■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■

( ^ω^)僕の知らない地球 のようです
1名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:27:18 ID:n9HqO1T2O
 
   更新頻度 遅め

2名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:28:52 ID:n9HqO1T2O
 
「…………」


「…………ん」




 頭が痛い。
 随分と長く眠っていたようだ。

 しかし、目を開けてもそこには暗闇が広がるばかり。
 やがて、それは土の中に顔をうずめているからであるということに、ようやく気付くことができた。


(;^ω^)「…ぶはあ!!」


 顔を上げ、うつ伏せに寝ていたらしい体勢を直し、今度は仰向けに転がる。

 頭が痛い。

3名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:29:38 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「はあ……はあ…っ」


 自らの左腕に喝を入れて、痛む額にだらしなく乗せた。
 こうしていると、この激しい頭痛も幾分か楽になる。


(;^ω^)「……」


 薄く目を開け、周りを見てみる。

 地面の感触で何となく予想がついていたが、そこはジャングルと呼ぶに相応しい、広大な密林のようだった。
 空は既に明るく、恐らく正午あたりだろうと推定できる。

 しかし、どこのジャングルにいるのかなんて全くわからない。


(;^ω^)「てゆうか……」

4名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:30:39 ID:n9HqO1T2O
 
 もっと知りたい情報、もっと理解できていない状況が多々ある。
 言うなれば、それは「今の状況」の全てがそうなのだが。


(;^ω^)「……」


 とりあえず自分の服装を見てみる。

 黒いTシャツに、米軍のマークがつけられた野戦服のようなズボン、ブーツ。
 腰にぶら下がるオートマチックの拳銃とナイフ。更に右足のブーツにもナイフがある。


(;^ω^)「……ますますわかんないお」


 兵士の格好で、ジャングルに倒れていた自分。

 何故だ。何が起こった。
 こうなる前の記憶が一切無い。
 思い出そうとすればするほど、頭も更に痛んでいく。

5名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:31:36 ID:n9HqO1T2O
 
 何も思い出せない。
 状況がわからない。

 その根本的なことでさえ、自分は何も知らない。


(;^ω^)「…僕は、誰なんだお」


 そう、自分という人間のことでさえ。



──

6名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:33:05 ID:n9HqO1T2O
`



( ^ω^)僕の知らない地球 のようです





7名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:33:53 ID:n9HqO1T2O
──



 暫く同じ体勢でいると、頭痛が大分収まってきた。
 とりあえず体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。


( ^ω^)「…適当に歩いてみるかお」


 とにかく、せめて場所だけでも知りたい。
 その手掛かりを探るべく、茂みを掻き分けながら進み始めた。


 ようやくそれらしき手掛かりを見つけたのは、それから三時間が経った後だった。

8名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:34:56 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「……!!」


 吐きそうになるのを無理やり堪え、その「手掛かり」から後ずさる。


 そこには、白骨化した人間の死体が転がっていた。
 着ている服やその大きさから、成人男性であることだけは伺えた。


(;゚ω゚)「はっ、はっ、…」


 大木にもたれ、尻餅をつきそうになるのを堪える。

 落ち着け、落ち着くんだ。
 そう言い聞かせながら、静かに目を閉じる。
 ゆっくりと深呼吸をして、また静かに目を開け、ようやく呼吸を整えることができた。

9名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:37:24 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「……」


 改めて白骨死体を見る。
 民間人のような服を着ているが、自動小銃を手にしている。
 何らかの紛争、内戦に巻き込まれたような格好だ。

 さらに、その足元にはその男のものと思しき荷物があった。


(;^ω^)「………」


 ゆっくりと荷物に手を伸ばし、此方に引き寄せる。
 中には銃のマガジン、財布、手帳が入っていた。

10名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:38:17 ID:n9HqO1T2O
 
 まず財布を見てみる。
 免許証を取り出し、それを読み込むと、ようやく自分の居場所に大きな目星をつけることができた。


(;^ω^)「スペイン語…コロンビア国籍」


 コロンビア国籍の男の死体。
 もしここがコロンビアであると仮定すれば、この状況に説明はつきそうだ。

 国軍と革命軍が内戦を繰り広げるコロンビアで、この男は内戦に巻き込まれて命を失い、いずれかの軍に属しているであろう自分も倒れた。

 しかし本当にそうなのだろうか?
 自分が身にまとっている服には米軍を示すマークがつけられている。
 つまり、コロンビアの国軍でも革命軍でもない可能性がある。

11名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:38:57 ID:n9HqO1T2O
 
 それに、もし民間人と内戦が衝突した場合、場所はジャングルではなく市街地になるものだ。

 何らかの理由でジャングルで戦闘があったとしても、何かが気にかかる。


(;^ω^)「……」


 顔を上げ、周りを見渡す。

 静かすぎる。
 戦闘があったとはとても思えない。

 戦闘後の静けさじゃない。
 最初から何も起こらなかったような、自然の静寂だ。


(;^ω^)(だったら…)


