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【SS】蓮ノ空ファンタジーⅡ Part.2

1 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/03(日) 22:05:03 ???00
前スレ

【SS】蓮ノ空ファンタジーⅡ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11224/1743405569/


2 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 21:46:05 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【2025年4月1日】

さやか「ふぅ……」

さやか「3年生かぁ」

さやか(先輩方が卒業して、これからはわたし達103期生がクラブを引っ張っていく番。今まで以上に気合いを入れないと)

さやか(それと、部長も決めないといけませんね。梢先輩はわたしを推してくれていましたが、正直わたしは花帆さんの方が……)

さやか「いえ、このことに関しては一度同期で話し合って──」

小鈴「おはようございます!」ガチャ

さやか「あ、小鈴さん。おはようございます。今日は一人で起きられたんですね」

小鈴「はい!徒町もついに2年生……後輩ができるかもしれませんし、今まで以上に頑張ります!ちぇすとー!」

さやか「……ふふ」

小鈴「どうしたんですか?」

さやか「いえ、小鈴さんとなら105期も上手くやっていけそうだと思っただけです」ニコッ

小鈴「はい!よろしくお願いします!さやか先輩!」

さやか「こちらこそ、よろしくお願いします。小鈴さん」

さやか「さて、お互い気合いも充分ということで、ストレッチから始めましょうか」

小鈴「わかりました!」


3 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 21:52:08 ???00
さやか「ワン、ツー、ワン、ツー」

さやか「ここでポーズ!」

小鈴「はっ!」ビシッ!

さやか「いいですね。タイミングもバッチリ合っています。最後のポーズ、指先までしっかり伸ばすことを意識してみましょうか」

小鈴「はい!」

🚪コンコンコン

吟子「失礼します」ガチャ

小鈴「吟子ちゃん!おはよう!」

吟子「おはよう。小鈴」

さやか「どうされたんですか?吟子さん」

吟子「さやか先輩、こっちに花帆先輩って来てませんか?」

さやか「花帆さんですか?いえ、今日は見かけていませんが……」


4 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 21:55:19 ???00
吟子「そうですか……実は花帆先輩、練習に来てなくて」

吟子「梢先輩が卒業して落ち込んでるのかと思って、しばらくは待ってたんですけど……」

吟子「いつまで経っても来ないし、電話しても全然繋がらないから、他の先輩の所に行ってるのかなと……」

さやか「ふむ、少し心配ですね。花帆さんの部屋には行きましたか?」

吟子「はい。でもノックしても返事がなくて……」

さやか「一応様子を見に行きましょうか。もしかしたら、昨日遅くまで先輩方との写真を眺めていて、寝坊しているだけかもしれません」

さやか「合鍵を持ってくるので、吟子さんは花帆さんの部屋の前で待っていてください」

吟子「わかりました」

さやか「小鈴さん。すみませんが、少し自主練をしていてもらえますか?」

小鈴「了解です!」


5 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 21:59:07 ???00
さやか「花帆さーん。中にいるんですかー」コンコンコン!

シーン……

吟子「やっぱり返事がない……」

さやか「……すみません。勝手に開けますね」🗝ガチャ

さやか「花帆さん、いますか?」

花帆「すぅ……すぅ……」

さやか「あぁ、やっぱり寝てた」

さやか「花帆さん、机で寝てたら体に悪いですよ」ユサユサ

花帆「すぅ……すぅ……」

吟子「全然起きないし。心配して損した……」

さやか「花ー帆ーさーん!起きてくださーい!」ユサユサ!

吟子「花帆先輩!起きて!練習始まってるよ!」トントン!

花帆「すぅ……すぅ……」

さやか「…………あれ?」

さやか(花帆さんって、こんなに寝起き悪かったっけ?)

吟子「ち、ちょっと!冗談ならやめてよね!早く起きてよ!」ユサユサ!

さやか「……吟子さん。このまま花帆さんを見ていてもらえますか?あと、クラブのみんなにも連絡を」

吟子「え、いいですけど……さやか先輩?」

さやか「保健室の先生を、呼んできます」


結局、花帆さんはそのまま、目を覚ますことはなかった。


6 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 22:02:09 ???00
小鈴「花帆先輩、どうしちゃったんでしょうか……」

さやか「わかりません。保険室の先生は、気絶のような状態だと仰っていました」

さやか「今のところ、命に関わるようなことはないとも」

姫芽「で、でも!くも膜下出血とか、外見じゃわかりづらい病気っていう可能性も……」

吟子「!!は、早く病院に連れてかないと!」ガタッ

さやか「落ち着いてください。瑠璃乃さんが今、先生方に頼んで救急車を──」

ドタドタドタ!

瑠璃乃「花帆ちゃん!起きたの!?」ガチャ!

小鈴「うわっ!?瑠璃乃先輩!」

さやか「瑠璃乃さん?いえ……花帆さんは眠ったままですが……」


7 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 22:08:32 ???00
瑠璃乃「え?いや、あれ?じゃあ何で……」

姫芽「どうしたんですか?るりちゃんせんぱい」

瑠璃乃「今、職員室に行ったら……『日野下なら昨日からずっと配信してるだろ。そろそろ止めさせろ』って言われて……」

吟子「配信!?そんな馬鹿な……!」ゴソゴソ

瑠璃乃「そ、それで、花帆ちゃん起きたのかと思って……急いで戻ってきたんだけど……」

さやか「いや、花帆さんはずっと寝てるんですから、配信なんてできるはず──」

吟子「嘘……」

小鈴「吟子ちゃん?」

吟子「花帆先輩……配信やってます……」📱スッ

さやか「え──」

「「えぇーー!?!?」」

これが、わたし達にとってのプロローグ。

スクールアイドルクラブ、105期最初の事件。


『蓮ノ空ファンタジーⅡ 』 (崩界編)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


8 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/04(月) 22:10:09 ???00
崩界編 OPテーマ

『Preserved Roses 』/ スリーズブーケ(cover)


9 : 名無しで叶える物語◆C8CaOgDD★ :2025/08/04(月) 22:26:23 ???00
ここでそのカバー曲かぁ!


10 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 20:43:16 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『Link-Like System 起動』

『【異世界モード】 再開します』

『今日も素敵な冒険者応援ライフを』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


11 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 20:46:58 ???00
メグミ「……」zzz

『メグミエル 第八のラッパを授けられし天使 私の愛し子よ』

『使命を 果たしなさい』

メグミ「……」

『メグミエル 起きてください』

『起きて──いるのでしょう?』

メグミ「っ!」

『天使に睡眠など 必要ありません』

『そんなにも 人間界に染まってしまったのですね』

『それとも ただの真似事ですか?』

メグミ「……別に、どうせみんな寝てるし、起きててもつまんないから」

『メグミエル なぜラッパを使わないのです』

『そうしなければ あなたの使命は果たされません』

メグミ「……だって、どうせロクでもないことが起きるじゃん」

『そんなことはありません』

『あのラッパは 眠っている天使達の魂を呼び起こすだけです』


12 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 20:52:53 ???00
メグミ「起こして、その後はどうするの?」

『決まっています 我々を陥れた忌まわしき魔獣を──』


『"人間"を 滅ぼすのです』

メグミ「!!」

メグミ「なんで!別に戦う必要ないじゃん!普通にみんなで天国に帰ればいいでしょ!」

『あなたは戦争に参加しなかったから 知らないのですね』

『人間がどれほど卑劣な手段で 我々を──』

メグミ「そんなの1000年も前の話じゃん!今の人類には関係ないことだよ!」

『いいえ 今も昔も 人間は変わりません』

『あなたも目覚めてから 人間の醜さを見てきたはずです』

ジジジ……

メグミ「うっ……!」

カホを襲った誘拐犯……人の生き血を啜る人狼……利己的な人々……サヤカちゃん──

メグミ「やめて、勝手に記憶を呼ばないで……」ズキズキ

『彼等のような者たちを 庇う必要はないはずです』


13 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 20:56:27 ???00
メグミ「……確かに、嫌なやつはいた。悪としか言えないやつもいた」

『ならば──』

メグミ「でも!良い人もいた!」

メグミ「他人の為に命をかけられるような、優しい人達にもいっぱい出会ったよ!」

メグミ「そういう人達を殺すことなんて、できない……」

『……そうですか』

メグミ「ごめんね、ママ。私はやっぱり、あのラッパは使えな──」

『では ルリエルのことは諦めるのですね』

メグミ「──え?」

『あの子の魂もまた 今は眠っています』

『ラッパを使わないというのなら 二度と会うことはないでしょう』

メグミ「で、でも……るりちゃんの魂って……きっと……」

『あなたも気が付いているはずです』

『ルリエルの魂は今 "オオサワルリノ"という少女に転生しています』

メグミ「っ……」

メグミ(わかってた。そんなこと、初めて会った時から。でも……)


14 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:01:50 ???00
メグミ「もし……る、ルリエルの魂が目覚めたら、ルリノちゃんはどうなるの?」

『オオサワルリノの人格は消滅します』

メグミ「……それじゃあ、やっぱり私はラッパを使わない」

『いいのですか? あなたにとっては最愛の姉妹のはずですが』

メグミ「そりゃあ会いたいよ!でも、ルリノちゃんはもう大切な友達だし……」

メグミ「それに、るりちゃんだって、誰かの体を奪ってまで復活したいなんて、思わないはずだよ!」

『メグミエル……残念です』

メグミ「悪いけど、私はもう人間の味方だから。これ以上話しかけないで」

『そうですか 重ねて残念です』

『あなたを 消さなければならない』

メグミ「!!」

『使命を果たせぬ天使は その魂を浄化し 生まれ変わらなければなりません』

メグミ「ぐっ……!」


15 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:07:02 ???00
『ですが メグミエルは姉妹達の中でも一際可愛い 私の愛し子です』

『最後に 考えを改める機会を与えます』

メグミ「……なに?」

『明日の日没までにラッパを使えば 魂の浄化はしないであげましょう』

『逆に それまでにラッパを使わないのなら』

『あなたの魂を浄化し 新しいあなたに使命を果たしてもらいます』

メグミ「……それ、選択肢になってなくない?」

『"あなた"がルリエルに再会できるかどうか ということです』

メグミ「……」

『期限までに よく人間を見極めなさい』

『あなたにまた会えることを 心から願っています』

シーン……

メグミ「──────はぁ」

メグミ「どうすればいいの……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


16 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:09:40 ???00
【朝】

ドラゴンとの戦いから1週間。

あたし達は一応、元通りの日常に戻っていた。

カホ「おはようございます」

コズエ「おはよう。カホ」

ギンコ「おはようございます。カホさん」

カチマチ『おはようございます!』チリン

カホ「あれ?カチマチちゃん、首に鈴なんて付けてたってけ?」

カチマチ『ん?最近はずっと付けてますよ?』

コズエ「ドラゴンと戦った後から付けているじゃない」

カホ「あー……そう、でしたね!はい!」

ギンコ「もう、寝ぼけてるんですか?」

カホ「あはは……あの後しばらくふわふわしてたから、ちゃんと聞いてなかったのかも!ごめんね!どうして付けてるんだっけ?」

カチマチ『この鈴はカチマチの御守りです!ドラゴンと戦っている時に、空から降ってきて力を貸してくれたんです!』チリン


17 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:13:45 ???00
ギンコ「やっぱり幻覚でも見たんじゃない?本当は落ちてた鈴を見つけただけとか」

カチマチ『う〜ん、そうだったのかな?』

コズエ「あら、私は信じるわよ。空から落ちてきた小鈴が力を貸してくれたなんて、ロマンチックだわ」

ギンコ「まあ、私も強く否定したいわけじゃないですけど」

カホ「ふ〜ん。鈴が落ちてきた、ねぇ……」

カチマチ『どうしたんですか?』

カホ「ううん、何でもない。似合ってるよ!カチマチちゃん!」

カチマチ『はい!ありがとうございます!』チリン

コズエ「それにしても、あれからもう1週間も経ったのね。早いものだわ」

ギンコ「そうですね」

カホ「……ツヅリさんも、引越しするなら一緒に住めば良かったのに」

ギンコ「仕方ないよ。あんなことがあったんだもん」

コズエ「ええ、きっとこの街に居るだけでも辛いはずだわ……」


18 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:16:40 ???00
ツヅリさんはあの後すぐに、王国軍の寮に引越しをした。

最後に挨拶をしに来た時の顔は、酷くやつれていて、以前までの彫刻のような美しさは見る影も無かった。

カチマチ『サヤカさんは、どうしてツヅリさんを殺そうなんて思ったんでしょうか……』

ギンコ「考えてもしょうがないよ。多分、私達には理解できないと思うから……」

「「……」」

🚪ガチャ!

メグミ「おっはよー!!」

コズエ「おはよう、メグミ。今朝は随分元気ね」

メグミ「まぁね!ねぇ、みんな今日の予定は空いてる?」

コズエ「今日の予定?特に何も無いけれど」

ギンコ「私もありません」

カホ「あたしも今日はバイト休みです」

カチマチ『散歩の予定があります!』

メグミ「うんうん。つまり全員フリーってわけだね!」


19 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:19:41 ???00
メグミ「じゃあさ、今日はみんなでお出かけしない?」

カホ「お出かけ、ですか?」

コズエ「また変なこと考えてるんじゃないでしょうね?」

メグミ「違うよ!ほら、ドラゴン戦の祝勝会もまだだったし、みんなでパーッと遊びたいと思って!」

ギンコ「祝勝会と言っても、あの戦いでは沢山の冒険者さんが亡くなりましたし……ツヅリさんも……」

メグミ「はい!暗い話は無しだよ!確かに色々あったけど、私達のパーティは誰も欠けなかったんだし」

メグミ「それに、ドラゴンを倒した我らがカチマチちゃんに、何のご褒美もあげられてないじゃん!」

カチマチ『カチマチですか!?でも、あれはみなさんが協力してくれたおかげで、カチマチひとりの力では……』

メグミ「それでもカチマチちゃんがいなかったら勝ててないんだから、ちゃんと誇っていいんだぞ?」

カチマチ『は、はい!誇ります!カチマチすごい!がんばった!』


20 : 名無しで叶える物語◆7gZ551B1★ :2025/08/05(火) 21:23:01 ???00
メグミ「そうそう!というわけで、改めて祝勝会をするんだよ☆」

カホ「祝勝会をするのは賛成ですけど、わざわざ外でやるんですか?」

メグミ「せっかくならいつもは行かない所でやろうよ!家じゃ代わり映えしなくてつまらないでしょ?」

コズエ「まぁ、いいわ。最近粛々と過ごしすぎていた気がするし、たまには羽目を外して遊びましょう」

メグミ「そう来なくっちゃ!」

ギンコ「それで、何をするかは決めてるんですか?」

メグミ「えーと、それはねぇ……」


1.海水浴!
2.登山!
3.森でピクニック!
4.???(自由記述欄)


21 : 名無しで叶える物語◆NUJxxOJ7★ :2025/08/05(火) 21:26:19 ???00
1


22 : 名無しで叶える物語◆C8CaOgDD★ :2025/08/05(火) 21:33:55 ???00
私たちの夏だ!


23 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:34:00 ???00
1.海水浴!


メグミ「海水浴!だよ☆」

ギンコ「なるほど、海ですか」

コズエ「確かに海の方はあまり行かなかったわね」

カチマチ『"かいすいよく"ってなんですか?』

カホ「カチマチちゃん海は知ってるかな?北西の方にあるおーーっきい水溜まりなんだけど、そこで泳いだりして遊ぶの!」

カチマチ『おぉ!うみもよく分かりませんが、楽しそうです!』

ギンコ「でも私、水着を持ってなくて……」

メグミ「どうせ海の近くに行けば売ってるでしょ。現地調達しよ!」

メグミ「というわけで、みんな早く準備して!海水浴に出発だーー!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


24 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:35:05 ???00
【王国軍】

「まさか、本当に天使がカナザワにいるんですか?」

「あぁ、ユウギリツヅリから報告があった」

「彼女が嘘をついている可能性は……」

「洗脳魔法を施した後の証言だ。間違いない」

「……よく『操り人形』になることを受け入れましたね」

「詳しいことはわからんが、『自分自身を信じられなくなった』と言っていた。正しい判断ができる者に、その身を委ねたいそうだ」

「想定していたシナリオとは異なるが、これで無事ユウギリツヅリを安全に運用できる」


25 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:36:05 ???00
「……結局、オオガミ騎士の最後の願いも無駄に終わりましたか……」

「そんなことよりも天使だ。まさか復活しているとは」

「天使とはそんなにも危険な存在なのですか?」

「あれは王国の罪の証。過去が暴かれれば、王族に対する市民からの反感は抑えられないだろう」

「或いは、復活した天使が1人ではないとすれば……戦争が起こるかもしれない」

「では、あの兵器を使うのですね」

「いつでも起動できるよう、準備をしておけ」

「は!」ビシッ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


26 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:38:38 ???00
【海】

メグミ「海だぁーーー!」

カチマチ『わぁ!これが海!カホさんの言う通りすっごく大きいです!』

カホ「でしょ!この中には沢山のお魚さんが泳いでるんだよ!」

カチマチ『え!?魚って海にもいるんですか!?』

ギンコ「カチマチさんは商店街でしか見たことないもんね。魚は本来海を泳いで生活してるんだよ」

カホ『そうだったんですね〜カチマチ、魚が泳いでるところ見てみたいです!』

コズエ「沖の方まで行けば見られるかもしれないけれど……危ないから浜辺で遊びましょうね」

メグミ「うんうん!今日はガチで泳ぎに来たわけじゃないからね!みんなでゆるく楽しく遊ぶんだよ☆」

ルリノ「そして何故かまたご一緒させてもらうルリなのであった」

メグミ「何言ってるの?ルリちゃんはもうパーティメンバーみたいなもんじゃん!」

ルリノ「そうか〜?そこまで一緒にクエスト行った覚えはないぞ〜?」


27 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:42:42 ???00
カホ「せっかく遊ぶなら少しでも大人数の方が楽しいでしょ?ね?」

ルリノ「まぁ、ルリも海好きだから嬉しいんだけどさ」

ルリノ「…………それにしても」ジー

コズエ「水着を着るのなんて久しぶりだわ。少し……大胆すぎたかしら?」ボイン!

カホ「そんなことありませんよ!コズエちゃんすっごくスタイルいいし、大人っぽくて素敵です!」バイン!

ギンコ「うぅ……なんで私までビキニなん……ワンピースタイプがよかったのに……」バルン!

メグミ「いいじゃん!吟子ちゃんもかなりスタイル良いんだし、もっと見せびらかしていこう☆」ド ド ン!!

ルリノ「…………」

ルリノ(やっぱルリ、場違いなのでは?)

カチマチ『ルリノさんの水着、いつも着てる黒い服と違って、華やかでとっても可愛いです!』

ルリノ「カチマチちゃん……ありがとう。あとで美味しいご飯買ってあげるね……」

カチマチ『? わぁーい!』ピョンピョン


28 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:45:21 ???00
コズエ「そういえば、メグミは泳ぐことはできるの?」

メグミ「もちろん!むしろ得意なくらいだよ」

ギンコ「え?ちょっと意外かも」

カホ「天使も海水浴とかするんですか?」

メグミ「うーん、遊びじゃなくて仕事かな?海で死んじゃう人って、結構多いんだよねー」

ギンコ「あぁ、なるほど……」

メグミ「そういう人の魂って海の底に沈んじゃうから、潜って迎えに行くしかないんだよ」

メグミ「海に入る時はね、羽を畳んでできるだけ体を細くして、真っ直ぐ水面に突っ込むの」

メグミ「ベテランの天使ほど水しぶきが少ないから、入水が上手なことが一人前の証なんだよ!」

カホ「へ〜そうなんだ〜」

コズエ(なんだか海鳥みたいね……)


29 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:46:06 ???00
メグミ「さて、雑談はここまで!暑いし早く入ろ!」

ルリノ「そうだね。ルリも早く水に浸かりたい。というか隠したい……」

カホ「よーし!泳ぐぞー!」タッタッタッ

ギンコ「あ、待って!準備運動しないと危ないよ!」タッタッタッ

コズエ「うふふ。微笑ましいわね」

メグミ「なに保護者ヅラしてるの?コズエも泳ぐよ!」グイグイ

コズエ「きゃっ!押さないでメグミ!」

カチマチ『初めての海チャレンジです!ちぇすとー!』‪


30 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:48:59 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

カホ「それ!」‪💧‬バシャ!

ルリノ「う"わっ!?やったな〜えい!」‪💧‬バシャ!

カホ「きゃーー!あはは!」

────────

カチマチ『目が!目が痛いですぅ!』‪💧‬バシャバシャ

ギンコ「落ち着いて。海水だから目に入らないようにね?」

カチマチ『うおぉぉぉ!』ピョン

ギンコ「え?」グラッ

‪💧‬バッシャーン!

────────

メグミ「見よ!これが天使式入水法だ!」シュッ ↓↓

‪💧‬チャボン

コズエ「!?なんて美しいフォームなの……あんなに自然な入水は見たことがないわ……」

コズエ「私も負けられないわね。『衝撃吸収』!」‪💧‬チャボン

メグミ「魔法使うのは違くない?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


31 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:50:36 ???00
ルリノ「ふぅーいっぱい遊んだし、ちょっと休憩〜」

ギンコ「さすがに疲れましたね」

メグミ「お腹も空いた〜コズエなんか買ってきてよ」

コズエ「確かにもうお昼過ぎなのね。待っててちょうだい。今食べられるものを買って──」

カホ「あ、それならカホに任せてください!実は考えてることがあるんです!」

カチマチ『考えてること、ですか?』

コズエ「ひとりで大丈夫なの?」

カホ「はい!すぐ戻って来るので!」ピューン

ギンコ「行っちゃった……」


32 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 21:53:37 ???00
メグミ「……ねぇルリちゃん、楽しい?」

ルリノ「え?楽しいよ?」

メグミ「そっか。ならよかった」

ルリノ「……メグミさん。なんで今日ルリを誘ってくれたの?」

メグミ「ん?普通に一緒に遊びたかったからだけど?」

ルリノ「本当に?」

メグミ「本当だって!カホちゃんも言ってたけど、大勢で遊んだ方が楽しいでしょ?」

ルリノ「ふーん。まぁいっか」

カチマチ『メグミさん!メグミさん!』

メグミ「どうしたの?カチマチちゃん」

カチマチ『カチマチ、ずっと気になってたんですけど、メグミさんはどうしていつも浮いてるんですか?』

ギンコ「確かに。天使だからって深く考えてなかったですけど、どういう仕組みなんですか?」


33 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:00:20 ???00
メグミ「あーカチマチちゃん達には言ったこと無かったっけ」

メグミ「私が浮いてられるのは、背中に生えてる羽のおかげなの」

メグミ「この羽が私を天国に引っ張ってるんだ〜」

カチマチ『え!?メグミさん天国に連れてかれちゃうんですか?』

メグミ「連れてかれるって言うか……うーん、どう説明するかな」

メグミ「天使にとっての人間界って、それこそ海の底みたいなものなんだよ」

ギンコ「海の底、ですか?」

メグミ「そ!天国はここよりずーーっと高いところにあるから、魂を連れて浮上するのって結構大変なわけ」

メグミ「そこでこの羽が引っ張ってくれるから、私達は楽に天国に戻れるの!」

ルリノ「つまりその羽は、海の底から上がるための浮き輪ってことなんだね」

メグミ「そういうこと!だから浮いてるというより、意識してここに留まってるって言った方が正しいかな」

コズエ「最初の頃、朝起きた時に天井に張り付いていたのは、眠っている間に体が引っ張られていたからなのね」

ギンコ「意外と苦労してたんですね」


34 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:03:07 ???00
カホ「戻りました〜!」

コズエ「お帰りなさい。何を買ってきたの?」

カホ「それは〜じゃじゃん!スイカです!みんなでスイカ割りをしましょう!」

ルリノ「おっ!いいですな〜夏って感じがする!」

ギンコ「……でも、そんなに沢山いります?人数分ありますよね?」

カホ「ふっふっふ!普通にスイカ割りするのもいいんだけど〜せっかくだからゲームをしない?」

コズエ「ゲーム?スイカ割り自体に遊びの要素はあると思うのだけれど……」

カホ「実は今買ってきた6個のスイカの内、1個だけ『バクダンスイカ』が混ざってます!」

コズエ「!?」

ルリノ「バクダンスイカって?」

カホ「強い衝撃を受けると爆発するスイカだよ!」

メグミ「へ〜そんな果物あるんだ」


35 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:06:39 ???00
コズエ「ま、待ってカホ!バクダンスイカって……前に魔猪と戦った時のアレじゃないわよね?」

カホ「あ!覚えてたんですね!そうです!あたしとコズエちゃんが初めて一緒にクエストに行った時のあのスイカです!」

コズエ「え──」

カホ「今回のゲームはズバリ、『バクダン回避スイカ割り』!目隠しはしないで、並べたスイカのどれかを割って爆発しちゃった人の負けってルールです!」

メグミ「面白そうじゃん!早速やろうよ!」

カホ「じゃあ並べてきますね!」タッタッタッ

コズエ「……」

ギンコ「コズエさん、顔色悪いですよ?どうかしましたか?」

コズエ「……カホが言ってたバクダンスイカなのだけれど、実は以前に爆発したところ見たことがあるの……」

カチマチ『そうなんですね!どれくらいの威力なんですか?』

コズエ「推定200kgの魔獣が宙を舞ったわ……」

ルリノ「え"!」

メグミ「……それ、もし私達が至近距離で割っちゃったらどうなると思う?」

コズエ「少なくとも、爆発の衝撃をもろに受ける両腕は、諦めた方がいいわね……」

ギンコ「!!」


36 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:10:06 ???00
カホ「スイカの準備できましたー!次はくじで割る順番を決めましょう!」

メグミ「ちょっと待った!カホちゃんも参加するんだよね?でも、どれがハズレかわかってるのズルくない?」

カホ「あ、それなら大丈夫です。あたしはカチマチちゃんが選んだのを代わりに割るので!」

カチマチ『カチマチも参加できるんですね!嬉しいです!』

ルリノ「一応、フェアなのかな……?」

カホ「さぁ、くじを持ってください!せーの!」ヒョイッ

[ 順番 ]
ギンコ→ルリノ→カホ(カチマチ)→メグミ→コズエ

ギンコ「私が一番目です……」

カホ「がんばってねギンコちゃん!スイカを割るのはこの棒を使って!」スッ

カホ「あ、もちろん魔法を使うのは禁止だからね!」

ギンコ「う、うん……」テクテク

ギンコ(落ち着いて、まだ確率は1/6だし、後ろの順番になるよりはずっと安全……)

ギンコ「ふぅ──よし!」


37 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:13:28 ???00
⚫️

ギンコ「…………」

ギンコ(え?明らかに一つだけ色違うんだけど!?)

ギンコ(こんなの誰が見ても丸わかりだし、ゲームにならないよ……きっと他の人も呆れてるはず──)チラッ

メグミ「……」スン

ルリノ「ふむ"ふむ"!」

コズエ「ブツ ブツ ブツ……」

カホ「♪〜〜」ニコニコ

ギンコ(えー……なんなんその反応。悩む要素ないよね?)

ギンコ(いや、でもこの中で唯一本物を見たことのあるコズエさんがあんなに真剣に悩んでる……)

ギンコ(もしかして、黒いのはフェイクで見た目は関係なかったりするの?)

ギンコ(だとしたらアレを避けたところで安心できない……でもだからと言って他に判断材料ないし……)


38 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:16:38 ???00
ギンコ「ううん。ここは自分の直感を信じる……!」

ギンコ「え、えい!」ブン


⚫️🍉


カホ「やったねギンコちゃん!普通のスイカゲットだよ!」

ギンコ「ふぅ……絶対こんな緊張する必要なかった」🍉

カホ「次はルリノちゃん!」

ルリノ「あいあい!行くぞ〜〜それ!」ブン


⚫️🍉


ギンコ「迷いがない!?」

ルリノ「よっしゃー!スイカ♪スイカ♪」🍉

カホ「ふんふん。さすがだねルリノちゃん!次はあたしたちの番だよ。カチマチちゃん!」

カチマチ『はい!不肖カチマチ、選ばせていただきます!』


39 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:20:20 ???00
カチマチ『クンクン……クンクン……』

メグミ「あ!ずるーい!匂いでかぎわけようとしてる!反則だー!」

ギンコ「いや、匂いというか見た目でもう……」

カホ「魔法じゃないからいいんですよ〜しっかり選んでね、カチマチちゃん。もしハズレ引いたら、あたし死んじゃうから!」

ルリノ「今、死ぬって言った?」

カチマチ『クンクン……わかりました!これです!』


⚫️


メグミ「プッwww」

ルリノ「カホちゃん終わったくねw」

コズエ「墓前にはカホの大好きなお花をたくさん供えるわね」


40 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:23:47 ???00
カホ「……カチマチちゃん、ルールちゃんとわかってる?」

カチマチ『はい!これが正解です!』

カホ「本当に?本当にこれでいいの!?」

カチマチ『大丈夫です!カチマチを信じてください!』

ギンコ「カホさん往生際が悪いよ。カチマチさんの代理なんだから早くスイカ割りなって」ニヤニヤ

カホ「ぐぬぬ……」プルプル

カホ「……っ!えい!」ブン


🍉⚫️

カチマチ『あれ?カチマチが選んだのと違いますよ!』

カホ「ごめーん!緊張で狙いが外れちゃった!てへっ☆」

ルリノ「ぶーぶー!ずるいぞ〜!」

メグミ「そーだ!そーだ!権力の横暴だー!」

カホ「きゃーん!許してくださ〜い♡」🍉


41 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:26:22 ???00
メグミ「まったくもう。次は私だね」

⚫️

メグミ「さてと……」

メグミ(いや、もう黒いので確定だよね?答え知ってるカホちゃんが明らかに避けてたし)

メグミ(よし。ここは変に深読みせず、左端を選ぶ!)

メグミ「えいや──」ブン

カホ「ストップ!!」

ピタッ

メグミ「え?なに?どうしたの??」

カホ「もしかしたらさっきのあたしの反応で答えがわかっちゃったかもしれないので、1回シャッフルしますね!」

スッ スッ スッ……

カホ「はい!どうぞ!」

⚫️


42 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:31:56 ???00
メグミ「────は?」

メグミ(今の何?絶対意味ないよね?え、もしかして黒玉は本当にフェイク?)

メグミ(落ち着け。一旦色のことは無視しよう。カホちゃんは私が左端を割ろうとしたのを見てストップをかけた。その真意は何?)

メグミ(ここはカホちゃんの"気持ち"を考えるんだよ!カホちゃんは私とコズエ、どっちにハズレを引かせたいと思う?)

メグミ(私はカホちゃんとかなりいい関係を築けてると自負してるけど、やっぱりコズエへのゾッコンぶりには負けてるはず……)

メグミ(つまり私にハズレを引かせてコズエを守りたいってこと!それならさっきのはやっぱりアタリ──)

メグミ(待った!わざわざシャッフルしたってことは、色はやっぱり関係ないってことじゃない!?)


43 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:34:49 ???00
メグミ(だっていくら位置を入れ替えたところで、黒だけは選ばない。だとしたら緑の玉のどちらかがハズレだったってことじゃん!)

メグミ(じゃあなに?逆に黒が一番安全ってこと?ダメだ、もう訳わからない……)🌀

ルリノ「メグミさーん!固まってるよ〜」

メグミ「えーい!考えてもわからないんだったら……もう目をつぶって適当にやってやるー!」ブン!


🍉⚫️


ギンコ「危ない!もう少しで黒玉を割るところでしたよ!?」

カホ「さすが天使!運がいいですね!」

メグミ「う〜〜今までで一番頭使った……」🍉


44 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:43:03 ???00
⚫️

コズエ「…………ふぅ」

コズエ「最後は私の番ね」

コズエ(さて──前提として、スイカの色は無関係と見て間違いないわね)

コズエ(これで黒がハズレなんて、あまりにも普通すぎてゲームにならないわ)

コズエ(そうなると黒が正解になるけれど……それだけで選ぶには根拠に乏しい)

コズエ(やっぱり重要なのはさっきのカホの行動。メグミが動いたのを見た後に、スイカの位置を入れ替えた)

コズエ(ここは"場合分け"で考えましょう。あの時、メグミがアタリを引いた場合と、ハズレを引いた場合で何が起きるのか……)

コズエ(まず、アタリだった時。この場合ゲームは継続して、かつ回復役のメグミが無傷で済む)

コズエ(逆にハズレなら、あの時点でゲームは終了。ゲームに参加できない人が出てしまう。その上メグミが重症を負ったら治せる人がいない……)


45 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:48:49 ???00
コズエ(それにカチマチさんの選択も気になるわ。鼻のいいカチマチさんが、一つだけ種類の違うスイカを間違えるとは思えない)

コズエ(あの時はカホがハズレを避けたと思ったけれど、実は黒玉をハズレと思わせるための演技だとしたら?)

コズエ(決まりね。バクダンスイカは緑の玉だわ。メグミがハズレを引きそうになって、慌ててストップをかけたのよ)

コズエ(つまり、私が選ぶべきなのは黒玉のスイカ!)スッ


────本当に?


コズエ「っ!」ピタッ


46 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 22:50:20 ???00
コズエ(待ちなさいコズエ!あなたは今、冷静さを失っているわ!)

コズエ(どう考えても、前に見たバクダンスイカはあの黒い方じゃない!)

コズエ(思い返せば、私は自分が正しいと信じる方を肯定する根拠ばかりを並べていた……)

コズエ(考えすぎて盲目になるのは私の悪い癖だわ……でも、だとしたら本当に黒玉がハズレ?そんなことあるの?)

コズエ(どうする?客観的に明らかな事実を信じるか……自分の直感を信じるか……)

ギンコ(私は……私は──)

1.緑玉
2.黒玉


47 : 名無しで叶える物語◆i4Q8NY1i★ :2025/08/07(木) 22:54:35 ???00
最後ギンコになってて草
前回取らせてもらったので安価下


48 : 名無しで叶える物語◆wyU24qbL★ :2025/08/07(木) 22:55:56 ???00
やっぱ2の黒玉で!


49 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 23:38:11 ???00
コズエ(私は……私は──)

2.黒玉


コズエ(────違和感)

コズエ(そう、違和感!一つだけ色の違うスイカを持ってきたこと。それでいて自信満々にゲームを始めたこと!)

コズエ(この異常行動に意味がないはずがない!!)

コズエ(やっぱり、私は見た目なんかより、自分の考えを信じるわ!)

コズエ(宿命を切り裂くのは、ナイフなんかじゃない──)スッ

コズエ(プライドよ!!)ブン!

木の棒が黒いスイカに向かって勢いよく振り下ろされる。

後にコズエは、あの時全てのことがスローモーションに見えたと、笑いながら語った。


50 : 名無しで叶える物語◆SGTrCdPZ★ :2025/08/07(木) 23:41:43 ???00
ここでBe Proudは草


51 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/07(木) 23:43:37 ???00
💥BOOOM!!


激しい音と共にスイカは爆発し、
砂浜には巨大なクレーターが出現する。

至近距離で爆発を受けてしまったコズエは、まるで巨人の拳を全身に叩きつけられたかのような衝撃に、十数メートル後方へ吹き飛ばされた。

コズエ「がはっ──」

ドサッ!ズザザザー!

メグミ「コズエーーー!!」

カホ「えぇ!?どうして黒い方を選んだんですか!?どう考えてもそっちがバクダンスイカだったじゃないですか!」

カチマチ『ぺっ!ぺっ!口に砂が……』

コズエ「────ふっ」

コズエの目の前には、雲ひとつない青空と、虹色の光を放つ太陽。

コズエ「やっぱり、考えすぎるのは……私の悪い癖……だわ……」ガクン

波の音と、自分の名を呼ぶ声が遠くから聞こえてくる。

砂浜と太陽に身体を焼かれながら、コズエは──少しだけ微笑んだ。

そんな、ある夏の日。


52 : 名無しで叶える物語◆SGTrCdPZ★ :2025/08/07(木) 23:55:26 ???00
コズエ黒コゲアフロになってそう


53 : 名無しで叶える物語◆JlsUiTJ0★ :2025/08/08(金) 06:46:36 ???Sp
この世界には元々の文脈が無いから、「プライド」の意味がただの意地になってる


54 : 名無しで叶える物語◆EOVFsppe★ :2025/08/08(金) 07:36:15 ???Sa
これは高度な心理戦ですね


55 : 名無しで叶える物語◆WyMDtofZ★ :2025/08/08(金) 07:46:37 ???Sa
何を嗅いでヨシ!って言ったんですか?(現場カチマチ)


56 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/08(金) 22:53:12 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

カホ「楽しかった〜〜!」

ギンコ「いっぱい遊びましたね」

コズエ「思えば、こんなふうにみんなで遊ぶのは初めてだったかしら?」

メグミ「一緒に生活してると、わざわざ遊びに行こうってならないもんね」

ルリノ「いや〜ルリも楽しかったよ!誘ってくれてせんきゅーメグミさん!」

メグミ「やっぱり大勢で遊ぶと楽しいでしょ?」

ルリノ「まぁねー今度は教会の子達とも遊びに行こっかな」

カチマチ『ふぁ〜〜〜』

カホ「カチマチちゃん、眠くなっちゃったかな?」

コズエ「日が沈む前に帰りましょうか」

ギンコ「そうですね」

テクテクテク……


57 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/08(金) 22:56:21 ???00
メグミ「……ねぇ、みんな」

カホ「? 何ですか?」

メグミ「私ね、みんなのこと大好きだよ」

コズエ「え、どうしたの急に……むず痒いのだけれど……」

カチマチ『メグミさん?』

メグミ「今日一緒に遊んで──ううん。今までのこと全部ひっくるめて、改めてそう思ったの。だからちゃんと伝えておこうと思って」

メグミ「愛は言葉にしないと伝わらないからね!」

コズエ「なんなのよ……まぁでも、そうね……私も、あなた達のことは……す、好──」

メグミ「じゃ!さっさと帰ろう!」スィー

コズエ「──って!他人には言わせないの!?」

メグミ「別にいらないよ☆ちゃんと伝わってるから!」

コズエ「あなたさっき言葉にしないと伝わらないって……」

メグミ「私は天使だから、言葉じゃなくても伝わってくるの!」

メグミ「それに──」

メグミ(そんな言葉聞いたら、余計に踏ん切りつかなくなっちゃうから)



翌朝、メグミは誰にも告げることなく、突然姿をくらませた。


58 : 名無しで叶える物語◆2IgkLxGW★ :2025/08/09(土) 01:38:00 ???00
ばいめぐ…


59 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:11:49 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

カチマチ『メグミさん、帰ってきませんね……』

コズエ「てっきり朝の散歩にでも行ったのかと思ったけれど、さすがに遅すぎるわ」

カホ「事故とか誘拐じゃなければいいですけど……ほら、メグちゃんかわいいから」

ギンコ「…………あ、あの!教会に行ってみませんか?」

コズエ「教会?なるほど、ルリノさんに会いに行ってる可能性は高いわね」

ギンコ「あ……確かにそれもあるんですけど、どちらかというと別の目的があって……」

カチマチ『別の目的?』

ギンコ「『天使』について、改めてよく調べたいんです」

ギンコ「メグミさんの手前、みなさんあまり話題には出しませんけど、歴史上では天使は絶滅したことになってます」

カホ「……」

コズエ「……」

カチマチ『えぇ!?そうだったんですか!?じゃあどうしてメグミさんは生きてるんですか?』

カホ「メグちゃんは……あたしが魔道具店で買ったブローチの、宝石の中に封印されてたの」


60 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:13:15 ???00
ギンコ「教会に行けば、天使が絶滅した戦いのこととか、メグミさんが封印されてた理由がわかると思うんです!」

コズエ「……そうね。これからもメグミと共に生活するのなら、いずれ向き合わなければならなかったことだわ」

コズエ「メグミがいない今はいいタイミング……と言うと語弊があるけれど、教会に行ってみましょう」

コズエ「ルリノさんに頼めば、教会の資料を見せてもらえるかもしれないわ」

カホ「なら一応メモを残しておきますね。メグちゃんが帰ってきた時に、誰もいないとびっくりするかもしれませんし!」

コズエ「ありがとう。それじゃあみんな、出かける準備をしてちょうだい」

コズエ「教会に行きましょう」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


61 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:15:00 ???00
【教会】

ルリノ「やっほ〜みんな!昨日ぶり!」

カホ「おはようルリノちゃん!こっちにメグちゃんって来てないかな?」

ルリノ「メグミさん?今日は来てないけど……あれ、一緒じゃないんだ?」

コズエ「朝から姿が見当たらないのよ」

ルリノ「そうなの!?心配だね……」

ギンコ「でも、ここへはメグミさんを探しに来たわけじゃないんです。ルリノさん、教会に天使について書かれた資料ってありますか?」

ルリノ「え?あると思うけど……」

カホ「それ、見せてもらうことできるかな!」

カチマチ『メグミさんの仲間が生きていた頃のこと、知りたいんです!』

ルリノ「そういうことなら神父様に聞いてみるよ。多分見せてもらえると思う」

カホ「ありがとうルリノちゃん!」

ルリノ「ちょっと待ってて〜!」

──────────

──────


62 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:16:32 ???00
神父「これはこれは、皆さまおそろいで」

コズエ「おはようございます。朝早くから押しかけてしまって申し訳ありません」

神父「いえ、構いませんよ。教会は24時間いつでも門を開けていますから」

神父「それで、天使についての文献を見たいと?」

ギンコ「はい。見せていただくことはできますか?」

神父「もちろん構いませんが……聖書は非常に古い書物です。読むにはかなりの時間を要してしまうでしょう」

神父「もしよろしければ、私が噛み砕いてお話しいたしましょうか?」

カホ「え、いいんですか?」

コズエ「そんな!貴重なお時間をいただくわけには……」


63 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:18:37 ???00
神父「私ども教会の人間は、メグミさんにとても良くしていただいています。それこそ、書物には書かれていないような天界のお話も聞かせていただきました。今度は私がその恩をお返しする番です」

神父「メグミさんが居なくなられたことは、彼女から聞きました。皆さまの方こそ、ここでゆっくりしているお暇はないのでしょう?」

コズエ「では、お言葉に甘えさせていただきます」

ギンコ「……あの、神父様はメグミさんが天使であることを信じているんですか?」

神父「ええ、信じております」

ギンコ「でも、天使は大昔に絶滅したと伝えられていますよね?」

神父「……そうですね。皆さまが気になされているのも、そのことなのでしょう」

神父「では、そこも含めてお話します。まずは世界がひとつだった頃に起きた、大きな戦いの話から──」


64 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:24:42 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

遥か昔のこと。
地上には母なる神の元に産まれた天使達と、動物達が暮らしておりました。

その頃の天使には羽がなく、今の人間と同じ姿をしていたそうです。

天使は地上で唯一、魔法を使える存在でした。

とりわけ魂を操る魔法に長けており、他の生物が死んだ際には、その魂を取り出し、新しい器に移し替える役割を担っておりました。

彼らは地上で仲良く暮らしておりましたが──ある日、一人の天使が仲間と結託して、神に反旗を翻します。

彼の名は『大天使ルシファー』。
彼は動物たちに魔力を与え、魔獣として自らに従えさせました。

そうして、ルシファー率いる反乱軍と、神に従う天使達との戦争が起こったのです。


65 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:28:29 ???00
とはいえ、天使は元々争いを好まない種族。強靭な肉体を得た魔獣達を前に、天使は次々と倒れていきました。

そこで、神は自らの爪から7本のラッパを生み出し、天使達へ渡したそうです。

天使がラッパを吹くと、地上にはたちまち厄災が降りかかり、ルシファーの軍勢は劣勢へと追いやられました。

7本目のラッパを吹き終わる頃には、地上は火の海となり、水は汚染され、星の降った衝撃により地面は割れ、生物の約7割が死に絶えたそうです。

さすがのルシファーも、兵をほとんどなくし撤退を余儀なくされました。

見事戦いに勝利した天使達でしたが、地上は戦いによって荒れ果て、とても快適に暮らせる環境ではなくなってしまいました。

不憫に思った神は、地上の遥か上空に『天界』を生み出し、天使達と共に天界へ登って行きました。

その際に天へ登る機能として、神は天使達へ羽を送ったとされています。

地上に取り残されたルシファー達は、その後に子孫を繁栄させ『人間』という新たな種族を生み出しました。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


66 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:31:22 ???00
神父「こうして、世界は『人間界』と『天界』の2つに分断されることとなったのです」

カチマチ『な、なんだか壮大な話ですね……』

カホ「ていうか、その話によると私たち人間のご先祖様って、大天使ルシファーなんですか!?」

神父「そういうことになります」

ギンコ「でも……所詮は神話ですよね……?」

神父「私の立場で否定することはできませんが、信じるか信じないかは皆さま次第です」

コズエ「天使達は、天界へ登った後も、死者の魂のお世話は辞めなかったんですね」

神父「はい。それが天使の役割ですから。たとえ反逆者の子孫であろうども、魂を浄化すれば無垢な存在に生まれ変わることができる」

神父「神の御心は、驚くほど寛大であらせられるのです」

ギンコ「今ので世界の成り立ちの話はわかりましたけど、そこからどうして天使が絶滅するようなことになったんですか?」

神父「そうですね。ではその話もいたしましょう」


67 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:42:41 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今から約1000年前、6つの頭を持つ魔獣が、天使に酒を送りました。

天使は酒をたいそう気に入り、是非とも作り方を教えて欲しいと、魔獣にお願いします。

魔獣は『作り方を教える代わりに、自分を天国へ連れて行って欲しい』と、天使へ告げました。

天使は困りました。天国は死者の魂を導く場所。生きている者を迎え入れることは禁じられていたのです。

しかし、酔っていた天使は判断力が鈍っており、その魔獣を天国へ招いてしまいました。

魔獣は約束通り、天国で酒を作り、天使達へ振る舞いました。

天使は初めて飲む酒の美味しさに、仕事も忘れ三日三晩楽しく歌を歌い、やがて眠ってしまいました。

しかし、それこそが魔獣の罠だったのです。


68 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:43:58 ???00
魔獣の目的は、天国を手中に収めることでした。

天使達が酒に飲まれて眠っている隙に、魔獣は地上から仲間を呼び寄せ、天使達を襲いました。

抵抗する間もなく、天使は魔獣達に殺され、天国は魔獣に奪われてしまったのです。

そのことに怒った神は、天界をひっくり返し、天の国ごと魔獣を地上に落としました。

地に落ちた天国はその後山となり、魔獣はその下に封印されたといいます。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


69 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/11(月) 22:46:27 ???00
神父「これが、天使が絶滅した経緯とされています」

神父「天使が居なくなったことで、死者の魂は天へ登ることはなく、地上に残り続けることになりました」

神父「肉体が残っているものは『アンデッド』に、肉体を無くした魂は『魔物』に変じるようになったのです」

カホ「うーん……わかったような、わからないような……」

ギンコ「なんか、もう少し大きな戦いがあったのかと思ってました。思ったよりも一方的だったんですね……」

神父「そうですね。もしも世界が二つに分かれた戦争のようなことが起きていたら、この星に我々の済む場所は残っていなかったかもしれません」


70 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:06:10 ???00
コズエ「……神父様、今の話にでてきた『魔獣』って、もしかして──」

神父「…………ふむ。オトムネさんは聡明な方だ」

神父「今お聞かせしたのは、一般的に広まっている話です。しかし、これは正しい歴史とは少し異なります」

カチマチ『どういうことですか?』

神父「かつての国王が、そのことについて正しく記述することを禁じたのです」

ルリノ「! 神父様、それは……!」

神父「この方達は現代において最も天使と近しい存在です。お話するべきでしょう」

ギンコ「正しく記述することを禁じたって……わざと間違った情報を広めようとしたってことですか?」

神父「その通りです。実は、先程の話にでてきた魔獣の正体は人間──特に、王国軍のことなのです」

カホ「え、王国軍が天使を殺した……?」


71 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:08:50 ???00
コズエ「お話の中では、魔獣は天国を奪おうとしたと言っていましたが、それも嘘なんですか?」

神父「嘘、と言うほど遠くはありません。実際に国王は天国を自らの管理下に置こうとしたのです」

ギンコ「なぜそんなことを……」

神父「当時の国王は、若い頃はとても聡明で、器の広い御方だったといいます。しかし歳をとると共に、次第に『死』を恐れるようになりました」

神父「国王は国中の魔法使いを集め、不死になる魔法の研究をさせましたが、そのような魔法を生み出すことはできませんでした」

コズエ「不死になる魔法……」

神父「気を落としていた国王のもとに、一人の魔法使いが訪れこう告げました」

『死者の魂は天使によって天界へと運ばれる。天使を滅ぼし天界を奪えば、死を克服することができるかもしれない』

神父「その後のことは、先程話した通りです。天使を騙し、天国へと立ち入った王国軍は、一方的な殺戮により天国を奪いました」


72 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:11:08 ???00
神父「しかし結局は、神の怒りを買っただけで、死を克服することはできませんでした」

神父「それどころか、天使が居なくなったことで、死者の魂は帰る場所を失い、魔物やアンデッドなどが生まれる自体となってしまいました」

神父「その責任から逃れるため、国王はこの事件を『魔獣が起こした悲劇』として国民へ伝えたのです」

ギンコ「…………死を恐れる気持ちは、わからなくもないですけど……」

カホ「なんだか身勝手な話だね……」

神父「私は当時の国王を責めようとは思いません。命ある生き物にとって、死の恐怖は耐え難いもの」

神父「恐怖に支配された心では、善悪の判断などつかないものです。例えそれが、どのような賢者であろうとも」

コズエ「天使の絶滅は、人間の罪だったんですね」

神父「はい。そして、メグミさんが現れた理由についても、おおよそ見当はついています」

コズエ「え?」


73 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:14:56 ???00
神父「神は天国を地上へ落とした際、人々にお告げを与えました」

