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塔と民話のサーガのようです- 1 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:34:49 ID:pDGpqt6cO
- お題消化型gdgdファンタジー
お題提供は一日一人一個まで
ギャグありシリアスありのごった煮の予定
以下総合より拝借
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
透明な鳥籠
学園都市
足の小指をタンスの角で強打した時と同等の激痛を相手に与える魔法が使える魔法使い
逆さまの城
なくしたものを見つけられる能力
相も変わらず繰り出される放屁
お風呂のカビを根元から除去する魔法を使える魔法使い
以下プロローグ
- 2 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:35:54 ID:pDGpqt6cO
- これは、むかしのおはなし。
神様に愛された娘がいて、娘もまた神様を愛していた。
だけど、娘はヒトだから、神様の住う蒼空には行けなかった。
そこで娘は、神様に誓いを立てた。
「わたしはあなたのためにこの身をささげます。ヒトと交わることなく、千代の刻を過ごしたのなら、わたしはあなたにふさわしい、白くけがれのない女になるでしょう」
そうして娘は、誰もいない森で暮らし始めたという。
けれども、その娘が神様のもとへ行ったかどうかは、さだかではない。
――第一階層「出入口の国」に伝わる民話
- 3 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:37:40 ID:pDGpqt6cO
- 食料。
水。
メモ。
鉛筆。
少しの着替え。
お守り。
それから、折り畳み式のフレイル。
ζ(゚ー゚*ζ「…よしっ」
鞄の中身を確認した私は、蓋をしめた。
ζ(゚、゚*ζ「……明日からお務めかぁ」
お務め。
それは、私の一族が代々続けて行う仕事。
なにをするのかといえば、私が住んでいる「塔」の階層を登って、他に誰が住んでいるのかを探り、伝承を調べるのだ。
「塔」、というのは……あくまでも通称だ。
てっぺんは、天に届いてしまいそうなくらい高くて、外壁は赤黒い色でとても不気味だ。
伝承によれば、人が生まれた時から存在して、みんなその中にいたという。
私の住む階層は、第一階層で「出入口の国」と呼ばれている。
何故そんな名前なのかというと、他の階層に出る扉の他にも、「外」に繋がる扉があるのだ。
「外」には一度、双子の姉であるツンと一緒に出たことがある。
……とても恐ろしいところだった。
「塔」の中と違って、地面は赤茶けた土がむき出しになっていて、地割れがあちこちにあった。
そして、人の骨らしきものが散らばっていた。
- 4 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:39:03 ID:pDGpqt6cO
- そんな不気味なところだったから、みんな「外」には出たがらなかった。
……まぁ、たまに「外」に調査をしに行く人はいたけど、帰ってきた人なんていなかった。
それは、他の階層に行った人も同じなのだけれども……。
コンコン、とノックの音。
ツンかな?
ζ(゚ー゚*ζ「はぁーい」
ガチャリ、とノブを回す音。
入ってきたのは、私の父だった。
( ´_ゝ`)「夜遅くにすまない」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん、今荷物の確認してたの」
( ´_ゝ`)「そうか」
父は物静かな人だ。
彼もまた、私と同じように双子の弟がいたそうだ。
だけど私が生まれる前に、彼はお勤めをしに旅に出ていった。
それ以来、帰ってこなかった。
( ´_ゝ`)「…怖くないのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「全然。ツンは心配して泣いてたけどね」
不思議なことに、私の気持ちは穏やかだった。
これから死ににいくようなものなのにね。
( ´_ゝ`)「そうか」
父が、私の頭を撫でる。
くすぐったいな。
十七才にもなって、こんなことをされるのは。
( ´_ゝ`)「…デレ」
- 5 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:41:37 ID:pDGpqt6cO
- ζ(゚ー゚*ζ「なぁに?」
( ´_ゝ`)「…頼みがあるんだ」
そう言って父は、手紙を渡してきた。
( ´_ゝ`)「もし弟に…弟者に、会ったら渡してくれないか」
ζ(゚ー゚*ζ「弟者さんに…」
( ´_ゝ`)「生きてる可能性が少ないのはわかっている。だけど…どうしても伝えなきゃいけないことがあるんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……わかった」
手紙を受け取って、鞄の中にしまう。
( ´_ゝ`)「中身は見るなよ。これは俺とあいつだけの秘密だから」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなことしないわ」
ζ(゚ー゚*ζ(少し気にはなるけどね)
( ´_ゝ`)「……さぁ、もう寝なさい。明日の出発は早いのだから」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、おやすみなさい」
灯を消す。
扉が閉まる音。
ζ(-、-*ζ「…………」
少しだけ、心配なことがある。
お勤めには私の親友のくるうと、自警団のお兄さんがついてくる。
だけど、一人足りない。
いつもお勤めには仲間が三人ついてくるのに。
ζ(-、-*ζ(きっと、あれなんだよね)
みんな諦めかけているのだ。
「塔」の存在や、神様の説話、他の階層のことが明らかになることを。
ζ(-、-*ζ(それでも私は気になる)
だから、私はお勤めに行く。
そして姉に、ツンに伝えなくては。
- 6 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 18:42:04 ID:m/TPdPJA0
- お、もう書けたのか
早いな
- 7 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:45:12 ID:pDGpqt6cO
- 女の子が、私に背を向けて立っていた。
真っ白な髪。
床に引きずってしまうくらいの長さ。
ζ(゚ー゚*ζ(きれい、)
触れてみたいと思った。
ゆっくりと歩く。
気付かれてはいけないと思っていた。
本当は、近付いてはいけない存在なのだ、とも。
けれども触れることはできなかった。
彼女は、鳥籠の中にいた。
透明だったから、近付くまでわからなかった。
ζ(゚ー゚*ζ(……やめよう)
隔離されている。
やはり、触れてはいけなかったのだ。
諦めて、鳥籠から離れて、
ζ(゚ー゚;ζ「ひっ!!」
lw _ ノv「…………」
彼女が、いた。
背中しか見えていなかったのに。
lw _ ノv「…………」
顔は、髪によって隠されている。
だけど、唇だけは見えていた。
lw _ ノv「 」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
- 8 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:47:35 ID:pDGpqt6cO
- はたと気付けば見慣れた天井。
ζ(゚ー゚*ζ「……夢?」
変な夢であった。
ζ(゚ー゚*ζ(夢に整合性を求めるのもおかしいけど)
時計を見る。
朝の、七時。
出発は九時だからちょうどいい。
起き上がって、リビングへ向かう。
キッチンには、ツンがいた。
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう」
ξ゚⊿゚)ξ「……おはよう、デレ」
複雑そうな表情で、ツンが言う。
ζ(゚ー゚*ζ「今日の朝ご飯は?」
ξ゚⊿゚)ξ「ん…ハムエッグとフレンチトースト、あと野菜スープ」
ζ(゚ー゚*ζ「へぇ、豪華だね」
私の言葉に、ツンはうなずく。
ξ-⊿-)ξ「当たり前でしょ。…もうすぐかわいい妹が、いなくなるんだから」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
昨日から、ツンは泣いてばっかりだ。
双子のどちらかがお勤めに行くのは、昔からの決まりごとで、よく言い聞かされていたはずなのに。
ξ゚⊿゚)ξ「……そうだ。あとで練習をしましょ」
ζ(゚ー゚*ζ「えー、またあれやるの?」
ツンは縋るようなまなざしで、私を見た。
ξ゚⊿゚)ξ「あれが、使えなくなっていたらお勤めできなくなるもの」
ζ(゚ー゚*ζ「……わかったよ」
- 9 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:50:21 ID:pDGpqt6cO
- あれ、というのは……。
そう、一種の魔法のようなものだ。
先祖代々から、双子にしか使えない不思議な力。
それは、遠く離れた双子の片割れに、文章を送ることができるのだ。
言ってしまえばそれはテレパシーなのだけれども、少し方法が特殊なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「お待たせ」
テーブルに、料理が並べられる。
ζ(゚ー゚*ζ「おいしそう…」
ξ゚⊿゚)ξ「私が作ったんだから当然よ」
ζ(^ー^*ζ「いっただきまーす!」
ナイフとフォークで、フレンチトーストを切り分ける。
口の中に入れたそれは甘くてハチミツの香りが、ふわって鼻に抜けていった。
もふもふのふかふかでしっとりやわらか。
たまらない!
ζ(>ー<*ζ「おいし〜!」
思わず足をバタバタする。
ξ゚⊿゚)ξ「こらこら、はしたないわよ」
ζ(>ー<*ζ「だっておいしいんだもん」
もぎゅもぎゅと咀嚼。
うん、至福。
ζ(´ー`*ζ「こんなおいしいご飯を作れる嫁さんをもらえて、ブーンさんは幸せ者だねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっとそれは関係ないでしょっ」
ζ(゚ー゚*ζ「ありますー。だって結婚するんだからさ!」
- 10 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:52:54 ID:pDGpqt6cO
- ξ゚ー゚)ξ「…………」
ツンは、ただ静かに笑うだけだった。
なにこれ。気まずいじゃない。
からかいついでに、お祝いしただけなのに。
ζ(゚ー゚*ζ「……ツン、」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、やってよ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
言われなくても、分かった。
私は、棚の引き出しからペンと紙を出した。
それにサラッと一言を書いて、小さく畳んだ。
静かに息を吸う。
そして、手のひらに置いた紙に向かって、ゆくりと息を吐き出した。
紙が、ふわりと舞う。
同時に、それは小さな蝶に変化した。
ゆらゆらと揺れながら、蝶は飛ぶ。
私の半身である、ツンのもとへ。
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ツンは、黙って蝶に手を伸ばす。
手に触れた途端、蝶は紙に戻った。
ξ゚⊿゚)ξ「……ちゃんと、出来たね」
バタフライエフェクト。
周りの人達は、そう呼んでいる。
今までお勤めに行った人達は、これを使って、ここに残された双子に情報を届けていた。
だから私の家には、膨大な記録があり、幼少の頃からそれらを頭に叩き込まれてきた。
……とはいえ、他の階層は行く度に違う国になっているそうだから、あまり意味がないように思えるんだけど。
ξ゚⊿゚)ξ「……ほんとに、行っちゃうの?」
ツンの言葉にうなずいて、わたしはハムエッグに手を伸ばした。
早く食べないと、集合時間に間に合わない。
- 11 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:54:54 ID:pDGpqt6cO
- 朝食を食べ終えたら、もう一度荷物の確認。
それから家を出て、集合場所である扉へ向かう。
その途中で、私はくるうに出会った。
ζ(゚ー゚*ζ「くるう!」
川 ゚ 々゚)「あ、デレ」
笑ってるんだかぼんやりしてるんだか分からないような顔で、くるうは私を見た。
くるうは、お医者さんでもあり、魔法使いでもある。
その二つを合わせた、「魔療」というものが使えるんだそうだ。
……怪我したことないから、どんな風に治してくれるのか分からないけどね。
川 ゚ 々゚)「もうすぐだねー」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。でも本当にいいの?」
川 ゚ 々゚)「いいのー」
長い黒髪をいじりながら、くるうは言う。
川 ^ 々^)「汝のために己を殺せ、だもの」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
その言葉は、くるうの家に伝わる教えである。
なんとも物騒な言葉だけど、その自己犠牲の精神のおかげで、貴重な仲間が増えた。
感謝すべきなのだ、本当は。
- 12 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:56:15 ID:pDGpqt6cO
- 川 ゚ 々゚)「それよりこの服どうー?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、かわいいよ」
川*゚ 々゚)「ほんとー?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、ほんとほんと」
シンプルな赤いワンピース。
ふんわりと広がった裾には、黒いレースがついている。
とてもかわいいけど、返り血が目立たなさそう、と考えてしまう私はまったくおしゃれに興味がなかった。
今の格好だってそうだ。
ハーフパンツと、飾り気のないシャツブラウス。
それから、父からプレゼントされたトレンチコート。
ζ(゚ー゚*ζ(少しだけ、おしゃれしてみたらよかったかな)
なんて考えてももう遅い。
もう少し歩いたら扉に着くのだから。
- 13 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 18:58:10 ID:pDGpqt6cO
- そうしてしばらく歩いていると、
【+ 】ゞ゚)
扉の前に背の高い男の人がいるのを見つけた。
お勤めに着いてくる自警団のお兄さんだ。
彼はものすごく大きな鞄を持っていた。
横に長い、棺桶みたいな鞄。
ζ(゚ー゚*ζ(重くないのかな?)
川*゚ 々゚)「オサムー」
くるうがぱたぱたと走って、その人のもとへ行く。
彼女は、オサムさんのことを慕っているのだ。
川*゚ 々゚)「おはようオサム。その荷物はなぁに?なにが入っているの?」
まくし立てるようなくるうの口調に、オサムさんはゆっくりと返事をした。
【+ 】ゞ゚)「おはよう、くるう。これには、旅に使うものと武器が入っているんだ」
川*゚ 々゚)「そうなんだぁー」
ζ(゚ー゚*ζ「……おはようございます」
【+ 】ゞ゚)「ああ、おはようございます、デレさん」
……実は、オサムさんのことは苦手だったりする。
彼はいつも無表情だし、少し年が離れているし、あまり面識がないからどのような人柄なのかまったく知らないからだ。
【+ 】ゞ゚)「これで、仲間は全部ですか?」
オサムさんの言葉にうなずこうとした時だった。
「デレー!!」
- 14 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 18:58:47 ID:GqmXpCBkO
- こんなに早くあの安価を用いて話を考えるだなんて・・・
なんと勇ましい
- 15 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 19:00:26 ID:pDGpqt6cO
- 突然聞き覚えのある声が聞こえた。
ζ(゚ー゚;ζ「ドクオ!?」
ドクオ、というのは木こりであるネーヨさんの息子で、私の幼馴染みである。
その彼が、リュックを背負ってこちらに来ていた。
ζ(゚ー゚;ζ「ど、どうしたの?」
('A`)「俺も行く!」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ」
('A`)「だって、三人しかいないんだろ?」
ζ(゚ー゚;ζ「まぁそうなんだけど…」
ちらりと私はくるうとオサムさんを見る。
川 ゚ 々゚)「まーいいんじゃなぁい?仲間不足なのは本当だし」
くるうは、どうでもよさそうに答えた。
彼女、意外とめんどくさがりなところがあるのよね。
【+ 】ゞ゚)「……きみは何か取り柄を持っているのか?」
オサムさんが静かに聞く。
彼のまなざしは品定めをするようなものだった。
('A`)「木こりの息子なんで…斧の使い方には慣れています」
【+ 】ゞ゚)「…くるうの手にも負えないような怪我をしたら置いていくが、それでもいいのか」
('A`)「……はい」
その言葉に、私は不安になる。
- 16 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 19:02:08 ID:pDGpqt6cO
- ζ(゚ー゚;ζ「いいの?ネーヨさんにはちゃんと許可もらったの?」
('A`)「三日間喧嘩したけど最終的には「シラネーヨ、好きにしな」って言われた」
ζ(゚ー゚;ζ「…………そう、」
穏やかそうな顔をしているのに、なかなか強烈なことを言う人なんだ。
ネーヨさんの印象を上書きしつつ、私は言った。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ…くれぐれも死なないように、ね?」
('A`)「おう」
川 ゚ 々゚)「お話しおわりー?」
【+ 】ゞ゚)「やっと出発か?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、お待たせしました」
扉まで歩いて、ノブに手をかける。
ζ(゚ー゚*ζ(緊張するなぁ)
そう思いつつ、ノブを回して扉を押した。
扉の向こう側は、どうなっているのか分からない。
深呼吸をして、私達は中へ入っていった。
プロローグ 第一階層「出入口の国」 了
- 17 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/02(火) 19:05:55 ID:pDGpqt6cO
- これからデレ達はたくさんの階層もとい国を旅していきます
どんな旅になるかはまだ分かりません
>>1のお題と皆様がたのお題を取り入れることでこの旅は進展していきます
では今日はこれで失礼
- 18 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 19:25:10 ID:GqmXpCBkO
- 乙 期待してる
お題 森の中の町
- 19 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 19:35:43 ID:TlR4UOSc0
- 期待期待
お題 魔物とキャッキャッウフフ
- 20 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 21:07:38 ID:m/TPdPJA0
- 乙
- 21 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 21:26:18 ID:kKUEHn0s0
- 乙乙!期待してるー!!
- 22 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 21:54:06 ID:EDF8jK920
- 乙
- 23 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:06:11 ID:SFfzYyVoO
- おはようございます皆様がた
ゲリラ投下の時間でございます
- 24 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:07:18 ID:SFfzYyVoO
- 神様は全知全能の存在だと言われている。
ならば、学徒は神様と同等の存在ではないのだろうか?
人よ、あくなき探求心を抱け。
醜悪と言われようとも、知識を食らい尽くすのだ。
――第二階層「学園都市の国」に伝わる言葉
- 25 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:10:21 ID:SFfzYyVoO
- 扉を抜けたその先には、よく手入れがなされた樹々に囲まれた道があった。
けれども、その道には赤い煉瓦が敷いてあったから、人の手が加わっていることは明らかだった。
ζ(゚ー゚*ζ「ここは……」
('A`)「…なんか、すごいところに来たな」
【+ 】ゞ゚)「こっちの国よりは発達していそうだな」
川 ゚ 々゚)「早く行こうよー」
ζ(゚ー゚*ζ「くるう、落ち着いて」
はしゃぐ気持ちはわかるけど、どんな人があるのかはまだ分からない。
親切な人だったらいいけど、よそ者を嫌う人だったら困る。
もっと困るのは、人がいないことだけど。
とりあえず、前進。
…といっても、くるうとオサムさんは先に歩いているけど。
('A`)「デレ?」
ζ(゚ー゚*ζ「…なんでもない」
協調性がないパーティである。
これからのことを憂いながら、私は三人の後を追う。
ちらりと振り返ったそこには、ずっと同じような樹々と道しかなくて。
扉なんてなかったよ、と言っているようだった。
- 26 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:12:14 ID:SFfzYyVoO
- ほどなくして私達は、
ハソ ゚−゚リ「そこで何をしているの?」
初めて人に出会うことができた。
ブレザーを身に着け、前髪をピンで止めているその女の子は、潔癖そうな印象があった。
ζ(゚ー゚*ζ「私達、旅をしているんです」
ハソ ゚−゚リ「あら、旅人さんでしたか。ごめんなさい、国から逃げた生徒かと思って」
恥ずかしそうにはにかむ彼女は、さらに続けた。
ハソ ゚−゚リ「私は、学園都市高等部委員生生徒会長のなちと申します」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ。この人達は仲間のくるうとドクオ、それからオサムさん」
ハソ ゚−゚リ「よろしくお願いします」
彼女は、深く礼をした。
なんだかやりずらいな、堅苦しい。
川 ゚ 々゚)「ねぇねぇ、学園都市ってなぁに?」
ハソ ゚−゚リ「学園都市は、学徒のために作られた国です」
ζ(゚ー゚*ζ「国なの?」
思わずこぼしてしまった言葉に、なちさんは苦笑いする
ハソ ゚−゚リ「はい。驚くでしょうが、国には学徒と奉仕者と呼ばれる人しかいません」
ハソ ゚−゚リ「学徒は、私のように制服を身に着けて勉学に励む者を指します。奉仕者は、学徒が心地よく勉学に励めるように環境を整える方達を指します」
- 27 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:14:21 ID:SFfzYyVoO
- さかさかと歩きながら、彼女は説明する。
それにしても足が早い……。
オサムさんくらいしかちゃんとついてこれてないよ、なちさん。
ハソ ゚−゚リ「そして学徒にも種類があります。一つは一般生、もう一つは委員生。一般生の中でも抜きんでた能力を持つ学徒が委員生になります」
ζ(゚ー゚*ζ「委員生…?」
駆け寄りながら、問い掛ける。
ハソ ゚−゚リ「委員生は国全体の動向を、自由に操作できるのです」
('A`)「なにそれこわい」
すると、なちさんはきょとんとしてこう言った。
ハソ ゚−゚リ「怖い、ですか?」
('A`)「だって、なちさんは学生なんだろ?まだ子供なのに、国を操れるって…」
ハソ ^−^リ「……ああ、なるほど」
なちさんは、からからと笑いながら説明をする。
ハソ ゚−゚リ「昔から、この国にこんな言葉があるんです」
ハソ ゚−゚リ「神様は全知全能の存在だと言われている。ならば、学徒は神様と同等の存在ではないのだろうか?
人よ、あくなき探求心を抱け。醜悪と言われようとも、知識を食らい尽くすのだ」
- 28 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:19:10 ID:SFfzYyVoO
- なちさんの言葉を必死に覚えながら、私は聞く。
ζ(゚、゚*ζ「神様?」
ハソ ゚−゚リ「そう。私達委員生は、まだまだ神様の足元には及ばない…。だけど、このまま勉学をし続ければ、いつかは神様になれるはず」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ハソ ゚−゚リ「その言葉を信じて、生まれた時から知識を食らい、吸収して、身につけてきたんです」
('A`)「…すごいですね」
ハソ ゚−゚リ「これくらい、全然よ」
ζ(゚、゚*ζ(……神様、かぁ)
なぜだか、ぼんやりと胸を打つものがあった。
ζ(゚、゚*ζ「…………」
【+ 】ゞ゚)「デレさん?」
ζ(゚ー゚;ζ「あっ…なんでもない、です」
【+ 】ゞ゚)「そうですか。もうすぐ着くそうですよ」
オサムさんの指差した先には、ずらりと並ぶ塀と、巨大な門扉があった。
なちさんは、ブレザーのポケットから鍵を取り出して門扉の鍵穴にそれを差し込んだ。
川;゚ 々゚)「これだけおっきーと、開けるの大変そー」
ハソ ゚−゚リ「いえ、一部しか開きませんから」
ガチャリと開いた扉は、家で使っているものと大きさが変わらなかった。
川;゚ 々゚)「門扉の意味…」
【+ 】ゞ゚)「こんな大きな扉を開けられても困るが」
もっともだけど、一瞬わくわくしたのに。
ハソ ゚−゚リ「ようこそ、学園都市の国へ」
- 29 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:21:19 ID:SFfzYyVoO
- 国内に入った私達は、学徒と奉仕者達から熱烈な歓迎を受けた。
それはもう、すさまじかった。
ぜひ我が家に泊まりに来てくれ!という人が多すぎたのだ。
結局は、なちさんの家に三日間泊まることとなったのだが。
ハソ ゚−゚リ「狭いけど、ゆっくりしていって」
ζ(゚ー゚;ζ「…充分です」
ζ(゚ー゚;ζ(一人暮らしなのに、なんで客室が六つもあるんだろう)
ものすごく豪華だった。
ζ(゚ー゚*ζ(私のいた国でもこんな家なかったんだけど)
とりあえずそれぞれの客室に荷物を置いて、私達は、日が暮れるまでなちさんに国の中を案内してもらった。
寄ってくる学徒は、なちさんが必死に追い払っていた。
文化は、私達の国よりも発展しているようだった。
ハソ ゚−゚リ「ここでは、勉学の他にも研究をする方もいますからね」
('A`)「へぇ、これは?」
ハソ ゚−゚リ「これは懐中時計。超鋼で出来ていて傷つきにくいんですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「すごい…」
ハソ ゚−゚リ「それほどでもありません」
こんな小さな時計、初めて見た。
少し欲しかったけど、やめておいた。
国の半分まで見終わった頃、日が沈み始めた。
川 ゚ 々゚)「おなかすいたー」
ハソ ゚−゚リ「じゃあご飯を食べに行きましょう」
- 30 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:22:45 ID:SFfzYyVoO
- なちさんは、奉仕者が経営している食堂に連れていってくれた。
それぞれ好きなものを頼んで、待っていた時のことだった。
【+ 】ゞ゚)「……ここの住人は好奇心旺盛ですね」
今まで無口だったオサムさんが、ぼそっと呟いた。
ハソ ゚−゚リ「ええ、外部から人がやってくるのはめったにないので」
まぁたしかに、国から出る人なんてめったにいないだろう。
ハソ ゚−゚リ「あなた達の生活や文化を知りたいのでしょうね」
【+ 】ゞ゚)「なるほど」
それから、なちさんに根掘り葉掘り色々なことを聞かれた。
大体の質問は、私とドクオが答えた。
オサムさんはこういうの嫌いそうだし…というかまったく興味がなさそう。
くるうも口を利くのは面倒だというような子だから期待できなかった。
ハソ ゚−゚リ「へぇ、「外」にも出れるんだ」
('A`)「でも、誰も戻って来なかったんだ」
- 31 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:24:44 ID:SFfzYyVoO
- ハソ ゚−゚リ「…みんなどこに行ってしまったんでしょうね」
川 々 )「さぁ? わたしにはわかりませーん」
ダン!とハンバーグにフォークを突き刺しながらくるうが言った。
ζ(゚ー゚;ζ(あ、)
ちょっとまずかったな。
というのも、くるうの両親は「外」の冒険についていったのだ。
ζ( ー *ζ(汝のために己を殺せ、か)
一体誰がこんな家訓を考えたのやら。
そう考えているうちに、私の手は止まっていた。
ハソ ゚−゚リ「…お口にあいませんでしたか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、お腹がいっぱいなんです」
あいまいに微笑みながらそう答えた。
- 32 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:26:12 ID:SFfzYyVoO
- 次の日、私とドクオはなちさんとともに学徒用の図書館を訪れた。
くるうは、オサムさんと一緒に市場へ行った。
ζ(゚ー゚*ζ(くるうはこういうところは苦手そうだなぁ)
私語飲食一切禁止なものだから、とても静かであった。
昨日みたいに学徒が大量に押しかけてくることがないから快適といえば快適だけど。
一冊の本を借りて、閲覧室に移る。
ここなら多少の私語は可能だそうだ。
ハソ ゚−゚リ「これが、民話の本ですね」
なちさんから、うすべったい本を受け取る。
パラパラとめくると、昨日なちさんから聞いた、神様と勉学の話が載っていた。
('A`)「……これしかないのか?」
ハソ ゚−゚リ「ええ」
他にももっとあるはずじゃ、と言おうと思ったけどそれはやめた。
考えてみれば、私の国にも民話はもともと一つしか伝わっていなかった。
それが、バタフライエフェクトによって各国の様々な民話が蒐集されただけの話。
ζ(゚ー゚*ζ(各国には一つしか民話がないって本当なんだ)
そう思いながら、ページをめくると、なちさんの口からは聞かなかった言葉が見つかった。
「ただし、肥大し過ぎた好奇心は己を殺すこととなるだろう」
- 33 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:28:11 ID:SFfzYyVoO
- ζ( ー ;ζ(なに、これ)
私はそこ知れぬ恐怖を感じた。
ハソ ゚−゚リ「ああ、これですか?」
なちさんが、身を乗り出して説明する。
私の手が震えていることには、気付かずに。
ハソ ゚−゚リ「これは、学園都市にいれば叡智をきわめることができるが、国外に出てしまったらそれは出来ない、という意味なの」
ζ( ー ;ζ「…………」
本当に、そうなのだろうか?
ハソ ゚−゚リ「だから、ここから出ていく人はいないんです」
('A`)「……気にならないのか?もっと「外」を知りたいとは思わないのか?」
ハソ ゚−゚リ「いいえ、そんな不必要なことはしません」
('A`)「…………」
ハソ ゚−゚リ「だって、過度の好奇心は、身を滅ぼすと書いてあるのですから」
- 34 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:29:48 ID:SFfzYyVoO
- 気分が悪くなってしまった私は、ドクオの手によって外に連れ出された。
ζ(゚ー゚;ζ「ごめん、ドクオ…」
('A`)「いや、それより平気か?」
ζ(゚ー゚;ζ「うん…」
あの一文が、頭から離れない。
私達の旅を否定されているようだった。
ζ(゚ー゚;ζ「…ドクオ、私のしていることは正しいよね?」
('A`)「…それはわからない」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「だけど悪いことだって思ってない。思ってたら着いてこないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……そっか」
少し沈黙。
それから深く息を吸う。
私は、目の前の噴水を眺めながらドクオに言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、さっきの話の率直な感想を言ってもいい?」
('A`)「ああ」
ζ(゚ー゚*ζ「…私のやってることが無駄だと言われているような気もしたんだけどさ。他にももう一つあってね」
('A`)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「ここの住人を外に出さないようにしている気がしたの」
('A`)「……」
- 35 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:31:27 ID:SFfzYyVoO
- ζ(゚ー゚*ζ「なんでだろうね。あらゆる知識を吸収しろって言っておきながら、行動に制約をかけてるんだよ?」
('A`)「……その話を作った人にとって、都合が悪いからじゃないか?」
ζ(゚ー゚*ζ「そうね……。だけどそれは一体誰が広めたんだろうね」
喋っているうちに、段々元気を取り戻してきた。
私は饒舌になり始めていた。
ζ(゚ー゚*ζ「そもそも、国内だけでどうしてこんなに発展しているのかしら?住人が学徒と奉仕者しかいないから?」
口が乾燥している。
舌がまわらない。
ζ(゚ー゚*ζ「だとしてもおかしいわ。所詮は小さな国なのに、こんな発展を遂げているなんて、まるで…」
('A`)「神様に操られているようだ、って?」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん」
('A`)「……まぁ、あれだよな」
青い空を見上げながら、ドクオはこう言った。
('A`)「勉強だけで神様になれたら苦労はないよな」
- 36 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:33:21 ID:SFfzYyVoO
- その後のことは、特筆することもない。
なちさんの家にもう一泊して、旅を再開するだけだった。
ハソ ゚−゚リ「本当に行ってしまうんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ」
ハソ ゚−゚リ「そうですか…」
残念そうになちさんは言った。
それから、彼女はブレザーのポケットから小箱を取り出した。
ハソ ゚−゚リ「餞別の印に、これをどうぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「開けてもいい?」
ハソ ゚−゚リ「どうぞ」
開けてみると、中には、あの小さな時計が入っていた。
ハソ*゚−゚リ「職人が持っている技術を全て使って作った時計です。決して、狂うことはありません」
誇らしげに、彼女はそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
ハソ ゚−゚リ「いいえ、お気をつけて」
私達はなちさんに見送られながら、学園都市の国を後にした。
川 ゚ 々゚)「ねーえ、オサムー」
【+ 】ゞ゚)「なんだ?」
川 ゚ 々゚)「絶対とか決してとかってあるのかなぁ」
【+ 】ゞ゚)「さぁな。だけど……」
川 ゚ 々゚)「?」
【+ 】ゞ゚)「国の中しか知らないような奴等が作るものなんて、たかが知れてると思うぞ」
第二階層「学園都市の国」 了
- 37 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 10:34:13 ID:SFfzYyVoO
- お題まとめ
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
足の小指をタンスの角で強打した時と同等の激痛を相手に与える魔法が使える魔法使い
逆さまの城
なくしたものを見つけられる能力
相も変わらず繰り出される放屁
お風呂のカビを根元から除去する魔法を使える魔法使い
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
- 38 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 11:00:26 ID:wBp3XY4A0
- お題募集してるなら
ζ(゚ー゚*ζのおっぱいにダイブ
- 39 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 11:07:20 ID:czIz4pmEO
- 乙
ほのかに薄暗い匂いがするのが良いわー
- 40 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:29:30 ID:SFfzYyVoO
- あるところに、魔法使いの国がありました。
みんな優れた魔法を使えるのですが、血の気が多くて、いつも喧嘩をしてばかりでした。
神様は何度も仲良くするように言いましたが、喧嘩はますますひどくなるばかり。
ですから神様は怒って、彼らから優れた魔法を奪って、代わりの魔法を与えました。
それから、魔法使いは喧嘩をしなくなりました。
というのも、与えられた魔法は全てくだらないものだったから、喧嘩のしようがなかったのです。
ゆえに大国は小さな国になり、人々は緩やかに衰退していきました。
――第三階層「くだらない国」
- 41 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:30:53 ID:SFfzYyVoO
- 次にたどり着いたところは、森でした。
ζ(゚ー゚;ζ「ここどこー」
鬱蒼としげる木々は、人を不安にさせるものである。
まして、さっきまではきちんとした町だったから尚更だ。
【+ 】ゞ゚)「さてね」
そう言いながら、オサムさんはさっさと歩いていってしまいます。
(;'A`)「道、わかるんすか?」
【+ 】ゞ゚)「草をよく見るんだ。少しだけ減っている部分があるだろう?」
川 ゚ 々゚)「ほんとだー」
【+ 】ゞ゚)「つまりわずかだがここを歩いた人がいるんだ」
川*゚ 々゚)「オサムすごぉーい」
きゃっきゃとくるうは喜んだ。
それからまもなく、森を抜けて茶色い道に出た。
わりと頻繁に使われていることは明らかであった。
(;'A`)「よかった…」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます」
お礼を言うと、オサムさんは、
【+ 】ゞ゚)「野垂れ死ぬにはまだ早すぎる」
と言った。
だけど私は見てしまった。
オサムさんの顔色は変わっていなかったけど、耳が赤くなっていることを。
ζ(゚ー゚*ζ(意外と恥ずかしがり屋さんなのかな?)
雰囲気と言葉遣いがあれなだけで、本当は親切な人なのかもしれない。
- 42 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:32:34 ID:SFfzYyVoO
- 川*゚ 々゚)「見てー!」
そう言うくるうの視線の先には、小さな白壁の家がてんてんと建っていた。
('A`)「……村?」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん…」
国にしては小さすぎるような気がした。
だけど、私の国のことを考えたらどっこいどっこいかもしれない。
あそこだって、畑と牛と豚ばっかりだったし。
ζ(゚ー゚*ζ「とりあえず、行ってみましょう」
- 43 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:34:21 ID:SFfzYyVoO
- 突然やってきた余所者にも関わらず、住人達は暖かく迎えてくれた。
ヽ`・−・)「ようこそ、くだらない国へ」
ζ(゚ー゚*ζ「くだらない国?」
ヽ`・−・)「はい、くだらない国です」
ζ(゚ー゚*ζ「……はぁ、」
ヽ`・−・)「申し遅れました、私はこの小さな国を治めているディアッドという者です」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ、こっちがドクオ。それから……」
川*゚ 々゚)「くるうとオサムだよー!」
ヽ`・−・)「以後お見知りおきを」
さっそく私は気になったことをディアッドさんに聞いた。
ζ(゚ー゚*ζ「ところでくだらない国というのは……」
ヽ`・−・)「その話はとても長くなりますが、よろしいでしょうか?」
その言葉にうなずくと、ディアッドさんは自分の住まいへ案内してくれた。
彼の家は他の住人達と同じように、白い壁に煉瓦を乗せてできた素朴な家だった。
ζ(゚ー゚*ζ(落ち着くなぁ)
やっぱり狭いところは落ち着く。貧乏性かもしれないけど。
- 44 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:35:30 ID:SFfzYyVoO
- ヽ`・−・)「まず由来を話すには、昔話をしなければいけません」
私は話を覚える準備を整えた。
ちなみに、ドクオとくるうは私の隣のソファで、ディアッドさんの奥さんが出したお茶とクッキーに夢中になっている。
オサムさんはいつも通り、物静かにしている。
ヽ`・−・)「その昔、私達の住む国は魔法使いの国と呼ばれていました。みんな優れた魔法を使えたのですが、彼らはプライドが高く血の気が多かったため、しょっちゅう戦ってばかりいたそうなのです」
ζ(゚ー゚*ζ「魔法、ですか」
ヽ`・−・)「ええ、今でも一応使えますが…まぁその話は追々」
お茶を一口飲んで、ディアッドさんは続けた。
ヽ`・−・)「そこで神様は何度も魔法使い達に仲良くするように言いましたが、喧嘩はますますひどくなるばかり」
ζ(゚ー゚*ζ(神様、)
また、神様だ。
ヽ`・−・)「なので神様は怒って、彼らから優れた魔法を奪って、代わりの魔法を与えたそうです。それから、喧嘩はなくなりました」
- 45 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:37:39 ID:SFfzYyVoO
- そう言いながら、彼は右手を差し出した。
なんとなくそれを見つめていたら、ポン!という音と共にクッキーが一枚現われた。
ζ(゚ー゚*ζ「へ、」
思わず間抜けな声が出る。
そのクッキーを、彼はもしゃもしゃと食べた。
ごくんとそれを飲み込んで、話は再開した。
ヽ`・−・)「このように、与えられた魔法は全てくだらないものだったのです」
ζ(゚ー゚*ζ「…なんだか、とっても面白い魔法ですね」
ヽ`・−・)「そうでしょうとも。これで喧嘩できる人はとても稀有な存在ですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは…」
川*゚ 々゚)「いいなー」
くるうのつぶやきに、ディアッドさんは穏やかに笑った。
ヽ`・−・)「ですから大国は小さな国になり、人々は緩やかに衰退して……今となっては村のような規模に落ち着いたのです」
- 46 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:40:28 ID:SFfzYyVoO
- ('A`)「他の人は、どんな魔法が使えるんだ?」
ヽ`・−・)「そうですねぇ。私の妻は風呂場のカビを徹底的に除去できる魔法が使えますよ」
ζ(゚ー゚;ζ(微妙に便利だ)
ヽ`・−・)「それから長老は、足の小指をタンスの角で強打した時と同等の激痛を相手に与える魔法が使えます」
ζ(゚ー゚;ζ「うわぁ」
(;'A`)「痛そうだ…」
川 > 々<)「やだー」
,_
【+ 】ゞ゚)「…………」
みんな、あの痛みを想像して顔をしかめていた。
よく見ると、オサムさんも眉間に皺を寄せていた。
ヽ`・−・)「痛いには痛いですが、あれでは人を殺せませんからね」
ζ(゚ー゚;ζ「まぁそうだけど…」
ヽ`・−・)「昔の魔法は、派手に炎の塊を出したり雷落としたりしてたそうですから」
�熙�(゚ー゚;ζ「怖い怖い」
ヽ`・−・)「それに比べたら全然ですよ」
- 47 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:42:11 ID:SFfzYyVoO
- くだらない国は、とても小さな国で、住人も少なかった。
民話の蒐集も終わってしまったし、日はまたまだ高かったから、私達はすぐ出発することにした。
ヽ`・−・)「何もないところですみませんね」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、貴重なお話ありがとうございます。」
ヽ`・−・)「とんでもない!久々に旅の方が来て楽しかったですよ」
【+ 】ゞ゚)「…その前は、どんな旅人が来たんだ?」
今まで黙っていたオサムさんが口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「デレさんくらいの年の男の子でしたよ。私がまだ子供だった頃の話なのであやふやですが」
【+ 】ゞ゚)「名前は?」
ヽ;`・−・)「名前?名前はー…うーん…忘れてしまいました」
【+ 】ゞ゚)「そうか」
ヽ`・−・)「…ああ、でもとても目が特徴的でした。糸目で目が垂れていた方でしたよ」
- 48 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:44:04 ID:SFfzYyVoO
- もしかしたら、と一瞬考えた。
それは、父の双子の片割れ……弟者さんかもしれない、と。
だけど、ここに来たからといって、それは彼が生きている証明になるのだろうか?
ζ(゚ー゚*ζ(ならないよね)
そもそも、弟者さんからのバタフライエフェクトはもうとっくの昔になくなっているのだ。
生きているほうがむしろ奇跡。
ζ(゚ー゚*ζ(……というか生きてるとしたらお勤めサボってるだけじゃん!)
うぅ〜、と思わずうなりながら考えこむ。
川 ゚ 々゚)「デレが変になってるー」
ζ(-、-;ζ「いや、色々ね…」
ヽ;`・−・)「やはり休まれていったほうがいいのでは…」
+ζ(゚ー゚;ζ「いえ、お気遣いなく!」
ディアッドさんにそう言って、私は扉を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「さー次もガンガン行くわよー!!」
('A`)「……デレが壊れた」
【+ 】ゞ゚)「壊れることもあるんだな」
川*゚ 々゚)「多分もとに戻るよー」
わははは!と笑いながら妙なテンションで、私は扉を通っていった。
第三階層「くだらない国」 了
- 49 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 13:46:12 ID:SFfzYyVoO
- お題はバンバン募集中ですよ!
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
なくしたものを見つけられる能力
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレのおっぱいにダイブ
- 50 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 14:09:27 ID:juAClmSM0
- はやいな乙
あのへんてこな魔法をこう消化したか
- 51 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 14:25:20 ID:wBp3XY4A0
- >>49
お題は10個を上限としといた方が…
お題を消化したら補充的な感じじゃないと300個もやるはめになるぞ
- 52 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 14:33:25 ID:SFfzYyVoO
- >>51
それは恐ろしい
じゃあ今未消化が7つあるのであと3つお題募集します
- 53 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 14:34:52 ID:cYaA.oHA0
- 乙乙
お題
病の国
- 54 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 14:39:27 ID:wBp3XY4A0
- んじゃ
お題『('A`)と川 ゚ 々゚)の命をかけた漫才』
- 55 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 14:57:07 ID:JDCVYnZ.0
- お題:一方その頃兄者とツンは
ストーリーに差し障るようなら無視して頂いておkです
- 56 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:26:05 ID:SFfzYyVoO
- 何も取り柄がなくっても、笑顔は誰にでもできる。
そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝。
どんなにつらくても、笑いさえあればそれでよし。
笑う門には福来る。
笑えないのなら……。
――第四階層「笑顔の国」
- 57 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:27:11 ID:SFfzYyVoO
- 気がついたら、私は手足を縛られて床に転がされていた。
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ…?」
なんとか首を動かすと、気絶したオサムさんの姿も見えた。
ζ(゚ー゚;ζ(ドクオは?くるうは…!?)
