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雪のハヤブサ、のようです- 1 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:29:55 ID:dkysk3SEO
-
これは、雪の世界のお話。
そこは氷の壁が世界を囲み、空にはいつも雪雲が満ち。
そんな世界で生きた、数人の男女のお話。
- 2 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:30:53 ID:dkysk3SEO
-
太陽って知ってるかい?
知ってる!絵本で読んだことあるお!
あれはね、本当にどこかにあるんだよ
え、架空の話じゃ…
架空なんかじゃないさ
あったら本当に暖かいんですか?
暑いぐらいじゃないかな、多分
どこにあるの?
僕も探してる最中さ。さあ、ご飯にしようか
- 3 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:31:38 ID:dkysk3SEO
-
雪のハヤブサ、のようです
.
- 4 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:32:41 ID:dkysk3SEO
-
第1話『孤独ではなく』
街から離れた、とある孤児院。
孤児院と言っても人数も少なく、彼らは家族のようなものだった。
( ´∀`)「シチューができたよー」
(´・ω・`)「できたよー」
(*^ω^)「うまそうだお!」
川 ゚ -゚)「ショボンは料理が上手いよな」
( ´∀`)「僕を抜かす日も近いね」
(*´・ω・`)「えへへ…」
ξ*゚⊿゚)ξ「私も料理したい!」
('A`)「死人が出るよ、冗談じゃなく」
「うっせー!」ξ#゚⊿゚)ξつ))A`)「あプっ!」
(;´∀`)「こらこら…」
- 5 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:33:47 ID:dkysk3SEO
- 美味しいご飯を食べ終わり、
院長であるモナーが本でも読もうかと考えていたその頃。
ドアが二回、力強くノックされた。
( ´∀`)「お客さんかな?皆、邪魔にならないようにね」
( ^ω^)「はいお!」
川 ゚ -゚)「誰だろうな?」
('A`)「モナーさんの飲み友達じゃねーの?」
(´・ω・`)「たまに来るあの双子っぽい人らか」
ξ゚⊿゚)ξ「新しい家族かもね!」
めいめい勝手な想像を働かせている。
モナーがドアを開けると、そこにいたのは予想だにしない人物だった。
( ´∀`)「…」
- 6 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:34:39 ID:dkysk3SEO
-
ドアを挟んで家側には、初老の男性。
外側には、赤い服を着て剣を下げた男。
( ´∀`)「…何でしょう?」
( ・∀・)「あなたが、院長のモナーさんですね?」
( ´∀`)「いかにも」
( ・∀・)「見て分かる通り、私は王城の騎士。それも騎士団長」
( ・∀・)「私がここに来た理由、お分かりでしょうか?」
( ´∀`)「キカイの事ですか?」
( ・∀・)「違います。キカイの研究自体は禁じられてはおりません」
( ・∀・)「問題は、あなたの『太陽の研究』です、モナーさん?」
一瞬、場に静寂が満ちる。
それを破るのは、長身の騎士。
( ・∀・)「もろに禁止されてるんですよ、太陽についての研究は」
( ・∀・)「それについて知っていながら研究を重ねた貴方は、重罪人だ」
- 7 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:36:16 ID:dkysk3SEO
-
院長モナーは、黙っていた。
数人の男女が固まってよく分からない状況に固唾を飲んでいるのに、騎士が気付いた。
( ・∀・)「孤児院の子供達ですか。青年もいるようですが」
( ^ω^)「…誰だお?」
( ・∀・)「僕はモララー。君達のモナーさんを捕まえに来たのさ」
その言葉に、一同がざわめく。
彼らの質問を代表するかのように口を開いたのは、痩躯の青年。
(;'A`)「何のためにだ?」
( ・∀・)「あれ、知らないんですか」
- 8 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:37:30 ID:dkysk3SEO
-
(;´∀`)「待って下さい」
口を再び開けかけた騎士を、モナーが止める。
( ´∀`)「皆、二階に行っていなさい」
ξ;゚⊿゚)ξ「え…」
( ´∀`)「いいから行って」
彼らはモナーのいつにない真剣な物言いにたじろぎ、すごすごと退散していった。
再び沈黙が場を支配し、窓を雪が叩くぱたぱたという音が聞こえる。
(´・ω・`)「捕まるって…何でなのかな」
川 ゚ -゚)「分からない…」
('A`)「しっ…」
ξ゚⊿゚)ξ「何?」
見ると、青年は一階に通ずるドアに耳を当てていた。
下の話し声を聞くつもりらしい。
- 9 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:38:36 ID:dkysk3SEO
-
ドアの向こうから声が漏れている。
両者共に小声という訳ではなく、それは全員に聞こえていた。
「…何故、研究がいけないんでしょう?」
「…というと?」
「私には、理解できません」
「太陽という名前の物質は確かに実在するんです」
「私の研究では、それは大岩のはず。ならば、その切片だけでも持ち帰れば…!」
「そうすれば、この世界が雪に埋まることもない。広葉樹の屋外栽培さえ可能かもしれない」
「そんな希望の塊を、何故…」
「全く…」
呆れたような声。
「貴方は何も分かってない」
- 10 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:40:12 ID:dkysk3SEO
-
騎士モララーの声は続く。
「この世界は筒を立てたような氷の壁に囲まれていますね?」
「そして、その筒の外にあるのが、太陽という何か」
「お伽話の中にも出ますから、国民も存在だけは知っているんです」
「仮に太陽があったとして、それにデメリットがなかったとします」
「そんな神々しいものがいきなり出てきたらどうなるか?」
「きっと国民の忠誠は、そちらに向いてしまいます」
「いや、最悪の場合、太陽を神とし崇める者も出るでしょう」
「…そうなってもらっては、困るのです」
「我等が王城のみを見、忠誠を尽くしてもらわないと」
「労働なり税金なりで、ね」
- 11 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:41:08 ID:dkysk3SEO
-
渇いた笑いが響く。
だん、と、拳が固いものにぶつかったかのような音がした。
テーブルを叩いたようだ。
「馬鹿な事を…」
「この国…いや、あなた達は腐っている…!」
「そうかもしれませんねぇ。じゃ、行きますか」
(;^ω^)「や、やばいお!」
川;゚ -゚)「出るぞ!」
ドアを蹴り開け、階下に転がり出る。
そこにいたのは、数人の騎士に囲まれ縄で後ろ手に縛られたモナー。
( ・∀・)「おや」
(;´∀`)「あ…」
何故だ。
太陽を探したから?それだけで、逮捕されるのか?
疑問が渦巻き、揺れる。
訳が分からない。
- 12 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:41:55 ID:dkysk3SEO
-
(;´・ω・`)「モナーさん…」
少年が名前を呼ぶ。引き留めるかのように。
( ´∀`)「…少し、時間を貰えますか」
( ・∀・)「どうぞ」
子供達に向き直り、一人ずつに話し始める。
( ´∀`)「ショボン、君はこの中で一番若い」
( ´∀`)「…無限の可能性を、信じるんだ。君に出来ないことはない」
(;´・ω・`)「え、あ、はい…」
( ´∀`)「ツン、泣かないで」
( ´∀`)「僕を忘れろとは言わないけど、前を向いて生きて」
ξ;⊿;)ξ「え…うん…」
- 13 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:43:04 ID:dkysk3SEO
-
( ´∀`)「クー、君は本が好きだね」
( ´∀`)「その英知は、いつか実を結ぶ。絶対に」
川 ゚ -゚)「…はい」
( ´∀`)「ブーン、笑顔を絶やさないで」
( ´∀`)「その笑顔に僕が一体何度救われたか。そして、笑顔あってのこの院だよ」
(;^ω^)「は、はいお」
( ´∀`)「ドクオ、君が一番年長でしっかり者」
( ´∀`)「君が好きなキカイも、いつか役に立つ。皆をよろしく頼むよ」
('A`)「はい…」
- 14 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:44:07 ID:dkysk3SEO
-
( ´∀`)「君達に、家族はいない」
( ´∀`)「でも、君達はそこらの家族よりずっと絆が強い」
( ´∀`)「…僕の、一生の誇りだよ」
またも静寂。
そして、無慈悲な声が告げる。
( ・∀・)「行きますよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ…」
(;^ω^)「待って下さいお!」
背中を向け、歩き始める。
振り返ってはくれなかった。
川 ゚ -゚)「…お父さん…」
…少女の呟きは、雪に呑まれ―――
―――扉が、閉まった。
- 15 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:45:29 ID:dkysk3SEO
-
しばらくして、外に控えていたであろう他の騎士が入って来た。
モナーの使っていた資料を事務的に探し、去っていく。
誰も口を開かなかった。冷たい風が窓を鳴らす。
そこにあるのは、突然のことからきた混乱。
モナーを引き止められなかった後悔。
未来への不安。
ξ゚⊿゚)ξ「私達…どうなるのかな」
(´・ω・`)「分からない…」
('A`)「身分の保障もないんじゃ働けないしな…」
川 ゚ -゚)「私は」
黒髪の少女に視線が向く。
川 ゚ -゚)「私は、太陽を探したい」
- 16 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:47:13 ID:dkysk3SEO
-
( ^ω^)「太陽…」
川 ゚ -゚)「モナーさんがずっと研究してたんだ、私達が引き継ごう」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、資料とか持ってかれたし…」
川 ゚ -゚)「そんなもの持ってたら捕まる。一から調べればいいさ」
迷いなく言い切る少女。
その目には、絶対の覚悟があった。
(´・ω・`)「僕もやるよ」
(´・ω・`)「できることは、全部やりたい」
('A`)「俺もやる。…どうしても、このままじゃな」
( ^ω^)「僕だってやるお!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、不安だけど…私も」
どこにあるか、一体何なのか。
存在すら朧げな何か。
その何かを見つける為、少年達は誓った。
―――いつか『太陽』を見つけよう!
- 17 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:49:51 ID:dkysk3SEO
- 第一話、終わりです。
一つ一つが短いので、投下間隔を狭めたいです。
こちら携帯なので、文字化け等あったら言ってください。
- 18 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 19:58:00 ID:CXwrWQ660
- 乙
- 19 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 20:21:32 ID:q8kM4e4c0
- 雰囲気とか最高にタイプ
続き期待
- 20 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 20:45:34 ID:kK4DVZSY0
- 文字化けはとりあえず見あたらない
おつ
- 21 :名も無きAAのようです:2012/07/25(水) 21:09:28 ID:SYUnGpIc0
- 乙!
設定がいいな
- 22 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 21:04:34 ID:/ATvqffU0
- 高橋しん?
- 23 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 22:43:29 ID:1najWLCUO
- >>22
どうやらその人の漫画と内容が被り気味らしいですね。
真似したつもりはないんですが、展開やらが被ったらすんません。
明日ブックオフにでも行かなくては。
ちょっとしたら二話投下します。
- 24 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:03:35 ID:1najWLCUO
-
第2話『シーフ・マインド』
――あの日から、三年。
彼らは精一杯生きていた。
…ただ、身寄りも身分証明もない彼らが生きる道は、随分と限られていたが。
(;´・ω・`)「…」
(´・ω・`)「開いたっ」
( ^ω^)「入るお」
('A`)「お、立派だな。倉庫のくせに」
要するに、盗賊である。
ここは、ある貴族の邸宅の倉庫。
ちなみに、彼らは独自に『上流階級しか狙わない』というルールを設けていた。
単純に儲けが少ない、というのもある。
が、彼らなりの良心によるところも大きい。
川 ゚ -゚)「急いでっ」
('A`)「よし、大体詰まった」
- 25 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:04:47 ID:1najWLCUO
-
大方の荷造りを終えたところに、女の子が飛び込んで来た。
ξ;゚⊿゚)ξ「家主が起きたわ!」
( ^ω^)「ナイスだお、ツン」
(´・ω・`)「行こう」
倉庫を出て走り、階段を昇り、角を曲がる。
と、彼らの目の前に人影が見えた。
(#,゚Д゚)「止まれッ!賊めが!!」
川 ゚ -゚)「先回りされたか」
(,,゚Д゚)「最近、盗賊が増えているらしいが…」
(,,゚Д゚)「テメェら、ここがどこだか分かってんのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたの家?」
飽くまで飄々と答えるツン。
悟られぬよう、全員じりじりと後退する。
2メートル後ろは、窓。
- 26 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:05:45 ID:1najWLCUO
-
(,,゚Д゚)「分かってんじゃねえか。
ここはな、お前らゴミが来ていいとこじゃねぇんだよ」
( ^ω^)「ケチ臭いこと言うなお、どうせ余る程金あるのに」
(,,゚Д゚)「当然だ、貴族なんだからな」
(,,゚Д゚)「お前らの上に立ってんだよ、俺は」
意地悪く笑う貴族。
ふと、その目が何かに留まった。
自分に向けられた、青い筒に。
('A`)「寄るなよ、死ぬぞ」
(,,゚Д゚)「…何だぁ、それは?」
- 27 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:07:42 ID:1najWLCUO
-
ドクオが腰の位置に構えているのは、大きな筒。
小さく収納できるのか、三段に別れている。
('A`)「古代の遺産さ。『大砲』ってんだよ」
(,,゚Д゚)「…機工師か、お前」
('A`)「一般的には、な」
('A`)「さあ、死ぬか逃がすか。選べ」
貴族は、今だに余裕の表情。
その目にあるのは、恐らくは未知のものへの興味。
(,,゚Д゚)「成る程…。お前ら、来い」
その言葉が終わらぬうちに、鎧を着込んだ男達が物陰から出てきた。
剣を持っているあたり、警備の傭兵か。
その数は、五人。
(,,゚Д゚)「死ぬか奴隷になるか。選べ」
- 28 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:08:58 ID:1najWLCUO
-
(,,゚Д゚)「うちにも、よく分からん設計図やらが昔からあってなぁ…。
それを使って儲けてくれるってんなら、命はとらんぞ?ん?」
('A`)「クー」
合図を受けたクーが喋りだす。
その右手に白い球体を持っている。
川 ゚ -゚)「私達は、飽くまで盗賊だからな」
川 ゚ -゚)「盗るもの盗った後は…」
(,,゚Д゚)「何を…!」
クーが球体を床に叩き付けると共に、その場に真っ白な煙が充満した。
一寸先すら見えない中、貴族の怒声と何かの爆発音、ガラスの割れる音が同時に響く。
ようやく煙が晴れた頃、そこに盗賊はいなかった。
- 29 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:09:59 ID:1najWLCUO
-
―――数分後、彼らは雪の中を歩いていた。
( ^ω^)「今回も無事完了、だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「随分頂いたから、暫くはいいわね」
(´・ω・`)「クー、『煙玉』あといくつ?」
川 ゚ -゚)「私の手持ちは2個だな」
('A`)「また今度作っとくよ」
ドクオが持っていた『大砲』や、先程クーが使った『煙玉』は現代には伝わっていない。
何らかの理由で技術が途絶え、文字通り埋もれてしまっているのだ。
この国には、そういった機工技術を発掘、研究する者が少数いる。
盗賊である以上世間には知られないが、ドクオもその一人。
要するに、未知の『キカイ』を扱える数少ない人材である。
('A`)「あんなもんキカイが好きなら誰でもできるぞ」
(´・ω・`)「普通は扱うのが精一杯さ」
- 30 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:11:01 ID:1najWLCUO
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( ^ω^)「おっお、見えてきたお」
白銀のカーテンの向こうに、見慣れた家。
言わずもがな彼らの拠点である。
扉を開け、暖炉に火を灯す。
荷物を片付け一段落。
(´・ω・`)「疲れたねー」
('A`)「俺は廃坑に行ってくる」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、疲れてるだろうに」
川 ゚ -゚)「大変だな」
('A`)「そう思うなら手伝いとかさぁ」
川 ゚ -゚)「やだ」
('A`)「ですよねー」
- 31 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:12:35 ID:1najWLCUO
-
町の外れに、廃坑、又は炭坑と呼ばれる場所がある。
随分昔から石炭等を採っていたが、今は採掘をしていないようだ。
どこまで続くのかも今ひとつ判明していない。
城の近くにも同じようなものがあり、そちらからは町に出回る燃料が供給される。
その廃坑に、キカイの部品が転がっていることがよくあるのだ。
昔の採掘のキカイとおぼしきものから、大砲のような武器まで。
('A`)「寒い…」
風があるあたり、どこかへ抜けているのか。
と、ドクオの目が何かを捕らえた。
('A`)「お…何だあれ」
あったのは、金属製の紐。
鞄に入れて、また歩く。
('A`)「奥まで行かないと、もう取り尽くしちまったな…」
- 32 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:14:15 ID:1najWLCUO
-
それから暫くのこと。
('A`)「…?」
小さな部品を拾っては鞄に詰めていると、奥から何かの音が聞こえてきた。
不定のリズムを刻むそれは、明らかに…
(;'A`)「足音…」
鞄から大砲を出し、がしゃりと伸ばす。
自分が盗賊である以上、どうしても思考は悪い方へと向かう。
前にカンテラを突き出し、身構える。
一般人はこんな所には来ない。
そもそも立入禁止だ。
(;'A`)「…」
- 33 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:15:02 ID:1najWLCUO
-
从; ∀从
暗がりからふらふらとした足取りで現れたのは、女の子。
歳は大体ドクオと同じぐらいか。
从; ∀从「だ、誰…」
(;'A`)「え、ちょっ」
ドクオを確認した瞬間、くずおれるように座り込む。
とりあえず水筒から熱い茶を出し、与えてみた。
从;゚∀从「あぁ、ありがと…」
(;'A`)「えーと…」
とにかく数ある疑問を整理し、ぶつけてみる。
(;'A`)「どっから来たんだ?」
从;゚∀从「いや、分からない…。
気付いたら倒れてて、どうしようもないから歩いてみた」
(;'A`)「気付いたら、って…」
- 34 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:16:45 ID:1najWLCUO
-
落ち着いたところで、座って話をすることにした。
聞けば、自分の名前もここにいる理由も、何も分からないらしい。
('A`)「あれか、記憶喪失って奴?」
从 ゚∀从「あー…そうかも」
('A`)「…持ち物とかは?」
从 ゚∀从「何も持ってなかったよ。…あと、頭痛いんだよなぁ」
('A`)「打ったのかもな。ここじゃ薄暗いから分からんけど」
('A`)「どーすっかなぁ…」
安全な場所に連れて行くべきなのだろうが、やはりそこは警戒が必要か。
(;'A`)(でも、一応弱ってんだよなぁ…)
从*゚∀从「あー、お茶あったけー」
(;'A`)
- 35 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:18:11 ID:1najWLCUO
-
―――――――――――
('A`)「ただいまー」
鞄を重くしたドクオが家の扉を開ける。
その後ろには、女の子。
从 ゚∀从「おじゃまします」
( ^ω^)「ああ、おかえりー…?」
出迎えてくれたブーンに事情を説明しようと、口を開いた。
('A`)「あ、こいつは―」
(^ω^;)「皆ー!集合だお!」
川 ゚ -゚)「ほう、ドクオにそんな甲斐性があったか」
ξ゚⊿゚)ξ「お年頃ねぇ」
(;'A`)「お前らもほぼ同年齢だろ!」
(;'A`)「事情は話すから、とりあえず暖かいもんあげて!」
从;゚∀从「なんか悪いな…」
- 36 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:20:08 ID:1najWLCUO
-
('A`)「――ということで、拾ってきた」
(;´・ω・`)「拾ってきた、って…」
当の女の子は今、とりあえずドクオのベッドに寝かせてある。
やはり疲労は溜まっていたようで、泥のように眠っている。
ショボンがそこに近づき、首元の何かに触れた。
ペンダントのようだ。
(´・ω・`)「これ、さ」
(;'A`)「うん…」
川 ゚ -゚)「外れないんだよな」
外れないペンダント。
王城に勤務するある程度以上の階級、職業の者は、特別な首飾りを持っている。
切断しない限り外れないもので、職を退くまで着けたまま、という代物だ。
( ^ω^)「よく分かんねーお」
ξ゚⊿゚)ξ「つまり、とんでもない人を連れ込んじゃった訳ね」
- 37 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:21:47 ID:1najWLCUO
-
(´・ω・`)「どんな人が着けてるんだっけ?」
川 ゚ -゚)「王様から大臣から…あと抱えの機工師とか?」
('A`)「如何せん候補が多いな…」
ξ゚⊿゚)ξ「お城の事なんかほとんど知らないしね」
恐らく模様も細かく差があるのだろうが、今は知りようがない。
複製を防ぐ為に、それらは公表されていないのだ。
つまり、今は彼女の正体は一切分からない。
川 ゚ -゚)「名前ぐらい分かればな…」
('A`)「ま、何にせよ、本人も交えて相談しないとな」
(´・ω・`)「いい時間だし、僕達ももう寝ようか」
( ^ω^)「おっお。解散だお」
ξ゚⊿゚)ξ「おやすみなさーい」
('A`)「あー疲れた」
('A`)
('A`)「あれ?」
女の子にベッドを貸している今、寝床がない事に気付いた。
- 38 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:23:29 ID:1najWLCUO
-
予備の毛布を引きずり出し、暖炉の前に横になる。
暖炉に火は入っているが、少し寒い。
('A`)「どーすっかなぁ…」
明々と燃える炎を見つめ、考える。
あの女の子は、廃坑の奥からやって来た。
そして、王城のペンダント。
つまり、廃坑と王城はどこかで繋がっている筈。
ここまでは、昔廃坑を国が管理していたと考えると納得できる。
しかし、問題はそこではない。
クー達のここ三年間の研究で、氷の壁の一部が僅かに光っている事が分かった。
それが、一定時間をかけて壁を一周している事も。
つまり、『太陽』らしきものは壁の中、或いは外部にあるということだ。
その光源が『太陽』だとすれば、だが。
- 39 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:26:47 ID:1najWLCUO
-
壁の外がどうなっているかなど、想像したこともない。
ただ、ドクオは廃坑が外へ通じている、と見立てていた。勘だが。
そして、今、城との繋がりが見つかった。
要するに、外界へ廃坑が通じていても、とっくに国が見つけ、封鎖しているだろう。
それともそんな道は存在しないのか。
考えても埒があかないと悟り、思考を移す。
あの女の子は?
国の重要人物ともあろう者が、何故記憶を無くしてふらついてたのか。
('A`)「…」
(;'A`)「解るわけねーよな…」
やっぱり考えるのはショボンやらクーやらツンに任せるべきなのか。
とりあえず、近いうちに壁を見に行く必要がある。
これまで敬遠していたが、廃坑からの希望が断たれた今、そうするしかない。
考えるのを止めると、急に睡魔が襲ってきた。
- 40 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:27:40 ID:1najWLCUO
-
―――――――――
从 ゚∀从「え、俺そんな偉いの?」
( ^ω^)「偉いお」
ξ゚⊿゚)ξ「偉いわ」
威厳も何もない様子だが、一応はそれなりの階級の筈だ。
よく見れば、服も上等なもののよう。
川 ゚ -゚)「で、そんなお偉いさんに言いたい事が」
从;゚∀从「お偉いさんってのやめてくれ」
川 ゚ -゚)「すまん。…でな、私達は盗賊なんだ」
从 ゚∀从「マジかよ」
たいして驚く様子もない。
ペンダント持ちの中でも、庶民的な階級だったのだろうか。
川 ゚ -゚)「どうする?」
从 ゚∀从「どうするって、なぁ…」
- 41 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:28:39 ID:1najWLCUO
-
从 ゚∀从「…」
从 ゚∀从「城に行ったところで、俺危なくね?」
(´・ω・`)「まあ、誰かに狙われて今に至った可能性はあるね」
('A`)「そこで提案なんだが、盗賊やんない?」
从;゚∀从「んー…」
しばし考え込む女の子。
城に帰るリスクと盗賊に手を染めるリスクを考えると、無理もない。
やがて、ゆっくりと喋り出した。
从 ゚∀从「逃げるしかなかったのも、多分何か理由あんだろうしなぁ…」
从 ゚∀从「ドクオに助けてもらった恩もあるし、盗賊…だな」
(*^ω^)「おっお、よろしくだお」
こちらとしても、人数が増えるのは有り難い。
双方に損がない、両得という奴である。
- 42 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:29:28 ID:1najWLCUO
-
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず名前決めましょう、呼びにくいわ」
从 ゚∀从「そーだな。よし、拾い主よ」
('A`)「任せろ」
胸を張ったドクオに、全員の目が集中する。
明らかに不審げな目線。
(;´・ω・`)「え、ドクオに任せるの?」
ξ;゚⊿゚)ξ「止めたほうが…」
从 ゚∀从「自分で付けるのもなぁ」
( ^ω^)「ドクオの大砲に付いた名前言ってやろうかお?」
从 ゚∀从「おう…大砲?」
( ^ω^)「『万能くん2号』」
从;゚∀从「おぉぅ…」
(;'A`)「いいだろ、万能なんだよ!」
- 43 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:32:11 ID:1najWLCUO
-
('A`)「クー、本貸して」
川 ゚ -゚)「なるほど、小説の中の人物ならまぁ大丈夫だな」
('A`)「よし…」
本を受け取り、ぱらぱらと繰る。
やがて何かを見つけたのか、満面の笑みで、
('∀`)「『ウメキチ』」
从;゚∀从「嫌だっ!!」
('A`)「えー何でだよ、音楽家らしいぞ、ウメキチ」
ξ゚⊿゚)ξ「だから言ったのに」
('A`)「じゃ、それには劣るが…『ハインリッヒ』」
从;゚∀从「タメキチより数百倍いいわ!それにする!」
(;´・ω・`)「小説の中の人物なんかでいいの?」
从 ゚∀从「いいよ、この機会逃すと無い気がするし」
( ^ω^)「僕らに頼めばいい話なのに」
- 44 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:33:09 ID:1najWLCUO
-
一段落ついたところで、さて、とばかりにドクオが手を打ち鳴らす。
('A`)「これでハインも立派な盗賊だな」
从;゚∀从「う、うれしくねぇ…」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁいいじゃないの、それなりに安泰だし」
从 ゚∀从「盗賊だぞ?」
(´・ω・`)「このご時世にマトモに正義してる騎士なんかいないよ」
( ^ω^)「とりあえず名前も決まったし、改めてよろしくだお、ハイン!」
从 ゚∀从「ああ、よろしく!」
(;´・ω・`)「ってかさ、ハインリッヒって男性だったよね、確か…」
川 ゚ -゚)「…いいだろ、黙ってればバレん」
- 45 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:38:43 ID:1najWLCUO
- 今回はここまで
ドクオの大砲ですが、長さ4倍直径2倍のプリングルスみたいな感じです。
BOF3というゲームに出てきたモモという人の大砲をイメージしてます。
- 46 :名も無きAAのようです:2012/07/26(木) 23:53:21 ID:rdA/xPrU0
- 乙
- 47 :名も無きAAのようです:2012/07/27(金) 07:09:54 ID:k02KHQqUO
- キミのかけらを連想したんだけど
どんな話だったか思い出せないから気にせずこの話を楽しみに待ってます
- 48 :名も無きAAのようです:2012/07/28(土) 13:08:04 ID:ahzQWHx.0
- 人多いねえ
おつ
- 49 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:50:23 ID:JwmrEHMAO
-
第3話『凍りの大地』
( ^ω^)「準備いいかお?」
从 ゚∀从「うっす!」
壁を調べに行く、というドクオの提案は先日あっさり通った。
今回はそれに際して食糧が足りない為、その調達が目的。
又、ハインの初盗賊行為でもある。
('A`)「基本は盗って逃げる、だからな。緊張してると走れないぞ」
从 ゚∀从「おう、大丈夫」
川 ゚ -゚)「まあまあ身軽そうだし平気だろう」
(´・ω・`)「行こうか」
- 50 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:51:06 ID:JwmrEHMAO
-
家を出、街を歩いて目標を決める。
郊外の方が仕事はしやすい。
やがて、先頭のブーンが一件の貴族の家の前で止まった。
( ^ω^)「人気もないし、ここなんかどうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか見たことあるわよ」
('A`)「前に来たことあんだろ、多分」
从 ゚∀从「いいのか?」
川 ゚ -゚)「貴族の家は少ないからな、多少の重複は仕方ない」
从;゚∀从「ってか見つからねーの?」
(´・ω・`)「しばらく前に鐘は鳴ったし、今は普通の人なら寝てるよ」
この世界において『一日』という単位は王城に管理されている。
時計、というキカイがあり、それにより判明しているとのこと。
一日の終わりに鐘が鳴り、また新しい一日が始まる。
国民は一応は鐘を基準に生活している。
その鐘が鳴ってしばらく経つので、今は大抵の人は寝ている筈だ。
- 51 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:52:07 ID:JwmrEHMAO
-
適当な所の窓を外し、侵入した。
大きな家の倉庫は大概地下にあるのを知っている為、階段を探す。
しんと冷えた廊下を歩く。
川 ゚ -゚)「あったぞ、階段」
('A`)「よーし」
从 ゚∀从「こえーな…」
( ^ω^)「多分倉庫はこの扉の向こうだおね」
(´・ω・`)「開けるよ」
ショボンが錆びかけた鍵穴に二本の銀色の棒を差し込んだ。
がちゃがちゃと動かしていたが、しばらくすると小さな音と共に鍵が外れた。
ξ゚⊿゚)ξ「絶好調ね」
(´・ω・`)「いつも通りさ」
- 52 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:53:18 ID:JwmrEHMAO
-
ツンを見張りにし、残りが中に入った。
倉庫にあるものを次々と鞄に入れていく。
从;゚∀从「なんかもう今にも人が来そうで心配なんだけど」
('A`)「気にしたらハゲるぞ」
从 ゚∀从「ハゲてたまるか」
幾つかある鞄の半分程が一杯になっただろうか。
いきなりツンが入って来た。
焦っているように見える。
ξ;゚⊿゚)ξ「見回りがいる!」
(;^ω^)「えー…」
川 ゚ -゚)「よし、撤退準備だ」
(´・ω・`)「珍しいね、今時」
(;'A`)「喋ってないで!」
- 53 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:54:28 ID:JwmrEHMAO
-
急いで半端に重い鞄を持ち、倉庫を出た。
地上への階段を昇った辺りで、足が止まった。
最近見た顔だ。
ご丁寧に警備兵まで従えている。
(#,゚Д゚)「また来やがったな…。見回り置いといて良かったぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン?」
( ^ω^)「あれぇ…?」
(#,゚Д゚)「殺せぇぇぇぇぇっっ!!」
川;゚ -゚)「撤収っ!」
从;゚∀从「わああああああっ!」
各々手にした煙玉を目茶苦茶にたたき付け、走る。
いつかより濃い煙の中、いつかと同じような怒声が響いた。
(;´・ω・`)「窓!窓!」
(;'A`)「ラッキー!」
廊下の突き当たりに都合よくあった窓へ、大砲の先が向いた。
- 54 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:55:34 ID:JwmrEHMAO
-
吹雪の郊外に、ガラスの砕ける音が響く。
(#,゚Д゚)「待てゴルァァァ!」
从;゚∀从「うぉぉう!まだ来てる!」
(;'A`)「何で2連続で同じとこ入るかなー!」
(;^ω^)「すまんお!つい!」
(;´・ω・`)「道理で見覚えあったんだよね!」
川;゚ -゚)「この風じゃ煙玉も使えんぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ「遮蔽物もないし…」
後ろには、兵士を置き去りに剣を振り上げ走る貴族。
迫力は相当な物だ。
- 55 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:56:28 ID:JwmrEHMAO
-
(;'A`)「したらば奥の手!」
腰の位置に大砲を構え、ドクオが振り向く。
狙い澄まして引き金を引くと、低い破裂音と共に丸い物が飛び出し――
(,, Д )))「うぐぉっ!」
その腹部に命中した。
(´・ω・`)「ナイス!」
('A`)「万能くんは万能なんだよ!」
弾丸は木製だが、威力は充分。
足止めに成功したところで、また走る。
川;゚ -゚)「全く、ハインの初陣なのに…」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンのせいよねー」
( ^ω^)「気付かなかったお前らにも責任はあるお、きっと」
从 ゚∀从「まあまあ」
- 56 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:57:20 ID:JwmrEHMAO
-
――数時間後、家で暖まりつつの話し合いが行われた。
無論、反省会も兼ねている。
暖炉を中心に半円を描いて座るのが彼らの常だ。
('A`)「まず反省会からか」
川 ゚ -゚)「とりあえず戦犯はブーンということで」
(´・ω・`)「うん、解決だね」
( ^ω^)「いや……うん、もういいお、それで」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、言いたいことがあるなら言いなさい」
( ^ω^)「確かにターゲット決めたの僕だけど、確認しないのもどうなんだお」
川 ゚ -゚)「じゃ、次回からはターゲット決定後に話し合うか」
( ^ω^)「そこまでせんでも」
从 ゚∀从「お前らいつもこんな適当なの?」
('A`)「いきあたりばったりなのは否めない」
- 57 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 22:58:37 ID:JwmrEHMAO
-
(´・ω・`)「でも、今日盗った分で準備は整ったね」
川 ゚ -゚)「明日にも出掛けるか」
準備、というのは、無論壁に行くためのもの。
食料の数を慎重に吟味する。
持っていく分を見誤る訳にはいかず、持ちすぎても重荷となる為だ。
野外での生活用具も整えてあり、かなり本格的といえた。
少しのミスが凍死を招く。
漏れがあってはならないのだ。
从 ゚∀从「なんつーか、怖いな…」
('A`)「寒さだけが敵じゃないからなぁ」
( ^ω^)「雪狼に会わない事を祈るお」
ξ゚⊿゚)ξ「何日かかるかも分からないのよねー」
- 58 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:00:58 ID:JwmrEHMAO
-
出る前に、しっかりと睡眠をとる。
ちなみにハインのベッドは、今のところ元モナーの部屋にある。
鐘の音が聞こえない位置での睡眠の間隔は、体内のリズムのみが頼りだ。
そして、これからそのリズムが壊れることも容易に予想できる。
そういう意味でも、今ここでの睡眠は大事だ。
ベッドに横たわり、目を閉じる。
从 -∀从
――何か、眠れない…。
俺はここにいていいのか?