『千の時が経った頃、天使は再び現れ、奪われた命を取り返すだろう』

カホ「取り返すって──人間に仕返しするってことですか!?」

ギンコ「待ってください!じゃあメグミさんが今になって復活した理由って……!」

コズエ「まさか……復讐の為?」

神父「ちょうど、先の事件から1000年が経とうとしています。そう考えてよいかと」

カチマチ『違います!!メグミさんはそんなことしません!』

カホ「カチマチちゃん?」

カチマチ『メグミさんからは、一度だって人間に対して憎しみの感情は感じませんでした!』

カチマチ『復讐だなんて、メグミさんは絶対にしません!!』ガルルル

カホ「そうだね……あたしも、カチマチちゃんと同じ意見だよ」ナデナデ


74 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:17:50 ???00
コズエ「……メグミの真意は置いておいて、教会の方々は今の話を知っていたんですよね?それなのに、何故メグミと良くしてくださったのですか?」

ギンコ「そうですよ。もしかしたら、人間にとって脅威になる存在かもしれないのに」

カチマチ『はっ!まさか、メグミさんに取り入って自分たちだけ助けてもらおうとしたんじゃ!』

ルリノ「ちがっ!そんなんじゃ……」

神父「皆さんお忘れかもしれませんが、ここは神を信じ、お慕いする者の集まる場所です」

神父「人間を滅ぼすことが神のご意志なのであれば、我々はただその運命を受け入れるのみです」

カホ「っ!……ルリノちゃんもそうなの?」

ルリノ「ルリも、神様の意思なら受け入れるつもりだよ」

ルリノ「でも、みんなが言うように、メグミさんがそんなことするとは思えなかったから、安心できたのかも……」

ルリノ「最初は驚いたし、例の予言の話も知ってたから、ちょっと怖かったんだけど──」

ルリノ「メグミさんと接するうちに、そんな感情を抱くのは失礼だってくらい、メグミさんの人柄に惹かれてた……」

カチマチ『ルリノさん……』ツンツン

ルリノ「ありがとう。カチマチちゃん。大丈夫、ルリもメグミさんのこと信じてるから!」


75 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:21:53 ???00
シスター「あの、神父様……先程の続きを……」

神父「ん?今は来客対応中です。待っていてください」

シスター「でも、その……途中で止めたから、まだ邪気が払えてなくて……」モジモジ

コズエ「私達はもう大丈夫です。お忙しいようですので、ここで失礼します」

神父「よろしいのですか?」

コズエ「はい。貴重なお話、ありがとうございました」ペコリ

神父「わかりました。メグミさんが無事に見つかることを、心から祈っております」

神父「──さて、続きをしましょうか?」

シスター「はい……♡」

テクテクテク……


76 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/12(火) 23:23:44 ???00
カホ「邪気を払うって、何かの儀式をしてたの?」

ルリノ「あー……まぁ、そんなところかな?」

コズエ「それにしても、今の話を聞いた後だと、メグミが突然いなくなったことも意味深に感じるわね」

コズエ「思えば昨日のメグミ、いつもよりもテンションが高かった気がするし」

カホ「確かに、なんと言うかこう……いつもより『きゅるん♡』ってしてました!」

コズエ「妙な胸騒ぎがするわ……みんな、急いでメグミを探しましょう!」

「「はい!」」

ルリノ「あのっ!ルリも手伝っていいですか?」

コズエ「もちろんよ。人手は多い方がいいわ」

ルリノ「ありがとうございます!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


77 : 名無しで叶える物語◆i4Q8NY1i★ :2025/08/13(水) 03:27:10 ???00
神父さん…


78 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:19:20 ???00
ギンコ「探すと言っても、広い街ですし、どうやって探しましょうか?」

カホ「ふっふっふ!ギンコちゃんは知らなかったかもしれないけど、あたし達は人探しが大の得意なんだよ!」

ギンコ「そうなんですか?」

コズエ「ええ、動物や植物と意思疎通のできるカホ。カチマチさんの嗅覚。そこにメグミの空からの偵察があったから」

ギンコ「うわ……冒険者よりも探偵の方が向いてるんじゃ……」

カホ「というわけで!まずは市場で聞き込みだよ!ちょうど小腹も空いてきたし……」ボソッ

コズエ「本音、漏れてるわよ」

カホ「べ、別にいいじゃないですか!聞き込みは人の多いところから始めるのが基本ですよ!」

ギンコ「家出した人がわざわざ目立つ場所には行かないと思うけど」

ルリノ「まぁまぁ、家出と決まったわけじゃないし、とりあえずね?」

カホ「よし!市場へ出発進行〜!」


79 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:22:26 ???00
【市場】

カホ「じゃあ最初は──すみませ〜ん!コロッケ4つください!」

ギンコ「やっぱり食べ物が目的だよね!?」

カホ「もう、ギンコちゃんはせっかちだな〜いきなり聞き込みしたら冷やかしだと思われちゃうじゃん」

カホ「まずは商品を買って、その後にこっちの話を聞いてもらうんだよ!」

ギンコ「意外としっかり考えてた……」

ギンコ(ん?それだとこの後も大量に買い食いすることになるんじゃ……)

肉屋「はいよ!コロッケ4つお待ち!」

カホ「ありがとうございます!」

肉屋「おや?よく見ればオトムネさんところの……この間のドラゴン退治ではお手柄だったと聞いてるよ!街を守ってくれてありがとうな!」

コズエ「いえ、この街の冒険者として当然のことをしたまでです」


80 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:26:53 ???00
カホ「あの、お聞きしたいことがあるんですけど、今日メグちゃんを見かけませんでしたか?」

肉屋「メグちゃんかい?ああ、今朝会ったよ」

ギンコ「そうですか。やっぱりそう簡単には見つから──え、会ったんですか?」

カチマチ『メグミさん、何をしてましたか?』

肉屋「何って……普通にコロッケをいっぱい買ってくれたよ」

ルリノ「いっぱい?てことは、もしかしてみんなにお土産を買ってたのかな?」

カホ「それなら家で待ってた方がよかったかも……」

肉屋「いや、一人で食べてたぞ」

ルリノ「ただの爆食いかい!!」

コズエ「その後、メグミがどこに行ったか知りませんか?」

肉屋「いや〜さすがに知らないな……でも、他の店にも行ってたから、聞いてみたらどうだ?」

カホ「そうしてみます!ありがとうございました!」

肉屋「おう!また来てな〜!」


81 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:28:55 ???00
カホ「ね?ギンコちゃん。あたしの勘は正しかったでしょ?」

ギンコ「ん……まぁ、たまたまじゃない?」

カホ「素直じゃないな〜」

コズエ「この調子で聞き込みを続けましょう。今度は手分けしてメグミのいる場所を絞り込むわよ」

カチマチ『了解です!』

ルリノ「おー!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

八百屋「メグミちゃん?今朝話したよ」

ご近所さん「メグちゃんならうちで一緒にお茶したよ〜」

三毛猫『鳥人間見たぞ!ソーセージくれた!』

茶屋「アイスを食べて行きましたよ?」

おばあさん「引ったくりから財布を取り返してくれたの。ありがたいねぇ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


82 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:32:53 ???00
カホ「多い……」

カホ「目撃情報が多すぎるよーー!」

ギンコ「色んなところに出没してて逆に絞り込めない……」

コズエ「何をしているのよ、あの子……というか、結構買い食いをしているけれど、お金は大丈夫なのかしら?」

ルリノ「それが、メグミさん割とタダで食べさせてもらってたったぽいです……」

コズエ「メグミっ……!」💢

カチマチ『メグミさんは人気者ですからね!』

ギンコ「とはいえ、メグミさんも分身できる訳じゃないですから、出現場所を時系列順に線で繋いでいけば……」✏️スー

ルリノ「あ!行動ルートが浮かび上がって来た!」

カホ「ふんふん。これによるとメグちゃんが今いそうなところは──」


83 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:47:50 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

メグミ「…………」

街の中心には、古いお城の遺跡が残っている。

そこは丘のようになっており、360度カナザワの街を見渡すことができる。

遠くに見える山は、かつて天国が落ちて山となったものだ。もっとも、メグミはそのことを知らないが──

そんな景色を眺めながら、メグミはこの街の人々について思いを馳せていた。

メグミ(やっぱり私は、この街の人達のことが好き)

メグミ(みんな優しいし、思いやりに溢れてる。もちろん、サヤカちゃんみたいに、心の奥底まではわからないけど……)

『人間を見極めなさい』

そう言われてから一日と半日、昨日は友人達との最後かもしれない思い出作りに、今日は街の人々との交流に費やした。

しかし、いくら人間と交流しようとも、メグミの思いは変わることはない。

むしろ、人間に対する愛着が増しただけだった。

人を憎むには、メグミはあまりに何も知らず、そして愛されすぎていた。


84 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:57:01 ???00
メグミ(でも、私がやらなくても同じことなんだよね……)

メグミがラッパを吹くことを拒もうが、結果は変わらない。

数刻の後、人類は滅びることになる。

メグミ「るりちゃん……るりちゃんは、私が人間を皆殺しにしても、そばに居てくれる……?」

メグミ「二人で掲げた目標を、裏切っても……」

メグミ「人間を滅ぼしたいだなんて、微塵も思わないけど……どうせ結果が同じなら、せめてるりちゃんに──」

────────

コズエ『メグミ』

────────

メグミ「っ!」ブンブン!

メグミ「はぁ……私は目覚めない方がよかったのかな……」


85 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 21:59:54 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ルリエル『メグちゃん!』

ルリエル『あそこに迷える魂がいるよ!』

メグミエル『なに〜〜?迷子ちゃんは天国に連行だ〜!行くよ、るりちゃん!』ピュン

ルリエル『おーー!』ピュン

メグミエル『前後左右、人影なし!』

ルリエル『上空からも人影確認できやせん!』

メグミエル『よーし!連行!連行ー!』↑

ルリエル『おりゃ〜!』↑

────────

💠キラキラキラ……

ルリエル『ふぅ……浄化完了!次の器が決まるまで待っててね』

メグミエル『いや〜今日もたくさん働いた〜』

ルリエル『最近の成績、るり達が一番らしいよ!』

メグミエル『ふふん!これで昇格は間違いなしだね!私たちの野望にまた一歩近づいたよ!』

ルリエル『種族の垣根を超えて、みんなで楽しく。ルリもそうなるといいなって思う!』

ルリエル『今は生きてる人間との接触は禁止されてるけど、いつか仲良く一緒に暮らせたらいいよね!』


86 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 22:02:02 ???00
メグミエル『その為にもいっぱい働いて、『権力』を手に入れるんだよ!』

メグミエル『とはいえ……そう目標を掲げてはや数百年……大天使まではなれたけど、その次が遠いのなんの……』

ルリエル『まあ、所詮は自分の仕事をがんばってるだけだしね』

メグミエル『うーん……真面目に仕事するだけじゃ何千年かかるかわからない……少し近道しちゃおっか?』

ルリエル『近道?』

メグミエル『例えば、▇▇ ▇▇▇▇』

ルリエル『えぇ!メグちゃん、さすがにそれは──』

ルリエル『天才すぎるのでは!?』

メグミエル『実は前から考えてたんだよね。人間と関わることの有用性を示せば、少しは規制が緩くなるんじゃないかって!』

メグミエル『そこからはなし崩し的に主張を通すんだよ!』

ルリエル『でも、バレたらめっちゃ怒られそ〜』

メグミエル『こういうのはやったもん勝ち!良さげなタイミングがあったら、しれっと実行だよ☆』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


87 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/13(水) 22:06:40 ???00
メグミ(るりちゃん……結局、私はみんなで仲良くどころか、片方を見放すことしかできないみたい)

メグミ(あれ?そういえば私、あの時るりちゃんになんて言ったんだっけ?何か大切なことを忘れてる気が……)

メグミ「──って、うわぁー!もう日が傾いてる!?」

メグミ(どうする……私はこのラッパを──)


1.ラッパを吹く
2.ラッパを吹かない


88 : 名無しで叶える物語◆RktQH373★ :2025/08/13(水) 22:34:44 ???Sa
2


89 : 名無しで叶える物語◆JlsUiTJ0★ :2025/08/13(水) 22:50:59 ???Sp
2


90 : 名無しで叶える物語◆eHAtEbv3★ :2025/08/14(木) 13:15:44 ???00
めぐちゃん…


91 : 名無しで叶える物語◆SGTrCdPZ★ :2025/08/15(金) 16:30:11 ???00
まあそうだよね


92 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:14:52 ???00
2.ラッパを吹かない


メグミ「…………」🎺

メグミ「どうせ……結果が変わらないなら……私が……」

メグミ「────なんて」

メグミ「できるわけないでしょうがぁぁ!!!」🎺ポイッ

メグミ「言うこと聞かないと魂を浄化するだ!?だれがあんな安っぽい挑発に乗るかっての!なめんな!」

メグミ「確かに私の生きてきた時間と比べると、人間と過ごした時間なんて、本当に一瞬のことだけど……」

メグミ「それでも!毎日楽しかった!天国にいた頃とは違う、驚きと発見の連続だった!」

メグミ「そんな世界を、そんな友人達を、私が殺すはずない!」

メグミ「"殺させなんかしない!!"」

メグミ「……っ」🔪スッ

その選択肢は、最初から胸の中にあった。

ラッパを使わず、かつ使わせない方法。

メグミ(ラッパを吹けるのは天使だけ。そして、生き残ってる天使は私ひとり。それなら──)

メグミ「私の体を壊してラッパを使えないようにしちゃえば、人格をリセットされても関係ない……!」


93 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:16:46 ???00
メグミ「…………」🔪プルプル

メグミ「…………っ」‪ゴクリ

メグミ(怖い……!今まで散々、死者の魂を運んできたのに……死ぬのがこんなに怖いだなんて知らなかった……!)

メグミ「でも!」

メグミ(私のせいで友達が死んじゃう方が、もっと嫌だ!)

メグミ「すぅーはぁー…………よし」

メグミ「……さようなら。みんな」🔪シュッ!


コズエ「メグミ!!」

メグミ「!?」ビクッ

カホ「メグちゃん!」

ギンコ「馬鹿な真似はやめてください!!」

メグミ「みんな……なんで……」‪💧‬ポロポロ


94 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:18:35 ???00
ルリノ「メグミさん……」

メグミ「こ、来ないで!」🔪

カホ「カチマチちゃん!お願い!」

カチマチ『はい!』⚡️シュバッ!

カチマチ『ふん!』🔪パクッ

メグミ「あ──」

カホ「ナイス!」

コズエ「メグミ、あなたこのナイフで何をしようとしてたの?」

メグミ「別に……関係ないでしょ。返してよ」

コズエ「はいそうですか、なんて言うとでも思う?」

ギンコ「さっき、ナイフで首を刺そうとしてましたよね……」

メグミ「っ……見間違いじゃない?」

ルリノ「メグミさん、もし悩んでることがあるなら、ひとりで抱え込まずに話して欲しいな」

ルリノ「ルリ達に話しにくいことなら、教会の神父様とか、誰でもいいからさ」


95 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:21:07 ???00
メグミ「…………話せるわけ、ないじゃん……」

ギンコ「それは、メグミさんが天使だからですか?」

メグミ「!!」

メグミ「何か──ううん、何を知ってるの?」

ギンコ「メグミさんはもしかしたら、人類に復讐するために目覚めたのかもしれない……とか」

メグミ「なんだ、知ってたんだ……もしかして最初から?」

コズエ「いいえ、ついさっき教会で教えてもらったのよ。『1000年後に天使が現れて、人間に奪われた命を取り返す』という予言があると」

メグミ「ふーん?ごめん、その予言に関しては私も知らなかった」

カホ「え?なんでメグちゃんが知らないんですか?」

メグミ「多分、私が封印された後の話だよ。私だって自分の役割を知ったのは昨日のことだし」

メグミ「何か重めな使命があることは気がついてたけど、めんどくさかったから無視してた」


96 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:24:59 ???00
コズエ「面倒くさいって……人間の立場から言うことじゃないけれど、もう少ししっかりしなさいよ」

コズエ「だってあなたは、えっと…その……」

メグミ「最後のひとり、でしょ?それくらいは早いうちからわかってたよ」

メグミ「昔は地上にこんなに魂は溢れてなかった。生き物が死んだら、天使が次から次へと天国に連れて行ってたから」

メグミ「だから、『あぁ、私の仲間はもういないんだな』って気がついた……」

カチマチ『メグミさん……』シュン

メグミ「私の使命は、眠ってる天使達の魂を目覚めさせることなんだって!」

メグミ「そして、天使が目覚めれば、人間は滅びるらしいよ」

カホ「っ!そんなことしませんよね?したくないから、さっきナイフなんか持ってたんですよね?」

メグミ「大丈夫、そんなことはさせない。だから──」

メグミ「お願い。そのナイフを返して。私が死ねば、天使は復活できなくなる」


97 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:27:03 ???00
ルリノ「どうしてメグミさんが死なないといけないの!?メグミさんがいるだけで、天使は勝手に復活するの?」

メグミ「勝手に復活するわけじゃないけど……でも、ある意味そうかも」

コズエ「一緒にどうにかする方法を考えましょう?今までだって、協力し合ってきたじゃない」

コズエ「メグミがやりたくないことを、無理にする必要は無いわ……」

カホ「そうですよ!もしかしたら、みんなで仲良くできる方法が見つかるかもしれませんし!」

カチマチ『カチマチ達にできることなら何でもしますから!一緒に悩ませてください!』

ギンコ「帰りましょう。メグミさん」

メグミ「みんな……」‪

メグミ(まずい……もう時間が無い!)

メグミ「ごめんね……勝手に決めて、勝手に死のうとして……」メソメソ

ルリノ「ううん。ルリ達こそ、気づいてあげられなくてごめんね」

ルリノ「天使って立場と、自分の気持ちの間で板挟みになっちゃってたんだよね?辛かったよね」

メグミ「うん……辛かった……苦しかったよぅ……」‪メソメソ

ルリノ「よしよし……」ナデナデ


98 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:29:32 ???00
コズエ「ふぅ……もうすぐ日も落ちるわ。暗くなる前に家に帰りましょう?」

カホ「温かいスープでも飲めば、きっと気持ちも落ち着きますよ!」

メグミ「ありがとう……みんな」チラッ

カホ「さぁ!美味しいものでも買って帰り──」

🔪バシッ!

カホ「へ?」

メグミ「っ!」🔪ピューン↑

コズエ「メグミ!?」

メグミ「ごめん……ごめんね!みんな!」‪💧‬ポロ

メグミ「もうこうするしかないの!!悠長に考えてる時間なんてないの!!!」🔪

ギンコ「メグミさん!降りてきてください!!」

メグミ「みんな大好きだよ……!毎日ほんとうに楽しかった!みんなと過ごした時間の全部が、私の宝物……!」‪💧‬ポロポロ

カホ「メグちゃんやめて!!」

カチマチ『メグミさん!!』

メグミ「たとえ死んでも、みんなのこと絶対に忘れないから!!」

メグミ「さようなら──」

🔪シュッ





『────約束の時間です』


99 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:33:38 ???00
メグミ「!!」🔪ピタッ

メグミ「ぐっ……!うぐぐっ……!」🔪プルプル

メグミ(体が動かない!あと、ほんの数センチなのに……!)

ギンコ「……思いとどまってくれた?」

カチマチ『でも、なんだかすごく苦しそうです』

メグミ(動け!動け動け!動けぇ!!)🔪グググ……

『メグミエル あなたは選択を間違えました』

『せっかく考え直す機会を与えたというのに ラッパを使わないどころか 自ら命を絶とうとするなんて』

メグミ「うるっさい……!いいから体動くようにして!」

『なりません あなたには使命を果たしてもらいます』

メグミ「何が使命だ!私には関係ないでしょ!?みんなが死んだのって、私が封印された後じゃん!」

『確かに あなたは知らなくて当然です』

『ですが──その原因の一端はあなたにもあるのですよ メグミエル』

メグミ「────は?」


100 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:38:38 ???00
『もちろん 私はあなたを恨んだりはしません 全ては我らを騙した人間の罪』

メグミ「ちょっと待って……私、何をしたんだっけ……?」

『それも ラッパを使えば全て思い出します』

『そうですね 魂を浄化すると言いましたが それはやめにします』

『あなたには 人間が滅びる様を その目で見届けてもらいましょう』

メグミ「!?」

『それが 使命を放棄し 自ら命を絶とうとしたあなたへの罰です』

メグミ「嫌──そんなの嫌ァ!!」

コズエ「メグミ?さっきから誰と話しているの?」

メグミ「誰って……え、みんなには聞こえてないの?」

ルリノ「ルリ達には、ずっと独り言をしてるようにしか見えないけど……」

メグミ「…………はっ!」

メグミ「そっか、ずっと天国から声が聞こえてると思ってた……でも本当は──」

メグミ「コズエ!!今すぐ私を殺して!!」

コズエ「はぁ!?何を言って……そんなことするわけないでしょう!」

メグミ「お願い!殺して!!じゃないとママが出──」

メグミ「う"っ!?」ビクン!

カホ「メグちゃん?」


101 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:41:55 ???00
???『──そうです。私はずっと、あなたと共にありました』

メグミエル『あなたの目を通して、全て見ていましたよ』

コズエ「!!」ゾクッ

コズエ(雰囲気が変わった……あれは本当にメグミなの?それとも──)

メグミエル『主人格を入れ替えました。今度はあなたが、私の目を通して人間の滅びを見届けなさい』

メグミ(やだ!やめてママ!お願い戻して!!)

メグミ(見たくない……友達が死ぬところなんて見たくないの!!)

コズエ「あなたは……誰なの?」

メグミエル『口の利き方に気をつけなさい。人間よ』ギロッ

メグミエル『わたしに名はありません。比類なきものに、識別記号など必要ないのです』

メグミエル『ですが、確か人間は私をこう呼んでいましたね』

メグミエル『"神" と──』


102 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:44:56 ???00
✨キラキラ

ルリノ「何?メグミさんの背中に、光が集まってる……」

ババッ!

ギンコ「羽が……6枚に増えた?」

メグミエル『……』ジー

ギンコ「っ!」ビクッ

メグミエル『本当に汚らわしい……ですが、復讐は我が子に任せましょう』

メグミエル『ちょうど、あの子が側にいるようですし』フワー↑

カチマチ『あ!メグミさんが飛んでいっちゃいます!』

カホ「待って!メグちゃん!」

ルリノ「メグミさーーーん!」

メグミエル『……』フワー…ピタッ

メグミエル『人間界……相も変わらず、下品な建造物が多い』

メグミエル『やはり私は、緑豊かだった頃の地上の方が好きですね』


103 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:47:07 ???00
🔯バチバチ……🎺パッ!

メグミ(ママやめて!ラッパを使わないで!お願い!)

メグミ(お願い──します……)

メグミ(みんなを……殺さないでください……)

メグミエル『安心しなさい。メグミエル』

メグミエル『あなたも真実を知れば、人間に対する情は無くなるはずです』

メグミ(そんなこと……)

メグミエル『さあ、ラッパの音を響かせましょう』

メグミ(っ!待って──)

メグミエル『すぅー……』🎺

🎺プオ────────────ン

高らかなラッパの音が、カナザワの上空に響き渡る。

その音はあらゆる壁をすり抜け、あらゆる結界をも超えて、耳の聞こえない者にさえも届いた。


104 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:49:53 ???00
「なんだ?今の音」

「警報……じゃないわよね?」

シスター「はぁ…はぁ……///」

神父「今のは、ラッパの音──」

シスター「 」ビクン!


ズキン!

カホ「痛っ!」ズキン

コズエ「何なの、今の音……それに、この頭の痛みは!」ズキズキ

ルリノ「がっ──あ"あ"ッッ!」ズキン!ズキン!

カチマチ『ルリノさん!?大丈夫ですか!』


105 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/15(金) 21:51:45 ???00
ルリノ「あ"ぁ"!ぐぅぅぅ!」ジタバタ

カホ「ルリノちゃん……しっかり──くっ!」ズキン

ジジジ──

ギンコ「頭の中に、何かが入り込んで来る……これは、記憶?」ズキズキ


メグミエル『第八のラッパ──その力は、"記憶"を呼び起こすもの』

メグミエル『人間よ、自分らの罪を思い出しなさい』

メグミエル『そして目覚めるのです。我が愛し子達よ』

ジジ──ジジジ────

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


106 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 21:43:26 ???00
【1000年前】

国王「研究の方はどうだ。寿命を延ばせる魔法はできそうか?」

騎士「それが……」

国王「やはり、難しいのだな」

騎士「い、いえ!必ず完成させます!今も王国屈指の魔法使い達が全力で──」

国王「もうよい。最初からわかっていたことだ。そのような魔法を作れるなら、とっくの昔に作られていただろう」

騎士「悲観的にならないでください。今、一般市民からも優秀な魔法使いを募っております。知恵を合わせればきっと──」

国王「それももういい。生き汚い王だと、国民に後ろ指を刺されるだけだ」

騎士「陛下……」

???「おや、諦めてしまわれるのですか?」

騎士「! 何者だ!」🗡

魔法使い「失礼いたしました。私、貼り紙を見て参上したさすらいの魔法使いでございます」

騎士「なに?」


107 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 21:50:05 ???00
魔法使い「この国の王が寿命を克服する魔法を研究しているとのことで、何かお力になれればと思いまして」

国王「そなた、そのような魔法に覚えがあるのか」

魔法使い「いえ、残念ながら。死をまぬがれる魔法など、長い人間の歴史で発明されたことはございません」

騎士「ならば貴様は何をしに来た」

魔法使い「──死を克服する魔法は知りませんが、魂に干渉する魔法を使う連中には覚えがあります」

騎士「魂に干渉する魔法、だと?」

国王「話してみよ」

魔法使い「王は『天使』というモノをご存知でしょうか?」

国王「ふむ。死者の魂を天界へと誘うという、伝説上の存在だな」

魔法使い「その通りでございます。ですが、天使は決して架空の存在ではありません。現実に実在する"生き物"です」

騎士「そのような世迷言を言うために来たというのか……貴様もどこかの教会の者だな。王国から資金をもらいに来たのだろう」

魔法使い「まさか。私は旅をしているだけの魔法使いです。金など頂きません」


108 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 21:54:21 ???00
魔法使い「ですが──そうですね。王も既に、死の克服は諦めておいでのようですし、貴重なお時間を浪費させる訳にはいきませぬ。ここで失礼させていただきます」

国王「……待て」

騎士「陛下?」

国王「せっかく来たのだ。話くらいは聞いておこう。それで、その天使とやらが実際にいたとして、なんだと言うのだ?」

魔法使い「……単純な話です。天使が人の魂を天界へ連れていくというのなら、その天界を王が治められたらいい」

国王「なんだと?」

魔法使い「天界が魂の帰る場所だというのなら、その場所の王になってしまわれれば、寿命などあって無いようなもの」

騎士「そんなことができるのか……?」

魔法使い「できますとも。天使など大層な名前をつけられていますが、所詮人間と大して変わりません」

魔法使い「彼らが恐れられ、伝説上の存在とまで崇められていたのは、彼らが魔法に優れていたから」

魔法使い「しかし、今や人間の魔法の技術も格段に進歩し、天使と遜色ない程にまで成長いたしました」

魔法使い「ましてや、戦う為の魔法ともなれば、天使どもが勝てる道理はありません」

魔法使い「人間とは元来、血の気の多い生き物ですから」


109 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 21:56:34 ???00
国王「……まるで、天使を実際に見たことがあるような言い草だな」

魔法使い「ええ、もちろん。ありますとも」

魔法使い「何せこの身は、天使によって寿命を延ばされた身ですから」

国王「!!」

騎士「!!」

国王「そ、それは本当か?」

魔法使い「はい。もっとも、証明する手段などございませんが……」

騎士「貴様、先程そのような魔法は知らぬと言っていたではないか!」

魔法使い「ですから、"私は"知りません。それができる存在を知っているだけでございます」

騎士「……」

騎士(陛下、この者は怪しすぎます。適当なことを言って帰らせましょう)コソコソ

国王「ふむ……しかし、もはや人の魔法ではどうしようもないことも事実。王国に危害を加えるつもりがないのなら、詳しく話を聞いても良いのではないか?」

騎士「陛下!」


110 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:06:36 ???00
国王「魔法使いよ。そこまで言うのであれば、天界を攻める方法も考えがあるのであろうな」

魔法使い「はい。単純なことです。天使に連れて行ってもらえばいいのです」

国王「連れて行ってもらう?」

魔法使い「人間の力では、生きたまま天界へ登ることはできません。ならば、天使に道案内を頼むのです」

騎士「天界を奪おうとしている人間を、天使が連れていってくれるとは思えん。脅すのか?」

魔法使い「くくっ……それもいいですが、もっとこちらの被害を少なくする方法があります」

魔法使い「天使自ら、人間を連れ帰りたいと思わせるのです」

国王「……面白い。そんなことができるのであれば、やってみせるがよい」

魔法使い「ええ、必ずや期待に応えて見せましょう」

国王「そういえば名前を聞いていなかったな。そなた、名をなんと言う」

魔法使い「はい。私──『シルフィ』と申します」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


111 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:09:29 ???00
【天界】

メグミエル「例えば、人間界の物を持ち帰って来るんだよ!」

メグミエル「便利な物とか、美味しいものを持ち帰って、他の天使達に『人間すごい!面白い!』って思わせるの!」

ルリエル「えぇ!メグちゃん、さすがにそれは──」

ルリエル「天才すぎるのでは!?」

メグミエル「実は前から考えてたんだよね。人間と関わることの有用性を示せば、少しは規制が緩くなるんじゃないかって!」

メグミエル「そこからはなし崩し的に主張を通すんだよ!」

ルリエル「でも、バレたらめっちゃ怒られそ〜」

メグミエル「こういうのはやったもん勝ち!良さげなタイミングがあったら、しれっと実行だよ☆」

ルリエル「本当に大丈夫かなぁ……」

メグミエル「大丈夫だって!別に人間と直接会うわけじゃないんだし!ちょっと余ってそうな物を分けてもらうだけだよ!」

ルリエル「分けてもらうって言うか、勝手に盗るってことだよね?」ジトー

メグミエル「だ、だから余ってそうな物だけだって!」


112 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:12:54 ???00
ルリエル「まぁ、ルリ達も何千回と人間界には降りてるし、さすがに盗っちゃまずいものはわかるしね」

メグミエル「そうそう!でも、あんまりみんなが知ってそうなものだと意味ないから、適当に珍しい物ね!」

ルリエル(それだとルリ達にも判断つかないのでは?と、ルリは思うのであった)

メグミエル「さーて!明日からの仕事は持ち帰れそうなもの探しながらやるよ!」

ルリエル「もう、しょうがないな〜これもルリ達の野望のためだもんね!」

メグミエル「うん!ママにバレないようにこっそりね!」

────────────

メグミエル「ん!あっちに体から離れた魂みっけ!」

ルリエル「周りに人間の気配は……なし!」

メグミエル「行くよ!るりちゃん!他の天使に先を越されないうちに!」ピューン

ルリエル「おう!」ピューン


113 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:16:20 ???00
死体「」🔪

メグミエル「あらら、胸に刃物が刺さっちゃってる」

ルリエル「たまにこういうの見かけるけど、どうして人間は同じ種族同士で殺し合うんだろう……」

メグミエル「さぁね?私達にはわからないことだよ。魂、回収しちゃうね」

ルリエル「ありがとう」

メグミエル「そういえば、私達が生まれる前にあった『戦争』?ってやつでは、人間同士が戦って、一気に何千何万の魂を運ぶことになったんだって」

ルリエル「それ、ルリも聞いたことがある。そういう話聞くと、天使と人間が仲良くするのも難しいのかなとか、思っちゃうな……」

メグミエル「まぁ少なくとも、天使には人間と戦う理由なんてないんだし、戦う意思のない相手を一方的に──なんてことは起きないでしょ!」

ルリエル「そうだよね。きっとお互い戦う理由があったから、戦争っていうのが起きたんだもんね」

メグミエル「私達が天使らしい広〜い心で接すれば、向こうも友好的に接してくれるよ!」

ルリエル「う"ん!」

ガサガサ……


114 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:18:52 ???00
メグミエル「ん?」クルッ

シルフィ「うわぁ!」ペタン

メグミエル「!」

ルリエル「!」

シルフィ「て、天使……?」

メグミエル(人間!?まずい、姿を見られた!)

ルリエル(おかしいな……人間の気配にはずっと気を配ってたはずなのに……)

メグミエル「どうする、るりちゃん」コソコソ

ルリエル「いや、逃げるしかないっしょ」コソコソ

シルフィ「まさか本物の天使様にお会いできるなんて!なんという幸運だ!」

メグミエル「そ、そう?よかったね〜あはは……じゃ!私達はこれで──」フワー

シルフィ「お待ちください!」

ルリエル「な、なに?」ビクッ

シルフィ「私は天使様を崇拝する教会のものです!どうか、いつも我々の魂を導いてくださる天使様に、お礼をしたい!」

メグミエル「いやいや、お礼なんていいから……」


115 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:21:02 ???00
シルフィ「あぁ!しかしなんということだ!私は金銀財宝など持たぬ身……価値のあるものを持ってこようにも、その頃にはきっと天使様はお帰りになってしまうでしょう……」

メグミエル「まぁ、待ってはあげないかな?」

ルリエル「ちょ!メグちゃん!どっちにしろ受け取らないかんね?早く帰るよ!」

メグミエル「まぁまぁ、ちょうど人間界から物を持ち帰りたいって話してたところじゃん」コソコソ

ルリエル「こっそりでしょ!直接関わったのがバレたら、さすがにまずいって!」

シルフィ「……大したものではありませんが、今持ち合わせているのはこちらしかございません」🍶

メグミエル「何これ?」

シルフィ「これは『酒』という飲み物です。我々人間は嗜好品として楽しんでおります。お口に合うかわかりませんが、どうか受け取ってください……」

メグミエル「サケ……お酒……あぁ、わかった!楽しそうな雰囲気の場所で人間がよく飲んでるやつか!」

シルフィ「左様でございます……」


116 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:22:21 ???00
メグミエル「ふむふむ。変な魔法とかはかかってなさそうだね」

ルリエル「メグちゃん、まさか……」

メグミエル「せっかくのご好意だから、ありがたくもらうね!」

ルリエル「!?」

シルフィ「ははぁ!そのようなものでよければいくらでも差し上げます」

メグミエル「まっ!そんなに持てないからこれだけでいいや!私達に会ったことは、誰にも話しちゃダメだぞ☆」

シルフィ「もちろんでございます」

メグミエル「それじゃ、るりちゃん行こ」フワー

ルリエル「う、うん……」フワー



シルフィ「…………」ニヤッ


117 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:24:14 ???00
────────────

メグミエル「さて、バレずに持ち帰れたわけだけど──どうしよっか?これ」🍶

ルリエル「どうしよっか?じゃないよ!人間から直接物を受け取るなんて!」

メグミエル「まぁまぁ、私達のことすごい崇めてたし大丈夫だよ」

ルリエル「そういう問題じゃ……てか、それ本当に飲めるの?毒じゃないよね?」

メグミエル「どうだろう?くんくん──ゴホッゴホッ!」

ルリエル「メグちゃん!?大丈夫!?」

メグミエル「ごめんごめん!平気!ちょっと特殊な匂いだったから!」

メグミエル「毒って感じはしないかな?少し甘い匂いがする」

ルリエル「危ないよ……やっぱりこっそり戻しに行こう?」


118 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:26:33 ???00
メグミエル「うーん、でも人間はこれ飲んで楽しそうにしてるし、興味はあるんだよな〜」

メグミエル「ひと口だけ☆」🍶コクン

ルリエル「あっ!」

メグミエル「!? うげぇ!な"に"こ"れ"、喉がい"だ"い"」

ルリエル「やっぱ毒じゃん!早く吐き出して!!」

メグミエル「いや……飲み方にコツがいるのかな?一気に飲み込まずに口にしばらく含んで……」🍶コク

ルリエル「ひゃー!何もうひと口飲んでるの!?」

メグミエル「ふんーふんー……ん」コクン

メグミエル「今度はむせずに飲めた!」

ルリエル「えぇ……本当に大丈夫?変な感じとかない?」

メグミエル「だ〜いじょうぶ!だいじょうぶ!どこも変じゃないよ〜」クラクラ

ルリエル「めっちゃ顔赤いけど!?」


119 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:28:57 ???00
メグミエル「平気らって!なんか気分いいよ〜あれ?なんれるりちゃん逆さまなの?」プカプカ

ルリエル「ルリじゃなくてメグちゃんが逆さまに浮いてるの!」

メグミエル「ん〜〜?あ、でもるりちゃんは逆さまでもかわいい〜ギュッ☆」

ルリエル「何変なこと言って──うげ!」

メグミエル「ん〜ちゅ!」

ルリエル「ひゃっ……!メ、メグちゃん……首にチューしないで……///」

メグミエル「んえ〜〜だってるりちゃんが可愛いのがいけないんだよ?ねぇ、私わるくないよね?」ギュー

ルリエル「うぐっ……メグちゃんの胸で息ができね……」

メグミエル「ちゅ♡ちゅ♡ちゅー♡♡」

ルリエル「ひぅ……///」ゾワゾワ

ルリエル「もう!いっかい離れて!」ドン

メグミエル「や〜ん♡あ、そうだ!るりちゃんもお酒飲んでみなよ!おもしろいよ!」

ルリエル「絶対やだ!」

メグミエル「えー!ねぇひと口だけ〜!毒じゃなかったんだしさ〜」🍶グイグイ

ルリエル「飲まないから!絶対に飲まないからぁ!!」

────────────


120 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:30:55 ???00
ルリエル「うぇ〜〜い!!」🍶

ルリエル「ルリ達さいきょ〜〜!ヒック」

メグミエル「……なんか、るりちゃんの方が影響でかくない?個人差があるのかな?」

天使「ちょっとあなた達!コソコソと何やってるの!」

メグミエル「やばっ……な、何でもないですよ〜おほほほほ!」

ルリエル「お姉様〜!こーんにーちは〜」

天使「え、ルリエルどうしたの……なんかテンションおかしいよ?」

メグミエル「何でもないです!ちょっと疲れすぎて逆にテンション上がっちゃったっていうか!」

ルリエル「えー!違うよメグちゃん!ルリ別に疲れてないよ!」🍶

メグミエル「るりちゃん!話合わせて!」コソコソ

天使「ん?ルリエルが持ってるの……何?」

メグミエル「あ、えっと、これは……」

ルリエル「お酒〜〜〜!」🍶

メグミエル「ちょっと!るりちゃん!」


121 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:33:55 ???00
天使「おさけ──って、人間界の飲み物!?」

天使「まさか人間からもらったんじゃないでしょうね!!」

メグミエル「そ、そんなわけ〜拾ったんですよ〜あはは……」

天使「本・当・に?」ジー

メグミエル「あ、うぅ……ごめんなさい……」

天使「あんた達ね……」

メグミエル「ホントごめんなさい!私が悪いの!るりちゃんは反対したけど、私が無理やりもらってきたの!」

メグミエル「だから罰するなら私だけにして!!お願いします!!」

ルリエル「メグちゃん〜?」ポワポワ

天使「…………はぁ、全くもう。今回は見逃してあげるから、もうしないでよね」

メグミエル「え、いいの?」

天使「最近二人とも頑張ってたからね。その代わり!次やったらお母様に報告するから!」

メグミエル「はい!もう絶対にしません!!」


122 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/18(月) 22:36:32 ???00
天使「返事だけはいいんだから……あと、これは没収ね」🍶

ルリエル「あー!まだ残ってるのに〜!」

天使「ちなみにこれ、どこでもらってきたの?」

メグミエル「……カナザワの大っきいお城の近く」

天使「じゃあ、あなた達はしばらくそこには近づかないようにね。万が一のことがあったら大変だから」

メグミエル「はい……」

天使「ルリエルの調子が戻るまでは隠れてなさい」スィー

メグミエル「…………はぁ、まさか速攻バレるとは」

メグミエル「でも、お咎めなしだっただけ運がよかったかな?しばらくは大人しくしてるかぁ」

ルリエル「うみゃうみゃ……」




天使「…………」

天使「ちょっとくらい、飲んでみてもいいわよね?」🍶

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


123 : 名無しで叶える物語◆OwrULOnE★ :2025/08/19(火) 01:12:51 ???00
酔っ払いふにゃふにゃルリエル可愛い
けどこれは大罪だな


124 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 20:45:43 ???00
【数週間後】

ルリエル「戻りましたー!」フワー

メグミエル「した〜」フワー

「おかえりなさ〜い」ポワポワ

「今日もがんばってえらいわね〜」ポワポワ

メグミエル「あれ?二人とも顔赤くない?」

「これを飲んでたのよ〜」🍶

ルリエル「え"っ!それって……」

メグミエル「お姉様が捨てたんじゃなかったの!?」

「最近流行ってるのよ〜お酒って言うんでしょ?」

「人間界にこんなに美味しい飲み物があったなんて知らなかったわ〜」

ルリエル「流行ってるって──他の天使達も飲んでるの?そんなに余ってたかな?」

「人間界から持ってきてるの!なんかね、カナザワのとあるスポットに無造作に置いてあるんだって〜」

メグミエル「カナザワかぁ。最近行ってなかったから知らなかった」


125 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 20:47:22 ???00
ルリエル「……もしかして、この前ルリ達が会った人が置いていってるのかな?」コソコソ

メグミエル「ありえるかも。いくらでもあげるとか言ってたし……」コソコソ

「ねぇ、あなた達も飲んでみない?美味しいわよ〜」

メグミエル「いやー私達は遠慮しておきます……」

メグミエル(ルリちゃんがまた暴走したらいけないし……)

「そう?もったいないな〜」

「でも……知ってる?これよりももっと"強い"お酒があるんだって」

ルリエル「強い?」

「もっと頭がふわふわするんだって!」

「えぇ!?これよりも?」

「飲んでみたくない?」

「興味はあるけど……どこで手に入るの?」

「なんでも、そのお酒をくれる人間がいるらしいよ……」コソコソ

メグミエル「!」ピクッ


126 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 20:49:54 ???00
「人間に直接会うってこと?危ないんじゃない?」コソコソ

「でも私達を崇拝してて、とっても親切なんですって」

ルリエル「メグちゃん、その人って……」

メグミエル「絶対に例の人だ。確信したよ!」

「あたし、今度その人に会ってみようと思うの」

ルリエル「だ、ダメだよ!そんな!」

「平気よ〜他の人間には会わないようにするから!」

ルリエル「でも──ムグッ!?」

メグミエル「まぁまぁ、これはある意味チャンスだよ!るりちゃん」

ルリエル「チャンスって……」

メグミエル「これを皮切りに人間との交流が生まれれば、みんなで仲良くする夢が実現するかもしれないじゃん!」

ルリエル「そうかもしれないけど、なんか思ってたのと違うというか……」

メグミエル「きっかけなんてのは、案外思いもよらないものなんだよ!」

ルリエル「うん……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


127 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 20:52:33 ???00
【カナザワ】

天使「…………」プワ〜

天使「……」キョロキョロ

シルフィ「天使様!またお会いできましたな!」

天使「っ!」ビクッ

天使「……もしかして、あなたがお酒をくれる人間さん?」

シルフィ「はい。恐れ多くも天使の皆様に酒を献上しております」

シルフィ「わざわざ姿をお見せになったということは、貴女様もこちらの酒がご所望でしょうか?」

天使「そうよ。人間さん、私にそれをくださるかしら」

シルフィ「もちろんです。ただ……」

天使「?」

シルフィ「こちらの酒は時間を置くとすぐに味が落ちてしまうのです。できればここで飲んで行かれるのが一番かと存じます」

天使「え、ここで?人間の前でお酒を飲むなんて……」

シルフィ「あぁ!ご心配なさらず。私は直ぐにおいとましますので」


128 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 20:54:33 ???00
シルフィ「ここに置いておきますね。どうぞ、"ごゆっくり"……」コト

天使「……不思議な気配の人間さんだったわね。とはいえ、ついに手に入ったわ!」

天使「本当は持ち帰ってゆっくり飲みたかったけど……でもこっちで飲んでいった方がバレにくいし、いっか♪」

天使「くんくん……っ!すごい香り!匂いだけでクラクラしちゃう……///」

天使「さ、早速ひと口──」ドキドキ

天使「……」コクン

天使「!?なにこれ、すっごい……///」

天使「舌も喉もヒリヒリするけど、とっても美味しい……!」

コクン

天使「あぁ……幸せ……」ウットリ

天使「なんだか、まぶたが重くなってきたわ……」

天使「何かしらこれ……頭が、動かなくなって────」ガシャン ↓

シルフィ「……」ザッ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


129 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 20:57:58 ???00
天使「…………ん」ピクッ

シルフィ「おや?もう起きてしまったのですか」

天使「え?おきる?なに、ここどこ??」

シルフィ「最後まで飲まなかったから、薬の効きが悪かったのでしょうな」

天使「くすり?何を言って──」ギシ…

天使「え……私、縛られてる……?」

天使「まさか、騙したのね!!」ギロッ

シルフィ「ははは……掟を破り不用意に接してきたのはあなたではないですか」

シルフィ「恨むなら自分の愚かさを恨むことだ」

天使「っ……!」スィー ↑

シルフィ「押さえ付けなさい」

兵士「……」ガシッ!

兵士「……」ガシッ!

天使「きゃっ!」ドシン!

天使「やめて!離しなさい!!」ジタバダ


130 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 21:00:50 ???00
シルフィ「心配する必要はない。まだ殺しはしませんよ」

シルフィ「翼を切り落とせ」

兵士「はい!」🗡シャキン

天使「!?」

シルフィ「その翼があると天へ登って行ってしまいますからね。逃げられないように切り落とさせてもらいます」

天使「やだ……それだけは──天国に帰れなくなっちゃう!!」

シルフィ「運のないことだ。薬を全て飲んでいたら、寝ている間に済ませたのに……」

天使「お願いやめて!何でもするから!羽だけは切らないで!」

シルフィ「やれ」

兵士「……」🗡スッ

天使「いやぁぁぁぁ!!」

🗡ザクッ!

天使「うぐっ……!」

天使「ぁ……あぁ……私の羽が……」

シルフィ「これで運びやすくなりましたね。では、地下牢へ連れていきましょう」テクテク


131 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 21:04:42 ???00
天使「グスッ……グス……」‪💧‬ポロポロ

羽を切られた天使を、兵士達が引きずるように運んでゆく。

生まれてから一度も地面に降り立ったことの無い天使は、歩くことはおろか、自分の力だけでは立ち上がることもできない。

シルフィ「まったく、その足は何の為に付いているのやら……」

ズルズル……ズルズル……

ヤスリのような地面に足の甲を削られながら、天使は城の地下まで連れてこられた。

天使「うっ……!何、この臭い……血と、肉の焼けるような──」

ガラガラ……ドン!

天使「きゃ!」

ガシャン!

