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( ゚д゚ ) 学生と先生の怪奇夜話、のようです (´・_ゝ・`)

1 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:12:21 ymQrW8sAO
夏なので

関連作→http://boonrest.web.fc2.com/genkou/yoru/0.htm

ブンツンドーさんもまとめてくれてた。ありがとうございます
http://buntsundo.web.fc2.com/long/kaiki_yawa/top.html

↑の作品知らなくても読むのに支障ない

本編より1年くらい前のお話。短編


2 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:14:14 ymQrW8sAO

(´・_ゝ・`)「君、幽霊とか信じる?」

 先生が俺にかけた初めの一声はそれだった。

 彼のオカルト趣味は学内でも有名だったので、質問自体に驚きはしなかった。
 俺が大学2年生になり、彼のゼミに入った初日のことだ。

( ゚д゚ )「いると思いますよ」

 特に考えもせずに答えると、先生は「そうか」と心なしか嬉しそうな声をあげた。
 これがいけなかったのだ。
 俺達のやり取りを眺めていたゼミの先輩が、あーあ、と呟く。

(´・_ゝ・`)「W神社の裏手の廃ビルが『出る』らしいよ。今度行ってみようか」

 冗談だろうと思った。

 冗談ではなかった。
 その翌日に俺は廃ビルに連れていかれ、しかもそこで女の霊らしきものを見てしまったものだから、
 それ以降、俺は時々心霊スポットへと引き回されるようになったのであった。

 腹立たしいから、一つ、話をしようと思う。

 一介の学生の俺が、教授センセーの馬鹿野郎に振り回される話を。
 いま思い出しても泣きたくなるような、おぞましい怪談を。


 まずは、俺が先生に、15ヵ所目の心霊スポットへ誘われたところから。


3 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:16:10 ymQrW8sAO



( ゚д゚ ) 学生と先生の怪奇夜話、のようです (´・_ゝ・`)

      『子供の話』


.


4 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:19:06 ymQrW8sAO

 俺が大学3年生の頃、夏休み。
 就職活動に関する相談があったので、大学の就職課に行った。

 相談は恙無く終わり、帰る前にジュースでも飲んでいこうと
 学食で休んでいると──

(´・_ゝ・`)「やあミルナ君」

(;゚д゚ )「ぶぁはっ!!」

 後ろから肩を叩かれた。炭酸ジュースを吹き出す。

 振り返ると、紙コップを持った先生が立っていた。
 出張に行くと聞いていたのに。

 先生が俺の向かいに座る。
 彼が持つ紙コップから、コーヒーの香りが漂ってきた。
 「コーヒーの匂いがしたら、近くに盛岡教授がいるぞ」──学生の間でよく言われるジョークである。

(;゚д゚ )「……先生、出張では」

(´・_ゝ・`)「思いの外、早く終わってね。昨日帰ってきたんだよ」

 足を組み、コーヒーを飲む仕草がどことなく優雅だ。
 オジサマ好きの女子学生は大抵、まず先生の外見や身のこなしに惹かれる。
 そのあと本性を知って、彼女達の熱視線は、「紳士」から「変人」を見る目に変わる。(それでも粘ろうとする物好きは一定数いるが)


5 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:20:35 ymQrW8sAO

 ──盛岡デミタス。
 50代、たしか独身。
 ぱりっとしたグレーのベストとスラックスがよく似合う。

 ここVIP大学で経済学を教えている、大学きっての有名人だ。
 なぜ有名かといえば、

(´・_ゝ・`)「ミルナ君、今日は空いてるかい?
        文学部の学生から面白い心霊スポット情報を仕入れたんだけど」

 これ。
 冒頭で触れた通り、この人は幽霊とかそういうのが大好きなのだ。

 趣味は心霊スポット巡り。行くだけでは飽きたらず、罰当たりなことをしては挑発行為を繰り返す。
 幽霊を見たい、ただそれだけのために。
 ろくな死に方をしないだろうなと思う。

( ゚д゚ )「空いてません」

(´・_ゝ・`)「何だ。残念だね」

 予定など無い。
 が、ここで「空いてます」と答えるほど馬鹿ではない。

 俺はもう学習したのだ。
 隙を見せれば、この男は問答無用で俺を心霊スポット探索に引きずり込む。
 そうすれば俺だけが怖い目に遭う。もうパターン化されていると言ってもいい。

 きっぱり答える俺に、先生は微笑みを向ける。


6 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:21:24 ymQrW8sAO

(´・_ゝ・`)「まあ、無理は言えないか」

( ゚д゚ )「物分かりがよろしくて助かります」

(´・_ゝ・`)「それにしても、この間は楽しかったね?
        廃病院でミルナ君が腰抜かして号泣して、四つん這いで逃げたときはおかしかった」

( ゚д゚ )


7 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:21:48 O3nGEW.Y0
なっつかしいー!
好きだったぜー!