体をよじってなんとか見渡そうとする私の耳に、キンキンした声が聞こえてきた。
「レッディースアーンド!ゼェントルムェン!!!長らくお待たせしました!今宵皆様のお目にかかりまするは新コンビ「ドックンandクルー!」サイッコーにホットでクールな漫才を見せてくれるよね!?ねェ!?」
キャンキャンと響く甲高い声。
ああ、そうだ、思い出した。
- 58 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:29:34 ID:SFfzYyVoO
- ζ( ー *ζ「…………」
【+ 】ゞ゚)「……彼女、大丈夫か?」
川 ゚ 々゚)「へーきへーき、そのうち元気出るよ」
くだらない国を出た後、私はものすごく落ち込んでいた。
というのも、あの妙なテンションでいたのが恥ずかしくなってしまったのだ。
ζ( ー *ζ(なんであんなことしちゃったのかなぁ)
自己嫌悪に女子としての恥じらい……。
ああ、女の子失格だ…。
ζ( ー *ζ(わはははってなによ、わはははって……)
('A`)「あー…あんまりきにすんな、な?」
ζ( ー *ζ「むり」
私は貝になりたい。
そんなテンションで歩いていたら、
(*+ロ+)「ハァーイ!おはようこんにちはこんばんはー!旅人さん?旅人さんだよねェ?」
('A`)「あ、ああ、まぁ、」
(*+ロ+)「ようこそようこそいらっしゃーい!私はキャノティート!キャノって呼ぉんで、ちょーんまげー!!」
キンキンする声で、彼女?は言った。
というのも、顔は白塗りで色んなメイクをしていたからだ。
('A`)「え、ええと俺はドクオ、そこにいるのがデレ」
川 ゚ 々゚)「わたしはくるう!それとこの人はオサムー」
(*+ロ+)「なるほどなるほど!ようこそ、笑いの国へ!」
('A`)「笑いの国?」
- 59 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:31:25 ID:SFfzYyVoO
- (*+ロ+)「そうとも!ここは愉快で奇怪で壮快な笑いの国!笑えるのならよっといで、笑えないなら出ていって!」
(;'∀`)「こ、こうか?」
(*+ロ+)「そうそうお兄さんお上手ー!!パチパチ素敵ー!」
川*^ 々^)「にっこー」
(*+ロ+)「ああ、かわいらしい!やっぱり笑顔が一番!スマイリースタイリー!」
(*+ロ+)「ほらお嬢さんとお兄さんも」
ずいっと顔を近付けながら、キャノが喋る。
うるさい、耳障りだ。
,_
【+ 】ゞ゚)「…………」
ほら、オサムさんも顔をしかめてる
ζ( ー *ζ「……うるさい、今そういう気分じゃないの」
(*+ロ+)「どーしてなして?笑いの国では笑わなきゃいけないんだよ?」
- 60 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:32:53 ID:SFfzYyVoO
- ζ( ー *ζ「あなたは落ち込んだりしないの?」
(*+ロ+)「どんなにつらくても、笑いさえあればそれでよし、何も取り柄がなくっても、笑顔は誰にでもできるもの」
すると、急に声を張り上げて叫んだ。
(*+ロ+)「そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝!!!笑う門には福来る!」
(*+ロ+)「笑えないのなら……」
パチン、とキャノが指を鳴らした瞬間だった。
今まで誰もいなかったのに、急に人が出て来たのだ。
川*` ゥ´)( ・`ー・´)( ^ー^)@*゚ヮ゚))
みんな、同じような笑みを貼り付けて。
(*+ロ+)「二人とも、死んじゃいなよ」
- 61 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 16:34:21 ID:cYaA.oHA0
- 面白い。支援
- 62 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:34:26 ID:SFfzYyVoO
- 【+ 】ゞ゚)「やれやれまったく…」
背後から、オサムさんの声が聞こえた。
ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん!」
【+ 】ゞ゚)「デレさんは無事か……くるうとドクオくんは?」
ζ(゚ー゚;ζ「それが…」
(*+ロ+)「ほらほらお二人さん遠慮しなーい!!!大事な仲間が待ってるんでしょう?笑顔すら浮かべられないクソみたいなゴミクズのお友達がさ!!」
('A`)「……クズでもクソでもないわ」
川#゚ 々゚)「………………」
【+ 】ゞ゚)「……どうも、ここはステージかなにかの下みたいだね」
ζ(゚ー゚;ζ「ですね…」
川 ゚ 々゚)「ほんとにドクオと漫才したら、二人を助けてくれるんでしょうね?」
(*+ロ+)「お客がウケたらね〜☆」
ζ(゚ー゚*ζ(どういうことなの…)
【+ 】ゞ゚)「……状況がさっぱりなんだが」
ζ(゚ー゚;ζ「私にも分からないわよ」
- 63 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:36:49 ID:SFfzYyVoO
- (;'A`)(やべー。というかくるうって苦手なんだよなぁ)
川 ゚ 々゚)(オサムのためオサムのためオサムのためオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサムオサム)
(;'A`)(つーかこえええ!!!!)
川 ゚ 々゚)「ドクオ」
(;'A`)「はひっ!」
川 ゚ 々゚)「あなたがつっこみね」
(;'A`)「え?」
川 > 々<)「はいどーもー!みんなのアイドルくるうちゃんでーすっ」
(;'A`)(ええいやけくそっ!)
('A`)「いや初めて会ったのにアイドルもクソもないだろ」
川*` ゥ´)( ・`ー・´)( ^ー^)@*゚ヮ゚))「…………」
('A`)(す、すべったぁぁぁ!!!)
川 ゚ 々゚)「くるうの好物はータイノエです」
('A`)「タイノエってなに?」
川 ゚ 々゚)「知らないの?鯛の口に寄生してる動物」
(;'A`)そ
川 ゚ 々゚)「揚げるとパリパリしててシャコみたいな味。ノットガレージ」
(;'A`)「…………」
川 ゚ 々゚)「なんか突っ込めや」
(;'A`)(いや会場もドン引きだから)
- 64 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:38:47 ID:SFfzYyVoO
- 川 ゚ 々゚)「ドクオの好きな物はー?」
('A`)「え、うーん…バナナヨーグルト?」
川 ゚ 々゚)「…卑猥だね」
(;'A`)「何を想像したの!?」
川 ゚ 々゚)「逆に聞くけどドクオは何想像したの?」
(;'A`)「質問を質問で返すなぁー!」
川 ゚ 々゚)「ほら早く言ってごらん?何が欲しいの?」
(;'A`)「話題すり変わってる!違う話になってる!」
川 ゚ 々゚)「大衆の目の前で無様におねだりしなさいな」
(;'A`)「17才とは思えない発言!これはひどい!」
('A`)(あ、でも地味に観客にウケてる…?)
川 ゚ 々゚)「ほらほらなにが欲しいの?」
(;'A`)「何も欲しくないわっ」
川 ゚ 々゚)「そう」
(*+ロ+)(……あの子、何してるのかしら?)
川 ゚ 々゚)「でも私は欲しいものがあるわ」
('A`)「え?」
川* 々 )「さぁ、死にたくないなら伏せなさいな」
- 65 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:41:19 ID:SFfzYyVoO
- 【+ 】ゞ゚)「っ!?」
ζ(>ー<*ζ「きゃあっ!?」
爆発音。それから、土埃。
「おま…何か手立てがあるんだったら早く言ってくれよ!!!」
「敵を騙すにはまず味方からって言わない?」
「まぁ、そうだけど…」
「それにこういう魔法使うのは初めてだったから時間かかったのよー」
声が、近付いてくる。
さっきまでステージで馬鹿騒ぎしていた、声。
川 ゚ 々゚)「これがホントの楽屋落ち、なーんてね」
('A`)「デレ、大丈夫か」
川*> 々<)「オサム〜!会いたかった!!!」
【+ 】ゞ゚)「…さっきの音は?一体何したんだ?」
川 ゚ 々゚)「たまたまポケットに入ってた小さい空き瓶に、魔力を最大限まで込めて暴発」
�熙�(゚ー゚*ζ「やることがむちゃくちゃすぎる!」
- 66 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:42:35 ID:SFfzYyVoO
- 川*゚ 々゚)「んふふー、皆殺しー」
('A`)「そんなことより早く脱出しようぜ!こんないかれた国に長居したらどうなるかわかったもんじゃない」
そう言いながら、ドクオは私を拘束していた縄をほどいてくれた。
オサムさんも縄がほどけたようだ。
('A`)「さっさと荷物を持って出て行こう」
ζ(゚ー゚*ζ「うん!」
荷物をまとめて、急いで外へ。
何人か住人に狙われたものの、私のフレイルでそれらを蹴散らした。
ζ(゚ー゚#ζ「もう二度と行きたくないわ!」
そう叫びながら、私達は扉をくぐって急いで閉めた。
それでも、あの金切声が聞こえてくるような気がして恐ろしかった。
第四階層「笑顔の国」 了
- 67 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 16:44:52 ID:SFfzYyVoO
- お題ストック(10個までですよ)
一方その頃兄者とツンは
病の国
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
なくしたものを見つけられる能力
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレのおっぱいにダイブ
- 68 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 16:47:56 ID:cYaA.oHA0
- 乙
くるうのキャラかわいいなぁ
- 69 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 17:17:53 ID:GNiIkdaMO
- >>47
>ζ(゚ー゚*ζ「デレさんくらいの年の男の子でしたよ。私がまだ子供だった頃の話なのであやふやですが」
これディアッドのセリフだよな?
- 70 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/03(水) 17:36:08 ID:SFfzYyVoO
- >>69
間違えたwwwwww
そうですディアッドです
ちょっと笑いの国に一人漫才しに行ってきます
- 71 :名も無きAAのようです:2012/10/03(水) 17:41:51 ID:GNiIkdaMO
- おk
滑らないようにな
- 72 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 11:47:07 ID:4r6PmTn6O
- 短い投下だよ
たいしたことないグロ描写もあるよ
- 73 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 11:48:54 ID:4r6PmTn6O
- 強きをくじき、弱きを助ける。
それなら、みんなが弱ければ神様に助けてもらえるんじゃないか?
健康は害だ。
今すぐ病め。
望んでいなくとも、ヒトはみな平等なのだ。
――第五階層「病の国」
- 74 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 11:51:35 ID:4r6PmTn6O
- 扉をくぐった先には、延々と続く赤茶けた土の道があった。
ぜえぜえと肩で息をしながら、背後を振り返る。
そこにはもう、あの忌まわしい狂乱の国への扉は消えていた。
前まではそれが少し不安だったけど、今となっては安心だと感じていた。
【+ 】ゞ゚)「……とんでもない目にあったな」
オサムさんの一言に、みんなうなずいた。
('A`)「これからもああいう国に当たるのかな…」
ζ(゚ー゚;ζ「だろうねぇ」
それぞれが独自の文化を形成しているから、私達の価値観とはだいぶ違う。
それは今まで訪れた国のことを思い返せば、当たり前のことなんだけど……。
ζ(゚ー゚;ζ「やっぱり少し怖いね」
川*゚ 々゚)「大丈夫だよー。怪我したらわたしが治すから」
ζ(゚ー゚;ζ(そういうことじゃないんだけど、)
ζ(゚ー゚*ζ「…ありがとう」
一応、お礼をする。
【+ 】ゞ゚)「……国が見えてきた」
オサムさんの言葉に、私は少し緊張した。
(;'A`)「…なんか見るからにやばそうなんだけど」
ドクオの言うとおりだった。
あちこちの家から煙突が飛び出ているのだけど、煙は真っ黒で空すらも覆っていた。
ζ(゚ー゚;ζ「……たしかに」
とはいえ、進むことしか私達には残されていなかった。
- 75 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 11:53:48 ID:4r6PmTn6O
- 恐る恐る国へ入った私達を迎えてくれたのは、ボロボロのコートと眼帯を身に着け、ガリガリに痩せた男だった。
(φд゚)「ようこそ、病の国へ」
ζ(゚、゚*ζ「病の国……」
たしかに、健康には悪そうな国だけど。
(φд゚)「僕はパミィ。糖尿病を患って片目をなくしたんだ」
ほらね、というように眼帯をずらすパミィさん。
その下にはぽっかりと開いた眼窩。
('A`)「もしかして病の国だから、みんな病気に掛かってたりするんですか?」
(φд゚)「ええ、住人は全て病気持ちです。ほら、あすこに煙突があって真っ黒い煙が出てるだろう?あれを吸った人は喘息になるんだ」
川 ゚ 々゚)「じゃあわたし達も喘息になっちゃうのー?」
(φд゚)「そんなことはありません。あれは長く空気を吸わなくちゃならんのです」
('A`)「はぁ…」
とはいえ、息苦しくて仕方がないのだけれども。
(φд゚)「まぁ特にこれといって名所があるわけでもないですし、旅人さん達は長居しない方がいいでしょう。国境まで案内します」
パミィさんはそう言って、歩き出した。
- 76 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 11:55:36 ID:4r6PmTn6O
- 歩きながら、私は質問する
ζ(゚ー゚*ζ「ところで…なんでわざと病気に掛かろうとしているんですか?」
(φд゚)「至極単純な話です。神様に助けてほしいからです」
('A`)「助けてほしい?」
(φд゚)「ほら、強きをくじき、弱きを助けるって言うじゃないですか」
さかさかと歩きながら、パミィさんは歩く。
細くて人一人しか通れないような路地で、よくここまで歩けるものである。
(φд゚)「そこで、みんなが弱ければ神様に助けてもらえると思いまして」
ζ(゚ー゚;ζ「はぁ…」
(φд゚)「だから、子供が生まれたらすぐに病気に掛からせるんです」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
ゾッとした。
子供達がかわいそうだ、とも思った。
神様なんて、いるかどうかもわかりはしないのに。
そう思っていたのは、私だけじゃなかった。
川 ゚ 々゚)「変なのー」
くるうがそう言った。
川 ゚ 々゚)「もともと健康だったのに、悪くして喜ぶんだ」
(φд゚)「……そうすれば神様に助けてもらえますから」
('A`)「そもそも神様がいる保証なんていないんだぜ?」
「助けてもらえるという保証もな」
(φд )「…………」
視界が開ける。
猫の額ほどしかない広場と、錆び付いた扉。
- 77 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 11:58:44 ID:4r6PmTn6O
- (φд )「うるさい、」
パミィさんが振り向く。
その手には、いつ取り出したのかは分からないけど、ナイフが握られていた。
(φд;)「俺だって好きで関わったわけじゃないんだよ!それが決まりだったからだ!」
ζ(゚ー゚;ζ(やばっ)
鞄には折り畳み式のフレイルがあった。
だけど、こんな狭いところで振り回したらみんなにも当たってしまう。
ドクオの持っている斧も同じだ。
ζ(゚ー゚;ζ(どうしよう、)
そう思った時だった。
【+ 】ゞ゚)「動くな」
オサムさんの低い声。
それから、風切り音。
(φд;)「あ゛っ……」
額を貫かれて、崩れ落ちるパミィさんの体。
- 78 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 12:02:12 ID:4r6PmTn6O
- 振り返れば、クロスボウを鞄にしまうオサムさんの姿が目に入った。
(;'A`)「お、オサムさん……」
【+ 】ゞ゚)「仕方ない。それに死んだ方が本人もよかったはずだ」
(φー )
ζ( ― *ζ「…………」
人が死ぬところを見たのは、初めてだった。
だらだらと路地に流れる血を見て、段々気分が悪くなってきた。
ζ(;―;*ζ「ぅ…ぇっ…」
涙が出て来て、唾液が溢れてきた。
口の中がまずい。
胸がむかむかする。
川*゚ 々゚)「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
くるうが、私の背中を撫でながらそう言った。
川 ゚ 々゚)「ドクオ、扉開けて」
(;'A`)「あ、ああ…」
川*゚ 々゚)「デレ、だいじょーぶだからね」
視界がふさがれる。
まっしろ。
包帯かなにか?
それから、ふわりと体を抱き抱えられた。
川*゚ 々゚)「今日は特別だからねっ」
その言葉を最後に、私の意識は途切れた。
第五階層「病の国」
- 79 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 12:03:30 ID:4r6PmTn6O
- あ、最後に了つけるの忘れてしまった
お題ストック(10個までですよ)
一方その頃兄者とツンは
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
なくしたものを見つけられる能力
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレのおっぱいにダイブ
吐くのを必死に我慢している女の子はかわいいと思う
- 80 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 12:35:28 ID:uwP0rXowO
- おだい ハイテンションなおさむ
- 81 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 12:44:27 ID:PN0huvgQ0
- 乙乙
お題
川д川私の子供を返して
- 82 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 12:55:56 ID:hiMEK7zo0
- 乙!
お題消化ありがとう!
- 83 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 15:36:52 ID:4r6PmTn6O
- ……もしも彼らが生きていたら。
娘の晴れ姿を見たら、なんと言うんだろうか。
――余談「出入口の国」
- 84 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 15:39:34 ID:4r6PmTn6O
- |゚ノ ^∀^)「兄者さん」
( ´_ゝ`)「…………」
|゚ノ ^∀^)「兄者さん!」
( ´_ゝ`)そ「あ、すまん。ぼーっとしてた」
|゚ノ ^∀^)「もう、しっかりしてください。せっかく娘さんのお着替えが終わったのに」
( ´_ゝ`)「はは…。ちょっと、今までのことを回想していてね」
|゚ノ ^∀^)「感傷にひたるのもいいですけど、ツンさんの花嫁姿も見てやってくださいな」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
( ´_ゝ`)「……似合うな」
ξ//⊿//)ξ「…………」
|゚ノ*^∀^)「あらやだ、この子ったら固まっているのね。そんなんじゃブーンくんにキスされたら倒れちゃうんじゃないかしら」
ξ//⊿//)ξ「…………」
( ´_ゝ`)「レモナさん、あんまりからかうのはよしてくれ。ツンの顔がトマトみたいになってる」
|゚ノ ^∀^)「うふふ、ごめんなさいねぇ」
( ´_ゝ`)(……あいつが見たらどう思うんだろうか。)
(*´_ゝ`)(お前の娘も随分立派になったな、かわいいぞ)
( ´_ゝ`)「…とか言うのかなぁ」
|゚ノ ^∀^)「誰が言うんですって?」
- 85 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 15:42:36 ID:4r6PmTn6O
- ( ´_ゝ`)「いやなんでもない」
ξ゚⊿゚)ξ「……ほんとに、これで、いいと思う…?」
( ´_ゝ`)「ああ、十分綺麗だよ。ブーンさんもきっと喜んでくれる」
ξ//⊿//)ξ「べ、別にあいつのことはいいのっ!」
|゚ノ*^∀^)「あらあらうふふ」
( ´_ゝ`)「…ヒートにも見せたかったな」
|゚ノ ^∀^)「…そうねぇ、こうして見るとそっくりね」
ξ゚⊿゚)ξ(……お母さんに、そっくりなんだ)
( ´_ゝ`)「…それじゃあレモナさん、当日もこれでお願いします」
|゚ノ ^∀^)「はい、承知いたしました。式の日にはかわいい花冠もつけましょうね。ベールと一緒になっているやつを」
ξ*゚⊿゚)ξ「……はい」
ξ-⊿-)ξ(……デレにも、見せたかったなぁ。)
( ´_ゝ`)「ツン?」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでもないわ」
ξ゚⊿゚)ξ(……デレ)
余談「出入口の国」 了
- 86 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/04(木) 15:45:21 ID:4r6PmTn6O
- お題ストック(10個までですよ)
ハイテンションなおさむ
川д川私の子供を返して
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
なくしたものを見つけられる能力
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレのおっぱいにダイブ
日常パート(ただし表面上だけ)
- 87 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 18:59:54 ID:PYY0Mk8.0
- お題に
デレ達とは違う場所から逃げてきた旅人
- 88 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:14:18 ID:rtFbbAeUO
- あるところに、なくしものを見つけてくれる神様のようなヒトがおりました。
彼は、どんなものでも見つけることができました。
「お金をなくしたんだ」
「東の木の根にあるよ」
「靴下をなくしてしまったの」
「西の石の下にあるよ」
「玩具をなくしてしまったの」
「北の井戸の底にあるよ」
「チョコレートがなくなってしまったの」
「南の食いしん坊のお腹の中にあるよ」
けれどもある日、誰かがこう言いました。
「きっと奴が隠しているのさ」
その言葉を信じて、みんな彼を無視するようになりました。
すると彼は悲しくなって。それから怒りながらこう言いました。
「みんながそう信じるなら、全部私が隠してしまうよ」
それからというものの、この国では、なくしたものは一度たりとも絶対に、見つかることはありませんでした。
――第六階層「見つからない国」に伝わる民話
- 89 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:15:34 ID:rtFbbAeUO
- 森の中で、くるう達は野宿をしようとしていた。
デレは枯れ葉を集めたベッドの上で眠っていた。
その隣で、看病を続けていたくるうも寝てしまっていた。
火の番をしているドクオとオサムは、黙ってあたりの様子を伺っていた。
('A`)「……デレ、大丈夫かな」
不安そうなその声に、オサムが答える。
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だろう。しかし、少し配慮が足りなかったのは謝るべきだったな」
(;'A`)「いや、あれは仕方なかった……と思います、はい」
あれ、というのはオサムが撃ち殺した病の国の住人のことだ。
間近で人が死ぬところを見てしまったデレは、放心状態になり、オサムに抱えられて国を出たのだ。
【+ 】ゞ゚)「…考えてみれば、まだ17だからな」
くるうも同い年だが、彼女は職業柄、血や死体をしょっちゅう見ていたため動じることはなかった。
【+ 】ゞ゚)「ところでドクオくんは平気なのかね?」
('A`)「鶏とか鹿とかバラしてたんで…。さすがに人は初めてだけど」
【+ 】、ゞ゚)「……人を殺すのは、いけないことだよ」
(; A )「っ……」
ほんの少し口を吊り上げてオサムが言った。
- 90 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:17:03 ID:rtFbbAeUO
- 笑っているつもりなのかもしれなかった。
しかし、ドクオにはそれが恐ろしいものに見えた。
(;'A`)「……そういえば、オサムさんはいくつなんですか?」
話題を変えようと、ドクオは口を開いた。
【+ 】ゞ゚)「うん、22才くらいかな。捨て子だったから、正確な年齢は分からないんだ」
(;'A`)「……すみません、」
【+ 】ゞ゚)「いや、気にしていないよ」
【+ 】ゞ゚)「ところで君は、この旅についてきてよかったと思っているかい?」
('A`)「……ええ」
【+ 】ゞ゚)「そうか」
オサムは、安心したように呟いた。
('A`)「オサムさんは?」
【+ 】ゞ゚)「……悪くないよ」
('A`)(悪くない、かぁ)
【+ 】ゞ゚)「だけど、国にいた時よりは居心地がいい」
('A`)「?」
【+ 】ゞ゚)「正直帰りたくないんだ」
('A`)「なんでですか?」
ドクオは聞いたが、オサムは何も答えなかった。
【+ 】ゞ゚)「そろそろ子供は寝なさい。あとは任せていいから」
('A`)「…………」
- 91 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:18:18 ID:rtFbbAeUO
- 本当は理由を聞きたかった。
しかし、こうもあからさまにはぐらかされてしまうと、逆に聞けなかった。
('A`)(いつか、聞くことができるかな)
横たわりながら、そう思う。
それからまもなく、ドクオは寝てしまった。
- 92 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:19:33 ID:rtFbbAeUO
- 日が昇った頃に、デレ達は歩き出した。
川 ゚ 々゚)「もう大丈夫?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、平気」
デレがうなずくと、くるうは笑った。
オサムは相変わらず無口だった。
ドクオはあたりをキョロキョロしていた時だった。
「おーい!」
と、背後から声がした。
デレ達は振り向く。
(´レ_` )「やぁ、君達も旅人かい?」
ζ(゚、゚*ζ(…父に似てる)
('A`)「ええ。もしかしてあなたも?」
(´レ_`*)「ああ、といってもこれから国へ帰るところだ」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ、こっちがくるう、ドクオ、それからオサムさん」
(´レ_` )「俺は豸`y龜者」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
(´レ_` )「ずっとずっと向こうにあるgっf眤d国の出身なんだけど…」
川 ゚ 々゚)「へぇ、そうなんだー」
【+ 】ゞ゚)「どうして旅に?」
(´レ_`;)「その国には語るにもおぞましい風習がありまして。それに嫌気がさしたのです」
川 ゚ 々゚)「顔が真っ青ー」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫ですか?」
(´レ_`;)「ええ、なんとか」
(´レ_` )「そうだ、よかったら一緒に、この先にある見つからない国に行きませんか?」
('A`)「おお、いいね」
みんなはうなずきました。
五人はてくてくと見つからない国へ歩いていきました。
- 93 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:21:18 ID:rtFbbAeUO
- ('A`)「ところで…見つからない国っていうのは?」
(´レ_` )「なくしたものが二度と見つからない国らしい。その昔には、なくしたものを必ず見つけてくれる神様のようなヒトがいたらしいけど」
川 ゚ 々゚)「なんでなくなっちゃうの?」
(´レ_` )「さぁ?気付いたらなくなってしまうのだとか」
【+ 】ゞ゚)「…困るな」
(´レ_` )「まぁね。でもその神様の話を聞いたら、ちょっと同情することもあって」
ζ(゚ー゚*ζ「神様の話?」
(´レ_` )「ん。その神様もといヒトが、なくしものを見つけられるのは、そいつが隠しているからだって噂が流れてさ」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ…」
(´レ_` )「それで怒ってしまったのさ。そう思うのなら、俺はそうする、ってさ。それからだね」
川 ゚ 々゚)「…じゃあ、その神様みたいなヒトが、ものを隠しているの?」
(´レ_` )「じゃないかなぁ。……おっと、もうそろそろだ」
- 94 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:23:32 ID:rtFbbAeUO
- 五人は、見つからない国に入りました。
すると赤ん坊を抱きかかえた女性が近付いてきました。
川д川「ようこそ、見つからない国へ」
( д )「あうーぅぅー」
川;д川「あ、ごめんなさいね。よーしよし」
川*゚ 々゚)「わー、かわいー!」
【+ 】ゞ゚)「…ふむ」
(´レ_` )「男の子ですか?」
川*д川「はい、かわいいでしょう?」
(* д )「ぅー、だぁ」
(*'A`)「かわいい…」
川*^々^)「癒されるねー」
ζ( ー *ζ(…………)
川д川「ところで旅人さん達はここに何をしに?」
(´レ_` )「俺は少し休んでいこうと思ってね。で、君達は?」
('A`)「デレ、どうする?」
ζ(゚、゚*ζ「ええと、」
川д川「……あれ?」
ふとみんなが気付くと、女性の腕から赤ん坊が消えていました。
川;д川「あれ…どこにいったのかな、ミーくん?」
川;゚ 々゚)「さっきまでいたのに…」
- 95 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:25:20 ID:rtFbbAeUO
- ζ(゚ー゚;ζ(まさか、)
(´レ_` )「…なくした?」
川#д川「そんなわけない!ずっとずっと抱いていたもの!」
川#д川「ああ、そうか。あんた達が盗ったのねきっとそうだわ」
(;'A`)「ち、ちが…」
川#д川「返してよ!私の赤ちゃん!返して!」
女性は、デレにつかみ掛かってきました。
それをオサムが必死に止めました。
川;д;川「赤ちゃん、赤ちゃんがぁぁ…」
(´レ_` )「…どうか落ち着いて。一度村を探してみましょう」
川;д;川「でも、」
(´レ_` )「やるだけのことはやってみましょうよ」
そう言われて、みんなは手分けして国の中を探すことになりました。
オサムは東へ。
くるうは西へ。
ドクオは北へ。
豸`y龜者は南へ。
泣き続ける女性のそばに、デレは居続けることになりました。
- 96 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:26:53 ID:rtFbbAeUO
- ζ(゚ー゚;ζ「……大丈夫ですか?」
川д川「……ごめんなさいね、さっきは」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、大丈夫です」
女性はいくぶんか落ち着いてきました。
けれどもやっぱり、そわそわとしていて落ち着きがありません。
川д川「…人が、」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
川д川「人が、いなくなるのは初めてなんです」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
川д川「今までは、胡椒の瓶とか、シーツとか、なくなっても困らないものばかりだったのに」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか……」
川д川「ああ…赤ちゃん……」
また泣き出した女性を、デレが慰めようとした時でした。
「……ぎゃあ、おぎゃあ」
ζ(゚ー゚;ζ「泣き声がする」
川д川「え?」
デレは女性の手を取って走り出しました。
赤ちゃんの声がするほうへ。
ひたすら駆けて、駆けて。
それは、扉の近くにある、古い納屋から聞こえました。
ζ(゚ー゚*ζ「この中から、聞こえる」
女性は黙って納屋の戸を開けました。
川*д川「ああ!赤ちゃん!かわいいミーくん」
ζ(゚ー゚*ζ(よかった…)
デレは胸をなで下ろしながら、そう思いました。
川*д川「よしよし、ママが来ましたからねー。もう大丈夫でちゅよー」
(* д )「キャッキャッ」
- 97 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 00:31:15 ID:65UX/Cbk0
- 見てるよー
- 98 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:37:07 ID:rtFbbAeUO
- 楽しそうな、声がします。
そういえばデレは赤ちゃんの顔を見ていませんでした。
ζ(゚ー゚*ζ「見てもいいですか?」
川*д川「ええ、どうぞ」
そう言った彼女の腕には、
(φー )
頭から、血を流す、男が。
- 99 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:38:59 ID:rtFbbAeUO
- 「デレ?」
ζ( ー ;ζ「ぁ…あ…」
('A`)「デレ!」
ζ( ー ;ζ「っ……」
('A`)「大丈夫か?だいぶうなされてたみたいだったから…」
ζ( ー ;ζ「……大丈夫」
私は無理矢理微笑んで、ドクオにそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ここは?」
('A`)「さぁ…。今、オサムさんとくるうが国の様子を見に行ってる」
ζ(゚ー゚*ζ「そっか、」
ζ(゚ー゚;ζ(それにしてもひどい夢だった)
父似の男の人。
赤ちゃんを連れた女の人。
それから、パミィさん。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「何か食う?それとも水がいい?」
ζ(゚ー゚*ζ「…水だけにしようかな」
('A`)「はいよ」
ドクオから、水筒を受け取る。
おいしい。
これだけでも結構救われたような気がした。
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」
('A`)「おう」
- 100 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:41:26 ID:rtFbbAeUO
- それから、まもなくしてオサムさん達が帰ってきた。
【+ 】ゞ゚)「どうも国は滅んでしまったようで、誰もいなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「滅んだ…」
川 ゚ 々゚)「家と扉しかなかったよー」
そうなると、民話の蒐集もままならない。
そのまま通り過ぎることにしようという話になった。
が、
ζ( ー ;ζ(うそでしょ……)
【+ 】ゞ゚)「どうしましたか、デレさん」
ζ(゚ー゚;ζ「いや、なんでもない、です……」
滅んだ国は、あの夢に出て来た国にそっくりだった。
違うのは、迎えてくれる人がいないだけ。
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
川 ゚ 々゚)「やっぱりまだ体調悪い?休もうか?」
ζ(^ー^;ζ「! だ、大丈夫!」
('A`)「本当か?」
ζ(゚ー゚;ζ「うん、それより先に行こうよ!」
なんであんな夢を見たのだろう。
そもそもあれは夢だったの?
父そっくりのあの人は?
なくしものを見つけてくれるヒトの話は?
ζ( ― *ζ(もう、わかんないよ…)
【+ 】ゞ゚)「扉を開けるけど、構いませんよね?」
ζ( ― ζ「はい…」
扉の近くにあった納屋を見つめながら、返事をする。
赤ちゃんの泣き声が、聞こえたような気がした。
第六階層「見つからない国」 了
- 101 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:49:17 ID:rtFbbAeUO
- お題ストック(10個までですよ)
ハイテンションなおさむ
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレのおっぱいにダイブ
- 102 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 00:49:36 ID:zeHGSb8s0
- 速筆だな乙
不穏さがじわじわと…
- 103 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 00:50:08 ID:XWVKmJPk0
- こえええええええええええよ
- 104 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 00:56:05 ID:rtFbbAeUO
- なにがなんでもこれは夜中に投下したかったのです
- 105 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 01:08:43 ID:65UX/Cbk0
- こえぇよ…
乙乙
- 106 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 03:15:48 ID:Dp0NXD0c0
- こんな時間に読むんじゃなかった…怖ぃい
- 107 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 05:02:46 ID:Zx40MD3Y0
- うーむ、面白い
ダークな雰囲気が堪らん
- 108 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 11:59:50 ID:65UX/Cbk0
- お題
\(^o^)/「僕は死なないよーwwwwwwwwwwwwwwwwww」
- 109 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 13:19:35 ID:rtFbbAeUO
- 今日は四時半に投下するよー
あとお題に制限追加します
セリフ単体なら大丈夫ですが、AA「セリフ」みたいなのはご遠慮ください
でも>>108は消化するよ!
- 110 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 13:23:11 ID:CR1VMbOA0
- お題
ζ(゚ー゚*ζが胸にダイブ
- 111 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 13:23:52 ID:CR1VMbOA0
- >>110
訂正
ζ(゚ー゚*ζがおっぱいにダイブ
- 112 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:27:14 ID:rtFbbAeUO
- ぼくは、よく、わからないです。
――第七階層「はくちのくに」
- 113 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:30:18 ID:rtFbbAeUO
- 次に私達がたどり着いたところは、地面が真っ白な国でした。
川 ゚ 々゚)「きれいー」
ζ(゚ー゚*ζ「ずいぶんさらさらしているわね」
('A`)「うわ、靴の中に入ってきた」
どうも、それは土ではなく砂だったらしい。
歩くたびに、靴に砂が入って不快だった。
川 ゚ 々゚)「……あれって国かなぁ?」
ζ(゚ー゚*ζ「あー…かなぁ」
目をこらせば、遠くにポツポツと家が見えた。
【+ 】ゞ゚)「…人のいる気配がしない」
('A`)「うへぇ、また無人かよ」
川 ゚ 々゚)「そういえばさっきの国はなんで誰もいなかったんだろうねー」
ζ(゚―゚*ζ「…………」
そうだ。
みんな知らないのだ。
あれは夢だから。
ζ(゚―゚*ζ「…………」
【+ 】ゞ゚)「…顔が青いな」
ζ(゚ー゚;ζ「いえ、大丈夫です」
【+ 】ゞ゚)「…すまないな、今度からはもう少し気をつけるよ」
なぜか、オサムさんは謝って私の頭を軽く撫でた。
違う。
オサムさんのせいじゃない。
でも誰が悪いのかと言われたら、
ζ( ― *ζ(…わかんない)
答えは、でなかった。
- 114 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:32:16 ID:rtFbbAeUO
- 国は、意外と広かった。
でも、迎え入れてくれる人は誰もいなかった。
('A`)「誰もいないのかな?」
川 ゚ 々゚)「…かもしれないね」
だって、家は朽ち果てているものばかりだったから。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、扉を探そうよ」
そう言って歩こうとした時だった。
「うぁー」
ζ( ー *ζ「!?」
突然聞こえた声に、みんなが固まった。
あたりを見渡す。
どうも声は、左にあった家からするみたいだ。
ドクオが、鞄に手を突っ込んだ。
オサムさんはくるうを後ろでかばいながらクロスボウを取り出した。
私もフレイルを取り出す。
「ぅーう、ぅーう」
赤ちゃんみたいな声。
思わず耳をふさぎたくなる。
先ほど見た夢を、思い出してしまいそうだったから。
「うー、」
「こら、しずかに」
それとは別に、たどたどしい言葉が聞こえた。
キィ、と家の扉が開く。
そこから、真っ白な少年が出てきた。
\(^o^)/「ああ、おきゃくさま」
それから、にこりと笑ってこう言った。
\(^o^)/「ようこそ、はくちのくにへ」
ζ(゚ー゚*ζ「白痴の国?」
\(^o^)/「いいえ、はくちです。ぼくはおわた、なかへどうぞ」
- 115 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:33:59 ID:rtFbbAeUO
- 中に招き入れられた私達は、おわたくんと向き合う形で席についた。
\(^o^)/「ごめんなさい、なにもないよ」
そう言って彼が差し出してきたのは、白い砂が目一杯入ったティーカップだった。
(;'A`)「…これ飲み物なのか?」
\(^o^)/「たべもの、ない。のむのこれだけ」
微妙に会話が成立していないような気がする。
でも、これは彼なりにもてなしているのだろう。
ζ(゚ー゚;ζ(さすがに砂は飲めないけど)
\(^o^)/「きみは、だれ?」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ、こっちはドクオ」
川 ゚ 々゚)「くるうだよー」
【+ 】ゞ゚)「オサムだ」
\(^o^)/「…でれと、でれでれ?」
ζ(゚ー゚*ζ(あ、だめだ)
やっぱり会話は成立していなかった。
【+ 】ゞ゚)「ここには他に誰もいないのか?」
\(^o^)/「しんだった」
川 ゚ 々゚)「え?」
\(^o^)/「ちがしろくなってばかになる。そしてちをはく」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
\(^o^)/「でもすぱむがいるよ」
ζ(゚ー゚*ζ「すぱむ?」
\(^o^)/「ともだち。だいすき」
そう言って、おわたくんは部屋の奥へ消えていった。
それからまもなく、彼は何かを引きずってきた。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「あーあ、いーあ、あー」
- 116 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:37:37 ID:rtFbbAeUO
- それは、うつろな笑みを浮かべた女の子だった。
年はおわたくんと同じくらいかな。
\(^o^)/「すぱむ。すぱむ、すぱむ!」
両手をあげて、おわたくんが叫ぶ。
同時に、すぱむちゃんが床に頭をぶつけた。
おわたくんが、すぱむちゃんの服を手放してしまったからだ。
ζ(゚ー゚;ζ「ちょ…大丈夫?」
思わず駆け寄ると、彼女は締まりのない笑みを浮かべて私に抱き付いてきた。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「まぁまー!」
ζ(゚ー゚*ζ「へ?」
川 ゚ 々゚)「お母さんと勘違いされてるんじゃない?」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「まま、あ、ぁーあぁ」
すぱむちゃんが私の胸に抱き付く。
ζ(゚ー゚*ζ(泣いてる…)
少し頭を撫でてみる。
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「うーぁ、すぃー」
ζ(゚ー゚*ζ「よしよし」
くるうの言う通り、お母さんに間違えられているのかもしれない。
- 117 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 16:38:43 ID:lrRxGdRY0
- ペース早いなぁ
支援
- 118 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:39:38 ID:rtFbbAeUO
- ζ(゚ー゚*ζ(もしくは人恋しいか)
\(^o^)/「すぱむ、よろこんでる」
('A`)「…そうか」
複雑そうな表情でドクオがそう言った。
('A`)「……なぁ、少しだけこの子達と遊ぼうよ」
【+ 】ゞ゚)「……」
川 ゚ 々゚)「いいね、たまにはいいと思う!」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだねぇ…」
この子達は、いつから二人ぼっちだったんだろうか。
それはおわたくんに聞いてもわからないだろうけど、でも。
ζ(゚ー゚*ζ(ずっと、寂しかったはず)
【+ 】ゞ゚)「……仕方がないな」
ため息まじりに吐かれた、オサムさんの言葉。
だけど、おわたくん達への視線がやわらかかったのを私は見逃さなかった。
- 119 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:43:29 ID:rtFbbAeUO
- (#'A`)「ぐわぁぁ!鬼だぞぉぉぉ!」
川;゚ 々゚)「ドクオこわいー」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「あうぅー」
(#'A`)「悪い子いねぇかぁぁぁ!バラバラにすっぞぉぉ!」
ζ(゚ー゚;ζ「なにかが違う!違いすぎる!!」
\(^o^)/「ぼくはしなないよーwwwwwwwwwwwwwwwwwwわるいこじゃないからー!wwwwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「くるう、こっちこっち!」
,_
【+ 】ゞ゚)「俺に任せて先に行け」
('A`)そ
ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん、鬼ごっこは気迫で鬼を追い払う遊びじゃないよ…」
('A`)+「と見せかけてからのシャバドゥビタァァァッチッ!!!」
【+ 】ゞ゚)そ「なん…だと…」
\(^o^)/「あのふたりこわい」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「こあいー」
川 々 )「ドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめドクオめ…」
ζ(゚ー゚;ζ「くるう落ち着いて!」
まぁ、こんな調子で私達は日が暮れるまでずっと遊び続けた。
本気で鬼ごっこやかくれんぼをするのはいつぶりだろうか。
ζ(゚ー゚;ζ(あれを鬼ごっこと呼ぶのもあれだけど)
- 120 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:47:05 ID:rtFbbAeUO
- すぱむちゃんは、自力で歩けないのでみんなで交替でおんぶをした。
彼女の体は羽のように軽くて、心配だった。
でも、
\(^o^)/「たのしかったです」
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「いさぃあー」
ζ(^ー^*ζ「……ならよかった」
一緒に遊べて、二人とも満足したみたいだった。
夕食は保存食の缶詰を開けて、一緒に食事をした。
とても楽しかった。
その後が、問題だった。
ヽiリ,,;―;ノi「ぅ゛…え゛っ!」
ζ(゚ー゚;ζ「すぱむちゃん!?」
\(^o^)/「…すぱむ、」
びちゃびちゃと床にこぼれる、白。
だけどその臭いはまぎれもなく血の臭いで、
ζ( ー *ζ(ああ…)
川;゚ 々゚)「すぱむちゃん!」
くるうが慌てて駆け寄る。
ヽiリ,,;―;ノi「あー…ぁ、うぅう…」
\(^o^)/「…すぱむ、しんじゃうの?」
- 121 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:50:02 ID:rtFbbAeUO
- 川 々 )「……治す」
くるうがぽつりと呟いた。
ζ(゚ー゚;ζ「え…」
川#゚ 々゚)「治すの!絶対助ける!」
そう言ってくるうは鞄から白衣を取り出した。
【+ 】ゞ゚)「くるう、」
川# 々 )「一人でやれる」
てきぱきと道具を出しながら、くるうが言った。
【+ 】ゞ゚)「……」
('A`)「行きましょう、オサムさん」
ドクオが、オサムさんに呼び掛ける。
【+ 】ゞ゚)「…何かあったら、呼べ」
川 々 )「……うん」
\(^o^)/「……くるうちゃん」
川 ゚ 々゚)「なぁに?」
\(^o^)/「すぱむちゃんなおる?」
- 122 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:50:57 ID:rtFbbAeUO
- 川 ゚ 々゚)「…汝のために己を殺せ、だから」
\(^o^)/「?」
川 ^々^)「だいじょーぶだよ」
くるうの笑みに、おわたくんはなんともいえない表情を浮かべた。
すがるような、それでいて泣き笑いをしているような顔。
\(^o^)/「ぼくは、よく、わからないです」
川 ゚ 々゚)「…デレ、」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。……おわたくん、行こう」
私は、おわたくんの手をつないで、部屋の奥に向かった。
その晩は、誰も眠ることも口をきくこともなかった。
ただ一つ言えるのは、誰もがすぱむちゃんの無事を祈っていたということ。
- 123 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:53:38 ID:rtFbbAeUO
- そして、朝になり。
川 々 )「みんな、」
やつれた様子のくるうが、扉を開けた。
髪の色は、黒から赤に変わっていた。
彼女は、大量に魔力を使うと、髪の毛の色素が抜けてしまうのだ。
\(^o^)/「すぱむちゃんは?」
おわたくんの言葉に、くるうは
川 々 )「…………ごめんね、」
\(^o^)/「…………」
川 ;々;)「ごめんね、ごめんね……」
\(^o^)/「……だいじょーぶ」
おわたくんは、そう言って部屋を出ていった。
(;'A`)「おわたくん」
ドクオが慌てて後を追う。
【+ 】ゞ゚)「…くるう、」
川 ;々;)「だめだった…だめだったの…!」
わあわあと泣き出すくるうに、私とオサムさんはただ、立ち尽くすことしかできなかった。
ζ( ― *ζ(こんなのって、ないよ)
川 ;々;)「あああああ……」
ずっとずっとくるうは泣いた。
私は彼女を抱き締めて泣いた。
オサムさんも、静かに泣いた。
すぱむちゃんのいる部屋からも、泣き声が聞こえた。
もう、どうしようもないくらい悲しかった。
- 124 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:56:10 ID:rtFbbAeUO
- ひとしきり泣いて、すぱむちゃんのお墓を作ったあと、私達はおわたくんに連れられて扉の前に来ていた。
川 々 )「ごめんね…」
\(^o^)/「ううん、たすけてくれてありがとう」
川 ゚ 々゚)「…助けられなかったんだよ?」
\(^o^)/「でも、すぱむちゃんとあそんでくれた。おはかもつくってくれた」
おわたくんは、真っ赤に泣き腫らした目で、くるうを見つめる。
\(^o^)/「それだけで、じゅうぶん」
川 ゚ 々゚)「……」
\(^o^)/「これ、あげる」
そう言って、おわたくんは、膨張した缶詰を渡してきた。
川 ゚ 々゚)「いいの?」
\(^o^)/「うん」
くるうは、それを手に取ろうか迷っていたようだった。
【+ 】ゞ゚)「受け取りなさい」
川;゚ 々゚)「…でも、」
【+ 】ゞ゚)「それはおわたくんの感謝の気持ちなんだよ。受け取ってあげなさい」
川*゚ 々゚)「……ありがとう」
オサムさんに促されて、くるうはそれを受け取った。
\(^o^)/「きをつけてね」
扉をくぐり抜けながら、ふと思った。
ζ(゚―゚*ζ(一人になったら、彼はどうするんだろう)
考えても、私にできることなんて、ないのだけれど。
第七階層「はくちのくに」 了
- 125 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/05(金) 16:57:39 ID:rtFbbAeUO
- お題ストック(10個までですよ)
デレがおっぱいにダイブ
ハイテンションなおさむ
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
- 126 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 17:21:33 ID:SmwhfcM60
- 乙
早くて嬉しい
>>109
把握。お題消化ありがとう
- 127 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 17:30:06 ID:JffbQOKAO
- \(^o^)/オワタ、頑張って生きれよ!