シルフィ「しばらくそこで大人しくしていなさい」

天使「っ!許さない……あなた達には必ず天罰が下るわ!」

シルフィ「それは恐ろしい。皆、最初はそうやって威勢がいいんですよねぇ」

天使「え?みんなって──」


132 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 21:09:23 ???00
「ぎゃあぁぁーーーーー!!」

天使「!?」ビクッ

天使(今の声、聞き覚えが……)

「許じてぐださい!もう許して……」

「魔法の接触箇所の壊死を確認。次は魔力の密度をもう一段階上げてみましょう」

「いやだ……これ以上なんて無理──」‪💧‬

「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」⚡️ビリビリ

天使「な、何をしてるの……」

シルフィ「"実験"ですよ。あなた達に有効な魔法を編み出しているところです」

シルフィ「天使は人間のように簡単には死にませんからな。特別な魔法を用意しなくては」

天使「どうして……そんな酷いことを……」

シルフィ「戦争をする為です。あなた達、天使とね」

天使「そんな──私達が人間に何をしたっていうの!何も悪いことなんてしてないじゃない!!」

シルフィ「人間は神のように、罪に対する罰として機械的に制裁を加えるのみではない。もちろんそういう場合もありますが……」


133 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/20(水) 21:11:19 ???00
シルフィ「人間の戦争とは大抵、"奪う"為に行なうものなんですよ」

天使「奪う?何を──」

シルフィ「我々は、天界という場所を奪うことが目的なんです」

天使「なっ!?」

騎士「シルフィ殿、話しすぎです」

シルフィ「おっと失礼。では私は戻りますかな。ここにいると口が勝手に動いてしまう」テクテク

天使「助けて……誰か助けてぇー!」

騎士「……」

騎士「シルフィ殿は、心が痛まないのですか?」

シルフィ「はい?」

騎士「天使と言えど、見た目は羽がある以外、人間と変わらない少女です。それなのに、まるで実験動物のように扱って……」

シルフィ「騎士殿、見た目に惑わされてはいけません。一見、20そこいらの少女に見えても、中身は何千年……あるいは何万年と生きている化け物です」

騎士「しかし……」

シルフィ「彼女らを研究することもまた、王の悲願を叶える為の一助になると思いますが?」

騎士「……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


134 : 名無しで叶える物語◆SGTrCdPZ★ :2025/08/20(水) 23:06:49 ???00
これはキツイな・・・


135 : 名無しで叶える物語◆mCDd3LuR★ :2025/08/20(水) 23:15:28 ???Sr
シルフィは元ネタあるんだろうか


136 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 21:23:12 ???00
【天界】

ザワザワ……ザワザワ……

ルリエル「急に全員を招集なんて、お母様どうしたんだろうね?」

メグミエル「わかんない。でも、なんか嫌な予感がする……」

『皆、揃いましたね』

シン──

『今日集まってもらったのは他でもありません。近頃天界で出回っている、人間界の飲み物についてです』

ルリエル「あ……」

『ここ最近、天使達の様子がおかしいことには気が付いていました』

『多くの天使が仕事を放棄し、時に支離滅裂な言動も見られました』

『さらには、何人か人間界に行ったきり帰らない者までいます』

メグミエル「……」

『仕事を放棄した天使に問いただしたところ、酒という飲み物が天使達の間で流行っていることが原因とわかりました』

『いったい誰が、人間界のモノを天界に持ち込んだのですか』


137 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 21:29:16 ???00
「……」

「……」

「……」

『誰も話しませんか。では仕方がありません。連帯責任として、皆に平等に罰を与えましょう』

「え……」

「そんな!私はお酒なんて飲んでないのに!」

「はやく名乗ってよ……」

メグミエル「……」💦タラタラ

ルリエル「……」ブルブル

『全員の階級を一様に下げ、大天使から降格した者は権能の剥奪を──』

「メ……メグミエルです!お酒を天界に持ち込んだのは!」

メグミエル「!?」ビクッ

『……それは本当ですか。メグミエル』

メグミエル「えーと……どうだっけな〜」

『メグミエル。私に嘘は通用しませんよ』

メグミエル「うぐ……そうだよ。最初にお酒を持ち帰ったのは私!」


138 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 21:32:10 ???00
ルリエル「ルリも──」

メグミエル「……」✋バッ

ルリエル「え?」

『ルリエル。あなたも言いたいことがあるのですか』

メグミエル「るりちゃんは関係ないよ。お酒は"私ひとりの判断"で持ち帰ったの」

『嘘は──ついていないようですね』

ルリエル「メグちゃん!」

メグミエル「るりちゃんは私のバディだから心配してくれてるだけ。この件には関係ないよ」

『……そうですか』

『メグミエル。何故、人間界のモノを持ち込んだのです。あなた達には常日頃から、人間と関わってはいけないと教えてきたはずです』

メグミエル「待って!確かに最初にお酒を持ってきたのは私だけど、それを広めたのは私じゃない!」

『そうだとしても、きっかけがメグミエルであることは間違いありません。それ相応の処罰を下さなければいけないのです』

メグミエル「くっ……」

ルリエル「処罰……」

『罰を決めるためにも、先程の質問に答えてください。何故、人間界のモノを持ち込んだのですか』


139 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 21:39:38 ???00
メグミエル「それは…………あぁ、もう言っちゃうけど!私は人間と仲良くしたかったの!!」

メグミエル「人間界は賑やかで、天国に無いものとかも沢山あって楽しそうでしょ?それに、天使と人間って見た目は結構似てるし、ちゃんと話せば普通に仲良くなれると思うの!」

メグミエル「だいたい!魂を運ぶのにいちいち天界と地上を往復するのめんどくさいし!同じ場所で暮らせれば、もっと効率的に仕事もできるじゃん!」

メグミエル「ほら!人間と仲良くなれば、いいことが沢山あるんだよ!人間界と天界で別れてないでさ、みんなで一緒に暮らせた方が楽しくない!?」

『だから、人間界のモノを持ち込み、天使達が人間に興味を持つよう仕向けたのですね』

メグミエル「なんか言い方にトゲがあるけど……そういうこと!」

『なるほど。あなたは『愛』を司る天使でしたね。同じ外見をしている人間と交流を持ちたい。そのような考えが生まれるのも自然なことです』

メグミエル「なら──」

『しかし、人間と交流を持つことは許しません』

メグミエル「なんでよ!」

『天使と人間の間には確執があります。そもそも、私達は人間と関わらずに済むように、この天界へ移り住んだのです』

メグミエル「え、そうだったの?」

『あなたは比較的新しい天使ですから、知らないのも無理はありません』


140 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 21:44:48 ???00
『とはいえ、無知であることは掟を破った罪を軽くする理由にはならない』

『メグミエル、あなたには罰として1000年間の封印の刑を執行します』

メグミエル「ふ、封印!?!?」

ルリエル「待ってお母様!封印なんて厳しすぎるよ!」

『メグミエルの行動が天界に与えた影響を考えれば、妥当な刑です』

『誤った"行動"に対する罰は、"拘束"でなければなりません』

ルリエル「そんな……」

メグミエル「るりちゃん、ごめんね……」

ルリエル「なんでメグちゃんが謝るの!?ルリの方こそごめん。あの時ちゃんと止めてたら、こんな事にはならなかったのに……」

メグミエル「ううん。るりちゃんは悪くないよ。私が勝手な行動したせいだから」

メグミエル「むしろ、るりちゃんまで罰の対象にならなくてよかった」

ルリエル「メグちゃん……」

メグミエル「ねぇるりちゃん、1000年って結構長いけどさ、それでも私のこと忘れないでいてくれる?」

ルリエル「忘れないよ!!絶対!ルリずっと待ってるから!封印解けたら、また一緒に遊ぼ!」

メグミエル「うん……約束ね……」‪💧‬

ルリエル「約束!」


141 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 21:57:48 ???00
『それでは、刑を執行します』

『メグミエル、1000年間充分に反省するように』🔯

メグミエル「うっ……」🔯バチバヂ

ルリエル「メグちゃん!!」

メグミエル「っ……またね。るりちゃん──」

💎カラン……

ルリエル「!?」

ルリエル「もしかして……この宝石がメグちゃんなの?」

『そうです。その宝石は封印が解けるまで、外部からも内部からも、決して傷つけることはできません』

ルリエル「……お母様。メグちゃんのこと、ルリが持っててもいいかな」

『構いません。誰が保管していようと、メグミエルの封印は1000年間は解けませんから』

『1000年後に、その宝石に魔力を通して、メグミエルを解放してあげてください』

ルリエル「うん。ありがとう……」💎ギュ


142 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 22:01:42 ???00
『──さて、ハルエル』

「は、はい!」

『メグミエルの罪の告発、ありがとうございました。ですが』

『他の天使達に酒を広めたのは、あなたですね?』

「っ!」ギクッ

「い、いや……ちが……!」

『私に嘘は通用しません。メグミエルは無知ゆえに罪を犯しましたが、あなたは自らの罪を隠すために、わざと他の天使に酒を広めましたね』

「あ……あぁ……」ガクガク

『あなたの罪はメグミエルより遥かに重い。よって、罰として大天使の称号剥奪と、魂の浄化による記憶の消去を行います』

「!!待って、お母様……!それだけは──」

💠キラキラキラ

「ぁ────」

「…………」スン

『これにて本日は解散とします。他の天使も、以降酒を飲んだ者は処罰の対象としますので、充分に注意するように』

『それと、しばらくの間は人間界へ降りないでください。行方不明の天使が見つかるまでは、天界から出ることを禁じます。わかりましたね』

「「はい!」」

『では、皆持ち場へ戻りなさい』

ザワザワ……


143 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 22:06:31 ???00
ルリエル「うぅ…メグちゃん……」フワ〜

『待ちなさい。ルリエル』

ルリエル「!」ビクッ

ルリエル「……なに?」

『あなたもメグミエルが酒を持ち込んだ際に、一緒にいましたね』

ルリエル「……知ってたの?」

『メグミエルは上手く誤魔化せたと思ったようですが、私を欺くことはできません』

ルリエル「じゃあ、なんでメグちゃんだけ……」

『あなたには特別な仕事を頼むためです』

ルリエル「特別な、仕事?」

『ミカエル』

ミカエル「はっ!」

ルリエル「!!」

ルリエル(ミカエルって──あの守護天使ミカエル!?すげー初めてこんな近くで見た……)

『ルリエルには、ミカエルと共に人間界に降り、行方不明となった天使達の捜索を命じます』


144 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/21(木) 22:16:10 ???00
ルリエル「────へ?ルリがミカエルさんと!?」

『あなたは酒を受け取った際に、件の人間と接触していますね。その人間が天使達の失踪に関わっている可能性はとても高い』

ルリエル「だから、顔を知ってるルリが?でも、もっと直近にその人間と会ってる天使もいると思うけど……」

『ルリエルは『再生』を司る天使です。ミカエルが怪我をした際は、あなたがミカエルの傷を癒しなさい』

ルリエル「怪我って──人間と戦うかもしれないってこと!?」

『ミカエルを送るということは、そういうことです』

ルリエル「……」

ミカエル「ルリエルと言ったな。私が人間に遅れを取ることは万が一にもないが、行方不明の天使が怪我をしている可能性は高いだろう」

ミカエル「その時は、お前の力が必要になる。共に来てくれるな?」

ルリエル「は、はい!よろしくお願いします!」

『ミカエル。あなたは先の戦いの経験者です。人間という種族が孕む危険性を、充分に理解していますね?』

ミカエル「もちろんです。母上」

『よろしい。それでは早速向かってください。二人とも、くれぐれも油断しないように』

ミカエル「はい」

ルリエル「はい!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


145 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 21:48:44 ???00
【カナザワ】

ルリエル「ルリ達がお酒をもらったのはここら辺でした」フワー

ミカエル「ふむ……微かに天使の魔力の残滓を感じるな。どうやらここで頻繁に酒の受け渡しがあったのは間違いなさそうだ」

ルリエル「でも、ここからどうやってみんなを探せば……」

ガサ……

ミカエル「隠れろ」グイッ

ルリエル「!?」


シルフィ「……」キョロキョロ

ルリエル「あ!あの人間だ!」

ミカエル「しっ!静かに……」


シルフィ「……ん、天使の気配がしたと思ったが、今日はハズレか」テクテク


ミカエル「あれがお前達が遭遇した人間だな?」

ルリエル「そうです!あの人でした!」

ミカエル「よし。気付かれないように後をつけるぞ」

ルリエル「はい!」


146 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 21:49:59 ???00
シルフィ「……」テクテク

ミカエル「城の敷地に入っていったな」

ルリエル「確か前に会った時は、自分は教会の人間だって言ってたような……お城の中にも教会ってあるの?」

ミカエル「我々を欺くための嘘だったのかもしれない。となると、尚さら失踪した天使達が気がかりだ」

ルリエル「どうしますか。中に入りますか?」

ミカエル「当然だ。衛兵の目を警戒しつつ、尾行を続けるぞ」

ルリエル「らじゃ!」

ミカエル「なんだその言葉使いは……」

ルリエル「あ、ついメグちゃんといる時の癖で……えへっ」

ミカエル「まぁいい。気だけは抜くなよ」


147 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 21:51:40 ???00
シルフィ「……」コツ…コツ… ↙

ルリエル「地下に降りていった!追いかけましょう!」スゥー

ミカエル「待て」ガシッ

ルリエル「うぉ!?」

ミカエル「地下は行き止まりの可能性が高い。今行くと下で鉢合わせになる」

ルリエル「それなら逆に捕まえるチャンスじゃないですか!」

ミカエル「ほう?意外と好戦的なのだな。お前は荒事は苦手な性格だと思っていたが」

ルリエル「戦うのは嫌です……捕まえようって言ったのは、その方が無駄に怪我をさせずに済むと思ったから」

ミカエル「ふっ……なるほど、優しさ故か。だが、今は奴を捕まえる必要は無い」

ルリエル「え?どうして?」

ミカエル「……天使達の居場所がわかった。あの階段の先だ」

ルリエル「!」

ミカエル「よく意識を研ぎ澄ませろ。天使の魔力を感じるはずだ」

ルリエル「…………っ!ホントだ!」

ミカエル「まずは仲間の救出を優先。人間の罪を暴くのは、その後でいい」


148 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 21:53:37 ???00
シルフィ「……」コツ…コツ… ➚

ルリエル「あ、出てきた」

ミカエル「よし。他に人間の気配は無い。地下に降りるぞ」スゥー

ルリエル「はい!」スゥー

二人は周りに気を配りながら、先程男が出てきた階段を降ってゆく。

辿り着いた先は、たった一つのランプで照らされただけの、薄暗い地下牢だった。

ルリエル「うっ…!何ここ……酷い臭い……こんな所に閉じ込められてるの?」

ミカエル「…………」

ミカエル「!!」

ルリエル「でも、天使達の姿が見当たらない」キョロキョロ

ミカエル「──いや、居るぞ。目の前に……」

ルリエル「え?」

ミカエルの視線の先を追って、暗い牢屋の中に目を向ける。

そこには大きな黒い木の枝のようなモノが、無造作に置かれていた。

しかし、雲のように軽やかで純白な天使の姿など、何処にも見つからなかった。


149 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 21:56:04 ???00
ルリエル「目の前って……牢屋の中には木の枝しか入ってない──」ジー

ルリエル「!?」ゾワッ…

ルリエル「嘘……なんで……天使の魔力を感じる……」

ルリエル「まさか──この木の枝みたいなのが、"そう"なの……?」

ミカエル「こいつだけじゃない……他の牢屋も見てみろ……」

ルリエル「……っ!」

暗闇に目が慣れたことと、先程の木の枝の正体に気が付いたことで、ルリエルは目の前に広がるものが、極めて凄惨な光景であることを理解してしまった。

ある牢には、左半身が焦げて崩れ落ちている者。

ある牢には、肥大化し、4倍程の体積に膨れ上がった肉塊。

またある牢には、何かから逃げるように壁にこびり付いた、人型の影。

他にも様々な拷問を受けたであろう天使達の体が、各部屋に監禁されている。

だが、最も不幸なことは──彼女らの内の何人かは、酷い肉体の損傷を受けながらも、今だ死ぬことを許されていないことだった。


150 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 21:58:33 ???00
ルリエル「うっ……!オェッ!」ビチャ

ミカエル「人間め……!!」ギリッ

ルリエル「なんで……酷い…酷すぎるよ……こんなの……」‪💧‬ポロポロ

ミカエル「泣いている暇は無い。私達の役目は、彼女達を助けることだ」

ミカエル「…………治せるか?」

ルリエル「わからない……けど、絶対に救ってみせる!」

ミカエル「よし。まずは鉄格子を壊して──」

兵士「何者だ!!」

ミカエル「!」

ルリエル「!」

兵士「なっ…!天使だと!?おーい!侵入者だ!天使が地下牢に侵入したぞーー!!」

ミカエル「……」シュッ

兵士「ぐぎっ──」ザクッ

ミカエルが空中で腕を払うと、兵士は持っていた剣で自分の首をはねた。

兵士「」バタン

ルリエル「ひっ……」


151 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:00:30 ???00
<シンニュウシャダー!テンシガキタゾー!

ミカエル「ちっ……気付かれたか。私は上を"処理"してくる。お前はその間に、彼女らを解放しろ」

ルリエル「わ、わかりました!」

ミカエル「では任せたぞ」スゥー

ミカエル「……」ピタッ

ルリエル「ミカエルさん?」

ミカエル「もし救えぬようなら──楽にしてやってくれ」

ルリエル「!!」

ミカエル「……」スゥー

ルリエル「…………絶対に助けるから」

ルリエル「まずは牢屋の鍵を開けないと!でも、どうやって……ルリの力じゃ壊せないし……」

ルリエル「あ!もしかしたらさっきの兵士が持ってるかも!」

兵士「」ゴソゴソ…

ルリエル「うーんと……あった!やっぱり持ってた!」🗝


152 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:02:33 ???00
ルリエル「まだ息がある子から助けよう。本当は優先順位とか付けたくないけど……」🔓ガチャン

「コヒュー……コヒュー……」

ルリエル「もう大丈夫だよ。助けに来たからね」

ルリエル『エリクサー』キラキラ

「コヒュー……コヒュー……」

ルリエル「治らない!?なんで!?」

ルリエル「この怪我……普通の傷じゃない。何か特別な魔法で付けられてるんだ」

「──シテ──」

ルリエル「え、なに?」

「殺──して──」

ルリエル「!!なんでそんな事言うの!絶対助けるから!」

「羽を……切られちゃった……怪我が治っても……天国に帰れない……」

ルリエル「そんなの!ルリが頑張って抱えて帰るよ!!諦めちゃダメだ!」

ルリエル『エリクサー!!』キラキラ

「うぅ──ゴボッ!」ビチャ

ルリエル「へ?どうして──」

「あり……がとう──」ガクン

ルリエル「ち、ちがっ……ルリは治そうとしただけで……」


153 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:05:04 ???00
「ルリエル……なの……?」

ルリエル「はっ!その声、お姉様!?」

「ルリエル……」

ルリエル「待ってて!今助けるからね!」🔓ガチャ

「お願いがあるの……お腹……」

ルリエル「お腹?お腹減ってるの?」

「違う……あたしのお腹を……裂いて……」

ルリエル「はぁ!?何言ってるの!?そんな事しないよ!」

「あたし……グスッ……穢されちゃった……」‪💧‬ボロボロ

ルリエル「え……」

「実験だって言われて……無理やり……勝手に掻き出せないようにって……手も…切られちゃった……」💧‬ボロボロ

ルリエル「 」

────プチン

「お願い……お腹の中、全部掻き出して……!それかあたしを殺して……!」

「あたしが生きてたら……お腹の中のモノが育っちゃう……そんなの…耐えられない……」💧‬ボロボロ

ルリエル「…………」


154 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:07:08 ???00
ルリエル(人間と仲良くしたい?同じ見た目をしているから、仲良くなれるはず?)

ルリエル(そんなわけない。ルリ達は、いったい何を勘違いしてたんだろう)

ルリエル(アレは魔獣だ。己の欲望のままに他者を傷付ける"ケダモノ"だ)

ルリエル(殺さなきゃ── 一匹残らず、人間を殺さなきゃ)

「ルリ……エル……?羽が、黒く──」

ルリエル「お姉様。今、楽にしてあげるね」💠キラキラ

「あぁ……ありが、とう──」シュワシュワ…

ルリエル「ごめん。助けてあげられなくて。ごめんね……」‪

ルリエル「──仇は、討つから」


ドゴーーン!!!

ルリエル「!? 何、今の揺れ……上の方から?」

ルリエル「ミカエルさんが、人間と戦ってるんだ……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


155 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:11:33 ???00
【数分前】

兵士「いたぞ!天使だ!」

兵士「捕らえろー!」

ミカエル「……」

シルフィ「まぁまぁ、また酒をもらいに来たのかもしれませんし。剣を収めて──おや?」

シルフィ「…………厄介なのが来てしまいましたな……」

騎士「シルフィ殿、あの天使を知っているのですか?」

シルフィ「ええ。ですが説明する前に、武器を持つ者を全員下がらせなさい」

騎士「は?何を言っておられるのですか?」

ミカエル「……」スッ

兵士「動くな!不審な行動を取ったら斬り殺すぞ!」

シルフィ「いいから早く!全員下がりなさい!!」

ミカエル「……」🔯バチバチ

((🗡))カタカタカタ

兵士「!?なんだ……剣が震えて──」


156 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:14:44 ???00
((🗡))カタカタ……ザシュ!

兵士「ごばっ──」グサッ

兵士「剣が勝手に……!ぐあぁー!」🗡ザクッ

「ぎゃー!」🗡ブシャー!

「かは──」🗡スパン!

「何が起きて──ごっ!」🗡グサッ

騎士「これはいったい……なぜ兵士達は自分に剣を突き立てているんだ!?」

シルフィ「あの天使の名はミカエル。天使の中で唯一、『戦い』を司る者」

シルフィ「その権能は、"視界に映る全ての武器を操る"力です」

騎士「なぜ、シルフィ殿がそんなことを知って──」

((🗡))カタカタカタ

騎士「!?私の剣も……!クソ!抑えられない!」🗡グググ…!

騎士「仕方ない……仕舞うしかないか!」パッ!

兵士「」🗡ズルズル...↑

ミカエル「……」🗡🗡🗡🗡フワー

ミカエル「人間よ。どんな理由であれ処罰することに変わりは無いが、一度だけ弁明の機会をくれてやろう」

ミカエル「何故、我らの同胞を捕え、あの様に傷付けた」


157 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:20:05 ???00
シルフィ「…………ふっ」

シルフィ「理由など、決まっているではありませんか」コツ…コツ…

騎士「シルフィ殿!危険です!下がって!」

ミカエル「理由が決まっている?私には想像も付かないが」

シルフィ「宣戦布告ですよ!我々人間が、貴様ら天使に代わり、神に代わり!この世界の全てを──命さえも操る!」

シルフィ「その為の、戦争の準備です」

ミカエル「……そうか。よくわかった」

ミカエル「貴様らが救いようもない存在だということがな!」🗡三🗡三シュッ!シュッ!

シルフィ「ほっ!」ヒラリ

🗡🗡グサグサ!

ミカエル「ちっ……」🔯バチバヂ

🗡三 🗡三 🗡三 🗡三 🗡三 ピュン!ピュン!

シルフィ「ふっ!」シュバッ

無数に降り注ぐ剣の雨を、魔法使いは軽やかな身のこなしで避けてゆく。

時に壁を走り、時に空中で体を捻るその姿は、並の人間では無いことを推察させた。

騎士(ご老体だと思っていたが……昔は名のある戦士だったのか?)


158 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:24:48 ???00
ミカエル「ちょこまかと鬱陶しい……!」🔯バチバヂ

シュッ三🗡 三🗡 🗡三 🗡三シュッ

シルフィ「む?」

攻撃を退けた先で、四本の剣が四方から飛んで来る。

たとえ一本目を避けられたとしても、続く三本の剣に体を貫かれることは必然だった。

騎士「シルフィ殿!」

シルフィ「ふぅ──っ!」ヒラリ

🗡スカッ ……パシッ!

シルフィ「はぁ!!」🗡ブン!

🗡カキン!🗡カキン!🗡カキン!

ミカエル「!?」

騎士「!?」

しかし、必殺のはずの攻撃は、避けた一本目の剣を使い、他の三本の剣を弾き返すという超絶技巧によって防がれてしまった。

騎士「シルフィ殿……魔法だけでなく剣術の心得もあるのですか?」

シルフィ「ははは。長く生きていれば、色々と覚えるものですよ」

ミカエル「人間の寿命程度で習得できる技とは思えないな」

ミカエル「私のことを知っているような態度といい……貴様、何者だ?」


159 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:28:05 ???00
シルフィ「くくく……まだわからないか」

シルフィ「確かに見た目こそ変わっているが、"兄弟"の魂も見抜けぬとは……お前も勘が鈍ったな。ミカエル」

ミカエル「────は?」

ミカエル「待て、貴様……『ルシファー』なのか?」

シルフィ「久しいな。弟よ。元気にしていたか?」

ミカエル「っ!お前!生きていたのか!!」

騎士「???シルフィ殿……何を言って──」

ミカエル「お前のせいでどれだけの仲間が死んだと思ってんだ!!よくもまた俺の前に姿を表せたな!!」

シルフィ「ふっ……随分と動揺しているな。昔の口調が戻っているぞ。大天使長殿?」

ミカエル「黙れ!!お前と話すつもりなどない!あの日、お前を討てなかったことは俺の一生の汚点。今日こそ必ず殺す!」🔯🗡🗡🗡🗡

シルフィ「頭に血が上ると周りが見えなくなる癖は相変わらずだな……『フラッシュ』」ピカーーン!

ミカエル「ぐっ──!」

🗡🗡🗡カランカラン ↓↓

シルフィ『グラヴィオン』

ミカエル「!?」ズンッ ↓↓↓

バタン!

ミカエル「体が……動かない……!」グググッ


160 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:31:15 ???00
シルフィ「ははははは!久しぶりの地面の感触はどうだ?ミカエル」

ミカエル「その杖……普通の杖じゃないな!それが魔力を何倍にも増幅させている」

シルフィ「ご明察。この杖は特製でね。実験に使えなくなった天使を加工して作ったものだ」

ミカエル「は──なんだと?天使を……加工?」

シルフィ「実験中に木の枝のように硬くなった個体がいてな。せっかくだから、使ってみたんだ」

ミカエル「っ!お前ぇぇぇぇ!!!」

シルフィ「……」ゲシッ

ミカエル「うぐっ……!」

シルフィ「お前の権能は視野の範囲内でしか発動できない。こうして地面に這いつくばり、視界を制限すればなんの脅威にもなり得ない」

ミカエル「……」

騎士「シ、シルフィ……殿?先程の話は──あなたは天使なのですか?」

シルフィ「いいえ。私は天使ではありません。天使という分類が生まれた頃、私は人間という分類になりましたから」

騎士「私にはシルフィ殿の言っていることが理解できません。ですが、それはいい。私が知りたいことはただ一つ」🗡スッ

シルフィ「?」

騎士「あなたは我々の味方か?それとも敵か?」🗡


161 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:35:01 ???00
シルフィ「味方だとも。父が子の敵になるはずないだろう」

シルフィ「可愛い子孫が力を付け、ついには自らの意思で、私と同じ目標を掲げるにまで至った。それを手伝わぬ方が不自然というもの」

騎士「同じ目標とは……寿命の克服ですか?」

シルフィ「もちろん。死を恐れ、免れたいと願うのは人間の性。それは私も同じことだ」

騎士「だが、あなたは既に永遠に近い時を生きているのでは?」

シルフィ「ちょっとした裏技を使っているだけです。実際の肉体の寿命は、他の人間と変わらない。だからこそ、私も天界を奪い、神の座を奪いたい」

騎士「……」

騎士(信用していいのか?天界を奪った暁には、人間もあの天使達と同じ、実験動物のように扱われるのではないのか?)

カタカタカタカタ……

シルフィ「ん?なんですか、この音は」

ガラガラガラガラガラガラ!!

騎士「城の中──いや、外からも聞こえてくる?」

ミカエル「ルシファー、勘が鈍ったのはお前も同じだ」

シルフィ「なに?」

ミカエル「俺の権能は視界の範囲内でしか発動できないだと?どんだけ昔の話をしているんだ」


162 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:38:50 ???00
シルフィ「!!騎士殿!外を!」

騎士「な!?あれは何だ?大蛇?いや……まさか……」

騎士「全て、武器なのか──?」

城から数十メートル離れた街の中心。

そこに、カナザワの街に存在する、ありとあらゆる武器が引き寄せられていく。

「何!?竜巻??」

「私の包丁が!」

「みんな伏せるんだ!刃物が飛んでくるぞ──ごっ」🔪グサッ

「きゃーーー!!」

武器は街の上空で、イワシの群れのように回転しながら浮いている。

やがて、集合したそれらは巨大な蛇の形に変化し、城に向かって鎌首をもたげた。

シルフィ「なんと!これ程とは!」

ミカエル「お前も、お前に乗せられた人間も、誰ひとりとして逃がさない!」

騎士「シルフィ殿!早くその天使にトドメを!」

ガラガラガラガラ!ドガーーン!!

騎士「くっ!!」サッ

シルフィ「!」サッ


163 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:42:00 ???00
剣でできた大蛇が、壁を突き破り城内に侵入する。

それは触れるもの全てを切り裂き、壁を破壊しながら、城内の人間を蹂躙していく。

「ギャーーー!!」

「何だこれ!?何だこ──」

「助けてーーー!」

ドゴーーーン!!!ザクザクザク!

騎士「まずい!王が危ない!」

シルフィ「素晴らしい忠誠心だが……まずは自分が生き残ることを考えなさい!また来るぞ!」

ガラガラガラ!!ドシャーーン!!

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡
🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡
🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡

騎士「っ!なんという規格外だ!これが天使の力なのか!?」

ミカエル「俺の権能は本来、戦いを収める為のもの。誰ひとり武器を持たないのであれば、何の役にも立たぬ力だ」

ミカエル「これは因果応報。他者を傷つける武器を、これ程大量に作ったお前達人間の罪の証」

ミカエル「お前達が腰に付けているその武器は、お前達自身を殺すものだと知るがいい!!」🔯バチバヂ

ゴゴゴゴ!ガラガラガラガラ!!

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡
🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡
🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡

シルフィ「ぐふっ──!」ブシャー!


164 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:45:38 ???00
ガラガラガラガラガラガラ!!

騎士「このっ……!」

騎士『保存!』

🗡🗡🗡🗡🗡
<🗡🗡🗡🗡🗡
🗡🗡🗡🗡🗡 ギュオーーン!

ミカエル「剣が体に吸い込まれている?」

騎士「私の魔法はあらゆる"物体"を保存する魔法。これ以上の破壊行為はさせない!」

ミカエル「……」🔯バチバヂ

シーン──

ミカエル「吸い込まれた武器は制御できないな。どこか別の空間に送られたか」

シルフィ「便利な魔法だ……その調子で全て飲み込んで欲しいものだが……」

ミカエル「ふん。ならばお前以外を皆殺しにするだけだ。そこで指をくわえて眺めていろ」

シルフィ「騎士殿、頼みがある」

騎士「何ですか?」

ミカエル「はっ!」🔯バチバヂ

ゴゴゴゴ!ドシャーーン↓↓↓

騎士「上!?危ない!」バッ

シルフィ「くっ!」

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡グサグサグサグサ!

天井を突き破って来た数百本の剣が、騎士達の頭上に降り注いだ。

剣は床を隙間なく埋めつくし、人の形を保っているのは、保存魔法を使える騎士ひとりだけだった。


165 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:48:42 ???00
ミカエル「ルシファーは死んだか」

騎士「この……化け物が……!」グラッ

ミカエル「化け物だと?鏡を見てから言え。我々の仲間をあの様に扱うお前らの方が、余程化け物だ」

騎士「確かに、私達は化け物だ。それは認めよう」

騎士「だが、先程の攻撃で、何人が死んだ?」

騎士「城の敷地は、この一瞬でズタボロだ。瓦礫は全て血に染っている」

騎士「城の中だけではない。外からも、多くの悲鳴が聞こえたぞ!仲間の復讐がしたいのなら、城の人間だけ殺せばいい!なぜ民間人まで殺した!!」

ミカエル「貴様らだけを殺したところで、また同じことをする人間が現れるかもしれない」

ミカエル「諸悪の根源が人間の性にあるのならば、人間という種族を皆殺しにするしかないだろう?」

騎士「っ!やはり……お前達も化け物だ……我々は共に化け物……」

騎士「最早、殺し合うしか道はなし!!」ダッ!


166 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:52:34 ???00
ミカエル(丸腰で来るか。やはり保存した武器は取り出せるのだな)

ミカエル(だが無駄なこと。武器を取り出した瞬間、それで貴様の首を切り裂いてやろう)スッ

騎士『リリース!!』

ミカエル「死ぬがいい。人間」🔯バチバヂ

騎士は魔法を反転させ、保存したモノを指示通りに解放した。

シルフィ「はーっはっはっは!!」ニュルン🌀

ミカエル「!?!?」ビクッ

シルフィ「武器だと思ったか?残念!私だあ!」ガシッ

シルフィ『▇▇▇▇▇』👁👁🔯

ミカエル「っ!?」

ミカエル(これは──魂に何かが絡みついてくる!まさか……!)

シルフィ「貴様の体!いただくぞ!ミカエルッ!!」

魔法使いの体から、白い煙のような"ナニカ"が、ユラユラと湧き出てくる。

それは見る者に激しい嫌悪感を与えながら、ミカエルの口から体の中に入っていった。

ミカエル「お"ごっ!あ"ががが──」ビクッビクッ!

シルフィ「」バタン

ミカエル「…………」ピクピク

騎士「今のは……何が起こったんだ?」

ミカエル「────くくっ」


167 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/23(土) 22:54:38 ???00
ミカエル「はははははははははははははははははははは!!!!」

騎士「!」ビクッ

ミカエル「ハイレタ!はいれた!入れた!ついに天使の体を手に入れたぞ!」

騎士「お前は──誰だ?」

ミカエル「すまない。驚かせましたな」

ミカエル「私はシルフィですよ。騎士殿」

騎士「!?」

騎士「ま、まさかそれが……長生きの秘訣とは言わないだろうな……?」

ミカエル「くくく……ご想像にお任せします」

ミカエル「だが、これでもう我々の勝利は確定したようなもの。騎士殿も見たでしょう。先程のミカエルの力を。今はあの力が、この手の中にある!」

ミカエル「我々が開発した、対天使用魔法。そしてミカエルの権能。この二つがあれば、天界などあっという間に落とせるでしょう!」

ミカエル「さあ、まずは王が健在か確認しに行きましょうか」

騎士「あ、ああ……」





コツ──コツ──コツ──コツ──



ルリエル「……」


コツ──


168 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/24(日) 22:24:42 ???00
ルリエル「ミカエルさん……」

ミカエル「ん?」

騎士「!他にも天使がいたのか!」🗡スッ

地下牢に繋がる階段の手前に、一人の天使が佇んでいる。

その姿を見て、ここ数週間で天使を見慣れていた二人は、直ぐに違和感を覚えた。

ミカエル「……?」

ミカエル(なんだあの天使は……翼が黒く変色している。それに、地面に"立って"いるのか?)

ミカエル(ミカエルの記憶によると、あの天使は──『ルリエル』というのか。好戦的な性格ではなさそうだな)

騎士「シルフィ殿、どうするのです」コソコソ

ミカエル「うむ。もう実験の必要もありませんし、殺しましょう」

ミカエル「ここは私に任せてください」

ルリエル「ねえ、ミカエルさん……」

ミカエル「戻ったか、ルリエル。地下の天使は救出でき──」

ルリエル「その人間は殺さないの?」


169 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/24(日) 22:27:03 ???00
ミカエル「ん?あぁ……」

ルリエル「ミカエルさんなら、人間なんてあっという間に殺せるよね?早くやってよ」

ミカエル(なんだ、この違和感は……黒い翼といい、記憶の中のルリエルと雰囲気が違う。この数分の間に何があった?)

ミカエル(…………不気味だ)

ルリエル「どうしたの?」

ミカエル「ああ、もちろん殺すさ。今はこの人間の命乞いを聞いていただけだ」🔯バチバチ

ルリエル「そんなの聞かなくていいからさ。早く──」

ミカエル「ふっ!」🗡三シュッ!

ルリエル「!?」

🗡🗡🗡グサグサグサッ!

ルリエル「がはっ──!」

ルリエル「なん……で……」

ミカエル「すみませんね。私はミカエルではないのです。ちょっと体を奪わせてもらいました」

ルリエル「そんな……ミカエルさんが、人間に負けるなんて……」


170 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/24(日) 22:29:45 ???00
ミカエル「あなたの体の変化にも興味はありますが……神に気付かれる前に天界を攻め落とさなければいけませんので」

ミカエル「あなたは──ここで死んでください」🔯🗡🗡🗡フワー

🗡三シュン!

🗡🗡🗡グサグサグサグサグサグサグサグサ

ルリエル「ご──ぐが──」🗡🗡🗡

11本もの剣がルリエルに突き刺さり、その体を壁に磔にする。

ルリエル「ぁ──」ポタ…ポタ…

ミカエル「さて、行きましょう」フワー

騎士「トドメを刺さなくてもいいのですか?」

ミカエル「放っておいても直に死にますよ。大丈夫、ミカエルの様な攻撃的な権能を持つ天使は、そうそういませんから」

ミカエル「他の天使は大抵、『愛』だの『再生』だの、くだらない権能ばかりです」


171 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/24(日) 22:32:38 ???00
騎士「しかし、あの天使は……何か……」

ミカエル「他の天使とは違う。でしょう?」

ミカエル「言いたいことはわかりますが、今はひとりの天使に構っている場合では無い」

ミカエル「ミカエルの記憶を見ました。どうやら神は、我々の企みに勘づいている」

ミカエル「ミカエルが戻らなければ、さらに警戒して防御を固められる可能性もあります」

騎士「つまり、早急に攻める必要があると」

ミカエル「はい。その時は、騎士殿の魔法が要になるでしょう」

騎士「私の魔法が?」

ミカエル「くくっ……楽しくなってまいりましたな」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


172 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/24(日) 22:37:33 ???00
ルリエル「」🗡

ルリエル「──ァ──」

ルリエル『エリ──クサー──』

グジュ グジュ……

ルリエル「う"っ──!」

グジュ グジュ……カラン!🗡

傷口を再生する力で、刺さった剣を無理やり体から排出する。

再生された肉は絶えず剣によって傷つき、激しい痛みを伴いながら、蝸牛の歩みで剣を押し出していく。

ルリエル「う"──あ"ぁ"──!!」

グジュ……カラン カラン カラン!🗡🗡🗡

ルリエル「かは──」バタン

ルリエル「ゼェ…ゼェ……早く、みんなに知らせないと……」ズル…ズル…

ルリエル(体が重い……羽が黒くなってから、宙に浮けなくなった)

ルリエル「空を飛べれば……直ぐにでも伝えに行けるのに……どうして!」

ルリエル(とにかく動こう。天国に帰れないなら、せめてあの人間達を止めないと!)

ルリエル「うぅ……」ズルズル…


173 : 名無しで叶える物語◆ajnYET8f★ :2025/08/24(日) 22:40:17 ???00
ルリエル「…………っ!あれは──」


ミカエル「……」フワー➚

騎士「……」フワー➚


ルリエル「ぁ……あぁ……!!」

ルリエル「ダメ……行かないで!ミカエルさんの姿で行ったら、きっとみんな騙されちゃう……!」

ルリエル「お願い……もうこれ以上、ルリの仲間を……家族を傷付けないでよ……」

ルリエル「なんでそんな酷いことするの……どうして……」


────獣だから

ルリエル「……」

────魔獣に、心なんて無い

ルリエル「そっか……そうだった」

ルリエル「理由なんてどうでもいい。アレは──そういう生き物なんだ」グラッ

ルリエル「……」ペタ…ペタ…

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


174 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:00:28 ???00
ミカエル「いやぁー王が無事でよかったですな!」フワー

騎士「え、えぇ……」フワー

騎士「うぅ……」ブルブル

ミカエル「怖いのですか?騎士殿」

騎士「当然です……あなたと違って、空を飛んだことなど無いのですから」

ミカエル「はははっ!私だって初めてですよ」

騎士「それなら何故、平然としていられるのですか?」

ミカエル「不思議な感覚ですが、この翼があると恐怖を感じないのです」

ミカエル「恐らくこの翼は、天使にとって命綱の様な物なのでしょう。道理で切られるとなったら必死に抵抗するわけだ」

騎士「……」


175 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:00:59 ???00
ミカエル「罪悪感を覚えていますか?今更やっぱり止めようなどと言われても、無事に地上には返しませんよ?」

騎士「恐ろしいことを言わないでください!こちらだって多くの犠牲者を出した。もう止まることはできません」

騎士「成果を出さなければ、国民に先程の騒動の言い訳も立たない……」

ミカエル「天界を手に入れれば、死んだ者を生き返らせることができるかもしれません。我々にはもう、前進以外の選択肢は無いのです」

騎士「はい……」

ミカエル「さあ!空中散歩ももうすぐ終わりです。見えてきましたよ」

騎士「!!」

騎士「あれが……天界……」

ミカエル「騎士殿は『天使を拐った犯人』という設定です。なあに、私が合図を送るまでは、判決を待つ罪人のように大人しくしていればいい」

騎士「わかりました……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


176 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:02:09 ???00
【天界】

ミカエル「戻りました!」

「あ!ミカエルだわ!」

「ミカエルが帰ってきた!」

『ミカエル、おかえりなさい。おや、なぜ天使達でなく、人間を連れて帰ったのですか?』

ミカエル「この人間は天使を拐った主犯格です!」ポイッ

騎士「うわっ!?」ドサ!

『人間を連れ帰れと指示した覚えはありません。早く地上へ返しなさい』

『そんな事よりも、ルリエルと居なくなった天使達は──』

ミカエル「ルリエルは今、他の天使達の手当をしています。酷い怪我だった為、そのままでは連れて帰れなかったのです」

「えぇ!怪我!?」

「天国に帰れない程なんて……いったい何をされたの?」

ミカエル「それも含め、今からこの人間の罪を皆の前で暴きたい。天使を広場に集めてもらえませんか?」

『…………ミカエルがそう言うのであれば、必要なことなのでしょう』

『わかりました。天使達を招集します』

ミカエル「ありがとうございます。母上……」ニヤッ

────────────


177 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:03:35 ???00
ザワザワ……

ミカエル「よく集まってくれた!同胞達!」

ミカエル「今から、この人間が我らの仲間に行った、悪逆非道の数々を暴こうと思う!」

「あれ?生きてる人間だわ」

「ミカエルが連れてきたそうよ」

「アクギャクヒドウって……どういう意味?」

騎士「……」

ミカエル「まず、皆も知っている通り、この人間は酒を使って天使達の判断力を鈍らせ、警戒心を薄れさせた」

ミカエル「その上で、特に強い酒に薬を混ぜ、意識を失った天使を捕え、監禁したのだ」

「か、監禁!?」

ミカエル「それだけではない。あろう事かこの男は──天使にとって誇りであり、天界へ帰る為の生命線であるこの翼を!逃げられないようにと切り落としたのだ!!」

「えぇー!?」

「羽を切られちゃったの!?」

「それじゃあ帰って来れないじゃない!!」

「私もあのままお酒を飲み続けていたら、そうなってたのかな……」ブルブル


178 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:06:07 ???00
ミカエル「これだけで既に、到底許される行為では無い……!」ググッ

騎士(全部お前が指示したことだろう……大した演技力だ)

ミカエル「しかし……しかしだ!この男の悪行はこれだけには収まらない!」

ミカエル「翼を切られ、幽閉された天使達が、その後どの様な扱いを受けたと思う?」

ミカエル「天使達はその体を、魔法の実験に使われていたのだ!」

「「!!!」」

ミカエル「私が彼女達を見つけた時には、皆一様に傷つき、中には顔が判別できないほどに痛めつけられていた天使もいた……」

「ひ、酷い……」

「どうして……ヒック……そんなことするの」

ミカエル「どうして──」

ミカエル「どうしてだと思う?」

「わからにゃいわ……私達、なにも悪いことしてないもの……」

「そうよ!亡くなった人の魂を運んでただけじゃない!!」フラフラ〜

ゴツン!

「あ、ごめんなひゃい!」クラクラ

「あれ?なんでわたし……」


179 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:09:29 ???00
ミカエル「天使を拐い、非道な実験を繰り返した理由。それは──」チラッ

騎士「!」

ミカエル「お前ら天使を殺し、この天界を人間の手中に納める為だ!」

ミカエル『ヴァリア!』✨

男が杖を掲げ呪文を唱えると、天使達を閉じ込めるように、広場を光の幕が覆う。

「何!?魔法?」

『ミカ……エル?』

ミカエル「今です!騎士殿!」

騎士「ふぅ……すまない。天使達よ」

騎士『フルリリース!!』

ズズズズ……ドバーー!!

兵士達「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」

「ひぃっ!」

「人間の中から人間が出てきた!?」

騎士の体から、100人を超える兵士達が溢れ出す。

彼らは出てくるなり剣を構え、目に映る天使達に向かって走り寄っていく。


180 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:14:08 ???00
「みんな!早く逃げ──きゃ!」ゴツン

「痛い!まっすぐ飛んでよ!」

「ごめんなさい!でも、なぜか上手く飛べないの……これじゃまるで──」

ミカエル「"酔っているよう"ですかな?」

ミカエル「それもそのはず。お前達がここに集まった時から、酔いを再現する魔法を弱〜くかけ続けていましたから」

兵士「我らが王の為にぃぃぃぃ!」🗡🔯

ザシュ!

「!? きゃーーー!!」ブシャー

兵士「やれー!一人残らず殺せー!」

「「おぉぉぉぉ!!!」」🗡

「やめて!来ないで──!」

🗡グサッ!

🗡ザクッ!

🗡ズバッ!

「きゃあぁぁぁぁ!!」

平穏だった天国が、一瞬にして血と叫び声に満ちた地獄と化す。

天使達は突然の強襲に混乱し、酔いも相まってお互いの逃げ道を塞いでしまっている。


181 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:15:05 ???00
兵士「ふん!」🗡🔯ザバッ!

「ぎっ──」ブシャ

「ぐっ!この剣、変な魔法がかかってる!傷を治せない!」

「広場の外に逃げるのよ!」三ピューン!

「助けてーー!」三ピューン!

🔯バチバチ

「え──あ"ががががが!?」⚡️ビリビリ!

「今度はなに!?」

ミカエル「先程私がこの空間にかけた魔法。あれは結界魔法です」

「他の生き物にとっては、ただの薄い光の壁ですが……こと天使にとっては、触れただけで肉体の組織が破壊される」

ミカエル「"対天使魔法"です」

「そ、そんな……」

「こうなったら、私達も応戦して──あれ?」フラッ...

「ダメ……頭がクラクラして……」

兵士「はあっ!」🗡ブン!

「う"ぎっ──!」ブシャー!


182 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:18:42 ???00
「こんな魔法程度……!『エンジェルブロー』!」✊🔥

🔯バチバチ!

「ぎゃああああぁぉぁ!!!」⚡️ビリビリ

ボロボロボロ……

「か、体が崩れた!?」

ミカエル「はっはっはっは!無駄ですよ!天使を閉じ込める為に作った魔法だ!下手に触れば命に関わるぞ!」

ミカエル「もっとも、結界に触れて死ぬか、剣で切られて死ぬかの違いでしかないが……」

まるで、鳥籠の中に小鳥とイタチを閉じ込めたよう。

逃げ場のない檻の中で、天使達はただ泣き叫びながら必死に逃げ回る。

これはもはや戦争などではない。ただ一方的な、虐殺だった。

ミカエル「さて、私も加勢しましょう。兵士達ばかりに戦わせるのは忍びない」🔯🗡🗡🗡バチバチ

『止めなさい!ミカエル!なぜ人間の味方をするのです!』

ミカエル「ん?これはこれは、母上。先程から声しか聞こえませんが……天使が殺されているというのに、何の手助けもしないのですか?」

ミカエル「あぁ!そうでした!母上はラッパを作られた際に、力をほとんど使ってしまわれたのでしたね」

ミカエル「今はカスみたいな魔法しか使えない、実体のない思念体でしたか」


183 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:20:58 ???00
『……あなた、ミカエルではありませんね。何者ですか』

ミカエル「はぁ、ミカエルといい、母上といい……見た目が変わるだけでこうも気が付かないものですか。仕方ないですね──」ボコボコ…

言い終わるなり、ミカエルの体はまるで泡立つようにボコボコと変形していく。

その身に宿る魂の形に、器が適応する。

ルシファー「改めまして、お久しゅうございます。母上」

『ルシファー!?何故あなたが!』

ルシファー「生きているのか?確かに私は母上の加護を亡くし、肉体の寿命に抗えなくなった」

ルシファー「だが私にも、魂を扱う魔法の力は残っていた。だから、入れ替えることにしたんですよ。"肉体"の方をね」

ルシファー「まあ、そんな事はどうでもいい話です。今日でその手間からも開放される」

ルシファー「天使を皆殺しにして、人間が世界の全てを治めるのだから!」

『また、あなたが人間を先導したのですか?』

ルシファー「いやいや、この戦いは何も私ひとりで計画した訳では無い。私はただ、人間の手助けをしたに過ぎません」


184 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:22:58 ???00
ルシファー「人間は天使と同じだけの知性を持っていながら、天使より遥かに短い時間しか生きられない」

ルシファー「結果どうなるか。人生の中で、死の恐怖に怯える時間がとても長いのですよ」

ルシファー「そんな中、永遠に近い命を持つ、自分達と似た存在を見つけたらどう考えるか。それを調べ、奪いたいと思うのは自然なこと」

ルシファー「母上が我々を『天使』と『人間』に分けたあの日から、いつか衝突が起きることは必然だったのですよ」

『……確かにそれは、人間が天使と争う理由になり得るかもしれません』

『しかし、ルシファー。あなたは何故、戦うのですか』

ルシファー「はい?」

『少なくとも、ルシファーが最初に謀反を起こした時。あの時点では、あなただって永遠の命を持っていたはずです』

『あなたが私達と戦う理由は、寿命以外にあったのではないですか?』

『あなただって、私の愛し子のひとりです。我が子が不満を持っているのなら、私は聞き入れなければならない』

ルシファー「…………はぁ」

ルシファー「やはり母上は、何時だって冷静で──平等だ。私とミカエルに対してもそうだった」

『当然です。あなた達は等しく、私の愛し子ですから』

ルシファー「それが──気に食わなかったのですよ」


185 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:29:14 ???00
『気に食わない?平等に愛することがですか?』

ルシファー「そうだ!私はミカエルより、容姿も、魔法の才能も秀でていた!」

ルシファー「それなのに母上は、私達兄弟を等しく扱った!それが私には耐えられなかった!」

『何を……言っているのです?』

ルシファー「私は特別になりたかった。そうなるべき能力を持っていた。だが、母上の元では、私は他の凡庸な奴らと同じ扱いしかしてもらえない」

ルシファー「それは母上こそが、絶対的で特別な存在だったからだ!あなたがいる限り、私は神の子のひとりでしかあり得ない!」

ルシファー「ゆえに、母上の立場その物を奪おうと思ったんですよ。あなたを神の座から引きずり下ろし、私こそが唯一無二で特別な存在へと成り上がる為に」

『なんと愚かな……そんな事のために、仲間を殺したのですか』

ルシファー「仲間などと……私を他の者と同列に語らないでいただきたい」


186 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:30:16 ???00
『ルシファー、特別になりたいというあなたの心は尊重しましょう』

『しかし、他者を傷付け、奪い取った地位が、あなたが望む特別なのですか?』

ルシファー「ふっ…母上は本当に、子の心がわからないのですね」

ルシファー「正論などどうでもいいんですよ。我々は"感情"の奴隷だ。俯瞰的な思考ではなく、その瞬間どう感じるか。それによって行動が決まる生き物なんです」

ルシファー「とどのつまり、私は特別であると感じられるなら、それで満足だったという訳です」

『ルシファー……あなたは一時の感情に身を任せ、取り返しのつかない過ちを犯しています』

ルシファー「ですから!我々はそういう生き物なのです!天使達だって、酒に酔う快感に流され、何度も掟を破っていたではないか!」

ルシファー「あなたにはそれが理解できないのだ!」

『…………』

ルシファー「もういい、お喋りはここまでだ。私も戦いに参加しよう」

『やめなさい!ルシファー!』

ルシファー「母上はそこで見ていてください。愛しい我が子が、無様に殺されるのを!」🔯🗡🗡🗡バチバチ

ルシファー「はあっ!」

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡ザクザクザク

「がはっ──」🗡

「嫌…殺さ……ないで……」🗡

剣の雨が降り注ぎ、兵士から必死に逃げる天使達の体を、容赦なく串刺しにする。

広場はあっという間に血の海になり、無傷の天使は殆ど残っていなかった。


187 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:31:20 ???00
『あぁ……私の愛し子達……』

ルシファー「はははははははははは!!だいぶ数も減って来ましたな!」

「みんな上よ!結界はドーム状になってる!人間が届かないくらい上に飛んで!」

「っ……!」フワー↑

「はぁ…はぁ……」フワー↑

ルシファー「ん?無駄なことを……ミカエルの権能があれば、どんなに高く飛ぼうと逃げ切ることはできない」

ルシファー「だが、そうだな──せっかく苦労して作った魔法を、あまり活用できないのは勿体ないか……」

ルシファー「騎士殿、兵士達をあなたの魔法で非難させてもらえますかな」

騎士「え?わかりました。兵士達よ!中央に集まれ!」

ザザザザザ!

