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彼らは時の階段を上るようです- 1 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 20:45:25 ID:Cz45Vf3s0
- 来たぜ、ぬるりと……
- 2 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 20:49:07 ID:9XK3O6uIO
- 来たか…!
- 3 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 20:55:39 ID:Cz45Vf3s0
- ノリでスレ立てたけど投下はまだ先なんじゃよ
本編とは関係無い短編を書いてるので、それが書き終わったら第六話から投下を始めますん
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/37256/1311252426/l50
うrlに第五話まで投下してます。読んでくれると色々と捗る
- 4 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/27(土) 21:02:36 ID:vgiTO/C6O
- やっと来たな
- 5 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/08/28(日) 15:35:20 ID:fugf8JqA0
- 名前欄ェ……
短編も書き終わったんで見直し終わったら第六話投下します
分らん所は言って下さい。設定捻じ曲げようとも必ず答えます
- 6 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 17:57:53 ID:jcidkB9c0
- すっげぇ楽しみにしてますわ。
- 7 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:49:40 ID:fugf8JqA0
-
駅に着いた俺とブーンは改札を抜け、ドクオの乗った電車の到着を迎えた。
( ^ω^)「お疲れさん」
(;´_ゝ`)「……」
('A`)「……おう」
全身に血肉を浴びたドクオを見て、この男――西川ホライズンは何も思わないのだろうか。
この光景に慣れているのか? 俺は彼らの過去を詮索しようとしたが、知る事自体が重罪の様な気がして、すぐに止めた。
後に聞いた話だが、使針者は死んだ時点で肉体が一度完全消滅するらしい。
ドクオの体に付いた肉片もすぐに消滅し、電車内は一変して綺麗になった。
――消えるからいい、という話ではない。
三つの不良グループ、合計500人が仲間割れで負傷。内三人が『行方不明』。
今回の件は、モララーの手でそう処理されていた。
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第六話「 i can't be cool 」
―――――――――――――――
- 8 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:51:07 ID:fugf8JqA0
-
モララーの課題であった不良の一掃は難なく終わり、兄者は自分の持つ力の大きさを再確認する。
そして避けては通れぬ道、『内藤ホライゾン』に対しても再び目を向け始めた――
( ´∀`)「――きりーつ。れー。かいさーん」
从;゚∀从「教師が真っ先に帰ろうとするな! まだ一時限も終わってないから!」
( ´_ゝ`)(……土曜日曜とのギャップが気持ち悪いな)
今日は月曜日。
兄者は普段通り教室の席に座り、いつも通りのホームルームに参加していた。
使針者という役さえ無ければ、兄者も気兼ね無く学校生活をエンジョイ出来たであろう。
それこそ生ぬるい学園ラブコメの主人公、不良漫画の主人公、日常ほのぼのアニメの主人公に成り切って。
(;´_ゝ`)(俺だってそうしたいのは山々だ……)
だが、そうはいかない。
『流石弟者』と『流石父者』は能力の対価として命を落とし、母者は使針者として元気にやっているが、その消息は不明。
消息不明と言えば彼の妹、『流石妹者』も同じ事であった。
つまり、兄者の目の前には問題が山のように累積しているのである。
横堀から告げられた『保護』の誘いも今日中に答える事になっているし、内藤の件もまだ返事はしていない。
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「もう嫌だ こんな生活 止めてやる」
(;><)「突然一句詠まれても困るんです……」
- 9 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:52:56 ID:fugf8JqA0
-
( ´_ゝ`)「おお愛しのパシリ野郎。どうだ、週末は楽しかったか?」
( ><)「久しぶりに父さんと出掛けたんです。あとホモ臭い事言わないでほしいんです」
( ´_ゝ`)「え? お前の父親って確か……」
( ><)「? 昔っから一緒に住んでるんです。忘れたんですか?」
( ´_ゝ`)「……ああ、そうだったな」
( ´_ゝ`)(……ビロードの父親は随分前に蒸発したって聞いたぞ?
復縁したとしても、ビロードにその様子は何にも無かった――)
(;´_ゝ`)(――内藤の能力……? いやいや。西川はともかく俺、ましやてビロードには何の用も無いはずだ)
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「もう嫌だ 自分の性格 ウザ過ぎる」
( ><)「いや、だから一句詠まれても困るんです」
ビロードとの雑談の間にホームルームは終わり、兄者は一時限目の『準備』に取り掛かる。
カバンから教科書とメモ帳を取り出して机に広げると、さも当然の様にアイマスクを装着して机に伏せた。
( Φ_ゝΦ)「よし、寝る」
この男の中には学業への熱意など絶無なのである。
( Φ_ゝΦ)「昼休みになったら起こして」
( ><)「了解なんです」
- 10 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:53:39 ID:fugf8JqA0
-
.
- 11 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:56:45 ID:fugf8JqA0
-
( ´∀`)「――おっと授業に参加しないアホがひとり登場〜。
教師に対し居眠りがバレるとテスト0点なの知ってたか? マヌケ」
優雅に夢の世界を堪能する兄者の傍らに、教師モナーが両腕を組んで現れた。
咄嗟に頭を上げるも既に手遅れ。居眠り最長記録を更新し続ける兄者に、弁解の余地は無い。
(;´_ゝ`)(しまったッ! 一時限目は『国語』! くそッ! 今まで頭ン中からすっぽり抜け落ちていやがったぜ!)
(;´_ゝ`)(今は奴の『世界』だ……どうするッ!?)
( ´∀`)「なぁ……兄者よ、黒板に向かって『答え』を書け……(内申的な意味で)死にたいのか?」
(;´_ゝ`)「お……俺が授業に参加すれば……俺が答えれば……
ほ……ほんとに……俺の『内申』……は……どうにかしてくれるのか?」
( ´∀`)「ああ〜約束するよ〜〜〜っ。兄者の『睡眠』と引き換えのギブアンドテイクだ」
(;´_ゝ`)「……」
(#´∀`)「書け……早く書けッ!!」
現実に引き戻された兄者の前に、大きく分厚い『内申』という壁がそびえ立った。
今ここでモナーの言う事を聞けば事なきを得る。プライドさえ捨て安定の将来を選ぶのなら、今するべき事は一つ。
しかし、流石兄者はこう言った――
- 12 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:58:58 ID:fugf8JqA0
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/::ヽ. 「::::l /} /:::/ /´::::/ /´::::> ,.-.、_ __,,..、
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∧_∧ < ――だが断る
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- 13 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 21:59:39 ID:fugf8JqA0
- (;´∀`)「ナニッ!!」
( ´_ゝ`)「この流石兄者は腐っても不良……教師に屈するなんてのは『ビーストファング』の名折れだ……。
俺の積み上げてきたモンは……そう簡単に崩れやしねーのさ……」
(;´∀`)「〜〜〜〜ッ!!」
(#´∀`)「Massacre!」
(#´∀`)
( ´∀`)「……冗談モナ」
( ´_ゝ`)「あ〜分かってる分かってる。前の奴答えればいいんだろ?」
( ´∀`)「そうそう。今日もクラムボンの真理へと近づくモナ」
从;゚∀从(なんつー高度な茶番だよオイ……)
- 14 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:00:52 ID:fugf8JqA0
-
( ´∀`)「それそうと、さっき校長から 『校長室に来い』 って兄者への伝言を頼まれたモナ。
また何かエロ騒動でも起こしたモナ? キレーな女の人が一緒だったモナ」
(;´_ゝ`)「エロの常習犯みたいに言うな。あんなの、初犯で懲りたぜ」
从 ゚∀从(前科有り……っと。まぁ大した障害にはならないな)
( ´∀`)「ふむふむ……『クラムボンが炸裂した場合の被害予想』についてよく書けてるモナ」
( ´_ゝ`)「前世よりクラムボンの謎を探求する俺に死角は無い」
( ´∀`)「それじゃあ早く校長室に行くモナ。土下座する時は熱い鉄板の上がルールモナ」
( ´_ゝ`)「ヘイヘイ。行ってきますよー」
- 15 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:04:47 ID:fugf8JqA0
-
―――――
( ´_ゝ`)(ん?)
一階の校長室へ向かう途中、兄者は昇降口に人影を見た。
それが気になった兄者は、人影の居た場所へフラフラと寄っていく。
正直言って校長の呼び出しと鼻をほじる事が同義な兄者にとって、この道中の寄り道は極自然な事である。
一年から三年までの下駄箱が等間隔に並んでいる。兄者はその間を順に見ていくが、人の影は無い。
傘立てを漁り、掃除ロッカーの中も確認するが、やはり人は居ない。
――気のせいか。
そう思い、踵を返した瞬間の出来事であった。
爪'ー`)
フォックスの残像が視界の片隅に映り、次いで鉄球が直撃した――と錯覚する衝撃が兄者の体に駆け抜ける。
(#´_ゝ`)(……ったく!)
しかし兄者は顔色一つ変えず身を翻し、彼を追撃せんと迫るフォックスの拳を受け止めた。
(#´_ゝ`)「いきなり何すんだ!」
爪#'ー`)「悪いが俺も忙しくてなァ! 喧嘩できんのが今しかねェ!」
(;´_ゝ`)「アホか!」
爪#'ー`)「ああ!」
- 16 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:08:11 ID:fugf8JqA0
-
――使針者は能力を与えられると共に、筋力や反射神経、その他追随する全ての身体能力が上昇する。
そして反射神経、肉体強度の上昇はその最たる物であった。
放たれた銃弾の弾道さえ把握し回避する事もでき、能力を使わずとも、使針者は常人を圧倒する強さを持ち合わせている。
(;´_ゝ`)(――なのに!)
その筈なのにフォックスの攻撃は捉えるのが精一杯。拳も蹴りも、捌いて防ぐのが限界だった。
一撃一撃が重く、数発食らった今でさえ、兄者の腕には莫大な負担が掛っていた。
防戦一方。今が正にその状態であり、兄者の最も嫌う展開であった。
兄者は反撃の時を見計らい、フォックスが拳を引く一瞬を狙って前に出る。
思惑通りフォックスの懐に飛び込んだ兄者。残すは、全力でフォックスの腹を打ち抜くだけであった。
しかし思惑通りなのはフォックスも同じだった。
兄者の拳を掴み取り、フォックスはバックステップと共に手前に兄者を引きこむ。
それと同時に突き上げられた片膝は、兄者の顔面に向けて放たれたものだった。
自分の動きが予測されていた事に気付いた兄者だが、既に逃げ場も避ける方法も皆無。
フォックスとの読み合いに負けた事のショックも大きいが、兄者は何より先にこの状況の打開策を練っていた。
――そうして思いついたのが、『逆に突っ込む』という作戦だった。
.
- 17 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:09:43 ID:fugf8JqA0
-
(;´_ゝ`)(間に合うか!?)
爪'ー`)(これでリベンジは果たし――)
爪;'ー`)「――ッツ!?」
兄者はギリギリの所で頭の軌道を変え、自身の額をフォックスの膝にブチ当てる事に成功。
額と膝が激突し、ダメージ受けたのはフォックスであった。
激突の衝撃で脳を揺らされた兄者。
歪む視界もそのままに、彼は飛び退いて態勢を戻す。
荒れた呼吸。腫れた両腕。血の垂れる額。
この状況、どうみても兄者が負けていた。
(;´_ゝ`)(フォックス……いつの間に強くなった? 前は俺の勝ちだったろうに……)
爪'ー`)(……いいねぇ、いい塩梅だ。それでこそ――って奴だ!)
フォックスは兄者めがけて跳躍し、落下の力も加えた手刀振り下ろす。
直撃はヤバい。
しかし逃げ場も避ける方法も皆無。先程と同じく、兄者は全面衝突を覚悟する。
兄者は利き手を引いて力を込めると、全力を持って手刀へ向けて打ち出した――
――フワリとフォックスの体が宙に舞う。
兄者の拳が直撃したのではない。まるで衝撃を相殺、吸収されたかの様な感覚。
フォックスは兄者の拳を起点に空中で一回転。
彼の本命は『踵落とし』。フォックスの足は寸分狂わず兄者の頭蓋を捉え、間も無く直撃しようとしていた。
- 18 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:11:27 ID:fugf8JqA0
- 『手刀は囮だった』と気付くも手遅れ。
『一秒』もすればフォックスの足が直撃し、病院送りは免れない。
だが能力を使えば話は別であった。
(; _ゝ )(――――ッ!)
そして、それからの一秒は余りにも無情で無意味だった。
他の一切を拒む無敵の力、『無慈悲な馬鹿野郎≪マーシレス・イディオット≫』
喧嘩の醍醐味さえ一蹴する『能力』。それを発動した時点で兄者は悟る。
俺は負けた。
爪; ー )「なッ!?」
蹴りが兄者の体に触れた瞬間、フォックスの体は予兆無くブッ飛び壁面に叩き付けられる。
次いで壁は崩落し、砂煙を上げてフォックスに降り注いだ。
(;´_ゝ`)「おい! 大丈夫か?」
(゚、゚トソン「……心配は無用です」
(;´_ゝ`)
(;´_ゝ`)「……お前……」
咄嗟に駆け出した兄者を制止したのはトソン。
まるで忍者の様に気配を消して現れた彼女は、眼光鋭く兄者を睨み付ける。
少しして兄者が立ち止まるのを確認すると、彼女は踵を返し、瓦礫に埋もれたフォックスを一瞥する。
- 19 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:12:22 ID:fugf8JqA0
- (゚、゚トソン「まったく……」
彼女は瓦礫に歩み寄り、埋もれたフォックスを引っ張り出して胸倉を掴みあげ、振り回した。
これが怪我人への処置として正しいかと聞かれれば、当然間違っている。
しかし、骨の一本二本は折れているであろう病み上がりのフォックスは、意外にもその処置で目を覚ます。
爪'ー`)「……ん、起きた起きた」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚#トソン「起きなさい!」
爪;'ー`)「えっ」
爪; Д )「起きてる! 起きてるって言ってんだろうが!」
(゚、゚#トソン「なんで起きてるんですか!」
( ´_ゝ`)(わぁ、流れるような禁じ手だぁ)
投げてからの関節技、絞め技の連続攻撃。続けて鳩尾への肘打ち、金的へのコーナーキック。
兄者曰く、トソンの攻撃は清々しい程に禁じ手ばかりである。
特に金的コーナーキックは見ていて苦しいものがあった――金的とは金玉の事である――
(゚、゚トソン「さて」
(;´_ゝ`)そ ビクッ!
(゚、゚トソン「フォックスが御迷惑を掛けました。まだまだ貧弱な癖に……」
(;´_ゝ`)(いやいや! 金玉蹴られれば誰だってこうなるって!
ヤバい! フォックスが栽培マンの自爆を食らったヤムチャみたいになってる!)
- 20 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:13:22 ID:fugf8JqA0
- (゚、゚トソン「何やら物騒な音がしたので来てみたら、案の定フォックスが闇討ちを……」
(‐、‐トソン「……本当にすみませんでした」
(;´_ゝ`)「そ、それじゃあ俺は用があるんで……」
爪 )
( ´_ゝ`)(嗚呼フォックス、打ち止めになっても強く生きろよ……)
かくして喧嘩は幕を閉じ、一時の喧騒は嘘の様に消え去った。
兄者は校長室へと急ぎ、トソンもフォックスを連れて教室へと戻ろうとするが――
(゚、゚トソン「よいしょっと」
(゚、゚;トソン「……あー」
( ^_ゞ^)
( ^_ゞ^)「いま、授業中」
(゚、゚;トソン「先生……」
(#^_ゞ^)「……壊れた壁」
(゚、゚;トソン「あの」
(# _ゞ )「……股間を押さえる狐鳴フォックス! どうしてそうなった!」
(# ゚_ゞ゚)「どうやら、VIP高校伝統の『四次元説教』を執行する必要がありそうですねェッ!」
――とんだトバッチリを食らったのは語るまでも無い話である。
- 21 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:14:05 ID:fugf8JqA0
-
.
- 22 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:15:25 ID:fugf8JqA0
-
―――――
(;´_ゝ`)「はぁ……」
(;´_ゝ`)(腕痛すぎワロ……笑えないぜ、全く……)
校長室の扉をノックしようと腕を上げた兄者だが、先の喧嘩で受けたダメージが今になって響いてきた。
学ランを捲ってみると、自身の両腕が赤く腫れ上がっているのが確認出来る。
忙しい鼓動を抑えつつ、兄者はフォックスの変化についてその驚きを爆発させた。
(;´_ゝ`)(“男子三日会わざれば”とはよく言ったもんだ)
(;´_ゝ`)(今までの一年……フォックスの野郎、一体何してたんだ?)
(;´_ゝ`)(能力も無しに俺と……ましてや、ブーンとドクオのコンビも相手にしたんだろ?)
(;´_ゝ`)(っていうか今日だよな、アイツの退院……って事は病み上がりであの馬鹿力かよ……)
(;´_ゝ`)(……萎える話だ。使針者の恩恵が無かったら――)
ノパ−゚)「――入らないのか?」
( ´_ゝ`)「……いや、入るけどさ」
( ´_ゝ`)
(;´_ゝ`)(え!? 何!? 今って気配消すのが流行なの?)
不意に現れた白衣の女性。その紅色の髪は何とも言えず神秘的である。
新しい保険医か? 兄者が声を掛けるのも待たず、彼女は校長室の扉を押し開けた――
- 23 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:17:18 ID:fugf8JqA0
-
/ ,' 3「おお、いらっしゃい」
そしてこの男。VIP高校校長、荒巻スカルチノフ。
校長室には高級な机や椅子があるにも関わらず、荒巻はソファに座ってテレビゲームに興じていた。
傍らには保健室登校の生徒が居り、皆楽しそうにテレビ画面を見つめている。
/ ,' 3「お客さんじゃ。ゲームはここまで、勉強してきなさい」
( ´_ゝ`)
――この爺は御人好しだ。
この男は俺の様な不良、彼らの様な不登校生徒も難なく入学させてしまう。
金銭面が苦しい生徒、病気や事故に遭った生徒には金銭有る限りの援助をし、常に生徒を守ろうとしている。
学力なんぞお構い無し。個人の自由、発想、行動を全て肯定する。それがVIP高校と言う場所だ。
創立から――何年経ったかは知らないが、この男は俺の恩人である。俺は入学式の日を一生忘れないだろう。
/ ,' 3「二人とも座ってくれ。今茶菓子を取ってくる」
( ´_ゝ`)「おう」
( ´,_ゝ`)(……相変わらず、か)
思わずニヤニヤする兄者。
兄者が心許した数少ない人間が変わらず居る、という事は、彼にとっては何よりも安心出来ることだった。
- 24 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:19:43 ID:fugf8JqA0
-
横長のソファが一対に置かれており、兄者は女性と並んで座り――
ノパ−゚)
( ´_ゝ`)(……誰だコイツ)
――最初に気付くべき事に気付いた兄者。
/ ,' 3「よいしょっと」
遅れて荒巻もソファに座り、持ってきた茶菓子で一息つく。
のどかな光景ではあるが、兄者は横に座る女性への警戒を解いていなかった。
( ´_ゝ`)「……爺さん、この人は何だ?」
/ ,' 3「む、当ててみなさい」
( ´_ゝ`)「……じゃあ俺に何の用だ? さっき壁をブッ壊した位しか心当たりが無いんだが」
/ ,' 3「相変わらず切り替えが早いのう。実に若者らしいが……不良っぽくは無いな?」
荒巻は乾いた声で笑い、それが止むと同時に兄者の目をぐっと見据えた。
年寄りの眼光とは侮れないものだ。兄者はキュッと身を強張らせ、荒巻の言葉が出るのを待つ。
/ ,' 3「……『使針者』」
そして一言、荒巻は呟いた。
- 25 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:20:47 ID:fugf8JqA0
-
( ´_ゝ`)「敵か」
兄者の即答に荒巻は首を横に振る。
おっとりとした空気から一変。糸が張った様な空気になった今、荒巻は再び口を開いた。
/ ,' 3「それは横の女性と、お主の返答次第じゃて」
ノパ−゚)「――では返事を聞こうか、流石兄者」
兄者はその口調に心当たりがあった。
むしろ彼は、これほど機械的な人間を他に知らない。
先週の金曜日、俺に『保護』の誘いを持ち掛けてきた男、横堀。
その女版とでも言える人間が兄者の隣に座っていた。
(;´_ゝ`)「まさか……横堀、なのか?」
ノパ−゚)「……ああ。もっとも、今は能力を解除しているから生身だ。この姿は、私の表向きの姿だと思ってくれ」
/ ,' 3「初見で見破られて悔しそうじゃのう? 横堀」
ノパ−゚)「うるさい」
白衣の女性――横堀は荒巻の隣に座り直し、再三兄者を見据え、再び同じ質問を兄者に投げ掛けた。
ノパ−゚)「単刀直入に言おう。お前を『保護』しに来た……どうする?」
.
- 26 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:21:52 ID:fugf8JqA0
-
―――――
<ヽ ∀ >「え〜っと……一人、二人……」
<;ヽ ∀ >「……四人、五人……?」
ハハ )ハ「ニダー、語尾忘れてる」
VIP高校の門前、一組の男女がVIP高校を見上げて立ち尽くしていた。
<;ヽ`∀´>「ああ、ごめん……ニダ」
ハハ ロ -ロ)ハ 「で、中のターゲットは本当に五人も居るの?」
<ヽ`∀´>「ああ、僕の能力で見る限りは確かだ。強そうな奴も居るから……的は三人に絞ろう」
ハハ ロ -ロ)ハ 「ニダー、語尾と一人称」
<ヽ`∀´>
<;ヽ`∀´>「……よし! さっさと倒しに行くニダ!」
男は腕をグルグル回しながら門をくぐり、女も追って門をくぐる。
- 27 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:31:29 ID:fugf8JqA0
-
ハハ ロ -ロ)ハ 「作戦は?」
<ヽ`∀´>「いつも通り」
ハハ ロ -ロ)ハ 「……相変わらずのグッドアイデア」
<ヽ`∀´>「あ、でも『荒巻』って奴には気をつけるニダ。そいつが恐らく、この敷地内で最強の能力者ニダ」
<ヽ`∀´>「……それじゃあ始めるニダ」
ハハ ロ -ロ)ハ「オーケー。ワイルドな奴が居るのを期待するわ――」
「――【ザ・クラフター】」
「――超振動≪ハウリング≫」
.
- 28 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:32:09 ID:fugf8JqA0
-
―――――
束の間の沈黙。
兄者の思案はすぐに終わり、彼は答えを口にした。
( ´_ゝ`)「……俺はブーンとドクオ、二人と一緒に行動する」
ノパ−゚)「そうか」
ノパ−゚)
/ ,' 3「スカウトが失敗して悔しそうじゃのう? 横堀」
ノパ−゚)「うるさい」
ノパ−゚)「……それじゃあ私は仕事に戻る。その選択、後で後悔するなよ。何があっても」
横堀はソファを立ち、凛とした足取りで校長室を後にした。
残った二人はお茶を啜り、手元の菓子をつまんで暇を潰し始める。
( ´_ゝ`)
/ ,' 3
――が、その手は不意に、ピタリと止まった。
.
- 29 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:33:17 ID:fugf8JqA0
-
/ ,' 3「……静か、じゃのう」
( ´_ゝ`)「ああ、まるで学校中の生徒が『消えた』みたいだ」
それを最後に会話は止み、二人は耳をそばだてた。
ここは学校。授業中とは言え、少なからず生徒の声が聞こえる筈だ。
それが一切聞こえてこない。他にも、道路を走る車の音や煩わしいセミの鳴き声さえ消え去った。
唐突な無音。
故に、この状況が『異常』である事は明白だった。
/ ,' 3「横堀、外はどうなっとる」
「察しの通りだ。人の気配がまるで無い」
荒巻の問いに廊下の横堀が答える。
横堀も同様、この事態に思考を巡らせていた。
(;´_ゝ`)「なぁ、これって――」
/ ,' 3「兄者、対能力者は初めてか?」
(;´_ゝ`)「……いや、土曜にブーンと、一度だけ」
/ ,' 3「いいか。これ程の所業をワシらに気付かれず完遂した時点で敵は並大抵の者ではない。
能力は『秒針』でも上位、運が悪ければ『分針』は確実じゃ」
(;´_ゝ`)「……ああ、そうだな」
- 30 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:34:00 ID:fugf8JqA0
-
/ ,' 3「敵を見つけた時はワシと二人で戦う事になるが……お主の能力には弱点も多い、遠慮無くワシを頼れ」
(;´_ゝ`)「爺さん……随分と手慣れてるな」
/ ,' 3「ジジイはどの世界でも最強。それが王道ってもんだろう?」
不敵に笑みを浮かべる荒巻は、短く「行こう」と兄者に告げてソファを立った。
曲がった背中、掠れた声、真っ白な髪。
兄者はその全てが、何故だか不思議と頼り甲斐のある物に見えてならなかった。
( ´_ゝ`)(また後で色々聞かないとな)
/ ,' 3「……よし、ワシに続け」
兄者と荒巻は横堀と合流し、ひとまず安全な場所を探すべく、校内を慎重に探索し始めた――
- 31 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:35:06 ID:fugf8JqA0
-
――『二階。とある教室』
(;´_ゝ`)「本当に人が居なくなってやがる……」
窓辺から外を見渡す兄者。
広がっているのはいつも通りのVIP町。だが、人の気配も音も無い。
この教室までの経路も同じ事で、この世界には兄者達以外の人間は誰も居ないようだった。
/ ,' 3「……『一定範囲の空間を操る能力』」
(//‰ ゚)「それも、かなり強力な代物だな」
(//‰ ゚)
( ´_ゝ`)(……あれ……?)
今起きた事をありのままに話すと、先ほどまで『女』の姿だった横堀が『男』になっている。
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)
(;´_ゝ`)「オカマッ!?」
(//‰ ゚)「違う。俺の能力だ」
- 32 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:36:55 ID:fugf8JqA0
-
(;´_ゝ`)「えぇ〜? さっきまで普通の女医だったのに……」
ノパ−゚) 【ビフォー】
↓
(//‰ ゚) 【アフター】
( ´_ゝ`)「……今は野郎か。なんか萎えた」
既に白衣は脱ぎ捨てて、横堀は完全武装の機動隊の様な格好になっていた。
迷彩服に防弾チョッキ、加えて腰には三丁の拳銃が携えてある。
長かった紅色の髪も、今では藍色の短髪になっていた。
/ ,' 3「安心していいぞ。元々横堀は女、野郎になるのは仕事の時だけじゃ」
( ´_ゝ`)「なんだ! 表の顔って、オカマバーの店員って意味じゃ無かったんだな!」
(//‰ ゚)「一応言っておくが、俺の能力は『生命を機械化する能力』だ。
今はその能力で体と性別を変えている。男の方が何かと動きやすくてな」
( ´_ゝ`)「セルフ性転換か。新ジャンルだな」
/ ,' 3「……話を戻そうじゃないか」
.
- 33 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:38:12 ID:fugf8JqA0
- ( ´_ゝ`)「で、これは『敵』が来たっていう事でいいのか?」
(//‰ ゚)「今は敵の数も能力も分からんが、俺の推測だと敵は数名。
下手に攻撃して来ない所を見ると、どうやら敵は中々の手足れのようだ」
/ ,' 3「うむ、ワシも同意見じゃ。空間を操る能力者と……そう、攻撃専門の能力者のコンビかのう」
(//‰ ゚)「前者の能力の程度が分からない以上、バラけて動くと各個撃破される恐れがある。
そして、いずれ始まる戦闘において地の利を得ているのは敵だ。勿論の事だが気を抜くなよ」
( ´_ゝ`)「なんでそんな事分かるの? エスパーなの?」
/ ,' 3「ワシの能力は知っての通り、戦力としては中途半端じゃ。大部分は横堀と兄者に頼る事になる」
(//‰ ゚)「決め手は流石兄者か……」
( ´_ゝ`)「なんなの? 無視なの?」
.
- 34 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:39:11 ID:fugf8JqA0
-
「――いいえ、あなたを無視してる訳じゃないわ。その問いの答えは『ノー』よ」
- 35 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:40:09 ID:fugf8JqA0
-
――誰か、女の声。それは『敵』の声に間違い無かった。
現に教室の扉、その向こうに 『敵が居る』 。
(;´_ゝ`)「お、おいッ!」
兄者は驚き声を上げる。
しかし、荒巻も横堀もまるで 『聞こえていない』 様な素振りで会話を続けた。
「無駄よ。貴方の声は私によって掻き消され、二人の耳には届いていない」
「知ってる? 音っていうのは振動。つまり――」
ハハ ロ -ロ)ハ 「私に掛かれば暗殺なんて、数学の計算式よりも簡単なの」
扉が開き、敵が教室内に入る。
扉の音も足音も、気付いているのは兄者一人。
――そしてこの時、兄者の中では一つの感情が爆発していた。
それは今までに感じた事の無い、不良の喧嘩では知る事の出来ない未知の感情。
ハハ ー )ハ「――超振動≪ハウリング≫」
敵、ハローが威勢良く言い放つと同時に兄者の体は震えた。
- 36 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:41:11 ID:fugf8JqA0
-
――やっとか。
微笑む兄者は両目を見開き、敵の攻撃を今か今かと待っていた。
喧嘩では知る事の出来ない感情とは『スリル』と言う名の高揚感。
不良になる以前から血沸き肉躍る戦いを欲していた兄者。
一筋縄ではいかない相手とは、兄者にとって最高の『玩具』であった。
鬱憤の溜まっていた兄者にとって、このスリルは恍惚する程に待ち侘びた感情。
( _ゝ )
――やっと獲物が現れた。
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第六話「 i can't be cool 」
―――――――――――――――
- 37 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/28(日) 22:48:14 ID:fugf8JqA0
- / ̄\
| ..|
ノ つДノつ
| |
LJ ̄LJ
ゾーンプレス斉藤
こいつの事も……忘れないで下さい……。
次の投下は来週だと思います。早ければ人知れず投下します
感想やら批評やら質問、ドンと来い
- 38 :29日・30日「納涼夏祭り」:2011/08/29(月) 19:30:15 ID:8C3vGmpoO
- 読みおわった
ゾーンプレス斉藤初めて見た気がする
ググったらえらい昔からあるみたい
- 39 :名も無きAAのようです:2011/09/02(金) 00:36:50 ID:lUdqV25w0
- 次の投下は少し先になる
スレ自体チラ裏だから問題無いが
チラ裏と言えば、各話タイトルは曲名から引用しているという小ネタがあるが割とどうでもいい
- 40 :名も無きAAのようです:2011/09/08(木) 22:53:11 ID:AQmU2jG60
- 明日明後日あたりに投下しますん
- 41 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:08:51 ID:EQO1sTAc0
- 俺のスレは下げ時々投下……
いいね! いい環境だよ!
投下するっ……!
- 42 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:09:39 ID:EQO1sTAc0
-
<ヽ`∀´>(……ハローを無事ターゲットの場所まで誘導出来た。後は、彼女次第だ……)
ニダーは戦いを好まない性格であった。
確かに能力を得る前は強欲、横暴、傍若無人な人間ではあったが、今ではすっかり落ち着いた参謀である。
彼は誰も居なくなった校舎の中、視聴覚室に身を潜めていた。
真っ暗な教室を照らしていたのは、宙に浮かぶ無数のディスプレイ。
そこには校舎内の様子が分割されて映し出され、当然今までの兄者達の行動もニダーには筒抜けだった。
『……指示はもう無い? もうイタズラ始めちゃったけど』
椅子に掛けてディスプレイを見ていると、通信機からハローの声が聞こえてきた。
<ヽ`∀´>「ああ、もう始めても構わないよ。最初は一番弱い、学ランの奴を狙うといい」
『分かったわ……語尾、忘れないようにね』
<ヽ`∀´>「ああ。後は任せたよ」
通信が切れ、ニダーは再びディスプレイに目を向ける。
『 ( ´_ゝ`)「何なの? 無視なの?」 』
ハローに声を消されて困惑する兄者。ハローの言うイタズラとはこの事で、彼女はそのネタばらしをしながら教室に足を踏み入れる。
この様子、一見兄者とハローだけが互いの存在に気付いているようで、実は違う。
『 / ,' 3 』
――荒巻は誰より早く、ハローの存在に気付いていた。
.
- 43 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:10:20 ID:EQO1sTAc0
-
<ヽ`∀´>(……荒巻スカルチノフ。奴は気付いている。ハローにも僕にも……なのに何故動かない?)
<ヽ`∀´>「……ん?」
その時、兄者達の映るディスプレイとは別の、一際大きなディスプレイが激しく明滅した。
上空からのVIP高校の映像を、『DANGER』という赤文字が塗りつぶしている。
これは何処かに馬鹿デカいエネルギー源が発生した事を指しており、ニダーはすぐさまコントロールパネルを表示しエリア内を隈なく見回る。
<;ヽ`∀´>「こいつか……!」
検出されたのは『ターゲット3』。それは流石兄者の事であった。そして、その兄者に最も近いのはハローだった。
何が起きるか分からない以上、彼女をあそこに置いておく訳にはいかない。
一抹の不安に焦りながら、ニダーは通信機を取ってハローに呼び掛ける。
<;ヽ`∀´>「ハロー! 今すぐそこから離れろッ!」
瞬間、全てのディスプレイから焦燥感を煽る警告音が鳴り響き、画面の危険信号が辺りを真っ赤に染め上げた。
<:ヽ`∀´>「――不味い!」
.
- 44 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:11:05 ID:EQO1sTAc0
-
.
- 45 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:11:45 ID:EQO1sTAc0
-
(//‰ ゚)「……荒巻。お前、分かっていてやったな」
/ ,' 3「どうだか」
彼らの見上げた視線の先には、巨大な風穴を幾つも開けられたVIP高校があった。
それにより校舎のおよそ半分が『消滅』している。それを誰がやったのか――いや、やらせたのか。知っているのは荒巻だけだった。
/ ,' 3「とりあえず兄者を休ませてくれ。ワシは……後始末に行ってくる」
(//‰ ゚)「待て。事情を――」
/ ,' 3「後でな」
聞く耳持たず。
荒巻は軽く準備運動をすると、淡い残像を残して姿を消した。
.
- 46 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:12:39 ID:EQO1sTAc0
-
ハハ;ロ -ロ)ハ「くっそ……」
ハローはそう呟き、教室の床に拳を叩きつけた。
彼女の見上げる先に天井は無く、ニダーによって造られた、偽物の空が広がるばかりだった。
床に寝転び助けを待っている自分が情けない、とハローは思った。
あの瞬間、目の前で何が起きたのか――右足を失い、意識も霞む彼女には、到底理解しえない事だった。
彼女の右足があった所を血が流れている。
一応の処置により出血は微々たる物だが、ニダーの助けが遅くなれば、出血多量で彼女は死ぬだろう。
片足で視聴覚室へ行く事も考えた。しかし落下の衝撃で、左足も使い物にはならなかった。
小さな風が彼女を煽る。
ハハ;ロ -ロ)ハ「……ニダー?」
/ ,' 3「残念。外れじゃ」
ハハ ロ -ロ)ハ「……そう」
ハローは表情を凍らせた。
/ ,' 3「安心しろ。殺しはせん。少なくともワシは、お主の様な若い芽を摘む趣味は無い」
ハハ ロ -ロ)ハ「……何勘違いしてるの? 私はまだ戦え――」
.
- 47 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:13:36 ID:EQO1sTAc0
-
折れた片足に力を入れ、無理矢理立ち上がったその時、ハローは戦慄した。
――後ろで束ね上げた白髪。上は黒のタンクトップ、下は白のボンタン。
無駄なく洗練された肉体からは、およそ人の一生では獲得出来ない『重み』とも言えるオーラが漂っていた。
荒巻の容姿を見た瞬間、ハローの脳裏にニダーの言葉が駆け抜ける――『荒巻には気をつけろ』。
ハローはその言葉の意味を瞬時に理解し、ニダーの言葉が全くの『無意味』であった事を結論付ける。
/ ,' 3「どうした。泣いているのか」
焦りで収縮する精神の中、荒巻の言葉が『慈悲』や『憐れみ』を与えるものではないと彼女は分かっていた。
荒巻の言葉に抑揚は無く、彼女は心臓を握り潰される様な感覚の前に、理性を失った。
『今死にたいのか?』
荒巻の『重み』に負けた今、彼女の耳は幻聴だけを響かせている。
<;ヽ`∀´>「ハロー! 大丈夫か!?」
教室の扉を横に叩きつけ、大声を上げて現れたニダー。
ニダーは教室内を即座に一瞥し、反射的にこの状況がヤバい事を悟る。
だが、何故か彼の体は微動だにしない。
.
- 48 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:14:48 ID:EQO1sTAc0
- / ,' 3「お主達に頼みがあるんじゃ」
恐怖や絶望に代わる存在が口を開いた。
/ ,' 3「今からワシは仲間と合流する。お主達にはその場に現れ、『逃がしてくれ』と懇願してもらいたい」
/ ,' 3「何があろうと『逃がしてくれ』と頼み続けるんじゃ。それだけ……それだけじゃ」
荒巻はそう言い、何事も無かったかのようにハロー達に背を向けた。
絶好のチャンスだった。
ハハ;ロ -ロ)ハ「ハウリ――」
<;ヽ`∀´>「止めろッ! ……止めるんだ……」
ニダーは分かっていた。
ハローの死角――背後に浮かんだ巨大な掌が、いつでも彼女を殺せる事を。
これが純な頼みでなく、ハローの命を対価にした命令だという事も、ニダーは分かっていた。
<;ヽ ∀ >「止めてくれ……」
誰に向けた一言なのか、ニダーは震えた声でそう呟いた。
/ ,' 3「それでは、また後でな」
荒巻の姿が消えると同時に、ハローの背後の掌は消滅した。
<;ヽ`∀´>「ハロー……」
緊張の糸が切れると、ニダーはすぐさまハローに駆け寄り、彼女の体を抱きしめた。
- 49 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:15:28 ID:EQO1sTAc0
-
.
- 50 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:16:09 ID:EQO1sTAc0
-
流石兄者は夢を見ていた。
坑道の様な一本道。壁面の上部をランタンが灯し、遠くで光が一点に集束している。
その道を真っ直ぐ行くと、突き当りには真っ白に塗装されたデスクが置いてあった。兄者はデスクに手を伸ばし、そこに置かれた手帳に触れた。
夢はそこで終わり、兄者は芝生の上で目を覚ました。彼は辺りを見回すが、ここがどこだか思い出せない。
兄者は記憶を遡り、画像として脳裏に焼きついたものを一枚一枚見直していく。
(//‰ ゚)「気がついたか」
(;´_ゝ`)「……」
間もなく横堀が声を掛け、兄者は瞬時に事態を把握した。
- 51 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:16:51 ID:EQO1sTAc0
- ( ´_ゝ`)「……ここは?」
(//‰ ゚)「俺は知らないが、設備が整っているのを見ると、学校管轄の植物園といった所だろうな」
彼らは木々に囲まれた場所に座っていた。天井まで伸びた草木が光を遮っている。
雑草が隙間無く地面を覆い、ざっと見た所、人の手が加わっていない天然の自然にも見えた。
兄者は樹木に背を預け、その光景を一瞥する。
頭の回転が遅い。兄者は現在位置を思い出すのに、数十秒を要した。
(//‰ ゚)「手を貸そう」
兄者は差し出された手を取って立ち上がり、横堀に問い掛ける。
( ´_ゝ`)「一体何が……いや、俺は何をした?」
(//‰ ゚)「……さぁな。ただ、俺が見ていた限り、あれはバグや暴走の類だった。
現象として伝えるのは容易いが、納得するには荒巻の話を聞くしかない」
( ´_ゝ`)「そうか……」
(//‰ ゚)(……事情を知らないのは俺だけか)
横堀は比較的驚いた口調で語っていたが、それでも彼の表情は変化しなかった。
兄者は横堀のそういう所が苦手であったが、今ばかりは気が楽だった。
(//‰ ゚)「荒巻が待っている。行くぞ」
植物園――VIP高校園芸部の部室を後にし、彼らは荒巻との合流場所へと走り始めた。
.
- 52 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:17:42 ID:EQO1sTAc0
-
/ ,' 3「――こうなる事は予期していた」
再び校長室で顔を合わせた三人は、荒巻の用意した茶菓子に目も暮れず、彼の話に耳を傾けていた。
兄者は荒巻と向かい合ってソファに座り、横堀は少し離れた壁に背を預けている。
/ ,' 3「兄者の入学式の時も同じ事が起きた。そりゃ今度みたいに能力は無かった……、だが、それでも多数の被害者が出たのは事実」
/ ,' 3「そして今回、ワシは兄者を暴走とも言える状態にさせた。その意図はたった一つ。この先の戦いに、その力が必要だからだ。
無能力であれだけ暴れたお主を暴走させるのは賭けだった……運が悪ければ全員が死ぬとまで考えてた」
/ ,' 3「……いや、言い方が甘いな。ワシは、兄者の精神を一時的に破壊した」
( ´_ゝ`)「……」
/ ,' 3「正直すまんかった。だが、おかげでお主の能力も、強制的ながらも進化した」
/ ,' 3「兄者。お主は今、コーラを振って開けた様な状態じゃ。能力が不安定で出力も調整出来ないだろう。
修行にはワシが付き合う……安心しろ。暴走したらワシが抑える」
(//‰ ゚)「十分の気絶を代償に、周辺の物を見境なく消滅させる能力か……『アンチ』らしい能力だ」
横堀は続けて言う。
(//‰ ゚)「荒巻、後始末は終わったのか?」
誰も横堀の相手をしない。そして、その不意の沈黙を破ったのは、校長室の扉を『ノック』する音だった。
.
- 53 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:18:57 ID:EQO1sTAc0
-
/ ,' 3「入れ」
(;´_ゝ`)「は!?」
荒巻の一言に兄者は驚愕した。横堀は表情こそ変えないが、既に腰から拳銃を引き抜こうと身構えている。
扉の向こうに誰が居るか予想出来ない荒巻ではない。それが何故? 兄者は動揺しつつも、校長室の扉を見据えた。
<ヽ`∀´>「失礼します……」
学生の手本の様な入室をし、入ってきたのは一人の男だった。兄者と横堀は、彼の名前を知らない。
男の声は震えていた。それでも足を止めないのは、彼の中に確固たる決意がある証拠だろう。
兄者には、彼に敵意があるように見えなかった。
(//‰ ゚)「動くな。両手を頭の後ろで組み、膝を付け」
迷い無く銃口を向ける横堀。男は、横堀の言う事を素直に聞いた。
荒巻はソファを立ち上がり、男の目の前に佇むと、降参の姿勢を見下しながら質問を投げ掛ける。
/ ,' 3「……この空間を作ったのはお前で間違いないな?」
<ヽ`∀´>「はい。僕が能力を使い、貴方達をこの空間に連れてきました」
/ ,' 3「もう一人、兄者を襲おうとした女が居る筈だ。どこに居る?」
<ヽ`∀´>「彼女はもう居ません。ここから逃がし、遠くに行くよう指示しました」
/ ,' 3「……お前は何をしに来た?」
<ヽ`∀´>「『取引』をしに」
.
- 54 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:19:41 ID:EQO1sTAc0
- / ,' 3「取引……?」
<ヽ`∀´>「はい。『この学校の生徒』と、僕の『命』を引き換えて貰いたい」
/ ,' 3「……ほう」
<;ヽ`∀´>「……」
――ニダーの取れる手はこれしかなかった。
ハローを逃がし、かつ自分も生き残る。ハローはこの作戦に強く反対していたが、ニダーにはこれ以外の方法が浮かばなかった。
最悪彼女だけでも生き残ってくれればいい。ニダーはそう考え、この作戦を強行したのだった。
ニダーは戦いを好まない性格だった。そして何より、関係の無い人間に被害が及ぶのを嫌っていた。
一度はVIP高校の生徒を人質に戦う事も考えた。だが、彼の中では『勝利』よりも『プライド』の方が大事なのだ。
彼は、自分の命を口先の『嘘』と『ハッタリ』に賭けていた。
ニダーがやろうとしているのは、荒巻が彼の能力を把握してない今だけ有効な、架空の取引である。
/ ,' 3「……本当だろうな。『人質が居る』というのは」
<ヽ`∀´>「事実を隠しての取引は有り得ません。僕のプライドに賭けて、それは保証します」
/ ,' 3「女と一緒に逃げる、という手もあった筈だが?」
<ヽ`∀´>「いえ。貴方は僕達を追い、殺すだけの力を持っている。ただ単に逃げるだけでは、数分寿命が延びる程度です」
/ ,' 3「女が逃げる時間稼ぎをしているという事か……」
<ヽ`∀´>「……仰る通りです」
- 55 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:20:33 ID:EQO1sTAc0
-
今のところ、ニダーの言葉には二つの嘘がある。
一つが『人質の有無』。もう一つは『ハローが逃げている』という事だった。
ハローは今、三階の教室で休んでいる。両足が使い物にならない以上、彼女一人で逃げるのは当然不可能。
荒巻も『ハローが逃げている』いう嘘には気付いているだろう。しかし、ニダーの狙いはそこにあった。
どういう訳か荒巻は、仲間に『隠して』ニダー達に頼み事をした。
それは、その頼み事が仲間にバレてはいけない理由があるからだろう。
荒巻は『後始末』という名目でニダー達に接触し、ハローの足が使えない事を知った。
すなわち、ここで『ハローが逃げていない』という証明をすると、荒巻は『後始末』を怠ったという結論に直結する。
そうなれば『後始末』を怠った理由を聞かれ、最後にはニダー達に持ちかけた『頼み事』とその『真意』を白状する事になるだろう。
荒巻にとって、それがどれ程重要なのかニダーには分からない。しかし、彼はその一点に賭けて交渉するしか無かった。
この取引の裏の顔。
それは、『ニダー達の命』を見逃す代わりに『生徒を救い』『頼み事』を隠すか、というものである。
<ヽ`∀´>「どうなされますか?」
/ ,' 3「……」
意外だ、と荒巻は思っていた。
恐怖に負けて女々しく命乞いをするだろう思っていた矢先の出来事。
この数分で精神を持ち直し、あまつさえ脅迫染みた交渉を持ちかけてくるなど、荒巻は微塵にしか考えていなかったのだ。
――だが、荒巻の目的とそれは関係無い。
- 56 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:21:54 ID:EQO1sTAc0
-
/ ,' 3「横堀、銃をよこせ」
荒巻が呟く。
(//‰ ゚)「……どうするつもりだ?」
/ ,' 3「決まっておろう」
手渡された拳銃を男に向け、荒巻は引き金に指を掛ける。
/ ,' 3「例え生徒が何人死のうが、ワシにその責任が全て係ろうとも、逃亡先には困らん」
/ ,' 3「ワシはそういう生き方をしてきた」
その時、兄者は咄嗟にソファを立った。荒巻とニダーの間に割って入り、兄者は荒巻の持つ拳銃の銃身を握りしめる。
初めて触る銃身はとても冷たい。兄者は荒巻の目を見つめ、無理に微笑んで見せた。
(;´._ゝ`)「……なぁ、こいつを逃がせば終わるんだろ? 見た感じ、こいつは悪い奴じゃ――」
/ ,' 3「敵を殺し、自分の時計の針を進める……ワシら使針者はその宿命の下に存在している。兄者、それが分らんのか?」
(;´_ゝ`)「……ほら! 敵が仲間になる展開もあるだろ? そうしようぜ、な?」
/ ,' 3「なぁに……殺しも慣れれば的当てと一緒じゃ。お主も使針者、殺しは避けては通れんぞ」
(;´_ゝ`)「それでも今は避けられる! 銃を仕舞ってくれ、爺さん!」
/ ,' 3「誰が死のうが関係無い。それに、最後まで生き残って『死者を生き返らせろ』と願えば、死んだ者も全員蘇る」
.
- 57 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:22:40 ID:EQO1sTAc0
-
(;´_ゝ`)「だが……」
兄者は感情をリセットし、再度この状況を観察した。
まだ戦闘らしい戦闘は無い。それなのに、敵が自分達に頭を下げるという事実が、兄者には理解できなかった。
そして一番の違和感は、取引にしては抽象的過ぎるという点だ。取引の物品が『命』というのは、余りにも不透明な話である。
まるでポーカーだ、と兄者は思った。
互いに、ハイカードを承知で全額ベットするような、虚勢の張り合い――
――普段の滑らかさを取り戻した兄者の思考は、そこで全てを理解した。
( ´_ゝ`)「……分かったよ。その上で爺さんに一つ教えてやる」
/ ,' 3
( ´_ゝ`)
(#´_ゝ`)「――俺は、アンタの敵だ!」
乱暴に振り上げた片腕が荒巻の体を掠める。しかし、彼にはそれだけで十分だった。
(#´_ゝ`)「【イディオット】!」
.
- 58 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:24:00 ID:EQO1sTAc0
-
/ ,' 3「ほう……!」
瞬間、荒巻の体は音速を超えて吹き飛んだ。次いで強風が校長室を荒らし回り、部屋の六面を切り刻む。
僅かな音は衝撃波となって壁面を吹き飛ばし、拳の一振りで鎌イタチが巻き起こる。
(//‰ ゚)「ッ!? 待て!」
横堀は、ニダーを連れて校長室を出ていく兄者に向けて怒号を発した。しかしそれも風に掻き消され、兄者の耳には届かなかった。
届いたとしても、兄者はその足を止めなかっただろう。
(//‰ ゚)「くっ……」
/ 3「……慌てるこたァ無い……ワシがすぐに諸共ブッ潰してくれるわ……!」
未だ止まない暴風の中に、二つの巨大な掌が現れる。
右手、左手。二つの掌が同時に指を鳴らすと、先程までの暴風が簡単に打ち消され、部屋の中はしんとなる。
/ 3「――【道化の左手】 【懺悔の右手】 【覇王の三眼】」
(;//‰ ゚)「なッ……おい荒巻! それは――」
横堀の言葉は届かない。
荒巻は瓦礫の上で跳躍すると、そのままどこかへ消え去った。
.
- 59 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:24:41 ID:EQO1sTAc0
-
―――――
(;´_ゝ`)「急げ! とっとと女連れて逃げるぞ!」
<;ヽ`∀´>「恩にきる! 後で謝罪と賠償をさせてくれ!」
(;´_ゝ`)「その話も後だ! 早く女の所まで案内しろ!」
<;ヽ`∀´>「いや! このまま校舎の外に行く!」
校長室を飛び出した二人は急いで外へと駆け出した。
グラウンドでは風穴だらけになった校舎が確認でき、兄者は思わず唖然となる。
<;ヽ`∀´>「少し無防備になる! 間に合ってくれよ……!」
<;ヽ`∀´>「【ザ・クラフター】!」
ニダーがグラウンドの土に両手を押し当てると、彼の周辺の地面が強烈な光を発した。
次の瞬間、土は間欠泉の様に打ち上がり、一本の線となって校舎へと向かって飛んで行く。
(;´_ゝ`)「アンタの能力……」
<;ヽ`∀´>「察しの通りだ! この空間に持ち込んだ物質は、僕が自由に『分解』『再構築』出来る!」
<;ヽ`∀´>「もっとも、やってる時は動けない上に、生命体には一切効かないってのが使い難い所だけどな!」
.
