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(´・ω・`)ごちそうさま、のようです- 1 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:20:47 ID:C.I5fgP.O
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561:名も無きAAのようです
12/04/01(日) 22:32:10 ID:sjgMlIUUO
なんかAA+スレタイひとつください
562:名も無きAAのようです
12/04/01(日) 22:34:53 ID:vkhMY5Og0
(´・ω・`)ごちそうさま、のようです
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- 2 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:23:21 ID:C.I5fgP.O
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1.
興奮を忘れないうちに立ち上がり、パソコンラックの前に向かう。
回転式の椅子に腰をかけ、彼女は高さを調整した。
ちょうど良い高さになり、座面下のレバーを握っていた手を前に持ってくる。
パソコンを、スタンバイモードから平常運転に戻した。
普段感情を表に出さない彼女がこれほどまで興奮していたのには、わけがあった。
今まで食べたことのないと言っても過言ではない程、おいしい料理を食せたからだ。
退屈な大学生活のなかで、彼女の活動の源となっているのが、おいしい料理である。
その感想を、いつものようにブログに書こうと思っていたのだ。
ぎこちない動作でブログのページを開いた。
同じく食べ歩きが趣味である人からのコメントを逐一確認、返信する。
そのときのタイプする手の遅さも、マウスを握ったときのそれと同じくらいだった。
ああ、こうしている時間が既に惜しい。
そう思っていた彼女は、不手際ながらもスピーディーに作業をこなした。
一通りの返信は終えたので、漸くブログを更新する機会が巡ってきた。
新鮮なまま残っているあの料理の感想を、柄にもなく浮かれた様子で書いてゆく。
タイプするだけで当時の味覚が蘇り、唾液が溢れ出してきた。
この、感想を書くという作業をしていると、当時の感動が再びやってくるという事。
それが、彼女が食べ歩きの感想ブログを続けていて見つけた、ささやかな幸せだった。
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- 3 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:24:49 ID:C.I5fgP.O
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川 ゚ -゚)「……」
思わず頬が緩む。
ほっぺたが落ちる、とはまさに正確に的を射た言葉だ、と再認識していた。
相変わらず、キーボードを凝視しないと文字を打てないが、
その一文字一文字には彼女の純粋な心が詰まっている。
彼女は、自分に正直で、思ったことを後先考えずにすぐに言っていくタイプの人間だ。
だからこそ、彼女の書く感想は非常にまっすぐな、
素直なものなので、読んでいても彼女と同じ心地になれるのだ。
川 ゚ -゚)「侮っていた……と」
文字を打つスピードは、変わらない。
ただ、次の文章はまだか、と急かす自分を落ち着かせる。
早く文章を書いて、当時の感傷に浸りたい、と焦る自分がいるのだ。
それを紛らわすために、わざとらしく独り言を漏らす。
その間も、彼女の感想は次々と文字を形成していた。
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- 4 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:26:48 ID:C.I5fgP.O
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川 ゚ -゚)「くわずぎら……ん?」
次なる文字を形成しようとすると、玄関の扉が数回、叩かれた。
室内に在る音は、彼女がキーボードを叩く音以外に存在しなかったため、
そのノックの音は彼女の耳によく行き届いた。
あの人が来たのか、と思い、一旦手を止める。
椅子を引いて立ち上がり、玄関に向かった。
先ほど言っていた食べものを、持ってきてくれたのだ。
密閉パックに入ったそれを受け取り、深々と礼をして扉を閉めた。
扱いが少しばかり雑に見えたのは、早く感想の続きが書きたいからだ。
パックをちいさなテーブルの上に置き、再びパソコンと向かい合う。
そして、再び室内はキーボードが叩かれる音に支配される事となった。
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- 5 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:28:48 ID:C.I5fgP.O
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ブログの更新を終えた彼女は、どんな気分だっただろう。
すっきりした、晴れやかな顔だっただろうか。
更なる欲を追求する、笑みの貼り付いた顔だっただろうか。
密閉パックを手に取った時は、その両方だっただろう。
中の食べものを食べる時なんか、尚更だ。
しかし、その後に彼女の顔面に現れたそれは、この二つともかけ離れていた。
川; - )「……くッ!」
箸を落とし、その場に横たわった。
苦悶の声をあげるが、誰も聞かない。
次第に身体中に張り巡らされた神経が意義を失ってゆく。
視界も、既に暗転していた。
あちこちが痺れ、最終的には泡をも吹く始末だ。
何とかせねば、と助けを求めるべく身を動かそうとするのだが、既に遅かった。
喉元に遣った手はそのまま、脚が見苦しいまでに暴れる。
その脚の動きが止まるのに、そう時間はかからなかった。
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- 6 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:30:23 ID:C.I5fgP.O
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川 - )
最期に、彼女はなにを思っただろう。
おいしい料理に対する、愚直なまでの喜びだろうか。
若しくは、喜びではなく悲しみ、憎悪だろうか。
悲しきかな、それを知る者はこの世に一人として存在しなかった。
静かな室内、彼女の動きはぴたりと止まったきり、寸分ものぶれもなく固まってしまった。
――そこには、未だ完食されていない
そして、永久に完食されることのない料理が、残されていた。
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- 7 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:33:33 ID:C.I5fgP.O
- ――――――――――――――――――――――――
(´・ω・`)ごちそうさま、のようです
〜 まんぷく刑事の物語 〜
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- 8 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:47:36 ID:C.I5fgP.O
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○作品中にて、特定の読者に不快な思いを与えてしまう表現があるかもしれません。
しかし、それは演出のためのものであり、決して中傷を目的とした表現ではないことをご留意ください。
○当作品には「○話」「○章」「○部」などございません。
左上の小分けの数字がそれに該当するとお考えください。
○そのため、投下は話数ごとにおける一定数の投下ではありません。
きりのいいところで切ることになり、毎度の投下量にばらつきが生じるかもしれません。
○当作品はノンフィクションであり、実在の組織や団体、その他一切のものとは何ら関連性を持ちません。
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- 9 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:49:59 ID:C.I5fgP.O
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2.
午後八時頃、警視庁捜査一課では遅ればせながら新入りの刑事の歓迎を行っていた。
人々が忙しなく動く警視庁のなかで、そこだけは和やかなムードになっていた。
午前中に済ませる筈だった歓迎会が夜にまで長引いたのは、大きな事件を抱えていたからだ。
( ゚∋゚)「知っている人は知っていると思うが、改めて紹介しよう。モララー刑事だ」
( ・∀・)「よろしくお願いします」
大柄のクックル警部に言われて、モララーはすぐに会釈した。
群青のスーツがよく似合う男で、体格の面では心許ない。
含みのある笑みを常に浮かべているような男であったせいか、若干近寄りがたいオーラを醸し出していた。
ホワイトボードの前で御辞儀をした後は、モララーは現在
捜査一課の手が空いている事もあってか、各人に挨拶をしていった。
警察学校にいた時に教えられた事は、上下関係を守れという事だ。
礼儀の基本は挨拶だ、と教わっていたのが彼にそういった行動をさせた。
( ・∀・)「よろしくお願いします」
丁寧すぎるその動作のひとつひとつが、彼が現職の刑事である事を忘れさせる。
苦笑を浮かべ、先輩の刑事たちはあれこれと話をしていった。
モララーは刑事というものをよく知らずにここまで来たので、
捜査一課に配属されたという実感も未だ湧いてこない。
挨拶や雑談にも面白味を感じないまま、全員への挨拶が終わった。
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- 10 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:51:36 ID:C.I5fgP.O
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部屋の隅でぼうっとしていると、話し声が聞こえた。
無意識のうちに、その会話に耳が傾いていた。
( ゚∋゚)「おい、あいつはまだなのか」
从*゚ーノリ「『残務処理だ』とか言って」
それを聞いて、クックル警部は頭を掻いた。
事件は既に終わっており、残務処理など残ってない筈だからだ。
こうなる時は、決まってあの人物は一服するか犯人と雑談をしているのである。
モララーは二人の会話に違和感を覚え、クックルに歩み寄った。
モララーとは対照的に膨れ上がった腕を見ても、畏怖など感じない。
萎縮する様子もなく、クックルを見上げてモララーは口を開いた。
( ・∀・)「これで全員じゃないのですか?」
( ゚∋゚)「あ、ああ。警部補がいないんだ」
それを聞いて、モララーは「ほう」とだけ言った。
随分と挨拶をして回ったと思っていたが、まだ一人いないそうだからだ。
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- 11 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:52:59 ID:C.I5fgP.O
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( ・∀・)「どんな人ですか?」
从*゚ーノリ「食べる事がだいすきな人よっ」
( ・∀・)「た、食べる?」
モララーは、語尾を跳ね上げたルカ刑事に思わず聞き返した。
まさか、人物の特徴を聞くのに容姿や性格よりもそういった事を聞かされるとは思ってもみなかったのだ。
警部補と言うのだから、やはり厳格な人なのかもしれないし、
若しくはとあるドラマのように飄々とした、誘導尋問のうまい人なのかもしれない。
そのような予想をあらかじめ浮かべていたのが、悉く外れていた。
果たして、食事を何よりも好む警部補とはどのような人物なのだろうか。
モララーの興味は、すっかりその警部補とやらに向けられていた。
( ゚∋゚)「捜査中もよく飯を食っててな。
『腹が減っては捜査もできぬ』とほざきやがる」
( ・∀・)「そうなんですか」
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- 12 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:53:57 ID:C.I5fgP.O
-
クックルはそれを言って姿勢を変えた。
ずっしりとした腕が、鳩のように膨れ上がった胸筋の上で組まれた。
あわせて「ふん」と鼻息を鳴らし、苛立ちを隠せないでいる。
ルカは困り顔で「あはは」と笑っていた。
モララーもあわせて微笑をこぼす。
( ゚∋゚)「もし肉まん片手にここに来たら、覚えておけよ……」
从*゚ーノリ「あ、来ましたよ警部」
( ゚∋゚)「お?」
( ・∀・)「ん?」
ルカの高い声を聞いて、クックルとモララーは振り向いた。
確かに跫音が短い間隔で聞こえてくる。
非常に重い跫音で、どこか特徴的に聞こえた。
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- 13 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:54:43 ID:C.I5fgP.O
-
少しすると、男が荒い鼻息で肉まん片手にやってきた。
もう片方の手で頭を掻き、一言。
(;´・ω・`)「いやー、はは。遅れました」
(#゚∋゚)「……その肉まんは……なんだ?」
(´・ω・`)「え?」
(´・ω・`)
(#゚∋゚)
(;´・ω・`)「その、道端に落」
(#゚∋゚)「問答無用!」
クックル警部の鉄拳が、男の顔面に食い込んだ。
肉まんもろとも、男は地に背中から倒れてしまった。
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- 14 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:54:47 ID:PyKqW8BoO
- 支援
- 15 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:55:57 ID:C.I5fgP.O
-
3.
(´#)ω・`)「いやね、逮捕した子とお話してたんですよ」
( ゚∋゚)「で、肉まんを差し入れしようとした、ってか」
(´ぅω・`)「腹が減っては人は素直になれないですから」
( ゚∋゚)「ったく」
腫れた目を擦って、男は言った。
話の流れからして、この男がその警部補で間違いないようだった。
鼻息を吐いてから、クックルはモララーの肩を掴んだ。
警部補にはまだ挨拶をしていなかったのをモララーは思いだし、一歩前に出た。
そして、深々と頭を下げようとした。
( ・∀・)「モララーです。よろしくお願――」
(´・ω・`)「……?」
途中で挨拶を遮ったのを見て、男が首を傾げる。
モララーは挨拶やら礼儀やらを忘れて顔を上げ、男の顔を数秒間見つめた。
虚を衝かれたような顔をして、指を前に突きだし、ぷるぷると震わせた。
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- 16 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:56:05 ID:1najWLCUO
- ノンフィクション…?
- 17 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:56:43 ID:5Hxu3NI6O
- >○当作品はノンフィクションであり、
え?これ実話なの?