本来、城にいなきゃいけないんだろうな。
本当の家族とか見たら、全部思い出すのかな。
家族といえば、ここの皆には血縁関係とかないんだって。
何か居心地いいんだよ、この家。
…俺も、家族になれるのかな。
――――――――――
―――――――
――――
―
- 59 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:01:59 ID:JwmrEHMAO
-
―――――――――――
('A`)
目が覚めた。
相変わらず外は銀世界で、明るさも変わらない。
気持ちのいい目覚め、でもない。
今から、壁に行くんだ。
前人未踏って訳じゃないが、厳しい道のりだろう。
死ぬかもしれない。
でも、まだ見たことのない何かもきっと見られる。
そう思うと、心踊るような、緊張するような、妙な気持ちになる。
('A`)「風呂でも、沸かすかな…」
時間ならある。
俺の睡眠時間は皆より相当短い。
理由は知らない。
('A`)「うしっ」
とりあえず水を汲もう。
- 60 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:03:28 ID:JwmrEHMAO
-
クーが起き出す頃、ショボンは体操をしていた。
どことなく表情が暗い。
(´-ω-`)「ふー」
川 ゚ -゚)「憂鬱そうだな」
(´・ω・`)「憂鬱って訳じゃないんだけどね…」
川 ゚ -゚)「怖いとか?」
(´・ω・`)「…怖くないって言ったら嘘になるね」
川 ゚ -゚)「大丈夫、きっと何とかなる」
そんな会話を交わしていると、軽い足音が聞こえてきた。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンはいつも通り起きてないか。ドクオは?」
(´・ω・`)「どうせ風呂だよ」
川 ゚ -゚)「朝風呂とはいい御身分だな」
(´・ω・`)「軽く勿体ないよね、燃料」
- 61 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:04:32 ID:JwmrEHMAO
-
そうこうしているうちに、残りの二人も起きてきた。
といっても、ブーンは目が覚めきっていないようだが。
( ´ω`)ボー…
从 ゚∀从「お、皆起きてたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんま寝れなかったわ…」
川 ゚ -゚)「ブーンが羨ましいな」
( ´ω`)「睡魔にノックアウトされそうだからもう一眠り…」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
( ^ω^)「ブーン、覚醒」
川 ゚ -゚)「便利な体だ」
扉が開き、ドクオがのしのしと歩いてきた。
部屋に向かおうとし、皆に気づく。
('A`)「お、ブーンが起きてる」
( ^ω^)「どうだお」
('A`)「威張るこっちゃねーから」
- 62 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:05:26 ID:JwmrEHMAO
-
('A`)「…?」
从;*゚∀从
…どこか、ハインの様子がおかしい。
顔が赤いようにも見える。
(;'A`)「何だ、どうした?」
从;゚∀从「え?…どうってお前…そりゃ…」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた裸だしね?」
(;'A`)「え、それが何か…」
(´・ω・`)「僕らと違ってハインは見慣れてないから」
从//∀/从
ここにきて初めて自らの間違いに気づくドクオ。
肩にタオルを掛け、生まれたままの姿で立ち尽くす。
さながら変態である。
(;'A`)「あっ」
( ^ω^)「いーから着替えろお」
川 ゚ -゚)「見慣れてしまった自分を悲しく思うよ」
- 63 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:06:32 ID:JwmrEHMAO
-
―――――――――――
( ^ω^)「皆、準備はいいかおー!?」
ξ゚⊿゚)ξ「おー」
川 ゚ -゚)「うむ」
( ^ω^)「何だお何だお、テンション上げろお!」
ξ゚⊿゚)ξ「こんなとこで元気使ってらんないわよ」
リビングの暖炉前に全員が集まっている。
いつもと違うことといえば、それぞれ鞄を担いでいることか。
人により大きさは違うが、平均して両手で抱える程の大きさだ。
- 64 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:07:31 ID:JwmrEHMAO
-
その中で一際大きな鞄を持つのが、ブーンとドクオ。
それぞれに予備の食料と工具が追加されている。
(;'A`)「俺って、とんでもないことしたのかもしれん…」
(´・ω・`)「まだ不明とはいえ国の重鎮に恥部見せたからね、大罪だよ」
从;゚∀从「気にしてねーから、な…」
( ^ω^)「まだ言ってんのかお」
川 ゚ -゚)「ここで暮らしてたら稀にあの光景が見えるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンの場合はさらにレアよ」
从;゚∀从「いや、もういいからよ」
( ^ω^)「じゃ、ぼちぼち行くかお」
(´・ω・`)「だね」
- 65 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:08:28 ID:JwmrEHMAO
-
('A`)「よっこらしょっとぃ」
( ^ω^)「オヤジかお」
家の扉をしっかりと施錠。
別段盗られるものなどないが、鍵をかけるに越したことはない。
今回の目標は、世界を囲む氷の壁の調査。
あわよくば、破壊。
行きはどこに行っても着くが、問題は帰りだ。
点在する針葉樹林のみが道標となる。
川 ゚ -゚)「一応目印になる紐はあるからな」
(´・ω・`)「分かりやすい物に巻きつつ行くのがいいね」
- 66 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:09:46 ID:JwmrEHMAO
-
( ^ω^)「ワクワクするお」
(´・ω・`)「能天気でいいね…」
体力のあるブーンを先頭にし、できた雪の道を一列に歩く。
こうすることで、後ろを歩く女性達でも一応はついて来れる。
しばらく経ち、休憩がてら振り向く。
町の光が小さくなっている。
('A`)「ブーンのスタミナが怖いんだが」
ξ゚⊿゚)ξ「体力馬鹿だから」
(;^ω^)「馬鹿とは何だお」
从 ゚∀从「さっきより寒いなー」
(´・ω・`)「都市部から離れるほど気温は下がるからね、どんどん寒くなるよ」
川 ゚ -゚)「ブーンはいいな、脂肪があって」
( ^ω^)「分けてやろうかお?」
川 ゚ -゚)「ツンの胸にあげてやってくれ」
ξ#゚⊿゚)ξ「失敬ね、充分あるわよ」
- 67 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:10:53 ID:JwmrEHMAO
-
奇妙な行列は続く。
やがて、目前に林が見えてきた。
(´・ω・`)「とりあえず目印を…」
川 ゚ -゚)「ここなら目立つだろう」
一際開けたところにある木に、赤い紐が交わる。
帰りに見つけられることを祈ろう。
('A`)「まだ歩けるか?」
( ^ω^)「舐めんな、余裕だお!」
(;'A`)「お前にゃ聞いてねーから…」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ」
从 ゚∀从「まだいけるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「もたついて食料切らしても困るし、急ぎましょ」
(´・ω・`)「案外タフだね、皆」
( ^ω^)「じゃ、行くかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
('A`)「大分町も見えなくなってきたな」
(´・ω・`)「もう鐘は聞こえないかな?」
- 68 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:12:19 ID:JwmrEHMAO
-
それからしばらく歩いたが結局、
無理して体調を崩しては本末転倒だということで、今日の行軍は終了となった。
周りに崖しかなかった為、その崖に横穴の雪洞を掘る。
充分大きく掘ったところで、その中に小さなテントを張った。
( ^ω^)「狭っ」
从 ゚∀从「痩せな」
川 ゚ -゚)「無理を言ってやるな」
(;^ω^)「最近僕の扱いが酷いおー…」
('A`)「これまで壁に行ったのは何人ぐらいだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「記録にある中では三人ね」
(´・ω・`)「いずれも地図を作るためだよ」
('A`)「…壁の外に何かがあるなんて、考えもしなかったんだろうな」
ξ゚⊿゚)ξ「精々お伽話だもんねえ」
- 69 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:13:17 ID:JwmrEHMAO
-
全員で、寄り添うように眠る。
真ん中には、小さいながらもランプの光。
雪洞の入口は塞いであるが、酸欠防止の為少し穴を開けてある。
从 ゚∀从「…どのぐらい来たんだろうな、これで」
('A`)「まだ十分の一ないぐらいかな…」
ξ゚⊿゚)ξ「ペース上げる?」
川 ゚ -゚)「流石に上げた方がいいかもな」
(´・ω・`)「何にせよ、もう寝よう」
( ^ω^)「また明日、だお!」
从 -∀从「お休みー」
- 70 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:14:27 ID:JwmrEHMAO
-
―――――――――――
微かに鐘の音が聞こえた。
雪は止み、空気は澄んでいる。
('A`)「寝る時間が普段とズレるのは諦めるか、もう」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、テント片付けて」
( ^ω^)「いや、ツンも手伝えお」
(´・ω・`)「もうすぐ、山越えだからね。気を引き締めよう」
地図によると、町を囲うようにぐるりと山脈が巡っている。
その向こうの様子は場所によるが、目指している方向では平地の筈だ。
- 71 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:15:28 ID:JwmrEHMAO
-
川 ゚ -゚)「…成る程、山だな」
さらに半日の後、予定通り彼らは雪山に到着していた。
木の類は一切見えない。
从;゚∀从「厳しそうだな、こりゃあ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ…」
('A`)「…ま、行くか」
( ^ω^)「だおね」
(´・ω・`)「この山を越えたらあとは平坦みたい」
('A`)「まさに山場、ね」
また、一列で歩き始める。
膝ほどまである雪を踏むと、ざくりざくりと音がした。
家を出たときより、かなり深まっている。
- 72 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:16:29 ID:JwmrEHMAO
-
歩き始めてどのぐらい経っただろうか。
ブーンも含め全員に、疲労が色濃く出ていた。
雪は膝上まで積もっている。
(;^ω^)「ドクオ、交代…」
(;'A`)「おう」
さっきから、ドクオとブーン、ショボンで先頭を交代しつつ歩いている。
川;゚ -゚)「そろそろどこかで休まないか…?」
そういうクーは息も切れ切れだ。
流石にどこかでキャンプをしなければいけないだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あれ!」
ツンが左を指差している。
何を見つけたのかと、全員がそちらを見た。
从 ゚∀从「あれ、洞窟か?」
(´・ω・`)「丁度いいね、あそこにしよう」
- 73 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:19:19 ID:JwmrEHMAO
-
生き物の気配はない。
雪で入口を塞ぎ、風除けにする。
空気穴を開ける事も忘れない。
ξ゚⊿゚)ξ「なかなかきついわね…」
( ^ω^)「スープ作るからゆっくり休むお」
ξ*゚⊿゚)ξ「あ、ありがと…」
(;^ω^)「いや、全員で飲む奴だから…」
灯籠石、という代物がある。
この世界に存在する希少な鉱石だ。
真っ赤な石で、衝撃を与えると表面が爆発を起こし、擦れば火がつく。
この鉱石の最大の特徴は、『ほとんど変わらない』こと。
爆発しても、火がついても質量は変わらない。
実際は減っているのだが、微量窮まりない、という程度。
要は素晴らしいエネルギー源で、大掛かりなキカイの動力にも一役買っている。
ドクオの大砲の原動力も、簡単ながら灯籠石だ。
この石は、言わばこの世界の生命線。
- 74 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:21:38 ID:JwmrEHMAO
-
灯籠石を受け取り、服で擦って火を点ける。
その上に金具で小さな鍋を置き、雪を入れてスプーンで丁寧に潰した。
沸騰しゆく水を見ると、何となく眠くなる。
('A`)「ブーンは早めに寝とけよ、先頭多かったし」
( ^ω^)「いや、大丈夫だお。腹減ったから飲んだら寝るお」
(´・ω・`)「食い意地で生きてるもんね、ブーンは」
粉末のスープを湯に入れ、配る。
確実に疲労はとれると思う。
ひとしきりスープを飲み、明かりを囲んで横になる。
まともな食事は起きてからにしよう。
- 75 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:22:48 ID:JwmrEHMAO
-
スープを両手で包んで飲む。
手に熱が移るのが何となく心地好い。
川 ゚ -゚)「足が…」
呟くクーに視線が集まる。
川;゚ -゚)「い、いや、気にしなくていい」
(´・ω・`)「何、とりあえず言いなよ」
川;゚ -゚)「…何と言うか、じんじんする、みたいな?」
('A`)「凍傷なりかけだな。皆も体の先を暖めとけ」
( ^ω^)「防寒しててこれだおね…」
川 ゚ -゚)「すまんがもう寝る…スープ美味しかったぞ」
从 ゚∀从「寒いな…」
ξ゚⊿゚)ξ「こんなに気温差があるとは思ってなかったわ」
- 76 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:26:50 ID:JwmrEHMAO
-
从 ゚∀从「あと何日続くのかな、これ」
(´・ω・`)「あと二日もない…と思う」
(;'A`)「厳しいな…」
ξ゚⊿゚)ξ「クーの体力がねぇ…」
川 - _-)「んー…」
クーは元々体が少し弱い。
最近は風邪もひかないので安心していたが、やはり無理があったか。
( ^ω^)「どうせ引き下がれないし、やるっきゃないお」
从 ゚∀从「ま、そーだわな」
外からひゅうひゅうと風の音が聞こえる。
吹雪に見舞われるのは避けたいところだ。
('A`)「…寝るか」
ドクオの言葉をきっかけに、寝袋にくるまり眠り始めた。
- 77 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:27:48 ID:JwmrEHMAO
- 今夜はここまで。
ありがとうございました。
- 78 :名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 23:37:22 ID:kWexmTg.0
- 乙ですたい。
- 79 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 16:19:47 ID:QbvsTOvg0
- おもしろいあげ
- 80 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:44:25 ID:q4YIPxKIO
-
第4話『鋼鉄の遺骸』
('A`)「おぉぅ…」
この気温だと、寝起きの小便すら命懸けだ。
ともすれば股間が凍る気がする。
( ^ω^)「もう縮み上がりっ放しだお」
(;´・ω・`)「いいから来なよ…」
从 ゚∀从「男は立ってられるからまだいいよなぁ、尻凍るよ俺は」
ξ;゚⊿゚)ξ「ハイン、慎み持とうよ…」
川 ゚ -゚)「各自準備はいいかー」
('A`)「おうよ」
洞窟の奥の鞄を持ち、出していた道具を仕舞う。
酷い霧だが、風も雪もない。
( ^ω^)「天候としては歩きやすそうだお」
(´・ω・`)「じゃ、先頭ブーンね」
( ^ω^)「任せろお!」
- 81 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:45:26 ID:q4YIPxKIO
-
洞窟から出て、あるものを見つけた。
点々とした獣の足跡。
从;゚∀从「…ドクオ、何これ」
('A`)「雪狼だな、見つかったか」
川 ゚ -゚)「霧が問題だな…」
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず歩きましょ」
傾斜は、さほどきつくない。
しばらく進み、違和感に気づいた。
何かいる。
恐らくは狼だが、姿が見えない。
(;´・ω・`)「向こうも闇雲には襲って来ない筈だ、行こう」
小声のショボンに従い、歩く。
- 82 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:46:25 ID:q4YIPxKIO
-
また少し上ると、霧が晴れてきた。
霧の代わりに、また真っ白な何かが目に入る。
( ^ω^)「お出ましだおね…」
取り囲むように四頭。
白い毛並みの、雪狼だ。
从;゚∀从「逃げないと…」
('A`)「そうだな…」
ドクオが、大砲を真下に向ける。
引き金を引くと、耳をつんざくような破裂音がした。
それと共に先程の霧のような煙が辺りを包む。
(;'A`)「走るぞ!」
川;゚ -゚)「よし」
(;^ω^)「行くお!」
- 83 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:48:27 ID:q4YIPxKIO
-
どれ程駆け登ったろう。
狼は怯んだはずだが、撒けたのか。
川;゚ -゚)「はー…はー…」
(´・ω・`)「大丈夫…?」
川 ゚ -゚)「ああ、一応…な」
周りを見渡す。
依然として、狼達はこちらを取り囲んでいた。
唸りを上げ、距離を詰めてくる。
ξ;゚⊿゚)ξ「多分、また走らないといけないわね…」
('A`)「いや、その心配はないな」
どうやらここからは下りのようだ。
先には、下り坂が広がっている。
从 ゚∀从「あ、ここ、頂上か…狼どうする」
( ^ω^)「ブーンに任せろお」
全員その言葉を若干疑いながら、鞄から木の板を取り出した。
- 84 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:49:54 ID:q4YIPxKIO
-
(´・ω・`)「何するつもり…?」
( ^ω^)「どれだけ移動しようが、臭いが残ったら意味ないおね」
( ^ω^)「ドクオ、これを撃ってくれお」
そう言い、黒っぽい弾をドクオに投げる。
( ^ω^)「僕がドクオの道具を勝手に使って秘密裏に開発したんだお」
(;'A`)「いつの間にこんなもん…」
川 ゚ -゚)「こっちの準備はできたぞ」
打ち合わせていた作戦通り、横一列に並ぶ。
狼だけが不安要素だ。
(;'A`)「よし、いくぞ!」
(;´・ω・`)「…行くしかないのか…!」
- 85 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:51:11 ID:q4YIPxKIO
-
大砲の弾が雪を貫通して地面で弾けた瞬間、嫌な臭いが強烈に広がる。
と同時に、彼らは斜面を紐のついた木の板に座って滑り降りはじめた。
ちなみにこの作戦の発案者はブーンだ。
(*^ω^)「おおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
从;゚∀从「くっせぇぇぇぇっ!」
ξ*゚⊿゚)ξ「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
(;'A`)「寒ぅぅぅぅっ!」
川;゚ -゚)「は、速い…!予想以上に!」
(;´゚ω゚`)「アアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――…」
様々な感情をない混ぜにした叫びが、雪山に響き渡った。
- 86 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:51:59 ID:q4YIPxKIO
-
かなりの距離を滑り降り、ようやく止まる頃には頂上がかなり遠くに見えた。
( ^ω^)「作戦、成功!」
(;´・ω・`)「ど、ど、どどどうってことはなななななな」
川 ゚ -゚)「落ち着け、ショボンよ」
('A`)「それよかブーン、何だあの弾」
( ^ω^)「嗅覚潰すには最適だお?」
从;゚∀从「あの臭い、まさか…」
( ^ω^)「手近にある臭いものなんか一つしかないお」
ξ゚⊿゚)ξ「…どうやって取ったの」
( ^ω^)「え、トイレで普通に汲み取ったお?」
(;'A`)「お前俺の万能くんに何食わしてんだ!」
川 ゚ -゚)「そこじゃないだろう…」
- 87 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:52:58 ID:q4YIPxKIO
-
ブーンのおかげで狼から逃れられたのは事実。
事実だが、女性から一定距離を置かれたのもまた事実。
( ^ω^)「納得いかん」
(´・ω・`)「当然だと思う」
('A`)「ああ、大砲まだ臭い…」
从 ゚∀从「雪で擦っとけ」
ξ゚⊿゚)ξ「もう着いてもいいわよね…」
川;゚ -゚)「この平地を越えれば壁だと思う」
今や雪は腰の下ほどまである。
歩くのすら困難だ。
吹雪で見えないが、この先に壁が聳えているのだろう。
- 88 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:54:11 ID:q4YIPxKIO
-
そこからまた半日歩き、睡眠をとることにした。
川;- _-)
ξ-⊿-)ξ
('A`)「こいつらは限界か…」
( ^ω^)「頭脳派だし無理もないお」
(´・ω・`)「寧ろここまで無事なのが凄いよ」
从;゚∀从「俺もちょっと辛いかな…」
('A`)「充分だ、もう寝とけ」
(´・ω・`)「もう、明日には着く筈だよ」
( ^ω^)「明日に備えて長めに寝るかお」
('A`)「だな」
- 89 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:54:21 ID:09jq0v8c0
- ブーンばっちい…
- 90 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:55:42 ID:q4YIPxKIO
-
――――――――
翌日、雪は止んでいた。
だからはっきりと見ることができた。
どこまで高いかすら分からない、氷の壁を。
('A`)「随分近いな」
(´・ω・`)「見た感じはやっぱり氷か」
从 ゚∀从「行くか」
川 ゚ -゚)「うむ」
( ^ω^)「先頭の順番はドクオだお」
ξ゚⊿゚)ξ「大きい…」
それから壁の根本に着くまで、半日とかからなかった。
――あまりに、大きい。
これが全て氷なのか。
壁を見てきた探険家が『神の産物だ』と言うのも、納得できる。
事実そうだとしても、驚かないだろう。
- 91 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:56:30 ID:q4YIPxKIO
-
(´・ω・`)「壁、割れない?」
从 ゚∀从「ちょっとずつ削れば或いは…」
('A`)「試してみるか」
鞄から折り畳み式のシャベルを取り出し、渾身の力でたたき付ける。
がつり、という音と共に斜めに氷が削れ、傷がついた。
( ^ω^)「根気よくやればいけそうだお」
川 ゚ -゚)「!」
川 ゚ -゚)「いや、見ろ」
斜めについた壁の傷。
その傷が、修復されつつある。
甲高い音を立てて、周りの氷が傷を覆う。
- 92 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:58:06 ID:q4YIPxKIO
-
ξ゚⊿゚)ξ「破壊は無理、と」
('A`)「溶かすのもこれじゃな…」
(´・ω・`)「そもそも氷なのかどうかが怪しくなってきた」
とにかく、ただの氷でないことだけは判明した。
打開策も見つからないが。
と、手持ち無沙汰に周りを見渡していたクーが、何かを見つけた。
いつの間にか、双眼鏡を手にしている。
川 ゚ -゚)「何かあるぞ、向こう」
全員で双眼鏡を回し、代わる代わる見る。
壁伝いに行った遥か右の方向に、うっすらと黒い何かがあった。
从 ゚∀从「…あ、あれか。よく見えたな」
川 ゚ -゚)「目はいいんでな」
('A`)「見えてはいるが結構遠そうだな」
( ^ω^)「でもまぁ行かない手はないおね」
- 93 :名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 23:59:24 ID:q4YIPxKIO
-
ξ゚⊿゚)ξ「また歩くの…」
( ^ω^)「帰りもあるのを忘れないように」
从 ゚∀从「もう帰らんでよくね?」
('A`)「バカ言ってねーで行くぞ」
川;゚ -゚)「見つけといて何だが、足がもう…」
(´・ω・`)「おぶるよ。行こう」
( ^ω^)「鞄持つお」
从 ゚∀从「ドクオー、俺も足動かねー」
('A`)「はいはい、歩くぞー」
从 ゚∀从「つまらん奴め」
置いていた鞄を担ぎ、足を進める。
この辺りは雪も凍って、少しは歩き易い。
- 94 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:00:51 ID:TNMy6Eq6O
-
それからまた一度のキャンプを挟み、その黒い物体にたどり着いた。
氷の壁の側にあるそれは、鉄。
どうやらキカイの一種だ。
('A`)「でかいな…」
( ^ω^)「何の為のもんか分からんお」
('A`)「多分、心臓みたいな部分がある筈だからちょっと調べるわ」
ドクオはひょいひょいと鉄の山を上り、中を改めていく。
その様子を見て、クーも考え込んでいる。
川 ゚ -゚)「私も色んな角度から見たいな。降ろしてくれ」
(´・ω・`)「はいはい」
从 ゚∀从「…?」
ξ゚⊿゚)ξ「何、どうしたの?」
从 ゚∀从「何か見たことある」
从 ゚∀从「気がする?」
- 95 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:02:19 ID:TNMy6Eq6O
-
キカイに上っていたドクオが、突如奇声を上げた。
両手をばたばたと動かしている。
(;'A`)「おっ、おっ?」
( ^ω^)「どうしたお?」
(;'A`)「おわぉぉぉぅっ!!」
( ^ω^)「あ、転んだお」
ξ゚⊿゚)ξ「また派手に転んだわねー」
(´・ω・`)「凍りついてるもんだから滑るんだよ」
('A`)「違うな、粋なタップを踏んだのさ」
(*'A`)「それよりほら、これ」
ξ゚⊿゚)ξ「何?」
キカイから落ちてきたドクオが持っているのは、拳大の灯籠石。
動力部分から見つけてきたらしい。
(*'A`)「四つもいっぺんに使ってやがった」
(´・ω・`)「また暖かくなるね、テント」
- 96 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:03:10 ID:TNMy6Eq6O
-
川 ゚ -゚)「うーん…」
从 ゚∀从「んー…?」
(;'A`)「何こいつら」
( ^ω^)「クーは分からんけど、ハインはこれを見たことあるらしいお」
('A`)「そーいや記憶無かったな」
从 ゚∀从「自分でも忘れかけてたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ハインが見たことあるって事は、城のキカイ?」
从;゚∀从「そお…なのかな。気のせいかもだけど」
(´・ω・`)「貴重な情報だね」
話がまとまりかけたところで、クーも近づいてきた。
川 ゚ -゚)「ドクオ、分かったぞ」
('A`)「何が?」
川 ゚ -゚)「このキカイの形は、知っている」
( ^ω^)「どういう事だお?」
川 ゚ -゚)「昔にいたが、今はいない動物だ」
川 ゚ -゚)「鳥、という奴に似ている」
- 97 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:05:53 ID:TNMy6Eq6O
-
唖然とする一同を尻目に、クーは説明を続ける。
少し興奮気味なのが見て取れた。
川 ゚ -゚)「この真ん中の、空間の開いた部分が胴体、こちらが顔」
川 ゚ -゚)「左右に張り出したあの部分が、翼という部位と見て取れる」
川*゚ -゚)「つまり!これは鳥が羽を広げている様を摸しているに違いないな!」
ξ;゚⊿゚)ξ「…確かに鳥に見えない事もないけど」
(;^ω^)「その前にトリって何だお」
(´・ω・`)「鳥はずっと昔に絶滅したとされている生き物さ」
(´・ω・`)「一説によると、空を飛べたらしいよ」
('A`)「それを摸している、ってことは…」
川 ゚ -゚)「このキカイも飛べたのかもな?」
- 98 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:07:07 ID:TNMy6Eq6O
-
('A`)「ここに落ちてるってことは、この壁の上を越えようとしたのか」
川 ゚ -゚)「かなり大掛かりなキカイだな」
(´・ω・`)「それと城とのつながりがあるかもしれない、ってことは」
从 ゚∀从「複雑になってきたな」
('A`)「ほー…」
ドクオも何かを考え込んでいる。
よし、と手を打って、宣言した。
('A`)「俺、このキカイ作るわ」
ξ゚⊿゚)ξ「言うと思った…」
( ^ω^)「とにかくキャンプ張るかお」
川 ゚ -゚)「だな」
('A`)「俺、もう少し調べる」
从 ゚∀从「俺にも手伝わしてくれ、何か解る気がする」
('A`)「よっしゃ行くぞ」
- 99 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:08:06 ID:TNMy6Eq6O
-
キャンプを張り、簡単な食事を終える。
ドクオ達はまだ帰らない。
( ^ω^)「食料に余裕はあるおね」
(´・ω・`)「そうだね、多めに持ってきてよかった」
川 ゚ -゚)「寒いな…」
ξ゚⊿゚)ξ「クーは体調大丈夫?」
川 ゚ -゚)「大丈夫な訳がない…」
川;゚ -゚)「脈拍から排便から体温から、全部最悪だ」
川;゚ -゚)「気合いで持ってるようなものだ」
(´・ω・`)「多寡はあれど皆そうだよ、きっと」
( ^ω^)「クーはまたスープ飲んで早く寝るお」
川 ゚ -゚)「すまない…」
ξ゚⊿゚)ξ「謝らないでよ、その気合いまで無くしちゃお終いよ」
- 100 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:09:18 ID:TNMy6Eq6O
-
その頃、キカイにて。
メモをとりつつ話す、二つの影があった。
('A`)「…ああ、先端のこれが回って推進力になるんだわ多分」
从 ゚∀从「左右の羽は何だろ、風を掴むためか」
('A`)「後ろの羽で方向調整だろうから、そうかも」
从 ゚∀从「さっきのトリとは随分違うんだな…」
('A`)「ってかお前飲み込み早過ぎだろ」
从 ゚∀从「何かな、スラスラ入ってくる」
('A`)「お前の正体がマジで気になる」
从 ゚∀从「俺も分かんねーよ…」
一瞬俯き、言葉を探すようにするハイン。
やがて、意を決したかのように話し出した。
- 101 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:11:10 ID:TNMy6Eq6O
-
从 ゚∀从「俺、さ」
从 ゚∀从「よく分かんないけど凄い奴かも知んない訳じゃん?」
('A`)「まあな」
从 ゚∀从「そしたらさ、いつか城に戻らないといけないよな」
('A`)「まあな…」
从 ゚∀从「ここにいたいんだよ、俺…」
从 ゚∀从「理由も何にも分からないし、無責任だと思うけど」
('A`)「俺はな」
('A`)「あいつら同様、ハインを大事な家族だと思ってるぞ」
从 ゚∀从
从 ゚∀从「…ありがとうな。ちょっとスッキリした」
('A`)「今日はもう休むか、腹減ったし」
从 ゚∀从「そうだな!」
- 102 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:13:18 ID:TNMy6Eq6O
-
―――――――――
(;'A`)「終わったー…」
从 ゚∀从「丸二日かかるとはな…」
あれからさらに二日を使い、壁とキカイの調査は終わった。
今から帰宅である。
川 ゚ -゚)「ショボン、頼む」
(´・ω・`)「うん、もう完全にクーの足だよね僕」
ξ゚⊿゚)ξ「いいじゃない、胸感じ放題よ」
(´・ω・`)「防寒具でゴワッゴワだよ」
( ^ω^)「先頭は僕だお!」
('A`)「相変わらずの威勢だ」
从 ゚∀从「凄いよなー」
( ^ω^)「出発!」
ざくり、と雪を踏む。
しばらく歩かなかったからか、足取りは少し軽い。
- 103 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:14:32 ID:TNMy6Eq6O
-
行きより会話は少し減って、黙々と歩く。
雪が強く降り、景色が霞んできた。
( ^ω^)「そろそろ休むかお、天気も怪しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、こまめに休んだ方がいいわ」
(´・ω・`)「あそこに岩があるから、とりあえずあそこの陰まで行こうか」
川 ゚ -゚)「頑張れショボン」
(´・ω・`)「明日から歩こうか」
川 ゚ -゚)「前向きに検討しよう」
( ^ω^)「信用できないタイプの奴だお、それ」
- 104 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:16:06 ID:TNMy6Eq6O
-
かじかむ手で時間をかけながらも岩陰にテントを張り終え、中に入った。
会話を交わしながらスープと一緒に干し肉をかじる。
( ^ω^)「今日で食糧が大体半分を切るお」
从 ゚∀从「余裕はあるな、じゃあ」
('A`)「早めに帰りたいけどな」
(´・ω・`)「同感」
ξ゚⊿゚)ξ「私、帰ったら暖炉に汗かくまで当たるんだ…」
川 ゚ -゚)「火傷しないようにな」
('A`)「何つーかこう、火に向かって手を翳してると…」
('A`)「生きてる感じがするよなぁ」
ドクオの台詞に釣られ、全員が濡らした板に置いた灯籠石に手を向けた。
皆が明かりに向かって数秒間黙り込む。
奇妙な光景といえた。
(´・ω・`)「なんか熱が回っていくね…」
川 ゚ -゚)「あー、手がぁー」
- 105 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:16:52 ID:TNMy6Eq6O
-
――――――――
('A`)「今日も歩くぞー」
ξ゚⊿゚)ξ「おー…」
川 ゚ -゚)「明日までに山越えはしたいかな」
川 ゚ -゚)「そして、今日は自分の足で歩こう」
( ^ω^)「いい心がけだお」
(´・ω・`)「断言しよう、今日の終わりにはクーは僕の背にいる」
('A`)「か…かっけぇ…!」
从;゚∀从「そうでもなくね?」
一通りの下らない会話を終え、眼前に横たわる山に向かう。
キカイを見に行ったせいで位置がズレたため、山は行きより低く見えた。
( ^ω^)「行きより楽そうでいいおね」
川 ゚ -゚)「帰りまで歩き切れるやもしれん」
- 106 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:18:04 ID:TNMy6Eq6O
-
山を眺めていたショボンが、小さく声を上げた。
多少顔色が悪い。
(´・ω・`)「ん、あれ?…ちょっと待って」
('A`)「ほら歩くぞー」
(;´・ω・`)「ちょっ、帰りってまた滑るの?」
動揺するショボンを見て、後ろのクーが意地悪く笑う。
あのときのショボンの悲鳴は凄まじかった。
川 ゚ -゚)「それはほら、なんだかんだで速かったしな?」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、損はないわよね」
(´・ω・`)
(´・ω・`)
(´・ω・`)「嘘だろ」
ショボンの慟哭が雪山に響いたのがこの翌日。
彼らが家にたどり着き、倒れるように眠ったのはこの四日後の事だった。
- 107 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 00:19:12 ID:TNMy6Eq6O
- といったところで今回はここまで。
ありがとうございました。
- 108 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 06:57:18 ID:Ezmdcf.U0
- 乙
ウンコ爆弾を何日も携帯していたという事実www
- 109 :名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 22:19:50 ID:zt4/MP7o0
- おつあげ
連日頑張るね
- 110 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:28:59 ID:pmnA1BAEO
-
第5話『空の飛び方』
从;゚∀从「まだ筋肉痛が…」
('A`)「俺もだよ。特に足が」
家にたどり着いてから数日後のこと。
ドクオとハインは町を歩いていた。
鳥のようなキカイを作る為には、明らかに材料が足りない。
つまりは買い物だ。
いつもはドクオ一人だが、今回はハインも連れている。
从 ゚∀从「で、どんなトコなんだよ?」
('A`)「キカイの専門店だな。
拾うだけじゃ到底手に入らない奴とかがある」
从 ゚∀从「はー」
('A`)「あ、あと帰りにパン買って来いってツンが」
从 ゚∀从「お使いかよ」
- 111 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:30:21 ID:pmnA1BAEO
-
('A`)「おお、着いた」
从;゚∀从「ここか?」
ドクオの足が止まったのは、一軒の家の前。
至極普通の家にしか見えない。
('A`)「ほら、入るぞ」
从 ゚∀从「お、おう…」
その中にあったのは、銀色をしたキカイの数々。
ハインは何か妙な気持ちを覚えた。
やはり見たことがあるような、そんな感覚。
すると、奥から女性が出てきた。
長い髪を束ねた作業着姿で、歳は今ひとつ分からない。
('、`*川「うーっす、ドックン久しぶりぃ」
(;'A`)「いい加減普通に呼んで下さい…」
('、`*川「いいじゃない、減るもんでなし」
('A`)「意味分かりませんから」
- 112 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:31:32 ID:pmnA1BAEO
-
掴み所がない。
そんな印象を受けた。
女性がこちらを向いた。
その目で見定められているような感覚に陥る。
('、`*川「で、誰この子」
从 ゚∀从「あ、ハインリッヒです」
('A`)「最近増えました」
('、`*川「増えたって鼠か何かか。私はペニサス、よろしく」
从 ゚∀从「あ、よろしくお願いします」
ペニサスが少し笑った。
受け入れられたのかどうかは分からない。
('A`)「で、これなんですが」
ドクオが束にした紙を渡す。
あのキカイのことが細かく書いてある紙だ。
('、`*川「ふうん」
- 113 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:33:01 ID:pmnA1BAEO
-
ややあって、ペニサスが口を開いた。
メモを突き返しながら、話す。
('、`*川「お察しの通り、これは飛行の為のもんだね」
('A`)「やはり…」
('、`*川「しかも多分、国の奴だ。ずっと前相談に来たしね」
('A`)「相談聞いたんですか?」
('、`*川「聞く訳ないよ、城の奴らは傲慢で嫌いだし」
('A`)「まぁペニサスさんらしいです」
('、`*川「奴ら失敗したのかぁ…いい気味だね」
('A`)「落ちたって事は何か欠陥があったと思うんですが…」
('、`*川「そうさねぇ…」
('、`*川「ハインちゃん、どう思う?」
- 114 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:34:10 ID:pmnA1BAEO
-
唐突に話を振られ、少し焦った。
何だこの人、試してるのか?
一瞬黙り込み、思い出す。
キカイは壁の近くに落ちていて、主に前の損傷が激しかった。
从;゚∀从「えぇと…壁の近くにあったんで」
从 ゚∀从「壁を乗り越えようとしてパワー不足だったんだと思います」
('、`*川「おぉ、やるね」
('、`*川「構造上の欠陥はないね。見に行った時も完璧だった」
('、`*川「壁の高さを見誤って、定員オーバーだろうね」
正解のようだ。
何となく嬉しくなった。
('、`*川「ってかあんたらまだ太陽どうこう言ってんの?」
('A`)「その為に、このキカイの修復のヒント貰いに来たんですよ」
('、`*川「ヒントってもねぇ…あんたもう私より出来るだろ」
('A`)「出来ませんよ…」
- 115 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:35:42 ID:pmnA1BAEO
-
('、`*川「とりあえず、あんたら少人数とは言え灯籠石の動力は必須」
('、`*川「前に風除けもかな。あ、あと上空は気温も低いよ」
('、`*川「あんたの家に灯籠石いくつある?」
('A`)「合計六個です」
('、`*川「んじゃ小さいのを三台作って二人ずつ乗ったらいいかも」
('A`)「それで高度はどんぐらいまで行けます?」
('、`*川「細かくは分からんけど、ここの物よりは飛べる筈」
('A`)「じゃ、それで」
('、`*川「動力とガラスね。高いぞー」
- 116 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:36:49 ID:pmnA1BAEO
-
('、`*川「――まいどありー、ブーン達によろしくー」
(;'A`)「まけてくれたっていいじゃないすか…」
从 ゚∀从「さよならー」
キカイを積んだソリを借り、ペニサスと別れた。
どうやら相当の出費になったらしい。
('A`)「よく分からん人だったろ」
从 ゚∀从「ああ、まーな」
('A`)「あの人あれででかい盗賊団仕切ってるからな」
从;゚∀从「マジで!?」
('A`)「あの人自体は盗賊じゃないが、拠点の提供とかしてるんだと」
从 ゚∀从「妙な人だと思ってたらそんな事が…」
('A`)「ま、基本はいい人だな。さー帰るぞ」
从 ゚∀从「おうよ」
- 117 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:38:07 ID:pmnA1BAEO
-
川;゚ -゚)「ううむ…」
その頃クー達は、水の入った瓶を見ていた。
壁から取ってきた氷が、解けて水になったものだ。
(´・ω・`)「普通に解けるのか…」
( ^ω^)「壁からはがしたからじゃないかお?」
(´・ω・`)「多分そうだろうね」
川 ゚ -゚)「魔法か何かなのかもしれん」
( ^ω^)「流石にそれは…」
川 ゚ -゚)「ただ確実なのは、壁の外に何かがあるという事だな」
川 ゚ -゚)「あの鉄の塊が飛べれば、だが」
(´・ω・`)「普通の氷じゃないと思ってたけど…案外そうでもないのかな?」
( ^ω^)「いや、異常だろうお」
- 118 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:39:23 ID:pmnA1BAEO
-
(´・ω・`)「凄い勢いで凍結していたと考えたら?」
川 ゚ -゚)「…そんなの、どうやって?」
議論も滞りかけたところで、ツンがやって来た。
何かが載った皿を持っている。
ξ*゚⊿゚)ξ「ちょっと!ホラ!ホラッ!!」
自慢げに持っているのは、クッキー。
議論だけでなく、全員の表情までもが凍結した。
( ^ω^)「ツン」
( ^ω^)「小麦は無駄にするなって言ったお?」
ξ#゚⊿゚)ξ「失礼ね、おいしくできたわよ!」
川 ゚ -゚)「おいしくできたそうだ、ショボン」
(;´・ω・`)「僕!?」
嫌がるのも無理はない。
一度食べたブーンが寝込むレベルのものだ。
彼曰く、激震が走ったそう。
- 119 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:40:36 ID:pmnA1BAEO
-
('A`)「ただいまー」
从 ゚∀从「おー寒っ」
ξ*゚⊿゚)ξ
(;'A`)
( 'A)「さ、仕事仕事」
(;^ω^)「逃げんなお!」
(;'A`)「嫌だぁ!嫌だ!死にたくない!これからって時に!!」
从;゚∀从「え、何…クッキー?」
ξ゚⊿゚)ξ「ハイン食べてよ、自慢の出来よ」
从;゚∀从「…?」
((( 'A)「でな、ペニサスさんによるとあれはやっぱり飛行が目的で」
(((( ´・ω)「ほう、とりあえず作業は手伝うよ」
ξ゚⊿゚)ξ「逃げんな」
('A`)「「ごめんなさい」」(´・ω・`)
- 120 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:42:13 ID:pmnA1BAEO
-
ξ;゚⊿゚)ξ「だから美味しいって!」
川 ゚ -゚)「味見はしたのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「した」
( ^ω^)「なら平気かもしれんお、どれ」
中途半端な緊張感の元、ブーンがクッキーの皿に手を伸ばす。
全員に見られながら咀嚼し、嚥下した。
( ^ω^)
(;^ω^)
…そして、ばたりと倒れた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ブゥゥゥーーーーン!!」
('A`)「さ、とりあえずブーンを運ぶか」
川 ゚ -゚)「ミーティングは持ち越しで」
(´・ω・`)「食べなくて正解だね、ハイン」
从;゚∀从「何、慣れてんの?」
(´・ω・`)「いつもブーンが犠牲になるよ」
- 121 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:44:33 ID:pmnA1BAEO
-
――翌日、ようやく復活したブーンを交えてのミーティングが行われた。
('A`)「まあ、当面の目標は飛行キカイの制作だな……ブーン?」
( ´ω`)「まだ全快は遠いおー…」
从;゚∀从(よかった、食わなくて…!)
