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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part04- 1 :避難所の中の人★:2012/02/17(金) 14:14:20 ID:???
- ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。
○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。
■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。
■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/
■本スレ
ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part02
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1309786963/
■避難所前スレ
ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part03
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1317993354/
■お約束
・書き込みの際には必ずローカルルールおよびテンプレの順守をお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
もし荒らしに反応した場合はその書き込みも削除・規制対象になることがあります。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
・避難所に対するご意見は「管理・要望スレ」(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1301831018/)まで。
■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・二次創作は元ネタ分からなくても読めれば構いません。
投下SSの二次創作については作者様の許可を取ってください。
・男のヤンデレは基本的にNGです、男の娘も専スレがあるのでそちらへ。
■SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
- 2 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/17(金) 15:20:59 ID:0lWryE4Q
- 荒巻乙
- 3 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/17(金) 17:19:33 ID:CvYmrEJc
- 本スレ間違ってた
ヤンデレの小説を書こう!Part51
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1324357113/
- 4 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/17(金) 17:21:05 ID:CvYmrEJc
- 現在議論スレでテンプレ及びローカルルールについての意見を募集しています
- 5 :避難所の中の人★:2012/02/17(金) 17:21:21 ID:???
- あれコテハン外れてる
- 6 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/17(金) 23:27:00 ID:GMEeKTLY
- 立て乙
- 7 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/18(土) 00:07:46 ID:ZOuT5d.k
- スレ立て乙彼さまです。
願わくば、このスレも、素晴らしいSSとその素晴らしい語り場にならんことを…
- 8 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/18(土) 08:35:11 ID:CdD.mLQ6
- スレ立て乙
- 9 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/18(土) 11:30:37 ID:D.mYAX/s
- スレ立て乙です
- 10 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 00:16:33 ID:1ALP5BK2
- >>1乙してやろう
- 11 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:34:39 ID:wwXkGvCg
- 投下しますー。
- 12 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:35:58 ID:wwXkGvCg
- なおNTRがあるので、嫌いな方はスルーしてください。
- 13 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:36:42 ID:wwXkGvCg
-
「ごめんね、渚。その、私はもうご主人様がいないとダメなの・・・・・・本当に、ごめんなさい」
その一言でどれほど私は傷つき、悲しんだだろう。生まれてから十五年間、ずっと一緒だった幼馴染は、所詮強い雄を求める雌にしか過ぎなかった。
中学二年辺りの時、付き合っているのが周囲にばれて囃し立てられた。見た目が女性にしか見えず、声も体躯も顔も女性のようである為、周囲の学生達からは話のネタに度々されていたのをよく知っている。幼馴染であり、彼女でもある少女はよく分かれた方がいい、もっといい男がいる、だのと友達に言われているのも知っていた。
それでもずっと一緒だった。私も彼女も両親が遠いところで働いているからずっと二人で住んでいた。
朝も、昼も、夜も。
ずっとずっと幼馴染と一緒だった。互いに依存し合っていると思っていた。
それ故にこんなにもあっさり、他の男の元へ行ってしまった事が、とても悲しくて、ショックだった。でも、幼馴染が幸せそうだったから、取り戻そうとは思わなかった。どんな理由であれ、幼馴染を傷つけたり、悲しませたくなかったから――
それでもやりようのない、やり場のない、この悲しい気持ちは心を深く傷つけ、思わず自分が世界で一番不幸ではないのだろうかと思ってしまいそうなほど、悲しみ、嘆き、泣いた。
- 14 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:37:30 ID:wwXkGvCg
- 公園のジャングルジム。その一番上で背骨が痛いのにも関わらず寝転がっていた。
降り積もる雪、このジャングルジムに来るときについていた雪は既に新たな雪で塗りつぶされていた。
「そういえば、今日はヴァレンタインだったか」
綺麗なよく通る声。誰がどう聞いても女性の声だった。コンプレックスの一つであり、幼馴染から好きだといわれたものでもある。
流れた涙が氷つき、頬が少しぱりぱりしている。最近は学校から帰った後、毎日の様にこの公園へ来ていた。特に意味はないが、全くといっていいほど人が来ないというのが唯一の理由かもしれない。
そんな人気のない小さな公園に、今日は来客があった。
流れるような黒髪、雪と同じぐらいに白い不健康で病的な肌、よく造り込まれた冷たい印象を与える端整な美しい顔立ち。好みのタイプだろうが何だろうが、十人通り過ぎれば十人が振り返ってしまいそうな、神がかった美しさだった。自分に表現力があれば彼女の魅力を原稿用紙一枚は書けてしまいそうな、それくらい凄い。
彼女は無表情だったか、少しだけ喜びが滲み出ているのを感じられた。今日はヴァレンタインだから、告白して成功した帰りなのかもしれない。
もっとも、彼女はいつ誰に告白しようとほぼ確実に成功しそうではあるが。
美しさに気を取られてよく見ていなかったが、どうやら彼女は私と同じ学校で同じ学年らしい。ネクタイの色と制服で判断できた。
そして、何故だか、真っ直ぐ私の方へ歩いて来ているというのも分かった。私の後ろに公園の出口はないから近道という訳ではなさそうだった。というより自ら足を運ばないと来れないという位置にある公園だから、目的を持って来ていると思ったほうが正しい気がする。
- 15 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:38:32 ID:wwXkGvCg
-
そんなことを考えている内に彼女はとうとう私の前まで来ていた。ばっちりと、目が合う。近くで見れば見るほど恐怖を抱く美しさだった。街を歩けば何回もスカウトされそうな、ナンパされそうな。多くの男性はその美しさの前に告白を躊躇い、それでも告白してしまうほど手に入れたいような。そんな感じの女性だった。今まで幼馴染しか見てなかった私は、同じ学年にこんなに綺麗な人がいるとは思わなかった。
「降りてきてくれないかしら?」
綺麗な、聞き惚れてしまいそうな音色の声が彼女から発せられる。本気で芸能人になれそうだ。とりあえず、降りろとの事なので降りる。
何故、話しかけられた、とか浮かび上がる疑問は全て無視した。私は細かいことに拘らない主義なのだ。
「何か、用?」
私も制服だから同学年だと気づく筈だ。彼女は何も言わず、じりっ、と無表情で一歩近づいてきた。何かぞっとするものを感じ、私は半歩下がろうとする。
だが、突然彼女が私に勢いよく抱きついてきた為、半歩どころか数歩下がることとなった。
- 16 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:39:50 ID:wwXkGvCg
-
「な、何を・・・・・・ッ?!」
私の右耳に異物が入り込む。いや、気が動転しただけで数秒間は気づけなかったが、よくよく考えなくてもこれは耳掻きだと分かる。
何故私は美少女に突然抱きつかれ、耳に耳掻きを差し込まれているのだろう。
少しの間、お互いに身動きをとらず、何も喋らず、静寂が公園を満たした。しんしんと雪が二人に積もっていく。
「ん、んっ・・・・・・」
いきなりかりっ、かりっと耳掻きを動かされ、変な声が出そうになってしまう。ただでさえコンプレックスの女声で喘ぎ声を発してしまったら色々終わりそう。耳掻きを抜こうにも、首には少女の腕が回されている為、叶わない。
「いきなり、なに?」
「あんまり動かないで・・・・・・鼓膜破れちゃうわよ?」
これは、動くなって言う脅しなのだろうか。どちらにせよ耳掻きが入っている状態であまり動きたくない。彼女は小さく笑みを浮かべた。
「今日が何の日かご存知?」
かりっ、かりっと絶妙なポイントを掻かれる。正直喘ぎ声を押し殺すので精一杯だった。というか何で私はこんなに感じやすい・・・・・・二次元じゃあるまいし。
「ヴァレンタインデーよ。私のチョコ受け取ってくれるわよね?」
かりっ、かりっと相変わらず私の耳の中の性感帯を刺激しているが、更に奥深くへ差し込んできた。別に痛くはないが、怖い。
- 17 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:41:10 ID:wwXkGvCg
-
私は彼女が耳掻きを動かすせいで何も返事できないので、仕方なく小さく頷く。よく分からない、何故こうなって、何故彼女がわざわざ私にチョコを上げようとするのかが。自慢じゃないが、私が学校で深く関わっているのは幼馴染だけだ。本当に自慢じゃないな。
彼女は私に回していた腕を外すと、ポケットに指を忍ばせた。今のうちになら抜け出せるが、万が一耳が傷ついたら嫌なので素直に待つ。
じっとしている内に、また首に腕が回される。あれ、じゃぁチョコは?
――チョコは、彼女のその綺麗な赤い唇に挟まっていた。
ゆっくりと彼女の顔が近づいてくる。頬を真っ赤に染め、目尻には涙が浮かんでいた。
「その小さな可愛らしいお口で受け取らないと、鼓膜が破れちゃうわよ?」
チョコを唇で挟みながら、少し震えた声でそんなことを彼女は言った。どうしよう、彼女――精神的に病んでる気がする。
それでも傷心効果だろうか、私の傷ついた心はぽっかり空いた部分を埋めようとしているのだろうか。私は彼女の括れた細い腰に手を回し、脇の下から背中に手を回し、彼女を抱き寄せた。
ようやく、初めて彼女は驚いたような表情をした。それでも、そのまま瞳を閉じずに私へと顔を近づけてくる。
「ぁむっ・・・・・・」
彼女のどんな想いが篭ってるんだかよく分からないチョコレートを唇で受け取る。傍から見たら恐らく女二人のヴァレンタインレズハッピーにしか見えないだろう。
- 18 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:43:03 ID:wwXkGvCg
-
彼女から貰ったチョコは少し変な味がしたが、市販されてもおかしくないレベルの味だった。恐らく五百円以上千円以下ぐらいの値段で売っていそうなレベルである。
「ぁんっ、んんんっ ちゅ」
彼女からチョコを受け取ったのはいいが、そのまま舌を差し込まれた。幼馴染に上げるはずだった初めてのキスが彼女の舌で蹂躙されていく。その幼馴染も今頃他の男に蹂躙されているのかと思うと、涙が零れた。
「ちゅっ、ちゅ、ん、んく」
口の中にあったチョコは当に蕩け、私の食堂を伝って奥へと流れ込んでいく。更に彼女の唾液までもがお口の中一杯に広がって、チョコを追って流れ込んでいった。
ひゅっ、と彼女が私の耳に差し込んでいた耳掻きを横に投げ捨てたかと思うと、私を深く抱きしめてきた。より奥まで舌が入り込み、絡みあう。
もはや彼女は、蕩けた表情で私とのキスに夢中になっていた。
「ちゅぅ、んっ、ぁ、んん! きもひぃ、ぃぃょぉ、ちゅっ」
頭の中がぼうっとして、思考がぐちゃぐちゃに掻き乱される。
- 19 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:46:24 ID:wwXkGvCg
-
もうこれ以上くっつかないのに、ぐいぐいと私を引き寄せて奥深くまで舌を差し込む彼女。
私を抱いているその手がこぎざみに震えているのが伝わってくる。寒いのだろうか、私はこんなに熱いのに。あぁ、彼女も熱くすればいいのか。
「んぅ?! ちゅ、はぁ、んん! ちゅぅ」
激しく舌を出し入れし、先端を絡ませたり、唇と舌で挟んだりする。彼女の震えがより一層大きくなり、慌てて深く抱き込み、より熱く激しく舌を絡ませる。
体はとても熱いのに、脳は逆に冷えてくる。なぜか意識が薄れてきた。目の前で溶けたような笑みを浮かべて喘ぐ彼女がぼやけて見える。
「やっ、もぉだめっ、ちゅっちゅ、ぁぁ、くぅんっ」
彼女はもはや震えているというより痙攣していた。そのことに気づくのが遅れ、焦って唇を離す。二人を繋ぐ銀色の糸がぷつりと切れ、ついでに私の意識が切れたのも、同時だった。
こうして二人の美少女(片方男)の絡み合いは終わりを迎えた。
- 20 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:48:55 ID:wwXkGvCg
-
「はぁ、はぁ――運んでちょうだい」
地面にへたり込んでいる私は、近くの男に命令する。ぐったりとしている一見美少女に見えるこの少女は実は男である。男性ホルモンはちゃんと仕事をしているの? と言いたくなってしまいそうな長くて綺麗な黒髪に、女性にしか見えない上、女性が羨む様な可愛らしい綺麗に整った顔立ち、そして少女のような華奢な体躯。身長は百七十センチ以上あるが、男らしいというよりは長身のかっこいい女性という風にしか見えない。
その彼は大きなボディガードに連れ去られていく。私の屋敷に運ぶのだ。
それよりもまさかキスだけで、こんなになっちゃうなんて・・・・・・。
下を見ると、今もぽたぽたと愛液が零れ落ちている。
未茶 渚。彼とのこれからを考えるだけで背筋がゾクゾクする。あの女をどう始末しようか考えていたけれど、まさか自分からフってくれるとは思わなかった。
一応情報が正しければ、童貞の筈、流石にキスはあの女が持って行っただろうケド。
でも、許してあげる。私に彼を譲ってくれたから。本当だったら殺してるけれど、特別に許してあげる。
――私に彼を譲ってくれたから!
「渚、これからよろしくね・・・・・・ふふっ」
- 21 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 20:50:10 ID:wwXkGvCg
-
投下終了。
何日遅れだよって話だけど、前スレの>>942みたいなお話が結構好きなので書いてみた。
中二臭い書き方はデフォ。
- 22 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/19(日) 23:50:52 ID:0LH4LMAM
- 乙。個人的にはNTRされた幼馴染がなんだかんだで男に戻ってきたけど取られててガビーンッ!!なENDが欲しかった
- 23 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 10:36:57 ID:vLu4OEeM
- >>21
乙乙!
- 24 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 13:07:08 ID:Au6okXeI
- GJ!続きはあるんだよね?
- 25 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 16:14:39 ID:j1zCIO82
- >>22
それは明らかなスレチだろ
それをやったヤツがどうなったかは言うまでもないよな
- 26 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 16:45:13 ID:ntrpJcLA
- >>22
確かに「ガビーンッ!!」だけで終わるとスレチかもね
そこから「私にはあの人しかいないの!!」とか繋がると良作になると思う
要はどうヤンデレ味に味付けするかじゃないかな
- 27 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 17:39:25 ID:NkYTO7j6
- 耳掻き…
何かの作品を連想するな…
- 28 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 18:42:59 ID:H7uIOoRU
- GJでござった
続きもお願いします
>>27
俺は空から天使が降ってくる漫画を思い出した
アレは思いっきり耳の中に耳かき棒突っ込んでたが
- 29 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 21:05:22 ID:O3mMlLFQ
- 遅ればせながらすれたて乙。
- 30 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/20(月) 23:05:02 ID:YysqhtRo
- 人外娘のヤンデレキボンヌ
オオカミでお願いします
- 31 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/21(火) 22:51:16 ID:Vuge7UGM
- 個人的に思うんだが
ツンデレキャラがヤンデレ化した瞬間が最強に怖いと思うのは俺だけ?
- 32 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/21(火) 23:27:42 ID:bD1q1CSA
- 誰か、ツンデレからのヤンデレを書いてくれ
- 33 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/22(水) 02:41:53 ID:qDxmecck
- ツンデレか…ルイズかシャナみたいなのか?
ルイズならヤンデルイズがあるが…この場合、要望とは違うな…
- 34 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/22(水) 09:33:50 ID:2COf.jwc
- チコ・・・ポポ・・・
- 35 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/22(水) 16:47:21 ID:qriKJJEA
- >>33
>ヤンデルイズ
ほほう
- 36 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/23(木) 00:46:28 ID:yeIEi/hk
- それ一番好きなタイプ
- 37 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/23(木) 01:42:26 ID:l3LzjD7M
- >>33
二次創作はスレチじゃないし(>>1投稿のお約束より)
個人的にはぜひ読みたいものなので投稿をお待ちしていますよ
パロSSスレじゃ書きづらいだろうしね
- 38 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/23(木) 03:46:55 ID:SeFm1FxU
- >>37
ヤンデルイズは既に100話を超える大作が完結済みだよ。
ググれば出てくる。一応念のために。
- 39 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/23(木) 15:27:38 ID:du4/Kd3s
- ヤンデルイズは、ヤンデレものでありなおかつ泣ける
- 40 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/23(木) 17:18:59 ID:wCDSS03Y
- ヤンデレ話やっぱ好きだなぁ、俺。
- 41 :37:2012/02/23(木) 18:50:57 ID:l3LzjD7M
- >>38
もうあったのか…知らなかった
教えてくれてありがとう
今、ググって読んでるけどいろいろなものが満たされていくのを感じるよ
- 42 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/23(木) 23:07:48 ID:K0XLarZU
- 最近、投下が少なくてみんなのヤンデレ分が足りてない件について
- 43 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/25(土) 02:52:47 ID:t4DdWx.Q
- ヤンデレに萌え以上の感情を感じた人
安心してください
それが普通です
- 44 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/26(日) 20:15:52 ID:CgG8Rwp.
- 文章かいてると、ある地点で急に書く気が失せてしまう。
集中力って大事ね
- 45 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/26(日) 22:02:07 ID:1kzl6thM
- 住民一人に付き5行のSS書くだけでだいぶ変わるぞ
- 46 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/26(日) 22:26:44 ID:xV13aSuM
- ROM入れると何人いるだろうな
こういうスレだとかなり多そう
- 47 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/26(日) 23:46:47 ID:y4IyaVQY
- 読み専、職人合わせて2000人くらいと想像する。
まあ、このスレの住人に限って言えば、普通のラノベじゃ満足できない種類の人間なのは間違いない。
- 48 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/27(月) 00:52:58 ID:Dnr/HOLs
- うぃき見ると毎日2000前後は来てるけどスレにまで来るのはどれぐらいなんだろう
- 49 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/29(水) 00:09:02 ID:9j.Dx7r.
- すごい久しぶりにきたわ
- 50 :雌豚のにおい@774人目:2012/02/29(水) 19:19:06 ID:k5tP7J2M
- 荒れる前は余裕で3000強か4000弱だった覚えがある
- 51 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/01(木) 00:18:03 ID:TEYHpMUg
- しかし、本スレはどうなるんだ?
荒らしが他サイトに誘導してるぞ…
まあ、運営は知らん顔だろうが…
- 52 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/01(木) 11:34:18 ID:nZO9Q/sE
- >>51
そうなのか?
本スレ一切見てないから状況が分かってないわ
自分はあそこを荒らし隔離スレだと思ってる
- 53 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/01(木) 16:13:00 ID:S776GUPM
- ていうかこのままだとこのサイト近い内に閉鎖になっちゃうんじゃね?割とマジで
- 54 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 01:07:11 ID:W/y0jbLk
- 閉鎖も時間の問題だろうね
あの粘着ぶりはマジキチ
- 55 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 01:54:54 ID:QH.OIEio
- エロパロ板の方、スレ削除依頼出してこようか?
あそこからここに来る人はもういないだろうし
- 56 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 02:46:07 ID:W/y0jbLk
- >>55
頼めるのなら、お願いします。
実は、俺も行ったけどよくわかりませんでした。
バカでごめんなさい。
- 57 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 04:20:30 ID:5yUt2Rfc
- 本スレとか数ヵ月ぶりに見たけどまだやってんのか
こっちでも話題にださないでスルーしとけ
- 58 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 05:52:34 ID:OZx4l3RE
- 今受験やら新年度の準備やらで忙しいの当たり前じゃね?
って去年も同じことレスした気がする
- 59 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 08:24:32 ID:g479YKqg
- まあ、気長に待とうぜ
- 60 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/02(金) 23:58:05 ID:8Ev.vb.2
- 就職活動の疲れを癒しにきました。
- 61 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/03(土) 01:44:26 ID:iVECm0nI
- 就職した疲れを癒しに来ました。
- 62 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/03(土) 11:45:56 ID:IdcCsfJ2
- 人生の疲れを癒しに来ました
- 63 :罪歌のワルツ:2012/03/03(土) 13:09:35 ID:umAQQdVM
- 初めてなんですが
投稿します
- 64 :罪歌のワルツ:2012/03/03(土) 13:14:07 ID:umAQQdVM
- 突然だが、僕は今クラスメートの家でソファに座っている。連休にも関わらず呼び出した江坂カホの家には両親がいないようだ。
「江坂さん、今日は何の用があって呼び出したんですか?」
「江坂じゃなくてミホって呼んで」
江坂ミホは僕の隣に寄り添うように腰を下ろし囁いた。
「あくまで今、僕らはクラスメートなだけなのだから名字で呼ぶのは普通じゃないかな?」
僕はクラスメートから少し距離を空けた。
「セイジはひどいなぁ、私達は恋人同士なんですよ」
「違うよ、僕は君からの告白をきちんと断ったはずだ」
また距離を詰めようとする彼女を僕は遠ざけた。
江坂ミホはセイジ、つまりは僕に好意を向けているクラスメートだ。しかし、告白を断った今もその好意は僕に向けたままである。
「どうして?セイジはあの子に脅されてるんでしょだから私を避けるんだよね。そうでしょ、ねぇそう言ってよ、私はセイジの為ならなんだってするから」
「今日は君が僕の後輩の怪我させたと聞いたから来たんだ」
「どうして?セイジは好きでもないあの子の方が大事なの?」
「確かに僕はあの後輩に好意は抱いてないが、君が僕の後輩を怪我させた動機が僕なら話は別だ」
「もぅ仕方ないなぁ、セイジが素直にならないなら、私だって考えがあるんだからぁ」
江坂ミホは僕を押し倒して光を映し出さない瞳で熱っぽい視線を僕の視線に絡ませる。僕はそれを冷たくでも、逸らさずにいた。
何故なら、僕は彼女の心狂わした罪を償わなければならない
その為に僕はここに来たんだ
- 65 :罪歌のワルツ:2012/03/03(土) 13:17:08 ID:umAQQdVM
- 投稿終了
- 66 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/03(土) 14:02:18 ID:N3t0FtpM
- 久しぶりの投下ああああああん!!///
GJ!こういう性格のヤンデレもええな
- 67 :就職活動に疲れた男:2012/03/04(日) 00:33:58 ID:hhwq1qHw
- 俺は、今就職活動中の男である。エントリーシートの中身である志望動機を適当に決め、
そして、送るこの作業を行っている。そして今、書類審査をとおり、面接の真っ最中である。
B子「君はなぜこの会社を選んだんだい?」
A男「御社を選んだ理由は今後の発展が望ましくまたやりがいを感じ地域貢献もできるからです。」
B子「では私の為に奉仕はできるかな?」
A男「よろこんで!!!!!」
こんな風に決まらないかな
これお酒飲みながら書いているので消してください。
- 68 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/05(月) 00:36:18 ID:l3QP6w6M
- 支援
- 69 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/05(月) 08:41:48 ID:vyH4NQzw
- ドラファン読みたすぎて死にそう
- 70 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/05(月) 11:05:45 ID:GDq63hRg
- >>69
禿同
- 71 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/05(月) 11:06:49 ID:sz7OA6sQ
- うむ
- 72 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/06(火) 01:58:42 ID:9BUTQADQ
- やっぱヤンデレ最高だなぁ…ビバ!虚ろ目!ジーク!ヤンデレ!!
- 73 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/06(火) 06:55:43 ID:h0ItiBmE
- キモオタと彼女の続き読みたいッスよ……。
- 74 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/06(火) 12:22:27 ID:dwAG0lYw
- >>73
私もだ
- 75 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/06(火) 20:47:12 ID:gJ69fAFk
- ノン・トロッポまだー?
- 76 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/06(火) 22:20:33 ID:1L6c0ceY
- >>73>>74
君達が歩まないと先ができるわけないだろ
0、5の話も気になる
- 77 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/07(水) 19:33:05 ID:6wr7K4Ug
- ふむ、非情なまでに失礼な書き込みだな。
- 78 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/08(木) 11:03:15 ID:sJwTjni.
- w
- 79 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/08(木) 14:51:09 ID:YSUVixSU
- ブリュンヒルドてヤンデレなの?
- 80 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/09(金) 01:59:12 ID:QSppj5iE
- 惚気話になるかどうかはわからないけど、僕の彼女――薗原美耶子は、とてつもない変態だ。ちょっと引いてしまうくらい変態なのだけど、そこは惚れた弱みで目をつぶらざるを得ない。
だから、こうして全裸で目隠しをされて両手両足を椅子に縛りつけられて、右太腿の上に全体重を乗せられて蛇みたいに巻きつかれている現状も、惚れた弱みでまあしょうがないかと諦めるしかない。
「ぺろ、ぺろ、ちゅぷ、……ちゅうぅ、ん、ぺろ」
ぺろぺろちゅーちゅー、と。
先程から間抜けなオノマトペが耳元でさえずっている。どれくらいこうしているだろう、すでに美耶子の体重を支えている太腿の感覚は消失している。舌と唇を交互に使って、僕は鎖骨から肩にかけてをひたすら、ただひたすらに舐められ啄ばまれている状態なのだけど、これもまた仕方ないなこいつぅ、と苦笑して済ませるほかにない。
「ちゅ、ちゅっ、ぺろぺろぺろ、れろ、んちゅうぅううっ……」
翔子は、文字通り全身を僕の身体にゆだねているようだ。視覚に頼れないので、それ以外の四感を頼りに現状を把握するほかない。 ふよふよと胸元に押し付けられる肉感的な感触と、太腿に感じられるぬるぬるとしたこそばゆさと猛烈な熱量から鑑みるに、美耶子もやはり生まれたままの姿で僕と絡まっているんだろうなと推測できる。
鼻先からくらくらするくらいに感じられる汗と雌の匂い。フルマラソンを完走して来たんじゃないかっていうくらい、翔子の全身は汗でまみれて熱く猛っている。……これは久々に、かなり催している様子。性的な意味で。
- 81 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/09(金) 02:06:06 ID:8e7siARo
- >>80
テストで投下させていただこうとして順番間違えました。
タイトルはありません。この場をお借りして投下させていただきたいと思います。ご容赦ください。
- 82 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/09(金) 02:29:44 ID:x8hg5dfU
- どうして翔子がここまで欲情してしまったのか。ここまで理不尽で意味不明な仕打ちは、今の翔子からすると珍しいくらいだ。最近は大人しかったのだ。
一時期は本気で危なかった。ピークだったのは高校時代か。自他共に、命の危険になんて何度も直面したし、その度に朝日を拝める幸せを噛み締めたりもした。周囲の人たちには、本当に迷惑をかけてしまったと思ってる。ごめんなさい。
その経験から察するに、今の危険度はそう高くない。まだ流血沙汰にはなっていない。サイレンの音もまだ聞こえていないから、ここで僕が頑張ればまだまだ惨劇は回避可能なはずだ。
「お? おおぉおぉおっ? ぉうお?」
「ん〜、っちゅぅぅう〜、ちゅる、ぺろぺろ、っちゅううぅううっ」
轡と思しき何かをかまされて、呻き声しかあげられない。
翔子はまだまだ肩〜鎖骨への求愛に夢中な様子。俺の声には何の反応も示してくれない。わざとやっているわけではないだろうが、こうも無反応だと悲しくなってくる。
……本当に、どうしてコイツは自分のことしか考えられないんだろう。以前、そう問いかけたことがあるのだけど、帰って来た返答は、『それは違う。私はあなたのことしか考えてない。私がするのは全部あなたのため。私の理由は、あなただけ』
だとさ。
『でもそうしたいのは翔子の意思だろう? 翔子自らの意思で、僕のためだと言って、とんでもないことをする。やめてくれよ、そういうの』
『どうしてそんなこと言うの? あなた、私のことが好きなんでしょ?』
『好きだよ』
『じゃあ、どうして? 私のことが好きなら、どうしてそんなことを言うの? 教えてよ、ねえ、教えてってば』
こんな会話をしたのも、随分昔の話に感じる。実際にはたかが数年前のことなのにな。ちなみに、この後僕はお姉ちゃんや従妹や幼馴染を巻き込んでそれはもう見るも無残で血で血を洗う悪夢みたいな数日を過ごす羽目になったのだけど、それも今となっては懐かしい。
- 83 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/09(金) 14:41:09 ID:A09jTA5k
- 書きためくらいしろよ
終わったら終了のレスくらいしろ!
- 84 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/09(金) 16:53:35 ID:I3QFiVHs
- テストって.....
- 85 : ◆AW8HpW0FVA:2012/03/09(金) 18:06:11 ID:oBoqmP5.
- test
- 86 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/09(金) 18:07:28 ID:QUygNiWI
- (汗)
- 87 : ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:45:43 ID:Q3G2sITg
- 投稿します
- 88 :変歴伝 第四話『会に合わぬ雑花』 ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:48:32 ID:Q3G2sITg
- 新たに郎党に加わった一郎には異能があった。弓の扱いが卓越しているのである。
弓の腕は業盛も人後に落ちない自信があったが、一郎のそれは隔絶していた。
ある時、一郎は百五十歩離れた的の真ん中を射貫き、
さらに二の矢を構え放つと、それは最初に放った矢の矢筈に中って貫いた。
またある時は目隠しした状態で的を射貫いてみせた事もある。
流石の業盛でも、そのような芸当は真似出来ない。
だが、これほど技量に優れていても、古参達は一郎の郎党入りを頑なに拒んだ。
それに輪を掛けるように、一郎と鈴鹿を虐げる者まで出始めた。
業盛は火消しに追われた。出来うる限りの事をしたが、状況は一向に好転しなかった。
業盛にはこれ以上の方法は思い浮かびそうにない。
それでもない知恵を絞り、やっと捻り出したのは、自分の最も嫌いな人物に頼る事だった。
絶対にそいつだけには頼りたくなかったが、悩んでいる時間はなかった。
意を決した業盛は、鈴鹿と一郎を連れて山を越えた。
「なるほど、それで私のところに来たという訳ですか」
業盛の目の前にいるのは、平遠江守(とおとうみのかみ)重盛である。
平家の嫡男である重盛は、業盛の領地授与の手続きを全て行なった人物であり、
家中でも強い発言力も持っている。
領内のごたごたも、重盛に話せば解決するだろうと思ったのだ。
「……はい。私の力不足です……」
「……まぁ、そう暗い顔をしなくてもいいですよ。君のした事は理に適っています」
「……そう、ですか……」
業盛は重盛と目を合わせないように軽く横を向いた。
重盛はそれを咎めず、後ろに控えている鈴鹿と一郎に目を向けた。
「鈴鹿、君の歳は幾つかな?」
「十六です。隣の一郎は十になります」
「という事は、業盛より一歳年下か……」
思案する重盛の表情が、急に晴れた。業盛は一瞬嫌な予感がした。
「どうでしょう。君と業盛が義兄妹になるというのは。
血は繋がっていなくとも、義兄妹になれば赤の他人ではなくなります。
それに私が仲介すれば古参達も文句は言えなくなるでしょう」
「いや、それは流石に『お願いします!』なにっ!」
鈴鹿の声が業盛を遮った。慌てて振り返ると、鈴鹿が爛々と目を輝かせていた。
「私達のためにここまでしてくれる領主様と義兄妹になれるのならば、
これほど光栄な事はありません!」
「そうですか、では早速義兄妹の杯を交わしてもらいましょう」
なにやら本人不在のところで話が進んでいる。
なんとか断ろうとしたが、それよりも早く業盛の目の前には酒に満ちた杯が置かれた。
「こういうめでたい事は、早めにやった方がいいでしょうから」
「領主様、早く誓いの杯を!さぁ!さぁ!さぁ!」
最早、断れる雰囲気ではなくなっていた。
- 89 :変歴伝 第四話『会に合わぬ雑花』 ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:49:09 ID:Q3G2sITg
- 今日は疲れただろうから泊まっていきなさい。そう言って、重盛は部屋を用意してくれた。
重盛の事は嫌いだが、上司の親切を無下に断る訳にもいかない、一日ぐらいは我慢しよう。
いつもの業盛であれば、その思考にありつけた。
しかし、現在は重盛に対する嫌悪感以上のものが、業盛に圧し掛かっていた。
「えへへ、あにさまぁ〜」
鈴鹿が崩壊したのだ。背中に鈴鹿の大きな胸が押し当てられた。
「鈴鹿、近い、当っている!もう少し離れろ!」
「嫌です。それと、勘違いしないでください。当っているのではなく、当てているのです」
「そっ……そんな事はどうでもいい!俺が言いたいのは、分を弁えろという事だ!」
「分とはなんですか?兄様は兄様です。妹が兄に抱き付いてなにが悪いのですか?」
鈴鹿はますます抱き締める力を強めた。
業盛は一郎の方を見た。一郎は一郎で、そっぽを向いていた。どうやら助ける気がないらしい。
このままでは、過ちが起きないとも限らない。
「……はぁ……、買い物に行ってくる。二人はそこで待っていてくれ」
なんとか理由を見付けて、業盛は外に飛び出した。
業盛が買う物といったら果物ぐらいである。
季節的に李が旬だったので、それをいくつか買った。
香り高く、瑞々しい李を見つめる業盛の心中は、重盛の屋敷に帰りたくない、というものだった。
予想だにしなかった展開は、業盛の精神をごっそりと削り、疲弊させた。
この疲れを取り除く術は、甘酸っぱい果物を食べる事しかない。
ちょうど近くに酒家を見つけた業盛は、そこに腰を下ろした。
二、三個李を食べ終えた業盛の耳に、聞くに堪えない声が入ってきた。
そちらの方に目を向けると、十人ほどのごろつきが誰かを囲って脅していた。
手に付いた果汁を舐めた業盛は、道端の石を何個か拾うと、おもむろに立ち上がった。
「前は邪魔が入ったが、今度こそ落とし前付けてもらおうかぁ〜」
「やれるものならやってみなさいよ!その汚い手で触ったらただじゃおかないんだから!」
「ただじゃおかないだぁ〜?どうおかねぇん……ウガッ!」
女に手を出そうとしたごろつきの一人が、白目を剥いて卒倒した。
突然の出来事に、ごろつき達は騒然となった。
そのごろつきの集団の中に、以前業盛のライチを駄目にしたデカブツとチビもいた。
「あっ……兄貴あれ!」
「なん……ゲギャ!」
しかし、すぐにデカブツは悲鳴を上げて卒倒した。チビはまたも下敷きになった。
「なんなんだよ、これ……。逃げろ……、逃げろぉおお!!」
ごろつき達は、卒倒した者達を担ぎ逃げた。
後に残っていたのは、これまた以前業盛を罵倒した不躾女だけだった。
その不躾女が、不機嫌そのものの顔で業盛に迫った。
- 90 :変歴伝 第四話『会に合わぬ雑花』 ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:49:59 ID:Q3G2sITg
- 「……あんた、また勝手な事を……。……前にも言わなかったっけ。勝手な事をするなって。
一度言った事も理会出来ないなんて、本当に馬鹿ね、あんた……。
そこまでして私と付き合いたいのかしら?」
業盛の胸倉を掴み、女はそう言った。その見下したような態度に、流石の業盛も鶏冠に来た。
「以前も今回もそうだが、助けてやったのにその言い方はなんだ!
それに、なに訳の分からない事を言っている。なんで俺がお前と付き合わなければならんのだ!」
「なに強がってんのよ。あんたも私目当てなんでしょ。
言っとくけど、私はあんたみたいな童顔の餓鬼は端から願い下げなの。
分かったらさっさと目の前から消えなさい。……あぁ、言っても分からないか、あんた馬鹿だし」
「いい加減にしろ!こっちだって、お前みたいな不躾女願い下げだ!そっちこそ失せろ!」
「ッ……、人が親切に言っていればいい気になって……。
……いいわ、馬鹿のあんたにも分かるように教えてあげる」
そう言って、女は傲然と歩き出した。
案内された場所は、都の中にある中規模の屋敷だった。
「ここは私の家よ。ここだったら大声を出しても誰の迷惑にもならないわ」
「大声?それはどういう……」
言い掛けて、業盛は急速に後退した。女の手にはどこから取り出したのか刀が握られ、
先ほどまで業盛がいたところには、その白刃が振り下ろされていた。
「よく躱したわね」
「教えるとは、こういう事か!」
「えぇ、馬鹿のあんたにはこれが一番分かりやすい……でしょ!」
女は一瞬で間合いを詰め、再び斬り掛かってきた。
「抵抗したければしてもいいのよ?どうせ、私には勝てないでしょうけど」
女は余裕の笑みを浮かべ刀を振るった。しかし、業盛は刀を抜かず、
涼しい顔で、黙々と女の剣撃を躱し続けた。それが女の癇に触ったらしく、
「そう……、そんなに死にたいの。
少し痛い目に遭ってもらうだけで許してやろうと思ったけど、やめたわ!
お望み通り殺してあげるわ!」
女は素早く刀を上段に構えると、凄まじい速さで振り下ろした。唐竹割りである。
防御の出来ない業盛がこれを喰らったら、死は免れないというのに、
どういう訳か、今度は躱す動作すらしなかった。
鈍い音が響いた。女の振り下ろした刀は、真ん中の辺りでぽっきりと折られていた。
「えっ……嘘……どうして……?」
「別に……。刀身に手刀を打ち込んだだけだ」
「嘘よ!そんな曲芸みたいな事、出来る訳がないじゃない!第一……」
「確かにお前はごろつき共に比べれば強かったよ。だが、所詮はその程度だ」
業盛はそう言い残し、気だるそうにその場を後にした。
後ろで女の怒鳴り声が聞こえたが、業盛はそれを無視した。
- 91 :変歴伝 第四話『会に合わぬ雑花』 ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:50:24 ID:Q3G2sITg
- 重盛の屋敷に帰ってきたが、鈴鹿は相変らずだった。
業盛を見るなり、抱き着き、胸の谷間に業盛の顔面を押し付けた。
むにゅむにゅと吸い付くような柔肉に、業盛の理性は砕けそうになったが、
意を決して鈴鹿を突き飛ばした。
「いい加減にしろ、鈴鹿!これ以上は義兄妹でなくともやりすぎだ!」
「そんな事言って、本当はもっと挟まれていたかったんじゃないですかぁ?」
「うるさい!」
室内のゆるい空気を切り裂くような、業盛の怒鳴り声が響いた。
「お前がそうなった原因が義兄妹の契りにあるのなら、
遠江守様には悪いが義兄妹を解消してもらう。屋敷の事は、また改めて考える」
これで少しは鈴鹿の頭も冷えるだろう、と業盛は思った。
しかし、
「……いやぁ……」
出て行こうとして、鈴鹿に抱き着かれた。業盛はぞっとした。
先ほどまでの甘ったるさなど微塵もない、鬼気迫るものがあったからだ。
業盛は振り向く事が出来なかった。嗚咽が身体を通り抜けた。
「ごめんなさい……。もうあんな事はしませんから……、捨てないでください……」
「なにを馬鹿な事……」
「ひぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
鈴鹿はへたり込んでしまった。
「わっ……わた……、あっ……あに……さま……、きらっ……たら……、うっ……うぁ……」
「鈴鹿……、おい、鈴鹿!」
業盛が揺すっても、呼び掛けても、うわ言ばかりで全く反応しない。
「兄上、姉上を抱き締めてあげてください!」
困却する業盛に助言をしたのは一郎だった。
ずっと鈴鹿の横にいたはずなのに完全に忘れてしまっていた。
「とにかく、抱き締めてあげてください、早く!」
質疑の猶予もなく、一郎が急かす。
業盛も、鈴鹿を落ち着かせる方法が思い付かない。業盛は鈴鹿を強く抱き締めた。
それで、鈴鹿の嗚咽が止んだ。しばらく続けていると、鈴鹿は泣き疲れたのか眠ってしまった。
「一郎、一体なにが起こっているんだ?」
業盛はやっと疑問をぶつける機会を得た。一郎は心底呆れたという表情を浮かべた。
「まさか、まだ分からないんですか?姉上は、兄上の事が好きなのですよ。
兄妹としてではなく、女として」
「なっ……なにを馬鹿な……。俺は鈴鹿にそこまで……」
「好かれるような事はしていないと?姉上の事を付きっ切りで看病した事も、
屋敷内で虐げられていた私達のために奔走してくださった事も、好かれる事じゃないと?
兄上、あなたはあまりにも鈍感すぎます」
「いっ……一郎……」
「私は、兄上が姉上をどうしようと、口は出しません。
出た結果に従うだけです。……それでは、失礼……」
そう言って、一郎は部屋から出て行ってしまった。
出た結果に従う、などと言われても、業盛に鈴鹿をどうしようという気は全くない。
業盛は鈴鹿を布団に寝かせると、部屋を出た。
日は既に沈み、澄み切った空には大きな満月が浮かんでいた。
- 92 :変歴伝 第四話『会に合わぬ雑花』 ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:51:47 ID:Q3G2sITg
- 翌日、業盛達は自らの領地に向けて出発した。
鈴鹿は昨日の事を忘れたかのように業盛の腕に抱き着き、甘えているが、
発狂が怖くて怒る事が出来ない業盛は、場の流れで鈴鹿の髪を梳いた。
それが鈴鹿には気持ちよかったらしく、ますます業盛に甘えてきた。
こんな心寒く、そして甘い空間は滅多にない。
業盛達は山中の木の生い茂る場所までやって来た。そこで、業盛は強い殺気を感じた。
「ッ!」
鈴鹿と一郎を抱きかかえ、業盛は後退した。直後、地面に鉄針が突き立った。
二撃目がない事を確認し、混乱する二人を降ろした時、
木々の間から声が落ちてきた。いい加減に聞き飽きた、勘違い不躾女のものだった。
「なんで、なんで避けられるのよ!ちゃんと気配を消したのに、なんで!」
怒鳴り声と共に木々が揺れ、女が姿を現した。相変らず憎憎しい表情をしていた。
「またお前か!いい加減にしろ!」
「うるさい!あんた如きが私に命令しないで!
あんなまぐれ勝ちで、あんたにでかい顔されちゃたまんないのよ!
あんたを殺して、昨日の負けがただの偶然だったと証明しないと、私の気が治まんないのよ!」
「……お前みたいな人でなしは、後にも先に見た事がないぞ」
「うっ……うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」
子供みたいに女が喚き散らした。いい歳をした女性にあるまじき行為である。
女もそれに気付いたらしく、咳払いを一つし、業盛を指差した。
「とにかく、あんたを殺すまで離れてやらないんだからね。
今日からは震えて眠るがいいわ!」
問答無用にして清々しいまでの粘着宣言である。
それを聞いた業盛が、露骨に顔を歪めた。
鈴鹿だけでも苦労するというのに、なぜこんな不躾女の世話までも見なければならないのか。
業盛は、自分の女運の悪さを呪った。
道中、女は自分の素性を明かさなかったが、それは業盛が屋敷に帰って来てすぐに判明した。
偶然遊びに来ていた正連が女を見て、姉さん、と言ったからだ。
服部水城(みずき)、それが女の名前である。
誠実な弥太の姉が、こいつとは、と流石の業盛も驚きを隠せず、その時ばかりは目を見開いた。
- 93 : ◆AW8HpW0FVA:2012/03/10(土) 00:52:08 ID:Q3G2sITg
- 投稿終了です
- 94 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/10(土) 01:18:51 ID:yjOSgtCU
- やっときたあああああああああああああああああああああああああああああああああ
- 95 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/10(土) 02:21:51 ID:ygStcEew
- キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
- 96 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/10(土) 08:47:38 ID:CQTtRDfw
- ズボン脱いだ
- 97 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/10(土) 11:22:43 ID:dYiciL7g
- >>93
乙乙!
- 98 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/11(日) 05:23:46 ID:1MEp4HW.
- 乙!
3ヶ月ぶりか。
触雷もきてくれー
- 99 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/11(日) 10:28:33 ID:ojfPliOU
- 水城キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
- 100 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/12(月) 20:07:21 ID:bUTL6upU
- きたぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!
完璧なるヤンデレだ!!
- 101 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/12(月) 20:22:17 ID:S0i11gCs
- 水城ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ
- 102 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/13(火) 08:37:46 ID:Hsor9GK.
- 何だ、これ
同じヤツが書き込んでるのか?
- 103 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/14(水) 20:24:10 ID:GjaQbWOM
- 書き込みテスト
- 104 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/16(金) 15:32:38 ID:prDrkb82
- テステス
- 105 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/16(金) 16:48:48 ID:3jZzvSdo
- おっぱいぃい!!
- 106 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/17(土) 22:25:04 ID:V30pi0Hc
- >>100 完璧なるヤンデレ???それはよいしょしすぎ。
- 107 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/17(土) 23:58:51 ID:dPpDeb5Y
- 逆に、みんなの「ぼくのかんがえた完璧なヤンデレ」ってのをココで聞いてみたい。
みんなは、どんなヤンデレが好み?
俺はとにかく想いが強い娘。
相手が好きで好きで好き過ぎて、その想いに自分まで押しつぶされちゃいそうな……、
- 108 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/18(日) 05:40:07 ID:vrKFYANw
- 完璧を目指すな、最高を目指せ。
完璧は駄目だそこから先がない、最高ならまだまだ先がある。
それは全てにおいて言えることだ、ヤンデレだろうと、キモ姉妹だろうと、SSだろうと、完璧なんて妥協点にしかすぎない。
- 109 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/18(日) 21:19:56 ID:Z8X6YC/.
- >>108
よく言った
- 110 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/18(日) 22:33:26 ID:Eu1/wU3g
- >>108
熱い、熱いよアンタ……
- 111 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03:11:47 ID:STlZt21Q
- 思いつきの短編を投下します。
ろくに推敲とかしてないんでクオリティとかは気にしないでください。
- 112 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03:13:55 ID:STlZt21Q
- 駅前から少し離れた雑居ビルの一階に位置する喫茶店、ブレッド。
ガラス越しに店内の様子を覗いてみると女性の客が一人だけいる。
知っている顔だった。高校時代の同級生、久坂葵。この地域では有名な富豪の生まれだ。
緩いウェーブの掛かった長い黒髪に均整のとれた顔立ち、特徴的な大きな円らな瞳が一際目立っている。
紺色のシャツに、多分下はそこらで売っているようなデニムだろう。
黒縁の伊達眼鏡を掛け、地味目に装っているが遠目から見ても分かる様なお嬢様らしい気品が溢れている。
手持ち無沙汰そうにひとさし指に髪を巻きつけては頬杖をついて俯く。
どこか憂いを含んだ瞳だったが、葵は俺に気づいた途端、目の色を変えてにこりと笑った。
俺は愛想笑いで返し入り口の蝶番を軋ませる。
ドアに無理やり付けたであろう大きいベルが派手に音を立てた。
「らっしゃい」
店内にはボサノバ風の落ちつた曲が流れている。いい加減なマスターの声とマッチしていなくもない。
マスターに軽く会釈をして彼女のいる席に向かい、相対するように椅子に腰掛ける。
それからマスターが頭を掻きながらコップ一杯の水を差し出し、スタスタとカウンターの奥へ入っていった。
水の飲み干し葵を一瞥する。
「あー君は今までどこに行ってたんですか?」
それが彼女の第一声だった。俺はわざとらしく重い溜め息をつく。
「……分かってる癖に」
葵は悪戯っぽくふふっと微笑んだ。
「もう五年も経つのか。去るものは日々に疎し、もう忘れられたと思っていたがな」
「私は自分でも嫌になるくらい執着する女のようです。すいません、カプチーノ一つお願いします」
自嘲気味にそう言い、ついでに注文する。
カウンター奥から出てきたマスターがメモ帳に何か書き込み、今度は面倒そうに俺に目を向ける。
「水をもう一杯」
「公園の水でも飲んでろ」
おお手厳しい。
「それが客に対する態度かね?」
「客は商品を買う。金が無いなら帰れ」
口を開くたびに険悪になる俺とマスターのやりとりを葵が止めた。
「マスターさん!あー君に酷い事言ったら許しませんよ!私が払いますからブラックお願いします!」
マスターがばつの悪そうな顔をしてチッと舌打ち。そしてカウンターの奥に引っ込む。
「俺のことになるとすぐ怒るのは変わらないな」
「……みたいですね」
俯き加減で恥ずかしそうに葵が言った。
「えぇと、その、お知り合いなんですか?」
「ああ、あいつは大塚。小学校からの付き合いだ」
「えっ」
葵が素っ頓狂な声をあげ、目をしばたたいた後、「それはすいません」と軽く頭を下げた。
過去の友人に怒鳴った事を謝っているのだろうか。俺には分からない事だが。
- 113 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03:14:30 ID:STlZt21Q
- 大塚が熟練の技を披露しつつコーヒーを淹れる姿を見ていると、「こっちみんな」と言われた。
仕方なく葵に視線を戻す。だが特に話すことが無い。
今度はこっちが手持ち無沙汰になり、ぼんやりしていると唐突に葵が口を開いた。
「私が今日ここに呼び出した理由、解っていますよね?」
口を引き結び目が据わっている。舌先三寸で誤魔化すな、ということか。だが、ここはあえて。
「解らないな、ようやく連絡がついた元恋人との再開を楽しむ為か?」
「それもありますが……本質ではありません」
大方想像は出来ている。次に彼女は連れ戻すと言うだろう。
葵は肩をすくめて言った。
「……では、少し昔の話をしましょうか」
盛大に予想が外れた。それと同時に背中に嫌な汗が浮かぶ。
「五年ほど前の事です。私はペットを飼っていました。それはそれは大事にしていましたよ。
最初は反抗ばかりしていましたがちゃんと躾をするとそれも収まりました。
毎日決まった時間に三食与え、トイレの世話も、お風呂にも入れてあげて、
その後は太らないようにウンドウもしてあげました」
何かを思い出すように妖艶に笑みを浮かべる葵に思わず生唾を飲み込む。
だがその顔はすぐに落胆に変わった。
「その生活が1ヶ月もした頃でしょうか、私からペットを奪おうとする人が現れました。
最初からこの子は私のものなのに何度も『返せ』って言うんですよ?
最初は軽くあしらっていたのですがだんだんストレスも溜まってきまして、
お肌に良くないですし、いい加減騒々しいのでその人を処理しようと出掛けました。
ですが、それが間違いだったのかもしれません。
上手く処理が出来たので上機嫌で家に帰るとペットがいないんです。
私はその晩、泣きに泣きました。後日落ち着きを取り戻した私は、
何があったのか仕えているメイドに聞くと、
友達とか言う人が押し入ってペットと一緒に逃げたそうです」
葵がそこで言葉を切った。俺の隣に大塚が立っている。
「カプチーノとブラックコーヒー、お持ちしました」
小皿の上にティーカップとスプーンを乗せ机に置く。
「では、ごゆっくり」
伏し目がちにそう言い大塚が何かを呟いて店の奥に引っ込んだ。
「とりあえず飲みましょうか。冷めるのも嫌ですし」
あまり飲む気分ではなかったが葵の大きな瞳が俺を捉えて「飲め」と言っている。
仕方なくちびりちびり口の中に運ぶ。
「では、先ほどの続きを」
前置きし聞きたくも無い昔話が再び始まった。
「それから私はその友達とどこかへ消えたペットを探しました。
まぁ、紆余曲折はありましたが今年になってようやく見つけ出しました。
あなたというペットを……何かおかしな事でも?」
「いや、く、はは、なんでも、ない」
笑いが止まらない。困った時に笑うという日本人らしさが遺憾なく発揮されている。
- 114 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03:15:00 ID:STlZt21Q
- このままではいけないと脳が判決を下した。
太ももをつねり気を引き締めて今度はこちらから切り出す。
「それで、どうする気だ?その細い腕で俺を連れ戻すとでも?」
緊張のせいか口の中が異様に乾く。
半分も減っていないコーヒーを一気に飲み干すと、葵が笑みを浮かべた。
何かとてつもなく嫌な予感がする。すぐにこの場を離れろと頭の中で警鐘が打ち鳴らされている。
「ふふふ、流石にそんな事は出来ませんよ。あなたの幼馴染のあの人なら出来たかもしれませんがね。
あの可愛い子なら」
「……俺はもう行くぞ。これから仕事がある」
「もう少しだけいても良いでしょう? それにあなたって今は無職じゃないですか。
仕送りで生活しているんでしょう?」
「なっ……!」
下手に出歩けば見つかる可脳性が高くなってしまう。
その為俺は事情を話し止む無く親からの仕送りで生活していた。
誰のせいだと怒鳴りたくなったがそこをぐっと飲み込む。怒りで時間をつぶしたくは無い。
「もういい、俺はいく、ぞ」
席を立ち、少し歩いた所で酷い眩暈が襲った。
次第に意識が朦朧としてくる。
「くそ、なん、だ……これ」
あぁ、そうか。簡単な事だ。薬を盛られていたんだ。
ではいつ?葵は何もしていない。とすると大塚が盛った事になる。
「何故? と思っているでしょう?これも簡単な事、脅迫よ。
あなたを逃がしたのが大塚君って分かったのはすぐの事。でも探すのに手間取ってね。
去年ようやく見つけて、『あなたの居場所を言わなきゃ殺す』
って子供みたいに脅したら血相を変えて答えたわ。
あの時の顔ったら、ふふふ、あははっあはははははははははははははは」
警察に言おうか、と大塚は一瞬考えただろう。だが久坂の家は多方面と繋がっている。
言うに言えないだろうし、警察もきっと動かない。
大塚本人はここにいない。二人だけの室内に葵の高らかな笑い声が響く。
その声に力を抜き取られているのではと錯覚してしまうくらい全身に力が入らない。
駄目だ、立てない最悪這ってでもここを出なければ。
「ふっふふ、どお?お友達に裏切られて、悔しい?悲しい?
私は嬉しいわ! あなたのそんな顔を見るのも監禁し始めた頃以来だもの、
体の芯から嗜虐心を煽られるこの感じ、くひひひひ」
いつの間にか葵が俺を正面から見下していた。
「今夜はたっぷりお仕置きしてあげる。逃げる気も起こらないぐらいにね。ふ、ひひ、ひひひ」
残る力で葵を見上げると口を三日月の様に歪ませていた。
まぶたにも力が入らなくなる。
目を閉じればすぐにでも意識が離れるだろう、ああ、もうどうでもいい。
どうせ俺はもう逃げ出せれない。それならもう身を任せてしまえばいい。
あの生活もいいじゃないか。
逆らえば鞭が飛び、決まった時間に高級料理が並び、葵が俺の糞尿を飲み下し、
広い浴場に癒され、その後は夜が明けるまで葵の体を貪る。
それでいい、自由は無くとも不自由はない。
だから、だからもう寝てしまおう。
寝てしまおう。
- 115 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03:17:07 ID:STlZt21Q
- 投下終了です。
タイトルは特に決めてないんで題名の無い(ryでもいいですが、
勝手に付けていただいても結構です。
- 116 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 21:25:29 ID:rX7D.krk
- うん。いいヤンデレだった。
しかし不甲斐ない幼馴染だな。
- 117 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:08:33 ID:F4RGPhX6
- テステステスト
- 118 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:10:18 ID:F4RGPhX6
- 投下します。
続きじゃなくて短編ですが・・・
エロを書いたことがないので練習という感じです。
- 119 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:13:13 ID:F4RGPhX6
- 「俺卒業したらこの家出て行くよ。」
それは11月のある夕飯の時だった。
何を言っいるのか分からず、「何を言っているの?」と聞き返すほどだった。
「高校を卒業したらこの家を出て行こうかなって思ってるんだけど、どうかな?」
「ダメ!!」
自分でも驚く位大きな声が出たと思う。
恐らく今まで生きてきた中で一番だった。
「姉さん、聞きて。俺はもう姉さんの重荷にはなりたく無いんだ。」
「別に重荷なんて一度も思ったことなんて無いんだよ。」
間入れずに自分の意志表示をする。
この気持ちは本当だ。
一度もそんことを思ったことがない、思うはずもない。
たった一人の大切な家族だに重荷なんてそんなこと。
「でも俺のせいで大学を中退しただろ?働き初めてからだって毎日早く帰って来て家のことをする。恋人だって出来たことないじゃないか!!」と感情的に話す。すぐ感情的になるのがこの子の短所でもあり長所だ。
「恋人なんて要らないよ。君がちゃんとした大人になってくれたらお姉ちゃんはそれでいいんだよ。」冷静に悟す様に言葉を紡ぐ。
「そんなのは分かってる。姉さんはいつだって自分のこと蔑ろにして、俺のことを優先してくれた。それには感謝してる。だから俺なんかに構わず自分の幸せを掴んで欲しいんだ。」
「私は別に今の生活で充分満たされてるから大丈夫だよ。」
「それが間違えてるよ、姉さん」
そう言うと食べかけの御飯を残してリビングを出て行ってしまった。
ごちそうさまも言わないで。
俺は自分の部屋でベットに寝そべりながら姉さんとのさっきのやり取りを反芻していた。
俺たちには両親がいない。俺が中学三年生の時、姉さんが大学二年生の時に事故で死んでしまった。
本当に突然だった。急に死んでしまった両親の代わりに姉さんは大学を止めて働き始めた。
その時の俺は中学生で何も出来ずに姉さんに沢山苦労をかけた。
高校生になった今でもそうだ。
バイトや家事等はして姉さんの負担を減らそうとしても、俺がいるということは根本的な解決にはならない。
姉さんに幸せが訪れないのだ。
そんなことになって欲しくない。
今まで自分を抑えて生きてきたんだ。
これからは何にもとらはれずに生きて欲しい。
だから俺なんかにとらはれずに、自由に生きて欲しいんだ。
- 120 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:14:47 ID:F4RGPhX6
- 「家を出て行く。」あの子がそんなことを言うなんて。
どっかの雌豚にでもそそのかされのだろうか?
そんなはずがない。
あの子はお姉ちゃん子だ。
私がここまで育てたのだ。
あの子は良くもまぁ、私好みに育ってくれたものだ。私の全てはあの子であり、あの子の全ては私だ。
そうでないと
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
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おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい。
悪い害虫は付かない様に今まで見張ってきた。
姉である私から見ても弟はカッコいい。
あの子の笑顔だけで御飯三杯はいけちゃうぐらいだ。
一人暮らしなんかさせたらどんな害虫が付くかたまっもんじゃない。
どうせ一人暮らしがカッコいいとか夢をみているんだ。
一時の気の迷いに違いない。
だからちゃんと教育しないとね。
- 121 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:15:21 ID:F4RGPhX6
- コンコンと控えめにドアがノックされた。
この家でノックするなんて一人しかいない。
「どうぞ」と俺が返事をすると姉さんがお茶を持ってきた。
さっきの話の続きをしにきたようだ。
「姉さんやっぱりなんと言われようと俺は出ていくよ。」
「ダメ。そんなの許さないんだよ。お姉ちゃんの言うことが聞けないの?」
そう言いながら小首をかしげる。
俺はいつもお姉ちゃんの言うことを聞いてきた。
だから誰もが訪れる反抗期もなかった。
でもこれが最初で最後の反抗期だ。
「何でそんなに俺が一人暮らしすることが嫌なんだよ!!」
姉さんはハァーっとため息をつきやれやれといった感じで説明を始めた。
「お外はね危険がいっぱいなんだよ。本当はね、家から一歩だって出したくはないんだよ。」
「俺は今まで姉さんに守られて生きてきた、だから今度は姉さんを守れる男になりたいんだ。」
俺の言葉を聞いて姉さんはゆっくり首を横に振った。
「そんな必要ないよ。今まで通り私が守って上げるんだよ。だから心配しなくていいよ。それが私の使命であり宿命なんだよ。」
満面の笑みだった。
目は全然笑ってないのに、口元は三日月の様にくにゃりと曲がっていた。
俺は恐怖した。ここまで姉さんに恐怖したのは初めてだった。
いつもコロコロと笑っていて、優しい姉さんだった。
俺が姉さんをこんな異質な物に変えてしまったのか?
俺がそんなことを考えていると姉さんが急に口を開いた。
「私の教育がしっかりしてなかったからこんな不良みたいなこと言い出すんだね?分かったよ、今から教育すればいいんだよ。」
教育?何を言ってるんだか全然わからない。
教育が何のことを指しているのかわからないが、今の姉さんが異常なのは一目瞭然だ。
まずは逃げないと、俺の第六感が逃げろ、逃げろと警告している。
姉さんが懐からなんか怪しげな小瓶を取り出してきた。
瓶の蓋を取ってその中身を自分の口に含んだ。
そのまま立ち上がり、俺の前まで来る。
俺は逃げないといけないと思っているのに、目の前の姉さんが余りにも異質過ぎて体が動かない。
そして俺の頭を腕でホールドしてそのままキスをした。
- 122 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:16:01 ID:F4RGPhX6
-
私は今大事な人とキスをしてる。
大事な人とするキスがこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。
私はこのまま唇を舌でこじ開けて自分の口のなかにある液体を流し込む。
そのまま舌でこの子の口の中を陵辱する。
クチュクチュとお互いの唾液が混ざり合って厭らしい音が鳴り響く。
「うぅ・・」と苦しそうに呻くが止めてやらない。
舌を引っ込めようとしたのを私の舌で追撃する。
強引に私のホールドを振りほどき、私を押し返す。
お互いの口に銀色の唾液の橋がキラリと光った。
混ざり合った唾液をコクりと飲む。
今まで飲んだ飲み物よりも極上で、魅力的で甘美だった。
「はぁはぁ・・・・。」
呼吸が乱れる。まるで体育のマラソンで走ったあとのようだ。
「姉さん、どーしてこんなことを・・・」
呆然とした顔でそんなことを聞いてくるのが可笑しくて、思わずクスリと笑ってしまった。
私が笑ったことが気に入らない様で
「何で笑っているんだ?教えろよ!!」と怒鳴った。
「これはね、教育なんだよ。間違った道に進もうとしている家族がいるならそれを正すのが家族の役目なんだよ。だから教育するんだよ。」
「姉さん、こんなの間違えてるよ。姉弟でこんな事したら・・・」
そこで言葉を濁し、目を逸らした。
なぜそのように言葉を濁し、目を逸らすのかが私にはわかる。
自分の吐いた言葉に自信を持てないからだ。
人間は都合が悪いと目をそらす生き物だからだ。
「姉弟でこんな事したら何?」
わざと唇に指を持っていき、なるべく妖艶さを醸し出す。
それを見ておあずけの食らった子犬の様な顔をする。
鏡の前で練習しておいてよかった。素直にそう思う。
今までおあずけを食らっていたのは私の方だ。
これからは好きにさせてもらう。
- 123 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:16:26 ID:F4RGPhX6
- なんだろう?この感じ。
ドクドクと心臓が動いて止まらない。
ドキドキするし、乱れた呼吸が整わない。
それに下半身が今までに経験したことがないくらいに異常に熱い。
理由は何となく分かってる。
「姉さん、俺に一体何を飲ましたんだよ?」
整わない呼吸で、なんとか声を絞り出す。
「そんなの知らないんだよ。最近のインターネットは便利だよー。でも一つ言っておくと素直になるお薬かな?」
俺はそんな得たいのしれない物を飲まされたのか。
でも体がどんどん熱くなる。
やばい。姉さんの前なのに欲望をぶちまけたい、ぶちまけたい。
姉さんが俺にフラフラと近づいて来て俺を押し倒した。
足に踏ん張りがきかずにそのまま倒れ込んでしまう。
俺を見下ろしながら、シュルシュルとスーツを脱いでいく。
姉さんは下着だけの姿になった。
いつも身に付けているしま○らで買っている安物の下着じゃなくて黒色の大人の女性の下着だった。
「どう?興奮しちゃう?この前の週末に同僚と買いに行ったんだよ。」
普段休日でもあんまり外出しない姉さんが珍しく外出したと思ったらろくでもないことを。
その下着のせいでぷつりと数少ない理性の糸が一本切れた気がした。
姉さんは俺のズボンのチャックを下に降ろして、愚息を愛おしそうに取り出した。
「なっ何してんだよ。止めて。」
「そんなこと言う割にはこっちの子はこんなに元気なんだよ。本当は嬉しいんじゃないの?」
ペロリと俺の愚息を舐める。
ゾクゾクと背中に何か得体のしれないものが駆けずり回る。
「もう我慢できない!!いただきますなんだよ。」
パクリと俺の愚息を加え込んでジュルジュルと下品な音を立てながらストロークをし始めた。
「あっああダメ・・ダッダメだ、姉さん。お願いだから。」
力のない声しか出てこない。
いつもお淑やかな姉さんからは考えられない位に下品だった。
そしてそれは俺に暴力的な快感が与える。
「姉さんそれ以上やると・・・」
「ふぃふぃよ。ふぁして。」
くわえながら喋られると、口がモゴモゴして更に気持ちが良かった。
もう限界だった。
「姉さん!!」
俺は叫ぶと自分の欲望を姉さんにぶちまけてしまった。
- 124 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:16:52 ID:F4RGPhX6
- 私はわざとコクりと大きな音を立てて弟の精液を飲んだ。
彼はそれを熱を帯びた視線で見ている。
初めて飲んだ精液はヌルヌルとしていて喉越しは最悪だが好きな人のであると思うと不思議といくらでも飲めそうな気がした。
私にもどんどんと薬が効いてきたようだ。体が熱く、暑くなってくる。
口に含んだだけでもこんなになるのだから、実際に飲んだらどうなるのだろう?想像するのも恐ろしい。
それでも必死に耐えているこの子はとても可愛いと思う。
いつもは少しクールぶっていてるせいか今はしおらしくて5割増しくらいで可愛い。
まあ私から見ればいつも可愛くて最愛の弟なのだが。
私は立ち上がり愛液でグショグショになったショーツを脱ぎ捨てて、ブラジャーを取った。
そしてそのまま馬乗りになる。
いわゆ対面座位の体制だ。やっぱり初めては顔が見えてる方がいいと思うからだ。
それにお姉さんだからリードしてあげなきゃ。
「姉さん本当にするのか?」
さっきまでの拒絶とは違い、不安そうに聞いてきた。
「大丈夫、お姉ちゃんに任せておけばいいんだよ。」
ああ、欲しい。
この子が。この子が欲しくてたまらない。
笑った顔も、泣いた顔も、泣き叫ぶ顔も、すべて私のものにしたい。
声も、瞳も、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、私のものに。
少しづつ腰を下ろしていく。
秘所と鈴口がふれあったと同時に、私は一気に腰を下ろした。
我慢できなかった、早くこの子を感じたかった。でも失敗だったのかもしれない。
痛いイタイいたい痛いイタイいたい痛いイタイいたい。
初めてが痛いのは聞いていたが、ここまで痛いとは。
でもでも大切な人とつながっていると思うと我慢できそうな痛みだと思う。
むしろ心が満たされていて幸せの様に感じているようにも思える。
「姉さんももしかして初めて?」
「大丈夫だよ。私に気にしないで、好きなように動いて。私はお姉さんだから全部受け止めてあげるんだよ。」
そう言うとコクりと頷いて、腰を動かし始めた。
「・・・ああ・・・、・・・私の中で・・・。んっ、んっ・・・」
理性と倫理観の壁が崩壊した瞬間だった。
- 125 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:17:25 ID:F4RGPhX6
- 「あっ・・・きゃうっ・・・いっ・・・つうっ・・・ああっ・・・はあっ・・・やんっ・・・あああっ・・・んっ・・・あんっ・・・うあっ・・・ああああっ」
姉さんの声に艶が増した。
俺はいったん腰を止める。
「あっ何で・・・止めるの?」
まだまだ物足りないといった様な顔を俺に向ける。
「私は平気だよ。・・・もっと・・・はげしくても平気だよ。だからその・・・めちゃくちゃに・・・して。」
あまり痛くはなさそうだ。
俺は腰の動きを速めた。
「ひうっ、ああっ、んんっ、あんっ、いいっ、ひゃふっ、あっ、ああっ、んっ、もっとっ、ああっ、ひうっ、あうっ」
俺の愚息と姉さんの膣がこすれるのがすごい快感になる。
姉さんも俺の前で喘ぐ。
俺は腰の振るスピードを早めた。。
こすれあう性器がクチュクチュと卑猥な音を立てる。
腰を止めずに姉さんの胸、首筋、唇、頬などありとあらゆるところにキスすし、しゃぶりつく。
胸を強く揉みほぐす。そのたびに膣が愚息をキュッキュと締め付けが強くなる。
組み伏せられ快感に身をよじり喘ぐ姉さんは何よりも色っぽかった。
「ひいっ、んんっ、ちゅっ、ぷはっ、んあっ、あんっ、はっ、うっ、ああっ」
クチュクチュと卑猥な音が部屋に響く。
「ひいっ、ああっ、あんっ、うっ、ひゃうっ、あっ、ああっ、あああああーーーー!!」
ひときわ大きく喘ぐ姉さん。
膣の締め付けが一気に強くなった。
どうやら言った様だ。
俺は腰を止めた。
姉さんはとろんとした目で荒く息をつく。
ゆっくりと膣から硬いままの愚息を引き抜く。
愛液に微かに血が混じっていた。 姉さんは身をよじった。
ほんのり染まった肌には汗が玉のように浮かんでいて、呼吸が整っていなかった。
「姉さん、俺まだ・・・」
姉さんは硬いままの俺のを見ると、焦点の定まらない目でぼんやりと頷いた。
「まだまだ出来るんだよ。」
姉さんはそう言いうと四つん這いになってお尻を向けた。
自らの白い指で性器の入り口を開く。
愛液でぐしょぐしょの膣の入り口が目に入る。
「私のアソコを君のおチンチンでたくさん突いてだよ。」
あられもない姉さんの痴態。
頭がおかしくなりそうな興奮。俺は姉さんの腰をつかみ、一気に挿入した。
- 126 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:17:56 ID:F4RGPhX6
- 頭がおかしくなりそうな位突かれる。
子宮まで届いた時また逝きそうになる。自分で一人でしてる時とは違う快感。
「あん!!もっともっと・・・あぁ・・お姉ちゃんを、・・・突いて。壊して」
「姉さん・・・姉さん。」
この体制じゃ顔を見れないのが残念だ。
パンパンとお互いの性器が当たる音と私の喘ぎ声が近所迷惑になるんじゃないかと思う位に部屋に響きわたる。
私のアソコを突く速度がさらに上がった。
「姉さん。お、俺もう我慢できない・・・」
ぱんっ、ぱんっ、と柏手を打つような音が響く。お互いの結合している場所からはクチュクチュと卑猥な音がする。
「ああっ、んあっ、ひうっ、ひぐっ、あんっ、あああ!」
膣をえぐる快感に私は熱い息を吐いた。
責められる体は勝手に喘ぐ。
体中がもう汗だくだ。
「あうっ、らめっ、ひいっ、らめ、あんっ、ああ、ひぎぃっ、ひゃうっ、らめっ、ひあっ、しゅごい、ああっ」
頭の中が真っ白になる。
「姉さん。お、俺もう我慢できない・・・」
「ひっ、ひいよ。中に、なかにひょーだい。お姉ひゃんの中に・・・」
そう言うと膣の中に何か熱い感覚が広がった。
「らめっ、もうらめ、あん、へあっ、ああっ、んんっ、あっ、あっ、あっ、ああっ、ああああああああああっー!!!」
精液で私の膣内が満たされる。
私の感覚では何分、何時間も射精されていく感じだった。
膣からおチンチンの感覚が消える。抜いたのだろう。
そのまま心地よい熱さと気だるさに包まれながら私は意識を手放した。
- 127 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:18:28 ID:F4RGPhX6
- 目を覚ますと弟が可愛い寝息と立てていた。
いつ見てもキュートな寝顔だ。
私はこの子のことを愛している。
それは家族愛だけじゃなくて、男と女の関係でもだ。
物心が付くよりも前のお母さんがこの子を生んだ時から運命を感じていた。
そしてこの子には知らない秘密が私にはある。
両親は事故で死んだと思っていることだ。
確かに両親は事故で死んだが、その事故の原因は私が作ったものだ。
それは私が殺したも同然だと言うことだ。
何故かって?答えは簡単だ。
邪魔だった。私たちが愛しあうには両親という存在は邪魔だった。
だから事故に見せかけて殺した。
現実世界には薬で小さくなった名探偵なんかは居ないわけで、私が犯人だとバレることもなかった。
一種の掛けだったがこれが成功した瞬間、神様は私たちを祝福してくれたんだと思った。
そして今日また一歩私は幸せになった。これからはどんどん幸せになっていくだろう。
そのように思うと顔が自然とニヤけてしまう。
「これからもよろしくだよー。」
そう言うと私の最愛の伴侶に出来るだけ優しくキスをした。
- 128 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/03/20(火) 00:20:44 ID:F4RGPhX6
- 終わりです。
タイトルは「家族教育」です。
もう一本の方も近じか・・・
ではでは
- 129 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/20(火) 00:44:04 ID:82fjvZ1U
- しまむら....
- 130 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/20(火) 10:27:52 ID:3T7UtNgg
- >>128
乙です!
- 131 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/20(火) 10:48:12 ID:9/u7G56I
- >>128
gj!
よかったぜ!
- 132 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/21(水) 02:12:01 ID:BRZlwkZw
- >>128 GJ!!イイネ!!
- 133 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/22(木) 13:20:51 ID:0XCtlsTk
- 質問なんだけど、「男のヤンデレ」って
男→男 の場合のみを禁止してるのか
男→女 の場合もだめなのか
男と女が相思相愛なヤンデレの場合はどうなのか
みんなはどう考えてるの?
- 134 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/22(木) 13:27:51 ID:JjDBmS32
- 男ヤンデレは801あたりでやってんじゃない?
- 135 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/22(木) 15:39:18 ID:XRveybqg
- >>133
テンプレをよく読め。
男は専用スレあるから、ここで議論するな。
- 136 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/22(木) 17:19:28 ID:CxQ1G4jk
- テンプレも読めねぇのかゆとりは
さすが春休みだな
- 137 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/22(木) 18:22:59 ID:H5TsLvQE
- ここまでテンプレ
- 138 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/23(金) 18:28:42 ID:tUyjt3pQ
- ↓のスレからヤンデレssが大量にレスされます
- 139 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/23(金) 20:54:34 ID:w4JzPpUs
- 私だけを見て…
- 140 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/23(金) 20:55:51 ID:dqgw/y/2
- http://i.imgur.com/jZVuy.jpg
- 141 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/23(金) 20:56:05 ID:dqgw/y/2
- 誤爆
- 142 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/25(日) 23:09:57 ID:0Di/RPpE
- だれかいる
- 143 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/25(日) 23:54:52 ID:BVat41SY
- 今、異世界召還物ファンタジーでヤンデレ書いてるんだが...。
需要あるかな?
- 144 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/25(日) 23:55:30 ID:XnPQkl3A
- >>143
あるよ!
- 145 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/25(日) 23:56:20 ID:fIFjkje.
- きたい
- 146 : ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:23:33 ID:cIlpiggY
- 異世界召還物第一話書きあがったので投下します。
題名は「星屑ディペンデンス」です。
- 147 :星屑ディペンデンス 第一話 ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:24:18 ID:cIlpiggY
- もしも、魔法が使えたら。
それは、誰しもが一度は思い描く夢である。
絵本や御伽噺、最近であればアニメやゲーム。
何時の時代も、それは人間の空想の中心にある。
幼い頃、布団に入ってから寝るまで、魔法使いの夢を見た人も多い筈だ。
もちろん、魔法について夢想するのは子供だけ、と決まっている訳では無い。
口に出さずとも、頭の中ではファンタジーな世界が展開している人というのは結構居るものだ。
そういった人達が小説や漫画といった物を産み出すのだから当然といえば当然だが。
かくいう俺も、そんな人間の1人だった。
小さい頃から、いつもそんな事ばかり考えていた。
順調に厨二病の道を歩んでいたが、普段は普通に振舞っていた為、周りには結構友達も居た。
高校に入学し、文芸部に所属したと言う事もあり、考える理由と場所には事欠かなかった為、空想は加速していった。
授業中だろうがなんだろうがお構いなしに、暇さえあれば自作の厨二小説の構想を考えていた。
だから、俺はそんなに驚かなかったのだ。
突然、魔法の使える世界に召還されたと言われても。
- 148 :星屑ディペンデンス 第一話 ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:24:56 ID:cIlpiggY
- 「...ふむ、お若いの。そろそろ起きて下さらぬか。」
頭上から声を掛けられ、ゆっくりと目を開く。
目に入ってきたのは見慣れない光景。
星型の文様とよく分からない文字が沢山刻まれた石造りの天井。
優しそうな微笑でこちらを見つめる白髪の老人。
明らかに自分の部屋ではないその光景に、即座にこれは夢であるという可能性を思い浮かべる。
暫く何もせず、黙って今の状況を考えていると、先程声を掛けてきたであろう、目の前の老人が口を開いた。
「突然、こんな事になって、さぞ驚かれていることじゃろう。今、説明して差し上げるのでな。名を聞かせて貰えぬじゃろうか。」
老人は再び微笑みながら、しわがれた、しかし温かみのある声で名を尋ねる。
「...日鏃 龍です」
答えない理由も無かったので、素直にそう答えた。
「そうか...姓がヒヤジリで、名がリュウと申すのか。リュウ殿と呼んでも構わないかな?」
「あ、リュウでいいです。」
「そうか、ではリュウよ。始めに言っておくが、今起きている事は夢では無い」
体を起こし、頬を抓りながら、老人の話を聞く。
薄々気付いていた事だ。何せ俺は、今までこんなにはっきりと実体を伴った夢を見たことが無かったから。
では、今のこの状況は、なんらかの理由で俺が自宅以外の場所に連れてこられたということになる。
俺は昨日、しっかりと自室のベットに入った事を覚えている。
自作小説の続きを少し書き足して、明日も学校だからと早めに布団に潜り込んだのだ。
更に、この老人の顔を知らないと来ている。
さっき、名前を聞かれたので、初対面であることはほぼ間違い無いだろう。
...いよいよ、危険を意識して来ていた。ファイティングポーズ。
「ああ、そんな身構えんでも。君に危害を加えたりせんから。安心して欲しい。」
そういってまた微笑む老人。
特に危険は感じないので、説明とやらを黙って聞くことにした。
「ああ、すまないの。自己紹介がまだだった。ワシの名はエヴァルド・ヴィンズ・グロンキ。ここで召還師をしておる。」
...召還師?
おおよそ日常生活では聞き慣れない言葉が出て来た。
自分は魔法とかそういうファンタジーな事を考えるのが好きなので、何となく雰囲気は掴めるが...。
もし、もしも俺が考えている通りの言葉だとすると...。
さっき黙って聞こうと思ったばかりだが、早速口を挟んでしまった。
「あの...えっと...エヴァルドさん?...」
「エヴァンで良い。」
「えっと...エヴァンさんは...召還師なんですか?...」
「そうじゃ。」
「召還師っていうと...間違ってたら恥ずかしいんですが、あの魔物とかを呼び出す?...」
エヴァンは眼を見開き、途端に嬉しそうな顔をした。
「そうじゃ。よく知っておるなぁ。これは話が早く済みそうじゃ。」
「...」
眼が点になるとはこの事なのだろうか。
「驚くのも無理は無い。見たところ、君は魔法の無い世界から召還されたようじゃからな。」
...オイ、皆聞いたか。魔法だってよ。
幼い頃から魔法を夢見てきた身としては、願ったり叶ったりなこの状況。
しかし、伊達に17年生きてきた訳ではない。この世に魔法なんて存在し得ないことくらい知っている。
だからこそ、俺はその空想の世界に魔法を遊ばせてきたのだ。
残された可能性は二つ。この爺さんが末期の厨二病を拗らせているか、はたまたこの爺さんが危ない宗教団体の一員か。
前者はまだ良い。今すぐこの爺さんの横っ面を張り飛ばして、眼を覚まさせれば何とかできる。
しかし、後者だった場合はヤバい。俺に狂った盲信者集団をどうにか出来るほどの力は無い。
あぁ、どうすればいいんだ俺は!早く状況を見極めて適切な対処をしないと...!
逡巡する俺を前に、エヴァンは苦った顔で笑う。
「その顔は疑っておる顔じゃな?ここに来た者はみーんなそんな顔をする。折角、今回は説明の手間が省けそうじゃと思っておったのに...」
1つ溜息を付き、
「しかし、信じざるを得なくなる。まぁ、百聞は一見に如かず、じゃな。」
徐に立ち上がったのだった。
- 149 :星屑ディペンデンス 第一話 ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:25:59 ID:cIlpiggY
- ・
・
・
・
・
結論から言うと、エヴァンの言う事は本当だった。
徐に立ち上がったエヴァンは、掌を上に向けると、何かを呟いた。
すると信じられないことに、その掌の数センチほど空中に青白い炎が浮かんだ。
俄かには信じ難かったが、エヴァンの周囲に更にいくつも揺炎が浮かんだのを見て降参(?)した。
それからドヤ顔のエヴァンにいくつかの事を聞かされた。
俺こと日鏃 龍は地球とは違う異世界に召還されたこと。
この世界では魔法が当たり前のように使用されている事。
これから『テルミヤ サキ』という人物の下でこの世界の事を詳しく教わると言う事。
「...と、言う事で詳しい事はサキの下で一緒に暮らしながら聞いて欲しい。サキは君と同郷の者だからな。話も通じるじゃろう。」
「分かりました。」
「よろしい。しかし、今回は説明の手間が省けて助かったわい。それもこれも、君が予想以上に冷静だったからじゃ。他にも召還された者はたくさんいるのじゃが、皆一様に取り乱してしまってなぁ。」
「いや〜、元より楽観的なのと、こういう世界に憧れていたから...命の危険が無い限り、この世界はワクワクします。」
「...命の危険、か...」
「...どうしました?」
「ん?いや、なんでもないぞ。それより、サキが迎えに来るまで少しあるのう。他に何か聞きたいことはあるかの?」
「あ、いくつかあります。まず、何で言葉が通じるんですか?俺が元居た世界とは言葉が同じ...な訳じゃないですよね?」
「ああ、それはな。」
そこで言葉を一旦切り、部屋一体に書かれた魔方陣に顎をやる。
「君が召還されたこの魔方陣、いわばフィルターのようなものでな。この世界に必要な最低限の事柄が自動的に習得されるのじゃよ。」
「へぇ...便利ですね。」
「言語の他には、魔力や特殊能力も付けられるのじゃ。」
「魔力って言うのは、魔法を使うエネルギーみたいなものですよね。特殊能力っていうのは...?」
「すまぬ...それについてはサキに聞いてくれ。今日はもう疲れてしまって...召還には大量の魔力を必要としてのう。一月に一度しか出来ぬくらいじゃからな。」
そういうエヴァンの表情は、確かに疲れて見えた。
「そうですか...じゃあ、最後に一つ...いえ、二つ、いいですか?」
「いいぞ。」
「あの...何故俺はこの世界に召還されたんですか?それと、俺は、元居た世界に帰れるんでしょうか?」
一瞬思案顔をしながら、
「何故この世界に召還されたかについては...サキに聞いてくれ。この世界の背景についても説明しなければ無くなるからの。」
「はい。」
「それで...帰れるかどうかについては...」
一つ間を置いてから、
「分からん」
「...。」
最悪、帰れないと言う答えを予想していたので、驚きはしなかった。
「古い伝承にはそれらしき記述もあるが...方法は分からないんじゃ...」
「そうですか。」
この世界の事はまだ良く分からないが、何とか生きて行く自信は漠然とあるので、特に何も感想はありません。まる。
この楽観的な性格は、果たして良い物なのか、悪いものなのか。今の俺にはまだ分からない。
「...こちらも一つ聞きたいんじゃが」
神妙な顔をしてエヴァンが言う。
「君は元居た世界に帰りたいか?」
少し考える。その間10秒程。
一つ咳払いしてから口を開いた。
「正直、どっちでもいいです。一つ心残りなのが、親とかに何も言わないで居なくなっちゃたから...心配してるかも、って事ですね。」
これでも、親にはそれなりに優しく接して来たつもりだ。
親も俺に愛情を注いでくれていたと思う。一般的に。
俺には妹と兄が居るが、やっぱり子供を1人でも失うのは辛い事じゃないんだろうか。
「...。」
エヴァンは申し訳なさそうに口を動かす。
「わしは...この作戦には反対じゃった。」
深刻な雰囲気が滲み出ていたので、居住まいを正す。正座。
「詳しい事は話せないが...君達にも暮らしがあるのに...無理やり誘拐のような...こんな事はしたくなかった...」
独白の様に、断片的にしか聞き取れなかったが、エヴァンは苦悩しているようだった。
確かに、皆が皆俺の様に楽観的では無い。中には家族を持つ者も居たかも知れない。
召還された理由はまだ分かっていないが、個人の生活を壊してまで呼び寄せるべきものなのか。
エヴァンの人の良さが分かる瞬間であった。
「...おお、サキが来たようじゃ。とにかく、もし何かあったらわしに気軽に相談してくれ。サモ村唯一の召還師であり、村長であるこのエヴァルド、いつでも力に成るぞ。」
- 150 :星屑ディペンデンス 第一話 ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:27:33 ID:cIlpiggY
- ・
・
・
・
・
「私が照宮 咲だ。これから暫くの間、宜しく頼む。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
そう言って握手を交わし、軽く自己紹介をした。
ゲームとかでよく見る騎士の鎧に身を包んだ彼女は、後で束ねられた黒髪を揺らしている。
身長は俺より少し下、大体165cmくらいだろうか。年は俺の一歳年上らしいがしかし、俺よりも圧倒的にお姉さんな感じがする。
顔立ちは日本人のそれを残しながらも、凛々しく整っている。早い話が美人だ。
「私の家まで少しあるからな。聞きたいことも山ほどあるだろう。話ながら歩こうか。」
俺がさっきまで居た場所は、森の奥の祠のような場所だった。
森を抜けて村に入るまで結構あるらしいので、色々質問してみる。
まず、この世界の背景と俺が召還された理由について。
この世界には、人間と魔族の二項対立があるらしい。
始めからぶっ飛んだ設定に、思わず「ドラ○エかよ!」と突っ込んでしまった。
彼女はそれを受けて笑いながら答える。
「私も召還された時には同じ事を思ったよ。魔王なんて、実際に聞けば酷く陳腐に思えるからな。」
「それで、魔族と人間がどうしたんですか...?」
「人間と魔族は現在戦争状態にあってな。毎日の様に戦いが起こっているんだが、人間と魔族には力差がありすぎた。魔族の持つ魔力は強大なんだ。」
「へぇ...それと俺が召還された事にどんな関係が?」
「うん、村長から『特殊能力』の話は聞いたかい?」
「ちらっと...。召還された時に付くって奴ですか?」
「そうだ。この世界に生きる人間は、稀に特殊な力を持って生まれる事があってな。それが唯一魔族に対抗する力なんだ。」
「へぇ...どんな物があるんですか?」
彼女は「そうだな...。」と呟き、
「例えば、私の場合は訓練せずとも剣が扱える、『騎士』という特殊能力を授かった」
彼女は腰に控えた剣に手を掛けながら答えた。
「それで、話の続きだが、この『特殊能力』は一万人に一人が持っているかどうか、と言う確立なんだ。」
「...それじゃ、魔族に対抗するには弱いですね。」
「その通り。しかし、どうにかして能力者を増やさなければ、魔族との戦いを制する事は出来ない。」
そして、俺の方へ振り向き、「そこで私達の出番さ」と微笑んだ。
「どういう訳か、別世界から召還された人間は、必ず特殊能力を持っているんだ。」
都合良過ぎじゃね?とも思ったが、聞いても分からないと思ったので、そのまま話を促す。
「だからこの世界の王は、世界中の召還師に一月に一度召還を行えっていう命令を出したのさ。」
「成る程。」
「...怒らないのかい?」
急に訪ねられ、思わず「何を?」と返してしまう。
「要するに君は、無理やり戦争に参加させられるんだぞ?日本は平和な国だったからな。それが急にこんな意味の分からん世界に連れて来られて...。」
「まぁ、何とかなるでしょう。」
咲の言葉を遮り、声を発する。
楽観的な俺には、正直戦いの恐怖とかは感じられなかった。それよりも、特殊能力を授かって悪と戦うと言う事にワクワクしてさえいたのだ。
「...君は凄いな。私が召還されたのは2年前だが、当時私は、村長に食って掛ったぞ。」
苦笑しながら、そう語る咲。
正直俺も、病気なんじゃないかというくらいに楽観的だと自覚している。
「まぁともかくとして、同じ故郷の者は君が初めてだから、正直少し嬉しいよ。」
- 151 :星屑ディペンデンス 第一話 ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:29:02 ID:cIlpiggY
- その後も少しこの世界の事について教わった。
魔法が使える変わりに、地球にあった様な科学は無い事。
地球との細かい違いはあるが、大きく生活が変わるようなことは無い事。
これから1ヶ月間、この世界での暮らしに慣れてから、戦争に参加する事。
その1ヶ月の間に少し戦闘訓練する事。
「...それと、君の能力についても調べないとな。」
「どんな能力なんだろ...。」
それから数分歩き、周りにも家が点々と見られるようになってきた。
レンガ造りの、いかにもファンタジーな家々だ。
「さ、着いたぞ。ここが私の家だ。」
咲は立ち止まり、前方を指差す。
他の家よりは小さいが、しっかりとしたレンガ造りの平屋だ。
「これからどのくらいになるか分からないが、改めて宜しくな。」
こうして、俺の異世界物語は幕を開けた。
危険な匂いも少なからずするが、それよりも魔法が使える世界に来た事を素直に喜んでいた。
これからどんな事が起きるのか、得意の空想の世界を展開する。
鼻歌を歌ったりして、気分は上々だった。
- 152 : ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 17:30:04 ID:cIlpiggY
- 投下終了です。
初投稿なので、文章的に拙い部分等、たくさんあると思いますが、そういった点、ご教授頂けると助かります。
第一話から壮絶な説明回になってしまいましたが、次回からはおにゃのこも登場させて行きたいと思っていますので、
ご容赦くださいm(_ _)m
しかも、病み成分が全く無いですね...時間が掛かるかもですが、必ず病ませるので期待してください
後、厨二なのは仕様です。
- 153 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/26(月) 19:04:11 ID:FWrlEQHI
- 期待の新人きた!
楽しみにしてるよ!
- 154 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/26(月) 21:47:10 ID:crWMZ7H2
- おつ
- 155 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/26(月) 21:57:11 ID:uS3va18.
- 段落、改行はこまめに。
厨二という説明は無用。
「このメス豚っ。」×
「このメス豚っ」〇
ある程度は書きためる。
初回から説明回で初めると読み手は疲れる。
それでもやるのなら、イベント込みでやるなどして読み手を退屈させない工夫をする。
小説の書き方でググれば色々出てくるので読み手に頼る前に自分で勉強しておく。
なんて書くと叩かれるか……
- 156 : ◆TvNZI.MfJE:2012/03/26(月) 23:07:12 ID:0QVtEbKQ
- >>155
ご指摘有難う御座いますm(_ _)m
読み返してみると、まだまだ甘い点がたくさん見えてきました
自分でも勉強してみたいと思います
これからも日々精進していきますので、宜しくお願いします
- 157 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/26(月) 23:23:13 ID:JT14Ocwg
- ここからどう病んでいくのか機体しる
三点リーダは ... より … のほうが見やすいかな?
- 158 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/27(火) 00:20:36 ID:/M6rtKJo
- マジレスするが……こういう職人を育てていけんとスレは廃れるんだろうな…。
実際、最近は過疎ってるからな。
期待してるから、頑張って欲しい。
- 159 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/27(火) 00:26:20 ID:jKfYVHQA
- 職人を育てるなんて言う事がそもそも傲慢だ
大体、小説作法なんてものはどうでもいい。そんなものは作品の面白さにほとんど影響しない
そんな小手先の技術を望むより面白い話を書いてくれることの方を望むべきだ
GJ。期待してる
- 160 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/27(火) 00:57:15 ID:/M6rtKJo
- >>159
お前は馬鹿か。
俺のレスに噛みついてどうする。
匿名掲示板ならではの無責任な叩きをするな、ということを暗に言ってんだよ。
説明されんとわからんのか。
- 161 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/27(火) 09:30:22 ID:w/SsDt6U
- >>152
乙です!
- 162 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/30(金) 12:44:32 ID:f6Xc.2lo
- 期待の新人っぽいの来てた。乙です!
- 163 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/30(金) 22:13:53 ID:2Oc4aK4.
- 初めからとかすげぇ楽しみにしているんだが、まだかなぁ
- 164 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/30(金) 22:15:30 ID:JhmXOW6k
- 催促イクナイッ
- 165 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/30(金) 22:27:00 ID:Se4M7Kj6
- ヤメタマエ!
- 166 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 00:51:51 ID:1ahPfP7M
- しかし続きが気になる星屑
というかファンタジー系が好き
- 167 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 06:55:08 ID:8xYY1HCY
- おいおいおい、圧倒的にwktk感がすっげぇんだが
- 168 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 09:51:43 ID:/DwmXpRA
- 過疎
- 169 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 14:25:01 ID:XUan7akI
- ヤンヤンヤン
- 170 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 15:48:21 ID:O6g0Bcp.
- 百合ヤンデレってアリなの?
- 171 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 15:53:50 ID:XrgT.IOg
- 自分は投下前に注意書きしてもらえば全然構わないけど嫌う人も居る
専用スレもあるし
ヤンデレ百合
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1221059806/
- 172 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 15:56:43 ID:XUan7akI
- 専用スレがあるならそっちでやった方が良いかもねー
- 173 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 15:56:48 ID:O6g0Bcp.
- >>171
thx
- 174 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 17:39:43 ID:UjrqF0ec
- こういう細分化見ると寝取り寝取られスレはすごいと思う
このスレの羊と悪魔は百合ヤンデレだったね、自然に壊れてるあの感じは好きだった
桜庭一樹とかシャーリージャクスン的なって言うと過大評価になるのかな、だいたいそういう感じの
- 175 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 20:19:42 ID:7gDDxpHM
- みんな、どんなのが読みたいんだ?
1,ヤンデレが通った後に草木一本残るかっ!(スクイズ的王道もの)基本的にバッドエンド。
2,草も木も朱に暮れろぉ!闇夜に輝くヤンデレの星は一つ。ヤンデレさん無双もの。(泥棒猫死亡、主人公監禁)M男の性癖爆発。
3,優しいヤンデレさん(仏モード。死者なし。ストーリーに起伏なし)所謂、ほのぼの。
4,ヤンデレっつったら愛だろ! 根底に愛を感じないものはヤンデレといわん!(逆レ、監禁、鉈NG)ある意味純愛もの。
どれだ?
- 176 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/31(土) 20:45:46 ID:oQaVrQXs
- あえていえば好きなヤンデレは3とか4だけど1や2も嫌いじゃない
1や2って展開が無理すぎたり主人公の行動にイライラさせられたり・・・
でも3のストーリーに起伏がないのもつまらんし
4はヤンデレ感が薄くなりやすいのが・・・
- 177 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/01(日) 08:18:15 ID:TCDdt/qc
- 何がいいのかわからんが……
4で考えてみる
- 178 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/01(日) 10:54:58 ID:DNXCoU6o
- 流血が見たいわけじゃなくて徐々に病んでく過程が見たいんや
- 179 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/01(日) 12:31:45 ID:TCDdt/qc
- 流血なし? 3?
バッドエンドは、みんな嫌いなのか?
みんなのニーズがわからん。
俺的にはヤンデレと付いた時点でハッピーエンドは有り得ないんだが……
- 180 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/01(日) 14:13:10 ID:u3Y/2p1Q
- 全ての選択肢を愛する
- 181 : ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:44:37 ID:XXR4FJlE
- 星屑ディペンデンス第2話、投稿します
- 182 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:45:49 ID:XXR4FJlE
- 「ここが居間。飯は朝昼晩三回出すから、その時間にはここに居てくれ。廊下の奥がトイレと風呂。そっちが君の部屋で、こっちは私の部屋だ。君の部屋には、ベッドと箪笥と机しか置いていない。必要な物があれば言ってくれ。出来る限り用意する。それと、服とか、その他生活に必要な物は一通り用意してある。こっちも足りない物があったら言ってくれ」
「はい」
「それと……夜、私に手を出そうとしても無駄だぞ?私は召還者の世話を何度か行なって来ているが、男は殆ど全員襲ってきたからな。先刻も言ったが、私は『騎士』の能力者で……」
「襲いませんよ!」
思わず声を荒げると、咲はクスクスと笑った。
「すまない、冗談だ」
そういって尚笑い続ける咲。こちらとしては、結構心外だった。
確かに、俺は現在青春真っ盛りだが、見境無く女性を襲う様な男では無い。と思う。
……正直、少し自信が無い。今まで一緒に寝た事がある女性と言えば、妹(俺が小学校高学年で妹が小学校低学年の時)くらいのものである。
そんな女性経験皆無の俺が、突然こんな美人と半ば同棲紛いの事をするなんて……未知の領域なので、自分でも保障が出来ない。
……あぁ、クソっ、無駄に意識したせいで余計に気になってきちまった……。
見れば、咲は結構良いスタイルをしている。出る所は出て、締まる所は締まっているというか……。
「……おっと、急にニヤニヤし始めたな。これはやはり私の実力を見せ付けて置くべきか……」
「すいません冗談ですごめんなさい許してください申し訳御座いませんでしたッ!!」
「ふむ、分かれば宜しい」
そういってニッコリ微笑む咲。
うおッ、なんて破壊力(物理的)だッ!!