- 18 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:58:24 ID:C.I5fgP.O
-
そして、一言。
(;・∀・)「……ショボン叔父さん!?」
(´・ω・`)「ん? 俺の名前を知っ――」
名乗ってもないのに名前を言われ、ショボン警部補は少し驚いた。
どうして知っているのか、そう聞こうとするとショボンも顔色が豹変(かわ)った。
「あ」と声を漏らし、半歩前に出てモララーの顔を凝視する。
モララーのテンションにあわせるように、ショボンも声を荒げた。
(´・ω・`)「――モララーか? 久しいな!」
( ゚∋゚)「なんだ、知り合いか?」
間髪入れず、クックルがそう問う。
すると、少し遅れてショボンが応答した。
(´・ω・`)「こいつは甥ですよ。いったいいつぶりだ?」
( ・∀・)「……さあ」
ショボンの問いに、モララーはぶすっとして答える。
しかし、二人が親戚である事に間違いはなかった。
モララーの父の弟に、刑事がいるのは知っていた。
記憶の片隅に、幼少時大阪の実家に行って料理を振る舞ってもらったのを覚えている。
決して、ショボンの事を忘れたわけではない。
というのにショボンに早速嫌な態度を見せる理由は、単純だった。
モララーは、ショボンの事が苦手なのだ。
なにも、刑事だからだとか、そういった理由ではない。
なぜだかは忘れてしまっているが、それでもモララーはショボンの事を好きでなかったのだ。
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- 19 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 16:59:56 ID:C.I5fgP.O
-
その事をショボンも察しているのか、頭を掻いた。
親族のなかで唯一の甥であるため、可愛がっていた筈なのだ。
それなのに嫌われる理由が、わからなかった。
他の刑事には深々と丁寧に頭を下げていたモララーだが、ショボンにはそれっきり接さなかった。
「反抗期の影響だろうか」とクックルは考え、それ以上は深く突っ込まなかった。
娘しかいないクックルに、男同士などという言葉はいまいち伝わらない。
気まずい空気のなか、それを切り裂いたのは誰の声でもない、一本の電話だった。
ルカが取り、少し言葉を交わす。
すぐに返事をし、受話器を置いて、声をあげた。
从*゚ーノリ「殺人事件発生です」
その言葉で、モララー以外の皆が動いた。
あまりに速すぎる動きだったため、モララーはたじろいだ。
刑事になったばかりのモララーだから、事件など当然請け負った事がない。
右も左もわからず、ただあたふたとだけしていた。
それを、ルカから事件の詳細を聞いていたクックルの一喝が制した。
クックルの身体中に貼り付いている筋肉が、漸くそれらしく見えていた。
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- 20 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:01:33 ID:C.I5fgP.O
-
( ゚∋゚)「ショボンとモララー」
(´・ω・`)「へ?」
( ・∀・)「へ?」
( ゚∋゚)「所轄から捜査権を引き継いで、現場を委せるぞ」
それを聞いて、モララーは一瞬固まった。
刑事が捜査をするのに二人一組になるとはよく聞く話だが、
まさかそれを叔父であるショボンとで委されるとは、予想だにしなかったのだ。
当然、拒みたい気持ちでいっぱいでいる。
しかし、それを許されない事は重々承知していた。
だが、それを踏まえてでも身体は動かなかった。
それを見て察したのか、クックルが歩み寄り、モララーの肩に手を載せた。
びくっと身体を震わせると、クックルは厳ついながらも優しさを垣間見せるような声で言った。
( ゚∋゚)「心配するな、こいつの渾名を知っているのか?」
( ・∀・)「あ、渾名?」
すると、クックルは大きく肯いた。
そして
( ゚∋゚)「奴は健啖家。人呼んで『まんぷく刑事(デカ)』だ」
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- 21 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:02:58 ID:C.I5fgP.O
- 間違えました
仰るとおりフィクションの間違いです
お騒がせしました
- 22 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:06:38 ID:C.I5fgP.O
-
4.
東京の都市部の喧噪を微塵にも感じさせない、郊外のあるアパート。
近未来化が進む現代において、その流れに取り残されたような風貌を見せるそこで、九月十四日、事件は起こった。
今にも腐りそうな階段は、錆びて赤茶色を剥き出しにしている。
壁の土も所々剥がれており、このアパートを前に立つと、決してここが東京だとは誰も思わないだろう。
この「ひいらぎ荘」で、ある女性の死体が大家によって発見された。
時刻は午後十時の十分頃。
一人暮らしをする大学生という事で、大家が作りすぎた芋の煮っ転がしを
お裾分けしようとしたが、明かりは付いているのにノックをしても返事がない。
だが、風呂に入っているような音も聞こえてこないため、寝ているのか、程度に思っていた。
しかし、それだと明かりを点けている事に説明がいかない。
不審に思った大家が鍵を開けてなかに入ったところ、住人の素直クールという女性が
部屋のなかで泡を吹いて倒れているのを見て、大家は腰を抜かしながら通報した。
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- 23 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:08:11 ID:C.I5fgP.O
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(´・ω・`)「――というところだ」
( ・∀・)「……へえ」
パトカーを運転している隣で、モララーは不遜な語調で答えた。
どうして自分がショボンと組まなければならないのか、それが不満で仕方なかったのだ。
ショボンはそれを気にしないようで、続けて口を開いた。
信号が青になり、パトカーが動き出した時の事だった。
(´・ω・`)「事件性の有無は、目下捜査中らしいが……」
( ・∀・)「『見てみないとわからない』でしょ?」
(´・ω・`)「ああ、そうだ。初めてだと思うが、緊張はするなよ」
( ・∀・)「はいはい」
モララーはやはり不満だった。
幼少時、父の出身地である大阪に泊まりに行った時も、ショボンは過保護だった。
その過保護が延長しているのかと思って、気にくわなかったのだ。
大人になってからも子供扱いされるのが、嫌。
これは、親戚を持つ人の多くが実感する事である。
だからこそ、ショボンはモララーが悪態を吐こうが気にせずに済んだ。
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- 24 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:09:20 ID:C.I5fgP.O
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二人を乗せたパトカーは、ひいらぎ荘に着いた。
敬礼をする鑑識に敬礼を返して、現場に向かった。
被害者のクールが住んでいた部屋は、軋む階段の先、すぐそこの二〇一号室だ。
二人が階段を上る時も、この階段は嫌な音をあげた。
「壊れるんじゃないか」と思ったショボンだが、案外丈夫な
造りだったようで、軋みをあげる点以外では問題はなかった。
開かれた扉の前で指紋の検出を行う鑑識の横を通り抜ける。
室内は、ロープの張られた床と、その上を行き交う鑑識で溢れかえっていた。
狭いそこの室内だけで三人はいるこの空間に、モララーは嫌悪感を抱いた。
一人暮らしの女子大生とあるが、別段それをにおわせるインテリアやぬいぐるみはなかった。
必要最低限の調度品だけが並べられたその部屋は、
デザインよりも機能を追求した家具ばかりが目立っていた。
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- 25 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:11:27 ID:C.I5fgP.O
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無趣味なのか、娯楽の本やギターなどもない。
洒落っけのない室内に、ショボンは少しがっかりした。
(´・ω・`)「女子大生、ねえ」
( ・∀・)「こんな狭っちい部屋に余計なもの置く人の方が少ないんじゃないすか」
(´・ω・`)「ぬいぐるみの一個や二個、あったほうがいいのにな」
相変わらずショボンに食ってかかるモララーだが、同じ事を考えていた。
少なくとも、この室内の様子では、恋人はいなさそうだった。
同時に、部屋が荒れてない事も認識した。
ショボンは、ふとロープの隣にあったテーブルに目がいった。
膝の高さまでもない高さのテーブルで、クールは死ぬ直前までは食事をとっていたな、とわかった。
丼鉢が置かれており、隣には青い蓋の密閉パックが置かれていたからだ。
(´・ω・`)「……ん?」
ショボンはすぐに歩み寄り、丼鉢を覗き込んだ。
うどんを食べていたようで、麺が数本と丼鉢の半分ほども
ない汁、そして一口しかかじられてない油揚げが残っている。
そのうどんに湯気はたっておらず、油揚げの脂が浮いている。
(´・ω・`)「(ほう……旨そうだな)」
それを見て、ショボンは腹の音を鳴らした。
おいしそうなうどんを見て、腹が減ったのだ。
胃が食物を求めている。
欲望が食の存在を求めている。
腹の音を聞くと、モララーが笑った。
笑ったといっても、嘲りの混じったものだった。
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- 26 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:13:23 ID:C.I5fgP.O
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( ・∀・)「仕事中すよ。なに考えてんすか」
(´・ω・`)「いや、悪いね。うどんは好物なんだ」
(´・ω・`)「(薄い狐色……油揚げだけのシンプルな具材……完璧だ)」
ショボンは、ルカの言っていた通り、食事が何よりも好きなのだ。
仕事の途中でもよく食事をとると言うし、捜査一課に肉まん持参で
やってきたのを見て、それは言うまでもないな、とわかっていた。
仕事中に料理が現れるものなら、事件そっちのけで料理を凝視する事だってある。
すると、モララーは片づけられていない丼鉢を見て、あることを思いついた。
( ・∀・)「もしかして、死因は毒殺っすかね?」
それを聞いて、ショボンは浮かべていた笑みを取り消した。
険しい顔つきに戻り、しゃがんだままモララーの方を見てゆっくり肯いた。
(´・ω・`)「……ああ」
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- 27 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:15:16 ID:C.I5fgP.O
-
5.
そこで、ショボンは先ほどの話の続きをした。
モララーには現場を見せてから状況を伝えようと思っていたのだ。
ここに来る前に頭に叩き込んでいた情報を、なにひとつ誤りなく伝える。
(´・ω・`)「被害者は素直クール二十二歳、D大学に通う女子大生だ。
. 死因は青酸系の毒物による中毒死。
. 死後三十分から一時間経過しているようだな」
( ・∀・)「毒の出所は?」
(´・ω・`)「見ての通りだ。このきつねうどんかららしいな」
丼鉢、隣の密閉パックの中身を検査した結果は既にでている。
丼鉢、パックともに毒物反応が出たとの事だ。
そこから考えられるのは、パックの中身を丼に移し、そして食べた、という事だ。
(´・ω・`)「つまり、油揚げに毒が盛られていたのかもしれないな」
( ・∀・)「でも、麺は食べられてるっすよね。
うどんを食べ終えてから油揚げを載せた、って事すか?」
モララーが思ったことを素直に言っていくと、ショボンは肯いた。
現状を考えると、それ以外には考えにくいからだ。
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- 28 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:16:32 ID:C.I5fgP.O
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青酸系の毒物は、一度致死量が体内をまわるとすぐに効き目が現れ、死に至らしめる。
そのため、最初からうどんに油揚げを載せていると、
一口目で死に繋がってしまい、麺の大半を平らげるのは不可能なのだ。
それはわかっていても、モララーは疑問を抱いていた。
( ・∀・)「なんでわざわざパックに油揚げを入れてたんすかね」
(´・ω・`)「簡単だ。油揚げの主な味を答えろ」
( ・∀・)「はい?」
モララーは思わず聞き返した。
なぜそんな事を聞かれるのか、全く見当もつかなかったからだ。
しかし、それでもショボンは訊いているため、答えざるを得ない。
( ・∀・)「そりゃ、旨味っしょ。油揚げが酸っぱかったら食ってられない」
(´・ω・`)「そうだ。油揚げは、非常に旨味が豊富な食材だ」
( ・∀・)「……で?」
答えたのはいいものの、やはりわからなかった。
それがどうした、という言葉が喉元まで出かかった。
結局は口にしなかったが、続きを促す事にした。
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- 29 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:18:27 ID:C.I5fgP.O
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(´・ω・`)「油揚げは、いただく前にうどんに載せて、うどんと一緒に食うのが一般的だ。
. だが、油揚げを汁に浸けておくと、旨味成分が逃げてしまうんだ」
( ・∀・)「へえ」
(´・ω・`)「だから先に油揚げを食べるのが一番おいしい食べ方だが、先に平らげるともったいない。
. そう思って一旦近くにあった密閉パックに移したのだろう」
( ・∀・)「……」
モララーは黙り込んだ。
なぜ、仕事場、現場にきてまで食べものの話をされるのかわからなかったのだ。
確かにそれだと筋は通るが、それがわかったところで事件が進展する筈もない。
そこで、出しなにクックルに聞いた言葉を思い出した。
ショボンの渾名は「まんぷく刑事」なのだ、と。
よほど食に精通した男なのだろう、とモララーは思った。
モララーの幼少時からそうだったかは、覚えてはいない。
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- 30 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:19:35 ID:C.I5fgP.O
-
すると、ショボンの眼が鈍く光った。
光ったというよりかは、じわじわと燃え上がっていた。
怒りを見せているようで、モララーはどうしたのか聞いた。
(´・ω・`)「食事は、人類皆共通で持っている楽しみなんだ。
. その食事で人を殺すなど、許せるわけがないだろ」
( ・∀・)「……そうすか」
確かに許しがたい事態だが、モララーにとってはどうでもよかった。
毒殺であろうと刺殺であろうと、殺人は、殺人なのだから。
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- 31 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:20:53 ID:C.I5fgP.O
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6.
呆れたモララーは、足下にあったゴミ箱に目を移した。
スーパーで貰えるレジ袋をゴミ袋代わりにしているようだ。
しゃがみ込んで手袋をはめ、中身を漁る。
鼻をかんだ後のティッシュやペットボトルが見つかるなか、
別のスーパーのレジ袋と、中身が空洞の飴色の小瓶が見つかった。
小瓶が袋に入ったかたちである。
それに違和感を抱き、袋を持って二つを同時に取り出す。
するとそれにショボンが食いついた。
(´・ω・`)「鑑識がまだ調べてなかったようだな」
( ・∀・)「袋はいいとして、瓶はどうなんすか。怪しいっすよ」
ラベルを見ようと思ったが、ラベルが貼られていない。
ふつう、瓶にはラベルが貼ってあるため、モララーが違和感を抱いてもおかしくない。
それを持って立ち上がり、ショボンに歩み寄る。
すると、同時にショボンが鑑識を呼んだ。
モララーから受け取った小瓶を、受け流すように鑑識に渡した。
鑑識は少し場所を離れ、その瓶を調べにいった。
見送ってから、モララーに説明を施す。
.
- 32 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:22:07 ID:C.I5fgP.O
-
(´・ω・`)「ひょっとすると、あれに毒が入っていたのかもしれない」
( ・∀・)「まあ。でもそうすると、これって自殺になるんじゃないすか」
(´・ω・`)「それを決めるにはまだ早いぞ」
そう言ったショボンの言葉のあと、モララーは室内を見渡した。
争った形跡はなく、箪笥や押入に手が付けられていない事を確認する。
( ・∀・)「ほら、争った形跡はないし、物取りでもない。
まして、小瓶が転がっていた。
こりゃー自殺っしょ」
(´・ω・`)「毒物反応が出てから言うことだ――」
ショボンが言った直後に、後ろの方にいた先ほどの鑑識が声をあげた。
「毒物反応がでた」、と。
それを聞いて、ショボンは唖然とした。
(;´・ω・)「……」
( ・∀・)「ほら、自殺じゃないすか」
勝ち誇った様子でモララーが呟く。
否定はせず、ショボンは返事を言った。
(´・ω・`)「捜査を進めてから結論を下そう」
.
