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浦板ラブストーリー- 1 名前: ○ 投稿日: 2004/12/07(火) 22:51
- 『浦板』
この街で彼らは生まれた。
あふれかえる池沼。
絶え間なく続く派閥争い。
白い雪が降り積もる、この季節に・・・
ふたりは出会った━━━━。
浦板ラブストーリー
- 2 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/07(火) 22:54
- 2ゲトー
職人さんがんばれ
- 3 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/07(火) 23:16
- ヒロインはしーどか塩澤
- 4 名前: ○ 投稿日: 2004/12/07(火) 23:20
- 浦板の真ん中、最も危険とされるその地に彼は住んでいた。
そこは、東西南北に生息する派閥が戦うのにもってこいの場所であった。
冷たい風に空き缶がカランコロン、と音をたてて流される。
所々抉られているアスファルト。
割られたガラスの窓。
━━まさしく戦場であった。
しかし、今はとてつもなく静かだ。
降り注ぐ雪の中、ザクッザクッと足音をたてながら一人の男が歩いてくる。
浦板がこうなってしまったのは、いつからだろう?
郊外に逃げてゆく住民の中、彼だけは、この地に残っていた。
「寒いぜ...。」
白い息で空に色をつけながら、荒れ果てた街を歩いてゆく。
誰もいなくなった今となってはどこに住もうと彼の勝手だろうが、
彼はいつものように自分の住むおんぼろアパートの扉を潜った。
部屋自体はそれほど狭くないことから、このアパートがボロいのではなく、
戦いによってボロボロにされた事が見受けられる。
男は、部屋の隅にあるストーブに灯油を入れるとスイッチを捻った。
接触が悪いらしく、三度ほど捻ったのち、火が灯る。
手荷物を置くと、少し大きめのシングルソファーに腰を降ろしテレビを付けた。
『え〜
本日の午後、浦板北部で抗争が勃発しました。
小規模の物だったので死者はいない模様
続けます、本日の午後・・・・』
「・・・・・・。」
「いつまで続ける気なんだ・・・。」
男は、重い体をソファーに預けると、そのまま眠りにおちた━━。
- 5 名前: ○ 投稿日: 2004/12/07(火) 23:57
- 窓の隙間から吹き抜ける風に当てられて、男が目を覚ました。
「いつのまに・・眠ってたんだろう・・」
窓を閉めに行くと、外に人影が見える。
「!?」
男は慌てて家を飛び出した。
「油断した!今日は雪が降ってるし戦いは無いと思ってたぜ・・・!!」
「やめろぉッ!!!!」
男の叫び声が街にこだまする。
しかし、そこに人はいなかった。
「・・・・?」
男が不思議そうにあたりを見渡す。
丁度右下辺りに目をやった時に何かが倒れている事に気づいた。
「何だ?こんな所に1人で来たのか?」
近づかないで喋りかけるが返答はない。
「どの派閥のモンだ?」
まったく返答がない、気絶しているようだ。
男は警戒しつつも近づき、体にかかった雪を払う。
女だ。
持ち上げようとすると、その眼をゆっくりと開けた。
紅い瞳。
蒼い髪。
「・・・ここ・・・は?」
小さな唇を寒さに震えながらもあける。
「浦板の中央部だ。
今は、猫さえもいない。
体が冷えているようだ...
話は俺の部屋で聞くぜ?」
男が手を出す。
「やっ!ダメですっ!
私といたら・・・危険なんです・・・!!」
男の差し出した手を払うと、倒れそうになりながら歩きだした。
が、二・三歩もしないうちに膝を落とす。
「いいから来な・・
危険には慣れてるぜ・・・」
男は背中を女の前に向ける。
白い雪がハラハラと舞う。
女は低く泣きながら、男の背中にしがみついた。
初めて知った、人間の暖かみ。
「あの・・・名前・・教えてもらっていいですか・・?」
「・・・・サイコだ。」
この出会いが彼の運命を大きく変えたのだった。
- 6 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/08(水) 13:53
- 激しく期待age
- 7 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/08(水) 15:35
- サイコー
- 8 名前: 水 投稿日: 2004/12/08(水) 16:18
- 意外な登場人物ですね
絶対俺か健ちゃんだと思った
- 9 名前: ○ 投稿日: 2004/12/08(水) 21:57
- 一人では少し大きめのソファーに女が腰をおろす。
「で、こんな所で何をしてたんだ?」
サイコが台所でコーヒーを入れながら言う。
しばらく、ポットからお湯が出る音が部屋中に響く。
「逃げて・・・来たんです・・・」
差し出されたコーヒーに目もやらずに俯いて呟く。
「とりあえず、コーヒーを飲むといいぜ?
体が冷えている・・・。」
女の体が震えてるのは、寒さだけが原因では無いようだ。
サイコがそっと毛布をかけた。
「私は・・・誰も傷つけたくない・・・」
低い声で泣きながら女が小さくこぼす。
この奇怪な尾にも羽にも、この人は何の不思議も持たずに何の恐怖も持たずに、
人と同じように接してくれた・・・・。
「詳しいこと分からねぇが・・・
自分のしたくねぇ事は、しなくていいんだぜ?
お前も同じイキモンなんだ?な?
とりあえずコーヒー、飲みな。」
ストーブーの火の音が静かに流れる。
細い指で掴んだコップを唇に当てる。
熱さに慣れないせいか、ゆっくりと角度をあげていく。
「・・・あったかい・・・。」
女が言う。
「名前、聞いていいか?」
サイコがそう言った瞬間、外から爆音が聞こえてきた。
- 10 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/08(水) 23:07
- やばいめっちゃワラタ(;゚∀゚)=3何この良スレwww期待あげ
- 11 名前: ○ 投稿日: 2004/12/09(木) 04:32
- 「いよう。」
扉が勢いよく開く。
サイコは扉に目を向けた。
「てめぇは・・・北のしーど!!??」
浦板の東西南北に分かれる派閥のひとつ、北のしーど。
『しーど』と言う女リーダーが統率する派閥である。
「サイコさん。
何であなたの所にソレがいるか知りませんが・・・
返してくれます?」
部下を連れたしーどが上目遣いで女を見て言う。
女は目をあわせられずに震えている。
「ソレだと・・・?返すだと・・・?
全てはコイツの意志・・・だろッ!!??」
サイコの声を聞き、女の震えが止まる。
「・・・・あっ、おっ、怒らないで!
あなたとやり合うつもりはないわ!」
しーどは慌てた表情でそう言う。
明らかに圧倒的なサイコのオーラに気圧されたようだ。
しーどの部下も冷や汗をかいて動くことさえままならない。
「とりあえず、話を聞いて。
ニュース見た?北で小規模の抗争があったの。
その時にこの子を逃がしてしまったの。
この子は、大切な友達なの!ネ?」
しーどがそう言い相づちをうつと、周りの部下も「そうそう俺たちマブだかんね〜」とか言う。
「さぁ、行きましょう?ネ?」
しーどが、女に手を差し出す。
が、女はそれを見てサイコの背中に隠れた。
「話にならねぇな。
帰りな。コイツは、てめぇらといたくねぇんだよ。
それとも、力づくでやるか?」
サイコが鋭い眼光しーどを睨みつけて、そう言う。
しーどは一歩ひきさがってしまう。
「う・・・、わ、わかったわ。
今日は一旦帰ります。」
「行くお。」「はい!しーどたん!」
しーどの声に反応し、部下がしーどをかつぎ上げる。
扉を出たあたりでしーどが振り向いた。
「今日は帰るけど・・・
また、迎えに来るからね?」
意味深な笑みを浮かべてしーどが言う。
「じゃあ、さようならぁ〜
サイコさん、ディズィーちゃん♪」
しーどはそう言い残すと部下が歩きだした。
外から爆音が響き、しーどの戦車が走り出す。
それは、そのまま浦板北部へ走り去った・・・・。
- 12 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 11:06
- サイコはプリキュア最終話
- 13 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 11:45
- 表のDCスレに似た良スレの予感。激しく期待age
で、あと南と西と東が残ってるな。マジ職人さん頑張れ。
- 14 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 11:50
- ワロタ
- 15 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 18:28
- あげ
- 16 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 20:27
- ワロタ
しーどたんの活躍に期待age
- 17 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 21:13
- 期待あげ
- 18 名前: ○ 投稿日: 2004/12/09(木) 23:34
- かつて浦板は平和な国だった。
多少の争いはあったが、夜空の神様と呼ばれていた国王が全てを丸くおさめていた。
夜空の神様は、圧倒的な力を持っていたが、それを乱用する事は無かった。
浦板は平和な国だった。
しかし、国王が急死し状況は一変する。
彼は、親族をひとりも残さずに若くして死を迎えた。
それが問題だった。
跡継ぎとなる者が正式にいなかったのだ。
王座を巡って・・・
この国は内乱をむかえた・・・・。
「ディズィー・・っていうのか。」
サイコが扉を閉めながら言う。
「・・・え?」
「いや、名前。」
「ぁ、・・はい。」
しばらく何とも言えない沈黙が起きる。
切り出すタイミングを伺いながら、サイコが口をあけた。
「何か、喰うか・・?」
ディズィーの方を笑顔で見て言う。
ディズィーは俯き黙り込む。
「ん〜、寒いしラーメンでも作るかぁ。
俺のラーメンは特別美味いぜ?」
サイコが冷蔵庫を探りながら言う。
ネギを掴むとそれをまな板の上に置いた。
トンットンッと包丁の音がする。
「・・どうしてですか・・・?」
ディズィーの声に、サイコは包丁を叩く手を止める。
「どうして・・・
どうして、私に優しくしてくれるんですか・・・?」
ディズィーが立ち上がると、大きめのソファーがガタンと音をたてて揺れる。
「私は・・・ッ
こんなにも醜いっ!
羽だって生えてるし、しっぽもある!
今だって私のせいで、戦いになる所だったッ!!」
興奮しているせいか、ディズィーの羽が淡く光ってのびる。
潤んだ紅い目を大きく見開けて、サイコの方を見た。
「いいんだ・・。」
蒼い羽がふわりと舞う。
「何があっても俺だけは・・・
お前といっしょだ・・・」
「だから、・・いいんだぜ・・・」
サイコの優しく放った言葉に、ディズィーは泣き崩れた。
お湯が沸騰する音がする。
ディズィーの肩にサイコが手をおいて言う。
「どっちがいい?」
「ッ・・・ぇ?」
「いや、塩か醤油か。」
「・・・ぁ・・・」
俯いたまま涙をふき、少し赤くなった鼻をサイコのほうに向けてディズィーが笑った。
「・・・・・?」
不思議そうな顔でサイコがそれを見る。
「じゃあ・・・醤油でお願いします。」
ディズィーがそう言った。
- 19 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 23:40
- あんた天才w
- 20 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/09(木) 23:54
- プロの方ですか?
- 21 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 00:07
- ゴドーさんの登場マダー?
- 22 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 01:08
- 夜が明けた。
降り積もった雪に太陽の朝日が反射してあたりを照らす。
「まず、その服だ!
何だソレは、ちょっとエロすぎるぜ?」
サイコの声が部屋から聞こえてくる。
「なっ、エ・・・・えぇ!?」
ディズィーが顔を真っ赤にして俯く。
「いや、あの、これを着ろって・・
言われて・・。」
「あぁ、しーどにか。
あいつはアレだからなぁ。」
サイコがクローゼットを探りながら言う。
「ほらよ
とりあえず着な。」
サイコが、男物のシャツとセーター、ジーパンなどを投げる。
「それ着たら、買いもんに行くぜ。」
「ぇ?あ、はい。」
ディズィーは服を掴むとあたりをキョロキョロと見渡す。
その後に目線をまたサイコに戻す。
「・・・・?
あ、悪ぃわりぃ。」
サイコはそう言うと、ソファーにかけたコートを手に取り、扉の方へ歩く。
「じゃ、10分くらいで戻って来るから着替えときな?」
扉がキイッと音をたてて開く。
そのままサイコが歩き出す。
「あ、あの・・。」
ディズィーが言う。
それに反応しサイコが振り向いた。
「ん?」
「あ、え、っと・・・
いってらっ・・しゃい・・・?」
恥ずかしさを隠すためか少し首をかしげてディズィーが言う。
サイコは、背中を向けるとコートを持ってないほうの手をあげた。
「おう、いってくるぜ。」
- 23 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 01:23
- この方の文章能力は本当に凄いと思います。
- 24 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 01:32
- すげーーー!!!!!
サイコさんってトコがいいね
- 25 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 01:43
- 「あ〜、もぉ!どーしよ〜!」
コンクリートの家から叫び声がする。
ここは、裏板北部。
郊外では、そんなに抗争がないので人もそれなりにいる。
今の現状、実質裏板は5つの国に別れていると言っても過言ではない。
荒れ果てた中央部以外は、それなりに街として機能しているのだ。
「ディズィーがあああああああ。」
しーどが、とてつもなく叫んでいる。
「あー、もうっ!だいたい、あの子を使うなんてのが無茶だったんだ!
サイコは戦う気も無いからイイけど、他に渡ったらホントやばい・・・」
苦悩しまくってる様子だ。
「しーどたん!しーどたん!」
部屋の扉がノックされる。
「何?入ってよいぞ」
しーどがそう言うと扉が開き、部下が入ってくる。
「西の情報が少し入ってきました。」
「そうか、で、どう?」
しーどが言う。
「統治してる者や戦力については詳しく分かりませんが、どうやら昔からこの国にいた奴みたいです」
部下がそう言うと、しーどは手を頭にあてて何か考えている。
「昔から・・・か・・・
誰だ?ワカンネ。」
しーどは髪をかきあげると、天井を仰いだ。
「裏板は・・・
絶対に取り返してみせる・・・」
- 26 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 01:44
- サイコさんかっこいい・・・
- 27 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 02:13
- 「ちょっと・・大きい・・かな」
ディズィーが手を広げて部屋の鏡をみている。
外からドドドドドッと音がしたのでディズィーは窓に目を向けた。
そこには、サイコがいた。
宙を浮いている。
「・・・・!?」
ディズィーは、目の前の光景に漫画のように口をぽかんと開けてしまう。
「ぉ?やっぱダボダボだな。
さっ、乗りな。」
サイコが言う。
サイコは小型の飛行機に乗っていた。
「わっ!凄いですね。
これ・・・落ちたりしないんですか?」
地面に足がついてないのが不安らしく、ディズィーは落ち着かずに足をぶらぶらさせている。
「ん?大丈夫だぜ?
はい、これつけな。」
サイコが、顔まで覆うタイプの黒いヘルメットを渡す。
ディズィーは、髪の毛を後ろに軽く束ね、ヘルメットに頭を入れた。
「さっ、行くぜ!ちゃんと掴まりな!」
サイコがそう言うと、エンジンが一度吸うような音を鳴らし、いっきに吹き出す。
あまりの速度に、白い雪が地面と水平に吹きつけてくる。
ヘルメットがなかったら無事ではいられないだろう。
「家があんなにちっちゃい・・・。」
ディズィーが下を見て呟く。
「これは俺の秘密の宝物だからな。
上空を飛ばなきゃ見つかっちまうんだ。」
サイコが言う、腰にまわされたディズィーの腕が気になるらしくチラチラと下を見ている。
「ディズィー。・・・・・、、」
「はい?」
「・・・ん〜、な〜んか呼びにくいな。」
「え?」
「ディー。」
「ぁ、え、えぇ!!??」
「うん。いい感じだ。
さっ、飛ばすぜ!ディー!」
サイコが叫ぶと、再び飛行機のスピードがあがった。
- 28 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 02:15
- つーか、お褒めの言葉ありがとうございますッッ!!
妄想に付き合っていただいて幸いですw
プロとかそんなわけ無いですよ。
でもありがとうございますッッ
- 29 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 02:34
- >>○
すごい楽しく読ませてもらってるんで頑張ってくだせえ
- 30 名前: 湯田 (iNpnVhZQ) 投稿日: 2004/12/10(金) 02:58
- ひっそり読んでました。
職人さん、頑張って下さい b
つーかサイコさんのキャラをよく書き出せていますね。
- 31 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 03:05
- 統治してる者や戦力については詳しく分かりませんが、どうやら昔からこの国にいた奴みたいです
み ず ぴ ー ズ の 予 感 !!!!!
- 32 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 03:06
- >>〇
もしかして、サイコさん本人だったりして…?
- 33 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 03:20
- 大きな森に飛行機が着陸する。
風が周りの草を散らしている。
「ふぅ〜、着いたぜ。」
サイコはヘルメットを外し飛行機を降りるとディズィーに手をさしのべた。
「ぁ、ありがとうございます。」
それを掴むとディズィーも飛行機から飛び降りる。
ここは浦板南部。
南の『ルゥ』が統治している派閥がある。
北部より一番離れているのでディズィーの情報もそんなには流れていないだろう。
「飛行機見つかりたくねぇから、ちょっと遠いところに着陸した。
結構歩くぜ?」
サイコが言う。
街に向けてディズィーとサイコが歩きだした。
途中ディズィーが花を見たり鳥を追いかけたりして道草をくい、一時間ほどかかって街が見えてきた。
ちょうど太陽が真上に見える。
浦板南部、
透き通った川や、生い茂る木々
ここは自然が一番豊かな場所である。
その自然を損なわないように、美しい街がそこにはあった。
「わ〜、凄い。水が下から吹き出してる!」
ディズィーが噴水を見てはしゃいでいる。
「わっ、何ですかアレは?・・卑猥ですね。」
ディズィーが小便小僧を見てはしゃいでいる。
「あっ、すごい!なんかすごい!」
ディズィーが大きな花時計を見てはしゃいでいる。
「・・・とりあえず服だな。
窮屈だろ?しっぽ。」
サイコが、あからさまに膨らんだジーパンを見て言う。
「試着はさすがに出来ねぇし・・・
しょうがねぇ、俺のフィーリングにまかせるしかねぇな。」
サイコはディズィーがまったく話を聞いてない事に気づきながらも、一人で話を進めていく。
「よしっ!じゃあ、買ってくるからこの辺にいるんだぜ?」
「わ〜、すごい!綺麗!」
「・・・・・・・・・・。
ま、大丈夫だろ。
すぐ戻ってくるか・・・。」
- 34 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 05:28
- あげ
- 35 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 06:01
- なにこの良スレw
>>○
頑張って下さいね!
- 36 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 08:58
- 糞ワロタ。
ラスボスはロボディズィー軍団の予感。
職人さん頑張れ、蝶頑張れ。
- 37 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 08:59
- 下手な小説よりおもしろいw
続き期待age
- 38 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 14:16
- みずぴーズ登場マダー?
- 39 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 20:02
- エロい展開キボン
- 40 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 21:36
- 期待アゲー
- 41 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 22:45
- 「女モンの店に男一人で入るのは何か恥ずかしいな・・・」
サイコは手頃な服屋を見つけたが入りづらいらしく辺りをうろうろしている。
「あれ?サイコ?」
男の声がする。
「・・・・?
おぉ、ルゥか。久しぶりだな」
振り向いた先にいた男に向かってサイコが言った。
「そうだね〜、久しぶり。
こんな所で何してんの?」
ルゥは顎を女物の服屋の方にクイッとやり訪ねる。
「いや、相変わらず平和な街だな。
この街だけは今も昔もほとんど変わってない・・・。」
サイコが話をはぐらかすように言う。
「あれ?マジでこの店に来たんだ。
そんな趣味だったっけ?」
「なっ、何言ってんだコイツ。
んなんじゃねぇよ。」
サイコがあわてて弁解する。
「じゃあプレゼント?
へ〜、やっとアイツの事は忘れられたんだ?
それともアイツの代わり?」
ルゥが冗談っぽくそう言う。
「アイツの事は忘れねぇ。
けどアイツの代わりなんかじゃないぜ。」
サイコが真剣にそう答えるのを聞いてルゥは驚いた表情を見せる。
「マジで女なんだ!?
ふ〜ん、・・じゃあ入る?
いっしょに選んだげるよ。」
「え、ちょっ・・・」
ルゥはサイコの腕をひっぱると堂々と店のドアをくぐった。
男二人で女物の服屋か・・・。
・・さっきより状況が悪化ような気がする。
- 42 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 23:07
- 飛び交う突き刺さるような視線の中、サイコが服を選んでいる。
しっぽを隠すために少しゆたりとしたスカートを手にとる。
あまりまじまじ見るのも恥ずかしい。
カゴに入れると他の服といっしょにレジへ持っていく。
いっしょに選ぶと言っていたルゥは何の目的か分からないが、ひとりで服を探していた。
会計をすますと足早にその場を去った。
「ルゥ、そろそろ俺は行くぜ?」
サイコが買い物袋を肩に担いで言う。
「おぅ、そうか・・。」
ルゥが少し悲しそうに呟く。
「・・・サイコ・・。
僕は守るための戦いしかしない。
今までは、そうだった・・・。
けど・・奴らにだけは浦板を渡したくないんだ・・。」
「・・いつまで言ってる。
お前らが戦いを止めるまで俺は浦板から離れるつもりは無いぜ?」
サイコが深く強く言う。
太陽は少し西に傾いてきている。
「サイコは人を信じすぎだよ。
現実!奴らがこの国をこうした・・ッ!
僕は・・・・」
「俺は信じてるぜ。
この戦いが終わることを・・・」
ルゥの言葉にサイコが割り込む。
そのまま「じゃあな」と言い残して、サイコは歩いていった。
冷たい風がルゥの髪を揺らしていた・・。
- 43 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 23:29
- 広場にディズィーはいた。
始めてみる全ての物は新鮮でディズィーの目には輝いて見えた。
「わ〜、こんな綺麗な所に来たのは初めてです!!
ねぇ、サイコさん。
また、来ましょ・・・」
「・・あれ?」
周りを見て、やっとサイコがいない事に気づく。
目をこらして遠くまで見るが、どこにもいそうにない。
「すいません、お嬢さん。」
ディズィーの肩に手を置かれ、振り向こうとした瞬間、
ディズィーの口に布のような物が当てられた。
「・・・ぁ。」
遠のく意識の中、うっすらと揺らぐ景色にディズィーは眠りにおちた。
「任務完了。」
ディズィーに布を当てた男が無線にそう呟くと、入り口に戦車が乗り付ける。
「君いっ、何をして・・・」
ひとりの街人が不信な男に気づき、話しかけようとした。
が、それは銃声によって遮られる。
その恐怖の音に街人は逃げ出した。
「て、敵だあああぁーー!!
ルゥちゃまを呼べっーー!!」
街人が叫んでいる。
「よし、じゃあ作戦通り証拠を残せ。」
完全に眠っているディズィーを戦車に引きずり込みながら男が言う。
街の人は、あからさまに武装された男達に恐怖し近づこうともしない。
爆音を鳴らしてディズィーを乗せた戦車は走り去った。
- 44 名前: ○ 投稿日: 2004/12/10(金) 23:57
- 感想ありがとうございます!
がんばって妄想します〜。
エロい展開は・・・書けそうにもないOTL
- 45 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/10(金) 23:59
- 普通に面白いな
- 46 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 00:20
- なんか…引き込まれるなぁ…スバラスィ
- 47 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 00:40
- しどたんの美形悪役っぷりに期待age
今後の水さんの登場に期待age
- 48 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 01:19
- 「じゃあな」
サイコはそう言い残し歩きだした。
広場に向かって足を進める。
ルゥとの会話で久しく昔を思い出す。
「アイツ・・・か・・・」
サイコが白いため息をつく。
バーンッ!!
「!!」
寒空の下、銃声が響いた。
広場の方から騒ぎ声が聞こえてくる。
━━嫌な予感がする。
サイコは息を大きく吸い全速力で走り出した。
「ルゥちゃまあああーー!!」
広場から声がする。
広場の入り口が人混みに遮られ中に入れない。
「どいてくれ!!」
サイコが叫ぶが、街人はそれどころでは無い様子だ。
「皆、道を開けて!!」
後ろから響く声に、街人が反応する。
「ルゥちゃま!」
ルゥが走ってきたようだ。
入り口付近の人が散る。
広場の中には誰もいない。
「ディズィー!!どこだ!?
ディズィー!?」
サイコの呼ぶ声に返答は無かった。
「おい、おまいら。
何があった!?」
ルゥが街人にきく。
「それが・・・、何者かが急に現れて・・
女を連れ去っていきました・・」
「女!?どんな姿だった!?」
サイコが言う。かなり興奮しているようだ。
「あ、蒼くて長い髪で・・細くて綺麗な・・」
そこまで言うと、サイコが街人の肩を強くつかむ。
「どこにいった!?」
「いや、そこまでは・・・分かりません・・」
興奮したサイコの背中をルゥが軽く叩く。
「で、街人は無事なの?」
ルゥが言う。
「それが・・、ひとりだけ撃たれて・・。
ただ太股なので軽い怪我ですむと思います。
今、病院に運ばれていきました。」
街人がそう言うと、ルゥが拳を握りしめた。
「どこのッ・・奴らだ・・ッ?」
心を沈めようとするが、溢れてくる怒りにルゥの声が震えている。
「『東のコイチ』と言ってました・・
奴らの胸に付いていた紋章も、東の物でした・・・。
奴ら・・ついに攻めてくるんですか!?
ルゥちゃま!?」
「安心しろ・・・ッ。
この街は・・僕がッ守るよ・・」
ルゥが、フーフーと息を荒立てながら言う。
「おい、ルゥ!!落ち着けよ!
コイチがそんな事するわけないぜ!
それにわざわざ証拠を残す必要もない!
あからさまにお前らを戦わすタメの罠じゃねぇか!!」
サイコが言う。
「じゃあ、しーどの罠?
どちらにせよ同じだよ。
サイコ、人は変わってしまうんだ。
街人を傷つけられてッ!!
僕が黙っていられるわけがないッ。
それは君だって知ってるだろ?」
サイコは黙り込んでしまう。
「・・・戦争だ・・」
- 49 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 01:27
- うおお!!!面白い!!
- 50 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 01:39
- リアルで喧嘩がクソ強いしーどの戦いぶりに期待
- 51 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 05:51
- >職人さん
サイコさんはディズィーのことをディーと呼ぶのでは?
- 52 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 08:34
- そーゆーのは二人きりの時だけの方が雰囲気でるじゃない
- 53 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 10:52
- 平和な街の空気が変わる。
もうサイコひとりでは止めきれないほどに、ルゥ達は怒っていた。
それに、ディズィーがさらわれた。
たくさんの事が重なってサイコは混乱していた。
「コイチが・・・?
まさか・・。そんなわけないぜ。
ほんとにあいつらは変わっちまったのか?」
飛行機の止めてある森に走りながらサイコが呟く。
「まだ詳しく掴めてねぇ、西のやつら・・?
だが、もし違ったらどうする・・
俺は・・またッ・・好きな女ひとり守れねぇのか・・・ッッ!?
・・・クソォッ!!!」
サイコが、アイツと出会ったのも、白い雪の降る季節だった━━━。
浦板は平和な国だ。
そしてその中央にある浦板の街には、人々が溢れかえっていた。
夜空の神様が統治する浦板城を中心に、城下町が広がる。
そして、東西南北に四つの街があった。
誰かが言っていた「よい国では国王と民がいっしょに笑う」。
ここはまさにその通りの国だ。
浦板城の王座に腰をかけている男、優しそうではあるが威厳があり目に力があるこの男、
彼が国王『夜空の神様』である。
たくさんの兵士が謁見の間に集まる、
その中夜空の神様が口を開けた。
「先の戦いは、皆大変ご苦労だった。
民を守るのが我々の仕事。
傷つけるために戦うのではない!
守るために我々は戦うのだっ!!」
夜空の神様がそう言うと、兵士達が盛大に拍手をする。
「これからも私と共にこの浦板の平和を
この浦板の民を守ってくれ!
いつもながら大変貢献してくれた、我らが4部隊の隊長達をたたえたい!」
「北のしーど」
夜空の神様の声に、しーどが王座の前まで歩き出す。
そして夜空の神様の前に着くと、片膝をついてスッと腰をおろした。
「東のコイチ」
同じくコイチが出てくる。
しーどの横に着くと、同じように腰をおろす。
「南のルゥ」
ルゥも同じように歩いてゆく。
チラリと夜空の神様の方を向くと頭をさげ、腰をおろした。
「西の・・」
「サイコ」
- 54 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 11:03
- はぁはぁ・・がんばってくだちい!
- 55 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 12:07
- 謁見を終え、大食堂で晩餐が開かれていた。
「かんぱーいッ!!」
兵士達の声がする。
「サイコさん!いっき!」
「いっき!いっき!いっき!いっき!」
兵士達に音頭をとられ、サイコが片手に取ったビールをいっきに流し込む。
全てを流し込み喉がゴクリと鳴ると兵士達が拍手した。
サイコは、ジョッキをテーブルに勢いよく置く。
「皆、今日はお疲れ様だ!
俺はこの部隊の隊長になれた事を誇りに思うぜ!!」
サイコが叫ぶ。
「いえ、俺たちもサイコさんがいなきゃ今頃どっかでのたれ死んでました!
一生付いていきますよぉぉぉーー!!」
サイコは、男臭い涙と酒においに包まれる。
「しーどたん!しーどたん!!」
「今日の戦闘服は良かったよしーどたん!」
「テスタメントさいこぉだよ!」
「いつか、しーどたんに絶対バースト使わせてやる!」
こっちもこっちであれだ。
しーどがいっきにビールを流し込む。
くはぁーっと、大きく息を吐きジョッキにまたビールをついでゆく。
「コイチさん。コイチさん。」
「今日もすごいテクニックでしたよ!」
「今日はオナニーざんまいですね!」
コイチに群がる兵士達は、その後もさんざんと下ネタをまき散らしながら酒を飲みまくっている。
「ルゥちゃまぁ〜」
「戦闘中に猫を追いかけるのはイクナイよ!ルゥちゃま!」
「飲んで飲んで飲んで・飲んで飲んで飲んで・飲んで飲んで飲んで・飲んでぇ〜!」
ルゥもルゥで、ジュースのようにビールを流し込んでいく。
数時間、宴は続いた。
バンッ!!
ビールジョッキがテーブルに叩き付けられる音が、食堂中に響く。
「もう、おしまいか?
生きてるものはいないかーー!」
横でダウンした兵士を見て夜空の神様が、叫ぶ。
「俺はまだいけますぜ・・?」
サイコがふらふらになりながら眠る兵士をかきわけて夜空の神様の横に行く。
「あら、強がって。
私もまだまだいけますよぉ!!」
顔を真っ赤にしたしーどが来る。
「俺、まだ、余裕。」
コイチも立ち上がり王のテーブルにつく。
「僕も大丈夫ですか?」
ルゥがはいずるように近寄る。
「ハハハハハ!
かかってこい!若造!」
夜空の神様の声が開始の合図となり、五人はいっきにビールを流し込んだ。
- 56 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 12:53
- 職人さんは今日おやすみなのか?
折角の休日だけどもっともっと書いて欲しいッス!!
- 57 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 14:26
- >>56
おいおい こんだけ書いてくれてるんだから贅沢言うなよ
- 58 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 15:08
- >>57
スマソ・・・
おやすみっていうのは、仕事か学校やすみなのかな、と。
職人さん、マイペースで良いんでしっかり完結させてくださいねー
- 59 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 18:55
- マジ天才だわアンタw
- 60 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 19:35
- 読んでくれてありがとうございます!
蝶ありがとうございます。
昼過ぎから用事があったんで、家を出てました。
一応、完結までの流れは考えてあるんで
もし良かったら、最後まで付き合ってくださいな。
- 61 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 20:43
- チュンチュン・・・
雀の鳴き声とカーテンの間から抜けてきた光がサイコの目を覚まさす。
「ん〜・・・
つッ。
飲み過ぎたぜ・・・・」
サイコが起きあがろうとすると、頭痛が走ったらしく片手で頭を押さえる。
フラフラとキッチンまで歩くと水道の蛇口をひねった。
ジャーッと音がなり、水が勢いよく流れる。
大ざっぱに手に持ったコップに水を注ぐ。
どれくらい入ったか確認もせずに、サイコはそれを流し込んだ。
「ふぅ〜・・・
きっついな・・・」
少しはましになったのか真っ直ぐ歩くが、頭の痛みはそんなに引いてないようだ。
一人では大きめのソファーに腰をかける。
しばらく天井を向いて、目を閉じていた。
が、思い出すように目をパッと開け、立ち上がる。
「さっ、行くぜ!