- 60 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:25:27 ID:EQO1sTAc0
-
<ヽ`∀´>「……掴んだ!」
再構築された土が向かったのはハローの居る教室だった。
ニダーはハローの合図を感じ取ると、すぐさま土を自分達の所まで引き戻す。
ハハ;ロ -ロ)ハ「やっぱり失敗じゃない!」
土の上に乗って現れたハロー。身体的傷は深いものの、精神的には随分と回復しているようだった。
ニダーは土の再構築を解除し、落下してくる彼女を受け止めた。
ハハ;ロ -ロ)ハ「……って! その子はターゲットの――」
<;ヽ`∀´>「全部後だ! 逃げるぞ!」
(;´_ゝ`)「あ! お前らからリア充の匂いがプンプンする! 恋仲か!」
<;ヽ`∀´>「それはノーコメントだ! 君、悪いがハローを持っててくれ!」
ハハ ロ -ロ)ハ「えっ? 私チェリーボーイのオカズになるのは嫌よ」
(;´_ゝ`)「チクショウ童貞で何が悪い! ホラ、肩貸すからこっち来い!」
ニダーはハローを渡すとすぐさま空中にディスプレイを出現させた。
その画面上に瞬く間に打ち込まれる文字列。何をやってるのか兄者が聞くと、ニダーは短く「後始末」とだけ答えた。
<;ヽ`∀´>「――よし! 出来た!」
.
- 61 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:26:36 ID:EQO1sTAc0
-
ッターン。感動的なエンターキーの入力音であった。
<;ヽ`∀´>
ハハ;ロ -ロ)ハ
(;´_ゝ`)「戻っ……た?」
硬直すること数秒後。彼らの耳に、授業の終わりを告げるチャイムが聞こえてきた。
兄者は思わず校舎に目を向ける。穴だらけの校舎のままじゃ……、と兄者は思うが、それは杞憂に過ぎなかった。
いつも通りのVIP高校。
いつも通りの喧騒が、校舎の中ではひしめいていた。
(;´_ゝ`)……
( ´_ゝ`)「……それじゃあアンタら、またどっかでな」
<;ヽ`∀´>「……いつか必ず! この恩を返す……ッ!」
ニダーはハローを抱きかかえ、そのまま高校の敷地内を後にした。
――誰かが残り、足止めをしなくてはならなかった。
.
- 62 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:35:18 ID:EQO1sTAc0
-
/ 3
この化け物を止める役割を、兄者は自ら買って出た。
見ず知らず、ましてや一度は命を狙いに来た者を助けた理由は、極簡単な事だった。
――『プライド』
兄者は自分の『命』よりも、自分の『プライド』の方が大事なのだ。
だと笑う者も居るだろう。論理的に考えろと言う者も居るだろう。
- 63 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:38:32 ID:EQO1sTAc0
-
( ´_ゝ`)「……もう、そういうのは飽きたんだよ……」
/ ,' 3「兄者、お主は逃げんのか?」
( ´_ゝ`)「……爺さん、俺に何か隠し事があるだろ」
/ ,' 3「ほう、例えば?」
( ´_ゝ`)「……あいつらの弱みを握っていた。その上で何か命令を出した……とかな」
- 64 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:39:13 ID:EQO1sTAc0
-
/ ,' 3「……」
兄者と対峙する荒巻は無言のまま、ニヤリと笑って兄者に見せた。
刹那、荒巻は兄者の視界から消え――
/ ,' 3「お主は頭が良すぎる……」
――そう囁くと同時に、兄者の首を背後から一撃した。
.
- 65 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:39:53 ID:EQO1sTAc0
-
―――――
( ・∀・)「お客さん、どこまで?」
タクシーの運転手がニダーに尋ねる。
<ヽ`∀´>「近くに大きな病院があれば、そこまで」
運転手は気前良く返事し、タクシーは呑気なエンジン音を立てて発進した。
ハハ ロ -ロ)ハ「……ねぇ、これからどうするの? 私、左足はどうにか出来ても右足は……」
ハローが囁く。
<ヽ`∀´>「僕に当てがある。……飛び切り優秀な、僕に沢山の知識を与えてくれた人の所へ行く」
ハハ ロ -ロ)ハ「……それって遠いの?」
<ヽ`∀´>「ああ。まずは、適当な病院で治療を受けよう。話はそれからだ」
ハハ;ロ -ロ)ハ「それで、どこら辺なの? その人が居る所って」
<ヽ`∀´>「『某国』の『シベリア自治区』だよ」
ハハ#ロ -ロ)ハ「シット! 滅茶苦茶遠いじゃない!」
.
- 66 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:40:34 ID:EQO1sTAc0
-
<ヽ`∀´>(――名前も知らない学ランの少年……)
<ヽ`∀´>(必ず、必ず君に会いに行く。この恩を返すまで……お互い、生き延びている事を祈るよ……)
ハハ#ロ -ロ)ハ「ニダー? 聞いてるの!? というか貴方、今までずっと語尾と一人称忘れてたでしょ?」
<;ヽ`∀´>「あ……すまない……ニダ」
ハハ#ロ -ロ)ハ「リピート・アフターミー! ウリ&ニダ!」
<;ヽ`∀´>「ウ、ウリ……ニダ……」
ハハ ロ -ロ)ハ「……ニダー、ありがとう」
<;ヽ`∀´>「? ニダーありがとう……?」
ハハ*ロ -ロ)ハ「ファック! それはリピートしなくていい!」
互いに名も知らぬ兄者とニダー。
かくしてこの戦いは不思議な因果を残し、幕を閉じた――
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第七話「リトルグッバイ」
―――――――――――――――
- 67 :名も無きAAのようです:2011/09/09(金) 22:46:31 ID:EQO1sTAc0
- (V) ∧_∧(V)
ヽ(^ヮ^)ノ「……NGワードがあります……?」
(V) ∧_∧(V)
ヽ(#^ヮ^)ノ「おい! NGワードとか聞いてないぞ!」
(V) ∧_∧(V)
ヽ(^ヮ^)ノ <引っかかってんじゃねえよ、糞作者め。バラバラにするぞ
ノ ̄ゝ
名前:シーザー西脇
口癖:過疎ってんじゃねえよ、童貞どもめ。バラバラにするぞ
生息地:vip
らしい。俺もよく知らん
次の投下は来週再来週です
- 68 :名も無きAAのようです:2011/09/11(日) 02:21:24 ID:rf3AE/1QO
- 気のきいた感想は書けないが
毎回読んでいるとだけ書いておく
- 69 :名も無きAAのようです:2011/09/11(日) 03:23:41 ID:o1t2y8zI0
- マジかよ胸が熱いな
飽きさせんよう頑張るわ
- 70 :名も無きAAのようです:2011/09/16(金) 00:26:24 ID:muZ2vbBI0
- 今一気に読んで追いついた、次も面白いの頼む。
- 71 :名も無きAAのようです:2011/09/17(土) 17:32:30 ID:HlcXBSCk0
- 割と順調。来週の中盤には投下出来る
- 72 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 14:23:08 ID:.abQjNOo0
-
|
| :( 'A`): 推敲ハ終ワッテマスカ? ゴジ ダツジ ハアリマセンカ? NGワード対策ハ?
|__ //\ ̄ ̄旦\_ イロイロ注意スル事ガアリマスカラ,間違ウト恥ズカシイデスヨ
/ // ※\___\ マ、ニートニハ関係無イ話デスケドネ
\\ ※ ※ ※ ヽ
\ヽ-___--___ヽ
今晩投下します
今回は不快になる表現、回りくどい比喩が多用されます
聞かれても答えにくいのもあるから絶対に聞くなよ!
- 73 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/09/23(金) 20:58:58 ID:.abQjNOo0
-
――『VIP高校体育館』
∧_∧
(´∀` ) 『次は校長先生のお話ですモナ。ほじる物ほじって聞きましょう』
U θ U
/ ̄ ̄Ⅰ ̄ ̄\
|二二二二二二二|
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パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ
パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
( )】 ( )】 ( )】 【( ) 【( ) 【( )
/ /┘ . / /┘. / /┘ └\ \ └\ \ └\ \
ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ
↑ ↑ 生 徒 の み な さ ん ↑ ↑
- 74 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 20:59:39 ID:.abQjNOo0
-
从 ゚∀从「……全くよー。いきなり全校集会だなんて聞いてないぜー」
( ><)「また校長先生が何かやるんですか……」
从 ゚∀从「前は何やったっけ?」
( ><)「去年の冬に雪合戦……校舎の中まで戦場と化した、史上最悪の悪ふざけでした」
从 ゚∀从「ああ〜あれ凄かったよな〜。七組がスノーモービル持ち出して無双してたっけ」
( ><)「タバスコ入り雪玉には負けたんです。あの発想は無かった」
从 ゚∀从「石(笑)だもんな。雪玉に見せかけた堅牢なオモチとか、雪上落とし穴とか、とにかくカオスだった……」
从 ゚∀从
从*゚∀从「まぁ楽しかったけどな!」
(;><)「そりゃ無双してた七組の代表ならな!」
/ ,' 3『――え〜はい。校長です。元気です』
从*゚∀从「今年は何やるんだろうな? 虫取り大会か!?」
( ><)(ああ……今年は高岡が味方で本当に良かった……)
.
- 75 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:00:30 ID:.abQjNOo0
-
_,,,..,,,,_
./ ,' 3 `ヽーっ 『……はい、今日は皆さんに大事なお知らせがあります』
l ⊃ ⌒_つ
|二二二二二二二|
| |
パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ
パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
( )】 ( )】 ( )】 【( ) 【( ) 【( )
/ /┘ . / /┘. / /┘ └\ \ └\ \ └\ \
ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ
↑ ↑ 生 徒 の み な さ ん ↑ ↑
从*゚∀从「うおー! 大将! 今度は何をしやがるんでい!」
( ><)「さすが高岡。女らしさを大暴投した発言なんです」
.
- 76 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:01:10 ID:.abQjNOo0
-
_,,,..,,,,_
./ ,' 3 `ヽーっ 『いきなりだけど、明日から夏休みね』
l ⊃ ⌒_つ
|二二二二二二二|
| |
ピタッ ピタッ
ピタッ ピタッ ピタッ
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
( )】 ( )】 ( )】 【( ) 【( ) 【( )
/ /┘ . / /┘. / /┘ └\ \ └\ \ └\ \
ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ
↑ ↑ 生 徒 の み な さ ん ↑ ↑
- 77 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:02:05 ID:.abQjNOo0
-
从 ゚∀从 ( ><)
( ´∀`) ( ・_ゞ・)
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
爪 ー ) (゚、゚トソン
――その瞬間! この学校に居る全ての者の動きが止まった!
富・名声・力! かつてこの学校を創立し自由を手に入れた男 ゛海賊王゛ゴールド・ロジャー・スカルチノフ!
彼の集会の際に放った一言は、全生徒を夏へと駆り立てた!
『お前の夏休みか? 欲しけりゃ始めてやる……。堪能しろ! 成績の全てを夏に捨ててこい』
世は、まさに大・海・賊・時代!
.
- 78 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:02:46 ID:.abQjNOo0
- \ ∧ ∧ /_|/|/|/|/| セミだ!急げ!
. \ ( ゜д゜) + /文.|/ // /
ΦΦΦΦΦΦ\ + +:www; ./ | ̄|/|/| ∧_∧
\花火わっしょい+ ;: ;. +打ち上げたわっ/ .| |// (___)
「ワッショイ!!\ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ / / ヽ /〔 祭 〕〕つ
\( ´∀`∩∩´∀`∩∩´∀` .) / | |ヽ/l アミを持て! /二二ヽ
/■\ /■\ \つ ノ ヽ ノヽ ⊂//| |__|/ ∧_∧ / /(_) ksk!
∩ ´∀`)∩∩ ´∀`)∩∩ \ | l i、∧∧∧∧∧. /| .|/ ( ´∀`) (_) ∧_∧
〉 _ノ 〉 _ノ 〉 \ < > |/ // / ^ ̄]゜ (` )
ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ< 夏 > / ̄ ̄_ヽ ⊂〔〔 祭 〕
し´(_) し´(_) し´(_) < 予 休 > /_ノ(_) ┌|___|
――――――――――――――< み >―――――――――――――――――――――
< 感 の > . /,/-_-_-_-_-_\ ) )
< !! > ( ( /,, /― ((神輿))―\
まつりだワッショイ!! ∨∨∨∨∨ (。'。、。@,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。@ ) ))
まつりだワッショイ!! /// \. .∩ヽヽ∩ヽXXXXXXXX/ .∩
\ まつりだワッショイ!!/ + / \ i||i ∩i||i:||::::¥_][_¥::::||. i||i ワショーイ
+ / \ ワショーイ †人=†††¶┌┐¶††††
/■ \ /■ \ / ■\ + /お祭りマダー? マダミタイヨ \ ■\[/■ / ■\/■\] /■\ ■\/■\
(´∀`∩(´∀`∩)( ´∀`) / ■\ /■\ /■\二( ´∀( ´∀( ´∀`).□´∀` )´∀`)□∀`)
つ ノ(つ 丿(つ つ )/ ´∀`)△( ´∀`,.) (´∀` )\|祭)~| 祭) ̄||祭) ̄|つ ⊂|_((|祭)~ノ | ) )つ
ヽ ( ノ ( ヽノ ) ) ). // つ ⊃目⊂) ∬ ⊂ ⊂ )\ _ノ 〓二ノ〓二ノ) ( / (L〓|〓二|〓=〓ヽ
(_)し' し(_) (_)_)/(人_つ_つ (_(_) 目△▲_(_つ \)_)し(_)し(_)(_(_,(_)(_)し' (_)
(⌒)
 ̄
O
。
(*´∀`)
.
- 79 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:03:27 ID:.abQjNOo0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです
第八話「町、時の流れ、人」
―――――――――――――――
.
- 80 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:04:23 ID:.abQjNOo0
-
( ・∀・)「お客さん、どこまで?」
タクシードライバー――モララーは、車内に乗り込んだ老人に向けて問いかける。
/ ,' 3「中々様になっとるではないか。タクシードライバーも有りじゃな」
( ・∀・)「おーおー。兄者の事、派手にやってくれたな校長先生」
/ ,' 3「お主の頼みだ。それに、兄者の事を考えれば仕方の無い事……だが、計画通りとはならんかったわ」
( ・∀・)「あ、死んだ?」
(//‰ ゚)「死んでは意味が無いだろう」
(;・∀・)「……ジョークだよ」
後部座席に荒巻、兄者、横堀の順で座る。兄者はぐったりと項垂れ、意識は無いようだった。
モララーはその姿を一瞥すると荒巻らに一声掛け、タクシーを発進させた。
( ・∀・)「……お疲れさん」
( _ゝ )
バックミラー(リアビューミラー)に映る兄者は、目的地に着くまで目を覚ます事は無かった。
彼は深い眠りの中に居る。兄者はどんな夢を見ているのだろうか。モララーはふと思うが、すぐに思考を運転に集中させる。
目的地は新都市。彼らアスキーの本拠地である時計塔であった。
- 81 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:05:11 ID:.abQjNOo0
-
――――――――――
――『新都市。時計塔前』
( ・∀・)「んじゃ、俺はこのまま達磨崩しの案件に戻るわ。今日中に戻る」
/ ,' 3「む、兄者と話さんでいいのか?」
( ・∀・)「……コイツには早く大人になってもらわないと困る。不良だ何だと言ってもまだ子供。
命の取り合いを恐れたままじゃ使い物にならない。半ば命を尊ぶ野郎だ。殺す『覚悟』が無さすぎる」
/ ,' 3「随分とスパルタじゃのう」
( ・∀・)「母者の伝言だからな。それじゃあ、行ってくる」
モララーは自前のハーレーに乗り換え、二三度エンジンを鳴らすと直ぐにその場を後にした。
荒巻と横堀は少しの間それを見つめてから時計塔の中へと入って行った。
一階フロア。
白黒のブロック・チェック模様のカーペットが床一面に敷かれていた。
窓は無い。天井のライトが各所で煌々と輝いている。
フロアの真ん中には上へと続く螺旋階段。その先の頂上はアスキー達の集会場となっている。
荒巻達は螺旋階段の横を歩き抜け、その向こうの壁にある、一風変わった扉の中へと入って行った。
- 82 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:06:01 ID:.abQjNOo0
-
扉の向こうは小さな部屋となっており、その先をセキュリティの掛った鉄製の扉が遮っていた。
荒巻はポケットからカードキーを取り出し、それを専用の挿入口へと差し込んだ。
甲高い電子音が一瞬鳴る。扉のセキュリティ・ロックが解除された証拠だった。
カードを抜き取ると数秒間のラグが発生した。
随分と厳重なロックらしい。乱暴な金属音が何度か響いた後、扉の上部のランプが緑色に灯る。
/ ,' 3「開けてくれ」
『了解しました』
荒巻の声に音声システムが応答した。
鉄の扉は左右に割れ、荒巻達はその奥の、地下へと続くエレベーターに乗り込む。
次いで扉が閉まりエレベーターが動き出す。体が浮くような感覚がしばらく続いた。
今は横堀が兄者を背負っていた。まだ目覚める気配は無い。
( _ゝ )
(; _ゝ )(やべぇ俺改造される! 仮面ライダーにされてまう!)
それもその筈。兄者は既に目覚めていた。
- 83 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:06:43 ID:.abQjNOo0
-
そしてエレベーターは停止した。
扉が開き、その先へと歩き出す荒巻達。
時計塔の地下施設。そこは若くして使針者となった少年少女達を匿う保護施設。
戦いに巻き込まれた一般人を守る為、荒巻が作り上げた極秘の地下施設であった
.
- 84 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:07:36 ID:.abQjNOo0
-
.
- 85 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:08:23 ID:.abQjNOo0
-
―――――――――――――――
時刻は午後三時を回ろうとしていた。
日が照っている。風は無い。コンクリートの焼けた匂いが微かにするばかりだった。
モララーは閑散とした墓地に居り、見ず知らずの人間の墓に花を添えた。
それは過去の一件『達磨崩し事件』の被害者の墓標。この墓地には、その被害者達の墓標が幾つもある。
それら一つ一つを回り、墓標に花を添えてゆく。
これは達磨崩し事件に関わるに当たっての、モララーなりの礼儀であった。
( ・∀・)「……解決した筈の事件が更に性悪になって再浮上しやがった。
今度の事件、もしかしたらアンタら以上に被害者が出るかもしれない」
周囲には誰も居ない。静寂の中、モララーは墓標に向けて話を続ける。
( ・∀・)「必ず解決する……とは言い切れない。俺達が動く以上、この件は普通じゃないんだ。
被害者は最小限に抑えるとしか言えないんだ。すまない」
( ・∀・)
周囲には誰も居ない。モララーは小さく息を漏らすと、視線を空に向けた。
静かだった。その場所もモララーの感情も、全てが停止している。
セミの鳴き声や遠くに聞こえる街の喧騒。それらが空虚な物に思える程、その場所には何も無かった。
唯一動いているのは雲。それだけが時間の経過を自覚させ、モララーに微弱な現実感を与え続ける。
「……こんにちは。何してるんですか?」
( ・∀・)「あ、いや。ちょっとボーっとしてただけだ」
声を掛けられ我に返る。声の方へと視線を向けると、中高生ほどの少年が、申し訳程度の花を持ってこちらを見つめていた。
- 86 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:09:15 ID:.abQjNOo0
-
( ・∀・)「……お墓参り?」
( ^ν^)「そんな所です」
少年はモララーの横まで行き、先に墓標に花を添え、両手を合わせる。
彼はそれをさっさと終わらせ、モララーを一瞥し、沈黙した。
( ・∀・)「……じゃ、俺は帰るわ」
( ^ν^)「……」
( ^ν^)「あの、この方の遺族ですか?」
( ・∀・)「いや、違うが……ちょっとした自分ルールって奴だ。俺はそれを守りに来た」
( ^ν^)「ああ……それであんな事を」
( ・∀・)
( ・∀・)「うわぁ〜聞かれてたぁ〜」
( ^ν^)「確かに『うわっ。アイツ痛いな』って思いましたけど、言ってた内容からして刑事さんですかね。
……いや、普通じゃないって言ってたし別の組織かな。私立探偵とか、そういうカッコいい奴ですか?」
( ・∀・)「まぁ、そんな所だ」
( ^ν^)「――達磨崩し。貴方が探してるのは、そいつですか」
モララーは少年の言葉を聞いて硬直する。
しかしそれは一瞬の事。池に小石を投げた程度の衝撃が、モララーの感情に波打つ。
.
- 87 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:10:07 ID:.abQjNOo0
-
( ^ν^)「……実は僕も、貴方と同じく自分ルールを守りに来たんです。
達磨崩し。それに関しての、自分ルールです」
( ・∀・)「……君の名前は?」
( ^ν^)「巣立入早。友達が居たらニュッ君って呼ばれたいです」
巣立入早。それは以前トラから渡されたファイルの中に明記された、参考人物の一人であった。
現在十六歳の通信制高校の生徒。親は無く、幼少期を孤児院で過ごしていた。
後四歳の時、とある成人男性の下に引き取られる。
その成人男性とは『達磨崩し』。
オリジナルの『達磨崩し』を育ての親に持つ少年。それが巣立入早という名前だった事を、モララーは思い出した。
( ・∀・)「君が……」
( ^ν^)「良かったら駄弁りませんか? 丁度いい喫茶店、知ってますよ」
モララーには願ってもない話だった。
元はショボンとクックルが巣立入早に話を聞きに行く予定だったのだが、彼らは『何故か巣立が捉まらない』と愚痴を零していた。
自宅はいつもモヌケの殻。どこを探しても足取りが掴めず、巣立入早についてだけは寸止めを食らっていた。
これも何かの縁だろう。モララーはそう思って自分を納得させる。
.
- 88 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:11:41 ID:.abQjNOo0
-
――――――――――
遠くに聞こえていた喧騒が、今では目の前で絶え間なく生み出されていた。
人の群れ、行き交う自動車。いくら機械化が進もうとも、これだけは何故か変わらずにある。
慣習を捨てられないのが人間だ。先の戦争はそれが原因だという事さえ、多くの人は気付いていないだろう。
人間は慣習を守る為にあらゆる物の摂理を捻じ曲げてきた。歩道に植えられたあの木々も、遺伝子操作で生かされているだけに過ぎない。
本来なら自然は淘汰され、この街は完全な機械都市になっていた。その筈なのに、この街には前時代の遺物が多いのは何故だろうか。
――あの木にも声があれば、きっと『生まれたく無かった』と言うに違いない。
モララーは歩道に植えられた一本の木を見つめながら、アイスコーヒーを一口飲んだ。
( ^ν^)「ここは町の様子も、その時の流れも、人の様子も観察できる。お気に入りの場所の一つです」
( ・∀・)「……」
( ^ν^)「……そのグローブは外さないんですか?」
( ・∀・)「……」
スクランブル交差点を囲う様に立つビル群。その中の一つ、三階の喫茶店にモララーは居た。
店内は細長く伸びており、壁際はテーブル席、窓際はカウンター席だった。
窓際のカウンター席に並んで座る二人は沈黙し、しばらくの間、目の前のガラス窓から下の様子を見続けた。
何かに見とれていた訳では無い。二人はまるで、子供が虫カゴの中の昆虫を観察するように、それを続けている。
( ^ν^)「人は習慣を好む。なぜなら、それを作ったのは自分だからである」
( ・∀・)「……バーナード・ショー……古いのを知ってるな」
- 89 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:12:23 ID:.abQjNOo0
-
( ^ν^)「……僕が生まれる少し前、とても長い戦争が幕を閉じました。けれど、それ以来、世界は変わってしまった」
真下のスクランブル交差点を見下ろしながら、巣立は続ける。
( ^ν^)「日本は早期に武力放棄を決めた。だからこうして平和ボケして突っ立ってるだけで、最新鋭技術の恩恵を受けていられる……。
いち早く戦勝国の傘下に下り、自らモルモットになる事を選んだコイツらは……死んでいったシベリアの人の事を何だと思ってるんでしょうね」
( ・∀・)「……自分の生前の事を随分と知ってるみたいだが、そういうのが好きなの?」
( ^ν^)「相対的には、そうなります」
( ・∀・)
( ・∀・)「俺はあの戦争――俗に言う『箱庭戦争』で戦地を駆け抜けてきた」
( ・∀・)「シベリアの土地も、敵兵の死体も踏みつけてな」
( ^ν^)「……本当だったか。国民に事実を隠し、日本が戦地に軍事介入を行っていたのは」
( ・∀・)「大人の事情って奴だ。表があれば裏がある。んで、世界はおおよそ裏で動いている」
( ^ν^)「……クソッ垂れた大人の言いそうな事だ」
再び沈黙が始まる。そして彼らは人の流れに目を向けた。
二人は分かっていた。戦争の話題が世間一般で持ち上げられない理由と、その真意を。
- 90 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:13:03 ID:.abQjNOo0
-
( ^ν^)「ここは本当に不自由だ。褒めて持ち上げぬるま湯に浸し、陰湿卑劣は認めない。
平和ボケした奴らの巣は今も拡大を続けている。自分達が切り捨てられるその日まで、コイツらはそれに気付かない」
( ・∀・)「自由のための戦いがないところに、自由は無い」
( ^ν^)「……マラマッド、だったかな」
( ・∀・)「正解。よく知ってるね」
( ^ν^)「時間だけは沢山あるので」
( ^ν^)「……『達磨崩し』の話をします。それが本題で、僕から貴方へのささやかなお礼だ。何を話せばいいかな」
( ・∀・)「お前から見た『達磨崩し』。俺は奴の、育ての親としての顔を知りたい」
店内は疎らに人が居る程度で、混んでいる様子は無かった。店員も、店の奥で談笑している。
気の抜けた姿勢だが、この時間はそれほど客が入らないのだろう。半ば仕方の無い事だ、とモララーは思う。
遠くの席で数人の学生達が雑談をしている。
煩わしい音といったら彼らの声と、天井のスピーカーから流れる、陳腐な邦楽だけだった。
アイスコーヒーの氷は縦に連なり、グラスの中で身を溶かしている。
少し待つと氷柱は溶け、軽快な音を立てて崩れ落ちた。
( ^ν^)「それじゃあ話します」
モララーはグラスから巣立へと視線を向け、彼の語りに耳を傾けた。
- 91 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:13:55 ID:.abQjNOo0
-
( ^ν^)「……僕が引き取られて数日経ったある日、彼――達磨崩しは僕にこう言いました。
『私の持つ物は全て与える。それでも欲しい物があれば、それを手に入れる方法をお前に教えよう』」
( ^ν^)「初めて会った時は怖い人だと思いました。僕自身、親に捨てられてるので……どこか人間不信だったんだと思います、
でもそれは問題じゃ無かった。何故なら彼も僕と同じく人間不信……僕らは似た者同士だったと、後になって気付きました」
( ^ν^)「傷ついた幼心を癒すには最高の父親だった。見ている先が一緒だという事がどれだけ幸せな事か、身に染みて理解しました。
彼は僕と過ごす時間を毎日確保してくれた。そんな毎日が続き、いつしか僕は初めての満足感に浮かれていた」
( ^ν^)「公園、プール、遊園地。自転車に乗って当ても無く、遠くまで出掛けた事もありました。
……多分、達磨崩しの笑顔を見た事のある人間は僕しか居ないと思います。」
( ^ν^)「……その浮いた足が地に着いたのは、彼が『達磨崩し事件』の容疑者として連れていかれた時だった」
その言葉以降、彼の言葉から感情を読み取る事は出来なかった。
淡々と語られるその後。巣立は達磨崩しの死刑執行までを語り、小さく息を漏らした。
( ^ν^)「僕が語れるのはこんなもんですかね……」
( ・∀・)「……最後に一つ聞かせてくれ」
.
- 92 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:14:35 ID:.abQjNOo0
-
( ^ν^)
( ・∀・)「 お前が『達磨崩し』か? 」
.
- 93 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:15:15 ID:.abQjNOo0
-
( ^ν^)「それを答える前に、僕からの頼みを聞いちゃくれませんか」
( ^ν^)「……そのライダーグローブを外して下さい」
( ・∀・)
.
- 94 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:16:56 ID:.abQjNOo0
-
何を思っての質問か――或いは、何を『理解』しての質問なのか。
モララーの反射的な問い。ここは本来ならば真偽構わず『違う』と答えるのが定石である。
しかしその答えには『相手の矛先を変える』という力しか無い。この場面、どう答えようがモララーの疑惑が消える事はまず有り得なかった。
――ならばこちらも牙を向ける。
凡夫の用いた心理戦など巣立には意味を成さない。
そしてモララーはこの瞬間、巣立入早の本質を垣間見る。
( ^ν^)
狂人――化け物。
揺れる事無くモララーを見据える両眼。
その奥深くに見えるのは『達磨崩し』の残影、焦点合わぬ憎しみの炎に他ならなかった。
――いいだろう。これを外してやる。
モララーは小さく呟く。
.
- 95 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:17:43 ID:.abQjNOo0
-
( ・∀・)「グローブを外してやる。……その質問が何を意味するか、分かってるんだろ?」
( ^ν^)「グローブの下。もしそこに僕の思う物があれば、僕は今すぐ消えなくちゃならない。
それを見越して先に言っときます。楽しかった、ありがとう」
( ・∀・)「その礼儀も、達磨崩しに教わったのか?」
( ^ν^)「ええ」
( ・∀・)「良い親だ」
モララーは右手のライダーグローブを取り外す。
露わになった右手の甲。そこには、一つの時計が埋め込まれていた。
それは使針者の証、『0時3分』を指す、小さな時計であった。
( ・∀・)「――また会おう、『達磨崩し』」
「……類は友を呼び、同族嫌悪に苦悩するだろう」
( ・∀・)「それはお前の言葉か?」
既に巣立入早――二代目『達磨崩し』の姿は無い。
都会の雑音、若者の叫び声。徐々に増す客足と、それに合わせて出てくる店員達。
意味無き喧騒に消えていく巣立の声。最後に聞こえた一言を、モララーは小声で繰り返した。
- 96 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:18:24 ID:.abQjNOo0
-
( ・∀・)「……これは父さんの遺言です……」
モララーは残ったアイスコーヒーを一気に飲み干す。溶けた氷で味が薄まっていたが、気にせず喉を通した。
視線を適当に泳がせていると、モララーは隣の席――巣立の座っていた席に一枚の紙切れを見つける。
モララーはそれを手にとり、内容を確認した。中身は、モララーの予想通りだった。
( ・∀・)「……まぁ、そういう奴だよな」
瞬間、モララーの脳内に声が走る。
≪モララー、横堀がお呼びだ。早く戻ってこい≫
ショボンの声。
( ・∀・)≪……ああ、今帰る≫
≪……急げよ≫
紙切れをポケットに仕舞い、モララーは店を後にした。
墓地まで戻り、駐車場のハーレーに跨る。
( ・∀・)(……人間はどいつもこいつも深い深淵だ。のぞくと、めまいがする……)
それは著者ビューヒナーの言葉。モララーが身に刻み込んで理解している、一つの訓戒であった。
モララーはふと腕時計に目を向ける。間もなく時刻は午後四時。
VIP高校では、ちょうど一日の日程が終わろうとしている頃だった。
- 97 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:19:09 ID:.abQjNOo0
-
――『VIP高校。教室』
( ´∀`)「あれは彗星かな……? いや……違うな。彗星はもっとこう、バァーって動くもんな」
( ´∀`)「ハハッ! 光があんなに近いや! 体が焼けちまいそうだ!」
( ´∀`) アーハッハッハ!
从 ゚∀从「……燃え尽きているな」
ΩΩΩ「先生の命懸けの通知表製作ッ! 僕達は敬意を表するッ!」
(;><)(い、今まで起きた事をありのままに話すんです!)
.
- 98 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:19:55 ID:.abQjNOo0
-
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――『職員室に限りなく近い何か』
(*´∀`)「フフ……夏休み……あれは花火かな……? いや……違うな。花火はもっとこう、バァーって動くもんな」
(;・_ゞ・)「校長! なんでいきなり夏休みなんですか!」
/ ,' 3「なんつーか、気分? みたいなのあるじゃん? 『あ、明日夏休みだわ』っていうの」
/ ,' 3「んでさ、生徒の通知表とか出来てる?」
(;・_ゞ・)「……まぁ、どうせ今週から夏休みでしたし、終わってない教師なんて居な」
(*´∀`) モナァ・・・
( ・_ゞ・)「居ました」
/ ,' 3「んじゃプリントとか配り終わったとこから解散ね」
/ ,' 3「てかプリント要らなくね? ワシ読んだ事ないんだけど(笑)」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
- 99 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:20:37 ID:.abQjNOo0
-
( ><)(……本来数日かけてやるべき作業、一晩でもキツイ作業。
先生はそれを昼の集会後、三時間掛けて終わらせたんです)
( ><)(ふざける暇なんて無い。その筈が、通知表の端にクラムボンの絵が描かれているんです)
( ><)(しかも全員微妙に違う。パッと見た感じ、ただの泡なのにね)
( ´∀`) フフフフフ…
从 ゚∀从「せんせー。もう帰ってもいいですかー?」
( ´∀`)「暗黒の世界へ戻れ、ハイーン!!」
从;゚∀从「ハマーンみたいに言うな!」
( ><)(そして誰も気付いていませんが兄者の姿が無いんです)
( ><)(うぅむ。話したい事もあったのに……)
.
- 100 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:21:45 ID:.abQjNOo0
-
コンコン
( ´∀`)「誰だ? 誰かが僕を見ている」
从 ゚∀从「これがニュータイプへの目覚めか……」
( ><)「はいはい、どうぞー」
ガラガラッ!
爪;'ー`)「……あのさ……兄者居る……?」
从 ゚∀从「お、フォックスじゃん」
(;><)「うわぁ……股間の痛そうな姿勢……どっかで打ったんですか?」
爪;'ー`)「ああ……ちょいと金玉コーナーキックを……。いや、それより兄者をだな……」
从 ゚∀从「あいつなら集会が終わった後に校長と一緒にタクシー乗ってどっか行ったよ」
(;><)「なぜそこまで把握しているんです……」
从*゚∀从「なんせ学級委員ですからね」 ドヤァ
- 101 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:22:45 ID:.abQjNOo0
-
爪;'ー`)「あぁそう……居ないなら、まぁいいわ……」
( ><)「何か用があるなら伝えておくんです。何の用だったんですか?」
爪;'ー`)
爪;'ー`)「……そういえば、お前との喧嘩がまだ残ってたな……」
爪;'ー`)「続きやるか?」
( ><)
( ><)「……え?」
爪;'ー`)「ほら、こないだの……。途中でアイツらが割って来たから途中だったろ?」
爪;'ー`)「一応まだ勝ち負け決まってねーし、やるなら今だぜ……?」
( ><)「喧嘩……。僕とフォックスが……?」
从 ゚∀从(? ビロードの奴、いつもなら素っ飛んで殴りかかるのに……)
.
- 102 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:23:32 ID:.abQjNOo0
-
( ><)「……冗談」
爪;'ー`)「ん? 何か――」
以下、ビロード。
.
- 103 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:24:14 ID:.abQjNOo0
-
「――冗談キツイぜ。雑狐のお前が俺とやって勝てる訳ないだろ?」
「ましてやその体。何があったら知らねーけどズタボロじゃん(笑) 喧嘩どころかママゴトだって出来ねーだろ(笑)」
「っていうかお前ここで最強張ってた奴じゃなかったの? 何負けて当たり前みたいなツラしてんだよク.ズ」
「VIP高校最強の男がその有様とかマジで有り得ねー。帰って来て二週間で地位も人望も失くしたな」
「まぁ元々お前の持ってる物なんて最後にゃ何も残らない消耗品ばっかだけどな。不良で最強。だからなに? っていう(笑)」
「ほら、一年間お前の代理やってた女居るじゃん? あいつ、今頃お前見捨てて他の男とヨロシクやってるぜ?」
「一年も女放ってたんだろ? あいつもブスじゃねーから男なんていくらでも寄ってくるぜ? 案外乱.交好きだったりしてな」
「でさぁ、女も力も威厳も失くしたお前が俺に勝つのは無理なんだよ。絶対に確実に必然的に」
「分かる? お前は弱いんだよ。一年間学校サボった結果これだ。雑魚の成り損ないには丁度いい展開じゃん」
「ちょっとの間お山の大将になれて嬉しかった? お前がそれで満足してる間、俺ら一般生徒はマジで白い目だったの知ってるか?」
「そうそう。実は兄者もお前には呆れてるんだぜ? 喧嘩だ何だ言って絡んでくる三下だってさ(笑)」
「兄者とお前、喧嘩の戦歴じゃあお前の全敗じゃん(笑) 釣り合うどころか兄者の足引っ張ってんだよ」
「さ、これでマイナス要素にぼっちも追加だな。どんだけ生きる価値無いんだよ駄目人間」
「まぁ不良に存在価値は勿論、発言権も自由の保証さえ無いけどな(笑) いっそ死んでみろよ。笑ってやるから(笑)」
「後回しにせず言うとお前のしゃべり方ウザいんだよ。なんか背伸びしてる感丸出しでさ、見てて本当に苦しい。見苦しいのよ」
「さっきの『やるか?』とか何様だよ。自分の立場と実力を弁えた発言しろよ。ただでさえテメーの声で耳が腐り落ちそうだってのに」
「ああもう空気が腐ってく雑孤のマイナスオーラで周囲の物が汚染されていく生きた産業廃棄物が俺の目の前に」
「お前って実の所、存在価値も進歩も才能も頭脳も何も無いただの肉塊だよな(笑) 廃棄処分される犬と同じだわ(笑)」
「もう何言われても怖かないんだよ。お前さ、この高校に目立った不良が居ないから来たんだよな?」
「自分より強い奴が居ない所をわざわざ選んで不良のトップになってさ、挙句兄者にボコられて天下終了とかピエロ過ぎだろ」
「結局お前は誰かの踏み台。塗り固められたコンクリートと一緒で、永遠に誰かに踏み続けられる存在なんだよ」
「で、今度は俺の踏み台になってくれんの? 悪いね、お前程度の踏み台じゃ俺満足出来ないんだわ(笑)」
「まぁ俺には兄者っていう心強い親友が居るし、お前が居ようと居なかろうと関係ないけどな」
「俺の優しさで言ってやるよ。お前に居場所は無い。俺が与えない。全部もぎ取って握り潰してやるよ」
「そうだなぁ……最初はあのクソビ.ッ.チをダルマにしてやるよ(笑)」
「そうなったらマジで肉便.器だな。精.子搾,取に一生を終える女(笑) ケータイ小説にしたら売れるんじゃね?」
「乞食同然のウ.ジムシ狐さんはどう思います? 腹に穴開けて臓物引きずり出す鬼畜プレイがいいですか?」
.
- 104 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:24:56 ID:.abQjNOo0
-
爪'ー`)
( ><)
爪'ー`)「……お前、兄者の弟にでもなりたいのか?」
( ><)
ビロードは押し黙る。
先程、破裂した様に溢れ出したビロードの言葉は、その場に居る者全員を震え上がらせていた。
いつものビロードとは決定的に違う。普段の彼がプラスなら、今の彼はまさにマイナス。
今、ビロードの精神において、両極端に存在する『何か』が面を挙げていた。
ビロードは腐った表情でフォックスを見下す。
爪'ー`)「……ま、兄者の事は好きにしな。俺は喧嘩に負けた身だ。口を挟むつもりは無い」
爪'ー`)「じゃあな」
フォックスは呆気無く踵を返し、教室を後にする。
( ><)
从;゚∀从 (;´∀`)
教室に残ったのは深い沈黙。数分後、下校のチャイムが響くまで、彼らは一歩も動けなかった。
そして、この場に居た者達は予感した。平穏な日常が崩れ去るその日を、朦朧としたイメージと共に――
- 105 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:26:04 ID:.abQjNOo0
-
「……はーい! 通知表にプリントも挟んであるから、貰ったら帰っていいモナー!」
「おいビロード! 一体どうしたんだよ!」
「なんだよアレ……」
「……気持ち悪い……」
「じゃ、じゃあ先帰るわ!……ビロードも、メールしてこいよな!」
「ハイン、今は……」
「夏休みの課題も忘れないように! 楽しく、穏便に! 夏休みを堪能するモナ!」
.
- 106 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:26:44 ID:.abQjNOo0
-
友禅ビロードは後悔していた。
夏休みに遊ぶ約束を、まだ兄者としていないのだ。
( ><)「ああ、もっと、早く、兄者に言っておけばよかった」
友禅、ビロードは後悔、していた。
( ><)「ああ、もっ……と、早く、アイツを潰しておけば、よかった」
「あ、あ……。兄者は、どこにいるんです?」
.
- 107 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:27:26 ID:.abQjNOo0
-
.
- 108 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:28:10 ID:.abQjNOo0
-
―――――――――――――――
――『時計塔。地下施設内』
エレベーターを降りた先は無人だった。
ホテルのロビーの様な内装だったが、中央に設置された小さな噴水だけが異質な存在感を放っている。
荒巻は観葉植物に囲まれたソファに腰掛けた。横堀も追ってソファに腰かけ、兄者を横に寝かせる。
/ ,' 3「……警戒しとる様じゃが、もう何もせんよ」
( ´_ゝ`)「……まぁ、そうだろうな」
兄者は起き上がり、荒巻の方を見つめる。
( ´_ゝ`)「ここは?」
/ ,' 3「新都市の、時計塔の、地下施設」
( ´_ゝ`)「アスキーの?」
/ ,' 3「そう、アスキーの本部」
( ´_ゝ`)「俺は何の為にここに?」
/ ,' 3「ワシらのお手伝い」
( ´_ゝ`)「そうか」
- 109 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:28:51 ID:.abQjNOo0
-
/ ,' 3「……冷静だな」
( ´_ゝ`)「死の危険は無いからな」
/ ,' 3「すまなかった」
荒巻が急に告げた。
/ ,' 3「部下の頼みとはいえ……お主や生徒、弱い者にも手を挙げた。これは恥ずべき事だ」
( ´_ゝ`)「恥を忍ぶ必要があったんだ。何か、俺を強くする必要と理由があったんだろ」
/ ,' 3「本当に食えない男だのう……」
荒巻はそれから事の顛末を語り始めた。
近場に能力者が居る事を知ったモララーが、その能力者をVIP高校まで誘き寄せる作戦を立てた事。
その戦いを切欠に兄者の能力を無理矢理進化させる事。敵能力者の命を使い、兄者に殺しに対する覚悟を植え付ける事。
それらを目的として動いていた事を荒巻の口から聞いた兄者は、取り合えず胸を撫で下ろした。
予想が外れている事は無いと兄者は自覚していたが、確証を得られれば安心するのは当然。
やっと警戒を解いた兄者は、皮肉交じりに荒巻に言った。
( ´_ゝ`)「……で、あろう事か俺は爺さんを裏切り、敵の逃亡に一役買ったって訳だ」
/ ,' 3「他に予想外だった事と言えば、敵二人の愛情が予想以上に大きかった、という事かのう」
(#´_ゝ`)「……リア充共め。生かすべきでは無かったか」
(//‰ ゚)「生かしたからこそ言える台詞だ。その有難味を忘れるなよ」
- 110 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:30:14 ID:.abQjNOo0
-
/ ,' 3「ま、後は残りの者が揃うのを待つだけじゃ」
( ´_ゝ`)「ん? まだ誰か来るのか?」
/ ,' 3「……じき現れる」
荒巻はそう言い、先程自分が乗ってきたエレベーターに視線を向けた。
兄者もつられて視線を向けると、丁度エレベーターが開くところだった。徐々に開く扉の向こうに、人影が見える。
( ゚∋゚)「うーい。連れて来たぞー」
あ、こいつ人間じゃないな。兄者は一目でそう判断した。
ジーンズにタンクトップ。両方ピッチピチである。筋肉モリモリである。巨漢である。
(#)メω^)「西川ッス! オナシャス!」
その後に続き、既視感を覚える状態でブーンが現れた。
赤色のシャツはボロボロ。肉体的にボッコボコであった。
(´φω・`)「ほら、さっさと歩け」
('A`)「はい」
ショボンとドクオは既に上下関係が確立しているようだった。
その裏でどんな脅迫をされたのか、知る者はドクオ以外には居なかった。
('A`)(はぁ……なんで俺の秘密、三点倒立オナニーの事を知ってるんだよ……)
(´φω・`)(そういう能力なんだ。すまない)
ドクオは黒歴史、いわゆるダークヒストリーを握られていた。
- 111 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:30:54 ID:.abQjNOo0
-
ゴゴゴゴゴ……!!
その時、不意に突然、湧き上がるような地鳴りがロビーに響く。
(;´_ゝ`)「何だ!? 何の音だ!?」
(´φω・`)「今日は三番ゲートだ」
( ゚∋゚)「コーナー多めか……だが、あえて記録更新の方に賭けるぜ」
(´φω・`)「じゃ、俺はその逆に賭けるとしよう」
(;´_ゝ`)「待てよ! これ地震じゃねーの!? ヤバくないのか!?」
(´φω・`)「ジョー、モニター出したら三番ゲート開けてくれ」
『了解しました』
音声システム――ジョーが答える。少しして天井から降りてきたモニターに、彼らは視線を集中させた。
ノイズの後、モニターにはトンネルの様な映像が映し出される。
トンネル内は青色に照らされ、かまぼこ状の内部壁面は鋼鉄で覆われていた。
( ゚∋゚)「お前どっちに賭けるよ」
(;´_ゝ`)「え? ……じゃあアンタと一緒の方に」
(*゚∋゚)「気に入った!」
気に入られた。
- 112 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:31:34 ID:.abQjNOo0
-
(´φω・`)「……来るぞ!」
瞬間モニターのカメラが高速で動き出し、何かを追い始めた。
風を感じるその映像が捉えた物。高速で動き続けるそれは、第一コーナーを曲がった所でようやく残像を見せる。
『フゥハハァーハァーッ!!』
(;´_ゝ`)「誰だ!? 速すぎて見えねーぞ!」
『褒め言葉どうもォ!! だが俺は止まらねぇ!! 止まれないんだよォォォォ!!』
その者、第二コーナーで更に加速!
追っているカメラも段々離されてゆく……。この時のカメラの時速、およそ1200Km!
前を走るあの男……故にマッハ1を超越する!
『そこの新入り! 自然の摂理とは何だ! 言ってみろッ!』
(;´_ゝ`)「え? ……弱肉強食、とか?」
『惜しい! 答えは遅肉速食!! 速ければ食し遅ければ食われるのがこの世の理!! 鉄則だァ!』
.
- 113 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:32:16 ID:.abQjNOo0
-
その者、第三第四コーナーを駆け抜ける!
しかし迫るは≪ドラゴン・カーブ≫!! 180度の反転を要する難関の極み!!
『新入り諸君!! 平和という名の倦怠の海に呑まれてはいないか!?』
『確かにそれもいいだろう甘んじて受け入れるのもまた人生!! だが俺ァそんなん考えられねェ!!』
『周りのスロウリィな奴等に合わせる必要なんざ無ェんだよ!! タダで与えられる物なんざ捨てて当たり前!!』
『あえて言おう速さこそ全てであると!! 勉学恋愛趣味寝起き喧嘩や試合に人生そのもの!! この中に速さの必要無い事柄が一つでもあるか!?
いいや無いね存在し得ない!! 何故なら全て速さが解決するからだ!!』
度肝をブチ抜く奇想天外! その者、道なき道を駆け抜ける!!
壁を走るその様は、まさに疾風怒濤の韋駄天野郎!!
≪ドラゴン・カーブ≫――突破!
( ゚∋゚)「後は直線一本道ッ! 三番ゲートはどうなってる!?」
(´φω・`)「……何ッ!?」
( ´_ゝ`)「ワォ、どうしたっていうんだい?」
(;´φω・`)「システムエラー……つまり、このロビーに開く筈のゲートが、まだ閉じたまま……」
- 114 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:33:11 ID:.abQjNOo0
-
嗚呼!! 嘆かわしきは悪魔の悪戯!!
韋駄天野郎は露とも知らず、残った直線ひた走る!!
(;゚∋゚)「止すんだトラ! 止まれ! そのスピードで直撃したら身が持たないぞ!」
『いいね! いい緊張感だ! それでこそ身が引き締まるってもんだ!!』
(´φω・`)「奴はもう止まれない……これが、スピードに生きた人間の末路さ……」
('A`)「UNO持ってるけどやる?」 ボソボソ
( ^ω^)「あ、やるやる」 ボソボソ
( ´_ゝ`)「俺も俺も」 ボソボソ
.
- 115 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:33:52 ID:.abQjNOo0
-
―――――――――――――――
その者に迫るは閉ざされた鉄壁!!
風――否! 『速さ』の化身と化したその者は、あろう事か不敵に笑って大声を上げる!!
「俺の【ジバシリ】はァ!! 『進化』したァッ!!」
瞬間、その者は青色の帯に全身を包まれる!!
止まらぬ加速と共に……その者、トラは次の境地へと足を踏み入れ――駆け抜けるッ!!
徐々に青色の帯は剥がれてゆく。
そして、そこに見えたものとは――!
.
- 116 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:34:38 ID:.abQjNOo0
-
(#'A`)「俺のターン! ドロー4!」
( ´_ゝ`)「ドロー4!」
( ^ω^)「ドロー4!」
('A`)「ウソだろマイソン……」
床に座ってUNOに興じる三人。ソファでは荒巻と横堀が雑談に終始している
モニターに釘付けになっているのは、クックルとショボンだけであった。
――地鳴りが迫る。
(#'A`)「まだだ! 俺のターン! ドロー2!」
( ´_ゝ`)「ドロー4!」
( ^ω^)「ドロー4!」
('A`)「これが絶望か……」
――地鳴りが迫る。
.
- 117 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:35:19 ID:.abQjNOo0
-
『フゥハハーハァーッ!!!』
地鳴りと共に響き渡る笑い声!!
次の瞬間!! ロビーの一角、三番ゲートに亀裂――ッ!