- 33 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:23:31 ID:C.I5fgP.O
-
控えめな発言をするが、モララーは納得しなかった。
早く事件を終わらせ、ショボンから解放されたい一心なのだろう。
( ・∀・)「逆に、他殺のケースが考えられないっすよコレ」
(´・ω・`)「そう言うな。犯人が害者の死ぬ直前までここにいた、という可能性もあるだろ」
( ・∀・)「第三者の形跡なんか、残ってないじゃないすか」
そう言われ、再び室内を見渡した。
確かにそんな形跡はないが、指紋や髪の毛など、
見えないところに残っているかもしれない。
少しすると、ショボンの視線に気がついたのか、指紋を検出している鑑識と目があった。
指紋についてだが、幾つか他者の指紋が残っていると言う。
だが、照合の結果、それらは全てこのアパートの住人のものだとわかった。
( ・∀・)「アパートの住人、すか……」
(´・ω・`)「ほらな?」
( ・∀・)「同じアパートなら、お隣同士互いに遊びに来る習慣があるかもしれないっすよ」
(´・ω・`)「だろ?」
( ・∀・)「……?」
.
- 34 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:24:32 ID:C.I5fgP.O
-
むきになって否定してくると思っていたショボンの返答は、
モララーの予想とは大きくずれていた。
モララーの言葉に、大きく肯いてきたのだ。
そして、ショボンは続きを言い放った。
(´・ω・`)「刑事ドラマなんか観ないのか?」
( ・∀・)「あんまり」
(´・ω・`)「そうか。じゃあ教えてやるよ」
ショボンは、少し間を置いた。
(´・ω・`)「刑事には、聞き込みという重大な任務があるんだ」
( ・∀・)「……あ」
(´・ω・`)「聞き込みを始めるぞ、ついてこい」
.
- 35 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:25:50 ID:C.I5fgP.O
- 早いですが今回はここらで切ります。
他に誤植らしき表現がございましたら、ご指摘お願いします。
- 36 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:29:13 ID:PyKqW8BoO
- 乙!面白かった!次の投下の予定なんか決まってたら教えて下さい
- 37 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:34:32 ID:Pv3OWqng0
- 乙!これは面白い
- 38 : ◆D4Djhv3R9w:2012/07/26(木) 17:35:07 ID:C.I5fgP.O
- >>36
暇ができたら数節ずつ投下しようかと思います。
書きための進み具合にもよりますが、八月末までに完結させたいです。
- 39 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/26(木) 17:37:03 ID:C.I5fgP.O
- 化けとる
酉はこっちを使います
- 40 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 17:43:55 ID:5Hxu3NI6O
- 期待
- 41 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 18:52:52 ID:3cSilqfIO
- やっと来たんだ!
予告のときから待ってた
今から読む
- 42 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 20:27:59 ID:2FmobzB20
- くそ きつねうどん食いたくなった
- 43 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 20:28:21 ID:i/yZe7.Y0
- 面白そう
- 44 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 20:34:47 ID:oVk65Pe.0
- 甘い汁をたっぷり吸った油揚げをちょっと囓って、コシの強い麺をちゅるちゅるっと啜りたい
期待する
おつ
- 45 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 22:41:50 ID:InUIpUkY0
- 偽り?
- 46 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:12:26 ID:T8G5aCWgO
- ω・`)イツワリかと思った
- 47 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 14:51:41 ID:2nUgy6IcO
- 言い忘れてた
作品のなかには「んなわけねーよハゲ」な嘘知識があるかもしれません
もしそのような嘘知識がございましたら、どんな些細なことでも構わないのでご指摘お願いします
- 48 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:24:18 ID:2nUgy6IcO
-
7.
そう言うと、ショボンは室内からすぐ外に出た。
夏も終わり、秋に近づくというのに外はまだ蒸し暑い。
残暑の影響か、夜なのに不快感を覚える。
階段を下りて地に足をつけ、ふぅ、とショボンは一回深呼吸をした。
現場のぴりぴりとした空気をいつまでも吸っていると、肩が凝るのだ。
首を左右に傾け、関節を鳴らす。
遅れてやってきたモララーを見て、それをやめた。
( ・∀・)「聞き込み、すか」
(´・ω・`)「自殺か他殺かわからない以上、話を聞くのは当然だ」
( ・∀・)「といっても、どうやって――」
(´・ω・`)「そうだな、一〇一号室の人からにしよう。
. 聞き込みは俺がするから、おまえは手帳を出しとけ」
そう言ったきり、ショボンは早足で動き出した。
階段を下りてすぐのところに、一〇一号室がある。
資料では、既婚の若い女が住んでいる、とあった。
.
- 49 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:26:03 ID:2nUgy6IcO
-
扉の前に立ち、数回ノックする。
「はーい」とだけ声がして、その十秒ほど遅れて跫音が聞こえた。
扉が開かれると、確かに若い女がいた。
彼女はエプロンで濡れた手を拭って、ショボンに応じた。
料理をしていたのだろう、甘酸っぱい匂いが女と同時にショボンたちのところへやってきた。
(´・ω・`)「警察の者ですが、いまお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
(*゚ー゚)「……」
警察手帳を見せ、金色に輝く紋章を見せる。
途端に女性の顔は曇り、ショボンを警戒しだした。
(*゚ー゚)「クーちゃんの事、ですか?」
(´・ω・`)「ええ。……おや、料理中でしたか」
聞かれると、女は少し躊躇いながらも肯いた。
匂いからして、ちらし寿司かなにか、酢飯を用いる料理だと推測した。
思わず料理の事を考えてしまうため、ショボンは雑念を振り払い、本題に戻った。
(´・ω・`)「擬古しぃさん、でよろしいですか」
(*゚ー゚)「はい」
(´・ω・`)「お料理のほう、大丈夫ですか? 火なんかは」
(*゚ー゚)「今、巻き寿司をつくってますの」
(´・ω・`)「巻き寿司を」
料理の品目の予想が当たり、ショボンは心なしか嬉しくなった。
それどころではないと頭を振るい、しぃの顔を見る。
.
- 50 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:27:16 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「確か既婚のはずですが、ご主人は?」
(*゚ー゚)「……主人は」
亡くなったクールの話ではなく、急に夫の話を持ちかけられたためか、顔を一層曇らせた。
気づかれないように足下を見ても、靴はいましぃが履いているグロックスしかない。
出かけているとみて、間違いはなかった。
だが、もう午後十時半になっている。
ふつうのサラリーマンなどであれば、既に帰宅している時間帯だろう。
そう思っていたのを察したのか、しぃが先に口を開いた。
(*゚ー゚)「警備員のため、帰るのが遅れるのです」
(´・ω・`)「具体的には何時頃?」
(*゚ー゚)「……日付が変わる前には」
執拗に夫の話を聞いてくるため、次第にしぃの警戒心も強烈なものになっていく。
夫について、次の質問をしようとした時、しぃは怒りを伏せて、慎重に言葉を発した。
.
- 51 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:28:54 ID:2nUgy6IcO
-
(*゚ー゚)「夫がなにかしたのですか?」
(´・ω・`)「アパートの住人皆の動きを把握する必要があるのです」
(*゚ー゚)「もしかして、私たちを疑ってます?」
(´・ω・`)「……」
敵意を剥き出しにして、しぃが核心を突いた。
ショボンとしてみれば、疑ってはいるし、同時には疑ってないわけでもある。
返答に窮すると無言の肯定と捉えられるため、ぎりぎりで言葉を紡いだ。
(´・ω・`)「いえ、他殺と決まったわけではないので」
(*゚ー゚)「そう、ですか……」
疑ってないと知り、熱くなっていた自分を恥じてしぃはおとなしくなった。
しぃがほっとして視線を俯かせた時、ショボンは隙を突いて部屋の内装を見た。
カレンダーにはメモ用紙がびっしりと貼られており、隣のコルクボードには画鋲で紙が留められている。
正面からでないと紙の内容までは把握できないが、おそらく夫の仕事に関するメモなどだろう。
隅には座布団が三つ重なっており、その手前に何も載っていない卓袱台がある。
それ以上を見ようと思うと、しぃは知ってか知らずか顔をあげた。
(*゚ー゚)「で、聞きたい事とは、なんでしょうか?」
(´・ω・`)「あ、ああ……。あなたとクールさんについての関係を」
顎に手を当て少し考える仕草を見せると、ちいさく答えた。
(*゚ー゚)「あまり話した事はないですね」
.
- 52 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:30:30 ID:2nUgy6IcO
-
8.
それ以上探りを入れるのは今はまずいと思い、しぃの言葉を最後に礼をした。
玄関が閉められたのを見てから、黙って手帳にメモをしていったモララーが口を切る。
やはり疑心に満ち溢れたような声だった。
( ・∀・)「聞き込みの意味なんかあるんすかねぇ?」
(´・ω・`)「なにを言う。犯人逮捕のための、一番の近道だ」
( ・∀・)「まだ他殺って決まった訳じゃないすよ」
(´・ω・`)「それはそうと、次行くぞ」
(;・∀・)「あ、ちょ待って!」
モララーの言い分に言葉を濁したショボンは、隣の一〇二号室に向かった。
明かりは消えており、物音がたたないとすると寝ているのかもしれない。
まあ寝ている人がいてもおかしくない、とショボンは思った。
( ・∀・)「ジョルジュとかいう二十五歳の独身が住んでるみたいっすね」
(´・ω・`)「フリーターかな?」
.
- 53 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:32:04 ID:2nUgy6IcO
-
ショボンに渡された資料に目を通しながら、モララーが言った。
自殺だとしても、その原因を突き止める必要もあるため、人間関係は重要なのだ。
それをわかってもらうために、ショボンは資料を渡した。
( ・∀・)「料理人見習いってところっすね。
親もその親も料理人で、彼はその修行の身らしいっす」
(´・ω・`)「飲食店でアルバイトでもしてるのかな」
( ・∀・)「たぶんそうかと」
(´・ω・`)「……ふーん」
ノックしてもいいのだが、もし寝起きが悪いと手に負えない。
今時の若者はそういった人が多いので、ショボンはジョルジュという男をとばして次の部屋に向かった。
.
- 54 :名も無きAAのようです:2012/07/27(金) 18:32:48 ID:yXDbembAO
- ハゲ、どっかで目にした気がするがどこだったっけ
うーん思い出せない、まあそのうちおもいだすだろう
- 55 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:33:32 ID:2nUgy6IcO
-
一〇三号室、一階で一番奥の部屋だ。
部屋の主を聞くと、モララーは慣れたのか饒舌になって答えた。
( ・∀・)「高岡ハインリッヒ、ちょうどはたちでひいらぎ荘最年少っす」
(´・ω・`)「はたちか」
( ・∀・)「H大に通う女子大生で、被害者と同様一人暮らししてますね」
(´・ω・`)「女子大生の一人暮らしが流行っているのか」
ショボンが興味深そうに訊いた。
自分が大学生の時は、自宅から通っていたからだ。
若い女性の、しかもセキュリティー性のない一人暮らしなど安全なのだろうか、と案じる。
しかし、それでも一人で暮らす人がいるのはいわゆるジェネレーションギャップか、と思った。
( ・∀・)「そうかもしんないっす。
ひいらぎ荘にはあと一人、似たような人がいるっすから」
(´・ω・`)「……ふぅむ」
やはり、若いうちはいろいろと冒険してみたいものなのか。
自分の過去と照らし合わせて、物思いに耽っていた。
.
- 56 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:35:01 ID:2nUgy6IcO
-
玄関の前で立ち止まってノックもせず話をするので、住人が気づいたのだろうか。
たかたかと駆け寄ってくる音を聞いて、ショボンは我に返った。
鍵が開けられたのを聞いて、背筋を伸ばし警察手帳の用意をする。
从 ゚∀从「……どうかしましたか」
(´・ω・`)「失礼。警察の者ですが」
从 ゚∀从「……」
警察手帳を見せると、女性はやはりたじろいだ。
現職の、しかも仕事中の刑事に話しかけられた事など、滅多にないだろう。
そういう意味では、予想していた反応とも言えた。
从 ゚∀从「……クールさんが死んじゃったそうですね」
重苦しい口を開いて出た彼女の言葉が、それだった。
.
- 57 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:36:20 ID:2nUgy6IcO
-
9.
先ほどまで仮眠をとっていたのか、それともショックだったのか。
ハインリッヒという女性はうっすらと涙を浮かべていた。
思わず、ショボンが口ごもった程である。
(´・ω・`)「(変わった髪型だな)」
黙って少女を見ていると、ふとそんな印象が浮かんだ。
彼の若い頃は、男の定番の髪型と言えば七三分けだったが、その七の方の髪が伸びて、目にかかっているのだ。
邪魔じゃないか、と思って見ていると、視線の行く先に気づいたモララーが肘でショボンをつついた。
( ・∀・)「これはアシメトリーっていう髪型っす。
今じゃ定番すよ?」
(;´・ω・)「そ、そうなのか?」
自分の思考が読まれた事、またそれが流行であると聞いて、ショボンは狼狽えた。
もしかすると自分は知らないうちに相当歳をとってしまったかのもしれない、と思った。
.
- 58 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:37:51 ID:2nUgy6IcO
-
从 ゚∀从「……あ、髪は切るのが面倒なんで」
(´・ω・`)「そうでしたか、失礼。
. 本題に入ってもよろしいですか?」
从 ゚∀从「どうぞ」
照れ隠しも含めて、手早く本題に戻った。
ハインリッヒは、白いティーシャツに、薄く吸水性の高い水色のジャージ。
そんなラフな恰好に加え、このアシメトリーという髪型とどこか
やんちゃそうな風貌に見えるが、性格は至って冷静そのものだった。
(´・ω・`)「クールさんとはどういう関係で?」
从 ゚∀从「大学は違いますが、高校時代からの先輩です。
……たまに雑談もします」
(´・ω・`)「彼女はどんな人でした?」
从 ゚∀从「凄くクールでかっこよくて……あと、食事がだいすきです」
(´・ω・`)「ほう」
ショボンは最後の一言に食いついた。
どうしても、料理、食事の話となると身体が反応してしまう。
モララーに肘でつつかれたため、平生を取り戻す。
彼女は別段気にせず話を続けていた。
.