そんなこんなで、これから暮らしていく仮住まいの説明を聞き終わった。
「今日は疲れただろう。陽も暮れてきたし、風呂に入って来い。飯は用意しておくから」
「お願いします」
「ああ。服は君の部屋の箪笥に入れてある。洗い物は風呂場の前にでも出しておいてくれ。後で洗濯しておく」
「……あの、何か手伝う事ありませんか?」
流石に何から何までやって貰って申し訳なくなってきた。
「いや、いいよ。どうせ料理も出来ないだろうし、洗濯だって、碌にした事無いだろう?」
「……返す言葉もありません。でも、何で分かったんですか?」
「何、現代日本に住んでいる学生は、皆そんなものだよ」
そういって、優しく微笑む咲。
この世界に来た時、何とか生きていけそうとかほざいてたのが悔やまれる。
「ただ、いずれは出来る様にならないと駄目だからな。今だけだぞ?」
いつか恩返ししようと心に決め、俺は咲に向き直った。
「……お世話になります、姉さん」
「……その呼び方は遠慮して貰いたい」
- 183 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:46:41 ID:XXR4FJlE
- 風呂に浸かりながら、考え事をする。
地球に居た頃、風呂に入っている時間は専ら空想の世界に旅立っていた。
この世界に召還されてしまった以上、必然的に風呂に入っている時間が空く。
だから、この世界に召還されてからの事を整理しようと思い立ったのだ。
まず始めに思い浮かぶのは、人間と魔族の二項対立について。
人間と魔族の戦争については分かった。しかし、その戦争が起こった理由は何なんだろうか。
そもそも、魔族とはどういう物なのだろうか。
やはり魔族は悪なのだろうか。
もし今、人間と魔族のどちらの味方に付くかと問われれば、どちらとも言えない。
ただ単に、人間側に召還されたから、人間の側に居るとしか言えないのだ。
まぁ、善悪のみで付く方を決めるとは限らないが。
極端な話、俺にゾッコンな超絶美少女がいれば、例え悪であろうと魔族に付く可能性もある。
流石に言い過ぎだが、それぐらい適当な男なんだ、俺は。
とにかくその辺については、もっと詳しく調べ、考えるべきだと思う。
もう一つ疑問がある。魔法についてだ。
地球では――あくまで作り話の中の設定だが――魔法にも色々なタイプがあった。
例えば炎、例えば水。
それに、攻撃に特化した魔法だけでは無く、回復やその他の魔法等等。
この世界での魔法とは、一体どの様なものなんだろうか。
俺を召還した召還師、エヴァンは炎を自在に操っていた。
と、言う事は、地球(の作り話)にもあった様な属性魔法の類なんだろうか。
「……謎は深まるばかりである」
「おーい、飯の用意が出来たぞー」
扉の向こうから咲が声を掛けて来る。
「お、じゃあそろそろ上がるかな」
用意されていた服に着替え、食卓へと向かう。
ちなみに服は麻布の様なもので出来た簡素なものだった。
今の所、気候は暑くも無く寒くも無くといった感じなので、これで十分だ。
そういえば、この世界にも四季はあるのだろうか。
時間があったら、今度咲にでも聞いてみよう。
食卓には、ご飯(の様なもの)と焼き魚、味噌汁(の様なもの)が並んでいた。
様なもの、がついているのは本当にそのものなのか分からないからである。
「さ、座って。食べようか」
俺が椅子に座ってご飯もどき(仮)をじっと見つめていると、咲は一瞬不思議そうな顔をして噴き出した。
「心配しなくても、そのご飯はご飯だし、味噌汁は味噌汁だよ。地球にあった物と味は殆ど同じだ」
「あ、そうですか。じゃ、いただきまーす」
ご飯を口に含み、味噌汁を啜る。
咲は俺の反応を心配そうに見つめている。
……これは。
「どう……だろうか」
「凄く美味しいです!」
「ふふっ。それは良かった」
少し笑ってから、咲も焼き魚に箸を付ける。
「私も、地球の料理が恋しくなる事があってな。何度も試行錯誤して最近、やっと出来たんだ」
咲は嬉しそうに話を続ける。
「しかし、折角作っても食べさせる相手が居ないというのはやはり寂しいものでな。今まで世話してきた召還者達は味噌汁なんて見たことも無いから、反応は芳しくなかった。もちろん、美味しいとは言ってくれたがな」
そして味噌汁を一口啜り、途端に真面目な表情になると、
「……突然だが、私の友人になってくれないか」
本当に突然だった。
「私は、こちらの世界へ来てから一人も友人と呼べるような人間を持っていない。知り合いこそいるがな。」
咲は寂しそうな笑顔で続ける。
「世界の違いは考え方の違い。話をしていても、思いが伝わっていないと感じることが度々ある」
見知らぬ土地で2年間、心から話せるような人間を持たず暮らすというのは、どんなにか辛い事だろう。
「君とは同郷な分、話も通じる。良い友になれるかもしれん。だから、頼む」
正直に言うと、少々面食らった。だが、それは嫌だからではない。
「俺なんかで良かったら、喜んで。でも……」
一呼吸置いてから、続ける。
「そんな事言われなくたって、勝手に友達になりますよ。付き合うんじゃないんですから、友達になるのにわざわざ告白なんて要りません!」
俺が元気よくそう言うと、彼女はまたやわらかく微笑んだのだった。
後になって思い返し、よくよく考えたらデリカシーの無い一言だったなと悔やんだが、その時の彼女の表情は、とても嬉しそうな笑顔だった為、そんな考えはすぐに消えた。
ただ、その笑顔があまりに輝いていたため、少し責任を感じていた。
本当に、俺なんかが唯一の友達でいいんだろうか。
咲は性格が良い。出合って数時間の俺でもそう思うのだ。例え考え方が違っても、友達の1人や2人できそうな気がするが。
そこまで考えて、考えること自体が無意味だと気付いた。様は咲と仲良くすれば良いのだ。何も悩む事はない。
その時はそう思っていた。
- 184 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:48:38 ID:XXR4FJlE
- ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝日が差し込んできて、目を覚ます。
時計が無いので時間は分からないが、いつも通りに起きたのだとしたら、今は七時くらいだろう。
昨日はベッドに入ると、何かを考える間もなく寝てしまった。自分では気付いていなかったが、慣れない環境に疲れていた様だ。
居間へ向かうと、食卓には既に炊き立ての白飯と、玉子焼き、サラダ、そしてコーンスープの様なものが並んでいた。
起きた時、空腹はあまり感じていなかったが、いざ食事を目の前にすると腹が鳴ってしまった。
ぎゅるるるるる〜。
思わず腹を押さえる。
台所で盛り付けをしていた咲は、俺の腹の音で初めて振り向いた。
「あぁ、起きたのか。座って待っててくれ。私の分の盛り付けが終わったら食べよう」
他愛の無い話をしながら食事を終える。あ、飯は相変わらずうまかったです。
食後のティータイムとばかりに出された紅茶を啜りながら、自分の特殊能力について思いを馳せる。
咲と同じ『騎士』の能力なのだろうか。はたまた、何か別の能力なのだろうか。
「さ、腹の虫も落ち着いた事だろうし、今日の本題、特殊能力についてだ」
彼女は居間の隅に置かれていた本棚から、三冊の本を取り出してきた。
「では、早速説明を始めさせて貰うよ。まず、能力の種類についてだが、大きく分けて二種類ある」
こほん、と小さく咳をしながら話し始める。
「戦闘に長けた能力と、その他の補助的な能力だ」
持ってきた本の内の一冊を開き俺の方に向け、指で指し示す。
「戦闘に長けた能力には、私が授かった能力『騎士』、弓等の投擲武器を扱えるようになる『弓手』、特定の攻撃魔法が得意になる『属性魔術』などがある」
そのページには大きく剣の絵が描かれている。
「対して補助的な能力には、傷の治癒や体力の回復等の補助魔法を扱う『ヒーラー』、後は……村長の能力『召還師』もこの部類に入るな」
そして一息つき、紅茶を一口飲む。目で促されたので、俺も飲む。
「ここまで分かると思うが、大体、戦闘で攻撃を担当する能力と、補助を担当する能力に分かれているんだ」
「はい」
「本当はもっと細かく区分けされているんだが……今はこれだけ知っていれば十分だろう」
あまり一気に教えると混乱するしな、と彼女は付け加えた。
「さて、これから君の能力について調べるわけだが……」
彼女はそういって席を立つと、台所から何やら液体の入ったコップを持ってきた。
無色透明……一見すると水の様だが、何か特別なものに違いない。
「ちょっとこの本を見てくれ。それぞれの能力について解説が載っている図鑑の様な物なんだが、能力の横に色の付いた四角があるだろう?」
咲が差し出した本を見ると、確かに能力名の横に色の付いた四角があった。
例えば、『騎士』の能力には赤、『弓手』の能力には黄、といった具合に。
「それが能力を調べる鍵なんだ。能力は、使ってみるまで分からない。しかし、自分の能力を知りもしないのに使える訳がないだろう?」
そこでこの液体の出番さ、と彼女は言う。
「この液体は、能力を持つ者がこの液体に魔力を込めると、その能力に応じて色が変わる特殊な物なんだ」
「あ、って言う事は、その色とこの図鑑の色を比べれば、能力が分かる、って言う事ですか?」
「そういう事さ」
何か理科の実験みたいだな、とぼんやり思った。
「さ、早速やってみなよ」
と、コップを手渡される。
「…………」
「…………」
沈黙。
「……どうした?」
「……あの、魔力ってどうやって込めれば……」
「あぁ、そういえば説明してなかったな。じゃあ、私の言う通りにやってみてくれ」
そう言うと、咲はまた一つ咳をする。
「まず、自分の中にエネルギー――魔力がある事を想像するんだ」
エネルギーを想像。
すると、体の中に何かがぼんやりと渦巻くのを感じた気がした。
「心配しなくても大丈夫。さっき飲んだ紅茶には、魔力を安定させる薬を入れておいたから、幾分か魔力を扱いやすくなっている筈だよ」
何と、知らず知らずの内に一服盛られていたとは……。
そんな事を思いつつも、自分の中の魔力がよりはっきりと感じられるようになってきた。
「そうしたら次は、その魔力を手の方へと移動させる」
意識を体の中央から腕、そして手へと移動させる。
すると咲は俺の手に自分の手を添え、コップと一緒に包み込んだ。
「そして、魔力を掌からコップの中の液体へ」
すると、コップの中の液体に変化が現れ始めた。
- 185 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:49:57 ID:XXR4FJlE
- 机の上に置かれたコップをまじまじと覗き込む。
「凄ぇ綺麗だ……」
あの後、俺の魔力を込められた液体は、一瞬淡く輝いたかと思うと、渦巻くようにしながら色を変えていった。
変化が落ち着いた後、咲は先ほど見た本とは違う3冊目の本と睨み合っていた。
「こんな色は見たことが無い……」
等と、ずっとブツブツ呟いている。
一見何の変哲も無い水の様に見えた液体は、今やその姿を個性的な物へと大きく変化させていた。
上辺は鈍い銀色に輝いており、下辺へ行くに従って眩しい金色へと、グラデーションをかけながら変わっている。
「咲さん、これは何の能力なんですか?凄い綺麗に見えるんですけど」
「うーん、ちょっと待ってくれ。こんな色は見た事も聞いた事も無い……」
咲はペラペラとページを捲りながら、あーでもないこーでもないと呟いている。
何分そうしていただろうか、彼女はようやく「これだ」と一声上げた。
「これは凄い能力だ……どうやら君は、『鍛冶師』という能力を授かった様だ」
「『鍛冶師』?……それって、あの武器とかを作る……?」
正確には武器に限定されたものではないのだろうが、俺が誇るファンタジー脳みそは勝手にそういう解釈を下した。
「そうだ。これは非常に珍しく、しかも強力な能力で、もしこの能力を持つ者が現れた場合、王宮に報告しなければならないと言うほどだ」
「お、王宮?また大層な能力を貰ってしまったんですね、俺。で、それはどんな能力なんですか?」
「あぁ、ちょっとこのページを見てくれ」
そこには、こう書かれていた。
・この能力は戦闘能力の上位及び、戦闘補助能力の上位に位置する。
以下、能力の概要
・この能力を授かった者は、剣、槍、弓といった戦闘に於いて戦士が手にする物(原則として武器)を、己の魔力を基に生産する事ができる。
・この能力を授かった者は、個人に見合った最適の武器を見抜き、個人専用の武器を生産する事ができる。(個人の潜在的な武器を振るう素質を見抜く)但し、この能力の行使には莫大な魔力を必要とする。
・この能力を授かった者は、各専門戦闘能力には及ばないが、自分で産み出した武器を振るう素質を持つ。
この能力を持つ者が召還された場合、以下の原則に従う事
・この能力を持つ者が召還された場合、2週間以内に、誰にも知らせる事無く王宮へ申し出る事。
・
・
・
長々と書かれていたが、能力に関する記述はこの辺だろうか。
「……要するに、想像した武器を作れて、且つそれをある程度使えるって事ですか?」
「そして、個人が得意とする武器を見抜き、個人に合った特別な武器を作れる、といった所だろう」
「へぇ……俺、こういう能力に憧れたんですよ。何か主人公って感じじゃないけど、主人公を助ける脇役、みたいな……」
「う、うむ。わ、脇役か……こんなに強力な能力だったら、十分主人公でイケると思うぞ?」
「いや、主人公といったら剣士ですよ!」
「そ、そうか……」
力強く持論を展開する俺に、若干飽きれ気味な視線をぶつける咲。
……自分で言っておきながら、古い考えだな、と思ったのは内緒だ。
「まぁ、何はともあれ、これが君の能力だ。王宮に報告しなければならない程だからな。戦の要となる能力だという事だろう」
少し残念そうな顔をしていたのは、自分より強力な能力を持つ者が現れてしまったからだろうか。
「私はこれから王宮へと出向いてくる。君はどうする?」
「俺、付いていかなくていいんですか?」
「多分要らないだろう。召還者は召還されてから1ヶ月過ぎるまで、村から出てはいけない事になっているしな」
「そうなんですか。初めて知りました」
「そりゃあ、言ってないからな。当たり前だ」
咲は一拍間をおいてから、
「では、私が帰ってくるまでの間、村長の所に行ってみてはどうだ?魔法の事について聞きたいんだろう?」
「あ、そうですね。じゃあそうします」
「ああ。私は明日の夕暮れまで帰れないと思う。飯はそこら辺にあるパンを……いや、近所の人に頼んでおこう」
「そんな、悪いですよ。大丈夫です、適当に食っておきますから」
「いや、これを機にこの村の住人と顔見知りになっておくといい。皆優しいから、喜んで引き受けてくれると思う」
「でも……」
「仮にも、この村で1ヶ月過ごすんだ。仲良くなっておいて損はないと思うぞ?」
「……分かりました、仲良くなっておきます」
彼女は子供に言い聞かせるように優しく微笑み、
「良し。それじゃ、その人に挨拶しに行こうか」
立ち上がって、そう言ったのだった。
- 186 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:51:33 ID:XXR4FJlE
- 家の外に出てから1分も掛からずに、その家についた。
咲の家よりも少し大きいそこは、築10年といった所だろうか。古くもなく新しくもなくといった感じである。
扉を2度ノックする。
すると、「はいーただいまー」と、応答が返ってくる。
少し間をおいて妙齢の女性が出てきた。
「まぁ、サキではないですか。どうしたんです?」
「突然申し訳ありません、アルフォンシーナさん。お願いがあるのですが」
「まぁまぁ、お願いだなんて。何でも気楽に相談してと言ったではないですか。あなたの頼みなら何でも聞きますよ」
女性は優しげに微笑み、華奢な体をこちらに向けると「あら、見ない顔ですね。どちら様?」と話しかけてきた。
「あ、日鏃 龍って言います」
「彼は今回の召還者です。これから1ヶ月この村で暮らす事になります」
「あらあら、宜しくね、リュウさん。私はアルフォンシーナ・オルテンシア・ヴァンニという者ですわ。これから、宜しくお願いしますね」
「はい。宜しくお願いします」
「それで、お願いというのはなんですか?」
「はい。実は……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「まぁ。そういう事でしたら私にお任せ下さい。私、料理大好きなんです」
口元に手をあて、上品に微笑むアルフォンシーナは、快く了承してくれた。
「すみません。俺の為に食事を用意してもらうなんて……」
「いえ、いいんですよ。毎日、旦那と息子を食べさせているんですから。一人分増えるくらい大した事ではないですわ」
アルフォンシーナは結婚しており、5歳になる息子が居るらしい。
何だか一家団欒を邪魔してしまうようで、尚更申し訳ない。
そう思いつつ、やはりパンだけではひもじいので、甘んじさせて貰う。
俺とて、まったく料理が出来ない訳ではない。
やろうと思えば、目玉焼き等の簡単な料理は出来る。
しかし、この世界にはガスコンロ等という便利な道具はない。
もし料理をするとなれば火を起こすところから始めなければならないのだ。
無論、俺にはサバイバル経験などないので、そんな事できない。
だから、結局誰かに食事を用意して貰わなければならないのだ。
「食事は朝昼晩と用意しておきますから。適当な時間に来てください。私の家族と一緒に食べましょう」
「いえ、流石にそれは悪いので、用意しておいて下されば、取りに来ます」
「いーえ、皆で食べれば食事は一層美味しくなります。是非一緒に食べましょう」
「でも……」
咲は長くなりそうな気配を悟ったのだろうか。「あー」と俺達の会話を遮ると、
「彼はこれから出かける所もあるので、決まった時間に来るというのは難しいでしょう。やはり、食事は彼に持たせてやるのがいいのではないでしょうか」
アルフォンシーナは残念そうな顔をしたが、やがて頷くと、
「分かりました。美味しいものを用意しておきますから、帰ってきたら取りに来てくださいね」
と言った。
俺はもう一度「有難う御座います」と頭を下げる。
「では、彼の事を宜しくお願いします」
「ええ、任せておいて下さい」
咲は軽く頭を下げ、俺もそれに続く。
「では、一度家に帰ろうか」
- 187 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:52:55 ID:XXR4FJlE
- 「……じゃあ、行って来るからな。食器洗いくらいはしておけよ」
「はい」
「それじゃ」
家の前で咲を見送る。
「俺もぼちぼち出発するかな」
家の中に戻り、森の奥の祠へ向かう準備をする。
特に持っていく物もなかったので、テーブルの上に出しっぱなしだった本を片付けておいた。
その際、本棚にあった他の本の題名を何気なく見る。
〈基本剣術〉〈実録!戦場での動き方〉〈初心者にも出来る、簡単料理レシピ百選〉等等……
何となくツッコミたい気もするが、一人では空しいだけなので、スルーした。
祠へ向かう道すがら、自分が授かったという能力、『鍛冶師』について考える。
強力な能力らしいが、実際の所どうなんだろう。
「やっぱり、使ってみないと分かんないよな……」
足を止め、一度試しに能力を使ってみる事にした。
まずは……。
「えと、確かその人にあった武器が見抜けるんだっけ……」
もし本当なら、俺に合った武器も分かるんじゃないのか?
でも、どうやって調べるんだろう。
目を閉じて考える。その者に合った武器とはどういう事か。
やっぱり、その人にとって扱い易いって事なんだろうか。
じゃあ、扱い易いっていうのはどういう事だ。
…………。
頭に思い浮かべる。自分の姿を。
例えば、自分の得意なものっていうのは、それについて自然に動作が出来るってことじゃないだろうか。
運動が得意な者とそうでない者の最大の違い……それは、どれだけ動きに無駄が無いか、という事だ。
もしこの法則が当てはまるとしたら、その人物が武器を振っている所を想像して、一番自然な動きを想像できるものが得意な武器、って事になるのではないだろうか。
この方法が正解かどうかは分からない。分からないが、多分正解だろうという、自信を伴った確信を持つことが出来た。
まぁ、ものは試しだ。早速、思い浮かべる。先ずは剣を振るう自分の姿。
……駄目だ。動きがガッチガチに堅い。
では、ナイフはどうだろう。
……これも駄目。振り回そうとして自分を傷つけてしまう。
次に槍を持つ。
……これだ。
自分は槍術など欠片も知らないが、何故かこの動作を想像した時、自由自在に振舞わす事が出来た。
剣やナイフにあった違和感が槍にはなかったのだ。
と、いう事は、俺の得意な武器は槍だろう。
そうと決まれば、早速簡単な槍を作ってみよう。
ええっと、確か説明には、自身の魔力で武器を作り出す……って書いてあったな。
先程、咲に教えてもらった事を思い返す。
イメージ。
自分の魔力を凝縮させ、体外へ、槍という形で押し出す。
イメージ。
体内の魔力を指先へ。そして、指先から空間へ。
実体化させるイメージを伴わせて。目の前に槍を形作る。
すると、突然、目前の空中に棒状の光が輝き始めた。
除々にはっきりとした形になっていくそれは、突然輝くのを止めて、重力に従い地面に突き刺さる。
俺はそれを手に取り、両手で振り回す。
やはり体は、勝手に隙の無い動きで動いてくれる。
俺の得意な武器は、自らの間合いに敵を寄せ付けずに戦う、槍だったんだ。
- 188 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:53:57 ID:XXR4FJlE
- ◇◆◇◆◇◆◇◆
俺は少なからず感動していた。
なにせ、今まで夢見てきた魔法(に近しき物)に初めて触れたのだから。
確かに、魔法は一度見ていた。
しかし、見るのと実際に使うのでは、その意味合いは大きく違う。
ここでやっと、俺は異世界に来たのだという実感を持った。
能力を使ってみて、新しく分かった事がある。
それは、自身の魔力の容量だ。
今手に持っている槍は、俺の魔力を使って作った物だが、この槍を作った時、体に疲労を感じた。
体が重くなる、と言えば伝わるだろうか。
能力を発揮する度に同程度の疲労が溜まるのなら、これと同じものを後3本作れば体を動かせなくなるだろう。
と、言う事は、俺の魔力はこの槍4本分だという事である。
それともう一つ、魔力の残量は体に影響する、という事だ。
先程の考えから行くと、槍を4本作ったら体を動かせなくなる。早い話が気絶するだろう。
槍を4本作ると言う事は、魔力を全て使い切る、と言う事なので、結果的に、魔力が無くなる=気絶という等式が出来る。
体力を使えば魔力が減る、のかどうかは分からないが、魔力を使えば体力が減る、というのは確実だろう。
祠までの道のりも中腹か、という辺りで、道を遮る人影を見た。
ちなみにこの森の中の小道は、地球の自家用車が一台、ギリギリ通れるかという具合なので、人が2人もいれば簡単に道は塞がれてしまう。
このままでは通れないので、声を掛けようと近寄ると、明らかに穏やかではない雰囲気だった。
……これは明らかに、アレだ。
「よう、お嬢ちゃん、可愛いじゃん。俺らと一緒に楽しい事しない?」
男が3人――その内真ん中の1人は剣を持っている――1人の少女を囲んで何やら妖しい言葉を投げかけている。
異世界にもチンピラっているんだなぁ、と感心(?)していると、囲まれていた少女が声を発した。
「や、やめて下さい!私のお父様は偉大なる魔お――」
少女の言葉は途中から聞いていなかった。
その少女の容姿に驚いたからだ。
方の辺りで切り揃えられた髪は、一点の曇りも無い、落ち着いた白銀に染まっており、瞳は大きく、眩いばかりの金色に輝いている。
身長は160cmに届くか届かないか。そして、白い肌。全体的に幼い印象を受けるが、それがむしろ、人形のような愛らしさを助長させている。
真っ黒いワンピースに身を包んだ彼女は、輝く髪と瞳も相まって、夜空に浮かぶ恒星を思い浮かべさせた。
と、そこで先程の少女の言葉を受けてか、チンピラ三人衆(仮)の笑い声が上がる。
「だはははは!冗談も大概にしろよ!?そんな事言って俺らから逃げようだなんて無駄――」
「ちょっと、やめなよ」
俺は元より非情な性格ではない。
もし街で今のようにチンピラに絡まれている人が居れば、止めに入るだろうし、敵わないと分かっていればせめて警察を呼ぶくらいの事はする。
「あぁん!?何だテメェは!!やんのかコラ!!」
剣を持ったチンピラリーダー(仮)が俺に詰め寄る。怖い。
こんなにガタイの良い男、地球じゃそうそう見かけない。
俺は額がくっ付く程に接近して眼つけてくるそいつに見えないように、槍を持ってない方の手にも、同じ槍を創造する。
「オイオイ!セイムさんに戦いを挑むなんて無謀だぜ!!」
取り巻きその1(仮)がそれに合わせて合いの手を入れる。
どうやらこの男はセイムと呼ばれているらしい。
「そうだぜそうだぜ!セイムさんは『騎士』の能力者で、お前みたいなヒョロイ奴には勝ち目は無いんだぜ!!」
取り巻きその2(仮)もやたら説明くさい合いの手を入れてくる。
「そういう事だ。分かったら有り金全部置いて――」
「断る」
……ああ、こんな感じの、正義の味方を夢見た事もあったなぁ……
あの頃は確か、戦隊モノヒーロー特撮にはまってて……
「ああん!?」
あ、いかんいかん。夢想している場合じゃなかった。
「おいおい兄ちゃん。この剣が見えねぇのかい?俺は本気だぜぇ?」
男はニヤリと、下品に笑う。
…………。
……勝算は、ある。
但しこの策は、相手が『騎士』の能力に感けた、碌に訓練もしていない人間だった場合に限る。
確かに、能力の説明にあった通りだったら、『鍛冶師』の能力では『騎士』の能力に勝てない。
しかし、相手は俺の能力を知らない。
これを活かさない手は無い。
「……気に入らねぇな。テメェみてぇな、ヒーロー気取りの奴はよぉぉぉぉ!!」
セイムは剣を振り上げ、真っ直ぐに剣を振り下ろす。
バキィィィン!
右手に持った槍で辛うじて剣筋を逸らすが、その槍は手から弾き出されてしまった。
物凄い力だ。
即座に左手の槍を持ち直し、首筋を狙う。
セイムは俺の槍を弾いた予備動作から立ち直れず、この一撃は決まった。
――筈だった。
- 189 :星屑ディペンデンス 第2話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:55:43 ID:XXR4FJlE
- 結果、セイムの首筋を狙った一撃は、ありえない速度で振り上げられた彼の剣によって弾かれた。
もう、俺の手元には武器が残っていない。
「残念だったなぁ。俺が『騎士』の能力者じゃなかったら、勝ってたのになぁ」
セイムはそう皮肉る。
取り巻き達は大笑いしている。
しかし、関係ない。
次の一手を冷静に、冷静に吟味する。
セイムの一撃は力強いが、俺でも辛うじてその剣裁を逸らす事ができた。
ならば、次の彼と、そして俺の動き次第では、勝てる。
「だが、情けはかけねぇぜ。お前はここで死ぬんだ」
剣を頭上に掲げる。
その剣を見つめながら、イメージを研ぎ澄ませる。
体内で練った魔力を、両の掌へ。
「死ねぇぇぇぇぇ!!!」
そして……解放するッ!
◇◆◇◆◇◆◇◆
「油断したな」
セイムの首筋にぴたりと槍を当てる。
「な、何で……どっから出したんだよ!その武器は!」
彼は、怯えきった表情で、言葉を搾り出した。
簡単な事だ。
セイムが剣を振り下ろす瞬間、俺は残りの魔力を全て使い、2本の槍を創造した。
今セイムの首筋に当てられている1本は、先程までのものと同じ形状だが、彼の剣を地面に縛り付けているもう1本の槍は、矛の様な、刃が2本に分かれている物だった。
この特殊な形状をした槍で彼の剣を地面に押さえつけ、その隙にもう一方の槍を彼の首筋に当てた。
全ては、彼が油断したから成功した事だ。
「あんたがべらべら喋ってないで、一思いに殺っとけばこんな事にはならなかったのにな」
取り巻きは、とっくの昔に逃げ出していた。
ある意味、懸命な判断だろう。
俺は大きく息を吸うと、腹の底から声を出した。
「失せろッ!!!」
「ヒ、ヒィィィ!!」
セイムは転びそうになりながらも、脱兎の如く逃げ出した。
「……つくづく、小物臭のする奴だったな」
と呟きながらも、俺は地面に崩れ落ちる様に座り込んだ。
「……怖かった」
そりゃそうだ。こんな事初めてだったから。
本当は、失せろって言う時も声が震えていないか心配だった。
今回の作戦は、止めに入る時から考えていた事だった。
もし何も考えずに止めに入っていたら死んでいただろうし、この作戦自体、アイツが余裕をかまさなかったら成功しなかった。
だから正直、いつどこで失敗するか気が気でなかったのだが、何とか成功してよかった。
これで少女の貞操も守られ……あれ、そういえばあの子は?
そう思って振り向くと、心配そうな表情をした少女が立っていた。
良かった良かった、と溜息を付くと、少女の方から声をかけて来た。
「……何で、助けたんですか……?」
正直、訳が分からない。
お礼くらいは甘んじて受けようと思っていたのだが。
「……さっきも言いましたが、私、魔王の娘なんですよ……?人間の、敵ですよ?」
……へ?
魔王の、娘?
「魔王って、あの、魔族の頂点の……?」
「そうです。さっきも言いました」
確かにそんな事を言っていた様な気もするが、如何せん、彼女の衝撃的なまでに美しい容姿を、画面の前の皆(?)に説明する為に時間を割いていたし……。
そんな意味不明な事を考えつつ、まぁいいか、と思ってしまう自分が居た。
何せ、魔力が空っぽになった所為で、今にも倒れそうなのだ。
考える事に集中できない。
「私……私、あなた達の敵、なんですよ……?今こうしている間にも、あなたに危害を加えるかも……」
「君は……そんな事……しないと思うよ?」
散り散りになりそうな思考で言葉を発する。
「な……何故ですか?私が魔王の娘だって事、信じて無いんですか!?」
「ち……がう」
気絶する前に、言っておきたい。
「だって……君は……見るから……に……優し……そ……う……」
駄目だ……意識が……。
遂に自分の重さに耐え切れず、その場にどさりと倒れこむ。
「!!!」
少し距離を置いて話していた彼女が、驚いて駆け寄ってくるのを最後に見て、俺の意識は途絶えた。
意識が無くなる寸前、何か声が聞こえた様な気がした。
おお ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない。
…………。
……俺は勇者でも無いし、死んでもいない……多分。
- 190 : ◆TvNZI.MfJE:2012/04/01(日) 21:56:50 ID:XXR4FJlE
- 投下終了です
皆さんのご指摘を参考に、少し書き方変えてみました。
読みやすくなっていれば幸いです。
- 191 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/01(日) 22:29:14 ID:lS4gqNN6
- 乙!面白かったぜ
久しぶりの良作の予感
- 192 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/02(月) 01:19:15 ID:scUFrG6o
- 乙
そしてこれから第三話が投下されるまで待つという苦行が始まる
- 193 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/02(月) 10:32:38 ID:ATW.pWLg
- >>190
乙乙!
面白かったです
- 194 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/02(月) 17:33:07 ID:AwQswRIA
- GJ!!
>>192 禿同
- 195 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/04(水) 01:14:56 ID:ijZ5eTWI
- コナサスギワロエナイ…
- 196 : ◆m6alMbiakc:2012/04/04(水) 04:06:21 ID:AxMYjeew
- 投下します。
四月一日大幅に過ぎてますが、エイプリルフールネタを
- 197 : ◆m6alMbiakc:2012/04/04(水) 04:07:05 ID:AxMYjeew
- 悪夢だと思いたかったが、三回目となった目覚めの景色は変わらず、無機質な部屋のままだった。置かれている物はベットとランプだけと変化は無く、僕も手錠でつながれている。何一つとして事態は好転していない。
ここまで物がが少ないのも、彼女の計略ということくらいはわかっている。考えたくないが、彼女がいなくなれば餓死の前に、退屈のあまりに発狂してしまうだろう。情けない話だが、既に心まで掌握されてしまっている。
「それにしても暇だよなあ……」
寝返りを打ってみる。そしてひとりごとを言ったことを強く後悔した。
「ふーん、そんなに暇なの?」
「え、えと……瀬川先輩、これは――」
「瀬川じゃなくて梢」
すぐさま訂正が入り、墓穴どころか棺桶まで作ってしまったことを悟る。先輩の恨めしそうな視線に、ただ委縮するくらいしか今の僕には出来ない。これ以上機嫌を損ねるのは命にかかわる。
何か言わないと、と口を開く直前、あきれたように先輩が肩をすくめた。さっきまでの不機嫌さが嘘のようだった。
「まあいいよ。外出もできないと、そりゃストレスもたまるわね」
そう言って、僕をつないでいる手錠に手を伸ばす。しばらくの作業の後に、解錠の音が聞こえてきた。いままで手首にあった不快感が消えて、かわりに考えられないくらいの腕の軽さが僕に戻ってくる。
「え、これは?」
「一日くらいの外出ならいいわ。大概の事はどうにでもなるだろうし、ね」
同じ年代の他人には、決して出せないような柔和な笑みを先輩が浮かべる。こうしてみるお嬢様というのは冗談ではないらしい。同時に彼女が言っている真意もすぐに理解できた。どんなにあがいてみても無駄だということだろう。
でも諦めるわけにもいかない。
じゃあご飯を作って待っているからね、といって先輩は退室する。腑に落ちない点もあるが先輩の好意と受け取ることにして、僕も監禁部屋を後にした。
「ひ、広い……。何でこんなに広いんだ」
監禁部屋はどうやら屋敷の片隅にあるらしく、肝心の外につながる出口がなかなか見つからない。外の景色で判断しようにも、不自然なくらいに窓が無い。仕方なく勘を頼りに、この迷宮のような屋敷を進んでいく。
しばらく歩くうちにロビーのような所にさしかかり、豪奢な造りの木製ドアが遠くに見えた。どうやら当たりらしい。小躍りしたい衝動を堪え、ドアに駆け寄る。
ノブを捻り、ゆっくりと押す。抵抗もない。
「開いたっ!!」
鍵がかかっている、というアクシデントもなく、あっけないほどにドアが開いた。ドアの隙間からさしこんでくる光は確かに太陽光で、薄暗い部屋に慣れた僕には眩しい。
目が慣れる。次第に辺りの景色もはっきりと分かるようになった。
「え……」
あたり一面、海だった。あと数歩踏み出せば、断崖絶壁から真っ逆さまだろう。
「エイプリルフール!!」
後ろ、開いたままの玄関から、先輩が出てきて異常なくらいの力で抱きしめられる。
「自由になんて絶対にさせない。絶対に、ね」
「せんぱ――」
「この島、なかなか良いでしょう?」
二人で骨をうずめるには。
そうささやかれた直後、僕の意識は急速に遠のいていった。
- 198 : ◆m6alMbiakc:2012/04/04(水) 04:08:53 ID:AxMYjeew
- 投下終了です。
- 199 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/04(水) 04:37:01 ID:nzLiy3E.
- >>198
こんな時間に乙です
- 200 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/04(水) 17:31:42 ID:ww8kBS/Q
- >>198
乙です。
梢サン、中々にドSですね。だがそれが悦い!
- 201 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/05(木) 04:21:44 ID:zzaEv/As
- あれ、>>13の短編は保管されてる?
保管庫に見つからなかった。
- 202 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/05(木) 04:34:58 ID:zzaEv/As
- 保管した!保管に際して、なにかミスあれば教えてくれ。
- 203 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/05(木) 04:42:02 ID:.WU/K3OI
- NTR…
- 204 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/05(木) 08:18:08 ID:ZM7Q9gx6
- >>202
gj
- 205 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/05(木) 12:14:52 ID:f57D1PpA
- >>202
GJ
他のSSは保管庫に入れていたのですが、>>13の方の作品は入れ忘れてしまっていたようです。申し訳ありません。
やっぱ、最近1人位で保管してる感じになっていて(と言ってもwikiに参加してるだけの名無しですが)、ソレだと抜けがあったりするんで助かります。
- 206 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/05(木) 13:49:01 ID:VWKoBHCM
- >>198
乙です!
- 207 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 00:26:35 ID:0Db3mBlE
- ドSすぎワロ・・・えるわけねぇだろ!。思いっきり人生終了じゃねぇか!。いやっ、まぁ殺さない為に邪魔者がいない状況を作るだけでも先輩に愛されてるな〜と自分は思った。
- 208 : ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:29:24 ID:tHOCcq1Q
- test
- 209 : ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:29:57 ID:tHOCcq1Q
- 投稿します
- 210 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:32:04 ID:tHOCcq1Q
- 正連が言うには、水城も昔は温厚だったらしいのだが、
ある時を境に武術に傾倒し、今のようなどぎつい性格になってしまった、らしい。
なぜそうなったのかは、正連にも両親にも分からないというのだ。
「姉さん、美人なのにもったいないよなぁ……。
来年で二十になるから、早く婿を貰わないと、行き遅れてしまいます」
正連が婿のあたりを強調し、業盛を見つめた。
「どうでしょうか。刑兄が姉さんと……」
「俺、あいつに二回も殺されかけているんだが」
「……まぁ、姉さんはいつも、私より弱い奴の嫁になんてならない、と言ってましたしね。
刑兄の強さを知れば、きっと姉さんも……」
「勝った上で命を狙われてるんだが」
「…………………………」
「…………………………」
水城の好みに合う男は、永遠に現れない。それを感じさせる沈黙だった。
「それじゃあ、俺はそろそろ。弥太はしばらくここにいるのか?」
「……うん、暇だからもう少しここにいようと思うんだけど」
「そうか、まぁ、ゆっくり……」
突如、業盛は振り向きざまに手刀を振り下ろした。なにかが音を立てて床に落ちた。
落ちていたのは箆の折れた矢だった。
なんと、矢は戸の僅かな隙間を通して的確に業盛に飛んできたのである。
神業以外のなにものでもない。
「弥太、お前の姉、弓は得意か?」
「えっ……えぇ、前に空を飛ぶ雁の目を射抜いたのを見た事があります」
「……面倒臭いわぁ……」
そう言って、業盛は退室した。途中、水城と会った。
先ほど攻撃を躱された事もあってか、仇を見るような目で睨み付けている。
会話などしても無駄であると分かっているので、
さっさと離れようとしたが、水城に左腕を掴まれ、足を止められた。
間髪入れず、水城の口から破裂音と共に、針が飛んできた。
業盛は左腕を塞がれながらも、右手で飛んできた針を目に中る直前で掴み取ってみせた。
水城は苛立ちに顔を歪めながらも、左手に短刀を持ち、業盛の腹を抉ろうとしてきた。
業盛は慌てる事なく、水城の左肩関節に右掌を打ち込んで、可動域を制限した。
悉く攻撃を封じられ、次の手がなくなったらしく、
水城は舌打ちをすると、その場から走り去ってしまった。
「……あぁ〜、面倒臭せぇ……」
これで何回目になるか分からない台詞を吐きだした。
なにせ自室には鈴鹿がいる。
無理に離れようとすると、発狂してしまうので仕方ないとはいえ、気が休まらない。
「……あぁ〜、面倒臭せぇ……」
再び業盛は呟いた。
- 211 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:32:35 ID:tHOCcq1Q
- 就寝前に、髪を梳く事を業盛は日課としている。
子供の頃に、乳母に髪が綺麗だと褒められて以来、欠かさずやってきた事だ。
髪は伸びに伸び、まるで女のようになってしまったが、
これだけは止めたくない、誰にも任せたくない事だった。だというのに、
「兄様の髪、柔らかいし、光沢もあって、本当に綺麗ですね」
その大切な髪を、鈴鹿が勝手に梳いている。
「鈴鹿、これは俺の日課だから、自分でやりたいのだが」
「大丈夫ですよ。やり慣れていますから、髪の毛を抜いたりするような失敗はしません」
梳いた後で、時折鈴鹿は髪の臭いを嗅ぐ。それが業盛には、気色悪くてならない。
「そういう問題じゃないんだ。これはあまり他人に任せる事じゃないし……、
それと鈴鹿、臭いを嗅ぐのは止めろ」
「他人なんかじゃないですよ。私たち、義兄妹じゃないですか。
それに、兄様の髪、とってもいい匂いですよ」
どこかで見た光景。業盛には思い当たるものがあった。
それは以前に、景正にじゃれついていた因幡の事である。
あの時は白い目で見るだけだったが、それに近い事を今、業盛は被っている。
なんという因果であろうか。あの時、平蔵を助けていればよかったというのか。
業盛の頭の中で、これまで見た景正と因幡のいちゃつきの場面が浮かんでは消えていく。
「もっ……もしかして、余計なお世話でしたか。
私なんかが、兄様の髪に触ったのを怒っているのですか?」
想起に夢中になっている業盛の耳に、不穏な声が入ってきた。
振り返ってみると、鈴鹿の目が死んでいた。
「すっ……鈴鹿……、また……」
「あっ……あぁ……、ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「鈴鹿!」
慌てて業盛は前の時のように鈴鹿を抱き締めた。
しばらくすると、鈴鹿はそのまま眠ってしまった。
やっと静かになった鈴鹿を寝かせると、業盛も急激に眠くなった。
鈴鹿が起きた時に騒がれると面倒なので、業盛は隣に布団を敷き、目を閉じた。
それからしばらくして、部屋の戸が開いた。
また水城である。水城は音を立てずに業盛に近付き、
手に持っている刀を振り下ろしたが、直撃寸前に業盛の手によって止められた。
「寝込みを襲うとか、それでも武士の娘か?」
隣で鈴鹿が寝ているため、業盛は声を荒げる事は出来ない。
「あんたが死ねば、全て解決するのよ」
水城はそう言って立ち去った。再び部屋は静寂に包まれた。
- 212 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:33:04 ID:tHOCcq1Q
- 雨が多く、涼しさを感じられる季節にはなった。
相変わらず水城は屋敷に居着き、業盛の命を狙い続け、
鈴鹿も政務以外は殆ど業盛のそばを離れようとしなかった。
水城のやり口は非道なものばかりで、まったくもって武士の娘とは思えないが、
家中から歓迎されたのだから、こんな人でなしと付き合おうと思う者の価値観は理解出来ない。
鈴鹿も鈴鹿で、なにが面白くてそばから離れないのか、業盛にはまったく分からない。
分からない事だらけながら、業盛は向かってくる凶刃と、纏わり付く狂人を捌き続けた。
正景のそれとは違う、非常に充実した日々を過ごしながら、
少しくらいはまともな日が欲しい、そんなささやかな事を業盛は願っていた。
だが、平穏は訪れる事なく、さらに事態は悪化した。
発端は、水城が鈴鹿の作った料理の中に毒を混入した事だった。
それに気付いた業盛は、迷う事なく料理を庭に捨てた。これが騒動の原因となった。
捨てられる、もしくはそれに近い言葉を嫌う鈴鹿の前では、
自分の作った料理を捨てられるというのもそれに該当したらしく、
雨降る地面にぶちまけられた料理を見て、これまでにないほど発狂した。
理由を説明しても、抱き締めても一向に効果がなく、鈴鹿はひたすら謝り、泣き叫び続けた。
仕方なく、業盛は手刀を打ち込み、鈴鹿を気絶させた。
そんな業盛のもとに、嫌味な笑みを浮かべた水城がやってきた。
「そいつ、あんたの愛人なの?」
「違う」
業盛は即答した。
「そうなの。じゃあ、なんでそいつはいつもあんたにべったりなの?
愛人でもなんでもないのに世話をするなんて、私には理解出来ないわ」
「お前に理解されなくたっていい。それよりも、二度と鈴鹿を巻き込むような事はするな。
お前のせいで、俺は鈴鹿を傷付ける事になってしまったんだ」
「はぁ、なんで私のせいになる訳?あんたが料理を食べてれば、
こんな事にはならなかったのよ。人のせいにするのは止めてほしいわね」
「……目障りだ、さっさと消えろ……」
「その内、私があんたを消してあげるわよ」
嘲笑を残して、水城は立ち去った。程なくして、鈴鹿は目を覚ました。
元に戻ったか、狂ったままか、業盛は息を呑んで見守った。
「兄様、どうかしましたか?」
その声は、至って平穏なものだった。業盛は小さくため息を吐き、
「なんでもない」
と、言って、鈴鹿の頭を撫でてやった。
愛らしい声を上げる様を見て、とにかくこれで一安心と、業盛が思ったのもつかの間、
「兄様、お願いしたい事があるのですが」
「なんだ、言ってみろ」
「胸を揉んでほしいのです」
鈴鹿はとんでもない事を言い出した。
- 213 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:33:36 ID:tHOCcq1Q
- ついに実力行使に来たらしい。
業盛は鈴鹿がまた発狂してしまわないように、なんと言って断ろうか考えようとしたが、
鈴鹿は真剣そのものであり、事実、話の内容は真面目だった。
「実は私、胸に水が溜まりやすい体質らしくて、たまに締め付けるように痛むのです。
これまでは一人で対処してきたのですが、自分だと手加減して揉んでしまって……。
こんな事を頼めるのは、兄様しかいないのです!お願いします、胸を揉んでください!」
出産すると胸に母乳が胸に溜まり、痛みを発する事がある、と聞いた事はあるが、
胸に水が溜まるなどというものがあるのだろうか。
ないとは言い切れない病状のため、業盛は少し迷ってしまった。
「しかし、俺のような素人がそんな事をして大丈夫なのか。
下手にやって悪化したら元も子もないぞ。ここは医者に頼んだ方が……」
「嫌です!」
「えっ……」
「他の人に、身体を見られるのも触られるのは嫌なのです。
あのような汚い目で、手で触られたら、身体が腐ってしまいます。
それだけは嫌、絶対……絶対絶対絶対絶対絶対絶対ッ!
……でも、兄様はもう私の裸を見て、触っていますから大丈夫だと……」
「……………………」
やっぱり嘘かよ、と業盛は心中断定した。
そこまでして一緒になりたい理由が、業盛には分からない。
ただ分かるのは、ここで断ったら、鈴鹿が狂ってしまうという事である。
気絶させるという手段もあるが、正直使いたくない。業盛は覚悟を決めた。
「……分かった。揉んでやるから、帯を緩めて前を肌蹴てくれ」
「うん!」
嬉しそうに答えるなよ。業盛はそう思いながら、露出した鈴鹿の大きな胸に手をやった。
相変わらず柔らかく、大きな胸ではあるが、
一度見ている事もあってか、業盛の理性は軋まない。
「痛いか?」
「へっ……平気です。続けてください……」
言われるまでもなく、業盛は手の力を強めた。指が胸にめり込んでいく。
胸の根元を掴んで揺らしてみたり、寄せて谷間を作ったりした。
鈴鹿の切ない吐息が漏れ始め、乳首は硬く、胸は紅潮していった。
すると、とろんとした表情の鈴鹿が、業盛の股間に手を伸ばしてきた。
この時を待っていたとばかりに、業盛は胸から手を離し、
髪を結っている布を解くと、それで鈴鹿の両腕を縛り上げてしまった。
「えっ……、あっ……兄様、なにを……」
「勝手に動かれて手元が狂うと大変だからな。縛らせてもらった」
「でも兄様、私だけ……、ひゃあ!」
有無を言わさず、業盛の指が鈴鹿の膣内に挿入された。どろりとした液が、業盛の指を伝う。
「さぁ、体内の悪い水、全て吐き出させてやろう」
言うなり、業盛は乳首に吸い付き、膣内の指も忙しなく蠢いた。
- 214 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:34:04 ID:tHOCcq1Q
- 指が膣内で蠢き、乳首を強く吸い、甘噛むだけで、
鈴鹿の身体は激しく痙攣し、膣口からは液が泉のように湧いて出た。
乳首を吸いながら、業盛は鈴鹿の顔を覗いた。
鈴鹿は上気した顔で、こちらを見つめていた。
欲望で異様にきらきら光っている目は、まだ足りないと言っている。
「あっ……あにしゃまぁ〜、みぎのぉ……みぎのおっぱいもぉ〜」
放っていた乳首は、ガチガチに勃起している。乳首を抓り上げると、艶やかな声を上げた
「しゅ……しゅごいよぉ、これぇ〜。こんらの……わらひぃ……ばかになっちゃうよぉ〜」
だらしない表情で、陶酔の言葉を漏らす鈴鹿であるが、構わず業盛は愛撫を続けた。
膣内を抉る指は、乳首同様に充血し、勃起している肉芽も、焦らすように擦り続け、
「ひゃっ……ひゃだよ、あにしゃまぁ〜。
わらひぃ……、あにしゃまのま……ひぐっ!」
不意を突くように、爪で肉芽を押し潰した。膣内が収縮し小水が迸った。
それでも、業盛の指は止まらない。
「あっ……あにしゃ……だめ……はげ……あひゃう!」
もうなにを言っているのか分からないほど、鈴鹿は乱れに乱れていた。
その乱れ声が聞こえなくなる頃に再び顔を覗いてみると、
見開かれた目は、瞳が在らぬ方向を向き、口からは舌がだらしなく飛び出す、
という人間がしてはいけないような表情をしていた。
ようやく業盛は指を止め、色々な体液で汚れた鈴鹿の身体を清め始めた。
「よく耐えられたな、俺」
気絶するまで鈴鹿を攻める。それしか鈴鹿を狂わせずに黙らせる方法がなかった。
これのおかげで、業盛は大切なものを失ってしまった。また同じような事態になった時、
なんの恥じらいもなくこの行為を行う事が出来るだろう。
正直なところ、まぐわいよりもこちらの方が恥ずかしいのではないか。
それを考えると、業盛は泣きたくなった。
鈴鹿の清めが終わった。業盛は鈴鹿の腕の布を解いて、髪を結うと、
自分の身体に付いた体液を拭い始めた。自分の身体を拭くのに夢中になったのか、
この時、後ろの戸がほんの少し空いているのに、業盛は気付く事が出来なかった。
「ふ〜ん……、やっぱりあの二人はそういう関係だったんだぁ……」
覗き見ていたのは水城だった。水城は邪悪な笑みを浮かべ、その場を去った。
翌日の昼、部屋に戻った業盛は、異変に気付いた。
いつもだったら抱き着いてくる鈴鹿がいないのである。
ふと、机の上を見やると、書置きがあった。それは、誘拐文だった。
『あんたの愛人は預かったわ。
こいつを殺されたくなければ、六波羅への道中にある断崖に来なさい。
ただし、武器はなに一つ持たずに来る事。
もし寸鉄でも帯びているのを見たら、容赦なく殺すから、そのつもりで』
読み終えた業盛は、書置きを握り潰した。
- 215 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:34:43 ID:tHOCcq1Q
- 断崖には、弓を持った水城が待ち構えていた。
「やっぱり来たわね」
「水城、お前って奴は……」
「おっと、動いたらこいつの首が飛ぶわよ」
水城が短刀を鈴鹿の首に突き付けた。
鈴鹿は短刀を突き付けられたというのに、悲鳴一つ上げようとしない。
「水城、鈴鹿になにをした!」
「死んではいないわよ。気絶しているだけ。
本当だったら、あんたの死ぬところをこいつに見せてやるつもりだったけど、
ピーピーうるさいもんだから……、残念極まりないわ」
「…………」
「おしゃべりはここまでね。書置き通り、武器は持ってきてないみたいね」
そう言うなり、水城は矢を放った。放たれた矢は、業盛の胸に突き立った。
突如、業盛の身体が震え始め、その場に倒れた。
「なっ……なん……だ、これ……は……」
「鏃には我が家に伝わる猛毒が塗ってあるの。直に楽になるわ」
「ひっ……きょう……もの……。ひと……で……なし……」
「最高の褒め言葉として受け取っておくわ」
程なく、業盛はピクリとも動かなくなった。
それを見て、水城は大笑いした。
「意外とあっけなかったわね。これからはこの方法を使ってみようかしら。
……さてと、私の事を散々虚仮にした馬鹿の首を、斬り落としておこうかしら」
業盛の身体に片足を乗せ、いざその首を斬り落そうとした瞬間、水城は違和感に気付いた。
しかし、気付いた時には、業盛によって地面に倒されていた。
「あんた、服の下に鎧を着込んでいたのね!さっきの悶えも演技だったというの!」
「これでも一度は経験してるんでね、ちょっとやってみただけだ」
「じゃあなんで、矢が身体に届いていないなら、鏃に毒が塗ってある事に……」
「なんとなく、お前みたいな人でなしだったら、そうするだろうと思っただけだ」
水城になにをするでもなく通り過ぎ、いまだに眠っている鈴鹿に気付けをしていた。
水城の顔が、みるみる赤くなっていった。
「ふざけるな……、ふざけるなふざけるなふざけるなぁああ!」
水城は短刀を握ると、業盛に向かって突進した。
怒りの篭った刃は、業盛に叩き落とされてしまった。
またしても、水城は業盛を殺し損ねたのである。
「どうして……どうして勝てないの……」
悔しがる水城をよそに、業盛は鈴鹿に抱き着かれながらも帰ろうとしていた。
それがますます水城の癪に障ったらしい。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!」
ついには見栄も外聞もなく地団太を踏み始めた。それを見た業盛は、
「おい、この辺りは地盤がかなり緩い。昨日は雨だったから、そんなに暴れると……」
言い掛けて、駈け出した。崖が崩れ、水城が落ちたのである。
業盛の伸ばした手は、なんとか水城に届いた。
- 216 :変歴伝 第五話『悪土の酸橘、良土にて甘橘となる』 ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:35:24 ID:tHOCcq1Q
- 「なんのつもりよ……」
冷静ではあるが、悔しさが溢れる声音だった。
「見て分からないか。助けてやってんだよ。さっさと上がって来い」
「離しなさいよ!なにが悲しくてあんたなんかに助けられなきゃなんないのよ!」
再び水城は激高し、激しく暴れた。空いている手で、業盛の腕を殴った。
「あんた、私の事馬鹿にしてるの!散々命を狙ってきた相手を助けるなんて……。
聖人君主でも気取るつもり!」
「知るか!そんな下らない話をする暇があるなら、さっさと上がって来いと言ってるだろ!
早くしろ、馬鹿!」
「どうせ私なんて、あんたみたいな馬鹿も殺せない、ただの役立たずなのよ!
このまま死んでしまった方が、清々するわ!」
突如、水城の手を握る業盛の力が強くなった。刹那、水城の身体が引き上げられ、宙を舞った。
そのまま水城は地面に叩き付けられた。
「なにすん……」
水城が文句を言おうとした瞬間、業盛の平手が顔を打った。
「いい加減にしろ!なに勝手な事を言っている。
あんな訳の分からない理由で死んでいい命などある訳がないだろ!
両親や弥太にすまないと思わないのか!」
「ふん!……私は両親どころか皆から嫌われているよ!
せっかく頑張って強くなっても、褒めるどころか逃げていく!私なんて……」
「ふざけるな!」
業盛の怒鳴り声が響いた。
「どこの世界に自分の子が嫌いな親がいるか!
本当に嫌いだったら、お前をその歳まで育てる訳ないだろう!
お前はな、勝手に拗ねて、勝手に暴走して、勝手に捻くれただけだ!」
これ以上もないほどの痛烈な言葉だった。水城は声も出せず、業盛を見つめている。
「……もしも、本当にすまないと思うなら、さっさと家に帰って全員に謝罪する事だ。
そして、さっさと婿を貰う事だな。それが一番の孝行になる。
お前は顔だけなら天下一品なんだ。相手だったら掃いて捨てるほどいるだろうよ」
言いたい事はすべて言った、と業盛はため息を吐くと、驚いている鈴鹿と共に歩きだした。
「ねぇ、一つ教えてほしいんだけど、どうして、あんたは私の事を殺さなかったの?
あんたの腕だったら、いくらでも機会はあったはずなのに」
「まったく、まだ分からないのか」
振り返った業盛の答えは明瞭だった。
「お前が、俺よりも馬鹿だからだよ」
にっこりと笑う業盛の顔を、水城は真っ赤な顔で見つめていた。
ようやく業盛の屋敷に平和が訪れた、かと思えばそうでもなかった。
水城は相も変わらず屋敷に居着き、業盛の命を奪うべく、戦いを挑んでは負けていった。
それを見る家中の者達は、まだやっているのか、という冷やかな目付きで、通り過ぎて行った。
しかし、である。これまでだったら考えられないような大きな変化があった。
今まで殺す手段を選ばなかった水城が、白昼に堂々と勝負を申し込んだだけでなく、
業盛の呼称が、あんた、から、刑三郎、へと変わっている。
これに気付いた者は、戦いを受けて立っている業盛本人だけである。
これだけならまだよかった。
最大の変化は、いつものように勝負に勝ち、部屋に戻ると、
「兄様ぁ〜」
「ご主人様ぁ〜」
頭の壊れたのが、一人増えている事だった。
- 217 : ◆AW8HpW0FVA:2012/04/06(金) 00:36:03 ID:tHOCcq1Q
- 投稿終了です
- 218 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 01:12:48 ID:PRh9n1vw
- おつ。いい作品だ。
- 219 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 03:03:06 ID:zO7cktPo
- 次からようやく水城のデレが見れるんですねw
久しぶりにwktk!!
- 220 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 03:34:13 ID:Ucr0UDYQ
- 乙!
- 221 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 09:49:20 ID:evLpR6k.
- >>217
乙乙!
- 222 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 18:28:16 ID:zC2MG2sE
- 乙乙乙!
- 223 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/06(金) 18:59:46 ID:0oG/9L7M
- 乙
- 224 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 00:56:13 ID:.ZwjhNh.
- この作品の削除前の内容を知っている者がどれほど残っているのか・・・
- 225 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 04:42:26 ID:M5KUgbFM
- ほとんど知ってるだろ
- 226 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 10:14:30 ID:2fcDSHOU
- ドラファンまだかなあ
- 227 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 11:29:27 ID:g66DsudY
- >>224
知らないわけないだろ
- 228 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 11:48:59 ID:ir1tt5Oc
- >>227
禿同
- 229 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 16:44:17 ID:RgQSiWa2
- せやな
- 230 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/07(土) 21:54:11 ID:WAoGnQkU
- 初めからとかまだかなぁ
- 231 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/08(日) 07:33:19 ID:GVtMJvAM
- >>230
禿同
- 232 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/08(日) 22:35:11 ID:tqYnRNBY
- >>230
ほんとに禿同だな
- 233 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/08(日) 23:07:44 ID:Vhtwh3So
- ドラファンって保管庫にまだあんの?
- 234 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/08(日) 23:09:24 ID:ZBB5vQlo
- よしおまえ確認してこい
- 235 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/09(月) 01:05:12 ID:jJwYCUks
- ドラファン<変歴伝
- 236 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/09(月) 02:18:47 ID:cWQoVMOA
- <<233
<<234
22話まであったお
- 237 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/09(月) 16:29:17 ID:XLYo6YA6
- ドラファンかぁ なつかしいな
また読み返そうかな
- 238 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/10(火) 00:48:31 ID:wI10F/Us
- 「夫が隣に住んでいます」とか「不安なマリア」大好きだったんだけど
もう続きこないのかな…?
- 239 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/10(火) 01:00:54 ID:jrH7Cjpw
- 星屑まだですか
- 240 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/10(火) 01:05:17 ID:/iukE8FQ
- >>164
- 241 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/10(火) 23:11:28 ID:TPlTVDcY
- >>238
両方ともこれからなとこで終わってるからな
- 242 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/10(火) 23:12:17 ID:/iukE8FQ
- (ノ∀`)アチャー
- 243 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/11(水) 04:53:48 ID:7ScHJVZ.
- 軍人系はドツボです
- 244 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 00:25:22 ID:p.NkRVWo
- 途中で止める奴は書くなよ
期待させやがって
- 245 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 00:28:02 ID:JZSf.lFE
- * *
* いやです +
n .∧__,,∧ .n
+ (ヨ(´・ω・`)E)
Y Y *
- 246 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 00:31:29 ID:w1JJynV2
- >>244
あなたみたいに年中暇じゃないんでしょ
- 247 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 01:59:44 ID:rJzQggz2
- ところで本屋の店主みたいな文系陰気キャラはヤンデレと相性がいいと思うんだが
活発すぎないし、妄想癖とかみたいなキャラ設定上のオプションが色々つけやすそう
- 248 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 02:01:21 ID:J2ONpYko
- 作品が無いなら、自分で書けばいいじゃない。
by マリー・ヤミラトワネット
- 249 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 06:11:28 ID:ZzIqFQIA
- 年中春休みで引きこもってたらネタなんか浮かばないしな~
- 250 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 15:26:21 ID:XbmnkyBc
- 初心者の長編は100%近い確認で終わらない。真面目に書くつもりなら、短編から書くこと。
何本か練習で書けば分かるよ。
一つの作品終わらすって、どんだけ大変か。
自分に才能があるかないか。
初心者で長編に挑むって、どういうことか。
怒る気持ちは分かるが、初心者の長編は途切れて当たり前と思って読むべき。
- 251 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 15:53:22 ID:XbmnkyBc
- >>250
とまあ、挫折歴のある俺が言ってみる。
- 252 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 19:36:10 ID:o9z9mpms
- 未完の物は自分で妄想して楽しめばいいじゃないか!
- 253 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 20:18:38 ID:o9z9mpms
- ねえ、ここって男が泥棒猫に寝取られる展開は許される?
主人公と幼馴染は同じ高校に通う二年、別のクラス。
二人は中学から付き合っているが、主人公は彼女の嫉妬から来る束縛に辟易している。
そんな時、主人公と同じクラスで高校入学当初から彼の事が好きだった泥棒猫が
チャンスとばかりに積極的にアピールしてくる。泥棒猫は目的達成に手段を選ばないタイプで、
話すときのボディタッチから始まり、逆レイプ(誘惑して和姦でも可)で既成事実まで作り、主人公を幼馴染から奪おうとする。
そして主人公が幼馴染に別れを告げる事をきっかけに幼馴染ヤンデレ化。
っていう話を考えているんだがどうだろう。
なんだかスクールデイズみたいだが、差別化の為、主人公はいいやつなキャラクターを考えている。
ヤンデレの本質は大きすぎる愛だよね。そしてそれが上手くいかないから心が病んでしまう。
その病む過程が面白い。
この男が寝取られるのはあり?
- 254 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 22:31:30 ID:ymeb/il6
- 多いにありだな…
- 255 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 23:11:01 ID:mtEUwGjw
- >>253
まるでM・Iさんが悪人みたいじゃないですかーやだー
- 256 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/12(木) 23:52:37 ID:QadEwOoQ
- >>255
だが、善人でもない。
- 257 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/13(金) 00:48:16 ID:T3tgizdM
- >>253
ちんピクした
書いてくださいお願いします
- 258 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/13(金) 01:54:30 ID:kVy/GIL2
- >>253
えぇぞ!えぇぞ!
- 259 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/13(金) 15:53:31 ID:RcYrVFeg
- >>253だけど、今書いています。
纏まり次第投下します。
現在2話完成。1話1500〜2000字程。
5話完結予定。
- 260 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/13(金) 18:13:09 ID:T3tgizdM
- >>259
頑張れ!
- 261 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/13(金) 20:48:30 ID:ouLub.iE
- さっそく全裸待機するか
- 262 :test ◆1KAwi07cG.:2012/04/14(土) 03:59:39 ID:twZIOCNE
- test
- 263 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/14(土) 06:03:37 ID:B/9.Ifc.
- 最近妄想が膨らまないんだけど想像力が落ちたのかな
- 264 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/14(土) 06:07:24 ID:B/9.Ifc.
- 最近妄想が膨らまないんだけど想像力が落ちたのかな
- 265 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/14(土) 08:56:08 ID:8mg/J7Zk
- 大切なことです
- 266 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:12:22 ID:Br3PhM8M
- こんにちは、ヤンデレの娘さんのモノです。
久しぶりに投下させていただきます。
次の神作が来るまでの、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
- 267 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:12:41 ID:Br3PhM8M
- 「う……ん」
いつものように、たった一人のベッドで目を覚ます。
静かな室内に、思わず周りを見回す。
いつかのように、と言うよりもいつものように、三日が俺を起こしに来ていたりはしない。
「当り前、か」
と、俺は1人ごちた。
―――何も聞かないで―――
そう、昨日俺は彼女に言ったのだから。
―――何も聞かないで、言わないで。ただ、忘れてくれればそれで良い。忘れて、幸せになってくれれば―――
着替えて、ダイニングに移動。
親は、今日から出張。
その為、この家には俺一人。
「君がいなくなって、この部屋はずいぶん広くなっちゃったよ―――ってドラえもんじゃないんだから」
そんなボケをかましてもツッコミを入れる者はだれも無く。
朝食は、適当で良いだろう。
俺は、冷蔵庫の余りものを適当に胃袋の中に詰め込むと、黙々と学校の準備。
その間にも、昨日の言葉が思い出される。
―――貴様は、誰も幸せにすることが出来ない―――
『アイツ』の言葉が胸を突き刺す。
―――幸せになることなど、許されない―――
その言葉は正しい。
いつだって正しかった、残酷なまでに。
その言葉に従うなら、その正しさに従うなら、アイツを幸せにするためなら、することは、決まっている。
そんなことを考えながら、俺は玄関のドアを開けた。
すると、外から「・・・ぷぎゃ!?」と言うヒロインらしからぬ悲鳴が聞こえる。
「・・・・・・?」
何かと思ってドアの反対側を見ると、「・・・いひゃい」と鼻を押さえている緋月三日の姿が。
どうやら、玄関の前に立っていた彼女の顔を、ドアでノックアウトしてしまったらしい。
それはさておき、である。
「・・・・・・朝からどうしたの、緋月?」
俺は短く問いかけた。
「・・・いひゃいや・・・もちろん、恋人である千里くんと、朝から恋人らしく一緒に登校するために、恋人である千里くんをお迎えしようと3時間前から恋人である千里くんの自宅の前でお待ちいたしていた次第です」
彼女を名字で呼んだ俺とは対照的に、名前呼びを強調するように繰り返す三日。
「・・・・・・緋月」
最近寒くなってきたと言うのに早朝からならば尚更だろう、と言う言葉を呑み込んで、俺はもう一度彼女を名字で呼んだ。
三日に作った距離を、再確認するかのように。
「俺、昨日言ったよね。その手の話は、その・・・・・・」
「・・・昨日のことなら忘れました」
さっきまで鼻を抑えていたのが嘘のように、三日は俺を真っ直ぐに見据えて言った。
「・・・『忘れました』。千里くんのお願い通り。・・・私が忘れたのは、私が忘れられるのは、それだけです」
真っ直ぐな視線と、真っ直ぐな言葉。
それとは対照的に、俺は彼女から目を逸らしている。
「・・・・・・俺は、違うから」
「…え?」
「俺には、無理だから」
俺は小さくそう言い捨てて、逃げるように走り去った。
いや、逆だった。
走り去るように、三日から逃げた。
- 268 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:13:15 ID:Br3PhM8M
- 「おっはようございます、御神先輩!」
逃げ足ダダっとダッシュで三日を綺麗に撒いた通学路で、俺は後ろから声をかけられた。
一瞬、聞き違いかと思えるほど遠かったが、ギュン!と言う足音(?)と共に声の主が眼前に周りこんできた。
弐情寺カケルくんだった。
「……おはよ、弐情寺くん。良く分かったね、俺だって」
いくら高校生としては背の高い方だとは言え、俺と同程度の身長の奴は校内でも他に居ない、と言う程ではないのに、だ。
「いやぁ俺、目にだけは自信あるんですよ。一度会った相手なら、100メートル先からでも、後姿だけで分かりますよ。こう、ビビッっと!」
照れたように言う弐情寺くん。
「顔を視ないで、って言うのはもう目とか関係なく無い?」
「ウーン、何て言うか相手の全身の癖?モーション?とかも覚えちゃうんですよ、俺」
観察力と記憶力が長けている、と言う訳か。
元推理小説マニアだとは聞いているが、むしろ彼自身が推理小説の名探偵のようだった。
「確かに、どれだけちゃんとした、教科書通りの動きをしようとしても、その人の癖は残るからなぁ」
「そうです。スポーツでもどんな綺麗なフォームしても、手先とか、足の出し方とか、その人っぽさは微妙に残りますからねぇ」
「もしそう言う癖とか特徴とか消そうとしても、『特徴が無いのが特徴』になっちゃうしね、文字通り」
ちなみに、俺はそう言う奴を今までの人生で1人しか知らない。
「剣道やってるからですかねぇ、やっぱ」
「それ、関係あるの?」
「相手が面を被っていても分かりますから」
「確かに便利ではあるけど怖くない?剣道家がみんなソレできたら」
「あー、確かに。前に部の面子で、おふざけで面被ったままで誰が誰だか全員当ててみたら、感心される前にドン引きされましたからねー」
「そらそうだ」
控えめに言って、役に立つ特技とは言えなさそうだった。
「でも、好きな相手を一瞬でロックオン・ストラトス!出来るから、意外と便利なんですよ?」
「狙い撃つ気かよ」
「ってか珍しいですよね」
と、弐情寺くんは話題を切り替えた。
「御神先輩がこの時間に登校するなんて」
「そう?」
言われてみれば、そうかもしれなくもない。
「ホラ。俺とか、今から部活の朝練なんですけど、この時間帯だと基本、先輩と登校時間被んないじゃないですか。体育会系の部活されてる方じゃないですから」
「ああ」
ポン、と手を打って俺は納得した。
起きた時間は、普段とほぼ変わりない。
それにも関わらずこうして弐情寺くんと歩いているのは、普段だと、準備や朝食にもっと時間がかかるからだ。
普段は、2人だから。
独りではなかったから。
「それにしても、君の後輩キャラっぷりだけはブレ無いね。正直、昨日で尊敬度とかダダ下がりするかと思ったんだけど」
独りで歩いていてもヒマなので、その後輩クンと雑談パートをはじめることにした。
「下がるようなこと、ありましたっけ?」
「ボコボコにされて、バカ話した。昨日はそんだけしかやらなかったし」
「昨日は本当にすみません」
さすがにションボリする弐情寺くんに、俺は「そんなのいいよ」と手をヒラヒラさせる。
「でもスゴイですよ、先輩。俺にあんだけ打ち込まれて立ち上がった人、今まで見たこと数えるぐらいしかいませんでしたから!」
目を輝かせて言われると、複雑な内容である。
「そうは言うけど、俺より強い人なんて掃いて捨てるほどいるよ?」
「それはそうですけど、強い人たちはそもそもそんなに打ち込ませてくれませんよ。こっちが打ち込まれて、勝負付けられてます」
それを聞くと、俺もまた微妙なポジションである。
いや、別に最強とか目指してるつもり無いけど。
「あのガッツと、その後に熱く激しく聞かせていただいた一本筋の通った信念!あれこそ僕の理想とする正義そのもの!まさにジャスティス!」
眩しい……眩しすぎる。弐情寺くんのキラキラした純粋な瞳は、汚れきった俺にとっては眩しすぎて、正直正視に絶えなかった。
「・・・・・・って、どうしたんですか先輩。まるで聖なる光を浴びた死霊みたいな顔をして目を逸らして」
「いや、何でもない。・・・・・・そうそうそうだった。今日は良いことありそうって話だったね」
「言われてみればそんな話もしてたような気もしますけど、そんな話題でしたっけ?」
「良いことがありそうってのは、存外的外れな話じゃ無いかもよー?」
「お、マジですか」
意外と追求してくることなく、あっさり話にノッてくる弐情寺くん。
「ウチの学年に、美人が転入して来る」
「おお!先輩が美人って言うなら相当ですね」
「そう?」
- 269 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:13:38 ID:Br3PhM8M
- 「だって、緋月先輩なんて可愛らしい方とお付き合いしてるんですから。・・・・・・そう言えば、今日は一緒じゃないんですか、緋月先ぱ「聞かないで」「ラーサー!」
と、そんな会話をしていると、折り良く後ろから「オッ?」と声をかけられる。
「ンな時間に珍しいな、千里じゃねーか?」
「アンタも案外顔が広いわね、剣道部期待の新人クンと一緒だなんて」
振り向くと、葉山正樹に、彼と腕を組んで歩いている明石朱里がいた。
「おはよう、2人とも。今日、朝練だっけ」
「ああ、だから一緒にガッコ行けないかと思ってたンだがな、珍しいコトもあるモンだぜ」
「まぁ、ねー。あ、この子のことを紹介しないとだね。ええっと・・・・・・」
「剣道部1年、弐情寺カケルくん。夏の大会で大活躍したってので、新聞部の取材が来た、高等部1年生の中だとちょっとした有名人よね」
と、俺が話し始めるよりも前に、明石がつまらなそうな顔で言った。
そんなコトがあったとは知らなんだ。
「あ、ハイ、そうです。はじめまして、先輩方。僕、弐情寺カケルと申します。先輩方のお噂も、かねがね聞き及んでおりました」
正樹たちに向かって礼儀正しく(こう言う所は体育会系だ)一礼をする弐情寺くん。
「何だ、知ってたんだ」
「はい。同じ体育会系の部活同士、色々とお話だけなら。御神先輩のことが無くても、お2人は有名ですし」
「有名?」
「そんな設定?」
「あったかしら?」
怪訝そうな顔をする俺たちだったが、明石だけは明らかに目を逸らしていた。
「それはもちろん、我が学園期待のバスケ部新部長葉山正樹先輩と、『朱き潜行者』の異名を取る水泳部のエース明石朱里先輩ですから!」
ちょっと待てい。
「はやまん、はやまん。新部長とか、『わたし聞いてない』ってカンジなんだけど?」
「ああ、悪い悪い。言い忘れてた。大したことでもねーし」
俺がジト目で抗議するのを、頭を掻きつつ軽く応じる正樹。
弐情寺くんの言葉を聞く限り、十分大したことのように聞こえたんですけど?
「部活ってぇのは、部全体で1つのチームだかんなー。ソコがブレなきゃ、誰が部長だろうと関係ねーよ。『部長なんてただのカザリです、偉い人には以下省略』って奴さ」
何でもないことのように言う正樹。
けれど、だからこそ分かる。
「お前は、きっと良い部長になるな」
俺なんかとは、違って。
大切な人を守れない、俺なんかとは違って。
「おうさ。……ってどうした?」
そう応じて、ふと怪訝そうに俺の顔を見上げる正樹。
「何が?」
「ソレはこっちの台詞だバカ。……悪いモンでも喰ったような顔してるぜ?」
これはまた、随分な例えである。
その癖、かなりストレートど真ん中なのだから性質が悪い。
「別に、何でも無いよ」
正樹の言葉をかわし、俺は先を急いだ。
「オ、オイ。待てよ!」
「先輩、待って下さーい!」
その姿を、やはり明石はつまらなそうな顔で見ていた。
俺の、惨めな姿を。
- 270 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:14:07 ID:Br3PhM8M
- 九重かなえ
コンピュータのような正確さで、『特徴が無いのが特徴』としか言いようの無い字体で、クラスの黒板に名前が刻まれる。
「今日から皆様と共に勉強することになりましたー。よろしくお願いしますねー」
いつものようににっこりと笑って、九重はクラスのみんなに言った。
朝のホームルームのことである。
九重は、俺達のクラスの転入生として紹介された。
恐らくは顔を合わせることがあるだろうと思っていたが、よもや自分のクラスに入ってくるとは思わなかった。
「九重?九重じゃんよー!」
そんなことを考えていると、正樹がガタリと立ち上がって九重に駆け寄った。
「おっ前今まで元気してたかよ!?千里や先輩達と心配してたんだぜー!?」
「ゴメンー。キミ、誰だっけー?」
「一番順当だけど一番傷つくセリフキター!」
周りの視線を一様に気にすることなく、感情の赴くままに興奮して、落ち込んで、を表す正樹。
こう言う、自分に正直なところは羨ましい。
「どーせ俺は永遠のサブキャラですよーだ。でもヘコむ」
「冗談冗談。覚えてるよ、まぶやー」
「ソコは葉山だ葉山ー!何で沖縄のご当地ヒーローみたいな名前になってンだよ分かりづらいわ!」
「……正樹。その女、どう言う関係?超優しい幼馴染は怒らないから言ってごらん?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
席に座ったままの明石から燃え上がる、静かな怒りのオーラにひっくり返る正樹。
「冗談よ。噂には聞いてるから。仲よくしましょう、九重かなえさん」
「よろしくー」
型通りの挨拶を交わす明石と九重。
「あー、九重さん。そろそろ良い?」
いつも通り、どこかやる気無さ気な担任の先生が(ようやく)声をかける。
「お騒がせしてすみませんー。主にはやまーが」
「葉山くん、席に着きなさい」
先生の言葉に立ち上がる正樹。
「すンません、昔馴染みとあってつい。すぐ戻ります。……キッチリ名前覚えてんじゃねぇかよ、嬉しいじゃねぇか」
鼻歌さえ聞こえてきそうな歩調で着席する正樹。
「九重さんは、ソコの一番後ろの席ね」
「分かりましたー」
先生に促され、九重も着席する。
そこまでの様子を、俺は決して目を離すことなく注視していた。
そして、同じくその様子を見ていた三日の姿を、決して見ようとはしなかった。
そんなやり取りがあった後である。
転校生のお約束として、九重を質問攻めにしようとするほかのクラスメートを遮り、正樹が絡みに絡み、(半分以上は九重にスルーされたが)昼休みになって、
「なぁなぁ、せんりんせんりん。俺ら4人で九重の奴を校内案内してやろーぜ!」
と、彼が言い出したのは当然の流れだと言えるだろう。
「いきなり仙人みたいなあだ名作らないでよ。って言うか、4人って誰?」
「俺、お前、緋月に明石。いつもつるんでるカルテット。順当だろ?」
「・・・・・・」
まぁ、そうだけどさ。
「つーか、よぉ」
と、正樹は弾んだ表情を押し込めて小声で言った。
「こういうのってむしろ普段のお前のキャラじゃねーのかと、この正樹サンは思うんだが」
「・・・・・・どーゆー意味さ?」
「いつもせんりんなら、九重の奴が転校なんてなったらもっとテンション上がってるだろ?右も左もわからねー転校生にあれこれ世話をやくところだろ?」
「・・・・・・」
「緋月の奴に遠慮しているのか、って思ったけど、休み時間に朱里に聞いたら『なーんか違うっぽい』みてぇだし?」
いつの間にか、正樹は明石にも話を振っていたらしい。
「お前、何かあったか?」
今日は、正樹のカンが冴えているのか、それとも俺が分かりやすすぎるのか。
「・・・・・・別に」
俺がそう言うと、正樹は一瞬不機嫌そうな顔になったが、
「まぁ、言いたくねぇってのなら無理には聞かねーよ」
と引いてくれた。
「で、別に何も無いってぇのなら、九重の奴を誘いに行こうぜ?」
前言撤回。
- 271 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:16:17 ID:Br3PhM8M
- 夜照学園は広い。
中等部と高等部があるので当然だが、高等部だけでもかなりのものだ。(何しろ、学年によっては13クラスもある位だ。)
実際、俺も中等部時代は、高等部の校舎のことなんて全く把握できていなかったし、今現在でも広大すぎて時々迷うくらいだ。
そう言う事情もあってか、正樹たちの誘いに九重は2つ返事で納得してくれた。
「ンで、こっからがようやっと3年生のクラスがあるってぇワケだ。教室だけじゃなくて、3年生専用の自習室なんてイカれた代物まであるンだぜ」
と、嬉々として説明しているのが正樹だ。
それを、九重がいつものニコニコ笑顔と言う名のポーカーフェイスで聞いている。
相変わらず、感情の変化が分からない。
その後ろで、明石が目の笑っていない笑顔と言う怒髪天モードを発動している。
こちらは、感情の変化が分かり易い。
『自分が誰の男なのか、自覚あるのか・し・ら?』と言う本音が、目を見るだけで伝わってくる。
肝心の本人に伝わっていないのが難だが。
と、明石の方に目をやっていると、衝動的に抱きつきたくなる小動物的黒髪少女、もとい三日と目が合いそうになり、思わず前を向いて目を逸らす。
三日がどんな顔をしているのかは、考えないようにしよう。
と、前に向き直ると、見知った人影が廊下の奥から歩いてくる。
その影が
「か、」
の音と共に地を蹴り、
「な、」
の音と共に間合いを詰め、
「え、」
の音と共に両手を広げ、
「た〜〜〜〜ん!」
の音と共に、九重に向かって抱きつこうとするが、
「ラブるぼげぶはぁ!?」
その人影、もとい変態が廊下を転がる音と奇声が響いた。
「ちょっと、御神ちゃん!今尊敬すべき先輩に向かって失礼なこと考えなかった!?あと、人事みたいな顔してるけど、思いっきり私を投げ飛ばしたでしょアナタ!?」
変態、もとい一原百合子先輩は一瞬でダウン状態から復帰。
俺に向かって抗議の声を上げる。
「・・・・・・」
俺はつい、と視線を逸らした。
「?まぁ、それはさておきかなえたん、もとい九重たん。日本に戻ってたのね。覚えてる、私のこと?中等部時代の先輩の一原百合子。いやー、懐かしいわね。懐かしいついでに旧交を温めるために今夜食事でも行かない?その後はホテ・・・・・・」
九重に向かって興奮気味に話しかけていた(手も握ろうとしたらしいが、九重にサラリとかわされた)一原先輩の言葉は、彼女の背後に生まれた5つの殺気に遮られた。
「一原前生徒会長、いたいけな後輩を出会い頭に口説くと言うのは先輩として自生すべき行為かと思われますが?」
4つの殺気を代表するように、その1つ、もとい1人、氷室雨氷先輩が言った。
「口説いてない口説いてない!ただ、昔なじみにサプライズ的に会って、ちょーっち興奮しただけ。うーちゃんだってそうでしょ、ね?ね?」
「・・・・・・まぁ、そう言うことで今回『は』許しましょう」
ため息混じりに氷室先輩は言った。
氷室先輩とその後ろの3人は、一原先輩に激ラブ(病みラブ?)なのである。
血の気が多い部分もあるが、根本的に皆一原先輩には甘いのだ。
「お久しぶりですね、九重後輩。と、言っても中等部時代の先輩など、もう覚えてはいないかもしれませんが」
「いえ、そんなことはー。お久しぶりです、一原先輩、氷室先輩。お2人ともお元気そうでなりよりですー」
先の殺気だったやり取りに表情を崩すことなく、九重は氷室先輩に挨拶を返した。
「っつーか先輩方。受験勉強とかは良いんスか?2学期から受験用の時間割が始まってるって聞きましたけど?」
一原先輩たちとは見知った仲である正樹がそう問いかけた。
「いやいやいや、葉山ちゃん。いくら東大目指してるからって、そうそう24時間365日勉強してたら頭がショックのパーになっちゃうわよ」
「と、言うよりも、皆で図書館へ勉強しに行こうとしたら、あなた方がいた、と言うことなのですがね」
一原先輩の言葉に、氷室先輩が補足する。
先輩たちと同道しているメンバーには、英語教師であるエリちゃん先生もいる。
勉強会をするにはこれ以上無い相手だろう。
- 272 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:16:40 ID:Br3PhM8M
- 「図書館ー?図書『室』でなく、ですかー?」
と、九重が素朴な疑問を口にした。
「中等部と違い、高等部には図書室があるのです」
「自習室だと、みんなで勉強会やるのには向いてないからねー」
「ソレ、俺の台詞ですよー!」
先輩たちの説明に、正樹が抗議の声を上げるが皆スルー。
「と、そうだ九重ちゃん。折角だから、一緒に高等部(ウチ)の図書館行く?」
「折角ですけど、今ははやまー主催の高等部キャンパスツアーの真っ只中でー」
と、一原先輩の言葉に九重が答えた。
チラリ、と細めた奥の目が正樹の方に向いたのが分かった。
「俺はいーぜ、どっちでも。図書館は見せに行くつもりだったしよ。お前のための時間なんだ、お前の好きにしろよ」
正樹は言った。
それに対し、九重の表情が一瞬だけ動いたような気がした。
錯覚かと思うくらい、ささやかな変化。
想定とは異なる展開にか、ペースを乱されたことにか、どこか、不機嫌そうに顔を歪ませたよう、な?
それは、きっと、中等部時代の俺なら絶対に見落としていたような微弱な変化。
しかし、九重は瞬時にいつものポーカーフェイスに戻し、
「それでは、ご一緒しますねー」
と何事も無かったかのように、あるいはいつものように答えたのであった。
図書館に行く途中には、一度1年生の階を通って、1階まで行く必要がある。
「ここが一年生の世界か」
「それを言うなら教室」
などと正樹と明石がジョークを飛ばした時に、これまた見知った人影と出くわした。
廊下を歩いていた、1人の少年。
少年―――弐情寺カケルは一瞬驚いて目を見開いた。
そして、か、の音も、な、の音も、え、の音も発することなく、発する間もなく一瞬で。
九重を、抱きしめていた。
「会いたかった」
いとおしげに九重を抱きしめ、目に涙さえ浮かべて、弐情寺くんは言った。
「ずっと、会いたかった」
いきなりの出来事に、俺たちは誰一人対応できなかった。
九重でさえ―――驚愕に、目を見開いている。
俺は知らない。
九重のこんな顔を、俺は見たことも無い。
「ずっと心配してた。気にしてた。考えていた。恋―――してた。でも、また会えてよかった」
九重が動けないのを良いことに、弐情寺くんは言葉を紡ぐ。
「久しぶりだね、倫敦の名も知らぬキミ」
誰よりも嬉しそうな顔をした彼の姿に驚愕する俺たちの―――否、俺の後ろで、三日が嫉妬の炎を燃やしていることなど、誰よりも衝撃を受けていた俺が気づくはずも無かった。
- 273 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:17:16 ID:Br3PhM8M
- おまけ
解説:私立夜照学園
「あらゆる層の若者に、最上最良の教育を」と言う理念のもと、都内に創立された私立校。
幼等部から大学部まで存在し、途中編入も可能。
全ての学部を合わせた総生徒数は万を軽く超えるマンモス校である。
私立校の中でも比較的学費が安く、入学試験のレベルは特別低くも無ければ高くも無い。
その学費と比べて破格とも言えるカリキュラムや敷地面積、施設を誇る。
その為、中流階級から富裕層まで、様々な層の子供が在籍し、結果として個性が強く、自由な校風を生んでいる。
しかし、生徒の出自の違いや、生徒が多すぎる為に教師の目が行き届ききら無い等、生徒間のトラブルやイジメの温床を慢性的に抱えている。
- 274 :ヤンデレの娘さん 交錯の巻 ◆yepl2GEIow:2012/04/14(土) 13:17:48 ID:Br3PhM8M
- 以上で、投下終了となります。
お読みいただきありがとうございました。
- 275 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/14(土) 18:39:58 ID:twZIOCNE
- >>274
GJ!!!
規制解除はいつになるやら…。投下したくても出来ない。
- 276 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 04:23:03 ID:l4wRqlq.
- ナイスだ。
- 277 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 07:46:20 ID:GI3dJlmM
- ここって二次創作ありだし、商業活動してる訳じゃないから、少し官能小説やエロ本からアイデア借りてもいい……よね?
主人公を誑かすいいやり方が出て来ない。
- 278 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 08:14:21 ID:Y4IW8LJE
- >>277
バカが
盗作はあらゆる意味でやるんじゃねぇよ。
スレが荒れるだろうが。
過疎スレでも作品を晒す以上最低限の礼儀は守れ。
- 279 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 09:41:53 ID:LL6YmqaI
- >>274
乙乙!
- 280 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 10:02:50 ID:bgsbC8xU
- 完全なパクリはNGだけど、アイデアちょいならいいんじゃなイカ?
- 281 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 10:07:07 ID:uY8SNPlw
- オマージュくらいに留めておけば
投稿前に宣言しとけ
- 282 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 10:08:52 ID:GI3dJlmM
- 盗作になるほどアイデア貰うつもりはないんだ。
ただちょっと話を発展させるやり方を借りようと思って。
でもそういう意見があるなら止めとくよ。ありがとう。
- 283 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 11:18:22 ID:ZYATjKI2
- >>281
それでも言うやつは言うからね
- 284 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 15:24:56 ID:QLtw8NkQ
- アイディア借りるくらいいいだろ
大体ヤンデレなんて導入はみんな同じようなもんだろ
なにが盗作だ
馬鹿も休み休み言え
- 285 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 15:35:40 ID:GI3dJlmM
- ちょっと落ち着いてくれよ。
荒らす為に聞いたんじゃないんだから。
今短編書いてるから待ってな!!
- 286 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 15:50:05 ID:A7Q.UK8Q
- (ノ∀`)アチャー
- 287 : ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:03:30 ID:Gs/Z9.w6
- 空気を読まずに、星屑ディペンデンス第三話投下します。
どうやらもうすぐ新しい作品が投下されるようなので、ご飯ができるまでの間食程度にお召し上がり下さい。
- 288 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:05:38 ID:Gs/Z9.w6
- 「……まだ、帰ってきていない?」
「え、ええ。夕食を取りに来なかったので、作った分を家に届けに行ったら、まだ帰ってきていない様子でしたよ」
咲が王宮に出かけた次の日。無事に報告を済ませ、予定通りに帰ってきた彼女は、家に龍が居ない事を不審に思い、自分が留守の間、彼の世話を頼んでおいたアルフォンシーナの元へと来ていた。
「いくら出かけるのが遅かったとしても、私が出発した日には家を出ていた筈だ。祠までは片道30分程だし、今日のこの時間まで戻ってきていないという事はない筈……」
「あ、そういえば」
不意にアルフォンシーナが手を叩く。
「セイムさんが、森で男に襲われたー、手も足も出なかったー、ぶちころしてやるー、と言っておられましたよ」
のんびりとした彼女の言動からは想像もできないような下品な言葉が出た。もちろん、彼女の言葉ではないが。
「……何?セイムがやられた?」
セイムと言えば、召還者の中でも良くない噂を持つ男だ。不良と言っても差し支えないだろう。
それに、まがりなりにも『騎士』の能力者なので、それなりには強い。訓練を怠らない咲には到底敵わないが。
そのセイムがやられるとなれば、同じ能力者、それもかなりの手だれだろう。
咲の脳裏に一抹の不安が過ぎる。
「……有難う御座いました。ちょっと、森の方へ行って来ます」
「咲も気をつけて下さいね」
彼女は一つ礼をすると、森へ向かって脇目も振らずに駆け出した。
- 289 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:07:13 ID:Gs/Z9.w6
- ◇◆◇◆◇◆◇◆
会話が聞こえる。
「お父様。彼は人間の身でありながら、魔族である私を助けてくださいました。ですから、彼の為に部屋と食事、その他生活に必要な物を用意させて欲しいのです」
「うむ。他でもない我が娘を助けたという男だからな。種族に関係なく、恩は返すべきだ。至急、用意させよう」
「あ、有難う御座います!!」
話しているのは、女性と男性の様だ。今自分が寝ているベッドの近くではなく、この部屋の入口付近から聞こえてくる。
とりあえず、聞いたことのない声なのは確かだ。
状況を整理しよう。
ええと……俺は確か、少女を助ける為にチンピラを追っ払って、魔力を使い果たし気絶したんだっけか。
しかも驚く事に、その少女が魔王の娘だったんだよな。そして美少女。
まさか、俺が魔王なんてものと間接的にでも関わるとは思いもしなかったぜ。
ではこれらの事を踏まえて、此処はどこなんだ?
あの道を通りかかった親切な誰かさんが運んでくれたのかな。
て、いうか死んでは……いないよな。
だって今これを考えているのは俺だもの。
我思ふ、故に我在り。
……何か違う気がするけど、きっとそんな感じだ。うん。
そんな事をつらつらと考えていると、入口で話し込んでいた人物2人が俺の下へと歩いてきた。
「……あ、お目覚めになられたのですね!」
そう声をかけて来たのは、見紛う事なかれ、その白銀の髪と金色の双眸。あの時助けた魔王の娘(自称)である。
……あぁ、こうして見ると、本当に美人だ。
いや、美人というには少し語弊があるかもしれない。美しいではなく可愛いの方がしっくりとくる。
女優ではなくアイドル、といえば分かり易いだろうか。
そんな彼女は少し前まで何か心配事でもあったのでろうか、ほっと安堵からと思われる溜息を付くと、にっこりと微笑んで見せた。
誰だ、こんな可愛い娘に心配かけさせる阿呆は。
……自惚れでなければ、その阿呆とはまさに俺の事である。
「……先日は、その、助けて頂いたお礼も申し上げず、あんな事を言ってしまって……本当に御免なさい!」
彼女は深々と頭を下げると、そう言った。
俺はベッドから上体を起こし、それに答える。
「ああ、いいよいいよ。それより、無事でよかったね」
『あんな事』とは、何故助けたのか、云々の事だろう。
確かに、お礼の言葉と思って聞いてみれば、そんな非難がましい事を言われたのだから、驚かなかったと言えば嘘になる。
しかし、謝られる程の事でもない。俺はそこまで心の狭い人間ではないのだ。
と、先程その少女と会話していたであろう男性が言葉を発した。
「ステラよ。お前は彼に何か失礼な事を言ったのか?」
この少女、ステラという名前らしい。
ステラは一瞬びくっ、と体を強張らせてから問いに答える。
「……は、はい。私は彼に助けて頂いた時、あなたは人間なのに、何故魔族の私を助けるのですか、と言ってしまいました……」
と、男性は窘める様な口調で、
「駄目ではないかステラ。そういう時は、種族云々の話ではなく、先ず助けてもらったお礼を言うのが先であろう?」
「はい……しかし私は、人間に優しくしてもらった経験など無くて、俄かには信じ難く……」
「言い訳をするな」
なんだかステラが可愛そうになってきたので、助け舟を出す事にした。
「あの、俺は気にしてないんで、そんなに彼女を責めないであげて下さい」
男性は俺の言葉を受け、俺の方に向き直ると、
「突然だが、君はステラを魔族と知っていて尚助けたのかい?」
「いえ、知りませんでした」
ステラは物凄いショックを受けた顔したが、気にせず続ける。
「でも、仮に魔族だと知っていても助けたと思います」
この言葉に驚いた表情をしたのは男性の方だった。
「君は人間で、私たちは魔族だ。何故そんな風に接する事が出来る?」
俺は少しムッとして、こう返した。
「魔族だったら、助けちゃいけないっていう理由になるんですか?」
- 290 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:08:12 ID:Gs/Z9.w6
- 辺りが静まり返る。
やべ、俺なんか駄目な事言ったかな……。
耳が痛いほどの静寂とはこの事を言うのだろうか。
今言った事のどこが問題点か、真剣に悩みだした頃。
真剣だった表情を崩し、男性はにんまりと笑った。
「気に入った!私は君が気に入ったよ!まったく、面白い男だな、君は!」
先程までの威厳のある口調は何処へやら、急に砕けた態度で接してきた。
「君の様な男が、まだ人間にも残っていたとは!そうだ!今日はお祝いにしよう!乾杯だ!」
わははは!と豪快に笑い続ける男性。ていうか、声がデカい。無駄にデカい。
この状況をどうすべきか、答えを出しあぐねている俺に、ステラは半ば呆れた様な声で話しかけてきた。
「御免なさい。お父様はこういう人なんです。いえ、決して悪い人という訳ではないんですよ?」
「分かる。悪い人ではないっていうのは分かるよ」
ステラは確か、男性の事を『お父様』と呼んでいた。
と、言う事はこの男性は魔王だということになる。
しかし、いかにも愉快そうに笑う男性は、魔王だというのに荘厳だとか、悪の総大将だとかいう雰囲気は皆無だった。
「全然、魔王っていう感じがしないね」
俺がそう言うと、彼女は驚いた顔をして、
「あの……魔王っっていう話、信じてくれるんですか?」
「え?嘘だったの?」
「い、いえ!本当です!」
ぶんぶんと手を振って応じるステラ。
確かに、地球に居た頃の常識で考えてみると、魔王っていうのはもっと厳かなイメージがある。
しかし、目の前の男性はどうだろうか。初めの方ならまだしも、今の彼の話し方はいかにも庶民のお父さんのそれだ。
「お父様は確かに、少し優しすぎかも知れませんけど……それでも魔族を統べる王なんです。だからこんなに大きなお城だって……」
「……お城?」
「あ、彼方はまだ見てないんですもんね。ここは魔王城の本城、5階の部屋なんですよ」
どうやら俺は、魔王の城、RPGで言ったら最終ダンジョンに値する場所に居るようだ。
「……俺って確か、倒れたんだよね。君が助けてくれたの?」
「ええ。魔法で、運んできました」
「そっか、有難う。じゃあ、俺も村に帰らないといけないから……」
「あの……暫くこの城に泊まっていきませんか?」
「……え?なんで?」
「はい。助けていただいたお礼もしたいですし……」
「ああ。その事なら気にしないでよ。困った時はお互い様だし。それに、泊まっていくなんて悪いよ」
「でも……」
「いいんだって。村で心配してる人も居るだろうし……」
「まぁ落ち着きたまえ」
と、殆ど忘れられていた魔王様が口を挟んできた。
正直、アンタに落ち着けと言われたくないと思ったが、黙って耳を傾ける。
「ステラは君と話がしたいんだそうだ。魔族である自分を偏見なしに助けてくれた君と、ね」
「……そうなの?」
ステラは俯きがちに、さらに頬を多少紅く染めながら、小さく頷いた。
……そ、そんな反応されたら、断れないじゃないか!
「ま、まぁ、そういう事なら……」
そもそも、こんなに可愛い女の子に泊まっていけと言われて、断れる男が居るだろうか。
……いや、居ない!
と、まぁそんな理由もあるにはあるが(寧ろこの理由が9割を占めている)、仮にも魔王と呼ばれる人物が、俺に好意的に接してきているという事も理由としてあげられる。
早い話が、この機会に魔族について見極めておきたいのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰って……」
「おお!じゃあ早速パーティの準備だ!」
「お父様!またその話ですか?もう、少しは落ち着いてください!」
子供の様にはしゃぐ魔王を宥めながら、俺とステラは顔を見合わせ、苦笑したのだった。
- 291 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:09:22 ID:Gs/Z9.w6
- その後俺達は下の階に下りて、客間の様な場所へと向かった。
小さな丸い木のテーブルを囲む様にして3人で座り、メイドさん(実物は初めて見た!)が持ってきた紅茶を飲みながら、話を始めた。
「まだ自己紹介していませんでしたね。私、ステラ・アルメル・ラ・デゥエムと言います。魔王であるお父様の第2子女です。ステラと呼んで下さい」
以後お見知りおきを、と小さくお辞儀した。
「私は魔族を統べる王、レジス・リオネル・ラ・デゥエムだ。レジスおじさんとでも呼んでくれ」
「お父様、おじさんは流石にどうかと……」
「良いのだ!私は彼が気に入った!気軽に接して欲しいのだ!」
「せめて、さん付け程度にして貰った方が宜しいかと……」
「ステラ!お前も家族なんだから、もっと砕けた話し方で良いのだぞ?『お父様』ではなく『お父さん』、いや、最近の娘は父親を『パパ』と呼ぶそうじゃないか!」
「お父様は魔王としての自覚が無さ過ぎます!」
俺の自己紹介をするタイミングが掴めないまま、この漫才の様なやりとりを鑑賞する。
仲の良さそうな親子だなぁ、としみじみ眺めていると、魔王改めレジスがこちらの様子に気付いた様だ。
「おお、まだ彼の名前を聞いていないではないか!こんな不毛な争いをしている場合ではないぞ!娘よ!」
「お父様が悪いんですよっ!」
「さて、君の名前は?」
「あ、日鏃 龍っていいます」
「ふむ……ヒヤジリが姓で、リュウが名前かな?」
「はい」
「あまり聞かない名前だな……もしかして、召還者か?」
「そうです。丁度昨日この世界に来ました」
「ほほぅ。突然異界に召還されて、こんなに動ぜずいられるとは!素晴らしい、益々気に入ったぞ!何なら家の娘を君の嫁に……」
「もうやめて下さい!……あの、リュウさんと呼ばせてもらっても良いですか?」
身を乗り出してまた大袈裟な発言をしだした実の父親を押しのけながら、彼女はそう言った。
「呼び捨てでもいいよ?俺もステラって呼び捨てにさせてもらうんだし……」
「……恥ずかしい、です」
「……そ、そう?」
そんなもんかな、と何となく自分を納得させていると、紅茶を飲んで落ち着いたのか、レジスが話し始めた。
「何か相談があれば娘でも私でも、いつでも気軽にしていいからな。私は一応魔王だから、この世界の地理、歴史、その他諸々について人並み以上の知識を持っていると自負している」
「一応魔王って……一応も何も、種族の王なんですからもっと堂々として良いんですよ?」
と、ステラ。
「堅苦しいのは性に合わん!」
「そ、そうですか……」
うむ、と満足気に頷く魔王。嫌に庶民的な思考の魔王だな。
この人が日本の総理大臣だったら、良い意味でも悪い意味でも日本は変われるんだろうな。
「わ、私は一応魔術師なので、その方面の事だったら教えてあげられます……」
「お前も一応って言ってるじゃないか」
「お父様は黙ってて下さい!お父様がそんなだから、私にも伝染ってしまったんです!」
「こんな娘だが、優しくて気立ての良い子なんだぞ。しかも、魔法に関しては天性の才がある。家事はできないがな!」
「……お父様、一言多いです……」
しょげるステラ。
「それに、私は魔法が強くたって何一つ嬉しくない……です」
そして、途端に暗い表情になる。
それを見てレジスは、
「……そうかそうか。お前は優しいものな」
優しく頭を撫でる。彼女は安心するように目を瞑り、それを甘んじて受け入れる。
急展開すぎて話についていけないが、このシーンを見れば成る程親子だな、と思わせられる。
魔王は暗い雰囲気を打ち消すように「さぁ」と声を掛けると、
「今日はリュウの為のパーティだ。夕食まで後1時間ほどかな。私は用があるので少し外すが、夕食には食堂へ来るように」
それまで2人で城内案内がてら、話でもするといい。とレジスは立ち上がった。
そして、急に俺に近づいてきて、小さく耳打ちした。
「何なら、娘を襲ってもいいぞ」
「……襲いませんよ」
この世界の人は、このジョークが好きなのだろうか。普通父親ならば死んでも娘の貞操を死守しようとすると思うけど…….
それじゃ、と魔王は長い廊下の向こう側へと消えていった。
「では、私たちも少し歩きましょうか」
「うん」
俺達はステラを先頭に、魔王城観光へ向かう事にした。
- 292 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:10:45 ID:Gs/Z9.w6
- 魔族の長であるところの魔王が所有する城は、その肩書きに恥じぬ広さを持っていた。
敷地は広い森の中にあり、魔王とその家族の生活スペースである本城と、様々な用途に使用される棟が3棟あるらしい。
本城だけで10階あり、外観にも内装にも、さながらヨーロッパの歴史的建造物を彷彿とさせる様式美に溢れていた。
城内を案内されている途中、ステラの事について少し聞いた。
先ずは家族構成。
姉と妹が1人ずつ、兄が2人の5人兄弟。
その際ステラの年齢も聞いたが、俺の1つ下らしい。
そのしっかりとした態度から、年下だとは思いもしなかった。精々同い年くらいだろう、と。
その事を彼女に告げると、
「仮にも魔王の娘なので。しっかりしていないと駄目なんです。お父様もあんな調子だし……」
という答えが返ってきた。
成る程魔王の娘というのも大変なんだな、と薄っすら感じさせられた一幕だった。
俺にも兄妹がいるんだ、と話題に合わせて語りかける。
「兄ちゃんは頼りになるし、妹は年が近いけど、小さい頃はよく可愛がってたなぁ」
「……寂しい、ですか?」
兄妹に会えなくて、という意味だろうか。
「ん?いや、こっちに来てから色んな人に優しくして貰ったし、寂しくはないよ」
「……そうですか。よかったです」
安堵からか、優しげな微笑を浮かべながらそう呟く。
「もし私だったら、家族に会えなかったら寂しくて死んでしまいます」
「そこまでか言うか……」
現代日本の若者でこんな事を素直に言える奴は殆どいないだろう。
ステラにここまで言わせる程、彼女の家族は良い家族なんだろうな。
今は魔王であるお父さんにしか会っていないけど、機会があれば彼女の兄姉妹にも会ってみたい。
「あの、何か困った事とかあったら言って下さいね?いつでも、力になりますから……」
「……うん、有難う」
彼女の言葉に、久しぶりに素直にお礼を言った俺は、急に恥ずかしくなってきて照れ隠しに小さく笑ったのだった。
- 293 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:12:59 ID:Gs/Z9.w6
- ◇◆◇◆◇◆◇◆
30分程城内観光をしたおかげで、大分疲れてきていた。
10階もある建造物を上から下まで行き来したのだから、当然と言えるだろう。
「……少し、疲れきましたね。まだ本城しか見ていませんが、今日はこの辺にしましょうか」
「うん。そうだね」
俺達は出発地点のテーブルに付くと、一息吐いた。
「夕食まで30分程ありますね……何か、聞きたい事とか、他にありますか?」
「あ、じゃあ、魔法の事について聞いても良いかな?」
俺の本来の目的は、村長に魔法の事について聞くことだったのだが、この際なので、彼女に聞いても問題はないだろう。
「元の世界には魔法なんて無かったから……」
「はい、分かりました」
少し俯き、考える素振りを見せながら説明を始めた。
「ええと……どこから話しましょうか……では、魔力というエネルギーがあるのは知っていますか?」
「うん……魔法を使うエネルギー、ってことでいいのかな?」
「はい、大体そんな感じです……それで、魔法というのは、この魔力を別のエネルギーに変換して体外に押し出す技術の事を言います」
人差し指を立て、少し得意げになって話を進める。
「例えば熱や炎、例えば冷気や水、例えば光や雷。魔力をこれらのものに変換し、具現化するのが魔法です」
「ふぅん……」
俺の特殊能力『鍛冶師』は、魔力を変化させ武器を生み出す。それと同様に魔力を火や水、電気に変えるのが魔法と言う訳か。
「魔力はとても不安定なエネルギーで、そのまま体外に放出する事は難しいんです。ですから、魔力を別の状態に変えてから体外へ押し出す訳なんです」
「成る程」
発電所の仕組みみたいだ、と俺は思った。
例えば火力発電だったら、『火力』というエネルギーを最終的に『電力』というエネルギーに変える。
この例に当てはめると、例えば炎の魔法と言うのは『魔力』というエネルギーを『火力』に変えていると言う事になる。
「それで、人によって変換できるエネルギーで得意なものが決まっているんです。大体1つ……かな?これを『属性』と呼びます」
「って、言う事は、魔力を炎に変えるのが得意な人は『炎属性の魔術師』ってなる訳だ」
「その通りです」
と、微笑みながら頷くステラ。
「属性の種類は大体、『炎』、『水』、『雷』の3つです。他にも、魔力を生命エネルギーに変換するのが得意な魔術師とか、いくつかあります。『ヒーラー』と呼ばれたりしていますね」
「……有難う、大体分かったよ」
「お役に立てて、嬉しいです。何せリュウさんは私の命の恩人ですから」
- 294 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:14:03 ID:Gs/Z9.w6
- 「だからいいってそれは……あれ?」
「? どうしたんですか?」
一つ気になることが出てきた。
「ステラも魔術師なんだよな。なんの属性なんだ?」
「あ、私は少し特殊で……」
と、再び説明を始めるステラ。
「私は生まれつき、魔力を変換せずに体外に押し出す事が出来る魔術師なんです。そのかわり、属性魔法は使えないですが……」
「へぇ……どういう事?」
「ええと、魔力っていうのはとっても高エネルギーで、凄い威力を秘めているんです。しかし、普通はその不安定さからそのままエネルギーを使う事は危険なので、別のエネルギーに変換します。でも私は、その魔力の純粋な破壊力を、安定して体外に発現する事が出来るんです」
「へぇ……ゴメン、良く分かんないや」
「ふふ、ですよね」
炎とか雷とかならイメージできるけど、魔力そのもので攻撃っていうのはどういうことなんだろ……謎だ。
「まぁでも、ステラは凄い魔術師だってことだよね?」
「ええ……私はこんな力、必要ないですけど」
そう言うステラの翳った表情は少し気になったが、それよりも自分の中の疑問を解決したかった。
「じゃあさ、ステラは自分であのチンピラを撃退できたんじゃないの?」
先程の説明は良く分からなかったが、一つ分かったのはステラは超強力な魔術師って事だ。
あんな田舎ヤンキーは、それこそ指先一つでちょちょいのちょいなのではないだろうか。
「……ええ。あの方達を"殺す"事は簡単です。でも……」
清楚なお嬢様、といったステラからは見当もつかない程物騒な発言が飛び出したが、あえてその言葉を使った様に聞こえた。
「私は、人を"殺し"たくありません」
そしてはっきりと言った。
「私は幼い頃から、魔王であるお父様の下で、人間と魔族の戦いを見てきました」
人間と魔族の戦い。
この話は、俺の一つの疑問である人と魔族、善と悪に関する核心を突きそうだった。
「私は、人間と魔族が争っている理由を知りません。お父様に聞いてもはぐらかされます」
だからなのかも知れませんが、と真剣な表情で続ける。
「いつも思うんです。人間と魔族って仲良く出来ないのかな、って」
俺が知る限りでは、魔族が人間に何か害を加えているという話は聞いていない。
争っているのは知っているが、別に魔族が攻め込んでいるという雰囲気でもない。
証拠としては弱いかも知れないが、俺がいた村には警備をしている兵らしきものも居なかったし、村人も武装している空気ではなかった。
尤も、こちらの世界に来てから少ししか経っていない俺の知識内であれば、だが。
「私、人間と仲良くなりたいなぁって思うことが良くあるんです。いえ、魔族全体が考えている事かも知れません」
「……うん」
「でも、人間の多くは、私たちが魔族だという理由だけで忌み嫌います。現に私は何度も人間の村へ行きましたが、身分を明かすと同時に、攻撃されたり逃げられたりしました」
ステラは悔しそうな、泣きそうな表情で、声を震わせる。
と、言うことは俺がステラを助けた時も人間の村へ向かう途中か、もしくは帰る途中だったのだろう。
それにしても、よくめげずに何度も人間に会いに行けるな、と思う。
俺がそんなに何度も拒絶されたら、ああ、人間と仲良くなるのは無理なんだな、と思って諦めるだろう。
もちろん、俺はそこまで空気を読めない男ではないので、口には出さなかったが。
「でも、あなたは人間なのに、初めて私に優しく接してくれました」
それはもう本当に嬉しそうな表情で、彼女はそう言った。
そんなに喜ばれると、こっちは逆に申し訳なく思ってしまう。
「い、いやでもほら、俺はこっちの世界の人間じゃないし……」
「いえ、いいんです。私は、助けられた事自体が、とても嬉しかったんですから」
頬を赤らめながら、嬉しそうに言うのだ。
それはフォローの言葉の1つも言ってしまいたくなるだろう。
「……いや、でもその、ステラならきっと人間とも仲良くなれるよ」
「ふふ、リュウさんが言うのなら、きっと本当ですね」
さっきまで泣きそうな表情だったのが嘘のように、彼女は屈託なく笑う。
それを見て俺も一緒に笑うのだった。
- 295 :星屑ディペンデンス 第三話 ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:17:08 ID:Gs/Z9.w6
- その後も俺達は他愛の無い話を続けた。
「そういえばリュウさんのリュウって、どういう意味なんですか?」
「うん?ああ、リュウっていうのは……ドラゴンって分かる?」
「はい。この世界にも居ますよ」
「あ、居るんだ!?ドラゴンって本当にいるんだ!?」
「ええ。居ますよ。どうしたんですか?」
俺は召還された時に言語のフィルターのような魔法が掛けられているらしい。
それは俺の頭の中の地球語での知識が、言葉として口から出す時そのままこの世界の言語として変換されるといったものだった。
と、言う事は、だ。
俺の言う『ドラゴン』が相手に通じているとすれば、俺の想像している通りの『ドラゴン』と言う事になる。
……流石、魔法の使える世界なだけあって、ファンタジーだぜ。
「……いや、何でもない。で、リュウってのは俺の世界でドラゴンって意味なんだ」
「へぇ、そうなんですか。何でそんな名前を付けられたんですか?」
「いや、『龍みたいに伝説に残るような男になれ』だってさ。適当すぎて笑っちゃうよな」
「いえ、とてもいい由来だと思います」
「……そう?」
俺はもう少しマシな名前、いやこの名前でもいいんだけど、もっとマシな理由で考えて欲しかったなぁ。
何か恥ずかしいので、ステラにも聞いてみる。
「ステラは名前の由来とかあるの?」
「あ、私はですね……」
そういってまた思案気な表情をする。
「さっきも言ったと思うんですが、私は凄い特殊な魔術師なんです」
「えっと確か、魔力をそのまま攻撃の手段としてつかえる、だっけ?」
「そうです。それで、他の属性魔術は『炎属性』とか『水属性』とかはっきりとした名前が付けられているんですけど、この魔術は名前を付けられていないんです」
「ああ、何となく分かる」
炎とか水だったら『炎魔術師』とか『水魔術師』とかってできるけど、この場合は何て言ったらいいのか良く分からないからな。
「この魔術はとても珍しいと言う事もあって、正式な名前とかは無いんですが、便宜上こう呼ばれています。『星属性』と」
星属性とは、中々にファンシーな名前である。
しかし、魔術属性の中で実質最強らしいので、何かしら意味はあるんだろう。
この世界には宇宙の学問とかはないんだろうから、星なんてものは不思議な存在であるに違いない。
空高くに浮かぶ謎の物体。
そこに何らかの力を見出し、またそれにこの類稀な魔法を重ね合わせているんじゃないだろうか。
「お父様とお母様は私が生まれた時、私がこの魔術属性を持っていることを知って大層驚かれたそうです。そして、私の名前をこの魔法にかけて名づけようと決めたとか」
そして、と続ける。
「ステラとは"星"という意味の言葉なんです。……安直ですよね?」
「いや、とても良い名前だと思うよ」
確かに安直と言えるのかも知れないが、シンプルながらも女の子らしさが出ていて良い名前だと思う。
「ふふ、有難う御座います。……でも、そう考えると、私のこの銀の髪の毛と金の瞳も星のように見えてきます……よね?」
これには本心から頷いた。
何せ俺は初めてステラを見たとき、正しく星に例えて表現したのだから。
「リュウさんのその黒い髪と瞳も珍しいですよね……この世界では全然見かけません」
「ああ、俺の住んでた国は皆黒い髪の毛と黒い瞳なんだ。女性の黒髪の例えに『烏の濡れ羽色』なんて言葉があるくらいだよ」
「へぇ、一度見てみたいです……あ」
と、ステラが何かを思い出したように声を上げる。
「そろそろ夕食の時間ですね。行きましょうか」
「うん」
そういえば、腹が減ったなと、言われてから気付く。
魔王城で出される食事ってどんなものなんだろう、と想像を膨らませながら俺達は階段を下りた。
- 296 : ◆TvNZI.MfJE:2012/04/15(日) 21:18:39 ID:Gs/Z9.w6
- 投下終了です。
見返していて一つ気付いたのですが、第二話の表記が第2話になっていました。
保管される際に、ついでに直してもらえると幸いです。
以後、このようなミスが無いように気をつけます。申し訳ありませんでしたm(_ _)m
- 297 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/15(日) 22:22:48 ID:dTqzXCA2
- >>296
GJ!
