■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■
('A`)freaks!のようです- 1 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 00:55:55 ID:URyaCFXs0
-
*****
見世物小屋っつう言葉を、聞いたことはあるかい。
今はもう、殆ど見掛けない、昔昔の娯楽が一つ。
例えば、ひとの群がる縁日、薄暗がりに広がる通り、普段は何でもないような、ぽっかり穴が空いたような空き地。
奴らが選ぶ営業場所は、どこも暗くて湿りがきつい。
空気の澱んだ、いかがわしげな暗がりを好む。
*****
- 2 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 00:57:20 ID:URyaCFXs0
- *****
何故かって、そういう所に集まる輩が、連中にとって、格好のカモになるからさ。
別に奴らを否定している訳じゃあない。金を稼ぐってのはお前が思うよりも存外大変だ。ましてや、あいつらみたいな存在には、尚更。
…………見世物小屋を見てみたい?止めとけ止めとけ。ろくなもんじゃねえぞ。あいつらの仕事の大半は口回しと虚言の上手さで賄われてる。
ふらふら行ったところでな、手酷くぼったくられんのがオチだ。カッパのミイラだの、蛇を喰らう女だの、馬鹿馬鹿しい……
益々行ってみたくなった?案外趣味が悪いんだな、お前……
*****
- 3 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 00:59:08 ID:URyaCFXs0
- *****
………あー、そういやあ、一つ、言い忘れていた。
あいつらの言うことの大概は嘘と誇張で出来ている。ああ、これは本当に。軽々しく信じちゃいけねえ。本当だ。
……しかしな。
ごく、ごく一部、ほんのひとつまみだけ、嘘をついていない奴らがいる。
ありのまま、言うがままに、全てをさらけ出している奴らがいる。
俺はそいつらを、知っているんだ。この凡庸な、煤けた人生で一回こっきり、目で見た。話を聞いた。
*****
- 4 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 00:59:40 ID:f9RZvAGk0
- 楽しみにしてたぜ
- 5 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:00:44 ID:KXOAUDRY0
- いやっほぅ来たな!
嘘予告スレでかぶったとか言ってgkbrしてた奴だが正直めっちゃ読みたかったから嬉しいぜ
支援だ
- 6 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:02:53 ID:URyaCFXs0
- *****
誤解の無いように言って置くが、これは、俺の個人的な意見だ、たった一回話しただけの、知り合いにすら届かない、細い糸から得た印象だ。
あいつらは何にも、悪い事はしていない。明るくて社交的、実に愉快な連中だよ。ああ、そうとも。
でもなあ、あんた。
あいつらは、自分たちの事を、人間だと言う。
俺となんにも変わらない、おんなじ人間だって言うんだ。
*****
- 7 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:06:23 ID:URyaCFXs0
- *****
まるで子供が、はしゃぐみたいに、でも何故か、涙を浮かべてさ。
嬉々として話をする、奴らの目を見たその時から、
俺は、あいつらを、到底、同じ人間同士であるとは、思えなくなっちまったんだ。
*****
- 8 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:07:44 ID:aJvHR5GYO
- >>5
お前良い奴だな
支援
- 9 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:08:58 ID:URyaCFXs0
- ****************
( ∀ )「人ならざる者だなんて、本当失礼しちゃうよねえ。ぼく喋ってるじゃん。二足歩行だよ。ライターだって使える。考え事だってできる。九九の暗唱も楽勝だ!ほうら、人間過ぎる位に人間。ちょっと羽根生えてるけど」
****************
- 10 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:10:36 ID:URyaCFXs0
- ****************
( _ゝ )「別に、人間に固執するような謂れは、無いよ。人間だと認められなくたって、俺は今が、いちばん幸せだ。心は既に満ち足りている。水を差すような【普通】は、必要無い」
****************
- 11 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:12:38 ID:URyaCFXs0
- ****************
ξ 撿 )ξ「人間と、それ以外を区別する境界だって、所詮は、人間が決めた物でしょう?間怠っこしいことはいいから、あなたは、あなた自身は、どう思っているのかしら。私達は、あなたから見た私達は、人間?それとも、」
****************
- 12 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:13:49 ID:URyaCFXs0
-
****************
「「「ばけもの?」」」
****************
- 13 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:14:06 ID:NMpNXqvg0
- 楽しみにしてた、支援!
- 14 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:15:18 ID:URyaCFXs0
-
「俺は、」
( A )「おれは、お前らのことを、人間だとは、思わない」
.
- 15 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:17:34 ID:URyaCFXs0
-
('A`)freaks!のようです
prologue.
【空想問答】
- 16 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:20:11 ID:URyaCFXs0
- こんばんは、結局投下してしまいました
内心ガクガクです。手の震えが止まらん
今回はプロローグですので、お話の始まりは第一話からになります
支援ありがとうございます。震えが加速したりました!
- 17 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:22:47 ID:NMpNXqvg0
- >>16
おつ!
- 18 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:25:24 ID:URyaCFXs0
- トリップ付けたほうがよいのですよね
- 19 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:26:19 ID:kWCjr39E0
- 俺からだとξ ・ )ξになってるが大丈夫か?
- 20 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:28:43 ID:f9RZvAGk0
- 乙!
次も楽しみにしてる!
ξ゚⊿゚)ξは文字化けしてるみたいだな
- 21 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:29:14 ID:KXOAUDRY0
- 乙!続き期待
- 22 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:29:16 ID:URyaCFXs0
- 何故か2CHmateからだとツンの口が反映されない
何故
- 23 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:30:28 ID:CJPlhbmE0
- 乙乙楽しみにしてたから嬉しい
酉は好きにすればいいさ
- 24 : ◆/VnM9c0pK2:2012/09/06(木) 01:32:55 ID:URyaCFXs0
- 酉付いたかな
ツンの口について対策を考えなければ
次回は今週末か来週辺りに投下します
精進致します
- 25 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 01:45:21 ID:aTxXeej60
- おつ! 嬉しいぜ!
ツンの⊿の件は4月の総合でも出てた
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1333773035/709-726
2chmateからだとダメらしい
アンドロイドでの文字化け結構見るけど解決法があるのかどうかよくわかんない
あんまり表に出てこない話だし
- 26 : ◆/VnM9c0pK2:2012/09/06(木) 01:48:33 ID:URyaCFXs0
- >>25
ありがとうございます!2chmate経由はアウトなんですね……
色々やってみて駄目ならブラウザからの投下にしますね
お手数おかけしました
- 27 : ◆/VnM9c0pK2:2012/09/06(木) 02:07:28 ID:URyaCFXs0
- テスト
ξ゚撿゚)ξ
これで行けるか
- 28 : ◆/VnM9c0pK2:2012/09/06(木) 02:10:08 ID:kWCjr39E0
- >>27
まだ化けてる@Jane
酉もわかるぞw
- 29 : ◆FstLaIb4L6:2012/09/06(木) 02:12:00 ID:URyaCFXs0
- おい
おい……
おとなしくブラウザから投下するよ………
酉バレはええよ……
- 30 : ◆FstLaIb4L6:2012/09/06(木) 02:16:35 ID:URyaCFXs0
- ξ゚⊿゚)ξ
これでどうすか
- 31 : ◆FstLaIb4L6:2012/09/06(木) 02:18:32 ID:kWCjr39E0
- お、化けてない
酉はひらがな4文字とかやめれw
- 32 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 02:18:50 ID:CJPlhbmE0
- おkJaneからは正常に見えるぞ
- 33 : o(^o^)o:2012/09/06(木) 02:23:05 ID:URyaCFXs0
- 化けは直った
酉ってどうすればいいんだよ……
こちとらAndroidしか端末が無いよ……
- 34 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/06(木) 02:27:43 ID:URyaCFXs0
- これでいかがでしょうか
根本的なところで間違えていました
恥ずかしくて死にそうです
これだから新参は
- 35 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 02:27:48 ID:NMpNXqvg0
- 仮トリップを作成してくれるサイトがあるから、
そういうとこで作ってできたものをぐぐって何も出てこなければ
それを使えばいいんじゃね?
- 36 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 02:29:32 ID:kWCjr39E0
- おkヒットしない
期待してるぜ!
- 37 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 02:30:20 ID:NMpNXqvg0
- おっと失礼、出来ていたのか
うん、たぶん大丈夫だと思われ
以降の投下、期待してるぜー
- 38 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/06(木) 02:32:28 ID:URyaCFXs0
- 新参のてんてこまいにお付き合いくださり誠にありがとうございました
やっと手の震えが収まりました
支援、乙ありがとうございます
次回はなるべく早めに投下します
お騒がせ致しました
寝ます!
- 39 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 14:32:25 ID:tQ9F/I5c0
- 乙
フリークと聞くとダレンシャンが出てくる俺ガイル
- 40 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 20:32:21 ID:uzpfVLn.0
- >>39
俺もだ。
こういうの結構好きだぜ。乙。
- 41 :名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 23:37:00 ID:KXOAUDRY0
- 俺はやっぱフリークス怪物團だな
内容それっぽいし>>1も観たことあったりする?
あれは色んな意味ですげぇ
- 42 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 18:19:43 ID:HOIbpaqY0
- フリークスは映画の方の印象が強いのでタイトルの元ネタっぽくなっています
でも同じくらいイレイザーヘッドも影響強い
今夜くらいに投下します
- 43 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 19:03:54 ID:j8FdVxpE0
- おー、全裸待機してる
- 44 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 20:59:41 ID:72KXx/sY0
-
母ちゃんがぶっ倒れた。
ひとりに割り当てられるには、相当無茶な仕事量をこなしていたらしい。
検査結果は芳しくなく、あれよあれよと流されて入院。
体調の不良は続き、しばらく働けないらしく。
こんな時に頼れるような父親は、生憎、長い間行方知れずで連絡も着かない。
- 45 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:01:00 ID:72KXx/sY0
-
病院で横たわる母ちゃんの首は折れそうに細くて、母ちゃんの寝ているベッドの色に負けないくらい、まるで漂白したかのように、白かった。
挙げ句、私のことはいいから、ドクオはお家で待っていてね、無理はしちゃだめよ、だと。
無理してたのはお前の方だろ、クソババア。
今まで散々受けてきたはずの子供扱いが、なんだか頭にきて仕方ない。
仕事、してやろうじゃねーか。
…………とりあえずは、バイトから。
- 46 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:03:04 ID:72KXx/sY0
-
('A`)freaks!のようです
第一話 上
,
- 47 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:04:12 ID:72KXx/sY0
-
とは言ったものの。
('A`)「俺は、炎天下、職安の外で、一体、なにをしているのだろうか」
('A`)「俺は、なにをしているのだろうか」
('A`)「焦げる」
- 48 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 21:05:46 ID:BtVq2mRkO
- 来たか
支援
- 49 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:07:59 ID:72KXx/sY0
- 鬱田さん宅のご長男、穀潰しのドクオくんこと俺は、只今大絶賛求職中である。
世間で言うところの「にーと」に値する存在の俺。当然のことながら、生涯一度だって自分で金稼ぎなんかしたことはない。
空調の効いた自分の部屋で、パソコンをいじりつつ、腹を掻く。
1日三回運ばれてくる食事を平らげ、再度パソコンに向かってキーボードを打ち込む。
ネトゲで培った経験により、無駄に上がるネカマスキル。
現実の他人と話す機会を失って、徐々に下がる対人スキル。
母ちゃんは何にも言ってこなかったから、ただ、与えられるだけの毎日を享受して暮らす。
単調な日々の中、デスクトップに映る、僅かに変化してゆく情報を掬い取りながら生きる。
それが、俺にとっての「日常」だった。
- 50 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:09:45 ID:72KXx/sY0
- 今となっては、そんなだらけた生活も、したくたって出来ない訳だが。
懐かしいなあ、群がる男に媚売って、レアアイテムを搾り取る日々。
俺の為に、貯金まで崩して貢いでくれた彼は元気だろうか。
あの時は♂バレして逃げたりしてごめんね。
- 51 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:11:37 ID:72KXx/sY0
-
………………んな下らねえことを考えている場合ではなかった。
金が必要なのだ。
おしごとをさがさなければならないのだ。
,
- 52 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:17:31 ID:72KXx/sY0
-
('A`;)「…………」
('A`;)「溶ける。しぬ」
母ちゃんが倒れてから早1ヶ月。
色々なバイト先に出向いては、使えない奴め、と首根っこ掴まれて追い出された。
ビル清掃の仕事でゴンドラの床が半ば外れた時は、咄嗟に来世への転生を祈った。
居酒屋のバイトでは客にカツアゲされたり。
ゲーセンのバイトではプライズを厨房に盗まれかけたり。
文字通り踏んだり蹴ったりの事案ばかりが起きる。
真面目に真面目に働いて、波に乗って、これからだって時に、色々な面倒に巻き込まれる。
- 53 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:20:28 ID:72KXx/sY0
-
今まで母ちゃんの脛しゃぶって生きてきたツケが回ってきたんだろうけどさ。
('A`)(鈍臭えのは自分でも分かってるけども)
('A`)(……正直、きついもんはあるよな………)
社会から必要とされない俺。
何を任されても失敗する俺。
他人から浴びせられる「役立たず」という響きは、
ひどく、惨めな心地がした。
- 54 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:22:52 ID:72KXx/sY0
-
('A`)(……このまま突っ立ってても仕様がない)
('A`)「……帰ろ」
今日も今日とて、働き口は見つからず。
職安から離れて、足取り重く、家路を進む。
先程まで肌に突き刺さるようだった日差しは、いつの間にかナリを潜め、雲間に隠れるように、橙色の光を放っている。
久々に外に出て、何度目だろう、見かける夕暮れ。
('A`)「………………」
沈んだ気持ちは、そう軽々しく、晴れてはくれない。
- 55 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:24:58 ID:72KXx/sY0
-
びちゃり。
('A`)「うお、生暖かっ」
('A`)「…………雨か」
('A`)(鳥のうんこかと思った)
首筋に伝う粘性の無い液体。空を見上げると、色は変わらぬ橙だったのだが、さっきまで見当たらなかった灰色の雲が、粘土の塊のように、ごろりとまばらに、ちらほら、目に入る。
- 56 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:26:37 ID:72KXx/sY0
-
コンクリートで舗装された道路に、小さな点模様が重なっていく。
見る間に黒く染まる道、音を立ててぶつかりあう水。
('A`)「…………通り雨か……?」
徐々に増す落下する雨粒の勢いは、ぽつぽつとかしとしととかそんなレベルでは収まらない感じに、地面へ、俺へと襲いかかる。
粒の一つ一つが重く、身体に当たる度、妙な衝撃と、鈍い音が響く。鈍痛。
('A`)「……傘、無い」
- 57 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:27:51 ID:72KXx/sY0
-
ゆっくり慌てて、辺りを見回す。
少し歩いた先の道端に、暗く光る、電話ボックスが佇んでいるのが、見えた。
('A`)「今時電話ボックスって」
('A`)「しかもこんな道路に一個だけ」
('A`)「……あり得る話だな、田舎なんだし」
少し、雨宿りをしていこう。
帰りに母ちゃんの病院へ寄ろうと思っていたから、遅れる連絡もしておかなければ。
にわか雨なら、止むのは早いだろうし。
('A`)「お邪魔します……うお、黴臭え」
('A`)「タウンページ……大分前の版なんだな」
('A`;)「いつから使われてないんだ、これ」
母ちゃんにゲリラ豪雨に降られた旨をメールで送る合間に、電話ボックスに備え付けてある諸々の物をいじくってみるが、随分使われていないらしく、動いてくれるような挙動はなかった。
- 58 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:30:05 ID:72KXx/sY0
-
('A`)「…………どうすっかなあ……」
('A`)「……疲れた…………」
雨の叩きつける轟音が、薄いガラスを隔てて、骨に直接伝わってくる。
所々泥だか黴だか分からない汚れの付着した壁に体重を預けて待とうとしても、上手く足に力が入らない。
昼間、直射日光をいやと言うほど浴びていたのが仇になったか。
朝より少しだけ赤くなった肌が、どこかに触れる度、ひりひりした感覚に見舞われる。
- 59 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:32:58 ID:72KXx/sY0
-
なんだか頭もくらくらするし。
('A`)「日差しは体力奪うって、聞いたことがあったような」
('A��)「…………ねみい」
('A- )「……雨………止んだ……………」
(-A- )「…………………………」
- 60 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:34:52 ID:72KXx/sY0
-
視界を、蝕む、緑色。
意識が遠のいてゆくのだけが、分かった。
,
- 61 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 21:35:17 ID:TNQMvDaY0
- しえ
- 62 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:36:23 ID:72KXx/sY0
- *****
ああ、そうだ。
緑色。
ここがきっと、最初の分岐点だったんだ。
*****
- 63 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:38:15 ID:72KXx/sY0
-
*****
(-A- )「……………母ちゃん、それはチョコパイじゃなくてエンゼルp………」
(-A`)「………………!」
('A`;)「うわ、うわ、ねてた、ヤバい、うわあ…………」
('A`;)「あー………最悪だ…………」
- 64 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:41:23 ID:72KXx/sY0
-
飛び起きた。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。まだうっすらとしか開かない、閉じっぱなしだった目の隙間から、仄かな光が入り込む。
コンタクトをしたまま寝ていたからか、瞼を上に上げようとまばたきをしようと、曖昧な景色が晴れることは無く。
密閉された箱の中でずっと身体を動かさなかったせいだろう、着ていたTシャツは重く湿っていて、背中を汗が走るのが解った。
無理な姿勢で寝たからか、身体の節という節を動かすごとに、ぱきぱきと景気の良い擬音が耳へ入りこみ、痛くはないのに痛々しい。
寝起きできちんと機能しない、焦点の外れた目を必死にこすって、現在、俺のいる場所を、確認しようと、する。
- 65 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 21:42:02 ID:xWpxYMt20
- 来てた!支援
- 66 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:43:26 ID:72KXx/sY0
-
眠る前の俺の記憶が、とち狂ったりしていなければ。
俺は古くて汚い電話ボックスで、寝ていたはずだったのだ。
なのに。
('A`;)「……………………」
('A`;)「………………あ?」
目に飛び込んできた今の俺を包む風景は、
擦り切れた畳の広がる、小さな冷蔵庫の唸り声も聴き慣れた。
見違えようの無い、俺の家の情景だった。
- 67 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:44:23 ID:72KXx/sY0
-
第一話 上 おわり
- 68 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:46:50 ID:72KXx/sY0
- 今回はここまで
まだ全然フリークなんて出てきませんね
どくおくんのたのしいしゅうかつにっきが綴られていますね
- 69 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 21:48:18 ID:JdYcD44UO
- 乙乙
- 70 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 21:49:47 ID:72KXx/sY0
- 次回は来週末辺りに更新しようと思います
拙い文章の支援本当にありがとうございます
腹痛が主張を強めました
- 71 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 21:55:06 ID:b0kQvY3U0
- おつー!
