぞ」
(´<_` )「タイミングはばっちりだろう、アニジャ」
その二人の顔は、瓜二つだった。
兄弟、いや双子だろうか。
( ´_ゝ`)(´<_` )「流石だな、俺達」
アニジャと呼ばれる男の拳銃は自分に。
オトジャと呼ばれる男の拳銃はドクオに向いている。
('A`)「……クソッ……すまねぇ、ブーン……。気づけなかった……」
ドクオは右手で左腕を抑えながら、そう言った。
(;^ω^)「…………」
――どうしたらいいのだ。
必死で、思考を巡らせた。
背中の汗が、とても冷たく感じた。
-
第24話、以上になります。
支援ありがとうございました!
次回は、第25話と最終話を投下します。
遅くても来週の金曜日までに投下したいと思います。
最後までよろしくお願いします!
-
おつ
もうそろそろ最終話かー
-
おつ 完結までもう少しだな
兄者と弟者の出てくる伏線張ってあるとよかった気もする
-
おつありです!
ああ確かにその伏線欲しかったです……
連載って難しいですね、取り返しが効かなくて。
-
乙
-
そろそろ全裸待機
-
シコシコ
-
レスありがとうございます!
第25話、投下します。
-
(´<_` )「この距離なら、外さないぞ。二人共死にたくなければ、銃を捨てろ」
( ^ω^)「…………」
終われない。
こんな所で、終わっていいはずがない。
時間にして数秒だが、十分に考えた。
行動に移すしかない。
(#^ω^)「……おおおッ!!」
右手に握っている銃は、アニジャと呼ばれる男の拳銃に向いていた。
その引き金を引きながら、左手でポケットからもう一つの拳銃を取り出した。
ドクオが撃たれた後、予め預かっておいた物だ。
(;´_ゝ`)「ぐっ……!?」
(´<_`;)「なっ!?」
アニジャの手から離れる拳銃。
それを確認しながら、左手で握った拳銃で、弟者がいるであろう場所に向かって銃弾を放った。
(´<_`;)「……うぐっ…………」
-
アニジャは拳銃を拾いに行く時間が必要だろう。
先に仕留めるべきは弟者だ。
(´<_`;)「……う……」
床にうずくまっているオトジャは右胸を抑えていた。
防弾チョッキを着なかったのは、慢心からだろうか。
( ^ω^)「死ねお」
自分は、左手の拳銃をオトジャの頭に向けた。
(;´_ゝ`)「や、やめろぉぉぉおお!!」
静まり返った室内に響きわたる叫び声と同時に、銃声。
オトジャは頭から血を流して、ゆっくりと倒れていった。
(#´_ゝ`)「…………ブーン……殺してやる……!!」
既に盾など放り投げていたアニジャは、身体を机に隠すこともせず、拳銃を握り直してこちらに向けた。
(;^ω^)「おっ」
怒りによるものなのか、アニジャの動きは速い。
彼よりも速く撃つのは不可能だと感じた自分は、咄嗟に身を隠した。
同時に響く銃声。
アニジャの拳銃から放たれた銃弾は、自分が立っていた場所を通過して壁へと突き刺さった。
-
(#´_ゝ`)「隠れてるんじゃねぇ!! 出てこい!!」
アニジャは叫び声を上げているが、こちらに向かってくる様子はなかった。
死ぬ気で殺そうというわけではない。確実に自分を殺すつもりだ。
(;^ω^)「おっ……銃撃戦って大変だお……」
(;'A`)「まったくだ……。ま、終わらせてやるよ」
自分は左手の拳銃を床に置いて、右手の拳銃で机の影からアニジャに向かって威嚇射撃をした。
(#´_ゝ`)「くそっ、小賢しい!」
姿も確認せず撃っていては、当たるはずは無かった。
それでも、アニジャにとっては脅威のはずだ。恐らく身を隠しているだろう。
(#´_ゝ`)「出てこい!! ブーン!!」
威嚇射撃を繰り返す。
アニジャも同じように、こちらに撃ってきていた。
銃声は止まない。
しかしある声と同時に、室内は静寂に包まれた。
('A`)「俺はお呼びじゃねーのか?」
(;´_ゝ`)「!?」
ドクオの声が、アニジャのいる方向から聞こえてくる。
静まり返った室内に、銃声が鳴り響く。拳銃が落ちる鈍い音も聞こえた。
それは、勝利の合図だった。
-
(;´_ゝ`)「ぐっ……、な……なんだと……」
もう机に隠れている必要もない。
自分は立ち上がって、ゆっくりと二人のもとへ歩いた。
('A`)「前ばっかり見てたら、後ろから刺されちまうんだよ」
先程、自分はドクオに拳銃を返しておいた。
そして自分が威嚇射撃をしている間、ドクオは遠回りをしながらアニジャの裏についたのだ。
冷静さを失っていたアニジャに対してなら、この程度の策でも有効だった。
( ^ω^)「ショボンはどこにいるんだお」
落ちていたアニジャの拳銃を遠くに蹴り飛ばして、そう聞いた。
アニジャは右腕から血を流し、痛みに耐えながらゆっくりと答えた。
(;´_ゝ`)「……し……知るかよ……。言っても言わなくても、どうせ殺すんだろうが」
('A`)「じゃあ約束しよう。教えてくれたら殺さないでやる。止血して、机に手錠をかけておくだけにしてやるよ」
(;´_ゝ`)「……信じられんな」
('A`)「考えてもみろ。わざわざ腕を撃つ必要がどこにある? このためにそうしたんだよ」
(;´_ゝ`)「…………」
-
アニジャは、折れるだろうか。
いや、答えはわかっていた。
(;´_ゝ`)「……四階だ。階段を登って、廊下の一番奥にある署長室だろうな」
('A`)「……ほう」
(;´_ゝ`)「三階には刑事部があるが、まだ数人残っているはずだ。そこにはわざわざ顔を出さない方がいいだろう。もっとも、そこにいるとは限らないが」
( ^ω^)「随分と親切に教えてくれるお」
(;´_ゝ`)「……命は惜しいからな……」
( ´_ゝ`)(……すまない弟者……。必ず、仇をとってやる……)
アニジャは腰に付けてある手錠と鍵を外して、自分の方へと投げた。
自分はそれを受け取り、兄者の左腕と机の足にはめた。
('A`)「さてまあ、行くとするか……」
(;´_ゝ`)「ちょっ、止血は……」
( ^ω^)「おっ、止血の事忘れてたお」
自分は、アニジャの首に巻かれているネクタイを強引に外した。
-
( ^ω^)「ドクオ、腕出せお」
('A`)「ああ」
(;´_ゝ`)「なっ……えっ……?」
ドクオの腕にネクタイを巻きつけ、きつく縛る。
あまり詳しくはないが、この程度でいいのだろう。
('A`)「そんじゃま、さよならだ」
(;´_ゝ`)「やっぱりかよ……くそっ……」
( ^ω^)「殺さないだけいいはずだお」
たまにはこういう一興もいい。
全て殺してしまうのも、楽しくないじゃないか。
そんなことを考えながら、部屋を後にした。
('A`)「さて……三階はどうすっかな……」
( ^ω^)「おっおっ、アニジャはああ言ってたけど見て回ったほうがいいと思うお」
('A`)「ま、そうだよな。刑事部の奴らがちょっと厄介だな……」
( ^ω^)「銃とかの扱いも上手いかもしれんお……」
('A`)「ああ。ま、だからって放ってはおけねえよな」
-
そんな事を話しながら、三階へと辿り着いた。
廊下は相変わらず暗いが、奥にある扉から光が漏れていた。
('A`)「……いいか、アイコンタクトで入るぞ」
( ^ω^)「わかったお」
扉の前に立ち、拳銃を握り直す。
深呼吸をして、ドクオと目を合わせた。
('A`)(1……2……3!!)