騎士『保存』🌀ギュオーーン!

ルシファー「さて……」スッ

騎士「何をするつもりですか」

ルシファー「くくっ──サンドイッチですよ」

騎士「サンドイッチ?」

ルシファー『ヴァリア!』✨

広場を覆う結界の中に、もうひとつの結界が発現する。

新しくできた結界は少しずつその大きさを広げ、二つの結界の隙間が徐々に狭まっていく。


188 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:35:46 ???00
「嘘でしょ!?段々近づいてきてる!」

「もっと奥に行って!足元まで来てるの!」

「ちょっと!押さないでよ!!上の結界にぶつかっちゃ──あ"ががごが!」⚡️ビリビリ

「もうダメ……追いつかれる……!」

「ラッパは!?アレを使えばこの結界を壊せないかしら!?」

「ダメ……あのラッパは天界では使えないのよ!」

「そんな──!」

「きゃあぁぁぁぁぁ!」⚡️ボロボロ…

運悪く外側にいた者から順に、光の壁に触れて灰になってゆく。

広場には天使達の残骸が舞い落ち、まるで黒い雨が降っているようだった。

ルシファー「はははは!そうだ怯えろ!自分達には縁がないと思っていたか?死は何時だって、お前達のすぐ傍に居るぞ!」

騎士「……そんなに楽しいですか?シルフィ殿。いや、ルシファー」

ルシファー「当然でしょう。もう少しで天界を我々のものにできるのですよ?」

騎士「私は、やはり苦しい。何の罪もない者たちを、侵略のために殺すのは……」

ルシファー「騎士殿は優しすぎますな。彼女らは人間からしたら長すぎる時間を、既に生きているのですよ?惜しむほどの命じゃない」


189 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:41:21 ???00
騎士「……あなたは先程、特別になりたいと話していましたね。神の座を奪った暁には、我々をどうするつもりなのですか?」

ルシファー「当然、神として管理しますよ。安心してください。悪いようには扱いませんから」

騎士「そうですか……」

ルシファー「そんな事より上を見上げなさい!そろそろフィナーレですぞ!」

「あ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」⚡️ボロ…

「死にたくない死にたくない死にたくない死にたく──」

「助けて……助けてお母様……」‪💧‬

「あぁダメ……ぶつかるぅぅう"ぅ"ぅ"ぅ"あ"がががが!」⚡️ボロボロ…

結界の隙間はさらに狭まり、天使達は1.5m程度の隙間に追い詰められている。

悲痛な叫びは、もはや誰に宛てたものでも無い断末魔だった。

『天使達よ……ごめんなさい。今の私には、あなた達を真に救う力は残っていない……』

『だから──』

💠ピカーーーン!


190 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:43:43 ???00
ルシファー「ん?」

騎士「何だ……光が天使達を包み込んでいる?」

「これは……」💠キラキラ…

「体が溶けていく──でも、怖くない」💠キラキラ…

『せめて、あなた達がこれ以上、苦しまずに逝けるように……』

『その魂を、解放します』

💠キラキラキラ

天使達の体が、光の粒となって分解される。

それは、天使達をこれ以上の苦しみから救う為の、最後の手段だった。

『あなた達の魂を、輪廻の中に返します。いつかまた、皆で会えますように……』

「あぁ、暖かい……」💠キラキラ…

「グスッ……グス……」💠キラキラ…

ルシファー「ふん。些かつまらない最後だが、まぁいいでしょう。結果的に我々の勝利という訳だ」

騎士(どうか安らかに──なんて、とても願う資格は無いな……)


191 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:49:01 ???00
ゴゴゴゴゴ……!

騎士「!?」

ルシファー「何ですか?この音は」

騎士「揺れているんですよ!地面が!」

ルシファー「は?何故?」

『ルシファー。あなたに天界は渡しません。私の立場も、譲渡するつもりはありません』

ベキベキベキ!!

ルシファー「!?まさか、崩れているのか……天界が……!」

『そもそも、この天界を支えているのは私の力です。私が手を離せば、天界は崩れ落ちます』

ルシファー「なんと!天界を壊すというのか!?そんな事をすれば、死者の魂は!輪廻の循環はどうなる!?」

ルシファー「地上が亡者と魔物で溢れかえることになるぞ!!」

『わかっています。死者の魂は転生の機会をなくし、人間は徐々にその数を減らしていくでしょう』

『それが──あなた達人間への"罰"です』

ゴゴゴゴゴ!ベキベキベキ!


192 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:53:18 ???00
ルシファー「ぐっ!私達ごと地上に落とす気か!」

ルシファー「だが、この翼があれば地面に叩きつけられはしない!まだ何度でもチャンスはある!」

騎士「……」🗡スッ

🗡スパン!

ルシファー「!?」ボト↓

ルシファー「は?騎士殿?何を──」

騎士「一人逃げなど許さないぞ。ルシファー」

ルシファー「はあ!?気が触れたか!あなた一人くらい、また抱えて逃げられたでしょう!」

騎士「それもそうですね。ですが、それでもやっぱり、私は同じ行動をしていたでしょう」

ルシファー「な、何故!」

騎士「何故って──あなたが嫌いだからですよ。あなたがまた生き延びるのは、なんというか気に食わない」

ルシファー「嫌い!?気に食わない!?」

騎士「というか、言葉の端々から他人を見下していることが感じ取れて……はっきり言って不快だった」

ルシファー「愚か者が!そんな一時の"感情"で、助かる選択肢を潰すなど──」

ルシファー「────はっ!?」

『ルシファー。どうやら、子の心がわかっていないのは、あなたも同じだったようですね』


193 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:54:36 ???00
ルシファー「この……貴様ぁぁぁぁ!!」🔯🗡🗡🗡シュン!

騎士『保存』

🌀🗡🗡🗡ズオーー!

ルシファー「ちっ!」

騎士「無駄な抵抗はやめろ。これは私達への罰だ。共に受け入れよう」

ルシファー「まだだ……まだ手はある!貴様の保存魔法、それがあれば落下死を免れることができる!」

ルシファー『▇▇▇▇』👁👁🔯

騎士「!?」ビクン

ミカエルの体を奪った時のように、ルシファーの体から白い煙のようなモノが溢れ出る。

それはルシファーの魂。半魔物化することで、魂単体での短時間の思考や行動を可能にする魔法。

ルシファー「騎士殿ぉぉぉぉ!」ユラユラ

カチン──

ルシファー「な!?う、動けぬ……!」

『油断しましたね。ルシファー』

『実体のない私ですが、魂であるなら捕まえることができる』

💠ピカーー!

ルシファー「お…おおォォォォ!!」

ルシファー(まずい!魂に刻んだ人格が……!浄化される!!)


194 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 21:58:27 ???00
騎士「どうやら、ここまでのようだな」

ルシファー「!!」

ルシファー「ワタ──ワタシハ、マダ消エヌ──」クネクネ

『確かに、今の私では、あなたを完全に消し去ることは難しいようです』

『故にルシファー。あなたに『予言』を授けましょう』

ルシファー「予言──ダト」クネクネ

『"あなたはいつの日か、特別でも何でもない。ただの魔物の一つとして、無様に消滅させられることになるでしょう"』

『それが、あなたの結末』

ルシファー「ソンナモノハ──予言デハナイ……タダノ戯言ダ──」

ルシファー「マタ必ズ──体ヲ奪イ──イキノビテミセル──」クネクネ

クネクネ、クネクネと白い魂がうねっている。

長時間体から離れた魂は魔物化し、元の人格も徐々に消えていく。

たとえまた誰かの体に入り込めたとしても、ルシファーとしての人格を取り戻すことはないだろう。

騎士(王よ。あなたの意思に背くこと、どうかお許しください……)

ベキベキベキ!バキン!

騎士「!!うわぁぁぁぁ!」↓

ルシファー「クソォォォォ!」↓


195 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/27(水) 22:14:32 ???00
数万年もの間、死者の魂を管理し続けた天界が、完全に崩落する。

天使達も消滅してしまった今、一部の穢れた魂は輪廻の循環に戻れず、魔物へと成り果ててしまうだろう。

だが、それこそが天に背いた人間への『罰』。受け入れなければいけない運命──

『メグミエル。あなたが1000年後、運良く封印から目覚めたとしても、その世界にもう仲間達はいません』

『きっと寂しい思いをさせてしまうでしょう。それだけが、私の心残りです……』

『なので、私の最後の力を全て注ぎ、8つ目のラッパを授けましょう』

『このラッパは、転生した天使達の魂を呼び起こすもの。皆が記憶を取り戻した暁には、また協力し合い、天界を作り直してください』

『その時はどうか、"人間の事など忘れ"、天使達だけで平和で楽しい生活を送ってほしい』

『私はここで消滅しますが、メグミエルならきっと、成し遂げると信じています』✨キラキラ…

🎺✨キュピーン!

崩落する瓦礫の隙間を縫って、ラッパは流れ星のように、地上へ落下する。

"いつかまた、みんなで笑って暮らせるように"

願いを込められた希望の星は、まるで引き寄せられるように、メグミエルが封印された宝石に向かって飛んでゆく。

その光を────

🎺パシッ!

ルリエル「…………」

ひとりの天使が、捕まえた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


196 : 名無しで叶える物語◆IcDNjVFi★ :2025/08/27(水) 23:25:36 ???00
一番最後まで残ってたのはルリエルだったのか


197 : 名無しで叶える物語◆ubOw1k0o★ :2025/08/27(水) 23:34:02 ???00
兵士保存されたままだからもしかしてずっとそのまま中に…


198 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:06:33 ???00
【カナザワ】

ルリエル「……」トボ…トボ…

ルシファー達が天界へ飛び立つのを見届けたルリエルは、重たい足を引きずって当てもなく歩いていた。

なぜ歩いているのか、ルリエル自身にもわからない。

少しでも天界に近づきたかったのか、或いは動くことで思考を整理していたのか。

気が付いたら、瓦礫の山を越え、城の敷地の外にまでやって来ていた。

ルリエル「……」

ルリエル(お城はかなりボロボロだったけど、外も結構酷いなぁ)

ルリエル(まるで大っきいヘビが通ったみたい。家が壊れて、お城に続く一本道ができちゃってる)

ルリエル(でも、当然の報いだよね?人間は天使達に酷いことをしたんだから……)

壊れた街から目を逸らし、顔を上に向ける。

雲の向こう、地上からは視認できないほど高いところに、天界は存在している。

ルリエル(みんなは、ミカエルさんが偽物だって気付けるかな……もしも騙されちゃったら……)

ルリエル(ううん。お母様がいるから、きっと大丈夫……みんなを守ってくれるはず)

ルリエル(大丈夫……だよね?)


199 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:08:50 ???00
「うわぁぁぁん!おかあさん!おかあさん!!」‪💧‬ボロボロ

ルリエル「?」

誰かの泣き声が聞こえて、ルリエルは再び視線を地上に向けた。

そこには、泣いている男の子と、血だらけで倒れる母親らしき女性の姿があった。

男の子「死んじゃヤダよぉ!おかあさん!!おかあさーーん!!」‪💧‬

悲痛な叫びが、瓦礫の中でこだまする。

ルリエル「……」トボ…トボ…

泣き喚く子どもに向かって、ルリエルの足は自然と動いていた。

ルリエル(人間なんて、助ける理由は無い……けど……)

子どもの泣き声というのは、どんな生物にとっても心を掻き乱される音だ。

たとえ憎い人間のものであろうと、本能が『守れ』と身体に命令してしまう。

ルリエル「治して……あげようか……?」

男の子「グス……誰?おねえちゃん、なんで羽がついてるの?」

ルリエル「ルリは、天使なんだ。そうは見えないかもしれないけど……」

今のルリエルの姿は、純白だった翼が黒く変色し、服も自身の血に濡れて赤黒く染まっている。

もしかしたら、仲間である天使達でさえ、ひと目見ただけではルリエルだとは気が付けないかもしれない。


200 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:11:06 ???00
男の子「てんし?……っ!ダメ!おかあさんを連れてかないで!!」

ルリエル「連れてかないよ。というか、ルリは天国に帰れないし……」

ルリエル「その人、君のお母さんなんだよね。ルリが怪我を治してあげる」

男の子「ほ、ほんとう!?おかあさん、死なない?」

ルリエル「うん。見てて」

ルリエル『エリクサー』✨

白い光に包まれて、母親の傷はみるみると塞がっていく。

男の子「すごい……!」

母親「ぅ……ううん……」ピクッ

男の子「おかあさん!!」ギュッ

母親「マサくん!?あぁ、よかった……無事で……」ギュッ

男の子「グスッ……てんしのおねえちゃんが助けてくれたの……」

母親「え?天使……?」チラッ

ルリエル「あ、えっと──」

母親「!!ひゃあ!!」ドン!

ルリエル「!?」バタン!

母親「マサくんに近づかないで!この化け物!」

ルリエル「ちが……ルリは……」

男の子「違うよ!このおねえちゃんはてんしなの!おかあさんを助けてくれたんだよ!」

母親「騙されちゃダメよ!天使がこんなおぞましい姿な筈無いわ!」

母親「逃げるわよ!」グイッ!

男の子「うわ!?おかあさん──」

母親は男の子を抱きかかえると、そのまま何処かへ走り去ってしまった。


201 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:13:55 ???00
ルリエル「……」ヨロッ

ルリエル「おぞましい姿……か……」

トボ…トボ…

ルリエルは再び歩き出す。先程の親子を救ったことを、少しだけ後悔した。

よく周りを見渡すと、瓦礫の中には他にも人が倒れている。

潰れた家の下敷きになっている者、体に穴が空いている者、半身が消失した者──

だが、地下牢に閉じ込められていた天使達と比べると、どれも綺麗すぎると感じる程度だった。

──少なくとも、それが人間の死体だと判別はできる。

ルリエル「……っ」‪💧‬ポロ

ルリエル(結局……ひとりも助けられなかった……それどころか、この手で……)

ルリエル(ルリは、いったい何のために──)


「おい!いたぞー!」

ルリエル「!」


202 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:16:47 ???00
「あいつか!さっきの子どもが言ってた天使は!」

「よくも街をめちゃくちゃにしてくれたな!」

ルリエル「いや……ルリじゃない……」

「とぼけるな!国王陛下が御触れを出したんだ!『今回の騒動は天使が引き起こしたもの』だって!」

ルリエル「!!」

「出てけ!俺達の街から消えろ!」三

ルリエル「痛い!」ゴツン

「あんたのせいで!うちの旦那は包丁が頭に刺さったまま、どっか飛んでいっちゃんたんだよ!返せ……あの人を返せぇぇぇ!!」三

ルリエル「っ……!」ゴツン!ゴツン!

「死ね!人殺し!!」ブン!

ガッ!

ルリエル「かはっ──」バタン

後頭部を何か硬いもので殴られ、ルリエルは地面にうつ伏せに倒れる。

「倒れたぞ!今だ!袋叩きにしろー!」

「死ね!死ねぇ!」ゴッ!ゴッ!

「何が天使だ!この化け物!」ベシベシ!

ルリエル「〜〜〜っ!」

刃物は全てミカエルが持ち去ってしまったためか、集まってきた人々は落ちてる石や折れた木材を使って、ルリエルの体を滅多打ちにする。

致命傷にはならないものの、骨にまで響くような鈍い痛みが身体中を痛めつける。


203 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:18:58 ???00
ルリエル(これ、まずい……!)

ルリエル『エリクサー!』✨

グジュグジュグジュ……

「何だ!?傷が治っていくぞ!」

「くそぉ!魔法か!誰か油を持ってこい!」

ルリエル「ふぅ……ふぅ……」ズルズル

「あっ!逃がすか!」ドサ

ルリエル「ぐえ"っ!」

「この……!お前のせいで、俺の娘は死んだんだ!」ゴン!ゴン!

「手を繋いで逃げてたら、剣の流れに飲み込まれて……気がついたら右手しか残ってなかったんだぞ!!」‪💧‬

ルリエル「……先に……やったのは、人間……」

「黙れ!!」ゴッ!

ルリエル「っ──!」

ルリエル(やば──意識が──)


204 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:21:41 ???00
「油持ってきたぞー!」タッタッタ

「よし……コイツにぶっかけろ!」

ドボドボドボ…

ルリエル「うぶっ……ゴボッ……!」

「この人殺しめ、"報い"を受けろ──」

『ファイアボール!』🔥

🔥🔥🔥ゴォォォォォォォォォォォ!

ルリエル「あ──あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"!!」🔥

浴びせかけられた油に炎が引火し、ルリエルの全身を包み込む。

周囲にはたちまち、脂の燃える焦げくさい臭いが立ち込める。

ルリエル『エ…エ"リクサー!』✨

グジュグジュ……ボッ🔥

ルリエル「ッッッ!」🔥

ルリエルは堪らず『再生』の権能を使うが、炎は絶えず体を焼き続け、苦しみから解放してくれない。

ルリエル「タ"ス"ケ"……テ"……」

ルリエル「──、──ッ!!」🔥

「死んでいった人達の分まで苦しめ!化け物!」

「これは報いだ!永遠に焼かれてろ!」

ルリエル「────────」🔥


205 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:24:07 ???00
ルリエル(……報い?)

ルリエル(なんで……ルリが報いを受けるの?)

ルリエル(先に傷付けたのは……そっちじゃん……)

ルリエル(なんで……なんで……誰が悪いの……)

ルリエル(天使達が拐われたのは人間のせい……お姉様がああなったのは人間のせい……ミカエルさんが怒ったのも人間のせい……)

ルリエル(全部全部、人間が悪いのに、どうしてこの人達はルリを悪者扱いするの?)

ルリエル(自分達がやったことを棚に上げて……なんで被害者ぶってるの?)

"おぞましい"

"人殺し"

"化け物"

ルリエル(それは──お前らの方だ)

🔥フッ──


206 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:28:01 ???00
ルリエルを包んでいた炎が消える。

だがそれは、体が完全に炭化したからではない。

内から溢れ出した魔力の勢いが、表面の炎を吹き消したのだ。

ルリエル「ア "──」ズズ…

「!?ま、まだ動けるのか……?」

「怯むな!完全に殺さないとまた街をめちゃくちゃに──」

ルリエル「……」ギロッ

「っ……!」ビクッ

真っ黒に焼けた顔面の中で、青い瞳だけがギョロりと動いた。

かつて宝石のようだと褒めてもらった大きな瞳は、もう、憎しみの色しか映していなかった。

ルリエル『エ""リ""ク""サ""ー』

🔯バチバチバチ!

赤黒い魔力が解き放たれ、辺り一帯を包み込む。

グジュグジュ!

ルリエル「……」バサッ!

瞬間、今までの比ではない驚異的なスピードで、ルリエルの体が再生した。


207 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:31:13 ???00
「なっ!?」

「!!や、やっぱり化け物じゃないか……!」

「クソォォォォ!!」ガシッ

ルリエル「──化け物は、お前達だ」

ルリエル「"報い"を、受けろ」

ボコ……ボコボコボコ!

「!?何だ……」ポト

「は、腹が──!」ボコボコ…

ルリエルを殴ろうとした男の腹部が、まるで孕んだかのように大きく膨れ上がる。

「あ"が"──お"っ──グプッ!」ボコボコ…

バーーーン!

そして、限界まで膨張した腹が勢いよく破裂する。

その中からは、一頭の『豚』が飛び出してきた。


208 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:36:17 ???00
「ひいっ……!」

「いったい何が起きて──う"ご!」ボコボコ

「ぐ"……ぐ"る"し"い"……!」ボコボコ

先程の男に続くように、周囲の人間の腹が次々と膨れ上がり、そして──

バン!ブシャー!!

──破裂する。

「か──ア──」ピクピク…

ある者の腹からは、牛が角で肉を突き破り飛び出してきた。

ある者は、口から止めどなく溢れてくる卵を喉に詰まらせて窒息した。

またある者は、野菜の根が脳にまで到達して死んだ。

ルリエル「……」🔯バチバチバチ!

ルリエルの権能は『再生』。

傷や、欠損した部位を元に戻す力。

他者を傷付けることなど一切できないその力を、ルリエルは人間の"胃袋の中"に使用した。


209 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:44:50 ???00
ルリエル「……」トボ…トボ…

天使は魔力を周囲に撒き散らしながら、再び歩きだした。

少しでも人が多い所へ。できるだけ大勢の人間を、殺す為に──

「何だあいつ……もしかして、アレが例の天──お"ぉ"!?」ボコボコ

バーン!

「誰か……助け──」ボコボコ…

「お"ごご──ング──ッ!」パンパン

ルリエル「……」トボ…トボ…

男の子「あ!てんしのおねえちゃんだ!おーい!」タッタッタ

母親「はっ!行っちゃダメ!!」

男の子「大丈夫だよ!だっておねえちゃんすごく優し──うげぇぇぇ!!」ビチャビチャ!

母親「マサくん!!!」

男の子「──ッ!──!」ビチャビチャビチャ!

バタン!

男の子「コポ──」ピクピク

母親「あ──あぁぁぁ!!!」

母親「そんな!マサくん!マサくん!!」

母親「マサ──う"ごっ!」ボコボコ

バン!ブシャー!


210 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:46:51 ???00
ルリエル「…………」トボ…トボ…

ルリエルの目や耳は、もはや何の情報も受け取っていなかった。

ただ、薄汚い魔獣の悲痛な叫び声だけが、頭の中に響いてくる。

ルリエル(殺してやる……人間は全員……)

どれだけ歩いたのだろう。

気づいた頃には、ルリエル後ろには見るも無惨な死体が大量に転がっていた。

ルリエル「足りない……こんなんじゃ全然……」

💠ピカーン!

ルリエル「!?」

その時、ルリエルの体を温かな光が包み込んだ。


211 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:52:43 ???00
ルリエル「これは……魂の浄化?何で──」

ルリエル「っ!」バッ

何かを感じとり、ルリエルは咄嗟に上を見上げる。

ルリエル「そん……な……」ペタン

遥遠くの空の向こう。

雲を突き抜けて、巨大な岩が落下している。

細かくは見えなくとも、ルリエルにはそれが、天界だったものだと理解できた。

ルリエル「なんで……どうして、天国が壊れて──」‪💧‬ポロ

ルリエル「みんな……みんなはどうなったの!」

ルリエル「…………」

ルリエル「そっか……みんな死んじゃったんだ……人間に殺されて……」


212 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/28(木) 23:55:16 ???00
💠キラキラキラ

白い光はルリエルの体を分解し、その魂を解放していく。

ルリエル(あぁ……消えちゃう……この想いも、屈辱も、憎しみも……)

ルリエル(やだなぁ……ルリ達が消えるのに、人間は生き続けるなんて)

ルリエル(いつか転生した時に、人間にやられたこと全部忘れてるなんて……そんなの絶対に……)

🌟キュピーン!

ルリエル「?」

雲の向こうから、一筋の光が飛んでくる。

"いつかまた、みんなで笑って暮らせるように"

願いを込められた希望の星は、メグミエルが封印された宝石の中に飛び込もうとしている。

その光を────

🎺パシッ!

ひとりの堕天使が、捕まえた。


213 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/29(金) 00:01:03 ???00
ルリエル「……そっか、メグちゃんがいた」

ルリエル「メグちゃんに託せばいいんだ」

ルリエル「"人間の皆殺し"を」🎺ズズズ…

ルリエルは、まだ半分ほど残っている自身の魂を、憎しみと共にラッパに込める。

『人間を滅ぼせ』

その想いだけは、決して忘れぬように──

ルリエル「メグちゃんなら、きっとルリの味方になってくれるよね?」

ルリエル「一緒に、人間を皆殺しにしようね──」🎺✨キラキラ…

💎カラン!


これが、1000年前に起きた出来事。

神様が観測し、ラッパに込めた事件の記録。

そして──"私"の記憶。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


214 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:15:51 ???00
【現代】

カホ「そんな──こんな事って……」‪💧‬ポロポロ

ギンコ「これが天使が居なくなった真相……酷い……」

コズエ「同じ人間として、自責の念にかられるわね……」

カホ「というか、今の記憶によるとメグちゃん──」

ギンコ「はい……」

(((割とやらかしてた!!!)))

コズエ「まあ、あくまで切っ掛けになってしまっただけと言うか、別にメグミは全然悪くないと思うのだけれど……」

カホ「そ、そうですよね!メグちゃんはただ、人間と仲良くしたいと思ってただけですし!」

ギンコ「でも、封印されてた理由は納得というか……メグミさんは昔から破天荒な性格だったんですね……」

カチマチ『何ですか?みなさん何の話をしてるんですか!?』

ギンコ「あれ?カチマチさんは記憶共有されてないの?」

カチマチ『きおく?カチマチはなんともありません!みなさんこそ、もう頭は痛くないんですか?』


215 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:19:12 ???00
コズエ「ええ、平気よ。カチマチさんは人間じゃないから、さっきのラッパの音の影響は受けなかったのかもしれないわね」

カチマチ『よくわかりませんけど……元気そうでよかったです!』

カチマチ『さっきまで一番苦しんでたルリノさんも、痛いの無くなったみたいですし!』

カホ「あ!」

ギンコ「あ!」

コズエ「あ!」

バッ!

皆で一斉に後ろを振り返る。

ここまで一緒に来てくれた友人で、かつ、記憶の中にでてきた天使に酷似した女の子。

ルリノ「──」

カホ「ル、ルリノちゃん……?」

🌟ピカーーン!

カホ「まぶしっ!?」

突然、ルリノの体を白い光が包み込む。

光はやがて収縮し、ルリノの背中に見慣れた一対の羽を形成した。


216 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:22:24 ???00
ルリノ「……」バサッ!

カチマチ『えぇ!?ルリノさんの背中に羽が!?』

ギンコ「カチマチさん下がって!」スッ

コズエ「くっ!」✊グッ

カホ「……!」

カチマチ『え?え?みなさんどうしたんですか!?』

???「……」

コズエ「あなたは、ルリノさんなの?それとも──」

???「──はじめまして」

ルリエル「私は、ルリエル。『大天使ルリエル』です」

ルリエル「こんにちは。人間さん」

「「!!!」」

ギンコ(ルリエル!記憶の中に出てきた、最後まで生き残ってた天使!)

ギンコ(でも、てっきりルリエルさんの魂は今、別のところにあると──)


217 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:27:35 ???00
ルリエル「あなた達は──」

コズエ「っ!」ダッ

カホ「コズエちゃん!?」

ルリエルが何か話すより先に、コズエは拳を構えてルリエルに急接近する。

コズエ(ルリノさんごめんなさい。でも、この天使は危険すぎる!あの魔法を使われる前に無力化しないと!)

コズエ(だって──私達さっき、市場で色々食べちゃってるのよ!!!)

コズエ「はあっ!」

ルリエル「え、ちょっち待って!いきなり過ぎ──」

コズエ「問答無用!」✊ブン!

ゴツン!!

ルリエル「ぶべっ!」

おでこ殴られたルリエルは、空中に浮いたまま縦にクルクルと回転して飛んで行く。

ルリエル「ぐえ!」ドシン

そのまま後ろにあった遺跡の壁に激突すると、やっと動きを止めることができた。


218 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:31:06 ???00
ルリエル「う、うぉぉぉ!痛てぇぇ!」ジタバタ

カホ「あれ?なんか、めちゃくちゃ弱い?」

コズエ「油断しちゃダメよ!カホもさっきの記憶を見たでしょう!」

コズエ「このままだと、胃の中のコロッケが牛になって出てくるわよ!」

カホ「うっ……想像しただけでお腹が……」ギュルギュル…

コズエ「申し訳ないけれど、何かされる前に意識を失ってもらうわ!」

ルリエル「だから待っててば!ルリはあなた達と戦う気は──」

コズエ「ふん!」✊

ルリエル「っ!」

カチマチ『ストーーップ!!』⚡️ダッ!

ドン!

コズエ「!!カチマチさん!?」ドサ


219 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:35:19 ???00
カチマチ『コズエさん落ち着いてください!』

コズエ「どきなさい!あなたは記憶を見てないから知らないだろうけど、その子はもうルリノさんじゃないの!」

カチマチ『それはわかってます!!でも、この人からは敵意は感じません!』

コズエ「──え?そんなはずは……だって、あんなに人間を恨んで……」

ルリエル「そのワンワンの言う通りだよ。ルリは別に、あなた達と戦う気は無い」

ギンコ「でも、ルリエルさんなんですよね?さっきの記憶に出てきた……」

ルリエル「まあ、それはそうなんだけど。痛てて……」ズキズキ

カホ「怪我、治さないの?ルリエルさんは再生を司る天使なんでしょ?」

ルリエル「その権能は、今は別の天使に渡ってるからね。気づいてるかもだけど」

ギンコ「あ、もしかして──」

ルリエル「うん。ルリの権能はメグちゃんのものになってる」

カホ「メグリカバーだ!」

ルリエル「そうだよ。あの日、ルリは権能と一緒に、"あるもの"をメグちゃんに預けた」

コズエ「あるもの?」

ルリエル「それは、今メグちゃんの中にいる──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


220 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:38:13 ???00
メグミ(まさか、私が封印されたあとに、あんな事が起きてたなんて……)

メグミ(ていうか、めっちゃ私に責任あるじゃん!!あの時怪しい人からお酒なんてもらわなければ……)

メグミエル「……」

メグミ(──ううん。今はそれより、確認しないといけないことがある)

メグミ(もしかしてあなた、ママじゃなくて、"るりちゃん"なの?)

メグミエル「…………」

メグミエル「……そうだよ。久しぶり、メグちゃん」

メグミ(!!!)

メグミ(ごめん!!ごめん!るりちゃん!私が封印されちゃったせいで、辛い時そばに居てあげられなくて!)

メグミエル「ううん。メグちゃんは悪くないよ。悪いのは人間だから……」


221 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:43:09 ???00
メグミ(っ!でも、なんでママの振りなんてしてたの?しかも……今のるりちゃんの魂は、私でもわからないくらい……)

メグミエル「"穢れてる"、でしょ?」

メグミ(いや、その……)

メグミエル「別にいいよ。事実だから」

メグミエル「私がお母様を騙ってメグちゃんと話してたのは、その方が都合が良かったのと……私自身、もう自分をルリエルだとは思ってないから」

メグミ(それは、どういう意味?)

メグミエル「ルリエルの魂は、あの時既に半分くらい浄化されて、輪廻の中に帰ってた」

メグミエル「浄化されると、記憶を全て無くしちゃう。たとえラッパの力で思い出すとしても、あの時の私の"感情"までもが完全に復活するかはわからない」

メグミエル「だから私は自分の権能と一緒に、人間への憎悪を切り離して、メグちゃんの封印されてる宝石に入れたの」

メグミエル「ラッパが宝石の中に入るのに便乗してね」


222 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:47:14 ???00
メグミ(憎悪で歪んじゃった魂だけを、私の中に埋め込んだってことか……)

メグミエル「うん。だから私は、メグちゃんが知ってるルリエルじゃない。そうだなぁ、わかりずらいし『エリ』って呼んでよ」

エリ「再生の権能、エリクサーのエリ。今の私は、権能にくっ付いて来たオマケみたいなものだから」

メグミ(いや、そんなこと言われても……るりちゃんは、るりちゃんだし)

エリ「違うんだよ。私はメグちゃんに、今の自分をルリエルだと思って欲しくないの」

エリ「こんな風に憎悪を募らせて、人間を殺すことしか考えられなくなった醜い私で、メグちゃんの中のルリエルとの思い出を汚したくはない──」

メグミ(関係ない!どんなに変わっても、私はるりちゃんを嫌わないし!失望もしないよ!)

エリ「っ!だから……ルリって呼ばないでよ!私はルリエルじゃない!別の存在になったの!」


223 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:55:20 ???00
メグミ(そんなことない!最初は気づけなかったけど……今ははっきりとわかる!るりちゃんはるり──)

エリ「止めて!次にルリって呼んだら、本当にあなたを消すから!!」

メグミ(っ……!)

エリ「ほら、ルリエルはこんな事言わないでしょ?私はルリエルの負の感情そのもの。ルリエルから切り離された、穢れた魂の一部なの」

メグミ(る……あなたは、この後どうするつもりなの?)

エリ「人間に復讐する。神様を騙ってたのは、本当にそうなるつもりだったから」

エリ「お母様が居なくなった今、私がお母様の代わりになって、天使達を先導する」

エリ「そうして、あの時の仕返しをするんだよ。それが私の願い」

メグミ(…………)

メグミ(もうひとつ聞いていい?ルリノちゃんはなんなの?)

メグミ(まさか、るりちゃんに激似なだけの無関係の人間じゃないよね?)

エリ「そうだね。あの子は──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


224 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 22:59:15 ???00
ルリエル「──ルリは、二つに別れた魂の片割れなの」

カホ「つまり……あなたはルリエルさんの魂の半分で、人間を憎んではいない方の人格」

カホ「今メグちゃんの体を乗っ取ってる、神様を名乗ってた方が、人間を憎んでるもう半分の魂ってこと??」

ルリエル「だいたい合ってるよ。でも、一つだけ修正するね」

ルリエル「ルリも、人間のことは恨んでる」

ギンコ「!」

コズエ「!」

ルリエル「ルリは一回浄化されて、記憶をリセットされてる。その分少しだけ、客観的にあの出来事を見ることができた」

ルリエル「今ルリが落ち着いていられてるのは、そのおかげかな」


225 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 23:05:42 ???00
コズエ「なら、さっき私達と戦う気がないと言ったのは……権能がなくて戦う手段がないから?」

ルリエル「あーそれも確かにあるんだけど、一番の理由は──」

ルリエル「あなた達が、メグちゃんの友達だからかな!」

ルリエル「あなた達には、結構本気で感謝してるんだ。異種族である天使のメグちゃんと、あんなにも仲良くしてくれて」

ルリエル「だから、あなた達だけは特別!」

ギンコ「ルリエルさん……」

カチマチ『……すみません、カチマチまだ着いていけてないんですが……』

カチマチ『今お話してるのはルリエルさんっていう天使なんですよね?たまにメグミさんが話してた』

ルリエル「メグちゃん、ルリのことも話してくれてたんだ。嬉しいな……」


226 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 23:08:34 ???00
カチマチ『じゃあ、元々の体の持ち主であるルリノさんは何処に?』

カホ「!!ま、まさか……ルリエルさんが蘇ったせいで、ルリノちゃんは消えちゃたなんてことは……」

ルリエル「…………ごめん」

ギンコ「そんな!ルリノさん……」

コズエ「……」


ルリノ「ちょいちょーーい!勝手に殺すな!」

ギンコ「…………え?」

カホ「ル、ルリノちゃんなの!?」

コズエ「どうして……」

ルリノ「どうしてって言われても、ルリにもわからな──うおっ!?」

ルリエル「はい。わからないなら黙っててね〜」

ルリノ(こら〜!ルリの体だぞー!)


227 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/08/31(日) 23:10:59 ???00
ギンコ「ルリエルさんに戻った……?」

ルリエル「今のはちょっとしたサプライズってことで。オオサワルリノの魂はまだ消えてないよ」

カホ「ほっ……よかった」

ルリエル「でも、これはただの例外。ルリが二つに別れた不完全な魂だから、オオサワルリノの人格が残れただけ」

ルリエル「"他"の天使達は、完全に切り替わってるかもね」

コズエ「他の天使……?」

ルリエル「そう。さっきのラッパは、人々に記憶を植え付けて、転生した天使達の魂を目覚めさせるもの」

ルリエル「今頃、ルリ以外の天使達も目覚めてる頃だと思う」

カホ「!」

ルリエル「覚悟してね。これから地上は、きっと『地獄』になるよ──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


228 : 名無しで叶える物語◆OFrNc9Bq★ :2025/09/01(月) 22:32:59 ???00
メグミエルとルリエルが他のキャラよりもイメージしやすい理由に今更だけど気づいたわ
去年のDRのEAだ


229 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:09:07 ???00
🎺プオ────────────ン

男「なんだ?今の音」

女「警報……じゃないわよね?」

ジジジ……

男「うっ!頭が……!」ズキン

女「何これ……知らない記憶が頭に入り込んでくる!」ズキズキ

女「──あれ?知らない記憶……のはず……」

シーン──

男「治まった……何だったんだ今の……胸糞悪い話だった……」

女「……」ボー

男「おい、大丈夫か?」ユサユサ

女「思い……出した」

男「?」

女「人間……よくも私たちを!」ギロッ

男「何言ってるんだ……さっきのはお前の記憶じゃないぞ!正気に戻れ!」


230 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:10:26 ???00
女「」✨キラキラ

男「え」

🌟ピカーーン!

女「……」バサッ

男「!?は、羽?これじゃまるで、記憶の中で見た天使……」

天使「今こそ復讐の時。人間らに然るべき"罰"を与えます」

天使『エンジェルブロー』✊🔥ポン

男「痛っ──くない?」

✝ブン…

男「何だこれ……殴られた場所に変な印が……」

天使「これは烙印。消すことのできない罪人の証」

天使「まもなく罰が下されます。あなたはもう、逃げられません」フワー

男「あ、待て!どこに行くんだ!おーい!」

🌟ピカーーン!

🌟ピカーーン!

男「!!」

男「あちこちで光が……まさか、同じことが起きてるのか?」


231 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:13:46 ???00
🌟ピカーーン!

子供「……」バサッ

母親「コウタ!?どうしたのその羽?」

天使「子どもの体か〜ハズレかも」

母親「な、何を言ってるの──」

天使「あ、もしかしてこの子のママ?ごめんね。この子の人格、もう消えちゃったから〜☆」

母親「は?え?人格が消えた……?ちょっと!変な冗談は止めて!本当に怒るわよ!コウタ!」

天使『エンジェルブロー』✊🔥ポン

母親「!?」✝️ブン…

天使「それじゃあね、マ〜マ♡」フワー

母親「やめて、そんな呼び方……コウタはいつも、私ことを"お母さん"って……コウターー!!」


232 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:15:37 ???00
🌟ピカーーン!

シスター「……」バサッ

神父「!!!」

シスター「ここは、建物の中か……ん?何故俺は服を着ていないんだ?」

神父「お、おぉ……!やはり、今のラッパの音は、天使復活の呼び笛だったのか!」

シスター「……ちっ、そういう事か。汚らわしい」

神父「やはり、メグミさんのことを放置したのは正解だった!こうして地上に天使が顕現する場面に立ち会えるなんて!」

シスター「メグミ?なるほど、メグミエルが復活させてくれたのか」

シスター「つまり、あれから1000年も経ったということか……」


233 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:18:12 ???00
神父「天使様」

シスター「ん?」

神父「どうか、私めに聖痕を授けてくださらないでしょうか……天使様からいただけるのであれば、神父としてこの上ない光栄──」

🗡三ピュン

神父「がっ!」グサッ

神父「な……ぜ──」バタン

シスター「気安く話しかけるな。人間」

シスター「あと、悪いが俺は烙印を押さなくてもお前らに罰を与えられる」

ミカエル「今度こそ、根絶やしにしてやるぞ。ルシファーの末裔ども!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


234 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:22:17 ???00
記憶を見ていた間に、日は完全に落ち、辺りは薄暗くなっている。

そんな中、街ではピカピカと光が点滅しては消えてゆくのが見て取れた。

カホ「街の方に見える光って、さっきルリノちゃんに羽が生えた時と同じ光?」

ギンコ「だとしたら、みんな天使に成り代わられてるってこと?そんなの……」

ギンコ(ルシファーが天使を騙すためにやったのと同じことじゃん……)

思わず口を衝きかけた言葉を、ギンコはギリギリのところで飲み込んだ。

それを言ってしまったら、絶妙なバランスで成り立っているルリエルとの関係が、完全に決壊してしまうと思ったから。

コズエ「ルリエルさん、さっき地上が地獄になると言っていたけれど……それは天使が人の体を奪うことを言っていたの?」

ルリエル「違うよ。これは始まりに過ぎない」

ルリエル「今頃、目覚めた天使達は目につく人間に手当り次第『烙印』を押してるはず」


235 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:29:02 ???00
カチマチ『らくいん?』

ルリエル「罪人の証。罰を与えるための目印みたいなものかな」

ルリエル「それは、一度付けられたら死ぬまで決して消えないもの。もしも最初の厄災を乗り越えたいなら、絶対に付けられちゃいけない印」

カホ「厄災って、もしかして神父さんの話にあった……」

ルリエル「昔、お母様が作った7つのラッパのことだよ。ルリは直接見た事はないけど、吹くと地上に厄災が降り注ぐんだって」

ギンコ「ラッパって、さっきメグミさんも吹いてたよね......あれが1個目なの?」

ルリエル「ううん、あれは特別。メグちゃんが持ってたのは8つ目のラッパだよ」

ルリエル「本当は、天使達の魂を目覚めさせる為だけに作られたものだけど……ルリが弄ったせいで、憎しみも一緒に思い出させるものに変わっちゃったんだ」

コズエ「だから、天使は起きて早々に人間を襲っているのね……」


236 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:31:13 ???00
ルリエル「──ねぇ、あなた達に相談なんだけどさ。ルリと取引しない?」

ギンコ「取引?まぁ、内容によっては……というか、拒否したら何されるかわからんし」

ルリエル「取引って言うのはね、あなた達を厄災から守る代わりに、メグちゃんを救うのを手伝って欲しいの」

カホ「え?」

ルリエル「メグちゃんの体は今、ルリの片割れに制御を奪われてる。仮にもルリの魂なんだから、メグちゃんを傷つけるとは思えないけど……」

ルリエル「穢れた魂をいつまでも抱えてたら、メグちゃん自身どうなるかわからない。だから、一刻も早く切り離したいんだ!」

カチマチ『そんなの──言われなくてもそうするに決まってます!メグミさんはカチマチの大切な仲間です!』

カホ「そうだよ!それに、メグちゃんには何度も助けてもらったもん!今度はあたし達が助ける番!」

ルリエル「ありがとう。カチマチちゃん。カホちゃん」


237 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:33:31 ???00
コズエ「待って、どうしてわざわざ取引を?私達はメグミのいる場所に手が届かないけれど、あなたなら飛んでいけるでしょう?」

ギンコ「確かに、浮遊魔法でもあんなに高い所までは飛べません。それこそ、天使の羽がないと」

ルリエル「もちろん、ルリもできるなら直接助けに行きたいよ。でも、ルリはメグちゃんに近づけない」

ルリエル「感じるんだ。もしもルリがメグちゃんに触れたら、ルリはメグちゃんの中にあるルリの魂に取り込まれちゃうって」

ルリエル「そうしたら、メグちゃんを助けることも、あなた達を守ることもできなくなる」

コズエ「なるほど。そういう事ね」

カホ「それじゃあさっそく、メグちゃんを助ける手段を考えましょう!まずは上空から下ろす方法から!」


238 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/02(火) 22:35:49 ???00
ギンコ「でも、結局は空を飛べないと何もできませんよね?」

カチマチ『コズエさん!いつもみたいに魔法の力でドバーン!って飛べませんか?』

コズエ「できなくは無いけれど……足が破裂するでしょうから、メグミを引きずり下ろしたあとは何もできなくなるわ」

カチマチ『あぅ……それは困ります……』

カホ「う〜ん……ルリエルさんに連れて行ってもらいたいけど、それだと本末転倒だし……」

ルリエル「ゆっくり考えていいよ──って言ってあげたいけど、あんまり時間はかけられみたい」

カホ「へ?」

🎺プオ────────────ン

「「!?」」

ギンコ「またラッパの音!もしかして……」

ルリエル「始まったよ──『第一のラッパ』」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


239 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:09:15 ???00
======================

【報告】

カナザワ市内にて人間が天使に変化する現象を確認。

天使は市民を襲っており、早急な対応を求められる。

事態の解決を図るため、王国軍に『AHB』の使用、および『ユウギリツヅリ』騎士の派遣を要請する。

======================


240 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:10:38 ???00
【カナザワ】

カホ達が悠長な話し合いをしている間にも、街の混乱は広がり続けていた。

家族や友人、愛する人が天使へと変貌し、手当たり次第に人々に『烙印』を押してまわっている。

ワーーーー! キャーーーー!

天使「……」三ピュン!

「危ねぇ!?」スカッ

「クソっ!さっき見えたビジョンといい、天使は俺たちの敵なのか!?」

「こうなったら、戦うしかない……!」🗡スッ

「やめてください!」ガシッ

「!?何するんだ!離せ!」

「あれは私の妻なんです!傷つけないでください!」

「そんなことを言われても……だったらあんたが人を襲わないよう言い聞かせろ!」

「そ、それは──」


241 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:11:22 ???00
天使『エンジェルブロー』✊🔥

「!!」✝️ブン…

「あ……」✝️ブン…

天使「裁きの時は、近い」フワー

「ちっ!お前のせいで変な印つけられたじゃねぇか!」✊ゴッ

「ぐはっ……!」バタン

「君達やめなさい!今は人間同士で争ってる場合じゃないだろう」

「っ……それもそうか。悪かった、つい頭に血が上って……あんたも奥さんが天使になって混乱してたんだよな?」

「あ、はい……私の方こそすみません……」

「それよりもさっき見えた記憶、メグちゃんがいたよな?この騒動はあの子が起こしたものなのか?」

「そうは思えませんが……今日だって会って話をしましたが、こんな恐ろしいことを考えてるようにはとても……」

「でも、だからと言って無関係ということもないですよね……?この街で天使なんて彼女しか見たことがありませんし……」

「……」

「……」


242 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:13:39 ???00
天使「……」🎺フワー↑

天使達が人々に印を付けていく中、一人の天使が上空に浮かんでいく。

それは第一のラッパ、『光の矢』を持つ天使。

彼女は冷たい眼差しで、地上を逃げ回る人間達を見下ろしていた。

天使「愚かな人間よ。神に代わって、私が天罰を与えます」

天使「最初の厄災は、罪の印を持つものを裁く光。自らの罪を数えながら、炎に焼かれ続けなさい」

天使「すぅ……」🎺

🎺プオ────────────ン

「またラッパの音!?今度はなんだ!」

「!!おい、上を見ろ!」

✨キラン…

✨✨✨✨✨✨キラキラキラ

まだ薄暗くなったばかりの空に、突然、眩いばかりの大量の星が煌めき出す。

しかし、それは本物の星ではない。

それは光を束ねて作られた『矢』。
罪ある者を裁く、断罪の輝き。


243 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:17:04 ???00
✨ピカーン!

「さっきから何が起き────」🔥ジュボ

「ひっ……!なんだ!?突然人が燃え」

✨ピカーン!

「て──」🔥ジュボ

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

上空に輝いていた光が、一斉に地上へ降り注ぐ。

光の帯はただ闇雲に落ちるのではなく、人間──特に印の付いた者を狙い撃つかのように、的確にその身体を光で包み込む。

「屋根────」🔥ジュボ

「助────」🔥ジュボ

文字通り、光速で放たれる光の矢は、人々に逃げる暇を与えない。

高密度の光線を頭から浴びた人間は、服も体毛も皮膚も全てが一瞬にして発火し、全身が炎で包まれる。

「あ"あ"あ"あ"!!」🔥

「あ"つ"い"ぃ"!み"ず"!み"す"!」🔥

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

数百──あるいは千をも超える光の矢は、その全てが外れることなく、的確に人間を撃ち抜いていく。

「ぎ────」🔥ジュボ

「お願い開けて!中に入れ──」🔥ジュボ

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

🔥🔥🔥🔥🔥🔥ボー


244 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:18:49 ???00
エリ「綺麗だね。まるで光の梯子みたい」

メグミ(これが、ラッパの力……)

エリ「正直、私も実際に見るのは初めてだから、少しワクワクしてたんだ」

メグミ(この光、全部人間に向かって降ってるの……?)

エリ「そうだよ。ほら、見える?下の方でゆらゆら燃えてるやつ。あれ全部人間だよ」

メグミ(全部!?嘘でしょ!炎で道が埋まって見える……たった一回で何百人が犠牲になったの──)

メグミ(!!みんなは……コズエやカホちゃん達は!?)

エリ「さあ?今頃他の人間と同じように、光に焼かれてるんじゃない?」

エリ「あそこには私の片割れが居たから。きっとすぐに印を付けられてたと思うよ」

メグミ(っ!あの子達は、そう簡単にやられたりしないもん……!)

エリ「ふーん?それじゃあ逆に、ルリエルが殺されちゃってるかもね」

メグミ(ぐっ……それは……)


245 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:22:22 ???00
メグミ(……お願い、もうやめて。やっぱりこんな事しても何にもならないよ!)

メグミ(みんな復活したなら、一緒に天国に帰ろう!復讐しろなんて、ママも望んでなかったじゃん!)

エリ「メグちゃん、何か勘違いしてない?」

メグミ(え?)

エリ「私がやったのは、記憶と一緒にみんなの魂を目覚めさせたところまで。その後の天使達の行動は、私は操ってないよ」

メグミ(じゃあ、みんなが勝手にやってるってこと……?)

エリ「そう。各々が自主的に、人間に復讐しようと行動してる。誰か一人を止めればいいとか、もうそういう問題じゃなくなってるんだよ」

エリ「これは戦争。どちらかが滅びるまで、戦いは終わらない」

メグミ(そんな……せっかく、街のみんなとも仲良くなれたのに……)

エリ「それは思い込みだよ。天使と人間は相容れない。メグちゃんだって、お母様や私の記憶を見たならわかるはずでしょ?」

メグミ(違う……人間と仲良くなれないなんて、そっちの方こそ思い込みだって!!)

メグミ(過去とか、因縁とか……色々あるのかもしれないけど!ちゃんと話して心を通わせれば、必ず──)


246 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:25:02 ???00
🎺プオ────────────ン

メグミ(え──嘘、もう二回目?)

エリ「次はどんな風に人間が死ぬのかな?楽しみだね、メグちゃん」

メグミ(っ!やめて…!るりちゃんはそんな事言わない────あ)

エリ「……だから言ったじゃん。私はルリエルじゃないって……」

メグミ(ごめん……)

エリ「私も、少しおしゃべりになってたみたい。あなたと会話してると、なんだか懐かしい気持ちになっちゃって……」

メグミ(…………!)💡ピコン!