 だったら、何故死体がある。

12名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:40:36 ID:n9HqO1T2O
 
 腑に落ちない点が色々あるが、とりあえず荷物に財布を戻して手帳を取った。

 手帳は最初の数ページしか書き込まれていない。
 それを眺め、スペイン語で書かれた文章を一字一句読み取る。


( ^ω^)「…"人間が裁かれる時が来た。人が産んだ化け物を、神は人間界に放った"」

( ^ω^)「"奴らはいつでも、どこにでも現れる。寝る暇も与えられないまま、人間は裁かれ、衰弱していく"」

( ^ω^)「"生き抜きたいなら、奴らを殺すことだ。弱点は人間とほぼ同じだ"」

( ^ω^)「"自分が助かると思うな。他の人間を守るために戦え。それが我が身を守ることとなる"」

13名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:41:14 ID:n9HqO1T2O
 
 なんだこれは。
 どこかのSF小説のような、妙な言葉が並べられている。

 裁き。化け物。身を守る。
 人間じゃない誰かに、この男は襲われたとでも言うのだろうか。

 馬鹿馬鹿しい。
 こんなことより、かなり気になり問題があるというのに。


(;^ω^)「…てか、何でスペイン語が読めるんだお」


 米軍の格好をしているが、南米で公用語となっているスペイン語もマスターしている。

 気味が悪い。
 自分は一体何者なのだ。


(;^ω^)「……」

14名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:42:10 ID:n9HqO1T2O
 
 とりあえず白骨から銃を取り、更にマガジンを失敬する。
 フレームがかなり劣化しているが、使用するにあたって問題は無さそうだった。


( ^ω^)「AKS-74U…ごついもん持ってるお」


 武器の知識もある。
 どうやら軍人であることには間違いなさそうだ。

 AKSー74Uと呼ばれる自動小銃を肩にかけ、白骨を背に歩き出す。

 それからすぐ、ジャングルから市街地へ抜ける道を発見することができた。

15名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:42:52 ID:n9HqO1T2O
 
 町の様子は酷く殺風景なものだった。

 ボロボロになった建造物の群れ、伸びきった雑草、廃棄されたかのような車。
 人の姿はない。


(;^ω^)「…嫌な雰囲気だお」


 銃のセーフティーを解除し、町に下りる。

 人の姿は無いが、人の気配は間違いなく感じる。
 スーパーマーケットと表記された、今にも崩れそうな建物に侵入した時だった。


(;^ω^)「!!」


 棚の陰で、何かが動いた。

16名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:43:48 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「あ、あの…」


 恐る恐る声をかけると、「それ」はゆっくりと立ち上がり、此方に近づいてきた。

 男だ。
 背の低い男が、やけにゆっくりと歩み寄ってくる。


(;^ω^)「あの、お聞きしたいことがあるんですお」

(メノ‐゚)「……」

(;^ω^)「ここは何という町…って大丈夫ですかお!?怪我してるお!」


 よく見ると、男は顔面が傷だらけになっていた。

 しかし、様子がおかしい。
 顔から流れる血にも、その傷にも、まるで何も感じていないような。

17名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:44:50 ID:n9HqO1T2O
 
(;^ω^)「急いで治療したほうがいいお!近くに病院は…」

(メノ‐゚)「生き残りか」

(;^ω^)「…え?」

(メノ‐゚)「人、なのか」


 病院を探すため外に向かおうとすると、男が妙なことを口走った。

 生き残り、人。
 何を言ってるんだ。まだ状況は掴めてないが、少なくとも自分だってそうじゃないか。

 そう言おうと振り返った途端、その光景に思わず息が止まった。

18名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:45:26 ID:n9HqO1T2O
 
(メノ皿●#)「裁きを」


 目の前にいたのは、もはや人間ではなかった。

 大きく真っ黒な目、獣のような大きな口、歯。
 先ほどまで人間だったそれは、人とはかけ離れた「化け物」と化していた。


(;゚ω゚)「あ、あ」

(メノ皿●#)「人間に裁きを!!」

(;゚ω゚)「ヒッ!!」


 拳を振り回し、近くの棚を吹っ飛ばしていく化け物。
 人間の力じゃない。


(;゚ω゚)「うわっ、わあっ!!」

 店を飛び出し、入り口から距離を取る。
 直後、化け物が窓を突き破って飛び出てきた。

19名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:46:25 ID:n9HqO1T2O
 
(メノ皿●#)「フーッ、フーッ」

(;゚ω゚)「〜〜〜!!」


 肩に掛けていたAKS-74Uを反射的に取り、慣れた手つきで構える。

 こんな時でさえ、またも自分自身に驚いた。
 銃を扱った記憶すらないのだが、銃を持った途端、体が勝手に動いたのだ。


(メノ皿●#)「裁きをォォオオ!!」

(;゚ω゚)「!!」


 いや、驚いている場合じゃない。
 向かってくる化け物に、その銃口を向け、引き金を引く。

 しかし。

20名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:47:20 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「ジャムかお!こんな時に!」


 弾詰まりだ。今それを直している暇はない。

 一発も銃弾を放つことなくAKS-74Uを投げ、自らの腰に下がる拳銃に手を伸ばす。
 しかし、その直後に化け物の突進が迫ってきた。


(メノ皿●#)「グオッ!!」

(;゚ω゚)「!!」


 それを紙一重でかわし、再度拳銃を引き抜く。
 構えた拳銃は、化け物が素早く繰り出した裏拳に弾き飛ばされた。

21名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:48:32 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「ッッ!!」