扉を開けて中に飛び込み、ドクオは死角となっていた横に、自分は扉の正面に銃口を向けた。
( ^ω^)「おっ?」
しかしそこには、誰一人としていなかった。
不気味なほど、静かな部屋だった。
本当に、不気味だ。
( ^ω^)「おっおっ、誰もいな――」
(;'A`)「――伏せろブーン!!」
(;^ω^)「!?」
突如として聞こえたドクオの叫び声を聞き、内容を理解する前に身体が自然と伏せていた。
同時に響いた銃声。
( ´∀`)「おや、外しましたか」
-
銃声が聞こえたのは、自分の後ろからだった。
すぐに振り返ってみると、廊下の反対側にある暗い部屋の中で、一人の男が銃を構えていた。
( ´∀`)「……いや、当たったようですね」
――当たった?
いや、自分には何も当たっていない。
アドレナリンで痛みを感じていないわけではない。
(;^ω^)「…………」
まさか。
いや、そんなはずはない。
そんな事があってはならないのだ。
( ´∀`)「……まあ、これはこれでありでしょう。ブーン」
――やめてくれ。
( A )
( ^ω^)「…………」
何故、ドクオは何も言わないのだ。
-
( ^ω^)「……ああ……死んだのかお」
ドクオが、頭から血を流して倒れている。
死んだのだ。
その事実が、まるでテレビの向こう側の世界の出来事のように、心の器が受け止める事もせずに入り込んできた。
悲しみや怒り、そういった感情は沸かなかった。
心が壊れてしまったのか?
もはや心など存在していないのか?
( ^ω^)「…………」
いや、そうではない。
あまりにも突然すぎて、理解ができても“わからない”のだ。
(´・ω・`)「……ブーン……」
どこからか現れた男。
自分が――――いや、自分達が最後に殺すと決めていた男だ。
(´・ω・`)「ドクオは、死んだんだ。お前も死にたくなければ、銃を捨てろ」
( ^ω^)「…………ドクオが、死んだ……?」
(´・ω・`)「……ああ、そうだ」
( ω )「……嘘だお」
-
嘘ではない。
もう十分、わかっていた。
( ω )「…………嘘だお嘘だお嘘だお!!!!」
なのに何故、こんなにも否定したくなるのか。
(´・ω・`)「……確保しろ」
( <●><●>)「わかってます」
手に持っていたはずの拳銃は、いつの間にか床に落ちていた。
時計を見ずとも、ドクオが死んでから五分以上経過していたのがなんとなくわかった。
自分はただ床にへたり込んで、放心していたのだ。
( ω )「……ドクオ……」
バーボンは?
ショボンはどうするのだ?
まだ、殺していない。
目的を果たしていない。
( ω )「……ドクオ……答えてくれお……」
返事はない。
ドクオはただ、血を流して倒れているだけだ。
-
だが、わかっていた。
自分がどうするべきなのか。
( ^ω^)「…………」
ワカッテマスが、自分に近づいてくる。
まだ、距離はある。
(´・ω・`)「ッ!」
自分は床に落ちていた拳銃を拾い直し、部屋の奥へと飛んだ。
ショボン、ワカッテマス、そしてもう一人の男。
恐らく誰かが、バーボンだ。
なら、全員殺せばいい。
マガジンには、七発入っている。
足りるだろうか。
そんな事を考えながら、姿勢を整えて拳銃を構えた。
(´・ω・`)「待て!!」
部屋に響き渡るショボンの声。
それは自分に対するものなのか、他の二人に対するものなのかはわからない。おそらくその両方だろう。
ショボンは拳銃を構えてはいなかった。
-
(´・ω・`)「少しだけ、話をしよう」
( ^ω^)「……なんだお」
自分とショボン、ワカッテマスの三人だけが部屋の中にいる。
そしてショボンが扉の前に立っているおかげで、扉の外にいるもう一人の男の姿は見えない。
この状態であれば、いつでも全員殺せる。
それなら、少し話をしたところで問題はない。
(´・ω・`)「…………お前の兄は……ジョルジュなんだろう」
( ^ω^)「……」
――自分の兄、ジョルジュ。
名前しか知らず、顔も写真でしか見た事がない。
なぜなら、自分の産まれた日に死んだからだ。
(´・ω・`)「……ジョルジュは、俺の親友だったんだ」
(;^ω^)「……!?」
そんな、偶然があるだろうか。
自分の動揺を誘いたいだけか。
( ^ω^)「……わけわからん事言ってると、殺すお」
(´・ω・`)「……事実なのだがな。まあいい、あの世でジョルジュに聞いてくれ」
-
ショボンは、僅かながら右手の拳銃を握る力を強くしていた。
自分は、銃口をショボンから逸らさない。
終わりは、すぐそこまで迫っていた。
(´・ω・`)「二人共、手を出すなよ」
ショボンが先程までよりも力の篭った声でそう言ったが、誰も返事はしなかった。
しかし、ワカッテマスは拳銃を降ろしている。
余程のことがない限り、銃口を向けてくる事はないだろう。
それは例えば、ショボンが死んだ時だ。
(´・ω・`)「はじめようか」
ショボンが拳銃を構えて、そう言った。
もう、いつ撃ってもいいのだ。
そう思うと全身が粟立ち、僅かながら手が震えたが、それを悟られないようにゆっくりと移動した。
( ^ω^)「…………」
(´・ω・`)「…………」
やがて震えは止まった。
それを確認して、自分は移動をやめた。
そして、即座に狙うべき獲物に銃口を向け、二回引き金を引いた。
(;<●><●>)「ぐっ……!?」
(´・ω・`)「!?」
-
両腕に穴を開けて、床に膝をつくワカッテマス。
そしてワカッテマスの腕から落ちた拳銃に、もう一度狙いを定めて撃った。
拳銃は、明後日の方向へと滑っていく。
( ^ω^)「おっおっ、邪魔はされたく――!?」
視線をすぐにショボンに戻した時。
ショボンは、ワカッテマスの事など気にも止めず、自分に向かって発砲した。
(;^ω^)「――ッ!」
自分に飛来してくる銃弾が、確かにこの目で見えた。
それを、全身を捻るように強引に動かして、すんでのところで躱す。
無理な体勢のままショボンに向かって発砲するが、銃弾は思うように飛んではくれず、壁に穴を開けた。
急な動きに、身体が悲鳴を上げている。
このままではまずい。今撃たれたら――。
そう思ったが、ショボンは二発目を撃ってはこなかった。
(´・ω・`)「――集中しろ。次はないぞ」
( ^ω^)「…………わかってるお」
-
次仕掛けるのは、ショボンと同時でありたいと考えていた。
重要なのはタイミングだ。
室内は、まるで膨らみすぎた風船のように張り詰めている。
少し刺激を与えれば、破裂してしまう。
( ^ω^)(なにか……なにかないかお……!)