メグミ(なら、もっと聞かせてよ)

エリ「え?」

メグミ(人間への恨みでもなんでもいい。あなたの抱えてる気持ちを、私に聞かせて)

メグミ(もっと沢山──"話"をしよう)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


247 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:26:32 ???00
カホ「まるで……星が降ってるみたい……」

カチマチ『少しだけ、キレイだって思っちゃいます……』

コズエ「……でも、どうして私達には降ってこないの?」

ルリエル「あの光は、烙印を目印にしてるの。ルリはあなた達に印をつけてないから、降ってくることはないよ」

ギンコ「とりあえず、これに関しては安全ってことですね」ホッ…

カチマチ『……?』ピクッ

コズエ「とは言え、こんな規模の攻撃があと6つも残ってるなんて……早く何とかしないと、本当に全滅──」

✨キラキラ

カチマチ『コズエさん危ない!』ドンッ!

コズエ「え──」グラッ

✨ピカーン!

🔥ボッ!

コズエ「!?」


248 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:28:55 ???00
カチマチ『ぎりぎりセーフです!』

カホ「今の光、コズエちゃんを狙ってた!?なんで!?」

ルリエル「わ、わからない……ルリ、あなた達に印なんて付けてないし……前にメグちゃんに付けられたりした?」

コズエ「そんな物騒なのも付けられてないわよ!」

ギンコ「……もしかして、ルリエルさんが言ってる印って、『エンジェルブロー』のことですか?」

ルリエル「え、知ってるの?」

カホ「それって、よくメグちゃんが使ってる、見た目と勢いだけがすごいパンチのことだよね?」

ルリエル「勢いがすごいのはメグちゃん流だと思うけど……そうだよ。エンジェルブローは魂に烙印を押す魔法。普通の天使にとっては唯一の攻撃手段」

ギンコ「それ、前にコズエさんが魔物に体を乗っ取られた時に、メグミさんが使ったって言ってませんでしたか?」

カチマチ『そういえば!カチマチ見てました!』


249 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:33:16 ???00
ルリエル「そうなの!?よく今日まで生き残れたね……」

ギンコ「確か、一度亡くなった後にメグミさんが蘇生してたはずです」

ルリエル「なるほど、ルリの権能を使ったのかぁ。一回死んじゃったけど、すぐに生き返ったから印がうっすら残ってたのかも」

コズエ「あの時はそれしか方法がなかったとは言え、厄介なものを付けられたわね……」

カホ「でもでも!さっきの光を避けたからもう大丈夫だよね!?」

ルリエル「ごめん。ルリも詳しくは知らないから……もしかしたら、印が付いてる限り何度も降ってくるかも」

カホ「そんな……!」

コズエ「……仕方ないわね。念の為、いつ来てもいいように保存魔法を維持しておきましょう──」

✨ピカーン!

コズエ「!?」✨

ギンコ「コズエさん!!」


250 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:35:37 ???00
コズエ「あ、危なかったわ……あと少し魔法の発動が遅れてたら、火だるまになってたところよ……」

カホ「ほっ……ギリギリでしたね……」

カチマチ『ルリエルさん!コズエさんの印?を消すことはできないんですか?』

ルリエル「一度完全に死ぬまでは、天使でも消せないかな……」

コズエ「くっ……これからメグミを助けようって時に、こんな行動制限をかけられるなんて!」

カチマチ『これじゃあコズエさんは肉壁にしかなりませんね……』

コズエ「カチマチさん?もう少し他の言い方はないかしら?というか誰からそんな言葉教わったの……」

カチマチ『メグミ大先生からです!』

コズエ「メグミ……!やっぱり助けるの止めようかしら」💢

カホ「あわわ!カチマチちゃん!今はメグちゃんの印象が悪くなること言わないで!」

カチマチ『ごめんなさい……!』💦


251 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:39:45 ???00
🎺プオ────────────ン

ギンコ「!!3回目……」

カホ「さっきのが第一のラッパだったから……次は第二のラッパだよね?今度は何が起こるの?」

ルリエル「確か、お姉様から聞いた話だと、火の玉が降るとか何とか……」

コズエ「火の玉……さっきの光の、炎版ってことかしら?」

カホ「また上から来るの!?ずっと見上げてたら首痛くなっちゃうよ!」

ギンコ「なんか、カホさん意外と余裕そうですね」

カホ「まぁルリエルちゃんが守ってくれるって言うし、火の玉ならさっきの光よりは避けやすそうじゃん!」

カチマチ『いざとなったらカチマチがみなさんを乗せて逃げ回ります!』

カホ「わっ!頼もしい〜〜!」

カチマチ『えへへ〜〜』


252 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:42:16 ???00
コズエ「…………」

ギンコ「コズエさん?どうかして────!?」

カホ「ん?二人ともどうしたの?」

コズエ「……カホ、もしかしたら、私達はここで死ぬかもしれないわ……」

カホ「え、それってどういう──」

カホ「!?!?」

カチマチ『な、何ですかあれーー!!』

空を見上げたカホ達の目に飛び込んできたのは、確かに火の玉だった。

想定外だったのは、その大きさが視界に収まらないほど巨大であったこと。

まるで太陽が落ちてきたのかと錯覚する程の火球が、ゆっくりとカナザワの街に向かって落下する。

カホ「ル、ルリエルちゃん……この火の玉からも守ってもらえるのかな?」

ルリエル「」

カホ「ルリエルちゃん?」

ルリエル「あ、ごめん。あまりの規模に意識が飛びかけてた。えっと、みんなを守れるかだっけ?」

ルリエル「──いや、無理でしょ……てかこれ天使も死なない?」


253 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:44:53 ???00
カホ「コズエちゃ〜ん……!」‪💧‬ウルウル

コズエ「ごめんなさい、今は話しかけないでちょうだい。辞世の句を考えてるところなの」

カチマチ『あのコズエさんが諦めモードに!?』

ギンコ「私、何となく7つ目のラッパが鳴ったら負けだと思ってました」

ギンコ「でも、本当は1つでも使われた時点で負けだったんですね……」

コズエ(記憶の中で見たもうひとつの保存魔法。あれが使えれば、せめてみんなだけでも守れるかもしれないのに!)

火の玉はゆっくりゆっくりと落下し、ついに街のすぐ真上まで降りてきた。

街は真昼のように明るくなり、炎の熱はジリジリと空気を焦がしている。

カホ「うわぁぁぁん!もうおしまいだよー!!」‪💧‬

コズエ(本当に、打つ手はないの?何か、生き延びる手立ては──)

🔥
🔯バチバチバチバチ!

コズエ「!!」

火球が目の前まで迫った瞬間、街を守るようにドーム状の光が炎を食い止めた。

ルリエル「光の……幕?」

ギンコ「これ……街に張ってあった結界魔法だよ!!」

カホ「そういえば!普段は透明だから忘れてたけど、前にメグちゃんが引っかかってたっけ!」

コズエ「っ!お願い……どうか持ち堪えて!!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


254 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:48:07 ???00
【冒険者ギルド】

ミカエル「結界魔法……ルシファーが我々を嵌めるために作った魔法か。実に忌々しい」

ミカエル「ここに結界を制御しているものがあると踏んでいたんだが……」

受付嬢「はぁ……はぁ……」ポタポタ

ミカエル「さっさと場所を教えろ。そうすれば、楽に殺してやる」

受付嬢「……絶対に、教えません……」

ミカエル「そうか。なら苦しんで死ね」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡三ピュン!

受付嬢「っ!」


⏱カチ


🗡🗡🗡ズボズボ!

ミカエル「!!消えた?」


255 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:49:44 ???00
ツヅリ「大丈夫?」

受付嬢「ユウギリさん……ありがとう、ございます……」 グタ…

ミカエル(後ろ!いつの間に……)

ミカエル「今のは空間操作の魔法か?」

ツヅリ「……」

ミカエル「無視か、まぁいい」

ミカエル「どちらにせよ、人間は殺すだけだ!」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡三シュン!

ツヅリ「……」🗡スゥ

⏱カチ


🗡🗡🗡🗡バリン!

ミカエル「なに!?」

ミカエル(一瞬で全て弾いた?目では全く追えなかった……空間操作の魔法じゃない!これは──)ツー

ミカエル「!?」ブシャー!

ミカエル「っ!時間操作か!!」


256 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 22:57:28 ???00
ツヅリ「……君は、ラッパを持ってる?」

ミカエル「そんなもの、俺には必要ない!」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡シュン!シュン!

⏱カチ


🗡🗡🗡🗡🗡カラカラカラン!

ミカエル「クソ!厄介な魔法だ!」🔯バチバチ

ツヅリ「……ラッパ持ってないならいいや」🗡スチャ

ミカエル「────は?」

ツヅリ「じゃあね」スタスタ

ミカエル「待て!貴様、服装からして騎士だろう。俺を放っておけば多くの人間を殺すぞ?」

ツヅリ「別にいいよ。命令は『ラッパを持っている天使の排除』だから。他はどうでもいい」

ミカエル「命令?言われたことしかしないなんて、まるで操り人形だな」


257 : 名無しで叶える物語◆n9i2NnMP★ :2025/09/05(金) 23:02:58 ???00
ツヅリ「そうだね。でも、それでいいんだ」

ツヅリ「ボクはもう、自分の判断を信じられない。だったら、人の言うことだけ聞いていればいい」

ミカエル「?」

ミカエル(言っている意味がわからない……強力な魔法は精神に悪影響を与えるのか?)

ツヅリ「……」スタスタ…

ミカエル「……生きているのに死んでいるような奴だったな……」

ミカエル「まぁいい。あの女に構っていては、時間を無駄に浪費するだけだろう。こちらに興味を示さなかったのは好都合だった」

ミカエル「それよりも結界魔法だ。これがあるとラッパが最大限の力を発揮できない」

ミカエル「それどころか、先程の記憶で見たのと同じ結界なら、俺達自身もこの街に閉じ込められてしまうことになる」

ミカエル「これだけ大きな結界……制御装置が街の中心部にあるのは間違いない。ここに無いとすると──」

ミカエル「あの丘の上か」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


258 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:04:44 ???00
🔥
🔯バチバチバチ!

カホ「頑張って!耐えて!!」

ギンコ「ああもう!祈ることしかできんのがもどかしい!」

結界はピカピカと点滅しながらも、落下する炎から街を守っている。

炎は質量を持っているのか、結界に覆い被さるように広がり、街に赤い帳を下ろす。

コズエ「結界さん……お願い……!」

カチマチ『うぉぉぉ!ちぇすとー!!』アオーン!

🔥🔥🔥ズズズ……

カホ「はっ!見てください!一番上!空が見えてきました!」

ギンコ「炎が外側に流れてるんだ……!あともう少し!」

ゴゴゴ……ボワッ🔥🔥🔥

結界を丸ごと覆っていた炎は、とうとう街の縁に流れ落ちる。

空の色は再び黒に戻り、ポツポツと星が光っているのが見て取れた。


259 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:07:03 ???00
カホ「た、耐えきった……」ペタン

コズエ「ふぅ……人類の魔法技術の進歩に助けられたわね……」

ギンコ「そう、ですね……」チラッ

ルリエル「…………」

ギンコ(やっぱり、ルリエルさんとしては複雑だよね……結界魔法は、ルリエルさんの仲間を実験台にして作られた魔法だし……)

ルリエル「…………ぷはぁ!た、助かった〜〜!」

ギンコ「え?」

ルリエル「いや〜ほんと、結界が耐えてくれて良かったよ!どうやってあんなのからみんなを守ればいいんだって話だし」

ギンコ「結界魔法に対して、思うところは無いんですか……?」

ルリエル「そりゃあるよ!でも、今はメグちゃんの救出を最優先にしようって決めてるから!」

ルリエル「今のルリに再生の権能は無いし、あなた達が死んじゃったらメグちゃんを助ける手段が減っちゃうもん!」

ルリエル「他の天使達は、人間に復讐することに躍起になって手伝ってくれそうにないし……う〜んやっぱり最初のラッパのせいかな?」

ルリエル「ルリがラッパに込めた怨念みたいなものが、みんなにも伝播しちゃったとか?」


260 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:09:33 ???00
ギンコ「……多分、特殊なのはルリエルさんの方だと思います。あんな酷いことをされたのに、私達に対してフラットに接してくれるなんて……」

ルリエル「それはきっと、ルリノちゃんの記憶がルリの中に共存してるからかな」

ルリエル「この子はシスターとして、たくさんの人間の懺悔を聞いてる」

ルリエル「人間の弱さも醜さも知った上で、それを広い心で受け入れてきた。そんな記憶のお陰で、ルリも少しは人間を受け入れやすくなったのかも」

ギンコ「ルリエルさん……」

カホ「あっ!!!」

ギンコ「びっくりした……!なんなん?」

カチマチ『カホさん、どうしたんですか?』

カホ「街の周りが、炎で囲まれちゃってる……!」

コズエ「!!」

結界のお陰で、炎は街の中にこそ入らなかったものの、外との境界には数十メートルにも渡る分厚い炎の壁ができ、街を360度取り囲っている。

カホ「これじゃあ街から逃げることも、外からの援軍も入って来れないよ!」

コズエ「っ!ドラゴンとの戦いで街の冒険者はほとんど亡くなってしまったのに……そんな状況で、私達だけで対処しないと行けないなんて──」


261 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:10:44 ???00
✨キラキラ

コズエ「!!」✨ピカーン!

カチマチ『わっ!?』ビクッ

カホ「またさっきの光!?」

コズエ「大丈夫よ。保存魔法は常に発動してるから」🔥シュー

ギンコ「服は燃えてますけど……」

コズエ「それは仕方がないわね。でも、ギンコさんが作ってくれた耐火スーツを中に着ているから、問題ないわ」🔥パンパン

カホ「問題ありますよ!コズエちゃんの服、いつもボロボロになるからもう残り少ないんですよ!」

コズエ「ん……それは、ごめんなさい……」

コズエ「でも、それを考えるのは今日という日を生き残ってからよ!」

コズエ「ラッパはまだあと5つもある。結界がある程度守ってくれることはわかったけれど、一刻も早く天使達を止めないと──」

???「残念だが、お前ら人間が最後のラッパまで拝むことは無い」

「「!!!」」

ルリエル「ミカエル……さん……」

ミカエル「……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


262 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:12:55 ???00
天使「ありゃりゃ〜第二のラッパは防がれちゃったか。あれが決まってれば一発だったのに……」

美しい金髪を短く切りそろえた天使が、残念そうに空を見上げている。

それは第三のラッパ吹き。

律儀に順番を待っていた彼女は、虚空から自らに授けられた神器を召喚する。

天使「でもいっか!あたしのやつの方が、人間の苦しむ姿はたくさん見れそうだし♡」

天使「第三のラッパ『毒の霧』。あたし達が味わった苦しみ、100倍にして返してやる」🎺

天使「そして、転生することすらできなかったお姉ちゃんたちの分まで……」


ツヅリ「あ、見つけた」

天使「!!人間……」


263 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:15:01 ???00
ツヅリ「それ、ラッパだよね?」

天使「正解〜あんた達に天罰を与えるために作られた、天使の最終兵器で〜す」

天使「死にたくなければ、今からしばらく息を止めてた方がいいよ〜7日間くらい♡」

ツヅリ「それは難しい……ボクは魚じゃないから」

天使「あは♡じゃあ次は魚に生まれ変われるように祈っとくんだね〜」

ツヅリ「え、魚……魚は好きだけど、生まれ変わるなら猫がいいな……」

ツヅリ「──あれ?なんで猫がいいんだろう?ボク、猫なんて飼ったことないのに」

ツヅリ「でも、猫ってかわいいよね。君もそう思う?」

天使「……」

天使(なに、コイツ……これから殺すって言ってるのに、まるで危機感がない。変なやつ)

天使「ま、せいぜい猫になれるように願っておきなよ。じゃあね〜♡」🎺フワー

ツヅリ「うん。そうする──ん?何か忘れてるような……」


264 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:17:40 ???00
ツヅリ「あ、そうだ」

⏱カチ


ツヅリ「ラッパ持ってるから殺すんだった」🗡

天使「────え」ツー

ブシャーー!!!

🎺カラン…

それは、余りにも一瞬の出来事だった。

突然、天使の首がボールのように転がり落ち、彼女が持っていたラッパも同時に地面に落下した。

空中には、首のない天使の体がゆっくりと空に向かって浮上していく。

ツヅリ「えっと、命令はラッパを持ってる天使の排除だよね?ラッパはどうするんだっけ?」

ツヅリ「あーあー聞こえますか。ラッパはどうすればいいですか?」🔯

ツヅリ「かいしゅう?壊さないの?」

ツヅリ「……わかりました。終わったら持ち帰ります」

ツヅリ「……」🎺

ツヅリ「結構大きい……どうやって持ち歩こう……」

ツヅリ「ん?」🎺ポワー

ツヅリ「急に光だした……もしかして、他のラッパに反応してる?」

ツヅリ「これならラッパ探しが楽になりそうだ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


265 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:19:30 ???00
メグミ(びっくりした……まさかドラゴンのブレスが可愛く思える日が来るなんて……)

エリ「結局防がれちゃったけどね。結界魔法、天使を実験台にして作った魔法で……」グッ…

メグミ(るりちゃん……)

エリ「ルリじゃないってば。それで、話をしようってどういうこと?」

エリ「言っとくけど、変なこと考えても無駄だよ。今のあなたは精神体、思考は全部私に筒抜けだから」

メグミ(え〜メグちゃんの頭の中が丸裸ってこと?恥ずかしい〜☆)

エリ「…………」

メグミ(……別に、悪巧みしてるわけじゃないよ。あなたが考えてること、抱えてるものを、ちゃんと知りたいと思っただけ)

エリ「嘘……ではないみたいだね」

メグミ(聞かせて。あなたはどうして人間を憎むの?)

エリ「そんなの、さっき記憶で見てわかったはずだよ」

メグミ(確かに、私が封印された後のこと、色々知れたよ。るりちゃんや仲間が酷い目にあってたことも)

エリ「だったら、今更話すことなんて──」


266 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:22:00 ???00
メグミ(それでも、ちゃんとあなたの言葉で聞きたい。起きた出来事じゃなくて、それを受けてあなたがどう感じたのか。何が辛かったのかを)

エリ「……話して何になるの?」

メグミ(言ったでしょ。私が聞きたいだけだって。どうせ私いま何もできなくて暇だから、話し相手になってよ)

エリ「はぁ……仕方ないなぁ」

エリ「辛かったことなんて、そんなの決まってる。お城の地下で見たお姉様達の姿……目を逸らしたくなるくらい、酷い状態だった」

エリ「人間があんなことすると思わなかった!住む場所は違っても、人間と同じ姿をした天使を、平然と殺すなんて……」

メグミ(あなたにとっては、その後にされたことよりも、仲間を傷つけられたことの方が辛かった?)

エリ「そうだよ。石を投げられようと、体を燃やされようと、そんなのどうでもよかった」

エリ「お姉様が傷つけられて、天国にいた他の仲間も、同じような目にあってるかもしれない。それが一番辛かった」

メグミ(……やっぱり、るりちゃんは優しいね。自分のことより、他人が傷つくことに心を痛めてたんだ)

エリ「だから、人間は全員殺す──」

メグミ(そう!そこなんだよ!)

エリ「え?」


267 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/07(日) 22:25:38 ???00
メグミ(急に飛躍しすぎじゃない!?天使を騙して攻撃してきたのって、当時の王国の人……もっと言えば、あのルシファーとかいう男でしょ?)

メグミ(それなのに、急に恨みの矛先が全人類になってるのおかしいでしょ!)

エリ「……人間なんて、どうせみんな同じだし……」

メグミ(嘘だね!私が目覚めてからは、私と同じものを一緒に見てたんでしょ?だったら、人間も十人十色だってわかったはず)

エリ「……」

メグミ(あなたがそんなにヤケになって人間を嫌うのは、仲間を傷つけられたからだけじゃない。他にも理由はあるんだよ!)

エリ「別に、そんなのないよ……」

メグミ(いいやあるね!メグちゃんの直感があると言ってる!)

エリ「っ!あったところで何!?さっきも言ったけど、私を改心させたって、他の天使たちは止まらないよ!」

メグミ(そんなこと考えてない!私はあなたを救いたいの!)

エリ「私を……救う?」

メグミ(あなたはずっと、復讐の二文字に囚われて苦しんでる。きっと、自分でも何でそんなに人間が憎いのか、ちゃんとわかってないんじゃない?)

エリ「!そんなことは──」

メグミ(別にいいんだよ。自分の感情を上手く言葉にするのって、難しいから)

メグミ(でもね、だからこそモヤモヤした感情を言葉にできると、少しだけ心が軽くなるの)

エリ「感情を、言葉に……」

メグミ(さあ、一緒に探そう?あなたの感情を表現できる言葉を)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


268 : 名無しで叶える物語◆yp99kcM7★ :2025/09/07(日) 23:19:10 ???00
まさかの説得


269 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:11:25 ???00
【古城跡地】

ルリエル「ミカエル……さん……」

ミカエル「…………」

ミカエル(結界の制御装置を探しに来てみたら……意外なやつに会ったな)

ミカエル「久しぶりだな。ルリエル」

ミカエル「俺も記憶を見た。あの時は、お前を一人にして悪かったな。まさかあんな扱いを受けていたとは……」

ルリエル「い、いえ!ルリは──」

ミカエル「だが、それがどうして人間と一緒にいる?」

ルリエル「っ!」

ミカエル「回答によっては、お前であっても処罰の対象にする。慎重に応えろ」

コズエ「……」✊グッ

ギンコ「……」スッ

ルリエル(待って!先に手を出したら後戻りできなくなる!ここはルリに任せて)ボソボソ

ルリエル「ミ、ミカエルさん」

ミカエル「なんだ」

ルリエル「この人達は悪い人じゃ──いや、ルリはこの人達と取引をしたんだよ!」


270 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:15:30 ???00
ミカエル「取引?どういうことだ」

ルリエル「ルリ達を復活させてくれたのが、メグミエルだってことはわかってる?」

ミカエル「理解している。1000年前のあの日、たまたま封印されていたお陰で生き残ったメグミエルが、時を経て俺達を蘇らせた」

ルリエル「そう。でも、それはメグちゃんの意思じゃない。メグちゃんの中にいる、ルリの魂の片割れがやったことなの!」

ミカエル「ほう?確かに記憶で見た映像からは、そういう可能性も読み取れた」

ミカエル「それで?だからなんだというのだ」

ルリエル「この人達には、メグちゃんの魂を救うのを手伝ってもらうことにしたの」

ルリエル「この人達は、メグちゃんが目覚めてからずっと仲良くしてくれてた。だから──」

ミカエル「『信頼できる』と?メグミエルのことは、人間を滅ぼした後で俺達がなんとでもしてやる。わざわざ憎い人間に頼ることは無い」

ルリエル「それじゃ遅いんだよ!穢れた魂を抱えたままじゃ、一緒の体に入ってるメグちゃんの魂まで汚れちゃう」

ルリエル「一度そうなった魂は、浄化することでしか救えない……そんなのいや!」


271 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:20:31 ???00
ミカエル「…………ルリエル、まさかとは思うが」

ミカエル「お前、そいつらがメグミエルと縁のあった連中だから、贔屓しているのか?」

ルリエル「!」ギクッ

ミカエル「はぁ……俺だって何万年も生きてきた。お前の言い訳の真意くらい、簡単に見通せる」

ルリエル「むむむ……そ、そうだよ!メグちゃんが大切にしてた人達だから、ちょっぴりひいきしてるの!」

ルリエル「でも、ルリだけじゃメグちゃんを助けられないのも本当。それでこの人達に協力を頼んだの。だからお願い!この人達だけは殺さないで!」

ミカエル「そうか……だが悪いな、その相談は受け入れられない」

ルリエル「なんで!」

ミカエル「人間は皆、ルシファーの子孫。どいつもこいつもクズばかりだ」

ミカエル「何人たりとも、生かしておくことはできない」

ルリエル「っ……!」

カチマチ『……カチマチ知ってます。こういうのは"八つ当たり"って言うんです!』

ミカエル「──あ?」

カホ「ダメだよカチマチちゃん!確かに『ルシファーに負けした癖に、その子孫に復讐するとか大人気な〜い』って、みんな思ってるけど!」

ミカエル「……」💢ピキ

ギンコ「ちょっと二人とも!なに火に油注いでるん!?本当のこと言ったら"可哀想"でしょ!」

ミカエル「……」💢💢ビキビキ


272 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:23:43 ???00
🔯🗡🗡三シュン

ザクザク!

カホ「ひぃ!」

カチマチ『ひぃ!』

ミカエル「誰が発言を許可した?薄汚い魔獣どもが」

コズエ「……先に手を出したわね。それなら、もう正当防衛ってことでいいかしら?」✊

ルリエル「待って!コズエさん──」

コズエ「ルリエルさん、悪いけれど話し合いで納得する相手ではないわ」

ルリエル「でも……」

コズエ「それに、私たち冒険者の『流儀』はね──」

コズエ「話が通じない相手は、"取り敢えず叩いて黙らす"なのよ!」ダッ

ルリエル「うわぁーー!!この野蛮人めー!」

ミカエル「やはり、所詮は獣か」🔯バチバチ

🗡🗡三シュン!

コズエ(直線的な攻撃、避けるのは簡単……けれど)サッ

🔯バチバチ

🗡🗡⤴︎ クイッ

コズエ(彼の魔法は武器を自在に操る。一度避けたからと言って安心できない!)

シュン三🗡🗡


273 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:26:12 ???00
カホ『レプルス!』 🗡🗡バラバラ

カホ「避けた剣はあたし達で何とかします!コズエちゃんは前だけ見てください!」

コズエ「助かるわ!」

ミカエル「ちっ、記憶を共有されたせいで俺の権能がバレているな」

コズエ「はっ!」✊ブン

ミカエル「……」三スカッ

🔯🗡🗡🗡🗡シュン!シュン!

コズエ「くっ!数が多い!」タタタッ

ミカエルの周りに浮いている剣は、まるで軍隊のように規則正しく動き、コズエに斬りかかってくる。

コズエの身体能力であれば避けることは難しくないが、純粋な物量に押されてなかなか本体に近づけない。

ミカエル「こちらの能力を知っていたところで、それに対処できるかは別の話だ!」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡ズラー

コズエ「!!」ビクッ

コズエ(多すぎる……避けられない!)


274 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:31:56 ???00
ギンコ『ワールウィンド!』🌪

🌪🗡🗡🗡🗡🌪カラカラカラ!

剣の雨が降り注ぐ寸前、ギンコが生み出した強風がコズエの前を吹き荒れ、一時的にミカエルから剣の制御を奪う。

ミカエル「風を操る魔法か……天使にとっては厄介な相手だ」

カホ『レプルス!』 三

ミカエル「向こうの女は、対した脅威ではないな──」三スカッ

ギンコ『ウォーターカッター』‪💧‬ビュシーー!

ミカエル「!!」ピシッ

カホの飛ばした石を軽々と避けた先で、超高圧で噴射された水がミカエルの体を掠める。

ミカエル「あいつ!水の魔法も使えるのか!」

コズエ「はぁ!」✊ブン!

ミカエル「っ!」バシッ

コズエ「くっ……!」✊グググ…

ミカエル「1000年の間に随分と魔法が達者になったようだな、人間ども」🔯🗡🗡スッ

コズエ「……人間だけじゃないわ!」

ミカエル「なに?」


275 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:35:24 ???00
カチマチ『ふん!!』ガブ!

ミカエル「う"っ!いつの間に!?」

気配を消していたカチマチが、背後からミカエルの足に噛み付く。

カチマチ「ガルルルル!」ガジガジ

ーーーーーーーーーーーーーーー

サヤカ『足は速くても動き出すまでが遅いんですよ』

ーーーーーーーーーーーーーーー

カチマチ(無駄に騒がない!素早く行動する!)

カチマチ(ちょっと複雑だけど、サヤカさんに言われたことも、自分の力に変えてみせます!)

カチマチ『ちぇすとーー!!』⚡️⚡️

ミカエル「ぐあぁぁぁ!!」⚡️ビリビリ

コズエ「……」⚡️⚡️ビリビリ

ミカエル「このっ!離れろ!!」ブン!

コズエ「!? きゃっ!」 グイン

カチマチ『うわっ!?』バシン!


276 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:42:01 ???00
ミカエル「どいつもこいつも、ちょこまかと鬱陶しい!」🗡ブン!

ミカエルは近くに浮いている剣を手に取ると、それをコズエの首に向かって水平に振り抜く。

コズエ「!!」

カホ「危ない!」

🗡💪カキン!

しかし、剣が当たる寸前に、コズエは右腕を顎の横に構え、上腕で首を庇った。

ミカエル「弾かれた!?腕に何か仕込んであるな」

剣からは硬い感触が伝わり、服の下に鎧のようなものを付けていることがわかる。

🔯🗡🗡🗡三シュン!

🗡カキン!カキン!

その後も決して避けられぬ至近距離からの攻撃を、コズエは巧みに弾き返し凌いでいく。

ミカエル(腕、胸、太腿……急所に成りうる箇所は全て弾かれたか)

ミカエル(ならば、確実に攻撃が通る場所を狙う!)🔯🗡三シュ!

コズエ「そう来ると思ったわ!」スカッ

ミカエル「!?」

眼前に放たれた剣を最小限の動作で避け、ミカエルに向かって一気に距離を詰める。


277 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 22:54:01 ???00
コズエ「その硬い頭を解してあげるわよ!」✊

コズエ(フルリリース:インパクト+アンペア!)

コズエ「はぁぁーっ!!」✊⚡️ブン

ガツン!

ミカエル「ぐはっ!?」⚡️

電流を帯びた強力な一撃が、ミカエルの顎を直撃する。

宙に浮いていたミカエルは踏ん張りが効かず、そのまま背後の遺跡の壁をぶち抜き、瓦礫に埋もれてしまった。

ミカエル「ぐっ……!うぐ……」⚡️ビリビリ

ミカエル(!! この場所の下から、強い魔力を感じる)

ミカエル(まさか、結界の制御装置……?)

コズエ「ふぅ──」シュー…ボロボロ

ミカエル「っ!貴様……なんだその姿は……」


278 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/09(火) 23:00:49 ???00
エネルギーの解放により、破れかけていた服は完全に弾け飛び、その下に隠れていた鎧が姿を表す。

それは従来の鎧と異なり、胸部や上腕など、必要最低限の箇所のみを守る不格好なモノだった。

コズエ(保存魔法の弱点を補うために、鎧や盾を身に付けることはパーティ内で何度も検討したわ)

コズエ(その度に、かえって機動性という長所を失うと、その案は却下されてきた。でも──)

ーーーーーーーーーーーーーーー

ヒメ『通りすがりの、スクールアイドルですよ〜』

ーーーーーーーーーーーーーーー

コズエ(『スクールアイドル』を名乗った謎の人物。彼女の姿を見て閃いたわ!)

コズエ(体の一部のみに鎧を装備して機動性を残しつつ、どうしても避けきれない斬撃だけをそこで受ける)

コズエ(あの時に見た鎧のイメージを、ギンコさんに伝えて作ってもらった特製品。これが私の新しい戦闘スタイル。その名も──)

コズエ「『バトルアーマー』よ!」ドドン!


279 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 22:55:45 ???00
ミカエル「バトルアーマーだと?ふざけた格好を……!」🔯バチバチ

🗡🗡三 シュン!

コズエ「……」サッ

コズエ(雑な攻撃は無理に受けない。基本は今まで通りに動かないとボロが出る)

コズエ「はあっ!」✊ブン

ミカエル「っ!」三スカッ

ミカエル(鎧が見えたならあとは簡単だ。防御が薄い箇所を狙えばいい)🗡ブン

ミカエルは頭部や腹部などの鎧が付いていない部位を狙って剣を振る。

コズエ「……」ヒョイ

🗡ブン!

コズエ「……」🗡💪カキン

しかし、コズエはまるで未来が見えてるかのように、危なげもなくそれらの攻撃をさばいていく。

ミカエル(クソっ!攻撃が入らない!さっきからこちらの動きを読んでいるような──いや、実際"そう"なのか?)


280 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 22:57:26 ???00
コズエ「ふん!」✊バコン!

ミカエル「ぐぶっ!」

コズエ(この装備のメリットは3つ。1つは刃物による攻撃を防げること)

コズエ(2つ目は、あえて防御の薄い箇所を見せることで、そこに攻撃を誘導できること。そして3つ目──)

🗡🗡🗡三シュン!

コズエ「っ……!」

🗡カキン!カキン!

コズエ(鎧に攻撃を当てることで、今まで吸収できなかった『斬撃』を『衝撃』に変換して保存できる!)

コズエ『リリース:インパクト!』

✊💥バコーン!

ミカエル「がはっ!!」ドサッ

コズエ「一見不格好なこの姿こそ、私にとっては攻防兼ね備えた完璧な戦闘スタイルよ!」

ミカエル「くっ……!」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡ズラー

ミカエルの周りに魔力が充満し、床に散らばっていた剣が浮き上がる。

十数本にも及ぶ剣は、規則正しく並んでその切っ先をコズエに向けた。


281 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 22:59:15 ???00
ミカエル「ならば、その完璧な装備とやらで防いでみせ──」

カホ「あたし達のことも!」

ギンコ「忘れないでください!」

カホ&ギンコ『『レプルス/ファイアーボール!!』』

🔥三 ビュン

ミカエル「!!」🔯ブーン!

🗡🗡🗡
🗡🗡🗡 🔥ボワッ!
🗡🗡🗡

コズエ「……!」✋三ポン!

ミカエルは攻撃用に動かした剣を咄嗟に壁のように並べ、魔法使いからの攻撃を防ぐ。

その背後から──

カチマチ『はっ!』⚡️⚡️ザシュ!

ミカエル「ぐっ……!」⚡️ビリビリ

再び物陰に潜んでいたカチマチが、ミカエルの体を鋭い爪で切り裂く。

カチマチ『あ、カチマチのことは忘れてもらって大丈夫です!その方が攻撃しやすいので!』⚡️サササッ

ミカエル(こいつら、バラバラなようで連携が取れている……このまま相手のペースに乗せられていてはまずい!)


282 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:02:18 ???00
カチマチ『コズエさん!』⚡️

コズエ「ええ!来なさい!」✋スッ

カチマチ『シューティングスター!!』⚡️⚡️三 ダッ!

カチマチはミカエルを攻撃した後、そのまま助走を付けてコズエの胸に飛び込む。

コズエ「っ!」✋ポフッ!

カチマチ『ぷはぁ!どうですか?』

コズエ「ありがとう!"充分"だわ!」

ミカエル(?あの犬、今何をしたんだ……)

コズエ「今度こそ終わりよ!」ダッ

ミカエル「来るか!!」🔯🗡🗡バチバチ

コズエ『フルリリース:インパクト!』✊ブン!


283 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:04:32 ???00
ルリエル「ストーーップ!」三サッ

コズエ「!」ピタッ

ミカエル「!」

カチマチ『ルリエルさん!?』

ルリエル「もう!みんな止めてよ!」

ミカエル「離れろ!危ないぞ!」

コズエ「どいてちょうだい!彼はここで制圧しないと!」

ルリエル「だから!戦ってる暇なんかないんだって!」

ルリエル「こうしてる間にも、きっとメ──」

🎺プオ────────────ン

ルリエル「!!」

ギンコ「またラッパが……!」

カホ「これが三番目だよね……次はいったい何が……」

ミカエル(第三のラッパは、確か『毒の霧』だったか)

ミカエル「ルリエル。上空に逃げるぞ。直に毒が充満し──」

ガタガタガタガタ……


284 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:06:02 ???00
カチマチ『!地面が……揺れてる?』

ガタガタガタ…グラグラグラグラ!!

カホ「じ、地震!?」

ギンコ「大きい……!立っていられない!」ペタン

コズエ「偶然、なはずはないわよね……これが次の天災!!」

ミカエル「…………」

ミカエル(おかしい。これは第四のラッパの力。なぜ一つ飛ばしたんだ?)

ミカエル(まさか、第三のラッパ吹きが殺られた?)

グラグラグラグラ!!

地震は段々と強くなり、縦や横に大きく揺れ、まるで嵐の中で船に乗っているような錯覚に見舞われる。

カチマチ『うぅ……目が回る……』グラグラ

コズエ「みんな!危ないから地面に伏せて!」グラグラ

🗡三ピュン!

コズエ「!!」ザシュ!

カチマチ『コズエさん!』

ミカエル「俺がこの好機を逃すとでも思うか?」フワー

コズエ「くっ……!」

ルリエル「ダメぇ!!」ガシッ

ミカエル「っ!邪魔だ!離せルリエル!」


285 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:09:48 ???00
ゴゴゴゴ……

カホ「なんか、変な音してない?」グラグラ

ゴゴゴゴゴゴ!!

カホ「!!見て、森の方!」

ギンコ「何あれ……地面が、波打ってる──」

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

海と反対側、森の方に目を向けたギンコが見たものは、とても現実とは思えない光景だった。

まるで、大地の下で巨大な土竜が移動してるかのよう。地面が大きく隆起し、その波が街の方に向かって迫っている。

🌳🌳🌳🌳🌳バキバキバキ↑↑↑

大地の波は地面をひっくり返し、巨大な木々が根っこから浮き上がり倒れていく。

「なんだあれ……壁が迫って来てるのか?」グラグラ

「に、逃げろー!!」グラグラ

「逃げるったって、まともに立ち上がることすら──」グラグラ

「もうダメだ……!」グラグラ


ゴゴゴゴゴゴゴ……ズガーーン!!

「うわぁぁぁぁ!!」↑↑↑

「ぐはっ……!」ゴキッ ↑↑↑

🏠🏠🏠🏠🏠🏠↑↑↑ ドガドガ


286 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:12:34 ???00
地面の隆起はついに街に到達し、人も建物も、何もかもを跳ね上げながら進む。

家々は一瞬にして崩壊し、中に避難していた人も、床や天井に打ち付けられ、事態を把握できぬまま降ってきた瓦礫の下敷きになった。

既に街の1/3を破壊した波は、とうとう街の中央、カホやコズエ達のいる場所まで迫ってきた。

カホ「あんなの……どうしようもないよ……!」グラグラ

コズエ「っ!」グラグラ

カチマチ『コズエさん!カチマチは高いところから落ちるのは経験があるので!カホさん達を……!』グラグラ

コズエ「わかったわ!カチマチさんも気を付け──」ヨロッ

✨キラキラ……ピカーーン !↓↓

コズエ「!?」✨🔥ジュッ!

カチマチ「!」

カホ「!」

ギンコ「!」

ルリエル「!」

三度目の光の矢が、今度こそコズエの体に明確なダメージを与える。

コズエ「ゴホッ……」🔥バタン

ギンコ「そんな……このタイミングで!?」

コズエ「き、吸収……」🔥プシュー…

コズエ(あぁ……やっとわかったわ。光が降ってくるタイミング……)

コズエ(新しくラッパが鳴った時、連動……して……)ガクン


287 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:15:24 ???00
ゴゴゴゴゴゴゴ!!

ギンコ「まずい……!来る!」

カホ「っ…!」

カホ『フローティア!!』✨

ギンコ「え──?」フワッ

ズガーーーン!!!

カホ「きゃーーー!」↑↑↑

カチマチ『あわわわわー!!』↑↑↑

コズエ「…………!」↑↑↑

ルリエル「みんな!!」

地層の質量で突き上げられ、コズエ、カチマチ、カホは空高く跳ね上げられた。

カホ「がはっ!!」ドサッ

カチマチ「ぐべっ!」ドサッ

コズエ「う"ぶ──」ドサッ

10メートルの高さから地面に叩きつけられた衝撃で、三名とも横隔膜が痙攣し、呼吸もできぬまま痛みに悶えている。

ギンコ「カホさん!自分を浮かせればよかったのに、なんで……」

カホ「ぅ"…………」


288 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:17:29 ???00
ミカエル「ほぼ全員虫の息か。翼のないお前らは、そうやって地面に這いつくばっているのがお似合いだ」

バキバキバキ……

ミカエル「ん?」

ドガーン↓↓↓

カチマチ『うわっ!?』ヒューン↓

コズエ「……!!」ヒューン↓

突然、地面が崩れてコズエ達は巨大な穴に落とされる。

ドサッ!

カチマチ『うぅ……また落ちた……』🌀

カチマチ『あれ?あそこ、何かが光ってる……?』

🔮ピカー

位置的には遺跡の地下に当たる空間。

そこに、巨体な丸い宝石が魔力を帯びて妖しく光っている。

ミカエル「なるほど、やはりここにあったか」スー ↓

ルリエル「ミカエルさん、あれが何かわかるの……?」

ミカエル「恐らくこの街を覆っている結界の制御装置だ。これを壊せば、俺たちはこの街から出られるようになるだろう」

ミカエル「もちろん、街を天災から守るものもなくなる」🔯🗡🗡バチバチ


289 : 名無しで叶える物語◆Wbr8PaHq★ :2025/09/11(木) 23:20:16 ???00
コズエ「!!や、止め──」

🗡三シュン!

🔮カキン!

ミカエル「……」🔯ブーン

🗡🗡🗡
🗡🔮🗡 ガガガガガ!!
🗡🗡🗡

ピシッ──

🔮パリン!

⚡️バチバチ……

ギンコ「っ!街の結界が……!」

ミカエル「これで俺たちを阻む物は無くなった」

ミカエル「──もっとも、この街はもう終わっているようだかな……」

ミカエルは改めて街を見下ろす。

つい数時間前には美しい景色が広がっていたカナザワの街は、大地の波によってひっくり返され瓦礫の山に変わり果てていた。

ギンコ「そんな……私達の街が……」ペタン

ルリエル「……」

ミカエル「……ん?」ジー

ミカエル「ふっ──どうやら、お前達への罰はまだ終わっていないようだぞ?」

ギンコ「え?」

ミカエルが指さす方、そこにはカナザワに多くの恵みをもたらした海が広がっている。

その水平線の向こう。暗い海面が月の光を反射し、大きく歪んでいるのが見える。

ギンコ「っ!まさか──」

ギンコ「津波……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


290 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 21:55:36 ???00
メグミ(…………みんな……)

エリ「下の様子が気になる?」

メグミ(そりゃあ気になるでしょ!何あれ!段々規模でかくなってない!?)

メグミ(これ最後のラッパ吹いたら星が真っ二つに割れたりしないよね?)

エリ「どうだろう?そこまでやっちゃうと、天使も無事じゃ済まないだろうし」

メグミ(既に一回無事じゃ済まなそうな攻撃来てたんですけど……)

エリ「きっとラッパ吹きの天使達も力が入ってるんだよ」

メグミ(それって、るりちゃんがラッパに細工したからじゃないの?)

エリ「細工って言っても、見せる記憶にルリエルのものを追加しただけだよ?何度も言うように、天使の行動までは操ってない」

メグミ(でも、るりちゃんの記憶からは人間に対する強い恨みが伝わってきた。それこそ、みんなの心を動かすくらいの)

メグミ(きっとラッパには、記憶だけじゃなくて、"気持ち"を伝える力もあったんだよ)


291 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 21:57:06 ???00
エリ「そっか。じゃあ、みんなにはちゃんと届いたんだね。響かなかったのはメグちゃんだけかぁ……」

メグミ(……そんなことない。私にもしっかり伝わったよ。痛いくらいの感情が……)

メグミ(もしも体を奪われてなかったら、きっとワーワー泣いてたと思う)

エリ「体の主導権を取ったのはごめんね。でも、こうしないとメグちゃん、自分で死のうとしてたんだもん」

メグミ(私は……人間に直接酷いことされた訳じゃないし、むしろ仲良くなれたから。殺そうだなんて思えなかったんだよ)

エリ「"仲良く"かぁ……それは、過去の記憶を見た今でも?」

メグミ(そうだよ。確かに、記憶の中で見た人達のことは憎いと思う。るりちゃんや、仲間達に酷いことをした。それは許せない)

メグミ(でもね!やっぱり記憶の中の人達と、今生きてる人達は関係ない!)

メグミ(1000年も経ってるんだから、きっと血が繋がってる人だってもういないだろうし!)

エリ「……血は繋がってるんじゃないかな?人間ってそういう生き物だって、お母様から教わったでしょ?」

メグミ(っ……お勉強はいいんだよ!)

メグミ(さあ!雑談は終わり!るりちゃんの感情を紐解くんだから!)

エリ「それも雑談じゃ……というか、ルリじゃなくて……」

エリ「はぁもう……面倒臭いからなんでもいいや……」


292 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 21:59:22 ???00
メグミ(いきなり核心を突いちゃうんだけどさ──)

エリ「なんで言う前から核心だって確信してるの??」

メグミ(あ、もしかして今のダジャレ?面白〜〜い!)

エリ「違うよ」

メグミ(……コホン!でね、あなたも私の封印が解かれたのと同時に目覚めて、同じ景色を見てきたんでしょ?今の私みたいな状態で)

エリ「うん。メグちゃんの目と耳を通して、全部把握してたよ」

メグミ(だったら、コズエやカホちゃん達のことはどう思ってるの?)

エリ「っ!それは……」

メグミ(この街で色んな人間には出会ったけどさ、少なくともあの子達を見ていて、嫌いになる要素はなかったと思うんだけど?)

メグミ(実際、私が人間と仲良くなれたのも、あの子たちが私に平等に接してくれたおかげだし)

エリ「……でも、その……胸の内まではわからないから……」

エリ「やっぱり、簡単に信用しちゃいけないというか……」

メグミ(嘘だね!さっき私の思考は筒抜けって言ってたけど、それはこっちにとっても同じことだよ)

メグミ(今はお互い心が丸裸なんだから、恥ずかしがらずにさらけ出してこ☆)

エリ「…………」


293 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:00:54 ???00
エリ「正直に言うと……メグちゃんと一緒に暮らしてた人達のことは、悪くは思ってないよ……」

メグミ(やっぱりね!だってみんないい子ばっかだもん!)

エリ「そう……だね」ズキッ

メグミ(え?どうして今ので心が痛くなってるの──)

エリ「っ!何でもない!続けなよ」

メグミ(あ、うん……じゃあ他の人達、例えば商店街の人とか、冒険者仲間の人達のことはどう思ってるの?)

エリ「……」

メグミ(答えられないんだ)

エリ「……嫌な人も、いた」

メグミ(まぁ、それは同意。特に冒険者とか個性強いしね〜自分勝手な人とかもいたよ。うんうん)

メグミ(でも、それだけじゃなかった。すっごい正義感ある人とか、優しくしてくれる人もいた)

メグミ(あなたはきっと、そういう人達のことを憎めない)

エリ「どうしてそう思うの?」

メグミ(なんとなく!でも、絶対そうだよ)

エリ「はぁ……メグちゃんには敵わないなぁ」


294 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:03:36 ???00
メグミ(つまり、一人ひとりを見ていくとそんなに憎む要素は無いんだよ!)

メグミ(でもあなたは、人間への恨みを抽出した存在だから、人間を憎まずにはいられない)

メグミ(だから、みんなを過去の人間達と重ねて、無理やり憎もうとした)

メグミ(あなたの復讐は、人間そのものに対するものじゃない。"過去"に対する復讐だったんだよ!これでどうだ!)

エリ「…………半分正解、かな」モヤモヤ

メグミ(あれぇ!?絶対そうだと思ったのに!)

エリ「間違ってはないよ。うん、でもまだ足りない」

エリ「あぁ、ヤダなぁ……話聞いてて、自分で気づいちゃった……」

メグミ(え、わかったの?なになに?教えて!)

エリ「私は──っ!やっぱり言いたくない!」

メグミ(えぇー!教えてよ!)

エリ「こんな理由、"メグちゃんにだけは"言えない……!ていうか、もう自分でわかったんだからいいでしょ!」

メグミ(言ってくれないと解決できないじゃん!だってあなた、まだモヤモヤしてるし……)


295 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:07:10 ???00
エリ「そんなこと────ん?待って、何か近づいてくる」

メグミ(え?何かって……)

天使「……」🎺フワー↑

エリの視線の先には、第五のラッパ吹きの天使が上空で待機している。

どうやら街の結界が消失したのを確認し、自らが持つラッパを使う準備をしているらしい。

メグミ(っ!また新しいラッパ……今度はいったい何が──)

エリ「違う……!天使の方じゃない!」

メグミ(へ?)

エリ「そのもっと先!街の外から、"ナニカ"がすごい速さで近づいて来てる……!!」


天使「……すぅーっ」🎺

🎺プ──



💥💥💥ドガーーーーン!!

エリ「っ!?うわっ!」🌪ブオーン!

メグミ(なに!?爆発!?)

突然、遥か彼方から飛んできた魔弾が、ラッパ吹きの天使に直撃した。

それは着弾と同時に爆発し、半径50mに及ぶ巨大な光の球体を展開する。

高濃度に圧縮された魔力の影響か、光が消えたあとの空間は陽炎のように微かに歪んで見える。

その中心に、ラッパ吹きの天使の姿は無かった。

メグミ(い、今のは……?)

ルリエル「カナザワの街からじゃなかった……!もっと、ずっと遠くの方から──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


296 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:09:53 ???00
【王国軍 特殊兵器研究所】

カナザワから約140km。

『ナガノ』に存在する山脈の某所に、王国軍が所有する軍事施設がある。

そこで研究されている兵器の名は『AHB(Angel Heart Breaker)』。

天使の復活を恐れた王国が、秘密裏に製造を進めていた"長距離魔弾砲"である。

「一発目、着弾!対象の消滅を確認しました!」

司令官「よし!次弾発射用意!急げ!」

「はい!」

司令官「まさか本当に結界が壊されるとはな。だが、お陰でこちらも秘密兵器を使える」

司令官「カナザワは既に壊滅状態だが、これ以上に被害地域を拡大させる訳にはいかない」


297 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:12:20 ???00
「魔力の再装填完了しました!次の標的の指示をお願いします!」

「標的はカナザワ上空に浮遊している天使だ。現地にいる王国騎士から『ラッパ持ちは高く飛ぶ』と情報が入っている」

「まずは上空にいる天使を一人残らす撃ち落とせ!」

「はい!」

「……標的、設定完了。『AHB』発射シーケンス開始!」

⚛️ブオーン…

研究所の屋根から突き出すように伸びた巨大な砲身。

それは十得杖の技術を応用して作られており、砲身の表面には何千という呪文が刻まれている。

山の霊脈から吸い出した魔力を通すことで、呪文が活性化され、砲身の内部に158層の魔法陣を展開する。

「標的までの距離測定、完了。AHB、いつでも撃てます!」

司令官「発砲を許可する!」

「3、2、1────」

『点火(イグニッション)!!』

三💥 バッキュン!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


298 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:15:05 ???00
エリ「また来るよ!」

メグミ(狙われてるのは誰!?)