切り替えが大切だぜ!・・・つッ・・」
精神力で頭の痛みをおしきる。
西の紋章が入った上着を手に取ると、バサッと音をたててそれを広げる。
その上着の襟をつかみ、肩にかけた。
まだ低い位置にある太陽を横目にサイコが街を歩いてゆく。
店のシャッターもすべて閉まったままだ。
しばらくすると、浦板城が見えてきた。
門番の兵士がサイコに敬礼する。
「おつかれさん」
とサイコが言い、歩いてゆく。
「あ、サイコさん!
おはようございます!」
通りすがる兵士は誰もがサイコを見て挨拶をかわしている。
サイコが会議室として使われている部屋に着くと、その重そうな扉を叩いた。
「失礼します。」
サイコはそう言うと扉を開ける。
中には、夜空の神様としーど、ルゥ、コイチがいた。
「やっときたか。」
コイチが言う。
「サイコも城に住めばいいのに、いくら近いって言っても毎日くるの大変じゃない?」
ルゥが言う。少し眠たそうだ。
「いや、まあ俺はあそこが気に入ってるしな。」
サイコがルゥの隣、コイチの正面に位置する椅子に座った。
「じゃあ、会議を始めよう。」
夜空の神様がそう言った。
- 62 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 21:47
- 貿易の事や、隣国の状況
各自の街の状態などを話し合っている。
「さて、そろそろ修練の時間だな。
皆、今日もがんばってくれ。」
夜空の神様がそう言うと四人は立ち上がった。
ちょうど朝の7時くらいか、サイコは自分の担当する修練場へ向かう。
そこに着くとすでに兵士達がひたすら修練に励んでいた。
「おはよう」
サイコがそう言うと、兵士達が一斉に入り口の方をみる。
「ちゃーすッ!!」
声をそろえて挨拶をした。
サイコは全ての人に慕われていた。
まず、ずばぬけて強かった。
素手でも剣技でもサイコに並ぶものは、ほとんどいなかった。
4部隊のほかの隊長達でも、かなわないほどに強かった。
そして、その人柄。
誰にでも同じように接し、弱いものを守る姿勢は兵士達の憧れであった。
事実、サイコに救われ兵士になった奴らはたくさんいた。
青い空のしたそびえ建つ浦板城。
永遠に続くであろう平和な時。
この街で彼らは生まれ、育った。
季節は巡り、━━冬。
まれに起こる敵国の侵略戦争を除いて、浦板はいたって平和であった。
白い雪が積もる大地をサイコが歩いている。
その日、サイコは西の街へ来ていた。
街の外れを気の向くままに歩いている。
戦士の休息というやつか。
この付近で死んだ兵士への弔いか。
サイコは複数の足音が聞こえてくる事に気づいた。
森の奥、国境を越えた先から何者かが走ってきた。
「!!!」
サイコがそれを見て身構える。
「貴様!待てえッ!!」
「ちょっ、ヤァッ!!」
後ろから走ってきた男が、前を走っていた女の首を掴み地面に倒した。
「手間ぁとらせやがって!」
男は女の腕をロープで縛ろうとする。
「待ちな。」
サイコが言うと、男達は人がいる事に驚いたのか何かばれてはいけない事があったのか、即座にその場から逃げ出した。
「何なんだ・・・?」
サイコが不思議そうに逃げていく奴らを見ていると、女が声をかけた。
「あの・・・
ありがとう・・・」
黒い髪をした女が頭をさげる。
貧乏くさい格好をしている事から恐らく脱穀者か何かだろう。
隣国ではひどい税金がとられるらしい。
「大丈夫か?ひどい怪我だぜ?」
こかされた時にきれたのか、女の膝からおびただしい血が流れていた。
「ぁ、ありがとう・・
でも・・私はこの国の人間じゃないから・・」
女の言葉を耳にも入れず、サイコは背中に女を背負った。
「いいから来な。
そこはお前のいる場所じゃないぜ。」
- 63 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 22:17
- サイコさん格好よすぎw
age
- 64 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 22:20
- サイコさんハァハァ(;´Д`)
○氏ガンガレ
- 65 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/11(土) 23:04
- あげ
- 66 名前: ○ 投稿日: 2004/12/11(土) 23:37
- 白い雪がポツリポツリと赤く色ぬられている。
その先に、サイコと女がいた。
「俺はサイコって名だ。
お前の名も聞いていいか?」
サイコが言う。
「降ろして!
あなたに迷惑がかかってしまう!」
女が後ろで必死にもがくがサイコの力で離れる事は出来ない。
「逃げてきたんだろ?
よほどつらかったんだろ?
安心しな、この国は安全だ・・。」
「でも・・・ッ」
近くにあったサイコの戦車に着くと、女を座席に乗せる。
「・・・女なんだ男に甘えろよ。
強い奴は大好きだ。
けど、お前は恐れてるだけだろ?」
サイコが、そこにあった包帯で簡単に応急処置をする。
「・・・ありがとう・・・」
震える声で涙を流してることは分かったが、何も言わずにサイコは運転席に着いた。
アクセルを踏むと、戦車が揺れるエンジンが暖まるのにしばらく時間がかかるようだ。
「私は・・由利・・」
女がそう言うと、エンジンがかかり、戦車が雪の降る道をゆっくりと走り出した。
「という事で、国籍手続きを」
サイコが言う。
謁見の間に来ていた。
あの服のままだと流石にあれなんで、近くに住む女性に借りた服を由利は着ていた。
「ちょっ、私は反対です!」
しーどの声に反応しサイコが目を向ける。
「他の正式な入国者と違い、隣の国から来た事が真実かも疑わしいッッ!!!
それに、今城内に空き部屋なんで無いわ。
男共と雑魚寝さすわけには、いかないでしょ!?」
いつになく興奮して、しーどが言う。
それを聞き由利が俯く。
「ん?何だ、しーど。
嫉妬してるのか?」
隣からコイチが言うと、しーどが睨みつける。
「部屋は俺のアパートの一部屋を貸すぜ?
俺が連れてきたんだ。責任はとる。」
サイコの言葉にしばらく沈黙が起こり、由利は緊張した顔をしている。
「・・うん、まぁ問題はないんじゃないの?
サイコなら安心だしね。」
ルゥが沈黙の中、きりだした。
夜空の神様のほうを見る。
他の3人も夜空の神様を見た。
「サイコがここまで言うんだ。
断れる理由なんてない。」
夜空の神様が、そう言い放つと由利の顔がいっきに明るくなった。
サイコと目をあわせて、笑う。
しーどが、不服そうな顔をして国民認定書にハンを押した。
「これで由利、お前は浦板の住民だぜ?」
さっきまで笑っていた由利の目にいっきに涙がたまる。
「ありがとう・・・
私・・こんなに笑える事なんて・・
二度とないと思ってた・・・」
- 67 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 00:50
- おもれえええ
ageますね・・
- 68 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2004/12/12(日) 00:53
- (゚д゚)オウエンシテルシメ
- 69 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 01:45
- 「ふぁ〜・・・」
サイコが目を覚ます、部屋を開けると味噌汁のにおいがしてきた。
「あ、サイコ。おはよ〜」
エプロンを付けている由利が、台所に立ちながら言う。
「おう、おはよう。
なんかいつも作ってくれて悪いな・・」
サイコと由利が出会ってから約一月が過ぎていた。
サイコがソファーにドサッと腰をおろす。
「住ましてもらってるんだし、このくらい当然よ!
はい、朝ご飯。」
由利は二つ皿を並べると、次はお箸と味噌汁を持ってきた。
「さっ、食べよ?」
由利がサイコの横に腰をかける。
一人では大きく感じていたソファーも、二人だと小さく見えた。
由利は、その料理の腕から浦板城の兵使用食堂で働くことになった。
二人はいつもいっしょにいた。
それを周りも当然のように思うようになっていた。
お互い言葉にしたわけではないが、もうカップルといっても過言ではなかった。
「敵軍だあああーーー!!
剣を持て!戦争だーーー!!!」
伝達係りの兵士が街中をそう叫びながら走ると、街人達は家に隠れてゆく。
「サイコ・・・・
気を付けてね・・・?」
由利がサイコの鎧の背中にあるとめ金を締めながら言う。
「大丈夫だ・・・。
待ってくれる奴がいる。
これ以上負ける気がしない戦いはないぜ?」
サイコが心配そうに見る由利をみて、そう言う。
「さてと・・
行ってくるぜ?」
「・・・行ってらっしゃい・・・・」
由利が見守る中サイコ軍が西に向けて出発した。
ダッダッダッ!
兵士達の足音で地面が揺れている。
「うおぉぉぉッッ!!」
「どぉああぁー!」
「おぅあぁーーッッ」
剣のぶつかり合う音と兵士達の叫び声、悲鳴。
血や硝煙の匂いがたちこめる。
「そこだッ!」
サイコの剣が敵を斬る。
集まる兵士の間を斬り開きながら突き進んでゆく。
サイコの剣に太陽が反射し、キラリと光ったかと思うと次の瞬間にはもう振り切っていた。
敵隊の大将の首がおちる。
「我が軍の勝利だあぁッ!!」
サイコがそう叫ぶと、兵士達が剣を高くかかげて雄叫びをあげた。
- 70 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 13:12
- 職人さんがんばれ
- 71 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 13:57
- 重くて死にそう
- 72 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 15:02
- サイコが由利と出会ってから、もう一年が過ぎようとしていた。
月明かりの下、サイコがひたすら剣をふっている。
体から湯気が出るくらいに体温があがっているようだ。
「いつも遅くまでご苦労だな」
夜空の神様が歩いてきた。
「いや、当然のことです。
俺はリーダーです。
俺が負けるわけにはいかない・・・」
サイコが少し剣を振る腕を止め、夜空の神様の方を向く。
「寒いな・・・。
サイコ、久しぶりに。
・・・やらないか?」
なぜか夜空の神様が上着のボタンをはずす。
「・・・いいですよ?」
サイコも剣を置いて袖をまくりあげた。
目を見つめあったまま二人が近づく。
一歩一歩、顔が近づいてゆく。
ダンッ!
サイコが地面を蹴りいっきに距離をつめた。
流れるように拳を振り抜く。
が、それは空をきる。
「ハハハハ!
甘いな。」
後ろから聞こえる声にサイコが振り向いた瞬間、みぞおちに拳が食い込んだ。
そのまま、膝を地面におとす。
「気が早いぞ。
たしかに並の奴なら、あの距離でとれるかもしれん。
が、私はお前よりまだ強い。
頭を使え。」
夜空の神様がそう言うと、倒れるサイコに手を差し伸べた。
「いつッ。
手加減してくださいよ・・・。」
「あの力、は使わないだろ?
十分手を抜いているわ」
夜空の神様の肩にサイコが手をかける。
「いや、夜空の神様にはかないませんよ」
サイコがそう言う。
「そうだ。お前に見せたいものがある。
今日、やっと出来たんだ。」
「・・・・何ですか?」
「まあ、着いたら分かる。
地下に行くぞ」
そのまま二人は地下に歩いていった。
夜空の神様がドアノブに手をかざす。
すると、扉がゆっくりと開いた。
そこにあるものを見てサイコが目を見開ける。
「これは・・・・ッ!!」
「ハハハハ
どうだ?凄いだろ?
作るのに5年はかかったな。」
そこには、小型の飛行機があった。
「本当に作れたんですか!?
これが・・空を飛ぶんですか!?」
持ち上げようとしても、まったく動かない程の重量に、サイコはそれが空を飛ぶとは到底思えなかった。
夜空の神様が、機体をパシッと叩く。
「飛ぶ。自分でも驚く程の出来だ。
これからは、人間が空を飛ぶ時代が来るかもしれないな!!」
夜空の神様が誇らしげに言う。
サイコはその銀色の機体に見入っている。
「これ・・お前にやるよ」
「え!?そんなっ!!」
「なぁに、次はすぐに出来る。
これはサイコのだ。」
- 73 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 16:42
- >>○
好きだ。
- 74 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 19:07
- みずぴーの登場マダー?
- 75 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 21:11
- 「ただいま〜。帰ったぜ〜。」
サイコが玄関で靴を脱ぎながら言う。
「おかえり、サイコ。
遅かったね。」
テレビを見ていた由利が振り向いて言う。
「由利、明日城に行かないか?」
サイコが由利の隣に座り、そう言う。
由利がそれを聞いて驚いた顔をした。
「えっ!?何で?
折角の休みなのに・・・」
「いや、見せたいものがあるんだ」
サイコが言う、おそらく飛行機だろう。
由利は少し俯いている。
「明日は・・・
西の街に行きたかったなぁ・・・」
「西の街?」
「ほら、明日はさ・・・
私たちが会ってから、ちょうど一年なんだよね・・・。だから、・・・」
由利の言葉にサイコは思い出す。
そして覚えてなかった自分に嫌気がした。
「そういや・・そうだったぜ・・」
女心など到底理解しうる物では無いが、由利があの森に行きたがっている事は安易に分かった。
それに理由など無いのだろう。
「じゃあ、明日は西の森に行くか!」
サイコがそう言うと、由利は笑顔で首を縦にふった。
「でも・・サイコ。
見せたい物・・って?」
「いや、それは明後日でいいぜ。
どうせ二人とも城に行くんだしな。」
サイコはどうしても驚かせたいらしい、由利は不思議そうな顔をして首を傾げる。
「じゃあ、楽しみにしとくね。
おやすみ。」
「あぁ、おやすみ。」
立ち上がり自分の部屋に入る由利を最後まで見届けると、サイコはテレビのスイッチを消した。
「もう一年か・・
早いもんだぜ・・・」
白い雪の降る中そびえ建つ浦板城。
永遠に続くであろう二人の時間。
しかし。
━━それは唐突に奪われた。
- 76 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 21:13
- やべえ蝶おもしれえw
- 77 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 21:39
- 「何も変わってないね〜」
由利が雪の道を小走りしながら言う。
サイコは後ろから歩きながらついていく。
「お前は見違えるほど変わったぜ?」
サイコが言う。
しばらく間があいて、由利が振り向く。
「何それ〜、嫌味?」
由利が笑いながらそう言う。
たしかに由利は一年前の貧乏臭い格好やボサボサの髪とは変わっていた。
「違うぜ・・・。
格好なんかじゃないんだ。
お前の笑顔が見れるようになった。」
サイコが真剣にそう言うと、さっきまで笑っていた由利は照れくさそうに俯く。
「キャッ」
雪に隠れた木の根っこに足をとられ、由利がその場に尻餅をついた。
その衝撃で木の葉にたまった雪がドサッと落ちてくる。
「ヤァッー」
由利の黒い髪が雪で白く塗られた。
「大丈夫か?」
走ってきたサイコがうつ伏せになって転んでいる由利にのった雪を払う。
「・・・・」
由利は無言で俯いている。
「おい、どうした!?」
どこか打ったのか、由利が動かない。
「サイコが、いてくれたから・・・」
「えっ?」
屈んでいた由利が顔をあげた。
雪で濡れたのかどうかは定かではないが、頬が水滴で輝いている。
二人の目があう。
「サイコが、いてくれるから・・
私は笑っていられるんだよ?」
由利がそう言い、一度目線を外し下を見る。
が、しばらくしてまたサイコに目線を戻した。
遠くから雪が地面にドサッと落ちる音がする。
サイコの手が由利の黒い髪に優しく触れる。
二人の間に落ちた一粒の雪をお互いが追うように
二人の唇が重なった━━。
- 78 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 21:43
- 感想ありがとうございます!
蝶嬉しいです。
気が狂うほどに嬉しいんです。
妄想する元気が沸くぜーー!!うん。
- 79 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 21:51
- サイコさん…
職人さんMEGAグッジョブ
- 80 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 22:06
- どれくらい経っただろうか?
いや、一瞬だったのかもしれない。
誰かの走ってくる足音に、二人の顔が離れた。
「サイコさん!こんな所にいたんですか!
大変です!」
兵士が吐いている白い息を見て、外が寒いことを思い出す。
「ど、どうしたんだ?」
サイコの舌まわっていない、がまだ余韻が残っているようだ。
兵士はサイコの近くまで来ると、あわてて何かを言おうとしたが、
息がきれて言葉にならない。
「大丈夫か?落ち着いて話すといいぜ?」
サイコがそう言うと、兵士は大きく息を吹い叫んだ。
「夜空の神様が・・・ッ!!
殺されました・・・ッッッ!!!!」
風が森の木々を揺らしていた。
「おい!どういう事だ!?
夜空の神様はどうした!?」
寝室の前でコイチが医者に聞く。
「すいません・・・。
着いたときには・・・、もう・・・ッ」
夜空の神様の物であろう血のついた白衣を着ている医者が泣き崩れる。
「毒殺だ、そうよ。
コイチ、あなたよね?
今日の昼ご飯を運んだのは。」
部屋から出てきたしーどが殺意のこもった目でコイチを見た。
「なっ、毒殺ッ!?
たしかに俺が運んだ!!
だが、俺が殺すわけがない!!
それにこれを作ったのはルゥだろう!!」
コイチが興奮して、そう言う。
「僕が・・・?
もう、茶番はいい。
君たちが、夜空の神様の部屋に入ったのを僕は見たんだ。」
階段から上がってきたルゥが言う。
「言葉には何の説得力もないみたいね」
しーどが、腰にかけた鞘に指をかける。
「俺もお前らと話会う気にはなれない」
コイチも、勢いよく剣を抜く。
「こうなるのが狙いだろうが、しょうがないね。
僕は死なない、罪をかぶせようとしているんだろうが無謀だよ」
ルゥは、そう言いYOYOを構えた。
あまりものオーラに周りの兵士や医者達は、止める事も出来ない。
3人の殺気が頂点に達した。
- 81 名前: ○ 投稿日: 2004/12/12(日) 23:17
- 「やめろぉ!てめぇら!」
サイコの声が聞こえてき、3人は手を止める。
「何してんだ?おい。
いつもの喧嘩とは様子が違うぜ?」
兵士が見守る中、カツカツと音をたてながらサイコが階段をあがってくる。
「仲間同士でッ、
殺しあうつもりかぁッ!!!」
城全体がビリビリと震えているように感じるほどのオーラに3人は動く事も出来ない。
サイコが全員を殴り飛ばした。
「こんな時こそ、
こんな時に信じれないで何が仲間だッ!」
夜空の神様が殺されて一番悲しいのは、一番復讐に燃えるのは、サイコだろう。
「サイコさん・・・
あんたには感謝してる。
それに尊敬している。
だがッ!俺にはもうコイツらを信じる事は出来ないッ!!」
コイチが立ち上がる。
「俺がゆるさねぇ!
もう一度ここで剣を握ってみろ。
その時はッ、容赦しねぇッッ!!!」
鋭い眼光がコイチの足をすくませる。
「てっ、敵軍だあーーーッッ!!!」
伝達係の兵士の叫び声がする。
3人が無言のまま立ち上がる。
しーどが、震えながら背中を向けて歩いていく。
「おい、どこに行く?」
サイコが言う。
「北の街よ。
私はコイツらはもう信じれない。
けど、自分の街は守るわ・・」
「いくお」
しーどの兵達と共に歩き去った。
「俺も東に戻る。
次にここに戻るときは、もう止められない。
絶対にここは渡さない。」
コイチが歩いてゆく。
「サイコ・・・・。
君は人を信じすぎだよ。
奴らが、夜空の神様を殺した。
浦板を自分の物にするためだ。
夜空の神様への恩をこんな形で返すとはね・・・・。最低だよ。」
ルゥも歩いてゆく。
「ここで奴らを殺さなかったことを、
いつか君は絶対に後悔するよ・・」
そして城から三つの戦車が走り去った。
サイコが城の壁を力一杯たたく。
「あいつらが、そんな事するわけねぇ!
クソォッ!!
何でこんな事に・・・・!?」
サイコの拳から血がにじみ出ている。
「サイコさんッ!!
西の街が・・・ッ!!
占領されましたッ!!」
走ってきた兵士が言う。
「なんだと!?西の兵達はッ!?」
サイコは自分の耳を疑いたくなる。
「・・・全滅です・・・。
敵軍は、もうそこまで来ています!」
窓から下を見ると、見慣れない兵士が城門を破ろうとしていた。
「クソオォォッ!!
夜空の神様亡き今、ここを守るのは俺の役目だ!!!
ついてこいッ!戦うぞッ!!!」
中央の紋章をつけた兵士達が剣をかかげた。
- 82 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/12(日) 23:29
- 蝶GJ!!!
- 83 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 00:04
- 「サイコ・・・」
後ろから見ていた由利が心配そうに声をかけてくる。
「由利、お前はここに隠れてな。
すぐに帰ってくる・・・」
サイコが言う。
ダァーンッ!!
城門が破られた。
「行くぞォッ!
全兵!テツぅゥッ!!!」
サイコの声と共に弓が飛び交う。
防城戦の場合、広い場所でかつ高い所にいるので最初のうちは矢を打ちおろす。
しかし、何か違和感があった。
誰より先にサイコがそれに気づく。
「矢が・・・当たってねぇ!?」
敵の兵士達に当たった矢は、そのまま地面に突き刺さっていた。
そしてその兵は煙のように消える。
「何ですか!?あいつらは!?」
兵士が動揺している。
「わからねぇ!
だが!死なないわけじゃないみたいだぜ!
もう敵は目の前だ!剣を持てッ!!」
サイコが合図を出すと、一斉に兵士が走り出した。
ウオォォォォーーーッッ!!!
サイコも剣を握ると敵兵を斬る。
見た目は人間そのものだが、実体がないようだ。
サイコの剣は素振りをしているような感覚ですり抜けていく。
が、そいつらは人間と同じ急所で人間よりもろい。
斬る度に、バスッと音をたてて煙のように消えてゆく。
「こいつはまさか・・・
夜空の神様と同じような・・力・・?」
敵軍の個体個体は、大した強さではなかった。
味方の損害はほとんどないまま、敵は全て消え去っていた。
勝ち名乗りをあげようとサイコが剣を空に掲げようとした瞬間、
再び、城門の前に兵士が現れた。
明らかに、歩いてきたんじゃない。
生成された、という言葉が適切だろう。
サイコは状況を瞬時に飲み込んだ。
「敵は、城門の奥だッ!!
城門を突破しろォッ!!!」
サイコが叫ぶ。
これはもう確実に夜空の神様と同じ系統の不思議な力だ。
夜空の神様はそれを法力と呼んでいた。
夜空の神様は、兵士を生成したりしたことは無かったが、
動物などを出して驚かされたことをサイコは思い出した。
勝利の手段は二つ
法力の使い手を殺すか
法力を使いきるまで兵士を壊し続けるか
後者はまず不可能だろう。
「ちっ、守るための城門が仇となるとはな・・・!!」
- 84 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 00:56
- 少しづつだか確実に兵士が減っていく。
しかし、城門ももう目の前に来ていた。
「後、一息だーーッ!!
押し切るぞッ!!!」
サイコの声にまた兵士達の闘志が沸いてくる。
そこはもうサイコの射程距離だった。
銀色に輝く剣を手に握り、サイコが走り出した。
城門を通さまいと、敵兵がサイコに襲いかかる。
が、味方にはばまれる。
「サイコさん!行ってください!!」
味方の声を背にさらにスピードをあげてゆく。
城内とは比べものにならない程の敵が、あふれかえっている。
その先にひとりの男がいた、明らかに違うオーラ、
そして、その男が手をかざすと空気が集まり兵士が現れた。
あいつだッ・・・!!
サイコの瞳が大将をとらえる。
周りには敵しかいない。
サイコが剣を振る、敵兵が何度も斬りかかってくるがカスリもしない。
バスッバスッ、その音が短い感覚で10回程なった。
サイコの半径1Mほどに敵がいなくなる。
間合いの外から、槍を持った兵がジリジリと近づいてきた。
「・・・・・」
20人程の槍兵に囲まれている。
覚悟を決めたのか、サイコが一歩前に踏み込んだ。
キンッ!!
槍同士がぶつかる音が響く。
サイコの体は宙にあった。
それを見上げようとした兵士達は太陽に目が眩む。
引こうとした槍を踏み台にして、再びサイコが宙に舞った。
剣を高くかかげる。
その先には、敵の大将と思われる男。
サイコには、全てがスローモーションに感じていた。
男が手をあげると、下にいた兵士達がサイコめがけて槍を突く。
いくつだろう、数えるのもバカらしい程の数の槍がサイコを襲う。
サイコの瞳は男を睨んで放さない。
皮膚に冷たい金属がいくつも当たる感触がした。
ザクッ!!
血が辺りに飛び散った。
スタッ
サイコが地面に着地する。
辺りは急に静かになった。
サイコが鞘に剣をおさめる音すら響きわたる。
兵士達は、ひたすら待っていた。
サイコが大将の首をかかげる。
「我軍のッ・・・勝利だッッ!!!」
ワアァァァーーーーッッッ!!!
- 85 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 02:18
- サイコの元に兵士達が走ってくる。
「サイコさあーぁんッ!!」
「凄いよサイコさん!!」
「まるで神だッ!」
「あんたはえらい!!」
祝福の声が飛び交う。
バアァーンッッ!!
兵士達は後ろから聞こえてきた爆音に全員が一斉に振り向いた。
信じられない光景がサイコの目に映った。
さっきまで、そこにあったはずの
浦板城
ガラガラと音をたてて瓦礫が転がる。
いつのまに火薬を仕掛けられていたのか。
城門に気をとられてる隙に?
それとも別の方法で?
真実は誰にも分からないが、サイコには今そんな事はどうでも良かった。
「由利ィッ!!」
城内に残ったままの由利を思い出す。
あぜんとする兵士の間をくぐり抜けて、サイコが走り出した。
「由利ッ!由利ーぃッ!!」
サイコが瓦礫の山を手で払いのけていく。
ガラスなどでサイコの手のひらから血が流れているが、それでもその手を止めない。
「由・・・」
「サイコさん・・・
これでは由利さんは・・もう・・」
見るに見かねた兵士がサイコの腕を掴んでそう言った。
サイコは無言でその場に崩れる。
初めてみせたサイコの涙が由利の大切さを物語っていた。
「グァッ!」
城門から兵士の悲鳴がする。
その先には、新たな敵兵がいた。
油断していた味方は再び剣をとる。
が、一瞬だった。
全員が浦板城を見ていた、敵に背中を向けていた。
体勢を立て直す間もなく、ほとんどの兵士が殺されていく。
さっきと同じで実体の無い奴らだが、
強さが圧倒的に違った。
服装も違う。
「サイコさん、ここは俺がくい止めます!
逃げて・・・・ッ
ッッ!!??」
サイコの隣にいた兵士に剣が突き刺さる。
口から大量の血を吐くと、そのまま崩れた。
「・・・・おい、何だ、てめぇら・・・・
ふざけんなよ・・・・ッ?
ふざけんなよォッ!!!」
「うおぉぉぉーーーォッッ!!!!」
寒空の下そびえ建つ浦板城
永遠に続くように思われた平和な時間
━━この日
サイコは全てを失った━━
- 86 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 02:24
- やべぇ超おもしれぇ。
○さん頑張って
- 87 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 03:02
- その時のサイコの戦いを見た者はいないが、サイコは生きていた。
怒りと悲しみのあまり、戦った記憶はほとんど残っていない。
ただ、気がついたときには味方の死体が重なる戦場にひとり立っていたのだった・・
北のしーど
東のコイチ
南のルゥ
3人が帰ってくることは無かった。
西の街には敵が残っていた。
そいつらも同じように法力を使えるのだろう。
見えない壁が西の街を囲っていた。
サイコを恐怖するように、
それ以来、西の街から攻めてくることはなくなった。
それから、幾度もの抗争があった。
サイコの街は奪われた。
仲間も、愛する人も失った。
それでもサイコは浦板を守り続けていた。
そして、数年の時が経つ。
笑いあった
喧嘩もした
お互いの背中を預けた事もある
何度も命を助けられた
馬鹿な事もしたし
それを夜空の神様に怒られた事もあった
誰よりも近くにいた
誰よりも信じていた
・・・誰よりも浦板を愛していた
浦板ラブストーリー
- 88 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 10:11
- サイコさん!うぉおおおおおおお!!
- 89 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 11:48
- 感動した(つД`)
- 90 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 12:08
- 今後の展開が気になる!
神すぎます!職人さん!
- 91 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 19:06
- 期待age!!1!!
- 92 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 21:18
- ガタンゴトン・・・
無機質な機械音が聞こえてくる。
その音にディズィーは目を覚ました。
「ここ・・・は?」
地面から伝わってくる振動が、何か動いている物に乗っている事をディズィーに分からせた。
「えっ!?」
起きあがろうとしたが、手足がひっぱられ動かない。
暗くてよく見えないが、冷たい、金属のような感触に気づく。
どうやら縛られているようだ。
「どうなってるの!?
誰かッ!誰かいませんかッ!?」
ディズィーが叫ぶと、暗闇の中何かが少し動いた。
「お目覚めですか、姫・・」
男の声がする。
「!!??」
ディズィーは聞き覚えのある声に震え上がった。
「お帰りなさいませ。
もう逃げないでくださいよ?
あなたは大事な・・・」
「兵器なんですから・・」
不気味に響くその声に、ディズィーは気が狂うほど恐怖した。
が、力が上手に入らない。
「もうすぐ街に着きます。
あなたを一番上手に使えるのは・・
私たちしかいない・・・
北の奴らに奪われた時は、ひやっとしましたが、奴ら何も分かってない・・
・・兵器に意志なんていらない。」
ディズィーの力が抜けていった。
「さて、リーダーがお待ちだ。
早いとこ街に戻ってくれ。
少々揺れますが、我慢してくださいね?」
男がそう言うと、戦車が西の街へ走り出した。
ガタンゴトン・・・
- 93 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 21:45
- 西の街、今は見えない壁のせいで外から中に入ることは出来ない。
人っ子一人いない街中を、戦車が走っていた。
「ただいま帰りました。」
さっきの男が戦車から降りる。
運転席にいた人も無言で降りてきた。
が、男が手をかざすとバスッと音をたてて消える。
「ご苦労。」
誰もいない街から人の声が響く。
マイクを通しているようだ。
男は戦車のドアをあける、中から気を失っているディズィーを出した。
「南のルゥの誘導とディズィーの捕獲に成功しました。」
男がそっとディズィーを地面に置くと、その体が地面に吸い込まれてゆく。
「北のしーど、東のコイチ、それぞれに向けた誘導も成功した。
もうじき、奴らの戦いが始まるだろう」
マイクの声が響く。
「気がかりなのは、夜空の神様の力ですね。」
男が戦車に手を当てると、それも地面に吸い込まれてゆく。
「大丈夫だろう。
あれだけ探して見つからないんだ。
もう、消滅したものとみて間違えない。
リーダーが待っている、入れ」
マイクの声が終わると、男の体が地面に消えた。
「皆、浦板を取り返すのよ!」
しーどの声が兵士をかきたてる。
北の紋章を高くかかげ
その群は、浦板城跡地に向けて進んでいた。
ザンッザッ!!
兵士達が一斉に足をそろえる。
「もう俺は我慢できない!
ここの所落ち着いてオナニーもできない!
時は満ちたッ!行くぞ!
浦板城へッ!!」
コイチの声を聞き、兵士達が足並みをそろえて歩きだした。
「これからの戦いは、今までとは違う・・・。
本当に、昔の仲間を殺すことになるかもしれない。
けれど、引くことは出来ないッ!!」
「僕達が、浦板を守るんだッ!!」
ルゥを先頭に、南の全兵士が浦板へ向かった。
浦板全体が揺れる程の足音が鳴り響いていた。
- 94 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 21:47
- 由利って俺の姉さまの名前に近いよ!