川 ゚ -゚)「味見したのにあれってことは、ツンの舌がおかしいんだな」
ξ;゚⊿゚)ξ「おっかしいなぁ…」
(;'A`)「で、お前らにも手伝って貰う。指揮は俺とハインがとるから」
(´・ω・`)「僕らにもできるのかな?」
从 ゚∀从「組み立てをしてもらう予定だ。
機動の仕組みやら工夫はこっちでやる」
('A`)「まぁそれ以前に鉄板とか足りないけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、廃坑とやらに行きますか」
(´・ω・`)「壁のキカイ引っ張って来たら良かったね」
川 ゚ -゚)「無理を言うな」
- 122 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:45:25 ID:pmnA1BAEO
-
家を出てしばらく歩き、廃坑の入口に着いた。
ここはドクオがいつも通っているところとは別物だ。
この辺りには一人で運べないサイズの大きな部品が多い。
その為、これまで放っておくしかなかった。
('A`)「よし、ここだ。凄いぞーここは」
ξ゚⊿゚)ξ「案外近いのね」
地下に降りた一行が目にしたのは、膨大な量の金属。
鉄板、鉄板、鉄発条など種類も豊富で、文明の名残を感じた。
そのうち一際大きく厚い鉄板に触れ、ブーンが呟く。
(;^ω^)「いや、いくら僕達でもこれ運ぶのは…」
('A`)「あ、無理?」
川 ゚ -゚)「キカイ三台分、だしな…」
- 123 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:46:21 ID:pmnA1BAEO
-
(´・ω・`)「いっそ、ここに拠点置こうか」
从 ゚∀从「でも飛行キカイだし、いつか飛ぶんだぜ?出れなくね?」
(´・ω・`)「そこまで降りてないし、天井爆破しちゃえば」
('A`)「なにげに過激派だよな、お前」
結局ショボンの案が採用され、廃坑に大掛かりなテントを張ることになった。
周りを明るくするべく家のランタンも総動員し、一応は暮らせる環境を整える。
ξ゚⊿゚)ξ「風が通ってるから寒いわよね…」
从 ゚∀从「ま、テントは暖かいしな」
( ^ω^)「ランタンやら食料やら取ってくんのに四往復した僕を褒めて」
('A`)「凄いね」
( ^ω^)「報われねぇお…」
- 124 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:47:02 ID:pmnA1BAEO
-
('A`)「で、皆で部品を探す訳だが」
('A`)「一応金属を繋げたり曲げたりはできるが、最低限だ」
('A`)「だから、できるだけ指定した大きさピタリの奴を頼む」
('A`)「どうしても無かったらペニサスさんとこ行くから」
从 ゚∀从「あ、これが一台作るのに必要な部品な」
从 ゚∀从「細かいのは大体揃ってるな」
川 ゚ -゚)「ま、これだけあれば見つかるだろ」
(´・ω・`)「じゃ、今日はもう寝ようか」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか最近忙しいよね…」
( ^ω^)「ハインが来てから急に色んなものが回りはじめたおね」
('A`)「いい事だ」
- 125 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:47:45 ID:pmnA1BAEO
-
――――――――――――
( ´ω`)「おはようだおー」
('A`)「もう全員起きてるからな」
川 ゚ -゚)「ハインに至っては既にキカイ探しに行ってしまった」
(´・ω・`)「僕らも行くから、ブーンも後から来てね」
( ^ω^)「分かったお」
ξ゚⊿゚)ξ「二度寝しないように」
(;^ω^)「お…分かったお」
- 126 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:48:54 ID:pmnA1BAEO
-
ξ;゚⊿゚)ξ「骨が折れるわね…」
廃坑といえど、作業所やテントのある場所は広い空間となっている。
金属製の丈夫な柱と梁が、天井を支える形だ。
今探しているのは、鳥における『翼』。
数枚の金属を組み合わせて作るらしい。
( ^ω^)「ツン、何か沢山あったお!」
ブーンがそれらしい物を見つけてきた。
同じような大きさの鉄板を数枚重ねている。
ξ゚⊿゚)ξ「サイズは少し小さいわね…どうにか継ぎ合わせてもらいましょ」
思い切り引きずりながら作業所まで帰る。
非常に重く、二人掛かりでも辛いものがあった。
('A`)「お、速いな」
( ^ω^)「ツンが力持ちで助かったお!」
ξ#゚⊿゚)ξ
( ^ω^)「サーセン」
- 127 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:50:31 ID:pmnA1BAEO
-
その日は、ひたすらに部品を集めて終わった。
今日でかなりの部品が集まったが、一台分は揃わない。
( ^ω^)「同じ部品が沢山あるおね」
('A`)「一部の奴だけ集まりやがるんよ」
从 ゚∀从「しかし落ち着かない生活だよな」
ξ゚⊿゚)ξ「キャンプ生活も慣れたものよね」
(´・ω・`)「それにしても凄いよね、キカイ…」
川 ゚ -゚)「近所の地下にこんなんあるとは普通思わないわな」
( ^ω^)「しかも集めて組み立てたら飛ぶっていうね」
从 ゚∀从「まぁファンタジーだよなぁ」
適当な食事を終え、就寝。
テントの隙間から、堆く積まれた鉄の山が見えていた。
気温は低いが過ごせない程ではない。
この調子だと、完成はまだ遠いだろう。
- 128 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:51:25 ID:pmnA1BAEO
- 短いですが今夜はここまで。
おやすみなさーい。
- 129 :名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 23:51:54 ID:5ERI30uY0
- >>128
乙
- 130 :名も無きAAのようです:2012/08/03(金) 06:39:53 ID:e9/nZhTU0
- 乙乙
- 131 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 17:26:15 ID:OgRJ04vs0
- おつ
- 132 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:17:25 ID:fjZS0rasO
-
第6話『ヘルプ&ホープ』
作業を始めて三日。
ふとドクオが何処かに出掛け、しばらくして帰ってきた。
('A`)「今日から助っ人が来てくれるぞー」
( ^ω^)「そういえばどっか行ってたおね?」
('A`)「ペニサスさんとこ行ってた」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ助っ人ってペニサスさん?」
川 ゚ -゚)「それはいいな、かなり作業効率が上がるぞ」
(;'A`)「いや…」
( ´_ゝ`)「弟者、どうやらイマイチ歓迎されてないぞ」
(´<_` )「まぁそうだろう、ペニサスさんかと思いきや来たのが兄者なんだしな」
( ´_ゝ`)「俺だけ?」
- 133 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:18:15 ID:fjZS0rasO
-
歳は大体二十歳ぐらいだろうか。
二人揃って長身痩躯、顔まで殆ど同じである。
姿形がそっくりなその二人は流石兄弟と名乗った。
ペニサスの代理だという。
( ´_ゝ`)「何かな、寒いのは嫌らしい」
( ^ω^)「あー…言いそうだお」
('A`)「まぁこの人らも腕は立つらしいから、な」
(´<_` )「空を飛びたいなんてロマン、叶えざるをえんからな」
( ´_ゝ`)「モナーにも世話んなったしな」
(´・ω・`)「モナーさんを知ってるんですか?」
( ´_ゝ`)「知ってるとも、一緒に飛行機造ったしな」
ξ゚⊿゚)ξ「え」
(´<_` )「あ、知らない?」
- 134 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:19:36 ID:fjZS0rasO
-
兄者の言葉に一同が反応した。
その言葉が本当なら、モナーもそのキカイを知っていた事になる。
川;゚ -゚)「…モナーさんも同じキカイを?」
( ´_ゝ`)「ああ。飛行機ってんだけどね」
(´<_` )「壁の向こうに行くんだ、とか言ってたよ」
(´<_` )「ただ、あんときはモナーの持ってきたエンジンに機体がついて行かなくてな」
(´・ω・`)「諦めたってことですか?」
(´<_` )「ああ。っつーかアレは俺達のせいだな。
エンジン入れたら何もかも吹っ飛んだし」
( ´_ゝ`)「ま、あんときは俺らも未熟だったしなぁ」
('A`)「そして今度は俺達が、と」
( ´_ゝ`)「まさに運命だよな」
- 135 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:20:42 ID:fjZS0rasO
-
('A`)「運命…」
モナーにすらできなかったことに挑戦している、という事実に気圧される。
唐突に、兄者がぱんと手を打った。
( ´_ゝ`)「ま、運命はいいとして」
( ´_ゝ`)「今度は俺達も諦めない。…お前らも諦めんなよ」
( ´_ゝ`)「ときに、若干話に入れてないそこのお嬢さん」
从;゚∀从「な、何だよ」
(*´_ゝ`)「おっぱいでかいね、君!」
从 ゚∀从
(´<_` )「仕事を始めるかな」
(´<_` )「今回、鉄を裁断する機械を持ってきたからな」
从 ゚∀从「おぉ、そりゃ楽になるな」
('A`)「今は入口に置いてる。
後でブーンに持ってきてもらう予定だから」
( ^ω^)「何その力仕事…」
( ´_ゝ`)「お前ら兄者をもっと大事にしろ」
- 136 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:21:44 ID:fjZS0rasO
-
それから、彼らを交えての作業が始まった。
結論から言えば、流石兄弟はかなりの腕の持ち主だった。
様々な大きさの金属を加工し、形にしていく。
その様子に感化されたのか、心なしかドクオ達の作業効率も上がっているようだ。
( ´_ゝ`)「ぎゅいーんぎゅいーんががががが」
(´<_` )「口で効果音とは流石だな兄者」
( ´_ゝ`)「ふふん、どうだ、凄かろ」
( ´_ゝ`)「…あっ…」
(´<_` )
( ´_ゝ`)
(´<_` )「ホンットにお前は兄者だな」
( ´_ゝ`)「まさかの兄者全否定」
( ´_ゝ`)「一応な、俺だって傷つくんだぜ?」
(´<_` )「黙れよ愚兄」
( ´_ゝ`)「すまなんだ愚弟」
- 137 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:22:40 ID:fjZS0rasO
-
(´<_` )「ほら、鉄板な」
('A`)「あ、どうも」
川 ゚ -゚)「適当なようで凄いなあの人ら」
( ^ω^)「むしろ適当で技術もアレだったらいいとこなしだお」
部品を集め、指示の下で組み立てながら話す。
まだ飛行機の形にはなっていない。
テントの中からショボンがひょいと顔を出した。
(´・ω・`)「ご飯できたよー」
(*^ω^)「おっ、食べるおー」
ξ゚⊿゚)ξ「兄者さんたちもいかがですか?」
( ´_ゝ`)「おお、頂こうか」
(´<_` )「有り難いな」
- 138 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:23:51 ID:fjZS0rasO
-
パンとスープという、質素ながら定番の食事を取る。
流石兄弟の口にも合ったようだ。
( ´_ゝ`)「いや普通に料理の才能あると思うよ、うまい」
(´・ω・`)「伊達に回数こなしてませんから」
川 ゚ -゚)「ツンが当番の日には何かと言い訳してショボンに回してたからな…」
ξ゚⊿゚)ξ「私もできるってのに!」
( ^ω^)「よく分からない何かを料理とは言わんお」
('A`)「食べるのにちょっとした覚悟が必要だからな」
(´<_` )「苦労してんだな」
- 139 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:24:39 ID:fjZS0rasO
-
しばらくの後、その日の作業は無事に終わり、とりあえず流石兄弟は帰った。
テントの中で円形に座り、今後の予定を決めることに。
('A`)「とりあえずあの人らは毎日来てくれるらしい」
从 ゚∀从「それは助かるな」
( ^ω^)「この調子でいけば問題なく完成するんじゃないかお?」
(´・ω・`)「あと、モナーさんも飛行機造ってた、って…」
ξ゚⊿゚)ξ「何か意外よね。インドア派っぽかったし」
川 ゚ -゚)「とにかく、壁の向こうには確実に何かがある。
意地でも壁を越えないとな」
('A`)「流石さん達のリベンジでもあることだし、頑張らないと」
- 140 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:25:28 ID:fjZS0rasO
-
从 ゚∀从「…なあ」
話を静かに聞いていたハインが声を上げた。
彼女らしくない、怖ず怖ずとした声。
从 ゚∀从「皆にぼんやりとしか聞いてなかったんだけど、モナーさんって…?」
その問い掛けに、僕が話そう、とショボンが答えた。
(´・ω・`)「詳しくは話してなかったか。要は僕らのお父さんだね」
(´・ω・`)「僕達が孤児だというのは話したろう?
つまり僕達を拾ったのがモナーさんだ」
(´・ω・`)「太陽について研究していて、『禁忌研究罪』という罪で捕まった。
で、納得いかないから僕達が継いで研究しよう、ってね」
从 ゚∀从「ふうん…」
ξ゚⊿゚)ξ「死刑じゃないとは思うから、いつか帰ってくるんだろうけど…」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってる間に太陽見つけちゃおう、みたいな?」
川 ゚ -゚)「まさか飛行機を知っているとは思わなかったがな」
- 141 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:26:04 ID:fjZS0rasO
-
从 ゚∀从「いい人、だったんだな」
('A`)「まあな」
( ^ω^)「でも盗賊やってるなんて知れたら笑われるお」
从 ゚∀从「怒られるんじゃねーの?」
川 ゚ -゚)「大丈夫、雪だるまに埋めても笑ってる人だから」
(´・ω・`)「ブーン並に笑顔がモットーだからね」
从 ゚∀从「へー…。そういや、俺の父さんもどんな人なんだろな」
( ^ω^)「きっと立派な人だお!」
从 ゚∀从「だといいよなぁ」
- 142 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:27:05 ID:fjZS0rasO
-
会話の流れが少し途切れた。
ランプの光だけがゆらゆらと六人を照らしている。
('A`)「…頑張らないと、とか言ったけど、さ」
ドクオがぽつりと呟いた。
('A`)「俺は、正直不安で仕方ないよ」
(´・ω・`)「まあ、モナーさんと流石さんにもできなかった事だしね…」
( ^ω^)「できるお」
ショボンの台詞が終わるか終わらないうちに、ブーンが言いきった。
( ^ω^)「ここまでやって来たんだし、できるに決まってるお!」
('A`)「お前のプラス思考がたまに羨ましいよ」
( ^ω^)「二人が心配性すぎるんだお」
(´・ω・`)「そうでもないとバランスとれないじゃないか」
- 143 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:29:15 ID:fjZS0rasO
-
それから二月程、製造作業は続いた。
足りない部品を補いに走り回り、時には家にある物まで使う。
まさに、彼らの生活を賭けていると言って良かった。
从 ゚∀从「やっぱガラスで天井作るのは無理か?」
('A`)「無理だな。もう厚い毛布とかを頭に被るしかないんじゃね」
(´<_` )「よしっ、座席付いた」
( ^ω^)「こっちのプロペラもできたお!」
( ^ω^)「「流石だよな俺(僕)ら」」(´<_` )
(;´_ゝ`)「オイ…」
('、`*川「結局私も手伝ってるっていうね」
ξ゚⊿゚)ξ「ペニサスさんのお陰で随分助かってますよ!」
- 144 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:29:48 ID:4nA2iBPA0
- 支援
- 145 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:30:10 ID:fjZS0rasO
-
実際ペニサスが加わった事により、部品の都合も付けやすくなった。
この上なく強力な援軍といえる。
('、`*川「寒いー…女性は寒さに弱いんだっての」
(´・ω・`)「それほど寒くもありませんって」
('A`)「ただ文句言いながらも手はしっかり動いてる辺りベテランですよね」
('、`*川「いや私まだまだ若いから、21だから」
( ´_ゝ`)「無理を言わんで下さい、どう見ても三十路」
(#);´_ゝ`)「痛ってェ!ネジが!ネジが刺さってるっ!」
('、`*川「次はその股間の小ネジを貫くぞ」
(´<_` )「すんませんバカで」
从*゚∀从「よーし、こっち完成ーっ」
- 146 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:31:01 ID:fjZS0rasO
-
手を打って喜ぶハインとツンの側にある飛行機にペニサスが近付き、確認する。
('、`*川「あ、違う」
从;゚∀从「えっ」
ξ;゚⊿゚)ξ「えー」
('、`*川「いや、ここの機械の向きが逆だね。ややこしいけど」
(´・ω・`)「よく解りますね、こんなの…」
从;゚∀从「危なかった…」
('A`)「どうせ全部完成したら確認するんだけどな、一応」
手の平大の部品を外し、向きを正してまた嵌め込んだ。
- 147 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:31:53 ID:fjZS0rasO
-
前日に完成していた一機と合わせ、これで二機が終了。
残る一機も、今完成しようとしている。
('、`*川「ドックン、どうよ?」
ペニサスが操縦席に昇ってがちゃがちゃとやっているドクオに声をかけた。
顔は出さずに手だけを振り、返す。
「あ、大丈夫です………あとネジ一本…」
「できたっ!」
これで三機全てが、完成した。
(*^ω^)「皆、お疲れだおー」
(´・ω・`)「ここまで長いようで短かったね」
ξ;゚⊿゚)ξ「いよいよ、ね…」
- 148 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:32:46 ID:fjZS0rasO
-
翌日に入念に確認をし、小さなミスを直して本格的に作業は終了。
今すぐにでも飛べる状態となった。
( ´_ゝ`)「一旦家に戻るか?」
('A`)「いえ、必要ないです」
替えの服や食料、果てはベッドに至るまでもがこの廃坑のテントにある。
最早家はもぬけの殻、だ。
(´<_` )「ま、余ったのはここに置いとけば盗られやしないだろうしな」
( ^ω^)「……でも、皆、何か足りないと思わないかお?」
荷物をまとめるか、となったところで、ブーンが言った。
まじまじと銀色の機体を見ている。
ξ゚⊿゚)ξ「え、準備万端じゃない?」
( ^ω^)「いや、足りないお!」
彼らは知っていた。
ブーンが自信満々に提案するものは、大概どうでもよい物だという事を。
( ^ω^)「ほら、全部銀色で、華がないお!色塗ろうお!」
川;゚ -゚)「また、そんな…」
- 149 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:33:48 ID:fjZS0rasO
-
結局ブーンの熱に押され、三色の塗料がペニサスの店から持ってこられた。
(´・ω・`)「で、やるんだ。ホントいきあたりばったりだよね」
('、`*川「ま、そこがブーンの良いとこじゃない?」
('A`)「発動するタイミングが最悪ですよ」
从 ゚∀从「ま、パッと終わらせようぜ」
各々刷毛を持ち、塗料を塗っていく。
色は赤、青、黄の三色だ。
(*^ω^)「楽しいおっ」
( ´_ゝ`)「ま、機体の補強だと思えばいいか」
ξ゚⊿゚)ξ「兄者さんが塗っている所のムラがひどいですよ」
( ´_ゝ`)「大丈夫、ブーン程じゃない」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ホントだ…」
( ^ω^)「ほら、もう四分の一ぐらい終わったお!」
- 150 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:34:47 ID:fjZS0rasO
-
黄色を塗っているのがブーン、ツン、兄者。
赤がドクオ、ハイン、ペニサス。
そして青がショボン、クー、弟者だ。
なんだかんだと言いながらも、楽しそうに塗っていく。
从 ゚∀从「綺麗な赤だな」
('A`)「貴重な塗料だからな、無駄にすんなよ」
('、`*川「確か塗料に使う植物は屋外で栽培してたから、そうでもないんじゃない?」
('A`)「でも最後足りなくて翼が銀のままとかカッコ悪いじゃないですか」
从 ゚∀从「…いや、逆にいいかも?」
('A`)「…」
('A`)「あ、いいかも?」
('、`*川「いや、銀と青は合うけど、赤はねぇ…」
('、`*川「肉を捌いた後の包丁を彷彿とさせて」
(;'A`)「あー…」
- 151 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:35:39 ID:fjZS0rasO
-
一方、青を塗っている三人の間に、会話は無かった。
ただ黙々とこなしている。
(´・ω・`)
川 ゚ -゚)
(´<_` )
( ´_ゝ`)「何あいつら、怖い」
从;゚∀从「塗ってる向きまで一緒だ」
('、`*川「組み合わせに問題ありね」
('A`)「あそこの一人一人を各色に分担するべきでしたね」
( ^ω^)「声かけた方がいいかお?」
(;'A`)「…やめとけ…」
- 152 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:36:42 ID:fjZS0rasO
-
その日の残りの時間を全て費やし、塗装は終わった。
随分と三機の塗り方に差がある。
(´・ω・`)「ふー…」
从 ゚∀从「青だけクオリティが異常なんだけど?」
('A`)「なんか模様入ってるし…」
川 ゚ -゚)「雪の結晶だ。我ながら良くできた」
( ´_ゝ`)「こっちの黄色見てみ?」
(´<_`;)「黄色?…うわっ何これ塗り直してぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ところどころ銀が見えてる前衛的な模様です」
( ´_ゝ`)「結局ツンの腕も酷かったっていう」
('、`*川「あ、もう塗料ないわよ」
(´<_`;)「えー…」
('A`)「その点赤は普通で良い感じだな」
从 ゚∀从「普通が一番だ」
(*^ω^)「全部綺麗だお!」
- 153 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:37:36 ID:fjZS0rasO
-
何はともあれようやく飛行機は完成し、その日は解散。
決行は翌日となった。
大きなテントで六人が眠る。
ξ゚⊿゚)ξ
ふとツンの目が覚めた。
皆は眠っているようで、いくつかの寝息が聞こえる。
上着を探し、暗いテントからはい出た。
飛行機の側に、クーがいる。
川 ゚ -゚)「…眠れないようだな?」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃあ、ね」
ξ゚⊿゚)ξ「皆、完成を普通に喜んでるけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「これから、空飛ぶんだよ?……普通じゃないわ」
川 ゚ -゚)「まあな」
ξ;゚⊿゚)ξ「空にある雲、当然のように通り抜けられる気でいるけど、ぶつかるかも、とか」
ξ;゚⊿゚)ξ「そもそも氷の壁に限界なんかないのかもしれない、とか」
ξ;⊿;)ξ「私は不安で仕方ないよ…」
- 154 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:40:02 ID:fjZS0rasO
-
予期せぬ涙に、少し動揺した。
覚悟なんか、とうの昔にしたつもりだったのに。
ξつ⊿;)ξ「う…」
川 ゚ -゚)「私は」
川 ゚ -゚)「私は、希望だけを見ようと思う」
一瞬、意味が解らなかった。
川 ゚ -゚)「不安なのは皆同じだ。私も空元気で回してるだけ」
川 ゚ -゚)「太陽とか外とかもそうだが、私にはもう一つ…」
咳ばらいを一つ。
間を開けて、決心したかのように言った。
川 ゚ -゚)「ショボンが好きなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「…?」
川 ゚ -゚)「ドクオやブーンも好きだが、また違う感じだな」
川 ゚ -゚)「これまで、六人の関係を壊したくなかったから、どうにもできなかったんだ」
- 155 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:42:01 ID:fjZS0rasO
-
川 ゚ -゚)「太陽を見つけたら、それを見ながら気持ちを打ち明けるつもりだ」
川 ゚ー゚)「この上なくロマンチックだろう?」
川 ゚ -゚)「それまでは死ねないし、死なないさ」
川 ゚ -゚)「ツンも、個人的でもいいから何か希望を見出だすといい」
ξ゚⊿゚)ξ「私、皆をそんなふうに意識した事なかった…」
ふと考え込んだ。
脳裏に浮かぶのは、楽しい生活。
緊張しながら盗賊をして、思い切り逃げた。
下手でも料理をして、バカをやった。
ハインが来てから、それも幅が広がった。
モナーのことも。
頼りになって、いい匂いがして、温かかった。
ξ゚⊿゚)ξ「もう一度盗賊したいし、料理も食べてもらいたいし、何より」
ξ゚⊿゚)ξ「モナーさんに会いたい、かな…」
- 156 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:43:50 ID:fjZS0rasO
-
川 ゚ -゚)「欲張りめ」
ξ;゚⊿゚)ξ「いいじゃない!」
川 ゚ -゚)「だったら、それを全部やるために生きようか」
川 ゚ -゚)「きっと、どうにかなる」
ξ゚⊿゚)ξ「うん…ありがと。クーは強いよ」
川 ゚ -゚)「強くなんかないさ。もう泣きそうだ」
ξ゚⊿゚)ξ「すっきりしたら、眠くなってきちゃった…」
川 ゚ -゚)「そうだな、もう寝るか」
二人でテントに戻り、程なく眠った。
少しだけ、でも確かに、希望が持てた。
- 157 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:45:36 ID:fjZS0rasO
- 読んで頂きありがとう。
今夜はここまでです。
- 158 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:46:29 ID:4nA2iBPA0
- 乙
続きが待ち遠しい...
- 159 :名も無きAAのようです:2012/08/04(土) 23:52:59 ID:1IlqtLNsC
- 乙
ショボン最年少でドクオが最年長だけど年の差どれくらいなんだ?
- 160 :名も無きAAのようです:2012/08/05(日) 00:00:55 ID:EEAsz1kUO
- >>159
ドクオ>ハイン>クー>ブーン、ツン>ショボン
大体こんなんです。
ドクオとショボンの差は3歳程。
- 161 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:13:49 ID:QmQyvbGcO
-
第7話『吹雪を切り裂いて』
翌日、荷物をまとめて、出発の準備が整った。
飛行機が小さかったのと廃坑の通路が太かったので、天井の爆破はどうやら不要だ。
('、`*川「ま、ちゃっと行ってきなさい」
( ^ω^)「はいですお!」
( ´_ゝ`)「向こうで故障しても、まぁお前らなら平気だろうよ」
(´<_` )「頑張って、な」
从 ゚∀从「はい!」
('A`)「出る前に、一ついいか」
ξ゚⊿゚)ξ「何、拍子抜けね」
('A`)「飛行機の名前、決めようぜ」
(´・ω・`)「あ、それいいね」
( ^ω^)「どうせなら全部同じにしようお!」
川;゚ -゚)「そういうものなのか…?」
- 162 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:15:48 ID:QmQyvbGcO
-
('A`)「やっぱ鳥関係かな?」
(´・ω・`)「そういうのはクー詳しいよね」
川 ゚ -゚)「そうだな…ああ、うってつけの奴がいるぞ」
从 ゚∀从「うってつけ?」
川 ゚ -゚)「『ハヤブサ』という鳥だ」
( ^ω^)「おお?」
川 ゚ -゚)「寒いところで生活できて、全ての鳥の中で最も速く飛ぶ、とあった」
ξ*゚⊿゚)ξ「カッコイイじゃない!」
(*'A`)「よし、決定!こいつらは『ハヤブサ』だ!」
(#'A`)「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」
川*゚ -゚)ξ*゚⊿゚)ξ从*゚∀从「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」」」」」(^ω^*)(´・ω・`*)
- 163 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:17:28 ID:QmQyvbGcO
-
体重の関係で、飛行機一機につき男女一人ずつが乗ることになった。
赤の飛行機には、ドクオとハイン。
青には、ショボンとクー。
黄に、ブーンとツン。
それぞれ男性が運転、女性は双眼鏡で周りの確認と分担している。
('A`)「じゃ、付いてきてくれ」
(´・ω・`)「OK」
( ^ω^)「お!」
('A`)「行くぞ」
从 ゚∀从「おうよ!」
('A`)「…エンジン点火!」
ゆっくりと下部の車輪が回り、速度を上げながら廃坑の出口へ向かう。
翼をぶつける心配はないが、慎重に真ん中を走る。
廃坑の出口にきた辺りで、一気にレバーを引いて、
(;'A`)「プロペラ回転っ!」
ばらばらとプロペラが勢いよく回りだし、中途半端な浮遊感が全身を包み、
(;'A`)「よし、飛んだか…!」
三機のハヤブサが、曇り空に舞った。
- 164 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:18:32 ID:QmQyvbGcO
-
前に風除けがあるために直接風には曝されないが、気温が下がっているのを感じる。
('A`)「ブーン!ショボン!」
後ろを振り向いて叫ぶ。
ブーンは大きく手を振ってきた。
ショボンも顔が少し青いが頷いた。
声はもう少し近づかなければ聞こえないだろう。
从;゚∀从「寒いぃっ」
(;'A`)「毛布引っ張りすぎだ、寒いなら俺にできるだけくっついとけ!」
从 ゚∀从「え、いいのか?」
('A`)「ダメな理由がないだろ」
从 ゚∀从「んじゃお言葉に甘えて。…策士だなお前」
(;'A`)「違うわ!」
从 ゚∀从「お腹の辺り抱いときゃいい?」
('A`)「腕が動いて視界が良好ならそれでいい!」
この時のドクオが少しだけ幸せだったのは、言うまでもない。
- 165 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:19:33 ID:QmQyvbGcO
-
(*^ω^)「おっおおおお」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっと!」
ブーンはよほど楽しいのか、ぐらぐらと飛行機を揺らしていた。
ツンはブーンにしがみつきながら、どうにか普通に飛ばそうと模索している。
ふと前の赤い飛行機が、すいっと上へ行った。
ξ;゚⊿゚)ξ「あ!ドクオが高度上げたわよ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「置いてかれる!」
(;^ω^)「お、置いてかれたくないお!」
( `ω´)「高度上げるおおおおおお!!」
少し体が重くなったかのような感覚と共に、こちらの高度も上がりだす。
ξ゚⊿゚)ξ「良かった、バカで…」
( ^ω^)「おっ?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、何も」
- 166 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:21:10 ID:QmQyvbGcO
-
最後尾の青い機体からも、少し楽しげな声が聞こえてきた。
川*゚ -゚)「あ、ほら!町が下に見えるぞ!」
(;´・ω・`)「うん…」
川 ゚ -゚)「家があんなに小さい…素晴らしい景色だな」
(´・ω・`)「下見たら死ぬかもしんない、僕」
川 ゚ -゚)「だったらショボンの分まで見といてやるさ」
(´・ω・`)「何の意味があるのさ…」
川 ゚ -゚)「お、ドクオとブーンが上昇を始めたな」
(´・ω・`)「なるようになる、よね…」
片手でレバーを引き、上昇。
いっそのこと雲にでも突っ込んだら楽だろうか。
そんなことを考えるショボンだった。
- 167 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:22:56 ID:QmQyvbGcO
-
飛びはじめてしばらく、もう町は見えない。
眼下には縹渺たる雪原が広がっている。
('A`)「綺麗なもんだなぁ」
从 ゚∀从「俺達が世界で初めて見るのかな、この景色」
('A`)「多分そうなんじゃねーの」
从*゚∀从「さっきの町並みもいいけどこれもなかなか…!」
(;'A`)「乗り出し過ぎて落ちるなよ!」
从 ゚∀从「まだ壁は見えないな、雪も降ってきちゃったし」
('A`)「ま、ぶつかることはないさ。
あとハイン、定期的に下見て山があったら言ってな」
从 ゚∀从「任せろ!」
- 168 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:23:51 ID:QmQyvbGcO
-
ξ゚⊿゚)ξ「…あ、そろそろ山が見えてきたわよ」
( ^ω^)「んじゃ気を引き締めるお。もうすぐ雲に突っ込むはず」
ブーンの言葉が終わるや否や、ドクオの機体が大きく上へ動いた。
ブーンも負けじと上昇する。
( ^ω^)「ツン、ショボン達は来てるかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「来てる。大丈夫そうよ」
( ^ω^)「いよいよだお!」
機体は上昇を続ける。
ドクオたちの姿が白く霞んだ。
( ^ω^)「あっちはもう雲に着いたっぽいおね」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、やっぱぶつからないんだ」
( ^ω^)「何の話だお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、気にしないで」
- 169 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:25:06 ID:QmQyvbGcO
-
从*゚∀从「うわっ!真っ白だ!ホラッ!!」
真っ白な視界の中、興奮気味にハインがドクオの背中をばんばんと叩く。
(;'A`)「痛てーよ!いや、すごいけど寒い…あと体濡れるし!」
从;゚∀从「いや、まあそりゃそうだが…」
从*゚∀从「神秘的じゃんよ!」
('A`)「急に興奮しすぎだろうよ」
('A`)「しかし、これじゃ壁との距離が分からん」
从 ゚∀从「あ、そうだな」
('A`)「壁があるの知らずにぶち当たってあの飛行機の二の舞、なんて嫌だしなぁ」
从 ゚∀从「一旦下がりゃいんじゃね?」
('A`)「それだな」
スピードを落としてブーン達に近づき、高度を落とすように言った。
ショボン達にも伝えてくれるらしい。
- 170 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:26:10 ID:QmQyvbGcO
-
雲により周りの景色は見づらくなったが、結果として楽にはならなかった。
(´・ω・`)「不覚」
川 ゚ -゚)「なにがだ」
(´・ω・`)「いや…それより、大分寒いね」
川 ゚ -゚)「ああ、雪を作ってるその真っ只中だしな」
(´・ω・`)「早めに抜けたいね、雲…」
黄色い飛行機が近寄ってきた。
何か伝えることがあるのだろう。
( ^ω^)「ショボン!」
(´・ω・`)「何ー!?」
飛行機の稼動音に負けないよう、懸命に叫ぶ。
どうやら、一旦下がって壁との距離を確認し、雲に入る時間は必要最小限にするらしい。
- 171 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:27:57 ID:QmQyvbGcO
-
言われた通りに下降する。
下には雪原。前には氷壁。
壁が桁違いに大きいので距離は取りづらいが、まだかなりの距離がありそうだ。
頭に被っていた毛布を下げ、周りを見渡していたクーが何かに気づいた。
川;゚ -゚)「…?」
(´・ω・`)「何?」
川;゚ -゚)「後ろに、飛行機が…」
(´・ω・`)「え?」
前でも、黄色と赤の飛行機が近寄って何かを相談しているようだ。
(;´・ω・`)「とりあえず、向こうに行こう」
川;゚ -゚)「ああ、うん」
- 172 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:29:38 ID:QmQyvbGcO
-
前の二機に近付き、様子を聞く。
(;'A`)「いや、さっぱり分かんねーんだけど!何アレ!?」
( ^ω^)「僕らのよりでかいおね…」
ξ;゚⊿゚)ξ「多分城のやつよ!私達が見たやつ!」
从;゚∀从「それ、まずくないか?」
川 ゚ -゚)「禁忌研究罪、どころではないな…」
(;´・ω・`)「とにかく逃げよう!」
ショボンの言葉を合図に、三機が一斉に散開した。
(;´・ω・`)「今、相手どこ?」
川 ゚ -゚)「私達の機体の後ろか少し上だ」
(´・ω・`)「じゃ、下に…!」
- 173 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:32:22 ID:QmQyvbGcO
-
(;'A`)「これからって時に、何だって…!」
从;゚∀从「後ろから来たよな…俺達の飛行機を見てから出発して追いついたのか?」
(;'A`)「んな性能の飛行機、あんのか!?」
从;゚∀从「知るかっ!」
ハインの言うとおりあの飛行機がこちらの飛行を確認し、
それから飛び立ったとしたら、あれはこちらより数段高性能だということだ。
空を巡回している飛行機など見たことがない。
つまり、その可能性が高い。
(;'A`)「…………」
機体の黒が、希望を吸い込む色に見えた。
- 174 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:33:36 ID:QmQyvbGcO
-
大きな黒い飛行機が、下に行くのが見えた。
その先には、青い飛行機。
(;'A`)「ショボン達が目ぇ付けられたぞ!」
从;゚∀从「どうする?」
(;'A`)「ど、どうったって…!」
(;'A`)「大砲積んどきゃよかった…」
从 ゚∀从「とにかく奴の様子を見るぞ!」
('A`)「よし!」
黒い飛行機の右後ろについて、行動を見る。
ブーン達も相手の左上についているのが見えた。
武器などないが、威嚇程度にはなるだろうか。
- 175 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:35:12 ID:QmQyvbGcO
-
腹の妙な浮遊感も気にせず、がくりと下降。
逃げるべくエンジンを全開にして飛ぶ。
川;゚ -゚)「まだ後ろにいる!」
突如後ろから、連続で金属を打ち鳴らすような、爆発するような音がした。
(;´・ω・`)「今のは…?」
川;゚ -゚)「分からん!」
とにかく上下左右に飛び回り、撹乱を試みる。
その間も音は続いている。
川;゚ -゚)「あの音は…」
振り向き、双眼鏡を覗く。
自分達と同じような形をした飛行機。
その操縦席の下の部分が、音に合わせて光っていた。
- 176 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:38:00 ID:QmQyvbGcO
-
川 ゚ -゚)「ショボン、後ろだ!あの飛行機の後ろに回って…」
あの光は、危ない。そう直感できた。
ショボンの肩を叩こうとして、愕然とした。
(;´-ω・`)「…ぐ……!」
ショボンの肩が赤い。
上着が、血で真っ赤に染まっている。
頬に撥ねた血が凍りついている。
(;´・ω・`)「分かった、後ろだね…?」
川;゚ -゚)「ショボン!」
(;´・ω・`)「問題ない!」
川;゚ -゚)「…あ…」
そうだ、思い出した。
古代の機械文明の武器の一つ。
ドクオの大砲など目ではない攻撃力。
乗り物に付属できる。
逆に、こんなになるまでなぜ思い出せなかったんだ。
川;゚ -゚)「ショボン!あれは機銃といって――」
クーの横腹を、冷たい嫌な感触が貫いた。
- 177 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:40:55 ID:QmQyvbGcO
-
(;'A`)「あれ、まさか銃って奴か…?」
从;゚∀从「大丈夫かよ!?ショボンとクー血ぃ流してんぞ!」
(;'A`)「くそ、殺す気満々かよ…」
(;'A`)「とにかく、助けないと」
無理矢理下降し、危険を承知で青い飛行機へ向かおうとする。
すると、黄色い飛行機が近寄ってきた。
(;^ω^)「ショボン達は僕らがいくお!ドクオは全体を見てどうにか作戦を!」
(;'A`)「わ、分かった」
ξ;゚⊿゚)ξ「よろしく!」
落ちるような勢いでブーン達の飛行機は視界の下へ消えた。
从;゚∀从「どうするよ!?」
(;'A`)「どうったって、何も…!」
頭が混乱し、考えが纏まらない。
ブーン達の行動。
ショボン達の安否。
自分達の役目。
何も分からない。
- 178 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:45:05 ID:QmQyvbGcO
-
(;´・ω・`)「うぅっ…」
肩と腹が焼けるように痛い。
クーもこちらにぐったりともたれている。
息は荒いがまだある。
(;´・ω・`)「逃げないと…」
でも、多分無駄だろう。
だって、あっちの方が速いんだ。
訳の分からない武器もある。
(;^ω^)「ショボン!」
(;´・ω・`)「ブーン…」
ξ;゚⊿゚)ξ「何してんの、私達が囮になるから…」
(;´・ω・`)「…無駄だよ…」
(;´・ω・`)「二つあるエンジンの片方を撃たれた。もう、上がれない」
(;^ω^)「横でも下でもいいから早くするお!」
(´・ω・`)「本当に、駄目なんだ…」
また、悪魔のようなあの音。
僕には分かる。
分かるんだ。
もしも仮に囮がいたって、逃げられない事が。
僕らが墜ちたら、次の標的はブーン達だ。
- 179 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:47:46 ID:QmQyvbGcO
-
黄色い飛行機が、煙を上げて落ちていく。
それに重なるように、青い飛行機がふらふらと落ちる。
从;゚∀从「え…」
(;'A`)「嘘だろ…、……何がハヤブサだよ…」
从 ゚∀从「いや…まだ」
从;゚∀从「まだ間に合う!あいつらをこっちの飛行機に無理矢理乗せて降りよう!」
ハインの声を聞き、はっとした。
そうだ、まだ分からない。
諦めてなるものか。
(;'A`)「よし!」
下降しながら、二機の方へ向かう。
相手がこちらに気付かないことを祈るしか、ない。
- 180 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:50:04 ID:QmQyvbGcO
-
――何かに向けた祈りは、通じなかった。
黒い飛行機が大きく旋回して、こちらを向く。
銃口がぎらりと光ったように見えた。
(;'A`)「うわ…っ!」
咄嗟に右に操縦桿を切る。
凶弾が飛行機を掠め、機体が激しく揺れた。
从;゚∀从「大丈夫か!」
(;'A`)「く…」
また、射撃の音。
避け切れずに右の翼に幾つもの衝撃を受け、そこに穴が開いた。
(;'A`)「翼が!!」
从;゚∀从「っ!」
制御を失った機体は、左の翼を下にして落ちていく。
- 181 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:51:56 ID:QmQyvbGcO
-
遥か下に、雪原と森が見えた。
操縦席から体が外れ、落ちる。
せめて、せめてハインだけでも助けないと。
必死で伸ばした腕は、あと少しのところで空を切った。
二人の距離が少しずつ開く。
無我夢中でもがいても、何も変わらない。
大粒の涙が溢れた。
雪より速く落ちていく。
―――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
――――
―
- 182 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:53:29 ID:QmQyvbGcO
-
―
――――
―――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――――おい、見ろよ……!
―――この人まさか…マジかよ…―――――――――――
…でも、何で――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――
―――
―
- 183 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:54:13 ID:QmQyvbGcO
- 今日はここまでです。
ありがとうございました。
- 184 :名も無きAAのようです:2012/08/06(月) 23:58:11 ID:F.3xlFIc0
- おつ!
- 185 :名も無きAAのようです:2012/08/07(火) 00:06:46 ID:nbbs5g5E0
- 続きが気になるね
乙!
- 186 :名も無きAAのようです:2012/08/07(火) 00:12:45 ID:J4zE2kJU0
- 乙
おもしろい
- 187 :名も無きAAのようです:2012/08/07(火) 01:28:55 ID:QljDOjbI0
- おおお、一気に進んだ
いい引き方だ
おつ
- 188 :名も無きAAのようです:2012/08/07(火) 06:33:54 ID:sR7wE2vQ0
- え、いきなり散華?うそぉーん…
乙
- 189 :名も無きAAのようです:2012/08/07(火) 22:41:26 ID:QH1x1ZaM0
- excellent!!
- 190 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 14:29:03 ID:OymUFvQoO
- 乙です
うわああああ続きが気になるうううう
楽しみにしてますお
- 191 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:33:13 ID:S6HnqVqYO
-
第8話『メモリーズ』
――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
―――――
―
暑い。
ものすごく暑い。
何だっけ、何で……?
…あれ?