 痺れる右手を抑えながら、震える足で後ずさる。

 すべてが、スローモーションに見える。


(メノ皿●#)「裁きを」


 化け物が右腕を上げ、拳を突き出す。

 途端、スローモーションの世界が現実に戻った。
 素早く繰り出された右腕を、反射的にかかえるようにキャッチし、肩を外す。


(メ;ノ皿●#)「グガアアアア!!」

(;゚ω゚)「ふんっ!」


 そのまま背後に回り、口と後頭部を押さえ、膝を折る。

 そして、静かに化け物の首を回した。

22名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:49:30 ID:n9HqO1T2O
 
(;゚ω゚)「はっ、はっ、はっ」


 崩れ落ちた化け物の横で、震える両手に目を向ける。

 なんだ今のは。
 そんな殺しをどこで覚えたのだ。

 あまりにも気味が悪い。
 自分という人間に、一種の恐怖を感じる。

 早く、記憶を取り戻したい。


(;^ω^)「……」


 弾き飛ばされた拳銃を戻し、弾詰まりを直したAKS-74Uを肩にかける。

 手がかりがほしい。
 この化け物達の正体と、自分自身の記憶を戻すための手がかりを。


──

23名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:51:18 ID:n9HqO1T2O
──


( ^Д^)「モララー大佐」

( ・∀・)「…プギャーか」


 真っ白な広い部屋。
 会議室のように机が並べられた中で、モララーと呼ばれた男は一人座っていた。

 そこに、彼の部下であろう男、プギャーが静かに入ってきた。


( ^Д^)「報告します。コロンビアのヤオイストリートで、一体のミュータントが死亡したようです」

( ・∀・)「死亡?」


 怪訝な顔をプギャーに向ける。
 だが、彼自身その情報を疑っているようだった。

24名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:52:02 ID:n9HqO1T2O
 
( ・∀・)「あり得ん。コロンビアにはミュータントしかいないはずだ」

( ^Д^)「ええ、ですが明らかに人間に殺されたとのことです」

( ・∀・)「……」


 考え込むように俯くモララー。
 やがて、静かに指示を下した。


( ・∀・)「…その人間を徹底的に探せ。見つけたら報告しろ。手は出すなよ」

( ^Д^)「はっ」


 指示が来た途端、プギャーは早足で部屋から出て行った。

 また一人になった室内で、モララーが小さく呟く。

25名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 00:52:56 ID:n9HqO1T2O
 
( ・∀・)「…生き残りの抵抗勢力か、或いは…」


 まっすぐ前を見据えながら、机の上を指で叩く。

 そのうち、モララーは無意識のうちに口角が上がっている自分に気付いた。


( ・∀・)「それを上回る、"人間"なのか」


 長年探していたものが見つかったような。
 妙な胸の高鳴りを、モララーは確かに感じていた。



 第一話 終

26名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 01:46:45 ID:Tqa69U7w0

なんだか面白くなりそうだ

27名も無きAAのようです:2011/09/19(月) 03:11:07 ID:RihZOGJA0
いい!

28名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 07:46:02 ID:RVBs5TB2O
楽しみ

29名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:35:22 ID:GiXmvU5kO
 
──



 コロンビア北部の町、ニコドー。

 ヤオイストリートで化け物に襲われてから二日後。
 同じように廃れきったニコドーの町に、ようやく歩き着いた。


( ^ω^)「…ヤオイストリートと同じだお」


 建造物はボロボロになり、雑草がいたるところに伸びきっている。
 ということは、このニコドーにもあの町と同じ化け物がいるのだろうか。

30名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:36:05 ID:GiXmvU5kO
 
(;^ω^)「……」


 思い出すだけでも背筋が凍る。
 人間だと思っていたものが、どこかの映画のようなモンスターになっていた。

 人間を超越した身体能力を持つ化け物。
 そして、それをあっさりと殺した自分。

 名前すらわからない、得体の知れない自分という人間が、何よりも怖い。


(;^ω^)「……」

 銃のセーフティーを解除し、建物の壁に添って歩き進む。
 途端、何かが足元に触れた。

31名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:37:36 ID:GiXmvU5kO
 
( ^ω^)「糸…?」


 はっと顔を上げ、その場から飛び退き、銃を構える。

 トラップか?いや違う。攻撃トラップならとっくに怪我をしている。

 なら、一体これは何だ。


(;^ω^)「…不発?」

('A`)「ハズレだ」


 知らない男の声。南米なまりのスペイン語。
 その直後、後頭部に銃口が当てられるのを感じた。

32名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:38:17 ID:GiXmvU5kO
 
('A`)「こいつが揺れると敵侵入を示すランプが点滅する。それだけだ」

(;^ω^)「……」

('A`)「ああ動くなよ。まだお前が"人間"かどうかを知らない」


 人間かどうかを知らない?それはこっちの台詞だ。
 そう思った途端、またも体が自然に動いた。


(;^ω^)「シッ!」

(;'A`)「!!」

 素早く振り向きながら、拳銃を持った相手の右手首を掴み、その肘を曲げて内側に回す。
 体勢が崩れた相手から拳銃を奪い、そのまま後ろに回って銃を突き返した。

33名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:40:56 ID:GiXmvU5kO
 
(;'A`)「近接戦闘術…!?」

(;^ω^)「……」


 逆に後頭部に銃口を当てられてしまった男は、そのまま両手をゆっくりと上げた。
 攻撃の意思は無さそうだ。

 コロンビアの民兵だろうか。
 薄汚れた私服に武器を持ったその姿は、少なくとも国軍に関係する人間では無いように思えた。


(;'A`)「…やっぱりテメエ、"ミュータント"だったか」

(;^ω^)「ミュータント?何の話だお」

(;'A`)「え?」

34名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:42:49 ID:GiXmvU5kO
 
 何故知らないんだ、とでも言いたげな声を上げる男。
 妙な空気になってしまったので、とりあえず男から話を聞くことにした。


( ^ω^)「とにかく、聞きたいことが山ほどあるお。…ていうか、僕には記憶が全く無いんだお」

(;'A`)「…それって何も知らないってこと?」

( ^ω^)「だお」

(;'A`)「あー…わかった、まだ俺んちには入れらんないが、話ならしてやるよ」

( ^ω^)「助かるお」


 拳銃を返し、目の前の建物の中へ入る。
 あまりにも信じ難い話を聞かされるのは、それからすぐのことだった。


──

35名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:44:02 ID:GiXmvU5kO
──


 現在、西暦2012年4月30日。
 過去より世界の終わりと予言された年。

 文字通り、世界はほとんど終わってしまった。
 そこには文明も経済も無い、基本的な社会性くらいしか持たない、"人間の形をした化け物"が人類を滅亡においやった。


( ^ω^)「…どうしてこんな事態になったんだお?」

('A`)「化け物はどこからともなく沸いてきたわけではない。人災だよ」

( ^ω^)「人災…」

36名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:45:38 ID:GiXmvU5kO
 
 全ては、ある薬がアメリカで開発されたことから始まった。
 その薬の特性は「一定時間の間、痛みを全く感じない」こと。

 最初は医療でのみ使われる薬だった。
 だが、そのうちドーピング薬としてスポーツ界(特に格闘技)に流出。
 更には軍部が兵士達への薬の使用を国に認めさせ、米軍は史上最強の名を伸ばしていった。


