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( ^ω^)はウォール街の快男児のようです
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┃ .: .: I'll tell how to earn money. : :. : ┃::::
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┃ ;: .: by Nice Guy in Wall Street... ┃::::
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【 Case.カネの稼ぎ方、教えます。 】
(#・∀・) なんでピクルスを抜いてないんだよ! てめえの頭にゃピーナツバターが詰まってんのか!
『男なら黙ってピクルスごと丸呑みしちまうもんだ。女みてーなことを言ってんじゃねえ!』
(#・∀・) もういい、糞くらえだ!
ウォール街から少し外れたところにあるウナギの巣穴のようなバーガー店からモララーは飛び出した。
そのさい地面に投げつけたバーガーは派手に飛散し、近くを飛んでいた鳥やらなにやらがそいつに食いついた。
モララーは非常にいきり立っていた。
その原因はわかっていた。信頼しきっていた日本の企業が起こした不祥事だ。
ウォール街で証券マンとして働いているモララーは、日本の好景気のニオイを誰よりもはやくかぎ分けていた。
お得意サマに株を売りつけてサラリーマン数人分の稼ぎを得ていたモララーは、
その信頼していた日本企業が次々と株を暴落させていったせいでついに会社の窓から地面に突き落とされた。
くたびれたシャツに曲がったタイを直しもせず、ただビジネスの名残惜しくウォール街から離れられずにいたわけである。
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バーガーショップのある通りからすぐそこにある公園にモララーはいた。
ベンチに股を大きく開いて腰を落とし、新聞を引き裂くように持ってなめるように字面を見ている。
(#・∀・) ファッキン・ジャップ!
公園のゴミ箱に突っ込まれていたどの経済新聞にも、そのことは書かれていない。
それほどの大穴だった企業をモララーは長年かけてリストアップしてきた。
そいつでツリーを構築し、安定した収入と堅い信頼を築いてきたのだ。
(#・∀・) やつらは執着ってものを知らない。淑やかすぎてバカ丸出しってやつだ
(#・∀・) まずやつらがすべきだったことは新たなビジネスルートの開拓だったんだ
(#・∀・) 株式は俺が手配してきた。じゅうぶんすぎるだけのバックアップがあったはずなんだ!
新聞をくしゃくしゃに丸め、ゴミ箱に戻した。
似たような生活がこれで三日目となるわけだが、ウォール街はもうモララーを必要としていなかった。
モララーはもう三十をすぎている。
妻も彼女もいない。ウォール街へ心血を注ぎ込みすぎたためにその余裕がなかったのだ。
ウォール街から追い出された彼はとたんに人肌さみしく思うようになっていた。
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( ・∀・) あぶぶbbbb・・・・
口の周りについたケチャップを水道で洗い落とした。
そのあごに髭はない。毎朝ちゃんと剃っているのだ。
身支度をカンペキにこなしては毎日この公園にやってきている。
ウォール街での生活がどうしてもモララーから離れようとしてくれなかったのだ。
( ・∀・) はあ・・
ついでに顔も洗って、モララーはベンチに戻った。
公園は閑散としていて、ウォール街がここらの活気をすべて吸い取っているかのような感じさえした。
この公園には水道の蛇口とベンチ、掲示板とゴミ箱と公衆電話くらいしかない。
キャッチボールをするにはそこから見える景色が悪い。
ビルしか見えない公園でキャッチボールをしたくはないものだ。
ベンチに横になる。
するとどこかから電話の音が聞こえてきた気がした。
( ・∀・) !
反射的にモララーは己の携帯電話を取り出した。
その電話はあの日以来いっさいの音を鳴らしていない。
そもそもいま聞こえた音はあきらかに自分の持つそれとは違った音だった。
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( ・∀・) ・・電話?
