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( ・∀・)今日も二人で寝るようです('、`*川
-
今日も、いつもと同じような時間に、僕のスマートフォンにはLINE通知が届いた。
【ひま?】
【部屋、きて】
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超速支援
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それは深夜、大学通りの居酒屋で、いつものようにギコとブーンと酒を煽っていた頃だ。
大学生にもなればビールの味がわかるかと思ったら僕はそんなことまったくなく、一杯目にビールを頼む二人に申し訳なさげに梅酒の水割りを頼んだというのに、ギコに「女子かよ!」と突っ込まれたとこだっけか。
そこから発展した話の最中だった。
(,,゚Д゚)「だから結局よお!男女間での友情!?そんなのあるわけないんだってば!!」
( ^ω^)「ぼくもそう思うお。いくら友達!!って感じの女の子でも、もし部屋で二人っきりになったりしたら絶対ヤりたくなるお」
( ・∀・)「そりゃそーだ。男はそーゆー生き物だからな。しゃーないしゃーない」
(,,゚Д゚)「まぁブーンの場合は部屋で二人っきりになれる女いないんだろうけどなwwwww」
( ^ω^)「うっせwwwww僕だっているわwwwww一回15000円くらい必要だけどwwwww」
( ・∀・)「それプロの方々じゃねえかwwwww」
(,,゚Д゚)「wwwww」
-
(,,゚Д゚)「部屋で二人とかOKの証みたいなもんだろ!俺はもしそういうさ、いかがわしい状況になったら、まず間違いなく行くわ!!相手が誰だろうと行くね!!」
( ・∀・)「おお、言い切るねえ!」
( ^ω^)「相手が貞子ちゃんでも?」
(,,゚Д゚)「それは……ちょっと話が違うわ」
( ・∀・)「酷すぎwwwww」
( ^ω^)「なんでだお、行けおwwww肉食男子の意地を見せるんだおwwww」
(,,゚Д゚)「無理無理、無理だって流石にあいつは!うちのゼミで唯一攻略不可!!行ったら最後おそらく黒魔術か何かの贄にされるわ!!俺肉食男子からただの肉になるかも!!」
( ^ω^)「wwwwwwwwww」
(,,゚Д゚)「多少可愛い女でもさあ、危ない女とそうでない女くらいは弁えないと。あれはダメすぎるわ……」
( ・∀・)「うわー値踏みするねえ、ブーンなら多分いくぞ。飢えてるし。な?」
( ^ω^)「いや、僕もあいつはちょっと……」
( ・∀・)「お前もかよwwwww」
(,,゚Д゚)「ぶはwwwww」
( ^ω^)「おいきたねえwwww」
ピロリン♪
( ・∀・)「んお」
( ^ω^)「女かお?」
( ・∀・)「おー、たぶん17番目の彼女からだな」
( ^ω^)「そりゃあおめでたいこって」
-
(,,゚Д゚)「羨ましい話だな、女に困らない男ってのは」
( ^ω^)「お前がそれ言うのかお。ギコだってイケメンだし、ストックの女の子たくさんいるんだろうお。こわいわーモテ男こわいわー」
(,,゚Д゚)「ストックは言い方悪すぎんよ〜。ただただ一緒にいてお互い楽しくなれる女の子が多いだけだ」
( ^ω^)「はーいアウトォー!!しーんーでーくーれー!」
(,,゚Д゚)「すまんなモテ男でwwww」
( ・∀・)
( ・∀・)「あー、すまん、急用が出来てしまった……抜けるわ、ごめんな」
( ^ω^)「うわ、ガチで女かお。死ねお」
(,,゚Д゚)「後日ハメ撮り見せてくれなwww」
( ・∀・)「ばか、そんなんじゃねえってwwwwwちょっと地元でリオレウス出たらしいから討伐してくるわ。すまん、金、これ。ちょい多めに出しとくから許して」
(,,゚Д゚)「あいよ、いってらー。明日の3限ちゃんとこいよ」
( ^ω^)「おつかれー。逆鱗出たらよろしくなwwwww」
( ・∀・)「おー、おつー」
<ありがとうございましたー
( ・∀・)「ふう」
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季節はもうすぐ冬。
酔った体には心地の良い寒さが体を包む。ニット帽を深く被り直して、僕は大学前の通りを抜けて行く。
……でも少し寒すぎるから、自販機でホットコーヒーでも買うか。
100円の安いやつでいい。少し、酔い覚ましも兼ねて。
ピロリン♪
( ・∀・)「ん?」
【遅い】
( ・∀・)「……」
相変わらず、素っ気のないやつ。スタンプくらい押してくれれば可愛げあるものを。
( ・∀・)【今、居酒屋を抜けたよ。すぐ向かう。五分くらいかな】
【はよして】
( ・∀・)【はいはい】
-
うちの大学はそれなりに大きなところなので、学生マンションも周辺のそこらかしこに存在する。そのうち一つが、この裏手に存在する小さなボロマンションだ。
値段が安く一人で暮らすには充分だから、とペニサスは言っていたか。
ついたよ、と連絡を入れようとすると、既に一件メッセージが届いていた。
【いつも通りだから】
要約するなら、「鍵は空いてるから、勝手に入って締めてちょうだい」と言ったところか。
にしたって、これはちょっと味気なさすぎる。年頃の女の子ならもう少し色出してくれればいいじゃないか。
( ・∀・)「……」
無言で階段を上がる。この景色も何度目だろう。
俺は、ホットコーヒーを啜りながら307号室を目指した。
( ・∀・)「……意外と、少ないなーお前」
部屋の前に着く頃には空になった缶コーヒーに話しかけてみた。
言った後、少し気恥ずかしくなって周りに人がいないか確認したのは秘密だ。
-
部屋は当たり前だが真っ暗だ。でも外の街灯で、軽く、物の配置場所くらいは存在をうかがえる。
左手前に台所。その向かいにユニットバス。そのまま奥に、小さなスペース。
簡素な1LDK。
( ・∀・)「うぃす」
奥には、ベッド。
(-、-*川「……おそい」
元凶が、寝ていた。
-
( ・∀・)「ごめんごめん」
(-、-*川「ん。鍵閉めた?」
( ・∀・)「閉めたよ。電気つけていい?」
(-、-*川「無理。眩しいのやだし」
( ・∀・)「はいはい」
手探りで前へ進む。何も踏まなければいいが。
しかし軽く喉が渇いた。おそらくさっきのコーヒーのせいだろう。
( ・∀・)「ちょっと水もらっていいかな」
(-、-*川「冷蔵庫ん中にお茶あるから」
( ・∀・)「ん?いや、いいよ別に、水で……」
(-、-*川「いいよ飲んで。っていうか」
(-、-*川「早くして」
ペニサスはそっぽを向きながら、右手を上に少し上げた。
捲り上げられた布団。
人一人が入りそうなスペース。
早く来いと言っているらしい。
-
( ・∀・)「……うん、ただいま行きます」
お茶をぐいっと飲み干して、空のコップはテーブルに置いた。
ついでに、コーヒーの空の缶も。
開けられたその布団のスペースに、コートを脱いで、僕も潜り込んだ。
―――――――――
――――――
―――
-
(-、-*川「酒の匂い」
( ・∀・)「そりゃお酒のんでたもの」
(-、-*川「あとコーヒーの匂いもするけど」
( ・∀・)「すげ。名探偵だね」
(-、-*川「女はこういうのに敏感なのよ」
( ・∀・)「なるほど」
(-、-*川「……あったかい」
腕枕をしている左手に、ペニサスの手が添えられた。
少しどきっとしたけれど、平常心を装うように、少しだけ抱きしめている腕に力を込めた。
(-、-*川「またいつものメンバーですか」
( ・∀・)「え?」
(-、-*川「飲んでたのは」
( ・∀・)「ああ、うん。ギコとブーンだよ」
(-、-*川「へぇ」
( ・∀・)「うん」
-
(-、-*川「どんな話してたの」
( ・∀・)「んーと」
( ・∀・)「男女間に友情は成立するかー、とか、そんな話よ」
(-、-*川「ふーん」
(-、-*川「よくある言説だね」
( ・∀・)「うん」
(-、-*川「どうだろね」