間食に美味しくいただきました(笑)
ステラや魔王さんたちは良い人(?)そうな魔物ではありますが、
人間と魔物と言う設定は今後バクダンになりそうな予感しかしませんねぇ。
- 298 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 01:05:45 ID:iAcjsIvY
- >>296
GJ!!
- 299 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 02:53:20 ID:zG0y8hfk
- ここって二次創作はありなの?
ayakashiのパムや永遠のアセリアの瞬みたく、
「常人には無い戦闘力が得られる」と「精神が蝕まれる」が
ワンセットになっている便利な設定を流用してヤンデレに生かせないか
考えた事があったんだけど。
- 300 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 06:52:41 ID:a3fuX5wg
- だからテンプレ読めって
最近、こんなのばっかりだな
- 301 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 09:20:13 ID:6KRmPsyM
- >>296
乙です!
- 302 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 09:35:57 ID:ln0FWy1.
- 星屑いいな
- 303 :253 ◆CxSWttTq0c:2012/04/16(月) 15:16:41 ID:Oy19BJyM
- 投下します。なおプロットは>>253ですが若干変更があったので
253の通りではありません。
- 304 :『嘘と秘密』1 ◆CxSWttTq0c:2012/04/16(月) 15:18:35 ID:Oy19BJyM
-
「ねえ こーくん、私の事好き?」
ここ最近の彼女の口癖だ。こんな事聞かれたら誰だってこう答えるだろう。
「好きだよ。真衣」
「よかった……」
僕を抱き締め、安堵の表情を浮かべる彼女の問いに、答えは始めから一つしか用意されていない。
僕はまだ眠そうな彼女をベッドに残し、先にシャワーを浴びる為一階に降りた。
今日から新学期が始まる。
僕達が付き合い始めて、この春で三年が経つ。幼馴染だった僕達は、中学二年の春に彼女からの告白で付き合い始めた。
バスケットボール部に所属していた僕と、吹奏楽部でクラリネットを吹いていた真衣。
僕達の親は、親同士の仲が良く、その為僕と真衣は赤ん坊の頃から一緒に遊んでいたらしい。そしてまだ小学校にあがる前に、口約束ではあったが、将来子供同士を結婚させようと話し、僕達は半ば許婚の様な関係になった。
そのお陰で最近では不在がちな両親に変わり、彼女が花嫁修業と言う名目で泊まり込みで家に来られる様になったのだが。
僕は彼女を可愛い人だと思う。髪は黒く長く、よく手入れされているのか指で梳くとさらさらと気持ち良い。顔も綺麗というより可愛いと評される方が多いだろう。そして何より彼女を魅力的にしているのはその笑顔だ。健康的で柔らかい雰囲気の彼女が笑うと、こちらまで穏やかな気持ちになれてしまう。
家を空ける僕の両親の変わりに、こうして彼女が朝御飯を作ってくれるのだから感謝してもしきれない。
「あ、お風呂上がった? じゃあ食べよっか」
可愛らしいフリルの着いたエプロンを外しながらそう言うと彼女はその穏やかな笑顔で僕を見つめる。
「ああ。いつもありがとね」
「気にしなくてもいいのに。だって私、こーくんの彼女だもん」
最近ではこの幸せそうな笑顔を見ていると、なんだか彼女が自分にはもったいない様な、そんな気がして来る。僕は自分に自信が無いのかもしれない。こんな良い彼女が付き合う相手が、本当に僕で良いのかどうか。
「どうしたの?」
箸が止まった僕を不思議そうに見つめる彼女に焦り、急いでご飯を掻き込み御馳走様をする。
そんな姿が可笑しかったのか、再び微笑むと真衣も食べ終わり一緒に御馳走様をした。
「そういや、今日から新しいクラスだよね」
「そうだね……私も理系科目が出来たら、こーくんともっと一緒に居られるのに……」
理系文系で新しいクラスに分かれる事でクラスが別になるのが嫌なのか、憂欝そうな顔で僕の手を取り強く握る。
「大丈夫だって。さ、行こう」
「うん」
―――――――――――――――――――――――――
- 305 :『嘘と秘密』1 ◆CxSWttTq0c:2012/04/16(月) 15:19:29 ID:Oy19BJyM
-
僕の通う東高校は進学高で有名だ。校風は厳格な学力社会で出来ており、毎回学力テストの順位が職員室前にデカデカと張り出され、その順位を争い勉強している。点が取れない奴は見下され、学年順位が上がれば上がるほど尊敬される。
また学力テストでのクラス平均点は学園祭での出し物の評定に加算される為、それが勉強に対する誘因となり、この学力社会に拍車を掛けている。
「クラスメイトはただの友達ではなく、ライバルであり、仲間なんだ!」
とは去年の担任の弁。去年は良いクラスだったが、今年はどうか確かに少し気になる。
学校に着いてみると、クラス分けが張り出される昇降口は大混雑していた。既にクラス分けを見た一部の生徒が新しい環境に胸を膨らませ、その場で友達同士で歓談を始めてしまい、周りが見えていないのが原因の様で、まだ見ていない人がどんどん集まり昇降口はカオスとなっていた。
「あ!こーくん、あそこから見えそうだよ」
真衣に促され、人込みを避け横に逸れた場所に移動する。少し見難いがなんとか見えた。同じ事を考えた人がいたようで、先客が数人いた。
「僕は28HR、真衣は……24HRみたいだね。これだと階も違うんじゃない?」
「そんなあ」
僕の28HRは三階、真衣は二階だ。階が違うと学校生活の中で偶然会う確立はぐっと下がる。クラスによっては使う階段や廊下が全く違うものだから。
「私、会いに行くから。こーくんに、会いに行く」
真っ直ぐこちらを見つめて来る真衣。
こんな事で少し大げさだと思うが、そう言ってくれる真衣が愛おしい。僕も会いに行く、そう伝えようとして
「君も28HR?」
声を掛けられた。振り返るとそこには、肩までのセミロングでツーサイドアップにした髪型の、目鼻立ちのはっきりしたとても綺麗な女の子がいた。確かこの娘……
「わたし、橘春奈。君は斎藤幸一君だよね?これから一年よろしくね!」
クラス分けを確かめると、確かに橘春奈の名前があった。
「こちらこそよろしく。橘さんって確か学年トップの……?」
「あはは、それは前々回で、今はトップじゃないけどね」
「そうだったんだ。でも、なんで僕の名前を?」
「有名人だからね、君。草薙真衣さんも」
「え、私っ?」
橘春奈を睨むように見つめていた真衣が、突然話を振られ焦って敵意を隠す。
「君たち二人、仲の良いカップルって有名だよ?それに美男美女だし。周りはほっとかないでしょ」
「そ、そんなこと、ないよ?」
真衣、こっちに振らないで。
「とにかく。幸一君はこれからよろしくね! わたしの事は春奈って呼んで?苗字嫌いなの」
「そ……そうなんだ」
玄関が少し騒がしくなって来た。もうそろそろ教室に向かった方が良いかもしれない。
「じゃ、幸一君とわたしは三階ね。またね真衣さん」
橘春奈はそう言うと、強引に僕の腕を取り歩き始めた。
「真衣!」
真衣と話そうと振り返るが、先ほどの生徒の塊が動き始めたらしく、あっという間に大勢の生徒が下駄箱に殺到し真衣もどこかへ流されてしまっていた。
「ちょっと橘さん」
初対面の相手に無理やり腕を掴まれ連行されると言う突然の事態に混乱しながらも、怒ろうと思い橘春奈に声を掛ける。
- 306 :『嘘と秘密』1 ◆CxSWttTq0c:2012/04/16(月) 15:21:21 ID:Oy19BJyM
-
「春奈」
「え?」
「春奈って呼んで」
こちらを真っ直ぐ見つめる目が振り向く。
「えと、春奈……さん」
「なに?」
今度は体ごと笑顔で振り向いた。
「……ちょっとさ、失礼じゃない?僕達初対面だよね?」
「……そうね。ごめんなさい。チャンスが来たと思って嬉しくて」
春奈は少し照れた様子で頬を赤く染め
「だってこれで秘密を作れる」
「秘密?」
「そう。秘密」
そう言うと彼女はしなを作り体を寄せ、
「こう言う コ ト 」
キスをした。
―――――――――――――――――――――――――
侵略する事、火の如し。かの風林火山の一つだ。
彼女は、まさにそれだった。
「ん……ちゅ」
「!!!!」
「んぁ……ふぁ」
春奈の腕が肩に伸び、指先が耳に触れる。
「ん……はぁ……ちゅ、んぁ……んちゅ……ふぁ……ん」
そのまま指が耳を塞ぎ、周囲の音が消えた。
「ちゅっ……んぅ……」
聞こえる音は春奈だけ。
この柔らかさも、甘い匂いも、目の前のオンナのモノ。
「んーぁ……ん、ちゅ……」
頭の中がパニックで完全に思考停止状態に陥ってしまった。
突然腕を引かれて歩かされたと思ったら、階段の踊り場でキスされ、舌まで入れられた。
それも今日会ったばかりのクラスメイトに。
なぜ?なぜ?なんで?
…………なんでキスされてんのに抵抗しないんだ?
「!!!」
「んっ、あん」
やっと気が付き、突き放す。
「なにすんだよ」
「んふふ。気持ち良かった?」
顔が熱い。火照りを感じる。彼女の目を見られない。
「どういうつもりだよ」
「言ってなかった?ごめんね。 わたし、ずっと前から貴方が好きなの」
「!」
「大好き」
そう言うと春奈は僕に抱きつき
「いっぱい秘密、作ろうね」
耳元でそう囁いた。
―――――――――――――――――――――――――
- 307 :『嘘と秘密』1 ◆CxSWttTq0c:2012/04/16(月) 15:23:06 ID:Oy19BJyM
-
あれから口を漱いだ後すぐクラスに向かい、春奈とは近づかない様にした。
幸い、あのキスを見た人はこのクラスにはいなかった様で、みんな普通に接してくれた。
春奈はタ行、僕の右斜め後方の席で女の子グループで談笑している。
(学年トップ経験者で、可愛くて、友達も多い……)
(僕の事、好きっていったか……?)
(あの人だって、僕と真衣が付き合ってる事、知っていたはずなのに……)
(なんでキスなんか……)
(でも、……ちょっと、良い匂いだったな)
「よーし、今日のオリエンテーションはこれでお終いだ。明日から通常授業だから予習しておく様に」
担任の教師が当番日誌を窓際の出席番号1番の人に渡している。
立ち上がりふと後ろを見ると、春奈と目が合った。
慌てて目を逸らし左の窓を見る。大分曇ってきたみたいだ。
……ひと雨来そうだ。早く真衣と帰ろう。
―――――――――――――――――――――――――
真衣と、最近出来た綺麗な歩道橋を歩く。
「それで、こーくんのクラスはどうだったの?」
「ん、ああ。別に、普通だった、よ?」
「なに?そのどもり方」
真衣が不思議そうに見てくる。
(春奈の事は言えない……言ったら絶対、真衣を傷つける)
真衣は子供の頃からとても嫉妬深い子だった。最近それが顕著になってきた様に感じる。
きっかけは去年、同じクラスの女の子に告白されてからだと思う。校舎裏で告白されたのを、真衣に見られた。
真衣は鬼の様な形相で女の子をはたくと、驚く僕の手を握り走った。そして
「こーくんは私と別れたりしないよね?そうだよね?」と縋る様な、黒く淀んで、目の前の人しか映さない様な不気味な印象の目で語りかけてきた事をよく覚えている。
(きっと、春奈にキスされたなんて言ったら真衣は泣いちゃうよな……)
「どうしたのこーくん?さっきから黙って」
「あ、なんでもない。ごめんね」
「変なこーくん」
真衣は手を繋ぐと、微笑みながら今日あった事を話し始めた。
―――――――――――――――――――――――――
真衣は今日も一度帰宅した後斎藤家に来た。
うちの両親は二人とも海外で、一人が暮らすのに余りある仕送りを送って来てくれる。恐らく僕一人になった時、真衣が必ず斎藤家にやってくる事を予想しての仕送りだろう。以前真衣のおばさんにそんな事を聞いた事がある。
父の事だから毎年その件で必ず草薙家に挨拶に行っているはずだ。
そんな両家公認の半同棲生活において、一つ屋根の下に暮らす互いに想い合う若い男女がプラトニックな関係で居られるはずがなかった。
「………………ッ………ハ…」
「んっこーくん……んぁあ」
「……ん……真衣」
「んっく……ぁ、あ、あ、ぁあっ」
暗くなった部屋で僕らは愛を確かめ合う。
口づけると渇きを潤そうとするかの如く、真衣の舌が僕の舌を求め這いずり回る。溢れる唾液は互いを更に興奮させた。
燃える様に熱いオンナをかき混ぜ自身を打ち込むと体の下で真衣が喘ぐ。
繋がっている時にだけで感じるこの充足感が、僕に自信を与える。
この人と一緒にいていいんだ。愛していいんだ。
指を絡ませ全身で一つになると、とろんした目の恍惚とした表情の真衣と目が合う。
「こーくん…んっ………はぁあもっとぉ……んぁぁすきぃ……」
「…………ッ…………真衣……」
「あぁぁぁ…………きもちいい……こーくぅん……」
「ふぅ、んっあ……あ……あっ、あっ、あん」
「くぁ、ふぁ………こーくん、いっちゃう、いっちゃう」
「うっく……………ふわぁ」
真衣は腹を痙攣させ体を収縮させると絶頂した。
腕の下に寝転ぶ真衣が胸に耳を当て上目に見上げてくる。
「こーくん……幸一……未来の旦那様……んふふ」
「好きよ……」
「離さないからね……」
瞳は暗く、話す言葉は呟く様に、誓う様に。
そして、小さな秘密が大きな嘘を作っていく。
- 308 :『嘘と秘密』1 ◆CxSWttTq0c:2012/04/16(月) 15:24:48 ID:Oy19BJyM
- 投下終了。
- 309 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 17:19:28 ID:ln0FWy1.
- >>308
GJ!
- 310 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 20:08:03 ID:j./trSTk
- >>308
GJです!
この後の展開が気になりますね……特に、真衣が『秘密』に気付く瞬間が……
頑張って下さい!
- 311 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/16(月) 22:50:20 ID:xqxt6yHo
- >>308
GJ!!
続きを楽しみにしてます!
- 312 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/17(火) 09:21:59 ID:0QREG72.
- >>308
乙です!
- 313 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/17(火) 21:53:10 ID:I9bk8u/U
- ん
- 314 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/18(水) 02:07:59 ID:3YC5ACwE
-
「ん って>>313どうしたの!?」
「>>313から雌豚のにおいがするよ!!」
「あの女に何かされたんじゃ……」
- 315 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/18(水) 04:16:18 ID:LT6HESkM
- ここの住民はなろうやにじふぁんで何を読んでるの?
- 316 : ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:41:38 ID:N5/ACr3Q
- お久しぶりです
第23話ができたので投下します。
- 317 :天使のような悪魔たち 第23話 ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:44:11 ID:N5/ACr3Q
- 雨はさらに勢いを増していき、先程まで微かに積もっていた雪も、容赦なく溶かされ、流れていく。
そんな雨に打たれながらも、弟を探して私は街中を彷徨っていた。
…何処へ行ったのか、何の手掛かりもない。でも…あの子が何の連絡もなしに消えるはずがない。
きっと迷子になっているんでしょう。そうよ、そうに違いない。
だから私が迎えに行かなくちゃ。この雨だもの、きっと今の私みたいに、寒さで震えているに違いないわ。
私なんか、さっきから頭もぼうっとして、何度車にクラクションを鳴らされたか。
いろんな人に話しかけられたけど、この寒さじゃあ唇が動かしにくいんでしょうね。
何を言ってるのか、よくわからなかった。
何回も滑って転んで、擦りむいた膝がひりひりする。
───あの子がそんな風になってたらと思うと、可哀想で、胸の痛みが止まらない。
今にも押し潰されそうで、息が詰まってしょうがない。
ほんと、私がついていないとダメなんだから、あの子は。
…ああ、待っててね、飛鳥。今わたしが迎えに行くからね。
* * * * *
───悪寒を感じたのは、今日何度目だろうか。
嫌な予感が、なんてもんじゃない。取り返しのつかない事が起きようとしている。そんな気がする。
飛鳥ちゃんがだれと病院を出て行ったか、それは大体予想がついた。問題は、俺はその人物…穂坂 吉良の居場所がわからない事だ。
なんとか、接触しなければ。
「住所はおろか、電話番号もわからねえってのは…ちと分が悪いよなぁ…」
恐らく、今からそれらを調べるのには手間がかかるだろう。
個人情報にうるさくなった昨今では、母校に尋ねても教えてはくれない。
ならば知人を洗うしかないが…そもそも穂坂の対人関係の具合を、俺はよく知らなかった。
せめて、犬猫並みの嗅覚か、勘が俺にも備わってれば…。
1階ロビーの時計を見ると、亜朱架さんの電話があった時より、既に1時間近く経過していた。
「…行こう、斎木くん。」
突如として、結意ちゃんはロビーから出入り口に向かって歩き出した。
「行こう、って…まさか闇雲に探す訳じゃないよな?」
「それしかないでしょ? それに…お姉さんの行方だってわからないんだから。
多分、お姉さんも飛鳥くんを探しに行ったんだと思うわ。だったら…」
「道中、亜朱架さんを見つけられるかもしれない…か。」
「そう。それと………悪いけど、もう我慢できないの。止めても私は行くから。」
「…!」
静かな怒り、とでも言うのか。結意ちゃんの声は寒空なんかよりも遥かに冷たく、背筋に刺さった。
確かに、亜朱架さんの事も放ってはおけない。今の段階では、それが正しい判断なのかもしれない。
懸命、とは言えないがな。しかしお姫様はもう待てないと言うのだから。
「そうだな…行こう。」
買ってきた傘を渡し、俺たちは病院を出発することにした。
外の雨は横殴りになっており、今日一日は止む気配がない。
俺と結意ちゃんは病院前の路地で二手に別れ、それぞれ反対方向へ向かった。
辺りをよく観察しながら、小走りで住宅街の方へ入ってゆく。
果たして亜朱架さんは、この辺りの地理に詳しかっただろうか。でなくば、あらぬ所に入り進んでいるかもわからない。
明らかに冷静さを欠いていた彼女なら、それも有り得る。
似たような造りの、一軒家が立ち並ぶ路地に進んで来た。
隅までくまなく観察し、亜朱架さんの姿を、あるいはひとつひとつの表札をチェックする。
もしかしたら″穂坂″姓があるかもしれない…と踏んだが、見つからなかった。
「くそ…どこにいる!?」
手探りにも程がある。せめてもっと情報があれば。誰かアテはいなかったか?
- 318 :天使のような悪魔たち 第23話 ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:45:59 ID:N5/ACr3Q
- おまけに、亜朱架さんの″気配″も感じられないままだ。
第一、その時点で何かがおかしい。亜朱架さんと俺はもとを辿れば非常に近しい存在だ。
さらに、亜朱架さんの持つ力の反応は、俺からしたら隠しきれるものではない。
同じ市内にいるならば、その程度の距離間ならまず間違える事はない。
だとするならば…まさか。
「力を、失ったのか…?」
その可能性は、よく考えれば有り得る話だ。
亜朱架さんの能力は、極端に言えば「消し去る」事しかできない。
即ち、「破壊する」ことと同意義だ。
かつて彼女は、その力を以て何人も苦しめてきた。飛鳥ちゃん、結意ちゃんだとてその内に含まれる。
それが、今更になって罪の意識に苛まれたとしたら?
もうひとつ…優衣姉の件だ。
優衣姉は図らずも、あの力が非常に危険であるという事を改めて示した。だったら尚更、だ。
自分で自分の力を″消去″した可能性もある。
それなら、気配が感じ取れない理由にもなる。
「それがこんな事態になるなんて…誰が思ったよ!」
こんな時、俺は無力だ。俺の力はほとんど、亜朱架さんの力に対してのカウンターにしかならない。
結意ちゃんだって、木刀を持てば並の大人でも敵わない腕っぷしがある。
飛鳥ちゃんですら、不良相手に無双した事があると聞く。
佐橋なんて、予知能力で何度も恋人の危機を救ったらしい。加えて飛鳥ちゃんの未来をも変えたじゃないか。
けれど、俺は何ができた?
妹ちゃんの件では、結局結意ちゃんが傷つくのを防げなかった。
優衣姉の時も、何の役にも立てなかった。
そして今は、このザマだ。
俺にもせめて佐橋のような力があれば…
………そうか。
どうしてもっと早く気付かなかった? 佐橋の力なら、飛鳥ちゃんの、あわよくば亜朱架さんの居場所を突き止められるのでは?
早く、連絡をとらなければ。…だけど、電話番号は入っていない。誰かいないか?
俺は電話帳から、駄目元でまず結意ちゃんの番号を呼び出した。
ピピピ、と低めの独特な電子音の後に、ほとんど間髪を空けずに繋がった。
「結意ちゃん! 佐橋の番号知らないか!?」
思えば、随分と早とちりだったかもしれない。よく考えれば、結意ちゃんが飛鳥ちゃん以外の男に興味を示すはずがない。
俺の番号だって、必要があったから交換しただけで、世間話に用いた事など一度もないのだから。
『…そっか、予知能力で…。佐橋くんの番号は知らないけれど…三神さんの番号ならわかるわ。』
「三神…そうか!」
三神といえば、確か佐橋の恋人だったはず。彼女から聞き出せるなら、あるいは…!
『すぐに佐橋の番号を聞いてくれ!」
『わかった。一度切るよ。』
なんとか、希望が繋がった。その事に俺は胸を撫で下ろす。
あとは佐橋と連絡をとり、予知してもらえば………
待ってろよ、飛鳥ちゃん、亜朱架さん。
- 319 :天使のような悪魔たち 第23話 ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:47:36 ID:N5/ACr3Q
- * * * * *
「………うん、そう。佐橋くんならわかるんじゃないかって…。」
『…成る程、ね。なかなかどうして、君達には厄介ごとばかり降り注ぐね。
歩には、直接斎木君に電話させるよ。番号を教えてくれるかい?』
「ありがとう…番号は───」
斎木くんの向かった高級住宅街とは反対の、団地や商店街のある方面を私は探索していた。
でも、やはりそう簡単には見つからない…
穂坂 吉良。彼女との面識はそれこそ、人ごみですれ違った程度にしかないけれど、プライドの高そうな女に見えた。
もちろん、黒髪でツインテールなんて髪型、探せば他にいくらでもいると思う。
けれど、彼女は飛鳥くんと同じクラスだと斎木くんは言う。それだけで、私には十二分に疑わしかった。
「───、だよ。」
『了解。…ところで、貴女は大分斎木君と仲が良いようだね。』
「…どうしてそう思うの?」
『電話番号さ。貴女は今、携帯を離さずに、すらすらと番号を教えてくれた。
普通、友達の番号なんてものはそう頭に入るものじゃないのかな?』
…なるほど、そういうこと。
「私、一度見たものは絶対に忘れないから。」
『それは…羨ましい限りだね。』
これ以上用件はない。どちらともなく、通話を終了した。
羨ましい、か…本当にそう思うなら、あなたも私のように、絶望を何度も味わってみればいいのに。
愛する人に捨てられる怖さを。愛する人を失ってしまう怖さを。
それでもなお、同じ事が言えるのかな…?
………いつだってそうだった。
私は飛鳥くんを愛している。自分の命と引き換えにしても惜しくないほどに。
私だって、最初は自分の事しか考えていなかっただろう。
彼と結ばれたくて。彼に尽くしたくて。たとえ何度拒否されても、私は何度でも彼の為に尽くすつもりだった。
自惚れだけれど、自信があった。
自分の容姿は、少なくとも一般女子の平均以上には恵まれていると。
体当たりで接し続ければ、必ず飛鳥くんは私を受け入れてくれるという、自信が。
そして飛鳥くんは、とうとう私を選んでくれた。本当に、心から嬉しかった…!
犯された痛みなんて、一瞬しか感じなかった。それよりも、嬉しくて嬉しくて、どうにかなってしまいそうだった。
けれどそれを皮切りに、私たちを取り巻く環境が狂い出した。
同じように飛鳥くんを愛していた妹さん。
彼女によって飛鳥くんは記憶を奪われ、私を拒絶するように仕向けられた。
あの時の言葉は、今も私の心に深く刻まれている。もしも、もう一度同じ事を言われでもしたら…
私はきっと狂ってしまうだろう。
でも、結局妹さんは亡くなってしまった。
飛鳥くんが妹さんの事をどれだけ大事に思っていたかは、よくわかる。だからこそ…今でも私は彼女を100%憎みきれないでいる。
- 320 :天使のような悪魔たち 第23話 ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:51:07 ID:N5/ACr3Q
- 白陽祭に侵入し、斎木くんを取り戻す為に私達に牙を向けた斎木 優衣。
飛鳥くんは彼女の攻撃から私を守るために、瀕死の重傷を負った。
その彼女も、お姉さんによってなんとか倒すことができた。
けれど、同時に斎木くんは最も大切なものを再び失うこととなった…
そして今、飛鳥くんは行方を眩ませている。
…どうして? 私達は、幸せになってはいけないというの…?
商店街を隅々までチェックし、さらにその先へ足を進める。
閑静で、間に木々が立つ住宅街へとやってきた。
ただし、高級という言葉は似つかわしくない、団地も立ち並んだ住宅街だけれど。
あのお姉さんなら、ここまで来てひとつひとつ表札を調べて回っている可能性もある。
私もそれに倣い、視線を移らせてゆきながら歩く。
雨風は強く、傘も風圧でいつめくり上がるかもわからない。
視界の先は、もやがかかったようになり、あまり遠くまでは見渡せない。
───それでも、少し歩いた先にある、その刺々しい気配を感じる事はできた。
目前の、少し遠くから誰かが、傘も差さずに歩いてくる。
背は低いけれど、髪は大分長い。怪我をしているのか、片足を引きずりぎみにしている。
だんだんと近づく。100メートル…50メートル…20………
そこまで来て、ようやく私はその人が誰なのかに気付いた。
「お姉…さん……?」
言うや″彼女″は、ロケットのように飛び出してきた。
手には、何か鋭利なものが握られている。…私に、危害を加えるつもり…!
「っ、は!」
昔取った杵柄、とでも言おうか。部活動で鍛えられた動体視力が役に立った。
傘を捨て、半歩引いて彼女の攻撃を見切り、手首を強く叩いて刃物を落とす。
かちゃり、と軽い音を立てたそれは、どうやら硝子の破片らしかった。握っていた彼女自身の手からは、紅い雫が見て取れる。
…しかし、怯む様子はない。そのまま力任せに私にぶつかってくる。
その双眸は暗く淀み、まるで底が見えない。歯を食いしばり、全力を込めてくる。
「………殺してやる……!」
その言葉には、ありったけの憎しみが込められていた。
何故…? 殺してやるというのなら、何を今更…?
私には彼女の思考回路が読めなかった。
硝子片で血に濡れた小さな手は、私の首でも絞めようとしているのか。必死に上へ伸ばしてくる。
けれど、背丈に差がある。恐らく150センチにも満たない彼女の身体では、160センチほどある私の首を絞めるのは困難だ。
彼女はさらに、低く濁った声で叫ぶ。
「兄貴を………どこへやったぁぁぁぁ!!」
───えっ。
今、なんて言ったの…?
「いつもそうだ! お前が、お前さえいなければ!
返せッ! 私の兄貴を返せぇ───!!」
…そんな。
兄貴、だなんて。これじゃあまるで…
「死ね! 今ここで死ね! 兄貴を傷つけるやつは! みんな殺してやるッ!」
妹さん………なの……?
- 321 :天使のような悪魔たち 第23話 ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:52:56 ID:N5/ACr3Q
-
「お前さえ現れなければ! 私達は幸せに! 誰も傷付かなくて!
あのお前にそっくりなキチガイ女も現れなかった!
だから殺してやる! お前が死ねば兄貴は幸せになれるんだ!」
「…っ!」
彼女の言葉に、一瞬戸惑った。その一瞬で、彼女の両手は、私の首にかけられた。
「あ…っ、く、は…!」
…なんて力なの。こんな、幼い身体のどこに、こんな、力が…? だけど…させない…!
私は膝を使い、彼女の腹部を狙って蹴り上げた。
「ぐっ、あ、ごほっ…!」
力が緩む。その隙に私は彼女の腕を掴み、首から引き剥がして、素早く後ろ手に極(き)めた。
「く、離せっ! お前、お前がぁ───!!」
それでもなお、信じられない力でもがく。本気で、私に殺意を抱いているようだ。
…? ならば、なぜ彼女は、″あの力″を使わないのだろう?
あの力なら、私などすぐさま殺せるはず。まさか、使えないとでも言うの?
…それなら、斎木くんが居場所を特定できなかった説明もつくかもしれない。
能力を、消失したのなら。
考えれば、彼女の特性はあらゆる怪我をも瞬時に修復できる。
なのに、膝には擦りむいたような傷が。手のひらの裂傷も、塞がる気配がない。
…ほぼ確定だ。原因はわからないけれど、彼女は″不死″でなくなっている。
「…私の言葉なんて今のあなたには届かないでしょうけど。」
錯乱しているようにしか見えない彼女に、私はただ一言、告げた。
「飛鳥くんをどこかへやったのは、私じゃないよ。」
今の彼女の姿は、もしかしたら私も同じように辿っていたかもしれないのだ。
それだけは、否定できなかった。
「私だって…飛鳥くんに幸せになってほしいよ…! 私はただ、その時隣にいられれば、それだけで満足なのに…
どうして…私は、私が……私のせい、なの…?」
頬を伝うのは雨か、それとも…自分でも、よくわからない。
だけど、ひたすらに胸が痛い。
私のせいで、飛鳥くんが幸せになれないのなら。
…嫌だ。それでも、彼のそばに居たい……!
「…助けてよ………飛鳥くん………」
…私は、どうしようもない女だ。
- 322 : ◆UDPETPayJA:2012/04/19(木) 07:54:20 ID:N5/ACr3Q
- 第23話終了です。
- 323 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/19(木) 20:18:27 ID:vdm1vywE
- >>322
GJ!
- 324 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/19(木) 22:39:49 ID:Rs8z420c
- >>322
乙乙!
- 325 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/20(金) 07:51:37 ID:.9dgCKic
- >>322
乙!
>>315
蒼南学園血塗れ帰宅部とか好きですね。
- 326 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/23(月) 21:20:59 ID:B3o9hn.M
- お久しぶり!!
- 327 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 328 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 329 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 330 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 331 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 01:47:22 ID:c2phdPKA
- 何が起きたんだ…
- 332 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 05:42:43 ID:BbiOsirM
- 消されたんや…あれほど関わるなと言ったのに…
- 333 : ◆CxSWttTq0c:2012/04/26(木) 12:04:50 ID:1gwF8KZs
- 投下します。
- 334 :『嘘と秘密』2 ◆CxSWttTq0c:2012/04/26(木) 12:06:15 ID:1gwF8KZs
-
【嘘を吐く事と、語弊があり相手に誤解させる言葉をわざと言う事は、
哲学的に言えば、似ている様でしかし全く違う事であり、後者は悪ではない。】
‐マイケル・サンデル‐
「ねえこーくん。橘春奈…さんって、どんな人?」
「そ、そうだな、ただちに影響はない、人……かな?」
「……。よく話したりするの?」
「あんまり話さないよ。席も近い訳じゃないし。(後ろから視線は感じるけど)」
「じゃあ、仲良い訳じゃないんだ?」
「あんまり話した事もない人だから(真衣にキスの事は言えない……)」
「……ふーん。分かった。ごめんね こーくん。なんか聞きにくい事聞いちゃって」
「気にしなくていいよ」
「! そう……。ねえ こーくん、私の事好き?」
「……? 好きだよ。真衣」
「私も好き。愛してる」
「……ふふ。ねえ こーくん。私知ってるんだぁ。こーくんは私に嘘吐いた事ないって」
「私、知ってるんだぁ。……んふふ」
「愛してるよ。こーくん」
―――――――――――――――――――――――――
春奈にキスされてから二ヶ月が経った。
あれから春奈はこちらをジッと見つめたり笑顔で手を振ってくるだけで、春奈から話しかけて来る事も、キスして来る事も無くなった。
初印象から、少し気味悪く思いながらも、害がある訳では無かったのでだんだんとキスの事は気にしなくなっていった。ただ、学校生活において、いつも意識のどこかに笑顔の春奈が居た様な気がする。
そして心の片隅に小さな春奈が住みつき、少しずつ春奈を好意的に見始めた僕が居た。
その春奈から放課後、体育委員の仕事を手伝って欲しいと言われたのは、バケツをひっくり返した様な大雨の翌日だった。
―――――――――――――――――――――――――
夕暮れ時の西日が前日の大雨で出来た大きな水溜まりに反射して少し眩しい。
グラウンドの水捌けの悪く通常の練習が出来ない陸上部やサッカー部、野球部は、室内トレーニングや外周走り込みに行っているようだ。
春奈曰く、その間にグラウンド端の外器具庫の清掃をするんだとか。今日は遅くなりそうだから先に帰っていてと真衣にメールし、上だけ体操着に着替えてから器具庫に向かった。
- 335 :『嘘と秘密』2 ◆CxSWttTq0c:2012/04/26(木) 12:06:52 ID:1gwF8KZs
-
「来てくれてありがとう」
器具庫に入ると、春奈が少しはにかんで笑った。
「いいよ。何すればいいの?」
土煙と埃っぽさに若干辟易する。
「この棚の重い奴を下に降ろして欲しいの。わたしじゃ重くって」
「あ、扉は閉めてくれる?風で埃が舞うから」
確かにここで砂埃が舞ったら大変かもしれない。
「……、分かった」
扉を閉めると。
聞こえるのは遠くを通る車の音が少しだけ。薄暗くなった密室には僕達二人。
春奈は俯いていて、表情はよく分からない。
これまで何もして来なかった春奈の不気味さを今頃思い出しながら、激しい鼓動の音を感じる。彼女の近くまで行き、指示された物に目を向けた瞬間。
体当たりする様にして押し倒された。
「イタッ」
「ごめんね」
「でもどうしても幸一君とこうしたくて」
砂埃が舞うと同時に、白い柔らかな高跳び用マットが二人の衝撃を吸収してくれた。
春奈を見上げる僕の目に、彼女の少し紅潮した頬と抑えきれない笑みが零れる口元、三日月の様な瞳が映り込んだ。
「ねえ。エッチ、しよ」
いつか嗅いだあの甘い匂いがした。
「んっ……はぁ、ちゅるっ……んふぅ……ちゅ、ちゅ、……」
「やめろ!」
「あんっ いた」
キスしてきた春奈を怪我させない様に少し手加減して突き飛ばす。
「もー。……んふふ。気持ち良くなかった?」
「……っ」
口の周りに着いた唾液を舌で舐め取りながらゆっくり近づいてくる春奈。
気持ち良かった。だから自分の顔が赤くなるのがよく分かる。
「幸一君、内心わたしの事ちょっと良いかもって思っていたでしょ?無理しないで」
唇を舐めながら四つん這いで近づいてくる春奈。艶めかしい唇と豊かな胸が目を奪う。
「……わたし、幸一君が好き。好きで好きで堪らないの。高一の時からずっと狙ってた」
「なにを、」
ゆっくりと近づく甘い匂い。
「だからお願い……真衣さんと別れてわたしと付き合って」
「なにを言って、」
「セックスならわたしとしよ?」
衣擦れの音と共に彼女が覆いかぶさって来ると、再び彼女を見上げる状態になる。
「そんなの無理だよ……。僕は……真衣と付き合ってるんだから……」
「……わたしの事、嫌い?」
「……嫌いじゃないけど、こんなのやっぱり……」
彼女の大きな胸が揺れる。
「……………………」
本当に大きい。真衣より一カップ以上大きいかも知れない
「……おっぱい気になる?わたしのおっぱい、真衣さんより大きいよ?」
「わたしと付き合ってくれたら……このおっぱい、幸一君の好きにしていいよ……」
「……無理だよ……真衣と別れるなんて……」
「…………なら二番でもいい」
「え……?」
「わたし、本気だから」
- 336 :『嘘と秘密』2 ◆CxSWttTq0c:2012/04/26(木) 12:07:30 ID:1gwF8KZs
-
そう言うと春奈は立ち上がり、スカートのファスナーを降ろすとパンツごと脱いでしまった。
「幸一君……」
「んっ」
体を寄せキスする春奈。
感じるのは甘い匂いと柔らかい唇。
本当なら拒絶しなきゃいけないはずなのに、雰囲気に呑まれ彼女のキスを許してしまった。
(イイ匂い……この匂い、クラクラする……)
なんだかキスの時に目を開けているのが非常識な気がして、瞳を閉じた……。
思い起こせば今まで告白された事はあっても、こんなに迫られた事はなかった。
だから女の体は真衣しか知らなくて。春奈の匂いは、とても興奮するモノだった。
「ん、ちゅ……はぁ……んはぁ……ちゅ……」
激しさを増す彼女とのキスはとても気持ち良く、だんだん頭がぼーっとして来る。ベルトを外されズボンを降ろされても、ああ、これからセックスするんだとぼんやり思うだけだった。
「んはぁ大きい…………挿れるよ……」
彼女の腰が持ち上がり、亀頭に温かみを感じると徐々にその温かみが竿全体に広がり、オンナに飲み込まれていく。
「ふぁぁぁ……」
腰が密着すると春奈が吐息を洩らして抱きついてきた。
おぼろげに真衣を裏切った事を感じていると
「……っふ、んっく……は……うぅぅあぁ」
春奈が泣いていた。
「ど、どうしたの?」
「……グズッ……ごめんなさい、少し嫌な事思い出しちゃって……。わたし……、中学一年の時にレイプされた事があるの」
「え?」
突然の予期しない告白に戸惑う。
「……夜の公園で知らない人に押し倒されて無理やり犯されたの……。やめてって言ってもやめてくれなくて。力ずくで犯されたの……」
「それから男の人が怖くなって、当時好きだった人も信じられなくなった」
「…………………」
「高校に入っても、男の人が怖くて近づけなかった」
「……男の人が信じられなかったから……」
「でも少しずつその最悪の出来事を思い出さなくなって来た去年の春に、一組のカップルを見つけたわ」
「女の子の方はとっても幸せそうに笑ってた。そんな風に女の子を幸せそうに出来るあの男の人は、きっと優しい良い人なんだろうなって、そう思ったの……」
「…………………」
「それから、その男の人を見るといつも目で追ってた。体育でグラウンドを走っていたり、購買でパンを買ってたり。……気がつくといつもその人の事を考えてたわ。きっとあの人は信じられる人なんじゃないかって」
「考える時間が多くなるほどその人が気になった。そして、気付いたらその人を好きになってた……」
「…………………」
「あなたに彼女がいるのは分かってる。でもあなたを諦めきれなかった。それで……こんな方法になっちゃった……あはは、これじゃわたしもあの強姦魔と一緒だよね…………」
「……春奈さん……」
「わたし……あんなに嫌だったのに……泣いてたのに……同じ事しちゃった……」
春奈の目から、止めどなく涙が溢れてくる。
「わたし……最低だ……ごめんね……うぅ……はぅ」
春奈の涙を見ていると、同情心が湧きとても可哀相な女の子に思えてきた。
そして目の前の女の子が自分に助けを求めていて、助けられるのは自分だけの様な……。そんな錯覚に陥った。
【憐憫はさも愛情に似たり】
かの演出家も誰かにこんな気持ちを抱いていたのかもしれない。
一度憐れに思うと、心に燻っていた春奈への好意的な気持ちが爆発的に膨らんだ。
彼女が泣いている。可哀相だ。彼女が愛しい。ならどうする?キスだ。キスしよう。
泣いている彼女を慰めようと、顎を持ち上を向かせると、初めてこちらからキスをした。
「んっ……」
「はぅん……グズッ……幸一君?」
「……君は強姦魔じゃない。こうすれば、君は同じじゃない」
「幸一君……」
「………ん」
「あぁ……幸一君……」
そう、これは慰めているだけ。悪じゃない。そう自分に言い訳をして、僕達は再び繋がった。
こうしてまた一つ、僕達に秘密が増えた。
それはいつかの秘密より大きくて。甘くて……。
僕らは互いの熱を分け合った。
- 337 : ◆CxSWttTq0c:2012/04/26(木) 12:09:01 ID:1gwF8KZs
- 短いですがこれで投下終了。
- 338 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 16:33:41 ID:QJd79iwk
- >>337
GJ!
- 339 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 17:51:08 ID:fZbsF4Ok
- >>337
GJしたいけど……断りなしのレイプ、ntrネタはまずいと思う
- 340 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 18:25:22 ID:w3yWqUz2
- GJ!!!どっちを切ってもBADEND臭
- 341 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 23:21:53 ID:rdIDCMGM
- >>337
乙です!
- 342 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/26(木) 23:22:55 ID:YrXXwsu6
- NTRあるの?
あるなら怖くて読めん
- 343 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 00:01:32 ID:5eZfPW72
- 風見の二の舞か・・・・・・・・・・・・・・
- 344 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 00:39:34 ID:JYUNkA9.
- 風見の二の舞と決めつけるのはまだ早いと思うが。
案外レイプって嘘じゃね?昔不幸なことがあったと適当にいってるだけかも・・・
- 345 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 01:37:10 ID:CFLZSHZM
- 主人公の一人称視点の話だから、主人公に関してはNTRじゃないと思ってNTRアナウンスしなかったけど、
ヒロインの"過去"の恋愛遍歴やレイプ事件はNTRになるのね…
知らなかったよ。ごめんね。処女しかダメなんだよね?
- 346 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 01:47:21 ID:CFLZSHZM
- もし問題あるようだったら、今後投下はしないし、
お手数ですがここと保管庫から嘘と秘密1と2をヤンデレさんにお持ち帰りして頂きたいと思います。
- 347 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 02:37:31 ID:5eZfPW72
- >>346
うん、しない方が良いね。今本スレで保管庫の中の人が本スレの荒らしを
挑発して活動活発化させてる中でヤンデレでレイプネタやNTR出した作品
投下し続けたら「風見2世だ」とか「風見再び」とか騒ぎ立てるからさ。
- 348 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 05:19:47 ID:NDs0im86
- レイプネタはまずいな…風見がどうとかいう問題じゃなくて、行為自体に嫌悪感持たれるからな…
処女厨に関しては何処にでもいるし
- 349 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 06:28:45 ID:E1eMXBvI
- >>346
やめないでほしい…
凄く面白いし、レイプは春奈の嘘で、同情させようとしてると予想してた
- 350 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 07:10:59 ID:N5i1jgec
- 非処女でレイプされたことのあるヒロインなんて
ここの過去作品にもいるのに何言ってるんだか
- 351 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 12:01:00 ID:w3kvJUPY
- >>346
投下を止める必要はありませんが、注意書きはしっかりしましょう
比較的デリケートなジャンルなので関係ありそうなジャンルもひと通り知識を入れておくことをおすすめします
こちらの方では削除はしません Wikiの方は私の管轄外です
風見氏の方は少なくとも私が知る限りでは事実無根もいいとこで、単に避難所叩きのための餌にされたという認識です
Wikiの中の人はまずトリが違うのに何を言っているやら 本スレがどうしようもないのはいつものことだし
- 352 :避難所の中の人★:2012/04/27(金) 12:01:17 ID:???
- コテ外れてた
- 353 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 14:07:31 ID:gcyEsdxw
- 一回投下しちゃったんだからやめるなよ...こちとら楽しみにしてるのに...
- 354 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 14:12:43 ID:mtUW9iU6
- >>350
たとえば?
- 355 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 16:40:09 ID:a44BKCSA
- 投下やめないで欲しいです
後風見さん云々は荒らしが妄言ほざいてるだけですので
風見さん本人は悪くないです
- 356 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 23:19:16 ID:yaJ.skCU
- まぁ書いた人はまったく悪くないけど、過剰反応する人もいるから考えて投下したほうがいいかもな
レイプもNTRに似た嫌悪感を抱くし、ヤンデレ=一途ってもう当たり前の如く広まってるからね
レイプと一途はまったく関係無いけど「他の男に抱かれた」って共通点が頭に強く残るし
後これは断言できるけど、SS投下する前に注意書きしようがしまいが間違いなく叩かれるし荒らされる
- 357 :避難所の中の人★:2012/04/27(金) 23:29:39 ID:???
- >>356
ここのルール上注意書きさえしてあれば問題ないです
それで叩いたり荒らしたりするなら削除・規制対象になるだけですから
SS関連の基本的なルールは「嫌なら読むな」
だから回避しやすいように作者様には注意書きの記述やトリップの使用を推奨しているわけです
本スレがあの様なので荒らしに敏感になる気持ちはわかりますが、ここのルールは>>1やローカルルールに書かれているとおりです
それを破るならばこちらも対処をしますのでよろしくお願いします
- 358 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 23:47:45 ID:5eZfPW72
- >>349
>>355
クレクレ厨みたいに催促すんな。本スレで作者自演コメって言われるだけだし。
もはや、叩かれるの目に見えてる。管理人も管理人で仕事ろくにしないくせに
Wikiの中の人みたいに刺激して活発させるような原因作るな。
- 359 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/27(金) 23:56:03 ID:ZMeRdtZk
- 本スレなんて見てる奴いねえだろ
なんでそんなとこ気にしなきゃいけねえんだよ
- 360 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 00:13:52 ID:Pbflcyeg
- >>357
ちょっと書くときの注意書きの事で質問したいんだけど、どこで質問すればいいの?
要望スレ?
- 361 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 00:58:58 ID:3ZbpijDM
- 住人に聞きたいならここでいいんじゃない?
ちょっと過剰に書いてるくらいでちょうどいいと思うけど
>>358
削除依頼があったら削除・規制する以外に管理人の仕事があるのか?
てか本スレに現れたのが本気でWiki管理人だと思ってるの? トリも違うのに?
- 362 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 01:05:16 ID:03EKcfhU
- いちいちグダグダうっぜぇなぁおい
- 363 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 01:26:54 ID:fpDPz4Fw
- 黙って見れないのかよ
- 364 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 15:38:36 ID:nh8hFH8Y
- 投下する前に注意書きすれば十分だと思うけど
- 365 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 15:41:45 ID:/h3JH2qk
- 寝取られは専用スレへ、どうぞ
- 366 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/28(土) 19:04:05 ID:sBNvaM4E
- 寝取られ専用スレあんのかよwww
まぁ、書くかどうかはYouが決めちゃいな
- 367 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 09:23:45 ID:uZthC20s
- ?よくわからんが春奈ってキャラが自称過去レイプ経験アリってのが問題なのか?
メチャクチャ自然に読んでて全く違和感なかったから主人公が寝取られてるのが問題かと真剣に考えたぞ
ストーリー的にもう一人の方がメインっぽくてそっちはNTRないんだから問題ないんじゃないの?
ヒロイン一人しかいなくてNTR発言アリとかなら注意書き必要かも知れんけど
登場してくるヒロインが全部処女じゃないとダメとか・・・流石に無理がある
- 368 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 11:43:09 ID:3swOiyQs
- 確かに、処女非処女はどうでもいい
だが管理人氏が言ってた通り、デリケートな問題ではあると思う
だって、俺、レイプ嫌いだもん
ネタでも、そういうの抵抗ある
まあ、大騒ぎする必要は感じられないのも事実だが
- 369 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 11:50:20 ID:/4y4b8b2
- 投下前に注意書きしてれば問題無い
- 370 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 12:17:26 ID:aQyGONbI
- レイプとかは百歩譲っていいとして
成年マンガからとはいえ文章をパクるのはやめようよ
- 371 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 16:32:18 ID:/qw62f62
- >>370
パクリ×似てる○
マンガとか小説読んでりゃあ、その作者の文章の書き方に似るに決まってんだろうが。
むしろ「こういう書き方があるのか」って知識付けれていいだろうが。
そこは目瞑ろうぜ?。てか許容しろ。頼むから。
- 372 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 22:32:07 ID:wOWShuw6
- >>370
適当言うなよ
似たよう文章は腐るほどある
- 373 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 22:45:35 ID:aQyGONbI
- 「じゅら 誘惑」でググレ
- 374 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/29(日) 22:48:59 ID:wOWShuw6
- >>373
素晴らしい画像を見つけた
感謝する
- 375 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 03:56:22 ID:jFoSGlYA
- 少し似てるくらいあるだろと思ったが…名前まで同じ…
真似じゃなく、まんま抜き取りだな……
せめて、名前替えるとか、文末いじるとかあるだろうに
ここまであからさまだと、しらけるな……
- 376 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 09:30:38 ID:oBn8Mcag
- 荒らしが必死だな
- 377 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 11:52:33 ID:1sWqStZ2
- じゃら誘惑見てきたけど、確かに似してる部分はあったけど差ほど引っ掛からなかったな
- 378 :避難所の中の人★:2012/04/30(月) 17:19:19 ID:???
- ひとまずこの避難所では>>357が基本方針です
これ以上この話題はなしでお願いします
あまり続くようだと規制対象になりますのであしからず
まだ言いたいことがあるなら管理要望スレに来てください
- 379 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 17:28:26 ID:mbGXKpKU
- ヤンデレさんにお持ち帰りされた人はどうなっちゃうんですか?センセー!
- 380 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 18:33:13 ID:CGn5BYTI
- >>379
・・・・・・本当に知りたいの?
- 381 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 18:33:26 ID:CGn5BYTI
- >>379
・・・・・・本当に知りたいか?()
- 382 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 18:48:31 ID:1sWqStZ2
- >>379
そんなこと言ったらお前を狙っているヤンデレに俺達が殺されるだろ
- 383 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 19:00:59 ID:CGn5BYTI
- ・・・なっなんか俺のレスが、ひっひとつおっ多くね?(汗)
- 384 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 19:07:45 ID:CGn5BYTI
- ↑の件だがスマン無意識で余分に二回レスしたっぽい。
まったく気付かなかったぞオイ・・・
- 385 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 23:01:22 ID:E6AvlGBY
- 星屑は何時になったらくるんだ
ファンタジー系のヤンデレはただでさえ少ないというのに
- 386 :雌豚のにおい@774人目:2012/04/30(月) 23:03:24 ID:yrsoxUjI
- それより初めからはどうしたんだよ
- 387 : ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 13:07:48 ID:Bbf8rtn.
- 投下します。
- 388 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 13:09:39 ID:Bbf8rtn.
- 遠い空を見つめていた。
灰色の空を。
今はもう、誰も使うことのなくなったビル群。
割れたガラス。千切れたシャツ。そして腐った肉。
それらが転がる世界。
大きな戦争が起こって、この国が滅茶苦茶になってしまったのは、僕――カナメが生まれるより少し前のことだ。
大戦以降に生まれた僕のような子供は『第二世代チルドレン』と呼ばれている。
大戦真っ盛りに生まれた『第一世代チルドレン』との違いは、僅かな年齢差と身体能力。
体力的には優れているが、知能の低い『第一世代チルドレン』と、逆に知能は高いが体力の劣る『第二世代チルドレン』。
このような身体的特長が顕著になったのは、大戦中、空が光ってかららしい。
詳しいことは不明だけど……僕――カナメは第二世代チルドレン。
四つ年上の彼女『ケイ』は第一世代チルドレンだ。
僕が生まれ育った『トーキョー』の集落を独り旅立ったのは半年前。
両親が死んだとか、色々理由はあるけれど……何でも自分で選びたい……そんなことを考えている内に、トーキョーを飛び出していた。
そんな僕について来たのがケイ。
第一世代チルドレンの脳筋だ。
ケイはホンモノの馬鹿だ。
力が強い以外は何の取り柄もない。
彼女は取り分け『第一世代チルドレン』の特長が濃い。
他の第一世代と比して腕力はずば抜けているものの、おつむの具合は飛び抜けて悪い。
足し算、引き算は指を使うし、掛け算なんて、もってのほか。当然、一人では火も起こせない。性格も悪く誰とも打ち解けられない。
そのケイが、向こうの廃ビルから駆けて来る。
「カナメっ、カナメっ!」
ケイは嬉しそうに笑っている。また、よくわからない昆虫でも捕まえたのだろう。
そのケイが、自分で適当に切ったバラバラのショートカットの髪を揺らしながら、僕の目の前で停止する。
白痴っぽい笑顔でいう。
「カナメっ、虫けらだ!」
「……うん、虫けらだね……」
ケイが捕まえたのはゴキブリだが、これは確かに昆虫だ。
「食べられるよな? 食べられるよな!?」
馬鹿なケイがゴキブリを捕まえて来たのはこれが七回目だ。
僕は呆れて、いつもの答えを返す。
「ケイ…それは食べない方がいいよ…」
「なんでだ?」
ケイは笑っていたが、一瞬後に険しい表情になった。
「そんなこと言って、またケイを騙して置いて行くつもりだろ!」
- 389 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 13:10:49 ID:Bbf8rtn.
- ゴキブリが食用に向かないことの説明と、僕がケイを見捨てることの理由の因果関係がわからない。
とりあえず言っておく。
「ケイ…またお腹が痛くなっても、今度は知らないよ」
「うっ…」
とケイはたじろぐ。
以前、ケイは僕が少し目を放したスキに拾い食いした怪しい生き物のせいで酷い食中毒を起こしたことがある。
あの時は、色々な意味で死ぬかと思った。
自らの吐瀉物と排泄物に塗れ、生死の境をさ迷うケイと、それら汚物の始末とケイの治療にあたる僕。
……思い出したくもない。
「やっぱりっ! カナメは、ケイを捨てるつもりだっ! 捨てるつもりだっ!」
確かに、僕はケイを捨てたい。
そのために夢の島に行ったり、食事中、こっそり逃げたりもした。
そのいずれも、無残な失敗に終わったけれど……。
馬鹿で取り柄のないケイだが、僕のことに関する限り、妙に勘が働く。
僕がどんなに上手く捨てようと、三日以内に見つかってしまう。
見つかる度に泣かれるのも、酷い癇癪の末に拘束されそうになるのも、まっぴらごめんだ。
それに今のことに関しては、
「ケイ、酷い誤解だよ……」
「ほっ、ホントウに……?」
最近、ケイも流石に知恵を付けて来たのか、用心深くいう。
僕より四つも年上で、頭一つ分は上背があるケイだけれど、僕に見捨てられることが一番恐ろしいようだ。
「まあ……その虫けらは捨てようよ……」
「んん……」
ケイは上目遣いに僕を見て、照れ臭そうにゴキブリを差し出す。
「な、なに?」
「カナメにやる」
ケイは、ぶっきらぼうに言い放ち、そっぽを向いた。
……頭が痛くなって来た。
やはり、ケイの馬鹿には付ける薬がない。
いつか、必ず捨ててやる。
この終わり行く世界で、曇った空を見上げ、僕は心に固く誓うのだった。
- 390 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 13:13:38 ID:Bbf8rtn.
- ウィーク中にまた来ます。
今回、終了。
- 391 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/01(火) 18:09:24 ID:FrJQ7Yx6
- なんか凄い世界観だな......
ヤンデレどうこう以前に普通に小説として面白そう。期待大。GJ乙
- 392 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 18:38:10 ID:Bbf8rtn.
- よし、筆が乗って来た。
投下します。
- 393 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 18:39:44 ID:Bbf8rtn.
- そして、夜が来る。
僕とケイは、古びた平屋の、今はもう誰も住まなくなったそこに一夜の宿を求める。
夜は……『レイス』の世界だ。
第二世代の僕には危険過ぎる。
レイス――大戦中、空が光ってから、いつからか夜の世界を跋扈するようになった、かつては人間だったものの変異体。
日光の下では生きられず、そのため日中は、光を避けた暗がりに潜んでいる。
レイスは食欲だけで生きている。僕の両親もレイスにやられた。
生きたまま、がりごりと喰われた様は、一生忘れることはないだろう。
僕とケイの二人は、廃屋でささやかな食事を済ます。
「ケイ、その緑色の虫は鍋に入れない方がいいね」
「んあっ、わかった」
日が落ち、流石のケイもピリピリと緊張している。
せわしなく周囲を見回し、手元に近づけた鉄パイプを握ったり、手放したりと落ち着きがない。
「大丈夫だよ、ケイ。外にはトラップを仕掛けておいたからね。レイスが来れば、すぐ分かる」
「うん」
頷いたケイは真剣そのものの表情だった。
きっと、自分でなく、僕のことが心配なのだろうけど余計な心配だ。
僕は手持ちのリュックから組み立て式のボウガンを取り出し、早速組み立て始める。
「ケイ、もしレイス共がやって来たら?」
「…ぶっ叩いて、脳みそ撒き散らす!」
僕は、やれやれと肩をすくめる。
まったく、この脳筋は……
鉄パイプを握りしめ、鼻息を荒くするケイにいう。
「ハズレ。ケイ、またはぐれても知らないよ?」
「あうっ!」
ケイは第一世代だ。しかも、腕力に限っていえば、飛びきり強力な第一世代だ。
あのレイス共も五体くらいまでなら、素手で応戦できる。
鉄パイプを持ったケイの強さは……推して知るべし。
「……もし、僕がレイスに咬まれたり、ひっかかれた時は?」
「それは……それは……」
ケイはオロオロとして、しきりに唇を舐め回す。
「その時は、僕の脳みそを撒き散らす。分かるね」
「……」
レイスの体液には『レイス症状』を伝染させる『何か』がある。
感染すると、個人差はあるが、一時間ほどでレイスになる。
狂暴化し、喰うことしか考えられなくなる。
この国に僅かに残る『自衛軍』の調べでは、レイスの頭の中に『何か』いるらしい。
僕の旅の目的はこの『自衛軍』と合流することだ。
- 394 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 18:41:02 ID:Bbf8rtn.
- 『自衛軍』の本拠地は、ホッカイドウの何処かだ。
僕は、そこで『自衛軍』に志願するつもりでいる。
二時間交代で僕から先に眠る。
眠りに落ちる瞬間、泣きそうな表情で僕を見つめ続けるケイの潤んだ瞳が、酷く印象的だった。
…
……
………
…………
突然響き渡った激しい衝撃音に、僕は飛び起きた。
目の前では、腰に貧相な布切れを巻き付けただけの女のレイスが二体、鉄パイプを構えたケイと対峙している。
レイスたちは歯を剥き出して、飢えにぎらつく眼でケイを睨み付けている。
一方のケイは、わからない。僕を庇うようにして、こちらに背を向けている。
外には糸を張り巡らして、誰かやって来た時は鈴の音が鳴るようにしてある。
……ケイめ、ここまでレイスを近づけるとは、さては居眠りしたな!?
考えながら、手元のボウガンに手を伸ばす。
――と同時に、ケイが吼えた。
「ウウウウウ! ガアアアアッ! このメスブタどもっ! そんな格好で何しに来たっ!」
僕は、この剣呑な雰囲気の中、ずっこけそうになった。
確かに、レイスの女二人はおっぱい剥き出しのエロい格好をしている。
けど、問題はそこじゃない。……そこじゃないよね?
「喰らってぶっ飛べ! この腐れビッチがっ!!」
第一世代のケイが、加減なく鉄パイプを振るう。
目にも留まらぬスピードで振るわれたそれは、レイスの女二人の頭を潰れたトマトよろしく吹き飛ばした。
ごちゃあっ、と肉を叩く音がして、放射線状に血飛沫が飛ぶ。
狂奮冷めやらぬケイが喚き散らす。
「カナメは、ケイと一緒にピリオドの向こうまで行くんだっ! 行くんだっ!」
行かない。行きたくない。
ケイは何処でそんな言葉を覚えたのだろう。
そんなことより、部屋中レイスの血液で汚れてしまった。
レイスの血液はとても危険だ。
僕は、ピリオドの向こうがどうとか喚き続けるケイの手を引いて、その場を後にした。
「あのビッチども! カナメとファックするつもりだったんだっ!」
……いつものことだ。今更、何も思わない。
ケイの馬鹿は、取り返しのつかないところまで進行している。
「くそっ! くそっ! カナメは、ケイのだよなっ!? ケイのだよなっ!?」
「はいはい」
僕はボウガンを構えたまま警戒しつつ、路上に乗り捨てられた古いバンにケイを押し込め、自分も乗り込む。
- 395 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 18:42:12 ID:Bbf8rtn.
- 僕は後部シートにケイを押し倒し、激しくキスをする。
「あうっ! カナメっ!」
ケイには困った癖がある。
興奮し過ぎてしまうと、なかなか落ち着かないのだ。
鎮静化させるためには性的刺激を与えるのが一番早く、確実だ。
「カナメっ! カナメっ!」
喘ぐケイの首筋をなめ上げながら、耳元でそっと呟く。
「ケイ、落ち着いて……僕は逃げないから……」
なるべく平静を保ち、落ち着いた調子で言う。
このままケイを興奮させたままにしておけば、レイスを呼び寄せることは間違いない。
「カナメぇ…」
ケイが上げる切ない声を聞きながら、バンの窓越しに周囲を見まわす。
レイスのいないことを確認してから、ケイの大きな胸を揉み、下着の中に指を這わせ、ぐちゃぐちゃになったそこを掻き回してやる。
「はぁぅぅ…」
濃くなった女の匂いが車中に漂う。
僕は、舌を絡め、じっくりと煮溶かすようなキスで、ケイを追い詰める。
「カナメぇ……欲しいよぅ……」
返事代わりに、唇を吸い上げながら、肥大したクリトリスを捻り上げてやる。
合わせた唇の間から、くぐもった声が漏れ、ケイが絶頂の合図を出す。
むわっと牝の匂いが濃くなり、手のひらがケイの分泌液に塗れた。
「声出したら、やめるから……」
残酷に言い放ち、再びケイを追い詰める。
挿入はしない。
僕は第二世代だ。本能的な欲求をコントロールできない第一世代とは違う。性欲は理性でコントロール可能だ。
ケイは真っ赤になった顔で唇を噛み締め、呻きすら漏らさぬように耐えている。
興奮を抑えるための刺激は充分に足りている。それでもケイを快楽漬けにする理由は、ただの憂さ晴らしだ。
こんな厄介な馬鹿は、僕には必要ない。
「イケよ……ほらっ!」
アナルにも指を突っ込んで、激しく蹂躙してやると、ケイは返事代わりに、陰部から飛沫を吐き出した。
結局、僕がケイに挿入したのは朝日が射し始めた頃だ。
白目を剥き、飽和状態で快楽を受け入れるだけの人形だったが、それでも挿入の快感は並ならぬものがあったようだ。
「ぎひぃぃ…!」
短く呻き、絶頂する。同時に、思いっきり尻をひっぱたいてやる。
最後の締めだ。
ちょっとした悪戯心。
……マゾ豚に躾れば面白い。
- 396 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 18:42:53 ID:Bbf8rtn.
-
「カナメぇっ……好きぃぃ……」
ケイは、その喘ぎを最後に激しくアクメを迎え、失神した。
僕は行く。
この終焉の世界を。
僕は行く。
この終の空(ツイノソラ)の下、精一杯生きるために。
- 397 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/01(火) 18:43:34 ID:Bbf8rtn.
- 投下終了。
- 398 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 01:18:16 ID:Xi2PBI66
- >>397
GJ、ヒロインが精神崩壊しないか心配だ
とりあえず続き頑張ってください
- 399 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 03:56:02 ID:fNB9lct6
- うーん、なんか「エヴァンゲリオン」と「北斗の拳」を足して2で割った感があるな・・・・・・
- 400 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 07:26:22 ID:lNoFIrSU
- ついでに言えばバイオレンスジャックとクレイモアだなW
面白けりゃ何でもアリだ
続き楽しみにしてるよ
GJ
- 401 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 10:27:21 ID:zcWRFTxI
- >>397
独特の世界観だね
GJ!
- 402 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 10:58:11 ID:Ih01RK36
- >>397
乙乙!
- 403 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/02(水) 12:53:19 ID:.h2W0rbs
- 作中、ファーストチルドレンとセカンドチルドレンが登場していますがネルフは登場しないので御安心を。
世紀末覇者や伝承者、聖帝様は登場しませんが、死兆星が輝く時はあるかもしれません。
深淵の者も出ませんし、番号をふられた戦士が出てくるということもありませんが、食事代を暴力で支払うような展開はあるかもしれません。
かつて兄と呼んだ男は存在しませんが、悪が輝く時代ではあるかもしれません。
それでは投下します。
- 404 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/02(水) 12:54:19 ID:.h2W0rbs
- ホッカイドウへ向け、僕とケイの旅は続いている。
この日、とてつもない幸運があった。
走行可能なワンボックスカーを見つけたのだ。
ガソリンは未だ半分以上残っているし、バッテリーもあがってない。
――ツイてる。
これで、ずいぶん進めるだけでなく、夜間は比較的安全にやり過ごすことが出来る。
車の中には僅かだが食糧も積んである。
……察するに、これの所有者は死んでいるだろう。ここしばらくの不在を示すように、車中に、うっすらホコリが積もっている。
「これ、そんなに便利なのか?」
首を傾げるケイにも分かるように説明してやる。
「これで夜もセックス出来る。優れものだよ」
「……」
ケイはたっぷり10分は放心していた。
それから手を振って、
「ないない。カナメは、日が射さない内は絶対、挿れてくれない」
わかっているんだ、と言わんばかりに肩をすくめて見せる。
まあいい。今夜、身体に解らせてやる。
ちなみに、ケイの調教は順調に進んでいる。
多少の興奮状態なら、尻一つぶっ叩いてやれば冷静になるようになった。
僕は熟考し、よく考えた結果、市街地でガソリンを探すことにした。
日が落ちて来て、僕が運転するワンボックスカーは、七人のレイスを跳ね飛ばした。
ケイは大興奮のはしゃぎまくりで、
「カナメっ、あのメスブタ! あのメスブタを跳ねてくれっ!」
と大声で騒ぎ立てた。
一方、僕は少し複雑な気分だ。
僕には快楽殺人の趣味はない。
そして、レイスたちは元々は人間だ。
あまり、いい気分はしない。
「いいぞっ、カナメ! 女は世界にケイ一人だけで十分だっ!」
別に、ケイの指示で女のレイスを跳ねているわけじゃなく、レイスの方で勝手に飛び出してくる。
僕も避けてまで殺生を控えようとは思わない。それがこの無差別殺人の正体だ。
市街探索中、シャッター付きの車庫を発見したので、しばらくはそこを拠点として行動するつもりだ。
長く旅を続ける以上、用意しなければならない道具は沢山ある。
食糧はもちろん、医薬品、燃料、衣服、武器等も新たに手に入れる必要があった。
車庫の中は、数人のレイスたちの巣になっていたが、掃除はケイにやらせた。
先日の失敗を踏まえ、鉄パイプには布切れを巻き付けておいたので、血飛沫を辺りに撒き散らすこともないだろう。
- 405 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/02(水) 12:55:07 ID:.h2W0rbs
-
今日のケイは、きちんと僕の指示通りに動き、レイスたちを車庫から追い出した後、始末に及んだ。
ケイは、女のレイスに容赦ない。
車庫に巣くっていたレイスたちは一人残らず頭をかち割られたが、女のレイスに至っては、容姿が判らなくなるほど、念入りに暴行を受けていた。
僕はケイのその残虐性に眉をひそめながらも、車中からボウガンを撃ち、援護に徹した。
夜になり、比較的安全な車庫の中、車中の後部座席でこれからの展望をケイに説明する。
レイス掃除を終えたケイは上機嫌だ。
にこにこと僕の話を聞いているが、十分の一だって理解できないのはわかっている。
だから、ケイに出す指示は至ってシンプル。
「明日から、本格的に物質の収集を始めるよ。ケイは、僕の護衛。油断しないこと。いいね」
「うんっ」
取り返しのつかないところまで、馬鹿という名の病を進行させているケイだが、僕の護衛に関する限り、集中して抜かりはない。
話が終わった後は、ケイの衣服を脱がせ、消毒作業に入る。
返り血は浴びてないようだが、念のためだ。
消毒作業は100ppm濃度の塩素を使って行う。
もちろん、塩素は貴重品だが感染を防ぐため、出し惜しみしてはならない。
塩素水を付けた布で、たくましいケイの身体を拭き清めて行く。
身体能力に優れるケイの担当は専ら荒事だ。
汚れやすく、感染の確率が高い。
ケイを綺麗にする理由は、僕のためと労いの意味がある。
僕もそうだが、ケイの身体からは少し塩素の匂いがする。
顔から始め、髪、腕、胸の順に拭き清めて行く。
ほぼ毎日行うことだが、この時のケイは非常に安らいだ表情をしている。
実りのいいケイの胸を拭きながら感触を確かめる。
「んっ…」
ケイが熱っぽい息を吐く。
……少し、張りがある。
「ケイ、どう? 少し痛くない?」
言いながら、ケイの下腹部を軽く押す。
「んん……少し……」
生理が近いということだ。
身体能力に優れる第一世代のケイだが、生理期間中は少し運動能力が落ちる。
ケイがどうなろうが知ったことではないが、どうかしたい訳じゃない。
それに……
自衛軍との合流を第一目的に置く僕だが、以上の目的がない訳じゃない。
至上の目的は、子孫を残すことだ。
出来ることなら、第一世代の女性が望ましい。
もし、ケイが妊娠すれば、その子は第三世代……新しい人類だ。
それは新しい可能性を秘めている。
- 406 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/02(水) 12:55:45 ID:.h2W0rbs
- その可能性の追求のためなら、僕は旅をやめても構わないとすら思っている。
車中では、欲情したケイが四つん這いになって、僕におしりを突き出している。
ケイは行為中、僕に抱きつくことはしない。
脆い造りの第二世代の僕は、強靭なケイにとっては壊れやすいガラス細工の人形だ。
いつからか、行為中のケイはこの姿勢を取るようになった。
ケイの大きなおしりは、膣もアナルも丸見えになっていて、膣口は濡れてランタンの灯りに鈍く光って見えた。
ケイの吐き出した湿っぽい吐息で、車中の窓ガラスが曇って行く。
「……」
愛撫してもケイは、喘ぎ声一つ上げない。
ただ、獣のような荒い呼吸を繰り返し、膣口から粘液を吐き出す。
日ごろの訓練の賜物だ。行為中の彼女は、とても静かだ。
丸く大きなおしりには、夕べ僕が付けた手形が、はっきりと残っている。
一度、指でイかせてから、白く濁った粘液をケイの膣全体に塗りたくる。
ペニスを出して膣口にあてがうと、それまで唇を咬んで快感を堪えていたケイは驚きに近い喘ぎを上げた。
「カナメ……?」
のしかかるようにして、ケイの中に一気にペニスを挿入する。
「うぎぃっ……!」
潰れたカエルのような呻きを上げ、ケイが絶頂する。
今回の絶頂は大きいようで、四肢が震え、膣内がぎりぎりと引き締まる。
構わず、僕はケイの膣を突き上げる。
車中に肉を叩く湿った音とケイが規則正しく上げる小さな喘ぎが響く。
ケイは全力で耐えているのだろう。全身を真っ赤にして、小刻みに震えている。
「……イけっ!」
ケイの大きなおしりを打ち据える。
「きひっ…!」
ケイはたまらず絶頂し、膣からは漏らしたみたいに熱い液体を吐き出した。
僕は、生きている。
旅の目的を遂げるのが先か、新たな可能性を得るのが先か。
ケイの中に大量の欲望を吐き出しながら、僕は、今日を懸命に生きている。
- 407 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/02(水) 12:57:47 ID:.h2W0rbs
- 乗ってきました。
ウィーク中になるべく進めます。
投下終了。
- 408 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 16:54:44 ID:0/cKyfKA
- >>407 GJです!次も期待しています。
お久しぶりです。
投下させて頂きます。ペースは遅くなるとは思いますが、
休みの暇つぶし程度に読んで頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
- 409 :嘘と真実 1話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 16:58:35 ID:0/cKyfKA
-
〜誰かのエピローグ・1〜
どうしてこんなことになってしまったのか。今でもはっきりとした理由は分からない。
いつから間違いを犯していたのだろう。いくら後悔しても、もう元には戻れないのにいつまでも立ち尽くしていた。冷たい雨が容赦無く俺を打ち付ける。
このまま俺も、俺が犯した罪も流れて消えてしまえば良いのに――
―嘘と真実―
1話
父親の急な転勤でこの桜山(さくらやま)市に引っ越してきて早半年が経つ。
以前住んでいた地域と違って市内は気温が低く、11月上旬で既に一桁代を記録する程だ。
俺達家族の住んでいる場所は海が近いので、海風も合わさって余計に寒さを感じる。
「ママ、行ってきまーす!」
「……行ってきます」
朝の通学路ほど、歩くことを憂鬱に思う場所もない。
一旦学校に着いてしまえば室内だし多少はマシになるのだが、どうにもこの早朝の寒さには半年経った今も一向に慣れない。
そんな寒がりな俺に比べて目の前をぴょこぴょこ軽快に歩いている――
「お兄ちゃん!朝だからってシャキッとしなきゃ駄目だよ!」
「……そんなこと言ってもな、弥生。寒いもんは寒いんだよ」
我が妹、藤塚弥生(ふじつかやよい)は今日も朝から元気一杯だ。
少し茶色がかったセミロングとくりっとした大きな目が特徴的で、正直……半端なく可愛い。
勿論、俺はシスコンではない。
「だらし無いなぁ、お兄ちゃんは!弥生みたいに部活始めれば良いんだよ!サッカー好きでしょ?」
「弥生よ……何度言ったら分かるんだ?俺が好きなのは――」
「『フットサルであって断じてサッカーではない』でしょ?もう諦めてサッカーやりなよ!」
「お、おいっ!?」
突然腕に抱き着いてくる弥生からは女の子特有の甘い香りがする。
……やはり弥生は可愛い。兄妹だというのに俺と全く似ていないコイツが、僅か半年で6人に告白されたというのも頷ける。
勿論、俺はシスコンではない。断じて、ない。
「へへっ!そんなこと言いながらも朝練組の弥生と一緒に登校してる癖に!」
「だからそれはな、朝早く学校に着いて優等生を演出する為に登校してるんだよ」
現在時刻は朝の7時過ぎ。毎日女子バレー部の朝練がある弥生とは違い、本来ならばこんな朝早くに登校する必要はない。
……本来ならば。
「先週くらいから急に早起きし始めてさ。……何か企んでるの?」
「さあ?」
弥生が探るような目で見つめてくるので肩を竦める。妹が知ったところでどうにもならないし、知らせて心配をかけさせたくはない。
「……まっ、お兄ちゃんが何してようと弥生には関係ないけどね!」
ごまかされたのが嫌だったのか、頬を膨らませながらそっぽを向いて行ってしまった。
……相変わらず弥生は可愛いなぁ。無論、俺はシスコンではないがな。
「おいっ、待てよ!」
「お兄ちゃんなんか知らないっ!」
ご機嫌ななめな妹を追い掛けながら思う。
そう、本来ならばごく普通の高校二年生である俺、藤塚司(ふじつかつかさ)がこんな早朝から通学路を走ることはなかったはずだ。
「……はぁ」
一週間前にあんなことさえ起きなければ。
- 410 :嘘と真実 1話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 17:01:18 ID:0/cKyfKA
-
一週間前。いつも通り登校してきた俺は違和感に気付いた。俺の下駄箱だけ異常に汚いのだ。
恐る恐る自分の下駄箱を開くと中は更に酷く、生ゴミや砂などか混ぜこまれていた。
その次の日には俺のロッカーに大量の赤いペンキがぶちまけられていたり、机の中に無数のカッターの刃が入れられたりしていた。
……まあ分かりやすく言えばイジメ、あるいはかなり質が悪い嫌がらせである。
幸い誰もその惨状には気付かなかった為、自分で捨てたり放課後残ってこっそり塗り直したりした。
……正直、イジメられていると思われたくないし、まだ転校してきて半年だ。出来れば事を荒立てたくはない。
そこで俺は朝早く登校して犯人を捕まえようと決めた。
直接理由も聞きたいしその方が手っ取り早いからだ。
しかし早朝に登校しているにも関わらず嫌がらせは続き、今だに早朝学校に来る日々が続いている。今日こそは――
「いや、それはシスコンだろ。どう考えても」
「ははは、冗談キツいな晃は」
昼休み。いつものようにクラスメイトの小坂晃(こさかあきら)と飯を食う。
……ちなみに結局今日も既にやられていた。これで8日連続、か。犯人はどれだけ早く学校に来ているのだろう。
「弥生ちゃんが可愛いのは分かるが……。頼むから捕まらないでくれよ、親友」
グッと親指を立てる黒髪短髪の好青年、晃はサッカー部で俺が転校してきた直後から気さくに話し掛けてくれた。
まさに好青年の中の好青年なのだ。サッカー派とフットサル派に分かれてはいるもののそれから半年、今では学校で一番仲が良い。
「おいおい。エロゲ好きの犯罪者予備軍が何を宣ってるんですかねぇ?」
「……お前は俺を怒らせた。良いかよく聞け!?そもそも性描写が青少年に対して有害だという確定的なデータは全くなくだな――」
……"基本的に"コイツは好青年だが一つ大きな欠点がある。晃はかなりのエロゲ、要するに18禁バリバリのアダルトゲームマニアなのだ。
しかもそれを公言しているから質が悪い。
基本的に好青年でサッカー部のエースなのでかなりモテる。が、コイツに今だに恋人がいないのはおそらくそういう理由だと思う。
少なくとも告白してきた女子に「巨乳かつ金髪でツンデレ、エッチシーンの時はしおらしくないと駄目なんだ」と笑顔で断る好青年を俺は見たことがない。
「つまりこの条例というのは幸福追求権、ならびに表現の自由の――」
「晃君、晃君。ちょっと良いかな?」
「何だ親友?」
爽やかな顔で笑いかけてくる変態が約一名。
「もう、やめよう。俺が悪かったからさ」
「分かってくれれば良いんだよ親友!」
がっちりと握手してくる変態、もとい親友の情熱に折れたのか。それとも遠巻きから冷たい視線を送ってくるクラスメイト達に堪らなくなったのか。
どちらにしろ、コイツを暴走させたのは俺の責任だ。とりあえず謝っておくことにする。若干手遅れの感はあるが。
「またやってんだ、アンタ達?よく飽きないわね」
そんな素敵空間に変態がまた一人加わってきた。
セミロングの銀髪をなびかせながら俺達の間に椅子を割り込ませてくる美少女、中条雪(ナカジョウユキ)。
……すまん、皆。もうどうすることも出来ないかもしれない。
「おっす、中条。今日は遅かったな」
「購買組はいつも戦争だから。……"幻のカレーパン"、手に入れたわ」
それを聞いた瞬間、俺も晃も張り詰める。まさかコイツ、あのカレーパンを……?中条は手に持っていた紙袋をゆっくりと机の上に置いた。
「……幾つだ?」
晃が震えた声で中条に聞く。頼む、3つ……!そう言ってくれ……!祈るような眼差しで中条を見つめる俺達を、彼女はばっさりと切り捨てた。
「2つ……よ」
その言葉を聞いた瞬間、俺達の空気が更に張り詰める。弦ならば完全に張った状態、液体ならばまさに表面張力の状態だろう。
晃がゆっくりとこっちを向く。その瞳には確かな決意が宿っていた。
「友よ……済まない」
「いや、気にするな。俺も……悪いが譲る気は全くない」
勿論俺だって一歩も引かない。カレーパンは2つ、俺達は3人。
このことから分かることはたった一つ、誰かがこのカレーパンを食いそびれてしまうという歴然たる事実のみなのだから。
- 411 :嘘と真実 1話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 17:03:49 ID:0/cKyfKA
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"幻のカレーパン"とはこの学校に昔からある購買限定のパンだ。
一見普通のパンだが外はサクサク、中はスパイシーなカレーが絶妙な柔らかさを保っており食べた者の心を掴んで離さない。
噂では、一時期あまりの需要の為販売を中止してしまったらしい。今でも一日僅か10食の限定販売なのがこのカレーパンが幻と言われる由縁である。
「雪は買ってきた当人……だからこのカレーパンを食べられるのは後一人だ」
俺と晃は互いをしっかりと見つめ合い、手を前に出す。
何か揉め事があった時にはジャンケンで解決するのが俺達三人のルールだ。だから俺達にはこれがただのジャンケンではないことが即座に分かる。
「司……俺は"チョキ"を出すぜ」
「ほう……」
晃お得意の撹乱が始まった。こうやって自ら出す手を宣言することで相手の思考を縛る。古典的だが効果的な揺さ振りだ。
現にこの揺さ振りに慣れていない者は晃の言っていることが真実か嘘かに思考の多くを持って行かれるだろう。しかし――
「わざわざありがとよ。じゃあ俺は"パー"を出させて貰うぜ」
「……やるな、親友」
「くすくす……流石に司には通用しないでしょ?」
俺は即座に宣言を返す。この場合真実か嘘かは問題ではない。相手の術中に嵌まってしまっている、つまり考えていること自体が問題なのだ。
ジャンケンとはいかに相手を自分のフィールドに連れ込めるかで勝率が大きく変わる。遊び半分のジャンケンならば単純に直感と運が優れた者が勝つだろう。
しかしそれが本気になった時、人は緊張からか普段から無意識にしている癖や思考を外に出してしまう。
例えば、単純にパーを普段から多く出している場合、本気になった場でもついパーを出したくなるのが人間の心情だ。
ではそれを相手の縛りによって二択にされてしまったら……?
間違いなく普段の癖に自然と頼ってしまうはずだ。
ちなみに俺達は違いの癖を熟知している。晃はチョキ、中条はパー、俺はグーだ。
だからこそ晃は"チョキ"と言って、俺の無意識に語りかけるように、つまりグーを出したくなる状況を作り出そうとしたのだった。
「じゃあガチで行くしかないみたいだな……!」
「ああ、行くぜ……!」
しかし俺には通用しない。そうすれば純粋な運だけのジャンケンになるしかない。
……少なくとも晃には!!
「「最初はグーっ!!」」
グーをお互いに出してから手を振って次を出そうとする、その瞬間を俺は利用する。
振り上げた手をパーの状態にしてわざと晃に見えるよう掲げる。嫌でも晃の視界に入るそのパーは奴の無意識に語りかけるはずだ……"チョキ"を出せと!
「へぇ……」
中条がその一瞬、俺の切り札に気がつき笑みを浮かべる。ならば晃にはとっくに分かっているはずだ。しかしこの一瞬で考える時間は皆無。
「「ジャン!!」」
だからこそ晃はチョキを出す。出したくなる!だが俺は――
「「ケン!!」」
自分の手を振り下ろす瞬間にグーに変えるっ!これで俺の勝ちだぁぁあ!!
「「ポンッ!!」」
- 412 :嘘と真実 1話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 17:07:21 ID:0/cKyfKA
-
放課後、屋外プールに放り込まれていた体育館履きを回収して、俺は教室へと向かっていた。
早起きして学校に登校するようになってから相手の嫌がらせは小規模になっている。
良い意味で捉えれば俺が早く来ることで犯人が嫌がらせをしにくくなっているということだ。
しかし逆に悪い意味で捉えると犯人に俺の行動は筒抜けで、今まで通り普通の時間に登校しなければ嫌がらせはまた大掛かりなものになるであろうということであった。
「はぁ……カレーパン、食いそびれちまったな」
廊下を歩きながら昼休みのことを思い出す。
昼休み、俺が勝ちを確信したあのジャンケンは晃の勝利に終わった。
「運じゃ勝ち目はねぇよ……」
結局、俺が必死に考えて出した切り札も晃には通用しなかった。
というか、自分の誘導が通じなかった時点で晃は難しい思考は捨て司、つまり俺が出しやすいグーに勝てるパーを出すことを決めていたらしい。
だから俺の作戦にも晃は嵌まらず純粋なジャンケンで勝負しにきたのだった。
「俺、勝負運ないからなぁ……」
中条にはそれが分かっていたらしくあの時の笑みは今から敗北する俺を小ばかにするものだったのだ。
「くそ、覚えてろよ。次こそは勝ってやるからな!!」
誰もいない廊下で咆哮する俺は、傍から見るとかなり気持ち悪いに違いない。
「……はぁ」
奴ら、晃と中条と送る学校生活はかなり楽しい。
そりゃあ騒ぎすぎて担任やクラス委員に注意されることはしばしばある。しかしそれすらも退屈だった以前の日常に比べれば刺激になるのだった。
本当にこの桜山市に引っ越してきて良かったと思ってる。
だからこそ、この幸せな日常を脅かして欲しくない。誰にも迷惑は掛けないし、気付かせない。絶対に犯人は俺の手で――
「藤塚君、そこで何してるの?」
「おわっ!?」
考え事をしていたせいか、思わず変な声を出してしまった。
「だ、大丈夫?……どうしたの、その体育館履き?」
「えっと……って、委員長か」
恐る恐る振り向くとそこには俺達のクラス委員長である、辻本(ツジモト)さんが立っていた。
端正な顔立ちと肩までかかる艶のある黒髪が印象的な、典型的な大和撫子だった。確か晃が学年で一番人気があるとか言ってたな。
「藤塚君?その体育館履き……」
……って今はそんなこと考えてる場合じゃねぇよ!辻本さんは俺が持ってるずぶ濡れの体育館履きを気にしてる。何とかしてごまかさないと、面倒なことになる。
「ああ、これ?えっと……そう!振り回してたら噴水に落としちゃってさ!馬鹿だよね、俺も!」
「……今日は体育なかったけど、どうして体育館履き何か持ってるの?」
へらへらと笑ってかわそうとする俺に対して、辻本さんは冷たい口調で疑問を突き付ける。
……ちょっとまずいかもしれない。上手く話を逸らさないと。
「それは……あーっと晃に悪戯されてさ!」
「小坂君が?藤塚君と仲が良いのに?」
晃を言い訳に使うのは若干心苦しいが仕方ない。ここでばれてしまっては、今まで一人で闘ってきた意味がなくなってしまう。
「仲が良いからだよ。まあ軽い悪戯だからさ。あ、俺用事あるからもう帰る――」
「……クスッ」
俺が無理矢理話を切り上げてその場を去ろうとした時、辻本さんは静かに笑みを浮かべた。
その笑顔が普段の辻本さんからは想像出来ない程の冷たさを湛えていることに俺は気付く。何だ、この感じ……。
「えっと……」
「藤塚君って嘘、下手だね」
ゆっくりと近付いて来る辻本さん。普段、辻本さんはこんな人だったか。
確かに俺や晃があまりに五月蝿くすると怒るけど、それはクラス委員という立場であるからであって、普段は普通に仲良くやってたはずだ。
席が近いからか、たまに昼飯を一緒に食ったりした。何より転校したての俺に色々と教えて雰囲気に馴れさせてくれたのは辻本さんだ。
それはクラス委員としての役目だけでなく、彼女の面倒見が良い性格もあったからだ。
「どうしたの?藤塚君……顔真っ青だよ」
まるで身体が石にでもなってしまったかのように動けない。
夕焼けに染まる廊下で俺は立ち尽くすことしか出来ないでいる。それ程に目の前にいる辻本さんは異常だった。
「あ、あのさ……」
「とりあえず、話聞かせて?じゃないと……」
俺の手を辻本さんが握りしめる。ひんやりと冷たい感触が俺を支配していた。
目の前にいるのは本当に辻本さんなんだろうか。ならば何故彼女はこんなにも冷たい笑顔を俺に向けるのだろう。
……もしかしたら、もしかすると犯人は――
「怒っちゃうよ」
クスッと笑いながら彼女は俺に囁いた。
- 413 :嘘と真実 1話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 17:16:00 ID:0/cKyfKA
-
放課後の教室。すでに外は暗くなり始めていた。部活を終えた生徒達の声が微かに聞こえてくる。
そんな教室の中央の席に俺は座っていた。隣には辻本さんが座っていてさっきまで俺の話を真剣に聞いていたのだった。
「――大体の状況は掴めたわ。まず藤塚君」
「は、はい」
凛とした辻本さんの声に思わず姿勢を正してしまう。何とも情けない話だが弛緩してしまっている自分がいた。
「これからも何かトラブルがあったら必ずクラス委員の私に相談すること!」
「す、すいません……」
「全く……クラスの問題を解決するのが私の役割なんだからね」
少し不満げにこっちを見て話す辻本さんは何処か頼もしかった。
……結局、辻本さんに全て話してしまったのだ。問い詰められてもうどうにも言い逃れが出来なかったのだから、仕方ないのかもしれない。
「本当にゴメンな」
「……もう良いわよ、打ち明けてくれたんだし。だからいつまでも暗くならない!」
「痛っ!?」
背中を思いっ切り叩かれる。とても良い音がして辻本さんは満足そうだ。最初に問い詰められた時は恐怖を感じたが、それも気のせいだったようだ。
現に話し始めてからはいつも通り、俺が知っている世話焼きの委員長になっていたし。
「さて、どうしたもんかな。何で怨まれてるか分からないようじゃ、犯人を絞るのは難しいかもね」
「いってぇ……。まあ辻本さんがいると色んな意味で心強いよ」
辻本さんに打ち明けたおかげか、何だか気持ちが軽い。やはり一人で悩み続けるのは良くなかったのかもしれない。辻本さんは少し顔を赤くしていた。
「……な、何よ。最初は隠そうとした癖に」
「ゴメンゴメン。今度からはちゃんと辻本さんに言うからさ」
「そ、それなら良いけど!」
何故か辻本さんはそっぽを向いてしまった。まだ怒っているんだろうか。
「辻本さん?」
「と、とにかく!明日から対策を考えないといけないわね」
「確かに。今まで通り早起きして犯行現場を抑えるのは?」
辻本さんは顎に手を当てながら考えている。そんな端正な横顔が彼女の人気を裏付けていた。確かに学年一の美少女かもしれない。
「それは続けましょう。私はどの道、委員会の仕事で早く登校するし、きついなら私と藤塚君で交代制にすれば良いわ」
「そうだな。じゃあ晃と中条にも――」
「それは止めておきましょう。まだ確定的ではないしあまり多くの生徒を巻き込まない方が良いわ。明日の段階で私から先生にはちゃんとお伝えするから」
確かに生徒に話しても意味がないのかもしれない。
俺が話さなかった理由の一つでもあるし、先生に伝わるならば少しはこの状況もマシになるのかもしれない。
「分かった。じゃあとりあえず今のところ相手の様子を伺うしかないんだな」
「……まあ、ある程度の見当はつくわ」
辻本さんが難しい顔をしてこっちを見ていた。それは伝えるべきかを迷っているような表情だ。
「見当って……犯人の、か」
「……確定的ではないから、まだ藤塚君には話せないけど」
「それは――」
「藤塚君も、自分で考えてみて。さ、帰りましょ!もう遅いし」
話は終わりと言わんばかりに辻本さんは席を立ち、出口に向かって行った。今は何を聞いても答えてくれないだろう。仕方なく俺も彼女に続いた。
- 414 :嘘と真実 1話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 17:16:35 ID:0/cKyfKA
-
「今日は、ありがとな」
学校からの帰り道。意外と家が近い事が分かり、俺達は一緒に帰っていた。
「別に。困った人がいたら助けるのが友達でしょ?」
俺に笑いかけてくる辻本さん。
クラス委員ではなく"友達"として俺を助けてくれるのが凄く嬉しかった。何より一人では不安で潰れてしまったかもしれないから。
「お、おう。……やっぱり辻本さんは頼もしいな!」
「……調子良いんだから」
恥ずかしさを隠す為にふざけてごまかす俺に付き合ってくれる辻本さん。
今まで半年一緒に過ごしたクラスメイトだったが、こんなに話したのは初めてかもしれない。
帰りながら色んな話をした。趣味や食べ物など。そして殆ど好みが同じだったことにびっくりしたり、何だか不思議な気持ちになっている自分がいた。
辻本さんのことをもっと知りたい……そんな自分がいた。
「あ、私こっちだから」
「そっか。俺は左だからさ、じゃあまた明日な」
「うん、また明日!」
いつもより短く感じた帰り道。お互い手を振って別れる。少し物寂しい自分が何だか恥ずかしかった。
「……また明日、か」
でも今日は良い一日だったと思う。気持ちが楽になったし心強い味方も出来た。
「辻本、真実(マミ)か……」
交換したてのメールアドレスをぼんやりと眺める。
まだ問題が解決したわけではないが、彼女との出会いを作るきっかけをくれたことにはむしろ感謝したいくらいだった。
――これが全ての始まり。これから藤塚司とその周囲に蔓延る、嘘と真実の始まり。
- 415 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/02(水) 17:18:14 ID:0/cKyfKA
-
以上で投下を終了致します。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 416 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 17:20:14 ID:CYa9dS96
- GJ!面白くなりそう
イジメ、ダメ、絶対。
- 417 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 18:00:16 ID:orTOWDMI
- GJっす!もしかして前書いてた人かな?
これからの展開に期待!
- 418 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 18:25:23 ID:E4U0BBT6
- リバースの作者さんじゃないか!
お久しぶり、そしてGJ
- 419 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 22:42:51 ID:v1On0CIc
- 投下ラッシュ久々だな!
GJです!
- 420 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/02(水) 22:45:10 ID:fNB9lct6
- >>415
おぉーwwリバースの方でしたか;;GJ!!この読みごたえある文章・・・・・
素晴らしい・・・・・ただ、タイトル見て一瞬「嘘と秘密」と見間違えた俺が恥ずかしい;;
- 421 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 11:28:42 ID:XXe8aYvA
- リバースの人?好きな作者キター!乙です
- 422 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 16:51:57 ID:2ZPLwEWo
- ツイノソラ、嘘と真実
両作者さん共GJです
- 423 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 20:20:17 ID:7iZ8xvoI
- ばあさんや蝕雷はまだかのう?
- 424 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 20:27:41 ID:SBIl8kUw
- じいさんやさっき食べたばかりでしょう
- 425 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 20:57:06 ID:TGWJxYW.
- こはるの日々の三巻がいつの間にか出てた。買わんとな
- 426 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 21:28:58 ID:NRzhsrS2
- >>425
なん、だと……
- 427 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:39:24 ID:W9rqsCrk
- >>425
何故もっと早く言わなかった!?私も縦笛を舐められry
申し訳ありませんでした。投下させて頂きます。
休みの暇つぶし程度に読んで頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
- 428 :嘘と真実 2話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:42:27 ID:W9rqsCrk
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〜誰かのエピローグ・2〜
「……行くよ」
冷たい声が聞こえてくる。そうだ、もう行かなくちゃ。本来ならば一刻も早くここから立ち去らなければならないはずだ。なのに俺はいつまでも終わったことを――
「分かってる」
俺はゆっくりと歩き出す。冷たい雨で歩きにくいが、それでも俺は歩き出さなければならない。きっとこの罪は消えないから。だから俺は逃げるしかないんだ、ただひたすら遠くへ。
2話
夕焼けに染まる校舎裏。そこに佇む男女が一組。女子の方はポニーテールがよく似合う、可愛いらしい感じの女の子だった。
顔は夕焼け以上に赤くなっており、今まで自分自身がたどたどしくも話していた内容にかなりの羞恥心を覚えているようだ。
「そ、そ、それでっ!わ、私……あのっ!」
それでも必死に何かを相手に伝えようとしているようだったが、中々言い出せず先程の言葉をもうかれこれ5、6回繰り返しているところだ。
相手の男子はというと、もじもじしている女子を凝視しており、しばらく黙っている。
そんな状況が彼女を更に緊張させてしまい、場はまさに硬直状態だった。
……静寂と時折聞こえてくる部活動の掛け声だけが場に満ちていた。
「……何考えてるのかね、あの阿呆は」
「多分何も考えてないんじゃねぇかな……」
そんな気まずい男女を陰から見守る俺と中条。良い趣味ではないことは重々承知しているが親友の頼みだ、仕方がない。
……まあその親友はまさにいま気まずい空気のど真ん中に突っ立っているわけなのだが。
「何とか言わないとあの子が可愛そうね」
「って言っても晃がOKするとも思えないしな」
「何で……!」
「ん?っておいっ!?自重しろ!」
今にも飛び出さんばかりに身体を震わせている中条を必死に止める。コイツは美少女のことになると本当に変態に成り下がるからな……。
「あの無礼者に制裁を〜!」
「ここでお前が出て行ったら余計ややこしくなる!大人しく見とけ!」
精一杯の小声で中条を注意し、引き止める。中条は大層不満げな顔をしながらも渋々俺に従ってくれた。
ぷっくりと頬を膨らましていても西洋人形のような美しい顔立ちは崩れず、生れつきだという銀髪は夕焼けを鮮やかに反射していて形容し難い美しさを湛えていた。
これで黙っていれば完璧な美少女なのだろうが、世の中そうな甘くないらしい。
でなければ「可愛いは正義!」とかを掲げて昼休みに晃と、三次元と二次元を巡って議論を繰り広げたりはしないだろう。
「あ、司っ!」
「おっ、動くか」
そうこうしている内に晃はゆっくりと女子に近付く。彼女は期待と不安が入り混じったような表情をしながら晃の言葉を待っている。
「えっと……大内さん、だよね?」
「は、はいっ!!」
「気持ちは凄く嬉しかったよ、ありがとう」
「…………」
「でも、ね。大内さんの気持ちには答えられないんだ」
「……そう、ですか」
女子は晃の返事をある程度は予想していたのか、そこまで動揺してはいなかった。しかし目には涙を溜めており既に晃を見られてはいなかった。
「実は……俺、付き合っている人がいるんだ!」
「えっ!?」
急に晃は深刻な表情になり衝撃的な事実を話し始める。そんな晃を見守る俺たちにも嫌な空気が漂っていた。
「……司」
「……多分、そうだ」
「「はぁ……」」
何故か溜息をつく俺と中条。半年という短い期間ではあるが、ほぼ毎日三人で馬鹿やってたんだ。晃が何を考えているのか、嫌でも大体の見当はついてしまう。
そもそも何故今日に限って晃は俺たち二人に「ついて来て欲しい」なんて頼んだのか。
そして一見可愛らしいが中々諦めてくれなさそうなあの女子を見た瞬間、予想は確信に変わったのだった。要するに俺たちは――
- 429 :嘘と真実 2話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:43:20 ID:W9rqsCrk
-
「……断るダシにされたのね」
「まあな。晃の考えそうなことだ……」
早い話しが告白を断る為に利用されるのだ。それが先程の晃の発言で残念ながら現実のものとなりそうだった。
俺は中条を哀れみの目で見る。晃は黙っていればかなりの好青年なだけに今回のような、女子からの告白も多い。
ただここで中条と付き合っているということにして、もしあの女子がそれを周りに広めたら中条にかなりの敵が出来るに違いなかった。
中条もかなり美人なだけに怨みを買うことは間違いないし、それが美男美女カップルともなれば尚更のことだ。気が付けば中条は軽く溜息をついていた。
「……まあ、元気出せよ」
「ん?……現実逃避したい気持ちはわかるけど、気をしっかり持つのよ」
「は?何の話だ……?」
「何のって……これから司がイケニエになることよ」
「……何言ってんだ。晃の恋人役はお前しかいないだろ――」
そこまで言って、ようやく俺は中条が笑みを浮かべていることに気が付く。その笑みはどこか俺を小馬鹿にしているようだった。
「ま、まさか……」
「ふふっ、ようやく気付いたようね。あたし"たち"が呼ばれた理由」
確かにそれなら中条は被害を受けないが、そんなこと通用するはずが――
「ふ、藤塚君……?いつも一緒にいる……?」
「そう。実は俺……司と付き合っているんだ!」
その瞬間、世界が凍った気がした。少なくとも女子と俺は凍った。そして間髪入れず中条が俺を陰から突き飛ばし二人のところへ送り込む。
……こいつらもしかして最初からグルなんじゃないだろうか。そう思わせる程の、手際の良さだった。
「おお、司!我が最愛なる人よ!」
「ちょ!?おまっ!?」
晃がわざとらしくポーズを取って俺を抱きしめようとする。それを必死に拒もうとする俺だが――
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
時既に遅し。ポニーテールの似合う女子は思いっきり俺を見ながら泣き叫んでいた。
……流石にそこまで泣かれると落ち込むんだが。
駅前のラーメン屋。
夜の比較的混んでいる時間帯に来た為かしばらく並んだ後、ようやく三人で座れた。これが今日の悲劇の報酬だ。
「いやぁ!今日は本当にありがとな!これでしばらくは告白されずに済むかもな!」
かなり満足そうに微笑む晃とは対象的に沈む俺。
結局あの後、ポニーテールの女子はあろうことか俺を目の敵にして散々罵倒した。
そして学年中にこのこと、何故か晃は全く責められず俺が如何に最低人間であること、を言い触らすと言って去って行ったのだ。
俺は何が起きているのか理解出来ずにただ立ち尽くしていた。
……既に虐められてるのに更に追加で嫌がらせを受けるんじゃないか、これ。
「ふふっ。呆然としてる司の顔、悪くなかったわよ?」
「うるせぇ!いきなりあんなこと言われて対応出来るか!」
思い出し笑いをする中条。人ごとだと思って楽しみやがって。明日からどう過ごしていけば良いんだよ。
「まあこうしてラーメンを奢ってるんだから良いじゃないか、親友もとい恋人」
「まだ言うか!……大体嘘なんかついて良かったのかよ」
「あー、あの子さ……もう5、6回断ってるんだよ」
「……そういうことか」
いつもなら誠意を込めてお断りしている晃が、今日に限って何故あんな手段を取ったのか疑問だったがやっと分かった。
要するに普通に断っても絶対に諦めてくれない性質の女子なのだろう。だからこそ、あれくらいで諦めるかどうかは若干怪しいのだが。
まあいずれにせよ、そういうことにはあまり縁の無い俺には羨ましい話ではある。
「だから、周りから聞かれたら冗談で通して良いからさ」
「ああ……色々大変なんだな」
「まあモテない司には分からないわよね」
クスクスと笑う中条。確かに俺以外は正直異性にかなり、いや尋常ではない程モテるだろう。ただ晃を見ているとモテすぎるのも考えものだなと思うのだった。
「これであの子も少しは諦めてくれると良いんだけどなぁ」
「さあ?女の執念は怖いからね」
クスッと笑った中条に少し、ほんの少しだけゾクッとした。どこかで見たことがある、冷たい笑みだった。
「そ、そんなもんか」
「……そんなもんよ」
何が"そんなもん"なのか。それを聞く前に店員が食券を取りに来て、気付けばいつもの中条に戻っていた。
……俺の、気のせいか。
「さ、今日は何ラーメンでも好きなのを食べてくれ!あ、チャーシューは無し!」
「はあ!?汚名を着せられたんだからチャーシューぐらい奢れよ!」
「あたし、カニチャーハンね」
「「……自由ですね」」
三人でこんな風に馬鹿やる時間。これを脅かされないように俺は出来る限りの努力をしなければならない。それが俺の犯人への唯一の抵抗のように思えた。
- 430 :嘘と真実 2話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:44:13 ID:W9rqsCrk
-
放課後の教室。辻本さんに打ち明けてから一週間ほど経った。
あれからはなるべく少しでも集まって二人で話し合いをするようになっている。一人で考え込むよりも二人で悩んだ方が良いと、辻本さんが言ってくれたのだ。
「それじゃ藤塚君が男子しか愛せないっていうのは――」
「真っ赤なでたらめだよ!今説明しただろ?」
「とんだ災難だったわね。お疲れ様」
ようやく辻本さんにも一昨日の話が分かって貰えたようだ。クラスメイト全員を説得するには後どれくらいの時間がいるのだろうか。
……まあ、殆どはそれが嘘か冗談だと思っているみたいだが。
「てっきり犯人がまた何かやったのかと思ったじゃない」
「面目ない……」
あれから一週間。結局二人で交互に朝早く登校しているおかげか、嫌がらせは小規模なものになりつつあった。
「……でも、有り得るわね」
「有り得る?」
辻本さんは顎に手を当てて難しい顔をしている。夕焼けに照らされる彼女はいつもより余計に美人だ。
「藤塚君が嫌がらせをされている原因よ」
「俺の……原因」
「よく考えてみて。藤塚君はいつも小坂君と中条さんといるよね」
「あ、ああ……」
「二人ともかなりの美男美女だし、学年でも噂になってるのは知ってる?」
……それは嫌になるほど知っている。
一昨日も実際に体験したし、何より晃と中条と仲良くなってから半年。何回か二人を紹介して欲しいと頼まれたこともあったが全て断った。
二人ともそういうのは嫌いそうだったし俺も気が進まなかったのだ。
でも……もしかしたら少なからず俺は誰かに怨まれていたんじゃ……?