楽しみにしてる!
- 72 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/07(金) 22:03:28 ID:72KXx/sY0
- 怪奇夜話の投下を楽しみさびしみながら書き溜める
- 73 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 22:17:02 ID:bFHKKiow0
- 乙
wktkしちゃうわ
- 74 :名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 22:38:15 ID:BtVq2mRkO
- 乙乙
話がどう動くか、どんな風にフリークが関わってくるか楽しみだ
- 75 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/09(日) 10:41:40 ID:J7td3qDY0
- 投下予定日早まります
今日から火曜日までの間に必ず!
- 76 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/09(日) 20:15:13 ID:1c.01T.I0
- 今日の一時くらいを予定
- 77 :名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 20:56:09 ID:ri7BwHMc0
- よっしゃ!待ってんぜ。
- 78 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:00:28 ID:vZhiwWjQ0
- *****
本当は、うっすらと、感じ始めていた。
この世に産み落とされてから、少しずつずれてゆく、日々の、歯車。
一度がたりと音がして、大きく揺れた、日常の前輪。
まだ回り続けている後輪の軋みを感じながら、石混じりの生活を、ゆっくりと、進んでゆく。
進み続けなくてはならないのだ。
例え、全てが、なんのことはない、些末な偶然の、結果であったとしても。
*****
- 79 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:01:29 ID:vZhiwWjQ0
- *
('A`)freaks!のようです
第一話 後編
*
- 80 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:02:18 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`)「……………………」
('A`)「……酔っ払ってたわけじゃねえし」
('A`)「どうなってんだこれ」
立ち上がって、先ず、ここは、本当に自分の部屋なのだろうかと、部屋の中を見渡す。
六畳の部屋に薄型テレビが一台。母ちゃんが入院した夜から、ろくに洗っていない洗濯物が、部屋の隅の方に固まっている。
随分と使い古された赤褐色の座布団は、端の方の縫い目がほつれかけていて、幾度も尻に敷かれたせいだろう、圧縮されたかのように、ぺたんこになっていた。
間違いない。紛れもなく、十中八九、俺の家
だ。
- 81 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:03:18 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`)「服……は、別に着替えてないし」
('A`)「……カバンの中身も昨日と同じ……」
('A`)「夢遊病だったのか?俺は」
('A`)「……無いな」
しかしながら、夢遊病以外にこの状況を筋立てて説明出来るような考えが浮かばない。
ふわふわと、他に何か要因が無いか考えつつ、昨日使っていたカバンをまさぐり、携帯を取り出そうとする。
- 82 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:03:59 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`)「……あれ?」
('A`)「無い」
本来なら昨日使用したまま、カバンに突っ込んだままにしておいたはずの携帯が、無い。
ああやっちまった、と頭の隅で思うと同時に、ひやりと冷たい感覚が、胸を這う。
俺は本当に、ひとりで帰ってきたのだろうか。
誰かに運ばれて、家へと移動させられたのではないか?
- 83 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:04:45 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`;)「……うーん」
('A`;)「有り得ないよなあ」
('A`)「多分」
仮にそうだったとしても、携帯電話のみを盗んで帰ることなど、有り得ない。そもそも、俺の家を知っていてここまで運ぶ奴がいるという可能性自体、限り無く低いのである。
家の中にまで入れたとしても、昨日から少しも変わっていない家の中を荒らされた、などとは言えないだろう。
……ものを良く考えるというのは、俺にはあまり向いていないな、と、実感した。
- 84 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:06:01 ID:vZhiwWjQ0
-
此処で座って待っていても、無くした携帯電話が歩いて帰ってくる筈もない。
まずは着替えて、飯を食って、携帯の使用を、停止してもらって。そいでまた今日も、仕事を探そう。
いつもと違う出来事が起こったとしても、この、だれたせいかつが、変わってくれるわけじゃあねえし。
話のタネが、少し増えただけだ。
('A`)「………クソが」
心の端にも思ってもいなかった罵倒が、徐に口をついたのは、どうして、だったんだろう。
- 85 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:07:02 ID:vZhiwWjQ0
- *****
着替えた。
飯を食った。
歯は磨いた。
顔も洗った。
今日も安定の黒いスウェットに、緩くもきつくもない、紺色のジーンズ。
いつも過ぎるくらい、いつもの朝だ。
- 86 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:07:56 ID:vZhiwWjQ0
- 靴を履く為に、玄関に回る。
スニーカーに足を差し込み、靴ひもを結んでいると、
ぴんぽん。
ドアベルが、鳴った。
('A`)「……朝っぱらからなんなんだよ」
('A`)「……昨日から、調子狂うな」
本当に、昨日から、様子が変だ。
- 87 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:08:59 ID:vZhiwWjQ0
- 良い年したおばさんと、しなびた外観の男が二人。そんな金の無さそうな家庭に、営業や勧誘など、滅多にやってこない。
更に言えば、このアパートの住人間に、親しい繋がりなんて、全く無いと言ったっておかしくはない。
誰だろう。
('A`)「……ハイ。只今」
多分聞こえないだろ、くらいの声で返事をした後、玄関のドアを開く。
- 88 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:10:13 ID:vZhiwWjQ0
-
('、`*川「……あっ」
('、`*川「……鬱田さん?鬱田ドクオさん?ですよね」
……………。
こいつ、誰だっけ。
ああ、隣の部屋の、伊藤さんだ。名前は、忘れた。
何の用だ。
('A`)「……はあ。そうですが、うちになにか」
('、`*川「あ、はい、実は」
('、`*川「昨日、私の部屋に、鬱田さんの携帯を預かっていてくれってひとが……」
……有り得ない方の予想が、当たってしまった、らしかった。
- 89 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 01:10:32 ID:BpLXXJxE0
- 支援
- 90 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:11:37 ID:vZhiwWjQ0
- ('、`*川「これ、なんですけど……」
差し出されたのは、黒くて小さな塊。
所々傷のついた、確かに自分の携帯電話だ。
('A`)「……あー」
('A`)「俺のっすね」
('ー`*川「……!良かった!もし違っていたらどうしようかと思ってました」
('A`)「伊藤さん、が何故、俺の携帯を?」
('、`*川「ああ、私が……拾った訳では、ないんですが」
- 91 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:13:15 ID:vZhiwWjQ0
-
('、`*川「実は、昨日の夜中、一時くらいかな?ドアをノックされて、あっでも、呼び鈴はあったんですけど、鳴らなくて、直接、ノック」
('、`*川「何かなと思って、ドアのレンズを覗いたら、太めの男の人と、隣に中学生くらいの女の子が立ってまして」
('A`)「はあ、それで」
('、`*川「怪しいとは思ったんですが、女の子が居るから大丈夫かな、と思って、ドアを開けたんです」
- 92 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:14:23 ID:vZhiwWjQ0
- ('、`*川「そうしたら、男のひとが、このケータイを差し出してきて。夜分遅くにすみませんが、このケータイを、朝になったら隣の鬱田さんに届けてあげて欲しい、って言われました」
緊張していたのだろうか。最初は固くぎこちなかったのにも関わらず、喋れば喋る程、伊藤さんの口は滑らかになっていく。
夜遅くなのに他人の携帯を預かってくれる、親切な女性だった。
('A`)「……そうでしたか」
- 93 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:15:54 ID:vZhiwWjQ0
- ('A`)「お手数おかけしまして、申し訳ありませんでした。携帯、ありがとうございます」
('ー`*川「いえいえ、いいんですよ、これくらい。丁度今日は仕事が休みでしたし、なにもあぶないことはありませんでしたし」
それでも、怪しい男と引き合わせてしまったのは、俺の責任だ。
少し、胸が痛む。
('、`*川「あ、あと、もうひとつ」
- 94 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 01:16:15 ID:MHkUVfmg0
- 待ってた支援
- 95 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:16:54 ID:vZhiwWjQ0
- 伊藤さんが、羽織っていた灰色のパーカーのポケットから、なにかを取り出す。
……紙?
白い、紙切れのようだ。
('、`*川「ケータイを男のひとから受け取った後に、女の子から渡されました、これ」
手渡された紙は、案外ぞんざいに折られていて、小さかった。
中を開いてみると、走り書きのような汚い文字で、これまた小さく、数字が羅列されている。
- 96 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:17:42 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`)「……電話番号?ですか」
('、`*川「はい。よければ連絡して欲しい、って仰っていました」
('、`*川「個人的に、話がしてみたい、って」
- 97 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:18:41 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`)「……そうですか……。二つも用事を預かっていて下さって、なんてお礼を言えばいいか」
('ヮ`*川「大丈夫ですって、お隣さんでしょう?このアパートはそういう、積極的に関わり合う、みたいなのはありませんでしたから、ちょっと嬉しいんです、この、お裾分け!みたいな感じ」
('ー`*川「とはいえ、ひとから頼まれた用事ですけどね。これからお仕事ですか?頑張って下さいね!」
('A`)「……はい、本当にありがとうございました」
('、`*川「では、また!」
- 98 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:19:44 ID:vZhiwWjQ0
-
元気に声を出した伊藤さんは、振り向いて、自分の部屋に帰ってゆく。
……そういえば、随分久しく、事務関係以外で、他人と会話をした気がするな。
なんだか、鬱々としていた頭が、少しだけ、軽くなった。
('A`)「これから行くのはお仕事じゃなくて、お仕事探しなんだけどな」
('A`)「それはそれで置いておくとして」
('A`)「これどうしよ」
- 99 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:20:28 ID:vZhiwWjQ0
-
手の上に転がっている、一枚の紙。
個人的に話がしたいとか?誰が信じる、そんな話。
いきなり拾われて、多分部屋に勝手に入られて、携帯は隣人に預けて、俺には何も言わず去る。
行動の意図が不明に過ぎる。怪しいにも程がある。
……でもなあ。
- 100 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:21:09 ID:vZhiwWjQ0
- ('A`)「電話ボックスで寝こけてた俺を、運んでくれたのは本当らしいしなあ」
('A`)「お礼の電話くらい、しなくちゃなんねえかな」
('A`)「……マンドクセ」
- 101 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:22:16 ID:vZhiwWjQ0
- *****
そう、覚えている。
ここが、二度目の選択。
……ここで下した判断が、正しい物だったのかどうかは、今も、わからない。
この時はまだ、始まってすら、いなかったから。
*****
- 102 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:22:59 ID:vZhiwWjQ0
-
結局、電話を、かけることにした。
仮にも行き倒れていた俺を、助けてくれたのは事実だし。
携帯電話も戻ってきたし。
なにか悪いことを、された訳ではなかったし。
電話をしない理由の方が、少ないのだ。
('A`)「お礼言って、終わりにしよう」
胸の内の納得出来ないもやもやを。
- 103 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:23:52 ID:vZhiwWjQ0
-
紙に書きなぐってある数字を、ボタンを押して、入力する。
発信中の文字が出た。でたらめな番号を書かれたのでは無いことを、確認。
【('A`)「…………」
二、三回、コール音がして、
かちりと、控えめな、電話を取る音がひとつ。
- 104 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:25:32 ID:vZhiwWjQ0
-
『はいもしもしどくおくん?!?!鬱田さん!!??鬱田ドクオくんだよね!!?!?そうでしょ?!!ちがう?!?違ったらごめんね!!?違ったら切ってね!??できみはドクオくんなの!?!!ぼくわかんないから!!!テレパシーで送られてもわかんないから!!なんかいってよおおおおおおウグワッ』
Σ【('A`;)「ウワッ」
何事だ。
若い男の声。
えー……ええ……………
かちゃかちゃ。
受話器の向こうで、なにやら響く音。
『こらっ!電話勝手にとっちゃめっお!』
『すみません、お騒がせしましたお。うちの子が馬鹿やって申し訳ないお』
- 105 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:26:13 ID:vZhiwWjQ0
-
耳が裂けるかと思った。
いやいやいやいや、そういうことじゃない。
おかしい。今のは完全に、おかしい。
というか、なんで、俺の名前を、知っている……
【('A`;)「え、あ、いや、お構いなく……」
『で、ここで電話を切らないということは、もしかして君が、鬱田ドクオくんかお?』
- 106 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:26:54 ID:vZhiwWjQ0
- 【('A`)「あ、はい、鬱田です。昨夜はどうも、ご迷惑を………」
『おー!お電話お待ちしておりましたお!昨夜は勝手にお家に上がってすみませんでしたお!携帯電話はもう手元に戻りましたかお?』
自分からわざわざ一番微妙な所に触れてきた。
やっぱり、なにかおかしい。
【('A`)「あなたが、届けてくださったんですか?」
『そうですお!いやあ、失礼しましたお、そう、間怠っこしいことをしてしまって、お話ししたいことがあったとしても、ちょっと無理やり過ぎましたおね」
- 107 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:28:03 ID:vZhiwWjQ0
- 【('A`)「いえ、いいんです、道端で寝ていた俺が悪いんですから……」
お話ししたいことって、なんだよ。
【('A`)「その節は本当に、ありがとうございました。なんとお礼を言ったらいいか……」
『おっおっお。気にしないで下さいお!通りかかった道で人が倒れているのに、見過ごす訳にはいかないですお。当然のことをしたまでですお!』
- 108 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:28:58 ID:vZhiwWjQ0
-
【('A`)「はあ、しかし、お礼をしない訳には、こちらの気が済まないので、なにか贈らせては貰えませんでしょうか。こんなにご迷惑をおかけしっぱなしじゃあ、なんとも……」
本当は早く電話を切りたい。
一刻も早く関係を絶ちたい。
しかし、社会人(未満)としての礼儀は、忘れてはいけないのである。
求職者としてのプライドが、それを、許さない。
『それなら丁度良いですお!お礼というか、今、鬱田さんはお仕事を探していますお?」
- 109 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:30:02 ID:vZhiwWjQ0
- 【('A`;)「アッ……まあ、そうですね」
なんでしってる。
『決まっているお仕事も、まだ無いですおね?』
【('A`;)「……はい……。恥ずかしながら……」
触られたくない傷をえぐられるきもちってしってる?