由梨・・・読みは同じか・・
- 95 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 21:53
- 感想蝶ありがとうございます!!
嬉しいのです。
由利、しっくりくる女性の有名人やコテが無かったから適当に付けた・・OTL
- 96 名前: ○ 投稿日: 2004/12/13(月) 23:05
- そこには昔、浦板城があった。
それぞれの戦車の上に3人が立っていた。
もう肉眼でとらえきれる程の距離にいる。
今は恐ろしい程静かだが、数分後が数秒後かには、ここは戦場と化すのだろう。
3人が手を空にあげる。
それが振り降ろされた時、戦いが始まるのだ。
「まてぇッッ!!!」
サイコが叫ぶ。
3つの軍の中央に走ってきた。
「どうしても戦うのかッ!?
仲間を殺してまで・・・
そんなことはッ!!
夜空の神様は求めていないだろッ!?」
枯れてきた喉から振り絞って声を出す。
「コイチィッ!!
お前がルゥの民を撃ったのか?」
サイコが叫び続ける。
東の兵士達のざわめきが起こる。
「何を言ってるんだ!?
俺はずっと東の街にいたッッ!
しーどの奴が、無力な街人を傷つけたんだ!!
戦う理由はそれで十分だッ!!」
コイチの声に北と南も騒ぎだす。
「馬鹿な事をッ!!
今更、正義なんて語らないで!!
ルゥが私の街人を殺した・・・。
それは紛れもない事実よ!!!!」
お互いがお互いの言い分を放つ。
罪をかぶせようとしているとしか思えない行為に兵士の怒りは頂点に達していた。
「落ちついて・・ッ!!
考えろよッ!!!!
言っただろ・・・!?
西の奴らは・・・兵士を作れるッッ!!」
サイコの声が響いた。
「まさか」「そういえば、あの時」
兵士達に動揺が起きる。
思い返してみれば、そうだった。
あの時から全ておかしかった。
サイコも夜空の神様の時は気づかなかったが、
ここに来て、3人のつじつまのあわない言葉を聞き、気がついたのだ。
「剣を置けッ!!
本当の敵は・・・西の・・・・」
ドッドドドドッ!!
サイコの言葉が終わる前に、地面が激しく揺れ始めた。
立っていられることも出来ずに、ほとんどの兵士が地面に膝をつく。
サイコも例外ではない。
大地が水面のようにユラユラ波をたてている。
その中から、ゆっくりと、
大きな黒い城が生えてきた━━。
ドシーンッ!!
地面の揺れが止まる。
「ど、どうなってんだ・・・!?」
サイコが城のふもとを見ると、数人の人影が見えた。
城の影のせいでよく見えない。
その中の一人がゆっくりと歩いてきた。
「あのまま、潰しあってくれれば助かったのに。
また、邪魔をするのね・・・」
一歩一歩、前に進んで来る。
「・・・サイコ。」
今、太陽がそいつの顔を照らした。
「・・・・由・・・利・・・?」
- 97 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/13(月) 23:35
- アツい展開キター!!
蝶応援してます
- 98 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/14(火) 00:16
- この人の戦闘蝶あつい
それにラブシーンも蝶うまい
蝶期待してます!!
- 99 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/14(火) 04:35
- あ〜 マジいいわぁ〜w
職人さん 素敵すぎです
続きを・・・ 読みたい・・・!!
- 100 名前: JEO 投稿日: 2004/12/14(火) 04:47
- 100!
- 101 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/14(火) 13:23
- サイコっておじゃるまるに出てくる金持ちの親父に似てるやつのこと?
- 102 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/14(火) 15:14
- 蝶age
- 103 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/14(火) 17:56
- 何そのわかりづらい例え・・・
- 104 名前: ○ 投稿日: 2004/12/15(水) 00:49
- 城の影となって、コイチやルゥやしーどの位置からは人影すらも見えない。
女がゆっくりと歩いてくる。
・・・見間違えるはずがない。
「な・・由利・・?
生きて・・いたのか?
ど、どうしてこんな所に・・?」
サイコの脳裏には、否定したくなる事しか思い浮かんでこない。
「サイコ、あなたの考えてる通りよ」
黒い髪をした女がサイコの目を見る。
「嘘・・だろ・・?
あれは、お前が・・やった・・のか・・・?」
サイコが枯れた声で言う。
「・・・あれ・・?」
太陽が雲に隠れ辺りが暗くなる。
「夜空の神様を殺した事?」
風が女の黒い髪をなびかせている。
「浦板城に爆弾をしたけた事?」
サイコの体がふるえている。
「・・3人を憎ませあわせた事?」
女は今まで見たことがないような笑みを浮かべサイコを見ている。
「なッ、う、嘘・・・ッ
操られているのか!!??
脅されているのか!!??
なあ!由利ッ!?」
サイコは女の方へ駆け寄ろうとするが、体がいうことをきかない。
恐怖しているんだろうか。
「クスッ・・・
サイコ、あなたのせいで全てがくるったの。
あの時、浦板は私たちの手に入る、
・・はずだった。
夜空の神様を殺害したら楽なものだと思ってたわ。
けど、あなたが邪魔をした。」
女がサイコを睨みつける。
出会った時とは何もかもが違う。
「いつからだ・・・ッ!?
いつから、お前は西の奴らとッ!?」
怒りよりも遙かに強い悲しみにサイコは震えているのだろう。
女は黙ったままサイコを見ている。
「答えろッ!!答えてくれよッ!!!
由利ィッ!!!!!!」
サイコが消えそうな声で言う。
「リーダー、周りの兵士達が立ち上がってきています。
そろそろ戦闘体勢を。」
後ろから男の声がする。
その声を聞くと女が振り向いた。
「分かったわ。」
女がザッザッと足音をたてて歩き出す。
サイコは自分の耳を疑った。
ザッザッザッ
女は二・三歩進むとまたサイコの方を見る。
「いつから裏切ったか・・って?」
女が言うと急かすように城の下に立っている男が声をかけた。
「あゆみさん急いでくださいよ!」
その声に女はニヤリと笑う。
「なっ、・・・ぁ、あゆみ・・・?」
「出会った時からよ・・、サイコ。」
女は再び歩きだした。
ザッザッザッ
- 105 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/15(水) 00:52
- 続きキター!!
超GJ!ほんとすごい才能です
- 106 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/15(水) 00:53
- そこから騙してたのかーーーーーー!!!!!
- 107 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/15(水) 00:58
- ワラタ
- 108 名前: ○ 投稿日: 2004/12/15(水) 01:34
- 「ま、待てッ・・・!!」
サイコが震える体を持ち上げて由利、いや、あゆみの方へ走り出した。
あゆみはサイコの方を見向きもせずに歩き続けている。
周りの兵士達はもう戦闘体勢になっていた。
本当の敵がやっと分かったのだ。
城の下にいる男達が手を前にだす。
「私たちが何の策もなくココに来たとは思ってないよね?」
あゆみがつぶやく。
「サイコ、あなたの力に勝てる兵器を手に入れたの。」
あゆみの言葉にサイコが気づく。
「ディ・・ズィー・・!?」
「ご名答。
ただし無理矢理戦わせたりはしないわ。
姫は、城の中で丁重に扱っているの。
ただ、その力を吸い続けているだけ」
サイコとあゆみの間に兵士が現れる。
あゆみの言葉にサイコが怒り狂う。
もう、あの時の由利ではない。
しかし、その怒りはやはりどこか悲しい。
「うおおぉぉぉッーーっ!!!」
サイコの圧倒的なオーラに生成された兵士達の体が透けてゆく。
それを止めようと、
あゆみがサイコに手をかざした。
「これは私とディズィーの力よ。」
ビリビリと大気が震えている。
「自分の愛した二人の女に殺されるなんて・・・・
幸せね」
あゆみが微笑むと、サイコの周りの地面がえぐられるようにはじけ飛んだ。
- 109 名前: ○ 投稿日: 2004/12/15(水) 01:54
- 感想蝶ありがとーーーーーー!!!
いや、ほんとありがとうございます。
そろそろ終わりも近づいてきた悪寒。
次は、誰×誰を書こうかな〜
とか妄想してたりするんです。
すいませんOTL
- 110 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/15(水) 21:24
- 期待アゲー
- 111 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/15(水) 21:26
- 111
- 112 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 17:36
- 「ぐあぁーーーーッ!?」
サイコの体が地面とともに後方にはじけ飛ぶ。
それが、開戦の合図となった。
たくさんの兵士を横目に、あゆみと3人の男が黒い城に入ってゆく。
「奴らを城に入れるなぁーー!!!
弓を放てッ!!!!!!!」
コイチの叫び声とともに、黒い城に向かって弓が飛んでゆく。
空が見えなくなるほどの弓が城を襲う。
が、どれもあゆみ達には当たらない。
「サイコっ!!大丈夫!?」
土まみれになったサイコの体をしーどが揺らす。
周りにはコイチとルゥも寄ってきている。
「・・・久しぶりだな・・・・。」
「え?」
「こうやって・・・
四人がそろうなんて、な・・」
サイコが呟く。
コイチとルゥは兵士達に指示を下している。
「今は、そんなことを言ってる場合じゃないでしょ!?」
テスタメントなしーどが言う。
「そう・・だな・・」
サイコはしーどの手を握ると、ゆっくり立ち上がり服についた土を払う。
曇り始めた空を仰ぐと決意を固めた。
「サイコ、状況が悪いよ。
西の奴らが城に入った。」
ルゥが背中を向けたままサイコに話しかける。
「・・・あいつを・・・
奴らを殺すしか・・ないな・・・」
サイコは、やはりどこか悲しそうである。
3人は見えていなかったので、由利がいることも知らない。
言っても混乱するだけであろう。
「何か手があるんですか?」
コイチが言う。
「あぁ・・・細かいことは全て後で話そう。
とりあえず付いてきてくれ。
質問は無しだぜ?」
サイコはそう言うと走り出した。
「奴らを叩く!!
時間を稼いでくれッ!
行くぞ、コイチ、しーど、ルゥ!!」
サイコの声に兵士達の士気があがる。
3人は黙ってサイコの後を追った。
- 113 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 17:46
- 続きに期待
- 114 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 17:57
- 「うわっ、何コレ!?」
「本当にこんなのが飛ぶの?」
「格好いい〜」
3人がぎゅうぎゅうになりながら小型の飛行機に乗る。
「飛ぶ!!
俺も昔は驚いたぜ。
つかまれよ?行くぜッ!!!」
エンジンが悲鳴を上げながら、飛行機を持ち上げた。
それなりにスピードも出ている。
黒くそびえ建つ城が四人の目に映る。
兵士達の上を通り抜けてゆく。
「あれ?もしかして・・」
「サイコ、文句言っていいかな?」
「サイコさん格好いい〜」
3人は、迫りくる黒い城に状況をつかめたようだ。
「何も言うなって言っただろ?
歯を食いしばるといいぜッ!!!」
飛行機のスピードは一向に緩まない。
飛行機のスピードは一向に緩まない。
バアァーーンッ!!!
外では兵士達がハッスルしている。
久しぶりに見る4部隊隊長達の姿に士気がさがる要素なんてなかった。
黒い城に大穴があいている。
パラパラと音を立てて壁が崩れる。
「ふぃーー。どうにか入れたみたいだぜ。」
サイコが立ち上がる。
中は薄気味悪く真っ暗だが、壁の穴のおかげでうっすら明るい。
「無茶しないでよー!」
しーども立ち上がる。
「まぁ悪くはないけどね、結果は。
聞きたいことはいっぱいあるけど、戦いが終わってからだね」
ルゥが立ち上がる。
「サイコさん、行きましょうか!」
コイチが立ち上がる。
「・・・早くしないと外が危険だしな。
何人いるか分からねぇが、俺が見たところは四人はいたぜ。」
サイコは申し訳なさそうにボロボロになった飛行機に手を置く。
「さぁ・・・・行くぜッ!!」
四人が闇の中に歩きだした。
- 115 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 18:20
- 「待てッ!!」
サイコが走りだそうとするのを、しーどが止める。
サイコは自分の目に映った物に感情的になっていたが、三人を見て落ち着く。
「・・どう思う?」
コイチが先を見ながら言う。
「あからさまに罠ね。」
しーどが言う。
「まぁ僕も同じ意見だけど・・」
ルゥがため息をつく。
「・・・行くしかねぇな。
奴らは時間を稼げば勝ちだ。
それを考えた作りだろう。」
サイコも先を見て言う。
漫画かゲームのようだ。
目の前には四つの分かれ道。
そして先刻、四人の敵がその奥へと走っていくのを見た。
「罠だけど、やるしかないね。」
ルゥがYOYOを構えると歩きだした。
が、その肩をサイコが掴む。
「・・・?どうしたの?サイコ。」
少し強めに掴まれた肩をルゥが払う。
サイコは言葉を探したが特に思いつかない。
「・・悪いが、そっちには俺に行かしてくれないか?」
先刻サイコの目にだけ逃げてゆく敵が映った。
ルゥは理由も聞かずに他の道に行く。
「じゃあ全ては生きていたらね。」
カツンカツンと音をたてて消えてゆく。
「私も行くわ。
そろそろ兵士達が危ないだろうし、急がなきゃ・・・」
しーども赤いカマを背負い走り出す。
「俺も行きますね。
・・・じゃあまた後で。」
コイチも闇に消えていった。
サイコは一度深くため息をつくと、自分の道の先を睨みつけた。
「待ってろよ・・・ディズィー・・」
- 116 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 18:36
- キターーー!!
- 117 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 18:43
- 曇り空の下そびえ建つ黒い城。
兵士達の叫び声がこだまする。
「薄気味悪いな・・・」
コイチが先を急いでいた。
「サイコさん・・何か様子がおかしかったな・・・。」
走っていると少し広がった空間に出る。
コイチが立ち止まると、辺りがパッと光った。
「へえ、案外堂々としてるんだな」
コイチがちょうど部屋の反対側にいる敵を見て言う。
「逃げる理由がない。
お前達が入ってきた事はイレギュラーだが、所詮しれている。
唯一、恐れているサイコも作戦通りディズィーのいる部屋に向かった。」
部屋は何の味気もない黒い壁のみで構成されている。
「なめてくれるな。
こう見えても俺も四部隊隊長の1人。
ただの雑兵と比べてたら痛い目見・・・」
軽い爆発にコイチの言葉がかき消される。
「痛い目に・・・何だ?」
男が勝ち誇った顔で呟いた。
が、煙の中立っている人影を見て再び顔を引き締める。
「罠があるとは思っていたが、
この程度しか思いつかないのか・・」
コイチが少し後ろで立ち尽くしている。
「お前達に正々堂々なんて求めてない。
精一杯もがくんだな」
キンッ
鞘から剣を抜く音が部屋の壁に跳ね返る。
「東のコイチ、いざ参る!!」
- 118 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 19:16
- 迫りくるコイチに敵が素早く剣を抜く。
キンッキンッ
鋼同士がぶつかりあう音が何度も響く。
コイチのテクニック溢れる剣技に敵は圧されっぱなしだ。
法力どころでは無い。
右手一本でコイチは敵の剣をさばく。
「ッ・・」
コイチがわざとらしく相手と少し距離をあけた。
「得意の法力とやらは、どうした?」
コイチがそう言うと敵は簡単に挑発に乗り手をかざす。
次の瞬間、爆発が起きる。
「ハッ、面白い奴だな。」
それを軽くかわして右手でコイチが斬りかかる。
敵はかろうじてそれを防ぐが力で圧され体が大きくのけぞった。
コイチの左手が腰にある鞘を掴む。
「おい、隙だらけだな。
俺の二つ名も知らないのか?」
キンッ
再び剣を抜く音が壁に跳ね返る。
左手に持った剣。
「テクニシャンコイチだ。
・・・まぁ、覚えなくていいがな。」
「あ〜、もう!めんどう!」
しーどは襲いくる兵士を相手にしていた。
赤いカマが暗闇の中、薄黒く光る。
「罠っていうか、ただの時間稼ぎじゃない!!
いつになったら追いつけるのよ!!」
バスッバスッと音をたてながら走り続ける。
30体程斬っただろうか。
しばらくして兵士がいなくなった。
気づけば少し広まった場所にいる。
しーどは人の気配を感じカマを持つ手に力を加えた。
「どんな相手でも死ぬ気で殺します。
それが私のラブですから。」
暗闇から男の声が聞こえてくる。
まだ闇に慣れないしーどの目がかろうじてそいつをとらえた。
「この部屋・・罠がたっぷりありそうね。
暗闇に乗じて何かする気かな?」
赤いカマを相手に向ける。
「北のしーど・・・いざ参るわッ!!」
- 119 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 20:26
- しーどは強がるも罠に恐れて動きづらい。
相手は明らかに誘っている。
「どうしたんですか?
暗闇に怖じ気づきましたか?」
何事も無くしーどの方に歩いてきた。
しーどが構える。
相手が手のひらをしーどに向けると同時に辺りが爆発した。
「キャァッ!!!」
しーどはかろうじて直撃を避けたが、左手が巻き込まれ血が流れている。
「そこ。」
しーどの方にまた手のひらを向ける。
暗闇で見えないのは相手も同じだろう。
声と音に反応しているのか。
次は爆発が起きる前に運よくかわした。
が、避けた先でカチッとスイッチを踏んだような音がなる。
「ッ!?」
罠が仕掛けられていたのか。
「アハハ、かかりましたね?
私は、この部屋にある罠の位置などは全てからだが覚えています。
今あなたがかかった罠も、あなたが捕まっている位置もね。
この一撃で殺して差し上げます。」
「それが私のラブですから」
男が手のひらを前方に向けた。
爆音が響く。
「!?」
男が首もとに当たる冷たい感触に気づく。
「なっ、い、いつの間に!?」
背後に気配を感じるが首に当てられたカマのせいで振り向くことはできない。
しーどは痛そうに左手をぶら下げている。
「・・暗闇があだとなったわね。
見えないと分かっていたら、私にも手があるの。
バーストを使っても暗闇で見えなかったでしょ?」
「見えなかった!?な、何を・・・」
ザシュッ
血が辺りに飛び散った。
「君たちはどうしてこんな事をするの?」
ルゥが目の前にいる敵の攻撃をかわしながら問いかける。
「強者が弱者から奪うのにッ
理由なんているのかな!?」
敵がいう言葉が虚しくなるくらいにルゥは軽々と攻撃をかわす。
「そう・・・
やっぱり君たちの戦いは全部自分のためなんだね。
別に手を抜こうとも思ってなかったけど・・
本気で君を殺そうと思うには十分の憎しみを得られたよ・・・」
ルゥのYOYOが刃をむいた。
- 120 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 20:58
- 静かな黒い部屋にサイコがいた。
部屋の奥にディズィーがいる。
ぐったりと倒れていて目を覚ます気配も無い。
あゆみが言っていたとおり力を吸われた感じだ。
すぐに駆け寄りたい。
が、目の前にいる敵に殺意を向けなければならない。
一瞬の油断で全てが終わってしまいそうな空気。
あゆみがサイコを睨みつける。
「やっぱりあなたが来た・・・。
サイコに私は殺せないよ・・」
あゆみが無邪気に笑いかける。
油断を誘ったのだろうが、その笑顔が逆にサイコの決意を堅くした。
あの時と同じ顔で笑う由利が、今までが全て本当に偽りだった事をサイコに伝えた。
「毎日一緒にお城に行ったよね。
サイコが帰ってきたらご飯を作って待ってた。
あのソファーも二人じゃ狭かったね。
サイコと会ったのも、今日みたいな寒い日だったよね?」
あゆみが優しくそう言う。
「!!」
急に驚いた顔をしてあゆみがサイコの後方を見た。
サイコは振り向かずにあゆみを見ている。
「サイコさんッ!!」
コイチが走ってきた。
「なっ、由利さん・・・ッ!?」
あゆみを見てコイチが言う。
コイチがサイコの隣まで来る。
それと同時にコイチの頭が飛んだ。
バスッと音をたてて消える。
サイコは一瞬の隙も与えずに再びあゆみに殺気を当てた。
「なっ、どうして・・分かっ・・・」
あゆみが呟く、一歩ひいてしまう。
サイコがそれに対応するように一歩前に出た。
「笑いあった
喧嘩もした
お互いの背中を預けたこともある
何度も命を助けられた
馬鹿な事もしたし
それを夜空の神様に怒られた事もあった
誰よりも近くにいた
誰よりも信じていた」
ビリビリと空気が震えている。
「誰よりも浦板を愛していたッッ!!!」
- 121 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 21:01
- もっと〜〜もぉっとぉ〜〜ぉぉぉぉ!
続きかいてくださいね(*^∀゚)
- 122 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 23:02
- あゆみが一歩ひいた隙を逃さなかった。
サイコが急激に距離をつめる。
一瞬だ。
あゆみに法力を使うという選択に至る暇も与えずに、サイコの剣が胸に突き刺さった。
その感触にサイコは涙を流す。
「・・・・」
無意識のうちに涙が流れていた。
結果的にあゆみは自分の仕掛けた罠に自分でかかってしまった。
サイコを油断させようとした。
コイチを完璧にコピーしていた。
それなのに、サイコに一瞬で見破られてしまった。
血が抜けて冷たくなってゆく体、
意識もだんだんと遠のいてゆく。
あゆみはまだかろうじて開く瞳の先にいるサイコを見た。
「やっぱりサイコは・・・
人を信じすぎだね・・・」
その言葉にサイコは無言で立っている。
非情を貫こうとしているのだろうが、涙が頬を濡らしていた。
「・・・ありがとう・・」
サイコはあゆみの言葉を背中に、ディズィーの元へ向かった。
・・意識はまだ無いようだ。
剣で鎖につながれた腕と足をはずす。
そのままゆっくりとディズィーを持ち上げた。
ゴゴ
「・・・?」
ゴゴゴゴゴッ
何か様子がおかしい。
入ってきた扉の方を向くと、それは跡形もなく消えていた。
「え!?まさか・・・城が・・
崩れているのか!?」
その言葉は適切ではない。
正しくは消滅しているのだ。
この城は、あゆみの力によって生成されたものだった。
これはあゆみが事切れたあかしでもあった。
「げっ、やばいぜ・・・。」
この部屋に逃げ場がなくなった。
あったはずの道も無い。
サイコはディズィーを優しく抱きかかえた・・・。
ゴゴゴゴゴッ
外から見ても明らかに分かるほどの早さで黒い城が消えてゆく。
もう周りに敵はいない。
兵士たちはただ、曇り空の下消えてゆく黒い城を見守っていた。
「キャアーーーッ!!」
「死ぬ死ぬ死ぬーー!」
「ちょっ、お前らサイコさんは!?
サイコさんは!!??」
3人が城から出てきた。
その直後に入り口が消える。
あたりを見渡すがサイコはいない。
コイチがすぐさま振り向いた。
「サイコさぁーんッ!!!!」
- 123 名前: ○ 投稿日: 2004/12/16(木) 23:43
- 「行くか・・」
ディズィーをそっと置くと、壁の方へ歩いた。
「どらぁっ!!」
全ての力を込めて壁に拳をぶち込む。
破壊音とともに、大きな穴があいた。
外から急に吹き付けてきた風に体が冷える。
もう一度ディズィーを抱えると下を見た。
たくさんの兵士たちが小さく見える。
「高ぇな・・・。どう考えても死ぬぜ・・
せめて・・」
ディズィーを強く掴む。
「ディズィーだけは・・」
ゴゴゴゴッ
サイコがそこから飛び降りた瞬間、さっきまでそこにあったはずの黒い城は跡形もなく消滅した。
雲の多い空に二人がいた。
下では兵士たちがキャッチしようと落下点をうろうろしている。
「ディー・・・」
急速に地面が近づく中、サイコがディズィーを胸に強く抱き、呟いた。
(こいつだけは死なせない・・・!)
空から舞い落ちた一粒の白い雪がディズィーの鼻に乗り、音もなく消えていく。
それに反応するように、うっすらとディズィーの紅い瞳が開いた。
パアァッと音をたてて淡く光る蒼い翼。
「・・サイコさん・・?」
ディズィーは顔は見えないが、抱きしめられた腕と匂いで彼だと感じた。
二人の体がフワリと空を揺れている。
「おはよう、ディー・・・」
白い雪よりもゆっくりと二人の体は落ちてゆく。
「ぁ、おはようございます・・・、」
強く抱きしめられた腕は少しも緩みそうにもない。
少し戸惑いながらもディズィーがサイコの背中に腕をまわした。
舞い散る蒼い羽
舞い落ちる白い雪
兵士たちが何やら叫んでいる。
下から聞こえる声に急に恥ずかしくなり二人は腕をゆるめた。
「うおっ!」
上空にいたことを忘れ、手を離してしまいそうになる。
ギリギリのところでディズィーがサイコを掴んだ。
その時、二人の目があった。
ディズィーの紅い瞳は涙で赤く染まっている。
「・・なぁ・・ディー・・?」
景色全体が真っ白になってゆく。
「はい・・?」
(エンディング)
サイコモード サイコモードだぜ サイコモード サイコモード
サイコモード サイコモードだぜ サイコモード(フニャーン♪ フニャニャン?)
フルフルフルムーン(キスキス…) ディズィー…(キスキス…)
や・く・そ・く・だ・ぜ(キスキス…) 俺の奥さん(キスキス…)
サイコモード サイコモード サイコモード サイコモードだぜ
「キス・・したくなっちゃったぜ・・」
「・・」
白い雪の降る中で、二人の唇が重なった。
完
- 124 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 23:45
- サイコモードキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
- 125 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 23:53
- 完結激しく乙!
- 126 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木) 23:53
- 何かギャグなようで蝶感動しました(ノ_・。)
やべえええええええええええええええ
これやべえええええええええええええええええええ
よし、読み返そう。
そうしよう。
- 127 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:01
- みずぴーマダー・・・
- 128 名前: ○ 投稿日: 2004/12/17(金) 00:11
- やった、完結した。
最後の方はいっぱいいっぱいでしたが、最後まで付き合ってくれた皆様に蝶感謝。
蝶感謝!!
まだまだスレ残ってるし、
引き続きぜんぜん違う話で、浦板ラブストーリーを書こうかなぁとか思ってたりします。
誰×誰を書くか
どんな話にするか
などなど考えたら書くので、また読んでいただけたら蝶幸せです。
ちなみに今選択肢が無いので、良かったら
「コイツとコイツがイイ!!」
みたいな感じで選択肢を増やさしてください。
おわり。
- 129 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:14
- 今回出た人と違う人がいいな…火九お兄ちゃんとかw
どうでもいいけど「どらぁっ!!」ってジョジョですか?(・∀・)ニヤニヤ
- 130 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:22
- うらいた史上初の超神スレ
- 131 名前: 水 投稿日: 2004/12/17(金) 00:23
- >>○
お疲れ様。面白かったよ。
- 132 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:27
- みずぴここ見てたんだ
- 133 名前: 水 投稿日: 2004/12/17(金) 00:32
- 見てたよ。
- 134 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:41
- 良いものは良いと認める男!
みずぴー!
- 135 名前: ○ 投稿日: 2004/12/17(金) 00:43
- 俺、殴るときのかけ声オラァとドラァとムダァとアリィとボラァしか知りません。
予想以上に読んでくれてる人がいて蝶うれしいです。
蝶うれしいです!!
でも、なかなか次の案が思い浮かばない・・
女性をグレイプニール使うとか・・・?
うわっ・・だめっぽい・・OTL
- 136 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:47
- リクエストとしては実際に絡まない人たちを絡ませるのはやめてほすぃ
- 137 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 00:50
- そんなこと言ったら女性キャストと絡める人超少なくなっちゃうよ!!
- 138 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2004/12/17(金) 01:00
- (゚д゚)↑ノ シード ルゥ コイチ ノ サイドストーリー ナンカハ ナイノカシメ?
- 139 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 01:29
- ヒロインにみかたんを…w
- 140 名前: サイコ (DizzyUYI) 投稿日: 2004/12/17(金) 02:04
- 終ったようなのでずっと言いたかった事を。
「これは同姓同名の別人ですよね?w」
ともあれ俺(?)で遊んでくれたのは嬉しいぜ。
だが、サイコモードは俺の黒歴史なので以後禁止だ。
- 141 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 02:20
- きちんと書ききったのはえらいし、おもしろかったよ
- 142 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 04:24
- 火九さんの話が見てみたいです。
- 143 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 05:08
- 面白かった!
次はみかたんの話みたいな(・∀・)
- 144 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 09:01
- チョコメイ×しーぽん×鈴欄+オタメガネ?オタメガネでキボンヌ。
今回サイコモード以外はシリアスだったから、上の三人でお笑い短編集見たいな。次までの繋ぎ程度でどうですか?
- 145 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 11:27
- 塩澤出してね(・∀・)
- 146 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 11:55
- 神スレ認定
- 147 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 13:42
- みかたんキボンヌ。
しーどもキボンヌ。
綺麗どころ出そうよ。
- 148 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 14:30
- しーどは綺麗じゃない
- 149 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 14:45
- やっぱニール様だな
- 150 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 14:48
- 綺麗だよ
- 151 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/17(金) 22:49
- あげ
- 152 名前: ○ 投稿日: 2004/12/18(土) 00:32
- う〜ん。
火九兄は使ってみたいけど、難しそうですね。
問題はヒロインがいないなぁ・・・・
ギャグは書けないような気がします。
でも、やってみるかもしれないw
やっぱり問題はヒロインなわけです。
サイドストーリーは・・・・
まったく考えてもいないOTL
- 153 名前: ○ 投稿日: 2004/12/18(土) 00:33
- あげちゃった・・・OTL
火九さんで書きたい気がしてきた。
使いこなせないような気もしてきた。
ヒロインがヒロインがあぁーー
- 154 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 00:35
- そこでニールタンですよw
と足フェチが行って見る。
- 155 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 00:36
- うらいたで誕生した適当な女性キャラ…
夕子さん(ヲタメガネスレ)
- 156 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 02:55
- 亀子
- 157 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 12:58
- ンノレ
- 158 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 16:34
- Tさん頑張れ
- 159 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 17:22
- 上げておきますね
- 160 名前: ○ 投稿日: 2004/12/18(土) 21:30
- *注意*
これらの話は実際の人物とはあまり関係なく、フィクションです。
細かいことは気にしないでください。
- 161 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 21:44
- 新作来るかッッッ!
- 162 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 21:48
- ニールタン(*´д`*)ハァハァ
- 163 名前: ○ 投稿日: 2004/12/18(土) 22:02
- 科学に祝福された世界、『浦板』
そのシンボルである、世界の中心に建つ巨大な像。
生まれては消えてゆくはずだった命。
1Fづつ流れる時間・・・。
このだだっ広い世界で、
2人の時間が動き始めた━━。
浦板ラブストーリー
- 164 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 22:06
- 期待age
そそられる導入だ
- 165 名前: ○ 投稿日: 2004/12/18(土) 22:31
- 分厚い雲に覆われた夜空の下にひとつの町があった。
辺りは暗く、静まり返っている。
街角の灯に照らされて、人の陰がゆらりとうごめいた。
アスファルトを踏みつけて歩いていく。
暗闇であまり見えないが、男のようだ。
そのまま、さらに暗い路地に入っていった。
しばらく歩いていると周りが少し明るくなったので、
男は急に立ち止まり空を見上げた。
雲に隠れた黄色い月が姿を現している。
「見てみな、月が綺麗だ・・・」
男が手をのばすと、長い袖の影から何かが飛び出した。
「シメッ!」
空を見上げて高く鳴く。
リスのような小さな獣だ。
毛並みはフワフワな感じだが、毛色は暗くていまいち分からない。
「星は見えないなぁ・・・シメジ?」
男は優しく二本の指でその獣の背中を撫でる。
「シメェ〜・・」
それに反応し、くすぐったそうに身を揺らした。
どうやら、この生き物はシメジと呼ばれているらしい。
男は優しく笑うと再び空を見た。
が、雲に隠れて月さえ見えなくなる。
「・・・いくかぁ・・・・」
男がまた袖を伸ばすと、シメジが中に潜った。
男が、アスファルトを踏みつけながら暗闇へと歩いていった。
- 166 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/18(土) 22:39
- 実にそそられるなぁ…
- 167 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2004/12/18(土) 23:21
- (;゚д゚)チョウタイサク ノ ヨカンシメ
- 168 名前: ○ 投稿日: 2004/12/19(日) 00:01
- 街角の小さな寂れたバー。
扉には、『CLOSED』と書かれた看板が掛かっている。
男はその中に入っていった。
中は自分の体すら見えないほどに暗い。
慣れているのか、何も見えない部屋を当然のように歩いていく。
よく見ると部屋の奥の床からうっすらと光が漏れていた。
あれに向かって歩いているようだ。
キイッ
男が床に手を伸ばし引っ張ると、ゆっくりと音をたてながら開いた。
いっきに光が漏れる。
素早くそこに降りると、床をふさいだ。
どうやら地下があるらしい。
地下には、上の部屋よりも全然大きな空間があった。
生活感が溢れている。
「あ、お帰り、お兄ちゃん。」
中にいた男がパイプを片手に声をかける。
「おう、蠅。ただいま。」
「シメッ!」
男の赤いコートの袖からシメジが飛び出してくる。
蠅に向かってシメシメと吠えた。
「わっ、ごめんよ。シメジ!