あらためてそこら一帯を見た。
誰かが落とした電話から鳴っているのだろうがそれにしてはそういった類のものがまわりに見えない。
茂みに隠れているかもしれないが、音の感じからしてそんな場所から鳴っているような音ではないのだ。
モララーはふと電話ボックスに目をやった。
このご時世になって一度も使ったことのない公衆電話だったが、ひと目見てモララーは確信した。
電話は公衆電話にかかっているようなのだ。
( ・∀・) 公衆電話って、向こうからかけられるものなんだ・・
物珍しさに、モララーはひとつ電話にでてやろうと思った。
真昼のウォール街近辺の公園、自分以外には誰一人として人がいないのだ。
( ・∀・)]c もしもし
『まいったな、ほんとうに出るとは思わなかった』
意外とひねた声が、あおってくるような調子で言ってきた。
興味本位で公衆電話にかけてみようと思った学生か、程度にしかモララーは思わなかった。
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( ・∀・)]c こちら××公園の公衆電話だ。あんた、わかっててかけたんじゃないのか
『もちろんさ。マチガイ電話でつながるようなもんじゃあない』
( ・∀・)]c なんだ。どうして公衆電話にかけてきたんだ
『先に答えたって不審がられるだけだ。それよりあんた、真昼からそこでなにをしている』
( ・∀・)]c 大きなお世話だ。なんだ? きるぞ?
『まあ、待て』
( ・∀・)]c 俺だって忙しいんだ。遊びならほかにいくらでもやることがあるだろう
『あんたはウォール街の落ちこぼれじゃあないのか?』
モララーは一瞬顔がこわばった。
自分のことを調べ上げられていたかのような心境だった。
『そう警戒するな。この電話に出るやつはだいたいそうなんだ』
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( ・∀・)]c どういうことだ
『ウォール街を追い出された男がその後も通いつめる公園、そいつがそこなわけだ』
『そしてまだ明るいうちにここに電話を一本やると、そいつらがこぞって電話に出るわけだ』
『お前で三人目だぜ、ボーイ』
モララーは驚いた。
行動を予測されていたということにではなく、
自分と同じような男がほかにもいた、ということに驚いた。
( ・∀・)]c なるほどなるほど。じゃあ嘘はつけないな
( ・∀・)]c ああ、そうだ。俺はウォール街の落ちこぼれさ。笑えたか?
『笑えるな。こんなに笑えたのは愛人の嫁がライフルを持ってきた夜以来だ』
( ・∀・)]c なるほど、あんたの行動が読めたぜ
( ・∀・)]c 俺にケツの穴を広げる仕事を勧めるつもりなんだろう
『冗談じゃない。今日は、おまえに商談を用意しているんだ』
-
( ・∀・)]c 商談?
その言葉にモララーはぴくりと体を振るわせた。
『おまえ、株、詳しいか?』
( ・∀・)]c 詳しいもなにも、証券マンだ。ウォール街だぜ
『一分後に株価が大きくあがる企業を予想できるか?』
( ・∀・)]c できるか?って言われてできたら俺は今ごろ偉そうなデスクで女を跨らせてるところだ
『商談を持ちかけるのもいいが、いきなり持ちかけたってあんたは信用しないだろう』
『だから、商談よりまずは証明をさせてもらおう。そう思って株の話をしたんだ』
( ・∀・)]c どういうことだ? 話がまるで見えないが
『いまから・・きっかり四十秒後に××ってところの株価が大きくあがる』
『いますぐウォール街に行って、たしかめてこい』
-
( ・∀・)]c な、なに?
