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( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです
1名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:39:54 ID:V135c6MQ0
以前投下したのを若干加筆修正して終わらせる

2名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:41:01 ID:V135c6MQ0

そのお菓子屋さんは、ほかのおかしやさんとちがって、できたてのお菓子をいれたてのコーヒーや、
お茶といっしょに食べてもらうために、いくつかのいすとテーブルを、お店にならべていました。

ある日のことです。
その日はひどい雨で、誰もかさをさしてだって出かけたくないような、そんな日だったので、
お菓子屋さんにもお客さんは、もちろんいませんでした。


  ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです

3名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:42:02 ID:V135c6MQ0

ざあざあ、ざあざあ。

まったく晴れそうにない雨の音に、お菓子屋さんの店長さんがゆううつそうに、
角さとうを粉さとうにしていて、ちょうどそれが一山できたとき。

からんからん

深くてまるい音をたて、お店のドアがひらきました。

( ^ω^) 「まったく、ひどい雨だお」

こんな日にやってくるお客さんは、ろくなものじゃありません。

その証拠に、お客さんのびしょびしょにぬれた雨がっぱは、大きな水たまりをつくっていました。

( ´_ゝ`) 「いらっしゃいませ」

だけど店長さんはいやな顔をしないで、
あらったばかりのふわふわのタオルをお客さんにわたしました。

( ^ω^) 「すみませんお」

雨がっぱをぬいだお客さんは、タオルを受けとって頭と顔をふきましたが、
あんまり乱ぼうにふくものですから、あちこちに小さな水たまりができてしまいました。

それでも店長さんは、少しもいやな顔をしないで、
お客さんがいすに座って、ふう、と一息つくのを待っていました。

4名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:43:02 ID:V135c6MQ0

( ´_ゝ`) 「ご注文は?」

( ^ω^) 「砂糖たっぷりのコーヒーを温めで」

( ´_ゝ`) 「わかりました。少々お待ちください」

店長さんが赤どう色のやかんをとろうとすると、くしゅん、と大きなくしゃみの音がしました。

お客さんは鼻みずをぬぐって、鼻をぐすぐすいわせていいます。

( ^ω^) 「やっぱりあったかいココアにしてほしいお。体が冷えてしょうがない」

( ´_ゝ`) 「わかりました。少々お待ちください」

店長さんはやかんをとらないで、そのとなりの小さいおなべをとりました。

5名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:44:04 ID:V135c6MQ0

  ※


ずるずる、ふうふう、ずるずるずる

お客さんはおいしそうにココアをのみます。
そのあいだ店長さんは、おなべいっぱいのミルクの中へ、さとうの山をいれていました。

( ^ω^) 「ごちそうさま。おいしかったですお」

( ´_ゝ`) 「そうですか。ありがとうございます」

お客さんはココアを少しも残さないで、カップをテーブルにおくと、
ひどい雨がぴたりとやんでいることに気がつきました。

( ^ω^) 「雨も止んだみたいだし、僕は行きますお」

( ´_ゝ`) 「そうですか」

お金をはらおうと、お客さんが店長さんのところへ行くと、
店長さんはキッチンのほうへ行ってしまいました。

お客さんはふしぎに思いましたが、急いでいるわけでもないので、
店長さんがもどってくるのをきょろきょろしながら待ちました。

6名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:45:07 ID:V135c6MQ0

間もなく店長さんは白い箱をもってもどってきました。

( ´_ゝ`) 「いや、申し訳ありません。どうぞこれをお土産に持って行ってください」

とつぜんわたされた箱に、お客さんはたいへんおどろきました。
なぜならおみやげをもらうようなことを、何一つしていなかったからです。

(; ^ω^) 「いやいや、理由もないのに受け取れませんお」

( ´_ゝ`) 「いえいえ、今日はひどい雨だったでしょう。
       ですからお客さんも全然来ませんで、せっかく作ったお菓子が残ってしまいました」

( ´_ゝ`) 「私たちだけでは食べきれませんし、捨てることももったいなくて」

( ´_ゝ`) 「ですからどうか、これを受け取ってもらえませんか」

店長さんの話しを聞いたお客さんは、こころよくその箱をうけとりました。

( ^ω^) 「わかりましたお。そういう理由ならいただきましょう」

( ´_ゝ`) 「そうですか。ありがとうございます」

店長さんはうれしそうです。

お客さんは雨がっぱと中くらいの箱をそれぞれもって、外へといってしまいました。

7名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:46:04 ID:V135c6MQ0

からんからん、からんからん

こんどは二つずつ音がなりました。

一つは、お客さんが出ていった音です。
もう一つは、店長さんがかえってきた音です。

( ´_ゝ`) 「おかえり、弟者」

(´<_` ) 「ただいま、兄者」

二人の店長さんは、まるで同じようにみえました。

( ´_ゝ`) 「ひどい雨だったが、大丈夫だったか」

(´<_` ) 「ああ、大丈夫だ。しかし、」

(´<_` ) 「これはいったい、どうしたことだ」

後からきたほうの店長さんは、お店の中をぐるりとみまわし、
小さな水たまりと、足もとの大きな水たまりをみて、苦い顔をしました。

先にいた店長さんは、さとうがたっぷりはいった、あたたかいミルクを
もうひとりの店長さんにわたしていいました。

( ´_ゝ`) 「客だ。あんなにひどい雨だったというのに客が来たんだ」

(´<_` ) 「ああ、客か。そうか客か。なら、しかたないな」

ミルクをうけとった店長さんは、しかたない、しかたないと、ぶつぶつつぶやきます。

(´<_` ) 「しかし、ああ、 こんな日にやってくる客はろくなものじゃないな」

後からきたほうの店長さんの大きなため息に、もう一人の店長さんは、苦笑いしました。

8名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:46:57 ID:V135c6MQ0

  ※


家にかえったお客さんは、さっそく店長さんにもらった箱をあけました。

中には、小さくてかわいらしいゼリーが六つ、はいっていました。

(*^ω^) 「おっおっ、おいしそうだお」

お菓子が大好きなお客さんは、大よろこびです。


じつはこのお客さん、ちかごろ急に工場をくびになり、ずっと
あたらしい仕事をさがしている最中でした。
今日もそうしたわけで、ひどい雨だというのに出かけていたのです。