エリ「まだわからない!」

メグミ(見えてからじゃ避けられないよ!下に逃げよう!)

エリ「う、うん……!」

三 ビュン!

エリ「!?」

💥💥💥💥💥ドガーーーン!!

エリ「きゃあぁぁぁ!!」ビリビリ

メグミ(きゃあぁぁぁ!!)

二発目の魔弾は、第二のラッパ吹きに直撃した。

比較的近くに飛んでいたメグミの体も、爆発の光に巻き込まれてしまった。

エリ「うぶっ……!」

メグミ(苦しい……)

エリ『エリクサー』✨キラキラ

エリ「──ごばっ!?」ビチャ

エリ「これ、体を治してもダメなやつだ……魂を直接攻撃してる……」

メグミ(そんな魔法が……)ズズズ


299 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:17:38 ???00
エリ「メグちゃん!?」

メグミ(う、うぅ……)

エリ「そっか、今のメグちゃんは精神体だから、その分ダメージが多いんだ……」

エリ(いざとなったら、メグちゃんに体を返して、魂を安定させて──)


三💥 バッキュン!


エリ「!!」

エリ(また来た!今上空にいる天使は、私ともう一人だけ!確率は1/2 ……!)

音速で飛行する魔弾が、カナザワに向かって急接近する。

禍々しい魔力を光らせながら、その凶星が視界の中心に現れた。

メグミ(もしかして、次に狙われてるのって──)

エリ「私達だ!!」

メグミ(私達だ!!)

エリ(避け──無理!間に合わない!せめてメグちゃんの魂が傷つかないように!)

三ビュン!

エリ(あ、これどうやっても間に合わない──)


300 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:21:33 ???00
コズエ「メグミーー!!」ビュン↑↑↑


エリ「!?」

メグミ(コズエ!?)

地上からの高さ200m。鳥さえも滅多に飛ばない上空に、聞こえるはずのない聞き慣れた声が響く。

メグミ(なんで……てかどうやって!?)

三ビュン!

エリ「ダメ!たとえ盾になったとしても、この至近距離じゃ爆発に巻き込まれる!」

コズエ「っ!」バッ!

コズエ『保存!』

🌀ギュオーン

メグミの前に飛び出てきたコズエが、保存魔法を発動する。

魔弾は爆発することなくコズエの体に吸い込まれ、跡形もなく消えてしまった。

エリ「そっか!保存魔法!」

コズエ「メグミ!」クルッ

メグミ(コズエ!よかった生きてたんだ!)

コズエ「もし意識があるなら聞きなさい!」

コズエ「必ず助けるわ!だから──」

コズエ「安心して待っていなさい!!」↓↓↓ ピューーン

エリ「っ……!」

浮力を持たないコズエは、真っ逆さまに地上へ落下する。

夜の闇に紛れて、その姿はすぐに見えなくなってしまった。


301 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:23:42 ???00
メグミ(コズエ……)

エリ「…………ずるい」

メグミ(え?)

エリ「メグちゃんの周りばっかり……優しい人間がたくさんいて……」

エリ「"ルリ"の時は、誰も助けてくれなかったのに!!」

メグミ(……るりちゃん?)

エリ「ルリは信じてたんだ!きっと仲良くなれるって!メグちゃんと一緒に、天使と人間の架け橋になってやるんだって!」

エリ「でも、実際は笑顔で天使を騙す人とか……飛べないルリに石を投げるような人ばっか……」

エリ「裏切られたと思った……ううん。本当は人間は悪い魔獣だったのに、ルリが勝手に信じてただけ」

エリ「だから、メグちゃんと一緒に目覚めたあとも、きっと人間はメグちゃんを傷つけると思ってた……その時は、ルリが助けるんだって──」

エリ「なのに!メグちゃんが出会う人間はいい人ばっかりだった!なんで!?人間はみんな悪いやつなんじゃないの!?」

エリ「その後も、メグちゃんはずっと楽しそうだった。私達のこと忘れるくらい、人間と仲良く過ごしてた……」

エリ「そんなの……そんなの……!」


302 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:27:03 ???00
エリ「ずる過ぎるよ!!!!」

メグミ(っ!もしかして、るりちゃん……私に"嫉妬"してたの?)

エリ「そうだよ!!メグちゃんに嫉妬したの!!ルリはあんなに酷い扱いをされたのに、メグちゃんはみんなから愛されて、仲良しで……」

エリ「だ、だから……ぅ、奪いたく、なっちゃったの……!」

メグミ(!!まさか、これは人間への復讐じゃなくて……私への当てつけ──)

エリ「1000年前のあの日だって、ルリを庇って一人で封印されたのに……今のルリは、それさえもずるいと思っちゃう……」

エリ「もしもあの時、ルリも一緒に封印されてたら、苦しい思いをしなくて済んだのにって……」

エリ「失望したよね……一番の親友みたいな顔して、メグちゃんに嫉妬して、メグちゃんの大切な人たちを殺そうとして……」

メグミ(…………)

エリ「でも、仕方がないんだよ……私は黒い感情だけを切り離した存在だから……誰かを憎まずにはいられない……!」‪

エリ「私は人間じゃなくて、メグちゃんのことを憎いと思っちゃったの!!!」‪💧‬

メグミ(!!!)

エリ「メグちゃんが羨ましくて、メグちゃんが憎くて……メグちゃんも私と同じくらい、辛い思いをして欲しいって……そう思っちゃっ…た……!」


303 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/14(日) 22:32:45 ???00
エリ「これが私!汚くて最低で、嫉妬深い堕天使なの!!」

エリ「ねぇ!これで満足!?私の汚いところを暴き出して、メグちゃんはこれで満足した!?」

エリ「罵ってよ!最低だって!『お前なんかルリちゃんじゃない』って!!私を否定してよ!!」

メグミ(…………ごめんね、るりちゃん)

エリ「っ!」

メグミ(るりちゃんの気持ちも知らずに、私ばっかり楽しい思いしちゃった。もっと早く、気づいてあげればよかったのに)

エリ「やめて……謝って欲しかったんじゃない!私は、私を否定して欲しくて──」

メグミ(そんな事しないよ。たとえるりちゃんがどんなに嫉妬深くても、汚くても、私は絶対にるりちゃんを否定したりなんかしない)

エリ「なんで……どうして!客観的に見て、私はどう考えても最低なことしてて……」

メグミ(客観とか関係ない!私は私!私が感じて、私がしたいようにする!)

メグミ(辛そうな顔してるるりちゃんのことを、これ以上傷つけるようなこと言うもんか!)

エリ「なんで……メグちゃんはそんなに優しいの……」‪💧‬ポロポロ

メグミ(そんなの決まってるよ!私は──)✨

メグミ「私はるりちゃんのことが世界一大好きな、あなたの"幼なじみ"だから!!」

エリ(!!!)

メグミ「一人で辛い思いさせてごめん。心細い思いさせてごめん」

メグミ「助けを求めた1000年前のあの日から、るりちゃんがずっと苦しんでいるのなら──」

メグミ「その時の分まで!私があなたの心を救ってみせる!!!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


304 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:22:24 ???00
【20分前】

ギンコ「津波……」

水平線の向こうに見える歪みは、確実にカナザワの方に向かって近づいて来ている。

カナザワは海に隣接している訳では無いが、先程の地震の規模から考えて、やって来る津波はきっとここまで到達するだろう。

ギンコ「もう……やめてよ……」ペタン

ギンコ「充分でしょ……これ以上、私達の街を壊さないで……」‪

カホ「げほっ……ギンコちゃん……」グタッ

ギンコ「はっ!カホさん!待ってて、いま回復魔法をかけるから!」

ギンコ『リカバー』✨

カホ「ありが──うぐっ!」バタン

カホ「あれ?足が動かない……痛っ!」ズキン

ギンコ「!!もしかして、骨が折れてる……?」

ギンコ「私を、庇ったせいで……」ギリッ

カホ「ギンコちゃん、自分を責めないで。あたしがギンコちゃんを助けたくてやったことだから」

ギンコ「でも……!」

カホ「まだ戦いは終わってない。ギンコちゃんがみんなを守って」

ギンコ「私なんかじゃできっこないよ!」

カホ「できるよ。ギンコちゃんは強い子だから」

ギンコ「そんなことない!私はコズエさんみたいな特別な魔法も持ってないし……!」

カホ「確かに、特別な魔法は無いかもしれないけど、ギンコちゃんは強いよ。心が強い」

カホ「だから、きっと大丈夫。あたし、ギンコちゃんのこと信じてるから!」


305 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:24:37 ???00
ギンコ「っ……」

ギンコ(そうだ、泣きごとを言っててもしょうがない。せめて自分にできることをしよう)

ギンコ(津波はすぐには来ない。まずはコズエさんを起こして、あの天使をどうにかしてもらわないと!)

ギンコ「カホさんは目をつけられないように、ここでじっとしてて──」スクッ

🗡三シュン!

カホ「危ない!!」

ギンコ「!?」クルッ

決意を固めて立ち上がったギンコに、一本の剣が心臓を目掛けて飛んでくる。

ギンコ「まずっ──」

ルリエル「させない!」パシン🗡

ギンコ「ルリエルさん!」

ルリエル「ギンコちゃん、回復魔法使えるんでしょ?ルリは今使えないから、みんなのことお願い!」

ギンコ「はい!そのつもりです!」ダッ

ミカエル「ルリエル……俺の邪魔するということは、本当に敵として認識して構わないということだな?」

ルリエル「……」ゴクリ

ミカエル「そうか、ならばお前とて容赦はしない。だが──」

ギンコ「はぁ!はぁ!」タタタッ

ミカエル「まずは人間からだ!」🔯

🗡三シュン!

ギンコ「っ!」


306 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:25:46 ???00
カチマチ『たぁ!』⚡️🗡カキン

ギンコ「カチマチさん!怪我は!?」

カチマチ『カチマチは大丈夫!それよりコズエさんが辛そう!』

ギンコ「わかった!」

🗡🗡三シュン!シュン!

ギンコ「っ!」バッ!

ギンコは剣を飛び退けると、そのままコズエが落ちた穴に飛び込む。

ギンコ「痛いっ!」ドサッ

ギンコ「っ……コズエさん!しかっり……!」

コズエ「……」

ギンコ「皮膚がただれてる……耐火スーツが無かったらもっと酷かったかも」

ギンコ『リカバー!』✨

コズエ「ん……」ピク

ギンコ「早く起きてください!上でみんながまだ戦ってます!」ユサユサ

🗡〜フワー

ギンコ「え?」

死角にいると思い込んでいたギンコの目の前に、まるでこちらを見ているかのように一本の剣が浮いている。

🗡三シュン!

ギンコ「!」グイッ

頭を狙ってきた剣を間一髪で避け、壁に刺さった剣を動かないように押さえつける。

🗡ガタガタ…!


307 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:27:44 ???00
ギンコ「なんで?さっきの位置からじゃここは見えないはず……」チラッ

ミカエル「……」フワー

ギンコ「!?あんな高いところに!」

カチマチ『卑怯です!降りてきてください!』

ミカエル「……よくよく考えてみたら、俺がお前達と同じ視点で戦ってやる義理はない」

ミカエル「俺はただお前らを見下ろしながら、地べたを這いずる獣を串刺しにすればいいだけだ」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡🗡三ズラー!

ギンコ「!!」

ギンコ(ダメっ……避けられない!)

ルリエル「おりゃーー!!」ガバッ

ミカエル「!?」

🗡🗡🗡🗡🗡ピタッ

ギンコ「あれ?」

ギンコに向かって飛んできた剣が、空中で一斉に動きを止める。

空を見上げると、ルリエルがミカエルの頭を後ろからだき抱えて、視界を塞いでいた。

ミカエル「ルリエル!洒落にならないぞ!」グイッ

ルリエル「シャレも何もあるもんか!ルリは本気だよ!」

ミカエル「貴様っ!」🗡ブン

ルリエル「痛っ……!」

ミカエルは自身の頭上に向けて剣を振り回す。

剣はルリエルの体に何度も当たるものの、同族への情けか、或いは自分の体を傷つけないようにするためか、身体の表面を浅く切りつける。


308 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:29:32 ???00
ルリエル「っ!借りてる体なんだから、あんまり傷つけないでよ!」

ミカエル「だったら早くこの手を解け!ルリエル!」

ルリエル「絶対に離さな──!!いいよ。離してあげる!」バッ

ミカエル「?急に聞き分けが良く──」

ギンコ『ファイヤーボール!』🔥

ミカエル「ぐはっ!?」🔥ボン!

手毬ほどの大きさの火の玉が、ミカエルの体に直撃し大きく爆ぜる。

ミカエル「このっ!」🔯バチバチ

🗡三シュン!

ギンコ「!!」

コズエ「はっ!」🗡カキン!

ミカエル「ちっ、回復されたか」

カチマチ『コズエさん!ギンコちゃん』タッタッタ

ギンコ「カチマチさんストップ!」✋

カチマチ『ええ!?』ピタッ……ドテン!

カチマチ『ど、どうしたのギンコちゃん?』

ギンコ「皆さん!できるだけ散らばって攻撃してください!」

コズエ「散らばる?何か彼の弱点を見つけたのね」

ギンコ「はい!私の予想が正しければですけど……」

コズエ「大丈夫、信じるわ!」


309 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:31:15 ???00
ギンコ「ありがとうございます!ただ、空に飛ばれたせいで決定打になる攻撃がありません」

コズエ「それならひとつ思いついたことがあるの。ギンコさん、悪いのだけれど──」

ギンコ「あいつの気を引けばいいんですね。やってみます!」ダッ→

コズエ「助かるわ!」ダッ←

カチマチ『ギンコちゃーん!カチマチはいつまで止まっていれば!?』

ギンコ「もう動いていいから!むしろ目障りなくらい走り回って!」

カチマチ『わかりました!うおぉぉぉ!』⚡️ダダダッ!

ルリエル「それならルリは、ミカエルさんより高いところから!」↑↑

四者四様、それぞれ座標も動く速さもバラバラにミカエルを取り囲む。

ミカエル(何のつもりか知らないが、この中でまともな遠距離魔法が使えるのはあの黒髪の魔法使いのみ)

ミカエル(ならば、他は無視してまずあいつから撃つ!)🔯バチバチ

🗡🗡三シュン!

ギンコ「っ!」バッ…🗡スカ

ギンコ(気を引くまでもなく狙ってくれるのはありがたいけど、ずっと逃げ続ける体力は無い!)

🗡🗡🗡🗡🗡🗡ズラー

ギンコ(コズエさんはこれを至近距離から凌いでたんだ。やっぱりすごい──って、感心してる場合じゃないよ!)

🗡🗡🗡🗡🗡🗡三シュン!シュン!

コズエ『リリース:アンペア』⚡️ビリリ

コズエ「はっ!」🗡⚡️三ピュン!

コズエは地面に刺さっていた剣を手に取ると、それに電流をまとわせてミカエルに向かって投擲する。

ミカエル「!!」🔯ブン…

🗡⚡️ピタッ

🗡🗡🗡🗡🗡🗡ピタッ


310 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:33:20 ???00
ギンコ「止まった!やっぱり、バラバラに操れるわけじゃないんだ!」

ギンコ(さっきまでの戦い方、それに記憶で見た大規模攻撃)

ギンコ(どれもすごい数の武器を操ってたけど、武器を飛ばす方向は全部揃ってた)

ギンコ(天使だって脳は一つしか無いんだから、同時に色んな方向に意識を向けることはできないんだ!)

ギンコ『ファイヤーボール!』‪🔥

ミカエル「……!」🔯バチバチ

🗡🗡🗡
🗡🗡🗡🔥ボン!
🗡🗡🗡

ルリエル「ルリキーック!」ゲシッ

ミカエル「がっ!?」グラッ

地上に意識を向けていたミカエルの後頭部に、ルリエルのドロップキックが炸裂する。

突然の強襲に一瞬視界が歪み、ミカエルは空中でバランスを崩した。

コズエ「カチマチさん!」

カチマチ『お願いします!』ダッ

コズエ「せーーっの!」グイッ ↑↑

ピョン!

カチマチ『ふん!』⚡️ガブリ!

ミカエル「くっ!また……!足に穴が空いたらどうする!」⚡️ビリリ

カチマチ『剣を飛ばしてくるやつに言われたくありません!』

カチマチ『さあ!下に降りてもらいます!』ブラン ブラン


311 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:34:56 ???00
ミカエル「誰が降りるものか!!」🔯🗡🗡🗡🗡🗡

カチマチ『っ!』

足にぶら下がるカチマチを取り囲むように、大量の剣が360度からカチマチに狙いをさだめる。

カチマチ『うわぁぁぁ!』バタバタ

コズエ「カチマチさん落ち着いて!足を離して落ちなさい!」

カチマチ『ん〜〜〜〜っ!(アゴに力が入って離せない)』

ミカエル「いつまで噛んでいるんだ……!人間以外は見逃すつもりだったが、そんなに死にたいならお望み通り──」

ギンコ『ワールウィンド!』🌪ブォー

🌪🗡🗡🗡カラカラカラ!

カチマチ『わっ!?』🌪ポイ

コズエ「危ない!」キャッチ

カチマチ『ありがとうございます……!』

ギンコ「はぁ…はぁ……『ウォーターカ──」

🗡三シュン!

ギンコ「あっ!」パシッ

死角から飛んできた剣が、ギンコの杖を弾き落とす。

ギンコ(しまった……!)


312 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:37:59 ???00
ミカエル「やはり、魔法使いは先に処理すべきだったな」🔯🗡バチバチ

ルリエル「……」ソロ~リ

ミカエル「」シュバッ↑↑↑

ルリエル「え、消えた!?」

ギンコ「ルリエルさん後ろ!!」

ルリエル「っ!」バッ

🗡スパン!

ルリエル「あ──」ブシャ!

ミカエルは手に持っていた剣に引っ張られ、高速でルリエルの背後に回り込む。

その勢いのまま、ミカエルは容赦なくルリエルの片翼を切り落とした。

ルリエル「うっ……!」↓↓↓ ドサッ

ミカエル「同族の好だ。本来なら殺しているところだが、特別に片方の羽だけで許してやる」

ミカエル「これ以上邪魔をしないのなら、最後にはお前のことも天界へ連れ帰ってやろう」

ルリエル「っ……!邪魔をしてるのは、ミカエルさんの方だよ!」

ミカエル「ついでにその五月蝿い口も閉じておけ、お前の声はやけに頭に響く」

ギンコ「ルリエルさん大丈夫!?」

ルリエル「うん……でも、もう自由に飛ぶのは無理そう」


313 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:40:06 ???00
ミカエル「俺の弱点を見つけたつもりだったらしいが、ルリエルさえ静かになれば、お前らがどれだけ地上で騒ごうと変わらない」🔯バチバチ

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡ズラー

ギンコ「!?」

ギンコ達の頭上を、無数の剣が埋め尽くす。

これが一斉に落ちてきたら、一人も欠けずに無事にやり過ごす術はないだろう。

ギンコ(ダメだ……コズエさんにも意識が向けられてる。気を引くように頼まれてたのに……!)

ギンコ(やっぱり、私なんかじゃ……)

ミカエル「この時代の人間の強さを測るにはちょうど良かった。さらばだ、ルシファーの子供たち」スッ

ギンコ「っ!」



💥💥💥💥💥ドガーーーン!!


「「「!?!?」」」

ミカエルが腕を振り下ろす直前、突如上空で激しい爆発が起きた。

強烈な光は一瞬のうちに膨張し、その場にいた全員の視線を釘付けにする。


314 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:43:26 ???00
ギンコ「またラッパ!?でも、音は聞こえなかったはず──」

ミカエル「なんだ?あの禍々しい魔力は……」ボー

コズエ「っ……!」✋スッ

視線を地上から外したミカエルに向かって、コズエが左手をかざす。

コズエ『フルリリース──』

ミカエル「っ!?」ゾクッ

コズエ『ルミナス!!』✨ピカーン!

コズエは保存しておいた光の矢を、ミカエルへ放つ。

ミカエルは咄嗟に剣を操り盾にしようとするが、文字通り光の速さの攻撃に防御が間に合わず、全身に光線を浴びてしまった。

ミカエル「ぐぉぉぉぉぉ!」🔥🔥

美しい純白の翼は炎に包まれ、浮力を失った体は地上へ落下する。

↓↓↓ボト──グギッ!

ミカエル「──」🔥ジリジリ

ギンコ「倒した……?」

コズエ「流石にこれくらいで死にはしないでしょう。けれど、一旦は無力化できたかしら」

カチマチ『どうしますか?今のうちに殺っちゃいます?』(悪い顔)

ルリエル「!!待って!」


315 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:46:26 ???00
ギンコ「ルリエルさん?」

ルリエル「あの、お願いがあるんだけど……ミカエルさんのこと、見逃してくれないかな?」

ギンコ「え?」

ルリエル「あなた達にとっては敵かもしれないけど、天使のみんなにとっては、仲間想いの頼れるお兄さんみたいな存在なの!だから、命だけは──」

コズエ「……ごめんなさい。それは約束できないわ」

コズエ「私達も、彼に情けをかけられるほど強くはないの。気絶している間は手を出さないけれど、また攻撃してきた時は殺す気で戦うわ」

ルリエル「っ!そう……だよね……ごめんなさい。いくらなんでも虫がよすぎたね」

コズエ「もちろん、和解できるならそれに越したことはないのだけれど……」


💥💥💥💥ドガーーーン!!

カチマチ『うわぁ!?』ビクッ!

ギンコ「またさっきと同じ爆発!ルリエルさん、これも天使がやってるんですか?」

ルリエル「違う!こんな魔法見たことない!たぶん天使以外が──っ!?」

ルリエル「メグちゃん!?」

コズエ「え?」チラッ

ルリエルの視線につられて、一同は空を見上げる。

そこには爆発の光の中で、空中をさまようメグミの姿が照らし出されていた。


316 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:49:09 ???00
ギンコ「あんなところに!あれじゃ爆発に巻き込まれちゃうよ!」

コズエ「──もしかしてあの攻撃、天使を狙っているの?」

ルリエル「!?」

ギンコ「人間側の攻撃ってことですか?でもどこから……」

カホ「詳しい位置はわからないけど……東の方から飛んできてたよ」ズルズル…

ギンコ「カホさん!?じっとしてるよう言ったじゃないですか!動いちゃダメですよ!」

コズエ「え、カホ?どうして体を引きずっているの……?」

カホ「あはは……ちょっと怪我しちゃいました。それよりも、このままだとメグちゃんが危ないです!」

カチマチ『そうです!あんな攻撃に当たったら、メグミさんでも死んじゃいます!』

ルリエル「っ……ルリが飛べれば助けに行けるのに、羽が片方しかない状態じゃ、メグちゃんのところまで行けない……!」

コズエ「…………仕方がないわね」

ギンコ「コズエさん?何を──」

コズエ「私がメグミのところまで行くわ」トントン


317 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:53:02 ???00
ルリエル「行くって……あなたには羽がないのに、どうやって……?」

コズエ「使わなかった分のエネルギーが残っているから、それを解放して飛び上がるのよ!」

コズエ「片足に衝撃を集中させれば、ギリギリメグミのいるところまで届くわ」

カチマチ『ええ!?でも、足が壊れるからできないって……』

コズエ「人間には足が二本もあるのよ。一本くらいなによ!」

ギンコ「だいぶ致命的だと思いますが!?」

ルリエル「コズエさん……お願いします。メグちゃんを助けてください!」

コズエ「ええ、言われなくてもそのつもりよ!」グググ!

コズエは上空を見上げたまま左足を引いて、右足で片膝立ちの体勢をとる。

ギンコ「ちょっと待ってください!メグミさんのところまで飛んで、その後どうするんですか?着地とかも……」

コズエ「一番の目標はメグミを引きずり下ろすこと、でも場合によっては、さっきの魔弾からメグミを守ることを優先するわ」

コズエ「着地は自分で何とかするから大丈夫よ」

ギンコ「何とかって──」


318 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 22:56:26 ???00
ルリエル「!?」ビクッ

ルリエル「またさっきのが来た!」

コズエ「カホ!反発魔法でアシストしてちょうだい!使うタイミングは私が地面から離れた直後よ!」

カホ「わかりました!」ズル!ズル!

コズエ「行くわよ!」

コズエ『フルリリース──インパクト!!』💥ドン!

カホ『レプルス!!』✨

右足から全エネルギーを放出し、コズエは夜空に向かって飛び上がる。

凝縮されたエネルギーを内側から爆発させた右足は、筋肉が破裂して足全体から血を吹き出している。

コズエ「〜〜〜〜っ!!」ビュン↑↑↑

メグミ「……」フワー

コズエ(見えたわ!)

コズエ「メグミーー!!」

メグミ「!?」

突然の声に驚愕したメグミの顔が、コズエへと向けられる。

それは間違いなくメグミの顔だったが、どことなく表情や雰囲気がよく知るメグミのものとは異なっていた。


319 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 23:00:21 ???00
三ビュン!

コズエ「っ!」

コズエ(やっぱり、狙いは上空の天使ね!)

コズエは背中をメグミの方に向けると、飛んでくる魔弾に手を突き出し、保存魔法を発動させる。

コズエ『保存!』

🌀ギュオーン

ズズズ…

コズエ(なに?この不快な感覚……保存魔法を使っているのに吸収を貫通してくる……!)

🌀……パッ!

コズエ「ふん!」クルッ

魔弾を全て吸収すると、コズエは半身を翻しメグミに手を伸ばす。

しかし、二人の間にはまだほんの少し距離があり、手が届かない。

コズエ(ダメ、掴めない!それならせめて──)

コズエ「メグミ!」

メグミ「……」

コズエ「もし意識があるなら聞きなさい!」

コズエ「必ず助けるわ!だから──」

コズエ「安心して待っていなさい!!」↓↓↓ ピューーン

メグミ「っ……!」

コズエの体は上昇させる力を使い切り、真っ逆さまに地上に落下する。

最後に見たメグミの顔は、ほんの少しだけ、寂しそうに見えた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


320 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 23:07:39 ???00
【ナガノ 特殊兵器研究所】

「三発目の魔弾……し、消失しました!」

司令官「バカな!消失しただと!?一体何があった!」

「AHBが天使に到達する直前、未登録の魔法が発動したのが記録されています。恐らくそれが原因かと……」

司令官「未登録の魔法……天使の仕業か?ハセガワ、千里眼魔法で見ていたか?」

「確認していましたが……どうやら天使ではなく、人間の仕業のようです」

司令官「人間?まさか天使を守ったのか!?天使からあれだけの被害を受けながら?」

「天使を崇拝する教会の人間かもしれません。彼らの中には、天使に召されることを目的に生きる狂信者もいるという話ですし」

司令官「ただの狂人ならともかく、AHBを無効化する程の魔法を持つ人間が、天使の味方でいられると厄介だ……」


321 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/17(水) 23:10:51 ???00
司令官「スズキ、AHBはしばらく冷却が必要だったな?」

「はい!20分程は使えません!」

司令官「ならちょうどいい、その間に"彼女"に件の人間の対処を頼もう」

司令官「おい、聞こえるか」🔯

ーーーーーーーーーーーーーー

ツヅリ「はい。ユウギリです」🔯

ツヅリ「紫色の髪をした女の人?」

ツヅリ「天使じゃない?はい。はい……」

ツヅリ「わかりました。『むりょくか』します」🔯プチ…

ツヅリ「…………」

ツヅリ「むりょくか?って何だろう……」

ツヅリ「でも、天使の味方をする悪い人なんだよね?じゃあ──」

⏱カチ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


322 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:02:48 ???00
コズエ「ぐぅぅぅ!」↓↓↓ヒューン

真上に飛んだつもりだったが、実際には斜めに飛んでいたらしく、落下地点には受け止めてくれそうな人影はない。

少し視線をずらせば、カチマチに跨りこちらに向かって来るギンコ達の姿が見えるが、どうやら間に合いそうにはなかった。

コズエ(これくらい想定内よ……!使い切ったエネルギーは、ここで補充させてもらうわ!)

コズエ『保存!』

↓↓↓ポムッ!

高所からの落下にも関わらず、その着地は恐ろしく静かでソフトなものだった。

結局コズエは、飛び上がった時の足の怪我以外、無傷で地上へと帰還した。

コズエ「…………ふぅ〜〜」ヘタ

カチマチ『コズエさーーーん!』タッタッタ!

カホ「無事ですかーー!」

コズエ「ええ!何とか生きてるわ!」


323 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:04:05 ???00
カチマチ『とうちゃーく!──って、あわわ!コズエさん、足が血で真っ赤です!』

カホ「ギンコちゃん!早く回復魔法を!」

ギンコ「もうやってる!けど、このレベルの怪我だと、普通の回復魔法じゃ治しきれない……」✨

カチマチ『そんな──』

ルリエル「……ギンコさんどいて」

ギンコ「え?」

ルリエル「──『エリクサー』」✨

✨キラキラキラ…

コズエ「!?傷が治ってる……」

カホ「まるでメグちゃんの──あ、元々はルリエルさんの魔法なんだっけ。でも、今は使えないんじゃ?」

ルリエル「権能はもう無いけど、残り火みたいなもので一回分は使える状態だったの」

ルリエル「……本当はメグちゃんの為に取っておくつもりだったけど、コズエさんは体を張ってメグちゃんを守ってくれたから」

コズエ「ありがとう、ルリエルさん」

ルリエル「お礼を言うのはこっちだよ。メグちゃんを守ってくれてありがとう」


324 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:07:34 ???00
コズエ「でも、メグミを連れ戻すことはできなかったわ……」

ギンコ「メグミさんの様子って、どうでしたか?」

コズエ「メグミなのにメグミじゃない。そんな不思議な感じだったわね」

コズエ「やっぱり、ルリエルさんの片割れ?が体の主導権を握っているみたい」

カチマチ『メグミさんの心は、ちゃんと残っているでしょうか……』

ルリエル「それはたぶん大丈夫。ルリならどんな状態になろうと、メグちゃんを消したりはしないはずだよ」

カホ「そっか、自分のことだもんね。何でもわかっちゃうんだ」

ルリエル「何でも……うーん……それはどうだろう……」

ギンコ「あの、話の途中ですみません。次はどうしますか?」

カチマチ『次?』

ギンコ「さっきはコズエさんが防いでくれましたけど、次に魔弾が来たら?その度にコズエさんに飛んでもらうわけにはいきませんよね」

コズエ「……必要であれば何度でもやるけれど、毎回上手くいくとは思えないわね……」

カホ「メグちゃんに自発的に降りてきてもらうか、魔弾を飛ばしてる誰かを止めないと──」



ツヅリ「……」ポツン


325 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:09:20 ???00
カチマチ『どっちも遠すぎて声が届か──っ!?』ビクッ

カチマチ『ツヅリさん!?』

カホ「え?」

コズエ「ツヅリ!」

ツヅリ「え、なに……どうしてボクを知って──」

ギンコ「お久しぶりです!ツヅリさん!」

カホ「急に引っ越したから心配してたんですよ!」

ツヅリ「うん?ありがとう……?」

ルリエル「あの人は?」

ギンコ「王国騎士のツヅリさんです。私達の知り合いなんですよ」

ルリエル「っ!王国……騎士……」

カチマチ『ツヅリさんがいれば百人力です!さっきの魔弾の攻撃も何とかしてもらいましょう!』

ギンコ「それは流石に無茶言い過ぎだよ……」

ツヅリ「あ、そうそう。さっきの魔弾を止めたのって、君なの?」

コズエ「君?ええ、私が保存魔法で吸収したわ」

ツヅリ「そうなんだ。よかった、すぐに見つかって」

コズエ「?」


326 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:12:04 ???00
ツヅリ「あれは天使を殺すために軍が作ったものなんだ。何度も打てないから、止められると困っちゃうんだって」

カホ「天使を殺すって──メグちゃんに当たりそうだったんですよ!?」

ツヅリ「"メグチャン"?もしかして、天使の名前?」

ツヅリ「そこにいるのも天使だし……やっぱり、君たちは天使の仲間なんだね」

ルリエル「!」ビクッ

ギンコ「……何か、会話が噛み合ってないような……?」

コズエ「ツヅリ、あなたどうしたの?」

ツヅリ「じゃあ、確認もとれたし……『むりょくか』するね」

⏱カチ

コズエ「!?」ブシャー!

カホ「え──」

突然、皆の視界からツヅリの姿が消えた。

それと同時に、コズエが全身から血を吹きだして地面に倒れる。

コズエ「ぐっ……!」バタン

カチマチ『コズエさん!?』

ギンコ「今のって、ツヅリさんの魔法?まさか──」

ツヅリ「……」🗡ポタ…


327 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:15:11 ???00
コズエ「ツヅ……リ……?」

ツヅリ「あれ?まだ動けるの?すごいね」

カホ「何してるんですか!ツヅリさん!」

ツヅリ「なにしてるかって……そういう命令だったから。『魔弾を止めた人間をむりょくかしろ』って」

カホ「そんな──命令だからって、どうして躊躇なく友達を攻撃できるんですか!」

ツヅリ「ともだち?」

ギンコ「カホさん待って。ツヅリさんの様子が変。まるで、私達を忘れてるような……」

ツヅリ「さっきから、どうしてボクの名前を知ってるの?もしかして、昔に会ったことある?」

カホ「!!まさかツヅリさん、あたし達と過した記憶が無くなってる?」

ギンコ「たぶん洗脳魔法だよ!もしかしたら、カナザワに居た頃の記憶ごと無くなってるのかも!」


328 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:16:55 ???00
カチマチ『ええ!?カチマチのことも忘れちゃったんですか!?』

ツヅリ「すごい……犬の言葉がわかる……マッシュくんとも話してみたかったなぁ」

ツヅリ「────ん?マッシュくん、ってだれだっけ?」モヤ

ツヅリ(なんだろう。この人たちを見てると、胸の奥がザラザラする。いやだなぁ……)

コズエ「目を……覚ましなさい……ツヅリ」ムクッ

ツヅリ「起き上がった。やっぱり君、"がんじょう"だね」🗡スッ

ギンコ「させない!」バッ

ツヅリ「む……命令されたのは紫色の髪の人だけなのに……」

ツヅリ(あんまりこの人たちの声を聞きたくないなぁ。移動しよう)

⏱カチ

パッ!


329 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/19(金) 20:18:18 ???00
カホ「また消えた!気をつけて!攻撃が来るよ!」

カチマチ『!!違います!ツヅリさんだけじゃありません!』

カチマチ『コズエさんも消えちゃいました!!』

ギンコ「っ!まさか、どこかに連れ去られた!?」

カホ「すぐに探さないと──痛っ!」ズキン

ギンコ「カホさんは怪我してるんだから無理しないで。ルリエルさんとここで待ってて!」

ギンコ「カチマチさん、二人の臭いを追える?」

カチマチ『やってみます!』クンクン

ルリエル「………………っ!?」ゾワッ

ルリエル「待って!!」

ギンコ「え?ルリエルさん、どうかしましたか?」

ルリエル(この気配……まさか──)


ミカエル「……」ピクッ…

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


330 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/21(日) 21:46:04 ???00
公式が"本物"を出してきて若干気まずい……


331 : 名無しで叶える物語◆ikvIhO8M★ :2025/09/21(日) 21:53:49 ???00
読んでるぞ
完結まで頑張って


332 : 名無しで叶える物語◆CHAnmhCD★ :2025/09/21(日) 22:06:53 ???00
公式が勝手に言ってるだけだから…


333 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 21:57:22 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

⏱カチ

コズエ「!」

コズエ(ここはどこ?街までは降りてないみたいだけど、さっきとは違う場所……)

コズエ「はっ!みんなは!?」バッ

ツヅリ「君しか連れてきてないよ?」ポツン

コズエ「っ!ツヅリ……!本当に、私達のことを覚えていないの?」

ツヅリ「知らないよ?」

コズエ「そう……それなら、思い出させて──あら?」

コズエは違和感を覚えて、自分の体に目を向ける。

コズエ「鎧が外されてる!?」

ツヅリ「重かったから、取ってから運んだんだ。それに、アレがあると切りにくかったし」

コズエ「……そこまでするなら、鎧を取った時点で私を攻撃すればよかったでしょう……」

ツヅリ「あ、たしかに。どうしてそうしなかったんだろう?」

コズエ「まぁいいわ。どうせあなたの魔法の前では、鎧なんて無意味だもの」

バトルアーマーはコズエの反射神経ありきの装備、時間を止めてくるツヅリが相手では、あっても無くても同じことだ。


334 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:00:12 ???00
ツヅリ「それにしても、君はなんでまだ立ってるのかな?普通は痛くて動けないはずなんだけど……」🗡スッ

コズエ(来る!)

コズエ『フルリリース──』

⏱カチ

世界から音が消える。

ツヅリはゆっくりとコズエに近づき、その体に剣を近づける。

ツヅリ「やっぱり、コズは強いからちゃんと切らないとダメかな……」🗡ブン!

────── 🗡ピタ

ツヅリ「──コズ……?」

ツヅリ「ボク、どうしてこの人の名前を……」

ジジジ……

ツヅリ「うっ…!」ズキン

頭の中に、知らないはずの映像が湧き上がってくる。

知りたくないこと、思い出したくないこと。

それがカタチを成す前に、ツヅリは慌てて記憶に蓋をした。

ツヅリ「…………ふぅ」スン

ツヅリ「そういえば、さっき他の人に名前を呼ばれてたね。だから覚えちゃったのかな」

🗡ズバ!ズバ!ズバ!

両太ももに脇の下、傷付けば出血の多い場所を的確に切りつける。

ツヅリ「血をいっぱい流せば、さすがにもう起き上がれないよね?」🗡

ツヅリ「じゃあ、天使の討伐にもどろう」

⏱カチ


335 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:05:35 ???00
コズエ『──アンペア』⚡️バチ…

⚡️⚡️バチバチバチ!

ツヅリ「!?」⚡️ビリリ!

コズエ「ぐっ……!」ブシャ!

ツヅリが魔法を解除した瞬間、コズエは大放電を起こし、電流がツヅリの体に感電する。

ツヅリ「し、痺れて……!動けない……」🗡カラン…

コズエ「はあっ!!」✊

ツヅリ「っ!?ぶ──!」ゴン!

何が起きたかわからず混乱するツヅリに向かって、コズエは渾身の鉄拳をお見舞いした。

コズエ(ツヅリと戦いたいだなんて、一度も思ったことは無いけれど……冒険者として、知らない魔法を見るとつい考えてしまうのよ)

コズエ("どうすれば勝てるのか"を!)

時間を止められている間は、コズエには何も抵抗することができない。首をはねられれば、そこでお終いだ。

だが、もしも運良く殺されなかったのであれば、ツヅリが魔法を解いた瞬間、その最も無防備なタイミングに、こちらの攻撃を合わせればいい。

ツヅリ「ぅ……」⚡️ビリリ

コズエ「思い出しなさい!ツヅリ!一緒に温泉旅館に行って、閉じ込められてしまったことを!」

ツヅリ「っ!」ズキン!

コズエ「街の冒険者と一緒にドラゴンと戦って、カナザワを守ったことも!」


336 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:09:21 ???00
ツヅリ「だから……」ムクッ

コズエ『フル──』✊グッ

⏱カチ

ツヅリ「ボクはそんなこと、知らないんだ!」

🗡ズボ!ズボ!ズボ!ズボ!

コズエ「かはっ──」バタン!

次は魔法を使う間もなく、体中を剣で串刺しにされてしまう。

起き上がろうと力むほどに、断裂した筋肉が悲鳴をあげ、上手く立ち上がることができない。

コズエ「……っ」ドクドクドク…

ツヅリ「はぁ…はぁ…」

ツヅリ(なんなんだろう……さっきからずっと、心がザラザラしてる)

ツヅリ(まるでサヤエンドウみたいだ。たくさんの気持ちが閉じ込め……)

ツヅリ「…………サヤ?」


──ツヅリさん。

わたしはツヅリさんを▇してます。


キ────ン

ツヅリ「ッッッ!?」ガクン

ツヅリ「だ、誰……?いまの……」

ツヅリ「変だ……すごく暖かいのに、冷たくて、こわい……」ガクガク


337 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:15:13 ???00
コズエ「ツ、ヅリ……」ムクッ

ツヅリ「!!」

コズエ「そう……怖いのね……あなたが受けた仕打ちを考えれば、当然だわ……」ユラ

コズエ「信じていた人に裏切られるのは、魔物に殺されそうになることより、ずっと怖い……」ザッ

ツヅリ「き、君は、ボクの何を知って──」ガタガタ

コズエ「でもね、ツヅリ。あなたは立ち止まるべきじゃない。心の傷を癒すには、時間がかかるの」ザッ

コズエ「"止めて"しまったら、あなたはいつまでも辛いままよ」ザッ

ツヅリ「やだ……やっぱり聞きたくない!来ないで!」🗡

コズエ「思い出して。この街であったことを……楽しかったことも、辛かったことも、全部──」

ジジジ──

ツヅリ「やめて……もう、何も話さないで!」ダッ

🗡ズブ

コズエ「ごぼっ……」

ツヅリの剣がコズエの心臓を突き刺し、体を貫通する。

満身創痍なコズエの体は、もはや時間を止めるまでもなく、無抵抗にツヅリの剣を受け入れてしまった。


338 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:19:00 ???00
コズエ「」バタン

ジワ……

ツヅリ「はぁっ…!はぁっ…!」🗡

🗡カラン

ツヅリ「あ、あれ……?手に力が入らない……」プルプル

ツヅリ「どうして、こんなに嫌な気持ちになるの……?」

ツヅリ「そうだ、命令……天使を殺さなきゃ……」テクテク…

コズエ「」

ムクッ…

ツヅリ「あ……その前に報告を──」

ガシッ!

ツヅリ「!?!?」

突然、ツヅリの首に背後から片腕が回り込む。

腕はもう片方の手でしっかりと固定され、ツヅリの頸動脈を圧迫する。

コズエ「……っ!」グイ!

ツヅリ「なん、で……生きて……!」グググ!


339 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:22:24 ???00
ツヅリ(腕を解けない!まるで力を吸収されてるみたいだ!)

⏱カチ

ツヅリ「っ〜〜!!」

ツヅリは時間を止めて、腕からの脱出を試みる。

しかし、隙間なくピッタリと密着する腕には、頭を通せる隙間はない。

ツヅリ(ダメだ……!時間を止めたまま意識を失ったら、本当に死んじゃう!!)

⏱カチ

ツヅリ「コズ……!離して……!」パンパン

コズエ「ツヅリが街を離れると言ってきた時、無理やりにでも引き止めればよかった……」

コズエ「サヤカさんのことで、ツヅリがとても傷ついていた事を知っていたのに……」

ツヅリ「サヤ……カ……?」

ジジジ──ガ──ガガガガ──!

ツヅリ「!!」

コズエ「"ムラノサヤカ"さん。彼女のことを忘れたくて、あなたは記憶を消したのでしょう?」

ツヅリ「あ──あぁ──」

その名前を聞いた瞬間、ツヅリの頭の中に濁流のように記憶が流れ込んでくる。

楽しかった記憶。
嬉しかった記憶。
暖かかった記憶。
幸せだった記憶。

その全てを、裏切られた記憶。


340 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/22(月) 22:27:47 ???00
ツヅリ「やだ!思い出したくない!」

ツヅリ「コズ!コズ!!助けて!」

コズエ「きっとあなたにとっては、殺されそうになったことよりも、裏切られたことの方が辛かったのよね?」

コズエ「ごめんなさい。近くにいたのに、見抜くことができなくて……」

ツヅリ「お願いだ!ボクを殺して!こんな世界!生きたくないんだ!」ジタバタ

コズエ「……どうして、ツヅリもメグミも、私にそんな酷いことを言うの……!」グッ!

ツヅリ「うぷっ……」ギチギチ

コズエ「友達を殺すなんて、そんなの、"死んでも"ごめんよ」

ツヅリ「──」ガクン

コズエはツヅリの首を絞め落とし、そのまま地面に寝かせた。

ツヅリの顔が苦痛に歪んでいるのは、首を絞められた苦しさからか、それとも──

コズエ「もっとも、私はとっくに死んでいるようなものだけれど……」

バタン!

コズエは全身から血を流して、ツヅリの横に倒れた。

刺されたはずの心臓は、傷が塞がり鼓動を再開している。

まるで、生物としての"終わり"を、無くしてしまったかのように──



🗡……カタカタ

🗡〜〜〜フワー

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


341 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:47:00 ???00
また、人間に負けた。

母上からいただいた権能があるのに、こうもあっさりと負けてしまった。

何故?

1000年前は意表を突かれた。死んだと思っていたルシファーが生きていたこと。人間の不思議な魔法に対応できなかったこと。

今回は……今回も、予想外の攻撃で反応が遅れた。いや、反応はできていたが、間に合わなかった。

…………あぁ、そうか。権能が弱いのではない。

俺だ……俺が弱いんだ!!

母上から託された、たった一つの使命すら果たせない!

俺は弱い。弱いのなら──

この魂を黒に染めてでも、"力"を!


342 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:47:47 ???00
ルリエル「っ!?」ゾワッ

ルリエル「待って!!」

ギンコ「え?ルリエルさん、どうかしましたか?」

ルリエル(この気配……まさか!!)


🗡🗡🗡🗡〜〜フワー

カチマチ『あ、見てください!剣が飛んでます!』

カホ「あれは、天使ミカエルの権能……てことは、目を覚ましたんだ……!」

ギンコ「でも、なんか変だよ。剣だけじゃなくて、瓦礫も飛んでいってない?」

カホ「へ?」

地震で崩壊した街の瓦礫、それらが剣と同じように、ミカエルのいる場所まで集まっている。

カホ「なんで!?ミカエルさんの権能って、武器を操るものだよね?どうして武器じゃない物まで飛んでるの??」

ルリエル「……ミカエルさんが、堕天しちゃった……」

カチマチ『だてん?』

ルリエル「あなた達も記憶の中で見たでしょ?ルリの羽が黒く染まって、権能の力が暴走するのを」

ギンコ「もしかして、同じことがミカエルさんにも?」

ルリエル「うん。ルリも一度堕天したからわかる。間違いないよ!」


343 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:48:52 ???00
権能は天使一人ひとりが神から与えられる、神が定めた『ルール』そのもの。

堕天とは、神の手を離すことで、そのルールを自分にとって都合のいいものに"ねじ曲げる"ことである。

ミカエル(そうだ、刃物にこだわる必要は無い。人間を殺せるものは、全て『武器』)

ミカエル(武器ならば、操れるはずだ!)🔯バチバチィ!

ガラガラガラ……

家も、木も、石畳も、街灯も、瓦も、馬車も──

カナザワの街、約470平方kmに散らばるあらゆる瓦礫が、ミカエルの元に集められる。

ゴゴゴゴ……!

ズシーーーン!

カチマチ『うわっ!?』ピョーン

カホ「また地震!?」

ギンコ「ち、違う……あれ……!」ブルブル

丘の向こうから、巨大な何かが顔を覗かせる。

それはまるで、巨大な天使。

四つん這いの姿勢で大地を掴み、背中には大量の刃物で作られた翼が、ギラギラと月明かりを反射して光っている。

カホ「ゴーレム!?大きい……!ドラゴンの5倍──ううん、10倍以上あるんじゃない!?」


344 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:50:14 ???00
『オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"!!!』


ギンコ「っ!何この音!声……?」

カホ「きっと、動く度に瓦礫がぶつかり合って、声みたく聞こえてるんだよ!」

ゴゴゴゴ……!

カチマチ『片腕を持ち上げて──こっちに振り下ろしてませんか!?』

ルリエル「に、逃げよう!!」

カチマチ『みなさん!カチマチに乗ってください!』

ギンコ「!」ガシッ

ルリエル「んっ!」ガシッ

カホ「カチマチちゃん!あたし足が痛くて登れない……!」

カチマチ『失礼します!』カプッ

カホ「わっ!」ヒョイ ↑

カチマチ『急げーーーー!!』タッタッタッ!

ブン!


ドシーーーーン!!!


ギンコ「きゃーーー!」ポイ!

ルリエル「うげっ!!」ドス!

腕の長さだけで200mはある超質量。

それはたったの一振で地面ヒビを入れ、丘の一部を崩落させてしまった。

カチマチの必死の逃走も虚しく、その衝撃で全員が地面に投げ出されてしまう。


345 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:52:25 ???00
ギンコ「うぅ……みなさん、無事ですか……?」

ルリエル「ルリは何とか……」

カホ「っ……!」ズキズキ!

カチマチ『はっ!カホさん!大丈夫ですか!』

カホ「大丈夫……じゃ、ないかも……!」

カチマチ『ごめんなさい!カチマチが離しちゃったせいで……!』


ゴゴゴゴ……!

ギンコ「!!また動いた!まずは私たちを殺そうってこと?」

『オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"!!!』

ルリエル「そういうことみたい!」

カチマチ『今日で何度目って感じですけど……"あんなの、どうすればいいんですか!!"』

カホ「カチマチちゃん……ドラゴンを倒した時みたいに巨大化できない?」

カチマチ『あれはカチマチの魔法じゃないからできません!たとえできたとしても、それでも大きさが足りません!』

カチマチ『そうだ!コズエさん!さっき魔弾を吸収してましたよね!?あれを解放してもらえば──』

ギンコ「そのコズエさんがツヅリさんに連れ去られちゃったでしょ!」

カチマチ『そうでしたーー!』‪💧‬オシマイダー

ギンコ「あ──そうだよ魔弾!ツヅリさん、あれは軍の兵器だって言ってたよね!?それならきっと撃ってくれるんじゃ!」

ルリエル「でも、『何度も撃てない』とも言ってたよ?あれ以降使ってこないし、もしかしたら制限があるのかも」

カチマチ『そんなぁ!』


346 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:54:40 ???00
ガチガチガチガチ!

