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( ^ω^)はイキガミの配達員になるようです- 1 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:37:27 ID:KPm2r6WsO
- 【国家繁栄維持法】
この法律は国民に「生命の価値」を再認識させることで国を豊かにすることを目的とし、
その手段として若者たち(18歳〜24歳)を対象にしたある通知を出している。
その通知とは「逝紙(いきがみ)」と呼ばれる死亡予告証である。
およそ1000分の1の確率で選ばれた者は―――――――
―――――――紙を貰ってから24時間後には死んでしまう。
元ネタ:漫画「イキガミ」より
原作へ敬意と愛を込めて。
- 2 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:42:58 ID:KPm2r6WsO
- ―――――――
( ´∀`)「……さて、今日君の担当する死亡予告書なんだけどね、内藤くん」
( ^ω^)
( ´∀`)「……内藤くん?」
( ´∀`)
( ^ω^)「……ZZZ」
( ´∀`)
ばしん。
( #)ω^)「はい、なんすか課長」
( ´∀`)「わぁ、謝りもしねぇよこの糞ガキ」
- 3 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:44:52 ID:oLuAWC/M0
- 支援
- 4 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:48:52 ID:KPm2r6WsO
- ( ´∀`)「ちゃんとしてよ。まだ新人とはいえ……ってか新人だからこそ、居眠りとか気をつけないと」
( ´∀`)「仮にも、人の死を見届ける仕事してんだから」
( ^ω^)
( ^ω^)「いやぁ、昨日は先方さんと……」
( ´∀`)「知ってるよ。だからこそだよ」
( ´∀`)「はい、これが今日の『予告書』通知者リストね」
( ^ω^)「……はい」
( ´∀`)「元気出してよ。でないと、こっちもやってらんないんだから」
( ^ω^)「はい」
( ´∀`)「……ったく」
( ^ω^)
( ^ω^)(……何人目だろうか)
- 5 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 07:54:14 ID:KPm2r6WsO
-
極論を言えば、人はみんな誰だって「神」なんだと思う。
そんな中、自ら「死神」を選ぶ物好きがいるってんだから……。
第一話:『一般的異端人(アブノーマルフォーマル)』
本日の対象:素直キュート
- 6 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:00:37 ID:KPm2r6WsO
-
―――――――
o川;* ー )o「あっ!ん、はぁっ!!ああっ!!いいのぉ!!」
o川;* ー )o「もっと!!もっ、あっ!もっときてぇっ!ぁん!」
o川;* д )o「いく、いっちゃ、いっちゃ、あああぁっ!!」
―――――――
ぴっ。
( ^ω^)
( ^ω^)
『元アイドル素直キュート、AV初出演!!初めてで喘ぎまくりのイキまくり!!』
( ^ω^)
( ^ω^)「ふぅん」
どうやら、今日の相手はこの人らしい。
- 7 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:07:30 ID:KPm2r6WsO
- 自己紹介をするならば、僕は内藤ホライゾンという。
( ^ω^)「まぁそれなりにいろんな人に渡してきたけど」
( ^ω^)「……AV女優は初めてだな」
職業、逝紙配達員。
まだ新米の域を出ておらず、働き初めてようやく2ヶ月が立ったところだ。
仕事内容はと言えば簡単。
逝紙を対象者に届け説明を施すだけ。
……まぁ当然これでは、説明不足になるだろう
まずは、逝紙から始めようか。
- 8 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:16:06 ID:KPm2r6WsO
-
『国家繁栄維持法』
通称、「国繁」。
数年前に内閣が変わると共に施行された法律だ。
( ^ω^)「さて」
この法律は平和な社会に暮らす国民に対し、「死」への恐怖感を植え付けることによって「生命の価値」を再認識させる事を目的としている。
( ω )「そろそろ行くか」
国民は、この法律によって誰にカプセルが注入されたかを知ることができない。
つまり国民はその時期(死亡予定の18〜24歳の)が来るまで「自分は死ぬのでは」という危機感を常に持ちながら成長することになる。
( ^ω^)「……あら、コートにシミがついてんな……」
その「危機感」こそが「生命の価値」に対する国民の意識を高め、社会の生産性を向上させるらしい。
( ^ω^)「…………ま、気にしたら負け、かな」
現に、ここ数年のGDP(国内総生産量)等に上げられる日本の指数の増化はめまぐるしくものを見せ、
日本は世界経済のフロントランナーにも上げられるような大国とまで昇華した。
( ^ω^)「素直キュート。住所は、と……」
- 9 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:18:08 ID:KPm2r6WsO
-
だからって、僕は絶対に認めない。
こんな法を、認められる訳がない。
( ^ω^)「……」
愛する人を理不尽に殺した、この法を……
何よりも呪いながら、今日も僕はイキガミを配り続ける。
この話は……また後日にしよう。
- 10 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:24:09 ID:KPm2r6WsO
- ―――――――
o川*゚ー゚)o「お疲れさまです、監督」
監督「いや、ありがとうねキュートちゃん!!今日もいいもん見せてもらったよwwちゃんと良い作品に仕上げるからね!」
o川*゚ー゚)o「はい、お疲れさまです」
監督「ん?キュートちゃん帰る?急いでるの?」
o川*゚ー゚)o「……?いえ、急いではいませんけど」
監督「なんだったら、ご飯おごろうか?実は僕も、今からちょっと時間余るんだよね」
o川*゚ー゚)o「いいんですか?ありがとうございます」
監督「いやいや、いいんだよ。はははwじゃあ、車取ってくるね」
o川*゚ー゚)o「はい」
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o(くせぇ。)
くせぇ。くせぇったらありゃしねえ。
ゲロみたいな臭いがする。
醜悪な下心、それを隠してるフリをしてるだけ。
実際は隠そうともせず……むしろ私に見せ付けてるみたいに。
くせぇ。
- 11 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:27:15 ID:KPm2r6WsO
-
o川* ー )o「待って……あっ、監督……車の中じゃあ……」
監督「大丈夫だよ、こんな寂れた地下駐車場……誰も来やしないだろ」
ほら。
やるなら早くやれ。
喘いではやるから、なるべく早く終わらせて。
雑念と共に、舌を噛みきってしまいそうだから。
- 12 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:32:48 ID:KPm2r6WsO
-
監督「いやぁ、美味しかったね!」
o川*゚ー゚)o「本当ですね。本当にありがとうございます。ごちそうさまでした」
平日にしては車道は飽和状態。
わずわらしい。なぜ自分以外の人が車道を通ってるんだ。
これがぷよぷよみたいに消えてくれりゃあ、どれだけいいか。
o川*゚ー゚)o「……」
監督「CDでも聞くかい?キュートちゃんってどんな音楽が好き?」
o川*゚ー゚)o
どんな音楽。
o川*゚ー゚)o「……J-POPならなんでも」
監督「ははw今の女の子だと、○○とか人気だよね」
監督「もちろん、AABもね」
o川*゚ー゚)o
- 13 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:37:04 ID:KPm2r6WsO
- AAB48。
今の日本を引っ張る、人気アイドルグループだ。
日本で彼女達の名を知らない人間はいないし、彼女達の名を聞かない日はない。
そして
o川*゚ー゚)o「……その話は、やめて下さい」
私が、やめさせられたグループだ。
監督「wwwああ、ごめんごめん」
監督は気をきかせてくれたらしい。
とっさにCDをしまい、ラジオのボタンを押した。
しかし流れてきた音楽は、やっぱりAABのものだった。
o川*゚ー゚)o(ああ)
煩わしい。
- 14 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:44:09 ID:KPm2r6WsO
-
思えば、何年前だろう。
同姓から容姿をそれなりに誉められるので、冗談半分でAABのオーディションを受けたのは今でもはっきり覚えていり。
それが最終審査まで行き、ついぞ合格と聞いた時には、嬉しすぎて母と泣きあった。
そして、そこからは努力の毎日だった。
毎日、自分以上の美少女達とダンスや歌の練習。
容姿を更に磨く為にケアは一瞬たりとも欠かさなかった。
苦汁と辛酸を舐め続けるような日々に耐え、一流のアイドルの一角として世間に認知されるように努力した。
そして努力は身を結ばなかった。
事実上の解雇を言い渡され、ほとんど何も残らなかった私は、
唯一残されたネームバリュー、「元アイドル」を使い、AV女優としてデビューした。
- 15 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 08:44:59 ID:KPm2r6WsO
- ちょっと休憩します。
戻ってきたら最後までやります
- 16 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:43:11 ID:KPm2r6WsO
-
反応の遅い電球が、数秒差で光を生む。
年ごろの女にしてはみすぼらしい空間が、露になる。
o川*゚ー゚)o「……ただいま」
今では自宅たるこの六畳間だけが、私の安らげる場所。
実家に帰れるはずもないのだから。
o川*゚ー゚)o「……」
何をするわけでもない。
ただ静寂が嫌で、テレビを無造作につけた。
ぴっ。
「どうも、AAB48でーs」
ぴっ
o川*゚ー゚)o
ああ、煩わしい。
今の日本じゃあ、どこにいたって彼女達の名から逃げられないのだ。
そのうちストレスで死んでしまいそうだ。
- 17 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:46:14 ID:KPm2r6WsO
-
o川*゚ー゚)o
なぜこんな事になったんだろう。
本当は私も、彼女達と同じ目線の元にいたのかも知れないのに。
いつの間にか私は、こんな世界に身を投じている。
華々しかった世界から、どんぞこに。
それが何よりも煩わしい。
o川*゚ー゚)o
o川* ー )o「……煩わしい」
なんだろうなぁ、この世界は。
o川* ー )o
ぴんぽーん。
o川*゚ー゚)o「……?」
- 18 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:50:21 ID:KPm2r6WsO
- o川*゚ー゚)o「……誰だろ、こんな時間に」
がちゃり。
o川*゚ー゚)o
( ^ω^)「あ、どうも」
玄関口に立っていたのは、少し太った温和そうな男だった。
( ^ω^)「素直キュートさんのお宅……でよろしいでしょうか」
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「……はい」
( ^ω^)「あなたに、死亡予告書をお渡ししに来ました」
o川*゚ー゚)o
えっ。
- 19 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 14:56:22 ID:KPm2r6WsO
- ( ^ω^)「つきましては、こちらの書類が……云々……」
o川*゚ー゚)o
死亡予告書……って。
イキガミ?
ありえない。
私が? 死ぬ?
国繁で、死ぬ?
嘘。
( ^ω^)「……して、こちらの死亡予告書とそn」
o川;*゚ー゚)o「違います」
( ^ω^)「え?」
o川;*゚ー゚)o「人違いです」
o川;*゚ー゚)o「帰って下さい」
ばたん。
(;^ω^)「え、ちょ?素直さん?」
o川;* ー )o「うるさい!!帰ってよ!あなたに用なんかない!!」
(;^ω^)「いや、そう言われましても、あなたは」
o川;* ー )o「知らない!!帰ってよ!!」
o川;* ー )o
なんで。 なんで私が。
- 20 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 15:02:21 ID:KPm2r6WsO
- (;^ω^)「……あーもう」
(;^ω^)「素直さん!……いいですか!」
o川;* ー )o
(;^ω^)「どうあなたが現実逃避しても……あなたの人生は翌日19時ジャスト!終わってしまうんだ!」
o川;* ー )o「っ!!」
(;^ω^)「どうか逃げないで下さい!……いや、逃げるだけならいい!むしろ、全力で逃げたらいい!でも……」
(;^ω^)「目をそらしただけじゃ、逃げた事にはならないんだお!」
o川;* ー )o
o川* ー )o「……」
がちゃり。
o川*;ー;)o「……本当に、私なんだね」
( ^ω^)「声をあらげてすいません……心中、お察しします」
- 21 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 15:07:51 ID:KPm2r6WsO
- ( ^ω^)「では、お渡しします。こちらがあなたの死亡予告書……逝紙です」
o川*;ー;)o「……」
( ^ω^)「この逝紙ですが、対象者の最後の一日をなるべく保証出来るよう、公共施設及び公共交通機関、また国繁加盟店を自由に使用できるチケットにもなります」
o川*;ー;)o「……はい」
( ^ω^)「最後の一日を満足出来るように、心からお祈り申し上げます」
o川* ー )o
- 22 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 17:49:59 ID:qfQ6INUsO
- かなり面白いけど
ブーンの語尾の「お」が少なくね?
- 23 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 19:33:03 ID:wyUI6L1wO
- >>22
そういう作品もある
- 24 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 19:51:41 ID:KPm2r6WsO
-
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「……」
o川*゚ー゚)o「最後の一日、か」
渡されたイキガミを見る。
赤枠には大きくこうかかれている。
「PM 7:00」。
o川*゚ー゚)o「……死ぬんだなぁ……」
どれだけ見ても実感がわかない。
まずはどうしようか。
両親に言うか?
……いやぁ。
o川* ー )o(……顔を合わせるのもちょっと忍びないよなぁー……)
アイドルからAV女優に落ちぶれた娘を、あの人達は受け入れてくれるだろうか。
いや、受け入れてはくれるんだろう。
でもそれじゃあ、むしろ自分の気が持たない。
優しくしてくれる親を見て、さらなる自己嫌悪に陥るに決まっている。
o川* ー )o(とりあえず、どっかいこう)
先ほど内藤という男は言っていたが、この逝紙はパスカードにも似た効果があるらしい。
ならば使わない手はないだろう。
時刻は8時20分。
残された時間は、22時間と40分。
- 25 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 20:02:34 ID:KPm2r6WsO
- o川*゚ー゚)o「……お洒落な居酒屋とか……高級レストランとか」
自分の発想の拙さに泣けてくるが、浮かんだのがこれくらいしか無かった。
時間が時間なんだし、仕方ないのかも知れないけど。
とりあえずは、お腹が空いた。
o川*゚ー゚)o(ラウンド駅前に、めちゃくちゃ高いお店あったけど、あれは加盟店なのかな。だったら言ってみたいけど)
携帯電話を開き、検索をかけてみる。
うん、確かに。
「国繁加盟店」との表示がある。
ああいう高級そうなとこは体面を気にするもんだし、当たり前と言えば当たり前なのか。
o川*゚ー゚)o「れっつらごー」
死ぬとわかればなんだか可笑しくて、一人で笑ってしまった。
いつぶりだろうな、自然と笑みが出たの。
- 26 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 20:27:08 ID:KPm2r6WsO
-
―――――――
トレンディドラマに出てくるような、小綺麗なお店。
自分の服と不釣り合いで、なかなか笑えてきた。
少しイケメンの彼氏に連れてこられたりしたら最高だろうなぁ、なんて考えた。
ウェイターに逝紙を見せれば、ただ小さく頷き「こちらへどうぞ」と導かれる。
o川*゚ー゚)o(なんだかVIPみたい)
一般的に、国繁死は「お国の為に自ら犠牲になった尊い人」として扱われるのだ。
つまりは、私は死によって得た事のない待遇を受けている。
o川*゚ー゚)o「この、和牛の〜〜〜と、〜〜〜〜のAコース、〜〜〜も付けてお願いします」
0をつけ間違えてるんじゃないかと思うくらいのそれを、惜しみなく頼んでみた。
その間もウェイターさんの表情が一切変わらないのが、私にはありがたかった。
- 27 :名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 23:38:44 ID:7Kv3XmrkO
- 面白い
支援
- 28 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 00:44:12 ID:eZyp8AmY0
- 続きが気になる
- 29 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 05:47:33 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o「うわぁ……」
出された料理は、一言で言うなれば絶品のものだった。
牛肉は、ここまで柔らかくなるものなのか。
その味わい深さは、思わず恥も捨ててかぶりつきたくなるような充足感を与えてくる。
o川*゚ー゚)o
ああ、ここまで満足したのはいつぶりか。
高い料理一つで至上の悦びを受けているというのは情けない話ではあったが、事実だ。
幸せが込み上げてくるとは、こんな時に使う表現なんだろう。
o川*゚ー゚)o「すごく美味しいですね」
ウェイター「ありがとうございます。我々の尽力の甲斐あってか、巷でもかなりの評価を頂いているようで」
o川*゚ー゚)o「はい!テレビでもこの店の話はよく聞きます」
ウェイター「ありがとうございます。最近では、あのAABの方々もあしげく此処に来て頂いているんですよ」
o川*゚ー゚)o
あれ。
o川*゚ー゚)o「……そう、ですか」
なんだろう。
o川*゚ー゚)o
目の前の幸せの塊が、ゴミに見えるよ。
- 30 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 05:56:09 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o「帰ります。ありがとうございました」
ウェイター「あ、え……まだ、頼まれたデザートの方をご用意させて頂いてませんが……」
o川*゚ー゚)o「すいませんが、キャンセルで。ホントにごちそうさまでした」
ウェイター「……はい、ありがとうございました。ま……」
「またお越し下さいませ」とでも言おうとしたのだろうか。
ウェイターは不自然に言葉を止めて、私を見送ってくれた。
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「……あ」
タクシーが通りかかる。
ひとまず止めてみようと手を挙げれば、すんなり速度を落としてくれた。
o川*゚ー゚)o「……」
運転手「どちらまで?」
o川*゚ー゚)o「……」
どうしたものかと考えたが、先に逝紙を見せる事にした。
そうすれば、だいたいわかってくれるだろうと。
運転手は一瞬だけ驚いた表情を見せたけど、すぐにそれをひた隠した。
o川*゚ー゚)o「……都内の繁華街にでも……適当に」
なんでこんな事を言ったのかはわからない。
たぶん、逃げたかったのだ。
あの忌々しい、栄光の塊の名前から。
ウェイターの口から一節として出た、ただそれだけの名前から。
- 31 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:02:57 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o
運転手「……」
それに比べたら、このタクシー運転手は楽だった。
最後だと知った私に介するわけでなく、ただ押し黙ってくれている。
o川* ー )o
沈黙がただ、今だけはありがたい。
空間を満たすのはうるさい車の音と、ラジオの無機質な声だけ。
世間話くらい飛ばした方が良かったか、そう思ったけどすぐに止めた。
o川*゚ー゚)o
「どうもー!!AAB48でーす!」
そして、ラジオからも聞こえてくる、
忌々しい呪詛にも似たそれ。
o川* ー )o「……っ」
o川* ー )o「……ここでいいです」
運転手「ん?まだ繁華街までは遠いですが」
o川#* ー )o「いいから!!」
- 32 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:08:09 ID:w2KLwfEIO
- o川#* ー )o「……はぁ……はぁ……」
一目散に走った。
とにかく走った。
逃げる場所が欲しかった。
でも、街中の大きな看板広告も彼女達を映している。
わかってる。無駄だって事くらい。
でも。
o川#* ー )o「でも……」
行き着く場所は探しても、賑わう居酒屋には入りたくない。
喧騒には、ヘドが出る。
o川* ー )o「……はは」
完全に一人になれる場所を探した。
でも見つかったのは、カラオケくらいのもんだった。
o川* ー )o
o川* ー )o「もう、ここでいいかな」
- 33 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:17:38 ID:w2KLwfEIO
-
o川*゚ー゚)o
カラオケの個室に一人、寝転ぶ。
画面は既に消してある。
告知PVなんかで彼女達が出てくるのは必然的だったから。
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「……なんか、歌うかな」
電子目次を見れば、ランキングでも予告でも彼女達。
煩わしい。
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「……あ」
そんな中、皮肉にも唐突に見つけた歌があった。
AABの初期の頃に出たものだ。
私がAABに在籍中に、最も好きだった歌。
公演では、だいたい真ん中辺りでよく歌われたものだ。
……公演には2度しか出してもらってないけど。
- 34 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:25:23 ID:HYqbBE12O
- まだ投下中かな?
支援
- 35 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:28:59 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o
なんの気無しに、その歌を入れてみた。
o川*゚ー゚)o
歌いたくなったとか、聞きたくなったとか、それはどうか知らないけど
とにかく入れてみたくなった。
o川*゚ー゚)o
流れてくる懐かしいメロディ。
o川*゚ヮ゚)o「〜〜〜〜♪」
忘れるはずもない、大好きだった歌詞。
o川*゚ヮ゚)o「……〜〜〜〜♪」
少しだけ、嬉しかった。
この歌を歌えるだけで、幸せなあの頃に戻れた気がしたから。
あの頃はまだ右も左もなかった。
今じゃAABのセンターであるクールちゃんも、昔は私の隣でダンスの練習中にこけたりしてたんだから。
しかし、彼女は可愛かった。
人気が出るのも必然な気がする。
o川*゚ヮ゚)o「〜ら〜ららら〜〜♪」
彼女もこの歌が好きだったっけ。
でも、今は歌う事があるのかなぁ。
様々なヒット曲が出た今、長い公演の中でもこの歌に出番があるかどうかはわからない。
o川*゚ヮ゚)o「ららら〜〜〜♪〜〜……」
そんな事を考えていたら、バカらしくなってきた。
こんな事をしていたって、昔に戻れるわけじゃないんだから。
それはいつまでも、過去の話。
今の私が口から吐くは、こんな栄光への歌なんかじゃない。
性欲にまみれた豚どもを悦ばせる、いやらしい喘ぎ声なのだ。
o川* ヮ )o「らら……♪……ああああ」
o川* ヮ )o「……あああああああああああああ♪」
そう思えば、何か台無しにしてやりたくて、めちゃくちゃな声を出した。
- 36 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:33:58 ID:w2KLwfEIO
- o川* ヮ )o「ああああああ!!ああああ!あああああ!」
歌のメロディとリズムを破壊してやるように。
綺麗な思い出を破壊してやるように。
o川* ヮ )o「あはは!!……死ね〜!♪しーね〜〜♪死ね!!!!」
歌のメロディとリズムに乗って吐き続ける。
綺麗な思い出と重ね合わせながら。
o川* ヮ )o「死ねー♪死〜ね!みんな死ねー♪ああはははははははは♪」
「死ね」とだけ吐き続ける。
メロディとリズムを無視して、
綺麗な思い出を憎んで。
o川*;ヮ;)o「死ね!!!死ね!!!死ねー!!!ははは!死ねえええええええええええ!!!」
私なんか、早く死ね。
―――――――
- 37 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:37:34 ID:w2KLwfEIO
-
o川*;ヮ;)o
私は最後の一日まで、嫉妬と羨望に苛まれ続けたのだ。
そして深夜2時の中頃、そのまま眠りに落ちた。
―――――――
- 38 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:41:49 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o
起きたら、既に14時を回っていた。
残された時間は、5時間と少し。
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「5時間、か」
もう誰にも連絡をしない事にした。
国繁死の場合、家族にはちゃんと連絡が行くし
まぁそちらには問題はないだろう。
行きたい場所は決まってる。
o川*゚ー゚)o
初めて公演を行なった舞台。
死ぬなら、そこがいい。
o川*゚ー゚)o
ここからなら、3時間ほどで行けるはず。
夢に潰された人生だ。夢を見たまま死にたいのだ。
- 39 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:46:13 ID:w2KLwfEIO
- もし私が場違いにアイドルなんて目指してなければ、
国繁死とわかったら何をしてたんだろう?