しかし、なかなか仕事はみつからないで、お金もそろそろなくなりそうな、
そんなときにもらった、おいしそうなゼリー。

お客さんのよろこびようったらありません。

いそいそとスプーンを持ってきて、箱から一つ、ゼリーをとり出します。

(*^ω^) 「いただきますお!」

お客さんはわくわくしながら、ゼリーをすくって、そろりと口にいれました。

(*^ω^) 「おいしいお!」

9名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:47:46 ID:V135c6MQ0

ゼリーは甘くて、やわらかくて、いままで食べたことがないくらい
おいしいゼリーに、お客さんはゼリーのようにとろけてしまいそうです。

(*^ω^) 「おいしいお!」

お客さんは、だいじにだいじに少しづつ、ゼリーを食べます。

しかし、ゼリーは小さいのであっというまに、なくなってしまいました。

( ´ω`) 「お・・・ 」

ですけどゼリーはまだまだあります。
お客さんは少しなやんで、やっぱりもう一つ食べようと、ゼリーをとりだしました。

すると、なんとゼリーが宙にぷかぷかと、ういているではありませんか!

(; ^ω^) 「おっ!?」

お客さんはたいへんおどろきました。
しっかりとゼリーを持っているはずなのに、ゼリーは目のまえにういています。

10名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:48:34 ID:V135c6MQ0

お客さんはいそいで、ゼリーがどこかへ逃げてしまう前に
つかまえようと、もう一本の手をのばします。

(; ^ω^) 「おおっ!?」

お客さんはまたおどろきました。

なぜなら、手をのばしたはずなのに、その手がなかったのですから!