- 128 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 17:34:24 ID:MeNOSmzg0
- お題:変わらない終わり
- 129 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 22:00:59 ID:pSO73JWcO
- 乙
神が出てこなかったのは初か
- 130 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 23:12:31 ID:LrQXVrSgO
- 面白い
お題:愛してるって10回言ってみて
- 131 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/06(土) 14:17:44 ID:XDxUdk4UO
- 第八階層が予想より長くなりそうなので三日ほどお時間いただきます
ちなみにほのぼのです多分きっとええ
- 132 :名も無きAAのようです:2012/10/07(日) 13:19:47 ID:AgRdzTw.O
- 面白い
お題:好奇心は猫をも殺す
- 133 :名も無きAAのようです:2012/10/08(月) 20:24:59 ID:t4GN8a3Q0
- 良いね良いね!
- 134 :名も無きAAのようです:2012/10/08(月) 21:56:42 ID:2jWednTI0
- まだかなー
- 135 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/08(月) 23:58:17 ID:i2MkZC/sO
- ふぇぇ…まだ半分も書けてないよう…
ちょっとマジで書き溜めが多いのでもうしばしお待ちを
次回予告もどきだけは置いていきます
第八階層は名無しの国でございます
ちらほらとみんなの過去を垣間見る貴重な回になる予定です
あとまさかのあの人も…おっと誰か来たようだ
- 136 :名も無きAAのようです:2012/10/09(火) 20:36:32 ID:8Cod.DAI0
- 待ってる
- 137 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:07:06 ID:n3lmFAa6O
- 長くなりすぎたので前編だけ投下
後編は鋭意作成中
- 138 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:07:42 ID:n3lmFAa6O
- 知ってる?
名前って、神様がつけてくれたもので、その中にはその人の大切なものが詰まっている。
名は体を表すっていうよね。
じゃあ、それがなくなったらどうなっちゃうのかな。
――第八階層「名無しの国」前編
- 139 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:10:15 ID:n3lmFAa6O
- ζ(´ー`*ζ「むにゃむにゃ…」
ξ゚⊿゚)ξ「こらー!起きなさい!」
ζ(゚ー゚;ζ「ひゃいっ!?」
シーツを引っ張られて、私はベッドから転がり落ちた。
ζ(>ー<*ζ「いたい〜…」
ξ゚⊿゚)ξ「だってもう、10時なのよ?」
お姉ちゃんはそう言って、私をズルズルと引きずる。
ζ(゚ー゚*ζ「ごーめーんーなーさーいー」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく…。早く着替えてきなさい」
ζ(^ー^*ζ「はーい」
寝ぼけまなこをこすりながら、タンスに行って、お気に入りのワンピースを引っ張り出す。
生地には青い小花が散っていて、袖がパフスリーブになっている、かわいいものだ。
もそもそと着替えて、リビングへ。
ζ(゚ー゚*ζ「おはよー」
( ´_ゝ`)「おはようじゃなくてこんにちはだろう?」
お父さんが、呆れながらそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ」
( ´_ゝ`)「まったく…お姉ちゃんを見習って早寝早起きしなさい」
ζ(´ー`*ζ「はーい」
ξ゚⊿゚)ξ「できたわよー」
お姉ちゃんが、朝ご飯?を運んできた。
パンに目玉焼き、それからサラダ。
代わり映えのしない、いつものメニュー。
ζ(゚ー゚*ζ「いただきまーす」
- 140 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:12:57 ID:n3lmFAa6O
- 食べながら考える。
今日は何をしよう?
そうだ、この間買った本がまだ部屋にあるからそれを読もう。
ξ゚⊿゚)ξ「なぁに、また今日も本読むの?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたって昔から本の虫よねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは…」
本はいい。
読んでいるだけで、その世界に飛び込むことができるから。
食事を終えて、部屋に戻る。
そうだ、本を読む前に部屋を片付けよう。
この間、ベッドと壁の隙間に本を落としてしまったし、ちょうどいいだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「よいしょー!」
ずりずりとベッドをひいて、壁から離す。
ζ(゚ー゚*ζ「たしか、ここらへんに…」
隙間に手をつっこみ、中を探す。
ζ(゚ー゚*ζ(あ、あった!)
ガシッと掴んで、引きあげる。
綿ぼこりがたくさんついた、文庫本が出てきた。
ζ(゚ー゚*ζ「あー…すごい汚れ」
本をはたこうと、窓の方に向かおうとした時だった。
ζ(゚ー゚;ζ「……?」
どこからともなく、視線を感じた……気がした。
ζ(゚ー゚;ζ(気のせいだよね)
まさかお化けがいるわけないし。
窓を開けて、ほこりを一生懸命はらい落とす。
ζ(゚、゚*ζ「そういえば、これって何の本だっけ?」
なんとなく気になる。
私はベッドに腰掛けて、それを読み始めた。
もう、掃除のことはどうでもいいやと思っていた。
- 141 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:14:42 ID:n3lmFAa6O
- 鶏小屋に入り、俺は一羽の鶏を取り出した。
逃げないようにしっかりと体を押さえて、家に戻る。
('A`)「じいさーん、ちょっとー」
( ´ー`)「呼んだ?」
('A`)「ああ、鶏しめようかと思って」
俺はじいさんに、鶏を見せた。
おとなしいそいつは、自分がこれから何をされるのかわかっていないようだった。
( ´ー`)「卵を産まなくなったやつか」
('A`)「そうだ」
( ´ー`)「じゃあ包丁を持ってこよう」
そう言ってじいさんは家の中へ戻った。
('A`)「…………」
こんなざっくばらんな口を利いてしまっているが、俺はじいさんを尊敬している。
俺は生まれてすぐ、身寄りをなくしてしまった。
それを父方のじいさんが引き取ってくれて……たくさんのことを教えてくれた。
木の手入れの仕方、料理、斧の使い方、そして。
( ´ー`)「しっかり持つんだよ」
('A`)「あいよ」
ダン!と包丁が鶏の首を叩き切った。
作業台に、血がダラダラと流れる。
( ´ー`)「お湯は今沸かしているからネ」
('A`)「了解」
鶏のしめ方なども、彼に教わった。
最初の頃は怖くて仕方がなかった。
だって毎日毎日名前つけて遊んでいたのに、ある日突然それが食卓に出て来るんだぜ?
- 142 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:15:55 ID:n3lmFAa6O
- ('A`)(今となっては鹿もさばけるようになったけど)
( ´ー`)「お待たせー」
よいしょ、とじいさんが寸胴鍋を地面に置いた。
なみなみと張られたお湯が、少しこぼれる。
鶏の足を掴んで、その中にざぶりとつける。
こうすると、羽がむしりやすくなるんだ。
( ´ー`)「今日は、何にしようかネ」
('A`)「やっぱ丸焼きじゃねぇの?」
( ´ー`)「丸焼きネー」
('A`)「だって今日、じいさんの誕生日だし」
( ´ー`)「……そうだっけ?」
('A`)「忘れてたのかよ、まったく」
そう言うと、じいさんはポリポリと頬をかいた。
(;´ー`)「ははは」
('A`)「誕生日おめでとう、」
……あれ?
('A`)(じいさんの、名前って、なんだっけ?)
('A`)「……じいさん」
( ´ー`)「ありがとう」
('A`)(……まぁいっか)
- 143 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:19:27 ID:n3lmFAa6O
- その日、わたしは家で泣いていた。
家にはわたししかいなくて、心細かった。
川 ;々;)「うっく…ひぐっ、」
両親は、わたしを置いていってしまった。
塔の「外」に出ていった友達を助けに行くのだと、言った。
いかないで、って言えなかった。
だってわたしの家には「汝のために己を殺せ」って言葉があるから。
(´・_ゝ・`)「どうしても救わなきゃいけない人がいるんだ」
ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫、パパもママもすぐ戻ってくるから」
うそだ。
だって、「外」に行った人はみんな帰ってこなかったもの。
川 ;々;)「ううぅー……」
その時、コンコン、ってノックの音がした。
扉まで近付いて、開けようとする。
ああ、だけど誰がきたのかわからないや。
川 ;々;)「……だぁれ?」
「自警団の人だよ。泣き声がしたから、心配になって」
それは、大人の声だった。
川 ;々;)「…………」
黙って扉を開ける。
そこには、小さいお兄さんと大きいお兄さん?がいた。
从 ゚∀从「こんにちは」
川 ;々;)「……こんにちは」
从 ゚∀从「おうちの人は、どうしたのかな?」
- 144 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:21:45 ID:n3lmFAa6O
- 川 ;々;)「……「外」に、行っちゃった」
从;゚∀从「「外」…!?」
川 ;々;)「友達を、助けるって」
从 ゚∀从「……わかった」
大きいお兄さんは、小さいお兄さんにこしょこしょ話をした。
从 ゚∀从「あなたのパパとママを探してあげるからね」
川 ;々;)「……「外」に行くの?」
从 ゚∀从「あんまり遠くまでは探しにいけないけどね」
川 ;々;)「…………」
大きいお兄さんは、小さいお兄さんを置いて出ていった。
小さいお兄さんは、すごく静かでつまらなかった。
- 145 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:23:45 ID:n3lmFAa6O
- 川 ゚ 々゚)「ねぇ」
( ゚_ゞ゚)「なに?」
川 ゚ 々゚)「さっきお兄さんとなに話してたの?」
( ゚_ゞ゚)「……、その子の話し相手になって安心させてやれ、って」
川 ゚ 々゚)「…………」
( ゚_ゞ゚)「俺にできることなら、なんでもする」
川 ゚ 々゚)「じゃあ、好きって十回言って」
( ゚_ゞ゚)「……なんで?」
川 ゚ 々゚)「誰かに好きって言われると安心するってママが言ってたから」
( ゚_ゞ゚)「やだ」
川 ゚ 々゚)「なんで?」
( ゚_ゞ゚)「恥ずかしい。それに、そういうのは本当に好きな人にしか言っちゃいけないんだよ」
川 ゚ 々゚)「……嫌い?」
( ゚_ゞ゚)「さぁ?」
心底どうでもよさそうに、彼は言った。
それがなんだかムカついて。
川 ゚ 々゚)「じゃあ、絶対好きって言わせる」
( ゚_ゞ゚)「どうやって?」
川 ^々^)「好きにさせるの!」
わたしは、笑ってそう言った。
- 146 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:27:41 ID:n3lmFAa6O
- ( ゚_ゞ゚)「…………」
深呼吸。トリガーに指をかける。弾く。
風切り音。矢が的に当たる、小気味いい音。
从 ゚∀从「やるねぇ〜」
口笛を鳴らしながら、師匠が言った。
いつからいたんだろう、この人。
( ゚_ゞ゚)「だけど、中心から少しずれています」
从 ゚∀从「それとゆっくり撃ちすぎ」
そう言って師匠は、俺の手からクロスボウを奪った。
从 ゚∀从「こうやって……」
カンッ!と響く音。
そして、的の中心に刺さっている矢。
从 ゚∀从「こうやる」
( ゚_ゞ゚)「……さすがですね」
从*゚∀从「もっとほめてもいいのよ〜?」
ものすごい自慢げな顔。
少しむかつく。
( ゚_ゞ゚)「これで女性らしさがあればいいと思いますが」
从 ゚∀从「頭ぶち抜くぞ童貞」
( ^_ゞ^)「ははは」
笑ってごまかす。
- 147 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:29:31 ID:n3lmFAa6O
- 从 -∀从「小さい頃は、かわいかったのにねー。いつからこんな憎たらしくなったかね」
( ゚_ゞ゚)「…………」
从 ゚∀从「懐かしいよ。ついこないだ拾ってきたと思ったらこんなにでかくなってさ」
( ゚_ゞ゚)「師匠、」
从*゚∀从「で、いつになったら初孫抱かせてくれんの?」
心底意地の悪い笑みを浮かべて、師匠はそう言った。
( ゚_ゞ゚)「…………」
回りくどい仕返しだ。
まったく……。
( ゚_ゞ゚)「これはひどい」
思わずそう呟いてしまった。
その呟きに、彼女はからからと笑った。
- 148 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:31:51 ID:n3lmFAa6O
- ζ(´ー`*ζ「むにゃむにゃ…」
ξ゚⊿゚)ξ「こらー!起きなさい!」
ζ(゚ー゚;ζ「ひゃいっ!?」
シーツを引っ張られて、私はベッドから転がり落ちた。
ζ(>ー<*ζ「いたい〜…」
ξ゚⊿゚)ξ「だってもう、10時なのよ?」
お姉ちゃんが、パジャマの裾を掴んで引っ張る。
ζ(゚ー゚*ζ「ごーめーんーなーさーいー」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく…。早く着替えてきなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「はーい」
寝ぼけまなこをこすりながら、タンスに行き、青い小花柄の、パフスリーブのワンピースを探す。
私の持っている服の中では一番のお気に入りだ。
女の子らしくて、すごくかわいいのだ。
もそもそと着替えて、リビングへ。
ζ(゚ー゚*ζ「おはよー」
( ´_ゝ`)「おはようじゃなくてこんにちはだろう?」
お父さんが、呆れながらそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ」
( ´_ゝ`)「まったく…お姉ちゃんを見習って早寝早起きしなさい」
ζ(゚、゚*ζ「はーい」
ξ゚⊿゚)ξ「できたわよー」
お姉ちゃんが、ご飯を運んできた。
パンに目玉焼き、それからサラダ。
代わり映えのしない、いつものメニュー。
ζ(^ー^*ζ「いただきまーす」
食べながら考える。
今日は何をしよう?
そうだ、この間買った本がまだ部屋にあるからそれを読もうかな。
- 149 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:33:22 ID:n3lmFAa6O
- ξ゚⊿゚)ξ「なぁに、また今日も本読むの?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたって昔から本の虫よねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは…」
本はいい。
読んでいるだけで、その世界に飛び込むことができるから。
食事を終えて、部屋に戻る。
そうだ、本を読む前に部屋を片付けよう。
この間、ベッドと壁の隙間に本を落としてしまったし、ちょうどいいだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「よいしょー!」
ずりずりとベッドをひいて、壁から離す。
ζ(゚ー゚*ζ「たしか、ここらへんに…」
隙間に手をつっこむ。
ζ(゚ー゚*ζ(あ、あった!)
ガシッと掴んで、それを引きあげる。
綿ぼこりがたくさんついた、文庫本が出てきた。
ζ(゚ー゚;ζ「あー…すごい汚れ」
本の汚れをはたこうと、窓のほうを向いた時だった。
- 150 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:35:28 ID:n3lmFAa6O
- (´レ_` )「いつまで同じことを繰り返すつもりだ?」
ζ(゚ー゚;ζ「だっ、誰!?」
知らない男の人。
……でも、父に似ていた。
それに、会ったことのあるような……?
(´レ_` )「豸`y龜者だよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……?」
ノイズがかった、声。
わからない、なんて名乗ったんだろう?
(´レ_` )「君の名前は?」
ζ(゚ー゚*ζ「わたし、は……」
名前、なんだっけ?
わたし、わたし……。
ζ(゚ー゚*ζ「名前なんて、ない」
(´レ_` )「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「出ていって」
(´レ_` )「いやだ」
ζ(゚ー゚#ζ「……出ていってよ!」
頭の中が、グチャグチャだ。
名前?ない、ない。
いらない。
お姉ちゃんさえいればいい。
父さえいれば、本さえあれば。
(´レ_` )「いい加減にしろ」
ζ( ー #ζ「っ……」
(´レ_` )「君は今まで旅してきたことを忘れてしまったのか?仲間のことも、出会った人のことも、旅の意味も」
ζ( ー *ζ「…………」
- 151 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:40:17 ID:n3lmFAa6O
- (´レ_` )「懐中時計は、まだ持っているか?」
ζ( ー *ζ「かいちゅう、どけい……?」
(´レ_` )「小さい時計だよ」
ζ( ー *ζ「…………」
時計。
小さい、時計……。
ζ(゚ー゚*ζ「!」
タンスに駆け寄り、引き出しをあさる。
たしか、あったはずなんだ。
ζ(゚ー゚;ζ(こんな小さい時計、私は持っていなかったって)
そう思って、それで。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
シャツの下に隠れていたそれを、取り出す。
ζ( ー *ζ(ああ、)
どうして忘れてしまっていたのだろう。
なちさんからもらった、餞別の品なのに。
(´レ_` )「見つかったかね?」
ζ(゚ー゚*ζ「……ええ」
埋もれていた記憶が、徐々によみがえる。
私の名前はデレ。
民話蒐集の旅をしていた。
はくちのくにを出た私達は、次の国にたどり着いた。
それで……。
ζ(゚ー゚*ζ「あ……」
タンスが、溶けるように消えていく。
ベッドも、窓も、床に放り投げたほこりだらけの本も。
そんなの、最初からなかったんだ。
父も、お姉ちゃんも……いいえ、ツンも。
- 152 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:42:14 ID:n3lmFAa6O
- ζ(;ー;*ζ「…………」
(´レ_` )「どうして泣いているんだ?」
心底不思議そうに、その人は言った。
ζ(;ー;*ζ「……なんでもない」
涙を拭う。
見慣れたはずの部屋は、いつの間にか真っ白な空間になっていた。
服も、いつもと同じものに変わっていた。
ζ(゚ー゚*ζ「ここは……?」
(´レ_` )「ここは、名無しの国。君はここの住人に名前を奪われてしまったのさ」
ζ(゚ー゚*ζ「名前……」
(´レ_` )「名前というのは、神が与えたものでその人の本質を表している。名は体を表すという言葉があるだろう?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ…」
(´レ_` )「その本質を奪われてしまったら、君は何者でもなくなる。残された体はわずかな記憶の残滓を基に、いつも同じ終わりを迎える夢を見続けることとなる」
ぞくりと背筋が泡立つ。
名無しの国が怖いというのもある。
だけど……。
ζ( ー *ζ(なんでそんなことを知っているの?)
目の前にいるその人の存在が、一番恐ろしかった。
ζ( ー *ζ「あなたは、」
震える声で、問い掛けようとした。
でも、
(´レ_` )「君と同じ、ただの旅人だよ」
それは、できなかった。
- 153 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:45:28 ID:n3lmFAa6O
- 私は、彼と一緒にドクオ達を探すことになった。
ζ(゚ー゚*ζ「このまま歩いていけば、見つかるかな」
(´レ_` )「見つかるだろうさ。俺が君を見つけたようにね」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
どうも、彼は信用ならない。
だけど私が頼ることのできる人は、彼以外にはいないのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「はぁ……」
(´レ_` )「あれだ」
そっと彼が指差した先には、ぼんやりと滲む緑。
水彩絵の具を真っ白な画用紙に垂らしたような、そんな景色。
ζ(゚ー゚*ζ「この中にいるの?」
(´レ_` )「いるよ。誰がいるかはわからないけど」
緊張しながら、その中に入ると……。
('A`)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ!!」
私が駆け寄ろうとした時だった。
(´レ_` )「まぁまぁ、待ちたまえ」
ζ(゚ー゚*ζ「な、なんですか……」
(´レ_` )「ただ呼び掛けるだけじゃダメだ。思い出させないと」
ζ(゚ー゚;ζ「思い出させるって……」
どうすればいいの、と言おうとした時だった。
( %ヾ$w)「しっuo.Iktgm/aん啝Dxよ」
ζ( ー ;ζ「ひっ……!!」
- 154 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:47:11 ID:n3lmFAa6O
- 醜悪な姿。
そして、音。
それはもはや、人とは呼べなかった。
('A`)「あいよ」
どうして、普通に会話しているの。
ドクオにはそれが、何に見えているの……?
( %ヾ$w)「ltw鬪jtg~しmPiuるktwhネ」
('A`)「了解」
ζ(゚ー゚;ζ「ドクオっ!!」
私は、彼の制止を振り払ってドクオにすがった。
('A`)「……だれ?」
ζ(゚ー゚;ζ「ねぇ、ドクオ!私だよ、デレ!覚えているでしょう!?」
('A`)「……しらん」
ζ(゚ー゚;ζ「ずっと旅をしていたでしょう!?くるうと、オサムと一緒に!!」
('A`)「……」
ζ(゚ー゚;ζ「最初は学園都市の国に行ったよね?その次はくだらない国、それから笑いの国に……」
_,
('A`)「……」
ほんの少しだけ、彼が眉を寄せた。
ああ、そういえば……。
ζ(゚ー゚;ζ「そう!その、笑いの国でくるうとドクオがコントをしてたの!すっごく変なのを!」
_,
('A`)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「覚えてないなら実演してあげる!くるうの好物がね、タイノエっていう寄生虫だかなんだかよくわからないもので、みんなが反応に困ってね」
_,
('A`)「はぁ……」
- 155 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:49:35 ID:n3lmFAa6O
- ζ(゚ー゚*ζ「そう!それでドクオが好物はバナナヨーグルトだって言ったの!そしたらくるうが卑猥だねって」
(i|'A`)「………」
ζ(゚ー゚*ζ(あれ、)
心なしか、顔が青ざめている気がする。
ζ(゚ー゚*ζ「それでね、くるうが大衆の前でおねだりしなさいなって……」
(i| A )「う、」
ζ(゚ー゚*ζ「う?」
(((;>'A`))>「うわぁぁ!!!」
叫びながら、両手で耳をふさいで地面をのたうち回るドクオに、私は何もできなかった。
ζ(゚ー゚;ζ「ド、ドクオ……?」
- 156 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:51:32 ID:n3lmFAa6O
- (((;>'A`))>「忘れてたのに!せっかく傷が癒えてきたのにぃぃぃ!!!!」
ζ(゚ー゚*ζ「! 思い出したの!?」
(i| A )「ああ、」
ζ(゚ー゚*ζ「ならよかった……のかな?」
(i| A )「…………」
最善ではなかったかもしれない。
でも私にはどうすればいいのかなんて、わからなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「あの……元気、だして?」
(i| A )「…………おう、」
(´レ_` )「ふむ、空間も抜けたようだから早く行こうか」
そう言って彼は、さっさと歩いていってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「あっ……。ドクオも、はやく!」
(*'A`)「う、うん……」
手を掴み、彼を追いかける。
そういえば、ドクオは何の夢を見ていたのだろう?
- 157 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:53:57 ID:n3lmFAa6O
- 彼は振り返らずにどんどん歩く。
私はひたすら追いかける。
ζ(゚ー゚;ζ(早い……)
息が切れる。
辺りが白いから、どれくらい走ったのかさえわからない。
ζ(゚ー゚;ζ「はぁ…はぁ…」
(*'A`)「あの、デレ」
ζ(゚ー゚;ζ「な、なに?」
(*'A`)「手、いつまで握ってるんだ?」
顔を赤らめて、視線をすこしずらしながらドクオは言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ご、ごめん!」
パッと手を離す。
ζ(゚、゚*ζ「平気?痛くない?」
(*'A`)「平気平気」
と、その時だった。
(´レ_` )「こっちにまた、誰かが夢を見ているぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「!!」
私は、彼の声がした方に向かって走り出した。
(;'A`)「デ、デレ……?」
ζ(゚ー゚*ζ「ごめん、説明している暇はないの。あとで説明するから!」
黒く滲んだ点が見えた。
その中に、彼は入っていくのも。
ζ(゚ー゚*ζ「とりあえず、あの中に入るの!」
('A`)「わかった」
そうして、勢いよく入った先には……。
- 158 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 09:56:36 ID:n3lmFAa6O
- 川 ;々;)「うっく…ひぐっ、」
暗い家の中で、膝を抱えて泣いている幼い少女の姿が。
ζ(゚ー゚*ζ「くるう!!」
川 ;々;)「……だれ?」
('A`)「おいおい、覚えてないのかよ……」
ζ(゚ー゚*ζ「さっきまでドクオもこうなってたんだよ?」
(;'A`)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「くるう、私だよ、デレだよ」
川 ;々;)「……知らない、わからないよ」
('A`)「今まで、みんなと旅してたことも忘れたのか?」
川 ゚ 々゚)「旅……?」
暗い色をした瞳に、少しだけ光が戻る。
川 ゚ 々゚)「パパとママがどこに行ったのか知ってるの!?」
(;'A`)「え、いや、その……」
ζ(゚ー゚*ζ(なるほど)
くるうは、両親がいなくなった時の夢を見ているんだ。
川;゚ 々゚)「しらないの?ねぇ、はやくたすけてよ……」
ζ(゚ー゚*ζ「くるう、」
その時だった。
家の扉が、ノックされたのは。
- 159 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 10:12:12 ID:n3lmFAa6O
- ('A`)「…………」ζ(゚ー゚*ζ
私とドクオは思わず息を潜める。
しかしくるうは扉の方へ近付こうとしていた。
ζ(゚ー゚;ζ「だめっ!」
思わず私はくるうに抱き付く。
だって、扉の向こうには何かがいるのだ。
ドクオと話していたような、人ではないものが。
川#゚ 々゚)「離して!」
ζ(゚ー゚;ζ「やだ!」
(;'A`)「静かにしろよっ!」
ドクオが協力して、やっとくるうはおとなしくなった。
川#゚ 々゚)「うー、うー!」
ζ(゚ー゚*ζ「お願い、聞いて。私達はみんなで塔の中を旅してきたの」
川;゚ 々゚)「うー……」
ζ(゚ー゚*ζ「名無しの国にたどり着いた私達は、住人に名前を奪われて記憶をなくしてしまった。くるうは自分の名前、思い出せる?」
川;゚ 々゚)「……わかんない。くるうっていうのが名前なの?」
('A`)「そうだ、くるうって名前だったよ。魔法の使える医者で、みんなが怪我や病気をしたら助けるって言ってたじゃねぇか」
川 ゚ 々゚)「病気、」
その瞬間、私達のいる暗い部屋が、陽炎みたいに揺らぎ始めた。
川;゚ 々゚)「わたし……。わたし、」
('A`)「はくちのくにで、おわたくんにもらった缶詰は持ってるか?」
川;゚ 々゚)「あ、あ……。持ってる、ある、」
- 160 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 10:13:39 ID:n3lmFAa6O
- 空間は白くなり、そしてくるうのそばには、鞄が現われた。
小さくて華奢だった体が、いつの間にか元通りになっていた。
川 ;々;)「なんで、なんで忘れてたの。あんな大事なこと……」
また泣き出してしまったくるうを抱き締めて、私は頭を撫でてあげた。
('A`)「……あとは、オサムさんだけか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
そういえば、彼は……あの旅人さんはどこに行ってしまったのだろう?
- 161 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 10:16:13 ID:n3lmFAa6O
- どうにか落ち着いたくるうを加えて、私達はオサムさんを探す。
川 ゚ 々゚)「不思議なこともあるんだねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「私もびっくりしたよ」
('A`)「でも、なにがおそろしいって、デレが来なかったら俺達はずっと夢を見続けていたんだよな……」
川 ゚ 々゚)「よく気付いたねー」
ζ(゚ー゚*ζ「あはは……」
あの人に助けてもらったと、口にするのはなんとなく憚られた。
いつの間にかいなくなってしまった人のことを話しても、信じてもらえないような気がして。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば何の夢を見たの?」
('A`)「俺はじいさんの誕生日祝いの夢」
川 ゚ 々゚)「わたしは両親がいなくなった時の夢。デレは?」
ζ(゚ー゚*ζ「ひたすら本を読んでる夢だったなぁ。父とツンがいて、会いたいなって思っちゃった……」
('A`)「……俺も、会いたいって思ったよ」
川 ゚ 々゚)「…………」
空気が、重くなる。
それは、みんな今まで口に出してはいけないと思っていた。
川 ゚ 々゚)「……帰りたいな」
ζ(゚ー゚*ζ「ねー……」
('A`)「……帰ろうよ。絶対に生き残ってさ」
川 ゚ 々゚)「……うん、」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうだね、そうだよね」
このままではダメだ。
国に帰って、ツンに会うんだ。
でもその前に、弟者さんも探さして、手紙を渡さなきゃね!
- 162 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 10:18:50 ID:n3lmFAa6O
- 川 ゚ 々゚)「あ、あれ……」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
白い空間に、まるで包帯に垂らした血のような赤い点が一つ。
川*゚ 々゚)「オサム、のかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「多分……」
ζ(゚ー゚*ζ(確証はないけど)
('A`)「行こう。早く助けなきゃ」
足並みを揃えて、中に入る。
そこには、
( _ゞ)「…………」
無言で立ち尽くしているオサムさんの背中と、
从。&μ从
矢の刺さった、異形のなにか。
ζ(゚ー゚*ζ「オサムさん!」
私が呼び掛けると、彼はゆっくりと振り向いた。
その目は、ひどく濁っていて。
( ゚_ゞ゚)「まだ、いた」
「……オサムさ、っ?」
だから、気付かなかった。
彼が私に狙いを定めていたことを。
- 163 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 10:21:32 ID:n3lmFAa6O
- ζ( ー *ζ「ぁ……」
(;'A`)「デレ!」
膝からちからが抜ける。
お腹が、痛い。
( ゚_ゞ゚)「まだ、いる」
機械的な作業。
すばやく装填されたそれが、ドクオに向けられる。
ζ( ー ;ζ「だめっ!!」
駆け寄ってきたドクオをとっさにかばう。
ζ( ー ;ζ「ぐっ……」
背中が、熱い。
お腹も痛い。
(il A )「あ……」
青ざめたドクオの顔。
怖がらせた、かも?
ζ( ー ;ζ「ごめん、だいじょうぶ、だから」
だいじょうぶじゃ、ないけど。
でもね、やっぱり、言わなきゃ。
ζ( ― ζ「…………」
(;'A`)「デレ!デレ!!」
第八階層「名無しの国」前編 了
- 164 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/10(水) 10:38:57 ID:n3lmFAa6O
- お題ストック(10個までですよ)
ハイテンションなおさむ
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレがおっぱいにダイブ
好奇心は猫をも殺す
- 165 :名も無きAAのようです:2012/10/10(水) 10:51:38 ID:JEdNrM820
- 乙、ここで切るのか
デレーー!!
- 166 :名も無きAAのようです:2012/10/10(水) 12:20:33 ID:NzteJZiQ0
- 乙!
お題
それぞれの休日
- 167 :名も無きAAのようです:2012/10/10(水) 12:34:46 ID:yk9J4WPI0
- おつ
- 168 :名も無きAAのようです:2012/10/10(水) 19:49:26 ID:o5M5jVRcO
- 乙、1話読み終わるとなんかもの悲しくなる、例えるならキノの旅っぽい感じ好きだわ
お題
正義の騎士団
- 169 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:37:21 ID:pQO/g1JEO
- 初めてバトルシーン書きました
が、しかし!
かっこよくなんて書けませんでしたごめんなさい
- 170 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:41:22 ID:pQO/g1JEO
- 残滓が一つしかないって、いつ誰が言った?
神様には一瞬でも、ヒトには長く感じる人生だ。
生きている時間が多ければ、体に残る記憶も増える。
――第八階層「名無しの国」後編
- 171 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:44:55 ID:pQO/g1JEO
- その日、俺は師匠とともに盗人を追いかけていた。
盗人は二人組で、怪我人も何人か出していた。
从 ゚∀从「気をつけろよ、飛び道具を持っているからな」
(;゚_ゞ゚)「はい」
森の中に逃げ込まれてしまった今、状況は俺たちの方が不利ではあった。
だけど、隣に師匠がいたから、怖くはなかった。
怖くは、ない。
从 ゚∀从「……場合によっちゃ、殺しても構わないからな」
(;゚_ゞ゚)「……はい」
初めて人を殺すかもしれないという、不安ならあったけど。
木々に紛れながら俺と師匠は進む。
奴等はどこにいるのだろう。
いつ攻撃してくるのだろう。
( _ゞ )「ふー……ふー……」
呼吸が荒くなる。
クロスボウを構える手が震える。
だけど、探さなければ。
探して、捕まえて……。
从 ゚∀从「!!」
ヒュゥ、と音がした。
矢が、俺と師匠の間をすり抜けていったんだ。
(; _ゞ )「う、」
从;゚∀从「お、おい!」
矢が飛んで来た方向へ、クロスボウを構える。
射る。
装填。
射る。
装填。
- 172 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:47:46 ID:pQO/g1JEO
- 从;゚∀从「あそこだ!」
師匠が指差した先に、男がいた。
(’e’;)「ぎゃっ……!」
崩れ落ちる体。
師匠がさらに矢を撃ち込む。
( e ;)「っ……!」
( _ゞ )「…………」
俺と師匠は近付く。
( e #)「ク、ソがぁ……!」
从; ∀从「!!」
クロスボウが、俺に向けられる。
(; _ゞ )「ひっ……!」
とっさに俺はそいつの頭を撃ち抜いた。
( e )「がはっ……」
(; _ゞ )「はー……はー……」
从;゚∀从「 。 」
言葉が、聞こえない。
ただ視界に入ったのは、
从; ∀从「 !!」
彼女の、手の、中の、凶器。
( _ゞ )「あああああ!!!!!」
引き金に、手を掛けた。
- 173 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:50:45 ID:pQO/g1JEO
- 気絶したデレを抱えて、俺とくるうはオサムさんから逃げていた。
(;'A`)「ちくしょう……デレ……!」
彼女に守られるなんて、最悪だ。
(; A )(頼むから死ぬなよ……!)
川;゚ 々゚)「とりあえず、撒いたかしら……」
肩で息をしながら、くるうが言った。
川 ゚ 々゚)「シート敷くから待ってて。そしたら、左向きに寝かせてあげて」
地面に真っ白なシートが敷かれる。
そこに、ゆっくりとデレを寝かせる。
川 ゚ 々゚)「矢が抜けてないから出血は少ないけど……ばい菌が怖いわね」
てきぱきと白衣に着替え、瓶や包帯を出しながらくるうが言う。
( A )「俺のせいだ……」
川 ゚ 々゚)「んーん、オサムのせいだよ」
( A )「でも、」
川 ゚ 々゚)「ドクオはデレを助けようとしただけだよ」
( A )「…………」
川 ゚ 々゚)「でも、オサムのことは責めないで。あれは、その……色々あったから」
('A`)「……わかった」
その時、誰かが近付いてくる気配がした。
(;'A`)「来ちまったか」
川;゚ 々゚)「…………」
だけど、覚悟を決めるしかなかった。
- 174 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:53:23 ID:pQO/g1JEO
- ('A`)「なんとかしてオサムさんを元通りにさせる」
川 ゚ 々゚)「……どうやって?」
(;'A`)「……どうにかして」
くるうは呆れたような顔をした。
('A`)「とりあえずくるうはデレの治療してくれ」
川 ゚ 々゚)「……わかった」
俺はうなずいた。
それから鞄をあさって手斧を出した。
川 ゚ 々゚)「待って」
くるうが、デレの鞄を指差した。
川 ゚ 々゚)「フレイルも、持っていったほうがいいと思う」
川 ゚ 々゚)「……わかった」
デレの鞄から、折り畳み式のそれを取り出す。
('A`)「ちょっと借りるからな」
ζ( ― *ζ「…………」
足音が、近付く。
( ゚_ゞ゚)「…………」
虚ろな目が、くるうを射る。
('A`)「おい」
( ゚_ゞ゚)「…………」
('A`)「こっちだよ、ぼんくら」
挑発。
オサムさんの視線が、こちらに向く。
(#゚_ゞ゚)「…………」
('A`)(あとで怒られるかな)
それならそれで、上等だ。
- 175 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:55:43 ID:pQO/g1JEO
- 狙いを定められた瞬間、走り出す。
矢が外れる。
('A`)(いつもと違う)
あの人はもっと冷静に、そして素早く人を殺すはずだった。
それなのに今は、装填のスピードだけが早く、とにかく射ることしか頭になかったようだった。
距離が詰まる。
(#'A`)「うぉりゃー!!」
(;゚_ゞ゚)「っ!」
手斧を、ぶん投げる。
一瞬、オサムさんがひるむ。
が、それはかすりもしなかった。
( ゚、ゞ゚)「ばかが」
それは、いつか見たような背筋の凍るような笑みで。
だけど、それが嬉しくて。
(#'A`)「ばかはそっちだ!!」
袖に隠していたそれを取り出す。
ジャキンという音と共に、それが伸びる。
(;゚_ゞ゚)「!?」
(#'A`)「遅いっ!」
フレイルの打撃部分で、クロスボウの軌道をずらす。
(;゚_ゞ゚)「あっ……」
そのままフレイルを振り回す。
そして、
(#'A`)「たぁっ!!」
( _ゞ )「っ!?」
持ち手の部分で、顎の下を突いた。
(; _ゞ )「がっ……」
(;'A`)「…………」
- 176 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 11:59:55 ID:pQO/g1JEO
- 地面へ倒れゆく体。
それをなんとかひきずり、くるうのもとへ運んだ。
川 ゚ 々゚)「おみごと」
真紅の髪をいじりながら、くるうはそう言った。
('A`)「そりゃどうも」
川 ゚ 々゚)「意外と強いんだねー」
(;'A`)「いや、いつものオサムさんだったら瞬殺されてると思う……」
川 ゚ 々゚)「そう、」
呟くように言って、くるうはオサムさんの首元に手を当てた。
川*゚ 々゚)「ん、生きてるね」
('A`)「ならよかった。ところでデレは?」
川 ゚ 々゚)「だいじょーぶ。消毒したし、止血魔法かけといたから」
('A`)「そうか……」
思わず地面に座り込む。
( A )「……死んだら、どうしようかと」
川*^々^)「……だいじょーぶ」
やけに優しい笑みを浮かべながら、くるうは言った。
川 ゚ 々゚)「んー、あとなるべく綺麗にくっつくように縫合はしたけど……。やっぱり少し傷痕が残っちゃうかな」
('A`)「あー……」
- 177 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 12:03:22 ID:pQO/g1JEO
- 川*゚ 々゚)「ちゃんと責任取りなさいよね、嫁にもらうとかしてさ」
(*//A//)「は、はぁ!?」
川*> 々<)「んふふー。くるうちゃんは、ドクオがデレのこと好きなのはずーっと前から知ってるのよー?」
(*//A//)「す、好きじゃないし!」
川*゚ 々゚)「えー? じゃあなんでこの旅に着いてきたのー? この子のこと心配だったからじゃないの?」
(*//A//)「そ、それは……!」
( -_ゞ-)「んん……うるさい……」
(;'A`)「あ、」
気付けば、オサムさんがこっちを見ていた。
川*^々^)「オサムー!」
(;゚_ゞ゚)「ぐぇっ……」
くるうが勢いよく抱き付いたせいで、オサムさんの首が絞まったらしい。
('A`)「くるう、ちょっと離れてやれよ」
川*゚ 々゚)「えー? だって久々に会えたのにー」
(;゚_ゞ゚)「ひ、久々……?」
('A`)「あなたと俺たちはずっと旅をしていたんです。それが、この国の住人に名前を奪われて記憶がなくなって、ずっと夢を見ていたんです」
- 178 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 12:06:08 ID:pQO/g1JEO
- ( ゚_ゞ゚)「夢……」
そう呟いて、オサムさんはすがるように言う。
( ゚_ゞ゚)「じゃあ、俺が師匠と特訓していたことも、彼女を殺したことも夢なのか?」
('A`)「……それは、」
川 ゚ 々゚)「ううん、それは本当のこと」
( ゚_ゞ゚)「…………」
川 ゚ 々゚)「オサムは師匠のハインさんに拾われて、ずっと育てられていた。 そしてオサムが17才の時に、森に逃げた盗人を師匠さんと一緒に追いかけて……」
言いにくそうに、くるうは言った。
川 ゚ 々゚)「人を殺したショックで、錯乱してハインさんを殺しちゃったんだよ」
( _ゞ )「……まぎれもない、事実なのか」
川 ゚ 々゚)「……うん」
( ゚_ゞ゚)「そうか、」
はぁ、とため息がこぼれる。
( _ゞ )「……ああ、」
その時、空間が揺らいだ。
森が消える。
苔むした地面も、木々のそよ風も。
( _ゞ )「……思い出したよ」
川 ゚ 々゚)「そう。じゃあ、」
バチン!という音。
なにが起きたのか、わからないような顔をしてオサムさんがくるうを見つめた。
(#);_ゞ゚)「…………」
川*^々^)「あとでデレに謝ってね」
見たこともないような笑顔で、くるうはそう言った。
- 179 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 12:17:46 ID:pQO/g1JEO
- オサムさんと交替しながら、デレを担いで移動をする。
川 ゚ 々゚)「早く出たいねー」
【+ 】ゞ゚)「そうだな」
('A`)「だけど、扉も住人も見当たらないな……」
歩けども歩けども、白い空間が広がるばかり。
どうしたものかと思っていた時だった。
「わっ、思い出してる!」
「なんで、なんで?」
「わからないよ」
こそこそと話す声が耳に入った。
【+ 】ゞ゚)「あそこだ」
オサムさんの視線の先には、小さな小さな人間がいた。
(;∵)「見つかった」
(;∴)「見つかった」
川 ゚ 々゚)「……あなた達がこの国の住人?」
( ∵)「ばれてしまっては仕方ない」
( ∴)「そうです、住人です」
('A`)「なんで名前を奪ったんだ?」
( ∵)「名前、ないのです」
( ∴)「僕らに名前、ない」
( ∵)「ないから芯すらない」
( ∴)「名前盗るといっぱい景色見えた」
( ∵)「だから盗りました」
( ∴)「ました」
- 180 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 12:21:25 ID:pQO/g1JEO
- 川 ゚ 々゚)「名無し、ねぇ……」
( ∵)「欲しいよ名前」
( ∴)「四人いるから二人くらい置いてって」
('A`)「だめだよ。みんな大切な仲間なんだ」
( ∵)「どうしても?」
( ∴)「絶対だめ?」
【+ 】ゞ゚)「……なら代わりに俺たちが名前をつけてやればいいんじゃないのか?」
川*゚ 々゚)「さっすがー!オサムの言うとおりだよ!」
( ∵)「やだ」
( ∴)「だめ」
('A`)「?」
( ∵)「二人しかいないのに、どうやって思い出を作るのさ」
( ∴)「見てのとおりここはなにもなくて寂しいの」
( ∵)「ちょうだい、そこの人の記憶」
( ∴)「長生きしてるから記憶もたくさん!!」
【+ 】ゞ゚)「断る」
(´∵)「だめなのか」(∴`)
【+ 】ゞ゚)「嫌ならこんな国を捨ててしまえ。余所にいけばいい」
(´∵)「…………」(∴`)
- 181 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 12:22:36 ID:pQO/g1JEO
- それは、少しかわいそうだな、と思ってしまった。
オサムさんは、出入口の国が嫌いだったかもしれないけど……。
デレがお勤めで旅に出なければ、俺は国を出ていこうとは思わなかったんだ。
【+ 】ゞ゚)「行くぞ、二人とも」
川 ゚ 々゚)「あ、待ってー!」
('A`)「……」
小人達は、いつまでもそこに座っていた。
ずっとずっと、二人ぼっちで。
('A`)「…………」
【+ 】ゞ゚)「おい」
(;'A`)「え?」
気付けば、扉の前に立っていた。
くるうはもう出ていってしまったらしく、姿は見えなかった。
【+ 】ゞ゚)「いつまでそこにいるんだ?置いていくぞ」
不機嫌そうにオサムさんが言った。
(;'A`)「それは、勘弁してください」
デレの体を背負い直して、扉をくぐる。
そうして、俺達は名無しの国を後にした。
第八階層「名無しの国」後編 了
- 182 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 12:25:20 ID:pQO/g1JEO
- お題ストック(10個までですよ)
ハイテンションなおさむ
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
森の中の町
デレがおっぱいにダイブ
好奇心は猫をも殺す
正義の騎士団
それぞれの休日
いつも言い損ねてしまいますが、お題提供支援乙、ありがとうございます
とても嬉しいです
- 183 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 12:50:58 ID:5AMUVx.Y0
- きてたーー!
