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('A`)は牢獄の中に囚われ続けているようです- 1 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/05(火) 01:39:40 ID:d0C9eZpU0
- ('A`)は監禁されてしまったようですの続き
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/lite/read.cgi/internet/13029/1345651845/l30
お題募集中です
ストック(上限は10個まで)がいっぱいになるまではいくらでもどうぞ
もらったお題(あと4個まで募集)
暗闇
死ねない呪い
酒浸り
烏
「聴こえる?」
NTR
少しだけ性的な描写が入る予定です
あとやっぱり鬱々としています
- 2 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/05(火) 01:41:50 ID:d0C9eZpU0
- 今でも鮮明に思い出すことができる。
高校二年生の春だった。
新入生歓迎会の後片付けを、彼女と一緒にして。
勢いでこう言ってしまった。
「ずっと好きでした!付き合ってください!」
ずっと、というのは、中学生の時からの話で。
まったく面識はなかったけど、その頃から彼女のことが知りたくて仕方がなかった。
一目惚れだったのだ。
潔癖そうで、人を寄せ付けないような雰囲気がとても好みで、たったそれだけで恋い焦がれていた。
彼女のために勉強をして、同じ高校に入って話しかけて、必死に印象付けをして。
ああ、だけど彼女はこう言ったんだ。
川 ゚ -゚)「悪いけど、好きな人がいるんだ」
と。
なんて月並みなフラれ方。
あまりにも平凡すぎて思わず笑ってしまったくらいだった。
彼女も、素直冷子も笑っていた。
川 ゚ー゚)「その子は女の子だから、気持ちを伝えられないけどね」
なんだ、それじゃあ付き合えないのか。
そう思ったら、フラれた悲しみはどうでもよくなってしまった。
そばにいて、今まで通りバカやって楽しめれば、それでいいじゃないか。
そんな言葉を呪詛のように胸の中に積み上げて。
それはあっさりと崩れてしまった。
暑い夏の終わりの出来事だった。
- 3 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/05(火) 01:44:13 ID:d0C9eZpU0
- ――あれから三年の月日が流れた。
素直に監禁されていた俺は、デレこと井手口玲香に救い出され、それ以来ずるずると付き合いを続けていた。
付き合い、といっても友人としてだ。
こんなひねくれものの俺にも友人ができるなんて、人生はかなりわけがわからない。
今日は久々に仕事が二連休で、その初日は井手口と一緒に出掛ける約束をしていた。
('A`)(おせえな)
駅前のショッピングモールの中にある喫茶店にいるのだが、音ががやがやして非常にうるさい。
こういうところは苦手だ。
('A`)(早く来いよ、まったく)
そう思っていたら、
ζ(゚ー゚*ζ「久しぶり。やつれた?」
と、いつもの気にくわない笑みを浮かべながら、彼女がやって来た。
('A`)「いや、そんなことはない」
事実、俺はわりと真っ当な人生を歩んでいるように思えた。
そこそこの収入はあるし、人間関係も希薄、互いに干渉することは稀で、俺にとっては天国のような場所だった。
というかやつれたように見えたのは、ずいぶん待ちぼうけを食らったせいだと思うのだが。
まぁ蒸し返すのも野暮だ。
('A`)「むしろ、井手口の親父さんに感謝してる」
ζ(゚ー゚*ζ「そう?病院の警備って大変だと思ってたんだけど」
('A`)「肌にあってたんだよ、多分」
- 4 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/05(火) 01:45:01 ID:d0C9eZpU0
- たしかに大変なこともあるし、面倒なこともあるけれど。
だけど、俺は井手口の親父さんの好意を無下にすることはできなかった。
('A`)(親とかそういうのには弱いんだよなぁ)
昔バイトしてたコンビニの店長しかり、井手口の親父さんしかり。
年上に優しくされるとどうしてもほだされてしまう。
ζ(^ー^*ζ「そっかー。でも、元気そうでよかったよ」
('ー`)「…………」
その言葉に、俺は曖昧に微笑んだ。
……一つだけ心に引っ掛かっていることがあった。
なんてことのない話。
だけどそれは、誰にも言えないことで、
ζ(゚ー゚*ζ「……どうかした?」
('A`)「いや、なんにも?」
じわじわと心を蝕む、黒い染みのような異物だった。
('A`)(……父親、か)
季節外れの寒風吹き荒ぶ三月の終わりごろ。
俺は、父親に、会った。
会ったというか、見つかった、というほうが正しいか。
誰もいない警備室で見舞いに来た人を受付していた時のことだった。
- 5 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/05(火) 01:45:55 ID:d0C9eZpU0
- ( ・∀・)「久しぶりだね」
張り付けた笑みを浮かべながら、あいつはそう言った。
('A`)「……あんたは、」
恐怖で足が突っ張った。
そこはかとなく息が苦しくなる。
( ;∀;)「なんでお前だけ生きてるの?」
( A )「あ…………」
( ;∀;)「彼女の代わりにお前が死ねばよかったんだ!!」
(i| A )「……、」
俺は、瞬く間に事故で入院していた時の記憶に呑まれていた。
( ・∀・)「知らない間にずいぶん大きくなったねえ。それに、三年前にはなんだか事件に巻き込まれたんだってね?」
(i| A )(おまえには関係ないだろ、)
なんともいえない怒りがこみ上げる。
でも口に出すのは憚られた。
とてもじゃないけど恐ろしくて。
( ・∀・)「風の噂で聞いたよ、同級生の父親のすねかじってるんだって?」
(i| A )(ちが、)
( ・∀・)「クズだなぁ。人の死を踏み台にして他人に寄生するなんて」
(i| A )(寄生なんて、してない!)