从 -∀从「ん…?」
从 ゚∀从「あれ?」
目が覚めると、何故か豪華な部屋の中にいた。
視界が霞み、頭が揺れる。
よく見ると汗も酷い。
从;゚∀从「う…」
从 ゚∀从「風邪でもひいたかな…」
何か大事なことがあったような気がする。
ただ、思考に霧がかかったかのように朧げだ。
ベッドサイドの水を飲むと、少し落ち着いた。
- 192 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:35:25 ID:S6HnqVqYO
-
ベッドから降り、立ち上がる。
足に痛みを感じた。
見れば、包帯が巻いてある。
从;゚∀从「何で、こんな…?」
行動する度に、謎が増える。
諦めてベッドに座ると、がちゃり、とドアが開いた。
メイドのような二人組だ。
(゚、゚トソン「あ!」
ミセ*゚ー゚)リ「タカオカ様!」
从;゚∀从「え?え?何?」
(゚、゚トソン「お久しぶりです、トソンです」
ミセ*゚ー゚)リ「同じくミセリですよー」
从;゚∀从「いや、ごめん訳分からん」
何故か敬語を使われている。
- 193 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:36:24 ID:S6HnqVqYO
-
――――――――――
しばらくかけて何も分からないことを告げると、二人は驚いたようだ。
当然といえば当然か。
ミセ*゚ー゚)リ「アレですか、記憶喪失って奴でしょうか?」
从;゚∀从「あー…そうかも?」
(゚、゚トソン「貴女の名前はタカオカ、と言うのです」
从 ゚∀从「へー…こんなにされてるってことは、偉いのか…?」
ミセ*゚ー゚)リ「もっちろん、王女様ですから!」
从 ゚∀从「はーん…」
从;゚∀从「は?」
(゚、゚トソン「ま、ともかく着替えましょうか」
トソンとやらがおもむろに俺の上着に手をかけた。
慌てて制止する。
从;゚∀从「いや、いい!いい、自分で着替えるって!」
- 194 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:37:29 ID:S6HnqVqYO
-
ミセ*゚ー゚)リ「あ、やっぱタカオカ様ですねー。いつも『自分でできることは自分でやる!』って」
(゚、゚トソン「寝てる間に着替えさせたのも久しぶりでしたしね」
从;゚∀从「いや待て、疑問点が多い」
从 ゚∀从「どんぐらい寝てたの、俺?」
(゚、゚トソン「三日、ですね」
从 ゚∀从「あと俺、王女らしいのに随分フレンドリーだな?」
ミセ*゚ー゚)リ「子供の頃から一緒に遊んでましたから!」
从 ゚∀从「俺の怪我の程度は?」
(゚、゚トソン「切り傷、打ち身、捻挫です。大きいものは計六ヶ所ですね」
- 195 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:39:11 ID:S6HnqVqYO
-
この二人が俺とかなり親しい身なのは分かった。
なら、質問攻めにしてでも記憶を取り戻したいところだ。
从 ゚∀从「えっと、すまんが色々協力してくれ」
ミセ*゚ー゚)リ「はい、何なりとどーぞ!」
从 ゚∀从「俺がここにいる経緯を教えてくれ」
(゚、゚トソン「えー、まず数ヶ月前にタカオカ様は謎の失踪を遂げました」
从;゚∀从「おおぅ」
(゚、゚トソン「で、三日前に騎士の方が運んで来ました。以上です」
从;゚∀从「…どこにいた、とか、何で倒れてた、とかは?」
(゚、゚トソン「いえ、聞けませんでした。…箝口令でも敷かれてるんですかね」
- 196 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:40:23 ID:S6HnqVqYO
-
从 ゚∀从「細かく俺のプロフィールを」
(゚、゚トソン「タカオカ様、18歳。双子の王女の妹方です」
(゚、゚トソン「王位につく確率が薄いため機工団長も兼任していました。
が、行方不明により解任となりましたね」
ミセ*゚ー゚)リ「趣味はキカイの開発、改造。好物は――」
从;゚∀从「あ、それ以上はいいや…」
これ以上は有益な情報はないと悟り、止める。
从 ゚∀从「双子ってのは?」
(゚、゚トソン「ワタナベ様です。そっくりなのですぐに判りますよ」
ミセ;゚ー゚)リ「ただ、酷い熱なので無理は禁物です」
从 ゚∀从「あ、あと最後に大事な事が…」
(゚、゚トソン「はい」
从;゚∀从「トイレまで連れてって、急いで」
- 197 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:41:35 ID:S6HnqVqYO
-
どうにか間に合った。
広いトイレに座って用を足す。
从;゚∀从「トイレの大きさじゃねーな…」
从 ゚∀从「…ん?」
…ここにしか住んだことないんなら、何で広いとか分かったんだ?
やはり、まだ大事なことを思い出していない。
多分あの二人以外の奴に聞かないと。
王女なら、親は王様か。
俺を運んで来たのは騎士だっけか。
熱とか怪我とか言ってられないな。
すぐに聞きに行こう。
- 198 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:42:19 ID:S6HnqVqYO
-
トイレから出、部屋に戻って着替えた。
トソンとミセリはまた寝る、と言うと、あっさりと引き下がった。
心の中で二人に謝りながら、部屋を出た。
体中痛いが、我慢すれば歩けなくはない。
从 ゚∀从「王室、王室…」
从 ゚∀从「上の方かな?」
从;゚∀从「マジで上にあんのかよ…」
警備兵は驚いていたが、通してくれた。
入ると、机で書類を相手取っている男がいる。
( ΦωΦ)「タカオカ!寝ていたのではなかったか?」
从 ゚∀从「あー、何から話していいのか…」
( ΦωΦ)「記憶喪失は聞いている。お前が父、ロマネスクである」
- 199 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:44:06 ID:S6HnqVqYO
-
(;ΦωΦ)「起きたら行こうと思ったが、まさか自分から来るとは…」
从 ゚∀从「まあ、色々と…。俺が見つかった状況、分かる?」
( ΦωΦ)「うむ、それなら騎士のモララーに聞け。今は地下の機工研究室であろう」
从 ゚∀从「分かった。ありがとう」
( ΦωΦ)「待て、松葉杖を持って来させよう。右足の捻挫が酷いそうな」
从;゚∀从「あ…うん…」
どことなくいかつい印象だが、内面に温かさを感じた。
この人が自分の父。
やはりよく思い出せない。
- 200 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:45:01 ID:S6HnqVqYO
-
( ΦωΦ)「…あと、一つだけ言っておこう」
从;゚∀从「?」
勿体振った言い方に身構える。
何を言われるのか。
( ΦωΦ)「どんなになっても、どこに行っても」
( ΦωΦ)「お前の家はここである、と」
从 ゚∀从「うん…?」
( ΦωΦ)「お前は昔から外で遊ぶのが好きであったからな…」
( ΦωΦ)「そんなお前が決めたことなら、何でも貫くがいい」
( ΦωΦ)「ただ、帰る場所はいつでもある、という事だ」
从 ゚∀从「…分かったよ」
何と言うか、色々と見透かされているように感じた。
有り難く松葉杖を借り、地下を目指した。
父とも久しぶりらしいし色々と話し込みたいが、記憶が戻らなければ意味がない。
それに、その忘れている何かがやけに俺を急がせている。
- 201 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:46:09 ID:S6HnqVqYO
-
どうにかこうにか地下に着いた。
モララーとやらを探す。
( ・∀・)「お探しでしょうか?」
从 ゚∀从「あんた、モララーさん?」
(;・∀・)「忘れておいでで?」
从;゚∀从「えっと…ざっくり言うと、記憶喪失って奴だ」
(;・∀・)「え」
从 ゚∀从「で、俺が倒れてた状況を教えてくれ」
(;・∀・)「は、はあ…」
( ・∀・)「まずは自己紹介、から。私はモララー、騎士団長兼機工団長です」
- 202 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:47:06 ID:S6HnqVqYO
-
休憩室のような所に移動し、話す。
( ・∀・)「…貴女は、見回りの時に町外れで発見されまして」
( ・∀・)「傷だらけで倒れいたところを、私の部下が保護しました」
从 ゚∀从「ふうん…怪我の理由は?」
(;・∀・)「さあ…発見したとき既に重体でしたので」
从 ゚∀从「そう…か。もういいよ、ありがとな」
( ・∀・)「失礼します」
モララーは一礼すると、数人の騎士を引き連れ上階へ行った。
- 203 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:48:31 ID:S6HnqVqYO
-
直感で分かった。
モララーは嘘をついている。
どこが嘘、とまではわからないが、小さな嘘ではない。
モララーが怪しい。
モララーをこっそりと追うと、騎士の詰め所のような場所へついた。
扉に耳をつけ、聞く。
从;゚∀从
「……だから、気付いたら怪我してた、ということにしろ」
「間違っても飛行機なんて単語は出すな。以上だ」
がたがたと席を立つ気配。
急いでその場を離れた。
部屋に戻り、ベッドに倒れ込む。
考えたいが、今は頭が割れるように痛い。
また明日、考えを整理しよう。
- 204 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:49:19 ID:S6HnqVqYO
-
――――――――――
(゚、゚トソン「お粥です。食べられます?」
从 ゚∀从「ん、大丈夫。…ところで、この毛布」
昨日は人を探すのに夢中で気付かなかった。
豪華な部屋の中、この毛布だけが場違いに擦り切れている。
ミセ*゚ー゚)リ「それ、タカオカ様が見つかった時にしがみついて離さなかったらしいです」
(゚、゚トソン「大事そうなので、騎士の方に頼み込んで譲り受けました」
从 ゚∀从「…そうか。お前ら、すまんが出てくれ」
ミセ*゚ー゚)リ「…?分かりました、食べたお皿は置いといて下さいね」
- 205 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:52:14 ID:S6HnqVqYO
-
一人になった。
ボロの毛布を抱き、匂いを嗅ぐ。
何となく懐かしいような、そんな気がした。
从 ゚∀从「さて…」
昨日、聞ける事は全て聞いた。
ゆっくりと考える。
双子ってことは、権利の相続に意見が割れた可能性がある。
仮にそうだったとしよう。
俺が行方不明になった理由は、恐らくそれだ。
すると怪しいのは、モララー。
その事件により、機工団長であった俺の跡を引き継いだはずだ。
嘘をついていたことも大きい。
この場合、双子の立場が対等なら、意見をはっきり言える俺を残す筈。
わざわざはっきりと発言するタイプの俺を狙ったのは、機工団長の座を得るためか。
それともワタナベを言いなりにして、傀儡…いや、飛躍しすぎか。
- 206 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:53:47 ID:S6HnqVqYO
-
要するに、モララーに都合がよすぎるのだ。
これだけの事情があって、モララーを疑わない手はない。
从 ゚∀从「モララーかその部下に襲撃を受けた、のかな…?」
それで行方不明になり、モララーは晴れて昇進、か。
殺されかけたとき、俺はどうしたろう?
騎士相手では、喧嘩は無謀。黙ってやられるのも嫌だ。
答えは一つ、逃げたんだ。だからこその行方不明。
逃げるとしたら、ここは二階だし、窓か。
カーテンを開け、外を見た。
- 207 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:55:05 ID:S6HnqVqYO
-
从;゚∀从「…?」
窓を覗いた瞬間、何かが頭に浮かんだ。
朧でよく分からないが。
从 ゚∀从「…あ…?」
…そうだ、ここだ。
俺はこの窓から飛び降りた。確実に。
――廃坑。
廃坑を走った。
疲れきって動けなくなったんだった。
そういえば、飛行機という単語もあった。
…いや、これは少しズレている気がする。
でも廃坑絡みなのは確かだ。
で、動けなくなって、誰かにお茶を貰った。
そうだ、誰かが…誰か…。
――「だ、誰…」
――「え、ちょっ」
――「えーと…どっから来たんだ?」
- 208 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:56:08 ID:S6HnqVqYO
-
―――そうだ、思い出した。
.
- 209 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:58:09 ID:S6HnqVqYO
-
从 ゚∀从「あ…」
そうだ、そうだった。
頭の靄が急速に消えていく。
熱も忘れ、思考もクリアになる。
あの時、確かに騎士に襲われた。
当事は訳分からなかったが、モララーの刺客だったんだ。
逃げなければ。
何かのきっかけで記憶が戻ったと知られれば、口封じは必至。
また襲われるのも、時間の問題か。
体調を崩しているなら、尚更だ。
ドアが二回ノックされ、開いた。
びくりと体が跳ね上がり、思わず身構える。
ミセ*゚ー゚)リ「失礼します、どうなさいました?」
(゚、゚トソン「ワタナベ様から、様子を見てほしい、と言われまして」
从 ゚∀从「…お、お前らか…」
- 210 :名も無きAAのようです:2012/08/08(水) 23:59:17 ID:S6HnqVqYO
-
二人に全てを話した。
記憶が戻ったことと、逃げる必要性があること。
あと、まだやることがある、ということ。
ミセ;゚ー゚)リ「そんな、本当に…」
从 ゚∀从「大変な目に遭ったが、あいつらは多分生きてる。行かないと」
(゚、゚トソン「出て行こうとしたら言え…と、ロマネスク様からの伝言があります」
(゚、゚トソン「全てを終えたらいつでも帰ってくるように、と」
ミセ*゚ー゚)リ「ロマネスク様がタカオカ様の見つかった状況、知ったみたいですね」
ミセ*゚ー゚)リ「あの方、何でもお見通しですもんねー」
从 ゚∀从「……」
从 ゚∀从「凄いな、父さんは…敵わんよ」
从 ゚∀从「…荷造りを手伝ってくれ。バレないように、食料程度に留めて」
(゚、゚トソン「はい…」
从 ゚∀从「大丈夫。いずれ帰る」
(゚、゚トソン「約束ですよ」
- 211 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:00:23 ID:E84leBeAO
-
今、モララーは機工団長だ。
俺がその位にいた頃にも、飛行機の開発は一応終わっていた。
壁の近くで俺や皆が見つけたのは、テスト飛行の残骸。
ちなみに乗っていた機工師と騎士は全員帰還した筈だ。
モララーが、何を考えて俺達を撃ち落としたのかまでは分からない。
ただ、奴は危ない。
純粋な好奇心で外を見ようなんてことは、絶対にない。
(゚、゚;トソン「えー、とにかく食料を集めてきました」
从 ゚∀从「…あ、置いといて」
- 212 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:01:42 ID:E84leBeAO
-
あるとすれば、王位の継承に向けて、領土の拡大。
モララー派と王女派、と次の王位に関する意見が城内で割れている。
今はどうなっているのか知らないが、モララー派が消えることは、まずない。
この国の継承方式上、ペンダントさえあればあとはどうにでもなるのだ。
大体は血縁によるものだが。
从 ゚∀从「考えたって、無駄か」
ミセ*゚ー゚)リ「何か…?」
从 ゚∀从「いや。荷物ありがとうな」
(゚、゚トソン「私、待ってますからね」
从 ゚∀从「ああ、帰ってくる」
すまんが、嘘をついた。
多分、帰っては来れない。
二人との付き合いは長かった。
名残惜しいが、これまでだろう。
从 ゚∀从「噂になったり、しないよな?」
(゚、゚トソン「どうでしょう…。
以前も箝口令が敷かれ、知っているのは私達と上層のみでしたが」
从 ゚∀从「そうか…」
モララーの耳に入るのは、仕方ないかな。
- 213 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:03:12 ID:E84leBeAO
-
勘でしかない。
二回の飛行とも上手くいくと信じ、失敗した信用ならない勘だ。
でも、皆生きている気がする。
勢いよく窓を開けた。
下は雪が吹き溜まりになっていて、クッションとして機能しそうだ。
从 ゚∀从「じゃ、この瞬間をもって俺、タカオカじゃないんでな」
ミセ;゚ー゚)リ「そんな、名前まで捨てることは…」
从;゚∀从「今から俺の名前は『ハインリッヒ』だ!じゃっ!」
(゚、゚;トソン「あ!」
泣きそうになるのを堪え、どうにか格好つけて飛び降りた。
捻挫に響いて悲鳴が漏れた。
- 214 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:04:51 ID:E84leBeAO
-
――――――――――――
( ・∀・)「お呼びでしょうか」
( ΦωΦ)「呼んだ。…最近、飛行機の改良に熱心であるな?」
( ・∀・)「ええ。外の世界が見つかれば、資源も豊富になるでしょう」
( ΦωΦ)「一般の飛行機をわざわざ撃ち落としたのは?」
(;・∀・)「…!」
(;・∀・)「…何故、それを」
( ΦωΦ)「愚か者が。モララー派にも、我輩の腹心はおる」
(;・∀・)「……」
( ΦωΦ)「もうよい。今後一切、飛行機関連の研究は禁止だ」
(;・∀・)「…」
( ΦωΦ)「領土や権利に踊らされる程、滑稽なことは無い」
( ΦωΦ)「…純粋な冒険心、好奇心なら応援するがな」
( ΦωΦ)「お前の原動力は、もっと汚く、どす黒い」
( ΦωΦ)「下がれ」
( ・∀・)「はっ…」
- 215 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:07:04 ID:E84leBeAO
-
今回はここまで。
いきなりレスが増えて驚いたお
- 216 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:12:50 ID:DTYgD2X.0
- 乙
- 217 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 00:13:36 ID:q8dCbRPg0
- おっおっおっ
- 218 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 02:41:44 ID:AlVddIrkO
- 乙ですお
ロマネスクにフラグが…
そして名前だけのワタナベは出てくるのか?
みんなは無事なのか?
いろいろ気になるわー
続き楽しみにしてますお
- 219 :名も無きAAのようです:2012/08/09(木) 08:17:34 ID:CX.SE7cY0
- 乙
- 220 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:13:53 ID:X3GrZcLwO
-
第9話『心身冷えて』
廃坑を歩く一つの影があった。
先程まで意気揚々と歩いていたのが、今やのろのろとしたそれに変わっている。
从;-∀从
もう、どのくらい歩いただろうか?
踏み出す度に右足が痛む。折れていないだけマシだと思うが。
脆弱な自分の体を呪う。
頭がぐらぐらとし、吐き気も酷い。
歩かなければ。
引き返したら楽になるが、治ってからなんて悠長なことは言えない。
从;゚∀从「はー…はー…」
廃坑の壁にもたれる。
こちらに来た覚えがある。道は間違っていない。
廃坑は一本道だから、迷うこともない。
- 221 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:14:49 ID:X3GrZcLwO
-
背中に力を入れ、体勢を直してまた足を動かす。
城にいたときは、体調は平気だと思っていた。
問題ないというよりは、堪えられると。
それは果たして、思い上がりでしかなかった。
从;゚∀从「あんときの俺、すげーな…」
一度来た道のりだからと、舐めていた。
終わりが見えないのは、辛い。
ひたすらに歩く。
何も考えない。痛みなんて知らない。
熱や吐き気なんて知ったことか。
いつかの恐怖が今の覚悟より原動力になるなんて、ない。
从; ∀从「う…っ…」
急激な吐き気を催し、膝に手をついて吐き戻した。
これで二回目、最早妙な色の苦い液しか出ない。
- 222 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:15:58 ID:X3GrZcLwO
-
从;゚∀从「くっそ…」
荷物を軽くしたいが、食べたって吐くだけだ。
餓死なんてしたくない。
寒さも敵だ。
熱による寒気とは別に、単純に気温が低い。
しばらく歩いて、座り込む。
休憩をとりつつ、包帯の下を覗いた。
足首は赤黒く変色している。
从 ゚∀从「いつ着くのかな…」
今、怪我は大きく六ヶ所。
右肩から肩甲骨辺りまでと、右の腰骨の所に切り傷。
これは深くなく、痛むだけ。
ただ、じめじめした廃坑で化膿するのも時間の問題だ。
打ち身が左肘、右膝。
膝はなかなか辛い。
捻挫が右足首、左手首。
右足首が一番厳しく、歩く度に軋む。
- 223 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:17:16 ID:X3GrZcLwO
-
从;゚∀从「!」
またも吐き気。
だが、生憎吐くものなどもうない。
少し液体を出しただけで、あとは唸って時間の経過をひたすら待った。
从;゚∀从「寝よう…」
件の毛布に包まり、丸まって寝転がる。
辛くなったら抱いていた為、土やら何やらで汚れてしまっている。
…王女でいたら、楽なのに。
少し心が揺れた。
自らの体を抱き、震えを無理矢理押さえ付ける。
从 -∀从
俺は、皆にもう一度会うんだ。
こんな訳の分からない所では、死ねない。
しばらくすると、眠りに落ちた。
- 224 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:18:17 ID:X3GrZcLwO
-
人影が見えた。
どこか暖かく、輝いている。
ぼんやりと手を伸ばした。
その手は、血と土に塗れている。
今にも腐り落ちそうな腕。
ぼとり、と肉が落ちて白い骨が覗いた。
从;゚∀从「――うああぁっ!?」
恐怖に悲鳴を上げ、跳び起きた。
腕を見る。
青白いが、腐ってはいない。
从;゚∀从「何だってんだ…」
することは、山のようにある。
殺されたくないし、死にたくないし、会いたいし、楽になりたい。
モララーなんぞに邪魔されてたまるか。
- 225 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:19:13 ID:X3GrZcLwO
-
その場に座り、用を足す。
体温が勿体ないな、と回らない頭で考えた。
どのぐらい眠ったのか。
少しは楽になったが、まだ体中が痛い。
パンを口に入れた。
水と一緒に飲み下す。
二口目は、飲み込む気になれずに出してしまった。
一口だって、体温になる。
自分を奮い立たせ、また歩いた。
未だ、廃坑に生き物の気配はない。
- 226 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:20:33 ID:X3GrZcLwO
-
从 ゚∀从「お…っ」
木の棒が落ちている。
ナイフを押し付けて適当な長さに折り、杖代わりに使うことにした。
重い足音に、一つ軽い音が混ざる。
少しだけ、新鮮だ。
熱も痛みも、下がらない。
唐突に腹が動き、また吐く。
パンの一欠けらが、そのまま出てきた。
涙が滲む。
これだけ吐いても、吐き気すら消えない。
从;゚∀从「ふー…ゴホッ…」
从 ゚∀从「下痢がないだけ、マシかな…」
どうにかプラスに考え、原動力を作る。
マイナス思考は絶対良くない。
- 227 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:21:14 ID:X3GrZcLwO
-
从;゚∀从「何か入れないと…」
このままじゃ、栄養がいかずに弱るだけだ。
本格的に何か食べないと。
熱だってこのままじゃ下がらないし、悪化する一方だろう。
風邪如きに殺されるのは勘弁だ。
从;゚∀从「よし…!」
水で湿らせた干し肉とパンを、無理に嚥下した。
胃から口まで戻って来たが、また飲み込む。
立ち上がって三歩ほど歩き、強烈な不快感が込み上げてきた。
从; ∀从「う゛…うぅ…」
从; ∀从「うぶ……っ、うっ、う」
結局、およそ乙女らしからぬ音と共に、全部出してしまった。
从;゚∀从「…うぇ、汚ね…」
从;゚∀从「もうしばらくは諦めるか…服にかかっちまったし…」
- 228 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:21:52 ID:X3GrZcLwO
-
歩きながら、どうにか明るいことを考えようと努める。
今頃、トソンは心配してるかな。
ミセリは楽観的だから、トソンを励ましてやってほしいな。
ドクオ達、どうしてるだろう。
ショボンとクーの怪我はどうだろうか。
…皆、俺の心配なんかしてないのかもしれない。
やけにあっさり送り出されたし。
厄介払いか何かだったのか。
俺を殺そうとしたのも、父さんの差し金だろうか。
ドクオ達にとって、よそ者だったのか、俺。
从; ∀从「……!」
嫌な思考が頭を支配する前に、毛布を引きずり出して顔を埋める。
涙が溢れてきた。
- 229 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:22:50 ID:X3GrZcLwO
-
从 ;∀从「うぐっ…く…」
从 ;д从「ううぅあぁぁぁぁ……」
違う。
皆は、そんなに冷たくない。
俺が一番分かってるのに。
泣いちゃ駄目だ。
水分が勿体ないだろうが。
必死で涙を拭き、毛布をしまって足を動かす。
从;゚∀从「あ…」
石に躓き、ばたりと倒れ込んだ。
砂が口に入り、ざらざらと気持ち悪い。
忘れていた体中の痛みが襲ってくる。
从; ∀从「…ちくしょー、いてーよ…」
ふらふらと立ち上がり、また歩く。
思考はストップしかけている。
その方が、好都合かもしれない。
- 230 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:23:47 ID:X3GrZcLwO
-
また眠って、体力を戻した。
从; ∀从
夢遊病者のように、ただ進む。
ふらふらと、ゆらゆらと。
色々な事が思い出された。
トソンとミセリは、昔ずっと一緒だった。
あいつらの方が二つ程年上だ。
字も教えてもらった。
あぁ、ミセリはあてにならなかったな。
適当ばかり言ってた。
ワタナベも引っ込み思案さえ直ればなぁ。
双子だからか、話がよく合った。
かくれんぼは楽しかった。
トソンの隠れるところがずるいんだよ、何だよ兵士に化けるって。
たまに暇なときの父さんも交えると、それもまた楽しかった。
いつから敬語になったっけ。
いつから様付けになったろう。
中途半端な距離は、階級によるものか。
階級なんか、下らないだろ。
その辺の偉い奴より、あっちの皆の方がずっと素晴らしい。
- 231 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:24:46 ID:X3GrZcLwO
-
从; ∀从
ショボンの料理は美味しかった。
スープなんか、城のやつにも負けてないよな。
ツンも教えて貰えばいいのに。
あの料理を食べてるブーンの胃腸が気になる。
クーは学者みたいだったな。
ハヤブサ、なんてよく知ってるな。
ブーンは笑ってばっかだったな。
だお!って何だよ、一体。
飛行機の上で、ドクオ照れていやがった。
ドクオは、命の恩人だよな。
あいつに会ってから色々始まったんだな。
また会ったら、今度は正面から抱き着いてやる。
驚いた顔が目に浮かぶ。
- 232 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:27:17 ID:X3GrZcLwO
-
从; ∀从
また、転んだ。
したたかに鼻を打ち、生温い物が流れ出すのが分かった。
痛い。
全身痛いよ、誰か助けてくれないかな。
随分、歩いた。
どこまでも寒いな。
何かが聞こえるような気がする。
何か呼んでる。
…天国やら地獄やらの声だろうか。
眠い。
毛布は……あぁ、あった。
ちょっと寝よう。
寝ないと歩けないし、いいだろ。
いて…。
いいさ、痛みなんか、いつか忘れる。
とても眠いんだ。
少し、ほんの少しだけ眠ろうかな。
- 233 :名も無きAAのようです:2012/08/10(金) 23:28:40 ID:X3GrZcLwO
- 今日はここまでです。
短くてごめんちゃ!
- 234 :名も無きAAのようです:2012/08/11(土) 00:11:30 ID:xucBxLDw0
- すごい気になる!!
乙!
- 235 :名も無きAAのようです:2012/08/11(土) 10:01:51 ID:ez31nh3Q0
- ぶった切るなよwww
乙
- 236 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:01:06 ID:NPowYhtsO
-
第10話『炎を燈せ』
…暖かい。
どうなったっけ、俺。
起きたら分かるか。
从 ゚∀从「…?」
質素なベッド。
大きなテーブル。
明るい暖炉。
(;'A`)「あ、起きた」
会いたかった奴。
('A`)「熱やら怪我やら酷いからな、寝とけよ」
从;゚∀从「あ…」
('A`)「あ?」
从 ;∀从「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」
真正面から、抱き着いた。
暖かい、離したくない。
絶対離さない。
とにかく今は、暖かさを感じていたかった。
('A`)「…ま、寂しかったろ…」
軽く頭を撫でられた。
驚きもしていない様子だが、ドクオの拍動が高ぶっているのが分かる。
- 237 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:01:57 ID:NPowYhtsO
-
しがみついたまま、全部話した。
記憶が全部戻った。
訳の分からない位を、捨ててきた。
その他諸々。
嗚咽で切れ切れで自分でも解りづらかったが、ドクオは黙って聞いてくれていた。
ただ、モララーの名前が出ると、ぴくりと反応していた。
('A`)「お前は廃坑に倒れてたよ」
('A`)「何となく胸騒ぎがして行ったら、ハインがいたんだ」
('A`)「いつかみたいに、な…」
从;゚∀从「死にかけてたろ…」
('A`)「お前だけでも、生きてて良かった」
- 238 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:02:49 ID:NPowYhtsO
-
気になる言い方だ。
从 ゚∀从「お前だけでも…?」
('A`)「…」
('A`)「…俺は、雪原に倒れてて」
('A`)「飛行機の残骸から、食料やら荷物とって帰ってきたんだ」
('A`)「あいつらの飛行機は、分からなかった」
('A`)「酷い吹雪で…」
从 ゚∀从「でも、待ってりゃ来る」
('A`)「もう、五日にもなるんだよ…」
- 239 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:03:51 ID:NPowYhtsO
-
从#゚∀从「嘘だ!」
('A`)「嘘なんかつくかよ」
冗談を言っている目ではない。
でも、信じたくない。
从#;д从「嘘だろうが!あいつらが死ぬ訳ないんだっ!」
('A`)「あの環境に、数日だぞ」
从#;д从「うっせぇよ!いるんだろ!出てこい皆っ!!」
渾身の力でドクオを突き飛ばした。
この体のどこにそんな力があったのか、と思う程飛んだ。
- 240 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:05:27 ID:NPowYhtsO
-
从#;д从「どれだけっ、どれだけ信じたと思ってんだっ!」
从#;д从「なんで平気な顔してんだよ!家族だろ!?」
唐突に、視界が大きく揺れた。
頬を殴られたのか。
口の中に血の味が広がる。
从#;д从「いってぇな、何だよっ!!」
(#'A`)「平気そうに見えんのか…?」
(#'A`)「平気だと思ってんのか!?」
(#'A`)「信じたくないのは同じだ馬鹿野郎!!」
(#'A`)「どれだけ探したか!どれだけ心配したか、祈ったか、泣いたか!!」
(#'A`)「でも俺まで死んだら意味ねぇんだよ!!」
- 241 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:06:44 ID:NPowYhtsO
-
暫しの間、息を荒らげて睨み合う。
ふいに、ドクオが静かに言った。
('A`)「…すまん…」
从 ;∀从「う…」
从つ∀从「俺も、悪かった」
('A`)「ただ、確実に死んだ訳じゃ…」
从 ゚∀从「もう、いい。大丈夫だ」
('A`)「そうか…」
('A`)「とにかく、俺達は生きてる。ハインも来てくれた」
('A`)「俺は諦めないぞ」
('A`)「まだチャンスはある。騎士が何だ」
('A`)「絶対に飛んで、太陽を見つけてみせる」
('A`)「それが皆の為でもあるんだからな」
- 242 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:07:35 ID:NPowYhtsO
-
从 ゚∀从「皆も…悲しんでばっかじゃ、呆れるよな」
从 ゚∀从「取り乱してごめんな…」
('A`)「ああ、平気だ」
从 ゚∀从「よし、もっかい頑張ろうぜ!」
('A`)「よし!」
从;゚∀从「…にしても、グーはねーだろ…せめて平手打ちとかさ」
('A`)「言うこと聞かない子にはグーパンチだ」
从 ゚∀从
从*゚∀从「はは…何だよそれ」
('∀`)「分からん」
二人の間に、ぎこちない笑みが浮かんだ。
久しぶりに笑ったような気がした。
- 243 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:08:31 ID:NPowYhtsO
-
それから、数日をかけて風邪と怪我を治した。
最初はやはり何も食べられなかったが、次第に回復に向かっていった。
('A`)「捻挫も…うん、もうちょいだな」
从 ゚∀从「ああ、あと足首だけだ」
从 ゚∀从「これで変態に助けてもらいつつの着替えともおさらばだ」
(;'A`)「誰が変態?」
从 ゚∀从「だって俺がここに来たとき、服綺麗だったし」
从*゚∀从「寝てる間に脱がしたんだろ?」
(;'A`)「人聞き悪いわ!あの服ゲロ臭かったんだよ!」
从 ゚∀从「体も拭いたっぽいしな」
(;'A`)「だから臭かったの!顔とか血みどろだったしよ!」
(;'A`)「ってかまだ臭い、怪我もういいんだし風呂入んな」
- 244 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:09:20 ID:NPowYhtsO
-
シャワーを浴び、汚れを落とす。
久々の感覚が肌に気持ちいい。
从 -∀从
俺は生きている。ドクオもいる。
でも、四人はもういない。
何なんだろうか、これは。
いずれもう一度、飛ぶんだ。
怖い。
どうしようもなく怖い。
从;゚∀从「ダメだ…」
从;゚∀从「余計なこと考えるの、やめよ…」
がしがしと頭を洗うと、沢山の砂が出てきた。
肩と腰の切り傷は、もう塞がっている。
一生残るだろうけど、構いはしない。
- 245 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:10:22 ID:NPowYhtsO
-
―――――――
从*゚∀从
しばらくして、ハインが風呂から出てきた。
やけにさっぱりとした顔だ。
从 ゚∀从「俺の毛布どこ?」
('A`)「掴んで放さなかった奴か。元俺の毛布だけど使う?洗ったといたが」
从 ゚∀从「使う。あれ俺の相棒にする」
('A`)「相棒ボロッボロだけどな」
畳んだ毛布を手渡すと、嬉しそうにベッドに敷いた。
从 ゚∀从「んじゃ、お休み!」
(;'A`)「よく寝るな…」
ハインの後ろ姿を見て、少しだけ幸せな自分がいる。
皆はいないのに、どういうことだ。
何か複雑な気持ちになった。
- 246 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:11:40 ID:NPowYhtsO
-
その後二日をかけて、また出かける準備を整えた。
今度の目標は壁ではなく、山。
飛行機を目印に、皆を探しに行く予定だ。
廃坑に置いてあった金は意外と余っていたので、必要な分の食料や道具を買い揃えられた。
買い物の入った袋を提げて帰宅し、鞄に次々と詰めていく。
灯籠石が二つしかないため、少々不安だ。
- 247 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:13:16 ID:NPowYhtsO
-
突如、静かな家にノックが響いた。
(;'A`)「はい、誰……っ!」
( ・∀・)「やあ、こんにちは」
今、一番見たくない顔。
表面笑っているが、目は冷たい。
从 ゚∀从「何しに来た」
( ・∀・)「ちょっと、来てくれません?」
从#゚∀从「何をぬけぬけと…!」
('A`)「いや…」
('A`)「…行くぞ」
いつの間にか大きな袋を持ったドクオが、後ろにいた。
- 248 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:14:18 ID:NPowYhtsO
-
連れてこられたのは、廃坑。ハインが通った道だ。
( ・∀・)「お願いがあります」
冷たい笑みを張り付かせたまま、騎士が言った。
( ・∀・)「その、ペンダントが欲しい」
指差す先は、ハインの胸。
つまり、王族である証だ。
( ・∀・)「それさえくれれば、見逃してあげますよ」
('A`)「何を偉そうに」
('A`)「わざわざ俺がここまで来た理由、分かるか?」
( ・∀・)「さて、ね」
('A`)「あの時…撃たれた時」
('A`)「お前、あそこにいたんだろ」
( ・∀・)
('A`)「仇、とらせてもらうぞ」
金属音を立て、大砲を伸ばす。
ハインに、ナイフと何かが放られた。
- 249 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:15:22 ID:NPowYhtsO
-
( ・∀・)「相談失敗、ですか。残念ですよ」
廃坑の奥側には、剣を抜き、盾を構えたモララー。
入口から少し入った辺りに、大砲を腰だめに構えるドクオ、ナイフを握るハイン。
( ・∀・)「あの機械、驚きました?」
( ・∀・)「機関銃、といいます」
( ・∀・)「小型化は未だできませんが、飛行機につけるぐらいなら可能なんです」
(#'A`)「黙れっ!」
くぐもった音と共に、木製の弾丸が発射された。
がつん、と音を上げ盾に弾かれる。
(;-∀・)「なかなか重い。ですが、いつまで弾がもつかな」
- 250 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:16:00 ID:NPowYhtsO
-
从;゚∀从「…」
ドクオが背負っている袋と別に、もう一つ袋が落ちている。
恐々その袋を覗き、悟った。
ドクオは、モララーとの争いを想定していた。
そうでなければ、こんなものは作らない。
从;゚∀从「よし…!」
モララーの目を盗んで作業をしなければ。
袋の中の物とナイフを握りなおし、動き始めた。
- 251 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:17:27 ID:NPowYhtsO
-
( ・∀・)「後ろで小細工をしてるようですが?」
(#'A`)「お前は俺だけ警戒してりゃいいんだよ!」
ハインが動いた。
俺の意志を汲んでくれたのか。
本当は話しておきたかったが、こんなに早く来るとは思っていなかった。
モララーが素早く距離を詰めてくる。
先程と感触の違う弾丸を装填し、引き金を引いた。
(#'A`)「死ね…!」
大砲の先から、爆炎が噴き出した。
炎が騎士の右半身を焼く。
(#;;-∀・)「ぐあっ!?」
手袋を通し、こちらの手も焼け爛れるのを感じた。
しかし、手段を選んではいられない。
- 252 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:19:39 ID:NPowYhtsO
-
追い撃ち、とばかりに通常の弾丸がモララーの腹に命中した。
さらにもう一発、顔面に当てる。
('A`)「ここまでだな」
('A`)「お前といえど生きてるしな…。土下座でもしたら許してやるよ」
(#;;-∀・)「く…!」
(#;;-∀・)「糞がぁぁぁっ!!」
烈火の如く怒ったモララーが突っ込んできた。
剣戟をすんでのところで大砲に受ける。
甲高い音と共に腕が痺れた。
(#;;-∀・)「このっ!!」
複数繰り出された斬撃の一筋が、ドクオの腕を裂いた。
(;'A`)「うあ゛っ!?」
(#;;-∀・)「…よしっ。大砲は剣と違い様々な行程が必要だからな、片手ではできまい」
(#;;-∀・)「ここまでだな!」
(;'A`)「くそ…」
- 253 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:20:39 ID:NPowYhtsO
-
剣が、突き付けられる。
(#;;-∀・)「最後のチャンスだ。ペンダントをよこせ」
(;'A`)「…」
从;゚∀从「分かった」
(;'A`)「オイ!」
从;゚∀从「お前が死んじゃ意味ねぇんだよ」
ドクオの制止も聞かず、首の丈夫な紐をナイフで断った。
从;゚∀从「そら」
ペンダントの金属部分を投げる。
ドクオとハインは数歩下がった。
(#;;-∀・)「………」
- 254 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:22:06 ID:NPowYhtsO
-
ペンダントを見ていた騎士が、不機嫌な声を上げた。
(#;;-∀・)「偽物だろう、これは」
从;゚∀从「…」
(#;;-∀・)「私だってペンダント持ちだ、違いぐらいは分かる」
(#;;-∀・)「もう知るか。二人仲良く殺してやるよ」
ざっ、とモララーが近寄ってくる。
('A`)「馬鹿が、今度こそ死ね」
ドクオが無事な方の腕でナイフを投げた。
(#;;-∀・)「何だ…?」
投げたナイフは明後日の方向へ向かい――
――いつの間にかモララーの横の壁に貼ってあった黒い板に刺さり、爆発した。
(#;;-∀・)「!!」
爆風が、またその上の板を爆発させ、それがまた誘爆を引き起こす。
- 255 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:24:35 ID:NPowYhtsO
-
轟音を上げて、雪や土の塊がモララーの頭上に降り注いだ。
(#;;-∀・)「うわ…あああぁぁっっ!!」
――幾許もしないうちに廃坑の天井は崩れ、完全に分断された。
濃い土煙の中、二人が立ち上がる。
从;゚∀从「平気か?」
(;'A`)「傷口にすっげえ砂入った…」
从 ゚∀从「…帰るか。肩貸してやろうか」
('A`)「怪我したの腕だろうが。しかも利き腕でもないし要らねーよ」
从 ゚∀从「今のお前、顔恐いぞ」
('A`)「ほっとけ」
大砲を持ち、ゆっくりと外へ向かう。
从 ゚∀从「…生きよう、な」
('A`)「ああ…」
- 256 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:25:22 ID:NPowYhtsO
-
その後ほど、瓦礫の向かい側。
剣を杖代わりにふらふらと廃坑を歩く影があることを、彼らは知らなかった。
- 257 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:26:50 ID:NPowYhtsO
- 今日はここまでなのです。
読んでくれて有り難う。
- 258 :名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:32:58 ID:otTq64jA0
- 気になるね
乙!