おつ!面白かった
- 184 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 12:53:05 ID:gDP.0tLA0
- おツンツン
- 185 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 12:57:33 ID:CNaHdc/I0
- 乙
ドクオがんばったなー
- 186 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 13:24:01 ID:f63SLBkI0
- 乙です!
ところでバタフライエフェクトって受信する側と発信する側が決まってるのかな
兄者とツンは送ることはできないの?
- 187 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 15:08:52 ID:pQO/g1JEO
- >>186
送りあうことは可能ですが、ルール上お勤めに行く人が残っている人に向けてしか送ってはいけないことになっています
理由として受け手が近況報告などをしてしまうとお勤めがスムーズに行かなくなってしまうこと
また、持っていける紙の枚数に上限があるため余計なことに使ってしまわないようにするためです
早く説明に組み込むべきでしたね…失敗した
- 188 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 15:31:02 ID:vbwQ4uyoO
- >川 ゚ 々゚)「フレイルも、持っていったほうがいいと思う」
>
>川 ゚ 々゚)「……わかった」
↑
下のセリフはドクオじゃないか?
間違いだったらすまんけど一応伝えとく
- 189 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 15:34:18 ID:pQO/g1JEO
- >>188
また誤字ってるじゃないですかー!やだー!
おっしゃるとおりでございます
もうやらないようにしてたのに…
ちょっと素手でオサムと戦ってきます
- 190 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:47:49 ID:cpuRRgqoO
- 「愛してるって10回言ってみて」の出した者だけど、お題消化ありがとう!
くるうとオサムの場面に使われて嬉しい
名無しの国、前後編で読みごたえあって面白かった
- 191 :名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:12:24 ID:D7P73rbw0
- 留守番側からバタフライエフェクトを送るときは往復はがきにしよう(提案)
というのは冗談として弟者が消息不明になってから兄者が送ってみたりはしたのかな
そういう生存確認の目的でも駄目なのかな
- 192 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/11(木) 21:29:03 ID:pQO/g1JEO
- >>191
次回をエフェクト回にします(断言)
こうして見ると不明瞭な点が多すぎるのでわかりやすく解説します、なるべく
ついでに次回予告
第九階層「透明な国」
まったりほのぼの回の予定
- 193 :名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 00:06:17 ID:qYT4dNHg0
- >>186です。質問への詳しい回答トンクスです。把握!
エフェクト回楽しみにしてます!
- 194 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:28:25 ID:7A6.zx8IO
- 私事の都合により早朝から投下いたしまする
眠い…
- 195 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:30:01 ID:7A6.zx8IO
- むかしむかし、好奇心旺盛な人しかいない国がありました。
彼らはみんな、お互い知り尽くしていたので、知らないことはなに一つありませんでした。
彼らは基本的にはお人好しで、誰かが困った時にはすぐに駆け付けて、その人の悩みを解決していました。
ある時、国に初めて旅人がやってきました。
みんな旅人さんにたくさんの質問をしました。
旅人さんはニコニコと質問に答えてくれました。
けれども、旅人さんの国がどんなところなのかは答えてくれませんでした。
ある日、誰かが旅人さんの鞄を拝借して、中身を見てしまいました。
彼の国のことが分かると思ったからです。
ところが、鞄の中にはなにもありませんでした。
「何をしているんだい?」
旅人さんは見たこともないような形相で言いました。
「お前ら全員消え失せてしまえ」
……こうして、好奇心旺盛な国からヒトは消えてしまいました。
きっとあの旅人さんは神様だったのでしょう。
でなければ、こんな寂しい国にはならなかったはずなのです。
――第九階層「透明な国」
- 196 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:32:32 ID:7A6.zx8IO
- ζ(´ー`*ζ「……ん」
緩やかに、瞼を開ける。
視界に入ってきたのは、木製の天井。
ζ(゚ー゚*ζ「ここ……」
起き上がろうと、体を動かした時だった。
ζ(゚ー゚;ζ「いたっ」
じん、とお腹と背中が熱くなる。
ζ(゚ー゚;ζ(っ……そうだ、ドクオは?くるうとオサムさんは?)
どうにか頭を動かして、あたりを見回す。
年季の入ったチェスト。
首の長い水瓶。
私の鞄。
日が差し込む木枠の窓。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ζ(;ー;*ζ(いなくなっちゃったの?)
ジワリと涙が滲む。
どうしようもないくらい不安で、心細かった。
ζ(;ー;*ζ「…………」
扉が、開く音がした。
ζ(;ー;*ζ「……だれ?」
か細い声で、問い掛ける。
('A`)「……デレ?」
ζ(;ー;*ζ「……ドクオ?いるの?」
- 197 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:36:35 ID:7A6.zx8IO
- 呼び掛けた瞬間、ドタドタと足音がした。
(;∀;)「よかった!やっと起きた!」
その顔は涙でぐしゃぐしゃで、だけど笑っていて。
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの……大丈夫?」
(ρA;)「お前こそ平気なのか?」
目元をこすりながら、ドクオが言う。
ζ(゚ー゚;ζ「起きようとしたら、痛かった」
('A`)「そうか……」
鼻をすすって、彼は言った。
('A`)「ごめんな、俺のせいで……」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオのせいじゃないよ、大丈夫」
ζ(゚ー゚*ζ「だって、助けてくれようとしたんでしょ?」
(*'A`)「…………」
なぜか、ドクオは黙ってしまって、目をそらした。
ζ(゚ー゚*ζ「ところでここは?くるうとオサムさんは?」
('A`)「あの二人は、住人探しだ。まだ誰にも会っていないんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ」
('A`)「仕方ないから、適当に空き家を使ってるんだが……」
- 198 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:39:46 ID:7A6.zx8IO
- ζ(゚ー゚*ζ「それにしては綺麗すぎじゃない?」
率直な感想を述べる。
だって、今寝ているベッドはふかふかで気持ちがいいし、家の中にはほこり一つ落ちていなかった。
('A`)「そうなんだよ。しかもおかしなことに、知らない間に食事が用意されたり、風呂が沸かされていたりするんだ」
ζ(゚ー゚;ζ「……それ、ちょっと怖くない?」
(;'A`)「だから絶対、ここには誰かいるはずなんだけどなぁ……」
ζ(゚、゚*ζ「そうだねぇ……」
('A`)「まぁいいや。飯食えるか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。というかお腹すいた」
きゅるる、と間の抜けた音が響く。
ζ(゚ー゚;ζ(わざわざ鳴らなくてもいいのに……!)
('-`)「……缶詰温めてくるわ」
明らかに笑いを堪えながら、ドクオは言った。
ζ(゚ー゚;ζ(最悪だー……)
そう思いながら、うなずいた。
- 199 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:41:55 ID:7A6.zx8IO
- ドクオと一緒にご飯を食べて、しばらくしてからくるうとオサムさんが帰ってきた。
川 ゚ 々゚)「……うん、だいじょーぶだね」
傷を見ていたくるうが言った。
何故だか、お腹がポカポカする。
背中もだった。
ζ(゚ー゚*ζ「そう?」
川 ゚ 々゚)「まぁ、四日間寝込んでたしね。それから、回復魔法かけ直したから、あと三日くらい寝てればくっつくよ」
その言葉を聞いて納得する。
回復魔法というのは、結構地味な魔法で、傷の治りを早くするために血の巡りをよくする魔法なのだそうだ。
ζ(´ー`*ζ(あったかくて気持ちいい)
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうね」
川 ^々^)「いーえ」
にこっと笑って、くるうは結んでいた髪をほどいた。
ζ(゚ー゚*ζ「……真っ赤になっちゃったね」
川 ゚ 々゚)「ん、結構最近魔法使ったからね。魔力尽きかけてるかも」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫なの?」
川 ゚ 々゚)「ちょっと休めば元通りー」
ζ(゚ー゚*ζ「そっか」
それにしてもすごい色だ。
燃え盛る炎のような、鮮やかな赤。
これはこれでしっくりくるけど……。
でも、普段から見慣れている黒髪のほうが私は好きだった。
- 200 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:43:49 ID:7A6.zx8IO
- とその時、扉がノックされた。
【+ 】ゞ゚)「くるう、入ってもいいか?」
その声は、オサムさんのものだった。
川 ゚ 々゚)「どうぞー」
入ってきたオサムさんは、少し気まずそうに私を見た。
【+ 】ゞ゚)「……怪我させてすまなかった」
ばつが悪そうにオサムさんは言った。
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、あれは仕方ない……と思います」
さっきドクオから聞いた事情を思い浮かべながら、私は返す。
それにしても、オサムさんにあんな過去があるとは、私はまったく知らなかった。
【+ 】ゞ゚)「……もっと早くに話すことができたら、よかったんだがな」
それはなかなか、難しい話だろう。
師匠を殺めてしまった、なんて。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、私は大丈夫ですから」
【+ 】ゞ゚)「…………」
ζ(^ー^*ζ「もうこの話はおわりにしましょう、ね?」
オサムさんに笑いかけてみる。
【+ 】ゞ゚)「…………」
だけど、彼はまだ硬い表情をしていた。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
くるうが呼び掛ける。
【+ 】ゞ゚)「……わかった、すまない」
そう言って、オサムさんは部屋を出ていった。
- 201 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:45:31 ID:7A6.zx8IO
- ζ(゚ー゚*ζ「……そういえば、住人は見つかったの?」
私の質問に、くるうは首を振る。
川 ゚ 々゚)「いないの、誰も」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
川 ゚ 々゚)「森の中にあった町なんだけどね、だぁれもいない。だけど朽ちてはいないし、料理がこっそり用意されてたりするから誰かいるはずなんだけどね……」
ζ(゚、゚*ζ「……それじゃあ、話も蒐集できないね」
川 ゚ 々゚)「そーだねー」
ぐーっ、と伸びをしながら、くるうは言った。
ζ(゚ー゚*ζ(変な町)
だけど、なぜか居心地がよくて。
ζ(゚ー゚*ζ(不思議だなぁ)
そう思いながら、天井を見つめた。
- 202 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:47:41 ID:7A6.zx8IO
- 二日目になると、起き上がれるようになっていた。
ζ(゚ー゚*ζ(おお……)
なんとなく感動。
朝ご飯を運んできてくれたドクオによると、くるうとオサムさんはまた住人探しの旅に出たらしい。
ζ(゚〜゚*ζ「仲良しだねぇ」
スクランブルエッグを食べながら、思わず呟く。
ちなみにこれは、今朝起きたらキッチンに置いてあったそうだ。
なかなかおいしい。
('A`)「そうだな」
ζ(゚〜゚*ζ「まぁ、たしかにくるうはオサムさんに懐いてるけどねぇ」
('A`)「……懐いてるっていうより、恋人同士っぽいよね」
ζ(゚ー゚*ζ「あー…かなぁ?」
恋をしたことがないからなんともいえないが。
('A`)「……デレは、好きな人とかいないのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。興味ない」
(´'A`)「…………」
あれ、なんでちょっと悲しそうなんだろう?
ζ(゚ー゚;ζ「そもそも恋とか愛とかよくわからないよ。私はひたすら先祖様が蒐集した話を覚えることしかしてこなかったからさ」
('A`)「あーたしかに。小さい頃は全然遊ばなかったよな」
ζ(゚ー゚*ζ「怪我したら困るからって言われてさー」
- 203 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:49:47 ID:7A6.zx8IO
- ('A`)「それがどうやったら、フレイルを振り回すような子に……」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっとした反抗心かな。私だって逞しいんだぞーみたいな」
('∀`)「なんだそりゃ」
思わずドクオがふき出した。
ζ(゚ー゚*ζ「だってあのまま育てられてたら、確実にもやしだよ。旅する体力なんかないって」
('A`)「まぁ、そうだな」
トーストされた食パンを食べ終えて、私はドクオにお皿を渡した。
('A`)「ちょっと洗ってくるわ」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、ごちそうさまでした」
('A`)「おそまつさまー」
久々の食事はおいしかった。
ζ(゚、゚*ζ「…………」
でもこのまま寝るのは、ちょっとどうかと思った。
食べてすぐ寝たら牛になるらしいし……。
チェストの上の、鞄に手を伸ばす。
これは昨日、くるうが移動させてくれたものだ。
鞄からペンと紙を出す。
そして、はくちのくにと名無しの国での出来事を簡潔に認めた。
ζ(゚ー゚*ζ(……ツン、元気かな)
- 204 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:53:30 ID:7A6.zx8IO
- 本当は、ツンもバタフライエフェクトを使うことは出来る。
だけどバタフライエフェクトを使っていいのはお勤めに行った人だけという掟があった。
もし、受け取り手からこちらにバタフライエフェクトが届いてしまったら。
きっと国が恋しくなって、旅ができなくなるだろう。
話がしたくなって、たくさんバタフライエフェクトを使うだろう。
余計なことを考えて、隙を作ってしまうかもしれない。
だから、受け取り手はバタフライエフェクトを使ってはいけない。
使ってしまえば、お勤めに行った者を、命の危機に晒してしまうかもしれないから。
……書きながら、ふと思い出す。
- 205 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:55:23 ID:7A6.zx8IO
- ζ(゚ー゚*ζ(そういえば昔、父が言ってたなぁ)
( ´_ゝ`)『……片割れの死は手にとるように分かるんだ』
ζ(゚、゚*ζ『わかるの?』
( ´_ゝ`)『ああ。バタフライエフェクトが使えなくなるんだ』
ζ(゚ー゚*ζ『使えなくなる……?』
( ´_ゝ`)『……一度だけ、掟を破ったことがあるんだ』
( ´_ゝ`)『何ヵ月も、いや何年も蝶が来なくなって……。心配になって、蝶を送ろうとしたんだ』
( _ゝ )『紙は、蝶にならなかった』
( _ゝ )『その時、悟ってしまったんだ。片割れが、死んでしまったんだって』
その時に、私は自分の持っている能力がツンなしでは発現できないことを知った。
あれは、二人で一つの能力なのだ、と。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
どうして、父は私に手紙を託したのだろう。
弟者さんが死んでいるとわかっているのに。
ζ(゚ー゚*ζ(諦めきれないのかな)
そう考えていた時、チェストの中から、カタン、という音がした
ζ(゚ー゚*ζ「……?」
- 206 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 06:57:30 ID:7A6.zx8IO
- 少しずつ体を動かす。
そして、チェストの中を開けてみた。
ζ(゚ー゚*ζ「……絵本?」
タイトルは「透明な国」。
ページをめくる。
「むかしむかし、好奇心旺盛な人しかいない国がありました。」
ζ(゚―゚*ζ「…………」
絵本を読み進める。
描かれている住人たちは、みな幸せそうに笑っていた。
しかし、旅人さんは、笑顔なのにどこか怖い感じがした。
……というかどこかで見たことがあるような気もする。
「でなければ、こんな寂しい国にはならなかったはずなのです。 おしまい」
ζ( ― *ζ「…………」
寂しくて悲しい気持ちになった。
ここにいた住人は、この旅人に消されてしまったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(……でも、それじゃおかしい)
消されたのなら、なぜご飯やお風呂の準備がされるのだろう?
ζ(゚ー゚*ζ(……まさかね、)
部屋に、誰かがいるような気がした。
ζ(゚ー゚*ζ(……気のせい気のせい)
紙の余白に、絵本の内容を書いた。
国名は……、
ζ(゚ー゚*ζ(透明な国)
絵本のタイトルにしよう。
不思議とそう思った。
紙を折って、息を吹き掛ける。
ひらひらと、蝶は飛ぶ。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
それを見送って、絵本を元通りチェストの中にしまった。
- 207 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 07:03:28 ID:7A6.zx8IO
- 三日目になると歩けるようにまでなった。
ζ(゚ー゚*ζ「もう大丈夫だと思う」
川 ゚ 々゚)「うん。でもしばらく無茶は禁物だからね?」
さっそく出発することに決定。
オサムさんとくるうは、いつものように少し前を歩き、ドクオがそれを追いかける。
……私は、歩みを止めて、振り返った。
ζ(゚ー゚*ζ「七日間、お世話になりました。ありがとうございました」
ゆっくりと、お辞儀をする。
顔をあげた時、ちょうど風がふいてきた。
ζ(>ー<*ζ「っ……」
砂が入らないように目をつぶろうとして。
ζ(゚ー゚*ζ「あ……!」
私は見た。
(*゚∀゚)ノシ
満面の笑みを浮かべながら、手を振る女の子の姿を。
声は、聞こえなかった。
だけどたしかに、その子はこう言っていたんだ。
「またね」、って。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「おーい!置いてかれるぞー!」
ζ(゚ー゚*ζ「待って、今行くから!」
ζ(゚ー゚*ζ(消えたんじゃない)
彼らは、透明になっただけなんだ。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「なんか嬉しそうだな」
ζ(^ー^*ζ「ううん、別に」
ドクオに笑いかけながら、私は扉に向かった。
第九階層「透明な国」 了
- 208 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 07:05:29 ID:7A6.zx8IO
- お題ストック(10個までですよ)
ハイテンションなおさむ
臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力
逆さまの城
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
デレがおっぱいにダイブ
正義の騎士団
それぞれの休日
書き溜めはマンキンのOPとソルティレイのOP、あと妖星乱舞が一番捗ると気付いた今日この頃
- 209 :名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 07:48:36 ID:7hw36cwo0
- meg rock良いよね
- 210 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/12(金) 08:08:25 ID:7A6.zx8IO
- >>190
愛してるを好きに変換して書いてしまいました、ごめんなさいー
ついでに目次を作りました
多分合ってるはず
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
- 211 :名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 08:14:13 ID:Ex3Pm.RA0
- 乙乙
お題
鳴かぬなら、○○○○、ホトドクオ
○の中はお好きに考えてください
- 212 :名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 19:39:15 ID:g.gf34.EO
- 乙〜!
お題
届いた想い
- 213 :名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 11:00:07 ID:G0YjMhHEO
- 乙乙
- 214 : ◆R6iwzrfs6k:2012/10/13(土) 16:50:44 ID:.hv.LAfQO
- お知らせ
私事やらラノベ祭やら鬱祭やらが忙しいので投下速度がゆっくりになります
まったりお待ちくださいませ
- 215 :名も無きAAのようです:2012/10/19(金) 20:12:28 ID:U9k86UKs0
- オーケーぃ
- 216 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:34:37 ID:OF3HtC06O
- いぇーーーい!!!!
久しぶりの投下だぜヒャッハー!!!
ラノベ祭には間に合わないからもう開き直るよぉぉぉ!!!!
あとまだ前編しか出来てないです
- 217 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:35:07 ID:OF3HtC06O
- 特別なものがなんにもなくて、これといって楽しいことも悲しいこともない国がありました。
そこに住むヒト達は、なんにも感じずに生きていました。
争いはなかったのですが、ヒト同士の繋がりがあまりにもなさすぎたものですから、神様はその国を見ても、なんにも面白いとは思えませんでした。
――第十階層「にぎやかなの国」前編
- 218 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:36:21 ID:OF3HtC06O
- 次にたどり着いたところは、とても不思議なところでした。
ζ(゚ー゚*ζ「わぁ……」
(*'A`)「すげー」
なぜか空は薄桃色に染まっていて、とても綺麗だった。
それから、花火のあがる音が辺りに響いた。
【+ 】ゞ゚)「祭かなにかか?」
オサムさんの呟きに、くるうが目を輝かせる。
川*゚ 々゚)「いいね、いいね。お祭だったら屋台見たいなぁ」
ζ(゚ー゚;ζ「お金はどうするのよ」
今までのらりくらりと旅をしてきたけど、一度たりともお金を使ったことはなかった。
というか、使えるんだろうか?
('A`)「とりあえず行ってみよう」
ドクオの言葉にうなずいて、私達は国に向かった。
- 219 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:38:29 ID:OF3HtC06O
- しばらく歩いていくと、楽しげでにぎやかな音楽が聞こえてきた。
川*゚ 々゚)「やっぱりお祭っぽいよー」
【+ 】ゞ゚)「そうだな」
ζ(゚ー゚*ζ「お祭かー……」
思わず故郷にいた頃のことを思い出す。
小さい頃は、よく父とツン、それからネーヨさんとくるうとドクオの五人と一緒によくめぐっていた。
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
【+ 】ゞ゚)「門が見えてきたな」
オサムさんの言葉で、我に返る。
川*゚ 々゚)「すごく派手な門だねー」
ζ(゚ー゚*ζ「うわ、」
くるうの言うとおり、その門は風船なら花やらで飾られていた。
('A`)「くぐるのに勇気がいるな」
ζ(゚ー゚;ζ「だね」
そんなことを言いながら、入国して、
( ><)「わぁ、お客さんです!外からのお客さん!!」
すぐに背の小さい女の子に話しかけられた。
( ><)「はじめまして、ようこそにぎやかな国へ!どこから来たのですか!?」
ζ(゚ー゚;ζ「えっと……あっちから」
なんとなく、来た方向を指差す。
すごく元気がいいから、つい押されてしまう……。
- 220 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:40:21 ID:OF3HtC06O
- ( ><)「そうなんですかー!あ、ボクはビロードです、よろしく!」
ζ(゚ー゚*ζ「私はデレ」
('A`)「ドクオ」
川*゚ 々゚)「くるうとオサムだよー!」
(*><)「よろしくなのです!」
( ><)「みなさん、運がよかったですね!明日からお祭が始まるのですよー」
【+ 】ゞ゚)「……明日から?」
ζ(゚ー゚*ζ「この騒ぎは?」
素朴な質問に、ビロードちゃんは、
( ><)「これは前夜祭なのですよ」
とあっさり返してきた。
ζ(゚ー゚;ζ「ぜ、前夜祭!?」
見たところ、屋台がずらりと並んで、飲んだくれている親父がたくさん沸いているというのに。
と、あたりを見渡していたら、こちらに近付いてくる男の人に気付いた。
……のだけれども、同時に異臭がした。
甘ったるくて、鼻に突き刺す臭い。
ζ( ー ;ζ(く……くさっ……!?)
そう思ったのは、私だけではなかったようだった。
ビロードちゃん以外みんな顔をしかめたり息を止めたりしていた。
- 221 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:42:25 ID:OF3HtC06O
- 臭いはどんどん近付いてくる。
ζ( ー ;ζ(ひえぇ……)
( ><)「どうしたのですか?」
キョトンとしているビロードちゃんは、このキツい臭いがわからないのだろうか?
そして、その臭いの主は、ビロードちゃんに話し掛けてきた。
( <●><●>)「ビロードや この人達は 誰ですか?」
( ><)「旅の方なのです!さっき自己紹介した方で……」
ζ( ー ;ζ(が、我慢我慢……)
いくら臭いがひどくても、面と向かって言えるわけがなかった。
が、それに堪える術もなく……。
( <●><●>)「ところでね なんでみなさん 白目むく?」
臭いからだよ、と思わず言いそうになった時だった。
( ><)「あっ!お兄ちゃん、能力使ってるんでしょ!!」
( <●><●>)「ああ失敬 うっかりして いましたよ」
( ><)「まったくもう……。大丈夫ですか?」
ζ(゚ー゚;ζ「ええ、多分……」
大丈夫じゃない。
臭いがキツすぎて鼻が麻痺している、とても気持ちが悪い。
(;'A`)「うぇぇ……」
川;゚ 々゚)「く、くさかった……じゃなくて助かった……」
【+ 】ゞ-)「まったくだ」
- 222 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 00:43:51 ID:Y2mqX2Vc0
- 来てた!支援支援!
- 223 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:44:26 ID:OF3HtC06O
- ζ(゚ー゚*ζ「ところで、そちらの方は……」
( <●><●>)「わたくしは ワカッテマスと いうものだ」
( ><)「ボクのお兄ちゃんで俳人さんなのです。みんなからはワカって呼ばれているのです」
川 ゚ 々゚)「廃人?」
ζ(゚ー゚;ζ「俳句を詠む人のことだと思うよ、くるう……」
( <●><●>)「そのとおり お嬢さんは 頭がよい」
ζ(゚ー゚*ζ「それは、どうも……」
それにしても、俳人だからってずっと五七五で話し続けるつもりなんだろうか?
( ><)「ところでお兄ちゃん、スランプは治りましたか?」
( <●><●>)「全然だめですね、片っ端から俳句っぽくしてみましたが失敗でした」
Σζ(゚ー゚;ζ(普通に話せるんかい!)
なんだかペースが乱されてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ(悪い人ではないだろうけど……)
( <●><●>)「ところで、みなさんは急ぎの用はありますか?」
ワカさんの質問に、私達は旅をしている理由を説明した。
それから、特に急いでいる旅でないことも。
( <●><●>)「それならわたしたちの家に泊まって、本祭を楽しんでから旅立ってはいかがでしょう?」
川*゚ 々゚)「お祭行きたい!」
- 224 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:46:39 ID:OF3HtC06O
- くるうの言葉に、私達はうなずく。
('A`)「今まで大変だったから、たまにはいいんじゃないか?」
【+ 】ゞ゚)「ドクオの言うとおりだな」
ζ(゚ー゚*ζ(オサムさん、お祭って好きなんだ)
少し意外だった。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、そうしようかな」
私の言葉に、
( ><)「やったー!」
と、ビロードちゃんは飛び跳ねながら喜んだ。
( <●><●>)「では、私の家まで案内しましょう」
笑みを浮かべながら、ワカさんはそう言った。
ワカさんの家に向かう道すがら、私はこの国がにぎやかになった所以とされる民話を聞いたり、本祭にはどんなイベントがあるのかを聞いた。
( ><)「能力バトル大会は、ぜひ見に来てほしいのです!」
('A`)「能力バトル?」
( ><)「この国にいる人達は、みんな不思議な力を持っているのです」
( <●><●>)「その中でだれが一番強いのかを二人一組で競いあうのです。わたしも、今年は優勝を目指しています」
ζ(゚ー゚*ζ「へぇ……」
【+ 】ゞ゚)「なんで二人一組なんだ?」
オサムさんの言葉に、ワカさんはこう言った。
( <●><●>)「一人なら守るものが何もありませんから、存分に暴れる事ができるでしょう。しかしそれは、まことに強いといえますでしょうか?」
【+ 】ゞ゚)「…………」
- 225 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 00:48:02 ID:TiObqtJ60
- ワカッテマス良いキャラしてんな
- 226 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:48:29 ID:OF3HtC06O
- ( <●><●>)「助け合う事が出来なければ、本当に強いとはいうことができませんよ」
( ><)「それに、神様からもらった能力のほとんどは、二人一組にならないと使えないものが多いのです」
( <●><●>)「……実は、さっきの臭いはわたしの能力の一部でして」
川;゚ 々゚)「えーっ、あのくさいやつー!?」
【+ 】ゞ゚)「こら、くるう」
川 ゚ 々゚)「ごめんなさい」
そんな二人に笑いかけながら、ワカさんは言う。
(*<●><●>)「いえいえ、そう思われたのなら逆に本望です」
( ><)「お兄ちゃんは、つけている香水の香りを何倍にも強める能力の持ち主なんです」
(;'A`)そ「ずいぶん限定的だな!」
ζ(゚ー゚*ζ(たしかに)
そんなので、戦うことなんかできるのだろうか?
私達の疑問に、ワカさんは笑いながらこう言った。
( <●><●>)「ええ、たしかに弱いです、それはワカッテマス。しかし妹と一緒なら無敵なのです」
( ><)「ボクは、臭いのレベルが高いほど強力な武器を作る能力を持っているのです!」
('A`)「臭いのレベル……?」
( <●><●>)「そう言われても、なかなか理解できないでしょう」
からからと笑うワカさんの言葉に、私達はうなずいた。
- 227 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:52:00 ID:OF3HtC06O
- ( <●><●>)「ええ、ワカッテマス。もうすぐ家に着きますから、見せてさしあげます」
そうして、ワカさんの家に着いた私達は、まず庭先に案内された。
( <●><●>)「あそこに、的があるでしょう?」
指差すその先には、木々の間につるされた木の板があった。
( ><)「あれをバラバラに壊してあげます!」
いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、ビロードちゃんは的を見つめる。
数瞬の静寂。
ビロードちゃんの表情は真剣で、先ほどの笑みの面影は残っていなかった。
( ><)「……お兄ちゃん、」
そう呟いた刹那、
( <●><●>)「はい」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
甘ったるい臭いが、鼻を刺激した。
ビロードちゃんが、的に向かって右手を伸ばす。
その手には、いつの間にか小さな黒いものが握られていて。
その引き金が引かれた瞬間、ターンッ!と聞き慣れない音が耳をつんざいた。
ζ(>ー<*ζ「っ……?」
思わず目をつぶる。
が、的がどうなったのか気になって、すぐにそっちを見た。
- 228 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:54:49 ID:OF3HtC06O
- ζ(゚ー゚*ζ「!!」
川 ゚ 々゚)「すごい……」
(;'A`)「な、なんだ今の……」
【+ 】ゞ゚)「…………」
的は、木端微塵になっていた。
(*><)「これが、ボクの能力です」
誇らしげに、ビロードちゃんは言った。
( <●><●>)「さすがですね、ビロード」
(*><)「えへへ」
( <●><●>)「少し、片付けをしてきますので、先に家の中に入っていてください」
ワカさんはそう言って、木々のある方へ向かっていった。
が、先程の出来事があまりにもショックで、何も言えなかった。
けれども、彼だけは違った。
【+ 】ゞ゚*)「素晴らしい、」
惚けた表情で、オサムさんは言った。
いつもは濁りきっている瞳が、爛々と輝いていた。
【+ 】ゞ゚*)「あんな武器、初めて見た。あれは、君が考えたものなのか?」
( ><)「いいえ、あれは昔パパが持っていた銃の真似をしたんです」
【+ 】ゞ゚*)「銃、というのはなんだ?俺のいた国にはそんなものなかったんだ、仕組みはどうなっている?使い捨てなのかそれとも繰り返し使えるのか、重さは、射程距離は?」
ζ(゚ー゚*ζ(こんな饒舌で楽しそうなオサムさん、見た事ないな)
- 229 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:57:50 ID:OF3HtC06O
- そんなことを考えていたら、
(;'A`)「おい、」
ドクオが私の脇腹を肘でつついてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
あれを見ろ、と言うようにドクオは視線を投げ掛ける。
川 ゚ 々゚)「…………………………………………」
そこには、無言でビロードちゃんをにらむくるうの姿があった。
ζ(゚ー゚*ζ(や、やばい……)
そう思ったものの、時すでに遅し。
(;><)「ええっと、お家の中に銃がありますから、説明してあげましょうか」
【+ 】ゞ゚)+「是非頼む」
ζ(゚ー゚;ζ(あわわわわ……)
さらにくるうの眼光はきつくなる。
それに気付かずに、ビロードちゃんはオサムさんと一緒に家の中へ。
ζ(゚ー゚;ζ(どうしよう、)
そう思った時だった。
- 230 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 00:59:40 ID:OF3HtC06O
- 川 々 )「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「なんだ?」
川 ^々^)「ちょっと、屋台見に行ってくるー」
にっこりと笑みを浮かべて、くるうは言った。
川*^々^)「だからオサムはぁ、ビロードと一緒にいればいいよ」
そうして、くるうはオサムさんの返事も聞かずに走っていってしまった。
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
( ><)「くるうさん、どうかしたんでしょうか?」
キョトンとした表情で、私達を見るビロードちゃんに、素直に答えを言うのははばかられた。
代わりに、小声でドクオに話し掛けた。
ζ(゚ー゚;ζ「……私、ちょっと探しにいくから、ここに残ってもらえる?」
('A`)「わかった」
ζ(゚ー゚;ζ「お願いね!」
そうして、私はくるうの後を追うこととなった。
- 231 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:01:06 ID:OF3HtC06O
- 走るデレの背中を見送った後、俺はオサムさんと向き合った。
【+ 】ゞ゚)「……二人とも、急にどうしたんだ?」
('A`)「なんでもないです」
どうして想いを寄せられる相手は、そろいもそろってこうも鈍いんだろうか。
('A`)(察しろよ……)
なんてゴチながら、家の中へ入る。
( ><)「こっちなのですよー」
と、案内された部屋の壁には、銃がたくさん飾られていた。
【+ 】ゞ゚*)「おお……」
オサムさんが、思わず声をもらす。
( ><)「これが携帯用のピストル、あっちはライフルで……」
【+ 】ゞ゚*)「ほうほう。違いは?」
('A`)(……よくわからん)
仕組みやらなにやらを聞き流しながら、部屋を眺める。
それにしても、オサムさんがあんな風に興奮するところ、初めて見たなぁ。
クロスボウも銃も飛び道具だから、興味を持つのも仕方がないのかもしれない。
- 232 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:02:55 ID:OF3HtC06O
- ('A`)(……でもあいつはショックだっただろうなぁ)
思い返せば、くるうとオサムさんはしょっちゅう一緒に行動しているが、オサムさんの対応はいつだって平坦だった。
くるうは、そんなのお構いなしにべったりくっついていたけど。
('A`)(……そもそも、ああまでされて好きって気付かないものか?)
俺だったらすぐに気付くんだけど……。
【+ 】ゞ゚)「ドクオくん」
(;'A`)「な、なんですか?」
オサムさんは、言いにくそうにこう言った。
【+ 】ゞ゚)「少し、席を外してくれないか?」
('A`)「…………」
なんで?
そう聞きたかったが、雰囲気的に無理であった。
俺は、黙って部屋を出た。
【+ 】ゞ゚)「……すまないな」
何に対して、謝っているのだろう。
('A`)(なんにもわかんねーや)
パタン、と扉が背後で閉まった。
- 233 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:04:23 ID:OF3HtC06O
- 屋台が立ち並ぶ大広場に到着したものの、くるうの姿はとっくになかった。
ζ(゚ー゚;ζ(足が早いのは相変わらずだなぁ……)
人込みをかき分けながら、そう思う。
ζ(゚、゚;ζ(暴走してなきゃいいけど……)
あの子は怒ると見境がつかなくなって、何もかもを壊す癖があった。
思い返せば、一度だけ大暴走をして、周りの家をたちまち壊してしまったこともあった。
あの時はたしか……。
ζ(゚―゚*ζ(両親の捜索を打ち切った時だった)
塔の「外」は、あまりにも遠くに行くと二度と帰ることができない。
だから、自警団の人達も仕方なく周りを探してすぐに帰ってきてしまった。
それで、くるうが怒って、オサムさんがどうにか止めて……。
ζ(゚ー゚*ζ(……それから、オサムさんに依存し始めたんだよね)
- 234 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 01:06:36 ID:w2sySx8Y0
- しえーん
- 235 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:07:33 ID:OF3HtC06O
- 今までは、私とくるう、それからたまにドクオを含めて三人で遊んでいた。
それが、気がついたらオサムさんも入り交じるようになっていた。
といっても、彼はくるうに引っ張られて無理矢理連れてこられたみたいだから、喋ることは全然なかった。
……気がついたら、オサムさんは遊びに来なくなった。
くるうも、いなくなった。
きっとオサムさんを追いかけていたのだろう。
ただ、変わらなかったのは、ドクオだけだった。
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
どうして、彼はいつもそばにいてくれるのだろう。
わざわざこんな旅に着いていく理由だって、ないはずなのに。
その訳を考えていた時だった。
ζ(゚ー゚;ζ「……あ!」
一瞬、赤髪が見えたのだ。
しかしそれはまた人込みの中に消えていった。
ζ(゚ー゚;ζ(くるう……!)
なんとかして、追いつかなければ。
- 236 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:09:54 ID:OF3HtC06O
- ( ><)「……どうしたんですか、オサムさん」
ビロードさんが、俺を見上げながら言う。
【+ 】ゞ゚)「……個人的な話なんだが、君はやり直したいと思ったり、忘れる事のできないような過去を持っているかい?」
( ><)「……そういうのは、よくわかんないです」
【+ 】ゞ゚)「そうか」
幼い少女には、そういったものがないのかもしれない。
【+ 】ゞ゚)「……昔、俺はこの手で守ってくれた人を殺してしまったことがあるんだ」
ぽつりぽつりと、言葉がこぼれる。
今まで仲間に言えなかった過去。
それを話そうと思ったのは、名無しの国での出来事のせいだろうか?
【+ 】ゞ゚)「……幸せに、なってはいけないと思っているんだ」
( ><)「その人を、殺してしまったからですか?」
その言葉に、俺はうなずいた。
【+ 】ゞ゚)「あの娘から……くるうから、何度も好意を告げられたが、俺はそんなものを受け取る資格はないと思っている」
( ><)「…………」
【+ 】ゞ゚)「盾すら壊してしまうような人間が、他人を守れるわけがないって思っているんだ」
実際、俺は守るべきものを壊しかけてしまった。
俺は周囲を傷付けることしかできないのだ。
- 237 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:13:16 ID:OF3HtC06O
- やれやれ、といった感じでビロードさんが呟く。
( ><)「あなたは臆病者で馬鹿ですね」
【+ 】ゞ゚)「…………」
( ><)「ボクには幸せにならないことで、その負い目から逃れようとしているようにしか見えません」
ビロードさんが、銃の飾り棚に手を伸ばす。
( ><)「結局自分が傷つくのが怖くていじけているだけなのです。何も背負えない人が、なにかを守ることなんてできません」
( ><)「でも、あなたには幸いにも慕ってくれる人がいる。その気持ちを踏みにじってしまったら、今度こそあなたは無力な人間になってしまいますよ」
幼い顔つきに似合わない笑みを浮かべながら、ビロードさんは俺に銃を差し出した。
それを受け取ろうとして……、師匠とくるう、ドクオくんやデレさんの顔が脳裏によぎった。
【+ 】ゞ )「しかし、」
( ><)「なら、あなたはなぜ銃に惹かれたのですか?銃はクロスボウなんかより強力で危ない武器なのですよ?」
【+ 】ゞ )「…………」
( ><)「自分の過ちを、くるうさんの気持ちを、受け入れたいと思っているからではないのですか?」
【+ 】ゞ )「……俺は、」
俺は、幸せを、受け入れてもいいのだろうか?