( ・∀・)「自分だけ幸せになるつもりなのか?」
(i| A )「…………」
( ∀ )「そんなの絶対に許さないよ」
- 6 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/05(火) 01:46:57 ID:d0C9eZpU0
- ('A`)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「……鬱田くん、聞いてる?」
('A`)「すまん半分寝てた。で、なに?」
すっとぼけて井手口に問うと彼女はむすっとした表情でこう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「だから、一緒に映画に行きましょうって話をしてたの!」
('A`)「映画かー。どこに?」
ζ(゚ー゚*ζ「隣の新束町にね、マニアックな映画を流してる個人キネマがあってね!」
('A`)(こいつはどこからそういうのを調べてくるんだか)
ζ(゚ー゚*ζ「ね、いいでしょう?」
小首を傾げて可愛い子ぶりながら井手口が言った。
なにも知らない男が見たら、少しときめくのかもしれない。
だけどこいつの趣味を知っている身としては、どこか気持ちの悪いものに見えた。
まぁでも、たまにはこんな休みもいいだろう。
('A`)「じゃあ行こうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「さすが鬱田くん、話が早いね」
嬉々としながら井手口は伝票をひっつかんでレジへとかけていった。
('A`)(やれやれ)
俺はすっかり冷めてしまったコーヒーをあおって、飲みほしてからレジへと向かった。
- 7 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 02:51:09 ID:eLWxspY.O
- 続き! ドクオどうなるか気になってたんだ
お題:戻らぬ恋
- 8 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 12:52:07 ID:HU29Noeg0
- お題
ダブルアナルファック
- 9 :<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
- <^ω^;削除>
- 10 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/06(水) 16:38:41 ID:IB4iG.Lg0
- 比府駅から三つ駅を通りすぎて新束駅へ。
それから後は井手口に任せて、適当にその背を追いかけて。
気づけばラブホテルやどんなテナントが入っているのかわからないビルが立ち並ぶ、なんだか怪しい場所にいた。
('A`)(男女で歩くと意味深だな)
だけど井手口の頭の中には、おそらく映画のことしかないだろう。
こいつは、グロテスクなものと猟奇的なものしか愛さないのだから。
('A`)(キチガイ乙)
ζ(゚ー゚*ζ「そこの角を曲がった路地にあるんだよー」
足取りが早くなった彼女を追いかけて、俺も早足になる。
ビルに入ってエレベーターの前へ。
井手口は下行きのボタンを押した。
('A`)(地下で映画とかなんかやばそうだよなぁ)
と思いつつ、少しこのアングラ感にわくわくしている自分がいた。
もしかしたら悪いことしているかもしれない、という高揚感だ。
('A`)(ガキかよ)
なんて思いつつエレベーターの中に入った。
ζ(゚ー゚*ζ「着いたよー」
- 11 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/06(水) 16:39:29 ID:IB4iG.Lg0
- 降りた先にはこじんまりとした受付があって、そこには男が一人いて。
(´<_` )
('A`)(ん、どっかで見たような?)
そんな気がした。
だけどとうとう思い出せず俺はチケットを買うデレの背中を見つめていた。
(´<_` )「いらっしゃい。今日は二人なのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、たまにはいいかなーって」
(´<_` )「珍しいな、彼氏?」
ζ(゚ー゚*ζ「ただの友達よ。というか音哉くんは鬱田くんと中学一緒だったでしょ?」
('A`)(は?)
(´<_` )「あ、」
まじまじと視線を感じる。
そして、
(´<_` )「うわ懐かしいな、元気にしてたか?」
('A`)「え、あ、まぁ……」
('A`)(全然覚えてねえ)
しかもそいつは嬉しそうに受付から出てきて、俺に近付いてきた。
(´<_` )「お前は相変わらず細いなー。メシ食ってるのか?」
('A`)「ん、まぁ……」
曖昧に言葉を返す。
状況を整理しよう。
こいつは音哉という名前で、どうも俺の中学時代の同級生らしい。
だけど俺はまったく覚えていない。
ちくしょう井手口め、余計なことしやがって。
- 12 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/06(水) 16:40:17 ID:IB4iG.Lg0
- ζ(゚ー゚*ζ「そういえばお兄さんは元気?」
(´<_` )「最近連絡してないけどまぁ元気じゃないかな」
('A`)(あ、)
そのやりとりで、なんとなく思い出した。
流石音哉。通称弟者。
俺の中学では有名な双子の片割れ。
そういえば、こいつの兄に馴れ馴れしく話し掛けられた覚えがある。
('A`)(毎回毎回そっけなくしてたのによく話し掛けてきたよな、あいつも)
音哉もとい弟者の印象はかなり薄い。
あまり話したこともないのに、こんな風に話しかけられるとなかなか反応に困るものである。
(´<_` )「まさか井手口ちゃんが鬱田と仲良しだったなんてなー」
ζ(゚ー゚*ζ「同じ高校だったし、色々あったんだよねえ」
('A`)「あー、うん」
('A`)(色々、ね)
(´<_` )「俺も高校に行けばよかったなぁ」
('A`)「あれ、高校にいなかったっけ」
(´<_` )「兄者は比府高に行ったけど、俺は中卒ー。家の手伝いしてた」
('A`)「……そうか、大変だな」
口ではそう言いつつも、べつになんとも思っていなかった。
- 13 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/06(水) 16:41:19 ID:IB4iG.Lg0