『そしていまから十分後にまたここに電話をかける。それから商談を持ちかけよう』
( ・∀・)]c おい、待て、話が見えないぞ プープー
モララーの困惑がとけきれないうちに電話はきれた。
男が言った企業はなかなかにマイナーで目をつけている人も少ない、景気の悪い企業である。
だから最初モララーはただのいたずらかと思ったが、それでもモララーは気がつけばウォール街に飛び出していた。
きっかり四十秒後、モララーはたしかにその変化を見た。
株価がいっきにウン十ドルとあがったのである。
それを見てモララーは目を丸くさせた。
『ハハハ。あがったか、あがったか』
( ・∀・)]c どういうからくりだ。どうしてわかった
-
男はひとしきり笑った。
だがモララーはまったく不快に思わなかった。
『おまえは、いまいろいろと推測をたてている』
『なにかしらのラグで前もってその株の変動を見た、とか』
『どこかで大きく株が動くことを知っていた、とか』
( ・∀・)]c じゃあないのか
株は非常に緻密な計算と情報の構築が必要になる。
この男はそれだけの緻密なものを持っている、としか思えなかった。
『違うな。見当違いもいいところだ』
( ・∀・)]c だったらなんでわかったんだ。ただの勘ではあるまい
『もっと的を射た理由がある』
( ・∀・)]c なんだ
『俺が、ウォール街の快男児だからだよ』
-
午後三時ごろ、モララーは快男児を名乗る男と顔を見合わせた。
男はよく見る肥満体型で、シャツをズボンのなかにおさめられないでいたが、ビジネスマンらしき恰好をしている。
快男児がモララーにかけた挨拶のそのひねた声を聞いて、モララーはベンチから飛び出した。
( ・∀・) あんたか。いたずら電話をかけてきたやつは
( ^ω^) いたずら電話ったぁなんだ。当たってたろ
( ・∀・) いろいろ聞きたいことはあるが、おまえはまず誰なんだ
( ^ω^) ウォール街の快男児。ホライゾンと呼んでくれ
( ・∀・) ホライゾンか。職はなにをやっている
( ^ω^) それがぱっと言えないからウォール街の快男児って言われてるんだ、察しておくれよ
( ・∀・) は?
( ^ω^) ただ・・まあ
( ^ω^) 金融コンサルタント ってところだな
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( ・∀・) で、
( ^ω^) さて、名乗らせておいて続きはないお
( ・∀・) ・・あぁ、そうかい
( ・∀・) 俺はウォール街に心血どころか精子までそそいでた無職、モララーだ
( ・∀・) 転がり落ちた経緯はお察しの通りだよ、これでいいかい
( ^ω^) 上出来だ
( ・∀・) で、商談ってなんだ
( ^ω^) 2万ドルだな
( ・∀・) ・・はあ?
-
( ^ω^) 俺は実力をちょびっとだけ、見せた
( ^ω^) 俺は、カネの稼ぎ方を知っている
( ^ω^) その片鱗は、さっきの無名の株価で証明してみせた
( ・∀・) それがなんだよ
( ^ω^) 商談ってのはな、ボーイ
( ^ω^) 俺が、おまえに、カネの稼ぎ方を教える
( ^ω^) ただしペイは先払い、2万ドル
( ^ω^) それが、商談の全て・・だお
そういうと、ホライゾンはゴミ箱に突っ込まれていたくしゃくしゃのボール状の経済新聞を広げだした。
ベンチでとなりに座っていたモララーはぽかんとホライゾンの顔を見つめた。
-
( ・∀・) ・・2万ドル、2万ドルって、なんだ。2万円のマチガイか?
( ^ω^) 日本はこれから落ちるところまで落ちていく。円はがらくただ
( ・∀・) ああ、そうだ。俺は日本が落ちてったせいでここにいる。よく知っているな
( ^ω^) おまえ・・よその株を扱うならちゃんと国の動きもチェックしておくべきだお。シロートが
( ・∀・) おいおい、なにを知った口を利いてんだペキンダックが
( ・∀・) ちゃあんとチェックしてたさ。日本語だってぺらぺらだぜ。アーアー、オマエノアタマハクルクルパー ってな
( ^ω^) なんでもいいお。とにかく、2万ドルだ
( ・∀・) なんでもよくねえよ。こちとら窓際から投げ出された身だぜ
( ・∀・) 骨折の治療費その他もろもろでそんなカネを捻り出す余裕なんざねーよ
( ^ω^) 借りればいい。返せるだけのカネは稼げる
-
( ・∀・) なんだ、金融コンサルタントって言いながらあんた自身が高利貸しってところかい
( ^ω^) 別に貸してもいいけど、三羽烏だぜ
( ・∀・) ファックだ、クソッタレ。やっぱりおまえもウォール街の落ちこぼれってことか
言った瞬間、モララーは頭を強く殴られた。
それも鈍器のようなものだったから、モララーは一瞬で頭に血が上った。
ホライゾンにつかみかかり、拳をひいた。
(#・∀・) てっめえ・・
しかし、ホライゾンの顔を見た瞬間にまぶしいものが目に入り思わず目を閉じた。
ホライゾンのひねた声が笑った。
( ^ω^) ウォール街の人間でも、なかなか見たことがないだろ
( ;・∀・) ・・・・・・・それ、ほんものか?