互いにタイミングを見計らい、心理戦にまで発展しつつあるこの状況。
周囲の状況やショボンの視線などを常に把握するため、心を落ち着かせる事に必死になっていた。
風船が破裂したのは、そんな時だった。
(#´_ゝ`)「ドクオォォ!!」
(;´・ω・)「ッ!?」
不意に廊下から聞こえた叫び声。
それは、アニジャによるものだった。
何かしらの手段で手錠を外して、自分達を探しまわっているのだろう。
自分は酷く冷静だった。
しかしショボンは、その一瞬の焦りを隠しきれてはいなかった。
やるなら、今しかない。
-
自分はショボンの顔に向かって発砲した。
(;´・ω・)「くッ!!」
ショボンは身体を横に動かして銃弾を躱した。
やや遅れて発射されたショボンによる銃弾。
自分には先程よりも明確に、正確に、その銃弾が見えていた。
そしてその銃弾が当たったのは、自分の拳銃のグリップだった。
(;´・ω・)「――ッ!?」
ショボンは間違いなく動揺している。
グリップを握り直すと、めり込んでいる銃弾が酷く熱かった。
火傷は免れないはずだが、痛みは感じなかった。
( ^ω^)(終わりだお)
言葉にはしなかった。
いや、時間にして一秒もないであろうこの一瞬に、言葉を発する事はできない。
銃口を再びショボンに向ける。
ショボンは体勢を崩しているため、自分に当てることは不可能だろう。
これで、本当に終わりだ。
(´・ω・`)「甘いッ!!」
(;^ω^)「ッ!?」
-
一瞬。
自分はほんの一瞬だけ、油断したのか。
体勢を崩していたはずのショボンは、しっかりと銃口をこちらに向けていた。
撃たれる。
やられる前に撃たなければ。
自分はすぐに引き金を引く。
咄嗟の判断だ。頭に当たる事はないだろう。致命傷さえ与えられれば。
――しかしそんな考えも無駄な事だとわかった。
自分の左胸に飛来する、一発の銃弾。
ショボンは既に、発砲していたのだ。
( ^ω^)(ああ……終わりかお……)
呆気ない。
あまりにも呆気ないものだ。
死というものは。
( ^ω^)(おっ…………)
自分の左胸に銃弾がめり込んだ時、まるで目眩に襲われたように視界が暗くなった。
暗い、暗い世界だった。
-
――ポジション警察署・三階――
ブーンが床に崩れ落ちるよりも早く、自分の右肩にブーンの撃った銃弾がめり込んだ。
しかし、その時点で確信していた。
自分は、勝ったのだと。
この戦いに勝利したのだと。
(´・ω・`)「……終わったか……」
ブーンは、もう動かなかった。
間違いなく、死んだだろう。
( ´∀`)「お疲れ様です、ショボン警視……」
(´・ω・`)「ああ、ありがとう……。お前のおかげだぞ、モナー」
( ´∀`)「モナモナ」
モナーは、笑顔を浮かべている。
実際、モナーがドクオを殺していなければ、こうはならなかっただろう。
(´・ω・`)「ワカッテマス、大丈夫か?」
(;<●><●>)「……ええ、なんとか」
ワカッテマスは両腕から血を流していた。
正確に腕に当てるブーンの射撃技術に、驚かされてしまう。
-
止血はしておいた方がいい。
自分はネクタイとベルトを外して、ワカッテマスの腕に巻きつけた。
( <●><●>)「……終わりましたね」
(´・ω・`)「……ああ。これで、全て終わったんだ」
( ´∀`)「なにか忘れてないですか?」
(´・ω・`)「……? 後処理の事か? そんな事は含まないでおいてく――――ッ!?」
突然。
あまりにも突然だった。
自分に襲いかかった、銃弾。
それは自分の背中に入り込んできた。
一体誰が?
ブーンが、生きていたのか?
――その答えは、すぐに分かった。
( ´∀`)「モナモナ、私の勝ちモナ」
モナーが、自分の後ろで笑っていたのだ。
-
(;´・ω・)「……どういう……事だ……」
何が起きたのか、理解できなかった。
咄嗟に拳銃を探したが、右肩を撃たれた時に床に落としてから、拾っていなかった。
ブーンを殺した事で、油断していた。
(;<●><●>)「……まさか……」
ワカッテマスのその言葉で、気づいた。
警察署内部の共犯。
それは本当に一人だったのか。
いや、そもそもプギャーは共犯だったのか。
考えてみれば、おかしい。
ドクオの後をつけさせた翌日、プギャーは自分を殺そうとしてきたのだ。
ドクオに脅されたのでは、と何故考えなかった。
( ´∀`)「プギャーは、ありがたい誤算だったモナ。おかげで、自分の望んでいた通りのエンディングを迎えられた……」
(;´・ω・)「……モナー……貴様が……内部の共犯か……」
( ´∀`)「ショボン警視を出しぬけるとは、やっぱり私は誰よりも優れている……」
-
自分は馬鹿だ。
プギャーに襲われたあの日、ICレコーダーを証拠に自分の身の潔白を示そうと必死になっていた。
何故なら、プギャーに尾行させていた事を周りに隠していたからだ。
どうして、もっと客観的に考えられなかったのだ。
( ´∀`)「さっき、ジョルジュと言う名を出したな」
(;´・ω・)「……?」
( ´∀`)「冥土の土産に教えてやるが、ジョルジュを殺したのは私の父モナ」
(;´・ω・)「なっ……!?」
どういう事だ。
まさか、警官の家族を狙った連続殺人事件の犯人が、モナーの父親だという事か。
( ´∀`)「モナモナモナ。私の父親に友人を殺されて警官になったショボン。それを殺した私。どうだ、それだけでも素晴らしいシナリオじゃないか!」
(;´・ω・)「ッ……」
こいつは、狂っている。
-
(´・ω・`)「……ただ、楽しんでいたというのか……」
( ´∀`)「ああ、そうかもな」
(#´・ω・)「貴様ッ……!」