「……小坂君はまだしも、藤塚君と中条さんがいつも一緒にいるのを、快く思っていなかった人もいるかもしれないわ」
「……つまり、中条が俺の嫌がらせの原因ってことか」
「まだ可能性の一つに過ぎないわ。でも有り得なくはないと思うの」
辻本さんの言っていることは最もだと思う。確かに今までその可能性も考えなかったわけではない。ただ――
「……仮にそれが事実だとしても、俺にはどうしようもないよ」
そう。俺個人に原因があって嫌がらせをされているならまだしも、中条が理由ならば俺に出来ることはないはずだ。
「……例えば、よ」
「ん?」
「例えば……少し中条さんと距離を置く、とか」
「なっ……!」
「ただの例えよ。……でもこのままじゃ中条さんにも被害が及ぶかもしれないわ」
確かにそれも辻本さんの言う通りだ。もしこの仮説が正しいなら俺だけでなく、犯人はむしろ中条を狙ってくるだろう。
……でもそれじゃ本末転倒だ。俺はあいつらとの日常を守る為にこうして辻本さんと話をしているのに、中条と仲良くするのを止めるなんて……!
「…………少し、考えてみるよ」
「……うん。まだそうと決まったわけじゃないんだから!ほら、しゃきっとする!」
「いってぇ!?」
辻本さんに背中を思いっ切り叩かれる。彼女の明るさにまた救われた気がした。
「さ、帰りましょ!今日は藤塚君に付き合って貰うとこもあるし!」
「えっ?俺そんな約束――」
「今したの!さ、行くわよ!」
辻本さんに腕を捕まれそのまま教室の外へと連れて行かれる。彼女なりに気を使ってくれてるのが分かり、嬉しかった。
- 431 :嘘と真実 2話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:44:57 ID:W9rqsCrk
-
「お待たせいたしました!"いつまでも二人で"でございます!ごゆっくりどうぞ!」
最近駅前に出来たスイーツ専門店。長いこと外国で修業を重ねた店長が、故郷である桜山市に出した店らしく、店の評判はかなり良い。
クレープからパフェまで甘いものなら大概の物はあり、味も絶妙な甘さで絶品らしい。
平日の夕暮れ時にも関わらず店内は満席状態だ。その殆どが女性客でありそれぞれが頼んだクレープやらパフェやらに舌鼓を打っている。
「きゃあ!来たよ藤塚君っ!」
「…………」
そんな店内の一番端っこの席に、俺と辻本さんは向かい合って座っていた。辻本さんは普段からは想像出来ないほどはしゃいでいるようだった。
「美味しい〜!もう最高っ!」
「……確かに美味い、けど辻本さん?」
「藤塚君、ほんっとにありがとね!!」
「あ、ああ……」
あまりにも辻本さんがはしゃいでいるので文句を言うタイミングを失ってしまう。そう、俺はこの女性ばかりのスイーツ専門店に無理矢理連れて来られたのだった。
辻本さんはかなりのスイーツ好きらしく、ここの看板メニューである"いつまでも二人で"というパフェを狙っていたらしい。だが――
「流石カップル限定パフェなだけあるわ!生クリームとかもう堪んない!!」
「あはは……」
それがカップル限定のパフェらしく、俺はいつの間にか利用されていたのだ。
いつもながら自分の鈍感さに情けなくなる。気付けば色々なことに巻き込まれてしまっていることが多いのだ。
「藤塚君、はい!」
「ん?……ってええっ!?」
気が付くと目の前で辻本さんがパフェの乗ったスプーンを笑顔でこちらに差し出していた。まるで幸せのおすそ分けと言わんばかりにスプーンを差し出している。
「はい、あーんして!」
「い、いや、あのですね!」
「私たち"カップル"なんだから!はい、あーん!」
「むぐぅ!?」
無理矢理開いている口にパフェを押し込められる。絶妙な甘さが口の中に広がった。
「もう一口、あーん!」
「あ、あーん……」
「うん、よろしい!」
何故か若干頬を赤らめながらも幸せそうな表情をする辻本さん。そんな彼女を見ているとこちらまで暖かい気持ちになるのが分かった。
……協力してくれるお礼にこれくらい付き合うのは当然だしな。いつの間にか先程まであった不安な気持ちはどこかへ行ってしまったようだった。
「パフェ最高っ!」
「大袈裟だな……」
いつの間にかつられて俺まで笑顔になっている。この一週間で晃や中条と過ごす時間と同じように、辻本さんと過ごす時間も自分の中で大きくなっている気がした。
- 432 :嘘と真実 2話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:45:38 ID:W9rqsCrk
-
「今日は付き合わせちゃってゴメンね」
帰り道。いつものように辻本さんと帰る。今までは晃も中条も部活組だったので帰りは一人だったが、一週間前からは辻本さんと帰る日々が続いている。
「あはは。まあ辻本さんの違う一面を見られたから俺は満足かな」
「あ、あれはね!つ、つい夢中になっちゃってね!その……」
今日のパフェの一件をからかう俺に対して、辻本さんは顔を真っ赤にしてしどろもどろに説明しようとしている。そんな辻本さんもいつもと違って新鮮だった。
「分かってるって。クラスの皆には内緒にしておくからさ」
「あ、ありがとう……」
「……俺の方こそありがとな。おかげで元気になったよ」
「ううん、私も楽しかったし」
「俺も……辻本さんの意外な一面が見れて楽しかったしな」
「もう止めてよね、恥ずかしいんだから!」
今日のことを笑いながら帰る俺たち。
こんな風に協力してくれる辻本さんの為にも何とかして犯人を捕まえないといけないな。
「あ、私こっちだから」
「おう、じゃあまた明日な!」
「あっ!藤塚君っ!」
いつもの十字路で別れようとする俺を引き止める辻本さん。思わず振り返ると辻本さんは少し俺と距離を置いて立っていた。
「どうかした?」
「……油断、しないようにね」
「……えっ?」
「嫌がらせ、まだ終わったわけじゃないから」
急に無表情になる辻本さん。まるで先程とは別人だった。
……何だろう、この寒気は。彼女は何を伝えようとしているのだろう。
「お、おう。勿論……分かってるよ」
「……明日からも、またよろしくね?」
「あ、ああ……よろしく」
俺の返事に満足したのか、辻本さんは微笑んで行ってしまった。後には十字路に立ち尽くしている俺だけがぽつんといた。
深夜。俺は中々寝付けずにいた。何度も寝ようと試みるが目は冴えているし、寝たくはなかった。
「……大丈夫」
もう一度ベッドに入って今日を振り返る。そして自分に言い聞かせる。
確かに今日も嫌がらせはあったが、一週間前に比べれば大したことないじゃないか。
今日も一日楽しかった。本当に楽しかった。だから明日も大丈夫さ。何も……起きない。起きるわけがないんだ。
『……油断、しないようにね』
「っ!」
寒気が止まらない。何も恐れることはないんだ。辻本さんもいる、一人じゃないんだから。そう思っても震えは止まらなかった。
この時、俺は気が付くべきだったんだと思う。言ってたじゃないか、狙われているのは俺だけじゃない可能性があるって――
- 433 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/03(木) 21:48:05 ID:W9rqsCrk
-
以上で投下を終了いたします。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 434 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 22:33:54 ID:nJmgwN1Y
- GJ!来てた!更新早くて嬉しいです。
中条辺りに死亡フラグ?
- 435 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/03(木) 23:07:13 ID:WenS7yrA
- 続き気になるGJ
- 436 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/04(金) 00:26:32 ID:I7NqR6D2
- 面白かったGJ
うほっ♂
- 437 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/04(金) 01:00:40 ID:rwPm6XsA
- >>433
GJ!更新早くて嬉しいです
- 438 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/04(金) 01:27:59 ID:xV12J97w
- よく分からんけど辻本が犯人だったりしてな
- 439 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/04(金) 01:35:32 ID:AdeiaVyc
- 辻本がやられると見た
- 440 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/04(金) 10:39:51 ID:WFxlp872
- 乙です!
- 441 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 442 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:41:08 ID:CUtNslec
- トリテス
- 443 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:42:21 ID:CUtNslec
- サバイバル系ヤンデレ、ツイノソラ投下します。
- 444 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:43:22 ID:CUtNslec
- ワンボックスカーの後部座席では、ケイがこちらにおしりを突き出した姿勢で膣から精液を垂れ流し、失神している。
全身を赤く染め、時々打たれたようにびくっと震える。
乾いた布で手早くケイの身体を拭き上げ、後始末をしてから僕も眠る。
二人一緒に眠るのは、いつ以来だろうか。
…
……
………
…………
目を覚ますと時計の針は午前八時を指そうとしていた。
僕の胸に顔を埋めるようにして眠るケイの髪を一つ撫で、締め切ったシャッターの方に視線を向けると、隙間から日光が
射し込むのが見えた。
少し、寝過ごしてしまった。
「ケイ、朝だよ。もう起きて……?」
「んん…」
いやいや、と首を振るケイは捨て置き、僕は着替えを済ませる。
シャッターを開け放ち、とりあえずこの車庫の中を物色する。
スペアタイヤがあったので、まずはそれを確保し、工具箱を失敬する。
工具箱の中にバールがあるのを確認し、僕はニヤリと笑う。あとは日中の探索でガソリンを確保できれば行動の幅は、グ
ンと広がる。
しばらく車庫の中を物色し、一番嬉しい掘り出し物は乾電池とジッポーライターだった。
ジッポーはオイルを入れれば使えるし、乾電池に至っては懐中電灯、ランタン……用途は幅広い。
レイスの巣になっていたことで、かえって荒らされずに済んでいたようだった。
そこまでの探索を終えたところで、ケイがのそのそと起き出して来た。
「おはよっ! カナメ!」
全裸でやって来たケイは、ぐっと大きく伸びをする。
愛液と精液の混じった粘性の液体が、つうっと腿をつたう。
ケイは自然な流れでそれを指で掬い取り、口に入れた。
「カナメぇ……お腹すいた……」
それに合わせたように、僕のお腹も、くうっと鳴る。
「……だね」
車庫内の探索を終え、続いて食事の準備に移る。
干し肉や干物等の保存がきく食糧でなく、それ以外の食糧から片付けて行く。
僕らは何でも食べる。トラップを張って仕留めた小動物や野草、木の実、時にはケイが捕まえた昆虫だって食べる。
今朝は野草とキノコを入れたスープと炒り米で朝食を済ませた。
ケイは食事中も全裸のままで、時折股間から流れ出す液体を舐め取りながら、幸せそうな笑みを浮かべていた。
「カナメ……夕べは、すごかった……」
「そう……」
無駄にエロいケイは放って置いて、僕はせっせと食事を詰め込む。
ケイが車庫のワンボックスカーを見て、しみじみと言う。
「あれは、便利なものだっ……」
「知ってるよ」
「大事にしないとなっ!」
「言われなくても、そのつもり」
ケイが、うんうんと頷いた。
朝食を終えるとケイを促して着替えをさせる。
激しい運動の邪魔になる大きな胸にサラシを巻いてやり、続いてレイスの引っ掻きや噛みつきを防ぐため生地の厚い迷彩
服を上下に着させる。僕とお揃いのものだ。
今日の予定は探索だ。必要物資のありそうな場所は昨日の内に目星を付けてある。
護衛をするケイには近接戦闘の可能性がある為、手にはバンテージを巻き、その上に革製のグローブを付けるように命じ
る。
「……ブラスナックルとブラックジャックは?」
ここで、鈍いケイも気付いたのか、声色が固くなった。
そう、今日はいつもやってるような探索じゃない。
「必要だよ」
僕は短く告げ、ケイの頬にキスをする。
「……?」
不思議そうに首を傾げるケイに頷いて見せる。
これから行くのは市街地だ。危険を承知で宝探しをするのは僕らだけじゃない。
進んで暗がりに入る必要もある。
第一世代の荒くれに絡まれる可能性もある。
僕らが行くのは市街地。
暗がりにはレイスが。日の照る場所には、ケイが何より嫌う『人間』たちがいる。
自力で生きている以上、他者とのトラブルは避けられない。
- 445 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:44:04 ID:CUtNslec
- ケイと共に車で街の中心部に向かう。
道中、路上に乗り捨てられている車を見て回り、ガソリンの残量がないか確認する。
同じことを考える奴はいくらでもいるようで、中々ガソリンを集めるのは難しいが、お目零しに預かった数台からガソリ
ンを入手することができた。
ガソリンスタンドなんてものが機能しているのは一部の強力な自治体か、自衛軍のいるホッカイドウくらいのものだ。
僕がガソリンを抜いている間、ケイが周囲の警戒にあたる。
「ケイ、人間に気を付けるんだよ」
「……」
ケイが厳しい表情で頷く。
馬鹿で淫乱のケイが世界で一番嫌っているのは『人間』だ。
腕力こそずば抜けているものの、知能で劣るケイは『トーキョー』の集落では馬鹿にされ、ずっと差別され続けていた。
度重なる嫌がらせに、ある日、業を煮やしたケイは、六人相手に大立ち回りをやって退け、その内二人が命に関わるほど
の重傷を負った。
殆ど追い出される形で集落を飛び出したケイが、途方に暮れている時に出会ったのが僕だ。
差別から孤立していたケイと、思想の違いから孤立していた僕。
第二世代として知能こそ高いが、体力や腕力ではオールドタイプより劣る僕と、第一世代の中でも傑出した運動能力を持
つケイ。ある意味、理想的な組み合わせの僕たちが行動を共にするのは自然な成り行きだったのかもしれない。
最初の内、無言で僕を見つめるだけのケイの視線は猜疑心に満ちていたものの、ホンの数日でその態度はがらりと変わっ
た。
「カナメは……優しいなっ!」
別に特別なことをしたわけじゃない。ホンの数日、一緒に暮らしただけだ。
第一世代のケイは僕の三倍は食べる。これは、ケイが大食しているのではなく、第二世代の共通の特徴として、僕は極端
に食が細いのだ。
そんなケイに、僕は惜しみ無く食料を与えた。
腕力があり、おつむはからっきしの彼女は、僕にとっては理想的なパートナーと思えたからだ。
何でも自分で選びたい。誰の制止も受けたくない。自由に行動する僕をケイが守る。
僕がケイに求めたのは、ひたすら我が身の安全だった。その要望に応える彼女の期待に応えるのは、ある意味、僕の義務
とすら言える。
ケイが腹を空かせた時は食事を。寒がれば毛布を。寂しがれば愛情によく似たものを。鬱憤が溜まった時は快楽を与えて
やった。
ただ予想外だったのは、ケイは僕が思っていたよりも、強く、馬鹿で、淫乱で、独占欲が強く、残忍だったことだ。
トーキョーを出て、ケイにどのような心理的変遷があったのかは分からない。
ケイは僕以外の『人間』を憎み、嫌うようになった。
午前中は乗り捨てられた車からガソリンを抜いて回る。
警戒状態のケイはストレスが溜まったのか、時折苛立たしげに舌打ちしたり、路上に唾を吐き捨てたりしていた。
「どうしたの、ケイ。苛ついて」
「……見られてるっ!」
言われて僕も周囲を見回すが人気はない。
隠れた場所から監視している。しかし場所の特定には至らない。それが原因でケイは苛立っているのだ。
目を剥いて喚き散らすケイは軽い興奮状態にある。
「いいかげんにしなよ」
ケイのしりたぶを捻り上げ、左右に揺すってやる。
「ぐうううっ……」
痛みを堪える声には、どこか甘い響きがある。ケイは確実にマゾの性癖を開花させつつあるようだ。
「集中するんだ。じゃなきゃ――死ぬよ?」
「!」
死ぬ、という言葉に反応して、ケイの鼻がひくっと動く。
……ケイは、銃で腹を打たれたことがある。
同行していたのが第二世代の僕じゃなければ、ケイは死んでいただろう。
弾丸は腹膜で止まっていたが、麻酔なしの処置から来る激痛は、物覚えが悪い馬鹿のケイにも解るように強い教訓を垂れ
た。
レイスなんかより、生きた『人間』の方が余程始末に負えない。
「脳みそ……撒き散らしてやるっ……!」
呟いたケイの瞳から光が消える。
問答無用の先制攻撃は余計なトラブルの原因にしかならないが、まあいい。そう思うことにする。そこまでの考えは、ケ
イには高望みだ。
この終わりかけた世界で生きる以上、最善の道はあり得ない。
あるのは次善の道。それだけ。
- 446 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:47:11 ID:CUtNslec
- ケイにバールを使わせ、門の鍵を破壊して家屋に侵入する。
「ケイは車の見張り」
僕が言うと、ケイは、ぎょっとして目を剥いた。
「あぶないっ! 何考えてんだっ!」
門には鍵がかかっていた。高い確率で、家の中にレイスは存在しない。荒らされてない可能性が高い。……人間がいる可
能性はあるが。
「一人は駄目だろっ、一人はっ!」
「ん、わかった。じゃあ、ケイが行ってきてよ」
レイスも人間も関係なく、ケイに『掃除』をさせる。メリットは、先ず安全を確保できること。デメリットは、中にいる
のがまともな人間だった場合でも『掃除』されてしまうこと。
ケイは人間を必要以上に嫌うが、僕はそうじゃない。
まともな会話が可能な人間からは情報交換が可能だ。物資は貴重だが、情報ほどじゃない。……過去にケイを捨てようと
した理由の一つでもある。
「あーっ、もうっ! ああ言えばこう言う!」
ケイが、ばらばらに切り揃えた髪をかき回す。……これもそのうち、きちんとカットしてやらなければならない。
僕は車の有用性を解き、個別での行動の必要性を解いた後、ケイに選択を迫った。
『掃除』をするか、『見張り』をするか。
僕が無理に決めれば、ケイは独断で行動に走る。だから、ケイに決めさせる。重要なことだ。
ケイはしばらく迷っていたが結局は、
「……見張りをする……」
という決断をした。
……残念。『掃除』に行ってくれれば、今度こそ捨てられると思っていたのに。
そう、やはりあるのは次善の道……。
△▼△▼△▼△▼
家屋に侵入する。
不幸か幸運か、人間もレイスも存在しないようだった。
埃と黴の匂いがする廃屋で、僕は必要物資を回収して回る。
大戦以降も人が住んでいたのか、思ったより良質な品物を回収することができた。
浴室ではギフトの箱詰めになったままの石鹸を手に入れることができたし、キッチンでは塩素や中性洗剤を手に入れた。
これは大当たりかもしれない……。
その思惑の正しさを証明するかのように、家屋からは有用な物資が大量に見つかった。
衣服は大分傷んでいたが、ウエス(きれはし)にすれば、ふき取りなんかに使える。棚からはまだ食べられそうなフルー
ツの缶詰を見つけた。
ケイの様子身を兼ね、それらの物資を次々と車に運び込んで行く。
三回程往復を繰り返し、取り切れない物資はまとめて押し入れの奥に隠す。
寝室で見つけた貴金属の類いも攫って行く。こんな時代だが需要はある。『メトロポリス』に住む一部の富裕層は装飾品
に目がない。持って置けば物々交換に使えるし、うまく行けば通貨を手に入れることが出来るかもしれない。
そこで、屋外から大きな物音と男たちの怒声が聞こえた。
- 447 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:48:57 ID:CUtNslec
- ようやく来たか。
僕は慌てることなく、既に組み立てていたボウガンを手に取り二階へ向かう。
窓から見下ろすと、既に二人の男がケイに頭を割られて倒れていた。三人ほどがケイを取り囲み、残る二人が車ごと物資
を奪おうとしていた。
物資を奪おうとしている二人を優先して、ボウガンで狙いを定め、射殺する。
「ケイっ! 一人は殺すな!」
話がしたい。その思惑からの指示だが、僕が行かない限り、望み薄だろう。
襲撃者の人数がはっきりしない。そのため僕は慎重に階下に向かい、ケイの元を目指す。
玄関のところであたふたとして、家屋の中とケイを見比べている馬鹿を発見したので、物陰からボウガンの矢を見舞って
やる。
第二世代の僕の駄目な所は、腕力行使による生け捕りができないということだ。
これまで何人くらい殺した? 数えたことはないが、ケイより多いのは確かだ。
駐車してある路上では、ケイが既に二人を倒し、半ば戦意を喪失して後込みする様子を見せている二〇代半ば程の男に向
かって鉄パイプを構え、威嚇しているところだった。
――間に合った。
「殺すっ! 殺すっ! 脳みそ、ぶち撒けろっ!」
対峙する男は、年齢から察するに旧世代の人間……『オールドタイプ』だろう。若干、第一世代の可能性があるが、それ
はないと思う。
「やっ、やめっ! 分かった! 俺たちが悪かった! 降参する!」
そんなことを叫びながらも、男は手にしたナイフを放そうとはしない。
「ケイ、腕をへし折ってナイフを奪うんだ」
一瞬、僕に視線を走らせた後、ケイが鉄パイプを振るう。
男はそれに殆ど反応できず、折れ曲がった腕を抱えて悲鳴を上げた。……やはり、オールドタイプの人間だ。第一世代な
らこう簡単には行かない。
興奮したケイが、とどめを刺してしまう前に割って入り、転がるナイフを蹴っ飛ばす。
「どけ、カナメッ!」
退くもんか。ケイ以外の生きた人間と会話するのは久しぶりだ。この機会を逃す訳には行かなかった。
- 448 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:49:30 ID:CUtNslec
- 指の骨を七本ほど折った所で、彼は正直者になった。
最初、仲間が後三人残っているとほざいていたが、結局は仲間はもういないと白状した。
更に、彼らのアジトの場所と構成員の情報を聞き出した頃には、彼の関節が倍以上に増えてしまっていたのは、僕にとっ
ても彼にとっても悲しいことだった。
ケイは喜々としてオールドタイプの彼を痛め付け、僕は同じ質問を何度も繰り返した。
拷問をしている間、誰も助けに来なかった事からして、ここに彼の味方は、もういないというのは本当のことのようだっ
た。
二時間程の尋問の後、ケイにとどめを刺すよう指示した時、彼が、ほっとしたように安堵の表情を浮かべたのが酷く印象
的だった。
罪悪感はない。一歩間違えば、僕は同じ目に、ケイはそれ以上に酷い目に遭っていただろうことは間違いないだろうから
。
「さよなら」
僕が告げて、ケイが鉄パイプを振り落ろす。
時刻が昼を過ぎていたことから、この日の探索を断念する。どうせ、急ぐ旅じゃない。それに僕は虚弱な第二世代だ。少
し疲れてしまった。
「カナメ、これからどうする?」
「そうだね……今日はもう、ゆっくりしようか……」
頑張ったケイを座らせ、返り血に汚れた顔を拭ってやる。
ケイは深く溜め息を吐き、それからゆっくりと、緊張を解いた。
「カナメは優しい……わかってる……」
「……」
それはどうだろう。
僕は答えることはせず、ケイに柔らかな笑みで答えるのだった。
△▼△▼△▼△▼
北に向かって二時間ほど車を走らせる。
僕の知識が確かなら、ここはニイガタで、そろそろニホンカイに出るはずだった。
知性と理性に優れる第二世代の最も高い死亡原因は――自殺。
高い知能と理性の行き着く先は、未来への絶望と生の放棄なのだ。
僕も時々は考える。
生きていてどうなる?
海は濁り、汚染された雨の降るこの世界が、いつまで持ちこたえられるというのだ。
自衛軍?
馬鹿馬鹿しい。奴らが『レイス』を研究して、どれだけのことが分かった? 第一、第二世代が、なぜ存在する? それ
に答えられないのが、奴らの限界じゃないか。
子孫……? どうせ死ぬ。そんなことに何の意味が――
「――海だっ!」
ケイのその声に、はっとして強く頭を振る。
――考えるな!
朗らかに笑うケイに笑みを返しながら、濁った海と曇った空とを見比べる。
「終わる世界……か」
負けてやらない。精一杯の意地を張り、僕は――
「潮の匂い……カナメっ、一緒に遊ばないかっ!?」
窓から身を乗り出して言うケイの様子に、思わず吹き出してしまう。
余計な力が肩から、すうっと抜けて行く。
「それもいいね」
僕は――僕らは、確かに今日を生きている。
- 449 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:50:58 ID:CUtNslec
- 投下終了。
なぜかまとめwikiに入れてもらえないこのss。
これにて完結ということで。
- 450 :ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 00:55:34 ID:CUtNslec
- なんか改行がおかしい。失礼しました。
このssは補完しないで下さい。
- 451 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 01:22:48 ID:wzx03GJU
- うーんなんだかなぁ、読みにくいですね・・・・前々から思ってましたが
- 452 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 02:29:06 ID:MTGKq5TU
- 終わり?
- 453 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 10:21:54 ID:XHD.K/vw
- え? 終わりなん?
- 454 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 11:02:22 ID:Gw8YEDeI
- 終わりかー
お疲れさまです、次回作期待してます
- 455 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 11:12:48 ID:f80QdGs2
- 乙
まとめwikiは誰でも編集可能だから自分で保管すればいい
- 456 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 11:18:16 ID:SR1iW3eg
- こういうはっきりした世界観やキャラ付けは好きだったんだが
お疲れさん、乙しとくよ
- 457 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 12:56:52 ID:lDEo9GEQ
- >>450
GJ!
てか今回だけ保管しなければいいのか
SS全部保管しないほうがいいのかどっちなんだ(;^ω^)
Wikiに関していうと誰かが一部でも更新してくれただけで
神キタワァ(n'∀')η
って言いたくなるぐらい人がいないのだなw
そうやってなんとか運営しているのが今の状況なのですよ
だから疑問点や修正希望があったらあっちの掲示板に書き込んで
一ヶ月ぐらいは様子を見てくださいな
で、SSは一応保管しときますので
削除なり希望があったら言ってくだしあ(;^ω^)
- 458 :Wikiの中の人 ◆hjEP2rUIis:2012/05/05(土) 12:58:58 ID:lDEo9GEQ
- 酉忘れてたw
サーセンw
- 459 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 15:19:56 ID:VNde5smk
- これで?終わり??ヤンデレSSじゃないじゃんw
- 460 :ツイノソラ ◆wERQ.Uf7ik:2012/05/05(土) 16:11:56 ID:KLp6Gldw
- >>459
それに関してはすいません。
ただ、wikiにまとめもしてもらえないようなSSはもう書きたくないし、書かない。
へそを曲げたと思ってもらって構わない。
気が乗らないのに書けない。
それが本音。
読み手も書き手も好きでやってる。
嫌になったら辞める。当然の理屈。
序盤で切ったから、読み手の人には悪いとは思ってる。
でも無理して書いたモン読みたくないだろうし、見せたくない。
- 461 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 16:25:50 ID:8r3EQgkE
- 以降この話題は終わりで
- 462 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 16:33:00 ID:VNde5smk
- SSの保管状況はどうなっているの?
いままで避難所に投下された作品は一つも保管されてないの?大丈夫かよオイオイ
- 463 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 17:40:43 ID:DZKGbP8A
- >>460
最近は過疎ってるから丸一月まとめられないなんてことは珍しくも無い
まとめは誰かの善意だからね。まとめるのが遅くても文句を言うことなんて出来ない
それが嫌なら自分でまとめるしかない
一回の分量が少なめということ以外問題らしい問題もないだけに残念だ。個人的には撤回して続けてくれることを願うよ
- 464 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 20:07:28 ID:sI1ZFJbY
- >>460
俺は楽しみにしてたんだけどなあ……
俺みたく楽しみにしてたやつもいる
書きたくないなら仕方ないが、また気が向いたら書いてくれ
- 465 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/05(土) 20:27:31 ID:VNde5smk
- もうええよ
- 466 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 00:10:43 ID:69OyX9pE
- 未完になって放置されるよりは作者の思うようにやってもらった方がいいんじゃないか?
また次の作品期待してます 乙
- 467 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 00:48:17 ID:Uiz8I4B2
- 少なくとも触雷や変歴伝や初めからは俺が保管してやるから安心して投下してきてくれて構わないよ(キリッ
- 468 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:39:00 ID:AD11.4Q2
-
こんばんわ。深夜に失礼いたします。
投下をいたします。読んで頂けたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
- 469 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:41:07 ID:AD11.4Q2
-
〜誰かのエピローグ・3〜
どれくらい歩いただろう。気が付くと小屋が見えた。雨は一向に止む気配を見せない。このまま進むのは自殺行為のように感じられた。
「……入るか」
かなり古びた小屋だった。所々雨漏りをしているが雨風はなんとか凌げそうだ。端の方に座り込んでぼんやりと天井を見る。至る所に染みが出来ていて、まるでそれは――
「っ!」
急に吐き気がして俺はうずくまる。今更何を後悔しているのか、もう分からなくなりそうだった。
3話
翌日の昼休み。俺は何だか清々しい気分でいた。理由は簡単だ。昨日あれだけ心配した俺に対する嫌がらせが、今日初めて何もなかったのだ。
下駄箱にゴミもなければロッカーも汚されておらず、体育館履きもずぶ濡れではない。つまり何も起きていなかったのだ。
これからという可能性もあるだろうがそれならば逆に犯人を捕まえるチャンスだと思った。こちらも警戒出来るし犯人も迂闊に手出しは出来ないはずだからだ。
「司、何だか今日は嬉しそうね」
「何か良いことでもあったのか、親友」
晃も中条も俺がテンションが妙に高いのが気になるようだ。とにかく俺の思い過ごしだったのだ。何も怯える必要はなかった。
そう思うと急に眠気が襲ってきた。やはり昨日あまり寝付けなかったのが響いているらしい。
「ふわぁ……」
「残念だな、司。次は井上の古文だぜ。もし寝たりしたら――」
「50分立ちっぱなしで授業を聞かないといけないわね」
いつものように嫌味に笑う中条。立たされたら笑えねぇっつーの。
井上は怒らせたらかなり厄介な先生だ。生徒たちの中でも"鬼の井上"なんていうあだ名で呼ばれたりしている。
「頑張って寝ないようにはするよ」
「藤塚君、ちょっといい?」
「あ、辻本さん。晃、中条、わりぃ。ちょっと席外すわ」
辻本さんは心配そうか顔をしている。おそらく今日何か嫌がらせをされてないか聞きたいのだろう。
ここでは二人に聞こえてしまうので場所を移動する。辻本さんも分かってくれたようで俺たちは教室を出た。
「司の奴、委員長に呼び出し喰らって……また変なことしたのかね」
面白がって司と辻本を見る晃に対して、中条は少し不機嫌そうな顔をしていた。
「……あたし、ちょっとトイレ」
「おう、早く戻って来ないと井上怖いぞ〜」
「司みたいなヘマ、あたしはしないわよ」
晃とふざけあってから、中条は小走りで近くの女子トイレに向かう。何か良くない気持ちが沸き上がるのを中条自身も自覚していた。
――あたし、こんなに心狭かったっけ。
都合よく女子トイレには誰もいなかった為、中条は蛇口を思いっ切り捻って出て来た冷水を――
――頭、冷やそう。落ち着けあたし。
顔に何度もぶつけた。ぶつける度に身体が縮こまるほどの冷たさを感じる。
……これでいつも通りの"中条雪"に戻れただろうか。
「……落ち着け、あたし」
声に出して中条は確認する。別に委員長は自分たちの仲を引き裂こうとしてるわけじゃない。
どうせ司がまた悪戯でもして今頃生活指導室辺りで怒られているに違いない。晃もそういってたじゃないか。
――こんな些細なことで動揺するあたしがおかしいんだ。
「……司と晃は、あたしの一番の親友だよ」
だから心配する必要なんてない。"あの時"みたいに裏切ったりするわけないんだ。だってあれはもう昔の話だし、司と晃には関係のないことなんだから。
中条は何回も繰り返す。まるで魔法の呪文のように。
「司と晃は、あたしの一番の親友だよ」
――大丈夫。委員長はあたしの居場所を奪おうなんてしてないから。だから大丈夫。
「司と晃は、あたしの一番の親友だよ」
――だから……疑ったりしてはいけないんだ……!
「……よしっ!」
冷え切った自分の頬を軽く叩いて、中条は女子トイレを後にした。大丈夫、もう元通り。サバサバしてる中条雪に戻れたはずだから。
- 470 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:43:13 ID:AD11.4Q2
-
屋上が解放されている学校は、現実では中々ないと思う。少なくとも前の学校は屋上へ行くことは出来なかった。
いわゆる"青春"と呼ばれる部類の一つが屋上だと思い込んでいる俺にとっては、この学校の屋上解放というのはかなり魅力的な点の一つなのだ。
「それじゃあ、今日は何も起きてないのね」
「ああ。俺も用心して今日はいつもよりも早く登校したけど到って平和だよ」
そんな屋上に俺と辻本さんはいた。
いつもなら昼休みともなれば結構な数の生徒で賑わうのだが、今日は生憎の曇り空。屋上には殆ど生徒はおらず俺たちにとっては都合が良かった。
「……諦めた、のかしらね」
「まあまだ分からないけどな。やりづらいのは確かなんじゃないか」
屋上の隅っこにあるベンチに座りながら俺たちは話を続ける。辻本さんは考える時の癖なのだろうか、手を顎に当てて難しい顔をしていた。
「……辻本さんの言いたいことは何となく分かる」
「えっ?」
「まだまだ油断大敵ってことだろ?」
今日はまだ終わってはいない。これから犯人が何か仕掛けて来る可能性は十分にある。
それにたまたま今日しくじっただけで、明日になったら嫌がらせをされているという可能性だって十分ある。
「……油断はしない方が良いと思うの。私たちに出来ること、まだあると思うし」
「そうだな。とりあえず警戒は最大限しておくよ。何かあったらすぐに連絡する」
「それもそうだけど――」
辻堂さんの話を遮って予鈴が鳴り響いた。そろそろ井上が教室に来て、今日当てる生徒を品定めするに違いない。
最後に教室へ戻ったり、立っていた者がよく当てられてしまうのだ。
「とりあえず予鈴が鳴ったから急いで戻ろう。俺も用心しておくからさ」
「う、うん……」
辻本さんは何か言いたげだったが黙って俺の後について来た。大丈夫、俺がしっかりと警戒していればそう簡単には嫌がらせは出来ないはずだ。
- 471 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:43:59 ID:AD11.4Q2
-
「明日はホームルームに球技大会の組分けをするからな。どれが良いか各自考えてこい。それでは、また明日!」
担任の礼を期にクラスメイトたちは帰り支度をしたり、部活へ行く準備をし始める。そんな中俺は――
「あらあら、この机に突っ伏して動かないのは一体誰かな?」
「晃くん、これはさっきの古文の授業で恐ろしくも居眠りをしてしまった藤塚司じゃないかしら」
完全にノックダウンしていた。嫌味を言いながら近付いてくる晃と中条に構う力すら今はない。
……あの時、睡魔に負けず打ち勝てていたら、井上の怒りを買ってしまい一人で黒板に同音異義語をひたすら書き続けるという罰を受けずに済んだのだろうか。
「いや、実際司は頑張った方だぜ?"たいしょう"なんて漢字、よく7個も思い出せたもんだ」
晃はよくやったと言いながら俺の肩を叩いてくれた。そう、俺は頑張って抵抗したんだ。無い脳みそを振り絞って7個も同音異義語を書いたんだぞ。
「まあそのせいで余計に井上の怒りを買って、"ほしょう"、"こうてい"、"きょうい"……それから何だっけ?」
「えっと……確か"こうしょう"、"こうせい"、"しこう"……くらいかな」
「そうそう。それらも追加で書かされる羽目になっちゃったわけだけどね」
クスクスと笑う中条の声さえも今は気にならない。とにかく黒板にあんな大量に漢字を書いた疲労感で一杯だった。
「ふ、藤塚君……大丈夫?」
心配げな声に思わず顔を上げると、辻本さんが立っていた。目の前にいる晃と中条に気を使いながらも、俺が心配で話し掛けてくれたようだった。
「ああ、別に大したことじゃないよ。まあ良い勉強になったしさ」
辻本さんを安心させる為に明るく答えると、彼女も微笑んでくれた。
……我ながら現金な奴だなと呆れてしまう。晃と中条も半分は心配して声を掛けてくれたのに対応があからさまに違うからだ。
「おいおい!俺たちが心配してやってた時は無視してた癖に、委員長の時はすぐに返事かぁ!?」
「うるせぇ!お前らは心配半分、からかい半分だろうが!」
ふざけてからかってくる晃。まあ、こいつらと辻本さんとじゃ関係が違う。晃と中条とはもう半年も一緒につるんでるんだ。
これくらいじゃないと照れ臭い。晃もそんな感じらしく、怒ったふりをして俺に絡んで来ていた。
「こんなこと言ってるぜ、中条?もう司と遊ぶのはやめようかねぇ」
「えっ……と、あはは……」
「ん?どうした中条?」
中条の反応が悪かったのが気になったのか、晃は中条を見る。つられて俺も見ると、少し複雑そうな表情をしている中条がいた。
「あ、あはは!あたしも、もう司と遊ぶのはやめようかな!」
「そうだよなぁ。何か司君、素っ気ないし?」
「晃の恋人なのにね?」
「お、お前らいつまでも引っ張り過ぎだろ、そのネタ!」
二人の掛け合いにいつものように突っ込む。中条を見るが、俺が知っている意地悪そうな中条に戻っていた。俺の見間違いだったのだろうか。
結局、いつも通り騒ぎ出した俺たちを辻本さんが注意するのだった。
- 472 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:44:39 ID:AD11.4Q2
-
「未記入は何処だっけ?」
「右端に置いておいて。……手伝わさせちゃってゴメンね、藤塚君」
放課後の教室。夕焼けが差し込む中、俺は辻本さんの仕事を手伝っていた。
クラス委員は色々と雑務が多いらしく、今日は二学期中のクラス全員の提出物をチェックしている。
「いや、いつも放課後時間取らせちゃってるしさ。俺、部活やってないから暇だし」
「そう?でも本当にありがとね。凄く助かるわ」
「しかし、こんな量を辻本さん一人に任せるなんて先生も先生だよな」
二学期分、しかもクラス全員ともなれば結構な量の用紙が机の上には広がっていた。
これを一人で仕分け、整理までするのはかなり骨が折れるに違いない。辻本さんは苦笑しながら作業をこなす。
「まあ先生もお忙しいから。それに意外とこういう仕事も楽しいものよ?」
「楽しい……ね。俺には分からないけどなぁ」
こんなアンケートや進路調査の整理の何処が楽しいのか見当もつかない。
「例えば、藤塚君は将来公務員になりたいんでしょ?」
「えっ?」
「でも警察官や国会議員とかもあるから、恐らく安定した仕事、もしくは国関係の仕事が良いのかな」
ニッコリと微笑む辻本さんに対して俺は呆然としていた。何で彼女が俺の将来の夢を知っているんだ。一体彼女は――
「まあこんな風に皆の進路調査を見て、その人が何を考えてるのか推測できるじゃない?」
「あ、ああ、そういうこと。つーかそれって勝手に見ちゃいけないんじゃ……」
「別に見てるわけじゃないわよ。チェックしてる時に見えちゃうんだもの、仕方ないわ」
「あはは……」
当然のように話す辻本さんに頼もしさすら感じる。
……何を考えてるんだ、俺は。自意識過剰にも程があるだろ。
「さ、ちゃっちゃと終わらせましょう。出来れば今日中に職員室に持って行きたいし」
「了解しました、お嬢様」
「頼んだわよ、じいや」
ふざけながら夕焼けに染まった教室でせっせと作業をする。この時、俺は嫌がらせのことなんてすっかり忘れていた。
「じゃあ私、職員室に寄っていくから」
夕日も沈みかけた頃、ようやく作業が終わり辻本さんと教室を出た。一緒に帰ろうと誘ったが職員室に整理した用紙を届けるので、近くで別れることになった。
「おう、暗くならない内に帰れよな」
「あっ!藤塚君!」
「ん?」
昇降口に向かおうとする俺を辻本さんが呼び止める。
「今日はありがとね。それから……気をつけて」
「あ、ああ。気をつけるよ」
「うん。じゃあまた明日!」
明るく手を振りながら辻本さんは小走りで職員室に向かって行った。
「……そうだ」
辻本さんに言われて思い出した。まだ今日は終わってないんだ。夕焼けに染まる階段を降りながら俺は自分の甘さを改めて思い知った。
- 473 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:45:22 ID:AD11.4Q2
-
「お、中条」
「……司」
帰る途中に正門で偶然中条と会った。制服に自転車を押している中条に若干の違和感を覚える。
「あれ、帰りか?部活はどうした?」
「ちょっと手、捻っちゃってね。今日は早退」
中条の右手首には包帯が巻いてあった。どうやら練習中に捻挫したらしい。
「そっか。俺も今帰るとこなんだ。途中まで帰ろうぜ?」
「う、うん……」
中条と一緒に暗くなり始めた通学路を歩く。
そういえば中条と二人きりで帰るのは、初めてのことだった。晃も中条も部活組だったので帰りはいつも一人だったのだ。
「中条ってセッターだっけ?」
「……そうだよ」
「セッターってかなり難しいんだろ?どっちに打たせるかとか、瞬時に判断しなきゃいけないんだもんな」
「大袈裟だよ……」
中条は女子バレー部で弥生の先輩だ。たまに家で弥生から中条の話を聞いたりするが、かなり優秀なセッターらしく弥生たち一年生の憧れらしい。
たまにその話をすると中条がこれでもかと言うぐらい自慢話をするので、普段は話さないのだが……今日は食いついてこないな。そんなに手首が痛むのだろうか。
「弥生……えっと、妹も言ってたぜ?中条は凄いセッターだってさ」
「……うん、ありがと」
中条はずっと俯いたままだ。俺の方を一切見ずに歩き続けている。いつもの中条ならもっとふざけたり、俺を困らせようとするのに。
……何かあったのだろうか。
「……どうかしたか?」
「えっ!?な、何が?」
「何かあったんじゃねぇのか。さっきからずっと俯いてるし」
「そ、そんなこと……」
中条は明らかに動揺しているようだった。暗くなっているせいで表情はよく分からない。でも何となく昼間のあの表情が思い出された。
「……ちょっと時間、あるか」
「……うん」
いずれにしろ心配だ。俺は中条と近くにある公園に行くことにした。
- 474 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:46:12 ID:AD11.4Q2
-
通学路の途中にある小さな公園。公園内には設置物が殆どなく、ブランコが二つあるだけだ。そんなブランコに俺と中条は座っていた。
「ほい、コーヒーで良かったか?」
「……ありがと」
中条にコーヒーを渡してブランコに座る。音を立てながら揺れる感覚が何だか懐かしかった。
「あったけぇな、コーヒー」
「…………」
ホットコーヒーを飲みながら中条が何か言うのを待つ。きっと俺から聞いても答えづらいだろうし、中条のペースで話をして欲しかった。
中条はしばらくずっと俯いたままだったが、観念したのか少しずつ話をし始めた。
「……あたし、変なんだ」
「変?」
「うん。あたしとさ、司は親友だよね?」
真剣に俺を見つめる中条。改めて見るとかなりの美少女なのがよく分かった。この質問はちゃんと答えなければならない。
「ああ、勿論だ」
「……どうやってあたしたちが仲良くなったか、司は覚えてる?」
忘れるわけがない。俺にとって中条は晃の次に出来た友達だからだ。
「当たり前だろ。お前がいきなり、バレー部の可愛い藤塚弥生の兄は君か、とかいって突っ掛かってきたんだよな」
「あはは、まさか一字一句覚えてるなんてね」
「あんなに印象的な出会い、忘れる方が難しいな」
急に俺に突っ掛かって来たのが中条だった。
学校が始まって一週間、晃と友達になりようやくクラスにも少しずつ溶け込めるようなっていた4月中旬。中条は嵐のように現れたのだ。
理由はどうあれ、それから何かと中条は俺に絡むようになり気付けば三人で馬鹿をやるようになっていたのだった。
「覚えててくれて……嬉しいよ」
中条は照れ臭そうに話を続ける。
「正直、引かれたらどうしようかと思ってたよ。でもあたし……不器用だから」
「だからって妹ともっとお近づきになりたいから仲良くしろとか、ないわな」
「う、うるさいわねぇ!あたしだって必死だったんだから!」
中条はすっかり恥ずかしがっていた。
それが普段の中条とあまりにも掛け離れていて、俺はつい吹き出してしまう。暗くてよく分からないがきっと中条は今顔を真っ赤にしているに違いない。
「わ、笑うなっ!!」
「ゴメンゴメン。で、それがどうしたよ?」
「と、とにかくね!司と晃には……その…………しゃしてるの」
「えっ?」
急に声が小さくなったので思わず聞き返す。すると――
「か、感謝してるの!!こんなあたしを受け入れてくれてすっごく嬉しかったの!!」
公園内に響き渡るくらいの大声で中条は叫んでいた。
……めっちゃ照れること大声で言いやがって。
「だから!!……だから不安になっちゃったのよ」
「不安?」
「……委員長がさ、最近司とよく話したりしてるじゃない?」
「あ、ああ……」
少し、ドキッとした。
確かに辻本さんとの時間が最近三人で遊ぶ時間よりも長くなりつつあるからだ。
それでも俺が晃と中条を親友と思う気持ちは変わらないが二人はどうなのか、考えなかったわけではない。
「あたし、変に勘繰っちゃってさ。委員長が、あたしたちの仲を引き裂こうとしてるんじゃないかって……」
「委員長が?いや、それは――」
委員長は俺が頼んだから協力してくれているだけだ。
「分かってる。そんなことないって分かってるよ。……でも凄く不安になって」
中条はまた俯いてしまった。そうか、だから中条は俺と委員長が話してる時、口数が少なかったんだ。
……中条も俺と同じだ。三人の関係を崩したくなくって、それが崩れるのが怖かったんだ。
「……中条、その気持ち分かるよ」
「司……?」
中条が俺を見つめる。俺も今の日常を守りたくて辻本さんと一緒に戦っているんだから。
「……俺も不安だからさ。今が楽しすぎて、いつこの日々が壊されてしまうのかって」
「うん……」
「でも辻本さんは別に俺たちの仲を引き裂こうとはしてないから」
「……信じて、いいんだよね」
いつの間にか中条の顔が目の前にあった。これだけ近ければ周りが真っ暗であっても関係ない。不安げな中条の顔がはっきりと見えた。
今彼女を安心させられるのは、俺だけなのかもしれない。だから俺は中条の目を見てはっきりと答える。
「……ああ!信じろ。俺たち、親友だろ?」
「……うん、分かった。信じるよ、司のこと」
中条はゆっくりと微笑んでくれた。それは俺の知っている意地悪なものじゃなくて、つい見とれてしまった。
「あっ、ゴメン!」
「い、いや……俺こそわりぃ」
至近距離だったことにお互い気付いて急いで距離を取る。何だか恥ずかしかったが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
- 475 :嘘と真実 3話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:46:57 ID:AD11.4Q2
-
「あ、司そっちなんだ」
「おう。中条は下り坂か」
すっかり暗くなった帰り道。
さっきのこともあり、少し照れ臭かったがいつも通りの中条に戻っていた。今日付き合わせたお詫びに、コイツなりに気を使ってるのかもしれない。
「じゃ、あたしはこれで。……今日は、ありがと。司の言葉、嬉しかったよ」
中条はこちらを向かず、ぶっきらぼうに自転車に乗る。きっと恥ずかしがっているのだろう。
「気にすんな、親友だろ。下り坂、気をつけてな」
「うん。また明日ね!」
「おう、またな!」
中条はそのまま下り坂を自転車でかけていった。俺はそのまま帰り道を歩いて行く。
「……信じる、か」
改めて思う。俺はこの日常を、大切な仲間たちとの日々を失いたくない。中条をこれ以上不安にさせないためにも、俺は一刻も早く犯人を突き止めなければ――
「……今日は結局何も起きなかったな」
本当に何も起きなかったのだろうか。今までずっと、辻本さんと一緒に警戒しても続いていた嫌がらせ。果たして今日突然止むことがあるのだろうか。
「……大丈夫」
何も起きなかったんだ。自分自身にそう言い聞かせて、俺は家への道を急いだ。
「今日も元気か、司君?」
次の日の朝、ホームルーム前に晃が話しかけてきた。いつもは朝練で疲れているせいか席で爆睡しているのだが、今日は気持ち悪い笑みを浮かべて近付いて来る。
「どうした?ちなみに金なら貸さん」
「違うっ!親友よ、分かっているとは思うが今日のホームルーム、議題は覚えているかな」
「確か……あー、球技大会――」
「そうだ親友っ!勿論司君はサッカーに出てくれるよな!なっ!」
俺が言い終わる前にガシッと手を握ってくる変態が一名。
せっかく解いた誤解が一瞬の内に水の泡になるような行動は止めて欲しい。現に不審なものを見る目でこちらを伺っているクラスメイトも2、3人いる。
「わ、分かったからその手を離せ!」
「よっしゃ!頼むぜ親友!いやっほぅ!!」
爽やか系変態男子が思いっ切りガッツポーズをした瞬間、教室に予鈴が鳴り響いた。晃をなだめて席に返しながら俺は考えていた。
「今日も……か」
今朝も嫌がらせは起きていなかったのだ。まだ油断は出来ない。しかし本当に犯人はもう諦めたのではないだろうか。
辻本さんはしばらくは油断しない方が良いと言っているが、昨日のこともある。中条も――
「……あれ?」
そういえば中条の姿が見当たらない。
いつもは朝練が終わった後には教室にいるんだが。バレー部は朝練が長引いているのだろうか。でもアイツ、怪我したんじゃなかったっけ。
「ホームルームやるぞ!席につけ!」
そんなことを考えている内に担任が教室に入って来た。
まあ俺の考えすぎなのかもしれない。単純に風邪を引いたって可能性だって十分あるわけだし。そんな俺の疑問に答えてくれるかのように担任は口を開く。
「最初に……皆にも知っておいて欲しい話だ。ちゃんと聞くように」
教室がしんと静まり返る。何だろう、皆はそんな不思議そうな表情をしていた。
「今日休んでいる、中条なんだがな――」
その瞬間、急に鼓動が激しくなるのを感じた。何で中条の名前が出てくるんだ……。そして俺は、俺は何でこんなに震えてるんだ。
「昨日交通事故にあって……重態だそうだ。今朝保護者の方から――」
頭がガンガンする。吐き気が止まらない。
交通事故って……何だよ?重態?昨日あんなに笑ってたじゃねぇかよ……。何だよ、それ。今日も何も起きてないって?起きてるじゃねぇかよ!!
「今はまだ……おいっ、藤塚!!」
気が付けば俺は教室を飛び出していた。何でもっと気をつけなかった!?辻本さんにも言われてたんじゃないか――
『ただの例えよ。……でもこのままじゃ中条さんにも被害が及ぶかもしれないわ』
俺は………………大馬鹿野郎だ。
- 476 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/06(日) 02:48:11 ID:AD11.4Q2
-
以上で終了いたします。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 477 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 02:55:58 ID:QBL2b1dk
- リアルタイムで読めました乙
面白いので続きが気になります
- 478 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 03:23:55 ID:BG6KL/nA
- >>476
GJ!夜更かししてて良かった。続き期待してます。
- 479 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 10:04:45 ID:er6jMZAs
- >>476
GJ!!
続きが気になる!
妹も気になる!
- 480 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 12:28:02 ID:69OyX9pE
- ん
- 481 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/06(日) 19:24:01 ID:1WZ4BiZw
- GJです!中条…。
続きに期待です。
- 482 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/07(月) 08:55:00 ID:mawkhk/w
- >>476
乙乙!
- 483 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/10(木) 01:06:49 ID:os8SNG1o
- 俺はいつまで星屑を待てばいいんだ
完結させるって言っただろ!
- 484 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/10(木) 01:10:28 ID:pwqfdB8k
- 中条たんまだ?
- 485 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/11(金) 21:53:22 ID:m0nTliFw
- ぽけもん黒をいつまでも待つ。
- 486 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/12(土) 15:37:54 ID:p4HX/coY
- 私待つ〜わっ♪いつまでも待つ〜わっ♪
たとえあなたがry
- 487 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 488 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/13(日) 19:41:03 ID:UseX0B1A
- へ、変歴伝は…まだ、か…
- 489 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/14(月) 04:32:10 ID:PuLZufh2
- 昔の書き手達はもうここ見てないんかね
ヤンデレ離れしたのか
- 490 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/14(月) 16:04:15 ID:f9X1HRZs
- あまりいいたくないが、ここで書くメリットは少ないだろうな……
- 491 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/14(月) 22:26:05 ID:dECLgYzQ
- 小説家になろうとかで書いてるんだろうな
でもヤンデレ小説あんまりないな
- 492 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/14(月) 23:12:41 ID:cVVq15z.
- じゃあ何処で書けばメリットあるの?
- 493 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/14(月) 23:25:20 ID:JlOBus.2
- なろうは会員登録必要だし変な奴はよってきにくい
向こうは改稿もできるしこっちで書くメリットはあんまないかも
- 494 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/15(火) 18:36:38 ID:IG4oHn.U
- >>493
本当にそうだから困る…
- 495 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/15(火) 23:36:31 ID:5em/IxZI
- 星屑と嘘真は期待
- 496 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 00:33:47 ID:3eLAnmaA
- >>494
本当、ここはもう斜陽だよ…
力のある書き手さんだったら、自分の作品多くの人に見てもらいたいって思って当然だし、リバースとか、変歴伝とか、ぽけ黒とか、ヤンデレの娘さんとか、今残ってる力のある書き手さんはこれくらいか?普通に他の投稿サイトでも通用する。
あー、どうなんだろ、その辺り。
余所でも書いてそうだよな…
書いてんだったらニュースって形で誘導して欲しいな…
無理か…
- 497 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 03:37:44 ID:90n9dnqs
- なろうはヤンデレで検索すると大量にヒットするが良作が少ないんだよな
理想郷はそこそこあるが
- 498 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 04:35:08 ID:Vm3Gn0jQ
- もうここ閉鎖でいいんじゃね?管理人も見放してるみたいだし、仕事しないし
- 499 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 09:59:19 ID:3eLAnmaA
- >>497
同意。
ヤンデレだけに特化した作品は少ない。
なろうじゃヤンデレはオプションだな。
この板でやるようなキツいのはない。
そういうの期待して読むとスカタンこく。
だから期待を裏切らないこの板が好きなんだけど……
環境悪いもんな…荒らしも叩きも普通にいるし…
書き手さんにはキツい環境だよな……
- 500 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 16:50:06 ID:NeEPk3FM
- 本スレなんて長い間荒らしに占拠されてるみたいだしね。
もし個人サイトとかで続けるなら報告欲しいな。
- 501 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 17:09:49 ID:PkbQbNiM
- >>498
何を根拠に?
- 502 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 18:25:00 ID:ShQYZOjk
- >>501
相手にすんな
正体は分かるだろ
- 503 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/16(水) 23:13:51 ID:KyIEFFgU
- 嫉妬とかヤンデレって
2chのエロパロ板が間違いなく最先端を行ってたよな
嫉妬スレがつぶされてから凋落が始まったな
- 504 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:03:23 ID:a1yRYt1k
-
こんばんわ。投下に間が出てしまい、申し訳ありませんでした。
投下いたします。よろしくお願い致します。
- 505 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:05:14 ID:a1yRYt1k
-
〜誰かのエピローグ・4〜
結局小屋には長居せず、雨の中をひたすら歩き続ける。
どれくらい歩いたのかも分からなくなり始めた頃、ようやく街が見えてきた。
俺は……ついに帰って来れたんだ。思わずその場でへたり込んでしまう。
「ははっ……あはは……」
自然と笑えてきた。天を仰ぎ、笑い続ける。俺は、俺は解放されたんだ……!
――オモシロソウネ。
「……………………えっ」
咄嗟に振り返るが誰もいない。いるはずがない。こんな土砂降りの雨なんだぞ。それに一本道だ。何よりアイツは――
――ミツケタヨ、ツカサ……。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
俺は叫びながら走り出す。何でアイツの声がするんだ。
雨に紛れて俺も消えてしまえば、アイツから逃れることが出来るのだろうか。
4話
思いっ切り廊下を駆け抜け、がむしゃらに走り続ける。気が付けばもう正門のすぐ近くまで来ていた。
「おいっ!まて司っ!!」
まさに正門を抜けようとした瞬間、誰かに腕を掴まれる。振り向くと晃が息を上げながら俺の腕を掴んでいた。
「晃……」
「何やってんだよ司!?」
「何って……中条のとこに行くんだよ……!」
「何処の病院にいるのか、司は知らないだろうが!?」
晃に言われてようやく我に返る。
何も聞かずに飛び出して来たので、俺は中条の容態以外は知らないんだ。
「じゃあ病院を――」
「落ち着けよ!……仮に行っても、今は面会謝絶だってさ」
俺の言葉を遮って、辛そうに晃は答える。
……晃だって辛くないわけないんだ。大切な親友が大怪我をしたんだ、晃だって今すぐ飛び出したかったに違いない。
それでも俺を止めようと必死に堪えてるんじゃないか。
「……わりぃ、晃」
「いいんだ。……司が飛び出してなきゃ、俺が飛び出してたかもしれない」
晃は俺の肩を軽く叩く。自分と同じ気持ちを持っている人がいてくれることの有り難さを感じた。
「俺たちは……待つしかないのかな」
「今は、な。とにかく教室に戻ろう。皆、心配してるだろうしさ」
晃の言う通り、今は待つしかないのかもしれない。
……ただ、待つことしか出来ない自分がとても情けなかった。
- 506 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:06:21 ID:a1yRYt1k
-
担任にこっぴどく怒られた後、俺たちは教室に戻った。
中条がいないのにも関わらず授業はいつも通り進み、先生に当てられたクラスメイトも普通に受け答えをしていた。
勿論、それが当たり前だ。頭では理解出来るし、中条とそこまで仲良くなければ当然だと思う。
……でも、頭では理解出来ても俺のいらつきや焦りは収まらなかった。昨日のアイツの笑顔が、焼き付いて離れない。
そんな、心ここにあらずの状態で気が付けば昼休みになっていた。
普段なら晃と、そして中条が俺に寄ってきてくれる。そのことが余計に俺を苛立たせているように思えた。
「司、ちょっといいか」
「……おう」
晃が手招きをして教室を出る。どうやら話があるようだ。ちょうど教室に居づらくなっていたので、俺は黙って晃の後をついていくことにした。
教室を出る途中辻本さんが心配げにこちらを見ていたが、今の俺には彼女を気遣う余裕はなかった。
晃の後をついていくと屋上に出た。
晃はそのまま隅っこまで行き、地べたに座った。俺もそれに倣い、晃の隣に座る。昨日と打って変わって、青い絵の具をぶちまけたように晴れ渡る青空が広がっている。
それにつられてからか、屋上にはたくさんの生徒が集まっていた。
それぞれが昼飯を食べたり、ボーッとしたり、たわいもない話に花を咲かせたりしていて……それが余計に中条がいないことを強調しているように感じてしまう。
「……俺も、さ」
「ん?」
晃は青空を眺めながらゆっくりと口を開く。つられて俺も雲一つない空を見上げる。
「俺も……晃があの時教室を飛び出してなかったら、飛び出してたと思う」
「ああ……。でも晃が止めてくれたおかげで、少し冷静になれたぜ」
「でも心ここにあらず……違うか?」
晃の言葉に内心ドキッとしてしまう。確かに今の俺は何をしてもまともに集中出来そうにない。
「あ、ああ。でも何で分かるんだ?」
「当たり前だろ。俺も、そうだからな」
晃は立ち上がりそのまま空を仰ぐ。
……そうだったんだよな。俺だけが辛いわけじゃないんだ。決まってるじゃないか。晃だって、中条の親友なんだから。
「……わりぃ、晃」
「別に謝らなくていい。俺だって司が飛び出さなきゃ、気が付かなかっただろうしな」
俺もゆっくりと立ち上がり空を仰ぐ。俺たちの気持ちとは全く正反対に広がっている青空。俺に出来ることは……落ち込んでいることだけじゃないはずだ。
「……俺、中条を待つよ。落ち込んでたらさ、アイツに笑われちまうしさ」
晃は一瞬驚いた表情をした後、意地悪く笑った。
「ほう。中々分かってんじゃねぇか親友」
「誰かさんが分かりにくく教えてくれたからな」
「恋人に向かって"誰かさん"はないだろ、司くん?」
「いつまで引っ張ってんだよそのネタ!」
俺が、俺たちが暗くなっても仕方ない。中条は必死で闘ってるんだ。俺たちはアイツを信じて待とう。
大丈夫、中条なら絶対帰ってくるから。
- 507 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:07:10 ID:a1yRYt1k
-
放課後、いつも通り辻本さんと教室に残る。
辻本さんは俺のことをかなり心配してくれていたようで、昼休みに無視したことを謝ると笑顔で許してくれた。
改めて俺は、支えてくれる友達の有り難みを噛み締めるのだった。
「先生も面会出来るようになったらすぐに教えてくれるらしいから、安心してって」
「そっか。心配してくれてありがとな、辻本さん」
「ま、まあ……ね」
辻本さんは顔を真っ赤にしながら呟いた。相変わらず恥ずかしがり屋の彼女に思わず吹き出すと、辻本さんはいつものように怒る。
それが面白くてまた俺は吹き出してしまい、余計に辻本さんを怒らせてしまうのだった。
……気にしてないわけ、ない。辛くないわけも、ない。でもいつまでも落ち込んでる場合じゃない。
アイツが帰ってきたらいつものように出迎えてやる為に、俺に出来ることをしよう。
「ゴメンね、今日も職員室に寄らないといけないから」
「おう。じゃあまた明日な」
「うん、また明日ね」
辻本さんと職員室前の廊下で別れて昇降口へと向かう。昇降口には夕日が差し込んでおり、真っ白な下駄箱を染め上げでいた。
「……ん?」
下駄箱を開けると靴の上に小袋がおいてあった。薄い水色の袋で、ピンクのリボンが結ばれていた。
「悪戯……か?」
昨日はなく、今日も朝から一切行われていない俺への嫌がらせ。今朝の事件で今の今まですっかり忘れていた。
刺激しないようにゆっくりと持ち上げる。そんなに重くはなく、本当に嫌がらせか疑わしい。
というか、こんな小袋で嫌がらせなんで出来るのだろうか。出来ないからこそ、今まで大掛かりな手を使ってきたはずだ。
「……開けてみるか」
鼓動が高鳴るのを感じる。ただ、開けずに捨てるのも出来そうになく、俺はゆっくりとリボンを解き手の平へ中身を出した。
「何だ……これ?」
袋から出て来たのは画鋲でもゴミでもなく、金属の破片だった。
手の平に収まるくらいの大きさで夕日を受けて鈍く輝いている。袋を覗いてみるが他には何も入っていないようだった。
「……わけが分からん」
どうやら俺の思い過ごしだったらしい。一応気にはなるので明日辻本さんに見せるとしよう。溜息をつきながら俺は正門へと向かう。
「……結局、今日も何もなかったな」
もう犯人は飽きてしまったのだろうか。それとも機会を伺っているのだろうか。
見上げた夕焼け空は不気味なくらい紅く染まっていた。
- 508 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:08:01 ID:a1yRYt1k
-
「お兄ちゃん、入っても良い?」
「おう。どうした?」
気を紛らわせようと思い、夕食後ずっと机に向かっていたが一向に集中出来ずにいると、ドアが開き弥生が入って来た。
どうやら風呂上がりのようで可愛らしいピンクのパジャマがよく似合っている。弥生は少し不安げな顔をしながら俺のベッドに腰掛けた。
「……今日ね、部活に中条先輩、来なかったんだ」
「あ……」
「その顔、やっぱりお兄ちゃん何か知ってるでしょ!?」
しまったと思った時にはもう遅かった。弥生はベッドを飛び出し俺に迫る。どうやら弥生には、というか女子バレー部には中条の話は伝わっていないようだった。
「と、とりあえず落ち着け!話してやるから!」
「……ゴメン」
今にも飛び掛かって来そうな弥生をなだめてベッドに座らせる。一瞬、本当のことを言おうか迷ったがこうなってしまっては仕方ない。
弥生は一度決めたら絶対に諦めない性格だ。それは昔から変わらない。
だから煙に巻くのは無理だと思った。何より弥生は中条のことを尊敬していたし目標にもしていた。そんな弥生を騙すのは……正直嫌だったのだ。
「……いいか。落ち着いて、最後まで俺の話を聞くんだぞ?約束な」
「……うん、分かった」
弥生を落ち着かせてから俺は今日起きた出来事を話し始めた。
今朝いきなり担任から中条が交通事故にあったと聞かされたこと。
すぐに病院に行こうとしたが今は面会出来る状態ではないこと。
何かあればすぐに担任が教えてくれること。
細かい部分は省いたりしたが、大まかな出来事は全て話した。途中弥生は震え出したり、涙を溜めたりしていたが決して泣かず、黙って耐えていた。
「――以上が今、俺が知ってることだ」
「あり……が……と……」
話が終わっても弥生は震えながらずっと泣かないよう耐えていた。目には今にも溢れそうなくらい涙が溜まっている。
……素直に強いな、と思った。俺なんか我慢できず教室を飛び出しちまったのに、弥生はちゃんと約束を守ったのだ。
でも話は終わった。もう、良いんだ。だから――
「よく頑張ったな、弥生」
「あっ……」
俺は弥生を思い切り抱きしめた。頭を優しく撫でてやる。少しずつ弥生の震えは大きくなっていった。
「だから、もう泣いていいんだ。思いっ切り、泣いていいんだ」
「う、うわぁぁぁぁあん!!」
俺が言い終わった瞬間、弥生は俺の胸で泣き始めた。感情を思い切り爆発させて、涙がぼろぼろとこぼれ落ちていく。
俺は黙って弥生を抱きしめ続けた。きっとこういう感情は、溜め込むより全て吐き出した方がいいから。弥生はしばらく泣き続けていた。
- 509 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:08:44 ID:a1yRYt1k
-
「大丈夫か?」
「ぐすっ……うん、もう……平気……」
しばらく泣いて弥生はやっと落ち着いたようだった。目は真っ赤に腫れ上がっていたが、もう涙は出ないようだ。
「……中条なら大丈夫さ。アイツの強さは、弥生も知ってるだろ」
「……うん。先輩、凄く強いもん」
「じゃあ大丈夫だ。信じよう、中条のこと」
「……うん!」
目は腫れ上がっていたが、それでも弥生は笑顔を見せた。少し落ち着いたのかもしれない。
その後は少し弥生とたわいもない話をした。もう少し側にいてやりたかったし、弥生も泣き顔見られたと文句を言いながらも俺のベッドに寝転んでいた。
「じゃあ一年は井上の恐怖を――」
「味わってないよ。学年違うしね」
「何というゆとり……」
「いやいや、お兄ちゃんが悪いよ。授業中寝るなんて……それ、なに」
「ん?……ああ、これか」
弥生が指差したのは机の端に置いてあった、金属の破片だった。
蛍光灯の光を浴びて鈍く輝いている。結局こいつの正体は分からずにいた。弥生が興味津々だったので投げて渡す。
「……鉄の塊?どうしたの、これ」
「拾ったんだ。俺もよく分からないんだけどな」
流石に本当のことは言えなかったので、拾ったことにした。弥生はしばらく興味津々に眺めていたが、飽きたらしく俺に返してくれた。
「なーんだ……」
「まあ、ゆっくり調べてみるよ」
「……お兄ちゃん、分からないの?」
「えっ?」
「それ、多分だけど弥生知ってる」
少し得意げな顔をして金属の破片を指差す弥生。
……鼓動が高鳴る。何故かは分からないが弥生はこの金属の正体を知っているようだ。
「……一体、何なんだこれ?」
「多分だけど……自転車の部品じゃないかな」
「自転車……?」
「うん。中学生の時に弥生、自転車壊しちゃったことあったよね」
「あ、ああ……」
昔、弥生が自転車を壊してしまったことはよく覚えている。確か下り坂でブレーキが効かなくて止まれずに、電信柱にぶつかったんだっけ。
自転車は大破したし、弥生自身も結構な大怪我だったと思う。
「あの時、ブレーキが効かなかった理由がそれだよ」
「これが、か?」
「それが壊れてたらしくてね、弥生の自転車。確かブレーキなんちゃらってやつ」
「これがそのブレーキなんちゃらの一部ってか」
金属の破片ということはこれは部品の欠けた部分なのだろう。
弥生は嘘をついているようには見えないし、おそらく本当にこれは自転車の部品に違いない。だが――
「そんなもの取ってても意味ないよ、お兄ちゃん」
「まあ……な」
「あー、弥生のこと信用してないでしょ」
頬を膨らませて怒る弥生はいつもながら可愛かったが、俺の心には疑問が残ったままだった。
- 510 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:10:11 ID:a1yRYt1k
-
「……またか」
朝早く登校して下駄箱を開けると昨日と同じような小袋が置いてあった。誰かの悪戯か、それとも犯人の仕業なのか。一体何の意味があるのか。全く分からない。
「何だ……これ?」
中身は昨日の金属片ではなく、黒い紐のようなものだった。紐といっても2、3cm程しかない切れ端だ。いや、紐にしては堅すぎるか。
表面はツルツルとしていて断面から想像するに――
「……ワイヤー、か」
ワイヤーを切った時の断面と少し似ていた。だから何と言う訳でもないのだが。
とにかく、一人で考えていても仕方がない。もしこれが嫌がらせの犯人の仕業ならば、必ず何かしらの意図があるはずだ。
昼休みに辻本さんに聞いてみるのが良いだろう。昨日の弥生の話も含めて、辻本さんなら何か思い付くかもしれない。
今だに中条の容態は予断を許さないらしく、新たな情報はなかった。
昨日弥生に言った反面、あたふたするわけにもいかないが本音を言えば一刻も早く中条の意地悪い笑みが見たかった。
「これが?」
「ああ。二日連続で入ってたんだ」
昼休み、辻本さんと屋上に来ていた。晃は部活の昼練があるらしく、今頃グラウンドで練習をしているだろう。
俺は辻本さんに一部始終を説明し、昨日の金属片と今日新たに下駄箱にあったワイヤーらしき物を見せた。
辻本さんは難しい顔をして俺の話を聞きながらそれらを眺めている。
「うーん……。誰かの悪戯……にしてはちょっと手が込んでるわね」
「一人で考えてても埒外あかなくてさ」
「自転車……」
辻本さんは何か考え込んでいるようだ。まだ仲良くなって一週間程度だが、辻本さんが居てくれて本当に良かったと思う。
彼女や晃が居たから俺は何とか自分を保っていられるような気がした。
「まあ簡単には分からない――」
「…………嘘、でしょ」
「えっ?」
辻本さんは顔を強張らせていた。彼女の緊張感は俺まで伝わる程で、普段は冷静な辻本さんらしくなかった。
……彼女は一体どんな推理をしたのだろうか。
「…………藤塚君。あのね、これはあくまでも推測に過ぎないから……」
「あ、ああ」
「聞きたくないなら、ちゃんと言って欲しいの」
恐る恐る俺を見つめる辻本さん。もしかしたら俺は聞かない方がいいのかもしれない。
こんな破片や切れ端なんか忘れて、中条の帰りを大人しく待っていた方がいいのかもしれない。
……でも、それじゃあ意味がないんだ。犯人を捕まえてまた晃と中条と、今度は辻本さんも一緒に平穏な日常を取り返すんだ。
その為に俺は今こうして辻本さんに相談しているんじゃなかったっけ。覚悟を決めろよ、藤塚司……!
「……犯人が分かりそうなことなら、何でも言ってくれ」
「…………分かったわ。何度も言うけど、今から話すことは推測の範疇を出ないから」
「ああ、分かってる」
俺の返事を聞いて辻本さんは一度深呼吸をする。どうやら彼女も覚悟を決めたようだった。
「藤塚君、私が前に言ったこと、覚えてる?」
「前に……?」
「犯人の動機についてよ。もしかしたら原因は中条さんにあるかもしれないって、私言ったじゃない」
「……ああ。俺が嫌がらせを受けているのは中条や晃といるから、ってやつだろ」
確かに辻本さんにそんなことを言われたのは覚えている。しかし今回の嫌がらせと何か関係があるのだろうか。
辻本さんは厳しい表情のまま、話を続ける。
「そう。その時に私、こうも言ったわよね。"このままじゃ中条にも被害が及ぶかもしれない"って」
- 511 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:10:52 ID:a1yRYt1k
- 「あ、ああ……。でもそれが――」
「分からない?この金属片はそれを犯人が行った"証"なのよ」
「あ、証?一体何を言ってるんだよ辻本さんは!?」
頭が混乱する。辻本さんが言いたいことがよく分からない。
……証?何の証だよ。中条が被害に遭う?アイツは別に交通事故に――
「…………あ」
「……気が付いた?」
辻本さんが俺を見つめて呟く。俺は今何を思い付いた?
決まっている。おそらく目の前の辻本さんと同じことだ。
――そもそも中条は何で入院しているのか。それは交通事故に巻き込まれたからだ。
――じゃあ、アイツはいつ巻き込まれたのか。
俺は知ってる。だって一昨日、中条は俺と一緒に途中まで帰ったんだよ。アイツ、笑ってたじゃねぇか。
それで、途中で別れて……アイツは自転車に乗って坂を下ったんじゃなかったっけ。
「藤塚君の話をまとめると、そうなるわ。そして中条さんはその後、交通事故に遭った……」
いつの間にか思考が口に出てしまっていたらしい。いや、今はそれはどうでもいい。つまりアイツは……自転車に乗って事故に遭った可能性が高い。
「……だから、何だよ」
「だからこの金属片とワイヤーが問題になるのよ」
……そうだよ。もうやめよう、分からないふりをするのは。
俺は薄々気が付いてたんじゃないか。弥生も言っていた。この金属片は自転車のブレーキを動かす部品だって。
じゃあこのワイヤーも同じく、ブレーキに関わる部品なんじゃないか。つまり犯人は俺に伝えたかったんだ。
「中条さんが事故に遭った原因がもし、ブレーキが効かないことだったとしたら――」
「犯人が中条を、事故に遭わせたってこと、だな……!」
「ふ、藤塚君……?」
俺は無意識の内に立ち上がっていた。屋上の雑音も、今は一切気にならない。
犯人は伝えたかったんだ。中条を交通事故に遭わせたのは自分だ、ってな。
だから一つずつヒントを置いて行ったんだよ。鈍い俺でも分かるようにさ。
ああ、今はっきり分かったぜ、犯人さんよ。俺が憎いんだろ、こんな回りくどいことするくらいなんだからさ。
安心しろよ、俺も今お前が憎くて仕方ないからな。今すぐお前を探し出して――
「藤塚君っ!!」
「…………辻本さん」
気が付けば俺は辻本さんに抱きしめられていた。辻本さんは今にも泣きだしそうなのを必死に耐えているようだった。
彼女のそんな顔を見ていると、自分の中のどす黒い何かが少しずつ収まっていくのを感じた。
「憎しみに流されないで……そんなこと、中条さんも望んでない……」
「辻本さん……」
何故俺の気持ちが彼女に分かるのか。それは辻本さんも同じ気持ちだからだ。
彼女は俺より先に見当が着きながらも、必死に俺にそれを伝えようとしてくれた。
犯人が憎くて仕方ないのは俺だけじゃないんだ。そう思うとほんの少しだけ気持ちが楽になった。
「ありがとう、辻本さん。もう、大丈夫だから。……見られてるし」
「うん……えっ!?」
顔を真っ赤にして俺から離れる辻本さん。
いつの間にか俺たちは注目の的となっていた。まあ、あれだけ騒げば仕方ないのかもしれない。
「あはは、抱き着いてたからカップルとか思われたかもな」
「カッ、カップル!?」
「あべしっ!?」
瞬間、到底目で追えない早さのビンタが俺を襲う。な、なんという威力。
「な、な、な、な、な、な、なにを言ってるのかぜんっぜん分からないわ!……あれ、藤塚君?」
「……下です」
「何してるのよ?頬が真っ赤よ」
「あはは……」
俺は辻本さんの明るさにまた救われていた。
もし辻本さんがいなかったら、俺は犯人への憎しみに潰されてしまったかもしれない。勿論、犯人は絶対に許さない。
でも同じ目に遭わせる為に捕まえるんじゃない。中条にちゃんと謝らせて、罪を償わせる為に。これ以上被害が広がらない為に捕まえるんだ。
- 512 :嘘と真実 4話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:11:42 ID:a1yRYt1k
-
「辻本、ちょっといいか」
「あ、はい!ゴメンね、藤塚君。先戻ってて」
「おう」
「今日提出期限になってる進路調査用紙なんだがな」
「あ、それなら今日の放課後に出すので――」
屋上から帰る途中、辻本さんは担任に呼び止められていた。
内容からするに一昨日一緒に整理した用紙の話らしい。長くなりそうだったので先に教室に戻ることにした。
「……絶対に捕まえてやるよ」
もう俺だけの闘いではない。大切な親友が傷付けられたんだ。絶対に捕まえてみせる。
「おっ、親友!また辻本さんとデートか」
「うるせぇ、エロゲー信者」
廊下で練習帰りの晃と合流する。
からかわれたのが何だか恥ずかしくて、ついおちょくると晃の目が光った。どうやら触れてはいけない部分に触れてしまったようだ。
「なんだと……KI☆SA☆MA、そこに直れぇぇぇぇえ!!」
「ちょ!?まてっ!」
「藤塚君っ!」
まさに晃に矯正されそうだった瞬間、辻本さんがこちらに走ってきた。何かあったのだろうか。晃もふざけるのを止め、辻本さんを見ている。
「ど、どうしたの辻本さん?」
「今先生から聞いたんだけど中条さんが――」
急に心臓が高鳴る。一体中条はどうなったのか。おそらく晃も同じ気持ちに違いない。
「意識を取り戻したって!」
- 513 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/17(木) 00:13:41 ID:a1yRYt1k
-
以上で投下を終わりに致します。
読んで下さった方、本当にありがとうございました。
- 514 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/17(木) 00:52:13 ID:9MRrUOb.
- リアルタイムでGJ!
待ってた!次回に期待!
- 515 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/17(木) 09:29:39 ID:mSrX8wWc
- >>513
乙乙!
- 516 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/18(金) 11:37:32 ID:abKNGAMo
- GJ!これは…犯人分からん。
- 517 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 04:49:02 ID:Iw1e74hE
- よし、じゃあみんなネット上のオススメヤンデレ小説を紹介しよう
まずは俺から、理想郷の
リリカルってなんですか?
ルナティック幻想入り
- 518 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 07:49:16 ID:V773qY0E
- >>517
…そうだな
まだ、その方が健全だな…
なろうの
『前途多難です…』
作者 ID
ヤンデレ不作のなろうでは、これが一番読めた。
- 519 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 18:19:53 ID:BrGL12Eo
- なろうの「重なり合わないシンメトリー」
- 520 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 19:25:28 ID:gI3dY4Zo
- 519の「重なり合わないシンメトリー」の作者「鬱」氏のシリーズ
「誰かにとっての君は。」
「幻想の名は愛」
「相互不認知」
「死に至る病」
話数も多いし完結してくれる。
- 521 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 22:31:44 ID:F79JzQ3A
- >>519
それ一度途中まで読んだけど話が重すぎて断念した
豆腐メンタルの俺には厳しい内容だった
- 522 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 22:37:44 ID:MKaKsKNI
- >>521
どんな内容なん?
- 523 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 22:44:36 ID:F79JzQ3A
- 途中までだからなんともいえないしちょっと忘れかけだが
兄貴をDVするキモウトと過去に兄貴を虐待していた母親(だったかな?)とが兄貴の中で重なりあって
兄貴のトラウマを刺激してしまい幼児退行するところまで読んで終わった
俺のガラスのハートにひびが入ったわ
- 524 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/19(土) 22:52:44 ID:MKaKsKNI
- ありがとう。読んでみる
- 525 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/20(日) 02:49:41 ID:E77o3FHI
- なろうだと「黒の魔王」が一番好きだ
ヒロインが正統派ヤンデレ
ただファンタジーメインの話だから
成分としては薄めだけど
なかなか面白いと思うよ
- 526 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/20(日) 04:39:18 ID:Wsw.9S7w
- 修羅場スレの地塗れ竜とかは今もたまに読むなぁ
ルナティック幻想入りみたいな過激なヤンデレ小説がもっと増えてほしい
- 527 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/20(日) 07:13:30 ID:3/hztQuU
- なろうの「猫とワルツを」はお勧め
- 528 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/20(日) 10:40:30 ID:JBkk0C.6
- >>527
禿同
ちなみにここにも何話かわ多分猫とワルツをがあるで、いや知ってるかもしれんが
- 529 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 530 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 531 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/21(月) 00:17:31 ID:SyyI3/6U
- kitai
- 532 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/22(火) 02:31:43 ID:2MqIDJVM
- >>526
修羅場スレ懐かしいなあ
あそこだと「沃野」「うじひめ!」「妹は兄に恋してる」が未だに読み返してるや
- 533 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/22(火) 04:12:43 ID:2fjSLVFU
- めだかボックス〜何でも知ってた少年〜
安心院さんがいい感じ
- 534 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/22(火) 09:29:20 ID:SCcWVYJM
- 二次は原作知ってないとあんまり面白くない。
ルナティックは半分くらい読んだけど、ヒロイン描写が少な過ぎて、なおかつヒロイン多過ぎて、掘り下げてもないから薄っぺらく感じたな。
ヒロインに個性を感じんから、ストーリー展開だけを見る感じになる。
そしたらなんかパターン化してるな、あれ。似たような話の連続に感じた。
リリカルってなんですか?も 40話くらい読んだけど、同じシーンの連続で疲れちゃった。
結局、二次ってのは原作ありきなんだな…。
原作があるから、キャラを掘り下げる必要はない。
原作知らんでも、面白いとか言う人いたけど……俺にはきつかった。
- 535 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/22(火) 22:26:12 ID:bAJOP5UM
- そろそろヤンデレ世紀がきてもいいはず・・・
- 536 :sage:2012/05/22(火) 23:25:27 ID:s0aCksfM
- >>534
俺は2つとも原作知ってるから楽しめた口だけどそれでも
2次創作の場合原作のキャラと違和感感じていまいち萌えれないことも多いんだよなあ
エロSSなら気にならないんだけどヤンデレssの場合なぜか駄目だわ
- 537 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/22(火) 23:25:37 ID:s0aCksfM
- >>534
俺は2つとも原作知ってるから楽しめた口だけどそれでも
2次創作の場合原作のキャラと違和感感じていまいち萌えれないことも多いんだよなあ
エロSSなら気にならないんだけどヤンデレssの場合なぜか駄目だわ
- 538 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/24(木) 18:37:48 ID:l1Lepm72
- 短編一本書き上がったので投下します
- 539 :月夜の晩に:2012/05/24(木) 18:38:20 ID:l1Lepm72
- 月が……。
煌々と青白く輝く月が、わたしを見下ろしていた。
***
どうやらすっかり寝入ってしまっていたらしい。
目を瞬かせ、ぼやけた思考回路を軽く頭を振って立て直す。
部屋の電気は全て消されており、窓から差し込む月明かりだけがこの空間を薄暗く照らしている。
ありふれたマンションの一室たるこの部屋だが、こうして月の光に照らし出してみると、なかなかに幻想的な雰囲気を醸し出していた。
わたしはつい、と窓の外に目を見やった。
夜空に輝く、大きくて丸々とした月。
黒い折紙を丸く切り抜いたようなそれが放つ青白い光は、まるでスポットライトのよう。
そうしてしばらく月に見蕩れていたわたしだったが、やがてあることを思い立った。
この天然のスポットライトの下、映画や舞台に出てくる登場人物さながらに、夜の街を闊歩するのも良いかも知れない。
そんな考えが不意に、頭を過ったのである。
そうとなっては善は急げだ。
わたしは意気込んで立ち上がろうとして、――――――すぐにそれが、最早叶わぬ夢なのだと思い出した。
ああ、どうしてわたしはこんな当たり前のことを忘れていたのだろう?
ひょっとしてわたしの頭は、未だに夢から覚めきっていなかったのだろうか。
―――――四肢を鎖で繋がれていては、散歩はおろか立つことすらできないだろうに。
- 540 :月夜の晩に:2012/05/24(木) 18:39:16 ID:l1Lepm72
-
***
そもそもの発端は、今から三ヶ月ほど前に遡る。
一介のしがない会社員だったわたしは、同僚のKから誘いを受けて、所謂合同コンパに生まれて初めて参加したのである。
とはいえ、生来わたしは皆で騒ぐよりも一人静かに過ごすことの方が好きだったので、どうしても場の空気に馴染むことができなかった。
時折話しかけてくる相手方の女性に適当に受け答えしつつ、わたしはただ早く時間が過ぎ去ってお開きになるのを待っていた。
しかし待てども待てども合コンは一向にお開きにならず、それどころか時間が経つにつれて益々盛り上がりを見せ始めた。
メンバーはKを含め完全に出来上がってしまっており、彼らを置いて先に帰るのも憚られる。
どうしたものかと途方に暮れていたわたしだったが、そんな時に声をかけてくれたのが、相手方の女性の一人であるIだった。
聞けばIもこういった集まりは苦手らしく、今日は急に来られなくなった友人の代わりに来ただけなのだと言う。
すっかり意気投合したわたしたちは、何やら酒の一気飲みなどを始めたKたちを尻目に、二人だけの会話を楽しんだ。
それ以降、わたしとIは何かと連絡を取り合うようになった。
別れ際に電話番号とメールアドレスは交換していたし、何より、あの夜の彼女とのひと時はとても心地良いものだったからだ。
Iもそう思ってくれていたようで、電話で他愛も無い話をしたり、休日には共に遊びに出かけたり、お互いの家に行き来したりもした。
やがて一ヶ月もする頃には、わたしとIはまるで何年来かの親友のようになっていたのである。
そんなある日、会社帰りに高校時代に仲の良かった唯一の異性のMと偶然出くわした。
久しぶりに会ったため会話が弾み、せっかくなので二人で食事をして帰ったのだが、自宅に帰りつくなり、Iから電話がかかってきた。
見ると先ほどから何度も電話がかかってきていたようなのだが、今の今までマナーモードにしていたためまるで気付かなかったのだった。
わたしが電話に出るなり、Iは酷く取り乱した様子でわたしとMの関係について問い質してきた。
どうやらIは、わたしとMが連れ立って歩いているところを目撃したらしい。
わたしはいつに無く取り乱しているIに内心戸惑いつつも、Mとの関係について説明した。
Iは尚も何か言いたげにしていたが、わたしの説明に納得してくれたようで、どうにか落ち着きを取り戻してくれた。
Iとの電話を切った後、わたしは先ほどのIについて考えを巡らせた。
わたしが女性と肩を並べて歩いているのを見てあそこまで取り乱すということは……やはり、そういうことなのだろう。
何となく気付いてはいたのだ。
わたしがIを見る目と、Iがわたしを見る目には違いがあるということに。
だがわたしは、敢えてそれに気付かぬふりをしていた。
要するに怖かったのだ、わたしは。Iと、親友よりも更にその先の関係に進むことが。
まったく、我ながら何と情けない男なのだろうと思う。
それでもやはりわたしは、彼女とのこの心地良い関係を壊したくなかったのだ。
しかし、この時のわたしは、まだ気付いていなかった。
他ならぬわたしのそんな態度こそが、彼女の内なる狂気を育んでいたのだということに。
- 541 :月夜の晩に:2012/05/24(木) 18:40:35 ID:l1Lepm72
- Mとの一件以来、Iの様子は目に見えておかしくなっていった。
まず、これまでは日に一度程度だった(それでも十分多い気がするが)電話の数が格段に増した上に、一度毎の通話時間も長くなった。
メールの数に至っては電話よりももっと多くなり、ほとんど毎時間置きかそれ以上の頻度で送ってくるのだ。
そしてそれらを無視しようものなら、Iはこちらが反応を示すまで狂ったように益々たくさんの電話やメールをしてくるのだった。
まあ、それだけならまだ良かった。
量が増えただけでメールや電話の内容は以前までと変わらなかったし、こちらが無視さえしなければ至って平和なものだったからだ。
だがIの暴走は、それだけに留まらなかった。
Iは次第に、わたしを監視するようになっていったのである。
朝は出勤しようとするわたしを家の前で待ち伏せし、会社帰りには会社までやってきて、出来る限りわたしを近くに置こうとしてきた。
また、自宅にいる時でもふとベランダから外を見ると、Iが物陰からこちらの様子を伺っていたということも一度や二度では無かった。
メールや電話の頻度はここにきて更に増し、いずれもわたしの動向を探るようなものばかりになった。
特に昼休みには必ず電話をかけてきて、昼休みが終わるまでわたしに電話を切ることを許さなかった。
そんなことが何日も続き、さすがに耐え切れなくなったわたしは、ついに彼女に対して言ってしまったのだ。
「いい加減にしてくれ!君のしていることは悪質なストーカー行為以外の何物でも無い!もう二度と、わたしの前に現れないでくれ!」
Iは泣きながらわたしに縋りつき、何度も何度も謝罪してきたが、わたしはとうとう聞く耳を持たなかった。
***
わたしがIに一方的に決別を言い渡してから三日後の夜、一日の労働から解放されたわたしは一人、家路を急いでいた。
そういえばあの日の夜も、今日と同じくらい月が綺麗な夜だった……気がする。
あれ以来、Iは一度もわたしの前に姿を現していない。
あれほどしつこくしてきた電話やメールもすっかり鳴りを潜め、自宅前や会社で待ち伏せされることも無くなった。
わたしは安堵する反面、どこか寂しくも思っていた。
Iがわたしにしたことは決して許されることでは無いが、それでも彼女は確かに、わたしの親友だったのだ。
そんなIともう二度と会えないというのは、いくらわたし自身が言ったこととはいえ、やはり悲しい。
もう少し違うやり方があったのではないかという考えが、どうしても胸に去来する。
だが全てはもう遅い、遅いのだ。
そんなことを悶々と考えながら夜道を歩くわたしの後姿は、さぞ隙だらけだったに違いない。
いや、実際隙だらけだったのだろう。
何故ならその時のわたしは、後ろからそっと近づいてきている影に、まるで気付いていなかったのだから。
- 542 :月夜の晩に:2012/05/24(木) 18:41:32 ID:l1Lepm72
- 突然だった。
突然首筋に、とてつもない電流が走ったのである。
あまりの衝撃にわたしは地面に倒れ伏したが、幸か不幸か、気を失いはしなかった。
わたしは突如現れた襲撃者の顔を見るため、痺れて上手く動かせない身体をどうにか捩りながら、天を仰ぎ見た。
そこには月明かりを背に、まるで聖母のような微笑を浮かべたIの姿があった。
Iは芋虫の如く地べたを這うわたしの姿を、陶然たる面持ちで見つめていた。
そして追い討ちとばかりにもう一度、手に持ったスタンガンを動けないわたしの首筋に押し当てた。
強烈な電流が、またしてもわたしの身体を襲う。
そうして今度こそ指の一本も動かせなくなったわたしは、Iに引き摺られ、そのまま連れ去られてしまったのだった。
わたしを拉致したIはしかし、すぐにはわたしをマンションへと連れ帰らなかった。
彼女はまずわたしを人気の無い手近な裏路地へと連れ込み、そこで思う存分、自らの欲望を満たしたのだ。
身動きの取れないわたしには最早Iに抗うすべも無く、ただ彼女からの陵辱を甘んじて受け入れるしかなかった。
Iは執拗にわたしの身体を弄り、舐め回し、蹂躙した。
その時の彼女の瞳は酷く混濁していて、まさしく情欲に狂った獣のそれであった。
わたしはIに、何度も何度も射精を強いられた。
わたしが彼女の膣内に精を吐き出す度、Iは大粒の涙の流しながらうわ言のように愛していると宣い、貪欲にわたしの唇を貪った。
そんな行為を繰り返されるうち、次第にわたしの意識は遠退き、ついには気を失ってしまった。
そして次に意識を取り戻した時には、わたしはすでにこの部屋のベッドに寝かされ、四肢を鎖で繋がれていたのである。
***
あの夜から二週間、わたしはいまだこの部屋に縛り付けられている。
食事は全てIから口移しで与えられ、入浴は身体を濡らしたタオルで拭くだけ、下の世話も全て彼女によって行われている。
その見返りとばかりにIはわたしの身体を求め、わたしは日に幾度と無く彼女に犯されるのだった。
何度も逃げ出そうと試みたが、鎖は頑丈にベッドに繋がれていて外すことが出来ず、全て徒労に終わった。
わたしはもう一度、首だけを動かして窓の外を見た。
ガラス板一枚隔てた向こう側には、月光に照らされ、不眠の賑わいを見せる夜の街の姿があった。
けれど、どれほど手を伸ばそうとしても、わたしにはもうそこに辿り着くことはできない。
その時、玄関で物音がした。Iが帰ってきたようだ。
恐らく今夜もまた、わたしは彼女に良いように弄ばれるのだろう。
知らず、涙が零れた。
そんな哀れなるわたしを、月はいつまでも無言で見下ろしていた。
- 543 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/24(木) 18:42:44 ID:l1Lepm72
- 投下終了です
読んでくださった方、ありがとうございました
- 544 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/24(木) 21:36:15 ID:LEKsn3fw
- 乙ー
- 545 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/24(木) 21:46:24 ID:P6YPu2TY
- GJ
- 546 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/24(木) 22:18:52 ID:CDDiS9Mk
- 乙乙!
- 547 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/27(日) 20:20:05 ID:pq4Ykv4k
- 監禁は大好物です。
情景の描写が上手くて、読みやすかった。
また書いてくれー。
- 548 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/28(月) 05:57:01 ID:CG.gM/6U
- 睡眠導入剤の代わりに蟲師というアニメを見てたら
11話の回想シーンで直球ど真ん中のヤンデレヒロインが出てきて眠れなくなったでござる
ヤンデレが定着する以前の05年の作品なのに凄まじい純愛だったぜ
- 549 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/28(月) 16:46:35 ID:DV4n5F3g
- そういえばヤンデレの元祖って天城越えじゃね?
と天城越えを聞きながらふとおもった。
- 550 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/28(月) 20:30:47 ID:gfRG5LoI
- 神話のほうがはやいんじゃ
- 551 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/29(火) 03:05:58 ID:YjfIWB3A
- wikiで調べたから実際はどうかわからんが、日本最古だとイザナミらしいね
「あなたの国の人間を一日で何千人殺します」
だっけ?