早く切りてえ。なにを要求されてもいい。こいつとの話を止めたい。正直言って、鬱陶しい。
相手の男が黙った。何拍か、何十秒か、そろそろ沈黙が重くなってきたころ、相手の男が、口を開いた。
『うちの会社で、働かないかお?』
- 110 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:31:01 ID:vZhiwWjQ0
-
…………………………
まあそりゃあさ、人助けったって、他人の部屋に無断で入るのは、どうかと思うよ?
携帯も、わざわざ隣人に預けさせた意味が分かんねえし。
俺の名前、教えてないのに知ってるし、俺が無職だってこともわかってるし、電話したらいきなり変なテンションで迎えられたし。
でもさ、
あそこで拾われなかったら、俺の命が危なかったのかもしれないじゃん?
命の恩人の頼みだったら、断るとか、できないよね?そうだろ?
- 111 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:31:49 ID:vZhiwWjQ0
-
脳内で稲妻のごとく、良からぬ考えが駆け巡る。
ああでも、おかしい。やっぱり、おかしい。見ず知らずの人間を、会社で雇おうって?縁故でもないのに、そりゃちょっと、無理があるだろう。
ぐぬぬ。
- 112 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:32:31 ID:vZhiwWjQ0
-
【('A`*)「働くというのは、どういう……」
『実は、ウチは小さな人材派遣会社をやっているお。人材派遣と言っても、少しだけ特殊な人達を、色々な場所に貸し出す会社。派遣する人材はかなり揃っているんだけど、足りないのは、事務とか、付き人とか、所謂雑用係のひとだお。ドクオくんには、そういう役目を、やってもらおうと思っているお』
【('A`*)「雑用……ですか……」
『お給金は、流石に最初はそこまで出せないけど、働き振りが良ければじゃんじゃん上げちゃうお!』
【('A`*)「なんと……」
- 113 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:33:38 ID:vZhiwWjQ0
-
なんて魅力的な響き。
あんまりにも好都合過ぎて、眩暈がしてきそうだ。
最近貯金も危うくなってきて、それでも仕事が見つからなかったから、疲れて道端で眠ってしまったのかもしれない。
これは、頑張っている俺を見た神様からの、ささやかな労いなのでは?
踊らされててもいいや、ここはとりあえず、ノっとこうじゃないか!
- 114 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:34:31 ID:vZhiwWjQ0
-
【('A`*)「とても、嬉しいお知らせではあるんですが……いきなりは、ちょっと」
【('A`*)「御社の活動であったり、企業方針などを教えては頂けないでしょうか」
興奮して口調がつい、面接用のものになってしまう。
『あー……そうくるかお……ぼくは頭があんまり良くないから、そういう格式張ったやつはあんまり意識してないんだお』
『代わりといってはなんだけど、一回、ウチに来て見てみるお?それが、一番わかり良いと思うお!』
- 115 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:35:40 ID:vZhiwWjQ0
- 【('A`*)「良いんですか!では、後日、訪問させて頂きます!」
『後日とかじゃなくて、明日でもいいお?ウチの都合はつきそうだけど、ドクオくんはどうだろうお』
【('A`*)「ハイ!勿論予定は入っておりませんので、是非、伺いたいと思います!」
じゃあ、と前置きを置いて、メモをとったほうが良いと助言を受ける。
メモの用意を迅速に行い、どうぞ、と電話越しに告げると、ゆっくり、住所を答えだす声。
メモを取りながら、案外近いところにあるなあ、と、ぼんやり考えた。字を書いている内に声は止み、俺はボールペンを机に置いて、受話器を手で覆った。
- 116 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:36:25 ID:vZhiwWjQ0
-
【('A`*)「承知しました!では、明日のお昼頃、伺わせて頂きます!」
『元気があるのは良いことだお!こっちも社員一同、楽しみにしているお!』
『じゃ、明日、待ってるお。ばいばいおー!』
がちゃり。
通話は、切れた。
- 117 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:37:54 ID:vZhiwWjQ0
- *****
「ねえ明日ドクオくんくるの?!ねえほんと?!嘘じゃない!?ねえねえねえねえ」
「嘘じゃないお!後勝手に電話でちゃめっお」
「嬉しいなあ!!やっとあのドクオくんにあえるんだ!!嬉しいなあ嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい」
「いきなりドクオくんの前に現れちゃ駄目だお。びっくりしちゃうお?」
「しかし、良くあの状況から仕事の話まで持っていったな。すごいわ」
「仮にも社長兼代表取締役の腕を舐めないで欲しいお!」
「社長うぜえんです」
「わかります」
「いつものことだろ」
「みんな酷いお……」
「……鬱田くん、受け入れてくれるかしら。……私たちを、見て」
「大丈夫だお、心配ないお!だってあの、鬱田ドクオくんだお?杞憂も杞憂、就職しないなんて考えらんないお!」
「……まあ、億が一、拒んだとしても、無駄なんだお。彼に決定する権利はもう、ないお」
「僕らと関わったその時から、」
「この世に生まれ落ちた時から、お」
*****
- 118 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:39:02 ID:vZhiwWjQ0
- *****
夏。
真夏日。
汗も出ぬ程の炎天下。
俺は、最寄りの駅前、少し行った坂を、ひいひい言いながら登っている。
('A`;)「ハア、ハア、………」
('A`;)「坂、きつ……………」
_
- 119 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:39:44 ID:vZhiwWjQ0
-
着慣れてしまった黒のリクルートスーツとともに、右手にハンカチ、左手には高めの菓子折り。
暑さのことも考えて、中身は無難に焼き菓子セット。
完璧だ。
('A`;)「ハア…………」
('A`;)「…………あれ、か、?」
- 120 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:40:46 ID:vZhiwWjQ0
- 坂の先、見えるのは、想像していたようなビルディングとはかけ離れていて。
馬鹿でかい洋館。
赤いレンガと蔦の目立つ、絵本にでも出てきそうな、洋館だった。
強い日差しと陽炎が、洋館の存在を、曖昧に、揺らがせる。
この世のものではないかのように、まるで、生きているかのように。
- 121 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:41:46 ID:vZhiwWjQ0
- ( ^ω^) 「おー!鬱田ドクオくんだお!」
その洋館から駆けてくる、まんまるいシルエットの男がひとり。
肌が白いから、柔らかいゴムボールが跳ねているみたいだ。
('A`)「あっ、もしかして、内藤さん、ですか」
( ^ω^) 「おっおっお。そうだお!僕が社長の内藤、内藤ホライゾンだお!」
- 122 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:42:28 ID:vZhiwWjQ0
-
('A`)「一昨日はどうも、お世話になりまして……」
( ^ω^) 「ああ、そういう話は中でするお!こんだけ暑くちゃろくな話も出来ないおね、あっちーお!」
そう言うと、内藤さんは、先程自分の出てきた扉を引いた。
- 123 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 01:43:55 ID:.5PlVegk0
-
支援
- 124 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:43:57 ID:vZhiwWjQ0
-
ぎい、と音がして、館の中が、ちらりと見える。
内藤さんの歩みに釣られ、俺も、館に、すいこまれてゆく。
先を行っていた内藤さんが、俺の方に向き直る。
それはまるで、これから始まる舞台の口上。
或いは、すでに終わった演劇の、カーテンコールのおまけのおまけ。
全開の笑顔を振り撒きながら、内藤さんは、言った。
,
- 125 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 01:44:44 ID:.5PlVegk0
- mageってなんだよ…orz
- 126 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 01:44:54 ID:p9IOm/cAO
- なんか不穏な感じになってきた
- 127 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:47:20 ID:vZhiwWjQ0
-
( ^ω^) 「歓迎するお、鬱田ドクオくん!」
( ^ω^) 「我等が愉快な理想郷へ!」
( ^ω^) 「歴史の遺物、享楽の澱の中!」
『【フリークス】へ、ようこそ!』
*
- 128 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:48:44 ID:vZhiwWjQ0
-
第一話 後編 【前口上】
終わり
- 129 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:50:48 ID:vZhiwWjQ0
- 今日の分おしまいです
どくおくんのしゅうかつにっきはおわり
新たにどくおくんのたのしいしゃちくにっきが綴られますね
よいことです
- 130 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:53:28 ID:vZhiwWjQ0
- 支援ありがとうございます。成長期が訪れました
後mageに笑った
質問等あればどうぞ、まだあんまり明らかにはなってないですが
- 131 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 01:57:34 ID:vZhiwWjQ0
- 多分次回は今週中です、お粗末様でした
- 132 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 01:58:51 ID:.5PlVegk0
- 乙!
笑えてもらって良かったよ~
- 133 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 02:00:16 ID:Zsz1q1eg0
- おつんつん
- 134 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/10(月) 02:13:03 ID:vZhiwWjQ0
- あっ内藤さん内藤の日おめでとうございます
- 135 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 11:36:22 ID:gASfb82o0
- これは続きが気になりますだな
投下ペースはやいし楽しみだ
ほっとたんどりーちきんさんど
はんばーがー
- 136 :名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 12:56:35 ID:GLJi9NQY0
- 続き待ってる
- 137 :名も無きAAのようです:2012/09/11(火) 00:42:36 ID:DjzeO5gI0
- おつ
しゃちくにっきたのしみにしてます
- 138 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/11(火) 17:38:29 ID:x0mONmsI0
- 今日明日投下したい
- 139 :名も無きAAのようです:2012/09/11(火) 21:06:04 ID:Fzme2YBo0
- おー!
まってるよー!
- 140 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/11(火) 23:10:56 ID:nt0aFetM0
- 0時から1時位を目処に投下するます
- 141 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 00:37:04 ID:/T/c0TG60
- もーすぐかなー
- 142 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 00:41:48 ID:vBojVSBU0
- 1時から投下
- 143 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 00:57:40 ID:vBojVSBU0
- わだば投下すっぞ
- 144 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 00:59:09 ID:vBojVSBU0
- *****
ぼくらは、かれがここにやってくるのを、ずうっと、ずっと、まっておりました。
なぜ、かれが、ぼくらにこんなにも、したわれているのだろうか、と、おもうかたが、いらっしゃるかもしれません。
そのりゆうは、じつは、ぼくらにも、はっきりとは、わからないのです。
それと、おもいちがいをされているかたも、いらっしゃるとおもいますので、ひとつていせいさせていただくと。
ぼくらはかれを、したい、こころまちにしてはおりますが、かれのことをすいているわけでは、まったくもって、ないのです。
これは、さまつなようにみえますが、いっとう、たいせつなことなので、ございます。
ともあれ。
ぼくらは、かれが、ここに、やってくるのを、ずうっと、ずっと、まっておりました。
*****
- 145 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:00:11 ID:vBojVSBU0
- *****
('A`)freaks!のようです
第二話
*****
- 146 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:01:38 ID:vBojVSBU0
-
内藤さんは、役者染みた顔をして、俺に口上らしき挨拶を述べた後、何事もなかったかのように、前を向き、歩をすすめる。
この人がどこかしら変なのは、一昨日辺りから感づいていたので、今更、妙な驚きを感じることは、なかった。
('A`)「大きなお屋敷ですねえ」
( ^ω^)「おー、まあ確かに、あまり、たくさん見かけないような建物ではあるお」
- 147 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:03:14 ID:vBojVSBU0
-
長く、真っ直ぐ通っている廊下は一面フローリングで、歩く度にカツカツと、硬質な音が響く。
道の所々には台に置かれた花瓶だか壺だかが置かれていたが、別に美術品に特別、興味が有るわけではないので、金持ちなんだろうな、とか下衆いことを考えながら、内藤さんについて行った。
( ^ω^)「さ、こちらですお」
とある扉の前で内藤さんが緩やかに立ち止まり、一呼吸置いた後、扉を引いてくれる。
玄関で聞いたのと同じような、ぎいと軋む音を放ちながら、扉は存外、軽やかに開いた。
- 148 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:04:42 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「応接室というか、そんな感じのもんですお」
( ^ω^)「ドクオくんも、遠慮せず、そちらに」
('A`)「はい。失礼致します」
この応接室とやらがまた、なんとも高級そうな雰囲気を纏っている。
部屋の真ん中にあるテーブルとソファ、壁際に並べられた棚と諸々の調度品、なんだかこの部屋に居てはいけないような気持ちになって、無意識の内に、肩を縮めてしまう。
- 149 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:06:32 ID:vBojVSBU0
-
('A`)「あ、これ、先日は本当にご迷惑をおかけしまして………」
( ^ω^)「おー、そんなに気をつかわなくたっていいのにお……ありがたく頂いておくお」
用意しておいた菓子折りを手渡して、ようやく、ソファに腰掛ける。
体重をかけた途端に、沈み込んでゆく腰。革の滑らかな感触が心地良い。ああ、やっぱり金持ちくせえ。羨ましいなあ、畜生。
- 150 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:07:34 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「この暑い中、良くいらして下さいましたお」
( ^ω^)「この前の件については、本当に申し訳なかったと思っているお。配慮も、君の気持ちも考えず、部屋に上がり込んで……」
('A`)「いえ、そのことは本当にもう、いいんです。このまま話をしてもきっと、解決は難しいと思いますので……」
(; ^ω^)「そう言ってくれると本当に助かるお……不甲斐ない社長ですまないお、社員に沢山、迷惑かけたお」
- 151 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:09:15 ID:vBojVSBU0
-
社長。
一見した様子からでは、この男が会社のまとめ役、簡単に言えばかいしゃのいちばんえらいひと、だとは到底判断できない。
暑い暑いと言いながらシャツの襟口をぱたぱた動かす様は、小学生男子を彷彿とさせる。
太っているから一目見た時は気づかなかったが、この男、恐らく、俺とそう年は変わらない。
それでも、俺の心に、妬み嫉みの感情が湧いてくる気配がないのは、この男が持つ、変にほのぼのとしたオーラのせいかもしれなかった。
- 152 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:09:51 ID:9TYfZ.iIO
- 支援
- 153 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:09:57 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「うーん、まあ、ドクオくんがそれでいいなら、僕らも、もうこれ以上、こじらせたくはないお」
('A`)「ハイ、そうして頂ければ幸いです」
これで、夢遊病じゃなかった事件のあれこれは、一旦終了。
次の話題が、今日ここに来た、一番の、わけ。
- 154 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:10:53 ID:vBojVSBU0
- ぎい。
突如、内藤さんの後ろで、扉が開いた。
音のした方に目を向けると、小柄な女性が一人、何やら両手で持ちながら、背筋を伸ばして立っている。
(*゚ー゚)「お茶をお持ちしました、社長」
(*゚ヮ゚)「鬱田ドクオさんですね、社長からお話は窺っております。ようこそいらっしゃいました」
年齢は、俺と同じ位か、少し上。童顔気味の顔立ち、着ている薄水色のカーディガンと白いスカートが、良く似合っていて愛らしい。
- 155 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:12:35 ID:vBojVSBU0
-
('A`)「あ、はあ、はじめまして。あなたは……」
(*゚ー゚)「申し遅れました。私の名前は、猫田椎、と申します。ここで、内藤社長の秘書を、勤めさせて頂いております。よろしくお願い致します」
('A`)「猫田さんですね、よろしくお願い致します」
口元に手を当て、ころころと笑う。かわいいという概念を三次元上に起こすと、こんな感じになるんだろうか。
何にしろ、今まであまり関わりのなかった人種では、ある。
- 156 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:13:35 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「しぃちゃんありがとうお!冷たいやつ、煎れてくれたお?助かるおー」
(*゚ー゚)「外が暑いので、お口の中だけでも涼んで頂こうかと……鬱田さんは、コーヒーとお紅茶、どちらがお好みですか」
('A`)「あー、じゃあ、コーヒーをお願いします。砂糖とミルクは結構です」
(*゚ー゚)「はい、どうぞ、社長はお紅茶で良いんですよね」
( ^ω^)「おっお!しぃちゃんさんきゅお!」
- 157 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:14:22 ID:vBojVSBU0
-
(*゚ヮ゚)「では、私はこれで。ドクオさん、ゆっくりしていって下さいね」
('A`)「ありがとうございます」
…………ドクオさん?