( ^ω^) ってことは見たことがないんだな。ほんものだぜ
ホライゾンは金ののべ棒を素手で握っていた。
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( ;・∀・) ちょ、ちょっと触らせてくれ!
( ^ω^) 触ってわかるような男だとも思わんがな
指紋も気にせずにモララーはのべ棒にべたべた触れる。
冷たさ、感触、なにか強い力を加えたらへこむのではと思える棒だった。
( ;・∀・) ・・き、金融コンサルタントだったか
( ^ω^) ああ
( ;・∀・) 月、いくらくらい稼いでんだ
( ^ω^) 5
( ・∀・) ご・・5千か。それでも、まあ・・
( ^ω^) かってにゼロをとるんじゃねえ。5万だ
( ;・∀・) ごっ・・・・5万? 5万ドル?
( ^ω^) 安定してないけど先月は、な。ふだんは更にゼロがもう一個つくぜ
( ;・∀・) い、いますぐ証明できるものを見せてくれ! そうしたら俺はおまえに従う!
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言われて少しホライゾンはけげんな目をしたが、のっそりとした動きでかばんを開いた。
のべ棒をしまうついでになかから明細書のようなものを取り出した。
モララーは奪い取るようにそいつを手に取り、ギョロギョロとした目で端から端までを追った。
( ・∀・) ・・な、何ドルだ
( ^ω^) 2万
( ・∀・) 信じる、信じるぜ。おまえの話
( ・∀・) だが、俺だってカネがないのは事実だ
( ^ω^) ・・何ドルだ
( ・∀・) 退職金と預金、あわせて1万7000程度
( ^ω^) あんた、ウォール街で稼いでたんじゃあなかったのか
( ・∀・) あのなあ、ウォール街で稼ぐにはそれだけのドーピングが必要ってあんたもわかるだろ
というとモララーはなにかのにおいを嗅ぐ仕草をした。
モララーは働いていた頃毎日のようにドラッグをきめていたのである。
現在モララーは仕事を失ったわけだが、片割れのドラッグのほうは今でも続いているわけだ。
それが今のモララーに焦燥感を植えつけている。
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( ・∀・) そいつの買う相手を間違えてな、どんどんむしられちまったわけだ
( ^ω^) 逆にヤクで飛ぶ程度のカネしか稼げてなかったのか
( ・∀・) なあ、いいだろ、1万7000ドルだ、悪くはないだろ
( ^ω^) しかたないね。いますぐそいつをキャッシュで、そうだな、すぐそこの××バーガーの喫煙席だ
( ・∀・) ?
( ^ω^) さすがにこんなところで商談するわけにはいかないだろ
( ・∀・) いや、それはわかるのだが、どうして××バーガー?
( ^ω^) それも後で説明する。まだウォール街の人間が少ない今のうちに商談を済ませたいんだお
( ・∀・) わかった、わかった。××バーガーの、喫煙席に、ゲンナマで1万7000ドル。オーケー?