旦那の方も、合ってるかわからんが返す言葉があれじゃあ、奥さん病みますって(笑)
- 552 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/29(火) 03:39:09 ID:NbefvTEo
- >>551
監禁から逃げ出そうとしても永遠にループしてしまい
監禁されている事実を認めるまでループから抜け出すことは出来ないのだ
- 553 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:08:00 ID:5MJHYHvE
-
こんばんわ。
ペースが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
投下致します。よろしくお願い致します。
- 554 :嘘と真実 5話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:11:11 ID:5MJHYHvE
-
〜ある犯人のプロローグ・1〜
許せないと思った。あの人はあんなにも苦しんでいたのに。
だから同じ目に……いや、それ以上の苦しみを与えなければならないと思った。
あの人の代わりに私が思い知らせてやるんだ。
5話
学校が終わってすぐ、俺と晃と辻本さんは市内の中央病院へ向かった。
中条が意識を取り戻したのだ。一刻も早く会いたい。それに――
「なあ、委員長。中条が俺たちに会いたいって、言ってたんだよな」
「うん。だから今日は私たちだけで行くことになってるわ。私はクラスの責任者として、だけど」
「中条……」
どうやら中条も俺たちに会いたいらしい。だからこそ一刻も早く病院へ向かわなければならないんだ。
それなのに俺は怖かった。果たしていつも意地悪くて何処か憎めない中条は、俺の知っている姿をしているんだろうか。
「…………」
首を振って嫌な想像を隅に追いやる。大丈夫さ、そう何度も自分に言い聞かせて。
電車から見える夕焼けは、街全体を真っ赤に染め上げていた。
気が付けば視界には真っ白な天井が広がっていた。
しばらく何が起こったのかも理解出来ず、とりあえず起き上がろうとすると激痛が体中を駆け巡る。
堪え切れなくて、起き上がるのを断念して天井を見つめていると扉の開く音がした。
「な、中条さん!?意識が戻ってるわ、すぐに先生を!」
よく分からない内に周りが騒がしくなり、あたしは自分がどんな状況だったかを少しずつ理解した。
- 555 :嘘と真実 5話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:12:01 ID:5MJHYHvE
-
正直、頭の包帯だけでよく済んだなと思った。
聞けば司と別れたあの日、あたしは坂のすぐ下にある交差点で事故に遭ったらしい。
全身打撲はあるものの、骨折などは一切ないようだった。
代わりにバラバラに砕け散ったあたしの自転車が事の凄惨さを物語っていたらしい。
「頭を強く打っていたのでどうなるかと思いましたが――」
どうやらあたしは2、3日昏睡状態にあったらしく、頭に巻いてある包帯がその証のようだ。
医者はもう歩けるなんて奇跡だと言っていた。
……あたしの運もまだ捨てたもんじゃないのかもしれない。
「何か欲しいものはあるかな?」
しばらく入院は続くらしく、医者はあたしに気を遣ったのか、こんな質問をしてきた。
"欲しいもの"、そう聞かれてあたしの脳裏に浮かんだのは一つだけだった。
それが無意識に言葉が出て来る。
「つ、司……あの、クラスメイトで会いたい人がいるんです」
司だけでは……恥ずかしかった。晃に会いたいのも事実なので、あたしは二人に今すぐ会いたいと伝えることにした。
司に会えれば、あたしはもっと早く元気になれる、何となくそんな気がしたからだ。
医者はすぐに学校へ連絡を入れてくれたらしく、今日の放課後に司たちはあたしに会いに来てくれる、と言われた。
何故かドキドキしてしまう。別に今まで通り、何も変わらないのに。
司があたしが目を覚ましたらすぐに駆け付けてくれるからか。
あたしってそんな単純だったかな。
あ、髪の毛とかボサボサじゃないかな。
咄嗟に鏡を見たあたしの目に映ったのはいつも通り、銀髪をなびかせている中条雪だった。
「……どうしちゃったんだろ」
司に抱く気持ちは、晃に対するそれとは何となく違う気がしてしまう。
今までは悪友、親友で十分満足していた。
それが司に打ち明けたあの夜から、あたしの中にあった得体の知れない感情が少しずつあたしを蝕んでいっているようだ。
「……司」
蝕む、という表現は間違っているかもしれない。
あたしは司に会いたい。それは決してマイナスの感情なんかではなく、むしろ強いプラスの感情のように感じられた。
友情ではない、別の何か……。ただ、それが具体的に何なのか。今のあたしには分からなかった。
「あっ……ど、どうぞ!」
そんな考えはノックの音に掻き消えて、不意をつかれたあたしは間抜けな声で返事をしてしまった。
少しの静寂の後、ガラガラとドアが開き、そこには確かに司がいた。
- 556 :嘘と真実 5話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:12:44 ID:5MJHYHvE
-
「中条……!」
「あ、司――」
司は険しい顔であたしに駆け寄り――
「良かった……本当に良かった……」
「へっ!?つ、司!?」
気が付けばあたしは思い切り司に抱きしめられていた。
自分でも分かるくらい顔が真っ赤になる。あまりの恥ずかしさに抵抗しようとするが、司はあたしを抱きしめたまま微動だにしない。
……司の体温が、心地好い。いつの間にか抱きしめ返している自分がいた。
「おう、無事で何よりだな中条!」
晃も病室に入って来てくれた。本当は晃にも感謝するべきなのだが、今のあたしは司を抱きしめるので精一杯だった。
また、得体の知れない感情があたしを満たしていく――
「……藤塚君、そろそろ中条さんを離してあげたら?」
「あ、わりぃ」
「あ……」
そんなあたしの気持ちを踏みにじるような冷たい声が病室に広がる。
司は恥ずかしくなったのか、あたしから離れていってしまう。そして代わりに委員長が目の前に来た。
……なんで委員長がここにいるのだろう。彼女はあたしが呼んではいないはずだ。医者の手違いか。それとも――
「中条さん、本当に無事で良かったわ。クラスの皆も心配してたのよ」
「あ、ありがとう……」
どうしてだろう。彼女の笑みが……怖い。
張り付いたようなその笑みが、怖くて仕方がない。
でも、司も晃も全く気にしていないようだ。……あたしの思い込みなのだろうか。
「もう、退院出来そうなの?」
「えっと……もう少し……かな」
「交通事故に遭って一週間程度で退院出来るなんて、流石は中条だな」
「あはは、違いねぇな」
あたしをおちょくってくる司たち。思わず自然と笑顔になる。
そうだ、あたしにはこんなにも暖かい仲間がいるじゃないか。あたしは一人なんかじゃないんだ。
「まあ安心しろよ中条。退院するまでは、出来る限り来るからさ」
「う、うん……」
そんなあたしの気持ちに応えるように司は一番言って欲しかった言葉をくれる。
雑に頭を撫でられながら、あたしは自分の気持ちに芽生えた感情が一体何なのか、やっと分かった気がした。
「流石に中条といえども他の患者を弄るわけにはいかないしな」
「べ、別に弄らなきゃ生きていけないわけじゃないわよ!」
あたしを気遣って励ましてくれる司のことが、あたしはきっと――
- 557 :嘘と真実 5話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:13:46 ID:5MJHYHvE
-
「じゃあ今日はこの辺にしとくか」
「ああ、あんまり遅いと悪いしな」
「うん、今日はありがとね」
気が付けば外は暗くなっており、そろそろ面会時間も終わりが近付いてきていた。
司たちと別れるのは名残惜しかったが、また会えるしあまり拘束しても気が引ける。
何より、久しぶりに誰かと話して、あたし自身が少し疲れていた。
「あ、私、中条さんに色々渡す物あるから、先に外で待ってて」
「おう、了解」
「じゃあな、中条」
「あ……うん」
司と晃はいなくなり、病室にはあたしと委員長の二人になった。
鞄からプリントなどを取り出しはじめる委員長。
……なぜだろう、とても不安な気持ちになる。
さっきのあの笑みのせいかもしれないが、早く彼女が帰ってくれたら良いのにと思ってしまう自分がいた。
「これが昨日の分で、こっちが一昨日の分。これは提出期限が来週だから気をつけてね」
「……ありがとう」
笑顔で説明してくれる委員長。
何も恐れる必要はないのに何故かあたしはその笑顔が好きになれない。
ただの思い込みに違いないのだが、どうしても彼女を受け入れられないのだ。
「……中条さんって、藤塚君と小坂君と仲が良いよね」
「う、うん……まあ」
委員長は急に作業をしながら話し始める。あたしに気を遣ってたわいのない話をしてくれているのか。それとも――
「特に藤塚君とは仲良いわよね。さっきも抱き合ったりしちゃって」
「あ、あれは!その……不可抗力っていうか……」
「顔、真っ赤よ?」
「っ!?」
クスクスと笑う委員長。
何となくいつもあたしにからかわれている司の気持ちが分かった気がした。委員長はそんなあたしの顔をじっと見つめる。
「……もしかして、中条さんは藤塚君のこと、好き?」
「…………えっ」
「やっぱり好きなのね」
「ち、ちがっ!あ、あたしは!そ、そのっ!」
委員長の言葉に思わず反応してしまうが上手く言葉が出てこない。
そしてこんなにもうろたえる自分を見て、同時にはっきりと自覚してしまう。
あたしは……あたしはやっぱり司のことが好きなんだ。
「ふふっ、お似合いだと思うわ。藤塚君と中条さん」
「えっ!?……そ、そうかな」
「ええ、お世辞じゃなくね」
「あ、ありがと……」
自分でも顔が真っ赤になるのを感じる。自覚してしまうと何だかとても恥ずかしくなる自分がいた。思わず下を向いてしまう。
「……でも気をつけなくちゃね」
「へっ?」
見上げると目の前に委員長がいた。雰囲気は先程とは打って変わって、あの張り付いたような笑みであたしを見ている。
……あたしは何を浮かれていたんだろう。
ずっとあたしの本能は警告していたじゃないか。委員長は、この女は決して味方なんかじゃないって。
「藤塚君、今大変じゃない?だから助けてあげないと」
「た、大変?一体何を言って――」
「嫌がらせ、されてるでしょ。……もしかして、知らない?」
「い、嫌がらせ?」
委員長が何を言っているのか、全く見当もつかない。司が嫌がらせに遭ってる?そんなわけない。仮にそうだとしたら――
「……もしかして中条さんは相談されてないんだ。藤塚君に、このこと」
「あ、あたしは……」
そうだ。もしそんなことが司の身に起きているなら、司はあたしや晃にまず相談するはずだ。
だってあたし達は親友なんだから。なのに何で委員長が、委員長だけがそんなことを知っているんだろう。
「私には話してくれたから、"親友"の中条さんにはてっきり話したものだと思ってたんだけど」
「あ、あたし……あたしは……」
「……この話はもう忘れて。藤塚君も――」
止めて。それ以上しゃべらないで。あたしの中の大切な何か軋んでいく。
もうこれ以上、あたしと司の絆を壊さないで――
「"信用できない人"には話したくないみたいだったから」
「……あ」
――あたしの中で大切な何かが壊れる音がした。
- 558 :嘘と真実 5話 ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:14:23 ID:5MJHYHvE
-
「じゃあお大事に。……また来るわ」
辻本さんが病室から出て来たので俺たちはそのまま帰ることにした。
「結構長かったけど、何か大事な話でもしてたのか」
「うーん……女の子だけの秘密の話、かな」
クスッと笑いながら話す辻本さんに思わずドキッとしてしまう。普段とのギャップというやつなのかもしれない。
「へいタクシー!」
少し前で既に道路に向かっている晃が大袈裟にタクシーを呼ぼうとしていた。
アイツもアイツでかなり中条のこと、心配してたからな。もしかしたら安心していつもよりはしゃいでいるのかもしれない。
「…………」
無意識で抱きしめてしまった中条は、俺が想像していたよりもずっと華奢で、何だか甘い香りがした。
当たり前だが中条もやっぱり女の子なんだな、と改めて感じる。
「良かったわね、中条さんが元気そうで」
「ああ。最初聞いた時は本当にどうしようかと思ったけど、安心したよ」
「……藤塚君、明日暇?」
「ん?まあ部活やってないし土日は暇だな」
「じゃあ明日付き合って欲しいところがあるんだけど」
辻本さんは少し申し訳なさそうな顔をして俺を見つめる。
明日の予定は特には決まっていないし、辻本さんにそんな表情をされて断れる男の方が少ないと思う。
「良いよ。別に予定ないしさ」
「やった!……あ、ありがとね」
「……そんなに喜んで貰えると嬉しいよ」
「う、うるさい!」
恥ずかしそうにそっぽを向く辻本さん。何だか最近、色んな辻本さんの表情が見れて、それが凄く嬉しい自分がいることに気が付いた。
我ながらなんとも現金な奴だと思う。
「おーい!タクシーゲットだぜっ!」
「はいはい……」
いつもよりテンションの高い晃の捕まえたタクシーに乗り込みながら振り返る。
本当に怒涛の一週間だった。色んなことがあったけど、中条が無事で本当に良かった。
後は捕まえるだけだ。中条をこんな目に合わせた犯人を辻本さんと一緒に。
既に明かりの消えた病室で少女は膝を抱える。
――大丈夫。
ぶつぶつと何かを呟きながら時折震え出す。まるで見えない何かに怯えるように。
――大丈夫。司はあたしを信じてくれてる。
彼女の目には一切の光は宿っておらず、ただ漆黒を写すのみ。
――大丈夫。だって抱きしめてくれた。凄く嬉しかった。
少女の想いに応えてくれる者はもう誰もいなかった。得体の知れない感情が、彼女を蝕んでゆく。
――大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。
病室にはいつまでも少女の呟きが木霊していた。
- 559 : ◆Uw02HM2doE:2012/05/30(水) 23:16:37 ID:5MJHYHvE
-
以上で投稿を終了いたします。
今回は話の構成上、いつもより若干少なめの分量になってしまいました。
申し訳ありません。読んで下さった方、ありがとうございました。
- 560 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/31(木) 01:44:50 ID:gt99VsHA
- GJ!続きが気になる!
負けるな中条!
- 561 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/31(木) 02:53:47 ID:6CRXphos
- >>559
GJ!
辻本さん素敵だわ
- 562 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/31(木) 07:51:25 ID:R1GPc8qE
- GJ
中条さんにはとことん病んでほしいw
- 563 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/31(木) 08:27:30 ID:VyZg6oBQ
- 辻本さん露骨すぎるwGJ
- 564 :雌豚のにおい@774人目:2012/05/31(木) 10:00:42 ID:9F1EFa/E
- >>559
乙乙!
- 565 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/02(土) 00:31:23 ID:iBHRqp7k
- >>543、559
が共に神作な件
- 566 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/02(土) 10:16:39 ID:SkceqihI
- 中条さんの病みはまだか…!
- 567 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/03(日) 15:44:39 ID:95pTxt32
- 大学卒業するまでにほととぎすは来るのか・・・
また半年ぐらいしたら来よう・・・
- 568 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 05:07:15 ID:NUbAMNgg
- 綾緒なら俺の隣で寝てるよ^^
- 569 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 14:47:56 ID:14NcqlcI
- テスト
- 570 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 14:48:26 ID:14NcqlcI
- 投下します
- 571 :キモオタと彼女 5話:2012/06/04(月) 14:52:05 ID:14NcqlcI
- 拙者は、昔見たドラマを思い出していたでござる。
オタクが電車内で酔っ払いに絡まれている美女を助け美女と付き合う物語。
正直あんなシチュエーション有り得ないでござるし、所詮はフィクション。 オゥフ
そう思っていた時期が拙者にもあったでござる。 コポオ
今、拙者の前に広がるこの光景は…紛れもなく現実でござる。
「ああああああにょでしゅねェ、おおおおオトゥコの人々がジョジョ女性をカカカ囲ミュのは、いいいいいイケナイことですよぉ! ヌフ」
ひぁぁぁぁぁ!!! やはり、怖いもんは怖いでござるぅぅぅぅぅぅ!!
ドラマは酔っ払いサラリーマン一人に対し、拙者の今の状況は見た目が厳つい若者が何人もいるでござるぅぅぅぅぅぅ!!
…でも、ここで拙者が逃げてしまったら朝比奈さんが…はわわわわわ…。
「お前…!?」
ひぃっ!? 一番威圧感のあるイケメンが話かけてきたでござるぅぅぅぅぅぅぅ!!
「…お前ら、帰るぞ」
ふぇ?
「なっ、なんでだよ!? この女に何人も…」
「いいから帰るぞ」
「あっ、あぁ…。」
まさかの拙者大勝利!?
えっと、どうしてこうなったんでござろうか。
とあるビルの二階の喫茶店で拙者と朝比奈さんが向かい同士で座る日がくるなんて…。
あの後、朝比奈さんに無言で手を引かれて今この喫茶店にいるでござるが…。
「…………。」
「…………。」
うぅ…きっ、気まずいでござる…。
朝比奈さんはさっきからずっと顔が赤いまま俯いているし。
やっぱり、拙者と一緒にいるなんて恥ずかしくてしょうがないんでござろうなぁ。
よっ、よし!
朝比奈さんに拙者と一緒にいて無理をさせるのは、申し訳ないので帰る提案をしてみよう。
そうしようでござる。 コポォ
「…あのっ、」
「あのね助けてくれてとても嬉しかった、ありがとう。あなたはいつも私の事を助けてくれるのに私はあなたに何もしていないよね。 うん、そうだよね。 私はこれからあなたに尽くして尽くして一生尽くさなきゃいけないよね。今までのお礼もしなきゃいけないしね。だから、今からホテ」
「い、いやっ、落ち、落ちつい」
「…嫌? 私と一緒にいるの嫌なの?」
いやいや、嫌じゃなくて…。
- 572 :キモオタと彼女 5話:2012/06/04(月) 14:54:44 ID:14NcqlcI
- だっ、駄目でござる…。
まったく、話にならないでござる。
朝比奈さんの後ろにいる女性が笑いを堪えているせいかものすごく肩がプルプルしてるし、周囲の目が痛いでござるぅぅ。
ここは、退散しなければ!
失敬!
「きょ、今日の事は全然気にしなくて大丈夫ですので! お礼も大丈夫ですので!」
千円札一枚を置いて拙者は逃げるように店を出たでござる。
フフッ、照れているあなたも可愛いね。
でも、今回は反省すべき点がたくさんあるわね。 彼と一緒にいると思考がまとまらず、周りが見えなくなってしまうのが難点だなー。
そう、さっきまで私の後ろにいた女にも気付けないほどにね…。
私以外に彼を狙っている女がいるなんて。
まっ、彼に近付く女は……から。
それより、これからは今日の事を理由にデートに誘う事が出来るのが楽しみで仕方ない。
今まで伝える事が出来なかった私の感謝の気持ちと私がどれだけあなたを愛しているかをこれからは、いっ〜ぱい伝えるからね!
明日、会社で会ったら早速デートの約束しないと!
彼とデートが出来るなんて…!
明日が楽しみでしょうがない。
今日は、明日に備えて計画と準備をしないとね。 本当に…明日が楽しみだわ。
- 573 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 14:56:27 ID:14NcqlcI
- 投下終了です
見てくださった方、お疲れ様です
- 574 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 15:43:10 ID:T7RwClC.
- >>573
懐かしすぎて感動した
読み直してきたわ、おかえりー
- 575 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 15:49:52 ID:kkI5weAs
- おおぅ、まさかの続き来てるw
これでこれからも待っていけるな
- 576 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 17:11:24 ID:BCYE/kd6
- >>573
遅かったじゃないか・・・
よく・・・よく帰って来てくれたっ・・・!
- 577 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 20:59:06 ID:AZGeEQUg
- >>573
ずっと待ってました………
めちゃめちゃ嬉しいです…
- 578 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 21:41:15 ID:2HeYuB5M
- >>571
>「ああああああにょでしゅねェ、おおおおオトゥコの人々がジョジョ女性をカカカ囲ミュのは、いいいいいイケナイことですよぉ! ヌフ」
ジョジョは故意に入れたと見たw
GJ
- 579 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 23:03:42 ID:URKiy7x6
- GJ
嬉しすぎて涙が( ノД`)…
後、前に4、5話ありませんでしたっけ?
在ったらそちらもまた再投稿をm(_ _)m
- 580 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/04(月) 23:14:17 ID:kQ6x2kio
- 久しぶりの投下GJです!
これからもガンガンきてくれよ!
- 581 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/05(火) 02:07:28 ID:E8WKw79U
- 失敬!ドヒューン!
よく帰ってきたwおかえり
- 582 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/06(水) 00:58:21 ID:QIrKFpdU
- もうこないと思ってたから嬉しい乙
- 583 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/06(水) 11:25:59 ID:5ouGh7QI
- >>573
乙乙!
- 584 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/07(木) 01:25:17 ID:Y..FFxn6
- こんな感じでウェハースもかえってきてくれないかなあ。
- 585 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/07(木) 06:38:21 ID:NWa1zrWs
- >>573
感動した!
よく、戻ってきてくれた!
ありがとう!
- 586 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/08(金) 02:22:18 ID:E79gfnvI
- >>573
できれば完結までやってほしい
- 587 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:34:45 ID:4wO9i5Cc
- test
- 588 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:36:59 ID:4wO9i5Cc
- test
- 589 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:38:57 ID:4wO9i5Cc
- 白髪女とちっさい女の4話投稿します
- 590 :白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:40:24 ID:4wO9i5Cc
- 学園祭で何をするか決まってからの3週間はすぐに流れた。
結局の所卵かけご飯じゃなく丼屋をすることになってのだ。
それからは研究、研究と毎日学校から帰ると研究と言うなの料理に付き合わされた。それこそ遊ぶ時間がないほどに。
特にやる気があるのは禊で毎日僕を誘いに来た。
まず授業が終わるとすぐに僕の席に来て僕を捕まえる。
そのあとはスーパーに行って食材を購入し、僕の家に直行するのだ。
そしてそれからは料理に試行錯誤して、完成品がその日の晩ご飯になる。
食後は禊とゲームしたりして過ごすのだ。(禊はゲームしかしないのだが・・・)
だから僕には遊びに行く時間なんてないのだ。
余りにも休みがないので
「何でこんなに熱心に誘いにくるんだ?」
と質問してみた。
「そんなの沢山売ってそのお金で新しいゲームを買うに決まってるだろ。そのために沢山修行しないとダメじゃないか。」
と言う禊に反論してみたりする。
「ちょっとは遊びにいかせてよ。禊は張り切りすぎだって。もう種類もかなりあるし、味もよくなったから準備は大丈夫だろ?」
そう言うと禊は腕を組んで考え込んだ。
考え込むこと数秒。
「まぁでも最近は根を詰めすぎたし、少しは休みが必要なのかもね。よし!!三日間の休みを与えてやろう。」
三日間の休みをもらえた。何でも言ってみるものだな。
この休みの三日間は何をしようかなと考えるが余りいい案が思いつかない。
何をするのか考えていると、メールの着信音がなった。
彩弓ちゃんからだった。
『お買い物に行着ませんか?お買い物!!もうそろそろ衣替えの季節ですよね?新しい服が欲しいなあー何て思ってるんですよ。』
ポチポチと返信の文を打つ。
『まあいいよ。暇だから付き合うよ。』
『だったら明日商店街の噴水の前で12時に待ち合わせで。』
『OK』
「メール?誰からだったの?」
禊がそんな事を聞いてくる。
禊は彩弓ちゃんの事を良くは思ってないから、誤魔化したほうが面倒くさく無いな。
そう思い誤魔化すことにした。
「聡太だよ、そ・う・た。」
「フ〜ン。ほっしーって聡太とうち以外に友達居ないの?なんかいつもうち達としか遊んでないじゃない」
と意地悪い笑顔を浮かべながら聞いてきた。
この顔は少し意地悪なお姉さんを演じる時の禊の顔だ。
チビのくせに小憎たらしいい。
「い、いるよ。倉前くんとか・・・・あっ!あと、きっき清洲橋さんとか!!」
「必死すぎて逆に引いちゃうレベルだよ・・・」
禊は結構ガチで引いてるみたいだった。
少しイラっとしたが、なんとか誤魔化せたみたいだ。
まあアリバイ工作のために聡太に連絡をしておかないといけないな。
- 591 :白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:40:58 ID:4wO9i5Cc
-
私、新見禊は天川星司のことが好きだ。
別に私はテレビゲームは好きじゃなかった。
星司君が好きだから話題づくりのためにしているだけ。
でもしているうちに好きになってしまっていたのだが。
少しでも彼のそばにいたいから、その努力は惜しまない。
私には時々自分でも制御出来ない黒い、黒い感情があるのがわかる。
それは私の胸の中に住んでいて、彼が他の雌のと話していたり、話をしたりすると私の胸の中を暴れ回る。
学園祭のことだってもしかしたら星司君がゲーセンで会ったあの女の元に行くかもしれないので、引きはがすために毎日好きでもない料理に誘ったのだ。
もし彼が私に告白してきてくれたら0.2秒でOKの返事をだすだろう。
それよりも彼に私の想いを告白したい。したいしたいしたい。
でもそれは出来ない。
自分が臆病だとかそんなどこにでもある恋愛小説の1フレーズだったらどんなにいいことか。
おそらくだけど彼は私のことを嫌いじゃない。むしろ好きな方だと思う。
でも彼は私が想いを伝えても振り向いてはくれない。出るのは優しい拒絶の言葉なんだと思う。
それが彼の心の防衛術。
人には距離を置くと言う彼の考え方。
別に星司君はゲイじゃなく健全な男子高校生である。(それでも見つけたエロ本は捨てているが)
うちにはそこまでの拒絶はしないが、あの事件があった直後はそれはもう酷いものだった。
そう考えると昔彼のそばにいたあのクソ女が憎い。
彼に深いキズを付けて彼の心をバラバラにしたあの女が。
今もなお彼の心を縛りつけているクソ女が憎くて仕方がない。
あの女が原因で今も彼とは深い仲にはなれない。
友達以上恋人未満。
これが新見禊と天川星司の関係なのだ。
それでも所詮は昔の女だ。
時は心の特効薬とは昔の人は凄い言葉を残したものだ。
少しづつだけど彼の顔に笑顔が増えてきた。
このままいけば遅かれ早かれ、いつか自分の気持ちを星司君に伝えられる時が来ると思っていたのだが奴が現れた。
百瀬彩弓とかいうクソ雌が。これは女の勘だがきっとクソ雌は星司君のことを好きになる。
今は別になんとも思ってないだろうが、このまま彼と一緒にいたら好きになるだろう。
そんなのは絶対に許さない。許されるはずがない。
私よりも高い身長を持ち、私がどれだけ望んでも手に入れることができなかった白い髪を持っているアレが許せない。
私の髪が白かったらとどれだけ望んだことか。
来る日も来る日もあの雪のように白い白髪を望んだ。
でも結局、手に入らなかった。
だから白い髪を持つあの雌が憎い。
私は星司君の笑顔が好き、声が好き、髪が好き、優しさが好き、性格が好き、鼻が好き、目が好き、口が好き、意地悪が好き、
抜けたとこが好き、淋しがり屋なとこが好き、ファションセンスが好き
すきスキすき好き好きスキすき好きすき好きスキ好きスキすきすきスキ好きすき好きすきスキ好きスキすき好き
愛してる愛してるあいしてるアイシテルあいしてるアイシテル愛してる愛してるアイシテル愛してるあいしてる
すきスキすき好き好きスキすき好きすき好きスキ好きスキすきすきスキ好きすき好きすきスキ好きスキすき好き
愛してる愛してるあいしてるアイシテルあいしてるアイシテル愛してる愛してるアイシテル愛してるあいしてる。
頭のてっぺんからつま先までぜーんぶ愛してる。私のモノにしたい。
でも私が自分の小さな体にこんなにも沢山の気持ちを詰め込んでいても、私の気持ちは彼には届かないだろう。
私はただ、彼に、星司君に好きになって欲しいだけなのだ。
- 592 :白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:41:30 ID:4wO9i5Cc
- 「母さん、出かけてくるよ。」
僕は時間に余裕を持って家を出た。
遅刻するわけにはいかないからだ。
多分これはデートというやつなのだろう。
待ち合わせ場所に着くと、彩弓ちゃんは15分前にもかかわらずに待ち合わせ場所にいた。
女の子のファッションというものはよくわからないが、なんだかいつも着ている服よりも気合が入っているように見えたような気がした。
「早いね。待った?」
「いや、全然待ってないよ。私も今来た所ですよ。」
そんな社交辞令的なことをやってみる。
「これからどーする?ご飯?買い物?」
「そーですね。私はご飯を食べて来てないから何か食べたいかもしれないです!」
「だったら僕はハンバーガーが食べたいな。最近米ばっかりだったからパンがいいよ。」
「反対の反対で賛成です。」
「なんかテンションが異常に高いね。」
何はともあれ彩弓ちゃんは快諾したよううだった。
僕たちは最近出来た個人経営のハンバーガー屋に行くことにした。
そこのお店は某チェーン店のハンバーガー屋よりも少し値が張るが、味は格段に美味しく今をときめく若者に大人気なのだ。
お店に入って僕は照り焼きバーガーのセット、彩弓ちゃんは中にオムレツが入っているハンバーガーを頼んだ。
休日にしてはお店は混んでなくてすぐ出てきた。
それを持ってまた噴水の前まで行く。噴水広場で食べるのだ。
広場には色々な人が来ていて、とても賑わっていた。
そこでベンチに座りハンバーガーの包を剥く。
彩弓ちゃんが僕の隣でモシャモシャとハンバーガーを咀嚼している。
頬っぺたにケチャップが付いていて幼く見えた。
「お兄さん。これが食べたいんですか?」
僕の視線に気づいたのか、彩弓ちゃんが包をこちら側に向けてくる。
「はい、あ〜ん。」
彩弓ちゃんの食べかけの場所・・・
こういうのに抵抗はないのかな?そう思ってその場所にかぶりつく。
フンワリとしたオムレツの中に入っているベーコンが香ばしいく美味だった。
「お兄さんのも下さい」
彩弓ちゃんが口を開けたので持っていたハンバーガーを突っ込んでやる。
モシャモシャと咀嚼した後
「間接キスですね?」
とニッコリして言われた時に飲んでいたコーラを吹いてしまった。
僕の吐いたコーラが目の前の鳩にかかってバサバサと飛んでいってしまった。
- 593 :白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:42:10 ID:4wO9i5Cc
- 昼食を食べたあと、本日の目的である服選びをすることになった。
僕は改めて、彩弓ちゃんの服装を観察してみる。
紺色のホットパンツに上は白黒のボーダーのフードだった。
靴はブーツで膝の高さぐらいまで足をおおっている。
そして頭にはチェックのハンチングだった。
頭に帽子を被っている理由が僕にはわかる。
「お兄さんは私の服装どう思いますか?」
「ボーイッシュだと思うな。もうちょっと女の子らしくてもいいんじゃないかな?」
「私、そう言う女の子女の子した服装が苦手なんですよね。ヒラヒラだとか、ゆるゆるだとかはちょと。」
本当に嫌そうな子をしながら言っているので本当に嫌いなのだろう。
「へー。ならどんな服装が好きなのさ?」
「ゴッシクロリータ系とか森ガール系とか姫系とかあと・・・」
「思っくそひらひら系でゆるゆる系じゃん!!」
「あたし〜。さいき〜ん。け〜たいとか〜、ちょ〜デッコってるんですけど〜。みたいな〜。」
もみ上げの部分を指でクルクルしながら少し間延びした声で言う。
「それはギャル系だよ」
「夢見る少女じゃいられない、じゃーん」
「今度はダークロックだね。」
エアーギターでじゃーんという彩弓ちゃんは少し可愛かった。
「お兄さんツッコミが上手いです。ボケるのが楽しいじゃないですか!!」
「今日はやけにテンション高いね。」
「うれしーんですよ!!こうやって休日に誰かと遊ぶの。」
「学校の友達とかとは遊ばないの?」
友達があんまりいない僕が聞くのもはばかれるが聞いてみた。
一応言っておくけど、居ないんじゃないよ。あんまり居ないだけなんだから。
学校の友達・・・その言葉を聞いた瞬間彩弓ちゃんは少しだけ悲しそうな顔をしたが、すぐに取り繕って話題を変えた。
「それはそうと私はスカートがね、すーごーく嫌いなの。男の子に生まれたかったなー。でも最近は女の子に生まれて良かったと思ってるんです。」
多分触れられたくのない話題だったのだろう。かなり強引な話の転換だったが、僕は乗ってやることにした。
誰にだって聞かれたくない話ぐらいある。各有、僕だってそうだ。
「なんで?最近女の子としていいことあった?」
そう聞いた瞬間、彩弓ちゃんの顔付きが変わった。
周りの音が消える。僕と彩弓ちゃんだけが時間に取り残されているように感じた。
彩弓の顔は凄く艶っぽくなっていて、元々大人びていた雰囲気が更に大人びていた。
ドキドキと鼓動の音が聞こえてき来る。
一歩、また一歩と彩弓ちゃんが近づいて来るが僕は蛇に睨まれたカエルのように一歩も動けない。
僕との間が10センチぐらいの所で止まり、自分の唇に右手の人差し指を当てた。
うるさい子供にシッーとやる時のポーズだ。
何をするんだ?と身構えた瞬間、その人差し指をゆっくりと僕の唇に持ってきてピッと付けて
「秘密です。」
と妖艶に笑った。
「かっか、からかうなよ。」
搾り出した声は震えていた。多分顔が真っ赤になっていただろう。火が吹くほど顔が熱い。
「からかってなんかないですよ。秘密とは言いましたけど、理由は多分わかりますよ、近いうちにでも。」
そう言うと彩弓はお店の中へと走って消えって行った。
- 594 :白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:42:40 ID:4wO9i5Cc
- 「ふー疲れた!!」
思いっきり伸びをする。
なんで女の買い物に付き合うのってこんなに疲れるんだろうか?
別に買いもしないものをタラタラと観たりする。
目的のものだけ買ってしまえばいいのにと毎回思う。
まさか禊よりも長いなんて思わなかった。
「ありがとうございます。長い時間付き合ってくれて。」
もう辺りは薄暗くなりつつあった。
「全然いいいよ」
ここで疲れを見せれば男の株が下がるというものだろう。
「それとあのー・・もう一つお願いしてもいいですか?」
少し遠慮がちにに聞いてくる。
「ここまで来たらとことん付き合うよ。なんだ?」
「ひかりケ丘の学園祭を一緒に回ってもらえませんか?」
ここで少し考えてみる。
僕は学園祭で店を出すから店番があるし、なんだか彩弓ちゃんと一緒に歩いているところを禊に見られてはいけないような気がする。
でも彩弓ちゃんと一緒にいるのは楽しい。どーしたものか。
ウンウン考えていると彩弓ちゃんがショボーンとしてきた。
「そーですよね。私なんかと一緒にいても楽しくないし、この髪の毛のせいで一緒に歩いているとジロジロ見られて見世物になっている気分になりますよね?
私気づいてたんですよ。お兄さんが周りの目線に気づいてるのに気づいていないふりを知てるって。周りの目線も何かって。
今日だって暇の中の暇だったから付き合ってくれただけで、コンビニにちょっと買い物に行く方が優先されるべきですよね。
わかってます。今日の出来事は一時の夢だったなんてことは。それに・・・」
「そ、そんなことは思ってないよ!!」
そのままほっとくとずっと自虐が続きそうなので無理やり話に割り込む。
「僕は視線なんて気にしてないし、彩弓ちゃんと居て楽しいよ!!すっごく癒されるし、妹がいたらこんな感じかなって思うんだ。」
「だったら、学園祭を一緒に回ってくれますか?」
そんな風に上目遣いで、目に涙を貯めながら言われたら断れない。
ここで断ったら人間として何か大切なものを失う気がしたので
「もちろんOKさ!!」
と快諾してしまった。
すると彩弓ちゃんは急にニッコリして
「買い物と約束のお礼です。」
と言って、チュッと僕の頬にキスをしてきた。
一瞬何をされたか分からずボーッとしていたが、何をされたか理解できると急に顔が熱くなってきた。
彩弓ちゃんはダダっと小走りで僕から距離を取り、クルリと振り向いた。
「さっきも言った通りそれはお礼です。学園祭楽しみにしていますよ。もし約束を破ったら・・・しますから。それじゃあ!!」
約束を破ったらの後の声が小さくて聞こえなかったが、もう走っていってしまったので聞くに聞けなかった。
最後のキスは想定外だった。思い出すだけでも恥ずかしい。
なんだか年下の女の子に振り回される男の気持ちが分かった様な気がした一日だった。
- 595 :白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:43:17 ID:4wO9i5Cc
-
俺たちは百瀬と星司のやり取りを物陰から見ていた、隣にいる彼女の顔は影になっていてどんな表情か分からない。
肩が震えている。今にでも飛び出して行きそうな雰囲気がピリピリと感じる。
確かにアリバイ工作を頼まれたが、俺はお前の為を思って彼女に情報をリークした。
俺は彼女の協力者だ。でも一番に考えているのは親友だ。
「どーだった?」
と飛び出すのを抑える意味で聞いてみると
「幸せそうに笑っているあいつが気に食わない!!殺したい。どうして?ねぇ?どうして?どうしてなの?なんで?なんでなの?
あいつは敵だ。あいつに騙されているんだ!!そーだあいつが弱みを握ったんだ。また誑かしたんだ。そーやって何人も何人も。許さない許さない。」
そーだった。雰囲気や顔に似合わずかなりの激情家だった。
「落ち着いて。クールダウン、クールダウン。今出ていったら計画が台無しなるだろ。まだまだ先は長いんだから。」
肩をポンポンとタップして落ち着かせる。
「ふん、どーせ結果は分かりきってんだから。」
「君は誰のために動いてるかもう一度ちゃんと考える方がいいと思うよ。」
諭す様に言う。この計画に乗った時点で俺たちは共犯者なのだから。
「大丈夫わかってるわよ。」
本当に大丈夫なのか?
不安にならずにはいられない。
言ったそばから路地裏の居た猫を威嚇してるし・・・。
「何か起こるなら学園祭だから、学園祭の準備を今からするから帰るぞ。」
まだ猫を威嚇しているが襟をつかんでズルズル引張ていく。
このまま学園祭か・・・
不安しか無い。
そして運命の学園祭が始まる。
- 596 :やーのー ◆gnQKrmKMl.:2012/06/09(土) 14:44:59 ID:4wO9i5Cc
- 終わり
次から学祭編です。
間隔が空くと思いますが出来たときはよろしくね
- 597 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/09(土) 17:58:30 ID:WX8nHqtw
- >>596
gj!
- 598 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/09(土) 22:59:26 ID:ptXBzCN2
- >>596
乙乙!
- 599 :彼は愛さない:2012/06/12(火) 02:29:11 ID:TGhkF6aY
- 私の幼馴染みは変わった奴だ。
変わったといっても最初からではない。
小さなキッカケで彼の性格は今とくらべて大きく変わった。
―学生時代は私達の仲は長年の付き合いがあり、彼の面倒を見ていた。
今も彼の自堕落差は変わって・・・いや、今の方が酷いな・・・。
ある日、彼が放課後に呼ばされて心配で見にいったら・・・なんというか・・・ほら?罰ゲームってあるだろ?告白と見せかけて、実は告白する側の陣営がゲームをして負けた奴がその罰ゲームをするという悪趣味極まりない遊びだ。
オマケに告白する側はなんもデメリットもないゲームだ。
私の幼馴染みはその犠牲者+笑い者にされたってわけだ・・・。
まぁ・・・それが彼女らの最後の平穏な日々になったわけだが・・・。
呆然と立っている彼が心配で肩に手をかけようとしたんだが・・・
「触るな売女が」
そう言った後彼は私の横を通り過ぎて行った。
ショックだった。
彼の目を見た時、もう私を幼馴染みを見る目ではなく、汚らわしい物を見る目だった。
彼にその・・・恋心というか・・・そういう感情を持っていた私の初恋はアイツらのせいで壊れたんだ。
―殺してやる
とは思っていたんだが当時の私はそんな問題より彼に嫌われたのが凄く凄くショックでね・・・呆然とそのままフラフラ〜と帰っちゃったんだよ。
フフフ・・・本当に本当につらかったなー・・・
- 600 :彼は愛さない:2012/06/12(火) 03:04:30 ID:TGhkF6aY
- そのまま家に帰った私は隣の彼の家にも聞こえる位大泣きして寝たんだ。
・・・そんなにうるさかったのかな・・・。
次の日、ギリギリの状態で朝に起こしに彼の家に向かいに行ったんだが彼は珍しく家に出たらしいんだ。
大泣きしてるのを心配されたのをあれ!?聞かれた!?と必死にごまかして逃げるように彼の家から学校に向かったんだ。
やはり嫌われたのか・・・と死にたくなる気分で学校に着いて教室に入ったのだが彼の席に彼はいなかったので、友人に聞いたらまだ着いていないそうだ。あれ?と不思議に思ったんだがチャイムが鳴り席に座って授業を受けた。
―最初の授業が終わりなにかあったのかと心配したが二時間目が始まる時に彼は教室に入って来た。
遅れたことよりも学校に来た彼を私はなぜかホッとした。
・・・私の初恋を壊した連中共がニヤニヤして彼を見ているのが不快だった事を除けば・・・。
学校では特にいつもどうりの彼だったが“女”が絡むと彼の友人達が驚く程の憎悪を覗かせていた。
とにかく“女”が絡むと平気で病院送り、精神病院送りと彼の行動は過激を増した。
当時の私はなんとか彼の女嫌いを“私”だけでも許容の範囲に入ろうと努めたが当時の彼はNOの態度で拒絶ばりの嫌悪感を出していた。
だがある日だ。
彼の“世界”に入る為に今日もと学校に着いたのだが、そこで小さな事態が起きた。
女子の何名かが行方不明らしい。
だからなんだとどうでもよかったのだがその行方不明の名前が挙がるたびに確信を得た。
彼と私の仲を壊した奴らだと。
そしてこうも思った。
―彼があのクズ共をヤッたのだと。
・・・知ってるかい?
結構裏の世界ではあのクズ共を重傷を負わせても変態共には高く売れるそうだよ?。
その日彼は私の前から去った。
- 601 :彼は愛さない:2012/06/12(火) 03:39:56 ID:TGhkF6aY
- 「ふふっ、けど運命のようにまた私達は再開した」
「・・・・・・・・・」
「あぁ、――私の愛しい人」
「触るな」
ゴッ
「グッ、ひっ酷いじゃないか幼馴染みに対して殴るなんて・・・しかも本気で」
「黙って聞いてればいちいちホラを吹きやがって貴様が逃げ場所を暮れてやるとか言って着いていったらなんで売女もセットでついてくるんだ」
「だってここは私の住んでいるマンションの部屋だし」
「売女が・・・」
「私はあんなクズ達とは違うよ」
「女は信用できん
吐き気がする」
ザッ
「あっ、どこ行くんだい」
「・・・掃除だ」
「夜には帰って来るんだよ」
「・・・・・・・・・・・・」
ガチャン
―愛しき人
アナタはいつに
愛してくれる?―
―憎き女よ
アナタを永遠に
愛さない―
- 602 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/12(火) 03:40:30 ID:TGhkF6aY
- 駄文サーセン死んでくる
- 603 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/13(水) 09:18:55 ID:haCUppLc
- >>602
乙乙!
- 604 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/14(木) 22:15:37 ID:10AjiKZU
- >>602
おつ
言いたい事はすごく伝わるな
それだけに文章が分かりにくいのが
残念だけど技術は勉強すればいいだけだから
次回作が楽しみにしてます。
- 605 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/14(木) 23:46:22 ID:d4E.uxII
- >>604
ツッコミどころ多すぎw
お前も人の事言えんよ
- 606 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/15(金) 01:11:04 ID:YCayPoMc
- 作品に対しての突っ込みならわかるが感想に対しての突っ込みは・・・
別に貶してるわけじゃなくてむしろ鼓舞してんだからかみつくなよ
- 607 : ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:37:51 ID:Q5b3WH.c
-
こんばんは。投下を致します。
よろしくお願い致します。
- 608 :嘘と真実 6話 ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:38:56 ID:Q5b3WH.c
-
〜ある犯人のプロローグ・2〜
計画は綿密に練らなければならない。
途中で頓挫してしまっては意味がないし、アイツを苦しませることが出来なくては成功とはいえない。
まずは孤立させよう。少しずつ侵食していき、恐怖を与える。
そう、まるでばれないよう食卓に毎日毒を盛るように。
6話
「ふわぁ……」
腕時計を見るとちょうど正午を指していた。約束の時間だ。
桜山市はどちらかといえば田舎で、待ち合わせ場所といえば駅前の時計塔の下くらいしかない。
休日ということもあり、時計塔の下は結構な人がいる。
「藤塚君っ!」
「あ……」
「ゴメン、待ったかしら?」
「……い、いや!待ってないよ」
女の子の私服は意外とドキドキしてしまうものだ。しかも相手が学校の中でもかなり美人な女の子であれば尚更だと思う。
肩までかかる黒髪に白いワンピース、目の前の辻本さんは形容し難い程輝いて見えた。
「ん?何か藤塚君、顔赤いわよ」
「えっ!?ま、まあ今日は暑いからさ!あはは……」
「……まあ良いわ。さっ、行きましょ。ここじゃ落ち着かないし」
自然に俺の手を引いて歩き出す辻本さん。
思わずドキッとする俺に構わず進んでいくのは彼女らしいが、少しは俺のことも考えて欲しいものだ。
というか、そもそも今日これから何処に行くのか、俺は全く知らなかったりする。
昨日中条の見舞いに行った後、辻本さんに急に誘われて集合場所と時間だけメールで指定されたのだ。
「そういえば何処に行くんだよ」
「それは着いてからのお楽しみ!」
「はぁ……」
どうやら事前に目的地を教えてくれそうにはない。
俺は溜息をつきながらも、目の前のはしゃいでいる辻本さんを見ながら、まあいいかとか思ってしまうのだった。
- 609 :嘘と真実 6話 ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:39:43 ID:Q5b3WH.c
-
桜山市に唯一あるショッピングモール。
この周辺はただでさえ田舎で何もない地域だ。休日ともなれば買い物客でごった返している。
「後は……シャンプーだけね」
「まだ買うのか……」
そんな人の波の中に俺たちはいた。そして俺の両手は溢れんばかりの生活用品が詰まった袋で塞がれている。
……ああ、どう考えても荷物持ちですよ。本当にありがとうございました。まさかこれだけの為に呼ばれたんじゃないだろうな。
「うーん……このシャンプーはちょっと高いわね」
そんな俺を尻目に辻本さんは熱心にシャンプーを選んでいる。
まあどうせ暇だったし荷物を持つだけで一日美少女と一緒に過ごせると考えれば易いものなのかもしれない。
「やっぱりこれにしよっ」
「じゃあレジに――」
「あ、まだ冷凍食品と歯ブラシと、それから――」
「……ガッデム!!」
易いもの……なのか……?
「うん、大体目当ての物は買えたわ」
「さいですか……」
買い物を一通り終えて、公園で一休みする俺と辻本さん。空は快晴で家族連れやカップルで賑わっていた。
「やっぱり男手があると違うわね」
「お役に立てて光栄ですよ、お姫様……」
「まあまあ、そんなにいじけない!さ、用意するから手伝って!」
辻本さんは鞄からビニールシートを取り出して芝生に敷きはじめた。よく分からないが俺も彼女に倣い、手伝いをする。
買った荷物や靴を四隅に置けばあっという間に即席のピクニックの完成だ。
「よし、いい感じね」
「あはは、何か幼稚園を思い出すな」
「さ、今日付き合ってくれた藤塚君にご褒美よ」
「お、おおっ!!」
目の前に並べられたのはサンドイッチや唐揚げ、卵焼きなどの定番メニューがぎっしり詰まったお弁当箱だった。そして――
「こ、これはっ!?ま、まさか"手作り"お弁当でしか見られないという伝説の――」
「タ、タコさんウィンナーがどうかした?」
「それだっ!!どうかしている!!」
ズビシと辻本さんを指差して俺は立ち上がる。
なんということだ。まだこの荒んだ現代にタコさんウィンナーを作ることの出来る女子高生がいたとは……。
「辻本真実、おそるべし……」
「えっ……」
「あ、別に今のはノリだから気にしなくて良いよ」
「……今、真実(マミ)って」
辻本さんは少し恥ずかしそうにしながら俺を見つめる。思わず引き込まれそうになるが、何とか自分を保つ。
そういえば今、つい名前で呼んでしまった。ノリとはいえ、名前で呼ばれるのを嫌がる女の子も結構いると思う。ここはちゃんと謝らないとな。
「……ああ。ゴメンな、つい呼んじまったけど嫌なら――」
「ち、違うの!……えっと、急に呼ばれたからビックリしただけで別に嫌じゃなくて……」
顔を真っ赤にしながら突然話し始める辻本さん。どうやら嫌われてはないようだ。でも、何でそんなに焦っているんだろうか。
「む、むしろねっ!もうそろそろ名前でも良いんじゃないかな、なんて思ったりしてねっ!?」
「あ、ああ……。まあ辻本さんが良いなら俺は構わないけど」
相変わらず顔を真っ赤にしている辻本さん。何だか手元のタコさんウィンナーと似ている気がする。
「じゃあ……私も呼んでいい?」
「えっ?」
「わ、私も……名前で呼んでいい?」
今にも茹でダコになりそうな顔色をしながら辻本さんは俺に言ってきた。
別に名前でも名字でも変わらない気もするが、辻本さんとは結構仲も良いし一向に構わないと思った。
「ああ、中条も晃も"司"って呼んでるから別に構わないけど」
「わ、分かったわ……つ、つ、つ、つ、司……君」
まるで何かの鳴き声のように噛みまくる辻本さんに思わず吹き出してしまう。そうするといつものように辻本さんが怒りながら言い訳をするのだった。
- 610 :嘘と真実 6話 ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:40:29 ID:Q5b3WH.c
-
夕暮れの帰り道。結局公園でかなりの時間を過ごした俺たちは、買った荷物を届ける為に辻本……じゃなくて真実の家に向かっていた。
「いやぁ、真実はすぐにテンパるよな。見た目とは大違いだよ」
「な、何よ。人のこと、散々馬鹿にした癖に!」
「あはは。わりぃわりぃ」
自分から呼んでほしいと言ってきた癖に、しばらく"真実"と呼ばれる度に顔を真っ赤にして震え出すのだから、からかいたくもなる。
むしろ俺を"司君"と呼ぶのに果たして何回"つ"を繰り返したのだろうか。
「もう知らないっ!」
「まあまあ、そんな怒るなって」
そんなやり取りを繰り返す内にいつの間にか真実の家に着いていた。
彼女の家はオートロック型のマンションでいかにも高級そうな佇まいをしていた。
「お邪魔します」
「どうぞ。荷物はリビングにお願いね。ちょっと洗濯物取り込んでくるわ」
「了解。よいしょっと……」
はち切れんばかりの袋を持ち上げて真っ直ぐ廊下を進んでいくとすぐにリビングに着いた。
開放感溢れるリビングの向こうにはソファーとテレビがあり、窓からは夕焼けがカーテンをすり抜けて差し込んでいた。
とりあえずリビングにある大きな机に荷物を置く。
「……ん?」
最後の荷物を机に置く時、不意に写真立てが視界に入る。
木製のこじんまりとした作りの中には一枚の写真が入っていた。そこには仲良く写っている男女の姿があった。
「真実……か」
今よりも幼いが女の子の方は真実だということがすぐに分かった。隣には真実の頭を撫でながら穏やかに笑っている男性がいる。多分この人は――
「わざわざ悪かったわね。でもおかげで助かったわ」
洗濯物を片手に持ちながら真実がリビングに入って来る。俺を見た後、すぐに目線は写真立ての方へ向いていた。
「あ、勝手に見てゴメン。この人、真実の兄貴だよな。随分仲良さそうだ」
「……うん。良く分かったわね、兄だって」
真実は俺の横を通り、写真立てを伏せた。表情は影になっていてよく分からない。
「まあ俺も兄貴だし、何となく分かるんだよ」
「……そっか。司君も、妹さんと仲良いものね。弥生ちゃん、だっけ」
冷蔵庫から麦茶を出しながら淡々と真実は話す。何だろう、先ほどまでと空気が違う気がする。
「あ、ああ……。良く知ってたな、妹の名前」
俺の質問に真実はクスッと笑う。そして俺に麦茶の入ったコップを差し出しながら――
「……勿論。忘れるわけないわ」
笑顔で答えた。
俺はコップを受け取ったまま棒立ちしていた。何だろう、彼女から伝わって来るこの感情は。
寒気がする。いつの間にか汗をかいていることに気付いた。もう11月なのに何で汗なんかかいているんだ、俺は。
「…………あんなに可愛い一年生、学校で知らない人の方が少ないわよ」
「……ああ、そういうことか」
「何よ、良いから座ったら」
一気に力が抜けて椅子に座り込む。冷たい麦茶が喉に染みた。何を恐れているんだろうか、俺は。
真実の言ったことは当たり前で、弥生が学内で有名人であることも俺は知っているじゃないか。変に考えてしまうのは俺の悪い癖だ。
だって……真実が知ってるわけないのだから。
「……家族、仲良いんだな」
「そうね。今はこっちで一人暮らしをしてるから家族にはあまり会えないけど」
「ふーん……って一人暮らし!?このマンションでか!?」
俺は思わず立ち上がり辺りを見回す。どう考えても一人では広すぎるリビングだ。だが真実はきょとんとしている。
「な、何でそんなに取り乱してるのよ。普通でしょ?」
さも当然のように答える真実はやはりどこかおかしいに違いなかった。主に金銭感覚が。
- 611 :嘘と真実 6話 ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:41:32 ID:Q5b3WH.c
-
しばらくたわいのない話をした後、真実の薦めもあって中条の見舞いに行くことにした。
真実は用事があるらしく、今から晃を誘うのも気が引けるので一人で行くことにする。
「じゃ、お邪魔しました」
「ううん、今日はありがとう。本当に助かったわ。一人だと何かと入り用なのよ」
あの大荷物も今思えば一人暮らしだからこその量だった。妙に納得しながら靴紐を結び立ち上がると、いきなり真実に背中から抱き着かれた。
「うおっ!?」
「…………」
動揺しまくる俺とは対照的に真実は黙って俺をただ抱きしめている。背中越しでも分かるほど甘い香りがしていた。
「ま、真実……さん……?」
「……はい、おしまい!」
「わっ!?」
急に弾き飛ばされてドアまで行ってしまう。振り向くと真実は顔を真っ赤にしていた。
「今日の……お礼よ。お、お礼なんだからねっ!?勘違いしないことっ!」
いきなりまくし立てる真実を見て、一つの言葉が自然と頭に浮かぶ。でも言ったらきっと彼女はまた真っ赤になって怒るに違いない。
「……な、何よ」
「真実って……典型的なツンデレだな」
まあ、言ってしまったが。そして当然のごとく顔を今以上に真っ赤にした真実に部屋を追い出されながら、病院に向かうのだった。
完全に毎回のパターンになっている気がするのは、気のせいではないと思う。
- 612 :嘘と真実 6話 ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:42:13 ID:Q5b3WH.c
-
「おう、元気そうで何よりだな」
「つ、司っ!?来るなら来るでちゃんと言ってからにしてよ!」
病院に着いたのは面会終了時間の30分程前だった。どうやらここの病院は休日の面会時間が短いようだ。
急いで中条の病室を訪ねるとパジャマ姿の中条はいきなり髪を整え始めたのだった。
「別にボサボサでも俺は構わないけど」
「あたしが構うの!もう……司の馬鹿!」
「す、すいません……」
よく分からないが怒られたので謝っておく。そのままベッドの横にある椅子に座って中条を眺める。
どうやらだいぶ良くなっているようだ。とりあえず、一安心だな。
「……来てくれて、ありがと」
「気にすんな。言ったろ、出来る限り来るってさ」
「う、うん。でも嬉しいよ……」
俯いて顔を赤らめる中条はいつもの意地悪な彼女と違ってとても女の子らしかった。
……いかん、何を考えてるんだ俺は。さっき真実に抱き着かれて変になったのかもしれない。
「で、どうなんだ体調は?もうすぐ退院出来るのか」
「うん。先生が言うには早ければ来週中に退院出来るって」
「お、良かったな。弥生も喜ぶよ、きっと」
中条とじっくり話したのは久しぶりな気がする。
相談を受けたあの夜から、まだ3、4日しか経っていないのだが、感覚的にはもう随分前のことに思えた。
話は主に中条の病院生活についてで、食事がまずいとか隣がうるさいなど基本的には中条の愚痴だったが、それでも十分楽しいひと時と過ごした。
「おっ、もう時間みたいだな」
「……うん」
「そんなしょんぼりすんな。また来るし――」
立ち上がろうとした瞬間、中条に抱きしめられる。真実といい、中条といい、女の子の間では今抱きしめが流行っているのだろうか。
……まあ中条の場合は、何となく分かる。ずっと病院で一人だと俺だって不安になってくるだろうしな。だから俺は励ましの意味を込めて――
「あっ……」
中条を抱きしめ返した。中条はそれに応えるように俺をより強く抱きしめる。
少しでも中条を元気付けることが出来たら、俺がここにいる意味はあるのかもしれない。
「……中条、頑張れよ」
「うん…………………えっ」
突然、中条が俺を引き離す。流石に強く抱きしめすぎたのだろうか。
「ゴメン、強すぎたか?」
「う、ううん……あ、あのね司――」
「はい、もう面会時間過ぎてますよ!さ、帰った帰った!」
いきなり看護婦のおばさんが病室に入って来る。時計を見ると既に10分程オーバーしていた。いつの間にか話し込んでしまったようだ。
中条は何か俺に言いたげだったが、看護婦のおばさんの勢いに負けてしまい、そのまま追い出されてしまった。
「さ、消灯するからアンタも帰りな!」
「う、ういっす……」
半強制的に病院から追い出されてすっかり暗くなった帰り道を一人歩く。
中条の最後の言葉が少し引っ掛かる。突然抱きしめるのを止めた中条は、とても不安げな表情をしていた。
「……また見舞いに行けば良いかな」
辺りは不気味な程真っ暗で、俺の呟きだけが響いた。
――この時俺はまだ気付いていなかった。これから始まる狂気は、もう既に俺たちを蝕んでいたことに。
- 613 :嘘と真実 6話 ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:42:49 ID:Q5b3WH.c
-
――あの香り。司からしていたあの香りは……。
「……司」
――間違いない。あの香りはあの女の……。
「……どうして」
――司は……司は……あの女と……いたんだ……。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
病院にはいつまでも無機質な声が響いていた。
「ふぅ……」
洗い物をしてやっと一息つく。さっきまで伏せていた写真立てを持ち上げると、私が大好きだった兄さんの笑顔が入って来た。
「……司、君か」
どこと無く兄さんに似ている。理由はそれだけだったのかもしれない。
でも気が付けば彼を目で追っている自分がいた。彼ともっと色んな話がしたい。だからこそ――
「上手くいったかしら……」
自分でもぞっとするような笑みを浮かべて、机に置いてある小ビンを眺める。愛用している香水を、ちゃんと"彼女"は分かってくれたのだろうか。
「ふふっ。信じているわよ、中条さん……」
彼女の笑みと同じくらい、今宵の月は不気味にその光を湛えていた。
- 614 : ◆Uw02HM2doE:2012/06/17(日) 23:44:45 ID:Q5b3WH.c
-
今回はここまでです。投下を終わります。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 615 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/17(日) 23:57:30 ID:o8EH/Xgg
- ありがとう‼
毎回楽しみにしてるぜ!
- 616 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/18(月) 00:03:33 ID:6LYMWCV6
- 辻本さんテラ策士
GJ
- 617 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/18(月) 00:22:37 ID:boQk5yCQ
- GJ!待ってました!
中条にもっと病んでほしいと思う俺はおかしいのかもしれない。
- 618 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/18(月) 00:28:30 ID:xnMSb7JQ
- gj
毎回投稿を待ち望んでいる俺がいるw
中条には幸せ(ヤンデレ的な意味で)になって欲しいんだが作者の今までの傾向から
して嫌な予感しかしない(´Д` )
- 619 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/18(月) 09:16:07 ID:2uwcUvao
- >>614
乙です!
- 620 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/19(火) 02:30:04 ID:0MRKuD46
- GJ!続きに期待。
結局誰が嫌がらせをしてるのか、気になる…
- 621 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/19(火) 19:36:23 ID:ePNgPNxc
- 中条さん頑張れ!
- 622 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/22(金) 19:17:04 ID:dsFLy9M.
- かソ…
最近ほトトギすが本気で来ないような気がするなぁ
- 623 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/23(土) 00:54:08 ID:Vsg8gajU
- 綾緒なら俺の隣で寝てるよ^^
- 624 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/23(土) 21:48:12 ID:hsdI2gEU
- >>623
耳掃除してもらえよ^^
- 625 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/24(日) 23:59:35 ID:k9qCwnFs
- 古本屋の女主人でヤンデレみたいなSSありませんかね?
それかどなたかぜひ短編を希望
- 626 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/25(月) 03:22:33 ID:usW1ad0Y
- まとめにあった気がするけどあんまり印象に残ってない
- 627 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/25(月) 05:23:46 ID:jUvjvlCI
- 小籠堂番台日誌だな
これ古本屋の意味あるのかと思わんでもないが
- 628 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/26(火) 02:08:16 ID:J2vbofcY
- >>627
見てきた。目を付けたネタはいいがただ古本屋と設定しただけな感じ
もっとうまくやれるとおもうが、まあむろん俺は無理
- 629 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/27(水) 00:55:34 ID:vcnyPYms
- 高身長のヤンデレってないかな?180cm位の
- 630 : ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:21:09 ID:89A4IfTU
- 年上が至高であることは僕の経験から言うべくもないが、周囲の年下、ロリ、ペドにはほとほと呆れさせられる。
年上だってスゴくいいんだ!!そんなことを伝える話
- 631 : ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:21:58 ID:89A4IfTU
- 「そんでさ、いつから付き合ってんの?」
姫さんの話になると、みんな鼻孔が少し広がる。
姫さんというのは僕の交際中の相手の事で、こういう話題になるのも僕の携帯の待受が姫さんと僕のツーショット写真だからだ。
「高二からかな、姫ちゃんの卒業式からだから、もしかしたら高一からかも」
交際の申し出は向こうからだ。 これを言うと相手はいつも驚く。
「なんて告白したの?」
ほら来た。 誰も僕が告白された側だなんてこと、微塵も考えちゃいない。
「リボン貰いにいく時に」
これは嘘だ。 驚かれるのが癪に障るからこういう風に言うようになった。
卒業式の日に一年生がわざわざ学校に行くわけ無い。 姫さんが僕の家に来てそのまま上がり込まれて告白されて一方的にリボンを渡された。
一方的になんて言うと聞こえが悪いが本当に一方的にだったんだからこれは語弊にはならないハズだ。
「どれ待受見せてよ。 うわ激マブ! 年上ってこんなエロいんだな……」
この時、僕は言うべきなのだろうか。
「そりゃあ、もうすごい」と
- 632 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:24:39 ID:89A4IfTU
-
学校の講義をすべて終えて、帰路に着くと必ず姫さんからメールが届く。
受信の件名が未だに『姫せんぱい』のままなのは僕が不精だからなんだと思う。
『講義お疲れ様、お腹空いてる?』
『姫ちゃんも就活、お疲れ様。 空いてるけど、今日母さんなんて言ってた?』
帰路の電車内で少し吟味してからこの内容で返信した。
勿論僕と姫さんは兄弟でも、ましてや幼馴染でもない。
しかし姫さんの方が僕よりも僕の母親と仲が良い。 今では遅くなるかどうかを僕よりも姫さんに伝えておくほどだ。
あと文章内で「姫ちゃん」と呼ぶのは向こうが一方的に取り決めた事で、それを破ると姫さんは拗ねる。
「付き合ってるのに、距離を置かれてるみたいで不安になる」と泣きつかれ、一時間もその事に対し問答が続くとさすがに不精の僕でも気をつけるようになる。
リュックの中から文庫出すよりも早く、返信が来た。 相変わらず早いなと感心する。
『今日師長会で遅いらしいよ。 冷蔵庫にも何にも無いし、ジョニーパスタに行こうよ、お金も貰ってるし!』
愛で溢れる絵文字に、この返信速度。 聞けば僕とメールのやり取りをしている時は常に携帯を握っているらしい。
友達と喋っているときなんかはわざわざ中断するというんだから、何だか僕の方が申し訳なく思ってしまう。
姫さんの友達界隈では僕は「束縛彼氏」なんて言われているそうな……。
『じゃあ、そうしますか。 今○○駅出たから後三十分ぐらいで付くと思う』
今度はあまり考えずに返信して、すぐに携帯をポケットの奥にねじ込む。 すぐに返信の合図の振動が来たが、僕はそれを無視して文庫本を開いた。
- 633 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:25:17 ID:89A4IfTU
-
富野姫華と出会ったのは高校の入試当日だった。
姫さんは僕の高校の先輩でその日監督生として学校に来ていた。
僕は試験が終わった直後にその昨夜の徹夜が祟ってトイレの便座で下半身を丸出しにして眠りこけてしまった。
僕の高校は少し辺鄙な土地にあるもので受験生の内に僕と友達と言えるような知り合いもいなくて僕は放置されて二時間もトイレで過ごしてしまった。
起きた頃には既に遅くて、すぐに職員室の電話を借りて中学校の方に安全を伝えた。
次に両親に電話したが、親は共働きで、両親二人は遅くなると言う事で迎えにはかなり遅くなると言う知らせを受けた。
バス停も下校時間を過ぎると、一気に本数が減りダイヤを見てもらうと、ほんの二分前に出たばかりで次は三十分ほどかかると言う。
それならば地元の駅まで送り届けると、ちょうど答案用紙を数え終えた姫さんが名乗りを挙げてくれた。
しかし僕は男子、もしもがあってはならないので、付き添いで会場に来ていた姫さんの後輩の女子生徒も付き添うと言う事で帰路は三人になった。
帰り道はとても受験直後とは思えないほど賑やかなものとなった。
理由は答え合わせの結果が上々だったからという事と、僕がトイレで眠りこけていた事で盛り上がったからだ。
前半はそんな感じで三人で盛り上がり、後半は注意すべき教員や、規則のレクチュアで。
付き添いで来た女子生徒とは駅のロータリーで別れ、駅から地元までは姫さんとしばらく同じだった。
生徒会の苦労話を聞いて、「生徒会も大変だな」としみじみ思っていた矢先、いつの間にか僕が生徒会に入る事を約束事にされていた。
この時は生返事の口約束で立候補しなければ投票を受け付ける事もあるまい、とタカを括っていたのが甘かった。
まさか生徒会長直々の『他薦』を貰う事になるとはこの時は粒とも考えていなかった。
しかも帰路を共にした女子生徒がゴネて、事もあろうに受験当日の僕の失態を恩着せがましく僕に説いてきたのだ。
こうなると僕は断る事も出来ず、生徒会として三年間のポストを約束させられたのである。
生徒会に入会して、始めにやったのは書記であった。
姫さんが懇切丁寧に僕にイロハを教えてくれたおかげで、二年次には会計、三年次には副会長の役職をそれぞれ全うする事が出来た。
しかし姫さんの「懇切丁寧」は文字通り丁寧であり、それと同時に姫さん自身の熱も合わさり下校時間を過ぎる事もしばしばあった。
正直迷惑だったが、教えてもらっている手前それを無碍にすることも出来ず、メモを取ったりして熱意に応えている「フリ」をしていた。 ……たまにだが。
そんなこともあって無事僕は姫さんの卒業まで真面目な後輩を演じきった。
やっと下校時間ギリギリで帰宅する事がなくなる! と思っていた春休みの頭、姫さんが卒業式を終えたその足で、自宅を訪ねて来た。
何で知ってるか、その時は驚きで一度しか聞かなかったが、上手くはぐらかされて結局聞けずにそのまま告白された。
後から聞いた話によると、僕の地元の祭りや近況の報告、些細な世間話などから大体の地元の割り出しをして探し回ったらしいが、僕は少しそれを疑問に感じていた。
- 634 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:26:12 ID:89A4IfTU
- タラコのカルボナーラは本当に最高だと食べ終わっていつも気付く。
ナポリタンおいしいとか言って食わず嫌いしいたあの頃の僕に論語を説きたい。
「師いわく、齢十七にしてカルボナーラに感服す」
「何言ってんの? 秀くん」
まだ梅肉パスタを食べている最中の姫さんがフッと笑う。
この図、歳の近い兄弟だと思われるんだろうな。
「カルボナーラに気付くのが遅すぎた。 それを悔やんで文献に残そうかなと」
「梅肉も美味しいよ。 ほら、あーん」
そう言って僕の口元までパスタを玉状にまとめたフォークを持ってくる。
こういうのも僕が情けなく思われる原因なんだろうな。 親鳥が行儀よくエサを運び、それを食べるひな鳥の図。
しかしひな鳥からすれば親鳥の食べろ、フォークを口に含めと言う物言わぬ圧力が口をこじ開けさせる。
フォークを口に含んだ瞬間、姫さんはなんとも言えぬ、嬉しそうな顔をする。 それもまたひな鳥としては複雑だ。
「どう、お味の方は?」
「うん。 まあまあ」
「そう? じゃあもう一口いる?」
甲斐甲斐しいと言われるのはこの辺りの性格のせいだろう。 高校の時もそう言われてからかわれていた。
でも実際は善意の押し売りなのだと、少し聞こえの悪い言い訳をしてしまうのが「ひな鳥のフリ」が上手い生徒の心情である。
「いや、デザートまで開けときたいからもういい」
「そうか、デザートも来るんだったね。 ごめん、すぐ食べちゃうね」
「ゆっくり食べて、もう少し姫ちゃんと一緒にいたいし」
嘘も方便である。 こうでも言わないと姫さんは急かされたみたいに急いで食べるからだ。
それは傍から見れば尽くす彼女に毒吐く彼氏で、僕に向けられる視線がまるでスキャンダルを暴かれたアイドルみたいに厳しいものとなる。
方便と言ったのも理由がある。
目の前の姫さんは頬を少し紅くしてとろける様な眼差しを僕に向け、「うん、わかったぁ」と普段はしっかりした声もおぼつかない赤子みたいになっている。
交際を始めてもう四年、慣れというものだろうか。
「ところでさ」
梅肉をフォークで掬い、口に含むと姫さんは言った。
「結構大事な話、あるんだよね」
「ん、なに?」
姫さんは一度わざとらしく咳払いをしてから、僕の方に改めて向きなおす。
- 635 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:27:08 ID:89A4IfTU
- 「私達、もう付き合って五年目に入ったんだよね」
「うん」
「それで、私も内定がめでたく通りまして……」
僕が今大学二回生で、姫さんが四回生なのに姫さんがこんなに余裕なのは八月にはもう大手の内定を決めていたからだ。
「うんうん」
ここでもう一度姫さんが咳払い。
「おほん、それでね秀くん。 私考えたの」
姫さんは、そう言って少し前に乗り出してきて僕の手を握る。
「四年経った今でも好きで、これからはもっと一緒にいたいと思ったの。 だから、ね?」
ほんのりと漂う空気が湿り気を帯びて、二人の間にある空気はさらに質感さえも伴っていく。
「……。 一緒に暮らさない?」
「え?」
「ああ、一緒に暮らすって言ってもね、結婚しようとかじゃないの。 同棲しようってこと、なんだけど……」
僕の驚きが、若干の戸惑いが意外だったのか、見る見るうちに姫さんはしぼんでいく。
「ええと、もしかしてイヤだったかな?」
握っていた手を離して、努めて落ち着いている様子を保ちながら姫さんは訊ねる。
しかしその表情は見ていて辛いものがある。
ひびの走る氷の上のような危うさ、ペキペキという音が聞こえる。
口元をキツく結ぶ姫さん。 それでも困ったような笑みを目元だけに浮かべている。
「イヤって言うか、突然すぎてさ……。 親にも言わないとさ、ね?」
「それなら大丈夫だと、思う」
「え?」
「もう話は何度かしてるの……」
口元の緊張を少し緩めて、でも困ったような笑みを崩す事は無く姫さんは続ける。
「学校の方も今より二駅は近くなるかなってぐらいだし、今よりも少し動きやすくなると思う」
「へえ、そうなんだ」
心情を吐露すると、同棲は望んでいない。
セックスだって僕はあまり積極的ではないし、姫さんの事も好きだけれどもずっと一緒にいたいわけではない。
気を使ってるし、姫さんはやたらと会いたがるし一緒にもいようとするけど、そういう気持ちは僕の方にはあまり無い。
「僕が通学してる大学は私立って事しってるよね?」
「ああ、うん。 でも家賃も光熱費とか生活費は私が負担するし、秀君には負担はかけないつもりだよ」
それはそれで困るのだ。 なんと言うかその辺りの事の比重が違うと“後ろめたさ”が出来てしまう。
今でさえ僕は姫さんに負い目や、自分という人間の情けなさを自覚しているのに、これ以上の自分の不甲斐なさを認識するような項目を作りたくない。
「ね? どうかな?」
さっきの笑みは既に、歓喜の色を見せていた。 僕の不安要素は無いと思っているのだろう。
「急でさ、ごめん……、まだ何もいえない」
笑って見せるけど、きっと逆効果だ。 見る見るうちに姫さんがしぼんでいく。
「そっか、うん。 分かった」
- 636 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:28:03 ID:89A4IfTU
- あの食事から今日までの一週間、僕はとにかく姫さんから離れた。
メールは出来る限り手短に済ましたし、会う約束はとにかく蹴った。
そして今、僕は戸惑っている。
学校で少し残ってレポートを終わらして、いつもよりも遅く帰ってきた。
姫さんとのメールも「友達と遊びに行くから」とテキトーなこと言って切り上げた。
これで多分逃げ切れたはずなんだ。 なのに……姫さんが改札にいる。
それも必死に僕を探しているのか、改札から出てくる一人一人をしっかりと吟味している。
携帯を見ると着信が五回ほどきていた。 すべて姫さんからだ。
おそらく最近の僕の態度に気付いたのだろう。
このままでは仕方ないし、次の改札に向かう列に紛れていく事にした。
「あっ! 秀くん!!」
改札を抜けると同時に姫さんは僕に駆け寄り、手を握ってきた。
ものすごく嬉しそうなその表情に、僕以外の人は微笑ましいと心の内で思っているのだろう、優しい笑みを僕に向けてきた。
「どうしたの? なにかあった?」
「うん。 今日おばさん夜勤らしいから晩御飯作っておいたんだけど、携帯は繋がらなかったし、ね」
あくまで、僕に非を求めない。 僕の罪悪感が喉元まで来たのが分かる。
何も言えない。なんでだ。
「帰ろう?」
手を引かれるまま、僕は歩みを開始する。
「今週カリキュラム詰まってて大変だったでしょ? 明日から二連休うれしいね」
僕の嘘すら暴こうとしない。辛い。乾いた笑顔しか出来ない。
「ビーフシチュー久しぶりに作ってみたんだ。 秋になってまだすぐだけど、上手くできたと思うんだよね。 フフン」
どれくらい待ってたんだろう? 何時間、僕を。
もういっそのこと僕を攻めて欲しかった。罵詈雑言を浴びせ、僕の嘘を暴き、僕に謝罪を要求して欲しい。
「ちゃんとパンも用意してるから、抜かりはないハズ!」
「あのさ、」
「うん?」
改まって僕よりも目線よりも少し高い位置にある姫さんの目を見る。
僕よりも高い身長、すらっと長い足が目立つ体躯。華奢なイメージを思わせる腰、肩まで伸びた髪を後ろで束ねたお決まりのポニーテール。
少し高い鼻、小ぶりな唇、少し垂れ気味の眼、血色の良い白い肌。
いつもそうだった、僕の負い目。
釣り合うわけも無い。姫さんの友人も言っていた。
『姫ちゃん、なんであんな子と付き合ってるんだろうね?』
盲目的な愛。それは見えていないだけで、気付けば途端にしらけてしまう。
もしかしたら、そう考えた事もあった。でもそれは、きっと狂人の戯言。
健常な人からすればただの妄言なのだ。
気付いていたが、最後まで付き合うつもりだった。こう言えば聞こえはいいが、僕もきっと盲目的に愛されていただけなのだろう。
今まで黙って、自分の気持ちを不愉快に感じていたのがその証拠だ。
- 637 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:29:10 ID:89A4IfTU
- 「今日は、外食にしたい」
「えっ? でもお財布は家に置いて来ちゃったよ?」
「僕が出すよ」
そう言うと姫さんは慌てて言った。
「そんな! 悪いよ」
「大丈夫、お金あるから」
知っていた。姫さんが外食やデートの経費を自己負担していること、母さんから貰っているという嘘。
言わなかったのは、言えなかったのは僕の甘え。
「いいんだ、話もあるし」
「うー。 ……分かった。 じゃあ、そうしよっか」
やっと、折れてくれた。
最後ぐらいは僕が出さないと、いけないよな。
別れよう。
晩御飯を終えてから、近所の公園まで足を伸ばした。
自宅でするような話じゃないからだ。
きっと姫さんは承諾しない。それどころか、おそらくひどい癇癪を起こす。
そんなところに両親が来たら……、考えただけでもぞっとする。
公園のベンチに座ると、姫さんも隣に腰掛けてきた。肩が当たるそんな近さが、今は不快でしかなかった。
繋いできた手が、それを際立たせる。
「あのさ」
「うん?」
切り出したのは僕ではなく、姫さんの方からだった。
「同棲の話、考えてくれた?」
「うん、まあね……」
嘘ではない。
「私もね、この一週間ずっと、頑張って考えたの。 話してもいい?」
「いや、まずは俺からいいかな」
「うん。 いいよ」
肩に重みを感じた。姫さんが頭を預けてきていた。
「まずさ、同棲の話。 やっぱりこれは出来ない」
思い切って、言ってみた。
反論がくると思ったけど、案外あっさり姫さんは頷くだけで了承してくれた。
その穏やかな表情に一抹の不安を感じながら、僕は続ける。
「次にさ、俺たちのこれから、何だけど……」
握られていた手を解く。それから姫さんの両肩に手を置き、姫さんを僕の肩から離し、僕も姫さんと対面するような姿勢に改まってから言った。
「俺たち、少し距離を置こう」
姫さんの両目が何度か瞬きをした後、「え?」と僕の発言に虚を衝かれたような、そんな表情を浮かべる。
急に後悔に似た罪悪感が僕の背を押した。 立ち上がるしかなかった。
横からの姫さんの視線から逃げるために立ち上がったのだ。
改まって後ろを振り返る。 姫さんはまだ膠着したままでこちらを見上げている。 僕が急に立ち上がって驚いたのかもしれない。
- 638 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:29:36 ID:89A4IfTU
- 「ごめん……」
そう言って、その場を後にしようとした。 逃げようとしたのだ。
初めて他人をあそこまで落胆させた。 その光景に背を向けるしか僕は出来なかった。
一歩踏み出すかどうか、その瞬間に腕を捕まれた。
「ちょっと待って!」
姫さんの大きい声は普段は聞くことは無い。 それほどに普段は穏やかな人なのだ。
公園一面に聞こえたのではないか、そう思うくらいの“叫び”。
「座って」
「イヤだ」
情けないが、もう姫さんの顔を見れる自信は無かった。 愚かだ。
あまつさえ姫さんを引き剥がそうと綱引きを展開し始める自分に笑えてくる。
「座りなさい」
「話すことなんて無いよ、距離を置こう」
今度は姫さんが立ち上がった。
腕を手繰り寄せられ、姫さんと向き合う形になった。 なんて非力なんだ、僕。
「答えはノーよ。 昔も今も私に秀くんに不満なんてないよ。 秀くんにあるのなら言って? 頑張って直すから」
姫さんの瞳には強い意志が宿っていた。掴まれているのが腕から手に変わっていた。
僕よりも強い力。 日ごろのトレーニングの賜物だろうか。
そのまま抱き寄せられる。 僕は抵抗するが、それも空しく抱きしめられてしまう。
華奢な体のどこにこんな力があるんだ? たしかに姫さんの腹筋はうっすらと割れてるけども、線自体は細い。
「やめて、離して!」
普通は女性の方が言うセリフなんだろうな……。
「秀くんは、何にも心配しなくてもいいんだよ?」
少し姫さんの腕の力が弱まったと思うと途端、頬を片手で挟まれ唇を奪われてしまった。
入ってくれる舌。 いつもより大きい音で唾液を啜られる。
思わず縮こまりそうになる。 背中から来る姫さんの腕の力が強まる。
荒くなる呼吸、隅々まで這い回る姫さんの舌。
僕は既に抗う力を無くしていた。 それは諦めとかそういうのではなくて、ただただ姫さんの術による圧倒からだった。
「はあ、」
気持ちよかった、僕は若干の体重を姫さんの身体に預けていたから、姫さんの声は耳元で聞こえている。
休む間もなく、姫さんは耳を弄り始めた。
啄ばむ様な口付けと、軟骨を這う舌。 徐々に湿り気を帯びていくのに応じて背筋に電気が走り、思わず仰け反る。
「ずっと、一緒だよね? ずっと……ねえ? 秀」
やっと離れた。 が、一人では踏ん張らなければ、到底立てない。
すぐに姫さんが僕を抱きしめる。 今度は無理やりではなく、優しく。
背中を摩る姫さんの手。 しかし息はまだ荒い。
姫さんは僕よりも六センチほど高いので、見上げる形で姫さんの表情を伺う。
うっとりとした表情はきっと僕意外は見たことが無いだろう。 完全にしまりを無くしている。
欲望を充足させ、放心によって満足に限りなく近づいた姫さんのその表情。
「どうする……? 続き、する?」
妖しげな期待の色が瞳に入り混じり、笑みも艶かしいものに変わっていく。
そして、僕を片手抱きとめたまま、もう一方の片手が僕の身体に沿って降りていく。
「うふ」
姫さんの笑みが邪なものに変わる。
僕が勃起しているのが堪らなく嬉しいのだろう。
- 639 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:30:21 ID:89A4IfTU
- 「お家いこっか?」
このまま、姫さんに身体を預けたまま、自宅に戻れば……。
急所に触れられたせいか、急に頭の隅がハッキリとした。
冷静になった一部が必死に拒否と診断する。
「イヤ、だ」
「え?」
姫さんから離れて、姫さんの眼を見て言う。
「もうたくさんだ」
「秀……くん?」
「少しの間、会いたくない。 独りにしてくれ」
そこまで言って、やっと駆け出す。
姫さんは追ってこなかった。
そんな事に安心している自分に気付いたのは、施錠を解いている時だった。
リビングに入ると、微かにビーフシチューの香りがした。
テーブルにはフランスパンのような固いイメージを思わせるパンが何丁か用意されていてランチョンマットもお皿も、スプーンも二個ずつ行儀よく置かれていた。
僕は着替えも、シャワーも浴びないまま施錠だけをしてすぐにベッドに横になった。
心の中は疲弊と、達成感と、少しの寂しさがあった。
思えば、この部屋に何度姫さんが来たんだろう?
両親よりも多くここにいた気がする。
部屋を見渡せばそこら中に姫さん由来の物があった。
姫さんからのプレゼント、姫さんが持っている物とセットの物。
下手をすれば僕の物よりそっちの方が多いかもしれない。
姫さんは好んで僕によく何かをプレゼントしてくれた。 そして僕がそれを身に付けたり、使っていたりすると上機嫌になる。
僕の方はあまり財政がよくなかったのであまり贈り物を用意する事は少なかったが、ストラップや欲しいと言っていたものを渡すと、目尻を濡らして喜んでくれた。
喜んで付けるのは別にいいのだけれども劣化した挙句、ストラップの紐などが何度も修繕されているのを見ると、何だか僕は情けない気持ちになっていた。
そういえば、この部屋が互いにとって始めての性交渉を持った場所でもあった。
思い出して情けなくなるのが、終始リードしてくれていたのは姫さんの方で、誘ってきたのも姫さんだった。
あの日から姫さんのアプローチとアクションが過激になり、僕は会うのが少し億劫になっていた。
それからはデートの誘いも断り、一緒にいることも少なくなってきた。
そして姫さんに土下座をされた。 しかも改札でだ。
「許してください、お願いします」
周囲の目が僕と姫さんに突き刺さる中、謝罪を続けようとする姫さんをやっとの事で立たせると、この部屋で長い長い談合を行った。
必死な姫さんに折れて、僕は性交渉の頻度と内容の改善を提案した。
姫さんはそれを受諾し、それから今後の交際の続行を望んだ。
その時の必死さは、いま思い出しても怖い。
「本当に、いいんだよね? それだけ我慢したら、一緒にいてくれるんだよね?」
必死なその姿に、僕は頷くしかなかった。
まどろむ中、そういった経験が何度かあった事が僕の姫さんに対する負い目と付随して、大きくなっていたのだろうと確信した。
きっとあのまま、このベッドに二人横になっていたら、それこそ後悔していただろう。
このまま、眠って目覚めたら、変わろう。
もう、何も気にしなくてもいいように。 それなら臨終まで独りでもいい。
そう思いながら、明日に何も不安の無いまま、まどろみの中に落ちていく。
何も考えずに明日を迎えるなんていつ以来だろう。
- 640 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:31:08 ID:89A4IfTU
- 何度かメールを送ったけど返信が来ない。
あれからどれくらい時間が過ぎたのだろう。
携帯の液晶に表示された時刻は既に先の出来事が昨日の事だと掲示している。
交際を始めて、三年と半年。
思い返せば彼、秀くんの事ばかりを優先していた事に少し胸がドキリとする。
頭から足の先まで、彼の事ばかり。
秋の始めの頃の空気は夜になるともう寒く感じるほどで、少しだけ熱を帯びた携帯が妙に浮きだって感じる。
携帯のメニューから電話帳を呼び出し、秀君の番号を選択し発信する。
何度かの電子音を聞いてから電源ボタンを押して立ち上げる。
ベンチから立ち上がり、公園を出てすぐに足は秀くんの家に向いて歩き出した。
何だか。 何だか昔の事をさっきからずっと思い出している。
そして決まって思い出すのは秀くんの事ばかりで、勝手に笑みがこぼれる。
生徒会に入ったばかりの頃、私の指導を熱心に聞く彼。 メモを取り、言われた事を反芻する声。
まだあの時は可愛い後輩にしか思っていなかった。 でも時が経つにつれて、私は無理やり理由を作って彼と生徒会の活動をするようになっていた。
私のいきなりの誘いには、彼も困っていただろう。
あの頃は秀くんは高校一年生で、初めての事の連続だったから。
分かっていながらも、私は彼を連れまわした。
放課後も彼を拘束するような事を何度もした。
夏休みや祝日も学校に呼び出し、筆記係がしなくてもいいような事を私と彼の二人きりで行っていた。
義務感からか、それともそういう性分からか、彼は少し困ったような態度を見せるだけで、私が強引に押し切れば付き合ってくれた。
ここで私は彼の性格に味をしめてしまったわけだ。
「彼は頼まれれば断れない性格なのだ」
私のこの予感は当たっていた。
そうして彼を独占したのだ。 卒業式の当日に。
住所は、恥かしながらストーキングをしていたので知っていた。
卒業式の当日、生徒会は基本的に全員出席のだけれども、一年生は例外的に一般性と同様に休日を割り当てられる。
彼が来ないことは大学入試の前日に知った。
彼が私のために出席してくれないのに落胆し、入試はギリギリの成績となってしまったのを今でも覚えている。
卒業式を終えて何人かの友人たちと別れを惜しみ、何人かの男子生徒からの「お約束の」告白を済ませた後、すぐさま彼の家へ向かった。
電車に少し揺られて、何度も彼の背中を追って歩いた道を通り、彼の家の前に立つ。
そして意外な事に、これが始めて秀くんの家のインターホンを押した瞬間だった。
- 641 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:31:39 ID:89A4IfTU
- 「先輩!?」
秀くんの驚いた声に私はその時、我に返ったのだ。
秀くんにアポイメントをとるのを忘れていた。
その事に気付いたせいで声が裏返る。
「少し、よろしいでしょうか?」
しまった。 秀くんの前ではいつも冷静な先輩を演じていたのに、ここでボロを出してしまうなんて。
「えっと……」
しかし、そんな事でここを終わらせてしまえば、ここを逃してしまうと。
そんな事が脳裏によぎり、勝手に言葉を紡いでいた。
「中に入ってもいい?」
「えっ?」
「すぐに終わるから」
いつもの通り、押し切った。
そして秀くんは、いつも通り押し切られた。
そのまま私は家に上がりこみ、秀くんの部屋に入り、告白をした。
部屋に入った瞬間、部屋の匂いにあてられ少し眼が回ったけど、すぐに立ち直った。
それほどに気合が入っていた。
「卒業式、お疲れ様でした」
「ふー、本当にこないんだもん。 代表者の挨拶読み上げるとき探してたのに……」
わざと秀くんに嫌味を言う。
今後の展開も視野に入れての発言。 嫌な女だ。
秀くんは悪びれて何度か軽く頭を下げ、謝辞を告げる。
「それで、話って何ですか?」
秀くんがそう言ったのをきっかけに私は姿勢を改め、正座を組み、秀くんの眼の目を見る。
「あのね、ずっと前から言おうと思っていたんだけど……」
話している最中から制服のリボンを解き、何度か畳んで秀くんに差し出す。
「私と付き合ってください」
- 642 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:32:06 ID:89A4IfTU
- 秀くんはすぐに眉間に皺を寄せた。すかさず私は彼の手にリボンをねじ込み、秀くんを抱き寄せた。
実際力ずくでも良かったけど、秀くんの了解を得て交際を始めたかった。
秀くんの鼓動は、私の告白か行動かのいずれかによって激しく彼の胸を叩いていた。
それを肌越しに感じて、濁った思考が心の中に満ちていく。
『あともう少し、いつも通り押し切ってしまえ』
「えっと、先輩……、あの、ですね」
ダメだ!
グッと抱きしめる。 秀くんの骨が鳴る。 肋骨は鳴りやすい。
「生徒会の時に、いつも連れまわしてごめんね? イヤだったよね? 私がもう少し自分を抑えてたら……ごめんね」
感極まり、涙が出る。 嗚咽を理由に彼の髪の匂いを思い切り吸う。
ここぞとばかりに彼の手を握る。 そして必死に秀くんを抱きしめる。 足を絡ませる。
「い、いえ、別に迷惑になんて思っていません」
この言葉に心の中で酷く笑ってしまった。
もう少しで、もう少しで彼を手に入れることが出来る。
それから溜息を彼の耳に何度も当て、背中に回していた手を彼の首筋に回す。
動脈の鼓動は未だに激しいまま。 私はそれに歓喜する。
「あんな風にしたのは、秀くんに会う理由がそれしかなかったからなんだ……ごめんね」
わざとらしく彼のうなじに口をつけながら声を出す。 一言出すたびに彼の体が少し震えて……、秀くんの私に対する反応の一つ一つが愛おしくて仕方が無い。
「俺なんかでいいのか、分からないんです……」
嗚呼、やった! ここまで長かった。
でもそれもこれで終わりなのだと思うと、すぐに心労は消える。
彼の後ろめたさに対する抵抗の無さに、私はどれだけ助けられてきたのだろう。
利用し続けたが、彼は一度も私のその卑怯な手段を見抜かぬまま、私の手中に落ちるのだ。
嬉しさで心が躍る。 それを表面には出さない。
ここはそういう場面だと、今までの経験が告げる。
あくまで冷静な演出を続けなければならない。
それが彼への礼儀だと思うのだ。
「ううん、秀くんじゃなきゃいやなの。 もう一度聞くね?」
わざとらしい涙も彼には一途な宝石に見えただろう。
上擦った声も純情な乙女の命がけの告白に聞こえただろう。
知らなくてもいい。 彼はこの事に気付かず、終わるに違いない。
その自信がある。
「私と付き合ってください」
- 643 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:32:36 ID:89A4IfTU
- コンビニに入って、駄菓子を買う。
秀くんの好きなじゃがりことのりしお味のポテトチップス。
飲み物はポカリスエットを二つ。
店員さんはもうフリーターなんだろう、私が大学に入ってからずっとここでバイトしている人だ。
何度か声を掛けられた記憶がある。
コイツの印象というか目つきが細くて嫌な気持ちになったのを覚えている。
そういえば初めてコンドームを買ったのもこのコンビニだったなあ。
別になんとも思っていなかったけど、わざと秀くんと連れ立ってコイツがレジを担当している時に買ったな。
「あれ? 今日彼氏さんはいないんですか?」
最悪、話しかけてきた。
「その目って見えてるんですか?」と嫌味を返してやろうかと考えたが、面倒なのでテキトーに笑みを返しておいた。
「おつりとレシートになります」
おつりを受け取る際、手を握られた。 思わず笑みが崩れる。
狐目の癖に調子に乗るな。 そういう嫌味も込めて、握られた手を目の前で拭いだ。
狐目が眉間に皺を作るが、気持ち悪いモノは気持ち悪い。
「あの、ウェットシートください」
コンビニを出て、ウェットシートでさらに手を拭う。
あの手の輩は調子に乗らせておくとろくな事が無い。 妙に自信があるのもいただけない。
私達ぐらいの若者で「特別」というのは本当に希少な事なのだ。
容姿や何かの後ろ盾がないとまず輝けはしない。
だから恋人や友人と言う役をわざわざ認識して、各々でそれらを特別な扱いをしているというポーズをとるしかない。
いわばごっこなのだ。 それらというものは社会に出てからも重要だから慣れ親しんでおかなければならない。
子供が人形遊びで擬似的な母親をするのも、ヒーローごっこでわざわざ悪役を演じるのも、予行練習という一言に集約している。
でも、なぜだろう。
そう思うたびに、秀くんの事で胸が痛む。
彼を思うたびに、考えるほど、待っている時ほど私の中で彼がどんどん大きくなっていくのだ。
何かしてあげたい、喜んで欲しい、ずっと好きでいて欲しい。
そういった感情が、秀くんをもっと特別にしていく。
そして、私以外の人には秀君のことを特別に思って欲しくない、見ないで欲しい。 そう思うようになった。
だから私は彼と共有の友人が多い。
彼が誰かと遊ぶ予定があると私は決まってそれに参加した。
彼の友人達には私は出来た人間だと思われているだろう。 それはそういう風に演じきった自信があるからだ。
器量よしで、一途で、彼以外には興味が無い。
そういった人物像で彼の友人と接していた。
それが功を奏したのだろう、友人達は彼と私の関係に羨ましいということ以外に口を挟むことはなくなった。
あれだけ秀くんののろけ話をしていればそうなるのもおかしくは無い。
- 644 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:33:55 ID:89A4IfTU
- ウェットシートをゴミ箱に入れた際に、あの店員と目が合った。
店員は手を振ってきたけど私は無視して歩みを再開した。
一応もう一度携帯から発信してみたが、秀くんは出てくれなかった。
きっとあの狐目の性だな。
携帯の画像フォルダを呼び出し、暗証番号を打ち込んでフォルダにアクセスする。
フォルダ名は“秀くん”
普段は暗証番号なんて打ち込まなくても呼び出せるフォルダで我慢しているのだけれど、さっきみたいに不快な事が起こると私はこのフォルダで癒しを受ける事にしている。
このフォルダはいわゆる“ハメ撮り”という種類の画像が保存されている。
もちろん私自身が撮られているわけではない。 秀くんのフォルダなのだから、そこには秀くんしか写っていない。
中でも一番のお気に入りは始めての写真だ。
付き合い始めて二ヶ月。 秀くんが私と手を繋ぐ事にも慣れ始めて、私が目配せすると秀くんから繋いでくれる様になった頃。
セックスもしない「イチャイチャ」に悶々としていた私は次のデートで絶対にシようと決めていたのだ。
しかし秀くんの奥手な性格ではこれから自分から手を繋ごうとするのが限界だろうという予想は見えていた。
そう、私から仕掛けるしかこの状況の打開は無いのだ。
六月の中間試験の最終日に予定を空けておくように秀くんに釘を刺し、私は私でインターネットや友達伝いの情報で予備知識を集めて戦闘にそなえて動いていた。
幸い、「お姉さんキャラ」というポジションに憧れる女子大生が多数に存在してくれたおかげでその手の話には事欠かなかった。
恥じらいなどが全く存在しない「猥談」には正直呆れてしまったけど、嬉しそうに体験談を語る彼女達を見ていると少なくとも意中の男性とそういう行為を行うのはとても楽しい、嬉しい事だと言うのは分かった。
月並みな言葉だが、それで幸せならそれでいいのだろう。 そう思った。
ついに来た六月十一日、私は歩く保健の教科書と化していた。
気持ちを高揚させ、生理周期も完全に計算に入れてこの日に望んだ。
秀くんの家に行く前には五キロのジョギングとアップを済ませて、シャワーを浴びて、コンビニでゴムも買った。
卑猥な話に私と秀くんを投影し、興奮しても決して自慰行為はしなかった。
その方が感じやすくなるとかそんな都市伝説みたいな迷信を信じていたからではない。
私はこの時セックスしようではなく、彼を犯そうと考えていたからだ。
秀くんは始めての際にインパクトを与えておかなければならないと思ったからだ。
「お前は私のために射精するのだ」
常軌を逸していたと言っても過言ではない。 犯罪者のロジックだ。 しかも犯罪の種類が強姦。交際関係が無ければ腹をくくらなければならない。
いや、交際関係があってもおそらくダメだろう。
しかし犯罪者は浅ましい思考といやらしい欲望の矛先を見つけていた。
これは不幸な事だ。 状況が見えなくなっている証拠なのだ。 きっと冷静ではいられない。
経験者が言うのだから間違いない。
酔っ払いが「酔ってないです」という常套句を吐くのと同じだ。
酔っていたんだ。 富野姫華。
セックスをしに行くというより、レイプしに行くというほうが正しいと思う。
そもそも秀くんからすれば私という人間が犯しに来たというのが分かれば、きっと落胆するに違いない。
それはいけないなと考えを改めたが、これは行為の中断の熟考ではなく、行為の開始に関する熟考であった。
どのようにすれば、強姦を初めから考えていた事をバレずに出来るか。
恥ずかしながら、幼稚である。
- 645 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:34:31 ID:89A4IfTU
- 部屋に入ると私はすぐに秀くんとベッドに横になった。
秀くんはこれをあまり好まないけど、私が手招きすれば応じてくれる。
これであとはムラムラしたとか言えば、初めからその気は無かったと思ってくれるはず。
今にして思えばだが、バレバレである。
抱き合って三十分ほどしたぐらいで、私は秀くんを思い切り抱き寄せ、付き合ってから六回目の口付けをした。
今回のは深い方だ。
初めての行為なので、秀くんは私を離そうと抱擁を解こうとしたが、私はグッと力を込めてそれを阻止する。
この時から私には確信があった。
私のほうが秀くんよりも体力があると言う事に。
小学校高学年の頃から習い始めた総合格闘技のおかげか、それとも中学校のときから始めたジョギングのおかげか。
ともかく、単純な腕力でも、格闘技から見た腕力でも秀くんには負けることはないという確信があった。
そもそも秀くんは私よりも骨格が太い割りに非力なのだ。
決して私が太いわけではない……、はず。
長い間の口付けを終えて、秀くんの顔を見る。
目をしぱたたかせ、困惑するその表情は、まさしく天使のそれと同じくらい愛おしい。
胸を何度も締め付ける感覚に思わず鳥肌が立つ。
「しよう?」
この時、彼は予想通りためらった。
何か言おうとして、唇が動いたが、私はその言葉が出ることを許さなかった。
再び彼を強引に抱き寄せ、接吻する。 いや、“させた”というべきか。
その後は、秀くんの顔中にキスをして、耳に舌を這わせ、首筋に痕を付けるほどの口付けをした。
それと平行して私は服を脱ぎ、秀くんの服をずらしながら乳首を軽くつねったり、へその入り口に沿って指で舐めたり。
そこまできて、ようやく秀くんが口を開いた。
「や、やめて……」
この時の彼のうっとりした表情、彼の紅くなった頬、絶え絶えになった声。
我慢できるわけがなかった。 いやむしろ私を焚きつけたのはその仕草だった。
「気持ちいい、くせに……」
恥ずかしい事ながら私は我を忘れて彼をむさぼった。
脱いだ服で彼の手足を縛り、言葉攻めにして、彼の感じるたびに震えるその体を満足するまで蹂躙した。
陵辱、強姦、秀くんは腰を浮かせ、身体をねじったりしながらも私が与える刺激に対して抗ったが、その様な仕草も私には肴になってしまった。
いやおそらく、そのような仕草が好物でこういう事をするのだろうと、冷静な私は分析していた。
「ほら、入れるよ?」
散々、遊んだ後秀くんも精根尽き果て、大人しくなり抵抗もしなくなって私はセックスを始めた。
秀くんは目を泣き腫らし、それを隠そうと拘束されて満足に動けない腕で顔を隠しながら騎上位の私を見上げていた。
その表情も私を酷く満足させてくれた。
征服する喜び、恐怖を与え主導権を握る喜びに血肉も踊る。
例えるなら歓喜、欣幸、法悦、それから随喜。
たまらず私は携帯を取り出し、カメラモードで画面に映りだした秀くんに声をかける。
「ほら、秀くん、腕どけて!」
「えっ、やめて! 撮らないで……」
もはや聞く耳持たんとばかりに無理やり腕をどかせ、シャッターを切る。
何度も何度も。
慣れ始めた腰の動きに緩急をつけて、たまに腰を折り。彼に口付けをする。
それを嫌がり、顔を逸らす秀くん。
しかし生殺与奪の権利はこちらにあるとばかりに、私は彼に強要する。
それもたまらなく私に満足感や、やりがいを与えていると、彼は気付いていない。
燃えるのだ。 文字通り。
「そろそろ、イこっか?」
もはや秀くんは何も言わなかった。
なにも言わなかった。
- 646 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:34:59 ID:89A4IfTU
-
思えば、それが私たちの初めての喧嘩だった。
内容は秀くんの徹底的な無視。
無理やり会おうと思えば会えるのだが、会ってみても秀くんはどこか虚ろで、屋内には行こうとせず、そのまま帰ってしまう。
手も、繋いでくれなくなった。
私から繋いでも、いつの間にか離れてしまう。 嫌がっているのが分かるのは辛い。
そして何がダメなのかも分からないのだ。
先も言っていた通り、これが私と秀くんの不一致の原因なんだと思う。
ともかく私はその秀くんの態度にとことん追い詰められてしまった。
負けたのだ。
しかし当の本人はその事に気付いていない。 私が降伏をしようと電話をかけるが、一向に出ない。
このままでは私が飢え死にしてしまう。 それが狙いならば本当にまずい。
実際にこの頃の私は奇行を繰り返していた。
彼の部屋の灯りが着いたと同時に電話をかけたり、通学中の彼に対して痴漢行為を行ったり、通り魔を撃退したりと、思い出しただけでも気が狂っていたと自嘲してしまう。
まあ、たくさんの葛藤を乗り越え、敵本陣に乗り込む事に決めた私は改札で彼を待ち、土下座を敢行した。
それが功を奏して、何とか話し合いの席を設ける事が出来た。
先も言ったとおり無茶苦茶なやり口だ。 余裕がなかったにしてもこれは少しお行儀が悪い。
しかし、これを機に私たちの初めての喧嘩は幕を閉じたのだ。
聞けば性行為の際に私と秀くんとの間に温度差があったようで、秀くんはその時の私との齟齬を気に掛けていただけだった様だ。
それならばと私は彼に合わせると彼に意見し、そこをオトシ所とした。
それからはもう禁欲あっての宴のように私の生活は一変した。
秀くんから返ってくるメールの一文字一文字に感動し、聞く発音の一つにも感嘆とした。
「ところでさ、誕生日プレゼントもう買ってあるからね?」
キョトンと一拍置いて「ああ」と秀くんは頷く。
この人は下手をすれば自分の誕生日を忘れてしまうほど自分というものを希薄に感じている節がある。
何よりも自分よりも、自分の嫌悪感を先に優先してしまうのがその現れだ。
「ごめんね、ありがとう」
「ううん、いいよ。 それよりもまだ手を離さないで欲しいな」
腰に回っていた手の感触が離れていくのが素直に悲しかった。
「ああ、ごめん」とばかりに彼はさっきの場所に手を戻してくれた。
嗚呼、もうそれだけでも幸福感が沸いてくる。
どれだけの事なのだろうこの充足感は。 アンドロギュノスが元に戻ったようなそんな感覚だろうか。
彼のほうに体重を預けると、吐息が耳にかかってこそばゆいと同時に深い愛おしさがこみ上げてくるのを感じる。
- 647 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:35:18 ID:89A4IfTU
-
「きっと喜んでくれると思うの。 自信あるよ」
彼はその顔に笑みを深くして、髪を撫でてくれるそれが無性に嬉しい。
喜んでもらっているのが分かる。 そしてそう感じてもらっているのが無性に嬉しい。
もっと喜んで欲しい。 私でもっと満たされて欲しい。
「晩御飯とか、も、頑張るからね」
とうとう泣いてしまった。
秀くんはそれに戸惑って、私がわがままを言うとすぐにそれに応えて抱きしめてくれる。
きっと、秀くんは誰にもこうなのだと思う。
ただ交際中で、こんなワガママを言うのが現状では私しかいないからこうやってくれてるけど、きっと他の子に対しても頼めば実行してやるのだろう。
それは優しさなのだと思う。 薄情であるわけではなく、ただただ他人に優しい。
彼は人を嫌わない。 怒ることはあるだろうが、それは人に怒っているのではなく、行動のそれに怒っているのだ。
まさに罪を憎んで、人を憎まずを地で行っているのだ。
私は、私はだから不安なのだ。
この優しさも、この扱いも、私ただひとりのモノにしたい。
優しさが彼の総てではない。 しかし彼の強さは優しさから来るものであると私には分かる。
その純然な彼の強かさが、高邁とした彼の哲学がただただ愛おしい。
「私以外に、もう優しくしないで」
無理だと分かっていても、彼は「頑張ってみるよ」と了解をしてくれる。
きっと思いの丈がありすぎるのだ、私は。
「私ももっと、貴方だけになるから。 そうするから……」
叶わない願い、それが思いの丈なのだ。
「お願い、お願いだから……」
「分かってる。 うん、ごめんね」
そうして彼に接吻をねだる。
彼はそれに応じてくれる。
そうして私は激しく彼を求めて、言い訳をする。
彼はそれに応じてくれる。
そうして彼の胸元を抱き寄せる。
こうして私は独り静かに嗤うのだ。
- 648 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:35:37 ID:89A4IfTU
-
私は嫌われたいから彼を酷く乱暴に扱っているのではない。
これは彼の優しさに甘えているわけではないからだ。
そこまで私は自暴自棄になれないし、あつかましくも無い。
ならばなぜ、こんなにも彼を暴力的に愛してしまうのか、それは彼に対しての怒りがあるからだ。
勝手に自分で『あなた以外を欲しがらない』といった誓いを立て、秀くんにもそれを強要しているのだ。
そして私は恐れている。 一度彼に拒絶されているからだ。
だから自らをセーブしている。
全ての事柄を彼に了解を取ってから進める。
「いま、してもいい?」
我ながら姑息だと思う。
さっきまでこのための布石なのはきっと見抜かれている。
思い返すと、秀くんの少し考えてからの頷きが哀れみがこもっていたのではないのかと思えてしまう。
酷く脆く、危ういと自分自身で評価を下し、壊れたくないからと言う理由で仕方なく秀くんを求める。
そんな事を言って、優しい彼を抱くのだ。
秀くんは自身の体に舌を這わせる私をどういう風に見ているのだろうか?
セックス依存症の女、脆い女、気持ち悪いもの。
なんだっていい。 最後まで彼を抱けるのなら。
秀くんに愛が無くても。
私が最後まで、彼の選択肢のなかで私一人しか選べないようにすればいい。
そうだ、私しか、彼に選択肢を剥奪すればいいんだ。
そうしたら、そうしたら思う存分彼におぼれる事が出来る。
「ね? いいよね? ね?」
気持ち悪いくらい、彼の同意を煽る。
余裕が無くなっているのが、後になって分かるのだが……、この時はもうそれこそ必死なのだ。
「気持ちいい? ねえ、どう?」
彼が私から目を背ける。
瞬間、拒絶がフラッシュバックする。
イヤだ、ごめんなさい、もうしませんから。
余裕が無い頭が、言葉をどうにか搾り出す。
「あっ……、ご、ごめん、その、せめて気持ちよくなってもらいたくて……」
どうすればいいのか分からない恐怖。
彼から滲み出した拒絶が、私への嫌悪感が、ただただ怖くてうろたえてしまう。
好きだから、愛してるから、自分で満足して欲しい。
でもそれが空回りしてしまう感触が、吐き気のように気分を、私を追い詰めてしまう。
「えっと!、えっと…えっと…」
狼狽する。 何とかすぐ繋がなければ、彼が、彼に、嫌われてしまう。
もうあれは、いやだ。
こんどはきっと、耐えられない。
「ごめんっ、なさいっ……! もっと気持ちよくするから、もっと……、もっと!」
そこまで言って、手を握られた。
私はその手に驚いて、思わずおののいてしまったけど、彼は構わず私を抱き寄せて謝辞を告げる。
「そんなに、あせらなくてもいいよ」
「でも、でも本当はイヤだったでしょ? ……秀くんが本当にいやなら……、私、が、我慢す、するから、できるからっ!」
彼の笑顔が眩しい。
私は何度この顔を見るのだろう。
何度彼に許しを乞い、許してもらえるのだろう。
「いやだったら、しないよ」
嘘だ。
それが分かる。
私はまた彼の優しさで、彼を傷つけている。
彼はそれに気付いているのだろうか?
- 649 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:37:29 ID:89A4IfTU
-
彼の家が見えてきた。
青い屋根の一軒家。
思えばどれだけあの家にいたのだろう?