恋人の一人くらい作って、その人の腕の中で最後を過ごしたのか。
母や父に感謝して、円満に人生を迎えたのか。
はたまた今以上に失敗した人生を選んで、死が決まって喜んでいたのか。
o川*゚ー゚)o「……ないな」
今以上に失敗した人生なんか、ないか。
電車の窓からは、風景から消えていた緑が姿を現し始める。
o川*゚ー゚)o「懐かしいな」
- 40 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:54:07 ID:w2KLwfEIO
-
―――――――
o川*゚ー゚)o
誰もいない、静かな世界。
いつ来ても小さなホールだ。
でもこの上で確かに私達は、夢を綴っていた。
o川* ー )o「……はは」
ちゃんちゃら可笑しい話だ。
ここへ来て今更、「私達」なんて言葉を使っている自分が。
o川* ー )o「……よ、っと」
舞台へ上がってみる。
懐かしさだけが込み上げてくる。
昨日みたいな嫌悪感は、まったくない。
o川*゚ー゚)o「……」
少しだけ、あの頃にここで繰り返したダンスを踊ってみる。
タップ、ステップ。
何かに連れてかれるような、不思議な感覚。
現在時刻、5時半。
o川*゚ー゚)o「……あと、1時間半か」
/ ,' 3「おや」
o川;*゚ー゚)o「えっ」
- 41 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 06:58:25 ID:w2KLwfEIO
- / ,' 3「人がいるとは……珍しい」
o川;*゚ー゚)o「えっ……あ」
/ ,' 3「いやいや、いいよ。そのまま舞台にいるといい。何かここに思い入れでもあるんじゃろう?」
o川;*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「はい」
/ ,' 3「ワシもこの舞台が好きでな。よくここに来るだけの客じゃよ」
o川*゚ー゚)o「……そうなんですか」
o川*゚ー゚)o「客、ね」
/ ,' 3「あぁ」
/ ,' 3「ここはな、ワシが好きなアイドルグループが全盛期の時に公演を行なっていた場所なんじゃよ」
o川*゚ー゚)o
……それって。
o川*゚ー゚)o「……AAB?ですか?」
/ ,' 3「!ほぉ、知ってるかね」
- 42 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:04:06 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o「でも、『全盛期』って……彼女達の全盛期って言うなら、今でしょう」
CDも出す度飛ぶように売れるし、公演から握手会等のチケットは一瞬のうちに無くなってしまう。
私がいた「あの頃」には考えられない世界だ。
/ ,' 3「かもな」
/ ,' 3「しかしな、ワシの全盛期な紛れもなくここなんじゃよ」
/ ,' 3「ワシの好きな彼女達はここにいた。……まぁ今が嫌いというわけではないが」
o川*゚ー゚)o「……」
/ ,' 3「良かったぞ、あの頃は。あの頃があったからこそ、今の彼女らがあるんじゃろう。……例え」
/ ,' 3「その中に、ここで夢潰えた子がいたとしても」
o川*゚ー゚)o「……っ」
- 43 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:11:53 ID:w2KLwfEIO
- o川*゚ー゚)o「あなた、もしかして……私を」
/ ,' 3「ん、君の事なんか知らんけど」
o川;*゚ー゚)o「……知らんのかーい」
/ ,' 3「ほっほっほ」
/ ,' 3「……まぁ、知らん。知らんのが当たり前じゃった」
/ ,' 3「今のようにメディア主体じゃ、名前だけが先行するからのぅ」
o川*゚ー゚)o「……それでも、今は売れてる」
/ ,' 3「売れない時代があったからこそじゃろ」
/ ,' 3「名前すら覚えてないが、ワシはここで見た彼女達を忘れない」
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「……じゃあ」
- 44 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:12:51 ID:w2KLwfEIO
-
o川*゚ー゚)o「今度は私の名前を覚えてもらう為に、今からここで見ててもらっていいですか?」
/ ,' 3
/ ,' 3「……ああ」
/ ,' 3「贅沢じゃな。AABの生ライブ、独占とは」
o川*^ー^)o「一生ものの宝ですね、おじさん!」
/ ,' 3「ほっほっほ」
o川*゚ー゚)o「じゃあ、歌います!曲名は―――――――」
―――――――
- 45 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:16:55 ID:w2KLwfEIO
-
o川*^ヮ^)o
素直キュートは舞台上、幸せそうに息を引き取った。
彼女が好きだったあの歌は、誰かの心に今も響いているのだろうか。
―――――――
( ^ω^)
( ^ω^)「なんてね」
( ^ω^)「僕にゃ君のエロい体の方が頭には残ってるけど」
( ´∀`)
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「君なあ」
( ^ω^)「言いたい事はわかりますよ」
( ´∀`)「わかるなら素直に殴られて欲しいな」
( ^ω^)「いやです」
- 46 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:21:52 ID:w2KLwfEIO
- ( #)ω^)「訴えますよ課長」
( ´∀`)「正当防衛だよ。バカを感染されそうになったから身を守ったまで」
( ^ω^)「こりゃひでえや」
( ´∀`)「……あのな。死に感慨深くなるのはわかるけど、それでも対象者に深入りだきゃあするなよ」
( ´∀`)「……『人の死は』」
( ^ω^)「『ただの統計として見、そして計れ。紙面は悲劇を語らない』……でしょ」
( ´∀`)「わかってるならいい」
( ´∀`)「たった明日死ぬってわかってるだけ、ただそれだけで赤の他人に変な情を抱くのはお門違いなんだよ」
( ^ω^)
( ^ω^)「わかってますよ」
嗚呼。
- 47 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:24:55 ID:w2KLwfEIO
-
「もし―――なら――――ツンは、どうするんだお?」
「どうもしないわよ。だってあなたは―――――」
「違うお。僕は―――――――」
( ^ω^)(明日死ぬだけ、ただそれだけ……か)
( ^ω^)(そう割りきれたのなら……なぁ)
それが難しいから、人なのだろう。
夢潰えたアイドル。
彼女の最後は、人として幸せと言えただろうか?
- 48 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 07:29:11 ID:w2KLwfEIO
- 死亡予告書――――――――――――――
『o川*゚ー゚)o』
指名:素直キュート
生年月日:6月9日
本籍:○○県シベリア地区6―9
住所―▽▽都速報市プラス3丁目24―16
死亡予定時刻:「PM7:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
第一話:『一般的異端人(アブノーマルフォーマル)』
終了。
- 49 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 13:47:13 ID:eZyp8AmY0
- 乙!
面白かった続きが楽しみ
- 50 :名も無きAAのようです:2011/09/13(火) 18:16:26 ID:HYqbBE12O
- 面白いけど、ちょっと鬱になる
まあ多少へこんだ気分になるのは
作品の内容上やむを得ないのかな
- 51 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 07:15:08 ID:zx4nOZ.6O
- そして重大なミスに気付いた
×「死亡予告書」→○「死亡予告証」
フツーに変換されるから違和感無しに使ってた……今日また2話投下しますね
- 52 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 19:10:18 ID:ahTWdN5.0
- 乙
読みやすかったし面白かった
- 53 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 19:50:49 ID:NGvpfIm20
- 乙
これは良作品
- 54 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:09:42 ID:zx4nOZ.6O
- 「なぁ、ヒッキー」
「なに?」
「こんな事は言いたくないんだけどさ……もしお前、俺が急にいなくなったとしたら、どうすんの?」
「は?wwなにそれどういう意味?」
「お前、DQN達とうまくやっていけるのか?」
「……大丈夫だよ。高校生活も、あと半年だよ?」
「弁当隠され金を取られ」
「っ……」
「……最近じゃ俺が見ないとこだから、俺もフォローしにくいんだよ」
「こんな状況でもし俺がいなくなったら」
( ФωФ)「お前、どうする気なんだ?」
- 55 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:13:01 ID:zx4nOZ.6O
-
「いや、別にいいよ。相手にしてないだけだし」
( ФωФ)「相手にしてないのに、便所用スリッパを借りて帰るのは心が広すぎるな」
「うるっせぇなあ。別にお前、明日死ぬわけでもないんだろ?」
( ФωФ)
「それに、いざとなりゃやり返すさ。あいつら、根はビビりだから。カッターナイフ振り回すか、素手でちょっと殴るかしたら、イッパツさ」
( ФωФ)「そうか」
( ФωФ)
( ФωФ)「……そうか」
- 56 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:14:45 ID:zx4nOZ.6O
- 生きる事に必死な人間に向かって、世間様は必死になって人徳を求めやがる。
こう言っちゃなんだが、後悔こそ人生だ。
誰より求められた美しいはずのものこそ―――――――
第2話:「繋がりの果てに(ラストフルトラスト)」
対象者:杉浦ロマネスク
- 57 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:21:36 ID:zx4nOZ.6O
- ―――――――5時間前、VIP第一高等学校「北応接室」
( ^ω^)「授業中にごめんね、杉浦ロマネスクくん」
( ФωФ)「……いえ。なんですか」
爪'ー`)y-「……」
( ^ω^)「……あのね」
( ФωФ)「……?」
( ^ω^)「……ああ、いや、うん……単刀直入に言おう」
( ^ω^)「君に……逝紙が届いてるんだ」
( ФωФ)
は?
( ^ω^)「僕はこれを、渡しにきた」
- 58 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:22:38 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)
そう言って、このおじさんが手渡してきたもの。
死亡予告証。
間違いない。テレビで見た。
授業でもやった。
それが、俺の元に。
死亡時刻は明日のPM1:30
今から、24時間後。
これ。
これって。
( ФωФ)「本物……?」
( ^ω^)「……本物だよ」
爪'ー`)y-「……杉浦」
担任も深刻な顔で俺を見ていた。
つまり俺は……本当に死ぬらしい。
まじでか。
- 59 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:27:43 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)「まさか……バカな。だって、そんな」
嘘だろ。
だってまだ、高校三年生。
いやそりゃあ確かに18歳ではあるけど。
柔道で全国でも活躍して、おかげで大学からスポーツ推薦、しかも全額無償で貰って。
友達にもそれなりに恵まれて、幸せな明日があるはずの俺が。
人生を今から謳歌するはずの、俺は。
( ^ω^)「……気持ちはわかる。明日は嫌なら学校にも出席しなくていい」
( ^ω^)「最後の一日は君次第だ。では、僕はこれで」
爪'ー`)y-「……ご苦労様です」
( ^ω^)「……いえ。それでは」
( ФωФ)
( ФωФ)「……」
爪'ー`)y-「杉浦……」
- 60 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:30:29 ID:zx4nOZ.6O
- 爪'ー`)y-「……まさかお前みたいなクラスの見本と言えるべき生徒が選ばれちまうなんてな」
( ФωФ)
爪'ー`)y-「……今なら、なんでも言えばいい。なんなら今から帰ったって構わない。何か俺に言いたい事はないか?」
( ФωФ)
( ФωФ)「……先生」
爪'ー`)y-
( ФωФ)「……ずっと言わないで、って言われてたけど」
( ФωФ)「うちのクラス、いじめがあるんだ」
爪'ー`)y-
爪'ー`)y-「……そうか」
- 61 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:33:21 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)「どうやったら、いじめは無くなる。いじめの解決策ってなんだ」
爪'ー`)y-「……」
( ФωФ)「この前、Googleで調べた」
( ФωФ)「『いじめ 解決策』で調べたんだ」
( ФωФ)「そしたらな、200万件くらいヒットしたんだ」
( ФωФ)「でもな、解決策、どこにも無かった」
( ФωФ)「200万もあったのに、答えが無かった」
爪'ー`)y-「……違うんだよ、ロマ。それはな、解決策がないんじゃない」
爪'ー`)y-「その全てが解決策なんだよ」
爪'ー`)y-「いじめって問題はな、言わば人間関係だ。人はモノじゃない。変わりゆくからこそ、いじめは無くならない」
爪'ー`)y-「いろんなケースがあるから、いろんな答えがある。それがいじめなんだ」
( ФωФ)「じゃあ俺はどうすりゃいい」
爪'ー`)y-「……」
( ФωФ)「『正しい答えが無いから何もしなかった』なんてのが、アンタはそれが正しいと思うのか」
爪'ー`)y-「……あのなぁ、ロマ」
- 62 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:38:41 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)「わかってるだろう、馬鹿は力で見せないとわからない」
( ФωФ)「暴力を封じ込めるのは、更に大きな暴力しかないんだ」
爪'ー`)y-「だから……その、いじめっこどもを殴らせろと?」
爪'ー`)y-「ふざけんなよ、お前」
( ФωФ)
爪'ー`)y-「死ぬならなおさら、そんな事してどうすんだ。暴力で解決するなら、俺がそいつらぶん殴るっての」
( ФωФ)
爪'ー`)y-「……俺、授業中に一度だけ言ったよな、覚えてるか?」
( ФωФ)「?」
爪'ー`)y-「人を救う方法だよ」
( ФωФ)「……あぁ」
( ФωФ)「『ノドが乾いてるやつがいたら井戸の堀り方を教えろ。腹が減ってるやつがいたら麦の植え方を教えろ』……ってやつ」
爪'ー`)y-「そうだよ。間違っても、水や麦をそのまま上げて飢えを癒すだけで終わっちまってはいけないんだよ」
爪'ー`)y-「今のお前みたいに」
( ФωФ)
- 63 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:42:56 ID:zx4nOZ.6O
- 爪'ー`)y-「いじめは無くすもんじゃない。終わらせるもんだ」
爪'ー`)y-「もしお前が最後の一日をそれに使いたいなら……やるべきは、その『いじめられっこ』に対して、じゃないのか?」
( ФωФ)「……俺は」
爪'ー`)y-「いいよ、杉浦」
爪'ー`)y-「俺はお前みたいな生徒に会えて良かった。最後の一日まで他人を考える事が出来るやつなんか、大人でもそうそういないんだからな」
爪'ー`)y-「俺はお前の担任にいれた事を、誇りに思うよ」
( ФωФ)「……」
爪'ー`)y-「今日はもう帰れ。で、ゆっくり休め。な?」
( ФωФ)
( ФωФ)「はい」
- 64 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:45:51 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)
( ФωФ)「死ぬのかぁ」
( ФωФ)(明日、死ぬのかぁ……)
聞いた話じゃ、俺は3歳くらいの頃に母親の薦めで柔道をやり始めたらしい。
らしいというのは、俺にはまるでその頃の記憶がないという意味だ。
とにかくまぁ、そのおかげで強く育った俺は
ケンカじゃ、誰にも負けなかった
だからって力を周りに鼓舞するほど僕は馬鹿じゃない。
それが無益だと気付いたのは中学2年生の頃だったか。
別段仲が悪いわけじゃないが、クラスの頭が悪いグループには関わらなかったし、向こうも関わっては来なかった。
そして高校に入って。
僕はいじめを見てしまった。
いじめられたやつの名は、ヒッキー。
今の俺の一番の親友だ。
- 65 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:50:00 ID:zx4nOZ.6O
-
不愉快だった。
いじめているDQNというやつは、頭が悪いチャラチャラしたひょろいやつだった。
そんな弱そうなやつがクラスで大声で息巻き、つるんではヒッキーをいじめていた。
それが気にくわなかった。
だから、一度だけヒッキーが殴られている時、「やめろよ」と言ってやった。
そしたら。
(-_-)「あ、あの……」
( ФωФ)「?」
(-_-)「助けてくれて、ありがとう……」
( ФωФ)「……あぁ、うん」
そこから僕とヒッキーは仲良くなった。
- 66 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 20:56:08 ID:zx4nOZ.6O
-
ヒッキーは話してみると面白いやつだった。
よくわからないアニメか何かのネタをふってきたりもした。
(-_-)「やっぱ東方なら諏訪子っしょwww俺マジロリコンwww」
( ФωФ)「うははww」
二人で遊ぶ事も多くなり、次第にヒッキーといるのが楽しくなってきた。
そして幾月。
いじめはまた始まった。
……俺に口出しされてはうざいからか、俺の見えない場所で、だ。
( ФωФ)「どうした、弁当ないのか?」
(-_-)「……いや、弁当、忘れちゃったみたいだwww」
( ФωФ)
ヒッキーは嘘を付くのがヘタだ。だからすぐにわかった。
- 67 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 21:01:48 ID:zx4nOZ.6O
-
( ФωФ)こんな状況でもし俺がいなくなったら、お前、どうする気なんだ?」
ヒッキーは真面目に返さなかった。
だから俺はどうするべきかわからなかった。
( ФωФ)
「暴力じゃ解決しない」。
だったら先生。
俺は、どうすればいいのだ?
いくら高尚な倫理を並べられたって、俺は否定する気にはなれないんだよ。
「暴力」を潰すのは、「もっと大きな暴力」だけだって事を。
- 68 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 21:04:15 ID:zx4nOZ.6O
- ( ФωФ)
( +ω+)
……やっぱり俺には、これしかないよなぁ。
明日しぬなら。
どうせなら。
水を与えながら、井戸の堀り方を教えるよ。
麦を食わせながら、畑の作り方を教えるよ。
これは人を救うに、良い方法なのかな?
先生。
- 69 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 21:08:31 ID:zx4nOZ.6O
- ――――――翌日。
朝礼のベルが鳴るかという頃。
俺は、クラスのど真ん中で行動を開始した。
( ФωФ)「おいDQN」
DQN「……あ?」
( ФωФ)「ヒッキーに謝れ」
(;-_-)
(;-_-)(ろま、何を……)
DQN「…………」
DQN「……はあぁ?wwwなんだいきなりwwww」
( ФωФ)「知ってんだよ、お前がヒッキーの私物潰したり、裏で金巻き上げたりしてるくらい」
DQN「えーwww証拠がありませんけどぉwwwひどくね?wwww」
DQN「つーかまず、誰があんなのに構うかってのwwwきめぇなwww」
( ФωФ)「いいからやれってんだ。殺すぞ」
DQN「……あ゛?」
- 70 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 21:12:59 ID:zx4nOZ.6O
- DQN「んだよ、ロマネスク」
( ФωФ)
顔が近い。
DQN「お前調子乗りすぎんなよ」
( ФωФ)
顔が近すぎる。だから。
DQN「あんまりナメてtt」
とっさに手が出た。
DQN「ぐぶづっ!!!」
DQNは盛大に鼻血を出して吹っ飛ぶ。
なんだ。弱い。弱すぎるよ。
こんなのが、人をいじめてたのかぁ。
女子「―――――キャアア!」
( ФωФ)「騒ぐなお前ら」
女子「―――!!!」
( ФωФ)「……生意気だなぁDQN。なんでそんな口が聴ける?DQNよォ」
そのワックスべたべたの髪の毛を掴み、DQNを引っ張りあげる。
DQN「あ゛ぁ!いだ、いだい……!!!」
ぶちぶちと、端から髪がちぎれる音。
なんか、楽しい。
( ФωФ)「もし俺が手を出したら、俺の大学へのスポーツ推薦が取り消されるからか?だから俺が手を出すはずがないと?」
( ФωФ)「ナメ腐ってくれてんなよ、オイ」
DQN「ヒッ……!!!」
- 71 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 21:29:46 ID:zx4nOZ.6O
- DQNはひどい顔だった。
いつものにへら顔は涙でぐじゃぐじゃ、腰パンはズレ落ちて青いトランクスが見えている。
その情けない姿を、クラス中に晒してやった。
( ФωФ)「まずは、ヒッキーに謝れよ」
DQN「……え」
( ФωФ)「ヒッキーにこの場で、土下座して謝れって」
DQN「……ううう」
( ФωФ)「早くしろってんだよ!」
DQN「あ゛ぁッ!」
2発目が出た。膝が綺麗に入った。
DQN「……ご、ごめんなさ……い……」
するとすぐに地べたに頭を擦り付けた。
よしよし、聞き分けの良い子は好きだ。
( ФωФ)「……さて」
( ФωФ)「ヒッキー」
(;-_-)「ひぃっ」
( ФωФ)「お前がやろうとしてたのは、こういう事なんだけど、わかってる?」
(;-_-)「……」
友人は怯えきった顔でこちらを見ていた。
ひっでぇな。まるで化物でも見てるかのようじゃないか。
- 72 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 21:40:01 ID:zx4nOZ.6O
-
( ФωФ)「友達だから忠告するよ、ヒッキー。たかだか先生にチクる事すら出ないお前が。自分の勇気がないのを周りのせいにして何も行動しないお前が」
( ФωФ)「いじめに向き合うなんて、簡単な事じゃない」
( ФωФ)「つまるところ、一人じゃお前は何もできないんだよ」
(;-_-)「……どうしたんだよ、ろま……お前なんかおかし……」
( ФωФ)「俺、死もうすぐぬんだ」
( ФωФ)「イキガミ、届いた」
(;-_-)「えっ!!?」
クラス中がざわめく。うるさいったらありゃしない。
( ФωФ)「今日の1時半、間違いなく死ぬ」
(;-_-)「そんな、お前……!!」
( ФωФ)「だからさ、昨日からずっと、最後の一日、何しようかって考えてた」
( ФωФ)「でも、これくらいしか浮かばんかった。クラスの皆もさ」
( ФωФ)「このクラスの問題を、見て見ぬフリだけはやめてくr」
爪;'ー`)y-「杉浦!!お前!!」
( ФωФ)
……時間か。もう少し色々、伝えたい事はあったんだけどな。
- 73 :名も無きAAのようです:2011/09/14(水) 22:01:33 ID:ahTWdN5.0
- 支援
- 74 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:01:33 ID:mKsKrKoc0
- 支援
- 75 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:16:23 ID:2VMSrzGoO
- 爪;'ー`)y-「何やってんだ馬鹿野郎が!!すぐDQNを離せ!それと―――」
先生が何かを言っているが、聞こえないフリをしよう。
それより、まずはヒッキーだ。
( ФωФ)「しのぐだけじゃダメだよ、ヒッキー。向き合わなきゃさ」
(;-_-)
( ФωФ)「これからお前人生たのしむんだろ。なら、変わろう。少しずつ」
( ФωФ)「口だけで自分を慰めるのはもうやめよう。俺がいなくても、お前は出来るよ」
(;-_-)
爪;'ー`)y-「おい……」
( ФωФ)「あと、クラスのみんな」
( ФωФ)「こんな事やっといてなんだけど、俺はやっぱりこのクラスが大好きだったよ」
爪;'ー`)y-
( ФωФ)「みんなと一緒に卒業できないのが心残りだけど、俺はこの学校にいられて良かった」
爪;'ー`)y-「……お前」
( ФωФ)「……じゃあね、みんな」
- 76 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:28:28 ID:2VMSrzGoO
- (-_-)
その後、「ろま」……杉浦ロマネスクはそのまま家に帰りました。
そして数日の後、彼の葬式が行われました。
多くの人が涙しました。
普段はあまり交友のないクラスメートも葬式に参列していました。
また、ろまの両親はそんな息子を「誇りだ」と言っていました。
ろまは、みんなから愛されるやつだったのです。
(-_-)
そして……それだけに、わかりません。
あいつが自分の最後の一日を使ってまで、僕に何を伝えたかったのか。
僕の何を変えようとしたのか。
あいつの最後の言葉の真意を、理解出来ていない気さえします。
僕は、あいつがいた時と変われているのでしょうか。
(-_-)「ろま……」
- 77 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:29:29 ID:mKsKrKoc0
- 支援
- 78 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:30:30 ID:3qLh4gD2O
- ロマネスク、お前…
泣けるシーンだ
支援
- 79 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:31:43 ID:2VMSrzGoO
-
―――――――
生徒が屋上に忍び込んだら、先生が怒る。
じゃあ先生が屋上に忍び込んだら、誰が怒ってくれんだろうな?
爪'ー`)y-
爪'ー`)y-「……いい風だな」
どうだった?ロマネスク
お前は納得して、天に逝けたのか?
爪'ー`)y-「……っち」
爪'ー`)y-「タバコ、ラス1だ。……しっかり味わうとすっか」
先生、お前に言ったよな?
「ノドが乾いてるやつがいたら井戸の堀り方を教えろ。腹が減ってるやつがいたら麦の植え方を教えろ」ってな。
あの話な、実は続きがあるんだ。
- 80 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:33:58 ID:2VMSrzGoO
-
頭がいいお前なら気付いてたかも知れないよな。
もし今の世界で、ホントに堀り方植え方を教え続けてりゃ
今頃飢えに苦しむ国なんか無いはずなんだよ。
じゃあなんで未だに南米なんかじゃガキどもが飢餓に苦しんでるか、知ってるか?
なんでって、むこうの国には文明御大層な「いたわる」って感情が無いんだ。
食料が来ても、大人がまずたらふく食う。
子供はその余りを貰うんだ。
だから両親は満腹、ガキが飢餓状態なんて事が日常なんだよ。
だが食料の量の問題じゃない。食料の量を増やしたところで、俺らへのアピール程度に井戸掘って麦植えてるあいつらは絶対に働かなくなる。
知ってるか?
植え方を教えても、堀り方を教えても、やつらはまともにやらないんだよ。
知能が無いんじゃない。たんに働くのが嫌なだけだ。
こちらが教えようとしてる事の有用性を理解せず、サボるんだよ。
あげくの果てには、その麦の種まで食べて「我々は飢えている。もっとよこせ」なんて抜かすんだ。
それを見て日本人は「発展途上国は可哀想」なんて抜かすんだ。
爪'ー`)y-「……どう思うよ?杉浦ロマネスク……」
お前のやってた事は、そういう事なんだぜ?
- 81 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:36:55 ID:2VMSrzGoO
- お前が必死にやってたのは、そういう事なんだよ、ロマネスク。
爪'ー`)y-「こんな事、教師は言っちゃいけないんだがな……」
今からは、俺の偏見な。
いじめるやつはクズだ。
んでもって、いじめられるやつはバカなんだ。
クズを矯正させようったって難しいし、バカを更正させようったってうまくいかない。
だからいじめって無くならないんだよ。
聞いた話じゃ、ヒッキーへのいじめは無くなってないらしいぞ。
いや、DQNではないらしい。
DQNはお前との一件以来、とても大人しくなったよ。
また別のやつが、いじめてるらしいんだ。
ヒッキーは、変わったのかな?
- 82 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:42:54 ID:2VMSrzGoO
-
爪'ー`)y-「でも、お前の死は無駄じゃなかった」
今まで気付けなかったいじめを、なんで俺は今回は知ってると思う?