( ・∀・)「え?」
(-、-*川「あたしはよくわかんないわ。男女間の友情どうこう」
( ・∀・)「ああ、うん」
(-、-*川「こうして、あたしあんたとこうして一緒に布団に入ってるじゃん。それも何回も」
( ・∀・)「そーだね」
(-、-*川「なのにあたしは未だに一度も襲われてない」
(-、-*川「これは果たして男女間友情成立を意味するのか、それともあたしに女としての魅力がないのか……」
( ・∀・)「なんとまた、答えにくい二択にしやがるなあこの野郎……ww」
-
( ・∀・)「少なくとも後者だけは否定しとこうかな。ペニは女性としてもかなり上玉だよ」
(-、-*川「お世辞とか、いらないんだけど」
( ・∀・)「いやいや」
( ・∀・)「料理もできるし家事だって得意。他人によく気が使えるしそれに」
( ・∀・)「おっぱいもでk」
(-、-*川「あ、胸触ったら殺すぞ」
実は去りげに動いていた右手は、その一言でぴたりとナリを潜めざるを得なくなった。
( -∀-)「……これだから、手ェ出せませんよ」
(-、-*川「よろしい」
(-、-*川「でも、こうして素直に聞いてくれるとこ、好きだよ」
( ・∀・)「へ?」
(-、-*川「あんたのそーゆーとこよ。あたしの嫌なことしないとこ、結構好き。恋愛感情ではないけど」
( ・∀・)「そうかい」
(-、-*川「うん」
(-、-*川「ま、性格は最悪だけどね、あたし」
( ・∀・)「そうかなあ」
(-、-*川「そうよ」
( ・∀・)「そーか」
-
(-、-*川「……あたしは否定派だわ」
( ・∀・)「友情の話?」
(-、-*川「うん」
(-、-*川「そもそもね、男の友情と女の友情って、違うもの」
(-、-*川「あたし、思うの。男の友情は損得勘定で、女の友情は利害関係」
( ・∀・)「……ほぼ同じじゃね?」
(-、-*川「ちょっと違うよ。利害関係ならね、足を引っ張れるの」
(-、-*川「相手をね、道連れにできるの」
( ・∀・)「女の子の方がタチ悪いのね」
(-、-*川「かもね。女の友情がドロドロしがちなのは、そのせいかも」
( ・∀・)「ふーん」
(-、-*川「うん」
(-、-*川「あたしを見たらわかるでしょう。いっつも、周りを巻き込んでばっか」
( ・∀・)「……うーん」
( ・∀・)「それは、僕のこと?」
(-、-*川
( ・∀・)
( ・∀・)「……僕は、好きで巻き込まれてるとこ、あるから」
(-、-*川
(-、-*川「へんなの」
-
( ・∀・)「誰かが言ってたな、女の恋は上書き保存、男の恋は名前をつけて保存、だっけ」
(-、-*川「まぁ、うまいこという人がいたもんで」
( ・∀・)「だね。男はすぐヨリ戻したがるっていうのは、そーゆーことかな」
(-、-*川「そーなの?」
( ・∀・)「前の女の方が良かったな、って漏らす人はたくさん」
(-、-*川「女々しい」
( ・∀・)「確かに」
(-、-*川「もっと芯のある男がいいな」
( ・∀・)「うん」
(-、-*川「そういえば、大丈夫?そっち狭くない?」
( ・∀・)「ん?大丈夫だよ」
(-、-*川「そう」
( ・∀・)「うん」
(-、-*川「じゃあいい」
( ・∀・)「はい」
-
(-、-*川「……恋人はさ」
( ・∀・)「うん?」
(-、-*川「恋人はさ、友達には戻れないのかな」
( ・∀・)
( ・∀・)「どうだろうね」
(-、-*川「……うん」
( ・∀・)「戻りたい?」
(-、-*川
(-、-*川
( ・∀・)「……」
(-、-*川「戻し方、わかんない」
( ・∀・)
( ・∀・)「うん」
(-、-*川
(-、-*川「……もーちょい、抱きしめて」
( ・∀・)
( ・∀・)「うん」
―――――――――
――――――
―――
-
支援
-
支援
-
( -∀-)
( -∀・)
( ・∀・)
……朝。
ペニサスより先に起きた俺は、左手がとても冷たい事に気付いた。
腕枕のせいだろう、感覚がない。
( ・∀・)(起きないように、起きないように……っと)
少しずつ腕の位置をズラし、そのうちようやく通ってきた血液のおかげで痺れが左手に走る。
(-、-*川
ペニサスはいつの間にかこちらを向いて、俺の胸にうずくまるように寝ていた。
( ・∀・)
特に深い意味もないが、ただ純粋に、その寝顔を見て
とてもいい女だな、と思った。
( ・∀・)「……」
軽く頭を撫でてやった。特に反応はなかったけれど。
(-、-*川
( ・∀・)「……」
-
( ・∀・)「……うげ」
時刻を確認する。
11時半。
真っ昼間だ。そう思えば急に腹も減ってきた。
昼飯を食べて、3限の授業に出なければ。
( ・∀・)「……ペニ。昼だよ、起きな」
(-、-*川「……ん」
(-、-*川「……あたしもーちょい寝る」
( ・∀・)「えー。3限、出ないの?」
(-、-*川「出席、とっといて。出来ればレジュメも」
( ・∀・)「そんなに行きたくないのか」
(-、-*川「うん」
(-、-*川「……どうせ行ったら、いるんでしょ、ギコ」
( ・∀・)「いるだろうね」
(-、-*川「会いたくない、今は」
( ・∀・)「……ん」
( ・∀・)「わかった」
-
男女間での、友情の有無。
俺は、答えがでない。
それはきっと、自分の行動に答えが出ていないからだ。
こうして、毎回毎回、ペニサスの部屋に足を運ぶ、その意味が。
( ・∀・)(うおー、さすがに時間が時間か。飯どころはどこも満員)
( ・∀・)(コンビニでいいか)
ピロリン♪
( ・∀・)「ん?」
もし男女間に友情が存在しないのだとしたら、俺のしていることはなんだ。
-
【ありがと。おかげでよく寝れた】
【行ってらっしゃい】
( ・∀・)「……」
こうして、今。彼女もいない俺が。
大喧嘩をして、別れる間際かというほど疎遠になっている親友の彼女の部屋に泊まりに行き、そして一緒に一晩を過ごしているこの意味は、どこにある?
-
(,,゚Д゚)「うーっす、モララー」
( ・∀・)「うぃー。あれ?ブーンは?」
(,,゚Д゚)「寝坊だとよwwだから出席とっといてと頼まれたわ、あんにゃろ。後でラーメンあたりを奢ってもらわなきゃ気が済まんわ」
( ・∀・)「なるほどwww」
(,,゚Д゚)「まったく……」
(,,゚Д゚)「……今日も、来てないな、あいつ。何してんだろ」
( ・∀・)「……ペニ?」
(,,゚Д゚)「うん。お前、何か知らねー?」
( ・∀・)
( ・∀・)「さぁ。まったく」
(,,゚Д゚)「だわな。うーん……」
( ・∀・)「どんだけ喧嘩してても彼女のことは気になりますかw」
(,,゚Д゚)「茶化してくれるなよー俺だってどうしようか悩んでんだぞー」
( ・∀・)「そうね」
-
( ・∀・)「まぁ、なるたけ早く、仲直りしてほしいんだけどな」
(,,゚Д゚)「……うん」
( ・∀・)「お前らが喧嘩してるのは、見るに堪えないよ」
(,,゚Д゚)「……ごめんな」
( ・∀・)「……ぜんぜん」
だって、本当なら
謝らなきゃいけないのは、僕の方だもの。
友情でなければ、なんだ。
恋愛感情ではない。それだけは間違いないんだと思う。
愛情でも、友情でもなければ、なんだろう。
あの日、二人が大喧嘩したというあの日に
「慰めて」と俺に言っていた彼女に沸き起こった感情は、なんだったんだろう。
-
( ・∀・)「……同情かなあ」
(,,゚Д゚)「え?」
( ・∀・)「あ、いや、なんでも」
それでも僕は、頼まれたらまたあの部屋に行ってしまう。
ピロリン♪
-
【今日もまた来て】
これは、とても歪な、優しさとはまた違うような
正体不明の情が繋ぐ物語。
-
乙
-
( ・∀・)今日も二人で寝るようです('、`*川
一話、おしまい。
-
ありがとうございました。
また明日の同じくらいの時間に来れたら。
-
乙乙。楽しみ
-
乙
-
おつ
-
期待してる
-
ふーむほーむふーーむ
珍しい形のモララーとペニサスだ
続き気になりますね
この雰囲気がいい
ひとまず一話おつ!