最後だけ呼び方が違ったが、なんだったんだろう。
まあ、いい。コーヒーは冷えててうまかった。唇も程よく湿ったところで、今はこれから、内藤さんと話すことに、集中したい。
- 158 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:15:21 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「さて、話を変えるお。ドクオくん」
('A`)「……ハイ」
( ^ω^)「昨日言った通り、で話は大体終わっているんだけど、まあ、時間もあるし、もう一度説明するお」
- 159 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:17:02 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「僕はこの洋館で、小さな人材派遣会社を経営しているお。さっき言ったかな、会社の名前は、【フリークス】。株式会社フリークスだお」
( ^ω^)「いつも明るく元気におしごと!たがが外れる程のやる気であなたのニーズにお応えします!がモットーだお」
('A`)「はい」
( ^ω^)「まあ冗談は置いといて、人材派遣とはいっても、ウチは周りとは、少しだけ違う種類のお仕事を、お客さんから貰っているお」
('A`)(冗談だったのか……)
( ^ω^)「例えば、画家さんが絵を描くときのモデルさん、写真家さんの作品の被写体、ファッション関係のモデルさんとか、主にアート方面の需要が高いお」
- 160 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:18:17 ID:vBojVSBU0
-
('A`)「芸能事務所とは、何か違いがあるんですか?」
( ^ω^)「うーん……ウチは、所謂芸能事務所とか、他の事務所とは違って、表立ったお仕事とか、あんまり目立つようなお仕事は、お断りしてるお。テレビとか、雑誌とかね」
( ^ω^) 「普通のモデル業の人とは違って、派遣される人は【社員】としてウチで働いているお。色々な事務も兼ねて、お客様の依頼ごとに、派遣されてくれる人たちだお」
('A`)「はあ……なかなか厳しそうですね、マネージャーもいないのであれば、諸々の管理だって、全て自分の責任で管理しなければならないのでしょうし」
- 161 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:19:18 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「そう!そうなんだお。最近、じわじわ仕事の依頼が増えてきたんだけど、急に忙しくなったせいか、社員の子達の自己管理が上手くいかなくなっちゃったんだお。依頼先とのトラブルも、割と目立つようになってきちゃって、正直、今、会社の流れはあんまり、良くないお」
( ^ω^)「だから、今度、派遣関係のお仕事をする社員とは別に、マネージャーや雑用、事務関係のお仕事をしてくれる社員さんを募集することにしたんだお!」
( ^ω^)「そこで、お仕事募集登録とか色々面倒な手続きをしに町へ出て、帰り道、丁度良く、仕事を探して行き倒れていたドクオくんを発見した、というわけだお!」
- 162 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:20:37 ID:vBojVSBU0
-
('A`)(随分フランクな口調になったな)
('A`)「そうだったんですか……」
( ^ω^)「君さえ良ければ、僕は是非、君に、我が社の社員として、働いて貰いたいんだお」
( ^ω^)「君は仕事にありつきたくて仕方がない。僕らは、新たに仕事をしてくれるひとが、誰でもいいから、必要。これ以上、お互いにとって、利益になることがあるかお?」
- 163 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:22:26 ID:vBojVSBU0
- ああ、確かに、俺は、仕事が欲しくて堪らない。一刻も早く、働く場を、見つけなければならないはずだ。
そのつもりで、ここへ、内藤さんの招待を受けて来たのだから。
内藤さんの言葉の影に、拒絶しては、いけない、と、言われているような気がして、ならない。
しかし、やっぱり、おかしいのだ。いくら説明を受けど、何かが、小さな違和感が、頭の隅に引っ掛かる。コレと言った試験も受けず、面接らしい面接もせず、道端で倒れていたような、どこの馬の骨とも知れぬ男を、いきなり、採用?是非働いて欲しいだと。
余りにも、出来過ぎている。
- 164 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:23:34 ID:vBojVSBU0
-
('A`)「おれは、」
ここではたらくことがほんとうにただしいせんたくなのか
('A`;)「………………」
おれは、ここにいてよいのか、いては、いけない?
('A`;)「………おれは」
眩暈。
( A )「…………………」
- 165 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:25:03 ID:vBojVSBU0
-
( ^ω^)「焦って結論を出す必要は無いお」
内藤さんが、ソファから立ち上がって、言っ た。
俺の言葉を遮るように、さっき、雑談をしていた時とはまるで違う、早口で低く囁く声が、静かな応接室に、染み渡る。
( ^ω^)「僕はしぃちゃんに紅茶のおかわりを貰ってくるから、良く、考えて、言葉にしてみればいいお」
( ^ ω)「……君に、つたえなきゃいけないことも、あるお」
( ω)「…………急ぎ過ぎたかお」
- 166 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:26:48 ID:vBojVSBU0
- そう呟くと、内藤さんは、扉に向かって歩き出し、ドアを押して、応接室を後にした。
だだっ広い部屋に、一人。眩暈は既に、治まっていた。
('A`;)「なんだったんだ、畜生……」
働きたくない訳じゃないのだ。
寧ろ、自分には勿体なさすぎる位、良い条件の職場であると、理解している。
決断を下そうと思考すると、それを邪魔する何かが、頭の奥からやってくる。
はい、と舌を回そうとした瞬間に、突然襲い来る、眩暈。緑色の、眩暈。
自分の身体へ、明確に現れる異常。
今までこんなことは、なかったのになあ。
異変を辿って、行き着くはじまりは、全て、あの、電話ボックス。
- 167 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:27:52 ID:vBojVSBU0
-
('A`)(幽霊とか、宇宙人とか、信じるつもりは全く無いが)
('A`)(それ以外に説明のつく要因が見つからん)
('A`)(こええな)
('A`)(あのひともなに考えてんだかわかんねえし)
('A`)(最初の電話からしておかしすぎたし)
- 168 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:30:59 ID:vBojVSBU0
- ('A`)(でも、いいひとなんだよな、たぶん)
('A`)(…………ここでにげても、しかたないような、気もする)
('A`)(……………………)
('A`)(…………はあやれやれ)
('A`)(…………追いかけよう)
あんなにも俺を必要としてくれるような企業が、この先他に、現れるだろうか?
悲しいかな、俺の経験則から予測してみると、今みたいなチャンスが、訪れることはきっと、もう、未来永劫、無いと思うのである。
この際、ドッキリとか、悪ふざけとか、そういうんでも、構わない。
('A`)(この状況自体が俺の妄想だったりしてな)
('A`)「まあ、いいや」
('A`)「行こう」
- 169 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:31:52 ID:vBojVSBU0
- *****
先程内藤さんが出て行った扉を開けると、すぐ目の前に、人の影。
猫田さんが、ポットの乗ったプレートを両手に抱え、立っている。
('A`;)「猫田さん」
(*゚ー゚)「あら、鬱田さん、どうなさりました?随分と、慌てていらっしゃるみたいですが……」
('A`;)「内藤さん、がどちらに行ったのか、御存知ですか」
(*゚ヮ゚)「社長なら、少しお紅茶を召し上がってから、忘れ物があると言って、上の階に行かれましたよ。すぐお戻りになるとは思いますが……」
- 170 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:32:34 ID:vBojVSBU0
- ('A`;)「どうしても、今、お話したいことがありまして、」
(*゚ー゚)「お急ぎの御用事なら、上の階へ上がってお話されても結構ですよ。二階までは、スタジオ兼、事務所になっておりますので、プライベートな空間ではありませんから」
('A`)「そうですか、ありがとうございます」
(*゚ー゚)「どう致しまして!」
猫田さんが指差す方向に向かって脚を出す。
ああ、そういえば、まだ。
- 171 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:33:17 ID:vBojVSBU0
- ('A`)「猫田さん」
(*゚ー゚)「……、何でしょう?」
('A`)「コーヒー、美味かったです、すごく。また、頂いても、いいですかね」
(*゚ー゚)「………」
(*゚ヮ゚)「ハイ、喜んで!」
うん、かわいい。
ちゃんとお礼を言えて、良かった。
前に向き直って、階段の方向に歩を進める。
ドア横に敷いてあるマットに足をとられつつ、転ばぬように。
- 172 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:34:51 ID:vBojVSBU0
- *****
(*゚ー゚)「………………」
(*゚ー゚)「……やっぱり、いい子、ドクオくん」
(*゚ー゚)「………いい子だから、むしろ、心配なのよね」
(*゚ー゚)「受け入れよう、受け入れよう、って悩んだ挙げ句、離れていっちゃう人、いっぱい見てきたもの」
(*゚ー゚)「……後ろめたさで小さくなった背中、見るの、もう嫌よ、あたし」
( )「大丈夫だろ、あいつなら」
( )「見た目程やわな奴じゃあないよ。勘で判断するしかないけどな」
(*゚ー゚)「……あなたの勘、良く当たるものね」
(*゚ー゚)「今は、待ちましょ、彼を」
( )「………おう、そうだな」
(*゚ー゚)「……美味しいコーヒー、煎れておきましょうね」
*****
- 173 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:36:20 ID:vBojVSBU0
- 猫田さんと別れて、廊下を進む。
流石に人の屋敷で走り回るのは憚られたので、音をたてないように、急いで歩いた。
足を動かしている内に階段下へと辿り着いたので、二階の方を見据えて、上る。
階段を境に、床材がフローリングから絨毯へ変わっているので、足触りがふかふかしていて、若干、歩きにくい。
('A`)(そこもかしこも金持ちくせえ)
('A`)(羨ましい)
- 174 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:37:17 ID:vBojVSBU0
- 階段を上り終えると、一階とさほど変わらない景観の、二階が姿を現した。
強いて変わっているところを挙げるなら、廊下が全て、絨毯を敷いた風になっているくらい。他は壁紙の柄が違ったり、心持ち道幅が狭くなっていたり、ちょっと見ただけだと、変化が感じられないかもしれない。
('A`)「しまった」
('A`)「内藤さんが二階のどこに居るのか聞くのを忘れた」
('A`)「うっかりさん」
- 175 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:37:59 ID:vBojVSBU0
-
下に戻って、猫田さんに、もう一度聞こうか。
このまま二階を彷徨いていても、目的の内藤さんに会うのに、効率が良いとは言えないだろう。
もっと計画的に飛び出せばよかったなあ。
('A`)(飛び出すのに、計画的もへったくれもねえか)
俺は、階段上で、ぼんやりと、ひとりごちる。
- 176 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:39:26 ID:vBojVSBU0
- *****
(*゚ー゚)「あっ」
( )「どした」
(*゚ー゚)「今日、出張してたワカッテマスが帰ってくる日じゃん」
( )「まじで」
(*゚ー゚)「ワカッテマスの部屋、二階じゃん」
(*゚ー゚)「ワカッテマス、今日ドクオくんが来るの知らないじゃん」
( )「…………あっ」
(*;゚ー゚)「…………やべ」
( )「………ワカッテマスはまだ、ドクオには刺激が強いかも」
(*;゚ー゚)「…………追いかける?」
( )「……………そうしよっか……」
*****
- 177 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:40:25 ID:vBojVSBU0
-
階段を降りよう。
猫田さんはまだ、下の階、近くに居るはずだ。
階段上でしばしぼうっとしていたのを止めて、下の階へ向かおうと、身体の向きを変える。
考え事をする時に、立っていようが急いでいようがその場で止まってしまうのは、俺の悪い癖だ。
これから始まる仕事中に、この癖の出ないようにしなければ。
('A`)「早よ行こ」
('A`)「猫田さんと話している間に、内藤さんも降りてくるかもしれないし」
- 178 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:41:18 ID:vBojVSBU0
-
下の段へ、足を踏み出す。
かたり。
背後で、扉の開く音がした。
,
- 179 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:43:02 ID:vBojVSBU0
- ('A`)「……!」
内藤さんが降りてきた。
ああ、まあ、当然?そう思ったよね。
('A`)「内藤さ……」
部屋から出て来たであろう、内藤さんに声をかける。
内藤さんに背を向けて喋るのは失礼だから、さっき変えた身体の向く先を、内藤さんの方に戻す。
そこには、内藤さんが、あのへらへらした顔を下げて、立っているはずだったんだけども。
- 180 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:43:55 ID:vBojVSBU0
-
( <●>)
('A`)
あっれえ。
- 181 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:44:48 ID:vBojVSBU0
-
( <●>)
('A`)
('A`)「……………こんにちは」
( <●>)「こんにちは」
( <●>)「もしかして、君が、ドクオくんですか」
- 182 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:45:30 ID:vBojVSBU0
-
('A`)「……………………………」
('A`)「………………あー、はい。そうです。ぼくがドクオです」
( <●>)「……ふむ」
- 183 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:46:27 ID:vBojVSBU0
-
ばたばた。
(; ^ω^) 「ワカ!ちょっ、ちょっと待つお…………」
(; ^ω^) 「あっ」
廊下の向こうから走ってくる、内藤さん。
- 184 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:47:27 ID:vBojVSBU0
-
ぱたぱた。
(*;゚ー゚)「鬱田くん!あの、まだ話したいことが…………」
(*;゚ー゚)「あっ」
階段下から駆けてくる、猫田さん。
- 185 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:48:10 ID:vBojVSBU0
-
('A`;)
( <●>)
(; ^ω^)
(*;゚ー゚)
異変は未だ、止まる様子を、見せない。
*****
- 186 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:49:05 ID:vBojVSBU0
-
第二話 前編
おわり
- 187 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:50:02 ID:zDUEY6/MO
- ( )こいつが特に気になるが他の奴の正体も知りたい
- 188 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:50:06 ID:/T/c0TG60
- おつー
- 189 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:50:16 ID:vBojVSBU0
- 今日の投下おしまいです
支援ありがとうございます
盲腸に爆弾が仕掛けられました
- 190 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:51:39 ID:9TYfZ.iIO
- 乙!