お客さんはわけがわからなくなって、思わずあたまをかかえてしまいました。

ゼリーは元のとおりに、箱の中へともどってしまいました。

そこでお客さんは、ふと思いました。

(; ^ω^) 「もしかして・・・ 僕は透明人間になってしまったのかお・・・?」

お客さんはいそいで、みえないようにみえる手で、服をめくって大きなおなかをみてみました。

するとやっぱり、そこにおなかはありません。

おなかだけではありません。
足も、顔も、おしりだって、ぜんぶなくなってしまって、ありません。

(  ゚ω゚) 「お・・・ 」

お客さんはこわくなって、そのままふとんをかぶって、ねてしまいました。

11名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:49:24 ID:V135c6MQ0

  ※


次の日の、にわとりがおきるよりも、もっとはやくにお客さんはおきました。
もう、顔もおなかも、足だって、ぜんぶちゃんとありました。

お客さんはゼリーをみながら、かんがえます。

( ^ω^) 「ふうむ。
       僕が透明になった理由は、このゼリーが怪しいお」

お客さんは、昨日と同じように、ゼリーを食べました。
昨日と同じで、やっぱりゼリーはおいしくありました。

そして、やっぱり昨日と同じように、お客さんはなくなってしまいました。

( ^ω^) 「ふうむ」

ですが、昨日とちがって、お客さんはおどろきませんし、こわくもありません。
お客さんはそのままじっと、時計をみていました。



しばらくすると、お客さんはまるっきりぜんぶ、元のとおりになりました。

( ^ω^) 「ふうむ。
       結構長い時間透明になれるようだお」

どうやらお客さんは、とうめいになれる時間をはかっていたようです。


のこりのゼリーはあと四つ。

お客さんは、どうするのでしょう。

12名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:50:12 ID:V135c6MQ0

  ※


一つめのゼリー。

お客さんは、大すきな女の人のところへいきました。

ξ;⊿;)ξ 「 」

女の人は泣いていました。



二つめのゼリー。

お客さんは、宝石店へいきました。

(  Д ) 「 」

たくさんの宝石がつまったカバンを、だれも見ることができませんでした。



三つめのゼリー。

/  3

工場の社長さんはいつのまにか、つめたくなっていました。

13名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:51:13 ID:V135c6MQ0

四つめのゼリー。

(´・ω・`) 「お前を逮捕する」



(; ^ω^) 「どうしてバレたんだお・・・!」

はあ はあ はあ はあ

お客さんは、一しょうけんめいに走っていました。

とうめいなので、お巡りさんたちにみつかることはありません。

(; ^ω^) 「くそぅ・・・」

お客さんは知りませんでした。

お客さんがぬすんだ宝石が、めずらしいものだったこと。

宝石を売ったお店の人が、お客さんのかおをおぼえていたこと。

あしのうらの社長さんの血が、お客さんの家までつづいていたこと。


(; ゚ω゚) 「! しまったお!」

お客さんはあわてました。

あしの先と手の先が、みえています。
このままではもうじき、ぜんぶ元にもどってしまいます。

そうなると、あっという間にお巡りさんにみつかってしまいます。

(; ゚ω゚) 「そうだお!」

お客さんはどこかを目ざして、もっとはやく走りました。


もしかしたらこの日たくさんの人が、お客さんの手あしだけをみたかもしれません。

14名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:52:00 ID:V135c6MQ0

  ※


からんからん

まるくて深い音をたて、お店のドアがひらきました。

店長さんは、やってきたお客さんをみて、たいへんおどろきました。

なぜならそのお客さんは、牛のようにあらい息をして
ぬれたように汗をかいて、そのうえ、すっぱだかだったからです。

店長さんはコップを落としてしまいましたが、すぐにいつもの落ちついたようになりました。

(´<_` ) 「いらっしゃいませ」

(  ゚ω゚) 「はあ、はあ、 て、店長」

(´<_` ) 「はい、いかがなさいました」

(  ゚ω゚) 「 、店長 はあ、ゼリー・・・ ゼリーを、」

(´<_` ) 「ゼリーですか。今日は桃のゼリーと、洋梨のゼリーがありますが・・・」

(  ゚ω゚) 「ちがうお」

お客さんはふうふう言いながら、店長さんにつめよります。

15名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:52:58 ID:V135c6MQ0

(# ゚ω゚) 「ゼリーだお!
       この前お土産にくれた、あのゼリーだお!」

お客さんにガクガクとひどくゆすぶられながら、店長さんは言います。

(´<_` ;) 「申し訳ありません。私には何のことだか・・・」

(# ゚ω゚) 「ふざけないでくれお! さっさと出すんだお!!」

そう言われても店長さんには、まったく心当たりがありません。

店長さんが本当に困っていると、もう一人の店長さんが
おおきなおぼんを持ってやってきました。

( ´_ゝ`) 「待て待て、お前の言う店長は俺のことだろう」

(´<_` ;) 「兄者・・・」

(  ゚ω゚) 「お・・・」

二人にふえた店長さんに、お客さんはすこしびっくりしましたが、
お客さんにとってはどうでもいいことでした。

(  ゚ω゚) 「どっちだろうと、どうでもいいお。 ゼリーを出せお」

( ´_ゝ`) 「ああ、もちろん。 さあ座ってくれ」

店長さんに言われたとおり、お客さんは近くのいすにすわりました。

そのときもう一人の店長さんが、少しいやそうな顔をしたのはないしょです。

16名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:53:44 ID:V135c6MQ0

( ´_ゝ`) 「さあ、たくさんあるから遠慮しなくていいぞ」

(  ゚ω゚) 「いただくお」

店長さんはおぼんの上から、前にあげたゼリーの何倍も大きなゼリーを、お客さんの前におきました。

お客さんはすぐにそのゼリーを食べはじめました。


ばくばくもぐもぐ。

お客さんはどんどんゼリーをたいらげていきます。

( ´_ゝ`) 「おいしいか?」

(  ゚ω゚) 「 」

ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ。

店長さんは、お客さんがなにも言ってくれないので、少しむっとしましたが
お客さんのために、おかわりのゼリーを用意してあげました。

(  ゚ω゚) (いっぱい食べておかないと、また途中で見えてしまうお)

ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ。

(´<_` ;)

( ´_ゝ`)

二人の店長さんはそのようすを、じっとながめているだけです。

ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ
ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐもぐ、ばくばくもぐ

17名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:54:39 ID:V135c6MQ0

からん、ときれいな音をたててスプーンはお皿におちました。

お客さんはもうずっと前から、そこにいませんでした。

(´<_` ;) 「・・・・・・兄者」

( ´_ゝ`) 「どうやら透明になりすぎてしまったようだ」

      「       」

( ´_ゝ`) 「見えないだけでなく、触れることも出来なくなったんじゃないか」

      「       」

( ´_ゝ`) 「これで誰にも見つからず、どこへでも行けるな」

(´<_` ;) 「・・・兄者、俺には全く事情がわからないんだが」

( ´_ゝ`) 「なに、気にするほどのことじゃない」

こまった店長さんは、もう一人の店長さんにいいますが、
もう一人の店長さんは、まるでだれかとはなしているようで、きいてくれませんでした。

      「       」

( ´_ゝ`) 「なにをそんなに怒っているんだ」

      「       」

( ´_ゝ`) 「知らん」

      「       」

( ´_ゝ`) 「まあ、いたければいればいいさ。  戻れるかどうかはわからんが」

(´<_` ;) 「・・・・・・」

18名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:55:27 ID:V135c6MQ0



それからというもの、このお菓子屋さんには
人数よりも一人分おおくのしせんがあるようになりました。





  ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです  おわり

19名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:56:10 ID:V135c6MQ0

お菓子屋さんの向かいには、お花屋さんがありました。
お花屋さんの店長さんは、とてもかわいらしく、こころのやさしいひとでした。

そんな店長さんですから、とうぜんたくさんのひとが好きになりました。

いま、お菓子屋さんのまどから、お花屋さんの店長さんをみている男のひとも、
たくさんのひとの内のひとりです。


  ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです 2

20名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:57:04 ID:V135c6MQ0


('A`) 「ああ、花になりたい」

お客さんは、ほおづえをつきながら呟きました。
ふたりの店長さんは、いつものことなのでお客さんを気にしません。

('A`) 「ああ、花になればいつでも彼女の側にいられる。彼女に微笑んでもらえる。
     彼女がしゃがんだらパンツが見えるかもしれない。ああ、羨ましい」

ですけど、今日のお客さんはどうしたことか、あぶない独り言をもらしてしまい、
それをきいてしまった、かべぎわの席の女の子は、おそろしくなって、
たのんだお茶をのむまえに、そそくさとお店をでていってしまいました。