- (´<_` )「別に大変でもないさ。こう見えても意外とこの商売は繁盛してるしさ」
('A`)「そうかい」
いい加減相槌を打つのも疲れてきた。
それを察したのか、井手口は笑顔でこう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、そろそろ映画始まらない?」
(´<_` )「おっと。つい話し込んでしまって申し訳ない」
弟者が重そうな扉を開けて、仰々しく言う。
(´<_` )「ではじっくり、ご観覧ください」
('A`)(やっと口きかなくて済む)
そのことにほっとしながら、俺たちは薄暗がりのなかに足を踏み入れた。
- 14 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:25:38 ID:5sPE1Kcs0
- 映画の内容は最低最悪、悪趣味ここに極まりといった感じだった。
人魚の肉を食べてしまったせいで、死ねない呪いをかけられた男女の物語。
死ねないせいで彼らは悲惨な運命を辿り、烏が肉を啄む傍らで肉がもぞもぞと動き出して人形を取るところでそれは終わった。
なんて気持ちの悪い映画なのだろう。
それを井手口は、微動だにせず食い付くように見入っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、鬱田くん顔色悪いね?」
('A`)(そりゃ悪くもなりますわ)
まったく、本当にこいつは。
('A`)(頭がおかしい)
だけど、どうして、離れることができないのだろう。
居心地がいいと思ってしまうのだろう。
('A`)(別に異性として好きなわけでもないのに)
- 15 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:27:04 ID:5sPE1Kcs0
- 行きとは反対の電車に乗って比府駅に戻る。
改札を出て、井手口はショッピングモールに行こうとしたが俺は気乗りしなかったから、帰ることを告げた。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、また今度話そうね」
('A`)「おう」
たったそれだけ。
いつも通りの会話。
それでもまた、俺は井手口に会うのだ。
('A`)(不思議なものだ)
もしかしなくても、俺もおかしいのかもしれなかった。
('A`)(類は友を呼ぶっていうもんな)
明日は何をして過ごそうか。
一日中眠ってしまおうか。
('A`)(まぁなんでもいいや)
結局一人だし。
('A`)(うん、一人だ)
翌日はぼんやりと、ただひたすら眠って時間を潰し、休みは終わってしまった。
それでも浪費した気にならないのは、今までもずっとそうやって生きてきたからなのだろう。
('A`)(さて仕事だ)
- 16 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:28:32 ID:5sPE1Kcs0
- 病院の警備員の仕事は意外ハードだ。
見舞いに来た客に面会用の札を手渡したり、侵入者を見つけたら追いかけたり。
あと、
(#゚;;-゚)「守衛さん守衛さん」
('A`)(またか)
一番苦手なことだけど、患者の話し相手をしたりもする。
暇な時に限って、だが。
(#゚;;-゚)「昨日も一昨日もいなかったね」
('A`)「休みだった」
(#゚;;-゚)「そうなんだ。遊びに行った?」
('A`)「うん、まぁ」
(#゚;;-゚)「へぇ」
この、目の前にいる傷だらけの女はでぃというあだ名で呼ばれている。
本名は知らない。
彼女は昔、火事で家族を亡くしてから精神を病んで、精神科の開放病棟で暮らしていると言っていた。
そして本人も外に出る気はあまりないのだとも。
彼女は病棟が閉まるまでは、屋上庭園でのんびりしていることが多い。
で、俺も仕事をサボるのにそこを使う回数が多かったから、自然と顔見知りになってしまったのだった。
(#゚;;-゚)「守衛さん守衛さん」
('A`)「ん?」
(#゚;;-゚)「昨日友達ができたよ」
- 17 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:30:27 ID:5sPE1Kcs0
- ('A`)「そうかい」
それで話しかけられる回数が減ればいいんだけどなぁ。
そういうわけにもいかないだろう。
(#゚;;-゚)「あ、きた」
と、彼女が指差した先には。
∬´_ゝ`)
('A`)(ん?)
どこかで見た顔だった。
('A`)(昨日見た流石の弟にそっくり)
とは思ったが、わざわざ口に出すのも面倒だった。
だって、もし親戚筋だったらよけいに口を突っ込まれてしまうかもしれないから。
∬*´_ゝ`)「でぃちゃんおはよー。元気?」
ちょっとイラつく、甲高い声でそいつが言った。
(#゚;;-゚)「うん。それなり」
∬*´_ゝ`)「ならよかったぁ。あたしもうれしー」
('A`)(あ、だめだ生理的に無理なタイプだわ)
こういう馴れ馴れしいノリが俺は一番嫌いだ。
そそくさと庭園を後にしようとしたのだが。
∬´_ゝ`)「あ、もしかしてそこにいるのがでぃちゃんの話してた守衛さん!?」
('A`)(時すでに遅し)
- 18 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:31:39 ID:5sPE1Kcs0
- しかもがっちりと肩を掴まれた。
鳥肌がたつ。気持ちわるい。
とにかく不快だった。
('A`)「すいませんけど急ぎの用事が」
(#゚;;-゚)「サボりに来たくせに」
返す言葉もない。
だけどわざわざ言わなくたっていいだろうに。
どうしてこうも、俺の周りにいる女は迂闊にそういうことを言ってしまうんだろう。
悪態をつくが、もはやこれはどうにもならない。
仕方無く俺はにこにこと笑っている金髪の女に自己紹介をするはめとなった。
∬´_ゝ`)「鬱田くんって、ずいぶん珍しい名字ねぇ」
('A`)「はぁ……」
∬´_ゝ`)「あ、あたしは姉者ってあだ名なの」
('A`)「……本名は?」
∬´_ゝ`)「内緒」
('A`)(理不尽だ)
俺だけ名前を言って、あっちはあだ名だけだなんて。
とはいえこれ以上絡むのはめんどくさかった。
適当に流す。
(#゚;;-゚)「姉者さんは、守衛さんに聞きたいことがあるんだよね?」
∬´_ゝ`)「そうそう、ちょっとね」
('A`)(何を聞くつもりだ?)