( ^ω^) オーケー
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モララーは言われたとおりにカネをおろした。
かき集めてみると一瞬だけ自分はカネ持ちであるかのように錯覚した。
だがなめていると一瞬で消えるカネだとも自覚している。
はやく次のカネの増やし方を見つけなければならないことをモララーはわかっていた。
××バーガーは昼間にモララーがバーガーを投げつけた店である。
二度とくるつもりもなかったがビジネスが絡む以上そうは言ってられない。
喫煙席に向かうと、ホライゾンははやくも紫煙を浮かべていた。
( ・∀・) 待たせたな。ほら、まずはゲンナマだ
( ^ω^) まずはゲンナマ。そうだ、わかってるじゃねーか
( ^ω^) 世のルール、「まずはゲンナマ」だぜ
( ・∀・) さて、話はいろいろ積もっているわけだが、
“(^ω^ ) それより先に、ちと・・・買ってきてくれ クイッ
( ・∀・) ・・・、・・・なんだ
( ^ω^) チョッコレィトシェイケッ
( ・∀・) オーケー、俺が持とう
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シェイクを二個買ってモララーは戻ってきた。
ホライゾンは二本目のタバコを吸っていた。
( ^ω^) ごくろう
( ・∀・) さて、商談とやらも聞きたいが・・
( ^ω^) あんた
( ・∀・) モララーだ
( ^ω^) モララー。商談って聞いて、どこを浮かべる?
( ・∀・) そりゃあ、一流のレストランか、相当な酒がふるまわれるバーだ
( ^ω^) 逆にいうと、そーゆーところにはそーゆー連中が集うわけだ
( ^ω^) ウォール街はいわゆる金融街
( ^ω^) で、金融ってやつのメカニズムを一言でいえば、誰かを食い物にするってことだ
( ・∀・) あぁ、そうだな。俺も多くの人を食い物にしてきた
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モララーはまともに株を紹介していたわけではない。
むしろ、株券を買ったが最後、次の瞬間には紙くずになるようなところばかりを紹介してきた。
それは株券が電子媒体になったつい最近までもずっとだ。
( ^ω^) ・・いるんだよ。儲け話を探してうろつく、ハイエナどもが
( ・∀・) しかし、こんなふうに声が筒抜けな店だと
( ^ω^) 誰がこんな店でそんなまともな商談をすると思うんだいボーイ
( ^ω^) 誰もがなにかのジョークとしか思わないだろう
( ・∀・) とはいうがな、
( ^ω^) オーケー、わかった。じゃあこうしよう
( ^ω^) 俺はときおり、嘘を言う。そして、そのときは必ず合図を出す
( ・∀・) 合図?
ホライゾンはポケットから、紙くずを取り出した。
新聞の一部をちぎったものであると、すぐにわかった。
その紙くずには文字の切れ端以外に「lighter」と書かれてあった。
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モララーはホライゾンの灰皿の隣にあるライターにそっと目配せした。
ホライゾンはうなずいた。
( ^ω^) 嘘をつくときは、こいつを弄ぶ
( ^ω^) な、これでいいだろ
( ・∀・) オーケー、いいぜ
( ^ω^) ではさっそく
ホライゾンは銀色に輝くライターを握った。
( ^ω^) 今回、どうしてペイをゲンナマで用意させたかわかるか?
( ・∀・) なるほど
もしこの会話を聞いている人がいると、いまホライゾンが言ったことは嘘である、と思うだろう。
モララーは実際に多額の現金を持ち込んでいるわけだが、この一言を聞くとその者は
「いまここにカネはない」と勘違いする、というメカニズムである。
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( ^ω^) 銀行ってのは面倒なものでな
( ^ω^) 必ず、明細、履歴ってものが付きまとってくる
( ^ω^) これは、カネを稼ぐ上ではかなりの足かせとなるんだ
( ・∀・) ほう
( ^ω^) もし俺の通帳に個人名義から大金が送られてみろ
( ^ω^) パンダに目をつけられた時、メンドウなことになる
( ^ω^) バーチャルマネーは信用ならないくせに、バーチャルが書いた文字は信用される世の中だ。わかるか
( ・∀・) ああ、わかったぜ
ホライゾンがライターを卓上に戻した。
この頃には既に、モララーは商談をバーガーショップで進めることになんの不安もなくなっていた。
同時にホライゾンという男への信ぴょう性も高まっていた。
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( ^ω^) で・・ええと、なんだっけ
( ・∀・) 商談・・カネの稼ぎ方、だ
( ^ω^) それだ。あんた、たしか証券マンだったんだよな
( ・∀・) 株のメカニズムなら頭に叩き込んである
( ^ω^) じゃあ、儲けのメカニズムは
( ・∀・) ・・は?