- 59 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:39:05 ID:2nUgy6IcO
-
从 ゚∀从「たまに私料理を振る舞う事もありますよ」
(´・ω・`)「あなたも料理がお好きで?」
从 ゚∀从「好きというか、バイトをしてるうちに身についたというか……」
从 ゚∀从「でも、クールさんに振る舞ううちに、料理は好きになりましたよ」
照れ気味で笑って、嬉しさを表現する。
クールの事を好いているな、とショボンは思った。
料理とは、食べる人がおいしそうに食べてくれれば作った側も嬉しくなるものなのだ。
人の心と心を繋ぐのは食事、料理だ、とショボンは思っている。
だからこそ、ハインリッヒの喜びに同感できた。
(´・ω・`)「さぞおいしそうに食べてくれるんですね」
从 ゚∀从「はい。顔一面を笑みで埋めて食べてくれるので」
(´・ω・`)「そうですか」
当時の情景を思い出したのか、ハインリッヒの口角は少しつりあがった。
暫くその感傷に浸ってもらうのもいいのだが、ショボンたちには時間がない。
名残惜しくも、次の質問にとりかかった。
.
- 60 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:40:42 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「そんなクールさんですが、最近なにか悩みなどありました?」
从 ゚∀从「な、悩み?」
ハインリッヒは動揺した。
それが、知っているがゆえの動揺か、知らなかったがゆえの動揺かまでは見分けられない。
説明すべく、重い口を開いて続きを言った。
(´・ω・`)「彼女は毒入りのうどんを食べたのですが、
. 果たしてそれが故意か事件か、今はまだわからないのです」
从 ゚∀从「……クールさんが自殺?」
どうやら、彼女の動揺の理由は後者だったようだ。
クールは、日頃からそのようなそぶりを見せなかったのだろう。
从 ゚∀从「そんなわけない。
うどんだって、おいしいおいしいって言ってたのに」
(´・ω・`)「はい? クールさんが死ぬ直前までうどんを
. 食べていたのを知っているのですか?」
从;゚∀从「へ?」
ハインリッヒが、大きく動揺した。
.
- 61 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:42:09 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「その場にいなければ、食べた物の種類まではともかく、
. その感想なんてわかるわけないですよね?」
从;゚∀从「あ……えっと……あれ?」
素早くショボンの追究がはじまる。
聞き込みの際、おかしい事があれば逐一問い詰めるのが鉄板だ。
当然ながら、なんらかの事情により嘘を吐く人もいるにはいる。
それでは真相を掴めないので、心を鬼にして粗を探すほかないのだ。
从 ゚∀从「いま刑事さんが毒入りうどんって言ったから……
勘違いしちゃったかもしれません」
(´・ω・`)「というと?」
从 ゚∀从「私が料理を振る舞うとき、決まっておいしいと言ってくれるので、
それで情報が錯覚して勘違いしたかもしれない、という事です」
(´・ω・`)「……本当ですか?」
ショボンは疑惑の目を向ける。
決して、ハインリッヒを犯人だと決めて聞いているわけではない。
ただ、知っていてはならない事を言っていたから、細部まで訊くだけだ。
この行動に他意はない。
しかし、ハインリッヒは迂闊な発言のせいで疑われたのかと思い、必死に言葉を並べる。
その様が、モララーにとってはどこか不自然に感じ取れた。
.
- 62 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:43:06 ID:2nUgy6IcO
-
从 ゚∀从「なにぶん、慕っていた先輩が亡くなって……
その……ショックというか」
(´・ω・`)「……そうですか」
ハインリッヒの目に、うっすらと涙らしきものが浮かぶのが見えた。
今のハインリッヒの語調ではそうは思えなかったのだが、慕っていたというのは聞く限り本当だ。
まして、死亡を聞いてショックを受けない人の方が少ない。
ハインリッヒは女子大生だ、尚更だろう。
そう思い、ショボンは追究の手を休めた。
.
- 63 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:46:09 ID:2nUgy6IcO
-
10.
ハインリッヒと別れ、ショボンは廊下を歩いた。
顔をやや俯かせ、両手はズボンのポケットに突っ込まれている。
モララーの声を意に介せず、ただ考え事に耽っていた。
ひいらぎ荘の敷地を囲うブロック塀を抜けて、道路に出る。
ブロック塀に凭れかかると、遅れてモララーがやってきた。
(;・∀・)「ちょっとショボンさん!」
(´・ω・`)「なんだ」
鼻息を荒くしているが、時間帯と会話の内容を考え、声は小さくなっている。
ショボンは凭れかかったまま、やや上に向けていた視線をモララーに向けた。
( ・∀・)「どー考えてもあいつ怪しいっすよ。どーして追究しなかったんすか」
(´・ω・`)「ハインリッヒさんか?」
二、三度肯く。
普段は鈍っているモララーの眼が、珍しく鋭くなっていた。
( ・∀・)「どう考えても都合がよすぎます。
自殺ならその関与、他殺なら殺人。
……なにか、必ずやってるっすよ」
(´・ω・`)「あの人は害者に懐いていた。
. だからショックを受けていてもおかしくないんだ」
( ・∀・)「そーゆー風には見えなかったっすよ。
つい、口を滑らせてしまった、てなところっす」
(´・ω・`)「鑑識の現場検証が済んだら、害者の部屋を捜査する。
. ハインリッヒさんを疑うのは、その時に部屋から
. 彼女とまつわる証拠品が出てからでも遅くないだろ」
( ・∀・)「……」
.
- 64 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:47:19 ID:2nUgy6IcO
-
ショボンの意見を聞いて、モララーは黙ってしまった。
これには反論できないと思ったのだ。
確かにそれからでも遅くないし、確証を持って事情聴取に洒落込める。
ショボンは「どっこいしょ」と言って背をブロック塀から離した。
再び、あの軋む階段を上る。
次は二〇二号室に向かう、そうわかってモララーは資料を手に取る。
( ・∀・)「二〇二号室、杉浦ロマネスクっす。
四十六歳と、入居者の中で最年長っす」
(´・ω・`)「独身か?」
( ・∀・)「いや、妻子はいるっすが、住んでるのはロマネスクだけっす」
(´・ω・`)「単身赴任、か」
廊下を音を立てて歩く。
被害者のクールが住んでいた部屋の扉の横を抜け、次の部屋の前に立つ。
明かりは点いているため、聞き込みをしても問題ないだろう。
そう思い、ノックをした。
.
- 65 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:48:43 ID:2nUgy6IcO
-
ドスの利いた、低い声が扉を隔てて遠くから聞こえてくる。
モララーは忘れていたかのように手帳を取り出した。
( ΦωΦ)「はい」
(´・ω・`)「警察の者ですが、クールさんの事についてお話を伺ってもよろしいですかね?」
ショボンはそう言って警察手帳を出そうとした。
すると、部屋の奥からする匂いを敏感に嗅ぎ取った。
気づかれないように部屋の奥を覗くと、部屋の中央に
小さな炬燵矢倉が組まれており、その上に料理が見えた。
(´・ω・`)「おっと、食事中でしたか。出直してきます」
( ΦωΦ)「いいよ、気になさらんで」
その会話の間も、料理の匂いと形状から、品目を察する。
こんがり揚がった狐色で、なにやら棒のようなものが刺さっている。
それらを載せた皿の隣には、黒い液体が注がれた小皿がある。
その上には、かじりかけの狐色の食べ物が液体に浸かっていた。
.
- 66 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:51:08 ID:2nUgy6IcO
-
それらを総合させて、ショボンはある推測を立てた。
この間一秒前後だ。ロマネスクには気づかれていない。
気に障らないように、控えめに話を切り出す。
(´・ω・`)「お、串カツ……ですか? 随分と大きいようですが」
( ΦωΦ)「晩ごはんである」
(´・ω・`)「いいのですか? 冷めてはせっかくの串カツも味気ないでしょうに」
( ΦωΦ)「む……」
すると、ロマネスクは少し口ごもった。
少しして、申し訳なさそうに口を開いた。
(´ΦωΦ)「なるべくはやく済ませてほしいのである」
(´・ω・`)「お手間はとらせません。
. 一応、あなたのお名前と職業をお聞かせください」
( ΦωΦ)「吾輩は杉浦ロマネスク。たこ焼きや串カツを作って売っているのである」
.
- 67 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:52:05 ID:2nUgy6IcO
- >>65
ロマネスクの輪郭が半角ですが、ミスです。
お気になさらぬよう。
- 68 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:53:48 ID:2nUgy6IcO
-
11.
ロマネスクの肌は黒く、躯も大きかった。
クックル警部より背が低い程度で、威圧感を持っている。
両目の上から縦に伸びる痣があり、それが威圧感を増させていた。
(´・ω・`)「まず、クールさんが亡くなった頃、
. あなたはどこでなにをしていましたか?」
( ・∀・)「……?」
ショボンが、ロマネスクに対しての聞き込みの内容を
他の住人と変えたため、モララーは一瞬疑問に思った。
その疑問は実体を形成する事なく、無意識のうちに消えてしまった。
ロマネスクの方は、モララーとは別の理由で首を傾げた。
( ΦωΦ)「すまぬ、いつ頃の話だろうか」
(´・ω・`)「だいたい九時から十時頃です」
「ふむ」と肯いて、ロマネスクは少し瞼を伏せた。
思いだそうとしたのだろう、しかしそれは数秒しか続かなかった。
( ΦωΦ)「ずっと串カツの練習をしておってな」
(´・ω・`)「いま召し上がっていたあれですかな」
( ΦωΦ)「なにぶん、いまの時代稼ぐにはたこ焼きだけじゃやっていけそうにないからな」
.
- 69 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:56:12 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「ん? でもたこ焼きと串カツを売るって――」
(´ΦωΦ)「むぅ……。串カツは『これから』である。失礼したな」
ロマネスクはしょんぼりとした。
今まではたこ焼き一筋で生計を立てていたが、晩はビールと一緒に
串カツも売って売り上げを伸ばそう、という考えである事を教えてくれた。
ショボンも、言われてみると確かに、残暑のせいでストレスが溜まりがちな今、
仕事帰りにビールと串カツがあるなら、食べて呑んで鬱憤を晴らしたいと思えた。
そう考えると、ショボンは唾液がわいてきた。
( ΦωΦ)「修行するためにも、まずは串カツがどういう食べものか、
どうすれば旨いか、から研究していたのである」
(´・ω・`)「それがあの串カツですな」
( ΦωΦ)「うむ」
.
- 70 :>>69訂正 ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 18:57:47 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「ん? でもたこ焼きと串カツを売るって――」
(´ΦωΦ)「むぅ……。串カツは『これから』である。失礼したな」
ロマネスクはしょんぼりとした。
今まではたこ焼き一筋で生計を立てていたが、晩はビールと一緒に
串カツも売って売り上げを伸ばそう、という考えである事を教えてくれた。
ショボンも、言われてみると確かに、残暑のせいでストレスが溜まりがちな今、
仕事帰りにビールと串カツがあるなら、食べて呑んで鬱憤を晴らしたいと思えた。
そう考えると、ショボンは唾液がわいてきた。
( ΦωΦ)「修行するためにも、まずは串カツがどういう食べものか、
どうすれば旨いか、から研究していたのである」
(´・ω・`)「それがあの串カツですな」
( ΦωΦ)「うむ」
.
- 71 :>>69訂正 ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:00:02 ID:2nUgy6IcO
-
少し間を置いて、ロマネスクはショボンに聞き返した。
( ΦωΦ)「して、それがなにか?」
(´・ω・`)「いや、亡くなったクールさんは隣の部屋ですから、
. 物音とか怒鳴り声が聞こえるんじゃないか、と」
( ΦωΦ)「むぅ」
アパートでは、屡々隣人の生活音が聞こえてくるものだ。
自殺にしても他殺にしても、口喧嘩のようなものが
聞こえていれば、捜査はぐっと進展する。
ショボンはそれを期待していた。
同時に、モララーの疑問も晴らしてくれた。
ロマネスクも納得したようで、また眉を垂れさせて口を開いた。
(´ΦωΦ)「常に台所で揚げていたから、特に気にかけてなかったのである」
(´・ω・`)「一時間もの間、揚げ物を?」
すると、ロマネスクはかぶりを振った。
( ΦωΦ)「九時二十分頃までは仕込みをしていた……気がするのである」
(´・ω・`)「仕込み……材料を串に刺すとかですか」
( ΦωΦ)「見よう見まねで試したがゆえ、なかなか
思うようにできなくてな。少々手間取っていたのだ」
(´・ω・`)「で、少し前に揚げるのをやめ、食べていた、と」
( ΦωΦ)「うむ」
(´・ω・`)「そんな長時間作っていたのに、できたのはあれだけですか?」
( ΦωΦ)「む?」
.
- 72 :>>69訂正 ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:01:30 ID:2nUgy6IcO
-
ショボンは無礼を承知で、室内にある串カツの数を勘定していた。
揚がった三、四本が皿の上に並べられている。
何も刺さっていない、カツが食べられた後の串の数は二本ほど。
どうも、時間とできた量が見合ってないように思えたのだ。
( ΦωΦ)「あー…。作りすぎてしまったがゆえ、
明日にでも荘の皆にお裾分けしようと思ってな」
(´・ω・`)「お裾分け、ですか」
( ΦωΦ)「良い点、悪い点を聞いて、今後の研究の参考にするのである。
荘の皆は料理が好きだからな」
(´・ω・`)「その作り置きはどこに?」
( ΦωΦ)「密閉容器である」
.