とある女生徒がな、教えてくれたんだよ。
凄いと思うぜ?今まで怖くて黙認するしかなかったいじめってやつを、今回、その子は勇気もって伝えてくれたんだ。
それはな、お前のおかげだと思うんだ。
爪'ー`)y-「影響力、あったんだよお前……だから」
お前が一番思いをぶつけたヒッキーが、変わってないはずがないと思うんだ。
俺に確かめるすべはないけど、そう信じてるぜ。
- 83 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:47:45 ID:2VMSrzGoO
-
―――――――
( ´∀`)「しっかし……ねェ?なんか悲しいよねぇ」
( ^ω^)「何がですか?」
( ´∀`)「杉浦ロマネスク……あんな有能な子が死んでしまうなんて、って話だよ。確率ってのは無慈悲で、いやはや恐ろしい」
( ´∀`)「この世にゃ、もっと死ぬべき人間がいっぱいいるのに」
( ^ω^)「……そういう事は言うべきじゃないです」
( ´∀`)「なに?真実でしょ?」
( ^ω^)「真実でしょうが……それでも人の命は、尊重すべきでしょう」
- 84 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:51:50 ID:2VMSrzGoO
- ( ´∀`)「『人の命は尊重すべきですよ』ね」
( ´∀`)「勘違いしてるね」
( ^ω^)「……?」
( ´∀`)「いいかい、その言葉はね……君みたいなのが言う、『人命は尊重すべき』という言葉の『人命』とはね……つまるところ、自分の命なんだよ」
( ^ω^)「っ……」
( ´∀`)「大事にするのも尊重にするのも大切にするのも、結局は巡り巡って自分の命だよ」
( ´∀`)「自分の命が含まれてるからこそ、自分の命が一番にくるからこそ、君は命が大事だなんてほざくんだ」
( ^ω^)「でも……だからって命の不平等性をひけらかすのは、倫理的によくないですお……」
( ´∀`)「口癖」
( ^ω^)「……あ」
( ´∀`)「また語尾に『お』ってついてたよ」
( ^ω^)
( ´∀`)「……早く忘れなさいな」
( ^ω^)「……はい」
- 85 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:56:08 ID:2VMSrzGoO
-
( ^ω^)
なぁ、ツン。
「杉浦ロマネスクが死ぬくらいならば」と課長は言ったけど、僕は違うと思うんだ。
この親友にあたるヒッキー。
例えばこいつが死んでたら……どう変わったと思う?
僕はね、そこに差異は生じないとすら思うよ。
人は繋がり。
失う繋がりもまた一つあれど。
消える繋がりは、ないんだから。
( ^ω^)「……」
そしてな、ツン。
君との繋がりの果てに、僕は僕を台無しにしてる気分さえあるよ。
( ^ω^)
でも。
台無しだっていい。
それでも君との繋がりを、一辺たりとも忘れたくないから。
―――――――
- 86 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 01:59:23 ID:2VMSrzGoO
- 死亡予告証――――――――――――――
『( ФωФ)』
指名:杉浦ロマネスク
生年月日:12月17日
本籍:○○県ヒロユキ市7―9―12
住所―○○県ヒロユキ市7―9―12
死亡予定時刻:「PM1:30」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
第二話:「繋がりの果てに(ラストフルトラスト)」
終了。
- 87 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 02:17:38 ID:3qLh4gD2O
- 重い話だけど乙でした
ヒッキーのその後はやはり書かないほうが
いや、あそこで終わらす為には書けないかな
- 88 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 12:23:00 ID:mKsKrKoc0
- 乙
綺麗な終わり方じゃない所がいいな
次も期待してる
- 89 :名も無きAAのようです:2011/09/15(木) 15:35:14 ID:aGUXjY8w0
- やべぇ
ガチ泣きした
- 90 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 15:24:17 ID:8AuThKws0
- これってどんな感じにタヒんでる設定なのかな?
- 91 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 17:23:49 ID:5.JuDch.O
- >>90
詳しい描写は後々にしますが、小学校入学時に受ける予防注射の中、0.1%の注射器に混入している特殊なナノカプセルがあり
それが規定時刻が来ると心臓近くで破裂、そして心臓麻痺を引き起こします
その際、死にはまったく痛みを伴いません。
- 92 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 17:53:50 ID:5.JuDch.O
-
―――――――
( ^ν^)「死ぬのかぁ……あと24時間で」
( ^ν^)「……」
( ^ν^)「何すっかな」
数年前に国家繁栄維持法が施行され始めてから、真っ先にその効果の程が顕著に現れた部分がある。
それは、「NEET」と呼ばれる人種の消滅である。
NEETとは、Not in Education, Employment or Training, NEET(教育、労働、職業訓練のいずれにも参加していない状態)の略語であり、数年前の日本で大問題となった者達だ。
大人へと成り行く過渡期の中、リソース(環境)、モチベーション(自己活気)、パフォーマンス(実力)、etc……様々な要因に欠陥が生まれ
社会へのスタートを切れずに燻ってしまった数々の若者達が、これに陥ってしまった。
- 93 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 17:58:39 ID:5.JuDch.O
- しかし国繁法が生まれて以来、この命を限りあるものと実感出来た若者達は、こぞって生に対し懸命になった
皆がスタートラインに並び、皆がスタートダッシュを切ったのだ。
そのスタートさえ乗り遅れなければ、NEETと呼ばれる人種は生まれない。
結果として、このNEETはほぼ絶滅。
しかし、
( ^ν^)「……天罰みたいなもん、かな」
此度。その絶滅危惧種に、死神はやってきた。
その死神の名を、正しく言うならば。
( ^ν^)「死亡予告証……『イキガミ』……か。俺に死を渡すシニガミの名がイキガミ、ってのは……なかなかどうして皮肉が効いてるね」
さて、甚だ疑問だ。
―――――未来を見据えられない人間は、最後の一日をどう扱う?
- 94 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 18:00:54 ID:5.JuDch.O
-
―――――――
君が神様のごとし価値を見いだしていたものは、そうだな。
例えば君がたった一杯のコーヒーを飲んでいる間に
ただのゴミクズに変わっちゃうんだよ。
否定すんなよ。君も人間ならば、知ってるでしょ?
第三話:「形無し味方無し(フォームレスホームレス)」
対象者:速報ニュー
- 95 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 18:11:37 ID:WWSpEJJQO
- なにこれ支援。
- 96 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 18:22:28 ID:5.JuDch.O
- 未だにニートやってたらイキガミが届いたwwww
1:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 13:47:27 ID:nem2r6WsO
どうしようか
2:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 13:49:47 ID:ww62r25sP
うpしろよ
3:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 13:52:22 ID:hjnw258g0
はいはい国繁死の英雄様かっけー
4:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 13:55:27 ID:4M5nJPWMO
>>1
うp
デマなら国繁取締法でお縄だな
お疲れ
( ^ν^)「……」
まぁ、当たり前の流れだろう。
1000人に一人の低確率を引き当てたやつがさらにまた低確率な人種、ニートだなんて
誰も信じないだろう。
まぁそれはどっちでもいい。
どっちにしたって、事実だから。
( ^ν^)「……うぷろだは……まぁ、どこでもいいか」
10:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 13:58:66 ID:nem2r6WsO
これでいいのか?
h ttp//:○○××…….jp
皆は、どんな反応するだろう。
- 97 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 18:23:13 ID:5.JuDch.O
- ごめんなさい都合悪くなった
続きはまた後日……
- 98 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 18:42:55 ID:2Bo1xlgk0
- 都合なら仕方ないな
- 99 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 19:19:29 ID:S4rpEAcM0
- 生殺し状態…////
- 100 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 20:35:15 ID:qQnDCPHU0
- ぐはっ
これはキツイが楽しみに待ってる
- 101 :名も無きAAのようです:2011/09/18(日) 05:35:44 ID:aaj6GKMUO
- >>72
×死もうすぐぬ
○もうすぐ死ぬ
誤字が大変な事なっとる
- 102 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 05:55:01 ID:VJL9pu4UO
-
死亡予告証――――――――――――――
『( ^ν^)』
指名:速報ニュー
生年月日:8月13日
本籍:○○県ゆとり町7―2
住所:○○県ゆとり町7―2
死亡予定時刻:「PM1:40」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
俺に届いた死亡予告証。
それを今のID付きで貼り付ける。
名前が晒されるのも、死ぬのだから躊躇う必要もない。
( ^ν^)「……」
お、きたきた。
11:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 14:00:66 ID:rMM6p2Ws0
>>10
……え?
マジで?
12:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 14:02:00 ID:yyx2r6sBO
おい解析班急げ
もしかしたらマジで1000分の1を引いたVIPPERかも知れないぞ
―――――――
( ^ν^)「……」
増える。増える。
レスがどんどんついていく。
- 103 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:03:27 ID:VJL9pu4UO
- 13:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 14:02:08 ID:rn6emxkIO
>>10
これガチなやつじゃねえか……
俺の知り合いの友達が貰ってたやつと一緒……
14:名も無きVIPPERのようです
XX/0X/2X(月) 14:02:98 ID:k2C4rzz6zO
>>1はよく掲示板でも人を笑わせてくれるいいやつでした
死亡という事には甚だ遺憾ですが、これも国の為ならば心残り無く送り出せます。
テレビ用
―――――――
( ^ν^)「……『信じてくれた?マジなんだよ、ニートの方は証明のしようがないけど。俺も急な事でびっくりしたんで、とりあえずスレ建てたんだわ』……っと」
エンター。
さっきまでとは違う重みでクリックする。
数秒置いてF5を押せば、また言葉の波は押し寄せた。
『おお……なんか、うまく言えないけどとりあえず冥福を祈る』
『え?これガチ?釣りじゃないの?』
『国繁に関する法はキツイから、偽造だったら一瞬でタイーホされてるはずだろ。』
『マジなのか。でも死を間際にしてスレ立てって……どうなの』
『確かに。こんなスレ立てて、>>1は何がしたいんだ?』
( ^ν^)
( ^ν^)『それがわからないんだよ。死が決まって、今で30分ほどだろ?でも、何がしたいのかわからない』
( ^ν^)『残された時間で、何をすればいいのかわからないんだ』
- 104 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:08:06 ID:6pwLlA8.O
- こんな時間帯に…
支援だ
- 105 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:10:42 ID:VJL9pu4UO
- 『なんでだよ。世話になった人とか、いるだろ?その人に感謝述べたりとかは……』
( ^ν^)『ニートだからなぁ……パッと浮かばんわ』
『ざまぁwwwはよ死ねニートwww』
( ^ν^)『あと23時間だけ待ってね』
『じゃあ養ってくれてる親になんかしろよ』
( ^ν^)『ババァに……なぁ。父親死んで、一人で俺を養ってくれてんだよな。確かに、そうかも』
『死ぬ前……俺なら童貞捨てるかなぁ。レイプしてでも』
『死亡予告証対象者が犯罪犯したら、国繁遺族年金が支払われなくなるんだろ?それだけは嫌だわ』
( ^ν^)『性欲はないんだよなぁ、なんか』
『つーかまずさ、ニューよ。なんでこんなご時世にニートなんかやってんだ?』
( ^ν^)『知らない人から名前で呼ばれんのってなんか恥ずいな』
( ^ν^)『いいよ、話す事にするわ。今までの事から、イキガミを貰うまで』
( ^ν^)『俺の人生の全てを』
- 106 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:18:31 ID:VJL9pu4UO
- 『wktk』
『手短に話せよ。ホントならお前の大事な時間を奪ってまでやるこっちゃ無いんだから』
( ^ν^)『なんだこのスレ。皆、異様に優しいんだな。やっぱガチな死は効くものがあるのか……』
( ^ν^)『まず、小学生の頃まではすっ飛ばすわ。フツーの子だったからな。お前らと同じで軽くハブられかけだがまだ輪には入れてた感じのな。で、中学生から』
( ^ν^)『俺は、イジメにあったんだ』
―――――――
イジメも、お前らが思ってる感じのやつな。
明らかな無茶振りをされたり、芸をやらされる程度だ。
後は物が無くなったりとか。
で、俺にはすぐ限界が来た。
イジメをなんとかやめさせたかったんだ。
そんで浮かんだ……ってか、よく聞く解決策があったんだよ。
簡単だよ。『反抗する』だけ。
俺は生まれて初めて心から勇気を出して
イジメっこに立ち向かったんだよ。
……カッターナイフを持って、な。
それがいけなかった。
- 107 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:25:21 ID:VJL9pu4UO
- 暴れたんだよ。
暴れ散らしたら、イジメっこもビビってやめるだろうと思ってさ。
当てる気は無かった。
俺は、ビビりだもの。
でもなぁ、向こうはガードしたかったのか、手を前に出してきてな。
次の瞬間、今でも忘れない、あの感触さ。
『ざぐりっ』、ってな。
カッターナイフ、なめちゃいけないな。
そのイジメっこの手首の健を、思いっきりぐちゃぐちゃにしたらしい。
先生がすぐに来た。
俺はかなり強引に引っ張られた。
でも俺も状況が状況だし、混乱しながら半狂乱になってるんだわ。
あろう事か先生にまでカッターナイフを振り回した。
当時の俺にとっちゃ生憎、今の俺にとっちゃ幸いだが
先生は薄皮一枚切ったレベルで済み
俺はカッターナイフを叩きおとされて……
そっからはよく覚えてない。
気づいたら生活指導部で延々と教師と話してた気がする。
- 108 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:32:20 ID:VJL9pu4UO
- イジメっこは仮にも野球部の、それなりに有望なやつだったんだ。
でも、俺のせいで野球を続けられなくなったらしい。
しかし俺がイジメられていたと言う事実が判明して、生活指導も何を加味してくれたのか
俺は謹慎だけで済んだんだ。
ずっと家で罪悪感に飲まれ続けたよ。
憎んでるやつとは言え、人一人の人生を奪ったんだから。
そいつの親もうちに来た。
最初のうちはその親もイジメに関してひたすら謝っていたが
最終的には、俺のカーチャンがその親に土下座していた。
もう、ホントに死にたかった。
何よりカーチャンに申し訳なくてな。
……で、謹慎で自宅待機してた。
浮かばない反省文の続き。
誰も自分を邪魔をしない部屋の中。
いろんな条件が揃ってな、俺はすぐ浮かんだよ。
『あれ、部屋の中がこんなに楽なら、このままでよくね?』って。
- 109 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:40:27 ID:VJL9pu4UO
-
『いやその理屈はry』
『いや確かにそうだろうが……なんか違うだろ。逃げてるだけじゃねーか』
( ^ν^)『今にしてもおかしいと思うよ。だが、体が楽を覚えちまってな。今や、カーチャンへの罪悪感なんか無くなってるよ』
『はよ死ね糞ニート』
( ^ν^)『だからあと23時間待てよ』
『お前がニートになるのをカーチャンは認めたのか?』
( ^ν^)『認めたっていうか……なぁ』
―――――――
最初はそりゃあ部屋に喋りかけてきたよ。
J( 'ー`)し「ニュー、学校は?いかないの?」
( ^ν^)「……行きたくない」
J( 'ー`)し「……そう。まだ心が重いのね」
J( 'ー`)し「でも安心してね、カーチャンは、いつまでも味方だから。あんたが大丈夫と思えた時、また学校に行けばいいよ」
母は誰より俺の事を考えてくれて、心地よかった。
そのぬるま湯を、俺は手放したくなかったんだと思う。
―――――――
( ^ν^)『それが今……まぁ俺は24なんだが、今まで続いてる、と』
『甘えだな』
( ^ν^)『俺もそう思うよ』
( ^ν^)『そして、今日が来た』
- 110 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:46:41 ID:VJL9pu4UO
- ―――――――
J( 'ー`)し『ニュー。ニューよ』
ドア越しに、カーチャンの声が聞こえてきたんだ。
確か、VIPの糞スレでも見て笑ってた頃だったかな。
( ^ν^)『うっせぇな。なんだよ糞ババァ』
J( 'ー`)し『……あなたにお客さんよ』
( ^ν^)『は?お前が処理しとけよバカじゃねーの?話しかけてくんなよ』
J( 'ー`)し『……』
そして数分後だ。
J( 'ー`)し『……ニュー』
ドア越しでもわかるくらい、カーチャンの声は震えてたんだ。
だから、ちょっと違和感は感じてたよ。
( ^ν^)『あ?また?今度はなに?』
J( 'ー`)し『……あんたに渡すものがあるの。ドア、開けて頂戴』
( ^ν^)『は、なに?金?』
J( 'ー`)し『……違う』
( ^ν^)『んだよキモいな。じゃあ知らねーよお前が勝手にやってろよ。なんでもいいから俺にやらすなってんだ』
J( 'ー`)し『……じゃあドアの下から入れるから。必ず見といてね』
そんでさ、俺のドアの下から何かが入ってきたんだよ。
それがさっきお前らに見せたやつ。
イキガミ、だよ。
- 111 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:54:14 ID:VJL9pu4UO
- (;^ν^)『……は?』
びっくりした。
びっくりって言葉が軽く感じるくらいびっくりした。
(;^ν^)『おいババァ!!おい!!』
ドアを開けずに叫んだよ。
今思えば、こんな時まで引きこもってる自分が恥ずかしい。
J( 'ー`)し『……なに?』
(;^ν^)『ほ……ホンモノか、これ?』
意味のない確認だ。ホントはわかってる。
人の死を扱うこのイキガミに、偽造されたモノなんかあるわけないって事に。
J( 'ー`)し『……ホンモノね』
(;^ν^)『……おい、どういう事だよ……なんだよ!!』
(;^ν^)『どうにかしろよババァ!!早く!どうにかしろ!!』
J( 'ー`)し『……無理ね』
(;^ν^)『あああああ!!!使えねーな糞が!!もういい消えろ早く!!』
謎のストレスがのし掛かってかて、思わずドアを全力で蹴ったよ。
その反動は、いつもより足が痛く感じた。
- 112 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 06:57:59 ID:6pwLlA8.O
- ④
- 113 :名も無きAAのようです:2011/09/20(火) 11:53:25 ID:9xj.Z6/s0
- きてたのか
- 114 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 02:13:30 ID:Dj4H6hgw0
- とっかかりがまたイジメってのがなー
- 115 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 07:34:52 ID:JpxEJ6ucO
-
『カーチャン……(´;ω;`)ウッ』
『母親は悪かねーだろ。何当たってんだよゆとり』
( ^ν^)『んな事言ってもなぁ……切羽詰まってたもんだから』
『で、今は落ち着いて、カーチャンに謝りたいとでも思ってんの?』
( ^ν^)『うん、あ、いやぁ……んん?なんか違うかな。謝りたいとかは別に……』
『死ね』
( ^ν^)『違うよ。違うんだよ。そりゃ、罪悪感とかはあるよ?でもなんかなぁ……』
『わけわからん。ニートの甘えだろそれ』
( ^ν^)「ううん……うん。多分そうなんだろうね。よくわからん」
『俺、>>1の気持ちわかるかも。』
( ^ν^)「お?」
( ^ν^)『どゆこと?』
『要するにさ、カーチャンへの気持ちが曖昧なんだろ?こっちがどんな対応しようが、お前にずっと優しくしてくれたカーチャンに、お前はどんな感情で持って向き合っていいかわからなくなってんだろ』
( ^ν^)『……』
『そりゃあ何したって尽くしてくれんだから、こっちが何するかなんか考えなくていいし楽だわな。だけど、それって良い事なのかな』
( ^ν^)『……良い事ではない事はわかるよ。でもな、どうしたらいい』
『じゃあ、向き合え。恥ずかしいだろうが、最後の一日だろ』
( ^ν^)
- 116 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 07:40:18 ID:KQHf6hss0
- 朝から支援!
- 117 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 07:46:37 ID:JpxEJ6ucO
- ( ^ν^)『向き合うって、何さ』
『とりあえず部屋から出て、カーチャンと喋れ。なんでもいい。とりあえず他愛ない話でいい』
『で、話が途切れたら、感謝を伝えろ。今までありがとう、って』
( ^ν^)『……』
『そっから次は、いじめっ子のとこに行け』
(;^ν^)『…………え?はぁ?』
『まずは、謝れ。あの時は悪かった、ってな。自分のせいで、とは言わなくていいから』
(;^ν^)『……いや、いやいやいや。コミュ障の俺にそんな事……』
『最後の一日だろ』
(;^ν^)『最後の一日だからこそだよ!なんで貴重な時間をそんな憎ったらしいやつの為に使わなきゃいけねーんだよ!』
『貴重な時間、ってなんだよ?』
『お前はその時間を、貴重に使えんのか?何をするんだよ、その貴重な時間とやらで』
(;^ν^)
『いいか、ニュー。お前は今から、嫌が応にも『未来』が無くなる。これから真っ当に生きていこうったって、もう出来ないんだよ』
『ならば、過去を真っ当にしていくところから始めればいいんじゃないのか?』
(;^ν^)
( ^ν^)
『マジレスすまん。けど、俺の友人の一人もイキガミで名誉の死を受けたんだ』
『周りのやつはそれを名誉だと例えたけど、本人は最後の一秒まで言ってたよ』
『死にたくない、って』
( ^ν^)
- 118 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 08:14:15 ID:JpxEJ6ucO
- 『綺麗事だけど、ない未来は作れないんだよ。なら、あった過去を取り繕えよ』
( ^ν^)『……うん』
『それがお前が、真っ当に生きた証になると思う』
( ^ν^)『……初めてだよ。ここまで綺麗に論破されたの。なんか清々しいわ』
『良かったなお前。負ける喜びも知れて』
『なんかわろたwwww』
( ^ν^)『そうだな。俺も人生頑張らなきゃだ。もう頑張れないが、ラスト一日くらい変えてみるか』
( ^ν^)『今からカーチャンと向き合ってくる。んで、次はいじめっこと。そっからは……街をぶらついたり、昔の友達に会いにいったりするかな』
( ^ν^)『それをずっとここに実況する事にしよう。それが俺が生きた証の一つになればいいな。暇なやつはその証人になって欲しい』
そう打って、力強く押したエンターキー。
( ^ν^)
名残惜しそうに数秒貯めてから、ようやく指を離す。
そしてすぐに、F5ボタン。
『おk、頑張れ』
『頑張れニュー。なんか胸が熱くなってきた……』
『もしかしたら俺は歴史の一瞬に立ち会ってるのかも知れない……応援してるよニュー!』
( ^ν^)『ありがとう。そして……』
( ^ν^)『ついでに死に場所も、予告しとくわ』
- 119 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 08:24:23 ID:JpxEJ6ucO
-
( ^ν^)『明日、ゴールとして俺は都内の鬼女公園に1時に行く。そしてそのまま死ぬ事にする』
( ^ν^)『明日暇なやつがいたら、見届けてくれたら嬉しいな。別に、死体見たさに来てくれてもいいから』
( ^ν^)『それが俺の生きた証、その2だ』
『行くわ!そしたら直接、話を聞かせろよ!』
『よし、もしお前がちゃんとカーチャンといじめっこに話をつけられたら行く!頑張れ』
『そうやって俺らが集まった事がニュースになり、生きた証その3が生まれるのか。胸熱』
( ^ν^)
( ^ν^)『ありがとう、みんな』
( ^ν^)『じゃあまず、カーチャンと話してくる』
『いけ!ニュー!』
『遅れた脱ニートだ!明日から働くって行ってこい!』
『それはねーよwww』
( ^ν^)『wwwwいやまぁ、ちゃんと感謝をのべてきますよ』
そのレスを最後に、ニューはパソコンを付けたまま席を立った。
自分を繋ぎ止めていた堰を断った。
今まで負ってきた責を、断った。
明日の価値を見出だせないその男は、
明日の価値を見出だす為に、今日を使う事にした。
- 120 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 08:41:13 ID:KQHf6hss0
- 上手くいくといいな…
- 121 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 13:27:39 ID:JpxEJ6ucO
- ドアは、重たかった。
頭の中で一日の予定を反芻しながら、一捻り。
行くは、一階へ。
( ^ν^)
:J( ー )し:「……」
母はリビングで、小さく震えていた。
その背中はみすぼらしくて、見ていられなかった。
( ^ν^)「なぁ……母さん」
J( 'ー`)し「……あら、ニュー。気分は?」
( ^ν^)「なんともないよ」
J( 'ー`)し「そうかい。お出かけ?」
( ^ν^)「……いや」
母さんに話が会って、と。
そう言おうとしたけど、なかなか口に出ない。
J( 'ー`)し「?」
( ^ν^)「……いや、あの」
J( 'ー`)し「なに?」
( ^ν^)「……なんでもない」
畜生。何してんだ俺。
変わるんだろうが。
最後までこんなんで、どうする。
後回しにする未来はもうないんだぞ。
- 122 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 13:33:23 ID:JpxEJ6ucO
-
J( 'ー`)し「……」
そんな俺を見て、母は力無く近寄ってくる。
( ^ν^)「……」
J( 'ー`)し「いつからか、まぁ」
そして、俺の体の大きさを確かめるよいに、肩をさする。
J( 'ー`)し「こぉーんなに、大きくなっちゃって……」
J( 'ー`)し「昔は死んだ父さんを目指して、『ぼくは消防士さんになる!』ってのが口癖だったちびっこがねぇ」
( ^ν^)「母さん、あの」
今だ。今言え、ニュー。
(;^ν^)「今まで……引きこもってて……その…ごめん……」
違う。ちがうんだよ。謝るんじゃない。
ごめんじゃないんだ。言うべきは、ありがとうだろう。
J( 'ー`)し「いいのよ」
しかし母は、優しくそう言ってくれた。
- 123 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 15:08:43 ID:RSj3XQw20
- しえ
- 124 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 19:26:22 ID:JpxEJ6ucO
-
J( 'ー`)し「どうせ今から動かなくなるんだし」
そうやって肌を這わせるように、突然母は俺の首に手を―――――
(;゚ν゚)「かっ――――!!!?」
首を、絞めあげてきた。
J( 'ー`)し「ごめんねニュー。今まであんたただのゴミだと見くびっていたけど」
J( 'ー`)し「やっぱり違ったわ。あなたはちゃーんと、お金のなる木だったわ」
(;゚ν゚)「―――!!!??――!!!――あ゛っ!!!はぁっ!!」
なんで。母さん。どうして。
やめて。苦しい。助けて。
痛い。辛い。怖い。嫌だ。
声にしたいけど、声は出ない。
(;゚ν゚)「―――――」
J( 'ー`)し「いつまでもクズのままだから……そろそろ処分しちゃおうかな、なんて思ってたら、最後の最後で国繁年金ですって」
J( 'ー`)し「ありがとうねニュー。これでカーチャン、大金持ちよ」
(;゚ν゚)「……!!」
待って。
待ってくれよ。
お母さん?