-
1LDKは一人暮らしには広すぎだと思うが
-
>>35
見返して気付きました、1DKの間違いです、ありがとうございます。それでも贅沢な方でしょうが。
あとモララーの一人称が俺になってるところもありますね、失礼しました。
-
乙 いい雰囲気
-
「最初に彼女の部屋に呼ばれたのはいつのことだったか。なんで、彼女の部屋に呼ばれるハメになったのか」
実はこの歪な関係の渦中にある僕、モララーは、これに答える事が出来ない。
部屋に呼ばれた理由すらも、実は曖昧で思い出せない。よくある、男女間の軋轢といった感じだったか……
しかしこの話を始めるにあたり、割と重要なファクターであるにも拘らず、それを曖昧にしか覚えていないというのは、
恐らくだが、それはまぁ……くだらない?もしくは馬鹿げた?まあ、そんな表現が似合うような、一笑に付すような内容であったのだろう。
あの盤石の仲の良さを誇っていた二人にそんな亀裂が入る日がくるとも思っていなかったし、その二人に亀裂を入れた要因が「一笑に付す」だなんてまぁ酷いことではあると思うが
恐らくそんなものは、どこのカップルだって一緒なのだ。
カップルというものはその仲の良し悪しに拘らず、少しだけ視点を変えればいくらでも解決するような内容で一晩頭を抱えてしまうのが定めとなっているらしい。
-
(,,゚Д゚)
ギコは元から、かなりモテる男だった。
あいつはとにかく友達が多い人間なのだ。
人を楽しませる、場を盛り上げる才能にずばぬけて富んでいる。
かと思えば逆に人の悩みにも敏感に反応し、掛け値なしにすぐさま助力に走れるような男だ。
そして何よりの魅力といえば、その芯の硬さか。
決めたことはやり通す意志の強さを持っているものだ。
「リーダー的存在」という言葉もあるが、長いこと彼を観てきた僕からすれば、彼はいつでもどこかしら中心の存在としてグループの中にいる。
ので、もはやリーダー「そのもの」だとすら思う。
リア充なんて言葉は、彼のためにあるような言葉だろう。
-
('、`*川
一方で彼女、ペニサスは―――容姿は普通か、普通より上と言ったところか。可愛いというよりは綺麗といった部類に入る女性だ。
彼女も彼女で人を惹きつける性格をしている。
なんと言っても面倒見が良く、彼女の友達の一部の人間は、少しの皮肉も込めてか、「母さん」というあだ名までつける者もいるほどだ。
ちょっと前も、僕はギコの家で宅飲みをして酔いつぶれてしまった事があった。
その時は起きて気付いたら毛布をかけられて、机の上にはヘパリーゼが置かれていたり……なんだその用意周到さは。
そんなとても献身的な彼女はだが、その分、ある種女性らしい一面というか……強く頼れる女性の裏側というか。
一人でかなり悩み詰める悪癖もある。
性分とせず悪癖と表現したのは、それ相応の融通の効かなさがあるからだ。
「悩み」というものは他人に相談するのが特効薬。
でなければ大抵は暴走してしまうのが、もはやある種の日本人のテンプレというものだ。
どれだけ馬鹿馬鹿しい悩みでも人は一旦悩み状態に陥ると、他に頭が回らないものである。悩みは悩みを呼び、人をダメにする。
そしてそのうち行き着く先が「悩んでいる事事態に悩む」。こうなったら最悪、迷走極まりない。
これほど本末転倒なことがあるだろうか。
-
ましてや彼女は、元来の強さからか、それを一人で抱え込んで自爆するタイプだ。
メンヘラと呼ぶようなレベルのものでもないがしかし、確かに悪癖とは呼べるものである。
もう少し柔軟になってもいいのではないかと僕は思うが、まあ、それをしないのが彼女の良さの一つであるのも確かだし、
その強さに助けられている人がいるのも事実なのだ。一長一短とは言ったもので、だからこそ悪癖と呼べるものなのだ。
前置きが長くなってしまったが、言いたいことを一言にまとめてしまうとすると、
――――――この二人はそれぞれ違うベクトルで、バカみたいに頑固なのだ。
だから、この二人はお似合いなんだけれども……喧嘩をすれば長い。
とにかく長い。
その長い戦いの、始まりの日のお話を、ここで振り返ることにしよう。
-
( ・∀・)今日も二人で寝るようです('、`*川
-
支援
-
―――――――――
――――――
―――
( ・∀・)「ん」
( ・∀・)(珍しいな)
妙だな、とも思った。
それはとある晩、まだギリギリ電車が走っているかという、深夜とも呼べないような時間。
バイトを終えて、まかないを食べながらTwitterを見ていたら、とある女性が一言、愛想もなくこう呟いていた。
【もうどうしたらいいのかわからない。】
それは、年頃の女性なら誰だってするような、他愛のないお悩みつぶやきだった。
こういう時は決まって、取り巻きが「どうしたの?」「何かあった?」「大丈夫?」だなんて、声をかけに行くものだ。
女のコミュニティはそんな曖昧な気遣いで維持されている。
それ自体はどんな環境にいたって良く見る光景なのだが、しかし妙なのは、この発信源。
それが親友の彼女、ペニサスという女性であることに僕は驚いていたのだ。
-
彼女は、(誰かさんに似て)とても硬い芯を持ち、一人で全て解決するような、世の甘えた自称メンヘラ共へ見せつけてやりたいくらいの強さを持つ女性だ。
そんな彼女は、こういうネットであっても、人に弱みを見せる事はあまりしない性格だったはずだ。
ネガティブな発言というものは、自分とは関係ない者のものであっても、それ自体に人をマイナスへ引っ張る力がある。
それをわかってか、ペニサスは元来、こういうものは一人で抱えてしまい隠し通すのが常だった。
もちろんギコとセットで、だが、彼女ともよく遊びに行く仲だ。
こいつがどういう女であるかは理解しているつもりである。
それがどうだ、この意味深な一言。
( ・∀・)(何かの冗談かな?それとも、うーん)
( ・∀・)(本気で参ってるか)
あのペニサスが?なぜ?と。
最初は友人らしからぬ、くだらない好奇心からだったのは確かだ。
-
( ・∀・)(……声だけはかけておくかな)
僕だけかもしれないが、こういう時の彼女へは、声を掛ける時も気を遣う。
なぜって、そりゃあ一つだ。彼女が献身的……言い換えれば、とてつもなく周りに気を配る人間だからだ。
いつも人に気遣う側だからだろうか―――ここに先述の悪癖さんも合間見えて、彼女は基本的に気を遣われる事を良しとしない。
だから、こういう時は「何かあったのか?大丈夫か?」などと声を掛けるのはタブー。
「なんでもないよ、心配してくれてありがとう」で跳ねられるのが関の山だろう。
なのでここは嘘をつく事から始める。
( ・∀・)(……さて)
-
良い文章支援
-
( ・∀・)(まずは、ペニサスへ電話をかけます)
何コールで出てくれるかな。いや、別に出てくれなくてもいいが。
献身的な女性というのは、こういう対処も早いのだろうか……だなんて、わけのわからないことを考えながら3コール。
彼女が電話に出た。
【はい、もしもし……?】
( ・∀・)「……」
【もしもし?モララー?】
( ・∀・)「……」
( ・∀・)「ん?あれ?」ごそごそ
【モララー?どうしたの?】
( ・∀・)「あ、うわ……!」
ぶつり。
ここで電話を切る。仕込みは完了。
そしてLINEを送ることにしよう。
( ・∀・)【ごめんごめん!間違えた!いま俺のスマホ、スリープボタンぶっ壊れててさ!たぶんポケットの中で何かに触れて電話かかっちゃったんだと思うわ】
( ・∀・)【ご迷惑をおかけしました。というか今大丈夫だった?】
-
こうして、ペニサスと話す口実をゲット。同時に今、自分と話せる状況かどうかも確認しておこう。でも、電話にでたってことはおそらく自宅なんだろう。
【ん。いいよ、今暇だったし】
( ・∀・)(ビンゴ)
うーん、我ながら回りくどいやり方である。
いらぬ気遣いかもしれないが、まぁ用心にこしたことはない。
( ・∀・)【ならよかった、すまんね。今なにしてたとこ?】
【ん?一人で自宅でお酒飲んでるよ】
( ・∀・)【さみしーやつww】
【ほっとけwww今日は暇なやつがあんまりいなかったの!でもどーしても飲みたかったから】
( ・∀・)【お?なら、いってやろーかwww僕は暇だぞおー】
【うん】
( ・∀・)【酒は話し相手がいた方が美味しくなるものだからねwww】
( ・∀・)
( ・∀・)(え?)
