■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■
トラツグミは知りたいようです- 1 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:17:19 ID:c4YsDqOAO
-
―――とある大陸の、とある森の中。
―――そこには白く四角い研究所が佇む。
―――その研究の内容は、誰も知らない。
―――ただ、噂もある。
―――合成生物、つまりは『キマイラ』の研究をしている、と。
- 2 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:18:07 ID:c4YsDqOAO
-
トラツグミは知りたいようです
.
- 3 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:19:16 ID:c4YsDqOAO
-
第1話『いくつかの命』
('A`)
物心がついた頃から、ドクオと呼ばれる彼は小さな部屋の中にいた。
他人と違うのは知っている。
よく来る研究者達は、普通の人間。
彼は異常な人間もどき。
『蜥蜴』の遺伝子が組み込まれ、そのおかげで週一で手足を刻まれる羽目になっている。
体の形に異常はないが、ただ皮膚が妙だ。
手足が茶色だか何だか分からない色で、手触りも違う。
- 4 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:20:08 ID:c4YsDqOAO
-
川 ゚ -゚)「うー」
同じ部屋に、女の子がいる。
これは何と合成されているのか知らない。
ただ、一度だけ聞いた。
明らかな失敗作だ、と。
川 ゚ -゚)「うーん?」
('A`)「…」
歳で言えば、二人とも18。
ただ、クーと呼ばれる女の子の振る舞いはとてもそうは見えない。
抱き着いてみたり、叩いてみたり、時に粗相をしたり。
その都度研究者を呼び、始末をしてもらっている。
川;゚ -゚)「むむっ」
('A`)「…またかよ、お前…」
クーの足元に水溜まりがある。
ため息をつきながら呼び出しボタンを押した。
- 5 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:20:52 ID:c4YsDqOAO
-
すぐに白い服の人間が飛んできて、雑巾を使いはじめる。
慣れたものだ。
( ・∀・)「…いい加減クーもトイレぐらいは覚えて欲しいね」
('A`)「全くだな」
( ・∀・)「ああ、そうだ。ドクオに連絡があったんだ」
( ・∀・)「明日、違う部屋に移ってもらうよ」
('A`)「……何で?」
( ・∀・)「さあね?ただ色々と変わり時らしいよ」
('A`)「クーは?」
( ・∀・)「ここ」
そう言って足元に手を向ける。
何となく妙な気持ちになった。
- 6 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:22:00 ID:c4YsDqOAO
-
( ・∀・)「初めての引っ越しだね、ただ向こうにも同居人はいるから」
('A`)「またクーみたいな?」
( ・∀・)「いいや、正常さ」
俺だって異常だ、という言葉は胸に仕舞っておいた。
細かい連絡をして、研究者は出ていった。
川 ゚ -゚)「んっ」
クーが自分の服の裾を掴んでいるのに気づいた。
('A`)「何だよ」
川 ゚ -゚)「…」
('A`)「明日で離れ離れだぞ」
川;゚ -゚)「…うああ」
- 7 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:22:55 ID:c4YsDqOAO
-
運ばれてきた食事を食べる。
ドクオは米を主食とした料理だが、クーにはまた別のメニューがある。
どろりとした白い塊をクーの口元に持っていく。
この作業にもまた、慣れた。
('A`)「慣れた、かぁ」
('A`)「何年も一緒だもんな」
川 ゚ -゚)「んー」
('A`)「こんな事しなくて済むんだぜ、羨ましいだろ」
川 ゚ -゚)「ん?」
まるで分かっていない。
食事を終えてしばらくすると就寝のベルが鳴った。
- 8 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:24:02 ID:QWadt3T6O
- おもしろそう
支援
- 9 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:24:07 ID:c4YsDqOAO
-
部屋を暗くし、固いベッドに横になる。
明日で、クーとお別れ。
そう思うと、何か嫌だった。
理由は分からない。
('A`)「迷惑かけられっ放しなんだがなぁ…」
ごそごそと音がし、腹に体重を感じた。
クーが乗っている。
川 ゚ -゚)「うっ」
('A`)「重いよ」
そのままクーが倒れ込んできた。
ベッドで抱き合う形となる。
('A`)「何だ、こんな時に」
川 ゚ -゚)「やっ」
('A`)「や?」
川 ゚ -゚)「いーやー」
- 10 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:24:55 ID:c4YsDqOAO
-
('A`)「嫌?」
別れを拒んでいるのか。
そんな筈はない。
クーにはっきりした自我などないのだから。
それなのに。
それなのに。
川;゚ -゚)「いや!」
(;'A`)「お、おい」
ばちばちと顔を叩いてくる。
痛い。
(;'A`)「落ち着けっ」
両手を抑える。
今度は頭突きを繰り出してきた。
(;'A`)「仕方ないだろ、決まったんだよ!」
強く言うと、すごすごと引き下がった。
川 - _-)「んっ」
(;'A`)「何だってんだ…」
よく分からないまま、眠りに落ちた。
- 11 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:26:04 ID:c4YsDqOAO
-
翌朝。
研究者が二人来た。
もう部屋の移動を始めるらしい。
一人がドクオの腕を縛った。
もう一人はクーの方に構っている。
('A`)「逃げやしないよ」
( ・∀・)「ふふ、知ってるよ」
突然叫び声が聞こえた。
クーだ。
川;゚ -゚)「いや!やー!んっ!」
(;-_-)「あぁこら、落ち着いてよー」
( ・∀・)「ドクオ、クーを落ち着かせてくれ」
('A`)「ああ、うん」
クーに近づき、縄を解かれた腕で頭を撫でる。
- 12 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:27:49 ID:c4YsDqOAO
-
ドクオが触れている間は、何があろうと大人しい。
そのせいで検査の際も何度か鎮静剤代わりに呼ばれた。
('A`)「仕方ない、引っ越しなんだから」
川;゚ -゚)「んっ…」
('A`)「……まあ、あれだ」
('A`)「しっかり、な」
川;゚ -゚)「…」
手を放す。
クーは騒がない。
歩き出す。
重い音を上げて無機質な扉が閉まっても、クーの声は聞こえなかった。
- 13 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:29:36 ID:c4YsDqOAO
-
研究者に連れられ、歩く。
一つ上の階に移動らしい。
これまでは地階だった為、覚えている限り初めての地上暮らしとなる。
('A`)「広いのか?」
( ・∀・)「一部屋に四人だからね、広いよー」
('A`)「四人も」
( ・∀・)「ん、まあ…」
少し口調を曇らせる。
一呼吸の後、静かに言った。
( ・∀・)「共食い、しないだろ?」
('A`)「する訳ないだろ」
言ってから気付いた。
共食いする奴らもいるのか。
('A`)「じゃ、クーは?共食いなんかしないぞ」
(;・∀・)「あれはかなり特殊だからねぇ…」
('A`)「……まあ、そうか」
- 14 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:30:57 ID:c4YsDqOAO
-
部屋の前で拘束を解かれ、研究者と別れて部屋に入る。
中に居たのは、三人。
つまりドクオで最後だ。
从 ゚∀从「うーっす」
ぼさぼさとした黒髪の女。
ξ゚⊿゚)ξ「あんたで最後ね?」
金髪でツインテールの女。
( ^ω^)「おっお、よろしくだおー」
見た感じ太った男。
一見する限り、大体年齢は変わらないように思える。
- 15 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:32:02 ID:c4YsDqOAO
-
('A`)「よろしくな」
从 ゚∀从「揃ったところで自己紹介といくか。付き合いも長くなるしな」
言うと、女の子は両腕を広げた。
いや正確には、大きな黒い翼を。
从 ゚∀从「識別名はハイン。烏との合成だ」
( ^ω^)「おっ、鳥人間だおね」
この烏のハインは、検査の際に何回か目にした。
だから特別驚きもしない。
ξ゚⊿゚)ξ「私はツン。蛇キマイラね」
徐に服をたくしあげる。
下半身がこれまた大きな蛇になっているようだ。
- 16 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:33:09 ID:c4YsDqOAO
-
( ^ω^)「僕はブーンだお!豚との混合らしいお」
道理で毛深い。
腕などを見せてくれたが、全身を桃色の毛に覆われていて、鼻も変な形だ。
( ^ω^)「ちなみにツンとは前の部屋で一緒だったお」
ξ゚⊿゚)ξ「こいつは豚野郎でいいわ」
( ^ω^)「否定はしないお」
('A`)「俺はドクオ。蜥蜴との合成だな」
腕をまくって見せる。
奇妙な色合いだが、少々気に入っている。
从 ゚∀从「すげー色だな」
('A`)「擬態で肌色も可能っちゃ可能だけど、面倒だしな」
- 17 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:34:06 ID:c4YsDqOAO
-
从 ゚∀从「前の部屋に同居人とかいなかったんだよなー、変な感じだ」
ξ゚⊿゚)ξ「何か交流を通しての心身の変化が、とか言ってたわ」
('A`)「まぁ研究の一環じゃなきゃこんな事しないだろうしな」
( ^ω^)「そういえば、二人の『特殊技能』は何だお?」
基本的に、自分達にはその『元の動物』の特徴が備わっている。
元より拡大されていることがしばしばだ。
が、むろんデメリットも多い。