- 125 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 19:40:48 ID:JpxEJ6ucO
- J( 'ー`)し「ふふふ……」
笑っている。いつもの顔で。
『肩を震わせながら』、笑っている。
首から手は離れない。
自分がどれほど力をこめても、少し力が緩むだけで、その手は離れない。
本気で殺す気なんだ。母は。
(;゚ν゚)「ざけ…な……離せ……離せ……よっ……!!」
J( 'ー`)し「あら、あなた、毎日のように私に『ぶっ殺すぞ』って言ってたじゃない。そんな見下してた私に、力ですら勝てないの?」
J( 'ー`)し「20過ぎの男が、40後半を迎えた女に力負けしちゃうの?笑えちゃう(笑)」
(;゚ν゚)
J( 'ー`)し「ありがたい話よね、国繁死ってのは。その名誉死性からか、死体検証をまったく行わない。だからこんな細い女が首を絞めた後なんか、見つかるわけないしね」
J( 'ー`)し「あなたは死はただの国繁死扱い、ってわけよ。だから、大人しく死んでくれたら嬉しいな」
(;゚ν゚)「な……ん、で……」
なぜ殺す必要がある。
ほっといたって、俺は23時間後には死ぬんだ。
なぜこの母は、今になって俺を殺そうとする?
J( 'ー`)し「それくらいわからないかな、ニュー?」
J( 'ー`)し「あんたが痛みなく名誉死扱いなんて気にくわないからよ」
(;゚ν )
- 126 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 19:47:54 ID:JpxEJ6ucO
-
(; ν )「俺はっ!あんた…ッ…の……息子……だろうが…………」
J( 'ー`)し「大丈夫、あなたは今から息をしなくなるからね。文字通り、息する子……『息子』じゃなくなるわ。なーんて(笑)」
(; ν )「……」
J( 'ー`)し「……つーかね、あんた、バカじゃない?母親は何があっても子を愛すって言いたいの?んなわけないじゃない」
J( 'ー`)し「それはただ単に母親の仕事の一つが、『息子に、いつも家族に優しいと思わせたり、いつも自分を愛してるんだって勘違いさせる事なんだってだけよ』」
( ^^)
- 127 :( ^ν←これ抜けた^):2011/09/22(木) 20:11:34 ID:JpxEJ6ucO
- J( 'ー`)し「何よ『母さん』って。最後の一日になって、いきなりキモいわよ」
( ^ν^)
J( 'ー`)し「最後の一日でいきなり頑張って報われようったって、そんなムシのいい話があるわけないでしょ」
( ^ν^)
J( 'ー`)し「……死んだか」
J( 'ー`)し「さよならニューちゃん。そしてあなたの甘ったれた人生に、お疲れさま」
- 128 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 20:22:40 ID:KQHf6hss0
- oh…
- 129 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 20:32:54 ID:v0GZ4Jng0
- 因果応報ってやつだな
- 130 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 20:50:29 ID:JpxEJ6ucO
-
『なぁ、結局速報ニューって釣りだったの?』
『いや、アレが釣りなら捕まってニュースにでもなってるだろ……イキガミ偽造とか、重罪だぞ』
『でも結局、鬼女公園には誰もいなかったしな。他にいったやついる?』
『お前ら知らないの?国繁は実は某国のテロ運動なんだぜ!その情報が漏れるかも知れないから規制されたんだよ!』
『まぁいきなり音信不通ってのは怖いよなぁ……』
そんな話題も数日後には、政治家の暴言や芸能人の離婚といった話題にかきけされていた。
うまく行けば書籍化されたかも知れない、ドラマのようなあるニートの最後の一日は
まとめブログにすら乗らず、情報の山に埋もれていった。
―――――――
( ^ω^)「……いまだにあんなやつ、いたんだなぁ」
この世界は、生き易い。
でも人生は、息苦しい。
それが最後までわからなかったであろう男、ニートの速報ニュー。
あまり同情の念が出てこないのは、僕が
それとも心のどこかで彼を見下してたからか。
( ^ω^)「……」
本音が漏れる場所、2ちゃんねる。
ふいに思いつき、そこにスレを立ててみた。
『お前ら、明日死ぬとしたらどうする?』
( ^ω^)
すぐさま返ってきた答えは、こうだった。
『そんな事より好きなラーメンの話しようぜ!!』
- 131 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 20:52:55 ID:JpxEJ6ucO
- 死亡予告証――――――――――――――
『( ^ν^)』
指名:速報ニュー
生年月日:8月13日
本籍:○○県ゆとり町7―2
住所:○○県ゆとり町7―2
死亡予定時刻:「PM1:40」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
第三話:「形無し味方無し(フォームレスホームレス)」
終了。
- 132 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 21:08:59 ID:wc.tvT4g0
- マジかよ
- 133 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 21:35:31 ID:48D135Pk0
- 予想外すぎたが面白かった
- 134 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 21:49:25 ID:0fH6uZLk0
- 乙
こういう展開はキツイな
IFバージョンとか見たいわ
- 135 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 22:59:20 ID:xSgto.Po0
- マジか……
結構キツいな
乙
- 136 :名も無きAAのようです:2011/09/22(木) 23:17:21 ID:GCy0eTDA0
- 乙
救われないな
- 137 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 00:41:57 ID:W6B/Ue5UO
- 結末予想外だった
あと状況はニュくんとは違うけど
死、2ちゃんねるでガンバリストの話思いだした
- 138 :名も無きAAのようです:2011/09/27(火) 05:57:33 ID:qASgjoIAO
- 都内。
欲と欲がぶつかりあう夜の街、「ビッチ町」。
そのの駅前に見えるこじんまりしたバー、「バーボンハウス」
(´・ω・`)「いらっしゃいませ」
そここそが、僕、真弓ショボンの築き上げた城だった。
高校を卒業後、バーでバイトしていた経験を生かし
紆余曲折と努力を経て、僕は自分の店を持つようにまで至った。
ちなみにこの「バーボンハウス」という名前には、あまり意味はない。
「ショボンがやってるバー」……それを兄貴が「バー・ショボン」さらに「バーボン」と略したまでの話だ。
……そう言えばそろそろ、その兄が登場する時間帯だ。
僕の兄は、この夜の街を闊歩する男。
今日もどうせ、そこらへんのお高いホステスなんかを連れてくるのだろう。
「いいからいいから!ちょっと顔出すだけだってんだ」
(´・ω・`)(……ほら)
兄貴の声だ。
- 139 :名も無きAAのようです:2011/09/27(火) 06:03:06 ID:qASgjoIAO
-
「別にそのまま家もよってけなんて事ァねーよ!ここでシメーだからよ!」
(´・ω・`)
また女でも口説いてるんだろう。
そして酔わせて食っていくつもりだろう。
まったく……あの兄貴だけは、悪い意味でしっかりしている。
「ちょ、まって下さいお……僕、お酒あんま飲めないし……」
(´・ω・`)
……ん?男の声?
(`・ω・´)「おいすー!来たぞショボーン!」
(;^ω^)「ちょ、だから僕は……」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「やぁ、ようこそ兄貴。貴方がそっちにも目覚めたとはね」
(`・ω・´)「違ェよ。この人は、俺の死神さ」
(´・ω・`)「え?」
- 140 :名も無きAAのようです:2011/09/27(火) 06:04:40 ID:qASgjoIAO
-
(`・ω・´)「俺、死ぬらしいわ」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「え」
(`・ω・´)「明日の午前1時にな」
(`・ω・´)「イキガミ、届いちまった」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「……そうかい」
- 141 :名も無きAAのようです:2011/09/27(火) 06:09:12 ID:qASgjoIAO
-
―――――――
神様達は俺ら人間をコマとした人生ゲームで遊んでいるのさ。神様がふったサイコロで、俺らの人生は決められる。
それだけなら平等なんだがなぁ……
……神様は、平気でイカサマをするから。
第四話:「即席の最大幸福(ハリーヘヴンスリーセブン)」
- 142 :ミスった:2011/09/27(火) 06:11:48 ID:qASgjoIAO
- ―――――――
神様達は俺ら人間をコマとした人生ゲームで遊んでいるのさ。神様がふったサイコロで、俺らの人生は決められる。
それだけなら平等なんだがなぁ……
……神様は、平気でイカサマをするから。
第四話:「即席の最大幸福(ハリーヘヴンスリーセブン)」
対象者:真弓シャキン
- 143 :名も無きAAのようです:2011/09/27(火) 17:55:32 ID:NbiERe2.0
- 支援
- 144 :名も無きAAのようです:2011/09/27(火) 21:04:00 ID:0fW/zIn2O
- これは楽しみ
支援
- 145 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 21:52:52 ID:n/thVli2O
- ―――――――数時間前。
(`・ω・´)「そうか……俺、死ぬのか」
( ^ω^)「はい」
( ^ω^)「そこに書かれている通りです、真弓シャキンさん」
(`・ω・´)「……」
びっくり。
自分が国繁死ってのは、まさかだな。
あと24時間ちょっとで死ぬというのに、浮かんできたコメントはこれだけだった。
というよりむしろ、感心も大きい。
( ^ω^)「他にご質問等は?」
(`・ω・´)「……内藤さんとやら」
( ^ω^)「はい?」
(`・ω・´)「この俺の最後の一日は、尊重されて然るべきなんだよな?」
( ^ω^)「え……あ、はい。もちろんです。ですから死亡予告証はその一日を出来るだけ不自由なく過ごせるようにと配慮されているものですが」
- 146 :名も無きAAのようです:2011/09/28(水) 21:59:09 ID:n/thVli2O
- (`・ω・´)「つまりそれに殉ずる貴方も、もちろん俺の一日を尊重してくれているわけだ」
( ^ω^)「……?はい、もちろんそうですが……?」
(`・ω・´)
にやり。
そんな擬音が生まれそうなくらい、分かりやすくにやついた。
(`・ω・´)「じゃあよ、決まりだな内藤さん」
( ^ω^)「……?」
(`・ω・´)「俺の最後の一日に付き合ってくれよ!いいバー知ってるんだわ。ちょっくら飲みに行こうぜ」
( ^ω^)
(;^ω^)「……はい?」
(`・ω・´)「よし、決まりだな!さぁ行こう!早くしねーと俺が死んじまうぜ!」
(;^ω^)「え?ちょ、待って下さい。僕も仕事中で……」
(`・ω・´)
(`・ω・´)「……これから華々しい未来を送るはずだった24歳の、文字通り命懸けの仕事をあなたは断r」
(;^ω^)「ごめんなさい!わかりました!わかりましたから!」
- 147 :仕事→頼み事の方が日本語が自然かな:2011/09/28(水) 22:36:09 ID:n/thVli2O
-
―――――――
(´・ω・`)「なるほどね。いやはや、嫌なやつに目をつけられましたね内藤さん」
(;^ω^)「お……いや、でも私も楽しいっちゃ楽しいからいいんですが」
(`・ω・´)「そうだな。それにショボン。嫌なもんに目をつけられちまってるのは俺だぜ?1000人に1人から選ばれちまったわけだし」
(;´・ω・`)「……ああ、うん、確かに」
(;^ω^)「……」
笑えない。
死が絡んでるばかりに、まったく笑えないジョークだ。
(`・ω・´)「もうちっと人生楽しむはずだったんだがな。俺は先におさらばさ」
(´・ω・`)「うん。常連が一人減ると思うと寂しいね。まぁこういう店に騒がしさを持ち込む常連なんか、早々に消えりゃいいとは思ってたけど」
(`・ω・´)「キツいな。涙ぐみながら『どうして兄さんが……!!』とか言えばいいのに」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)(……なんか、おかしいな)
そう思った。
僕は今までいろんな死に直面した。
その中で一番処理に困るのは、案外にも「家族」だ。
大抵の当人は死を受け入れる事に抵抗はないが、家族は違う。
どれだけ仲が悪くとも、やはり最後には失うものの大きさを、寸前まで悔やみ続ける。
それが繋がりを持った人間というものだからだ。
なのに、この兄弟。
( ^ω^)(……妙にサバサバしすぎだお)
- 148 :名も無きAAのようです:2011/10/03(月) 22:58:57 ID:c6rLNZtA0
- 続き気になるお
- 149 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 10:39:57 ID:A5NkyfHwO
- (´・ω・`)「なんか腑に落ちない顔してますね、内藤さん」
( ^ω^)
(´・ω・`)「身内が死ぬのに、なんでそんな落ち着いてられるのか、ってとこですか」
( ^ω^)「……はい、まぁ」
(`・ω・´)「お、内藤さんなんだ、そんな事で悩んでたのか!聞きたいなら聞けばいいぞ」
(`・ω・´)「なんせ死人に口無し、もうすぐ喋れなくなるわけだし」
用途が違う上に笑えない。
わかったこの人、確信犯だ。
(`・ω・´)「ちょっとな、俺の夢は特殊でな。あんまり家族から理解を得れてないわけだわ」
(´・ω・`)「かっこいい言い方すんなよ。いい歳してろくに職もないもんだから家族から見放されてるだけだろ」
(`・ω・´)「おいみなまで言うなおい」
( ^ω^)「……え、失礼ですが……無職……?」
(`・ω・´)「ちげーよ。一応、職にはついてるさ」
( ^ω^)「?」
- 150 :名も無きAAのようです:2011/10/12(水) 10:46:36 ID:A5NkyfHwO
- (`・ω・´)「というかまぁ、職業というよりは、生きざまみたいなもんだけど」
( ^ω^)「……?ますます意味が……」
(´・ω・`)「かっこつけないの。ホントにもう……」
(`・ω・´)「あぁ」
(`・ω・´)「俺、ギャンブラーなんだわ」
( ^ω^)
(`・ω・´)「博打で生計立ててんの」
( ^ω^)
(;^ω^)「……はい?」
(´・ω・`)「こんなんだから、家族から見放されてんですよ。わかるでしょ?」
(;^ω^)「……え、あ……ホントに?まじで?」
(`・ω・´)「まじだ」
(;^ω^)「まじか……」
いやはや、これは驚いた。
今のご時世に、そんな波乱万丈な人生を選んでいる人間がいたとは。
- 151 :名も無きAAのようです:2011/10/15(土) 09:32:40 ID:vi2fcCakO
- (`・ω・´)「わはは。やっぱりあんたもそんな反応すんのか。みんな同じだ、そうやって驚きと呆れを混ぜたような」
( ^ω^)「いや、え、その……失礼ですが……成立…してるのですか?それで……生活が」
(`・ω・´)「してるよ。だからこうして今あんたに酒をおごってるんじゃないか。俺をそこいらのギャンブラーと一緒にすんなよ」
( ^ω^)「……ですが」
にわかに信じられません。
そう言いつつホントは全く信じられていないのだが、ここまで胸を張って言われては少し引ける。
第一、ホントにそんなふざけた生計の立て方が成立するのなら、今頃パチンコ屋は丸つぶれだろう。
(`・ω・´)「キモの部分から言えばな、俺は、ギャンブルの『常勝』の方法を知っているんだよ」
毅然としたまま彼はそう答えた。
ギャンブルなのに、常勝。
そんな矛盾を前提としたまま、彼は話を勧めた。
- 152 :名も無きAAのようです:2011/10/15(土) 14:46:47 ID:jb8eJOSw0
- おっ、続ききた?
- 153 :名も無きAAのようです:2011/10/15(土) 15:57:40 ID:L1Fc.RC.0
- 焦らしすぎだろwwww
- 154 :名も無きAAのようです:2011/10/19(水) 07:50:07 ID:0u2lR0HUO
- (`・ω・´)「『常勝』の法だよ、常勝の。何もどこぞによくある『必勝』の法を知っているわけじゃない」
( ^ω^)「……はぁ」
(´ーω-`)「……」
ショボンさんは無言でグラスを磨いていた。
もしかすれば、聞きあきているのだろうか。
(`・ω・´)「ギャンブルってぇのは非常に良く出来たシステムでな。簡単に言えば馬鹿は必ず最後は泥沼に入る仕組みになってる」
( ^ω^)「よく聞く話ですね。特にパチンコやスロットなんかには……」
(`・ω・´)「そうさ、パチンコやスロットなんかが一番わかりやすいな。あれはひどいもんさ」
(`・ω・´)「パチンコ屋の怖いところは、毎日いけるってとこにある。これが一番危ないんだな」
(`・ω・´)「継続ってのは良くも悪くも人間に多大な効果を及ぼすってこと」
( ^ω^)「……」
(`・ω・´)「話がそれた。じゃあなぜ多くの人はギャンブルに負けるかって話からだな」
- 155 :名も無きAAのようです:2011/10/19(水) 08:05:30 ID:0u2lR0HUO
- (`・ω・´)「『コントロール幻想』って言葉は知ってるか?」
( ^ω^)「いえ……あまり学はないもので」
(`・ω・´)「心理学用語だったかな。簡単に言えば、人間にゃ往々にして『自分だけは特別』『俺なら大丈夫』だって心理があるのよ」
( ^ω^)「……へぇ」
(`・ω・´)「ギャンブルをする人間はまずこれに支配される。レアな当たりを引いた、少ない投資で勝てた。勝った事実が裏付けだとこじつけるようにしてな」
(`・ω・´)「思い上がりも甚だしいもんさ。そうなると、ギャンブルの本質を忘れ出す」
( ^ω^)「……本質?」
(`・ω・´)「あぁ」
(`・ω・´)「『財布には上限があるが、欲には上限はない』って事」
( ^ω^)「……あー」
(`・ω・´)「『勝ちたい金額』を設定しながら勝負やるやつなんていねえだろ。だが、『払える金額』は最初から設定されてある。自分の財布の中身なんだからな」
(`・ω・´)「2万円出して2万5000円返ってくるものを、1万しか出せずそのまま飲まれる、みたいなな」
(`・ω・´)「もっとも、例えの話だが」
( ^ω^)「……じゃああなたの常勝法とは?」
- 156 :名も無きAAのようです:2011/10/19(水) 08:16:23 ID:0u2lR0HUO
- (`・ω・´)「急かすなぁ。まず俺はな、単純に儲けるなら、さっき上げたパチンコやスロットが一番良いと思う。」
( ^ω^)「はい?それはまた……」
(`・ω・´)「競馬や競輪はイヤなんだ」
(`・ω・´)「信じる相手が『生物』だからな」
( ^ω^)
(`・ω・´)「生物は所詮生物。不調もありゃ奇跡もある。デリケートなんだよ、『運』ってのが。」
( ^ω^)「なるほど。でもパチスロは」
(`・ω・´)「ああ、機械なんだよ。よっぽど信頼における」
(`・ω・´)「生物じゃなく、機械。そうすれば『運』という莫大すぎる可能性は、『確率』という矮小なもんに成り下がってくれる」
( ^ω^)「……一応、理にはかなってますおね」
(`・ω・´)「だろ」
- 157 :名も無きAAのようです:2011/10/19(水) 08:29:13 ID:0u2lR0HUO
- (`・ω・´)「みんな知らないんだろうが、ああいうパチンコやスロットっていうのは、馬鹿が勝てないだけで賢いやつなら誰でも勝てんだよ」
( ^ω^)「はぁ……まぁ、先ほどの理論から言うならそうでしょうか」
(`・ω・´)「まぁただ、パチ屋やスロ屋に入り浸ってる時点で、そいつは馬鹿なんだがな」
( ^ω^)「なんですかそれ。矛盾してませんか?」
(`・ω・´)「してるな。つーか、賢いやつはギャンブルなんかしない。コツコツ働いた方がいいと知っているからな」
(`・ω・´)「ただ。賢いやつにもイレギュラーはいるもんさ。俺みたいにな」
(`・ω・´)「まず俺は、ギャンブルをしにいく時は朝イチ。そんで25万は持って行くかな」
(;^ω^)「にっ……!?」
(`・ω・´)「んで、上限を忘れる。やる台はパチンコなら釘、スロットなら設定を良く見る。それで1時間半は使うかな」
(`・ω・´)「そんで、これだ!ってのがあればそれをやる。無ければ別の店、もしくは帰る」
( ^ω^)「……ほー。なんか、諦めがいいんですおね」
(`・ω・´)「当たり前だろ」
(`・ω・´)「パチやスロは、どれでもいいわけじゃない。大概の人間はそれに気付かず、『パブロフの犬』よろしく『レバーひきゃ餌出るだろ』みたいな楽観的考えしか持たなくなる」
- 158 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 08:50:20 ID:WUZ9VFjQO
- (`・ω・´)「そうなりゃ負け組確定……だから自分の業に呑まれない事も大事だな」
( ^ω^)「言い方がなんかかっこいいですね」
ここでシャキンさんの幾杯目かのグラスが空になる。
弟たるショボンさんは無言のまま、しかし待ってましたと言わんばかりに次のグラスを用意した。
高そうなスコッチウイスキー、ロック。
疑わしき濁色にも関わらずそれは、正体不明の説得力を持ち合わせている。
(`・ω・´)「そして……引くんだ。大当り」
( ^ω^)
そのグラスをぼんやり眺めたまま。
その勝ち組の背中は、あまりにも不安定に見える。
(`・ω・´)「こんなとこかな。俺の常勝法ってのは」
( ^ω^)「……」
(`・ω・´)「信じられないかい、内藤さん?ただな、俺は18で家を出てから、ずーっとこうやって生きてきた」
(`・ω・´)「弟が店開いた今じゃあ毎日ここに通ってる。お高いホステスなんかを連れてな」
(´・ω・`)「ふふ。おかげでうちは繁盛してます」
(`・ω・´)「その事実が、俺の言ってる事の裏付けだと思ってくれりゃいい」
- 159 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 09:04:21 ID:WUZ9VFjQO
- ( ^ω^)「……いや、恐れ入ります」
(`・ω・´)
( ^ω^)「ほとんどの人間はそこまでの研究する前に、その日一日の幸福で満足してしまう。なのにあなたは、そんな即席では飽きたらず、その先まで手を伸ばした」
( ^ω^)「かっこつけた言い方をするなら、誰にもたどり着けない境地でしょう」
(`・ω・´)「ああ。いや、まぁ、他にもいると思うぜ?こうやってギャンブルで食い繋いでるやつってのは」
( ^ω^)「そんなの極僅かでしょう。少なくとも、私は聞いた事はありませんし」
( ^ω^)「こんなお兄さんを持つショボンさんも、ある種誇らしいでしょう」
(´・ω・`)「皮肉に聞こえますねそれはw単なる無職ですよそいつは」
(`・ω・´)「おいおい」
(´・ω・`)「でもまぁ、話題にはなりますし」
(´・ω・`)「自慢の兄ですね」
(`・ω・´)
(`・ω・´)「……そうかい」
( ^ω^)
- 160 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 09:15:54 ID:WUZ9VFjQO
- (`・ω・´)「よしショボン、最後に一杯、なんかお前の自信作をくれ」
(´・ω・`)「……お勧め?」
(`・ω・´)「なんでもいいんだよ。よくよく考えりゃ俺は、お前に高そうな酒しか頼んだ事がなかった気がするからな」
(´・ω・`)「じゃあとっておきの名酒を飲ませてあげるね。『水』って名前なんだけど」
(`・ω・´)「せめてアルコールはいれといてくれよ〜……」
そう言ってシャキンさんは大袈裟にアクションした。
素面に見えたが、実はかなり高揚しているらしい。
( ^ω^)「はははw」
(´・ω・`)「冗談。じゃあ、たまにはカクテルなんかどう?兄貴、あんまり飲んだ事ないでしょ」
(`・ω・´)「カクテル……ふぅん。確かにいつも洋酒ばっかだったからな。たまには、悪くないかもな」
(´・ω・`)「じゃあ用意しますね、お客様」
- 161 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 09:31:04 ID:WUZ9VFjQO
- ―――――――
繊細な指先が踊る。
宝石が等間隔に混ざってゆく。
絢爛豪華な黄色と、優柔なピンク。
最後にパイナップルが添えられ、それは完成した。
(´・ω・`)「……お待たせ」
(`・ω・´)「おぉ」
それは、シャキンさんの前に。
僕は頼んではいなかったが、僕の前にも。
(`・ω・´)「へぇ、洒落た色だな」
( ^ω^)「凄い……。とても綺麗ですね」
(´・ω・`)「でしょ。兄貴にぴったりだと思ってね」
(´・ω・`)「『ミリオンダラー』って言うんだ」
( ^ω^)「ミリオンダラー……『百万ドル』?」
(`・ω・´)「おお、えらく景気のいい名前だな!」
(´・ω・`)「その方が兄貴にはお似合いでしょう。お金持ちや成功者には、これはうってつけだと思うんだ」
(`・ω・´)「はは……」
シャキンさんはゆっくりと口をつけた。
グラスの中の黄金が、静かに揺れ動く。
(`・ω・´)「……うん。気に入った」
(´・ω・`)「へへ、ありがとう」
- 162 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 09:38:48 ID:WUZ9VFjQO
- ―――――――
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「さて」
(´・ω・`)(そろそろ閉店準備でもするかな……)
ぎぃ。
(´・ω・`)(ん……)
樹の扉の音は、よく響く。
( ^ω^)
( ^ω^)「お邪魔ですかお?」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「……いや、大丈夫ですよ。昨日、兄貴はちゃんと家に帰りましたか?」
( ^ω^)「駅前でタクシーを呼びましたお。大丈夫でしょう」