ただいま!」
蠅が少し怒り気味なシメジをなだめるように撫でる。
男はそれを横目に、カウンターのようになっているテーブルの椅子に座った。
赤いコートをテーブルにかける。
「どうしたん?お兄ちゃんがこんな早く帰ってくるなんて。」
蠅がシメジとジャレながら言う。
シメジは楽しそうだ。
「いや、マスターに呼び出されてな。
旅行先から死ぬ気で帰ってきた。」
男はそう言うと深くため息をついた。
「火九お兄ちゃんも大変やね〜」
蠅がシメジの体を高くあげながら言う。
シメジは怖がっている。
「いや、蠅も行くに決まってるだろ・・・
まぁとりあえず、ちょっと眠るな。」
火九と呼ばれた男は、テーブルに置いた赤いコートを背中にかけると、そのまま目を閉じた。
- 169 名前: T (JoHEoDwI) 投稿日: 2004/12/19(日) 00:19
- ネ申作品キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
シメジ活躍期待sage
- 170 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/19(日) 00:20
- うお…コテ残ってた(;´Д`)
すまんorz
- 171 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/19(日) 01:28
- 蝶アゲまくる
火九兄ちゃん蝶アゲ
- 172 名前: ○ 投稿日: 2004/12/19(日) 02:40
- 火九が帰ってきてから数10分たっていた。
ガチャッ
奥にあるドアが開く。
中から男が眠たそうに歩いてくる。
「あれ?兄貴帰ってたんですか?」
男が言うとシメジが睨みつける。
「あ、シメジも。」
「うん、さっき帰ってきたよ。
探しに行く手間が省けたね。
マスターが呼び出したんだって。
いつもマスターが呼んでくれたら楽なんやけどなぁ〜」
蠅が頭をかきながら言う。
男は火九の隣に座った。
全身黒づくめだ。
黒い服に黒いジャケット、黒いズボン。
そして黒い帽子。
「まったくその通りですね。
マスターが呼び出したってことは・・」
「仕事だと思うよ、DC」
蠅はそう呟いて、ため息を放つ。
DCは嬉しそうに拳を握りしめる。
シメジは眠たそうだ。
「そういや、後の2人はどうしたんですかね?」
ふいにDCが言う。
「さあ〜ねぇ。
たぶん、お兄ちゃんを探しに行ったんだと思う。
マスターが連絡入れてるだろ。」
蠅はそういうと、立ち上がった。
「じゃあ俺もマスターが帰ってくるまで寝てくら〜」
後ろ手を振ると奥の部屋へ入っていった。
- 173 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/19(日) 07:50
- シメジ上げ
- 174 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2004/12/19(日) 07:51
- (゚д゚)sageジャー!!
- 175 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/19(日) 11:04
- 最高に面白い
- 176 名前: ○ 投稿日: 2004/12/19(日) 15:56
- 「で、用って何?マスター。」
火九が問いかける。
外では日が昇ろうとしていた。
床がギシギシときしむ。
でかい。あまりにもでかい。
火九を一掴みで握り潰しそうな黒い巨体が椅子を三つ並べてドスンと腰をおろした。
DCと蠅も座る。
「シィ・・・メ・・」
シメジは火九の肩でぐっすりと寝ている。
夢でも見ているんだろうか。
「仕事だ。」
マスターと呼ばれている男がそう言うと、火九はとてつもなく嫌そうな顔をした。
「マスター、分かってる?
俺たちは盗賊じゃないんだぜ?」
火九の声に蠅がウンウンと頷く。
が、マスターが強く睨みつけると二人はすぐさま固まった。
「・・・ここを貸してやってるのは誰だ?
それにお前らは世間的にはただの盗賊だ。
今更何も変わらない。」
「いやだから変えるんだって。」
「そういう意味じゃない。」
マスターの重い声に火九が黙る。
「それで・・仕事って何ですか?」
DCが嬉しそうにたずねた。
マスターがDCの方を向く。
「・・いつも通り、簡単な盗みだ。」
マスターが淡々と説明を始めた。
浦板大陸南部にある夜の街『ナイトメア』
そこである物を盗んでこい、との事だ。
マスターは説明を終えると腰をあげた。
「俺は、そろそろ店を開ける。
裏口から出るんだな」
「あ、そういや二人は?」
火九が言う。
「火九を探しにたまたまナイトメアの近くまで行ってたから現地に向かわせた。」
マスターはそう言うと一階のバーに上がっていった。
「はぁーあ・・・・。行くかぁ〜」
火九が赤いコートを羽織る。
文句を言いながらも裏口のドアを開けた。
- 177 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/19(日) 20:15
- 裏っぽいお兄ちゃん…(*´Д`)
- 178 名前: ○ 投稿日: 2004/12/19(日) 23:59
- 火九たちのアジトがある街から、南へ数キロ。
夜の街『ナイトメア』があった。
行く道はどこも整備されている。
・・・科学に祝福された世界。
大抵どこにいても世界の中心に建つデカすぎる像が目に入る。
あれが出来てからもう何年経っただろう。
火九たちが誓いを交わした、あの日。
あの目触りな像が建てられたんだ。
作られた道を歩くのは嫌いだ。
好き嫌い以前に、そんな所を歩いていたらすぐに見つかって捕まってしまうのだが。
わき道、といっても木々が生い茂っているわけでもない。
ただ、まだ何もない道を火九たちは歩いていた。
ナイトメアに着く頃には、また夜だろう。
「で、兄貴。作戦とかはあるんですか?」
DCが言う。
「無いよ。いつも通り早いもん勝ちで」
火九の真っ赤なコートが風に揺れている。
「お兄ちゃん、あいつらには連絡入れたの?」
「あぁ、目的の物と早いもん勝ちとだけ言っといたよ」
太陽が大地を照らす。
その光は何のために注ぐのだろう。
最近は木々や草花なんて見なくなった。
数年後には世界の全てがアスファルトで埋め尽くされそうな勢いすらある。
「んじゃ、解散で。
先行ってもいいし、ゆっくり行ってもいいから。」
火九が手を振るとシメジが高く鳴く。
「じゃあまた、アジトで」
DCは頭を下げると走り去った。
蠅が火九の方を向く。
「俺はゆっくりと行くわ〜」
懐からパイプを取り出して深く吸う。
白い煙が、ポワーっと浮かんでいた。
- 179 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 00:31
- 日が暮れる。
オレンジ色に染まっていた街は、やがて黒へと色を変えていく。
それに比例して街が賑やかになる。
夜の街『ナイトメア』
黄色い月の下、この街に活気が溢れる。
夜の街の名は伊達じゃない。
風俗女やホストマン。
洋風にギャンブルや和風に博打。
何でもありだ。
そんな街にある一つの大きな館。
その中にたくさんの人が集まっていた。
外とは少し雰囲気が違う。
皆、スーツなどを着こなしている。
中はライブなどの会場のようになっており、前方にある舞台を見上げれるように椅子が並んでいた。
「皆さま、お忙しい中お集まりいただき、大変ご恐縮でございます。」
マイクを持った男が舞台に姿を現す。
館の方々に設置されているスピーカーから、その男の声が響く。
「本日も良い商品ばかり集めましたので、最後までお楽しみくださいませ。」
男が手を胸に当て、深く頭を下げると、館中から拍手が鳴り響いた。
「それでは、一つ目の商品です。
カタログNO。�ョ4530『ゴッポの絵』」
男の声と同時に激しい格好をした女性が、荷車に乗せた商品を持ってくる。
「10000$からスタートさせていただきます。」
いっきに騒ぎ始める。
「12000!」
「15000!!」
「30000ッ」
- 180 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 00:58
- 人混みの中を火九が歩く。
その真っ赤なコートはどこにいても、とにかく目立つ。
「お兄さぁ〜ん。遊んでかない?」
色んなとこから色んなものが飛び出しそうな服を着た女が火九に話しかける。
「あ〜、今から仕事だから30分くらい待っ・・・・ッ」
ガンッ
火九がそこまで言うと後頭部を殴られ、言葉を飲み込む。
「・・・・・」
殴った奴は振り向きもせずに歩いていく。
「イッターッ
殴らなくてもいいだろうに。」
火九はエロティックな格好をした女に「ごめんね」と言うと、殴った奴の方に走っていく。
「どうしたんだ?何か怒ってる?」
火九が歩きながら、そいつの顔の前に顔を持ってくる。
「・・・・・」
無言で目をそらす。
「やっぱ怒ってるな?
あ、そういや俺を探してくれたんだって?
ありがとな。」
火九が笑顔でそう言うと、そいつは顔を真っ赤に染めた。
「ちっ、違うッ!!
私は、ただ散歩してただけよ!!」
細い指で火九の顔を掴み、視界からどけるとまた歩きだした。
プイッと首を振ると深緑の髪が宙を舞う。
「んだよ〜、怒りすぎだろ。
俺は別の方から行くからなぁ?」
火九の声に何ら反応もせずに女は歩いていった。
「シメッ!」
シメジが火九を見て笑う。
「こらッ、シメジ。
今から仕事だから静かにしろよ?」
シメジが裾に隠れる。
「さっ、行くか〜」
- 181 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 01:28
- 続き乙
>>179
文字化けしてるよ
- 182 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 02:30
- 感想蝶ありがとうございます!
一応また完結までの流れは考えたので、最後まで付き合ってくれたら嬉しいです。
文字化けは・・・
NO.4530の「.」が化けた模様。
中途半端な時間に寝てしまって眠たくないから少し更新します〜。
- 183 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 03:22
- 今回、マスターに盗って来るように言われた物はこの大きな館にあった。
中身はいつも通り知らされていない。
NO.4536『悪魔の種』
マスター自身もそれが何に使われるのかも知らないのだろう。
そういう仕事だ。
「それではNO.4535『ピカチョの絵』は、100000$で決定いたします」
会場に拍手が起きる。
「続きまして〜、NO.4536『悪魔の種』・・・」
激しい格好の女性が荷車に乗せて小さな箱を持ってきた。
これが目的の物だ。
競り合いが始まる直前
舞台上から人影が降りてきた。
ダンッと大きな音をたてて着地する。
蠅だ。
客がそれを見てざわめく。
次の瞬間、マイクを持った男は蠅の手刀で気絶した。
客がそれを見て叫び出す。
席を立ち逃げ出し始めた。
「賊だぁーーーーッ!!!」
蠅はゆっくりと荷車の方へ歩く。
「これが目的の物か。ちっちゃいな〜」
その箱をとろうと手を伸ばす。
しかしカチッとブレーカーが落ちる音が鳴り館が真っ暗になった。
蠅は、客の騒ぎ声の中誰かが「トゥーレイト!」と呟いたのを聞いた。
蠅の目が暗闇に慣れた時には、もう小箱は無くなっていた。
「げっ・・・やられた・・・」
- 184 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 03:51
- 「ふっ、勝った・・・」
人々の騒ぎ立てる館の屋根の上に男がいた。
彼の名はMDR。
小さな小箱を月の光にあてる。
「初勝利だ・・・マジ嬉しい・・」
MDRが嬉しそうに、その箱を見ている。
確かめるように、箱を揺らす。
スカッスカッ
「・・・あれ?」
もう一度揺らす。
スカッスカッ
「まさか・・・」
MDRは恐る恐る小箱の蓋に指をかけた。
「中身入ってない!シッショォーッ!!」
「表がうるさいなぁ。」
火九は、その館の裏側にいた。
窓を簡単に割ると、そこから中に入っていく。
舞台の奥に商品管理室があった。
サンプルを舞台に出し、競り落とした人に本物を渡す。
『悪魔の種』も例外では無い。
警備員が見張るその部屋に保管されていた。
「おい、お前!何者だ!?」
警備員が歩いて来ている奴に言う。
「悪いが、一つだけ盗ませてもらいます」
DCはそう言うと、警備員を斬った。
血は流れていないが気絶している。
逆刃刀か、何かだろう。
手応え無いなぁと言いたげな顔をして、商品管理室のドアノブを捻った。
ジリリリリリリッッ!!
警報音が館中に鳴り響く。
「ぉ、罠ですか!!」
DCがライトアップされる中、嬉しそうに剣を抜いた。
わらわらと集まる警備員。
黒一色でコーディネートされた男の服装に警備員たちは圧倒されていた。
見間違えるはずもない。
『黒いサイクロン』の異名を持つこの男
「なっ、壁際のDCだ!!
くそっ、まとめてかかれッ!!」
- 185 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 04:13
- 「ふんっ!」
ひとり、ふたり・・・
DCが豪快に斬っていく。
「数はこっちが圧倒的だッ!!」
きりがない程敵がいるのにDCは楽しそうに笑っている。
「グワァッ!!」
DCの反対側から悲鳴が聞こえた。
警備員たちが振り返る。
バサッ
窓から差し込む月明かりが、男のコートを照らした。
「まさか・・・『赤いサイクロン』!?」
真っ赤なコートに月明かりが反射する。
「おう、DCお疲れさま。
じゃあ、先にその部屋に入った方が勝ちって事で」
火九が商品保管室を見てそう言う。
「了解。負けませんよ!!」
黒い影が警備員を次々と斬る。
赤い影も敵を殴り倒していく。
数分後には、30程いた警備員たちは全員のされていた。
DCが商品管理室に走る。
ドアノブに手をかけた。
「よっし!勝った!!」
DCがそれを勢いよく引いたが開かない。
何度も一生懸命引いている。
後ろからゆっくり歩いてきた火九がDCの横の壁に勢いよく手を当てた。
バラバラと壁が崩れていく。
「はい、俺の勝ちだ。」
火九が部屋に足を入れて笑顔で言った。
DCはドアノブを握ったまま唖然としている。
「はぁ〜
兄貴の頭が柔らかいと言うか、無茶くちゃと言うか・・・・」
DCがドアノブから手を離す。
「さてっ、逃げようか〜」
中から小箱を持った火九が出てきて、そう言った。
- 186 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 09:09
- MDRワラタw
今回も面白いっす!
- 187 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 13:47
- 今回もまたすごい良作ですね
ただ個人的にはDC様の通り名は『明王』が良かった
- 188 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 16:46
- お兄ちゃぁんage
- 189 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 17:55
- >>187
同意!やっぱDC様は明王でなくっちゃな〜(・∀・)
- 190 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 18:02
- あんた、ネ申www
- 191 名前: 猿 投稿日: 2004/12/20(月) 18:54
- 期待age
>○さん
応援してます(・∀・)オモシロイ
- 192 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 19:00
- とあるバーの地下に火九たちが集まっていた。
「また、お兄ちゃんの勝ちかよ〜」
パイプを吹かしながら蠅が言う。
「マジ、シショッた。
良く考えたらそりゃ表に出るのはサンプルだよなぁ・・・」
MDRが空の箱を地面と垂直に投げては取り投げては取りと繰り返しながら悲しそうに言う。
「あれ?そういえばニールは?」
火九はテーブルに腰をかけ、嬉しそうに小箱をかかげている。
「先に帰ってたみたいです。
何か機嫌悪いんで放置しときました。」
DCが部屋の方を指さす。
「なぁ〜に怒ってんだか、アイツ。
まぁ、マスターが来る頃には出てくるかな。」
火九がそう言うと、周りの3人と1匹が冷たい視線で火九を見た。
「うっ・・・。なんだよ・・お前ら・・」
あまりの冷たさに少したじろぐ。
「わっ、わーったよ。
行けばいいんだろ、行けば!!」
火九は赤いコートとシメジをテーブルに置くと、立ち上がった。
「つーか、俺が何かしたのか・・・」
火九がブツブツ呟きながら奥の部屋への方を向く。
「たぶん、お兄ちゃんが悪いから」
「身に覚えねぇ〜」
蠅の言葉に火九はすぐさま反論したが、ゆっくりと歩いていく。
「兄貴、空気読めないからなぁ〜」
「お前に言われたくない」
火九がそう言うと、DCは凄く分かりやすいくらいに凹んだ。
MDRはシメジと遊んでいる。
火九が奥の廊下を進んでいき、3人の視界から消えた。
- 193 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 19:02
- トントンッ
手の甲で、木のドアを軽く二回だけ叩く。
ドアには『グレイプニール』と書かれた板が掛けてある。
「ニール?起きてる〜?」
火九が反応の無い部屋に話しかけた。
「・・・・・何?」
中から低く一言だけ聞こえてきた。
明らかにご機嫌ななめだ。
1、なぁ〜に、怒ってんの?
2、何怒ってんだコイツゥーーッ!?
3、今、いい?
火九の中でいろいろな選択肢が浮かぶ。
「・・・今、いい?」
火九がドアにもたれ掛かりながら優しく呟いた。
「ぇ?いい・・・けど。」
慌てたような声でニールが言う。
火九をその声を聞くとゆっくりとドアノブを捻った。
ガチャッ
ドアを開けると甘い匂いが鼻につく。
小さなベッドと洋服棚、木製の机。
女の子にしては少し殺風景な部屋だ。
ニールは部屋の端にあるベッドの上で、壁にもたれて膝に布団をかけていた。
薄いピンク色をしたタンクトップのワンピース。
さっきまで寝ころんでいたのか、後ろ髪が跳ねている。
ニールは、少しずりおちたタンクトップの肩を持ち上げた。
薄い黒色をした瞳を火九より遙かしたに逸らす。
膝にかけた布団から出ている足の指を時折曲げたり伸ばしたりしている。
どうも落ち着かないようだ。
パタッ
火九は開けたドアをゆっくりと閉めた。
- 194 名前: ○ 投稿日: 2004/12/20(月) 19:03
- 火九がニールの隣に腰をかけた。
ニールは無言で俯いている。
「先に帰ってたんだって?」
火九がニールの方を向いて言う。
ニールは何故か膝にかけた布団を引っ張り首くらいまで持ってくる。
「・・うん。」
露わになった膝元を隠すように三角座りになる。
「俺が盗ったぜ?」
火九が嬉しそうに言うと、ニールは口元くらいまで布団をずり上げた。
無言で俯いている。
「・・・怒ってない?」
火九が顔を覗こうとするが、ニールは布団の影に隠れた。
「何で?」
ニールがそのままの状態で言う。
「何となく、そんな気がする。」
「・・・別に・・・」
「ほら、やっぱり怒ってる!」
「怒ってなんか・・・ッ!!」
ニールは勢いよく顔を上げたが、目の前にあった火九の顔を見て言葉を飲み込む。
耳まで真っ赤に染めながら、体を反転させて立ち上がった。
「後ろ髪、寝癖すごいぞ?」
火九が言う。
「うるさいっ!!出ていけ!」
「へっ?」
「着替えるから出てけッ!!」
ニールがそう言うと、火九はよく分かんねぇ〜と言いたげな顔をして部屋から出ていった。
- 195 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/20(月) 22:56
- ニールたそモエッ(・∀・)
裏板においとくにはもったいない才能ですね
- 196 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/21(火) 00:44
- AGE
- 197 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/21(火) 15:04
- ABE
- 198 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/21(火) 15:10
- アベシ!!
ごめん、ABEと聞いてつい…
- 199 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/21(火) 15:56
- セックル
- 200 名前: T (JoHEoDwI) 投稿日: 2004/12/21(火) 16:06
- 200GET
- 201 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/21(火) 22:26
- 流れがw
期待あげ^^
- 202 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/21(火) 22:44
- まぁゆっくり書きあげてくださいね
- 203 名前: ○ 投稿日: 2004/12/23(木) 11:08
- 「ご苦労だったな。」
マスターが小箱を手に取り、それと引き替えに札束を火九に渡した。
「さんきゅう。マスター。」
火九はそれから大ざっぱに約半分抜き取る。
残りを蠅に渡すと、蠅がそれを四人に渡していった。
ニールは無言でカウンターに座っている。
どことなく怒りのオーラを感じる。
「で、お兄ちゃん、これからどうすんの?」
蠅が言う。
このパターンだといつも、金を手に入れた火九は気づいたときにはどこかに旅立っている。
「アスファルトのジャンゴーから飛び出したいな〜。」
火九がやはりそう言う。
「兄貴、奴らにやられっぱなしで悔しくないんですか?」
DCが流れをぶったぎってそう言った。
火九が苦笑いをすると手を伸ばす。
「まぁ、人には人のジャスティスってもんがあるからな〜。
たしかに俺はこうやって世界が科学に浸食されていくのが嫌だけど、それで助かってる人もたくさん見てきた・・・」
「でも奴らの正義は犠牲の上に成り立っている。」
「それは俺たちも一緒だろ?
まぁ、戦いなんてのは極力ないに越したことはないってことだ!」
火九がどこか悲しそうにそう言った。
- 204 名前: ○ 投稿日: 2004/12/24(金) 14:13
- 感想蝶ありがとうございます!!
年末忙しくてなかなか時間がない罠。
少し遅くなりますが長い目で見守ってやってください。うん。
感想蝶うれしいです!!
今日はクリスマスイブだ。w
- 205 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/25(土) 14:00
- あがる!!
- 206 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/25(土) 23:08
- 職人さんGJ!!
- 207 名前: ○ 投稿日: 2004/12/26(日) 01:31
- 酒屋の地下に火九達は居た。
マスターはもう帰ったようだ。
一同は、思い思いくつろいでいる。
ニールの機嫌がどうにも悪い。
「・・・・ニール?」
火九が声をかけるとテーブルに顔を俯けたままニールが呟く。
「何?」
機嫌が悪いオーラをかも出している。
周りは見て見ぬふりをしているようだ。
火九はニールの隣に座った。
「明日ひま?」
火九が唐突に言う。
「え?」
蠅がゆっくりと立ち上がって部屋に退散していく。
くつろぐDCを引っ張ってMDRも部屋の方へ歩いていく。
そんな空気なんだ。
シメジはぐっすり寝ているようだ。
「明日暇ならどっか行こうか?」
シメ〜とシメジがうなされている。
「・・・どこに・・?」
「ん〜、俺のベストプレイスに!!」
火九が力強く言った。
ニールが椅子を揺らす音がゆっくりと鳴っている。
「・・・・あ、時間無いならいいんだが。」
微妙な間を取り繕うように慌てて火九が言う。
「・・いいよ・・」
ニールは俯き椅子を揺らしながら小さく言った。
- 208 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/26(日) 01:32
- 続きキター
- 209 名前: ○ 投稿日: 2004/12/26(日) 01:50
- やばいこんな事あまり考えてなかった。
前作と同じパターンになってしまいました。アハ。
今から過去の話になりますねw
しまった〜〜。同じパターンだああ。
OTL
- 210 名前: ○ 投稿日: 2004/12/26(日) 02:14
- 数十年前、科学というものはそれほど盛んではなかった。
一人の少年がいた。
生まれた時は覚えてはいないが祝福の中、生まれてきた。
何の問題も無い家庭に育ち、両親から溢れるほどの愛情を注がれていた。
天才
それが本当にいるのなら彼のような男の事をいうのだろう。
彼はあまりに賢かった。
賢すぎた。
当初の目的は何だっただろう?
両親の病死
きっかけは確かそれだった。
愛していた両親が原因不明の病気で死んでしまったのだ。
「現代医学では治療不可能」
そう言われていた病気だった。
彼は、その病気の治療法を見つけるために医学の道を志したのだ。
しかし、今となってはそんな当初の目的なんて忘れてしまっていた。
彼は賢すぎた。
医者になり数ヶ月で両親の病気の治療法を見つけてしまったのだ。
若くして彼は科学の第一人者となる。
例えば、人間がチンパンジーを見るような感じだろう。
賢すぎた人間。
彼から見た人々は調度そんな感じだったのだろう。
世界に悲劇が襲いかかるのはこれから数年後の事である。
- 211 名前: ○ 投稿日: 2004/12/26(日) 02:39
- 誰もいない大きな島にその像は建てられた。
「何でこんな何も無いところに建てるんですか?先生」
下っ端が彼に話しかける。
彼は少し成長していた。
あれから数々の奇病を治し、巨万の富も得ていた。
「まず土地が安かった。
それにどこだっていい。
すぐにここが世界の中心になる・・・」
思えば退屈だったのかもしれない。
人生の最大の目標を、人生の最初の所で達成してしまった。
残りの長すぎる余生の暇つぶしに、彼は世界を手に入れる事にしたのだ。
方法なんていくらでも思いついた。
彼から見たら全ては無意味な存在だった。
当初の目的などとうの昔に忘れていた。
自分に付けられた名前。
大切な意味があったような気もするが、そんな事も忘れてしまった。
両親が付けてくれた名前。
今では他の人間と識別するためのただの記号になっている。
意味なんてどーでもいいのかもしれない。
人間に興味なんて一切ない。
自分の生まれた意味も分からない。
ただ、何かを残したかった。
自分が生きていた証拠を?
両親が付けてくれた『小川』って名前を?
どちらにせよ、彼はその大きな像に入っていった。
何も無い大地に建つその像が、静かに世界を見ていた・・・。
- 212 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/26(日) 02:43
- 小川キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
- 213 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/27(月) 01:20
- 正直続きが気になる
- 214 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/28(火) 20:14
- これはもうN男、P.C、Let'sの3人も出すしかないですね(・∀・)オガニー
- 215 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2004/12/30(木) 00:50
- 〜(ミ ゚д゚) シメッ
- 216 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/30(木) 01:07
- 続き期待あげ
- 217 名前: ○ 投稿日: 2004/12/30(木) 01:32
- 世界の端に建つ像の中にあるたくさんの研究室。
その一番奥にある薄暗い部屋に小川はいた。
「ついに・・・出来たぞ・・・!ハッハハッ!」
小川が黄色く発光したモノをかかげて呟いている。
暗い部屋がそれを中心に光っていく。
それが収められているカプセルのような入れ物に貼ってあるラベル。
そこに書かれている赤い文字。
『オガニウム』
それは、個体のようで形が無い。
液体のようで感触も無く、
気体のようで眼に映る。
なんとも不思議なモノだった。
小川がこれを数年かけて作り出した。
意志を持つ意思。
と言えば的確なのだろうか?
「アハハハハハハッ!!!ハッハッ・・・」
小川はそれを見つめては笑い続けている・・
自分の才能に恐怖を抱くほどに。
「後はこれを放つだけだ・・・」
今までの何にも属さないモノ。
それを小川は『オガニウム』と名付けた。
どれでも無いが、全てであるモノ。
学習する恐怖。
意志を持つ意思。
空気には触れられない。
音にも、光にも。
常に触れている?
そうだとしても、傷つけることは出来ない。
それらに傷つけられる事があったとしても・・・。
- 218 名前: ○ 投稿日: 2004/12/30(木) 01:50
- 誰もいない静かな森に男がひとり歩いていた。
獣を追ってきたのだろう。
「・・・・・?」
が、男は急に立ち止まる。
森の奥からする不思議な気配に引き寄せられるように男が歩いていく。
草木をかきわけ奥へ奥へと歩く。
しばらくすると水の匂いがしてきた。
泉だ。
神秘的な光を放っている。
黄色い発光体。
男は瞬きもせずにそれを見つめていた。
『血を一滴、くれないか?
そうすれば何でも願いを叶えよう。』
泉から透き通るような声が響く。
男は無言で自分の指を噛みちぎり、滴る血を泉に垂らした。
・・この日、人知れず悪魔が生まれた。
全ては小川が作った筋書き通りに。
- 219 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/30(木) 03:15
- 職人さん GJ!です
- 220 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/30(木) 23:27
- 続き期待age
- 221 名前: ○ 投稿日: 2004/12/31(金) 02:08
- 一面に咲く花びらの丸い紫色の花。
この地方の人々はそれをパーフルと呼んでいる。
パーフルの広がる花畑にひとつの影があった。
まだ若い火九だ。
大の字になって寝ころんでいる。
澄んだ空気に星が輝き辺りを照らす。
今にも掴めそうな月に手を伸ばしていた。
「はぁ〜・・・・」
降り注いできそうなほど近くにある夜空を見つめて、火九が深く息をつく。
リンリンと虫の鳴く声が静寂に響いている。
「やっぱ、ここにいたのか!」
遠くから赤い影が歩いてきた。
火九は空を見上げたまま動かない。
時折吹く風に、男の赤いマントが揺れている。
男は火九の隣に腰をおろした。
「いい匂いだな。
お前はホントここが好きなんだな」
男が一つパーフルを摘むと鼻に当てた。
「こうやって空を見てたら楽しいんだ〜」
火九がぼんやりと呟く。
「相変わらずだな。」
「んなこと言って、お前も来るじゃないか。シュウト?」
「お前がいつもあまりに遅いからだ」
「あ〜、悪い。
ぼーっとしてたら時間なんてあっという間に過ぎるからな〜」
火九が地面に手を着くと腰をあげた。
「帰るか?」
シュウトが立ち上がる。
赤いマントがフワリと風に乗る。
「そうだな、そうしよう。」
火九が両手を大きくあげて背筋を伸ばす。
「そういや火九、もうすぐ誕生日だな」
「ん?」
「何か欲しいものとかあったり?」
「あ〜、ん〜、珍しい花・とか」
「・・・・相変わらずだな」
パーフルの花びらが春を運ぶ。
それは、ひらひらと風に舞い散っていた。
- 222 名前: ○ 投稿日: 2004/12/31(金) 02:32
- 火九とシュウトは同じ村に住んでいた。
生まれたときから家が近く、親友だった。
「珍しい花かぁ〜・・・」
シュウトがそう呟きながら歩いている。
火九への誕生日祝い品といったところか。
まだあまり行ったことの無い場所を探す。
森の奥へと足を進めていった。
「・・・やけに静かだな・・・」
シュウトの着た赤いマントが少しも揺れないくらいに風がない。
「・・・ん?何だあれは?」
森の奥からうっすらと延びる光にシュウトは惹かれるように歩いていく。
眼が虚ろになっている。
その先には泉があった。
黄色い光を放つモノが浮いている。
シュウトは、ただひたすらにそれを見つめていた。
『血を一滴、くれないか?