8 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:22:08 ymQrW8sAO

(´・_ゝ・`)「そういえばあのとき、落ち着いたミルナ君は何て言ったかなあ……。
        『何でもするから、今回のことは誰にも言わないでください』だったっけ?」

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)「まあミルナ君もいい歳した男だ。あの無様な逃げっぷりを恥じるのも無理はないね。
        それは僕も重々承知しているし、君がそう言うなら黙っておいてあげようと思った。
        本当に『何でもする』ならね」

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)「そうかあ、ミルナ君は今日は忙しいか……。
        僕のために時間を作ることは出来ないんだね……。
        いや、分かってるよ。しょうがないことだよね。うん。
        ああ何だか急にミルナ君の関係者各位に笑い話を提供したくなってきた」

( ゚д゚ )「予定ある気がしてましたけどやっぱりありませんでした」

(´・_ゝ・`)「やあ、そうか。それは何より」

 この悪魔め。



*****


9 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:23:06 ymQrW8sAO


(´・_ゝ・`)「今日は静かなもんだ」

 深夜。丑三つ時。
 公園のウォーキングコースを歩きながら、先生は感心したように言った。

( ゚д゚ )「今日は、って……。前にも来てたんですか」

(´・_ゝ・`)「先週、夜中に1人で来てみたんだけど
        何組かのカップルがあれやこれやしていてね。
        邪魔するのも申し訳ないからすぐ帰ってしまった」

(;゚д゚ )「ああ、そうですか……」

 反応に困りつつ、俺は左右を見た。
 外灯のおかげであまり視界は暗くない。

 左手には背の高い垣根。
 右には、フェンスに囲まれた運動場。
 ウォーキングコースには一定の間隔でベンチが置かれているが、今のところ人影はない。


10 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:24:12 ymQrW8sAO

(´・_ゝ・`)「何かいる?」

( ゚д゚ )「今のところは何も見てないです」

(´・_ゝ・`)「ミルナ君が頼みなんだからね。異変があったらすぐ教えてよ」

 ──先生は幽霊が大好きなくせに、全然「見えない」人だ。
 いわゆる零感。
 見えない聞こえない触れない、気配すら全く感じられない。徹底した零感体質。

 俺だって霊感がある方ではないと思うのだが、
 先生といると、どうしてか色々と見えてしまう。
 多分、先生が見えなさすぎるので、俺にとばっちりが来るのではなかろうか。

( ゚д゚ )「……そもそも、ここは何が出るんですか」

(´・_ゝ・`)「ウォーキングコースは、たしか、男の霊が叫びながら追いかけてくるって」

 夏の、生暖かい夜風が俺と先生の間を通り過ぎる。
 帰りたい。
 言っておくが俺は、怖いのは苦手だ。


11 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:24:55 ymQrW8sAO

(´・_ゝ・`)「このコースを抜けた先にある広場では、腕の長い老婆が噴水の前に佇んでるとか。
        人形に犬のリードをくくりつけて引きずり回す女とか──あ、これは幽霊じゃなくて生きた人間だったかな」

 他にも様々な目撃例が挙げられていく。
 その内の何割が事実だか分からないが、出来れば遭遇したくないものばかりだ。

 それらを聞いている内に、広場へ出た。
 腕の長い老婆も人形を引きずる女もいない。

 適当な場所をカメラで撮影し、先生は不満げに溜め息をついた。
 そろそろ帰れそうだ──そんな期待が湧く一方で、ある焦燥が浮かんでは沈み、また浮かぶ。
 耐えられるか。いける。いや。でも。無理。

(;゚д゚ )「……先生、トイレ寄っていいですか……」


12 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:25:00 y.Z8ce1gO
眠いし明日になってから読もうかな、別に怖いとかじゃないんだけどね?


13 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:25:47 ymQrW8sAO


 ──トイレの中まで付いてきてくれという俺の頼みは、
 先生の汚物を見るような表情で放たれた「嫌だよ」という一言で切り捨てられた。

(;゚д゚ )「そこで待っててくださいよ! 嫌がらせとかしないでくださいよ!」

      「嫌がらせって何だい」

(;゚д゚ )「怖い話するとか」

 公衆トイレ。
 俺は入口に一番近い便器の前に立ち、外にいる先生へ声をかけた。

 ちくしょう、付いてきてくれたっていいじゃないか。
 個室の中まで来いと言っているわけじゃあるまいに。


14 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:26:48 ymQrW8sAO

(;゚д゚ )(先生の人でなし)

 さすが夜のトイレ。雰囲気に溢れている。
 全体的に薄汚れているし、少し臭うし、電気の光もどこか弱々しい。
 4つほどある個室は、どの扉もうっすらと開いているので、人はいなさそうだ。

 「トイレは綺麗に」。
 壁に貼られた注意書き自体が汚れていて、物悲しい。

 さっさと用を足し、ズボンのチャックを上げる。
 鏡は見ないようにしながら洗面台で手を洗っていると──

〈……ヒィ……〉

 背後から、声のようなものがした。


15 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:28:33 ymQrW8sAO

〈ヒィ……ン……ヒィィ……〉

 子供の泣き声に似ている。
 水を止め、振り返った。
 声は一番奥の個室から聞こえるようだった。

 啜り泣くようなそれは、徐々に勢いを増し、ついには泣き喚いているほどにまでなった。
 思わず後退り。

 ──生きている子供か?
 まさか。しかし、ないとも言い切れない。親に置き去りにされたとか。
 声をかけるべきだろうか。けど。「人」じゃなかったらどうする?