( ´∀`)「おっと、怒らないでほしいモナ。それを言うなら“お前もな”、だ。お前も、ドクオやブーンとの勝負を楽しんでいたんだろ?」
モナーが、手をひらひらと動かしながらそう言う。
否定はできなかった。
実際、ブーンを殺した時の達成感は、今までに関わった事件では味わった事のないようなものだった。
( ´∀`)「人間は皆、楽しい事がしたいんだよ。ドクオやブーンだって、楽しいからやってたんだ」
( ´∀`)「いやしかし、あの二人は本当にいい目付け物だったモナ……」
(;<●><●>)「……どういう事ですか」
( ´∀`)「たまたま、ゲームセンターで見つけたんだよ。ガンシューティングゲームをプレイしている二人の目は、酷いもんだったモナ」
( ´∀`)「……まあ、こんな話はどうでもいいモナ」
-
モナーが、拳銃を握り直してこちらに向けた。
今ならまだ、手はあるだろうか。
いや、この距離では体当たりすらできない。
ワカッテマスも自分も、撃たれているのだ。
拳銃相手に勝ち目は無い。
そう考えているうちに、モナーが撃鉄を起こす音が聞こえた。
( ´∀`)「二人共、さよならモナ」
( ^ω^)「――お前モナ、だお」
(;´∀`)「ッ!?」
突然、声がした。
それと同時に、銃声が室内に響き渡った。
頭から赤黒い物を噴き出して、モナーは勢い良く倒れていく。
( ^ω^)「……仇はうったお……ドクオ……ゲホッ……」
ブーンが、生きていたのだ。
心臓を確実に撃ち抜いて殺したはずのブーンが。
-
――ポジション警察署・三階――
どうしてまだ、自分は息をしていられるのか。
(;´・ω・)「貴様……生きていたのか……」
( ^ω^)「……心臓には……当たらなかったみたいだお……」
それは、胸ポケット入っていたライターのおかげだった。
銃弾が身体に入り込むことを阻止してはくれなかったが、心臓に到達するはずだった弾道を逸らしてくれた。
ライターを取り出して確認してみると、隅が大きく凹んでいた。
( ^ω^)「まったく……ベタすぎるお……」
親友からもらったライターのおかげで、生き延びるなんて。
まるで安っぽい刑事ドラマのようだ。
(´・ω・`)「……どうした、俺達を殺さないのか」
ショボンが、身体を起こしてそう言った。
( ^ω^)「残念だけど、もう弾が入ってないんだお」
そう。
一発だけ、残っていたのだ。
まるで、ドクオの仇を取るためのように。
-
( ^ω^)「……拳銃を拾いに行くような元気もないお」
(´・ω・`)「……そうか。それは、残念だな」
ショボンは無理やりに立ち上がって、自分が落とした拳銃を拾いに行った。
( ^ω^)「……ブーンは、手に入れた力で沢山の人を殺し続けてきたお……。でも初めて、その力で人を救ったお……。案外、悪くないお」
(´・ω・`)「……ああ。そういうものだ……」
ショボンは拳銃を拾うと、苦しそうに自分の正面に座り込んだ。
胸を撃たれた直後は意識が薄かったのではっきりとはわからなかったが、やはりショボンはモナーに何処かを撃たれているようだ。
( ^ω^)「……頼みがあるお」
(´・ω・`)「なんだ?」
( ^ω^)「ブーンを……あんたの手で殺してくれお」
(´・ω・`)「……そうしたいところだがな。抵抗できない人間を殺すわけにはいかん」
-
やはり、そうだろう。
二人きりならともかく、この場にはワカッテマスもいる。建前上、仕方のない事だ。
しかしどうしても、ショボンの手で殺されたかった。
それで初めて、負けたと思えるからだ。
( ^ω^)「……実は、まだ一発残ってるんだお」
(´・ω・`)「……ほう」
身体を強引に動かして、近くに落ちている空の拳銃を持ち上げ、ショボンに向けた。
( ^ω^)「……だから、あんたを殺すお」
(´・ω・`)「…………」
そう言われても、まだ踏ん切りがつかない様子だった。
しかしそれを後押ししたのは、自分ではなかった。
( <●><●>)「……ショボン警視。奴を、殺してください」
(´・ω・`)「ワカッテマス……」
( <●><●>)「私は、わかってますから」
(´・ω・`)「……ふっ、そうか……。なら、仕方ないな」
-
ショボンは少しだけ笑って、拳銃を自分の頭に向けて、撃鉄を起こした。
これで、最期だ。
(´・ω・`)「やっとだ。やっとお前を、ぶち殺せる」
( ^ω^)「おっおっ、迫力あるお……」
(´・ω・`)「……ふっ。さよならだ、ブーン」
( ^ω^)「さよならだお」
自分がそう言うと同時に、ショボンは引き金を引いた。
-
ドクオ。
クー。
ツン。
自分達は、ほんの少し違う運命を辿っていれば、幸せになれたのかもしれない。
今更考えても、無駄な事だ。
多くの人を殺してきた。
それはきっと、悪い事なのだ。
理解している。
そんな自分は、生きているべきではない。
誰もが、死んでくれと望んでいるはずだ。
裁判を待つのも悪くない。
だが、前例のない程、多くの罪を犯してきた人間だ。
判決が下るには、相当な時間を要するだろう。
それまで、自分は生かされ続けているのだ。
その事実に納得しない人もいるだろう。
ならば、ショボンという正義の味方に殺された方がいいのだ。
-
――いや、正義とはなんだ?
それは、自分が信じる道の事だろうか。
そういう意味では、自分も正義の味方だったのかもしれない。
全くもって、馬鹿げた話だ。
考えるだけ無駄だろう。
結局のところ、多数決だ。
自分は正義の味方なんかじゃあない。
最後まで悪人だ。
この糞みたいな人生からは、悪人のままさよならだ。
本当に、さよならだ。
-
――それまではっきりとしていた意識。それはまるで白い闇に染まるように、薄く透明になっていった。
.