(´・ω・`)「そうですか……でも、なんでまた?」
( ^ω^)「一応昨日は業務中でしたから。思いっきり飲むわけにもいかなくてね」
( ^ω^)「今日は非番ですから。『ミリオンダラー』、もらっていいですかお?」
(´・ω・`)「はい」
(´・ω・`)「……なんか、変な語尾ですね」
( ^ω^)「……はは。よく言われますお」
- 163 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 09:48:01 ID:WUZ9VFjQO
- (´・ω・`)「兄貴は、もう死んだんですね」
( ^ω^)「……はい。今が1時45分……だから、ほんの45分前に」
(´・ω・`)「……感慨深いものもないや」
( ^ω^)「……そうですかお」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「……『答え会わせ』。します?」
( ^ω^)
( ^ω^)「……一応。今日来た目的の1/4くらいは、それですし」
(´・ω・`)「そうですか」
(´・ω・`)「……の前に、はい」
グラスは置かれた。
昨日と同じで、ミリオンダラー。
巨万の富。
- 164 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 10:02:44 ID:WUZ9VFjQO
- (´・ω・`)「……兄貴の話。あれ、何割信じてました?」
( ^ω^)「……ぶっちゃけ、0割」
(´・ω・`)「ははw」
( ^ω^)「というか……失礼ながら……知ってたんですお、僕」
(´・ω・`)「あら」
( ^ω^)「国繁死対象者の事後処理の要覧で……」
( ^ω^)「シャキンさんに、巨額の借金があるってこと」
(´・ω・`)「やっぱりか」
( ^ω^)「さらに無職……最初見たときは、目を疑いましたよ」
- 165 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 11:40:56 ID:WUZ9VFjQO
- ( ^ω^)「結局のところ、彼もギャンブルで大勝などしていなかった」
(´・ω・`)「そういう事。」
( ^ω^)「しかし理解出来ないのはその先です」
( ^ω^)「なぜシャキンさんは……そんな事」
(´・ω・`)「わかりませんか」
(´・ω・`)「見栄に決まってるでしょう」
( ^ω^)
(;^ω^)「はい?」
(´・ω・`)「バカなやつです」
(´・ω・`)「あいつはいっつもここで、一人旅立った僕に安心させる為に」
(´・ω・`)「どっからか借りた金で、ここでずっと豪遊して……ずーっと僕に『勝ち組の兄』をアピールし続けた」
(´ーωー`)「僕も気づいてましたよ。あの凡人たる兄に、そんな事出来るわけがない」
(´ーωー`)「そんな方法で世が渡れるはずがない……けどの」
(´ーωー`)「けどね内藤さん。あいつ馬鹿だから……そんな方法でしか……泥沼に落ちても維持を張って……」
(´;ω;`)「……あいつはね、最後の最後まで、僕の自慢の兄で有り続けたんですよ」
( ^ω^)
(´つω;`)「……失礼しました」
( ^ω^)「……いえ」
- 166 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 11:55:12 ID:WUZ9VFjQO
- ( ^ω^)「しかしまぁ、彼は最後に引き当てたじゃないですか」
(´つω・`)「……」
( ^ω^)「大当り」
(´・ω・`)「……はい?」
( ^ω^)「もし借金等で多額の負債を抱える人間が国繁で死ぬとなればどうなるか」
( ^ω^)「……国繁の死亡予告伝達前に出来ていたものに限り、その借金の返済責任は無くなります」
( ^ω^)「彼は、7桁ほどの借金を持ち合わせていましたが……それは全てチャラになりました」
(´・ω・`)「……あぁ」
( ^ω^)「僕が見た最大のケースで奨学金の返済が帳消しになったものもありますが、それを遥かに上回る額です。シャキンはそれを、引き当てた」
(´・ω・`)「……なんだか、皮肉な話だ」
( ^ω^)「ええ」
(´・ω・`)「ははは」
(´・ω・`)「幸せだったかな、あいつ」
( ^ω^)「わかりませんが、そうであると願いたいですね」
- 167 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 12:01:13 ID:WUZ9VFjQO
-
―――――――
都内。
欲が欲を動かす街、ビッチ町。
その街の隅、隠れた名店と評判のバー、『バーボンハウス』。
「……いらっしゃいませ」
その店のカウンター、その右奥から3番目の席には、いつも「SAVE」と書かれた札で予約されている。
「すいません、この席は……」
「ああ、ごめんなさいね、お客様」
「その席は、この店一番のVIPが予約されている特等席なんです」
特等席には、富の象徴であるカクテル
『ミリオンダラー』が用意されていた。
- 168 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 12:04:18 ID:WUZ9VFjQO
- 死亡予告証――――――――――――――
『(`・ω・´)』
指名:真弓シャキン
生年月日:12月13日
本籍:○○都ビッチ町アバズレ区7―21
住所:○○都ビッチ町アバズレ区7―21
死亡予定時刻:「AM1:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
第四話:「即席の最大幸福(ハリーヘヴンスリーセブン)」
終了。
- 169 :<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
- <^ω^;削除>
- 170 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 14:33:53 ID:dHYWZPc.0
- ふむ・・・
おつおつ
- 171 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 15:38:23 ID:9qVha1020
- 乙
毎回読んだあとに何とも言えない気持ちになる
- 172 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 17:02:12 ID:FFlg4hcE0
- 焦らし投下乙乙
原作探してみようかね
- 173 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 17:27:45 ID:fTMOX3nAO
- 素晴らしい
- 174 :名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 18:19:29 ID:MyjemgPw0
- 乙
やっぱ面白いわ
- 175 :名も無きAAのようです:2011/10/23(日) 14:57:47 ID:tUm27dLQO
- ―――――――
『ドラマ的な大恋愛や甘酸っぱいロマンスなんてありえない。』
そう気付いたのは高校生になってからだった。
突然の転校生や、名家のお嬢様なんてのは実際問題出会えるもんじゃないのだ。
こんな現実じゃ恋愛というものは、せいぜいパスタ作ってくれる大親友の彼女のツレ辺りに会いたいけど会えなくて震えるくらいが関の山だという事らしい。
だから女の子とは、恋人よりは友達として置いておくのが捗る。
気になる女の子がこちらを振り向く可能性なんてとてつもなく低いのだから、それでも充分だった。
そう思っていた。
そんな時期が僕にもありました。
- 176 :名も無きAAのようです:2011/10/23(日) 15:01:10 ID:tUm27dLQO
- 申し遅れました。俺は高良ギコといいます。
(*゚ー゚)
はいこれが俺の自慢の恋人さん、箱猫しぃちゃんです。
見ての通りですが、やばいくらい可愛いです。
彼女と出会ったのは高校2年生。
たまたま席が近かった事が幸いし、仲良くなりました。
いろんな思い出を重ね、僕たちはここにいます。
そして
そんな彼女は今夜、死ぬらしいです。
- 177 :名も無きAAのようです:2011/10/23(日) 15:03:54 ID:tUm27dLQO
- ―――――――
愛するってなに?
あいする……ああ、iする?
自分勝手にするって事なんだね?
……え、違わないの?
第五話:【愛飢え男《ウィズラブレミゼラブル》】
対象者:箱猫しぃ
- 178 :名も無きAAのようです:2011/10/23(日) 16:37:25 ID:6Nfn1aRo0
- 待ってました!!
- 179 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 16:03:13 ID:kCASFejI0
- そろそろ来そうな予感あげ
- 180 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 18:16:43 ID:MBlVkAGc0
- 一話一話のタイトルが秀逸
大好きだぜ
- 181 :名も無きAAのようです:2011/11/11(金) 15:58:47 ID:e8Iol1CU0
- めちゃめちゃ楽しみにしてます
- 182 :名も無きAAのようです:2011/11/14(月) 22:27:34 ID:6drAvxl20
- まだですか?
- 183 :名も無きAAのようです:2011/11/14(月) 23:28:55 ID:qMp3FizEO
- 作者だけど、ちょっと都合が悪くなってね
君達、>>175-177を忘れる事は出来る?
ちょっと後回しにしたいんだこの話
- 184 :名も無きAAのようです:2011/11/14(月) 23:41:03 ID:O4N2zKrY0
- 喜んで忘れましょう
- 185 :名も無きAAのようです:2011/11/14(月) 23:50:14 ID:5YlGSxwM0
- え? >>175-177 ?
何の事?
- 186 :名も無きAAのようです:2011/11/15(火) 00:54:33 ID:/idsOD1s0
- 1・2・3…ポカン! どくしゃは >>175-177 をわすれた! そしてあらたに しえん をおぼえた!
- 187 :名も無きAAのようです:2011/11/15(火) 02:23:02 ID:eeYqItZw0
- ん?なんだっけ?あれ?
- 188 :名も無きAAのようです:2011/11/15(火) 19:01:57 ID:7KpIpTV60
- 追いついた
めちゃめちゃ面白いなこれ。wktk
- 189 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:41:05 ID:EmRmJv1AO
- ( ´∀`)「ねぇ内藤くん、推理小説ってあるでしょ」
( ^ω^)「はい?」
からん。
安い居酒屋のカウンターに、くたびれたスーツの男性が二人いた。
前に置かれた一杯300円もしない焼酎のロックを、ちびちびと煽る姿が妙に二人の哀愁を誘う。
( ´∀`)「ああいうのに出てくる殺人犯ってさ、すんごいトリックしかけてくるでしょ?アリバイ工作、死体工作etc……」
( ´∀`)「そうやって色んな探偵や刑事を欺いてるよね」
( ^ω^)「……はい。まぁ、最後にはキレモノ探偵の名推理により大抵捕まりますけど……」
( ´∀`)「じゃあ」
冷や奴に夢中になりながらも、モナーさんは口を止める気はない。
まぁその母親でもあるまい僕は、それを意地汚いだとか言って責める積もりは毛頭無いのだけれど。
( ´∀`)「じゃあ、だよ。そんなキレモノがいるわけでもない現実で、犯人たる人間達は……なぜこのトリックと呼ばれる工作を行わないんだろう?」
- 190 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:42:29 ID:EmRmJv1AO
- ( ^ω^)「……どうでしょう。さすがに人を殺した事はないので、わかりかねます」
( ´∀`)「そりゃあね、こう思うんだ。トリックなんて考えられる頭のいいやつ、もしくは冷静なやつは」
( ´∀`)「どんなに相手が憎くても、殺人なんてリスクの大きいことを犯さない」
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「やったとしても、死体を山の中に埋めたりするくらいか。これなら行方不明となるだけで、そもそも事件が発覚しないからね」
( ^ω^)「……なるほど。それなら探偵の出番だって、ない」
( ´∀`)「うん」
( ´∀`)「……」もぐもぐ
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「……ん、控え目だね。どうしたの?ここは僕のおごりなんだから、遠慮しなくていいんだよ」
( ^ω^)「そんな事言って、どうせこれ経費から落ちるんでしょ」
( ´∀`)「そこは言いっこ無し」
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「ふふ」
( ´∀`)「……君に、ちょっとした話をしようか」
- 191 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:44:34 ID:VCAlqe2o0
- キター!?
- 193 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:45:46 ID:A3QKu8gM0
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
めっちゃ楽しく見せてもらってます!!
- 195 :またまたまたまたまたミスった:2011/11/16(水) 22:47:03 ID:EmRmJv1AO
- 皮肉にも、この世はとても壊れやすい「割れ物」で充満しています。
「割れ物注意」よろしく……みんなそれを壊さぬようにと、繊細に過ごしています。
たまに「割れ物」を割ってしまう人間がいます。
彼は周りから、「割る者」と呼ばれてしまいます。
「割る者」は、罵られます。
ふふ、壊れちゃう方は、いつだって無責任。
第5話:【無差別殺神《ゴーストホロコースト》】
対象者:井戸本貞子
- 196 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:47:45 ID:EmRmJv1AO
- 管理人さん、>>192>>194消しといてくんねぇかな
超恥ずかしい
- 197 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 22:53:13 ID:EmRmJv1AO
- ( ´∀`)「昔々あるところに、ある少女がいました」
( ^ω^)
( ´∀`)「彼女は大学で、オカルト研究部に所属していました」
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「彼女は霊のたぐい……オカルト全般を信じきっていました」
( ^ω^)「……あの」
( ´∀`)「するとびっくり。彼女は会ってしまったのです」
( ´∀`)「死神に」
( ^ω^)
( ´∀`)「……ってね」
( ^ω^)「……それは、モナーさんの……?」
( ´∀`)「まぁね、昔……僕が受け持った子でね。最近君は、何かと死亡予告者に心を入れてる節があるから」
( ´∀`)「こんな馬鹿もいた、って話」
( ^ω^)「……」
- 198 :名も無きAAのようです:2011/11/16(水) 23:11:45 ID:EmRmJv1AO
- ―――――――四年前、某大学キャンパスオカルト研究部部室。
その少女は、オカ研のエース的存在だったんだ。
川д川「……でね、思うんですよ。人間は物体的存在としては不要な、精神性を持っていて……」
(・∀ ・)「つまりはその精神ってのが死後にゃあ魂って形に帰依するってか」
川д川「そうです。霊は、まず何かしらの感情から形を成すもの……」
(・∀ ・)「俺らにある心ってのが死後、新しい形に生まれ変わるわけか」
川д川「いえ、むしろ……逆なのでは」
(・∀ ・)「?」
川д川「死後にあらわれる魂という物こそ……本当の心の形なのではないか、って」
(・∀ ・)「……ふぅん」
- 199 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 00:02:52 ID:nusaUask0
- しえん
- 200 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 05:26:25 ID:CHtCQTLMO
- (・∀ ・)「やっぱ面白いな、お前」
川;д川「えっ……、あ、すいません勝手にべらべらと!私、そういうつもりで……」
(・∀ ・)「や、皮肉じゃねーよwまんまの意味さ」
(・∀ ・)「お前と話してんの、楽しいわ」
川*д川「えっ……」
先輩部員「確かに、貞子ちゃんワールドは見てて飽きないよなw」
大概のオカルト研究部ってのはね、内藤くん。大抵が不気味がって楽しむだけなのさ。
でもこの貞子って子は違った。まるで一端の研究者かのように、オカルトに対し真摯に向き合っていた。
川д川「……あの」
(・∀ ・)「ん?」
川д川「斎藤先輩は……」
(・∀ ・)「ん?」
川д川
川;д川「……す、すいません。なんでもないです……」
(・∀ ・)「なんだよーw愛の告白ならいつでも受けんぞ?w」
川;*д川「え、あ、いや…その……」
先輩部員「調子のんなきんたまwww」
(・∀ ・)「きんたま言うなwww」
- 201 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 05:32:09 ID:CHtCQTLMO
- (・∀ ・)「……っし。じゃあ、そろそろ帰るとすっかー」
川д川「……あ、はい」
(・∀ ・)「2時間後にゃもうバイトかー。だりぃなー早く帰んねーと」
川д川「あ、お、お疲れさまです」
(・∀ ・)「おぉ、貞子!」
(・∀ ・)「また明日な!」
川д川「っ……!」
川*д川「は、はい!」
ここまで話せばわかるかな。
そうさ、彼女がこんなにオカルトに熱心なのは、
別にオカルト研究者目指してるからとか、そういうわけじゃないんだ。
好きな人と話す口実になるから。
好きな人に興味を持ってもらえるから。
井戸本貞子は、同じくオカ研の先輩、斎藤またんきに恋をしてたんだよ。
- 202 :名も無きAAのようです:2011/11/18(金) 20:42:23 ID:bNQ3KL9I0
- しえん
- 203 :名も無きAAのようです:2011/11/22(火) 09:48:28 ID:PIBs/JiEO
-
( ´∀`)「ふん、滑稽だね。好きな人の為にオカルトに被れる、だなんてね」
( ^ω^)「……そんなバカにした言い方」
( ´∀`)「いや、馬鹿なやつだろとは言わないさ。
好きな子のために懸命になる事が、『馬鹿だ』とは言わない。
ただ、もう少しマシな方法があったんじゃないかと思うんだよ、僕はね」
( ^ω^)「……まぁ不器用だとは、思いますが」
( ´∀`)「恋ってそんなものなんだろうね?
大抵は気持ちばかりが先行し、歪が歪のままに進められるってもんだ。
軌道修正が効けばいいのだが……これがまた難しい」
( ^ω^)
皮肉か。もしくはわざとか。
モナーさんの言葉のせいで、目の裏にはひっきりなしにあの思い出が甦る。
( ´∀`)「……あぁ、君に対する皮肉ではないよ。津村さんは、また別」
( ^ω^)
( ^ω^)「よく僕の考えてる事がわかりましたね」
( ´∀`)「わかりやすいよ。いきなり枝豆むしる手がピタッと止まるんだもん」
- 204 :名も無きAAのようです:2011/11/22(火) 22:02:10 ID:42dtBsS60
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
楽しみにしてます!
- 205 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 10:38:43 ID:jMbpd4wQO
- ( ´∀`)「まぁ君のとは、ケースが違うじゃない」
( ^ω^)「ただの惚れた腫れたならば、あまり大きな違いはないように思いますが」
( ´∀`)「言ったろ。これはただの恋の話。君のは愛だ。誇っていい」
( ´∀`)「恋は一方通行、愛は相互反応だよ」
( ^ω^)「……なるほど」
( ´∀`)「……まあ、最近では……」
( ´∀`)「自分の弱さを他人に押しつけるだけの行為。それをさして恋だの愛だのと言っちゃうらしいけどね」
「……馬鹿馬鹿しいモナ」
ま、とにかく
僕はそんな彼女に、イキガミを渡しにいったのさ。
(・∀ ・)「今日もシメーにするか。またな、貞子!」
川д川「あ、はい。お疲れさまでした!」
女友「……ほんっっと、良い感じだよねー貞ちゃんと斎藤先輩!」
川д川「そ……そうかな?確かに先輩、私の話をちゃんと聞いてくれるけど……でも、それだけで」
女友「それがムズいんだっつーの!アンタと小一時間会話を続けられるって、それこそマジモノの幽霊さんでもなきゃムリだよ?w」
川;д川「え……ちょ、ひどくない?そんな風に思ってたの?」
- 206 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 10:44:40 ID:jMbpd4wQO
- 女友「冗談ww……で」
女友「いつになったら告白すんの?」
川;*д川「こっ……こくっ!!?」
女友「告白」
川;*д川「な、なな……ないよ!そんなの!わ、私みたいなのがいったら迷惑だろうし……それに……!」
女友「あ、好きだって事は否定しないんだねw」
川;*д川「……うう」
女友「いいんだってアンタで。ホントに純粋だしそれなりにカワイイし」
女友「つーか絶対斎藤先輩もその気あるって!!アンタが勇気出しゃ、もうイチコロだよ!」
川;*д川「え……ええ……?」
- 207 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 10:49:45 ID:jMbpd4wQO
- 女友「ま、ちゃんと考えとけよそのへんwじゃねー」
川д川「あ、うん、また……」
川д川「……」
川д川(告白……かぁ)
川д川(そりゃあ……斎藤先輩とお付き合い出来たら……なんて)
川д川(考えはするけど……)
いるんだよねぇ。自分に自身が無い子。無さすぎる子。
他人の良いとこを見つけては劣等感に陥っちゃったりする子。
誇れるモノのない子。
それが、貞子。
川д川「……帰ろう」
- 208 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:00:07 ID:jMbpd4wQO
-
川д川「……」
川д川(あ……)
帰り道、貞子は必ず少し大きな公園の前を通りかかる。
小学生と温和そうなおばあさん、それと犬。
なんとも微笑ましい空間の、空きスペース。
彼女はその空きスペースであるブランコをちらりと見た。
それがまるで、「おいでおいで」と言っているかのように揺れ動いていたから。
川д川「……」
ぎしり……。
特に用も無いが、ちょこりと座ってみた。
錆びたそれは心地よい不協和音を鳴らしながら、揺れる。
しかしそれにもすぐ飽いて、しかしやる事もないので、携帯をいじりながらボーっとしていた。
川д川「……なにやってんだろ、私」
- 209 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:01:17 ID:jMbpd4wQO
-
川д川「……」
川д川(あ……)
帰り道、貞子は必ず少し大きな公園の前を通りかかる。
小学生と温和そうなおばあさん、それと犬。
なんとも微笑ましい空間の、空きスペース。
彼女はその空きスペースであるブランコをちらりと見た。
それがまるで、「おいでおいで」と言っているかのように揺れ動いていたから。
川д川「……」
ぎしり……。
特に用も無いが、ちょこりと座ってみた。
錆びたそれは心地よい不協和音を鳴らしながら、揺れる。
しかしそれにもすぐ飽いて、しかしやる事もないので、携帯をいじりながらボーっとしていた。
川д川「……なにやってんだろ、私」
- 210 :また連投しちった……:2011/11/26(土) 11:08:29 ID:jMbpd4wQO
- 今の日常は、苦痛であると言えば苦痛だ。
普通の女の子たる私が、ただ、あの人を好きになっただけ。
そんな事だけで……やってしまった、曲がりに曲がった努力。
そして今は
「オカルト大好き電波ちゃん」
そんな名前で呼ばれる。
ふざけるなと言いたい。
自分が異端だと言われ喜ぶのは馬鹿だけだ。
もしくは、それでしか個性を発揮出来ない無個性人間。
川д川(……まぁ無個性って、モロに私の事だけど……)
でも。
もしそれでも。
斎藤先輩と結ばれたなら……報われるだろう。
大好きな先輩。
彼と結ばれたなら。
いや、でも。
しかし。
川д川(……無限ループ)
川д川(……もう、死んじゃいたいなぁ)
自分を優しく受け止めているブランコは、やはり冷たかった。
- 211 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:16:30 ID:jMbpd4wQO
-
「……井戸本貞子さん、ですモナ?」
川д川「えっ」
そうして、気付くのが遅れた。
( ´∀`)
すぐ隣には、フォーマルなスーツ姿の知らない男性が立っていた。
川;д川「あの、え……」
不安がよぎる。
このご時世に見知らぬ男性から声をかけられるとなると、どうも犯罪の臭いが絡む気がしてならない。
( ´∀`)「……あぁ、不安がらないで下さい」
( ´∀`)「私は尾前モナーと申します」
( ´∀`)「あなたに、死亡予告証を届けにきましたモナ」
川д川
川д川「えっ」
- 212 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 11:30:46 ID:jMbpd4wQO
- 川д川
川;д川「……」
嫌な汗が吹き出る。
不安が、やけに大きくぶり返してくる。
でも、目の前の白い紙には。
間違いなく、私が写っていて。
川;д川「……や、やだ……」
何が嫌だ、なのか。
意味のない言葉だけど、出さないわけには行かなかった。
先ほど死にたいと言ったばかりなのに、何故。
何故私はこうも、生きていたい。
( ´∀`)「……まぁ私も大変遺憾だとは思いますが」
( ´∀`)「仕事柄、あなたにこれを渡さなきゃいけない」
川;д川「あ……」
( ´∀`)「さぁ、受け取って下さいモナ」
川;д川
そうして私は、震える手でそれを受け取った。
受け入れた。
- 213 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 13:38:40 ID:WIjwTGoY0
- 楽しみにしてます!