- 19 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:32:39 ID:5sPE1Kcs0
- 俺は一介の警備員であって、まったく有名ではない。
顔だってよくない。
性格はもっとひどいけど。
だから。
∬´_ゝ`)「三年前の、素直冷子とあなたのことについて知りたいんだけど……」
('A`)(ああ、)
だから、その名前を久々に聞いたときには俺は納得したのだ。
('A`)(いつまでも素直の名前がくっついてくるんだなぁ)
そう思いながら、俺は記憶を掘り返す。
素直は井手口という同級生に執着していたこと。
しかしその井手口は何故か俺に話しかけてきたこと。
そのせいで素直は嫉妬に狂い、井手口が俺に興味をなくすまで、監禁されたこと。
一度素直に殺されかけたこと。
いつのまにか素直が殺されたこと。
その死体と何日も過ごして気がふれそうになったこと。
井手口に助けられて、その縁で彼の父親によくしてもらったこと。
淡々と、簡単にそれらを説明した。
誰も邪魔をしなかった。
そういえば、俺が主体となってこんなに長々と自分のことを話すのは久々だ。
いつもは他人に任せっぱなしだし、自分のことを聞かれることが少なかったものだから。
∬´_ゝ`)「なかなか壮絶ねえ……」
ううむ、と唸りながら姉者は言った。
- 20 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:35:10 ID:5sPE1Kcs0
- (#゚;;-゚)「素直さんを殺したひとはわからないの?」
('A`)「……そうだな」
('A`)(一時期井手口かと思っていたけど、結局確証はないしな)
∬´_ゝ`)「まさかあなたが殺したり?」
('A`)「できねえよ。足枷の鍵は素直が持っていたんだから」
∬´_ゝ`)「……そうよね」
('A`)「……気は済んだか?」
さすがに一時間もふらついていたら、サボりがばれてしまう。
∬´_ゝ`)「ええ、とても興味深い話が聞けたわ」
(#゚;;-゚)「もっと、守衛さんの話聞きたいな」
('A`)「おーそのうちな」
そうして、逃げるように庭園を後にした。
思えば俺のなかであの事件はとうの昔に終わってしまっていたけど、そう思っているのは俺だけなのかもしれない。
('A`)(井手口はともかく。他の連中は何も知らないから)
しかし普通は、その一線を越えてくる人間は今までいなかった。
触れてはいけないものだと思っているのだ。
それが、今日暴かれた。
('A`)(いや)
少しだけ。
少しだけあいつも言っていた。
( A )(クソ親父)
人生が狂ったのはあいつのせいだ。
母も妹も、みんな死んじまって。
そういえばあいつの親戚も全部クソだった。
そもそも勘当してたのにいきなり子供を押しつける父親も父親だ。
俺の顔が見たくないって理由だったらしいけど。
- 21 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:36:03 ID:5sPE1Kcs0
- ('A`)(俺も見たくねえ)
小さい頃から接点が薄いくせに、ずっと家にいて。
そのくせ俺が話しかけても空気のように扱った。
言葉をまともにかわしたのは、病院で罵倒されたくらいだろうか。
('A`)(……違うか。あれは一方的に悪意を向けられただけだ)
とかく、俺の存在はあいつにとって邪魔だった。
母と妹には、それなりに優しかったのだから。
('A`)(でも殺したのはあいつだ)
あいつが、いけないんだ。
……本当に?
从 ー 从「おにいちゃん」
視界の端に、ちらちらと影がうつる。
小さな声。
从 ー 从「待って、おにいちゃん」
('A`)(うるせえよ)
とてっとてっと、足音。
どうしてこうも、幻っていうのは生々しいんだろうか。
('A`)(早く死ねってか)
死にたいさ。
だけど死にたくないんだ。
どうしても。
俺は、卑怯ものだから。
- 22 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/08(金) 13:37:41 ID:5sPE1Kcs0
- お題募集中です
ストックがいっぱいになるまではいくらでもどうぞ
お題(上限は10個まで)
酒浸り
「聴こえる?」
NTR
戻らぬ恋
ダブルアナルファック
- 23 :名も無きAAのようです:2013/03/08(金) 14:30:18 ID:CUqaqd.E0
- 乙 前より読み易くなってて良いね
お題:ラーメン二郎
- 24 :名も無きAAのようです:2013/03/08(金) 15:39:41 ID:axxJisp.0
- ( ^ω^)は出てくるんでしょうか?
- 25 :名も無きAAのようです:2013/03/09(土) 01:25:09 ID:tMRUZWh2O
- おつー!登場人物増えた、どうなるのか楽しみ
- 26 :名も無きAAのようです:2013/03/09(土) 08:46:55 ID:JXFRzcRQO
- お題 誘惑
- 27 :名も無きAAのようです:2013/03/09(土) 09:52:36 ID:dd0KYfiM0
- お題 登山
- 28 :名も無きAAのようです:2013/03/09(土) 09:54:12 ID:YJV.eiTs0
- お題 ドクオの性欲
- 29 :名も無きAAのようです:2013/03/10(日) 17:19:04 ID:0V3hzsJo0
- お題「たまにはヤンデレも悪くないな…」
- 30 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:44:40 ID:jiTHLPxs0
- 今日も今日とて定時に上がった俺は、帰路につこうとした。
が、それを止めるのが一人。
∬´_ゝ`)「おつかれさまー!」
('A`)「なんのつもりだ、待ち伏せか?」
∬´_ゝ`)「んーん、べつにぃ? あなたと友好を深めたいなぁって思っただけ!」
('A`)「ストーカーみたいだな」
ぽろりとこぼれた言葉に、姉者はにんまりと笑ってこう返した。
∬´_ゝ`)「でも、あたしは好きな人がちゃあんといるのよ?」
('A`)「へえ。そうかい」
だからなんだっていうんだ。
その言葉を飲み込んで、俺は観念して言った。
('A`)「夕飯、まだか?」
∬´_ゝ`)「そうね、ラーメンが食べたいわ」
不気味な笑みが引っ込んで、代わりに今日の昼間に見たような、マイペースな笑みが表れる。
∬´_ゝ`)「ラーメン、ラーメン!」
無邪気にそう言って、彼女は歩きだした。
俺はひたすらその後についていった。