- 259 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:52:26 ID:k/kBbTe.O
-
第11話『騎士の思惑』
モララーとの戦闘の三日後。
いつかのように重い鞄を担ぐ二人がいた。
从 ゚∀从「腕、マジでいいの?」
('A`)「大丈夫、大概塞がった」
从;゚∀从「ま、いいけどさ…」
前回との違いは、人数ともう一つ。
部品を積むためのソリを曳いている。
('A`)「…最悪、死体見つけてもここに乗っけるぞ」
从 ゚∀从「分かった」
- 260 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:53:12 ID:k/kBbTe.O
-
墜落した方向はドクオが知っているらしい。
ドクオが前でソリを曳き、ハインが後ろから押す形で歩く。
从;゚∀从「く…」
(;'A`)「大丈夫か?」
从;゚∀从「大丈夫、そのうち慣れる」
少し歩いて休憩がてら幌の雪を払い、また歩く。
それを繰り返した。
半日歩き、その日は終了。
人数が少ないからか、いつかよりも疲労が溜まる。
- 261 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:54:23 ID:k/kBbTe.O
-
見つけた小さな森の中にテントを張った。
カンテラの光に、ぼうっと二人が浮かび上がる。
もそもそとパンを頬張りながら、何となしに見つめ合う。
(;'A`)「結構、辛いな…」
从 ゚∀从「だなぁ。やっぱ二人ってのが荷物の面で響く」
('A`)「今から行くとこ、な」
('A`)「山を登るだけでいいんだけど、地図の中で一番傾斜きつい山なんだ」
从 ゚∀从「ソリ、平気かな」
('A`)「追い追い考えるか」
从 ゚∀从「そーな」
('A`)「寝るか」
从 ゚∀从「ん」
盛り上がらない会話を打ち切り、狭いテントの中で丸まって眠った。
いつかの騒がしさが、少し懐かしい。
- 262 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:55:27 ID:k/kBbTe.O
-
次の日も、ただソリを曳いて歩いた。
荷物をソリに積めば楽だという根本的なことに気づいたぐらいだ。
山の麓に林があったため、そこでキャンプをした。
从 ゚∀从「あ、そうだ。ソリここに置いてかね?」
('A`)「大丈夫か、それ」
从 ゚∀从「標高的に道のりは二日だろ?往復したって余裕だぜ」
('A`)「ま、林なら判りやすいか。それ採用」
从 ゚∀从「よしっ」
('A`)「明日から、二日登山だからな。気合い入れろ」
从 ゚∀从「任せろ、歩くことに関すりゃ相当な経験者だ」
(;'A`)「笑えねーから…」
- 263 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:56:24 ID:k/kBbTe.O
-
不意に、がばりとハインが抱き着いてきた。
(;'A`)「おい」
从 -∀从「しばらくこのまま」
从 -∀从「…冷静になればさ、皆死んでるんだよな」
小刻みに震えるその背中に手を回した。
('A`)「まぁ、な…」
从 -∀从「俺な、廃坑で死ぬかと思ったんだよ」
从 -∀从「泣く程怖かったし、嫌だったし、寂しかった」
从 -∀从「一人だった、ってのもでかいと思う」
从 -∀从「皆も多分怖かった筈だ…」
- 264 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:57:19 ID:k/kBbTe.O
-
从 -∀从「だからさ、ドクオは絶対死なないでくれよ」
从 -∀从「俺も精一杯生きるさ」
从 ゚∀从「俺は、ドクオが大好きだ」
从 ゚∀从「だから誓ってくれ。一人にするな。俺も誓うから」
見つめるその目は真剣だった。
冗談やごまかしはききそうにない。
('A`)「………分かった、死なないよ」
从 ゚∀从「よし!」
ハインがのそりと離れた。
少し表情も晴れやかだ。
('A`)「お前、そんなん言う奴だった?」
从 ゚∀从「一連の経験してみ、寂しがり屋にもなるから」
('A`)「絶対やだ」
从 ゚∀从「だろうな」
- 265 :名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 23:59:06 ID:k/kBbTe.O
-
翌日、ソリを手近な木に結び付け、登山を開始した。
('A`)「とにかくてっぺんまで行くぞ。そっから見渡すから」
从 ゚∀从「了解ぃ」
ざくざくと雪を掻き分け登っていく。
ソリがないため、やはり若干は楽だ。
この辺りは起伏が厳しく、岩と雪の塊の判別がつきづらい。
また、雪のなかに岩が埋もれている場合もあった。
从;゚∀从「なかなか体力遣うな…」
('A`)「ちょっと休むか」
岩に座り込み、鞄を探ってチーズのかけらを口に入れた。
しばらく、ぼんやり雪景色を眺める。
从 ゚∀从「のんびり見たら、この景色も悪くないなー」
('A`)「雪は屋内から見るもんだと思う」
从 ゚∀从「ロマンのねー奴だ」
- 266 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:00:00 ID:GEAN7CyQO
-
从 ゚∀从「ん?」
ふと、ハインが何かを見つけた。
ある方向を指差している。
('A`)「双眼鏡、双眼鏡…」
('A`)「よし」
覗くと、沢山の白い何かがこちらに向かってきている。
どうやら、人の団体が歩いているようだ。
ざっと二十人ぐらいか。
ハインに双眼鏡を渡すと、やはり驚いていた。
从;゚∀从「あれ、騎士だぞ多分」
(;'A`)「うぇ、どこまでも相性悪いな…」
よりによって、同じ日に。
飛行機のときとは違い、出発を見つけて追ってきたとは考えづらい。
単に運が悪かったのか。
- 267 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:00:47 ID:GEAN7CyQO
-
('A`)「多分ブーン達の飛行機から大事な部品抜いて、
リベンジできないようにしたいんだろ」
从 ゚∀从「まず間違いなくモララーの差し金だよな」
(;'A`)「生きてたとはなぁ…」
向こうはこちらに気づいていないようだ。
立ち止まり、キャンプの支度をしている様子。
从 ゚∀从「歩くか」
('A`)「今のうちだな」
立ち上がり、鞄を背負いなおした。
霧が少し出ている。
登って十分引き離した辺りで、こちらもテントで休むことにした。
- 268 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:02:39 ID:GEAN7CyQO
-
―――――――――
从;゚∀从「ドクオ!起きろ!」
ハインに乱暴に叩かれ、目を覚ます。
(;'A`)「え、痛っ、いや何!?」
从;゚∀从「すぐ近くまで来てる!騎士!」
(;'A`)「は…?あ、そうか…!」
あいつら、実は俺達に気付いていたのか。
テントを張る振りをしていただけだ。
霧で視界が隠れていたからテントを張るとき下が確認できなかった。
きっと俺達の作った道を通ってきたんだ。
(;'A`)「よっし!」
荷物を持ち、テントを飛び出す。
確かに白い防寒服の集団がすぐ右にいた。
その距離は15メートル程だ。
- 269 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:03:36 ID:GEAN7CyQO
-
从;゚∀从「危ねっ!」
ハインがドクオの腕を掴み、雪中に引き倒す。
同時に、テントから爆炎が上がった。
(;'A`)「マジかよ…容赦ねぇな…」
('A`)「仕方ない、ちょっと降りるぞ!」
从;゚∀从「おう」
きつい傾斜を滑り降り、立ち上がり左に向かう。
霧のせいで、互いが完全に見えなくなった。
('A`)「どうにかあいつら抜くぞ!」
从 ゚∀从「できんのか!?」
('A`)「知らん!」
- 270 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:04:27 ID:GEAN7CyQO
-
斜面を駆け上がる。
岩に躓き、雪を引きずり、度々転んだが休む余裕はない。
从;゚∀从「お、おい…!」
('A`)「どうにかついて来い!」
どれ程走ったかは分からないが、ドクオがふと立ち止まった。
(;'A`)「ふー…やっぱ、あった…!」
(;'A`)「ハイン、騎士は?」
从;゚∀从「はー…はー…えー…あっ」
从;゚∀从「あそこの辺りに、いる」
ハインが指差しているのは、ドクオ達の斜め右下。
霧が薄くなり、双眼鏡無しでも少しだけ見えた。
- 271 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:05:09 ID:GEAN7CyQO
-
('A`)「ハイン、手を抜いてる場合じゃないのは分かるよな?」
从;゚∀从「あ、ああ…」
('A`)「あれ、見えるか」
ドクオが手を向けた方向にあったのは、きつい斜面のずっと上の雪塊。
それは大体騎士の真上に位置している。
('A`)「あれを動かして、雪崩を起こす」
从;゚∀从「起きるのか…?」
('A`)「大砲を雪塊に当てる。とにかく雪塊の上へ」
- 272 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:06:39 ID:GEAN7CyQO
-
しばらく登り、大きな雪塊の真下辺りまで来れた。
騎士の方向を伺っていたハインが、声を上げた。
从;゚∀从「騎士がこっちに気付いた!」
(;'A`)「最悪…」
周りを見渡すと、ドクオ達の身長を越える程の大きな岩があった。
(;'A`)「ハイン、左下の岩の裏へ!」
从;゚∀从「え、あの位置だと雪崩起きてももろに食らうぞ」
('A`)「いいから」
訳も分からずハインが岩の裏へ行くのを見届ける。
一応準備は整った、四の五の言っている暇はない。
ここから直接雪塊を狙い、どうにか落とすのが唯一の打開策だ。
このまま逃げても追いつかれる。
故に、ここで無力化するしかない。
- 273 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:08:07 ID:GEAN7CyQO
-
大砲と弾丸を取り出し、構える。
一発。
弾が雪塊に突き刺さり、騎士が上を向いた。
二発。
雪塊が少し揺れ、騎士の一部が右へ走る。
三発。
最後の弾丸は雪塊で爆発を起こした。
本格的に響きを上げ、周りの雪を巻き込んだ雪塊が滑り落ちてくる。
(;'A`)「うおおおおぉぉ!!」
ドクオも慌てて岩の方向へ走った。
雪崩の端がこちらへ届くのも時間の問題だ。
从;゚∀从「ドクオ!」
伸ばされた手を掴むと、思い切り引っ張られた。
岩に体を押し付け、二人でできるだけ固まる。
――大雪の波が、双方を包んだ。
- 274 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:10:20 ID:GEAN7CyQO
-
―――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
―
从;゚∀从「……………!」
体が動かない。
口の中の雪を吐き出すと、何故か下ではなく上へ上がっていった。
どうにかごそごそと身動きをしてスペースを作ると、右に黒い岩があった。
从;゚∀从(上、行かないと…)
右手で岩を掴んで、上に出ようと雪を掘る。
从;゚∀从「!?」
不意に誰かに足を掴まれ、雪の中に引きずり込まれ――
(#'A`)「抜けたぁぁぁぁ!!」
从;゚∀从「え、何…ゴホッ!ゴホ!う゛ー…」
(;'A`)「お前何下に掘り進んでんの!危ねーよ!」
从;゚∀从「あ、そうだったのか…」
从 ゚∀从「…?」
从#゚∀从「いや危ないのお前だろ!!」
- 275 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:11:11 ID:GEAN7CyQO
-
見渡すと、何もない斜面。
一面、雪しかない。
从#゚∀从「安全性を考えろよ!」
(;'A`)「いいよ、結果オーライだろがよ!騎士全滅だし!」
ふと自分が触れている岩を見ると、一回り小さい。
隠れた岩とは別の場所のようだ。
从;゚∀从「大分流されたな…」
('A`)「騎士も復活して来ないとは限らん。行くぞ」
从 ゚∀从
从;゚∀从「あ…?」
('A`)「ん?」
从;゚∀从「荷物、流された…」
- 276 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:12:04 ID:GEAN7CyQO
-
('A`)「そういや俺の大砲も…。あるのは俺の鞄だけか」
从 ゚∀从「あ、あそこ洞窟あるぞ。あそこで確認しよう」
('A`)「ああ」
すこし離れた洞窟まで歩いて、荷物を広げる。
折りたたみスコップ一つ、幌と毛布が一枚ずつと、食料、灯籠石一つ。
(;'A`)「そういえば、テントが俺だった分、寝袋は両方お前だったな…」
从;゚∀从「ま、まあともかく…」
拳大の灯籠石に火を点け、地面に置いた。
从;゚∀从「飛行機に行きゃ何でもあるし…」
(;'A`)「テントはない…」
(;'A`)「先行き不安だな…」
从;゚∀从「平気、だろ…」
- 277 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:13:36 ID:GEAN7CyQO
-
洞窟の入口を雪で塞ぎ、毛布を取り出した。
('A`)「もう寝るか、疲れたし」
从 ゚∀从「今日は随分動いたな…」
('A`)「…冷静になったら、雪崩ヤバかったな」
从 ゚∀从「そりゃそうだろ、生きてんのが奇跡だ」
('A`)「でも面白かったぞ、雪景色にハインの片足だけ出てんだから」
从;゚∀从「やめろよ…」
火を消し、二人で毛布を被ってぎゅっと抱き合うように眠る。
軽い会話で気を紛らわそうとしたが、尋常ではなく寒い。
寒さに震える体を強く寄せ合った。
- 278 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:15:02 ID:GEAN7CyQO
-
――――――――――――
( ΦωΦ)「雪山に騎士を派遣した理由は何だ」
(",・∀・)
( ΦωΦ)「黙っていては分からん」
(",・∀・)
(#ΦωΦ)「雪山の危険性を解っているのか…?」
(#ΦωΦ)「たかが飛行機如きの為に、部下の命を危険に曝せるものなのか!?」
(",・∀・)「私の部下です。口出しは不要です」
(#ΦωΦ)「我輩の部下でもあるっ!」
(",・∀・)「…」
(",・∀・)「やっぱり、駄目ですね」
( ΦωΦ)「何を…?」
(",・∀・)「申し訳ない、王には死んで頂きます」
(;ΦωΦ)「………っ!」
- 279 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:16:19 ID:GEAN7CyQO
-
(;ΦωΦ)「ぐ…っ!衛兵!モララーを…!!」
(",・∀・)「衛兵は掌握し、除けてあります。
金、というダーティな手段ではありますがね」
(",・∀・)「思えば、王女などを狙わずとも、直接頭を乗っ取ればよかったんです」
(; ω )
(",・∀・)「チェックメイト、ですね?」
――――――――――
从;'ー'从「あ…あ…」
从;'ー'从「お父様…タカオカも…?」
- 280 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:17:35 ID:GEAN7CyQO
-
今日はここまで。
冬に投下するべきだったとさっき気付いた。
- 281 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 00:43:39 ID:f48ynO.I0
- 乙!!
- 282 :名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 22:42:50 ID:3z7l5u9c0
- おつ
- 283 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:22:58 ID:e2.N0h9YO
-
第12話『生命と死と』
外には雪が降り、厳しい寒さが襲ってきている。
灯籠石を擦り、洞窟の真ん中に置く。
周りを確認しに行っていたハインが帰ってきた。
('A`)「どう?」
从;゚∀从「何もいない。あと寒い…」
鍋に雪を詰め、灯籠石で暖め始めた。
しばらくすればスープの粉末を溶かせる。
ハインの鞄を失くしたので、寝袋もないし食料も半分以下。
厳しい状況と言えた。
- 284 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:24:12 ID:e2.N0h9YO
-
…ようやくスープができた。
少ないそれを分けて飲み、パンをかじる。
('A`)「あの時は無我夢中だったが…良かったのか?」
从 ゚∀从「何が」
('A`)「騎士だよ。雪崩でどうにかしちまった奴ら」
問いに対して曖昧な返事をしてからハインが返す。
从 ゚∀从「いい…んじゃないかな」
从 ゚∀从「あいつら皆自分の階級とか金しか考えてない奴ばっかだし」
从 ゚∀从「面識なんか無いに等しいし、何より殺されかけたろ」
- 285 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:25:33 ID:e2.N0h9YO
-
从;゚∀从「つーか、そう思ってないと罪悪感に潰される」
('A`)「ま、そうだな。……行くか」
从 ゚∀从「なんか持とうか?鞄ないけど…」
('A`)「いや、気にすんな」
鞄を持って洞窟を出る。
凍てつく空気が肌を刺した。
ひたすらに上を目指す。
会話は随分と減り、雪を踏む音ばかりが聞こえる。
周りを見渡しても、黄色も青も見えはしない。
从 ゚∀从「まっすぐ進んでいりゃあ、もうすぐ頂上だがなぁ」
('A`)「どんだけ流されたのか、だよな」
- 286 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:27:01 ID:e2.N0h9YO
-
それでも休憩を挟みつつ登山を続けると、やがて傾斜が緩まり、地面は水平となった。
('A`)「ここがとりあえずのてっぺんだな」
从 ゚∀从「さあ、探すか」
周りを見ながら、ゆっくりと歩く。
視界はいいとは言い難いが、見えなくはない。
('A`)「…なあ」
从 ゚∀从「ん」
('A`)「あいつら、死んでるんだよな…」
从 ゚∀从「お前がそう言ったんだ」
('A`)「そうだな…。すまん」
从 ゚∀从「まぁ……でもさ、生きてるに越したことはないよなぁ」
('A`)「だよな」
- 287 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:27:49 ID:e2.N0h9YO
-
単調な景色に異変が見えたのは、それからしばらくのことだった。
白に混じって、黄色が一点。
気づくと共に、二人は精一杯の速度で向かった。
('A`)「これだ!」
从 ゚∀从「あっちに青もあるぞ」
確かに、少し離れた辺りに青い機体も霞んで見える。
('A`)「…何もないな」
機体を調べたが、荷物から動力の灯籠石に至るまで何もなかった。
もちろん、死体も。
从;゚∀从「先を越されたのか?」
('A`)「それはないと思うけどな…とりあえず向こうも調べよう」
青い飛行機も見てみたが、結果は同じ。
何もなかった。
- 288 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:28:28 ID:e2.N0h9YO
-
从 ゚∀从「移動したのかな」
('A`)「ああ。とにかく付近を捜すぞ」
この付近は、とりわけ岩の多い地形となっている。
荷物がなかった以上、どこかへ移動したのだろう。
闇雲に歩き回り、それらしきものを捜す。
岩が洞窟を形作っている場所も多く、すぐには見つかりそうにない。
(;'A`)「長引くかもな…」
从;゚∀从「一旦休もうぜ」
ハインに従い、近場の岩を風除けにし、小さな火と共に体を休めた。
('A`)「近くにいる筈なんだがな…」
从 ゚∀从「せめて雪が止めばなぁ」
('A`)「…」
('A`)「行くか」
从 ゚∀从「ん」
- 289 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:29:44 ID:e2.N0h9YO
-
それからもしばらく捜しつづけた。
しかし、寒さは確実に体温を奪い、死を近づける。
不意にドクオが何かを見つけて叫んだ。
(;'A`)「あった!あれだ!」
ドクオが走り出した先にあったのは、青い大きな板。
从 ゚∀从「洞窟の蓋代わりってことか」
明らかに人工の板。
ショボン達の飛行機の外装、そのものだった。
雪に足をとられながらたどり着き、板をずらして入った。
何かがあるが板のせいで光が入りづらく、いまひとつ分からない。
从 ゚∀从「灯籠石が落ちてる…」
擦って火をつけ、地面に置く。
橙の光が、洞窟を控えめに照らし出した。
- 290 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:30:40 ID:e2.N0h9YO
-
(;'A`)
そこにあったのは、懐かしい顔。
あの四人が、間違いなくそこにいた。
('A`)「…ハイン、ありったけの石つけて」
('A`)「明るいとこで、見たい」
从;゚∀从「うん」
足元に落ちている四つにも、火をつけた。
火は大きく燃え上がり、固まった顔を一層照らす。
どこかで、呻き声がした。
(;^ω^)「う…?」
青白い顔をしたブーンが、ゆっくりと動いた。
- 291 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:31:45 ID:e2.N0h9YO
-
(;'A`)「ブーン!おい!」
ドクオが飛びつき、肩を叩く。
ブーンは力無く笑った。
(;^ω^)「お…。生きてるうちに、また会えるとは…思わんかったお…」
(;'A`)「他の皆は生きてるのか!?」
( ^ω^)「死んでる、お…」
( ^ω^)「飛行機が墜落したとき、ツンは気を失ってて」
( ^ω^)「僕もギリギリだったけど、どうにかここにたどり着いたお…」
既にブーンは息も絶え絶えだ。
弱々しい呼吸が聞こえる。
(;'A`)「もういい、喋んな!」
( ^ω^)「話すお…」
- 292 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:32:50 ID:e2.N0h9YO
-
( ^ω^)「で、…ショボン達を捜しに行って、どうにか見つけた…けど」
( ^ω^)「ショボンは…もう…死んでて」
( ^ω^)「血を流して…泣いてるクーと一緒に…ここへ連れてきたお…」
( ^ω^)「ずっと…泣いてるクーを見てるのは…、心が痛かった…お」
洞窟に寝かせられている二人を見る。
服が赤黒く斑に染まっていたが、その手はしっかりと繋がっていた。
( ^ω^)「間もなく二人も…死んだお」
( ^ω^)「僕も…死のうと思ったけど…、どうしても…怖くて」
从;゚∀从「ほら、立てよ。皆で一緒に帰ろう」
ブーンはハインの言葉を、ゆっくりと首を振って拒否した。
- 293 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:34:18 ID:e2.N0h9YO
-
( ^ω^)「僕は、もう駄目だお…。手、見てお」
ドクオがそっと手袋を外す。
その指は、悍ましいほどに青黒くなっていた。
(;'A`)「凍傷か…」
( ^ω^)「これだけ…は、言っとかない、と…」
( ^ω^)「僕達の…死体は、放っておいて…くれお」
从;゚∀从「何言ってんだよ!何のために来たと…」
( ^ω^)「死体…四つも連れて雪山とか…、それこそ自殺行為だお」
( ^ω^)「死んでまで迷惑には…ならないお」
(;'A`)「…」
どう返していいか分からない。
二人でも厳しいこの状況下で、ブーンの言い分はもっともと言えた。
- 294 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:35:18 ID:e2.N0h9YO
-
( ^ω^)「そろそろ…だお。僕、も…」
(;'A`)「ブーン!待てっ!!」
( ^ω^)「もう…眠いお…ちょっと、寝るお…」
( ^ω^)「会えて、良かった…。二人で、生きて…くれ、お…」
(;'A`)「おい!」
少し笑って目を閉じ、ブーンは動かなくなった。
後に残ったのは、四人分の死体。
どれも凍りついていて、表情はおよそ穏やかとは言えない。
( ω )
ξ ⊿ )ξ
川 - )
(´ ω `)
(;'A`)「おい…起きろよ…」
- 295 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:37:02 ID:e2.N0h9YO
-
( A )「おい、おい…」
( A )「………………」
('A`)「無力だな、俺…」
从;゚∀从「そんな事、ないって…」
ドクオはブーンの手をとり、ツンのそれと重ねた。
冷たく固まった指同士が、なぜかぴったりと互いに嵌まった。
ツンが死ぬまで、もしかしたら死んでもずっと握っていたのだろう。
('A`)「あいつな、ツンが好きだったんだ」
('A`)「ま、俺達の延長線上みたいなもんだったけど…」
('A`)「…」
('A`)「…そうだ、生きないとな」
('A`)「俺達は、どうしても生きないと…」
从 ゚∀从「…ああ…」
('A`)「今日は、ここで寝よう」
从 ゚∀从「分かった」
- 296 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:37:53 ID:e2.N0h9YO
-
洞窟の隅にある僅かな食料を集めた。
これで今回の分は凌げる。
('A`)「飛行機の動力部分も使い物にならなかったから…」
('A`)「戦利品は灯籠石四つ、だけだな」
('A`)「食料ももうすぐ底をつくか」
淡々と食事の用意をするドクオに、聞いてみる。
野暮なのは分かっている。
从 ゚∀从「悲しくないのか?」
('A`)「悲しいよ」
('A`)「悲しいに決まってる。悔しくもある」
('A`)「俺があの時見つけてれば、もしかしたら帰れたかも、とかな」
('A`)「でも、泣いたって何もないだろうが」
- 297 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:39:08 ID:e2.N0h9YO
-
ハインがドクオの肩を掴み、ぐいっと引き寄せた。
そのまま腕を背中に回し、ドクオの頭を胸の上に押し付ける。
(;'A`)「ちょっ、何…」
从 ゚∀从「泣け」
(;'A`)「は?」
从 ゚∀从「お前な、溜め込み過ぎなんだよ」
(;'A`)「俺の勝手だろ…」
从 ゚∀从「んな姿勢で格好付けんなよ。いいから泣けって」
(;'A`)「…」
やがて、小さな嗚咽が聞こえてきた。
堪え切れなくなり、ハインも泣き出す。
二人分の悲痛な泣き声が、雪山に響いた。
- 298 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:41:16 ID:e2.N0h9YO
-
―――――――――――
翌日山を降りる事にした。
これ以上ここにいる意味は、ない。
('A`)「何、昨日の…」
从 ゚∀从「あーでもしないと泣かないだろお前」
('A`)「いいんだよ、そんなのは」
从 ゚∀从「落ち着いて思い出したらちょっと興奮してきたろ?」
(;'A`)「…しねーよ」
从 ゚∀从「でも俺が抱き着いてるとき、いつも心臓バクバクだろ」
(;'A`)「うるせー」
手早く荷物を纏め、鞄に詰めて背負う。
入口の板をずらし、外に出た。
天気は良好。
('A`)「じゃあな、皆。達者でな」
从 ゚∀从「またいつか会えるよな」
自分にもよく分からない別れの挨拶をし、歩き出す。
おもむろに雪を口に含んだ。
口の中に刺すような冷たさを感じる。
無意味な行動だが、生きていると実感できた。
- 299 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:42:51 ID:e2.N0h9YO
-
いつものようにドクオを先頭に、斜面をひたすらに降りる。
予想以上に体力を使う。
(;'A`)「疲れるな…」
从;゚∀从「疲労が溜まってんのも、でかいんだろうな…」
短く休憩を挟みながら、進む。
会話はよりいっそう減り、殆ど黙ったままで雪崩の後使った洞窟まで着いた。
食料も節約しなければならない。
一人につきパンを半分と、チーズを一欠け、だけ。
スープは前回で切れてしまった。
時間もかからず食べ終わる。
不意にハインの腹が大きく鳴った。
从;゚∀从「いや、今のは俺の意思じゃないぞ」
('A`)「んなもん分かってる。…手袋、外してみ」
从 ゚∀从「ん、ああ」
- 300 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:43:23 ID:e2.N0h9YO
-
青白く、血色の悪い指。
あまり生命は感じられない。
('A`)「動く?」
从 ゚∀从「今は暖まってるから動くけど、外では殆ど動かない」
('A`)「痛みが無くなったらすぐ言えよ。そうなったら致命的だから」
从;゚∀从「分かった」
ブーンの指の色を思い出し、背筋が冷えた。
('A`)「もう寝るか」
火を消し、毛布を二人で被る。
いつまでも慣れないし、寒い。
ひゅう、という音が聞こえている。
風が出てきた。
吹雪は敬遠したいところだ。
- 301 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:44:55 ID:e2.N0h9YO
-
結局、吹雪にはならなかった。
用を足しに行っていたドクオが戻ってきた。
(;'A`)「手がかじかんで漏らすかと思った」
从 ゚∀从「危ねーな」
('A`)「股間に凍傷を起こすとこだった」
从;゚∀从「…俺も一応行ってくる」
ハインが戻ってから出された食事は、少し増えていた。
('A`)「足りると思うし、何より食わないと歩けない事に気付いた」
从 ゚∀从「まあ、結構残ってるようにも見えるよな」
それでも、やはり少ない。
中途半端な空腹を持て余しながら、ただ歩いた。
- 302 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:45:47 ID:e2.N0h9YO
-
実際、雪をかきわけながら歩くのはかなりの重労働だ。
人数も少なく、テントがないため体力回復も困難。
さらには食料まで少ないときている。
岩が多い地形の為、いつかのように滑るのも危険だ。
(;'A`)「最悪だよな…」
風が出てきた。
吹雪に見舞われるのは、まずい。
从;゚∀从「なあ、ちょっと休もう」
(;'A`)「ああ…」
その場にスコップで穴を掘り、天井部分を幌で塞いだ。
雪の穴の中に二人で座りこむ。
風がないだけで、随分暖かく感じる。
从 ゚∀从「…ここで寝ちゃ駄目だよな」
('A`)「洞窟ですらギリギリのラインだからな、駄目」
- 303 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:46:35 ID:e2.N0h9YO
-
('A`)「何か食べるか?」
从 ゚∀从「いい…」
('A`)「そうか」
会話が続かない。
二人共、眠らないだけで必死だった。
ドクオはじっとしているが、ハインは一定時間毎に唇を強く噛んでいる。
それでも眠りそうになり、時折頬を叩いている。
いくら強気であろうが、やはり女性。
体力の限界が来ているのか。
ドクオが幌の隙間から外を見た。
風が強く吹き、雪も降っている。
('A`)「風が弱まるのを待って出るぞ」
从 ゚∀从「……ん、おう」
- 304 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:47:13 ID:e2.N0h9YO
-
しばらく堪えると、風の音が聞こえなくなった。
凝り固まった足を無理に動かし、穴を出た。
('A`)「ハイン?」
从;゚∀从「おう…」
それからは一言の会話もない。
ただ無心に歩いた。
幾許も進まないうちに、ハインの足音が聞こえなくなった。
慌てて後ろを振り向くと、雪にへたりこんでいる。
从;゚∀从「ごめん、休ませてくれ…」
ドクオは鞄を体の前に回すと、ハインを背中に引っ張り上げた。
从;゚∀从「お、おい…」
('A`)「踏ん張れ。もうちょっとだからな」
- 305 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:48:21 ID:e2.N0h9YO
-
('A`)「山じゃいつ吹雪くか分からないし、堪えてる体力も食料もない」
('A`)「俺なら心配すんな」
从;゚∀从「ごめんな…」
(;'A`)「謝んなよ。精一杯生きるんだろ」
从;゚∀从「ああ…」
それから間もなく、山を降り切ることができた。
後ろから不安定な寝息が聞こえる。
揺すり上げてバランスを直し、また歩く。
眠っている余裕はない。
一刻も早く帰らなければ、二人とも死ぬだけだ。
自分の足音、吐息、ハインの寝息。
それだけを聞いて歩いた。
- 306 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:49:09 ID:e2.N0h9YO
-
やがて、町の光が見えてきた。
その頃には、ハインも一応歩ける程には回復していた。
半病人のように家までたどり着き、ベッドに倒れ込む。
風呂にも入りたいし、着替えもしたいが、それは後回し。
とにかく、寝たかった。
様々なことが頭を過ぎる。
モララーの生死。
殺してしまったであろう騎士。
死体も埋められなかった皆。
それら全てを頭から追い出し、眠りに落ちた。
- 307 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:49:50 ID:e2.N0h9YO
- 今夜はこれまで。
読んでくれた人、ありがとう。
- 308 :名も無きAAのようです:2012/08/18(土) 23:59:25 ID:zge92UOI0
- 乙...皆死んだのか...