これを受け取っても、よいのだろうか?
- 238 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 01:15:14 ID:fLyhEopg0
- ビロード大人びてるな
- 239 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:16:49 ID:OF3HtC06O
- 川 ゚ 々゚)「…………」
人込みでデレをまいた後、私は人気の少ない森の中にいた。
川 ゚ 々゚)「……オサム、」
あんな風にはしゃいでるの、初めて見た。
わたしにはいつもしかめっ面ばっかりなのに。
川 ゚ 々゚)「…………」
長い髪の毛を、いじる。
むかし、オサムがきれいだねって、長いほうが素敵だよって、褒めてくれた髪の毛。
……ほんとに、むかしの話。
オサムは忘れてしまっているかも。
もしかして、好みが変わったのかな。
だって彼女は、髪が短いから。
川 ゚ 々゚)「…………、」
ぐるぐると黒い感情が渦を巻く。
川 ゚ 々゚)「……ポッと出のくせに」
目をつむる。
自分の体の中を巡る魔力を感じ取る。
ひどく弱々しく、微かだ。でも。
川 々 )(人を傷付けるには充分だ)
今まで、たくさんの人を癒してきた。
その分、自身を殺して来た。
川 々 )(一度くらい、)
一度くらい、その力を自分のために使っても構わないよね。
川* 々 )「ふふふ、」
オサム。
大好きなオサム。
ずっとずっとあなたを追いかけていた。
大好き、大好き、大好き!!!!
川*゚ 々゚)「、」
ゆっくりと、歩き出す。
そろそろあの家に戻ろう。
- 240 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:19:03 ID:OF3HtC06O
- 川 ゚ 々゚)「おかえりー」
ζ(゚ー゚*ζ「」
突如消え失せた友人を探し回った挙げ句見つからなくて意気消沈しながら家に戻ったら、本人が既に帰っている。
その時の気分って、なかなかやるせないものである。
ζ(゚ー゚#ζ「…………ただいま、」
そう言いながら、私はくるうにでこピンを一発くれてやった。
川 > 々<)「いったぁ〜い!!」
ζ(゚ー゚*ζ「まったく……心配したんだから」
川 ゚ 々゚)「……ごめんね」
締まりのない笑顔を浮かべながら、くるうは謝ってきた。
ζ(゚ー゚*ζ(よかった)
その様子を見て、少し安心した。
もしかしたら、私がいない間にオサムさんと仲直りしたのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ(そうだったら話を蒸し返す必要はない)
私はそれ以上、あのことに関して話すのをやめた。
- 241 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:20:47 ID:OF3HtC06O
- 次の日、私はドクオと一緒に屋台を回ることになった。
くるうはいつも通りオサムさんと一緒だ。
ワカさんとビロードちゃんは、大会に備えるために一足先に会場にいると言っていた。
( <●><●>)「本選が始まるのは昼下がりなので、それまでは屋台を見ていたらどうでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「予選とかはないんですか?」
( ><)「予選はみなさんが来る前に済んでしまったのです。楽しみにしてください!」
ζ(゚ー゚*ζ(お祭かー……)
そういえば前に、こうやってドクオと一緒に行ったことがあったな、と思い出した。
ζ(゚ー゚*ζ(あの時のドクオはなんだか面白かった)
名前を呼ぶ度にびっくりしたり、滑舌が妙に悪かったり、顔色が赤くなったり青くなったりしていた。
('A`)「デレ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん?」
('A`)「どうしたんだ、ぼーっとして」
ζ(゚ー゚*ζ「ん、なんでもない」
- 242 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:22:01 ID:OF3HtC06O
- ('A`)「そうか?」
心配そうにいうドクオに、私は笑いかける。
ζ(^ー^*ζ「平気平気、お腹の傷もすっかり治ったから痛くないよ」
('A`)「……そっか」
複雑そうに、ドクオは言った。
……傷のこと、まだ気にしてるのかな。
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよ」
('A`)「…………」
ドクオは、唇を噛み締めた。
安心させたくて、そう言ったのに。
ζ(゚―゚*ζ(どうしてうまく伝わらないんだろう)
('A`)「……デレ、」
ζ(゚ー゚*ζ「へ……?」
ドクオの手が、私の左手を取った。
そして、そのまま歩き出した。
ζ(゚ー゚;ζ「ド、ドクオ……?」
( A )「話があるんだ」
真剣な声。
話って、なんだろう。
人込みからわざわざ離れるくらいだから、きっと大事な話だ。
ζ(゚ー゚;ζ(でもなんで今……?)
その理由を考えようとする。
だけど人々の喧騒と、にぎやかすぎる音楽のせいで、集中することができなかった。
- 243 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:24:29 ID:OF3HtC06O
- しばらく歩いて、雑踏から解放される
それでもまだドクオは歩き続ける。
やっと歩みを止めたのは、森の中に入った頃だった。
('A`)「デレ」
私と向かい合いながら、ドクオは私の名前を読んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「なに?」
手は、握り締められたまま。
('A`)「俺、ずっと嘘ついてた」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
('A`)「ただお前を救いたいとか、勇者になりたかったとか、そういう理由で仲間になったわけじゃない」
その声は、震えていて。
よくよく見たら、彼は額に汗をかいていた。
( A )「ずっと、デレのことが好きだった」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
好き。
それは、きっと、友人以上の好意、という意味。
ツンが、ブーンさんに向けるようななにか。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
( A )「仲間がいようといまいと、お勤めにはついていくつもりだった。デレのそばにずっといたかった」
('A`)「なにかあったら、守ろうって決めてたんだ」
ζ(゚ー゚*ζ(……わたしは、)
('A`)「俺は、弱いし臆病だけどさ。好きな女の子くらいは守り抜きたいって……」
ζ( ― *ζ(わたし、)
- 244 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:26:34 ID:OF3HtC06O
- ('A`)「デレさえ生きていればいい。俺は死んじまっても、」
ζ( д *ζ「やめてよ!」
思わず、手を振り払う。
やっとのことで、出た言葉はそれだった。
( A )「…………」
ζ( ― *ζ「……わかんないよ、そんな理由でお勤めについてきて」
(;'A`)「そんな理由って……」
ζ( ― *ζ「なんでそんな軽々しく他人のために死ねちゃうの?好きってそういうものなの?」
(;'A`)「…………」
ζ( ― *ζ「……私、そういうの全然わからない。ドクオが私に好意を持つ理由も、くるうがオサムさんに執着するわけも」
言葉と一緒に、しずくがあふれる。
長らく、他人に話したことのない秘密が、どんどんこぼれていく。
ζ( ― *ζ「ツンが、ブーンさんのことを好きな理由もわからない。その逆も……」
(; A )「デレ、」
ζ( ― *ζ「友達以上の関係なんて、わかんないよ……」
(; A )「…………」
- 245 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 01:30:18 ID:Lm336V820
- なんかドキドキしてきた
支援
- 246 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:31:49 ID:OF3HtC06O
- 嫌われたに違いなかった。
今のドクオは、理解できないって顔をしていたから。
( A )「……ごめん」
ζ( ― *ζ「……ううん」
背を向けながら、私は言う。
ζ( ― *ζ「……ごめん、ちょっと一人にして」
( A )「…………」
ζ( ― *ζ「ワカさん達のところには、行くからさ」
( A )「…………」
ドクオは、何も言わなかった。
気配が離れていく。
ζ( ― *ζ「…………」
私は、声を押し殺して泣いた。
こんなの普通じゃないってことくらい、分かってる。
好きだから、父と母は私とツンを生んだ。
それは他の人にもいえることだ。
だけど、だけど……。
ζ( ― *ζ(愛しいとは、思ったことがない)
- 247 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:33:10 ID:OF3HtC06O
- 雑踏は苦手だ。
しかしなぜか、女性というものはこういったものを好む。
川*゚ 々゚)「オサムー」
【+ 】ゞ゚)「なんだ」
しまった、少し不機嫌に返してしまったかな。
そう思ったのも束の間だ。
くるうは相も変わらず目を輝かせながら、俺に綿菓子の屋台を指差した。
川*゚ 々゚)「あれほしいなー」
【+ 】ゞ゚)「そうか」
しかしあいにく、俺は砂糖の塊が嫌いだ。
【+ 】ゞ゚)「…………」
とはいえ、昨日のあれの埋め合わせのために一緒にいるのだから、拒むのは気が引けた。
【+ 】ゞ゚)「一つでいいな?」
ワカさんにもらった食券を取り出しながら、くるうを見る。
川*^々^)「うんっ!」
その言葉に安心する。
二つと言われたら、どうしようかと思った。
- 248 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:36:55 ID:OF3HtC06O
- ( ,,^Д^)「おっ!あんちゃん顔に似合わず甘いもん好きなんだねぇ!」
【+ 】ゞ゚)「……いや、そこの子が食べるんだが」
( ,,^Д^)「なーんだ、アベックさんか!しょうがないなぁオマケしといてやんよ!」
【+ 】ゞ゚))「え、いや、それは……」
( ,,^Д^)「ほらほらほらー!」
【+ 】ゞ゚)「…………」
断る間もなく、俺は両手に綿菓子を持つこととなった。
川*^々^)「わーい!いただきまーす」
ニコニコしながら綿菓子に取り掛かるくるうを見ながら、俺は言う。
【+ 】ゞ゚)「……くるう、もう一ついらないか?」
川*^々^)「ううんー、いっこでじゅーぶん」
【+ 】ゞ゚)「……、」
……これはあれだろうか。
今までくるうとの仲をなあなあにしてきた罰なのだろうか。
川*゚ 々゚)「食べればいいのに、おいしいよ?」
砂糖でベタベタになった口で、最上級の笑みを浮かべながらくるうは言った。
【+ 】ゞ゚)「そ、そうか……」
引きつりながらそう返して、綿菓子に口をつけた。
ああ甘い。
【+ 】ゞ-)(まったく……)
胸糞悪くなるくらい、甘ったるい。
- 249 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:37:57 ID:OF3HtC06O
- 俺はあてもなく森を飛び出した。
( A )(そんな理由、か)
好きじゃなかった。
それどころか、迷惑だったらしい。
視界がにじむ。
堪えなければ。
森はどんどん遠のく。
にぎやかな音楽が近付いていく。
どんどん、もっと、うるさく。
喧騒を求めて走り、そして、
( <●><●>)「どうしましたか、そんな泣きそうな顔をして」
('A`)「…………」
(;A;)「フラれた」
ワカさんと遭遇した。
( <●><●>)「それはそれは……」
平坦な声。
それから、ワカさんが手招きをした。
( <●><●>)「まぁ、少しお話をしましょう」
(;A;)「…………」
( <●><●>)「ここで泣くにはにぎやかすぎますから」
- 250 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:40:59 ID:OF3HtC06O
- そうして連れてこられたのは、一軒の店。
中には誰もいなかった。
きっと祭に行っているのだろう。
( <●><●>)「知り合いの店ですから、どうぞ好きになさってください」
('A`)「はぁ、」
人の家だから使ってもいい、っていうのもなんだか変な話だ。
しかしそんなことは関係ないというような態度で、ワカさんは店の奥の小さな椅子に座った。
俺も、テーブルを挟んで座った。
ちょうど彼と向かい合う形だ。
( <●><●>)「それで、どうしたんですか?」
( A )「…………」
話そうかどうしようか、俺は迷った。
しかし、ワカさんはわざわざ付き合ってくれたのだ。
この後に、大会があるというのに。
俺は、勇気を出して、デレとのことを話し始めた。
彼女と幼馴染みであったこと。
最初はずっと友達でいられると思っていたこと。
十五才の時に知ったお勤めのこと。
いつか故郷から出て行ってしまう彼女と、もう二度と会えないとわかった瞬間に、離れたくないと思ってしまったこと。
何の取り柄もないけど、守りたいと思ったこと。
それを全て、否定されてしまったこと。
- 251 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:42:13 ID:OF3HtC06O
- ( <●><●>)「…………」
('A`)「結局俺はただのおせっかい焼きで、あいつには邪魔だったのかなー、なんて」
はは、と渇いた笑いが出る。
あんな風に突き放されると、もはや開き直るしかなかった。
( <●><●>)「……ドクオくん」
('A`)「はい」
( <●><●>)「これから、少し質問をします」
('A`)「?」
( <●><●>)「あちこち旅をしてきたあなたからすれば、くだらない仮説かもしれません、だけど、私なりに考えたのです」
('A`)「…………」
( <●><●>)「お話を聞く限り、デレさんとそのお姉さんのツンさんは、とても対照的な関係に思えます」
('A`)「ああ……」
たしかにそうだ。
ツンはわりと交友関係が広かった。
しかし、デレは人と関わるよりも本を読むほうが好きだった。
古くからの友人といえるのは、俺とくるうくらいだ。
( <●><●>)「他にも、対照的な点はありますか?」
('A`)「うーん……」
俺は、ツンと話したことがあまりなかった。
ツンよりも、デレに興味があったからなんだが……。
('A`)「あ、デレは右利きで、ツンは左利きだ」
( <●><●>)「ほう、」
- 252 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:44:52 ID:OF3HtC06O
- 真っ黒な瞳が、少し輝いた。
( <●><●>)「他には?」
('A`)「えーっと……」
それから、ワカさんにせかされるまま、俺はデレとツンの特徴をあげていった。
その度に、ワカさんの目はギラギラと輝いた。
('A`)「それくらいかなぁ……」
( <●><●>)「なるほど」
ワカさんは、一呼吸おいてそう言った。
( <●><●>)「やはり、私の考えは……」
('A`)「?」
( <●><●>)「……もう少し、時間をくださいますか?」
('A`)「は、はぁ……」
( <●><●>)「すみませんね、もう少ししたら会場に行かなくてはいけませんから」
その言葉を聞いて、俺は申し訳なくなった。
(;'A`)「すみません……」
( <●><●>)「いえ、吐き出して少しでも楽になれたのなら幸いです」
ワカさんが歩き出す。
俺もその後に続く。
('A`)(仮説……)
ワカさんには、デレのなにがわかったのだろう。
店の外へと向かう背中を見つめながら、俺はそう思った。
――第十階層「にぎやかな国」前編 了
- 253 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 01:46:58 ID:OF3HtC06O
- しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
- 254 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 01:49:01 ID:OF3HtC06O
- お題ストック(10個までですよ)
届いた想い
鳴かぬなら、○○○○、ホトドクオ
逆さまの城
相も変わらず繰り出される放屁
魔物とキャッキャッウフフ
デレがおっぱいにダイブ
正義の騎士団
- 255 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 01:51:07 ID:OF3HtC06O
- インフォメーション
実はあと二、三話で旅は終わります
その後のなんやかんやは前後編では済まないくらい長くなる予定です
それが終わったらエンディングです
つまり、もうちっとだけ、続くんじゃ
- 256 : ◆R6iwzrfs6k:2012/11/02(金) 01:59:43 ID:OF3HtC06O
- うっかりトリ忘れてるなんなのもう
肝心なこというの忘れてた
完結近いからお題は締切ますといいたかったんだわたし!たわし!
支援ありがとうございました、おやすみなさい
- 257 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 02:05:36 ID:ZK4BFKUMO
- おつです!ラスト近いのさびしいわ
- 258 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 10:28:26 ID:v9mKweao0
- おつ!
核心に近付いてて次が楽しみだ
- 259 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 17:45:04 ID:Z/880THI0
- おつ
- 260 :名も無きAAのようです:2012/11/02(金) 20:04:51 ID:ZdNvxAHo0
- おつおつ
- 261 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 17:31:29 ID:hOcDXbJ.0
- おつおつ
- 262 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 20:44:20 ID:MqoVDhrMO
- 乙 終わりに向けてすげぇ話が動いてきたな
wktkしてきた
- 263 :名も無きAAのようです:2012/12/09(日) 23:01:33 ID:ncdL14qg0
- マダカナマナカナ
- 264 :名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 22:39:09 ID:eHUfS21I0
- 2ヶ月か、後一ヶ月だ
- 265 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:36:44 ID:rqidrRV20
- 「なにか特別なものを与えよう」
それから、神様はたくさん考えて、ヒト達に、不思議な力を与えました。
けれどもけっして喧嘩が起きないように、そしてヒト達が助け合って生きていけるように、ある工夫をしました。
――第十階層「にぎやかな国」後編
- 266 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:39:05 ID:rqidrRV20
- ζ( ― *ζ「…………」
私の気分はどん底だった。
ピンクの空も、軽快なマーチも、人々の歓声も、全て疎ましかった。
ζ( ― *ζ(ドクオの馬鹿)
みんな、死にたくてお勤めに参加したわけないのに。
ζ( ― *ζ(……好きって、なんなの)
【+ 】ゞ゚)「デレさん!」
名前を呼ばれてハッとする。
その声の主は、オサムさんだった。
【+ 】ゞ゚)「客席はこっちです」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ああ……。ありがとうございます」
人込みをかき分けて、オサムさんのところへ向かう。
ζ(゚ー゚*ζ「くるうは?」
【+ 】ゞ゚)「くるうなら、ビロードさんと話しています。なにやら話したいことがあるとか」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですか」
……もしかして、昨日の話を引きずっているんだろうか。
少し不安になる。
でも、客席の隅っこでビロードちゃんと話しているくるうの表情はとても明るかった。
川 ^々^) (><*)
ニコニコしながらなにかを語りかけているその様子は、とても和やかだ。
- 267 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:41:15 ID:rqidrRV20
- ζ(゚ー゚*ζ(杞憂、だったかな)
くるうがビロードちゃんの頭を撫でているのを見て、私はほっとした。
ζ(゚ー゚*ζ(よかった)
普段は子供っぽいけど、あの怒りが一日で収まったあたり成長したなぁ、なんて思ってしまった。
【+ 】ゞ゚)「そろそろ行きませんか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ごめんなさい」
【+ 】ゞ゚)「いえ。ただ、ドクオくんを一人で待たせているのも悪いかと思いまして」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
私はなんて返せばいいのかわからなかった。
だけど、そのまま黙っていてもオサムさんは変に思わなかったらしかった。
ζ( ー *ζ(はぁ……)
これから、どうすればいいんだろう。
今まで彼とどんな会話をしていたんだっけ?
【+ 】ゞ゚)「……デレさん?」
ζ(^ー^;ζ「っ……なんでもないです」
笑顔を取り繕って、オサムさんに言う。
……でも、さすがにバレバレだったらしい。
オサムさんはなにかを察したようだった。
【+ 】ゞ゚)「……まぁ、あんまり無理しないようにしてください」
そうして、彼は歩き始めた。
- 268 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:42:36 ID:rqidrRV20
- ビロードちゃんとワカさんの活躍はすさまじかった。
ζ(゚ー゚*ζ「いっけぇぇぇ!!」
【+ 】ゞ゚)「おお……」
(*'A`)「すげぇな!やれ、やれ!」
川 ゚ 々゚)「…………」
どんな能力者が来ても、ビロードちゃんとワカさんは、お互いを守りあっていた。
二人のコンビネーションは、抜群だった。
ζ(゚ー゚*ζ「すごいね、すごい!」
思わず興奮して、私はドクオに話し掛けてしまった。
ζ(゚ー゚;ζ(……ちょっと、まずかったかな)
一瞬そう思ったけど、
(*'A`)「な!これなら優勝できるんじゃねぇか!?」
ドクオも興奮していて、満面の笑みを浮かべながらそう返してくれた。
ζ(゚ー゚*ζ(……よかった)
それとなく安心して、私はまたビロードちゃん達の方に視線を戻した。
- 269 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:45:01 ID:rqidrRV20
- ( <●><●>)「ビロード!」
( ><)「はいです!」
ビロードちゃんの手に、光が収束していく。
それは徐々に剣を形作っていって。
( ><)「これで、終わりです……!」
一瞬で間合いを詰めたビロードちゃんは、それで相手を切り付けた。
(;*゚∀゚)「いてて……」
(;*゚ー゚)「つ、つー!」
( <●><●>)「まだやりますか?」
(;*゚ー゚)「っ……降参よ!降参!」
敗北が宣言された途端、客席は沸き上がった。
「いいぞー!よくやった!!」
「潔い!」
「おつかれさま!!」
次々とかけられる言葉は、決して降参した者を罵倒するものではなく、むしろ優しかった。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
そうだ、これは誰かを殺すために戦っているわけではないからだ。
誰が一番強いのか、それを決めるための戦いだから。
- 270 :名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 23:46:14 ID:jX8pBQQYC
- キター!
- 271 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:46:28 ID:rqidrRV20
-
(φー )
ζ( ー *ζ「…………」
一瞬、パミィさんのことを思い出してしまった。
彼が、私達のように旅に出る勇気さえあれば、あそこで死ぬこともなかったんだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(……それでも先はなかったかもしれない)
生まれる国は選べない。
親も選べない。
だけどそれは仕方のないことなのだ。
川 ゚ 々゚)「次」
ζ(゚ー゚*ζ「ん?」
川 ゚ 々゚)「次、決勝だね」
くるうが、ビロードちゃんを見つめながらそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」
川 ^々^)「楽しみだなぁ」
満面の笑みを浮かべながら、くるうは言った。
- 272 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:47:25 ID:rqidrRV20
- 決勝戦。
臭いを武器にするビロードちゃん達に相対するのは、プギャーとまたんきという二人組の男だった。
ζ(゚ー゚*ζ「どんな能力なのかな」
私の呟きに答えてくれたのは、オサムさんだった。
【+ 】ゞ゚)「風を操る能力だそうですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「へぇ……」
しかし会場は無風だ。
こんな状況でも、風を操ることができるのだろうか?
そんなことを考えているうちに、決勝戦が始まった。
( <●><●>)「まずはお手並み拝見です」
( ><)「です!」
ビロードちゃんが、握り拳を相手の方に突き出した。
そして。
( ><)「いっけぇぇぇ、です!!」
握り締められていた拳が開いた瞬間、手の平から光が飛んでいった。
(;'A`)「なんでもありだな」
ドクオの呟きに私はうなずいた。
( ^Д^)「…………」
(・∀ ・)「…………」
相手は、動揺せずにそれをただ見つめていた。
が、突然間の抜けた音が会場に響いた。
- 273 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:48:27 ID:rqidrRV20
- ぷぅー、ぷすんっ。
それと同時に、小馬鹿にするような笑みを浮かべたプギャーが叫んだ。
( ^Д^)「そんじゃあ、やりますか!」
とその時、光の矢の軌道が急に逸れてしまった。
【+ 】ゞ゚)「ほう」
興味深そうに呟いたのはオサムさんだった。
【+ 】ゞ゚)「無風状態でも風を生み出せるのか」
ζ(゚ー゚*ζ(無風……?)
その言葉がやけに引っ掛かった。
無風でも風を生み出せるなら、それは一人で十分ではないのか、と。
( ^Д^)「派手にやろうぜ!」
(・∀ ・)「おうよ!!」
仁王立ちしているまたんきが叫んだ瞬間だった。
ブボボッ!ボッ!!ブーッ!!!
(;'A`)「!! 違う、オサムさん。風を生み出してるのはあいつだ!!」
ドクオが、またんきを指差して叫んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「まさか……」
【+ 】ゞ゚)「…………」
あの音って……。
川 ゚ 々゚)「おなら?」
ζ( ー *ζ「ぶふっ……!」
くるうの一言に私は思わず噴き出してしまった。
ζ( ー *ζ(お、おなら……!)
しかしその威力は馬鹿にできないようだった。
- 274 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:50:10 ID:rqidrRV20
- ( ^Д^)「どっせい!!」
( ><)「!」
無数の鎌鼬がビロードちゃん達に襲いかかる。
が、ビロードちゃんはとっさに盾を作り出した。
【+ 】ゞ゚)「飛び道具の多いビロードさんとあの能力だと、少し分が悪いかもしれないな……」
たしかにそうかもしれなかった。
ビロードちゃんが剣を使うのは、相手が弱り切った時だけなのだ。
遠距離能力同士の戦い。
一体どうなってしまうんだろうか?
(・∀ ・)「まだまだだぜぇぇぇぇ!!!!」
相も変わらず繰り出されるおなら。
( ^Д^)「おらぁぁぁ!!!」
次々襲いかかる風の刃を防ぎながら、ビロードちゃんは銃弾による段幕を展開する。
( ><)「こっちも負けていられませんよ!」
( <●><●>)「ワカッテマス!!」
ζ(゚ー゚*ζ「す、すごい……」
その戦いに、私達は圧倒され、見入っていた。
川 ゚ 々゚)「…………」
ただ、彼女だけを除いて。
- 275 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:51:35 ID:rqidrRV20
-
弱くて貧相でちっぽけでか細くて、誰かを守るためには不十分で役立たずな私の魔療。
でもね、けどね、誰かの足を引っ張ることはできるんだ。
.
- 276 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:53:37 ID:rqidrRV20
- ( ><)「……?」
その時、ボクは痛みを感じた。
(;><)「?」
頭が、熱い。
じわじわとその熱はあがっていって、ボクの思考力を奪っていく。
(;><)「ぁ……う……!」
手から、銃が滑り落ちる。
地面に着く直前、それは霧散した。
能力が維持できない。
(;><)(どうして……?)
(;<●><●>)「ビロード……?」
お兄ちゃんが、駆け寄ってくる。
だめ、こっちに来ちゃ。
来たら……。
( ^Д^)「今だ」
(・∀ ・)「あいよ」
( <〇><◎>)「!?」
無数の鎌鼬が、お兄ちゃんの体を吹き飛ばした。
(;><)「お、お兄ちゃん……!」
頭痛に耐えながら、ボクはお兄ちゃんに駆け寄った。
(;<〇><●>)「ビ、ビロード……」
(;><)「お兄……ちゃ……」
- 277 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:54:21 ID:rqidrRV20
- ( ^Д^)「寝転がってる暇はねぇぜ!!」
(;><)「っ!?」
体が、吹き飛ぶ。
そのまま壁に叩き付けられて、肺の中の空気が、潰れた。
(;><)「う……ぅ、」
どうして、こんな、急に?
耐えがたい痛みの中で、ボクは必死に考えて。
でも、答えは出なかった。
(;><)(ごめんなさい、お兄ちゃん)
守れなくて、ごめんなさい。
- 278 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:55:41 ID:rqidrRV20
- 川 ゚ 々゚)「………………」
あいつの元へ、男が近付く。
(;><)「…………」
彼女は、動かない。
動けない。
彼女が戦う前に、私が魔療を使ったからだ。
健康なのに、血の巡りが速くなったら、頭がのぼせてしまってどうにもならない。
だから魔療は、むやみやたらに使ってはいけないのだけど。
川 ゚ 々゚)「…………」
使ってしまった。
自分のために、相手の意思を潰すために。
川 ゚ 々゚)(……それで、いいのかな)
いいんだよ。
いつだって私は自分を殺してきたじゃないか。
一度くらい、相手を殺したっていいじゃないか。
- 279 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:56:45 ID:rqidrRV20
- 川 々 )「……わたし、」
【+ 】ゞ゚)「くるう?」
オサム。
オサムが、わたしを見てる。
見つめてる。
バレてしまいそうだ。
わたしが、教えを破ったことが。
川 々 )「ご、ごめんな、さ、」
【+ 】ゞ゚)「くるう……?」
その時だった。
ブシッ、と、わたしの鞄の中から音がしたのは。
('A`)「ん?」
その音に、ドクオが呟いた。
ζ(゚‐゚*ζ「……っ!?」
その臭いに、デレが動揺した。
川 ゚ 々゚)「!!」
その時、わたしは意思を固めた。
鞄から、それを取り出して。
倒れていたビロード目掛けて、オワタくんからもらった謎の缶詰を投げ付けた。
- 280 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/03(木) 23:58:45 ID:rqidrRV20
- カラン、と音がした。
(;><)「……?」
目の前には、パンパンに膨らみ、ガスと真っ黒い汁を噴き出しているラベルのない缶詰があった。
(;・∀ ・)「なにこれくっさ!!」
(;^Д^)「おぇぇっ……!」
突然現われたそれに怯んだ二人は、立ち止まってぎゃあぎゃあと騒いだ。
いまだ止まない頭痛にふらつきながら、ボクはゆっくりと立ち上がる。
その体を支えてくれたのは、お兄ちゃんだった。
( ><)「……いつのまに来たのですか?」
(メ<●><●>)「まぁ、先ほどからじりじりと、ね」
お兄ちゃんは、ためらいもなく缶詰から噴き出した汁を手に取った。
(メ<●><●>)「やることはわかりますね、ビロード」
( ><)「……口に出さなきゃわかんないですよ」
軽口をたたきながら、お兄ちゃんに笑いかける。
(メ<●><●>)「まったく……、私を守ってください。でなければ、あなたを守れませんから」
(*><)「…………」
なにも答えずに、ボクは光を収束させた。
最後の最後なのだから、派手にやろう。
(*><)「お二方には、悪いのですが!!」
( ^Д^)「は?」
(・∀ ・)「へ?」
- 281 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:00:51 ID:DvH7HC1.0
- 夕暮れ時。
ワカさんの庭のベンチに座りながら、私はドクオに話し掛けた。
ζ(゚ー゚*ζ「……すごかったね」
('A`)「……な」
オワタくんからもらった缶詰の中身が、あんな風に活躍するとは、予想だにしなかっただろう。
ζ(゚ー゚;ζ「……すごい臭いだった」
('A`)「おう、ちょっと対戦者がかわいそうになったわ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
沈黙。
能力バトル大会の興奮で、つい話し掛けてそのまま一緒に帰ってきたものの、やっぱりまだ気まずかった。
ζ(゚ー゚*ζ(どうしようかな……)
と、考えていたら、
('A`)「デレ」
ζ(゚ー゚;ζ「ひゃいっ!?」
真剣な面持ちで、ドクオがこう言った。
('A`)「やっぱり、諦められない」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「嫌いでもなんでもいいから、俺はお前のことを守りたい。ずっと傍にいたい」
ζ(゚、゚*ζ「…………」
ζ(゚ー゚*ζ(別に、嫌いってわけじゃ、ないんだけどなぁ)
とは思ったけれども、なんだかうまく言葉に出来なくて、私はうなずいた。
(*'A`)「そっか」
なのに、ドクオは嬉しそうに笑うから、余計わけがわからなくなってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ(まぁ、いっか)
とその時、私はビロードちゃんとワカさん、オサムさんとくるうが帰ってくるのを見つけた。
- 282 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:01:46 ID:DvH7HC1.0
- ζ(゚ー゚*ζ「おかえりなさい!」
('A`)「怪我は、大丈夫なのか?」
( ><)「大丈夫なのですよー。ご心配おかけしました」
深々とお辞儀しながら、ビロードちゃんはそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「ところで、勝負の行方は……?」
( <●><●>)「私達の勝ち、ということで処理されました」
【+ 】ゞ゚)「まぁ、缶詰を投げ入れたことに関してはこっぴどく叱られたが」
苦笑しながら、オサムさんがくるうを見た。
川 ゚ 々゚)「…………」
くるうは、なんともいえない表情でオサムさんから視線を逸した。
(メ<●><●>)「まぁそういうことですから、これから知り合いのところでお祝いをしにいくことになりまして」
( ><)「よかったら、一緒に来てほしいのです!」
ζ(゚ー゚*ζ「いいんですか?」
(*><)「楽しいことはたくさんの人と分け合うのがいいのですよ!」
川 ゚ 々゚)「…………」
ビロードちゃんの笑顔に癒されながら、私はうなずいた。
ζ(゚ー゚*ζ「みんなも、それでいいよね」
('A`)「もちろん」
【+ 】ゞ゚)「ここで出国するのも、野暮な話だよ」
川 ゚ 々゚)「…………」
( <●><●>)「それでは行きましょうか」
嬉しそうに、ワカさんはそう言った。
(*><)「道案内はボクがします!」
ビロードちゃんが歩きだし、私達はその後に続いていった。
- 283 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:02:58 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「少し、ビロードたちから距離を開けて話をしましょうか」
小声で、俺に向かってワカさんが言った。
おそらく、デレのことで話があるんだろう。
('A`)「わかりました」
そこはかとなく、歩く速度を落とす。
川 ゚ 々゚)「それでね、オサムが綿菓子をね」
ζ(゚ー゚*ζ「オサムさん、甘いもの好きなんですか?」
【+ 】ゞ゚)「いやまったく……」
( ><)「それは災難でしたね」
少し先では、デレがみんなと話しているのが見えた。
おしゃべりに夢中な今なら、俺がいないことに気づかないかもなぁ、なんて。
('A`)(ちょっと寂しいけど)
今は、それでいい。
- 284 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:04:20 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「さて、」
なにからお話ししましょうか、と呟きながらワカさんはほんの少し考えて、こう言った。
( <●><●>)「……昔から、この国にはおとぎ話がありまして」
('A`)「?」
( <●><●>)「昔、この国はあんまりにもなにもなさすぎて、神様はつまらないと感じていたのだそうです」
( <●><●>)「ですから神様は、人間に特別な力を与えたそうなのですが。さてドクオくん」
('A`)「は、はい」
( <●><●>)「この能力を使った争いが起きないようにするには、どうすればいいでしょうか?」
争いが起きないようにする。
ほんの少し難しい問題だ。
でも、昨日ビロードちゃんが言った言葉を思い出して、俺は答える。
('A`)「個々の力が弱くて、」
( <●><●>)「…………」
('A`)「互いに助け合わないと、能力が使えないから」
( <●><●>)「その通りです」
緩やかに笑みを浮かべながら、ワカさんは続ける。
( <●><●>)「そう、一人ではなにもできないのです。わたしも両親からビロードとは一心同体の存在であることを叩き込まれました」
( <●><●>)「だからこそ、わたしは思ったのです」
( <●><●>)「デレさんとお姉さんは、二人で一つの対称的な存在ではないのか、と」
('A`)「……二人で一つ?」
予想だにしなかった言葉に動揺しつつ、俺はワカさんに聞き返した。
( <●><●>)「デレさんは、内向的で読書が好きで、恋愛感情には疎く、旅をすることにあまり抵抗がない」
( <●><●>)「対してお姉さんは、活発的で交遊関係も広く、恋愛感情を持ち、塔の外を出ることはあまり好きではない」
- 285 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:07:10 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「おかしいとは思いませんか?普通、一族の伝統とはいえ二度と戻ることのできない旅を進んで行う人がいると思いますか?」
( <●><●>)「また、それをおとなしく見送る人がいると思いますか?」
('A`)「…………」
( <●><●>)「思うに、デレさんの一族たちは二種の人間に分かれて生まれるのです。一人はお勤めに向いている人間、もう一人は国に残る人間……」
国に残る。
つまり、それは、子孫を残すということで。
お勤めに出るということは、それが叶わないから。
ζ( ― *ζ「友達以上の関係なんて、わかんないよ……」
デレの言葉が、反響する。
( A )「……俺の、」
俺の、恋は、最初からみのるはずもなかった?
( <●><●>)「鳴かぬなら 鳴かせてみせなさい ホトドクオ」
('A`)「……へ?」
ワカさんのわけのわからない言葉に、俺は間の抜けた声が出てしまった。
( <●><●>)「ともに鳴かずば 鳴くこともならん」
- 286 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:08:50 ID:DvH7HC1.0
- ( <●><●>)「いえ、これは先人の句を短歌にアレンジしたものでして」
('A`)「はぁ、」
( <●><●>)「デレさんが、恋心をわからないのなら、あなたが教えればよいのですよ」
そうは言うけどさ、ワカさん。
('A`)「……俺にできるかなぁ」
( <●><●>)「やりもしないで諦めるのは一番駄目なことですよ」
ワカさんの言葉が、ぐさりと刺さる。
でも、たしかにそうなんだ。
それに俺は。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、二人ともなんで離れてるの?」
ふと立ち止まったデレが、不思議そうに俺たちを見る。
( <●><●>)「ああ、少しのんびり歩いていまして」
( ><)「まったく、お兄ちゃんはマイペースですね」
ははは、と笑いながらワカさんは歩みを速める。
先ほどの話は内緒ですよ、というようにこっそり俺に目配せをして。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ?」
('A`)「今いくよ」
やっぱり。
(*'A`)(俺はデレが好きなんだ)
- 287 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:09:53 ID:DvH7HC1.0
-
どんちゃん騒ぎをした翌日。
名残惜しいけれども、私たちはにぎやかな国を去ることにした。
( ><)「楽しかったですよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「私も、ビロードちゃんたちと一緒にいれて楽しかったよ」
【+ 】ゞ゚)「色々お世話になりました」
( ><)「いいのですよー」
川 ゚ 々゚)「…………」
( <●><●>)「寂しくなりますねぇ」
ワカさんが、ちらりとドクオを見ながらそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ(そういえば昨日ずっといたし、仲がいいのかな?)
なんてことを思いながら、私はワカさんに頭を下げた。
川 ゚ 々゚)「……行こ、デレ」
扉に手をかけながら、くるうが言う。
そうだ、先に進まなくては。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、お元気で」
( <●><●>)「どうかお気をつけて」
くるうの開けた扉をくぐる。
私の後を、ドクオとオサムさんがついてきて。
- 288 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:10:47 ID:DvH7HC1.0
- ζ(゚ー゚*ζ(あれ?)
くるうは?
そう思って振り向いた時だった。
「っごめんなさい! でも、わたしはオサムが好きだから!」
なんて、声が聞こえてきて。
それから、くるうがこっちに駆け寄ってきて。
川* 々 )「早くいこ?」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ζ(^ー^*ζ「うん」
らしくもなく顔を赤くしていたものだから、思わず私は笑ってしまった。
――第十階層「にぎやかな国」後編 了
- 289 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:11:53 ID:DvH7HC1.0
- しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
- 290 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:13:01 ID:DvH7HC1.0
- お題ストック(募集してません)
届いた想い
逆さまの城
魔物とキャッキャッウフフ
デレがおっぱいにダイブ
正義の騎士団
- 291 : ◆R6iwzrfs6k:2013/01/04(金) 00:14:51 ID:DvH7HC1.0
- あけましておめでとうございます
なんやかんやしていたらすっかり投下が遅くなってしまいました
ちゃんと生きてます
- 292 :名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 00:16:29 ID:IH3tIB7s0
- 乙です!!
- 293 :名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 00:18:43 ID:sTdPYGIoO
- 待ってたよ!!乙!!!
- 294 :名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 02:21:44 ID:71exLTmo0
- 待ってたおつ
- 295 :<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
- <^ω^;削除>
- 296 :名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 11:50:38 ID:saN9I.as0
- おつおつ
- 297 :名も無きAAのようです:2013/01/22(火) 02:38:08 ID:dzi4P9Ng0
- あけおめおつ!
- 298 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:40:10 ID:5TUghTwk0
- むかしむかし、あるところに不幸せな国がありました。
その国はとても荒れ果てていて、いつも争いごとばかりでした。
ある日、その国に神様がやってきました。
「どうして、この国はいつも不幸に満ちあふれているのですか」
「信じられるものがないからです。親も、兄弟も、なにもかもが信じられないのです」
「それは悲しいことだ」
「ここはいつでも血と姦淫にまみれておりますから、他人を信じられるはずがないのです」
その言葉に対して、神様はこう言いました。
「ならば、私を信じなさい。そして、一日に一度あなた達に詞を授けよう。そのとおりにすれば、幸せが訪れるだろう」
――第十一階層「信心深い国」に伝わる民話
- 299 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:41:07 ID:5TUghTwk0
- まず私たちの視界に入ってきたのは、奇妙な建物だった。
ζ(゚ー゚*ζ「なにあれ?」
('A`)「ピラミッドか?」
川 ゚ 々゚)「でもでも、上のほうがおっきいよー?」
それは、逆さまになった四角錐状の建物だった。
離れた場所からも見えるそれが、とんでもない大きさであることは明白だ。
ζ(゚ー゚;ζ「なんだかすごいとこに来ちゃった?」
【+ 】ゞ゚) 「……とりあえず、進むしかないだろう」
オサムさんの言葉にうなずいて、私たちは歩き出した。
- 300 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:42:14 ID:5TUghTwk0
- 整備された道をしばらく歩くと、国の入り口らしき門が見えた。
閉じた扉の前には、煙管を手にした男の人と、
( l v l) (・∀ ж・ )
片方の口を縫われた双頭の怪物が立っていた。
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
入りにくいなんてものじゃない。
正直怖かった。
けれども、お勤めをするためには、通らなくてはいけないのだから。
ζ(゚ー゚*ζ「すみませんっ!」
勇気を出して、声をかけると煙管の男の人が振り返った。
( l v l) 「もしや、あなた方は旅人さんで?」
うなずくと、彼は嬉しそうに微笑み、
(*l v l) 「だと思いました」
と言った。
( l v l) 「ようこそ、信心深い国へ。わたくしは巫女さまの遣いをしている宗男と申します」
宗男さんは、きびきびとした動きで礼をした。
ζ(゚ー゚*ζ(なんだか機械みたい)
川 ゚ 々゚)「巫女さまってなぁに?」
( l v l) 「実はこの国には、昔からありがたい神のご加護がありまして」
と、話しかけていた口を宗男さんは閉じてしまった。
( l v l) 「ああ、この話はあとにして、先に中へ案内いたします。傷に障ったら大変でございますからね」
ζ(゚ー゚;ζ(傷?)
- 301 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:44:05 ID:5TUghTwk0
- その一言に、ひやりとする。
もしかして私のことだろうか?