ジーンズのポケットにある合鍵を形だけで確かめる。
そう、違う場所に引っ越すのがいやなら、同じ場所に私が行けばいい。
義母からの了承も貰っている。
彼は驚いてくれるだろうか? いやきっと最初は拒絶されるはずだ。
私はそれでもいい。 ここまでの道程でそう思った。
思い出すのは秀くんの事ばかり。
軋轢があっても、私は彼を愛する事をやめることは出来ない。
彼の拒絶に、きっと私は情実に捕らわれた答弁しか出来ない。
爛熟したこの思いは、本懐を遂げるしかないのだ。
そうでなければ、もう……。 私にはもう……。
一応、玄関の錠を解く前に秀くんの携帯に電話をかけた。
一分待ったが出ない。 ここで、ドアの施錠を解く。
おばさんが夜勤の日はチェーンをしないのは知っていたから、そこは気にせず玄関に入る。
「もう、秀くんったら……」
靴を二つそろえて履きやすい場所に置く。
ここにきて、やっぱり秀くんにも私がいないとダメだなと確信する。
私たちはこの交際期間の間、涵養に互いを求め合ってきた、その上で思ったのだ。 間違いない。
玄関を出て、階段を上がる。
階段をあがって、突き当りを右に曲がればそこが秀くんの部屋だ。 ちなみに左に曲がればおばさんの部屋となっている。
ノブを回してから静かにドアを開く。
暗闇に目が慣れていたので、すぐに白いシャツを視認出来た。
秀くん、疲れてたんだね。 カリキュラムの消化お疲れ様。
すぐに秀くんの手を背中の方で縛り、足をベッドの足に縛った。
どうするかはもう決めていた。
やはり初めてのことを秀くんにも思い出してほしい。
私だけのもので、秀くんだけの人だって。
灯りを点けると、秀くんは煩わしい様子で眉間に皺を刻んで、ゆっくり目を開けた。
可愛いなあ、反則だよ、その顔。
「ん……、えっ? 姫さん?」
- 650 :姫ちゃんの奮闘 ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:37:54 ID:89A4IfTU
- 「おはよう、ってまだ夜だけどね」
あれだけ言って聞かせたのに、まだ私のことを『さん』付けでまだ呼ぶ。
そこに少し物申したかったけど、今は我慢しよう。
「なんで、どうして? あれ? 手が……」
聞きたいこと、驚いていることがごちゃ混ぜになって困惑する秀くんの表情を十秒ほど楽しんでから私はそれぞれに答えた。
ここで暮らす。 あなたを諦める事なんて出来ない。 一方的な分かれ方なんて認めない。
「そんな……、でも、ぼくはもう姫さんの事」
「さん付けしないでって、言ってるでしょ? いい加減怒るよ?」
少し力を入れて言うと、秀くんは口をつぐんでしまう。
私はこの顔も好きだ。 私のことを自分より強いものだと認めているこの秀くんの顔。
何度見てもそそるものがある。
「大きい声出したら、嫌だけど殴るよ?」
「姫さ……ちゃん」
言いかけたところで、私の顔の微妙な変化を見つけたのだろう、すぐに秀くんは言いなおしてくれた。
「もしも、この事が終わってまだ私と別れるなんて言うのなら、私しか残らないように秀くんの周りを壊すから」
「え?」
「本気だよ? 私は絶対やるよ。 第一秀くんが私のいない世界で幸せになれるわけなんてないの」
秀くんは何かをいいかけてやめる。
きっと「思い直せ」とかそんな言葉を使おうとしたのだろう。
でも私の思いつめた何かがそれを止めたのだ。
「ね? もう決めてよ。 わたしだけだって」
秀くんの答えを聞いてから、私は彼の服を乱暴に脱がせ、そのまま強姦にいたった。
彼に射精を強要し、互いにオーガズムを味わった。
今、彼は私の腕枕の上で寝息をたてている。 規則的な彼の動きと安らかな寝顔とは裏腹に泣き腫らした目が印象的だ。
縛っていた手足に残る痕も、痛々しい。
秀くんは私の問答に「ごめんね」と答えた。
それは拒絶の意味ではなく、哀れみと許容の入り混じったものだった。
こんな風に言いたくはないけど、彼は腹をくくったのだ。
私と添い遂げる覚悟をその言葉に込めてくれた。
私はそれに答えようと思う。
彼の寝顔を見てそう思った。
- 651 : ◆Nwuh.X9sWk:2012/06/27(水) 03:40:05 ID:89A4IfTU
- 久しぶりの投下で緊張したけど、ここで終わりです
連投、誤字脱字はお許しください
あと、年上の綺麗なお姉さん萌え〜
- 652 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/27(水) 07:26:13 ID:JAOqTcR2
- 朝から素晴らしい作品をありがとう!
お姉さんは良いよね、良いよね、本当に良いよね
- 653 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/27(水) 07:31:19 ID:Wt2.0aKc
- >>651
gj
ウェハースの人か、懐かしいな
姫ちゃんかわいいよ姫ちゃん
- 654 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/27(水) 10:08:40 ID:TY8.v/j6
- >>651
乙です!
- 655 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/27(水) 20:12:45 ID:UQEpCwxc
- 『逆レイプって、ほっほんとーに、いいものですよね!』って天国の晴男ちゃんも言ってるよ!
gj!
- 656 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/27(水) 22:29:01 ID:NwWW/uJs
- なんだこれ
最高じゃないか
- 657 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/28(木) 02:11:41 ID:JnMx6Qlc
- お胸がポカポカするお(´・ω・`)
- 658 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/28(木) 08:13:25 ID:UGuqmV82
- 年上好きの俺には最高のSSだわ
- 659 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/30(土) 00:25:06 ID:yTotDmoA
- ウェハースのひときてるじゃないですかやったー!
- 660 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/30(土) 03:43:28 ID:Km4GXatg
- 中条さんはまだか……。
- 661 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/30(土) 04:51:55 ID:BSpmRtXw
- 変歴・・・
- 662 :雌豚のにおい@774人目:2012/06/30(土) 06:21:20 ID:IYtkj8rg
- gj
- 663 :sage:2012/06/30(土) 23:02:28 ID:0QQ6HOYk
- gj!
また良い作品を書くじゃないか
- 664 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/01(日) 05:57:26 ID:2SAjFoMM
- エロゲでもっとヤンデレヒロイン増えてくれないかな
- 665 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/01(日) 09:39:02 ID:ot07VlFw
- エロゲのツンデレヒロインは多いけどヤンデレは少ないよなあ
- 666 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/02(月) 21:27:50 ID:IESVAbqU
- ウエハースの人来てるね
姫ちゃんの奮闘とても良い作品でした
年上&逆レイプは最高ですね
次回作楽しみにしてます
- 667 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/03(火) 01:07:06 ID:4R2aKb.c
- GJ!!
- 668 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/03(火) 03:22:59 ID:aKuwkRJ.
- くるくるファナティックはヤンデレかと思ったらキチガイだっしな
やみツキはなんか駄目やった
- 669 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/03(火) 15:18:16 ID:MMtforPM
- >>651
なにこれすごい面白い
- 670 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/03(火) 19:01:01 ID:ULsYFBpQ
- ヤンデレの女の子に前も後ろも無理矢理ぐちゃぐちゃに犯されてイきすぎて人格崩壊したい
- 671 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/03(火) 20:02:51 ID:qs0zbpTs
- この文量でこの質は堪らんね
乙でした、年上最高
- 672 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/03(火) 22:29:43 ID:3T.7XrPk
- 最近のエロゲでヤンデレヒロインって言ったら、ぶらぶらのアレぐらいか
- 673 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/04(水) 04:33:08 ID:yRRYOLqw
- ぶらぶらなぁ、コメディとヤンデレは合わないきがする
やっぱりシリアスな修羅場だな
そんな俺は軍人や女騎士ヤンデレが好き
- 674 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/06(金) 14:23:36 ID:Yt9O5SJk
- 軍人娘とか俺得すぎる
- 675 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/06(金) 15:48:22 ID:oylUha0c
- 漏れ得
- 676 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/07(土) 01:04:46 ID:ayzBHLIc
- 放置されてる軍人ヤンデレの続き誰か書いてくれれば・・・
- 677 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/07(土) 21:46:29 ID:KxyfUAvo
- 短編SSの「顔を忘れる男」っていう作品が好きなんだけど本質がわからん泣
相思相愛だとわかると次の日女性が消えて、人の顔の一部が見れなくなることや
最後のくだりで出てくる女性、母親の手紙の話とかがわからん
前から気になってるんでよかったら教えてください!
- 678 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/08(日) 04:25:01 ID:lCQFYHkY
- 何らか元ネタがあったり専門知識が必要な物だったりするなら知らんけど
ヤンデレスレだからという単純な考え方をするなら、最後唐突に出てきた母の手紙やらから病んだ女性(母?)が他の女を消していったとかかも
ただ、よくある「自分にとって当たり前な情報」が既知の情報であると考えて書いた作品なのか、それとも不確かな情報のみ与えて後は読者に想像させる作風なのかはわからんが
主人公が悪夢を見たり、顔のパーツが見えなくなるのは物語に特殊性を持たせるためかもしれないが
事故にあった後に会った自称同級生の女性(あからさまに怪しい、悪夢見てない)
最後に登場した長い間主人公の傍で主人公を見てた女性
子作りをした覚えのない実の母親
実の母のことは知らないらしいから、養親の母からもらっていたらしい告白してきた人の名前を書いた手紙
この辺についての説明が一切ないから考察ではなく想像しかできない気がする
……もしかしたら主人公は、興味をもった部位を無意識下で収集なりなんなりしていて(その過程で女性を殺し、それを歪曲して悪夢だと思っている)
興味を持った部位は収集したから、そこには興味を持てないから見えないとかかもしれない
- 679 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/08(日) 12:05:37 ID:YxR5kpBc
- ああ
- 680 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/09(月) 18:36:05 ID:0PMVE96w
- >>678
恐いなオイ
もうその考えしか考えられなくなってしまったじゃねーか
- 681 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/09(月) 19:24:51 ID:XWaHX8jA
- >>674
今年のロシアの対独戦勝記念軍事パレードでプーチンとメドベージェフの居る貴賓席後方に
軍服を着た幼年学校生徒と思われる女性がいて、それ以来軍服着た女性に萌えるようになってしまった
- 682 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 02:14:20 ID:o2KgGDP.
- 「しっかりしろ!だらしがないぞまったく」キリッ「規律だっ!」キリリッ
とか言われて服とか直されたい
- 683 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 08:03:27 ID:Hea.M/WM
- 亀ながら1に敬意を表しながらスレ立て乙であります
- 684 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 08:03:47 ID:Hea.M/WM
- 亀ながら1に敬意を表しながらスレ立て乙であります
- 685 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 09:30:53 ID:cXSkE9Ys
- 最近、なろう辺りに板の作者が流れ込んでるな…
あっちの方が読者も多いし、仕方ないことかもしれんが、悲しいことだ
ここでしか出来んこともあるだろうに
- 686 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 10:14:56 ID:cXSkE9Ys
- なろうはな…デッカいけど、痛いヤツも多いんだよ…
この前なんかな…『ぼくのかんがえたさいきょうのやんでれひろいん』を送りつけて来たヤツがいてな…
個人メッセージでだぞ!?
痛さのあまり、気絶しそうになったよ…
すまん、愚痴った。
消える。
このレスは全力スルーしてくれ。
ここが恋しいよ……
- 687 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 21:22:39 ID:y3xD6UtI
- 何処だろうと書いてくれる作者様に最大級の感謝を
- 688 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/10(火) 23:01:02 ID:t8QzEa9k
- キモオタ彼女はよ
- 689 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/11(水) 00:22:11 ID:oNSZuOxA
- 変歴伝はよ
- 690 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/11(水) 00:23:33 ID:IFNB2R8.
- なろうで誰が書いてるの?
なろうって見方がよくわからんから全然見てないや
- 691 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/11(水) 02:31:50 ID:MriGjKO2
- 俺はもう何年もヤンデレスレにいるがかつての作者達はスレを見に来てすらいないんだろうか
- 692 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/11(水) 02:56:23 ID:aYu4kfAQ
- だれかぜひ軍人ヤンデレを
- 693 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/11(水) 23:56:33 ID:DIirDNOw
- >>678ありがとう!
確かに理屈で考えるには説明が少ないよね
かえって、その言葉足らずなところが小説の不気味さを演出していて、いいのかも
正直なところ、もう少し説明欲しいけどね!w
- 694 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/12(木) 01:13:07 ID:hki9Ok7.
- なろうにいった作者の作品教えろ下さい
- 695 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/12(木) 17:04:14 ID:W80.TGdw
- >>694
てめえで探してくだちい
- 696 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/13(金) 01:22:44 ID:iqKQrVmM
- >>695
なんで……隠すんだい……?
私はただ、君の好きなものを知りたいだけだよ?
おかしいことじゃないよね、だって私は君の○○なんだからさ
だからさ、教えてくれないかな。君が夢中になっているナニかを
別に、知ったからといってどうこうするわけじゃないさ
ただ、君のことを知りたい、君の趣味を知りたい、君の好きなものを知りたい、君の好きなことを知りたい、君の、全てを知りたいんだ
- 697 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/13(金) 02:42:23 ID:H18/4gNc
- 実際猫とワルツの人だけじゃん
少なくともここで宣言してる人は
もしいるんなら俺も知りたい
- 698 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/13(金) 02:44:41 ID:sEaB3S02
- せやな
- 699 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/13(金) 05:26:44 ID:uiD0guTo
- 嘘と真実の作者さんが居る。
他にも居るみたいだな…
- 700 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/13(金) 05:36:02 ID:uiD0guTo
- っていうか、お前ら自分でスネークしろよ
- 701 :ふぇぇ紳士@VIP(偽) ◆XzIXoOb8BE:2012/07/13(金) 12:29:16 ID:MMn.6UI6
- ドラファンの続きが読みたいなーっと
- 702 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/13(金) 23:20:10 ID:vSiVNUaU
- ここも人が戻ってきたね
- 703 : ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:12:52 ID:1T.A.a2U
- 夜分遅くに失礼します。
投下致します。よろしくお願い致します。
- 704 :嘘と真実 7話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:14:18 ID:1T.A.a2U
-
〜ある犯人のプロローグ・3〜
いくつもの偶然が重なり、この状況を作り出した。
ただの偶然か、はたまた天が味方をしているのか。
いずれにしろ、今を逃す手はないと思う。こんな機会、二度と来ないに違いなかった。
7話
「……ん?」
日曜日。それは誰にも平等に訪れる休息の日だ。
だからこそ俺は惰眠を貪ろうと意気込んで、昨夜ベッドに潜り込んだのだが――
「すぅ……」
「……おいおい」
何故か隣には我が最愛の妹がすやすやと寝息を立てて寝ているのだった。
やはり弥生は可愛い……じゃなくて何でこんな状況になってるんだよ。
いやでも弥生は可愛いしな、って話を逸らすんじゃねぇよ、と一人問答をしていると弥生が目を覚ました。
「ふわぁ……」
「……おはよう、弥生」
「あ、おはようお兄ちゃん」
まだ眠たげに瞼を擦りながら穏やかな笑みをこちらに向ける弥生。
弥生はやっぱり可愛いなぁ。
……ちなみに決して俺はシスコンではない。断じて、ない。
「……何かあったか?」
俺の質問に弥生は少し困った顔をする。
まあ、俺のベットに来た時点で大体は察しているのだが、自分で自覚しなければいつまでも治らないこともあるものだ。
「うん……。また……あの夢……見た…から……」
「そっか。よく言えたな、弥生」
震えながら言い切った弥生を優しく抱きしめる。弥生は無言で俺をギュッと抱きしめていた。
そんな弥生を見ながら俺は思う。
いつからだろうか、弥生が時々"異常"に俺を必要とするようになったのは。
元々仲が悪かったわけではないが、この状況は少なからず普通ではない。
まあ、思い返した所で理由は一つしか思いつかないのだが。
「……落ち着いたか?」
「うん。もう大丈夫。ありがとお兄ちゃん」
「よし、じゃあ俺はもう一眠り――」
「さ、せっかくの休日なんだから起きようねお兄ちゃん!」
弥生の明るい声と同時に俺が愛用している水色のタオルケットが無情にも奪い取られてしまう。可愛い顔して何たる悪行だ。
「休日だからこそ寝たいんだがな……」
「はい!お兄ちゃんも洗濯手伝って!」
「はーい……」
笑顔で手伝いを要求してくる弥生に仕方なく従い、俺は早朝から洗濯に励むのであった。
- 705 :嘘と真実 7話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:14:58 ID:1T.A.a2U
-
あれはまだ東京にいた時のことだったか、特に面白いこともなく惰性で毎日を過ごしていた。
少なくとも今のような充実した毎日は過ごせていなかったと思う。そして俺自身もそんな変わらない毎日を受け入れていた。
その時は変わらないことは平和な証だと思っていたし、今だって東京での日常が最悪だったなんて思ってはいない。
だから俺は、いつまでもこんな日常が続くんだろうな、なんて呑気に思っていたんだ。
「やっと終わった……」
「ご苦労様。今お昼作っちゃうね」
「おう……」
ソファーに倒れ込む俺を尻目に、弥生は台所に向かっていた。
家は両親が共働きの為、俺たち二人だけの時は弥生が家事をしている。
俺も力仕事は出来るが料理はからっきしなので弥生に任せてしまっている。
「適当にあるもので作っちゃうよ!」
「うぃっす……」
薄い桜色をしたエプロンを着けてせっせと料理をし始める弥生の姿は、中々様になっていた。
流石半年で6人に告白されることはあるなと、謎に感心してしまう。
「ふわぁ……」
本当によく立ち直ったものだ。
あの事件があってから、弥生はしばらく外は勿論のこと、自分の部屋からすら出られなくなっていたのに。
親父が転属の命を受けて引っ越してきたおかげでもあるが、一番は弥生の精神力か。
弥生は華奢だが打たれ強い。まだ一年も経っていないのにもう無かったことのように振る舞っているし、電車にもちゃんと一人で乗れる。
「お兄ちゃん!生姜入れちゃうよ!」
「はーい」
だからこそ心配でならない。今の生活を保つ為、弥生も無理をして気丈に振る舞っているのではないのか、と。
「もうすぐ出来るからコップとか運んで!」
「りょーかい」
ソファーから立ち上がり台所へ向かう。幸い無理をしているような様子は今の弥生からは微塵も感じられない。
白い山の中に所々、稜線のように緑や赤が走っている素麺、いや冷や麦を運びながら俺はあの時のことを思い返していた。
- 706 :嘘と真実 7話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:15:32 ID:1T.A.a2U
-
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あ……お兄ちゃん……」
「弥生っ!大丈夫か弥生っ!」
たまたま当時通っていた学校が創立記念日で休みだったのが運が良かった。
いつもの時間に起きてしまい、もう一眠りしようとしていると、突然家の電話が鳴ったのだ。
訝しながら出てみると最寄りからは少し離れた駅からで弥生が痴漢に遭ったという話だった。
訳が分からず、とにかく弥生が心配で一目散に現場の駅に駆け付け、駅員室に通されると顔を真っ青にして弥生が震えながら座っていた。
「……うん、大丈夫。わざわざありがとね」
「大丈夫なわけねぇだろ!?」
すぐに壊れそうな作り笑いをして弥生は気丈に振る舞おうとしていたが、身体は小刻みに震えていた。
「大丈夫。犯人はもう捕まったみたいだし……大丈夫。大丈夫だよ」
「弥生……」
「学校にはお休みするって連絡済みだからもう帰ろう、お兄ちゃん。」
弥生は精一杯の笑顔でそう答えた。そんな弥生に、俺は頷きタクシーで一緒に家まで帰った。そして玄関に入った瞬間――
「……もう、我慢しなくていいぞ」
「……う……ん……」
弥生は俺に抱き着いて、震えながら泣いた。
声にならない叫びが俺にも伝わってやり切れない気持ちになった。
本当は弥生だってその場で泣きたかっただろうに、一度泣いてしまったらしばらくはどうしようもなくなってしまうから。
だから弥生は必死に我慢したのだ。身体を震わせながらただ泣き続ける弥生を、俺は抱きしめることしか出来なかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
- 707 :嘘と真実 7話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:16:08 ID:1T.A.a2U
-
「この芸人も消えちゃうのかな」
食後の昼下がり。
俺はリビングで弥生をテレビを見る。弥生は一生懸命にワイルドさを伝える芸人に無慈悲な一言を呟く。
「おいおい、それは言っちゃいけないんだぜぇ?」
「…………」
「痛っ!?無言でつねるな!」
「無言でつねっちゃうんだぜぇ、ワイルドだろう?」
「…………」
「いたぁ!?ちょっと急にデコピンしないでよお兄ちゃん!」
「あ、暴れるな!テレビが見えん!」
あの事件から弥生は確かに立ち直ったのかもしれない。
でも確かに深い傷痕を残したのは事実だ。でなければ今俺の膝の上に弥生が乗っかったりはしていないのだから。
「うがぁ!」
「俺が悪かった!だから落ち着け!」
しばらくまともに男と話せなかった弥生の為に、毎日部屋の扉越しに話し掛けたりした。
最初はふさぎ込んでいた弥生も、環境の変化も重なって何とかまともに会話することが出来るようになった。
「……じゃあ、いつものお願い」
「……弥生、そろそろ止めないと――」
「お兄ちゃん……」
泣きそうな顔で俺を見つめる弥生。
それはまるであの時の表情のようで、俺には無視することなんで出来やしない。
俺が干渉し過ぎたからか。立ち直りはしたものの、弥生はたまに俺を異常に求めてしまう。
ベットに入って来たり膝の上に座ったり。そして――
「……目、つむれ」
「うん……」
目をつむった弥生にそっと口づけをする。
それに応えるように弥生は俺を軽く抱きしめる。向かい合ってキスをする兄妹。
これが……これがあの事件が引き起こした異常な日常だ。果たして弥生は本当に立ち直ったのだろうか。
俺には、弥生があの事件を忘れられないからこそ、俺に依存してしまっているようにしか思えない。
だからこそ、俺が弥生を拒んだりしたら……そう考えると、どうしても断れないのだった。
「お兄ちゃん……もう一回……」
「やよ……んっ」
いつか弥生は立ち直ることが出来るのだろうか。
- 708 :嘘と真実 7話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:16:40 ID:1T.A.a2U
-
夜も更け、ようやく一日が終わる。わたしはベットに腰掛けながら窓の外を覗く。
そこには真っ暗な闇が広がっていた。
「……お兄ちゃん」
昔からだった。不安なことがあったりすると無意識にそう言ってしまう。
それを聞いたお兄ちゃんは、必ずわたしを助けてくれた。あの時だってそうだ。
お兄ちゃんはわたしの為にわざわざ駅まで来てくれた。その後ふさぎ込んでしまったわたしに、毎回話し掛けてくれた。
今、わたしがこうやって生活出来るのはお兄ちゃんのおかげなんだ。
「…………」
だから、不安で仕方ない。
お兄ちゃんと離れてしまうのが不安で仕方ないんだ。
まだわたしはあの事件を完全には忘れられずにいる。いけないと思っても、お兄ちゃんを頼ってしまう。
……依存してしまう。でも、もしお兄ちゃんに……お兄ちゃんに恋人が出来たら……。
「わたしを……見てくれるのかな……」
きっと見てくれないに違いない。そうしたらわたしはどうなってしまうのだろう。
わたしは……あの悪夢に耐えられるのだろうか。
「……自分のこと、ばっかり」
呟きながら自覚する。わたしは本当に自分勝手なんだ。
お兄ちゃんに恋人が出来ることは、妹のわたしからしたら喜ばしいことのはずなのに。
「……考えるのは、止めよう」
……たまにこうなってしまう。お兄ちゃんに甘えていると考えちゃいけないことを考えてしまう。頭がぐるぐるするのだ。
「……お兄ちゃんと話してから寝よう」
こういう時はお兄ちゃんと少し話せばすぐに落ち着く。思い立ったわたしは部屋を出てお兄ちゃんの部屋へ向かう。
扉が少し開いていて中からお兄ちゃんの声が聞こえてきた。覗いて見ると電話で誰かと話しているようだった。
「あー、なるほど。でも辻本さんの言う通りかもな……」
「……っ」
楽しそうに話すお兄ちゃんを見ていたら、何故か切なくなってその場を離れてしまった。
部屋に戻り、ベットに飛び込む。
「……辻本……さん」
何だろう。頭がぐるぐるする。あんな楽しそうに話すお兄ちゃん、久しぶりに見た。
――頭がぐるぐるぐるぐるする。
わたしには絶対にしない、あんな笑顔を。
――ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
もう寝よう。大丈夫、今夜はぐっすり眠れるはずだから。
- 709 : ◆Uw02HM2doE:2012/07/14(土) 02:18:43 ID:1T.A.a2U
-
今回はここまでになります。
構成上、短くなってしまいました。申し訳ありません。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 710 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/14(土) 08:43:42 ID:uergHnGU
- >>709
乙です!
- 711 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/14(土) 14:56:51 ID:a8p1yFyM
- 乙
- 712 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/14(土) 18:00:14 ID:tNv6mgjk
- GJ!こんな妹いたらなぁ…。
- 713 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/15(日) 01:08:21 ID:GwpEUC0o
- 妹参戦のお知らせ
- 714 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/15(日) 01:47:54 ID:g83C/MIc
- GJ。さ、全裸で待機してるから続きを頼む。
出来れば中条多めで。
- 715 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/16(月) 12:53:34 ID:vHQyXaDk
- 期待
- 716 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/21(土) 10:57:35 ID:3BsKbIcc
- 乙
- 717 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/24(火) 01:06:48 ID:OV9LLRP.
- 投下します
- 718 :キモオタと彼女 6話:2012/07/24(火) 01:11:20 ID:OV9LLRP.
- 激動の日曜日が終わり、憂鬱な月曜日でござる。
2つの意味で。
昨日の今日で朝比奈さんと顔を合わすのは、気まずいでござる。 ヌゥフォ
流石に会社内で昨日の事を朝比奈さんから切り出してくるとは思えないし、もしかしたら昨日の出来事は白昼夢という可能性もあるでござる。ヌホホ デイドリーム
こういう時は、普段通りに振る舞うのが一番でござるな。 オゥフ
今日は何事もありませんように!
どうやら、拙者の心配事は杞憂に終わったでござるな。 ヌホホ
朝比奈さんは、いつも通り凛としているし拙者に対する態度はいつも通りでござる。
やっぱり、リアルは「昨日は助けてくれてありがとう。 抱いて!」等とエロゲー展開はないでござるよな。 オゥフ
これで、落ち着いて便所飯に行けるでござる。
朝、コンビニで買った菓子パンを数個持ち、部署を出て男子トイレに入ろうとした時に肩を軽く叩かれたでござる。
…まさかね。 まさか後ろを振り向いたら、朝比奈さんだというそんな十週打ち切りラブコメ漫画みたいな展開には…。
「あっ、あのねっ! 昨日のお礼も兼ねてお弁当作ってきたの! だっ、だから…あの…その…一緒にお弁当とかどうかな〜?なんてっ、ねっ? どうかな?」
…まさかの予想が当たったでござる…。
さっきまでの朝比奈さんは、どこへいったのやら。
昨日の喫茶店の時と同じように顔を赤らめながら、目線はどこか忙しなくまるで好きな男に手作り弁当を作ってきたかのような態度でござるが…。
まぁ、それはないな。
朝比奈さんは拙者みたいなのと一緒に居るのが恥ずかしくてしょうがないんだけど、昨日一応助けてもらったのもあるからお礼はしておこうって感じでござろう。
この現場を他の社員に見られると、色々とマズい気が…。
この場はさっさとお弁当だけ貰ってまた他の男子トイレに行くでござる。
「あっ、あのっ、はい、ありがとうっぅ、ございます、はい。」
「ううん、気にしなくて大丈夫! じゃあ、どこで食べよっか?」
…えっ? …いやいや、それは駄目でしょ。
- 719 :キモオタと彼女 6話:2012/07/24(火) 01:11:53 ID:OV9LLRP.
- 激動の日曜日が終わり、憂鬱な月曜日でござる。
2つの意味で。
昨日の今日で朝比奈さんと顔を合わすのは、気まずいでござる。 ヌゥフォ
流石に会社内で昨日の事を朝比奈さんから切り出してくるとは思えないし、もしかしたら昨日の出来事は白昼夢という可能性もあるでござる。ヌホホ デイドリーム
こういう時は、普段通りに振る舞うのが一番でござるな。 オゥフ
今日は何事もありませんように!
どうやら、拙者の心配事は杞憂に終わったでござるな。 ヌホホ
朝比奈さんは、いつも通り凛としているし拙者に対する態度はいつも通りでござる。
やっぱり、リアルは「昨日は助けてくれてありがとう。 抱いて!」等とエロゲー展開はないでござるよな。 オゥフ
これで、落ち着いて便所飯に行けるでござる。
朝、コンビニで買った菓子パンを数個持ち、部署を出て男子トイレに入ろうとした時に肩を軽く叩かれたでござる。
…まさかね。 まさか後ろを振り向いたら、朝比奈さんだというそんな十週打ち切りラブコメ漫画みたいな展開には…。
「あっ、あのねっ! 昨日のお礼も兼ねてお弁当作ってきたの! だっ、だから…あの…その…一緒にお弁当とかどうかな〜?なんてっ、ねっ?
- 720 :キモオタと彼女 6話:2012/07/24(火) 01:12:49 ID:OV9LLRP.
- 激動の日曜日が終わり、憂鬱な月曜日でござる。
2つの意味で。
昨日の今日で朝比奈さんと顔を合わすのは、気まずいでござる。 ヌゥフォ
流石に会社内で昨日の事を朝比奈さんから切り出してくるとは思えないし、もしかしたら昨日の出来事は白昼夢という可能性もあるでござる。ヌホホ デイドリーム
こういう時は、普段通りに振る舞うのが一番でござるな。 オゥフ
今日は何事もありませんように!
どうやら、拙者の心配事は杞憂に終わったでござるな。 ヌホホ
朝比奈さんは、いつも通り凛としているし拙者に対する態度はいつも通りでござる。
やっぱり、リアルは「昨日は助けてくれてありがとう。 抱いて!」等とエロゲー展開はないでござるよな。 オゥフ
これで、落ち着いて便所飯に行けるでござる。
朝、コンビニで買った菓子パンを数個持ち、部署を出て男子トイレに入ろうとした時に肩を軽く叩かれたでござる。
…まさかね。 まさか後ろを振り向いたら、朝比奈さんだというそんな十週打ち切りラブコメ漫画みたいな展開には…。
「あっ、あのねっ! 昨日のお礼も兼ねてお弁当作ってきたの! だっ、だから…あの…その…一緒にお弁当とかどうかな〜?なんてっ、ねっ? どうかな?」
…まさかの予想が当たったでござる…。
さっきまでの朝比奈さんは、どこへいったのやら。
昨日の喫茶店の時と同じように顔を赤らめながら、目線はどこか忙しなくまるで好きな男に手作り弁当を作ってきたかのような態度でござるが…。
まぁ、それはないな。
朝比奈さんは拙者みたいなのと一緒に居るのが恥ずかしくてしょうがないんだけど、昨日一応助けてもらったのもあるからお礼はしておこうって感じでござろう。
この現場を他の社員に見られると、色々とマズい気が…。
この場はさっさとお弁当だけ貰ってまた他の男子トイレに行くでござる。
「あっ、あのっ、はい、ありがとうっぅ、ございます、はい。」
「ううん、気にしなくて大丈夫! じゃあ、どこで食べよっか?」
…えっ? …いやいや、それは駄目でしょ。
- 721 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/24(火) 01:15:46 ID:OV9LLRP.
- すいません
もう一度投下をやり直します
- 722 :キモオタと彼女 6話:2012/07/24(火) 01:17:11 ID:OV9LLRP.
- 激動の日曜日が終わり、憂鬱な月曜日でござる。
2つの意味で。
昨日の今日で朝比奈さんと顔を合わすのは、気まずいでござる。 ヌゥフォ
流石に会社内で昨日の事を朝比奈さんから切り出してくるとは思えないし、もしかしたら昨日の出来事は白昼夢という可能性もあるでござる。ヌホホ デイドリーム
こういう時は、普段通りに振る舞うのが一番でござるな。 オゥフ
今日は何事もありませんように!
どうやら、拙者の心配事は杞憂に終わったでござるな。 ヌホホ
朝比奈さんは、いつも通り凛としているし拙者に対する態度はいつも通りでござる。
やっぱり、リアルは「昨日は助けてくれてありがとう。 抱いて!」等とエロゲー展開はないでござるよな。 オゥフ
これで、落ち着いて便所飯に行けるでござる。
朝、コンビニで買った菓子パンを数個持ち、部署を出て男子トイレに入ろうとした時に肩を軽く叩かれたでござる。
…まさかね。 まさか後ろを振り向いたら、朝比奈さんだというそんな十週打ち切りラブコメ漫画みたいな展開には…。
「あっ、あのねっ! 昨日のお礼も兼ねてお弁当作ってきたの! だっ、だから…あの…その…一緒にお弁当とかどうかな〜?なんてっ、ねっ? どうかな?」
…まさかの予想が当たったでござる…。
さっきまでの朝比奈さんは、どこへいったのやら。
昨日の喫茶店の時と同じように顔を赤らめながら、目線はどこか忙しなくまるで好きな男に手作り弁当を作ってきたかのような態度でござるが…。
まぁ、それはないな。
朝比奈さんは拙者みたいなのと一緒に居るのが恥ずかしくてしょうがないんだけど、昨日一応助けてもらったのもあるからお礼はしておこうって感じでござろう。
この現場を他の社員に見られると、色々とマズい気が…。
この場はさっさとお弁当だけ貰ってまた他の男子トイレに行くでござる。
「あっ、あのっ、はい、ありがとうっぅ、ございます、はい。」
「ううん、気にしなくて大丈夫! じゃあ、どこで食べよっか?」
…えっ? …いやいや、それは駄目でしょ。
- 723 :キモオタと彼女 6話:2012/07/24(火) 01:18:41 ID:OV9LLRP.
- 只でさえ、日頃から朝比奈さんに残業を手伝ってもらい、他の社員達から「なんで朝比奈とあのキモデブが一緒にいるんだよ。 あり得ねよなぁ〜。」
便所飯をしている時に聞いちゃったんだよなぁ…。
拙者はまだしも朝比奈さんに迷惑がかかるのは避けたいから、ここは丁重にお断りをしようそうしよう。
「っぅふ、あっ、あのですね…。」
「それじゃ行こっか! 良い場所知ってるんだ〜♪」
オゥフ 聞く耳を持ち合わせてござらんか。
それにしても、同年代の女性になすがままに引っ張られる拙者の情けなさに泣けてくるでござるよ。 ヌゥフ
そして、朝比奈さんに連れてきてもらった場所が…。
「資料室…ですか…?」 「うん! ここなら誰も来ないし、ゆっくり出来るしねー。」
まぁ、確かに資料室なら薄暗く少し埃っぽいし、昼休み時間わざわざ人が来ることはないだろう。
というか、朝比奈さんがここで昼食をとっているというのが信じられないでござる…。
朝比奈さんは他の同僚と一緒にオサレなカフェーで昼食をとっているイメージがあったんでござるが…。
まさか、こんな所で朝比奈さんが1人寂しく昼食を食べているとは思いもよらなかったでござる。
というか、朝比奈さん昨日の日曜日から何かキャラが変わっている気がするでござるが、気にしたら負けだよな、うん。
「じゃあ、食べよっか!」
「あっ、はい。」
弁当を開けてみると、拙者の好物だけが入っていて驚きでござる。
こんな偶然あるもんだなぁ。
よし、この豚肉の生姜焼きを一口…。
うん、肉らしい肉で美味しいでござる。
某五郎ちゃんのようなコメントしか出てこないでござるが、本当に美味しい。
今まで食べてきた豚肉とは違うような味がするでござるよ。
「その豚肉はね、イベリコ豚を使ったんだよ! 美味しい?」
イベッ、イベリコ豚? 拙者には一体どういう肉なのかさっぱりわからんでござるよ。 ヌホホ
その後も、朝比奈さんの手作り弁当に舌鼓を打ちつつ、会話もぽつりぽつりしていたら昼食時間があっという間に終わったでござる。
「きょ、今日はわざわざありがとうございました! ウップ」
「いえいえ、お粗末様でした〜♪」
…本当にどうしたんだろうか。
- 724 :キモオタと彼女 6話:2012/07/24(火) 01:21:26 ID:OV9LLRP.
- キャラが全然違う…。
もしかして、拙者が日曜日の件を他の同僚に言いふらすと思っているから、ここまで拙者に対して無理に拙者に接してきてくれているんではないでござろうか…。
だとしたら、朝比奈さんは心配性でござるな。 ヌフ
そんな気は毛頭ないし、日曜日の事は墓まで持っていくつもりでござるよ。 ヌゥフホホ
まぁ、こんな日はきっと今日だけだと思うし、あんま気にせず…。
「あっ、あのさっ! もし、貴方が良ければなんだけどさ…これから毎日貴方の為にお弁当作ってきてもいいかな…?」
今日は、拙者の予想を裏切る展開が多いでござるな…。
「い、ぃやっ、あの、さすがにそれは申し訳ないといいますか、はいっ…」
「迷惑…かな…?」
なっ、何故そこで涙目になるんでござるかぁぁぁぁ!?
あんなに美味しい弁当なら毎日食べたいでござるが、朝比奈さんの負担になるし、何より他の人達から朝比奈さんが拙者に弁当を作ってきているという噂が流れたら色々とあばばばばば……。
ここは、男らしく断ろう!
そうした方がお互いの為でござるしな。 ヌホホ
「オッ、お気持ちはウッ! 嬉しいんですが、やはり遠り…」
「………」
はわわわわっ、なっ、泣かしてしもうた…。
えーいっ! こうなりゃヤケだ!
「あのっ! あさ、朝比奈さんの負担にならないなら、たまに作って欲しいです! ハイッ」
「……ほんと?」
「…あいっ! 何なら毎日食べたいですよ! えぇ!」
「じゃあ、これから毎日作ってくるね!」
…明日からどうやって昼食時間を乗りきろうかと考えると胃が痛くなってきたでござる…。
本当に…どうしてこうなった。
- 725 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/24(火) 01:25:33 ID:OV9LLRP.
- 投下を終わります
投下失敗して申し訳ないです
見てくださった方はお疲れ様でした
- 726 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/24(火) 04:08:57 ID:fCg10C.k
- ぐっじょぶ!です
閑話とかに登場してた優羽とかの他の女キャラの登場はまだ先ですかねー
- 727 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/24(火) 08:49:34 ID:.vXBut32
- >>725
乙乙!
- 728 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/24(火) 09:43:40 ID:CH.oSQMU
- >>725
GJ!
優羽のほうの外伝も頑張ってください!
- 729 : ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:16:47 ID:PPLsI1oc
- >>725
GJです!続きに期待!
深夜に失礼します。投下させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
- 730 :嘘と真実 8話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:18:04 ID:PPLsI1oc
-
〜ある犯人のプロローグ・4〜
……自分は何を期待していたのだろう。最初から理解していたはずだ、敵だと。
「…………」
鏡をじっと見つめる。何て情けない顔をしているのだろう。そんな顔に冷水をたたき付ける。
しっかりしろ、今更後戻りなんて出来やしない。
「……もう少しだ」
あの時決めたはずだ。何をしても絶対に復讐するって。これはあの人がくれたチャンスなんだから。
8話
「おっす」
「おはよう我が最愛なる友よ!おっ、今日は委員長も一緒か」
「おはよう、小坂君」
早朝の通学路。
俺は真実と晃と一緒に学校へ向かう。今だに規模は小さくなったものの、俺への嫌がらせは続いている。
だから最近はよく真実と一緒に通学して、対策を考えたりしていた。
晃が朝練のない日は一緒に登校することが多いので、最近は自然と三人で登校することも多くなった。
「そういえば中条、今日退院だっけ」
「ああ、昨日メールしたら今日の夕方には退院出来るらしい。放課後病院に行くけど二人とも、空いてるか?」
真実も晃もすぐに了承してくれた。
中条が入院してから一週間ほどが経っていた。ようやく中条が帰ってくる。
なんだかんだ言ってやはり一週間は入院してしまったが、これでまた一緒に馬鹿をやれる。
そう思うと浮かれてしまう自分がいた。
「まあちょうど良いタイミングだよな、中条も」
「ちょうど良い?」
「ああ、球技大会か」
俺の言葉に晃は思いっ切りガッツポーズをする。いや、それガッツポーズするところか。
「そういうこと。中条が入れば女子バレーはこっちのもんだしな!そして男子サッカー!」
「ふふ、期待してるわよ二人とも」
「おう!司、フットサルじゃないからって手、抜くなよ!」
「分かってるつーの」
運動部の球技大会への熱の入れようは異常だと思う。まあ気持ちは分からないでもないが、この暑苦しさは何とかしてほしい。
「気の無いフリしてるけど司君、昨日も一生懸命シュートの練習してたのよ」
「お、おい真実っ!」
思わず顔が赤くなるのを感じる。晃は目を輝かせて俺に抱き着いてきた。真実はそんな俺たちを見てクスッと笑うのだった。
……最近、真実に良いようにからかわれているような気がしてならない。
「……司君、そろそろ」
「あ、ああ。そうだな……」
真実に耳打ちされて時計を見ると既に結構な時間になっていた。今日は俺が先に行って、嫌がらせがされているかどうか確認する日だ。
「ちょっと俺、職員室に用があるから先に行くわ」
「何だ司、最近多いな。また委員長と二人で登校だよ……」
溜息をつきながらやれやれというポーズをする晃。
言われてみれば確かにここ一週間、晃と一緒に登校する日は必ず俺が先に行っている。
まあローテーションの関係、つまり俺と真実が交互に先に行っているから固定になるのは当然なのだが。
「何かな、小坂君は私と一緒だと嫌なのかな?」
「いやぁ……流石に毎回歩きながら説教されるのは――」
晃の鳩尾辺りに強烈な蹴りが炸裂する。思わずうずくまり悲鳴をあげている晃を真実は笑顔で見下ろしていた。
「何か言った?」
「……ぐふっ」
「……委員長ってこんな仕事だったっけ?」
「はいはい、司君はさっさと行く!」
「うぃーす。無事でいろよ、晃」
「…………」
物言わずうずくまっている晃を一瞥して、俺は通学路を走る。
晃に言われて改めて気付いたが、真実と晃は端から見ると二人きりで登校するカップルのように見えたのかもしれない。
「……ちっ、晃め」
そして何となく晃にムカつく自分はかなり器の小さい人間なのかもしれない。
- 731 :嘘と真実 8話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:18:56 ID:PPLsI1oc
-
昼休み。
真実は委員会の仕事があるらしいので、晃と二人で飯を食う。やっぱり晴れた日は屋上、ということで隅のベンチに座って青空を眺めていた。
「何か二人だと、やっぱ物足りないぜ……」
「晃が物思いに耽っている……うん、キモいな」
「うるせぇな。司だって中条がいなくて寂しいだろうが」
「……まあな」
雲一つ無い青空を眺めながら晃に同調する。確かにこの一、二週間は何処か物足りなさを感じた。
勿論晃や、そして真実との時間も大切だが、やはり中条も欠けてはいけない俺の大切な仲間なんだ。
「まあ中条は今日退院だろ?放課後行って今まで分散々いじってやろうぜ」
「……返り討ちにあうのが関の山だけどな」
うへへと変態な笑みを浮かべる変態と少し距離を置く。うん、今日も弥生の弁当は美味いな。
「それより、ですよ!そろそろ話してくれてもいいんじゃない?司くぅん」
「な、なんだよ……」
晃の言葉につい緊張してしまう。まさか嫌がらせのことか……いや、ばれるはずが――
「惚けやがって、司と委員長のことに決まってんだろうが!」
「……そっちかよ」
ほっとする俺などお構いなしに晃はまくし立てる。
「なんだなんだ!?最近一緒に登校するようになったらお互いに名前で呼んでるしよぉ!」
「いや、それには訳があってな……つーか何でそんなに悔しそうなんだよ」
「くっそこのリア充が!俺たち親友じゃなかったのかよぉぉお!」
目に涙を浮かべながら擦り寄って来る変態ほど気持ち悪いものはない。とりあえず近寄られた分だけ距離を取ることにする。
「リア充って……その気になれば晃なら、彼女くらいすぐに出来るだろうが」
「三次元には嘘しかないっ!!」
根っからのダメ人間ぶりを露呈する台詞を瞬時に言えるのはある意味称賛に値すると思う。
付き合っていると時間がいくらあっても足りないので無視するが。
「例えば……そうだ、この前告白してきたえっと……あのポニーテールの子……」
「……ああ、大内(おおうち)さん?」
「そうそう!彼女なんてどうだ?如何にも可愛らしい――」
「駄目だ。金髪ではないし巨乳でもない」
どっかの不思議な冒険に出て来そうなポーズをしながら、ビシッと言い放つ晃は本当にただの変態なんだなと確信した。
一応色々な意味で可哀相なので突っ込んではおく。
「……それなんてエロゲ?」
「とにかくっ!大内さんはない!それより問題は君だよ司くぅん!」
変態にガシッと肩を組まれてしまった。マズイ、近距離過ぎて吐き気すらするぞ……。
「近寄らないでくれますか」
「君と委員長が仲が良いのはよーく分かった!」
全く聞いていないよこの変態。
「でもな、うかうかしてると誰かに取られちまうぞ」
「……別に俺には――」
「関係なくないだろ?俺と委員長が二人きりで登校してるの、気にしてる癖にさ」
あまりの驚きで言葉が出ずに晃を見る。晃はやっぱりかという表情をしながら少し笑っていた。
「いや、司は分かりやすいからさ。今日とか、思いっ切り顔に出てたし」
「そ、そうか……」
まさか顔に出ていたとは思わなかった。ってことはもしかしたら真実も気付いていたのだろうか。そう思うと今朝以上に顔が赤くなるのが分かった。
「ま、別に強制はしないけどよ。決めるなら早くした方が良いぜ?中条も帰ってくることだしよ」
「ん?何でそこで中条が出て来るんだよ」
「……はぁ、この朴念仁が」
何故か晃は溜息をつきながら俺の肩をポンポンと叩く。
……何だこの良く分からない敗北感は。
「まあ司の好きにすれば良いけどよ、あんまり待たせるなよな」
「待たせるって――」
「さ、飯だ飯!早く食わねぇと昼休み終わっちまう!」
「お、おう」
どうやら自分で気が付けということらしい。
もしかしたら顔だけではなく、こういう俺が気付けない箇所に敏感になれるから晃はモテるのかもしれない。
- 732 :嘘と真実 8話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:19:24 ID:PPLsI1oc
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晃君は爽やかに隣の男子に話しかける。
……忌ま忌ましい。あの男子が羨ましくて仕方ない。
男子に嫉妬するなんておかしいと言われるかもしれないが、人の感情を勝手に"常識"という名のただの多数派意見でカテゴライズしないで欲しい。
相手が誰であろうと自分以外の人間に好意や笑顔を向けて欲しくない。それが恋をしている人間が抱く、ごく当たり前の感情なのではないか。
少なくとも私はそうだ。それ程に私の小坂晃君への気持ちは強い。
「晃君を一番好きなのは私なのに……」
何度も何度も告白した。それでも晃君は応えてくれなかった。
晃君はこの高校に入ってから色んな人から告白されているけれど、それらを一度も受け入れたことはない。
……何故なのか。私には全く分からなかった。けれど――
『きっと小坂君は、藤塚君と中条さんと一緒にいたいのよ……大内さんよりもね』
「……っ」
悔しいけれど事実だと思った。
他人に言われて初めて気が付いた私も私だけど、確かに晃君はあの二人、藤塚司と中条雪と一緒にいる時が一番楽しそう。
ずっと晃君を見てきた私だからこそ、すぐに分かった。つまり晃君にとって私、大内翠(おおうちみどり)は少なくともあの二人より重要ではないのだ。
「……忌ま忌ましい」
本当に忌ま忌ましい。一番晃君のことを考えているのは、想っているのは他でもないこの私なんだ。
なのに……なのにあの二人の存在がそれを邪魔する。そして更なる裏切り者までが私の心を今、掻き乱している。
「次は……あの女……」
中条雪の時は予想外に上手くいった。
……若干やり過ぎてしまったかもしれない。いや、今更もう遅い。私は後戻りなんか出来ないんだから。
藤塚とかいう男子は最後でいい。今はすぐに始末しなければならない奴がいる。
「……許さない」
散々私の味方を気取っておいて、結局晃君を盗ろうするメス豚。
「待っててね、晃君……」
誰も近付かせはしない。私は私のやり方で、晃君を守ってみせる。それが今の私の存在理由のように思われた。
- 733 :嘘と真実 8話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:20:35 ID:PPLsI1oc
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放課後、いつものように教室で真実と嫌がらせに対する会議を開く。
「じゃあ、今日は何もなかったのね……嫌な予感がするわ」
「確かにな。中条の自転車の部品が壊されていた時も、朝は何もなかったし」
「中条さんの所にはこれから行くけど、一応連絡しておいたら?」
「ああ、そうするよ」
晃は部活なので終わるまで教室で待つことにしている。
中条は夕方といっても色々と退院の準備で時間が掛かっているらしく、晃の部活が終わってからでも十分間に合うようだ。
「……よし、中条にはメールしといた」
「そう……じゃあ、小坂君のとこに行きましょうか。そろそろ終わっているかもしれないし」
「おう……それなんだ?」
真実は可愛らしいピンクのリボンが付いた小袋を持っていた。中には同じく可愛らしい形をした、様々な種類のクッキーが入っている。
「ああ、いつも司君に虐められてる小坂君に見舞いと思って」
「虐めてるのは俺じゃなくて――」
「何か言った?」
笑顔で俺に詰め寄って来る真実。
こないだと同じ甘い匂いがしたが、それよりも笑顔だけれど決して笑っていない方が気になって仕方ない。というか恐い。
「……いや、何も」
「うん、よろしい」
今度は満面の笑みではにかむ真実を見ていると、女性という生き物の恐さが少し分かった気がした。
「…………」
そして同時に自分にはクッキーがないというしょうもない理由で、晃を羨ましく思う自分の小ささにも気付いた。
……自分で思うよりも俺は女々しいのかもしれない。
晃の様子を見に行くと、ちょうど練習が終わったところらしく、邪魔にならないよう正門近くで待つことにした。
「クッキーの感想が楽しみだわ」
「あいつは何食べても基本的には『美味いっ!』って言うぞ」
正門に向かうため、中庭を歩きながら真実と話す。夕焼けが校舎を真っ赤に染めていて中庭も薄く赤に染まっていた。
「だから、小坂君に渡したのよ」
「ん?」
「毒味よ、毒味。普段使わない色々な調味料を入れてみたの。……ちょい足しってやつかしら」
真実は意地悪そうににやりと笑う。何か中条に似てきたなと思いつつ、その毒味クッキーを満面の笑みで受けとった晃に心の中で合掌する。
……うん、クッキー貰わなくて良かったな。
「何でそんなことを……」
「この前テレビでやってたのよ、ちょい足しは以外とイケるって。でも自分じゃ試す気にならないし――」
「こんにちは」
ふと呼び止められて、振り返るとポニーテールの少女が立っていた。
顔は少し強張っており、両手を後ろに組んでいる。夕日がちょうど彼女を染めていて、日陰にいる俺たちからみるとポニーテールは真っ赤に染まっていた。
何処かで見たことがある気がする。確か……。
「どうしたの、大内さん。何か用かしら?」
真実の言葉で記憶が蘇る。そうだ、確かこの前晃に告白した女の子だ。今日の昼休みも、たまたま彼女の話題を出した気がする。
「……真実の知り合い?」
「そうよ。1組の委員長だからよく委員長同士の集まりで会うの」
「…………辻本さん、ちょっと来てくれないかな」
「ええ。司君、ちょっと待っててね」
夕焼けに染まる中庭に大内さんの声が通る。呼びかけられた真実は"無警戒"に彼女の元へ歩いていく。
……無警戒?何を言っているんだ俺は。何故警戒する必要があるんだ。真実の知り合いなんだろ。何も警戒する必要なんて――
「……っ」
何だろう、この胸騒ぎは。真実を見る彼女の目は一切の光を宿しておらず、夕日に染められたポニーテールはまるで血のように真っ赤だ。
そして何より異質なのはさっきまで組んでいた右手に握られている、鈍く輝いて――
- 734 :嘘と真実 8話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:21:12 ID:PPLsI1oc
-
「ま、真実っ!!」
「……くんは、誰にも渡さない」
「えっ……」
叫んだがもう遅かった。大内さんは真実の腹部に深々とナイフを突き立てる。
刺された真実は傷口を抑え、そのまま地べたに倒れ込んでしまった。辺りに真実の真っ赤な血が広がり、草や地面に染み込んでいく。
「真実!大丈夫か!おいっ!?」
「う……あ……」
真実を抱き寄せるが、傷口を抑えるのがやっとで見る見る内に刺された腹部から血が出ていくばかりだ。
「まだ生きてる」
「止めろっ!!」
また真実を刺そうとする大内さんを咄嗟に組み伏せる。早くしなければ出血多量で真実が……!
「何でこんなことっ!」
「離せっ!お前も殺してやるっ!晃君は……晃君は渡さないっ!!」
女子とは思えない力で抵抗する大内さんを、何とか抑える。
やはり晃をまだ諦めていないのか。だが何故真実が指されなければならない。何故俺まで殺そうとする――
「あの銀髪と同じ目に遭わせてやるっ!」
「なっ!?」
いきなり力の緩急を付けられて突き飛ばされる。しまったと思った時には既に大内さんはナイフを構えていた。
……"あの銀髪"?まさか……まさか、中条を……中条をあんな目に遭わせたのは――
「ふふ、あはは……何を驚いた顔してるの、藤塚司君、だっけ」
「くっ……!お前が、お前が中条の自転車に細工したのかよ!?」
目の前にナイフを突き付けられ、立ち上がることも出来ない。こうしている間にも真実は命は消えてしまうかもしれないのに……!
「ふふ、よく気が付いたじゃない!そうよ!私よ!嬉しい?お友達の敵が見つかって」
「ふざけるなっ!何でこんなことしやがった!中条を……真実をどうして刺した!」
「……邪魔なのよ、あんた達。あんた達がつるんでるせいでいつまで経っても晃君は……晃君は!」
大内さんは震えながら俺たちを睨みつける。
単なる恋愛感情を越えた、狂気とも取れる得体の知れぬ感情が彼女を支配しているようだった。
自分の身体が震えるのを感じる。べったりと血に濡れたナイフと狂気を突き付けられれば誰だって恐怖してしまうだろう。
「……ふざけんなよ」
「……何よ!?」
……それでも、俺は負けるわけにはいかない。ついに見つけた、中条をあんな目に遭わせた犯人。真実を助ける為にも恐怖なんかに負けている暇はないんだ。
「ふざけんなって言ってんだよ!そんなに晃のことが好きなら、諦めてんじゃねぇよ!」
「私は諦めてなんてないっ!!」
「いいや、諦めてるね!中条や真実に勝てるわけないって思ってるから、だから殺そうとしたんだろうが!」
「っ!!……ち、違う……私は……私は……!」
大内さんはナイフを構えたまま何かをぶつぶつと呟いている。
このままじゃ、後ろにいる真実の命が危ない。かといってここでいきなり動けば間違いなく大内さんに指される。どうすれば――
- 735 :嘘と真実 8話 ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:21:43 ID:PPLsI1oc
-
「司っ!?おい、司!大丈夫か!?」
「あっ……」
「晃!そうか、部活終わったのか!」
九死に一生だった。晃が部活を終えて駆け足で中庭を走ってくる。
「お、大内さん……い、委員長!?おい、どうしたんだよ司!」
晃は血だらけの真実を見て愕然としながら俺に駆け寄る。
そして大内さんが握っているナイフを見た。目線に気付いたのか、それとも狂気が弱まったのか分からないが、大内さんはナイフを落とした。
俺はすぐに後退し真実に近付く。息はしているが依然危険な状態であることに変わりはない。
すぐに携帯を開き、病院にかける。一方で晃はゆっくりと大内さんを見つめた。大内さんは相変わらず何処か虚ろな目をしている。
「……大内さんがやったのか!?」
「わ、私……その……私は……!」
大内さんは晃の怒鳴り声に思わず後ずさる。目には涙を溜め、首を小さく横に振っていた。
「何でこんなこと……!」
「っ!!」
晃の悲痛な叫びに耐えられなくなったのか、大内さんはその場を逃げ出す。
「ちょ、待て!司、わりぃ!俺あいつ追い掛ける!すぐに捕まえて先生呼んでくるから!」
「分かった!こっちも緊急だ急いでくれ!」
晃はすぐに校舎に消えていった大内さんを追い掛けた。晃の足ならすぐに捕まえられるはずだし、先生もすぐに来るに違いない。
とにかく今は真実の側に居てやらないと……!
「あっ、もしもし!」
長いコール音が終わりやっと病院に繋がる。すぐに状況を伝えると今すぐ向かうと言われ電話を切られた。
しかし目の前の真実は今にも息絶えてしまいそうにしている。果たして救急車が来るまで持ち堪えることが出来るのだろうか。
「すぐに救急車来るから!頑張れ真実っ!絶対に死ぬな!」
「はぁ……はぁ……」
傷口をハンカチで抑え、簡単な止血を行う。完全な止血は無理だが未使用なハンカチだし、無いよりはマシだ。
「真実……頑張れっ……!!」
地面に広がっている真っ赤な血が今の状況を嫌でも俺にありありと物語ってくる。それでも俺は必死に真実に呼びかけ続けた。
しばらくして人が集まって来る気配がする。晃が呼んでくれたのか、それとも誰かが中庭の異常事態に気が付いてくれたのか。
いずれにせよ、後は時間との戦いであった。
「死ぬな……真実っ!!」
「退院おめでとうございます!」
「こちらこそありがとうございました。さ、行くわよ雪」
「……うん」
携帯を開く。
これで何度目だろうか。電話をする。画面には"藤塚司"と表示されている。
何度かコール音がした後に、さっきからずっと聞いているアナウンスがまた流れてきた。
『ただいま電話に出られません。ご用の方は――』
「司……」
「ほら、雪!早く行くわよ!」
母親に急かされて車に乗る。すれ違いで救急車が病院に入って行った。急患なのかもしれない。
……司は来てくれなかった。もしかしたら何か急用が出来たのかもしれない。でも連絡くらい、してくれても良いのに。
約束、したのに――
「……司、何処にいるの」
車の窓ガラス越しに呟いても誰も答えてはくれない。ただあたしの中には疑念が渦巻くばかりだった。
- 736 : ◆Uw02HM2doE:2012/07/25(水) 01:24:00 ID:PPLsI1oc
-
以上で投下を終了いたします。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 737 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/25(水) 01:24:55 ID:FOVLVZ0A
- おっつおっつ
- 738 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/25(水) 02:45:24 ID:tcn4XBrk
- 入院したい
- 739 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/25(水) 05:03:31 ID:qOLxGTIE
- 中条たんハァハァ
委員長は怪しいですぬ
- 740 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/25(水) 09:23:20 ID:DkP8Z.Tg
- >>736
乙乙!
- 741 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/25(水) 14:49:06 ID:tcn4XBrk
- (*´Д`)ハァハァ
- 742 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/26(木) 00:02:05 ID:qOPrhORw
- GJ!中条たん次回活躍の予感!
辻本さん刺されるとは思わなかった(´・ω・)
- 743 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/26(木) 07:14:28 ID:l2pVBfPY
- GJです
ドラファン読みたいね
俺は変歴伝よりドラファンが好きだな
- 744 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/26(木) 20:49:51 ID:fBvL77Wc
- 同じく・・・・仕事の癒しによみたいですよね
- 745 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/27(金) 02:11:49 ID:d6I6.3iw
- 「〜より」とか言うと荒れるかもしれないから
- 746 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/27(金) 04:12:18 ID:6U.AoPO6
- 俺は変歴
水城ちゃんがでるから
- 747 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/29(日) 23:33:27 ID:hLt00QH2
- ぽけもん黒と触雷の続きを・・・
- 748 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/29(日) 23:37:51 ID:d.MdfwE6
- >>747
催促(・A・)イクナイ!!
- 749 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 01:14:55 ID:YMwCzYiM
- >>748
まったくその通り。実にけしからん
あの、触雷まだでしょうか…
- 750 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 01:53:46 ID:wA0vptvI
- >>749
メッ
- 751 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 09:26:40 ID:2rwAFZNA
- 初投下です。
なんかまだプロローグだけでヤンデレ成分ない感じですが。
- 752 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 09:31:30 ID:2rwAFZNA
-
【プロローグ】
喫茶店《テラローシャ》の一番奥の席で、黒山散(くろやま・ちる)は新聞を読みながら待っていた。冴えないサラリーマンみたいな姿だ。全く似合っていない。
私が慌てて駆け込むと、席には既にコーヒーが用意されていた。
「ごめん。ちょっと仕事が遅れた」
黒山は「たいして待ってない」と無感情に言った。「ただ"眼球"か"骨格"だったら、確実に怒ってただろうな。これからは気をつけろよ、ナーシャ」
ナーシャは私の愛称だ。本名はナターリア・マクシモーブナ・シューキナ。
「うん、ごめんごめん。あ、ちょっと重めのものを頼んでもいい?」
「別にいいけど、先に髪を直せよ。変な感じになってるぞ」黒山は新聞を横に置いて、髪の毛がぼさぼさになっているというジェスチャーをした。
私は手鏡を取り出し、走ってしまって乱れた髪の毛を手でちょこちょこと整えた。赤くなった顔が映って、ますます恥ずかしくなる。普通の乙女だったら、と思った。
普通の乙女だったら、好きな男の目の前で、いくら髪の毛と言っても、化粧を直すようなことをやるだろうか。と言っても、直さないわけにもいかないのだが。
整え終わったところで、ちょうど店員がお茶を持ってくる。
「マテにペッパーミントのブレンドティーのお客様は」
マテ茶と聞いて私は顔をしかめる。疲労回復に役立つというが、あの風味は私にはどうにも受け容れがたい。
黒山だろうと思っていたら、案の定黒山が手をあげていた。
「こっちだ」
日本人とブラジル人の混血らしく、しかも生まれたときからブラジルに住んでいたという黒山は、マテ茶にさほど違和感を覚えないらしい。
「あとメインのメニューを頼む。連れが何かほしいらしい」
「承知しました」
確かに、既にメニューを片付けられている。「もう食べたの?」
「ああ。さっき"心臓"が一人やってきたんで、一緒にステーキ食べてた。ここは随分とメイン料理の種類が豊富だな」
「……それじゃ、もう夕食は済ませたのね」
「ああ。だから重めのものを頼むんだろ? お前はまだ夕飯食べてないだろうが」
重めのものと言っても、サンドイッチくらいだと思っていたのだが、
デートみたいなものだと思っていたので、先に食事を済まされたのはショックだった。
私はそのことが腹立たしくて、黒山に向かって自分でも気にしていないことを注意する。
「……コードネームを人前で使うのはよした方がいいと思うんだけど」
「全員の名前なんか覚えてられるか」
けっ、と黒山は悪辣そうな笑みを浮かべた。「俺たちが幾ら進化した個体と言ったって、百万人以上もいるんだぞ。種族だけでも千と数百だ。種族だけならまだしも、一人一人の名前なんか覚えてられるかっつうの」
「そうは言っても、機密保持が」
何が機密だよ、と黒山は新聞を畳んで、天井を睨みつけた。そして私を見つめた。獣のように鋭かったが、確かな美しさのある、綺麗な瞳だった。
「大体が進化した個体だの何だのと言って、人類に気にされてないだけの突然変異だよ、俺たちは」
- 753 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 09:34:33 ID:2rwAFZNA
- 今にも唾を吐きだしそうな言葉だった。
「そりゃそうだけどね」
「大体名前で言ったって、組織のことなんか分からねえじゃねえか」
別に私だって、組織のことなんか興味ない。
どうせ私を排除した組織なのだ。そんな奴らの話題をするより、黒山と一緒に普通の話題、料理とか仕事とか、映画とか小説とか、そういう普通の話を、普通に話していたい。
他の人たちの名前は覚えないで、私の名前は覚えてくれているというのにも、優越感を感じないでもない。彼自身はそんな、特別な意味は持たせていないんだろうけど。
そんなことを考えていると、いつのまにか黒山は私を見つめていた。
「お前は組織に興味持ってねえかもしれねえけどな」
どきりとした。「そんなことないわよ」
「そうかな。まあ、俺からするとお前は組織から逃げたがってるように見えるってことだ」
「そんなことないって」
「どっちだっていいんだ。俺はお前を守りたいんだからな」
そういうことをさらりと言うなって。特別な意味もないくせに。
口を尖らせてそう言おうかとも思ったが、彼は本気の眼をしていた。ちょっと驚く。
「竜享夢(ろん・しゃんめん)はまだいいんだよ。あいつには市街戦でも十分に生存できる戦闘能力があっからな。でもお前はどうするんだ」
「……分かってるよ、そんなことくらい」
「お前が自分の能力を役立てられるのは水中だけなんだぞ。本当はこんな内陸に引きこもらないで、沿岸部にいてほしいんだ。でも仕事のためって言うから仕方がなく、なんだ」
彼は私を真っ直ぐに見つめてきたが、こればかりは譲れない。
これ以上あなたと離れるなんて、絶対に嫌だ。
きっと黒山は気付いていないだろうけど、私だってこれでも、すごく我慢しているくらいだ。
本当はもっと、ずっと一緒にいたいのに。
私があなたと一緒にいたいって言ったら、あなたは来てくれるんですか?
……無論、できないだろう。
彼はこちらの仕事でブラジル人の母親を養っている。それをやめることはできない。
でもそれなら、彼と一緒の場所に、こちらから行くだけだ。
私は彼と睨み合った。
顔が触れそうなほど、じっと睨み合っている。
「メニューですよ」
は、と横を眺めた。店員がにやにやと笑って「仲良くね」と言った。キスでもするような姿勢に見えたのだろうか。私は顔を赤らめる。
黒山を見ると、困惑しているような、不審そうな視線を店員に向けた。どうして笑われたのかなど、まるで気付いていないらしい。私は脱力して、メニューを眺めた。
「俺がとりあえず言いたいことは、お前はもっと組織のことを真剣に取り組むべきだぜって、そういうことだ。たとえ嫌いだとしてもな」
「……散は、嫌いじゃないの?」
「嫌いな奴もいるけど、俺は"脳"とか"眼球"とかとは親しいからな。"血管"とか"骨格"の奴らは、やっちまいたいくらいだけどな」
眼球。その言葉を聞いて、すごく苛立つ。
"眼球"はプロポーションのよい、とても綺麗な女性だ。組織の幹部として働いていて、組織が創設された当初からのメンバーの一人らしい。私は組織にだって受け容れてもらえないのに、組織の、しかも幹部に位置する彼女が、黒山と一緒にいる。
何か理不尽な感じがした。
しかしそんなことは気にしていないらしい。黒山は溜息を吐いた。
「それに好きでも嫌いでも、知らないわけにはいかない」
黒山は鋭い目つきをにっこりと細めた。戦慄が背筋を駆け抜ける。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」
だろ? と言う黒山の笑みは、獣が大きすぎる獲物を、口いっぱいに咀嚼しているようでもあった。
私は「うん」と頷くしかない。黒山は笑みを消し、
「でも、俺にとっての組織は敵なんかじゃないんだよな」
私は思わず黒山を見つめた。しかし黒山は何だか心ここにあらずという感じで呟いた。
「俺は組織のことなんかどうだっていいんだ」
どういうことだ、と思った。それは初めて聞く話だった。黒山はぼんやりと呟いた。
「もっと下らねえことでいいんだ。俺はそれだけでいいんだ」
私は問いかけようと思ったが、黒山はぶるぶると首を振った。「もうこの話はやめておこうぜ。さっさと夕食を頼んでくれ」
「こんな下らねえこと、話したくもない」
- 754 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 09:35:16 ID:2rwAFZNA
-
喫茶店から出て、渋谷駅で黒山と別れるときだった。
黒山が東急のデパートを眺めて、遠い顔をしているのが、ひどく辛くなった。きっとあの娘のことを考えているのだ。
私は黒山に向かって、唐突に「キスして」と言った。呆れられるだろうことは予想がついていた。
しかし予想よりも、よほどひどかった。
「……まだ足りないのか」
黒山は悲しそうな顔をしていた。その表情に浮かんでいるのは、失望とか悲しみとか、同情とか憐れみとか、そういうものだった。
まだ愛が足りないのか、と言っているのだった。
「分かってるけど」
私は自分の情けなさに歯を噛み締めた。そうだ。彼はいつも言っていた。他者に頼るな、と。
"他者に自分を依存させるな"と。
「ああ、分かってる。でも」
足りない。黒山が好きだ。愛している。愛している。愛している。
だから愛してほしい。
そう思わないわけがあるのか? 愛しているから、愛してほしいって、そう思わないわけがあるのか?
私は黒山の頬を両手で掴んだ。その獣みたいな目は、今だけは母親のような、優しい目つきをしていた。
私は思う存分黒山の唇を吸った。ほとんど舌を絡めるくらい、濃厚なキスだった。
好きだ。愛してる。愛してる。愛してる。その気持ちが浮かんできた。と同時に欲望が生まれた。
だから、愛して。今だけでいいから。
三十秒ほどしたところで、黒山は肩を押してきた。
「愛の中毒だな。比喩表現じゃなく」
黒山は悲しそうに言った。
私はひどく恥ずかしくなって、情けなさで縮こまって、それでも黒山をぎゅっと抱きしめた。愛してる、と呟いた。
それで、その日は別れた。
- 755 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 09:37:43 ID:2rwAFZNA
- 投下終了です。
中二病の設定とか主人公の性格とか、いろいろ欠点があるかもしれません。
少しずつ直していきたいんで、よろしくおねがいしやす。
- 756 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 16:27:34 ID:7f5o.nUk
- >>755
乙!。俺の中二心が疼いた。
ネタバレになっちまうだろうけど二人にもコードネームあるん?
- 757 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/30(月) 23:03:52 ID:PrvYt3UE
- >>755
GJです
しかし初投下とは思えない程文章書くのに慣れてますねw
- 758 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/31(火) 09:02:31 ID:ro2UvEjw
- >>755
乙です!
- 759 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/31(火) 16:44:33 ID:NCaIgjl.
- 短い
- 760 :755:2012/07/31(火) 22:21:14 ID:t3zrBCAw
- >>756
ええと、ありがとうございます。
多分いろいろなネタばれがあるんで話せないっす
>>759
ありがとうございますっす。
確かに短いっすね、すんまそん。なんかどれくらい書けばいいのかまだよく分からなくて
とりあえずプロローグ書き足しとか書き直しとかする気がします。
なんか情けないですが前のプロローグから大幅な変更があるかもしれません
つかメインヒロインをプロローグに出してないし
- 761 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/31(火) 23:10:13 ID:NCaIgjl.
- >>760
二次ふぁん民……?
- 762 :雌豚のにおい@774人目:2012/07/31(火) 23:11:59 ID:EKotyCzs
- え?
- 763 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/03(金) 15:07:58 ID:UYOtJ2lI
- >>755
GJ
プロローグだけでもヒロインの愛の深さ(深淵的な意味で)を感じます。
キャラは某オルフェノクみたいな感じなのかな?(微妙なたとえでスミマセン)
ところで、題名とかはないんですか?
- 764 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/03(金) 15:15:04 ID:UHVqhR6.
- 中条さんまだかな〜
- 765 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/04(土) 00:53:32 ID:rguWi2t.
- んっ?僕の中条たんに何か用かな?
- 766 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/06(月) 16:04:06 ID:rQDVs2Cw
- そういうのやめなよ(迫真)
- 767 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/06(月) 16:06:28 ID:jmpb/feM
- >>766
ホモは帰って、どうぞ
- 768 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/06(月) 23:47:36 ID:TsuD7y0o
- 長編でも短編でもツンデレとヤンデレを兼ね備えた奴が出てくる作品おしえれ
- 769 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/06(月) 23:49:32 ID:jmpb/feM
- >>768
自分でお探しください、以上。
- 770 : ◆lSx6T.AFVo:2012/08/07(火) 08:31:47 ID:l.6o34l6
- 第八話、投下します。
- 771 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:33:29 ID:l.6o34l6
- ヘビセンと呼ばれるショッピングモールがある。
設立されたのは今から一年前と比較的新しい、大規模な商業施設だ。郊外にある広大な土地を使った複合型のモールで、その規模は非常に大きく、他県から訪れる人も少なくないと聞いている。
元は市主導で自然公園をつくるはずの土地だったらしいが、重役の献金問題等で話がこじれ、結局は頓挫してしまったという背景を持つ。
しかしながら、ここら周辺にも大きな自然公園はあるので、市民としては公園よりもショッピングモールができたほうがありがたかったのかもしれない。
モールの外観は近代ヨーロッパをモチーフにしており、レンガ敷きの遊歩道、ガス灯をイメージした街灯など、精巧な小道具で場を盛り上げている。
そのためか、買い物をせずともぶらぶらと歩いているだけでもそれなりに楽しめてしまうので、金銭の乏しい学生にも大変な人気があった。我が校の生徒も例外に漏れず、平日休日問わず多くの生徒がヘビセンを訪れていた。
ところで、ヘビセンというのはあくまで非公式の愛称であり、実際にはもっと長ったらしい正式名称が存在しているということにも触れておこう。なら、何故このモールはヘビセンなどと呼ばれ始めたのか。それは、モールの全体図を見れば一目瞭然である。
先端にある円形の映画館に、ぐにゃぐにゃとくねり曲がった遊歩道。その姿が、ちょうどヘビのように見えるからだ。ヘビのようなショッピングセンター。略してヘビセン。どうも、そういう由来らしい。私自身、人づてに聞いたことなので確証はないが。
それが製作者の意図してつくったものなのか、そうでないのかはわからないし知らない。とにかく、そういう風変わりな名前のショッピングモールがあるのだということを覚えて欲しい。
さて。前置きが長くなったが、私は今、そのヘビセンの中にある、とある喫茶店にいた。ヘビの姿になぞらえると、ちょうど尻尾の一番先の辺り。その客の足取りが最も悪いであろう場所に位置する喫茶店で、私はひとりコーヒーを啜っていた。
昨夜の前田かん子との通話時に、私は本日の会合場所を此処に指定した。この喫茶店が、自分にとって慣れ親しんだホームグラウンドであり、少ないとはいえ一応は人の目があることが、此処を選んだ理由だ。
いや、実をいうと、もっと大きな理由がある。自分の住む街からはそこそこ遠いヘビセンを、わざわざ選んだ理由が。
「…………」
ぼんやりと、窓に映る自分の冴えない顔を見つめた。
そういえば、結局、昨夜は彼女からはハッキリとした返事はもらえなかったな、と思い出す。
今日はちゃんと来てくれるかしら。ちょっと不安になってくる。予定の時間は刻一刻と迫ってきていた。といっても、どちらにせよ私には待つことしか出来ないのだが。
- 772 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:35:10 ID:l.6o34l6
- 珍しく緊張していたのか、肩のこりがひどい。私は丹念にこりをほぐしながら、店内の様子を再度顧みた。
落ち着いた、と言えば響きはいいが、実際はただ寂れただけの喫茶店。店内にはモダン・ジャズが気にならない程度の音量で流れ、雰囲気を出す為か、照明はわざと薄暗くしていた。
来店している客は、私を含め五人。皆どこか気だるげな空気を醸していて、それが店の活気のなさに拍車をかけている。
日曜日だというのに、どうしてこうも客が少ないのだろうか。他人事ながら、私は少し心配になってきた。
この店も、端っことはいえヘビセン内に含まれているのだから、立地条件としては申しぶんないはずなのに。しかし、ヘビセンのフードコートには全国にチェーン展開しているコーヒー店もあるし、それも仕方ないかもしれないけど。
この喫茶店はサイドメニューの数が極端に少なく、しかも肝心のコーヒーが値段のわりに美味しくないときているので、そもそもフードコートの店とは勝負にすらなっていなかった。というか、店側に張り合う気力が見られない。
けど、私はそんなやる気のない店の態度を気に入っていた。それが、此処を贔屓に利用する要因なのかもしれない。客層は見ての通り、疲れた人々ばかりでとても静かだし、勉強や考え事をするのには最適といえよう。
店内を一通り見渡し終えると、私は窓の外を眺めた。現在、私は窓際の二人席を陣取っているので、外の様子はよく見て取れた。
今朝の天気予報でも言っていたのだが、どうやら本日は午後から雨が降るらしく、雲行きが怪しかった。曇天が広がる空には、こぼれる日差しが一筋もなく、昼間にも関わらず辺りは夕方のように薄暗い。そのせいか、街灯にはさっそく灯がともっていた。
いつもなら、行きかう人々で溢れている街道も、普段よりは淋しく感じた。通行人がぽつぽつとしか見受けられない。そして、その手には皆折りたたまれて細くなった傘を握られていて、今にも降り出しそうな雨に備えている。
「…………」
良くない流れだな、と思う。正直、私は焦りを感じていた。このままでは、計画に支障をきたすかもしれない。窓に映る自分の顔も、不安そうに複雑に歪んでいた。
「うまくいけばいいけど……」
ぽつりと、そんな弱音のような独り言を吐き出した時だった。突然、目の前の窓がカタカタと音を立てて震え始めたのは。
地震だろうか、そう思って瞬時に身構えたのだが、どうも地震とは勝手が違う気がした。ハッキリ言えば、もっと人工的な匂いがする。
その振動に気付いたのは、どうやら私だけではないらしく、店内に居座る客も何事かと顔を上げていた。気だるげな空気が幾分か引き締まり、ささいな緊張が発生する。
- 773 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:36:56 ID:l.6o34l6
- 音だ。加えて音も聞こえ始めた。まるで牛の鳴き声のような。いや、牛といっても闘牛だ。闘争心を抱えた、低い唸り声。その音はどんどんと激しさを増していき、それに比例して窓の震えも大きくなっていた。
店内の視線は、全て窓の外に集中していた。何かが現れる。皆、そんな予感を感じていたからだろう。かくいう私も同じ気持ちだった。何かが来訪するのを、恐れと共に待っていた。
そして、振動と音が頂点に達した時、遂にそれは現れた。
轟音を轟かせながら、突如横合いから飛び出してきた真っ黒な物体。それは店の前で大きく旋回すると、摩擦による白い煙を巻き上げながら急停止した。どっどっどっ、と耳をつんざくような重低音が周囲に響き渡る。
それは、素人目から見ても明らかに違法改造だとわかる無骨な形をしたバイクだった。黒のメタリックボディが眩い光沢を放っている。跨るライダーもバイク同様に黒尽くめで、黒のフルフェイスヘルメットにライダースーツ。そしてブーツを履いていた。
ヘビセンは、自転車等での進入を禁じている。ましてや、目の前で唸っているような巨大なバイクなどはもってのほかだ。本来なら、きちんと所定の駐輪場で駐車しなければならない。
けれど目の前のライダーは、そんなルールは与り知らぬとばかりに、白昼堂々と違法行為をやってのけていた。そして、私はこんなことを平然としてみせる人物を一人知っていた。
エンジンが切られた。すると、先程までの騒音はなんだったのか、水を打ったような静けさが取り戻される。
騎乗するライダーが、バイクから降りた。続けて、装着するフルフェイスヘルメットに手をかける。
砂金の如き金髪が、中空を舞う。
ヘルメットの下から現れた端正な容姿をした女性は、私の予期していた通り、前田かん子その人ならなかった。
その映画のワンシーンみたいな光景に目を奪われたのは、私だけでなく、店内にいる人間全員も同じであっただろう。尤も、薔薇の茎にひそむ棘のように、感じ取ったのは美しさばかりではないと思うが。
彼女はそのまま店の前でバイクを停めると、大股で出入り口まで歩いていき、乱暴にドアを開けた。付属するベルが、ガチャガチャと汚い音を奏でる。
「い、いらっしゃいませ……」
店員さん(おそらく大学生のバイトだろう。温和そうな笑顔が特徴的だ)の震える笑顔を無視して、前田かん子はぎろりと視線を一周させた。
客達は、その視線上に入ることを恐れ、亀のごとく首を引っ込めていた。そして彼女は窓際に座る私を見つけ出すと、カツカツとブーツを鳴らして接近してきた。
私はいつもの柔和な笑みを浮かべて、片手を上げながら挨拶する。
「こんにちは前田さん。今日はわざわざ貴重な休日に撿撿」
バン、と前田かん子がテーブルを思い切り叩いた。机上のコーヒーカップが、怯えて一跳ねする。
「なぜ私を呼び出した」
今となっては聞き慣れてきたハスキーボイスで、短くそう告げる。
どうやら、機嫌は見ての通りあまりよろしくないらしい。といっても、私は機嫌のよい彼女なぞ見たことがないのだけど。
- 774 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:39:41 ID:HRoXok2Y
- 「わけは話しますよ。ですからまず、席に着いたらどうでしょうか?」
「私はお前とお喋りしに来たんじゃない」
提示した提案を、即座に突っぱねる。金剛像のような仁王立ちが、お前とは一秒でも顔を合わせていたくないと暗に告げていた。
やれやれ、とさしもの私も肩をすくめるしかない。まさか、ここまできっぱり拒絶されるとは。
さっきから気付いていることではあるが、店の雰囲気が剣呑なものに取り替わっていて、非常に居心地が悪くなっていた。普段とは大違いだ。店内にいる客も、そわそわと落ち着きなく身体を揺らしていた。
なんだか悪いことをしてしまったな。ひどく罪悪感を感じる。せっかくの日曜日なのに、これでは店にも客にも迷惑をかけてしまう。関係のない人を巻き込みたくはなかった。なんとかしなくてはならない。
それなら、と私は意気込む。空気が張り詰めているのなら、解きほぐしてやればいい。私は場の空気を和ませてやろうと、とっておきのジョークを口にした。
「いやはや、これは手厳しいですね。会っていきなりこれでは、まさに取り付く島も無いといったところですかね撿撿鳥島だけに」
そう言い終えると、したり顔で前田かん子を見た。けど、
「…………」
彼女には何の変化も見て取れなかった。相変わらず、刃物のような鋭い視線で私を見ているだけだ。それに店の空気も全然弛緩していなかった。むしろ嫌な感じが増しているような……。
「あの、今のわからなかったですかね? 取り付く島と、自分の名前の鳥島をかけたダジャレだったのですが、あの、面白かったですよね?」
「…………」
「あ、いや、やっぱりなんでもないです。なんか、すいませんでした」
私はゆるゆると頭を下げた。そして顔を上げようとしたのだが、ショックが大きすぎたのか、動きはかなり緩慢になった。
数少ない持ちネタが不発だったことにより、私は決して少なくないダメージを負っていた。というか、重傷だ。割と本気に傷ついている。深夜寝る前とかに必死で考えてニヤニヤしていたのに……死にたくなる。
切り替えよう。
ふぅ、と息を吐き、今の出来事なんて無かったとばかりに、私は冷静に続けた。
「非常に言い難いことなんですが、今日前田さんを呼び出したのは、そのお喋りをするためなんですよ」
何か突っ込まれないうちに、素早く言葉を継ぎ足す。
「といっても、なにも世間話をしようってわけじゃありません。私がしようとしているのは、もっと有意義な話です」
慎重に、本題へ切り出した。
「前田さんには、田中キリエに関する情報を話して欲しい」
- 775 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:41:22 ID:HRoXok2Y
- そこで初めて、前田かん子の態度に変化が現れた。仏頂面に少し、ヒビが入る。
「鳥島タロウ。私が初めてお前と会ったときに言った言葉を、もう忘れたのか?」
「忘れちゃいませんよ。お互いのことを知らないなら、付き合ってからお互いのことを知っていけばいい、でしたよね?
前田さんのその言葉には全面的に同意します。だけど、今回は状況が状況でして、どうしても前田さんの力が必要になるんですよ。どうか、協力していただけませんか?」
少しでも誠意を見せようと、深々と頭を垂れてみせる。
しかし、前田かん子は付き合ってられないとばかりに渇いた笑いを漏らした。
「くだらない。お前が何を言おうと、私は前言を撤回する気は無い。その程度の用で呼び出したというのなら、帰る」
そう言うやいなや、彼女は一度も席に着くことなく、くるりと踵を返して、宣言通り出入り口へと戻っていく。説得は失敗した。このままでは、彼女は本当に帰ってしまうだろう。
仕方がない、か。私は下唇を噛む。目的の為だ。やはり多少のリスクは負わざるを得ないだろう。
一歩、二歩、三歩と進んだところで、私は遠のいていく前田かん子の背中に、言葉をひとつ投げかけた。縫い針を指に指したように小さい、ちょっとした傷を負わせる程度の切れ味を備えて。
「あまり調子に乗るなよ、前田かん子」
ぴたり、とまるで影を楔で止めたかのように、前田かん子の足が止まった。そして、ゆっくりと首だけを動かし、横顔をこちらに見せる。
「おい、お前、いま、なんて言った?」
全身の肌が粟立った。明らかな殺意の宿る隻眼が、容赦なく私を射抜く。殺される、と思わされてしまうほどの凶暴性。片目でこれなのだ。もし両目で睨みつけられていたら、私は失禁していたかもしれない。
「無責任なんですよ」
しかし、こちらも怯まない。なるべく感情のない顔をつくって、悠然と言い返す。
「先程の台詞、そっくりそのまま返させていただきましょう。あなたこそ、自分が言ったことをお忘れになっているんじゃありませんか?
もし田中キリエを悲しませたのなら、私を殺す。あの時、たしかに前田さんはそう言いましたよね?」
「ああ、言ったよ」
「それが無責任なんですよ。あなただって、もうとっくに気付いているのでしょう? 私が他人の心情を慮るのを非常に不得手にしているのは。いい機会ですからハッキリ言っておきますが、このままでは私は、百パーセント田中さんのことを悲しませますよ」
舌がカラカラに渇いているのに気付く。コーヒーで口内を湿らせようかと思ったが、カップの中は空っぽだった。しょうがないので、そのまま続ける。
- 776 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:43:36 ID:HRoXok2Y
- 「田中さんのことを知らないのなら、本人に訊けばいい。ええ、大いに結構ですよ。しかし私は、彼女の触れられて欲しくない領域にズケズケと踏み込んでいきますよ、間違いなく。
私には田中さんの心の機微を感じ取るなんて器用な真似はおそらく出来ないでしょう。平気な顔して、彼女の心を蹂躙してしまう。嫌な思いをさせてしまう。
そんな地雷原の中を全力疾走で進んでいくような行為を、あなたは望んでいるのですか? 少なくとも私は御免ですね。攻略本どころか、説明書も無しにワンコインクリアをするようなものですよ」
返事はない。もう少し畳み掛ける必要があるか。
「私が田中さんの告白を断ったのは、自分のそういう性分をよく理解していたからです。言うならば、彼女のことを想ってこその結果だった。だけれど、それを無理矢理つなぎ合わせたのは他ならぬあなたですよ、前田さん。
あなたには、私に情報を与える義務がある。田中さんのことを悲しませないために、わたしには彼女の基礎知識を教える必要がある。そしてその義務を放棄するということは、畢竟、前田さんが田中さんを傷つけるのと同義です」
「私がキリエを傷つけているって言うのか? お前は」
「はい。このままでは前田さんは間接的に田中さんを傷つけることになります。私、鳥島タロウが田中さんを傷つけることを十二分に知りつつも放置するのだから、当然でしょう? おかしなことは言っちゃいませんよ」
前田かん子は揺らいでいた。まさか自分が田中キリエの傷害に加担しているとは思ってもいなかったのだろう。ぶっちゃけた話、私はそうとうにズルイこじ付けを言っているのだが、前田かん子は気付かない。こと田中キリエのことになると、正常な考えが出来ないことは知っていた。
いけるな、とここで私は確信する。後はちょっと、ほんの少し背中を押すだけ。
「私は前田さんに殺されたくない。前田さんは田中さんを悲しませたくない。互いの利益は一致しています。なにも悩むことはないでしょう。ここで意固地になるのは、あまり得策とはいえませんよ。
さて。これで、私の言いたいことは全て終わりです。後は、前田さん次第ですよ」
私は一仕事を終えた後のように大きく息を吐き、腕を組んで、椅子にもたれかかった。コーヒーを飲みたかったが、中身が空なので我慢する。
前田かん子はしばらく私を見つめていた。ここまで説得されておきながら 、なお決めあぐねているらしい。
おそらく、私の提案にそのまま乗っかるのが気に喰わないのだろう。彼女はものすごく私のことを嫌っている。けど、結果はわかっていた。
- 777 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:45:43 ID:HRoXok2Y
- 「…………」
前田かん子は、帰りかけていた足を元に戻すと、無言のまま私の対面の席に腰掛けた。
「わかって貰えたようで嬉しいです」
とりあえず、これで第一関門は突破。今日こなさなくてはならなかった最低限のミッションは達成した。彼女が交渉のテーブルにつかずあのまま帰っていたら、一番困っていたのは私だっただろう。
前田かん子は、投げやりな口調で言う。
「御託はいい。さっさと訊きたいことを訊け」
「まあまあ、そう急かさずに。せっかく店に来たのですから、まずは注文しないと。私も、ちょうどコーヒーのおかわりを頼もうとしていたんです」
横に立て掛けられていたメニュー表を彼女に向かって差し出したが、前田かん子は受け取ろうともしなかった。仕方がないので、見えるようにしてテーブルに置いておく。
いやあ、嫌われてるなあ、とことん。まあ、わかってはいることだけどさ。
自分としては、出来ればもっと仲良くなりたいと思っているので、なんとか今日その糸口を掴めればなと密かに考えていた。
前田かん子はメニューに一応目を通しているらしく、眼球が上下左右に動いていた。そしてその動きが停止した頃を見計らって、私は未だびくびくと怯えている女性店員さんを呼んだ。オーダーを告げる。前田かん子は結局、私と同じコーヒーをたのんだ。
それからは互いに無言だった。なんとなく、注文の品が到着してから話そうという空気が出来あがっていた。なので、私も黙ってそれにならっていた。
そして私は、ここぞとばかりに、前田かん子のことを改めて観察した。考えてみれば、彼女のことを仔細に見るのは初めてかもしれない。私達が会うときは、大抵が穏やかでない。
まじまじと無遠慮に見つめる。彼女は、本当に綺麗な人だった。お人形さんみたいだな、とありふれた決まり文句しか頭に浮かばない。
長い睫毛に、日本人にしては高い鼻、そして決め細やかな白い肌。一番の特徴である軽く巻いた金髪は、オレンジ色の照明に照らされてきらきらと光っている。
一見すると、その髪は天然物のようにしか見えない。もしかしたら本物かもしれなかった。彼女には異国の血が混じっているのかしら。
そのまま視線はずるずると下がっていき、最終的には首の下、彼女の豊かな乳房の辺りにとまった。
思わず、感嘆の息を漏らしそうになる。
大きい。前田かん子の胸は、とにかく大きかった。こんなに大きな胸を、私は画像や動画等の媒体以外では一度だって見たことがなかった。
ピッタリとしたライダースーツを着ているせいか、形のよさがくっきりと表れていて、その存在を更に強調していた。張りも弾力も中々ありそうで、対の張り上がった球体は、みずみずしい西瓜を連想させた。
後はもう少し、首元まで上げたジッパーを、後もう少しだけ下げてくれたのなら……。
- 778 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:47:40 ID:HRoXok2Y
- 「なに見てんだよ」
突如、向かいから飛んできた声に、私はひどく混乱してしまった。あ、え、と訳のわからぬ言語を吐き出した後に、慌てて自己弁護をする。
「あ、ええとですね、思わず感心してしまって、大きいなあって」
「大きい? なにがだよ」
「おっぱいがです」
「…………」
「あっと、違うんです。今のは本当に違うんです。言葉のあやというか、なんというか、いや、でもおっぱいが大きいのは事実ですし……。
そ、そうですっ。私は褒めているんです。だって、滅多にいないじゃないですか、そこまで胸の大きい人って。いやあ、いいなあ。セックスアピールとしては申し分ないですし、得することも多いんでしょうねえ。ははは……」
「…………」
「ですから、別に決していやらしい意味で言ったんじゃ……」
「…………」
駄目だ。これまでの経験則から推測するに、私はまたやってしまったのだろう。いつもの空気の読めていない発言を。前田かん子の目は言葉を重ねるごとに険しくなっていくし、とんでもないヘマをやらかしてしまったのだ。
というわけで、大人しく口をつぐむことにした。これ以上、藪をつついてヘビを出すわけにはいかない。いま居るところが、ヘビセンだけにね。
二人の間に、再び沈黙が訪れる。今度は多大な気まずさを抱えて。
落ち着かなくって、視線を横に逸らす。そして、おや、と気付く。いつの間にか店内の空気が穏やかになっていた。
もともと、他人に無関心なへんてこな人間しか集まらない店なのだ。徐々に前田かん子への耐性がついてきたのだろう。全くをもって、たくましい人達である。もはや尊敬の念すら抱いてしまう。こっちは未だ、これっぽっちも慣れていないというのに。
「話に入る前に、ひとつだけ訊きたいことがある」
沈黙を打ち破ったのは、意外なことに前田かん子からだった。それに、何か訊きたいことがあるという。
まさか、彼女から何か質問してくるとは思わなかったので、一瞬、呆気にとられてしまった。が、この気まずい沈黙を打破したかった私は、渡りに船だとばかりに飛びついた。
「ぜひぜひ、ひとつと言わずに、どうぞ何度だって訊いてください。どうせ、後ほどは質問責めになるのでしょうし、情報は出し惜しみしませんよ」
私は笑顔で受け入れた。すると、
「そ、そうか……」
コホン、とわざとらしい空咳きして、前田かん子は頬を赤らめた。
- 779 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:49:12 ID:HRoXok2Y
- 頬を赤らめた? 私は疑問に思う。何故、彼女の頬は上気しているのだろうか。もしかして、店内の暖房がきついのかしら。それなら、自分が店側に言うのだけれど……。
コホン、と彼女は空咳きをもうひとつ挟み、
「えーと、だな……お前らは……実際のところ、どこまでいったんだ?」
ぼそぼそと小さな声で話すので、聞き取るのに苦労した。私は尋ね返す。
「どこまで、とはどういう意味でしょうか? すいません。そういうの察するの苦手なんで、もっとはっきり言ってもらえると助かります」
「だから、あれだよ。あるだろう、恋愛の、AとかBとかCとかさ。私が訊きたいのは、そういうことだよ」
「えっ」
いつもより半音高い、素っ頓狂な声をあげてしまう。今、前田かん子はなんて言ったのだ? 恋愛のABC?
「なんだよ。別におかしなことは訊いていないだろう」
「はい。まあ、おかしくはないですが……」
なんというかすごく意外だ。意外なのは質問の内容ではなくて、彼女の態度だった。どう見ても、恥ずかしがっているようにしか見えない。
うーん。頬が赤いのは暑いからではなく、単に恥ずかしかったからなのか。まさか恋愛関係の質問に躊躇してしまういじらしさを持つとは。普段のイメージと差がありすぎて。なんていうか、頬が自然と緩んでしまう。
前田かん子は一見すると、恋愛経験がとても豊富そうな外見をしている。けれど、もしや実際は違ったりするのかもしれない。意外と中身は乙女乙女しているのだろうか。
でも、もしそうだとしたら、あれだよね、外見とのギャップで、なんかこう、くるものがあるよね。すごくグッとくる。
頬と一緒に、きっと心まで緩んでしまったのだろう。抑えとけばいいのに、悪戯心がわいてしまった。私は正直には返答せず、冗談を言ってみることにする。尤も、その数秒後に、私はひどく後悔することになるのだが。
「どこまで進んだか、でしたよね」
私は一拍おき、
「田中さんにはもう受精させましたよ」
すぐだった。私がそう言った瞬間、否、言い終える前に、前田かん子が肉食獣のような俊敏さで飛び掛ってきた。
- 780 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:50:51 ID:HRoXok2Y
- 動物的な本能が警鐘を鳴らす。殺される。私はそう思って、ほぼ反射的に椅子を後ろに引いた。が、寸でのところで遅かったらしい。彼女の右手は私の後頭部をしっかりとホールドし、もう片方の手で右目に何かを突きつけた。
視界に見えるは、三つの黒い点。フォークだ、と気付いた。テーブルの横に備え付けられていたフォークを、私の右目のすぐそこに向けているのだ。
近い。眼球とフォークとの距離は、おそろしく近かった。緊張のせいか、鼻の頭にぽつぽつと汗の玉が浮かび始める。もし少しでも頭を動かしたら……。そんな想像をしてしまうと、怖くなって瞬きすら出来ない。
「確認する」
冷え切った声で、前田かん子は言った。
「いま言ったのは、事実か?」
「冗談です」
私は即答した。
「今のは、味気のない会話に彩りを与えようとした、ただのジョークですよ。実際には、まだ手すら繋いじゃいません。私は、プラトニック・ラブを信条としているので」
「…………」
「な、なんなら、田中さんに電話で訊いてみたらいかがですか? 彼女はそんなことはしていないと即座に否定するでしょう。断言できます」
「…………」
「ですから、いい加減に、手、放してもらえませんかね。フォーク。このままじゃ、眼球を傷つけてしまいますよ。そんなの、シャレになりません」
「…………」
「それに、店内の注目もすごい集めちゃってますし、ほら、せっかく店員さんが注文の品を持ってきてくれたのに、そこで盆を持ったまま怯えて固まっていますよ」
「…………」
「そもそも、今日はこんなことをするために来たのではないでしょう。私達は話し合いをするはずです。ですから、もっと、穏便にいきましょうよ、穏便に」
「…………」
「それに、私の身体に傷がついて悲しむのは、私だけでなく田中さんもですよ。あなたは彼女に、負わせる必要のない不要な心労を負わせるつもりなのですか?」
「……ちっ」
田中キリエの名を出し、彼女の暴走は漸く止まった。忌々しい舌打ちを返事代わりにして、私を解放してくれる。
私は即座に安全な距離をとった。高鳴っている鼓動をしずませる。けど、しずまらない。背中にかいている汗は、決して暖房のせいではないだろう。腋の下にも汗をかいていた。
- 781 :私は人がわからない:2012/08/07(火) 08:52:29 ID:HRoXok2Y
- なんというやつだ。私は驚愕してしまう。
あれほどのささいなことで怒るのか、という点に関してはまだいい。そっちのほうは想定内だ。田中キリエ関連のこととなると前田かん子が杓子定規になるのは、自分だってよく知っていた。
私が驚いたのは、人体を破壊するときに生じる心理的抵抗が、彼女から全く感じられなかったことだった。
普通、人は激しい感情に身を任せてでもいない限り、他者を攻撃するのに大きな抵抗を感じる。だが、前田かん子はあくまで冷静に、些か冷静すぎるほどに私を破壊しようとした。これは驚くべき事実である。
今のだって、もし私が選択をとり間違えていたら、彼女は本当にフォークで眼球をえぐっていたかもしれない。いや、間違いなくえぐっていただろう。私は危うく、右目を失っていたのだ。
気をつけなくてはならない。己に言い聞かせる。脅しと本気との境界線が曖昧すぎて、そう自由には動けない。もっと、もっと慎重に進まなくては。
「ご、ご、ご注文の品を、お持ちしました……」
私達の傍らで事の成り行きを見届けていた店員さんが、恐怖に駆られながらも己の職務を全うしてくれた。
店員さんは私と前田かん子の前に恐る恐るコーヒーを置くと(ソーサーを持つ手が震えていたので、中身が少しこぼれていた)脱兎のごとくキッチンへと避難してしまった。
その姿を見て、私は苦笑してしまう。可能ならば、自分も彼女のように、さっさとこの場所から逃げ出してしまいたいものだ。
けど、そんなわけにもいかない。私にはやるべきことがあるのだ。筋書き通りに物事を進めるためには、少しでも前田かん子と長く居る必要がある。
果たして今日は、この会談を五体満足で終わらせることが出来るのだろうか。カビのようにしつこくこびりついた不安を胸に感じつつも、私は必死でポーカーフェイスを装い、ブラックのコーヒーをのんびりと啜ったのだった。
- 782 : ◆lSx6T.AFVo:2012/08/07(火) 08:56:05 ID:5oSJktVM
- 投下終了です。
あまりにも長いあいだ放置しっぱなしだったので、さすがに深く反省。
書きためのストックもそこそこできたので、これからは投下がかぶらないかぎり、毎週火曜日に投下していこうと思います。
きちんと完結させますので、これからはどうか御贔屓にお願いします。
- 783 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/07(火) 10:39:26 ID:4/OOEizg
- 乙!
楽しみにまっとるで
- 784 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/07(火) 17:23:57 ID:r4BxeWiQ
- >>782
お久しぶりです
無理せずゆっくりどうぞ
乙乙!
- 785 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/16(木) 14:10:02 ID:whYtgT1w
- 過疎ってレベルじゃないけど…
まさかみんなヤンデレな女の子にかnおっと誰か来たようだ
- 786 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/16(木) 23:36:11 ID:3f7rS9go
- 久しぶりに来たが私は人がわからないの更新きてる
やばい、待つことに報いはあたったんやでー
乙です
- 787 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 01:33:02 ID:WLkKLIHI
- しかし待ってるけど救われない人もいるわけで…
- 788 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 17:01:41 ID:OEGnWNSw
- 暑い夏こそヤンデレで涼みたいものだ
- 789 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 17:05:42 ID:s.yNdo9Q
- ヤンデレの尿に限るな
- 790 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 21:15:43 ID:5NqZFRP6
- やれやれここには変態しかいないのか?
もっと!純粋に!ヤンデレを愛せるやつはいないのか!
- 791 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 21:34:52 ID:2SevfxBI
- 終わらないお茶会とか
いない君といる誰かとかの作者って今何してるの?
- 792 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 21:49:38 ID:8TF6rT4Q
- 同人活動
- 793 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/17(金) 22:29:14 ID:2SevfxBI
- >>792
マジで?
- 794 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/18(土) 22:08:26 ID:pgeJfMNo
- このスレって一気に人来たかと思ったら
またすぐ過疎るのね
- 795 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/18(土) 23:26:51 ID:7bLttjrU
- 避難所だからね、仕方ないね
- 796 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/19(日) 05:13:52 ID:.SFicSis
- 毎日見てるけど
- 797 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/19(日) 06:09:37 ID:5SNqH2.6
- すいません、ここでなろうサイトに投稿した自作ヤンデレ小説の宣伝は可能でしょうか?
荒れる元になりそうなら退散します。
また、居座るつもりは無く、更新した時に書き込みする位です。
ジャンルは、近代ヨーロッパツンデレ→ヤンデレファンタジーです。
まだ導入部分なのでヤンデレはほぼ無しです。
一日くらい待って特に反応無しor別にいいんじゃない的な書き込みがあったら更新時に書き込みさせて頂きます。
またその場合、作品紹介にこの小説はヤンデレ小説を書こう@避難所で宣伝しております、を付け加えさせて頂きます。
またその場合、なろうサイトの作品はリンクフリーなようなので問題なさそうならURLのhを抜かした状態で貼り付けようと思います。
現在はなろうサイトにはまだ未投稿の状態です。
- 798 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/19(日) 11:12:13 ID:LwIbcpaM
- 結局投稿したのかしてないのか
日本語勉強してこい
- 799 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/19(日) 11:47:43 ID:2ZOLfI7Y
- >>797
テンプレ読め
関連するニュースはOK
あんまあざといと叩きのネタになるかも知れんが
まあ自己責任でやるんだな
- 800 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/20(月) 00:05:04 ID:j1UdCM4k
- どんだけ読んで欲しいんだよwww宣伝とか言っちゃってる時点でないわ。
- 801 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/20(月) 01:44:39 ID:aF0C9V9I
- 読みたい
投稿待ってるよ!
- 802 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/20(月) 04:35:58 ID:83kCbtGA
- ヤンデレに関する情報なら歓迎するよ
しかし近代だと世界大戦系かな?ら 軍人ヤンデレを所望する
- 803 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/20(月) 06:23:02 ID:uOeCHts6
- 面白かったらいいけどさ……
宣伝だけしたいっていうなら、マジ叩かれるぞ?
ここは2チャンのパロ板だからな
叩き専門のきっつい住人もいる
こことなろうでマルチ掛けるんなら、最低限完結させるつもりじゃないと
- 804 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/20(月) 08:50:57 ID:HnqYXEkE
- >>798>>800
先程投稿しました。
元はこのサイトに掲載するつもりだったんですが、諸事情によりあちらにする事にしました。
どんな理由であれ、ここに投稿しない以上宣伝にしかならないのでその言葉を使いました。
読んで欲しい、というのも本心です。
>>799>>801>>803
ご指摘などありがとうございます。
やはり荒れる元になりそうなのでテンプレ違反ではなさそうですが今回だけで以後顔は出さないようにします。
完結はもちろんその所存ですが、リアル事情で完全にコントロールできない部分がある為なんともいえません。
>>802
舞台は戦時中ではないし作者がミリオタではないのでご期待には沿えないかもしれませんが軍人のヤンデレは出る予定です。
作品紹介
ttp://ncode.syosetu.com/n3167bi/
気が向いたら読んでやってください。
- 805 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/22(水) 03:45:45 ID:jl.68gQQ
- こっちに投稿すりゃ良かったじゃねえか…
別サイトに投稿してURL貼るっていう意味がわからん
- 806 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/22(水) 03:49:26 ID:gmhuwya.
- そんなにちやほやされたいんだね。
- 807 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/22(水) 05:50:14 ID:9MwFrmVw
- テンプレ違反でもないのにいちいち突っ掛かんなよ
この過疎ったスレでSS作者がどれだけ大事か
>>804
乙
期待してる
- 808 : ◆lSx6T.AFVo:2012/08/22(水) 10:52:32 ID:/4kh.2c.