-
第25話、以上になります。
続けて、最終話を投下します。
-
もう4時だか大丈夫か
-
国を震わせた殺人犯をこの手で殺してから、丁度一年が経った。
テレビでは、今頃その特集番組が放送されているだろう。
自分も、先日その取材を受けたばかりだった。
(´・ω・`)「……、ふぅ……」
自分は、警察署の裏にある喫煙所にいた。
あの頃と同じタバコを吸っているのに、何故だか少し香りが違って感じる。
風は強い。過燃焼のせいで辛くなったか。
いや、違う。当時と今とでは、タバコを吸う理由が異なるからだ。
当時は、捜査の息抜きの一つだった。だが今は、ただの習慣でしかない。
あの頃の方が、いくらか美味かった。
(´・ω・`)(辞め時かもしれんな……)
タバコの事ではない。仕事の事だ。
ブーンとドクオをこの手で葬ってからというもの、捜査に身が入らなくなっていた。
いや、特に手を抜いているという事はない。だが、当時に比べると、やる気が損なわれているのがはっきりとわかる。
( ´_ゝ`)「ショボン警視」
不意に横から声をかけられる。
そこにいたのは、アニジャ巡査だった。
-
( ´_ゝ`)「お供していいですか」
(´・ω・`)「ああ、構わん」
自分がそう言うと、アニジャは軽く頭を下げて胸ポケットからタバコを取り出した。
( ´_ゝ`)「一年、経ちましたね」
(´・ω・`)「……そうだな」
この一年間、ポジション警察署が置かれた状況は最悪だった。
ブーンとドクオによって、多くの警官が殺された。
その中には、出世も望める若手もいた。
モララーやオトジャのような優秀な者が殺されたのは痛手だった。
当然、警察署のセキュリティの向上にも力を注がなければならなかった。
現在、改修工事中だ。
そして何より、世間からの批判が殺到した。
法の番人である警察が、このような事件を許してしまったからだ。
しかし、ブーンとドクオを殺した事に関しては、あまり咎められなかった。
( ´_ゝ`)「刑事部に所属できて、嬉しい限りです」
(´・ω・`)「そうなのか?」
-
自分は、ブーンとドクオ相手に奮闘したアニジャを刑事部に推薦したのだ。
( ´_ゝ`)「ええ。何か大きな事件があった時は、ショボン警視の下で働けるのでしょうし」
(´・ω・`)「……近いうち、警察を辞めるかもしれないぞ」
(;´_ゝ`)「えっ!?」
(´・ω・`)「いや、まだわからんがな」
(;´_ゝ`)「でも一体……どうして……」
(´・ω・`)「……どうしてだろうな」
(;´_ゝ`)「…………」
アニジャは、タバコを吸う事を忘れているのか、固まっていた。
自分は水の溜まった灰皿に吸い殻を落とし、ネクタイを締め直した。
(´・ω・`)「まあ、どっちにしたっていつかは辞めるんだ。それまでは、よろしく頼むよ」
( ´_ゝ`)「はい、是非」
(´・ω・`)「まずは、今日の家宅捜索からだな」
( ´_ゝ`)「警視も捜索に行かれるんですか?」
(´・ω・`)「ああ。彼は、顔見知りだしな。とりあえず俺は、準備をしてくるよ」
( ´_ゝ`)「はい、また後で」
そう言うとアニジャは、また軽く頭を下げた。
歪んだネクタイを何度も直しながら、自分は喫煙所を後にした。
-
――――
一時間後、自分はあるビルの二階にいた。
“デザインミルナ”と書かれた小さな看板のついた扉をゆっくりと開け、中へと入った。
( ゚д゚ )「…………誰かと思ったら、ショボンさんじゃないか」
(´・ω・`)「……お久しぶりですね」
( ゚д゚ )「またあの事件絡みか? もう四年も前だぞ。知ってる事は全部話した」
椅子に腰掛けながらタバコを吸っている男、ミルナ。
この男とは、ある事件の重要参考人として自分が直接話をした事がある。
その事件は未だ未解決のため、何度もここに足を運んで話をしていた。
しかし今日は、その事件の事ではない。
(´・ω・`)「今日は違うんです」
( ゚д゚ )「……じゃあなんだ」
(´・ω・`)「……これは、逮捕状だ」
( ゚д゚;)「……なっ……?」
自分は、一枚の紙をミルナへと突きつけた。
-
(´・ω・`)「ブーンとドクオ。彼らは、国の管理下に置かれていない廃工場をアジトにしていた。そのアジトの所有者――――もっとも、正式な所有者ではないが、それらを調べてな」
(´・ω・`)「最後に行き着いたのが、お前だったんだよ」
( ゚д゚;)「……いや待て、それは認めよう。だが、この逮捕状は……」
これは、ブーンとドクオによるテロ行為の加担者としての逮捕状だった。
(´・ω・`)「廃工場近くにあるマンションの住民が、玄関に監視カメラを仕掛けていた事が発覚してな。その映像に、お前が廃工場の中へ入っていくところが映っていたんだ」
(´・ω・`)「ブーンとドクオが、まだ廃工場の中にいる時にな」
( ゚д゚;)「くっ……」
ミルナは机によりかかり、頭を抱えていた。
(´・ω・`)「全員入れ」
自分がそう言うと、扉から四人の捜査官が室内に入ってきた。
その四人はすぐに室内の物を端から動かして、何かの重要な証拠となるものを探している。
(´・ω・`)「残念だったな、ミルナ」
( ゚д゚;)「…………」
ミルナと、その部下三名が連行された。
探せば探すほど、薬物や拳銃、今までの未解決事件に繋がる証拠が出てきた。
彼らは、長い事刑務所の中で暮らすこととなるだろう。
-
半年程前、廃工場からは他にも重要な物が見つかっていた。
それは、二人の少女の死体だった。
原型を留めてはいなかったが、歯型から身元を特定できた。
行方不明となったブーンの友人ツンと、女子高生のデレだった。
ブーンの自宅から二人の血液が取れたことによって、ブーンによる犯行だという事は判明した。
ツンに関してはそれで終わりだ。しかしデレ関しては、謎が多くあった。
銀行強盗の時の映像が復旧したことによって、その事件の人質だった事は判明したが、共犯という線は薄かった。
恐らく、後日ブーンから何かしらのアクションを起こして、接点を持つようになったのだろう。
その事実によって、デレの両親が強盗によって殺されたという事件も、見直された。
ブーンがデレの両親を殺したという証拠はない。だが恐らく、そうなのだろう。
(´・ω・`)(裏でも多くの人間を殺していたとはな……)
-
もう一人、ブーンとドクオに関わって殺された人物がいた。
クーという、ブーン達と同じ大学に通っていた女性だ。
この少女は、自宅近くの道路に死体が放置されていた事によって捜査が進められていたが、犯人に繋がる手がかりが少なかった。
しかしクーの自宅に落ちていたビニール製の切れ端が、ミルナの証言によって発覚したブーン達のもう一つのアジトにあった、開封済コンドームの袋と一致した。
そしてその袋からは、ドクオの指紋だけが検出された。
これにより、クーを殺した犯人はドクオだと判明したのだった。
(´・ω・`)(それだけでは、終わらなかったがな……)
一年前、モナーの家宅捜索が行われた際、地下からクーの両親が救出された。
ある日突然、モナーという見知らぬ男に理由もわからず監禁されたという。
クーもドクオもモナーも死んでいる。真相は迷宮入りかと思われたが、机の中からモナーの手記が発見された。
それには、モナーが行ってきたこれまでの犯罪などが、事細かに書かれていた。
-
クーを脅して、ドクオを殺させる。