このことにはさすがの店長さんもだまっていられませんでした。

(´<_` ) 「お客様、欲望は口に出さないよう、お願いします」

('A`) 「ああ、パンツになりたい」

お客さんはきいてくれませんでした。

これを見ていたもうひとりの店長さんは、お客さんにいいました。

( ´_ゝ`) 「お客様、パンツにしてあげることは出来ませんが、花にしてあげることなら出来ますよ」

お客さんは店長さんのほうをふりかえりました。

('A`) 「mjd?」

( ´_ゝ`) 「mjd」

21名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:58:22 ID:V135c6MQ0

うれしくなったお客さんは、すぐさま店長さんの元にかけよります。

('A`) 「どうすればいいんだ?」

お客さんのようすは、ひっしです。
これもお花屋さんの店長さんの下着が見たいがためかとおもうと、
もうひとりの店長さんはなんだか目頭があつくなりました。

店長さんは、お客さんにお菓子をさしだしました。

ちいさくて、まあるい、かわいらしい、あめ玉です。

('A`) 「これを?」

( ´_ゝ`) 「食べて下さい」

お客さんは、少しもためらわずに、あめ玉を口の中にほうります。
あんまりぶようじんすぎる、と、だれかがおもったかもしれません。

ぴんくいろのあめ玉は、いちごの味がしました。
お花屋さんの店長さんに、よくにあう味だ、とお客さんはおもいました。

('A`) 「・・・・・・」

お花のようにかわいらしい、お花屋さんの店長さん。
くちびるは、いちごのように赤いろです。
近づけば、きっと、いちごのようにあまいにおいがするのでしょう。


お客さんはたっぷりの時間をかけて、あめ玉をなめきりました。

22名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:59:14 ID:V135c6MQ0

(´<_` ;) 「なんだか気持ち悪い顔をしていたが・・・」

もうひとりの店長さんは少しとまどっていましたが、もうひとりの店長さんは、
まったく気にしないで、あめ玉のような種になったお客さんを、つまみあげました。

( ´_ゝ`) 「弟者、植木鉢買ってきて」

(´<_` ;) 「はあ・・・」

店長さんはためいきをつくと、向かいのお花屋さんへむかいました。

23名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 10:59:55 ID:V135c6MQ0

  ※


一週間後、植木ばちにきれいなお花がさきました。

だれもみたことがないような、めずらしい、
お客さんのことなんて、少しもおもいだせない、かわいらしいお花です。

そんなお花がちょうどきれいにさききった日、お花屋さんの店長さんがやってきました。

从'ー'从 「こんにちわぁ〜」

のんびりとしたお花屋さんの店長さんのえがおは、
どんなお花にも負けないくらいにかわいらしいものです。

そんなお花屋さんの店長さんの来店に、
店長さんは急いで、お客さんのお花を、小さな花束につくりました。

( ´_ゝ`) 「もうすぐご結婚されるそうですね。おめでとうございます。
       こちら、お客様からのファンの方から、プレゼントを預かっています」

どうぞ、と店長さんはお花屋さんの店長さんに、花束をわたしました。

从*'ー'从 「わぁ、かわいい〜。でもファンだなんて、ちょっと照れちゃいます〜」

お花屋さんの店長さんは、花束よりもかわいらしく、少しはずかしそうにほほえみます。
店長さんはそんなようすをみて、お客さんに、よかったですね、とこころの中でいいました。

24名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:00:37 ID:V135c6MQ0

お花屋さんの店長さんは、いちごのケーキと紅茶をいっぱいのんでかえっていきました。
そのむねにはお客さんの花束がいて、すこしうらやましくも思いました。

(´<_` ) 「兄者、あの花は?」

( ´_ゝ`) 「花屋に渡したぞ」

(´<_` ;) 「切ったのか?」

( ´_ゝ`) 「? うん」

店長さんは、もうひとりの店長さんがどうしてあわてているのか、わかりません。

(´<_` ;) 「あれって、客、切ったら死ぬ ・・・んじゃない、か?」

( ´_ゝ`)

( ´_ゝ`) 「でも、ほら。根っこと茎、残ってるし」

(´<_` ;) 「・・・・・・」

25名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:01:19 ID:V135c6MQ0


それからというもの、このお菓子屋さんには
茎がすこしだけはえた植木ばちがあるようになりました。





  ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです 2  おわり

26名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:02:14 ID:V135c6MQ0

お菓子屋さんには、いろいろなお客さんがやってきますが、
一ばん多いのは、女の子のお客さんです。

今日もお菓子屋さんには、女の子のお客さんがやってきていました。
学校がおわったばかりなので、お店の中には、一番のりの、このお客さんしかいません。

お客さんは、近ごろひとりでお菓子屋さんへやってきます。
女の子たちのだれより早くやってきて、かべぎわの席にひっそりするようにすわるのです。
そのように毎日やってくるのですが、おこづかいは多くなかったので、
いつも、お茶をいっぱいのむだけで、お菓子を注文することはしませんでした。


  ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです 3

27名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:02:59 ID:V135c6MQ0

( ´_ゝ`) 「どうぞ」

ζ(゚ー゚*ζ 「あ! ありがとうございまあ、す?」

お客さんの目の前には、お茶のはいったカップといっしょに、お菓子が一皿ならべられました。
たのんでいないお菓子をまえに、お客さんは困ってしまいます。

ζ(゚- ゚*ζ 「あの、わたし、これ、頼んでないです・・・・・・」

( ´_ゝ`) 「ええ。サービスですので、どうぞお召し上がり下さい」

ζ(゚ー゚*ζ 「サービス」

( ´_ゝ`) 「ええ。サービスです」

ζ(゚ー゚*ζ 「じゃあ、遠慮なくいただきますねえ。ありがとうございます!」

ずっとお菓子と店長さんを、ちらちらと見比べていたお客さんは、
それでぱっとわらって、さっそくフォークでお菓子をつつきました。

ζ(゚ー゚*ζ 「わあ、おいしそう」

茶色のこなのかかった、白いクリームのケーキは、たいへんやわらかいものだったので、
少しのちからで、一口ぶんのケーキがフォークの上にのります。
にがいけれど、とてもおいしいケーキに、お客さんはむちゅうになりました。
ケーキは、お茶がカップの半分までへるまえに、
お皿の上からなくなってしまいました。