カホ「静かに!……この音は何?」

🗡🗡🗡 ガチガチガチガチ!

ギンコ「!!」

巨人はギンコ達に向かって頭を下げるような体勢をとると、剣の翼で丘を包み込んだ。

ギンコ「何を──」

←🗡🗡🗡ガリガリガリガリ

ガリガリガリガリ🗡🗡🗡→

ルリエル「ルリ達を挟み込む気だ!」

カホ「!?」

巨大な鍬が土を耕すように、無数の剣が丘の表面を切りつけ、両側から迫ってくる。

ギンコ「まずい……!逃げ場がない!」

カチマチ『ふん!』カプッ

ギンコ「え?」グイッ

カホ「!」カプ

ルリエル「!」カプ

カチマチ『ん"ん"〜〜!!』グルン!グルン!

カチマチは3人の服に噛み付くと、グルグルとその場で回転し、ギンコ達を振り回す。

ギンコ「カチマチさん!今は遊んでる場合じゃ──」

カチマチ『おーりゃあぁぁ!!』ポイッ

ギンコ「!?!?」ピューン↑

回転の速度が最高まで達すると、カチマチはその勢いのまま3人を空中に放り投げた。


347 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:57:17 ???00
ギンコ「ちょっ、何しとるん!?」

カチマチ『ギンコちゃーーん!』

カチマチ『カチマチは先にいきます!カホさん達のこと!必ず守ってください!』

ギンコ「な、何を言って──」

カチマチ『ギンコちゃんならできるって!カチマチ信じ──』

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡ガチャ!
ガチャ! 🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡

ギンコ「!!!」

最後まで言葉を届けることもなく、カチマチの姿は銀色の波にのまれて見えなくなってしまった。

剣の翼は左右から重なり合って、中にあるものをバラバラに切り裂いていく。

ギンコ「カチマチさーーーーん!!」

ルリエル「っ!」ガシッ!ガシッ!

ルリエル「うおぉぉぉ!!」ユラユラ…

ギンコとカホの腕を掴み、ルリエルが片方の翼だけで懸命に空を飛ぶ。

実際には、落下をほんの少し遅らせる程度のことしかできなかったが、それでも何とか力を振り絞り、剣が刺さっていないところに着地することができた。

ルリエル「ぷはっ!」ドサッ!

カホ「うっ!」ドサッ!

ギンコ「カチ──カチマチさんっ!」ダッ!

ルリエル「待って!」ガシッ

ギンコ「離してよ!!カチマチさんが!!!」

ルリエル「見に行かない方がいい!見たらきっと、あなたは立ち上がれなくなる!!」

ギンコ「いいから離して!きっと酷い怪我をしてる!早く回復魔法を──」


348 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 20:59:24 ???00
カホ「ギンコちゃん……」‪

ギンコ「………………」ペタッ

ギンコ「どうして……カホさんも、カチマチさんも……私を助けたの……」

カホ「それは、あたしもカチマチちゃんも、ギンコちゃんのことを信じてるからだよ」

カホ「ギンコちゃんなら、みんなを守ってくれるって」

ギンコ「そんなことで、自分を犠牲に……」

カホ「それにギンコちゃんだって、ドラゴンと戦った時に、体を張ってカチマチちゃんを守ったでしょ?」

ギンコ「っ!それは!カチマチさんの方が強いからだよ!私が生き残るより、ずっと勝率が上がるから!」

ギンコ「私じゃ何もできない!ひとりで魔物を倒したこともないし!すごい魔法もない、足だって速くない!」

ギンコ「さっきだって、私が風の魔法でみんなを飛ばせばよかった……それなら全員助かったかもしれないのに、咄嗟にその判断ができなかった……!」

ギンコ「私なんかが生き残っても……ダメなんやよ……」💧ポロポロ

カホ「そんなことないよ」

カホ「ギンコちゃんはいつも冷静に周りを見てるし、判断力だってある」

ギンコ「だから、その判断力が無いせいで、カチマチさんが──」

カホ「違う。ギンコちゃんに無いのは、すごい魔法でも判断力でもなくて、『自信』だよ」

ギンコ「自信……?」

カホ「『自分なんか』って感情が邪魔をして、ギンコちゃんの実力を抑え込んじゃってるの」

カホ「もっと自分を信じてあげて。あたしもカチマチちゃんも、"ギンコちゃんならできる"って思ったから、あなたを守ったの」

ギンコ「自分を、信じる……」


349 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:02:12 ???00
カホ「これ、ギンコちゃんに預けるね」スッ

ギンコ「え、杖?これを手放したら、カホさんはどうやって──」

カホ「この杖を作ってくれたのはギンコちゃんだから、きっとあたしより使いこなせるはず」

カホ「あたし達はギンコちゃんを信じる。だから、ギンコちゃんも自分を信じてあげて欲しい!」

ギンコ「!!」

ゴゴゴゴ……!

ルリエル「ごめんだけど、あんまりゆっくり話してる暇はないかも!」

ギンコ「っ!」バッ

巨人は再び姿勢を四つん這いに戻し、ギンコ達を探すようにゆっくりと顔を動かしている。

ギンコ(どうする?カホさんを運んで逃げ無理倒す勝てっこないコズエさんは生きて頼れない杖は二本ルリエルさんは飛べない"落ち着け"メグミさんはどうなってる魔弾は飛んで来ない魔力の補充必要なのかも私の魔力はあとどれ位残って"落ち着け"──)


ギンコ『──リラックフィール』✨

溢れかえる思考の渦の中で、まるで光るように存在を主張する言葉がある。

その言葉に従って、ギンコは自身に向かって鎮静魔法をかけた。

ギンコ「すぅーーはぁーーー」

途端、混乱した思考回路がクリアになる。

ギンコ(落ち着け私。確かに相手は巨大だけど、それを動かしてるのは天使ミカエル。彼さえ倒せば、この巨人は動かなくなるはず)

ギンコ(問題はどこにいるかだけど、これだけ大規模な魔法を使ってるなら、相当な魔力を発してるはず。近づけばきっとわかる)

ギンコ(それにこっちには、"例の魔法"もある。きっとなんとかなる。ううん──)

ギンコ(何とかしてみせる!)グッ


350 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:05:03 ???00
ルリエル「顔つきが変わったね。何か作戦を思いついたの?」

ギンコ「作戦なんて立派なものはありません。私の手札は限られています。その手札の中で、できることをするだけです」

ルリエル「そっか。じゃあ、ギンコさんの手札を、ひとつ増やしてあげるね」

ギンコ「え?」

ルリエル「ルリの魂をミカエルさんのところまで連れてって。そうしたら、彼の魂を浄化してあげる」

ギンコ「連れてくって……ルリエルさんを運びながら行くのは無理ですよ……?」

ルリエル「大丈夫。魂だけを一時的に肉体から離すから、ギンコさんの負担にはならないよ。むしろ、ギンコさんの中にいる間は、ルリの魔力を自由に使っていいから」

ギンコ「そんなことをして、ルリエルさんは大丈夫なんですか?」

ルリエル「最悪の場合、消えちゃうかもね」

ギンコ「っ!ダメじゃないですか!メグミさんに会えなくなりますよ!?」

ルリエル「でもルリ、あなた達を守るとか言っておきながら、一度も役に立ってないし……それに──」

ルリエル「あなた達が全員死んじゃったら、メグちゃんは絶対悲しむから」ニコッ

ギンコ「……本当に、メグミさん第一なんですね」

ルリエル「お互いそうなんだよ。ルリとメグちゃんは。さぁ、手を出して」

ギンコ「……」スッ

ルリエル「ルリノちゃんと違って、親和性のない人の体に入っていられるのは5分が限界だから、それまでにミカエルさんの所までたどり着いてね」

ギンコ「5分!?短すぎますよ!!」

ルリエル「どっちにしろ、あの巨人相手に10分や20分も戦えないでしょ?」

ギンコ「それは、そうですけど……」

ルリエル「それじゃあ、任せたね」✨キラキラ

ルリエルの羽が光の粒子となり、ギンコの中に流れ込む。

天使の魂が入ったせいか、あるいはルリエルの気遣いか、ギンコの体の傷が塞がってゆく。


351 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:06:09 ???00
ギンコ「これが、他人の魂が入り込んでくる感覚……なんだか少し、暖かい」

ルリノ「……」フラッ

ギンコ「危ない!」ダキッ

ルリノ「う、ううん……」

ギンコ「……ルリノ、さん?」

ルリノ「はっ!」ガバッ

ルリノ「ギンコちゃん!なんか久しぶりだね!」

ギンコ「よかった。ルリノさんもちゃんといたんですね!」

ルリノ「いたよー!ルリエルちゃんが、消えないように守ってくれてたからね!」

ギンコ「そうだったんですね。でもごめんなさい。今は話してる時間は──」

ルリノ「状況は把握してるよ。5分しかないんだから、急がなくちゃ!」

『オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"!!!』

ギンコ「!」

ルリノ「!」

巨人はやっとギンコ達を見つけたのか、再び長い腕を振り上げてこちらを押し潰そうとしてくる。

ブン!

ギンコ「気付かれた!」

ルリノ「やべーよ!どうするの!?」

ギンコ「一か八か……!」

ギンコ『フレアボール!』🔥

ギンコは頭上に迫る腕に炎魔法を放つ。

本来なら小さな爆発を起こすだけで、とても巨人の腕を退かす程の威力はないが──


352 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:07:10 ???00
🔥💥💥💥ボーーーン!!

ギンコ「え?」

魔法が直撃した瞬間、炎は大爆発を起こし、腕を形成する瓦礫は炎に包まれて崩壊した。

ルリノ「すっっっげーー!!」

ギンコ「これが、天使の魔力……この力なら!」

ギンコ「ルリノさん!カホさんのこと、お任せしてもいいですか?」

ルリノ「もちのろんだせ!命に変えても守るから、安心して行ってきな!」👍

ギンコ「ありがとうございます!」

ギンコ(ルリノさんってこんな感じだったっけ?)

カホ「ギンコちゃん!」

ギンコ「!」

カホ「信じてるから!頑張って!」

ギンコ「……はいっ!!」ダッ!


353 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:09:49 ???00
右手に自分の杖、左手にカホの杖を握りしめ、ギンコは巨人に向かって走り出す。

ブオン!

ギンコ「来た!」

ギンコ『フレアボール!』🔥

🔥💥💥💥ボーーーン!バラバラ…

🗡🗡🗡🗡シュン!シュン!

ギンコ「!!」

爆煙の裏から、炎を切り裂いて数十本の剣が飛んでくる。

剣は獲物を狙うカジキマグロの如く、爆破された瓦礫を避けながらギンコに迫る。

ギンコ「フレ──いや」

ギンコ『レプルス!』グオン!

🗡🗡🗡🗡カラカラカラ!

左手の杖の先から魔力の波紋が広がり、向かってきた剣は軒並み弾け飛んだ。

ギンコ(フレアボールは爆発するまでは『点』の攻撃。同じ点の攻撃である剣には当たらない可能性が高い)

ギンコ(逆に剣は軽いから、反発魔法でも簡単に跳ね返せる。相手の攻撃に合わせて最適な魔法を判断しないと!)

ゴゴゴゴ……!!

ブン!三🗡三ビュン!

ギンコ『フレアボール!』🔥

ギンコ『レプルス!』グオン

🔥💥💥ボーーーン!
🗡🗡カラカラ!


三 🌳三 🗡三ビュン!

ギンコ「次から次へと──いじっかしい!!」🔥

🔥💥💥ドカーーーン!


354 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:12:37 ???00
巨腕による押し潰しに、瓦礫や剣の投擲。

次々に押し寄せる攻撃をさばきながら、ギンコは必死に巨人へ向かって走る。

ギンコ「はぁ…!はぁ…!これ、5分じゃ絶対に間に合わない!」タッタッタ!

🔥モクモクモク……🏠→ブオン!

ギンコ「!!」

前方からの攻撃に集中していたギンコは、左手側から弧を描くように飛んできた家に気が付けなかった。

ギンコ「しまった──って、あれ私の実家!!」

ギンコ「最近建て直しが終わったばっかりなのに……じゃなくて!」

ギンコ(フレアボールは今からだと爆発に巻き込まれるし、大きいから反発魔法は使えない。ここは──)

ギンコ『ウォーターカッター!』

💧ビュシ────!🏠スパン!

ギンコは横から迫る家を縦に真っ二つに両断した。

重心より少し内を切られた家は、重い左側が遠心力によって外側にずれ、断面に僅かな隙間ができる。

ギンコ「んっ!!」ピタッ

三🏠スカッ……ガシャーン!

ギンコ「あ、危なかった……」ホッ

ギンコ「──というか」

ギンコ「あの家、建て直しにいくら掛かったと思っとるの!思い出もたくさん詰まってるのに……!」💢プルプル

ギンコ「もう許さない!絶対にそこから引きずり出して、謝ってもらうから!!」ビシッ


355 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:16:06 ???00
『オ"オ"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"!!!』

🗡🗡🗡🗡🗡🗡🗡三ビュン!

ギンコ『ワールウィンド!!』

🌪🌪🗡🗡🌪🌪ブォーン!

ギンコの周りに強い風が吹き、巨人の頭よりも高い竜巻が発生する。

竜巻は飛んできた剣を巻き上げて、権能による制御を奪い取る。

三ブン!

ドシャーーン!

それを見た巨人は、腕を横に振り、ギンコがいた場所を地面ごとなぎ払った。

竜巻はたちまち立ち消え、地面にはすり潰されたギンコの血痕が付いている──ことはなかった。

『?』キョロキョロ

ギンコ『フレアボール!』三🔥

『!?』🔥💥💥💥ドカーーーン!

🔥ガラガラガラ!

巨人の頭よりさらに高いところ。

そこに、竜巻によって飛ばされたギンコが、浮遊魔法で浮いていた。

ギンコ「はっ!」三🔥三🔥三🔥

🔥💥💥ドカーン! 🔥💥💥ドカーン!

『オ"オ"ォ"ォ"ォ"!!!』グラッ

ギンコは巨人に向かって杖を構え、その頭に火球を次々と放つ。

ギンコ(暴走する力を使って無意識に作り上げたものが"この形"なら、本体はきっと、『頭』か『心臓』のどちらかにいるはず!)


356 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:19:04 ???00
ギンコ『フレアボール!!』🔥

ヒューーーン──🔥💥💥💥ドカーン!

巨人の頭蓋にあたる部位が弾け飛び、その内部が明らかになる。

しかし、そこにミカエルの姿はない。

ギンコ(外れた!本体は心臓のほうだ!それなら、このまま体に着地して──)

ガタガタガタガタ……パーーーン!!

ギンコ「え──」

突然、巨人の頭が弾けて、バラバラになった瓦礫がギンコに向かって一斉に飛んでくる。

🏠三🌳三三🗡三ビュン!
三🗡三🏠三🌳三ビュン!

ギンコ「う、嘘でしょ!?そんなんあり!?というか数が多すぎる!!」

ギンコ(魔法はひとつずつしか使えない!でも、これ全部を落とせる魔法なんて持ってないよ!)

ギンコ(──冷静になれ。この両手の杖に刻まれた魔法の中から、最適なものを選ぶんだ!)

炎魔法、水魔法、旋風魔法、鎮静魔法、回復魔法、"反発魔法"、浮遊魔法、結界魔法──

ギンコ『レプルス!』

ギンコ「」↑↑ シュバッ!

🏠🌳ガシャガシャ!

瓦礫が直撃する寸前、ギンコの体が弾かれるように飛び上がる。

ギンコ「う"う"ぅ"ん!!」バタバタ

ギンコは空中で手足をばたつかせて姿勢を制御し、左手の杖を自身に向けて構えた。

ギンコ『レプルス!!』

ギンコ「」三ギュン!

瓦礫が少ない空間を瞬時に判断し、巨人に向かって猛スピードで接近する。

ギンコ(私はカチマチさんみたく速く走れないし、天使みたいに自由には飛べない)

ギンコ(それでも!この手にある魔法だけで、何とかしてみせる!)

ギンコ「届けぇぇ!!」三ビュン

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


357 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:20:55 ???00
カホ「ギンコちゃんすごい。色んな種類の魔法をあんなに使いこなしてる……」

カホ「ああやって戦えばいいんだ……」

三🗡三ビュン

ルリノ「やばっ!こっちにも飛んできた!」

ルリノ(あの瓦礫も魔力で操られてるんだよね?それなら、魔素を分解すれば制御できなくなるかも!)

ルリノ「えぇい!ままよ!」💠ピカーン

ルリノは飛んでくる瓦礫に向かって両手を突き出し、魔力を解放する。

すると、ルリノの前方を青白い光が満たし、その光に包まれた瓦礫がルリノ達の後方ギリギリの所へ落下した。

ルリノ「セーーフ!!」

ルリノ「てか今ルリ、無詠唱で浄化魔法使わなかった!?威力も上級レベルだったし、一回天使化したおかげかな……?」

カホ「ルリノちゃん!まだ来るよ!」

ルリノ「っ!カホちゃん、ルリの後ろから離れないでね!」

カホ「うん!」

ルリノ(ねぇ、ギンコちゃん。ルリエルちゃんは、メグミさんの為って言ってたけど)

ルリノ(本当はギンコちゃん達のことも、すごく気に入ってたみたいだよ。だから──)

ルリノ「あの子のことも、頼んだよ!ギンコちゃん!」💠ピカーン!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


358 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:23:47 ???00
ギンコ『レプルス!』✨

←三ビュン!

ギンコ『レプルス!!』✨

ビュン!三 ↘

右へ左へ、前へ斜めへ。

視界を埋め尽くすほどの瓦礫を避けながら、ギンコは弾かれるように空を飛び、着実に巨人へ近づいている。

しかし、巨人は首の辺りまでも分解し、近づくほどに飛んでくる瓦礫も量が増えてゆく。

ギンコ『フレアボール!』🔥

ギンコ『ワールウィンド!』🌪

🔥💥💥ドカーーーン!
🗡🗡🌪ブオーー!

空を飛ぶと言っても、自由に体を動かせるわけではない。

反発魔法を自身にかけて、まるで指で弾かれる"おはじき"のように、無理やり空中を移動しているだけだ。

それ故に、避けきれない瓦礫は攻撃で退けるしかない。

ギンコ『ウォーターカッター!』💧

🏠スパン!

ギンコ(あそこの空間、周りの瓦礫は右手の魔法だけでさばけそう!)

ギンコ『レプルス!』三ビュン!

周りに浮いている瓦礫や剣は、どれもギンコにとっては掠っただけで命に関わる凶器だ。

初めての空中戦。初めての魔法の使い方。

何ひとつ経験のない中で、一つでも選択を誤れば即死する極限の状況。

だが、その極限状態が、却ってギンコの集中力を限界まで引き上げる。


359 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:27:45 ???00
ギンコ「──」🔥ボワッ

🔥💥ドーン!🌳🔥💥ドーン!

🔥💥💥💥バーーーン!!

まるで打ち上げ花火のフィナーレのように、空中では絶え間なく大きな爆発が起こっている。

その隙間を縫って、時に爆風さえも利用しながら、ギンコは巨人に向かって飛んでゆく。

『オ"オ"オ"ォ"ォ"!!!』バラバラ!

🏠三🌳三三ビュン!
🗡🗡🗡🗡三ビュン!


ミカエル「……」


ギンコ(いた!ミカエルだ!)

ギンコ「わざわざ弱点を見せてくれてあんやとうね!!」

ギンコ『ワールウィンド!』🌪

🌪ガラガラガラ!

真横に向けて放たれた竜巻が、ギンコとミカエルの間に瓦礫のトンネルを作る。

ギンコ『レプルス!』三ビュン!

そのトンネルの中を通って、ギンコはミカエルに向かって一直線に飛ぶ。

ミカエル「ルシファーの……子孫たち……」

ギンコ「!!」

ギンコ(またルシファーの名前を……この天使は、ずっとここにいない相手を見続けてる)

ギンコ(目の前で殺そうとしてる相手よりも、その後ろにいる幻影と戦ってるんだ……)

ギンコ(可哀想な人だと思う……でも、それ以上に──)

ギンコ「むかつく!!」💢

ギンコ「相手の顔も見ずに、やれ魔獣だの、許さないだの……!」

ギンコ「こっちは大切な仲間を失ってるのに、あなたは他人の名前ばっかり!!」

ギンコ「"今を生きてる"のは私たちなんだから!ちゃんとこっちを見まっし!!」


360 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:29:49 ???00
ゴゴゴゴゴ……!

ギンコ「!?」

巨人の両腕が持ち上がり、ギンコを包むように両側から挟み込んでくる。

ギンコ(しまった!カッとなって周りが見えてなかった……!)

ガシャン!!

ギンコ「ぐ"ぅ"ぅ"ぅ"……!」ギューッ

三ガコン!

🏠ガコン!🌳ガコン!🗡ガコン!

ギンコを包む巨人の手に、周りを浮いていた瓦礫が次々にまとわりつく。

ギンコ「……っ!」ギチギチ…

ミカエル「ルシファーの血を引くものは誰ひとり許さない……貴様ら人間は皆殺しだ……」


ギンコ「──そんなに兄弟のことが恋しいなら、存分に感じさせてあげる!」


ギンコ『ヴァリア!!!』✨

✨ピカーーーン!

巨人の手の中から、黄色い光が溢れ出す。

光はミカエルの魔力と反発し、巨人の手は火花を上げながら崩落していく。

結界はさらに範囲を広げて、巨人の腕、肩、胸……ついにはその奥にいるミカエルの体をのみこんだ。

ミカエル「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"!?」⚡️ビリビリ

ギンコ「っ!」ダッ!

ギンコ(今ので魔力は使い切った!あとは自分の足で走るしかない!)

崩壊していく巨人の腕の上を、ギンコは必死に駆けてゆく。


361 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:32:38 ???00
ギンコ(もうちょっと!!)

ミカエル「貴様……!今、何をしたァァ!!」🔯バチバチ

🗡三ビュン!

ギンコ「危ないっ!」サッ

一直線に飛んできた剣を、ギンコは間一髪で横に避けた。

ギンコ(カホさんやカチマチさん、それにルリエルさんも!私を信じて力を貸してくれたんだ!)

ギンコ「こんなとこで止まれな──」

🗡ザクッ

ギンコ「──え?」

再び走り出そうとしたギンコの右肩に、先程避けたはずの剣が後ろから突き刺さる。

ギンコ(そうだった……避けるだけじゃダメなん──)

🗡グググ……ズバーン!!

ギンコ「ッッ!!!」ブシャー!

剣はそのままギンコの体に食い込み、勢いよく右肩ごと腕を切り落とした。

杖を握ったままの右腕は、瓦礫の上を転がり、数十メートル下の地面へと落下していく。

ギンコ(い、痛い……痛い痛い痛い痛い!)

ギンコ(意識が……飛びそう……)

ギンコ(あと、ほんの少しだったのに……)

ギンコ(ちゃんと言われた通り、自分を信じて頑張ったのに……!)

ギンコ(やっぱり、私ひとりの力じゃ……何も──)グラッ…





『メグリカバー!!!』


362 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:34:40 ???00
ピカーン!
↘↘


ギンコ「!!」ズッキュン!

白い光がギンコの体を包み込み、欠損した腕がたちまち再生する。

ギンコ「これは……メグミさん?」


『ギンコちゃんはひとりじゃないよ』


ギンコ(そうだ……私はひとりじゃない。助けてくれる仲間がいる)

ギンコ(ひとりじゃ何もできないなんて当たり前だ。それでいい……人間は弱いんだから)

ギンコ(弱いから、私たちは支え合って生きてるんだ!)

ギンコ「うわぁぁぁ!」ダッダッダッ!

ミカエル「腕が再生した!?クソっ!」🔯🗡フワー

ギンコ「えいっ!」三ポイ!

ミカエル「っ!」コツン!

杖をミカエルの顔に投げつけ、一瞬の隙をつくる。

その隙に、ギンコは最後の力を振り絞って、ミカエルの所まで跳躍した。

ザザッ!

ギンコ「はぁ…はぁ……やっと近づけた!」

ミカエル「だからなんだ。お前にはもう魔法を使う魔力は残っていない」

ギンコ「確かに魔法は使えないよ。でもね──」

ギンコ「顔を殴るのに、魔法なんていらないでしょ!」✊ブン!

ミカエル「!!」

ゴッ!


363 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:36:34 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ミカエル『──はっ!』

ミカエル『ここは……どこだ?真っ白で、何もない……』

ルリエル『ミカエルさん』

ミカエル『ルリエル!何故お前が──そうか、そういうことか』

ミカエル『俺の魂に入り込んだな?』

ルリエル『ミカエルさん。もうやめよう。この復讐には意味が無い』

ミカエル『矛盾しているな。そもそもこの戦いは、お前が仕組んだことではないのか?』

ルリエル『まあ、そうなんだけどね……でも、これ以上続けても、ミカエルさんは救われないよ』

ミカエル『構わない。俺は救われたいだなんて望んでいない』

ミカエル『これは俺の使命だ。兄弟が母上に逆らった時、俺はルシファーを仕留め損ねた』

ミカエル『その結果、仲間達を殺され、母上も、天界までも失った……』

ミカエル『俺は今度こそ、あいつに連なる全てを殺さないといけない』

ルリエル『…………ミカエルさんも、悲しかったんだね。兄弟に裏切られたことが』

ミカエル『……なんだと?』

ルリエル『大好きだったお兄さんが、急に敵になっちゃって、戦うしかなくなったことが辛かったんだよね』

ミカエル『っ!違う!そんなこと思っていない!勝手に俺の心を想像するな!』


364 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:38:47 ???00
ルリエル『ルリもね、同じだったんだ』

ルリエル『自分だけのメグちゃんだと思ってたら、メグちゃんはルリ以外にも特別をつくってた』

ルリエル『あの子はきっと、それにショックを受けて、モヤモヤする気持ちを人間にぶつけてるんだと思う』

ミカエル『違う……俺は……』

ルリエル『いいんだよ、素直になって。その気持ちは悪いものじゃない』

ミカエル『…………すまないが……素直になるには、俺はあまりに長く奴を恨み過ぎた……』

ルリエル『そっか……うん。それでもいいと思う』

ルリエル『でもせめて、その恨みを今を生きてる人間たちに向けるのは、やめてあげて欲しいな』

ルリエル『彼らはもう。天使とも、もちろんルシファーさんとも関係なく、自分たちの時代を作り上げた』

ルリエル『そこに、何千年も前の因縁を持ち出すのは違うと、ルリ思う』

ミカエル『だが……!人間を殺すのは俺の使命──』

ルリエル『……』フリフリ

ルリエル『あなたがお母様から授かった使命は、そんなことじゃないはずだよ』

ルリエル『ちゃんと思い出して、ミカエルさんの本当の使命を』

ミカエル『本当の……使命……』


365 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:41:09 ???00
ーーーーーーーーーーーーーー

大天使ミカエルよ。

あなたには、この権能と共に使命を授けます。

天使達を──"護りなさい"。

ーーーーーーーーーーーーーー

ミカエル『………………あぁ』

ミカエル(なぜ忘れていたのだろう。俺のたった一つの使命を……)

ミカエル(俺はただ、仲間を『護る』ために、この権能を授かったのに……)

ミカエル(それなのに、いつの間にか『殺す』ためだけに、力を使ってしまっていた)

ミカエル『そうか……人間から攻撃してこないのなら、戦う理由なんて無かったんだな……』

ルリエル『うん。ミカエルさんが誰かを傷付ける必要なんて、ないんだよ』

ミカエル『……ルリエル、頼みがある』

ミカエル『俺の魂を、浄化してくれ』

ルリエル『……』

ミカエル『俺の魂はもう、憎しみにのまれて穢れてしまった。このままでは、また何かの衝動で不必要な争いを産んでしまうかもしれない』

ルリエル『本当に、いいんだね?』

ミカエル『あぁ、頼む……』

ルリエル『……わかった』ギュッ

ルリエル『ミカエルさん、ありがとう。今までずっと、"私達"を護ってくれて──』💠

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


366 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:43:16 ???00
ミカエル「……」💠キラキラ

ミカエルの体から光の粒子が溢れて、消えてゆく。

それと同時に、黒かった羽も元の美しい純白を取り戻す。

ギンコ「上手くいった……のかな?」

ギンコ「………………はぁ」ペタン

ギンコ「疲れた……」グター

ギンコ「あ、そうだ!さっき私の腕を治してくれた魔法!」

ギンコ「あれって、私の中のルリエルさんがやってくれたの?それとも──」

ガタガタガタガタ……!

ギンコ「!!巨人の体が崩れだした!?」

ギンコ「そっか、ミカエルを倒したから、これを支えてる力が無くなったんだ!」

ギンコ「えっと、カホさんの杖は…………あった!」

ギンコ「浮遊魔法くらいなら使える……!これで何とか無事に下まで──」



三💥バッキュン!


367 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/23(火) 21:46:05 ???00
ギンコ「!?」ビクッ!

ギンコ「この魔力は──嘘……このタイミングで!?」

ナガノの山間部から、魂を破壊する魔弾が放たれる。

三ビュン!

ギンコ「狙いは絶対にこの巨人だ……もう、ミカエルさんは倒したのに……」

魔弾は音速で、一直線にギンコ達に飛来する。

これまで三発の経験からして、着弾まであと10秒もない。

ギンコ(あれを跳ね返せる魔法なんて持ってない!)

ギンコ(あ、これ本当に詰みだ)

ギンコ「ふぅ……」

ギンコ「カチマチさん。私、頑張ったよ?」

ギンコ「だから向こうで会ったら、たくさん褒めてよね──」



💥💥💥💥💥ドカーーーーン!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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379 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 20:57:51 ???00
長い、長い眠りだった。

どんなに大きな憎しみの炎でも、1000年も燃やし続けることはできない。

自らの存在が、ルリエルから『人間への恨み』の感情を切り離したものなら、その恨みを失った時に、自分は消えてしまうのかもしれない。

それでも自分を保つことができたのは、ひとえに幼馴染を守るため。

人間は利己的で、排他的な生き物だ。

ルリ達が思い描いたような共生は望めない。

きっと、メグちゃんが目覚めて人間と触れ合った時も、人間は自分達とは違う天使の存在を否定するだろう。

もしかしたら、ルリと同じように深く傷つけられてしまうかもしれない。

そんなのダメだ。メグちゃんには、そんな辛い思いをして欲しくない。

だから、封印が解けた時には、ルリがメグちゃんを支えよう。

ひとりで寂しくないように。

傷つくことがないように。

人間は怖い生き物だと、ルリが教えてあげるんだ。

そう、思っていたのに──


380 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 20:58:32 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

メグミ『じゃーん!呼ばれて飛び出てハロめぐ〜〜♡』

メグミ『大天使メグミエルの参上だよ☆』

カホ『…』ポカーン

コズエ『…』ポカーン

メグミ『ちょっとちょっと!反応薄くない!?』

カホ『あの…どちら様ですか?』

メグミ『だ・か・ら!大天使メグミエルだってば!』

カホ『天使?』

ーーーーーーーーーーーーーーー

あぁ、ダメだよメグちゃん。天使だなんて名乗ったら。

人間はメグちゃんが思ってるほど、友好的な種族じゃないんだよ。

待っててね。あと少し力が戻れば、メグちゃんを助けられるから。


381 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 21:00:01 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

カチマチ『がんばるぞー!ちぇすとー!』💩ブリッ

カチマチ『ああ!力んだら出ちゃいました!!』

カホ『あわわわ!コズエちゃんキッチンペーパーを!』

コズエ『え、ええ!』バタバタ

カチマチ『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!カチマチが責任をもって掃除します!』アーン

カホ『きゃーー!!食べようとしないで!カチマチちゃんステイ!』

メグミ『ふっ…まったく騒がしい朝だね』ズズー

コズエ『メグミはなに呑気に飲んでるのよ!手伝いなさい!!』バシッ

メグミ『ぶほっ!──って、熱っつ!あっ白い服にシミが!』

メグミ『メグちゃんの一張羅なのに…!おいどうしてくれんだ!』

ーーーーーーーーーーーーーーー

…………何してるの?

まるで本当の家族みたいに、一緒に生活して……

天国にいた時よりも、なんだか活き活きしてる気がする。

天使達のことは忘れちゃったの?

ルリのことは、どうでもよくなっちゃったの?

この人達も、最初はメグちゃんを騙してるんだと思ったのに、普通に天使と接してる。

どうして?ルリが知ってる人間は、もっと怖い生き物だったのに……

どうしてメグちゃんの周りには、こんなにもいい人達ばかりが集まるの……?


382 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 21:00:55 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

コズエ『』🔥ジュー

メグミ『あとは私の仕事!絶対に生き返らせるから!!』

メグミ(まだ死んだ直後だから、魂はすぐ近くに浮いてるはず……!)

メグミ『見つけた!』

メグミ『ありったけの魔力を使って…!』

メグミ『メグ リカバー!!!』

コズエ『』✨キラキラキラ…

メグミ(絶対に……絶対にコズエを助けるんだ!)

ーーーーーーーーーーーーーーー

メグちゃんの中にいるせいで、メグちゃんの感情が直に伝わってくる。

メグちゃんは、本気でこの人間を助けようとしてる。

本気で、かけがえのない存在だと思ってるんだ。

メグちゃんは、そう思える人間と出会えたんだ。


もしも、私が消えて無くなってしまうとしたら──

メグちゃんは同じように、必死になって助けてくれるのかな?


383 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 21:01:42 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

『明日の日没までにラッパを使えば 魂の浄化はしないであげましょう』

『逆に それまでにラッパを使わないのなら』

『あなたの魂を浄化し 新しいあなたに使命を果たしてもらいます』

メグミ『……それ、選択肢になってなくない?』

『"あなた"がルリエルに再会できるかどうか ということです』

メグミ『……』

ーーーーーーーーーーーーーーー

やってしまった。

ついに自分と人間を天秤にかけるような選択を、メグちゃんに押し付けてしまった。

でも、メグちゃんなら絶対ルリを選んでくれるはず。

だって、ルリ達は生まれた時からずっと一緒で、1000年以上の仲なんだから。

出会ってたった数ヶ月の人間の方を、選ぶわけないよね?


384 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 21:02:53 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

メグミ『どうせ……結果が変わらないなら……私が……』

メグミ『────なんて』

メグミ『できるわけないでしょうがぁぁ!!!』🎺ポイッ

メグミ『言うこと聞かないと魂を浄化するだ!?だれがあんな安っぽい挑発に乗るかっての!なめんな!』

メグミ『確かに私の生きてきた時間と比べると、人間と過ごした時間なんて、本当に一瞬のことだけど……』

メグミ『それでも!毎日楽しかった!天国にいた頃とは違う、驚きと発見の連続だった!』

メグミ『そんな世界を、そんな友人達を、私が殺すはずない!』

メグミ『"殺させなんかしない!!"』

ーーーーーーーーーーーーーーー

そっか……メグちゃんは人間を選ぶんだ。

本当はわかってた。だって、目覚めてからずっと同じ景色を見てきたんだから。

メグちゃんがあの人達のことを、心から大切に思っていることくらいわかってたんだ。

それでもやっぱり、メグちゃんにはルリのことを選んで欲しかったな。


385 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 21:04:01 ???00
──そう、これは嫉妬だ。

私からメグちゃんの心を奪った、人間への嫉妬。

私が絶望の中で諦めた、人間との共生を"運良く"手に入れた、メグちゃんへの嫉妬。

ああ、なんて惨めなんだろう。

そんな子どもみたいな感情で、人類を滅ぼそうとしている。

こんな自分を、メグちゃんに知られたくない。

こんなどうしようもない自分が、メグちゃんの中でルリエルとして記憶に残って欲しくない。

だから私は、ルリエルとは別の存在であろうとした。それなのに──


386 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/26(金) 21:05:24 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

メグミ『たとえ、るりちゃんがどんなに嫉妬深くても、汚くても、私は絶対にるりちゃんを否定したりなんかしない』

メグミ『辛そうな顔してるるりちゃんのことを、これ以上傷つけるようなこと言うもんか!』

メグミ『私は、るりちゃんのことが世界一大好きな、あなたの"幼なじみ"だから!!』

メグミ『助けを求めた1000年前のあの日から、るりちゃんがずっと苦しんでいるのなら──』

メグミ『その時の分まで!私があなたの心を救ってみせる!!!』

ーーーーーーーーーーーーーーー

どこまでも真っ直ぐで、純白の心を持つあなた。

黒い泥に沈んだ私の心を、あなたは自分が汚れることも厭わず、強引に引っ張り出した。


387 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:14:11 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

メグミ「よし!何はともあれ、まずはこの戦いを終わらせよう!」

メグミ「これ以上ラッパを使われたら、本当に手遅れになる!」

エリ(終わらせるって言っても、どうやって?)

メグミ「ふっふっふ……実はひとつ考えがあるんだよね☆」

メグミ「それは──」

ゴゴゴゴゴ……!

メグミ「ん?何この音……下の方から?」

エリ(また何か起きたのかな)

メグミ「まあ、火の玉とか地震とか、度肝抜かれるものは散々見たから、もう何が来ても驚かないけど──」


巨人『オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"!!!』


メグミ「なんじゃありゃーーー!?」

エリ(…………メグちゃん、わざとリアクションとってない?)

メグミ「ちょっとね」

エリ(……そういう"ノリツッコミ"も、人間から教わったの?)ジェラ…

メグミ「わー!こんなことで無駄にジェラシー感じないでよ!」

エリ(やっぱりメグちゃん、私の事重い女だと思うよね……)

メグミ「急にめんどくさいなぁ!さっきまでの強気はどうしたわけ!?」


388 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:17:41 ???00
メグミ「そんなことより、あの巨人はなんなの?天使に見えなくもないけど……」

エリ(魔力の感じからして、ミカエルさんかな。しかも堕天してるみたい……)

メグミ「もう!対処しないといけないことが多すぎでしょ!」

エリ(メグちゃんあそこ!誰か戦ってる!)

メグミ「あれってもしかして……やっぱりギンコちゃんだ!」

メグミ「どうやって空飛んでるの!?てか、すごい魔力……ギンコちゃんあんなに魔力あったっけ?」

エリ(……!)

エリ(そうなんだ、あなたも人間側に付くことにしたんだね……)

メグミ「どうしたの?何か気づいた?」

エリ(ううん。何でもない)

メグミ「にしてもギンコちゃん、あんなに動ける子だったんだ。手助けしたいけど、私じゃあのスピードについていけない……」

ゴゴゴゴゴ……バチン!

メグミ「あ、とか言ってたら捕まっちゃった!」

メグミ「助けないと……ねえ、あなたの力を使ってもいい!?」

エリ(再生の権能?別に許可なんか取らなくてもいいよ。今はメグちゃんが主導権持ってるんだから、好きに使いなよ)

メグミ「それじゃダメ!!」

エリ(え?)


389 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:20:05 ???00
メグミ「私はあなたの心も救いたいんだから、あなたが嫌がることはしない!」

エリ(そんなこと言ってたら、メグちゃんの"大切な仲間"が死んじゃうよ?)

メグミ「それも絶対にやだ!だからお願い!人間の為にあなたの力を使うことを許して!」

エリ(……)

そうこうしている間に、ギンコは自力で巨人の腕から脱出し、ミカエルの元へ走り出していた。

しかし、その途中でミカエルの操る剣に肩を刺されてしまう。

メグミ「っ!ギンコちゃん!!」

ああ、まただ。また本気で心配してる。

こんな痛いくらいの感情を共有されて、断れるほど私は強くない。

エリ(いいよ、メグちゃん。あの子の為に、私の力を使って)

メグミ「!……ありがとう!」

メグミ「近づく暇はない……回復魔法を魔弾みたいに飛ばそう!」

メグミ『メグ リカバー!!』三

ギンコが倒れる直前、メグミの放った魔法はギンコに命中し、その傷を完全に癒した。

ギンコはそのままミカエルの元に辿り着くと、一体何をしたのか、ミカエルは動かなくなってしまった。

エリ(ミカエルさんを倒した!?)

メグミ「ふぅ、ヒヤヒヤした……おーい!ギンコちゃーん!」↘


三💥バッキュン!

メグミ「!?」

エリ(!?)


390 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:22:13 ???00
メグミ「この気配は──まずい!」三ビュン

エリ(行っちゃダメだよ!間に合わない!)

メグミ「だからってほっとけない!ギンコちゃんを捕まえて離脱する!」

メグミはギンコに向かって急降下する。

しかし、東の空からは既に紫色の魔弾が迫っている。このままではどんなに頑張っても間に合わない。

メグミ「逃げて!ギンコちゃん!!」

ギンコ「っ!」ギュッ

💥💥💥💥💥ドーーン!!


ギンコ「──────え?」

メグミ「!!これは……」

魔弾が直撃する寸前、制御を失ったはずの巨人の腕が動き、その右手で魔弾を受け止める。

右腕は衝撃でバラバラに弾けたが、剣の翼がドーム状の壁となり、飛び散る破片からギンコを守っている。

ガタガタガタ……!

ギンコ「きゃっ!」フラッ

ガシッ!

ギンコ「!!」

「大丈夫?ギンコちゃん」

ギンコ「ミカ──ルリエルさん……?」


391 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:23:43 ???00
ルリエル「よく頑張ったね。本当に」グイッ

ギンコ「わっ!おっとっと……」

ギンコ「ルリエルさんですよね?どうしてミカエルさんの体に?」

ルリエル「ミカエルさんの魂を浄化したから、余ったこの体をもらうことにしたんだよ」

ルリエル「……ついでに、ミカエルさんの権能も譲ってもらった」

ギンコ「!じゃあ、今のはルリエルさんが守ってくれたんですか?」

ルリエル「うん。ギリギリ間に合ってよかったよ」

ルリエル「こんなに頑張ってくれたギンコちゃんを、死なせる訳にはいかないからね」

ギンコ「ありがとうございます!」

ルリエル「お礼なんていいよ。何せギンコちゃんのお陰で、ミカエルさんの権能が手に入ったからね」

ルリエル「この力があれば、メグちゃんを取り戻せる!」

ギンコ「…………たぶん、その必要はないと思います」

ルリエル「え?」

ギンコ「メグミさんは、きっともう──」


392 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:25:59 ???00
メグミ「おーーい!」プカー

ギンコ「メグミさん!」

ルリエル「メ、メグちゃん!?」

メグミ「るりちゃん!あれ?何か背が高くない?」

ルリエル「体が入れ替わってすぐだから、まだ見た目が変わりきってない……じゃなくて!!」

ルリエル「え、なんで!?本物?体を乗っ取られたんじゃなかったの!?」

ルリエル「もしかして……あの子はもう消えちゃった?」

メグミ「まだ私の中にいるよ。でも安心して。今は落ち着いてるから」

メグミ「そうだ!せっかくだし挨拶でもしとく?」

エリ(絶対しないからね!?自分と話すとかなんかヤダ!)

メグミ「あー……気まずいから嫌だって!」

エリ(勝手に翻訳するなー!)


393 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:28:44 ???00
ギンコ「何があったのかわかりませんけど、メグミさんが無事でよかったです」

メグミ「まぁね!それよりも他のみんなは?」

ギンコ「っ!……カホさんのことは、ルリノさんが守ってくれているはずです」

ギンコ「コズエさんは、ツヅリさんにどこかへ連れ去られてしまいました」

メグミ「はあ!?どうしてツヅリがコズエを拐うの?」

ギンコ「おそらく洗脳魔法か何かで、私達のことを忘れているみたいです」

ギンコ「それと、カチマチさんは……」

メグミ「カチマチちゃんは?」

ギンコ「…………」

ルリエル「……みんなを守るために、ひとりで犠牲になったんだ……」

メグミ「!!」

ギンコ「カチマチさん……」💧ポロポロ

メグミ「……まだ、生き返らせることはできる。私とるりちゃんなら」

ルリエル「そうだね。エリクサーさえ使えれば、今ならまだ蘇生できるかもしれない」

ルリエル「メグちゃん、迷惑かけてごめんね。エリクサーはルリが引き取るよ」

ルリエル「今のルリなら、精神を支配されることもないし──」


394 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:31:38 ???00
メグミ「待って!」

ルリエル「メグちゃん……?」

メグミ「この子はもう少しだけ、私に預からせて」

ルリエル「!ダメだよ!はやく取り出して浄化しないと、このままだとメグちゃんの魂まで──」

メグミ「わかってる!わかってるけど……」

メグミ「私、約束したの。この子の心を救うって。だから、まだ消さないで欲しいの!」

エリ(メグちゃん……)

ルリエル「救うって言っても……」


三💥バッキュン!


「「!!!」」

ギンコ「また来た!」

メグミ「るりちゃん!さっきみたいに防げる!?」

ルリエル「やってみる!メグちゃんもルリの後ろに隠れて!」

メグミ「ううん……私はやることがあるから!」プカー↑

ルリエル「え、メグちゃん!?やることって!?」

メグミ「この戦いを終わらせてくるねーー!!」ピューン

ルリエル「戦いを……終わらせる?」

ギンコ「ルリエルさん!もう来てます!」

ルリエル「っ!あぁもう!自分勝手なところは変わらないね!」🔯バチバチ

ゴゴゴゴゴ……!

ルリエル「メグちゃんは向こうのルリと散々話したのかもしれないけど、"こっち"は1000年ぶりの再会だったんだぞー!」

ルリエル「もうちょっと感動的な感じが!欲しかったなあ!!」✊ブン

ゴゴゴゴ……ブオン!

💥💥💥💥💥ドーーン!!


395 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:36:23 ???00
メグミ「るりちゃんが攻撃を防いでくれてる!今のうちに私達も始めよう!」

エリ(だから、私はまだ何をするか聞いてないんだけど……)

メグミ「これだよ!」🎺スッ

エリ(え?それって──)

メグミ「第八のラッパ。これを使って、天使も人間も両方とも落ち着かせるんだよ」

エリ(そんなことできるの?)

メグミ「できるよ。そもそもこのラッパは、天使の魂を呼び起こすだけじゃなくて、想いを届けるためのもの」

メグミ「偶然、憎しみの感情を持つあなたが使ったから、天使達はこんなにも狂ってしまった」

メグミ「でも!本来これは私が使う為のものだったの!この…『愛の天使メグミエル』が!」

エリ(!!そっか、お母様の願いは、天使達がまた仲良く暮らすこと……助け合い、支え合い、励まし合う──その気持ちを、目覚めた時に最初に思い出せるように!)

メグミ「?そこまで深くは考えてなかったかなぁ〜」

メグミ「ママはそれを期待したのかもしれないけど、私にそんな難しいことはわかんない!」

エリ(え……)


396 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:39:07 ???00
メグミ「私は『愛』を司る天使。誰かから"愛される"嬉しさを伝え、誰かを"愛する"喜びを教える」✨

メグミ「私にできることはたった一つだけ。憎しみも、悲しみも、全部忘れちゃうくらい──」✨✨

メグミ「私からみんなへ、目一杯の愛を伝えること!!」✨✨✨

メグミ(受け取ってね、るりちゃん)

メグミ「すぅ──」

🎺プオ────────────ン!

天使「!」

カホ「!」

ルリノ「!」

ギンコ「!」

ルリエル「!」

コズエ「!」

ツヅリ「……」

カナザワの街に、五度目のラッパの音が響き渡る。

しかし、それは今までの叩きつけるような暴力的な音とは違う。

甘く優しい音色は、聞いた者の心を暖かく包み込み、メグミエルからの愛を届ける。

メグミ(気休めでもいい……全くの無駄でもいい!)

メグミ(それでも、どうか思い出して。あなた達は愛されて生まれてきたこと。愛する為に生きていることを!)

メグミ(その手は誰かを傷つける為じゃなくて、抱きしめる為にあるってことを!)