 混乱を落ち着けるため、一度、足元を見た。


16 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:29:30 ymQrW8sAO

   「……ミルナ君、まだ?」

 先生の声。
 そして、はたと気付いた。

 これだけ大きな泣き声なのに、先生は何も反応していない。
 先生には、聞こえていない。

(;゚д゚ )(霊だ──)

 逃げよう。
 顔を上げる。


 個室の扉と天井の間に、何かがいた。
 扉に跨がるように存在するそれは、やはり、子供らしい体格をしていた。

 しかし頭が異様に大きかった。
 普通の子供の──いや、大人の一回りも二回りもある。
 両目の辺りにはそれぞれ穴が空いているだけで、目玉は無い。

〈ワァアーン……〉

 それは泣き声をあげた。
 けれども大きく開かれた口は笑っていた。


17 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:30:41 ymQrW8sAO



 公衆トイレから飛び出し、俺は駐車場まで走った。
 見慣れた車の前でへたり込む。
 少し経った頃に足音が聞こえたのでまた逃げようとしたが、肩を叩かれ、立ち上がらないまま振り向いた。

(´・_ゝ・`)「何なんだ君は、急に」

(;゚д゚ )「せ、……せん、せい……」

 先生は車の鍵を開け、運転席に乗り込んだ。
 俺も慌てて助手席に座る。


18 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:32:24 ymQrW8sAO

 車が発進し、公園の敷地を出て。
 俺はようやく公衆トイレでの出来事を先生に説明できた。

(´・_ゝ・`)「ああそう。子供……。ふうん。そういう話は聞いたことないな。
        いいなあミルナ君。羨ましいなあ。僕も見たかったな……」

 よくもまあ、これだけ怯える人間を前にして、そんなことが言えたものだ。

(´・_ゝ・`)「ミルナ君が逃げていった直後に、トイレの中を2、3枚撮ってみたけど──何か写ってるといいね」

(;゚д゚ )「あんたって人は……」

 ハンドルを操りながら、先生は俺を横目で見遣った。
 にやりと笑う。

(´・_ゝ・`)「それで今回は、怖い怖いって泣かないのかい?」

 この野郎。
 なんて底意地の悪い。



*****


19 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:33:22 ymQrW8sAO


从 ゚∀从「そりゃあお前、ほいほい付いてったお前が悪いよ」

(-_-)「同感」

 翌日、昼。
 俺は盛岡ゼミの先輩2人と共に、カラオケに来ていた。
 ハインさんとヒッキーさん。ハインさんが女でヒッキーさんは男だ。

 この2人は先生の変人ぶりとオカルト趣味をいたく気に入っていて、
 事あるごとに、俺や先生から「心霊スポット体験レポート」を聞きたがる。
 自分は絶対に体験したくないが怖い話を聞くのは好き──という一般的な怪談好きだ。

 今回も、どこから聞きつけたのか(確実に先生からだろうが)
 昨夜の体験を詳しく話せ、と俺をカラオケに呼び出したのである。


20 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:34:44 ymQrW8sAO

(;-д- )「俺だって行きたくて行ったわけじゃないですし」

 呟き、マイクをテーブルに置いた。
 別に歌っていたのではない。体験レポートをマイク越しに語らされただけだ。

(-_-)「断ればいいのに」

从 ゚∀从「私も一回だけ誘われたことあるけど、断ったらそれ以降は誘われなかったぞ?
     ──まあミルナは先生に気に入られてっから、断るのも難しいんかな」

(;゚д゚ )「……気に入られてるんスかね……」

(-_-)「そりゃあ……ねえ?」

从 ゚∀从「なあ?」

 先輩達は顔を見合わせ、頷いた。
 首を傾げる俺に、2人は小さく吹き出す。

从 ゚∀从「言っちゃったもんなあ〜、ミルナ……」

(-_-)「言っちゃったもんねえ」

( ゚д゚ )「何をですか?」


21 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:36:28 ymQrW8sAO

从 ゚∀从「去年。ゼミの初日。
     先生の『幽霊信じる?』って質問に、お前、信じるって即答したろ」

(-_-)「あれは盛岡ゼミの学生に課せられる最初の試練だよね」

(;゚д゚ )「え? え?」

 たしかに全ての始まりはあの瞬間だったと思うが。
 試練ってどういうことだ。

从 ゚∀从「あのひと毎年、新しいゼミ生から適当に1人を選んで
     そいつに例の質問をぶつけるわけよ」

(-_-)「それに対してイエスと答えたらアウト。
    しかも霊感あったりしちゃったらもう最悪。
    確実に先生に気に入られちゃう」

从 ゚∀从「ミルナは幽霊信じる派だし、
     一番最初に心霊スポット突撃したときに何か見ちまったんだろ?
     こりゃあもう逃すわけねえよ」

 ハインさんが俺を指差して笑う。
 あの先生の問いへの「正解」は、ノーと答えるか、呆気にとられて沈黙するか、無視するかのどれからしい。


22 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:37:38 .kO26TMw0
ぬっひょほおおおおおおおお
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!!!!


23 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:38:12 ymQrW8sAO

 俺が後悔の念に苛まれていると、部屋のドアがノックされた。
 店員さんが入ってきて、先輩の注文したメニューを運んでくる。

(-_-)「あ、フライドチキンこっちにください。
    ──ミルナがスポット探険に誘われるの、どれくらいのペースだっけ?」

( ゚д゚ )「月に2回くらいのときもあれば、全然行かない月もありますけど……」

从 ゚∀从「何だ、そんなもんか」

(-_-)「あの人、一ヶ月に何回も心霊スポット行ってるんだよ。
    なのにそれくらいしか同行させられてないってことは、気遣ってもらってる方だ」

(;゚д゚ )(あれで……?)