でも、宗男さんはそんなこと知っているはずがないのだ。
( l v l) 「デレ様、どうかいたしましたか?」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、いえ、その、……」
('A`)「……宗男さん、なんで彼女の名前を知ってるんだ?」
私をかばうように、ドクオが一歩前に出る。
【+ 】ゞ゚)「…………」
オサムさんも警戒するように、鞄に手をかけた。
( l v l) 「神は、すべての行いをご存知なのです」
ζ(゚ー゚;ζ「?」
ぼんやりと、どこか遠くを見つめながら、宗男さんは言う。
( l v l) 「もちろんあなたがたがどこから来たのか、道中でなにが起きたのかも知っているのです。 そして、神は巫女さまにそれを伝えるのです」
「ぜんちぜんのー」( ・∀ ж・)
不意に、宗男さんのそばにいた怪物が、そうしゃべった。
( l v l) 「我々は神の言葉に従い、あなたがたを丁重にもてなします」
ζ( ー *ζ「っ……」
ぞわりと肌が粟立つ。
それは、本心からの歓迎ではなくて。
【+ 】ゞ゚)「……何故、神を信じるんだ?」
( l v l) 「幸せになれるからですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
( l v l) 「さぁ、どうぞゆっくりしていってくださいな」
怪物に門扉を開けさせながら、宗男さんはそう言った。
- 302 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:45:25 ID:5TUghTwk0
- 入国した私たちは、国の歴史や民話などをことこまかく説明されながら、ある建物に通された。
そこは、どうも宿だったらしい。
たくさんの人に出迎えられて、おいしい料理を山ほど出されて。
でも、少し怖かった。
だってみんな、私達のことをなんでも知っていたから。
( l v l) 「今日はこの宿で、ゆっくりお過ごしください」
川 ゚ 々゚)「部屋はみんなべつべつなの?」
( l v l) 「ええ、そういうお告げでしたから」
にっこりと笑う宗男さん。
でも、オサムさんは彼をうさんくさそうに見つめながらこう言った。
【+ 】ゞ゚)「ところで、そばにいたあの異形はなんなんだ?」
オサムさんの言葉に、宗男さんは答える。
( l v l) 「ああ、あれはわたくしどもが人工的に造り上げた異形でございます」
(;'A`)「……は?」
ζ(゚ー゚*ζ「じ、んこう、てき……?」
( l v l) 「とある双子の青年をあのように生まれ変わらせろという、神のお告げがありましたから」
- 303 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:46:13 ID:5TUghTwk0
- 川 ゚ 々゚)「…………」
( l v l) 「彼らも大いに喜んでいましたよ。この上ない名誉だと」
嬉々として語るさまは、狂気を感じた。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの、やっぱり、おいとましま……」
( l v l) 「なりません」
ζ(゚ー゚;ζ「え、」
目を見開いて、私をにらみながら宗男さんは言う。
( l v l) 「一泊させなければいけないのです。何故なら」
【+ 】ゞ゚)「神のお告げ、か」
( l v l) 「ええ、そうです。過去のように不幸に満ち溢れた国にはしたくありませんからね」
(;'A`)「……狂ってる」
小声で、ドクオがそう呟いたのを私は聞き逃さなかった。
なにかを信じるって、こんなおどろおどろしいものだったっけ?
私はドクオやくるう、オサムさんを信じているけど、こんな風にはならないし、なれないと思うんだけど……。
( l v l) 「とにかく、今日はどうぞ、お休みなさってください」
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
嫌です、とは言えない空気だった。
こうして、私達は仕方なく、一晩宿で過ごすこととなった。
- 304 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:48:02 ID:5TUghTwk0
- 一人部屋は落ち着かなかった。
昔は一人部屋が好きだったし、寝るのも苦にならなかったのに。
そういえば、お勤めを初めてからは、みんなとずっと寝ていたからかな。
ζ(゚ー゚*ζ(一人って、寂しい)
なちさんからもらった動かない時計のネジを巻きながら、そんなことを思った。
そういえば。
寂しいという感情は、恋する気持ちと同じなのだろうか?
ツンは、恋をすると好きな人と一緒にいる時間が長くなって、離れるととても寂しく感じるのだと、言っていたから。
ζ(゚、゚*ζ(あ、でもそうしたらみんなに恋することになっちゃうな)
ごろごろと寝返りを打ちながら、そう思ったを
私に恋するドクオにも、仲良しのくるうにも、少し苦手だけど頼もしいオサムさんにも、恋をする。
やっぱり少し、変だよね、これ。
じゃあやっぱり、恋ではないのかもしれない。
ζ(´ー`*ζ(みんなに、会いたいなぁ)
早く、朝に、なりますように。
- 305 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:49:03 ID:5TUghTwk0
- 翌朝。
【+ 】ゞ゚)「ふざけるな!!!」
Σζ(゚ー`*ζ「んぇっ!?」
私は、オサムさんの怒声で飛び起きることとなった。
声は廊下から聞こえてきた。
慌てて扉を開けると、そこにはオサムさんに襟元を掴まれてもがいている宿屋の主人と、おろおろしているドクオがいた。
ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん、どうしたんですか?」
【+ 】ゞ゚)「くるうがいない」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
彡;l v lミ「だから、くるうさまは先ほど出掛けたと、」
【+ 】ゞ゚)「そんなわけない。あいつは一人でどこかに行ったりしない。どこかに行くなら俺を連れていくはずだ!」
(;'A`)「オサムさん!ちょっと冷静になりましょうって!」
【+ 】ゞ゚)「冷静になれるものか。おい、それで、くるうはどこにやったんだ?」
今にも人を殺しそうなオサムさんの様子に負けて、宿屋の主人はようやくこう言った。
- 306 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:50:33 ID:5TUghTwk0
- 彡;l v lミ「さかしまの城です。宗男さまが連れていくと行ったので、くるうさまの部屋の鍵を開けました……」
【+ 】ゞ゚)「っ……!」
それを聞いた途端、オサムさんは宿屋の主人を床に投げ捨てた。
ζ(゚ー゚;ζ「オサムさん……!」
【+ 】ゞ゚)「悪いけどデレさん、俺はそこに先に行かせてもらう。二人もなるべく早く、あのピラミッドにきてほしい」
それだけ言うと、オサムさんは宿屋から出ていってしまった。
ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ……」
いつもは冷静なオサムさんが、あそこまで取り乱すなんて。
思考がまとまらない。
そもそもなんで宗男さんはくるうを連れ去ってしまったのだろう。
('A`)「デレ!」
ぼんやりしていた私の手を、ドクオが掴んだ。
('A`)「俺たちも早く行こう」
ζ(゚ー゚*ζ「っ……、」
その一言で、私は気合いを入れた。
ζ(゚ー゚*ζ「うん!」
急いで支度しなきゃ!
- 307 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:52:09 ID:5TUghTwk0
- さかしまの城。
神ははるか彼方の天空に御座す偉大な存在だから、地上に足をつかせるだなんてとんでもない。
だから天地ともに入り口があるのだそうだ。
【+ 】ゞ゚)「…………」
もっともそんなのは、くるうの安否に関係ないのだが。
門番は全て足を射抜いた。
飛びかかってきた衛兵も、弓兵も、全て片付けた。
城を歩くのは、ただ俺一人。
【+ 】ゞ゚)「…………」
今度こそ。
今度こそ、守ると俺は決めたんだ。
【+ 】ゞ゚)(師匠やデレさんのようなことはもう起こさない)
遠くにいた尖兵達の肩を、矢が貫く。
崩れ落ちる体。
しかし、生きてはいる。
【+ 】ゞ゚)(デレさんとドクオ君はまだ来ないのか?)
若干心配になりつつ俺は歩みを進める。
とはいえ、どうもこの城は、巨大な柱を中心に、緩やかな坂がぐるぐると渦を巻くようにして出来ているらしく、階段や分かれ道が一切ないので、迷う心配はないだろう。
同じような風景を繰り返し、時々兵士を倒して。
いったい、いつになったらくるうのもとへたどり着けるのだろうか?
そう思っていた時だった。
- 308 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:54:04 ID:5TUghTwk0
- 「しんにゅうしゃ!」( ・∀ ж・)
【+ 】ゞ゚)「!?」
異形の腕が振り回される。
間一髪避ける。
【+ 】ゞ゚)「邪魔だ!」
素早く矢を撃ち込む。
「いたーい」( ・∀ ж・)
しかし、胴に刺さったそれを異形は引き抜いた。
出血はあまりない。
「おかえしー」( ・∀ ж・)
【+ 】ゞ゚)「!?」
ビュン、と矢が投げ返される。
慌てて避ける。
が、矢から視線を戻した時。
「ひひ」( ・∀ ж・)
ぶん、と振り上げられる腕。
はね飛ばされる体。
【+ 】ゞ )「ぐっ……!」
受け身をとって衝撃をやわらげたものの、体のあちこちが軋んだ。
【+ 】ゞ゚)(まずいな)
このままでは先に進めない。
【+ 】ゞー)(どうする……)
クロスボウに矢を装填しようとした時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「オサムさんっ!」
【+ 】ゞ゚)「デレさん……?」
('A`)「大丈夫ですか?」
【+ 】ゞ゚)「ドクオ君……?」
- 309 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:55:38 ID:5TUghTwk0
- 肩で息をしながら、各々武器を構えて異形を見つめる彼らが、なぜだか頼もしく思えた。
「ふえたー?」( ・∀ ж・)
ゆるりと、しかしすばやく異形が距離を詰め、右腕を上げる。
しかし、
ζ(゚д゚*ζ「はぁっ!」
渾身の力で振られた打撃部分が、異形の腕にあたる。
「いたい、」(;・∀ ж・)
怯んだ腕はそのまま、宙に浮いたまま。
ζ(゚ー゚*ζ「オサムさん!」
その一言で、俺は成すべきことをさとった。
【+ 】ゞ゚)「すまない!」
一言そう叫んで、異形の脇をすり抜ける。
早く。
【+ 】ゞ゚)(早く、くるうを助けにいかなくては)
- 310 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:56:45 ID:5TUghTwk0
- ふかふかのベッド。
白霧色のレースの天蓋。
サテン生地のすべらかなシーツ。
しょりしょり、しょりしょり。
そんな音がするのは、どうして?
川 々 )「んん、…………」
幼い頃に、オサムに読んでもらった絵本みたいなベッド。
あれ?でも、昨日はこんなところで寝ていなかったような。
川 ゚ 々゚)「……?」
手枷が、ついている。
足枷も。
川;゚ 々゚)「…………」
状況が飲み込めない。
昨日は宿屋に泊まって。
部屋の鍵もきちんと閉めたのに。
川;゚ 々゚)「どうして、」
「あれれー、起きちゃったのー?」
不意に、幼い女の子の声がした。
ぺたぺたと足音。
从'ー'从
わたしの視界に、真っ白な女の子が入る。
川 ゚ 々゚)「だれ?」
从'ー'从「ここで神さまからお告げを受け取っている巫女だよー」
名前はないんだぁ、と言いながら、彼女はわたしの髪を触る。
川 ゚ 々゚)「触んないで」
触っていいのは、オサムだけなのに。
- 311 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:57:42 ID:5TUghTwk0
- 从'ー'从「赤くてきれいね。わたしの国には赤髪の女の子なんていないのー」
川 ゚ 々゚)「?」
从^ー^从「だからお告げで、長い赤髪の女の子の髪を切れ、なんて言われたときにはすごく困ったのだけど」
川 ゚ 々゚)「……え?」
从'ー'从「ねえねえ宗男さん、はさみ研ぐのまだ?」
( l v l) 「もうしばらくお待ちください、今研いでいますので」
川;゚ 々゚)「っ!」
切られてたまるものか。
そう思ってじたばたするものの、枷はとれる気配はない。
从'ー'从「大丈夫よ、くるうさん。痛いことなんかしないから」
川; 々 )(やだ、やだ!)
オサムのための髪なのに。
長いほうが好きって言ったから、伸ばしてるのに!
从'ー'从「どうしてそんなに嫌がるの?あなたが髪を切られれば、わたしたちは一日幸せでいることができるのよ?」
それって、とても、名誉なことでしょう?
川; 々 )(オサム、)
早く、助けにきて。
- 312 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 12:59:02 ID:5TUghTwk0
- 怪物の体力は底無しのように思えた。
いくらフレイルで打撃を与えても、斧で切りつけても、まったく痛がる様子がないのだ。
(;'A`)「きりがないな!」
振り回された右腕を斧で受け止めて、切りつけながらドクオが叫んだ。
「ひひ、」( ・∀ ж・)
ドクオが飛びすさって、距離をとる。
入れ違いに私はフレイルで怪物の頭を殴り付けた。
「…………」( ・∀ ж・)
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
ドクオが切りつけた傷口は、浅かった。
ζ(゚ー゚*ζ(どうすれば、動きを止められる?)
フレイルを持ち直しながら、左側の頭を殴ろうとした時だった。
Σζ(゚ー゚*ζ「なっ……」
ひょい、と左側の頭がフレイルの打撃部を避けたのだ。
軌道をよむのが難しいはずなのに。
( ・∀ ―・)
フレイルは、怪物のくちびるを掠めて、糸を切るだけで終わってしまった。
- 313 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 13:00:10 ID:5TUghTwk0
- ζ(゚ー゚;ζ「…………」
そのまま怯んでいたら、私は叩きつけられていただろう。
('A`)「デレ、下がれ!」
再び振り上げられた右腕目掛けてドクオが斧を投げつけていなかったら、だけど。
「いたーい」( ・∀ ∀・) 「…………」
たいして痛くもなさそうに、怪物が言った。
浅く刺さった斧を、左手で引き抜こうとする。
投げつけられたらひとたまりもないだろう。
かといってフレイルで防ぐこともままならなくて。
私たちには、どうすることもできなかったはずだった。
ζ(゚ー゚;ζ「ドクオ、」
('A`;)「…………」
私をかばうように、ドクオが前に出る。
斧が引き抜かれそうになったその時であった。
「あれ?」( ・∀ ∀・) 「…………」
右の頭が、不思議そうに首をかしげる。
皮膚が引きつれて、左側の頭は少し顔をしかめた。
「じゃましないで」( ・∀ ∀・) 「…………」
横目でちらりと左の頭を睨む右の頭。
ゆるやかに、左手が動く。
ずるりと斧を引き抜いて、そして。
- 314 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 13:01:45 ID:5TUghTwk0
- 諸事情により投下中止します
今日中には戻ってきます、多分
- 315 :名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 13:41:00 ID:5TtkIVgQ0
- うわあああ来てた一旦乙!待ってたよ!
- 316 :名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 13:52:55 ID:8hHleMu6O
- きになるう
- 317 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:18:33 ID:jKCCduck0
- 再開します
- 318 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:20:26 ID:jKCCduck0
- 右腕に斧を突き立てた。
「ああぁぁ゛あぁ゛ああ゛あ!!?」( ∀ ∀・) 「…………」
何度も何度も繰り返し。
ぐち、ぶずん、だんっ、ぶぢん。
右腕はもがく。
けれども左腕はやめない。
ζ( ー ζ「どういう、こと?」
('A`;)「わかんねえ……」
分かるのはただひとつ。
これは異常だということ。
不意に、左の頭と視線がかちあった。
「いだい、」( ;∀ ∀・) 「ねえ、」
ζ(゚ー゚;ζ「……?」
「いたい、にーちゃ、」( ;∀ ∀・) 「ころしてよ」
ζ( ― ζ「…………っ!」
(φー )
彼のことを思い出す。
殺すだなんて、そんな。
「うー、う゛ー」( ;∀ ∀・) 「こんなの、のぞんでなんか、いなかった」
ζ( ― ζ「…………」
横たわる巨体。
ぽい、と床に投げ捨てられる斧。
ドクオは静かに歩み寄って、それを拾った。
- 319 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:21:34 ID:jKCCduck0
- 「やだ、」( ;∀ ∀・) 「なんにんものしあわせのためにしょうすうがふこうになるなんて、かみさまはすばらしいね」
ζ( ― ζ(そんなの、神さまじゃないよ)
じゃあ、神さまってどんなの?
( A )「……デレ、」
ζ(゚―゚*ζ「やらなきゃ」
仕方ない。それに死んだ方が本人もよかったはずだ。
そんな言葉を自分に言い聞かせて。
ζ(゚―゚*ζ「ごめんなさい」
思いきりフレイルで殴り付けた。
腕がきしんでも、息がつまっても。
ζ(゚―゚ ζ「…………」
そのうちドクオも斧で切りつけて、けれどもなかなか血は出てこなくて。
「しにたくない」( ;∀ ∀・) 「ごめんな、ふたごで」
ζ(゚―゚ ζ「…………」
('A`;)「…………」
ぶじゅっ、という音がした。
白い液体が吹き出した。
ζ(゚―゚ ζ(血、なのかな)
- 320 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:22:38 ID:jKCCduck0
- そういえば、オワタくん、元気かなぁ。
元気じゃないかもしれないなぁ。
「あ、あっ、あ゛……」( ∀ ∀ ) 「…………」
そのうち、声は途切れて。
真っ白な床に、白い染みが飛び散って。
ζ(;ー; ζ「…………」
知らない間に私は泣いていた。
(;'A`)「デレ、」
ζ(;ー; ζ「これで、よかったんでしょう?」
('A`)「……うん、よかったんだよ」
早くくるうを助けに行かなくては。
そうは思うけど、腰が抜けて動くことは出来なかった。
('A`)「……大丈夫だよ、オサムさんは強いから」
ζ(;ー; ζ「うん、」
行くことで足手まといになるくらいなら、立ち止まってしまいたかった。
それに、もう、人が傷つくのを見るのは嫌だった。
- 321 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:23:44 ID:jKCCduck0
- しょきん、しょきん。
金属がこすれる軽い音。
从'ー'从「うん、気持ちよく切れそうね」
そう言って彼女はわたしに微笑みかける。
その笑みは、ゾッとしそうなくらい気味が悪くて、わたしのことなんかこれっぽちも考えていない身勝手さがあふれでていた。
無駄なこととはわかっていたけど、思わず身をよじるわたしに、男がこう呟いた。
( l v l)「危ないですよ、暴れたら余計なところまできれてしまうかも」
川;゚ 々゚) 「…………」
動きが止まる。
大人しく髪を切られれば、怪我はしないかもしれない。
だけど、髪を切られるのも嫌。
触られるのも、嫌なのに。
川 々 )(オサム、)
- 322 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:24:55 ID:jKCCduck0
- 風切り音。
从 ー 从「……え?」
少し遅れて、床にハサミが落ちる音。
从;ー;从「い、あぁ……!」
(;l v l) 「巫女さま!」
(; v ) 「あぐっ……!?」
川 ゚ 々゚)「?」
首をなんとか動かして、状況を確かめようとする。
でも、ここからではよくわからない。
川 ゚ 々゚)「!!」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫か?」
川 ゚ 々゚)「オサム、」
じっと見つめられて、なんだかわたしは気恥ずかしかった。
だって、寝間着のままだし、こんな風に見られることってあまりなかったし。
【+ 】ゞ゚)「無事ならいいんだ」
そう言って、オサムはベッドから離れた。
【+ 】ゞ゚)「おい、くるうの枷の鍵は?」
(;l v l) 「素直に言うとでも?」
【+ 】ゞ゚)「そうしたらお前を殺すまでだ」
从'ー';从「やめて、宗男にひどいことしないで。鍵ならわたしが持っていますから、だからくるうさんの髪を切らせてください」
- 323 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:25:57 ID:jKCCduck0
- 【+ 】ゞ゚)「断る。人をさらったうえにあんな異形をぶつけておいて、そんなことを言うのは図々しいにもほどがある」
沈黙。
返す言葉がないらしい。
でもオサムの言ったことは、ごもっともだった。
川 ゚ 々゚)(もし頼まれたとしても、切らせないけど)
かちゃかちゃという音とともに、枷が外される。
久々に自由になった気がした。
【+ 】ゞ゚)「立てるか?」
川 ゚ 々゚)「うん」
ふと。
巫女さんと宗男さんの様子が気になって、わたしはそちらを見た。
从; ー 从「どうしよう、言いつけが守れなかったら神さまに見捨てられてしまうわ」
(; v ) 「巫女さま、」
从; ー 从「これからどうしていけばいいの……」
川 ゚ 々゚)「…………」
矢で手を射抜かれたことなんて、彼らには些細な問題だったらしい。
異様な光景に変わりはないけれど。
【+ 】ゞ゚)「行こう、くるう」
川 ゚ 々゚)「……うん」
- 324 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:27:55 ID:jKCCduck0
- 無事にオサムさんたちと合流することができた私たちは、さっさとこの国から脱出することにした。
川 ゚ 々゚)「よかった、デレが着替え持ってきてくれて」
こんなところ、一刻も早く出ていきたいわ、なんて笑いながらくるうは言うけれど。
その目が笑っていないのは誰の目にも明らかであった。
('A`)「扉、開けるぞー」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
緑青がかった扉が開かれる。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
初めて人を手をかけた。
あれは怪物であったけれど、だけど。
ζ(゚―゚*ζ(でも、たしかに人だった)
あの肉の感触は忘れてはならない。
――第十一階層「信心深い国」 了
- 325 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/23(土) 14:29:02 ID:jKCCduck0
- しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
>>298 第十一階層「信心深い国」
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届いた想い
デレがおっぱいにダイブ
正義の騎士団
- 326 :名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 15:49:09 ID:5TtkIVgQ0
- 乙乙
盲信って怖い
- 327 :名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 17:15:40 ID:lz4qpD6I0
- 乙
まさにくるっとる
- 328 :名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 00:58:01 ID:lX5swIdEO
- ( ;ω;)ひどいお……、訴訟をおこすお
- 329 :名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 01:49:45 ID:6YOCy3Vw0
- 乙乙!
- 330 :名も無きAAのようです:2013/02/26(火) 17:17:31 ID:7W0Otx.w0
- しえ
- 331 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:33:57 ID:0B7VPRSo0
- 兄者へ。
前回の報告から時間が経ってしまったけど、俺は相変わらず元気です。
兄者も変わらず元気でいるか?
ヒートさんとはうまくやっていると俺は信じているけど。
お勤めをしていると時間の感覚がわからなくなるから、二人が今いくつなのか、子どもはもう生まれたのか、そういうことが一切わからない。
少なくとも多少年は取ってるとは思うんだけど。
前書きが長くなってすまん。
実は驚くべきことに、今さっき渋澤おじさんに会ったんだ。
もうとっくの昔に死んだあの人が、俺の目の前に現れたんだ。
まず国の説明をしなくてはいけないな。
十一階層「戦争の国」を後にした俺たちは、薄暗がりの世界にたどり着いた。
住人も家もなにもない。
方向が正しいかどうかもわからずにひたすら歩いていたら、いつの間にかはぐれてしまっていた。
そして気付いたら渋澤おじさんがいたんだ。
「弟は元気か?」と言われた。
だから、国を出るときには元気だったと伝えた。
どうしておじさんがいるのか聞いてみたけど、本人にもわからないようだった。
どこで死んだのかもはっきりしないのだと。
- 332 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:34:48 ID:0B7VPRSo0
- そしてまた気付くと彼は消えていた。
代わりに呆けた表情をしたキュートとデルタ、それからじぃが俺を見つめていた。
たくさんの国を見てきたが、こんな国は初めてだ。
今までの資料にもなかったよな?
つまりこれは、俺が見つけた国だ!
かっこいい名前をつけるぞ。
「常闇の国」なんて、どうだろう?
――第十二階層「常闇の国」にて、弟者から送られてきたバタフライエフェクトより
- 333 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:36:06 ID:0B7VPRSo0
- 唐突だけど、幼い頃の記憶の話をしたい。
私の家には大きな書斎、もとい資料室があった。
そこには歴代のご先祖さまが命を散らして集めた民話がたくさんまとめられていて、私はよくそこで本を読んでいた。
( ´_ゝ`)「デレは、本当に本を読むのが好きだな」
ツンとは正反対なんだな、と笑いながら父は私の頭を撫でていた。
本当に、私はよく本を読んでいたと思う。
好き嫌いは特になかった。
書架の端から端まで全部読んでしまうくらいに。
けれど。
一度だけ、父から手渡された本があった。
それは、父の片割れの弟者さんのバタフライエフェクトを集めたもので。
( ´_ゝ`)「これを、読んでほしいんだ」
と、勝手に開かれたページには、弟者さんが一番最後に送ったバタフライエフェクトが載っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「パパ、これなんてよむの?」
( ´_ゝ`)「とこやみ、だよ。夜みたいにずっと真っ暗なことさ」
それは、なんだかとてもおそろしいもののように思えた。
だけど、弟者さんはそんなことを全然思っていなかったようだった。
だから私も暗闇のことを怖くないように我慢をしていた。
そして、それは今もあまり変わらなかったりする。
- 334 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:36:54 ID:0B7VPRSo0
- ζ(゚ー゚*ζ「!」
('A`)「な、なんだこれ」
ドクオが戸惑ったように声をあげた。
川;゚ 々゚)「まっくらー」
【+ 】ゞ゚)「いや、それでも慣れてくるとうっすら物が見えるから、完全に暗闇ってわけでもないようだぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
薄暗がり。
十二階層。
私は、なにやら話し合っている三人をしり目に、弟者さんの話を思い出していた。
もし、これが「常闇の国」であるのなら。
私は、誰かと会うのだろうか。
それとも、ドクオやくるう、オサムさんが……。
ζ(゚ー゚*ζ「……とりあえず、歩きましょう」
【+ 】ゞ゚)「まぁ、たしかに」
川 ゚ 々゚)「オサム!一緒に手つなご!」
('A`)「仲がよろしいことで」
川 ゚ 々゚)「つなげばいいじゃん」
('A`)「お前なぁ……」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
手をつなぐ、というのは子どもの頃ならよくやったけどね。
少し気恥ずかしい。
でも、
(;'A`)「えっ!?」
ζ(゚ー゚*ζ「なによ」
(;'A`)「い、いや」
たまには、童心にかえってもいいんじゃないのかな、って。
ζ(゚ー゚*ζ(でも恥ずかしいな)
なんともいえないむずがゆさを感じながらも、私たちは薄暗がりのなかを歩き出した。
- 335 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:38:39 ID:0B7VPRSo0
- ('A`)「昔さ」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
('A`)「お前を書斎から引っ張り出して遊びに行くときに、よく手つないだよな」
ζ(゚ー゚*ζ「あー……」
川 ゚ 々゚)「そういえばそうだよねー」
【+ 】ゞ゚)「デレさんは意外とインドア趣味なんですね」
ζ(゚ー゚*ζ「んー、そうかも」
川 ゚ 々゚)「かもじゃなくて絶対そうだって」
('A`)「でも意外だったな、てっきり手つなぐの嫌がるかと思ったのに」
嫌ではない。
手をつなぐのは友達でもできるから。
ζ(゚ー゚*ζ(そう、だよね)
あまり詳しいことはわからないけど。
ζ(゚ー゚*ζ「?」
ふと気付くと、私の左手にはなにもなかった。
ドクオ達の声も。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
空っぽの手を、ぎゅうっと握りしめた。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
歩きながら考える。
私は、誰と会うのだろうと。
もしかしたら会えないかもしれない。
仲間とはぐれたまま、ひとりぼっちで。
ζ(゚ー゚*ζ(弟者さん、よくこんな暗いなかで手紙書けたなぁ)
- 336 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:40:01 ID:0B7VPRSo0
- もしかしたら次の国で書いたのかもしれない。
けれどもその次の国で、彼は。
ζ(゚ー゚*ζ(やめた)
こんな暗闇のなかで、そんなことを考えてしまったら。
私は先に進めなくなる。
歩みを止めてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ(そんな情けないこと、できないわ)
歩く。
歩く。
ひたすら歩く。
どれくらい先に進んだのかもわからずに、歩き続けて。
そして。
ζ(゚ー゚*ζ「!!」
(´<_` )
ぼんやりと、棒立ちしている人が見えた。
父だ。
違う。
似てるけど、違う。
ζ(゚ー゚*ζ「弟者さん……?」
うすぼんやりとした影の、彼はこちらを見た。
(´<_` )「、」
- 337 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:41:08 ID:0B7VPRSo0
- (´<_` )「きみは、お……」
ζ(゚ー゚*ζ「お?」
(´<_` )「……お勤めに、来た子か。俺と同じ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうです、デレです」
返事をしながら、私はまじまじと彼を見つめた。
なんてそっくりなのだろう。
父の生き写しのような人だった。
(´<_` )「……兄者とヒートは、元気か?」
ζ(゚ー゚*ζ「母は既に亡くなりましたが、父は元気でした」
今となっては、わからないけれど。
そんな不必要な言葉を飲み込んで、私は思い出す。
ζ(゚ー゚*ζ「手紙……っ!」
(´<_` )「手紙?」
ごそごそと鞄を漁る。
内ポケットのなかに、父から弟者さんへの手紙が入っているはずなのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「あった!」
少ししわのついたそれを、彼に手渡す。
(´<_` )「…………」
ほんの少し、躊躇ってから弟者さんは手紙を受け取った。
(´<_` )「……デレちゃん」
手紙の封を切りながら、弟者さんが呟くように私を呼んだ。
- 338 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:42:27 ID:0B7VPRSo0
- ζ(゚ー゚*ζ「はい」
(´<_` )「きみのお父さんは、なんて手紙を書いたかわかるかい?」
ζ(゚ー゚*ζ「……いえ、」
もしかして中身を見たと思っているのだろうか?
でも、封はちゃんとされていたはずだし……。
(´<_` )「俺にはわかるよ。恐らくヒートにも」
ζ(゚ー゚*ζ(なにが言いたいの?)
(´<_` )「きみは、お勤めに行くことを望んでここに来たのかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、まぁ……」
ツンは故郷を離れることを嫌がった。
私は故郷を離れてもよかった。
別に故郷がどうでもいいわけではない。
だけど、お勤めに行かなくてはいけないという意識があったから。
(´<_` )「その昔」
取り出した手紙を読まずに、彼は言った。
(´<_` )「俺たちの時代には、どちらがお勤めに行くのかを選ばせてもらえなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
(´<_` )「俺はあいつと違って、のほほんとした性格で、勉強も出来なかった。目新しいことが好きで、なんでもかんでも手を伸ばして物を壊してしまうような人だった」
彼は、手紙を開いた。
視線をそれに落としながら、彼は続ける。
(´<_` )「あいつは勉強も出来て、ダメな俺の尻拭いをよくしていた。物を壊してしまった時には一緒に謝りに行ってくれたこともよくあった」
ζ(゚ー゚*ζ「はぁ、」
(´<_` )「だけど、あいつは新しいものが苦手だった。新品とかそういう意味じゃない、未知のものが苦手だったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
- 339 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:43:12 ID:0B7VPRSo0
- ζ(゚ー゚*ζ「はい」
(´<_` )「きみのお父さんは、なんて手紙を書いたかわかるかい?」
ζ(゚ー゚*ζ「……いえ、」
もしかして中身を見たと思っているのだろうか?
でも、封はちゃんとされていたはずだし……。
(´<_` )「俺にはわかるよ。恐らくヒートにも」
ζ(゚ー゚*ζ(なにが言いたいの?)
(´<_` )「きみは、お勤めに行くことを望んでここに来たのかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、まぁ……」
ツンは故郷を離れることを嫌がった。
私は故郷を離れてもよかった。
別に故郷がどうでもいいわけではない。
だけど、お勤めに行かなくてはいけないという意識があったから。
(´<_` )「その昔」
取り出した手紙を読まずに、彼は言った。
(´<_` )「俺たちの時代には、どちらがお勤めに行くのかを選ばせてもらえなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
(´<_` )「俺はあいつと違って、のほほんとした性格で、勉強も出来なかった。目新しいことが好きで、なんでもかんでも手を伸ばして物を壊してしまうような人だった」
彼は、手紙を開いた。
視線をそれに落としながら、彼は続ける。
(´<_` )「あいつは勉強も出来て、ダメな俺の尻拭いをよくしていた。物を壊してしまった時には一緒に謝りに行ってくれたこともよくあった」
ζ(゚ー゚*ζ「はぁ、」
(´<_` )「だけど、あいつは新しいものが苦手だった。新品とかそういう意味じゃない、未知のものが苦手だったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
- 340 :名も無きAAのようです:2013/02/28(木) 17:43:34 ID:cpTlXunQ0
- しえん!
- 341 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:44:53 ID:0B7VPRSo0
- (´<_` )「でもそれ以外に弱点なんかなかった。そんな完璧に近いあいつと、不完全な俺を見た周りの人間は、お勤めに行くのはどっちが向いていると判断すると思う?」
ζ(゚ー゚*ζ「……私は、」
どちらが正しい、なんて言えないと思う。
塔の中はめちゃくちゃで、常識なんか通じないのだから。
ああ、でも。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたのほうが向いていると思います」
(´<_` )「それはどうして?」
手紙から顔をあげて、そう聞かれた。
ζ(゚ー゚*ζ「……父は、目新しいものが苦手なのでしょう? お勤めをしてわかったけれど、この塔の中は不可解なことがたくさん起きるわ」
(´<_` )「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「そんな環境では、父は狂ってしまうような気がする」
(´<_` )「……そう思ってくれる人が、俺の時にいたらよかったんだけどね」
はは、と笑いながら彼は言う。
(´<_` )「だけど、お勤めに行くことになったのは、しっかり者だけど臆病な弟だった」
ζ(゚ー゚*ζ(弟は、あなたでしょうに)
(´<_` )「弟は泣いていた。外に出ることが怖かったんだ。それに、あいつには愛する人がいたから」
(´<_` )「だけど俺は怖くなかった。それに俺は弟とヒートを大切に思っていたから」
どうしてこんな、言い回しをするのだろう。
どうして、どうして。
これでは、まるで。
ζ(゚―゚*ζ(自分が弟ではないと言っているような、)
(´<_` )「俺たちは嘘をついた」
ζ(゚―゚*ζ「…………」
(´<_` )「真実を知っているのは俺と弟者とヒートだけ。」
ζ( ― *ζ「じゃあ。あなたは、父は、」
( ´_ゝ`)「騙していて悪かったね。だけどそろそろ種明かしをしなければ、弟者は悔やみ続けるだろう」
- 342 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:46:15 ID:0B7VPRSo0
- 輪郭が、揺れる。
ぼんやりとした影が、薄くなる。
( ´_ゝ`)「なぁ、弟者に伝えてくれないか。俺は入れ替わってお勤めに出たことを後悔していないって」
ζ( ― *ζ「……はい」
( ´_ゝ`)「俺はいろんなものに触れられたし、弟を守れたことに誇りを持っているんだ。だから……」
ζ(゚―゚*ζ「…………」
( ´_ゝ`)「だから、俺が勝手に死んでしまったのを、自分が殺したかのように思うのはやめてくれ、って伝えてくれよ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………はい、」
私の言葉に、兄者さんは優しく笑った。
( ´_ゝ`)「この先、気を付けろよ。覚えていないけど、なにか嫌なことがあったような、そんな気がするんだ」
透明な手のひらが、私の頭を撫でる。
けれども温度も感触もなくて。
やっぱりこの人は死んでいるのだと、私は思ったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
( ´_ゝ`)「できればきみの口で伝えてくれ」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい!」
- 343 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:47:18 ID:0B7VPRSo0
- 気付けば私は、また一人になっていた。
ζ(゚ー゚*ζ(常闇の国、)
いったいどうして、こんな国ができたのか。
不思議に思いつつも私はふたたび歩きだした。
しばらくして。
白い点が見えた。
点?
というより、光?
とりあえず、そこを目指そう。
足を更に早める。
ああ、それにしてもドクオたちはどこにいるのだろう。
もしかして置いていかれてしまったのかな。
そんな怖い考えが浮かんでは消え、浮かんでは消え……というのを繰り返していた時だった。
「デレ!」
不意に、手を掴まれた。
じっとりと汗で湿った熱い手。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ?」
('A`)「勝手に手を離してはぐれるなよ……」
離したつもりはなかった。
でも、あの不思議な出来事はきっと私にしかわからないから。
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんね」
ただ一言、そう謝った。
ζ(゚ー゚*ζ「くるうとオサムさんは?」
川 ゚ 々゚)「ちゃんと近くにいるよー」
【+ 】ゞ゚)「暗くて見えないだけかと」
ζ(゚ー゚*ζ「……そっか」
みんながちゃんと揃っている。
それだけで、私は安心した。
- 344 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:48:15 ID:0B7VPRSo0
- ('A`)「先に進もうよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……うん!」
白い点を目指して歩くこと、……何分かはわからないけど。
だいぶ時間が経ってから、そこにたどり着いた。
点の招待は真っ白な、両開きのドアだった。
ドアの上には、ランプがあって、それが光源だったらしい。
ζ(゚ー゚*ζ(ここで兄者さんは手紙を書いたのかな)
そう思いながら、私はいつも使っている一式を取り出した。
そして、今さっき起きたことを簡単に書き留めた。
兄者さんと、父のことは少し悩んだけど、書くのはやめることにした。
ただ一言、「必ず帰るから」と。
その言葉で、手紙を締めくくった。
口で伝えなければ。
だってこれは、兄者さんとの大事な約束だから。
蝶はひらひらと舞う。
その暗闇の中に姿を消したのを見届けて、私はドアを開けた。
ζ(゚ー゚*ζ「絶対に、帰ろうね」
('A`)「……そうだな」
川 ゚ 々゚)「帰ったらオサムとデートする!」
【+ 】ゞ゚)「……まぁ、それもいいか」
思い思いの返事が返ってくる。
それが私の背中を後押しした。
- 345 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:50:20 ID:0B7VPRSo0
- ひらひらと蝶は飛ぶ。
デレたちの歩んだ道とは逆の方向に。
(´レ_` )
常闇のなかに、一人の男が立っていました。
彼に構わず、蝶は目の前を横切ろうとしました。
しかし、男は蝶を掴んでしまいました。
蝶はもがきましたが、やがてそれは紙に戻ってしまいました。
(´レ_` )「…………」
彼は紙の余白を、指でなぞりました。
文字を書くように、なんども。
それから男は、すぅ、と息を吸って。
吐息が、触れた途端に紙はまた蝶に戻りました。
そして何事もなかったかのようにそれは飛んでいきました。
(´レ_` )「…………」
(´レ_` )「……今度こそ、君を助けよう」
( レ_ )「シュー」
第十二階層「常闇の国」 了
- 346 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:51:54 ID:0B7VPRSo0
- しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
>>298 第十一階層「信心深い国」
>>331 第十二階層「常闇の国」
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正義の騎士団
- 347 : ◆R6iwzrfs6k:2013/02/28(木) 17:53:27 ID:0B7VPRSo0
- >>338と>>339は大事なことだから二回言いました
嘘です間違えて重複しただけです
- 348 :名も無きAAのようです:2013/02/28(木) 17:55:17 ID:OfaxnVtQ0
- 乙乙!!
- 349 :名も無きAAのようです:2013/02/28(木) 17:58:40 ID:xFD3WtLE0
- 乙!
兄者…
- 350 :名も無きAAのようです:2013/02/28(木) 20:42:48 ID:h4PM/.lA0
- おつー
- 351 :名も無きAAのようです:2013/02/28(木) 23:28:43 ID:4TR3LHwg0
- ついに弟者と遭遇……!と思ったらうあああああ
切ないな……。乙!
- 352 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:51:22 ID:Qi6qAOSA0
- 断章「出入口の国」
静まり返った書斎。
私を取り囲む背の高い本棚たち。
広さは十分あるはずなのに、息が詰まって仕方がない。
まるで牢獄のよう。
だから子供の頃は嫌いだった。
でも、デレは。
ξ ゚⊿゚)ξ「あ、」
ふらふらと、蝶が私のもとにやってくる。
ξ ゚⊿゚)ξ「……おかえりなさい」
そう言いながら、左手を差し出す。
手に触れた途端、それは紙に戻る。
ξ ゚⊿゚)ξ(……無事でよかった)
そんなことを考えながら、文字を追っていた時だった。
ξ ゚⊿゚)ξ「……え?」
思わず目を疑った。
最後に、こう一言書き添えられていたからだ。
「ツンは元気でしょうか?どうか近況を報告してください」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
本来なら、こんなお願いを聞いてはいけないのだ。
ξ ゚⊿゚)ξ(でも、)
でも、少しでも関わりを持ちたかった。
だっていつも、一方的に送られてくるばかりだったから。
ξ ー⊿ー)ξ(私とデレだけの秘密)
そう言い聞かせながら、私は真新しい紙を手に取った。
- 353 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:53:32 ID:Qi6qAOSA0
-
その娘の行方を、わたし以外に誰も知りません。
――最上階「神さまに愛された娘」
- 354 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:54:29 ID:Qi6qAOSA0
- 扉の先には、真っ白な螺旋階段がひとつ。
ζ(゚ー゚*ζ「国じゃ、ない?」
('A`)「みたいだな」
【+ 】ゞ゚)「随分高さがありますね」
川 >々<)「目がぐるぐるするー」
階段の上のほうを覗きこみながら、オサムさんとくるうが言った。
ζ(゚ー゚*ζ(こんなの初めてだ)
国がないなら、この先にはなにがあるのだろう?
好奇心と不安が胸でくすぶる。
ζ(゚ー゚*ζ「……行こう」
('A`)「おう」
川 ゚ 々゚)「目回したら助けてねーオサム」
【+ 】ゞ゚)「はいはい」
足をかける。
ひんやりとした冷たい音。
石で出来ているらしい。
後がつっかえないようにするためにも、私は早足で階段をのぼった。
ぐるぐる、ぐるぐる。
どんどん地上から遠ざかる。
ぐるぐる、ぐるぐる。
息があがっても、体だけがひたすら動いて。
ぐるぐる、ぐるぐる。
この先に進まなくてはいけないと、何故か強く思って。
- 355 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:55:17 ID:Qi6qAOSA0
- ぐるぐる、ぐるぐる。
lw _ ノv
唐突に、夢を思い出した。
お勤めに行く前に見た、真っ白な女の子の夢を。
ζ(゚ー゚*ζ(彼女は、なにを伝えようとしたの?)
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる…………。
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐる…………。
ぐるぐる、ぐるぐる、………………。
ぐるぐる、ぐる……、………………。
ぐるぐる、…………、………………。
ぐる……、…………、………………。
…………、…………、…………。
…………、…………、……。
…………、…………。
…………、……。
…………。
……。
。
- 356 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:57:02 ID:Qi6qAOSA0
- どのくらいのぼったのかわからない。
気づけば、螺旋の終わりがそこにあった。
そこもやはり真っ白な部屋で、
ζ(゚ー゚*ζ「!」
lw´‐ _‐ノv
赤や橙、紫色の、紙のように薄い花弁が散りばめられた真っ白な寝台の上に、赤黒い髪の女の子が眠っていた。
それが夢に出てきた彼女だとなぜか確信した。
ζ(゚ー゚*ζ「なんで……」
無意識のうちにそう呟いて、もつれる足を叱咤しながら寝台に近付いた。
(;'A`)「デレ、どうしたんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「この子、…………」
なんて説明すればいい?
会ったのはこれが初めてだけど、夢に出てきたことがあるのだと?