そうすれば何でも願いを叶えよう』
透き通るような声が響く。
シュウトは操られたように自分の指を噛みちぎった。
指から滴る血が泉に色をつける。
それと同時に黄色い光がシュウトを包み込んだ。
膝を地面におとす。
『我はオガニウム。
血の契約で貴様に力を貸そう。
何でも可能な程の巨大な力だ。
我は意志を持つ。
こうするように育てられた。
この感情しか・・・無い・・』
光が完全にシュウトに吸い込まれる。
バサッと赤いマントが地面に落ちた。
光の無い瞳が、恐ろしく輝く。
「殺意しか・・・無い・・」
シュウトはそう呟くと空に浮かんだ。
- 223 名前: ○ 投稿日: 2004/12/31(金) 03:41
- 太陽はまだ東よりにあった。
火九が村を歩いている。
朝からシュウトがいない。
無性に嫌な予感がする。
「シュウト知らない?」
火九がたまたま通りかかった村人に訪ねた。
「さっき森の方に行くのを見たよ」
村人がそう答えると火九は「ありがとう」と言って、森に向かった。
どこか薄気味悪い空気が流れている。
森の奥から静寂が広がっているような感覚だ。
嫌な予感がする。
何かに呼ばれるように火九は走り出した。
ザッザッ
静かな森に草を踏む音だけが走っていく。
「シュウト!?」
泉がある。
その側に落ちている赤いコート。
間違えなくシュウトのものだった。
が、シュウトの姿が見えない。
「シュウトッ!!??」
火九の声が森の奥からこだまする。
泉の端に付着している血痕。
・・・・嫌な予感がする。
火九が赤いコートに手を伸ばした。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
それを手にした瞬間、静かな森が突然騒ぎ始めた。
鳥が叫び、風が木々を激しく揺らす。
獣が辺りを走り回っている。
「・・・・・!!」
火九が村へ走り出す。
なぜ走り出したのかも分からない。
ただ、火九は恐怖で震える体を恐怖に向かって進めていった。
村の方から途切れ途切れだが、爆音が聞こえてくる。
「何だ、何が起きている・・・・ッ!?」
来た道を戻っていく。
来た時とは何かが違う。
赤いコートを手に、ひたすら走る。
火九の眼には恐怖が映った。
跡形も無く削り取られた住宅。
そこらじゅうに転がっている屍。
その先にいる立ち尽くしているシュウト。
「なッ、シュウ・・・ト?」
火九の体が震えている。
シュウトの腕が村人の体を貫いていた。
恐ろしい光を放つ瞳が火九を捉える。
その次の瞬間、低く唸り頭を抱えた。
「ぐぅぉぉぉォォ」
シュウトの体が空に浮く。
そして、手を伸ばしても届かない遙か遠くへ消え去った。
ただ一人、火九を残して・・・・
- 224 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/31(金) 09:23
- (´・ω・)さん…
- 225 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/31(金) 11:06
- トナカイ爆誕
- 226 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/31(金) 11:23
- 悪役(・ω・`)
- 227 名前: ○ 投稿日: 2004/12/31(金) 15:12
- それは人の形をしているが、人としてはありえないモノ。
どこから現れたのかは誰も知らない。
すでに十の街や村が破壊された。
それの通った後には何も残らない。
削り取られたように総てが塵となる。
『悪魔』
この呼び名は大袈裟では無い。
それに触れることは出来ず、兵器も無力だった。
一方的に触れられる感覚。
浦板の人々はいつ現れるか分からない悪魔に怯える日々を送っていた。
そこだけ地表が剥き出しとなった地面。
悪魔の通り道か。
その真ん中に赤い影がひとつあった。
「また間に合わなかった・・・ッ!!」
火九が骨も残らない砂を手に握りしめ、そう叫ぶ。
あれから、シュウトと故郷を失ったあの日から、火九はシュウトを追っていた。
悪魔の噂だけをあてに、この広い浦板を独り歩き回っていた。
「お前、こんな所で何をしている?」
後ろから呼ばれる声がする。
火九は少し警戒しながらも振り向いた。
黒い巨体、火九を一握りで潰せそうな巨体が立っていた。
「もしかして、ここはお前の故郷か・・・?
気の毒だったな・・・
数日前に悪魔が現れた・・。」
黒い巨体が悲しそうに立つ火九に、そう言う。
「悪魔なんかじゃないッ!!!
あいつはッ悪魔なんかじゃなかった!!」
それに火九がすぐさま言い返す。
黒い巨体は驚いた顔をしている。
「何か・・・・知っているのか・・・・?」
黒い巨体が問いかける。
火九は赤いマントを強く握り下を向いた。
無言で震えている。
「・・・俺は、すしや。
良かったら話を聞かせてくれ・・・」
すしやと名乗った黒い巨体が、火九に優しくそう言った。
火九の震えが増していく。
「世界を救う・・・・手がかりになるかもしれない。」
- 228 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/31(金) 15:30
- イイッ(・∀・)!!
西対東って構図になってるのがとってもイイッ!!
- 229 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/01(土) 21:07
- 小川さんとかシュウトさんに安定して勝てるのってkaqnさんと少年さんだけじゃないか?
- 230 名前: ○ 投稿日: 2005/01/02(日) 20:41
- 「おかえりなさい、Dr.すしや。」
白衣を着た人がすしやにそう言う。
「あぁ、少し部屋を借りる。」
すしやは火九を連れて奥にある部屋に入った。
中は色々な実験器具がある。
「医者・・・なのか?」
すしやの巨体に完全に隠れていた火九が後ろから言う。
二人はさっきの街からすしやの車で移動し、ここに来た。
「ああ、昔、な。
今は他の街で酒場をしてる。」
すしやはそう言うと椅子を出し火九を座らせた。
「・・・昔?」
「逃げたんだよ・・・。
・・・死を見るのが嫌になって。」
すしやは大きめの椅子を出し腰をかけた。
「じゃあ、今は・・・・どうして?」
「くだらない正義感からだ。」
そう言い、すしやは一つのファイルを出した。
それには、悪魔が破壊した街や悪魔に関する記録がたくさん書かれている。
「車で聞いたお前の話と今まで調べた事から、悪魔は一種のウィルスだと思うんだ。」
すしやの言葉にファイルを見ていた火九が顔をあげる。
「考えにくいが、そのウィルスに感染すると悪魔になる。
しかし、それじゃあもっと悪魔が増えるはずか・・・・。
何にしろ、そのウィルスのサンプルが無ければ何も分からないな・・・」
すしやは一人ぶつぶつと繰り返す。
「シュウトは・・・元に戻るのか・・?」
火九は不安そうに、そう言った。
すしやは何の反応もせずに、ひとりぶつぶつと色々な事を言っている。
「どこからウィルスが生まれたのか・・・
いや、そもそも自然がそんな物を生んだのだろうか・・・
感染後、身につけていた衣類は・・・」
「あ。」
それを聞くと火九は思い出したように赤いマントを脱いだ。
「これ、シュウトのマントだ・・・
いつ脱ぎ捨てたかは分からないけど・・」
すしやはすぐさまそれを手に取ると、顕微鏡に映した。
火九がそれを黙って見守る。
すしやの口元が恐れと喜びが混ざったように歪む。
「・・・大当たりだ・・・・・ッ」
- 231 名前: ○ 投稿日: 2005/01/02(日) 22:00
- 「しばらく俺は研究室にこもる。」
すしやが赤いマントを広げた。
「シュウトは助かるのか!?」
「ああ、絶対ワクチンを作ってみせる。
お前も感染している危険性がある。
このウィルスの性質が分かるまでは、この部屋を出るな。
食事はそこの中にあるのを適当に喰っといてくれ。」
すしやの言葉に火九が頷いた。
数日後
ガチャッ
火九の薬臭い部屋が開く、外から少しやつれたすしやが入ってきた。
「出来たのか!?ワクチン!」
「いや、それはまだだ・・・。
ただ、あのウィルスの性質が分かってな。
恐らく、それを機能させる核となる部分がある。
そこ以外はただの付属品でそれから感染することは無いようだ。
空気のような存在で、触れることが出来ない。
が、フラスコなどの密室に入れると外に出れない事から透き通るわけでは無い。
ここまでくるとウィルスかも疑わしいが・・・・」
しゃべり続けるすしやに火九が難しいことの言い過ぎでついていけなさそうな顔をする。
それを見てすしやは本題を思い出した。
「まぁ、要するにお前に感染している事は無い・というわけだ。
・・・俺はまた研究室にこもる。」
「俺は・・どうすれば・・?」
火九がそう言う、帰る場所も無い事はすしやも知っていた。
「そうだな、子守でもしてくれ。」
「子守ぃッ!?」
「人手不足でな。
親類のいなくなった子供や親が入院してる子供を預かってるんだ。」
すしやはそう言うと、火九に背中を向けた。
「手配しとくから後はよろしく。
数ヶ月程でワクチンは完成すると思う。」
「ちょっ、俺はッ!!」
「強制だ。
友達の事だからしょうがないが、気を張りすぎだ。
息抜きだと思ってやるんだな。」
- 232 名前: ○ 投稿日: 2005/01/02(日) 23:38
- 「お兄ちゃん、遊ぼうぜ!!」
「兄貴!決闘を申し込みます。」
「兄上〜、かけっこしようカケッコ!」
子供たちが火九の赤いマントにまとわりつく。
火九が子供の面倒を見るようになってから一ヶ月ほどが経っていた。
田舎育ちで毎日獣と戯れていた火九の運動神経は常人を逸している。
「じゃあ皆の意見の間をとって、
かけっこしながら決闘するか〜」
「兄貴!決闘は1対1でするものです!」
「DCは一番年上なんだから、細かいことは、我慢する!」
火九がそう言うと、DCは物わかりよく黙った。
ガチャッ
扉の開く音に火九達は振り向いた。
「あの・・・・」
弁当を持った少女が、そう呟く。
隣の弁当屋からよく配達に来る子だ。
「あ、ニールだ!昼ご飯だ!」
MDRが指をさす。
「いつも大変だな〜
皆もニールを見習え!!」
火九はそう言い、弁当を受け取った。
「ありがとな〜」
「ぁ・・・うん・・」
ニールは背伸びしてドアノブを回し扉を閉めると、そのまま走り去っていった。
「ふっ。」
蠅が意味深に笑う。
「・・飯喰ったらカケッコね」
MDRが言う。
「食べますか」
DCが割り箸を縦に割った。
「いただきます!!」
「いただきまぁ〜す!」
- 233 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/02(日) 23:46
- (・∀・)b
- 234 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/03(月) 14:05
- ほのぼのしてとイイ!!(・∀・)
- 235 名前: ○ 投稿日: 2005/01/04(火) 18:34
- 「街外れまで競争だッ!!」
火九の声を合図に4人は走り出した。
流石にこれだけ年の差があれば火九より速いやつはいない。
ある程度手を抜きながら火九は走っていく。
続いてMDR、蠅、DCと言ったところか。
火九を先頭に4人は走り続けていた。
浦板のとある場所に各国のお偉いさんが集まっていた。
真っ暗な部屋にあるモニターにそれぞれの顔が映し出される。
「悪魔によって既に十以上の街や村が破壊されている。」
モニターのひとつが話し始める。
「しかし、兵器は何も効かなかった。
物理的な銃火器はおろか、毒ガスなどの化学兵器ですら意味をなさない。」
ブォンと音を立てて新たなモニターが光った。
「!!!」
「あなたは!!!」
そこに映っているのは浦板中誰でも知っているであろう、天才『小川』だった。
「まさか悪魔に対する何かが分かったのか!?」
モニターの中にいる小川がゆっくり瞬きをする。
悪魔を作り出したのが小川だとは誰も知らない。
「はい・・・、悪魔は・・・一種のウィルスだと思います。」
「ウィルス!?」
「そうです。ウィルスのようなもの、我々は偶然、そのサンプルを手に入れました。
見てください」
小川が小さなビーカーに入った黄色い光をモニターに映す。
「これが悪魔の正体です。」
「そんなものを持っていて、あなたに感染することは!?」
「ありません、これらは悪魔の核、人間でいう心臓のような部分に集まり初めて動きます。
これに感染すれば最後、体は全てこれと同じモノになるのです」
「元は人間だった、という事か?」
「はい」
「では治療法はあるのか?」
「はい、ワクチンを見つけました。」
いっきに周りが湧く。
「しかし」
「?」
「悲しいながら、感染者は救えません。
単純に悪魔を殺すワクチン。
さらにその際街一つ消し飛ぶ程の破壊が伴うでしょう。」
「なッ!?そんなものは・・・・ッ」
「どのみち、これを使わなければその街は破壊される。
悪魔を殺して街を破壊するか。
悪魔を逃がして街を破壊するか。」
「・・・・・多数決を・・・・」
小川が再びゆっくりと瞬きをした。
- 236 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/04(火) 18:51
- キタワ〜〜〜!!!
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
- 237 名前: ○ 投稿日: 2005/01/04(火) 19:14
- 「はぁ〜、疲れたぁ〜」
街外れの野原に4人は寝ころぶ。
空には白く浮かぶ雲。
それの行く先を眺めながらボーっとしていた。
「そろそろ俺のが速く走れそう」
MDRが火九を見て言う。
「ハハハ、まだ無理だな〜」
火九がそう言うと、隣にいた蠅が立ち上がった。
「あれ?何?」
蠅が街の上空を指さした。
良くは見えないが影が浮いている。
「シュ・・・シュウト・・・」
「もしかして・・悪魔ッ!?」
火九が呟くのと同時にDCが叫んだ。
「お前達ッここにいろッ!!」
火九がDCの肩を掴んで、そう言う。
「絶対にッ絶対にここから動くなよ!?
DC、俺はすしやさんの所に行く。」
「そんなッ俺も・・・・」
MDRがそう言おうとするのをDCが妨げた。
「足手まといなんですよ・・・。」
悔しそうにDCが言う。
火九はMDRの頭を撫でると、街に向かって走り出した。
さっきまであんなに晴れていた空を黒い雲が覆い隠す。
ポツリポツリと雨が降り出してきた。
病院に向かい火九はひたすら走っていく。
時折聞こえてくる破壊音や悲鳴が、雨音にかき消されるのがせめてもの救いだった。
研究棟の地下へ向かい走る。
「すしやさんッ!!」
黒い巨体の背中に話しかける。
「分かっている・・・。
病院の皆はもう避難の準備を始めているだろう・・・。」
すしやは振り向かずに作業を続けている。
「なら、すしやさんもッ!!」
「もう・・・出来るんだ・・・」
外から爆音が聞こえてくる。
「すぐにワクチンを持っていく・・・
お前は外の様子を見てきてくれ」
「え・・・でも・・」
「早くッ!!」
すしやの気迫におされ、火九は再び階段を戻った。
外はもう数分前とは姿を変えていた。
人々が山のように重なっている。
見渡しの良くなった街に雨が降り注ぐ。
「お母さんッ!!お母さん!!!」
隣の崩れた瓦礫に立ちすがる少女。
ニールだ。
色々な血が雨に流され混じりあう。
「おかあ・・・・ッ」
何かを見たのか、ニールは気を失った。
瓦礫から血が流れている。
「シュウトォッ!!」
火九が空に向けて叫んだ。
「どうしてッ、シュウトッ!!!
シュウトッ、シュウト!シュウトッ!!」
ただひたすら、雨の降る空に叫び続けていた。
- 238 名前: ○ 投稿日: 2005/01/04(火) 19:42
- 建物で遮られていた視野がいっきに広がっていく。
その片隅に黄色く光る悪魔がいた。
恐ろしく輝く瞳。
「シュウ・・・ト・・」
火九が呟く。
雨音で声など聞こえるわけが無い距離に2人はいたが、悪魔はゆっくりと火九を見た。
ザァー
雨粒が地面に跳ね返り音をたてている。
赤いマントが濡れ、薄黒く色を変えた。
悪魔の眼光が色あせていく。
「シュウト・・・今助けてやる・・・」
悪魔が低く唸る。
頭を痛そうに抱えて唸り続ける。
悪魔が火九を見て、口を動かした。
声など聞こえるわけがない。
でも何となく
「逃・げ・ろ」
と三文字だけ言った気がした。
悪魔の瞳が恐ろしく輝く。
シュウトはニールをかつぎ上げると研究棟の地下へ走り出した。
「ワクチンをッ、早くッ!!!」
カンカンカンカンッカンッ
階段を走り降りていく、時折揺れる大地に足を滑らせないように必死に踏ん張る。
火九がドアノブに手をかけたのと同時に、扉が開いた。
「出来たぞッ!火九!!
外の様子は!?」
すしやが死にそうな顔で叫ぶ。
「・・・・・・」
火九は無言で涙を流していた。
短いけれど、自分の村を出てから初めて居座った街。
それを破壊したのが親友。
どんな気持ちだったのだろう。
「そうか・・・こんな事はしてられないな・・
行・・・ッ」
ドォォォーンッ!!
今までに無いほどの揺れが2人の平行感覚を失わせた。
ガシャン、バァーンッ
実験器具がぶつかり合う音が響く。
外で何が起きているのか。
立つことも出来ない。
すしやは崩れていくであろう、この場所から2人を守るため、ニールと火九の上に覆い被さった。
- 239 名前: ○ 投稿日: 2005/01/04(火) 20:04
- 「では、満場一致で悪魔の破壊を実行します。」
モニターに映った小川が呟く。
「方法は?」
「戦闘機よりワクチンを打ち出し、悪魔の爆発前に離脱させます。
次の出現が悪魔の最後になるでしょう・・」
黒い雲をかき分けて、白い影が現れた。
ゴゴゴゴゴッとジェット音が鳴り響く。
悪魔がそれを見上げると、プシュッと音をたてて戦闘機が放った何かが悪魔に刺さった。
そのまま戦闘機は空に消える。
「ぐあぁぁぁアァッッ!!!!!」
不安定な光を放ち、悪魔が悲鳴をあげている。
しばらく悶えた後、光が悪魔の中心に吸い込まれ、いっきに爆発した。
周りにあるものが次々と消し飛んでいく。
街中が光で満たされた。
黒い雲から落ちていく雨。
消えていく街にいっそう強く降りつけている。
悪魔の死亡
その吉報だけが世界中に流されたのだった。
- 240 名前: ○ 投稿日: 2005/01/04(火) 21:48
- 地下にいたおかげでニール、すしや、火九はほとんど無傷で生き残った。
他に、野原にいたDC達も生きていたが、全てが塵となった事から生存者は0と報告されていた。
こうして、小川は英雄となる。
小川の建てた像。
科学に祝福された世界『浦板』
そのシンボルである巨大な像を中心にアスファルトが広がっていく。
火九達はすしやの経営している酒場のある街に来ていた。
長い間帰ってなかったので、中は埃がたまっている。
4人の精神状態が落ち着くのに、長い時間がかかった。
その間、色々な発表があった。
悪魔の死亡
小川が作ったワクチン
・・・すしやの作った物と同じだった。
どこでサンプルを手に入れたのか?
アレ(悪魔)はどう見ても人工的に作り上げられたモノだった。
もしかして・・・
すしやの中に色々な考えが巡るが、それを今火九らに言うべきじゃない
と、心の中にしまっておいた。
数年後、小川が新たな研究を発表する。
『永遠の命』
自分のクローンを作り、それを冷凍保存しとく事により、怪我をした体や癌にかかった部位を取り替える。
簡単なようでかなり高度な技術だった。
これの導入により、金持ちは死ななくなったのだ。
・・これにより、小川は完全に世界を手に入れた。
しかし、また数年後、小川は死亡する。
「飽きた」
遺言として、それだけを残して・・。
すしやの考えは永遠に解けないまま、小川はこの世を去ったのだった・・・・。
- 241 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 00:02
- 「ん〜、いい天気だな〜!」
火九が青い空を見上げて言う。
シメジは家で留守番しているようだ。
「なぁ、ニール?」
「ぇ・・・、うん。」
ニールは後ろから歩いてくる。
かなりの距離を歩いた。
火九が突然、立ち止まる。
ニールは走って火九の少し後ろまで行った。
「あ、きれいっ〜」
ニールが目の前に広がる紫色を見て声をあげる。
火九もかなり久々にここに来た。
・・・・何一つ変わっていない。
一面に咲くパーフルの丸い花。
この村の春、その紫色。
村はなくなったけど、ここだけは変わらない。
「・・・火九・・・?」
ニールが火九の背中に話しかける。
「どう・・・したの・・・?」
火九の震える背中を見て不思議に思う。
泣いているのだろうか?
「いや・・・・
何か・・いろんな事を思い出した・・」
「?」
「やっぱ綺麗・・だよな・・・」
「うん・・、始めてみた。
こんな綺麗な景色・・・」
ニールの鼻にパーフルの匂いが流れる。
2人は眼を閉じてそれを感じていた。
あれから十年、何が正しくて何が間違ってるかなんて誰にも分からない。
ただ、小川が死んでも世界は科学に蝕まれていく。
悪魔の真実も解る事もない。
今はただ・・・
この綺麗な景色を見ているだけで
幸せだった・・・・。
「火九・・・、私、森の奥に行くね?」
気を使ってか、ニールは森の方へ行った。
あれはどれくらい前だろう。
火九はパーフルの花畑に寝ころび空を見ている間に時間を忘れていた。
久々にボーっとしてしまった。
「ニールーー?」
火九が呼ぶが返事は無い。
立ち上がりあたりを見渡す。
ドクンドクンッ
火九の胸が騒ぐ、嫌な感じだ。
森の奥へと走り出す。
悪魔は死んだ。
もう絶対に現れることは無い。
それはとっくの昔に知っていた。
もしかしたら生きていて捕らえられてるのじゃないかと思い、像に侵入した事もある。・・見つかったが。
あの日から俺たちは指名手配となった。
悪魔は死んだ。
悪魔は死んだ。
悪魔は死んだ。
悪魔は死んだ。
悪魔は死んだ。
悪魔は死ッ・・・・
- 242 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 00:03
- 話の作りうますぎあげ
- 243 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 00:28
- 感想ありがとうございます。
蝶うれしいです!!
何か上手に言いたい事をまとめれなかったぜ。OTL
さぁ、クライマックス。
良かったら最後まで付き合ってください。
火九さん、すいません。
この話、バッd(ry
- 244 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 00:37
- バッドエンドなの!?
なんかそれ聞いただけで泣きそうだ(;∀;)
- 245 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 00:38
- デジャヴ(;∀;;;;..
- 246 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 00:53
- マスター・すしやの黒い巨体が小箱を持っている。
「皮肉なもんだ・・・」
先日、火九達に取りに行かせた小箱。
『悪魔の種』
一度崩壊したあの街に探しに行ったが、見つからなかった。
もう悪魔なんて現れないと分かっていても、なぜか探していた。
一見、何かの宝石に見えるそれ。
それは、あの日すしやが作ったワクチンだった。
そのあまりの美しさは宝石と間違えるのも無理はない。
「どうして、こんなものがまだ残ってたのか・・・」
すしやが大きくため息をつく。
「『悪魔の種』・・か。
まったく皮肉な名前が付いたものだ・・」
誰から誰に渡ってきたのか、その美しさからいつの間にか『悪魔の種』と呼ばれ、裏マーケットを駆け抜けていた。
もう二度と使うことの無いワクチンだが、すしやはどうしても気になり、火九達に取りに行かせたのだった。
「マッ、マスタァーー!!!」
外から火九が走ってきた。
かなり慌てているらしく目が血走っている。
「どうした?」
「ニッ、ルはッ!?」
「ニール?お前と一緒じゃ・・・」
火九が勢い良くすしやをつかんだ。
「・・・ッじ、なんだッ・・」
「落ち着け、火九。」
「同じなんだッッ!!あの日と!!
泉に付着した血!
あの嫌な胸騒ぎッ!
恐ろしいくらい黄色い光ッッ!!!!」
火九がはぁはぁと息を切らせる。
すしやは自分の手に握られたワクチンを思い出した。
偶然なんて・・この世には無いのかもしれない。
「悪魔はッ生きているのか!?
なぜッまたあそこにッ!?」
「落ち着け!まだそうと決まったわけじゃ無いだろう!!
ただ、どこかに行っただけかもしれん」
すしやの脳裏を絶望がよぎる。
核さえ生きていれば、再生するのか?
そもそも戦闘機からワクチンを撃ち出すという曖昧な方法で核を撃ち抜けれるわけが・・。
生まれた場所に戻るのが習性なのか?
もっと調べておくべきだった・・・。
ドオォォォーーーーッッン!!!!!
- 247 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 01:24
- すべては偶然なのかもしれないし、
運命なのかもしれない。
ただ悪魔に一番想い入れ深い故郷を最初に破壊する習性があるだけかもしれない。
そんな事は誰にも分からないが、悪魔はそこにいた。
綺麗な深いグリーンの髪。
細くて長い白い脚。
恐ろしく輝く瞳。
激しく揺れる大地。
その上に5人は立っていた。
まったく同じ光景。
「何が起こった?」「どうしてこんな事に?」
そんな質問は後回しにしなければならない事は、成長した3人には分かっていた。
「火九、俺はあの日作ったワクチンを持っている。」
「!?」
「それを打ちにいく。お前達は逃げろ」
すしやがそう言う。
周りは次々と消し飛んでいく。
「これは治療じゃない。
もう知ってるだろ?」
すしやがワクチンを強く握りしめて言う。
その手の震えは止まらない。
「危ないッ!!」
DCの声と同時に爆発が起きた。
すしやが血だらけになっている。
すしやの持っていた、ワクチンが地面を転がっていく。
美しい悪魔が視界に入った。
「うおぉぉぉぉッッ!!!!」
MDRが即座にワクチンを拾い、走り出す。
「待ッ!!」
火九が何かを言おうとしたが、MDRは消し飛んでいた。
シッショーの声も聞こえない。
カランカラン
ワクチンが蠅の方へ転がる。
それに目を向ける間もなく、蠅の足下が崩れた。
「グァッ!?」
落ちてきた瓦礫を浴びて、骨の砕ける音が響く。
火九はそれを見ないようにワクチンを拾い上げた。
「・・・・ニール・・・・」
火九が走り出す。
爆発の真ん中を走り抜ける。
赤いマントが風に揺れる。
悪魔はゆっくりと火九に目を向けた。
「おぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!」
が、DCの叫び声に誘われて振り向く。
次の瞬間には、DCも姿を消していた。
「ッ」
悪魔が真後ろにいる気配に気づく。
「ニール・・・」
宝石のように美しいそれを、火九は空にかかげた。
さっきまで晴れていた空。
そこに黒い雲が浮かんでいる。
ポツリポツリと雨が降り出した。
- 248 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 01:42
- ザァー
降り注ぐ雨が2人に当たり跳ね返る。
今、確実に火九の手に握られたワクチンが悪魔の胸に突き刺さった。
「ぐぉぉォッ」
悪魔は低く唸り、悶えている。
瞳の輝きが色あせていく。
「ニール・・・」
火九は触れる事が出来るようになったニールの体をゆっくりと抱きしめた。
「か・・きゅう・・・」
ニールが呟く。
黄色い光がニールの体に吸い込まれていく。
「ごめんな・・・ニール・・・」
ザァー
雨に火九の涙は流されていく。
「火九ッ!!」
ニールが火九を強く抱きしめた。
ザァー・・・・ザァー・・
何が間違ってて、何が正しいのかなんて俺には分からない。
ただ・・俺には・・
「火九・・・ッ。だっ・・」
ニールが泣きながら叫んでいる。
「ん?」
火九は両手をいっそう強く絞める。
「だいっ」
黄色い光が完全にニールの中に入った。
「大好きだよッ!!」
カッ!
あたりが破壊と共に光に包まれていく・・・。
科学に祝福された世界『浦板』、か・・
ただ・・俺には・・
この世界が・・科学に・・
呪われているようにしか・・
思えなかった・・・・。
生まれては消えてゆく命
1Fづつ流れていく時間
意味もなく降り続ける雨の中
2人の時間が終わりを告げた・・・
完
- 249 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 01:47
- ぐはっ
終わりましたッ!!
すいません、もっと綺麗なバッドエンドにしようと思ったんですが、色々ミスが積み重なりました。
シメジとの出会い。
挟むの忘れたりw
ほんと最後まで読んでいただいて感謝いたします!!!
また、皆さんがこれに飽きなかったら、書かせていただこうと思います。
次は、戦闘しない話をッw
ありがとうございました〜
終わり
- 250 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 01:49
- (・∀・)乙かrえ
- 251 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 01:56
- ニールたんが報われない・・(つД`)
でもGJ!です!
面白かったですよ!
次回作に期待!
- 252 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 01:56
- お疲れさま〜。
なんか消えるように終わっていったのが切ないよ〜(;∀;)
続編書いてくれるんだったら是非かいてほすぃ。
- 253 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 02:58
- ヤバい、ラスト切な過ぎて本気で泣きかけたw
職人〇氏超GJ!!
貴方のペースで良いんで、どんどん新作出してって下さい。
期待してますよ〜。
- 254 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2005/01/05(水) 07:19
- 〜(ミ;゚д゚) シメジノ タンジョウヒワ…
- 255 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 14:09
- はぁはぁ
感想が蝶うれしいです!!
はぁはぁ
次は誰で書こうかなぁ・・・・
今熱い人、常時募集中。
たぶん戦いのない話になるんで、それにあってそうな人・・・・
そしてヒロイン・・・・
あ〜困った。ヘルプミー。
- 256 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 18:46
- >>〇さん
GJ!楽しみに読んでます〜頑張って下さい!!
リクエストですが、シャロンさんとかはどうでしょう?
- 257 名前: るぅ (8BBK4jWU) 投稿日: 2005/01/05(水) 19:22
- 超良スレさげ
結構前からこのスレROMってました、名前使ってくれてありがとうございます|*´∀`)
何か変なキャラしてるけどw
マジセンスいいわー
超面白くて話の世界に入り込んじゃうし。
個人的に少年とMINT君を使って欲しいなw
- 258 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 19:43
- るぅの背後ゲット!!
- 259 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 19:45
- リクエストあげ
- 260 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 21:51
- リクエストですか?
カリスカスレ>>377さんなんてどうでしょうか?w
- 261 名前: 260 投稿日: 2005/01/05(水) 21:51
- カリスマスレでした・・・
カリスカスレって何処だよw
- 262 名前: ○ 投稿日: 2005/01/05(水) 22:22
- 少年さんかぁ〜
シャロンさんかぁ〜
う〜ん・・・・
ヒロインがいないw
誰かいいアイディアをッ!!
お願いします。
- 263 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 22:30
- メイン少年さん
ヒロインショタ希望
- 264 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 22:38
- さりげなくスルーしてますね^^
- 265 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 22:47
- ヒロインはあっつん
- 266 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 23:11
- 一作目に登場してるけど、ヒロインしーどたん希望。
スレで結構ネタがあがってますよ。
- 267 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 23:51
- 次はハッピーエンドがいいですぅ^^
- 268 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/05(水) 23:54
- むしろニールたんのハッピーED版キボン
- 269 名前: 309 投稿日: 2005/01/06(木) 00:09
- この流れならこのコテで言える!!
ニールタソのハッピーエンドキボン
- 270 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 00:24
- エロゲばっかやってる奴はすぐにマルチEDに逃げる
- 271 名前: ○ 投稿日: 2005/01/06(木) 00:36
- よっし!!
シャロンさんで書きたくなってきた!
漢字めんどくさいからカタカナで!!
でも、やはり書けない気もする。
ヒロインは・・・・ほんと迷ってます。
ハッピーエンド。
それは幸せの終わりなんですよ・・・・
・・・・はい。
- 272 名前: ○ 投稿日: 2005/01/06(木) 01:40
- 流れはだいたい出来ました・・・・。
昔考えたののかなり使い回しですがw
ヒロインッッ
明るい天然キャラとして使いやすそうなヒロイン様をッ!!
- 273 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 02:26
- そこでシャロンさんをヒロインへ移行ですよw
- 274 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 02:56
- 続き期待age
- 275 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 03:13
- 明るい天然キャラ
セイネさんとか。
- 276 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 03:21
- ゆきのせヒロイン
- 277 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 04:25
- るぅヒロインでBL気盆ぬ
- 278 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 04:54
- やっぱニールたんでしょw
- 279 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 15:47
- >>278
ニールは火九とハッピーエンドを迎えました
- 280 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 17:27
- ユメヒロイン
- 281 名前: ○ 投稿日: 2005/01/06(木) 20:04
- セイネさんでいかしていただこうかなぁ。
一番しっくりくる。
しかし自信がないッ!