从 ゚∀从「よーっぽど先生に好かれっちまったら、もっと頻繁に連れ回されるかもだけどなー。
     まあ、あの人がそこまで気に入るような奴も滅多にいねえか」

('、`*川「っくしゅん!」

从;゚∀从「わ、お姉さん大丈夫? エアコン強すぎたかな」

('、`*川「あ、大丈夫です大丈夫ですごめんなさい。
     こちらナイフとフォークです。それではごゆっくり」

 店員さんが出ていくと、先輩達は待ってましたと言わんばかりにフライドチキンやハニートーストに取り掛かった。
 カラオケだと言うのに、今のところ誰も歌っていない。


24 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:39:51 ymQrW8sAO

从 ゚∀从「そんでさミルナ、昨日帰った後は何もなかったの?
     おばけお持ち帰りしなかった?」

(;゚д゚ )「ありませんよ。あって堪るか」

从 ゚∀从「つまんねえなー……あっ」

 ハニートーストを切り分けていたハインさんが、フォークで口に運ぼうとした瞬間、
 手を滑らせたのかトーストごとフォークを落としてしまった。
 たっぷりのバターにシロップ、アイスクリームがハインさんの服にべったり付着する。

从;゚∀从「あああっ! 新しい服なのにっ! 金かけたのにっ!」

(-_-)「おしぼり……あ、ちょっとしかないや」

从;゚∀从「洗面所で落としてくる!」

 ハインさんが慌ただしく個室を飛び出した。
 転倒する音が聞こえた気がしたが勘違いということにしてあげよう。
 するとどこからか音楽が流れ始め、ヒッキーさんも腰を上げた。


25 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:42:01 ymQrW8sAO

(-_-)「電話だ。ちょっと外に出てくる。チキン食べていいけど僕のぶん残しといてね」

( ゚д゚ )「はあ」

 そうして、俺1人が残された。
 空調の冷風が腕に当たる。何だか肌寒い。
 ハインさんも言っていたが、たしかに冷房をきかせすぎているのかもしれない。

 リモコンで温度を少し上げ、背もたれに寄り掛かる。
 手持ち無沙汰。フライドチキンを取り、かぶりついた。

 軟骨をごりごりと景気よく噛んでいると、その音に混じって、何か聞こえた気がした。
 口を止めて耳を澄ます。

 廊下の方で流れている有線放送の音楽、カラオケの画面の向こうで曲の宣伝をするアーティスト。
 どこかの部屋のドアが開閉されたのだろう、男の熱唱する声が僅かに大きくなって、小さくなった。
 他には音らしい音も声も無い。


26 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:43:15 ymQrW8sAO

 気のせいか。
 チキンの骨を殻入れに落とす。

 ふと視線を落とすと、足元にトーストの欠片を見付けた。

( ゚д゚ )(ハインさんめ、ちゃんと拾わずに行ったな……)

 ティッシュを抜き取り、トーストを拾うために屈み込んだ。

 テーブルの下に子供がいた。
 細長い舌でトーストを舐めている。
 目玉は無く、頭が大きい。

〈キィキィキィ……〉

 硝子を掻くような声を出して、そいつは笑った。

 思わず仰け反る。ソファに頭をぶつけてしまった。
 瞬間、ばちんと音をたて、部屋の明かりが全て消えた。
 機械の電源まで落ちる。


27 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:44:02 ymQrW8sAO

〈キィキィキィキィ〉

 俺はテーブルやソファにぶつかりながらも何とかドアまで逃げた。
 廊下に転がり出る。
 通話を終えたのか、携帯電話を持ったヒッキーさんが傍に立っていた。

(;-_-)「何してんのミルナ」

(;゚д゚ )「……っ、……!!」

 室内を指差し、口をぱくぱくさせることしか出来ない。

 子供はもういなかった。



*****


28 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:44:40 rze63hVYO
ペニサスいたwww


29 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:45:10 ymQrW8sAO


   从;゚∀从『や、彼氏でもない男泊めんのはさすがに駄目だろ』

   (;-_-)『ごめん。無理。話聞くのは好きだけど巻き込まれるのは勘弁』


 先輩達は薄情だ。
 こんな状況で1人になりたくないのも家に帰りたくないのも分かるだろうに、
 お願いだから泊めてくれと泣きつく俺をあっさり見捨てた。

( ゚д゚ )(家帰ったらやばい気がする……)

 近所の公園(昨夜の公園とは違い、遊具しかないような小さい場所だ)のブランコに座り、
 俺は途方に暮れていた。

 他の先輩や後輩、友人等にも連絡してみたが、
 全員に何かしらの不都合があって、泊めてもらえそうになかった。
 明らかに不可思議な力が働いている。


30 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:46:27 ymQrW8sAO

(;゚д゚ )(そんな強い霊なのかな……やべえ。やべえよ俺死ぬんじゃないか)

 じっとしていても時間は過ぎる。
 公園の中央に立てられた時計が、午後5時を知らせるメロディを響かせた。

 遊具や砂場で遊んでいた子供達が各々帰宅する旨を口にする。
 何とはなしにそれを眺めていると、集団の中に、妙なシルエットを見付けた。

 頭が大きい──

(;゚д゚ )「……!」

 俺は急いで公園を出た。

 駄目だ。やはり俺に憑いている。
 このまま家で1人になって夜を迎えるのはまずい。

 実家に帰っておくべきだった。
 しかし夏休みの間だって大学に行く用がいくつかある。バイトもある。
 実家は大学から遠いし──

(;゚д゚ )(──って、大学!)