(;^ω^)「そんなことしたら、他国が黙ってないんじゃ…」

('A`)「もちろんだ。他国の政府はアメリカの目に見えた軍備強化を批判した」


 だが、アメリカはそれを無視し続け、軍事力を拡大させていった。

37名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:46:32 ID:GiXmvU5kO
 
( ^ω^)「…その薬はそんなに凄いもんなのかお?ただ痛みを感じないだけなのに」

('A`)「痛みを感じないことがどれだけ便利か。例えば戦争だと、一度銃弾を受けたら戦う意思が削がれ、しかも負傷者扱いで戦場の死角へ引きずり込まれる」

('A`)「ところが痛みがないとどうだ。銃弾を受けても大したことはないから、失血で気分が悪くなるまで戦える。ただそれだけで、攻撃力は何倍にも膨れ上がる」

(;^ω^)「……」


 こうして軍事力を上げていったアメリカに、恐れていた事態が起こった。

 スポーツ界に流出していた薬が他国に密輸され、それが他国の軍部に行き届いたのだ。
 調子に乗っていたアメリカに、薬を手にした連合軍が忠告、宣戦布告。

 第三次世界大戦の幕開けであった。

38名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:47:29 ID:GiXmvU5kO
 
('A`)「そっからはもう滅茶苦茶さ。アメリカとヨーロッパ諸国が、まるで冷戦の時のように味方を吸収しまくった。それはアジア全土、アフリカにまで影響が及んだ。この南米もそうさ」

('A`)「ミサイルを飛ばし合い、兵士を送り合い、"痛みのない"殺し合いが始まった。それが全ての始まりだ」

(;^ω^)「……」


 なんということだ。
 たった一つの薬が、世界を壊滅に追いやったのか。

 しかし気になることが一つ残る。


(;^ω^)「それで、あの化け物達は一体なんなんだお」

('A`)「…ただ戦争が起きたくらいじゃ、国はここまで廃れねえ」

('A`)「薬にはとんでもない副作用があったんだ」

39名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:48:50 ID:GiXmvU5kO
 
 薬を使い続けると、体にある変化が見られる。
 痛みを感じなくなる時間が飛躍的に伸びるのだ。

 数時間だった効果が、数日間、数週間もの間現れる。
 そして、遂には半永久的に痛みが無くなる。

 その状態になってしまうと、もはや他の人間の手に負えなくなる。
 人々はその状態になった人間を「ミュータント」と呼んだ。


( ^ω^)「ミュータント…」

('A`)「それから、ミュータントはミュータント同士で集まるようになり、ある理念が奴らに刻まれた」


 周りの人間からは「人間を超越した」と言われ、自分達自身、身体能力の伸びも見られた。
 そのことから、ミュータントは自分達のことを人間以上の存在だと考えた。

40名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:50:29 ID:GiXmvU5kO
 
('A`)「そして、奴らはこう唱えたんだ。"愚かな戦争ばかり繰り返す人間共に生きる道は無い。我々が裁きを下す"ってね…」

( ^ω^)「"裁き"…」

('A`)「結局はイカレた盲信者と変わりはしねえ。あいつらも人間の子だよ」


 だが、ミュータントの戦力は凄まじかった。
 そのうちミュータントとしての副作用が生まれ、それが人間達を恐怖の底に陥れ、まともに戦えない状態にした。


( ^ω^)「ミュータントとしての副作用?」

('A`)「お前も見ただろ?あいつら、激しい感情に見舞われると、目が黒くなって口がやけに大きくなる。まさに人外の化け物だよ」


 この化け物はなんだ。これが同じ人間だった者の姿か。
 ミュータントのその姿を見た途端、人類は漸く、薬に対する恐怖を感じた。

41名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:51:09 ID:GiXmvU5kO
 
 もう薬は使うべきではない。
 人間達の間でそう結論されるも、既に薬を使い続けていた者が大半で、ミュータントは続々と増えていった。


('A`)「薬を使い続けることでミュータントになるんだから、その場で薬をやめていれば、ミュータントにはならなかった」

('A`)「だが話はそう簡単じゃない。人類は"痛みのある戦い"に恐れを抱き、麻薬中毒者のように薬を摂取し続けた。痛みが無いということは、一種の安心に繋がるんだ」

( ^ω^)「なるほど…」


 人類に裁きを下すため、ミュータントは女子供関係なく殺していった。
 薬が開発されてこの間、約五年ほどだった。

42名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:52:08 ID:GiXmvU5kO
 
( ^ω^)「ところで…」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「人間とミュータントはどうやって違いを見分けるんだお」