でも、それってなんだか、変じゃない?
ζ(゚ー゚*ζ「……なんでもない」
そう返して、私は彼女を揺り起こそうとした時だった。
- 357 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 01:59:08 ID:Qi6qAOSA0
- ノリ, ;^ー^)li「ああっ!」
いつのまにか彼女の近くに、人がいた。
五芒星の髪飾りを二つつけた、美しい金髪の女の人だった。
ノリ, ^ー^)li「起こさないであげて」
私の手を、やんわりと握りしめながらその人は言った。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは……?」
ノリ, ^ー^)li「わたしはジャンヌ。シュールの世話をしています」
川 ゚ 々゚)「しゅーる?」
('A`)「そこで寝てる人のことか?」
ドクオの言葉に、ジャンヌさんはうなずいた。
ノリ, ^ー^)li「あなた達は……この塔がどうして出来たのかを調べに来たのでしょう?」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
【+ 】ゞ゚)「何故それを?」
ノリ, ^ー^)li「今までにも二回、あなた達のような人がここに来たの。何回か説明はしたのだけどねえ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
私は、言い様のない不信感に襲われた。
目の前にいるこの人が、なんとなく苦手で。
ζ(゚ー゚*ζ(でもみんなはそんなことないみたい)
だから私は平静を装って、ジャンヌさんに聞いた。
ζ(゚ー゚*ζ「では、教えてください。なぜ塔が出来たのですか?」
ノリ, ^ー^)li「……長い話になるわねぇ。今となっては遠い昔の話になるわ」
懐かしむように、彼女は語りだした。
- 358 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:00:41 ID:Qi6qAOSA0
- 塔が出来る前、ここは広大な森だったわ。
森の外は山や村があって、もっと先には大きな都市があったの。
わたしはもともと小さな村でまじないごとをしている魔女だった。
まじないといっても大したことはないのよ?
病気や怪我の治りを早くしたり、かわいい女の子達の恋愛成就を願ったりするような、ちっぽけなもの。
わたしは、他人のささやかな幸せのために尽力をつくしていた。
けれども、その異端の力が普通であったのはその村だけのようだったわ。
都市からね、たくさんの人が来たの。
魔女を狩る自称正義の騎士団が。
彼らはこう主張してきた。
人の運命を決めているのは神であり、病気や怪我をするのも必然だ。
死する者を引き留めたり、恋慕の想いをねじ曲げるその力は神に反するものである、と。
そしてその力を手に入れるために、夜魔と姦淫しているのだと。
もちろん、そんなことはしていなかったわ。
わたしは代々受け継がれた知識をもとにまじないごとをしていただけのこと。
わたしは人にとっていいと思われることをしたのだから、そんなことを言われてとても不快だったし悲しかった。
それは村の人たちにも同じだった。
- 359 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:02:39 ID:Qi6qAOSA0
- 村の人たちは、わたしを森に逃がしてくれた。
追っ手から酷い傷を負わされたけど、どうにか逃げおおせたわ。
なぜ、森に逃げたかというとね。
その森にはこんな言い伝えがあったの。
「神様に愛された娘がいて、娘もまた神様を愛していた。 だけど、娘はヒトだから、神様の住う蒼空には 行けなかった。 そこで娘は、神様に誓いを立てた。
「わたしはあなたのためにこの身をささげます。ヒトと交わることなく、千代の刻を過ごしたのなら、わたしはあなたにふさわしい、白くけがれのない女になるでしょう」
そうして娘は、誰もいない森で暮らし始めたという。」
これはけっこう有名な言い伝えでね。
都市のほうにもこれが伝えられていたものだから、騎士達は森に入ることはできなかった。
だってその娘の領域に入ることは、神の領域を侵すことと同義だったから。
わたしはとにかく逃げるのに必死で、気にしていられなかったのだけどね。
でも、別にまじないごとで人を殺したわけではないし、悪いことはしていないはずだから、中に入ってもいいだろうと思っていたの。
- 360 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 02:04:23 ID:1bokjoKo0
- 支援
- 361 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:04:23 ID:Qi6qAOSA0
- ノリ,;^ー^)li(ここまでくれば平気かしら)
出血している左腕を庇いながら、わたしはひたすら歩き続けた。
真夜中に村を飛び出したというのに、いつのまにか空は白んでいました。
ノリ, ^ー^)li(逃げたはいいけど、この先どうしましょう)
そう悩みながら、歩いていた時でした。
ノリ, ^ー^)li「!!」
小屋が見えたのです。
こじんまりとした、本当に小さな家。
誰かいるのかもしれない。
もしかしたら、言い伝えの彼女の家かもしれない。
人がいなくてもいい。
とにかく、体を休めることができるところへ。
わたしは、朦朧とする意識のなかで必死に歩みを進めました。
そして、素朴な木戸をやっとのことでノックして。
わたしは、眠ってしまいました。
- 362 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:06:55 ID:Qi6qAOSA0
- 気付くと、わたしはベッドに寝かされていました。
左腕の傷には、布が巻いてありました。
ノリ, ^ー^)li(ここは、)
lw´‐ _‐ノv「気がつきました?」
ノリ, ^ー^)li「!」
覗きこんできたその人は、とても真っ白な女の子でした。
髪も睫毛も肌も、なにもかもが真っ白で。
まるで色を落としてしまったかのようでした。
lw´‐ _‐ノv「ヒトが来るなんて久々」
そんなことを呟きながら、彼女はわたしに野草のお茶をくれました。
そして、森の外でなにがあったのかを聞かれたので説明しました。
lw´‐ _‐ノv「魔女狩りをねぇ……」
ノリ,;^ー^)li「わたしの村だけではないそうですが……」
lw´‐ _‐ノv「……ヒトをまとめるには、一定数の悪者が必要だし、他人を食い潰して幸せを得る生き物だから」
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「だからといって、あなたが捕まる理由にはならないけれど」
やんわりと微笑みながら、彼女は一本のナイフを取り出しました。
そのナイフを自分の腕にあてがって、すっと引きました。
ノリ,;^ー^)li「え、」
その傷口からこぼれる液体は赤ではなく、白でした。
それどころか、肉すらも色がなくて。
ノリ,;^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「正義の騎士団様は、私を見たらなんて言うのでしょうね」
魔女と呼ばれたヒトよりも、神に愛された私のほうが、よほど異端であるでしょうに、と。
そう言っていたのを、わたしはよく覚えています。
- 363 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:08:08 ID:Qi6qAOSA0
- シュールに助けられたその日から、わたしは彼女の家に住むこととなりました。
でも、はっきりと口で「一緒に住みましょう」と言ったわけではありません。
なしくずしに暮らして、ぼんやりと時間を共有することが多かったような気がします。
彼女とはよくおしゃべりをしていました。
野草の話であったり、まじないの話であったり、わたしの幼少期の話であったり。
彼女は逆に、あまり自分のことを話したがりませんでした。
でも、よくこう言っていました。
lw´‐ _‐ノv「もうすぐ私は神様のもとへ行くでしょう。そうしたら、この家はジャンヌのものよ」
だけどわたしは、家なんかどうでもよかったのです。
ただ、彼女の友達でありたかったのです。
ある日のことでした。
わたしはその日、シュールとお茶をするために野草を摘みに外に出掛けました。
けれどもなかなか目当てのものが見つからなかったものですから、わたしはずいぶん遠くまで探しに行きました。
帰ってきた頃には日が暮れようとしていました。
- 364 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:10:15 ID:Qi6qAOSA0
- ノリ, ^ー^)li「ただいま、シュー」
……部屋のなかは、めちゃくちゃでありました。
嫌な予感がします。
わたしはシューを探しました。
lw _ ノv
彼女は、寝室の隅で体を抱きかかえるように座っていました。
体を覆っているシーツには、真っ赤な血がついていました。
ノリ, ゚―゚)li「……しゅー、?」
lw´‐ _‐ノv「……やられちゃった」
ノリ, ゚―゚)li「え?」
lw´‐ _‐ノv「さっき、たくさん男のヒトが来て、魔女だといわれたの。魔女を匿った仲間だと」
ノリ, ゚―゚)li「…………」
lw _ ノv「よごれちゃった。かみさまに、あえないよ」
申し訳なさと後悔と怒りが混じりあいます。
なんて、卑劣で、自分勝手なのでしょう。
だから、わたしは気付かなかったのです。
lw´‐ _‐ノv「ごめんね、ジャンヌ」
そう言って、彼女が己の舌を噛みきったことに。
ノリ,;゚―゚)li「シュー!!」
口からだらだらと真っ赤な血が垂れます。
だけどどうにもならなかったのです。
彼女は神のもとへ昇ろうとしていました。
けれども、汚れてしまった彼女を神は受け入れてくれませんでした。
- 365 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:12:01 ID:Qi6qAOSA0
- そのあとの記憶は、あやふやです。
ぐらりと地面が激しく揺れて、あまりにも怖かったものですから、わたしはシュールの亡骸を抱き締めていました。
窓の外を覗くと、森や村を巻き込んで、小屋がどんどん高くなるのがわかりました。
そのうち小屋も形を変えて、色を失いました。
lw _ ノv「……………………ぁ、」
たった一言、彼女が言葉を発しました。
ノリ, ゚―゚)li「シュー……?」
名前を呼んだその瞬間でした。
lw _ ノv「ぁあああぁぁあぁぁあああ!!!!」
彼女は、悟ってしまったのです。
神に拒絶されたのだと。
それから気絶するように眠ってしまいました。
それ以来起きることはありません。
汚れた魂を彼女の体に戻すために、彼女は自分の魂を追いかけて、その代償として世界は壊れてしまいました。
この塔は、彼女の体そのもので、たくさんの夢を見ています。
その夢のせいであなた達は死にかけたこともあるでしょう。
あなた達の先祖を殺した夢もあるでしょう。
けれどもどうか、彼女を怒らないでください。
シュールが世界を滅ぼしてしまったのは、もとはといえば騎士団から逃げてしまったわたしのせいです。
それに、彼女はとても優しいのです。
ほんのすこしだけ生き残った人達のために、一番下の階はとても住み心地のいい世界にしたのですから。
そこにいれば、あなた達はそんな目に合うこともなかったのです。
- 366 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:13:39 ID:Qi6qAOSA0
- ζ(゚―゚*ζ「……じゃあ、神様のもとに、彼女は、シュールさんは、いけなかったの……?」
やっとのことで言えた質問に、ジャンヌさんはうなずいた。
ノリ, ^ー^)li「その娘の行方を、わたし以外に誰も知りません。民話の結末なんて、そんなものです」
(;'A`)「というか、どういうことなんだ?俺たちが住んでた世界は偽物だっていうのか?」
ノリ, ^ー^)li「そんなことはありませんよ。ただシューの手によって、少し作り替えられてしまっただけです」
【+ 】ゞ゚)「……今まで旅してきて、俺たちが見たものはすべて彼女の夢なのか?」
ノリ, ^ー^)li「ええ、一番下の階以外はすべて夢です」
川 ゚ 々゚)「……変な夢ばっかりだったよね」
ノリ, ^ー^)li「夢に整合性を求めるのですか?」
川 ゚ 々゚)「…………」
ノリ, ^ー^)li「夢だからこそ、おかしなことがたくさん起きるのでは?」
ζ(゚ー゚*ζ(夢だった、)
なちさんも、ディアッドさんも、キャノさんも、パミィさんも、オワタくんも、二人ぼっちの小人も、ワカさんも、ビロードちゃんも、巫女さんも。
なにもかもが、夢。
- 367 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:14:50 ID:Qi6qAOSA0
- ノリ, ^ー^)li「どうか、彼女とわたしのことはそっとしてくださいな。シューが目覚めてしまったら、この塔はどうなるかわかりません」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ノリ, ^ー^)li「もしかしたら、あなた達の故郷を潰してしまうかもしれません。彼女の心はとても不安定ですから」
ζ(゚ー゚*ζ「……わかりました」
そう言うと、ジャンヌさんは優しい笑みを浮かべながら、ゆっくりお辞儀をした。
ノリ, ^ー^)li「わかっていただけてありがたいわ」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、その前に一つ教えてください」
ノリ, ^ー^)li「なにかしら?」
ζ(゚ー゚*ζ「私には遠く離れた双子の姉へ手紙を届けることができます。それをバタフライエフェクトと呼んでいるのですが、どうしてこんな能力があるのかわかりません」
ノリ, ^ー^)li「……どうしてそうなったのはわからないわ。わたしにもわからないことはたくさんあるから」
ζ(゚ー゚*ζ「そう、ですか」
期待していなかったとはいえ、少し残念であった。
ζ(゚ー゚*ζ「……故郷に帰ったら、この話をしても?」
ノリ, ^ー^)li「ええ、構いません」
そう言いながら彼女はゆるやかに歩き出した。
行く先にはひとつ、ドアがあった。
ノリ, ^ー^)li「どうぞこちらからお帰りください。ただ、この塔のなかのことですから、何が起きるかわかりません。十分お気を付けて」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
無限に続くような真っ白な廊下。
私は、一歩踏み出した。
- 368 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:18:34 ID:Qi6qAOSA0
- こつ、こつ、こつ、と音が響く。
誰も、口をきかない。
今まで会った人が、すべて存在しなかったなんて。
('A`)「……俺たちは、本当に存在してるのかな」
【+ 】ゞ゚)「……さてね」
川 ゚ 々゚)「…………」
こつこつこつ。
こつこつこつ。
どれくらい歩いたのかはわからない。
けれども、廊下に終わりが見えた。
川 ゚ 々゚)「またドアー?」
もう飽きた、というような調子でくるうが言った。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
私は、まったく別のことを考えていた。
(´レ_` )
夢であるならば。
父にそっくりなあの人は?
旅の途中で何度も出会って、助けられて。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「デレ、おい」
ζ(゚ー゚*ζ「あ……。ごめん、どうしたの?」
- 369 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:20:38 ID:Qi6qAOSA0
- ('A`)「いや、ドア開けたんだけどさ」
【+ 】ゞ゚)「あんまりにも暗すぎて、くるうが怖がっているんだ」
オサムさんのいう通りだった。
ドアの先は常闇の国のような薄暗がりがずぅっと続いているようだった。
川 ゚ 々゚)「なんか、すごくやだ……」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
困ったことになった。
この先を進まなければ帰れないし、だけどくるうを置いていくわけにもいかないし。
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、私が先に進んで様子見するよ!」
('A`)「それは危ないだろ!」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だってば、少し進んで戻ってくればいいでしょ?」
川 ゚ 々゚)「やだ、デレいかないで」
('A`)「……俺も行く」
【+ 】ゞ゚)「そのほうがいいかと」
ζ(゚ー゚*ζ「んー……」
結局、話し合いをした結果、私とドクオが試しに百歩進んでみることとなった。
なにかあっても走ればなんとか引き返せる距離だろうし、叫べばなんとか声も聞こえるだろうという理由だった。
ζ(゚ー゚*ζ「くるうはオサムさんと待っててね」
川 ゚ 々゚)「…………」
くるうは、不安そうに私を見つめた。
なんだか本当に子供みたいだった。
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だって」
そうして、私とドクオは暗闇へと足を踏み入れた。
私が先頭で、後ろはドクオに任せることにした。
- 370 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:23:43 ID:Qi6qAOSA0
- 一歩、二歩、三歩。
('A`)「真っ暗だな」
ζ(゚ー゚*ζ「ね」
三十五歩、三十六歩、三十七歩。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば常闇の国で、弟者さんに会った」
('A`)「それも、夢なのかな」
ζ(゚ー゚*ζ「そうかもね」
五十八歩、五十九歩、六十歩。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、そうだとおもいたくないなぁ」
('A`)「……そう、だよな。ごめん」
ζ(゚ー゚*ζ「んーん、いいよ。大丈夫」
八十三歩、八十四歩、八十五歩。
('A`)「なぁ、デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「なに?」
('A`)「……好きだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
- 371 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:25:46 ID:Qi6qAOSA0
- 九十七歩、九十八歩、九十九歩。
ζ(゚ー゚*ζ「わたしには、わかんな……っ!?」
がくん。
つんのめる体。
足場が、ない。
ζ( ― *ζ(なんで!?)
とっさに叫ぶ。
ζ( ― *ζ「来ちゃダメ!!!」
「デレ!?」
ドクオの焦った声。
ああ、でもそれは遠いところから聞こえたから。
落ちずに済んだんだ。
ζ( ー *ζ(よかった、のかな)
みんなを守れた。
私が落ちただけで済んだ。
ああでも、このあとどうなるんだろう。
もしも死んでしまったら。
誰が父に兄者さんの言葉を伝えるの?
――最上階「神さまに愛された娘」 了
- 372 : ◆R6iwzrfs6k:2013/03/04(月) 02:27:44 ID:Qi6qAOSA0
- しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
>>298 第十一階層「信心深い国」
>>331 第十二階層「常闇の国」
>>352 断章「出入口の国」
>>353 最上階「神さまに愛された娘」
お題ストック(募集してません)
デレがおっぱいにダイブ
- 373 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 02:40:45 ID:0hC4oRRg0
- 乙です
- 374 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 02:49:09 ID:1bokjoKo0
- 乙
収束もうすぐかな。終わるのが惜しいな
- 375 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 09:34:20 ID:t./0YUQg0
- 乙!
- 376 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 10:17:33 ID:lTcHyuoA0
- 乙乙
デレがおっぱいにダイブのお題を出したものです
最後まで残ってて感無量
- 377 : ◆q1ehpBDtqc:2013/06/14(金) 08:53:47 ID:zdEdE6s.0
- 絶賛煮詰まり中
来月までには投下したいなぁ、という報告
- 378 :名も無きAAのようです:2013/06/14(金) 18:16:45 ID:MDCyemgo0
- 煮詰まりだと逆の意味になるよ そういう時は行き詰まり
エタらなけりゃ幾らでも待つよ!
- 379 :名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 02:20:20 ID:X.QGY/yo0
- 待ってる
- 380 :名も無きAAのようです:2013/08/31(土) 00:24:49 ID:QGUK15KY0
- 待ってます
- 381 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:24:19 ID:c3X.ALzM0
- 断章「出入口の国」
ξ >⊿<)ξ「きゃあっ!」
羽のざわめき。
風の音。
ξ;゚⊿゚)ξ(な、なに……!?)
嵐のような風が吹き荒れるなかで見えたものは、光輝く無数の蝶だった。
ξ;゚⊿゚)ξ(どういうこと……?)
白い蝶たちは、書斎の壁をすり抜けてどこかへと消えてしまった。
一人取り残された私は、ようやく気付く。
書斎の本棚にしまわれていた、民話たちがすべてなくなっていることに。
- 382 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:27:59 ID:c3X.ALzM0
-
サーガは、終わらない。
――最上階「塔と民話のサーガ」
- 383 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:29:01 ID:c3X.ALzM0
- 耳元で、ごうごうと風を切る音がする。
ζ( ― *ζ(こわい)
こんなことになるなら、ツンに兄者さんのことを教えればよかった。
くるうと遊びたかった。
オサムさんと仲良しになればよかった。
もっとドクオに優しくすればよかった。
ζ( ― *ζ(しにたくない)
……光がひとつ、見えた。
ζ( ― *ζ「?」
猛スピードでやってくるそれは、白い蝶で。
ζ(゚―゚*ζ「バタフライエフェクト……?」
どうして?
誰が?
ζ(゚ー゚*ζ「ツン……っ!」
手を伸ばす。
触れたい。
たとえ死んでしまっても、ツンに触れたくて。
ζ(゚ー゚*ζ「ツン!」
手に触れた瞬間、蝶は千々に分かれた。
ζ(゚ー゚*ζ(ツン、)
ツンの手紙、読みたかった。
- 384 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:29:57 ID:c3X.ALzM0
- 「諦めるにはまだ早いぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「え、?」
がしりと掴まれる手。
暗闇に浮かび上がる顔。
(´レ_` )
ζ(゚ー゚*ζ「あなたはっ……!?」
どうして、ここに?
問いかけようとして、でも言葉が出なかった。
いつのまにか、私は落ちるのをやめて、空中に浮いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あの、」
(´レ_` )「ご覧、デレ。君の味方はなにもあの三人だけではないんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
たくさんの蝶が、列をなしていた。
階段上に、ずらりと。
(´レ_` )「上に戻ろう」
ぐい、と手が引っ張られる。
彼は気にせずに、蝶を踏んづけて上へと上がる。
私もそれに続く。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
振り返ると、私がのぼり終えた後の蝶たちは、紙に戻って下へと落ちていくのが見えた。
ζ(゚ー゚*ζ(あれ、なんの紙なんだろう……)
気になったものの、今はそれどころではなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……あなたは、いったいなんなのですか?」
その人は答えずに、こう言った。
(´レ_` )「君に見せたいものがある」
ζ( ー *ζ「っ!?」
その瞬間、膨大なイメージが頭の中に流れ込んできた。
- 385 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:31:41 ID:c3X.ALzM0
- ζ(゚ー゚*ζ「!」
鬱蒼と繁る森の中。
その中にぽつんと小屋があって……。
ζ(゚ー゚;ζ(あれ、)
私はいつのまにか小さな小屋の前にいた。
瞬きをしたら、次には小屋の扉が開いていた。
私はなんにもしていないのに。
ふわふわと記憶が自然に千切れる、夢のなかにいるみたい。
だけど感覚はいやに生々しい。
気付けば私は小屋の中にいた。
ζ(゚ー゚*ζ(ここは、)
どこだろう。
部屋の中を見回す。
すると、小さなベッドに寝かされたジャンヌさんと、彼女の手を握るシュールさんがいた。
そうして私はやっと気付いた。
これは過去にあったことなのだと。
ノリ, ー )li「うう、」
小さな呻き声と衣擦れの音が部屋に響く。
ノリ, ー )li「ここは、」
視線を彷徨わせるジャンヌさんに、
lw´‐ _‐ノv「気がつきました?」
と、顔を覗き込みながらジャンヌさんは言った。
- 386 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:33:06 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ^ー^)li「!」
ジャンヌさんは慌てて起き上がってシュールさんを睨み付けた。
恐怖、敵意、それから不信感。
だけど彼女は気にせず、ジャンヌさんに飲み物を差し出した。
ジャンヌさんは受け取らなかった。
lw´‐ _‐ノv「この森にヒトが来るなんて久々」
そう言いながら、差し出した飲み物を自分の口許に運んだ。
ノリ, ^ー^)li「……わたし、魔女なのよ? こんなことしてもし騎士団に見つかったらあなたも……」
lw´‐ _‐ノv「彼らが私を捕まえるなんてないわ。私は神に愛された娘だもの。神様を慕うなら、私も慕わなくてはいけないはずよ?」
ノリ, ^ー^)li「…………」
ジャンヌさんはじぃっとシュールさんを見つめた。
言葉の真意をはかることができなかったようだ。
lw´‐ _‐ノv「それにしても、魔女狩りをねぇ……」
ノリ,;^ー^)li「わたしの村だけではないそうですが……」
lw´‐ _‐ノv「……ヒトは、他人を食い潰して幸せを得る生き物だし、一定数の悪者を必要とするからね」
空になったコップを弄びながら、シュールさんは言った。
- 387 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:34:13 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「だけどただのヒトでは迫害する理由にはならないわ。だから近親姦や夜魔との姦淫といった異端の証を他人に押し付けるのよね」
立ち上がって、部屋のすみに置いてあるたらいの中にコップを入れる彼女の背中を眺めながら、忌々しそうに、そして怒りながらジャンヌさんはこう言った。
ノリ, ^ー^)li「近親姦なんか気持ち悪くて出来ないし、夜魔なんか見たこともないわ」
lw´‐ _‐ノv「事実の有無なんか関係ないのよ。ただ自分たちとは違うという意識が欲しいだけ」
戸棚からなにか取り出したシュールさんが振り返る。
そして、横にしたナイフで自分の腕を軽く叩きながらジャンヌさんを見つめた。
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「…………」
沈黙。
ぺたん、ぺたん、と肌を叩く薄刃の音がする。
今、二人はなにを考えているのだろう。
私にはわからなかった。
沈黙を破ったのは、シュールさんだった。
lw´‐ _‐ノv「だからといって、あなたが捕まる理由にはならないけれど」
そして、そのナイフで自分の肌を切り裂いたのだ。
ノリ,;^ー^)li「え、」
ζ(゚ー゚;ζ(っ……)
lw´‐ _‐ノv「正義の騎士団様は、私を見たらなんて言うのでしょうね」
ノリ,;^ー^)li「なに、して……」
呆然とした口調で、ジャンヌさんが呟く。
だって、その傷口からは真っ白な牛乳のような液体が、とろとろたらたらと溢れ出たのだから。
lw´‐ _‐ノv「見てのとおり、私のほうがよっぽど異端でしょう?という証明。まだまだ時期ではないけれど、これから私は死んで、神様のもとに行くのよ」
ζ(゚ー゚*ζ(なんて)
なんて、きれいに笑うのだろう。
シュールさんは、死ぬことをこれっぽちも恐れていないんだ。
- 388 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:35:48 ID:c3X.ALzM0
- (´レ_` )「彼女には、愛するものがあったから」
ζ(゚ー゚*ζ「愛するもの」
ζ(゚ー゚*ζ(愛って、なんなのだろう)
不可解だ。
死ぬというのは、とても怖いことなのに。
だけど、愛のために本当に死ぬことができる人もいるのだと、私は今知った。
イメージの奔流は止まらない。
次に見えたのは小さな木のテーブルで、お茶をしている二人の姿。
おしゃべりをしているようだった。
ノリ, ^ー^)li「どうして魔女って悪者にされちゃうのかしら。わたしはただみんなが幸せになれるようにおまじないをしていただけなのに」
lw´‐ _‐ノv「ヒトは自分にないものは理解できないからね。だからお話のなかの魔女は最後にはみんな死んでしまう」
ノリ, ^ー^)li「あんな性悪な魔女なんてなかなかいないわよ、きっと」
lw´‐ _‐ノv「そもそもそんな意地悪なヒトは魔女でなくても嫌われているさ」
ノリ, ^ー^)li「それもそうよねえ」
けらけらと無邪気な笑い声をあげるジャンヌさんは、心底楽しそうだった。
lw´‐ _‐ノv「そういえば森の外は、今はどうなっているの?」
ノリ, ^ー^)li「小さな村がたくさんあって、その先には大きな都市があるわよ。都市には汽車?という乗り物が最近出来たそうよ」
lw´‐ _‐ノv「便利な世の中になったのね」
ノリ, ^ー^)li「そうね」
lw´‐ _‐ノv「だけど、一向に争いはなくならないのね」
ノリ, ^ー^)li「…………」
lw´‐ _‐ノv「神様に会ったらお願いするの。もっとよりよい世界にしてほしいと」
ノリ, ^ー^)li「……そう」
- 389 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:37:23 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ^ー^)li「……でも、わたしはシューといると幸せだわ」
lw´‐ _‐ノv「……ふふ」
ノリ, ^ー^)li「だってわたしは」
lw´‐ _‐ノv「?」
ノリ, ^ー^)li「今まで与えるばかりで、もらったことなんて数えるくらいしかなかったもの」
ζ(゚ー゚*ζ(なんだかくるうみたい)
くるうはいつだって人のために動いていた。
私が喜ぶから遊びに誘ってくれて、オサムさんが欲しいからたくさん好きと言って。
ζ(゚ー゚*ζ(あの子のために、なにかしたことってあったかな)
なかったような気がする。
今からなにかをあげようとするのは、遅いだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(そもそも帰れるかどうかもわからないのに)
場面がまた変わる。
寝台に眠っているシュールさん。
その傍らにはジャンヌさんがいて。
彼女の髪を撫でながら、なんともいえない視線を浴びせていた。
- 390 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:38:18 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ー )li(シューが好き)
ζ(゚ー゚*ζ(……?)
胸がぎゅうと苦しくなる。
なだれ込むこの気持ちは、ジャンヌさんのもの?
ノリ, ー )li(魔女なのに助けてくれて、優しくしてくれたシューが好き)
どろどろしていて、どきどきもあって。
ノリ, ー )li(シューがいるなら他になにも要らないわ)
ζ( ― *ζ「っ……」
息が詰まる。
ノリ, ー )li(だけど)
苦しい、苦しい。
ノリ, ー )li(シューにとってのわたしは、ただのヒト)
打ちのめされる。
ノリ, ー )li(特別な要素なんてなにもない)
私と彼女は違いすぎる。
ノリ, ー )li(妬ましい。こんなにたくさん愛される神が妬ましい)
真っ黒で、澱んでいて。
ノリ, ー )li「ああ、シュー……」
だけど彼女は美しい。
ノリ, ー )li(あなたをさらってしまいたい。どこまでも遠くまで逃げてしまうの)
ζ( ― ;ζ「はっ、ぁ……」
ノリ, ー )li(いっそのことバラバラにして、鍵をかけてあなたを閉じ込めて)
ぐるぐるとお腹のなかに渦巻く見知らぬ悪意が、私を食い散らしていく。
ζ( ― ;ζ(わたしは、わたしは……!)
ノリ, ー )li「それでもあなたは、神を愛すのでしょうね」
ζ( ー ;ζ「私は、違う!!」
- 391 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:39:14 ID:c3X.ALzM0
- ジャンヌさんが、シュールさんの手を優しく握る。
ノリ, ー )li(なんて冷たい手なの。死んでいるみたい)
最初に見た光景の時のように。
ノリ, ー )li(でもまだ生きている。まだ彼女は神様のもとへは行けない)
だけどその意味は、あまりにも変わりすぎていた。
ノリ, ー )li「シュー、」
愛しています。
と、ジャンヌさんは、シュールさんのくちびるにキスをして。
lw´‐ _‐ノv「ん……、」
その瞬間、雪のように真っ白だったくちびるが、ほんのり薄く色付いて。
ノリ, ー )li(ああ、手が温かい)
じわりじわりと、熱はシュールさんを侵食していった。
まるで毒のように。
lw´‐ _‐ノv「……?」
キョトンとした顔で、彼女はジャンヌさんを見つめた。
無意識にジャンヌさんの手を振りほどいて、唇に指をあてて。
ノリ, ^ー^)li「ねえ、シュー。大好きなの。愛してる。たとえあなたが神のものだからといってわたしは諦めたりなんかしたくないの」
lw´‐ _‐ノv「ジャンヌ、あなた……」
ノリ,ぅ。ー^)li「ごめんね、シュー」
ぽたり、と垂れる雫をぬぐいながら彼女は謝る。
シュールさんは、なにも言わない。
ただ、ゆっくりと、上体を起こして。
lw´‐ _‐ノv「…………ごめんね、私は嫌」
ぶづんっ、と音がした。
半開きの口から赤い血が垂れる。
ノリ,; ― )li「シュー!」
- 392 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:40:20 ID:c3X.ALzM0
- 昇る、昇る。
神様がいる空へ、シュールさんの魂が。
だけどいけない。
彼女は人に触れてしまったから。
一度汚れてしまったら、いけないのだ。
赤くなった白は二度と白に戻れない。
ずるずると地面が隆起する。
人も家も森も村も都市もなにもかもを巻き込んで。
シュールさんの体は自分の魂を追いかける。
ζ(゚ー゚*ζ(地面が枯れていく……)
全てを塔に取り込まれてしまった世界は、私にとって見覚えのある荒野となった。
ζ(゚ー゚*ζ(…………)
塔の最上階から悲鳴が聞こえる。
場面はまた変わる。
顔を上気させたシュールさんが、ジャンヌさんの頬をはたく。
lw´ _ ノv「なんてことをしてくれたの……!あなたのせいで、私は!」
ノリ, ^ー^)li「シュー、好きよ」
lw´ _ ノv「私は、大嫌いよ……!」
ぐずぐずと泣き出すシュールさん。
その体を抱こうとして、ジャンヌさんは突き飛ばされた。
lw´‐ _‐ノv「来ないで」
すっかり様相の変わってしまった小屋の中を歩きながら、彼女はなにかを探していた。
ノリ, ^ー^)li「……刃物なら、窓がなくなる前に捨ててしまったわ」
lw´‐ _‐ノv「っ……!」
ノリ, ^ー^)li「ねえシュー。いい加減に認めなさいな」
慈愛に満ちた奇妙な笑みを浮かべながら、ジャンヌさんは言う。
ノリ, ^ー^)li「あなたは神に見捨てられてしまったの」
lw´‐ _‐ノv「やめて」
- 393 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 13:40:35 ID:2.9/PPWs0
- あああ…
- 394 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:42:12 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ^ー^)li「わたしがあなたにキスをしてしまったから」
lw´ _ ノv「やめて……!」
ノリ, ^ー^)li「たかが同性とのキスで怒って見捨てるなんて、神は無慈悲ね」
ノリ, ^ー^)li「ああでも、シュー」
ノリ, ^ー^)li「あなたがいつまでも神にすがっていても、好きでいても、想いを馳せていても、信仰しても、祈りを捧げても、助けを求めていても、わたしはあなたを愛し続けるわ」
lw´ _ ノv「…………」
ノリ, ^ー^)li「相手を赦すことが、愛しているということよね、きっと」
シュールさんは、ただぼんやりとジャンヌさんを見つめているだけだった。
lw´ _ ノv(ああ、どうしてこんなに歪んでしまったの。私の、大切な友人は……)
ぺたんと座り込んでしまった彼女の体を抱き締めて、ジャンヌさんは囁いた。
ノリ, ^ー^)li「シュー、愛しているわ」
ノリ, ー )li「だけどあなたは神を愛してる」
髪を優しく漉きながら、ジャンヌさんは優しく詩を歌った。
異国の言葉なのかはわからない、だけどひどく聞き取りにくくて、それでいて耳に馴染んで。
lw´ _ ノv「やめて、」
小さく身動ぎをするシュールさんを押さえつけながら、ジャンヌさんは歌い続ける。
- 395 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:44:08 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ^ー^)li(気がふれてしまわないようにおまじないをしてあげましょう。せめて少しでもあなたが幸せなように)
真っ白な床からずるりずるりと蔦が現れて、シュールさんの体に絡み付く。
lw´ _ ノv「やめて、ジャンヌ……」
ノリ, ^ー^)li「大丈夫、夢の中でたくさんあれを愛せばいいよ。現ではわたしがあなたのことを愛すから」
lw; _ ノv「やめて、」
蔦を振りほどこうとシュールさんはもがく。
だけど外れない、それどころか花まで咲いてしまって……。
lw; _ ノv「じゃんぬ……!」
ジャンヌさんを悲しげに見つめていたシュールさんの瞳が、閉じられてしまった。
ノリ, ^ー^)li「おやすみなさい、ポピーに包まれていい夢を」
うっとりとした物言いで、彼女はシュールさんに微笑んだ。
ζ( ー *ζ「っ…………」
それが恐ろしくて、私はゾッとした。
ζ( ー *ζ(これが、本当にあったこと……?)
ジャンヌさんの話と、あまりに違うじゃない。
認めたくない私に、今までの民話を思い出す。
『神様は全知全能の存在だと言われている。』
『神様は何度も仲良くするように言いましたが、 喧嘩はますますひどくなるばかり。』
『そう、笑顔こそ神様が与えてくださった宝。』
『それなら、みんなが弱ければ神様に助けてもらえるんじゃないか?』
『あるところに、なくしものを見つけてくれる神様のようなヒトがおりました。』
『名前って、神様がつけてくれたもので、その中にはその人の大切なものが詰まっている。』
『神様には一瞬でも、ヒトには長く感じる人生だ。』
『きっとあの旅人さんは神様だったのでしょう。』
『争いはなかったのですが、ヒト同士の繋がりがあまりにもなさすぎたものですから、神様はその国を見ても、なんにも面白いとは思えませんでした。』
『それから、神様はたくさん考えて、ヒト達に、 不思議な力を与えました。』
『ある日、その国に神様がやってきました。』
- 396 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:45:45 ID:c3X.ALzM0
- ζ( ー *ζ「ああ、」
思わず、私は声を漏らしてしまった。
いつだってシュールさんは、神様のことを思っていたんだ。
どんなに深く眠っていても、ずっと、ずっと。
そして、あの夢で彼女はこう言っていたのだ。
はやくきて、と。
起こしてほしかったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(私に)
いや、私の祖先たちに。
ずっとそうやって、助けを求めていたんだ。
ζ( ー *ζ「…………」
(´レ_` )「君とお姉さんは、シュールの求める人そのものだ。夢から醒ましてくれる誰かを欲していたんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……じゃあお勤めは、塔の由来を探すことではなく、シュールさんを起こすのが本当の目的なの?」
(´レ_` )「本来ならばね。けれども塔全体にあの魔女の力が加わったせいで歪んでしまったのさ」
ζ(゚ー゚*ζ「バタフライエフェクトは……」
(´レ_` )「シュールを起こすには、少しでも効率をよくすべきだろう?物事はたいして大きくはなくて、すべて小さな積み重ねなのさ」
難しいことを言っているような気がする。
それとも、簡単なことを難しく言っているのか……。
ζ(゚ー゚*ζ(わかんないなぁ、もう)
(´レ_` )「小さな蝶の羽ばたきでも、いつかは竜巻を起こすこともあるんだよ」
- 397 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:48:24 ID:c3X.ALzM0
- 気付けば、蝶の階段は終わりに近付いていた。
ζ( ー *ζ「……どうして、私は人を好きになれないんですか?」
(´レ_` )「……それは、」
ほんの少しの沈黙。
それから、彼は言った。
(´レ_` )「君たち双子はもともと一人の人間が枝分かれして出来た存在だ」
ζ(゚ー゚*ζ「枝分かれ……」
(´レ_` )「一人は次のお勤めに備えて子孫を残し、もう一人はお勤めにいくために、ね」
悪い予感がした。
当たってほしくない答えだった。
だけどそうにちがいない、と私は内心感じていた。
ζ( ー *ζ「じゃあ、わたしは、」
(´レ_` )「愛する人が出来てしまったら、先には進めなくなるだろう?」
これは、彼女なりの優しさだよ。
と、神様はそう言った。
ζ( ー *ζ(ドクオ……)
私はただ手をとられるがままに階段をのぼり終えた。
ドクオの姿はなかった。
ζ( ー *ζ(くるうたちのところへ戻っていったのかしら)
- 398 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:49:19 ID:c3X.ALzM0
- そう思っていた時だった。
タァンッ!
と、暗闇に奇妙な音が響いた。
ζ(゚ー゚*ζ「え……?」
沈黙。
だけど、それがとても不気味で。
わたしはドクオが行ったであろうもと来た道を走り始めた。
ζ(゚ー゚;ζ(いやな予感がする)
さっきの話が本当であるなら。
ジャンヌさんは、シュールさんのことを塔の住人に知られるのが嫌で、その事実を知った私たちを殺そうとするだろう。
今までにもそうやってきたはずだ。
だから、最上階に到達した二組も出入口の国には戻って来なかったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(きっと私のように、落ちていったんだ)
なんて恐ろしい魔女なのだろう。
そして、そこまで彼女を狂わせた愛というのは、もっともっと恐ろしくて、仕方がなかった。
- 399 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:50:46 ID:c3X.ALzM0
- 開け放たれた扉の向こうの真っ暗闇は、怪物の口のようで不気味であった。
川 ゚ 々゚)「遅いね、デレとドクオ」
その暗闇を見て、不安そうに呟くくるうの頭を俺は撫でてやった。
【+ 】ゞ゚)「そうだな」
いくらなんでも遅すぎるよな、なんて言って。
【+ 】ゞ゚)「だけどきっと帰ってくるさ」
目的をちゃんと達成できたのだから。
あとは、帰るだけ。
たったそれだけのことなのに、胸がざわつく。
まだなにかが終わっていない、と。
【+ 】ゞ゚)「…………」
正直いってとても不快だった。
師匠とともに盗人を追いかけていた時の緊張感に似ていたからだ。
【+ 】ゞ゚)(もう全て終わったはずなのに)
あとは、皆で帰るだけだ。
そう言い聞かせていた時だった。
こつ、こつ、こつ。
川 ゚ 々゚)「!」
くるうが俺の服を掴んできた。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「…………」
こつこつ、こつこつ。
人影が見える。
徐々に近付いて。
それは先ほど見たばかりの顔で。
ノリ, ^∀^)li「…………」
それを、笑顔と呼ぶにはあまりにも歪みすぎていた。
思わず背筋がゾッとして。
- 400 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:52:13 ID:c3X.ALzM0
- 【+ 】ゞ゚)「くるう、下がってろ」
川 ゚ 々゚)「え、」
【+ 】ゞ゚)「いいから!」
彼女を庇うように立ち、奴にクロスボウを向けた。
あれは笑っていない。
怒っている。
殺意を込めて、感情に任せて嬲るつもりで。
そしてそれを微塵も隠さずに、こちらにぶつけていた。
【+ 】ゞ゚)(はなから帰す気なんてなかったんだ!)
突然立ち止まった彼女目掛けて引き金を引く。
川;゚ 々゚)「オサム!」
怯えたようなくるうの声。
だけどそれに構っていられなかった。
【+ 】ゞ゚)「っ……!」
ノリ, ∀ )li「…………」
矢は、刺さらなかった。
白い床から突然生えてきた蔦によって、絡めとられてしまったのだ。
ノリ, ∀ )li「ふふっ、」
楽しそうに、しかしイライラしたような笑い声だった。
ノリ, ∀ )li「なんでみんなでいかなかったのかなぁ」
装填したクロスボウを再度彼女に向ける。
ノリ, ∀ )li「 ――」
わからなかった。
異国の言葉のような、鼓膜を溶かすような、不思議な声。
いや、歌か?