 俺は携帯電話を取り出し、ある人へ電話をかけた。



*****


31 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:47:45 ymQrW8sAO


(´・_ゝ・`)「いいね。実にいい」

 ──大学、ある研究室。
 立派な椅子にゆったりと座っている先生は、
 にやつきながら事務机の上にあるパソコンのキーを打った。

 一方の俺はやや古めかしい椅子に座って溜め息を吐き出した。
 目の前、ゼミでよく使われる広い机の上には経済学の書籍やゼミ生の私物が詰まれている。

(;゚д゚ )(何も良くねえ)

(´・_ゝ・`)「しかしミルナ君、幽霊に遭遇したときはまず写真とか撮ればいいのに。
        僕もその幽霊見たいな」

(;゚д゚ )「んな余裕ありませんよ! よくもそういう無茶言えますね!
     先生は怖いって感情がないのか!?」

 先生は口元だけで笑って、何も言わなかった。
 やり返されないのをいいことに、先生に向けて次々に嫌味をぶつける。
 そこへいきなりプリンターが唸りだしたものだから、俺は跳び上がった。


32 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:49:13 ymQrW8sAO

(´・_ゝ・`)「それで、君は僕に何を期待してここに来たんだい?
        悲しいことに僕は幽霊も見えないし、その霊について知ってることもないよ」

(;゚д゚ )「……本当に何も知らないんですか?」

 プリンターが吐き出した数枚の紙をクリップで留めた先生は、辺りを見渡した。
 事務机の引き出しを開けて首を傾げる。
 封筒が無いな、と呟き。

 そして、マガジンラックや段ボールを覗き込みながら答えた。

(´・_ゝ・`)「調べはしたけど、公衆トイレに子供の霊が出るって話は見付からなかった。
        たぶん通りすがりの霊だったんじゃない?
        君ほんとタイミング悪かったんだね」

(;゚д゚ )「せっ……先生があんな場所に連れてかなきゃ、そもそもこんなことにはならなかったんだ!
     責任とって助けてくださいよ!!」

(´・_ゝ・`)「それもそうだ。
        でも僕に何が出来るかな。
        申し訳ないが、今すぐ効力を発揮するような解決策は思いつかない」

 俺だって具体的な案があって先生に縋ったのではない。
 ただ他にアテがなかった。


33 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:50:59 ymQrW8sAO

 しかし先生に何とかしろと喚いたところで、それこそ自分の責任を丸投げしているだけだ。
 先生に付いていった時点で何かしら覚悟はしなければならない。
 それが嫌なら断れば良かったのだ。昨日の脅しだって、現状から考えれば大したものじゃない。

 ごつり。机に額を当てて後悔する。

 不意に研究室のドアが開いた。
 顔を上げる。先生が出ていこうとしていた。

( ゚д゚ )「先生?」

(´・_ゝ・`)「事務室で封筒もらってくるよ」

( ゚д゚ )「ああ、そうですか」

 ドアが閉まる。
 少しの間ぼうっとして、はっと我に返った。

(;゚д゚ )「……話聞いといてよく俺を1人に出来るなあの人!!」

 俺も俺だ。何が「そうですか」だ。

 普通なら、1人にするな俺も付いていくと騒いでいるところなのに。
 これも霊の仕業か。
 はたまた俺がぼんやりしていただけか。


34 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:52:30 ymQrW8sAO

 とにかく、人がいそうなところに移動しよう。
 そう思って腰を上げた瞬間、携帯電話が鳴り響いた。
 心臓が飛び跳ねる。

 研究室のドアを開けて、ポケットから取り出した携帯電話を見てみると
 「盛岡先生」と表示されていた。

(;゚д゚ )「もしもし?」

『あ、ミルナ君。ちょっとお願いしていいかな』

(;゚д゚ )「何です? 早く誰かいるところに行きたいんですけど」

『必要な書類があったのを忘れてたから、ちょっと印刷して持ってきてくれない?』

(;゚д゚ )「書類……?」

『指示を出すから、その通りにパソコンを動かしてくれればいい』

 ドアを開け放したまま室内に戻る。
 プリンターに用紙をセットしてから、パソコンが乗った事務机の前に移動した。


35 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:53:29 ymQrW8sAO

『それじゃあ──』

 瞬間。
 プリンターが勝手に動き出した。

(;゚д゚ )「あ、うわ、え、なに、」

 紙が吐き出されていく。
 俺はまだ何もしていない。筈だ。
 まさか壊れたか。

(;゚д゚ )「ちょっと待って、先生! プリンターが!」

 言いながら紙を持ち上げる。
 黒い。初めは、何が写っているか分からなかった。

 凝視し、それが何なのか理解して──なぜなのかは理解出来なかった。


36 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:55:36 ymQrW8sAO

(;゚д゚ )「……大学……」

 この大学の、学生用玄関が写っていた。
 白黒で不鮮明だが、花瓶やポスターの配置に見覚えがある。

 未だ印刷を続けるプリンターから、一番上の紙を取る。
 そこには講義室が並ぶ2階の廊下。

 さらに出てきた用紙を拾い上げると、先程の廊下の先、突き当たりの階段。
 その次の紙には階段を上った先の3階。
 そのまた次は、廊下をまた進んで抜けたところの──研究室がある棟。