- 214 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 16:56:33 ID:jMbpd4wQO
-
( ´∀`)「……その時の彼女の可哀想な姿と言ったらないな。僕は今でもくっきり思い出す」
( ^ω^)
( ´∀`)「どうしてだろうねぇ。人生ある程度幸せで円滑に進んでるやつより、こういった負け組……というのは酷いかな?そんな連中のが」
( ´∀`)「死を言い渡された時には、色濃い……未練たらたらな顔をする」
( ^ω^)「まだ幸せになってない、自分にはまだまだ幸せになる権利がある……とか考えてるんでしょうね」
( ´∀`)「アホらしいね。幸せほど不平等な概念はないってのに」
――――――
母「……そう。まさか、アンタがね」
川д川「……うん」
母「どうする?せっかく最後の一日なんだから、誰かと何かしてきたりはしないの?」
川д川「……」
川д川「いまちょっと色々、考えてる」
母「そうかい。じゃあ、好きにしなさいね。私も父ちゃんも、何も言わないわ」
川д川「……ありがとう、母さん。今までいっぱい迷惑かけたね」
母「……ふふ、いいのよ。じゃあこれだけお願いしていい?」
川д川「?」
母「久々に、抱きしめさせておくれよ」
川д川「……うん」
- 215 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 17:01:40 ID:jMbpd4wQO
-
ぎゅっ……、と。
時間がスローになる感覚。
川д川
母さんは、いつの間にかホントに小さくなっていた。
回ってくる腕も、それを実感さする。
母「……ほんと、成長しちゃって」
川д川「うん」
母「胸だけはもう少し成長しても良かったんじゃない?(笑)」
川д川「……うるさいなw」
母「ふふ……」
川д川
母「……なんで、アンタが…………」
川д川
涙が出そうになった。
だからもうその日はすぐ部屋にこもった。
私が死ぬのは、明日のお昼の2時。
まだまだ時間は有り余ってる。
- 216 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 18:08:14 ID:d6e942E.0
- 見てます
本当に面白いです
- 217 :名も無きAAのようです:2011/11/26(土) 23:45:12 ID:1Km2I59.0
- +(0゚・∀・) + ワクテカ +
- 218 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 19:30:49 ID:c5DAeaXcO
- いつもの布団に寝転ぶけれど、違和感は取れない。
川д川
脳裏に残るのは、やっぱり先輩の姿。
川д川
川д川(……いま、告白したら)
彼はどう思うだろう。少しは哀れんでくれるのか。
実は好きだったら……なんて事があったりしたら。
あぁ。
川д川「……なんでもっと早く伝えとかなかったんだろ……私」
後悔したって遅い。
川д川「あぁ」
けど。
「……がんばろう」
行動は今からでも遅くはない。
どうしても、伝えたい。
川д川(……明日、絶対に言うんだ)
無造作に、携帯電話を開く。
- 219 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 19:34:08 ID:c5DAeaXcO
- 「俺は斎藤またんきって言います!よろしく!」
斎藤先輩と出会ったのは、とあるゼミ。
「貞子て珍しー名前wあ、呼び捨てでいいかな?」
「あ、俺、オカルト研究部に入ってるんだ。貞子もどう?」
「興味ない、かな?」
特に心霊なんかに興味はなかったけれど。
あなたの楽しそうな顔を見て。
楽しそうな顔を、もっとみたくて。
「あ、……はい。ちょっとやってみたい、です……」
「だよな、キモいよな……って、えぇ!?マジで!?」
川д川(……)
あの時と同じ。
勇気。
勇気を出せ、自分。
- 220 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 19:42:53 ID:c5DAeaXcO
-
ぷるるる、がちゃり。
早くて心の準備も間に合わないまま
「もしもし、あれ、貞子?」
繋がった。
川д川「……も、もしもし、先輩ですか?」
「はいはい先輩ですとも。珍しーな、お前が電話って」
「どした?大事な用?」
川д川「はい、……あの、先輩って明日は学校に何時に来ますか?」
「何時って……そうだな、3限あるし、昼にはいくけど」
川д川「……」
よし。
いけ。いまだ。
川д川「あの、あ、明日、ですね」
川д川「……お昼の1時半に、部室に来て欲しいんです」
――――――
- 221 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 20:22:31 ID:c5DAeaXcO
- ( ´∀`)「1番。告白は成功し、二人は結ばれ貞子は幸せな最後を過ごした」
( ^ω^)
( ´∀`)「2番。告白は失敗。無念だがスッキリした終わりを迎えた」
( ´∀`)「3番。イキガミを家に忘れた彼女は自分の死を証明出来ず、最後まで電波ちゃん扱いされた」
( ´∀`)「どーれだ」
( ^ω^)「4番」
( ´∀`)「正解。よくわかったね」
( ^ω^)「モナーさんがそういう時は大抵、答えが中にないですもん」
( ´∀`)「はは。内藤君、ヘタすりゃ僕よりひねくれてるよね」
( ^ω^)「……で、4番目の答えは?」
( ´∀`)「死んだよ。2人とも」
( ^ω^)
- 222 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 20:24:13 ID:c5DAeaXcO
- ( ´∀`)「……時計がね」
( ^ω^)
( ´∀`)「部室内の時計がね、狂ってたんだ」
( ´∀`)「彼女はそれで時間を見間違え、告白の最中に死んだよ」
( ^ω^)「……それで、なんで斎藤まで死んだんですか?」
( ´∀`)「ふふ」
- 223 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 20:26:55 ID:c5DAeaXcO
-
( ´∀`)「呼び出すまではうまくいったのさ、貞子は」
( ´∀`)「でも……」
――――――
「呼び出してごめんなさい、先輩」
「ああ、いいよ。ちょうど授業、つまんねーと思ってたしww」
「あ、いや……すいません」
「いいってだからwで、なに?用事って」
「まさかマジで俺に告白しちゃうわけ?w」
「っ……」
――――――
( ´∀`)「たぶん、だけど。貞子はそれをこう捉えたんではないかな。」
( ´∀`)「『おいおい、お前が?冗談だろ?』ってね」
( ´∀`)「そこで……折れちゃったんだろうね。
素直に告白、出来たら良かったんだけどね」
「傷つく事を恐れた彼女の心が土壇場で、路線変更した」
- 224 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:16:29 ID:c5DAeaXcO
- 「……やっぱりかぁ」
「?貞子?」
「私なんかが舞い上がって、馬鹿みたい。最後の頼みなら……って思ったけど」
「こんな事で報われようなんて、それがおかしかったんだよね」
「……?おい、お前なんかおかしいぞ貞子……」
「サヨナラ、先輩。私は、今から死にます」
「……はっ!?」
「それでも心はずっと、あなたのそばにいますからね」
「おい……貞子?は?死ぬ?なんで?」
「……実は私」
「いきg」
ばたり。
「……」
「貞子?」
「おい!貞子!貞子っ……!!?」
「!!!!!? ……脈がっ……嘘だろ……!!?」
「…………う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
- 225 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:19:54 ID:c5DAeaXcO
-
斎藤だって、違うのだ。
少なくとも『オカルト』は、今日の晩御飯よりは気になっていたし
『貞子』についても、帰りによる予定だったパチンコ屋よりは大切に思っていた。
どちらも心を占めるほどに強かったわけじゃないが
どうでもいいわけじゃない。
その、『貞子』が。
人間が、目の前で好意を伝えていきなり死んだ。
『オカルト』チックに。
「あ――――――」
『あなたが好き――――――』
『私の心はずっとそばに――――――』
『幽霊とは、心の真の形――――――』
それが、どうまとまったのだろう。
イキガミと知らぬオカルトかぶれは、こう考えたんだ。
「――――――今から俺は、呪い殺されるんじゃね?」
――――――
( ´∀`)「……はっ、馬鹿みたい」
- 226 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:21:57 ID:c5DAeaXcO
- ( ´∀`)「斎藤は恐怖から発狂。……後にその部室で自殺」
( ´∀`)「……どうだい、内藤くん」
( ´∀`)「滑稽だろ」
( ^ω^)
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「やっぱ無理かい。他人の死を笑うのは」
( ^ω^)「……少し気が引けます」
( ´∀`)「でもさ、馬鹿らしくならない?」
( ´∀`)「最後の最後に頑張ろうとした人間が、こんな結末を迎えるのは」
( ^ω^)「……そう……ですけど」
- 227 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:22:37 ID:c5DAeaXcO
-
( ´∀`)「僕は笑うよ。でも笑ってるのはバカにしてるからじゃない」
( ´∀`)「こんな悲惨な死に方、せめて笑って送ってやらなきゃ悲しすぎるだろう」
( ^ω^)
( ´∀`)「悔やむくらいなら前向けよ。僕らは一般人じゃない」
( ´∀`)「目に写る死の数々を、ただご冥福をお祈りするだけで過ごしていっちゃ……」
「僕らはいつか、人として終わってしまう気がするんだよ、内藤くん」
- 228 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:31:59 ID:c5DAeaXcO
-
久々に誰かとお酒を飲んだ僕は、そのまま帰路に着く事にした。
結構飲んだつもりだったが、モナーさんはぴんぴんしていた。化物みたいだ。
( ^ω^)
( ^ω^)(前を向き続けないと、死を迎える僕らはいつか壊れちまう……ってか)
どんなに死を見送っても、僕らはそれをずっと見据えなきゃいけない。
そこを、変わってはいけないのだ。
そうでなければ僕らは、永遠に気の狂わない犯罪者。
まるでただの無差別殺人犯だ。
( ^ω^)(……)
毎日毎日それを見送り続けた結果が、モナーさんのあの背中なんだろうか。
僕はいつまでたっても、あの背中に追い付ける気がしない。
- 229 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:48:04 ID:c5DAeaXcO
- 人間は愚かだ。
この仕事を始めて、ずっと思い続けてる事。
( ^ω^)(……その貞子ちゃんだって、最後で諦めなきゃあ、もう少しまともな最後)
( ^ω^)(それこそ1番や2番の答えになってたかもしれないのに)
何から何まで効率悪く、何から何まで非合理的。
ファミコンのような稚拙さを内蔵した生物。
( ^ω^)(……でも)
でも。
不思議な事に「どうせ死ぬんだから」と何もしなかった人間は、一人としていないんだ。
……だから僕は、人間を嫌いになれないんだろうな。
- 230 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 21:54:36 ID:c5DAeaXcO
- 死亡予告証――――――――――――――
『川д川』
指名:井戸本貞子
生年月日:12月2日
本籍:○○県幽霊町リング区0―01
住所:○○県よつば町ホテル呪怨3―33
死亡予定時刻:「PM2:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:尾前モナー
―――――――――――――――――――
第5話:「無差別殺神《ゴーストホロコースト》」
終了。
- 231 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 22:09:33 ID:W.5c/EkAO
- 乙 やっぱりサブタイトルいいね
あらちーの方?
- 232 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 22:13:23 ID:efsiNVrM0
- 乙乙!
- 233 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 22:22:44 ID:15okGEV60
- おおー!素晴らしい
乙乙
- 234 :名も無きAAのようです:2011/12/02(金) 23:15:22 ID:0Se6wFq.0
- 乙
読むと毎回不思議な気持ちになるぜ
- 235 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 05:14:41 ID:m6vK57KgO
- 毎度一話に時間かけすぎてごめんなさい
それと読んでくれてありがとうございます
年内にもう一話二話やれたらなと思います
>>231
はいそうです
- 236 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 11:30:22 ID:G1a4uxHgO
- 作者を辞めてないでよかった
- 237 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 17:59:59 ID:V73wV/4cO
- あらチーだったのか
次回も楽しみにしてるぜ!
- 238 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 18:30:03 ID:o00n8DY20
- ナ、ナンダッテー
乙 やっぱり面白いわ
- 239 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 19:29:02 ID:8ZQFgCWY0
- 次回も期待支援
- 240 :名も無きAAのようです:2011/12/03(土) 20:46:01 ID:KtvgeZ26O
- あらチー!?
- 241 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 13:23:50 ID:R6zUgjzoO
- 予想外過ぎる
- 242 : ◆BnhUepkPaA:2011/12/05(月) 21:31:02 ID:ChD1kGUcO
- 特に意味はないですが
某ったーに「イキガミでああ言ってるけど本物なの?」とDMきたので
一応置いときますね
- 243 : ◆BnhUepkPaA:2011/12/05(月) 21:32:40 ID:ChD1kGUcO
-
「他人をバカにする」。
この世にこれほどの悦があろうか。
言葉一つで簡単に、精神的優越感を得られる。
その対象が気付いていなければなおのこと、愉快。
「ミミカたんのおっぱい見たいよぅ……ハァハァ」
「一度でいいからミミカと会いたいなぁっ☆」
「今日もずっとハニーの事考えてたよ……ミミカはどう?俺の事考えててくれた?」
( ^Д^)(愉快愉快……っwwww)
超絶愉快。
- 244 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 21:32:47 ID:ChD1kGUcO
-
「他人をバカにする」。
この世にこれほどの悦があろうか。
言葉一つで簡単に、精神的優越感を得られる。
その対象が気付いていなければなおのこと、愉快。
「ミミカたんのおっぱい見たいよぅ……ハァハァ」
「一度でいいからミミカと会いたいなぁっ☆」
「今日もずっとハニーの事考えてたよ……ミミカはどう?俺の事考えててくれた?」
( ^Д^)(愉快愉快……っwwww)
超絶愉快。
- 245 :また連投……orz:2011/12/05(月) 21:35:14 ID:ChD1kGUcO
- こいつらは自らをバカだと晒しつつも気づかない。
愉快。
( ^Д^)(うひゃひゃwwww今日も大量ですなwwww)
俺の最近の趣味。
それはネカマキャラ、「桜ミミカ」(17歳)でキモい男を釣る事。
もともとそのSNSはガキやお馬鹿さんが多い事で有名だった。
2ちゃんでもかなりのヲチスレが立っていたし、
興味ない俺も知ったかぶりで「このSNSは情弱コンテンツだろwwww」とか言っていたものだ。
そしてそのうち、お気に入りだったネカマ釣りスレに、
自分が仕掛人として参加したくなってきた、というわけで。
( ^Д^)(いまやその禁断の蜜味にトリコ、ってなwwww)
( ^Д^)「うっわこいつとか上半身裸でキメポーズの写メ……wwww2ちゃんに晒してやるかwwww」
- 246 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 21:37:01 ID:ChD1kGUcO
- SNSに登録し、コミュニティというものに参加し、グループスレッドに書き込みまくる。
そしてそのグループ内に、自らが少しかまってちゃんの美少女というイメージを植え付け、
裏で誰とでも寝る女だという噂も流す。
結果は、成功の嵐。
というかチープすぎ。
世の男どもはこんなに餓えていたのかと引いたくらいだ。
( ^Д^)(草食系なんて騒がれてるが、あれもマスゴミさんの煽りでした、ってか……wwww)
今日もまた新しく何人かからメールが来ている。
映画見にいかないか、だとか
買いたいものがあれば買ってあげる、だとか
( ^Д^)(自分の裸の写メを送り、惚れた?なんて聞く男、とかなww)
( ^Д^)(……ん?)
- 247 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 21:42:50 ID:ChD1kGUcO
-
しかし、今日はまたまた
( ^Д^)「……なんだ、こいつ」
すげぇのが釣れていた。
『ミミカさんですか?突然ですが、明日、お暇でしょうか』
『私は全部ワカッテマスと申します。本名です』
『出来れば明日1日っきりでいいので』
『私とデートして頂きたい。でなければ』
『……私は明日、死んでしまいます』
( ^Д^)
( ^Д^)
( ^Д^)(wwwwwwwwwwww)
( ^Д^)(wwwwはwwwらwwwwいwwwwwてぇwwwwwwww)
( ^Д^)(しwwwwぬwwwwやべぇwwwwwwww)
( ^Д^)(久々にきた、大物だ!!!)
- 248 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 21:44:16 ID:ChD1kGUcO
- かなしい悲恋の歌が好き。
かなしい失恋の歌が好き。
かなしい苦恋の歌が好き。
みんな、いろんな「かなしい」が好き。
それはね、かなしいのが自分じゃなく他人だから。
知ってる?
「恋愛」は、ひっくり返すと「哀憐」になるんだ。
第六話:「御飯美味《バラードラバー》」
対象者:全部ワカッテマス
- 249 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 22:12:15 ID:QjpEKwbk0
- >>243と>>244ダブってますよ
wktkしながら待ってるぜ
- 250 :名も無きAAのようです:2011/12/05(月) 23:37:39 ID:FJDBSRh6O
- あらチーもイキガミも好きです
わくてか
- 251 :名も無きAAのようです:2011/12/06(火) 11:14:01 ID:POTFayTg0
- いつも楽しみにしてます
自分新参だから他の作品あるなら教えてー!
- 252 :名も無きAAのようです:2011/12/16(金) 19:18:34 ID:o38kqHCQ0
- この作者ってなんで途中でいろいろ放り投げるんだろうね
- 253 :名も無きAAのようです:2011/12/16(金) 22:16:58 ID:g0Ec7WtQ0
- たかが1週間でそんなこと言うのはカルシウム不足
- 254 :名も無きAAのようです:2011/12/17(土) 07:57:35 ID:MfXUOFJ.0
- いや持ってる現行殆ど途中じゃね?
- 255 :名も無きAAのようです:2011/12/17(土) 08:04:47 ID:tDOjS44IO
- >>251
◆BnhUepkPaAをGoogleで検索
または青空ホライズンへいって作者別から上のトリを捜す
- 256 : ◆BnhUepkPaA:2011/12/25(日) 17:35:45 ID:wTy6PMDcO
- 出来れば紅白終わるまで待ってて欲しいなー、なんて……
ごめんね遅筆で
- 257 :名も無きAAのようです:2011/12/25(日) 18:00:00 ID:IyQMxbVY0
- エタらなければ全く問題ナッシング
- 258 :名も無きAAのようです:2011/12/26(月) 14:15:52 ID:zAhMv9Ok0
- エタんなよ
- 259 :あけおめ:2012/01/07(土) 02:56:17 ID:7dpiJZzMO
-
『明日の昼13時ちょうどから15分まで、私はF5駅前の公園で、座っています』
『服装はスーツの上に薄いコートをつけています。帽子をかぶっていますが、すぐわかると思います』
『来ないならそれでも結構ですが、お時間があればぜひ声をかけて下さい』
『再三言いますが、私は本当に明日死にます。なればこそ、必ず来てほしいです』
( ^Д^)(wwwwww)
( ^Д^)(ふwwwひwwwひwwダメだにやけるwwwwおれきめぇwwww)
俺に釣られたやつの中でも初めてのパターンだ。
確かにこういった人もいる。
ネット上であった事もない人物と、恋をしてしまう人が。
電脳世界上の文字の羅列だけで、人を好きになれてしまう可哀想な人達が。
大抵は現実世界では異性に見向きもされないコミュ力無し顔面崩壊野郎か、
はたまた相手の書き込みを全て本音だと思っちゃう情弱野郎か。
偉い人は言っていたぞ、『嘘を嘘と見抜けないとネット使うのは難しい』って。
( ^Д^)(だからこうやってバカにされんだよwwwww)
- 260 :名も無きAAのようです:2012/01/07(土) 03:15:32 ID:7dpiJZzMO
- 自己紹介が遅れました。俺は指差プギャーです。
19歳です。底辺大学生です。趣味は人を馬鹿にする事です。
こんなんだから友達少ないです。
でも多く持つもんじゃないし、いいんじゃないかなと思います。
( ^Д^)(明日か……)
授業はあるが、ぶっちゃけサボってもいい。
もともと授業なんて、出席を取りにいってるようなものだ。
つまり、ひまだ。
行くしかないっしょ。
( ^Д^)(行くしかないっしょwwwwwww)
バカだと思われるかもしれない。
けど、家で寝ながらだらだらネット上の誰かを馬鹿にし続けるよりは、
こうやってどこかへ赴き実際に見つけた人を馬鹿にする方が良いだろう。
え、大差ない?
うるせぇ。小さな差も積み重なれば大きな差。
塵も積もればアルプス山脈だ。
- 261 :名も無きAAのようです:2012/01/07(土) 03:24:54 ID:7dpiJZzMO
- 今日もさっそくいつも常駐しているスレに行く。
そのSNSの馬鹿晒しあげスレ。
特上の馬鹿が釣れた時は個別にスレをたてたりもするが、今回はまだやめておこう。
俺はそのスレに、今来たメールを全部貼ってやった。
( ^Д^)『というわけで、明日会いにいくはwwww出来れば写メとかも取るwwww』
『アホスwww』
『ここで実況よろwwww』
『期待』
『アッー!な展開はよ!バンバンバン』
みんな俺にレスをつける。
ちょっとした英雄気分だ。
思わず顔がにやける。
幸せ。
( ^Д^)「F5駅……うちから、30分てとこか。意外と近いな」
実に楽しみだ。
- 262 :名も無きAAのようです:2012/01/07(土) 03:41:11 ID:7dpiJZzMO
- こんな事をしていると、大人は言うだろう。
したり顔で、「そんな事をして何になる。むなしくないのか」と。
俺は胸をはって「むなしくない」と言えるだろう。
と言うかそれ以前に、そういう大人だって、
例えばテレビなんかじゃ失言失態を生んだ人物はすぐに晒しあげてネタにしているじゃないか。
例えば糞な政治家さんなんかはすぐに他政治家の揚げ足を取り、自分の講演でさんざんバカにするじゃないか。
例えば大手企業だって、自社の利益の為に都合のいい数字や結果だけを全面的に公表してるじゃないか。
それに比べて見れば、俺なんか可愛いもんだ。
むしろ視聴率や得票率、売上率の為……つまるところ自分の利益の為にそれをする大人なんかよりは、よっぽどマシに思えないか。
それで自分の行為を正当化するつもりはないが、でも誰かにまともな顔で説教はされたくないのだ。
明確な利己的意識をもって人を騙す事に大人達なんかには、特に。
- 263 :名も無きAAのようです:2012/01/07(土) 03:52:24 ID:7dpiJZzMO
- ( ^Д^)(つまるところ、この世は馬鹿でいっぱいなんだ)
そう。馬鹿だらけ。
それがネットでは、顕著に現れる。
ならばそれをネタに、ちょっと幸せな気分になるのが何がいけない。
他人をバカにして少しご飯が美味しく感じる事くらい、何がいけない。
むしろ推奨されるべきだとすら思う。
人の失態を笑ってはいけない、
人の失敗を笑ってはいけない、
日本にはそんな風潮がある。
欧米諸国式ブラックジョークが日本に受け入れられないのはこの為だ。
外国では、「失敗はみんなで笑いとばしてやるもの」である。
馬鹿なもんは笑えてナンボだ。
だから外国に「不謹慎」なんて言葉はないし、そんな概念も少ない。
俺の考えも、そういう事だ。
ああ哀れ、ネットの恐さを知らずに
ネカマに釣られ恥を晒した馬鹿な男ども。
彼らが二度と同じ失敗をしないよう、笑ってやるのが筋だろう。
違うか?
違うか。
違っててもいいや。
本音を言えば、馬鹿が馬鹿にされて困るやつはいない。
俺にはその免罪符じみた事実だけで十分だ。
- 264 :名も無きAAのようです:2012/01/07(土) 04:02:59 ID:7dpiJZzMO
- ( ^Д^)(……なんでこんな事考えてんだ俺)
時計をみれば、書き込み終えてから既に1時間たっていた。
俺は夜に頭が冴える派の人だ。
早く寝よう。
出ないといろんな思いがグルグルし始める。
誰かが言っていたが、人は地面に頭が近くなるほどネガティブな考えが生まれがちなんだって。
落ち込むと背中が丸くなり地面に近づく。
うなだれると頭が落ち、地面に近づく。
そんな感じに。
だから布団に入ったらなにも考えず早く寝て、翌日シャキッと立てば幸せになれるらしい。
( ^Д^)(羊数えるかな)
長くなったけど、明日が楽しみってこった。
言わせんな恥ずかしい。
あ、言ってないわ。恥ずかしい。
- 265 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 14:39:27 ID:P5a0WDwoO
-
―――――翌朝、F5駅。
( ^Д^)
( ^Д^)
あれ、かな。
( <●><●>)
( ^Д^)(スーツの上に薄いコート……帽子……)
( ^Д^)(たぶんアレで間違いねぇな。でも……)
(;^Д^)(めちゃくちゃ若ェな……ヘタしたら俺と変わらないくらいか……)
ちょっと参った。
てっきり童貞のオッサンだとばかり思っていたから、拍子抜けというか。
( <●><●>)
(;^Д^)(わりとイケメンだし……背もたけぇな……なんだこれ)
あんなのが痛さMAXのメールばかりを送っていたのかと思うと、それはそれで笑えるが。
- 266 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 14:48:00 ID:P5a0WDwoO
- 現状を説明しよう。
俺は駅前から、公園前で突っ立っているターゲットを把握している。
( <●><●>)
全部ワカッテマスさん。
いつもは主要駅とのバイパスの役割を果たすF5駅も、この時間帯では閑散としている。
だから間違えるはずはない……はず。
とりあえず、あのメールはホントだったって事は間違いなくなった。
でも問題はここから。
(;^Д^)(うーん……どうしよ)
ホントならメールで
「やっぱ待ち合わせ場所かえよ!○○にきて!」とか言ったりして
右往左往するターゲットを腹を抱えて笑い
写メをとったりしながら楽しむつもりだったが。
(;^Д^)(……なーんだろ、この敗北感?的なの)
意気消沈。
普段、こういう釣りに釣られるのは社会不適合者というか……。
見てくれから非リア充らしさが伝わる、みすぼらしい人間がほとんどだ。
しかしあのターゲット。
顔も端正で聡明そうな見た目。
様になる大人びたコート姿。
スペックが高すぎる。
こんなのに引っ掛からなくても、今すぐにそこらの女子高生に声をかけられておかしくないほどに。
- 267 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 14:53:47 ID:P5a0WDwoO
- 要は怖いのかもしれない。
普段自分が手のひらで転がして遊んでいるのは、いつでも見下せる人間だった。
しかし、アレは未知数。
そういう事なのだろう。
うっわ、最低じゃん俺。
( ^Д^)(とりあえず……もうちょい近づいてみるか)
( ^Д^)(なんなら目の前を通ってみよう)
しかしスリルは味わいたい。
なんとも迷惑な性分が憑いてしまったものだ。
( <●><●>)
( ^Д^)(……)
自然に歩けているはず。
ターゲットとの距離は15mほど。
近づいてわかったが、背も高い。
なんだよ、第一印象ばっちりじゃねえか。
- 268 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 14:57:21 ID:P5a0WDwoO
- (;^Д^)(あー、もうやだ。写メだけ取って早く帰ろ)
なんだか自分がみすぼらしくなってきた。
早く帰ってしまおう。
(((( ^Д^)
がしっ。
( <●><●>)
( ^Д^)
腕を捕まれた。
( ^Д^)
( ^Д^)「えっ」
- 269 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 15:00:29 ID:P5a0WDwoO
- ( <●><●>)
( ^Д^)(……え)
(;^Д^)(えええええええ)
え、なんで。
バレた。バレた?バレたの?