('A`)「あー…」


 そう、目下の悩み所はこれだ。
 人間ではないとはいえ、ミュータントも普段は人間の姿をしているのだ。
 それを見分ける方法が欲しい。


('A`)「一番ポピュラーだったのが、"私は人間だ"と言ってみることだな。すると奴らはなりふり構わずすぐに姿を変える」

('A`)「奴ら自身、ミュータントであることを誇っているから、"私は人間だ"なんて意地でも言えないんだ」

( ^ω^)「なるほど…」

43名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:52:59 ID:GiXmvU5kO
 
('A`)「それにしても、まさかこの町に生き残りがいたとはなぁ…」

( ^ω^)「お、僕のことを人間だと信じてくれるのかお?」

('A`)「ああ。ここまで話して変身しないはずがないからな」

('A`)「俺はドクオだ。よろしくな」


 おもむろに近づき、手を差し伸べるドクオ。
 自己紹介をしながら手を握り返したかったが、自分の名前すらわからない。

 とりあえず手を握り返しながら、咄嗟に出てきた名前を口に出した。


(;^ω^)「僕は、えっと、…ブーン!ブーンだお!よろしく!」

(;'A`)「お、おお…?よろしくな」

44名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:55:34 ID:GiXmvU5kO
 
 固い握手を交わし、ようやく落ち着いた二人。

 直後、建物の奥から物音が聞こえた。


(;^ω^)(;'A`)「!!」


 同じ方向に、ほぼ同時に銃を向ける二人。

 その銃口の先。
 暗闇の中から、五つの人影が浮き出てきた。


(;'A`)「5人か…やっかいだな」

( ^ω^)「いや…」


 いや、いける。
 得体の知れない確信が、体の中を駆け巡る。

45名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 12:56:17 ID:GiXmvU5kO
 
(;'A`)「いや…ってなんだよオイ」

( ^ω^)「ドクオ」

(;'A`)「あん?」


 五つの影が、徐々に近づいてくる。
 拳銃を向けて冷や汗をかくドクオに、AKS-74Uを手渡した。


(;'A`)「え…?」

( ^ω^)「援護を頼むお」

(;'A`)「援護って…ちょ、オイ!!」


 五つの影が人間か否かなど、すぐにわかった。
 彼らは既に変身していたからだ。

 黒い目、大きな口。
 その五体のミュータントへと、ブーンが走り出した。

46名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:00:30 ID:GiXmvU5kO
 
(;'A`)「おい!!」

( ^ω^)「フッ!」


 一体目。
 大振りの拳を潜り抜け、足を払いながらラリアットの形で仰向けに倒す。
 そして、その首にナイフを走らせた。


[]#●皿●]「人間風情が…!」

ハハ+)皿●)「裁きをオオ!!!」


 その両隣にいた二体のミュータントが、怒りを露わにしながら同時に飛びかかる。
 紙一重のタイミングで二体の間を抜け、その片方の首を掴み、同時に膝を折り、脳天にナイフを突き立てた。


[];●皿●]「グ……ガ…」

( ^ω^)「フンッ!!」

47名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:01:52 ID:GiXmvU5kO
 
 勢い良くナイフを引き抜き、もう片方に目を向ける。
 直後、コンクリートの欠片を持った左腕が、ブーンの眼前に迫ってきた。


ハハ+)皿●)「裁きを!!」

(;^ω^)「!」

 その腕をよけながら、自らの腕で相手の手首を払う。
 そのまま背後に回りながら腕を絡め、相手の腕を背中に固定する。
 そして、その状態のまま頸動脈にナイフを滑らせた。