ワカこええ…これは刺激が強すぎるわ
- 191 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:51:48 ID:CGyFSALA0
- 乙ン
オカラダ ダイジニ
- 192 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:53:40 ID:vBojVSBU0
- ( <●>)をワカッテマスと呼んでもよいのかどうか大変悩みましたが結局ワカで落ち着いた
次回は今週末……に出来たら上出来です
乙ありがとうございます
- 193 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:53:42 ID:zDUEY6/MO
- おい、話を切るとこじゃねえぞ
- 194 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 01:56:17 ID:vBojVSBU0
- 前編後編制なのでどうか堪忍してつかあさい
なるべく早めに投下します
- 195 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 01:57:30 ID:y0pP1yJI0
- なかなか進まないな…
- 196 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/12(水) 02:00:52 ID:vBojVSBU0
- 話の進みが遅いのは自覚しておりますのでこちらでも検討致します
面目ないです
- 197 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 13:24:09 ID:nHeETuOQ0
- 気にスンナ
自分のペースでがんばれ
- 198 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 13:54:02 ID:hL4P3KNwO
- 急ぎすぎて作品の雰囲気壊されても困る
自分のペースでやってくれ
まぁダレすぎても困るが
- 199 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 13:59:41 ID:9TYfZ.iIO
- やりたいようにやればいいやないのー
- 200 :名も無きAAのようです:2012/09/12(水) 14:23:22 ID:TLypotxY0
- ゆっくり進む分長く楽しめるからイイヨ!
乙。
- 201 :名も無きAAのようです:2012/09/13(木) 04:47:52 ID:gziPzOSY0
- やってるの今気づいたわ
投下されてんの相当嬉しいわ
面白そうだから応援してるわ
- 202 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/13(木) 17:16:47 ID:/31hvKaw0
- 土日の変わり目に投下予定
です
- 203 :名も無きAAのようです:2012/09/13(木) 20:07:09 ID:oaW4xF6c0
- 待ってんぜ。
- 204 :名も無きAAのようです:2012/09/13(木) 20:45:45 ID:xiNDINlUO
- わくてかわくてか
- 205 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/13(木) 23:51:47 ID:WCjmORqA0
- *連絡*
第二話後編を再構成中です。
第二話後編から、作品の内容に、過度の身体障害者、知的障害者、または健常者への批判、差別発言、差別表現の描写が含まれ始めることと思います。
私自身の意見としてではなく、フィクション上必要な創作として、書いています。
フィクション上のことと割り切って、自己の意見とは切り離し作品の流れを考えられない方、または例えフィクション上でも差別表現を許すことの出来ない誠実な読者様方から、差別表現を外すよう要望、意見があっても、作品のテーマ上、上記の要望等は承ることは出来ないことを、承知して頂ければ幸いです。
気分が悪くなる、差別表現を許せないという方は、閲覧を中止するのが、双方にとって幸せな選択になると思います。
自分の文章にそこまで人を胸糞悪くさせるような力があるなんて自信は毛頭ありませんが、それでも言わないよりはマシかと思い注意を投稿させていただきました。
何卒ご留意頂けますよう、よろしくお願い致します。
- 206 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/14(金) 00:44:00 ID:YRdkwkLE0
- カタワ差別
嫌なら
見るな
産業用
- 207 :名も無きAAのようです:2012/09/14(金) 05:41:46 ID:mC7r2KlQO
- 把握
- 208 :名も無きAAのようです:2012/09/14(金) 14:02:43 ID:40PD76yo0
- 次が楽しみだ
- 209 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:26:51 ID:VV8ANZL20
- 投下
- 210 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:27:47 ID:VV8ANZL20
- *****
例えば。
お前の知覚している赤色が、俺の視認している赤色と、同じだとは限らないように。
贋作が贋作を究めれば、やがてはそれ自身が、確かな価値を持ち出すように。
阿呆らしいことを阿呆だと扱き下ろす阿呆の、多いこと多いこと!
夢を、夢だと自覚しようとするのは、馬鹿のやることだ!
*****
- 211 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:28:31 ID:VV8ANZL20
-
第二話
後編
- 212 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:29:14 ID:VV8ANZL20
- ('A`)「……………俺は今猛烈に混乱しています」
('A`)「立場にそぐわない言葉遣いをしてしまうかも知れません」
('A`)「そのへんはご了承を」
(; ^ω^)「……………………」
(*;゚ー゚)「……………………」
( <●>)「……………………」
('A`)「………説明して、頂けるんですよね」
(; ^ω^)「…………………………」
(*;゚ー゚)「……………………………」
( <●>)「…………………」
- 213 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:29:58 ID:VV8ANZL20
-
('A`)「……土下座はしなくて結構ですから、きちんと全部話して欲しいんです」
('A`)「隠してること、全部」
( ^ω^)「アッ土下座してんの僕だけかお」
(*゚ー゚)「社長の段取りが悪いのがいけないんですよ!もっと早く計画的に話しておけばまずこんなことには」
( <●>)「責任を社長に転嫁するのは良くないと思います」
(*;゚ー゚)「あんたが喋るともっと話が拗れるような気がするわ……」
('A`)「喧嘩は皆さん後でやって下さい」
( ^ω^)「はい」
(*゚ー゚)「ごめんなさい」
- 214 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:30:44 ID:VV8ANZL20
-
('A`)「この中で一番冷静且つ的確に実情を解説出来る人は」
( ^ω^)「ワカッテマス」
( <●>)「出鱈目言わないで下さい仮にも最高責任者」
( ; ω ; )「だってお……こうしてドクオくんが怒ってるんも、なんかみんなピリピリしてるんも僕のせいだけどお……どう説明すればいいのかわっかんねえお……」
( <●>)「泣くな」
- 215 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:31:35 ID:VV8ANZL20
- ('A`)「泣きたいのはこっちっすよ」
('A`)「ようやっと仕事にありつけるぞ!と意気込んでいたら」
('A`)「振り向きゃあ後ろに一つ目小僧」
('A`)「そりゃびっくりもするわ!」
('A`)「しょんべんちびるかと思ったわ!」
('A`)「しかも俺以外の皆様?全員親しげな様子ですし」
('A`)「今は亡き学生時代を思い出しましたよね」
('A`)「ああ……これは……今……ハブられてんな……と」
('A`)「食堂で独りぼっちでカレー食ってみれば分かりますよ」
('A`)「これはまだマシな問題だとしておきましょう。置いておく」
('A`)「本題はこっちですよ」
('A`)「仮にも新入社員にこんだけ重要なこと隠してタダで済むと思ってたんですか」
('A`)「ブラック会社か!」
('A`)「せめて館入る前位に一言言うとかさあ」
('A`)「あるでしょ」
('A`)「ドッキリ番組か!」
('A`)「それで?俺が驚き泣き喚き腰を抜かして家に一目散するのを?皆さん坂の上の豪奢な館から嘲笑おうとしてたんですか?」
('A`)「被害妄想だと言われる筋合いはありませんよ。只今のクレームは被虐歴≒年齢の換算でお送りしております」
('A`)「敢えて言おう。もう一度」
('A`)「ブラック会社か!」
('A`)「ブラックだと思われても仕方ないっすよ。そんくらいのことしてますよ」
('A`)「豚箱ってレベルじゃねえぞ!みたいな」
('A`)「入ったが最後人体実験の餌食に……みたいな」
('A`)「過労死するまでこき使われて死んだら死んだで豚の餌みたいな」
('A`)「通報されてもいいのか!」
- 216 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:32:45 ID:VV8ANZL20
-
( ^ω^)
( ; ω ; )
(*;゚ー゚)「やめてあげてドクオくん」
( ; ω ; )「妙にしっくりザクザクくる説教だお……」
( <●>)「自業自得ですよ」
(*;゚ー゚)「あんたも煽るの止めてよ……」
('A`)「で、どうなんすか。つい声を荒らげてしまいましたが」
- 217 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:33:26 ID:VV8ANZL20
-
もうここで働けなくなっても仕方ねえ、位の勢いで文句を言った。
だって、折角さあ、折角、やっと、やる気が実、結んだと思ってさあ。
働けるの、むちゃくちゃ嬉しくてさあ、息巻いて、内藤さんに、会社、入りますって言おうと思って、
これだよ。
この際言うけど、気持ち悪かったよ。
もうちょっとで吐くとこだったよ。
俺、こういうの、すげえ苦手なんだよ。
- 218 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:34:10 ID:VV8ANZL20
-
うなだれ膝を着く内藤さんと、それを庇おうかどうか迷っているらしい猫田さんの間、少し離れた壁にもたれかかり腕を組んでいる、男性。
顔の中心に、大きくひとつ、ぱくりと空いた空洞に、嵌まっているであろう、目玉。
艶やかに光を反射する眼球の、アウトラインをなぞったすぐ下には、普通よりも小さめだが、形はそれだと解る鼻、その更に下には、普段目にするものと何ら変わらぬ、ヒト科の口唇が鎮座している。
尋常ではなくでかい上目蓋を伏せ、落ちる視線は、床の方を向いていて、どこに、焦点を合わせているのか、窺うことはできない。
('A`;)(……やっぱ、じっと見てられるようなもんじゃねえな)
('A`;)(……うえ……………)
- 219 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:34:51 ID:VV8ANZL20
- そう。苦手なのだ。俗に言う、奇形、人外、その他同族、全部。
二次元上の、イラストでも駄目。無論写真や動画でも、駄目。苦手が過ぎて、やたらとその辺の単語や用語に詳しくなってしまった。
【一般的】に付いているべきパーツ、付いていない筈のパーツが、あったりなかったり。
倫理的にどうかとか、生物学上有り得ないとか、理屈ではなく、気持ち悪いのだ。
あんなのでヌける奴がこの世に存在するということさえ、半信半疑だったのに。
まさか生きて、まさかここで、ホンモノに、お会いできるとは夢にも思わず。
- 220 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:35:32 ID:VV8ANZL20
-
なんやかんや思いを巡らし、はて俺は今とんでもない場面に遭遇しているのではないだろうか、と気づき始めたところで、一つ目の男性が、重く、ため息をついた後、緩慢に、口を、開いた。
( <●>)「……ドクオくん」
('A`)「………はい」
( <●>)「私が、怖いですか」
('A`)「………………」
( <●>)「私のことを、気持ち悪いと思いますか」
('A`;)「………………」
突然、何を言い出すんだ。
- 221 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:36:20 ID:VV8ANZL20
-
( <●>)「言うのが、後ろ暗いですか」
ワカッテマスさん、だったか、男性は、静かに、呟くように、その大きな目を伏せながら、俺に質問を投げかける。
床でしなびていた内藤さんと、状況を整理しきれず、慌てふためいていた猫田さんも、二人、
いつの間にか立ち上がって、感情の読み取れない眼差しで、こちらを見つめていた。
何故、わざわざ、そんなことを、聞く?
だって、常識的に考えてみろ、人間には目が2つ、当たり前のことだ、現に俺にも内藤さんにも、猫田さんにだって2つちゃんと、でもあんたにはひとつっきり、しかもとびきりでかいやつが。
そりゃあ、気持ち悪くも思うだろう。
何故、そんな、【当たり前】のことを聞く?
- 222 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:37:04 ID:VV8ANZL20
- ('A`;)「……………」
心の内で呟いて、ああでもそんなこと口に出せる訳がない、だって世間は、世の中は、彼らのような存在を、庇護することを是としていて、本当に思っているだろうことは、言ったが最後、総叩きにされ、最低の悪であるかのような、扱いを受けるのが常で、そう、言える訳がないのだ!
みんなにわるものあつかいされたくないから!
- 223 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:38:43 ID:VV8ANZL20
-
( <●>)「正直に、仰有って下さい」
( <●>)「今、この空間に、あなたの意見、思想を聞いて、批判をするような愚か者は、存在しません」
( <●>)「私も、何も言いません」
( <●>)「あなたが、私を見て思ったことを、そのまま言えばいいんです」
( <●>)「あなたを、責める理由なんて、何一つ、無い」
- 224 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:39:28 ID:VV8ANZL20
-
淡々と、一文字一文字を踏み締めるように単語を呟く、ワカッテマスさんの口調は、何故か、柔らかい。
文字通り吸い込まれそうなほどにでかい眼孔が、一度も逸らされることなく、一点、俺の顔を見つめている。
なんの気持ちもこもっていない、常温のままの言葉で語りかけられ、なんとなく、緊張が、弛んでゆく。
- 225 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:40:14 ID:VV8ANZL20
- ( <●>)「さあ、どうぞ、遠慮無く」
その台詞が合図であったかのように、ゆっくりと、俺の口から、言葉が漏れた。
('A`)「……気持ち悪かった」
・・・・
('A`)「なんで、こんなのでも人間だって、言えるんだろうって」
('A`)「だって、あんたには、目が一つしかないじゃないか」
('A`)「空想でだけの、作り物だとおもってたから」
('A`)「すげえ、びっくりした」
('A`)「きっと俺は、お前らみたいなのにとっては、嫌な奴で、悪者なんだろ」
('A`)「……差別を、しているから」
('A`)「本当は、【普通】から外れた奴らが、疎ましくて仕方ない」
('A`)「劣っている癖に、可哀想だからって、保護されて贔屓されて甘ったれているやつも、大っ嫌いだ」
('A`)「あんたにゃ悪いが、俺は、あんたみたいな存在を、ただの人間として、見ることは、出来ないと、思う」
('A`)「…………悪いのは、俺なんだ」
こういう考え方しか出来ない俺が。
- 226 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:40:59 ID:VV8ANZL20
- 全部、多分、この場でくすぶっていた、全部の感情を吐き出して、暫く、少しずつ居心地が悪くなり始めたところで、ワカッテマスさんが、また、呟いた。
( <●>)「……わかりました」
ワカッテマスさんが、組んでいた腕を外し、ゆっくりと、両手を合わせ、叩き始める。
拍手。
ぱちぱちと響く、薄い音。
( <●>)「ええ、わかりました。どうやらあなたは、本当に、鬱田ドクオくんのようですね、ええ、安心、しました」
('A`;)「……?」
( <●>)「良い主張だったと思いますよ、正直で、卑屈だけれど、私達にとっては、まずまず」
(; ^ω^)「……強引だったけど、まあ、ひとまず、ホッとしたお……」
(*゚ー゚)「…………」
- 227 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:41:44 ID:VV8ANZL20
-
拍手の音が、重なり響く。
全く、意味が、解らない。
ひとり、置いてけぼりである。
('A`;)「あの、これは一体、どういう……」
( ^ω^)「あー、まあ、ここから先は、僕が説明するお」
( ^ω^)「仮にも、最高責任者、だし?」
にこにこと、開ききった笑顔を浮かべる内藤さんが、ワカッテマスさんと俺の間の空間に、ぽんと現れる。
( ^ω^)「最初僕は、君に、この会社のことを、小さな人材派遣会社、と説明したはずだお」
('A`)「……ええ、そう聞きました
- 228 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:42:51 ID:VV8ANZL20
- ( ^ω^)「そう。ここは、ひとを貸し出す会社。それ自体は全く、間違っていないお」
( ^ω^)「ただ、貸し出す人材が、少し特殊で、表向きの仕事は請け負っていない……僕は、そうも言ったと思うお」
('A`)「………………はい」
( ^ω^)「僕らの貸し出す少し特殊な人材っつうのは、まあぶっちゃけ、ワカッテマスみたいな人達のことだお」
( ^ω^)「俗に言う、奇形児とか、人外、とか、そう呼ばれざるを得ない姿をした人々」
( ^ω^)「そういう人達を必要としたり、好ましく思っている人は、実は結構、いるもんなんだお」
('A`)「…………」
( ^ω^)「……そう。君が想像しているような、ぶっ飛んだ性的嗜好を持つ人も、少なくないお。そういう変態さん達には、直接、社員を派遣したりはしないんだけどね」
( ^ω^)「基本的に、ウチが請け負っている仕事では、念入りに面接なり、審査なりをした上で、安心して社員が仕事出来そうな現場のみ、許可させてもらっているお」
( ^ω^)「だから、自然と、お支払い頂く報酬も、多額になる。という訳で、お客様も、基本的に、お金持ちの方々がメインになるんだお」
なんちゅう道楽仕事なんだ。
- 229 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:43:36 ID:VV8ANZL20
-
( ^ω^)「隙間産業みたいなものだから、需要と供給のブレは少ないし、お客様も望みの社員を借りるため、割と惜しみなく、お金を手離して下さる。援助交際みたいな、爛れた関係だお」
('A`)「身も蓋もないっすね」
( ^ω^)「おー。生憎、当社はあらゆる意味合いでの性的サービスを一切お断りしているから、精神面以外の事業はとっても、清潔で健全だお?」
( ^ω^)「……大体、これが、さっき言わなかった、この会社の、詳細な部分。次、君に何故、今までこのことを隠していたのか」
- 230 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:44:20 ID:VV8ANZL20
-
( ^ω^)「簡単に言うと、入社試験の代わりだお」
入社試験。
入社試験?