嘘だよ。女求めてきてんだろこいつ。
なんでばれるんだよ。
ばれてないばれてない。ばれてなーい。
(;^Д^)「な、なんですか」
( <●><●>)「……」
( <●><●>)
(;^Д^)
( <●><●>)「……人違いでした」
- 270 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 15:07:13 ID:P5a0WDwoO
- ( ^Д^)
(;^Д^)「そうですか」
( <●><●>)「ええ。すいませんでした」
(;^Д^)(……うっわあああああびびったあああああああ)
マジでびっくりした。
鳥肌がスタンディングオベーションだ。
なんならそのまま飛び立つんじゃないかってレベル。
びびった。
まぁ、ばれてないならいい。
このまま通り過ぎ……
( <●><●>)「桜ミミカ」ボソッ
(;^Д^)「えっ!!」
( <●><●>)「あ、反応した」
(;^Д^)「あ……」
あ。
- 271 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 15:12:45 ID:P5a0WDwoO
- ( <●><●>)「あなたでしたか」
(;^Д^)「えっ、う、あ……?」
バレた。しまった。やってしまった。
人違いと言われホッとした瞬間大本命の名をつかれ、咄嗟に反応してしまった。
(;^Д^)(なんだこいつ……!)
やべぇ。怒られる。
殴られてもおかしくない。
( <●><●>)「……」
( <●><●>)「じゃ、ここで話すのもなんですから。近くのファミレスでも行きますか」
( ^Д^)
( ^Д^)
( <●><●>)「あ、お金は僕持ちで大丈夫ですよ」
( ^Д^)「は……」
( <●><●>)「は?」
(;^Д^)「はい?」
( <●><●>)「はい」
- 272 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 15:20:09 ID:P5a0WDwoO
- (;^Д^)「や、あ、あの」
( <●><●>)「はい?」
(;^Д^)「あの、でも、おれ、用事あると言うか……その」
( <●><●>)「へぇ。用事ですか。平日昼間から、スウェットに軽く着こんだ姿で」
(;^Д^)「あ、や、あの……」
( <●><●>)「だいたいこんな時間に人騙して楽しんでるやつが何言ってんですか」
( <●><●>)「付き合ってもらいますよ、ちょっとの時間ね」
(;^Д^)「あ……はい」
あまりのパニックに、コミュ障発動。
為す術なく、ファミレスにつれてかれた。
ああ、どうしたものか。
- 273 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 15:37:05 ID:P5a0WDwoO
-
―――――ファミレス内。
( <●><●>)「さて」
(;^Д^)(あわわわわ……)
自分の体じゃないみたいだ。
パニックで動けない。
今から何されるなか、気が気でならない。
( <●><●>)「あっ」
( <●><●>)「店員さん、この店、これは使えますか?」
そう言って全部さんは懐からカードを出した。
カード?
いや、カードか?カードにしてはデカい。
( ^Д^)
(;^Д^)「!!!!!」
……イキガミだ。
- 274 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 15:55:13 ID:wsMAj/SEO
- わかってますの本質はどんなのか・・・
- 275 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 16:05:10 ID:P5a0WDwoO
- 店員は少しおどろいたような表情を見せた後で、業務的な対応で許可を出した。
そして隣でさらに露骨に驚く俺。
( <●><●>)「大丈夫ですか。ありがとうございます」
(;^Д^)「……あんた」
( <●><●>)「言ったじゃないですか。明日死ぬって。ミミカさん」
(;^Д^)「……その名前で呼ばないで下さい……」
言ったけど。言ってたけど。
マジでしたか。
なにそれ怖い。
( <●><●>)「……まぁ、こういう事ですので、どうか付き合っていただけませんか」
(;^Д^)「あ……あぁ」
( <●><●>)「うん、良かった」
- 276 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 16:10:47 ID:P5a0WDwoO
- ( <●><●>)「全部ワカッテマス。23歳の大学院生で、心理学を研究しています」
(;^Д^)「あ……はい」
( <●><●>)「んで、あなたは永遠の15歳桜ミミカちゃん。黒髪ロングのオタク美少女でよろしかったですね」
(;^Д^)「ごめんなさい、ホントに勘弁してください……」
( <●><●>)「ふふ、冗談です」
(;^Д^)「あ、あの……それで」
(;^Д^)「イキガミって」
( <●><●>)「はい、私は死にます」
軽っ。やめてよ、めちゃくちゃ気ぃ使うわ。
- 277 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 16:54:45 ID:UKLtgat.O
- これ好きだわ待ってた支援
- 278 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 17:34:23 ID:ACzI8/bE0
- wktk
- 279 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 20:35:06 ID:P5a0WDwoO
- (;^Д^)「い、いつ……」
( <●><●>)「2時間後」
しかも近い。
(;^Д^)「も、もう間近じゃないっすか……」
( <●><●>)「近いですね。そんな事より早く君の話を聞かせてください」
(;^Д^)「は、そんな事って……」
( <●><●>)「いいから。どうせ死ぬなら時間が惜しいですよ。ほら早く」
(;^Д^)「え、あ……」
自己紹介。
(;^Д^)「指差プギャーです。19歳です」
( <●><●>)「そうですか」
- 280 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 20:45:54 ID:P5a0WDwoO
- ( <●><●>)「なぜ人を騙してたんですか?」
(;^Д^)「え、う……」
やはり来たか、とは思いつつも言葉がでない。
覚悟していた言葉なのに。
(;^Д^)「……」
( <●><●>)「特に理由はありませんか」
(;^Д^)「……はい」
( <●><●>)「強いて言うなら、人を馬鹿にして優越感に浸りたかった、と言ったところですか?」
(;^Д^)「……はい」
言い正されると、凄まじい寂しさが胸に流れた。
そう、俺はこういうむなしい男なのだ。
どうしようもない、駄目人間。
- 281 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 20:51:16 ID:P5a0WDwoO
-
( <●><●>)「……素晴らしい」
( ^Д^)「は?」
( <●><●>)「あはははは!素晴らしい!素晴らしい!」
(;^Д^)
( <●><●>)「あははははは!」
(;^Д^)(ええ……)
- 282 :名も無きAAのようです:2012/01/12(木) 20:56:49 ID:P5a0WDwoO
- ( <●><●>)「ははは!あなたはそんな!大して理由もなく!」
( <●><●>)「優越感の為だけにここまで行動するのですか!」
(;^Д^)「……」
( <●><●>)「すげぇ!ははははは……!」
( <●><●>)「はははは……失礼」
(;^Д^)(そんだけ大声で笑っときながら失礼も糞もねーだろ……)
念のために言っておくが、ここはファミレス内である。
頼んだ品をもってきた店員さんが、こっちを変な顔しながら見てる。
恥ずかしい。
- 283 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 08:23:04 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「いやぁ……ホントに、あはは」
( <●><●>)「どうしてそんなに、人を見下したいんですか?」
(;^Д^)「……ッ!」
( <●><●>)「いやいや、答え難いですよね……でも、答えていただきたいんですよ」
(;^Д^)「……」
( <●><●>)「あなた達はなぜ人類みな平等と謳いながら」
( <●><●>)「そこにある優劣をやたらと気にするのですか?」
(;^Д^)(なんだ……こいつ)
( <●><●>)「……」
(;^Д^)
( <●><●>)
( <●><●>)「なんとか言って下さいよ」
(;^Д^)「え、あ」
- 284 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 08:23:39 ID:fsGCxnVA0
- こえええええええええええ
- 285 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 08:29:27 ID:DOz2c7usO
- (;^Д^)「あ、いやぁ……だって……」
(;^Д^)(つーかなんて質問だよ。なんでこんな死の間際にまでこんな人間哲学みたいな話がしたいんだこいつ……)
( <●><●>)「はい」
(;^Д^)「そりゃあ……アレですよ。あの……なんつーかな」
(;^Д^)「アンタみたくイケメンで背も高いような……勝ち組?にはわかんないだろうけどさ」
(;^Д^)「俺みたいな人生ダメダメ……クズ人間はきっと欲しいんだよ、悪いことだとしても」
(;^Д^)「自分が最低じゃないってことを」
( <●><●>)「何を言う、あなたも最低ですよ」
(;^Д^)「……おっしゃる通りです……」
- 286 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 08:42:24 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「失礼。あなたも、そうだったのですか?」
(;^Д^)「? そう、とは?」
( <●><●>)「ずーっと人を見下したかったのかと」
(;^Д^)「ああ、……はい。ん?……んん?」
( <●><●>)「あれ。違うのですか」
(;^Д^)「ああ……どうだろ。見下す?のかは知らないけど」
(;^Д^)「ただただ、楽しかったですから。人が、自分の手のひらで踊ってるのは」
( <●><●>)「ほぉ」
(;^Д^)「だってそうだ。自分でやっといてなんだが、あんなチープな嘘にみんな簡単に引っかかった」
(;^Д^)「金持ちもいたし、普段俺に偉そうに口垂れるようなオッサンもいた」
あれ。
( <●><●>)
(;^Д^)「中身は底辺大学生の俺だよ。そんなのにやつらこぞって媚びてきて……まるで」
(;^Д^)「『ああ、所詮世の中こんなもんだったんだ』って……」
なんでちょっぴり熱くなってんだ、俺。
- 287 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 08:47:23 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「へぇ……」
( <●><●>)「世の中がわかった気でいれたと」
(;^Д^)「……それも理由じゃないかも。よくわかんない」
( <●><●>)「そうですね。わからないもんだ」
( <●><●>)「あなたは、それでいい」
( ^Д^)「えっ……」
( <●><●>)「たぶんそれでいいんだと思います。人の愚かな部分が見れたと言うなら、それを知れた幸せ」
( <●><●>)「『他人の不幸は蜜の味』は昔っからある言葉ですから」
(;^Д^)「いや、そんな不幸とか……」
( <●><●>)「違わないでしょうよ」
(;^Д^)「……はい」
- 288 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 09:06:47 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「あなた方凡人は、そうしてまでしないと自分の居場所を守ってられないんですね」
(;^Д^)「……凡人……って」
( <●><●>)「違うんですか」
(;^Д^)「……」
( <●><●>)「いや、どっちでもいいです。私から見たらあなたもそこらの人間も変わらないです」
(;^Д^)「なんだそれ、まるで……」
まるで自分が有能な人間かのような言い方。
( <●><●>)「え、私は有能ですよ?」
しれっと言いやがった。
- 289 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 12:07:23 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「見たらわかるでしょう。この顔。加えて大学院でも成績はトップレベル」
自分を指差して言う。
( <●><●>)「スポーツも並以上には出来るし、コミュニケーション力もある」
(;^Д^)「……自分で言ってて恥ずかしくないんですか」
( <●><●>)「ないですよ。全部事実ですから」
言い返せないのが腹が立つ。
しかし、むしろ稚児の開き直りにも見えた。
誰もがうらやましがる長所の羅列が、だ。
( <●><●>)「しかしそれゆえに」
( <●><●>)「私を見た友人は、なぜか皆こう言うのですよ」
( <●><●>)「『お前どうせ心の中では俺を見下してんだろ』」
(;^Д^)「……」
( <●><●>)「……知らねぇっつんだよ」
- 290 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 12:21:24 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「別に見下さねぇよ。てめえらみたいな凡人見て何になんだよ」
(;^Д^)「お」
( <●><●>)「なんでそんなに気にして欲しいんだよ。てめぇらが勝手にカスなんだろうがよ」
(;^Д^)「おい……」
( <●><●>)「わっっけわかんねぇ。なんでそんなに優劣が欲しい。なんで自分の定位置を横じゃなく縦で見つけようとする」
( <●><●>)「なんで凡人は凡人のままで変わらないんだ」
(;^Д^)「……」
( <●><●>)「……失礼」
- 291 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 12:27:41 ID:DOz2c7usO
- (;^Д^)「あんたは……」
( <●><●>)「なんですか」
(;^Д^)「その……なんつーか」
( <●><●>)
ああ、なぜだろう。
自分よりもよほど上手い人生を歩んでいるはずなのに。
幸せな世界も見れたはずなのに。
この男は。
全部ワカッテマスという人は。
(;^Д^)「……あんた、悲しいな」
( <●><●>)
( <●><●>)「……そう、ですか」
何が、とは聞かなかった。
言葉の意味は、ちゃんと伝わっていたのだろうか。
- 292 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 18:53:23 ID:2vXkSs1g0
- AKBは放り投げたまま?
- 293 :>>292書いた方がいい?:2012/01/14(土) 20:10:25 ID:DOz2c7usO
- ( <●><●>)「まぁとにかく、私でこんなんですから「
( <●><●>)「あなたも気をつけた方がいいですよ」
(;^Д^)「はい?」
( <●><●>)「世の全てをわかった気になるのはまだまだ早いですよ」
いきなり落ち着いたかと思えば、出てきたのは説教じみた言葉だった。
なんだ、偉そうに。
( <●><●>)「わかってますよ。私だって覚えがある。他人の不幸は、確かに嬉しい」
( <●><●>)「でもね、ミミカさん」
(;^Д^)「その名前で呼ぶなよ……」
( <●><●>)「他人の不幸を笑う人は、必ずどこかで別の人に笑われてます」
( <●><●>)「むしろ、その当人にも笑われてるかも知れませんね。あなたが不幸だと笑ってるものが、その人にとっては幸福かもしれませんから」
( <●><●>)「何かを知った気でいる人間ほど、何かにとらわれてるだけという事が多いのです」
(;^Д^)「俺がそうだと?」
( <●><●>)「はい」
(;^Д^)「……!」
( <●><●>)「そしてたぶん」
- 294 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 20:12:25 ID:2vXkSs1g0
- あ、休止宣言したかなんかならすまんかった
作者の気が向いたときに書いてくれ
俺は楽しみにしてます
- 295 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 20:21:05 ID:DOz2c7usO
-
「私も、ね」
それを最後に、全部さんは「そろそろ帰ろう」と一人ごちた。
帰る場所なんて、もう無いのに。
そんな最後の時間に彼は、凡人の俺から何を受け取ったのだろう。
(;^Д^)
( ^Д^)
「おれも帰ろう」
伽藍とした一人ぼっちの帰路には、みすぼらしい凡人が歩いていた。
どうやら誰かの不幸を糧に生きる彼は、
その有能な人間の無情の死を、美味と感じはしなかったらしい。
夕焼けは、孤独な時間を間延びさせる。
( ^Д^)「……『何かを知った気でいる者ほど、何かにとらわれてるだけ』……か」
( ^Д^)「……」
ふと思いつき、開いたのは携帯電話。
- 296 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 20:37:51 ID:DOz2c7usO
-
そう言えば全部さんは、最初からわかっていたのだろうか。自分がネカマだと気付かれるような素振りは一度だって見せなかったはずだが……。
と考えているうちに、答えは見つかった。
( ^Д^)
「『何かにとらわれてるだけ』―――――」
( ^Д^)
( ^Д^)「ドンピシャ、か」
( ^Д^)「うっわ俺ってば、超恥ずかしい」
- 297 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 20:39:25 ID:DOz2c7usO
-
【本名】痛すぎるネカマ、桜ミミカたんヲチスレ【指差プギャー】
『今日は3人キモヲタのふりして釣られてみたwww超喜んでたぞwww』
『昨日はF5駅にわざわざターゲットに会いにいってたぞwwww暇なのかこいつwwww』
『あ、ちなみに昨日の写メ→ttp〜〜〜〜』
そのスレッドでは、俺は稀代の馬鹿扱いをされていた。
- 298 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 20:45:23 ID:DOz2c7usO
- 死亡予告証――――――――――――――
『( <●><●>)』
氏名:全部ワカッテマス
生年月日:5月5日
本籍:○○県ギョロ町目黒区3―27
住所:○○県ギョロ町目黒区3―27
死亡予定時刻:「PM3:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:内藤ホライゾン
―――――――――――――――――――
第6話:「御飯美味《バラードラバー》」
終了。
- 299 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 21:03:21 ID:BvdxGak60
- おつ
- 300 :名も無きAAのようです:2012/01/14(土) 21:05:55 ID:zZs4H8uc0
- おおおおお!!!
面白かった
- 301 :名も無きAAのようです:2012/01/15(日) 20:28:07 ID:QbeFL./6O
- 面白いわおつ!
- 302 :名も無きAAのようです:2012/01/16(月) 00:08:08 ID:ssHw06ykO
- これも好きだけど同じくらいAKB好きだから続き凄くみたい
- 303 :名も無きAAのようです:2012/01/16(月) 15:52:26 ID:ACr/.2zQO
- 素晴らしい
- 304 :名も無きAAのようです:2012/01/18(水) 16:53:16 ID:SvRwaOi60
- ここで言うことじゃないのかもしれないけど
シチュエーションクイズってもうやらない?
あれ結構好きだったんだけど
- 305 :名も無きAAのようです:2012/01/18(水) 17:57:46 ID:fj5FYRa60
- 遅くなったけど乙
- 306 : ◆BnhUepkPaA:2012/01/19(木) 19:32:45 ID:5P9pa2e2O
- いま気付いた。いつものクセでいつの間にかタイトルの読みを()から《》にしてた……
これからは《》に統一しますごめんなさい
>>804
僕が出来るのは紹介くらいのものなので
またネタが溜まればやるかも
- 307 :名も無きAAのようです:2012/01/19(木) 20:26:36 ID:aP345p3E0
- 楽しみにしてます
- 308 :名も無きAAのようです:2012/01/23(月) 22:13:27 ID:CWQ6nk9UO
- ( ´∀`)「……君は地球温暖化の原因、知ってる?」
('A`)「二酸化炭素じゃないんですか」
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「違うらしいよ、それ」
('A`)「え」
( ´∀`)「もしかしたら主要因かもしれない、とは言われてるらしいけどね」
('A`)「……まだわかってないってことですか?」
( ´∀`)「そ。じゃあなんでこんなにCO2、CO2と叫ばれるか、わかる?」
('A`)「……」
( ´∀`)「二酸化炭素が原因、って事にしとけばとっても得する人がいるから」
('A`)
('A`)「はぁ」
- 309 :ごめんなさいさげて下さい:2012/01/23(月) 22:16:23 ID:CWQ6nk9UO
- ( ´∀`)「つまるところ、そんなもんなのさ」
( ´∀`)「真実はね、人間に悪ふざけみたいにひねくり転がされる」
( ´∀`)「そして僕らは真実を伝える必要はない。例えば目の前に転がる人間が、悪ふざけに興じていても」
('A`)「……はい」
( ´∀`)「僕が言いたいのはそれだけ。さぁドクオくん、行ってらっしゃい」
('A`)「はい」
( ´∀`)「あ、最後に一つ」
('A`)「はい?」
( ´∀`)「僕が言った言葉、も一度復唱」
('A`)
('A`)「……『人の死は、ただの統計として見、そして計れ。紙面は悲劇を語らない』」
( ´∀`)「よろしい」
('A`)「行ってきます」
( ´∀`)「はい。内藤くん、頼んだよ」
( ^ω^)「わかりました」
そう言えば僕に一人、後輩が出来た日があった。
懐かしいから、その日の話でもしようか。
- 310 :名も無きAAのようです:2012/01/23(月) 22:18:34 ID:CWQ6nk9UO
- 真面目になんか生きていけない、この人生はまるで悪ふざけ
辛すぎて、不条理で
それでも周りは歩んでいくの。
これじゃあまるで広い海。
この現実にいつかどうせ溺れてしまうなら
せめてもの間、少しの呼吸をさせて下さい。
第七話:「幻実瀬海《シュールシュノーケルシュピーケル》」
対象者:此方ミルナ
- 311 :名も無きAAのようです:2012/01/23(月) 22:41:15 ID:TodqkH8M0
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
wktk
- 312 :名も無きAAのようです:2012/01/23(月) 22:55:38 ID:FMHYcuY20
- チマチマ投下か
- 313 :名も無きAAのようです:2012/01/24(火) 00:14:39 ID:sIux6is60
- 今北支援!!
- 314 :名も無きAAのようです:2012/01/24(火) 19:59:28 ID:njZSpJq.0
- ヒャッハー 支援
- 315 :名も無きAAのようです:2012/01/24(火) 20:31:08 ID:J8eN8.qI0
- まだ?