主に外見上の意味で。
- 18 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:35:39 ID:c4YsDqOAO
-
('A`)「俺はさっきチラッと言ったけど、擬態。あと再生」
从 ゚∀从「ちぎれても生え変わるのか」
('A`)「腕ぐらいなら二日で生える。痛いから嫌だけど」
( ^ω^)「尻尾はないのかお」
('A`)「ないな。残念ながら」
从 ゚∀从「俺はほら、見ての通り、飛べるよ」
ハインが腕を振り、ばさばさと風を起こす。
数枚の羽根が舞った。
从 ゚∀从「ものが掴めない上に鳥目だけどな」
( ^ω^)「飛んでみたいおー」
ξ゚⊿゚)ξ「飛べない豚はただの豚よ」
- 19 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:36:58 ID:c4YsDqOAO
-
ξ゚⊿゚)ξ「私はまぁ、牙とか粘液にある毒かな」
('A`)「蛇だしな」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、あと丸呑みとか得意」
(;'A`)「蛇だしな…」
ξ゚⊿゚)ξ「足がないから移動に不便なのよね…」
鱗つきの尻尾を振る。
光が反射して少し綺麗だ。
( ^ω^)「僕は嗅覚だお、一度嗅いだら絶対忘れないお!」
从 ゚∀从「流石は豚野郎だな」
( ^ω^)「褒め言葉として受け取っておくお」
- 20 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:38:00 ID:c4YsDqOAO
-
そのほか他愛のない話をしていると、昼食が運ばれてきた。
( ・∀・)「担当は変わらず、この僕モララーだからね」
('A`)「担当ったって基本的に食事の配膳だけだろ?」
( ・∀・)「配膳と引率だね、たまに研究」
自らの仕事が研究者らしくないのを知っているのか、自嘲的に笑った。
从 ゚∀从「あ、俺どうすんの?」
ハインが翼を広げてアピールする。
食事できないということか。
( ・∀・)「今日からはそこのドクオに食べさせて貰ってくれ」
(;'A`)「え」
( ・∀・)「慣れてるだろ?」
(;'A`)「まあ…」
- 21 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:39:08 ID:c4YsDqOAO
-
モララーが皿を残して去っていった。
('A`)「お前これまでどうしてたの?食事」
从 ゚∀从「モララーに食わされてた」
('A`)「同居人を連れてくりゃ良かったのに…」
从 ゚∀从「いいのが居なかったらしいな」
('A`)「口開けて」
从 ゚∀从「あー」
(*^ω^)「アツいおねー!」
('A`)「肉食ってろ、豚野郎」
( ^ω^)「知らないようなら言うけど僕の体脂肪率8パーセント切ってるお」
从;゚∀从「え、じゃあその体は」
( ^ω^)「筋肉」
('A`)「とんだ詐欺じゃねーか」
- 22 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:40:26 ID:c4YsDqOAO
-
ξ゚⊿゚)ξ「慣れてる、ってのは?」
(;'A`)「えー…」
返事に窮する。
一体どう言えばいいだろう。
('A`)「前の同居人も食事できない奴だったんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふうん」
从 ゚∀从「零れてるぞー」
慌てて視線をスプーンに向ける。
野菜を拾って皿に戻した。
( ^ω^)「多分同居人の組み合わせも実験のはずだお」
('A`)「なるほど…」
ξ゚⊿゚)ξ「まあいいじゃない、気楽に行きましょう」
从 ゚∀从「だなあ」
これから、少し新しい生活が始まる。
……しかし、介護とも言えるあの行動が役に立つとは思ってもいなかった。
- 23 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:42:06 ID:c4YsDqOAO
- 今日はここまで。
豚について調べて知ったんですが、奴ら超ハイスペックです。
つまり豚野郎は褒め言葉です。
- 24 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:51:20 ID:f.R4Rsdg0
- 乙!
続き楽しみにしてる!!
- 25 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 00:54:16 ID:sTbeT/2E0
- 乙乙
展開が読めんな
- 26 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 01:08:29 ID:QWadt3T6O
- 続き楽しみだなぁ
- 27 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 01:26:37 ID:1xxCGyDU0
- 乙乙
続きが楽しみだ
- 28 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 02:12:30 ID:tVRAJDDM0
- おつ
絶対完結まで読み続ける
- 29 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 02:30:19 ID:YV5OoLJo0
- 乙乙
- 30 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 00:09:37 ID:vfcOn9Hg0
- 気になる。
- 31 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:31:57 ID:eAmVdhN2O
-
第2話『鵺が鳴く』
四人での生活が始まってから一月。
その内容はほとんど変わらないと言っても良かった。
いつものように暇を持て余し、検査や実験台にされ、また眠る。
从 ゚∀从「…だからな、ドクオの腕は非常食になるって」
検査から帰ってくると、何とも物騒な話をしていた。
(;'A`)「…」
ξ゚⊿゚)ξ「無理よ、骨張ってるし」
( ^ω^)「あ、お帰りだおー」
('A`)「食物連鎖上位のお前らに言われたら洒落にならんのだが」
从 ゚∀从「冗談冗談」
- 32 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:32:40 ID:eAmVdhN2O
-
('A`)「全く…」
どかりと座って、そのままの勢いで寝転がる。
再生の実験には体力を使う。
( ^ω^)「聞いてくれお、また僕の体脂肪率下がったんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「化け物じゃないの」
从 ゚∀从「…」
ハインがツンとドクオを交互に見ている。
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
从 ゚∀从「いや、眼がさぁ」
- 33 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:35:57 ID:eAmVdhN2O
-
从 ゚∀从「ツンの眼は爬虫類っぽくないんだなぁ、って」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、上半身は人間だからかな」
('A`)「たまに鏡見ても怖いんだよな、自分…」
( ^ω^)「ツンは上下で分かれてるけど、ドクオは手足なんだおね」
('A`)「眼とかの器官の機能は一切変わらんらしいがな」
从 ゚∀从「で、ツンって卵生?胎生?」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「さあ…?」
( ^ω^)「ハインもどうなのか気になるお」
从 ゚∀从「いやー、俺は胎生じゃないかな。翼だけだし」
从 ゚∀从「何より卵なんざ出るほど尻の穴でかくねーし」
ξ゚⊿゚)ξ「ハイン、喧嘩でも売ってんの?」
- 34 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:37:18 ID:eAmVdhN2O
-
('A`)「ツンも胸があるってことは使うんじゃないか…?」
( ^ω^)「でも絶賛退化中にしか見えないお」
ξ#゚⊿゚)ξ「食らえ、蛇絞め!」
(;^ω^)「あがっ、やめて、首絞めないで!」
がたがたと音を上げて騒いでいると、ノックの音が響いた。
( ・∀・)「随分打ち解けたようで何よりだよ」
从 ゚∀从「おう、何?」
('A`)「飯には早くないか」
( ・∀・)「んー…ちょっとね」
- 35 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:38:52 ID:eAmVdhN2O
-
( ・∀・)「君達に羽を伸ばしてもらいたくて」
从 ゚∀从「もう伸びてるよ」
(;・∀・)「いや、違う違う。実はね、えー…」
なんとも歯切れが悪い。
その台詞を妨害するように、声が響いた。
(,,゚Д゚)「何をしている」
大柄な男だ。
白衣を着ている辺り、研究者だろうか。
( ・∀・)「…いたのか、ギコ。こいつらには干渉しないと言ったろう」
(,,゚Д゚)「ふふん、『特異』を盗られたからって拗ねんなよ」
( ・∀・)「こいつらの前でそういう話をしないで頂きたいね」
(,,゚Д゚)「知ってるよ。大事な大事な験体だもんなぁ?」
- 36 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:40:09 ID:eAmVdhN2O
-
( ・∀・)「君こそ、何を?」
(,,゚Д゚)「ただの連絡だ。至急会議室に集まれ」
( ・∀・)「分かった。…だが少し遅れると伝えてくれ」
(,,゚Д゚)「ふん、言っといてやるよ。…ただな、モララー」
(,,゚Д゚)「験体に中途半端な思いを入れるのは、タブーだぜ?」
( ・∀・)「知ってるよ。君は早く行くんだね」
(,,゚Д゚)「チッ…」
ギコと呼ばれた研究者はずかずかと大股で去って行った。
煙草の臭いが漂っている。
ξ゚⊿゚)ξ「…何よ、今の」
( ・∀・)「同じ研究者だよ。僕とは馬が合わないがね」