\ 先輩! /
\ 今タイム何秒ォ!? /
( \/ /∧ <./| /| /\___
ヽ./ /(十)>/⌒ヽ / .| / / / //
/ /\/ ,ヘ i  ̄ > \_/ /____//
し' \_/ i />  ̄ ̄ ̄ ̄
i⌒ヽ ./  ̄>__ .|| |::
/⌒ヽ i i \( .|/ / /\ .|| |::
i | /ヽ ヽ ∠__/  ̄ .|| |::
ヽ ヽ| |、 \_ノ > <> || |::
\| )  ̄ ./V ..|| |::
____ .ノ ./⌒)∧ / ...__________||___
/ し'.ヽ ( .∨ /\________|__|
// し' / /\  ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
- 118 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:36:02 ID:.abQjNOo0
-
,.ィ , - 、._ 、
. ,イ/ l/  ̄ ̄`ヽ!__
ト/ |' { `ヽ. ,ヘ
N│ ヽ. ` ヽ /ヽ / ∨
N.ヽ.ヽ、 , } l\/ `′
. ヽヽ.\ ,.ィイハ | _|
ヾニー __ _ -=_彡ソノ u_\ヽ、 | \ ――三分二十八秒!!
.  ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ >
. l  ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ ∠__ これは新記録だ!!
゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ トr‐' /
l `___,.、 u ./│ /_
. ヽ. }z‐r--| / ト, | ,、
>、`ー-- ' ./ / |ヽ l/ ヽ ,ヘ
_,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´ ./ \、 \/ ヽ/
-‐ '''"  ̄ / :| ,ゝ=< / | `'''‐- 、.._
/ !./l;';';';';';';\ ./ │ _ ←どう見てもショボン
_,> '´|l. ミ:ゝ、;';';_/,´\ ./|._ , --、 | i´!⌒!l r:,=i
. | |:.l. /';';';';';|= ヽ/:.| .|l⌒l lニ._ | ゙ー=':| |. L._」 ))
l. |:.:.l./';';';';';';'! /:.:.| i´|.ー‐' | / | |. ! l
. l. |:.:.:.!';';';';';';';'| /:.:.:.:!.|"'|. l' │-==:|. ! ==l ,. -‐;
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- 119 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:36:43 ID:.abQjNOo0
-
ナ ゝ ナ ゝ / 十_" |!.|?
cト cト /^、_ノ | 、._ あ __  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・
ミミ:::;,! u `゙"~´ ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ ゞヾ ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/  ゙̄`ー-.、 u ;,,; j ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\ ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/ J ゙`ー、 " ;, ;;; ,;; ゙ u ヾi ,,./ , ,、ヾヾ | '-- 、..,,ヽ j ! | Nヾ|
'" _,,.. -─ゝ.、 ;, " ;; _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ | 、 .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
j / ,.- 、 ヾヽ、 ;; ;; _,-< //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─-- エィ' (. 7 /
: ' ・丿  ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、 i u ヾ``ー' イ
\_ _,,......:: ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... ' u ゙l´.i・j.冫,イ゙l / ``-、..- ノ :u l
u  ̄ ̄ 彡" 、ヾ ̄``ミ::.l u j i、`ー' .i / /、._ `'y / 「壁が飛び散って
u `ヽ ゙:l ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_  ̄ ー/ u / 人が出てきたァーッ!?」
_,,..,,_ ,.ィ、 / | /__ ``- 、_ l l ``ーt、_ / /
゙ u ,./´ " ``- 、_J r'´ u 丿 .l,... `ー一''/ ノ ト 、,,_____ ゙/ /
./__ ー7 /、 l '゙ ヽ/ ,. '" \`ー--- ",.::く、
/;;;''"  ̄ ̄ ───/ ゙ ,::' \ヾニ==='"/ `- 、 ゙ー┬ '´ / \..,,__
、 .i:⌒`─-、_,.... l / `ー┬一' ヽ :l / , ' `ソヽ
ヾヽ l ` `ヽ、 l ./ ヽ l ) ,; / ,' '^i
↑どう見ても兄者 ↑どう見てもブーン ↑どう見てもドクオ
- 120 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:37:23 ID:.abQjNOo0
-
/ ,' 3「やっと揃ったのう」
(//‰ ゚)「よくもまぁ、これだけ冷静さに欠けた面子に出来たものだ」
<おっ! お前達が新入りだな! 俺はトラ、先輩だ!
<ちょ……こっち来るな! キモイ!
<なんだその格好! 赤色無しのペプシマンみたいな格好しやがって!
(//‰ ゚)「……ショボン、モララーを呼び戻してくれ。早速だが、今晩からミーティングを始めるぞ」
(´φω・`)「了解」
≪モララー、横堀がお呼びだ。早く戻ってこい≫
≪……ああ、今帰る≫
モララーの声。
≪……急げよ≫
ショボンはそれだけ言い残し、モララーとの思考接続を解除した。
一瞬の接続だったが、ショボンはモララーの中に僅かな『動揺』を察知する。
だがそれは伏せておこう。ショボンはそう判断し、横堀に目を向け、接続を終えた事を合図で知らせた。
- 121 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:38:40 ID:.abQjNOo0
-
横堀が一歩前に踏み出る。
(//‰ ゚)「――我々『ASCII』はこれより『達磨崩し事件』に本腰を入れ、逮捕に向けての活動を開始する」
(//‰ ゚)「ここにモララーを加えた合計九名を一部隊とし、今後の作戦を順次展開していく予定だ」
(//‰ ゚)「新入りへの時計塔内部についての説明は説明はトラが担当。
残りの物は今夜のミーティングまで自由行動。午後九時に時計塔の頂上に集合しろ。以上だ」
( ´_ゝ`)(……えぇ〜っと?)
/ ,' 3 1
(//‰ ゚) 2
(´φω・`). 3
( ゚∋゚) 4
(十) 5
( ・∀・) 6
( ^ω^)「アイアム、ナンバー7」
('A`)「アイム、ナンバー8」
(;´_ゝ`)(……)
- 122 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:39:40 ID:.abQjNOo0
-
(;´_ゝ`)「……アイアム、ナンバー9?」
( ^ω^)「イエス! ナンバー9!」
('A`)「俺達、巻き込まれたんだZE☆」
若者を拉致って無銭労働を強いる集団。
巻き込まれた事を自覚した瞬間、兄者はここがそうでない事を天に祈り始めた。
現実は時として残酷である。時の流れもまた、その一つである事に変わりは無いのだ。
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです
第八話「町、時の流れ、人」
―――――――――――――――
.
- 123 :名も無きAAのようです:2011/09/23(金) 21:55:09 ID:.abQjNOo0
- やりたい事を詰め込んでみたらこうなった。反省はした方がいい
次回からようやく達磨崩しの話を進める事が出来るよ!
達磨崩し編は後三話くらいで終わらせたい。まだまだ書きたい場面は沢山あるのです
今後は今回の様な罵詈雑言に留まらず、糞尿吐瀉物血肉が辺り一帯に飛び散る可能性が高いです
投下前には注意書きしますが、やりたい放題書いてく事に変わりはないよ! でも規制される危険が出てきたら止めるよ!
例の如く、次回は一週間後になると思われますん
今回は本当にやりたい放題やってしまった。次回はちゃんとビッシリ書くよ! ('(゚∀゚∩
- 124 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 07:32:22 ID:B.cNPyX6O
- あえて質問「巣立入早」←これどう読むの
「にゅ」がはいるのは予測できるけど
もうひとつ、トラって(=゚д゚)じゃなかった?
- 125 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 14:27:37 ID:ToJ2SxJc0
- 巣立入早=すだちいりはや
ニュー速とは読まない。これが俺クオリティ
トラは(=゚д゚)ですが、最後の所は能力で(十)こんな感じになりました
簡単に言えば仮面ライダー的変身をしました
- 126 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 21:29:16 ID:ToJ2SxJc0
- ラジオに名前出たお!
死ぬほどうれしいお!
- 127 :名も無きAAのようです:2011/09/24(土) 22:37:05 ID:B.cNPyX6O
- >>126
書き込みしようと思ってた
感想ラジオのレスを読んだら
覆面Bかと思ったけど違ったみたい
- 128 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/09/26(月) 17:36:38 ID:ApCpKkcM0
- ちょっと本気出したら書けた(ドヤァ
今晩投下出来ると思う。しかし短いので、役割的には番外編になる(兄者の過去話)
バトルはないよ! 期待してた人はもうちょっと待っててね! 二部が始まるくらいまでな!
正直ラジオには出ないと高を括ってたから、厨二に釣られてスレ開いた人はマジですまんこ
- 129 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:39:26 ID:ApCpKkcM0
- 時計塔の地下施設。簡単に言ってしまえば、そこは大きなホテルだった。
地下数階まで及ぶ居住区画に加え、住民に不自由をさせないような物が多く存在している。
各所に作られた娯楽施設やトレーニングルームなど、その幅は今もなお、住民達の要望によって広がりつつある。
それらの説明をトラの案内の下で聞かされ、兄者達三人は内部のおおよその構造を把握し終えた。
終わった時には時刻は午後七時を回り、丁度腹も空く頃であった。
ミーティングが行われるまで残り二時間。時間的には余裕がある。
それを見計らい、トラは兄者達に向けて揚々と話す。
(=゚д゚)「この先の部屋はショボン先輩のバーになってるんだ。……良かったら奢るぞ?」
(*^ω^)「はい先輩! 何か腹が膨れるものは出ますかお!」
(=゚д゚)「当然!」
('A`)「……晩飯? 晩飯が……食えるのか?」
(*^ω^)「そうだおドクオ! メシ、白いご飯が食えるんだお!」
('∀`)「よっしゃァ!」
( ´_ゝ`)「……そういえば、ブーン達は今までどこに住んでたんだ? まさか野宿な訳……」
( ^ω^)「えっ」
('A`)「えっ」
(;´_ゝ`)「……よ、よかったな。今日から三食宿有り、仕事有りの生活だぞ」
( ;ω;)「やったおぉぉぉぉぉ!!」
( A )「俺達……やっと屋根のある場所で……!」
- 130 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:41:37 ID:ApCpKkcM0
-
――『ショボーンズ・BAR』
かくしてショボンのバーである。
(´φω・`)「サービスは無しだ。食い物が欲しいなら金を出せ」
カウンターの向こうでショボンが言う。
彼はいかにも『マスター』といった風貌で、洗い終わったグラス等の水を拭き取っていた。
そのカウンター席に四人並んで座り、トラがショボンに声を掛ける。
(=゚д゚)「先輩、今日は俺の奢りなんです。コイツらにたっぷり食わせてやって下さい」
(*^ω^)「カモン! ホットドッグ!」
(*'A`)「ええい! うな丼はまだか! 早くうな丼を出せ!」
( ´_ゝ`)「ご飯と味噌汁、卵焼き。あ、味付け海苔と漬物もオマケしといて」
(´φω・`)「えっと……アメリカン〜丼ィ〜庶民食ゥ〜?」
(´φω^`)「……トラ? この注文、相当高くなるぞ? 主に、場違いな注文を理由にな」
(;=゚д゚)「お前ら馬鹿か!? ここバーだぞ! もっとオシャレな物を頼めないのか!」
(´φω^`)「いいよいいよ! 厨房ならあるし、今すぐ極上の物を作ってやろう!」
(*^ω^)「フゥゥゥゥゥゥ!!」
(*'A`)「うな丼マダー?」
(;= д )「止めろォ! 給料が吹っ飛ぶゥゥゥゥゥ!!」
- 131 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:42:43 ID:ApCpKkcM0
-
(*^ω^)「ハムッ! ハフハフ、ハフッ!」
(*'A`)「ウメェ! もう一杯!」
(;=゚д゚)「あぁ……俺の給料が……」
ショボン特製のバーボンを煽りながらトラが囁く。
ガツガツと飯を頬張るドクオとブーン。それとは正反対に、既に食事を終え、少し離れた席で一人コーラを飲む兄者。
トラは兄者の横に座り直すと、気さくな笑みを浮かべて兄者を一瞥した。
(=゚д゚)「……晩飯、お前はもういいのか?」
( ´_ゝ`)「ああ、もう十分だ」
(=゚д゚)「……名前は? まだ聞いてなかったしな」
( ´_ゝ`)「流石兄者。アンタは?」
(=゚д゚)「トラ。といっても、この仕事場だけの偽名だけどな」
( ´_ゝ`)「ふぅん……」
- 132 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:44:19 ID:ApCpKkcM0
-
(=゚д゚)「……これまで事情は後で、モララー先輩本人から聞くといい。企てたのはあの人だからな」
( ´_ゝ`)「ああ」
兄者自身、今夜中にモララーに会って話を聞くつもりだった。
こういう事は先に言ってほしいもんだがな。兄者がそう言うと、隣に座るトラも賛同して笑った。
(=゚д゚)「ま、あの先輩、ああ見えて過保護な所あるからな」
( ´_ゝ`)「けど今回はそれが原因で拉致だぞ? モララーはヤンデレの素質持ってるね、絶対に」
(=゚д゚)「言えてるが……誰にだって、無くしちゃならない大事な物っていうのが必ずある。
形振り構わず必死になって、守るべき物がな……」
( ´_ゝ`)「耳の痛くなる話だ」
(=゚д゚)「……でよ、俺は能力の対価で『疲労感』を失くしちまったんだが……兄者、お前は?」
(;´_ゝ`)「失くした、って事は……疲労感が丸々無いのか?」
(=゚д゚)「……例えるなら風船さ。疲れが限界まで溜まった時に、風船みたいに意識が破裂して、しばらく気を失ったままになる。
ここ数日は働き詰めだからな……そろそろ気絶すると思うぞ」
( ´_ゝ`)「へぇ、俺とは違うんだな」
(=゚д゚)「で、お前は何を持ってかれたんだ?」
( ´_ゝ`)「……弟、らしい」
.
- 133 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:45:26 ID:ApCpKkcM0
-
(=゚д゚)「弟……人間一人か。珍しいな」
トラの反応は素っ気ないものだった。
それを見る限り、彼も戦いの中で様々な物を見てきたのだろう、と兄者は想像する。
兄者はふと昔の事を思い出した。
それとタイミングを同じくして、ショボンが声を上げる。
(´φω・`)「よければお前達兄弟の話、聞かせてもらえないか?」
( ´_ゝ`)「……あんまり良い話でもねーぞ」
(´φω・`)「まぁそう言わないで」
これはサービスだ。
ショボンはそう言い、兄者のグラスに再びコーラを注いだ。
乗じてトラもバーボンを要求するが、あえなく門前払いであった。
( ´_ゝ`)「……それじゃあ話すけど、聞いても引くなよ……」
弱々しく始まった語りに耳を傾けたのはショボンとトラ。
静まり返った様子を見て、ブーンとドクオも思わず手を止める。
今、全員の視線は兄者に向けられていた。
( ´_ゝ`)「……小学生の頃、俺達兄弟は周囲からこう呼ばれていた――」
- 134 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:46:15 ID:ApCpKkcM0
-
――『努力と才能の双子』ってな。
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第九話「時には昔の話を 【努力と才能の双子】」
―――――――――――――――
.
- 135 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:46:58 ID:ApCpKkcM0
-
行動や思考が一緒になりやすいだけで、俺と弟者は普通の兄弟となんら変わりはなかった。
仲の良い兄弟。それが傍からみた俺達の第一印象。
そしてもう一歩踏み入った学校の友達や教師達。何も知らない彼らは、俺達兄弟をこう称した。
『努力と才能の双子』。初めてそう呼ばれたのは、俺達が別々の方向を向き始めた、小学四年生の時だった。
(´<_` )「時に兄者」
( ´_ゝ`)「なんだ」
(´<_` )「今日は友達と遊ぶのだが、一緒に来ないか?」
( ´_ゝ`)「早めに帰ってこいよ」
(´<_` )「……ああ」
俺は全てにおいて弟者に負けていた。
正確に言えば『弟者に勝てる事が無い』だが、些細な事だろう。
反面、弟者は才能に満ちていた。
努力を要さず勉学に長け、歩くだけで人が集まる。流石弟者、俺の弟はそういう奴だった。
それを幼くして自覚した俺は、弟者と肩を並べる為の努力を始めた。
だが弟者は俺をおいて先にいく。肩を並べる事が出来たのは勉強だけで、他の事は足元にも及ばない。
――その勉強も、『小学校までの内容』という天井が無ければ、負けていたのは明白だろう。
.
- 136 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:47:39 ID:ApCpKkcM0
-
俺が弟者と対等にある為には、膨大な量の勉強をするしか方法がなかった。
しかしそれも中学に上がったら負ける。そう思った俺は、小学生にして大学受験までの内容を無理矢理頭に叩き込んだ。
(*´_ゝ`)
これで勉強だけは負けない。そう思い、安心した矢先の事だった。
いつも通り机に向かい、勉強を始める俺の横に立ち、弟者が言った。
(´<_` )「? これって――」
.
- 137 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:48:30 ID:ApCpKkcM0
-
.
- 138 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:53:12 ID:ApCpKkcM0
- 努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
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努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
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努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力努力
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- 139 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:53:54 ID:ApCpKkcM0
-
才能
.
- 140 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:55:00 ID:ApCpKkcM0
-
「……あにじゃー。朝なのじゃー」
扉の向こうで声が聞こえた。それは、年端もいかない俺の妹の声だった。
「……勝つだけが全部じゃないんだよ、兄者……」
扉の向こうで声が聞こえる。それは、これから仕事に向かう父の声だった。
「……」
扉の向こうで誰かが立ち止った。しかし、数秒もすれば俺を置いて行く。
( _ゝ )
小学六年生にして俺は挫折。
その後の数ヶ月間、俺が外の空気を吸う事は一度たりとも無かった。
――山の様に積み上げた努力が、一片の才能に負けた瞬間だった。
俺の一生は、弟者にとっての二、三日。
辿り着けない絶望。努力の限界値。才能の可能性、未来。
自分への希望。現実逃避。苦し紛れの努力――潰える自我。
自分を見失った俺は後日、自殺未遂の所を母者に見つけられ、病院へと搬送された。
それからの入院中、俺は死を渇望した。なんでもいいから死にたかった。現実に殺される位なら自殺する方がマシだと考えたからだ。
まぁ子供っていうのは頑固なもので、精神病棟に移されてからも、俺は自殺未遂を幾度となく繰り返していた。
- 141 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:55:53 ID:ApCpKkcM0
-
( ´_ゝ`)
ふと俺はカレンダーを見た。季節は夏だった。
中学校。弟者は変わらずやっているだろうか。爪を噛みながら、俺はそう思った。
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「その癖は相変わらずだね……」
俺の様子を見ながら母者は言う。
そう言われてから、俺は今、母者と面会している事を思い出した。
分厚いガラスに仕切られた二つの部屋。それぞれの部屋の片隅には警察官が仁王立ちしている。
それに至る経緯はこうだ。
何を思ったのか、俺は精神病棟を脱走。その道中で――
――とにかく、俺は病棟を脱走して事件を起こし、警察に捕まっていた。
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「アタシの古い友達が上に掛け合って、お前のやった事は全部帳消しになった」
死刑はないのか。反射的に、俺はそう言った。
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「アタシが許さないね」
母者は言い切る。
- 142 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:56:50 ID:ApCpKkcM0
-
( ´_ゝ`)「……弟者は元気か?」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「ああ、元気にやってるよ。でも、中学では不良らしくてね。友達は居ないみたいだ」
( ´_ゝ`)「……不良?」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「授業放棄、深夜徘徊、暴力沙汰……今日も補導されて、この建物の中に居るよ」
(;´_ゝ`)「なんで……なんで止めなかった!」
俺は声を荒げ、分厚いガラスを何度も叩いて母者に問い続けた。俺の中に微かな生気が灯った瞬間だった。
そして母者は微笑みながら俺に言う。
@@@
@#_、_@
( ._ノ`) 「弟者がそれを選んだ。自分の成功を捨ててまで、無くしちゃならない大事なモンがあったんだよ」
.
- 143 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 21:59:43 ID:ApCpKkcM0
-
俺が病棟を退院してから数カ月後。その時点で、もう自殺未遂をする事はなくなっていた。
そして俺は何も知らないクラスメイトに囲まれて、とある私立中学の教室の中に居た。
二年三組。それが俺に与えられた地獄の名前だった。
地獄――悪い意味じゃない。なにせ俺は一度死んでいる。だから俺は苦しい事も悲しい事も、感じる必要は無かった。
機械的に進む日常。
そんな中、俺はある事を始める。
q(#`д。')p「ドクオぉ〜! ちょっと金貸せよぉ〜」
(;'A`)「あっ!」
d(#゚q゚)n「……お! 結構中身あんじゃん!」
川#`д'。)し「おい! 明日も金持って来いよ! でなけりゃぁ〜?」
(;'A`)「あぅ……うん……」
( _ゝ )
――それが不良狩り。人生の転機とも言える行動だったと、俺は今でも信じている。
.
- 144 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 22:01:08 ID:ApCpKkcM0
-
見境なく不良を病院へと送る俺。そんな事を一か月も続ければ、校内から不良は『一人を残して』消え去っていた。
俺の噂もすぐに広まり、残る一人の耳にもそれは伝わった。俺達の激突を誰もが予期し、その結末を想像していた。
そして、その日はやってくる。
「……久しぶりだな」
俺の目の前で声が聞こえた。それは、俺の無力を証明する壁。
「努力と才能。喧嘩ならそんな事は関係無いよな、兄者」
俺の目の前で声が聞こえた。それは――
( ´_ゝ`)「――馬鹿、だったんだな。お前も」
(´<_` )「当たり前だ。俺、才能に縋らないと何も出来ないんだぜ」
( ´_ゝ`)「だが俺は努力しても何も出来なかったぞ」
(´<_` )「力を入れる所を間違えただけだ。……兄者は、俺に出来ない事をずっと一人でやっていた。
俺は一人じゃ何も出来なかった。圧倒的に、欠けた物が多すぎたんだ」
( ´_ゝ`)「……なぁ、これが終わったら……」
(´<_` )「……一緒に不良のトップでも目指してみようぜ」
( ´_ゝ`)「ああ、そうしよう――」
- 145 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 22:03:08 ID:ApCpKkcM0
-
俺は殴り弟者を続け、弟者も俺を殴り続けた。
雨が降ろうと関係無い。日が落ち登ろうとも拳を振り続ける。
そんな中、俺は自分の中で見知らぬ『何か』が湧き上がる感覚に痺れていた。
試しに俺は笑って両目を見開き、弟者の拳を全て受けきってみた。
するとどうだ。日常では感じられない感情が沸き起こった。
――そして俺は自覚した。
俺が欲しかったのは自分と拮抗し、越えていく力。血沸き肉躍る戦い、生きた心地を与えてくれる相手だった。
一筋縄ではいかない相手――『弟者』こそ、俺の求めた最高の『玩具』なんだと悟った。
その喧嘩の終わりを俺は覚えていない。
次に起きた時には全身を包帯で巻かれ、病院に居た。
窓際のベッドには俺と同じ格好の弟者が居り、俺達は顔を見合わせ、久しぶりに笑顔を見せあった。
あの時弟者に言われた「おかえり」という台詞に鳥肌を総立ちさせたのは、今となってはいい思い出だ。
退院後、俺達は不良への道を順調に進んだ。
いつの間にか不良グループのトップに居たり、『ビーストファング』だなんて異名も付けられたりもした。
努力も才能も関係の無い世界で、俺と弟者は毎日を楽しんだ。後悔は無い。あるのは夢の様な『あの頃』の記憶だけ。
一辺倒に努力だなんだと言って墓穴を掘っていた、黒歴史にも近しいあの記憶だけ。
弟者が何を思って不良になったのか。あるいは、進むべき道を間違っていたかどうか、それを問うのは野暮というものだ。
ただ一つ俺が言える事は、弟者も俺と同じく欲していたのかもしれない。
生きた心地を与えてくれる相手。その可能性を持った、俺という存在を――
.
- 146 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 22:05:44 ID:ApCpKkcM0
-
―――――――――――――――
( ´_ゝ`)「昔話は以上だ。すげー端的に言ったから誤解すんなよ」
(=゚д゚)「その後、弟はどうなったんだ?」
( ´_ゝ`)「中三の時に父者の車に乗って出掛けて、二人揃って交通事故で死んじまった」
(´φω・`)「……面白い話だった。トラ、今回だけは俺の奢りだ」
(=゚д゚)「んじゃあ、お言葉に甘えますかね」
(;^ω^)(予想以上に壮絶だったお……)
(;'A`)(本人から聞くと……また違った重みがあるな……)
(;^ω^)(お? ドクオは兄者と同じ中学だったんだお?)
('A`)(ああ、ちゃんと弟者の顔も覚え……)
- 147 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 22:07:04 ID:ApCpKkcM0
-
(´φω・`)「さ、そろそろミーティングの時間だ。お前達は先に行ってろ。俺は、食器を片づけたら行く」
トラに背中を押され、そそくさとバーを後にする四人。
上へと向かうエレベーターの中、ドクオが不思議そうに口を開いた。
('A`)「何であの人、俺達にメシ奢ってくれたんだろうな」
(=゚д゚)「……人には色々、事情ってのがあるんだよ」
( ^ω^)「……兄者」 ボソボソ
( ´_ゝ`)「ん?」
( ^ω^)「内藤の件で話があるお。後で部屋に来てほしいお」
そういえば、と兄者は思った。
内藤ホライゾン。ブーンとドクオが倒そうとしている相手だが、兄者は未だその人影すら見ていない。
敵と言われも実感が沸かない。故に、兄者の頭の中から内藤の事はすっかり抜け落ちていた。
――そういえばアレも思い出した。
海岸沿いの倉庫群。かつて流石兄弟が束ねていた不良グループを壊滅させたあの時。
そこでショボンと瓜二つの顔をした少年に出会った事を、兄者は今になって思い出した。
そして忘れそうになっているが、今夜中にモララーと話すという用事もあるのだ。
知らぬ間にフラグを立てすぎた。トリプル・ブッキングの面倒臭さが鼻につくが、兄者は別段、嫌ではなかった。
身近な人間の大切さは兄者が誰より理解している。それを思えば一晩の多忙など塵に同じだった。
音が鳴り、エレベーターが停止する。
一階フロアの螺旋階段はとても長く、登り切るには少し時間が掛かるだろう、と兄者は予想する。
- 148 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 22:07:50 ID:ApCpKkcM0
-
時間という概念は階段に似ている。どちらも前を向かなければ、ロクに上れもしないのだ。
だが兄者の中の時間はゆっくりと進んでいる。前を向くのに時間は掛ったが、今は前を向いて上っている。
――俺は今、時の階段を上っているようだ。
兄者はそんな事を思いながら、螺旋階段の一段目に足を乗せた。
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第九話「時には昔の話を 【努力と才能の双子】」
―――――――――――――――
.
- 149 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 22:14:40 ID:ApCpKkcM0
- 即席感が否めないのは仕様
次も一週間以内の投下になります。ならなくても俺は知らない
誤字脱字があったらプギャーして下さい。質問あれば五臓六腑を金に換えてでも答えます
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
- 150 :名も無きAAのようです:2011/09/26(月) 23:41:40 ID:hEpdWTuAO
- やっぱり大佐のAAがしっくりくる
- 151 :名も無きAAのようです:2011/10/07(金) 20:04:32 ID:Vuew1SCM0
- 明日か明後日くらいに投下出来るといいね!
- 152 :名も無きAAのようです:2011/10/08(土) 13:02:06 ID:VDEGqN1g0
- やっと追いついたわ。投下楽しみにしてる
- 153 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/10/08(土) 22:27:31 ID:8qy3VGXU0
- このスレの位置が崖っぷち過ぎる
明日の朝、早く起きれたら投下します
起きれなかったら夜。それでも駄目なら>>1は死んだも同じっ・・・!
- 154 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/10/09(日) 20:51:07 ID:rG10mUc60
- 投下予告の頻度だけは一流の所、見せてやるぜ!
見直し終わったら投下始める
- 155 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:52:36 ID:rG10mUc60
-
『寄るなッ! 誰一人……その場を動くんじゃあない……!』
夜の美術館に怒号が響く。
壁を背に、周囲を警備員に囲まれている男。
彼は拳銃をこめかみに押し当て、何かに怯えた様子でカタカタと震えていた。
『議員……! 落ち着いて……銃を下して……!』
『……達磨崩しっ……!』
両目を見開き、怯え、縮こまる議員。
そんな状態で呟いた彼の一言は、周囲の人間の耳には気違いの世迷言だとしか思われなかった。
『来る……達磨崩しが……死にたくないィィィ!!』
それが議員の最期の一言。
『待っ――!』
一拍置いて、弾丸が議員の頭部を貫通した。
.
- 156 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:53:17 ID:rG10mUc60
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十話「 狂気の瞳 ≪Invisible Full Moon≫ 」
―――――――――――――――
.
- 157 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:54:12 ID:rG10mUc60
-
(=゚д゚)「先日起きた美術館での議会議員の自殺騒ぎ……。
今見て貰ったのは、荒巻さんとヒッキーが美術館の監視カメラから拾い上げた映像です」
(=゚д゚)「死亡したのは議会の重鎮の一人。コイツは裏の仕事も数多く扱っていまして、議会もこの映像は厳重に隠していました」
(´φω・`)「相変わらずだな、ウチのトップは」
/ ,' 3「天下りの完成刑みたいな議会じゃからな。最早、議会に残っているのは絞り粕だけだ」
(´φω・`)「……で、今回死亡した議員が言っていた『達磨崩し』というワード……あれは?」
(=゚д゚)「達磨崩しがやった、という事でしょう」
端的にトラが答える。
彼らが今居るのは時計塔の頂上。大きな円卓を囲んでのミーティングをやっている最中であった。
壁に埋め込まれたテレビ画面は、議員が自殺する寸前の映像を映して停止していた。
(´φω・`)「……横堀、前々から聞こうと――いや、お前が言うのを待っていたんだが、あまりに遅すぎる。こっちから聞かせてもらう」
(´φω・`)「『達磨崩し』は能力者なのか? そうならば奴の能力は何か、答えてもらえるか」
(//‰ ゚)「あ……いや。今回はちょっと特殊でな。首相直々の指令で我々は動いている。
事件としては管轄外だが、稀代の難事件である事に変わりない。気を抜く必要は無いぞ」
(´φω・`)「……なんだ、やけに初々しい反応だな。らしくないぞ」
(//‰ ゚)「うるさい」
- 158 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:55:03 ID:rG10mUc60
-
(=゚д゚)「……んで、さっきの映像を達磨崩しの『第二の事件』だとして、問題は『第三の事件』……」
( ´_ゝ`)「それは三人目の被害者――というか、二件目と同じく自殺した議会議員が最期に言った、議長の『殺害予告』だな?」
(=゚д゚)「そうだ」
( ゚∋゚)「その予告って釣りじゃないのか?」
(=゚д゚)「……確かに不可解な事は多い。一件目の殺害方法は分からず、続く二件目三件目は意味不明な言葉を残す自殺。
達磨崩しが二人の議員を脅迫して言わせたとしても、当人の家族も金も、毛ほどの変化は無かった。
体に爆弾を仕掛けられた訳でもなく、ただの自殺。逃げられた状況にも関わらずの、自殺……」
( ´_ゝ`)「……『そういう能力』、っていうのが一番分かりやすい考え方だな」
( ゚∋゚)「能力の幅は相当広い。もしかしたら、こんなデスノートみたいな能力もあるかも知れないな」
( ´_ゝ`)「……用心に越した事は無い。仮想敵を作り、考えうる全ての能力への対策が必要だ。
しかしこうなると、議長から身辺警護の依頼が来ると思うんだが……」
/ ,' 3「ああ。兄者の言うとおり、ここに首相を通しての指令状がある。我々で議長の子守をしろ、との事らしい」
( ゚∋゚)「それで、その犯行が行われるのはいつだ?」
(=゚д゚)「資料の通りなら……三週間後の今日です」
( ゚∋゚)「……」
( ゚∋゚)「……例えば、だ」
クックルは椅子にもたれ、天井から吊るされた照明を見ながら話し始めた。
- 159 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:55:54 ID:rG10mUc60
-
( ゚∋゚)「三件目の事件が達磨崩しによるものでなく、議会がでっち上げた『自作自演』である可能性は考えられないか?
一件目、二件目は確かに奇怪な死に方をしているが、三件目だけはやけに人間臭い……」
( ゚∋゚)「三件目だけが、犯人の明確な目的によって引き起こされている気がしなくはないか?」
( ゚∋゚)「……そう考えた場合、これは達磨崩しの名を使った議会の大掃除である可能性が大きくなってくる。
余計なスキャンダルを生み出す者を、凶悪殺人犯という看板の裏で消していく。もしそれが議会全体の思惑だとしたら?」
(//‰ ゚)「……だとすれば今回、議長は煙玉の役割を果たす事になる訳か」
( ´_ゝ`)「議長の殺害予告……まぁ、世間の目眩ませとしては十分な話題性があるな」
( ・∀・)「んじゃあ、一件目は達磨崩しによるもの。二件目は議会の――」
( ゚∋゚)「――いや、重ねて言うが、議会の自演は三件目だけだ」
( ・∀・)「そう思う訳は?」
( ゚∋゚)「物真似する奴ってのは大抵が目立ちたがりだ。だからこそ、行動はシンプルかつ短絡的なものになる。
その無意識がオリジナルとの軋みを生むんだよ。これまでの事件から達磨崩しという人物像を想像してみろ。わざわざ殺人予告をすると思うか?」
( ・∀・)「……なるほどな。なら『第三の事件』が議会の自演だとして、『第二の事件』は誰がやった?」
(=゚д゚)「達磨崩しがやった、って事ですよ」
トラが簡潔に呟く。
( ・∀・)「……議会の汚れっぷりを考えると、確かにクックルの言う事も十分な可能性を孕んでいるな」
- 160 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:56:58 ID:rG10mUc60
-
クックルの発言により、この場に居る者は総じて沈黙した。
持論の再構築。
沈黙の中でそれを始めた彼らは、荒巻が席を立ち、テレビ画面の横に移動した事に誰一人として気付かない。
この場に居る者達が良い意味で自分勝手なのは明白で、兄者もそれは一見して理解していた。
荒巻は咳払いをし、彼らの視線を集めた。
/ ,' 3「……我々の管轄は使針者による犯罪が主だが、こういった普通の事件とて管轄外という訳ではない。
もしクックルの推測が当たっていた場合、事件解決は議会委員の一斉摘発に直結する。
各々、思う所はあるだろうが、今は議会委員の自殺を食い止めるのが先決だ。
恐らく議長の殺害予告の裏で、不特定多数の議員が、何者かによって 『自殺に仕立て上げられて』 殺される」
/ ,' 3「既に全議会議員の履歴を調べ、裏の顔を持つであろう人物の名前をピックアップしてある。
そのリストの中でも飛び切り臭うのが――この三人だ」
荒巻はリモコンをディスプレイに向け、画像を切り替える。
『 ( ・3・) ボルジョア 』
『 ( ^^) 山崎渉』
『 (゜3゜) 田中ポセイドン』
(´φω・`)「なるほど……。確かにそういう顔をしているな」
( ´_ゝ`)「そういう顔?」
(´φω・`)「幸が薄いって意味だよ。この顔を見てみろ。主役級には成れず、下の方で細々と薄汚れていく人間の顔だ」
( ´_ゝ`)「たまには日に当てないと、人も例外無くカビていく訳か……」
- 161 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:57:55 ID:rG10mUc60
-
/ ,' 3「……ではワシは今から議長の私邸へ向かい、警護態勢の検討をしてくる。
お前達は横堀の指示に従い、迅速に事に対応しろ」
( ゚∋゚)「おー行ってらっしゃーい」
/ ,' 3「それじゃあ、後は任せたぞ」
荒巻はそう言い残し、この場を後にした。
(//‰ ゚)「……議長の件は荒巻に任せるとして、問題は俺達の今後の行動だ。
殺害予告までの三週間をノンビリしている訳にはいかない。よって先の議員三人を監視、極秘裏に護衛する事とする」
(//‰ ゚)「モララー、ショボン、クックルを小隊長とし、人員を三つに分けよう。メンバーは各人に一任する」
(//‰ ゚)「もし本件が議長の自作自演だった場合、議員殺害の実行犯には『殺しのプロ』を雇っているだろう。
何者かによる『議長殺害予告』まで残り三週間。その間、何としてでも議員の暗殺を阻止しろ」
( ´_ゝ`)「質問」
(//‰ ゚)「何だ」
( ´_ゝ`)「俺達新入り三人も現場で動く事になるのか?」
(//‰ ゚)「いや、お前達三人にはローテーションで現場に入ってもらう。
現場で動くのはお前達の内の一人と、俺達五人だ」
(´φω・`)「人員不足は相変わらずだな……」
( ・∀・)「そう言うな。烏合の衆より大分マシだろう」
- 162 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:58:37 ID:rG10mUc60
-
(//‰ ゚)「全員、敵勢力との交戦に向けて準備をしておけ。張り込みは今から開始する」
(//‰ ゚)「……以上だ」
( ゚∋゚)「……終わったぁ〜」
(´φω・`)「んじゃ、取り合えず店に顔出しておくか……」
真面目な雰囲気は一転。
席を立ったメンバー達は雑談を交わしつつ、呑気な様子で階段を下りていく。
その途中で小隊長は相方を見つけ、三組のチームが完成した。
( ・∀・)「うし、行くぞトラ」
(=゚д゚)「了解!」
(´φω・`)「え? ちょ……お店……」
(//‰ ゚)「趣味は仕事の後だ。……行くぞ!」
( ゚∋゚)「……お前、どんな能力?」
('A`)「……ドラゴンになれますけど……?」
(*゚∋゚)「気に入った! これから一緒に張り込みやろうぜ!」
(;'A`)「えぇ〜!? 今日は夏季アニメが二本始まるのに……」
- 163 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 20:59:19 ID:rG10mUc60
-
( ´_ゝ`)(いいなぁ……俺もドラゴンになってみたいなぁ……)
( ´_ゝ`)(……で、ブーンは皆が話してる最中も、完全に爆睡してた訳だが……)
( ´_ゝ`)「おーい。起きろー」
兄者は、机に突っ伏し死んだように眠るブーンの肩を揺らした。
( ‐ω‐)
( ^ω^) ハッ
(^ω^ )
(^ω^)
( ^ω^)
( ^ω^)「今起きた三行」
( ´_ゝ`)「・大人の事情全開
・張り込み開始。俺らは留守番
・犯人はヤス」
( ^ω^)「ヤス?」
( ´_ゝ`)「業界用語って奴さ。犯人はみんなヤスなんだよ」
- 164 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:00:00 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^)「いやぁ〜小難しい話はどうしても眠くなるんだお」
( ´_ゝ`)「それじゃあ部屋に戻ろうぜ。俺達の部屋のカギ、トラさんから貰ってんだ」
( ^ω^)「え? 俺達、もしかして相部屋なのかお?」
( ´_ゝ`)
( ^ω^)
(; _ゝ )「何が言いたいかは良く分かる! だが諦めろ!」
( ^ω^)「……オナ」
(; _ゝ )「言うな!」
( ;ω;)「……オナニィィィィィィ!!」
(; _ゝ )「諦めろ! もう無理なんだよ、相部屋の時点で!」
.
- 165 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:00:48 ID:rG10mUc60
-
――『地下三階。兄者達の部屋』
( ^ω^)「……」
( ´_ゝ`)「……」
(;^ω^)「……それで、良く考えたら」
(;´_ゝ`)「別に話す事も無いんだよな、俺達……」
今更である。
リビングには横長ソファがテレビに向けて設置されており、二人はそこに座っている。ソファの前にはガラス板の低いテーブルが置かれていた。
テレビはバラエティ番組を映しており、気まずい二人の沈黙をやんわりと霧散させていた。
( ´_ゝ`)「……あ、そうだ。内藤の事なんだけどさ……」
ふと思い出した事を口にする兄者。それを耳にしたブーンは、スイッチが入った様に笑みを浮かべた。
(*^ω^)「おっ! 一緒に戦ってくれるのかお!?」
( ´_ゝ`)「ああ。前に来たお前からのメールの内容を見て、そう決めた」
( ^ω^)「お? 兄者は某国に何か用でもあるのかお?」
( ´_ゝ`)「ああ。内藤の所に行くまでにウチの母親と妹を見つける。母者は使針者だって大佐から聞いてるし、本人も相当強い。
この先の道中を考えても、母者は十分な戦力になるからな」
- 166 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:01:38 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^)「ほえー。兄者のカーチャンはそんなに強いのかお?」
(;´_ゝ`)「そりゃあもう、常時ダダ漏れの威圧感が何よりの証拠だ……」
( ^ω^)「……兄者」
( ´_ゝ`)「ん?」
( ^ω^)「……俺とドクオがこの時計塔に連れて来られる前、クックルさんとショボンさんと戦ったお」
(;´_ゝ`)「……で、ズタボロにされて連れて来られたと」
( ^ω^)「俺が相手したのはクックルさんの方なんだけど……どうにも腑に落ちない事があるんだお」
( ´_ゝ`)「……そういえばクックルさん、無傷だったな」
( ^ω^)「そう、俺の攻撃は一度も当たらなかったんだお。
能力自体の強さは俺が上……なのに、クックルさんには一切の攻撃が通用しなかったんだお」
( ´_ゝ`)「『そういう能力だった』っていうのじゃ無くて?」
( ^ω^)「そうだお。……何て言うか……普通、使針者なら、自分の能力を大いに使って戦う筈だお。
でもクックルさんの戦い方は違ったんだお。能力を使ったのは一瞬で、残りは肉弾戦……」
( ´_ゝ`)「でもよ、使針者は総じて身体能力が向上してるんだろ? ビルの壁を蹴って空中戦を繰り広げる事も可能。
そこにクックルさんの元々の格闘能力を上乗せするんだぜ? ブーン程度の相手なら――」
( ^ω^)「――能力を使うまでもない。確かにその通り、能力の有無で引っ繰り返る戦いではなかったお……」
- 167 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:02:33 ID:rG10mUc60
-
( ´_ゝ`)「……で結局、腑に落ちない事ってのは?」
( ^ω^)「人間の反射神経には限界があり、それは使針者になっても変わらない。音速を超えられたら反応するのは不可能だお。
今回、クックルさんとの戦いでそれと近しい状況に一度だけなったお」
( ´_ゝ`)「使針者でも反応できない距離で、ブーンのエアガンをクックルさんに向けた……?」
( ^ω^)「言う通りの状況だお。そしてその攻撃は何故か避けられ、俺は一撃を食らった。
――その『一撃』こそ、俺の思う腑に落ちない事だお」
( ^ω^)「――『弱かった』」
( ´_ゝ`)「……つまり?」
( ^ω^)「クックルさんは『反射神経』を何かしらの方法で向上させたが、反面『攻撃力』が落ちていた」
( ^ω^)「もしもこの二つの事に関連性があるなら――」
( ´_ゝ`)「……自分の身体能力を操る方法がある、とでも言いたいのか?」
( ^ω^)「その通りだお」
(;´_ゝ`)「……藁、だな。頼るには弱すぎる推測だ。……クックルさんはその事教えてくれなかったのか?」
(;^ω^)「いや、何せ時間が無かったから聞いてないお」
- 168 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:03:52 ID:rG10mUc60
-
――今日の戦いで兄者が見たのは、荒巻とニダーの二人の能力。
それらの体験を経て、兄者は自身の能力の決定的な欠陥を再確認していた。
荒巻の能力――詳細は分からず終いだが、根本的な馬力で兄者が負けていたのは事実。
無敵と言えど、それは勝利を約束する能力ではないのだ。現状荒巻には勝てない。それが兄者の見積もりだった。
対し、ニダーの能力。
特殊な空間を作り、敵を引き込み、圧倒的優位で敵を殲滅する。言わば『蟻地獄』の様な能力。
空間内では自由に物を『分解』し『再構築』出来る。それだけならば問題ない。多くの能力者は対抗できるだろう。
しかし兄者は別だった。
例え兄者がニダーに一撃入れ、致命傷を与えたとしても無意味なのだ。
一撃目で殺せなければ、次に能力が使える様になるまでの『五分間』で自分が死ぬ。
兄者の能力は確かに強力である。
無敵――つまり、全ての現象を無視して行動が可能。
だが一秒。 たった一秒。 僅か一秒。
兄者の能力はトランプで言う『ジョーカー』である。
強力無比である反面、使ってしまえば後は無防備……自分を守れる切り札が無くなるのだ。
戦力としては余りにも脆弱。持つだけ無駄な重荷にしかならない。
――そこに、新たな可能性の光が灯る。
.
- 169 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:04:33 ID:rG10mUc60
-
兄者が今求めているのは安全な『逃走方法』。
ブーンの言う通り身体能力を操作出来れば、二度目の能力発動までの『五分間』を逃げ切れるかもしれない。
兄者の能力の性質上、一番相性の良い戦法は『ヒット&アウェイ』。
それさえ出来れば兄者は強い。そして、強くなるまでの道筋は既に出来ている。
( ´_ゝ`)「……ま、全ては明日からだ」
脳内に広がる思考を端に寄せ、兄者は呆けてそう言った。
(;´_ゝ`)「俺もすげー疲れてんだよ。能力の進化が原因なのか、頭が普段より重たく感じるぜ……」
( ^ω^)「それもそうだおね。今日は休んで、明日色々決めるとするお」
( ´_ゝ`)「さっきの身体能力の事とか、自分の能力の事とか、今すぐ詳しく知りたいのは山々なんだけどなぁー」
( ^ω^)「そう都合良く使針者に詳しい人が居るなんて有り得ないお。荒巻さんも居ないし……」
( ´_ゝ`)「使針者とかに詳しい人か……」
( ^ω^)「……あっ!」
(;^ω^)「……すっかり忘れてたけど、そういえば一人だけ居たお!」
.
- 170 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:05:14 ID:rG10mUc60
-
.
- 171 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:05:55 ID:rG10mUc60
-
――『異空間“どっか”』
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「ああ、可能だよ。感覚を掴む為の練習は不可欠だけどね」
`ヽ_っ⌒/⌒c
絵具を全色混ぜ合わせた様な景色の中で、佐々木カラマロスは二人の質問に答えた。
見えない床に足を付け、ブーン達は佐々木の説明に耳を傾ける。
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「回避力となる反射神経、攻撃力と防御力となる筋力、肉体強度。それに加え、マサイ族並みの視力」
`ヽ_っ⌒/⌒c
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「雑な説明だが有名所はこんなもんさ。もっとも、『身体能力は操作出来る』と気付く者は数少ないけどね」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(;^ω^)「……そういう大事な事は最初に言ってほしいお……」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「聞けば答えていた。それに、気付く奴は気付くようになってるのさ」
`ヽ_っ⌒/⌒c
- 172 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:06:40 ID:rG10mUc60
-
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「で、他に聞きたい事もあるんだろ? ……内藤ホライゾンの事とか?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(;^ω^)「――ッ!? アイツの事が分かるのかお!?」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「まぁ一応この戦いの管理者だからな。これから使針者の情報は俺を介して得るといい。色々と捗るぞ」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(;^ω^)「……じゃあ、内藤の最近の行動を教えてほしいお」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「仲間を集めている途中だ」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(;^ω^)「全員の名前と能力は?」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「残念、それは禁則事項だ。お前の知らない相手の情報は開示出来ない。
`ヽ_っ⌒/⌒c 内藤ホライゾン、素直クール、ツンデレ。明かせるのはこの三人の情報だけだ」
(;^ω^)「……なら、もういいお」
- 173 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:07:23 ID:rG10mUc60
-
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「お前は何か無いの? 見た感じ、一悶着あったみたいだけど」
`ヽ_っ⌒/⌒c
( ´_ゝ`)「ああ……なんか、昼間のアレで俺の能力が進化したらしいんだが……」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「ん、確か消滅系の能力だったな。詳しく知りたいのか?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
( ´_ゝ`)「いかにも」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「ガッシュのクリア編でも読んで来い」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(#´_ゝ`)「真面目に答えろ、怒ってるぞ……!」
〃∩ ∧_∧ そ
⊂⌒( ;・ω・) 「対応早くね!? 『怒るぞ』じゃないの!?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(#´_ゝ`)「いいから教えろ!」
- 174 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:08:05 ID:rG10mUc60
-
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ;・ω・) 「……お前の能力、進化の原因は何だった?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(#´_ゝ`)「爺さんが……無理矢理……」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ;・ω・) 「そう、無理矢理なんだよ。言われてるだろう? コーラに例えられてさ」
`ヽ_っ⌒/⌒c
( ´_ゝ`)「……能力が不安定で、出力も調整出来ない」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)「全くもってその通りで、お前の能力はまだ不完全な状態なんだ。
`ヽ_っ⌒/⌒c まだ形を成してない、サナギみたいな状態になっている」
( ´_ゝ`)「で、それが何か関係あるのか?」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「……先に忠告しておく。進化後の能力を使えば『お前は死ぬ』。
`ヽ_っ⌒/⌒c 詳しく言えば、能力が暴走して お前の体が消滅する だろうな」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「今は経験値を溜めて、地道にゆっくり丁寧に! 今ある能力を使える様になるのが先決だよ」
`ヽ_っ⌒/⌒c
- 175 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:08:46 ID:rG10mUc60
-
( ´_ゝ`)「……」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「……?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
〜〜〜〜〜〜
『ちょこっと前』
( ´_ゝ`)「なぁ爺さん、あれって危ない方法じゃなかったのか?」
/ ,' 3「え? 何? 聞こえない」
(;´_ゝ`)「えぇ〜?」
/ ,' 3「いいっていいって! 死なないから大丈ブイ!」
〜〜〜〜〜〜〜
(#´_ゝ`)「思いっきり死ぬじゃねェか!!」
( ^ω^)「兄者ェ……」
- 176 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:09:57 ID:rG10mUc60
-
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「ぶっちゃけアレ外道の進化方法でさ。リスク高いし、精神崩壊とかも有り得たんだぜ?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(#´_ゝ`)「……こうなりゃジジイの眼薬にカビキラーを――」
(;^ω^)「踏み止まれ! 戻れなくなるぞ!」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「……もう用は無い?」
`ヽ_っ⌒/⌒c
(;^ω^)「あっ! 最後に兄者の時計の場所を変えてやってほしいお」
( ´_ゝ`)「む? そういえば俺の左ケツの時計、移動出来るのか?」
( ^ω^)「これからの事を考えると、事ある度にケツ弄られると複雑なんだお」
シュタッ
∧_∧
⊂( ・ω・)⊃ 「んじゃあやるけど、覚悟はいい?」
/ ノ
し―-J
( ´_ゝ`)「それは当然痛くないんだろ? 余裕wwww」
( ^ω^)
- 177 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:11:16 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^)
( ´_ゝ`)「えっ」
( ^ω^)「例えると……」
( ´_ゝ`)「……例えると?」
(;゚ω゚)「目玉引っこ抜いてアボカド尻に刺す位痛いおォォォォォ!!!」
(;゚_ゝ゚)「そういう大事な事は早く言えェェェェェェ!!」
ヒュンヒュン!