- 31 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:45:30 ID:jiTHLPxs0
- 繁華街を散々練り歩いてたどり着いた所は「豚骨拉麺 地平屋」。
下手くそな白字で、なにやら高尚めいた言葉が羅列している黒い看板が色んな意味で特徴的だ。
('A`)(最近のラーメン屋にありがちな感じだなぁ)
というか豚骨かよ。
めちゃめちゃ胃に来るじゃねえか。
ぶっちゃけ少食の俺にはキツくて仕方がないんだが。
∬´_ゝ`)「ここのラーメン最高なのよねぇ。ラーメン二朗って知ってる?そこにインスパイアされててー」
('A`)(でもこいつは食う気満々なのな)
というかラーメンオタクのようだった。
なんだよラーメン二朗って。
女が食うもんじゃねえだろ。
('A`)「はぁ……」
意気揚々と店のなかに入る姉者の背を見つめながら、思わずため息をついてしまった。
('A`)(サイドメニューしか頼まないぞ俺は)
そう決意しながら、俺はのれんをくぐった。
- 32 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:47:14 ID:jiTHLPxs0
- 店のなかはそこそこ混んでいた。
適当に空いているカウンターに座る。
( ^ω^)「いらっしゃいだお!」
∬´_ゝ`)「特盛豚骨ラーメン肉野菜ニンニク全部マシで」
呪文を唱えるように、姉者はなにかを頼んだ。
∬´_ゝ`)「鬱田くんは?」
壁に書かれたメニューを見る。
サイドメニューがいっさいない。
豚骨ラーメンしかないのかよ、ふざけんな。
('A`)「……豚骨の小盛りのニンニク抜きで」
( ^ω^)「了解ですお!」
小太りの店主がばたばたと動いているのを横目に、俺は問う。
('A`)「……それで、昼間の件についてなにか続きがあるのか?」
∬´_ゝ`)「あら分かっちゃった?」
('A`)「そもそもあの事件が目当てで、俺にはさして興味はないだろ?」
俺の一言に、姉者は水を一口飲んで、こう答えた。
∬´_ゝ`)「事件の真相を知りたいの」
('A`)「なんで?」
∬´_ゝ`)「……昔、知り合いが素直冷子に恋をしていた。結局フラれてしまったのだけど、それでもいいやと笑っていた」
('A`)(へえ、素直がねえ)
- 33 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:48:14 ID:jiTHLPxs0
- あいつのことを好きになるやつがいたのか、なんてひどいことを考える。
('A`)(俺よりはいるか)
∬´_ゝ`)「だけど彼女は殺されてしまった。その人は、気が触れてしまった」
('A`)「…………」
∬´_ゝ`)「その人のためにも、あたしは事件を追い続けようって、犯人に少しでも近付こうって、そう思ったの」
( ^ω^)「おっ、おっ、おまちどおさまだおー!」
テーブルにドン、と器が置かれる。
俺は普通のどんぶりで、姉者のそれは洗面器のような大きさであった。
∬´_ゝ`)「だから、あなたに近付いたの」
('A`)「それで勤め先まで調べあげたのか?」
∬´_ゝ`)「ええ」
なんてことのないような顔をしながら、姉者は割り箸を割ってどんぶりに突っ込んだ。
∬´_ゝ`)「だってあなたが一番彼女の近くにいたんだもの」
('A`)(だけど、俺は)
あいつのことなんて、これっぽっちも知らねえよ。
そう思いつつ、俺はつゆをすすった。
やっぱり豚骨は好かない。
食べきれるだろうか。
一心不乱に野菜と肉を頬張る姉者の姿を見ながら、そんなことを思った。
- 34 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:49:43 ID:jiTHLPxs0
- 小盛りですら食べきれなかった俺は、ぐったりと店の外のベンチに座っていた。
('A`)(きもちわりい)
姉者はいまだにあのラーメンと程遠いなにかを貪り食っていた。
よくもまぁ、あれだけの量を食べれるなと素直に感心していた。
噂によれば、どこぞの風変わりな喫茶店のメニューも遭難することなく食べきったらしいが。
('A`)(というかなんでわざわざ登山に例えるんだろう)
つくづくわけのわからない奴だった。
('A`)「…………」
「あれ。鬱田くん?」
不意に、声を掛けられた。
ζ(゚ー゚*ζ
そこにはつい最近、会ったばかりの顔がいて。
('A`)「なにしてんの?」
ζ(゚ー゚*ζ「サークルの飲み会の帰り」
('A`)「ああ」
そういえばそうだった。
井手口は大学生だから、人付き合いもそこそこあるんだろう。
だったらこんな遅い時間まで出歩いていても不思議ではないか。
ζ(゚ー゚*ζ「鬱田くんこそ、なにしてるの?」
('A`)「知り合いの飯待ち」
答えながら、店の入り口に視線を送る。
ζ(゚ー゚*ζ「へえ、知り合い……」
('A`)「今日知り合ったばかりだけどな」
ζ(゚ー゚*ζ「モテモテですなぁ」
('A`)「バカ言え……」
- 35 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:50:35 ID:jiTHLPxs0
- からかうような調子で放たれた言葉に、俺はそう返した。
会ったばかりのあいつを異性として意識してないし、色恋沙汰には縁遠いし。
('A`)(そもそも性欲は人よりかなり劣るというのに)
と、ほとんど自分で処理したことのない俺はそう思ったのであった。
∬´_ゝ`)「げふぅ……。あら、知り合い?」
からからと店の引き戸を閉めながら、ようやくラーメンをたいらげたらしい姉者が言った。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ζ(^ー^*ζ「井手口です」
∬*´_ゝ`)「玲香さん!あの、三年前の事件で鬱田くんを見つけた!?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、はい」
すると姉者の興味はさっそく井手口へと向かった。
さっきと同じように、姉者が素直のことを聞き出して、それに対して井手口がつらつらと答えていく。
あらかた情報を聞き終えた俺には、なんの用事もないだろう。
('A`)(ちょうどいい)
('A`)「二人とも話が長くなりそうだから、俺は先に……」
∬´_ゝ`)「えーつまんなーい」
ζ(゚ー゚*ζ「帰っちゃうの?」
('A`)「…………」
あ、だめだ。
これは一番めんどくさいパターンだ。
がっちりと二人に手を掴まれながら、俺はそう思った。
∬´_ゝ`)「飲みにいきましょー!」