28名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:03:43 ID:V135c6MQ0

ζ(゚ー゚*ζ 「とってもおいしかったです! ごちそうさまでした」

( ´_ゝ`) 「そうですか、それは良かった」

お客さんは、おじぎした頭を上げたとき、からになったお皿のとなりに、
お茶がたくさんのこっていることに、やっと気づきました。
お客さんは少しはずかしくなって、あわててカップに手をのばしました。

ですが、お客さんがカップに口をつけたところで、
カップのなかみが、つるりとテーブルに飛び出してしまいました。

ζ(゚ー゚ ;ζ 「うあ!」

( ´_ゝ`) 「ちょ」

お客さんが手をすべらせたわけではありません。
お客さんと、お客さんのもっているカップだけが、よこになってしまったのです。

ζ(゚ー゚ ;ζ 「ああああ、ごめんなさいい!」

あわててあやまるお客さんは、そのまま上へ上へとうかんでいきます。
そんなお客さんをみた店長さんは、まずはこぼれたお茶をふくために、
タオルをとりにいきました。

29名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:04:27 ID:V135c6MQ0

  ※


ζ(゚ー゚*ζ 「すごいですねえ!」

( ´_ゝ`) 「そうですか」

店長さんは、上を向いていいます。
テーブルの上は、もうすっかりきれいになっています。
お客さんは、すっかりてんじょうに引っかかってしまっているのに、わらっていました。

ζ(゚ー゚*ζ 「スカートの中、のぞかないで下さいねえ」

( ´_ゝ`) 「 そんなことはしませんよ」

ζ(゚ー゚*ζ 「ちょっと間があきましたねえ」

( ´_ゝ`) 「そんなことはありませんよ」

店長さんはちょっとだけ、口をへのじにまげます。
それをみたお客さんは、おかしそうに、口に手をあててわらいました。

30名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:05:08 ID:V135c6MQ0

ζ(゚ー゚*ζ 「それにしても、ほんとにすごいですねえ」

お菓子屋さんの中をぐるりと見まわして、お客さんはいいます。

ζ(゚ー゚*ζ 「このまま外に出たら、どうなるんでしょうねえ」

ζ(゚ー゚*ζ 「よその国に行けちゃったり、するんですかねえ」

お客さんは、下にいる店長さんにききました。

( ´_ゝ`) 「さあ、どうでしょうねえ。私は飛んだことがないので、わかりませんねえ」

ζ(゚ー゚*ζ 「そうですかあ」

店長さんのことばに、お客さんが、うーん、とうなったそのときです。


からんからん

深くてまるい音をたて、お店のドアがひらきました。

( ´_ゝ`) 「いらっしゃいませ」

ひらいたドアからは、何人かの女の子がやってきました。

ζ(゚ー゚*ζ 「あ!」

お客さんは、店長さんにむかって、しーっ、とゆびを口にあててみせます。
やってきた女の子たちは、お客さんの友だちでした。
お客さんは女の子たちがやってくるのを、ずっと待っていたのです。

31名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:05:50 ID:V135c6MQ0

少し前のことです。
どうやら女の子たちのあいだには、楽しいはなしがあるらしいことに、お客さんは気づきました。
ですがお客さんがいくらたずねても、女の子たちはちっともおしえてくれようとはしません。

それならば。
女の子たちがおしゃべりしているのをこっそりきいてやろう。
そのように、お客さんはかんがえたのです。

ζ(゚ー゚*ζ 「・・・・・・」

お客さんは、てんじょうに引っかかっていることをよろこびました。
かべぎわにすわっているよりは、てんじょうにいたほうが、
女の子たちにはみつかりませんし、おしゃべりも聞きやすくなりますから。

女の子たちは、お客さんには少しも気づきませんでした。
窓ぎわの、一ばん日あたりのいい席にすわって、それぞれ食べたいおかしを注文します。

お客さんは、そうっと、てんじょうをうごきました。
女の子たちのあいだにはもう、楽しそうなようすが見えています。
お客さんは、みんなはいったいどのような楽しいおしゃべりをするのだろう、とわくわくしました。

ですが、

32名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:06:42 ID:V135c6MQ0

「あいつってほんと、うざいよね」

「わかるわかる、見てていらいらするよね」

聞こえたてきたことばは、お客さんのおもっていたものと、ずいぶんちがうものでした。

ζ(゚ー゚*ζ 「?」

お客さんはおもわず、くびをかしげてしまいます。
もしかしたら、聞きまちがえたのかもしれません。
女の子たちの楽しそうなようすと、さきほど聞こえたことばと、似ていないように思えるのです。

しかし、わからないお客さんをよそに、女の子たちはどんどんおしゃべりをつづけていきます。
そのうちに、お客さんは、女の子たちのわだいはどうやらお客さんについてのことらしいと、気づきました。

ζ(゚ー゚*;ζ 「え?」

「今日もかわいこぶってたよ、あの子」

「やっぱり」

ζ(゚ー゚ ;ζ 「そ、そんなことしてないよ・・・」

そんなおしゃべりを聞くつもりは、お客さんにはありませんでした。
お客さんは、いっしょうけんめいに、ちがうちがう、とくりかえします。
ですけど、小さなこえしかでないので、女の子たちには聞こえません。