ブォン! ∧_∧
⊂ヽ( ・ω・)つ 「さ、始めるぞ!」
(( ( ) ))
⊂ノ( __フ つ
(_/
流石兄者による阿鼻叫喚のシングルプレイの始まりである。
.
- 178 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:12:30 ID:rG10mUc60
-
――『深夜。とある山中』
この山の中腹には議会議員、田中ポセイドンの館が建っていた。
過去形である理由は至極簡潔。
既に館はガレキの山と化し、田中ポセイドンは『頭部のみの存在』となっているからだ。
「……いいね。君、面白いよ……!」
(;'A`)(勝てない……死ぬッ……!)
( ∋ )
戦闘不能となったクックルの肩を担ぎ、ドクオはある一点を見据えていた。
その視線の先には、ガレキの上で月を見上げる『敵』の姿があった。
「僕の仕事はもう終わった……だから君達を殺す理由が無い」
(;'A`)「……逃がすつもりは無いんだろ……?」
「いや、逃がしてあげよう。ついでにこの頭もあげるよ。僕に死体収集の趣味は無いしね」
(;'A`)「……」
.
- 179 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:13:33 ID:rG10mUc60
-
(;'A`)「――ふざけんな! お前ぐらい簡単に倒せねぇと……内藤なんか……ッ!」
「……ワガママを言わないでおくれよぉ……」
「もっと強くなってからだ……君を狩るのは……もっと熟してからがいい……!」
(;'A`)「――【ドラゴン・スケイル】ッ!」
瞬間、ドクオは毒々しい紫色の両翼を羽ばたかせ、一気に男との距離を縮め、攻撃に転じた。
ナイフの様にスラリと伸びたドクオの爪は、一瞬にして男の喉元へと迫る。
「……それじゃあ僕には届かない。君、怯えているだろう?」
喉には当たった。
だが爪は無残にも砕け散り、ドクオは謎の衝撃によって大きく後ろに吹っ飛んだ。
これを幾度となく繰り返し――ドクオは幾度となく敗れ去る。
(; A )「クソ……ッ! クソがァァァァァァ!」
「僕と君とでは力の差が大きすぎる。それでも突っ込んでくるっていうのは……勇敢とは言わない」
「……そうだね。これから先、その無謀さで死なれたらガッカリだから――」
.
- 180 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:14:13 ID:rG10mUc60
-
爪゚ー゚)「――今の内に半殺しにしておこうか」
.
- 181 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:15:07 ID:rG10mUc60
-
――翌朝。
議会議員田中ポセイドンの頭と、重傷を負って気絶したクックルを連れ、ドクオが時計塔に帰ってきた。
クックルとドクオはすぐさま地下の医療施設へと運ばれるが、ドクオの身体は常軌を逸するグロテスクな状態にされていた。
(; _ゝ )「……何でッ! 何でドクオは『生きてる』んだッ!」
(;・∀・)(この状態で生きている……いや、何かしらの能力で生かされている……!)
(;^ω^)「だ……大丈夫なのかお……?」
('A`)「……ああ。痛みも何にも感じねぇ……」
文字通り『半殺し』。
両腕と下半身は身体を離れ、ドクオの体を覆っていた鱗も全て剥がされていた。
尾も千切り取られ、ドクオの体で残っているのは『頭』と『胴体』と、背中の『両翼』だけだった。
生存は不可能。誰もがそう判断しているし、そう考えるのが当たり前。
しかしドクオは生きている。生き地獄に晒されている。
( ・∀・)(……死なせてやった方が――)
- 182 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:20:00 ID:rG10mUc60
-
(;=゚д゚)「先輩! ドクオの体のパーツ回収してきました!」
/ ,' 3「急いで始めるぞ! 早くせんと取り返しがつかなくなる!」
(//‰ ゚)「分かっている! モララー、そっちは任せたからな!」
荒巻と横堀、その他数名が治療室へと駆け込み、息つく間もなく手術は開始された。
絶句し、硬直する面々。数分もすると、彼らも自分の仕事へと戻っていった。
予期せぬ唐突な田中議員の死亡により、事後処理と情報収集の仕事が山積みだったのだ。
治療室前の喧騒はすぐに無くなった。
そして、最後に残ったのはブーンと兄者、モララーだった。
(;^ω^)「……ドクオの体、本当に元通りになるのかお?」
( ・∀・)「ドクオの体を機械化し、壊れたパーツを取り換える。今から横堀達がやるのはそれだ」
(;´_ゝ`)「……なるほど。機械として直し、能力を解除すれば、人として治っているのと同じなのか……」
( ・∀・)「そういう事だ。だから元通りになる可能性は高いと思うぜ」
(;´_ゝ`)
(;^ω^)
それから先、手術が終わるまで、彼らは一言も話せなかった。
新都市での生活一日目。
唐突に起きた惨事。これが後に起こる激闘の予兆だと、気付いた者は極僅かであった――
.
- 183 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:20:40 ID:rG10mUc60
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十話「 狂気の瞳 ≪Invisible Full Moon≫ 」
―――――――――――――――
.
- 184 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:22:24 ID:rG10mUc60
-
――『とある豪華客船。シベリア行きの便』
爪゚ー゚)「ただいま」 ガチャ
( ^ω^)「おっ。新都市での仕事は終わったのかお?」
爪゚ー゚)「まぁね。面白い子も見つけたし、楽しかったよ」
川 ゚ -゚)「それはいいが、チームの行動を阻害する様な事はしてないよな?」
爪゚ー゚)「……もし、してたら?」
川 ゚ -゚)「私がお前を殺す」
爪 ー )「それも……いいねぇ……!」
(;^ω^)「ここで暴れるなお! 船が沈没しちゃうお!」
豪華客船の一室に、内藤ホライゾンとその仲間が集結していた。
内藤ホライゾン、素直クール、ジィ、ツンデレ――
(´・ω・`)
――ショボンと名乗る『誰か』。
.
- 185 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:24:03 ID:rG10mUc60
-
(´・ω・`)「でさ、ジィ。船内の掃除はしてくれた?」
爪゚ー゚)「もちろん。船は自動操縦に切り替えておいたから、存分に船旅を楽しむといい」
ξ゚⊿゚)ξ
爪゚ー゚)「……んん? なんだい?」
( ^ω^)「……また別行動するのか、だってお」
爪゚ー゚)「もちろん。君達とは同盟を結んでいるが、仲間になった訳じゃないからね」
(´・ω・`)「……なら風呂くらい入っていきなよ。血まみれじゃ街にも出られないだろ?」
爪゚ー゚)「そうだねぇ……ま、お風呂借りていくよ」
ジィはそう言い、部屋の浴室の中に消えた。
川 ゚ -゚)「……で、これからどうするんだ? 」
( ^ω^)「仲間になってくれそうな人にバンバン声かけながら、取り合えず『某国』の首都に向かうお」
(´・ω・`)「さっき佐々木に確認してきたけど、『本戦』が始まるのは八月の終盤らしい。時間は十分あるよ」
( ^ω^)「それなら特訓と実践に時間を掛けるだけだお。本戦が始まるまでの一カ月、オイラも力を蓄えるお」
ξ゚⊿゚)ξ
( ^ω^)「……そうだお。オイラ達の願いが叶うまで後少しだお……」
――来たるべき時は、ゆっくりとその針を進めていた。
.
- 186 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:34:33 ID:rG10mUc60
-
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「DIOとかミュウツーみたいなキャラにしようと思った爪゚ー゚)が……
`ヽ_っ⌒/⌒c 何故だかヒソカの様な性格になってしまった」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「ハンターハンター見てたらこうなった。反省はしない」
`ヽ_っ⌒/⌒c
誤字脱字御幣の指摘や矛盾に疑問など、気になった事は何でも聞いて下さいおながいします
ちなみに裏設定もあります。この言葉に釣られた方は是非質問をどうぞ! ('(゚∀゚∩
能力バトルでやりたかった事の一つ。修業。よって次回は修行編です
次の投下は一週間以内になると思います。再来週になろうが意地でも反省はしない
- 187 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:43:29 ID:rG10mUc60
- さあ……五話に一度の『没ネタ解放一人祭り』の時間だ……
それに際し、再三胸に刻んで欲しい事がある……『本編とは一切関係無い』という事っ……!
そう言った上で投下する没ネタ――今回は二つ……! 面白さは保障しないっ……!
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
- 188 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:44:30 ID:rG10mUc60
-
人類ッ!
その手が届かぬ遥か先の――宇宙!
ある時、人類未踏のその宇宙において、惑星間を駆ける謎の機影現る!
何を隠そう、それはロケット! そう、それはロケットに間違い無かった!
輝くメタリック・ボディ! そこに刻まれたるは簡潔なる一文ッ!
『ゲロシャブ運送』! それこそが、惑星間を駆けるロケットの正体であった!
( ^ω^)「落ちてる」
彼がパイロット! 別名『肉団子』! まさに豚ッ!
ちなみに現在、ロケットの燃料は絶無っ・・・!
故に落ちてゆくっ・・・! 星の重力に引っ張られ・・・何も出来ずっ・・・!
機体・・・大気圏を辛うじて突破っ・・・! 生存への光明来るっ・・・!
迫る大地・・・! そこに広がる・・・未知の生態系・・・!
肉団子と呼ばれし男――内藤ホライゾン!
彼は知らないっ・・・! この星で・・・自分がどういう目に遭うのかを・・・! 一片足りともっ・・・!
- 189 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:45:10 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^) オ ナ ピ ク ミ ン で す
.
- 190 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:45:52 ID:rG10mUc60
-
(;^ω^)「うひょ〜。何か落ちちゃった」
( ^ω^)「……あ、燃料タンクがふえるワカメで満ち満ちてるお……」
( ^ω^)「なるほど! 同期の人達がロケットの燃料タンクから燃料を抜き出していたのはこれが目的だったんだお!
オイラが知らない星に落ちる事を予想して、食料を積んでおいてくれたんだお!」
(^ω^)
( ^ω^)「さぁ〜って! これで食料は問題無いお! 住処もロケット改造すりゃいいし……服もあるし……」
( ^ω^)
( ^ω^)「オナニーすっか」
彼が不時着したのは雪原。一面に広がる白い世界で、彼は白い物をブチ捲ける事を決意した。
現在の状況を絵にしたので参考にしてほしい。
雪
山 A , ←豚
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 191 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:46:38 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^)「は…」
( ゚ω゚)「ウッ!!」 ドッピュン
三億。
( ^ω^)「はぁ…」
( ゚ω゚)「ウッ!!」 ドピュッ!
二億。
( ^ω^)「はぁはぁ…」
( ゚ω゚)「ウッ!!」 トピュ
一億。
.
- 192 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:47:30 ID:rG10mUc60
-
一瞬にして六億の精子が飛翔っ・・・! 止め処無く・・・飛翔っ・・・!
果てる内藤ホライゾンッ! 雪原に放たれた六億の精子ッ!
瞬間ッ! その六億の精子に異常発生――ッ!
コングラッチュレーション・・・! おめでとう・・・精子はピクミンに進化した・・・!
蔓延るピクミンっ・・・! 溢れ返る六億のピクミンっ・・・!
.
- 193 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:48:17 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^)
( ゚ω゚)「生まれたわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
/⌒ヽ
ノ( ○
γ ヽ
l● ●l
`> <´
/ \
´ | | `
tl ̄tl
( ゚ω゚)「わあああああああああ!!!!!」
( ゚ω゚)「あぁん!」 ドピュ!
/⌒ヽ /⌒ヽ
ノ( ○ ノ( ○
γ ヽ γ ヽ
l● ●l l● ●l
`> <´ `> <´
/ \ / \
´ | | ` ´ | | `
tl ̄tl tl ̄tl
( ^ω^)「――やはり増えた、か……」
- 194 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:49:09 ID:rG10mUc60
-
( ^ω^)「さてと、取り合えず当面の目的はこうだ」
( ^ω^)「ロケットの燃料となる物を見つける事。母星を消し飛ばせる程の戦力を手に入れる事」
( ^ω^)「部下のピクミンを定期的に増やす事。食糧とかは……まぁピクミン食えばいいわ」
( ´ω`)「でも……ピクミン作るにはオナニーしなきゃいけないお……」
(^ω^)
( ´ω`)「未踏の星だからオカズは無いし、オイラだけじゃあピクミン生産が間に合わないお……」
(^ω^)
(^ω^)「あーあ! どっかにエロ画像とか落ちてねーかなー!」
(^ω^)「エロ画像があると戦力上がって色々と捗るんだけどなー!」
.
- 195 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:49:49 ID:rG10mUc60
-
( ´ω`)「ああ……もういいお……絶望しか見えないお……」
( ´ω`)「……そういえば、何ピクミンって呼ぶか決めてないお……」
( ´ω`)「……オナピクミンで決定だお」
( ´ω`)「じゃ、オイラは寝るから夜中の晩は頼んだお。六億も入れば何だって倒せるお……」
ロケットの中へと戻る内藤ッ!
周辺を警護するオナピクミンの群れッ! 圧倒的戦力ッ!
絶対的安心感に囲まれ――夜、来たるっ・・・!
――否っ・・・! 安心などこの星には存在しないっ・・・!
愚行っ・・・! 自分の立場と力量を見誤った者が行う愚行っ・・・!
それに気付けばまだ三流に留まれる・・・だがっ・・・! 内藤はそれすら気付けない・・・!
翌朝・・・彼は目の当たりにするだろうっ・・・!
自分の思慮の浅はかさが生み出した・・・絶望の朝日をっ・・・!
- 196 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:50:36 ID:rG10mUc60
-
【内藤の日記】
何者かの陰謀により、私は見知らぬ星へと不時着してしまった。
落下の衝撃で私は傷だらけ。今すぐに治療、止血だけでもしなければならない状態に陥るのであった。
だが治療するにも道具がない。私はその時、自身の生命の終わりを悟った。
意識も霞み、走馬灯が見え隠れしていた時だった。耳の奥で、誰かが必死に囁くのだ。
「すぐ村に着きます! 頑張って下さい!」という女の声。
微かな振動が身体に伝わる。私は、誰かの背に乗っていたのだ。
次に目覚めた時、私は天井の木目に視線を向け、寝転んでいた。
体は上手く動かなかった。布団の隙間から見ると、私の身体は包帯で巻かれていた。一目して下手だと分かる巻き方だ。
誰がやったか知らないが、私は不器用な者がやったであろう手当を見て、微笑む。
「あ……」
部屋に入ってきたのは年頃の少女。濡れタオルを抱えているのを見ると、彼女が私の手当てをしてくれたらしい。
_、_
( ,_ノ` )「やぁ御譲ちゃん。どこかにタバコは無いかな?」
私、内藤ホライゾンは女に話しかけてみる。すると女は、恍惚した表情で顔を逸らした。
これから始まる恋の物語、乞うご期待あれ――
.
- 197 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:54:31 ID:rG10mUc60
- 訳が分からなくなった末に出来たもの
エロ画像のある所にVIPPER在り。ブーン系民を増やそうと思った書いたのは本当に嘘です
俺のエロ画像収集の為に書いたとか、そういう汚い心で書いた訳じゃない。誤解はよくない
- 198 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:55:17 ID:rG10mUc60
-
ここが何処であるか分からず、思い返せば自分が誰かも分からない。
打ちっぱなしのコンクリートに横たわる少年は、目覚めと共にそう悟った。
そして少年は体に違和感を覚える。自分の体が、諸々の感覚とリンクしていない様な違和感。
彼は立ち上がって辺りを見回し、その途中で一瞥した机へと歩み寄った。
(この手帳……誰が書いたんだろう?)
机上の電気スタンドが煌々と光っており、その下に手帳が広げられていた。
少年は椅子を引いて腰掛けると、手帳の開かれたページへと目を向ける。
「……嘘だ……」
震えた声で呟くと、少年は手帳に書かれた一文を脳内で反芻した。
それを現実として受け止めるには情報が足りない。とにかく彼は手帳を隈なく読み込み、それを事実と確証させる証拠を探す。
――少年はそれを嘘であると信じたかったが、証拠は探せば探すだけ出てきてしまう。
『新薬投与に予期せぬ不具合』
『感染率100%。感染者から外傷を受けた場合、速やかに医療機関へ連絡を』
『大自然の追い打ち。地震、津波により人口激減』
こうして“人類は滅亡した”という一文は、たった三枚の新聞記事で事実へと変貌した。
- 199 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:55:58 ID:rG10mUc60
-
――傍には誰も居なくて、自分の事も分からなくて
大人になったのかも分からない
時間の止まったこの星で――
『どうしてぼくは生きているんだろう』
(,,・д・)は拾うようです
.
- 200 :名も無きAAのようです:2011/10/09(日) 21:59:07 ID:rG10mUc60
- フラジールと言うゲームに影響されてちょっと書いた
地の文を沢山書かないといけないので途中で飽きてしまった
清く正しい>>1の心が生み出した作品。だが没ネタだ
ちなみにゲームのサントラ聞いてると鬱になる。感情移入するだけ鬱になる
- 201 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 09:54:32 ID:RJlRV26MO
- 読みおわった
こころなしか、文章が読みやすくなった気がする
内容もいよいよ核心に触れてきたみたいかな
ところで質問を一つ
藁←これどう読むの
それとあまりにも下過ぎないかい?
今上げとけば、次回の投下時には
20〜30番手くらいのいい位置にいられると思った
- 202 :名も無きAAのようです:2011/10/10(月) 14:20:45 ID:Zo9R1tKg0
- >>201
ありがとうございますん
藁=わら 読めない字はコピペして変換すれば分かると思います
ググレカスとは言わないぜ!
>>123で書いてある通り、読んで気持ちの悪い描写が増える可能性があるのです
第一部が終われば上げる予定ですが、それまで自分から上げる気はありませぬ
まぁ上げられても全然問題無いんだけどね!
- 203 :名も無きAAのようです:2011/10/15(土) 00:31:08 ID:4grd5DGg0
- 麻雀面白過ぎて書くのが辛い
11月に入ったら投下する
- 204 :名も無きAAのようです:2011/10/19(水) 19:18:29 ID:LQchYrPY0
- >>203なんて無かった
大体書けているので、今週中か来週の前半で投下したいと思います
ようやく長かった前振りが終わる……(ドヤァ
ついでに能力とか諸々の設定とかまとめたので、それも次の投下の時に出します
- 205 :名も無きAAのようです:2011/10/21(金) 01:22:22 ID:exzPgrEA0
- 乙。
無理せず、頑張れよー!!
- 206 :名も無きAAのようです:2011/10/21(金) 22:48:06 ID:t7ngiP220
- 一話分は書き上げたのだが、切りの良い所で終われなかった
もう一話分書いてくるから遅れます
すまんこまんこ
- 207 :名も無きAAのようです:2011/10/24(月) 22:36:59 ID:o7GeGba60
- 臭いスレの流れ止めようとしたらマジレス返されたでござる
明後日くらいに投下します
二話分+設定をやっと書き上げたよ!('(゚∀゚∩
- 208 :名も無きAAのようです:2011/10/25(火) 21:17:35 ID:GbPYvCak0
- おー、楽しみにしてるぜ
- 209 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/10/26(水) 19:57:32 ID:brz.HBPE0
- 色んなものが円環の理に導かれたので
今日の投下は週末に回します
ごめんなさい
- 210 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/10/31(月) 17:25:22 ID:VewDHgdk0
- 出来た。何とか修正し終わった
かなり端折ったけどもういい。俺は書き終わったんだよ!
明日投下します^p^
本当です。嘘じゃありません。明日こそは投下しますよ、ええ
- 211 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:26:24 ID:P6Z16LgI0
- 投下する
- 212 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:27:19 ID:P6Z16LgI0
-
――『治療室の同階。喫煙室』
喫煙室に足を踏み入れると同時に、モララーは鼻を摘まんで文句を垂らした。
(;・∀・)「俺タバコの匂いって嫌いなんだけどな……」
(´φω・`)「悪いな。この階で人の居ない場所がココしか無かったんだ」
悪ぶれずショボンが応える。
一つの机に椅子が四つ。そのセットが五つ、部屋の中には用意されていた。
ショボンが座っていたのは部屋の一番奥の席で、机上の灰皿には吸殻が数本押し潰されていた。
反対側の椅子を引き、モララーが腰掛ける。
( ・∀・)「何の用だ。早く議員の監視に戻りたいんだが……」
(´φω・`)「どういう事だ」
( ・∀・)「あ?」
(´φω-`)「……いや、頭ん中で話そう――」
(´φω・`)≪――さっきクックルから聞いた。この一件が終わったら横堀を殺す……あれはどういう事だと聞いている≫
.
- 213 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:28:07 ID:P6Z16LgI0
-
( ・∀・)≪……お前の能力で俺の考えはお見通しだろ? 思考を繋いだ今の状態なら、俺の考えは全部引き出せる筈だ≫
(´φω・`)≪そうしたいのは山々だが、相手が意図して秘密にしている事は無理なんだよ。だからこうして――≫
不意にモララーの脳内で解錠の音が響く。
これは、ショボンの能力がモララーの秘密へ立ち入る事を許された証であった。
許可を得たショボンは思考の海へと手を伸ばし、モララーの秘密――その全容を把握した。
(´φω‐`)「――相変わらず躊躇が無いな。そう簡単に秘密を明かせる奴、少ないんだが……」
( ・∀・)「クックルに聞いたんなら、俺の頼みも聞いてるよな?」
(´φω・`)「……止めてもやるんだろ。俺には止められない」
( ‐∀‐)「……最期まで頼むぜ」
(´φω・`)「分かっている」
.
- 214 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:29:01 ID:P6Z16LgI0
-
( ・∀・)「……それじゃあな」
(´φω・`)「……もう一つだけいいか?」
席を立とうとしたモララーを呼び止め、ショボンが問う。
(´φω・`)「……達磨崩しについて何か知っている事は?」
( ・∀・)「無い」
モララーは即答し、喫煙室から出て行った。
(´φω‐`)「……その秘密だけは明かしてくれないか……」
宙を漂うタバコの煙を見上げながら、誰に言う訳でも無く、ショボンはそう呟いた。
(´φω・`)(つ……。あー……駄目だな。止めとこう)
ショボンは右へ左へ揺れる煙を何かに例えようとしたが、上手い言葉が浮かばなかった。
つくづく自分の不器用さ、鈍感さが嫌になる。ショボンは溜息と一緒に、有りっ丈の煙を吐き出した。
.
- 215 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:29:44 ID:P6Z16LgI0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十一話「 幕間劇 」
―――――――――――――――
.
- 216 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:30:38 ID:P6Z16LgI0
-
( ・∀・)「どうだ、何か変化はあったか」
( ´_ゝ`)「おかえり。……まだ何も」
ドクオの治療が始まってから数時間。
そして丁度昼間を過ぎた頃、治療室の中から荒巻が顔を出した。
/ ,' 3「もう大丈夫」
(;´_ゝ`)「そうか……」
(;^ω^)「……」
待ち侘びた一言を聞き、ブーンと兄者はようやく冷や汗を拭い取った。
.
- 217 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:31:36 ID:P6Z16LgI0
-
/ ,' 3「両手足が綺麗に切られておった分、直すのに時間は掛からなかった。
後は細部の調整で終了って所だし、横堀達に任せて問題無かろう」
(;^ω^)「……ドクオは?」
/ ,' 3「精神的ショックが大きいようだが、別段変った様子は無い」
/ ,' 3「……ま、ショックが大きいのはお前達も一緒だ」
(;^ω^)
(;´_ゝ`)
/ ,' 3「それはそうと、兄者は後でワシと特訓じゃ。昼飯食べたらワシの部屋に来なさい」
/ ,' 3「クックルが戦闘不能の今、補欠のお前が烏合では話にならんからな」
(;^ω^)「俺はどうすればいいお?」
/ ,' 3「怪我人だが、クックルの下で修行するといい。奴は他の奴者より教官向きの人間じゃからな」
/ ,' 3「……それじゃあ、また後での」
( ´_ゝ`)「じゃあな」
(;^ω^)「おっおっ……」
.
- 218 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:32:19 ID:P6Z16LgI0
-
兄者は荒巻と下で、ブーンはクックルの下で特訓を開始。
議会議員二人の監視も継続しながらの特訓により、二人は実力を 多少なりとも 身に付けた。
クックルが全快するのに時間は掛からず、ブーンはすぐさま実践的技術を身につける特訓に突入する。
全快には至らぬものの、ドクオも遅れて特訓を開始した。こうして二人は身体能力操作の術を急ごしらえで身につける事に成功した。
一方兄者は荒巻と共に、第二の能力を扱う練習に多くの時間を使った。
『アンチ』の能力は総じて扱いが難しい。そのせいもあってか、練習の間、兄者は第二の能力は扱いきれずに終わった。
二週間。人が一人前になるには、あまりにも短すぎた。
- 219 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:33:11 ID:P6Z16LgI0
-
だが時間は刻々と過ぎていく。
一人目の議会議員が何者かに殺されてから二週間。
連続して発生すると思われた議員暗殺は、まるで息の根が止まったかの様に膠着していた。
これは荒巻とヒッキーの情報操作による賜物である。
彼らの流したブラフの情報は議員暗殺を企てる者の足を完全に停止させる事に成功。
そして作戦は第二段階へと移行する事となる。
(-_-)「……出来た。これで多分、行ける」
/ ,' 3「御苦労。ヒッキーは休んでいてくれ」
アスキーは明日の晩、暗殺者を各所で待ち伏せ迎え撃つ。
そのシンプルな策を明日の晩に控え、各々は戦いの準備を始めるのであった。
.
- 220 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:33:52 ID:P6Z16LgI0
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―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十一話「 幕間劇 」
―――――――――――――――
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- 221 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:34:49 ID:P6Z16LgI0
- このまま第十二話を投下します
十一話が短かったのは円環の理のせいだよ('(゚∀゚∩
- 222 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:38:35 ID:P6Z16LgI0
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―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十二話「 トルキア 」
―――――――――――――――
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- 223 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:39:26 ID:P6Z16LgI0
-
――『夜。新都市中心街。とある料亭』
新都市でも有数の高級料亭。
そこの玉石の庭へと降り立ったヘリカルとシラヒーゲは、料亭内に漂う異様な雰囲気を瞬間的に察知した。
*(‘‘)*「……待ち伏せかな」
( ´W`)「だろうな。どっかから情報が漏れたか、或いは、俺達がヘマをしたか……」
( ´W`)「……ま、んな事ァどうでもいい。要は中に居る奴らがボルジョアって野郎の居場所を吐いてくれればいいだけの話……」
*(‘‘)*「取り合えず中の様子を確認してみるよ。大人しくしててね?」
( ´W`)「へいへい」
ヘリカルは両手を握り占め、その中で能力を具現化――掌を開け、一匹の昆虫を空へと放った。
*(‘‘)*( 粘着キリギリス。敷地内に居る人間を確認、配置を見てきて…… )
.
- 224 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:40:26 ID:P6Z16LgI0
-
――――――――――――――
その料亭内にはショボンとトラの二人が息を潜めていた。
危険な状況の中、ショボンはヘリカルとシラヒーゲの姿を目視で確認している。
気配を悟られない限界の位置で、ショボンは二人の実力を憶測する。
(;´φω・`)(……なるほどな。悔しいがクックルがやられたのも頷ける。コイツらは100%プロの殺し屋だ……。
あの子供だって侮れん……能力を具現化出来る以上、かなりの実力を持っている……!)
(;´φω・`)(そして……あの髭面の奴、恐らく子供の数十倍は強い……。
今も油断している様に見えるが……ここから一歩でも前に出たら十中八九気付かれる!)
(;´φω・`)(……参ったな。二人組でこれだけ強い以上、あっちからの増援は期待出来ない……。
モララーならコイツらとも十分戦えそうだが、俺とトラだけじゃあ無理だ……!)
(´φω・`)(さて……どうしたものか……)
ショボンが居るのは料亭の屋根裏。木目の隙間から二人を監視していた。
そして、その様子をヘリカルの【粘着キリギリス】が捉えていた。
.
- 225 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:41:10 ID:P6Z16LgI0
-
*(‘‘)*「……一人見つけた」
( ´W`)「どこだ?」
*(‘‘)*「屋根裏のとこ」
( ´W`)「……何でぇ、あれ、ゴキブリじゃなくて人だったのかよ」
*(‘‘)*「ヒゲさん、どうする? まだ中には居そうだけど始める?」
( ´W`)「そうだな……。屋根裏の奴だけ捕まえとけ。後は俺が――」
( W )「――斬るッ!」
*(‘‘)*「らじゃー!」
次の瞬間シラヒーゲは全速力で料亭内へと駆けていき、ヘリカルも自分の役割を果たそうと能力を発動する。
*(‘‘)*「【粘着キリギリス】! プラス、【毒虫の末黒野(パープル・フレグランス)】!」
ヘリカルが声を上げると同時に庭の玉石は彼女の能力に飲み込まれ、姿を変えた。
白く輝く玉石は無数のキリギリスへと変貌。
(;´φω・`)(――来るッ!?)
およそ数百のキリギリスが、ショボンの居る屋根裏目掛けて飛び掛かった――
.
- 226 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:42:17 ID:P6Z16LgI0
-
―――――――――――――――
( ´W`)(……あそこだな)
シラヒーゲの警戒心が感じ取ったのは一人の気配。
広間の中で待ち構えている。彼の感じ取ったものは、そういう雰囲気を含んでいた。
それを知ってなお、シラヒーゲは襖を開けて広間へと踏み込む。
――障子を幾つか隔てた先に、居る。
( ´W`)「……そいじゃあ早速斬らせてもらうぜ……」
シラヒーゲは腰を低く落とし、右手で刀の柄を握る。
呼吸を止め、刀剣へと意識を集中。
陽炎が刀剣を包み込む。
脱力。
( ´W`)「……っと」
そして目にも止まらぬ抜刀。
刀剣から放たれた実体を持つ殺気は音も無く障子を切り裂き、目標へと迫る。
.
- 227 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:43:18 ID:P6Z16LgI0
-
( ´W`)(……ああ、こりゃ切れてねぇ……って事は十中八九)
――障子の上半分が落ち、二人を相見えさせる。
顔を見合わせる二人は沈黙の中で感覚を研ぎ澄ませ、相手の挙動の一瞬を見逃さぬよう警戒している。
悪手を出せば即死。トラの警戒心はより一層の高ぶりを見せ、目の前の男を眼光鋭く睨みつけた。
( ´W`)「……てめぇ、使針者か」
(=゚д゚)「……まぁな」
( ´W`)「俺が何をしに来てるか、分かってんのか?」
(=゚д゚)「だからこその待ち伏せだ。大人しく捕まって貰うぜ」
( ´W`)「……悪い事は言わねぇ。止しな。俺とお前じゃ勝負にならねぇし、てめぇはまだ若い。
んなとこで命を投げ捨てるモンじゃねーぞ」
(=‐д‐)「……」
( ´W`)「いいんだな? てめぇ、死ぬぞ」
(=゚д゚)「死ねれば本望。負けて悔いは無い」
( ´W`)「……馬鹿野郎が」
.
- 228 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:44:02 ID:P6Z16LgI0
-
( ´W`)(……若い奴を殺るのは気が引けるってのによう……ったく)
再び腰を落とし、身構える。
シラヒーゲは刀剣の切っ先をトラに向け、持てる力を徐々に開放してゆく。
再び刀剣に陽炎が立ち上り、能力発動の準備が整った。
( ´W`)(――【七つの断罪(マルチ・ファクター)】)
(=‐д‐)「……まぁな、そうは言ってもタダで負けるつもりは毛頭無い」
(#=゚д゚)「最初っから全速力だ! んでもって速攻で終わらせるッ!」
怒号と共にトラは有りっ丈の能力を解放。
そして、紅と銀のボディアーマーが彼の体を覆っていく。
彼の能力の本質である『速さ』を具現化したそれは【ジバシリ】――またの名を【イダテン】。
( 十)「……」
( ´W`)「……んだよ、ちったぁ面白そうな能力じゃ――」
( W )「――ねぇ、かっ……!」
その瞬間、突如シラヒーゲを襲う謎の浮遊感。
体が横に吹っ飛んでいる。そう自覚した時には、既に二度目の浮遊感が彼の体を支配していた。
( 十)「ブッ飛べ」
そして三度目の浮遊感。トラの全力の蹴りが、シラヒーゲの体を天井へと打ち上げていた。
- 229 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:45:28 ID:P6Z16LgI0
-
シラヒーゲは背中を天井に打ち付け、痛みを感じる間も無く畳へと落下。
その途中。落下中のシラヒーゲを、トラが再び蹴り飛ばす。
( W )(……思ったより動きが早ぇな。見た所、具現化型、肉体強化系って所か)
広間の中を吹っ飛ぶシラヒーゲを追い越し、トラが次の蹴りで打ち返す。
吹っ飛ばし、それを追って蹴り飛ばし、吹っ飛ばす。
シラヒーゲは一方的に攻撃を受け続け、ピンボールの球の様に蹴り回される。
( 十)「ふっ!!」
そして最高速で繰り出される締めの一撃。
全力を込めた蹴りがシラヒーゲの体を打ち抜き、玉石の庭へと弾き出した。
手応えは――無い。
( 十)(……強い)
( W )「……今のは十分痛かったぜ。ただ、悲鳴を上げるにゃちょっと弱かったがな」
( ´W`)「よっと」
あれだけの攻撃を受けながらもシラヒーゲは悠々と体を起こす。
服についた埃を払う余裕さえ垣間見える。実力差はやはり、気合いで埋まるものではなかった。
( ´W`)「もう一度、最後の忠告だ。俺の眼の前から消えろ。パッと見で分かる……お前は秒針だ。
そんな今のお前がこんだけ強ぇって事は、もっと時間を掛ければ更に強くなれるって訳なんだが……」
( 十)「……」
( ´W`)「……聴いてる訳無ぇよなぁ……ったく」
.
- 230 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:46:42 ID:P6Z16LgI0
-
( ´W`)「……分かった。頑固なテメーには、俺自身の罪をもって死を与えてやる……」
刀剣から立ち上る陽炎が一段と大きくなる。同時に、シラヒーゲの放つ雰囲気も異質な物へと変貌していく。
肌を刺すプレッシャーがトラを襲う。心臓が縮む様な感覚を押し殺し、トラは目の前に居る男、シラヒーゲを見据えた。
( 十)(来る……!)
( W )「『トルキア』が一人、大罪使いのシラヒーゲだ。冥土の土産に覚えとけ」
その言葉がトラの耳に届いた瞬間。
(;十)(――ッ!?)
彼の背を、冷たい刃が走り抜けた。
.
- 231 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:47:22 ID:P6Z16LgI0
-
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- 232 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:48:06 ID:P6Z16LgI0
-
彼らがビルの屋上で待ち構え、そこに現れたのはジィだった。
ジィも最初こそ三対一の状況に驚いた様子だったが、すぐに子供の様な笑顔を浮かべ、不敵に彼らを見つめた。
爪゚ー゚)「……たかが三人。それも、君達程度の実力で僕を殺したいのかい?」
( ゚∋゚)「殺すんじゃねぇ。捕まえるんだよ」
クックルはジィに向かって歩き始め、右手に意識を集中――能力を発動。
そうして右手の内に具現化されたのは緑色の半固形の物体。
それは変幻自在に形を変えるクックルの能力――【スライム】であった。
爪゚ー゚)「……あんまり強そうには見えないけど、大丈夫なのかい?」
( ゚∋゚)「黙れ。今の俺に誠意は無いぞ」
クックルは走り出し、攻撃に備えてスライムの形を変える。
スライムは鞭の様に細長く伸び、その先端は大きな円柱形に変化した。
(#゚∋゚)「おおおおお!!」
やがて巨大なハンマーと化したそれにスライム特有の弾力を加え、ジィの頭上へ全力で振り下ろす。
だが、迫るハンマーを見てもジィは慌てる素振りを一切見せず、あろう事かクックル達に欠伸をして見せた。
そして、ゆったりと片手を上げ、ハンマーに向ける。
爪゚ー゚)「フッ、子供騙しもいい所だ」
.
- 233 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:48:47 ID:P6Z16LgI0
-
空を切り裂きジィへと到達したハンマー。
コンクリートの地面には亀裂が走り、周囲を強烈な風が吹き抜けた。
それを見てクックルは、一瞬だけ、この攻撃がジィに直撃した事を期待した。
(;゚∋゚)(……化物め……!)
だが、ハンマーは彼の片手で軽々と静止していた。
爪゚ー゚)「……そっちの二人の方が面白そうだ。早く来なよ」
手応えもクソも無い。クックルは既にジィの眼中には存在しないのだ。
一方。
(;'A`)「……」
( ^ω^)「……」
圧倒的な実力差を見せられて尚、西川ホライズンだけ は、不気味なまでに冷静であった。
.
- 234 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:49:28 ID:P6Z16LgI0
-
――『新都市中心街。とある料亭』
( ´W`)「なぁよう。アンタ、ボルジョアって野郎の居場所知ってるだろ? 吐いちゃくれねぇかね……」
*(;‘‘)*「あの……ごめんなさい……加減を間違えてね、しばらく話せなくしちゃったんだよ……」
(;´W`)「参ったなぁ……今夜中にボルジョアを消さねーと色々面倒なのによう……」
(;´φω `)「ぐ……あ……!」
(= д )
庭には動かなくなった体が一つと、毒で苦しむ体が一つ、並んで横たわっていた。
前者の背中からは大量の血が流れ出ており、辺りには血生臭い臭いが充満していた。
後者はヘリカルの【毒虫の末黒野(パープル・フレグランス)】の毒に中てられ、全身を強烈な痛みに襲われていた。
*(‘‘)*「……あ! そうだよ! この人達の持ち物見ればヒントがあるかも知れないよ!」
( ´W`)「いいや、やっても無駄だ。こいつらだって素人じゃねぇ。情報漏洩の危険は第一に消してるぜ」
*(#‘‘)*「じゃあどうするの!?」
(;´W`)「いや、だからって怒るなよ……」
*(#‘‘)*「しかもさ! ヒゲさん『斬るッ!』とか言ったのにソイツ生きてるじゃん!」
.
- 235 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:50:16 ID:P6Z16LgI0
-
ガミガミと喚くヘリカルの頭を押さえるシラヒーゲ。
ポケットから飴を取り出し渡しても、ヘリカルの御機嫌は一向に良くならない。
遂に痺れを切らせたシラヒーゲは大きく息を漏らし、仕方無く刀剣を鞘から抜き出した。
(;´W`)「分かった! わぁーったよ! 殺しゃあいいんだろ!」
(;´W`)「俺がズバーっと真っ――」
(;´W`)
*(‘‘)*
――その瞬間、時が止まった。
.
- 236 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:50:58 ID:P6Z16LgI0
-
(= д )
(;´φω `)
( ・∀・)「……悪いな。俺が遅れたせいで……」
時が止まった世界で、モララーだけが動いていた。
( ・∀・)「だが尻拭いは自分でするぜ。お前らはよくやってくれた」
モララーは玉石の上に横たわる二人を肩に担ぎ、料亭の塀を飛び越え、時間停止を打ち切った。
塀の向こうで待っていたのは横堀で、モララーは二人を横堀に預け、再び料亭の庭に飛び込む。
モララーはシラヒーゲの真ん前に立った。
( ・∀・)「……」
( ´W`)「……」
( ´W`)「……そうか、こりゃあ、てめぇの仕業か……」
*(‘‘)*「あれっ? 二人とも居なくなってる?」
モララーとシラヒーゲは旧知の仲である。その詳細は、今はまだ闇の中。
しかし二人の間柄に一層二層の深みがあるのは明白で、この場を収める方法として、モララーが取ったこの行動は最善であった。
.
- 237 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:51:52 ID:P6Z16LgI0
-
( ´W`)「……帰るぞ」
*(;‘‘)*「えっ!? 何で!?」
*(;‘‘)*「ヒゲさん、お仕事まだ終わってないよ? ボスに何て言うの?」
( ´W`)「俺が説明しとくから気にするな。コイツが出てきた以上、この仕事は打ち切りだ」
*(;‘‘)*「……」
納得が行かないと言わんばかりの表情でシラヒーゲを見るヘリカル。
だが、普段と違う彼の顔を見て、ヘリカルは思わず言葉を飲み込み、退却を承諾した。
( ´W`)「……モララー。今回は引くが、お前の事は奴に報告させて貰うぜ。近々挨拶に行くかもな」
( ・∀・)「……」
( ´W`)「……あばよ」
そう言い残し、シラヒーゲとヘリカルは料亭の塀を飛び越え、新都市の闇の中へと姿を消した。
( ・∀・)(……まず一つ、って所か)
.
- 238 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:52:38 ID:P6Z16LgI0
-
( ・∀・)(怪我人は回収。クックルの方にはジィ、荒巻と兄者の方には奴が向かってる……)
料亭を後にしたモララーは当ても無く歩き出した。
彼の目的は一つ。その為の行動が、たった今、一つだけ終わった。
モララーは真っ暗な裏道を一瞥しながら、新都市の大通りを歩く。
まだだ。まだやる事は山の様に残ってる。
それに、俺の目的を果たすには、この場所は少し明るすぎる。
( ∀ )
『躊躇』を失くしたモララーに迷いは無い。
彼は裏道の中へと進む。すると、いかにも柄の悪そうな連中が二人、モララーの道を塞いだ。
だがその二人はすぐに道を開け、モララーを視界に入れない様に下を向いた。
モララーは狂気的な笑みを浮かべていた。
.
- 239 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:53:51 ID:P6Z16LgI0
-
.
- 240 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:55:16 ID:P6Z16LgI0
-
――『地下十階。バトル・フロア』
/ ,' 3「ここはバトル・フロアと言ってな。闘技場みたいな所だ。ルールに則り、技を磨く場所」
その空間は六面全てがコンクリートで出来ており、中の空気は大分ひんやりとしていた。
観客席からの光、天井で煌々と照る多数のライト。その全てがフロアの真ん中に居る荒巻と兄者をライトアップしている。
観客席にはボルジョア氏、山崎氏の両名が座っており、どちらも深い眠りの中だった。
床に座って暇そうにする荒巻に寄り、兄者が口を開く。
( ´_ゝ`)「……そういえば、どんなブラフの情報を流したんだ?」
/ ,' 3「議員二人が時計塔に地下に居るという情報を、出来るだけ信憑性を薄くした状態で流しておいた」
( ´_ゝ`)「それじゃあ、ここに来る殺し屋は……」
/ ,' 3「……ま、馬鹿でない事は確かだろう。馬鹿にあの情報の確証を得る事は出来んしな」
(;´_ゝ`)「……緊張する」
/ ,' 3「大人の仕事は総じてそんなものじゃよ」
そう言うと、荒巻は兄者に微笑んで見せた。
.
- 241 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:56:06 ID:P6Z16LgI0
-
/ ,' 3「にしても暇じゃのう……」
柔軟体操をしたり、腕立てをしたり、跳んでみたりと、暇潰しに明け暮れる荒巻。
兄者も脳裏で特訓の事を思い出しながら時間を潰す。最終防衛ラインとは言え、暇なものは仕方ない。
( ´_ゝ`)「……そういえばさぁ、特訓で言ってた事あるじゃん。見るべきものは本質である。あれってどういう意味なんだ?」
/ ,' 3「そのまんまの意味じゃよ。イメージが堅強になるにつれて能力は魂を持ち、実体を持つようになる」
( ´_ゝ`)「いや、それが意味不明だと何度言わせれば」
/ ,' 3「ま、要は自分の能力を一言で表せ、という事じゃ」
結局、意味不明は解消されなかった。
半ば理解を諦めた兄者は話題を変えようと、別の事を口にした。
( ´_ゝ`)「……それはそうと、これが終わったらモララー呼んで貰えるか?」
/ ,' 3「む? 何か用か?」
- 242 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 17:57:20 ID:P6Z16LgI0
-
(;´_ゝ`)「あいつ、ここに俺が来てから何にも話して来ないんだぜ?
メールを送れば返してくるけど、無視された件数の方が多いしさー……」
/ ,' 3「あいつは変な所で淡白だしのう、そういうのも仕方あるまい。諦めた方が懸命じゃな」
(;´_ゝ`)「でも困るんだよ! アパートの事とか何にもやってないしさ、管理人さんに迷惑掛ける訳にはいかないし……」
/ ,' 3「ま、そこら辺は言って聞かせておこう」
苦い表情を浮かべ、荒巻は静かに息を漏らした。
【覇王の三眼】による広範囲索敵は大きな集中力を要する。
兄者と雑談しながらそれを続けていた荒巻は、少なからず疲れを感じていた。
兄者はそんな荒巻に気付く訳でも無く、モララーに対する愚痴を延々と述べている。
/ ,' 3「――静かに」
その合間、ピクリと何かに反応する荒巻。
兄者はその呟きが何を意味するのかすぐに悟り、小声で荒巻に問う。
( ´_ゝ`)「どこら辺だ?」
/ ,' 3「時計塔の前で立ち止まっておる……今、中へ入ってきた」
.
- 243 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:00:22 ID:P6Z16LgI0
-
/ ,' 3「……兄者。今から来る相手は相当強い訳だが……そうなれば当然、ワシが死ぬ可能性すらあるだろう」
(;´_ゝ`)「そんな奴が他に居るのか? 爺さんよりも強い奴なんて滅多に居ないと思うんだが……」
/ ,' 3「……よいか。いざとなったらワシが命懸けで敵の動きを止める。その隙にお主が敵を殺せ」
/ ,' 3「最悪、ワシ諸共殺せ」
( ´_ゝ`)「その役目はお互い様だ」
/ ,' 3「……ったく、生意気じゃのう。よし、たの――」
宣言するかの様に言い切る。
それは兄者が自らとの決別の為に言い放ったものであった。
これは喧嘩じゃない。本物の命の取り合い。
なら俺もその土俵に立たなければ意味が無い。勝てる訳が無い。
(;´_ゝ`)(……殺す覚悟か……)
.
- 244 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:01:05 ID:P6Z16LgI0
-
/ 3「――――」
( ´_ゝ`)「……ん? 爺さん?」
その瞬間、得体の知れない違和感が兄者を襲う。
さっき爺さんの言葉が途中から遅くなった気がしたが、気のせいか?
しかも何故だか爺さんが微動だにしない。一枚の絵の様に静止している。
……空気の流れも無くなっている……止まった? 何が?
( ´_ゝ`)(……)
(; _ゝ )(……いや! まさか有り得ない! これが『敵の能力』だとしたら、俺は……!)
全てが停止した世界で最悪の予想を立てた兄者。
不運にもその予想は的中。未だ確証は無いが、今まで感じた事の無い『何か』が兄者の体を包み込んでいた。
.
- 245 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:01:45 ID:P6Z16LgI0
-
――全ての『時間』が完全に止まっていた。
.
- 246 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:03:37 ID:P6Z16LgI0
-
( <●><●>)(……どういう事だ。俺の能力は間違いなく発動し、時を止めている。なのに、あの子供は動いている……)
( <●><●>)(あんなのを無意識の内に認可したとでも言うのか? ……いや、どうせ何かしらの能力者なんだろう)
( <●><●>)(……大方『アンチ』。厄介だな。時間停止を三時間にしといて正解だったか……)
バトル・フロアへ続く通路の奥。そこの階段の陰に隠れ、気配を消して兄者を観察する男。
彼は慎重に情報を掻き集め、兄者をどうするかを考えていた。
( <●><●>)(まずは様子見だな。出来れば即死が望ましい)
( <○><○>)(――【無慈悲な拷問箱(ディメンション・ボックス)】)
男は能力を発動。
彼が片手で空をなぞると、その痕に沿って空間が切り裂ける。
そこへ手を突っ込み、彼は中から一本のナイフを取り出した。
特徴的な「く」の字型の刀身、それはナイフの中でもククリナイフと呼ばれる一本である。
曲がりは小さく、細長く薄型。投擲には丁度良い大きさに収まっている。
男はナイフを兄者に向けて投げた。兄者がそれに気付く様子は無い。直撃は確定。
だが、ナイフは兄者の体に突き刺さらず、弾かれた。
(;´_ゝ`)「ッ!? 誰だ!?」
.
- 247 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:05:14 ID:P6Z16LgI0
-
( <●><●>)(……一応ヘリカルの毒もナイフに仕込んだんだけど、効いてないみたいだ……)
( <●><●>)(今までに能力を無効化する能力は何度か見てきたが、このナイフを弾けた奴は居なかった。
能力は無効化出来ても武器そのものは消せない。能力無しの格闘戦だと、そういう能力者は無力になる)
( <●><●>)(だが奴は違う……能力以外の物も無効にした……)
能力無効化の上位互換能力――攻撃を全て無効化出来る能力か?)
( <●><●>)(……いや、それだけ強力な能力なら何かしらの制限がある筈……突くとすれば、その一点だけ)
( <●><●>)(――面白いな。後でスカウトしてみるか)
(;´_ゝ`)(早い……ここまで来るのに五分も掛ってない筈だ……滅茶苦茶な技術と頭脳と反射神経だな……。
玄関を入ってエレベータを発見。そのセキュリティを突破し、地下十回までの通路を間違い無しに進めてこその芸当だ。
異常だ……相当頭が切れると見て間違い無い……!)
(;´_ゝ`)(見れば分かる……これは時間が止まっている状態……奴の能力そのもの!
そして、その中で動けるのは俺だけ……俺だけが奴を倒せる……)
(;´_ゝ`)(多分、今の俺が動けるのは『イディオット』の自動発動が原因だろう。
しかも時が止まったこの状況なら、難点だった『一秒間のみの発動』という制約が時間停止によって無効化されている!)
(;´_ゝ`)(――俺だけでも、勝算は十分あるッ!)
.
- 248 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:06:00 ID:P6Z16LgI0
-
――『山崎氏所有のビル。屋上』
(#゚ω゚)「おおおおお!!」
ブーンは蹴りを放ち、ジィは右腕を上げて受け止める。
激突と同時に激しく空気が振動し、激突した一点を中心に爆発が巻き起こる。
ジィは爆風に身を任せて後ろに下がり、揚々と呟く。
爪゚ー゚)「捨て身か、若いのに大変だね」
(#゚ω゚)「おおっ!!」
ジィを追ってブーンも飛び出す。
自分の足元を爆破し、その衝撃で前方へ突進。全力の拳を打ち出した。
ひょいと体を捻り、ジィはそれを楽々と避ける。
爪゚ー゚)「ほら、もっと頑張って当てないと、君の体が先に壊れるよ?」
.