ζ(゚ー゚*ζ「三次会いえいっ!」
('A`)(勘弁してくれよ……)
とはいえ、明日は遅番だ。
つれ回されたって、別に構いやしなかった。
('A`)(どうせ帰れそうにもない)
ずるずると二人に引っ張られながら、俺はそう思った。
- 36 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/10(日) 23:59:02 ID:jiTHLPxs0
- もらったお題(上限は10個まで)
酒浸り
「聴こえる?」
NTR
ダブルアナルファック
誘惑
「たまにはヤンデレも悪くないな…」
- 37 :名も無きAAのようです:2013/03/11(月) 00:02:23 ID:pROlHpIU0
- 乙。相変わらず性欲は無いままか
お題:生爪
- 38 :名も無きAAのようです:2013/03/11(月) 04:53:20 ID:EwiR8p.w0
- おまんこドリブル
- 39 :名も無きAAのようです:2013/03/11(月) 19:22:56 ID:uMQzqMe20
- 続きが楽しみだ。
お題:スレドニ・ヴァシュター
- 40 :名も無きAAのようです:2013/03/14(木) 00:01:33 ID:ooCqHwPg0
- 気付けば自宅の、しみったれた天井が目に入った。
('A`)「……頭いてえ」
唸りながら起き上がる。
そういえば昨日、姉者に送ってもらったような気がする、とおぼろげな記憶を手繰り寄せる。
∬´_ゝ`)「こんな壁の薄い部屋じゃ、女の子連れ込めそうにないね」
('A`)「好きになったことなんかねえよ」
∬´_ゝ`)「え、ないの?」
('A`)「ないない」
そんな会話を交わした覚えがあった。
('A`)(悪かったな壁が薄くて)
ちょっとむかつきながら、顔を洗う。
('A`)(今日も適当に生きよう)
午後一時に差し掛かった時計を見ながら、俺はそう思った。
- 41 :名も無きAAのようです:2013/03/14(木) 00:02:25 ID:ooCqHwPg0
- 病院の屋上庭園に行くと、でぃが一人で空を眺めていた。
天気がいい日ならともかく、曇り空を見ても余計に気分が落ち込みそうなものだが。
(#゚;;-゚)「あ、守衛さん。こんにちは」
('A`)「おう」
こんな灰色の空の日には、こいつはいつも同じ話をする。
耳にタコができそうなくらいに繰り返されたつまらない話だ。
(#゚;;-゚)「お母さんとお父さんが死んだのはこんな日だった。真夜中に火をつけられて、わたしだけ逃げてしまった」
('A`)「うん」
(#゚;;-゚)「わたし、今でも殺した人を怨んでる。家に火をつけたその人を」
('A`)「そうか」
(#゚;;-゚)「……、それは、わたしの知ってる人」
('A`)「……え?」
初めて言われた言葉に、思わず呟く。
(#゚;;-゚)「昔、みなしごを預かったときがあったの。でも仕方なしに引き取った子だから嫌いだったからいじめちゃった」
('A`)「…………」
(#゚;;-゚)「しばらくしてから追い出してそしたらまもなく火事があって」
- 42 :名も無きAAのようです:2013/03/14(木) 00:03:48 ID:ooCqHwPg0
- ('A`)「直接そいつが火をつけたところを見たのか?」
(#゚;;-゚)「でも逆恨みそうなのはそいつだけよ」
('A`)(逆恨みって)
それは、逆恨みとは言わないような気がした。
みなしごになりたくてなったわけじゃないだろ、きっとそいつだってさ。
と、俺は思ったしまったのだが。
('A`)(関係ないか)
だって俺はでぃとなんら関係がないのだから。
('A`)「……そういえば姉者とはどうやって知り合ったんだ?」
(#゚;;-゚)「守衛さんのことを探してたの。色んな人に話しかけてたみたい」
('A`)「へえ」
('A`)(物好きな奴だ)
あいつの、狂ってしまった知り合いとはどういう奴だったのだろう。
素直に惚れて、殺されて、気が触れて。
その姿をみた姉者は、何を思ったのだろう。
(#゚;;-゚)「それでたまたまここに来て、他愛ない話をして。守衛さんは、知り合いですよって言ったの」
('A`)「……そうかい」
なんだか気分が悪い。
なんとなく、一人になりたい気分だった。
('A`)「……ちょっと中戻るわ」
そう断って、俺は院内への扉をあけた。
振り返るとでぃは相変わらず空を眺めていた。
- 43 :名も無きAAのようです:2013/03/14(木) 00:05:59 ID:ooCqHwPg0
- 何事もなく仕事を終えて帰る道すがら、しばらく開いていなかった携帯電話を取り出すと、ちかちかと明滅。
('A`)(井手口からだ)
夜中の二時に、電話が掛かってくるなんて珍しい。
だけど呼び出しがたったの二秒だ。
すぐに電話を切ってしまったのだ。
('A`)(なんだったんだ?)
そう思いつつポケットにしまった時だった。
「うーつだくん」
いるんでしょう、という空耳。
違う、それは三年前のことだ。
('A`)「井手口……?」
何してるんだよ、という言葉が出てこない。
だって今は、明け方の五時なのだから。
ζ(゚ー゚*ζ「お仕事お疲れ様」
('A`)「……あ、ああ」
まただ。
この、得たいの知れない笑み。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、鬱田くん。たまには、わたしの家においでよ」
('A`)「……は?」
にこにこと笑いながら言われたその言葉は、本当にわけのわからないものだった。
- 44 :名も無きAAのようです:2013/03/14(木) 00:06:44 ID:ooCqHwPg0
- ('A`)「なに言ってんの、お前」
ζ(゚ー゚*ζ「今夜は君を離さない、みたいな?」
わけがわからない。
こいつがいまだに何を考えているのか、俺はわからない。
寝ぼけた頭じゃさらに理解ができない。
でもこいつはそうじゃなさそうだ。
そのまま帰す気もなさそうだ。
('A`)「……分かったよ」
ζ(゚ー゚*ζ「話が早くて嬉しいなぁ」
そうして、井手口はきびすを返して歩き始めた。
ああ、そうだ。
そうだった。
そういえばこいつは大学に通い始めてから一人暮らしを始めたと言っていた。
素直の暮らしていたマンションで。
素直の住んでいた部屋で。
一人で、住んでいるのだ。
他にも空室があったというのに。
('A`)(ほんとにこいつの考えてることはわけわからん)
その小さい背中を見つめながら、つくづくそう思った。
- 45 :名も無きAAのようです:2013/03/22(金) 23:09:02 ID:Sq75iCTQ0
- 続きktkr!!