- 73 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:03:00 ID:2nUgy6IcO
- いつまで訂正してるんだ
訂正レスは>>70だけです
- 74 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:05:28 ID:2nUgy6IcO
-
12.
密閉容器と聞いて、ショボンは現場の状況を思い出していた。
青い蓋の密閉パックのなかから毒物反応が出たのだ。
もしそれが何者かからの差し入れだとすると、これは途端に毒殺事件へと姿を変える。
恐る恐る、ショボンは密閉パックについて話を伺ってみた。
(´・ω・`)「その密閉パックですが……蓋は何色ですか?」
( ΦωΦ)「? 青であるが、それがなにか」
( ・∀・)「!」
モララーが顔色を変えた。
この言葉だけでこの一件を毒殺事件とし、
ロマネスクを犯人と決めつけた訳ではない。
だが、どうも無関係には思えなかった。
ショボンも考えは一緒だったようで、詳しい話を聞いた。
(´・ω・`)「なにか、今日――でなくともいい。
. 最近、クールさんに密閉容器を使って差し入れをしましたか?」
( ΦωΦ)「差し入れ、か。どうしてだ?」
(´・ω・`)「現場に、青い蓋の密閉容器があって、
. そこから毒物反応が出たからですよ」
(;ΦωΦ)「っ! 誠であるか!」
.
- 75 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:09:26 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「誰かからその密閉容器の中に眠る差し入れを受け取って、
. 食べて死んでしまったなら。そう思ったのです」
( ΦωΦ)「なら、その容器から犯人を見つけだすのは不可能だぞ」
(´・ω・`)「どうしてですか?」
( ΦωΦ)「なぜなら、この荘に住まう者ならば
全員青い密閉容器を持っているからである」
(´・ω・`)「え?」
これには、ショボンも虚を衝かれた。
なぜ皆持っているのか、見当もつかなかった。
ロマネスクは淡々と事情を説明した。
( ΦωΦ)「三日ほど前に、荘の皆で手料理を持ち合ってパーティーをしたのである。
そのとき、『あると便利だから』と言って大家が皆に配ったのだ」
( ΦωΦ)「それも、大中小、三通りの、な。
おかげで早速重宝しているのである」
(´・ω・`)「……そうですか」
ショボンはがっかりした。
密閉パックの持ち主が特定できないからだ。
住人の皆に大中小三つの密閉パックを出してもらって、
持ってない人が犯人だ――というのはどうだろうか、とショボンも考えたが、
仮に犯人がいるとして、当然その対策を練っているに違いない。
望みはあと一歩のところで消えてしまった。
.
- 76 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:11:23 ID:2nUgy6IcO
-
( ΦωΦ)「……そろそろいいだろうか」
(´・ω・`)「あ、すみません」
気が付くと、十分以上も話をしていた。
控えめに切り出したロマネスクの言葉を聞いて、ショボンは肯いた。
元々、夕食の合間に行った聞き込みのため、早いうちに切り上げるつもりだったのだ。
ところが思いのほか話が長引いてしまった。
申し訳ない気持ちで、ショボンは礼を言ってロマネスクと別れた。
.
- 77 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:13:43 ID:2nUgy6IcO
-
13.
( ・∀・)「密閉パックのことっすけど」
(´・ω・`)「なんだ?」
書いていた手帳に目を通しながら、モララーは言った。
ロマネスクの証言を纏めたものと現場状況のそれとを比べているようだ。
次なる二〇三号室を前に、二人は小声で言葉のやりとりをした。
( ・∀・)「持ち主を割れば一発じゃないんすか?」
(´・ω・`)「確か、一人につき大きさの違う密閉パックを三つ持っている、とのことだが」
( ・∀・)「だから、二つしか持ってない人を――」
(´・ω・`)「俺が犯人ならな、そんなへまはしないんだ」
( ・∀・)「……?」
モララーは首を傾げた。
至極当然の論理だと思っていたのに、あたかもそれが異端であるかのように言われたからだ。
ショボンは両手をポケットに突っ込み、顔を上げ空に視線を向ける。
昔話でもするかのような語調で、彼は続きを言った。
(´・ω・`)「たとえば、だ。
. 作りすぎて余った料理をお裾分けしたいから、クールさんのパックを貸してくれ、と言う。
. 当然クールさんはパックを貸すだろう。それに毒入りの何かを詰めて、渡す。
. そうすれば、パックを返す手間が省けるから、お互いにとってメリットが生まれるわけだ」
( ・∀・)「そりゃ、そうっすが……」
.
- 78 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:15:35 ID:2nUgy6IcO
-
(´・ω・`)「毒を盛る以上、完全に計画殺人だ。
. 密閉パックから犯人を手繰られるのを恐れない訳がない。
. だから俺はがっかりしたんだ」
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「さて、最後の住人に話を聞くぞ」
手をポケットから抜き、身体をモララーに向ける。
落胆など微塵にも感じさせない眼で、モララーを見た。
モララーは慌てて資料を取り出し、最後の住人についてショボンに知らせた。
( ・∀・)「都村トソン、二十二歳っす。
彼女も、一人暮らしの女子大生っすね」
(´・ω・`)「ああ、さっき言ってたあれね」
.
- 79 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:17:20 ID:2nUgy6IcO
-
( ・∀・)「しっかし、いいんすかね」
(´・ω・`)「なんだ?」
( ・∀・)「もう十一時っすよ。明かりも点いてない」
言われて、ショボンは二〇三号室を見た。
明かりは点いておらず、ただ不気味なまでの静寂が漂っていた。
今時の大学生ならば起きていても不思議ではないのだが、如何せん寝ていた場合は彼女に悪い。
聞き込みはあくまで相手の善意によって行われるものなのだから、機嫌を損ねてはまずい。
それを言われずとも学んでいたモララーが、ショボンに尋ねたのだ。
(´・ω・`)「どうしたものか」
( ・∀・)「今日ははやく帰りましょう」
(;´・ω・)「おまえがそれを言ってどうする」
.
- 80 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:18:53 ID:2nUgy6IcO
-
やはり、この人は苦手だ。
そう思い、モララーはさっさと聞き込みを切り上げたかった。
しかし、そうはさせないとショボンが動いた。
背を向け帰ろうとするモララーの肩に、ぽんと手を置いた。
なんだと思って振り返ると、ショボンがぬっと顔を近づけてきた。
驚いたモララーは、肩にかけられた手を振り払い、数歩後退りをした。
ショボンはポケットに手を突っ込み、不適な笑みを浮かべた。
(;・∀・)「なんすか!」
(´・ω・`)「現場の捜査を再開するんだよ」
( ・∀・)「はァ?」
(´・ω・`)「鑑識はほとんど帰っただろうからな」
( ・∀・)「しかし、なにを捜査するんすか」
(´・ω・`)「決まってるだろ」
ショボンは同じ姿勢のまま歩みを広げ、モララーの横を通り過ぎた。
扉が開かれたままの二〇一号室に手をかける。
背後にいるモララーに、ショボンは低い声で言う。
(´・ω・`)「自殺か、他殺かだよ」
.
- 81 : ◆D8q8Hi/vow:2012/07/27(金) 19:19:57 ID:2nUgy6IcO
- 推理要素は次回投下からです
今回も読んでいただきありがとうございました
- 82 :名も無きAAのようです:2012/07/27(金) 19:37:00 ID:Asn.vIHE0
- 乙
次回も楽しみだ
- 83 :名も無きAAのようです:2012/07/27(金) 21:30:26 ID:yXDbembAO
- 乙
ハゲは何のキーワードなんだ?
- 84 :名も無きAAのようです:2012/07/28(土) 13:13:58 ID:ahzQWHx.0
- なにかしら食べながら読みたくなる
おつ
- 85 : ◆D8q8Hi/vow:2012/08/26(日) 01:26:53 ID:l25d3lsYO
- てs
- 86 : ◆D8q8Hi/vow:2012/08/26(日) 01:27:55 ID:l25d3lsYO
-
14.
モララーの返事を聞かぬうちに、ショボンは室内に入っていった。
果たしてこれは「帰りたければ帰ればいい」という意思の表れなのだろうか。
むろん帰るわけにはいかなくなったので、モララーも渋々室内に入った。
ちいさなテーブルの上にはまだ丼鉢と青い蓋の密閉パックが残っており、他には死体の位置を示すロープ、ゴミ箱の近くに毒が入っていた小瓶。
それぞれが、証拠物件を示す番号の書かれた札とともにそのままの形で置かれていた。
指紋検出の結果、住人のクールによる生活指紋、アパートの住人の指紋しか残っていなかった。
青い密閉パックと小瓶は指紋が拭かれた跡が残っており、最小限のクールの指紋しか見つからなかった。
外部犯による犯行ではないことだけがわかっているが、他はどれも曖昧だった。
( ・∀・)「自殺か他殺かなんて、どう調べるんすか」
(´・ω・`)「『自殺では起こり得ない何か』を見つければいいんだ」
ショボンは手袋をはめ、ラックの上のパソコンに向かった。
モララーはやはり首を傾げるだけで、二言目はない。
.
- 87 : ◆D8q8Hi/vow:2012/08/26(日) 01:48:14 ID:l25d3lsYO
-
(´・ω・`)「聞いた話では、所轄がここにきた時、パソコンは熱を持っていたらしい」
( ・∀・)「熱、すか」
(´・ω・`)「死ぬまでの間、パソコンをいじっていた、と見るのが妥当だな」
( ・∀・)「じゃあ、そのパソコンにヒントが?」
(´・ω・`)「……わからない」
( ・∀・)「……そうすか」
ショボンは回転式の椅子に腰を下ろした。
レバーで目線の位置を調整し、パソコンを起動させる。
真っ暗な画面に横長のバーが出たかと思うと、数秒して青い画面が映し出された。
(´・ω・`)「……シンプルな待ち受けだな」
( ・∀・)「むやみに容量の多い画像を貼ると、重くなるんすよ」
(´・ω・`)「そ、そうなのか」
ショボンはパソコンや携帯電話などと言った電子機器を扱うのが苦手だった。
起動くらいはできるのだが、あとはマウスでポインタを動かしてクリック、くらいしかできない。
そういう面では、隣にモララーがいてくれると非常に助かった。
青い画面の左端に、アイコンが幾つか並んでいる。
インターネットに接続するアイコンくらいは見ただけでわかるのだが、他がいまいちピンと来なかった。
アイコンの上でポインタを右往左往させると、モララーはしびれを切らしたのか、やや荒い声で指示を出した。
( ・∀・)「ショートカットしたいアイコンの上でダブルクリックっす」
(;´・ω・)「しょ、ショートカット? ダブルクリック?」
( ・∀・)「あーもう、ちょっと貸してください」
モララーはショボンの右隣からぬっと顔を出して、マウスを半ば奪うようにして受け取った。
マウスを動かして、インターネットへと繋がるアイコンにポインタをあわせ、二度クリックした。
ポインタが砂時計のマークになると、画面一面を覆う大きなウィンドウが現れた。
- 88 : ◆D8q8Hi/vow:2012/08/26(日) 01:49:15 ID:l25d3lsYO
-
(´・ω・`)「ほう」
( ・∀・)「これ、結構いいパソコンっすよ」
(´・ω・`)「ほう、パソコンって良いとか悪いとかがあるのか!」
( ・∀・)「……なんでもないっす」
少し待つと、細かな文字が横に並ぶページへと飛んだ。
画面中央よりやや上部に、赤い文字が並んでいる。
モララーは何の迷いもなくポインタを上に持って行った。
(´・ω・`)「どうするんだ?」
( ・∀・)「パソコンってのは、どんなページを見たのかを記憶する、履歴っつーな機能があるんすよ」
(´・ω・`)「それでクールさんの足取りを追うのか」
( ・∀・)「っす」
ショボンは感嘆の声をあげた。
モララーは履歴の一覧を開く最中、これではどっちが上司でどっちが部下なのかわからないなと思っていた。
.
- 89 : ◆D8q8Hi/vow:2012/08/26(日) 01:51:58 ID:l25d3lsYO
- 睡眠時間を削って投下しようと思ったけど無理だった
以上十四節目です。たった三レスというわけのわからない更新ですみません
時間がとれた時に一気に投下しようと思います
- 90 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 03:16:36 ID:y8X7en7gO
- 時間のある時にある程度まとめてがいいかと
3年以内なら大丈夫
- 91 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 12:01:11 ID:gcF3VR6QO
- 乙。無理せず書いてくれ。とりあえず3レスでも楽しめた
- 92 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:37:34 ID:cHys1QnYO
- てすと
- 93 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:39:39 ID:cHys1QnYO
-
15.
( ・∀・)「お」
(´・ω・`)「どうした」
表示された履歴から最新のものをクリックする。
するとページが変わり、背景に青空が見えるページへと飛んだ。
ショボンは、あまりその画面が意味するものがわからない。
が、モララーは何かを読みとったようで、それを見て軽くガッツポーズをとった。
( ・∀・)「ビンゴっすよ。被害者は死ぬ直前までブログを書いてたみたいっす」
(´・ω・`)「ブログ?」
( ・∀・)「あとで教えるから」
ショボンを軽くあしらって、次にホイールを廻した。
文字列を目で追っていると、時折画像が貼られているのがわかった。
その画像だが、焼きそばだったりパフェだったりと、とりわけ食べものの画像が多かった。
そして文章を読むと、このページではそういった食べものの感想が延々と書き綴られていた。
読んでいるだけで腹が鳴りそうな文章だ。
オノマトペを極力使用せず、且つ簡単な言葉だけで構成された文章なのに、
実際にその食べものを味わえているかのような錯覚に見舞われてしまった。
ショボンも「おお」と声を漏らし、夢中で文章を読んでいる。
.