- 249 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:06:54 ID:P6Z16LgI0
-
事実、ブーンはその身を削って一撃一撃を繰り出していた。
ブーンの能力【過重爆撃(リバウンド・ボム)】の本質は『爆破』。
現在はその本質を自分の体に付加しており、彼は文字通り『生きた爆弾』と化していた。
クックルの下で身体能力の操作方法を身に付け、辛うじて爆発に耐え得る強度の肉体を得てはいるが、ダメージがある事に変わり無い。
(#゚ω゚)「ずあああああッ!」
ブーンの拳がジィの顔面へと迫る。
ジィはそれを咄嗟に横へ飛んで回避し、ブーンの死角へと回り込む。
そのまま背中から内臓を貫こうと一撃を繰り出すが、背に触れた瞬間ブーンの体が爆発し、それを遮る。
突きを弾かれたジィはすぐさま後ろへ跳躍。
焼け焦げた片手が動くのを確認し、ブーンを再度見据える。
爪゚ー゚)(触れただけで爆発か。厄介だけど……消耗戦だね。避けてれば勝てるんけど――)
ジィは横目でドクオを一瞥。攻撃の予兆を感じ、直感的にその場を跳び退く。
(#'A`)「はあッ!」
ジィの居た場所を風の弾丸が穿つ。
(#'A`)「逃がさねぇぞ!」
空中に飛び上がったジィを狙って風の弾丸を打ち込むドクオ。
乗じてブーンもエアガンを抜き取り、ジィへ目掛けてBB弾を乱射する。
.
- 250 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:07:35 ID:P6Z16LgI0
-
連続爆撃に加え、風の弾丸による退路の封鎖。
空中で逃げ場を失ったジィは体を丸めて攻撃が止むのを待つが、一向にその気配は無く、むしろ攻撃は段々と激しくなっていく。
流石に煩わしい。ジィは少しだけ能力を強く発動し、彼らの攻撃の射程圏内から離脱する。
ビル屋上の貯水タンクに降りて一考。
そして、ジィは自分の精神の昂りを感じた。
爪゚ー゚)(……付加型、具現化型、型無しが一人ずつ。随分バランスの良いパーティだ……)
爪゚ー゚)(僕の能力の弱点にも気付き始めてるし……そろそろ決めないとね)
爪* ー )(狩るか、取っておくか……!)
(;゚∋゚)「ッ!? 二人とも下がれ!」
少し離れた所からクックルが叫ぶ。
ブーンとドクオは後退の合図を耳にすると身を翻し、慎重にクックルの所へと向かった。
- 251 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:08:37 ID:P6Z16LgI0
-
('A`)「何かあったんですか?」
(;゚∋゚)「今、奴から感じる雰囲気が一気に変わったんだが……分かるか?」
(;'A`)「……いや」
(;゚∋゚)(ヤバい感じがプンプンするな……。かと言って俺がコイツらを守りながら戦えるレベルの相手でも無い……)
無駄な詮索と哲学は止めろ。命の重みは常に変動し、それと同じく優先順位も変わる。
殺すべき奴は殺し、生かすべき奴は生かせ。俺達がやるのはそういう事だ――
クックルは『ASCII』の基本理念を思い出す。
その上で導き出された最善の行動。クックルは死を覚悟して提案した。
( ゚∋゚)「……次、奴がもし全力で攻撃して来た場合、俺が命懸けで動きを止める」
( ゚∋゚)「そしたら、俺諸共奴を殺せ」
( ^ω^)「分かった」
(;'A`)「――ブーン!? お前何言って……いや、クックルさんも!」
(;'A`)「大体! やるにしてもブーンの体が持たないだろ!
唯一接近戦が出来るブーンには俺以上の疲労が溜まってるんだぞ!?」
( ^ω^)「……大丈夫だお。ダメージはあるけど、攻撃すればそれ以上のダメージを奴に与えられるお。
アドバンテージは着実に稼いでる。……大丈夫だお」
.
- 252 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:09:59 ID:P6Z16LgI0
-
ドクオは二人を説得し、別の案を考えようと促すが、それに応える者は居なかった。
沈黙。停止。
数秒が経ち、ようやく全てが動き出す。
爪* ー )(――狩ろうっ♪)
やがて我慢の限界を迎えたジィは全てを解き放ち、動き出す。
生存と死滅の狭間にある快感。彼の求める物はそれだけであった。
異質の興奮。常軌を逸した先にある領域。そこへ自分を連れて行ってくれる相手を探す過程で、彼は今の性格となった。
そして、それこそが『トルキア』が一人、無常使いのジィの『本質』である。
爪* ー )「ン〜! 良い気分だ! もうぼっ――」
爪゚−゚)「――き、する位ね」
.
- 253 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:10:46 ID:P6Z16LgI0
-
(;゚∋゚)(また雰囲気が変わった……戻った?)
突然ジィが素面に戻る。
爪゚−゚)「……嫌なタイミングだね、全く」
彼は上着の内ポケットで震える携帯電話を取り、そう呟いた。
溜息を吐きつつ仕方無く耳に携帯を当てると、彼の表情は更に暗くなる。
爪# ー )「……分かったよ。それじゃ……」
電話を切る頃には、ジィは明らかに不機嫌な顔になっていた。
爪゚ー゚)「また会おう、二人とも」
そんな表情から一転、ジィは表情を作り直し、張り付けた様な笑顔をブーン達に向けた。
そして次の瞬間ジィは踵を返し、ビルの屋上から飛び降りた。
(;'A`)「なッ……! 追うぞ!」
咄嗟に翼を羽ばたかせるドクオ。だが彼の肩をクックルが掴み、寸での所で制止させる。
( ゚∋゚)「……敵が引いたんだ。もう戦う理由が無い。だから追う必要も無い」
.
- 254 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:18:11 ID:P6Z16LgI0
-
(#'A`)「――有.り.得.ね.ぇ.!.」
ク.ッ.ク.ル.の.手.を.弾.き.、.ド.ク.オ.が.叫.ぶ.。
(#'A`)「奴.に.は.虚.仮.に.さ.れ.た.借.が.た.っ.ぷ.り.残.っ.て.る.!.
そ.の.上.、.俺.も.奴.も.使.針.者.だ.!. .殺.し.合.っ.て.何.が.悪い.!.」
( ゚∋゚)「……開.き.直.り.で.人.間.を.捨.て.る.な.。俺.達.は.、た.だ.で.さ.え.大.事.な.も.の.を.奪.わ.れ.て.る.ん.だ.……」
(;'A`)「そ.れ.は……」
ク.ッ.ク.ル.の.言.葉.に.言.い.返.せ.ず.た.じ.ろ.ぐ.ド.ク.オ.。
そ.こ.へ.追.い.打.ち.を.か.け.る.様.に.ブ.ー.ン.が.言.う.。
- 255 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:18:52 ID:P6Z16LgI0
-
( ^ω^)「ドクオ。俺達の目的は内藤ホライゾンをころ.す事だお。それまではお互い、絶対にし.ねないんだお」
(;'A`)「……そうだったな、言う通りだ。悪い、容赦出来なくてよ……」
ドクオはそう言って能力を解除した。体が元の人間の姿へと戻る。
そして自分を落ち着けようと髪をかき上げ、息を漏らした。
('A`)「……もう大丈夫です」
( ゚∋゚)「よし、それじゃあ俺達も逃げるぞ。そろそろ野次馬が集まってくるしな。二人とも動けるか?」
( ^ω^)「大丈夫ですお」
('A`)「行けます」
.
- 256 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:19:32 ID:P6Z16LgI0
-
退路を走る三人。彼らは一階まで駆け下り、裏口からひっそりとビルを出て行った。
複雑な路地をクックルに付いて行き、表通りに戻る。ドクオがビルの方を見返すと、そこには騒ぎを聞きつけた一般人が群れを成していた。
今回ジィには逃げられたものの、ドクオは奴に一矢報いた事で内心喜んでいた。
前回はあれだけ一方的にやられたのだ。こうして対等に戦えた事さえ十分な結果だろう。
( ^ω^)「ドクオ? 帰るお」
('A`)「ん、ああ」
ブーンの呼び掛けで我に返り、ドクオは止まっていた足で再び歩き出す。
( ^ω^)
('A`)(……)
そして、それとは別に、ドクオの中には一つの疑念が生まれ始めていた。
.
- 257 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:20:12 ID:P6Z16LgI0
-
.
- 258 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:22:11 ID:P6Z16LgI0
-
―――――――――――――――
――『地下十階。バトル・フロア』
この場所に戦いは無く、両者の話し合いの上で、ある一つの事が決まっていた。
( <●><●>)「……これで取引は成立だ」
( ´_ゝ`)「口約束だからといって破るなよ?」
( <●><●>)「分かっている。それじゃ、そろそろ時間だ。動き出すぞ」
男は腕時計を一瞥し、経過した時間を確認した。
残り二分。時間の停止した世界で二分と言うのも半ば矛盾しているが、その二分はあっと言う間に過ぎ去った。
( <●><●>)「あと、その爺さんの説得も忘れるなよ。意味も無く戦うのは御免だ」
( ´_ゝ`)「分かってる」
/ 3「――」
/。' 3「――なッ!?」
時が動き出した瞬間、驚嘆の表情を浮かべ飛び退く荒巻。
彼は咄嗟に能力を発動しようとするが、兄者の敵意無き立ち振る舞いを見て、違和感を覚える。
.
- 259 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:23:06 ID:P6Z16LgI0
-
/ ,' 3「……兄者よ、お前、そいつに操られているって事は……」
( ´_ゝ`)「それは無い。んで、この戦いは終わりだ」
/ ,' 3「……まるで意味が分らんぞ」
( <●><●>)「あの席で寝てる二人を殺さない。ただ、それだけの話だ」
男は再び指で空をなぞる。そうして裂けた空間に手を突っ込み、今度は中から携帯電話を取り出した。
それを見て身構える荒巻だったが、男が「部下に連絡するだけだ」と言うと、渋々構えを解いた。
( <●><●>)「……ん?」
( ´_ゝ`)「どうした?」
( <●><●>)「……いや、仕事の依頼人から電話だ。お前達の信頼の為に敢えて明かすが、依頼人は議長本人だ」
( ´_ゝ`)「それじゃあやっぱ、クックルさんの見立ては大体当たりって事か……」
男は携帯の通話ボタンを押し、耳に当てる。
意外にも男は丁寧な口調で対応していた。
( <●><●>)「ええ、そういう事なら構いません。では……」
議長との通話の後、彼は続けて別の所へ電話を掛けた。
そうして三ケ所への連絡を終えると、男は兄者に向けて言う。
( <●><●>)「これで正式に依頼はキャンセルされた。依頼人本人も同じ意向だという旨を今の通話で確認した。
部下への連絡も済んだ今、俺達に戦う理由は無い」
.
- 260 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:25:08 ID:P6Z16LgI0
-
( ´_ゝ`)「お互い、余計な戦闘を避けられて良かったな」
( <●><●>)「その点、お前は高く評価出来る」
そう言って男は携帯電話を空間の裂け目に投げ込んだ。
( <●><●>)「……さて、それじゃあ俺は帰らせてもらう。また会おう、流石兄者」
不気味に見開いた両目で兄者を一瞥。
そして男は何事も無かったかの様に来た道を帰って行った。
その後ろ姿を見ながら荒巻が言う。
/ ,' 3「どういう事だ」
( ´_ゝ`)「至極個人的な取引の結果だ」
/ ,' 3「……まぁよい。終わったのなら万々歳じゃ。早くみんなを呼び戻そう」
深く聞くのは野暮だろう。それに、兄者が殺し屋に何を頼もうと関係無い。
荒巻はそう思い、それ以上の事を聞くのを止めた。
.
- 261 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:25:49 ID:P6Z16LgI0
-
.
- 262 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:26:45 ID:P6Z16LgI0
-
―――――――――――――――
議長室の窓際に佇む須藤議長は通話を切り、落ち着いた声で呟いた。
( ´┏_┓`)「……これでいいのか? 達磨崩し」
「はい」
( ´┏_┓`)「まったく、こんな下らない事に時間を使わせないでくれ」
「須藤議長、立場を弁えて下さい。僕には貴方を殺す方法がいくらでもあるんです」
( ´┏_┓`)「君こそ立場を弁えたまえ。姿も見せず人に物を頼むなど不愉快極まりない。いい加減、姿を見せたらどうだ?」
「須藤議長、黙って頂きたい」
( ´┏_┓`)「ふっ……沈黙を破った者が何を言う……」
嘲笑気味に須藤議長が囁く。
( ´┏_┓`)「……今になって達磨崩し事件を掘り返し、君は一体何を望んでいるんだ?」
.
- 263 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:27:50 ID:P6Z16LgI0
-
「……僕の願いは十中八九貴方には届かない」
( ´┏_┓`)「そうだろうな。聞き入れるつもりも無い」
「残り一週間、せいぜい死に装束でも繕っていて下さい。一週間後、僕が貴方を殺す。必ず……」
( ´┏_┓`)「……そう、確か、初代達磨崩しは『巣立』とか言ったな。いやぁ、あれは可哀そうな人だった」
役者染みた口調で須藤が言う。
( ´┏_┓`)「まぁ……彼のおかげで議会も綺麗になったんだ。また宜しく頼むよ、二代目達磨――」
(#^ν^)「――黙れって言っただろ! 殺されたいのか、アンタは!」
須藤は視線を室内に戻し、姿を見せた達磨崩しと目を合わせる。
そして不敵な笑みを浮かべて議長の席に座った須藤は、達磨崩しの顔を見て、昔の事を思い出した。
( ´┏_┓`)「……君は確か、巣立入早だったかな? 覚えてるよ。死刑執行の場に居た、あの子供だろう?
いつの間にか死刑場に入り込み、育ての親の亡骸に縋っていたな……」
(#^ν^)「黙れと何度ッ――」
( ´┏ー┓`)「ははっ! そうか! 君、もしや巣立史郎の『冤罪』を晴らしに来たのではないか!?」
(# ν )「黙れ! 殺すぞ……!」
( ´┏_┓`)「……馬鹿だな。そして若い。巣立史郎は死ぬべくして死んだのだよ」
.
- 264 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:29:25 ID:P6Z16LgI0
-
( ´┏_┓`)「分らんのか? この薄汚れた社会を掃除するには犠牲が必要だ。
最早この街の議会は法が通る場所ではない。故に、殺処分するしかないのだ」
(#^ν^)「ああ! 言う通りだ! だけどな、こんな屑の溜まり場を掃除する為だけに巣立史郎は死んだんだぞ!」
( ´┏_┓`)「だからどうした。あのまま議会が腐敗の一途を辿っていた場合、我々は某国の恩恵を受けられなかった。
誰かを悪とし、それを抹消するシステムこそが人類を進化させてきたのだ!」
(#^ν^)「ならば何故貴方が悪を演じなかった! 何故史郎さんが罪を被らないといけなかったんだ!」
( ´┏_┓`)「そんな事は決まっている。私が『正義』――いや、私が『真実』なのだ。
私は君達とは違い、淘汰する側の人間なんだよ」
(#^ν^)「悪を捏造する者が真実だと!? ふざけるな! アンタのその狂った価値観が多くの人を殺.してきたんだろうが!」
( ´┏_┓`)「だが結果を見ろ。彼の死があったからこそ新都市は生まれ、目まぐるしく発展し、今に至る。
その指揮を長年執ってきたのが私だ。この街の住民は、私を正義と言って否定しないだろう」
(#^ν^)「……もういい、一週間後だ。全部、その時に蹴りをつけてやる」
(#^ν^)「誰が俺を悪だと言おうが、アンタだけは必ず殺す!」
( ´┏_┓`)「勝手にしろ」
.
- 265 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:30:10 ID:P6Z16LgI0
-
議長本人が捏造した議長殺害予告を一週間後に控え、この街の人間はそれぞれの思惑を巡らせていた。
正義も悪も、主人公も悪役も無いこの一幕。
傷ついた者達。孤立し、策を巡らせる者。直向きに自分の思いに順ずる者。
他者への疑念を抱く者。この一幕を通過点とする者。あるいは、その一幕の中で成長を見せる者。
――終幕の時は近い。
.
- 266 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:30:51 ID:P6Z16LgI0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十二話「 トルキア 」
―――――――――――――――
.
- 267 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 18:31:49 ID:P6Z16LgI0
- 投下終わります
あとで晩飯食ったら茶番を投下しに来ます。オナシャス
- 268 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:46:17 ID:P6Z16LgI0
- 茶番始めるよ!('(゚∀゚∩
設定とか解説がメインだよ!('(゚∀゚∩
ぶっちゃけ厨二病ノートだよ!('(゚∀゚∩
- 269 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:46:58 ID:P6Z16LgI0
-
〜〜今回の投下を見た花京院君の感想〜〜
ー-ニ _ _ヾV, --、丶、 し-、
ニ-‐'' // ヾソ 、 !ヽ `ヽ ヽ
_/,.イ / /ミ;j〃゙〉 }釗 } ハ ヽ、}
..ノ /ハ 〔 ∠ノ乂 {ヽ ヾ丶ヽ ヽ
ノノ .>、_\ { j∠=, }、 l \ヽヽ ', _ノ
ー-=ニ二ニ=一`'´__,.イ<::ヽリ j `、 ) \ 意味が分からないッ!
{¨丶、___,. イ |{. |::::ヽ( { 〈 ( 〉
'| | 小, |:::::::|:::l\i ', l く >>1の解説を聞こうッ!
_| | `ヾ:フ |::::::::|:::| } } | )
、| | ∠ニニ} |:::::::::|/ / / / /-‐-、
トl、 l {⌒ヽr{ |:::::::::|,/// \/⌒\/⌒丶/´ ̄`
::\丶、 ヾ二ソ |:::::::/∠-''´
/\\.丶、 `''''''′!:::::::レ〈
〉:: ̄::`'ァ--‐''゙:::::::/::::ヽ
\;/:::::::::::::/::/:::::::::::://:::::〉
::`ヽ:::ー-〇'´::::::::::::::::/-ニ::::(
/
- 270 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:48:08 ID:P6Z16LgI0
-
〜〜今回の投下を見た球磨川君の感想〜〜
,.ィ佳州州liⅥlⅦ州Ⅶ州州l}li、
ィ州リ'州lⅦliⅦ'.wⅦi州i }l州lⅦⅦ{li、
_ ィリ'州州!川.!州}liⅥ州}l}Ⅶ州il}l}l! li i,Ⅶ{li!
 ̄ ̄ノリ,イi州l}ll州i}l}lⅦ`Ⅶ{iイl}.ⅦⅧ州州州州li}!
/.州イ州l州Ⅶ州l、ヽ .メ_`'__l}_l.Ⅶ州l州州|州i
,' 州lリ州Ⅶ}、Ⅵ{l|、.、_/イrZハ,ヾli}リ}州l州州州
. l|}!.|!Ⅷ}》}lハ.≧x 行/リ リ}! l州l州州州
. |l} .l} }リ州}l,ノl 必 ゞ‐′ .lリ'lⅣⅦ、} } 『ん、能力の概念が新しく増えてるの?』
. l}! Ⅵハ}l}Ⅶ}弋リ.} リ' l! ∠メイ{
'} ノ{ ⅣⅦ` ヽ 〃 /ーイ州l} 『具現化型? 付加型? 一体何の話なんだろう』
', ` ヽlハ <⌒ヽ / ./: lⅦ、}!
\ ! \ ヽ-'′ イ Ⅵ`-、 『土日祝日以外をこのスレの傍観に費やす僕でも分からないなぁ』
/ ̄`, / _ x≪´ _ィzヘ、
/ ー‐'-、}‐'フx≪ ,xz≦////ハ、
| 、___.|.// .x≦彡/////ィ彡≦/>、_
| 、_ |' l} |///////ィ彡//////////≧
|  ̄.〉 ll |////ィ彡////////////ィ//
,.ィl| ァ'/ | .l| ル'ィ彡/////////////イ////
x<///リ イY:::ム /////////////////イ/////
- 271 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:49:09 ID:P6Z16LgI0
-
〜〜今回の投下を見たちゅるやさんの感想〜〜
\ __ /
_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ .`´ \
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽ
〃 {_{ノ `ヽリ| l │ i| 色んな所がツギハギでよく分からないけど……
レ!小l● ● 从 |、i|
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│ スモチを食べれば分かる気がするにょろ!
/⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i !
\ /:::::| l>,、 __, イァ/ /│ いち早くスモチを差し出すにょろ!
. /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
`ヽ< | | ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
- 272 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:49:52 ID:P6Z16LgI0
-
――そんな読者の声を聞き、佐々木カラマロス大佐が動いた!
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( # ゚ω゚)「俺は悪くねぇ! 悪いのは特訓の描写をミスった>>1だ!」
`ヽ_っ⌒/⌒c
, '´ ̄ ̄` ー-、
/ 〃" `ヽ、 \
/ / ハ/ \ハヘ
|i │ l |リノ \}_}ハ
|i | 从 ● ● l小N そうだとしても意味が分からないにょろ
|i (| ⊂⊃ 、_,、_, ⊂li|ノ 読者の為にも、簡単な説明が必要だと思うにょろ
| i⌒ヽ j (_.ノ ノi|__/⌒)
| ヽ ヽx>、 __, イl |::::ヽ/.
| ∧__,ヘ}::ヘ三|:::::/l| |',:::::ハ
| ヾ_:::ッリ :::∨:/ | | >'''´
- 273 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:50:36 ID:P6Z16LgI0
-
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( `・ω・) 『鬼ごっこ』をしていると思ったら『達磨さんが転んだ』のルールでやっていた(キリッ
`ヽ_っ⌒/⌒c
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽ
〃 {_{ リ| l.│ i|
レ!小lノ `ヽ 从 |、i| ……ごめんにょろ。やっぱり分からないにょろ
ヽ|l ● ● | .|ノ│ もういいから、本編の補完をしてほしいにょろ
|ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j | , |.
| /⌒l,、 __, イァト |/ |
| / /::|三/::// ヽ |
| | l ヾ∨:::/ ヒ::::彡, |
∧_∧
⊂(#・д・) へーへー!! やりゃいいんだろ! こっちは被害者だってのによ!
/ ノ∪
し―-J |l| |
人ペシッ!!
__
\ \
 ̄ ̄
- 274 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:51:19 ID:P6Z16LgI0
-
――『新都市について』
| | ||| __ | | 三 | | || |_.-'´ イ
_____| | ||| _」 |\ | | 三 | | || |\ /´|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ||| l l 釗 | | _|l__l|_L || |i- | /| |
| | ||| l l | | \_\ | | || |l : | | | _ .
| | ||| l l | |-. _ |_. ┤ | | || |l : | | _ -!' ̄
| | ||| l l | | `l |::::|[l | | | ||_|-´|_-‐|'´ |
| | |||_l l | |¬-| i i |::::| l | | | || |l : | | |
| | ||| l l | | ̄¬┐ __lニニl___ _| ̄|::::| l_| | | || |l : | | |
| | ||| l l |、| |i l| |三三三三| li| |::::|_l | | | || |l : | | |_.-‐
| | ||| l l | | |i i├┐ |三三三三| li| |iiii|_l | | [| ||_|-´|-‐¬  ̄|
| | |||_「iil |.._| |i i┝┿_|三三三三| li| |::::| l | | [| || |l : | | |
_____| | ||| l l |_| |i i│┥_|三三三三|_「:li| |::::| l | il| | || |l : | | |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ||| l l | _.!| |i i|i]i|_|三三三三|::|::li| |::::| l 「 ̄  ̄ l!|| |l : | | |
| | |||-tニlニi!冂| |i i||_i|_|三三三三|::|::li| |::::| l |__| ||_|l_:_|__l___l|___
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- 275 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:54:15 ID:P6Z16LgI0
- 〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
第三次世界大戦にてその頭角を現した一国『某国』。
その突出した技術力を全面的に反映させて作られた最初の街。それが新都市である。
景観を詳しく知りたい場合、「攻殻機動隊」のアニメを見るか、このワードをグーグルで画像検索をする事をお勧めする。
新都市の主なルール(法律と同義)は某国によって定められているが、その詳細を決めているのは『議会』である。
しかし議会自体がグレーゾーンな存在であり、裏で行われている違法行為は留まる所を知らない。
過去にその違法行為を摘発しようとした議会議員が居たが、その人物は今もなお行方不明のままである。
一説では『議長が殺し屋を雇って始末した』、とも言われているが、今の我々にそれを確かめる術は無い。
警視庁を内部に構える新都市だが、どうやらそれとは別に首相直属の特殊部隊があるらしい。
その実態、メンバー、存在目的など、何もかもが謎に包まれている部隊。
特殊な技能でも持ち合わせているのだろうか?
この街には意外にも『時計塔』というものが立っている。
そこ管理人は『トラさん』と呼ばれ、昼と夕方、午前0時の三度、頂上の鐘を鳴らしている。
機械だらけの街だからこそこういう物を大事にしていくべきだろう。風情を形象した唯一の建造物として有名だ。
なお、ここ最近議会議員の自殺が多発している。そして更に驚くべきは三週間後の『議長殺害予告』。
前時代を代表する殺人鬼――『達磨崩し』の復活を示唆させる事件も点々と発生しており、議会内の緊張感は日に日に増している様子だ。
- 276 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:54:59 ID:P6Z16LgI0
-
――『使針戦争について』
./ ;ヽ
l _,,,,,,,,_,;;;;i
l l''|~___;;、_y__ lミ;l
゙l;| | `'",;_,i`'"|;i | ホント 戦場は地獄だぜ! フゥハハハーハァー
,r''i ヽ, '~rーj`c=/
,/ ヽ ヽ`ー"/:: `ヽ
/ ゙ヽ  ̄、::::: ゙l,
|;/"⌒ヽ, \ ヽ: _l_ ri ri
l l ヽr‐─ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| | / |
゙l゙l, l,|`゙゙゙''―ll___l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
| ヽ ヽ _|_ _ "l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |二;;二二;;二=''''''''''' ̄ノ
/"ヽ 'j_/ヽヽ, ̄ ,,,/"''''''''''''⊃r‐l'二二二T ̄ ̄ ̄ [i゙''''''''''''''''"゙゙゙ ̄`"
/ ヽ ー──''''''""(;;) `゙,j" | | |
- 277 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:55:53 ID:P6Z16LgI0
- 〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
『使針者』と呼ばれる者達によるバトルロワイヤル。
その歴史は長く、現在までの人類の進歩と深く関わっている。
魔法少女の絶望が人類の繁栄に繋がっているような感じである。
つまり、佐々木カラマロス大佐の事は優しいQBだとでも思えばいいのである。
総勢132人の使針者で行われるのが使針戦争の『本戦』。
地球上に散らばっている能力者の内からランダムで選出される仕組みだ。
選出されなかった場合、本戦の期間中のみ『リタイヤする』という選択が可能となる。
もっとも、現在の使針者の総数からして、選出されないという可能性は限りなく低い。
最後の一人まで勝ち残れば『何でも願いが一つ叶う』という景品がある。
だが、この下りに到達するには50話くらい必要だったりする。苦行と同義である。
- 278 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:56:35 ID:P6Z16LgI0
-
――『使針者(能力者)について』
ト、 ト、 |\ ∧
_|:.:.:\|:.::ヽ!:.:.:.\/:.:.|
_>:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|/|
\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.へ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.¨フ
弋´:.:.:.:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.く
<:.:.イ:.:.:.:/.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.!:.:!.:.:.:.ヽ:.:_,>
弋´.:.:.:.:.:.:/.:.:.:./ |:.:.!:.:.:.:!:.ハ.!.:.:.::.:\
<:.:./.:.:/:/T ト、∨:.:.:/!レ小:.:!:.小、>
<:八 小| 代圷 |:.:Ⅳイタヽ小|ヽ!
厶込、N  ̄ レ !  ̄ ム、 「あの現行をブチ壊す!」
rイ!.ハ , j 八 \
/ V ヽ ー : -' イ \_
,. -へ. \ >、 _, ィ \ /¨「 ̄ ̄ `ー 、
/ ヽ \ / ', \ ! }、
/ / ! \ |\ソ | / \
. / / , /マニ/ / ,厶 ∠、 ヽ、
/ / ', ∧ G〉/ / / \/ \ \
厶-―-、 / |./ ∨|/ r' つ ノ Yヽ \ \
| \ ! |イ| {レ '´ ィク ) ` 、 \
| ヽ ! |d | ' / ) \. \
∨ \ |/ | ! 〉 ' , ィ } \ \
∧ \/ ! / ,. -―' ヽ ヽ、
i ヽ } / / | !
| ,. --- ∨ / ∠、 ! ,__ ノ
/ー‐ 彡'  ̄¨ 弌 / / ヽ \___ ヽ_ト― ´
`ー<_∧ }/ , '| ! / |
| ∧ / / | ∨ |
ヽ ∧ / | / |\
| \ / |G 、 !::::::\
| >‐' | |>`ー-、 !:::::::::::\
※荒らし行為は即地下行きです。
- 279 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:57:25 ID:P6Z16LgI0
- 〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
使針者は『秒針』『分針』『時針』の三種類。順に60人、60人、12人で計132人。
今は本戦中で無い為、使針者の数は適当。本戦中のみ上記の人数制限が適応される。
【時針】>>(時空改変の壁)>>【分針】>>(都市壊滅の壁)>>【秒針】>>>>【人間】=ハムスター
みたいな図を第二話で公開したな。あれは嘘だ。正直言ってここら辺の設定は適当である。
強ければ上、弱ければ下くらいの認識で十分。というか能力者の区分については深く考えない方が無難である
「時針強すぎワロタww勝てぬwwww」という事で組み込まれたのが『アンチ』と呼ばれる能力者。
ハンターハンターで言う『特質系』である。
『アンチ』は秒針に十人、分針に五人。
それぞれ時針に対抗しうる能力を有しているが、どれも難癖ばかりの難しい能力。
使い方次第では最強にもなるが、反面扱いの難しいので、敵と戦い簡単に死ぬ事が多い。
その性質上、本選に選出される可能性は他と比べて非常に高い。
この戦争では時針を倒さない限り、秒針分針に未来はないのだ。
他にも能力の『付与』と『具現化』と『型無し』とかもあるが、詳しい事は俺にも分からない。
ポケモンで言う物理技と特殊技みたいなものだろう。作中での説明を待とう。
ぶっちゃけ能力云々の事はかなり適当なんで気にしない方が無難である。
- 280 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:58:22 ID:P6Z16LgI0
-
――『一応、VIP町について』
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- 281 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 21:59:51 ID:P6Z16LgI0
- 〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
VIP町はのどかで大きな田舎町。ビル等の建物は駅前に集中しており、駅から離れていく程に閑散としていく。
町外れには廃工場があり、少し前に謎の爆発事故を起こしている。
この町は平和過ぎる余り、子供達はヤンチャである。
それが転じて不良の数も昨今上昇傾向にあったが、二つの巨大勢力(流石兄弟一派とフォックス一派)によって事無きを得ていた。
その後の流石弟者の死亡で勢力図が変わるかと思いきや、フォックスとのタイマン勝負で兄者が勝利し、治安は更に良くなった。
ちなみに『流石兄者とフォックスが手を組んだ』という噂が流れており、不良の数はどんどん減ってきている。
凡夫同然の不良達にとっては、ケンシロウとラオウが組んだも同然の噂だった。
メインな施設としてVIP駅、VIP高校、ワクテカ病院などがある。
VIP駅からは最新鋭都市『新都市』へと向かう電車が超低頻度で通っているが、利用できる人間は一握りの人間である。
その電車を利用する謎の団体が居るという噂は、VIP町に住む者ならば周知の事。
右頬に十字傷の巨人。着物を羽織った博学紳士。おにぎり常備の少女。
この三人と一緒に歩く様子を一般人に目撃されたトソン(名字未定)と高岡ハインリッヒだが、当社の記者の取材にはノーコメントを貫いた。
事実解明の為、記者が彼女達を尾行していたのだが、どういう事だか当日の記憶がすっぽりと無くなっていた。
これで確定した。彼女達の家には何かがあるに違いない。後日、狐鳴フォックスにも話を聞いてみようと思う。
新都市の病院には高岡ハインリッヒの姉、『高岡でぃ』が入院中である。
彼女は前代未聞の難病を患っているが、かの名医『素直ヒート』が担当している為、容体は安定しているそうだ。
治ったら是非とも取材せねばなるまい。
- 282 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:00:56 ID:P6Z16LgI0
-
――『佐々木カラマロス大佐について』
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
懐の深い奴なら別なんだろうが、俺も含めた大概の人間は
なにかをけなすよりも褒めるほうが難しいと思うんだ。
そしてだからこそ、けなすよりも褒めるほうがより高級な傾向があると思う。
たとえば佐々木カラマロス大佐に興味のないVIPPERが大佐のAAを目にしたら
(たかがAAごときで行数無駄にしやがって・・・)とつい考えがちだと思う。
(やっぱAAに行数をかけるのも大切だよな)とは思いにくい。
反対にビロードや流石兄弟のAAあたりを目にしたら
(簡易AAの腐女子ホイホイの癖に、そこそこ読者付くのな・・・)と考え、
(安定したクオリティのAAで幅広い想像力が培われるな)とは考えにくい。
佐々木カラマロス大佐に興味がないってことは、ニュートラルで妥当な判断を下しやすいって
意味でもあるはずなのに、脳内シミュしてみたらこのざまだ。
でもやっぱり、人間としてまともなのは二番目の考え方だと思う。
つまり大佐はブーン系小説の未来そのものって事なんだと思う。素敵。
.
- 283 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:02:26 ID:P6Z16LgI0
-
【今の所の主要人物】
( ´_ゝ`)
名前:流石兄者
能力:【無慈悲な馬鹿野郎(イディオット)】
内容:五分に一度、一秒だけ無敵。つまりマリオのスター状態になる。秒針の【アンチ】。
( ^ω^)
名前:西川ホライズン
能力:【過重爆撃(リバウンド・ボム)】
内容:劣化キラークィーン。主な攻撃手段は、爆弾にしたBB弾をを用いた爆撃。秒針。
('A`)
名前:鬱木ドクオ
能力:【ドラゴン・スケイル】
内容:全身が毒々しいドラゴンになっちゃう。風まで使えて攻守に長けた優秀な能力。分針。
/ ,' 3
名前:荒巻スカルチノフ
能力:【道化の左手】 【懺悔の右手】 【覇王の三眼】
内容:死ぬほど強い。マジやばい。チョベリバの極み。時針。
- 284 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:03:37 ID:P6Z16LgI0
-
ノパ−゚)← →(//‰ ゚)
名前:横堀(偽名)
能力:生命を機械化する能力。
内容:厨二じゃないから名前は付けない。それが横堀クオリティ。有効活用する場面はもうちょい先。秒針。
( ・∀・)
名前:モララー
能力:―――(時間止める系)
内容:能力を語るには少し早い。既に作者から死刑宣告をされている。
しかしそれがあの様な結末となる事を今の>>1は知らない。まるで分からない。意味不明である。
(´φω・`)
名前:ショボーン
能力:【E・オブザーバー】
内容:多人数の思考を繋ぐ能力。アスキーの通信兵的な立ち位置。『E』とはエクスペリエンスの略。秒針。
(=゚д゚)
名前:トラ
能力:【ジバシリ】→【イダテン】
内容:ラディカル・グッドスピード。気体以外なら何でも足場に出来る。
重力なんざァ無視してなんぼの二枚目アルター能力。決してパクリとかそういうのではない。秒針
( ゚∋゚)
名前:クックル
能力:【スライム】
内容:変幻自在のスライム()を使って戦う。このスライムをオナホにしてはならない(戒め)
▼・ェ・▼
名前:ビーグル
能力:―――
内容:首狩り犬の置き土産。忘れた頃にやってくる
- 285 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:08:02 ID:P6Z16LgI0
- ( ^ν^)
名前:巣立入早(スダチ イリハヤ)
能力:【虚構主義者(ステルスマスター)】 【?????】
紹介:透明になれる能力。エロ同人誌御用達の能力である。もう片方の登場は間も無くである
( ´∀`)
名前:モナー
能力:無し
紹介:国語の授業を全てクラムボンの謎解明に使う男。
謎の組織に追われていると聞くが、定かではない。
- 286 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:08:42 ID:P6Z16LgI0
-
\ /
\ 凄いにょろ! これを読めば初見の読者も釣りまくれるにょろ! /
\ . /
\ そしてなんと丁寧な説明なんだにょろ! 称賛に値するにょろ! /
\ /
\ -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、 /
/ /" `ヽ ヽ \
┏┓ ┏━━┓ //, '/ ヽハ 、 ヽ. ┏┓┏┓
┏┛┗┓ ┃┏┓┃ _ 〃 {_{ノ `ヽリ| l │_i|. ┃┃┃┃
┗┓┏┛ ┃┗┛┃┏━く ● >小l● ● 从く ● >.━━━━━┓ ┃┃┃┃
┏┛┗┓ ┃┏┓┃┃ \/ ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ \/' ┃ ┃┃┃┃
┗┓┏┛ ┗┛┃┃┗━━/⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i ! ━━━━━━┛ ┗┛┗┛
┃┃ ┃┃ \ /:::::| l>,、 __, イァ/ /│' ┏┓┏┓
┗┛ ┗┛ /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |' ┗┛┗┛
`ヽ< | | ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
- 287 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:09:22 ID:P6Z16LgI0
- /ヽ /ヽ
/ \___/ \
/ \
/ ヽ
. | **** ● ● | だろ!? ワシ頑張ったよ!
. | **** (_人_) /
\ /
, '´ ̄ ̄` ー-、
/ 〃" `ヽ、 \
/ / ハ/ \ハヘ
|i │ l |リ }_}ハ
|i | 从 ノ \l小N (近いにょろ……)
|i (| i ● ● li|ノ
| i ⊂⊃ 、_,、_, ⊂ノi|
| l x>、 __, イl |
| lくミヽ::::ヘ三l:::::ノl lヽ
| l( ⌒ )..::::V::/ ( ⌒ )
- 288 :名も無きAAのようです:2011/11/01(火) 22:12:15 ID:P6Z16LgI0
-
これにて今回の投下を終わります。延期しまくってごめんごまんこ
もうね、『鬼ごっこが』と『達磨さんが転んだ』のルール間違えた時には訳が分らなかった
修正分を書いてる時は終始ポルナレフになってた気がする
次の投下はまたしても一週間後という事にしておきます
多分守らないです。ボルガ博士、お許し下さい
- 289 :名も無きAAのようです:2011/11/02(水) 01:19:03 ID:tksuI4goO
- 今回量があるので今日は寝る
明日(もう今日か)起きてから読むことにする
- 290 :名も無きAAのようです:2011/11/02(水) 01:30:25 ID:BBd/ONpc0
- >>254の,には何か意味はあるのかな?
なにわともあれ乙!!
- 291 :名も無きAAのようです:2011/11/02(水) 02:59:23 ID:qDDsgRGI0
- >>290
何度やってもNGワードで弾かれたのでムシャクシャしてやった
特に意味は無い
- 292 :名も無きAAのようです:2011/11/05(土) 02:21:23 ID:7/iGuqnIO
- 明日起きてから読むと書き込みしたが
先ほど読み終わった、まる
- 293 :名も無きAAのようです:2011/11/09(水) 20:17:33 ID:38yZ7KHI0
- │|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ _
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ 7/ |`=、
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ 〈〈__ノノ
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖|┃│ `ー‐ '′
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ 「| lヽ
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ .l L. |ノ
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ V'´
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ 「| lヽ
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖|┃│ .l L.. |ノ
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ V'´
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ 「| lヽ
│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ .l L.. |ノ
│|‖┃│┃│‖ │┃‖│┃│ V'´
│|‖┃│ _ │┃│ 「| lヽ
│|‖ ,,,,,,,, /'彡│┃│ .l L.. |ノ
第十三話→ .│,...、 ミミミミ_, く/ │┃│ V'´
│へニニ匚{~`〒'" イ │┃│ 「| lヽ
│ 、┴〜-〜'7 │┃│ .l L.. |ノ
│ "ヾ二二(. │┃│ V'´ 、__..、
│ ヾ ┬、\ ┃│ つノ
│l | l \ \-、 ┃│
│|‖│ | |、 \/ / ┃│ o
│|‖┃│ |_ノ| `'′ ┃│
│|‖┃││ `'′ │ │┃│ o
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│|‖┃│┃┃‖┃│┃││┃│ o _
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│|‖┃│┃┃‖┃│┃‖│┃│ <>
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
明 日
- 294 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/11/10(木) 00:59:18 ID:N47JmL8w0
- それでは予告通り、見直しが終わったら投下始めます
- 295 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:19:34 ID:N47JmL8w0
- 達磨崩し編の最終話。今回はその前編です。
作風荒れまくりの第一部でしたが、今回含めの三話分で綺麗にまとめたいと思う
ちなみにオナニーした後はティッシュ一枚でスマートに決めます。お願いします
- 296 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:20:14 ID:N47JmL8w0
-
夜が明けようとしている。
時計塔の頂上に差し込む朝日は昨夜の戦いを脳裏へと押し遣り、彼らに束の間の休息を与えた。
ブーン、ドクオ、クックルの三人は逸早く眠りに落ち、一つのソファを寝惚けながらに取り合っている。
『トルキア』との戦闘で最も善戦し、体力を消耗したのは彼らだ。咎める者も当然居ない。
横堀、モララー、荒巻は次の事での話し合いを早速始めていた。
一週間後に迫る議長の護衛をどうするかで意見を飛ばし合う三人。手元のコーヒーには誰一人として手をつけていない。
トラとショボンの二人は重傷を負い、現在は彼らの傷を癒す為の医療チームが結成され、処置を施している真っ最中である。
その医師の見立てでは、一週間では到底完治し得ないとの事だった。
そして、兄者は一人、時計塔の頂上から、朝焼けに照らされる新都市の景観を見下ろしていた。
ここに来てそろそろ一カ月となる。VIP町の友人達は元気にしているだろうか。兄者はふと、そう思う。
今まで騒々しいばかりの一カ月で、彼はゆっくりと物思いに耽る時間を失い、色々なものを置き去りにしている。
普通の日常とは一つ隔てた、或いは、一段上の所に自分は居るのだろうか。
時の階段を上り始めた事で、あのVIP町での日々は空虚なものへと変わってしまったのだろうか。
じりじりと上る太陽。その日の朝を迎えるまで、彼らは各々の思う様に時間を使った。
.
- 297 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:21:24 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十三話「 想い出は遠くの日々 」
―――――――――――――――
.
- 298 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:23:23 ID:N47JmL8w0
-
( ´_ゝ`)「ちょっと外行ってくるわ。昼頃には帰ると思う」
/ ,' 3「ああ、ならばこれを持っていけ。新都市でのお主のIDカードじゃ」
そう言って荒巻から渡されたIDカードをジーンズのポケットに仕舞い、兄者は時計塔の螺旋階段を下りて行く。
(;´_ゝ`)「さむっ」
一階フロア着き、兄者が呟く。八月とは言え明朝。秋も間近に迫っており、前に比べて随分と肌寒くなっていた。
兄者は一度部屋に戻って上着を羽織って来ようとも思ったが、これから日が出る事を考え、そのまま外へ出た。
時計塔を後にして、少し離れた所の門を潜って歩道に出る。
道は左右に延びていた。向こう側の歩道に行くには、遠くの歩道橋を使うしか無さそうだった。
その歩道橋があるのは左だが、兄者はそれと反対の右方向に足を向けた。
新都市の勝手が分からない分、変な道順で歩くと迷子になる恐れがあるからだ。彼はそう考え、右へと進む。
しばらく進むと横断歩道が目に留まる。兄者はそこで立ち止まり、向こうに渡ろうと考えた。
まだ日も出切っていない時間帯だと言うのに人は多い。それは兄者の知るVIP町では有り得ない光景だった。
こっちは六人。向こうには四人。誰とも擦れ違わずに向こうに渡るのは簡単そうだ。兄者は頭の片隅で思う。
やがて信号機が青に変わる。兄者の思惑通り、彼は誰とも擦れ違う事無く向こう側に着く事が出来た。
兄者はそのまま真っ直ぐ歩き、目に付く物を一瞥しながら歩いて行く。
- 299 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:25:40 ID:N47JmL8w0
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無表情なビルが軒を連ねている。残業であろうか、ビルの至る所で照明が点いているのが見えた。
見上げれば見上げるだけビルがある。しかし見ていても、あまり面白いものではない。
兄者は視線を前に向け、再び歩く事に意識を集中する。
そうしてフラフラと歩き続け、彼が行き着いた先はファミリーマートだった。
最新鋭の技術に加え、空を穿つ程の建築物が大半を占める新都市でもコンビニはあるらしい。
兄者はニヤリと頬を緩め、この肌寒さを何とかするべく、そそくさとファミリーマートに入店した。
いつもの入店音が鳴る。しかし、店内には誰の姿も見られなかった。
(;´_ゝ`)(……なんだよ。中はやっぱり違うのか)
店内には幾つかのテーブルが用意され、それぞれの机上にはタブレット型のコンピューターが置かれていた。
商品棚がは一つも無かった。だが、無い代わりに雑誌類は豊富に取り揃えられ、店内は小さな書店の様にも思えた。
兄者は取り合えず椅子に座り、机上のコンピューターのタッチパネルに触れてみた。
すると音声ファイルが再生され、兄者はその誘導に従い、メニューを開く。
このコンピューターの形状はiPadそのものだが、利便性は元のそれを大きく上回っている。
これは商品管理に特化した物なので元々のスペックには劣るが、それでも新都市外の製品とは比べ物にならないキャパシティと処理能力を有している。
( ´_ゝ`)(なるほど。これで商品を選ぶのか)
インスタント食品、菓子類、各種ドリンク、肉まんやファミチキ等のファーストフード。
その他に文房具、化粧品、ビニール傘など。
タッチパネルに表示された商品は、どれも馴染みある一般的な物ばかりだった。
- 300 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:26:39 ID:N47JmL8w0
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(;´_ゝ`)(……ファミチキ下さいも言えないこんなファミマじゃ……)
とは思うものの、兄者は表示された商品メニューから幾つか選択し、画面上のカート中に放り込んでく。
最終的にファミチキ二つとホット・カフェオレに決めた兄者は、画面下の『御会計』と表示された所をタッチした。
『しばらく御待ち下さい』
音声が再生され、画面が切り替わる。
画面はレンガ調のキッチンの様子を映し出し、ファミリーマートのロゴの下で、小さなコックがフライパンを振るい始める。
それはいつの時代でもある単調な動画だが、兄者はその動画に深く見入っていた。
『商品が用意出来ました。IDカードを挿入の後、カウンターにて御受け取り下さい』
( ´_ゝ`)(……カウンター、ね)
カウンターには透明なガラスで守られたチェーンコンベアーが伸びていた。丁度「つ」を反転して見た様な形だ。
少し経つとベルトの上を注文した商品が流れ始め、兄者は慌てて席を立つ。
間も無く甲高い電子音が鳴り、チェーンコンベアーが停止。
荒巻から貰ったIDカードを取り出し、兄者はカードを傍に設置された端末に差し込んだ。
するとコンベアーを覆うガラスの一部分がスライドし、そこから商品を取る事が出来た。
『……また、お越し下さい』
兄者はその音声に耳を傾ける事無く、ファミリーマートを後にした。
.
- 301 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:27:49 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
ファミチキの味が不変である事に喜びつつ、兄者は再び新都市の街を歩き始める。
時刻は午前六時。全体的に早起きなこの街は、目覚めの時をとっくの前に迎えていた。
(*´_ゝ`)(ファミチキうめぇ……)
交差点に差し掛かり、兄者はスーツ姿の大人や登校中の学生と肩を並べる。
朝っぱらから目的も無く歩き、何の負い目も感じず労働者に挟まれファミチキを食らう男を世間はどう見るだろうか。
普通ならば偏見の一つでも脳裏を掠めるだろう。しかし、新都市の人間にそう思う者は殆ど居ない。
兄者の行動も一つの幸せの形として許容する。他者に迷惑を掛けず、個人で幸せならば文句は無い。
それらを言葉で形容するならば『自己満足主義者の塊』である。故に兄者を含め、他人の事などどうでもいいのだ。
所詮、使い捨て。今だけの付き合い。
この街の人間の潜在意識――共通した開き直りは、それに尽きる。
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- 302 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:28:58 ID:N47JmL8w0
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兄者は人の波に紛れて歩き続ける。が、大して目に留まる物が無い。
煌びやかな衣服で着飾ったマネキンが、ショー・ウィンドウの向こうで泣いている。
沈黙を決め込む喫茶店が青ざめている。シャッターを下したままの八百屋が呻き声を上げている。
冷たい風が歩道を走り去っていく。
ガムが靴底にくっ付いた様な不快感が拭えない。
兄者は咄嗟に歩調を速め、物言わぬこの感覚から逃げようと考えた。
( ´_ゝ`)(……おっ)
そして視界の片隅に映った公園を見て、兄者はすぐさまその公園へと向かった。
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- 303 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:29:52 ID:N47JmL8w0
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―――――――――――――――
夢の中で、昔の事を思い出した。
ただ、それを言葉にしようとすると、どうしても喉の奥が詰まってしまう。
後悔と罪悪感だけがしんしんと降り積む心の中で、俺は一体何を探して歩いているのだろう。
それは不良として生きていた時も変わらなかった。無我夢中で体を動かし続け、行き当たりばったりの幸福に縋る。
弟が死んでそれを止めた今、俺は幸福なのだろうか。或いは、俺は不幸なのだろうか。
無くした幸福を取り戻す術は無い。死んだ人間が生き返らない様に、それだけは決して存在しない。
だからこの戦いで最後の一人まで生き残り、自分の家族を元に戻す事も絶対にしない。
乗り越えたものを下りる必要も無い。だから、俺は今あるものを大事にすると決めている。
例えそれが悲しみを伴い、自分の心に痛みを与え続ける様な事だとしても、今あるものだけは握って離さない。
そうしないと昔の事も一緒に無くしてしまいそうで、苦しい事も悲しい事も、全部忘れてしまう気がするからだ。
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- 304 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:30:39 ID:N47JmL8w0
-
――夢の中は綺麗だった。
幻想的な景色の中に自分が居て、芝生の上に素足を晒している。
遠くの空は夜明けを迎えていて、その奥には沢山の星が瞬いている。
足元には薄いガラスが一枚浮いていて、そこに足を乗せると、その少し上に次のガラスが現れる。
そうして俺はどんどんガラスの上に足を乗せていき、どんどん上へと上って行く。
ガラスの階段を上り、見えた夜明けはとても美しかった。
足は冷え、風が吹き、高い所で怖い筈なのに、俺は何故だか心が洗われる感覚に浸っていた。
そして俺は朝日に見惚れて立ち止まり、ただ茫然と世界を眺めた。
――ふと、今まで上ってきた階段の事を思い出す。
俺は思わず振り返って下を見るが、そこにガラスの階段は無い。
そこにあるのは、朝露を帯びた芝生。
上っていると錯覚していただけで、俺は一段たりとも階段を上ってはいなかったのだ。
しかも下りるのは簡単で、『上るのを止めてもいい』と俺は考えた。だが、俺はそうはしなかった。
戻れるけど戻っちゃいけない。戻ったら、二度と前には進めない。
理由はそれだけだった。
.