(;^ω^)「フッ!!」

 あと二体。
 残りのミュータントがいた方へ構えると、その二体が勢い良く崩れ落ちた。

48名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:02:35 ID:GiXmvU5kO
 
( ^ω^)「!」


 思わず振り返る。
 そこには、手慣れた様子でAKS-74Uを構えるドクオの姿があった。


('A`)「援護は俺の仕事だろ?」

( ^ω^)「…そうだったお」


 互いに親指を立て、笑顔を向け合う。
 五体のミュータントは、いともあっさりと片付いた。


('A`)「んなことより、さっさと此処から出よう。俺んちに案内してやる」

( ^ω^)「有り難いお」

49名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:04:25 ID:GiXmvU5kO
 
 建物を出て、夕暮れの中を慎重に進む二人。


('A`)「コロンビアにはもう生き残った人間はいないと言われている。その方が都合がいいと思って、最近ここに住むようになったんだ」

( ^ω^)「都合がいいって、どうしてだお?」

('A`)「誰も疑わずに済むからさ。…さ、ここだ」

( ^ω^)「…学校?」


 コンクリート一階建ての小学校。
 その地下へと案内されていく。


('A`)「地下への扉は発見されづらいし、頑丈なロックをかけられる。唯一の安全地帯だよ」

( ^ω^)「なるへそ」

50名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:05:17 ID:GiXmvU5kO
 
 金庫のような地下室に入ると、すぐにドクオが電灯をつけた。
 狭い部屋だが、生活するには充分な食料と寝床が揃っている。


('A`)「コーラでも飲むか」

( ^ω^)「いただくお」


 どこから持ってきたものなのだろうか。
 この部屋に不釣り合いな小さな冷蔵庫から、ドクオがコーラを2つ取ってきた。


( ^ω^)「ありがとうだお」

('A`)「それにしてもお前、ずいぶん強いな」

( ^ω^)「え?」

51名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:05:59 ID:GiXmvU5kO
 
 コーラを開け、ドクオのコーラと軽く合わせ、口に含む。
 懐かしいような新しいような、不思議な味が口に広がった。


('A`)「お前のその戦闘術…米軍で培ったモンだろ。それも特殊部隊の」

( ^ω^)「…わかんないお。本当に記憶が無いんだお」

('A`)「そうか…」


 コーラを何度も口にしながら、ドクオが話を続ける。


('A`)「いやな、見覚えがあるんだ。その動き」

( ^ω^)「え?ドクオも米軍の人間だったのかお?」

('A`)「いやいや、俺はただのコロンビアの民兵だよ」

52名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:06:47 ID:GiXmvU5kO
 
( ^ω^)「じゃあどうして…」

('A`)「……」


 ドクオが一気にコーラを飲み干し、大きく息を吐いた。


('A`)「戦争が起こった時、ヨーロッパ諸国とアメリカが対立したのは話したな?」

( ^ω^)「聞いたお」

('A`)「このコロンビアは…というより南米は、ヨーロッパに戦力吸収されたんだ」

( ^ω^)「…ということは」

('A`)「ああ」

53名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 13:07:48 ID:GiXmvU5kO
 
 目を伏せながら、腰にある拳銃を机に置くドクオ。
 その表情から感情を読み取ることは、ブーンにはとてもできなかった。


('A`)「米軍に攻められたんだ。ここ南米はな」

(;^ω^)「……」


 その言葉を聞いた途端、ブーンは無意識にズボンに刻まれた米軍のマークを手で覆っていた。



 第二話 終

54名も無きAAのようです:2011/09/29(木) 22:13:21 ID:0tGOf93o0
乙!

55名も無きAAのようです:2011/09/30(金) 11:23:30 ID:Gx4bUXBU0

おもしれぇぇえ

56名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 18:54:45 ID:m3o/LG5o0
面白いのにまとめがないのな

57名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:45:23 ID:wIx/vkn.O
 
──



(;^Д^)「…モララー大佐」


 薄暗い部屋に居座るモララーに、プギャーが焦った様子で話しかける。
 モララーは横顔だけを向け、プギャーの報告に耳を傾けた。


(;^Д^)「コロンビア・ニコドーにて、五体のミュータントに生命反応が無くなりました」

( ・∀・)「五体…」

(;^Д^)「もはや人間の抵抗勢力としか思えません。早く潰さなければ…」

( ・∀・)「落ち着けプギャー」


 椅子から立ち上がり、テーブルに置いていた携帯電話をプギャーに投げる。
 慌ててそれをキャッチすると、モララーが静かに口を開いた。

58名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:46:43 ID:wIx/vkn.O
 
( ・∀・)「面白い話じゃないか。まずは試すんだ」

( ^Д^)「試す…?」


 携帯電話の画面を見る。
 どうやら被験体管理室へと電話をかけているようだ。


( ・∀・)「管理の連中に伝えろ。"コロンビアにソクラを放て"とな」

(;^Д^)「ソクラ…!」

( ・∀・)「早くしろ」

(;^Д^)「は、はい!」

59名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:47:40 ID:wIx/vkn.O
 
 プギャーが慌ただしく電話の相手と話し始める。
 再び椅子に腰掛けたモララーは、自分の口角が上がっていくのを無視しながら呟いた。


( ・∀・)「ミュータント類生物兵器、ソクラ」

( ・∀・)「万が一、奴を倒すことができたなら…」


 灰色の壁を見つめながら、静かに笑みを浮かべるモララー。

 まるで、子供が新しいオモチャを手にしたかのように。



──

60名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:48:48 ID:wIx/vkn.O
 
──


( ^ω^)「とりあえず今日中にはニコドーを出るお。車もあるみたいだし」

('A`)「そうか、寂しくなるな」

( ^ω^)「…アメリカに行けば、何か思い出すはずなんだお、多分」

( ^ω^)「ドクオも一緒に来るといいお!きっと楽しくなるお」


 ドクオの隠れ家の中で、ブーンは旅の準備をしながら話を進めていた。

 寂しそうに、しかし優しい笑顔でドクオが返す。


('A`)「…いや、俺は残るよ」

(;^ω^)「え?どうしてだお」

('A`)「コロンビアは俺の故郷だからさ。最後まで戦っていたいんだ、ここで」

61名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:49:31 ID:wIx/vkn.O
 
 また一人で行動するとなると、やけに心細く、そして寂しくなる。

 しかし、それがドクオの判断なら仕方ない。
 ブーンは笑顔をつくりながら頷いた。


( ^ω^)「…わかったお、気をつけるんだお」

('A`)「お前こそな。記憶が戻ったらまた来てくれ」


 ドクオはコロンビアに残り、ブーンはアメリカに向かう。
 一人にはなりたくないが、ある意味仕方のない判断でもあった。

 地上への扉を開け、校内にある車へと二人で歩く。

62名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:50:19 ID:wIx/vkn.O
 
 陽も沈みかけた世界で、二人は校舎裏の倉庫に着いた。

 中にはかなり古くなったジープがぽつんと待っていた。
 失礼ながら、少し不安になる外見だ。


(;^ω^)「…走れるのかお、これ」

('A`)「ちゃんとならしてあるから問題ない。ガソリンも一応入ってはいるが、もはや貴重な存在だ。大切にしてくれ」

(;^ω^)「良かった…ありがとうだお」


 助手席に荷物を置き、エンジンをかける。
 音を聞く限り、走行に問題は無さそうだった。


( ^ω^)「…それじゃドクオ、今まで本当に世話になったお。またどこかで会うお」

('A`)「ああ、元気でな」

63名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:52:20 ID:wIx/vkn.O
 
 徐々に車を進ませ、グラウンドへ出る。

 完全に姿が見えなくなる前に、もう一度ドクオの方へと振り返る。


 校舎の前で手を振るドクオ。
 その姿に向かって手を上げかけた途端。



('A`)「ブーン、逃げろ、早く」



 彼の姿は、大きな爆炎に包まれた。

64名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:53:15 ID:wIx/vkn.O
 

(;゚ω゚)「………え?」


 足が勝手に急ブレーキをかける。

 紅色の空に映える、大きな炎。
 激しく燃え盛る小学校の校舎。

 そして。



∬メ●皿#∬



 見覚えの無い化け物が、一体。



(;゚ω゚)「……!!」


 ミュータントだ。それは間違いない。

 しかし、他のミュータントと何か違う。
 「早く逃げろ」と本能が告げている。

65名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:53:58 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ●皿#∬「……」