- 309 :名も無きAAのようです:2012/08/19(日) 00:00:06 ID:P9Ut.JT.O
- うん、読んだよ
- 310 :名も無きAAのようです:2012/08/19(日) 00:01:41 ID:gqNMYsgUO
- こんなにサクサク死んじゃうとは・・・乙
- 311 :名も無きAAのようです:2012/08/19(日) 17:12:29 ID:0OWOvstU0
- 予想できない進み方してて結構気になってる
おつ
- 312 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 14:41:17 ID:H5gQ4CgQ0
- 嫌な奴ほど生き残るのな
乙乙
- 313 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:17:59 ID:eAaENk/EO
-
第13話『城内騒乱』
あれから数日、ペニサスの店。
奥の部屋で座って話す、三人の姿があった。
('、`*川「…ふうん」
('A`)「ま、そんな訳です」
('、`*川「まあ、何」
('、`*川「二人生きてるだけでも奇跡だよ」
('、`*川「でも、だからって大人しくする訳じゃないんだね?」
从 ゚∀从「ええ」
ハインが即答すると、ペニサスは少し笑った。
それでこそ、という風に。
('A`)「あいつらの方が、明らかに飛行機の性能は高かった」
('A`)「だから、城に動力を盗みに入ります」
- 314 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:18:50 ID:eAaENk/EO
-
('、`*川「ほう」
('A`)「うまくいく確証はありませんが、方法はあります」
('、`*川「女の子を武器にするとは、ドックン外道だね」
(;'A`)「…?」
ペニサスには、まだハインの正体は話していなかった筈。
何故、知っているんだ。
('、`*川「ああ、当たりかぁ」
从;゚∀从「え…」
('、`*川「私、元は国の機工師なんだよね。小さい頃のハインちゃん見たことあるよ」
从;゚∀从「そうだったんですか…」
('、`*川「止めろとは言わないけど、相当厳しいんじゃないかな」
- 315 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:20:46 ID:eAaENk/EO
-
('A`)「でも、行きます」
('A`)「これまでは負け続けでしたから。……もう、後がないんです」
('、`*川「…ま、そうだね。決行はいつ?」
('A`)「明日にも」
('、`*川「分かった。ここまできたら全力で応援してあげるよ」
从 ゚∀从「え、いいんですか?」
('、`*川「まあ私も会いたい奴いるし」
('A`)「ありがとうございます」
('、`*川「んにゃ、気にしないで」
再度礼を言い出て行こうとしたドクオを、ペニサスが軽く呼び止める。
('、`*川「皆が死んだのはあんたのせいじゃないよ」
(;'A`)「え?」
('、`*川「気負いすぎるな、って事」
('A`)「…はい」
('、`*川「ま、絶望とか自責に潰されるようなタマじゃないだろうけどね」
ハインが呼ぶ声が聞こえる。
また礼を言い、そこを後にした。
- 316 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:22:11 ID:eAaENk/EO
-
从 ゚∀从「作戦とかあんの?」
家に帰り、簡単な食事を摂る。
保存用に粉末にしたスープよりは、数倍美味しい。
('A`)「箝口令、ってことは、まだ末端の奴はお前がいると思ってるんじゃないかな」
('A`)「それを利用する予定」
从;゚∀从「大丈夫か…?」
('A`)「さあ?…でも見回りなんて大抵下っ端だろ」
从;゚∀从「えー…」
('A`)「城に会いたい人いるんだろ?」
从 ゚∀从「まあ、な」
('A`)「んじゃ行くぞ。一緒にいりゃ多分俺も平気だと思う」
从 ゚∀从「計画アバウトすぎるだろ」
('A`)「どうせ行くのは皆が寝静まった時間だし、それは最後の手段だからな」
- 317 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:23:38 ID:eAaENk/EO
-
――――――――――
鐘が鳴った。
つまり、普通の人なら今から就寝。
盗賊なら、今から仕事。
仮眠から覚めると、『応援』は既に家に到着していた。
('、`*川「お目覚めだね」
( ´_ゝ`)「おいっす」
(;'A`)「!?」
(´<_` )「ノックに返事がなかったから勝手に入ってきましたー」
从;゚∀从「か、鍵は?」
( ´_ゝ`)「それはもうがちゃがちゃと」
(;'A`)「盗賊だったんですか…」
( ´_ゝ`)「ペニサス盗賊団の機工担当兼モナーさんの飲み友達だ」
(´<_` )「機械の奪取らしいな、今回は」
('、`*川「ちなみに私は素人なんでよろしくね」
( ´_ゝ`)「さー、作戦でも立てるかな」
- 318 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:25:28 ID:eAaENk/EO
-
( ´_ゝ`)「まず目的を一つずつ言ってみ」
('A`)「機械の奪取とできればモナーさん奪取」
( ´_ゝ`)「早速二つ言ってるよこの子」
从 ゚∀从「会いたい奴らがいる」
('、`*川「殴りたい奴がいる」
(´<_` )「城まで乗り込んで殴るとかすげぇ物騒」
ひとしきり聞き、少し考え込んで兄者が言った。
( ´_ゝ`)「モナーの奪還は無理。一応罪人だし」
( ´_ゝ`)「後、班分けるぞ。ペニサス・ハイン組と流石・ドクオ組で」
- 319 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:26:45 ID:eAaENk/EO
-
( ´_ゝ`)「多分ハインの方はハインがいりゃどうにかなる。王族だし」
从 ゚∀从「なるほど…?」
( ´_ゝ`)「機工研究室は地下にあるから、牢獄とも近い」
( ´_ゝ`)「牢獄も機工研究室もきっと兵士は多いが、どうにかする」
( ´_ゝ`)「最終的に正門に集合、みたいな感じ」
( ´_ゝ`)「以上が作戦、おっぱい揉みたい」
(;'A`)「!?」
(´<_` )「兄者よ、頑張りすぎで反動がきたか」
( ´_ゝ`)「あーフルチンで雪中行軍してぇ。フルパワーで乳房揉みしだきてぇ」
从;゚∀从「途中まで格好良かったのに…」
('、`*川「引くわー」
(´<_` )「行きますか。今から行けばいい時間だ」
( ´_ゝ`)「王様に裸踊り伝授してぇ」
- 320 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:28:43 ID:eAaENk/EO
-
外には妙な機械があった。
唸りを上げる機械に乗り込んで、眼前に聳える城へ向かう。
それぞれ背中に大小の袋を背負っている。
从*゚∀从「わっ、速っ」
('、`*川「いいでしょ」
('A`)「結構揺れますね…」
( ´_ゝ`)「たまにこの風圧に股間の兄者を当てたくなる」
(´<_` )「兄者、運転に集中するように」
从 ゚∀从「改めて俺達、全力で生きてるな」
('A`)「城で盗賊行為とか普通じゃないよな」
('、`*川「空飛ぼうとか考える時点で普通じゃないわ」
- 321 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:29:31 ID:eAaENk/EO
-
城門の近くで機械は停止した。
正面から入るらしい。
(´<_` )「一階に窓ないしな」
( ´_ゝ`)「じゃ、俺達が先に行って門をどうにかするからな」
('、`*川「頑張ってねー」
('A`)「緊張感が皆無ってのがまた」
三人で城門に向かい、兄者が門に大砲を向ける。
外に見張りはいない。
( ´_ゝ`)「さ、派手にいくかね」
十分離れて引き金を引くと、砲門から炎が噴き出した。
しばらく木製の門をじりじりと焼き、黒くなった門扉を蹴破る。
(´<_` )「派手か?」
( ´_ゝ`)「ドカーンってしたら確実に兵士集まるだろがよ」
- 322 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:30:55 ID:eAaENk/EO
-
一階に人気はなかった。
暗い廊下を走る。
(´<_` )「入って右に地下への階段だっけか」
('A`)「ありましたよ」
次は階段を降りる。
牢獄は地下二階、研究室が地下一階だと聞いた。
(´<_` )「下から行くぞ」
( ´_ゝ`)「把握した」
地下二階へ向かって歩く。
踊り場から下を覗くと、兵士が欠伸をしているのが見えた。
(´<_` )「出番だな」
弟者が階下に向かって大砲を向けた。
- 323 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:32:32 ID:eAaENk/EO
-
*
从 ゚∀从「殴りたい奴って誰です?」
遠くで、微かに悲鳴が聞こえた。
('、`*川「いずれ分かるよ」
从 ゚∀从「…とにかく、俺の部屋へ行きますか」
('、`*川「王女様の言うがままに」
从;゚∀从「やめて下さい…」
二階のハインの部屋まで、誰にも会わずにたどり着いた。
そこにあった上等な服を身につけ、雰囲気を出す。
从 ゚∀从「これでごまかせるかと」
('、`*川「似合わないね、綺麗な服…」
从;゚∀从「ほっといて下さい…」
背後で、扉の開く音が聞こえた。
ぎしりと体が固まる。
「誰ですか?」
「……あー!」
- 324 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:33:23 ID:eAaENk/EO
-
*
牢獄を走る。
左右を間断なく見て、人を探す。
一番奥で、ドクオが声を上げた。
(*'A`)「いた!」
少し窶れているが、雰囲気は変わらない。
元孤児院の元院長、モナーがそこにいた。
( ´∀`)「…ん、ドクオ?」
('A`)「ええ、ドクオです!」
( ´∀`)「後ろは、兄者と弟者かい。久しぶり」
( ´_ゝ`)「久しぶり」
(´<_` )「ドクオ、話は手短にな。兵士は失神してるけど一応」
(;´∀`)「何したの…」
- 325 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:35:14 ID:eAaENk/EO
-
ドクオはかい摘まみながらではあるが、全てを話した。
モナーは、静かに頷いて聞いている。
( ´∀`)「そう…」
( ´∀`)「生きてて良かった、ドクオ」
('A`)「でも、皆は」
( ´∀`)「昔から君は背負い込み、溜め込みすぎる」
( ´∀`)「君の計画や飛行機に不備はなかったんだろ?」
(;'A`)「でも、俺のせいじゃ」
( ´∀`)「でも、じゃない」
( ´∀`)「…頼りなさい、誰かを」
( ´_ゝ`)「あ、こいつ今可愛い彼女みたいのいるよ」
(´<_` )「同棲してな」
( ´∀`)「何それ羨ましい」
- 326 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:36:34 ID:eAaENk/EO
-
( ´∀`)「…時間がなかったか」
( ´∀`)「じゃ、帰ったら僕の部屋の床下調べてね」
(;'A`)「床下?」
( ´∀`)「いいものがある。それがあればわざわざここの動力盗まなくていい」
( ´_ゝ`)「おい、何故俺達に教えてくれなかった」
( ´∀`)「君らの飛行機、普通の動力にも堪えられてなかったろ」
(´<_` )「うん、確かに」
一通りの話が終わり、一瞬静かになった。
(´<_` )「…時間ないから、もう行くぞ」
( ´∀`)「…ドクオ、僕もいずれ帰る。それまで頑張って、な」
('A`)「はい…!」
( ´∀`)「兄者、弟者、また呑もうな」
( ´_ゝ`)「裸踊り、期待してるぜ」
(´<_` )「踊ったのはお前だがな」
- 327 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:38:08 ID:eAaENk/EO
-
牢獄を出て、静かに歩く。
兵士は倒れて、起きる気配はない。
( ´_ゝ`)「変わってなかったな、あの人は」
(´<_` )「あれがあの人だな」
('A`)「モナーさん、相当機械に明るかったんですね」
(´<_` )「うん、まぁな。半端じゃなかった」
( ´_ゝ`)「欠点といえば酒癖かな」
('A`)「?」
( ´_ゝ`)「酔うと何でも喋っちゃうからあの人」
(´<_` )「禁忌研究罪で逮捕されたのもバーで喋ったからだしな」
('A`)「聞きたくなかったそんな事実」
( ´_ゝ`)「…さて、こっちの用は終わったがどうする?」
(´<_` )「予定をちょっと曲げて灯籠石でも盗むか」
('A`)「了解です」
- 328 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:39:08 ID:eAaENk/EO
-
*
(゚、゚;トソン「タカオカ様…!」
ミセ;゚ー゚)リ「と、誰です?そこのおばさま」
('、`*川「しばくぞ小娘」
从 ゚∀从「よう。…ま、すぐ出るんだけどね」
(゚、゚トソン「…ゆっくり話をしてる時間は、なさそうですね」
从 ゚∀从「顔だけでも見れて良かった。多分次会うのはずっと先だ」
ミセ*゚ー゚)リ「わずかな間でも帰ってきてくれて良かったです」
あの時は嘘のつもりで『帰ってくる』と言った。
こんな事態になるとは思わずに。
从 ゚∀从「頼みがある…」
- 329 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:41:37 ID:eAaENk/EO
-
(゚、゚トソン「何でしょう?」
从 ゚∀从「今から城内で盗賊を見つけても、捕まえないでくれ」
('、`*川「私達も盗賊だし」
ミ;*゚ー゚)リ「え、えと…解らないけど分かりました!」
从 ゚∀从「よし、ありがとう。あと、今父さんいる?」
(゚、゚トソン「ロマネスク様は…、殺されました」
从 -∀从「…そうか」
正直なところ、予想はできていた。
予想はできていたが、やはりやりきれない。
廃坑で留めを刺していれば、と。
ミセ*゚ー゚)リ「正式な発表はまだですが、暗殺のようです」
ミセ*゚ー゚)リ「次の王は、モララーという騎士だとか」
- 330 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:42:41 ID:eAaENk/EO
-
从;゚∀从「ここにきて、かよ…」
('、`*川「今王室にいるのは、モララー?」
鋭い目つきでペニサスが尋ねた。
(゚、゚トソン「ええ…多分」
('、`*川「よし、行こうか王室」
从 ゚∀从「殴りたい人って…」
('、`*川「そう、モララーだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あの、多分入れませんよ、王室…」
(゚、゚トソン「ガードが厳重ですからね」
「あの…」
いつの間にかいた誰かが、控えめに声を上げた。
今度はハインと同じぐらいの身長の小さな陰。
从;'ー'从「えと…」
从'ー'从「よく分からないけど、王室なら私が」
从*゚∀从「ワタナベ!」
- 331 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:44:23 ID:eAaENk/EO
-
从;'ー'从「私、聞いたの…モララーさんが、お父さんを殺してた」
从'ー'从「タカオカだけでも生きてて良かった…」
从;゚∀从「やっぱりか…やけに都合いいもんな」
从'ー'从「で、手伝ってほしいんだ…」
('、`*川「じゃー行こうか、話してる時間が惜しいから歩きながらで」
从 ゚∀从「ええ。行くか、ワタナベ」
从'ー'从「うん」
扉を開け、静かな廊下の上を目指す。
ドクオ達は上手く行っただろうか。
ミセ*゚ー゚)リ「なんか、嵐みたいだったね…」
(゚、゚トソン「後半は話に入れませんでしたしね…」
- 332 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:46:03 ID:eAaENk/EO
-
*
『機工研究室』と彫られた物々しい鉄の扉。
その中では、こんな時間であっても機工師と兵士が研究や警備の為にいる。
そんな頑丈な扉が、突然大きな音を立てて吹き飛んだ。
(*´_ゝ`)「じゃじゃーーーーん!!」
(*´_ゝ`)「盗賊でぇーーーっす!!」
('A`)「すっげえ生き生きしてますね」
(´<_` )「正面突破大好きだから、こいつ」
突然の乱入者に、室内は騒然とした。
(*´_ゝ`)「こん中で一番でかい灯籠石持ってこーいっ!」
爪;'ー`)「くそ、どんな盗賊だよ……うぐぁっ!」
飛び出てきた騎士の腹に、兄者と弟者の砲弾が命中した。
二人の周りに騎士が集まる。
- 333 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:46:34 ID:eAaENk/EO
-
(*´_ゝ`)「やっぱ泥棒と盗賊の違いはコレだな!派手さが違う!」
(´<_` )「俺は静かな方が好きだがな」
(;`・ω・´)「くそ…全員かかれ!相手は大砲、複数は相手取れん!」
( <●><●>)「囲めば勝機が出るのは分かってます」
( ´ー`)「………ボーナス、出るかな……」
爪'ー`)「く…」
四人の騎士が二人を包囲する。
背中合わせの流石兄弟は、未だに余裕。
( ´_ゝ`)「こういうのも、いいだろ?」
(´<_` )「まーな」
( ´_ゝ`)「やるか!」
(´<_` )「おうよ」
二つの大砲が、火を吹いた。
- 334 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:48:05 ID:eAaENk/EO
-
角で集まる数人の機工師。
そこにも、大砲が向けられた。
('A`)「これ予備だからもう壊せないんだよね…」
(;-@∀@)「あ…」
('A`)「悪いけど、動いたら撃つよ」
その言葉に、機工師が固まった。
(;-_-)「…」
一人が、隙を伺い工具を握り締める。
まさにその顔に、砲門が向いた。
('A`)「…次はないぞ。どうせあんたら警備関係ないから、責任は問われないだろ?」
(;-_-)「…、はい…」
よし、とばかりに振り向き、大きな飛行機にするすると登る。
しばらく金属音が続き、がこっ、という音と共に何かが取り出された。
灯籠石だ。
通常の数倍程の大きさで、これはドクオの頭ほどもある。
- 335 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:49:23 ID:eAaENk/EO
-
(;'A`)「こんなんあるんだ…」
驚くドクオに、兄者達が近寄ってきた。
( ´_ゝ`)「どうよ?」
(´<_` )「でかいなー」
('A`)「動力部分は大体同じです。単純に石が大きいってだけみたいで」
( ´_ゝ`)「よし、じゃあ撤収ぅー」
兄者が白い弾を大砲に詰め、適当な所に撃つ。
着弾と同時に、濃い煙が充満した。
後に残された機工師は、ただただ呆けているしかなかった。
- 336 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:50:10 ID:eAaENk/EO
-
*
ぎい、と重い音を立てて、物々しい扉が開かれる。
(",・∀・)「…騒がしいな、今日は」
モララーが、そこにいた。
(",・∀・)「謀反か何かかい?」
('、`*川「モララー」
モララーの言葉を遮るように、ペニサスが一歩前に出た。
('、`*川「あんたは間違ってる」
(",・∀・)「ほう?」
('、`*川「…昔は、違ったろう。誰かみたいに、純粋に外を見たがってた」
(",・∀・)「今は違う、と」
('、`*川「違うね」
('、`*川「ドクオ達を人の命を使ってまで邪魔をする」
('、`*川「位の為なら手段を選ばない」
('、`*川「今のあんたは、真っ黒だよ」
- 337 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:51:10 ID:eAaENk/EO
-
暫しの間、沈黙。
やがてモララーが口を開いた。
(",・∀・)「だから何だよ?」
(",・∀・)「形はどうあれ、僕は夢を追っている。何がいけないんだい」
('、`*川「仮に、地位を利用して目的を遂行するのを是としても」
('、`*川「人の命を弄んでる時点であんたは駄目だ」
(",・∀・)「それを言いに、ここまで?」
('、`*川「…私はあんたの心を確かめにきたんだ」
('、`*川「来なきゃ良かったけどね」
(",・∀・)「それだけか」
(",・∀・)「衛兵、来い!」
呼び掛けに応え、一人の兵士が奥から出てきた。
- 338 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:52:35 ID:eAaENk/EO
-
大柄な兵士。
モララーの声に応え、黙って剣を抜いた。
ミ,,゚Д゚彡「…」
(",・∀・)「ふふ。よし、殺してしまえ」
兵士は剣を振り上げ、こちらを睨み――
ミ,,゚Д゚彡「死ぬのは、お前だから」
(";・∀・)「!?」
ずぶり、とモララーの腹に剣を突き刺した。
(";・∀・)「な、何…!」
从'ー'从「モララーさん」
从'ー'从「あなたの味方は、もういませんよ…!」
(";・∀・)「どういう…」
从 ゚∀从「単純に、兵士が全員ワタナベを信じてるって事だろ。当たり前だけど」
从'ー'从「フサさん、ありがとう。あとは私達が…」
ミ,,゚Д゚彡「ええ、解りました」
- 339 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:52:47 ID:r3qlIunU0
- 支援
- 340 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:56:26 ID:eAaENk/EO
-
(";・∀・)「…く、卑怯な…」
うずくまるモララーの周りが赤く染まっていく。
その目の前に、二人が立った。
从 ゚∀从「…父さんや皆が受けた痛みの何分の一だよ。苦しまないのを幸せに思え」
从'ー'从「話すことは、もうありませんね」
从'ー'从「これからの国は私が、いや私達が作ります」
从 ゚∀从「…尤も、俺はしばらくは一緒にいられないがな」
从 ゚∀从「クイーンを侮ったお前の負けだな」
「チェックメイトだ」
「チェックメイトです」
殆ど同時に、二つのナイフが躊躇いなくモララーの背中に突き立てられた。
- 341 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:57:23 ID:CDEVEESYO
- 物語は淡々とすすんでるな
支援
- 342 :名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 23:59:33 ID:eAaENk/EO
-
びくびくと痙攣を繰り返すモララーは、騎士に持って行ってもらった。
しばらくは無言だったが、ふとハインが口を開く。
从;゚∀从「やっと終わったか…ワタナベ、ありがとな」
从'ー'从「ごめんね…前も、体調治ったら会いに行こうと思ったんだけど…」
从 ゚∀从「あー、いいよそんなん。勝手に出たの俺だし」
从;'ー'从「本当は一人で全部やる気だったんだけど、手伝わせちゃって」
从 ゚∀从「いや、気にすんな」
从;゚∀从「にしてもお前がここまでやってたとはな…」
从'ー'从「どうしても最後の勇気が出なくて…。
それに、実はまだモララー寄りの騎士もいるし」
从 ゚∀从「ま、当然っちゃあ当然か」
- 343 :名も無きAAのようです:2012/08/21(火) 00:02:48 ID:qFSt30x.O
-
モララーの遺した血溜まりをじっと見ていたペニサスが立ち上がり、言う。
('、`*川「しんみりしてるとこ悪いけど、帰るよ」
从 ゚∀从「あ、分かりました」
从'ー'从「もう行っちゃうの?」
从 ゚∀从「まあ、な。一応盗賊だしさ」
从 ゚∀从「…アレだ、全部終えたらまた帰ってくるさ」
今度は本心からそう言った。
もう失敗はできない。
从'ー'从「うん、じゃあ頑張って。私もどうにかやるから」
階下に下り、城門を開放して貰った。
ドクオ達は既に待機している。
从 ゚∀从「じゃ」
从'ー'从「また、いつか」
互いに緩く手を握り、放す。
――ゆっくりと、重い扉が閉まった。
- 344 :名も無きAAのようです:2012/08/21(火) 00:03:22 ID:qFSt30x.O
- 今夜はこれまで。
支援ありがとね
- 345 :名も無きAAのようです:2012/08/21(火) 00:10:43 ID:34dpiSms0
- 乙!
- 346 :名も無きAAのようです:2012/08/21(火) 00:23:08 ID:hqcdrfoM0
- おつ!
- 347 :名も無きAAのようです:2012/08/21(火) 20:43:38 ID:ECbjjDvI0
- このまま幸せになっておくれ
乙です
- 348 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:30:38 ID:bJr5IkMoO
-
第14話『空に全てを』
('、`*川「何これ」
ペニサスが持っているのは数枚の紙。
何やら細かく書き込んである。
('A`)「モナーさんの部屋の床下にありました。多分設計図です」
('、`*川「あんたらが灯籠石だけ持って帰ってきた理由かい」
('A`)「ええ、まあ」
( ´_ゝ`)「さすがに材料の都合つけられるのはペニサスさんだけだしな」
('、`*川「…多分いくつかは足りないし、また廃坑かなぁ」
从 ゚∀从「どうせ飛行機置くのは廃坑なんだし変わらないでしょ」
(´<_` )「じゃ、一旦工具とって廃坑集合で」
('A`)「分かりましたー」
- 349 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:31:49 ID:bJr5IkMoO
-
――――――――――
( ´_ゝ`)「…さて」
(´<_` )「何となく懐かしいな」
('A`)「ええ」
散らばった部品。
壁に飛んでいる塗料。
全てがずっと昔のことに思えた。
从 ゚∀从「さ、始めましょうよ」
('、`*川「モナーの件と合わせて三度目の正直ね」
('A`)「二度あることは、にならないのを祈りますか」
( ´_ゝ`)「まあ平気だろ。今度はモララーとやらの邪魔も入らん」
(´<_` )「じゃー部品探しますか」
('A`)「あ、俺テント立ててきます」
各々、廃坑に散っていく。
廃坑には、前回利用した金属の裁断機なども準備されていた。
- 350 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:32:29 ID:bJr5IkMoO
-
いつかと同じように、着実に機械は組み立てられる。
人数が少ないため、ゆっくりと。
('A`)「動力部分できました…けど」
('A`)「モナーさんの動力と、この灯籠石じゃサイズ合いませんよ」
( ´_ゝ`)「この兄者が改良してしんぜよう」
('A`)「分かりました。弟者さんお願いします」
(´<_` )「おう」
( ´_ゝ`)「あっこの感じ久しぶり」
从;゚∀从「うぉぉぉぉぉう!」
('、`*川「あーしっかり抑えて抑えて」
从#゚∀从「とぉう!」
('、`*川「よしよし」
- 351 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:33:28 ID:bJr5IkMoO
-
作業は少しずつながら確実に進み、三月程を要した。
前回よりも一回り大きなものができつつある。
('A`)「兄者さん」
( ´_ゝ`)「ぎゅいーんぎゅいーんががががが」
(´<_` )「兄者、それはもういい」
( ´_ゝ`)「つまらん奴め…。まあいい、鉄板な」
手渡された板を、飛行機の腹の部分に嵌め込んで固定する。
…これで、一応は完成となった。
銀色をした、大きな飛行機。
从*゚∀从「おお…」
( ´_ゝ`)「お疲れ様」
(´<_` )「かなりかかったな…」
('、`*川「え、完成?」
(;'A`)「そうでしょ?」
- 352 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:34:26 ID:bJr5IkMoO
-
('、`*川「折角こんなもんがあんのに?」
ペニサスの足元にあるのは、三色の塗料。
内容はやはり赤、青、黄のようだ。
(;'A`)「色塗り楽しかったんですか?」
('、`*川「…ちょっとだけ、ね」
( ´_ゝ`)「じゃ塗るか」
从 ゚∀从「どうせなら三色全部使います?」
(´<_`;)「えー…統一感ゼロじゃん…」
('、`*川「いいでしょこの際。前から赤・青・黄でいくか」
('A`)「すっげえ派手になりそう」
そう言いながらも各自刷毛を手にとり、赤い塗料を塗っていく。
- 353 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:35:17 ID:bJr5IkMoO
-
('、`*川「こういうの好きだわー、私」
( ´_ゝ`)「確かにテンション上がりますよね」
赤い部分を塗り終わり、刷毛を持ち替え真ん中を青に変えていく。
ドクオとハインは尾翼の部分で黄色を塗っている。
(´<_` )「…」
弟者は三色の刷毛を持ち、全員分の修正をしているようだ。
从 ゚∀从「弟者さんが器用すぎる」
('A`)「もうあの人だけでいいと思うんだ」
(´<_` )「修正箇所が増えるから兄者は塗らないでほしいところだ」
(;´_ゝ`)「喋った!」
わいわいと騒ぎながら塗っていく。
三つの色に分けられる飛行機。
その様子が、いつかどこかの本で読んだ未知の現象のようだとドクオは思った。
…確か、『虹』といったか。
- 354 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:36:50 ID:bJr5IkMoO
-
――――――――――――
飛行機を塗り終わり、全員がその前に立っている。
('、`*川「…何と言うか」
('、`*川「メルヘン?」
( ´_ゝ`)「悪趣味」
(´<_` )「前衛的と言っておこう」
彩られた飛行機は、随分と目立つ色をしていた。
(;'A`)「…まあ、いいか」
从 ゚∀从「三色揃ってるのが大事なんだよ、多分」
('、`*川「…さて、最終点検に入るよ」
(;´_ゝ`)「塗る前にやるべきでしょう、それは」
('、`*川「細かいことはいいんだよ。…あと、ドックンとハインちゃんは一旦家帰んな」
('A`)「え、何でですか?」
('、`*川「ちょっとでもゆっくり休むべきだろ。あと小型のテントも持って来ないとだし」
('A`)「あーなるほど」
- 355 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:38:18 ID:bJr5IkMoO
-
点検もしたかったが、ペニサスに従い後を任せることにした。
しばらく歩き家について、どさりとベッドに寝転がる。
从 ゚∀从「ベッドが貴重に思える今日この頃ぉー」
('A`)「お前が来てからテントの使用頻度が跳ね上がったからなー」
しばらく会話が途切れた。
沈黙を埋めるように、ドクオが話し出す。
('A`)「…お前さ、いいの?」
从 ゚∀从「ん?」
('A`)「正直、城の生活のがいいだろうし」
('A`)「また堕ちるかもしれないし、さ」
从 ゚∀从「何でここにいるか、って…」
从 ゚∀从「後戻りできなくなってから聞くなよ…」
(;'A`)「すまん…」
- 356 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:39:03 ID:bJr5IkMoO
-
从 ゚∀从「でも、関係ないかな」
从 ゚∀从「俺はここにいたいよ」
从 ゚∀从「ワタナベも上手くやってるようで、心配ないし」
从 ゚∀从「なら俺は俺がいたいところにいるのさ」
从 ゚∀从「二度も命を救われた恩返しも、まだだしな?」
('A`)「んな大袈裟な…恩返しなんか」
从*゚∀从「ああそれはアレか、一緒にいるだけで満足です的な?」
('A`)「意地でも恩返せ、二倍ぐらいにして」
从 ゚∀从「怒んなよ!」
('A`)「怒ってません」
- 357 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:39:43 ID:bJr5IkMoO
-
不意に、ハインがこちらを真正面から見据えて言った。
从 ゚∀从「お前こそいいの?」
('A`)「何」
从 ゚∀从「皆、まだ雪山だろ。墓もないし、置き去りみたいなもんだ」
('A`)「…」
('A`)「…いいよ」
('A`)「ブーンの言った通り、皆を運んでたら俺達が死んでた」
('A`)「まあ、あいつらの夢を叶える為に置いてきた、ってのも変だけどな」
('A`)「外の世界に行く為なら、屑と呼ばれたって笑ってやる」
从 ゚∀从「…そうか」
- 358 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:40:33 ID:bJr5IkMoO
-
('A`)「死ぬ訳にはいかないし、くよくよしてても仕方ないだろ?」
从 ゚∀从「…」
从 ゚∀从「辛くない?」
('A`)「…?」
从 ゚∀从「いや、泣いても仕方ないとか、くよくよしてても仕方ないとか」
从 ゚∀从「もっとこう、感情出そうぜ」
从 ゚∀从「悲しい時には泣いて、嬉しいときには笑うとか」
从 ゚∀从「大事だぞ、そういうの」
(;'A`)「うーん、性分だしな…」
('A`)「善処しようか」
从;゚∀从「何それ…」
- 359 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:41:38 ID:bJr5IkMoO
-
遠くから鐘の音が聞こえてきた。
('A`)「もう時間だな。寝るか」
从 ゚∀从「最後に、いいか」
('A`)「どうぞ」
从 ゚∀从「怖い?」
('A`)「怖いよ」
('A`)「でも、怖がったって仕方ない」
从 ゚∀从「また出た」
('A`)「だから、その先の希望を見る」
('A`)「そうすれば、ちょっとは恐怖も和らぐぞ」
从 ゚∀从「そうか。ありがと」
从 ゚∀从「…明日、頑張ろうな」
('A`)「ん、ああ」
- 360 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:42:05 ID:bJr5IkMoO
-
――――――――――
(´<_` )「おはよう世界の希望ども」
('A`)「何ですかその超プレッシャー」
('、`*川「ドックン、この飛行機の名前どうすんの?」
('A`)「名前ですか。決まってますよ」
('A`)「また『ハヤブサ』でいきます」
('、`*川「ほー」
('A`)「あいつらには、もう見えないかも知れないけど…これでいいんです」
('A`)「引きずってる訳じゃないけど、忘れちゃいけないんですよ」
( ´_ゝ`)「…ま、それで飛びゃ奴らの無念も晴れるだろうさ」
- 361 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:42:37 ID:bJr5IkMoO
-
いよいよ飛行機に荷物を積み込み、ドクオとハインも乗り込んだ。
('、`*川「覚悟いい?」
('A`)「乗ってから言いますか、それ」
('、`*川「まあ、堕ちてもまた生きてるだろうし心配はしないよ」
从;゚∀从「えー…」
( ´_ゝ`)「大丈夫、今度は邪魔も入らん」
(´<_` )「帰ってきたらモナー交えて呑むか」
(;'A`)「ギリギリ未成年なんで、俺」
( ´_ゝ`)「気にすんなよ」
- 362 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:43:21 ID:bJr5IkMoO
-
从 ゚∀从「そろそろ行こうぜ」
('A`)「だな。…じゃ、行ってきます」
从 ゚∀从「行ってきまぁす」
('、`*川「んー」
( ´_ゝ`)「おう」
(´<_` )「じゃな」
('A`)「準備いいか、ハイン」
从 ゚∀从「いつでも来いよ」
操縦桿をしっかりと握る。
恐怖を蹴り飛ばし、ずっと前の出口を睨んだ。
('A`)「……よし、行くか」
- 363 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:44:19 ID:bJr5IkMoO
-
エンジンを入れる。
飛行機が細かい振動を始めた。
だんだんと速度を上げて廃坑の出口へ向かう。
出口の坂道が終わる辺りで、レバーを引く。
全て前回と同じタイミングだ。
前のプロペラが回って、奇妙な浮遊感を感じ――
(;'A`)「いくぞ!」
从 ゚∀从「おう!」
――虹色をしたハヤブサが雪空へと飛び上がった。
- 364 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:45:06 ID:bJr5IkMoO
-
――――――――――
(;´∀`)「はー…はー…」
(;´∀`)「あ、いた!」
('、`*川」「あら?」
(;´∀`)「家にいないとか、聞いてないよ…」
( ´_ゝ`)「むしろここがよく分かったな」
(´<_` )「何、脱獄?」
( ´∀`)「いや、王権が移って、禁忌研究罪が廃止されて」
( ´∀`)「手続きやらでごたごたしてて、ようやく解放」
('、`*川「あとちょっと早けりゃねぇ…」
(;´∀`)「え、まさか…」
(´<_` )「もう行ったけど…」
(;´∀`)「そんな…鈍りきった体に鞭打って走ったのに…」
( ´∀`)「ま、でもドクオなら平気かな」
(*´_ゝ`)「景気付けだ、呑もう!」
( ´∀`)「お前何にも変わってないのな」
- 365 :名も無きAAのようです:2012/08/22(水) 23:46:29 ID:bJr5IkMoO
- 今日はここまで。
短いですが、次回からは多分もうちょい長くなる予定。多分。
- 366 :名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 00:05:07 ID:gWLGLtSY0
- 乙乙!
地上生存組はハッピーエンドかな
次回も楽しみにしてる
- 367 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:18:49 ID:8Vo7oxdkO
-
第15話『虹のハヤブサ』
極彩色の飛行機が空を飛ぶ。
やはりスピードは段違いで、相応に寒い。
程なく町の真ん中程に差し掛かった。
遠くに城が見え、ハインがそちらを見ているのが分かった。
从;゚∀从「…なあ、おい」
('A`)「そんな心配しなくても、大丈夫だって言ったのお前だろ」
从;゚∀从「心配なんかしてねーよ、飛行機が見えるって言おうとしたの!」
(;'A`)「は?」
从 ゚∀从「多分モララー派の残りだ。
飛行機なら俺達って事、知ってたんだろう」
(;'A`)「しつこいな…ハイン、大砲の撃ち方分かる?」
从 ゚∀从「分かる」
('A`)「よし!」
- 368 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:19:38 ID:8Vo7oxdkO
-
敵の飛行機とはまだ距離がある。
今のうちならまだ作戦は立てられる。
('A`)「後ろから大砲出してくれ」
从 ゚∀从「おし」
('A`)「黒い弾なら着弾したら爆発するから、留めはそれを使ってくれ」
('A`)「狙うのは、敵の機銃部分、次に翼」
('A`)「流石に操縦士を狙う必要はないから、それでいいよ」
从;゚∀从「できるか、それ…」
('A`)「できる。…モララーの亡霊を撃ち落とすぞ」
从 ゚∀从「おう!」
- 369 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:20:29 ID:8Vo7oxdkO
-
前回の墜落で気付いた事がある。
あの機銃だ。
あれは、機首の向いている方向にしか向けない。
しかもあれだけ撃たれたにも関わらず、当たったのは数発のみ。
ドクオ達に到っては機体にしか当たらなかった。
命中率にも問題があるようだ。
つまり敵の機首の向きに気をつければ、当たらない筈。
('A`)「俺は飛行に集中する。頼んだぞ!」
从;゚∀从「頼まれたっ!」
飛行機が近づいてきた。
擦れ違う形で射線を避ける。
- 370 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:21:19 ID:8Vo7oxdkO
-
('A`)「…?」
擦れ違った時、何かを感じた。
違和感のようなもの。
そのまま旋回して敵の後ろにつき、様子を見た。
操縦桿を握る、フードを被った男。
違和感の原因はそいつだ。
嫌な予感が当たらないのを祈りつつ、後ろ姿を見続ける。
ばさり、フードが外れた。
( ",・∀)
(;'A`)「…!」
あの火傷、あの顔。
予感は当たった。
間違いなくモララーだ。
ハイン達が留めを刺したと聞いたが、まだ生きているのか。
- 371 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:22:16 ID:8Vo7oxdkO
-
ハインも気付いたようで、驚いているのが分かった。
从;゚∀从「モララー…!」
(;'A`)「ハイン、気をつけろよ」
从 ゚∀从「お前もな。考えるのは後だ、墜落させよう」
('A`)「…ああ。とにかく、機銃を狙ってくれ」
('A`)「繊細なもんだろうから普通の弾丸で構わない」
('A`)「他はそれからだ」
从;゚∀从「了解っ!」
ハインが大砲を構え直す。
ドクオが操縦桿を握り直す。
負ける訳には、いかない。
- 372 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:23:51 ID:8Vo7oxdkO
-
敵の飛行機が少し加速し、ぐるりとこちらを向いた。
(;'A`)「くっそ!」
必死に右に避けると、銃弾の群れが機体を掠めるのが分かった。
奴らもまた、確実に落とす気でいる。
从;゚∀从「敵の下についてくれ!」
('A`)「分かった」
そのまま後ろから突っ込み、飛行機の真下を通り過ぎる形をとる。
ハインが大砲を上に撃ったのが分かった。
横に離脱する。
从 ゚∀从「当たった!」
('A`)「よし、どう…うわっ!」
銃弾が飛来して、ドクオの頭のすぐ横で風を切った。
いつの間にか後ろに回り込まれている。
- 373 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:30:18 ID:8Vo7oxdkO
-
上下左右に飛び回り、どうにか機銃の狙いをずらす。
こちらの方が機動力が高いため、少しずつ距離が開いた。
(;'A`)「しつっこいんだよ…!」
また空を飛び回って機銃の射線を避ける。
十分な距離を取れたが、大砲も届かない。
敵の飛行機も様子を見にかかり、小康状態となった。
(;'A`)「危なかったな…」
从;゚∀从「大砲、機銃に当てたはずなんだけどな」
- 374 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:32:34 ID:8Vo7oxdkO
-
从;゚∀从「まさか外れてたのか?」
(;'A`)「何にせよもう一撃だ、爆弾使っていいからどうにか当ててくれ!」
从 ゚∀从「分かった!」
高度を下げると、町外れの家から人がこちらを見ているのが分かった。
慌てて浮き上がると、今度は目の前に敵の飛行機が見えた。
少し降り、擦れ違う形でまた下に潜り込む。
敵の銃口が光り、弾が撃ち出されるのが分かった。
翼を削り、肩を掠める。
(;'A`)「今だ、撃てぇっ!!」
从#゚∀从「当たれっ!!」
ハインが再び大砲を上に向けた。
- 375 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:34:00 ID:8Vo7oxdkO
-
重く、耳を撃ち抜くような音がした。
旋回して様子を見ると、敵の下部から煙が吹き出ている。
从;゚∀从「よし…!」
('A`)「ああ、留めを―――」
ドクオの台詞が終わらないうちに、飛行機が大爆発を起こした。
火のついた部品や何かが雪原に散っていく。
熱波に煽られ、機体がぐらりと揺れた。
(;'A`)「………!?」
从;゚∀从「灯籠石が誘爆したのか?」
(;'A`)「ゆ、誘爆…」
今や雪原には何も見えない。
ブーン達がああならなくて良かった、という思いが頭をよぎった。
- 376 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:35:30 ID:8Vo7oxdkO
-
何もない雪原を見渡し、ふと我に返った。
('A`)「…ハイン、無事か?」
从 ゚∀从「あー、何とかね」
从;゚∀从「というかお前、肩!」
指を差された箇所の服が破けている。
血は出ていない。
('A`)「大丈夫、怪我はない」
从 ゚∀从「なら、まあいいか」
頭上を見る。
いつも通り、重い雲が垂れ込めている。
('A`)「もう邪魔はないからな、行くぞ」
从 ゚∀从「おう」
- 377 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:36:17 ID:8Vo7oxdkO
-
从 ゚∀从「雲、突っ切れんの?」
('A`)「やってみないと分からん。覚悟いいか?」
从 ゚∀从「ちょっと待て、……よし、毛布完璧。行くぞ!」
大きな毛布を二人で被り、準備は整った。
ぐいっ、と体に重力を感じ、引き上げられるのが分かった。
耳元でごうごうと風が鳴っている。
しばらく昇ると、だんだんと周りの景色が白んできた。
(;'A`)「やっぱ寒い…」
从;゚∀从「なー」
本格的に雲に入り、周りが白とも灰色ともつかぬ色に塗り潰される。
('A`)「やっぱ真っ白だな…」
从;゚∀从「濡れるな…」
ただ雲の中を飛ぶ。
二人を包む毛布とガラスに水滴が張り付き、凍った。
('A`)「深呼吸とかすんなよ、危ないかも」
从 ゚∀从「しねーよ、んな事」
- 378 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:37:22 ID:8Vo7oxdkO
-
毛布越しの冷気が肌を刺す。
防寒着の肩の辺りが少し露出し、凍りついている。
(;'A`)「く…」
余った灯籠石で機体の主要部分を温める機構を作った為、機体が寒さにやられる心配はない。
しかし乗っている二人は別だ。
手袋をしている指が冷たいを通り越して痛く感じる。
前のガラスも風除けとはいえ、真っ白で何も見えない。
頬に雪が当たり、それも凍結した。
後ろから二本の腕が伸びてきた。
それぞれドクオの手を掴み、操縦桿に押し付ける。
从;゚∀从「ほら、こんなとこ早く抜けるぞ。しっかりしろ」
(;'A`)「あ、ああ」
从;゚∀从「前に乗り出したせいで背中凍ってんだよ。急げ!」
('A`)「分かった」
操縦桿を持ち直し、きっ、と上方を睨んだ。
- 379 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:39:05 ID:8Vo7oxdkO
-
前回到達した雲は、ほんの下層だったようだ。
証拠に、前回とは気温が段違いだ。
ゴーグルに水が付き、みしみしと氷が張る。
視界を確保するためにゴーグルを外すと、目元がちくちくと痛む。
从;゚∀从「大丈夫か!?」
('A`)「大丈夫。お前は自分の背中の心配をしろ!」
ただひたすらに高度を上げる。
体が凍っていくのが分かった。
気にもせずに上を睨む。
まだか。
まだなのか。
(;'A`)「どんだけ厚いんだよ、この雲…!」
- 380 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:39:50 ID:8Vo7oxdkO
-
(#'A`)「ハイン、生きてるか!?」
从;゚∀从「生きてる!喋りたくねーだけだ!!」
事実、息をするごとに肺が凍る気さえする。
後ろのハインがぐっと体を寄せてきた。
その部分だけ少し温まり、神経が復活したような錯覚に陥る。
(;'A`)「もうちょい堪えろ!」
从;゚∀从「もうちょいだな!?」
手の痛みがいよいよなくなってきた。
ハインの呼吸も荒い。
びしり、とガラスにヒビが入った。
凍える風が死神の声に思える。
- 381 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:41:00 ID:8Vo7oxdkO
-
雲の色が薄まってきた気がする。
もう少し。
息が震える。
まだか。
まだ白い。
体が軋み、痛む。
頼む、頼むから、どうにか――――
- 382 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:42:18 ID:8Vo7oxdkO
-
―――ぶわっ、とばかりに視界が開けた。
(;'A`)「…」
从;゚∀从「あ」
从;゚∀从「青い…?」
青い。
空が青かった。
(;'A`)「綺麗、だな…」
まさに一点の曇りすら無い、青空だ。
上の視界を丸々覆う程巨大なのに、継ぎ一つ無い。
从*゚∀从「すげーなー、何で出来てんだ、あれ…?」
('A`)「雲みたいにまた実体のない感じなのかもな…」
- 383 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:43:29 ID:8Vo7oxdkO
-
数十秒の間、二人で馬鹿のように青空を見上げていた。
('A`)「そういや」
('A`)「太陽に気をとられてばっかで、雲の上とか考えた事なかったな…」
从*゚∀从「すげぇ…!」
从*゚∀从「凄いぞ、ドクオ!!なんだよこれ!?」
从*゚∀从「下も見ろ、下もっ!!」
言われるがまま、下を見る。
今さっき通り抜けた雲が、まさに雪のように眼下にあった。
(*'A`)「お…!」
見たことなのい、形容しがたい程の素晴らしさ。
思わず頬が緩んだ。
- 384 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:44:37 ID:8Vo7oxdkO
-
ここは雲の中ほど寒くはないらしい。
機体や体の氷が溶けて、少しずつ感覚が戻っていくのを感じる。
突如、背中に衝撃を感じた。
振り向くと、ハインが抱き着いている。
腹に両手が回り、抱きすくめられた。
从*゚∀从「な、綺麗だな!」
(*'A`)「なー…」
外したゴーグルを見ると、エンジンに近い座席に置いたからか多少温まり、割れていない。
もう一度つけなおした。
从 ゚∀从「というか寒かったなぁ」
('A`)「半端じゃなかったな…」
- 385 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:45:09 ID:8Vo7oxdkO
-
しばらくは雲の上をのんびりと飛んだ。
ハインの興奮も収まり、落ち着いたようだ。
('A`)「空と雲もいいけど、あれもなかなか」
指差す向こうには、氷壁。
その壁が、すっぱりと途切れていた。
从 ゚∀从「越えられそう?」
('A`)「高度がな…これ以上は、ちょっと」
从 ゚∀从「ここまで来たんだ、絶対行くぜ」
('A`)「おう」
ひゅう、と風を鳴らして飛ぶ。
この調子なら、壁へもそうかからないだろう。
- 386 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:46:26 ID:8Vo7oxdkO
-
少しして、壁に着いた。
代わり映えのしない景色だが、退屈はしない。
壁の縁は、彼らの少し上に位置していた。
('A`)「やっぱここ以上はもう上がれんな…」
从;゚∀从「あと十数メートルか…」
('A`)「…」
('A`)「ハイン、大砲出して」
从;゚∀从「え、ああ」
ハインが後ろをがさがさと探り、大砲を取り出した。
从 ゚∀从「何すんの?」
('A`)「壁を崩す」
- 387 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:47:17 ID:8Vo7oxdkO
-
从;゚∀从「いや、そんなんできるなら最初から…」
('A`)「これ見て分かったんだけどさ」
('A`)「この壁、コップみたいだろ?」
从 ゚∀从「壁が?」
('A`)「底面に町や山があって、丁度ここが縁」
('A`)「コップの縁を欠けさせるぐらいなら、できる」
('A`)「多分」
从 ゚∀从「多分…」
('A`)「とにかく、ハイン撃ってくれ。出来るだけ近づくから」
从 ゚∀从「頼んだ」
- 388 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:48:43 ID:8Vo7oxdkO
-
それから少しずつ壁に近づき、壁との距離は今や目測で10メートル程となった。
壁に沿ってその距離を保って飛ぶ。
('A`)「爆弾でいいからな」
从 ゚∀从「任せろ!」
ハインが大砲を抱えた。
慎重に弾を入れ、狙いをつける。
从;゚∀从「もうちょい上かな…」
从 ゚∀从「よし!」
低い破裂音が聞こえた。
弾丸が飛び、壁に命中して爆発を起こす。
- 389 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:49:38 ID:8Vo7oxdkO
-
白い煙が上がった場所から、網の目のように亀裂が広がる。
(;'A`)「どうだ…?」
しかし、入ったひびはまた下の方から段々と修復されていく。
そして、しばらくもしないうちに元の氷壁に戻ってしまった。
从;゚∀从「戻っちまったぞ…」
(;'A`)「再生するとか言ってたな、忘れてた」
('A`)「ハイン、あと爆弾は何発ある?」
从 ゚∀从「二発」
(;'A`)「ギリギリだなー…」
少し考え、ドクオは次の作戦をハインに話しはじめた。
話を聞くハインが段々と不安げな顔になる。
- 390 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:51:18 ID:8Vo7oxdkO
-
('A`)「…できる?」
从;゚∀从「…」
从 ゚∀从「やる」
ぎゅっと大砲を抱え直し、今度はドクオの横から前に向けた。
二人で目を合わせて頷いた。
飛行機が壁からかなり離れ、今度は壁に向かって正面から飛んだ。
どんどんと壁との距離が詰まる。
从;゚∀从「行けっ!」
ハインが撃った砲撃が、壁にひびを入れる。
その間も飛行機は壁に向かっている。
(;'A`)「早く!」
从;゚∀从「うっせー!…よし、頼む!」
再度撃ち込まれた弾丸が壁で爆発を起こし、亀裂が幾筋にも増え―――
―――轟音を上げて、壁の一部が壊れた。
- 391 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:52:51 ID:8Vo7oxdkO
-
腹に響くような音を立て、信じられない大きさの氷塊が落ちてくる。
氷壁の向こうにも、また青空。
壁の向こうに向かって、全速力で飛ぶ。
从;゚∀从「うおおぉぉぉう!!」
(#'A`)「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
亀裂の中心だけを見て、そこを目指す。
氷のかけらが肩を打ち、大きな塊がすぐ横を落ちていく。
壁の断面に翼が触れ、機体を大きく揺らした。
(#'A`)「抜けたぁぁぁぁっっ!!」
そして、遂にハヤブサは壁の外に飛び出した。
- 392 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:54:00 ID:8Vo7oxdkO
-
从*゚∀从「よっしゃぁぁぁぁぁ!!やったな!!」
(*'A`)「ああ、ついにやった」
はしゃぎかけて、本来の目的を思い出す。
まだまだこれからだ。
('A`)「でも…まだだ。降りるぞ」
从 ゚∀从「おうっ」
眼下に雲はあるにはあるが、壁の中のように常に空に充満している訳ではないようだ。
雲の無いところを選び、高度を下げていく。
雲を抜け、円を描いて螺旋状に降りる。
从 ゚∀从「なあ、下…」
从 ゚∀从「結構暗いんだな?」
下を見ると、確かに薄暗い。
('A`)「とにかく降りよう…」
从 ゚∀从「だな」
- 393 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:56:29 ID:8Vo7oxdkO
-
飛行機を降ろして、自分達も地面に降り立った。
地表は、土。
雪でないのが新鮮でならない。
从 ゚∀从「やっぱ暗いな、何でだ」
('A`)「まぁ薄暗い程度だから大丈夫だろう」
空を見ると、先程まで青かったのが降りてみると紺に近く見える。
从 ゚∀从「暖かいから上着は置いてくか?」
('A`)「そうだな」
防寒着を脱ぎ、身軽になる。
脱いだ上着は飛行機と共にとりあえず残しておくことにした。
荷物の詰まった鞄を担ぎ、歩きだす。
見たことのない景色。
聞いたことのない音。
嗅いだことのない匂い。
そして、立ったことのない土地。
山積みの未知に対し、思わず笑みが零れた。
- 394 :名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 23:57:42 ID:8Vo7oxdkO
- 今夜はここまで。
物語も大詰めですぜ!