- 37 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:40:59 ID:eAmVdhN2O
-
( ^ω^)「何で?」
( ・∀・)「彼は、君らは飽くまで実験材料として扱われるべきだ、と考えているようだ」
( ・∀・)「だからかな」
('A`)「それって、あんたは…」
(;・∀・)「ほ、ほら、さあ!時間が無い、来るんだ!」
勢いに押され、モララーについて行く。
どこに行くのか、とブーンが問うと、彼は少し笑って答えた。
( ・∀・)「何、久しぶりの外出をね」
- 38 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:42:21 ID:eAmVdhN2O
-
(*^ω^)「外とか数年振りだお!」
よく分からないままにモララーについて外に出た。
拘束はない。
从*゚∀从「おぉ」
眼前に広がるのは、鬱蒼たる森。
何となく心が踊る。
こちらに背中を向けたモララーが言った。
( ・∀・)「機材の搬入らしくてね、夕暮れまで入れないよ。じゃ、僕はこれで」
('A`)「夕暮れね、把握した」
ξ゚⊿゚)ξ「あー野生が踊るわー」
ツンがするすると木に巻き付いて登っていく。
( ^ω^)「キメェ」
ξ゚⊿゚)ξ「聞こえてるわよ、豚」
- 39 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:43:32 ID:e..rnn/s0
- モララー…
- 40 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:43:40 ID:eAmVdhN2O
-
从 ゚∀从「じゃ、俺もっ」
ばさりと翼を広げ、ハインも飛び立った。
風に落ち葉が舞う。
('A`)「レッツ木登りぃ」
負けじとひょいひょいと木の枝に手をかけ、登る。
( ^ω^)「…」
ブーンが不満げな顔をしている。
ドクオの横の枝に留まったハインが笑った。
从*゚∀从「ははっ、登れねーのかよ!」
(;^ω^)「うっせーお!」
ξ゚⊿゚)ξ「おだてたら登るんじゃない?」
(♯^ω^)「豚を馬鹿にすんなお!そこで指くわえて待ってろお!!」
('A`)「首を洗って、な」
- 41 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:44:51 ID:eAmVdhN2O
-
木の幹を掴んだブーンが力任せに登ってくる。
(♯゚ω゚)「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
从;゚∀从「うお、マジで登った!恐っ!」
枝を揺らしてハインが飛び上がる。
ドクオとツンも慌てて違う木に避難した。
( ^ω^)「どーだお!登ってやったお!」
自慢気に枝の上に立ち朗々と宣言して、
(;^ω^)「おぉぉっっ!?」
木の折れる乾いた音と共に墜落した。
ξ;゚⊿゚)ξ「大丈夫!?」
('A`)「逃げといてよく言うわ」
- 42 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:46:39 ID:eAmVdhN2O
-
結局へとへとになるまで外出を満喫し、やがて日暮れの時間になった。
橙の光が木の隙間から伸びている。
从 ゚∀从「もういい時間だな、帰るか」
( ^ω^)「お!」
各々歩いて帰路につく。 研究所の扉を押し開け、入った。
…何かがおかしい。
誰も居ない。
ξ゚⊿゚)ξ「静かね……」
('A`)「あれ、何でだ?」
( ^ω^)「おーーーい!研究対象のお帰りだおーっっ!!」
返事も反応もない。
- 43 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:47:51 ID:eAmVdhN2O
-
(;'A`)「……」
えもいわれぬ不安が頭を支配する。
('A`)「皆、一旦解散しよう。一段落ついたら部屋に集合だ」
从;゚∀从「おう」
めいめい、違う方向に走り出す。
思えば何かがおかしかった。
検査室への移動ですら拘束されていたのに、今回は完全な自由。
(;'A`)「…」
見慣れた通路を走る。
階段を降り、何度か曲がった。
結果は見えていたが、それでも走らずにはいられなかった。
- 44 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:50:14 ID:eAmVdhN2O
-
(;'A`)「クー!」
小さな部屋の扉を開け、中に入る。
誰もいない。
シーツすらないベッドがあるだけだった。
(;'A`)「……」
意味が分からなかった。
何故だ。
何故誰も居ない?
床に手を当てた。
長い生活による汚れが染み付いている。
思えば随分世話を焼かされ、迷惑も被った。
だのに、何故こんなにも………。
(;'A`)「…」
(;'A`)「……戻らないと…」
- 45 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:51:32 ID:eAmVdhN2O
-
ふらふらと部屋に戻った。
ハインがいる。
从;゚∀从「あ…」
ドクオの様子を見て、会話を躊躇っているようだ。
('A`)「ハイン…」
从;゚∀从「…?」
('A`)「皆、どこ行ったんだろう」
从;゚∀从「分からん…俺もどこ行っていいか分からず戻って来ちゃったし…」
从;゚∀从「その、前に一緒だったクーってのはいたか?」
('A`)「…いなかった」
从;゚∀从「…そうか」
('A`)「何なんだろうな、急に」
- 46 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:52:59 ID:eAmVdhN2O
-
从 ゚∀从「…ま、元気出せよ」
从 ゚∀从「誰も居ないんだ、仕方ないさ」
('A`)「仕方ないって何だ…!」
(#'A`)「あいつが消えたのが仕方ないってのか!!」
(#'A`)「何年も世話焼いてきたのが一瞬でなかった事になってんだぞ!?」
从;゚∀从「あ、いや…」
自分の言い分がおかしいことは、よく分かっていた。
ハインの目が潤んでいる。
やり場のない感情をぶつけてしまったことを後悔した。
頭を落ち着け、謝る。
(;'A`)「…いや、ごめん…」
从;゚∀从「ああ、気にすんな」
- 47 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:54:02 ID:eAmVdhN2O
-
ハインが目を擦り、沈黙を嫌がるように聞いた。
从 ゚∀从「…なあ、よければ教えてくれよ。クーってどんな奴なんだ?」
('A`)「そうだな…」
('A`)「見た目は普通の人間でな…」
驚く程スムーズに言葉が出て来た。
昔からずっと一緒だったこと。
初めての検査の日から、一月前の別れの日まで。
ハインは頷きながら聞いていた。
('A`)「……あれだ、大事なものには失くしてから気づく、って本当だった」
从 ゚∀从「不思議な奴なんだな」
('A`)「まあな…」
会話が途切れた辺りでブーンとツンが戻ってきた。
- 48 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:55:09 ID:eAmVdhN2O
-
(;^ω^)「誰もいないお。人間も動物も」
ξ;゚⊿゚)ξ「書類もね。とにかくご飯はあったから」
保存食らしき缶詰を開ける。
茶色く、よく分からない食べ物があった。
('A`)「なんぞこれ」
( ^ω^)「…ウンコ?」
('A`)「ハイン、あーん」
从;゚∀从「この流れで!?…ちょ待っうげぉっ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「…どう?」
从#゚∀从「食うぞ、この蜥蜴ッ!!」
- 49 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:55:49 ID:eAmVdhN2O
-
どうやらただの魚であることが分かった。
腹が減っては、ということで食事の時間を取る。
从 ゚∀从「ほれ、次次」
('A`)「気に入りすぎだろうよ」
ξ゚⊿゚)ξ「…これから、どうする?」
从 ゚∀从「ここに居てもなぁ」
( ^ω^)「どうせ誰も怒らないし出かけようお!」
( ^ω^)「この森の近くに村があるって聞いたお、行ってみようお!」
('A`)「それもいいかもな」
所内を周り、必要な物資をかき集める。
旅の目的は分からないが、一応多めにあって損はない。
- 50 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:56:29 ID:eAmVdhN2O
-
準備を終え、夜の森に繰り出す。
暗く、虫の声だけが聞こえる。
('A`)「何故一泊するという案が出なかったのか」
ξ゚⊿゚)ξ「テンションよ、テンションのせいよ」
( ^ω^)「おっお、ワクワクするお」
从;゚∀从「やべぇ、何にも見えないんだけど」
ツンの尻尾を必死で掴みながらハインが言う。
そういえば、夜目が利かないと言っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「まー私の尻尾握るのは勘弁かな、這いづらいし」
从 ゚∀从「じゃ、裾」
ξ゚⊿゚)ξ「許す」
- 51 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:57:27 ID:eAmVdhN2O
-
不意にブーンが立ち止まった。
手を横に伸ばし、後ろの三人を止める。
(;^ω^)「…」
('A`)「何だよ」
( ^ω^)「なんか来てるお……獣の臭いと、薬の臭い」
('A`)「…それって」
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオ!」
ツンがドクオを地面に引き倒す。
風を切ってドクオのいた位置を通過し、『それ』はこちらを睨んだ。
ミ,=゚д)「―――…」
- 52 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:57:59 ID:eAmVdhN2O
-
ミ,=゚д)「ヴゥ…」
毛並み、体躯、様子。
総合的に判断して、明らかに『キマイラ』だ。
(;'A`)「それも、虎キマイラ」
理性のかけらも見受けられない。
共食い、という言葉が頭に浮かんだ。
(;'A`)「人面獣心、ってか…」
なぜいるんだ。
まさか、逃がされたのか?
…だったら、まさか自分達も?