 ここだ。


『ミルナ君ミルナくんみるなくん』


 電話の向こうの声は、先生とは全く違うものに変わっていた。
 やがて子供が馬鹿笑いする声になる。
 俺は携帯電話を取り落とした。

 きっと、すぐそこにいる。

 目を閉じ、耳をふさぎ、机の陰で縮こまった。
 部屋の中に自分以外の気配を感じても、物音がしても、ずっとそうしていた。



*****


37 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:56:40 ymQrW8sAO



(´・_ゝ・`)「本当に子供の霊なのかな。
        僕に成り済まして油断させるなんて、子供の手口とは思えないが。
        ああでも、子供ってのは悪戯となると頭が回るものだよな」

 しばらくして戻ってきた先生は、俺の話を聞いてからというもの、
 何と言うか、非常に──うきうきしていた。
 プリンターの前に散らばる紙を拾い上げては、それを眺めて頷いている。

 やはり先生は俺に電話など掛けていなかった。
 というか、つい先ほど履歴を確認してみたところ、発信者番号が俺の携帯電話になっていた。
 電話が掛かってきたときはたしかに先生の名前が表示されていたのに。

( ;д; )「もう嫌だ……何で俺が狙われるんだ……」

 そして俺は滂沱していた。
 先生が来るのがもう少し遅かったら、漏らしていたかもしれない。何をって、それは言わないけれど。


38 : 名も無きAAのようです :2013/08/25(日) 23:58:57 ymQrW8sAO

( ;д; )「祟られるなら、いつも罰当たりなことしてる先生が祟られるべきなのに……」

(´・_ゝ・`)「そうだねえ。是非とも僕の方に出てきてほしいんだけどね」

 先生はプリント用紙を丁寧に整頓し、ファイルに綴じた。
 そのまま首を傾げて沈黙。
 それも僅か5秒ほどで、再び口を開いた。

(´・_ゝ・`)「まあ、やっぱり、ミルナ君だから憑いちゃったんじゃないかな」

( ;д; )「へ?」


39 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:00:11 bLelILkYO

(´・_ゝ・`)「一番最初は、トイレから泣き声がしたのを聞いたんだったよね」

( ;д; )「……はい」

(´・_ゝ・`)「しかしそれ以降、子供の霊は、ずっと笑ってるらしいじゃないか」

 たしかに。
 カラオケでも、先の電話でも、子供は笑い声をあげている。
 一時間ほど前に公園で見かけたときはどうだか分からないが、少なくとも泣き声は聞いていない。

 しかしだからといって、それが何だというのだろう。

(´・_ゝ・`)「トイレで泣き声を聞いたとき、もしかしたら、その子は本当に泣いていたのかもしれないよ」

( ;д; )「?」

(´・_ゝ・`)「悲しい。寂しい? かな?
        ともかく、そんなような感情から泣いていたとしよう。
        けれど──」

 あの泣き声は激しかった。
 しかし俺が奴の姿を見たとき、奴は笑っていた。


40 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:01:34 bLelILkYO

(´・_ゝ・`)「君に気付いてもらえたから、嬉しくて笑った。っていうのはどうだろう。
        嬉しかったから笑ったし、嬉しかったから君に憑いた」

(´・_ゝ・`)「そう考えてみれば、普通の子供じゃない?
        君が構ってくれる……逐一反応するから、ちょっかいを出す。
        単なる悪戯。今のところ、危害らしい危害は受けてないでしょ。怪我とか」

 もちろん僕は専門家じゃないから分からないけど──と先生が付け足す。
 こういうときに先生の推理が間違っていたためしが無い。

 俺は涙を拭い、首を振り、そして訊ねた。

( ゚д゚ )「……先生の言う通りだとしたら、どうしたらいいんですか」

(´・_ゝ・`)「そりゃあ……悪戯っ子には、大人からのお説教でしょう」


41 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:02:38 bLelILkYO



 その後。

 先生は適当にそこら辺へ向かって説教を垂れた。

 ちょっと面白かったが、何故か俺が正座させられたのが納得いかない。



*****


42 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:04:49 bLelILkYO

 時と場所は変わって。

从;゚∀从「見えないし正体も分からない幽霊に説教って……やること滅茶苦茶だな」

( ゚д゚ )「いつものことです……。
     あと後半は『どうせなら僕のところに出てきなさい』ばっかり言ってました」

(-_-)「聞いてくれるといいね」

 居酒屋。
 俺は、例の先輩2人と居酒屋にいた。


 ──仕事を終えた先生が帰宅するというので、
 やむなく俺も大学を出る羽目になったのが一時間ほど前。

 ここまで来たらいっそ先生の家で一泊させてくれと頼んだが、

   (´・_ゝ・`)『女の子ならそれも考えたんだけどね』

 と一蹴された。酷い。
 妙に浮世離れした風でありながら、たまに、非常に低俗な言動が見られる。
 あの人は理解出来ない。

 そこへハインさんから「調子はどうよ」と電話が来て、
 これはもうここに賭けるしかないと思い、俺は携帯電話に土下座する勢いで頼み込んだ。
 「泊めさせてとは言わないから一緒にいてください楽しいことしてください」。必死だった。