 やがて、化け物は片手に持った巨大な何かをブーンに向けた。

 それが見えた途端、ブーンはようやく現実に戻ることができた。


(;゚ω゚)「RPG…!?」


 急げ。逃げろ。

 自分に喝を入れながらアクセルを踏み、ハンドルを全力で切る。
 車が走り出した直後、その後ろでまたも爆発が起きた。


(;ーω゚)「くっ…!!」

 車体が大きく揺れ、グラウンドから舞う砂埃がブーンを襲う。

 それでも、どうにか校内から出ることができた。

66名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:55:10 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ●皿#∬「……逃が、さない…」


 砂埃の舞うグラウンドを歩き、自らが乗ってきた大型バイクに跨る。
 旧型のジープなど、すぐに追いつけるモノだ。

 RPGの巨大な砲身を背中にかけ、エンジンをかける。


∬メ●皿#∬「…殺す、人間、ぜんぶ」


 ブーンの走り去った方向へ、バイクは勢い良く走り出した。


∬メ●皿#∬「…殺して、やる…」


 強烈な殺意を、その身に乗せながら。



──

67名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:55:50 ID:wIx/vkn.O
 
──


(;^ω^)「……」


 舗装された直線道路を走りながら、ブーンは武器の用意を始めた。


 見知らぬ化け物が、ドクオを殺してしまった。
 そして恐らく、奴は自分も殺す気だ。


(;^ω^)「なんなんだお…あの化け物は……」


 あの一瞬、本能が告げていた。
 戦ってはいけない相手だ、と。

68名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:57:49 ID:wIx/vkn.O
 
 それもそうだろう。
 対戦車ロケット砲、RPGー7を片手で軽々と発射させるような化け物だ。
 人間が勝負を挑める存在じゃない。


 しかし、それだけではない気がする。

 戦うことを躊躇わせた理由を、奴は身に纏っていたはず。
 確か──



∬メ●皿#∬「逃がさ、ない」

(;^ω^)「!!」


 考えている暇はない。
 ジープのサイドミラーに、バイクに跨ったあの化け物が映った。

69名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:58:33 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)「…レースでもする気かお!」


 アクセルを踏み込み、一気に加速させる。
 しかし、後ろのバイクはお構いなしに距離を縮めてくる。


(;^ω^)「くそっ!ジープ如きじゃ追いつかれるお!」


 どうすればいい。
 もし確実に照準できる距離に詰められて、もう一度あのRPGー7を向けられたら。

 間違いなく、命はない。


(;^ω^)「…やっぱりこれしかないかお」


 舗装された直線道路で勝ち目はない。
 ならば、ジープの特性を生かした勝負に持ち込むしかない。

70名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 19:59:32 ID:wIx/vkn.O
 
( ^ω^)「ふんっ!」

∬メ●皿#∬「!」


 道路から外れ、砂利の上へと車を走らせる。
 後ろのバイクもその後を追うが、安定がとれないためかスピードを落としていく。


( ^ω^)「次は獣道だお!!」

∬メ●皿#∬「!」


 砂利を走り、その向こうのジャングルへと車ごと突っ込んでいく。

 四輪駆動の先駆けとなったジープだからこその芸当。
 ジープなら木の根や土の上も安定して走ることができる。

 しかし、それがバイクとなるとそうはいかない。
 オフロードバイクでもない限り、このような悪路を走破するのは困難になる。

71名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:00:46 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ●皿#∬「ク、ガ、…」


 案の定、化け物は不安定にバイクを操り続ける。

 やがて、バイクは勢いよく滑り、大木に激突した。


( ^ω^)「!」

 ジープを止め、後ろを振り向く。

 直後、激突したバイクが爆発を起こした。
 辺りに部品が散らばり、木々が燃え盛っていく。


( ^ω^)「…どうにか上手くいったお」


 化け物の体ごとバイクが滑ったのも確認した。
 生存するのは不可能だろう。

72名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:01:31 ID:wIx/vkn.O
 
 前に向きなおり、そのままジープを進める。


(;^ω^)「……」


 しかし、何故だ。
 何故、妙な胸騒ぎがする。

 何故、まだ奴の気配を感じる。


(;^ω^)(……)


 助手席からAKSー74Uを取り、車を止める。

 そのままゆっくりと降りようとした途端。
 ブーンの眼前に、RPGー7の砲身が迫ってきた。


∬メ#●皿#∬「ガアアアアア!!」

(;^ω^)「!!」


 体を倒しながら攻撃を避け、相手の胴を蹴る。
 その反動で、ブーンは転がるようにジープから出ることができた。

73名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:02:43 ID:wIx/vkn.O
 
 体勢を立て直し、銃口と共に相手を見る。


(;^ω^)「……え」


 ブーンが戦うことを躊躇わせた理由。
 それは化け物の服装にあった。

 野戦服のようなズボン、米軍のマーク。
 腰にかけられた銃とナイフ、そして右足のナイフ。

 メインウェポン以外の装備のレイアウトが、全てブーンと一致しているのだ。


(;^ω^)「正直に答えろお」

∬メ●皿#∬「……」


 銃口を向けたまま、ブーンが口を開く。
 対する化け物は、ブーンを見据えたまま微動だにしない。

74名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:03:32 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)「お前、名前は?」

∬メ●皿#∬「ソ、ソクラ…」

(;^ω^)「ソクラ…」

(;゚ω゚)(ソクラ……)


 どくん、と心臓が跳ね上がる。
 頭が割れるように痛む。

 知っている。
 この化け物を、「ソクラ」という名前を知っている。




    『被験体8番、反応あり』

    『"ソクラ計画"唯一の成功です』


(;゚ω゚)