(;^ω^)「考えるのは後だお!来るお!」
ミ,=゚д)「ヴォア゛ァッッ!!」
飛び掛かる虎をブーンが受け止め、押し返す。
从;゚∀从「わわわっ!」
(;'A`)「ツン、ハインを連れて離れろ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「死なないでよね!」
- 53 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:58:49 ID:eAmVdhN2O
-
(;'A`)「よしっ」
戦力外のハインを逃がしたところで、敵を見る。
体のバランスから、キマイラであることは確かだ。
しかし、人間の成分が非常に低いようだ。
ミ,=゚д)「…!」
虎が木々の隙間を走り回る。
撹乱を狙っているのか。
(;'A`)「弱点を…」
ドクオも虎に合わせて飛び回り、体を観察する。
素早さではまだ負けていない。
ミ,=゚д)「グルォッ!」
(♯^ω^)「ふんぬっ!!」
ブーンと虎ががっぷり四つに組み合う。
ドクオが叫んだ。
(;'A`)「ブーン、腹と左足!そこだけ人間だ!!」
- 54 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 23:59:40 ID:eAmVdhN2O
-
(♯^ω^)「把握だおっ!!」
ブーンが虎の腹を蹴り飛ばす。
唸って距離をとり、今度はドクオに突進してきた。
(;'A`)「おっと」
樹上に飛び上がり、回避。
バランスを崩した虎をブーンが上から押さえ付けた。
ミ,;=゚д)「グゥゥゥゥゥオオッッッ!!」
虎が唸り、暴れる。
(;^ω^)「おっ!?」
ブーンの拘束が緩み、虎が立ち上がり―――
ミ,= д)
――倒れた。
- 55 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 00:00:03 ID:6tCPilGE0
- 序盤を終えてからが本番な感じか。期待
- 56 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 00:00:48 ID:rlArG/rkO
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ふう」
虎の足元から立ち上がったのは、ツン。
('A`)「あ、毒か…」
ξ゚⊿゚)ξ「私の毒ね、血液を凝固させる成分があるから」
(;^ω^)「虎も可哀相に…」
ミ,= д)
キマイラの様子を見る。
研究所から脱走したのだろうか。
('A`)「やばくないか、これ…」
ξ゚⊿゚)ξ「他のもいるでしょうね…」
(*^ω^)「とにかく、僕らのチームワーク完璧だったお!」
- 57 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 00:01:47 ID:rlArG/rkO
-
ξ*゚⊿゚)ξ「留めは私よ、感謝しなさい!」
( ^ω^)「ブーンの力も役立ったお!」
('A`)「俺が弱点を………」
(;'A`)「あ」
ドクオが小さく声を上げ、どこかに走っていく。
程なく、ハインをおぶって帰ってきた。
ξ;゚⊿゚)ξ「あー」
从 ;д从「あ、あんまりだろう、お前らぁ…」
从 ;д从「よりによって、目の見えない俺を化け物のいる森に放置なんてぇっ……!」
('A`)「完全に忘れてた」
ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんね…」
从 ;∀从「だから夜は嫌なんだぁー……」
ハインを宥めすかしながら歩きだす。
危機は脱したものの、チームワークに問題があるようだ。
- 58 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 00:02:28 ID:rlArG/rkO
- 今日はここまで。
ハインちゃんかわいいお
- 59 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 00:03:33 ID:91Z5NuVo0
- 乙
- 60 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 00:16:04 ID:D.PkYbyA0
- おつー
- 61 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 08:40:13 ID:n5U0uXMU0
- おつおつ
- 62 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 11:03:03 ID:H6.OPsNM0
- はいんはおれのよめ
- 63 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 01:14:45 ID:h/WC5l1U0
- 羽のハインとか中だるみを思い出す萌えた。
おーつ。
- 64 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 22:59:47 ID:UIdaE/Yw0
- 乙!
- 65 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:09:01 ID:z/QD7NhMO
-
第3話『歩く意味』
森を抜けてからしばらく歩くと、小さな村に着いた。
夜も更けて、明かりは見えない。
('A`)「…なんかこう、宿らしいとこはないか?」
( ^ω^)「よく見えないお」
从;゚∀从「もう俺、夜怖い…」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あった!」
ツンに案内され、一軒の建物に入る。
ドアを押し開けると、からん、と甲高い音が鳴った。
('、`*川「んー…どちら様?客?」
眠そうに目を擦って出て来た人に、泊まりたい旨を伝えた。
('、`*川「あー、はいはい。一部屋でいいね?…じゃ3番が空いてる。細かい事はまた明日ぁ」
- 66 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:11:11 ID:z/QD7NhMO
-
('A`)「なんかすっげぇ適当だったな」
ξ゚⊿゚)ξ「時間も時間よ、仕方ないわ」
(;^ω^)「というかこの体で普通に泊まれたことに驚きだお」
从 ゚∀从「いいだろ、飯にしようぜ」
ハインの提案を受け、缶詰を広げる。
また例の魚だ。
('A`)「何なんだろうな、これ」
从 ゚∀从「さぁ?」
それ程かからずに食べ終わり、とりあえずの就寝となった。
小さな部屋に、好きな姿勢で眠る。
狭いが文句は言えない。
- 67 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:12:22 ID:z/QD7NhMO
-
翌朝。
昨晩通してくれた人が部屋を訪れた。
女将というか店長というか、そういう存在だったらしい。
雑魚寝している四人を見て、少し怖がっていた。
('、`;川「え、えーと」
('、`;川「村長が呼んでますんで、行って下さいね」
( ^ω^)「怖がることないお。大体昨日見ただろうに」
('、`;川「暗かったもので…」
('、`*川「あと、これ」
渡されたのは布製の何か。
分厚く、重い。
- 68 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:14:31 ID:z/QD7NhMO
-
拡げると、体がすっぽり入るようになった上着。
サイズのおかげで、体の殆どが隠れる。
('、`*川「体は隠した方がいい、らしいです」
('A`)「でしょうね」
ごそごそと音を立てて身につける。
ξ゚⊿゚)ξ「尻尾出るんだけど」
从 ゚∀从「いっそブーンがおぶったらどうだ?ブーンに尻尾巻き付けて」
('A`)「二人羽織みたいな?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、なるほど。ほら、入れなさい」
ブーンがツンを背中に揺すり上げ、とりあえずは見られるようになった。
( ´ω`)「一応女の子なのに当たるもんが当たらんおー……」
ξ#゚⊿゚)ξ「このっ」
(;^ω^)「ちょ、締まってる締まってる!内臓出るおぉぉぉ!!」
- 69 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:17:21 ID:z/QD7NhMO
-
('、`*川「こっちです、どうぞ」
女性に連れられ少し歩き、村の奥の少し大きな家に通された。
中に一人の老人がいる。
/ ,' 3「お早うございます。さ、座ってください」
促されるままに腰を下ろした。
/ ,' 3「…さて、まず、貴方達は森の方から来ましたな?」
('A`)「ええ」
恐らくは抜けてきた森のことだろう。
虎には簡単な墓を作って来たが、野犬などに荒らされないかが少し不安ではある。
/ ,' 3「やはり…」
- 70 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:19:20 ID:z/QD7NhMO
-
/ ,' 3「たまにあるんですよ。その…」
彼らの事を言いづらい様子。
ツンが台詞を引き取った。
ξ゚⊿゚)ξ「被験体の脱走?」
/ ,' 3「ええ、それが」
/ ,' 3「いつもは一人のみで、すぐに職員が探しに来ていましたが、今回は違う様子」
/ ,' 3「何かあった、と見ても?」
結局、知っている事を全て話した。
研究所の行方については、何も知らないらしい。