('A`)「入社試験」
( ^ω^)「そう。入社試験」
( ^ω^)「君が、所謂【普通でない】存在に対して、どのような感情を抱いているのか?」
( ^ω^)「君が、本当に、この会社に適合出来る、にんげん、なのか」
( ^ω^)「主に、その2つを判断するための、テストだお」
- 231 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:45:04 ID:VV8ANZL20
-
('A`)「…………はあ、そうだったんですか」
( ^ω^)「もう、嘘は言っていないお。これで全部、隠してること全部、話したお」
- 232 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:45:49 ID:VV8ANZL20
- ……妙に納得してしまったが、なんか、違うと思う。
まあ、最初から、入社試験も、面接も、履歴書提出さえ無かったのは、怪しいとは思っていたけど。
もっともらしい説明を受けたが、まだ、何か、引っ掛かる。小さい棘が、肌に埋まって抜けない感じ。もどかしいって言えばいいのか、めんどくせえ、わかんねえ。
言いくるめられたような、おしゃぶりくわえさせられたような。
納得しなくていいことを、無理やり聞き分けさせられている。
言葉の中に嘘は無いが、奥深く、最も肝腎な部分が、うやむやになっている。
なんだか無性に、腹が立つ。
なんで、よりによって、俺なんだ?
- 233 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:46:29 ID:VV8ANZL20
-
('A`)「……少し、質問させて頂いても、宜しいでしょうか」
( ^ω^)「……いいお。なんでも聞いてくれお」
('A`)「なんで、俺をこの会社に、誘ったんですか」
( ^ω^)「君じゃなきゃあいけなかったんだお」
('A`)「だから、なんで」
( ^ω^)「どうしてもだお。理由なんて、君が知っても仕方がないお?」
('A`#)「………………」
理不尽だ。
理不尽だ。
糞。馬鹿にしやがって。
- 234 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:47:13 ID:VV8ANZL20
- ( <●>)「……隠していること、全部?」
( <●>)「しぃさんのことも、全部白状したんですか?」
(*;゚ー゚)そ
俺と内藤さんが険悪な雰囲気になりつつある最中、ずっと黙り込んでいたワカッテマスさんが、再度、口を開く。
(; ^ω^)「あっやべ、忘れてた」
(*;゚ー゚)「ワカお前……余計なことを……」
- 235 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:47:55 ID:VV8ANZL20
-
猫田さんのこと?
なんでここに、猫田さんが出てくるんだ。
猫田さんは、だって、普通の人じゃないか。
お前らとは、関係無いじゃないか。
段々、感づき始めている、自分の意識を殺して、でも、やっぱり、気づかないふりは、出来なかった。
この会社に勤めているという事実が、もう、既に、普通じゃないんだ。
- 236 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:48:38 ID:VV8ANZL20
- ('A`)「猫田さん」
(*;゚ー゚)
('A`)「正直に、話してください」
(*;゚ー゚)
('A`)「怒りませんから。もう、あきらめてますから」
(*;゚ー゚)
( )「往生際が悪いぞ、しぃ」
(*;゚ー゚)「うわあんた、いきなり喋っ」
ほらね。
- 237 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:49:23 ID:VV8ANZL20
- ( )「見ていると、鬱田ドクオ、やはりなかなか良い面をしている。こちらの事情も、きっと、わかってしまっているんだろう」
( )「もう、いいだろう、隠さなくても。
大丈夫さ、しぃの心配しているようなことは、起きない。なあ、ワカよ」
( <●>)「……そうですね」
どこか投げやりに応えるワカッテマスさん。相手の声は、猫田さんのいる方向から聞こえては来るものの、猫田さんが口を動かしているわけではなく、第一、声の質がまるきり違う。
( ^ω^)「いいんじゃないかお?言っちゃえお、しぃちゃん」
(*゚ー゚)「………元はと言えば社長のせいで………」
_,
(*゚ー゚)「…………」
,
(*~ー~)「うう。わかったわよ、見せればいいんでしょ、もう。ハア」
( )「やっと諦めたか。結構結構」
- 238 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:50:07 ID:VV8ANZL20
- 溜め息混じりにそう呟いて、猫田さんは肩を落とす。
そうして、なにを思ったのか、自分の履いているロングスカートを、ゆっくりと、捲り上げ出した。
( ^ω^)「ひゅう、しぃちゃん大胆だお」
(*゚ー゚)「社長後で覚えてて下さいね」
(; ^ω^)「ごめんなさい」
( <●>)「その見苦しい大根足見せつけられるこっちの身にもなってください。さっさとしろ」
(*゚ー゚)「んな気持ち悪い目ん玉くっつけてるお前に言われたくない」
('A`)「………………」
ぎゃあぎゃあ喚き合いながら、それでも止まらず捲られてゆく、白いスカート。
その手が膝を越えたころ、ようやく、それは、現れた。
- 239 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:50:52 ID:VV8ANZL20
-
( ∵)
('A`;)「……………?」
猫田さんの右膝。
その、普通ならば膝頭であろう、と思われる部分が、不自然に、盛り上がっている。てらてらと鈍く光るその塊は、まるで、肌色の油粘土をまだらに丸めたやつを、そのまんま、膝にぽんと、くっつけたみたいだった。
('A`;)「…………顔……?」
この様子だけでも十分、奇妙っちゃあ奇妙なのだが、一番に驚くべきところはまた、その塊の真ん中部分にある。
- 240 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:51:35 ID:VV8ANZL20
- 小さな目、鼻、口、耳。
眠っているように見える、赤ん坊のような顔が、肌色の塊に、現れていた。
閉じた目蓋は、中に眼球の入っているかの如く、内側から張りを帯びている。鼻と思しき出っ張りは、よく見ると、空気を通す穴が、ささやかに、2つ、ついていて、その下に、一文字、真っ直ぐ入る切れ込みは、恐らく、口。
今にも動きだしそうなほど、物の見事に、顔であった。
- 241 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:52:19 ID:VV8ANZL20
- (*゚ー゚)「……ねえ」
( ∵)「…………………」
(*゚ー゚)「ねえって」
( ∵)「…………………」
(*゚ー゚)「おい」
( ∵)「……………………」
(*゚ー゚)「……自分で喋りなさいよ」
( ∵)「……………………」
ひたすら、自分の右膝に語りかける猫田さん。
その様子はどこか滑稽なのだが、異物が実際に膝にくっついているのを知っている以上、あれが冗談でやっているんではないことは明白で、笑い損ねた自分の頬が引きつっているのが、はっきりと、解る。
- 242 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:52:59 ID:VV8ANZL20
- ( ∵)「………………」
(*゚ー゚)「ごめんね、顔を出しながら話すのは嫌だってさ。顔隠してる時はあんなに偉そうなのにね」
( <●>)「骨無し脳足りん腫瘍野郎」
( ∵)「滅せよ」
( <●>)「喋れるじゃないですか」
( ∵)「………………」
('A`)「………………」
膝についた肉塊が口を動かし喋る様子。
たった今目にした光景だが、思いの外強烈だった。
- 243 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:53:43 ID:VV8ANZL20
-
でも、結局。
この廊下でお喋りしていた者の中で、【普通】であったのは、自分だけ、だった訳だ。
騙されたというか、やっぱりな、最初からおかしいとは思っていたんだ、と負け惜しみの一つでも言いたくなるような、でも、あんまり嫌な感じはしない。妙な感覚。
今、俺は、安心、しているのだろうか。
さっきはムカついてムカついて仕様がなかったのに。
- 244 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:54:29 ID:VV8ANZL20
-
( ^ω^) 「というわけで、これで隠してたことは、本当に本当に全部だお」
('A`)「…………」
(; ^ω^) 「んな怨めしげな顔で見ないでくれお……僕が悪かったお……」
('A`)「………入社の件」
( ^ω^) 「お?」
('A`)「少し、考えさせて頂きます」
( ^ω^) 「………いいお。隠し事して、ドクオくんの誠意を弄んでいたのは僕らだしお。好きにすればいいと思うお」
('A`)「ありがとうございます」
(*゚撿゚)「……本当に、ごめんなさい、ドクオくん」
('A`)「いいんです、言いにくいこと、無理やり言わせちゃって、デリカシーの無かったのは、俺の方ですから」
( <●>)「……………」
('A`)「無言で見つめてこないで下さい。気持ち悪いです」
( <●>)「そうそう。その調子です」
('A`)「………ありがとう、ございます」
('A`)「ありがとう、ございました」
( <●>)「…………お礼を言われるようなことは、何一つしていませんよ」
でかいギョロ目の男性は、ぼそりと、そう呟いた後、背を向けて、廊下の先へ歩いていった。
- 245 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:55:13 ID:VV8ANZL20
- *****
帰り際、猫田さんに目一杯謝られながら、紙袋に入った何か、内藤さんに入社時に必要な契約書だかを渡されて、もみくちゃにされた。
しわしわのスーツのまま館の外に出ると、これまた綺麗な夕焼け空が、眼前に広がり、目が眩む。
日の光で真っ赤に染まりつつ、坂を下って、家路を急ぐ。腹が減った。コンビニで、弁当でも買って帰ろう。久し振りに、ビールでも買おうかな。酒はあんまり好きじゃないけど、今日は、あんまり、疲れたから。
- 246 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:55:59 ID:VV8ANZL20
-
スリーエフで冷やし狸うどんと、発泡酒を一本、買った。猫田さんに渡された紙袋がいやに重くて、肩が凝る。やっとこさ自分の部屋の前に着いて、鍵を開けたとき、すぐ隣から、女のひとの声がした。
('、`*川「鬱田さん、お帰りなさい!偶然ですね、私も、今帰った所なんです」
伊藤さんだ。仕事帰りだったか、若干衣服がよれてはいるが、元気そうな様子は、何時見ても変わらない。幸せなのは、いいことだ。
- 247 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:57:02 ID:VV8ANZL20
- ('、`*川「……鬱田さん、なにかあったんですか?」
え、そんな、ひとに訝しがられるほど、酷い顔してましたか。
まあそりゃそうだろうな。色々あったもん、今日。
('、`*川「なんか、すごい、嬉しそうなお顔、してますよ。顔色もいいし、いいこと、あったんですか」
いいことなんてないっすよ。
今日は、散々だったんですよ。
('、`*川「あらまあ、そうでしたか、失礼しました。でも、幸せなのは、いいことだから、あんまり、自分をごまかさない方が、良いとおもいますよ。身体にも、心にも」
('ヮ`*川「では、私は、これで」
- 248 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:57:46 ID:VV8ANZL20
-
……………
ニヤニヤしてる俺は、気持ち悪いな。
鍵を開けていた扉を引いて、見慣れた自分の部屋に入る。
黴くせえ。そろそろ換気が必要かもしれない。
母ちゃんが倒れた時から、一度も掃除、してないしなあ。
風呂に入り、満足に身体も拭いていないけど、パンツを履いて、テレビを点けて、うどんを啜る。
猫田さんの紙袋に入っていたのは見るからに高そうなクッキーの詰め合わせだったけど、甘ったるいのもお構いなしに、一つ、つまんで頬張って、安酒で流し込む。大分回ってきたんじゃないか、と自己暗示して、酔ったふり。そうでもしねえとやってらんねえ。
- 249 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:58:31 ID:VV8ANZL20
-
内藤さんから受け取った契約書を引っ掴んで、署名欄に、うつだどくお、と殴り書く。印鑑ねえから、拇印でいいよな。親指に朱肉。べたり。OKだ。
いくつか四角い欄があったから、そこにも、勢い良く、チェックを入れる。乱暴なのは、酔いのせい。仕方ない、仕方ない。
よくわからんテンションのまま、一度無くした携帯の、リダイヤルから、電話をかける。
あの、ヘラヘラふにゃふにゃした、嘘つきの、泣き虫の、名ばかり道楽金満社長へ。
- 250 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 22:59:16 ID:VV8ANZL20
-
発信中。
発信中。
発信中。
コール音。
三回鳴って、がちゃり、受話器をとる、あの音。
( ^ω^) 「ハイ!いつも明るく元気に真心その他でご奉仕します!株式会社フリークスだお!」
('A`)「内藤さん。俺です。鬱田ドクオです」
( ^ω^) 「……なんだ、ドクオくんかお……張り切って電話でて損したお……」
('A`)「………伝えたいことがあって、お電話しました」
( ^ω^) 「伝えたいこと、ねえ」
('A`)「…………入社します」
( ^ω^) 「………………」
('A`)「鬱田ドクオ、御社、株式会社フリークスに、入社を希望致します」
( ^ω^) 「………本当にそれでいいのかお?」
- 251 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 23:00:25 ID:VV8ANZL20
- ('A`)「ええ、決めたことですから」
( ^ω^) 「ふうん。自分で決めたなら、仕方ないお。僕が止める義務は無いお。後悔してももう遅いお!」
( ^ω^) 「わかったお。承知しましたお!」
ああ、どこかで、みみにしたような、きざなせりふ。
( ^ω^) 「改めて、鬱田ドクオくん、歓迎するお!ようこそ我が社へ!」
- 252 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 23:01:13 ID:VV8ANZL20
-
「フリークスへ、ようこそ!」
,
- 253 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 23:02:02 ID:VV8ANZL20
- *****
翌日朝、俺は酷い二日酔いに見舞われ、何故か、隣人に救急車を呼ばれることとなるのだが、それはまた、別のお話。
- 254 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 23:02:47 ID:VV8ANZL20
-
第二話 後編
おわり
- 255 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/15(土) 23:05:28 ID:VV8ANZL20
- 投下終わり
集中力と文章の整合性の低下が著しいので少し休みます
三話は来週以降に投下
お粗末様でした
- 256 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 23:32:17 ID:fIBzYPgM0
- おつかれー!
続きも楽しみにしてる
- 257 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 23:37:46 ID:hIm.Mw4M0
- 乙
次が楽しみ
- 258 :名も無きAAのようです:2012/09/15(土) 23:45:41 ID:MUpyrS7U0
- 乙
- 259 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 14:00:05 ID:aiIvsURM0
- なんだかんだで良いね
乙
- 260 :名も無きAAのようです:2012/09/16(日) 14:23:09 ID:.FdfrVTEO
- 来てたか、乙!