    『よし、8番を演習場へ。他の被験体は別の計画に移せ』

    『おはよう"ソクラ"、我が息子よ』

75名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:04:46 ID:wIx/vkn.O
 
 真っ白な天井。
 響き渡る複数の男の声。

 失われた記憶の雫が、ひとつ、ブーンに零れ落ちた。


∬メ●皿#∬「…死、ね」

(;^ω^)「!」


 RPGー7を向ける「ソクラ」の腕に、AKSー74Uのフルオートの弾幕を浴びせる。
 ソクラの持つRPGー7が、その右腕ごと吹き飛ばされた。


∬メ#●皿#∬「…殺す」

(;^ω^)「!!」


 残った左腕でナイフを抜き、途轍もないスピードで迫る。
 その姿に引き金を引く前に、ソクラはブーンの視界から消えた。

76名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:06:05 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)(チッ…)


 ジャングル内での視界の悪さを利用したカモフラージュ。
 どこかの木々を移動しながら、確実にブーンへと迫ってくる。


(;^ω^)(あくまで接近戦を挑む気かお)


 ナイフを構え、辺りの木々を360度警戒する。

 やけに静かだ。


(;^ω^)「……」


 どこだ。どこから来る。
 どこに潜んでいる。

 神経を研ぎ澄まし、視野を広げ、相手を探る。

 直後、ブーンの真上から、静かに木の葉が落ちてきた。


(;^ω^)(──真上!!)

77名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:07:12 ID:wIx/vkn.O
 
∬メ#●皿#∬「ガアッ!!」

( ^ω^)「フンッ!!」


 真上から体ごとナイフを振り下ろしてきた相手を避け、距離を取る。

 とても片腕が無い状態とは思えないほどの威圧感。
 短い睨み合いの末、ソクラが先に手を出した。


∬メ●皿#∬「ガアア!!」

( ^ω^)「シッ!」


 順手に握ったナイフをうねらせ、変幻自在に繰り出すソクラ。
 その軌道を、全てナイフで流していく。

78名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:08:34 ID:wIx/vkn.O
 
 強い。
 だが、全ての軌道が見える。


( ^ω^)(今だ!)

∬メ●皿#∬「!?」


 ソクラの突きをナイフで流し、手首を掴み、そのまま後ろ回し蹴りで倒しながら腕を固定する。

 うつ伏せに倒れた体と、固定された左腕と、首に当たるナイフの刃。


( ^ω^)「僕の勝ちだお」

∬メ;●皿#∬「グ、ガア、ア…」


 揺るぎない勝利が手渡されたのは、ブーンの方となった。

79名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:09:40 ID:wIx/vkn.O
 
( ^ω^)「死にたくなかったら、僕の質問に全て答えるお」


 ソクラの首にナイフを当てながら、ブーンが続ける。


( ^ω^)「お前、記憶はあるかお?」

∬メ●皿#∬「……わから、ない」

( ^ω^)「どうして僕を殺そうとしたんだお」

∬メ●皿#∬「人間は、殺す、べき」

( ^ω^)「……」


 人間は絶滅すべき。
 やはり、ミュータントの思想が完全に根付いている。

80名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:10:21 ID:wIx/vkn.O
 
( ^ω^)「最後の質問だお」


 ナイフを握る手に、力が入る。


( ^ω^)「僕のこと、知ってるかお」

∬メ●皿#∬「………」


 沈黙。
 答えろ、と念を押そうとした途端。

 ソクラが、自らナイフに首を差し出した。


(;^ω^)「なっ…!!」

∬メ;●皿#∬「〜〜ッッ」


 深く食い込んでしまったナイフを引き抜くが、もう遅かった。

 ソクラは激しく痙攣したあと、ゆっくりと固まっていった。

81名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:10:22 ID:C3WfRTKIO
来てたー
ブーン本当に強いな

82名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:12:00 ID:wIx/vkn.O
 
(;^ω^)「クソっ!!」


 地面を殴り、ニコドーの街の方を見る。
 黒煙が上る小学校を見据えながら、ブーンは小さく呟いた。


( ^ω^)「ドクオ…すまないお」


 AKSー74Uを取り、ジープへと戻る。

 ニコドーの街と、ドクオとの約束と、ソクラの死体。
 それらを背にして、ブーンはジープを走らせていった。



──

83名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:12:43 ID:wIx/vkn.O
 
──



(;^Д^)「…被験体ソクラ、死亡が確認されました」

( ・∀・)「そうか」


 背を向けたままプギャーの報告に応えるモララー。
 その声色は、どこか嬉しそうだった。


( ^Д^)「それと、ソクラを含む7体のミュータントをコロンビアで殺した犯人が特定できました」

( ・∀・)「…なんだと?」


 モララーが興味深けに振り向く。
 何かを期待するような瞳が、プギャーを捕らえた。


( ^Д^)「衛星からの映像でわかりました。奴はここを脱走した、被験体11番に間違いありません」

84名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:13:32 ID:wIx/vkn.O
 
( ・∀・)「11番…?」

( ・∀・)「……はは、そうか…」


 薄笑いを浮かべながら、またプギャーに背を向ける。


( ・∀・)「…面白いことになってきたな」


 これで、また別の戦争になってしまう。

 人間と、ミュータントと、
 新しい「人間」との。



 第三話 終

85名も無きAAのようです:2011/11/20(日) 20:34:01 ID:C3WfRTKIO

緊迫感がイイ

86名も無きAAのようです:2011/11/22(火) 16:44:19 ID:dUoeFsQ2O
すごく楽しみにしてます(^ω^)!

87名も無きAAのようです:2012/10/19(金) 20:11:35 ID:U9k86UKs0
今日読みました。これは続きが気になるっす。

■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■