('A`)「研究者が移動するにしても、ここ付近は通らなかった、と」
/ ,' 3「ええ、そうなります」
- 71 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:21:37 ID:z/QD7NhMO
-
/ ,' 3「皆さんの事情は分かりました。この村でよければ、一応は居られるでしょう」
( ^ω^)「ありがとうだお」
/ ,' 3「ですが、一つ…」
/ ,' 3「この村では多少慣れていますが、恐らく他の場所だと『化け物』扱いされるかと…」
/ ,' 3「皆さんを悪く言う訳ではありませんが、気をつけて」
('A`)「分かりました、わざわざありがとうございます。…とりあえず宿に戻るか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、今後の方針を決めましょう」
从 ゚∀从「…ああ、うん」
朝日の中を歩いて宿に戻った。
道中で人と擦れ違ったが、ぎょっとしているだけで騒ぎはされなかった。
- 72 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:23:42 ID:z/QD7NhMO
-
('A`)「しばらくなら宿代は無しにしてくれるらしいぞ」
( ^ω^)「マジかお、太っ腹だお」
座って何ともなしに荷物の整理などをしていると、扉がそっと開いた。
隠れるように覗いているのは、小さな女の子。
*(‘‘)*「…」
*(‘‘)*「にーちゃん達、体が変って本当…?」
ξ゚⊿゚)ξ「噂って凄いわね…。本当よ、ほら」
ツンが尻尾を振って見せる。
子供は少したじろいだ。
が、すぐに笑った。
*(*‘‘)*「遊ぼう!」
- 73 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:25:20 ID:z/QD7NhMO
-
よく見ると、後ろにも数人の子供が控えている。
('A`)「ブーン、行ってこい」
(;^ω^)「えー…」
ξ゚⊿゚)ξ「この豚の兄ちゃんが遊ぶってさ!」
*(‘‘)*「豚ちゃん、行こう!」
(;^ω^)「豚ちゃん…」
ブーンが外に引っ張られて行った。
わいわいと賑わう声が聞こえる。
(;'A`)「話し合いをしようって時に…。送り出したの俺達だけど」
ξ゚⊿゚)ξ「仕方ないわ、後で伝えましょうよ」
- 74 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:27:01 ID:z/QD7NhMO
-
部屋の壁にもたれてハインが座っている。
明らかに元気がない。
('A`)「で、ハインはどうした」
从 -∀从「いや…何でもないよ」
ξ゚⊿゚)ξ「話しなさいよ、絞めるわよ」
从;゚∀从「あ、えー…上着重いな、って」
言われて大きな上着に気づき、めいめい脱いで荷物の辺りに放った。
ξ゚⊿゚)ξ「さて」
ツンの尻尾がハインに伸びる。
从;゚∀从「待って待って待って待って!分かった、ごまかさないから!」
('A`)「恐怖の尻尾と名付けよう」
- 75 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:29:49 ID:z/QD7NhMO
-
ドクオとツンを見渡し、決心したように言った。
从 ゚∀从「お前達、さ」
从 ゚∀从「あの虎キマイラ、殺してはしゃいでたよな」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんなの…」
从 ゚∀从「いや、それが悪いとかそんなんじゃないよ。やるかやられるか、なんだし」
从 ゚∀从「でも、やっぱり元々は人なんだよ、俺達同様に」
从 ゚∀从「命が助かって喜ぶんじゃなくて、殺して喜ぶのは…違う、よな」
('A`)「…まあ、そうだな」
从 ゚∀从「本題は別だけど、とりあえず言っとこうと思って」
从 ゚∀从「突き詰めても何だし、それは仕方ないとして…」
- 76 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:31:53 ID:z/QD7NhMO
-
从 ゚∀从「何と言うかさ、俺達って世の中知らなさすぎたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「研究所で習っただけしか知らないもんね……」
从 ゚∀从「普通の村人見て実感したんだ」
从 ゚∀从「何て言うか…異常なんだな、やっぱし」
('A`)「……異常かどうかは知らんが、確かに変だわな」
('A`)「でも、さっきの子供みたいに怖がらない奴だっているよ、きっと」
从 ゚∀从「…そうかな」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら!」
重い空気を打ち破るように、ツンが手を叩いた。
ξ゚⊿゚)ξ「深く考えても泥沼だわ。今後どうするか決めましょうよ」
从;゚∀从「今後ったってなぁ…」
- 77 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:32:31 ID:z/QD7NhMO
-
('A`)「俺は人捜しかな」
从 ゚∀从「クーって奴か」
('A`)「ああ。…まぁはっきり目星がついてる訳じゃないんだけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「私達は…」
ξ;゚⊿゚)ξ「特に無し、かな?」
从;゚∀从「格好悪…」
从 ゚∀从「まぁでも、実際ないよな…」
ξ゚⊿゚)ξ「ずーっと無意味に生きてたもんね、思えば」
('A`)「何だそりゃ」
- 78 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:33:38 ID:z/QD7NhMO
-
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、私達って実験されんのが生きがいみたいなもんだったし」
思えば彼らは実験の為に生きていた。
実験されるために薬を飲み、切り刻まれ、同居人を変え、そうして生きる。
全ては次の実験の為に。
ξ゚⊿゚)ξ「それがない今、どうしようか…」
一瞬空気が固まった所に、勢いよくドアの開く音が響いた。
よれた服を着たブーンが仁王立ちしている。
( ^ω^)「話は聞かせてもらったお!」
从 ゚∀从「いつの間に…」
- 79 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:34:38 ID:z/QD7NhMO
-
( ^ω^)「効果的に登場するためにタイミング計ってたなんて内緒だお」
ξ゚⊿゚)ξ「バカかあんた。あ、バカだわ」
(;^ω^)「ちょっ……まあ、とにかく!」
( ^ω^)「なけりゃ探せばいいんだお!」
('A`)「は?」
( ^ω^)「だから、研究所の引越先を突き止めて、聞こうお!」
( ^ω^)「生まれてきた意味を!」
( ^ω^)「道中で何か見つかったら、それまででいいし」
( ^ω^)「何にせよ、僕達を捨てた奴を一発殴らにゃ気が済まんお!」
言い切って、笑った。
彼のよく見せる、朗らかな笑顔。
- 80 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:35:28 ID:sDtTyfYg0
- しえしえ
- 81 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:37:12 ID:z/QD7NhMO
-
( ^ω^)「それしかないお!」
从;゚∀从「全く…」
从 ゚∀从「俺もこいつみたいに楽天的ならなぁ」
('A`)「それはそれで困るかな」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあとにかく研究所を追うって事で…どうすんの?」
( ^ω^)「南に町があるらしいお、行くお!」
(;'A`)「お前、いつの間にそんな事まで…」
ξ;゚⊿゚)ξ「存外にできるわね…」
漠然とした行動に、ようやくはっきりした目的が見えた。
生まれてきた意味など、考えた事もなかった。
初めて、希望というものを持った気がする。
誰ともなしに笑い出し、小さな部屋に四人分の笑い声が満ちた。
- 82 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:38:36 ID:z/QD7NhMO
- 短いけど今日はここまで。
RESTさんに纏めていただいてます、ありがとうございました。
- 83 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:40:51 ID:sDtTyfYg0
- おつ、さらに期待!
- 84 :名も無きAAのようです:2012/09/18(火) 23:42:56 ID:GDfOxZJg0
- 乙!
意外にハインが一番繊細なんだな
- 85 :名も無きAAのようです:2012/09/19(水) 00:06:55 ID:QK5chHzA0
- のどかな村で良かった
しかしほんとペースはやいな、おつ
- 86 :名も無きAAのようです:2012/09/19(水) 00:29:10 ID:d8IYncFo0
- 名作長編の予感
期待してる
- 87 :名も無きAAのようです:2012/09/19(水) 06:18:45 ID:tSee1YnI0
- 乙
- 88 :名も無きAAのようです:2012/09/19(水) 11:59:59 ID:GkuoSYloO
- 乙
ハヤブサの人?