- 第九話、投下します。
- 809 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 10:54:16 ID:/4kh.2c.
-
遂に、ぽつぽつと雨が降ってきた。
徐々に雨量を増していく雨は、雨脚こそはまだ弱いが、これから激しくなっていくだろう予感を感じさせる、たしかな力強さを持っていた。降りしきる雨粒は遊歩道に黒い染みをつくり、通行人たちは慌てて傘を広げている。
私はコーヒーカップをソーサーに戻すと、ぼんやりと雨に見入った。
「何を見ているんだ?」
前田かん子が、角砂糖をコーヒーに入れながら問うた。
「いや、雨、降っちゃったなって」
「雨?」
怪訝そうに目を細めてから、彼女も外を見やった。雨粒は窓を軽くノックし、水滴を張り付かせては落ちていく。
「雨が降ると、なにか不都合なのか」
「不都合。そうですね、不都合といえば不都合です。実は今日、傘を持ってくるのを忘れちゃいまして。このままじゃ濡れて帰ることになるなと危惧していたわけです」
「嘘だな」
即座に否定されて、びっくりして対面を見返す。前田かん子はじっと私を睨みつけていた。嘘吐きを見る目だった。
「今のお前の返答は、通常よりも幾らか早かった。あらかじめ私がこの質問をするのに備えていたんだ。本当はもっと別の理由があるんじゃないか。雨が降るとマズくなる、別の理由が」
「……さすがに穿ちすぎですよ。別の理由なんてあるはずないじゃないですか」
ゆるゆると首を振る。
「前田さんが私のことを嫌っているのはわかっています。ですが、そう何度も突っかかられるのは困りますよ。とても疲れてしまいます。お願いですから、多少の不快には目を瞑ってもらえませんか」
「嫌っているのはわかっている、ねえ……」
角砂糖をコーヒーに入れながら、前田かん子は面白そうに笑う。
「ああ。たしかに私はお前を嫌っているさ。それもかなり。私はお前が嫌いで嫌いで仕方がない。鳥島タロウの全てが気に喰わない。特に、その喋り方。そのとってつけたような丁寧語は気に入らん。一人称が私の男子高校生だなんて、今まで見たことがないぞ」
まさか口調を指摘されると思っていなかったので、少々面をくらう。しかしまあ、言われてみると確かに珍しいかもしれない。妙齢の男性でもないくせに一人称が私だというのは。だが、これはもう癖みたいなもので、すっかり馴染んでしまって今更どうこう出来る物ではなかった。
「すいません。言葉遣いに関しては、我慢してもらうしかありません。長年染み付いてしまったものなので、矯正は難しいかと」
私がそう言うと、前田かん子は、チッと舌を鳴らして視線を外した。耳についているシルバーピアスが、オレンジ色の照明に照らされて鈍い光を放つ。
- 810 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 10:56:18 ID:/4kh.2c.
-
「なら、さっさと本題に入れ。キリエについて訊きたいことがあるのだろう?」
すわ本題か。私は居住まいをなおし、腕を組んでしばし考え込むと、やおら口を開く。
「そうですね……じゃあ、まずは田中さんの簡単な個人情報、プロフィールを教えてもらえますか?」
「プロフィール……内容云々は、私の自己判断で構わないのか?」
「構いません」
「そうか。了解した」
前田かん子は角砂糖をコーヒーに入れると、瞑想する時のように瞼を下ろした。どのようなことから話すべきかを考えているみたいだ。
五分程度経つと、彼女はフゥと息を吐き、目を閉じたままの状態で滔々と話を始めた。
「氏名、田中キリエ。現在は父親と継母の三人暮らしで、兄弟はいない。ペットなども飼ってないが、唯一自室でサボテンを育てている。現在三年目。継母からの贈り物と聞いている。
身長は百四十二・三センチで、体重は三十六・二キログラム撿撿いや、訂正だ。体重は三日前に二百グラム増えたから、正確には三十六・四キログラムだ。それと足のサイズは二十一・五センチ。
性格は引っ込み思案かつ人見知り。けど、細かいところに目が届き気配りは上手。だから、キリエのことを悪く思うやつは一人だっていないはずだ。キリエは優しくて可愛いからな。アイツの陰口を叩いてる人間なんかいたら、殺してやるさ。
利き手は左だが、書き物をするときや食事などでは右手を使う。まあ、スポーツ等以外では左手を使わないから、実質右利きと言ってもいいのかもしれない。
好きな食べ物は宇治金時で、嫌いな食べ物はトマト。趣味は料理に手芸。料理のほうは言うまでもなく絶品。小さい頃かずっと包丁を握っていたからな。経験だって豊富だ。休日にはお菓子なんかもつくったりする。
手芸のほうは、大体冬が近づくととマフラーや手袋なんかを編み始める。キリエが今年つけているピンク色のマフラーも、自分で編んだものだ。キリエはピンクが好きだから、毛糸も必ずピンク色のものを使用する。ふふっ、ほんとうに愛らしい。
それと、風呂に入ったときに最初に洗う箇所は左足の甲で次は撿撿」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
堪らず声を上げてしまった。身を乗り出すようにして話を遮る。前田かん子は急に話の腰を折られたためか、不機嫌そうに此方を睨みつけていた。
「なんだよ、急に」
「あ、いえ、いきなり話を中断させて申し訳ないとは思うのですか……あの、いくらなんでも詳しすぎやしませんか?」
「はあ?」
何を言っているのかわからない、といった風で首を傾げる。その態度があまりにも自然なものだったので、一瞬、間違っているのはこちらなのではと考えてしまう。けど、まさかそんなはずはないだろう。
- 811 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 10:58:16 ID:/4kh.2c.
-
「ですから、ちょっと田中さんについて仔細に知りすぎていますよ。身長や体重を小数点以下まで把握しているなんて、忌憚なく言わせてもらうとかなり異常です。ましてや、入浴時云々なんて言うまでもないかと……」
そう指摘すると、前田かん子は呆れ顔になって、
「なあ、鳥島タロウ。お前には、親友と呼べる人間はいるか?」
「親友、ですか? いえ、お恥ずかしながら……」
前田かん子は、やはりそうか、とでも言いたげにやれやれと首を振った。
「なら、理解できなくても仕方がないか。無知蒙昧なお前に教えてやろう。普通、親友ってのは相手のことをとてもよく理解しているものなんだ。とてもよく、だ。
親友のいないお前にはイマイチ理解出来ないのかもしれんが、これしきの基礎知識、親友なら知ってて当然なんだよ」
「そ、そうなんですか」
衝撃の事実だった。これまで私の考えていた親友像と、前田かん子の説明する親友像には、大きな隔たりがあった。まさか、親友なるものの心の距離感がここまで近いとは……。もはや密着と言っても差し障りがないではないか。
ぶっちゃけ、今言った親友の定義は違っているのではと疑ったりもした。が、実際に親友を持つ者の言葉にはやはり重みがあった。白黒つけるまでもない。恐るべし親友。自分にもいつか、そんな存在が出来たらなと願う。
ふむふむ、と感慨深く頷く。これでまた私はひとつ賢くなった。
「それで、次に訊きたいことはなんだ」
「次、ですか……次はですね、えと」
「どうした? 随分と考えあぐねているじゃないか」
返答に窮していると、ここぞとばかりに攻撃してくる。意地悪な小姑のように、ネチネチと陰湿に。
「今日は訊きたい事が山ほどあったから私を呼び出したんだろう? なのに、質問内容をぽんぽんと繰り出せない今の状況はおかしいな。私にはとても奇異に見える」
「ですから」
難癖をつけるのも大概にしてほしい。私は多少声を荒げて啖呵を切る。
「前田さんは疑りすぎなんですよ。ちょっとの間、言葉に詰まっていただけでしょう。それをなんですか。まるで私に腹蔵があるみたいに言うのは。そう気を揉まなくても、なんの裏もありゃしませんよ。
今はただ、ほら、バイキング料理と一緒です。目の前にずらりと料理が並べられていると、どれから手に取ろうか悩んでしまうでしょう? そんな感じで、質問を決められずにいたのです」
「本当にそうかな」
それでも揶揄する前田かん子に、身体の温度が上昇しかけるが、ハッと気付く。身に覚えがあった。こうやって、わざと私を苛立たせ、本性を暴こうとする手口には。
- 812 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:00:14 ID:/4kh.2c.
-
なるほど。冷静に観察してみれば、彼女からは明らかに作為的な雰囲気を感じる。私の本音を白日の下に曝すために、意図的に因縁をつけているのだ。つまるところ、彼女と同じことをしている。茶道室に居座る、あの魔女と同じことを。
そうとわかれば話は早い。
「さあ、どうですかね」
一息入れ、道化のように肩をすくめてみせる。こういう相手に真面目に取り掛かってしまうのは逆効果でしかないのを知っていた。
こちとら長いあいだ斎藤ヨシヱに煮え湯を飲まされ続けているのだ。この手の対応には、抜かりがない。
前田かん子もこれ以上の揺さぶりは詮無しと悟ったのだろう。そうかい、と呟いたきりあっさりと身を退いて、変に突っかかるのをやめた。黙って角砂糖をコーヒーに入れ、訊きたいことは決まったかと再度訊ねる。
「それでは、田中さんの男性遍歴について訊かせてもらえますかね」
私と付き合う以前、田中キリエがどんな恋愛をしてどんな別れ方をしていったかが気になっていた。
「ないよ」
「えっ?」
「キリエが男と付き合ったことは、今まで一度だってない。曲解されぬ内に言っておくが、女ともだぞ」
「へぇ、意外ですね。彼女って、中々モテるんじゃないですか? 容姿については問題ないですし、性格だっていいでしょう」
「ああ、モテたさ。キリエはクラスでもあまり目立つほうではないが、そのぶん密かなファンは多い。中学時代は言わずもがな、高校でだって何度か告白されている」
「なのに、どうして誰ともお付き合いを?」
「さあね。どっかの誰かさんを長年想い慕っていたからじゃないのか」
挑戦的な瞳で私を見る。こういう言われ方をされてしまっては、何も言い返すことが出来ない。愚者を気取ってわからないフリをし、遠くを眺める。
「どうして、なんだろうな」
急に、前田かん子が独白する。田中キリエの趣向は理解し難いとでも言いたげに、眉根を寄せていた。
「容姿はよくない。体格も華奢で頼りない。いつもへらへら笑ってて何を考えているかわからない。見てて不愉快だし、男性らしい魅力も皆無。少なくとも私には、ただの下賎な男にしか感じられない。なのに、なぜ、キリエはコイツに失望しなかった……」
角砂糖をコーヒーに入れながら、何か考え込んでいる御様子。私を貶める発言が鼻につくが、それは寛容な心をもって流しといてやろう。
- 813 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:02:34 ID:Lfmv7T16
-
それよりも、
「前田さん。いい加減、口を挟んでもいいですかね」
彼女は私にちらりと目をやって、訊ね返した。
「口を挟むって、なににだよ」
「コーヒーです」
私は、およそ液体らしい動きを獲得していないコーヒーを指差した。
「いくらなんでも砂糖を入れすぎでしょう。あまりにも量が多いもんだから、溶解しきってないじゃないですか。ものすごくじゃりじゃりしてそうです。というか、こんなの飲んだら血糖値がとんでもないことになりますよ」
「うん? 普通、砂糖はこれくらい入れるもんだろう。じゃないと苦いじゃないか」
「……いや、まあ、苦いかもしれませんけど」
コーヒーとはその苦味を味わうものではないのか、と心中で突っ込む。
前田かん子は小首を傾げながらも更に角砂糖を追加していたが、シュガーポットが空になったところで漸く手を止めた。そしてコーヒー(?)を口に含むが、どこか不満気な顔をしている。
まさか、まだ砂糖を入れ足りないのだろうか。勘弁して欲しい。こちとら見ているだけで胸焼けを起こしそうだというのに。
私は目の前の光景から目を逸らし、己のブラックコーヒーを口に含んだ。ねちゃねちゃとした甘ったるさを感じるのは、間違いなく錯覚だろう。
私は豆の苦味を十全に味わう為に、咥内の液体をぐるりと掻き回したのだった。
それから、私達はぽつぽつと言葉を交わした。
会話の主な内容は、もちろん田中キリエについて。彼女の情報を取り入れる度、重要な情報、不要な情報を取捨選択し、頭の中のメモ帳に書き連ねていく。そうすることで、あやふやだった田中キリエ像に肉付けがされ、実体を伴っていく。
前田かん子は面倒臭そうながらも、割りと誠実に質問に答えてくれた。やはり根は義理堅いのだろう。質問と返答の応酬は、滞りなく進んでいく。
話の途中、彼女はライダースーツのポケットから煙草を取り出した。
「ここ、全席禁煙ですよ」
無理だろうなと確信しつつも、控えめに諫言する。
うるせーちくしょーそんなルール私にゃ関係ねーんだよバーカ、ってな感じで素っ気なく跳ね除けられると大方予測していたのだが、存外、彼女は普通に従った。手中の煙草を、再びポケットに戻す。
意外と規則は守る人なのかしら、と危うくギャップ萌えで好感度が急上昇しそうになるが、軒下に違法駐車されている無骨なバイクを見て正気に戻る。
- 814 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:04:10 ID:Lfmv7T16
-
結局のところ、どこにでもあるただのダブルスタンダードだった。あれはいいけど、これはだめ。前田かん子の中にも、独自の線引きがあるのだろう。あぶないあぶない。危うく好きになってしまうところだった。
そんなやりとりがあり、また質問を数個加えたところで、話が潰えた。
ざあざあ、と力強さを露にした雨音を聞きながら、私達は同じ沈黙を共有する。彼女のコーヒーカップは既に空になっていた。私も残り少ないコーヒーを一気に煽って、同じく空にする。
スッキリしないな、とカップの底をじいと見つめながら思った。
違和感。そう、言うならば私は前田かん子に対し違和感を感じていた。田中キリエについて話す時の彼女は、その、何かが違うのだ。具体的にどう違うのかと訊かれたら困るのだが、とにかく、前田かん子は田中キリエ対し、特殊な感情を抱いているように見える。
だから、私は訊ねていた。
「前田さんは、どうしてそんなに田中さんに傾倒しているのですか?」
正直、返答は期待していなかった。私達は依然敵対関係を継続させているし、なにより前田かん子はプライベートな質問には答えないだろう。彼女が果たすべき義務は、あくまで田中キリエ関連の事のみなのだから。
だから前田かん子が、わかったと言って小さく頷いた時には、私は心底驚いていたのであった。新種の生物でも発見したときのような、物珍しい感動を覚えていた。
「私とキリエが初めて会ったのは、中学校からだ」
腕を組みじっと椅子にもたれたまま、彼女は小さいけれど、しかしはっきりとした声で己について語り始める。
この時、言ってしまえば私は心構えが出来ていなかったのである。どこか異国にでも観光に来たような、いわばお客様のような気楽さで話に耳を傾けていた。だから、次に発せられた発言には、掛け値なしに仰天することになる。
「当時、私はイジメられていた」
「はっ?」
横っ面を引っ叩かれたような衝撃。手にしていたコーヒーカップを落としそうになり、テーブルが硬質な音を立てる。
待て。待ってくれ。彼女は今、前田かん子は今、なんと言ったのだ? イジメられていた? バカな、そんな、まさか。
「冗談でしょう?」
今の発言が信じられなくて、若干、茶化すような口調で問いなおした。が、寄越された鋭利な視線で今のが嘘でないと確信する。
ほとほと信じられない話ではあるが、彼女は過去、本当にイジメられていたらしい。現在の恐ろしい風体からでは、到底考え付かないことである。
「私は昔から、孤独を恐れていた」
前田かん子は、静かに回顧を始める。
- 815 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:05:46 ID:Lfmv7T16
-
「とにかく独りになるのが怖かったんだ。周りに誰もいないという環境を異常なまでに厭い、沈黙ではなく喧騒を愛した。私はそんな人間だった。だから、学校ではいつも寄生虫のように特定のグループにくっつき、下手な相槌と愛想笑いを振りまいてコミュニティに媚を売っていた。
今となっては反吐が出そうな毎日だったが、当時の私はそれなりに幸せだった。私にとって一番マズイ事態というのが孤独。極端な話、孤独さえ遠ざかっていれば全部満足だったんだよ。
けど、まあ。そんな日常が続くはずもなかった。私はとてもつまらない人間だった。付和雷同をよしとし、常にイエスしか言わない人間。主体性も個性も欠陥した、大量消費品みたいな人間。そんな人間が、まず面白いはずがない。私は次第に疎まれ、イジメられていった。
イジメが始まったときは、文字通り地獄だったよ。今まで散々イジメられないように生きてきたんだ。それが突然、独りぼっちに。嗚呼、まさに発狂もんだったね。最悪ってのは、ああいうのを言うんだろうな。
そして、次第に私は自殺を考えるようになった。辛い日常に疲れていたんだ。目の前でちらつく死が、とても甘美な麻薬のように思えた。だから、死ぬことにしたんだ。
死に場所は学校の屋上を選んだ。学校の屋上飛び降り自殺。そっちのほうが、自宅で首を吊ってるよりもセンセーショナルな事件になると思ったからだ。
自分の死によって、アイツらに少しでも罪悪感を感じさせれれば、そんな復讐も兼ねていたのかもしれない。笑っちまうよな。加害者が被害者に対して申し訳なかったと思うことなんて、ありえないのに。
そして、私は恨み辛みを書いた遺書を持って、屋上に行ったんだ。ちょうど、今ぐらいの季節だった。寒い寒い冬の日。そこで、出会ったんだ。キリエに。田中キリエに。
夕日をバックにして立っていたキリエは、なんというか、ひどく非現実的な人物に見えた。まるで異世界に足を踏み入れてしまったような錯覚に陥った。我ながら陳腐な表現ではあるが、そのときは本当にそんな気がしたんだ。
私は驚いてしまって、何も口にすることが出来なかった。キリエも同じで、突然の来訪者に驚いているみたいだった。互いに顔を見合って、妙な牽制をしあっていた。
こんにちは、と機先を制したのはキリエだった。アイツは柔らかい笑みを浮かべて、こう訊ねてきたんだ。どうして屋上に来たのって。
悲劇のヒロインに酔っていた私は、無粋な部外者に水を差された気がして、とても気分が悪かった。別に貴女には関係がないでしょ、とか、つっけんどんなことを言った気がする。
けど、キリエはあくまで柔和に、優しくのんびりと接してくれた。久しぶりの温かい気遣いに、じんわりと胸に心地よいものが広がるのがわかった。私達は初対面だったが、自然とキリエに愁眉を開いていった。
- 816 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:08:53 ID:gEXkxocY
-
キリエは、夕日を見に来たのだと言った。学校の屋上から見る夕焼けはとても綺麗で、だからたまに此処へやってくるのだと。そして、よければ貴女も一緒に見ないかと誘われた。断るはずがなかった。私は黙ってキリエの横に並んで、夕日を見た。
綺麗だった。赤い夕日、紫色の千切れ雲、微かに光る星屑。空なんて今までに飽きるほど見てきたけど、私はあんなに美しい夕日を見たことがなかった。感動で胸中がぐちゃぐちゃになって、気付けば泣き出していた。
そして、全てを吐き出していた。孤独が怖いこと、イジメられて悲しいこと、屋上には自殺しに来たこと。私が吐露したモノを、キリエはそっくりそのまま受け入れてくれた。私の全部を受け入れてくれた。話を終えた後、アイツは私にそっと言ってくれたんだ。
なら、私と友達になりましょうって。それなら前田さんは独りじゃないでしょうって。
世界が変わった気がしたよ。喩えるなら、灰色だった世界に色がついたんだ。息苦しかった空気が爽やかなものになって、身体がとても軽くなっていた。生きているっていう実感が、初めて沸いたんだ。
でさ、触れたんだよ私は。私は真理に触れたんだ。キリエさえ居れば、他のことなんてどうでもいいんだっていう、至極簡単な真理に触れたんだよ。私にとっての世界は、キリエと、その他の有象無象なんだってことがわかったんだ。
大衆など必要ない。賑やかのなんていらない。私にはキリエ。ただ隣りにキリエさえいればいい。それなら孤独だって怖くないって。キリエさえいれば、世界なんて滅んだっていいんだって」
前田かん子は、私がいることなど忘れてしまったかのように、機械的に話しを続ける。口元は歪に曲がり、時折哄笑を漏らす。瞳は暗く濁り、此処ではない遠い世界を見据えている。
話はまだ終わっていないようだったが、もう十分だった。私はトリップしてしまった彼女を、冷ややかな視点で見ている。
違和感の正体にやっと気付いた。というか、気付くのが遅すぎたくらいだ。やはり自分は感情の推し量りが不得手なのだなと、つくづく実感する。
私はずっと、前田かん子が田中キリエに対して抱いているのは友情だと思っていた。けど、違うのだ。それは友情とは程遠いものだった。
彼女が抱いていたのは、ただただ歪曲し、狂気すら宿した、愚にもつかない愛情。おぞましさすら感じてしまう、井戸の底のように暗い感情だった。
気持ち悪い。私は対面に座る前田かん子を見て、そう思った。気持ち悪い、と。
「以上で、私とキリエの話は終わりだ」
話が終わると、彼女の瞳にも漸く光が戻ってきた。放棄していた正気を手繰り寄せつつあるのだろう。怖気立つような不快な感じが、徐々にではあるが消えていく。
ホッと胸を撫で下ろした。あの気持ち悪い前田かん子には、二度と会いたくないと思った。
- 817 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:10:36 ID:gEXkxocY
-
「いやぁ、そんな過去があったのですね。色々と意外な事実も露呈して、とても興味深く話が聞けました」
話をしてもらった礼儀として、質問をひとつする。
「ところで、結局イジメはどうなったのでしょうか?」
「ああ、あれからイジメていた奴等全員、学校に来れなくした」
「へぇ……」
具体的なことは訊かずにおこう。
と、不意に、フラッシュを焚いた時のように窓の外がピカリと光った。数秒して、ゴロゴロと天が唸り声を上げる。
私と前田かん子は、ほぼ同時に通りに目をやった。いつの間にか、外はとても暗くなっていて、通行人はものの見事に一人もいない。店内の客も全て消えていて、カウンターの店員さんだけが、ちらちらとこちらを盗み見ていた。
「…………」
もう頃合いだなと、これより先のことは断念する。内心、満足していない部分もかなりあったが、人事は全うしたのだ。後は、天啓を待つのみなのだろう。
「最後の質問です」
前田かん子を見据えて、言葉を続ける。
「どうして、田中さんは私のことが好きなのですか?」
これだ。何があろうと、最後にこれだけは訊いておこうと決めていた。長年の疑問。田中キリエが、なぜ鳥島タロウを好いているのか。
「あなたの口ぶりだと、田中さんが私を好きになったのは、どうやらもっと昔のことのようです。しかし、私と田中さんが初めて出会ったのは、高校からのはずだ。少なくとも私はそう認識しています。
なのに何故、田中さんは私に恋心を抱いていたのか。ずっと疑問だったんです。前田さん、教えてもらえますか?」
また雷が落ちた。前田かん子の顔が、青白い光に照らされる。轟音で窓が震え、キシキシと嫌な音を立てる。彼女はコツコツ、と人差し指でテーブルを叩いている。
「私も詳しく聞いたわけじゃない」
と、前田かん子はあらかじめ前置きをした。私は首肯して、先を促す。今から事の真相が、暴かれる。
「キリエは昔、市立N小学校に通っていた」
市立N小学校という単語を聞き、心臓がどきりと跳ね上がる。
「市立N小学校って……」
「そうだ。キリエはお前と同じ小学校に通っていたんだ」
- 818 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:12:15 ID:gEXkxocY
-
要は私と同じだよ、と自嘲的な響きを含めて、彼女は説明する。
「当時、たしか小学五年生だったか。キリエはイジメに会っていた。原因はわからない。アイツは優しい人間だから、自分からは絶対にイジメの原因を作り出していないはずだ。ほぼ一方的に危害を加えられたに違いない。
それだけでなく、家でもかなりの不和を抱えていたと聞く。さっき家族構成を説明した時、私は母親でなく継母だと言ったよな。アイツの実の母親は、もう既に亡くなっているんだ。自殺だったらしい。
キリエ自身が、特に母親のことは話したがらないから、これはあくまで憶測なんだが、おそらくキリエは実母から虐待を受けていたように思う。言葉の端々から、なんとなくそんな匂いがした。少なくとも、母親とは決して良好な関係ではなかったはずだ。
つまり、内でも外でも、キリエの世界はボロボロだったんだよ。嗚呼、可哀想に。キリエは、あの時が人生で一番辛かった時期だと言っていた。とても、ひとりで耐えられるものではなかったと」
ふっと、彼女の顔から憐憫の念が消え、憤怒に取って代わった。
「だけど、だ。憎たらしいことに、私にとって、最も不快な事実があったんだ」
激情をおさえきれなかったのだろう。彼女は唐突に握りこぶしでテーブルを叩いた。身体はやるせなさで震え、歯をぎりぎりと噛み締めている。羨望と憎悪が混ざり合った瞳の先には、当然のように私がいた。
「そんな絶望のさなかにいたキリエを救ったのが、鳥島タロウだという事実だ」
今にも噛み付かんばかりの表情で、最後を締めくくった。
かちり、と頭の中で歯車が動き出した。私は剣呑な様子の前田かん子には意にも介さずに、じっと考え込む。
そうだ。私は知っていた。小学五年生の時に、そのような少女がいたのを知っていた。かちかちと、歯車が噛み合わさっていくのを感じる。だが、何かが足りない。ジグソーパズルのワンピース。後一つ、最後にそれが埋まりさえすれば全て思い出せるのに。
「前田さん」
私は目を閉じて、眉間の辺りを強く揉んだ。かちかちかちかち。歯車が回る。
「当時、田中さんは苗字が違ったんじゃないですか? 田中キリエでない、もっと難しい名前だったはずだ。そうだ。私はその少女を知っている。けど、田中キリエではなかった。もっと違う。違う名前」
おぼろげながらも、少女の姿が浮かんでくる。しっかりと意識を向けなければ消えてしまうほどの儚い幻想だったけれど、確かに私の中に少女はいた。
そうだよ、と未だ興奮の抜けぬ声色で前田かん子は言う。
「アイツの親父は婿入りだったから、離婚時に苗字が変わっている。小学生の時、キリエは田中キリエでなかった。当時のアイツの苗字は撿撿」
- 819 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:13:47 ID:gEXkxocY
-
最後のピースを手渡してくれた。
「葛篭木だ。小学生の時のアイツの名前は、葛篭木キリエだ」
「ツヅラギ、キリエ撿撿」
かちり。全ての歯車が噛み合わさり、からくりは動き出す。フラッシュバックする情景。ストロボをたいた時のように、眩い閃光と共に記憶が浮かび上がっていく。
雨。校舎。昇降口。たたずむ少女。弱い。死んでしまいそうな。傘。失くした物。探索。結果。帰り道。水溜り。虹。そして、少女の瞳に宿る……。
靄が晴れていくように、さっと疑念がきえていくのがわかった。心に一陣の風が吹き、清涼剤の如き爽やかな気分が胸中を占める。やっとだ。わからないという気持ちの悪い状態から、やっと解放されたのだ。
葛篭木キリエ、いや、田中キリエはあの時の少女だったのだ。
「ありがとうございます」
テーブルに手をついて、深々と頭を下げた。自分にしては珍しく、それは正真正銘の心からの感謝だった。
「質問はこれで全て終わりました。前田さんのおかげで、これからうまくやれそうです。本日は御協力、誠に感謝いたします」
「ふん」
前田かん子はつまらなそうに鼻を鳴らしてから、すっと腰を上げた。自分の責務は果たした言わんばかりに、きっかりと私への関心を無くす。そして、ポケットの中から小銭入れを取り出した。
「支払いは結構です。今日は私が払いますよ。そもそも呼び出したのは此方ですし、そこまでしてもらうわけにはいきません」
「断る。お前に妙な借りはつくっておきたくない」
そうして乱暴に硬貨を投げる。三百十五円。ブレンドコーヒーちょうどの値段だった。
「それと鳥島タロウ。携帯電話を貸せ」
「携帯電話?」
誰かに連絡をとるつもりなのかしら、と疑問に思いつつも、私は古びた携帯電話を彼女に差し出した。すると、パキン。携帯電話が真っ二つに折られた。そしてそのままテーブルの上に放り投げられる。
「これからは二度と私に連絡をとろうとするな。わかったな」
「……はい」
意気消沈の返事をしながら、二つに分離した携帯電話を左右それぞれの手で拾い上げる。断面から赤いコードが、内臓のようにだらしなくはみ出していてグロテスクだった。
まあ、前々から機種変更をしようと思ってたし、別にいいんだけどさ。けどさ、そんなの口で言えば済むことじゃない。なにも物理的破壊に躍り出なくたって……まあ、いいんだけどさ。本当に気にしてないんだけどさ。別に、携帯電話くらい、いいんだけどさ。
はあ、と溜め息を一つ。携帯電話をテーブルに置き、つんつんと指でいじる。
- 820 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:15:04 ID:gEXkxocY
-
と、それで立ち去るだろうと思っていた前田かん子が、なぜかまだ前方に立っていた。
「まだ何か?」
点燈することのない液晶画面を覗き込みながら、いじけた口調で訊ねる。が、返事は返ってこない。
これは本格的におかしいぞ、と不安を感じながら顔を上げると、彼女は今まで見たことのない、なにやら難しい顔をして私を見下ろしていた。
「まだ、言わないつもりなのか」
低い、しわがれたハスキーボイスでそう言った。
はてなにやら。こちらとしては首を傾げるしかない。
「言わないもなにも、今日は訊きたいこと全て訊けましたし、私にはもう言うことはありませんけど」
「違うっ」
即座に言い返される。まだ惚ける気なのか、と前田かん子は詰問調で口火を切った。
「あまり私を舐めるなよ。気付いていないとでも思っていたのか。今日、お前は私と会ってからずっとそうだ。何を言うにも、薄皮一枚挟んだような嘘くさい物言いばっかしやがって。
違うんだろう、鳥島タロウ。お前の本当の目的は、キリエの情報を訊くことではない。そうなんだろう」
「…………」
「言えよ。なにが狙いだ。電話でなく、わざわざこんなショッピングモールの喫茶店にまで呼び出して、私とくだらない会話を交わした理由はなんだ。なにを企んでいるんだ。吐けよ、洗いざらい吐けよ。気味が悪いんだよ、お前」
「……くくく」
自然と、笑い声が漏れ出ていた。いやいや驚いた。前田かん子、コイツは私が思っているよりも、よっぽど鋭かった。野生の勘などではなく、冷静に私を観察しての結論なのだろう。彼女に対する評価を、改めなくてはならない。
「ええ、その通りです」
私はお手上げだとばかりに万歳して、降参の意を表した。
「たしかに、私が前田さんを呼び出したのは、田中さんのことを訊くだけではありません。それはあくまで名目上の理由です。隠された、真実の目的があります」
一呼吸置いて、十分な間をつくって空気を張り詰めた。そして、あくまで慇懃な口調で、ゆっくりと真意を告げた。
- 821 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11:16:25 ID:gEXkxocY
-
「私が前田さんを呼び出したのは、ひとえに言って好感度を上げるためです。田中さんとの個別ルートを進めつつ、前田さんとも親密になり、そしてゆくゆくは両手に華エンドという壮大な目的が撿撿」
雨音に負けないほどの乱暴な騒音。いつの間にか目の前から前田かん子は消えていて、出入り口のドアに付随していたベルが床に落ちた。店員さんは仰け反るようにして、恐怖でブルブルと震えている。
エンジン音がして、外に目を移すと、彼女はちょうどフルフェイスヘルメットを被っているところであった。そして前田かん子は私を一度も見ることなく、大雨の中をバイクで駆け抜けて行った。目を見張るほどの猛スピード。事故らなきゃいいけど、と不必要な心配をする。
猛獣の唸り声が遠ざかっていき、完全に消滅したところで、私は漸く身体の緊張を解いた。
「……怖かったなあ」
呟く。正直、かなり怖かった。身体中が間断なく震えている。終始わざと余裕な態度をつくっていただけに反動が凄い。深い呼吸を何度か繰り返し、私はなんとか平常心を取り戻した。
さて、今日の計画はうまくいったのだろうか。残念ながら、それはわからない。百点満点とは云えないだろうが、それでも及第点ぐらいは取れたはず。少なくとも赤点は免れた。
まあ、詳しいことは何も判明していないけど、今はそれでよしとしよう。
それよりも、
「まさか、田中キリエが葛篭木キリエだったとはねぇ……」
合縁奇縁。人の繋がりとは妙なものであると、殊更に実感する。いや、中々どうして。忘れていたフラグを今になって回収するとは、自分も結構主人公やってるじゃないか。笑ってしまう。
「…………」
これから、どうしよう。私はぽつねんと残された店内で一人、呆けたように座っている。
店の外では、相変わらず強い雨が地面を跳ねていた。冬本番のこの季節。この雨の中に出て行ったら、間違いなく風邪をひいてしまうだろう。明日からまた学校だし、体調を崩してしまうのは得でない。
「ふむ」
少し悩んだ末、私はまだカウンターで怯えている店員さんを呼んで、コーヒーのおかわりを注文した。雨脚が弱まるまで、もうちょっと店内で粘ろうと思ったからだ。
その時だった。
撿撿君さ、傘持ってる?
不意に、まだ幼い頃の己の声が再生されて、私は思わず苦笑したのだった。
そうだ。葛篭木キリエと初めて話したあの日。あの日も私はこうして傘を忘れて、雨が止むのを待っていた。
- 822 : ◆lSx6T.AFVo:2012/08/22(水) 11:17:37 ID:gEXkxocY
- 投下終了です。
お盆も明けたので、投下再開しました。
では、また次回に。
- 823 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/22(水) 13:14:24 ID:eYxJE.8w
- 乙
毎週火曜に来るのか
楽しみじゃないか
- 824 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/22(水) 13:28:24 ID:Uh3fhdPE
- >>822
乙です!
- 825 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/23(木) 09:02:35 ID:ZYswqV3Y
- 乙!
来週の投稿が楽しみだ
- 826 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/23(木) 22:09:22 ID:vgBhSg/6
- 乙
これから覚醒しそうなキャラが結構いるから楽しみ
- 827 : ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:07:08 ID:ylKqaTag
-
こんばんわ。
更新が遅れてしまい申し訳ありません。
投下致します。よろしくお願い致します。
- 828 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:08:50 ID:ylKqaTag
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〜ある加害者のモノローグ・1〜
世の中は腐っている。
少なくとも、僕はもうこの世界に微塵たりとも期待してはいない。
何度主張しても、何度抵抗しても……所詮は無価値だったんだ。
最初から、あの電車に乗った時から僕の命運は尽き果てていたのかもしれない。
……じゃあ、もしそうだとしたら"あの子"は悪魔だったのだろうか。あの子が、あの子さえ僕を指差さなければ僕は――
9話
鏡に映る自分の顔を見る。酷い顔だ。顔立ちのことではなく、表情の方だけれど。
「……司」
この単語を呟く度に心が締め付けられる。結局昨日、司が電話に出ることはなかった。
メールも送ったが同じように、全く反応はなかった。何か、あったのだろうか。それともあたし、嫌われちゃったのかな……。
そんなことを考えている内に朝になっていた。当然寝不足とぐちゃぐちゃな心のせいで今のあたしの表情が出来てしまっている。
「……しっかりしなきゃ」
今日から待ちに待った学校だ。司が何で昨日来なかったか、直接本人に聞けば良いだけの話だ。
もし納得いかない理由だったら弄ってやればいい。とにかく、そんなに重く考えることじゃないんだ。
「……よしっ!」
あたしは気合いを入れて洗面所を後にした。
どれ程の時間が経っただろうか。手術中のランプが消え、医者が手術室から出て来た。
真実の両親に何か話しているようだったが、様子からするにどうやら手術は成功したらしかった。
「ほい。……手術、成功したみたいだな」
「サンキュ。ああ、良かった……」
晃が渡してくれた缶コーヒーのプルタブを開けながらぼーっと真実の両親と医者のやり取りを見る。
苦めのコーヒーが身体に染み渡っていく。ふと壁にかかっている時計を見るとすでに夜中の2時過ぎだった。
病院に入ってから関係者として、警察に簡単な取り調べを受けて――
「……そういえば、大内さんは?」
「警察に引き渡されたらしい。今も多分事情聴取、つーか取り調べ中だろうな」
「……そうか」
結局、犯人は大内さんだったのだ。
真実を刺した件は勿論のこと、中条の自転車に細工したのも彼女だ。そして俺を一ヶ月近く悩ませてきた、あの数々の嫌がらせの犯人も恐らく――
「スマン……」
「晃?」
晃はうなだれていた。そこにはいつも明るく俺を励ましてくれていた晃の面影はなかった。
「俺が、もっとちゃんと断っていれば……委員長は刺されずにすんだのに……!」
晃は苦しそうにそう呟いた。無理もない、というか当然の葛藤だった。
まして晃は責任感の強い方だ。余計に責任を感じてしまい、責めざるを得ないのだろう。
「別に晃のせいじゃねぇよ。つーか、むしろ晃は真実を助けたじゃんか」
あの時の大内さんは、きっと晃以外の呼びかけでは止まらなかっただろう。
むしろとどめを刺そうとしていた彼女を止められたのは、晃のおかげだったのだ。
「でも俺は――」
「でももへったくれもあるか。とにかく晃は真実を助けたし、どんな事情があろうとも悪いのは……大内さんだよ」
「司……」
人は色んな感情を押さえ付けて生きてるんだと思う。それは憎しみだったり、欲望だったり、悲しみだったり。
でもそれらの感情をそのまま出すことは許されないから、だから人は我慢や妥協をして生きている。
とても残酷なことだが、一時の感情に支配された者が向かうのは、破滅しかないんだ。
人々はそのことに無意識に気付いているからこそ、この社会は成り立っているのではないか。
もし、自身の感情を押さえ付けられなくなったとしたら、それは自己責任以外の何物でもないはずだから。
- 829 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:09:23 ID:ylKqaTag
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「だから晃は真実が目覚めたらいつもみたくアホなこと言って励ましてやれば良いんだよ」
「……サンキュ。アホは余計だけどな」
晃は苦笑いしながら俺の肩を叩いた。やっといつものコイツらしくなってきたな。
「さて、これからどうするか。司はどうする?」
「……俺はもう少し、出来れば真実が目覚めるまでここに居たい」
「そうか……。家族には?」
「そこの電話で弥生には事情を話してあるから、そっちは平気だ」
本当は携帯からかけようとしたのだが、電池が切れてしまっていた。どうやら晃のもだったらしく、仕方なく10円玉を数枚犠牲にして自宅にかけることにした。
「後は、委員長の家族が許してくれるかだな……」
晃の言葉に思わず不安げになってしまう。
大体この時間まで付き添いで居させてもらっていることですら、感謝しなければならないのにもう少しなんて許して頂けるのだろうか。
そんなことを考えている内に、真実の両親が俺たちに歩み寄ってきていた。果たして何を言われるのだろうか。
緊張している俺の手を真実の父親であろう男性が、がしっと握ってきた。
「えっ……?」
「娘を助けてくれて本当にありがとう!君が司君だね?話は電話で娘から聞いているよ。君もありがとう!」
「あっ、はい……」
続いて晃も熱い握手をさせられる。母親の方は少し離れて俺たちを見ていた。これが真実の両親……。
確か真実は一人暮らしをしていると言っていたが、何だかとても温和な印象を受けた。
「あ、あのっ!すいません、俺――」
俺がこのまま真実の看病をしたいと申し出ると、真実の父親は快く許可してくれた。
どうやら二人とも共働きらしく、また早朝には仕事に行かなければならないらしい。ウチも共働きなので、その大変さは何となく分かった。
母親は少し不安げな表情を浮かべてはいたが、父親に倣って俺にお辞儀をして帰って行った。
帰り際の「娘が電話で言っていた通りだなぁ、あはは!」という真実の父親の台詞が気になって仕方なかったが、とりあえず許可を頂けたことには素直に感謝しなければならないだろう。
「……結婚フラグ?」
「んなわけあるか!」
朝っぱら、というかむしろ夜中から寝ぼけたことを言う晃にツッコミを入れる。
「でも良いのか?本当に帰らなくて。弥生ちゃんも心配してるだろうに」
「弥生には連絡してあるし、大丈夫だよ。それに目覚めた時に……傍にいてやりたいんだ」
真実が刺されたのは自分のせいだと、そう晃は自身を責めた。でも本当に責任があるのは晃じゃない。
…………俺だ。
俺が自分だけの力で嫌がらせを解決していれば、そもそも真実に打ち明けなければ彼女を巻き込まずに済んでいたはずた。
そうすれば俺と真実は今ほど親しくなることもなく、晃とも親しくならなかった。それならば大内さんに襲われることはなかったはずだ。
「……よく分からんが、あんまり思い詰めんなよ。司がさっき俺を励ましてくれた通りなら、司も悪くねぇんだからさ」
晃は軽く俺の肩を叩いて立ち上がる。励ましたはずが逆に励まされてしまった。
……晃がいてくれて本当に良かった。
「ああ、サンキュ」
「よしっ、司君が出られない分、しっかりと闘ってこなければな!」
「闘う……?」
「球技大会に決まってんだろ、球技大会!サッカーを司無しで闘わなければならないのは辛いが仕方ない……」
「……すっかり忘れてたわ」
一体コイツのサッカーへの想いは何処から来るのだろう。呆れたのが半分、そのお気楽さに救われたのが半分といったところか。
「俺は必ず優勝カップを――」
ひとしきりサッカーと今回の球技大会へ対する熱を語り尽くした晃は、満足したのか帰って行った。
「……さて、と」
一息付いた後、俺は静かに病室に入る。
本当は付き添い用の部屋があってそこで寝なければならないらしい。
だから、気付かれないようにこっそりと忍び込む。深い暗闇の中、手探りでベッドに近付くと、眠っている真実がいた。
近くにあった椅子に腰掛けて深い溜息を付く。
「……これで、終わったのか」
長い一日だった。
色んな感情が入り混じり満身創痍だ。でも真実が死ななくて本当に良かった。
そして一ヶ月近く続いた嫌がらせの犯人も、ついに捕まった。
これでようやく、俺が望んでいた平穏な日常が戻って来る。そう考えると途端に睡魔が襲ってきた。
「ふぁ……戻んの、めんどくさいし良いか……」
そのまま椅子に座り込んで目を閉じる。明日の球技大会には参加できないが、明後日からはまた元通りの生活が待っている――
そんな希望に満ち溢れた日々を夢想しながら俺はゆっくりと意識を手放した。
- 830 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:10:00 ID:ylKqaTag
-
「中条さんっ!」
「おお、中条さん久しぶり!もう大丈夫なのかよ!」
「今日のバレー、一応登録しといて正解だったぜ!やっぱ中条さんがいないと――」
あたしが教室に入った瞬間、クラスメイトが口々に話し掛けてくる。非常に有り難いことだが、それどころではない。
生返事をしながら教室を見渡すが司の姿は見当たらなかった。おかしい、いつもならとっくに居てもおかしくないはずなのに――
「あぶねぇ!ギリギリセーフだろ!?」
「あ……」
反対の扉から晃が滑り込んで来た。
クラスメイトに弄られながら自分の席に向かっていく。そうだ、晃なら司に何があったのか、知っているかもしれない。
そう思った瞬間、あたしは自然と晃に近付いていた。
「……おはよう、晃」
「おっ!復活したか中条っ!マジで待ってたぜ!」
あたしを見て満面の笑みで迎えてくれる晃。とても嬉しかったし、あたし達が親友だってことをより強く信じさせてくれる。
「昨日は悪かったな、急にお見舞いいけなくなっちまってさ」
「ううん、仕方ないよ。……それより司は?」
……自分に嫌気がさす。せっかくこうやって晃が心配してくれているのに、あたしの頭には司のことしかない。
晃がどうして昨日お見舞いに来れなかったのか、そんなことはどうでもいいからとにかく司に会いたい――
……間違ってるのは分かっている。でも止められない。この深くて真っ黒な感情があたしの心を蝕んでいくのを、止められない。
「あーっと……実はさ、昨日――」
「ほら!チャイムなってるぞ!さっさと席に着け!」
「わりぃ!また後で話すわ!」
「……うん」
タイミング悪く担任が教室に入って来て、晃から話を聞けなくなってしまった。
……一体晃は何を言おうとしていたのだろうか。ホームルームの時間が永遠のように感じられる。担任が何か言っているが全く耳に入って来ない。
「…………司」
一体どれくらい経っただろうか。やっとクラスが騒ぎ出すが今日が球技大会のせいで、すぐに晃は数人の友達と外へ出てしまった。
黒板の予定表を見ると次の休憩は昼休みあたしもバレーの選手として参加しなければならない。こうしている間にも司は――
「……?」
その時、あたしは違和感に気が付く。
教室を見渡すが姿は見えない。晃のようにもう移動してしまったのだろうか。
いや、確かにあたしが教室に着いた時には居なかったはずだ。
「ん?雪、どうしたの?早く着替えに行こうよ」
「あ……うん」
周りに促され仕方なく席を立つ。もしかしたら誰か知っているかもしれない。
けど、聞くのは怖い。もし事実だとしたら……あたしは平静を保てるだろうか。
「ね、ねぇ……聞いても良いかな?」
「何〜?」
呑気な友達の声とは対照的にあたしの中の何かが警鐘を鳴らす。聞かない方が、いや聞いてはいけない。そんな声をあたしは無視する。
「い、委員長は……今日いる?」
「あれ、雪聞いてなかったの?ホームルームで休みだって言ってたじゃん」
「…………そっ……か」
……やはり聞くべきではなかった。
あたしの中でうごめいていた得体の知れない感情が、
あたしの心を蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで蝕んで――
「――きっ!雪っ!?大丈夫!?雪っ!」
「…………あれ、あたし?」
気が付くとあたしは友達に支えられて何とか立っていた。一瞬だが気を失ってしまったらしい。
「急にふらついて倒れそうになるんだもん!大丈夫!?」
「……うん、大丈夫。ちょっと貧血でクラッときただけだから。ありがと」
「まだ病み上がりなんだから辛かったらすぐに言ってね」
「……ありがとう」
お礼を言ってまた廊下を歩き出す。友達が何か言っているが全く耳に入って来ない。担任の時と同じだ。
あたしの頭の中は最悪の可能性で一杯だった。司がいない、そして委員長もいない。
どう考えてもあたしの思い込みだ。そう思っても決して疑念は消えない。それどころか否定しようとすればするほど、それは強くなっていく。
司と……委員長は一緒に……。
「さあ向かいますよ、体育館に!いつものリベロ、お願いしますよ中条さん!」
「……任せて」
あたしはちゃんと笑えているだろうか。心の中はいつまでも疑念が渦巻いていた。
- 831 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:11:38 ID:ylKqaTag
-
「雪っ!」
目の前に迫るボールを両腕で弾く。強すぎず弱すぎず、ちょうど良い加減で味方へ――
「……っ!」
「くっ!」
速攻のスパイクが相手のコートに突き刺さる。
瞬間、クラスメイトの歓声が聞こえていた。スコアを見ると25対16。どうやら準決勝に進出したようだった。
「よっしゃ!」
「いやぁ勝った勝った!」
チームメイトも口々に喜びを表している。スコア的には圧勝だが中々手強い相手だっただけに、勝った喜びも一入のようだ。
「雪っ、お疲れ様!」
「恵(めぐみ)……ナイススパイク」
このチームのエースでありあたしと同じ女子バレー部の、林恵(はやしめぐみ)。
あたしの友達であり、部活では良いコンビでもある。あたしが上げて恵が決める。これがウチのバレー部の基本形とまで言われたりする。
「雪こそナイストス&カバー。私たち、結婚できるわね」
「はいはい」
「雪のいけず〜」
恵はいつものようにあたしに抱き着きながらふざける。確かにあたし達は不思議と息がピッタリだと思う。
それは自他共に認める程だし、何となく気が合うのかもしれない。小さめのあたしに比べて恵は175cmあり、ショートボブが良く似合う活発な奴だ。
だから冗談でよくカップルとか言われたりするのだが、正直恥ずかしいし勘弁して欲しい。
恵はむしろネタにして毎回あたしに抱き着いてくるけれど。
「……ゴメンね、恵」
「ん?」
「トス……結構乱れた」
恵だけに聞こえるよう、小さめな声で謝罪する。
周りは気付いていないかもしれないけど、今日のあたしのトスやレシーブは少し……いや、かなり乱れていた。それに恵が何とか合わせて打ってくれたのだ。
「……別に気にしてないけど、大丈夫?」
「……何とか、ね」
「病み上がりもあるだろうけど……何かあった?」
恵の言葉にドキッとしてしまう。そう、あたしの心は今かなり乱れている。
理由は勿論、司と委員長のこと。それがバレーにもはっきりと出てしまっていたのだ。恵はそれを何となく感じ取ったのだろう。
「……ま、次は昼休み挟むから一回落ち着きなよ」
「ありがと……」
「切り替えてきな!私の嫁だろ?」
恵の言葉に苦笑いしながらも少しだけ、救われたような気持ちになる。一回頭を冷やそう、そう思ってあたしは屋上へ向かった。司が一番好きな場所だから。
屋上には涼しい風が吹いていて心地好かった。球技大会ということもあり、屋上には殆ど人影は見えない――
「おっす、中条!ちょうど呼ぼうと思ってたんだよ!ほい、隣座れよ」
「晃……」
振り返るとベンチに晃が座っていた。ゼッケンを着たままなのがまた晃らしくて笑える。
「晃、ゼッケンつけたままよ」
「あっ、やべっ!まあ後で返せば良いか」
「相変わらずね……」
促されたまま晃の隣に座る。こうやって話すのも何だか久しぶりな気がして、何だか懐かしかった。
「どうだ女子バレーは?」
「次が準決勝よ。そっちは?」
「ナイス!ウチは次準々決勝。やっぱ司がいないと大幅に戦力ダウンだわ」
"司"……その言葉に思わず反応してしまう。そうだ、晃は知っている。何故司が今日いないのか、そして何故昨日来なかったのかを。
「あのさ、晃――」
- 832 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:12:55 ID:ylKqaTag
- 「司のことだろ、ちゃんと話すから安心しろって。その為に呼ぶつもりだったんだからさ」
「……ありがと、晃」
「中条だって司のこと心配だろ。別にお礼言うことじゃないって」
笑顔でそう答える晃。これだから晃はモテるんだろうな、なんて思う。晃は気が利くし、すぐにこちらの気持ちを汲み取ってくれる。それに比べて司は――
「……中条?」
「えっ!?何っ?」
「……もしかして今、司のこと考えてた?」
「っ!?」
思わず声も出ない。一気に顔が赤くなるのが分かる。そんなあたしの様子を見て、晃はにやけ始める。
「中条にしても司にしても、分かりやすいなぁ」
「う、うるさいっ!」
「あべしっ!」
おちょくろうとする晃の鳩尾に鋭い蹴りを入れる。晃はしばらく悶絶した後、またベンチに座り直した。
……そんなに分かりやすいかな、あたし。
「な、何も本気で蹴ることはないだろ……」
「……何か言った?」
「いえ、何にもございません!」
あたしの殺気にすぐにビシッとなる晃。やっぱり晃と話していると飽きない。
こう言うと偉そうに聞こえるが、この明るさがあたしが彼を"親友"と認めている理由の一つだったりする。とにかく晃といると元気になれるのだ。
……やはりどう考えても晃の方が良い男なのだが、あたしは何故か……うん、止めよう。また晃にからかわれてしまう。
「で、司のことだよな」
「うん……」
「ちょっと長くなるけど、良いか?」
「構わないわ、全部……教えて」
晃がゆっくりと口を開く。果たしてあたしの疑念はただの杞憂だったのか、それとも――
「……つか…さ……君?」
「んっ……ま、真実?」
結局、朝まで病室で寝てしまい、看護婦のおばさんにこっぴどく怒られてしまった。
その後も病室で真実の傍にいたのだが、いつの間にかまた眠ってしまっていたようだ。
微かな声と手の温もりを感じて目を覚ますと真実は目を開けて、俺の手を握っていた。つまり――
「意識が戻った……!」
「……司、君」
「ああ、俺だよ!本当に良かった……!」
思わず涙が出そうになる。目の前で刺された時は、血が溢れ出した時はもうダメかと思った。
でも、こうして真実は今生きている。
「……随分心配かけたみたいね、ごめんなさい」
「真実が謝ることじゃないよ。ちょっと待ってて、今お医者さんを――」
離そうとした手の平をギュッと握られる。真実は不安げな顔をしていた。
「……もう少しだけ、こうしていて、お願い」
「……分かった」
俺は真実の手をゆっくりと握り返す。とても小さくて普段の彼女からは想像しがたい程、頼りなかった。
「刺された時、力が抜けていくのが分かったの……」
「ああ……」
「身体がどんどん冷たくなって……怖かった。これが死ぬってことなんだって……」
「真実……」
「でも……司がいてくれた……この手を握って、私に呼び掛けてくれた」
「俺は何も――」
「してくれたよ……だからもう一度、確かめさせて。司は……ここにいるよね?」
「ああ……俺は居るよ。ここに、真実の傍に居るよ」
真実の言葉に応えるように手を強く握る。彼女は弱々しいながらも微笑んだ後、俺の手をそっと離した。
「すぐに戻ってくるからな。ちょっと待っててくれ」
「うん……待ってる」
こんな状況なのに真実の微笑にドキドキしてしまう自分がいた。とにかく真実が目を覚ましてくれた。
これで、本当に全部終わったんだ。俺たちは悪意に打ち勝つことが出来たんだ……。
廊下に出て時計を見るとちょうど12時だった。晃は今頃サッカーに燃えているのだろうか――
- 833 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:13:31 ID:ylKqaTag
- 「……あ」
ふと気付く。昨日からのドタバタですっかり忘れていたが、昨日は中条の退院予定日だったはず。慌てて携帯を取り出すが――
「電池切れなの、忘れてた……」
もしかしたら中条から連絡が来ているかもしれない。
昨日退院したなら今日、学校に来ているだろうが、晃は上手く説明してくれただろうか。いずれにしろ、申し訳ない気持ちになる。と同時に――
『よくもすっぽかしてくれたわね、司……。幻のカレーパン、買ってきなさい!出来なきゃ……ククク……それもまたよし、だわ』
「……ありそう、つーかそれしかねぇよ」
意地悪い顔をしながら近付いてくる中条が嫌でも脳裏に浮かんで来る。
そしてそんな状況を懐かしむ、というかむしろ多少望んでいる自分がいるのに気が付いた。
そう、やっと中条にも会えるんだ。
「あーあ、怖いからカレーパン、用意しておくかな」
自然とテンションが上がっているのに気が付く。別に焦らなくていいじゃないか。
時間はたくさんある。もう俺たちを苦しめる脅威は去ったのだから。
「――そういうわけで、委員長は病院に運ばれて、司は傍に居る感じだ」
晃は昨日の出来事を順序よく説明してくれた。おかげであたしの中に巣くっていた疑念は大体解消された。
確かにあたしの勘はある意味当たっていたが、それは司と委員長が一緒に何処かへ、とかではなく司の責任感から来るものだったから。
委員長の両親に司が信頼されている話は若干複雑だったが、隠さず話してくれた晃には感謝しなくてはならない。
「……ありがとう、本当に助かったわ」
「おや、毒舌の中条さんに褒められてしまった!」
「本当に感謝してるの、ちゃかさないでよ」
「まあ良いってことよ……それより――」
晃は急に顔を近付けて来る。思わず後ずさるがその分だけ晃が詰めて来るので結局かなり近い距離に顔がある。
「な、なによ」
「行かなくて良いのか、司んとこ」
晃の言葉にドキッとする。朴念仁の司とは対照的に晃の勘は鋭い。というか鋭過ぎる。
「べ、別にあたしは……」
「気になるから何処か上の空だったんだろ?」
「べ、別に上の空なんかじゃ……!」
「んー?」
ニヤニヤと笑う晃の鳩尾にまた一発お見舞いする。
呻き声を出しながらも晃は相変わらずニヤニヤしていた。いつも弄っているから反撃されているのかもしれない。
気に喰わなかったがもうばれてるのはあたしでも分かる。今更、しらを切っても無駄だろうし。
「……気になる」
「いてて……え?」
コイツ、殴りたい……!
「気になるって言ってんの!」
顔を恐らくは先程以上に真っ赤にしてあたしは叫んだ。同時に心の中のもやもやしたものが晴れていく気がする。
「……これがツンデレか」
「っ!」
「や、止めよう!ノーモア鳩尾!」
「じゃあ黙ってろ……!」
「は、はいっ!」
敬礼する晃はほって置いて、ため息をつきながら空を眺める。澄み渡るような快晴が広がっていた。あたしの心も決まった。司に、会いに行こう――
「さ、もう午後の試合始まるし、戻ろうぜ」
「分かってるわよ……ありがと」
あたしは、あたしはやっぱり司のことが好きだ。だから会いに行くんだ――
- 834 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:14:31 ID:ylKqaTag
-
気付けば病室に夕日が差し込み始めていた。長く話しすぎてしまったようだ。
「なるほど……じゃあ犯人は大内さんだったのね……」
「ああ、中条の自転車に細工したことも白状してたし……多分間違いないと思う」
刺された箇所がそこまで深くなかったのが不幸中の幸いだったのか、真実は目覚めてからすぐに話せる状態まで回復していた。
「そう。それじゃ司君への嫌がらせも、彼女が……」
「動機は前に真実が推理した通り、俺じゃなくて晃が目的だった」
それでも本来ならば安静にしてなければならないのだが、真実の強い希望により俺との会話が許可された。
と、言ってもたまに巡回に来るおばさんの刺すような視線に耐えなければならないのだが。
「小坂君……中条さんではなかったのね。大内さんは警察に捕まったって言ってたけど……」
「ああ、今日は球技大会だし、まだ学校も発表してないみたいだな」
「大内さん……」
真実は夕日を見つめて呟いた。確か同じクラス委員長同士だったんだっけ。いきなり聞かされるとショックだよな。
「真実……」
「……とにかく!これで司君の嫌がらせの件も解決ね」
「ああ、やっと普通の生活に戻れるよ……真実のおかげだ、本当にありがとう」
「ううん、私なんてこんなザマだし……結局犯人に刺されて司君に迷惑かけちゃっただけだわ」
真実は申し訳なさそうに俯く。何処まで責任感が強いんだろうか。
「いや、真実がいなかったら決して真相には辿り着けなかったよ……これでも感謝してるんだぜ?」
「……良かった、司君の役に立てて」
満面の笑みを浮かべる真実は、かなり可愛かった。思わず見とれそうになる程だ。
「ま、明日からは早起きもしなくて済むし、真実には本当に感謝だよ」
「……じゃあ、ご褒美貰っても良い?」
真実はまた俯いていて、表情はよく分からないがご褒美の一つや二つ、あげても何の問題もないだろう。
「何なりとお嬢様。こないだパフェですか?それともまた買い物に――」
「キス……しなさい」
病室に静寂が訪れる。
突然のことに上手く呼吸が出来なくなる。今彼女は何て言った?
俺の聞き間違いなのだろうか。いや、確かに彼女は――
「キス……してよ」
「あ……」
もう一度、今度はねだるように囁かれる。
聞き間違いでも勘違いでもない。
彼女は、辻本真実は俺に、藤塚司にキスして欲しいんだ。
その事実が俺の鼓動を急速に早まらせる。外に聞こえるんじゃないかと思うくらい、鼓動が早まるのが分かる。
よく見ると顔をこちらに向けた真実の頬は赤く染まっていた。
「…………」
「……真実」
名前を呼ばれて真実はゆっくりと目を閉じる。
流石に俺もこれが合図だということに気が付いた。汗ばんだ手で真実の肩を掴み顔を近付けていく――
『か、感謝してるの!!こんなあたしを受け入れてくれてすっごく嬉しかったの!!』
『……今日は、ありがと。司の言葉、嬉しかったよ』
『……来てくれて、ありがと』
『う、うん。でも嬉しいよ……』
「……っ」
何故だろう、何故今中条とのことを思い出すのだろう。
俺にとって中条は大切な親友で、それ以上でも以下でもないはずだ。
でも真実は、俺は真実のことが女の子として好きなんじゃないのか。
『ま、別に強制はしないけどよ。決めるなら早くした方が良いぜ?中条も帰ってくることだしよ』
……何だよ、何なんだよ。
どうしてこのタイミングで晃の言葉が思い浮かぶんだよ。
- 835 :嘘と真実 9話 ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:15:06 ID:ylKqaTag
- 「司……君……?」
「あ、ああ……」
気が付けば真実は不安げな目で俺を見つめていた。そりゃそうだ、俺が躊躇してるんだから。
……俺は、俺は彼女を安心させる為にここにいるんじゃないのか。だから、だからこれは――
「んっ……」
当然のことなんだ。唇が触れ合った瞬間、ドアの外から物音がして――
「んっ!?」
振り向く間もなく真実は俺を求めるようにキスを続ける。
女の子特有の、甘い香りが完全に俺を支配していた。何も考えられない。一瞬なのか永遠なのか。
決して短いとは言えない時間の後、俺たちはやっと唇を離した。
振り返るが扉は閉められたままで、看護婦に見られた……訳でもないようだった。
「キス……しちゃったね」
「……ああ」
真実はまだ頬を赤く染めてぽーっとしている。恐らくは俺もだろうが。
キス一つでこんなにもドキドキするとは思わなかった。どうやらそれは真実も同じようで、俺たちは中々目を合わせられなかった。
時計を見るともう良い時間だったので、とりあえず今日は帰ることにする。
「つ、司君っ!」
「ん?」
扉に手をかけると真実が呼び掛けてきた。振り向くと今だに顔を真っ赤にしながらも俺をしっかりと見つめている。
「わ、私……ああいうこと初めてだったけど……後悔してないからっ!」
若干目を震えながらたどたどしく告げる真実は今まで見ていたどんな彼女よりも……可愛かった。
「……俺も後悔してないよ。また、お見舞い行くからさ」
「う、うん。今日はありがとう……」
「じゃあな、ゆっくり休めよ」
手を振りながら扉を閉める。
……こういうのがギャップなのだろうか。だとしたらおそるべし、辻本真実。
「ん?」
真実の病室の前に何かが転がっているのに気が付いて拾う。
「……栄養ドリンク?」
未開封の栄養ドリンクが転がっていた。また冷たいのは買って間もないからなのかもしれない。
それは以前俺がテスト前に徹夜した時に愛用していたメーカーの物だ。あの時は中条と晃に散々弄られたっけ。
そして、その近くに袋も転がっていて、中にはゼリーなどが入っていた。さっき外でした物音はこれだったのかもしれない。
しかし誰が、というか落としたのに何故拾わなかったのだろうか。
「……とりあえず落とし物として届けるか」
何かが腑に落ちないが仕方なく俺は受付に向かった。
夜の街をがむしゃらに走る。
行き先なんてない、ただあの病室から一歩でも離れられるなら、何処でも良かった。
「はぁっ……はぁっ……!」
頭の中からあのシーンがこびりついて離れない。司と委員長が――
「はぁっ……はぁっ……!」
自分の息さえ耳障りだ。あのシーンが頭から離れない。
あたしの中の何かが完全に壊れていくような気がする――
「あっ!?」
足がもつれてしまい派手にこける。
流石に決勝戦までやった後の全力疾走に、身体は中々ついて来てくれなかった。
両足から血が出てるのを感じる。熱くて、痛い。
「……っく、ひっく」
目頭が熱くなるのを感じる。
止めようと思った時にはもう遅かった。心が決壊して歯止めが聞かなくなる。
「……っく!」
声は出なかった。震えながらひたすら涙を流す。何故涙が出るんだろう。
あたしは司が……あのシーンが、司と委員長が――
「うぅっ!」
駄目だ、叫んじゃ駄目だ。泣き叫んだら、きっともう止まらなくなる。
そんなの駄目だ。
今のあたしに出来ることは歯を食いしばって震えながら泣くことだけだから。
心が軋む、認めたくない。見たくなかった、見なければよかった。
負の感情がぐるぐるとあたしの心に溜まっていく。××した瞬間、あの女の目は確かにあたしを見ていた。
あたしに、見せ付けていた。司は……司はあの女のことが――
「うぅっ!!」
悔しい、辛い、嫌だ、悲しい、死にたい――色んな感情があたしを支配した。
しばらくそうやって泣いて、ようやくあたしは立ち上がることが出来た。
頭はクラクラするし身体は思ったように言うことを聞かない。
ふとゆっくりと空を見上げると月があたしを照らしていた。周りには誰もいない、暗い一本道にあたしだけ取り残されているようで、ようやくあたしは悟った。
元から分かっていたことだったはずだ。あの時裏切られた瞬間、あたしは散々思い知ったはずなんだ。
なのに司が優しくするから、あたしは勘違いしちゃったんだ。
そうだよ、あたしは――
「あたしは…………やっぱり、独りなんだ」
その言葉は誰にも応えられず、闇に消えていった。
- 836 : ◆Uw02HM2doE:2012/08/28(火) 02:17:29 ID:ylKqaTag
-
今回は以上になります。
読んで下さった方、ありがとうございました。
投下を終了いたします。
- 837 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/28(火) 06:48:06 ID:lxAwRLP.
- なんという神回…
真実さんとの結婚フラグたちましたねw
- 838 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/28(火) 12:59:55 ID:JP5xA7Q.
- >>836
乙乙!
- 839 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/29(水) 01:56:38 ID:O8kRHyUA
- GJ!中条はどうなる(´・ω・`)
やっぱり辻本さん怖い。
- 840 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/29(水) 02:04:49 ID:UXE3O/Vk
- 乙!
ヤンデレはやっぱり不憫系ヒロインにおいて一番映えるわ
- 841 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/30(木) 02:27:54 ID:5BFb.Ou2
- コネ━━━━━('A`)━━━━━!!
- 842 :ヤンデレ☆レモン:2012/08/30(木) 17:16:47 ID:.qf.IqEE
- 一話
俺には一人の幼馴染がいる。
その名前は「舟山 御崎」(ふなやま みさき)
そして俺の名前は(木葉 樹理)「このは じゅり」
御崎「樹理くーん!おっはよ〜☆」
樹理「朝から元気だなぁお前は・・・・」
いつもいつも元気な御崎にはかわいいところがいくつもあって
それは恋心というのか?
学校にて
美鈴「おそいぞ〜お話しすることがいっぱいあるっていうのに・・・」
樹理「ごめん、ごめん・・・」
彼女の名は「槐羅 美鈴」(えんじゅら みすず)
このクラスの学級委員長ですごく真面目
遅刻しそうになると軽くしかるけど
遅刻した時だったら本気で起こる
しかも上級生にも目を付けていて
校則違反のものを持ってきていたらすぐ叱る
だからそんなに友達のいないさびしい女だった
でもみんな逆らえない
だってこいつはこの学園の理事長の娘
つまりは金持ち
金さえあれば何でもできるやつだから
逆らえば終わりってところだ。
親いなけりゃ逆らっても意味なしなんだがな
泰知「うざいよ〜真面目ちゃん♡」
こいつは槐羅をよくからかう俺の友達の泰知
でもこいつは槐羅が好きらしい
うざいとかいうと可哀想じゃねえか
御崎「美鈴ちゃんなんかほっといて早く席に着こう
樹理君♡」
やっぱりこのクラスで一番可愛いのは御崎だわ
ある日の事だった
俺は告白された
同じクラスの結構モテモテの女の子に・・・
放課後…
御崎「樹理君に告白した子ってチヤホヤ知れて調子乗ってる
しかも男子の前では鼻声の矢部愛華ちゃんだよね?」
樹理「あぁ、、見てたのか・・・」
御崎「うん、迎えに来たら告白されてたから。あの子と付き合うの?」
いやいや、俺はお前が今好き?だし
御崎は無言で帰って行った
いや、先に帰られた
さっさと歩いてしまったので・・・
翌日・・・・
何と矢部は死んだんだ
何か知らないが指にくぎがいっぱい刺さってて
ナイフでいっぱい刺されてたらしい
御崎「へぇ、死んだんだ…」
続く
- 843 :ヤンデレ☆レモン:2012/08/30(木) 20:19:25 ID:.qf.IqEE
- 2話
なんかにやりとした笑みで先生を見る
樹理「どうしたんだ?」
御崎「何にも?」
御崎は隠し事はしてないみたいだが
俺の話を無視して教科書を開いて読んでいた
昼休み
美鈴「舟山さん!貴方最近先生の授業聴いてないでしょう?
今日だって無視して教科書読んでたし・・・
いい加減、授業ぐらい真面目に聞きなさいよ!」
ガシッ
御崎は槐羅の首を絞めた
御崎「うざいのよ・・・・理事長の娘だからって調子に乗ってると
痛い目に合うわよ・・・・・」
樹理「おい・・・やめろって!いくら何でもやりすぎだろ!」
美鈴「く・・・・苦しい・・・・貴方犯罪を犯すつもり?」
御崎「貴方なんて消えていいわよ、樹理君に近づくやつも
私をいじめるやつは全員、こうなるのよ」
まさか・・・
樹理「お前…まさか…・矢部を殺したのか・・・・?」
ありえない・・・・
こんなに笑顔が優しくて
可愛い女の子が人を殺すなんて・・・・
御崎「今更気づいても遅いよ・・・・くくくくくっあははははは
殺すのはなかなか面白かったよ
あいつの指に鱈腹釘を打ち込んだり、お腹にナイフをいっぱい
刺したこと。面白かったなぁ」
嘘だ・・・・・
御崎が人を殺した・・・・?
樹理「嘘だろ?そんな冗談いうなよ・・・・」
美鈴「貴方なんてパパに行って退学にして逮捕してもらうわ!」
御崎「言えないわよ、だってあなた今から私が殺すのだもの」
御崎はナイフを出した
血がこびりついていた
今まで殺してきたやつの血だろう
その中に矢部の血が・・・・
グサッ
グサッ
グサッ
御崎は槐羅をナイフで何度も刺した
死んでいても刺した
御崎「これで私に逆らう者はいなくなったね・・・・皆に言っとくよ
私に逆らったら殺すからね、美鈴ちゃんみたいに・・・・」
血まみれの槐羅をバラバラにして中庭の花壇に埋めていた
泰知「舟山、頼みがある・・・・」
御崎「限度が過ぎてると殺すよ・・・・・」
泰知「俺を殺してくれ!そしてお前も死んでくれ!」
続く
- 844 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/30(木) 22:53:45 ID:dpoF6Wg2
- 続かない
- 845 :雌豚のにおい@774人目:2012/08/30(木) 22:55:18 ID:dpoF6Wg2
- 誤爆。続きは?
- 846 :ヤンデレ☆レモン:2012/08/31(金) 19:00:24 ID:BOOwjX5Y
- 3話
御崎「いいよ、でも私は死なない。限度すぎてるし殺すわ」
ザクッ
御崎は泰知を刺して殺した
樹理「何でこんなことをするんだよ?」
御崎「だって、あなたに近づいてるのは意地汚くて、ただの馬鹿
なのよ。貴方が腐っちゃうわ・・・・・・」
御崎はそういって席に着いた
ある日の事
俺が3日親がいない1日目の夜の事
ピーンポーン
樹理「はいはーい」
ピーンポーン
樹理「うざいなぁ、もう押さないでください!」
ピーンポーンピーンポーン
インターホンの音がうるさいので開けたら
バターン
一瞬でドアが開いた
御崎だった
御崎「こんばんわ!樹理君一緒にご飯食べない?」
樹理「え?いいけど・・・・・・」
俺は御崎を家に入れて御崎が持ってきていたおかずを食べた
樹理「うっ!」
俺は急に苦しくなった
御崎「どうしたの?もっと食べてよ・・・・・」
おかずの中にやばいものが入ってんだ
この中には薬が入っていた
あいにく、飲み込みはしなかったが・・・・
御崎「毒薬飲まなかったんだ・・・・」
毒薬?
俺は御崎と一緒にいたくなくなって俺は席を立ち、家を出ようとした
樹理「俺、トイレに行ってくるな・・・・・・」
御崎「ふーん」
御崎はそういって席で待っていた
俺はその間にトイレに行って
トイレの窓から逃げた
続く
- 847 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/01(土) 01:31:19 ID:XiiiafCM
- これは投下して大丈夫なタイミングなのだろうか…
二回目の短編投稿です
稚拙な文章ですが、お読みいただければ幸いです
- 848 :セルロイド西洋人形:2012/09/01(土) 01:32:15 ID:XiiiafCM
-
自分の息遣いが、やけに近くで聞こえました。
彼の、私のそれより随分大きな手を引いて、生い茂る草木をかき分けながらひた走ります。
はだしの足は痛み、いくつも切り傷ができていますが、最早そんなことには構っていられません。
私の後につづく彼も、汗だくでした。彼が負った傷は大分癒えていましたが、それでも、私に手を引かれて走るのがやっとです。
「もう少しです、頑張って」
彼に励ましの声を掛けて、なおも私たち二人は林の中を進みます。迫りくる追手から逃れるために。
- 849 :セルロイド西洋人形:2012/09/01(土) 01:33:29 ID:XiiiafCM
-
彼の名前は、ういりあむ、と言います。
かろうじて名前はわかったものの、私はそれ以上、彼について知ることできませんでした。
彼の喋る言葉は、学ぶことはおろか、使うことさえも禁じられていた敵性語だから、私には到底理解ができなかったのです。
私と彼が初めて出会ったのは、二ヶ月ほど前、家の裏の、広い竹林を抜けた先でした。
突然家の裏で大きな音がしたので、何事だろうと様子を見に行ったのです。
私がそこで発見したのは、黒煙と炎を上げる翼の折れた戦闘機、そして、傷を負った米兵でした。それが彼、ういりあむです。
この戦争が始まる前のことです。
いつの日か、小学校にセルロイド人形という、美しい西洋人形が届いたことがあります。
アメリカから届いたプレゼントなのだと、優しい佐江子先生は私たち児童に言い聞かせてくれました。
はるばると海を越えて日本にやってきた青い目のお人形は、その後廊下の棚に飾られ、私たち児童によって大変可愛がられ、大切に扱われました。
綺麗に澄んだ真っ青な目、輝くような金色の髪、絹で作られた豪奢なお洋服。私はその全てが美しいと思いました。
中でも、彼女の綺麗な蒼い瞳は、未だに忘れられません。
そして、戦争が始まりました。
私たちが大事にしていたお人形は、とたんに「敵性品」となり、処分せねばならなくなったのでした。
柱に縛りつけられて竹やりで突かれ、最期は火にあぶられたそのお人形を、私たちは最期まで見ていました。
私が初めて彼を見たとき、敵国の人間に出会ったしまった事に驚き、恐怖すると共に、なんて綺麗な目なのだろう、と、素直に思いました。
見開かれた彼の瞳は、あのお人形の瞳に似ていたのです。
乗っていた戦闘機が撃墜したのでしょうか、彼の着る軍服からは血が滲んでいました。
彼はだいぶ負傷していてその場から動けないようでしたし、辺りに鉄砲は見当たりませんでしたが、油断は禁物です。うかつに近づいたら、彼は私を殺すやもしれません。
私が手をこまねいていると、彼は左腕を挙げて、開いた掌を見せました。右腕は動かすことができないようです。
昨年亡くなったおばあさまから聞いた話によると、その仕草は「降参」を示すものだと言います。
私は彼を背負って家に帰ると、傷の手当てをして、「傷が治るまで」という条件の下、彼を匿いました。
それからというもの、私と彼の、二人の生活が始まりました。
利き手である右腕と右足を負傷した彼は、最初の三週間を布団の上で過ごしました。食事を用意し、包帯を巻き換え、生活を共にする。私はなんだかお人形のお世話をしているようだと、おかしく感じたりもしました。
日が経つにつれ、彼は笑みを見せるようになり、私も彼に心を許していきました。
会話こそできませんでしたが、しだいに意思疎通ができるほどにはなりました。
彼は、布団の上で過ごすうちに、「いただきます」や「いってらっしゃい」など、わずかに日本語を覚えました。
私が折り鶴を折ってみせると、彼は喜びました。
彼と過ごすうちに、私は、アメリカ人は、かつて学校で教わったような冷血非道な人間ではないのでは、とすら思うようになりました。
私は紛れもない非国民でしょう。しかし、そう言われても構わないから、それ以上に彼を守りたいと、いつしかそう思うようになりました。
そう、およそ二ヶ月間、この村はずれの家なら見つかるまいと、人目を避けてひっそりと暮らしていたのです。そうです、今日、彼が村人の一人に見つかるまでは。
- 850 :セルロイド西洋人形:2012/09/01(土) 01:35:56 ID:XiiiafCM
-
逃げる私たちを攻め立てるように、背後、遠くで銃声が聞こえました。
いちいち立ち止まってなどいられませんから、私たちは、深い木々に紛れるように、ひたすら進み、進みます。
「Tell me...where are you going?」
彼が息絶え絶えに言いました。
私は答えません。ただ「心配は無用です。さあ、こっちです」と言い、一直線にあの場所を目指します。
そう、何も心配はいりません。あと少しです。あと少しなのです。
道を外れたの山の中を、走って、走って走って走って走って走って、そして、どれくらい時間が経った頃でしょうか、やっとあの場所に辿りつきました。
草むらを抜けたとき、まずはじめに、潮風が鼻腔をくすぐりました。ようやく辿りついたこの場所は、高く険しい崖になっています。下には海が広がっていますが、崖はあまりにも高く、飛び下りればまず命はありません。
絶好の場所でした。
「What's going on?」
行き止まりのこの場所で立ち止まった私を不審に思ったのか、呼吸を整えながら、彼が言います。
私はゆっくりと背後を振り返り、彼の碧い両目を見つめました。そして優しく微笑みます。
「これであなたは、私とずっと一緒です」
私の言葉を理解出来ないのですから、彼はわずかに首をかしげるだけです。
私は満ち足りた気分で、彼を眺めました。
出会った頃より幾分か伸びた金髪に、変わることのない鮮やかな碧眼。
こうして改めて見てみても、彼はまるで、かつて私が愛したあのお人形のようではありませんか。
奇妙なことです。あの時のお人形が米兵の姿になって、私の元へ再び帰ってきたようにも思えます。
だからこそ、私は彼を守らねばならぬのです。
あのお人形のように殺されてはたまりません。縛りつけられ、竹やりで突かれて、最期は火にあぶられて殺されてしまうなんて、そんなことはさせはしません。
彼は私の、私だけのものなのです。
その綺麗な瞳は、他の誰でもなく、私だけのものなのです。
もう二度と。
「……もう二度と、誰にも渡すものか」
彼を守るためなら、すべてを失ってもいい。
しかし、何を構うものですか。
これで私と彼はずっと一緒、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、いっしょなのです。
これいじょうのしあわせが、ありますか?
彼は私の目指すところにようやく気付いたのでしょうか。でももう遅い。
「No...Stay away from me!」と彼はなにかを叫び、後ずさりましたが、私はその手を取って、構わず海に飛びました。
彼のその言葉の意味は、最期までわからずじまいです。
- 851 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/01(土) 01:42:44 ID:XiiiafCM
- 以上です。
8月15日は過ぎましたが、ありがちな戦時ものです。
改めて飛んでみると、少し展開が駆け足なのと、若干ヤンデレ成分が薄い気がします……
お粗末さまでした。投下を終了します。
- 852 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/01(土) 03:29:44 ID:1w69tLhU
- gj 墜落した米兵と少女…ありそうで余り見ないから新鮮だった。面白いです。
- 853 :ヤンデレ☆レモン:2012/09/01(土) 10:49:53 ID:dryYok3E
- 4話
俺は親友の和馬の家に行った
和馬「OK!あいつが来たら教えてやるよ。ケータイの音で」
樹理「あぁ、サンキュー!」
俺は窓の近くしかもそこから出ると警察
これなら御崎を警察に突き立てることができる
ピるるるる
ケータイが鳴った
御崎「ねぇ和馬君、ここに樹理君が来なかった?」
和馬「来てないけど、どうしたの?」」
御崎「嘘ついたからお仕置きね・・・・・」
ザクッ
和馬は刺されて死んだ
俺は窓から逃げて警察官に行った
そして御崎の事を言った
警察「それは大変だ、すぐに君を保護しときますよ」
俺はほかの警察に守られてとうとう御崎がここへ来た
御崎「樹理君、どうして嘘ついたの?私がこんなにも樹理君が好きな
のに・・・・好きだからあなたを殺すよ・・・・・」
樹理「っひ」
警察「大人しくしないと牢屋域ですよ!」
グサッ
ザクッ
御崎は警察を何人も刺して俺を守っていた警察も全員殺してしまった
御崎「ゲームオーバーだね・・・・・」
俺は警察署を抜け出て逃げまくった
逃げて逃げて生きたいから・・・・
俺は家に駆け込んでカギもしめた
御崎「開けてよ・・・・開けてよ・・・・・」
御崎はインターホンの前でそう言う
樹理「い・・・・嫌だ!開けるものか!」
御崎「ドアをぶち破ってでもあなたを殺してやる!」
俺は庭に行って裸足で家を出た
続く
- 854 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/01(土) 13:35:23 ID:gjoLyEuc
- >>851
GJです。なんかこう文学的というか上品なSSですな。
ちょっと米兵が可哀想だなぁwそのままイチャコラチュッチュすればいいのに。
まあ時代が時代だからしょうがないかw
- 855 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/01(土) 18:03:30 ID:RcLTb3cw
- 乙乙!
トリ付けた方がいいよ〜
- 856 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/01(土) 23:54:13 ID:qmGZUSGc
- >>851
乙彼です!
しっとりして静かな狂気が良い感じですね。
- 857 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/04(火) 10:20:05 ID:X3nJ80Dk
- >>851
乙です!
- 858 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/04(火) 20:03:11 ID:8wV2xRpU
- 流れぶった切ってすいません>>804です
ユーザーからの指摘があり
>この作品は ヤンデレ小説を書こう!避難所 に宣伝をしております。
の文章を9月20日に削除させて頂きます。
>>805>>806
こちらに投稿しなかった理由はいくつかありますが
主に、改稿できるから、とヤンデレにいくまでが長いから、です
- 859 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/04(火) 21:53:36 ID:Hn/27M9Q
- 前フリが長いほどヤンだときの破壊力はでかいんだぜ?
- 860 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/05(水) 04:26:38 ID:YkAJfOKg
- >>858
変なのに粘着されてるな おそらくここのやつだろうけど
何でも言うこと聞いてたらキリないぞ
- 861 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/05(水) 23:32:36 ID:WGfNsFKY
- >>859>>860
ありがとうございます
ともあれここでは今後この話題について触れるような事は2度としません
失礼しました
- 862 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/06(木) 17:10:51 ID:pxNuLsFA
- 誰ならここに投下出来るんだろ
完結させるぐらいの覚悟と力を持った職人って、どれだけいるんだ?
エタは基本だろ?
保管庫にエタってる名作がどれだけあると思ってる
職人たちの帰還を祈るばかりさ……
- 863 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/06(木) 22:51:48 ID:FJvOfeUs
- やっぱ荒れてるのが結構でかいよな
- 864 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/08(土) 03:25:46 ID:led1qE4E
- 触雷は音信不通か.....
- 865 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/08(土) 12:43:28 ID:Y.7fv.5M
- >>864
自分よりでかくて強くておっぱいおっぱいなヒロインが好きだったんだけどな
- 866 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/08(土) 13:34:45 ID:Xzwea5Ao
- せやな
- 867 : ◆0jC/tVr8LQ:2012/09/08(土) 23:28:31 ID:uSsvNQf.
- 御無沙汰しています。
定期的に覗いています。
触雷はじわじわ執筆中です。
- 868 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/09(日) 05:37:49 ID:12WiyBE2
- まじで?もう半分諦めてたから嬉しい
- 869 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/09(日) 06:26:22 ID:0S3F5XAg
- まーたあれが来るのかw(歓喜)
- 870 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/09(日) 12:49:31 ID:JSghCvwI
- 生きる理由ができたよ ありがとぅ
- 871 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/09(日) 13:48:11 ID:xMxPUlvo
- >>862
知ってる限り「嘘と真実」書いてる人くらいかな。
長編完結させて今も書いてる人は。
ちょっと前はヤンぼうの人とか、完結させてくれる職人は結構いたけどね…。
まあ保管庫見れば完結作品がどんだけ少ないか分かる。
- 872 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/09(日) 15:01:02 ID:g5RVyJh6
- おお!!
生存報告が!
よし!!
全裸待機だ!
- 873 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/10(月) 04:51:48 ID:8twkt5ZI
- うおっしゃー!触雷の続きをwktkしながら待つとするか!
- 874 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/10(月) 13:36:45 ID:UEPTf95U
- まだだ…今までもこう言って結局投下してくれなかった輩がいたからな。
本当に来てくれるまで俺は信じないんじゃ
- 875 : ◆UDPETPayJA:2012/09/11(火) 22:30:02 ID:O8Q4sbvo
- お久しぶりです。
24話ができたので投下します
- 876 :天使のような悪魔たち 第24話 ◆UDPETPayJA:2012/09/11(火) 22:32:31 ID:O8Q4sbvo
- 雨に打たれながら待っていると、ようやく知らない番号からの通知が来た。
言われずともわかる。これはあいつの番号だ。俺は何の躊躇いもなく、受話ボタンを押した。
「よう、佐橋。」
『…光から話は聞いた。神坂の居場所を占って欲しい、だそうだな。』
…はて、そんな風に伝わっていたか。ニュアンスは確かに間違ってはいないが。
「まあ、そんな所だ。どうもあいつは厄介ごとを惹きつける事に関しては天才のようでねぇ…
何でもいいんだ。どんな些細な事でも。」
『…些細な事でも、か。簡単に言ってくれるな、お前も…分かっているとは思うが、俺は好きな時に好きな未来を視れる訳じゃないんだぞ。
俺は予言者じゃない。もしそうなら今まで苦労などしてこなかったさ。
───善処はする。視えたら、すぐに教える。だが…あまりアテにするな。
自分でも、扱いに困ってる能力なんだからな。』
………それもそうか。
だが、少なくともただの死に損ないたる俺よりは遥かにアテにできるよ、お前は。
俺は受話器越しにそう言ってやった。
せいぜい雨に打たれ続けても風邪を引くような事はない。俺の利点なんてそんなもんだ。
ひと呼吸おき、どちらともなく通話は切れた。
…さて、俺はまた捜索に入らなければならない。
あの委員長が何を思って飛鳥ちゃんを連れ出したのかは未だわからないが、どちらにせよ急がなければ。
…今の結意ちゃんなら、理由がどうあろうと穂坂に木刀で殴りかかるだろう。
そうなる前に。結意ちゃんが本当に″人間の血で手を汚す″前に止める。
それこそが俺の、恐らく最後の役割だ。
悔しいけど、やっぱり結意ちゃんを幸せにできるのはアイツしかいない。ならば俺は、あの2人の幸せを守る。
住宅街の一区画に見切りを付け、さらに奥へと進もうとした時、二度目の着信があった。
佐橋か!? と慌てて携帯を開くが、画面に表示されていたのは結意ちゃんの名前だった。
…見つけたのか? ワンテンポ、自分の心を落ち着かせ(るように努めて)、受話ボタンを押した。
「もしもし、結意ちゃん…? なにか、あったのか…?」
『……見つけたよ、斎木くん。』
奇しくも俺は、この時点で結意ちゃんが、穂坂宅を見つけたのではないという事に気づいてしまった。
声のトーンに、迷いが感じられる。もし穂坂宅を見つけたのなら、静かな怒りと冷静さを混ぜ合わせたような、もっと冷たい声がするはずだから。
「亜朱架さんを、か?」
『…! わかるの…?』
「わかるさ。だって、彼女は俺と同じモノだからねぇ。」
実際はそんなことない。気配すら読めなかったのに。だけど、そういう事にしておこう、と思った。
どんな時でも剽軽なお調子者。それが俺というキャラクターなのだから。
…しかし、こうなるとまずは先に亜朱架さんの状態を確かめないといけない。
亜朱架さんの安全の確保と同時に、情報の整理もだ。闇雲に穂坂宅を探しても見つかりっこないし、一度出直すべきだろう。
…果たしてお姫様は納得してくれるだろうか?
「いったん合流しよう、結意ちゃん。」
すると結意ちゃんはその一言だけで悟ったのか、『…そう、だね。…病院が、いいかな。』と答えてくれた。
決まりだ。電話を切ると俺は結意ちゃんのいる商店街の方面に向かって駆け出した。
水たまりでスラックスが濡れようと、構うものか。
今度こそ守らなければいけないんだ。結意ちゃんも、亜朱架さんも、飛鳥ちゃんも。
そのために、俺はここにいるのだから。
- 877 :天使のような悪魔たち 第24話 ◆UDPETPayJA:2012/09/11(火) 22:34:23 ID:O8Q4sbvo
- * * * * *
ほんの少しだけ雨は勢いを落としたようだが、相変わらずの悪天候には変わらない。
もはや傘を差す意味があるのかすら怪しい状態で病院へと戻ってきた。
自動ドアが開くと、漂白されたような息苦しい酸素が外へと逃げてくる。
正直、この独特の病院臭はあまり好きではないのだが。
ざっと辺りを見回すが、結意ちゃんの姿はない。…まだ着いてないのだろうか?
外来のベンチを見渡していると、不意に白衣を着たお姉さんから声をかけられた。
「…もしかして斎木 隼君?」
「そう…ですけど、何でしょう。」
「織原 結意ちゃんからことづてを頼まれたんだけどね…お友達ならもう来てるよ。小っちゃい女の子の方は今、ベッドで寝てる。
結意ちゃんは、身体中びしょ濡れだったから今、ナースステーションで着替えてるよ。」
どうやら、向こうの方が先に着いたみたいだ。俺は白衣のお姉さんに案内されて、そのナースステーションへと向かった。
2階にあるナースステーションは病室のエリアの中心にあり、一層の薬品臭が漂う。
ガラス越しにデスクが並ぶ空間の奥には仕切られた一角がある。
テレビで見たが、あれは裏方だろう。
「こっちよ。」白衣のお姉さんはその裏方へと俺を連れてくれた。その敷居の裏側には、ハロゲンヒーターの目の前で暖をとっている結意ちゃんの姿があった。
ハロゲンヒーターの上には結意ちゃんのブレザーがハンガーにかけて干されている。
だが、まるで傘などなかったかのような濡れっぷり。この程度では乾くまい。
「それはお互い様…って言いたいけどねぇ、」白衣のお姉さんは「何があったかなんていちいち聞くつもりはないけれど…肺炎だなんて、洒落になってないよ。」と言った。
…肺炎!? あの亜朱架さんが?
「会わせてください。俺、聞きたいことがあるんだ。」俺はお姉さんの目つきなど気にもせずに、食ってかかった。…だが。
「何を馬鹿言ってるのよ。39度も熱を出してうめいてる女の子に会って、何を聞くって?」
「そ…れ、は…」
「…今日は諦めなさい。まず明日まで起きないわよ。」ぴしゃ、とお姉さんはそう言い切った。
でも…亜朱架さんが、肺炎? 馬鹿な。だって亜朱架さんは俺と同じで…心臓が消されてもそこから生き返ったのに。
頭の中で早鐘が鳴らされてる感覚だ。何か、取り返しのつかない事が起きてる。このままではダメだ、と俺の直感が告げている。
「斎木くん。先生のいう通りだよ。」それまで沈黙していた結意ちゃんが、口を開いた。
「もう少し、体調が落ち着いてからにしよう?」そう言った結意ちゃんの目からは…なんていうか、疲れとでもいうのか。それが見て取れた。
それから数分後、巡察と言って若い看護婦と入れ代わりに白衣のお姉さんはナースステーションを出て行った。
看護婦はこちらをちらちらと気にしながらも、デスクワークに取り組んでいる。俺たちの間に割って入る素振りは、なかった。
凍りついた空気では何一つ打開できやしない。何か喋らなければ…
と考えていると、先に結意ちゃんの方が口を開いた。
「…たぶん、斎木くんの考えてる通りだよ。」
「えっ…?」
「私を殺そうと思ったなら、あの力を使えばすぐ済んだのに、そうしなかった。
…使えなかったんだと思う。もしかしたらそのせいで肺炎なんかに…」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。…亜朱架さん、そんな事を…?」
…どうやら、2人の間で一悶着あったようだ。けど、どうして亜朱架さんが結意ちゃんを殺そうとする?
「…あれはお姉さんじゃなかった。ねえ、覚えてる? 白陽祭の時、私とそっくりな女の人がいたじゃない。」
「あ、ああ…もちろん。」
忘れるわけがない、俺の姉にして最愛の女性のことを。
「あの人の力は斎木くんだけの力じゃあ抑えきれなかった。けど…その後お姉さんの言ったセリフ、覚えてる?」
「セリフ? ええと…何だ?」
「『私もあんたと同じ、お母さんと同じ力を持ってる。
あんたの力は、全部封じ込めちゃったから。』
…お姉さんは、そう言ったのよ。」
「優衣姉と…同じ力───ま、さか、そんな!?」
- 878 :天使のような悪魔たち 第24話 ◆UDPETPayJA:2012/09/11(火) 22:36:26 ID:O8Q4sbvo
- そこまで言われてようやく俺はソレに気づくことができた。
亜朱架さんには、復元する力はない。けれど、優衣姉は消去と復元を同時に使うことができた。
それと同じということは、あの時、亜朱架さんには復元の力があったに違いない。
…でも、なぜ?
「こうも言ってたわ。『───兄貴を、返せ』」
「!!」
そのセリフは…! 飛鳥ちゃんを兄貴と呼ぶ奴はあの子しかいない。
神坂 明日香。あの子は、消去と復元を使っていた。まさか…でもそれなら俺では抑えきれなかった優衣姉の力を封じられた説明にもなる。
俺と妹ちゃんで、同時に使ったなら。
…だけど、わからない。妹ちゃんは死んだんだ。どうしてまだ″いる″んだ。
それも、生前となんら変わりない、結意ちゃんに対しての憎しみを抱えて。
取り憑かれてるとでもいうのか。妹ちゃんの、妄執に。だからこそ、感情をコントロールできそうにないから。
「……力を、消した?」気付くと、俺はそう呟いていた。
しかし、能力に関しては誰よりも詳しい俺ですら気付けなかった事に気づくなんて。
やはり、結意ちゃんは恐ろしく頭の回る娘だ。
…どう有れ、これで問題がひとつは落ち着いた。解決はしていないけれど、居場所がわかっただけで今は良しとする。あとは、飛鳥ちゃんの行方だけだ。
「結意ちゃん、俺は一度学校に戻る。」
「?」
「情報が足りなさすぎる。穂坂の連絡先、住所。少なくともこれくらいは欲しいだろ?」
「うん…最低でもね。」
「それは俺がやっておく。だから結意ちゃん、今日は帰るんだ。情報は俺が集める。だから───」
「…勝手に何を言ってるの?」と、俺の言葉尻を遮り、ややトーンの低い声で結意ちゃんは言った。
…やっぱり、か。
こんな事を言えば結意ちゃんは拒否するのはわかっていたさ。
飛鳥ちゃんのために、居ても立っても居られないという事ぐらいは。
「わかってくれ。俺は結意ちゃんの為ならなんだって協力するさ。
けどそれは、結意ちゃんの幸せの為だ。そこには飛鳥ちゃんもいなくちゃ駄目だ。
さっきまで雨に打たれてたんだろう? …大事をとって───」
「………私の心配はしなくていいって、言わなかったっけ!?」と、結意ちゃんは語尾を荒げて吐き捨てた。
「…しない訳にはいかないぜ。結意ちゃんの幸せは、飛鳥ちゃんの幸せでもあるんだから。
ここで結意ちゃんに風邪でも引かせたりしたら、俺はあいつになんて言えばいい?」
「そんなの必要ないよ! …ずっとそばにいるって、約束したの! 私が守んなきゃいけないのよ!
…それに、どうして私に気を遣うの? 最初の事件の時からずっとそう。私が、斎木 優衣にそっくりだから?」
「!」
「悪いけれど、私は代わりにはなれないよ。私は飛鳥くんだけが…」
成る程。確かに、そう思われていてもおかしくはない。
客観的に見れば、俺の今までの行動は友人に対するそれと比べても行きすぎな感じはする。
優衣姉に対しての代償行為と思われても、無理はない。けれど…
「それは違うぜ、結意ちゃん。確かに結意ちゃんは優衣姉に似てはいる。
だけど、結意ちゃんは結意ちゃんであって、姉さんじゃない。
結意ちゃんの幸せを願ってはいるけど、代わりにしようだなんて思ったこと、一度もないぜ。」
俺は結意ちゃんの瞳を見つめ、まっすぐに伝えた。
…けれど結意ちゃんは、首を縦に振ることはなかった。
「私の幸せなんかどうだっていいのよ! 飛鳥くんがいればそれで十分なの! 飛鳥くんがいなきゃ……生きてる意味なんかないの……!」
いつしか結意ちゃんは、目尻に涙を溜めていた。
- 879 :天使のような悪魔たち 第24話 ◆UDPETPayJA:2012/09/11(火) 22:37:16 ID:O8Q4sbvo
- 「……どうして、そこまで…?」
愛し続ける事ができる? 亜朱架さんのせいで心をズタズタにされても、優衣姉にかまいたちで切り裂かれても。
…妹ちゃんに1度ならず、2度までも殺されかけても、呪詛を吐かれても。
流石にこの俺でも思う時はある。2人はもし出会うことがなかったなら、こんなにも傷付く事なんてなかったんじゃないか、と。
妹ちゃんの件を皮切りに、次々と問題が降りかかる。…まるで、見えない糸が2人を裂こうとせんばかりに。
それでも、この一言で俺は自分自身を納得させちまうんだ。
───だって、それが織原 結意という人間なのだから。
惹かれてた、って表現はある意味正しいのかもしれない。
あの優衣姉にだってすら、俺は一瞬とはいえ、そう思ってしまったのだから。
そう───愛に狂うその姿は、残酷なまでに美しい、と。
- 880 : ◆UDPETPayJA:2012/09/11(火) 22:40:09 ID:O8Q4sbvo
- 第24話終了です。
プロットも結末までできてて、どうにか年内までに完結させたいけどどうも遅筆…
- 881 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/11(火) 22:59:29 ID:XozDaChk
- うひょ
- 882 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/11(火) 23:51:06 ID:N4AsKKGk
- ついに終わってしまうのか…
- 883 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/12(水) 10:02:43 ID:N0WrLDho
- >>880
乙です!