よく考えよう。
- 282 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 21:11
- ヒロインがシャロンさんで、相手パイロンさんってのは?主役はもちろんシャロンさんで(・∀・)
- 283 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木) 23:45
- セイ姉さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
激しく期待age
- 284 名前: ○ 投稿日: 2005/01/06(木) 23:55
- *この話は実際の人物や団体とは驚くほど関係がないです。
細かいことを気にせずに、良かったら楽しんでくださいな。
- 285 名前: ○ 投稿日: 2005/01/07(金) 00:08
- 小さな町、『浦板』
季節は秋
少しばかり肌寒い。
見下ろす景色は紅で
吹き抜ける風に落ち葉が揺れる。
この小さな町で俺たちは出会った。
それは劇的でもないし
運命ですらないのかもしれない。
ただ俺は・・・
全てを伝えるために、
その想いを、今、
・・・・・言葉にした・・・・・
『浦板ラブストーリー』
- 286 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 00:10
- もう新作キター
- 287 名前: セイネ (SkqmBirw) 投稿日: 2005/01/07(金) 00:13
- ちょっとドキドキです・・・(・x・*)
- 288 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 00:14
- ニール! ニール!
((∩ ∩))
ニール!((∩_, ,_ _, ,_∩))セイネ!
((⊂ ((Д´;≡;`Д))ノ∩))
((⊂ l⌒i / ⊃)) セイネ!
((⊂ (_) ) )) ∪))
セイネ! ((_(((_)))_)))
- 289 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 00:14
- セイネたんもキター&背後ゲト
- 290 名前: 289 投稿日: 2005/01/07(金) 00:15
- >>288
(´・ω・`)
- 291 名前: ○ 投稿日: 2005/01/07(金) 00:41
- ジリリリリリリリリリリッッ!!!
「・・・ん〜・・・」
叫び続ける目覚ましの機械音、俺の朝はいつもこいつと共に始まる。
リリリ・・・・・ッ
俺は布団の中から精一杯手を伸ばし、目覚まし時計の頭を叩いた。
もう朝か・・・
静かになった部屋はまだ薄暗い。
だるいな・・・。
光を浴びなければ、どーにも活動意欲が湧かない。
俺は這いずるように窓際に行き、勢いよくカーテンを開けた。
「ふぁ〜・・・。」
窓から差し込む朝日につられ、大きく伸びをする。
朝露に塗れた窓の縁を掴み、ゆっくりと立ち上がった。
寒くもなく、暑くもない。
俺の、いや大抵の人間の大好きな気候だろう。
俺がこっちに来てから、もう数年経った。
こっちの公立の大学に行くために、一人暮らしをすることになったのだ。
最初の頃は戸惑っていたが、今となってはこの『浦板』に馴染んでいる。
地方なだけあって少し不便な事もあるが、それにもかなり慣れきた。
「さってと、学校行くかぁ・・・ふぁ・・」
俺は、眠気でいまいち思い通りに動かない自分を気合いで起動させた。
- 292 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 00:44
- 舞台が現代って初めてだね(・∀・)
期待してますよ〜
- 293 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 00:50
- 蝶期待あげ
- 294 名前: ○ 投稿日: 2005/01/07(金) 01:16
- 朝から焼き芋。
秋といえばこれに限る。
大量に買い込んだサツマイモをアルミホイルに包んでオーブンにぶち込む。
後は時間がそれを焼き芋に変えるんだ。
俺はダンボールから手頃なイモを二つ出し、オーブンの目盛りを40分の所まで捻った。
俺は一度動く気が出てきたら、急にせっせと動き出すタイプ。
少し散らかった部屋を簡単に片づけると、部屋の片隅に置いてあるCDコンポのスイッチを入れた。
芋の焼ける匂いが少しづつ漂ってくる。
CDの回る音が最初はゆっくりと鳴り、それがだんだん早くなってきたと思えば、
スピーカーから音が流れはじめた・・・
・・・・大好きな、この曲。
微かな記憶の隅っこで・・・いつも静かに流れている・・・。
チーンッ
・・・どうやらオーブンの任務が終了したようだ。
俺はCDコンポのスイッチを切ると、大きな手袋を片手に、オーブンへ向かった。
「あちッ!!」
開けた瞬間立ちのぼる蒸気に、俺は少しひるんだ。
が、再び気を取り直し焼き芋に手をかける。
「うん、美味しそうだ」
いい具合に柔らかい。
まぁ満足といったところか。
俺は、まだ熱すぎるそれを頬張りながら、口の中に放り込んだ。
- 295 名前: ○ 投稿日: 2005/01/07(金) 02:02
- ここから大学までは、結構近い。
俺は芋を喰いながら、服を着替えて鞄に筆記用具を詰めた。
電気を消すと、家の戸締まりをする。
外は吹き抜ける風のせいで少し肌寒い。
大学までの一本道。
その脇に並んだ木々。
この季節にはそれらの葉っぱがすべて紅に染まる。
電車で来ている人や、地元に住んでいる人の歩く中を俺も一緒に歩き始めた。
いつもとなんら変わらない景色だ。
5分程で、大きな時計塔が見えてきた。
『浦板大学』の門をくぐる。
地方の大学なだけあって土地はかなり広い。
「おはよぉ、シャロン〜!」
俺を呼ぶ聞き慣れた声がする。
振り向くとやはり奴がいた。
「おはよう。」
とりあえず返事はしておく。
「どうしたん?元気ないやん!」
お前のテンションが高すぎるんだよ。
「ふつうだ。
お前は朝から楽しそうだよな。少年よ。」
明らかに清々しい顔で少年は俺の隣に来た。
こいつとは、入学当初この大学で知り合った。
気があうのか、それ以来ずっと仲が良い。
俺と同じで、実家が遠く一人暮らしをしている。
特徴は・・・・
・・・脳天気かな。
「ハハ、でも今日は一個目からしんどい授業やからなぁ〜」
確かに一個目はだるい授業だ。
けど、少年がそう言うと、楽しそうに聞こえる。
「うん、だるいな・・・」
俺は手に持った鞄を肩にかけると、そのまま校舎に向かって歩いていった。
- 296 名前: 社灼 (sime.FJA) 投稿日: 2005/01/07(金) 06:59
- ヽ(゚д゚)ノ
- 297 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 18:47
- 今回は学園ものですね、○さん頑張って下さい。
- 298 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 22:31
- 期待あげ
- 299 名前: ○ 投稿日: 2005/01/07(金) 23:28
- 「・・・はい」
広い教室に小さな声が飛び交う。
教授が出席をとっている。
「彩子」「ここですわ」
・・・そろそろ俺の番か。
「シャロン」
「はい。」
自分の名前が呼ばれるのを確認すると、俺は返事をし筆記用具を出した。
「少年」「はい!」
相変わらず元気な少年の声が響く。
俺の右隣に少年、左隣に彩子がいた。
彩子も、入学当初から仲がよいが・・・、
なんて言うか・・・・ん〜・・・
住む世界が違う。
俗に言うお嬢様と言う輩だ。
「・・・レポートやってきた?」
少年が思い出したように俺に言う。
俺は鞄から出したレポートを少年に見せると、少年は急に頭を抱えた。
「どうしよう」、と唸っている。
・・・また、忘れたのか。
「また、忘れたのか?」
念のために聞いてみる。
少年は頭を抱えたまま俺の方を向いた。
「うん・・・
単位がぁ・・・やばいッ」
自業自得だが、こいつとも腐れ縁。
なぜかほっておけない。
俺が試行錯誤している中、彩子の手が伸びてきた。
「お貸ししますわ。」
手にはレポートが握られている。
「でもッ彩子はどうするん・・・?」
少年が潤んだ瞳で彩子に問いかける。
はぁ・・・
結局、このパターンかよ・・・
「わたくし、昨日あまりに暇だったのでレポートを二つ書いてしまいまして。
良かったら、お使いください」
こいつはなぜいつも二つレポートをしてくる。
「彩子様ッ、この恩は忘れないッ!!」
こいつも何回そのセリフを言っている。
「お気になさらないで。
『常に尊大に、そして慈悲深くあれ』
それが、我が家の教えですの。」
彩子は上品に笑うと涙目の少年にレポートを渡した。
「レポートの提出」
教授が小さくそう言うと、後ろの人から各自レポートを前に渡していった。
- 300 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/07(金) 23:37
- 彩子さんかよw
○さんネタに敏感ですなw
- 301 名前: ○ 投稿日: 2005/01/08(土) 00:16
- 鐘の音が鳴りやんだ校舎には、ほとんど人影が見あたらない。
先刻まであふれるほどに人がいた校門へと続く一本道にも、ただ静かに風が流れていた。
「まあ素敵!日本が狭いなんて誰が言ったのかしら?」
降ってくる紅い落ち葉を見上げながら、一人の女が歩いてきた。
嬉しそうに落ち葉を掴むと、それを宙に投げてクルリと回る。
その遠心力で、長いスカートも弧を描いた。
「セイネ、はしゃぎすぎですよ。」
セイネと呼ばれた女の後ろから、セイネの母にしては少し歳のとった女性が歩いてくる。
「でも、初めての日本だもの!
はしゃぐなと言う方が無理だわ〜。」
セイネが嬉しそうにスカートの裾を掴み、女性の方へ走っていく。
「けど、セイネ。
お行儀よくしないと、向こうに嫌われますよ。
あなたの父が理事長をしているとはいえ、こんな特例なかなか無いんですから。」
歳のとった女性が言う。
「あら、パパには感謝しているわ!
それに私、お行儀なら完璧よ?」
セイネはにこりと笑うと、スタスタと美しく直線上を歩いていく。
が、しばらく歩くと立ち止まった。
「でも・・・」
セイネがまた振り向く。
「どこにいても賑やかな方が皆楽しくない?」
セイネが笑顔をでそう言う。
ブラウンの髪が風に流される。
スタスタスタ
「セイネ、はやく行きますよ?」
振り向いたセイネを通りこし、校門へと足を進めていく。
「あっ、ちょっと待ってよ!!」
それを追い、セイネも校門へ向かった。
- 302 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/08(土) 00:27
- セイネたんキター
- 303 名前: ○ 投稿日: 2005/01/08(土) 00:32
- 感想ありがとうございます!!
蝶嬉しい。
彩子さんが後一歩早く存在していれば、全然違う話のヒロインにしてましたよw
一応、本当に一応だけど、最後までの流れは考えているんで良かったら読んでくださいな。
- 304 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/08(土) 00:48
- ○さん乙
ノ旦オチャドゾー
- 305 名前: 赭龍 投稿日: 2005/01/08(土) 01:21
- 壁│∀・)ジー
頑張って下さい
- 306 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/08(土) 19:44
- シャロンさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
- 307 名前: セイネ (SkqmBirw) 投稿日: 2005/01/08(土) 21:45
- 緊張する・・・(*・x・*)
- 308 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/08(土) 22:41
- セイネタんもキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
- 309 名前: ○ 投稿日: 2005/01/09(日) 16:27
- 重そうなドアの中にセイネはいた。
「あれ・・?パパは?」
セイネがキョロキョロと周りをみる。
「理事長はただいま出張中です。
話は聞いています。セイネさんですね?」
「あ、はい。」
「それでは転入手続きを・・・」
ガチャ
「失礼しましたー。」
セイネは深くお辞儀をすると、部屋を後にした。
「無事に終わりましたか?」
外で待っていた女性が言う。
「うん、大丈夫よ!
明日からここで生活するのね!
とても楽しみだわ〜」
「セイネ、何かあったら連絡するのですよ?」
「あら、心配しないで!
こう見えても私、自炊には自信があるの」
「心配するなと言う方が無茶ですよ。
まあ、たまに連絡を入れなさいよ?」
「は〜い。」
セイネが間延びした返事をする。
二人は校門へと歩いていった。
女性は車に乗ると、セイネの方を向き心配そうに手を振る。
セイネは何度も楽しそうに手を振った。
ブモモモモモ
排気ガスを吐いて車が視界の外へと走り去る。
砂埃が舞い、セイネはそれをかわすように俯いた。
「さっ、とりあえずは、お家へ行こうかな!!
その後に町の探検ね〜」
セイネは楽しそうに走り出した。
- 310 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/09(日) 16:29
- 続きage
- 311 名前: ○ 投稿日: 2005/01/09(日) 17:30
- 「ふぁ〜・・・」
授業が終わり、俺は座りっぱなしで固まった自分の体を大きくのばした。
隣で彩子がいくつかの教材をトントンと机の上で揃えている。
少年は・・・・
・・・はぁ・・・
「起きろ。」
俺は軽く少年の肩に手を触れた。
「んー・・・」
少年が眠たそうに目を開ける。
「授業終わったぞ。」
俺がそう言うと、少年は嬉しそうに目を大きく開いた。
「シャロン!今日バイトは?」
相変わらず、切り替えの早い奴だな。
「非番」
「よしっ!遊ぼ・・・・。」
そこまで言うと、次は急に落ち込みだした。
「なんだ?どうした?」
あまりの移り変わりに少し頭のほうが心配になり聞いてみる。
「俺がバイトや・・・」
そこまで落ち込むことかよ。
「ご機嫌よう」
彩子が立ち上がりそう言う、荷物の片づけが終わったようだ。
「あ、ご機嫌よう。」
俺と少年が声を合わせて言うと、彩子は上品に笑い歩き去った。
「・・・じゃあ、俺も行くわ〜・・」
少年が不服そうに言う。
「おう、また。」
教室もガヤガヤと騒ぎながら人が減っていく。
そろそろ俺も帰ろうかな・・・。
にしても、今日はマジ暇だな〜。
コンビニでも寄って帰るかぁ・・・。
俺は少しだるい体を持ち上げて。西日がさす教室を後にした。
- 312 名前: ○ 投稿日: 2005/01/09(日) 17:57
- 寒い。
いや、寒いと言うほど寒くないんだが、微妙に肌寒い。
コンビニを通ると、家までは少し遠回りになる。
けど、大通りから外れているんで人が少ないしプラマイ0だろう。
あ、でも景色が殺風景だから少しマイナスか・・。
曲がり角を右に曲がると、コンビニの青い看板が見えてくる。
自動ドアが開いた。
「こちらこそ!」
ドアから出てきた女がそう叫んでいる。
ブラウンの髪をなびかせながら、俺に背を向けて走っていった。
なんだろう?
俺はいつも、ボーっとしていても周りの声を勝手に聞いてしまう。
で、その会話の内容が気になったりするんだ。
数々の修羅場を潜ってきた俺にとって、
今さっきの会話の内容を予想する事は、赤子の手を捻るよりたやすい。
店員の「ありがとうございました!」に対する返事とみたね。
「こちらこそ」って・・・
・・・変わった奴だな・・・。
てか、あんな奴ここらにいたっけ?
ガァー
自動ドアが開く。
「いらっしゃいませ!」
店員が、自動ドア開くの見てから余裕でした、と言わんばかりの笑顔で挨拶してくる。
俺は手頃な晩飯を探すと、それを持ってレジに向かった。
ん〜、繊維があからさまに足りないな。
いや、キャベツが冷蔵庫にあった。
あれにむしゃぶりつくとしよう。
レジで会計をすませる。
店員の「ありがとうございました!」を聞くと、俺は家路を急いだ。
- 313 名前: ○ 投稿日: 2005/01/09(日) 18:54
- ガチャ
家の鍵を開けると、中に入る。
コンビニで買ってきた食べ物が入っている袋を台所に置いた。
まだ夕飯には早い時間だな。
俺はCDコンポのスイッチをいれた。
曲が流れ始める・・・。
静かに、けど力強く流れるフルートの音。
俺は眼を閉じて、その音を堪能していた。
大好きな・・この曲・・
歌は人の心を落ち着かせる。
それに、あの短い時間で人の心を動かせる。
特に、この曲はいつ聴いても感動する・・。
無性に切ない気分になってきた。
俺は部屋の端に置いてある楽器ケースを拾い上げた。
たまに、というかほぼ毎日、この時間になると俺は決まってあそこに行く。
この小さな町を見下ろせる場所。
地元の人でもほとんど知らない。
・・・裏山にあるの展望台。
昔使っていたらしいが、今はボロボロになった『立ち入り禁止』の札だけが貼ってある。
太陽が沈むにつれて冷え込んでいく気候に対抗すべく、少し着込んで家を出た。
戸締まりをすると、歩き慣れた道を歩き始める。
・・・やっぱり肌寒いな。
風が冷たく吹き抜けた。
- 314 名前: ○ 投稿日: 2005/01/09(日) 19:21
- 浦板の奥へ奥へと歩く。
今時は、やれギター、やれドラム。
恥ずかしくって、人前じゃこんなの吹けない。
だから、いつもあそこに行くんだ。
元々そんなに人がいるわけではないが、人気がほとんど無くなる。
アスファルトの坂道が、山に近づくにつれて獣道へと変わった。
歩いて30分程で、小さな展望台が見えてきた。
小さな木のベンチ。
冷たそうな鉄の柵。
静かすぎて自分の呼吸音すらうるさく聞こえる。
俺は楽器ケースをベンチの上に置くと、鉄の柵へと足を進めた。
『浦板』の町が下に見える。
少し冷たい風に当てられると、ベンチに座り楽器ケースを開けた。
大好きな曲、さっき聴いていたのと同じ、俺の大好きな曲があった。
楽器ケースからそれを出すと、乾いた口に先端を当て軽く吹き始める。
「♪トゥ・・トゥ・・トゥトゥ・トゥトゥトゥ・・・」
何ていうんだろう?
フルートを吹いている時のこの感覚・・
世界が・・
俺の音に満たされる。
どんな音も俺に届かない・・。
世界に 俺 ひとりしかいない
・・・この感覚。
前奏を吹き終え、歌詞の部分を頭に浮かべながら次に入ろうとする。
いつものように俺の音だけだった。
━━そこまでは
いつものように俺の音だけだった。
世界に 俺 ひとりしかいない
・・・この感覚。
その中、ひとつの女性の声が俺の世界に響いた・・
- 315 名前: ○ 投稿日: 2005/01/09(日) 19:47
- 「ここが、今日からお世話になるお家ね!」
コンビニの袋を持ったセイネが言う。
部屋の中を歩き回っている。
部屋にはいくつかのダンボールがあるが、ほとんど片づいている。
「嬉しいわ!私の使ってた物を全部送ってくれたのね〜」
大切そうに家具をひとつひとつ撫でていく。
「あ!」
大きなCDコンポが壁端に置いてある。
それを見て、セイネは嬉しそうにスイッチを入れた。
CDが回っている。
ゆっくりとフルートの音が流れ始めた。
セイネは両肘を床につき、眼を閉じいる。
しばらく聴き入ると、電源を切った。
「よしっ、町の中を探検しよっと!」
ダンボールの中からマフラーを取り出すと、それを首に巻き部屋を出ていった。
「日本は四季があると聞いたわ。
一年で四回も景色が変わるなんて素敵ね〜」
人に見られたら恥ずかしいくらいに喋りながらセイネが町を歩いている。
気の向くままに道を曲がる。
次第にアスファルトの道が獣道へと変わっていった。
長い坂道を楽しそうに登っていく。
「どこまで続くのかしら!
もしかしたら、浦板を見渡せるのかも!」
『立ち入り禁止』と書いた札。
セイネはその前で立ち止まった。
「・・・・?
漢字ってほんと嫌だわ!!
どういう意味なのかな〜?」
持参していたのか、懐から国語辞典が姿を現す。
それを引こうとしたが、何かが聞こえてくるのに気づいた。
「あれ?この曲・・・?」
セイネはその音がする方へ走り出した。
さっき聴いていたのと同じ音。
乾いた空気にフルートの音が響く。
展望台。
白いベンチに腰をかけいる後ろ姿。
西日が反射して銀色に光るフルート。
小さく見渡せる浦板の町。
今、前奏が終わった━━。
- 316 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/09(日) 19:50
- ヤバいもうドキドキだ(*・∀・*)
- 317 名前: sage 投稿日: 2005/01/10(月) 00:40
- ドッキドキング
- 318 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/10(月) 00:41
- ホントすいません。ミスりました。
- 319 名前: ハジャエディ (mRfdOT5I) 投稿日: 2005/01/10(月) 06:38
- ( ゚Д゚)ハジャー!!
- 320 名前: ○ 投稿日: 2005/01/10(月) 20:45
- 優しく 甘くて 透き通るような、低音・・
明るく 強くて 空まで届きそうな、高音・・
俺はフルートを吹くのをやめ、振り向いた。
ブラウンの綺麗な長い髪、その少し小さめな体から出ているのが不思議なくらいの綺麗な声だった。
「あ、ごめんなさい!
その曲・・大好きで、あなたのフルート聴いてたら つい 歌いたくなっちゃって・・。」
少し照れながら、そう言う。
今さっき歌っていた時の綺麗な声とは変わって、
・・正直・・かわいい声をしていた。
俺はその姿に見とれてしまわないように返事を考える。
「どうして・・ここに?」
こんな事言いたかったんだっけ?
彼女は笑顔でこっちを見た。
「探検していたの!
今日から、この町に引っ越してきたのよ。
私はセイネ!あなたは?」
隠れてフルートを吹いてたことが見つかった恥ずかしさのせいか、顔が熱い。
頭の中も真っ白だ。
「シャロン・・」
俺は彼女を直視できないまま、そう言った。
「シャロンかぁ〜、素敵な名前!」
彼女はそう言い、鉄の柵に手をかけた。
「凄く綺麗!こんな景色を独り占めできるなんて幸せだわ!」
この展望台から全てが見渡せる、
小さな町、『浦板』
チイサナマチ、『ウライタ』
季節は秋
キセツハアキ
少しばかり肌寒い。
スコシバカリハダザムイ。
見下ろす景色は紅で
ミオロスケシキハクレナイデ
吹き抜ける風に落ち葉が揺れる。
フキヌケルカゼニオチバガユレル。
「分かるわ!その気持ち!」
「だろ?あの曲はサビよりもそこがくるんだよな!」
どれくらい話していただろう?
気づけば、かなり盛り上がっていた。
「あ、もうこんな時間!」
セイネが袖を捲りあげ、細い腕に巻き付いた時計を見た。
かなり話し込んでしまったな。
俺はフルートをケースにしまう。
「ねぇ、明日もここにいるの?」
「ん?あぁ・・・たぶん」
セイネが笑顔で俺を見る。
「じゃあ、また聴かせてほしいわ!」
そう言い残すと、「さようなら!シャロン」と叫びながら走り去った。
- 321 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/10(月) 21:10
- キター
- 322 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/10(月) 21:44
- キタワ〜!!
職人さんオツカレ様です!
- 323 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/10(月) 23:34
- 期待age
- 324 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/12(水) 22:42
- 保守
- 325 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/12(水) 23:07
- 忙しいのかな?毎日の楽しみですよ!w
期待アゲー
- 326 名前: ○ 投稿日: 2005/01/12(水) 23:40
- 「チュン・・チュンチュン・・」
窓の外からカーテンの隙間を抜けて、光が一筋うっすらと入ってくる。
俺はその光とすずめの鳴き声で目を覚ました。
時計は六時をさしている。
布団に入ったまま部屋の電気をつける。
目を軽く閉じて思い出す━━━。
小さな頃の微かな記憶。
母さんの吹いていたフルートの音。
小学生の頃父を失い、母さんは俺を女手ひとつで育ててくれた。
・・ずっと母さんには迷惑ばかりかけてきた。
父が死んで以来、俺は友達を作ることも無く毎日早く帰っては、家事を進んでしていた。
・・小学生の俺に出来た精一杯の恩返しだった。
母さんは、そんな俺を見てフルートをくれた。
音楽が好きになった。
けど、中学に入ってからの三年間も、あまり人となれ合う事はしなかった。
母さんが、いつも心配してくれている事を知っていた。
・・心配をかけては、いけないと思っていた。
「お前は、物わかりが良さすぎる。」
ある日、母さんが初めて俺をしかった言葉だ。
その時は母さんの言いたいことが、あまり分からなかった。
ただ、毎日吹いてくれたフルートの音が聴こえなかった事は覚えている。
あの柔らかい音色は、次の日になると響いていた。
それに少しでも近づきたくて、俺はずっとフルートを吹いていたんだ・・・。
- 327 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/12(水) 23:45
- キタ━━(゚∀゚)━━!!!
- 328 名前: ○ 投稿日: 2005/01/13(木) 00:07
- そして、俺は大学受験を迎える。
私立は母さんに負担がかかる。
少しだけでも負担を減らしたくて、俺は勉強し続けていた。
どうやら俺は人一倍オツムの出来が悪いみたいで、
いや努力が足りなかっただけかもしれないが、地方の国立に合格をした。
母さんは喜んでくれた。
だが一人暮らしするのに、お金がかかる。
俺は辛いながらも母さんに頼んでみた。
母さんは快く了解してくれた。
・・やっぱり迷惑かけっぱなしだ。
けど、母さんはうれしそうに「お前が初めてわがままを言ってくれた!」と言った。
母さんには、ほんとに感謝している。
━━まだ、人と話すのは得意じゃない。
けど・・
彼女と話しているのは楽しかった。
記憶の片隅で微かに流れるフルートの音。
その恐ろしいほど美しい音色に、俺はゆっくりと目をあけた。
一時間ほど時間がたっている。
いつのまに寝たんだろうか?
俺は布団からゆっくり出て、焼き芋を焼き始めた。
毎日 焼き芋を食べても、まったく飽きはこない。
音楽をかける。
大好きな、この曲・・・・
歌を流しながら顔を洗い、服を着替える。
・・少し気合いが入ってしまうのは当然だろう?
俺は、音楽を止めると鞄をかつぎ家を出た。
- 329 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/13(木) 03:10
- すまん・・・・ オレ今大学生なんやけど一人暮らしなんやけど
涙出てきた 職人さんGJですわ・・・ 最近涙腺ゆるいな・・・
- 330 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/13(木) 06:59
- きっとこの曲ってのがオチなんだろうなww
- 331 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/13(木) 11:01
- >>330
空気嫁
本当センスあるなあ・・・続き期待!
- 332 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/13(木) 13:33
- なんだシャロンモードか?
- 333 名前: ○ 投稿日: 2005/01/13(木) 15:49
- え、オチ期待してるんですか?w
この曲がシャロンモードとかマジ笑えるやんw
思いつきもしなかった・・・・。
普通に終わりますよ!普通に!
感想蝶ありがとうございます!!
皆の言葉が僕の力になるッ!
・・・うん。
- 334 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/15(土) 21:42
- 職人さんまだ〜?
- 335 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/16(日) 02:01
- 最近来ないな
忙しいんだろうか
- 336 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/16(日) 04:23
- 本人忙しいって某スレで書いてたし、
今はうらいた闘技場でニールVST氏書いてるよ
- 337 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/17(月) 22:34
- age
- 338 名前: ○ 投稿日: 2005/01/17(月) 22:45
- よしっ、少しだけ忙しく無くなってきました!!
読んでいただいてありがとうございます。
今日の深夜くらいに書きますね〜。
よろしくです。
- 339 名前: T (JoHEoDwI) 投稿日: 2005/01/17(月) 22:46
- |∀・)ニヤニヤ
|彡サッ
- 340 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/17(月) 22:46
- 続き超期待あべ
- 341 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 01:17
- (・∀・)まだ〜?
- 342 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 01:20
- 期待age
- 343 名前: ○ 投稿日: 2005/01/18(火) 01:37
- キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカンコン
真上から少し西よりにある太陽が校舎を照らしている。
「疲れた〜」
少年が隣で大きくのびをする。
「なぁ、シャロン今から暇?」
少年は指の骨をポキポキ鳴らしながら俺を見た。
「バイト」
「何時にあがるん?」
6時だ。
が、俺には予定がある。
「8時・・・」
後ろめたさを感じながらも嘘を付いた。
俺の目を見てくる少年から目線を外す。
少年が少し疑いを込めたため息をついた。
「そっかー。
今日、欲しい物があったんやけどなー。」
残念そうに、そう言うと少年を俺の奥を見た。
「彩子はー?」
・・・いつもながら少年は凄いな。
たぶんコイツ程全ての人に同じ態度で接すことが出来る人間はいないな。
俺はつられて彩子の方を見た。
「・・少しくらいなら空いてますわ。」
どこに行くか分かってんのか。
カルチャーショックを受けるぞ。
「じゃあ、ちょっと付き合ってや!」
・・・まぁ、少年なら大丈夫かな。
「どこに行きますの?」
バーゲンだろう。
朝から必死でチラシを見ていたし。
「HEQのバーゲンだ!」
「はい?ばあげん・・・?」
「そう!一人だととてつもなく寂しくなるからッ!!」
「・・それは、どこにありますの?」
「電車で数駅!10分くらいや。
交通費はおごりますッ」
「でんしゃ?」
さて、帰ろうかな。
「えぇ!?
彩子、バーゲン行ったことないん!?」
・・・・・・。
早くここから逃げよう。
カルチャーショックを受ける前に。
俺は鞄を持つと小さく「じゃあな」と言って教室を出た。
- 344 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 01:40
- キタキタキター。超良い仕事です。
少年の無邪気さがいい、あと彩子様萌え
- 345 名前: ○ 投稿日: 2005/01/18(火) 02:08
- 「お疲れさま〜」
「おう、お疲れー」
ガララララ、と自動ドアが開く。
俺は鞄を持ち、家へと向かった。
外は、また一段と寒くなった気がする。
オレンジ色に染まったその中を俺は走っていた。
家に着くと、鞄を置き代わりに楽器ケースを持った。
そのまますぐに家を出る。
だんだんと辺りは暗くなってきていた。
・・・まだ、いるだろうか?
少し遅くなりすぎた気がする。
俺はいつもより数倍速く町を駆け抜けた。
『立ち入り禁止』の札を横目に山道を登っていく。
むき出しになった展望台にほとんど消えかかっている太陽が色をつける。
俺は鉄柵から伸びている人影に気づいた。
ベンチに楽器ケースを置く。
少し音をたてて置いたんだが、彼女は気づかない。
余程、景色に見とれているんだろう。
「よう。」
俺が呼びかけると、驚いたように背中をビクリと震わせる。
そして、セイネが振り向いた。
空に引かれた、黒と橙(オレンジ)の境界線。
『浦板』は紅(クレナイ)。
彼女の真っ直ぐのびた薄い茶色の髪。
展望台の白いアスファルト。
こんな美しい景色は見たことが無い。
いつも見ていた、ここから見える景色。
・・・何も変わらないはずだ。
なぜこんなに美しく映るんだろう。
いつもと変わらない。
ただ、ひとつ・・
・・その中に・・・彼女がいるだけだった。
- 346 名前: ○ 投稿日: 2005/01/18(火) 02:35
- 「遅いわ!シャロン!」
セイネが俺を見て言う。
その声に俺はハッとした。
「悪い・・、ちょっとバイトが長引いて。」
「そういえばシャロンは大学生?」
セイネがベンチに座る。
彼女は、俺の名前を軽く呼ぶが、俺はなかなか呼べない。
一見、大人しそうな感じだが、かなり明るい性格だ。
「うん、浦板大学に通ってる」
セイネが横に座るように手招きをしている。
俺はかなり高鳴る胸を静まらせ、隣に座った。
「あら、奇遇!!私も浦板大学に行くの。
今日からだと思ってたけど、10月は明日かららしいわ。
大学に行ったらそう言れて、今日は帰らされたの!」
笑いながらセイネが言う。
彼女の笑顔は、反則だ。
「ねぇ、シャロン!
フルート聴かせて?」
セイネが言う。
俺はかなり恥ずかしい気持ちを乗り越えて声を出した。
「・・・歌ってくれ・・ない・・か?」
「え?」
「あ、いや、声、綺麗だったから。」
かなりテンパってるのが自分でも感じられる。
俺は恐る恐る彼女の方を見た。
「うん!いいよ!」
セイネは、笑顔でそう言った。
俺はすぐに楽器ケースの方を向き、留め金に指をかけた。
フルートを出すと、それを口に当てる。
唇に走る冷たい感触が次第に熱くなってきた。
セイネが立ち上がる。
彼女の合図を受けると、俺は前奏を吹き始めた。
- 347 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 03:11
- 続き期待age
- 348 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 09:29
- ○さんのファンになりました
- 349 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 19:21
- age
- 350 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 19:23
- 表の方々へ
('A`)y―~~まぁなんだ、カエレや
- 351 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/18(火) 19:25
- ここはうら向きだろ
- 352 名前: 名無しさん⊂⌒~⊃。Д。)⊃表排除企画 投稿日: 2005/01/18(火) 19:37
- ここは裏ですよ^^
- 353 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/20(木) 12:47
- 期待してます。
- 354 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/20(木) 21:00
- あげ
- 355 名前: 安ジャー (mRfdOT5I) 投稿日: 2005/01/21(金) 14:24
- ( ゚Д゚)ハジャー!!