- 89 :名も無きAAのようです:2012/09/19(水) 12:46:12 ID:EDrImHAAO
- >>88
そうですよー
- 90 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:16:02 ID:b0NmTdBYO
-
第4話『鵺が啼く』
ブーンが聞いた町の方向へ歩く。
一泊の野宿の後、町が見えてきた。
( ^ω^)「何でも知ってる情報屋さんがいるらしいお」
从 ゚∀从「へー…」
('A`)「金はあるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ほとんどない」
('A`)「詰んでね?」
从 ゚∀从「なるようになる。そろそろあの服着るか」
('A`)「だな」
前の村で貰った服で体を隠す。
これで一応普通の人間には見える。
- 91 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:17:14 ID:b0NmTdBYO
-
着いた町は賑やかだった。
たくさんの人が行き来している。
いくつかある店のうち宿に入って受付に向かう。
从 ゚∀从「四人でーす」
(´・ω・`)「はいはい、一部屋で宜しいですか?」
从 ゚∀从「はい」
部屋の鍵を受け取る。
従業員がツンに目を向けた。
(´・ω・`)「あの、そちらの方は」
ブーンの背中でツンが体を固まらせる。
ξ;゚⊿゚)ξ「はい」
(´・ω・`)「足を怪我でもされてるんですか?よければ医者を紹介しますが…」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、いや…結構です。昔からですんで!」
(´・ω・`)「失礼しました。それではごゆっくり」
- 92 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:18:27 ID:b0NmTdBYO
-
部屋に入るなり、ツンがため息をついた。
ξ;゚⊿゚)ξ「危なかった…出かけるのは控えるわ、私」
('A`)「それがいいかもな。…さて情報屋に行くんだが、誰かツンについててやらないと」
( ^ω^)「じゃ僕が残るお。毛だらけで僕も危ないし」
実際、さっきまでブーンはフードを深く被っていた。
体毛や鼻をみられてもいけない。
从 ゚∀从「実際俺も羽とか落としたら怪しまれるよな…」
('A`)「俺だって眼と腕をよく見られたらアウトだ。全員綱渡りだろう」
- 93 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:19:27 ID:b0NmTdBYO
-
騒がしい町を歩く。
見たことのないような物もあり、ハインが目移りしているのが分かる。
('A`)「なんか町のずっと奥らしいぞ」
从 ゚∀从「あれか?」
ハインが指差しているのは、ひっそりと佇むぼろぼろの小屋。
今にも崩れそうに見える。
('A`)「怪しいな、行ってみるか」
フードを被りなおし、そこに向かった。
- 94 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:20:11 ID:b0NmTdBYO
-
ドアを開けると、一人の男が座っていた。
部屋の中には物が少なく、生活感はない。
/ ゚、。/「何だい」
('A`)「あんた、情報屋さん?」
/ ゚、。/「そうだよ。何が知りたい?」
案外簡単に教えてくれるようだ。
('A`)「北の研究所の移転先」
/ ゚、。/「ふむ」
手元の本をぱらぱらとめくる。
やがて頷き、言った。
/ ゚、。/「まずは情報料を頂くよ」
先払い、ということらしい。
- 95 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:20:52 ID:b0NmTdBYO
-
('A`)「いくらだ?」
/ ゚、。/「そーさなぁ…君達、特殊だからな」
从;゚∀从「!」
見抜かれている。
つい身構えた。
/ ゚、。/「君達の情報をおくれ」
('A`)「情報ってどんなだ」
/ ゚、。/「名前と……その服を脱いでくれたらそれでいい」
('A`)「俺はドクオ。こっちがハインだ」
言って、厚い上着を脱いだ。
奇妙な肌と黒い翼が露になる。
/ ゚、。/「…もういいよ、しまって」
从 ゚∀从「驚かないな」
/ ゚、。/「研究所の事は聞いてるからね」
- 96 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:21:50 ID:b0NmTdBYO
-
/ ゚、。/「どうやら研究所の主要メンバーは機材と験体を持って海を渡ったらしいよ」
急に言われて戸惑う。
慌てて頭に入れた。
/ ゚、。/「南の大陸に行ったとか。そこからは知らない」
('A`)「そこにはどう行けば?」
/ ゚、。/「ん、船かな。……ただ、身体検査があるからお勧めはしない」
/ ゚、。/「ここから西へ向かうと小さな漁村がある。密航しかないね」
('A`)「分かった。ありがとう」
/ ゚、。/「どうも、気をつけて」
- 97 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:22:54 ID:b0NmTdBYO
-
外に出るなりハインが深呼吸をした。
从 ゚∀从「何か疲れたな…」
('A`)「だな。……何だ?」
何やら町の方が騒がしい。
と、誰かがこちらに走ってきた。
深くフードを被っていて、顔はよく分からない。
('A`)「何だよ?」
( )「…お前…!」
向こうから叫び声が聞こえてくる。
( )「くそっ、どけ!」
(;'A`)「痛っ」
ドクオを突き飛ばして走り去っていった。
- 98 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:23:55 ID:b0NmTdBYO
-
また人が走ってきた。
今度は中年の男。
(;`・ω・´)「逃がしたか…!」
('A`)「あの、今のは」
(`・ω・´)「泥棒だ!妙な姿でな、よく分からん!」
('A`)「そうですか…」
悪態をつきながら男は去って行く。
男の背中が見えなくなると、また泥棒が戻ってきた。
从 ゚∀从「……何の用だよ、大声出すぞ」
( )「お前ら…研究所の奴だろう?」
(;'A`)「…」
( )「なら、今夜は寝るなよ…」
- 99 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:24:41 ID:b0NmTdBYO
-
('A`)「何だ、どういう」
( )「じゃあな」
ドクオに質問の時間を与えず、泥棒は走り去って行った。
从;゚∀从「…ま、帰ろう」
('A`)「…ああ。にしても、うまく情報が手に入った」
从 ゚∀从「あとは今夜か」
('A`)「何だろうな…」
帰ってブーン達に聞くと、泥棒は向かいの青果店を襲っていたらしい。
ξ゚⊿゚)ξ「夜なら、またハインは出られないわね…」
从;゚∀从「まあ、俺は宿で待機するよ…」
- 100 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:26:16 ID:b0NmTdBYO
-
――――――――――――
( ‐ω‐)
夜も更けてきた。
皆寝ることもできずに、中途半端にまどろんでいる。
異変は突然だった。
『―――――――――!!!』
大きな音に全員が飛び上がる。
(;'A`)「今のは…あっちの山か?」
ξ゚⊿゚)ξ「咆哮かしら。何にせよ行きましょう、きっとこれよ」
( ^ω^)「眠いおー…」
('A`)「どうせキマイラだ、ちゃっと終わらせて寝ようか」
三人がそろそろと宿から出、近くに見える山へ向かう。
从 ゚∀从「いってらっさーい」
从 ゚∀从「…」
从 -∀从「んー…」
- 101 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:27:01 ID:b0NmTdBYO
-
从 -∀从
彼らが出てしばらく。
ふと何か変だと気付いた。
体が、動かない?
从;゚∀从「誰だ!」
「薄情な奴らだな…全員行くか、普通」
見えない。
明かりがいつの間にか消されている。
从;゚∀从「…何だ、縛られてんのか?」
「そうだよ。皆は今頃相棒に夢中だ」
从 ゚∀从「お前、昼間の泥棒か」
「大概寝静まってる時間とは言え、ここは危ないな。…動くか」
体が持ち上げられるのが分かった。
どうしようもない。
- 102 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:29:10 ID:b0NmTdBYO
-
〈::゚−゚〉
(;'A`)「こいつか?」
山の開けた所にいたのは、人。
大柄で無表情だ。
〈::゚−゚〉「ガッ」
徐にドクオに拳を振ってきた。
すんでのところで回避し、事前に購入していたナイフを当てる。
が、弾かれた。
(;'A`)「…なんだ、固いぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ「牙も通らない」
再び突き出された拳をブーンが全身で受ける。
(;^ω^)「お゛っっ!!…石かお、この感じ…?」
(;'A`)「何だ、それ?」
- 103 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:30:35 ID:b0NmTdBYO
-
(;^ω^)「答えろお!お前はキマイラかお?」
〈::゚−゚〉「ギ」
(;'A`)「昼間と比べて随分無口になったな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも研究所って言ってたんならキマイラでしょ?」
('A`)「石は無機物だぞ!?」
ドクオ達は飽くまで『生物キマイラ』。
無生物とのキマイラなど見たことも聞いた事もない。
口論しているうちに間合いを詰められ、ドクオが蹴り飛ばされた。
(;'A`)「うわ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオ!」
(;'A`)「やばいぞ…こいつ、もしかして」
(;'A`)「体表全てが硬質化してるのかも…」
- 104 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:31:29 ID:b0NmTdBYO
-
从; ∀从「ぐおッ!!」
町外れに連れられてしばらく。
ハインは弄ばれていた。
何度となく蹴られ、転がる。
从;゚∀从「てめぇー…人が鳥目なのをいい事に……!」
「そう言うなよ。身分は同じさ」
从;゚∀从「何だよ、何で泥棒なんか…」
「うるせぇっ!!」
从;゚∀从「う゛っ!」
激昂した誰かの爪先が腹に突き刺さる。
胃液が出るのを辛うじて堪えた。
- 105 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:32:55 ID:b0NmTdBYO
-
从;゚∀从「くそ…」
「…お前まさか分かってないのか?」
「俺達はな、捨てられたんだよ!!」
「野生化した不完全なキマイラ、いくつか見ただろう?」
「あれらと一緒にだ……ッ!」
「まともに生きようにも、俺達は化け物だ!」
「実際、気味悪がられて忌み嫌われた」
「あいつらまともな人間は、俺達を化け物としか見ていない………!」
从;゚∀从「そんな事ない、現に怖がらない子供だっていたぞ」
「黙れ!」
- 106 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:33:44 ID:b0NmTdBYO
-
「…とにかく、俺達二人は泥棒で生きるしかないんだ」
从;゚∀从「じゃあ俺達なんて放っとけよ」