まってるよー!
- 46 :名も無きAAのようです:2013/03/23(土) 09:39:38 ID:P8tYVoD60
- しえん
- 47 :名も無きAAのようです:2013/04/18(木) 23:24:01 ID:.N/FJ5Gs0
- うおおお....
- 48 :名も無きAAのようです:2013/08/07(水) 15:57:03 ID:B38zZfiQ0
- まってるー
- 49 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 10:52:20 ID:bbev9LdE0
- あの部屋は、すっかり様相が違っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「汚くてごめんねー」
部屋の電気をつけながら、井出口が全然申し訳なさそうに言った。
('A`)「片付けりゃよかったのに」
ζ(゚ー゚*ζ「思い立ったら吉日というのを実行するとこうなるんだよ」
('A`)「掃除も思い立てよ」
とはいえ、汚いとか散らかってるとか、そう思わなかった。
白とピンクのコントラストがいやでも目につく明るい部屋で、素直のようにこざっぱりしすぎなくて、写真たてやぬいぐるみかど適度に物が溢れた……まぁ、女性らしい部屋というやつなのだろうか。
('A`)(よくわからんけど)
ζ(゚ー゚*ζ「まぁ適当にソファに座ってよ」
('A`)「あーうん」
ソファの右側に座ると、少し間を開けてその隣に井出口が座った。
なんとなく距離が近い。
('A`)「そういえば大学は?」
ζ(゚ー゚*ζ「自主休講ー」
それはただのサボリじゃないのか、という言葉を飲み込む。
俺もよくサボっているからだ。
('A`)「で、どういう風の吹き回しなんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「べつにー? 」
('A`)「いやなんかあるだろ」
率直に感想を漏らすとけたけたと井手口が笑った。
あ、こいつ酒くさい。
またどこかで飲んでいたのだろうか。
にんまりとした笑み。
だけど、井出口はなにも答えなかった。
- 50 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 10:53:33 ID:bbev9LdE0
- ('A`)(気が重い)
やはり断ればよかったんだろうか。
そんなことを考えながら、制服の入った鞄をちらりと横目で見た時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「クーに監禁されてた時よりは全然ストレスないでしょ?」
('A`)「…………」
それを引き合いに出されたら、断れない。
ずるいぞ、それは。
心の中で恨み節を唱えながら、俺は渋々うなずいた。
相変わらずへらへらした笑みを井出口は浮かべていた。
やっぱりこいつの考えてることはわからん。
きっと何年経っても理解できないだろう。
もう十分、酒臭いのに、井出口はまだ酒を飲むと言って聞かなかった。
仕方がないので、俺もビールを飲んだのだが酒が回るよりも先に俺は眠ってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「あらー眠くなっちゃった?」
('A`)「夜勤明けなんだから、しょうがないらろ」
微妙に呂律が回らない。
とにかく眠かった。
ζ(゚ー゚*ζ「しょうがないねえ、じゃあ寝なよ」
小憎たらしくてむかつく言い方だ。
しかし言い返す気力もなく、俺は素直にソファに横たわった。
ζ(゚ー゚*ζ「おやすみ、鬱田くん」
('A`)「…………」
おやすみ、なんて言われたのは、久々だった。
('A`)「……ん」
どう返せばいいか迷って、俺は小さく呟いた。
- 51 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 10:54:25 ID:bbev9LdE0
- 目が覚めてあたりを見渡す。
白い部屋。
殺風景で整理がなされた部屋。
暑い室内。
ぐちゃぐちゃに描かれた悪趣味な抽象画。
( A )「っ……」
息が詰まる。
鼓動が早くなる。
素直。
素直、冷子。
(; A )「はっ、はっ……」
浅く息をしながら、思考を巡らす。
どうして、どうして井手口の部屋じゃない。
違う、たしかに寝たはずだ。
从 ー 从「おにいちゃん」
背後からの呼び声。
頭を揺らす。
(; A )「くるな」
反射的に拒絶する。
川 )「鬱田」
声。
また別の声。
素直?
川 )「鬱田さん」
違う、誰、誰だ。
川 )「鬱田さん」
(; A )「は、っあ、ぁ……」
川 々 )「鬱田さん」
だれ?