【いや、きていいよって】
( ・∀・)
なんとまあ。
-
( ・∀・)【え、なにそれwwwどうしたの今日はwww俺後でギコに殺されたりしねーかそれwwww】
【バレなきゃへーきよ、へーき】
( ・∀・)【なになに、浮気したい気分なの?】
【いや、まあ】
【あんたならいいかなって】
( ・∀・)【何が?っていうかギコはどーしたよお前の王子様h】
【心配してくれてありがと。話し相手、欲しかったんだ】
( ・∀・)
【どうせ嘘でしょ。電話間違いなんて。前にあんたと電話したのいつの話よ。着信履歴がなければあたしの名前が一画面目に入らないことも知ってる】
【それも、あたしが悩んでるこんなベストタイミングで、底抜けのお人好しのあんたが、間違えて電話するの?】
( ・∀・)
( ・∀・)【酔ってるなペニサスゥ〜】
( ・∀・)【んなわけないでしょー、たまたまよ、たまたま。お前にはギコがいるし、お前の心配とかほとんどしねーよ】
【そっか、ごめん】
-
―――こういった時には、僕はどうしても不器用だ。どれが正着かわからないままに、嘘を通してしまった。これでいいのだろうか。
( ・∀・)【ま、でも、お前がそこまで参ってるのは珍しいから。行ってやるよそっち】
( ・∀・)【いないんだな?ギコ。その理由も含めて話してみーや】
【うん】
【ありがとう】
( ・∀・)【何か買って行くものは?】
【果実酒。美味しいの】
( ・∀・)【おっけ】
でも、僕はこういう時には、人に優しくしてしまう。
否。この対応は、優しいというよりは……甘い、だろうか。
-
( ・∀・)(さて)
コンビニで果実酒を探すついでに、彼女の事を探っておくか。
ギコに話を聞いてみよう。
ペニサスとギコはいつも一緒にいるというイメージだったが、それもどうやら今夜に限っては違うらしい。
ギコにどうして聞くか……だが。
こっちはまあ、正攻法でいいな。
( ・∀・)【ぎこー。ぎこたんやー】
返事はすぐに来た。どうやら暇人らしい。
【なんじゃいもらたんや】
( ・∀・)【今なにしてんの?】
【ん?ゼミの後輩連れてクラブに向かってるなうだけど】
【なんだ?お前も来る?】
( ・∀・)【あ、いやー】
( ・∀・)【ペニの野郎がさ、なんか、呟いてたけど】
【ん?】
( ・∀・)【もうどうしたらいいかわからん、とかなんとか】
【ああ】
【ほっといたらいいよ。いつものやつだよ】
-
【悩むと一人で抱えて爆発ちゃんだ。まぁ、少し喧嘩したので、ほっときゃなおるべな】
( ・∀・)
まあ、なんという言い草。
少しだけ苛立ちを覚えるものだったが、それは長年彼女と連れ添った彼にしかわからない信頼の裏返しとも取れたので(現に、僕が暴走しているだけかもしれないし)それ以上は突っ込むのは野暮だと思い、何も言わなかった。
( ・∀・)【ケンカ!へえ〜今度はなんですの?また別の女引っ掛けるところ見られました?】
【またってなんだよまたってwww覚えねえよww】
【いやー。考え方の相違ってやつですな】
( ・∀・)【なんだその若手バンドの解散理由みたいなの】
【まあ、場合によっては】
【別れるかもしんない】
( ・∀・)
( ・∀・)【あらあら、それは……まあ】
なんて返事すればいいのかわからない。
だからここは曖昧に返しておく。
とにかく、二人がかなり大きな喧嘩してて、ペニサスが荒れていることだけは確認出来た。
ギコが遊びに出かけているというのも気がかりだが、それは……なんだろう。頑固さ故の突っぱねだろうか。
ああもういいよ、俺は俺で勝手にしてやるよ、という。
-
( ・∀・)(ややこしやー、ややこしや……)
コンビニのお酒のコーナーへ。
果実酒としか指定されていなかったので梅酒にしておこうと思ったが、それならば梅酒と頼んでくるはずだし……と、
またもや要らぬ気遣いを発揮して、ここは柚子のお酒にしておく。
それに何本かチューハイでも買って行こうかと思ったが、彼女がどれくらい飲んでるかもわからないので、一つ連絡を入れる。
( ・∀・)【チューハイとかいる?】
【いる】
返事はやっ。
( ・∀・)【おっけ】
適当に、カルピスサワーだとかを何本か。
あと僕用におつまみ。僕はチーズが大好き。
ペニのつまみの好みはなんだっけ。彼女と飲みに行くと……ううん。
ギコがビールをかっ喰らってる隣で彼女は、いつも何をしてたっけ。
( -∀-)(なんか、意外と見てないもんだなあ、結構遊んでるはずだけど)
メジャーな柿ピーや、それらをカゴに放る。
あと氷も一応買っとこう。
あと……
( ・∀・)
( -∀-)(……いや、ほんっとに)
( -∀-)(ほんっっっとに、念のため。これは)
避妊具を一つ。
いやほんと……親友の彼女の家に何しに行くの、君はそんな事をして明日からギコに顔を合わせられるのかい?
と頭の中の天使がロンギヌスを持ち出してきて止めにかかったが、
まぁ、念のためである。
(;-∀-)(ほんと、何しに行くつもりだ、僕は)
本当に。
( ・∀・)(……)
僕は、こんな時間に彼女の部屋に行き、何をするつもりなのだろう。
-
慰める、という意味合いなら、この役回りは同姓の友達に任せたらいいのではないのか。
なんで彼女は僕を指定したんだろう。
ひょっとして僕に気があるのだろうか。
( ・∀・)
( ・∀・)(ないな)
ない。これは言い切れる。
ペニサスは心からギコのことを信頼しているし、彼に一生添い遂げる腹づもりだとすら思える。
……というか、そうなんだろう。
( ・∀・)(じゃあなんで)
よくわからないな。よくわからないが、必要とされたなら行くまでだ。
( ・∀・)(ごめんなギコ)
この先になにがあるかわからない。だから、僕は先に頭の中で親友へ頭を下げておいた。
せいぜい、彼がクラブでグラマラスなチャンネーを捕まえて朝までコースよろしくワンナイトラバーになっていることを願っておこう。
-
―――――――――
――――――
―――
('、`*川「おいすー」
( ・∀・)「うぃーす」
スウェットにパーカー。ラフな格好をした彼女は、
テーブルにもたれかかりながら、少しだけ中身の残ったロックグラスを揺らしていた。
そのテーブルの横には梅酒のボトル。今日初めて開けたものなのだとすれば、残量は、今日の彼女の荒れ模様を物語るものなのだが、そこは確認しないでおこう。
('、`*川「悪いね。寒かったっしょ、外」
( ・∀・)「いんや、ぜんぜん。せいぜいツンドラレベル」
('、`*川「なんてこったあ、私の友達の一人はペンギンだったのか」
( ・∀・)
( ・∀・)「買ってきたものはどこへおけば?」
('、`*川「お、ありがと。お酒は冷蔵庫の中にいれといてちょ〜」
( ・∀・)「はいよ」
冷蔵庫に酒や氷をビニール袋から取り出しながら、敢えて目線は合わせずに
この部屋に入ってから一番したかった質問をすることにした。
( ・∀・)「……で」
( ・∀・)「なんで目ぇ、そんな真っ赤なの?」
('、`*川
ついさっきまで泣き散らしていたのであろう、目が膨れ、赤に染まっている。
アルコールによる紅潮もあってか、普段の彼女の淑やかさはまったく感じられない風貌だ。
レアなものを見れているのかも知れない、と口にしかけて止めた。
-
('、`*川「あー、ちょっと写輪眼使いすぎて」
( ・∀・)「いつからうちは一族になったんだお前。いいから、話してみなさいや」
( ・∀・)「愚痴ならどんと来てくれよ、そのために呼んだんだろう僕を」
('、`*川「相変わらずお人好しさんだねー、モララーは」
( ・∀・)「……グラス借りるよ。ついでにそこの梅酒も」
('、`*川「うん」
('、`*川「さあ飲むぞー。夜は長いぞー」
( ・∀・)「おー!……ってお前、明日は授業は?」
('、`*川「おーひーるーかーらー♪」
( ・∀・)「うぇーい、同じく!」
乾杯、とグラスを軽くぶつけた。
氷もあるよ、と袋から取り出し、おつまみに付いてきた割り箸で氷をペニサスのグラスに入れてやる。
ありがとー、と惚けた顔の彼女は笑っていた。
('、`*川「あんねー、もうね」