- 94 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:41:09 ID:cHys1QnYO
-
( ・∀・)「どうやら、被害者は食べ歩きが趣味だったようっすね」
(´・ω・`)「それで、感想をブログに書いてたってわけか。
. いやあ、いい感性を持っているもんだ」
( ・∀・)「アクセス数やコメントを見る限り、同じく食べ歩きが趣味の人から好評を得ているみたいっす」
クールのブログは、だいたい一日に百から二百のユーザーに訪問されているようだ。
一週間に一、二度の更新がされていたが、主に食べた料理の感想を率直に書いている。
御世辞を並べるだけかと思いきや、口に合わなかった料理は躊躇いなく「まずい」と書いてあった。
ざっくりと読んで、ブログの趣旨が掴めるまでに十分を要した。
もういいだろうと思い、ショボンが本題を切り出した。
(´・ω・`)「で、死ぬ直前に書いた記事はどれだ?」
( ・∀・)「トップページの一番上っすね。ちょっと待ってください……っと」
.
- 95 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:42:25 ID:cHys1QnYO
-
最新の更新の日付は、読み通り今日だった。
二一時二八分更新のため、それより前は生きていた、という事だ。
記事のタイトルは、これで幾つ目の感想なのか、しか書かれていない。
しかし、文章の方にそれが事細かく記されている。
○9/14wed 21:28:35
最近味覚がおかしいのか、と思っていたのだが、それは大きな過ちである事に気が付いた。
この前の感想を書く頃から抱いていた蟠りは、ただの勘違いだったのだ。
さて、いつもは外食に向かいありとあらゆる品を食すのだが、今日は趣向を変えてみることにした。
自宅で食べてそのまま感想を書くという、このブログを始めて初の試みをしてみたのだ。
今日食べたのは、具材はなにもない、汁と麺だけのシンプルなうどんだ。
( ・∀・)「――で、その画像らしいっす」
(´・ω・`)「テーブルの上のと一緒だな」
( ・∀・)「相当明かりを強くして撮ったんすかね?」
(´・ω・`)「え?」
( ・∀・)「なんでもないっす。続き読みましょう」
.
- 96 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:43:26 ID:cHys1QnYO
-
最初は気分が優れなかったのもあって、食べる気にならなかった。
しかし、せっかくのうどんも、冷めてしまうと味気ない。
食わず嫌いはタブーと云うのが鉄則なので、食べてみたのだが……
驚くほどに美味だった。
当初はなにか調味料が不足しているのか、と思ったのだが、そうではない。
一口目を含むと、歯が自然と動いてしまう。
それらをのどの奥へ運ぶと、自然と二口目を欲してしまう。
身体が、次なるうどんを欲してしまうのだ。
当初の見た目だけで、すっかり侮っていたようだ。
これは隠し味に昆布を使っているのだろうか?
まだ完食はしていないので、具体的な味の感想は後に書こうと思う。
今は、とにかくこの感動をかたちとして残しておきたかったのだ。
いっそ、このまま死んでもかまわない。
いまこの記事を読んでいる食わず嫌いの諸君も、是非食べてみてほしいと思う。
続きは今日中にアップするので待っていてほしい。
( ・∀・)「……以上っす」
.
- 97 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:45:08 ID:cHys1QnYO
-
16.
(´・ω・`)「……」
( ・∀・)「……」
ショボンとモララーは、記事を読んだあと、少し不思議な気持ちになっていた。
文体は他の普段のと一緒で、そこに違和感を感じたのではない。
読み終えて、どこかもやもやとした何かが胸中に残ったような心地だった。
(´・ω・`)「なんか、妙に感じた」
( ・∀・)「他の記事なら普通に味の感想を書いているのに、これに限りそれがないからっすかね」
ショボンの抱いていた胸に残る蟠りは、それだった。
第一印象、感動くらいしか書かれていないのに完食しないうちに更新して、
また完食したのちにも更新するといった二度手間を踏んでいる事が、違和感として残ったのだ。
わざわざ二度に分けなくとも、完食してから一気に書けばいいのではないか、と。
(´・ω・`)「『完食していない』というのは、おそらく油揚げの事だろう。
. この写真じゃあまだ載ってないからな」
ショボンはページを少し上にスクロールさせた。
写真には、例のテーブルの上に載っているうどんが写っている。
文中でもあったように、麺と汁しかないシンプルなうどんだった。
油揚げはこの時別の場所に置いていたのだろうか。
とにかくこれを撮る時にはまだ油揚げはなかったという事だ。
.
- 98 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:46:33 ID:cHys1QnYO
-
麺を食べると想像を絶するほどの美味で、油揚げを食べるのも忘れて感動を記事に残す。
一度更新して昂揚が収まるのを待ってから、じっくり油揚げを味わうつもりだった。
しかし、その油揚げには毒が盛られており、それが叶わなくなったのではないか。
ショボンは、そのような推理をし、モララーにも言った。
だが、モララーは釈然としない様子で、食らいつくように反論した。
( ・∀・)「自分が思うに、そんな深い話じゃない気がするんすよ」
(´・ω・`)「というと?」
( ・∀・)「記事の最後をもう一度読んでください」
(´・ω・`)「『いっそ、このまま死んでもかまわない。』……か?」
( ・∀・)「そうっす。そういうことっす」
(´・ω・`)「……ふん」
.
- 99 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:49:35 ID:cHys1QnYO
-
モララーの言いたい事を理解し、ショボンは渋い顔をした。
最近の若者は、すぐ「死にたい」「死にそう」「殺す」などと云った過激な言葉を口にする。
それらは決まって比喩表現で、感情の度合いを表すものなのだ。
当然、クールの残した言葉もそれなのだろう。
ショボンはそう思っていたが、モララーはそうは思わなかったらしい。
クールはあくまで自殺したのだ。
そう云う自分の考えを、クールの書く感想記事のように率直に述べていった。
( ・∀・)「この記事の冒頭でも、彼女はなにやら思い悩んでいたと見受けます。
. それが膨れ上がって、対処しきれなくなった。
. そんな時に、想像を絶する美味の料理を食べた。
. だから、彼女は本気で死のうとしたんじゃないか」
( ・∀・)「二度に分けるようににおわせた文体は、ブログの購読者に心配させないように。
. 油揚げを残しておいたのは、最後にそれを食べて死ねるように。
. 食わず嫌いの人に宛てた言葉は、死に際に放った最期のメッセージ」
( ・∀・)「そうすると、全ての違和感に説明がつくっすよ」
(´・ω・`)「あくまでもおまえは自殺の線で考えるつもりか」
( ・∀・)「だってそうでしょ。現に『死んでもいい』などと自殺をにおわせる文章が残ってるんすから」
モララーは自殺で決まりだ、と睨んでいた。
それは早くショボンから解放されたいがためではない。
この記事と現状を照らし合わせると、そうとしか思えなくなったのだ。
しかし、それをショボンは認めなかった。
(´・ω・`)「早合点は若者全員が持つ悪いくせだぞ」
( ・∀・)「はい?」
(´・ω・`)「刑事は、万全を喫して初めて見解を口にするもんだ」
.
- 100 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:51:30 ID:cHys1QnYO
-
17.
そう言うと、ショボンは再びパソコンの画面を向かい合った。
「戻る」ボタンをクリックして、記事一覧のページにする。
記事のタイトルだけでそれが何日付けの更新の記事かわかるので、迷いなくとある記事をクリックする。
それは、最新の記事のひとつ下の記事だった。
(´・ω・`)「今の記事のなかではわからない事がある」
( ・∀・)「なんすか」
記事を開きながら、ショボンは言った。
モララーも視線はパソコンに向けたままで応じた。
(´・ω・`)「『最近味覚がおかしいのか、と思っていたのだが、それは大きな過ちである事に気が付いた。
. この前の感想を書く頃から抱いていた蟠りは、ただの勘違いだったのだ。』――と」
(´・ω・`)「この、彼女が抱いてた蟠りがはっきりしていないんだ」
( ・∀・)「それが、どうして前回の記事になるんすか」
(´・ω・`)「この蟠りとやらを抱いたのは、『この前の感想を書く頃』だ。
. この時指す『この前の』とは、ずばり前回だ」
( ・∀・)「九月十一日……っすね」
(´・ω・`)「……なにか思い出さないか?」
( ・∀・)「なにかって――」
ショボンがそう訊いて、モララーはろくに考えもせず否定しようとした。
しかし、その前回の記事の日付を思い浮かべた途端、その言葉は途中で遮られた。
それと開いていたページが表示されるのはほぼ同時だった。
( ・∀・)「っ! 〝料理パーティー〟っすか!」
(´・ω・`)「そうだ。ここで、最新記事の冒頭に繋がる」
.
- 101 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:52:54 ID:cHys1QnYO
-
( ・∀・)「確か『最近味覚がおかしいのか、と思っていた』っすね」
モララーは少しずつ表れる気分の昂揚を実感していた。
散らばっていたロジックが少しずつ繋がっていくのが、気持ちよかったのだ。
刑事になって初の事件であるため、それは尚更だった。
九月十一日に更新された記事は、モララーとショボンの読み通り、料理パーティーの事だった。
それをモララーが声に出して読んでいく。
○9/11sun 23:11:57
私が住ませていただいているアパートの大家だが、実は昔はイタリアンのシェフとして名を馳せらせていたようだ。
また私以外の入居者は、どういった因果か全員料理が上手なのだ。
それを知った大家が、気を利かせて料理パーティーなるものを開いてくれた。
私は昔から料理ができないので、ただ食べるためだけに参加するという醜態を見せてしまった。
だが皆はそれを拒まず、それどころか歓迎してくれたのには感謝せざるを得ない。
大家の家で八人が集い、皆が手料理を持ち合った。
というわけで、写真と一緒にそれらの感想を書いていきたいと思う。
( ・∀・)「――で、しばらく感想が続く、と」
(´・ω・`)「……ふむ」
.
- 102 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:54:48 ID:cHys1QnYO
-
ホイールを廻して、ページを下にスクロールさせていく。
その各料理ごとに、写真と大量の感想が書かれていた。
クールがいかに食事が好きなのかが、ショボンたちに一層強く伝わった。
たこ焼きやら寿司があると思えば、パスタやオムライスなど、統一性はなく、和洋折衷と言えるレパートリーだった。
見ているだけで、ショボンの腹が食を欲してくるのが隣のモララーには痛いほど伝わった。
一通りの感想が終わると、料理パーティーそのものの感想や締めくくりの言葉を最後に、記事が終わっている。
そこに来た瞬間、ショボンはホイールを廻す指を止めた。
( ・∀・)「どーしたんすか」
(´・ω・`)「おい、ここを読め」
モララーにそう言ってから、ある一文をポインタでなぞった。
言われた通り、彼は声にしてそれを読む。
( ・∀・)「『どれも美味しかった筈なのだが、ひとつだけどうしても理解しがたい料理があった。
. 皆は美味しいと言っていたのだが、とても私にはそうは思えない。
. ……もしかして、舌がおかしくなったのだろうか。』――っすか」
(´・ω・`)「これが、蟠りの正体か」
.
- 103 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:56:41 ID:cHys1QnYO
-
18.
( ・∀・)「理解しがたい……いったい、どんな料理なんすかね」
(´・ω・`)「ここには書いてないな。作った人に対する考慮か」
そのページはそれ以上下がない。
マウスから手を離し、ショボンは頬杖をついた。
記事の最後の文章をじっくり見つめている。
ここに、その理解しがたい料理の詳細が書かれていれば
捜査の進展に繋がったのだが、さすがにそううまく事は運ばれなかった。
モララーは感想の書かれた全ての品目からそれを考えてみるが、これといったものは浮かばなかった。
( ・∀・)「被害者は若いっすから、この昆布巻きとかじゃないっすかね?
. 甘味が強かった、とも書いてますし」
(´・ω・`)「いや、感想が書かれている以上それはない。
. 理解しがたい料理とやらは、ここの感想に書かれていない料理だ」
理解しがたいとは、なぜそれが美味しいのかがわからないと云うことだ。
書かれている感想のなかに、そのような記述がある料理はひとつとしてない。
どれも、何らかの形で高い評価がされていた。
つまり、ここにその理解しがたい料理については書かれてすらいない。
( ・∀・)「……じゃあ、わかんないっすよね」
(´・ω・`)「ああ、わからないな」
モララーはぶすっとして言った。
ショボンも相槌を打った。
.
- 104 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 20:58:30 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「食べ歩きが趣味の彼女が自身の舌を疑うほどなのだから、そうとう口に合わなかったのだろうな」
( ・∀・)「それが原因で、自殺ってか?」
(´・ω・`)「まさか。三日後――つまり今日になって、それは解消している。『勘違いだった』、と」
( ・∀・)「……」
自殺の線を推したいモララーだが、それ以上は言えなかった。
自殺も考えられないことではないが、そう決めつけるには何かが足りないのだ。
逆に、他殺と断定するにしても何かが足りない。
だから、ショボンもショボンで、強気で発言することはできないでいた。
( ・∀・)「一人一品だけだったら聞き込み次第でわかるのに、複数持ち寄られてたらなー」
(´・ω・`)「まあ聞き込みはしてみるが、覚えていない品目の方が多いだろうよ」
( ・∀・)「一応メモるか……」
モララーは手帳を取り出してペンを手に持った。
ショボンは、それを見て料理の感想のところまでページをスクロールさせた。
ひとつひとつ、モララーが品目と特徴を書いていく。
十を超える品々を書き終え、ページは記事の一番上にまで戻ってきていた。
自分で書いたメモの内容を一度確認してから、閉じてそれを仕舞った。
そして腕を組んで、ショボンの隣から離れた。
考え事をするかのように、室内を八の字にちいさく歩く。
.