今から読む
- 261 :名も無きAAのようです:2012/09/17(月) 23:11:59 ID:yO5vw2XM0
- おつかれー
続き楽しみだ
- 262 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/18(火) 06:52:27 ID:/hGyAHdw0
- 今週は色々と忙しいので、投下は多分来週末位になります
よろしくお願いします
- 263 :名も無きAAのようです:2012/09/19(水) 00:32:07 ID:.gt3oRXg0
- はあく
- 264 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 00:12:43 ID:mzxy8ubY0
- 来週半ばには上げられる
猫田さんの膝に居る( ∵)は食えるけど見えない 口は機能するが目は見えません 猫田さんが見ている光景を見ることが出来る 視界を共有しているよ
補足
- 265 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 00:53:24 ID:0IR5Njzg0
- よしきたこれでかつる
- 266 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 17:17:54 ID:gc9eTt.Y0
- >>264
チンコは生えているんですか
生えているなら処理はどうしているのですか
猫田さんが優しくナデナデしてあげる感じですか
- 267 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 18:12:19 ID:t6GOYBm60
- >>266
顔面だけですね可哀想なことに
人並みの性欲はあるっぽいのでいつも切ない想いをしているんじゃないかな
耳はないが耳孔はある
- 268 :名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 19:48:34 ID:6RnQAgZI0
- つまりおパンツみてムラムラ
お風呂でムラムラっめことか羨ましいやらかわいそうやら
- 269 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/26(水) 20:04:38 ID:vJHNoKy20
- 今日中か明日中に投下すます
- 270 :名も無きAAのようです:2012/09/26(水) 20:06:22 ID:mObF/l/I0
- リョーカイ!
- 271 :名も無きAAのようです:2012/09/26(水) 20:06:56 ID:uOCgCGf20
- まってるぜー
- 272 :名も無きAAのようです:2012/09/26(水) 22:05:07 ID:uArqIPJA0
- wktk
- 273 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/27(木) 21:29:55 ID:TkMvK6Ak0
- 日付変更と共に投下
- 274 :名も無きAAのようです:2012/09/27(木) 21:38:40 ID:ARyehKE20
- おk
- 275 :名も無きAAのようです:2012/09/27(木) 22:27:29 ID:UGkN.PJo0
- おういえ
- 276 :名も無きAAのようです:2012/09/27(木) 23:20:39 ID:vvgXJRf2O
- wktk
- 277 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:00:05 ID:wlHEydTI0
-
ああ、やんぬるかな。
.
- 278 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:01:00 ID:wlHEydTI0
-
('A`)freaks!のようです
第三話
前編
- 279 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:02:01 ID:wlHEydTI0
- ('A`)「母ちゃん?」
('A`)「うん、俺」
('A`)「おー、元気元気」
('A`)「母ちゃんは?」
('A`)「そっか。良かった」
('A`)「……あー、あんさ」
('A`)「……あ?……ああ……うん。うん」
('A`)「わかった。わかったから」
('A`)「ちゃんと休めよ。それじゃ」
('A`)「……わかったって……うん。じゃあね」
がちゃん。
- 280 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:02:55 ID:wlHEydTI0
-
そう。
つい先日のこと。
一応、仮にだが、就職出来ました。
で、母ちゃんに、報告した方がいいよな、と思い、電話をかけた。
結果、一通り愚痴を聞いて、後は俺の心配をして、その日の通話はおしまい。
退院したいと医者に言えども、そんなボロボロのからだじゃあ何も出来ませんよ、と、いなされてしまうらしい。
- 281 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:04:13 ID:wlHEydTI0
- 早くお家に帰りたいわ、とぼやく声は、普段聴くそれと、何も変わっていないように、思えた。
しかし、この、惚けた声色の中に、突然に倒れる程の疲労が溜まっていたのだ、と考えると、そう楽観的に現状を見ては居られんのだな、妙な義務感と後ろめたさが、背中を這うような心地がする。
('A`)「……仕事のことは、また今度言えばいいか」
('A`)「……俺が、しっかりしなくちゃ」
今、俺が頼れるのは、自分の身、一つだけなのだから。
- 282 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:05:25 ID:wlHEydTI0
-
……その、頼らざるを得ない我が身でさえ、得体の知れぬ化物屋敷へ、落としてしまったのも、ずばり、自分なのだけれど。
内藤さんとは、電話越しに啖呵を切ったり切られたり、意味の無い意地の張り合いを続けつつ、今後についての話をした。
彼の言うところに拠れば、
- 283 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:06:40 ID:wlHEydTI0
-
( ^ω^)「ここんとこあんまり大変なお仕事は来てないから、出勤はまだいいお!」
( ^ω^)「でも、それとは別に、今後晴れてこの会社に勤めるに当たって、説明することは、正直あんまりないんだけど、知ってた方が良いことは、たくさんあるお」
( ^ω^)「つうわけで、なるたけ早めに、また、ウチに来て欲しいんだお!」
との、ことらしい。
諸々話して通話を切って、残った酒を一気に煽り、色々省いて今に至る。
伊藤さん、すんませんした。
救急車の中は、思っていたより狭かったです。
- 284 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:08:54 ID:wlHEydTI0
-
ともかく。
着替えた。
飯を食った。
歯は磨いた。
顔も洗った。
初めて館を訪れた日から、一週間。
社員としての、初出社。
玄関で、靴べらを手に取りにやつく俺は、多分、一週間前の俺とは、肉体も、脳味噌も、別人であるに違いないのだ。
そう思わないと、この気持ちの昂りを、説明することが、出来ないから。
ちくしょう。
結局、あいつらの思う壺じゃねえか。
- 285 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:10:21 ID:wlHEydTI0
-
わくわくいらいら、落ち着かない胸を一発、拳で叩いて、俺は、開け馴れた扉を開ける。
忘れ物は無いか?
ああ、ひとつ、あった。
('A`)「………………いってきます」
いってきます。
.
- 286 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:11:38 ID:wlHEydTI0
- *****
('A`)「……雨か」
雨が降っている。
勢いは強くない。小雨である。
この間まで、西日の照り返しがきつかったアスファルトは、今はすっかり大人しく、靴裏で擦ってみると、僅かに、ずるりと、滑る感触が伝わってくる。
まだ歩き慣れていない急傾斜の坂道は、街の中心部から少し離れているせいか、閑散としている。
歩いていると見かける自動販売機は、きちんと機能しているようだ。
- 287 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:12:48 ID:wlHEydTI0
- こうしている内に、館の前へ着く。
改めて眺めても、変わらずでかい屋敷。一般的に考えられる「洋館」を体現しているような見た目。煉瓦で出来た外壁に這う蔦からは、降ってきた雨粒がそのまま、葉を伝って落ちてくるので、壁下に来る一瞬だけ、余計に濡れることになってしまうのだった。
('A`)「うへ、つめて」
('A`)「……ちゃんとインターホンはあるんだなあ」
ぴんぽん。
押すと変な音がするとか、変な触り心地がするとか、そんなことは、なんにも無かった。
別に、この屋敷自体をおかしい物だと思っているわけではないのだが、住んでいる社員が軒並み異常なので、疑ってかかってしまう所はある。
屋敷に罪は、ないのである。
- 288 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:14:09 ID:wlHEydTI0
-
しばらく立って待っていると、扉の向こうから、微かに、走ってこちらへとやってくる音がする。
('A`)(……内藤さんじゃない…………?)
あの太った男が走っているにしては、あんまり軽い足音。
猫田さんが、応対しに来ているのだろうか。
事前に館へ来る時間は、前もって伝えておいたので、それも、まあ、あり得ない話じゃない。
そもそも、客の迎えやら何やらを、いちいち社長さんがやっていたら、身とか間とか、色々と、保たないもんがあるのだろう。
がちん。
扉が、軽い音をたててひらいた。
- 289 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 00:15:21 ID:oJu0.OqE0
- 来てた!支援
- 290 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:15:58 ID:wlHEydTI0
-
ζ(゚ー゚*ζ「はいはあい、どちらさまですかあ」
('A`)「…………あれ」
開いた扉の隙間から、ぽこんと顔を出したのは、予想していたような人物ではなかった。
長めの金髪を、頭の両サイドで束ねた少女。
年は、高校生、くらいだろうか。
俺より、頭一つ小さいからだを、心持ち上向きにして、ゆっくりと辺りを見回し、視線が、俺の顔にぶつかる。
- 291 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:17:09 ID:wlHEydTI0
-
ζ(゚ー゚*ζ「はい…………………」
ζ(゚、゚*ζ「…………………?」
('A`)「…………あの」
ζ(゚、゚*ζ「んん……………?」
ζ(゚ヮ゚*ζ「……………あッ」
('A`)「……?」
ζ(゚ヮ゚*ζ「う、うつださん!うつだどくおさんですか!?」
('A`)「え、ああ、」
ζ(゚ヮ゚*ζ「ちがったらごめんなさい!でもしゃちょうやもらさんとか、あ、わかさんがねくらそうでかおいろのわるいせのひくめなおとこのひとがきたらそうだから、あいてしてあげなさいって!ちがいましたか!うつだどくおさんですか!」
- 292 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:17:51 ID:wlHEydTI0
-
('A`;)「おお……失礼なやつだな……」
('A`;)「うん、鬱田は俺だよ」
ζ(^ヮ^*ζ「やったーあってた!なかへおはいりください!ごあんないしますので!」
('A`;)「お、おう、ありがとう」
- 293 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 00:18:19 ID:adhwUjiw0
- おお
- 294 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:19:23 ID:wlHEydTI0
- ころころ変わる表情と、意識してみなくとも慇懃な態度。こいつもなんだか、ぐらぐらしている。
存在自体が、浮世を離れているような。
開かれた扉の向こうから、件の少女が手招きをする。
大人しく着いて奥へ進む。
時折、俺が着いてきているのか、確認するように振り向く彼女はというと、廊下を大袈裟に、スキップなんかしながら歩いている。
ζ(゚ヮ゚*ζ「こちらでっす、おきゃくさまのおへや〜」
ζ(^ー^*ζ「どうぞ〜、おすわりくださいな」
('A`)「ありがとうございます、お構いなく」
- 295 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:21:07 ID:wlHEydTI0
-
踊るように、軽やかに足を操る彼女は、やっぱりどこかふわふわとしていて、彼女の周りだけ、重力の無効になったみたいなふうなのであった。
じっと眺めていると、頭のネジが、外れてしまうような。
あ、いや、女の子を、そんなに長い間、見つめるなんてことは、しないけども。
ζ(^ー^*ζ「…………」
('A`)「…………」
('A`)「すみませんが、内藤さんはどちらに……」
ζ(^ヮ^*ζ「おしごとのおはなしで、おるすです」
('A`)「猫田さんとか、ワカッテマスさんは……」
ζ(^ヮ^*ζ「おしごとです!」
('A`;)「………………」
困ったなあ。
- 296 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:22:31 ID:wlHEydTI0
-
('A`;)「……それで、君は……」
ζ(゚ヮ゚*ζ「あっあっ、もうしおくれました!」
ζ(゚ー゚*ζ「わたくし、とうしゃ、フリークス、で、アルバイトをさせていただいております!はるみデレ、ともうします、よろしくおねがいいたします!」
('A`)「はるみ……さん?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、しゅんかしゅうとうのはる、に、せとないかいのうみ、デレはそのまま、カタカナひょうきです」
('A`)「ご丁寧にどうも。俺の名前は……知ってるみたいだけど」
ζ(゚ヮ゚*ζ「ハイ!しゃちょうから、だいたいのことは、うかがっております!ねくらそうでかおいろのわるいせのひくめなおとこのひと!」
('A`;)「内藤さんの野郎……」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
('A`)「あー、いや、いいんだ。案内してくれてありがとう」
- 297 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:23:36 ID:wlHEydTI0
-
ζ(゚ヮ゚*ζ「!おちゃ、おもちしますね!ええと、たぶん、もうすぐしゃちょう、かえってくるとおもいますので!」
('A`;)「いや、悪いから、大丈夫……」
ζ(゚ー゚*ζ「しょうしょうおまちください!」
彼女、名乗るところによると、春海デレは、無重力を纏ったままに、応接室を飛び出していく。
やけにひらがな調に聞こえる、彼女の言葉運びは、舌足らずで幼いが、話している内容から察するに、いかれているとか、ぱあであるとか、そういうような分類に、入っているんではないようだ。
- 298 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:24:26 ID:wlHEydTI0
-
('A`)(バイトだって言ってたしな)
('A`)(流石に、正規雇用じゃない子は、おかしいことはないだろう)
('A`)(良い子そうだし、明るいし)
('A`)(ちょこちょこ見える態度は気に食わんが)
天真爛漫であるとでも言い換えれば、余裕で許せる範囲内だ。
('A`)(それにしても、内藤さんはなんの用があって俺を呼びつけたんだ)
('A`)(いねーなら帰ってもいいかなあ)
('A`)(やることはたくさんあるし)
('A`)(帰ってもいいかなあ)
- 299 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:25:40 ID:wlHEydTI0
-
例の柔らかいソファに沈み込みながら、無意識に、欠伸をひとつ、吐いたのと同じタイミングで、先程、春海デレが、軽快に出て行った扉が開いた。
ζ(゚ヮ゚*ζ「おちゃ、おもちしました!」
かちゃかちゃ、危なっかしい音をたてつつ、ソファ前のテーブルに、ティーセットが並べられてゆく。
ポットから湯気が溢れて、辺りが紅茶の香りで満たされるのが分かって、こういう、高貴な雰囲気に不慣れである俺は、思わず背筋を伸ばしてしまう。
普通の紅茶の香りではなくて、多分これは、
- 300 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:26:38 ID:wlHEydTI0
-
('A`)「ハーブティー?ってやつか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あら、よくおわかりで!おさっしのとおりです」
ζ(゚ー゚*ζ「いくらねくらそうでかおいろのわるいせのひくめなおとこのひとだといっても、あんまりにあんまりなかおいろとおかおでしたので、せめて、おちゃでものんですっきりしていただこうかと……」
('A`;)「お、おう、ありがとう」
気の利くのと、愛想の良いのは、全く、別のことだった。
早く気づくべきだった。ちくしょうめ。
しかし、イライラするのと、感謝をするのも、別のことといえば、別のことなので。
('A`)(折角、淹れてくれたもんだし、)
('A`)「じゃ……いただきます」
ζ(^ヮ^*ζ「どうぞ!めしあがれ!」
既に中身の注がれたカップを手に取ろうと、指を伸ばす。
- 301 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:28:17 ID:wlHEydTI0
-
ところでだ。
一般論なんだが、紅茶とか緑茶とか、温度をかっちり計ってから淹れる奴がいるだろう。
どうにも、茶ってのには、飲む時の適温やら、注ぐ湯の温度はこれこれこうだ、とか、ややこしいことが少なくないらしい。
で、紅茶を淹れる温度、面倒臭いから説明は省くが、沸騰したまんまだと、旨くなくなっちまうんだと。
そこまでは、良い。
それだけなら、まだ良かったんだが、次に来るのが、いけなかった。
カップを温めるんだな、紅茶ってやつは。
沸騰未遂の湯の入った、ついでに、温められたティーカップ。
口当たりを考慮してのことか、カップの幅は、限りなく、薄い。
- 302 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:29:00 ID:wlHEydTI0
-
油断した。
物凄く、熱かったのだ。
.
- 303 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:30:09 ID:wlHEydTI0
-
('A`)「あ」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
ぱりん。
運悪くテーブルの縁に当たったティーカップは、大きく、音をたてて割れた。
('A`;)「、あっつ!」
膝に満遍なくかかった紅茶は、注ぎたてなのが不幸だった。
指で一瞬、触れたのみだが、それの温度は、流石に、尋常ではなく、慌てて、自分の持っていたハンカチで、茶を浴びた部分を拭きにかかる。
- 304 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:32:50 ID:wlHEydTI0
-
ζ(゚−゚*ζ「………………」
ζ( − *ζ「……………………」
('A`;)「春海、さん」
ζ( − *ζ「………………」
('A`;)「あの……ごめん…………」
ζ( − *ζ「…………す」
('A`;)「……………え、」
ζ( − *ζ
.