( ^ω^) 儲け方のメカニズムを、言ってくれや
モララーは問われている意味がわからなかった。
ばく然としすぎていて、答え方に窮した。
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( ・∀・) ・・金融は、だ
( ・∀・) ざっくり、2つのサイクルしかない
( ・∀・) CMCサイクルと、MCMサイクルだ
( ・∀・) Mがマネー、Cがマネーと引き換えになるなにかだ
( ^ω^) おう
( ・∀・) 雇われの身はCMC、経営者はMCMのサイクルを辿る
( ・∀・) つまり、労働力をカネにかえて、そのカネでメシや家を買うのが前者
( ・∀・) カネで労働力や資源を買って、そいつでカネを増やすのが後者
( ・∀・) つまり、前者ではカネは増やせないっつーからくりだ
( ・∀・) カネを稼ぐなら、後者・・つまり、MCMサイクルを築かないとだめってことで、
( ・∀・) このからくりが今の資本主義社会の闇たる部分で・・世の基本だ
( ^ω^) いちおう、まともに学校を出てはいるわけだ
( ・∀・) まあな
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( ^ω^) だが、それじゃあ不正解だ
( ・∀・) なんだって?
( ^ω^) そういった、どこぞのお偉いさんが言ったことに目を奪われてるせいで、根っこを見落としてる
( ^ω^) ジャパニーズ・コトワザでいうなら、東大デモクラシーだ
( ・∀・) トーダイモトクラスィーな。どういうことだ?
( ^ω^) カネの稼ぎ方は、簡単
ホライゾンは、左の手のひらを見せた。物乞いの手だ。
( ^ω^) 俺が、相手にカネをくれ、という
続けて、右手を左手の上にのせた。お手をしているわけである。
( ^ω^) 相手が、俺にカネをよこす
( ^ω^) ・・カネ稼ぎってのはな、つまるところ、これが全てなんだよ
-
( ・∀・) どういうことだ
( ^ω^) その2つのサイクルな。俺が学校で聞かされてた頃、うんざりだったぜ
( ^ω^) サイクルがどうの、労働がどうの。そーゆーフクザツな話になる理由、あんたはわかるか?
( ・∀・) カネってものがそれだけフクザツな概念だからだろ
( ^ω^) 違うね。あいつら、複数のことをいっぺんに話してやがるのさ
( ^ω^) カネの稼ぎ方、それはさっき言った二段階。あれで、すべてだ
( ・∀・) だが、それでカネは儲からない
( ^ω^) 儲かるね。・・ただ、説明が足りない
( ・∀・) え?
ホライゾンは三本目のタバコに火をつけた。
この間、ホライゾンは口を利かなかった。
-
( ^ω^)y-~~ フー
( ^ω^)y-~~ ・・たとえば、おまえに5万ドルよこせ、つって、おまえはよこすか?
( ・∀・) ばかな
( ^ω^) じゃあ、金ののべ棒を代わりにやる、っつったら?