- 884 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/12(水) 18:10:47 ID:sERabFHA
- 思えば一話目から随分経つんだよなぁ…
当時の結意ちゃんとは別人だわ
- 885 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/12(水) 20:11:55 ID:IwHK2s5w
- 時の流れを感じますねぇ
- 886 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:13:54 ID:bkK3AqX2
- 初投下します。
長編の予定でかなり軍事色が強いので苦手な方はご注意を。
- 887 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:17:54 ID:bkK3AqX2
- 「GO! GO! GO!」
「これで全室か?」
「おい、この扉がまだだっ! 外鍵がかかっていて開かない!」
「蹴り破るぞ!」
「男がいる!」
「両手を頭の上で組んで床に伏せろっ!」
「タイラップを! 連行しろ!」
「まて、何か言ってる」
「I...A...ican.」
「なんだって?」
「おい、ソイツ何を言ってるんだ?」
「黙れ、聞こえない! おい、もう一度はっきり発音してくれ!」
「僕は……アメリカ人だ」
あれは確か、2007年の10月の初めだった……
「Shit……」
「2等軍曹?」
確かあの時は運転席に座るパットはハイスクール時代に抱いたチアの話題で盛り上がっていた。
そして、僕の呟きを聞きつけたらしい、お調子者のウォルトが体を捻りながら、似合わないサングラス越しに僕の顔を覗き込んできたのだ。
「見ろ、故障車だ」
僕が指をさした先には、先に出発した車列のものだろうハンヴィーが道路の真ん中で煙を吹いて止まっている。
- 888 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:22:15 ID:bkK3AqX2
- 「おい、嘘だろ。 まさか、止まりゃしませんよね?」
ウォルトが大げさな動作でため息をつくのと同時に、ウェストポイント(陸軍士官学校)直産であられる隊長殿のありがたい御命令により先頭車両が故障車のすぐ横で止まり、後ろに車列を成していた僕らも当然だが、その場で停車するしかない。
「……ああ、畜生。 降りろ、周辺警戒」
投げ出すように置かれていたM4A1を掴み、長時間座っていたことで悲鳴を上げる足腰に鞭を打ち、鉄板付の重い扉を押し開けた。
直後にまるで身を焼くように照りつける日差しは、砲弾の後だらけの道を、ミキサーのように揺れるハンヴィーの荷台で揺られていたほうが幾分かマシではないかと思われるものだった。
「暑いな、畜生」
「軍曹、タバコはどうです?」
「勝手に吸ってろ。 おい、下がって」
物珍しげに集まってくる民衆に、身振りと大声で下がるように警告しながら、ここ、アフガニスタンの焼けた砂の匂いや、ガソリンに排ガス、その他が入り混じりになった何ともいえない匂いを吸い込む。
不朽の自由作戦が始まってすでに6年が過ぎようとしているのに、ここはまるで世界から取り残されたかのように変わらない。
「下がってろ!」
「《煩い! それ以上近づくと発砲する!》」
車の反対側に立つパットの鋭い静止と、先ほどまで隣に座っていたベイカーのパシュトー語に振り返ると、ターバンを巻いた現地の男達が何か怒りを訴えかけるように声を張り上げていた。
- 889 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:25:43 ID:bkK3AqX2
- 「どうした? あいつらはなんと言ってる?」
「自分の車が移動できないから、我々に移動しろと!」
「移動はできない、しばらく待って欲しいと伝えてくれ」
「《黙れ! できない! 待て!》」
こういった口論も珍しいことではない。
他の連中も、慣れた事だというように、我関せずと周囲に視線を走らせている。
と……
「《きゃっ》」
人ごみに押されて、道路に飛び出すように転がった一つの影が視界に入った。
スカーフですっぽりと顔を隠していて詳しくは分からないが、恐らく若い女性だろう。
「軍曹?」
ため息をついた僕に向けられたウォルトの怪訝そうな顔を無視して、倒れたときにどこか怪我でもしたのか、なかなか立ち上がらない女性に歩み寄る。
「大丈夫かい?」
「《え……?》 あ、はい。 少し足を捻ってしまったみたいで」
アメリカの軍人から差し出された手に一瞬、状況を理解できていなかったようだが、すぐに流暢な英語で返事が返ってきて、逆に僕が面食らった。
「言葉がわかるのかい?」
この国では、つい最近までタリバーン政権の下で、女性の教育や自由というものが厳しく制限されていた。
英語が喋れる女性など、めったにお目にかかれず、僕自身、通じなくて当たり前という感覚で声をかけたのだ。
「お父さんの都合で、一家で帰ってくるまではサンタクララバレーに住んでいました」
「カリフォルニアの? なんてこった、僕もシリコンバレーに実家があるんだ! サンマテオさ、行った事は?」
「あります。 でも驚きました……」
「《通してくれ! 通してくれ!》」
その時、中年の男性が人垣を掻き分けて、先ほどの女性と同じように飛び出してきた。
- 890 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:25:43 ID:bkK3AqX2
- 「どうした? あいつらはなんと言ってる?」
「自分の車が移動できないから、我々に移動しろと!」
「移動はできない、しばらく待って欲しいと伝えてくれ」
「《黙れ! できない! 待て!》」
こういった口論も珍しいことではない。
他の連中も、慣れた事だというように、我関せずと周囲に視線を走らせている。
と……
「《きゃっ》」
人ごみに押されて、道路に飛び出すように転がった一つの影が視界に入った。
スカーフですっぽりと顔を隠していて詳しくは分からないが、恐らく若い女性だろう。
「軍曹?」
ため息をついた僕に向けられたウォルトの怪訝そうな顔を無視して、倒れたときにどこか怪我でもしたのか、なかなか立ち上がらない女性に歩み寄る。
「大丈夫かい?」
「《え……?》 あ、はい。 少し足を捻ってしまったみたいで」
アメリカの軍人から差し出された手に一瞬、状況を理解できていなかったようだが、すぐに流暢な英語で返事が返ってきて、逆に僕が面食らった。
「言葉がわかるのかい?」
この国では、つい最近までタリバーン政権の下で、女性の教育や自由というものが厳しく制限されていた。
英語が喋れる女性など、めったにお目にかかれず、僕自身、通じなくて当たり前という感覚で声をかけたのだ。
「お父さんの都合で、一家で帰ってくるまではサンタクララバレーに住んでいました」
「カリフォルニアの? なんてこった、僕もシリコンバレーに実家があるんだ! サンマテオさ、行った事は?」
「あります。 でも驚きました……」
「《通してくれ! 通してくれ!》」
その時、中年の男性が人垣を掻き分けて、先ほどの女性と同じように飛び出してきた。
- 891 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:28:52 ID:bkK3AqX2
- 「危ない軍曹っ! 撃つぞ、下がれっ!」
「その子は私の娘だっ! 撃たないでくれっ!」
「ウォルト! 銃を降ろせ!」
ウォルトが怪訝な顔のまま銃口を動かしたのを確認してから、女性の父親に、彼女が怪我をしていることと、危害を加えるつもりがないことを説明している間に車列の他の車へ、次々と隊員達が乗車しているのが見えた。
「軍曹! あのポンコツ野郎のエンジンが直ったそうです、このクソ暑い往来からはサヨナラですよ!」
しきりに、ありがとうございますと告げる女性の父親を宥めながら、僕はベイカーが中から押し開けて、手招きしている車に軽く手を振ってから、二人に向き直った。
「それでは失礼します、お話できて光栄でした」
「あの……」
女性の父親と軽く握手を交わしてから、背を向けて小走りになったところで、今度は女性から声がかかる。
「あの……お名前は?」
「デュケスン、ジョージ・デュケスン2等軍曹です」
軽く振り返って、手を振って見せてからハンヴィーに乗り込み、重たい扉を閉めた。
去り際に女性が「ジョージ……」と何事か呟いたような気がするが、もう会うこともないだろうと思っていた。
そう、このときは……
- 892 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:28:52 ID:bkK3AqX2
- 「危ない軍曹っ! 撃つぞ、下がれっ!」
「その子は私の娘だっ! 撃たないでくれっ!」
「ウォルト! 銃を降ろせ!」
ウォルトが怪訝な顔のまま銃口を動かしたのを確認してから、女性の父親に、彼女が怪我をしていることと、危害を加えるつもりがないことを説明している間に車列の他の車へ、次々と隊員達が乗車しているのが見えた。
「軍曹! あのポンコツ野郎のエンジンが直ったそうです、このクソ暑い往来からはサヨナラですよ!」
しきりに、ありがとうございますと告げる女性の父親を宥めながら、僕はベイカーが中から押し開けて、手招きしている車に軽く手を振ってから、二人に向き直った。
「それでは失礼します、お話できて光栄でした」
「あの……」
女性の父親と軽く握手を交わしてから、背を向けて小走りになったところで、今度は女性から声がかかる。
「あの……お名前は?」
「デュケスン、ジョージ・デュケスン2等軍曹です」
軽く振り返って、手を振って見せてからハンヴィーに乗り込み、重たい扉を閉めた。
去り際に女性が「ジョージ……」と何事か呟いたような気がするが、もう会うこともないだろうと思っていた。
そう、このときは……
- 893 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:32:20 ID:bkK3AqX2
- 申し訳ありません。 上の二つが二回ずつ投稿されてしまいました。
- 894 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:37:44 ID:bkK3AqX2
- 2
「軍曹、A中隊のカワイコちゃん達はどこですか?」
「僕は知らない、少尉に聞けよ」
あの日は確か……2007年12月、いや、11月の終わりだったな。たぶん20日だ。
遠い爆音を聞きながら、バスケットコートから程近い、格納庫の前に置かれた簡易テーブルで適当な雑誌を読んでいた僕に、ウォルト。ウォルター・ハンセン一等兵が声をかけてきたのを覚えている。
「バースと賭けをやってるんっすよ。 そして、ラッキーなことに今日は俺らの勝ちだ」
ハイスクール時代はさぞモテたというハンサムな笑顔を浮かべながら、パットことペーター・ハミルトン一等兵が続いた。
「あまりくだらない事をやってくれるなよ」
「そう馬鹿にしたもんでもないですって」
「そうそう『金は時なり』」
そう、ウォルトが神妙な顔で言った時、ふと周囲が騒がしくなり、数台のハンヴィーが飛び込んできた。
「どうしたんだ?」
「さぁ? ところでさっきの話っすけど……」
「おい、待てよ兄弟。 ありゃ、A中隊のブリーチャーじゃねぇか?」
顔を見合わせてから走り出した二人に続いて、歩み寄っていくうちに徐々に周囲が騒然とし始めた。
「どうした? 何があった?」
僕は車体に体を預けるように力無く立っている隊員に説明を求めるように声をかけた。
「自動車爆弾が、その後に襲撃を受けて……まだ現場で立ち往生してる連中が……」
「なんてこった、大丈夫なのか?」
「自分は大丈夫ですが、仲間が……」
見ると周囲では次々と負傷者が地面に降ろされて治療を受けている。
うちの二人も片目を覆うように包帯を巻いて血まみれの片足を引きずる男を支えるように医務室に運んでいた。
「軍曹、すぐに準備をして車に乗れ! 友軍が孤立し、攻撃を受けている!」
- 895 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:37:44 ID:bkK3AqX2
- 2
「軍曹、A中隊のカワイコちゃん達はどこですか?」
「僕は知らない、少尉に聞けよ」
あの日は確か……2007年12月、いや、11月の終わりだったな。たぶん20日だ。
遠い爆音を聞きながら、バスケットコートから程近い、格納庫の前に置かれた簡易テーブルで適当な雑誌を読んでいた僕に、ウォルト。ウォルター・ハンセン一等兵が声をかけてきたのを覚えている。
「バースと賭けをやってるんっすよ。 そして、ラッキーなことに今日は俺らの勝ちだ」
ハイスクール時代はさぞモテたというハンサムな笑顔を浮かべながら、パットことペーター・ハミルトン一等兵が続いた。
「あまりくだらない事をやってくれるなよ」
「そう馬鹿にしたもんでもないですって」
「そうそう『金は時なり』」
そう、ウォルトが神妙な顔で言った時、ふと周囲が騒がしくなり、数台のハンヴィーが飛び込んできた。
「どうしたんだ?」
「さぁ? ところでさっきの話っすけど……」
「おい、待てよ兄弟。 ありゃ、A中隊のブリーチャーじゃねぇか?」
顔を見合わせてから走り出した二人に続いて、歩み寄っていくうちに徐々に周囲が騒然とし始めた。
「どうした? 何があった?」
僕は車体に体を預けるように力無く立っている隊員に説明を求めるように声をかけた。
「自動車爆弾が、その後に襲撃を受けて……まだ現場で立ち往生してる連中が……」
「なんてこった、大丈夫なのか?」
「自分は大丈夫ですが、仲間が……」
見ると周囲では次々と負傷者が地面に降ろされて治療を受けている。
うちの二人も片目を覆うように包帯を巻いて血まみれの片足を引きずる男を支えるように医務室に運んでいた。
「軍曹、すぐに準備をして車に乗れ! 友軍が孤立し、攻撃を受けている!」
- 896 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:38:32 ID:bkK3AqX2
- その後の時間は矢のように過ぎたさ。
とにかく戦闘できる態勢が整って全員が車に乗り込んで出発した。
中隊総出で取り残された連中を助けにいったのさ、だけど……
僕が詳しく思い出せる限りでは、車列が移動中に前の車の下だった地面が膨れ上がって、ついでに僕たち
も吹っ飛ばされ、僕は意識を手放した。
次に思い出せる記憶は、激痛と消毒されたベッドの匂い。 とにかく全身が痛かったのを覚えている。
「大丈夫ですか?」
よく見えなかったが僕が痛みに呻いたことで、部屋にいた人間は僕が目を覚ましたことに気がついたよう
だった。
「ここは?」
「安全な所です、デュケスン2等軍曹」
僕は痛みにまとまらない思考の中、回収されてキャンプの病院にいるものだと当たりをつけた。
少なくともタリバーンが捕虜の世話を『女性』にやらせる筈も無い。
「……部隊は?」
「無事、だと思います」
「よかった……」
痛みで自由の利かない体に鞭打ちながら上体を起こすと、清潔なシーツが僕の上半身から滑り落ちた。
それで気がついたのだが、僕はどうやら服を着ていないようだ。
- 897 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:40:39 ID:bkK3AqX2
- 「まだ、動いてはいけませんよ?」
声の主が暗がりから歩み寄り、僕は息を呑んだ。
中央アジア人らしい健康的な肌に、艶やかな黒髪。そして寧ろ現実感すら感じられない、ある意味人間離れした愛らしさを持つ少女が部屋着であろうラフな格好でそこに立っていた。
「あなたは一週間近くもそうやって眠っていたんです」
少女が微笑むと、その美しさはさらに輝きを増した。
多少たれ目気味なブルーの瞳が彼女が純粋な東洋系ではないことを示しているが、それは彼女のエキゾチックな美貌を損ねるどころかいっそう際立たせていた。
「それに、もう少し寝ておいたほうがいいと思います」
言葉を失っている僕の、上半身にゆっくりと手を添えてベッドに戻す。
まるで慈しむ様な動作に、僕の心臓はとたんに早鐘を打つのを感じた。
「あ、ありがとう」
どもりながらそういうと少女はくすくすとおかしそうに笑い、僕の頭を撫でた。
「ジョージ、あなたはジョージよね?」
彼女が自分のポケットからドックタグを取り出し名前を読んだ。
「はい」
ついつい生真面目に答える僕に再び笑顔を向けると彼女は僕の個人情報をそらんじ始める。
血液型から始まり年齢や所属、IDナンバー、果てには両親の名前や、実家の住所、極めつけは……
「キャサリンという娘がいますね? 今年いくつになりますか?」
「2歳……いや、3歳だ」
- 898 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:42:11 ID:bkK3AqX2
- 聞かれたことにすらすらと答えてはいけない。
理性では分かっていても体が、長年クソまじめといわれ続けた本能がそれを許さなかった。
「ああ、ジョージ。 それじゃ、昔の話をしましょう?」
「ま、まってくれ、これは尋問なのか?」
僕の質問に驚いたような顔をして見せてから、少女は再び微笑んだ。
「いいえ、そんな無粋なものじゃありません」
そう言うとまるで櫛を入れるように僕の切りそろえられた髪を、いや頭をゆっくりと撫でる。
「そうですね、ピロートークとでも思ってください」
「なんだって?」
「では、昔の話です。 あなたがハイスクールを卒業するかしないかの時期の話を」
僕の質問をまるで聞こえないかのように軽く聞き流して、少女は言葉を続ける。
仕方なく僕も当時を思い出そうと頭を捻った。
「そうは言っても10年近く前の話だろう?」
「8年と4ヶ月それと半月です」
まるで昨日の夕飯のメニューを聞かれるように答えて見せてから、話を促すように頭を撫でていた手を動かした。
- 899 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:43:46 ID:bkK3AqX2
- 「当時は……そうだ、普通に就職するか、入隊するかで悩んでいた。 進学をするにしても学費を貯めるためには働く必要があったからね」
「そうですか、それで?」
「結局、入隊する道を選んで……順調に昇進を続けてここにいる」
「……」
少女の手が止まり、表情が心なしか曇った。
微笑は消え、奥の見えないブルーの瞳には何か思案の色が浮かんでいるようにも感じた。
「それでは私のお話も聞いてくださいますか?」
少女は頭を撫でていた手を下ろし、僕の包帯だらけの手を握りながらそう呟いた。
「ああ」
「……あるところに、うまく言葉が喋れず、あまり友達のいない幼い女の子がいました」
まるで遠い昔のことを語るような口調でありながら、どこか懐かしむような表情。
「少女はいつも一人で遊んでいましたが、ある時、おうちから遠く離れた場所で迷ってしまい途方にくれ、ついには泣き出してしまったのです」
黙って彼女の話を聞くうちになんだか既視感を感じた。
いつだったか泣いている女の子を……
「そこで現れたのは地元のハイスクールの制服を着た男の子でした。 男の子は言葉の通じない女の子をなんとか泣き止ませようと苦労して、何とか聞き出した住所へ女の子を連れ帰ってくれました」
「君は、あのときの?」
「思い出していただけましたか?」
女の子といってもジュニアスクールにあがるか上がらないかの年齢だった記憶がある。
その後も何度か会話をしたような記憶があるが、僕が入隊する事を選び実家を離れてからどうなったかは知らなかった。
「それにしても、驚いたな。 こんなに綺麗になっていたなんて」
僕の言葉に、頬を染めながらうつむいて、握っていた僕の手をさらに力を込めて握り。
「父はこの辺りでは実力者ですから、ここは安全ですよ」
そのまま完璧な笑顔でそう言い放った。
- 900 :Homefront ◆VxHCGt/UxY:2012/09/14(金) 01:44:26 ID:bkK3AqX2
- 以上で1話と2話の投稿を終わります。
- 901 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/14(金) 22:00:34 ID:gb6xHTdU
- >>900
乙乙!
- 902 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/15(土) 01:02:41 ID:HRRXGwO.
- 勃った
- 903 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 904 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 905 :<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- <ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
- 906 :Wikiの中の人 ◆hjEP2rUIis:2012/09/16(日) 16:40:58 ID:CfpYmgr6
- >>900
Homefrontは作品名ってことでいいのかな(^_^;) ?
そういう解釈で保管されちゃったみたいなんで
確認したいんだけど
- 907 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/17(月) 15:13:50 ID:Q9PqylkA
- 投稿まだかな
- 908 : ◆0jC/tVr8LQ:2012/09/18(火) 02:31:06 ID:Sunf0Ego
- 久しぶりに投稿します。
短いですがご容赦を。
- 909 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2012/09/18(火) 02:32:10 ID:Sunf0Ego
- ※マジキチ描写あり。ご注意ください。
「お逢いしとうございました。ご主人様……」
「く、紅麗亜……」
姉羅々に連れて来られた、謎の洋館。その玄関口で紅麗亜と対峙しながら、僕は戦慄していた。
もちろん、この場所に紅麗亜がいたことに驚いているからだけど、もう一つ、僕の前に立ちはだかる紅麗亜が、どう見ても尋常な様子ではないからでもあった。
まず、服をほとんど何も着ていない。ただ白いレースのガーターベルトと、メイドのカチューシャのみ着けていて、肝心な場所は全部剥き出しだった。
そしてその顔はと言えば、見開いた両眼が血走り、顔全体は紅潮し、口は半開きで荒い息と涎が漏れているという具合だ。
髪型はポニーテールのままだったが、どういう訳か、金色に染められている。スーパーサ○ヤ人か?
僕の頭より大きな乳房は、奇妙に張っていて、ピンク色の先端からは、何やら液体が滴り落ちていた。
さらに、股間からは汁が滝のように流れ、あたかも失禁したような様相を呈している。
ハアッ、ハアッ、フウウウゥ……
そんな紅麗亜が、若干前かがみになりながら、乱れた息で、僕を睨み付けている。
まさしく、飢えた肉食獣だった。
もちろん、獲物は僕だろう。
怖いなんてものじゃなかった。すぐにでも、姉羅々を連れて逃げ出したかった。
でも、僕は完全に、蛇に睨まれた蛙になっていて、逃げるどころか、声を出すことさえできなかった。
「…………」
「…………」
紅麗亜も、最初に発した言葉以外、何もしゃべらない。
数秒間が、無為に過ぎて行く。
そして静寂が崩れた。紅麗亜が「御主人様!!」と怒号しながら、猛然と掴みかかってきたのだ。
抵抗する間もなく、僕は紅麗亜に抱きすくめられた。巨大な胸の間に僕の顔が挟まり、息ができなくなる。
「ングッ!」
しかし、すぐに解放された。右手で僕のジャージを掴んだ紅麗亜が、豪快な上手投げを放ったのだ。僕は一溜りもなく、床に転がされる。
「ふんっ!」
「うわあっ!」
どうにか受け身を取り、仰向けに倒れた僕の右側から、紅麗亜が覆いかぶさってきた。彼女は両手で、僕のジャージを掴んでくる。
「ま、待っ……」
「おおお……御主人様! 御主人様! 御主人様!」
必死に抵抗したが、まるでポテチの袋でも破るみたいに、ジャージは引き裂かれてしまった。
「フーッ! フーッ! フーッ!」
続いて、下着もティッシュペーパーのように千切られ、僕は裸にされてしまう。
「ひいいい!」
「フフ……」
薄く笑った紅麗亜は、右足で僕の胴体をまたぎ、馬乗りになった。完全に押さえ込まれた僕は、両手で紅麗亜の腰を押して脱出しようとしたが、ビクともしなかった。
- 910 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2012/09/18(火) 02:33:01 ID:Sunf0Ego
- 「うああ……」
半泣きになりながらもがいていると、僕の頭が紅麗亜の両手にガッチリと捕まえられ、引き寄せられた。紅麗亜も顔を近づけてきて、あっという間に唇が接触する。
「!!」
「んん……」
紅麗亜は目を閉じず、視線がもろにカチ合った。紅麗亜は舌を僕の口に強引にねじ込んでくる。歯の間がこじ開けられ、口の中を舐め回された。
「…………」
両手で紅麗亜の肩を押し返そうとしていた僕だったが、互いの舌が絡まり合っているうちに、だんだん意識が蕩けていった。
「うぅ……」
気が付くと、僕は両腕を左右にだらしなく広げていた。紅麗亜の唇は離れていて、彼女は僕の股間の上でM字に足を開いている。
「フフ……フフフフフ……」
紅麗亜は勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、僕のペニスを握り、指でしごいていた。
「うああ……」
不覚にも、いつの間にか、僕の股間は硬直していた。こんなに恐ろしくても、オスの本能というものは反応するのか。なんてどうしようもないんだ。
そして紅麗亜は、先端を彼女自身の入り口にあてがった。
「待っ……」
「ふん」
紅麗亜は何の躊躇も見せず、その超安産型のお尻を無造作に沈めた。当然のように、僕のものは彼女の奥深くまで吸い込まれる。
「ぐ……」
「あはああ! 素晴らしゅうございます! 御主人様!」
半端ではない快感に股間を襲われ、射精してしまわないように、僕は全身の筋肉を締めた。
一方、紅麗亜は叫びながら体をのけ反らせ、小刻みに腰をガクガクと動かし始める。
「あううっ! 御主人様、胸を! この性欲処理メイドのはしたない胸を!」
「え!?」
「ひぎいいっ! 容赦なく虐めてください! 早くっ!」
どうやら、乳房を愛撫しろということらしかった。逆らうと何をされるか分からないので、僕は慌てて紅麗亜の大き過ぎるバストに手を伸ばし、乳首を強めにつまんだ。
「あふううん! 気持ちいいっ!」
左右の乳首をしごかれた紅麗亜が、激しくあえいだ。どうやらお気に召してくれたようだ。と、紅麗亜の乳首から液体が出て来た。母乳なのか、それとも他の分泌物なのかは分からない。
「んふうう……」
紅麗亜は両膝を床に付けると、上体を前に倒してきた。そして片手で僕の頭を捕まえて引き寄せ、もう片方の手で乳房を支えて、僕の口に突っ込んできた。普通なら無理のある体勢なのかも知れないが、紅麗亜の胸が規格外に大きいため、性器が結合した状態で乳首が口に届いた。
「んぐっ!」
「ああっ! 御主人様専用家畜、紅麗亜の淫乱な、醜く肥大した乳房を吸ってくださいっ! 赤ちゃんみたいに! さあ!」
この指示にも、僕は従うしかなかった。吸い始めると例の液体が口の中に流れ出す。味を感じる余裕はなかった。
「ああああ! 御主人様にオマンコ犯されて、胸も蹂躙されてる!」
感極まった様子で、涙を流しながら絶叫する紅麗亜。その間も、紅麗亜の腰は、激しく前後左右に踊り狂っていた。
- 911 : ◆0jC/tVr8LQ:2012/09/18(火) 02:34:09 ID:Sunf0Ego
- 今回はこれで終わりです。
次は通常の長さで投稿したいと思います……(汗)
- 912 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/18(火) 12:05:26 ID:Ix7LOL..
- >>911
GJGJ
再開してくれるだけでも嬉しいよ
- 913 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/18(火) 15:17:45 ID:bKWTsSzQ
- >>911
乙乙!
自分のペースでまったりどうぞー
- 914 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/18(火) 21:01:56 ID:PsfiCvbQ
- >>911
GJ
- 915 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/18(火) 23:31:03 ID:aF0VGdi6
- 短すぎィ!!
それでこんどはあとどの位かかるんだw
- 916 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/18(火) 23:53:32 ID:4G/DORCg
- 早めに頼む
- 917 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/19(水) 04:58:09 ID:fumTboy6
- 母乳?どういうことなの?
まさか…
- 918 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/20(木) 01:40:26 ID:YzjFtjLA
- おふぅ
相変わらずキチりすぎンゴwww
母乳プレイとはたまげたなぁ…(歓喜)
- 919 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/20(木) 04:26:32 ID:QqGd2ePI
- 触雷キターーーーーーーーーーッ!
- 920 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/20(木) 19:20:47 ID:qQ5Wx9Go
- キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
- 921 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/21(金) 06:55:45 ID:mXxvgbH6
- どこから突っ込みゃええんやw…
- 922 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/22(土) 04:48:34 ID:XqeWiOjs
- あえて言おうほとんどであると
- 923 : ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:46:26 ID:7wGHF1AA
-
こんにちは。遅れてしまいましたが、
投下させて頂きます。
よろしくお願い致します。
- 924 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:49:41 ID:7wGHF1AA
-
〜ある加害者のモノローグ・2〜
人が死ぬのに、大層な理由なんていらないのかもしれない。
傍から見たらちっぽけに思えるその理由だって、本人からしたら大問題だからだ。
僕が死んだら、もしその理由を知ったら、多くの人が僕を否定するだろう。
でも、僕にとってはもうこの世は生きるには……厳しすぎる――
「兄さん?ちょっと良い?」
ドアのノックと共に妹の声が聞こえる。
誰もが、両親でさえも信じてくれなかった僕を、たった一人信じていると言ってくれた妹。
その声に一瞬縄にかけた手が止まる。
「昨日も言ったけど、私は信じてるよ、兄さんのこと」
それでも僕は妹の言葉には耳を貸さず、もう一度縄に手をかける。
――もう誰も信じられない。
それが僕の応えだから。確かに妹は本当に僕の無実を信じているのかもしれない。
でも、だからなんだ。妹が信じてくれたってそんなの無意味だ。
もうこの世に僕の居る場所はないのだから――
「……真実(まみ)」
「兄さん……」
妹、真実のほっとした声が聞こえる。
――"真実"。
そんな名前の妹に信じて貰えたのは唯一の救いだったのかもしれない。
「……ゴメン、真実。僕はもう……無理だ。最期まで迷惑をかけて、済まない」
思えば妹には昔から世話になりっぱなしだった。
元々世話焼きな妹と鈍臭い僕。いつも妹に迷惑ばっかりかけていた、色んな記憶が思い出される。
これが走馬灯というものなのかもしれない。
「最期……?に、兄さん!?何言ってるの!?ここを開けて!」
真実は必死にドアを開けようとするが、内側から頑丈に細工したんだ。
しばらく……僕が死ぬ時間くらいは稼げるだろう。
「さよなら、真実…………信じてくれて、ありがとう」
「止めてっ!兄さん!!止めてぇ!!」
ゆっくりと首に縄をかけて、深呼吸をする。
――さよなら、この醜い世界。
僕は思いっ切り乗っていた台を蹴飛ばした。
- 925 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:50:47 ID:7wGHF1AA
-
10話
「もう……本当に心配したんだから!」
家に帰って散々弥生に説教された後、ようやく夜飯にありつけた。
食卓には俺の好物である、弥生特製のミネストローネを始め、豪勢な晩御飯が広がっていた。
「だから悪かったって。でも連絡はしたろ」
「遅すぎです!昨日の夜中に一回、その後は音沙汰無しなんて!」
散々説教されたがそれでもまだ弥生はお冠だった。
確かにかなり心配かけちまったみたいだな。じゃなきゃ玄関に入った瞬間、抱き着かれたりはしないはずだ。
「悪かったよ。でもありがとな、俺の為にわざわざ好物作ってくれてさ」
「べ、別に……別にお兄ちゃんの為じゃないから!」
何という典型的なツンデレ台詞。思わず吹き出しそうになる。
「な、なによ!?」
「と、とにかく!早く食べようぜ。せっかくのご馳走が冷めちゃうし」
これ以上、弥生を怒らせても仕方ないのでとりあえず一回話を切る。
弥生は文句を言いつつも、席に着いてくれた。いつも通り、二人でいただきますをして飯を食う。
いつもならありきたりな光景も、今はとてもありがたく感じた。
そう、一ヶ月かけて取り戻した平穏な日常がここに広がっているのだ。
弥生特製の晩飯を美味しく頂いた後、すぐに風呂に入って自分の部屋に直行する。
今日は、というか昨日からだが色んなことがあって流石に疲れた。
ベッドに倒れ込んだらすぐに眠れそうだ。
「明日もあるし、もう寝るか」
充電していた携帯の電源を入れながら俺はベッドに向かう。
もしかしたら今日の球技大会の結果が晃から来ているかもしれない。
そんな軽い気持ちで画面を見ていた俺の目に映ったのは――
「……なんだ、これ」
"不在着信、70件"という文字だった。
……70件?どう考えても普通じゃない。だってこの携帯の電池が切れたのは、精々一日くらいのはずだ。
そんな短い間に70件も不在着信があるだろうか。
……何だろう、この悪寒は。異常なことが俺の知らない間に起きているんじゃないだろうか。
「…………」
とりあえずアイコンを不在着信に合わせ、ボタンを押す。すると詳細が表示された。不在着信70件全てに――
「……中条」
"中条雪"と表示されていた。
なんだ、中条か……いや、どうして70件もあるんだ。動揺する気持ちを抑えてひとまず深呼吸をする。
「…………」
……もしかしたら、いや多分中条は俺の携帯が電池切れだったのを知らなかったに違いない。
日付を見ると殆どが昨日の夕方から夜だ。つまり俺が見舞いに行くと約束したのに、来ないから心配でかけてきたに違いない。
「悪いこと、したな……」
中条の行動が腑に落ちて納得する反面、申し訳ない気持ちが沸き上がってくる。
もしかしたらアイツ、ずっと待ってたかもしれないんだ。
……いや、この不在着信の数は中条がずっと待っていたことを示している。
よりによって中条が退院する日にあんなことが起きるなんて、本当にタイミングが悪い。
「……とりあえず謝ろう」
すぐに中条に電話する。しかし呼び出し音が鳴るがしばらく待っても中条は出なかった。
もしかしたらかなり怒っているのかもしれない。もし逆の立場だったとしたら、俺も良い気持ちはしなかっただろう。
「何が"平穏な日常"だよ……馬鹿か俺は」
ベッドに横になり携帯を見つめる。不在着信、70件。
確かに若干異常かもしれないがそれだけ中条は俺を待っていたんだ。お気楽な自分に腹が立つ。
『信じるよ、司のこと』
「……俺は大馬鹿野郎だ」
もう随分昔に感じる、中条との会話を思い出す。
とにかく、明日ちゃんと謝ろう。ちゃんと謝って、幻のカレーパンを献上して、またいつもの俺たちに戻ろう。
もう俺を脅かす存在はいないのだから。
- 926 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:51:30 ID:7wGHF1AA
-
「おはよう司君っ!」
「おお、晃か」
朝、登校して席に着くなり晃が話し掛けてきた。勿論、胡散臭い笑顔付きで。
……俺の経験上、こういう時コイツは大体何か良からぬことを考えてる。とりあえず無難に対応しよう。
「この罪作りな軟派ボーイめ!」
「ん?何か変なもん食ったか。あ、サッカー優勝おめでとう」
俺は教壇に堂々と置いてある二本のトロフィーを指差す。
教室に入った時に見たが、土台のところにはそれぞれ"男子サッカー優勝"と"女子バレー優勝"とデカデカと彫ってあった。
どうやら晃は昨日の公約を見事果たしたようだ。
「ああ、サンキュー!最後は際どかったが何とか勝てたぜ!」
「……中条も、頑張ったみたいだな」
男子サッカーは何となく予想出来たが、女子バレーは正直予想外だった。
ウチのクラスで本職なのは中条と林さんだけのはずだ。その二人がよっぽど頑張らなければ、今あそこにトロフィーは一本しかなかったに違いない。
先程ぱっと教室を見渡したが中条はまだ来ていなかった。謝りたい気持ちがあるだけに、少し焦ってしまう。
「ま、中条も実際かなり上手いし……って違う!」
いきなりツッコミを入れてくる晃と若干距離を取った。朝からテンションが高すぎてついていけない。
「ど、どうした?」
「まだごまかす気かこのチャラ男!昨日のこと、さっさと白状しろ!」
「昨日って――」
晃の言葉で昨日の真実とのキスが記憶に蘇ってくる。
……落ち着け。考えたら晃にまた弄られるぞ。平常心を保つんだ。気が付けば晃が俺の顔を見つめていた。
「その表情は何かあったな!」
「な、何もねぇよ!」
「本当かぁ?」
晃は小さくなった名探偵張りの観察眼で俺を追い詰める。普段は馬鹿なくせに、どうでも良い所で鋭いのは厄介だ。
やはり顔だけではなく、こういう所も晃のモテる理由なのだろう。
「別に……普通に看病してただけだよ」
「看病?……あ、委員長の方か」
晃の口調に若干の違和感を覚える。委員長"の方"……じゃあ晃は一体、誰の話をしていたんだ。
「……他にいないだろ」
「ありゃ?中条が見舞いに行かなかったか」
「中条が……?」
きょとんとする俺を見て、晃も不可解そうな表情をした。
「あれ?司、会わなかったのか」
「あ、ああ……」
「おっかしいなぁ。球技大会の後、一緒にコンビニ行ってさ。ゼリーとか栄養ドリンクとか、司と委員長の為に買って持ってくって言ってたんだけどな」
「……ゼリー?」
「いやさ、どうせ司のことだから何も食ってないんじゃないかって、中条が言ってな。栄養ドリンクは若干ネタだけど」
晃の説明を聞きながら、俺は何となく気が付く。
昨日、真実の病室を出た時に病室の前に何が転がっていたか。それは今晃が言っている内容と同じだった。つまり――
「……アイツ、来てたと思う」
「思うってことは、会ってないのか」
「……ああ」
「そっか。まあ、急に用事が出来たのかもしれないしな」
急に用事が出来たから会えなかったのだろうか。
……いや、それはおかしい。あの病室の前に転がっていた品々が、中条が買ってきてくれた物だとしたら病室の目の前まで来ていたはずだ。
なのにそこまで来て帰ってしまうなんて、どう考えても不自然だ。何だ、何かが引っ掛かる――
「おーし、席着け!今日は緊急でこれから朝礼がある!先生の指示に従うように!」
「やべっ、とりあえずまた後でな!」
「あ、ああ……」
得体の知れない不安を抱えながら席に戻る。一刻も早く気付かなければならないのに、気が付けない。
そんなもどかしさを感じながら、俺は担任の話を聞いていた。
――結局その日、中条は学校を休んだ。
- 927 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:52:04 ID:7wGHF1AA
-
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
自分では銀髪と言い張っているけど、むしろ白に近い髪。
あたしは昔から喘息持ちで、ろくに運動も出来ない子供だった。
激しい運動をするとすぐに発作が起きる。この喘息のせいで、あたしは皆と一緒に遊べないことが多かった。
運動会や遠足、そういった学校行事に参加出来なかったあたしは、自然とクラスで浮いた存在になっていた。
別に虐めがあったわけじゃない。ただ、誰もあたしを遊びに誘わなくなった。
そして元々の性格もあってあたしから声をかけることも出来ず、ただじっと凄く小学生時代を送っていた。
だからかもしれない。中学生になる時に、いつも通っていた病院から今までとは違う薬を勧められた時、あたしは二つ返事で了承した。
その薬はかなり強力なものらしく、上手くいけば喘息を抑え普通に運動が出来るようになるというものだった。
ただ、強力ということはそれなりの副作用もあるということだ。
それは薬によって様々だが、その薬の場合は"髪の色素が抜ける"というものだった。
両親がそのリスクに戸惑う中、あたしは二つ返事でそれを了承したのだ。
もう小学生の時のような思いはしたくない、ただその一心だった。
両親もそんなあたしの気持ちに負け、新しい薬を使うことを許してくれた。半ば祈るような気持ちでその薬を使った結果は――
『中条ってばばあみてぇ!』
『えっ……』
『ホントだ!白髪ばばあじゃん!』
『ち、違うよ……これは……!』
『中条さん、白に染めちゃって変なの』
『あんまり男子にちょっかいだされるからって、調子乗らないでよね』
『あ、あたしは別に……』
虐めという代償をあたしに払わせた。
元々中学校なんて、小学校の延長線上だ。メンバーなんて殆ど変わらない。
皆、最初は気味悪がり、段々あたしを虐めるようになった。
……まあそれも頷ける。元々暗かったあたしが急に真っ白な髪になったのだ。
男子は面白がっただし、それを見ている女子の中には不快に思った者も少なくなかったに違いない。
いずれにしろ、あたしは喘息を抑えることの引き換えに、小学生時代よりも辛い学生生活を過ごすことになった。
世界中で自分が一番不幸なんていうつもりは全くない。ただ、その時の環境はあたしを絶望に追い込むには十分だった。
『中条さん、皆はああ言ってるけど……私は気持ち悪いなんて思ってないからね』
『……うん』
『さ、一緒に片付けようよ』
『……ありがとう』
だから、少し優しくされたくらいであたしは簡単に信じてしまったんだと思う。
皆から虐められているあたしに、当時のクラス委員長の女の子だけは優しく接してくれた。
今思えばそれがかりそめの優しさだなんてことは、少し考えれば分かったに違いない。
それでも当時のあたしにはその優しさが有り難かった。
家族以外の誰かと話すなんて久しぶりで……あたしは彼女を信頼しきっていた。
『ねぇ、何で中条なんかと仲良くしてんの?』
『あんたらのせいなんだからね。皆があの子虐めるから、先生が委員長が何とかしろって』
『まあ自業自得じゃない?最初虐めようって言ってたの、アンタなんだし』
『だってムカつくんだもん。皆だってそうでしょ』
『あの白髪女が知ったらビックリすんじゃないの?』
『最後はばらすけどね。ま、それまでは我慢かな』
……どこにでも転がっていそうな話だった。
でもそれが、自分に降り懸かってくるなんて全く考えもしなかった。
結局、あたしは友達だと信じて疑わなかった人は、あたしを苦しめる虐めの首謀者で。
その時、あたしの中で何かが壊れてしまったのかもしれない。
その後も友達なんて出来るはずもなく、あたしは小学生時代よりも遥かに辛い三年間を過ごした。
そして卒業と同時にあたしは桜山市に引っ越した。
家族には直接虐められていることを言ってはいなかった。それでも、何となく察していてくれたらしい。
新しい環境でもう一度最初から、あたしに学生生活をやり直して欲しいと思ったのかもしれない。
その気持ちに応えたくて、あたしも頑張って運動部に入ってやり直そうと思った。
それでも中々心の傷は消えなくて友達は出来たものの、あたしは何となく一定の距離を置くようになっていた。
友達とまで言えないような関係。
あたしは誰も信用出来なくなっていたし虐められさえしなければ、それでいい。本気でそう思っていた。
――少なくとも彼に出会うまでは。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
- 928 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:52:52 ID:7wGHF1AA
-
「…………」
ぼんやりと天井を見つめる。嫌な、本当に嫌な夢だった。
まさか、また虐められている時の夢を見るなんて、あたしも相当追い詰められているのかもしれない。
もう冬だというのに、身体中が汗でびっしょり濡れていて気持ち悪い。
時計はもう夕方を示していて、窓の外には夕焼けが一杯に広がっていた。
「……休んじゃったな」
やっと搾り出した声は予想以上に酷いもので、昨日の醜態をあたしに思い出させる。
振り払っても消えないあの光景。どうあがいても背けることを出来ない現実が、ただ心を蝕んでいた。
もう涙も出ない。出るのは掠れた声だけだ。
「……シャワー、浴びよう」
けだるい身体を引きずって一階に下りる。
結局昨日は夜中に家について親に散々叱られた挙げ句、微熱で学校を休んだ。
……でもそれでよかったのかもしれない。今、
司に会ったら、あたしは自分の中にあるどす黒い欲望を全て彼にぶつけてしまいそうだから。
今日は木曜日だ。後一日、学校へ行かなければしばらく司に会わなくて済む。
あたしの中の得体の知れない感情が落ち着くまで、それまでの辛抱だ。
「……ん?」
シャワーを浴びようとリビングに入ったら、インターホンが鳴った。
今日は両親とも朝帰りの為、一人っきりだ。あたしは寝ぼけたまま玄関に向かう。
どうせ宅配か何かだろう。そんな軽い気持ちでドアを開けると――
「はーい…………えっ」
「……よう、中条」
あたしが今最も会いたくて、それと同じくらい会いたくない人が目の前にいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『いたたた……ゴメン!大丈夫か?』
その日はたまたまぼんやりしていて、何となくよそ見をしながら廊下を曲がった。
瞬間、誰かとぶつかり、まるで漫画のような出会いを果たした。
『……平気』
『悪かったな、転校したばっかで――』
その男子は驚いたような表情であたしを、正確にはあたしの髪の毛を見ていた。
今までに何度も見たことのある反応に思わず溜息が出る。どうせ何で白髪なのか、理由でも聞かれるのだろう。
そんな諦観にも似た気持ちを抱くあたしに対して彼は――
『その銀髪、めっちゃ綺麗だな!』
『……へっ?』
『俺大好きなんだ、銀色』
笑顔で転んだあたしを引き上げながら、そう言った。
一瞬、あたしは何を言われたのか理解出来ないでいた。だって……初めてだったから。
あたしの髪の毛を"綺麗"だなんて言ってくれた人は、彼が初めてだったから。
『あっ、わりぃ!早くしないと手続きに遅れちまう!』
『あ、あっ……!』
『ゴメン!またな!』
そのまま彼は慌て廊下を走って行ってしまった。
……もっと色んなことを聞くべきだったと、彼の姿が見えなくなってからあたしは後悔した。
もっと彼のことを知りたい。気が付けばそう思っている自分がいた。
それからだろうか。無意識に彼の姿を探すようになったのは。あたしが誰かに興味を持つこと自体が久しぶりだった。
幸運にも次の週、その男子、藤塚司はあたしのクラスに転校してきた。更に妹はあたしと同じバレー部に入部してきたのだ。
彼にとってはほんの些細な出来事で、覚えてないのかもしれない。
ただ、あたしにとっては生まれてきて、一番嬉しい出来事だった。
誰もが忌み嫌っていたあたしの髪を、彼は何の躊躇いもなく"綺麗"と言ったのだ。
だからこそ、どうしても彼と仲良くなりたかった。
多少無理矢理でも、今を逃せばもう仲良くはなれない気がする。だからあたしは――
『バ、バレー部の可愛い藤塚弥生の兄は君か!?』
無理矢理口実を見つけて司に話し掛けた。
今思えば自分の必死さに目を背けたくなるが、仕方ない。
それにこれがきっかけであたしは司と仲良くなれたのだから。
それならばあたしが司を好きになるのは当たり前だったのかもしれない。
あたしをもう一度日の当たる場所に連れてきてくれた人。司のおかげで今のあたしがあるのだから――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
- 929 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:53:46 ID:7wGHF1AA
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中条は扉を開けたまま固まっていた。どうやら俺が彼女の家に来たことが、かなり予想外だったらしい。
「体調不良で休んだって聞いたからさ。見舞いに来てやったぞ」
「……な、何で家の場所……」
「お見舞い行きたいって言ったら林さんが教えてくれたんだ。中条も喜ぶだろうって」
林さんは中条と同じバレー部で、かなり仲がよいらしい。
当たり前といっちゃあ当たり前だが、中条の家の場所を知らなかった俺は、林さんに教えて貰ったのだった。
……俺に場所を教えてくれる時、林さんは何故かにやにやしていた。晃に少し似ている気がする。
「そ、そっか……」
「ほい、これが今日の分のプリント」
俺は鞄の中から今日配られたプリントを取って中条に差し出す。中条は無言でそれらを受け取った。
「それからコンビニでプリンとか――」
「……なんで」
「ん?」
「なんで……なんで、見舞いに来たの」
中条は俯いたまま、掠れた声で俺に聞く。やはりまだ調子が悪いのだろうか。
「なんでって……心配だからに決まってるだろうが。俺たち親友だろ」
「……じゃあ、委員長も親友なんだ」
「……えっ?」
「だって付きっ切りで看病してあげたんでしょ、委員長のこと」
なぜだろう。久しぶりに見た中条は無表情で、瞳には一切の光が宿っていなかった。
中条はゆっくりと俺の腕を掴む。
「……晃から聞いたのか」
「どうして?どうして看病したの?なんで、なんで来てくれなかったの?」
「……っ」
腕が強く掴まれる。中条は何かを爆発させるように震えていた。
どうして……そう質問する中条に俺は答えることが出来ずいる。
「どうして……どうしてキス……したの……?」
「っ!中条……」
中条は……静かに泣いていた。
いつの間にか掴まれていた腕は離されていて、嗚咽は出さず静かに……泣いていた。
やはり晃の言った通り、中条は昨日病院に来ていたんだ。
でも、病室には入れなかったんだ。なぜなら見てしまったから。
俺と真実が……キスしているところを。
「中条……昨日のことは――」
「ゴメン、もう帰って」
中条は俺の言葉を遮ってそのまま扉を閉めようとする。俺は無意識に中条の腕を掴み返していた。
「……離して」
「待てよ……俺はまだ中条に言いたいことがある」
「聞きたくない」
「聞いてくれ……俺は――」
「離して!もう聞きたくない!もう何も信じたくないの!もう傷付きたくないの!もう……!」
「な、中条っ!?」
「あっ……」
中条は必死に俺の手を振りほどこうとする。それが逆に俺を引き寄せてしまい、俺たちは玄関に倒れ込んだ。
咄嗟に中条を庇う形になり、彼女を抱きしめるような態勢になってしまった。
「……だ、大丈夫か中条」
「……うん」
目の前に中条の顔がある。
泣き腫らした目が昨日から彼女がどれだけ苦しんでいるかを物語っていた。
よく見ると中条はパジャマ一枚で、着崩れして彼女の真っ白な肌が見える。
精神衛生上、健全な男子高校生にはいささか刺激が強すぎる光景が目の前に広がっていた。
「ゴ、ゴメン!俺こんなつもりじゃ――」
「……そのままで、いて」
離れようとする俺を、中条は引き寄せる。
- 930 :嘘と真実 10話 ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:54:27 ID:7wGHF1AA
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お互いに抱き合うような状態で、中条は俺の胸に顔を埋めた。
「中条……?」
「……司の心臓、ばくばくいってる」
「ま、まあそりゃあ……こんな状態だからな」
この状態を意識したからだろうか。自分の顔が熱くなるのを感じる。
パジャマ一枚越しに、中条の体温や息遣いが伝わってきた。
……コイツ、こんなに細かったんだ。
俺は今まで中条は明るくて強くて、一人でも生きていけるような奴だって、勝手に勘違いしてた。
でも中条も一人の女の子だってことがこうしてるとすごく分かる。
「中条……」
「……雪って呼んで」
中条は上目遣いで俺を見てくる。俺の理性がなければすぐさま襲ってしまいそうなくらい、可愛かった。
「でも――」
「委員長のことは名前で呼んでるんでしょ。だったら……あたしもちゃんと名前で呼んで」
中条の強い眼差しに、思わず頷いてしまう。
「……ゆ、雪……なんか恥ずかしいぞ」
「……慣れなさい」
中条……雪は顔を赤らめてそっと呟いた。
お前も慣れてないじゃねぇか、とか言いそうになったが堪える。
「……もう一回呼んで、司」
「……雪」
「もう一回……司」
そうやってしばらくの間、俺たちはお互いの存在を確認するように抱き合い、名前を呼び合った。
「そろそろ帰るわ。ちゃんと早めに寝て、明日はちゃんと学校来いよ」
「うん。今日はありがとう。プリン、後で頂くね」
気が付けばもう辺りは真っ暗になっていた。雪はだいぶ落ち着いたようで、やっと笑顔を見せてくれた。
「おう、じゃあまたな……ゆ、雪」
「……かっこわる」
「うるせぇ!まだ慣れないんだよ!」
「あはは!冗談。じゃあ、また明日!」
雪に手を振りながら俺は帰り道を歩く。
」今日はっきりしたことがある。俺はたぶん……雪のことが好きなんだと思う。
アイツに笑っていて欲しいし、一緒に笑っていたい。
それは真実には抱かなくて、雪だけに抱く感情だ。
だからこそはっきりさせなければならない。確かに真実のことは好きだ。
でもそれは友達としてで、やっぱり俺は――
「……雪」
雪のことが好きなんだ。
「司……」
胸に手を当てる。まだ心臓がドキドキしている。
司にあんなことを言っておきながら、本当は自分の方がよっぽどドキドキしていた。
司に名前を呼ばれる度に身体の奥から暖かくなれる。だからこそ――
「……負けたくないよ」
失うことは考えたくない。
もし司があたしの側にいなかったら、もうあたしは生きていけない。
だって、知ってしまったから。人の温もりや暖かさを。司が教えてくれたから。
だからもう独りのあたしには戻れない。
「…………」
もし司が委員長のところに行ってしまうなら……あたしの中に何かが渦巻くのを感じる。
この暖かさを手に入れる為ならばあたしは何でもするに違いない。たとえそれが――
「……頭を冷やそう」
一瞬、頭を過ぎった考えに蓋をする。
それでも、あたしのどす黒い欲望は決して消えることはなく、まだぐるぐると渦を巻いていた。
- 931 : ◆Uw02HM2doE:2012/09/23(日) 16:56:23 ID:7wGHF1AA
-
以上で投下を終了致します。
読んで下さった方、ありがとうございました。
- 932 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/23(日) 18:03:05 ID:0uUtZdic
- >>931
乙乙!
- 933 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/23(日) 18:18:29 ID:dgvR99h6
- GJ!中条可愛いのう
- 934 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/24(月) 00:27:51 ID:vl9Vup9c
- 中条というとどうしてもその上の作品の中一条さんを連想してしまうなw
まあ似ても似つかないわけなんだが…
- 935 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/24(月) 21:50:37 ID:0kANsl/U
- せ、せやな
- 936 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/25(火) 07:10:51 ID:8Jr/VlAg
- >>931乙!
次回も楽しみにしてます!
- 937 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/26(水) 06:48:11 ID:WK1iRP4o
- 中条ちゃん副作用なの?
日本人で白髪は気持ち悪くない?きっと普通の人なら一緒の空気を吸うのも嫌だろうし、視界に映るのも耐え難いと思うなぁ。きっと今回キスとかしちゃったから勘違いしちゃったかもしれないけど、言っとくけど告白とかしちゃったら間違いなく振られるしもう今の関係に戻る事はできないだろうね。んっ?嫌だ?そうなるなら死んだほうがマシ?
ごめんごめん。大丈夫だよ。僕なら一生一緒に居られるしあいつよりも愛してあげられる。きっと君も僕を好きになるよ?後悔はさせない(キリッ)。えっ?こんな私を貰ってくれるのかって?しょうがないなぁ。どうせ最後まで売り残っちゃうんだから君の全てを貰ってあげよう。変わりに僕の全てをあげるよ。そして二人の遺伝子を混ぜ合わせて子供を作りまくろうね?(ゲス顏)子宮がぶっ壊れるまで産ませてやんよ。
- 938 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/26(水) 13:31:57 ID:5qVbazh2
- 女が男の事を好きすぎてペニバンで男をイカせまくる話が読みたい
- 939 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/26(水) 14:59:46 ID:RUlQu7tg
- >>937
つ鏡
- 940 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/26(水) 17:34:11 ID:wX45WWDU
- >>937
これはヤバい…。中条たん逃げてー!
- 941 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/26(水) 23:42:42 ID:zw/5bhVM
- なんやこいつ…
- 942 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/27(木) 00:58:07 ID:nz7m52N2
- 狂っとるの〜
- 943 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/27(木) 02:24:57 ID:QGy.TkFM
- 通報した(直球)
- 944 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/28(金) 21:48:30 ID:P2Aa.SfA
- 投下なし
- 945 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/29(土) 01:17:15 ID:K0mLL/Nw
- 今日は投下ありますように。
- 946 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/29(土) 01:39:11 ID:zbjjysWU
- >>937
何か変なのが湧いたな…
- 947 : ◆mAQ9eqo/KM:2012/09/29(土) 16:36:26 ID:SFMvRm2U
- 書き上がったんで、短編投下します。面白さの保障はありません。
- 948 :杢が割れる ◆mAQ9eqo/KM:2012/09/29(土) 16:41:56 ID:SFMvRm2U
- 大学生の頃からか、背後から視線を感じる。と、かつての恋仲であった嵯峨野玲に話した所、奴は一瞬動きを止めて、
「いい大人だってのにナルシズムはよしてくれ」
と苦笑交じりにのたまった。それから何か言いかけたが分からずじまいに終わっている。
結局、知人友人に片っ端から声をかけ、同じ問いを投げかけても、皆玲と同様に呆れ顔で、「何を言うか」と相手にもされなかった。
別に俺は極度の自己愛など持ってもいないし、出来ることならば、それほど自分に自信が持てる容姿を頂きたいと切に願っている。
という戯言はおいておくとして、結局、俺の悩みに親身になって対応してくれたのは現在の職場で後輩に当たる、蜷川奈々だけだった。
彼女も数年前に、ストーカーで困っていたらしく、それなりに対処の心得があると無い胸を張っていた。
まあ、半信半疑ながらもあれこれ教えて貰ったのだが……。
「なぜ腕を組む」
まさか実践と称して、いつもの帰り道を奈々と歩くことになるとは思いもしなかった。
当の奈々は悪戯っぽくウインクをして言った。
「ストーカーは狙ってる相手に恋人がいるだけでもかなーりショックを受けるものなんですよ!」
ご飯が喉を通らないくらい、と付け加えて、奈々が笑った。
それにしても妙に心地が悪い。いや、ただ奈々が無い胸を押し付けて歩きづらくなっているだけか。
「ところで、先輩はどうして玲先輩と別れたんですか?」
唐突に口を開けば痛い所を突いてくる後輩だ。
「……いや、なんと言うか、価値観の相違みたいなものだな」
曖昧に誤魔化してみたものの奈々は腹を見抜いたように含んだ笑みを浮かべた。
「ははあ、もしかして、束縛に耐え切れなくなったってオチですか?」
「うっ……」
「ご明察ってワケですか。まー、玲先輩ってそんな気してましたし。詳しく聞かせてくださいよ」
「プレイベートな事は遠慮願いたい」
「あーあ、折角先輩のために相談乗ってあげたのになー」
人の足元を見るとはまさにこの事で、愛嬌のある子だなと思っていたのが、急転して、忌々しい人間に変わりつつある。
だが、どうにも憎めない。変に出来すぎた後輩を持つのは辛いもので、匙を投げるほか無く、俺は今までの事を話した。
- 949 :杢が割れる ◆mAQ9eqo/KM:2012/09/29(土) 16:45:31 ID:SFMvRm2U
- 「最初はなんでもなかったんだ。平穏平穏で今思えば一番楽しい時期だったかもしれん。だが……大学を出て同棲を始めるようになってから、デート中に僕以外見るなって言われてな。
妹だろうが俺の視界に入るのも嫌っていたな。一番きつかったのは上司の付き合いで飲み会に行った日。必ず途中で迎えにきたし、家につくと同時に問い質されたよ。
その後はマーキングとか言って、全身を舐め回された。てな訳で、今は強引に別れた事にしている。同棲もやめた。
向こうはよりを戻そうと、悪い所があったら直すと言っているが、どうだかな。以上が全てだ」
「玲先輩って僕っ娘だったんですね」
「こんだけ話させといて感想がそれか。……高校時代からああだがな。」
ちなみに玲と奈々が知り合ったのは昨年奈々が入社してからだ。
呆れ気味に溜息を吐くと、あっけらかんとした口調で奈々が言った。
「大体予想は出来てましたからね。何はともあれ、一応、別れたんでしょう? 良かったじゃないですか!」
なら、何故個人のプライベートな事情を暴露させたのかと腹立たしく思う所だが、得も言われぬ感覚に中和された所為か、黙って歩き続ける。
ん? ふと思ったが、今日はあの視線を感じない。まさか、奈々の言ったとおり何かしらのショックを受けて帰ってしまったのだろうか。ならばもう恋人ごっこの必要は無い。
「なあ、今日はストーカーもいないみたいだし、そろそろ腕を解いても」
俺がそう切り出すと、奈々はさらに腕を抱く力を強めた。
「いいじゃないですか! 家まであと少しですし、本当にあと少しだけですから!」
断る理由がある訳でもないので詮方なしにここは甘んじておくとするが、今日の奈々は普段よりも積極的な気がする。普段は普段でうるさくはあるが、ボディタッチは今までにない。
閑散とした路地から住宅街に入り、俺の家の前で奈々は組んでいた腕を解いた。
それから帰るともなく時折手を握っては開いてを繰り返し、黙って俺を見つめている。
「どうした、帰らないのか?」
俺が訊いても、相変わらずの姿勢。それから数秒ともなく大きく頷いて声を発した。
「先輩! 私と、その……付き合って下さい! あ、いや、付き合って頂けないでしょうか? ってこうでもなくて……えーっとえーと」
頻りに首を傾げる奈々が滑稽に見え、また愛らしくも見える。今までは意識していなかったが、もしや俺は。
何とはなしに夜空を見上げると七夕でもないのに無数の星が川を作っている。
こんな洒落た日に告白とは、こいつもやり手だな。
「付き合ってやるよ」
「え?」
頭を絞っていたせいか良く聞こえなかったらしい。
恥ずかしい思いを隠しながらもう一度。
「……付き合ってやるよ」
俺の言葉に最初は固まっていた奈々も次第に頬を緩め、目には涙を浮かべている。
それを見せまいと奈々は咄嗟に踵を返し、走っていってしまった。去り際に、
「ありがとうございます」と残して。
- 950 :杢が割れる ◆mAQ9eqo/KM:2012/09/29(土) 16:48:13 ID:SFMvRm2U
- 後日、俺は奈々との交際を秘密ながらに続けていこうと思った矢先、休憩時間に奈々本人が公言してしまい、社内はなんとも居たたまれない空気に包まれた。
あまり親しくない同僚の女性社員からも生暖かい目で見られ戸惑っていると、不機嫌そうに玲が俺に封筒を差し出した。
とりあえず、自分の席に向かい封を切って中身をデスクの上にぶちまける。
開いた口が塞がらなかった。
中身は全部写真だった。だがそれだけなら何も驚きはしない。問題は被写体だ。
どの写真を見てもそこには奈々が写っている。ただそれだけでなく目を凝らすと奈々の奥に必ず一人の男が写っている。冴えないシャツと穿き古しのジーパン。
見覚えのある髪型。まぎれもなくそれは大学生時代の俺だった。他にも入社したばかりの俺や、ここ最近の様子まで必ず奈々と写っている。急速に頭の熱が冷めるのが分かった。だって、だってこれは。いつの間にか玲が俺の隣に立って、顔を覗き込んできた。
「わかったかい? 奈々って子は君のストーカーだったんだよ」
それから付け加えるように、
「僕も人のことを言えないけどね」
- 951 :杢が割れる ◆mAQ9eqo/KM:2012/09/29(土) 16:52:17 ID:SFMvRm2U
- 投下終了です。
これからもちょくちょく練習がてら、短編を投下していこうかと思っています。
実力が伴えばいずれ長編も……。
読んでくださった方に多大なる感謝。
- 952 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/29(土) 16:55:31 ID:MWI8HUeY
- GJ!
短編などと言わず、いっそこの話を長編にしたらどうです?
- 953 : ◆mAQ9eqo/KM:2012/09/29(土) 18:05:25 ID:SFMvRm2U
- >>952
書いてみたいとは思うんですが、プロットも立てずに書いたので
ここからの継続は難しいですね。書き溜めも一切ないですし……。
それとどうしても今の自分には長編を完結させる自信がありません。
長編を書いていらっしゃる方もおりますが、完結させているだけで自分は「凄いな」と感じます。
自分が長編をここに載せる時は手元に完結まで書いてからになると思います。
- 954 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/30(日) 11:49:37 ID:kSDJ4BNU
- >>951
乙乙!
- 955 :雌豚のにおい@774人目:2012/09/30(日) 17:09:39 ID:K5M/xcvg
- なんという締め方だよ...続きが気になるううううぅぅぅ
- 956 :避難所の中の人★:2012/10/01(月) 00:56:07 ID:???
- 次スレ
ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part05
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1349020310/
議論スレ>>343のテンプレを採用させていただきました
私事で申し訳ございませんが、最近ちょっと多忙なため対応が遅れることがあります
今のところは何とかなっていますが、管理が大変になってきた場合には削除人の募集も検討したいと思います
- 957 :避難所の中の人★:2012/10/01(月) 01:01:28 ID:???
- あ、あとスレが増えてスレ欄が見づらくなってきたと感じたので1〜3スレ目を過去ログ倉庫送りにしようと思っているのですがどうでしょうか
- 958 :雌豚のにおい@774人目:2012/10/01(月) 01:06:57 ID:1np5uERw
- いいと思いますよ。
- 959 :雌豚のにおい@774人目:2012/10/01(月) 09:38:11 ID:c5PUq.G6
- 別にいいかと
- 960 :避難所の中の人★:2012/10/01(月) 20:50:51 ID:???
- 倉庫送りにしてきましたー
掲示板トップ(http://jbbs.livedoor.jp/internet/12068/)をブラウザで開いて上部の「過去ログ倉庫」のリンクから閲覧できます
- 961 :雌豚のにおい@774人目:2012/10/05(金) 22:35:40 ID:rDF9Be96
- おつおつ
- 962 :埋め:2012/10/18(木) 15:37:27 ID:Q/ZmM3yo
- うーん……最近、面白いヤンデレないかなぁ?
なろうも最近ヤンデレ増えてきたけど、面白いのになると、無いよな
皐月二八とか、さくらぼんとか人気だけど完結は期待できそうにないし……
皆、何読んでる?
なろう作品はお呼びでない?
- 963 :雌豚のにおい@774人目:2012/11/11(日) 18:39:02 ID:nc7oItIc
- 新規開拓してない
保管庫の作品読みなおしてニヤニヤしてる
- 964 :雌豚のにおい@774人目:2012/11/11(日) 19:37:13 ID:BhoaYyA6
- >>962
さくらぼんの理想の彼女読んでるけど
ちょっと厨二すぎないか
- 965 :雌豚のにおい@774人目:2012/11/15(木) 06:15:22 ID:ZSOI/KiQ
- >>962
皐月二八さんの作品は好きだな。
血塗れ帰宅部がお気に入り。
ただ、どうも完結が望めそうにないのが……。
イロイロ書いてくれるのは喜ばしいんだけどね。
- 966 :雌豚のにおい@774人目:2012/11/17(土) 12:30:05 ID:ahDDx8Ac
- >>964
読者の大半が厨坊と工坊のなろうでは厨二はデフォルト
さくらぼんのあの小さい『ッ』がやだ
スコップ折れた
皐月二八はもう、お願いだから何か一つでも完結しろとしか……
全ての作品がエタ前提に見えてしまう……
- 967 :雌豚のにおい@774人目:2012/11/17(土) 14:00:04 ID:LhcLr6o2
- >>966
あーやっぱりなあ
あそこ若年層向けだよね
- 968 : ◆sin1r3oXGY:2012/11/23(金) 08:43:11 ID:f6Z.ygSk
- テスト
- 969 :雌豚のにおい@774人目:2012/12/07(金) 14:33:28 ID:E2ttBjnk
- 埋め
- 970 :雌豚のにおい@774人目:2012/12/27(木) 07:18:59 ID:qGvvKOLA
- テスト埋め
- 971 :雌豚のにおい@774人目:2013/01/01(火) 12:53:18 ID:HDqrJdzY
- 新年埋め
病んだ女の子に頭だけ出されて埋められたい
- 972 :雌豚のにおい@774人目:2013/01/13(日) 16:20:11 ID:Xsp0OifY
- 埋め
- 973 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:19:15 ID:qlyoFKaw
- その日はバレンタインデー、男子なら誰でも意中の相手からチョコが貰えるかとモヤモヤし、夢を叶え、夢散る日である!!
どこにでもある高校のこじんまりした家庭科室に人影が一つ…
僕の名前は幹、調理部のたった一人の男子でたった一人の後輩だ。
僕は人生のなかで今まで一度も恋愛をしたことがない、今まで好きになった人はいないかと言われたらNoと答える。
今まで生きてきてただ一人だけ好きになった人…
その人はそろそろここに来る。
カチ…カチ…クルッポー!クルッポー!
元気よく鳴いた鳩の声と共に扉が開いた。
「おまたせー」
平淡な声と共に一人の女性が入ってくる。
「今日の授業もしっかり同じ時間に終わってくれたから遅れずに来れたよ、待ったりした ?」
この人は遥香先輩、調理部のただ一人の女性でただ一人の先輩、とても綺麗な黒髪に透き通るような瞳、薄い唇も見つめるだけでドキドキしてしまう。
「いえ、そんなことはないですよ、全然、はい、待ってません!」
最後は声が裏返ってしまう。
「どうしたのそんなにドギマギして、今日具合悪いんじゃない?」
先輩が僕に近づいてくる。
「そんなことはないですよ!絶好調!絶好調!!」
「本当〜?」ぴとっ
暖かい先輩の手が僕のおでこに触れる。
「ん〜、幹君大丈夫、かな」
座っている僕の目の前には先輩の顔が、
「先輩!近い!近いです!!」
「幹君耳まで真っ赤〜」
先輩の手がおでこから離れる。
「ふふ、今日はなに作ろっか?」
「な、なににしましょうか、」
僕は先輩の手の上で踊らされっぱなしだ。
調理部は二人、一年の僕と二年の遥香先輩、だけだ。
僕が入った時は調理部の部員はもっといた、調理部というだけあって先輩も同学年の人も女性が多かった。
だが、一人一人とみんなやめていってしまい残ったのは先輩と僕の二人だけなのだ。
最後の先輩も昨日やめていってしまった、理由は学業の不振だそうだ、その先輩が頭が悪いとは聞いたことはなかったが…
その先輩がやめていくと言っていた時先輩は泣いていた。
遥香先輩はそんな優しい先輩なんだ。
僕が部活に入った理由は卑しくもこの遥香先輩と仲良くなるためなのだ、いわゆる一目惚れである、先輩は優しく頭がよく運動もでき料理が美味しい、いつも作った料理を食べるのだが何を作っても美味しい、まさに完璧だった。
僕なんかが先輩と付き合えるわけがない、僕はただ先輩と仲良くなれるだけでも嬉しい…その先なんか僕がいけるわけがないんだ…
「う〜ん…そういや今日はバレンタインデーだね、幹君チョコとか…貰ってないよね?」
「僕なんかが人からチョコなんて貰えるわけないじゃないですか、
そう言う先輩も男子からチョコ貰ってるんじゃないですか?逆チョコってやつですよ」
「一つも貰わないよ、好きな人のチョコ以外いらないよ」
「それじゃあ誰かにあげたりしたんですか?」
「好きな人にチョコ、それは産まれてきてまだないなぁ…
にしてもみんな退部しちゃって二人っきりで恋ばな何て初めてだね
じゃあ質問、幹君は誰かからチョコ欲しいとかはある?」
「ない、わけではないですね…」
ない、と言ったとき先輩はにんまり笑い、わけではないと言ったときには先輩はすごい速さで立ち上がり僕に近づいていた。
「幹君、誰からチョコ貰いたいのかな?」
「秘密、です…」
まさか目の前の先輩です!とは言えない。
「誰?誰?ねぇ?」
先輩の声は今までになく高揚しきっている。
「誰かな?誰が幹君をタブらかしたのかな?教えて?あいつらと同じようにして幹君を守ってあげる。」
「先輩?」
明らかに先輩の様子がおかしい。
「ねぇ、幹君誰だか教えてくれないかな?たった一人の先輩のお願い事だと思ってさ、教えてくれたら幹君の望むことなんでもしてあげる。なんでもだよ。ほら、早く教えてよ。教えて!」
「僕、は…」
腹をくくるのが男なのだろう。
「……」
先輩も黙り出すと、家庭科室はしんとなった。
僕が先輩を思う気持ちは本物だ、例え叶わなくっても…
「…僕は先輩のことが好きです!!」
世界が止まった
- 974 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:20:10 ID:qlyoFKaw
- 胸の鼓動が聞こえてしまうのではないかと思うくらいドキドキする。
先輩が先に口をひらいた
「もう一度言って」
「え?」
「もう一度、誰先輩が好きなの?」
「遥香先輩…」
「…私?」
「はい、遥香先輩が好きです。」
先輩の口角はにっと上がった。
「そう、ふふ、嬉しいわ、ふふふ!ふふふふ!!あっはっはっはっは!!!」
「先輩?」
「幹君私嬉しいわ…今人生で一番幸せ…何てったって好きで好きでしょうがない初恋の後輩に告白されたんだもの!!」
「こ、ここ告白!?」
「当然じゃない、好きなんでしょ、私のこと。お互いを思いあって男女はどちらかが告白して思いを伝えあって恋人にならないと」
そう言うと先輩はより一層僕に近づく
「幹君、実を言うと私幹君が後輩になって仲良くなれるだけでもいいと思ってたの、幹君が入学当初はね。でも本当に幹君が調理部の後輩になっちゃうとすっごく欲しくなっちゃって…私ずっと前から幹君のこと好きだよ。」
「先輩…」
「幹君、言って」
先輩が今欲しい言葉はきっと…
「僕と付き合ってください、先輩」
「私からもよろしくお願いします」
お互い真っ正面からの告白…
先輩は何故か満足感に満ちた顔で帰り支度を始める。
「せ、先輩部活は?」
「決めた、幹君今日は私の家でチョコを作らない?」
「へ、何でですか?」
「今日はお互いの始まりの記念日だから!そしてバレンタインデー、幹君にチョコ作んないとね!本当はここで作ろうと思ったけど、邪魔が入ったら嫌でしょ、学校だし。」
「でも…先輩の家に迷惑かけませんか?」
「大丈夫よ、私マンションに一人で住んでるから。それに二人だからいつも見たく寂しくならないからむしろ感謝!」
「じゃあお言葉に甘えましょうか。」
先輩の家は学校からとても近い高級そうなマンションだった。
「すごいカードキーがないとマンションに入れない…」
「今はどこだってこんなもんよ、」
マンションの中に入ってエレベーターに乗り二階、
105号室先輩の部屋である
「さ、入ってはいって」
「お邪魔します」
ドンガチャガチャカシャン
先輩は僕が入るとすぐにドアの鍵を閉めチェーンをかけた。
「幹君いらっしゃい私のお家に、」
「先輩、何でかぎ、ムッ」
僕が言葉を放った瞬間僕の唇は先輩の唇と重なっていた。
頭を横に振ろうとしても手でガッチリ押さえられ、体を離そうとしても壁際に押し付けられて逃げることが出来ない。
先輩はどんどん僕の中に舌を体液を入れてくる。
ぴちゃぴちゃと音を立てキスをする。
家に入ってから1分間もしないうちに僕はファーストキスを先輩にとられていた。
「あっは、幹君美味しい!胸がドキドキして壊れちゃいそう!」
三分間のキスのあと先輩は恍惚とした笑みでそう言った。
「幹君恋人なんだから先輩、じゃなくて遥香、だよね?幹君はなんて呼んで欲しい、今まで通り幹君?それとも幹?」
「先輩…キス…」
「キス?キス…ファーストキス幹君にあげちゃったね!そして幹君のファーストキス貰っちゃった!恋人なんだから当然だよ、幹君のセカンドキスもサードキスも、これからのキスは全部私のもの!」
「恋人ってこれが当然なんですか?」
「当然だよ、初恋の人と結ばれたらずっと一緒にいないとダメなんだよ。」
「でも、もし先輩に他に好きな人が…」
ん〜ちゅっぱ
「遥香、でしょ!それに幹君以外に未来永劫好きな人はできません!幹君は私のです、離しません」
「僕もせ、遥香…のことが大好きで、先輩に好かれるのも嬉しいです、でも、」
「でももなにもないよ、まったく・・・じゃあまず部屋に入って一緒にチョコ作ろうか」
- 975 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:22:05 ID:qlyoFKaw
- そこは台所
私流愛する人への調理教室!
チョコいっぱい溶かして…ハートの型にいっぱい詰めて…私の愛の数だけ詰めて…詰めきれなくてちゅーで補充して…出来上がり!!
後は冷やすだけだね!!
「幹君も手伝ってくれたからすぐに出来たよ!」
「美味しくできてるといいですね!」
「だね幹君好みの味になってるといいな…」
先輩はおもむろに残った溶けてるチョコを見ると、
「あ、幹君好みの味にしてあげる」
先輩はそう言うと指にすくい僕の口元に近づけた。
「幹君、いっぱい舐めてて私の味感じてね」
一瞬戸惑うが大好きな先輩の綺麗な指…
「いただきます」
「み、幹君舐めるのうまいね…」
先輩の人差し指は甘い、味覚だけにくる甘味ではない、頭までびりびりしてしびれてしまう。
「幹君の口の中暖かい、もっといっぱい舐めて…」
- 976 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:22:52 ID:qlyoFKaw
- 指を口から離すと先輩は名残惜しそうに口に舐めさせていた人差し指をいれた
「やっぱりチョコより幹君の涎のほうが美味しい…美味しい…!いいこと考えた」
舌に指でチョコを付け、先輩は舌を出してちゅーをせがむ、話せないが気持ちはわかる。
きっと、早く舌の上のチョコを幹君の舌で舐めて!、といったところか。
「いひひゅん…」
台所で先輩に押し倒され僕は先輩の舌を舐めるというより舐めさせられているというようだった。
さっきよりもずっと頭がびりびりするどうにかなってしまいそうだ。
「幹君…幹君の舌すごい美味しいよ…でも幹君のこのガッチガチのおちんちんもすごそう…」
先輩のにおい、大きな胸、綺麗な顔、淫靡なキス、僕の愚息は耐えられなくなっていた。
「私、幹君が欲しい…全部全部」
「遥香…僕も遥香の全部が欲しい」
「幹君」「遥香」
お互いを求めてうねりあう舌、キスはチョコで甘いのか先輩の涎が甘いのかわからない。
でも先輩が欲しい、気が付くと先輩はきつくきつく僕を両腕で抱き締めていたそれに答えるように僕も先輩を抱き締めていたる。
足も先輩がガッチリ足でホールドしている。
「幹君床じゃ痛いでしょ、ベッド行こ?」
先輩に手を引かれ向かったベッドの上は先輩のにおいがすごくして最高の場所だった。
スルスル
先輩はベッドに上がった僕のズボンを素早く脱がせる
「先輩…!」
「……遥香でしょ、ばつだから。」
先輩はパンツも脱がし僕の愚息をいただいていた。
ペロペログッポグッポ
「ふぃふぃふんふぃもふぃふぃぃ?」幹君気持ちいい?
先輩の舌は僕の愚息に快感を、新世界を見せていた、口のなかはまるで異次元であった。
「ぷはっ、幹君ばっかりずるいよ、私のもなめって気持ちよく欲しいな」
白いお尻が僕の目の前にくる。
ビデオなどでみた知識から先輩のエッチな所を広げてみる。
「恥ずかしいね…なんか…んっ!」
少しなめっただけで先輩は声を出していた。
「幹君、クリだめ…」
先輩はびくびくしながら頑張って気持ちよくさせようと僕の愚息を口に含み頭を動かす。
「遥香のここ…びっしょびしょだね」
「そういうこと言わないで、初恋でずっと好きな人とこんなこと出来るんだから嬉しくて…気持ちよくて…んんっ!」
先輩のクリはコリコリになって、穴からはすっぱい汁が溢れていた。
「ねえ幹君…いれて…私の初めてとって…」
「でも避妊とか…」
「いいのそんなの!!」
先輩は僕に覆い被さり耳元で言った。
「私のなんだから」
「遥香そんなに僕のこと・・・」
「びっくりした?私幹君が思ってる以上に幹君のこと大好きなんだよ、だから幹君一つになろ、」
先輩は馬乗りになり僕の腰にそそり立つ愚息をゆっくりと自分の中にいれてゆく。
先輩は痛そうだったがとても喜ばしそうだった
「ん、いっ・・・はいった・・・」
「遥香、血が、」
「だい、じょうぶ、だよ、幹君気持ちいい?」
「はい、先輩の中すごくいいです」
「よかったぁ・・・じゃあ幹君動いて、そうすれば幹君もっと気持ちよくなるでしょ」
「でも遥香痛かったりとかしないの?」
「だいぶ慣れてきたから、幹君が動かないなら私が動くよ」
先輩はゆっくりと上下に動き始めた、先輩の中はすごくぬるぬるしてあったかくてすごく気持ちがいい、僕は今にでも射精してしまいそうだった
「ふっ、ふっ、幹君のが、奥に当たってるのをすごい感じるよ、幹君幹君」
僕は先輩に覆いかぶさられ顔全体を嘗め回される。
でもやられてばっかりもいやだと僕は先輩を見下げるように体位を正常位に変える
「遥香、遥香の中気持ちいいよ、」
「幹君、いっぱいいっぱい遥香に腰振って、いっぱい幹君の赤ちゃんのもと頂戴!」
二人溶け合うかと思うほどの時間を過ごす、
- 977 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:23:11 ID:qlyoFKaw
- 「お腹の中、幹君でいっぱい、幹君愛してるよ幹君」
「遥香、僕も愛してるよ」
お互い熱いキスを交わすと台所に向かった
「チョコしっかり冷えてくれたね」
「それじゃあ幹君、ハッピーバレンタイン」
先輩の手に握られた大きなハートのチョコの真ん中にはI LOVE MIKI と書いてある
「遥香いつのまに・・・」
「えへへ、驚いてもらおうと思って、幹君食べて」
「うん」
先輩のチョコはすごく甘かった、砂糖だけではなく先輩の愛もしっかり入っているのであろう
「まだまだいっぱいおかわりあるからいっぱい食べてね」
「バレンタインってそういうのだっけ?」
まぁ、いいのだ今までずっと大好きだった先輩と恋人なのだ、幸せだ僕は。
「・・・幹君、今日から一緒にここで暮らさない?」
「え、いや、学校とか家族にも心配かけますし・・・」
「いやなの?ふーん、でも幹君は私のこと好きだよね、なら、」
先輩は目にも留まらぬ速さで僕の足首に手錠をしベッドの柱と鎖でつなぐ。
「これでここから抜け出せないね、幹君これからもあの調理部の女たちみたいなのから幹君を守るね、大丈夫ご飯もお風呂も全部私がお世話してあげるから、当然幹君と営みもいっぱいするよ」
「僕は・・・」
「愛してるよ、幹君」
12月24日某病院にて
「元気な女の子ですよ」
「大変長い出産でしたね」
「お父さん、お子さんですよ、お若いお父さんですね」
「私の大事な大事な夫なんです、その次に大事なのはこの子。
幹君、クリスマスプレゼントありがと
愛してるよ」
ハッピーエンド
- 978 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:23:40 ID:qlyoFKaw
- つまらなくてすみません
これで終わりです
- 979 :ユルリ・ラド:2013/02/14(木) 23:28:26 ID:qlyoFKaw
- 胸の鼓動が聞こえてしまうのではないかと思うくらいドキドキする。
先輩が先に口をひらいた
「もう一度言って」
「え?」
「もう一度、誰先輩が好きなの?」
「遥香先輩…」
「…私?」
「はい、遥香先輩が好きです。」
先輩の口角はにっと上がった。
「そう、ふふ、嬉しいわ、ふふふ!ふふふふ!!あっはっはっはっは!!!」
「先輩?」
「幹君私嬉しいわ…今人生で一番幸せ…何てったって好きで好きでしょうがない初恋の後輩に告白されたんだもの!!」
「こ、ここ告白!?」
「当然じゃない、好きなんでしょ、私のこと。お互いを思いあって男女はどちらかが告白して思いを伝えあって恋人にならないと」
そう言うと先輩はより一層僕に近づく
「幹君、実を言うと私幹君が後輩になって仲良くなれるだけでもいいと思ってたの、幹君が入学当初はね。でも本当に幹君が調理部の後輩になっちゃうとすっごく欲しくなっちゃって…私ずっと前から幹君のこと好きだよ。」
「先輩…」
「幹君、言って」
先輩が今欲しい言葉はきっと…
「僕と付き合ってください、先輩」
「私からもよろしくお願いします」
お互い真っ正面からの告白…
先輩は何故か満足感に満ちた顔で帰り支度を始める。
「せ、先輩部活は?」
「決めた、幹君今日は私の家でチョコを作らない?」
「へ、何でですか?」
「今日はお互いの始まりの記念日だから!そしてバレンタインデー、幹君にチョコ作んないとね!本当はここで作ろうと思ったけど、邪魔が入ったら嫌でしょ、学校だし。」
「でも…先輩の家に迷惑かけませんか?」
「大丈夫よ、私マンションに一人で住んでるから。それに二人だからいつも見たく寂しくならないからむしろ感謝!」
「じゃあお言葉に甘えましょうか。」
先輩の家は学校からとても近い高級そうなマンションだった。
「すごいカードキーがないとマンションに入れない…」
「今はどこだってこんなもんよ、」
マンションの中に入ってエレベーターに乗り二階、
105号室先輩の部屋である
「さ、入ってはいって」
「お邪魔します」
ドンガチャガチャカシャン
先輩は僕が入るとすぐにドアの鍵を閉めチェーンをかけた。
「幹君いらっしゃい私のお家に、」
「先輩、何でかぎ、ムッ」
僕が言葉を放った瞬間僕の唇は先輩の唇と重なっていた。
頭を横に振ろうとしても手でガッチリ押さえられ、体を離そうとしても壁際に押し付けられて逃げることが出来ない。
先輩はどんどん僕の中に舌を体液を入れてくる。
ぴちゃぴちゃと音を立てキスをする。
家に入ってから1分間もしないうちに僕はファーストキスを先輩にとられていた。
「あっは、幹君美味しい!胸がドキドキして壊れちゃいそう!」
三分間のキスのあと先輩は恍惚とした笑みでそう言った。
「幹君恋人なんだから先輩、じゃなくて遥香、だよね?幹君はなんて呼んで欲しい、今まで通り幹君?それとも幹?」
「先輩…キス…」
「キス?キス…ファーストキス幹君にあげちゃったね!そして幹君のファーストキス貰っちゃった!恋人なんだから当然だよ、幹君のセカンドキスもサードキスも、これからのキスは全部私のもの!」
「恋人ってこれが当然なんですか?」
「当然だよ、初恋の人と結ばれたらずっと一緒にいないとダメなんだよ。」
「でも、もし先輩に他に好きな人が…」
ん〜ちゅっぱ
「遥香、でしょ!それに幹君以外に未来永劫好きな人はできません!幹君は私のです、離しません」
「僕もせ、遥香…のことが大好きで、先輩に好かれるのも嬉しいです、でも、」
「でももなにもないよ、まったく・・・じゃあまず部屋に入って一緒にチョコ作ろうか」
- 980 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/15(月) 07:36:55 ID:gNBZWeCE
- こっちはいつになったら埋まるのだろうな
- 981 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/16(火) 21:32:30 ID:dZS5TOu6
- じゃあ埋めよう。
- 982 :盗賊さん:2013/04/16(火) 21:33:32 ID:dZS5TOu6
- ただの小鳥ですら、不気味に感じる薄暗い森の中、
僕こと、アシルは全力で森を疾走していた。
「ぜえ…ぜえ……」
口から漏れる呼吸も鉄の味にかわり、足は地面を踏みしめるたびに激痛を伴う。
それでも僕は足を止められなかった。
「ま…まだ…ハァ…追っかけてきてるのかな…フゥ…?」
僕は走りながら後ろを見ようとし、木が倒れる轟音を聞いてやめた。
間違いなく追いかけられているからだ。グレートエイプに。
「と……げふっ…盗賊さんっ!……盗賊さん……ハァ…どこぉおっ!」
涙目になりながら、僕の唯一のPTメンバーである盗賊さんを、かすれた声で叫ぶ。
そもそもこの事態になったのは、唯一のPTメンバーのせいなのだが、
この事態を解決できるのも唯一のPTメンバーだけなのだ。
「盗賊さっ…へぶっ!」
ちょっと出っ張っていた木の根に、僕は間抜けにも足を引っ掛けてしまった。
そのまま地面にうつ伏せに倒れてしまった僕は、起き上がろうとして振り向き、硬直した。
……グレートエイプさんがばっちり待機していたのだ。
「GUAAAAAAAAAAAA!!!」
「ひっ…うひっ……!」
グレートエイプの雄叫びを間近で聞き、僕は情けない呻き声を上げる。
後ずさろうにも体が言うことを聞かず、そもそもグレートエイプの腕が既に僕に迫っていた。
僕の顔と同じくらいある拳が近づいていくのを見て、僕は思わず走馬灯を走らせた。
――神様仏様!僕の人生は7割増しで英雄として語り継いでください……っ!
大したことのない人生を思い出し、僕が最期に思う言葉も情けないものである。
僕は目をつぶり、人生最期の衝撃に備えた。
「GYAU!」
……何時まで経っても来ない衝撃の代わりに、僕が聞いたのはグレートエイプの短い叫びだった。
恐る恐る目を開くと、そこに居たのは恐ろしいグレートエイプではなく、
爆発痕と、何本かのナイフが刺さった腕を掴んでうずくまっているグレートエイプだった。
「弱虫、晩御飯の獲物はそれかな?」
凛と響く声のほうを向くと、血のように赤黒い髪をバンダナで纏めた少女が立っていた。
目は薄暗い森の中でも輝く金色で、不敵な笑みを浮かべている。
「と…盗賊さん……」
目から涙が溢れる。盗賊さんが神々しい。
- 983 :盗賊さん:2013/04/16(火) 21:34:12 ID:dZS5TOu6
- 「GYYYYYYAAAAAAAAA!」
グレートエイプが雄叫びを上げて盗賊さんに突っ込む。
だが盗賊さんは不敵な笑みを崩さず、まるで流れるように敵の攻撃を回避した。
グレートエイプはそれを見て、まるで暴風のように腕を振り回す。
しかし盗賊さんにはやはり当たらず、風を切る音だけが周りに響いた。
「……そろそろかな?」
盗賊さんが攻撃を回避しながらそう独りごちると、大きく後ろにバックステップをした。
無論グレートエイプも一気に間合いを詰めて、その可愛らしい顔にストレートを叩きこもうとする。
「盗賊さんっ!あぶなっ……!」
僕も思わず叫んでかけ出したが、間に合わない!
今にもグレートエイプは溜めた右腕を盗賊さんに向けて……!
「……へ?」
……打ち込まなかった。
右腕を振りかざしたまま、盗賊さんの横を転がった。
何が起きたか、僕には一瞬わからなかった。
グレートエイプも硬直したまま、目に困惑の色を浮かべている。
「……弱虫?アンタまさか、毒塗ったの分からなかったの?」
盗賊さんは呆れた表情を見せる。
…ああ、そうですか毒ですか。
「さて悪いが、これも運命ってやつだよ。じゃあね」
そう行って、盗賊さんはあっさりとグレートエイプの首を刎ねた。
首を刎ねられた体はピクリともせず、切られた断面から血を勢い良く吹き出しただけだった。
ヘナヘナと僕は体を崩す。戦いは終わったのだ。
「……ところで弱虫くん、アタシはウサギが食べたいって言ってたよね?」
――僕の戦いはこれからだ!ラスボスが居たよ!
「い…いやあ……ウサギがね……その………」
強張った顔で僕は弁解をしようとするが、盗賊さんはニヤニヤしながらこう言った。
「じっくり……話し合おっか?」
――僕への精神的、肉体的嫌がらせは訓練という名で、食事ができるまで続いた。
- 984 :盗賊さん:2013/04/16(火) 21:35:21 ID:dZS5TOu6
- 「―いやあ、エイプの肉もなかなかのモンだねぇ!」
盗賊さんは満足気な顔で食器と足を投げ出した。
僕より一回り小さい体は、三回りも大きいグレートエイプの肉を6割収めることに成功した。
結局、この日の晩御飯は先程仕留めたグレートエイプになったのだ。
しかしこのグレートエイプ、筋っぽいし肉が臭かった。
盗賊さんが満足するような肉にするのに、僕は色々な香辛料やら調味料やらを用いた。
知らないのは盗賊さんだけだ。盗賊さんもたまには調理すべきだと思う。
「はは、満足してもらえて嬉しいですよ。」
口ではこういうものの、使ってしまった香辛料が山を抜けるまで持つか心配である。
「しっかし、アンタも一緒に旅をして一年立つんだから、いい加減あんなザコくらい倒しなよ。」
盗賊さんは呆れたように言う。
しかし、グレートエイプはザコではない。
あいつを倒すために討伐隊が組まれ、少なからず死傷者を出すほどのものだ。
あんな化け物を倒せるのはベテラン以上の冒険者くらいである。
そう、つまり僕は今、ベテラン以上の腕を持つ盗賊と旅をしているのだ。
「は…はは…肝に銘じておきます。」
またも愛想笑いである。
そもそもこういう戦いをそれなりに経験しているのに、僕は未だに成長してないのだ。
僕の能力を示す冒険者のカードも、全く上昇していない。
筋が悪いのか、既に限界値まで成長してるのかわからないが泣きそうである。
思わず胸に下げたカードを握る。
――僕だって、成長すればどんなにか………
少しの間、沈黙が流れる。
盗賊さんは、ハッとした顔をして、そのあとすぐに狼狽えるような表情を浮かべた。
どうやら僕の地雷を踏んだことを察したようだ。
「ま、まあアンタは出来てるほうよ!料理はうまいし!雑用もこなすし!」
またも盗賊さんは僕の地雷を、狙いすましたかのように踏み抜いた。
僕の職業は一応剣士です。
調理師とか、執事とかマネージャーとかそういうのじゃないんですよ。
「そのうち剣の腕も上がるさ!なんてったってアタシの相棒だからねっ!」
盗賊さんは、そう明るく笑って言った。
逆に返すようだが、僕はそのベテランの冒険者と1年一緒にいるのだ。
それでも僕の腕は上がらない。
カードは「Lv2」を指し示したまま、張り付いたように動かない。
ギガンテスのいる塔を登っても、
ゾンビ溢れる墓地を探っても、
ドラゴンのいる洞窟へ財宝を見つけに向かっても、
僕の、僕の冒険者のカードはピクリとも動かないのだ。
盗賊さんは悪くない。
でも、いつまでも埋まらない力の差が僕を卑小にするのだ。
「そうですね、いつか僕も盗賊さんのようなベテランの冒険者になりたいです。」
笑顔の仮面をつけ、盗賊さんを心配させないように明るく振る舞う。
――家事や雑用以外に、僕は演技能力も上がっているのかもしれない。転職したら次は役者にでもなるか…
しかし、そんな自惚れはすぐに消えた。
盗賊さんが、僕の襟首を掴んだのだ。
「……は、はい?」
震えて上ずった声を絞るように出す。
冷や汗が流れる。僕の心の声でも聞こえたのだろうか?
「ねえ弱虫、アタシは、名前で呼べって言ったよね?」
…違ったようだ。
だが、このやり取りも僕はあまりやりたくない。
「…カティさん」
つぶやくように、盗賊さんの名前を言う。
だが、盗賊さんは弾けるような笑顔を見せた。
「そう、それでいい。アタシをちゃんと名前で呼べるじゃない。」
盗賊さんは上機嫌である。
それでも、それでも僕は、盗賊さんを『盗賊さん』と呼ぶのを、譲れない。
「…カティさん、僕は盗賊さん……と貴方を呼びたいんです。」
盗賊さんがムっとした顔になる。
それでも僕は言葉を続ける。
「カティさん、僕は『盗賊さん』という呼び方に敬意を込めてます。
…ですからお願いです。『盗賊さん』と呼ばせてください。」
- 985 :盗賊さん:2013/04/16(火) 21:35:59 ID:dZS5TOu6
- ――僕はこの人と旅をするにあたって、途中から決めたことがある。
それは、一定の距離をとることだ。
僕と盗賊さんの力の差は歴然。
いつ見捨てられてもおかしくないのだ。
つまり、僕が捨てられた時に心を砕かれないようにしなければならない。
それがダンジョン攻略中なら、尚更である。
例え1人では生きて買えるのが難しい場所でも、心が平常通りなら何かしら対策を打てる。
そう、これは僕が生きていくために必要なことなのだ。
その為にも、僕は盗賊さんに心まで依存してはいけない。
「……ならまだ暫くはその呼び名で許してあげるよ。」
盗賊さんは不満そうに納得してくれた。
……いつか、僕はこの人と対等になることができるのだろうか?
料理の後片付けも終え、焚き火の周りでキャンプを張っていると、
盗賊さんが語りかけてきた。
「ねぇ、今日もアレ、飲む?」
盗賊さんが火を見ながら、ポツリと行ってくる。
アレとは、盗賊さんが自分に淹れてくれる栄養ドリンクのようなものだ。
アレを飲むと、心地よく眠ることができる。
「あ、ああそうだね。盗賊さんお願いできるかな?」
「よし!今日も上等なヤツを作ってあげるよ!」
僕が了承の返事を返すと、盗賊さんは嬉々として自分の鞄をあさり、
コップに様々な粉末をいれていく。
前に材料は何なのか聞いてみたが、はぐらかされてしまった。
きっと、聞いたら吐くような粉末なんだろうな………
「…できた。お湯で溶かしてあるから火傷に気をつけてよ?」
盗賊さんから、黒土色の飲み物が渡される。
いつ見ても体に悪そうだが、これも修行の内なんだろうな。
「頂きます……まずい………」
素直な感想が口から出る。
この不味さは絶対に体に悪い。
「ふふっ……アンタの体の為よ。ちゃんと飲むの。」
盗賊さんは僕の苦々しい顔を見て、微笑んでいる。
PTメンバーとの仲が良くなるのはいいが、正直なんとかならないのだろうか。
とっても不味い飲み物も半分が胃の中に収まった頃、
僕は盗賊さんに今回のルートについて尋ねた。
「盗賊さん、どうして危険なルートを選んだんですか?
今なら、街道を進んだほうが安全で早いはずなのに………」
盗賊さんは背中をビクっと震わせた後、さもどうでもいいかのように答えた。
「決まってんじゃん。アンタの為よ、アンタの為。」
僕が口を挟もうとすると、さらに遮るように盗賊さんは続ける。
「アンタが強くなるためには、こういう危険なルートを通ることこそ大事なの。
分かるアシル?アンタは今は弱いけど、いつか強くなる。
その覚醒を早めるためにも、危険なルートを通ることがアンタのためになるの。」
ぐうの音も出ない。
だが、今回はそんなことをしてる場合じゃないのだ。
「盗賊さん、僕らは次の街で開かれる討伐隊に参加するために向かっているはずですよ。
ここで時間を取られてしまうのは本末転倒です。
今からでも遅くない……街道に出て、まっすぐに次の街へいきま」
「うるさいっ!!!!」
盗賊さんの怒鳴り声で、今度は僕がビクっとなった。
盗賊さんはそんな僕を見て、目が若干泳いでいる。
「あ、ああゴメンね。怒鳴るつもりは無かったんだけど…
ただ、次の討伐隊に間に合うように向かっているから安心して。
アシル、アタシを信じて。
アタシはいつも、アンタの味方だから…ね?」
これだ、これがあるから僕は盗賊さんから距離をとらなければならない。
まるで呪文を唱えるように、早口で僕を諭す。
いつからだろう、盗賊さんが僕にこうやって話すのは。
なぜか盗賊さんは、僕に怒ったり、傷つけたりするような言葉を言うと、
まるで弁解するように諭す。
僕はめったに怒らないが、怒れば土下座する勢いで謝り出す。
そのせいで、僕は怒るに怒れないし、盗賊さんの変遷もわからない。
どうして盗賊さんの態度が変わってしまったんだろうか。
何を考えてるのか……全くわからない。
……僕は盗賊さんを信じてもいいのだろうか。
考えても、どうしようもない。もう……寝るか。
「いえ、盗賊さんを信じます。今日は先に火の番をおねがいしますね。」
グっと飲み物の残りを飲み、寝袋にくるまる。
途端に眠気が襲ってくる。
ほんとに……これは眠く………なるな………
- 986 :盗賊さん:2013/04/16(火) 21:36:52 ID:dZS5TOu6
- パチパチと、焚き火が音を立てている。
アタシの愛しい人は、あの飲み物を飲んでぐっすりと寝ている。
恐らく深夜に起きて、火の番を交代するつもりだろうが、それは恐らくできない。
明日の朝になるまでアイツは昏睡状態のままだろう。
アタシがそう調合したのだから、間違いはない。
コイツと旅をして1年…アタシは変わった。
前のアタシはとあるPTのシーカーとして、色々なダンジョンを巡っていた。
充実していたと思う。今となってはどうでもいいことになったが。
だがそんなどうでもいいことでも、悪い記憶はこびりつく。
――捨てられたのだ。そのPTに。
それも、ダンジョンの中でだ。
原因は、アタシがミスって石化トラップを発動させてしまったからだ。
その石化トラップはアタシと、隣の……忍者だっただろうか……を襲った。
忍者は完全に石化し、ダンジョンのオブジェと化した。
アタシは避けたが、右上半身が石化してしまった。
そんなアタシを救えるのは、もはや残り少ないMPを持つプリーストのみ。
戻るにはシーカーのアタシが邪魔。
治すにはリスクが大きすぎる。
………ならば、そのPTが選ぶ選択肢はひとつしかない。
アタシは眠らされ、その場に放置された。
起きた時には誰もいない。
オブジェとなった元メンバーの、悲痛な顔が近くにあるだけ。
絶望した。わかっていたのに、絶望を止められなかった。
それでも生きたかった。泥をすすってでも、まだ生きていたかった。
アタシは気配を消し、必死に逃げ、近くの街の教会に駆け込んだ。
数カ月後、アタシの石化は治った。
その代わり、アタシは信じる心を失った。
―火が、小さくなっていた。
アタシは薪を投げ込む。すると火はまた大きくなり、アタシの愛しい人を映す。
少し、幸せそうな顔で寝ている。
その顔を見る度にアタシまで幸せな気持ちになる。
「幸せそうにして……なんの夢見てんのよ。」
ふと独り言を漏らす。
あの時から、コイツの顔は変わってない。
多少は精悍になったかな?という程度だ。
そう、あの時…
アタシがPTを信じられなくなり、酒場で飲んだくれていた時、
アイツはアタシに話しかけてきた。
アタシは凄んで、アイツを遠ざけようとしてたのに…だ。
今でも覚えている。
アイツの言葉を。
「―どうしてもアナタが必要なんです!なんでも聞きます!雑用だってなんだってしますっ!!
…だから!僕の初めてのメンバーになってもらえませんかっ!?」
――あんなに、必死に口説かれたのは初めてで、あんなに心に刺さったのも初めてだった。
だからアタシはアイツと旅をすることにした。
そして旅をするごとに、アタシはアイツに惹かれて行った。
アタシがワガママを言っても、アイツは許してくれた。
アタシが無茶なことしても、アイツは心配してくれた。
アタシが苦しい時、アイツは側にいてくれた。
アタシが、アタシがどんなときも、アイツは裏切らなかった。
……体が火照る。あのモンスターを倒した高揚感がまだあるみたいだ。
アタシの女の部分はすでに濡れていた。
アイツを寝かせたのも、このせいである。
アイツをアタシで一杯にしないと、アタシをアイツで一杯にしないと収まらない。
アタシは、知らず知らずのうちにアイツを見て、息を荒くしていた。
―夜はこれから……まだ、朝は来ない。
火が煌々と輝いている。
アタシは薪をさらに投げ入れると、ゆっくりとアイツの元へ近づいていった。
―――
――
―
- 987 :盗賊さん:2013/04/16(火) 21:37:23 ID:dZS5TOu6
- アタシの一方的な交尾が終わり、アイツから交尾の後を消した後、
明るくなってきた空の下でくすぶっている焚き火を見ていた。
アイツをアタシで埋め尽くした。
アタシをアイツが埋め尽くした。
それでも足りない。
何かが足りない。
理由は、わかっている。
――アイツは、まだ故郷の女を忘れていない。
アタシを頑なに名前で呼ばないのは、そういうことだ。
アイツは言っていた。故郷に「カティ」という幼馴染がいるということを。
名が知られる冒険家になった暁には、故郷に帰りたいということを。
故郷に帰ったら……幼馴染と結婚したいということを。
馬鹿らしい。
非常に馬鹿らしい。
何も無い故郷に帰るなんて、アイツに相応しくない。
アイツはずっと、アタシと世界を回るべきなんだ。
それにアイツは………実は剣士としての才能があふれている。
恐らく、まともな方法で鍛えれば直ぐにでも、名のある剣士の1人として数えられるだろう。
だがそんなことはさせない。
アイツが故郷に帰る気がなくなるまで、アタシは絶対に何もさせる気はない。
もちろん討伐隊に参加させないつもりだし、
参加できてしまったとして、アイツには何も活躍なんてさせない。
アイツが、アイツが諦めるまで……アタシしか見なくなるまでは。
アシルはアタシのモノだ。
アタシがアシルのモノであるように。
アシルが、愛しいアシルがアタシだけを見てくれるなら、アタシはなんだってするだろう。
デーモンを殺せといえば殺しに行くだろう。
金を稼げと言われれば、悪行にだって身を染める。体も売ってしまって構わない。
死ねと言われれば死ぬし、人殺しをしろと言われれば村ごと焼き払ってしまうかもしれない。
だから、
だから、
だから……
―アタシの元へ……愛してるって……言ってほしい……
――ガサガサと、アイツの体が動き出す。
そろそろアイツは目覚めるだろう。
「ゴメン、火の番をするつもりがこんなに寝てしまって……」などと言いながら。
アタシはまた、皮肉を返すのだろう。
アイツの、唯一のPTメンバーとして。
―アイツはまだ、アタシをPTメンバーとしてしか欲していない。
ならば、アタシはアイツの為にPTメンバーとして傍らにいよう。
それが今のアタシの、精一杯の愛情表現になるのだから。
だから今だけ、今だけは………
愛情の込めた微笑みで
愛しい貴方を見つめていたい――
- 988 : ◆h6JXWPxL.I:2013/04/16(火) 21:38:54 ID:dZS5TOu6
- てすてす
トリップ大丈夫かな?
- 989 : ◆HCR/AskXjI:2013/04/16(火) 21:40:21 ID:dZS5TOu6
- あれ、違う…
これだろうか
- 990 : ◆DqYf8kaPjY:2013/04/16(火) 21:41:04 ID:dZS5TOu6
- ひえええ、間違えまくりだ
- 991 : ◆STwbwk2UaU:2013/04/16(火) 21:45:04 ID:dZS5TOu6
- うう・・・こっちだっけ・・・
埋めてるけど埋め方がダサい
- 992 : ◆STwbwk2UaU:2013/04/16(火) 21:46:19 ID:dZS5TOu6
- お、出た出た。
というわけで投下終わり。
本スレも避難所も落ち着いてていいねー
とってもgoodだよー
- 993 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/17(水) 00:46:18 ID:hpqVMGt.
- まさかこんなに面白いもので埋めてくれるとはありがとう!
まだまだこの世は捨てたもんじゃないな!
盗賊さんに幸あれ!
- 994 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/17(水) 14:34:01 ID:1cAU9o3Q
- >>992
おお、久しぶりー
そして盗賊さんかわいいよ盗賊さん
- 995 :幼なじみの早見さん:2013/04/28(日) 09:15:32 ID:arZbYdec
- 投稿します
- 996 :幼なじみの早見さん:2013/04/28(日) 09:24:54 ID:arZbYdec
- 男女で幼なじみなど実際に存在するものだろうか? 僕はそんなの空想上の設定にしかないと考えている。しかし、僕のクラスメートの早見さんは、僕と早見さんの関係のことだと言い張る。僕自身はただ早見さんが過保護にかまってきてるだけだと思う。例えば、僕が利き手を骨折したりしたらどうだろう。
病院でギブスをつけられた僕は深く溜め息をつく。この状況が妄想ならどれほど良かったか。
翌日の早見さんは家まで迎えに来た。おかげで一緒に登校することなった。全く嬉しくない。
「貴方って本当に馬鹿なのね」
「利き手の骨折だけで何度目だと思っているの?」
「でも、まぁ複雑骨折ではなくて安心したわ」
「流石に少し焦ったわ」
同じペースで歩く早見さんが色々と話しかけているが無視する。あんまりに黙ってるものだから、流石に気に障ったのか残された腕を絡め取り、関節を決めてくる。傍から見れば、抱き合ってるようにも見えなくもないが、全然嬉しくない。
「次は生きてられるかしら? 安心していいのよ、貴方を一人で逝かせないから」
冗談じゃない。死んでからも、この女と一緒なんて御免だ。
「娘が加害者だなんて知ったら、医者の母親は泣くだろうな」
「愛の形は人それぞれなのよ、親であろうが関係ないわ」
「だったら、僕は赤の他人でありたい」
「貴方は、私がいないと何も出来ないのに何を言うのかしら?」
「寧ろ、早見さんがいるせいで、何もさせて貰えないんだが」
学校に着いてからも、早見さんの過保護に付き合わせられる。こうして授業中から休憩時間まで、ずっと付きっきりで世話を焼かれると益々僕の駄目さに磨きがかかってしまうから、正直やめて欲しい。
早見さんは昔から勉強もスポーツも何でも出来る奴だった。だからこそ近くにいる僕は、常に自分と早見さんを比べてしまう。小さい頃は追い付こうと努力もしたことがあった。でも、時間が経つにつれて諦めるようになってしまった。
いつも昼休みになると、早見さんは僕を連れて空き教室で昼食を食べる。でも今日は利き手の使えない僕に、早見さんが食べさせることになる。
「いい加減に口を開けなさい」
僕は差し出される料理から顔を背けることで『食べたくない』と伝える。別に早見さんの料理に不満はないが、素直に従っていたら次は何をさせてくるか分からない。
「まぁいいわ、それより次の授業提出の課題は?」
「やってないし、やらないぞ」
「このままだと卒業出来ないわよ」
「知るか」
早見さんと一緒に卒業して、同じ大学とかお断りだ。まさか、大学のレベルを下げてまで一緒の大学にするとは思わなかった。
「あまり、貴方の為にはならないから、こういうことはしたくないのだけれど」
「何の話だ」
「課題の話よ」
何を言ってるんのさっぱり分からない。まぁ、分からないのはいつものことなんだが。その後、昼休みは早見さんから解放された。教室を覗いてみると、早見さんは勉強していた。僕は『忙しい奴だ』と思い、そのまま通り過ぎた。
放課後、帰る支度をしてると、山積みにされた今日提出の課題が目に入った。課題をやらなかった僕には関係ないと思ったが、よく見ると僕の課題がある。正確には僕の名前で出されてる課題なのだがいったいどうして。
「早く、帰りましょ」
「お前か?」
突然、早見さんが後ろから話しかけてきた。そして気付いた、こんなことする奴は一人しかいない。
「ええ、そうよ」
課題を見て、何のことか分かったらしく早見さんは素直に答えた。
「やっぱりか」
「親切な幼なじみを持ったことに感謝するのね」
こうして、僕の卒業は決定してしまった。
- 997 :幼なじみの早見さん:2013/04/28(日) 09:27:09 ID:arZbYdec
- 拙い文章、失礼しました
投稿終了です
- 998 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/30(火) 19:04:17 ID:xD9OWi1c
- >>997
GJ
いつの間にこんなところに
このスレももう終わるか
- 999 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/30(火) 22:06:06 ID:B3NfkCf.
- GJ!
早見さんおかしいよ早見さん
- 1000 :雌豚のにおい@774人目:2013/04/30(火) 22:33:53 ID:xD9OWi1c
- こんなスレ埋めてやるわ
あははははははははははははははははははははは
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