「ほんと、むかつくよねえ」

お客さんの友だちは、みんな楽しそうにわらいあいました。
ひとりだって、お客さんのこえをきいてくれる人は、いませんでした。

33名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:07:25 ID:V135c6MQ0

  ※


からんからん

深くてまるい音をたて、お店のドアが、ひらきます。

( ´_ゝ`) 「またのご来店をお待ちしております」

女の子たちは、かえっていきました。
けっきょく、お客さんは、女の子たちのおしゃべりをみんな聞いてしまいました。

ζ( - ζ 「・・・・・・」

ζ( - ζ 「・・・どうすれば、いいんでしょうねえ」

お客さんは、つぶやきます。

ζ( - ζ 「どうして、わたし、なんにもしてないのに・・・」

ζ(゚−゚#ζ 「・・・もう、嫌です、あんな子たち、ひどい目にあっちゃえばいいんです」

お客さんはこわい顔をして、店長さんのほうをにらむようにみます。
店長さんはお客さんをみかえして、いいます。

( ´_ゝ`) 「そう怖い顔をされても、私にはどうしてあげることも出来ません」

ζ(゚−゚#ζ 「・・・・・・」

34名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:08:10 ID:V135c6MQ0

からんからん

また、深くてまるい音をたて、お店のドアがひらきました。
もうひとりの店長さんが、かえってきたのです。

(´<_` ) 「ただいま」

( ´_ゝ`) 「ああ、おかえり」

(´<_` ) 「・・・客はいないのか」

( ´_ゝ`) 「いいや」

店長さんたちが、そういっていると、ぽつり、と、しずくがおちてきました。
お店のなかで、あめがふるわけが、ありません。
もうひとりの店長さんは、ふしぎに思って、上をみました。

 
お客さんは、泣いていました。
どうにか涙がおちないように、両手で顔をおさえるのですが、あとからあとからわいてくる涙は、
ゆびのすきまから、ぽつぽつとお菓子屋さんにふりつづけます。

(´<_` ;) 「どう、したんですか」

もうひとりの店長さんは、おどろいてたずねました。
お客さんは顔をかくしたまま、こたえます。

ζ( - ζ 「わたし、やなこと、いいましたね、・・・」

ζ( - ζ 「やっぱり、わたし、いやなこですねえ・・・」

ζ(д ζ 「こんなんじゃ、きらわれて、とうぜん、ですよねえぇ・・・」

ζ(;д;ζ 「もう、どっかに、きえちゃいたいです・・・!」

ついにお客さんは、わんわんと大ごえで泣きだしてしまいました。

35名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:08:51 ID:V135c6MQ0

(´<_` ;) 「そんなことありませんよ、きっと皆、あなたのことが好きですよ!」

もうひとりの店長さんは、ひっしにお客さんをなぐさめます。
ですがお客さんは、泣きやんでくれません。

( ´_ゝ`) 「・・・・・・」

店長さんは、そのようすを、だまってじっとみていました。

ζ(;д;ζ 「うあああああああああああああああん!!」

(´<_` ;) 「絶対に大丈夫ですから!」

わけもわからないのに、ひっしにお客さんをなだめる、もうひとりの店長さんは、
少しかわいそうにみえました。
そこで店長さんは、いいことを思いつきました。

( ´_ゝ`) 「ちょっと失礼」

ζ(;д;ζ 「うええええええええええええええええええん!!」

店長さんは、泣きつづけるお客さんの、ふくのすそを引っぱって、
てんじょうから下ろしてあげました。
そして、そのままお客さんを、まどまで引っぱっていきます。

36名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:09:37 ID:V135c6MQ0

きょうは雲ひとつない、まっ青なきれいなそらです。
店長さんはまどを開いて、そこからそっと、お客さんをおしだしてあげました。

お客さんはふわふわと、上へ上へと、とんでいきます。
町の人の何人かは、そんなお客さんのすがたをみることができました。

てんきのいい日のそらは、きっと気もちのいいものでしょう。
ひゅう、と風がふいて、お客さんの泣きごえも、
涙でぐしゃぐしゃな顔も、むこうへとながれていってしまいました。

もうひとりの店長さんは、店長さんのほうを、なんにもいわずにみています。
店長さんは、なんにもいわずに、お客さんのいなくなった、そらをみています。

(´<_` ;) 「・・・・・・」

( ´_ゝ`) 「俺が泣かせたわけじゃない」

(´<_` ;) 「・・・・・・」

37名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:10:18 ID:V135c6MQ0


それからというもの、このお菓子屋さんには
てんきのいい日はそらをみあげる人が見えるようになりました。





  ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです 3  おわり

38名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:10:59 ID:V135c6MQ0

よくはれたある日のことです。
店長さんはとなり町まで、お買いものに出かけていました。

このあいだ、お客さんがうっかりカップをわってしまったので、
あたらしいカップを買いにきたのです。


  (´<_` )はおかしをごちそうするようです

39名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:11:52 ID:V135c6MQ0

(´<_` ) 「ん?」

おめあてのティーカップを買って、さあかえろうか、というときです。
店長さんは、あるおかしやさんをみつけました。

店長さんも、お菓子屋さんの店長さんです。
ライバルしんとまではいいませんが、少しきょうみがわいたので、
そのおかしやさんに入ってみることにしました。


おかしやさんには、いろんなおかしがそれぞれ少しづつ、ちいさなふくろに入って売っていました。
店長さんは、お店のなかをぐるりと一しゅうしました。

(´<_` ) (うちの店のほうが美味しそうだな)