「憎いんだよ!」
また腹を踏まれた。
嫌な音を上げて口から液体が漏れた。
从; д从「…憎いって、何でだ」
「あれだけ俺達が疎まれたのに、お前達は普通に生活していやがる」
「それが!どうしようもなく!憎いッ…!」
言葉の節々で体を蹴られる。
抵抗したいが、縄が邪魔だ。
从; ∀从「……せめて、拘束ぐらい解きやがれ。お前の能力だろうが、これ」
「ああ、よく分かったな。そろそろ解いてやるよ」
「殺る前に、ヤってやるよ…」
- 107 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:35:18 ID:b0NmTdBYO
-
〈::゚−゚〉「ギッ!!」
石の腕が振り回される。
周りの木々をへし折り、風を切って迫る。
ドクオがどうにか跳躍で避けた。
(;'A`)「くっそ…長期戦は不利だぞ、これは」
三人は肩で息をしている。
石のキマイラは平然たるものだ。
腕を振ると、それを避ける。
元のスタミナの違いにこれだけの運動の差が出れば、こうなるのは必定と言えた。
ξ#゚⊿゚)ξ「このッ……!」
ツンが大きく伸び上がり、敵の顔に近づく。
触れた瞬間に横薙ぎに殴られ、べしゃりと地面にたたき付けられた。
- 108 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:37:03 ID:b0NmTdBYO
-
〈::"−゚〉「ギィィィィィッッ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「はー…」
敵の眼から一筋、赤黒い血が流れ出した。
〈::"−゚〉「ギアァァァァァァアッッ!!」
しかし片目を失い動揺したのか、目茶苦茶に暴れ始めた。
(;^ω^)「逆効果だお!」
(;'A`)「ぐあっ!!」
ドクオに向かって倒木が飛んできた。
正面から直撃し、吹き飛ぶ。
- 109 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:38:39 ID:b0NmTdBYO
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン、そこの木の後ろに!」
ツンの声を受け、ブーンがドクオを引きずって太い木の裏に避難した。
骨折などはなさそうだ。
(;'A`)「ブーン…」
(;^ω^)「大丈夫かお!?」
(;'A`)「ちょい休憩だ。……奴の右足を、ずっと削っといた」
(;'A`)「お前の力で何かぶつけたら、最低でも表面は砕けると思う」
( ^ω^)「分かったお。ナイフ借りるお」
( ^ω^)「いくお、ツン!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ!」
キマイラの前に踊り出る。
朝が近い。
そろそろ決めなければ。
- 110 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:39:44 ID:b0NmTdBYO
-
一方、拘束を解かれたハインは逃げていた。
四方八方から迫る何かを必死で避ける。
「避けるな、なかなか」
从;゚∀从「眼が見えなくてもな、空気の流れぐらいは分かるんだよ!!」
从#゚∀从「あとお前みたいな触手野郎に捧げるような処女は無い!!」
从#゚∀从「人をボコボコ蹴りやがって…!」
「よく喋るな、余裕あるのか」
足に何かが絡みついた。
持ち上げられ、そのまま背中から地面にたたき付けられる。
- 111 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:41:04 ID:b0NmTdBYO
-
从; ∀从「あ゛ぁ……っ!」
「痛いか。もうすぐ気持ち良くしてやるよ」
从; ∀从「………!」
从;゚∀从「はは、ははははっ…」
「何だ、頭でも強く打ったか」
从;゚∀从「最後に、質問だ」
从;゚∀从「…高いところとか、好き?」
「…何?」
从 ゚∀从「留め、刺しときゃ良かったなぁ」
从 ゚∀从「…ようやく、だ」
从#゚∀从「ようやく夜明けだ、屑野郎……!!」
- 112 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:42:12 ID:b0NmTdBYO
- 今日はここまで。
バトルなんかできないのに手を出した自分を殴りたいです。
あとこの世界の文化レベルは大体ドラクエ5ぐらいです。
- 113 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:43:20 ID:/DLBPHqA0
- おつおつお!
- 114 :名も無きAAのようです:2012/09/20(木) 23:59:49 ID:Ttb6S/xo0
- おつー!
- 115 :名も無きAAのようです:2012/09/21(金) 00:16:55 ID:rXWRkHD.0
- 続きが気になる引きで終わりやがって
乙乙!
- 116 :名も無きAAのようです:2012/09/21(金) 03:38:22 ID:XLZYUjw20
- ハインかっけえ
乙乙!!
- 117 :名も無きAAのようです:2012/09/21(金) 23:53:56 ID:iq927wt.0
- おつn
- 118 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 18:09:48 ID:K504oAUQ0
- 乙です
楽しみ
- 119 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:07:42 ID:sJnC7KbEO
-
第5話『人間性』
朝日を受けてハインが立っている。
その足元に、男を跪ずかせて。
从 ゚∀从「そんな顔だったのか」
(;^Д^)「クソ…」
从 ゚∀从「いかにも小物だな…蔦か?こりゃあ」
男の足は妙な方向に折れ曲がっている。
両腕がいくつもの蔦に枝分かれしているが、満足に動かせていない。
从 ゚∀从「お前の好みはまぁともかく…楽しみすぎたな?」
(;^Д^)「…女如きにやられるなんてな…」
从 ゚∀从「何だ生意気だな、もっかいフリーフォールいっとくか」
(;^Д^)「ま、待て…!」
从 ゚∀从「冗談だよ。とにかく町に突き出すからな」
(;^Д^)「イシは…相棒はどうしてる?」
从 ゚∀从「さあ?とにかく行くぞ」
- 120 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:09:01 ID:sJnC7KbEO
-
从 ゚∀从「…と、言っても俺じゃ運べないからな」
从 ゚∀从「お話でもしようぜ。ここなら山から帰って来る通り道だしな」
( ^Д^)「話って何だ」
从 ゚∀从「お前、何て言われてここに来た?」
( ^Д^)「…担当の研究者が『お前はもう用済みだ』って言ってな…」
( ^Д^)「殺処分される前に逃げて……で、まぁ、このザマだ」
そう言って、自虐めいた笑いを漏らした。
どうやら嘘はついていないらしい。
初めて、モララーが担当だった事が幸運だったことを知った。
- 121 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:09:46 ID:sJnC7KbEO
-
ふと、ある考えを思いついた。
从 ゚∀从「…なあ」
( ^Д^)「何だよ?」
从 ゚∀从「俺達さ、研究所を捜してるんだ。なんでこんな体になったのか知りたくて」
从 ゚∀从「お前らも一緒に行こうよ」
( ^Д^)「…ありがたいが、無理だな」
( ^Д^)「俺達は『実験されるため』にいたんだ…」
( ^Д^)「それ以外の僅かな可能性を見たいなら行けばいいが、俺はもういいんだ」
( ^Д^)「俺達にも俺達の生き方があるしな」
从 ゚∀从「……そっか…」
- 122 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:10:55 ID:sJnC7KbEO
-
( ^Д^)「ってかさっきからずっと足痛いんだが、どうなってる」
从 ゚∀从「ああ、明らかに折れてるよ」
(;^Д^)「マジかよ…怖くて見れねーよ」
从 ゚∀从「人を襲おうとした罰だろ」
( ^Д^)「上手くいくと思ったんだがな」
从 ゚∀从「いく訳ねーだろ。…あ」
ハインが何かを見つけ、飛び去っていく。
程なく事情を話されたドクオがやって来た。
('A`)「泥棒って二人組だったのか…。ボロボロだな、両方」
从 ゚∀从「頼むからもう一人にしないでくれ、録な目に遭わない」
- 123 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:11:40 ID:sJnC7KbEO
-
( ^Д^)「あいつは…?」
('A`)「石の奴か。足を傷めてるけど生きてるぞ…眼を潰したと思いきや瞼切っただけだったし」
('A`)「今頃、仲間が町長の所に運んでる」
( ^Д^)「…そうか」
从 ゚∀从「とにかくおぶってやってくれ、俺はもう無理だ」
('A`)「掴んで飛べないのか?」
从;゚∀从「体中が痛くてな、人を運ぶのはちょっと」
男を背に上げて三人で町の中心を目指す。
そこには人だかりができていた。
何とも、嫌な感じだ。
- 124 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:13:08 ID:sJnC7KbEO
-
二人で例の服を着て、人だかりの中に入る。
石のキマイラとブーン、それに背負われたツン。
倒れている石キマイラに気づいたドクオの背中の男が声を上げた。
(;^Д^)「イシッ!!」
背中から下ろされ、その近くに這い寄る。
それに気づいた群集がまたどよめく。
ブーンの背中に顔を埋めたツンが震えているのが分かった。
〈::"−゚〉「…ガ」
(;^Д^)「大丈夫だ。瞼を切っただけらしいし、足もすぐに治る」
( ^Д^)「…大丈夫だ」
('A`)「俺達はここまで。じゃあな」
( ^Д^)「ああ。お前らも頑張って生きろよ」
( ^Д^)「あと、お前……済まなかった」
从 ゚∀从「…ん、気にすんな」
- 125 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:13:53 ID:sJnC7KbEO
-
「待て」
宿に向かって去ろうとしていた四人を、太い声が引き止めた。
前に出てきたのは、大柄な男。
( ΦωΦ)「お前ら、何者だ?」
('A`)「お前こそ」
( ΦωΦ)「私はここの町長だ。…その服を脱げ」
('A`)「嫌だと言ったら?」
( ΦωΦ)「やむを得ずに捕縛だ」
('A`)「……よく言うよ」
目線を交わし、同時に四人が姿を現した。
群集のざわめきが一層大きくなる。
子供を後ろに隠す者さえいた。
- 126 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:15:18 ID:sJnC7KbEO
-
( ΦωΦ)「これからどうする予定だった」
('A`)「宿で怪我を治して、それから出るかな」
( ΦωΦ)「今すぐに出ていけ」
('A`)「何故」
( ΦωΦ)「化け物はこの町には必要ない」
('A`)「俺達は化け物じゃない」
( ΦωΦ)「では何だ」
('A`)「ただの普通の生き物さ」
( ΦωΦ)「私はそれを普通とは呼ばんな」
('A`)「ならば何をもって普通だ」
( ΦωΦ)「人間の形をしている事だ」
('A`)「俺は人間の形だが」
( ΦωΦ)「肌が異常であろう」
('A`)「なら皮膚病の奴は漏れなく化け物なんだな?」
( ΦωΦ)「病気と異常は違う」