- 105 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:00:32 ID:cHys1QnYO
-
( ・∀・)「しっかし、ここで理解しがたい料理とやらをあぶり出しても、だからどーしたってなるんすよね」
(´・ω・`)「そんな事はないぞ。大きな一歩だ」
( ・∀・)「だといいんすが……」
(´・ω・`)「俺を信じろ」
( ・∀・)「……。うっす」
力強く放たれたショボンの言葉に、モララーは肯くしかなかっった。
認めたくはなかったが、ショボンがとても心強い存在に思えた時だった。
モララーは、その後テーブルの前に来て、屈み込んでうどんを見つめた。
ショボンが唸っているなか、モララーは不思議な心地で少量の汁とかじりかけの油揚げの入った丼鉢を見下ろす。
そのまま、数分の時が流れた。
(´・ω・`)「理解しがたい……か。クールさんは何でも食べる人そうだしな……?」
(;´・ω・)「ん!? お、おいモララー!」
( ・∀・)「なんすか」
ショボンが推理を進めている最中。
彼は、パソコンに向かい直し、情報を集めようと思ったのだ。
が、視線が先ほどまで見ていた記事のところに向かわれたと同時に、急に立ち上がっては身を乗り出した。
(;´・ω・)「そのうどんだが、インスタントうどんじゃないよな?」
( ・∀・)「へ? インスタントじゃないっしょ。そんな報告ないし」
(´・ω・`)「そうか……そうか!」
( ・∀・)「どうしたんすか?」
モララーが振り返ると、目の前にショボンが立っていた。
その時のショボンの眼は、普段では見られない程に鋭くなっていた。
(´・ω・`)「これは自殺なんかじゃない。他殺だ!」
.
- 106 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:01:48 ID:cHys1QnYO
-
19.
(;・∀・)「……なんですと?」
(´・ω・`)「ブログを断片的に見ていったから気づかなかったが……これは他殺で間違いない」
モララーを立たせて、パソコンラックの前に連れてきた。
そしてショボンは椅子に座り、かちかちとクリックをしてホイールを廻した。
パソコンには文章をコピーしてペーストできる機能があるらしい、とショボンは知っているのだが、
彼はそもそもドラッグやダブルクリックによるコピーする範囲の指定すらできない。
だから、ポインタで文章をなぞっていった。
まずは十四日、今日の記事だ。
(´・ω・`)「まず『しかし、せっかくのうどんも、冷めてしまうと味気ない。
. 食わず嫌いはタブーと云うのが鉄則なので、食べてみたのだが……』――とあるだろ?」
( ・∀・)「っす」
(´・ω・`)「自分で作ったとするなら、なぜ食べる気がないのに作ったのだ?となる」
( ・∀・)「それはさっき自分が言いました」
本題を言わず、勿体ぶるショボンの語調にモララーはいらいらしてきた。
言いたい事があるなら早く言え、と言いたいのだ。
.
- 107 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:03:28 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「当然、それはインスタントでも当てはまる。
. つまり、うどんは自発的に作った訳ではない、となるだろ?」
( ・∀・)「だから、それを食べて感動した被害者が、幸せのまま死のうとしたんじゃないんすか?」
負けじとモララーも反論した。
昔から頑固なモララーは、親にも教師にも楯突く事が多いのだ。
それを知ってか、ショボンは「まあ待て」と手で合図する。
(´・ω・`)「それだとな、油揚げは最初からあって、それで死のう、と計画していたって事になるだろ?」
( ・∀・)「なんでっすか」
(´・ω・`)「もし最初に油揚げがなければ、普通は汁に毒を注いで、それで死のうと――
. いや。そもそもがおかしいんだ。モララーの言う通り自殺だとして、
. いくら美味しい物を食べて死ぬにしても、普通油揚げになんか盛ったりするか?」
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「油揚げも食べてから、汁で〆るだろ。わざわざ油揚げに盛る必要なんかないんだから。
. 人生の締めくくりを『料理で』迎えるなら、尚更だ」
.
- 108 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:05:09 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「そして、次だ」
ショボンはパソコンと向かい合い、マウスを握った。
ホイールを少し廻して、上にスクロールさせた。
同じく、今日付けの九月十四日の記事である。
うどんの画像を画面下部に、そして上部に現れた文章をなぞった。
(´・ω・`)「『今日食べたのは、具材はなにもない、汁と麺だけのシンプルなうどんだ。』――と」
( ・∀・)「……」
その文章をなぞってから、下の画像を自分の指で差した。
油揚げが載っておらず、艶やかな麺と汁が栄えるうどんが写されている。
(´・ω・`)「仮に最初から自殺を企んでいたら、『油揚げで死のう』なんて思わないんだ。
. やっぱり、汁で死のう、もしくはそのまま毒をのもうと企む」
( ・∀・)「じゃあ、最初は死ぬ気はなかったけど、油揚げを食べて幸福の絶頂に至ったから、とかじゃないんすか」
(´・ω・`)「話を最後まで聞かないのは、昔からの悪いくせだぞ」
( ・∀・)「……」
モララーにそう言って、ショボンはオホンと咳払いした。
しようとしていた話が逸れてしまったからだ。
.
- 109 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:06:04 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「続けて、下の文章を読め」
そう言ってホイールを廻した。
画像が上の方に流れていった。
(´・ω・`)「『まだ完食はしていないので、具体的な味の感想は後に書こうと思う。』。つまり――」
( ・∀・)「まだ麺を半分ほど残してたとかじゃないっすか?」
ショボンの言いたい事がわかったので、モララーは前以て反論をしておいた。
しかし、それに屈するショボンではない。
鼻で笑って、モララーを横目で見た。
そして視線を戻し、記事の上部に再びスクロールさせた。
.
- 110 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:07:47 ID:cHys1QnYO
-
20.
(´・ω・`)「うどんが冷めるのを憂慮するような美食家が、
. なんで残ったうどんが冷めるのを覚悟してブログを更新するんだ?」
そう言ってショボンがポインタで指した文章には
「しかし、せっかくのうどんも、冷めてしまうと味気ない。」
と書かれてあった。
実際、彼女は冷めてうどんが食せなくなるのを勿体ないと感じ、食べたのだ。
いくら感動したからと言って、いや感動したのであれば尚更、残す訳がない。
ショボンはそう言いたかった。
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「わかったか?」
モララーは自分の考えが否定されているのを、酷く不快に思った。
他殺なら他殺でいいのだが、それだとショボンに言い負かされたような気がして不愉快になるのだ。
頑なに拒もうと思ったのだが、如何せん唇が動かなかった。
モララーが黙ったのを見て、ショボンはそれを暗黙の肯定と察し、話を戻した。
(´・ω・`)「なにが言いたいのかって、最初は油揚げはなかったんだから、
. ブログを更新する際に『まだ完食していない』なんて書く筈がないんだ。
. 全て食べ終えてから更新する筈だからな」
(´・ω・`)「それなのに、『まだ完食していない』と書いた。なぜだと思う?」
( ・∀・)「さあ」
全く考えず、モララーはわからないと言った。
どうせ考えなくてもショボンが言ってくれるだろう、そう思ったのだ。
ショボンはその意図を読まなかったようで、顔色を答えを言った。
.
- 111 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:10:38 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「最初は〝完食した〟んだ。麺を、な」
( ・∀・)「……ああ」
(´・ω・`)「で、感動を残すべくすぐさまパソコンに向かう。それが、冒頭の文章だ」
モララーは脳内でブログの記事を再現させた。
最初の方には、油揚げの存在は書かれていなかった。
麺と汁だけだ、他に具材のないシンプルなものだ、と。
(´・ω・`)「で、感動を書き進めていく。そこに、犯人が戻ってきたんだ」
( ・∀・)「……!」
(´・ω・`)「毒の盛られた油揚げを密閉容器に入れて、クールさんに渡す。
. それを見て、一旦テーブルの上に置いた」
(´・ω・`)「先に感動だけを書いておこうと思ったクールさんが、
. 『まだ完食はしていないので、具体的な味の感想は後に書こうと思う。
. 今は、とにかくこの感動をかたちとして残しておきたかったのだ。』とだけ残しておいたんだ。
. 油揚げを食ってから、それも含めて感想を書こう、と」
(´・ω・`)「だから、その少し前の文章では噛み応えやら汁の感想が少し書かれてたんだと思う」
( ・∀・)「……」
( ・∀・)「………」
.
- 112 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:11:40 ID:cHys1QnYO
-
ショボンの言っている事に現実味が増していき、聞いていくうちにモララーはすっかりその推理にのめり込んでいた。
――ああ、そうか。なるほど。
そんな反応が、モララーの胸中だけでだが、見られた。
(´・ω・`)「さて、その密閉容器を渡した手段だが……ひとつ、疑問に思わない事はないか?」
( ・∀・)「疑問、すか?」
ショボンが急に質問してきたので、モララーは思わずたじろいだ。
じっくり状況を整理している最中だったので、なにも推理などできていない。
モララーは、今度は真面目に考えてみた。
今の推理と現場状況の間に孕んだ、疑問――矛盾を。
しかし、さすがに短時間では思い浮かばなかった。
十秒弱経過したのをみて、ショボンは「タイムアップだ」と言った。
モララーが心なしか悔しそうな顔をしたのが、窺えた。
(´・ω・`)「答えは、密閉容器に付いた指紋だ」
( ・∀・)「指紋?」
.
- 113 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:12:59 ID:cHys1QnYO
-
21.
言われてすぐに、モララーはテーブルの上にある密閉容器を見た。
それについては、毒物反応が出たのは聞いたが、それ以外の情報は特に聞いていなかった。
ショボンが「それだ」と言ったのを聞いて、ゆっくり視線をショボンに戻した。
(´・ω・`)「ぶっちゃけて言うとな、それがクールさんのであろうと犯人のものであろうと変わりないんだ」
( ・∀・)「え? じゃあ指紋が何だっつーんすか」
(´・ω・`)「おまえ、毒物反応以外の情報聞いてるか?」
( ・∀・)「……なんも聞いてねぇっす」
(´・ω・`)「それでいいんだ」
( ・∀・)「へ?」
モララーはてっきり、鑑識から情報を受けなかった不始末を叱られるものかと思っていた。
しかし、叱るどころかそれを褒めるかのように言ったショボンの思考が読めなかった。
(´・ω・`)「たとえばだ。その容器にクールさん以外の指紋があったとすると、どうなる?」
( ・∀・)「そりゃ、鑑識が飛んでくるっしょ。毒が出たんだから」
(´・ω・`)「でも来ていないということは、指紋はクールさんのだけだったってことだろ?」
( ・∀・)「そっすね」
(´・ω・`)「……まだ、わからないか?」
( ・∀・)「?」
.
- 114 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:14:18 ID:cHys1QnYO
-
モララーは首を傾げることしかできなかった。
わからないものは、わからないのだ。
ショボンのように現場慣れしている訳でもない。
するとショボンは椅子から下りて、歩み寄ってきた。
手袋をはめたままの右手で、密閉容器を掴んだ。
それをモララーの目の前に突きつける。
(´・ω・`)「俺がこうして持っても、誰も文句を言わないだろ?」
( ・∀・)「当たり前じゃないっすか」
(´・ω・`)「じゃーこうすれば?」
そう言って、ショボンは右手の残った指と右の掌を使って、器用に左手から手袋を抜いた。
その左手で密閉容器を掴もうとした。
モララーは、すぐに慌てた。
(;・∀・)「ちょ、なにしてんすか! 指紋付くっすよ!」
( ・∀・)「……――――ッ!」
(´・ω・`)「そうだ。やっとわかったか」
.
- 115 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:15:31 ID:cHys1QnYO
-
素手で物に触ると、そこには指紋が残る。
その指紋は、この世にひとつとして同じ形状のものが存在しない。
だから、指紋がわかればその持ち主も簡単に特定できる。
その指紋の情報によると、密閉容器はクールしか掴まなかった、とある。
しかし、モララーはそれだとおかしい事に気が付いた。
( ・∀・)「あ、あれ? でも犯人はこれ持ってきたんすよね?」
(´・ω・`)「ああ。夜とは言え、こんな暑い日に手袋なんてはめる訳がなかろうに」
( ・∀・)「じゃ、じゃあ……犯人はどうやってこれを持ってきたんすか?」
それがショボンがモララーに出した問題の答えだった。
仮にクール以外の指紋があれば、こちらから聞かずとも必ず報告が入る。
それがないということは、クール以外の指紋は無かったということだとはショボンの言った通りだ。
そして次に生まれる疑問は、「どうやって油揚げを差し入れに持ってきたのか」だ。
この部屋で油揚げを用意した訳ではないということは、今日付けのブログの記事の冒頭にある通りである。
ならば必ずよそから持ってきたことになるのだが、それだと指紋の有無と矛盾するのだ。
.
- 116 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:16:28 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「それだが……。お前、いいカン持ってんだな」
( ・∀・)「え?」
そう言って、ショボンは部屋の隅に言って、屈んだ。
そこにはゴミ箱が置かれてあり、毒が入っていた小瓶がナンバーの書かれたプレートと一緒に近くにあった。
が、ショボンはそれには構わず、ゴミ箱の中を漁った。
いや、漁ったという表現では語弊が生じる。
ゴミ箱の一番上に落ちていたそれを、拾い上げた。
( ・∀・)「……あっ!」
(´・ω・`)「おまえが見つけたレジ袋だ」
ショボンの手には、嘗て小瓶が入っていたスーパーのレジ袋が提げられていた。
.