店長さんは、ちょっととくいげになりました。
それといっしょに、このおかしやさんへのきょうみもなくなりました。

ですが、なんにも買わないで出て行くのも、なんだかわるい気がしたので、
どれかのおかしを買おうと、たくさんのおかしをみてまわりました。

(´<_` ) 「ああ、これにしよう」

店長さんは、おかしのふくろをひとつもって、お金をはらいに行きました。

40名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:12:33 ID:V135c6MQ0

  ※


(´<_` ) 「ただいま」

( ´_ゝ`) 「おかえり、売ってたか?」

(´<_` ) 「ああ」

(´<_` ;) 「・・・・・・何してるんだ?」

店長さんが、自分のお菓子屋さんにかえると、
もうひとりの店長さんは、なにもないところに向かって、スプーンをさしだしていました。

( ´_ゝ`) 「いや、腹が空いたというから」

(´<_` ;) 「ああ・・・」

店長さんは、もうひとりの店長さんが、なにをしているのかわかりました。

41名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:13:49 ID:V135c6MQ0

このお菓子屋さんには、少しまえからお客さんがいます。
とうめいなので、ほかのおきゃくさんも店長さんも、見えません。
もうひとりの店長さんは、お客さんが見えて、おはなしもできるようでした。

また、とうめいなお客さんは、見えないだけでなく、どんなものにもさわることが
できませんでしたから、スプーンをもつこともできません。
ですからかわりに、もうひとりの店長さんにスプーンをもってもらっているのだろう、
店長さんは、そうかんがえました。

( ´_ゝ`) 「でもな、食べられないんだ。触れないから」

(´<_` ;) 「まあ、そうだろうな」

もうひとりの店長さんは、ざんねんそうに、スプーンを自分の口に入れました。

42名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:14:39 ID:V135c6MQ0

(´<_` ) 「・・・そういえば」

店長さんは、とうめいでないお客さんはいないのか、お店の中をみわたしました。

窓辺では、茎だけがはえた植木ばちと、白いお花がならんでいます。
植木ばちにはえている茎も、もとはお客さんでした。

そのとなりの白いお花は、少しまえに、お花屋さんの店長さんが、
「いつかいただいたお花のお礼です。ファンの方に渡してください」といって、もってきたのです。
このために店長さんは、お花屋さんで、おなじお花を買ってこなければなりませんでした。

ですけど花びらが何枚もかさなった、そのお花のにおいはとても強いもので、
お菓子のにおいとは、いっしょになれそうもありません。

今日はてんきがいいのに、とうめいでもなく、茎でもないお客さんがひとりもいないのは、
そのせいにちがいないと、店長さんはおもいました。
だから、このお花が少しでもかれはじめたら、すぐにどこかへやってしまおうとも、おもいました。

店長さんは、買ってきたおかしのことをおもいだしました。

(´<_` ) 「兄者、おみやげだ」

( ´_ゝ`) 「おお、ありがとう」

店長さんは、かばんのなかから、となり町のおかしやさんで買ったおかしをとり出しました。
もうひとりの店長さんは、うれしそうにそのおかしをもらおうとしました。

43名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:15:21 ID:V135c6MQ0

( ´_ゝ`) 

( ´_ゝ`) 「タイムリーだな」

(´<_` ) 「何がだ」


ちゅうとはんぱに出されたままの、もうひとりの店長さんに手に、
店長さんはおかしをのせました。

もうひとりの店長さんは、なにかあるような顔をしました。
ですけど、店長さんは買ってきたカップをあらわなければならなかったので、
それいじょうもうひとりの店長さんには、かまいませんでした。

のこされたもうひとりの店長さんは、わたされたおかしを見ます。

ちいさくてまあるい、まっしろなこなざとうのかかった、雪だまのようなおかしです。

しばらくおかしをながめたあと、もうひとりの店長さんは、それをひとつ、つまんで食べます。
おかしは口のなかで、ほろほろくずれて、こうばしい味がします。

( ´_ゝ`) 「・・・・・・」

もうひとりの店長さんは、じぶんが作ったお菓子のほうがおいしいと、しっていました。
ですが、もうひとりの店長さんは、人の気もちがなによりも、
お菓子をおいしくしてくれることも、しっていました。
だから、おいしい、と、もうひとりの店長さんは、そう思いました。

44名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:16:02 ID:V135c6MQ0


そういうことがあって、きょうのお菓子屋さんの
お夕飯は店長さんの好きなものがいっぱいだったのです。





  (´<_` )はおかしをごちそうするようです  おわり

45名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:16:45 ID:V135c6MQ0

いち、に、さん。

( ´_ゝ`) 「・・・・・・」

(´<_` ) 「何してるんだ?」

おやゆびから、こゆびまで、じゅんばんに、
まげたり、のばしたりをくり返す店長さんに、もうひとりの店長さんがたずねました。
すると、店長さんはあそんでいた手をぶらぶらさせて、なんでもないようすです。



昔の話です。
ある町に、お菓子屋さんがありました。
そのお菓子屋さんは、だいのこども好きでしたので、
ことあるときには、こどもたちにお菓子をごちそうしていました。

ことあるときというのは、たいてい、こどもたちが泣いているときでした。
なかのいい子とけんかをして、泣いていたときも、
ころんでひざをすりむいて、泣いていたときも、
テストでわるい点をとって、泣いていたときも、
お菓子屋さんのお菓子をたべると、いつのまにか、なみだはとまってしまいました。
こどもたちにとって、お菓子屋さんは、とくべつなものでした。

ですが、こどもたちはおとなになるにつれて、お菓子屋さんのことを、
とくべつにおもわなくなっていきました。
おとなになったこどもたちは、もう、お菓子にごまかされません。
おとなには“おいしい”よりも、だいじなものが出来ましたから。