('、`*川「あたしはねー、愛がどうとか、ようわからん」
( ・∀・)「ん?」
('、`*川「恋愛の話。あたしはもう、愛とかいう抽象的なクソ表現嫌いになりそーだぜ。ふぁっきゅーあがぺー」
( ・∀・)「ギコの話か?」
('、`*川「でーすよ。どうも彼は、私の事がそこまで大事でないらしい」
( ・∀・)「いやいや、まさかそんなこと」
('、`*川「それでね、もう」
('、`*川「別れてやろうかと、思っとるんすわ」
-
( ・∀・)「別れる……って言ったって」
( ・∀・)「酔ってるお前にそれ言われてもな」
('、`*川「ん」
('、`*川「酔った勢いでこんなこと口走るような軽薄な女に見えるの?」
( ・∀・)「少なくとも今の精神状態に酒が加味されたら言っちゃいかねないかな、って」
( ・∀・)「何があったんよ」
('、`*川「うーん」
('、`*川「考え方の相違かな」
( ・∀・)「だからなんなのその若手バンドの解散理由みたいなの」
('、`*川「って言ってもなあ」
('、`*川「やっぱさ、長いこと二人で過ごしてきて、少しずつ溜まるものもあるのよ」
( ・∀・)「ほお」
('、`*川「あたしはねーコーヒー」
('、`*川「ミルク入れないと飲めないの」
( ・∀・)「……はい?」
('、`*川「でもギコ、あいついっつもブラックなの」
( ・∀・)「なんの話?」
('、`*川「たとえ話。でね、二人とも、ぜってーこのラインを譲らないの」
( ・∀・)「だとしたらお前、とてつもなくたとえ話下手だな。伝わって来なさすぎてびっくりしてるよ今」
('、`*川「まあ、だから……うーん」
('、`*川「察して」
( ・∀・)「わかるよ。二人とも頑固なんだって話だろ」
-
('、`*川「そーなの!そう!そういうこと!」
ペニサスは、グラスの梅酒を恐ろしい勢いで飲み干した。
( ・∀・)「一気はやめときなよ」
('、`*川「大丈夫じゃあ。今の私は阿修羅をも凌駕する存在なのだ」
( ・∀・)「わあこわい」
('、`*川「でね、考えたのよ。私は、というか私たち」
('、`*川「もっと大人になる必要があるんじゃないの、って」
( ・∀・)「ふむ」
('、`*川「だからさ、このままこの関係を続けててもお互いのためにならないと思うのね」
('、`*川「だから、二人の成長のためにさ。距離を置くか、でなければ―――」
そこでペニサスは、一旦酒に愚痴を移し、そして。
('、`*川「―――別れてしまおうかって」
力強く、そう言った。
( ・∀・)「うーん」
( ・∀・)「わかんないな、僕には、正直」
( ・∀・)「その一旦距離置くとかいう謎制度もそうだけど」
( ・∀・)「相性悪かねー相手と、成長のためにならないと別れを決意する意味も」
( ・∀・)「……蚊帳の外の人間だから好き勝手言えるのかも、だけど」
('、`*川「相性いい?そう見えるあたし達?」
( ・∀・)「牛乳とあんぱんだよお前ら……お前らの結婚を疑うやつ、僕ら友達の中には一人もいねーぞ」
-
( ・∀・)「僕は友達だからもちろん二人にゃ別れて欲しくねーよ」
('、`*川「うーん」
('、`*川「みんなには申し訳ないと思うんだけどね」
( ・∀・)「もう嫌いなの?あいつのこと」
('、`*川「嫌いじゃないよ」
('、`*川「でも、今は会いたくない」
( ・∀・)「あら、ペニともあろう女が、珍しく女々しいこと言う」
('、`*川「うるさい。あたしだって、やなもんはやだもん」
( ・∀・)「そういう問題はー、どーなのさ」
( ・∀・)「二人で解決して行くもんでないの?」
('、`*川「二人では解決できないとこにあるもん」
( ・∀・)「妥協は出来ない部分なのか」
('、`*川「……今更どうやって、カップル間のバランスを変えたらいいのさ」
( ・∀・)「いつからでも、どうやってでも変えれると思わないか、お前ら、どうしてそんな考えが凝り固まってるかな」
('、`*川「長いことやってきて無理だったもん」
( ・∀・)「やり方変えたら?」
('、`*川「どんな方法でも無理だったもん」
その思考がすでに凝り固まっているんだ、と言いかけて。
会話がとてつもなくテンポアップしてることに気付き少しだけ小休止を入れた。
返事を返さずに数秒、酒に目を移していると、彼女の紅く惚けた顔が反射していた。
彼女は見るからに不満げだが、同時に、
今にも涙がこぼれそうでもでもあった。
-
('、`*川「あたしだってねー、もららー」
( ・∀・)「……ん」
('、`*川「自分が幼いことは知ってるんだよ」
( ・∀・)「……うーん、そんなことないと思うけどね」
('、`*川「いんやー、幼いよお。いっつも考えてるのは自分のことだもん。自分自分じぶーん」
('、`*川「でもね、ギコとあってね。あいつね、ほんと楽しいやつで」
( ・∀・)「うん」
('、`*川「なんでも二人でやったよ。それでもね、なんというか」
('、`*川「心開いてくれてるのかなこの人、って思う場面もたくさんあったんね」
( ・∀・)「うん」
('、`*川「フツーはさ、こういうのって見逃すべきじゃん。そら、まったく違う幾億もの細胞で構成されるタンパク質の塊二つですもの」
('、`*川「いくら好き好き言い合う仲になっても、違う場面や、ん?って思う場面もたくさんあって当然よね」
( ・∀・)「その通りだよ」
('、`*川「でもね、私は、そーゆー垣根を越えたいの。人を好きになると以上はね」
('、`*川「仲良く過ごしたいの二人で。納得できない事は最後まで話し合ったりしてさ」
( ・∀・)
('、`*川「そうやってさ、心から信頼しあえる仲になりたいのに」
(;、;*川「……どーしたらいいのよ」
( ・∀・)
ついに、堰き止めるものが壊れてしまったのか。
彼女の真っ赤に染まった眼からは、また涙が零れてしまうらしい。
ああ、この子はこの一晩で、どれだけの葛藤を重ねたのだろう。
-
気になる支援
-
これは僕個人の意見だが、恋愛に王道はないと思っている。
そうでなければ恋愛小説なるものが今も昔も創作の一大ジャンルであり続けられる道理はないし、また、だからこそ人は頭を悩ませる。
行けば覇道、成せば王道。
恋は得てしてそんなもんだと勝手にこの20年で感じて結論を出した。
しかし今、この目の前で悩む少女に、僕はなんと声かけよう。こいつは立派に悩んでいる。
そして自分なりの答えを出そうと躍起になり激突し、こんな事になった自分をさらに責めてしまっている。
こんな少女に必要なのは自分なりの正論なのだろうか。
「女性の相談は相談した時点で答えが決まっているものが八割」なんて名言があるが、それに習うならこれは残りの二割だ。
僕は、一人でここまで悩み詰めた彼女を人として、少しだけ尊敬した。
愚かだと笑い飛ばすものもいるだろうが、自論に新たな自論をぶつけて人として成長してみせようとする彼女に僕は心を打たれた。
彼女が欲しているのは正論でも、彼女に対する同調でもない。
この涙はきっと今も、答えを出しあぐねている何よりの証拠なのだろう。
ならばどうする。なんと声をかけよう
( -∀-)
(;、;*川
( -∀-)「なあ、ペニ」
-
――――――僕は
( ・∀・)「なあ、こんなタイミングでこういうこと言うのって、すごくアレなんだけどさ」
(;、;*川「……?」
( ・∀・)「女の子の泣きじゃくる声って、あれだな。すっごい興奮するな」
(;、;*川
(;、;*川「……ぷっww」
-
(;、;*川「なによそれぇえええ!もー!」
うわ、ぞうきん飛んできた。勘弁してくれ。
(;・∀・)「いや、ごめんwwwでもマジで、今心からそう思ったんすよ、ハイ!」
(;、;*川「こっちは真剣な話してんのに!わかってるでしょあんたもさあああ」
(;・∀・)「わかってるよ!?わかってるんだけどもね、男には引き下がれないとこってあってね!?」
(;、;*川「知るかアホ!というかただのアホ!バカ!」
なんというか、頭悪そうな罵詈雑言。
でも、その張本人は、笑っていた。
何か吹っ切れたかのような顔をして、ぐしゃぐしゃの顔で、笑っていた。