それがモナーの目的だったようだ。
ドクオを操って楽しんでいるかと思いきや、他の人物に殺させる。
モナーの行動には一貫性が見られなかった。
(´・ω・`)(謎な男だ……ブーンやドクオよりも、よっぽどな)
モナーの父親は、すでに他界していた。
自分にとっては、親友の仇だ。だが、今更どうする事もできない。
犯人が判明しただけでも、ありがたく思った。
ブーンやドクオに関する事件は、恐らく他には無いだろう。
いや、そうであって欲しい。
そう思った。
-
――――
( <●><●>)「どちらへ行かれるのですか」
それから一時間後。
机で書類整理をしていると、ワカッテマスに声をかけられた。
(´・ω・`)「ああ……。親友の、両親に会いに行くのさ」
( <●><●>)「親友の……? それって、ブーンの両親では……」
(´・ω・`)「……まあ、そういう事になるな」
( <●><●>)「大丈夫、なのですか」
(´・ω・`)「ああ。まあ、多分な」
ブーンとジョルジュの両親と直接顔を合わせたことは一度しか無かった。
ジョルジュが死んだ時だけだ。
何を言われるか、まるで想像もつかない。
だが、たとえ何を言われようと、受け入れるつもりだった。
二時間後、自分はブーンの実家へと来ていた。
インターホンを押すと、低い声の男性が応答した。
「はい」
(´・ω・`)「ポジション警察署から来ました、ショボンと申します」
「……ショボン? ……そうか、今開けよう」
-
通話が切れると、家の中からは足音が僅かに聞こえてきた。
数秒ほどすると、玄関の扉がゆっくりと開かれた。
_、_
( ,_ノ` )「……最後に会ったのは、二十年前か」
(´・ω・`)「……そうですね」
_、_
( ,_ノ` )「入るか?」
(´・ω・`)「……ご迷惑でなければ」
_、_
( ,_ノ` )「……、どうだろうな」
そう言うと、彼はそれ以上は何も言わずに中へと戻っていった。
自分も、ゆっくりとその後を追いかけた。
_、_
( ,_ノ` )「まあ、座るといい」
リビングに置かれた椅子に座って、彼はそう言った。
自分も、テーブルを挟んで彼の正面にある椅子に、ゆっくりと腰掛けた。
(´・ω・`)「覚えててくださったんですね」
_、_
( ,_ノ` )「ああ。ジョルジュがよく話していた友達だったからな。何度かテレビでも、君の姿を見たよ」
-
(´・ω・`)「今日は、謝りたくて」
_、_
( ,_ノ` )「謝る? 何を言っているんだ。むしろ、俺の方こそ謝りたいくらいだ」
(´・ω・`)「……しかし、私の手でブーンは……」
_、_
( ,_ノ` )「それが一番良かったんだ」
彼は自分の目を見ることはせず、ただテーブルの中心を眺めていた。
_、_
( ,_ノ` )「そうだ。よかったら、ジョルジュに線香でも――」
J( 'ー`)し「あなた、誰か来てる…………ッ!?」
不意に、彼の後ろの扉から現れたのは、ブーンとジョルジュの母親だった。
彼女は自分の姿を見ると、その場で立ち止まってしまった。
_、_
( ,_ノ` )「……、ショボン君だ」
J( 'ー`)し「…………、あんた……」
J(#'ー`)し「……あんたよくもブーンを!!」
まるで今夜の食事を見つけた獣のような勢いで、彼女は自分に掴みかかってきた。
_、_
( ,_ノ` )「やめろ! まだそんな事を言っているのかお前は!!」
彼は椅子から立ち上がって、彼女を自分から引き剥がそうとしていた。
-
J(#'ー`)し「この男が……!! この男がジョルジュとブーンを殺したのよ!!」
_、_
( ,_ノ` )「何度言ったらわかるんだ!!」
(´・ω・`)「……シブサワさん、いいんです」
_、_
( ,_ノ` )「……しかし……」
(´・ω・`)「……大変……申し訳ありませんでした」
掴まれていては頭を下げる事もできなかったが、自分は何も抵抗もせず、謝った。
(´・ω・`)「私が、ブーンを殺したのは事実です。ジョルジュも、私の代わりに殺されたのです。私に殺されたと言っても、過言ではありません」
J(#'ー`)し「償いなさいよ!! ブーンを……ジョルジュを返して!!」
_、_
(# ,_ノ` )「お前は黙っとれ!!」
J(;'ー`)し「ッ……」
先程よりも強く、彼は叱咤した。
それを聞いて彼女は、自分を掴む手の力を少しずつ弱くしていった。
_、_
( ,_ノ` )「ジョルジュは、不運な事故だったんだ。たとえあの日君が死んでいたら、ジョルジュは深く悲しんだだろう」
_、_
( ,_ノ` )「ジョルジュなら、君の身代わりになろうとするはずだ」
-
J( 'ー`)し「でも……この男が死んでたら、今頃ブーンだって……!!」
_、_
( ,_ノ` )「ブーンは、ああいう人間だったんだ。家庭環境がほんの少し違ったところで、あいつの本質は何も変わりはしない……」
_、_
( ,_ノ` )「……いや……俺がそれを見抜けていたら、少しは違ったのかもしれないな……」
自分は話をしに来たはずだというのに、殆ど何も言えていなかった。
余計な事をしてしまったのではないか。そう思った。
_、_
( ,_ノ` )「ブーンは、死で償うべき事をしたんだ。わかっているだろう? 今までお前は大勢の人に何を言われてきたんだ」
J( 'ー`)し「…………」
ブーンが国王暗殺の犯人だとマスコミに知れ渡った時。
恐らくこの家には大勢の人が殺到しただろう。
当然、様々な嫌がらせも受けてきたはずだ。
-
_、_
( ,_ノ` )「ショボン君は、ブーンにいち早く償いをさせたんだ。もしショボン君がいなかったら、どうなっていた事か……」
J( 'ー`)し「…………、ごめんなさい……」
彼女はそう言うと、自分から両手を離して、その場にへたり込んだ。
J( 'ー`)し「……わかってたのよ……これが一番だって……。でも、受け入れられなくて……」
(´・ω・`)「…………」
J( 'ー`)し「……線香、あげてってね……ショボン君……」
(´・ω・`)「……はい」
シブサワさんが彼女をゆっくりと立ち上がらせて、部屋へ戻るように指示した。
廊下へと続く扉の前で、彼女はもう一度だけ自分の顔を見た。
笑ってはいなかったが、怒ってもいないようだった。
仏壇の前に座ると、そこにはジョルジュとブーンの写真が飾られていた。
-
_、_
( ,_ノ` )「ブーンは飾るなと言ったんだがな……。そうでもしないと、あいつは収まりが効かなくてな」
(´・ω・`)「……そうだったんですか……」
線香を立てて、両手を合わせる。
ジョルジュとブーンに何を言ったら良いのか。何も思い浮かばないまま、時間が過ぎてしまった。
(´・ω・`)「そろそろ、帰ります」
_、_
( ,_ノ` )「そうか。遠いだろうが、また来てくれると嬉しい」
(´・ω・`)「はい。また来年には、顔を出すと思います」
玄関の扉を開けて、振り返って頭を下げる。
出来ればここで、ジョルジュと遊んでみたかったものだ。そう思った。
-
――――
(´・ω・`)「とりあえず、一杯だな」
腕時計は二十三時を示していた。
自分は、バーボンハウスの扉を開けて、中へと入った。
(`・ω・´)「ようこそ……って、ショボンか」
(´・ω・`)「僕ですまんな父さん、バーボンを頼む」
(`・ω・´)「ああ、わかった」
父に、相談してみようか。
父も若いうちに警官を辞めたのだ。アドバイスをくれるかもしれない。