- 305 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:33:33 ID:N47JmL8w0
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―――――――――――――――
滑り台に太陽の光が反射し、兄者の顔を照らした。
公園のベンチに座る彼は低く唸ると両目を開け、大きな欠伸をして目を擦る。
どうやら眠っていたらしい。兄者はもう一度欠伸をしてから時計を確認した。既に午前八時を過ぎている。
肌寒さは日の光に打ち消されていた。
( ´_ゝ`)(さて、どうするかなぁ……)
ファミチキとホット・カフェオレのゴミの入ったビニール袋を手に持って立ち上がる。
周囲を見ても誰も居ない。兄者は再び歩き出したが、先程情景に混ざって眼に映った人物を思い出し、足を止めた。
もう一度公園内を見渡すと今度ははっきりと見えた。公園を囲む歩道を、高岡ハインリッヒが歩いている。
从 ゚∀从「――」
( ´_ゝ`)(……高岡?)
彼女は誰かと喋っているようだった。
兄者の位置からその相手の姿は見えなかったが、彼は公園内を出て、ハインの元まで走っていく。
- 306 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:34:16 ID:N47JmL8w0
-
( ´_ゝ`)「おーい! 高岡ー!」
从;゚∀从「――兄者!?」
振り向きざまに声を上げたのは、やはり高岡ハインリッヒだった。
そして彼女の他にもう一人、高岡と呼ばれて反応する者が居た。
(#゚;;-゚)「おはようございます」
ハインの押す車椅子に座る女性が丁寧に挨拶をする。
たどたどしく兄者も挨拶を返し、次いでハインにも声を掛ける。
( ´_ゝ`)「久しぶりだな」
从*゚∀从「おまっ……! ……いや、あぁ、うん。そう、だな……」
視線を宙に泳がせる彼女を尻目に、車椅子の女性が兄者を見つめ、口を開いた。
- 307 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:35:39 ID:N47JmL8w0
-
(#゚;;-゚)「……もしかして、貴方が流石兄者さん?」
( ´_ゝ`)「そうだけど、アンタは?」
(#゚;;-゚)「ハインの姉で、高岡でぃと言います」
御淑やかなお乙女といった印象だった。これが高岡の姉なのかと思うと、兄者は思わず吹き出した。
从#゚∀从「あっ! 兄者、お前今『全然性格違うじゃん』とか思っただろ? 姉ちゃんに失礼だぞ!」
(#゚;;-゚)「いや、多分ハインの事を笑ってるんだと思われ」
言い方からして彼女がネット常駐者である事が窺えた。
兄者は不思議な親近感の波に呑まれ「ウェルカム トゥ アンダーグラウンド」と言いそうになるが、発する手前でそれを踏み止まる。
例えそれを彼女に言ったとしても、御上品な口振りと共に隅田川の清流が如くサラッと受け流される姿が兄者には容易に想像できた。
从*゚∀从 ヒャ〜
そんな中、ハインは惚けて奇声を発するばかりであった。
(#゚;;-゚)「……話も長くなりそうだし、もう病院に戻ろっか」
( ´_ゝ`)「む、やっぱり何か病気なのか」
(#゚;;-゚)「せやな」
どこか抜けていると言うか半ば人を馬鹿にした様な態度に、兄者は早々に対策を立てる。
この女にマジレスは禁物だ。会って数分喋って数十秒という間柄だが、兄者は彼女の底知れぬ腹黒さを直感的に感じ取っていた。
しかし既に手遅れ。兄者はクモの巣に絡め取られた様に高岡姉妹の輪に加わり、病院までの道を否応無しに歩かされるのであった。
- 308 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:36:50 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
病院に着くと高岡でぃとはすぐに別れる事となった。どうやら外出前と帰りは診察をする決まりらしく、彼女は若い看護婦と共に姿を消した。
面倒臭い決まりのようにも思えるが、彼女の病気が何なのか知らない以上、兄者は口を噤んで黙っていた。
ロビーのソファに二人並んで座り、ハインが切り出す。
从 ゚∀从「……で、だよ。兄者。何でお前が新都市なんかに居るんだ?」
( ´_ゝ`)「巷で噂のモンスターペアレントのせいでな、逸早く社会経験を積んでる最中なんよ」
从 ゚∀从「ああ……モララーさんね。あの人、ぶっちゃけ変だもんなぁ」
( ´_ゝ`)「本人にそう伝えておこう。下着類は厳重に守っておけよ」
从;゚∀从「伝える事と私の下着に何の関係が!?」
( ´_ゝ`)「いや、アイツ自分の悪口言った奴には容赦無いんだよ。
そのせいなのか、アイツは悪口言った奴の下着を持って町内をほくそ笑みながら駆け回る、夢を見るんだよ……」
从;゚∀从「結局夢かよ! 変にビックリさせるな!」
( ´_ゝ`)「まぁ家に忍び込んで嗅いで元に戻すだけだしな。そう言われれば大して損害は無いか」
从;゚∀从「……って、やっぱり実物取りに来るんじゃねーか!
しかも嗅いで戻すだけとか……そんな無粋なキャッチ&リリース精神聞いた事無いぞ!!」
- 309 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:37:47 ID:N47JmL8w0
-
その後、病院の利用者から絶大なブーイングを受けるに至るまで、彼らはボケとツッコミの応酬を続けた。
羞恥心から揃って頬を染める二人。居た堪れなくなった兄者は咄嗟にハインの手を取り、病院の庭へと駆け出した。
(;´_ゝ`)「……いや、まぁなんだ」
庭の芝生に腰を落として兄者が言う。
( ´_ゝ`)「久しぶりだな」
从 ‐∀从「……そうね」
腰に手を当てハインが応えた。彼女は改まって息を漏らし、視線を宙に浮かべる。
从 ゚∀从「……お前からでいいよ」
( ´_ゝ`)「でぃさんの病気ってヤバいのか」
从 ゚∀从「ああ。それも、まだ治療法の見つかってない難病だ。
今はまだ両足の不全で止まってるけど、これからどうなって行くのかも分からねえ」
( ´_ゝ`)「治らないのか」
从 ゚∀从「……いやっ! 治る!」
沈黙の末、彼女が声を上げた。兄者にはそれが自己奮起の言葉に聞こえてならない。
横に座ろうとするハインの顔を一瞥。今はまだ笑顔を保つ彼女の表情に、兄者は胸の奥を痛めた。
- 310 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:38:27 ID:N47JmL8w0
-
从 ゚∀从「……私、馬鹿に見える?」
( ´_ゝ`)「お前はそれ以上に頑張ってんだろ。馬鹿だろうと関係ねぇよ」
从 ゚∀从「答えになってないぞ」
( ´,_ゝ`)「今のに流されないんなら馬鹿じゃないだろ」
从;゚∀从「相変わらず面倒臭い奴だな……」
( ´_ゝ`)「次、聞けよ」
从 ゚∀从「宿題やったか?」
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「えっ」
从 ゚∀从「えっ」
(;´_ゝ`)「えっ?」
从;゚∀从「……あと一週間ちょっとで学校始まるんだが……」
( ´_ゝ`)
.
- 311 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:39:08 ID:N47JmL8w0
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 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄E_ )__ノ ̄
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- 312 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:39:55 ID:N47JmL8w0
-
兄者は今まで気付いていなかったのだが、彼は学生らしく夏休みの課題に取り組む時間を悉く打ち砕かれていたのだ。
と言うか学生生活そのものを棒に振る事を余儀なくされていたのだが、彼はその事実をすっかり忘れていた。
(;´_ゝ`)(ああ畜生クソッたれ! そういえば全部忘れてた!
特訓だ何だと言ってリアルの事を全面的にすっぽかしてたよ俺!)
(; _ゝ )(……って言うかブーンと一緒に内藤倒しに行ったら学校行けなくね!?
留年か! まさか留年すんのか俺ェ!)
从*゚∀从「ざまぁ! 私も全くやってないけどな!」
(;´_ゝ`)「ま、まぁ? それは置いておこうぜ、みたいな?」
从 ゚∀从
从 ∀从「ああ……」
( _ゝ )「もう諦めようず……」
(#゚;;-゚)「ぬるぽ」
( _ゝ )「ガッ」
(#゚;;-゚)「私だ」
( ´_ゝ`)「お前だったのか」
.
- 313 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:40:39 ID:N47JmL8w0
-
(#゚;;-゚)「また騙されたな」
( ´_ゝ`)「してやられたぞ」
(#゚;;-゚)「暇を持て余した」
( ´_ゝ`)「神々の」
(#゚;;-゚)「……ハイン、診察終わったよ。部屋行こ」
从 ゚∀从「ああ……」
(#゚_ゝ゚)「おいテメェ! ネタを振るなら最後までやり抜け! お笑いを舐めるなよ!」
(#゚;;-゚)「えっ……ちょっと、何仰ってるか分かりかねます」
从 ゚∀从「兄者、言っただろ? 姉ちゃんは病人なんだぞ?」
( ´_ゝ`)「……」
隅田川の清流の流れる音がした。サラッとした清らかな音である。
.
- 314 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:41:45 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
――『入院棟。高岡でぃの個室』
台形に窪んだ窓からは病院の庭が一望出来た。
窓の手前には高岡姉妹の私物が入った棚があり、その上には手入れの行き届いた花瓶が二つ置かれていた。
でぃを車椅子からベッドに降ろし、ハインと兄者の二人はベッドを挟むように、パイプ椅子に腰掛けた。
( ´_ゝ`)「んで、まだ帰らせてくれないの?」
(#゚;;-゚)「いつからもう帰れると錯覚していた?」
(;´_ゝ`)「ハァ……分かったよ。好きにしてくれ王女様」
兄者は居直り、両手をだらんと床に向けた。
次いで両足を伸ばし、嫌々居てやるんだぞと言わんばかりに天井を見上げる。
(#゚;;-゚)「……それで、二人が結婚したら名字はどうするの?」
从 ∀从「なっ――」
( ´_ゝ`)「別に名字はどっちでもいいぞ。好きにしろ」
.
- 315 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:43:10 ID:N47JmL8w0
-
(#゚;;-゚)「じゃあ子供の名前は?」
( ´_ゝ`)「コイツとセクロスした後で考えるわ」
从* ∀从「セセセ、セッ――」
(#゚;;-゚)「デートとかしたの? やっぱり締めはラブホ一直線?」
( ´_ゝ`)「いやいや、残念ながらゲーセンで解散が定番だ」
从* ∀从「ざざざ残念――」
(#゚;;-゚)「なんだぁ。じゃあ新婚初夜までは片栗粉Xでむにゃむにゃ?」
( ´_ゝ`)「そうそう。オカズはむにゃむにゃでな」
ピュー
从∀ *从≡「ちょっ……私! ジュース買ってくるね!」
.
- 316 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:44:18 ID:N47JmL8w0
-
――下ネタトークを遺憾無く展開した後に残ったのは、異様な雰囲気を纏う沈黙だけであった。
(#゚;;-゚)「……私への適応が早いのね。もうちょっとマジレスかましてくると思ったんだけど……。
でも、知り合って間もない華奢な少女とする会話とは思えません」
( ´_ゝ`)「言いだしたのはそっちだろ? 俺としては至極真っ当な対応だったと思うんだが」
(#゚;;-゚)「ですが、そのせいで妹が部屋を出て行ってしまいました。追いかけはしないの?」
( ´_ゝ`)「すぐ帰ってくるさ」
(#゚;;-゚)
( ´_ゝ`)
.
- 317 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:45:59 ID:N47JmL8w0
-
(#゚;;-゚)「一から百までの数字の約数で、その約数が全て素数であるものは幾つ?」
( ´_ゝ`)「ん……。……二十、七。いや、二十六だな」
(#゚;;-゚)「『我が名はガンテンバイン』を書いた作家の名前は?」
( ´_ゝ`)「マックス・フリッシュだ。ドイツ文学の人だったと思う」
(#゚;;-゚)「高岡ハインリッヒの好きな人は?」
( ´_ゝ`)「知らん」
(#゚;;-゚)「……分かりました。先程の非礼をお許し下さい」
( ´_ゝ`)「いいよ。アンタ分かっててやるタイプっぽいし、謝るなら高岡の方にしてくれ」
二人きりとなった途端に態度を変えたでぃに驚く訳でも無く、兄者は淡々と彼女の質問に答え上げた。
そして、彼女の人形の様な瞳は兄者を捉えて離さない。
( ´_ゝ`)「……なんだよ」
(#゚;;-゚)「私と貴方、とても似ているわ。でも親友にはなれない。そうですね?」
( ´_ゝ`)「類は友を呼び、同族嫌悪に苦悩するって分かってるからな」
.
- 318 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:46:48 ID:N47JmL8w0
-
(#゚;;-゚)「それ、誰の言葉か知っている?」
( ´_ゝ`)「ん? 誰かの名言にでもあったのか?」
(#゚;;-゚)「十二年前、まだ新都市が完成してない頃に起きた連続殺人事件の犯人が言ったの。
『類は友を呼び、同族嫌悪に苦悩するだろう』って、死に際にね」
( ´_ゝ`)「……ま、よくある話だな。当人より他の何かが世間に広まるって事はよ」
(#゚;;-゚)「いえ、そうでもないわ。現にその影響は消え去って無いし、名実共に稀代の凶悪犯罪者として覚えられてるの」
( ´_ゝ`)「……そいつの名前は」
(#゚;;-゚)「巣立史郎と言う名前でした。二つ名は『達磨崩し』」
( ´_ゝ`)「達磨崩し……」
(#゚;;-゚)「……ねぇ、流石さんは知ってるかしら?」
彼女が微笑んで言う。
( ´_ゝ`)「……何を」
(#゚;;-゚)「大多数の人間が生き方も死に場所も選べずに終わるという事実。
後者はまだ流石さんには分からないと思いますが、前者には思い当たる事がある筈です」
( ´_ゝ`)「で?」
(#゚;;-゚)「そのお話が聞きたいのです」
.
- 319 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:47:53 ID:N47JmL8w0
-
( ´_ゝ`)「……聞いて何になる」
(#゚;;-゚)「私、小学生の低学年くらいからずっと病院に居て、幼少期の思い出というのが殆ど無いの。
死に場所はもう決まっているのですが、それに至る過程が希薄過ぎて、どうにも死を捉え辛いのです」
(#゚;;-゚)「有体に言うと、私は生きた覚えが無いので、死という概念が理解出来ない。私はそれが酷くもどかしい」
( ´_ゝ`)「……覆水は二度と盆に返らない。そして生も死も盆の外にある。理解の範疇を超えている事だ」
(#゚;;-゚)「そうかしら? 理解なんて脆弱なものよ。結局は自己満足で、天井の見えるものでしか量れない欠陥概念だわ」
( ´_ゝ`)「理解とは自身を騙す手段の一つである。故に物事の理解へと進む時、人は総じて盲目的になる」
(#゚;;-゚)「貴方の言葉ね? とても内向的で素敵です。……流石さん、貴方は今までに何人か切り捨てていますね。
それに無意識下で感情をセーブして、合理的に考える癖もあるようです。なのに、中にはしっかり野性を残している」
(;´_ゝ`)「……何が言いたいんだ。流石に付き合い切れるレベルを越えてきたぞ……」
(#゚;;-゚)「流石さん。早く大人になって下さい。私には無理でした。私はもう、限界に押し潰され、子供のまま死んでしまう」
(;´_ゝ`)「……何でそんな事を俺に? いや、そもそも会うのは今日が初めてなんだぞ?」
(#゚;;-゚)「いえ、私が貴方の存在を知ったのは大分前です。いずれ会う事も予期していました。会った時に伝える事も決めていました」
(;´_ゝ`)「俺を……待っていたのか……?」
(#゚;;-゚)「ええ。ずっと、プログラムの一つの様に、貴方に言葉を伝える為に、ずっと」
.
- 320 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:48:45 ID:N47JmL8w0
-
(;´_ゝ`)「……分かったよ。アンタみたいな天才肌は良く知ってる。どうせ俺の言う事だって全部予想通りなんだろ?
だけど、それを分かった上で敢えて一つだけ聞かせてくれ」
(;´_ゝ`)「――お前は誰だ?」
(#゚;;-゚)「……知ってるかしら。個人の正しさを証明する方法は二つしか無く、どちらも多くの犠牲を必要とするのよ。
それを知らずに正義だとか、自分をドラマやアニメの主人公みたいだと思うのって、凄く浅ましいとは思わない?」
(;´_ゝ`)「おい……」
(#゚;;-゚)「人はそもそも間違った側に立っているの。だから正しさの在り処を求めるのは筋違いですし、意味がありません」
(;´_ゝ`)「……」
(#゚;;-゚)「正義を口にする奴が、結局、いちばん気違い染みた連中に思えるわ」
.
(;´_ゝ`)「……」
(#^;;-^)「『夜の果て旅』。著者はセリーヌです。機会があれば読んでみて下さい」
.
- 321 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:50:43 ID:N47JmL8w0
-
取って付けた笑みを兄者に見せてから、でぃは視線を外に向けた。
(#゚;;-゚)「もう、私から言う事は何もありません。ごめんなさい。メンヘラっぽい事ばかり並べてしまって」
( ´_ゝ`)「……動機を聞かせてくれ。何で俺を待っていた。何で俺に言おうと考えたんだ?」
二人の視線が合う。
(#゚;;-゚)「……きっと貴方ならハインを救えると思ったからでしょうね。あの子、これから凄く大変な事に巻き込まれていくの。
でも、ハインは何があってもそれを我慢しようとするわ。その時、彼女を助けられるのは……」
( ´_ゝ`)「……その言い方、まるで預言者だな。俺の未来とかも分かるのか?」
兄者は彼女の瞳の奥を見つめた。
(#゚;;-゚)「……まず貴方の友達が一人死ぬわ。次に親しい人と殺し合う事になる。その次に、夢の中に閉じ込められる」
( ´_ゝ`)「……そっか。覚えとくよ」
そう言って兄者は席を立ち、ベッドの上のでぃに背を向ける。
彼はそのまま部屋を後にしようとするが、でぃからの問い掛けに足を止めた。
(#゚;;-゚)「私、今週中に死ぬわ。どう思う?」
( ´_ゝ`)「どうでもいい」
(#^;;-^)「……やっぱり私達、とっても似ている。ありがとう。今日は貴方に会えて良かった」
.
- 322 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:51:46 ID:N47JmL8w0
-
.
- 323 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:52:28 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
一階フロアに着くとハインが居た。
彼女は器用にも三本の缶ジュースを片手で持っており、内一本を兄者に差し出して言った。
从 ゚∀从「もう帰るのか? ちょっと話あるんだが」
( ´_ゝ`)「うむ。ジュース一本に免じて聞いてやろう」
从 ゚∀从「いや、立ち話で終わる事なんだ。聞いてくれ」
( ´_ゝ`)「うむ」
从 ゚∀从「……ビロードの奴、最近すげー荒れてるんだよ。
んで……あ、一か月くらい前に不良グループ三つが大喧嘩始めようとしてたのは知ってるか?」
( ´_ゝ`)「うむ」
从;゚∀从「んでな、多分そのシワ寄せだと思うけど、町中の不良共が以前にも増して殺気立ってんだ……」
( ´_ゝ`)「ほうほう、それでそれで?」
从;゚∀从「ここでビロードだ。……あいつ、『不良狩り』だっつって……」
从;-∀从「その……昔のお前と同じ事を……」
.
- 324 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:54:21 ID:N47JmL8w0
-
( ´_ゝ`)「あぁ……なるほどねぇ……」
兄者は缶ジュースを開け、中身を一気に胃へ流し込んだ。
喉を鳴らして飲み終えた缶ジュースをゴミ箱に投げ捨て、彼は腕を組んで首を傾げる。
( ´_ゝ`)「……教えてくれてありがとな。だけど、俺には何も出来ない話だ」
从;゚∀从「……会いに行かないのか? あいつが探してるの、多分お前だぜ?」
( ´_ゝ`)「いんや、実は俺、しばらく日本を離れる事になってんだ。多分、二学期中は帰って来られん」
从 ゚∀从「……そうなのか。いつ頃戻ってくる?」
( ´_ゝ`)「そうだな……」
兄者は言葉を千切り、沈黙を挟んだ。
( ´_ゝ`)「……最悪、もう二度と帰って来られんと思う」
从 ゚∀从「そ、そうか……で、どこ行くんだ?」
( ´_ゝ`)v 「某☆国」
从;゚∀从「おまっ……! あそこに入国出来るのか!?」
( ´_ゝ`)v 「多☆分」
.
- 325 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:56:01 ID:N47JmL8w0
-
从;‐∀从「んー……まぁ、いいか」
するとハインは上着のポケットから長方形のケースを取り出し、その中から一枚のチップを抜き取り兄者に渡した。
しかし兄者にはそれが何なのか分からず、頭上にクエスチョンマークを浮かべた。
从 ゚∀从「……それ、データチップって言うんだけど……知らないのか?」
( ´_ゝ`)「うむ」
从;゚∀从「仕方無いなぁー……。じゃあ新都市の携帯電話も持ってないんだろ? 某国に行くなら尚更買い換えた方がいいぜ」
( ´_ゝ`)「そんな事言われても、ウチ、流石兄者やし」
从 ゚∀从「……ま、気ィ付けて帰れよ! じゃあな!」
( ´_ゝ`)「うむ。またな」
( ´_ゝ`)(……またな、か)
笑顔を見せて駆けて行くハイン。
兄者は自分が別れ際に『またな』と言った事に驚きながらも、手を振って彼女を見送った。
時刻は午前十一時を回ろうとしていた。
.
- 326 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:56:42 ID:N47JmL8w0
-
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- 327 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:58:04 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
――『地下四階。ショボーンズ・BAR』
かくしてショボンのバーである。
(´φω゚`)「ぬわああああああああ! 痛い!! 主に全身が!!」
(;´_ゝ`)「……何やってんの? つーかドクターストップ出てねぇのかよ……」
(´φω゚`)「あぅん!! おかえり!! 見ての通りマスターやってるの!! 痛いけど!!」
( ^ω^)「オッスオッス。おかえりだおー」
時計塔に帰って来た兄者は昼食を食べにショボンのバーへとやってきた。
兄者はそこに居合わせたブーンの隣に座り、慣れ親しんだ日本食をショボンに要求した。
( ´_ゝ`)「ドクオは?」
( ^ω^)「バトル・フロアで連戦中だお。ここ居る間にチャンピオン倒すのが目標らしいお」
( ´_ゝ`)「ほへぇ……そりゃ御苦労なこった」
(´φω゚`)「はい! ご飯んんんんん!!」
( ´_ゝ`)「あ、どうも」
.
- 328 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 01:59:19 ID:N47JmL8w0
-
( ^ω^)「兄者はこれから寝るのかお?」
( ´_ゝ`)「ん〜……。アニメの録画溜まってるし、それ見て時間潰すかなぁ……」 モグモグ
(´φω゚`)「特訓とかせぇへんのォ!?」
( ^ω^)「俺はこれからクックルさんの所に行くつもりだお。兄者も来るといいお」
( ´_ゝ`)「いや、俺はもう十分爺さんと特訓した。次の段階に行くにも俺の精神が問題らしいし、好きに過ごさせてもらうぜ」
( ^ω^)「おっ。そういえば兄者の能力は何型なんだお?」
( ´_ゝ`)「爺さんの見た感じじゃ型無しらしいんだが、本当の所は分からねぇ」 モグモグ
(´φω゚`)「ちなみに僕も型無しなのォォォォォ!」
(*^ω^)「……で、例の二段階目の能力はどうなってるお!? 何か凄いって荒巻さんから聞いてるけど……」
(;´_ゝ`)「悪い、そっちも全然だ。爺さんの言った『見るべきものは本質である』ってのがサッパリ分からんくて……」 モグモグ
.
- 329 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:00:41 ID:N47JmL8w0
-
( ^ω^)「おっ? そんなの深く考えずに『無敵』とかでいいんじゃないのかお?」
( ´_ゝ`)「……そんなもんなのかなぁ……」 モグモグ
キリッ
(´φω・`)+「そんなもんだ。現象を言語化して理解しやすくするのは普通の事だしな。難しく考える必要は無い」
( ´_ゝ`)「うーん……なら『無敵』っていうのが一番しっくり来るよなぁ……」
(((´φω・`))) プルプルプル
(´φω゚`)「やっぱ痛ァいいいいいい!!! 全身がァァァァ!!」
.
- 330 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:01:45 ID:N47JmL8w0
-
その時、からんころんと音が鳴り、誰かがバーの中へと足を踏み入れた。
兄者達が扉の方へ視線をやると、そこにはライダースーツを着たモララーが立っていた。
( ・∀・)「よう兄者。探したぜ。次の師匠は俺だ。特訓行くぞ」
モララーは淡白にそれだけを言い、踵を返して店を出て行った。
( ´_ゝ`)
(;´_ゝ`)「飯食ってる場合じゃねぇ!」 ガタッ!
それを追って兄者は席を飛び上がり、急いで店を出て行った。
( ^ω^)「頑張れお〜」
その場に残されたブーンは取り合えず兄者の残したご飯をペロリと平らげ、この一食を奢ってやろうと考えた。
この先多くの迷惑を掛けるのだ。この程度、些細な事だ。
( ‐ω‐)「お釣りはいらないお……」
ブーンは兄者の分の代金をショボンに渡し、バーから全力で逃げ出した。
カサカサカサ
≡┏┏(´φω゚`)┓┓「テメェェェェ!! 自分の分も払えボケェェェェェェ!!」
≡┏(;゚ω゚)┛「金欠なんです勘弁ンンンンン!!!」
.
- 331 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:02:25 ID:N47JmL8w0
-
.
- 332 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:03:36 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
――『新都市某所。議長室』
( ´┏_┓`)「……荒巻君。呼び出された理由は分かるかね?」
/ ,' 3「いえ、皆目見当もつきませんな」
( ´┏_┓`)「よく言う……。今まで時計塔の地下で何をやっていた?」
/ ,' 3「それは私事ですので、控えさせて頂きます」
議長のもとへと呼び出された荒巻は時間通りに議長室へと赴き、須藤議長の質問に淡々と答えていた。
しかし荒巻が素直に事を話す訳でも無く、須藤は内心イラつきを覚え始めていた。
これでは埒が明かない。須藤は質疑応答の形式を諦め、自分なりの方法で荒巻の意図へと迫る。
( ´┏_┓`)「……使針者とか言ったな。君達の様な『人外』の存在を」
/ ,' 3(お前は『外道』じゃがな)
( ´┏_┓`)「ある筋からの情報では……時計塔の地下で使針者を匿っているらしいじゃないか。荒巻君」
/ ,' 3(素直に殺し屋と言えばよいだろうに……)
( ´┏_┓`)「……私はね、人類の平和を求めているんだ」
/ ,' 3「……と、言いますと?」
不意に須藤が呟いた言葉に荒巻が反応する。
須藤は席を立って窓際へと移動し、そこから見下ろせる新都市の全景を見つめた。
.
- 333 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:04:28 ID:N47JmL8w0
-
( ´┏_┓`)「細かい事を言えば切りが無いが、どうであれ平和が一番だ。
そして……戦争を経て分かったのだよ。生き残れるのは、一部の天才だけであるとね」
/ ,' 3「……議長、何を仰りたいのですか?」
( ´┏_┓`)「この際だ。はっきりと言おう――私は天才だ。故に苦悩している」
/ ,' 3「……」
須藤は振り返り、荒巻を睨んだ。
( ´┏_┓`)「――どれを犠牲にするか、ね」
/ ,' 3「……そうですか」
( ´┏_┓`)「君とて馬鹿じゃあるまい。私の言っている意味が分るだろう?」
/ ,' 3「して、我々アスキーは一体何をすれば良いのですか?」
( ´┏ー┓`)「ふっ、話が早い」
そう言い、須藤は机上に埋め込まれた液晶パネルに手を触れた。
すると彼の秘書がスピーカーを通して応答する。
( )『如何なさいましたか?』
( ´┏_┓`)「例の資料を持って来てくれ」
( )『分かりました。少々お待ち下さい』
.
- 334 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:06:23 ID:N47JmL8w0
-
/ ,' 3「例の資料?」
( ´┏_┓`)「ああ、今度の殺害予告での資料だ。君の部下の配置等は、それに従ってもらう事となる」
空気の排出音と共にスライドドアが開き、議長室に須藤の秘書が入室した。
秘書と顔を合わせた荒巻は礼儀正しく頭を下げ、彼から一枚のデータチップを受け取る。
荒巻はそれを携帯情報端末(PDA)の挿入口に差し込み、データファイルを画面上に表示させて目を落とす。
( )「議長、他に御用は?」
( ´┏_┓`)「荒巻君、私はカフェオレを飲むが……」
/ ,' 3「御構い無く」
( )「……ではすぐにお持ちします」
秘書が出て行くのを見送り、須藤が再び口を開く。
( ´┏_┓`)「その布陣で異存無いかね?」
/ ,' 3「……ええ。どういう状況下に陥ろうとも互いに支援し合えるよう調整されています。お見事ですな」
( ´┏_┓`)「……もうこちらから伝える事は無い。帰ってもらって結構だよ」
/ ,' 3「……では、失礼致します」
.
- 335 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:07:27 ID:N47JmL8w0
-
須藤に向けて頭を下げる荒巻。
その耳元へと頭を寄せ、須藤が小さく呟いた。
( ´┏_┓`)「……もしも私が死んだ場合、君達『人外』も道連れだ」
/ ,' 3「……それでは」
( )「あっ、お気を付けて」
カフェオレを持ってきた秘書と入れ違いに荒巻が議長室を後にする。
そして、須藤は退室していく荒巻の背を鋭い眼つきで追っていた。
だが秘書が須藤に声を掛けてカフェオレを手渡すと、彼は人が変わったかの様に表情を崩した。
カフェオレを一口飲み、須藤が言う。
( ´┏ー┓`)「……少し苦いな。作り方を変えたのか?」
秘書はそう聞かれると苦笑いを作り、弱々しく言った。
( )「えぇ。たまには、苦味も必要だと思いまして……」
.
- 336 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:08:08 ID:N47JmL8w0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十三話「 想い出は遠くの日々 」
―――――――――――――――
.
- 337 :名も無きAAのようです:2011/11/10(木) 02:15:37 ID:N47JmL8w0
- それでは今回の投下を終わります
現在5レス品評会の結果で天狗になっているので、その鼻を折るような感想お待ちしてます
だから次も一週間前後で投下するって言ってるだろ! いい加減にしろ!
- 338 :名も無きAAのようです:2011/11/12(土) 00:10:20 ID:zLBBm1q.O
- 天狗になってるというなら
かがみのやつかな?
- 339 :名も無きAAのようです:2011/11/12(土) 00:49:25 ID:6bOfNQmo0
- なんか>>1が構ってちゃん臭い事言ってるな
気持ち悪いから今後はそういうの止めとけ
まぁお前が書いたのってクマンマだよな
文体すぐにで分かったわ。というか鳥ミスってたもんな
- 340 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/11/12(土) 21:26:15 ID:6bOfNQmo0
- 酷い自演を見た。深夜のテンションは恐ろしい
- 341 :名も無きAAのようです:2011/11/12(土) 23:08:05 ID:zLBBm1q.O
- そうだとは思ってたんだけど
さすがにそれは書き込めなかったよ
トリ間違ったなんて本人以外わからないと思うし
- 342 :名も無きAAのようです:2011/11/13(日) 18:10:44 ID:w5k4zAg6O
- ようやく、内容がタイトルらしくなってきた
- 343 :名も無きAAのようです:2011/11/15(火) 00:40:55 ID:tmWf79jA0
- おい! 青空ホライズンのトップに佐々木カラマロス大佐が居るぞ!
アンケートに大佐の事書いといて良かったああああああ!!
明後日には投下したいと思います
まだ6レスしか書けてないので頑張ろうと思う
- 344 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/11/17(木) 03:39:45 ID:R2VAefvc0
-
パタパタ
〃∩ ∧_∧ パタパタ
⊂⌒( *・ω・)
`ヽ_っ⌒/⌒c
書けました。今夜投下します
どうでもいいけど「こにゃ」って書いても「今夜」になります
これ、かなり前のネタな
- 345 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 20:53:38 ID:73ta0UyM0
- 乙!!
風呂は入った!!
飯は食った!!
いつでも来い!!!
- 346 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/11/17(木) 21:47:53 ID:R2VAefvc0
- それじゃあ投下始めるよ('(゚∀゚∩
頑張ってシリアス書くのもいいけど、そろそろ戦闘描写もやりたいよ('(゚∀゚∩
いい加減スカッとした話が書きたいよ!('(゚∀゚#∩
- 347 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:49:33 ID:R2VAefvc0
-
――『八月十七日 AM10:45』
.
- 348 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:50:14 ID:R2VAefvc0
-
「私、今週中に死ぬわ。どう思う?」
「どうでもいい」
「……やっぱり私達、とっても似ている。ありがとう。今日は貴方に会えて良かった」
.
- 349 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:50:59 ID:R2VAefvc0
-
彼らの会話が終わり、男が退室した。
それを見送った高岡でぃは一息つくと、何処へ向けるでもなく、声を出した。
(#゚;;-゚)「……いらっしゃい。思ったより遅かったわね」
「どうも。新しい花、置いときますね」
.
- 350 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:54:39 ID:R2VAefvc0
-
高岡でぃが窓の方へ目を向けると、宙に浮いた花束が棚の上に置かれ、その持ち主が姿を見せた。
持ち主は深くフードを被っており、顔の上半分は影になって見えなかった。
(:::::::ν::)「……警察の目を掻い潜るのには苦労しました」
(#゚;;-゚)「透明人間の癖によく言うわよ。さっきもそれで私と彼の会話を盗み聞きしてたんでしょ?」
(:::::::ν::)「まぁ、それが趣味なんで」
(#゚;;-゚)「ここに来たって事は、決めたのよね?」
(:::::::ν::)「……この街が生み出した虚構の存在――『達磨崩し』。その存在は新都市の街から『現実』を奪い取った。
十二年前の『達磨崩し』、少し前の『首狩り犬』、そして今新たに生まれた『達磨崩し』。
これらの存在は都民に明確な『悪』の存在を植え付けた。
その『悪』が何から生まれたのかも知らず、考えずに……」
(#゚;;-゚)「それで今度は自分から悪役を買って出るつもり? 革命には及ばないし、余り効果的な行動とは思えないわね」
(:::::::ν::)「確かにそうかも知れない。事実、これから僕がやろうとしている事は紛れもなく負け戦だ。
それでも新都市上層部の存在を崩壊させ、この街を包む霧を晴らす事は出来る。僕はそれで満足だ」
(#゚;;-゚)「……ヒロイズムと形容すれば楽だけど、貴方は行動を以てそれを結果に繋げようとしている。
口だけの人間よりはよっぽど現実味のある話ね。いいわ、意訳する」
(:::::::ν::)「その上で高岡さんに頼みがあります」
.
- 351 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:56:10 ID:R2VAefvc0
-
(:::::::ν::)「もし僕が使命を果たせず死ぬような事になったら、その清算を貴方にしてもらいたい」
(#゚;;-゚)「私に未来を聞こうとはしないのね……。分かった、その役目は私が請け負う」
(:::::::ν::)「高岡さん、今までありがとう。友達らしい友達と言ったら、高岡さん位しか居なかった。
お互い変わり者でしたけど、楽しかった」
(#゚;;-゚)「……貴方、死ぬつもり?」
「過ちも失敗も多かった。だが、後悔する余地は無い。そんな時間を過ごす間に、世界はどんどん僕から離れていく」
(#゚;;-゚)「偉人の名句を改変するのは面白くないわ」
「頼みましたよ……じゃ、宜しく」
.
- 352 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:56:57 ID:R2VAefvc0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十四話「 虚像 ≪REPLICA≫ 」
―――――――――――――――
.
- 353 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:58:32 ID:R2VAefvc0
-
夜、時計塔の頂上に集まったアスキーの面々。
彼らは円卓を囲み、議長護衛についての最終ミーティングを行なっていた。
(//‰ ゚)「巣立入早、通称『達磨崩し』。その顔をよく覚えておけよ」
(//‰ ゚)「――それでは本日、日付が変わった瞬間から議長の護衛任務を開始する。
各自持ち場を死守し、状況に応じて適切な行動を取れ。必要ならば独断行動も辞さないと心得ろ!」
『「了解ッ!」』
声を合わせて言った後、彼らは一斉に席を立つ。
(;^ω^)「いよいよ本番、お仕事だお……」
('A`)「なぁに。相手は力押ししてくる感じじゃないし、大丈夫だって」
(;^ω^)「……そうだおね! そもそも『戦う』って決まってる訳じゃないお!」
('∀`)「そうそう。気楽でいいんだよ気楽で――」
(;・∀・)「――いい訳ねーだろうが! 真面目にやれ真面目に!」
平穏と緊張感が飽和した中、時間は刻一刻と過ぎていく。
明日――今から三時間後の、八月二十五日が、ずっしりと迫っていた。
.
- 354 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 21:59:25 ID:R2VAefvc0
-
――『八月二十四日 PM09:00』
.
- 355 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:00:08 ID:R2VAefvc0
-
( ・∀・)「全員乗ったか? 忘れ物は無いな?」
('A`)( ^ω^)「はーい」
(;´_ゝ`)(修学旅行かよ……)
現場への移動には偽装バンを使う。
車両の外装は水道局のものに上書きされており、一般市民に不信感を与えぬよう配慮が施されていた。
バンの後部には護衛に必要な機材、道具が取り揃えられており、後部座席の大半をそれらが陣取っている。
それでもブーンとドクオが悠々と座れるだけのスペースは確保されており、中は十分に広々としていた。
( ・∀・)「んじゃ、出発するぜ」
.
- 356 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:01:29 ID:R2VAefvc0
-
――『同刻。某ホテル最上階の一室』
/ ,' 3「ああ、ワシは既に議長のボディガードに付いておる。お前達も早急に持ち場へ向かえ」
『了解。それと、トラの奴が付いて来たがっているんだが……』
/ ,' 3「……応援も呼んであるが人員不足に変わり無い。気は進まんが、連れて来い」
『了解』
クックルとの通信を切り、荒巻は小さく息を漏らした。
/ ,' 3(……ショボンが欠けている今、一瞬の気後れが命取りじゃな)
ショボンの不在。これはやはり致命的だった。
能力による思考の簡易接続が無い状態では、情報の伝達にかなりの遅れが生じる。
相手は『達磨崩し』。未だ全容の明らかとなっていない敵に対し、それは余りにも危険な事であった。
.
- 357 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:02:35 ID:R2VAefvc0
-
現在、新都市の某ホテルは須藤議長一人の貸切状態となっていた。
達磨崩しを安全かつ確実に捕らえる為に用意された舞台。
ホテルには数百人規模のボディガードが配備され、各部屋、各所にも余す所無く監視カメラの目が向けられている。
たった一人の人間を守る為に動いた金は計り知れず、ホテルの内外を問わず、辺りは喧騒に満ち満ちていた。
そして荒巻はここにきて、須藤の極端なまでのやり口を目の当たりにし、考えを改めた。
/ ,' 3(腐っても議長……この男は紛れもなく有能じゃ。ムカつくが、一種のカリスマなのかのう……)
(-_-)「――荒巻さん、どう思う?」
ノートパソコンを操作しつつ、ヒッキーが言う。
/ ,' 3「ぬ? 何がじゃ」
(-_-)「達磨崩し――巣立入早という存在」
/ ,' 3「……使針者とみて間違いなかろう。しかし能力が分らん以上、それ以外は会って知るしか無いな」
(-_-)「……僕の見立てだと、多分、ボディーガードのほとんどが、死ぬ」
(-_-)「出来れば、今の内に対策しておきたい」
.
- 358 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:03:33 ID:R2VAefvc0
-
/ ,' 3「……お主の勘はよく当たる。分かった。議長の部屋へ行こう」
荒巻とヒッキーは、須藤議長の部屋の隣で待機していた。
出来れば荒巻は同室で護衛に当たりたかったのだが、須藤がそれを頑なに拒否したのだ。
信用出来ない。須藤ははっきりとそう言って荒巻の申し出を断り、自分の秘書と二人きりで部屋に閉じこもっている。
こちらに来る時は事前に連絡しろと念を押して須藤に言われており、荒巻は須藤に連絡し、入室の許可を得た。
荒巻が須藤の部屋のドアをノックすると、須藤の秘書が鍵を開け、彼らを部屋に招き入れた。
そして部屋の中へと進んでいくと、リビングのソファに座り、一人でオセロをして遊ぶ須藤の姿があった。
/ ,' 3「議長」
( ´┏_┓`)「ん……何だね」
/ ,' 3「私の予想では、貴方は明日、間違い無く達磨崩しに殺されるでしょう」
( ´┏_┓`)「ああ……それがどうかしたのかね?」
彼の視線はオセロの盤上から外れなかった。
まだ白と黒に優劣は無く、ゲームは五分五分といったところだろう。
/ ,' 3「そこで、私の部下の能力を使い、その対策を講じたいのです」
須藤の手がピタリと止まる。
( ´┏_┓`)「……その『能力』というのは、どういうものなんだ?」
.
- 359 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:04:49 ID:R2VAefvc0
-
一歩前へ出て一礼し、ヒッキーが申し出る。
(-_-)「僕の能力は同意の下に成り立ちます。しかし、その内容を相手に知られてからでは能力を使えないのです。
ですから、どうか何も考えず、『YES』とだけ、お答えください」
( ´┏_┓`)「……よかろう。好きにしろ」
(-_-)「ありがとうございます」
須藤は適当に答えると再び手を動かし、盤上を白黒に染めていった。
/ ,' 3(ヒッキーの奴、思いっ切り嘘ついたな。そんな制約なぞ在りはせんのに……)
(-_-)「それでは……」
ヒッキーはその場から少し離れると、片手を前に突き出し、能力を発動させた。
彼の手から放出される青白い光はゆるやかに形を成し、それはやがて人の形となって彼らの前に姿を見せた。
( )「おお……!」
秘書は思わず喜々とした瞳で「それ」を見つめた。
だが、その場で初々しい反応を見せたのは秘書だけで、彼はすぐに恐縮して苦笑いを浮かべた。
(; )「あの……すみませんでした……」
気の抜けた態度ではあるが、こういう時、心の支えになるのは彼の様な性格の持ち主なのかも知れない。
荒巻は脳裏でそう考えると共に、ヒッキーの講じた対策を万全のものにするべく、早急に行動を開始した。
.
- 360 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:05:30 ID:R2VAefvc0
-
――『八月二十四日 PM11:30』
.
- 361 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:06:49 ID:R2VAefvc0
-
――『東棟四階ロビー』
( ゚∋゚)「こちら東棟四階ロビー。現在須藤氏の雇ったボディガードに交じって行動している。
トラも同じく東棟一階エントランスで待機中。呼べば直ぐに動けるとは言ってるが、まだ全力で動ける体じゃない」
『了解した。クックルはそのまま行動を続けてくれ。それと、トラには元々頭数には入れていないと伝えておけ』
( ゚∋゚)「はいよ。切るぜ」
クックルは通信機器を胸のポケットに仕舞い、辺りの様子をぐるりと一瞥した。
何人もの黒服の男が辺りを徘徊し、蟻一匹の存在をも打ち消そうと殺気立っていた。
忙しなく連絡を取り合う者、仏頂面で通路を歩く者。
その誰もが使針者の事を知らず、未知の力の存在を知らず、この場所に居る。
滑稽だとクックルは思った。当事者だからこそ、彼はボディガード達の存在が馬鹿馬鹿しく思えてならなかった。
こいつらは何をやっているんだ。何の為に命を張って議長を守ろうとしているんだ。
どうせチンケなプライドとささやかな金の為だろうが、そんなのは下らない事だ。
もっと楽に大量の金を稼いでプライドを守る方法だってあるんだぞ。
クソ真面目に命を投げ捨てて、こいつらは一体何がしたいんだ?
( ゚∋゚)
(;‐∋‐)(……悪い癖、悪い癖だ……)
我に返ったクックルは思考をリセットさせ、気を取り直して任務に当たる。
自分の持ち場は東棟四階。彼は脳内で、それだけを繰り返した。
- 362 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:08:23 ID:R2VAefvc0
-
――『東棟七階』
男は所属も曖昧な部隊が自分達よりも優秀であると思えなかった。
しかもその部隊は上層階の警備を自分達に任せろと言い、男の上司もそれを承諾したのだ。
上が決めた事を下がとやかく言う権利も義理も無い。だが、今回だけは話が違う。何より、相手が違う。
自分の目でその部隊の実力を知り、間違いであると判断すれば上へ掛け合い警備体制を変更する。
これは独断行動だが、間違いを正す権利は自分にもある。男はそう思い、七階フロアへと足を運んだ。
(……気配は無し。それは当然の事……)
七階の通路は随所でフェンスが下りており、それによって一本の道が出来上がっていた。
男はその道に沿って歩いて行く。警戒は解かない。足音を極力消し、敵の存在を想定して行動する。
こうして人を誘導させている以上、この先に何かがあるのは間違いない。
待ち伏せ――あの部隊にそれが出来る程の人員は居ない。 数で対処しないとなれば、残るは一つ。
(……ブービートラップ)
.
- 363 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:09:20 ID:R2VAefvc0
-
しかし、男の警戒意識は杞憂に終わった。
道形に進んだ後、辿り着いたのはショーステージホール。
彼はそこまでの道中、何の妨害も受けずに来た。
今、男の目の前にあるのは両開きの扉。
そして、上の階に行く為にはこの先を経由しなければならない。
――何かがある。
男の積み上げてきた経験が告げる。
下手をすればここで死ぬ。この先の空間だけが、張り詰めている。
男は向かって右側の扉に手を当て、力を込めた――
「止せ」
――瞬間、後頭部に突き付けられた殺意。
その囁きを耳にした男は潔く手を引き、両手を上げて身を翻した。
殺意の持ち主を見て、男は納得した。
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- 364 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:10:05 ID:R2VAefvc0
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「……失礼した。お前達がどれ程の人間なのか、興味が湧いてな。こうして試しに来たんだが……」
( ∀ )「悪いがお前のヒーローごっこに付き合える程 こっちは気長じゃねぇ。
あれ以上手を動かしていた場合、俺は躊躇無くお前を殺していた」
「……」
( ∀ )「帰れ。そして二度と来るな。ここから上――いや、今日一日、この街全てが戦場になる。
須藤議長が我儘さえ言わなければ、お前らだってこんな場所に居なくて済んだんだがな……」
( ・∀・)「……ま、俺達には俺達の仕事がある。お前達はその邪魔さえしなければいい」
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- 365 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:11:18 ID:R2VAefvc0
-
男は何も言い返せなかった。
根本的に立場が違う。自分と奴で決定的な何かが違う。
経験や才能という次元では無かった。奴を見た瞬間から湧き出た嫌悪感が、それを確固たる事実とさせている。
人は球体。男はそう思い続けていた。
どんな人間も遠くから見れば丸く、逆に、どんどん拡大して見れば『角』がある。
『角』とは個性、人間性、思考、能力。その人間を個人足りうる存在として昇華させる為に必要不可欠なものである。
だが、この考え方は通用しない。モララーを見た瞬間、そう悟ったのだ。
人として大切な何かが欠けている。自分達とは『日常』が決定的に違う。
『異物』
(……俺は……一体、何を正そうとしていたんだ……?)
不意に、ごっそりと抜け落ちた現実感。
男は覚束ない足取りで来た道を戻り、自分の持ち場へと帰って行った。
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- 366 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:11:59 ID:R2VAefvc0
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- 367 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:12:47 ID:R2VAefvc0
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――『八月二十五日 AM00:00』
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- 368 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:14:20 ID:R2VAefvc0
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――『時計塔。地下最終階。サーチ・ルーム』
(´φω・`)「いよいよ日付も変わったか……さてと、こっちも急ごう」
劇場のスクリーン程のディスプレイには、都内ホテルの監視カメラの映像や、逐一入る定時報告の詳細が表示されていた。
ショボンはそれらを手元のコントロール・パネルで一気に片付けると、別の映像ファイルを表示させ、それを指さして言う。
(´φω・`)「いいか。俺達は現場に行けない代わりに、須藤議長の作り上げた『達磨崩し』の虚像を引っぺがす証拠を集めるんだ。
もし一連の『達磨崩し事件』が議会の自作自演だった場合、被害者が死亡する様子を捉えた監視カメラの映像はダミーだという事になる」
(´φω・`)「……そして、これが『本物』の映像だ。最初の被害者、友人と映画を見に行く学生二人の映像だ」
( ´∀`)「資料には既に目を通してありますモナ。今流れているのが『第一の事件』。しかし映像と被害者の友人の証言が食い違っているモナ。
映像の記録では、被害者はこの地下通路を通り終える事無く死亡している。しかし友人は『地下通路内で死んだ』と言う。
つまりこの友人は嘘をついており、その事実を議会が隠すよう強制した……」
(´φω・`)「そうだ。後は被害者の友人に身の安全を保障した上での事情聴取すれば、一件目の達磨崩しの虚像は消える」
(´φω・`)「更に言えば『第二の事件』。例の美術館での議員の自殺だ。こっちも粗方ウラは取れた。
その証拠を持って時間を掛ければ、おのずと虚像も晴れていくだろう……」
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- 369 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:15:59 ID:R2VAefvc0
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( ´∀`)「……残るは『第三の事件』。今回の事の発端となった『議長の暗殺予告』をして自殺した議員、そっちはどうなんですモナ?」
(´φω‐`)「……そう、問題は三つ目の事件。これは最早虚像とか言うレベルじゃない。
まるで本当に『達磨崩し』が居たと思えてしまうような巧妙なやり口だ。
俺もその虚像を取り払おうと街のデータバンクも調べてみたが、それが議会の仕業であるという確固たる情報は得られなかった」
(;´∀`)「……お手上げって事ですか?」
(´φω・`)「……いいや、逆だ。第一、第二の事件に比べ、この事件だけが余りにも完璧に隠蔽されている。
映像の書き換え、履歴の抹消、情報管制……どれも綺麗に仕上げてやがる」
( ´∀`)「……『第三の事件』が特異である事は分かりましたモナ。でも、それだって議会の仕業である事は間違い無いですモナ。
その証拠となるものは第一、第二、事件で十分得られているし、そう深く勘繰る必要は無いかと……」
(´φω・`)「この事件、俺には何か別の『悪意』が介在しているように思えてならないんだ。いや、確実に誰かが一枚噛んでいる。
そして俺はその『誰か』を見つけるつもりだ。……手伝ってくれるな?」
( ´∀`)「その為にモナが呼ばれたのですモナ」
モナーは微笑んで即答した。
(´φω・`)「……それじゃ、まずは前の二件と『第三の事件』の相違点を洗い、そこから考えうる可能性を虱潰しに消してくぞ。
時間のかかる作業だが、一刻も早く事件の真相を暴いてやろうじゃないか」
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- 370 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:17:38 ID:R2VAefvc0
-
二人はそれぞれ目の前にモニターに目を落とし、作業を開始した。
某国のデータバンクから議会議員の履歴を抽出し、事件との整合性を測る。
議員全員分の履歴を照合し終えるには数十分を要したが、怪しいと思われる矛盾項目は見つからなかった。
次に新都市に住む者が個々が持つIDカードの使用履歴から、一人一人の行動を予測し、同じく照合していく。
しかしこれも外れ。目ぼしい発見は一つも無い。
(´φω・`)(やはり須藤の所から見て行くのが賢明か……)
同様の手口で須藤の行動を照合していくと、事件の黒幕が彼である証拠はごまんと出てきた。
だがショボンの探している情報はもっと別、須藤とは志を別にする『何者か』の存在。
(´φω・`)(……ま、そう簡単には見つからないか)
(;´∀`)「ショボンさん!」
手を拱き、作業も捗らなくなってきた時、隣に座るモナーが大声を上げてショボンを呼んだ。
ショボンは咄嗟に席を飛び上がり、モナーが操作するモニターに視線を向ける。
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- 371 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:18:39 ID:R2VAefvc0
-
(´φω・`)「どうした!」
(;´∀`)「何者かが議会のデータファイルをコピーしてるモナ! オマケに、それを追ってまた『別の誰か』がデータを消し始めた!」
(;´φω・`)「なッ――! 早くそのファイルのバックアップを取るんだ!」
(;´∀`)「無理モナ! 外部からのコンタクトを遮断してる上、さっきハッキングして回収したデータの中にウイルスまで仕掛けてあった!