46名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:17:37 ID:V135c6MQ0

お菓子屋さんは、とくべつにおもわれなくなるのは、かまいませんでした。
しかし、おとなになったこどもたちに、なにもしてあげられないのが、くやしくてなりませんでした。

こどもたちに泣いてほしくない。
それだけをおもって、お菓子屋さんはいっしょうけんめい、かんがえました。

そうしてある日、お菓子屋さんはおもいつきました。

『 こどものころにおもいえがいていたゆめが
 本当になったなら、だれだって、えがおになるにちがいない!』

とうめいにんげんになれたらなあ。どうぶつとおはなしできたらなあ。
そらをとべたらなあ。こびとになれたらなあ。
そんな、たわいないゆめのはなしです。

お菓子屋さんは、そんなゆめのお菓子を、
いまにも泣いてしまいそうな人たちに、ごちそうしました。

『 こどものころのゆめがかなうことで、
 その人のつらいおもいが、少しでもむくわれてくれるといい!』

ですけどそれも、すぐにうまくいかないことがわかりました。

なぜなら、おとなは世間で生きるものです。
ゆめみたままのこどもでは、世間では生きていけません。
ですけど、ゆめからさめてしまえば、ゆめはやっぱり、ゆめでしかありません。
世間はひとつだって、かわってくれてはいません。

おとなは、こどもではなくなっていたので、
お菓子屋さんには、なにをしてあげられることも、できなかったのです。

お菓子屋さんは、もうやめよう、とおもいました。
お菓子屋さんも、ゆめも、もうまるっきりやめてしまおう、とおもいました。

47名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:18:21 ID:V135c6MQ0

そんなときです。


からんからん

深くてまるい音をたて、お店のドアがひらきました。
そこにいたのは、かつてのお客さんでした。

お客さんは、たわいなゆめでも、いつかは世間をかえられるのだと信じていました。
ですから、お客さんはどうにかして、お菓子屋さんにこれまでどおりにつづけてもらおうとしました。
ですけど、お菓子屋さんはどうされたって、お菓子屋さんをつづける気にはなれませんでした。

お客さんは、じぶんがお菓子屋さんの代わりに、つづけることにしました。

なんどのしっぱいが、なんだというのでしょうか。
つらいおもいは、いつかはむくわれるべきなのです。

お菓子屋さんは、すすんでお店をお客さんにあげました。
店長さんが気づいたときには、おかしやさんの姿はなくなっていました。

48名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:19:07 ID:V135c6MQ0



( ´_ゝ`) 「・・・・・・」

(´<_` ) 「兄者?」

ふいに立ち上がった店長さんは、そのままお店を出ていきます。
いちどドアをふりかえって、だけれどお菓子屋さんにはもどらずに、どこかへと歩いていってしまいます。

(´<_` ;) 「って!?」

もうひとりの店長さんも、あわてて後を追いかけます。
お店を出たとき、ドアをふりむいて、またおどろきました。

(´<_` ;) 「兄者!」

店長さんは、少しも止まってくれません。

(´<_` ;) 「兄者、どういうつもりだ」

( ´_ゝ`) 「・・・・・・」

追いついたもうひとりの店長さんは、店長さんにたずねます。
店長さんは口を開いて、それでも、少しかんがえてから答えました。

( ´_ゝ`) 「どうでもよくなったんだろうな」

(´<_` ;) 「・・・そんな無責任な」

( ´_ゝ`) 「どうせみんな、いつかはそうなるわけだし」

それだけいったきり、なんにもいってくれません。
お菓子屋さんはまだなにかいいつづけていましたが、

それはもう、どうでもいいことでしょう。

49名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:20:02 ID:V135c6MQ0





なんでもない、ある日のことです。
お客さんはいつものように、お菓子屋さんへやってきました。

さて、今日はなにを食べようか。

お客さんは、にこにこしながらドアを開けます。

 がちゃり

「おや?」

お菓子屋さんのドアは開きませんでした。
ドアには一まいの、はりがみがしてあります。


  『大変急なことではありますが、当店は本日をもって閉店させていただきます。
                                    七月 五日  流石洋菓子店』


お客さんは、がっかりしました。

いったい、お菓子屋さんはどうしてしまったのでしょう。

ですけど、お菓子屋さんはこのお店のほかにも、まだまだたくさんあるのです。

お客さんはそうして、どこかへ行ってしまいました。




      ( ´_ゝ`)はお菓子をごちそうするようです  おしまい

50名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 11:24:42 ID:V135c6MQ0
出来はともあれとにかく終わり

51名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 12:05:44 ID:h1dEYj1I0
最後ちょっと寂しすぎるな…
続き待ってたよ。乙

52名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 17:18:35 ID:rw0T.OgY0
ふむ。
おつ。

53名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 18:01:45 ID:9f8nMsQoO
ラストがあっさりしてるとは思うが、ちゃんと終わらせてくれて嬉しいよ
ずっと待ってた。乙

54名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 20:21:34 ID:S8fzI3ZoO
おいおいおい待ってたぜ


55名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 20:40:19 ID:8zyf8uVEO
お待ちしておりました。
乙です。

56名も無きAAのようです:2012/07/05(木) 22:12:27 ID:V135c6MQ0
いろいろ謝りたいので謝ります
申し訳ありませんでした

57名も無きAAのようです:2012/07/06(金) 02:49:49 ID:I.kREdM20
乙!
終わらせてくれて嬉しい。

寂しくて良い終わり方だ

58名も無きAAのようです:2012/07/08(日) 16:58:48 ID:Dc1q2JZE0
乙!
この話が好きだったからうれしい

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