- 52 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 10:55:05 ID:bbev9LdE0
- ζ(゚ー゚*ζ「おっはよー鬱田くん」
不意に、声がした。
今度は、はっきりと。
('A`)「ぁ……、え?」
ζ(゚ー゚*ζ「っていってももうすぐお昼なんだけどね、よく寝れた?」
俺の顔を覗きこみながら、にこにこと井出口は笑う。
なんて悩みの無さそうな顔なんだ。
('A`)「能天気で羨ましい……」
思わず声に出てしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「わたしはわたしなりに色々悩んでるけどー?」
すると膨れっ面でそう返ってきた。
('A`)「そりゃ悪うござんした」
起き上がりながらそう返した。
ζ(゚ー゚*ζ「さてと、今日は休みなんでしょう?」
('A`)「あーうん」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあまた、映画を一緒に観に行こうね」
さりげなく予定を決められている。
お前は一体俺のなんなんだ、と言いたくなる。
言ってもきっと無駄なのだろうけど。
('A`)(調子が狂う)
声に出さずにぼやき、俺は台所へ水を飲みに行った。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、朝食というかお昼?があるからそれ食べてってよね」
('A`)「いや、いらない」
先程の夢の残滓が鉄か鉛のように胃のなかにつまっていて、とてもじゃないけど食べる気にはならなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあせめてスープ」
('A`)「…………」
- 53 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 10:56:55 ID:bbev9LdE0
- こいつって、本当になにを考えて生きているんだろう。
会話だけ聞いていたら、俺たちはまるで付き合っているようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「だめ?」
('A`)「……わかったよ」
そして、満更でもないことに気付いて、俺はいやになった。
('A`)(頭おかしいのに)
両者ともに、お互いに、だ。
ζ(゚ー゚*ζ「はいどうぞ」
と、差し出されたのはコーンスープだった。
('A`)「インスタントかよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あら手作りのほうがよかった?」
('A`)「それはそれで困る」
それこそ、恋人かなにかのようである。
インスタントでよかった、と内心ほっとした。
でも、どうして。
('A`)(インスタントだってことに文句言っちまったんだ)
熱いスープを流し込みながら、俺はふとそう思った。
- 54 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 10:59:43 ID:bbev9LdE0
- 例の、流石弟者の映画館へ行くために、俺たちは電車に乗っていた。
('A`)「どうせまたグロい映画なんだろ?」
扉近くの壁にもたれ掛かりながら、諦観した風に言うと井出口は頷いた。
ζ(゚ー゚*ζ「ギニーピッグシリーズって、とてもいい映画なのよ……っと」
車両が揺れる。
井出口が慌ててつり革に掴まる。
微妙に背が届いていないのが滑稽であった。
('A`)(ろくな映画じゃねえな)
まったくもって嫌な予感しかしなかった。
('A`)「大体さぁ、なんでそういうときに俺を誘うんだよ。お前他にも友達がいるだろ?」
すると、井出口はキョトンとした顔でこう言った。
ζ(゚、゚*ζ「友達?」
('A`)「こないだだって飲み会に行ってただろ。俺なんか、携帯に入ってる連絡先なんて職場とお前くらいしか……」
ζ(゚、゚*ζ「…………」
じぃっ、と井出口が俺を見つめる。
電車同士がすれ違う。
どちらが鳴らしたのか分からないが、警笛が耳をつんざいた。
だけど、しっかり聞こえたのだ。
- 55 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 11:00:47 ID:bbev9LdE0
- ζ(゚、゚*ζ「友達なんていないよ」
ゾッとするような、あまりにも冷めた声だった。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、降りなきゃ!」
早く早く!と急かされるままに俺は電車を降りた。
だけど不意に、線路に飛び込みたくなった。
(; A )(俺は、)
俺は、自分で思っている以上に、頭のおかしいやつと、付き合っているんだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、間に合わないよ」
手を握られ、先導されるがままに歩く。
あっさりと改札を抜けてしまって、俺はなぜか逃げられないと直感していた。
俺は、井出口から、逃げられない。
ζ( ー *ζ「そうそう、大事な話があるの」
なんともないような体で、彼女は口を開いた。
ζ( ー *ζ「映画なんか見なくていいから、ちゃんと聞いてほしいな」
俺は、ああ、と一言返す以外の言葉はなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「よかった、三年前より素直で」
茶化すようなその笑い声には、私怨がこもっているような気がした。
映画館まで、あと少し。
- 56 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 12:25:33 ID:JCvyZArcC
- まさかの続ききてた!
- 57 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 13:41:52 ID:QWyJN8w.0
- これは期待
- 58 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 15:59:11 ID:4suCwZG20
- 日本が代表するキチガイ映画ktkr
- 59 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 17:26:18 ID:2g1NbjM20
- ('A`)「…………」
映画館を出たあと、また井手口の家に戻ってきた。
家主は今不在だ。
提出し忘れたレポートがあるとかなんとか言いながら、慌てて家を出ていったのである。
('A`)(ねっむ)
しかし素直には寝付けなかった。
あの妙な夢をまた見てしまうのではないか、という不安が付きまとっていた。
あの夢は、今までに見たなかで一番不愉快であった。
しかも、あんな悪趣味な映画を見たあとでなんて。
(il A )「うええ……」
下水特有の臭いと生臭そうな魚の臭いを勝手に想像してしまい、思わず吐きそうになる。
思わずテーブルに置いてあった水を飲む。
井手口からもらった薬を飲むのに使ったので、半分しか残っていなかったが、吐き気は薄らいだ。
('A`)(本当に気持ちが悪い)
ソファーに横たわる前に、俺は薬の空袋を手に取った。
薄べったい長方形の角が手に食い込み、眠気が一瞬飛ぶ。
('A`)「…………」
これを投げたら。
('A`)(また、ろくでもない事柄に、巻き込まれる)
しかし、いまさらどうにもならないのだ。
諦めと、恐怖心に似た倦怠感を、薬の空袋とともにゴミ箱に投げ捨てた。
- 60 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 17:28:54 ID:2g1NbjM20
- ('A`)(あいつは、俺に会ってどうするつもりだったんだろう)
戸籍上でしか繋がりを思い出せない父親。
本当に、二人は愛していたのだろうか。
そういえば馴れ初めを聞いたことがない。
あいつはたしか大学まで出ていた。
しかし、母は中学までしか行っていない。
二人はどうして出会ったのだろう。
('A`)(難しいことを考えると、)
さらに眠くなる。
まぶたを閉じて、うつらうつらとする。
今日は、声は聞こえなかった。
その代わり、ガチャリとドアが開く音がした。
それが乱雑に閉まる音とともに、複数の足音が混濁した意識に届く。
('A`)(ああ、)
もう、もどれない。
力の抜けた体を誰かに掴まれながら、俺は眠りへと落ちていった。
- 61 :名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 17:32:30 ID:W3TzMw.M0
- お題の募集を停止します
お題のストック
酒浸り
生爪
「聴こえる?」
NTR
ダブルアナルファック
誘惑
スレドニ・ヴァシュター
「たまにはヤンデレも悪くないな…」
たぶんあと二回くらいの投下で終わります
- 62 :名も無きAAのようです:2013/11/16(土) 19:18:01 ID:Dlg9mBVo0
- わくてか
- 63 :名も無きAAのようです:2013/12/15(日) 12:40:53 ID:b4SUDMeo0
- お題とってもらえて嬉しい!
楽しみに待ってます!
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