(;、;*川「もー……」
( ・∀・)「ごめんね」
(う、;*川「ん……」
どうやら、成功したようだ。涙は、止まったらしい。
僕を興奮させないためだろうか。
言ったあとだから言えるが、とてつもない賭けだったな、これ。
追い出されても仕方ないレベルだぞ。
('、`*川「……ギコもさ。今のあんたくらい余裕あったらなあ」
-
支援
女の涙には男の興奮や性欲を減退させる作用があるから、妄想では興奮しても現実で見るとそうでないらしいよ
-
( ・∀・)「僕はそのかわり、あいつほど気遣いができねーぞ」
('、`*川「そーね。ないものねだりなのよねこれも」
( ・∀・)「そーなるよな」
('、`*川「うん」
( ・∀・)
('、`*川「……うー、なんかつかれた」
( ・∀・)「そりゃ、あんだけ飲んだらな」
('、`*川「たぶんアホと会話してたせいだわ。SAN値削られてくわー」
そう言いながらこてん、と彼女は横倒れた。目線は天井を向いて虚ろなままだが、意識ははっきりしているらしい。
( ・∀・)「おーいねえさん、そのまま寝たら風邪引くべー」
('、`*川「おばあさんもう動けんのや。ちょっとベッドまで運んでくれんかねー」
( ・∀・)「えー、金二百両な」
('、`*川「高給取りめ」
僕もそれなりに酩酊……とまでは行かないまでも、足元に不安を覚えるくらいには酔っていたので、
部屋に横たわる彼女を踏まないように脇に手を差し込み、上半身を起き上がらせ、
( 、 *川「……」
( ・∀・)「え」
―――そのまま、抱きしめられた。
-
( ・∀・)「あの、ちょ」
( ・∀・)「ペニーさん?」
('、`*川「ごめんちょっと酔ってて」
( ・∀・)「あっ……そう」
('、`*川「そう」
( ・∀・)「お前、僕が変な気起こしたらどうする気なの」
('、`*川「まさか」
('、`*川「もららーはそんなことしない男だって知ってるもの」
('、`*川「ただ、こっちの方が起こしやすいでしょ、あたしのこと」
( ・∀・)
……いや、ごめんなさい、実はさっき、あなたの信頼を裏切るものを500円くらいで購入しまして。
とは言えないのでもちろん口に出さなかったが、ここでようやく僕は、彼女が僕を呼んだ理由を理解した気がする。
僕は―――「丁度いい」んだ。
または、「都合がいい」。
-
('、`*川「最近の悩みなんだけどね、聞いてくれる?」
僕に運ばれベッドの上に横たわった彼女がそう言ってきた。
( ・∀・)「ん?」
('、`*川「ずっとね、寝れてなかったの。あたし達このままでいいのかなーって、わからなくて」
('、`*川「今日みたいな日はさ、貫徹覚悟だったよ」
('、`*川「でもなんでだろーな、あんたが来てくれたからかな。ぐっすり寝られる気がする」
( ・∀・)
( ・∀・)「そうか」
布団をかけて、完全に寝る態勢になったのを確認しては、僕もベッドの横にもたれて寝ることにした。ら起きた時に腰が痛くなるのは覚悟の上であるが、念のため腰に座布団を添える。
よし、これで完璧。これで寝転ばずともぐっすり寝れる態勢に―――
('、`*川「あ、無理だわこれ」
( ・∀・)「え?」
-
('、`*川「なんか、いつもの癖づいてるのかな、まったく眠くない」
( ・∀・)「え、あ、はい。じゃあ、寝るまで話には付き合いまs」
('、`*川「ねえモララー。毛布もないと、寒いでしょ」
( ・∀・)
( ・∀・)「え?」
('、`*川「ちょっと、入れてあげる。ほら」
右手が上に上がる。
布団が捲り上げられる。
えっと、それが意味することは。
( ・∀・)「え、ちょっとそれは」
('、`*川「うるさい、はよ。このままじゃあたしが寝付けん」
( ・∀・)「お前、それは信用してるとかでなくて。っていうか僕が一緒に寝て何か変わるわけでも」
('、`*川「別に取って食おうってわけじゃないもの」
( ・∀・)「それ僕のセリフだぞ本来は?どっちかというと」
('、`*川「いいから、今晩だけ、一緒に寝てくれない?」
( 、 *川「あたしが寝付くまででいいから。ちっとは、慰めてよ」
( ・∀・)
( -∀-)
-
やっぱり僕は、甘い人間だ。
とどのつまりは、自分にも甘い。
ん、でも、どうなんだろうか。手を出さない状況で親友の彼女と同じ布団に入るのは、これは、逆に言えば厳しいものではないのか。
いやいやそういう言い訳はいいから。とりあえず今は。
( ・∀・)「……」
馬鹿っぽい表現になるが、ベッドの上は女の子らしい匂いでいっぱいだった。僕は着替えなんて用意してきていない。ジーンズとシャツで布団に潜り込み、
('、`*川
( ・∀・)
無言で、後ろから、彼女の頭の下に自分の腕を通した。
そうすると、彼女自分から頭を上げ、こちらにもたれかかってくる。
('、`*川「ん」
( ・∀・)「……」
('、`*川「……なんか、へんだ。あんた」
( ・∀・)「んえ?どーしたよ」
('、`*川「いやに落ち着くわ。マイナスイオンかなんか出てる?」
( ・∀・)「……さあな」
( ・∀・)「今のお前には、どんな男が腕枕したってそう感じるんじゃねーの」
('、`*川「……でも、こんなに優しくしてくれるのはあんただけだ」
-
( ・∀・)「優しくないよ。甘いだけの人間だよ」
('、`*川「じゃあ、甘えさせてくれるのは、かな」
('、`*川「私を甘えさせてくれる人って、ぜんぜんいないもん」
( ・∀・)「そーか」
('、`*川
('、`*川「あー」
('、`*川「今度彼氏が出来るなら」
('、`*川「あんたみたいなタイプがいいな」
( ・∀・)
( ・∀・)「僕みたいなタイプか」
('、`*川「うん」
( ・∀・)「でもそれは、僕じゃないな」
('、`*川「うん。あんたみたいなタイプでも、あんたじゃない」
( ・∀・)「僕だってペニみたいな彼女欲しいわ」
('、`*川「……でもあたしじゃないんでしょ、それも」
( ・∀・)「うん」
( ・∀・)「僕は、お前が帰る場所は、ギコんとこ以外ないと思ってるから」
('、`*川
('、`*川「ほんとに、もー……」
( 、 *川「なんであんたがうちに来てくれたのよ、馬鹿……」
-
その後程なくして、ペニサスは可愛い寝息を立ててぐっすりと眠りについた。
それを確認した僕も、程なくしてゆっくりと深い闇に包まれていった。
―――――――――
――――――
―――
-
( ・∀・)今日も二人で寝るようです('、`*川
二話、おしまい。
-
以上です。
途中、書き溜めを操作ミスで全削除してしまい、それにより投下が間延びしてしまったことと誤字が増えてしまったことで、読者の皆さんにはご迷惑おかけしました。すみません。
また明日も同じくらいの時間から。
-
乙
-
期待している
-
乙
雰囲気いいな
-
失礼、作者です。
本日予定が入り投下できそうにないので、また後日同じような時間に投下しに来ます。期待してもらっている読者さん方申し訳ありません。
-
( ^ω^)はあくした、待ってるお
-
(,,゚Д゚)「男は同時に4人まで女を好きになれる!」
突然、バカが叫んだ。
( ・∀・)
( ^ω^)
ζ(゚ー゚*ζ
(,,゚Д゚)「……男は同時に4人まで女を好きになれる!」
( ・∀・)「いや、二回言わなくていいから。なにその格言的なの?」
( ^ω^)「こういう、さらっと最低なこと言える男になりたい」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、メテオ〜」
(;^ω^)「うげ!卑怯者!僕のピクミンがァ!」
-
ζ(゚ー゚*ζ「たあいもなやつよのおwww」
今日も大学の授業を終えて僕たちは集まっている。
晩御飯を済ませたところで何もやることがなくなり、酒をちびちび交えながらスマブラに手を出しているところだった。
ζ(゚ー゚*ζ「やったねー」
( ^ω^)「ちくせう……僕、デレと相性悪いお」
いつメンというやつだろうか。
ギコは突発的に暇になった時、決まってこのメンバーに声をかける。