【+ 】ゞ゚)「くるう!!」
それが何なのかわからないまま、俺はくるうの体を突き飛ばして。
- 401 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:54:27 ID:c3X.ALzM0
- 【+ 】ゞ )「ぐっ……!?」
瞬間、足を引き裂くような痛みに襲われた。
よく見ると、それはイラクサのようであった。
ただし、本物のイラクサと違って立つことが出来なくなるほどの、尋常ではない痛みに襲われた。
川;゚ 々゚)「オサム!」
【+ 】ゞ゚)「来るな!」
こちらに駆け寄ろうとするくるうをいなす。
川;゚ 々゚)「で、でも」
【+ 】ゞ゚)「いいから!」
俺は、じっとくるうの目を見た。
川 ゚ 々゚)「オサム、」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だから、お前はそこにいて出来ることをしてほしい」
視線を外し、クロスボウに矢をこめる。
そして、射る。
ノリ, ∀ )li「ふふ、」
蔦によって絡めとられたそれに向かって、緩やかに笑いながら彼女は俺に近付いてきた。
もう彼女には、俺しか写っていなかった。
床にへたりこんで震えているくるうなど敵ではなかったのだ。
だから、
ノリ, ∀ )li「 」
川 々 )「オサムから、離れて……っ!!」
放物線を描きながら、落下してきた瓶に気付くのが遅れてしまった。
ノリ, ― )li「なっ……!?」
見上げたときにはもう遅い、目の前までそれはやって来ていた。
とっさにそれを振り払い、
ノリ,; ― )li「ギャッ……!!」
瞬間、硝子の破片が全て彼女の肌を引き裂いた。
硝子自身が、意思を持ったかのように。
グリグリと皮膚を抉り、犯し、侵略し、深々と突き刺さっていく。
- 402 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:56:04 ID:c3X.ALzM0
- ノリ,; ― )li「いたい、いたい、いたい!!」
体を抱き抱えるようにして、床にうずくまった頃には、あの妙な蔦やイラクサは消えていた。
【+ 】ゞ゚)「…………」
カチリ、と金属の擦れる音。
俺は、ビロードさんからもらった銃を彼女の頭に狙いを定めた。
ノリ,; ― )li「ひぐ……、うぅあ、ぁ……」
【+ 】ゞ゚)「これで終わりだ」
トリガーに指をかけて、俺は言った。
ノリ,; ー )li「そうね」
微かに笑いをこらえながら、彼女は言った。
ノリ, ∀ )li「そっちが終わりよ」
【+ 】ゞ゚)「っ……?」
鈍い痛み。
徐々に鋭い痛みを感じてきた。
- 403 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:56:49 ID:c3X.ALzM0
-
【+ 】ゞ )「なっ……?」
腹に、一輪の真っ黒な百合が咲いていた。
ノリ, ∀ )li「あはは」
たちまちそれが枯れてゆく。
種子を撒き散らして、拡がって、花を咲かせ、二輪、三輪、四輪と。
【+ 】ゞ )「っあ゛ぁあ゛あ゛ぁぁあ゛ぁあ゛あ゛
!!!」
川;゚ 々゚)「オサム!!」
来ちゃダメだ。
しかし言葉は喉から出ていかず、苦しげに息を吐き出すばかりであった。
【+ 】; ゞ )「ぁっ、……」
崩れる。
意識が、霞む。
その視界の端で、彼女が、イラクサに足を絡めとられて、大口を開けた、怪物のような植物に、呑み込まれていった。
【+ 】; ゞ )(くるう、)
弾丸は、あらぬ方向へと飛んでいって、俺は意識を手放した。
- 404 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:58:18 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ^ー^)li「ふふ、一人はおしまい」
腹から血を流しながら花を咲かせるオサムを一瞥して、それからわたしに視線を向けて、女は言った。
川;゚ 々゚)「オサム!オサム!」
狭いなかで身動きを取ろうとするが、叶わなかった。
ノリ, ^ー^)li「ずいぶんうるさいハエね」
川;゚ 々゚)「お願いだからオサムを助けて!わたしはどうなってもいいから!!」
ノリ, ^ー^)li「どっちから先に養分にしてあげようかなぁ?」
川;゚ 々゚)「…………」
狂ってる。
この人は、完全におかしい。
川;゚ 々゚)(もしかして)
もう、デレも、ドクオも、死んで……。
川;々;)「……うぁ、」
わたしのせい?
みんなで一緒にいれば、二人を助けられた?
ここにいなければ、オサムは怪我しなかった?
ノリ, ^ー^)li「あらあら泣いちゃった。お水がもったいないわ」
川;々;)「あ、ぁ……」
ノリ, ^ー^)li「じゃあ、その両目にお花を一つずつ咲かせてあげようかしら」
女が、左手を上げて、わたしの目を指差す。
川;々;)(みんな)
ごめんなさい。
- 405 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 13:59:50 ID:c3X.ALzM0
-
(# A )「ああああ!!!」
怒声。
不意をうたれて、女がわたしから視線を外す。
黒い人影は一瞬で間を詰めて。
ノリ, ^ー^)li「っ……?」
赤い花が散った。
べちゃりと濡れた、重みのある音。
人差し指をたてた左手が床に落ちたのだ。
ノリ, ; ー )li「ぎっ……!?ぃ……ぁあ!!」
- 406 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:01:10 ID:c3X.ALzM0
- 床へと崩れ落ちる体。
それをじっと、彼は見つめていた。
川 ゚ 々゚)「ドク、オ?」
呟くように名前を呼ぶと、ドクオがちらりとわたしを見た。
だけどすぐに視線を戻し、女の頭を蹴った。
( A )「お前のせいだ」
ノリ,; ー )li「ぐっ……」
('A`)「デレを返せよ!」
何度も何度も蹴る。
女の丸まった体が揺れる。
蹴られているせいだけではない。
彼女は笑っていた。
ノリ, ー)li「彼女を助けられなかったのは、あんたのせい」
('A`)「っ……」
ノリ, ^∀^)li「見捨てちゃったんでしょう?自分かわいさに」
('A`)「違う」
ノリ, ^∀^)li「なんで手を離しちゃったの?」
('A`)「それは、」
ノリ, ^∀^)li「ね、どうしていつも守られてるのかな」
( A )「黙れ」
ノリ, ^∀^)li「あの娘さえ生きてればいい、自分なんか死んでもいいって誓ったのに」
(# A )「黙れって言ってるだろ!!」
斧が振り上げられた瞬間、わたしは気付く。
イラクサが、ドクオの体にしゅるしゅると伸びていくことに。
川 ゚ 々゚)「逃げて!!」
そう叫んだときには、遅かった。
- 407 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:02:37 ID:c3X.ALzM0
- 光が見えてきた。
念のため、フレイルを装備して部屋に足を踏み入れる。
ζ(゚ー゚*ζ「!!」
ノリ, ー )li「…………」
まず目に入ったのは、イラクサでがんじがらめに縛られたドクオの姿。
そのそばに、泣いているくるうが檻のような花のなかにいて、お腹から血を流しているオサムさんがいた。
左腕からだらだらと血を流しながら笑っているジャンヌさんが、虚ろな目で私を見た。
ノリ, ー )li「あら、生きてたの」
忌々しげに言われたその一言に、ドクオとくるうが驚いたように私たちを見た。
川 ゚ 々゚)「デレ!」
(;'A`)「デレ!?」
安心したような顔をするくるうと驚いた表情を浮かべるドクオを少し見つめて、それからジャンヌさんへと視線を移した。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、ずっと嘘をついていたんですか?」
ノリ, ^ー^)li「…………」
彼女は、なにも言わない。
ただ、その笑みをさらに深めて、わたしをにらんだ。
ノリ, ^ー^)li「お前さえいなければ、ここに余計なものを運んで来なかったのに」
それは、恐らく私の傍らにいる神様にも向かって言っているのだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、どうして好きなのに、愛していたのに、シュールさんにひどいことをしたの?どうして、兄者さんを殺したの?」
ノリ, ^ー^)li「恋したことも愛したこともないやつに話したって無駄よ。あんたには人の心が分からない」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、分からないわ。どうしてドクオが私を守ろうとするのか、くるうがオサムさんを大事にするのか、ぜんっぜん分からない」
だけど、と私は区切って深呼吸をする。
本当は怖い。
自分は間違っているんじゃないかと怯えている。
(´レ_` )「大丈夫、君はお勤めでたくさんの世界を見た。二人ぼっちで世界を閉ざして引きこもっていた魔女よりたくさんのものを見てきたはずだ」
素直に言葉にしてごらん。
神様に後押しされ、ジャンヌさんを真っ直ぐ見据えて言い切った。
- 408 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:05:47 ID:c3X.ALzM0
- ζ(゚ー゚*ζ「愛は、お互いに想いあうから、初めて成立するんだよ」
ノリ, ^ー^)li「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「あなたのしたことでシュールさんは喜んでくれましたか?」
ノリ, ー )li「……………………ふふっ」
微かな笑い声が色のない部屋に反響する。
そして、
ノリ, ー )li「死ねよ」
(´レ_` )「デレ!」
目にも止まらぬ早さでイラクサがわたしを捕らえようとするのと、神様が前に躍り出たのは同時だった。
ζ(゚ー゚*ζ「神様!」
(´レ_` )「もう言葉は通じないと思え」
ギチギチと絡みつくそれを引き剥がしながら、神様がそう言った。
それは、つまり。
ζ(゚ー゚*ζ(殺すの?)
それ以外に方法はないんだろうか、と考えようとして、止めた。
大事な友達が、みんな倒れている。
彼女に殺されかけたから。
そんな、躊躇いもなく人を手にかけられる人は、同じ方法以外で止められるとは思えなかった。
ζ( ー *ζ「…………」
姿勢を落として、走る。
床に落ちていた斧を拾いつつ、更に駆ける。
- 409 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:06:59 ID:c3X.ALzM0
-
ノリ, ー )li「…………」
イラクサは、私の跡を追わない。
左手を庇い、肩で息をしながら立つのもやっとという状態の彼女は、先程の魔法が精一杯の攻撃だったのかもしれない。
くるう。
オサムさん。
ドクオ。
みんなを助けて、みんなで故郷に帰るんだ。
ζ(゚ー゚*ζ(ここでは死なない!)
距離を詰めた私は力任せに斧を振る。
とてつもなく重いと感じたそれは遠心力を身につけ、凄まじい勢いでジャンヌさんの首を刈ろうとした。
ノリ, ー )li「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
斧が、急速に成長した太い蔦によって阻まれる。
引き抜こうとしても抜けない。
ζ(゚ー゚;ζ「っ!」
目の前にニュッと延びる右手をとっさに交わし、同時に斧が抜けた。
その勢いで後ろへ一歩半下がる。
とたんに壺状の植物が大口を開けてわたしのいた場所を捕らえた。
- 410 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:08:22 ID:c3X.ALzM0
- フレイルを振り回し、それをなぎ倒す。
びちゃびちゃと不愉快な音を出しながら、いやに甘ったるい匂いのする液を振り撒き、壺は枯れた。
ノリ, ∀ )li「ふふ、」
彼女の目の前には、ぬらぬらと光る液体の池が出来上がった
よく見ると床から気泡が出ていた。
ζ(゚ー゚;ζ「え……」
溶けてる?
その事に気付いて、サーっと血の気が引いた。
ζ(゚ー゚*ζ「!?」
しかも、毒液が意思を持ったかのような動きを始めた。
ゆらゆらと揺らぎ、盛り上がり、人形をとり、そして。
一瞬で間合いを詰められた。
毒液まみれの手がわたしに触れようとする。
斧の刃でそれを切り落とす。
ジワリと鉄が溶ける音。
パシャリと腕が落ち、飛沫がわたしの服を汚す。
ζ(゚ー゚*ζ(服の上で助かった)
そう思ったのもつかの間だった。
視界が反転し、白い天井を仰いでいた。
飛沫を踏んでしまったせいで靴のそこがすっかりダメになり、滑ったのだ。
床に頭を打ち、意識が揺れた。
足を踏み潰されかけたので避ける。
びちゃり、と飛んだ飛沫がズボンに穴を開けた。
なんとか起き上がり、距離を取ってフレイルでそいつを叩き潰した。
頭が弱点だったらしく、ふたたび動き出すことはなかった。
だけど。
('A`)「デレ!逃げろ!!」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
- 411 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:09:41 ID:c3X.ALzM0
- …………。
じくん、と棘が刺さる。
ζ( ー *ζ「いっ……!?」
ノリ, ∀ )li「ねえ、忘れてない?」
ジャンヌさんの手から延びるイラクサが、わたしの足を絡めとったのだ。
ζ(゚ー゚;ζ「放して!」
ノリ, ∀ )li「やあよ、ふふ」
('A`)「デレ……、ぁぐっ!?」
振り返ると、ドクオの足の中からイラクサが生えていた。
筋肉をずたずたに引き裂くように、痛々しく。
(´レ_` )「くっ……」
神様はイラクサだけでなく、傷口の全てから緑色の小さな新芽がずるずると生えてきていて。
川 々 )「いやぁぁぁ!!!!」
くるうは、その様を見て絶叫していた。
ζ( ー ;ζ「悪趣味……!」
ノリ, ∀ )li「あなたには分からないでしょう。綺麗な愛なんてないの、愛するものがある人は多かれ少なかれ他人を蹴落とすことしか頭にないのよ?」
ゆっくりと、彼女が近付いてくる。
よたよたと、おぼつかない足取りで。
ノリ, ∀ )li「あなたの口に冬虫夏草を植えてあげるわ。間抜けに口をあけて時が止まったかのような死に方をプレゼントしてあげる」
ζ( ー *ζ「っ……」
ノリ, ∀ )li「ここまで悪足掻きされたの初めてだもの。わたしなりの、敬意だから遠慮しないでね」
口を閉じようとしても、どこからか生えてきた蔦が私の口をこじ開ける。
ζ( Q ;ζ「ぁ、あ、ぁ、」
ノリ, ∀ )li「じゃあ、さようなら」
- 412 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:12:03 ID:c3X.ALzM0
- 右手が徐々に近付いてくる。
死ぬ。
死んじゃう。
やだ。
ζ( Q ;ζ(たすけて)
必死に身動ぎした瞬間、破れたポケットから、ナチさんからもらった時計が地面に落ちた。
かちん、と白い床にぶつかり。
かちり、と銀色の蓋が開いて。
カチ、コチ、カチ、コチ……。
秒針の音。
家にあった時計と同じ音色が響く。
懐かしい、暖かい。
その回想は、時が止まったようにいつまでも続いて。
ζ( Q ;ζ「……?」
ジャンヌさんは、動かない。
不気味な笑みを湛えたまま、凍っていた。
不思議に思った私は、口を閉じようとした。
するとこじ開けていた蔦がバリバリと、氷を砕くように崩れていった。
体に巻き付いていたイラクサも同じだった。
ζ(゚ー゚;ζ(どうなってるの?)
口のなかに入ってしまった蔦の残りを吐き出しながら、フレイルを拾った。
ζ(゚ー゚*ζ(ジャンヌさん)
ごめんなさい。
思いきり振りかぶり、目をつむり、脳天めがけてそれを降ろして。
- 413 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:13:03 ID:c3X.ALzM0
-
陶磁器が割れるような音がした。
カチ、コチ、カチ、コチ、……カチリ。
「っあああ゛ぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁ!!!!」
耳をつんざくような悲鳴。
薄目を開けると、地に伏せた彼女が頭を押さえながら痙攣していた。
ζ( ー ;ζ「あ、ぁ……」
殺してしまった。
私が殺した。
死んでしまう。
「ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ちくしょうちくしょうちくしょうぅぅ゛」
視線を逸らすことができない。
だけど、だけどあまりにも怖かったから、横目でなちさんからもらった時計を見た。
時計は、音もたてずに溶けていた。
しゅわしゅわと、空気と同化するように。
- 414 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:14:19 ID:c3X.ALzM0
- ('A`)「デレ!」
ドクオに呼ばれ、振り返る。
気付けば、あの恐ろしい悲鳴は止んでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ……」
足を引きずりながら、彼は必死に私に近付こうとする。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ、いいよ、歩かなくて」
('A`)「だめだ、俺がしたいんだ」
ずるずると引きずる足と血のあとがあまりにも痛々しくて、私は少しだけ駆け寄って、彼の体を抱き締めた。
('A`)「ごめん、デレ。情けないや」
ζ(゚ー゚*ζ「バカ、私は平気だってば」
だけどなぜかむしょうに安心して、腰が抜けてしまって、ゆっくりと地面に座り込んでしまった。
('A`)「……怖かったんだな」
ζ( ー *ζ「平気」
('A`)「平気じゃない、足震えてるし」
ζ(゚ー゚*ζ「だから大丈夫だって」
ああ、生きている。
みんな生きている。
私は安心していた。
すっかり油断していた。
神様もくるうも、気絶していたし、なんにも動く気配がないから助かったと思っていた。
だから
ノリ, ー )li「ゆるさない」
音もなく、立ち上がったそれに気付かなかった。
- 415 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:15:36 ID:c3X.ALzM0
-
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
真っ赤に染まったジャンヌさんが、大木のように背後に立ち塞がっていて。
('A`)「デレ!」
ドクオがとっさに私の前におどり出る。
すさまじい早さで生長した枝のような指がドクオに迫る。
ζ(゚ー゚*ζ「ドク……」
「動くな二人とも」
瞬間、炸裂音が響いた。
ノリ, ー )li「グギッ……」
胴体だったあたりを弾丸が貫く。
体が震える。
枝がざわめく。
ドクオが駆ける。
駆けるというには、あまりにもぎこちない動きだけど。
それでも、床に落ちていた斧を拾って。
('A`)「はぁぁ!!」
ガツン、と幹に突き立てた。
ノリ, ー )li「キィアアァアァ!!!」
甲高い叫び声に思わず頭が痛くなった。
「ドクオ逃げて!」
幼馴染みの声と同時に包帯が投げつけられる。
畳まれていたそれは、彼女にぶつかった瞬間、蛇のように絡み付いて炎を纏った。
ノリ, ー )li「アァア゛ア゛……」
木が燃えるにおいがする、肉の焦げるにおいがする。
思わず口元を押さえる。
- 416 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:16:41 ID:c3X.ALzM0
- ノリ, ー )li「ァ、ァ、ァ、……シュウ、シュウ、」
シュール。
死の間際まで彼女はシュールさんのことを想っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(怖い)
人の気持ちが分からない私は、そうとしか感じられなかった。
(´レ_` )「やれやれまったく」
全身から血を流しながら、木に近付く神様は呆れたように呟いた。
(´レ_` )「そこまで人を愛せたのに、どうして君は優しくなれなかったのだろうね」
神様が火に触れると、それはますます勢いを増していった。
断末魔。
全てを焼き尽くす熱。
強まる悪臭。
火炙りにされた魔女。
それは、とてもおぞましい光景だった。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
それでも私は、目を開いてそれを見つめていた。
ζ(゚ー゚*ζ(ジャンヌさん)
彼女は、どこで間違えてしまったんだろう。
ζ(゚ー゚*ζ(最初から、出会わなければよかったのかな)
崩れ落ちていく体を見つめながら、私は考えた。
- 417 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:18:20 ID:c3X.ALzM0
- ボロボロになった私たちの体の怪我は瞬時に治ってしまった。
神様が、魔療とはまったく違う不思議な力を使って治してくれたのだ。
彼の手に傷口が触れると、それがずるりと抜け落ちてどこかに消えてしまう、触れたところはきれいさっぱり、元通りになってしまっていた。
(´レ_` )「すまなかったね、無茶をさせて。魔女の力が及んでいるとどうしても思うように使えなくてね」
その言葉を少し複雑な気持ちで私は受け取った。
川 ゚ 々゚)「オサム、痛くない?」
【+ 】ゞ゚)「俺はいいんだが、くるうのほうこそ大丈夫か?」
('A`)「跡もなにも残ってない……」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
他のみんなはそうでもなかったらしいので、私はそのまま黙っていた。
(´レ_` )「さて」
と、神様は煤で汚れてしまった扉を見つめた。
(´レ_` )「そろそろ彼女を起こしに行かないと」
君たちも、来るだろう?
その言葉に私は頷いた。
- 418 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:21:27 ID:c3X.ALzM0
- (´レ_` )「シュール」
真っ白な寝台で眠るその人に、神様は優しく声をかけた。
寝台を埋め尽くしているポピーの花をむしりとりながら、神様は呼び続ける。
からからに枯れてしまったそれは、乾いた音とともに床に落ちた。
lw´‐ _‐ノv「…………」
(´レ_` )「シュール、起きておくれ」
lw´‐ _‐ノv「……………………」
ζ(゚ー゚*ζ(シュールさん)
どうか早く起きてください。
神様は、ずっとずっとあなたに会いたがっていたんです。
あなただって、会いたかったでしょう?
無意識に祈りながら、私はじっあとシュールさんを見つめていた。
lw´‐ _‐ノv「………………………………、ぁ」
小さな声が漏れた。
本当にわずかな声。
みんなが固唾を飲んで見守っていなかったら、かき消えてしまったかもしれなかった。
(´レ_` )「シュール?」
lw´‐ _‐ノv「ぁ……、……あな、た?」
ゆっくりと、言葉が吐き出される。
(´レ_` )「そうだよ、シュール」
- 419 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:22:21 ID:c3X.ALzM0
- 眠そうな目が二回か三回、瞼によって磨かれる。
そのうち瞼が完全に目を覆ってしまったけど、彼女はちゃんと起きているようだった。
lw´‐ _‐ノv「……ずいぶん、姿を、変えたのですね」
(´レ_` )「最初は蝶になってこの塔に入ろうとしたのだけど、なかなか彼らが手紙を送ってくれなくてね」
ちらりと私のほうを見て、神様は言った。
(´レ_` )「人形をとろうとしたらよそ者を受け付けないように魔法をかけられていたから、塔から落ちてばらばらに砕けていた勤めの者の体を借りたのだ」
lw´‐ _‐ノv「そう」
体を起こそうともがいて、しかし力がうまく入らないのかそのまま横たわっているシュールさんの体を、神様が抱き抱えた。
(´レ_` )「ご覧、シュール。彼らが君を助けてくれたのだ」
再び目が見開かれる。
そして一人一人の顔を記憶するかのようにまじまじと見つめていた。
lw´‐ _‐ノv「……神様」
(´レ_` )「ん?」
lw´‐ _‐ノv「夢を見ました。不思議な夢でした」
(´レ_` )「どんな夢なのか聞かせておくれ」
lw´‐ _‐ノv「時計の夢でした」
(´レ_` )「時計」
ぽつりぽつりと吐き出される彼女の言葉を、神様は拾う。
lw´‐ _‐ノv「最初はなにもなかったのです。しかしある日を境に動かない懐中時計が私のそばに現れました」
(´レ_` )「…………」
lw´‐ _‐ノv「だけど、それが動かないことに疑問を抱きませんでした、動くのには早かったのです」
- 420 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:23:34 ID:c3X.ALzM0
- (´レ_` )「うん」
lw´‐ _‐ノv「毎日毎日あなたのことを考えながら、それを眺めていて」
すぅ、と息を吸う音。
一呼吸おいて、言葉が響く。
lw´‐ _‐ノv「動かさなくてはいけないと思いました」
(´レ_` )「どうして?」
lw´‐ _‐ノv「時計が動かない限り、あなたに会えないと思ったのです」
(´レ_` )「そうか、シュー。君は、彼女達を助けてくれたのだね」
その言葉に、私以外のみんなは不思議そうな顔をしていた。
なちさんの時計が動いたのは、シュールさんの夢と関係があるのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ(そもそも、なちさんもシュールさんの夢の一部だけど)
今まで私が見てきた人たちはみんな夢の産物だったのだ。
本当に、信じられないことだけど。
そしてやっと、ここに来てあの時計が役に立ってどうにか行き長らえたのだけども。
ζ(゚ー゚*ζ(本当に助けてくれたのかな)
それか、ここまで救いの手が伸びているのになかなか来ないものだから、しびれをきらしたのかもしれない。
いずれにせよ、私はあの時計を持っていなければ今ごろ変な草木になってしまっていただろう。
ζ(゚ー゚*ζ(怖い怖い)
冷や汗を流していると、シュールさんがとても眠そうにあくびをした。
- 421 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:24:48 ID:c3X.ALzM0
- lw´‐ _‐ノv「……神様」
(´レ_` )「シュー?」
lw´‐ _‐ノv「とても、ねむくて」
(´レ_` )「寝てしまいなさい。あとのことは任せてくれればいい」
髪を梳きながら、優しく寝かしつけるように囁いて
lw´‐ _‐ノv「……かみさま、」
(´レ_` )「うん」
lw´‐ _‐ノv「つれていって」
すがるようなその声に、
(´レ_` )「勿論だよ、シュー」
と返されて
lw´‐ _‐ノv「……よかった」
彼女の息が、止まった。
('A`)「……死んだ、のか?」
(´レ_` )「いいや、ずっと一緒だ」
心なしか口角をあげながら、神様は私たちに告げた。
(´レ_` )「これでお勤めは終わりだ。御苦労様」
川 ゚ 々゚)「お家に帰れるの?」
(´レ_` )「責任を持って君たちを送り届けよう。しかしひとつ約束をしてほしい」
【+ 】ゞ゚)「約束?」
訝しげな表情をするオサムさんを見据え、神様は答える。
- 422 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:26:28 ID:c3X.ALzM0
- (´レ_` )「君たちを送り届けた後に、塔の外の世界を元通りにする。荒れ地を整え、動物や植物を繁殖させ、再び人間が暮らせるようにする」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
(´レ_` )「それができるまでは塔から出ないでほしい」
川 ゚ 々゚)「でもでも、外にでないと様子が分からないよ?」
(´レ_` )「大丈夫、世界がもとに戻ったら、ユキを降らせる」
('A`)「ユキ?」
【+ 】ゞ゚)「なんですか、それは?」
聞いたことのない言葉だった。
すると神様は少し困ったような顔をして、
(´レ_` )「そうか、ユキを知らないか」
と呟いた。
(´レ_` )「ユキは、真っ白な粒でとても冷たくて、触ると消えてしまう」
聞いているだけだと、なんだかけったいな物のように思えた。
やっぱり一度もそんなものは見たことも聞いたこともないし、きっとツンも父も、そのまたずっと昔にいた人もユキなんて知らないような気がした。
(´レ_` )「塔ができる前の世界では、時々降っていたのだけどね」
私の考えに気付いたのか、苦笑いしながらそう言われた。
(´レ_` )「今言ったことを、みんなに伝えて欲しいんだ。今を生きている人だけでなく、これから生まれる人にもね」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
必ず伝えよう。
塔の出来事も、魔女の愛も、神様の約束も。
それから、娘の、巫女の結末も。
(´レ_` )「さぁ、目を瞑って」
ζ(‐ー‐*ζ「…………」
皮膚一枚を隔てた薄暗がり。
それはいつのまにか真っ暗闇に変わった。
風を切る音がする。
ひゅうひゅう、ごうごう、と。
だけど怖くない、恐ろしくない。
- 423 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:28:23 ID:c3X.ALzM0
- だってみんながいる。
故郷に帰れる。
ツンに、会える。
「ところでデレ」
ζ(‐ー‐*ζ「?」
「もう君は、片羽の蝶である必要はない。君は、普通の人であるべきだ」
それは、どういう意味ですか?
そう問おうとして、私の意識は黒に飲まれていった。
……若草の匂いが溶け込んだ、優しい風を感じる。
春の風だ。
少し涼しくて、とても懐かしい。
ζ(゚ー゚*ζ「ん……」
頬を撫でる草の感触がくすぐったくて、私は起き上がった。
家々から少し離れたところにある、丘だった。
私以外のみんなはまだ眠っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(帰ってこれた)
故郷に。
出入口の国に。
それが嬉しくて、胸が暖かくなってざわめきが大きくなって、私は言葉にならないなにかを叫びながら笑った。
- 424 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:31:01 ID:c3X.ALzM0
- ツン。
ツンに、会いたい。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ!くるう!オサムさん!」
冷えかけている体を揺さぶり私はみんなをたたき起こした。
('A`)「んん……デレ……?」
川 ‐々‐)「まだねむいよう……」
【+ 】ゞ゚)「くるう、起きなさい」
こんな時になっても、みんなはいつも通りだ。
目に見えて浮かれているのは私だけのようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「早く!早く帰ろ!」
(;'A`)「うおっ!?」
ドクオの手を取って、私は走り出した。
なぜだかはわからない。
だけど、くるうはきっとオサムさんと一緒の方がいいだろう。
もし彼女のほうが起きるのが早かったら、絶対にオサムさんを真っ先に起こしていたに違いない。
だから。
ζ( ー *ζ(なんとなく顔が熱いのは気のせいだ)
言い聞かせるように、胸のなかで呟いた。
- 425 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:33:37 ID:c3X.ALzM0
- 家のデッキで、安楽椅子に座って誰かが編み物をしていた。
ξ ゚ー゚)ξ「…………」
少し大人びた表情の彼女は、昔と変わらないはずなのにどこか違って見えた。
私より幾分か、年を取っていそうな気がして、足が止まりかける。
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
('A`)「デレ」
ドクオの声に、思わず手をきゅっと握る。
暖かい。
('A`)「行こうよ」
だけど、と言いかけて私は考え直す。
たしかに私とツンの間で流れていた時間は違ったのかもしれない。
ζ(゚ー゚*ζ(だから、なに?)
昔のままでもいいじゃないか。
私はあの時間のなかでしか年を取ることができなかったのだから。
('A`)「…………」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ゆっくりと歩き出す。
いつのまにか手をほどいてしまっていた。
どちらから手放したのかは分からない。
ドクオは私の手を求めなかったし、私もドクオの手を取らなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」
叫んだ瞬間、ツンは手を止めて顔を上げた。
ξ ゚⊿゚)ξ「…………」
- 426 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:35:13 ID:c3X.ALzM0
- 信じられない、というような表情で私を見つめて、彼女は立ち上がった。
緩慢な、歩くような早さでこちらに駆け寄ってくる。
ζ(゚ー゚*ζ(体の調子が悪いのかな?)
少し心配になりながら、私は走った。
ξ ゚⊿゚)ξ「デレ……!」
ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん!」
大きく広げられる腕。
思いきり、胸のなかに飛び込んだ。
……心なしかツンの胸が膨らんでいるような気がした。
そして、お腹も。
ξ ゚⊿゚)ξ「……あんた今失礼なこと考えたでしょ」
ζ(゚ー゚;ζ「気のせい気のせい」
笑って誤魔化す。
ツンはそれ以上なにも言わなかった。
ただ、私を抱き締めたまま、心底嬉しそうに
ξ ー⊿ー)ξ「おかえりなさい」
と、言った。
ζ(゚ー゚*ζ「……ただいま、お姉ちゃん」
そう言えたことが、とても嬉しかった。
- 427 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:36:44 ID:c3X.ALzM0
- ――パタン、と本を閉じる。
(゚A゚* )「ふー……」
ため息をひとつ吐いて、椅子から立ち上がる。
ずらりと本が収まっている書架に向き合い、これがどこにしまわれていたのかを探した。
(゚A゚* )(まったくあいつは、出しっぱなしにして。どうしようもないんだから)
心の中でごちながら、あたしはかなり上のほうの段を眺めた。
(゚A゚* )「お、あった」
はしごを使って登らなくてはいけないような場所に、ちょうど一冊入るようなスペースがあった。
恐らくそこに入っていたのだろう。
少し離れた場所に放置してあったはしごを持ってきて、書架に掛け、本を小脇に抱えて登る。
ギシギシと木の軋む音が心臓に悪い。
かなり年季の入ったものだから、正直使いたくはないのだけど、材料となる木が最近軒並み腐り始めているから作ってもらうこともできないのであった。
(゚A゚* )「…………」
しっかりと片手ではしごに掴まりながら、もう片方の手で本を掴んで隙間に押し込める。
(゚A゚* )「む……」
なかなか入っていかない。
できれば隙間を広げて本が痛まないようにしまいたいのだが、それは難しいようだった。
(゚A゚* )「っ……この……!」
と、格闘して、ようやく入った時だった。
左足が落ちる。
いや。
踏ん張っているのに、しっかりはしごを掴んでいたのに、落ちていた。
(゚A゚* )「あ……?」
書架が視界から消える。
- 428 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:38:28 ID:c3X.ALzM0
- 視界がゆっくり反転して、天井を見上げるようになる。
それは、段々遠ざかっていって。
(゚A゚* )「?」
ふんわりとなにかによって抱き止められた。
視界の端に写ったそれは、シーツかなにかのようだった。
川 ゚ -゚)「間に合ってよかった」
白い布に埋もれるあたしの顔を覗きこみながら、彼女は言った。
(゚A゚* )「クー!」
そうだ、魔法を使えるのは彼女だけである。
魔法、といっても昔話に出てくるような魔法ではなくて、物を浮かせる程度だと彼女は言うけどあたしからすればとてもすごいことだと思った。
だってあたしは、なにも持っていないからだ。
川 ゚ -゚)「ん」
差しのべられた手を掴み、体を起こす。
布はゆっくりと床に着地して、それからあたしは立ち上がった。
川 ゚ -゚)「はしごが折れてしまったんだね」
(゚A゚* )「ずいぶん年寄りだったし、しゃーないよ」
川 ゚ -゚)「ふむ」
- 429 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:39:53 ID:c3X.ALzM0
- そう言いながら、クーははしごの残骸から書架へと視線を移す。
川 ゚ -゚)「のーが本を読むなんて、珍しいな」
槍でも降ってくるんじゃないかとからかう彼女に、
(゚A゚* )「シーンのやつが出しっぱにしてたから、なんとなく読んでたのさぁ」
と従兄弟の名前をあげるとクーは納得したようだった。
(゚A゚* )「というか全然読まないわけでもないし」
小さい頃はここでシーンと一緒に本を読んでいた。
あたしのご先祖様の冒険譚はあらかた覚えている。
同じ話を何回も読む気にはあまりなれなかった。
川 ゚ -゚)「どのあたりを読んだんだ?」
(゚A゚* )「いっちばん終わりの方」
川 ゚ -゚)「ああ、悪い魔女と戦うところか」
(゚A゚* )「そーそー」
部屋の隅に置いてあった箒と塵取りを手に取りながら答える。
はしごの破片を集めるためだ。
(゚A゚* )「でもさぁ、本当にここは塔の中なのかなぁ」
あの話のなかでは、あたしたちの暮らしている国は出入口の国というところで、外界に繋がる扉と巫女の見た夢が反映された世界に繋がる扉があるのだという。
だけど、外界に繋がる扉とやらは今は蔦に覆われてしまって開けられない。
上層へと繋がると言われていた扉はまだ残ってはいるけど、開けてみたら真っ白な壁が立ちはだかっていて、一歩たりとも進むことなんて出来やしなかった。
- 430 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:41:58 ID:c3X.ALzM0
- だから、この話を信じる人はあたしも含めてあんまりいなかった。
ただのおとぎ話だという人もいるし、はなから作り話だとバカにする人もいた。
川 ゚ -゚)「わたしは、信じるよ」
クーはぽつりと呟いた。
川 ゚ -゚)「ひいひいおばあちゃんが、そう言ってたから」
(゚A゚* )「あー……トール婆はくるうさんに会ったことあるんだっけ?」
川 ゚ -゚)「そうそう」
(゚A゚* )「…………」
(゚A゚* )(ご先祖様と会った人と話が出来ていたら、あたしもそう思うようになったのかなぁ)
それか、クーみたいに能力の名残みたいなものがあったら……。
と、そこまで考えてあたしには双子の姉も弟もいないことを思い出した。
バタフライエフェクトは、双子にしか使えないのだ。
(゚A゚* )(一人っ子だし、従兄弟じゃだめだよねー)
箒に寄りかかって、ため息をついた時だった。
(;・−・ )「のーちゃん!大変!!」
シーンが珍しく大声でそう言いながら部屋に入ってきた。
(゚A゚* )「あー!あんたねえ、本出しっぱなしにしてくんじゃないよ!」
(;・−・ )「そ、それはごめんだけど……。外!外!」
川 ゚ -゚)「外?」
(;・−・ )「冷たい雨が降ってきたの!」
そう言われて、あたしは外に洗濯物を干していたことを思い出した。
(゚A゚; )「ああああ!洗濯物濡れる!!」
川;゚ -゚)「そんな、さっきまで晴れてただろう?」
そう言いながら、クーが窓のカーテンを開けた。
- 431 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:43:19 ID:c3X.ALzM0
- (゚A゚* )「!」
ねずみ色の暗い空。
さっきまで輝いていた太陽は、雲に覆われてしまったらしい。
その代わりに、ちらちらと灰のようなものが空から落ちていた。
(゚A゚* )「…………」
窓を開ける。
感じたこともないような冷たさの風が吹き込み、鳥肌が立つ。
手を伸ばして、それに触れる。
小さなそれは、よくみると灰色ではなくて白色であった。
よく手にとって見ようとしたけど、それは水に戻ってしまった。
(゚A゚* )「……つめたい」
思わず呟いて、思い出す。
――「君たちを送り届けた後に、塔の外の世界を元通りにする。荒れ地を整え、動物や植物を繁殖させ、再び人間が暮らせるようにしてあげよう」
神様は、さらにこう付け加えました。
「それができるまでは塔から出ないでほしい」
困ったような顔で、くるうは言います。
「でも神様、外にでないと様子が分かりません」
それに神様は答えます。
「大丈夫、世界がもとに戻ったら、ユキを降らせよう」
「ユキ?」
「なんですか、それは?」
ドクオとオサムは戸惑ったように言いました。
聞いたことのない言葉だったので、想像がつかなかったのです。
神様は少し困ったような顔をして、
「そうか、ユキを知らないか」
と呟いて、こう説明しました。
「ユキは、真っ白な粒でとても冷たくて、触ると消えてしまうんだ。塔ができる前の世界では、時々降っていたのだけどね」
- 432 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:45:01 ID:c3X.ALzM0
- (゚A゚* )「!!」
ユキだ。
ユキが、降ったんだ。
(゚A゚* )「二人とも、早く行こう!」
川;゚ -゚)「どこに?」
(゚A゚* )「蔦の扉!これ、ユキなんだよ!」
( ・−・ )「!」
洗濯物なんかあとでいい。
濡れてしまったならまた洗えばいいのだ。
あたしたち三人は外へ飛び出して、とにかく走った。
他の人たちはみんなユキに怯えて家のなかに入っていたり、不思議そうにそれを眺めていた。
誰一人として、民話のことを思い浮かべている人はいないようだった。
(゚A゚* )(ああ)
民話は、サーガは、終わっていなかった。
あたしたちとデレたちは繋がっていた。
それがなんだか嬉しくて、息が切れても走り続けて。
川 ゚ -゚)「扉……」
息も絶え絶えに、クーが呟く。
- 433 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:49:52 ID:c3X.ALzM0
- 蔦だらけだったはずなのに、それはみんな枯れて地面に落ちていた。
そして、扉がほんのすこしだけ開いていた。
( ・−・ )「……僕、少し怖いな」
川 ゚ -゚)「うん、わたしも」
不安そうな二人の声に、
(゚A゚* )「大丈夫」
あたしはなるべく明るく答えながら、扉に手を掛けた。
( ・−・ )「…………」
クーとシーンが顔を見合わせて、ドアノブを握る。
暖かい。
三人一緒なら、怖いものはないような気がした。
ゆっくりと、重い扉を押しながら考える。
(゚A゚* )(もしも、世界が元通りになったなら、)
あたしも、それを後世に伝えたい。
そうして、いろんな人に見てもらうのだ。
ギィ、と重たい音をたてながら、扉が開く。
川 ゚ -゚)「!」
( ・−・ )「わぁ……」
(゚A゚* )「行くよ、二人とも!」
そうして、あたしたちは塔の外へ出ていった。
サーガは、終わらない。
- 434 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 14:55:45 ID:c3X.ALzM0
- しおり
>>2 第一階層「出入口の国」
>>24 第二階層「学園都市の国」
>>40 第三階層「くだらない国」
>>56 第四階層「笑顔の国」
>>73 第五階層「病の国」
>>83 余談「出入口の国」
>>88 第六階層「見つからない国」
>>112 第七階層「はくちのくに」
>>138 第八階層「名無しの国」
前編
>>170 後編
>>195 第九階層「透明な国」
>>217 第十階層「にぎやかな国」前編
>>265 後編
>>298 第十一階層「信心深い国」
>>331 第十二階層「常闇の国」
>>352 断章「出入口の国」
>>353 最上階「神さまに愛された娘」
>>381 断章「出入口の国」
>>382 最上階「塔と民話のサーガ」
塔と民話のサーガはこれでおしまいです
お題提供、支援や乙をしてくれた方々ありがとうございました
- 435 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 15:02:36 ID:od8.lJcs0
- 完走乙!!!
すごく面白かったよ
- 436 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 15:30:03 ID:Vr9pfsqM0
- 完結乙!
最初から読み返してくる
- 437 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 19:17:38 ID:7qSCJiHQ0
- 完結乙!
デレとドクオは結婚したのかな。よかったな
- 438 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 19:18:57 ID:D.Nzt77g0
- よかった
- 439 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 21:41:05 ID:Waj0ZZao0
- 乙
なんか色々すとんと納得がいった。
- 440 :名も無きAAのようです:2013/09/20(金) 22:57:43 ID:1P8KaeIsC
- 全体的に満足感と寂しさが残るお話だった
蛇足な疑問なんだけど塔の外がただの荒野なら何でクルウ両親は帰って来れなかったの?
- 441 : ◆R6iwzrfs6k:2013/09/20(金) 23:22:29 ID:c3X.ALzM0
- >>440
荒野といっても地割れがひどくかなり地面がもろくなってます
なのでたぶん歩いているうちにそれに落ちてしまったり崖崩れに巻き込まれたりするイメージでした
描写不足ですね
- 442 :名も無きAAのようです:2013/09/21(土) 03:27:18 ID:39EdcuiA0
- おお、乙
神様も粋なことするぜ
- 443 :名も無きAAのようです:2013/09/21(土) 16:08:55 ID:AjVJIAX.0
- 乙!
本当に待っててよかった!
- 444 :名も無きAAのようです:2013/10/02(水) 15:19:31 ID:AgFFnU32O
- 一気読みした。面白かった
映画一本観終わったような読後感だ
色々とダークな部分はあったのに、なんだか清々しい
乙乙! デレとドクオ、オサムとくるうがどうなったか気になる
はくちのくには、白痴と白地と白血と吐く血の他に何か掛かってるんだろうか
- 445 :名も無きAAのようです:2015/04/29(水) 04:15:30 ID:icSsG3Ek0
- 見れて良かったよ。乙。
- 446 :名も無きAAのようです:2015/06/02(火) 20:08:39 ID:H0P1mCXM0
- 今読んだけどとても良かった。
ユキで繋がっていくっていうのがいい
- 447 :名も無きAAのようです:2016/03/05(土) 09:09:32 ID:qaniNzbw0
- まとめで読んでたけどとっても良かった!
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