- 395 :名も無きAAのようです:2012/08/25(土) 00:00:52 ID:a7dnLJks0
- おつですぜ!
- 396 :名も無きAAのようです:2012/08/25(土) 00:16:13 ID:l0O0Dkzs0
- 何が待ってるか楽しみですぜ!
- 397 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:23:28 ID:Y4eLQmqMO
-
第16話『光をその手に』
未知の世界を歩く。
時折、草が生えているのを見かけた。
こういった物が育てる環境なのだろう。
从 ゚∀从「凄いよな…」
そばを茶色い毛並みの動物が駆け抜けるのを見、呟いた。
('A`)「これも、太陽の恩恵か?」
从 ゚∀从「太陽ないじゃん」
('A`)「太陽は壁の周りをぐるぐる回ってるらしい。
だから、いつか追いつくかかち合うだろ」
壁沿いに歩くと、何かが見えてきた。
- 398 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:24:08 ID:Y4eLQmqMO
-
从 ゚∀从「岩か?」
('A`)「いや…金属だ、多分」
近づくと、それが直径だけでもドクオ達の身長程もあることが分かった。
錆び付いてはいるが筒のような形で、数本転がっている。
これまた錆びた球体もあった。
从 ゚∀从「…なあ、これさ」
('A`)「大砲だな、多分」
从 ゚∀从「だよな」
('A`)「こんなでかいのがあったのか…」
从 ゚∀从「何の為に…?」
('A`)「分からん…」
- 399 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:25:07 ID:Y4eLQmqMO
-
('A`)「あそこ、明かりがあるな」
ドクオが指差す先には、確かに一つの明かりがあった。
それなりに遠そうだ。
从 ゚∀从「家?」
('A`)「そんな感じだな」
从 ゚∀从「人がいるのか…」
歩いて近づくと、それは確かに家。
どこか奇妙な形をしていて、大きい。
扉の前で二人、顔を見合わせる。
('A`)「開ける?」
从 ゚∀从「…開ければ」
(;'A`)「なんか…怖くね?」
从;゚∀从「よし、じゃ一緒に開けるぞ!」
(;'A`);゚∀从「「せーのっ!」」
二人で取っ手を持ち、掛け声と共に押し開けた。
- 400 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:26:03 ID:Y4eLQmqMO
-
中には、数人の人がいた。
皆一様に、不思議そうにこちらを見ている。
うち一人の子供が、こちらに来た。
( ><)「誰ですか!」
(;'A`)「え…ドクオです」
从;゚∀从「ハインリッヒです…?」
ζ(゚ー゚*ζ「…よく分からないけど、とにかくこちらへどうぞ!」
('A`)「はあ」
/ ,' 3「まあ座りなさい、客人。酒はいかがかね」
从;゚∀从「え、えと…」
_
( ゚∀゚)「状況分からんのはこっちも一緒だからよ、心配すんな」
ノパ⊿゚)「それ言ったらお客さん余計心配すると思うぞ!」
- 401 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:26:38 ID:Y4eLQmqMO
-
/ ,' 3「さて…、交代の時期にはまだ早いのでは?」
老人が言った意味が分からなかった。
交換とは何だ。
そもそも何か勘違いされている。
(;'A`)「えーと…?」
/ ,' 3「え、違うの?まさかワシ間違った?」
_
( ゚∀゚)「素が出てるぞジジイ」
ノパ⊿゚)「交代じゃないんなら、何しに来たんだ?」
('A`)「話せば長いですが…」
しばらく時間をかけ、全て話した。
太陽を見つけるのが目的であること。
いくつもの命を犠牲にしたこと。
遂に壁を超えられたこと。
- 402 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:27:36 ID:Y4eLQmqMO
-
ζ(゚ー゚*ζ「――それは、まあ…立派な冒険譚ですこと」
从;゚∀从「事実ですよ」
(*><)「凄いんです!」
ノハ*゚⊿゚)「あの氷の中、町があるのかぁ…!」
_
( ゚∀゚)「太陽…って、普通にあるけど?」
('A`)「それは、どこに」
_
( ゚∀゚)「今はまだ出てきてないだろ。行っちまったばっかだし」
/ ,' 3「あれは氷の周りを一定時間かけて巡っておるんだ」
ノパ⊿゚)「惜しかったな!うちで時間を潰すがいいさっ!」
- 403 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:28:23 ID:Y4eLQmqMO
- _
( ゚∀゚)「俺の見立てだと、『太陽の一部を持って帰る』のは骨だと思うぜ?」
('A`)「そうか…」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、どうかゆっくりしていって下さいね。歓迎します」
/ ,' 3「自己紹介でもするかな。ワシは荒巻という」
( ><)「ビロードなんです!」
_
( ゚∀゚)「ジョルジュだ。よろしく!」
ζ(゚ー゚*ζ「デレといいます」
ノパ⊿゚)「ヒートだ!私とジョルジュとデレとお前らは同じぐらいだな!」
(*><)「兄弟が増えたんです!」
自己紹介も済んだところで、疑問をぶつけてみた。
('A`)「あの、交代って…」
- 404 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:29:02 ID:Y4eLQmqMO
-
/ ,' 3「あー、それか」
荒巻という老人は、椅子に深く座り直して話しはじめた。
/ ,' 3「ワシらはな、半分だけ家族なんだよ」
从 ゚∀从「半分?」
/ ,' 3「この土地にいるのはな、ワシらだけではない」
/ ,' 3「各地にこのような家があり、寄り合って暮らしている」
/ ,' 3「そこで問題なのが、血の濃さじゃ」
/ ,' 3「この家だけで子を為し続けると、どうしても血が濃くなるのが分かるか?」
/ ,' 3「例えばジョルジュとヒートで兄妹を為し、その兄妹がまた子を為すと」
/ ,' 3「何というか、妙な子供が生まれてしまう可能性がある訳じゃな」
- 405 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:30:32 ID:Y4eLQmqMO
-
ノパ⊿゚)「ジョルジュと子作りなんて絶対ヤダけどな!」
_
(;゚∀゚)
/;,' 3「ま、まあ、それはいいとして」
/ ,' 3「そこで生まれたのが、交代制度」
/ ,' 3「ある時期になると、子供と適当にもう一人が違う家に旅立つ」
/ ,' 3「こうしてどうにか凌いでいるんじゃな」
ζ(゚ー゚*ζ「この家でいうと、私とビロちゃんが交代で来ましたの」
( ><)「大人の話はわかんないんです!」
ともかく、こちらにもこちらの苦労があるのは分かった。
ふと浮かんだ疑問も口に出してみた。
从 ゚∀从「ここの人口はどんなもんなんです?」
ノパ⊿゚)「どっかの学者によると、三千人ぐらいなんだって!」
- 406 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:31:30 ID:Y4eLQmqMO
-
('A`)「太陽って、待ってりゃ来るのか?」
_
( ゚∀゚)「来るよ。毎日当然来る」
(;'A`)「そんな普通にあるのか…」
_
( ゚∀゚)「して、その鞄の中には何入ってんだ?」
ジョルジュが見ているのは、部屋に置かれた大きな鞄。
('A`)「テントと寝袋、食料と着替えと、あと灯籠石ぐらいかな」
ζ(゚ー゚*ζ「灯籠石?」
デレをはじめ、全員が不思議そうな顔をしている。
灯籠石を知らないようだ。
从 ゚∀从「灯籠石って、ほらこんな石だ」
赤い石を取り出す。
('A`)「火が点いたり爆発したりする危険物だからな」
ビロードが伸ばした手が一瞬で引っ込んだ。
- 407 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:32:20 ID:Y4eLQmqMO
-
ノパ⊿゚)「まあ、今日のところは飯にしようか!」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、じゃあ持って来ますね」
从 ゚∀从「あ、そうだ。ここの近所に金属の筒が落ちてたんですけど…」
/ ,' 3「あれはもうずっと前からあるが」
荒巻によると、荒巻が生まれる前から変わらずあったらしい。
あれが大砲という兵器なのは知らないようだ。
('A`)「なるほど…」
しばらくすると、料理が運ばれてきた。
パンと、柔らかそうな肉、あとは緑色の草があった。
从;゚∀从「あ、この緑、地面に生えてた」
ζ(゚ー゚*ζ「おいしいですよ?食べられるものを選んでますし」
- 408 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:33:07 ID:Y4eLQmqMO
-
食べてみると、なるほど美味しい。
保存食より遥かに栄養もありそうだ。
('A`)「この肉は…?」
_
( ゚∀゚)「ウサギだけど?」
从*゚∀从「うまいな、ウサギ」
_
(;゚∀゚)「氷の中って何も無いのな…」
('A`)「室内栽培は発達してたけどな」
从 ゚∀从「食べる?雪イノシシの干し肉」
_
(;゚∀゚)「すげー固そうだな、遠慮するわ」
/ ,' 3「しかし、空を飛ぶ道具とは…」
ノパ⊿゚)「キカイなんてそうそう見れないしな!」
- 409 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:34:32 ID:Y4eLQmqMO
-
食事が終わると、風呂を借りることができた。
どうやら生活の基本的なところは、ここも向こうも同じらしい。
ζ(゚ー゚*ζ「部屋はいくらでも空いてますからね」
( ><)「朝になったら起こすんです!」
('A`)「あさ?」
_
( ゚∀゚)「太陽が出始める時間の事を朝というんだ」
ノパ⊿゚)「明日は飛行機を見せてくれよ!」
从 ゚∀从「おう!」
/ ,' 3「ところでどうかなハインちゃん、これからワシと一戦交え痛っ!」
ノパ⊿゚)「こら!」
ζ(゚ー゚*ζ「すいません、ボケちゃって」
从;゚∀从「おう…」
/ ,' 3「お茶目じゃお茶目、叩かんでも良かろうに」
清潔なベッドに横たわると、飛行の疲れがどっと押し寄せてきた。
明日の事を話し合う余裕もなく、眠りに落ちていく。
- 410 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:35:23 ID:Y4eLQmqMO
-
――――――――――
_
( ゚∀゚)「起きろ!」
( ><)「朝なんです!お待ちかねの太陽もあるんです!」
太陽、と聞いて二人が飛び起きる。
階下に降りると、朝餉が並べられていた。
ζ(゚ー゚*ζ「食べます?」
(;'A`)「後で!」
ノハ*-⊿-)「おーーっす、おはよーうぅ……」
从;゚∀从「おはようっ!」
/ ,' 3「若いのう」
破る勢いで玄関の扉を開ける。
_
( ゚∀゚)「ほら、あれ」
(;'A`)「うわ!」
从;゚∀从「眩しっ」
空を見て、二人は咄嗟に目を覆った。
- 411 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:36:43 ID:Y4eLQmqMO
-
直視できない程の輝き。
炎とはまた違う、綺麗な光。
到底手など届かないと思った。
('A`)「おぉ…」
从 ゚∀从「すげー…」
何より、暖かい。
_
(;゚∀゚)「おー、感動してんな」
( ><)「あんまり見たら目が焼けるんです!」
振り返り、氷壁を見る。
こちらも太陽の光を反射して輝いている。
('A`)「あれは氷なのに融けないんだな」
从 ゚∀从「融ける端から再生してんのかもな」
('A`)「…にしても、すげーなぁ…」
从 ゚∀从「予想以上の規模だよな」
- 412 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:37:13 ID:Y4eLQmqMO
-
ふと、ドクオが大きくため息をついた。
力無く笑っている。
('A`)「どうしたもんかな…」
( ><)「何がです?」
('A`)「あれのかけらでも持って帰ろうって魂胆だったが…」
从 ゚∀从「ありゃまず近づけねーなぁ」
_
( ゚∀゚)「追い追い考えたらいいさ。帰ろう」
ジョルジュに従い、再び家のドアを開けた。
ζ(゚ー゚*ζ「どう?太陽」
('A`)「持って帰ろうってのは無理ですね…」
ζ(゚ー゚*ζ「朝ごはんにしましょうか」
ノハ*゚⊿゚)「ごはん!」
- 413 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:38:00 ID:Y4eLQmqMO
-
パンを食べ終え、適当に軽くした鞄を持つ。
ノパ⊿゚)「どこ行くんだ?」
('A`)「ちょっと飛行機とりに」
ノハ*゚⊿゚)「私も行く!」
( ><)「僕も行くんです!」
从 ゚∀从「結構遠いけど大丈夫か?」
_
( ゚∀゚)「ビロードは案外体力あるからいけるだろ。俺も行くよ」
(;'A`)「二人乗りだぞあれ、乗れるかな…」
从;゚∀从「翼とかにくっつきゃ、どうにか」
- 414 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:38:48 ID:Y4eLQmqMO
-
家を出て、騒ぎながら歩いた。
何となく、ブーン達がいた頃の騒がしさに似ていた。
大砲の転がっている場所に着いた。
初めは気づかなかったが、大砲の中を巣にしている動物がいる。
从*゚∀从「あ、かわいー」
_
( ゚∀゚)「こいつらがウサギな」
从;゚∀从「あ、これ食ったのか…」
('A`)「うまかったよな」
从 ゚∀从「うまかったけどさぁ…」
ノパ⊿゚)「なあ!この筒が何なのか分かるのか?」
('A`)「何となくな」
ノハ*゚⊿゚)「おお、すげー…!」
- 415 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:39:35 ID:Y4eLQmqMO
-
目の前の大砲に何かが留まった。
高い声で鳴いている。
('A`)「あれも可愛いな、何あれ?」
ノパ⊿゚)「あれは鳥だ!雀って種類かな!」
从 ゚∀从「あれが…」
見ていると、木の枝を数回跳ねて飛んでいってしまった。
( ><)「そっちにはいなかったんですか?」
('A`)「絶滅してた」
_
( ゚∀゚)「お前んとこどんだけ過酷なんだよ…」
ノハ*゚⊿゚)「逆に行ってみたいぞ!」
('A`)「その格好じゃ10分持たないぞ」
(;><)「環境が違いすぎるんです!」
- 416 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:40:23 ID:Y4eLQmqMO
-
――――――――
('A`)「はい、これが飛行機です」
ところどころ塗料の剥がれた飛行機に手を向ける。
ノハ*゚⊿゚)「おー…!」
( ><)「でかいんです!」
_
( ゚∀゚)「これ飛ぶのか?」
从 ゚∀从「飛ぶよ」
ノハ*゚⊿゚)「乗ってもいいか!?」
('A`)「色んなもんあるから気をつけてな」
ノハ*゚⊿゚)「おー!」
三人が嬉しそうによじ登り、乗り込んだ。
- 417 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:42:03 ID:Y4eLQmqMO
-
('A`)「飛んで帰る?」
从 ゚∀从「飛べないことはないだろ、そうしよう」
二人も翼に手を掛けて乗り込んだ。
相当狭い。
(;'A`)「操縦席開けてくれ」
_
(*゚∀゚)「狭い!」
从;゚∀从「いや何で嬉しそうなんだ?」
_
(*゚∀゚)「ハインおっぱいでけーじゃん!こう密着すんだろ」
从#゚∀从「降りろっ!」
ノパ⊿゚)「悪いがジョルジュはいつもこんなんだぞ!」
( ><)「操縦席のスキマに入るんです!」
やがて、ゆっくりと飛行機が走り、ふらふらと飛び上がった。
歓声が上がる。
ノハ*゚⊿゚)「うぉぉぉぉ!!跳んでるぅ!!」
_
(*゚∀゚)「おっぱい!おっぱい!」
从#゚∀从「落ちろっ!」
- 418 :名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 23:43:20 ID:Y4eLQmqMO
- それでは16話、ここまでです。
お休みなさーい。
- 419 :名も無きお米のようです:2012/08/27(月) 00:24:01 ID:IahmHPXo0
- おξ゚?゚)ξつん
- 420 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 00:28:30 ID:kk9NHfXs0
- なごむわー
- 421 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 01:29:03 ID:3Q8sAhac0
- おー思ってたより世界が広かった!
乙でしたー
- 422 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 20:16:47 ID:DPsNvO7o0
- ジョルジュの括弧が全角のせいか眉毛ずれてる
- 423 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 20:48:24 ID:Sbqes5rYO
- _
( ゚∀゚)
こうですか?
違ったら正しいの貼ってもらえると助かります
畜生、眉毛め
- 424 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 20:54:06 ID:DPsNvO7o0
- _
( ゚∀゚)
>>423
それでおk
- 425 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 21:29:08 ID:Sbqes5rYO
- >>424
ありがとう、助かった
- 426 :名も無きAAのようです:2012/08/27(月) 23:01:52 ID:X699w9Ic0
- 何故か歩くを思い出した
面白いなー
- 427 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:14:03 ID:t5Y2gjucO
-
第17話『草木の息吹』
ζ(゚ー゚*ζ「はい、お帰りなさい」
ノハ*゚⊿゚)「凄かった!」
ζ(゚ー゚*ζ「見てたわよ!凄いわねー、キカイって」
从 ゚∀从「翼に引っ掛かった事を有り難く思え」
_
(;゚∀゚)「マジで死の危険があったぞ…」
ζ(゚ー゚*ζ「お昼ですよー」
/ ,' 3「毎日の献立に何が出るかが老後の楽しみ」
_
( ゚∀゚)「暇すぎるだろ」
( ><)「ドクオくん達は午後はどうするんです?」
('A`)「特にないかな」
(*><)「じゃあこの辺りを案内するんです!」
从 ゚∀从「お、いいな」
- 428 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:15:24 ID:t5Y2gjucO
-
昼食を終え、わいわいと賑やかに歩く。
先頭はビロードで、荒巻とデレ以外の五人がいる。
至る所に生き物の気配がするのが新鮮に思えた。
('A`)「改めて太陽ってすげー…」
ノパ⊿゚)「そんな凄いのか?」
_
( ゚∀゚)「俺達にとってみりゃ、生活の一部だからなぁ」
从 ゚∀从「持ってるからこそ分からんのだ。分からん方がいいけど」
('A`)「例えばほら、地面に草が生えてるだろ」
('A`)「うちにはこれの代わりに雪っていうか氷がある」
_
( ゚∀゚)「考えらんねーな」
- 429 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:16:15 ID:t5Y2gjucO
-
しばらく歩くと、深く繁った森が見えてきた。
( ><)「ここでいつも遊んでるんです!」
('A`)「いいとこだな」
重なり合う木々を見渡し、ドクオが呟く。
木々の間から零れる太陽の光。
淀みなく流れる小川。
ところどころに咲く鮮やかな花。
向こうにいては確実に見られなかったものだ。
_
( ゚∀゚)「こっち来いよー」
少し離れた辺りでジョルジュが手招きしている。
行ってみると、大きな湖があった。
- 430 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:17:51 ID:t5Y2gjucO
-
从*゚∀从「おー!」
('A`)「でかい水溜まりだ」
ノパ⊿゚)「泳ぐぞ!」
_
( ゚∀゚)「ってかお前ら泳げる?」
('A`)「え、泳ぐの?」
てっきり釣りでもするのかと思い込んでいた。
水面を見渡す。
ざざ、というような音を立てて波立っている。
从 ゚∀从「まぁ、やってみりゃ分かるかな」
( ><)「泳げなかったら教えるんです!」
早速下着一枚になったビロードが水に向かって走っていく。
ジョルジュとヒートも服を脱ぎ始めている。
ノパ⊿゚)「あ、ハインも最低限の服は着るんだぞ!ジョルジュは獣だから!」
_
(;゚∀゚)「うっせぇよ!」
- 431 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:19:46 ID:t5Y2gjucO
-
適当な格好になり、水を掻き分けて歩いていく。
腰あたりまで水に浸かった。
('A`)「おー…」
できることなら、皆で来たかった。
そんな事をちらりと思った。
皆の為にも、どうにか太陽の恵みを得る方法を探さなくては。
考えていると、何かに足をとられて転んだ。
水しぶきを上げ倒れ込む。
(;'A`)「うぶわわわわっ!」
慌てて起き上がり、周りを見る。
向こうでハインが手を振っていた。
从*゚∀从「おーい!気持ちいいぞ、早く来いって!」
ノパ⊿゚)「その辺からは深いからな!」
恐る恐る、踏み出した。
- 432 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:20:47 ID:t5Y2gjucO
-
岸に近い辺りでドクオが沈んでいる。
ばたばたと腕を動かしているが、水面を叩くだけ。
_
(;゚∀゚)「泳げない…みたいだな」
从 ゚∀从「こっちは水に浸かる場所なんて風呂ぐらいしかなかったからなぁ」
( ><)「助けに行ってくるんです!」
ビロードがすいすいと泳ぎ、ドクオを水面に引き上げた。
ノパ⊿゚)「でもハインは泳げるんだな!」
从 ゚∀从「そうみたいだ」
大きく息を吸い、ざぶりと潜る。
透き通った水に光が差し込んでいる。
それを反射して、銀色の生き物が素早く泳ぐ。
綺麗だ。
向こうにも太陽の光が差せば、泳げるようになるのだろうか。
太陽というものの絶大な力を感じた。
- 433 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:22:08 ID:t5Y2gjucO
-
息継ぎをしに水面に出て、ドクオの様子を見る。
首まで浸かった水の中をおっかなびっくり歩いている。
(;'A`)「おお…?」
( ><)「水中で手足を動かすんです!」
(#'A`)「っおおおおおおう!!」
(;><)「力入れなくても浮くから大丈夫!」
ノパ⊿゚)「先は長いな!」
_
( ゚∀゚)「そーだ、ハインなら扉まで行けるんじゃないか?」
从 ゚∀从「何だそりゃ」
聞くと、水の中に一枚の扉があるという。
開けないからどうしようもないんだとか。
- 434 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:22:57 ID:t5Y2gjucO
-
ノパ⊿゚)「ハイン達の飛行機と同じような感じの奴だな」
つまり金属の扉。
これは怪しい。
从;゚∀从「場所教えてくれ!」
_
( ゚∀゚)「おし、ついて来い!」
ノパ⊿゚)「扉の辺りは空気があるから、息は片道でいいからな!」
深呼吸をし、ジョルジュとヒートの後について潜る。
澄んだ水中を泳ぎ、地面の下の辺りに潜りこんだ。
岩に手をかけ、加速しながら進む。
少し入った辺りでヒートが浮上した。
息はどうにか持ちそうだ。
- 435 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:24:24 ID:t5Y2gjucO
-
从;゚∀从「ぶっはぁっ!」
_
( ゚∀゚)「おお、無事来れたな」
着いたのは、周りを土壁に囲まれた場所。
足元に水が溜まっている。
从 ゚∀从「寒いな…」
外より気温が低い。
体も濡れているし、半分裸。
寒いのも当然といえた。
ノパ⊿゚)「だからあんま水から出たくないんだ!」
水から顔だけ出し、ヒートが言う。
_
(*゚∀゚)(今の俺、すっげぇ状況な気がする…)
ノパ⊿゚)「いらん事考えてるだろ!」
_
( ゚∀゚)「何故バレた」
ノハ*゚⊿゚)「顔に書いてるぞ、おっぱい天国だって!」
_
(;゚∀゚)「そこまでは考えちゃねーよ!」
- 436 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:25:57 ID:t5Y2gjucO
-
二人の会話を背に受け、扉に触れる。
冷気はここから来ているらしい。
茶色く錆び付いている以上、やはり金属。
確実に氷壁関連の物だ。
ここに入れたら、多分壁の秘密が分かる。
……あわよくば、壁を破壊できるかもしれない。
ただ、押しても引いても動かない為、今はどうしようもない。
ドクオにも伝えなければ。
从 ゚∀从「よし、帰ろうか」
ノパ⊿゚)「おう!」
_
(*゚∀゚)「最後に一言、ナイス透け乳!」
从#゚∀从「死ね!」
ノパ⊿゚)「死ねー!」
_
( ゚∀゚)「はっはっは、さー行くぜ!」
とぷりと水に潜り、また下を目指す。
あの扉には、絶対に何かある。
- 437 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:26:58 ID:t5Y2gjucO
-
一方のドクオは、デレを助っ人に加え泳ぐ練習をしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「うん、成長してますよ」
( ><)「微々たるものなんです!」
ζ(゚ー゚*ζ「潜るのはできてたから、ビロちゃんより早いじゃない」
(;'A`)「手で水を掻く!掻く!」
ノパ⊿゚)「たっだいまー!」
ざばり、とヒートが水から出てきた。
続けて二人も顔を出す。
从 ゚∀从「おー、頑張ってるな」
_
( ゚∀゚)「デレも来たのか!」
ζ(゚ー゚*ζ「暇でしたからー」
(;'A`)「きゅ、休憩ーっ!」
( ><)「上がるんです!」
- 438 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:27:53 ID:t5Y2gjucO
-
岸に上がって休みつつ、デレの持参したクッキーを食べる。
扉の話を聞くと、ドクオが少し狼狽した。
(;'A`)「気になるけど…俺、そこまで行けねーかも」
从 ゚∀从「ドクオの遺志は俺が継ごう」
ノパ⊿゚)「死んでないぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオくんは泳ぐ練習ですね」
_
( ゚∀゚)「練習手伝っちゃる!」
('A`)「おう、頼んだ」
クッキーを食べ終わり、また水に入る。
結局、その後の時間を全て費やし全員でドクオの練習にあたった。
- 439 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:28:57 ID:t5Y2gjucO
-
―――――――――――
練習は長く続き、太陽が見えなくなりかけた頃に家に着いた。
家の横に大荷物を積んだ荷車があった。
ノパ⊿゚)「ただいま!」
/ ,' 3「おう、お帰りなさい」
/ ゚、。/「あ、ども」
荒巻の横に、見慣れない長身の女性がいる。
ダイオードと名乗ったその人は、商人だという。
/ ゚、。/「皆、久しぶりだね」
ζ(゚ー゚*ζ「今回は何を?」
/ ゚、。/「服を少々ね。あと、包丁」
包丁と聞いて、ドクオに疑問が浮かぶ。
('A`)「こっちにも鉄の加工技術が?」
/ ゚、。/「単純なものなら作れるよ。君らの使うようなキカイは無理だけどね」
- 440 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:30:28 ID:t5Y2gjucO
-
/ ,' 3「ああ、ドクオとハインの話はしておいたからな」
('A`)「あ、助かります」
/ ゚、。/「興味深いね。いつかは氷の内側にも行きたいもんだよ」
从 ゚∀从「商人って、どういう儲けを?」
さっき服を出した時に金を受け取る様子はなかった。
ならばどうやって生計を立てているのか。
/ ゚、。/「ああ、そりゃ物々交換で。昔は通貨もあったけど、今は廃れたね」
/ ゚、。/「普通の人が住む家の他に、商人の町、ってのがあってね」
/ ゚、。/「そっから持ってきた物を渡す代わりに、食料とかを受け取る」
/ ゚、。/「で、また次の家にね」
('A`)「うまいこと回ってますね…」
/ ゚、。/「廻る所は決まってるからね、腹は減っても餓死はしないよ」
- 441 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:32:02 ID:t5Y2gjucO
-
/ ゚、。/「ところで、君達長持ちする食べ物持ってない?」
/ ゚、。/「歩いてると保存食が重宝してね、必要ないなら譲ってよ」
从 ゚∀从「いいですよ。もう使わないし」
鞄から様々な食料を出し、テーブルに広げる。
ダイオードの目が好奇心に輝いた。
/*゚、。/「いいね!」
/*゚、。/「干し肉とパンと…これは?」
('A`)「スープです。湯に溶いて下さい」
うち一つの肉をヒートが取り上げ、かじる。
ノハ;゚⊿゚)「あが、堅っ!」
ヒートからそれを受け取り、ダイオードも一口。
/ ゚、。/「癖があるね。でも、嫌いじゃない」
- 442 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:32:50 ID:t5Y2gjucO
-
/ ゚、。/「貰ったら何か返さなければね」
そう言うと二人をまじまじと見て、家を出た。
少しもしないうちに何かを手に戻ってきた。
/ ゚、。/「君達随分暑そうだからね、服をあげるよ」
手渡されたのは、風通しの良さそうな薄手の服。
日中は確かに暑かったため、有り難かった。
('A`)「お、ありがとうございます」
/ ゚、。/「気にしないで。これが本分だから」
( ><)「ご飯ができたんです!」
ビロードの声を聞き食卓へ向かう。
その後ダイオードも含めて夕飯を頂き、就寝となった。
- 443 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:34:00 ID:t5Y2gjucO
-
こちらでは、太陽が見えない時間帯を『夜』と呼ぶらしい。
ドクオ達がこちらに着いた時も、この夜だったとのこと。
ドクオはその夜に目が覚め、ついでに何となく飛行機の点検に出た。
揺れるカンテラで暗い機械を照らし、一つ一つを確認していく。
特に異常は見当たらない。
戻ろうとカンテラを吹き消しかけたその時、後ろから声がした。
/ ゚、。/「その石も、面白いね」
('A`)「起きてたんですか」
/ ゚、。/「君の足音を聞いて起きた」
- 444 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:34:44 ID:t5Y2gjucO
-
明かりのついたカンテラを掲げ、見せる。
('A`)「これは灯籠石って言って」
('A`)「ま、向こうの貴重なエネルギー源です」
/ ゚、。/「燃える石かあ。珍しい」
('A`)「実際希少な鉱物ですよ」
/ ゚、。/「服は気に入った?」
('A`)「ええ、助かりますよ。太陽のある間は暑くて」
今は太陽が見えないからか、少し涼しい。
ざあ、と一陣の風が吹いた。
/ ゚、。/「単刀直入に言おうか。悩んでいるね?」
図星だった。
意味のないごまかしの笑みが浮かび、消えた。
('A`)「まあ、ね」
- 445 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:35:37 ID:t5Y2gjucO
-
/*゚、。/「ふふ、これでも沢山の人と接してるからね」
/ ゚、。/「話してご覧よ、何か助言でもできればいいな」
笑顔に妙な魅力がある。
一呼吸置いて頭の中を整理し、話し出した。
('A`)「この近くに、こちらの世界にはある筈のないものがあるらしいんですよ」
('A`)「鉄では単純な物しか作れない、ですよね?」
/ ゚、。/「うん」
('A`)「扉があるって言ってました。錆びてはいるけど、鍵も」
('A`)「そんな技術、あっちにしかないんですよね…」
('A`)「ってことは、扉を介して二つの世界が繋がってるかもしれない」
('A`)「仮に違っても、凍った壁に関する何かがある筈なんです」
- 446 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:36:34 ID:t5Y2gjucO
-
/ ゚、。/「それで君達の目的も達成に近付くんじゃないの?」
('A`)「…仮に、壁が綺麗さっぱり消え去ったとしましょう」
('A`)「向こうの人々も太陽を見られますけど、こっちはどうなるのか」
('A`)「こっちの動植物は、きっとあの寒波には勝てません」
('A`)「俺達の行動の為に、絶滅するものが出るかも知れないし」
('A`)「そうなると、何のためにやってきたのか分からなくなる…」
/ ゚、。/「なるほどね」
しばらく沈黙が流れ、今度はダイオードが話し出した。
/ ゚、。/「昔は通貨があった、と言ったね?」
- 447 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:37:17 ID:t5Y2gjucO
-
/ ゚、。/「私が生まれる前に通貨は廃止されてしまってね…」
/ ゚、。/「それまで、通貨を巡って争いが度々起きていたらしいよ」
('A`)「…分かります」
ハインは騎士は階級と金しか考えていない、と言っていた。
貴族も自らの財産を守る為にドクオ達を殺そうとした。
自分達も、生きるためとは言え盗みを働いていた。
/ ゚、。/「で、いざ通貨を無くしてしまおう、って時に反対運動が起きたのさ」
/ ゚、。/「世界が回らなくなる、とか、駄目になる、とかね」
- 448 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:38:18 ID:t5Y2gjucO
-
/ ゚、。/「でも、今や物々交換が普通だ」
/ `、、/「だからね、何かこう、上手くは言えないけど…」
/ ゚、。/「君が思っている以上に、世界は頑丈…なんだよね」
('A`)「頑丈?」
/ ゚、。/「うん、頑丈。一人二人の力でぶち壊しにできる物じゃないよ」
('A`)「まあ、確かに…」
/ ゚、。/「だから安心しろ、って訳じゃなくて、必要以上に悩まなくてもいいんじゃないかな」
/ ゚、。/「君は君の希望だけを見ればいいし、何より世界って変わるものだから」
世界は変わるもの。
そう聞いて、少し胸の支えが取れた気がした。
- 449 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:39:58 ID:t5Y2gjucO
-
少し軽い様子でダイオードが尋ねた。
/ ゚、。/「ところで、ハインちゃんとはどんな関係なんだい?」
/ ゚、。/「血は繋がってない、よね?」
とりあえず肯定し、その後の返事に窮する。
仲間、は何かずれている気がする。
恋人、と呼ばれると違うと思う。
戦友、でもない。
家族、だろうか?
(;'A`)「……か、家族…?…でも、あいつも一応帰るとこあるし…」
結局、これまでのいきさつを細かく話した。
荒巻が話していたのはほんの上辺だったらしく、ダイオードは興味深そうに聞いていた。
/;゚、。/「そっちの世界、大変なんだね…」
('A`)「ええ、まあ…」
- 450 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:40:37 ID:t5Y2gjucO
-
/ ゚、。/「難しいね…」
/ ゚、。/「ドクオ君達は孤児で盗賊、ハインちゃんには親がいて王族」
/ ゚、。/「正反対だけど、誰より強く繋がってるね」
('A`)「何て呼ぶんでしょうね、これ」
流石のダイオードも言葉を探している。
/ ゚、。/「家族って言葉、好きじゃないんだよね…」
('A`)「何かあったんですか?」
/ ゚、。/「いや、そうじゃなく」
/ ゚、。/「この世界の交代制度のせいで、血の繋がりはバラバラでしょ」
/ ゚、。/「それを『家』で縛るのは、不自然じゃないか」
/ ゚、。/「…でもやっぱり家族でいいのかもね、君達は」
- 451 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:41:12 ID:t5Y2gjucO
-
家も何もかも違うのに、家族。
何か違和を感じる。
/ ゚、。/「ま、私が『家族』以上に繋がりの強い言葉を知らないだけだね」
/ ゚、。/「それ以上の言葉が作られたら、それを付けたらいいよ」
(;'A`)「適当ですね…」
/ `、、/「もう眠いからね…。戻ろうよ」
中途半端に話を切られたが、部屋に帰ることにした。
('A`)
家族だの、仲間だの、絆だの。
様々な単語が頭を巡った。
- 452 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:44:03 ID:t5Y2gjucO
-
ドクオに宛がわれた客用のベッドに座り、横のハインの寝顔を見る。
白い肌に、よく見れば整った顔。
安らいだその表情を、純粋で綺麗だと思った。
('A`)「家族…ね…」
孤児院の皆は家族と言えた。
産みの親の顔なんかは知りたくもないし、モナーを親と胸を張って言える。
でも、ハインは家族じゃないのか?