まず一番に僕、それにブーンにドクオ(今日はバイトだとかで来ていないが)、それとデレ、あと一人。
その「あと一人」は、本来なら、僕より先にいつもギコから声をかけられているのだが、今はもうそんなことはない。
少し前までは、いつも6人で遊んだものだが。
( ・∀・)「うん?」
ピロリン♪
( ・∀・)「……」
【寝れない】
「あと一人」から、LINEが届いていた。
-
( ・∀・)
( -∀-)(あのさあ……)
こう、何回もギコと一緒に遊んでる最中に抜けたら、怪しまれますって。
なんと間の悪い女だろうか。
( ・∀・)(まぁ、相性の悪いことに、僕はこういうのを断れねーわけだけど……)
( ・∀・)【今、ギコん家だけど】
【別に遅くてもいいよ】
【あんた来るまで起きてるから】
( ・∀・)
( -∀-)(僕が行くまで寝れない、の間違いのくせに)
というか、よくよく考えればとてもおぞましい発言である。来なければ承知しないぞ、の意にしか取れない。
それはまるで、呪いのように僕の思考回路の片隅をいじりつくすものだ。
( ^ω^)「そうだそうだ、それでギコ、なんて?」
-
(,,゚Д゚)「え?なにが?」
( ^ω^)「いや、何かいま言いかけてたお?お前」
(,,゚Д゚)「おお。今な、あまりにバトルに参加できなかったもんだからじっくり考えてたんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「やる気まったくないね……」
(,,゚Д゚)「男はどういう風に女を好きになるのか、ってな」
( ^ω^)「おまえ……いや、暇だからって考える事がそれかお」
( ・∀・)「さすがは一流スケコマシ」
(,,゚Д゚)「え、なにこの一斉ブーイング……ひでぇぞ」
(,,゚Д゚)「いや、それが聞いてみ、男は女を4人まで同時に好きになれると言ったのはだな、それは」
(,,゚Д゚)「男の『好き』は4種類あるということなんだよ」
( ^ω^)「?」
(,,゚Д゚)「『結婚したい』『エロいことしたい』『付き合いたい』『友達として』『憧れや尊敬・感謝』」
ζ(゚ー゚*ζ「5つあるけど」
(,,゚Д゚)「あ、ほんとだ。じゃあ5人」
( ・∀・)
( ・∀・)「おぉ〜、それ一理あるかも」
(,,゚Д゚)「な?な?モララーわかるだろ?」
-
( ・∀・)「なるほどー、あれだな、だから人は付き合い別れを繰り返すわけだな。いいこと言うなあギコ〜」
(,,゚Д゚)「ん?それはつまり?」
( ・∀・)「え、いや、だから」
( ・∀・)「『エロいことしたい』系魅力を感じて付き合ったはいいけど『結婚したい』系魅力は皆無で、別れてしまうとか」
( ・∀・)「自分にとってのその5つを埋めてくれる人なんてそうそう出会えないし、だから人は付き合い別れを繰り返して」
( ・∀・)「なるべく自分の理想に近い人を見つけるんだろうなって」
( ・∀・)「そういうことだろ?」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「お、おお!そーいうことだ!言いたかったのは!」
( ^ω^)「嘘こけ。100%そこまで考えてなかったろーがお」
ζ(゚ー゚*ζ「モララーが全部もってった形になったね」
( ・∀・)どやぁ
(,,゚Д゚)「だいたいそんな感じのこと考えてたし……うまく言葉にならなかっただけだし……」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ねえねえ、じゃあ女は?」
(,,゚Д゚)「え、わからん。俺男だもん」
ζ(゚ー゚*ζ「しまらねー!少しは女の気持ちも考えようよ!」
( ^ω^)「そーだそーだ!だからたくさんの女性を泣かすハメになるんだ!」
(,,゚Д゚)「おい待て!スケコマシキャラだけはやめろ!俺の名誉のために!」
-
( ^ω^)「確かによく考えたら」
( ^ω^)「どれだけドルオタの僕も、同時に2人のアイドルは好きになったことはないお……」
ζ(゚ー゚*ζ「それはなんか違うと思う」
(,,゚Д゚)「つまりはそれは『憧れ』の好きに2人ははいんねーって事じゃないのか」
( ^ω^)「そんなことないお!?僕は草壁ゆかには憧れるけど、木下林檎みたいなクールな女の子にも憧れてるお!」
(,,゚Д゚)「同一人物じゃねえか……」
( ・∀・)「ありゃ」
( ・∀・)「ちょい失礼。電話が」
(,,゚Д゚)「お?」
ζ(゚ー゚*ζ「また女か……shit」
( ^ω^)「最近多いお。いい加減彼女って認めればいいのに」
( ・∀・)「バーロー。まだそこまでの関係じゃねーんだよ」
そうだ。そこまでの関係じゃあない。
一緒に寝るだけの関係。ただそれだけの関係だ。
-
ああ、ちなみに、この電話というのはもちろん嘘で、二分後にアラームを設定しておいたのでバイブが鳴っているだけである。
これで数分話してるふりして、急用ができたと言ってここを抜けよう。
どうせまた彼女だ彼女だと茶化されるんだろうけど、仕方あるまい。
―――――――――
――――――
―――
-
( ・∀・)今日も二人で寝るようです('、`*川
-
―――――――――
――――――
―――
ゆっくり揺れる各駅停車で、僕は酔い覚ましも兼ねて思案する事にした。
( -∀-)(……一緒に寝るだけの関係なあ)
どうやら僕には謎の安心感があるらしく、彼女は僕と寝る時はぐっすり眠れるんだとか。
( -∀-)(……なんだそりゃ)
一応、僕だって年頃のオトコノコではあるのだし、となりで無防備で寝られてそこまで安心されると何かしらのプライドみたいなものに痛みを感じるのだが……。
もちろんこちらとしてはそんな幼気な彼女の信頼を裏切れるはずもなく、たったの一度だってそんな過ちを犯した事はない。
そうだ、誓って、ない。潔白だ。
-
( ・∀・)(……いやいや、アホか僕)
それは胸を張って言うことじゃない。
胸を張ること自体よくよく考えたら馬鹿らしい。
だってそれは「プリン一口食べたけどカラメルの部分だけだし大丈夫」と言っているようなもの。
(;-∀-)(……ううん、これはたとえ話としても全然違う気がする)
その、こう、なんて言えばいいのか。
僕もどうやら誰かほどにたとえ話が苦手らしいが、まあ、つまりは問題は「既にアウトなラインを越えている」というところにある。
大都会のど真ん中で包丁を持ち歩き、「いや、私はこれを危ない用途で使おうという気は無いんです。料理用です」と言い張るようなものである。
……これもまた違う気がするので、以降たとえ話は控えておきたい。
とりあえずは―――既に正当化の余地ないほどに、僕は彼女との関係を持ってしまっている。
いくら距離のあるカップルであるからと言って、世間的に見れば、これは当然許される事ではない。
それでもなぜか、これもまた奇妙なことに―――僕はこの関係に、ちょっとした、清涼感のあるような心地よさを覚えている。
-
さて、そんな僕の胸中はさておき、だ。
事実として、こんな危うい関係をずっと続けられているのは、僕としても何かしらの彼女への好意があるからに違いない。
しかしそれは浮気に他ならない、なんとも気味の悪い……不埒極まりないものである。
……と、ずっと思っていたところに、ギコのやつに面白い話を聞かされた。
( ・∀・)「人は5人まで同時に好きになれる、かあ」
大学の最寄り駅に到着。
ペニサスに連絡を入れて、まっすぐに彼女の元へ。
( ・∀・)(……で、なんだっけ。人は5人まで同時に好きになれる、それはつまり)
( ・∀・)(僕にとってのペニサスは、この5人のうちに入ってる?)
ううん、これは、なんだろう。
僕はペニサスに、憧れてるわけでもなければ、エロいことしたいわけでももちろんない。(自分に言い訳をしながら良くない買い物をしたことはあったけれど)
そして付き合いたい……のかな?
友達……うん、友達としてはもちろん大好きだけれど。
今の関係はまだ友達と呼べるものなのだろうか。
( ・∀・)(あれ、僕案外あいつと結婚したいのかも?)
それは……いや、アリ、かな?