(`・ω・´)「待たせた」
(´・ω・`)「ありがとう」
(`・ω・´)「……どうした、悩みでもあるのか?」
(´・ω・`)「よくわかったな……。仕事を、辞めようかと思ってるんだ」
(`・ω・´)「……ほう。お前がそう決めたのなら、それでいいんじゃないか?」
父は、そう言った。
いや、間違いなくそう言って来ることを、自分はわかっていた。いつだって、父はそう言うのだ。
-
――――
(´・ω・`)「とりあえず、一杯だな」
腕時計は二十三時を示していた。
自分は、バーボンハウスの扉を開けて、中へと入った。
(`・ω・´)「ようこそ……って、ショボンか」
(´・ω・`)「僕ですまんな父さん、バーボンを頼む」
(`・ω・´)「ああ、わかった」
父に、相談してみようか。父も若いうちに警官を辞めたのだ。アドバイスをくれるかもしれない。
(`・ω・´)「待たせた」
(´・ω・`)「ありがとう」
(`・ω・´)「……どうした、悩みでもあるのか?」
(´・ω・`)「よくわかったな……。仕事を、辞めようかと思ってるんだ」
(`・ω・´)「……ほう。お前がそう決めたのなら、それでいいんじゃないか?」
父は、そう言った。
いや、間違いなくそう言って来ることを、自分はわかっていた。いつだって、父はそう言うのだ。
-
無関心というわけではない。
父は自分を信頼しているのだ。
自分の決断には間違いがないと、心からそう思っているのだ。
(`・ω・´)「辞めたら、どうするんだ?」
自分の好物であるピーナッツをテーブルに置きながら、父はそう言った。
父が何を思っているかはわかっている。
そして自分がどうしたいかもわかっていた。
(´・ω・`)「ここを、継ぐよ。父さんはそろそろ休むべきだ」
(`・ω・´)「……ははっ、そうか。……全く、いい息子に育ったもんだ」
(´・ω・`)「父さんが育てたんだよ」
(`・ω・´)「あんまりおだてるなよ。……仕方ない、今日は奢ってやる」
父は笑顔を浮かべてそう言った。
父が自分にここを継いで欲しいと思っている事はわかっていた。
そして自分も、この店が好きだった。
(`・ω・´)「おっと、客だな」
外からは、話し声と足音が聞こえてきた。
これが聞こえないと、入店時のサービスが出来ない。そのため、店内で流れている音楽は少し小さめになっている。
-
(´・ω・`)「僕が行くよ」
自分は、父からショットグラスの乗ったトレイを受け取り、入り口へと向かった。
すぐに扉のベルが鳴り、二人の客が店内へと入ってきた。
(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ」
(´・ω・`)「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい……って、お前達か」
(*´_ゝ`)「警視! やっぱりここにいたんですか〜」
( <●><●>)「アニジャ巡査、落ち着いてください」
それは、アニジャとワカッテマスの二人だった。
(*´_ゝ`)「テキーラ! いただきます!!」
(;´・ω・)「なんだ、すでに酔ってるのか」
( <●><●>)「すみません、二人で飲みに行っていたのですが、アニジャ巡査がどうしても来たいというもので」
(´・ω・`)「そうか。それだったら、テーブルへ行くか」
自分は、カウンターからグラスとタバコを取って、二人をテーブル席へと案内した。
-
(´・ω・`)「二人共、ここに来たことは無かっただろう」
( <●><●>)「ええ。ですが、前々から噂で聞いていたのですよ」
(*´_ゝ`)「店の名前は知ってたんで、スマホで検索かけたらすぐ出ましたよ!」
(;´・ω・)「す、スマホか……」
( <●><●>)「ショボン警視はガラパゴス携帯でしたね」
(´・ω・`)「ああ、タッチパネルってのは、いまいち難しくてな」
(*´_ゝ`)「いやいや、こっちの方が便利ですよ! いろいろと!」
(´・ω・`)「……まあ、慣れってのも重要かもしれんな」
二人は恐らく、自分が“警察を辞める”という話をしていた事で、心配してくれていたのだろう。
(`・ω・´)「お待たせ。梅酒のロックと、バラライカだ」
( <●><●>)「ありがとうございます」
父がトレイに乗ったグラスをテーブルに置いていく。
ワカッテマスは、テーブルに置かれた梅酒を眺めながら、そう言った。
-
(`・ω・´)「ショボンの仕事仲間だね、今日は来てくれてありがとう」
(*´_ゝ`)「どうもです! いやよく似てますね〜」
(`・ω・´)「ははは、ショボンは俺ほどイケメンじゃ無いがな」
(´・ω・`)「イケメンって歳じゃないだろ……」
自分と父は、似ているとよく言われる。
確かに、自分の顔立ちは父譲りだ。眉だけは母に似たようだ。
(`・ω・´)「まあゆっくりしていってくれ。お腹は空いてないか? 奢りだから遠慮するなよ」
(*´_ゝ`)「マジですか! お腹空いてます! まだまだ食えます!」
( <●><●>)「アニジャ巡査、落ち着いてください。わざわざすみません」
(`・ω・´)「ふふ、面白いな二人は。ちょっとなにか作ってくるよ」
そう言うと父は、トレイを抱えてカウンターへと戻っていった。
自分も何も食べていない事を思い出して、料理が待ち遠しくなった。
-
( <●><●>)「ここにはいつも来られているんですか?」
(´・ω・`)「まあ、家が近いからな。毎日とはいかんが、頻繁に来る方だ」
(*´_ゝ`)「いつも一人ですか」
( <●><●>)「どうしてそういう事を聞くんですか貴方は……」
(´・ω・`)「いやいいんだ。こうやって誰かと飲むのは、久しいな」
最後に一緒に飲んだのは、プギャーだった。
プギャーには悪い事をしたと思う。
事実を知らなかったとはいえ、無実のプギャーを殺してしまった――実際にはプギャー自らナイフに向かって来たのだが――ため、自分は裁判にまで出る事となった。
しかし、プギャーの遺族が自分を庇ってくれたため、刑を科せられる事なく終わった。
償いの代わりに、毎年墓参りをしようと決めていた。
(´・ω・`)「一緒に酒を飲むような友人もいないからな。お前達が来てくれて嬉しいよ」
そう言った後、ドクオと飲みに来た時にもこの話をした事を思い出した。
-
(*´_ゝ`)「じゃあ、今度俺から誘います!! 毎日飲みますよ!!」
( <●><●>)「アニジャ巡査程ではありませんが、時間とお金の許す限りでしたら、付き合います」
(´・ω・`)「……ははっ、そうか……」
二人にそう言われて、嬉しく思った。
それが顔にも出てしまっている事に気がついて、少しだけ照れくさくなった。
自分は、友人が欲しかったのだろうか。
(`・ω・´)「お待たせ」
父が、皿を三つ抱えてやってきた。
テーブルに置かれたそれには、小さなピザが乗っていた。
(*´_ゝ`)「ピザじゃないですか!!」
( <●><●>)「美味しそうですね」
(`・ω・´)「いいオーブンを買ったんでな、最近よく作ってるんだ。足りないだろうから、ポテトも持ってくるよ」
(´・ω・`)「すごいね、こんな本格的に」
(`・ω・´)「ははっ、俺もまだまだ現役でやっていけそうだろう」
まだ、警察を続けろという意味だろうか。
父の事だ。きっとそうなのだろう。
本音を直接ぶつけては来ないが、遠回しに言ってくる事はある。