早く強制シャットダウンさせないと、こっちの地下施設の制御系統まで巻き込まれて消去される!」
(;´φω・`)「――分かった! 俺がココのシステムを停止させるから、お前は出来るだけデータファイルを回収してくれ!」
(;´∀`)「……ちょっ……! これはッ……!」
一人残されたモナーの叫びは、議会のデータファイルが完全に消去されると共に、虚構の中へと消え去った。
そしてただ一つ彼の脳裏に焼き付いたファイル名――『The Automatic Disord man』
(;´∀`)「全自動……錯乱システム……?」
.
- 372 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:19:21 ID:R2VAefvc0
-
――『八月二十五日 AM00:40』
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- 373 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:20:01 ID:R2VAefvc0
-
――『ホテル東棟。入口』
「失礼。現在このホテルは須藤氏が貸し切っており、部外者の方の立ち入りを禁止しております」
「……」
ホテルの入口を固めていた警備員が警告を促す。
しかし来訪者は口を開かず、そのままホテルの中へ入ろうとする。
「お待ち下さい」
その肩を力強く握り、警備員は来訪者の足を止める。
「これ以上は例え貴方と言えど――」
.
- 374 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:21:09 ID:R2VAefvc0
-
「――なんで……ッ!」
「は?」
(;・3・)「何で私に触れたんだァッ!」
.
- 375 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:21:54 ID:R2VAefvc0
-
歪な表情で自分を見返す議会議員、ボルジョア。
それに気圧された警備員は思わず手を離し、目の前の『異常』に足を竦ませた。
(; 3 )「ひゅっ……すぅ……」
ボルジョアの体が、ズレていく。
足首、膝、胴、首。
体の痙攣と共に、ゆっくりと、崩れていく。
.
- 376 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:22:45 ID:R2VAefvc0
-
(; 3 )「た、助けっ……」
達磨は救いを求めて手を伸ばす。
警備員は、その手を弾き飛ばした。
衝撃でバランスが崩れる。
そして――
.
- 377 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:24:23 ID:R2VAefvc0
-
「――あ゙あ゙あ゙あ゙ァァァァッ!!」
困惑と恐怖に染まった警備員の悲鳴は周囲の人間を呼び寄せる。
崩壊し、原形を留めぬボルジョアの肉体。
崩れた達磨は肉片として地に転がり、辺り一面に夥しく血を滲ませた。
そして、それを見た者達は総じて目の前の『現実』に足を竦ませる。
「一体何が起きた! 何でコイツが『達磨崩しに殺された』んだ!」
「いや、そもそもどうやって殺した!? どこから何をした!?」
「何で議員がここに!? 議会議員は全員自宅待機の筈じゃ無かったのか!」
「……捜せ! 捜すんだ! この近くに必ず奴が居る!」
「とにかく全員持ち場に戻るんだ! これの片付けは全部終わってから、今は自分の職務を全うしろ!」
.
- 378 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:25:04 ID:R2VAefvc0
-
(;=゚д゚)(……ついに出てきたか……達磨崩し……!)
一気に熱を帯びた現場の中、トラはその様子を冷静に観察していた。
ホテル内のエントランス。そこのソファーに腰掛け、トラは入口付近に目を遣る。
(=゚д゚)(……だが何だったんだ? ボルジョアのあの行動……。
何で警備員に助けを求める前にホテルに入ろうとしたんだ? 必死なら尚更、近くの人間に助けを求める筈だ)
(=゚д゚)(しかも、その助けを求めたのだって警備員が呼び止めてからだぞ?
……いや、警備員が呼び止めた後、ボルジョアは何て言った……?)
(=゚д゚)「……」
(;=゚д゚)「――まさか!」
.
- 379 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:25:45 ID:R2VAefvc0
-
尻餅をついた警備員を心配したのか、そこに彼の同僚の友人が駆け寄った。
友人は警備員に手を差し出すと、なるべく落ち着いた声にして言う。
「立てるか?」
「あ……ああ、大丈夫だ。しかし……目の前であんな死に方されるとな……」
「そうだな。グロいと言うか何と言うか、本当に人間の仕業なのかって疑っちまうよ」
「ほら、『手』を貸すよ」
「ああ、悪いな」
(;=゚д゚)「待て! そいつに触るな!」
.
- 380 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:27:18 ID:R2VAefvc0
-
「え」
突然の怒号に目を取られながらも、友人は彼の手を引っ張り上げた。
(;=゚д゚)「……クソッ!」
トラも急いで駆け出したが、遅かった。
引き上げた筈の警備員の手に、頭と下半身は繋がっていなかった。
二つ目の達磨が、崩れた。
.
- 381 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:28:15 ID:R2VAefvc0
-
――『ホテル最上階。一室』
/ ,' 3「既に二人も死んだ……。今、そっちの状況はどうなっておる」
『二人目の死人の同僚を移動させて、取り合えず今は車の中に閉じ込めておいた。
だけど警備員やボディガードは相当慌ててる……訳も分からず死人が増えたんだ、仕方無い……』
/ ,' 3「……お主の目で見た事、そこから推測出来る事を話してくれ」
『……『他人に触られたら死ぬ』っていう、一種の病気みたいなのが人に感染した。
俺もまだ情報不足で推測の域を出ないが、大方、達磨崩しの能力と見て間違い無いと思ってる。
拡大感染が無いのが不幸中の幸いだ……』
/ ,' 3「……確かボルジョアは何も言わずにホテルに入ろうとしたんだな? つまり、この中に目的があると言う事……」
/ ,' 3「……須藤議長を殺せと、達磨崩しに命令された可能性がある。そして恐らく……」
『……病人は複数人居るという事! つまり、ここに病人達が須藤を殺しに集まって来るのか!』
/ ,' 3「いいか、お主はその事を周囲の者に伝え、指揮官クラスへの伝達を要請しろ! 増援も可能な限り掻き集めろと言え!
そしてすぐに中心街へ周りの警備員達を連れて向かうのだ! この病気が一般人に広がる訳にはいかん!
病人――と敢えて呼ぶが、その者達の特定を急ぎ、早急に市民から隔離しろ!」
『了解!』
.
- 382 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:30:12 ID:R2VAefvc0
-
(;-_-)「荒巻さん! 早く! テレビ!」
始まろうとしていた。
/ ,' 3「テレビ……? 一体……」
(;-_-)「早く! 達磨崩しが全テレビ局をクラッキングした! 今どこのチャンネルの放送も――」
――『達磨崩し』という虚像を打ち払おうとする、少年の戦いが――
――『達磨崩し』という巨悪を捕まえようとする、彼らの戦いが――
.
- 383 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:30:56 ID:R2VAefvc0
-
―――――― 今 ――――――
.
- 384 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:31:36 ID:R2VAefvc0
-
『八月二十五日 AM01:05』
.
- 385 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:32:16 ID:R2VAefvc0
-
.
- 386 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:33:00 ID:R2VAefvc0
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..;.: ..,,:;:.,,;:;.:;.;.:;::,.:;:;.:;:;:;;;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
―――新都市の皆さん、こんばんは .. .,..::,:,:,,;:;::,,:;.:,,;:;:.:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
.,.,,....::;:;;.,:;:;;.,::;;:;;;;;;;;;;;;;;;
僕が、達磨崩しです―――..,,.::.:;:;;:.:;,;;:;;;;;;;;;;;;;;;
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.. . .. , .. .. .,,.. ..;:..,,.::;..,,;:.:;.,.;:,.:;,;;;;;;;;;;;;;;;;
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- 387 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:33:42 ID:R2VAefvc0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十四話「 虚像 ≪REPLICA≫ 」
―――――――――――――――
.
- 388 :名も無きAAのようです:2011/11/17(木) 22:39:25 ID:R2VAefvc0
- 〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) 「グーグル先生は偉大な御方です」
`ヽ_っ⌒/⌒c
にわか知識でハッキングとかクラッキングとか書きたくなかったのですが
使うと何か頭良さそうに見えるよね。付け焼刃のインテリには丁度良い言葉だよ!('(゚∀゚∩
場面の切り替えが多くて、そのせいで視点がギュルンギュルンしたのは正直反省している
そして後三話で上手くまとめると言ったな。あれは無理だ
次の投下も一週間後前後です
頑張ります。オナシャス
- 389 :名も無きAAのようです:2011/11/19(土) 04:19:04 ID:JFtdHPzQO
- 読み終わった
ヒッキーの能力はなんだったっけ?
身代わりの人影を作れるでOK?
- 390 :名も無きAAのようです:2011/11/19(土) 05:39:49 ID:proxl5Cc0
- >>389
お前は知りすぎた
- 391 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/11/20(日) 21:44:20 ID:cRZxD1rY0
- 諸事情で次の投下遅れます
ご了承下さい
- 392 :名も無きAAのようです:2011/11/21(月) 20:04:18 ID:bXiX2lwwO
- 隠れてたのに、ついに
総合の人に捕捉されたね
現行一覧に挙げられてたよ
- 393 :名も無きAAのようです:2011/12/08(木) 03:20:24 ID:kyggZPR.O
- 白組ガンバレ
紅組応援しなくてもよさそう
黒組………
個人部門で絵投票ゲットだぜ
- 394 : ◆yeyP4e7tEQ:2011/12/24(土) 15:03:17 ID:XSwTBlBU0
-
数少ない読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか。十四話投下後からのおよそ一ヶ月、見事にサボらせていただきました。
しかもそのサボった理由である紅白用の短編さえ書き上がらず、今も尚悪戦苦闘しております。というか半ば諦めています。
さてと話は変わりまして、実の所、私はある病に罹ってしまいました。スランプです。この一ヶ月間、私はゴールデン・スランパーでした。
今はもう現行書きたい症候群の方に罹り、ちょうど良い発破も掛けられたのでスランプは解消しております。そう、紅白短編は犠牲となったのだ
そして本題。次回の投下についてですが、これまた長い時間を頂く事になります
私自身、「本気で書く」だなんてのは間抜けで馬鹿らしく、今までの読者を見下げた言葉だとは思うのですが、それらの責任を全部持つ覚悟があれば使っていいと思っています
故に敢えて言おう。次回、本気で書くと。次で第一部を終わらせると。第二部からはVIPで投下してみたいと
以上でダルイ話は終わりです。今後とも当作を宜しくお願いします
>>393
せやな!
- 395 :名も無きAAのようです:2012/01/16(月) 17:12:07 ID:CCK.DQAY0
-
「広げた風呂敷をどうするか、方法は三種類ある。
畳むのと、ちぎるのと、あとは捨ててしまうのと」
という事を、とあるアニメ監督は言っています
近日中に投下します
達磨崩し編は、ブッちぎります(意味深)
- 396 :名も無きAAのようです:2012/02/27(月) 21:57:47 ID:wule8p/I0
- お待ちしております
- 397 :名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 11:09:15 ID:DMsld4nw0
- 待ってる
- 398 : ◆z09UquqmwE:2012/03/09(金) 23:47:55 ID:NMznVGoI0
- もうちょっとだけ待つんじゃよ
- 399 :名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 17:51:34 ID:QfdZh8CY0
- はーい
- 400 :名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 10:33:21 ID:zQcygYogO
- トリが変わってる
- 401 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/24(土) 03:58:42 ID:c5jo2ieE0
- 書けたよー\(^o^)/
ごめんねとしか言い様のない結末になったよー\(^o^)/
明日投下するよーごめんねー\(^o^)/
- 402 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:55:02 ID:OfS3fohc0
- 投下始めます
- 403 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:55:44 ID:OfS3fohc0
-
暗闇の中、吊り下げられた裸電球の下。そこには、椅子に体を固定された山崎渉の姿があった。
彼の目と口を塞ぐ布は、汗でぐっしょりと濡れ始めている。
音。
耳を傾ける程に希望が消えていく。
(::::::ν::)
達磨崩しがそこに居て、自分と同じ様な体勢の者に『ルール』を教えている。
音だけで分かってしまう。木の椅子が軋み、誰かが籠った叫びを上げている。
山崎は鼓動の高鳴りを抑えきれない。
その鼓動音に紛れ、足音が近づいてくる。
.
- 404 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:56:25 ID:OfS3fohc0
-
(::::::ν::)「……この映像は新都市のあらゆる場所で流れてる。だから今から俺の話す事は、全部お前達に向けられていると思っていい」
(::::::ν::)「これから『生きるか死ぬか』っつう大事な話をする。もし他人面決め込んで俺の話を聞かねぇって言うなら、そいつは真っ先に死ぬから覚悟しろ」
映像……という事は、どこかと繋がっている。
(;^^)(――つまり、助けが呼べるという事だ!)
そう勘付いた山崎は咄嗟に身を揺らし、自分の存在を懸命に誇示した。
しかし、それで何かが変わる訳ではない。ただ、山崎渉には確固たる意志があった。
新都市の為にも家族の為にも、自分の為にも彼は死ねない。
灰に埋もれたこの街を救い出す。それが彼の夢であり、共に誠実さの証明でもあった。
(::::::ν::)「……単刀直入に言う。俺は、『超能力者』だ」
(::::::ν::)「そして今度も俺はその力を使う。使って、あのクソ議長をブッ殺す。
だが……俺にも少なからず人情ってもんがある。これでも人を殺すのは好きじゃないんでな」
(::::::ν::)「……新都市を栄えさせた須藤が、たった一人で死ぬなんて惨めだとは思わねぇか?」
.
- 405 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:57:09 ID:OfS3fohc0
-
(::::::ν::)「……と、言う訳でな。お前ら新都市の住民も一緒に始末する事にした」
(::::::ν::)「今夜この街を『十の達磨』が徘徊する。そして、コイツらは問答無用でお前達を殺しに行く。
俺の力で『他人に触られたら死ぬ』っていう設定されてるからな。恨んでやるなよ」
(::::::ν::)「更にヒントを出してやろう。この『十の達磨』に『触った者』はペナルティとして次の達磨役をやってもらう。
達磨としての設定は全部引き継ぎ。下手に手を出せば感染しちまうから気を付けな」
(::::::ν::)「次だ。心優しい俺は大量虐殺の記念に、お前達に『現実』を見せてやろうと思う」
達磨崩しはそう言うと、山崎の口と視界を開放し、彼の体を縛る荒縄を順に解き始めた。
山崎にはその真意が分からなかった。探ろうとも思わなかった。
あと一本。
体と椅子を結び付ける荒縄は、残り一本となった。
.
- 406 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:58:04 ID:OfS3fohc0
-
―――――――――――――――
彼らは時の階段を上るようです。
第十五話「 残像≪FICTION≫ 」
―――――――――――――――
.
- 407 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:59:04 ID:OfS3fohc0
-
――『ホテル。最上階の一室』
/ ,' 3 「さてと。困ったもんじゃな」
(-_-)「……あんまり悠長にはしてられない。さっさと議長を別所に移さないと。
居場所がバレてる以上、長居は無用だよ」
/ ,' 3「ヒッキー。お前はクックルとブーンと合流し、議長を連れて時計塔に戻れ」
(-_-)「荒巻さんは?」
/ ,' 3 「ワシは少し『遠回り』して合流する。気に掛けるな」
(-_-)「……分かった。それじゃあ先に行ってるよ」
ヒッキーは手早く機材を片付け部屋を出た。
一方、一人残された荒巻は、このホテルの上空に浮遊する『敵』を冷静に見定めていた。
/ ,' 3 (こりゃあ……遠回りからそのままコースアウトかもな……)
.
- 408 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 04:59:50 ID:OfS3fohc0
-
/ ,' 3 (タイミングが良すぎる……しかし足止めにしては中途半端。足止めならヒッキーを逃がす訳が無い……)
/ ,' 3 (どの道、戦う事には変わりないか)
/ ,' 3 (敵は空で戦うつもりか。【右手】の防御が十分機能すればよいが……)
/ ,' 3 「……さて、と」
ベランダに出た荒巻はフェンスの淵に立ち上がり、そこからフッと飛び降りた。
次いで 【懺悔の右手】 を発動。巨大な掌が出現し、荒巻はそこに着地する。
/ ,' 3 (あいつか……)
夜空を見上げた荒巻の視界に敵が映った。黒のコートを身に纏うその敵は、遥か上空。
荒巻は掌に指示を出し、ゆっくりと上昇。
そして、二人は対峙する。
.
- 409 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:00:31 ID:OfS3fohc0
-
ノル川 ー゚川 「……こんばんは」
/ ,' 3 「お前か? さっきからワシにバンバン敵意を飛ばして来とるのは」
ノル川 ー゚川 「良い趣味してるでしょう?」
/ ,' 3 「抜かせ、このクソガキが」
/ ,' 3「……大事な仕事を抜けてきた。そのせいで若干イラついとる……どこまで『手加減』出来るか知らんぞ」
ノル川 ー゚川 「手加減するのはお互い様……どうか、お手柔らかに」
/ ,' 3 「むぅ……まさかとは思っておったが、お主、時針じゃな?」
ノル川 ー゚川 「 やってみれば 」
/ ,' 3「……分かるってか。気に入らんな、そういう態度は」
.
- 410 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:01:17 ID:OfS3fohc0
-
ノル川 ー゚川 「まだ何か言い残す事は有りますか?」
/ ,' 3 「ワシは遺言を言った覚えは無いぞ。お前こそ今際の際のセリフでも考えとけ……クソが」
ノル川 ー 川 (このクソジジイ……好き放題言いやがって……)
/ 3 (インテリ気取りのクソガキが……面白くもねぇセリフばっか並べやがって……)
ノル川 −゚川 「前口上はもういい……」
/ 。' 3「……さっさと、始めるぞ……!」
その瞬間、宙で互いを睨み合っていた二人の姿は、眩い閃光となって夜空を駆け巡った。
.
- 411 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:01:58 ID:OfS3fohc0
-
/ 3( 【道化の左手】――)
/ 。' 3「――うおらァッ!」
先に仕掛けたのは荒巻。彼は左の拳を能力の発動と共に打ち出す。
その衝撃は巨大な掌となり、悠々とコートを靡かせるレノへと迫っていった。
ノル川 −゚川 (……これは『回避』だ)
咄嗟の判断で夜空を蹴り上げ上空に飛び上がるレノ。
【左手】の攻撃を眼下に避けると、今度は視線を荒巻に向ける。
荒巻は既に身構え、次の【左手】を打ち出そうとしていた。
真っ向勝負。レノも片手を前に出し、能力を発動していく。
ノル川 ー゚川 「まずは一撃……!」
/ 3「次は外さん……!」
ノル川 ー 川 「――【ダイバー・スネーク】――」
/ 。 3「――【道化の左手】――」
相手の命をもぎ取ろうと突き出された二人の掌。
張り詰めた空気が、次の一瞬で砕け散ろうとしていた。
.
- 412 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:02:38 ID:OfS3fohc0
-
ノル川 ー゚川 (……油断した)
交差する二人の攻撃。荒巻は【右手】の自動防御で事無きを得たが、レノは【左手】に右肩を抉り取られていた。
更には【左手】の追撃がレノを襲う。体勢を整える暇など無く、レノはじわじわと詰められていく。
防御を掻い潜り、迫る【左手】。
ノル川; ー゚川 「うおっと!」
瞬間、レノは大きく身を仰け反らせ、空中浮遊用の能力を解除した。
すると彼の体は重力に従って落下を始める。【左手】もそれを追うが、徐々に加速する落下速度には追いつけない。
/ ,' 3 (ったく。そのまま落ちて死なんかなぁ……)
荒巻も【右手】を飛び降り追撃に向かう。
【道化の左手】、【懺悔の右手】、そして荒巻。
三方向から迫る攻撃に対し、レノは既に対応策を見つけていた。
ノル川 ー゚川 ( 流石は時針、と言った所だ……本気で無いにしろ、やはり人の殺し方は知っている…… )
ノル川 ー゚川 ( ……時間稼ぎなら現状で十分だが、生憎私も痛いのは嫌なんでね……)
ノル川 ー゚川 ( ……【ダイバー・スネーク】。私の『右腕』を『捕食』しろ )
.
- 413 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:03:18 ID:OfS3fohc0
-
レノの呼び掛けに応えた【ダイバー・スネーク】が彼の身を這い、力無くぶらさがる右腕に躊躇無く喰らい付く。
指、掌、腕全体。能力発動時は小指程度だった【ダイバ・スネーク】の体は、『捕食』するにつれて肥大化。
具現化型能力 【ダイバー・スネーク】 。
その全長は、最終的には2メートルを超えた。
≪――どうした。今日はやけに晩飯が多いが≫
ノル川 ー゚川 (それは腕を不能にされた私への皮肉か?)
≪……敵はあのジジイだな。今すぐ絞め殺してやろう≫
ノル川 ー゚川 (いや……今回は時間稼ぎが目的。故に殺しは無しだ……)
≪ 了解した。行ってくる≫
【ダイバー・スネーク】で落下の衝撃を緩和させ、ビルの屋上に着地したレノ。
彼はすぐさま【ダイバー・スネーク】が取り付く左腕を空中の荒巻に向けた。
ノル川 ー 川 「ジジイ。この『呪い』は少々タチが悪いぞ……!」
.
- 414 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:04:00 ID:OfS3fohc0
-
――『新都市西方。住宅地』
( ´_ゝ`)「……」
( ・∀・)「……どうした?」
( ´_ゝ`)「いや別に。何でも無い」
( ・∀・)「……んじゃ行くぞ」
先の放送があってから、アスキーの面々は三つに分かれて行動を開始した。
ヒッキー達は議長を護衛。トラはドクオと合流の後、『十の達磨』の捕獲に向かう。
そして兄者、モララーのコンビは、達磨崩し本人を探し出そうと新都市中を探り回っていた。
しかし新都市の中心街、オフィス街と順に回ってはきたが、達磨崩し――巣立入早の姿は一瞬さえ見られなかった。
こうして彼らは最後の望みとして、西方の住宅地にある巣立入早の自宅へと向かっているのであった。
.
- 415 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:04:41 ID:OfS3fohc0
-
――『巣立家』
人の気配は無く、また最近まで人が居た形跡も無い。ここにも達磨崩しは居ない。
モララーは軽く家の中を見て回ると、すぐに次の心当たりへ向かおうと玄関に戻った。
( ・∀・)「お、何か見つけたか?」
( ´_ゝ`)「何も無かった」
しばらくして兄者が戻って来る。
しかしその顔はどこか警戒の色を見せており、不思議に思ったモララーは兄者に質問した。
( ・∀・)「どうした? やけに気を張ってるな」
( ´_ゝ`)「……気配だ。たわ言みたいな事を言うが……誰かが俺達を追って来ている」
( ・∀・)「確証は?」
( ´_ゝ`)「今はまだ無い。でも居る気がするんだよ、俺達のすぐ近くに、誰かが居る……」
( -∀-)「……そうか。お前が言うなら、多分そうなんだろう」
(;´_ゝ`)「おまっ! 信じるのか!?」
.
- 416 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:05:26 ID:OfS3fohc0
-
( ・∀・)「そりゃ信じるに決まってる。何せお前は『アンチ』だからな」
(;´_ゝ`)「アンチねぇ……役に立ってる感じは一切無いが……」
( ・∀・)「……俺は以前、お前みたいに勘の鋭いアンチと戦った事がある。
それ以来、アンチには特別な力があると思い始めた。そりゃ時針を倒す為の存在なんだし、あって当然みたいな所もあるが」
( ´_ゝ`)「フーン」
(;・∀・)「少しは興味示せって……」
( ´_ゝ`)「そんな事より早く次の場所に行こうぜ。俺らが達磨崩しを倒さないと何も始まらねぇ」
この時、落ち着いているように見えるだけで、兄実は兄者はかなり焦っていた。
それもその筈。現時点で達磨崩しに対抗出来るのは自分達だけだと言うのに、未だ達磨崩しの所在すら掴めていないのだ。
先の達磨崩しによる放送の後、ほとんどの住民は自宅等に避難したそうだが、それでも死者が出ている事に変わりは無い。
一手の遅れが人命に関わる。その責任感が、兄者の精神を際限無く圧迫していた。
(;´_ゝ`)「なぁ! モララー!」
( -∀-)「……」
一方モララーは焦燥感に駆られる事も無く、落ち着いた様子で思案していた。
.
- 417 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:06:27 ID:OfS3fohc0
-
モララーは兄者の呼び掛けに眉一つ動かさない。
それを見て、兄者も吐き掛けた言葉を飲み込んだ。
( -∀-)「……よし」
( ・∀・)「兄者、お前の言う『気配』の出所は今どこだ?」
( ´_ゝ`)「……今は外だ。でもさっきより遠くなった。それが……?」
( ・∀・)「次。そいつの居る方角は?」
( ´_ゝ`)「時計塔から見て南。時計塔と気配の主で、俺達が挟まれてる図になる」
( ・∀・)「……お前はそのまま気配の元に集中しろ」
(;´_ゝ`)「な、なぁ……。俺も『気がする』ってだけで、そんな気配とか分からないんだからな……?」
( ・∀・)「あ? んな事はどうでもいいんだよ。そもそも俺の考えた策は、俺達が最高にラッキーでないと意味がねぇんだ」
(;´_ゝ`)「そんな運任せで大丈夫なのか?」
( -∀-)「そりゃあ駄目だったら、俺達は何も出来ずに人を見殺すだけだ」
( ・∀・)「それに考えてもみろ。今の今までアンラッキーだった俺たちなら、
もしかすれば最高のラッキーが転がり込んでくるかも知れないぜ?」
.
- 418 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:07:07 ID:OfS3fohc0
-
(;´_ゝ`)「モララー……お前意外にギャンブラーだったのか。もっと理詰めで考える奴だと思ってたのに」
( ・∀・)「今も昔も俺は理詰めだぞ。多少の運も絡んだ方が、心に余裕を持てるってだけだ」
( ・∀・)「……いいか。外に出たら時計塔に向かって移動するぞ」
( ´_ゝ`)「つまり……帰る、って事か?」
( ・∀・)「腑抜けるな。俺達が『追い詰める』んだよ」
そう言うとモララーは靴を履き、玄関扉を押し開けた。
(;´_ゝ`)(……気持ちわりぃな)
その時、開いた扉の隙間から、夜風に紛れて『気配』が流れ込んでいた。
そして兄者は察知する。相容れない、その異物の存在に――
.
- 419 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:07:48 ID:OfS3fohc0
-
新都市から音は消え去り、残ったのは屋内の光と、極少数の異端者のみだった。
足並み揃えて時計塔へと歩き続ける兄者とモララー。
二人の間に言葉は無い。二人は、沈黙の中に身を隠していた。
(;´_ゝ`)(……居る)
何者かが自分達を追っている。しかし、足音も、姿形も何もない。
感覚のみの存在が、彼らの背後で渦巻いている。
(;´_ゝ`)「……」
( ・∀・)(どうやら来たみたいだな)
兄者の顔色を見て、より一層周囲への警戒を強めるモララー。
既に時計塔は目と鼻の先。
頂上からは灯りが漏れており、そこには、確実に誰かが居た。
.
- 420 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:08:29 ID:OfS3fohc0
-
( -∀-)(……呆気無いもんだ)
モララーは不意に足を止め、踵を返して大きく息を吐いた。
( ・∀・)「――さて、出てきてもらおうか。誰かは知らないが、な……」
( ・∀・)「……ま、動ける訳ねぇか」
( ・∀・)「行くぞ兄者」
(;´_ゝ`)「え? お、おう……」
モララーの言うがまま、彼の後ろに付いて行く兄者。
一切事態が飲み込めない兄者は、ただ茫然とするしか無かった。
.
- 421 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:09:25 ID:OfS3fohc0
-
――『時計塔。頂上』
(´φω・`)「……」
(-_-)「……」
(´φω-`)「……達磨崩しは、殺したそうだ」
(-_-)「……本人が死んだ以上、仕事は終わりだね。
事故処理は警察に任せて、僕らも議長の所に行こう」
(´φω・`)「いや、そっちはヒッキーに任せる。俺は……少し休みたい」
(-_-)「……事件は終わった。それに間違いは無い」
(-_-)「じゃ、また」
,
- 422 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:10:05 ID:OfS3fohc0
-
(´φω・`)(……終わった、か。ヒッキーも良い性格してるよな、全く……)
――達磨崩し事件は、まだ何も終わっていない。
モララーが隠している秘密は?
達磨崩しの、本当の能力は?
荒巻と交戦したという男の正体は?
分からず仕舞いの事が多すぎる。
これでは本当に解決したのかさえ疑わしい。
ショボンは脳裏に残った疑問を順に考えていくが、どれも情報が足らず、また、それらに関連があるのかも分からない。
辛うじて推測で分かるのは、荒巻と交戦した男が何かを知っている、という事だけだった。
考えれば考えるだけ、彼の疑問は積み重なるばかりだった。
.
- 423 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:10:46 ID:OfS3fohc0
-
(´φω-`)(……達磨崩しは死んだ。事件は解決。それでいいんだ……)
それ以上の結末は、ショボンには考え付かなかった。
彼には先を考える事が無為で、余りにも悠長な事に思えてしまったのだ。
確かに考え続ければ点は線となり、疑問も全て解決するだろう。
しかし、それを他者に伝えるには、時間が無い上に証拠も無い。
考えるだけ無駄。続けるだけ無駄。
彼の判断は、そういう事だった。
後日、秘書と議長の死体が発見された。
両者とも、拳銃で頭を一発撃たれていたらしい。
どちらがどちらを殺したのか。
その一件は、既に彼らアスキーの管轄では無かった。
.
- 424 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 05:16:49 ID:OfS3fohc0
- 今回の投下を終わります。見所は>>422と>>423です。
やる気の冬眠もそろそろ終わってくれると思います
続きは一か月以内に書く。テコ入れ頑張る
- 425 :名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 07:52:01 ID:ktn5yjxc0
- おかえりなさい、待ってましたよ。
- 426 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/26(月) 09:56:22 ID:OfS3fohc0
- >>425
ありがとうございます
- 427 :名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 14:50:34 ID:3unKAMyQO
- 見所には感動した
伏線の回収の巧みさはさすがだった
次回は事件解決、議長死亡の謎を解きあかしてほしい
まあ、病気が快方へ向かってるようで何よりだ
- 428 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/27(火) 05:25:54 ID:T.gMQgc60
- >>427
ありがとうございます
- 429 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/27(火) 05:34:15 ID:T.gMQgc60
- ここに暇潰し用の謎を一つ置いておきます
これを解けたらスペシャルプレゼントが貰えるかもNE!
- 430 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/27(火) 05:34:57 ID:T.gMQgc60
-
(;^ω^)「あっつ……死ぬほど暑いお……」
('A`)「内藤さん。死体の前でそんな事、言うもんじゃありませんよ」
(;^ω^)「まぁ、そりゃそうだけど……」
('A`)「この倉庫、窓が無いから空気は籠ってるし、夏場のせいで日差しは最強クラス。
これはもう仕方無いですよ。何ならエアコン点けますか?」
(;^ω^)「エアコン? 明かりも点かないのに、そんな物があるのかお?」
('A`)「食品保存用の、それも零度以下まで下がる奴があります。
明かりが点かないのは蛍光灯が外されているだけで、電気自体は通っているようです」
二人の刑事は白骨化した死体を前に、そんな呑気な事を言い合っていた。
( ^ω^)「それで、被害者の死因は?」
('A`)「自殺なら転落死、殺人なら撲殺です」
( ^ω^)「撲殺……かなりボコボコにされてるな。
頭蓋骨には大きなヒビが入ってるし、指も数本折れてる」
('A`)「携帯電話などの所持品も、多くの物は割れていたようです」
.
- 431 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/27(火) 05:35:38 ID:T.gMQgc60
-
( ^ω^)「確か、死後一カ月程度だったおね?」
('A`)「はい。服装が夏のものですし、被害者が行方不明になったのも丁度一カ月前です」
_,
( ^ω^)「……この一カ月間、誰もこの死体の存在に気付かなかったのかお?」
('A`)「ええ。この倉庫の持ち主である会社が潰れてしまい、もう取り壊す寸前だったそうです」
( ^ω^)「で、解体業者が壊しに来たら、白骨死体がありました、と……」
中型飛行機なら楽に格納出来そうな巨大な倉庫の中を、内藤刑事はゆっくりと見回した。
解体寸前だった事から、倉庫内は空っぽの状態だ。
残っている物は、床に敷かれたゴム製のシートと、入口を塞いでいた二つのドラム缶だけ。ドラム缶の中には廃油が入っていた。
.
- 432 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/27(火) 05:36:19 ID:T.gMQgc60
-
('A`)「この一件、自殺ならば説明がつきます。
倉庫に入って鍵を閉め、壁の鉄格子を昇り、飛び降りる」
( ^ω^)「自殺……確かに自殺ならそうだお。だけど、遺書が無いお。
遺書無しの突発的な自殺にしては、随分と冷静に入口を固めているお」
_,
( ^ω^)「それに、この扉の閉め方も妙だ」
('A`)「……確かに。死ぬだけなら、こんな廃油入りの重たいドラム缶――それを二つも動かす必要は無い。
扉のノブを鎖と針金で縛る必要も無い……自殺にしては、どこか変ですね」
_,
( ^ω^)「自殺にみせかけた他殺……だが、この巨大倉庫は密室だ。
殺すまでは出来る、しかし、犯人はどこから脱出したんだお?」
('A`)「案外、搬出物に紛れてたり……」
(*^ω^)「それだ! 犯人は倉庫の食べ物と一緒に逃げ出したんだお!」
(;'A`)「え? いやいや、冗談ですよ」
( ^ω^)「そんなん分かってる。真面目にやれ、真面目に」
.
- 433 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/27(火) 05:37:01 ID:T.gMQgc60
-
(;'A`)「やっぱ、自殺なんじゃないですかねぇ……」
その時、二人の頭上から女性の声が降って来た。
『VIP署の内藤警部。いらっしゃいましたら、事務所までお越し下さい。署からお電話が入っています』
それは、倉庫の奥に取り付けられたスピーカーからだった。
('A`)「……あ、この倉庫、携帯の電波が届かないんですね」
携帯電話を出しながらそう言った部下の言葉に、内藤警部はポンと手を叩いた。
( ^ω^)「これ、他殺だお」
.
- 434 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:39:57 ID:3x5nW2Yo0
- 没ネタ連日投下ワンチャンあるで!
何日続くかは不明ですが、没ネタと打ち切りネタを毎日投下していこうと思う
これを機に冬眠から完全に目覚められると良いですね(他人事)
- 435 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:41:06 ID:3x5nW2Yo0
-
△
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
ξ;゚⊿゚)ξ「……何だこれ……」
(;'A`)「知るかよ……」
.
- 436 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:41:50 ID:3x5nW2Yo0
-
!?
△
( ̄( ;゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ξ;゚⊿゚)ξ「こっちに気付いた……」
┏┣┛┗┻╋┃┃┛┫┫!
△
( ̄( ;゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(;'A`)「謎の言語を喋りだした……」
.
- 437 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:42:31 ID:3x5nW2Yo0
-
プルプル・・・
△
( ̄( ;゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(;'A`)「怖がってるのか?」
ξ;゚⊿゚)ξノシ「あーよしよし。怖くないぞー」
_ _ _
╋ ╋ ╋┓゛ ╋ ┃
△
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
ξ゚⊿゚)ξ「?」
('A`;)(コイツ……今間違い無く『チチが無い』って言ったぞ……)
.
- 438 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:43:11 ID:3x5nW2Yo0
-
__
 ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
-=ニニニニ=-
♪ ∧,_∧ _,,-''"
( ´・ω・) )) ♪-''"; ;,
(( ( つ ヽ_,,-''"'; ', :' ;; ;,'
♪ 〉 とノ'", ;,; ' ; ;; ': ,'
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' ┼ヽ ヽ/〝 レ |
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :' d⌒) (__ __ノ
.
- 439 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:43:52 ID:3x5nW2Yo0
-
そんなこんなで謎の生命体を捕獲したツンどドクオは、
半ば面倒くさがりながらも、この謎の生命体を暮らしていく事を決めた。
当面、ドクオのアパートとツンの実家で交互に暮らす事とし、
もうとにかくドクオにアパートで暮らしている。
.
- 440 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:44:32 ID:3x5nW2Yo0
-
△
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)φ.......(目は基本的に見開いている、っと……)
('A`)φ......(帽子っぽいけど被れない。海の生き物っぽいけど陸地で生活可能……)
△ フワフワ
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
彡 彡
('A`)φ.....(謎の飛行機能を有している、っと)
.
- 441 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:45:13 ID:3x5nW2Yo0
-
('A`)(そうだなぁ……)
('A`)(浮いてるし、形からしてUFOっぽいんだよなぁ……)
△ ブォォォォォンン!!
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
彡彡|| ||ミミミ
('A`)(でもゴミ吸い取ってるし……これダイソンの新型掃除機なんじゃね?)
.
- 442 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:45:54 ID:3x5nW2Yo0
-
┣ ┃┃ ┓ ┓
△  ̄
( ̄( ゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)(そして相変わらずの謎言語……)
('A`)(こないだの『チチが無い』は聞き取れたんだけどなぁ……)
┣ ┃┃ ┓ ┓
△  ̄
( ̄( ゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「あー。そういえばまだ名前決めて無かったな」
('A`)「……」
('∀`)「よろしくな! ゲルルン!」
.
- 443 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:46:35 ID:3x5nW2Yo0
-
∩゚∀゚)') おわるよ!
) /
(_ノ_ノ
彡
.
_,,..-―'"⌒"〜 ̄"〜⌒゙゙"'''ョ
゙〜,,,....-=-‐√"゙゙T"〜 ̄Y"゙=ミ
糸冬
────────
.
- 444 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:47:15 ID:3x5nW2Yo0
-
『ツンの実家』
□ ━┣┣┃┗╋╋┻┛
△
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
ξ゚⊿゚)ξ「ちゃっと観察日記持ってきたのね。偉い偉い」
_ _ _
╋ ╋ ╋┓゛ ╋ ┃
△
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
ξ;゚⊿゚)ξ「まぁ何言ってるかは分からないけど……」
.
- 445 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:47:56 ID:3x5nW2Yo0
-
ξ゚⊿゚)ξ「んー。まだご飯については分かってないか……」
┣ ┃┃ ┓ ┓
△  ̄
( ̄( ゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ピーンポピーン ピーンピーンポーン
ξ゚⊿゚)ξ「む。この腹立たしいチャイムの鳴らし方は……」
lw´‐ _‐ノv「私だ」 ガチャ
ξ゚⊿゚)ξ「お前以外に考えられなかった」
.
- 446 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:48:36 ID:3x5nW2Yo0
-
lw´‐ _‐ノv「で、何だその面白生物は。ダイソンの新型掃除機か」
ξ゚⊿゚)ξ「何って……謎の生命体ゲルルンだけど……」
lw´‐ _‐ノv「……」
lw´‐ _‐ノv チラッ
_
┣゛╋
△  ̄
( ̄(゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄
lw´‐ _‐ノv「あ、ども」
ξ;゚⊿゚)ξ !?
.
- 447 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:49:17 ID:3x5nW2Yo0
-
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ? シューちゃんゲルルンの言ってる事分かるの?」
lw´‐ _‐ノv「┃┃┗┓┣┣┏┳」
┣ ┃┃ ┓ ┓
△  ̄
( ̄( ゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
lw´‐ _‐ノv「┃■╋┏」
ξ;゚⊿゚)ξ「喋れんの!?」
.
- 448 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:49:58 ID:3x5nW2Yo0
-
lw´‐ _‐ノv「……ツンちゃん」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、はい」
lw´‐ _‐ノv「ゲルルンの好物はトリュフだそうだ」
ξ゚⊿゚)ξ
lw´‐ _‐ノv
┣ ┃┃ ┓ ┓ !
△  ̄
( ̄( *゚ω゚) ̄)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
彡 彡
.
- 449 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:50:38 ID:3x5nW2Yo0
-
││┝┥┌──────────────────┴┐< お断りします
│││┝┥┌──────────────────┴┐\ / ̄ ̄ ̄ ̄
││││┝┥┌──────────────────┴┐< お断りします
│││││┝┥ おわり .[×]| \/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┤│││││┝━━━━━━━━━━━━━━━━━━| \カチ< お断りします
└┤│││││ ハ,,ハ, ヽゝカチ \/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
└┤││││ ( ゚ω゚ ) お断りします. | カチ < お断りします
└┤│││ / \ | カチ \ / ̄ ̄ ̄ ̄
└┤││ ((⊂ ) ノ\つ)) | カチ < お断りします
└┤│ (_⌒ヽ | カチ \____
└┤ ヽ ヘ } | カチ
│ ε≡Ξ ノノ `J | カチ
. └─────────────────――┘ カチ
.
- 450 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 08:52:43 ID:3x5nW2Yo0
-
仮タイトル:( ̄(゚ω゚) ̄)のようです
主な敗因:まだ続きが書けてない。
- 451 :名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 15:28:53 ID:f./5zMhMO
- こちとらただひたすら読むだけだから
なにかしら投下あるのはいいことだ(自己中)
殺人事件わからん、解決編早く書いて
- 452 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/28(水) 15:50:13 ID:3x5nW2Yo0
- >>451
1:('A`)「食品保存用の、それも 【 零 度 以 下 】 まで下がる奴があります。
明かりが点かないのは蛍光灯が外されているだけで、電気自体は通っているようです」
2:残っている物は、床に敷かれたゴム製のシート
3:それは、倉庫の奥に取り付けられたスピーカーからだった。
解決編は明日です(ゲス顔)
- 453 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:27:41 ID:YlKcaFlA0
- 解決編を書くと言ったな。あれは嘘だ
また没ネタを投下しておくよ
あと三日は没ネタが投下出来そうだよ
- 454 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:28:32 ID:YlKcaFlA0
-
内藤ホライゾンは観覧車の中で目覚めた。と、同時に観覧車が動き出し、ゴンドラが僅かに揺れた。
視線を窓に向けると、夕日は沈み切る直前だった。
「おはようございます」
スピーカーから聞こえてきたのは女性の声。
BGMは、サティの『ジムノぺディ』だった。
「チェックシートは、ご記入済みでしょうか」
( ^ω^)「おっ?」
「あと三十分程で下に到着します。それまでにご記入下さると、助かります」
( ^ω^)「……チェックシートって?」
「ご記入が終わるまで、一切の質問には答えられません」
( ^ω^)「……それ書いたら質問出来るのかお?」
「はい」
意外にも、それは即答だった。
.
- 455 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:29:12 ID:YlKcaFlA0
-
内藤がチェックシートを見つけるのに時間は掛からなかった。
彼は隣の席に手を伸ばすと、そこにあった黒い手帳を開き、中を確認した。
それは案の定チェックシートであり、最初の五ページは質問事項で埋まっていた。
しかし、いざ書き始めようとしても、辺りにペンらしき物は一つも見当たらない。
先の即答から沈黙を続けるアナウンスに向けて、内藤がその事を告げる。
( ^ω^)「ペンが無いお」
「すみません。どうやら置き忘れたようです」
_,
( ^ω^)「……」
「……では、私が口頭で質問しますので、それにお答え下さい。
多少、そちらのチェックシートとは違う質問をしますが、特に問題は有りません。冷静にお答え下さい」
.
- 456 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:29:52 ID:YlKcaFlA0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━
質問に答えるばかりで退屈だった内藤は、不意に「アナタは女性ですかお?」と質問した。
すると、またしてもアナウンスの人物は「女性です」と即答した。
以後同様のパターンを繰り返し、全て質問が終わった今では、内藤は彼女の情報を三つほど獲得していた。
アナウンスの人物は女性で、名前は『イル』。
この遊園地――ここが遊園地である事は、彼女が勝手に口走った事だ――で働いている従業員の一人だ。
彼女の趣味はオセロ。
最近は相手が居ないらしく、よく一人でオセロをやっているらしい。
後で相手をしよう、と内藤が言うと、彼女は少し声を裏返して「本当ですか?」とささやかに喜んでいた。
.
- 457 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:30:34 ID:YlKcaFlA0
-
内藤の乗るゴンドラは真っ暗で、窓からの景色にも一切の灯りが見えなかった。
電気が通って無いのか? とも考えたが、それでは観覧車が動ける訳が無い。
じゃあ、一体どうして灯りが点いていないのか――内藤は彼女に問い掛けた。
「ごめんなさい。電気は、あまり使えないのです」
(;^ω^)「遊園地なのに……」
「代わりと言っては何ですが、天井にランタンが吊るしてあります」
(;^ω^)「オイラ、ランタンの点け方なんて知らないお」
「大丈夫。LEDです」
.
- 458 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:31:15 ID:YlKcaFlA0
-
内藤は立ち上がってランタンのスイッチを押した。橙色の光が辺りを照らす。
立ったついでに遊園地内を見回してみたが、やはり、灯りが点いているのはここだけのようだった。
席に座り直し、天井のスピーカーを見上げる。
( ^ω^)「それじゃあ、いくつか質問があるお」
「お答えします」
( ^ω^)「ここはどこだお?」
「遊園地です」
( ^ω^)「もっと詳しく」
「……と、言いますと?」
(;^ω^)「……分かった。じゃあ、質問を変えるお」
.
- 459 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:31:55 ID:YlKcaFlA0
-
( ^ω^)「ここは、現実なのかお?」
「アナタにとって、ここは現実です」
( ^ω^)「それは、ここを現実としない者が存在している、という事で間違い無いお?」
「一部例外もあるようですが、概ねその通りです」
( ^ω^)「その者達は、オイラ達の居る世界を、どういう名前で呼んでいるお?」
「Two Dimensions。二次元。オンラインゲーム。
彼らには、私達はインターネット上の存在として認識されています」
(;‐ω‐)「……ここで目覚める以前の記憶が無いのは、そもそもオイラがネット上のデータだから……」
「その通りです」
(;^ω^)「……でも何故、ネット上のデータである筈のオイラが自我を持ってるんだお?」
「自我を持っている、とアナタが自覚しているからでしょう。自覚するという事は、個性を持つという事です。
個性があるという事は、アナタにとって、ここが現実であるという事です」
.
- 460 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:32:36 ID:YlKcaFlA0
-
(;^ω^)「そうかお……」
嘘だろ、とは言えなかった。
内藤は、この事態を肯定する自分の存在に気付いていた。
彼は先ほど目覚めた時、ここが何処なのか思い出せなかった。何故ここに居るのか分からなかった。
一切の過去を想起する事が出来なかった。すると彼は、すぐに『記憶喪失』という言葉を思いついた。
だが、イルの質問攻めを受けている時、内藤はある疑念に行き当たる。
記憶喪失にしては、自分は余りにも多くの情報を記憶していたのだ。
自分の名前、性格。好きな食べ物、嫌いな食べ物。趣味趣向から身長体重。
見ず知らずの相手に自己紹介が出来るほどの、十分な量の記憶。
イルからの質問は簡単なものばかりだったが、内藤はそれに全て即答。
記憶の偏り方がおかしい、と思った時には、彼は正解に辿り着いていた。
ここが『現実』ではないと、彼は直感したのだった。
.
- 461 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:33:17 ID:YlKcaFlA0
-
(;^ω^)「……イル」
「なんでしょう」
(;^ω^)「これから、オイラはどうすればいいんだお?」
弱気になった内藤がそう言うと、彼女は少し考え、
「その質問にはお答え出来ません」
と言った。
(;^ω^)「……」
「私には、確かにアナタの行くべき道を指し示すだけの知識があります。
ですが、アナタが今欲しているのは、行く道を教える立て看板では無いでしょう」
(;^ω^)「……」
「大丈夫。アナタは一人ではありません」
.
- 462 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:34:00 ID:YlKcaFlA0
-
「間もなく下に到着します」
イルのアナウンスを聞き、内藤は窓に視線を向けた。
外は見渡す限り真っ暗だったが、後一分もすれば、彼はゴンドラから降りなくてはならない。
ゴンドラを降りたら真っ先に彼女の所へ行こう、と内藤は考えた。
(;^ω^)「……君は何処に居るんだお? 降りたら会いに行くお!」
「……」
.
- 463 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:34:40 ID:YlKcaFlA0
-
「……座席の下にリュックがあります」
(;^ω^)「お?」
「それを背負って、ランタンを持って、ゴンドラを降りて下さい」
(;^ω^)「イル……」
「内藤さん、また会いに来て下さい。私は、ずっとここに居ます」
その言葉がどんな意味で彼女の口から出てきたのか、内藤には分からなかった。
ただ、彼女は寂しがっていた。その上、強がっている。
曖昧な感覚であったが、内藤は彼女の心を、そう理解した。
.