- 316 :名も無きAAのようです:2012/02/06(月) 03:09:03 ID:Fjmu2yTw0
- こいよー
- 317 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 08:17:22 ID:noY5QRDEO
- 母がもともと弱かった体を患い、寝たきりになったのはもう1年も前の話だったか。
大学を中退し、コネをフルに利用して就職にこぎつけた俺は、
頑張りの甲斐あってか、幸せな人生を送れていると思う。
( ゚д゚ )「じゃ、行ってきます」
母「はいよ。行ってらっしゃい」
( ゚д゚ )「今日も、すぐ帰ってくるから。何か食べたいものとか、ある?」
母「ふふ、ありがとうね。でもいいよ。アンタの好きにしな」
( ゚д゚ )「わかった」
しかし、母の体は良くはならない。
それだけが今も、心の端に突っかかったままだ。
それでも自分の為、母の為、青春を棒に降った俺は、この選択を絶対に後悔しないと心に決めたのだけれど。
- 318 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 08:22:36 ID:noY5QRDEO
- 神様とやらがいるならば、本当に間の悪い話だ。
( ゚д゚ )「何かあったら連絡して」
母「はいはい。」
いや、真に悪いのはタイミングか。
就職するのは、せめてあと3年は待って欲しかったところだ。
………まぁ、これも、3年早くなかっただけ良い、と考えるしかないのだろう。
( ゚д゚ )「………」
スーツは肩回りがキツくて嫌になる。
やんちゃボーズとよく呼ばれた俺だからかも知れないが、これは拘束具にさえ思える。
着たら社会に縛られるという意味では、まさに拘束具なんだろうけど。
( ゚д゚ )
「失礼します。此方ミルナさん、ですね」
- 319 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 08:27:01 ID:noY5QRDEO
- ドアを開けてすぐに出会ったのは、同じく拘束具に身を包まれた痩せ身の男と中肉中背の男。
( ^ω^)
('A`)「朝早くに失礼します」
( ゚д゚ )「………なんのようですか」
('A`)「………この度は貴方にこの報を届けにきた次第でして」
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )「………えっ」
えっ。
('A`)「あなたに………」
('A`)「イキガミを届けに参りました」
( ゚д゚ )
(;゚д゚ )
ホントに。
神様ってやつは、なんてタイミングの悪いやつだ。
- 320 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 08:42:30 ID:noY5QRDEO
- ('A`)「つきましてはこちらがその書類と………」
(;゚д゚ )
心の臓から音が止まらない。
わけがわからない。
なぜ俺なんだ。
頭をめぐらせても、何も追いつかない。
ただ、目の前の男は耳障りな説明をやめない。
('A`)「………という事になっておりますので、こちらのカードが」
(;゚д゚ )「………うるせぇぞ」
('A`)「はい?」
(;゚д゚ )「っるせぇってんだよ!!」
(;'A`)「………はぁ。すいません」
事も無げに言い返した。
畜生。人事だと思いやがって。
(;゚д゚ )「だいたい、なんだっ……あっと、…その………!!」
(;゚д゚ )「イキガミって………」
違う。それは知ってるだろう。
イキガミは、死の知らせだ。
俺らの体にすべからく入っているカプセルが、おおよそ1000分の1で死に直結する。
俺はそれを引いたんだろう。
違うんだ。何か言い返したい。何か言い返したいが、そうじゃない。
ホントは言い返せる言葉なんか1つもない事だって、わかってる。
('A`)「ですから、あなたの死をお知らせする為の紙です。こちらがそうですが……」
(;゚д゚ )「うるせぇっつってんだろ!!」
(;'A`)
狼狽し倫理がめちゃくちゃな自分を、上から眺めて見ている自分がいた。
今の自分のこれは恥ずかしいところだが、この気持ちはどうか察して欲しいと思う。
- 321 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 08:50:24 ID:noY5QRDEO
- 『死』。
そいつの口から漏れたそれは、ひどく心に溜まる。
認めたくなかった。
俺は精神は、他人より未熟だったのだろう。
人は理不尽と不条理に耐えて生きる生き物だ。
でもきっと、多感な青春を仕事に費やした俺は
きっとこの時、キャパシティオーバーを起こしたのだ。
落ち着き達観したところで、今の自分を止める方法は知らない。
(;゚д゚ )「いらねぇよ!!そんなもん!」
('A`)「いらない、と言われましても………貴方は間違いなく明日の朝8時ジャストに死んでしまいます」
(; д )「うるせえ!!」
('A`)「という事なので、貴方は………」
(; д )「あああああああ!!!うっせぇってんだよ!!!」
そうして許容量を遥かに超えた俺は。
(; A`)「ぁがっ…!!」
実に久しぶりに、人を殴った。
八つ当たりで他人に手を出した。
ごっ、と鈍い音がして、男が倒れた。
でも、久々にスカッとした。
- 322 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 08:52:20 ID:noY5QRDEO
- (; A`)「いたたっ………」
(; д )「………」ダッ
(; A`)「あ…!」
そして俺は、逃げるように会社に行った。
( ^ω^)
そいつはずっと、後ろで見ていた。
顔色1つ変えず、ずっと見ていた。
- 323 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 09:04:58 ID:noY5QRDEO
-
――――――
(; д )「………はぁっ………はぁ………」
会社についた頃には、汗でびっしょりだった。
同僚に心配の声をかけられたが、何でもないとだけ答えた。
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )(……死ぬのかな………でも)
あまりにも変わらない仕事の風景にそんな疑問が出てきた。
そうだ。もしかするとさっきのやつらはイタズラかもしれない。
あまり確認しなかったが、きっとそうじゃないだろうか。
だって。だって。あまりにも、いつもと変わらない………
上司「あー………此方。ちょっと、こっちに来い」
(;゚д゚ )
- 324 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 09:43:39 ID:noY5QRDEO
-
別室に連れていかれた時点で、どんな用かはだいたいわかる。
上司「………あー、その、なんだ」
上司「………お前、イキガミ、貰ったんだってな」
(;゚д゚ )
(; д )
(; д )「………はい」
やはり突きつけられた。
真実だった。
上司「とりあえず……今日は帰れ。後は好きにやればいい」
上司「俺が言えるのは、こんくらいだ。今まで、ホントにありがとうな」
(; д )「………」
「はいっ………」
- 325 :名も無きAAのようです:2012/02/25(土) 10:25:07 ID:2twjpiI.0
- しかし1000分の1ってかなり確立高いよな
- 326 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 08:17:26 ID:I68CLcMEO
- ――――――
がちゃ。
ドアを開ければ、その上についた鈴がおかえりと告げてくれる。
ちりんちりん。
でもそれは、ただの皮肉にしか聞こえない。
「あら?早く帰ってくるとは言ったけど……早すぎないかい?1時間も立ってないよ」
録に目も会わせられない俺に、
それでも母は俺の後ろ姿だけ見てそう言った。
当然、俺は言葉に行き詰まる。
「あぁ、その」
「……」
「……忘れ物……しちゃって……」
言えるわけないだろう。
床に伏す母親より先に死ぬ健全体の息子なんて
( ;д; )(………)
そんなの、あるか。
- 327 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 08:24:48 ID:I68CLcMEO
- ああ、母さん。
俺はあなただけが心残りだ。
もう少しすれば、俺も俺の為に生きれたかも知れない。
あなたがよく言う、「自分だけの幸せ」をつかめたかも知れない。
しかしもう、どうやらそれはかないそうに無い。
死ぬんだ。
死ぬ。
( ;д; )
もうすぐ俺は、終わってしまう。
なぁ、どうして俺なんだ神様。
- 328 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 08:43:15 ID:I68CLcMEO
-
――――――
( "A`)「………とりあえず、会社に連絡をいれました。出勤してた様なので、これから自宅へ向かいます」
( ^ω^)「そう。よかったね。顔はもう大丈夫?」
( "A`)「はい」
( ^ω^)「ナイス強がり。それでこそ社会人だ」
( "A`)「ホントに大丈夫ですよ」
( ^ω^)「そう」
( "A`)「でも…ああやって発狂する事もあるのですね。内藤さんもあんな体験があったのですか?」
( ^ω^)「ああ………うん。あったね。あったよ」
( ^ω^)「玄関先でイキガミを渡したら中に引っ込んでしまって、帰ってきたと思ったら包丁持ってたり」
(;"A`)「うわぁ………」
( ^ω^)「『つまりあなたを殺せば私は死ななくていいんでしょ!!?』なんて言ってね。怖かったのなんの。笑っちゃうでしょ」
(;"A`)「いえ………やはり死はそれほど重いと言う事です」
( ^ω^)「きみ、優等生だったでしょ」
( "A`)「えっ?」
( ^ω^)「はは。………やっぱなんでもない」
- 329 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 08:54:45 ID:I68CLcMEO
- ( ^ω^)「なぁ………ドクオ君」
( "A`)「………はい」
( ^ω^)「ぶっちゃけ、この法律を君はどう思う?」
( "A`)「えっ………」
( ^ω^)「イキガミなんて、名誉の死なんてかこつけてさぁ………お国の為とは銘打つけど」
( ^ω^)「ぶっちゃけこんなの、ただの殺戮ショーなんじゃねえのかな?」
( "A`)
(;"A`)「………え、いや」
( ^ω^)「どう思う?」
(;"A`)「……そんな事はありません。国繁死は間違いなく名誉の死。その死はこの国の未来に生きる人々の糧となり、生き続けます」
( ^ω^)「そこで教科書通りの返答が返ってくるあたり、君はホントに優等生なんだ」
( "A`)「はい……?」
- 330 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 09:02:47 ID:I68CLcMEO
- ( ^ω^)「そんな教科書通りの言葉に頼らなきゃ生きてけない、だから優等生なんだよ」
(;"A`)「………」
( ^ω^)「………これからあの此方ミルナさんをどうするかは君に任せる。ただね」
( ^ω^)「僕の言った『優等生』とは悪口だよ。なぜなら、優等生は『優等』なだけであって優秀ではないから。どうでもいい人間につけられるものなんだ」
(;"A`)「……!」
( ^ω^)「あれ、図星?君はそう呼ばれて育ってきたのかな?まぁでもそのうち君は、必ず後悔する。だから、今から、君には」
( ^ω^)「早く変わってもらわなきゃいけないのさ」
(;"A`)「………」
( ^ω^)「ま、こんなの、モナーさんは否定するだろうがね……」
( ^ω^)「じゃ、行ってらっしゃい」
- 331 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 09:08:20 ID:I68CLcMEO
-
――――――
( "A`)「……」
優等生は優秀じゃないから優等生と呼ばれる、か。
ブーンさんは俺を、ひどくつまらない人間と、そう言った。
ひどく遠回しだけど。
ひどく曖昧だけど。
何を伝えたかったのかは、少しわかった気がする。
- 332 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 09:19:08 ID:I68CLcMEO
-
――――――公園。
( "A`)「………此方ミルナさん」
「………」
( д )「………ああ」
( д )「なんで、ここがわかった」
( "A`)「たまたまです。あなたが家にいなかったものですから」
( д )「………」
( "A`)「代わりに出てくれたのは、あなたの母親でした」
(; д )「っ!………」
(; д )「言った………のか?母に。俺が、死ぬと」
( "A`)「いえ。言ってませんよ」
( "A`)「本当なら親族の方にも報告義務があるんですがね………」
( "A`)「優しいお母様ですね。かなりお体を崩されていたようですが」
(; д )「あぁ」
- 333 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 09:25:05 ID:I68CLcMEO
- ( д )「母は……もうほとんど寝たきりの生活だ。………もう先も、長く無いだろう」
( "A`)「そうですか」
( д )「俺は、どうすればいい。他の身寄りもない。頼れる親戚もいない。金もあるわけじゃ無い………どうすればいいんだよ」
( д )「一体、母をどうしたらいいんだよ………なぁ、鬱田さん」
( ;д; )「俺にはっ………!!母に………!『アンタを残して死にます』なんて言う勇気………ねぇよ………!!」
( "A`)「………」
( "A`)「安心してください、此方さん」
( "A`)「僕があなたの母を、介護します」
- 334 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 09:35:55 ID:I68CLcMEO
- ( ;д; )「えっ………?」
( "A`)「あなたがお亡くなりになれば………遺族年金という形で、病院暮らしを出来るだけの費用は手に入ります。当面はそれでなんとかなります」
( "A`)「………後は僕が、あなたの母を最後まで必ず見守る事を約束します」
( ;д; )「なっ………」
(;"A`)「本当ならもっといい解決法も存在するのでしょうが………すみません。これ以上の方が浮かびませんでした」
( "A`)「でも、あなたの母は必ず守ってゆくと誓います。あなたの意思は必ず僕が守ってゆきます」
( "A`)「だから安心してください、ミルナさん。他にも何かあれば、言ってください。先立つあなたに、僕は一切の後悔を残させたくはないんです」
( ;д; )「………」
「………はは」
- 335 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 09:44:21 ID:I68CLcMEO
- 「………そうだな。母は………卵焼き好きだから。病院食だけじゃ寂しいだろうから」
「はい、じゃあ、作ってあげます。あまり料理は得意じゃないですけど」
「あと、花が好きだから」
「どんな花が?」
「なんでもさ。どんな花でも」
「じゃあカーネーションですね。プレゼントしておきます」
「でも、やっぱり俺が死ぬと知って悲しませたくはないな………それだけが心残りだ」
「それも大丈夫ですよ。此方さん」
「えっ?」
「実は――――――」
――――――
――――
――
- 336 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 12:08:52 ID:I68CLcMEO
-
此方ミルナさんは、そのまま息を引き取った。
最後にしたい事は?と聞いたけど、黙って首を横に振った。
「殴ってごめん。それと、母さんを頼む」
それだけ言って、そのまま世を去った。
( "A`)(………いくか)
- 337 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 12:17:00 ID:I68CLcMEO
-
――――――数時間前。ドクオが此方宅にて。
ぴんぽーん。
( "A`)「………いないのかな」
( "A`)「………」
がちゃ。
母「はい………」
( "A`)「あ………」
母「おかえり。早かったねぇミルナ」
( "A`)「えっ?」
- 338 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 12:35:15 ID:I68CLcMEO
- ――――――数日後、病院
('A`)「具合はどうだい、母さん」
母「元気も元気。あんたのお陰だよ」
母「………ミルナ」
('A`)
('A`)「………うん」
自宅介護で、自分以外の人間を連れてくる事が少なかったから
気づくのが遅れてしまったんだろう。
ほら、ミルナさん。
あなたの母は―――――もうほとんど、人間を識別出来ていない。
現にあなたを名乗る私を、一ミリの疑問も抱かず抱き締める。
耄碌しちゃって、もうろくに人の顔すら見えていない。
('A`)「………」
胸が痛い。
これが何の救いになろうか。
これが何の幸福になろうか。
「本人が幸せだから幸せ」。
そんな言葉で無責任に終わらせていいのだろうか。
自分で始めた事とは言え………こんなの。
こんなの―――――
( A )「―――――悪ふざけも、いいとこだ」
母「ん?何か言ったかい?ミルナ」
('A`)「いや……なんでもないよ、母さん……」
- 339 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 16:28:00 ID:I68CLcMEO
-
('A`)「じゃあ、今から出かけるから、母さん」
母「わかったよ。ゆっくりしてきなさいね」
ドアを閉めるまで、ミルナさんの母はこっちを見ていた。
ミルナさんを投影した、自分を。
('A`)「………ふぅ」
( ^ω^)「なに溜め息ついてんの」
('A`)「あっ………内藤さん」
('A`)「なぜこちらに?」
( ^ω^)「君がどんな選択したか見に来たんだけどね」
('A`)「………すいません」
( ^ω^)「何を謝る。立派な選択じゃないか。………まぁ、本業に支障ない程度にね」
('A`)「………はい」
( ^ω^)「ちょっと、飲みにいこうか」
- 340 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 16:35:52 ID:I68CLcMEO
-
――――――居酒屋
( ^ω^)「僕も一度やってみたかったんだよ。こうやって後輩をつれて、我が物顔で居酒屋に入ってみる」
('A`)「………はい」
( ^ω^)「悪くないな」
('A`)「………」
( ^ω^)「もう顔は大丈夫かい?」
('A`)「はい。もともと大したものでもありませんでしたから」
( ^ω^)「でも痛かったでしょ」
('A`)「そりゃあ、まぁ」
( ^ω^)「はは。こんな世の中になってもまだ、ほとんどのやつらが『自分は死ぬわけない』って考えてんだから始末が悪いね」
('A`)「いえ」
('A`)「そう考えていればいいと思います」
( ^ω^)「ふぅん」
('A`)「人間は未来に保険を置く生き物です………そうやって未来の不幸を食い潰す生き物です」
('A`)「でも、それで幸せまで食い潰していちゃあ、本末転倒だから」
( ^ω^)
(;'A`)「あ、いや、すいません。生意気言って」
- 341 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 16:43:19 ID:I68CLcMEO
-
( ^ω^)「いや、よく言った」
('A`)「あ………はぁ」
( ^ω^)「前はひどい事言ってしまったね。とりあえず君は、ただ優等なだけの人間ではなかったらしい」
( ^ω^)「君は間違いなく、優秀だよ」
(*'A`)「っ………」
('A`)「ありがとうございます」
( ^ω^)「正直ミルナさんに殴られた時は、かなり不安だったんだけどね」
('A`)「いえ……何かわからされた気分でした。これは、ただ単に人に死を伝える作業では無い」
('A`)「大切な何かを『生き繋いでいく』ことこそが大切なんだろうって」
( ^ω^)「うん」
('A`)「だからあの紙は………『生き紙《イキガミ》』と呼ばれるんでしょうね」
( ω )「………うん」
('A`)「………?」
('A`)「内藤さん?」
- 342 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 16:47:03 ID:I68CLcMEO
- ( ω )
('A`)「………あ、あの」
( ^ω^)「………そこまでわかってるならば、大丈夫だね」
( ^ω^)「例えば明日もし、いきなり君が死ぬとしても」
('A`)「はい………」
('A`)
(;'A`)「は………い?」
( ^ω^)「あのね………ドクオくん」
内藤さんの顔は、無機質だ。
向き合ってないからかも知れないが、その瞳はどこを見てるかすらもわからない。
ただ体はゆっくりと動かし、自らのバッグに手を突っ込んでいた。
( ^ω^)「僕は君に、イキガミを渡さなきゃならない」
見慣れた大きめのカードと書類が。
自らが配り続けてきた紙が。
生き繋ぐ紙が。逝き報せる紙が。意気伝える紙が。
イキガミが、僕の目の前に置かれた。
- 343 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 16:50:35 ID:I68CLcMEO
- 死亡予告証――――――――――――――
『( ゚д゚ )』
氏名:此方ミルナ
生年月日:3月7日
本籍:○○県皆町民奈3―07
住所:○○県皆町民奈3―07
死亡予定時刻:「PM9:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:鬱田ドクオ
―――――――――――――――――――
第七話:「幻実瀬海《シュールシュノーケルシュピーケル》」
終了。
- 344 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:02:52 ID:OteUuUsU0
- 乙!
相変わらず、いい文章。
早く次が読みたい。
- 345 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:04:25 ID:vojTT59g0
- 乙
ミルナ死ぬのって>>321で朝8時って言われてない?
- 346 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:10:20 ID:ErgkWCxQO
- 乙 どっくんピンチ
- 347 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:20:46 ID:I68CLcMEO
- >>345
あら、ミスしちった………。あまり本編に関係ないけどそちらを『9時ジャストに〜』に脳内変換しておいてください。
心の綺麗な人には9時に見えるはずです。
- 348 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:22:01 ID:I68CLcMEO
- と思ったら>>343がPMになってて顔真っ赤な僕
ちょっと書き直そう
- 349 :訂正:2012/02/28(火) 17:22:53 ID:I68CLcMEO
- 死亡予告証――――――――――――――
『( ゚д゚ )』
氏名:此方ミルナ
生年月日:3月7日
本籍:○○県皆町民奈3―07
住所:○○県皆町民奈3―07
死亡予定時刻:「AM9:00」
あなたの御冥福を心からお祈りします。
発行日付:○月○日
担当人:鬱田ドクオ
―――――――――――――――――――
第七話:「幻実瀬海《シュールシュノーケルシュピーケル》」
終了。
- 350 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:23:18 ID:2rC4HJNA0
- あれ?9時ジャストにしか見えない
つまり俺は心のきれいな人間なんだな
- 351 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 17:37:10 ID:GxJDnC5Q0
- 先輩、ココのサイト…まじヤバイっス(^O^)
年明けから自分書けないぐらい美味しい思いしたっス
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- 352 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 19:31:24 ID:OteUuUsU0
- 安定の面白さ
- 353 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 20:00:45 ID:HFOCoCpYO
- ドクオ…
- 354 :名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 20:21:57 ID:7/NU5EA.O
- 凄まじいモヤモヤ感
- 355 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 16:54:02 ID:e4Uvn3sg0
- >>7-8
お前らも大人になれよ
- 356 :名も無きAAのようです:2012/02/29(水) 16:54:50 ID:e4Uvn3sg0
- 誤爆
- 357 :名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 11:40:02 ID:3ZETyHmk0
- 嘘…だろ…
- 358 :名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 13:05:31 ID:q2C59ToQ0
- 7話素晴らしい
- 359 :名も無きAAのようです:2012/05/04(金) 08:34:55 ID:sJlDmfMA0
- すげぇなこれ
- 360 :名も無きAAのようです:2012/05/13(日) 21:26:35 ID:7fWAPbFgO
-
とある居酒屋に、くたびれたスーツ姿の人間がいた。
机に伏したまま、彼は慣れない酒気に身を揺らしている。
(*'A`)〜♪
鬱田ドクオ。
彼はもうすぐ、その人生の幕を閉じる。
店主「お客さん、大丈夫かい?もうかなり酒が入ってんじゃねえか。一人で帰れるかい?」
(*'A`)「うぃ……」
(*'A`)「なぁ、親父さんよ」
店主「? はい?」
(*'A`)「僕も人々の歯車として使われ慣れ過ぎて、とうに忘れてしまっていたんですけどね。今になって、ようやく実感しましたよ」
「24時間って、とーっても短いんですね。」
店主からの返答は、無かった。
- 361 :名も無きAAのようです:2012/05/13(日) 21:31:17 ID:hjDh7lbw0
- お? お?
- 362 :名も無きAAのようです:2012/05/13(日) 21:34:56 ID:7fWAPbFgO
- 溢れ変えるたくさんの人達を押し退け歩き。
跋扈するたくさんの人間と何かを成し遂げて。
愛しさを覚えるたくさんの人間と血を繋いで。
でもなぜだろう。
大切なそれが漏れるのは、いつだって誰かと一対一の時だけ。
第八話:「一体位置《トゥーマンツーマン》」
対象者:鬱田ドクオ
- 363 :名も無きAAのようです:2012/05/13(日) 21:43:45 ID:7fWAPbFgO
- 店主「…お客さん、まさか」
店主「『もらった』のかい」
(*'A`)
(*'A`)「えぇ。あと2時間ちょっと…というところでしょうか」
(*'A`)「ご迷惑ですか、ここで最後を迎えるのは」
店主「迷惑って何だよ。むしろ有り難うと言いたいくらいさ。最後の場所に、ここを選んでくれて、な」
(*'A`)「…ありがとうございます」
その言葉と共に、僕はタバコに火を着けた。
真面目な僕がこんなものに手を出していると知れば、天国にいる母はどう思うだろうか。
浮かぶ紫煙の向こう側には、今までの苦労が映るようだ。
この苦労こそが、僕の全て。
逆に言えば、僕の人生には苦労しか無かったのだろう。
- 364 :名も無きAAのようです:2012/05/13(日) 21:56:21 ID:7fWAPbFgO
- 「どうだった?最後の1日は」
後ろから声が聞こえる。
こんな聞きにくい質問をずかずか聞けるのは、たぶんあの人だ。
( ^ω^)
(*'A`)「…どうも、内藤さん」
( ^ω^)「やぁ」
相変わらずの声色。
相変わらずの笑顔。
内藤さんは僕の前ではいつもそれを崩さない。
その姿は、不気味な機械にさえ見えた。
(*'A`)「……ありがとうございます、来てくれて」
( ^ω^)「暇だったし、いいよ」
がたん。
僕の隣の席に着いた内藤さんは、安い焼酎をロックで注文した。
- 365 :名も無きAAのようです:2012/05/13(日) 21:59:33 ID:qS/3NCVE0
- おおお、待ってたぜ
- 366 :名も無きAAのようです:2012/05/14(月) 00:32:37 ID:J28ZcbAQ0
- おおおおおきてる
- 367 :名も無きAAのようです:2012/05/14(月) 00:40:52 ID:zEiSA0UY0
- そして消えた
- 368 : ◆BnhUepkPaA:2012/05/14(月) 01:35:12 ID:z/0NsIqYO
- ちまちま投下して、遅くともだいたい再来週くらいに完成予定です
期待してくれる方ごめんなさい、なるべく早く仕上げます
- 369 :名も無きAAのようです:2012/05/17(木) 19:00:09 ID:T4uU2Xz.0
- めっちゃ期待してます
- 370 :名も無きAAのようです:2012/05/27(日) 21:40:52 ID:Egofo4rw0
- まだー?
- 371 :名も無きAAのようです:2012/05/27(日) 23:53:53 ID:y50p0tWs0
- 明日一気に投下だろ?
- 372 :名も無きAAのようです:2012/06/06(水) 22:52:08 ID:shkOZ2A.0
- そして時は流れ、六月に入ってから一週間ぎ経とうとしていた…
- 373 :名も無きAAのようです:2012/06/07(木) 16:49:09 ID:S.14rN2M0
- この作者だからしゃーない
- 374 :名も無きAAのようです:2012/06/16(土) 00:56:51 ID:Vz9r.1Ms0
- 作者さんからの伝言
「ホスト規制に引っかかり、投下が出来なくなってしまった
楽しみにしてくれている人、申し訳ない」
だそうです
- 375 :名も無きAAのようです:2012/06/16(土) 12:36:03 ID:16xEqR3E0
- なんやと
- 376 :名も無きAAのようです:2012/06/30(土) 16:10:44 ID:uynqtusY0
- え、ここで規制なの
- 377 :名もなきAAのようです:2012/07/06(金) 22:37:59 ID:mSQTfaFk0
- で、どうなるんだ?
待ってればいいのか?
- 378 :名も無きAAのようです:2012/07/07(土) 14:48:22 ID:VmVzCDng0
- 待ってんぜ
- 379 :名も無きAAのようです:2012/07/24(火) 11:37:11 ID:1Rlhwvr.O
- そして7月も下旬に
- 380 :名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 22:02:43 ID:zOMd5bOU0
- そして、季節は8月を迎えた
- 381 :名も無きAAのようです:2012/09/03(月) 15:45:11 ID:1BpiCiAM0
- そしてとうとう9月がやってくる
- 382 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 19:55:39 ID:wAAWD2OU0
- 時は流れた
来る10月
- 383 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 22:17:37 ID:yIVfIMHM0
- 一応待ってるんだぜー
- 384 : ◆BnhUepkPaA:2012/10/01(月) 23:28:57 ID:RK/8q4JM0
- おまたせして申し訳ない、作者です。最近規制が解けました。
だけど、はっきり言いますと、僕いろいろやってますけど、この話、イキガミは僕の中で一番優先順位が低いです。
あれ以来モチベーションが上がらず、いっそ削除依頼してしまおうかと思ったくらいです。
さすがにそれは読者の皆に忍びないと思いましたが、それでもこの話の更新はかなり遅くなると思います。
期待してくれている方、本当にごめんなさい。
- 385 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 23:40:53 ID:3FChnuJ60
- 一番優先順位高いのってなんだ?
もしかしてあらチー第3・・・いやなんでもない
- 386 : ◆BnhUepkPaA:2012/10/01(月) 23:45:43 ID:RK/8q4JM0
- いろんな場所で言ってるんですがあらチーに関しては、まず創作板ではやらないです。
創作板が嫌いなわけではなく、単純に気分の問題でVIPでしたいです。
それと、どうせなら昔みたいな盛り上がりを見せている時に投下したいです。単なる自己顕示欲です。
ようは、イキガミ以上に遅くなるかもということです。
- 387 :名も無きAAのようです:2012/10/01(月) 23:56:18 ID:3FChnuJ60
- そうなのか残念
とりあえず、他の作品も楽しみにしてるわ頑張れ
- 388 :名も無きAAのようです:2012/10/02(火) 00:30:54 ID:2Bt2DOGA0
- まー気長に待ってるよん
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