よく分からない。
言葉にできず、よく分からない何かが心の中にある。
ただ一つ確かなのは、今の誰よりも大事なのがハインだということ。
多分、自分よりも。
愛や恋、という奴だろうか。
(;'A`)(それは…やっぱ何か違うと思う…)
自問に自答できないまま、もやもやした何かを抱えて眠りに落ちた。
- 453 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 00:45:11 ID:t5Y2gjucO
- 今日はここまで
気を抜くと登場人物が増えて困る
- 454 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 01:21:01 ID:3DHuuoqI0
- 乙
増えたっていいじゃない!
とにかく続きが気になる
壁を挟んだ世界の違いが顕著で面白いわー
- 455 :名も無きAAのようです:2012/08/29(水) 02:28:10 ID:MvMhW1aQO
- 読んだよ
- 456 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:08:07 ID:DxBAIENIO
-
第18話『水底の鉄』
鉄の扉。
それはつまり、その加工技術があったということ。
ここの人々にそんな技術はない為、やはり古代の遺産ということになる。
('A`)「ごちそうさまっ!」
ζ(゚ー゚*ζ「はいはーい」
('A`)「それでは、今から扉調査隊を結成すんぞ!」
('A`)「俺とハインは決定、あと行きたい人!」
ノパ⊿゚)「はい!」
_
( ゚∀゚)「はい!」
( ><)「お昼寝の時間だからパスなんです!」
从;゚∀从「自由だなお前!」
ζ(゚ー゚*ζ「気をつけてね」
('A`)「ありがとう、行ってきます」
ζ(゚ー゚*ζ「夕飯までには帰ってきてね!」
(;'A`)「あ、うん…」
/ ,' 3「荒巻マジ空気」
- 457 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:09:15 ID:DxBAIENIO
-
ヒートを先頭に、湖の方向に歩いていく。
从 ゚∀从「お前ら、鞄の中身何なの?」
_
( ゚∀゚)「カラだよ」
ノパ⊿゚)「おやつ!」
('A`)「なんか大砲とか持ってきた俺がバカみたいだわ」
从;゚∀从「ま、いいか…」
少し歩き、件の湖に着いた。
身軽な格好になり、脱いだ服を鞄に詰める。
鞄は革だが、浸水は免れられないだろう。
_
( ゚∀゚)「ドクオ、いけるか?」
('A`)「多分」
ざっ、と勢いよく水に入る。
昨日と今日の朝の練習の成果を試す時だ。
- 458 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:10:40 ID:DxBAIENIO
-
鞄の紐を左手でをしっかり握りしめ、潜る。
先頭のヒートが岩の隙間に入り込み、ドクオも必死で岩を掴む。
大砲は分割して持つことにしたが、十分に重い。
周りの景色はかなり綺麗なものだったが、ドクオにそれを楽しむ余裕はなかった。
(;'A`)「…!」
前のヒートが浮上した。もう少しだ。
横の岩に足をかけ、蹴り上がる。
ごぼりと空気の塊が口から出て、肺が空になった。
無我夢中で手をかき、上昇を試みる。
上に伸ばした手が俄かに冷たくなり、今度は温かくなった。
急に強い力で引っ張りあげられ、水面が見えた。
(;'A`)「ぷはぁぁっ!」
空気がうまいと感じたのは初めてだ。
必死に深呼吸をし、肺を落ち着ける。
ノパ⊿゚)「お疲れ!」
(;'A`) 「ありがと、助かった…」
- 459 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:11:25 ID:DxBAIENIO
-
後からジョルジュとハインも顔を出した。
从 ゚∀从「生きてる?」
('A`)「正直危なかった」
服を乾かしたいが、この閉鎖空間で酸素がなくなっても困る。
仕方無しにところどころ湿った服を纏った。
('A`)「これか、扉」
錆び付いて、押しても引いてもびくともしない。
ならば奥の手、とばかりに大砲を組み上げる。
ノハ*゚⊿゚)「かっけー!」
('A`)「だろ?」
完成した大砲を扉に向ける。
爆音と共に一撃で扉が歪み、二撃で向こう側にゆっくりと倒れた。
_
( ゚∀゚)「おお」
('A`)「万能くん三号は超万能なんだよ」
ノパ⊿゚)「名前はカッコ悪いんだな!」
('A`)「ちくしょうめ」
- 460 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:12:21 ID:DxBAIENIO
-
カンテラを持ち、一歩入る。
冷気が身を震わせた。
やはり壁の真下だからか、寒い。
ところどころで凍りついている場所さえある。
ノハ;゚⊿゚)「さっむぅぅぅぅ!」
_
(;゚∀゚)「おぅ…」
('A`)「ハイン、こいつらに防寒着渡してやろう」
从 ゚∀从「ああ」
ドクオとハインの着ていた防寒着を貸すと、何とか寒さには堪えられそうな様子にはなった。
ノパ⊿゚)「二人はいいのかー?」
('A`)「今着てる服がちょっと厚いし、寒さは慣れっこだからな」
_
( ゚∀゚)「便利なもんだなオイ」
- 461 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:13:26 ID:DxBAIENIO
-
鉄の階段を降りる。
足音が冷たく反響し、耳に障る。
('A`)「滑んなよ」
从 ゚∀从「ああ」
長い階段を降りきると、また扉があった。
これは普通に開くようだ。
ノハ*゚⊿゚)「ワクワクする…!」
_
(*゚∀゚)「ああ!」
ぎりり、と軋んで扉が開いた。
真っ暗な部屋に一歩踏み出す。
先頭のドクオの踏んだ床が、少し凹んだ。
(;'A`)「ん?」
从 ゚∀从「どした?」
どこかから何かが唸るような音が聞こえている。
足を放した瞬間、ばちっ、という音と共に部屋が明るくなった。
- 462 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:14:09 ID:DxBAIENIO
-
(;'A`)「!?」
白い光に照らし出されたのは、全てが銀色でできた部屋。
ノハ;゚⊿゚)「おお…」
ヒートも息を呑んでいる。
夥しい程の機械がある。
機械が寄り集まって部屋の形を為しているようにさえ見えた。
様々な鉄管が壁沿いに伸び、全て部屋の奥の機械に集中している。
从 ゚∀从「この白い明かり…何だ?」
('A`)「分からん…」
炎に由来するものではない。
太陽光ともまた違う。
カンテラを吹き消し、奥の機械に向かった。
よく見ると、床にも小さな穴が開いていて、そこからまた機械が見える。
- 463 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:15:13 ID:DxBAIENIO
- _
( ゚∀゚)「こんなもんが近所の地下にあったのか…」
奥にある機械は、これまで見たこともないようなものだった。
抱える程の板に、夥しい程のスイッチ。
その横に少し大きなものと、十字を象ったものもある。
さらに不可思議なのが、その上に固定されたガラス板。
(;'A`)「動くのか…?」
从;゚∀从「エネルギーはどっかから来てるんじゃないか?」
ノハ*゚⊿゚)「かっこいー!!」
_
(;゚∀゚)「おい、あんまりいじると…」
- 464 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:16:01 ID:DxBAIENIO
-
ヒートがスイッチを次々に弄っている。
その弾みで、端にある一つのスイッチが押された。
部屋の照明が激しく明滅し、ガラス板がぼんやり発光する。
また低い唸るような音がし始めた。
ノハ;゚⊿゚)「しまったぁーーーーー!!」
(;'A`)「いや、こうなるのは読めたろう…」
ガラス板に次々と文字が浮かび上がる。
『Keyword:__________』
('A`)「うん?」
ドクオが適当にボタンを押す。
ガラス板の文字が切り替わった。
『Error!!』
- 465 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:16:57 ID:DxBAIENIO
-
从 ゚∀从「何だ、この文字?」
('A`)「何か書くのかな、さっきの。このスイッチで書き込むのかな」
从 ゚∀从「手がかりがあるとしたら、この奥か…」
ハインが見ているのは、さらに向こうへ続く扉。
扉の周囲が凍りついている。
_
(;゚∀゚)「この奥に行くってんなら、上着は返すよ」
('A`)「帰るのか?」
ノハ;゚⊿゚)「さすがに震えるぞ…」
从 ゚∀从「帰り、上着なしで大丈夫?」
_
( ゚∀゚)「ああ、階段ぐらいなら走るさ」
ノパ⊿゚)「じゃ、夕飯までに帰って来いよ!」
('A`)「ああ、分かった」
- 466 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:17:43 ID:MYtgS7OY0
- 来たか!
- 467 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:18:00 ID:DxBAIENIO
-
ヒート達を見送り、凍ったドアノブを下げ、体全体で押す。
がりがりと氷の削れる音と共に、扉は開いた。
そこにあったのは、幾つかの本棚と机。
やはり謎の光で明るい。
これ以上の扉はないが、非常に寒い。
从 ゚∀从「あの機械に関する何かがここにあるのか」
('A`)「ここになけりゃ、どうしようもない」
鉄の机の上に着火した灯籠石を置いた。
これで室温は少しは上がる。
本を片端からひっくり返し、見てみる。
…読めない。
('A`)「おい」
从 ゚∀从「何だよ」
('A`)「何、この文字」
从 ゚∀从「さっきのガラスに書いてた文字と似てるぞ」
('A`)「読める?」
从 ゚∀从「読めねーよ」
- 468 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:19:03 ID:DxBAIENIO
-
从 ゚∀从「あ、ドクオ!」
('A`)「どうした」
从 ゚∀从「これ、どう?」
ハインが持っているのは、何やら赤い本。
本が紐で留められている辺り、特別らしい。
('A`)「だから読めねーじゃん?」
从 ゚∀从「うん、何か大事な本っぽいだろ」
('A`)「意味ねーだろ…」
从 ゚∀从「ドクオ、どうにか解読頼む」
('A`)「無茶を言いなさんな」
- 469 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:19:59 ID:DxBAIENIO
-
('A`)「仕方ない、引き上げだな。…これは一応持って帰るか」
从 ゚∀从「他の本もな」
適当に数冊見繕って鞄に入れた。
濡れないように革で包むが、服が濡れていたことから浸水は免れられないだろう。
銀色の部屋を出て、先程の水面に着いた。
水は透き通っている。
('A`)「あ、帰りも泳ぐのか…」
从 ゚∀从「頑張れ」
('A`)「上ぶち抜いて登れないかな」
从 ゚∀从「それで洞窟崩落とか洒落にならんぞ」
('A`)「よっし、行くか」
上着を脱いで鞄に詰める。
鞄が重いのが不安で仕方ない。
- 470 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:20:49 ID:DxBAIENIO
-
――――――――――――
('A`)「ただいま戻りましたー」
ノハ*゚⊿゚)「お帰りっ!」
(*><)「お帰りなさい!謎の生命体はどうなりました!?」
从;゚∀从「いねーよそんなの!」
/ ,' 3「はて、ヒートとジョルジュの話では氷の巨人がいたと」
(;'A`)「何を喋った!」
_
( ゚∀゚)「いやー話が弾んじゃってね」
从;゚∀从「どんだけ弾んじゃったんだよ…」
ζ(゚ー゚*ζ「まあまあ、ご飯にしますよー」
ノハ*゚⊿゚)「ごはんっ!」
- 471 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:22:09 ID:DxBAIENIO
-
/ ,' 3「ほぉー…そんな物がなぁ…」
_
( ゚∀゚)「どんな文字?」
('A`)「こんな感じの…」
持って帰ってきた本を広げ、見せる。
全員が顔を寄せて見入った。
/ ,' 3「あー、こりゃ昔の文字じゃな。アルファ何たらとか言ったか」
从;゚∀从「今は使われないんですか?」
/ ,' 3「発音と意味が残っているものはあるが、表記は全く別物じゃ」
ノパ⊿゚)「よく知ってるな!」
/ ,' 3「ワシ昔習ってたし」
(;'A`)「え、じゃ読めるんですか?」
/ ,' 3「やってみよう」
- 472 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:23:18 ID:DxBAIENIO
-
そう言うと荒巻は仰々しく本を正面に置き、読みはじめた。
全員の視線が集中する。
/ ,' 3「あー…トゥ…」
/ ,' 3「えー…『今日』」
/ ,' 3「『終わる』、いや『終わった』」
/ ,' 3「…………」
/ ,' 3「…ウ、ウァー?って…あ、『戦争』」
/ ,' 3「…『私は、思う』」
/ ,' 3「確か…『下らな……かった』」
/ ,' 3「えー…」
/ ,' 3
/ ,' 3「ゴメン、分からんわワシ」
_
( ゚∀゚)「死ねよ」
/;,' 3「ボソッと言うな!何か生々しかろうが!」
- 473 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:25:00 ID:DxBAIENIO
-
/ ゚、。/「何か大変そうだね」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ダイオードさん。古語の指南書ありました?」
/ ゚、。/「うん、あったよ。これぐらいならサービスしてあげる」
ζ(゚ー゚*ζ「助かります!」
ノパ⊿゚)「その手があったか!」
/ ,' 3「ジジイ処分の危機!」
( ><)「皆の期待を裏切った罪は重いんです!」
('A`)「さー、解読だ解読だ」
手渡された指南書とやらを開く。
確かにそこの文字は古い本のものと一致していた。
- 474 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:25:35 ID:DxBAIENIO
-
そこにあったのは、複雑な文法、単語。
(;'A`)「えー…」
从 ゚∀从「どう?」
('A`)「そんなすぐにマスターできる物でもない事だけは分かった」
/ ,' 3「どら、見してみ」
从 ゚∀从「そうか、忘れてても本があれば思い出せるよな!」
/ ,' 3
/ ,' 3「ごめん、無理」
_
( ゚∀゚)「死ねよ」
/ ,' 3「嗚呼せちがらい世の中よ」
- 475 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:27:07 ID:DxBAIENIO
-
結局、全員で解読をすることにした。
数冊の指南書を机に広げ、また数冊の本を訳していく。
とりあえずは本の種類が明らかになった。
('A`)「この赤いのは多分日記だな」
_
( ゚∀゚)「こっちは小説だ」
ζ(゚ー゚*ζ「とりあえずその大事そうな日記から訳しちゃいましょうか」
全員で紐付きの日記に向き直り、解読を進める。
だんだん要領が掴めてきたようで、訳するスピードも上がっている。
/ ゚、。/「これで一日分、かな?」
ノハ;゚⊿゚)「古語って複雑だな…全然分からん!」
( ><)「おやつがあるから休憩するんです!」
/ ,' 3「難しいもんじゃのう…」
- 476 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:28:02 ID:DxBAIENIO
-
指南書を見ながら解読の作業は数日続いた。
……そして、ついに日記の訳が完成した。
('A`)「数日分しかないんだな…」
_
( ゚∀゚)「何かあった日だけ書くタイプの人だったんだな」
从 ゚∀从「とりあえず纏めて読んでみてくれよ」
('A`)「分かった。…これが終わったら、またあの部屋に向かうぞ」
从 ゚∀从「おう」
数枚の紙束を取り上げ、読み上げる。
- 477 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:29:27 ID:DxBAIENIO
-
('A`)「作者は…『デミタス』」
少し呼吸を整え、日記の内容を読む。
若干気が引けたが、仕方ない。
『今日、戦争が終わった。
思えば下らない戦争だった。
灯籠石欲しさに、ソウサクがビップに仕掛けただけだった。
結局ビップが防衛しきったようだ。
私はあの石ころに、人々の命は釣り合わないと思う。
権力者は、何も知らない。』
/ ゚、。/「二つの国があったようだね」
('A`)「ビップってのが俺達のいた王国の前身だろうな。今や名前なんかないけど」
- 478 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:30:54 ID:DxBAIENIO
-
『調停や条約がやっと決まったようだ。
両国は機械を封印するらしい。
私は全く馬鹿げていると思う。
機械を殺人に使ったのは、兵士だけだ。
それに私達研究者を巻き込むな。
言ったところで聞かないし、また言えもしない。』
从 ゚∀从「何かあった日だけ日記を書くタイプの人で良かった」
_
( ゚∀゚)「息子の成長とか書かれてたら俺泣いてたよ」
『さらにおかしな事が決まった。
調停は壁を築き、二国を引き離すらしい。
偉い奴らは何を考えているんだろうか。
偉い奴らは恐らく、暗殺やら反乱が怖いからとかそんな理由だろう。
何の解決にもならないだろう。』
- 479 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:32:02 ID:DxBAIENIO
-
『やっぱりだ。
私達機工師に画期的な壁を作れと言われた。
お前の脳は飾りなのだろうか。』
('A`)「ここの部分は字が震えてる」
/ ,' 3「まあ、怒るわな」
『腐らず、なおかつ修正のきく氷で作ることになった。
壁は恐らく、ビップの領地を囲む形で作られるだろう。
後世の人には申し訳ないが、ビップの天候がどうなるかは私にはわからない。
しかし、恐らくは太陽光が通らず、氷の支配する世界になるだろう。
私は、独自にこれを「アイスエイジ計画」と名付けた。』
- 480 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:33:51 ID:DxBAIENIO
-
『ようやくアイスエイジ計画のプログラムが完成した。
それは空気中の水分を少しずつ取り込み、氷の壁ができるはずだ。
妻も子供もいない私は、もうすぐ機械も奪われる。
そうなる前に、私はありったけの機械を持ってビップへ逃げる。
そして、出来るだけ機械を見つけやすくしてやるつもりだ。
密かな協力者は沢山いる。
馬鹿な政府の目なんか、いくらでも欺ける。
私は私を筆頭に、この「ホープ計画」は完成しつつある。』
('A`)「あとは白紙、と」
从 ゚∀从「デミタス様々、だな。機工師の神だよまさに」
ノハ;゚⊿゚)「あの氷、人が作ってたって事か?そうなのか?」
_
( ゚∀゚)「すげーな、戦争とかあったのか」
从 ゚∀从「あそこにあった大砲もそういう訳だろうなぁ…」
- 481 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:35:31 ID:DxBAIENIO
-
('A`)「…さて」
_
( ゚∀゚)「もう一度行くのか?」
('A`)「ああ。多分この中の単語を機械に書き込めば何かが起こる筈だ」
( ><)「一応指南書も持っていくといいんです!」
/ ,' 3「それがあればそれなりに文も読めるじゃろうしな」
从 ゚∀从「そうだな、そうしよう」
/ ゚、。/「じゃ、頑張って」
ノパ⊿゚)「何か変わるといいな!」
外に出ると、丁度太陽が氷壁の向こうに消えゆくところだった。
ドクオとハインは鞄を担ぎ、そちらと反対側に歩きだす。
今度こそ、何か変わる筈だ。
否、変えなければ。
- 482 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:37:37 ID:DxBAIENIO
- 今日はここまで!
今回出てきた機械はパッソコォーンです
あ、あと次回が最終回だぜな
- 483 :名も無きAAのようです:2012/08/30(木) 23:55:01 ID:oHDTbN6w0
- な、なんだってー! 終わってしまうのか…
寂しいが最後まで見届けるぜ
おつだぜな
- 484 :名も無きAAのようです:2012/08/31(金) 00:02:53 ID:Wlkpshc.0
- 乙!
次で終わりかぁ...寂しいなぁ...
- 485 :名も無きAAのようです:2012/08/31(金) 02:33:17 ID:6FCCS7us0
- ようやく追い付いたら次で最終話か、残念
乙です
- 486 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 03:10:04 ID:aYWGRxFo0
- 乙!
- 487 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 18:03:40 ID:v/hQyijw0
- 最終話生で読みたいから予告してくれよー
- 488 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 18:35:10 ID:P/NIjkWUO
- それでは今日の日付が変わる頃に投下しますって事で
- 489 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 19:13:05 ID:N96tWj9g0
- よっしゃ!
- 490 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:52:08 ID:P/NIjkWUO
-
最終話『希望を見据えて』
再び機械の前に立つ。
一つずつ文字を打ち、確かめる。
从 ゚∀从「やっぱりこれに字を入れたらいいんだな?」
('A`)「だろうな。…全く、昔の人ってすげーな、敵わんよ」
『Keyword:demitasu__』
『Error!!』
('A`)「こんなの、機械のレベルじゃない」
『Keyword:vip_______』
『Error!!』
从 ゚∀从「でも、俺達も頑張ったよ」
『Keyword:sousaku___』
『Error!!』
- 491 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:52:55 ID:P/NIjkWUO
-
('A`)「…そうだな。俺達も頑張ってここまできた」
『Keyword:iceage____』
『Error!!』
从 ゚∀从「ここまで来たらさ、何としてもこの壁どうにかしようぜ」
『Keyword:hope______』
『Keyword confirmationing...』
『...cancellation』
('A`)「えーと、解除か。よし!」
从 ゚∀从「おし!」
手袋をした二つの手が、がっちりと交わされた。
- 492 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:53:37 ID:P/NIjkWUO
-
新しい文字がガラス板に浮かぶ。
十字のスイッチでどうにかできそうだ。
『 message
>program improve
shut down』
(;'A`)「えー…と、メッセージ、機能改変、システム終了、だってさ」
从 ゚∀从「メッセージ、いくか」
メッセージに矢印が合っているのを確認し、大きなスイッチを押した。
程なく出てきたのは、長い文章。
当然、古語の。
从;゚∀从「うぉう…」
(;'A`)「えーと、本、本…」
从;゚∀从「まずは『見ている』…『これを見ている』、か。面倒な…」
- 493 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:54:31 ID:P/NIjkWUO
-
『これを見ている以上、あなたには機械の心得があるのだと思う。
つまりは私のホープ計画は成功したのだろう。
あなたが壁をどうにかしに来たのなら、考えてほしい。
世界は、平和になっただろうか?
私は、戦争で家族を殺された。
戦争が起きると思うなら、ここの事は忘れろ。
ただ、世界が荒れていないなら、壁は壊してくれていい。
その為に、わざわざ日記まで残し、解除キーも解りやすくした。
どうするかはあなたに任せる。
デミタス』
('A`)「ここまでか」
从 ゚∀从「ああ、訳は合ってる筈」
('A`)「……」
- 494 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:55:33 ID:P/NIjkWUO
-
('A`)「どうだろう。平和か、今?」
从 ゚∀从「平和、じゃないよな。少なくとも向こうは」
モララーや騎士に襲撃されたことを思い出す。
そもそも自分達も犯罪で生きてきた。
('A`)「でも…戦争は起きないんじゃないか?」
从 ゚∀从「モララーも多分いないしな、もう」
('A`)「それに……俺達が何のためにここに来たのか、だろ」
『 message
>program improve
shut down』
機能改変を選ぶと、夥しい量の文字が現れた。
言語としては成立しておらず、ただの文字列に見える。
('A`)「しっかり目的と覚悟を持って、ここまで来たんだ」
- 495 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:57:17 ID:P/NIjkWUO
-
('A`)「ここまできて辞めたら、それこそ皆に怒られるよ」
様々なボタンを押し、反応を確かめる。
そのうち文字を消去するボタンを見つけると、躊躇いなく文字列を消し去った。
从 ゚∀从「何…『C-3地点のプログラムを改変しました』、だと」
('A`)「これで、少なくともこの『C-3地点』の氷壁の再生機能は失われたはずだ」
('A`)「…戦争とかどうとか、俺にはどうしようもない」
('A`)「俺は、俺のしなきゃならない事をするだけだよ」
从 ゚∀从「帰るか」
('A`)「帰ろう。もう、ここに用はないな」
光る機械を後にし、歩きだす。
扉が閉まると同時に、向こうの照明が消えるのが分かった。
从 ゚∀从「じゃあな、デミタスさん」
- 496 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:59:10 ID:P/NIjkWUO
-
凍った階段を昇る。
ふいに、ドクオがぽつりと漏らした。
('A`)「なあ」
从 ゚∀从「うん?」
('A`)「俺達の関係って、何かな」
ハインは暫し考え込んだ。
ただ具体的な答えは出なかったようだ。
从 ゚∀从「分からんな…何だろな」
('A`)「いや、ちょっと前から俺も困ってて」
从 ゚∀从「分からんけど、分かることもある」
('A`)「?」
从 ゚∀从「俺、お前が好きだし…何よりさ」
从 ゚∀从「お前の全てを信じてるよ」
('A`)「…なるほど」
少しだけ分かった気がした。
絶対的な信頼関係。
これだけは、何があっても揺らがない自信がある。
今はこれだけ分かれば、それでいい。
- 497 :名も無きAAのようです:2012/09/01(土) 23:59:53 ID:P/NIjkWUO
-
またどうにか泳いで外に出ると、夜にも関わらず非常に暑く感じた。
从;゚∀从「さっきまで寒かったからなー」
(;'A`)「あっつ…」
少し離れた位置の氷壁に触ると、水が手についた。
融けるのも時間の問題だろう。
从 ゚∀从「さー、帰ろ帰ろ」
('A`)「疲れた…」
从 ゚∀从「…これでいいのかな?」
('A`)「俺はこれでいい。モナーさんや皆の目的もこれで達成だろ」
从 ゚∀从「お前がいいなら、それでいいや…」
('A`)「世界、変えちまったなー…」
从 ゚∀从「あー、そう考えたらすげーなぁ」
('A`)「ようやく、だな…」
何故か涙が出てきた。
ハインに悟られないように上を向き、ごまかした。
- 498 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:00:47 ID:5Oz3uKC2O
-
――――――――――――
('A`)「―――ってな事で、いずれ融ける」
_
( ゚∀゚)「ドクオの家行きてーな」
从 ゚∀从「誇張無しで何もないぞ」
ノパ⊿゚)「壁さ、何かこう…」
ノパ⊿゚)「バキバキッ!とはいかないのか?」
('A`)「うーん…」
从 ゚∀从「出来ないことはない、か?」
大きな大砲と砲弾があった。
あれを使えば或いはヒートの望みも叶うだろう。
ノハ*゚⊿゚)「やろう!」
( ><)「壁の内側見たいんです!」
(;'A`)
よく考えたら、爽快かもしれない。
(*'A`)「ま、明日な」
/ ,' 3「楽しみじゃな」
- 499 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:01:55 ID:5Oz3uKC2O
-
――――――――――――
ノハ*゚⊿゚)「おっきろー!」
(;'A`)「なんかもう、こっち来てからロクに眠れねーんだけど?」
_
(*゚∀゚)「ハイン!起きるか俺のボディプレスを受けるか選べ!願わくば起きるな!」
从;゚∀从「起きますっ!!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、騒がしいわねー」
ノパ⊿゚)「デレも行くんだぞ!」
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、まずは朝ごはんですね」
/ ,' 3「老人も強制参加?」
( ><)「行くんです!」
- 500 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:02:49 ID:5Oz3uKC2O
-
慌ただしく朝ごはんを食べ終え、工具を手に飛行機まで行く。
('A`)「機器を暖める為に使ってる灯籠石を使って撃つか」
从 ゚∀从「大砲の奴と併せて五つか、充分かな」
小さい灯籠石を取り出し、袋に入れた。
極端に寒くなければ、飛行機は問題なく動く。
('A`)「よーし、全員飛行機乗れーい」
ノハ*゚⊿゚)「飛ぶのか?」
从 ゚∀从「普通に地面を走る、危ないから」
('A`)「ヒートとジョルジュは翼に掴まってくれ、問題ないから」
_
( ゚∀゚)「把握!」
('A`)「あとは全員操縦席とその後ろに詰まろうか」
ζ(゚ー゚*ζ「はーい」
( ><)「はいなんです!」
从 ゚∀从「やべ、荒巻さん入らんぞ」
('A`)「荒巻さん、尾翼へ」
/ ,' 3「もうヤケじゃ、任せやがれ」
- 501 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:03:54 ID:YFg2N0iQ0
- 尾翼wwww
必要ないけれども支援
- 502 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:03:56 ID:5Oz3uKC2O
-
ふとビロードが大きな声を上げた。
ある方向を指さしている。
(*><)「ダイオードさんも来たんです!」
/ ゚、。/「やあ」
ノパ⊿゚)「早く乗るんだ!」
/ ゚、。/「いやいや、私は歩くよ。いずれ追いつく」
(;'A`)「どっちにしても定員オーバーですよ」
_
( ゚∀゚)「行こうぜ!」
ジョルジュの言葉を合図に、ハインがスイッチに手を伸ばした。
飛行機がひとしきり奮え、動き出す。
- 503 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:05:46 ID:5Oz3uKC2O
-
ごろごろと飛行機が動く。
沢山の嬌声が乗っている。
(;'A`)「狭い!」
从;゚∀从「スピード落ちるなぁ…」
ζ(゚ー゚*ζ「あら速い」
( ><)「前はもっと速かったんです!」
_
( ゚∀゚)「翼に掴まるのもいいな」
从;゚∀从「こいつ、この扱いに慣れやがった…!」
ノハ*゚⊿゚)「おおおおおおう!!」
/;,' 3「おおおおおおう!!」
( ><)「はい、到着なんです!!」
氷壁の下に水が溜まっている。
どうやら大砲のある場所もC-3地点内だったようだ。
- 504 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:06:02 ID:rSOCCMcI0
- 支援したい
- 505 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:06:33 ID:5Oz3uKC2O
-
使えそうな大砲を探す。
出来るだけ、錆びていないもの。
从 ゚∀从「あと動物が巣作ってない奴な」
('A`)「はいはい。…ま、これか?」
从 ゚∀从「撃てそう?」
('A`)「機構は俺の大砲と同じ。灯籠石が無かったなら違う爆発物を使ったんだろうな」
从 ゚∀从「火薬とか?」
('A`)「多分」
向こうからヒートがやって来た。
黒い球を転がしている。
ノパ⊿゚)「あんま錆びてない弾あったぞー!」
从 ゚∀从「よし、まー使えるかな」
('A`)「撃てなかったら錆び落としてリトライすりゃいいしな」
- 506 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:07:33 ID:5Oz3uKC2O
-
('A`)「―――さあて、と」
目の前には、壁を向いて準備万端な大砲。
幾つかの砲弾。
そして氷壁。
遥か後ろには、最早こちらからは見えないジョルジュ達。
安全は保障できる距離だ。
目を合わせて、頷く。
从 ゚∀从「3」
('A`)「2」
从 ゚∀从「1!」
(;'A`)「発射っ!!」
耳をつんざく爆音と共に、黒い球が壁に向かって撃たれた。
砲弾が壁に減り込み、ばきばきと音を立てて亀裂ができる。
しばらくして音が止まった。
从*゚∀从「追撃準備よし!」
(;'A`)「よし撃てっ!!」
また同じ音がし、一発目の右下辺りに二発目が命中した。
- 507 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:08:53 ID:5Oz3uKC2O
-
三発、四発と撃っていく。
大砲を撃ち込む度、亀裂は増える。
('A`)「やっと…!」
ああ、やっとだ。
やっとここまで来れた。
ブーン、ツン、ショボン、クー。
よく見ていろよ。
間違っても見逃すなよ。
――――今から、世界を変えてやる!
最後の五発目を撃ち込んだ。
亀裂が広がり、今度こそ地響きを上げて壁が崩れ落ちる。
(;'A`)「よし、乗れ!」
从;゚∀从「うおぅ!」
- 508 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:10:39 ID:5Oz3uKC2O
-
―――轟音を上げて、壁が崩れる。
氷の塊が地面に突き刺さり、重なり合う。
冷気が吹き出し、霧のようになった。
落ちる氷から逃げるように、虹色のハヤブサが飛んでいる。
(*'A`)「よおっしゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
从*゚∀从「うおおぉぉ、綺麗ーーっ!!」
向こうから歓声が聞こえた。
皆もしっかり見ているようだ。
モナーさんやペニサスさん、流石兄弟も見ているだろうか。
見ていなくたって、間違いなく気付いてくれる。
ひたすらに叫びつづけた。
黙る気にはならない。
声が枯れても息継ぎをして、また叫んだ。
気持ちが高ぶる。
涙が止まらなかった。
どうしようもなく、嬉しい。
- 509 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:12:12 ID:5Oz3uKC2O
-
――――――――――――
( ´∀`)「……!」
(*´_ゝ`)「へっへっへ、いいケツしてんな姉ちゃん!」
(*゚ー゚)「きゃん、お客さんのエッチー!」
( ´∀`)「…なんか今、ドクオが偉業を達成したような」
(´<_` )「何だ、それ」
( ´∀`)「太陽だよ。本当に出来たのなら凄いことだ」
(´<_` )「エスパーかお前は」
('、`*川「昔はあんたも世界を一つにするんだー、とか言ってたもんねー」
( ´∀`)「ドクオならできると信じてるよ」
( ´∀`)「あいつはもう、僕よりも立派になっ――」
(*´_ゝ`)「うへへへぇ、酒持って来いやぁー!」
(´<_` )「台無しだ、兄者」
( ´∀`)「あいつはもう、僕より立派になっているからね」
('、`*川「しかも言い直すか」
- 510 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:13:01 ID:5Oz3uKC2O
-
――――――――――――
(゚、゚トソン「ワタナベ様、そろそろ休憩なさっては?」
从'ー'从「大丈夫。タカオカもきっと頑張っているから、私も頑張らないと」
ミセ*゚ー゚)リ「でも、体を壊しては元も子もありませんし」
从'ー'从「…うん、それもそうね。ちょっと休むわ」
(゚、゚トソン「タカオカ様、どうしてますかね」
ミセ*゚ー゚)リ「結構楽天家だから、意外としっかりやってますよ、きっと」
从'ー'从「うん、タカオカなら大丈夫よ」
ミセ*゚ー゚)リ「軽く男の影が見えましたしね」
(゚、゚;トソン「え」
从;'ー'从「へ?」
ミセ*゚ー゚)リ「ええ」
从;'ー'从「…まあ、尚更心配ない、かな」
(゚、゚;トソン「先を越される…!」
- 511 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:14:09 ID:5Oz3uKC2O
-
――――――――――――
ノハ*゚⊿゚)「おおおおおお!!」
ζ(゚ー゚*ζ「綺麗…」
/ ,' 3「生きてるうちに、こんなもんが見られるとはな…」
_
( ゚∀゚)「あいつら、すげーなぁ…こっち来て数日で…」
( ><)「冷たい風が吹いてきたんです!」
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら、厚着してて良かった」
ノパ⊿゚)「あ、いーな!」
/ ,' 3「世界って、変わるんじゃな…」
_
( ゚∀゚)「何しんみりしちゃってんだよ?」
ノパ⊿゚)「死期が近いな!」
/ ,' 3「何を言う、まだまだじゃ」
ζ(゚ー゚*ζ「今日の夕飯は頑張らないとね」
(*><)「楽しみなんです!」
- 512 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:15:00 ID:5Oz3uKC2O
-
――――――――――――
/*゚、。/「おお、綺麗な」
/*゚、。/
/ ゚、。/「変わるもんだな…」
/ ゚、。/「たった二人で……いや」
/ ゚、。/「彼らとその家族で、かな」
/ ゚、。/
/ ゚、。/
/*゚、。/「それにしても、派手な鳥だな!」
- 513 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:16:48 ID:5Oz3uKC2O
-
風を切ってハヤブサが飛んでいる。
眼下には、崩れ落ちた凍った障壁。
二つの世界が繋がった証拠に、白い雪が吹き出してきている。
('A`)「氷の山だな…」
从 ゚∀从「改めてでかい事したんだな、俺達」
('A`)「向こうの皆も、満足してるかな」
从 ゚∀从「してるだろ。なんせ世界を変えたんだぞ」
('A`)「まーなぁ…」
从 ゚∀从「目に焼き付けとかねーとなぁ、この景色」
('A`)「だな…。…さ、降りるか」
从 ゚∀从「まぁ待てよ」
('A`)「ん?」
从 ゚∀从「もうちょっと、二人で見ようぜ」
('A`)「ん」
('A`)「…なあ」
从 ゚∀从「おう」
('A`)「…えー、何て言うか」
('A`)「お前に会えて、良かったよ」
从 ゚∀从「うん、俺もだ」
――雪煙に、一筋の虹が架かった。
- 514 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:17:29 ID:5Oz3uKC2O
-
これは、どこかの世界のお話。
そこは氷の壁が世界を囲み、空にはいつも雪雲が満ち。
そんな世界に、一条の光が差し込みました。
ここから世界は変わります。
どう変わるのかは誰にもわかりません。
でも、確かに変わります。
これから、希望を見据えて。
- 515 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:18:27 ID:5Oz3uKC2O
-
雪のハヤブサ、のようです
完
- 516 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:21:53 ID:rSOCCMcI0
- 景色が綺麗だ
おわってしまったか…
- 517 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:22:49 ID:YFg2N0iQ0
- うああああああああああああああ乙乙!
凄い良かった、終わった先もどうなるのか楽しみでたまらない
どんな雲にも銀色の裏地がついている、って諺を思い出しちゃったよ
あとスピッツの8823がピッタリで、聴きながら最終話読んだら思わず震えてしまった
夏だったけど清涼感と寒々しさが同居したような感覚になって楽しかった!
ゆっくり休んでくれ!
- 518 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:23:21 ID:5Oz3uKC2O
- はい、ここまでです。
なんか淡々と終わりましたが、読んで頂いてありがとうございます。
さすがに感想スレのトップを飾るとは思わなんだよ。
そこで喜びの舞を舞ってたら漫画まで頂いて有頂天でした。
でも画像半分しか見れなくて絶望の舞に変わりました。
多分次があるならファンタジーです、そん時はよろしく。
長々しいのは嫌いなので、これまでです。
- 519 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:26:57 ID:ru0iI.bk0
- 乙やでーい!!!
- 520 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:34:23 ID:w9FfkWrMO
- 感想スレ?ってどこにあるん?VIPなんかな…携帯でも見れるなら誰か誘導してくれないかのぅ…
- 521 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:37:45 ID:/6eWRa8g0
- 最大限の乙
- 522 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:38:04 ID:rSOCCMcI0
- 感想もイラストもすごかったなぁ
俺なんかは何も言うことがなくなった
真っ白から徐々に色づいていくのよな
追ってて楽しかった、おつでやんした
>>520
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1346414615/4-12
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1346414615/245
見られるかな
- 523 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:39:22 ID:l7jv3hg60
- 乙!!
雪山ではどうなるかと思ったけど
アフターストーリーも気になようなエンドで良かったわ
次も楽しみにしております
- 524 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:42:26 ID:VGM3CFCE0
- 乙です
すっきりしたエンディングで、しかもまたそれぞれの未来に想像の余地があるのがいいなあ
あと色の描写が綺麗で好きだった
良作をありがとうございました
- 525 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 00:43:26 ID:w9FfkWrMO
- 522ありがとう!見れたよ見れた!ありがとう〜
そして一番大事な事忘れるとこだった…作者さん乙っした!最近で一番好きでした!
- 526 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 02:07:15 ID:6TbmeUbY0
- 乙
綺麗な終わりだな
- 527 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 02:55:13 ID:Uobbw8R20
- いい味出してたよ、おつ
- 528 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 04:50:34 ID:rBa0vpcc0
- 一気読みした
久々に読後感の良い小説だった
乙です
- 529 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 09:17:53 ID:NpvQvr1.0
- キレイに纏まったな
すげー楽しかった、乙
- 530 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 11:08:58 ID:bqZmySu60
- 乙
素晴らしい作品だった
- 531 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 12:26:10 ID:4.leBxag0
- なたっだうそいわかーららも、つお
- 532 :名も無きAAのようです:2012/09/02(日) 17:01:42 ID:xZxEiSjw0
- >>531
まともにやってればね、モララーも王族の次に偉い順列まで行けるのにな
- 533 :<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
- <^ω^;削除>
- 534 :名も無きAAのようです:2012/09/04(火) 01:36:31 ID:EWpkqjss0
- 面白かったです
お疲れ様でした
- 535 :名も無きAAのようです:2012/09/04(火) 01:52:10 ID:DnrUGFv60
- おつおつ
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