- 127 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:16:13 ID:sJnC7KbEO
-
しばらく睨み合う。
淡々とした会話だが、両者の眼には明らかな憎悪が燃えていた。
ひゅう、と風を切る音がした。
いち早くドクオが反応し、ハインの前に腕を出す。
(;'A`)「……!」
その腕に、鈍く光る包丁が突き刺さっていた。
包丁を抜き、地面に落とす。
赤い血が溢れた。
はっきりと聞こえた。
化け物が、と。
( ΦωΦ)「どうやら民衆も黙っていないようだ」
(;'A`)「…一つ聞きたい。この二人はどうする気だ」
( ΦωΦ)「神に従い厳正に罪を裁くのみ」
(;'A`)「……厳正だってよ、聞いて呆れるね」
- 128 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:17:23 ID:sJnC7KbEO
-
堪え切れなくなった様子のツンが喋りだした。
その目には涙が溜まっている。
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、黙ってれば、何よ…!」
ξ#゚⊿゚)ξ「私達だって好きでこんなになったんじゃない!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「何にも解らない中、必死に生きてるのに!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「こいつら二人だって根は悪くない…!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ただ体が妙だってだけで!この扱いは何よ!!」
ツンの体が揺れた。
小さな音を立て、その体に当たったであろう石が落ちる。
遂に涙が溢れた。
ξ;⊿;)ξ「……あ……」
- 129 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:19:13 ID:sJnC7KbEO
-
誰が投げたかなど知らない。
だが、呪詛のような言葉は様々な声で聞こえてくる。
見ていた町長が冷酷に告げた。
( ΦωΦ)「最後だ。出ていけ」
ぽつりぽつり雨が降り始めた。
ξ;⊿;)ξ「酷いよ…」
ブーンが黙ってツンを抱え上げる。
また飛んできた石を軽く払った。
表情は読めない。
( ^Д^)「…本当に済まない…」
〈::"−゚〉「…」
('A`)「お前達のせいじゃない…」
ドクオもしゃがんで泣きじゃくるハインを立たせ、背負った。
宿ではなく、町の外に向かって歩く。
傷ついた体を引きずって。
- 130 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:20:18 ID:AgdsObwQ0
- 辛いな……支援
- 131 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:20:23 ID:sJnC7KbEO
-
町から出て、少し離れた位置に立ち止まった。
我慢の限界がきたのか、ツンとハインが声を上げて泣き出した。
( ^ω^)「ドクオ、腕は…」
('A`)「もう塞がった、心配はいらん。…当たったのが俺で良かった」
( ^ω^)「皆、心も体もボロボロだお…どこかで休まないと」
('A`)「…アテがある。ついて来てくれ」
ドクオを先頭にぬかるんだ地面を歩く。
…やがて、崩れかけた小屋が見えてきた。
いよいよ雨は強まっている。
- 132 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:21:58 ID:sJnC7KbEO
-
('A`)「あの泥棒が逃げたのがこっちだったんだ……すんなり見つかって良かった」
様々な物がある小屋の中に座る。
ツンはとりあえず泣き止み、恥ずかしそうにブーンから離れた。
ハインは未だ復帰できず、ドクオにしがみついて泣いている。
そのドクオも今ひとつどうしていいか分からずに、ハインの頭を撫でていた。
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「ハイン、ツン。ドクオも聞くお」
雨が小屋を打つ音と、ハインの嗚咽だけが聞こえる。
('A`)「…いい加減に泣き止めよ、もう大丈夫だろ」
从つ∀从「……うん…、ごめんな」
('A`)「謝んなくていい。何で皆して謝るんだ」
- 133 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:24:48 ID:sJnC7KbEO
-
( ^ω^)「…確かに、僕達は変だお」
( ^ω^)「でも、化け物って言われた時、悲しかったし、嫌だったお?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん…」
( ^ω^)「多分…だからこそ僕達は化け物じゃないお」
( ^ω^)「確かに完璧な人間とは違うけど…けど」
( ^ω^)「化け物って言われて嫌だった事が、僕達が化け物じゃない何よりの証拠なんだお」
从 ゚∀从「…そう、かな」
(;^ω^)「喋るの下手だから、こう、上手く言えないけど…」
( ^ω^)「…あんなのは気にする事ないんだお」
- 134 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:27:30 ID:sJnC7KbEO
-
( ^ω^)「人間じゃないなら、『人間性』を持とうお」
(;^ω^)「普通の人間ですら持ってないこともあるぐらいだから難しいお、でも…」
( ^ω^)「そうすれば、少なくとも化け物からは離れるお!」
('A`)「人間性か…」
( ^ω^)「元は人間なんだから、必ず持ってる物だお」
( ^ω^)「泥棒も謝ったし、僕達も大人しかったし…これでいいんだお」
話が途切れた。
眠る気にもならずに、ただ黙っていた。
二回、控え目なノックが響いた。
('A`)「…?」
(`・ω・´)「どうも…」
確か、青果店の店主。
- 135 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:29:01 ID:sJnC7KbEO
-
(`・ω・´)「…あの、すみませんでした」
('A`)「…何がですか」
(`・ω・´)「もちろん、町の人の無礼についてです」
( ^ω^)「いいんですお、気にしませんお」
(`・ω・´)「…うちの町の者は、町長には逆らえません」
(;`・ω・´)「だから、その」
(`・ω・´)「投石なども、きっと…仕方なく」
('A`)「よしてください」
(;`・ω・´)「…すみません」
- 136 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:30:16 ID:sJnC7KbEO
-
男は、大きな袋を差し出した。
中には食糧と少しの金が入っている。
宿に置いてきたものだ。
(`・ω・´)「弟から預かってきた物です」
(`・ω・´)「奴も来たがっていましたが、如何せん宿は離れられないしいらしく…」
('A`)「ありがとうございます、助かります」
(`・ω・´)「私からはこれを」
次の袋を差し出す。
(`・ω・´)「干した果物です。…長旅に向きますので、どうか」
(;'A`)「すみません、何から何まで」
(`・ω・´)「いいんです、こんなことは…大した事じゃないです」
- 137 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:31:44 ID:sJnC7KbEO
-
(`・ω・´)「あなたがたの受けた苦しみは、私達には到底分かりません」
(`・ω・´)「でも、少なくとも二人」
(`・ω・´)「この町の私達は、あなたがたに感謝していますから…」
( ^ω^)「こちらこそありがとうだお」
( ^ω^)「万が一ここにいるのを見られたら危ないから、早めに帰るお」
(`・ω・´)「そうさせて頂きます。…本当にありがとうございました」
(`・ω・´)「最後に、伝言です」
(`・ω・´)「その小屋の物は、自由に持って行っていいそうです。……では、これで」
男は一礼し、酷い雨の中を走っていった。
- 138 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:32:01 ID:Vd2IKoZU0
- こういうのは玉ねぎよりも目に染みるな
- 139 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:33:18 ID:sJnC7KbEO
-
( ^ω^)「ツンとハイン、見たかお?」
(*^ω^)「ちゃんと信じてくれる人もいたお!」
('A`)「静かに…」
見ると、二人は抱き合うように眠っていた。
規則的な寝息が聞こえる。
('A`)「泣き疲れたんだ。…子供みたいだな」
( ^ω^)「僕達も寝るお、いい加減疲れたお」
('A`)「だな」
二人も転がり、幾許もしないうちに眠った。
心の中のもやもやとした何かを無視し、明日に備えて。
- 140 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:34:13 ID:sJnC7KbEO
- 今日はここまで。
読んでいただきありがとう。
- 141 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:35:23 ID:Vd2IKoZU0
- 乙
連日投下凄いな
- 142 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:35:48 ID:arNn20BM0
- 感情移入しすぎて胸糞悪くなってたから少しでも救いがあって良かった
乙です
- 143 :名も無きAAのようです:2012/09/22(土) 23:42:55 ID:Xg8qLGlI0
- おつ
- 144 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 13:04:04 ID:RAtxccec0
- さ、削除だと…
頼むからまた戻ってきてくれよ
- 145 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 13:51:00 ID:ennfzC560
- 悲しい。
また書いて欲しいな
- 146 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 14:58:46 ID:8OLWknhY0
- いつでも戻って来いよください
- 147 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 21:44:16 ID:nCOPrIMo0
- 残念だ
またいつか読ませてくれ
- 148 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 23:26:59 ID:0zihcENY0
- また違う話でもいいから書いて欲しいな
- 149 :名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 16:53:07 ID:Bkqz.KPk0
- これ好きだったよ
お疲れさん
- 150 :名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 17:12:59 ID:h7RMPQmc0
- まじか
お疲れ様
いつでも待ってます
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■