- 356 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/21(金) 14:25
- ハジャさん漢字が…
- 357 名前: 安ジャー (mRfdOT5I) 投稿日: 2005/01/21(金) 14:30
- ( ゚Д゚)?
- 358 名前: ○ 投稿日: 2005/01/22(土) 00:10
- 「♪トゥ・・トゥ・・トゥトゥ・トゥトゥトゥ・・」
彼女が軽く息をすい、歌い始める。
いつもと違う・・この感覚・・・
まるで、世界に・・
俺たち2人しかいないような・・。
・・・この感覚。
セイネがこっちを見て、手を上下に振っている。
俺に「立て」と言いたいようだ。
俺はギターを弾いたまま、立ち上がる。
セイネが笑顔で歌っている・・。
そういえば俺は、あまり笑ってないような気がしてきた。
彼女を見てると俺もつい笑ってしまった・・。
━━楽しい。
太陽はその姿を完全に隠そうとしていた。
「もう一曲いこうよ!!」セイネが指を立てて、そう言う。
この曲と同じCDに入っている歌なら何でも吹ける。
彼女も全部好きだと言っていた。
「じゃあ、もう一曲いくぞ!?」
俺は、自分が喋っているんじゃないかと思うくらいの明るい声を出した。
こんな楽しいのは久しぶり・・・。
いや、初めてかもしれない。
気づいてしまった・・・。
セイネの綺麗な声が聞こえてくる。
いや・・とっくに気づいていた。
・・俺は、彼女が好きなんだ。
・・・・。
- 359 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/22(土) 00:46
- キタ━━(゚∀゚)━━!!!職人さん頑張れ
- 360 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/22(土) 08:52
- 〇さん乙!
でもギターって…w
そうか、2つ楽器持ってったんだね(・∀・)
- 361 名前: ○ 投稿日: 2005/01/22(土) 15:15
- うわっ、ミスだ。
ギターじゃない。
死にたい。
色々な事情でミスった。
泣きそう。
家帰ったら書き直しますね。
- 362 名前: セイネ 投稿日: 2005/01/22(土) 16:05
- ○さん頑張って下さいv(・x・*)
こういう恋がしてみたいな〜
- 363 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/23(日) 05:25
- セイネたんの背後ゲトー!
○さん続き楽しみにしてます〜!!
- 364 名前: ○(訂正) 投稿日: 2005/01/23(日) 23:07
- 「♪トゥ・・トゥ・・トゥトゥ・トゥトゥトゥ・・」
彼女が軽く息をすい、歌い始める。
いつもと違う・・この感覚・・・
まるで、世界に・・
俺たち2人しかいないような・・。
・・・この感覚。
セイネがこっちを見て、手を上下に振っている。
俺に「立て」と言いたいようだ。
俺はフルートを吹いたまま、立ち上がる。
セイネが笑顔で歌っている・・。
そういえば俺は、あまり笑ってないような気がしてきた。
彼女を見てると俺もつい笑ってしまった・・。
━━楽しい。
太陽はその姿を完全に隠そうとしていた。
「もう一曲いこうよ!!」セイネが指を立てて、そう言う。
この曲と同じCDに入っている歌なら何でも吹ける。
彼女も全部好きだと言っていた。
「じゃあ、もう一曲いくぞ!?」
俺は、自分が喋っているんじゃないかと思うくらいの明るい声を出した。
こんな楽しいのは久しぶり・・・。
いや、初めてかもしれない。
気づいてしまった・・・。
セイネの綺麗な声が聞こえてくる。
いや・・とっくに気づいていた。
・・俺は、彼女が好きなんだ。
・・・・。
- 365 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/24(月) 22:50
- 保守アンド期待あげ
- 366 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/25(火) 00:15
- さっき見つけて全て読んだよ!こんな神スレもっと早く見つけるんだったな。
〇さん超ガンガレ!そしてあげ
- 367 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/25(火) 06:24
- a
- 368 名前: ○ 投稿日: 2005/01/25(火) 21:33:26
- 母が聴いていた、あの曲。
俺は気になり、その曲を聴かせてもらった。
幼かった俺にも分かるくらいの感動。
何にも興味を示さなかった俺が初めて子供らしい笑顔で、こう言った。
「僕も、こんな人たちになりたい!」
母はいつもフルートを吹いていた・・。
セイネと明日も会う約束をしたんで、そろそろ寝ようと思っていた時
家の電話がなった。
プルルルルル
俺は布団から出ると、電話に出る。
「もしもし、シャロンです。」
めんどくさそうに、そう言う。
受話器から声が聞こえてくる。
「シャロン、元気?
久しぶりね〜、最近忙しくって。」
・・母さんだ!
「母さん!?久しぶりっ」
俺は母さんの声を聞いて、少し嬉しくなった。
「元気そうね、何かいい事でもあった?」
この優しい口調が少しなつかしい。
「いい事かぁ・・・」
俺は迷いながらもセイネの事を話した。
「へー。嬉しいねぇ。
シャロンがそんな話するなんてなぁ。」
何か少し恥ずかしいな。
「し、仕事の方はどうなの?」
話を変えてみる。
母は俺のためにずっと働いてくれている。
━ずっと母に頼りっぱなしだ。
「そんな事心配してくれるんだ?
まぁ、大丈夫だよ。」
笑いながら母が言った。。
それから母と30分ほど話し込んでいた。
「じゃあね、シャロン。
がんばりなさいよ!」
母の声を最後まで聞き届けると、俺はそっと受話器を置く。
母と話すのは、かなり久しぶりだった。
俺は布団を被り軽く目を閉じる。
母さんに励まされた・・。
いや、母のひと押しが無くても・・
俺は最初から、そのつもりだったのかもしれない・・
・・明日・・
彼女に・・
すべてを失っても、構わない・・。
彼女に・・この想いを伝えよう・・・。
微かに寝息をたてて、俺は眠りに落ちた。
かけっぱなしのCDが部屋中に響いていた・・。
- 369 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/25(火) 21:35:57
- 背後ゲット
- 370 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/26(水) 00:55:12
- 期待あぐぇ
- 371 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/27(木) 22:54:43
- 落ちないようにage
- 372 名前: ○ 投稿日: 2005/01/28(金) 01:47:19
- 感想ありがとうございます!!
蝶うれしいで〜す。
実は、暇そうに見えて今月はマジ忙しいんです。
少し遅くなりますが、生暖かい目で見守っていただければ幸い。
すいませんーー
- 373 名前: しーど (Ljvy.5j.) 投稿日: 2005/01/29(土) 11:35:11
- コソーリ見てます。職人さん頑張って下さいー!
…漏れも火九さんと絡んで美味しい思いしたかったな|ω・`)
- 374 名前: ○ 投稿日: 2005/01/30(日) 00:08:24
- んー。……ん?
もう朝か。
俺は眠たい目をこすり、顔を洗うと気合いを入れる。
いつも以上に・だ。
用意をすますと、学校にむかった。
紅に染まる一本道。
いつものように、そこを歩いていた。
今日は少年と遭遇しないみたいだ。
少し時間が早いからかな。
チャイムの音が鳴る前に俺は教室に腰をかけていた。
「おはようー!」
少年が歩いてきた。
昨日買ったであろう服を着ている。
となりに鞄を置くと勢いよく腰を降ろした。
「おはよう。
どうだった?昨日。」
明らかに疲れている少年に問いかける。
「かなり人多かった。
マジ疲れたわ〜」
だろうな。
彩子は無事なのか。
「おはようございます…」
くたびれた声が聞こえてくる。
彩子だ。
「お疲れだな。」
「そこは、戦場でしたわ。」
彩子が俺の右となりに座る。
「1限目は八木。
問題なく眠れる!!」
お前はいつでも寝てるだろ。
授業が始まると出席を取る。
それからしばらくすると教室にいる生徒がひとりひとり眠っていった。
こいつの授業は退屈で、いつもならまず寝てしまうんだが、今日はなぜか眠たくない。
何か落ち着かないな。
彼女はいつ来るんだろう。
セイネは、昨日、学部が同じだと言っていた。
遅刻したんだろうか?
左では少年がスースーと寝息を立てている。
彩子も珍しく眠っていた。
ガチャッ
教室のドアが開く音が聞こえ、俺は振り向いた。
ほとんど寝静まっていた教室で、それに気付いたのは俺くらいか。
こっそりと教室にはいってくる。
「セイネです、遅刻しました。」
教壇に行き謝ると、八木教授に席を指差される。
セイネは俺の方を見て、手を振った。
辺りは完全に眠りの世界。
俺は軽く手を振りかえした。
- 375 名前: ○ 投稿日: 2005/01/30(日) 00:27:03
- 「はじめまして!」
休憩時間、セイネが二人に挨拶をしていた。
「俺、少年。
よろしく!!」
「彩子ですわ、こんな時期に転入とか珍しいですわね。」
二人が自己紹介をしている。
そろそろ聞かれるんだろうな・・・。
「で、シャロンとは知り合いなん?」
きた。
「うん、そうよ!
たまたまあったの、裏や……」
セイネの言葉に俺が割り込む。
「そう!たまたま会ったんだ!!」
フルートの事は言わないぞ。
「ふ〜ん」
少年が呟く。
その目はやめてくれ。
「ねぇ、シャロン。
今日もあそこに行くの?」
「あそこ?」
………。
結果だけかいつまんで言うと、ばれた。
ただ、予想以上に悪い反応じゃなかったけど。
「へー、お前そんなん吹いてたんや。」
「驚きですわ。」
あー、何か恥ずかしいな。
「えぇ!とっても上手なのよ!!」
やめてやめて。
「今度聴かせろよ。」
少年が言う。
セイネが横で笑っている。
俺は昨日覚悟した事がある。
「あぁ、また今度な」
俺がそう言うと少年は帰っていった。
「いこっ?シャロン!」
セイネが楽しそうに裏山に走り出す。
俺は昨日覚悟を決めたんだ…。
いくぞ・・・
- 376 名前: ○ 投稿日: 2005/01/30(日) 00:42:17
- 白く冷たい、アスファルト。
展望台から見えるオレンジの空。
紅の浦板。
彼女の見せる、その仕草や
歌う声さえも……
すべてが、俺に語りかけてくる。
「すべてを失うくらいなら・・。
このままでもいいんじゃないか?」と。
セイネの声が遠くから聞こえた気がした。
・・・。
歌い終り、日が暮れていく。
何気ない会話も、どこか上の空になってしまう。
━ほんとにいいのか?
・・やっぱり駄目だった・・
最初から、そのつもりだったのに…
やっぱり…俺は…
母さんに…頼りっぱなしだ…。
最後に俺の背中を押したのは、母さんの励ましの言葉だった。
少し無言が続いたからか、セイネが不思議そうに、こっちを見ている。
・・目があった・・
━━いくしかない!!
俺は彼女から目を離さずに、呟いた。
「セイネ…」
精一杯の勇気だ。
「……?」
彼女は緊張した顔で、俺を見ている。
俺が真剣なのに気付いてくれたみたいだ。
セイネとは出会ってから、まだ数日しかたっていない。
…けど…
…あの日の事が忘れられない…
優しく、甘くて、透き通るような、低音・・
明るく、強くて、空まで届きそうな高音・・
彼女の歌声は、あまりに美しかった・・。
この小さな町で俺たちは出会った。
それは劇的でもないし、
運命ですらないのかもしれない。
ただ俺は・・・
全てを伝えるために、
その想いを、今、
・・・・・言葉にした・・・・・。
『浦板ラブストーリー』
- 377 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/30(日) 02:03:16
- 続きが気になりすぎる〜!!
GJGJGJ〜!!!!!
- 378 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/30(日) 11:23:00
- 378ゲット
- 379 名前: ○ 投稿日: 2005/01/30(日) 22:17:30
- 「セイネ‥
俺の‥パートナーになってください‥!」
優しく、強く、そう言った。
沈黙が続いた。
冷たい風が吹き抜け
それに乗ってきた落ち葉がカサカサと音をたてた…。
俺は、マジで後悔した‥。
「いいヨ‥」
━━え?
世界が‥
俺の音で満たされる。
どんな音も俺に届かない・・。
世界に 俺 ひとりしかいない。
‥この感覚。
‥その中、1つの女性の声が、俺の世界に響いた‥。
「私も‥言おうと思ってたんだ‥。」
セイネはうつ向いたまま、そう言う。
俺は彼女の眼を優しく見つめた‥。
セイネも答えるように、俺を見つめる‥。
沈みかけの太陽が、ただ俺たちを照らしていた。
ブラウンの長い髪も‥
その少し小さな体も‥
明るく話す姿や‥
笑い声すらも‥
全てが愛おしい‥
「‥で!!」
セイネが笑顔で言う。
━━ん?
「バンド名。
‥どうする?
フルートがメインなんて素敵だわ!!」
・・・・・・。
パートナーになってください!か‥。
言葉選び間違えたな‥。
・・すぅ・・
深く息を吸う。
「トラブルメーカーシャロン!!」
━俺は空を仰いで、そう叫んだ。
おしまい
- 380 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/30(日) 22:46:50
- GJ!(・∀・)
- 381 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/30(日) 22:56:46
- わらた
- 382 名前: ○ 投稿日: 2005/01/30(日) 23:54:06
- 終った〜!!
妄想に付き合っていただき凄く嬉しいです。
感想蝶ありがとうございました!
‥かなり短かったなぁ。
次は女性を主人公にして、ラブの要素が少し低めの話を書きたいです。
でも、もうすでに誰も原型を止めてない気がするw
まあとりあえず、今熱い人がいたら教えてくださいな。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
- 383 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/30(日) 23:56:53
- 今熱い人と言えば……フニー様しかいるまい
- 384 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 00:01:23
- みかたん
真琴さん
KONさん
しーど様
たつみたん
ルゥちゃま
好きなスレの人達を挙げてみるテスタ
○先生も色んなスレ覗いてネタ集めてください
- 385 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 00:01:31
- (*´Д`)フニーたそハァハァ
- 386 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 00:17:16
- 姉妹共演期待age
- 387 名前: ○ 投稿日: 2005/01/31(月) 15:23:45
- ん〜
今まで使った人も、もっかい使わしていただこうかな。
ニール姉妹……
くぅ。
どうしようどうしよう。
持ちネタがなくなってきたからフルで考えなくてわ。
次はホラーよりの話にします!!
人?
‥氏にますよw
短編をいくつもって感じで。
ん〜……
- 388 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 15:42:42
- プニーたんは二回も死ぬのか・・・・・
鬱だ・・・・・
- 389 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 17:09:33
- 姉妹+ホラー……(☆∀☆)!!!
赤いち(ry
- 390 名前: セイネ (SkqmBirw) 投稿日: 2005/01/31(月) 17:44:53
- ○さんお疲れ様でした&使って下さいまして有難うございます。m(__)m
これからもひっそりこっそり見ます|x・)
次回も期待です(´▽`*)
- 391 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 21:27:42
- 推理モノを期待してみる
・・・勝手な事言ってごめんなさいごめんなさい
- 392 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 21:49:04
- 一人の男を巡り美人姉妹が衝突してしまう「ニール100%」
- 393 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/31(月) 23:13:50
- はぁはぁ
- 394 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/01(火) 00:15:27
- (゚3゚)え〜ぬお〜とこ〜
- 395 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/01(火) 01:05:20
- サイコ編以外は自分の書きたいSSのキャラ名を有名人にしただけな感じなので
もう少し原型とどめてくれる事をキボン。
- 396 名前: ○ 投稿日: 2005/02/01(火) 02:16:12
- >>395
そう、それ!
かなり思ってたんですよね。
サイコさんの話は、何もない所からサイコさんで考えたんで、自分的にはサイコさんなんですよ。
うん。
一応、火九さんもそうなんですけど、使いこなせなかったトラップ。
火九さんをあまり知らなかった……。
で、三つ目のは、忙しかったんで昔書いたのを名前変えて少しキャラ変えていじっただけなんですよね。
マジで申し訳ない。
二月入ったら少しづつ解放されていくんで、次は大丈夫なはず!!
と、強がってみる。
キャラをどうにか引き出せるような気がする人表。
サイコさん
DC様
ひろゆきさん
ニール姉妹
しーど様
ルゥちゃま
ん〜…。
やっぱりキャラを無理矢理たててしまう。
原型を止めつつも、キャラをたてなきゃいけないんですよね。
誇張はありだが、創作はダメ絶対。
キャラに誇張の必要がないのが、サイコさんくらいなわけでw
ごめんなさい。
ニール姉妹は非常に使いやすそうなので、ヒロインはその二人で練らしていただきます。
後は、男性が数人決まっていったら本格的に内容を考えたい次第です。
熱い人いませんかー?
- 397 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/02(水) 18:32:58
- 期待あげ
- 398 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/02(水) 20:46:19
- age
- 399 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/02(水) 21:35:16
- つなぎに各ストーリーの後日談キボン
- 400 名前: ○ 投稿日: 2005/02/02(水) 21:55:12
- え?
後日談?
って何ですか?
- 401 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/03(木) 00:49:06
- 物語の完結後の話。
分かりやすくいうと続編読みきりみたいなの。
盛り上げる必要が無いからコメディーみたいなのが多いかな。
- 402 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/06(日) 19:03:12
- 新作期待あげ
- 403 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/07(月) 02:18:17
- 蝶新作期待age
- 404 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/08(火) 21:00:29
- まだ〜?(チンチン
- 405 名前: ○ 投稿日: 2005/02/08(火) 21:06:39
- そろそろいけそうです。
たぶん明日くらいから書きますね!!
後日談は‥
また今度でw
良かったら読んでくださいな。
- 406 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/08(火) 23:17:37
- 読みます読みます(*´∀`)
- 407 名前: ○ 投稿日: 2005/02/09(水) 09:11:47
- *この話はフィクションで実際に存在する人物や団体とは関係ないです。
- 408 名前: ○ 投稿日: 2005/02/09(水) 09:26:41
- 『浦板』
駅へと続く大通り
その途中、左手に見える路地
そこを曲がり真っ直ぐ進む
しばらくすると山沿いの細道
そこをさらに奥へと進むと山の上へと伸びる階段
それは、その先にあるらしい
それは、その先にあるらしい。
『浦板ラブストーリー』
- 409 名前: ○ 投稿日: 2005/02/09(水) 10:02:25
- 第1話『白い鳩』
ミーンミンミンミン‥
ミーンミンミンミンミンミン‥‥
真夏の昼下がり。
照り付ける太陽の下、短い命を蝉が叫び続けていた。
その叫び声にさらに暑さが増していく。
「大丈夫?顔色、悪いわよ?」
何もない道の途中、ふたりは立ち止まっていた。
少し背の高いファフが屈んで様子をうかがっている。
「うん‥平気‥。
少しお日様に当たりすぎたみたい…。」
麦わら帽子の下から覗いてくるファフに、グレイプは笑顔でそう答えた。
額からうっすら光る汗を拭くと、グレイプはゆっくり立ち上がる。
「さっ、姉さん。
行きましょう‥。」
やはりか。
ふたりの振る舞いなどからはあまり感じさせないが、
同じ色―特徴的な深緑色―の髪からふたりが姉妹だろうと予想はしていた。
「そうね、お腹すいたわ。」
歩き出したグレイプの後を追うように、ファフが立ち上がる。
カランコロン
懐かしい音を立ててファフが歩き出した。
ふたり服装も振る舞いも、性格を表すように正反対。
カランコロン‥
木の下駄がアスファルトを叩く。
やがてその音は山の方へと向かっていった。
- 410 名前: ○ 投稿日: 2005/02/09(水) 10:33:00
- 駅へと続く大通り、といってもそれ程人通りは多く無いのだが、
その大通りの左手に、地元の人も知らないくらいの細い路地があった。
そこを曲がると山沿いに道が続く。
奥へと進むと山の上へ伸びる階段。
その先にふたりの家がある。
ミーンミンミッ‥
ふたりが横を通ると、うるさい蝉の鳴き声がしばらくやむ。
ミーンミンミンミンミン
通りすぎるとまた鳴き出す。
それは、ふたりから明らかに異様な雰囲気が漂うせいだろうか。
生い茂る木木が太陽を遮り、広い影をつくっている。
ふたりは山の上へと伸びる階段を上がっていた。
「すいませーん!」
上の方から声が聞こえてくる。
そこにはひとつの家があった。
そこだけ時間が止まったような場所。
瓦の屋根に木造の建築。
『浦板』と書かれた小さな看板。
古びているが、しっかりと建っている。
「あの‥私たちの家に、何か‥用でしょうか?」
階段から上がってきたグレイプが、玄関で騒いでいる男に声をかけた。
男はハッとして振り向くと、頭を下げる。
‥‥客か。
真面目そうな面構えに、知的な眼鏡。
第一印象はそんなに悪くない。
ガチャッ
ファフは家の鍵を開けると、無言で中に入っていった。
男はどうしていいものかと、少しキョロキョロしている。
「姉さんはいつもああなんです‥。
気にせずに、お上がりください。」
まだ、自分より若い少女に丁寧に言われ、男は恥ずかしそうに玄関を跨いだ。
「居間へどうぞ。
しばらく待っていてください。」
ファフの脱ぎ散らかした下駄を揃えながら、ニールがそう言う。
男は頭を下げると、まだ空調の効いていない部屋に入っていった。
- 411 名前: ○ 投稿日: 2005/02/09(水) 11:14:10
- ゴオォォォッ
ゆっくりと室内温度調整機が動き出す。
かなり古い型で、床に設置するタイプのやつだ。
しばらくすると、居間は調度よい涼しさになっていた。
畳に敷かれた座布団の上に、男は座っている。
どうも落ち着かない様子でそわそわしていた。
それも、しょうがない事だろう。
何せこんな家にひとりで来たんだから。
「すいません‥。
お待たせしました。」
グレイプが部屋に入ってくる。
ロングスカートと普通にお洒落な洋服、外で会えば可愛い少女にしか見えないだろう。
だが、この和風な家と不似合いなその格好が逆に恐ろしく感じさせる。
グレイプはゆっくりと正面の座布団に腰をおろした。
深緑の髪は、座ると畳に届く程長い。
まるで人形のように美しい顔立ち。
男は自然と冷や汗をかいていた。
「あ、あの‥
何か言ってくれないと、すごく不安なんですけど…。」
グレイプの声に男が反応する。
「あ、すいません。
私はDCと申します‥。」
「私は‥グレイプです。
姉がファフ、今は台所にいます‥。」
また沈黙が起こる。
「えっと‥。
用件を‥聞いても‥?」
グレイプが切り出す。
DCは目をあわせられず、うつ向いたまま話出した。
「今回、ここに来たのは私の友人の事なんですが‥‥。」
- 412 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/09(水) 12:56:01
- アゲ
- 413 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/09(水) 18:44:18
- GJ
- 414 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/09(水) 18:58:33
- GJ
- 415 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/10(木) 02:15:38
- 今回はホラーという事で..。はぁはぁ
期待age
- 416 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/10(木) 02:16:10
- あがってなかったorz
- 417 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/10(木) 02:18:09
- あがってなかったorz
- 418 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/11(金) 11:43:01
- 職人さんがんがれ期待age
- 419 名前: ○ 投稿日: 2005/02/11(金) 16:03:02
- DCの話によると、友人の『ひろゆき』が長い間寝込んでいるらしい。
「そうですか‥。
ここに来た・って事はただの病気じゃないんですね‥?」
グレイプの声は少し喜びが混じっているようにも聞こえた。
DCはうつむいたまま話を続ける。
「はい‥。
医者に診てもらっても、体に何の異常も無いらしく‥。
しかし、日に日にひろゆきさんは衰弱しています‥。」
「困り果てていた時、あなた方の噂を聞いて‥‥‥。」
次の瞬間、DCが深く頭を下ろした。
「お願いしますっ!
ひろゆきさんを‥。
ひろゆきさんを助けてくださいッ!!」
心の底から悲痛を叫ぶようにDCが言う。
それと同時に、グレイプの後ろ側にあるふすまが開いた。
外からペットボトルのお茶を片手にファフが入ってくる。
「顔をあげなさい」
ファフが、短く冷たく言い放つ。
グレイプは振り返ること無く人形のように前を見ていた。
ミーンミンミン‥
遠くから蝉の鳴き声が聞こえてくる。
薄いTシャツにジーパン、女性にしては長身な体、スッと伸びた脚がまた美しい。
印象的な深緑の髪は、グレイプのそれと比べかなり短く、肩くらいまでのびている。
が、その芸術的なラインに見とれる事も出来ず、DCは脅えるように顔をあげた。
- 420 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/11(金) 16:09:13
- >>○氏
まじGJ
あとツクールスレ見てくれませんか
- 421 名前: ○ 投稿日: 2005/02/11(金) 16:44:16
- 「いいわよ、行きましょう。
ただし、代金は頂戴するわよ?」
ファフがグレイプの横に座る。
正座している二人に構うこと無く、楽な姿勢で座布団に腰を下ろした。
「はい‥分かっています‥。」
どうやらDCの覚悟は本物のようだ。
「グレイプ」
「あ‥はい‥。
一応、説明させていただきます。
代金は、時価。
仕事内容によって変えさせていただきます。
難しいほど‥高くなります‥。
‥いいですよね?」
グレイプが丁寧にそう言う。
DCはあまりの恐ろしさに声を出すこともままならず、ゆっくりと頷いた。
『浦板』での代金とは、金では無い。
「魂」
‥そう噂されている。
ひろゆきが住んでいる場所は『野間』。
ニールたちが住むこの町『光明池』の隣にある。
「ちょうどいいわ。
DCさん、だっけ?
先に行ってて。
私たちは後から行くから、駅前で会いましょう。」
ファフはそう言うと、グレイプに小声で何か言う。
それを聞くと、グレイプは「はい」と言い家の奥へ消えていった‥。
相変わらず、ジリジリと照り付ける太陽がうっとおしい。
ファフの履いた木の下駄が、カランコロンと町を進む。
その音は駅の方へと向かっていった‥。
- 422 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/11(金) 17:15:04
- 背後ゲトー
GJですよ
- 423 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/12(土) 06:34:36
- >>○氏
GJ!続き期待age
- 424 名前: ○ 投稿日: 2005/02/13(日) 14:23:42
- 「‥‥‥。」
ファフが深刻そうな表情で座っている。
ひろゆきの部屋。
畳の上に意識なく寝込んでいるひろゆきを、ファフを診ていた。
無言のまま診続けるファフにDCは不安を隠せない。
「あの‥治り‥ますか?」
DCが、恐る恐る口を開いた。
「‥大丈夫、なのは確か‥だけど‥」
「不思議ね」
ファフが立ち上がる。
「不思議‥ですか?」
DCが意味深な言葉に反応する。
「えぇ、不思議よ。
生きているのが‥。」
「えっ!?」
「この手の影(カゲ)にやられた人間は大抵即死するんだけどね。」
「グレイプ。」
ファフが一方的に話し続けている。
グレイプが閉じた目をゆっくりと開く。
「話は聞いていたかしら?
後は、またせたわよ?」
ファフはそう言い残し、ひろゆきの部屋を出た。
「あ、あの‥」
DCは状況が掴めずにおろおろしている。
「あ、もう平気です。
姉さんが診てくれたから‥、治療法は分かります。
昔、コイツは治した事あるんで‥‥安心していいですよ?」
グレイプの言葉に意味が分からない要素は大量にあったが、治ると聞いてDCはひとまず安心した。
「じゃあ‥早速ですが、治療を始めます‥。」
家から持ってきた大きなリュックを置き、ロングスカートの裾を持ち上げながらグレイプが立ち上がる。
白く細い腕を伸ばし、ひろゆきの胸に手を置いた。
「ううぅっっッ!!」
強くひろゆきがうなされる。
今までは、息さえもしてないくらい静かだった。
確実に何らかの反応を示したようだ。
何も分からないまま、DCは祈るようにそれを見つめていた‥。
- 425 名前: ○ 投稿日: 2005/02/13(日) 17:17:38
- 幽霊、妖怪、呪い、
そう“呼ばれている”モノを総称し、『影(カゲ)』と呼んでいる。
『影』とはまったく別の生き物。
幽霊などは一般的に、死んだ生き物の恨みが化けるモノだと認識されている。
実際、それらの目撃は死人が多い場所で多発する。
ただそれは、その『影』が死人の肉を好むだけ。
『影』とは種族。
不思議な力を持った生き物たち。
それらはどの生き物にも属さない。
人間に害を与えるモノもいれば、無害どころか助けてくれるモノもいる。
昔からたくさんの『影』がいた。
呼ばれ方は様々だが、昔からそれらはいた。
普通の人間には見る事さえ出来ない。
‥稀に見える人間がいるくらいだ。
そのせいで、生態などは何ら分かっておらず
その中でも害を与えるモノを
幽霊、妖怪、呪い、
富や豊をもたらすものを
精霊、神、
などと呼んでいた。
『影』が、見える人間は稀にいる。
しかし
『祓える』人間はいつの時代にも一握りしかいない。
‥ニール家の血を継ぐ者だけ‥。
- 426 名前: 窪田 (vgWD0Lks) 投稿日: 2005/02/13(日) 19:55:55
- ○さん(・∀・)b<GJ!
- 427 名前: ○ 投稿日: 2005/02/14(月) 00:15:09
- 感想ありがとうございますっ!!
蝶嬉しいですよ。
少しづつ書いていこうと思います。
上のが誤字だらけで憂鬱ですが、最後まで付き合っていただければ幸いでございます。
- 428 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/14(月) 02:30:19
- 期待
- 429 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/14(月) 02:31:16
- ガンガレ
- 430 名前: ひろゆき 投稿日: 2005/02/14(月) 02:49:11
- うはw俺死にかけてるやんw
職人グッジョブ。
- 431 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/14(月) 02:49:46
- 背後アンドGJ
- 432 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/14(月) 07:33:56
- 蟲師くせーな
- 433 名前: ○ 投稿日: 2005/02/14(月) 09:12:37
- それは俺も思いますた。
しかしムシシの香りはだんだん消えていくから許してくだせえ、兄貴。
- 434 名前: ○ 投稿日: 2005/02/14(月) 17:36:21
- 期待age!!!!
- 435 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/14(月) 17:39:16
- ○さん何やってんですか
- 436 名前: ○ 投稿日: 2005/02/14(月) 20:43:32
- ワラタww
一応俺じゃありません。
まあ面白いし俺でもいいや。
- 437 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/14(月) 21:05:45
- ○氏はもうトリップつけなきゃ
- 438 名前: ○ (SRnLxPvk) 投稿日: 2005/02/15(火) 05:27:09
- sage
- 439 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/15(火) 21:22:12
- 上の俺じゃない。
しかも面白くない。
トリップつけますね‥
- 440 名前: ○ (JOJORxx.) 投稿日: 2005/02/15(火) 22:36:10
- ↑も俺じゃない
- 441 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/16(水) 05:01:05
- T���颯ゥ
- 442 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/16(水) 11:09:51
- こうなると誰が○氏かわかんなくなるんだよな。
でも、一つだけ言えることが。
あんな蝶GJな文章作れるのは、本物の○氏だけ!
- 443 名前: T (JOJORxx.) 投稿日: 2005/02/16(水) 21:04:21
- ふざけすぎた…正直すまんかった。
>>438は語り
>>439は本物
>>440は俺
- 444 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/16(水) 23:56:10
- 期待age
- 445 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/18(金) 02:27:33
- 書き始めれば分かることだな
- 446 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/18(金) 18:03:57
- 知人の紹介で読み始めました。
SUGEEEEEEEEEE!!