( ・∀・) 証明書があるなら買ってやる
( ^ω^) そう。それが、カネの稼ぎ方の本質を脚色するわけだ
( ^ω^) 2つのサイクルがある反面、世の中は全員がカネを稼ごうとする
( ^ω^) いろんなやつがいろんなやつにカネをよこせというが、誰もよこしてくれない
( ^ω^) そこで、うまい手口で相手にカネをよこさせるわけだ
( ^ω^) その最たるものが、CMCサイクル・・労働力でペイを頂戴するってことさ
( ・∀・) はーん
-
( ^ω^) で、ここからが難しいぞ
( ・∀・) おう
( ^ω^) カネはだな、目に見えないものも含めたモノを買う
( ^ω^) 逆に、そんなモノと引き換えに稼ぐものって誤解を解かなければならない
( ・∀・) だが、その結果が暴力や犯罪だ
( ^ω^) そうだ。ここらがこのメカニズムでメンドウなところでな、世の中にはルールが付きまとう
( ^ω^) ルールがなけりゃあ、カネの稼ぎ方っつったら相手からもらう、の一方通行で成り立ってたんだぜ
ホライゾンは三本目のタバコも吸いきった。
四本目はつけようとしなかった。
( ^ω^) ただ・・まだ、抜け道はある
( ・∀・) ハーブか
( ^ω^) モノはいらない。ただ、相手にカネを出させる・・それだけだお
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( ^ω^) モノをなしにカネを出させる方法・・わかるか?
( ・∀・) ・・? 売春か?
( ^ω^) 売春とて体を売ってるじゃねーかボーイ
( ^ω^) ・・そうだな。しいて言うなら、夢を売ってるんだ
( ・∀・) 夢?
( ^ω^) いい男がアバズレからカネを巻き上げてる構図があるだろ
( ^ω^) あれがわかりやすい例だ。アバズレに夢を見させて、その対価としてカネをよこさせる
( ・∀・) なるほど・・
( ^ω^) それをメカニズムとして構築するならば、だ
( ^ω^) まず、相手に自分を信用させる
( ^ω^) 次に、カネを要求する
( ^ω^) 最後に、カネを頂戴する
( ^ω^) ・・つまるところ、カネの稼ぎ方の本質に、一枚屋根を追加しただけなんだよ
( ^ω^) 稼ぐ方法は、信用だ
-
( ・∀・) なるほどな・・証券マンにはとことん情けなく聞こえる言葉だぜ
( ^ω^) さて・・
( ・∀・) ん?
ホライゾンは、のっそりと腰をあげた。
飲み干したシェイクと、ライターを卓上に残したまま、カバンを持って、紫煙を浮かべて。
( ^ω^) 後腐れのないように、忘れてた信用をやるよ
( ・∀・) ?
( ^ω^) 俺こと、ウォール街の快男児
、 、、 、 、 、、 、 、 、 、 、 、、、 、
( ^ω^) ふだんはいろんな株を売買しているのさ
( ^ω^) 金融コンサルタントは副業ってやつだ
ホライゾンは右手をポケットから抜いて、そのまま卓上にパチンとなにかを置いた。
そのまま唖然とするモララーを店において、さっそうと店から出た。
モララーが卓上を見ると、二個目のライターがそこにあった。
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数分後、事を理解したモララーが顔を真っ赤にして店から出てきたが、
その頃すでにホライゾンはタクシーの中で一服ついていた。
( ^ω^) 別に嘘はついちゃあいない
( ^ω^) カネを稼ぐには、誰かからカネを貰う
( ^ω^) それ以上でも、それ以下でもない
( ^ω^) 勝手にそれに価値を定めるから、最近の連中は次々と糞をまき散らかして死ぬわけだ
( ^ω^) そのことに気づかせてやってからペイを貰ったんだ、ちゃんと対価があるだけ俺を悪く思わないでくれよ
( ^ω^) なんたって、俺はウォール街の快男児・・なんだお
ウォール街の快男児、ホライゾンは明日も金融に悩む人々を富豪へと導く。
後日、モララーの通報により捜査を進めていた警察だったが、
ホライゾンへ繋がる証拠が薄いことを理由に、今回の詐欺事件の捜査を断念したことが彼に知らされた。
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なるほどな・・・
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短いけど以上です!
1レス余分だったせいで総合には投下できなかったです^^;
ただ、新ネタが思いついたらまた投下したいと思います
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乙。銃社会でこれができる度胸があるなら、株の方も強いんだろうな。
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この( ^ω^)になら絶対騙される自信がある
いろいろ勉強になるな…
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ω・)さすが、語尾におがつかないブーンは強いね
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ブーンかっけえ
乙
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短いけどよくまとまってるな。
次も期待してぜ。
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