 そうして、引き気味のハインさんが、じゃあ飲みに行こうかと提案してくれたのであった。


43 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:06:08 bLelILkYO

从 ゚∀从「ま、先生が言うのも一理あるかもな。
     悪戯にいちいちビビってたらガキは喜ぶ」

 言って、ハインさんはホタテのバター焼きを口に運んだ。
 香ばしい匂いがする。それでも食欲が大して湧かなかった。

(-_-)「初めから無視しとけば良かったんだ」

(;゚д゚ )「無視……ハインさん達だったら無視出来ます?」

从 ゚∀从「頭でかくて目玉無いガキにおどかされたら泣いて小便ちびるかな」

(-_-)「同じく」

(;゚д゚ )「ですよね」

从 ゚∀从「おどかし方も手がこんでるし。
     ──でもあれだ、プリンターのやつって、心霊現象の物的証拠だよな!
     先生に頼めば見せてもらえっかな」

(-_-)「僕も見たいなあ」

 どこか楽しそうなのは、やはり他人事だからだろう。
 ちくしょう。


44 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:07:43 bLelILkYO

(-_-)「ところでさ、ミルナ、これからどうすんの?
    まさか朝までここに居るわけにもいかないでしょ」

( ゚д゚ )「すぐそこのネカフェに行こうかなと……」

从 ゚∀从「個室とか入ったら死亡フラグだぞ。絶対オープン席な」

(-_-)「オープン席だろうとブースだろうと、ふと下を見たらテーブルの下に……なんてことはありそうだけどね」

(;゚д゚ )「何ですか。俺を怖がらせて楽しいんですか。先生と同類じゃないスか」


45 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:08:21 bLelILkYO

(-_-)「でも真面目な話、もしもまた幽霊出てきたらどうするの?」

( ゚д゚ )「……そりゃあ、……お、お祓い? とか?」

从 ゚∀从「まー最終手段だな。それも駄目だったら……」

(-_-)「お気の毒さま」

(;゚д゚ )「やめてくださいよ!」

 先生も先輩も酷い。誰も俺を癒してくれない。

 しかし──2人が言うように、霊が俺のもとから去らなかったら。
 どうしたらいいのだろう。

 うなじ辺りに寒気が走る。
 それを誤魔化すように、俺は美味くもない酒を呷った。



*****


46 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:10:38 bLelILkYO



(; д )「うおえええええ」

 悪酔いした。

 便器に向かって胃の中身をぶちまける。

 苦しい。
 怖さを紛らわすためとはいえ、飲みすぎた。弱いくせに。
 何杯飲んだっけ? 一杯二杯ではない。3、4……やめよう、数えるとますます気持ち悪くなる。

(;-_-)「ミルナ、大丈夫?」

 ヒッキーさんの声に振り返った。
 手を伸ばして個室の扉を開ける。
 ヒッキーさんは俺の顔を見るや否や、うわっ、と変な声をあげた。


47 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:11:44 bLelILkYO

(;-_-)「顔色わっるー……目死んでるよミルナ。
     水もらってくる?」

 まともに返事が出来ない。
 ヒッキーさんの手が俺の背中を撫でた。
 すぐに便器へ顔を戻し、再び嘔吐を始める。

 頭が痛い。がんがんする。

 意識が遠くなる。



.


48 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:13:05 bLelILkYO





(;゚д- )

(;゚д゚ )「あ?」

 気付くと便座に腰を下ろしていた。
 ズボンは身につけたままだ。

 ヒッキーさんはいない。
 席に戻ったか。

 幾分かすっきりしているが、まだ気分は悪いし頭も痛い。
 冷たい水が飲みたい。

 立ち上がり、扉を開ける。
 そのとき不意に思った。

( ゚д゚ )(トイレの雰囲気、違わないか?)


49 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:15:00 bLelILkYO

 個室を出て、足が竦んだ。

 きたないタイル。壁。
 個室の扉は4つ程度。
 汚れた「トイレは綺麗に」の注意書き。

 あの公園のトイレだ。

 足から力が抜け、座り込む。背中に壁の感触。


 トイレの入口近く、洗面台の前に、子供が立っている。


50 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:16:31 bLelILkYO

 巨大な頭。
 空虚な目。

〈ぐぅぇ……げぇっ……〉

 笑うでもなく、泣くわけでもなしに、喉からげっぷのような音を鳴らしながら、
 子供がこちらへ近付いてくる。

 立てない。
 荒くなる呼吸の合間に、ひ、ひ、と情けない声が混じる。

 子供が一歩進む度、ぐらぐら、頭が重そうに揺れていた。
 揺れは徐々に大きくなっていく。

 天井の明かりが、ちかちかと点滅している。

 俺との距離が半分ほどに詰められた瞬間、子供の頭が震えた。

 ぶつ。ずるり。

 首が千切れる。
 水風船が破裂するような音をたてて、どす黒い液体を撒き散らしながら頭は割れた。


51 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:17:38 bLelILkYO

(; д )「あ、あっ、」

 点滅が激しくなり、明かりが完全に消えた。
 周りが暗くなる。
 しかしそれも3秒ほど。一瞬で、また明るくなった。

 頭のない子供が、すぐ目の前にいた。
 触れ合いそうな距離。
 「ふはっ」。悲鳴にもならない呼気が俺の口から漏れた。

 子供の手が俺に伸びて。

 また、視界が真っ暗になった。



*****


52 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:19:04 bLelILkYO


 目を覚ましたら朝だった。
 公園の管理人らしき人に起こされるまで、俺はトイレの壁に凭れて気絶していたようだ。

 管理人は酒臭い俺に顔を顰めながら、「あんたがやったのか」と壁を指差した。
 俺の周りを囲むように、黒っぽい汚れが壁と床に描かれていた。

 自分の潰れた頭を壁に擦りつける子供の姿を想像し、俺は凍りついた。


.