- 305 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:34:55 ID:wlHEydTI0
-
ζ( − *ζ「そんなことだろうと思ってたん で
す。どうせ私なんかが淹れ た紅茶なんて不味
くて不味くて飲めたもんじゃなかったんでしょ
う。ええ。わかっ ていますよ、ええ。だって
貴方は私を監視している組織のひとり。観察対
象が何を仕 込むかわからないですものね。正
解です。貴方は命拾いをしました 。天より授
か りし悪運に拍手を。拍 手を。拍手を」
- 306 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:36:06 ID:wlHEydTI0
-
ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち。
.
- 307 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:38:01 ID:wlHEydTI0
-
ζ( − *ζ「今だっ て貴 方のお仲間が窓から床
下から天井から水道 管から私を見ている。私
の一挙 手一投足を見ている。一挙一動を監視し
ている。私は監 視されている。監視され続
けている。何故こん な思いをし なければな
らな
いのか?私 があなたがたに何かしました
か?
なにもしていないのに。何故私が。私だけ
が!
私が!!!!!!! !」
- 308 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 00:38:32 ID:KnMwYC8kO
- おお支援
- 309 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:38:49 ID:wlHEydTI0
-
('A`;)「春海さ……」
ζ( − *#ζ「気安く私の名前を呼ぶな!」
('A`;)「う…………」
.
- 310 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 00:39:05 ID:rNSqngoE0
- デレちゃん電波だー!
ドクオはティーカップのとってを持たずに湯飲みのように持ったってこと?
- 311 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:39:55 ID:wlHEydTI0
-
なんか言い出したぞ。
なんか言い出した。
電波か?真正の方の電波女か?
なんにせよ許容範囲外だ。
俺の脳味噌及び精神は奴を受け入れられるだけの器を持ち合わせていない。誠に残念なお知らせである。
自分の気が動転しているのは、分かった。
冷静になんてなってない。
客観的に自分自身を見られていることは、辛うじて、喜ばしいような気がする。
まさに拍手を贈りたい。
ぱちぱち。
- 312 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:41:06 ID:wlHEydTI0
-
ζ( − *ζ「………………………………………」
まだぶつぶつと独り言を吐いている春海もとい電波に、出来る限り刺激を与えぬよう、息を殺しつつ、離れる。
がたん。
('A`;)「アッ」
ζ( − *ζ「…………!」
- 313 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:43:46 ID:wlHEydTI0
-
ζ( − *ζ
ζ( ー )ζ
ζ( ゚ー゚)ζ「…………なんで逃げるんですかあ?」
てへへ。
ζ( ゚ー゚)ζ「ひとの命を奪 お うと、私の生活を縛ろ うとしてお いて、」
ζ( ゚ー゚)ζ「自分だ けは無事に元の巣へ帰れるとでも思 ってるんで すかあ?」
ζ( ゚ー゚)ζ「お めでたいおつ むをお持ちな んですね え」
('A`;)「お、おう、自前だ」
ζ( ゚ー゚)ζ「そ うみたいですねえ」
- 314 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:44:45 ID:wlHEydTI0
-
死んだ魚みたいに濁った目でこちらを見る春海を、紅茶で温んだハンカチを手にし、しゃがんだ体勢で見上げる俺。
力の抜けた、節々の撓みが伺える春海の体。
肩へくっついたままにぶら下がっている右手の中から、細長い、金属様に艶めいた、鋭利な何かがはみ出していた。
('A`;)「あ、あの、ひとつ、よろしいでしょうか」
ζ( ゚ー゚)ζ「なんですか?手 短にどうぞ」
- 315 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:46:47 ID:wlHEydTI0
-
('A`;)「あ、ありがとうございます、あの、その、右手に握っていらっしゃる、物騒なそれは、いったい、なにに使う物なんでしょうか」
ζ( ゚ヮ゚)ζ「丁度今説 明し ようと思っていたところな んです。これはです ね 、マドラ ーといっ てですね、お 茶とか、 コーヒー とか、飲料 を撹 拌する為の道具 なんで すねえ」
('A`;)「はあ、そうだったんです……」
ζ( ゚ヮ゚)ζ「本 来の用途は、そう なんですけど お、このマド ラー、なんと、ア イスピックと兼 用できるとゆう、優 れも のなんです ねっ!」
('A`;)「!!!」
('A`;)「どっかで聞いたことのあるようなアレになってきたぞ……」
- 316 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:49:06 ID:wlHEydTI0
-
ζ( ゚ヮ゚)ζ「前 々前々 前 々から監視 監視監 視 の嵐でさ れっ ぱ なしもなかな かに苛 々するし我 慢す るのもも う限界だしお肌に も良く ないし っ てことで、」
ζ( ^ヮ^ )ζ「あ なたの 目 が、 見えな くな れば、他 の、あな た がたへ の、牽 制にもなるし、私 の監 視は、できなくな るし、一 石二 鳥じゃ、な いですか?」
('A`;)
んなわけ、あるか。
- 317 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:50:35 ID:wlHEydTI0
-
長ったらしいセリフをペラペラペラペラ垂れ流す間にも、履いたピンク色のスリッパを絨毯に擦らせ、躙りよってくる春海。
口元を歪め、傍から見ると、笑っているような面立ちも、瞬きの回数があまりにも少ない、飛び散る程に見開かれた眼も、彼女の常軌を逸した行動を、装飾するのに、十分だった。
バイトだから普通?
そんなの全く、関係ない。
この館に関わっている、という事実自体を、まず、疑ってみるべきだったのだ。
- 318 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:51:41 ID:wlHEydTI0
-
ζ( − )ζ
がつん、
がつ、
ぼこ。
('A`;)「、うお」
タイツによってコーティングされた、いやに、メタリックな脚部が、執拗に、腹を、脛を、鳩尾を狙う。
せめて腹部を守ろうと身体を丸めると、不意に、頭頂を引っ張られる感覚。
髪を摑まれた。
10代女子の筋力、侮れない。
強制的に、顔を、春海の、真正面へと、向けさせられる。
- 319 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:53:06 ID:wlHEydTI0
-
ζ(^ー^)ζ「最 後に何か言 って おきた いこ と、あ ります ? 」
('A`;)「、髪を掴むのは、止めて欲しいかな、いくら、根暗で、顔色の悪い、チビのオッサンだってな、禿げたくは、ねえんだ」
ζ(^ヮ^)ζ「お安い御 用です!」
髪から離した手で、そのまま、ボタンのひとつ、開いた襟首を摑む。
その時、一瞬、開け放した手のひらから、黒い髪の毛が何本か、落ちていたのを、まだ見えている目の端で確認し、ちょっとだけ、落ち込んだ。
- 320 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:54:04 ID:wlHEydTI0
- あ、あ、眼の前に、間近に迫る、マドラー、及びアイスピック(仮)の、切っ先が視える、ミリ単位で接近して、ようやっと確認出来る、二股に分かれた先端部。なるほど、物を突いたり引っこ抜いたり、そうゆうことをする方面に事欠かないような構造だ、誰だこんなの製品化した奴、俺の眼を犠牲に、販売中止には、なるのだろうか、幼児や老人がそうなる前に、俺がめくらになれば、あり得ない話じゃない、随分と俺も殊勝になったもんだ。後は、ああ、髪の毛が無事そうで何よりだ、この年でハゲんのだけは、流石に勘弁願いたい。
- 321 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:55:02 ID:wlHEydTI0
-
失明寸前のアタマで、考えるようなことじゃあねえな。
そんなの、知ったこっちゃない。
また、流されて、自分を傷つけるんだなあ。
また?
心底、愚かだ、きっと、俺は、世界一。
また。
ここじゃない。
.
- 322 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:56:23 ID:wlHEydTI0
-
ζ( ゚ヮ゚)ζ「じゃっ、遠慮なく!失礼しまあす」
拳で握り込んでいた棒を、ペンを持つ時のそれに持ち替える。
諦念ではない。反抗でもない。
自分でも、判別のしようがない感情で、膜を張って、待っていた。
受け入れよう。
また、こうやって。
- 323 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 00:58:47 ID:wlHEydTI0
-
( ∀ )「こらデレちゃん!勘違いが過ぎるよ!」
いつの間に眼を閉じてしまっていたんだろう。
それまで、降り注ぐ照明の光が、瞼を透かして、視界は朱色に染まっていた。
不意に、何者か、恐らくは、春海と自分以外の声を、たった今挙げた誰かによって、黒く、薄墨に、塗り潰される、瞼の裏の、血管や、皮。
- 324 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:00:00 ID:wlHEydTI0
-
「あっ、もらさん、おかえりなさい」
「ただいまデレちゃん!それはともかく、ドクオくん早く、離したげな!」
「えっ、あっ、ああああ!!また私ったら、ああ、あ、ああ、ごめんなさい、う、うええ」
「いや、いいから離してあげなって!」
「あっ、う、す、すみません!すみません!すみません!」
- 325 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:01:01 ID:wlHEydTI0
-
どさりと重い音がして、軽い痛みも身に受けて、身体が解放されたのを知る。
きつくきつく閉じていた瞼を、恐る恐る、ひらくと、久方振りに、外へ出たかのような、直視出来ない、光が溢れる。
「大丈夫だったかい!大丈夫だね?そりゃそうだ、ドクオくん、君がどうにかなっちまうはずがない!」
ああこれは多分、手を、差し伸べられている。
薄らぼやけた目玉を擦り、失明の危機より救い出してくれた、勇気ある青年?少年?どちらでも良い。
その彼の顔を見、手を、取って、立ち上がった。
- 326 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:02:34 ID:wlHEydTI0
-
( ・∀・)「初めましてドクオくん!いや!初めまして、じゃあ、ないのかな!」
( ・∀・)「ひさしぶり、ドクオくん。ぼくの同胞」
漸く、鮮明に、焦点の合う、視界と。
触れている掌に、確かに伝わる感触と。
('A`)「あ、ああ、助けてくれて、ありがとう
ござい、ま、」
('A`)
.
- 327 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:03:58 ID:wlHEydTI0
-
正面に、微笑む男の顔は在り、
摑む手は黄色く冷たく。細密に、モザイク様の。
伸びる腕から生うものは、極彩色が、花の如く。
.
- 328 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:04:41 ID:wlHEydTI0
-
彼は、鳥であった。
文字通り、鳥であったのだ。
.
- 329 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:05:25 ID:wlHEydTI0
-
第三話
後編
おわり
.
- 330 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:05:56 ID:w582KEjs0
- ヾヽヽ _ _ 、、
(,, ・∀・) 1 丶|丶| ー-, -千- __ ヽ |
ミ_ノ ┴ ./、|/、| ( ノ ___|__ __ノ o
″″
- 331 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:06:19 ID:wlHEydTI0
- うわ間違えた
>>329
三話前編です
失礼しました
- 332 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:07:03 ID:aD6C7h4w0
- 乙
>>330
ふざけんなwwwwwwww
- 333 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:07:05 ID:w582KEjs0
- あっ 終わりだった乙
精神キチもいらっしゃるんですね
- 334 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:07:33 ID:Ei99YITcO
- 乙
デレが電波かわいいな
- 335 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:08:39 ID:wlHEydTI0
- 三話前編終わりました
話が動くのはよんわからですねよんわから
後半話の辛抱です
>>310
その通りです
どくおくんは庶民なんですね
- 336 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:10:02 ID:VrHjlevU0
- おつ
デレちゃん一応正気のときもあるのね
- 337 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:11:24 ID:wlHEydTI0
- 私生活が忙しくなって来たので、投下ペースが更に遅くなるかもしれません。
完結させられるだけの芯は一応作ってあるので、逃亡はしません どうか最後までお付き合い願えたらと思います
- 338 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:11:48 ID:B1oAJJvg0
- おつおつ
ゆっくり待ってるよー
- 339 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/28(金) 01:15:13 ID:wlHEydTI0
- 紅茶の淹れ方あたりのツッコミは無しで……
次回は来週の日曜日、再来週の水曜日辺りに!
- 340 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:17:21 ID:L4P8CDzY0
- おつ
デレが怖すぎる…
- 341 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:25:42 ID:DumJSMYQ0
- おつおつ
- 342 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 01:35:58 ID:CT7VxfP60
- おつ!
- 343 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 02:01:42 ID:WIRE5tf.0
- おっつう
- 344 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 02:30:25 ID:xLHnSiT.0
- ドクオも気づかないだけでおかしなところがあんのかな?
なんにせよおつ
- 345 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 06:47:09 ID:lqxCI1oc0
- 親が倒れるまで何もしない(できない)ってのは
立派な欠損だと思うけど
- 346 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 12:19:47 ID:w582KEjs0
- おいやめろ
- 347 :名も無きAAのようです:2012/09/28(金) 16:10:57 ID:adhwUjiw0
- 乙
デレちゃん洒落になんないぜ……
- 348 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 01:04:45 ID:y4LxIJKc0
- なんか、所々文字化けしてるんだけど?俺だけ?
- 349 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 09:45:54 ID:g5sYobeI0
- >>318 髪を○まれた。
>>319 襟首を○む
>>327 ○む手は
この辺化けてるね。
- 350 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 10:09:18 ID:s/mzxmAQ0
- スマホからみてるけど特に化けてないぞ?
- 351 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 10:54:59 ID:2auUFkM20
- iphone+bb2cだと化けてる
- 352 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 11:58:40 ID:s/mzxmAQ0
- Android+2chmate
これは大丈夫
- 353 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/29(土) 12:01:59 ID:Ad1mPdaY0
- おおすんません
旧字使うの止めれば良いのかな、気障っぽくした罰か!
- 354 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 14:19:46 ID:II41TV5o0
- 化けてるのはドクオの心理状態が普通じゃないから、その表現なのかとおもった
- 355 : ◆mD5OgcljGs:2012/09/30(日) 12:23:46 ID:uExMqLyE0
- ラノベ祭やら鬱祭やら色々書きたい感じなので投下ちょっと遅れがちになります
ペース配分試行錯誤中しばしお待ちを
- 356 :名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 14:04:49 ID:SvCqGOuY0
- 了解
楽しみに待つぜ
- 357 : ◆mD5OgcljGs:2012/10/04(木) 21:37:59 ID:ou21WpoQ0
- 報告
設定の確認の為に作品を読み直したところ、序盤に今後の展開に干渉してくる重大なミスを発見しました。
続きを書くことで修正しようかとも思いましたが、想定していた以上に深く結末に繋がっている線であり、難しいと感じます。
そこで、このスレを一旦削除し、建て直すことにしました。
理由は上に挙げたミス、個人的には一部文章の破綻具合が度を越していることなどです。
一度全体の文章を精査した上で、もう一度一話から、ある程度の書き溜めをして投下しなおすのが賢明だと感じました。
今作品を支援して下さっている方には申し訳がたちません、情けない限りです
いつになるかはまだわかりませんが、必ず戻ってきます。
申し訳ありません。
- 358 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 21:55:40 ID:OZLfxF8k0
- おk
- 359 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 22:02:40 ID:9aEnA1m60
- わかった待ってる
- 360 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 22:06:03 ID:4r6PmTn6O
- わたしまーつーわ
- 361 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 22:06:24 ID:pabT/L2.0
- 把握した
- 362 :名も無きAAのようです:2012/10/04(木) 23:23:26 ID:eRjG8g.o0
- 待ってるよ
- 363 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 01:21:44 ID:2Eo4LzhI0
- 納得いくようにやってくれ
待ってる
- 364 :名も無きAAのようです:2012/10/05(金) 13:30:56 ID:CR1VMbOA0
- 待ってるよ~(´・ω・`)
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■