- 117 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:17:51 ID:cHys1QnYO
-
22.
(´・ω・`)「犯人が戻ってくる際、この袋に密閉容器と小瓶を入れておく。
. 袋ごと『油揚げだよ』と言って渡し、小瓶の事を訊かれる前にさっさと去る」
( ・∀・)「で、なにも知らない被害者は、袋と小瓶を捨てる。
. 結果、犯人はなにも足跡を残さずに毒を渡せた――っすか!」
(´・ω・`)「上出来だ。これでクールさんの死が自殺であると思いこませる事ができるのだよ」
ショボンはレジ袋をテーブルの上に置いた。
もし推理が合っていたとするならば、付いていた指紋は犯人に繋がる。
しかし、手袋をはめてレジ袋の中に小瓶と密閉容器を入れるなどすれば指紋は付かないし、
提げてくる際も掌の部分だけで提げていたとするならば犯人に繋がるものはいよいよなくなってくる。
それを知っていても、指紋の検出をする価値はあると思った。
ショボンだけでなく、モララーも同じような心境だった。
また、モララーは当初本件が自殺であると思っていたが、今ではもう自殺とは考えていなかった。
(´・ω・`)「これでわかったろ。これは、れっきとした殺人事件」
(´・ω・`)「それも、犯人は、このひいらぎ荘の住人の誰かだ」
( ・∀・)「殺……人……」
.
- 118 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:19:53 ID:cHys1QnYO
-
モララーは身震いこそしなかったものの、似たような気分だった。
人が一人、勝手に死んだだけだと思っていたのが一転、このアパートのどこかで人殺しが寝ている。
そうわかってしまった瞬間、なんともいえない複雑な心境が襲いかかってきた。
モララーが一通りの状況をメモしている間に、ショボンはパソコンの必要な部分だけを手帳に写し、電源を落とした。
スイッチを押すため腕を伸ばした拍子に、ふとデジタルカメラがあるのを見つけた。
パソコンと全くの同色であったため、気づかなかったのだ。
手袋をはめたままでそれを手に取った。
とてもきれいに拭かれており、画面に指紋や埃など全く残っていない。
機械に弱いショボンでも、デジタルカメラならある程度は使えるので、電源を入れてみた。
見るだけで香りが漂ってきそうな程美味しそうな写真と、
三日前の料理パーティーの際に撮ったであろう集合写真がデータとして残っていた。
写真を見て、ショボンはクールが言っていた理解できない料理とやらについて考えていた。
いくつもの写真を、スライドさせながら。
それらはどれも九月十一日付けのデータなので、全て料理パーティーで出されたものだろう。
(´・ω・`)「(たとえ理解できなかったとしても、写真は撮るだろう。まだ食べてないんだからな)」
そう考えて、流れていく写真を見送っていった。
また、それは食べるのが好きなクールが、理解できない料理と称した程だ。
その見た目だけで、それだとわかるだろう、とも考えていた。
.
- 119 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:21:03 ID:cHys1QnYO
-
様々な種類の料理を見ていくが、ほとんどがブログに感想の載せられたものだ。
そして全てを見てから、データにはそれらしき料理が載ってないことに気が付いた。
どれもショボンの知っている、非常に美味で有名な料理だったのだ。
(´・ω・`)「(まさか……見た目がひどかったから、撮ってすらいない?
. それとも、食べてみて酷かったから撮ってから消した?)」
(´・ω・`)「(いや……このひいらぎ荘の住人は、クールさん以外が料理は得手の筈だ。
. そんなに不味い料理が出る筈がないな)」
(´・ω・`)「(じゃあ、単に知らない料理だったってだけか? でも……)」
そこまで考えて、もう一度だけスライドショーを見た。
パスタだの、寿司だの、天ぷらだの、と。
次々流れていく写真は、どれもショボンの知っている料理だ。
クールが知らないであろうと思える料理はなかった。
.
- 120 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:22:35 ID:cHys1QnYO
-
(´・ω・`)「……わからないな」
( ・∀・)「どしたっすか?」
ふと、心境が口に出てしまった。
慌てて「あ、いや」と言葉を濁す。
(´・ω・`)「なんでもないさ。今日は遅いし、捜査はそろそろ切り上げよう」
( ・∀・)「待ってました!」
(;´・ω・)「……お前なあ」
( ・∀・)「じゃ、お先失礼しまーっす」
(;´・ω・)「あ、待て!」
モララーはそう言って、部屋を出ていった。
まだ言ってない事が山ほどあるショボンは、彼を追いかけて、部屋をあとにした。
こうして、九月十四日、事件当日の捜査は終わった。
.
- 121 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:23:44 ID:cHys1QnYO
-
23.
料理パーティーと聞いた時のクールの表情は、どこか抜けたようなものだった。
玄関の前でぽかんと口を開いていると、大家の伊藤ペニサスがくすっと笑った。
('、`*川「なぁに辛気臭いツラしてんのよっ」
川 ゚ -゚)「いや……あまりに唐突だったもので」
クールが淡々と言葉を並べると、またもペニサスは笑った。
半開きにされた扉から、上体だけを見せるクール。
彼女の顔と声は平生そのままだが、ノブを握る手に力が籠められていっているのを見て、ペニサスは堪らなくおかしく思えた。
('、`*川「大丈夫よ、クーちゃん以外のみんなには前以て話を持ちかけてあるから」
川 ゚ -゚)「その、私、料理なんて作れないんですよ?」
容姿も頭脳も人一倍優れている彼女だが、それが欠点だった。
砂糖と塩を間違えるのは当然、かき氷の苺シロップと赤ワインを間違える事だってあった。
それなのに、料理パーティーとは皆が手作りの料理を持ち合うものだ、とペニサスは言った。
クール以外の住人は料理ができると言っていたが、逆に言えばクール自身はどうすればいいのだ、となった。
図々しくも食べるだけ食べに来い、というのか、とクールは思っていた。
.
- 122 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:24:32 ID:cHys1QnYO
-
('、`*川「わかってるって。クーちゃんの部屋から料理するような音、聞いたことありませんからね」
川 ゚ -゚)「じゃあ、なんで……」
('、`*川「……気分?」
思わずクールは噴き出した。
顔を下に向けて、にやけた顔を見られないようにした。
それほど、クールにとっては意外な答えだった。
('、`*川「住人同士でコミュニケーションをとるいい機会だと思ってねぇ」
川 ゚ -゚)「まあ、そうですが……。それは大家さんの自宅で?」
('、`*川「結構広いのよ」
.
- 123 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:26:08 ID:cHys1QnYO
-
クールはたまに自室でペニサスと談話する機会があった。
手料理を振る舞えはしないが、缶ビールと少量のつまみさえあればその場は盛り上がった。
それは、酒にめっぽう強い二人だからこそ、だった。
そんな上戸の二人は、自然と仲がよくなっていた。
時々、ペニサスが惣菜を分けてくれる事もあった。
この度の件は、クールが今日も惣菜くれるのか、と期待した矢先での出来事だった。
('、`*川「どうよ、燃え上がるでしょ?」
川 ゚ -゚)「ま、まあ……」
('、`*川「今週日曜にするつもりなんだけど」
川 ゚ -゚)「大学が夏休みなので、大丈夫です」
('、`*川「そう、それはよかった。じゃ決まりね」
ペニサスは手をぱんと叩き、にこやかに笑んだ。
大家としては、住人全員が参加できるのが嬉しかったのだ。
クールはドライな性格だから、そう云ったパーティーの類は
苦手だろうか、と不安に思っていたが、それは杞憂だった。
.
- 124 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:27:32 ID:cHys1QnYO
-
しかし、別れを告げて帰ろうとすると、クールは部屋から飛び出した。
ペニサスが振り返ると、その時のクールは、日頃の
何も考えていないような顔ではなく、やや眉を垂れさせた、不安に満ちた表情だった。
階段に足を掛けたまま、「どうしたの」と訊いた。
川 ゚ -゚)「その……料理なんてできない私が行っても……ほんとうに、みんな許してくれるのでしょうか。
図々しいとか、欲深いとか……」
('、`*川「ああ、それ?」
ペニサスは何度目かになる笑みを浮かべた。
クールが心配性なのは薄々知っていたが、食に関するとそれは尚更のようだと思った。
不安げな眼で見つめるクールの肩を叩いて、「心配するな」と言った。
('ー`*川「料理を作る人にとっての一番の喜びは、それをおいしく食べてもらうことなんだからね」
.
- 125 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/29(土) 21:43:36 ID:cHys1QnYO
- 今回投下分>>93-124
ミステリーブームらしいので投下しました。
そして、今回の投下を持ちまして、以下の作品の投下はここ創作板ではなく、新設された小説板Ⅱ(略してⅡ板?)で行うことにします。
決して決して「新設掲示板をおれの手で流行らせてやろう」とか「ライバルいねぇから注目浴びまくりwww」とか云う不埒な考えではありません。ゼッタイ。
ただ、新設管理人さんの方針の方が私の肌に合っていそうだったので、創作板での活動も一年過ぎたことだし、この際移住して新鮮な気持ちでやり直そうかな、と云うだけです。ゼッタイ。
でも、「せっかく立ったのに誰も投下しないって云うのはなんだか寂しいなあ」と云う気持ちはありますが。
該当作品:
( ^ω^)は自らのパラレルワールドに迷いこんだようです
(´・ω・`)ごちそうさま、のようです
(゚、゚トソンちゃん、ゲキ萌え大作戦のようです(番外編のみ)
つまり、アルプスの後編とトソゲキ最終話の投下を終えることで、私めの活動場所は完全移行となります。
また、移行するにつきまして、こちらの現行スレは(ごちそうさまはまとめがつき次第)近いうちに過去ログ送りしてもらうかもしれません。
創作板がこれだけ流れが速いと、容量が問題になるのもそう遠くはないだろうと思うので……。
関係ないけど、偽りの続編は投下するとしたらVIP→小説板Ⅱです。
投下予告等の情報はツイッターで寂しげに載せています。
最近Janne Da Arcにハマっています。
と云うことで、今回も読んでいただき、ありがとうございました。
- 126 :名も無きAAのようです:2012/09/29(土) 21:57:00 ID:VTo0JN5Q0
- 乙乙
なぜジャンヌ…?まあ向こうにも読みに行くよー
- 127 : ◆wPvTfIHSQ6:2012/09/29(土) 22:05:44 ID:cHys1QnYO
- >>126
今までミスチル一本だったのですが、月光花をきっかけに試しにいろいろ聴いてみたのです。ハマりました。
で、なぜこんなことをいちいち申すのかというと、ジャンヌのある曲にインスピレーションを頂いて、新作を書き始めたからです。
「あれ、このタイトル……ジャンヌの歌にあったような」ってのがあれば、それは私のかもしれません。
- 128 :名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 07:33:12 ID:U8x/qeXkO
- 乙
向こうにも見に行くよ
- 129 :名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 08:31:27 ID:gBp0b5fA0
- かなた
- 130 :名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 08:32:17 ID:gBp0b5fA0
- 間違えた
- 131 :名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 15:55:59 ID:2IXLyfqsO
- これ読んでたらきつねうどん喰いたくなったから買ってくるハメに…
- 132 :名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 22:22:47 ID:CGnNqF960
- http://jbbs.livedoor.jp/internet/16305/
ここ?
- 133 : ◆D8q8Hi/vow:2012/09/30(日) 22:42:12 ID:ZggTO9BIO
- そうですそこです
- 134 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 01:24:40 ID:nOW2JcTMO
- >>133
作者さんちょっと頼まれては貰えないでしょうか
下記を小説版Ⅱの管理人のお部屋まで届けて欲しいんですが
書きこもうとしてもREFERERがどうとかで書き込めません
当方読むだけなので読むぶんには差し支えないんですが
たまには、全俺が泣いた、乙ぐらいは書き込めればなと思います
可能であれば書き込みできるようして貰えればありがたいです
作者さん不躾なお願いですがよろしくお願いします
引っ越しても読ませてもらいますので今後もがんばってください
- 135 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 01:40:25 ID:JYqxda8A0
- わざわざ作者に頼むことでもなかろうと思って転載してきた
嫌だったらごめんね
- 136 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 02:05:20 ID:nOW2JcTMO
- >>135
サンクス、ここの総合には頼みにくいなと思って
VIPかシベリアで頼もうと思ってたんだ
- 137 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 05:01:57 ID:kL4Fy9UE0
- (まとめがつき次第)って随分な自信だな 若いうちはちょっと図々しいくらいが良いのかもな
どこかまとめサイトさん面倒みたげたら?
俺はこの話あまり面白いと思わないから遠慮するけど
- 138 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 07:49:42 ID:ZAjmQznw0
- 今すぐじゃなくて時間経ったら過去ログ送るけど
まとめついたらすぐ送るってだけじゃないのか?
そんな言い方しなくてもいいと思うけどな
- 139 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 15:59:46 ID:vc2WHIU60
- こないだダダこねてた奴お前だったのか
- 140 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 22:31:26 ID:ZpknDxEk0
- 察してやれよお前ら
一緒に泣いてやれ
- 141 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 00:57:30 ID:DztASm2wO
- (´;ω;`)
- 142 :名も無きAAのようです:2012/10/16(火) 18:23:53 ID:b7v72tkk0
- >>136
9 返信:星林★[] 投稿日:2012/10/16(火) 15:15:34 ID:???0
>>8
返事遅くなってすみません
対応しました
よろしければ、元の板に配達していただければ全俺が助かります
- 143 :136:2012/10/17(水) 13:19:56 ID:e/2feqUYO
- >>142
サンクス、ちょっとテストを兼ねて管理人にも言ってくる
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