- 447 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/19(土) 12:00:56
- 「あ‥。」
ひろゆきの家の庭にファフがいる。
語りかけるように先を見つめている。
そこには、うっすらと光る白い鳩がいた。
それは、くちばしまで真っ白だ。
「へぇ‥、ほんとにいたのね。」
ファフが呟くと、白い鳩はゆっくりと振り向いた。
「あなたが、彼を守っていたの‥?」
「彼には、何かがあるのかしら?」
ファフはそのまま腰をおろした。
ミーンミンミンミン‥
「…羨ましいわ。それだけ色んな世界をみてきたって事だからね。
あなたの目から見てここはどう?
やはり他の場所とは何かしら違うのかしら?」
そこまで言うと、白い鳩は翼を広げた。
バサッバサッと音を立てて飛んでいく。
ひろゆきが治ったんだろう…。
「…良かったら今度、二人きりで話がしたいわね…」
ファフはそう言うと立ち上がる。
空を見上げる顔はどこか嬉しそうであった‥。
- 448 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/19(土) 12:05:22
- キター・・・
- 449 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/19(土) 12:27:29
- 「ぁ…姉さん、おかえり。」
少し疲れた表情でグレイプが言う。
隣には、先刻と同じ格好で横たわっているひろゆきがいた。
しかし、表情はおだやかで、ただ眠っているだけのようだ。
「お疲れ‥グレイプ。」
「うん、楽だったよ。
でも…、どうして?」
生きていたのかな?と付け加えようとしたが、DCに気を使ってか言葉を飲み込んだ。
「『白い鳩』がいたわ」
ファフが嬉しそうに言う。
「えっ!?嘘っ!?
よっぽど、凄い人なんだね‥。」
グレイプがひろゆきを見てそう言った。
「さて‥そろそろ行くわよ。
後はしばらく安静にしてたら勝手に治るわ」
ファフがDCに言う。
DCは脅えるように「ありがとうございます」と言った。
「では、代金の方ですが‥」
グレイプが丁寧にそう言う。
「大切な物ってありますか?」
「へっ!?」
気の抜けたDCの声が部屋に響いた。
「あ、今。今思い浮かんだものでお願いします。」
グレイプの声にDCは思い出すようにポケットに手を入れた。
チャラン。
畳に落とされたそれらがぶつかりあう音がする。
「あ、すいません。」
DCがあわててそれを拾った。
10枚のコイン。
「こんなものでいいんでしょうか?」
DCが恐る恐るそう言う。
「あなたの大切なものでしょう?
『こんなもの』なんて言うもんじゃないわよ」
「でも‥」
ファフはゆっくり手を伸ばしコインを握る。
「2枚でいいわ。
特に理由は無いわよ?
あなた達が気に入ったとかそんなのじゃないからね?
‥ばか。」
隣でクスクスと笑うグレイプを睨みつける。
すぐにグレイプは真剣な顔に戻った。
「では、お支払いの方はこれで‥。」
グレイプは頭を下げると先に出ていったファフを追い掛けようとDCに背を向けた。
「あの‥本当にいいんでしょうか‥?」
DCの声に再びグレイプが振り向く。
「あなたの魂が篭ったもの‥。
こんな価値のあるものはありませんよ?」
初めて見せたグレイプの笑顔に見とれているうちに、DCの前からグレイプは消えていた。
ミーンミンミンミン‥
庭から蝉の叫び声が聞こえてくる。
おだやかな寝息を立てているひろゆきの隣で、DCが座っている。
DCは安心と喜びが混じった溜め息を深く吐き、
8枚のコインを握り締めたまま眠りにおちた‥。
- 450 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/19(土) 12:45:22
- カランコロン
「あ〜、私も見たかったなぁ‥。
白い鳩‥」
グレイプが涙声でそう言う。
「はいはい、泣かないの。
あんたが悲しいとね、私まで悲しくなっちゃうの。
だから精一杯笑いなさい?」
ファフがそう言うと、グレイプは涙をこらえた。
「じゃあ、ついでにこれ持っていくわよ。」
ファフがグレイプが背負っている荷物を指差す。
「うん、ちょうど良かったね。」
グレイプが重たそうにそれを持ちあげた。
町外れの寺。
雲がふたりの行く先さえも覆い隠してしまいそうだ。
ふたりはその寺の前にいた。
寺は古びていて、人がいるのかも疑わしい。
が、中から聞こえてくる声はまさしく人の物だった。
「おーらおらおらおらおらおらッッ!!」
そのむさ苦しいほど男臭い声に、ファフはつい溜め息をもらす。
ピンポーン
何度押しても反応はない。
が、中から確に声は聞こえてくる。
ファフがめんどくさそうに敷居を跨ぐと、その後ろをグレイプがついていった。
「超ムカつく。
燃やしてやるわ!!」
イライラしたオーラを身に纏いながら、ファフがずんずんと寺へ向かっていく。
大荷物を抱えたグレイプはよたよたしながらも、必死でそれを追い掛けていた。
- 451 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/19(土) 13:12:33
- 「ちょっと、ばか!」
大声でファフが中にいる男を呼ぶ。
「おらぉ‥‥。」
激しい声が止まる。
「よう、ファフ‥」
男が振り向き、手を振った。
後ろから付いてきたグレイプがやっと寺に着く。
「と、グレイプ!」
男は汗をタオルで拭き、グレイプの背負った荷物を受け取った。
「あ、ありがとうございます‥」
グレイプが言う。
「こんな奴に礼なんていらないわよ。」
ファフが冷たく言い放った。
「ふーん、なかなか頑張ってるな。」
男が袋の中に入っている物を取り出した。
「それは12月頃の奴ね。」
ファフが言う。
「んー…。
こんなもんか?」
男はそろばんをパチッと弾き、ファフに見せた。
「冗談でしょ!?
配達の分際で取りすぎじゃない!?
燃やすわよ。」
ファフが凄い勢いで押しかかると、男はもう一度パチッとそろばんを弾いた。
その音を聞いて、ファフは瞳をそろばんの方に向ける。
「‥よし」
ファフはそう言い、グレイプを見た。
「あ、ありがとうございます。
では、いつも通りよろしくお願いしますね。」
グレイプが言う。
男はいまいち納得いかない顔をすぐに笑顔に戻し、頷いた。
「これが、新種の影で、これが……」
ファフが淡々と説明を続けている。
しばらくたつと、説明が終り立ち上がった。
「じゃあ、まかせたわよ。」
ファフが言うと、男はメモを取りながら片手をあげた。
カランコロン
下駄が地面を叩く音が心地良く響く。
「姉さんは凄いよね‥」
空を覆い隠した雲が、日差しを遮る。
麦わら帽子を片手にグレイプが呟いた。
「なにが?」
ファフが不思議そうに言う。
「何でも知ってるし、何でも覚えてる‥。
私なんて‥」
「私は見えるし診れる。」
グレイプの言葉にファフが割り込む。
「‥でも‥
『祓える』のは‥グレイプ、あなただけよ‥」
小さく悲しそうに呟くファフの声は蝉の叫び声にかき消された。
「え?何て‥?」
グレイプが聞き返す。
「んーん、何でもない」
遠くから聞こえてくる蝉の声がうっとおしい。
見計らったように、照り付けてきた太陽に、
グレイプはまた帽子を被った‥。
第一話 終り
- 452 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/19(土) 13:15:55
- 一応、第一話終りました。
第一話は、キャラを立てるのとキャラ紹介みたいな感じで流させていただきました。
第二話もすでにあるので速攻いけます。
感想ありがとうございます!!
読んでいただいて蝶感謝です。
また良かったら読んでくださいな。
- 453 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/19(土) 15:08:51
- 文句無しGJ!
- 454 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/19(土) 18:07:01
- GJGJGJGGJJGGJGJGJGJGJGJGJGGJGJGJGJ!!!
- 455 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/19(土) 18:20:57
- この流れにワラタww
- 456 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/19(土) 20:42:20
- GJ!続き期待あげ
- 457 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/02/20(日) 00:36:51
- 第二話『赤い星空』
まだ蝉が泣きやまぬ夏の終り。
ニール達の住む町『光明池』
そこにひとつの小さな学校あった。
この季節、見上げれば落ちてきそうな星空。
少し田舎なこの町では余計に星が見える。
星は照らしている。
静かに照らしている。
赤く照らしている‥。
- 458 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/20(日) 10:33:36
- 超GJ!
- 459 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/22(火) 20:55:12
- 期待age
- 460 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/25(金) 03:08:55
- あげ
- 461 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/26(土) 22:29:11
- 多分引越し中
気長に待ってくださいね
- 462 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/02/28(月) 04:01:08
- 期待age
- 463 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/02(水) 23:08:18
- 期待
- 464 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/03(木) 03:15:36
- age
- 465 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/03(木) 18:42:01
- あげてみよう
- 466 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/04(金) 05:33:02
- あげまくる
- 467 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/04(金) 11:05:05
- 続きマダー?
- 468 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/08(火) 17:35:14
- age
- 469 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/03/08(火) 18:10:01
- 響く声は蝉(セミ)のそれから蛬(コオロギ)へと変わっていく。
リーンリンリンリン
夏の終り
秋の始まり
夕暮れにふたつのカゲが伸びていた。
ひとつは美しい少女。
唇にひかれた薄いピンクがいつもと違う印象を与えるが、見間違えるはずも無い。
‥グレイプだ。
人形のような顔立ちにはあどけなさの中に恐怖すら感じる。
「涼しいですね‥」
グレイプの横にいた男が話かけた。
「そうですね。
ちょうどいい気候じゃないんですか‥?」
グレイプがそう答えると男は小さく頷いた。
事の始まりは数時間前━━。
- 470 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/08(火) 18:15:43
- キター━━━━(・∀・)━━━━━━!!
- 471 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/03/08(火) 18:28:28
- 「ん〜‥。」
大きな欠伸(アクビ)をしながら、ファフが居間へ入る。
「ぁ、姉さん。
おはよ〜。」
髪を後ろで束ねたグレイプがエプロン姿で声をかける。
対照的に、短いTシャツとパンツ一枚のファフ。
「おはよぉ‥」
と気だるそうに言うと、畳の上に腰を降ろした。
トントントンと包丁がまな板を叩く音がすると、
味噌汁の匂いがしてくる。
ファフがテレビのリモコンに手を伸ばすと、スイッチを入れた。
『今週は、からっとした晴れが続くでしょう‥』
天気予報が流れている。
「へー、嬉しいわ。
ここんとこジメジメしてて嫌になってた所よ。」
ファフが独り言のように呟いている。
グレイプが台所から朝食を運んできた。
『続いて、ニュースです。
昨夜‥連続強盗で逮捕された‥‥‥が‥‥脱獄‥‥』
プチッ
テレビのスイッチが切れる。
「食事中はテレビは消す!」
グレイプがテレビとファフの間に顔を入れ、そう言う。
ファフは顔をテーブルに向ける。
「いただきま〜す♪」
嬉しそうに手を合わせ、箸を掴んだ。
- 472 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/14(月) 09:43:19
- あげまん!
- 473 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/18(金) 08:53:46
- 期待あげ
- 474 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/18(金) 22:53:40
- あげます
- 475 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/19(土) 07:22:13
- まーだ〜?
- 476 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/21(月) 22:37:25
- 降臨期待age
- 477 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/23(水) 09:15:37
- 期待age
- 478 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/23(水) 14:49:53
- 期待age
- 479 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/24(木) 13:50:31
- 今日見つけて1から読ましていただきました!!
すげぇぇぇえ!!
期待あげ!!
- 480 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/27(日) 04:40:54
- あげ
- 481 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/03/29(火) 11:54:08
- 期待age
- 482 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/01(金) 23:51:52
- げ
- 483 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/06(水) 08:05:27
- あ
- 484 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/08(金) 12:06:50
- まだ〜
- 485 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/15(金) 10:17:37
- 俺はまだ諦めてないage
ヒマ有れば書いて下さい(つд`。)
- 486 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/15(金) 18:01:59
- 引越し完了したけど回線引いてプロバイダに入会するの忘れたとか書いてあった
- 487 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/19(火) 00:32:03
- 諦めないでage
DC様の逸話集の続きも、書いてくれると信じて待ってます!
- 488 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/04/19(火) 02:48:05
- 昼過ぎ、仕事の無い日はとことん暇なようで、ふたりは退屈そうに庭を見ていた。
浴衣姿のグレイプと、何らおかまいなく下着姿ののファフ。
たらいにいれた氷水にふたりは並んで足を浸けていた。
「はぁー、涼しい〜」
ファフがカランカラン・と氷を転がす。
グレイプは少し冷たそうに足を氷から遠ざけている。
夏の終り、秋の始まり。
リーンリンリンリン
静かにコオロギがないている。
夜になるとさらに煩くなるんだろう。
「あの…すいません〜!!」
玄関から聞こえてくる声にグレイプは立ち上がった。
浴衣の裾をあげ、スタスタと歩いていく。
その後に少し残る水滴が太陽を反射して光っていた…。
「はい、どちら様でしょうか?」
グレイプはそっと玄関の扉を開ける。
大学生くらいだろうか?
そこには一人の男が立っていた。
いつもの客に比べてそれほど脅えてはいない様子だ。
「あの…噂を聞きまして…、少し相談に。」男が言うとグレイプが手招きする。
「あ、お客さんですね?
どうぞ、お上がりください。」
グレイプが丁寧に頭を下げる。
男はぼんやりとグレイプを見ているようだ。
「…?
どうかしましたか…?」
グレイプの声にハッとしたように男は笑った。
「いえ、何でも…。
失礼します。」
そう言うとゆっくりと敷居を跨いぐ。
グレイプに誘われるように居間へと向かって行った…。
- 489 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/19(火) 04:40:12
- キタ───(・∀・)───!!
- 490 名前: 485 投稿日: 2005/04/19(火) 09:13:01
- 嬉しい…
ほんとに書いてくれた(;∀;)
これからもこのスレ見ます
陰ながら応援してますよ〜
- 491 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/20(水) 01:53:41
- あげます。
- 492 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/22(金) 05:29:38
- 保守
- 493 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/24(日) 06:12:26
- 頑張って下さい!(・∀・)
- 494 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/04/24(日) 06:14:45
- (・∀・)頑張らないとプチプチを絞っちゃうよ!
- 495 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/02(月) 05:04:14
- あげます
- 496 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/02(月) 16:54:36
- ダメだ!居間にいったら…ハァハァ
- 497 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/04(水) 03:56:03
- AGE
- 498 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/04(水) 10:54:22
- エロい展開きぼん
- 499 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/09(月) 11:28:10
- あげちゃう
- 500 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/09(月) 11:39:59
- 余裕を持って500。
- 501 名前: ○ (HAVNEicQ) 投稿日: 2005/05/16(月) 13:54:07
- 「それでご用件は…?」
グレイプがそう言うと、後ろの襖が開きファフが居間へ入ってきた。
男は言いづらそうに呟く。
「調査…とか…してもらえますか?」
「‥調査?」
グレイプがそのまま聞き返す。
男は申し訳なさそうに続ける。
「はい‥、噂を聞きまして‥学校に調査に来てくれませんか‥?」
男の依頼にグレイプは不思議そうに首をかしげた。
ファフはグレイプの隣に勢い良く腰をおろす。
「要は‥いるかどうか分からないって事でしょ?」
ファフはめんどくさそうに、頬杖をつき男を見た。
「はい‥、けど、毎年噂になりますし‥。」
男がそこまで言うとファフが立ち上がる。
「あ〜ヤだ、私は嫌だから。めんどくさい。
そんなのはどうせ噂よ、あれでしょ?どうせ学校の七不思議とかでしょ?」
ファフは、最高にだるそうな表情をしている。
「グレイプ、後はまかせるわ。」
そう言い残し後ろ手を振ると、居間をあとにした。
「すいません‥、いつもああなんで‥。」
グレイプが丁寧に頭をさげる。
「いや‥無理なお願いだとは思っていました‥。」
男は頭をあげてください、と言いたげなジェスチャーでグレイプを見た。
「じゃあ、どうしてですか?」
ふいにグレイプが言う。
「‥はい‥?」
「いえ、無理だと思っていたのに、どうして来たのかと思いまして‥。」
「‥あ、あぁ。
俺はそこの学校に行ってまして、天文気象部の部長なんですよ。
と、言っても今年作ったばかりの部活なんですけどね。
まぁ、その部活で合宿する事になったんです、学校で。」
「ぁ、流星群ですか。」
グレイプが言うと、男は軽く頷き続ける。
「それで、俺合わせてたった四人しかいない部活なのに一人の子が、
七不思議を信じてて怖いからやめる・って言い出したんですよ。」
男がここまで言うとグレイプを見た。
「なるほど、それで‥」
「あの‥、お願い出来ます‥か‥?」
男は恐る恐るグレイプから視線を外していく。
「いいですよ。
それが私の仕事ですし、噂が嘘なら料金はいただきません。」
グレイプはそう言って男を見た。
- 502 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/16(月) 18:38:59
- キターーーーーーー
続き期待age
- 503 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/16(月) 18:51:09
- ○先生、闘劇でサイコさん以外の3人が揃いましたよ!
- 504 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/23(月) 19:37:22
- ほしゅ
- 505 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/05/27(金) 20:56:33
- 揚げ
- 506 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/06/04(土) 10:51:22
- あげ
- 507 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/06/06(月) 20:23:13
- 最後の抵抗age
- 508 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/06/17(金) 13:48:32
- まだ残ってたのか……よく続いてるもんだ
保守あげ
- 509 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/06/18(土) 17:29:00
- ○氏を待ち続けるお前らに心打たれたよ・・・。
ageてやる。
- 510 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/06/25(土) 18:42:46
- せーんせ♪
- 511 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/01(金) 12:21:11
- まだまだー
- 512 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/08(金) 02:14:35
- 続き期待age
- 513 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/09(土) 23:11:46
- あげるんです!
- 514 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/13(水) 20:50:44
- あげ
- 515 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/13(水) 20:51:01
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 終了 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
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- 516 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/13(水) 20:53:45
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- 517 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/13(水) 20:54:14
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- 518 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/13(水) 20:56:43
- 祭りは好きだけど荒らすスレは考えるべきだと思う。
- 519 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/18(月) 18:25:37
- 期待age
- 520 名前: ○ ◆xRHAVNEicQ 投稿日: 2005/07/19(火) 19:02:31
- すいません、色々と忙しくて書く暇がありません…。
終ってないものを見ると腹がたつんで絶対終らせます。
ほんとすいませんmm
- 521 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/27(水) 18:41:50
- age
- 522 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/28(木) 08:12:13
- あげ
- 523 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/28(木) 08:25:49
- ○氏、最近忙しいのかな・・。
- 524 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/07/30(土) 19:51:26
- 期待あげ
- 525 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/01(月) 10:23:24
- まだまだ負けない
- 526 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/02(火) 17:03:13
- あげ
- 527 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/03(水) 21:25:02
- あげ
- 528 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/07(日) 15:44:25
- ひつこくあげ
- 529 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/08(月) 12:57:22
- 久々に○さんのDC逸話集が読みたくなったage
- 530 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/08(月) 13:04:35
- そういや誰か俺と漫画家目指さない?スレはどうなったんだ?
- 531 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/09(火) 21:39:15
- き…期待あげ…っっ
- 532 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/10(水) 23:30:01
- まだだ!
- 533 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/10(水) 23:38:24
- そろそろ帰ってくる予感!
- 534 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/23(火) 05:06:24
- 負けないよ!
- 535 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/24(水) 18:09:25
- ○氏ならきっと帰って来てくれる!期待age!!!!
- 536 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/25(木) 16:02:22
- まだまだ信じてage↑↑
- 537 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/27(土) 06:33:29
- あげ
- 538 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/08/30(火) 12:28:08
- 落とさせんぞ!
- 539 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/02(金) 21:35:26
- あぁ…○氏よ何処へ(´・ω・`)
- 540 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/11(日) 22:25:33
- 保守
- 541 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/11(日) 22:31:21
- ○氏がいない間にネタが積もりに積もってますよ!
- 542 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/11(日) 22:35:27
- うはー、まだあったんだこのスレ、懐かしいー。
○氏もう見てないのかな?
- 543 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/21(水) 02:53:04
- あげます!
- 544 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/25(日) 21:46:29
- むかつくレスを見たのでage
ここはまだ死んでない!
- 545 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/25(日) 21:47:13
- 死んでるよ
- 546 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/25(日) 21:48:10
- …(´・ω・`)
- 547 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/25(日) 21:50:46
- もうムリだろ
- 548 名前: ● 投稿日: 2005/09/25(日) 21:53:30
- 俺の出番か
- 549 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/26(月) 18:15:38
- >>544
詳しく
- 550 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/26(月) 18:16:41
- >>549
葬式スレ
- 551 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/26(月) 18:20:58
- >>550
ありがとう。
期待期待期待!
- 552 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 03:52:52
- 響く声は蝉(セミ)のそれから蛬(コオロギ)へと変わっていく。
リーンリンリンリン
夏の終り
秋の始まり
夕暮れにふたつのカゲが伸びていた。
ひとつは美しい少女。
唇にひかれた薄いピンクがいつもと違う印象を与えるが、見間違えるはずも無い。
‥グレイプだ。
人形のような顔立ちにはあどけなさの中に恐怖すら感じる。
「涼しいですね‥」
グレイプの横にいた男が話かけた。
「そうですね。
ちょうどいい気候じゃないんですか‥?」
グレイプがそう答えると男は小さく頷いた。
しばらくすると、町外れに学校が見えてくる。
「勝手に入っても良いんでしょうか…?」
グレイプの問いに小さく笑顔で男は答える。
「大丈夫ですよ、田舎の学校ですから」
男は、グレイプの前をゆっくりと歩いていく。
「それで、噂・というのは?」
誰もいない静かな校舎にグレイプの声が響いている。
「いえ、言われた通り他愛も無い噂話なんですが…」
男はグレイプの歩幅にあわせるようにゆっくりと前を歩いていく。
その話は、本当にどこの学校でもあるような噂話。
1、トイレの花子さん
2、校長室の写真
3、真夜中の音楽室
4、理科室の人体模型
5、運動場の銅像
流石にこれら全てを真に受けているわけではなく、その子が怖がっている噂。
6、屋上で自殺した女の子
これが問題だそうだ。
「…では、屋上を調査すれば良いのですね?」
グレイプが丁寧に言う。
「はい、本当にすいません」
男がそう言うとグレイプは首を一度だけ横に振る。
「気にしないでください。
もし、真実であれば退治。嘘であれば、その子に嘘だと伝えれば?」
カツンカツンと階段が叩かれて音が鳴る、視界にうつる屋上への扉を見て男は無言のまま首を縦に振った。
- 553 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 03:55:16
- これは・・・
- 554 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 04:02:21
- 「ん〜、いい天気だ!」
男が大きな望遠鏡を抱え、さらに大きく伸びをしている。
学校へ向けて意気揚々と足を進めていく。
空には雲ひとつなく、まだ低い太陽がそこへ昇ろうとしていた。
「あら、おはようございます」
後ろから聞こえたくる声に男は振り向く。
清楚な服装だが、グレイプとは違いどこか高飛車な雰囲気が漂う。
「お!おはよう、彩子」
「いい天気ですわね」
「んー、そうだな!晴れてよかったなー。
それにしても、彩子がちゃんと来てくれて良かった良かった!」
男が嬉しそうに笑うと彩子は少し顔を俯けて早足で前に進む。
「…あなたが調べてくださったんですもの」
すれ違い様に小さく呟いた。
「え?何か言ったか?」
男が聞き返すが、彩子は何も言わずに早足で校門を抜けていく。
男は「何なんだよ」と言いたげに頭を掻くが、慣れているのかすぐに後ろを追いかけていく。
校門を抜け、校舎一階の端「天文気象部」と書かれた部屋にふたりは入る。
「ふー、疲れたあー」
ドサッと荷物を地面に放り投げ、丁寧に望遠鏡を部屋の片隅に置く。
彩子はマイチェアーに腰をおろした。
「晴れて良かったなー」
男は嬉しそうに空をうっとりと見つめ、何度もそれを繰り返す。
どのくらいか「晴れて良かったなー」が彩子にとってただのBGMになりつつあった時、外から声が聞こえてきた。
「大丈夫か、ディー?重いなら俺が持つぜ?」
「だ、大丈夫…です。サイコさんに迷惑ばかりかけれません!」
「そんな所も大好きだぜ…?ディー」
「サイコさん…」
外から聞こえてくる声に男は大きくため息をつくと部室の扉を開けた。
「おはようございます、サイコ先輩。ディズィーさん」
いちゃつくなバカップルと言いたげな表情で男は呟く。
「よう、いい天気だな!」
「お、おはようございます…」
「おはようございますですわ、お二方」
いつものやり取りを済ますと、ふたりも荷物を置き腰をおろした。
「星が出るまで時間がまだまだあるぜ…?」
サイコが何か思いついたように呟くと、カーテンを閉め電気のスイッチを切った。
「キャッ、真っ暗で何も見えませんわよ!?」
彩子のかんだかい声が部室に響く。
男とディズィーはいつもの事のようにサイコの出方を伺っていた。
暗闇の中に、ボッと小さな灯りがともる。
「ロウソク、ですか」
男の声にかぶせるようにサイコが大きな声で叫んだ。
「季節外れの…怪談スタートだぜ!!」
- 555 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 04:25:15
- いつの間にか太陽は沈み、空を色を失くしていく。
冷えていく空の下で、真っ暗な学校の端にある小さな部屋から微かに光が漏れていた。
「サイコさん、もうこんな時間ですし…星、見に行きませんか?」
男が望遠鏡に触れながら玩具を買ってもらった子供のようにそう言う。
「そうだな…、じゃあ最後に…」
「肝試しだぜ!!」
サイコの楽しそうに言う言葉はディズィーは逆らう術もなく、男は意味が無い事を知っていた。
「最後ですよ?」
男がいやいや同意する。
サイコ嬉しそうにクジを作っていた。
「え?本当にやりますの…?」
彩子のおびえた声が薄暗い美部室の隅から聞こえてくる。
「あれ?彩子、もしかしてびびってる?」
「そ、そんな事ありませんわ!!!」
「なら、いいじゃん」
「……でも」
彩子の言葉にサイコがまたも割り込む。
「クジが出来たぞ!ひくんだ!」
クジは四枚、肝試しに行く順番だろう。
「ひとりひとり行くんですか?」
「当たり前だ!肝試しだぞ?ひとりに決まってるぜ!!」
サイコに言われ男とディズィーはクジを引く。
残った1枚を彩子は無言のまま受け取った。
肝試しのコースは単純。
1、トイレの花子さん
2、校長室の写真
3、真夜中の音楽室
4、理科室の人体模型
5、運動場の銅像
これらの全てを通り、
6、屋上で自殺した女の子
ここにクジを置いて帰ってくる。
今まで話てきた怪談の効果もあってか、彩子とディズィーはかなりおびえている様子だ。
「俺は最後かー」
男はクジに書かれた数字を見てそう言った。
「そ、そそ、それじゃあ、行って…きますわね」
彩子が「1」と書かれたクジを握り締めそっと部室の扉を開く。
キイッと静かな校内に音が響き、続いて足音が離れていった。
またキイッと音が鳴り、足跡が離れていく。
そして、静かな部室にひとり男が残されていた。
「…何で俺が行かなきゃならないんだ!?」
男は扉を開けようとして、そう呟いた。
「な、何だ俺…、び、びびってるのか?」
「い…行くぞ!!」
キイッと音が鳴り、足音が男と共に校内を進んでいく。
窓辺から差し込む月明かりが不気味に教室を照らしていく。
「怖くない、怖くない、怖くない…」
- 556 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 04:37:36
- 屋上に続く真っ暗な道を歩く…。
部室から屋上への道、理科室やら音楽室前を通らなければ行けないフルコースだ。
6、屋上で自殺した女の子
男は心臓音が聞こえてきそうな表情で上を見ていた。
屋上のドアノブに手を伸ばす…。
「いてっ!」
ドアノブに触れた瞬間、男は手を離しのけぞった。
「なんだ…静電気か…」
気をとりなおしてドアノブに手を伸ばす。
いやな予感がすると同時、ある思いがよぎる…。
屋上までは一本道…帰ってきてもおかしくないはずなのに、誰ともすれ違ってなくないか…。
背筋がぞっとしたが、おそらく隠れているとかだろう・と言い聞かせる。
ドアを開く、ひとりの男が立っている。
下にはよく見えないが 数人が倒れているようだ…。
状況がわからない…。
雲に隠れた月が姿をあらわし男の顔を照らす。
「あっ…!?」
星空の下、銃声が響いきわたった。
「ん〜‥。」
大きな欠伸(アクビ)をしながら、ファフが居間へ入る。
「ぁ、姉さん。おはよ〜。」
髪を後ろで束ねたグレイプがエプロン姿で声をかける。
対照的に、短いTシャツとパンツ一枚のファフ。
「おはよぉ‥」
と気だるそうに言うと、畳の上に腰を降ろした。
トントントンと包丁がまな板を叩く音がすると、
味噌汁の匂いがしてくる。
ファフがテレビのリモコンに手を伸ばすと、スイッチを入れた。
『今週は、ジメジメとした天気が続くでしょう‥』
天気予報が流れている。
「へー、嬉しいわ。
ここんとこ暑くって嫌になってた所よ。」
ファフが独り言のように呟いている。
グレイプが台所から朝食を運んできた。
『続いて、ニュースです。
連続強盗で逮捕され脱獄した小川氏が先日、逮捕されました。
場所は光明学園の屋上で、銃声を聞きつけた教員によって通報されたようです。
その際、屋上で天体観測を行おうとした学生4名が…』
プチッ
テレビのスイッチが切れる。
「食事中はテレビは消す!」
グレイプがテレビとファフの間に顔を入れ、そう言う。
ファフは顔をテーブルに向ける。
「いただきま〜す♪」
嬉しそうに手を合わせ、箸を掴んだ。
こうして…彼らの話が七番目となり、
学校の七不思議は語り継がれていった…。
星は照らしている。
静かに照らしている。
赤く照らしている…。
『浦板ラブストーリー』完
- 557 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 12:27:57
- こ、これは
- 558 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/28(水) 19:02:51
- ペースをageるぜ!!!
- 559 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/29(木) 00:14:29
- GJです!
- 560 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/29(木) 02:19:46
- なんだってえぇぇぇ!?
- 561 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/29(木) 11:51:27
- GJ!!
- 562 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/09/29(木) 15:51:03
- うお!ついにキター!?
あげ続けたかいがあった…。
GJです!!
- 563 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/03(月) 15:41:40
- あげます〜。○氏〜!!
- 564 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/05(水) 06:03:03
- あげ
- 565 名前: ○ ◆xRHAVNEicQ 投稿日: 2005/10/06(木) 17:53:37
- トリップあってるかな?
お久しぶりです。ご無沙汰です。
とりあえず自分でやり出したことなので終わらせておきました。
ニールスレ落ちたし勝手ながらこれで終わらせていただきます。
保守してくれた方や、GJくれた方、本当にありがとうございました!
需要があれば、また暇な時にでも書きたいと思います。
それでは。
- 566 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/08(土) 14:00:17
- ちんこ男期待age
- 567 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/08(土) 15:15:48
- GJ
- 568 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/08(土) 16:06:19
- 主役ちんこ。
ヒロインお姉さん。
どうですか?
- 569 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/12(水) 00:11:54
- あげ
- 570 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/12(水) 23:21:36
- 浮上せり
- 571 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/12(水) 23:57:01
- 我浮上せり
- 572 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/16(日) 23:00:07
- 保守っしゅっしゅ
- 573 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/21(金) 23:33:35
- 定期的にあげるよ
- 574 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/27(木) 15:34:29
- あげ
- 575 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/10/27(木) 15:37:33
- あげんなカス共
- 576 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/11/02(水) 22:48:12
- くじけずあげてみる
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