-
結婚。結婚かあ。
あんなやつを嫁さんに貰えるなら、それは人生成功してるって言い切れるんだろうなあ。
仮にもあいつは、「お母さん」という名誉?不名誉?なあだ名までつけられるほどの母性の塊だ。
料理はギコが常に絶賛していたし、気付いたら自分の洗濯を済まされていた、とか言ってたこともあったか。
なんともまあ、たまらないだろうな、そんな日々が続くのなら。
( ・∀・)(あーいう女と結婚したいってのは、間違いないなあ)
後であいつが寝るまで、この話でもしてみよう。
僕は意外とこのおしゃべりを楽しみにしているところがある。
寝たいから僕を呼ぶ彼女にとっては、それは迷惑なことかもしれないが、ちゃんと付き合ってくれるあたりはやっぱりいい女だと思う。
-
いつも通り、鍵は空いていた。
( ・∀・)「おじゃまー……」
そこで。
( ・∀・)「……ペニ?」
ふと違和感を覚えたので、僕は靴を脱ぎかけた段階でぴたりと止まった。
( ・∀・)
真っ暗な部屋。返事はない。
布団の上に物陰が一つ。
何も動くものない。しかしそこに、音が一つだけ。
(-、-*川
すぅ、すぅ、とただ静かに。
彼女の寝息。
( ・∀・)「……」
ペニサスが―――1人で、寝てる。
-
疲れていたのだろうか、大きめの布団に一人でくるまって、それはそれは静かに寝ていた。
(-、-*川
( ・∀・)(あらあら、まー……LINEに返事がないと思ってたら)
こうなってしまえばなんだか、僕は不審者のような気分だ。
1人で寝る女の子の部屋へ、物音を立てないように忍び込む不審者。
( ・∀・)(……たく)
そして僕は、ちょっとした複雑な心持ちを味わうことになった。
こんな単純明快なことを複雑にしたのは、他ならない僕なのだけれど。
―――――「なんだ、僕なしでも寝れるんじゃないか」と。
そんな事に僕は……
(-、-*川
とても見当違いな、マイナスな感情を抱いてしまった。
-
そこまで来て始めて僕は初めて気づいたものだが、実はここにある種の優越感を感じていたところがあったのだろう。
僕は頼られているのだと、そこに喜びを見出していたのも、ここに彼女に会いに来る理由の一つだったのだ。
他ならぬ親友の彼女からいの一番に頼られた。こんな事実が、僕を惑わせたのだ。
いや、惑わせたなんて、ペニサスにそんな気持ちは微塵もなかっただろう。
勝手に迷走したのは、僕だ。
そして―――今は、どうだ。
(-、-*川
静かに寝る彼女。
( ・∀・)
―――はたして僕は、今ここに必要なのだろうか。
-
( ・∀・)
( ・∀・)(帰る、か)
そうだ、もう、用済みだろう。
僕がなぜここに足を運んだかといえば、彼女を寝かしつけるためだ。
彼女のさみしさか何かを埋めあわせ、安心感を与え―――安らかに朝を迎えてもらう。
たったそれだけのことだ。
それがどうだ、現に、彼女はとても幸せそうに目を閉じているじゃあないか。
ならば僕は
( ・∀・)
さっき、脱ぎかけた靴を履き直し。
さっき、閉めたばかりの鍵をまた開けて。
さっき、ひねったばかりのドアノブをもう一度回し。
( ・∀・)
(・∀・ )
外へ。
-
(・∀・ )
外へ。
(・∀・ )
外、へ。
(・∀・ )
(・∀・ )
(-∀- )
( ∀ )
( ∀ )
( ∀ )
-
―――なんて自分に甘い人間なんだ、僕は。反吐が出る。
-
支援!
-
( ・∀・)
(-、-*川
やっぱり、可愛いやつだなと思った。
もはやここにいる意味はないけれど、僕はそれでも部屋の中に残ってしまった。
( ・∀・)
(-、-*川
なあ、ペニ。男は同時に5人まで、女を好きになれるんだってよ。
お前の最愛の人がそう言ってたよ。
別に僕は、お前とやらしーことをしようと思ってるんじゃない。
傷心のお前につけこんで、性欲を満たそうだなんてそんな事は微塵も考えてないよ。
神とお前と、お前の最愛の僕の親友に誓ってだ。
別に付き合おうだなんて思わないよ。
お前にはギコがお似合いだ。
だから結婚だなんてもってのほかだし。
友達としてはもちろん好きだよ。
……友達として。
そうだな、僕は友達としてお前が大好きなんだ。
きっとそうだ。
こんな変な関係になっちまってるけど。
ましてや僕は、用済みな僕は、
こんな事をしちまってるけど。
( ・∀・)「そうして好きでいて、わりーかな」
-
('、-*川「え、別にいいけど」
( ・∀・)
( ・∀・)
( ・∀・)
('、`*川
('ー`*川
にま〜〜〜〜……っっ、と。
僕が今まで見た中で断トツでいやらしい顔を、ペニサスはした。
-
( ・∀・)
( ・∀・)「あ、あの」
('、`*川「はい」
( ・∀・)「起きてらした……んですね」
('、`*川「そーですね」
( ・∀・)「いつごろから」
('、`*川「最初から。てか寝てないし」
('、`*川「言ったっしょあんたいないとほとんど寝れないって」
( ・∀・)「いや、あの、はい」
('、`*川「そんで寝たふりかましてやろーとしたら一瞬帰りかけるしさ」
('、`*川「かと思えばまた帰ってくるし」
('、`*川「あたしの顔じーーーっとみてるし」
('、`*川「挙げ句の果てになにあれ、愛の告白?……ぷっ、くく」
('、`*川「wwwwwwwwwwwwwww」
( ・∀・)
( //∀//)「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!!!!」
-
(;・∀・)「かえる」
('、`*川「なんでwwwwwまぁまぁそう言わずwww」
(;・∀・)「あああああああ!!ううううぅああああ!!!」
('、`*川「ちょ、近所迷惑近所迷惑!奇声は静かに」
(; ∀ )「ああああああ……ああ……」
('、`*川「よろしい」
どうしよう。凄く恥ずかしい。なんだろこれ、死にたい。何言ったっけ僕。
好きでいて悪いかな?ああ、そう。
なあモララーくん、その言葉の真意は知らんけど目の前の彼女はそれを受諾してくれました。やったね。
……いやいや、誤解は解いておこう。
(;・∀・)「いや、あのだなペニ」
(;・∀・)「さっき好きと言ったのはこれにはワケがな」
('、`*川「へえ?寝てると思ってるあたしの顔じっと見て言った『好き』にワケが?」
(;・∀・)「違うんだよ!あのな、まずとあるやつが『人は同時に五人まで好きになれる』と」
('、`*川「いいから」
('、`*川「言い訳は、署で聞かせてもらおう」
ペニサスが奥へよる。
ベッドには、人一人分のスペースが生まれる。
('、`*川「おいでー」
とんだ警察署だ。
暗くて真っ赤な顔を見られずに済むことだけは幸運だなと、素直に彼女の言う通りにした。
-
それから彼女へは、僕がギコにされた話をしてみた。
もちろん、ギコの名前は伏せて、だが。
それで、「お前は僕の中では友達の好き、なんだよ」という話をしたら、
('、`*川「こんなことしといてですかwww」
当たり前のことをつっこまれた。
そりゃそうだ。
('、`*川「あたしはなー」
( ・∀・)「ん?」
('、`*川「うん、あたしは女だからその法則は通用するかわからんけど」
('、`*川「結婚したいと付き合いたいはギコでしょ、エロいことしたいは……まだ誰もいないや、私もとからそういう欲求あんまないし」
('、`*川「んで、友達としては、同性だけどデレかな親友だし。んで憧れや感謝・尊敬となると、おかーさん」
( ・∀・)「なるほど、きれーにうまったね」
('、`*川「そんでね、あんたはこのどこにもいないけど」
('、`*川「このどこにも負けないくらい好きだよ」
( ・∀・)
と、僕の胸に顔をうずめながら、彼女は笑っていた。
( ・∀・)「そーですか」
-
('、`*川「そいつに言っとけ、ほんとは5人までじゃなく6人までだって」
( -∀-)「そーですな」
( ・∀・)「つーかやっぱ一番大事なとこ二つには、ギコがくるんだね」
('、`*川「ん。まーね。……なに?嫉妬?w」
( -∀-)「まさか」
( -∀-)「ただ、僕とこうして寝ていることを、お前の人生の黒歴史になればいいなーと思って」
('、`*川「なにそれ、さっきの仕返し?ww」
( ・∀・)「それもあるかも」
('、`*川「なるといいねえ黒歴史に」
('、`*川「そうして20年後もあんたとこうして寝てない事だけは願っとくわ」
( ・∀・)「まったくだよwwwww」
-
明日にでも破綻してしまいそうなこの関係を、
願わくばいつまでも、と。
不意にそう思ってしまった僕は、やっぱり自分に甘い男なんだろう。
でもまあ、しばらくは、いいか。
―――――――――
――――――
―――
-
( ・∀・)今日も二人で寝るようです('、`*川
三話、おしまい。
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乙。この雰囲気好きだわ
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なんか残像を思い出した。乙乙
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乙乙!
なんとなく思ったんだけど魔法少女書いてる人?
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おつです(・ω・)ノ
よい感じで好き♪
応援してます↑↑
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ありがとうございました。また明日の同じくらいの時間にきます。
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乙乙!また楽しみにしてます
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>>110
違います。すいません
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乙
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削除以来出てたけど、作者本人?
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本人です。申し訳ないです。
続きはブログでやることにしました。
短い間でしたがありがとうございました
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そんなあ
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面白いのが始まったと思っていたんだが残念だ
じゃあの
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ブログ教えてくれたりしませんか
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削除依頼のとこにアドレス書いてたぞ
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はいここに飛びました
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面白そうだったのになぁ……
ブログでも執筆頑張ってください
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なぜブログで?せめてブログのウラルおせーてよ
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