53 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:21:02 bLelILkYO


(;-_-)「──ミルナ、自分で店出てったんだよ。
     急に吐くのやめてさ。『具合悪いから帰る』って。
     本当だよ! わざわざ公園に運んで置き去りにするほど僕ら外道じゃないよ」

从;゚∀从「お前まじでお祓い行けよ……」

 以上が先輩2人の証言。

 俺は先生に「いい神社紹介してください」と泣きながら頭を下げ、
 そういった方面で評判がいいらしい神社に連れていってもらった。
 諸々の費用は先生が出した。

 しかし、いざ神社に行ってみると、「特に何もいない」と言われてしまった。
 一応お祓いはしてもらったけれど。



 その後数日はびくびくしながら過ごしたが、子供の霊を見掛けることは二度となかった。


54 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:43:34 bLelILkYO



(´・_ゝ・`)「やっぱり僕の説教が効いてたのかな」

(;゚д゚ )「あれが?」

(´・_ゝ・`)「あの子はただ反省するような素直な子じゃなかったのかもね。反抗期?
        怒られたことで興をそがれて悪戯はやめることにしたけど、
        おとなしく引っ込むのも癪だから、最後に一発ぶちかましてやろうとした。なんて」

 ふふふ、と先生が生温く笑う。

 何というか。
 それが正解だったとして、

(;゚д゚ )「じゃあ実際に説教した先生の方にぶちかませよ!!」

(´・_ゝ・`)「本当だよ。何でミルナ君なんだ。
        ミルナ君もしかして相当ナメられてたんじゃないの」

(;゚д゚ )「ろくなもんじゃねえ」

 机に突っ伏す。
 窓の外から蝉の声。
 夏もそろそろ終わる。


55 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:45:45 bLelILkYO

 どうして俺は今、研究室にいるんだっけか。
 先生に呼ばれたからだ。
 懲りていないのではない。ゼミの教授に呼ばれた手前、無視するわけにもいかないだけで。

(´・_ゝ・`)「で、あの幽霊は本当に見掛けなくなったの?」

( ゚д゚ )「ないです。それらしい現象も全然。
     ……でもあれ以来、道端で子供が遊ぶ声とか聞くと、死ぬほどびっくりするようになりました」

(´・_ゝ・`)「へえ」

( ゚д゚ )「子供の幽霊が出てくる怪談とかもう絶対に無理です。聞いたら泣く」

(´・_ゝ・`)「そうかそうか」

 先生が立ち上がった。
 悠然とこちらに歩み寄ってくる。
 俺は顔を擡げ、後悔した。

 何だその凶悪な笑顔。


56 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:48:07 bLelILkYO

(´・_ゝ・`)「人って、嫌いなものや苦手なものには敏感になるよね。
        どんなに野菜を細かくして肉に混ぜても、野菜嫌いな子供はすぐに気付いたり。
        虫嫌いな子供が小さな虫を目敏く見付けたり」

 ここぞとばかりに子供を例えに出してくる辺り、陰険だ。

 俺は腰を上げた。即座に先生の手で肩を押さえられた。尻餅をつくように椅子に戻される。

 先生が隣の椅子に腰を下ろし、足を組んだ。
 誰か助けてくれ。


57 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:52:42 bLelILkYO

(´・_ゝ・`)「また廃病院で申し訳ないんだけどね。隣町にあるんだって。心霊スポット。小児科の。
        行こうか」

( ゚д゚ )「前にも思ったけど……先生、ろくな死に方しませんよ……」

 そうかもね。
 平然と答える先生の目に、今回も俺に拒否権はないのだろうと思い知らされた。

 この人の我が儘ぶりは、特定の方向──オカルト関係に遺憾なく発揮される。

 実に、実に子供っぽい。


58 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:54:06 bLelILkYO



( ゚д゚ ) 学生と先生の怪奇夜話、のようです (´・_ゝ・`)

      『子供の話』



終わり


59 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 00:56:28 vWUVB/MY0



60 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 01:00:14 bLelILkYO
以上です
先生はペニサスに対して蟻より小さく薄っぺらい猫を被っていたので
ミルナの方が扱いは若干酷い

ありがとうございました
質問・指摘あったらお願いします


61 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 01:40:00 8o7hL4Rs0
デミタス先生に関わったら最後、だな
でも面白いから、ヒッキーやハインと一緒に遠巻きに眺めたいわぁ
おつおつ!


62 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 01:52:22 uqJlqNJgO
なんでこの作者の怖い話しって怖いんだろ
楽しみにしてる、乙!!


63 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 01:56:25 4bm/dlLg0
せ、せんせい!


64 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 02:19:31 foOauoQ.0
お久しぶりです先生!!



65 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 03:48:41 eVvfpmfU0
先生!
相変わらず怖いなぁ、乙です


66 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 10:32:26 qOeLz.PE0
ミルナも大変だったんだな…

乙!


67 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 14:18:48 9RpExpAM0
しっかりペニサス出てくるあたり本当に芸が細かい
またスピンオフあったらお願いします


68 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 17:35:10 htBHmbgYO
先生!!
乙です!


69 : 名も無きAAのようです :2013/08/26(月) 20:42:34 DZKpxet2O
先生のキャラいいなあ
前作も好きでした



70 : 名も無きAAのようです :2013/08/27(火) 12:13:01 QEy.EJeU0
先生!
先生じゃないか!


71 : 名も無きAAのようです :2013/08/27(火) 21:25:54 fHC0gLBc0
面白かったぜ!


72 : 名も無きAAのようです :2013/08/28(水) 14:26:03 /0C7aFz20
廃校の話で言ってたやつか
面白かったぜ!


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