- 464 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:35:22 ID:YlKcaFlA0
-
(;^ω^)「……」
間も無くゴンドラが一周を終えようとしていた。
内藤はリュックを背負い、手にLEDランタンを持って身構えている。
ゴンドラが停止し、僅かに揺れた。
扉を開け、暗闇の中へと歩き出す。
「頑張って」
ゴンドラの中で、イルが小さく囁いた。
.
- 465 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:36:08 ID:YlKcaFlA0
-
━━━━━━━━━━━━━━
.
- 466 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:36:49 ID:YlKcaFlA0
-
こうして内藤は訳も分からないまま、誰とも話せないまま、夜を越えなくてはならなくった。
寂れた夜の遊園地を少し歩く。
するとコーヒーカップの遊具があったので、内藤はそこに荷物を置いて、一時的な基地とした。
(;^ω^)(……錆びてて動かないお)
コーヒーカップでは、遊べそうになかった。
.
- 467 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:37:40 ID:YlKcaFlA0
-
内藤は探索がてら、この遊園地内を見て回ろうと考えた。
そもそも彼は眠る気は無かったし、いち早く頭の中を整理したかった。
リュックの中身は既に確認してあった。
およそ二日分の食料と、LEDランタンの替えの電池。
暇潰し用のオセロと、サイコロが二つ。そして、この遊園地の地図。
(;^ω^)(なんと心許無い装備なんだお……)
しかし、あの間の抜けた彼女がこれを用意したとすれば、納得出来るリュックの中身だった。
内藤はペットボトルの水と地図を持つと、コーヒーカップを後にした。
.
- 468 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:38:31 ID:YlKcaFlA0
-
━━━━━━━━━━━━
内藤が最初に向かったのは、遊園地の中央にあるメリーゴーランドだった。
これもコーヒカップと同じで錆びていて、電気も多分、使えない。
メリーゴーランドでも、内藤は遊べそうになかった。
とりあえず馬に跨ると、彼は夜空を見上げた。
星があって、月があって、たまに雲がそれを隠す。
ゆっくりだが、時間は確実に過ぎているようだった。
( ^ω^)(ゲームの中だけど、空はやっぱり綺麗だお)
.
- 469 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:39:15 ID:YlKcaFlA0
-
朝になったら遊園地を出て、人を探そう、と内藤は決意した。
この状況を理解するより先に、内藤は一人ぼっちである事をどうにかしたかったのだ。
更にはイルの事も探さなくてはならない。彼女もきっと、内藤の事を待っている。
夜空へと向けていた視線を、観覧車へと移す。
月明かりに照らされた物言わぬ観覧車は、今にも壊れてしまいそうな宝箱に見えた。
.
- 470 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:39:56 ID:YlKcaFlA0
-
順に遊園地内の遊具を見て回り、それが終わった内藤は、コーヒーカップの所へと帰って来た。
朝までどうしよう、と考えた時、内藤はオセロの事を思い出した。
オセロは本来二人で遊ぶべきものだが、一人でやるのも案外面白いのかも知れない。
これがまた、面白かった。
ランタンに照らされながら、内藤はしばらくの間、オセロ盤に向かい続けた。
そうしている内に、内藤は『角は取られても大丈夫』と『外側は先に置いちゃ駄目』という事に気付いた。
(*^ω^)
ドヤ顔だった。
しかし、これをドヤ顔で教えられる相手が居ない事を思い出すと、内藤は肩を落として息を漏らした。
.
- 471 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:40:38 ID:YlKcaFlA0
-
もう随分長い間オセロをやっていたと思うが、それでも夜が明ける気配はまるで無かった。
仕方が無いので、内藤はオセロを片付けると素直に横になった。
欠伸をし、体を丸めて目を閉じる。
(;‐ω‐)(……寝れないお……)
しかし眠気は一向に湧き上がらず、内藤は焦り始めた。
今、この世界では、彼は誰よりも孤独だ。
その孤独を受け入れる事がどれだけ大変な事か、考えたくも無かった。
だから、早く眠ってしまいたかった。今にも孤独が自分を覆い尽くすのではないかと、不安でしょうがなかった。
.
- 472 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:41:18 ID:YlKcaFlA0
-
悶々としたまま夜が更けていくのは、内藤は我慢できなかった。
だから、遠くから小さな声が聞こえてきた時には、内藤は心底救われた気分になった。
内藤は体を起こし、辺りを見回した。
ランタンは点けなかった。もしもの事を考えたら、ランタンを点ける事は出来なかった。
(;^ω^)(まだ何か聞こえるお……)
耳を澄まして聞こえてきたのは、こんな声――
.
- 473 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/29(木) 05:43:08 ID:YlKcaFlA0
- 仮タイトル:( ^ω^)は一人ぼっちのようです
主な敗因:即興で書き始めてしまった事
- 474 :名も無きAAのようです:2012/03/29(木) 13:28:20 ID:ikmRec32O
- 今すぐ続きを書く作業に取り掛かるんだ!
- 475 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/30(金) 08:01:41 ID:ZqsWcJbs0
- こないだの解決編を投下します
一文字も書いてないので即興です。誤字脱字なんて知らん
- 476 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/30(金) 08:10:42 ID:ZqsWcJbs0
-
('A`)「他殺……ですか?」
( ^ω^)「厳密には、被害者を意図的な事故死に追い込んだ人物が居る、って事だお」
('A`)「その人物とは?」
( ^ω^)「そう慌てるな。一から説明してやるお」
( ^ω^)「犯人は、被害者に氷の階段を登らせたんだお。
この倉庫には零度以下まで下がるエアコンがある。氷を保管する事も可能だお」
('A`)「じゃあ、どうやって被害者をそこに? 氷の階段なんて、普通は登ろうなんて考えませんよ」
( ^ω^)「そう。だから氷にはゴムシートが掛けられていたんだお。ほら、そこの床にゴムシートがあるお?」
(;'A`)「……だとしても、わざわざ氷の階段を上る必要があったんですか?」
( ^ω^)「それがあるんだお」
.
- 477 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/30(金) 08:19:54 ID:ZqsWcJbs0
-
( ^ω^)「例えばドクオ、君が倉庫の前に居たとする。そこに、銃や包丁を持った男が現れて、君に襲い掛かって来る。
その時、もしも倉庫の扉が開いていたとしたら、君はどうする?」
(;'A`)「えっ、そりゃあ……倉庫の中に逃げ込みますけど……」
( ^ω^)「そして、倉庫の扉を鎖と針金で固定し、廃油入りのドラム缶で厳重に塞いだ」
(;'A`)「待って下さい! それじゃあ、被害者は何故氷の階段を上ったんですか?
倉庫の中に入った時点で安全の確保は出来てますし、何ならケータイで助けを呼ぶ事も――」
(;'A`)
(;'A`)「……倉庫の中に、ケータイの電波は届かない……」
( ^ω^)「助けを呼べない密室に飛び込んでしまった被害者は、当然慌ててしまうだろう。
なんせ外には自分を殺そうとする人物が居る訳だし、一晩あれば、扉だって犯人に開けられてしまうかも知れない」
.
- 478 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/30(金) 08:28:58 ID:ZqsWcJbs0
-
( ^ω^)「そこで、倉庫の奥から電話のベル音が聞こえてくるんだお」
('A`)「……それで被害者はゴムシートでカムフラージュされた氷の階段を上り、電話を探しに行って転落死した。
そのベル音が、スピーカーから流れてくる音だとも知らずに」
( ^ω^)「氷に穴を開けるのは簡単だお。犯人は、登り切った所に氷の落とし穴を用意してたんだお」
('A`)「じゃあ、犯人はこの会社の関係者で、その時期に氷を大量に搬入した奴ですね」
.
- 479 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/30(金) 08:31:03 ID:ZqsWcJbs0
- >>477の最後のセリフは
( ^ω^)「助けを呼べない密室に飛び込んでしまった被害者は、当然慌ててしまうだろう。
なんせ外には自分を殺そうとする人物が居る訳だし、一晩あれば、扉だって犯人に開けられてしまうかも知れない。
しかも倉庫は冷蔵庫の様に寒い。下手すれば凍え死ぬかもしれない」
に置き換えておいてNE!
- 480 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/30(金) 17:17:48 ID:ZqsWcJbs0
- 急にやる気湧いてきたので来週中に本編16話を書いて投下します
もちろん没ネタ投下も続けます。オナシャス!
- 481 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/03/31(土) 07:17:07 ID:PPARIb9A0
- 今日も元気に没ネタ投下
- 482 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 07:18:04 ID:PPARIb9A0
-
――いい加減、宇宙最強を決めようぜ。
遥か昔、その一言と共に始まりを告げた戦いがある。
名を『アルティメットファイターウォーズ』と言い、星々の名高い戦士が集う最終決戦の場である。
それも今度で98回目の開催となり、第98回UFW開催の知らせは、既に全宇宙へと広がっていた。
.
- 483 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 07:22:02 ID:PPARIb9A0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
不思議と腹は減っておらず、ジョルジュはその日の昼食を缶コーヒーだけで終わらせた。
休憩時間は二十分以上残っている。暇を持て余したジョルジュの足は、屋上へと向かっていた。
屋上の扉を開けると、冬の冷気に交じり、何者かの気配がジョルジュの足元へと流れ込む。
気配の正体は元より分かっていた。屋上で待ち構えていたのは、ジョルジュの上司である流石父者だった。
_
( ゚∀゚)「どうも。物騒な気配、出てますよ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「出るんだろう? UFWに」
_,
( ゚∀゚)「……その事、誰にも言ってない筈ですが」
彡⌒ミ
( ´,_ゝ`)「フフッ、分かるさ。なんせ一月前から目が違う。
子供みたいに輝く君の目には……確固たる『決意』が見える」
.
- 484 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 07:23:00 ID:PPARIb9A0
-
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「まぁいい。話を進めよう」
そう言うと、流石父者はスーツジャケットとネクタイを脱ぎ捨て、ワイシャツの袖を大きく捲り上げた。
続けて準備体操を始めた流石父者は、その傍ら、自身の四肢に取り付けたウェイトを取り外す。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「実は私の妻もUFWに出る予定でな。こうなった以上、君の命が少々危険になる」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「だから、今ここで私に倒される程度の奴には、そこらの病院で一年間眠っていてもらおうと思う訳だ」
_
( ゚∀゚)「……無駄死には未然に防ぐ、という事か」
彡⌒ミ
( ´,_ゝ`)「まぁぶっちゃけ、君と戦いたいだけなんだけどね」
.
- 485 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 07:23:59 ID:PPARIb9A0
-
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「さて、一応聞いておくが……UFWには何をしに行くんだ?」
_
( ゚∀゚)「俺より、強い奴に会いに行く」
彡⌒ミ
( ´,_ゝ`)「……その若さ、大事にしろよ」
ジョルジュが脱ぎ捨てたジャケットとネクタイは、強風に乗ってどこかへ吹き飛ばされてしまった。
僅かに雲が空を覆い、周囲が段々と薄暗くなる。やがて雨も降り始めた。
雨に濡れる二人の男。身構え、じっと始まりの瞬間を待つ。
戦う事を決意した者達に、最早言葉は不要だった。
そして、落雷の閃光が彼らの体を包み込む。
両者の拳が交わったのは、その直後の事だった。
.
- 486 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 07:24:39 ID:PPARIb9A0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アルティメットファイターのようです
第一話 『皇帝兎』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
- 487 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 07:27:18 ID:PPARIb9A0
-
仮タイトル:アルティメットファイターのようです
主な敗因:設定考えるの面倒になった。
頭の中で完結しちゃった。
- 488 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 13:26:27 ID:a4DERjKIO
- >>479
こんなトリック作者以外思いつかん!
- 489 :名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 16:58:34 ID:PPARIb9A0
- >>488
私もそう思います!
3分間推理クイズ
http://homepage3.nifty.com/mystery-quiz/tensin8.htm
これの第一章、「巨大倉庫の中の不自然な死体」を丸パクリした。
正直言ってすまんかった。悪気しか無かったけどお許しください!
- 490 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/03(火) 20:30:34 ID:BG0hbzVs0
- 没ネタをって釣りスレ立て、
「ぴょまいらwww釣られてやんのwwww」とドヤ顔でレスする筈だった>>1
しかし実際には一行足りず、PCからではエイプリルスレだという事が一見して分かってしまっていた。
とても恥ずかしかった。sage投下の上に惰性で続きを書いている現状よりも恥ずかしかった。
スレ削除も頼もうと思った。
しかし釣りスレを立ててしまった以上、後戻りや取り消しは恥を塗り重ねるだけである。
( ^ω^)「――そうだ。続きを書こう」
そう思った次の瞬間、>>1は謎の新現行を書き始めていた。
それは、このスレからの逃亡を意味していた――
.
- 491 :名も無きAAのようです:2012/04/03(火) 20:42:47 ID:BG0hbzVs0
-
――その筈が、逃亡するという選択肢は>>1の中には存在しなかった。
『彼らは時の階段を上るようです』というクソ略しにくいスレタイの癖に、この先の展開は大体決まっている。
だが完結まで書き続けるのは本当に面倒臭い。飽き性には辛すぎる所業だ。
飽きやすい。
そこで>>1が閃いたのは『ながら投下』という投下方式。
気が向いた時に、その時のノリで書き進める。
思い返せば、ながら投下は飽き性には最高の投下方式だったのだ。
( ^ω^)「……」
以後、このスレはながら投下となる。
それが、>>1にとっての最後の決断だった。
.
- 492 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:45:16 ID:VO9iq/Os0
- 開き直った>>1はながら投下を始めるようです
- 493 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:57:12 ID:VO9iq/Os0
-
達磨崩しの一件が終わると同時に、アスキーの仕事は事務仕事一色となった。
事件の事後処理には丸々一週間を費やし、未だ各方面への報告は済んでいない。
そんな膨大な後始末を余所に、ブーン達は某国行きの客船に乗り込もうとしていた。
( ^ω^)「兄者ー。もう行くおー」
(;´_ゝ`)「分かってるって!」
( ´_ゝ`)「……それじゃあ」
(´φω・`)「ああ、見送りが俺達だけで悪いな」
( ´_ゝ`)「いえ、二人が来てくれただけで十分です。
今まで世話ンなったって、他の皆にも言っといて下さい」
(´φω・`)「ヤバくなったらいつでも頼れよ、俺達を」
( ´_ゝ`)「……はい」
.
- 494 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:58:07 ID:VO9iq/Os0
-
別れを済ませた兄者が客船に乗り込むと、間もなくして出航の汽笛が響き渡る。
客船が無事に出航した事を確認したショボーンは、モララーに
『見送りは済ませた。俺達も新都市を発つ』
という文面のメールを送った。
(´φω・`)「……さてと」
(´φω・`)「これで仕事は全部終わり。俺達は晴れてアスキーから逃げ出せるって訳だ」
( ゚∋゚)「政府に乗っ取られたアスキーに用は無い、ってな」
(´φω・`)「ま、そういう事だ。俺達もさっさと国外逃亡と洒落込もうぜ」.
(*゚∋゚)「急がないと機密保持法と越権行為を理由に首を跳ね飛ばされちまうしな!」
(´φω^`)「その通りだ! 全く、嫌でも戦時中を思い出しちゃうよなぁ!」
.
- 495 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:58:48 ID:VO9iq/Os0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
時刻は正午を回ろうとしていた。
日が照っている。風は無い。コンクリートの焼けた匂いが微かにするばかりだった。
モララーは閑散とした墓地の一角で、見ず知らずの人間の墓に花を添えた。
それは過去の一件『達磨崩し事件』で達磨崩しとして殺された、巣立史郎の墓であった。
( ・∀・)「オートマチック・ディソードマン」
( ・∀・)「これが、達磨崩しの本当の名前だ」
.
- 496 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:00:19 ID:VO9iq/Os0
-
( ・∀・)「全自動錯乱システム……なんとも皮肉な名前じゃねぇか。
本来、市民の安全と平和を守るべき機関が自らの手で混乱を起こしていたんだぜ?」
( ・∀・)「笑えねぇ冗談だ」
( ^ν^)「全くだ」
( ‐∀‐)「……今回、死んだのは『三名』。議長とその秘書、そして達磨崩し。
その他の人間は『誰も死んでいない』という扱いになっている……」
( ・∀・)「更には議会のデータファイルにも何者かの手が掛かっている。
データのコピー、そしてデリート。これをやったのは、お前か?」
( ^ν^)「いいや、俺は何にも知らないね」
( ・∀・)「……そうだな。あの時、お前は死んだんだもんな」
.
- 497 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:01:01 ID:VO9iq/Os0
-
( ^ν^)「ただ、一つだけ言える事がある」
( ・∀・)
( ^ν^)「あの三人の友達が居なければ、俺は今頃死んでいただろうし、もっと多くの人を殺していた」
_,
( ・∀・)「……友達?」
( ^ν^)「アンタと、病弱な少女と、気弱な好青年」
(;・∀・)「ああ、そう……」
.
- 498 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:01:41 ID:VO9iq/Os0
-
( ・∀・)「それじゃあな」
( ^ν^)「いいんですか? 俺を捕まえに来たんじゃ……」
(;・∀・)「あー……実はな、俺もアスキー抜けるんだわ」
(;^ν^)「捕まえる必要が無くなった、って事か」
( ・∀・)「そう。だから、お前はお前で好きにやってくれ」
( ・∀・)「あんまりメールすんなよ」
.
- 499 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:02:45 ID:VO9iq/Os0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
(//‰ ゚)「――事実上の『解散』という事だな」
/ ,' 3「うむ」
(;=゚д゚)「……」
時計塔の頂上。事務仕事の合間を縫って、荒巻がアスキーの現状について説明をしていた。
テーブルの上には退職届が三通。それは、ショボーン、クックル、モララーのものだった。
/ ,' 3「知っての通り、我々アスキーは首相直轄の部隊だ。
故に、このような形での辞職を受理する事は出来ない」
/ ,' 3「下手をすれば法的措置により、彼らが我々の敵になる可能性もある」
(;=゚д゚)「……だから、そうなる前に『アスキーを解散する』と言う事ですか?」
/ ,' 3「その通りだ」
.
- 500 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:03:26 ID:VO9iq/Os0
-
(;=゚д゚)「そんな……急すぎますよ……」
(//‰ ゚)「元々、このアスキーという部隊は荒巻が作り上げたものだ。
それが近い内に政府の小間使いになってしまう以上……最早アスキーの存在価値は皆無だ」
/ ,' 3「情けない事だが、達磨崩し事件において我々アスキーは全くの役立たずだった。
そして、一連の責任を取れるのはワシしか居らん。この決定は、仕方のない事なのじゃ」
(;=゚д゚)「達磨崩しが議長を殺害したのに、何で俺達が火の粉を浴びる羽目になるんだ……!」
/ ,' 3「……納得しろとは言わん。頼む。我慢してくれ」
(//‰ ゚)「……それじゃあ、後は俺も自由にさせてもらうぞ」
(;=゚д゚)「……横堀さんもですか」
(//‰ -)「まぁな。それに、医者としても、もうこの土地に未練は無いんだ」
.
- 501 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:04:08 ID:VO9iq/Os0
-
(//‰ ゚)「……【リマスター】」
横堀が小さく呟くと、彼の体が機械から生身へと戻っていく。
実の所、トラは横堀が能力を解除した姿を知らない。トラは目の前で移り変わる横堀の姿に、視線を奪われていた。
(;=゚д゚)「……オンナ、っていうか女性だったんですね……」
ノパ−゚)「もし次に会った時、私のこの顔を覚えていたら一杯奢ってやろう」
ノパ−゚)「じゃ、また」
こうして机上の退職届は四通となり、アスキーに残ったのはトラだけになった。
一人立ち止まり、路頭に迷っている。ふとそんな事を思ってしまい、トラは焦燥感に苛まれる。
今更普通の生活に戻れるのか? 警官として、もう一度正義を全う出来るのか?
(;=-д-)(いや……俺は一度も正義を全う出来なかったじゃないか……)
.
- 502 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:04:50 ID:VO9iq/Os0
-
/ ,' 3「……のう、トラよ」
(=゚д゚)「……はい」
/ ,' 3「これが、ワシからお前に示せる最後の道じゃ」
荒巻は片手に退職届を、もう片手には某国からの異動要請書を持っていた。
.
- 503 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:11:16 ID:VO9iq/Os0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
兄者は船上のテラスから海を見渡していた。
僅かな揺れには慣れないが、海風というのは存外気持ちの良いものだった。
( ´_ゝ`)「そういえばさぁー」
部屋の中で荷物の整理をしているブーンとドクオに向けて、兄者が問い掛ける。
( ´_ゝ`)「何日くらいで某国だっけかー」
( ^ω^)「ええっと……一週間だお」
ガイドメモを一瞥し、ブーンが答える。
('A`)「いいや、それはユートピアに着くまでの日数だ。
某国に着くのは更に一週間後。つまり、今から二週間後って事だ」
( ´_ゝ`)「フーン」
.
- 504 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:17:21 ID:VO9iq/Os0
-
身を翻し、兄者はテラスから部屋に戻った。
荷物が床一面にぶちまけられているせいか、足の踏み場はほとんどない。
兄者はベッドに飛び移り、更に話を続けた。
( ´_ゝ`)「で、問題の資金の総額は?」
('A`)「通帳には五十万ある。こんだけあれば問題無いだろ」
( ^ω^)「それに手持ちも十万あるお! これは夢を買える額の金だお!」
そう言うと、ブーンはカバンの中から誇らしげに財布を取り出し、十万円を取って見せた。
しかし、兄者にはこれが大金だとは思えなかった。ドクオの言う五十万も大した額ではないと感じていた。
( ´_ゝ`)「……いや、多分、これじゃ足りないと思う」
その事を口にすると、ドクオとブーンは揃って口を噤んだ。
.
- 505 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:26:07 ID:VO9iq/Os0
-
('A`)「……そうか? ぶっちゃけ、この旅じゃ金に大した用は無いと思うんだが……」
( ^ω^)「ドクオの言う通りだお? 内藤ホライゾンを倒すまでの間なら、これだけあれば十分足りるお」
兄者の言葉に不安を覚えたのか、二人は荷物の整理を放ってベッドの上の兄者に視線を向けた。
兄者は胡坐をかいて二人に視線を返すと、両手の平を使って説明を始める。
( ´_ゝ`)「いいか? まず、内藤ホライゾンを倒す為には人手が足りないんだ。それも圧倒的にな。
内藤の『存在を認めさせる能力』ってのは、前にブーンが言ったように、自分を主人公に仕立て上げられる能力って事だ」
( ´_ゝ`)「そこで俺は考えた。俺が奴の能力を持っていたら、まず何をするか」
( ^ω^)「……一体何をするんだお?」
( ´_ゝ`)「どんな手を使ってでも、大量の使針者を味方に付ける。
最悪、もう内藤には多数の仲間が存在しているかも知れないしな」
('A`)「んで、それと資金不足に何の繋がりがあるんだ?」
兄者の話が本題からズレたのを察知し、ドクオが話を引き戻した。
.
- 506 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:32:40 ID:VO9iq/Os0
-
( ´_ゝ`)「現状、俺達に足りないのは味方だ。反面、内藤はほぼ無限に味方を作り出せる。
この不利な状況を打開する可能性を持っているのが――」
('A`)「――金、って事か」
( ^ω^)「……?」
ブーンを残して逸早く理解したドクオ。
彼は物思いに視線を落とすと、何かを思い出した様子で荷物の中から客船の地図を取り出した。
床に散らばった衣類をどかし、そこに地図を広げるドクオ。
ブーンも兄者も、広げられた地図に目を向けた。
('A`)「……あった!」
ドクオは地図上を指でなぞり、目的の所で指を静止させる。
( ´_ゝ`)「……ほう」
(*^ω^)「うっは! カジノだお!」
.
- 507 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:38:45 ID:VO9iq/Os0
-
('A`)「兄者が言いたい事は分かったぜ。要は、これから俺達が仲間を集めて行く過程でも金が要るって事だろ?」
( ´_ゝ`)「その通り。『金をくれたら仲間になってやる』っていう現金な奴が居るかも知れないからな。
それに、これから仲間の人数が増えていけば、どうしても生活費もかさんでいく」
( ^ω^)b「その資金不足をカジノで解消しようず! っていう事だお!」
('∀`)「……まぁ? 俺達、使針者ですし?」
( ´,_ゝ`)「動体視力とか最強ですし? スロットとかマジ余裕ですし?」
(*^ω^)b「使針者の特権を乱用して、金を荒稼ぎしてやるお!」
「よっしゃあ!」と揃えて声を上げると、三人は手持ちの十万を持って勢い良く部屋を飛び出した。
目指すは大人の社交場カジノ。使針者である彼らにとって、そこはまさに貯金箱であった。
.
- 508 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:45:40 ID:VO9iq/Os0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
( ´_ゝ`)「……」
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
具体的な結果を言うと、カジノは門前払いを食らった。
その時まで、彼らはカジノが未成年禁止である事を忘れていた。
カジノの入り口前で茫然と立ち尽くす三人。そこには、半ば絶望的な雰囲気が流れていた。
.
- 509 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:51:17 ID:VO9iq/Os0
-
( ´_ゝ`)「どうしてこうなった」
('A`)「俺にも分からない。ヤバい」
( ´_ゝ`)
(;´_ゝ`)「いやマジでどうすんだよ! 金が無いと色々と問題があるぞ!」
(;'A`)「ンな事言ったって仕方ねぇだろ! こうなりゃカジノで肥えた客を騙して金を……」
(;´_ゝ`)「更に駄目だっての!」
(# l v l)「うるせぇぞガキ共!」
不毛な怒号が飛び交う中、そこにカジノの従業員が割って入ってきた。
僅かに開いた扉からは、貯金箱同然のスロットマシーンが数多く見える。
( ;ω;)「頼むお……一回だけでいいからやらせて欲しいお……」
(# l v l)「未成年だから駄目だって言ってるだろ! いい加減にしろ!」
.
- 510 :名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:55:16 ID:VO9iq/Os0
-
< ぬああああああ!!
(l v l #)「ったく! 外も中も騒がしいったらありゃしねぇ!」
(# l v l)「いいかガキ共! 今から客を放り出すから、入口ン所からは退いてろよ!」
(# l v l)「じゃあな!」
それを最後に従業員は扉を締め切った。
(;'A`)「なぁ……これからどうするよ……」
(;´_ゝ`)「今考えてる……」
.
- 511 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 00:01:35 ID:Gjc/ZCkI0
-
< ぬあああああ!!
(;^ω^)「おっおっ。中の叫び声が近づいてきてるお……」
( ´_ゝ`)「んー……取り合えず部屋戻るか」
(;'A`)「だな。このままでも埒が明かねぇ」
その時、再びカジノの扉が開き、中から先ほどの従業員が顔を出した。
(# l v l)「テメーら退けって言っただろ!」
(;´_ゝ`)「あ、はい。すんません」
(l v l #)「はい! お客様! 退出の準備が出来ました!」
<止めろ! 私はまだ負けていないぞ!
従業員は迷惑な客を引っ張り出そうと腰を入れて踏ん張っていた。
一方、客の方も意地汚くも床にしがみ付き、ここから出まいと力んでいた。
兄者らには非常にシュールな光景に見えたのは言うまでも無い。
.
- 512 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 00:07:48 ID:Gjc/ZCkI0
-
/ / ( / ノ⌒)
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,ノ\___ノヽ /⌒⌒`ヽ/ / / /
「チクショー!」 /'''''' ''''''::::::\ _ \ / /
/(●), 、(●)、.| / \ ヽ' /
/ ; ,,ノ(、_, )ヽ、, ,;.::::| ./\__.\__ノ
| ` -=ニ=- ' .:::://
ヽ、_ `ニニ´ .::::ノ
//  ̄ ̄ ̄/ /
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(_/
間も無くして半泣きのオッサンがカジノから飛び出してきた。
すると従業員はさっきまでの態度から一変し、
(* l v l)「またお越し下さいませぇ〜」
という営業スマイルを見せ、もう一度カジノの扉を締め切った。
.
- 513 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 00:20:34 ID:Gjc/ZCkI0
- 【今日のまとめ】
書いた所⇒ >>493‐>>512
三行まとめ⇒ ・今までの伏線等を完全にブン投げた!
・新キャラ「ダディ・クール」を加えた船上カジノ編が始まった!
・ながら投下が気楽過ぎて書き溜めが辛い!
【あとがき】
もうどうにでもなれ! また明日も書きに来ます。
あと、最近気付いたけど現行リストに捕捉されていました(この事を教えてくれた読者さんのレスも発見しました)。
感動した。こんなスレを現行と認める住民の生温さと優しさと心強さに感動した。
反面、物凄く罪悪感が生まれた。これから頑張ろうと思った(小並感)
- 514 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 08:43:16 ID:W3cYRQsgO
- 逃亡しようと画策していたが
到底逃げ切れないと思い
逃亡を中止した所まで読んだ
- 515 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 15:28:25 ID:Gjc/ZCkI0
- >>514
そこまで読んで貰えれば十分です。
ありがとうございました
- 516 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 15:29:11 ID:Gjc/ZCkI0
-
カジノの追い出されたダディ・クールは三人の少年に前で床に倒れ込んでいた。
ダディ・クールは三十歳をとうに超えたオッサンだった。
ジーンズに紺の作業服という服装と、彼の顔にこびり付く青ひげが何よりの証拠だった。
ダディは年甲斐無く涙を流していた。それはカジノ内で彼が大負けした事を現象している。
少年達の視線はダディに集中しており、ダディも少年達の視線に気付き、すぐに体勢を整えた。
ダディは立ち上がって涙を拭うと、この状況に困惑し閉口する少年達を気遣って声を掛けた。
|(●), 、(●)、|「すまないね。変な所を見られてしまった」
ダディの一言を皮切りに、少年――ドクオが反応する。
(;'A`)「いえ……あの、大丈夫ですか?」
|(●), 、(●)、|「ああ、大丈夫だ。立ち直りは早い」
しかしダディの財布には目に見える金が存在していなかった。
ドクオへの返答は、そのまま自分へ向けた励ましの言葉でもあった。
.
- 517 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 15:35:54 ID:Gjc/ZCkI0
-
( ´_ゝ`)「そンじゃ、僕らはこれで」
Σ(^ω^;)「おっ!? 兄者、それじゃあ呆気無さ過ぎるお!」
(;´_ゝ`)「馬鹿! これ以上関わると面倒だろ!」
小声で声を交わすブーンと兄者の会話はダディ・クールにも聞こえていた。
彼は苦笑いを浮かべると、「じゃあね」とだけ言い残して少年達の前を後にした。
( ^ω^)「行っちゃったお」
( ´_ゝ`)「俺らも帰って作戦会議だ」
('A`)「……そうだな」
哀愁を漂わせながら離れて行くダディの背中を、ドクオはしばらくの間見つめていた。
.
- 518 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 15:42:32 ID:Gjc/ZCkI0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
部屋の扉がノックされる。
( ´_ゝ`)「俺が出てくる。順番飛ばすなよ」
(;'A`)「このタイミングで革命だとォ!?」
(*^ω^)「うっはwwww神手札に早変わりだおwwww」
トランプゲームに興じていた三人から、兄者が立ち上がって扉の方へと歩いて行った。
覗き穴から来訪者を確認すると、それは昼間、彼らをカジノから追い出した従業員だった。
兄者は渋々扉を開けて対応した。
( ´_ゝ`)「はい」
(* l v l)「ルームサービスでーす」
従業員は満面の笑みを帯びた猫なで声で言った。
(;´_ゝ`)「……仕事、大変そうっすね」
( l v l)「カジノの時との落差はすげーよ。本当に」
.
- 519 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 15:51:17 ID:Gjc/ZCkI0
-
ドクオの「革命返しじゃオルルァ!」という大声に続いて、ブーンの「また紙くずだおぉ!!」という悲鳴が響き渡った。
従業員と顔を合わせている兄者は、従業員の表情がみるみる内に変わっていく様子を見ていた。
(;´_ゝ`)「あー! ほら! お前ら晩飯だぞー! いい加減、黙れー!」
兄者は咄嗟にフォローに回る。
しかし、「晩飯!? ヒャッホオオオオウウ!」という叫び声を誘発しただけで、結果的には無意味だった。
(# l v l)「……後で両隣と上下の部屋行って、謝っとけよ?」
(;´_ゝ`)「はい。すんません」
威圧的な従業員の発言に兄者は恐縮し、壁際に体を寄せた。
夕食の乗せられたワゴンが室内へと押し入れられる。
その時の従業員の表情は、既にサービススマイルに変わっていたという。
.
- 520 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 15:59:01 ID:Gjc/ZCkI0
-
━━━━━━━━━━━━━━━
この従業員というのは中々に御節介焼きのようで、部屋の荒れようを見るや否や、すぐに整理整頓を始めた。
およそ五分後。部屋は元の整然とした光景に戻った。
( l v l)「はいよ」
更には夕食の準備も卒なくこなした従業員。
現在、兄者らの前には芸術的な夕食が並んでいるのだった。
('A`)「やべぇ」
( ^ω^)「ドクオ?」
('A`)「マナー分からん」
しかしマナーが分からないのはブーンも同じだった。
ブーンはその事を思い出すと、何かしら知っていそうな兄者に目を向けた。
(;´_ゝ`)「……いや、俺も知らんぞ。そもそもルームサービスなんて初めてだし……」
( l v l)「食い荒らせ」
その時、至極簡潔な答えが従業員の口から飛び出て来た。
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- 521 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 16:05:59 ID:Gjc/ZCkI0
-
絵にすれば最悪な光景をもって夕食を終えた三人は、膨れた腹を摩って満足そうに息を漏らした。
(*´_ゝ`)「いやぁウマかった!」
(*'A`)「ルームサービスって良いものなんだな」
(*^ω^)「誰が呼んだか知らないけど……本当にウマかったお!」
(*´_ゝ`)「……」
(; _ゝ )「……おいちょっと待て。誰がルームサービスを呼んだ?」
(;'A`)ノシ「いやいや俺じゃない俺じゃない! 呼んだのブーンだろ!?」
(^ω^;)「おっ? 兄者じゃないのかお?」
.
- 522 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 16:15:47 ID:Gjc/ZCkI0
-
この場において全ての事情を知っているであろう人物は目の前に居た。
名を“ムネオ”と言い、彼を知る者は『奴の運んだ飯は絶対に食うな』と語っている。
( l v l)「……食ったな? 俺の飯を」
話は変わるが、彼らの乗った船――豪華客船“メシウマ”は人手不足に悩まされている。
故にメシウマの船長である“マニー”は『どんな手を使ってでも人手を増やせ』と従業員に命令していた。
( l v l)「働かざる者食うべからず」
( l v l)「でもお前ら食ったよな? コック自慢の超高級アルティメットフルコースを」
(;´_ゝ`)「……ちなみに、御値段の方は……」
(* l v l)「食材だけで百万円超えてます」
.
- 523 :名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 16:20:34 ID:Gjc/ZCkI0
-
(* l v l)「さあ! レッツ社畜! 楽しいお仕事が待ってるゾ!」
今から腹をブン殴って食べた物を全部出せば――と考えるドクオの頭は間違いなく混乱していた。
他二名の頭も発狂ならずとも正常な思考は出来なくなっている。
ムネオは三人の肩を順に叩くと、ドヤ顔交じりにこう言った。
(* l v l)「 明 日 か ら タ ダ 働 き で す ね 」
.
- 524 :名も無きAAのようです:2012/04/08(日) 16:52:29 ID:AhrQnij20
- これは無いわ。ながら投下は確かに楽だけど、これは無い
逃亡してくれた方がまだマシだったなぁ……(切実)
- 525 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:33:47 ID:pojJCEzI0
- >>524さんの書き込みに感銘を覚えました(自作自演)
今日の没ネタを投下したら、またしばらく消えます
六月頃に有名作者になる予定なので、またその時にお会いしましょう
- 526 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:34:27 ID:pojJCEzI0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第一話 ≒ EATX≪イクス≫
ブーンとツンはレフュージュの村で暮らしていた。
覚醒者として排斥された彼らにとって、ここは最後の居場所だった。
彼の居場所が無くなるまで、あと十二時間を切っていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
- 527 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:35:54 ID:pojJCEzI0
-
『EATX≪イクス≫』と称される特殊能力が人々の間で覚醒したのは五十年前。
とある赤ん坊が授乳の際に、母の乳首を乳房ごと噛み千切ったのが最初の事例だった。
それから間も無くして『覚醒者』の存在は世間に広まり、今では総人口の二割が覚醒者である事が判明している。
初期段階では覚醒者達の軍事利用も視野に入っていたが、結局は『触らぬ神に祟り無し』という結論に至った。
現代の覚醒者はアクセサリーに模した制御装置を体に取り付けており、今の所、世界は平和だという。
.
- 528 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:36:37 ID:pojJCEzI0
-
( ゚∋゚)「――と、いう感じで歴史の授業を終わる」
( ゚∋゚)「解散っ!」
納屋の片隅でクックル先生が声を上げる。
授業から解放された生徒達は、有り余った活力を発散させるべく一目散に駆け出した。
ξ゚⊿゚)ξ(眠い……)
( ^ω^)(眠いお……)
一方、納屋に残った二人は寝惚け眼で黒板を見つめていた。
彼らはおよそ十六歳。既に一般教養は身に付けている。
それでも彼らが授業に参加しているのは、
『この村に住むなら授業に出ろ』
というクックルとの約束があるからだった。
.
- 529 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:37:40 ID:pojJCEzI0
-
( ゚∋゚)「……授業は、つまらないか?」
( ^ω^)「あ、いえ。そんな事は……」
不意に話し始めたクックルに曖昧な反応を返すブーン。
それをフォローするかのように、ツンが丁寧な口調で開口した。
ξ゚⊿゚)ξ「昨日、寝るのが少し遅くなってしまったんです。それで、眠くって……」
( ゚∋゚)「……『少し』という言葉は、子供の嘘には必ず入っているものだ。
拭い切れない罪悪感が、そういう所に現れる」
( ゚∋゚)「二人とも、EATX≪イクス≫を使う練習をしているね」
クックルの断言に、二人は揃って押し黙った。
イクス能力の使用は大陸によって差異あれど、基本的には禁止されている。
『覚醒者の暴走』という事例が余りにも多すぎる事が主な理由だ。
だからこそアクセサリー型制御装置の存在が必要不可欠であり、
覚醒者には制御装置を装着する義務がある。
.
- 530 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:38:21 ID:pojJCEzI0
-
( ゚∋゚)「基本的に、君らの装着している制御装置は機関に頼まない限りは外せない。
もっとも、機関に行った所で申請書すら貰えないとは思うけどな」
( ゚∋゚)「……さて、前の授業のおさらいだ。答えろ」
(;^ω^)「はい」
( ゚∋゚)「制御装置とはいえ、EATX≪イクス≫については分からない事が多い。
分かっている事と言えば、『息を止めている間に発動する』という事だけ」
( ゚∋゚)「そこで問題。制御装置は覚醒者の何を感知し、どんな警告を発する?」
(;^ω^)「覚醒者の呼吸を感知して、感知出来ない場合は、覚醒者に激痛を伴う神経毒を注入するお」
ξ;‐⊿‐)ξ「……激痛とはいっても我慢出来る程度の痛み。
神経毒も、短時間で回復するような軽いものです……」
.
- 531 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:39:01 ID:pojJCEzI0
-
( ゚∋゚)「その通り。しかし、慣れれば痛みも意味が無い。
世の中には痛みを快感とする人間も居るくらいだしな」
( ゚∋゚)「その上、痛みに慣れた覚醒者は安易にイクス能力を使う傾向がある」
( ゚∋゚)「そういった危険な覚醒者を迅速に把握、処理する為に、制御装置には機関への通達機能が内蔵されている」
( ゚∋゚)「そこで第二問。その通達機能が発動するまでの猶予時間は?
また、『処理』とは具体的に何をされる?」
(;^ω^)「えっと……猶予は十分くらいだお」
(#゚∋゚)「十秒だ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「処理……禁固一週間?」
(#゚∋゚)「即時抹殺だバカ野郎!」
.
- 532 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:39:41 ID:pojJCEzI0
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咄嗟に吐き出した怒号だったのか、クックルは一呼吸置き、改めて語り出した。
( ゚∋゚)「あのな、俺もイクス能力を使うなとは言わん。
ただ、それが違法で、余りにも大きなリスクを孕んでいるという事を忘れないでくれ」
(;^ω^)「はい……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
先の怒号に恐縮した二人は藁の床に視線を落としていた。
そんな彼らの怯えた様子に対し、クックルは一抹の優しさを呟く。
( ゚∋゚)「……次から練習する時は俺を呼べ。いいな」
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- 533 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:40:22 ID:pojJCEzI0
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レフュージュ村から十分ほど歩き、目印を頼りに森を抜け、湖の畔に出るとブーンとツンの家がある。
家はクックルが打ち立てた木製の一戸建てで、子供二人で生活するには十分な広さをもっている。
レフュージュに来て六年。自給自足の生活も、ようやく彼らの肌に馴染んできていた。
ξ゚⊿゚)ξ「暖炉の火、お願いね。乾いてない洗濯物があったら乾かしたいの」
( ^ω^)「おっおっ。ついでにホットミルクも淹れとくお」
家に帰って来た二人は、まず何よりも先に家事をこなしていく。
ツンは畔に干していた洗濯物を取りに外へ出て行き、家に残ったブーンはキッチンに立って夕食の準備に取り掛かった。
( ^ω^)「んーと、今日の新聞は……十二年前の四月一日かお」
片手間に夕食のキノコシチューを作りつつ、ブーンは横目で古新聞を読み始める。
古新聞はこの生活での唯一の娯楽だ。
しかし、飛び切り大事に扱ってはいるものの、今読んでいる新聞にも多くの汚れが目立っていた。
現にキノコシチューの汁が紙面に飛び散っている。悲惨な光景と言っても過言ではなかった。
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- 534 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:41:02 ID:pojJCEzI0
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古新聞の一面に目を向ける。
そこにはでかでかと『覚醒者による犯罪多発』という文字が並び、横倒しになって火を吹く10tトラックの写真が載っていた。
傍らには容疑者の学生時代の写真があり、「こんな事をする奴じゃなかった」という同級生の感想も匿名で添えられている。
ブーンはここ四十年分の古新聞を何度も読み返しているので、この同級生の感想が無意味である事はすぐに分かった。
こういった匿名での発言は新聞社のでっち上げある事が多い。ブーンは一面記事を鼻で笑うと、古新聞を一枚捲った。
次に目に入ったのは政治関連の記事だった。
パッと見た限り、大半の政治家は未だに同じ事を繰り返しているようだった。
更に古新聞を捲ると、今度は一面記事についてのコラムが載せられていた。
著者はフォックス。その名前を見た瞬間、ブーンの手が硬直した。
十年前。ブーンとツンの生まれ故郷。
まだ幼く、覚醒者の自覚すら無い彼らの前にフォックスはやってきた。
そしてブーンの首を思い切り締め上げた。ブーンは息が出来なかった。
呼吸不可能に陥ったブーンのEATX≪イクス≫は強制的に発動。
間も無く暴走し、彼らの生まれ故郷は巨大なクレーターとなって消滅した。
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- 535 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:41:44 ID:pojJCEzI0
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(# ω )
端的な記憶が脳裏に溢れ返り、ブーンは自身の鼓動が急速に早まっていく事を感じていた。
内から込み上げる熱を帯びた意志――怒りが、ブーンの拳を固く握りしめさせていた。
ξ;‐⊿‐)ξ「ただいまぁ〜」
そこに、洗濯物を背負ったツンが戻って来た。
ブーンは彼女に目を向けるが、決して声は出さなかった。
( ^ω^)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン?」
そのツンの呼び掛けを最後に、二人の間に沈黙と、黒煙が流れた。
宙に漂う黒煙は、キノコシチューの鍋からだった。
(; ω )「……どうやらシチューを焦がしたようです……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……焦げて食べられない物じゃないし、大丈夫じゃない?」
(;^ω^)「……そ、そうだおね! まだ慌てるような有り様じゃないお!」
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- 536 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:42:24 ID:pojJCEzI0
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それから少し言葉を交わし、二人は各々の家事仕事に戻った。
結局、ブーンは本当に焦がした物について何も言わなかった。
キッチンには、焼け焦げた古新聞が僅かに残っていた。
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- 537 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/09(月) 21:45:07 ID:pojJCEzI0
- この後二人はベッドに入って眠るけど、ブーンが無呼吸症候群に陥っちゃうんだな
それで村にヤバい人たちが来てうわーってなってクックルが犠牲になってぷてらのどーんみたいな感じになる
ツンも死ぬ。彼(ブーン)の居場所が無くなって、第一話が終わり
続きはまだ書いていない。書く気も失せてしまった。
じゃあの
- 538 :名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 18:29:40 ID:0gso.myIO
- 時の階段のほう、最後まで考えてるなら
あらすじだけでも書いて、完結させてもらいたい
有名作者になってもここを見てくれてた
読者のことも時々思いだしてくれ(切実)
- 539 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/11(水) 00:54:14 ID:w3AAkvIA0
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その夜、VIPには“某スレ”が立っていた。
ブーン系民の入れ替わりから、既に某スレは見るに堪えない有り様となっている。
それでも私は某スレを開いた。これもブーン系民の務めだと、私は半ば諦念を込めて自分を説得させた。
( ´ω`)(……最初から読者様のマジレスかお……)
およそ>>30までのレスを見て、私は深い溜息を零した。
不毛なる論争――口喧嘩に、一体何の価値があるというのだ。
我々は楽しむ事を目的としている筈だ。それなのに、彼らは不毛なネガキャントークに花を咲かせている。
私が言えた事ではない。それは分かっている。しかし、ブーン系を楽しむ為の土台を作るのは、やはり雑談スレだ。
もっと和気藹々と、友達とエロ本を読み合っているような雰囲気こそが、雑談スレには必要なのではないか。
( ^ω^)(うはwwwwwwガイア君ktkrwwwwwwすきwwwwww)
そんな湿っぽい某スレに、コテ勢の一角“ 暗黒騎士ガイア ◆1irdG.R4xM ”が現れた。ガイア君すき。
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- 540 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/11(水) 00:54:56 ID:w3AAkvIA0
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ガイア君が来た事により、某スレに健全な雰囲気が漂い始めた。
もう地の文書くのが面倒なので割愛するが、後にこんなレスが某スレに書き込まれた。
113 :暗黒騎士ガイア ◆1irdG.R4xM :2012/04/10(火) 23:42:27.33 ID:RdCXzR1e0
●面白かった
( ^ω^)は荒野の腹パニストのようです
●面白そう
(´・_ゝ・`) デミタスはまぁそこそこ能力を使ってるようです
( ・∀・)幸せになるようです
●ショボンの話だけ書いてくれ
( ^ω^)ヴィップワースのようです
●普通
( ФωФ)地平線を越えるようです
地味子ハミングのようです川д川*(‘‘)*('、`*川
( ^ω^)性欲豚がオトナのお店に入り浸るようです
●時々読みきり感覚で読んでる わんわんおとか人面犬じゃん(笑)
( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです
●ゴチャゴチャしすぎ
彼らは時の階段を上るようです
( ´_ゝ`)ブラクラゲット、のようです
●もう名前の時点で駄目
( ^ω^)男は可愛く美しくのようです
●もう駄目
(´・ω・`)「はあ…今日も高校サボって2chか…」 川 ゚ -゚)スライム娘で何が悪い!のようです
トル゚〜゚)雷電霹靂、素直トールのようです リンネ。ようです。
●読者がウザくて読んでない
('A`)ドクオくんの家には変な人が来るようです
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- 541 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/11(水) 00:55:37 ID:w3AAkvIA0
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お分かり頂けただろうか。
もう一度、『ゴチャゴチャしすぎ』の所に注目して頂きたい。
●ゴチャゴチャしすぎ
→→→ 彼らは時の階段を上るようです ←←←
/::://:::! /-=、 ,// u / _,,.-ゝ. 「ヽ l ! , l 貼り付いたように動かぬ俺
/::_;イ-‐=レ'==ミ" '∠-==ヽl=ヽlヽ レ'レV
/::::::::..、 o ,≡:::::::〈、 o , :|│ リ ' ガイア君のレスには例のスレタイが……
::::::::::::::::: ` ー--‐ '´三 :::::::::ヽ`::ー-‐:'.´ |│ l
::::::::::::::: ニニ ::::::::::::::ヽ::::::::: U |│ ! この二つの符号が意味するものは
:::::::::::::::U  ̄ ̄ U::::::::::::::::ヽ::: u |│ .l
:::::::::::::::: U r‐:::::::::::::::::::::ヽ. Lノ | ひとつ……!
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- 542 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/11(水) 00:56:18 ID:w3AAkvIA0
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( ゚ω゚)(ガイア君が……)
その時、私の頭を痛烈な衝撃が走り抜けた。
怒りや、悲しみではなかった。
嬉しかった。
別の場所で、再び自分の名を目に出来た事が
ガイア君が、私のスレを一度でも目にしてくれていた事実が――
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- 543 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/04/11(水) 01:07:19 ID:w3AAkvIA0
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というような事がありまして、現在の私はこの上ない喜びに身を浸しております。
本当に嬉しかったので、スレに書き残しておきたかった。
>>538
粗筋書いて完結もワンチャンありますが、このスレは別所に移そうと思っています。
自分用没ネタ掲示板があるので、そこで少しずつ投下して、数年後に完結させる事になります。
どうであれ、今は完結までの粗筋を書く気はありません(威圧)
有名作者になっても読者の事は忘れないよ(同調)
- 544 :名も無きAAのようです:2012/04/13(金) 23:47:24 ID:KqiFnIscO
- >>539
ああ、あの時いたんだ
というかようですで検索もう生活の一部だろ
- 545 :名も無きAAのようです:2012/07/11(水) 22:00:30 ID:PIpQMyFI0
- まだか
- 546 :名も無きAAのようです:2012/07/19(木) 12:11:03 ID:uXihaOjc0
- このままだと過去送りにされるぞー
- 547 : ◆yeyP4e7tEQ:2012/07/19(木) 14:16:39 ID:DmRDzd..0
- 今まさに書いてるものが凄く楽しいんだよね。それ一番言われてるから
だから過去ログ送り、しよう(直球)
- 548 :名も無きAAのようです:2012/07/19(木) 22:52:09 ID:tJNNctJQO
- 兄者は…の頃から読んでたけど
振り返ればこの話は>>423の時点で終わってたな
ところで新しいやつって撃鉄?
- 549 :名も無きAAのようです:2012/07/19(木) 23:13:28 ID:DmRDzd..0
- >>548
そうだよ
また読んでくれると嬉しいなって
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