-
(´・ω・`)「……全く、僕の出番は遅そうだ」
仕方がない。
もう少しだけ、この仕事を続けてやろうではないか。
ジョルジュは、“正義とは、自分の信じる道”と言っていた。
しかし、正義が何なのか、自分にはまだわかっていない。
それがわかるまで、やってやろう。
-
――ブーン、そしてドクオ。
もしも運命が違えて会えていたら、互いに銃口を向ける事も無かったかもしれない。
このピザを、お前達と囲んでいたのかもしれない。
――いや、考えても無駄な事だ。
前だけを、見よう。
(´・ω・`)「警察を、続けるよ」
-
―――――――――――――――――――――――
( ^ω^)ブーンが闇に染まるようです
―終―
―――――――――――――――――――――――
.
-
―――――――――――――――――――――――
( ^ω^)ブーンは闇に染まるようです
―終―
―――――――――――――――――――――――
-
( ^ω^)ブーンは闇に染まるようです
以上になります。
一番最後で誤字してしまってすごく恥ずかしいです。
これまでの支援、本当にありがとうございました。
初めて書いたブーン系小説であり、初めて完結させられた小説でもあります。
というわけで、ピザでも食べたい気分です。
正直なところ、様々な場面で描写不足だと感じております。
質問等がありましたら、喜んで答えます。
本当にありがとうございました!
それと、Gatherさんがまとめてくださっております。ありがとうございます!
(´・ω・`)Gather
http://syobongather.blog.fc2.com/blog-entry-268.html
-
乙!
面白かった
-
乙。面白かった
いくつか聞きたいことがあるが、ブーンの母親がブーンに対して過保護になり、父親が無関心になったのはジョルジュが殺されたから?
-
乙!
-
乙!
面白かったよ
-
おつー
ブーンが連続殺人犯だってのは世間に知れ渡ってるのかな?
-
乙
-
バーボンから渡された "血のついた現金" が何か伏線あるのかと思ったけど結局あまり意味はなかったか
-
結局モナーの行動原理はなんだったの?
自分の思うままに人を操ることで自分の能力の高さを噛みしめるオナニー?
-
デザインミルナきたー!乙
-
乙
記念に書きました
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1834.jpg
-
>>701
真っ黒じゃねえかと思ったら、うっすらと....闇な雰囲気が出てて良いと思います。
-
乙!!
気づいた範囲で誤字脱字っぽくて訂正入ってない所まとめてみたよー、誤字脱字じゃない所あったらすまん
>>8の警察は軍は(警察や軍は?)、>>30の手はは無い(手は無い?)、>>35のカードマン(ガードマン?)、
>>54の警備金(警備員?)、>>112のブーン意外に(ブーン以外に?)、>>141と>>148と>>275の掲示版(掲示板?)、
>>181のお父さんを少し倣っていてな(お父さんに少し倣っていてな?)、>>184のテーブル置いて(テーブルに置いて?)、
>>227の一緒飯食おう(一緒に飯食おう?)、>>360の話したがら無い(話したがらない?)、
>>450のガムテープ貼り付け(ガムテープを貼り付け?)、>>495の聞いてたなかったろ(聞いてなかったろ?)、
>>615の男が床に崩れ落ちた(このハハ ロ -ロ)ハが男なら仕様?)、
>>655の胸ポケット入っていた(胸ポケットに入っていた?)、>>669のデレ関しては(デレに関しては?)
-
赤ペン先生かよ
-
まとめの労力減るからいいんでね
-
>>520
ドクオはおまけのつもりがブーンより主人公になりかけてたので、最後はあっけなく終わらせました。
>>693
そうです、それで間違いないです!
ジョルジュとの関連性をほんの少し匂わせたくておまけを書いた、というのもあります
>>696
そうです、マスコミが大々的に取り上げたせいでブーンの実家に色々と…
>>698
できればもうちょっとそういう部分も書きたかったのですがなかなか上手くいかず、結局“昔の事件との繋がりだよ”的なものになってしまいました…
>>699
モナーはただのオナニー野郎です。本当はモナー視点で父親についても書きたかったです。父やショボンをも越える云々…
>>700
面接を書いてる時にパラレルワールドかなーとか思ったので、デザインミルナにしておきました。
>>701
薄っすらとドクオとブーンが…!
ありがとうございます!保存しました
>>703
ありがとうございます!投下時に読み直してたのに全く気が付きませんでした…
ハローは女です…
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余談ですが、これを書くきっかけになったのは「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」という映画です。
影響を受けてるのは「ザ・ワールド・イズ・マイン」という漫画です。
どちらも面白いのでぜひ…!
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モナーの資金源はなんだ
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>>708
肝心のそこを書き忘れてました…
モナーの父親が、20年前の事件で手に入れた身代金などを、モナーが使っていたわけです。
それで札束に血がついていたという事になります。
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乙
なぜだか最後の対峙シーンが清々しくて良かったです
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連続殺人犯出したのに生きてるばかりかショボンを責め立てたのか……
図太い家系だなぁ
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正直拙い部分が多かったけど、面白かったし何より完結させたのが一番でかいと思う。今後も楽しみにしてる。
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最近のブーン系のカーチャンのクソ率が高い希ガス
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好き放題言われてなんか作者可哀想だなww
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自分としては、ちゃんと思い通りキャラが立ってくれたようで、むしろ褒められてると感じます!のでありがたいです。
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登場キャラと死に際の描写で、アルファっぽさを感じた
パクリとか言ってるわけじゃないよ!完結おめです!
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