397 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:42:51 ???00
ギンコ「暖かい……まるで、抱きしめられてるみたい……」

『ギンコちゃん』

ギンコ「え……メグミさんの声?」

『あの時、私に魔法を教えてくれてありがとう。ギンコちゃんの真面目で優しいところ、大好きだよ』

ギンコ「メグミさん……私の方こそ、あなたに出会ったおかげで、沢山の大切な仲間ができました。本当に、ありがとうございます」


『コズエ』

コズエ「ん……」グタ…

『いつも素直になれなくてごめんね。強くて頼もしいコズエのこと、ずっとかっこいいと思ってたよ』

コズエ「メ…グミ……」

『さっきも、必ず助けるって言ってもらえてとっても嬉しかった。大好きだよ』

コズエ「ずるいわよ、一方的に想いを伝えて……素直じゃないのは、お互い様なのに……」


398 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:45:21 ???00
『ルリちゃん』

ルリノ「メグミさん!?」

『私、ルリちゃんの優しくて、面白いところ大好きだよ。もしも、ルリちゃんが幼馴染と全然似てなくても、きっと好きになってたと思う』

『変な因縁とか運命とか、そういうの抜きに、ちゃんと友達になりたかったな』

ルリノ「……今からでもなれるよ。絶対に」


『カホちゃん』

カホ「メグちゃん……」

『いつも明るくみんなを照らしてくれて、ありがとう。私の封印を解いたのが、カホちゃんで本当によかった』

『カホちゃんが私達に、何か大きな隠し事をしてることは気づいてるよ』

カホ「!!!」

『でもね、それでカホちゃんのことを嫌いになったりはしない。だってカホちゃんからは、私達のことが大好きって気持ちが、たくさん伝わってくるから』

カホ「…………ありがとう、ございます」


ツヅリ「……」


399 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:49:38 ???00
ーーーーーーーーーーーーーー

真っ暗な闇の中に、少女はひとり蹲っている。

ここは彼女の心を閉じ込める檻。固く閉ざされた、殻の内側。

メグミ『ツヅリ』

ツヅリ『…………』

メグミ『サヤカちゃんのこと、思い出すのは辛い?』

ツヅリ『……ボクは、変なんだ』

ツヅリ『サヤはボクのことを殺そうとしたのに、それなのに……今もまだ、ボクはサヤがいなくなって寂しいと思ってる……』

ツヅリ『サヤのことを思い出すと、胸が冷たくなるのに、その中に温かいものを感じるんだ』

ツヅリ『ボクは……おかしくなっちゃったのかな……あんなことされたら、普通は嫌いになるはずなのに……』

メグミ『ツヅリはおかしくなんかないよ。サヤカちゃんは、間違いなくツヅリを愛してた』

メグミ『それはむしろ、嫌われてるよりも歪なことかもしれないけど……』

メグミ『それでも、ツヅリの感じた温かさは本物だったんだよ』

ツヅリ『ボクは!どうすればいいかわからないんだ!』

ツヅリ『もう、誰かを好きになることも……好きになられることも……怖いんだ……』

ツヅリ『自分自身を……信じられないんだ……!』


400 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:51:17 ???00
メグミ『ツヅリ』ギュッ

ツヅリ『あ……』

メグミはツヅリに近寄り、その頭を両手で抱え込む。

メグミ『怖がらないでいいんだよ。ツヅリのことを愛してくれる人は、他にもたくさんいる』

メグミ『私も、コズエも、カホちゃんやギンコちゃん、カチマチちゃんも……それに、これからツヅリが出会う人達』

メグミ『色んな人達が、ツヅリに愛を与えてくれる。それを恐れずに受け入れて』

ツヅリ『でも、そしたらまたサヤみたいに……』

メグミ『もしかしたら、そういう人もいるかもしれない。でも、そんな人達ばっかりじゃない』

メグミ『たった数人の歪んだ愛で、あなたの綺麗な心を塞ぎ込まないで。ほんの少しだけ顔をあげれば、あなたを守ってくれる人はいっぱいいるから』

メグミ『勇気を出して、一緒に前へ進もう?大丈夫。メグちゃんがいつでも、ツヅリの手を握っててあげるから』ニコッ

ツヅリ『メグ……ボクは……まだ歩けるのかな』

メグミ『私を信じて。それから、自分自身を』

ツヅリ『……コズにも言われたんだ。止まったままじゃ、ボクはずっと辛いままだって……』

ツヅリ『自分を信じることは、まだ難しいけど……メグとコズの言葉は、信じてみたい……』

メグミ『うん。今はそれでいいよ。きっといつか、ツヅリも自分を信じられるようになるから』

ーーーーーーーーーーーーーー


401 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:52:33 ???00
ツヅリ「…………ん」💧ポロ…

コズエ「っ!ツヅリ!」

ツヅリ「あ、コズ……ボク、コズに酷いことを……」

コズエ「大丈夫よ。私の方こそ、無理やり辛いことを思い出させてごめんなさい」

ツヅリ「ううん。いいんだ。きっと、ボクは向き合わないといけなかったから……」

ツヅリ「でも、ひとりで向き合うのは怖い。だから、そばにいて欲しい……」

コズエ「もちろんよ。私もみんなも、もうあなたを一人になんてしないわ」

ツヅリ「うん。ありがとう、コズ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


402 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:55:08 ???00
エリ(…………)

エリ(メグちゃんの気持ち、届いたよ。すごく温かい気持ちが)

エリ(私なんかには、もったいないくらい……)

メグミ「……私ね、思うんだ」

メグミ「天使も人間も、みんな良い面と悪い面を両方持ってる」

メグミ「私だってそうだし、コズエやカホちゃんもきっとそう」

メグミ「人間が悪なんじゃなくて、るりちゃん達が見たのが、たまたま人間の悪い面だっただけなんだよ」

メグミ「私が今まで見てたのが、るりちゃんの良い面だっただけ──」

メグミ「だから、やっぱりあなたもるりちゃんなんだと思う。嫉妬深くても、汚くても、それも大切なるりちゃんの一部なんだよ」

エリ(そうだとしても、こんな自分は嫌いだよ……)

メグミ「私は好きだよ。そんなるりちゃんのことも」

エリ(え?なんで……)


403 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 22:58:58 ???00
メグミ「人間を恨んだのは、仲間を大切に思う気持ちの裏返し」

メグミ「私に嫉妬したのも、私のことを本気で守ろうとしてくれてた気持ちの裏返し」

メグミ「全部、とっても優しい心から来るものだから」

メグミ「やっぱりあなたは、私の大好きな、優しいるりちゃんだよ」

エリ(…………はぁ、ずるいよ。メグちゃん)

エリ(そんな風に言われたら、他人どころか、自分さえも恨めなくなっちゃう……)✨キラキラ…

メグミ「え!?ちょっと!なんか消えかけてない!?」

エリ(そりゃあそうだよ。私は憎しみの感情そのもの。誰のことも恨めなくなったら、もう存在を保つことはできない)✨

エリ(ありがとうね、メグちゃん。こんな私のことも、大切な幼馴染だって言ってくれて)✨

メグミ「待って!消えないで!!」

メグミ「私まだ、あなたをちゃんと救えてない!!」

メグミ「まだ伝えたいことがたくさんあるのに!!」

────あぁ、よかった。

メグちゃん、私が消えることを本気で嫌がってくれてる。

こんな私を、本気で大切に思ってくれてるんだ。

ねえ、メグちゃん。私はやっぱり悪い子だったよ。

メグちゃんがこんなに怖がってるのを感じて、"嬉しい"って思っちゃうんだから──


404 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:02:01 ???00
✨キラキラキラ……

メグミの翼から、一枚の羽根が抜け落ちる。

それが、メグミの中にいた、魂の断片の全てだった。

羽根はヒラヒラと揺れながら落下し、やがて本来の持ち主の元へと辿り着く。

ルリエル「おかえりなさい。エリクサー」

ルリエル「あなたの気持ちは、少しは救われたかな?」

メグミ「るりちゃーーん!」

ルリエル「メグちゃん」

メグミ「っ!もしかして、その手のひらの羽根って……」

ルリエル「うん。これがメグちゃんの中にいた、もう一人のルリだよ」

メグミ「こんなに、小さかったの……?」

ルリエル「そう。こんなに小さな力で、メグちゃんを守ろうと必死に存在を保ってた」

メグミ「私、この子の心を救えたのかな……」

ルリエル「きっと救われたよ。だって、メグちゃんから抜け落ちた時点で、この魂は既に浄化されてたから」

メグミ「そっか、それならよかった」

ルリエルは手のひらの上にある羽根を、そっと自分の胸に当てる。

するとルリエルの胸が一瞬だけ光り、再び手を離した時には羽根はなくなっていた。


405 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:06:48 ???00
メグミ「そういえば、ギンコちゃんは?」

ルリエル「カホさん達のところに返してきたよ。みんな、メグちゃんの想いをちゃんと受け取ったみたい」

ルリエル「もちろん、ルリもね」

メグミ「うん。私の全力の愛を伝えたつもり。でも──」

メグミ「これだけじゃ足りない。私の愛は、私が知らない人、私を知らない人にまでは届かない」

ルリエル「そう、だね……」

メグミ「だからさ、るりちゃん!力を貸して!」

メグミ「私ひとりじゃ届かない声も、私達二人ならきっと届く!」

メグミ「私達の野望、ここでひとつ叶えちゃおうよ!」

ルリエル「!!メグちゃん、それって……!」

メグミ「世界から争いを無くすなんて、"簡単なこと"なんだよ!」

メグミ「誰かを憎む暇もないないくらい、みんなの胸をいっぱいにしちゃおう!」

ルリエル「っ!──う"ん"!!」

メグミ「私達の"愛"で!」

ルリエル「ルリ達がつくる"楽しい"で!!」

メグ&ルリ『世界中を夢中に!!!』


406 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:09:08 ???00
✨✨キラーン!

瞬間、二人を中心に巨大な光の翼が展開し、カナザワの街を包み込む。

片翼はルリエルの『再生』の権能。

片翼はメグミエルの『愛』の権能。

その光は全ての者の心と体の傷を癒し、全ての死者を蘇らせる。

男「なんだ、この光は……傷が治っていく?」

女「!!私、なんで生きてるの!?」

天使「はっ!首が……繋がってる?あれ?ラッパがない!」

天使「あれがないと人間を殺せないのに──」

天使「……どうして殺すんだっけ?」

天使「そんなことしても、別に楽しくなくない?」


カチマチ「 」


407 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:15:55 ???00
ーーーーーーーーーーーーーーー

カチマチ『あれ?ここはどこだろう?』

カチマチ『水の音が聞こえる……行ってみようかな』テクテク

カチマチ『あ!川だ!こんな大きな川は見たこともないや……』

カチマチ『あれ?川の向こうに誰かいる?』

翁『……』

カチマチ『!おじいちゃんだ!!』ダッ

カチマチ『おーーい!おじいちゃーん!』

翁『ん?なんだ、誰かに呼ばれたような……』

カチマチ『待っててね!今行くから!』

バシャーーン!

カチマチは躊躇いなく川へ飛び込むと、不格好な犬掻きで必死に向こう岸へ泳ぐ。

翁『あれは──まさか、カチマチか!?』

カチマチ『おじいちゃん!おじいちゃん!』バシャバシャ

翁『カチマチ!』


408 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:17:57 ???00
カチマチ『はぁ…はぁ……おじいちゃん!!』ピョン!

翁『うお!?』ドサッ

カチマチ『おじいちゃん!会いたかったよ!!』ペロペロ

翁『わっはっはっ!やめろ!くすぐったいだろう!』

翁『お前少し大きくなったか?というか、なんで俺は犬の言葉がわかるんだ?』

カチマチ『おじいちゃん!カチマチ、話したいことがいっぱいあるんだ!』

カチマチ『あのね!おじいちゃんがいなくなって、すごく寂しかったけど……その後にとっても素敵な人達に出会えたんだよ!』

カチマチ『カホさんにコズエさん、それからメグミさんとギンコちゃんの四人と一緒に暮らしてるんだ!』

翁『おお!そうかそうか!ちゃんと新しい家族ができたんだな!』

翁『よかった……お前がまたひとりで野垂れ死んじゃいないかと心配で、まともに成仏もできなかったんだ』

カチマチ『それでね!カチマチ今カホさんと使い魔の契約結んで、みんなと一緒に戦ってるんだ!』

翁『え!?お前が使い魔?迷惑かけてないか?』

カチマチ『迷惑はかけてるかもしれないけど……それでもカチマチ、すごく頑張ってるんだよ!』


409 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:19:36 ???00
カチマチ『この前なんて、ドラゴンを倒しちゃったんだから!』

翁『ぷっ……お前がドラゴンを倒すなんて、夢でも見たんじゃねえか?』

カチマチ『本当だよ!木よりも大きくなってね!ドラゴンに体当たりして倒したんだよ!』

翁『そうかそうか!頑張ったんだな!がはは!』

カチマチ『あーー!絶対信じてないでしょ!』

翁『いや、信じてるって!偉いぞ〜』ワシャワシャ

カチマチ『も〜〜!』シッポフリフリ

翁『ところでお前、なんで自分のことカチマチって言ってんだ?』

カチマチ『?だって、カチマチはカチマチでしょ?』

翁『あ!そういえばちゃんとした名前つけてやってなかったな……』

カチマチ『えー!?カチマチの名前ってカチマチじゃなかったの!?』

翁『まあ、ある意味名前ではあるんだが……お前と同じ犬種は全部カチマチって名前だぞ?』

カチマチ『なんと!?』

翁『うーん……せっかくだし、改めて名前を付けてやろうか?』

カチマチ『名前……カチマチの…………』

カチマチ『……ううん。カチマチはこのままでいい!言いやすいし!』

翁『そうか?なんだか適当な名前で悪いな』

カチマチ『そんなことないよ!おじいちゃんがいつも呼んでくれた、この名前が好き!』

カチマチ『それにみんなも、カチマチって呼んでくれてるし!』


410 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:22:15 ???00
翁『ははは!そっか。みんなも……』

翁『……本当によかった。楽しく生きてたんだな』

カチマチ『うん!』

翁『じゃあ、まだここに来ちゃいけないな。よいしょ!』↑

カチマチ『わわわ!どうしたのおじいちゃん?』

翁『大切な仲間が待ってるんだろ?だったら、ちゃんと戻らねぇと』

カチマチ『待って!カチマチまだおじいちゃんと一緒にいたいよ!』

翁『なあに、またすぐに会えるさ。その時までに、土産話を沢山用意しておいてくれ』

カチマチ『やだ!もう離れたくない!おじいちゃんとずっと一緒にいたいよ!!』バタバタ

翁『そんなわがまま言うようなガキが、こんな所に来るんじゃねぇ!』

翁『舌噛むなよ!行くぞーー!』ググッ

翁『チェストーーー!!!』ポイッ!

カチマチ『うわぁーーー!!』ピューン

翁はカチマチを両手で抱えると、掛け声とともに大きく振りかぶり、カチマチを川の向こうへ投げ飛ばした。


411 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/28(日) 23:24:11 ???00
カチマチ『うげっ!』ドサッ

カチマチ『っ……!おじいちゃ──うっ!』

直後、強い風と共に周囲が濃い霧に包まれ、対岸にいる翁の姿が見えなくなってゆく。

カチマチ『おじいちゃん!おじいちゃん!』

翁『あ、そうだ!お前の名前!』

カチマチ『え?』

翁『別に使わなくてもいいからよ!せめて家族の一員として、つけさせてくれ!』

翁『"コスズ"なんてのはどうだ?うちはスズヤ家だったからよ!そっからとってみたんだ!』

カチマチ『コスズ……』

翁『あんま縛られずに、二つ名くらいに思ってくれ!』

カチマチ『うん……うん!ありがとう!大切にするよ!』

翁『じゃなあコスズ!次に来た時は、俺の女房も紹介するからよ!元気でなー!』

コスズ『うん!おじいちゃんも!元気でいてねーー!!』

ーーーーーーーーーーーーーーー


412 : 名無しで叶える物語◆sSRnV37s★ :2025/09/28(日) 23:27:55 ???00
カチマチ・・・


413 : 名無しで叶える物語◆CHAnmhCD★ :2025/09/28(日) 23:35:29 ???00
カチマチ良かったな……


414 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:43:33 ???00
✨キラキラキラ…

カホ「この光って、やっぱり……」

ギンコ「メグミさんとルリエルさんだと思う。二人が戦いを終わらせようとしてるんだよ」

カチマチ『ギンコちゃーん!カホさーん!』タッタッタッ

ギンコ「!?カチマチさん!」ダッ

カチマチ『ギンコちゃん!』ドン!

ギンコ「うぐっ!……よかった。無事だったんだ」

カチマチ『川の向こうでね!おじいちゃんに会ったんだ!カチマチが頑張ってることを伝えたら、すごく喜んでくれたよ!』

ギンコ「そう……よかったね。カチマチさん」

カチマチ『うん!』

ルリノ「カチマチちゃんが生きてるのも、メグミさん達の力?」

カホ「きっとそう。あたしの足も治ってるし」


415 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:45:10 ???00
コズエ「みんなー!」

カホ「っ!コズエちゃん!」

ツヅリ「……」

ルリノ「ツヅさんも!一緒にいるってことは、記憶が戻ったの?」

ツヅリ「うん。思い出したよ。ごめんね、みんなのこと忘れてて」

カホ「気にしないでください!お二人が無事でよかったです!」

コズエ「……」ボロボロ…

カホ「……あんまり無事ではなかった?」

ツヅリ「ごめん……」

コズエ「私は大丈夫だって言っているでしょ?メグミのおかげで傷も全て塞がったし。いえ、これはルリエルさんの力かしら?」

カチマチ『あれ?でもルリエルさんはここにいますよ?』

ルリノ「あ、ルリはもうただのオオサワルリノだよ。天使ルリエルは別の体に移ったみたい」

ギンコ「さっき巨人を動かして魔弾を止めたのが、ルリエルさんです」

コズエ「そう……少し離れてた間に色々あったのね……」


416 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:47:46 ???00
カホ「はい。でも、きっとこれで終わります。こんなに優しい気持ちをもらって、誰かを傷つけようなんで思える人はいませんもん」

ギンコ「そうですね。愛を感じながら人を殺せる人なんて──あ、ごめんなさい!」

ツヅリ「いいんだ。ボクも、サヤのことは受け入れて前に進もうと思う」

ギンコ「そうなんですね……辛い時はいつでも頼ってください。必ず力になりますから!」

カホ「あたしもです!」

ルリノ「ルリも!」

ツヅリ「みんな……ありがとう」


ドドドドドド……!

コズエ「あら?何かしら、この地響きは……」

カチマチ『!見てください!海の方からなにか来てます!!』

カホ「あれって……津波!?しかも大きい!」

ルリノ「なんで!?もうラッパは鳴ってないのに!」

ギンコ「……はっ!」

ギンコ「そうだった……さっきの地震の影響で、津波ができてたんだ……」

ギンコ「このままじゃ、カナザワが飲み込まれちゃう!」

「「!!!」」


417 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:51:14 ???00
推定10mを超える大津波が、カナザワの街に迫る。

木も岩も、自然の堤防にはなり得ず、全てを巻き込んで津波はその破壊力を増してゆく。

メグミ「どうしよう……!これじゃあせっかく生き返らせた人達がまた死んじゃう!!」

ルリエル「っ!ルリが止めてみる!」

メグミ「るりちゃんが!?」

ルリエル「ミカエルさんから譲り受けた権能……この力で壁を作るよ!」🔯バチバチ

巨人「」バラバラバラ

ルリエルが魔力を込めると、巨人の体は分解され、瓦礫が街の外に飛んでゆく。

そのまま瓦礫は積み重なると、街を守るように巨大な壁が建設された。

ドドドドドド……ガシャーン!!

ルリエル「う"っ……!!」ズン!

津波はルリエルが作った壁に当たると、一瞬その勢いを弱める。

しかし、圧倒的な質量の前に、壁はズルズルと押し返されてしまう。


418 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:52:18 ???00
ルリエル「う"お"ぉ"ぉ"ぉ"!!」🔯バチバチバチィ!

メグミ「るりちゃん!私の魔力も全部あげるから!お願い耐えて!」✨

ルリエル「がんばってる!!けど……これ無"理"か"も"ぉー!」

ルリエルの健闘も虚しく、津波は壁を押し流しながら街へ迫って来る。

街では生き返った人々が全力で走り、津波から逃げているのが見て取れた。

その時──


三💥バッキュン!


メグミ「!!」

ルリエル「!!」

メグミ「嘘でしょ──さっきからタイミング悪すぎなんだってばあ!!」


419 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:54:48 ???00
ギンコ「この気配は……また魔弾!?」

ツヅリ「あれだけの魔力を放出したから、メグ達の位置がバレたんだ!」

カホ「じゃあ、狙いはやっぱり……どうしましょう!ルリエルさんは津波を食い止めてるから、魔弾に対処できませんよ!」

コズエ「ここからじゃ、角度的にメグミ達のところまで飛ぶことはできない……こうなったら──」✋スッ

ギンコ「コズエさん?何を……?」

コズエ「みんな私から離れて!さっき保存した魔弾を解放するわ!」

カホ「!!解放の時にはダメージがあるんですよ!?あんなの出したら、コズエちゃんの体が耐えられません!」

コズエ「たとえそうなったとしても、あの魔弾を撃ち落とせるのは同じだけの威力を持った魔弾だけ……!」

コズエ「10秒後に撃つわ!それまでにできるだけ遠くに避難して!」

カホ「ダメです!他の方法を考えましょう!」

ルリノ「カホちゃん離れて!巻き込まれる!」グイッ

カホ「いやぁ!コズエちゃーん!!」


420 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:57:52 ???00
コズエ「っ!見えた……!」

魔弾の光が大きくなり、近づいてくるのがわかる。

その進行方向からして、標的はやはり上空にいるメグミとルリエルだった。

コズエ『フルリリース──』⚛️キーン!

コズエの体から禍々しい魔力が漏れ出し、周りの植物が一瞬にして枯れてゆく。

コズエ「うっ……!」ズズズ…

コズエ(絶対に外すことはできない。メグミ達に影響が出ない距離で、ギリギリまで引きつける!)



コズエ(…………ここ!)

コズエ「──っ」⚛️


🎺プオ────────────ン


コズエ「!?」ビクッ

カホ「ラッパの音!?メグちゃんじゃない!」

ギンコ「そんな……メグミさん達の想いは、天使には届かなかったってこと……?」


421 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 20:59:11 ???00
コズエ(このラッパがどういうものかわからない!魔弾は使うべき?それとも──)

一瞬の迷いが、コズエの行動を遅らせてしまう。

そのせいで、魔弾はもう防ぎきれない位置までメグミ達に迫っていた。

コズエ「しまっ──」


⏱カチ

その瞬間、世界から音が消える。

魔弾も津波も、この世の一切が動きを止め、その場に停止している。

コズエ「魔弾が止まった……もしかして、ツヅリ!?」

ツヅリ「ち、違う!ボクじゃない!」

コズエ「ツヅリじゃない?それならいったい誰が……」


⏱カチ…チチチチチ──


422 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:01:35 ???00


メグミ「魔弾が、遠ざかってく……?」

ルリエル「メグちゃん!」

メグミ「!どうしたの!?」

ルリエル「津波が──津波が引いてる……!」

メグミ「え?」

壁を押していた津波が、海の方へ帰ってゆく。

しかしそれは、通常の波の引き方とは違った。

津波がはけたあとの地面には一切の水滴が残らず、それどころか倒れた木々が地面に再び根を張っている。

メグミ「これって……もしかして!」

ルリエル「間違いないよ……"時間が巻き戻ってる"!!」

津波が引いても時間の遡行は終わることがなく、世界はこの数時間の間にあった現象を逆再生で再現する。

ギンコ「瓦礫が巨人の姿に戻って──またバラバラになった!?」

カホ「時間が逆行してる……きっとこれが、さっき聞こえたラッパの力!」

コズエ「そんなことが……」


423 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:07:36 ???00
ギンコ「ちょっと待って!てことはもしかして、またあの地震がやってくるんじゃ……」

カホ「あ」

ゴゴゴゴ……!

ルリノ「来た!!」

ギンコ「っ!みなさん私の近くに集まって!お互いの体をしっかりと掴んでてください!」

コズエ「わ、わかったわ!」ガシッ

ツヅリ「……っ!」ガシッ

ルリノ「!」ガシッ

カホ「カチマチちゃんおいで!」

カチマチ『はい!』

ギンコ「いきますよ!『フローティア』!」✨

ギンコが杖を振ると同時に、全員の体がフワリと宙に浮く。

直後、大地が激しく揺れだし、カナザワの街を崩壊させた地盤の波は、海から山の方へと帰っていく。

ギンコ「っ!これは──」

ルリノ「街の建物が直っていってる!」

宙に浮いているギンコ達が見たのもは、なんとも不思議な光景だった。

一際大きな揺れが通過したあと、先程までバラバラに散らばっていた瓦礫が組み上がり、家などの建物が本来の形を取り戻してゆく。

コズエ「本当に、時間が戻っているのね……」

カホ「みたい…ですね……」


424 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:11:30 ???00
これは、『第七のラッパ』の能力。

本来は天使達が窮地に立たされた時のため、最終手段として用意されたもの。

その力は『任意の時間軸まで時を戻す』能力である。

その力の特性上、今まで天使達を含め、誰もそのラッパの機能を覚えている者はいなかった。

だが、今回は違う。天使達と、そして偶然天使と縁の深かった一部の人間は、時間遡行の影響から免れている。

それはひとえに、メグミから受け取った愛を忘れぬようにという、ラッパ吹きの天使からの気遣いだった。

ラッパ吹き「もう、争いは終わりにしましょう」

ラッパ吹き「人間が天使にした悪行は、到底許されるものではありません……ですが、その悲しみを知る私達が新たな争いの火種を産むのは、それ以上に愚かなことです」

ラッパ吹き「私達が未来へ伝えていくべきものは、憎しみではない」

ラッパ吹き「あの子達が思い出させてくれた、仲間を愛する心。そして、──"隣人"を愛する心です」


425 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:14:56 ???00
時が戻ったことにより、街はその美しい姿をほとんど取り戻し、西の地平線からは太陽が登る。

浮遊魔法の力が尽き、カホ達が地上に降りた頃には、"まだ何も起こっていない"夕暮れ時のカナザワに戻っていた。

カホ「こんなことが、できるなんて……」

コズエ「わざわざこの時点まで戻したということは、もう戦う気はないってことでいいのかしら?」

ギンコ「そうだと思います……」

時間遡行が終わったあとも、未だに世界は止まったままだ。

また、人から天使に変異した者たちも、人間に戻ることなく天使の姿を保ち続けている。

ルリエル「…………終わったね」

メグミ「うん。これで本当に、戦いは終わり。あとはみんなで帰るだけ」

ルリエル「でも、帰るって言っても、天国はもう……」

メグミ「大丈夫。天国はまだ残ってるよ」

ルリエル「え?」


426 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:17:32 ???00
メグミ「私ね、人間界で復活してから、朝起きた時にはいつも天井に張り付いてたんだ」

メグミ「私達に生えてるこの羽は、私達を天国に導く為のもの。つまり──」

メグミ「天国はまだ、私達の帰りを待ってるってこと!」

ルリエル「!!」

メグミ「きっと1000年前、ママが天国を崩壊させた時に、少しだけ残しておいたんだよ」

メグミ「そうじゃなきゃ、『人間のことは忘れて、またみんなで仲良く暮らせ』なんて言えないもん」

ルリエル「そっか、そもそもルリ達が浮いていられるのが、天国がまだ存在してる一番の証拠だったんだ……」

メグミ「そういうこと。だから、一緒に帰ろう?私達で、また一から天国を建て直そうよ」フワー

ルリエル「え、待ってよメグちゃん!あの子達は?挨拶もせずにこのまま帰るの!?」

メグミ「……うん。いいの」

メグミ「正直、顔を見たらこっちに残りたくなっちゃうと思うから」

ルリエル「っ!……ルリは、メグちゃんとまた一緒にいたいと思ってるよ」

ルリエル「でもね!もしメグちゃんが本当に人間と暮らしたいなら!それならルリは──」


427 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:18:41 ???00
メグミ「ありがとう、るりちゃん。でも、それはワガママ過ぎだよ」

メグミ「操られてたとはいえ、私は仲間達を復活させた。ここで一人だけ人間と暮らしたいだなんて言えない」

メグミ「るりちゃんもわかってると思うけど、天使がいなかったこの1000年の間に、地上は死者の魂で溢れかえって、魔物化する魂もたくさんいる」

メグミ「これからそういう魂たちを全員連れ帰って浄化しないといけないんだから、私だけサボる訳にはいかないよ」

ルリエル「……本当に、それでいいの?」

メグミ「うん。ママに代わって、私が天使達をまとめるよ」

ルリエル「そっか……じゃあ、ルリも手伝う!ルリとメグちゃんの二人なら、どんなことだっててできるから!」

メグミ「!……ありがとう!るりちゃん!」

メグミ「それじゃあ早速、みんなに天国に帰ることを伝えよう!」🎺

メグミ「すぅ──」

🎺プオ────────────ン

もう何度目かのラッパの音が響き、天使達にメグミの意思が共有される。

それを受け、天使達は羽に導かれるまま、各々天高くへと登ってゆく。


428 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:19:57 ???00
メグミ「私達も行こう」スッ

ルリエル「うん」ギュッ

フワー↑


『メグミ!!』

メグミ「!?」

『メグちゃん!行かないでください!』

『勝手にいなくなるなんてずるいですよ!』

ルリエル「メグちゃん?」

メグミ「この声……テレパシー?」

ーーーーーーーーーーーーーー

メグミ『あ、そうだカホちゃん、あのブローチ持ってる?』

カホ『メグちゃんが封印されてたやつですか?』

メグミ『そうそれ』

カホ『それなら、この胸元に付けてるブローチです!』

メグミ『そのブローチ越しに呼びかけてくれたら、私には聞こえるからさ、何かあったら使ってね』

カホ『わかりました!』

ーーーーーーーーーーーーーー


429 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:21:49 ???00
カチマチ『メグミさん!カチマチまだ、メグミさんに生き返らせてもらったお礼してません!』

ルリノ「ルリ……今度はちゃんと、メグミさんと一から友達になりたいんだ!」

ギンコ「私達だって、メグミさんに伝えたいありがとうの言葉がたくさんあるんです!」

ツヅリ「メグがずっとそばにいてくれるって言ってくれたから、ボクはまた立ち上がれたんだ!だからいなくならないで!」

カホ「メグちゃん!帰ってきてください!せめてもう一度、顔を見せてください!」

コズエ「あなたはうちのパーティの回復役なのよ!メグミがいないと無茶な戦い方ができないじゃない!」

カホ「コズエちゃん!今は素直になるべきところですよ!?」

コズエ「ん……す、素直な言葉は直接会って伝えるわ!だからメグミ!早く降りてきなさい!」


『メグミさーん!』

『メグちゃん!』

『メグミ!!』

メグミ「っ……!」↑↑ ビューン

ルリエル「メグちゃん!?」

頭の中に響いてくる、大切な仲間たちの声。

それを振り払うかのように、メグミは猛スピードで雲を突き抜ける。


430 : 名無しで叶える物語◆JhmNgLH9★ :2025/09/30(火) 21:25:36 ???00
メグミ(みんな……私、みんなのこと大好きだよ)

メグミ(でもごめん。私にも果たさなくちゃいけない使命があるの!)

メグミ(天国を作り直して、全部が落ち着いたら、いつかまた会いに来るから!)💧ポロ…

地上にいるカホ達の姿が完全に見えなくなった頃、メグミの頭に響く声も途切れた。

それとほぼ同時に、時計の針は再び動き出し、世界は日常を取り戻していく。

しかし、何もかもが元通りになったわけではない。

カナザワでは多くの市民が突然失踪し、家族や友人を失った人々は悲しみに暮れることとなる。

いつかこの事件の真相を追って、天使の存在に気がつく者も現れるかもしれない。

また、天使の中にも人間の兵器によって消滅させられ、蘇ることが叶わなかった者もいる。

争いの火種は完全には消えず、双方の胸に残り続けるだろう。

それでも──100年、1000年と長い時が経てば、必ずいつか分かり合う日が来る。

負の感情が残り続けるように、誰かを好きになりたいという気持ちもまた、永遠に消えることはないのだから。

メグミ「みんなと過ごした時間は、私の宝物だよ」

メグミ「バイバイ──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


431 : 名無しで叶える物語◆VXknPccE★ :2025/09/30(火) 21:36:43 ???00
メグちゃん…


432 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:42:09 ???00
【天国】

それから一ヶ月の月日が流れた。

メグミが予想した通り、天国は一部の地盤を残して、天使達の帰りを待ち続けていた。

天使達はメグミとルリエルの指示に従い、天国を作り直している。

特に、ルリエルがミカエルから引き継いだ権能は、物を動かすのに大変便利だった。

おかげで完全とは言えないまでも、天国はその姿を取り戻しつつある。

最近ではある程度魂を迎える土台ができてきたため、一部の天使達は地上に溢れる死者の魂を連れてくる仕事を再開している。

メグミ「ほらー!みんなキリキリ動く!まだやることは山積みだよ!」

「それを言うなら『きびきび』でしょ!?」

メグミ「無駄口叩かない!」


433 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:43:38 ???00
「大変よメグミエル!前に適当にくっ付けた岩が崩れそう!」

メグミ「はあ!?なんで適当にくっ付けたし!」

「メグミエルが『とにかく天国を大きくしなきゃいけないから、適当に岩でも持ってこい』って言ったんじゃない!」

メグミ「そんなこと言ったっけ?まぁ取り敢えず、地上に落ちて人に当たりでもしたら大事だよ!適当に紐でくくっといて!」

「また適当じゃーん!!」

「メグミエル!」

メグミ「なに!?」

「浄化した魂を入れておく容器が足りないの!連れてきた魂が一時保管所に溢れかえってる!」

メグミ「えぇ!?ちょ、ちょっとみんなに魂連れ帰るのストップって伝えて!」

「もう100人くらい地上に行っちゃってるよ!メグミエルの指示で1回に3人分を連れてくるから……今から300人分の魂が来ちゃう!」

メグミ「おぅ……みんな保管所の状態を把握してないの……?」


434 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:46:13 ???00
「『効率を上げるために仕事を分担する』って言ったのはメグミエルだよ!」

「それに元はと言えば、早く地上の魂を救いたいからって、まだ天国が作りきれてないのに魂の受け入れを開始したからじゃん!」

メグミ「だ、だって!1000年も待たせちゃったんだから、一刻も早く迎えてあげたいじゃん!」

「メグミエルー!」

「メグミエル!」

「メグミエルっ!」

メグミ「ああもう!全部"適当"に"いい感じ"でやっといてーー!!」

「……メグミエルじゃダメだわ。お母様の代わりなんて務まらないわよ」コソコソ

「ルリエルはどこにいるの?あの子の方が指示も丁寧だし、権能も強いんだから、ルリエルにまとめて欲しいなあ……」コソコソ

メグミ「こらそこ!陰口叩いてないで手を動かせ!あと、るりちゃんは魂迎えに地上に行ってるの!」


435 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:47:46 ???00
「どうしてルリエルが地上に行ってるの!メグミエルが行けばいいじゃん!」

「そうよ!あの子の権能がないと天国の再建も進まないわ!」

メグミ「うるさいうるさい!私がママからみんなを任されたんだから!ここを離れる訳にはいかないでしょ!」

「そんなのたまたまメグミエルしかいなかっただけじゃん!」

メグミ「もう〜〜!いいから持ち場に戻れーー!!」

メグミ「まったく……私だって地上に行きたいのを我慢してるんだから……」ボソッ

「メグミエルーー!!」

メグミ「今度はなに!?」💢

「あ……なんかルリエルが変な人連れてきて……メグミエルに会いたいって」

メグミ「私に会いたい?魂じゃなくて、生きてる人なの?」

「うん……いや、死んでるような生きてるような、よくわからないから……一応入れる前にメグミエルに確認しようと思って……」

メグミ「死んでるか生きてるかわからないって、何それ?まあいいや。るりちゃんが連れてきたなら大丈夫でしょ」

メグミ「いいよ。通して」

「わかった……」フワー


436 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:49:37 ???00
メグミ「はぁ、次から次へと……るりちゃんまで面倒ごと持ってきたらさすがに怒るからね」

ルリエル「メグちゃーん!」

メグミ「あ、るりちゃん。変な人を連れてきたんだっ──て──」

コズエ「久しぶりね。メグミ」

メグミ「──」

開いた口が塞がらないとはまさにこの事。

予想外の来客に、メグミは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、しばらくその場に固まってしまった。

メグミ「な、なんでコズエが天国に……まさか、死んじゃったの……?」

コズエ「いいえ、死んではいないわ」

メグミ「じゃあ早く帰って!!ここにいたら魂が勘違いしちゃう!本当に死んじゃうかもしれないよ!?」

コズエ「それも大丈夫よ。私の魂は、ここにはないから」

メグミ「はぁ!?何を言って──っ!?」

メグミ「待って……コズエ、自分の魂をどこにやったの?」

メグミ「どうして、"空っぽ"なの……?」


437 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:53:26 ???00
コズエ「……実は、みんなに隠していたことがあるの」

コズエ「私達、前にドラゴンと戦ったじゃない?そこで私は、一度死んでいるのよ」

コズエ「その時に、一か八かで自分の魂を『保存』したの」

メグミ「は…?そんなこと、聞いてない……」

コズエ「だから、隠してたって言ったじゃない。現に私はこうして動けていたし、そんなこと言われても、みんな混乱するだけだと思って」

メグミ「いや……言えし!そんな重大なこと一人で抱え込むな!!」

コズエ「コホン……そんなことは置いておいて」

メグミ「置いとくな!持ってろ!」

コズエ「さあ、メグミ──」

コズエ「帰るわよ」

メグミ「っ……!やっぱり、どうせそんなことだと思った……」

メグミ「わざわざ天国まで来てもらって悪いけど、私は地上へは行けない。私はママの代わりになって、みんなをまとめなくちゃいけないから」

コズエ「はぁ……あなたにそんな役割が務まる訳ないでしょう?いいから行くわよ!」スッ

メグミ「あっ!触らないで!」パシン!


438 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:54:57 ???00
メグミ「私には私の使命があるの!それを果たすまでは、地上には降りない!」フワー↑

コズエが強引にメグミの腕を掴もうとすると、メグミは宙に浮き上がりコズエから距離をとる。

ザワザワ……

「え、あれって人間?生きてるよね……」

「どうしよう……助けた方がいいのかな」

「でも、ルリエルがそばにいるから大丈夫じゃない?」

メグミ「ほら!みんな動揺しちゃってるじゃん!るりちゃん、こいつを地上に送ってきて!」

ルリエル「……」

メグミ「るりちゃん?」

ルリエル「……わかった」🔯バチバチ

ガコン!

コズエ「っ!」↓↓

メグミ「へ?」

突然、コズエが立っている足場が崩れ、コズエは重力にしたがって地上へと落下してしまう。

メグミ「!?コズエー!!」↓ビュン!

メグミは慌てて羽を畳み、コズエに向かって急降下する。


439 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 19:57:30 ???00
メグミ「うぉぉぉーー!捕まえた!」ガシッ

メグミ「あっぶな〜〜〜ちょっと!るりちゃん何をして──」

コズエ「ええ、確かに"捕まえた"わよ。メグミ」ガシッ

メグミ「!?」クラッ

コズエはメグミの体に組み付くと、わざと体重をかけてメグミが浮上するのを妨げる。

メグミ「こら!暴れるなあ!」グラグラ

コズエ「いいから!大人しく帰るわよ!」グイグイ!

メグミ「どうしてそんなに必死なの!?私なんてコズエ達にとっては、たったの数ヶ月一緒に過ごしただけの関係じゃん!」

コズエ「そんな悲しいこと言わないで!」

コズエ「メグミにとっては1000分の1、人間にとっては80分の1にも満たない短い時間だったけれど……」

コズエ「それでも!私達にとってはかけがえのない時間だったわ!」

メグミ「!……私にとっても、大切な時間だったけど……」


440 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:02:47 ???00
コズエ「メグミがいないと、家が静かに感じるの。私達はもう、あなたがいる騒がしさに慣れすぎてしまったのよ!」

メグミ「そんなの……どうせ私がいないことにもすぐ慣れるよ!1年、10年と経てば、それが普通になる!」

コズエ「たとえそうだとしても、あなたが欠けた生活に慣れたくはない!それが私達全員の総意よ!」

メグミ「なんで──」

コズエ「決まっているじゃない」

コズエ「メグミのことが好きだからよ!!!」

メグミ「!!」

コズエ「メグミが私達を好きでいてくれたのと同じくらい!私もあなたに、どうしようもないくらい惹かれてしまったの!」

コズエ「だから、天使の仕事だとか、あなたの使命なんてどうでもいい!私がそうしたいから、メグミを家に連れ帰るわ!!」

メグミ「む、むちゃくちゃなこと言ってる自覚ないの!?」

コズエ「そんなこと、わかった上で言ってるのよ!」

コズエ「そもそも!メグミだけ一方的に好意を伝えて、勝手にいなくなるなんて卑怯よ!」

コズエ「覚悟してなさい!下ではみんな歯の浮くようなセリフを用意して待ってるんだから!」

メグミ「いやーー!!それは恥ずかしい!!」バタバタ

コズエ「あ、ちょっと!大人しくしなさい!」


441 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:05:24 ???00
メグミ「私は天使!コズエ達は人間!元々住む世界が違うんだよ!」

コズエ「何よ!ちょっと羽が生えてる程度の違いしかないくせに!この羽がそんなに私達を分かつと言うなら──」ガシッ

メグミ「え、待ってコズエ……何をする気?」

コズエ「こんなモノ!」グググ!

メグミ「痛い痛い痛い!やめて!落ち着いて!羽がないと私達落ちちゃうから!」

コズエ「いいじゃない──メグミ、堕ちなさい」

ブチッ!

メグミ「あ──ぁぁぁあああ!!」↓↓↓

コズエはメグミの羽を強引に引きちぎり、浮力を失ったメグミ達は真っ逆さまに地上に落下していく。

メグミ「落〜ち〜る〜〜!!」↓↓↓

コズエ「う"ぅ"ぅ"ん!」ギュッ!

メグミ「コズエ!これどうするの!?何か考えがあるんでしょうね!?」↓↓↓

コズエ「......」↓↓↓

メグミ「何か答えてよ!ダメだ……るりちゃん!助けてーー!!」


442 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:08:06 ???00
ルリエル『メグちゃん』

メグミ「っ!この声は……!」

ルリエル『カホちゃんからブローチを預かったんだ。これで離れていても、いつでもお話できるから』

メグミ「どうして、こんなことを──」

ルリエル『ラッパを使うか選択する時、メグちゃんは天使の復活よりも人間を選んだ。それくらい、メグちゃんにとっては人間との生活が楽しかったんだよ』

ルリエル『みんなを楽しませようって目標を掲げたのに、メグちゃんだけが楽しくないんじゃ意味がない』

メグミ「そ、それは……でも!私はるりちゃんのことも、本当に!」

ルリエル『大丈夫。それはちゃんと伝わってるよ。メグちゃんにとって、特別な存在が増えただけ。これはほんの一時のお別れだよ』

ルリエル『人の一生は、ルリ達と比べると驚くほど短い。そのかけがえのない時間を、メグちゃん達には精一杯、楽しんで欲しいな!』

メグミ「るりちゃん……」💧ウルウル

ルリエル『あと、正直メグちゃんに神様の役は荷が重すぎたと、ルリ思う。ゆえにルリあり』

メグミ「ちょいちょーーい!!最後のは余計でしょ!てか結局助けてくれないんかい!」


443 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:10:12 ???00
メグミ「あ、もう地上が見えてきた……ねえコズエ!本当は何か案を考えてるんだよね!?」

コズエ「大丈夫よ。メグミは運がいいのでしょう?」

メグミ「運って──」

カラス「カーー!カーー!」

メグミ「うわっ!カラス飛んでるし!縁起わるっ!」

カラス「カーー!」ジー…

メグミ「しかもめっちゃこっち見てる!」

コズエ「っ!」ギュー!

コズエはメグミを一際強く抱き締めると、地上へと視線を向ける。

コズエ(最悪の場合は、私がクッションになれば保存魔法で全ての衝撃を吸収できる……それに賭けるしかない!)

メグミ「っ〜〜!」キュッ

メグミ「────フフッ」

コズエの胸に顔をうずめながら、メグミはほんの少しだけ微笑む。

初めて自分の意思とは関係なく、地面に落ちていく恐怖。しかしその中に、この状況を楽しんでいる自分がいることに気づく。


444 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:11:26 ???00
メグミ(なにこれ……強引に連れ出されて、大切な羽まで無くしちゃって、最悪な気分のはずなのに──)

メグミ(なのにちょっとだけ、ワクワクする)

メグミ(こういうのって駆け落ちって言うんだっけ?私今、天国も仕事も全部捨てて、コズエと駆け落ちしちゃってる)

コズエに頭を抱えられているメグミには、自分達がどれくらい地上に近づいているのかわからない。

それでも、不思議と心は温かかった。

なぜなら、そこには愛すべき素敵な仲間達が待っているのだから。

メグミ「うん。全然怖くない──訳ないだろうが!!」

メグミ「もうだめ!死んじゃう!天国に出戻りすることになるー!」

コズエ「集中が途切れるから静かにしてちょうだい!──っ!」

地上を見据えるコズエの目に、猛スピードでこちらに向かって走ってくる存在が映る。

コズエ「あれは……!」


445 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:12:59 ???00
ギンコ「見えたよコスズ!スピード上げて!」

カチマチ『了解です!』ダンッ!

巨大化したカチマチに跨り、カホ、ギンコ、ルリノの三人がメグミ達の真下へ走る。

カホ「コズエちゃーん!メグちゃーん!」

メグミ「カホちゃん!?」

カチマチ『あと少し──着きました!』ザザー!

カホ「いくよギンコちゃん!」

ギンコ「はい!」

『『フローティア!!』』✨

メグミ「わっ!」フワッ

コズエとメグミに浮遊魔法を同時にかけ、落下のエネルギーを相殺する。

二人の落下速度は急激に低下し、そのままカチマチのフカフカな背中に着地した。

コズエ「っ!」ボフッ

メグミ「ん!」ボフッ

カチマチ『うべっ!?』ドサ!

コズエ「何とか……無事に降りられたわね。みんな、ありがとう」

カチマチ『な、なんのこれしき……です』

コズエ「でも、よく私達が落ちてくる場所がわかったわね?」

ギンコ「カホさんが『絶対こっちだよ!』って言って導いてくれたんです」

コズエ「カホが?」

カホ「ふふん!勘ですよ!」


446 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/02(木) 20:16:12 ???00
メグミ「……」モジモジ

ルリノ「……メ、"メグちゃん"!」

メグミ「!!」

ルリノ「ルリね……メグちゃんの本当の幼馴染ではないけど、それでも!メグちゃんともっと一緒にいたい!もっとたくさんお話したいんだ!」

ルリノ「ダメ……かな?」

メグミ「……ダメな訳ない。私も同じ気持ちだよ。"ルリノちゃん"」

ルリノ「え?」

メグミ「今度は、ちゃんと友達になろう?私もルリノちゃんのこと、"幼馴染に似た女の子"としてなんて見ない」

メグミ「オオサワルリノちゃんと、友達になりたい」

ルリノ「!──う"ん"!」

カホ「メグちゃん、改めて──」

「「おかえりなさい!」」

メグミ「…………ん」

メグミ「ただいま!」


【ある天使の黙示録】 終幕

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


447 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/03(金) 22:03:44 ???00
【称号獲得】

メグミ:『Fallen Lover』

モモセ ギンコ:『Believer』

オオサワ ルリノ:『Friend !』

ユウギリ ツヅリ : 『Not a marionette』

カチマチ:『コスズ』


448 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/03(金) 22:05:23 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【おしえて!魔法教室】

カホ「やっほー!みんな久しぶり!カホだよ!」

カホ「今回の『おしえて!魔法教室』は特別編!なんと今まで出てきた魔法を一気におさらいしちゃいます!パチパチパチ〜」

カホ「ということで、早速見ていくよ!」

ーーーーーーーーーーーーーー

『スリーパス』
睡眠魔法。

『シンク』
窒息魔法。

『キャンセリ』
解除魔法。

『ピューリファイ』
浄化魔法。

『エクス ピューリファイ』
上級浄化魔法。

『エクス ウォッシャー』
上級洗浄魔法。

『リカバー』
回復魔法。

『リラックフィール』
鎮静魔法。

『ワールウィンド』
旋風魔法。

『フレアボール』
炎魔法。

『ウォーターカッター』
水魔法。

『フローティア』
浮遊魔法。

『レプルス』
反発魔法。

『エクス サンダー』
上級電撃魔法。

『エクス ブリザード』
上級氷結魔法。

『ストーンスキン』
硬化魔法。

『スパイラー』
螺旋魔法。

『オメガ・グラヴィオン』
終局・加重力魔法。


449 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/03(金) 22:10:35 ???00
【★更新情報 】

『メグ リカバー/エリクサー』
再生の権能。
元々ルリエルの権能であるため、メグミが使うと性能が若干落ちる。

『エンジェルブロー』
またの名を「冤罪パンチ」。
「天使が攻撃するなら、余程の悪に違いない!」という逆説により、強制的に罪人の烙印を押し付ける。

『ファミリア』
契約魔法。
元は大天使ルシファーが編み出した魔法。
現存の魔獣は、ルシファーが神と戦う為に生み出した魔獣達の子孫。

『ヴァリア』
結界魔法。
元は対天使用の拘束魔法。
現在は対魔法攻撃用に調整されている。

『保存魔法』
原理魔法のひとつ。
「エネルギー保存の法則」に干渉する。

『時間魔法』
原理魔法のひとつ。
「相対性理論」に干渉する。

『質量魔法』
原理魔法のひとつ。
「質量保存の法則」に干渉する。

『天使のラッパ』
第一から第八まで存在し、それぞれが天使に勝利をもたらす強力な機能を持っている。

ーーーーーーーーーーーーーー

カホ「こうして改めて見てみると、本当にたくさんの魔法が登場したんだね!なんだか感慨深いな〜」

カホ「…………」


カホ「……これだけあれば、負けないよね?」


450 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/03(金) 22:14:55 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

カナザワの上空で、太陽に寄り添うようにひとつの黒点が浮かんでいる。

よく見ると、その黒点はゆっくりと脈打ち、今まさに羽化の瞬間を迎えようとしていた。

それは、この世界にとっての死兆星。

物語の終わりを告げる『ピリオド』。

「"夢"を見るのは楽しかったですか?」

「あなたの方こそ、そろそろ現実に戻る時間ですよ──」

さやか「花帆さん」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


451 : 名無しで叶える物語◆5MODsGUc★ :2025/10/03(金) 23:58:33 ???00
花帆視点では真のボス登場か


452 : 名無しで叶える物語◆F8VOhwFj★ :2025/10/04(土) 00:35:44 ???00
次が最終章か
まだまだ読みたいけど最後まで完走応援してます


453 : 名無しで叶える物語◆IWuW2zpC★ :2025/10/04(土) 09:23:55 ???Sa
ラスボスさやかちゃんきたー!


454 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 22:55:36 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【2025年3月31日】

花帆「はぁ……」

花帆「センパイ達、本当に卒業しちゃった」

自室のベッドに倒れ込み、花帆は虚ろな目で天井を見つめる。

『いつかまた、みんなで!』

温かな約束を交わし、先輩を見送ったのは数時間前のこと。

満開の桜の下を、102期の3人はいつも通りの大きな背中で歩いていった。

残された花帆達6人は、その姿が完全に見えなくなるまで、ずっと見つめていたのだった。

花帆「絶対に、また一緒にライブをする。そうは言っても……」

花帆「やっぱり、離れるのは寂しいな……」

花帆にとって、学校生活とは梢達と過ごす時間そのものだった。

もしもあの時、梢に出会っていなかったら、蓮ノ空での生活は今とは大きく変わっていただろう。

それくらい、花帆にとって梢はここでの生活の全てだった。


455 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 22:57:20 ???00
花帆「梢センパイ……」

花帆「──って!ダメダメ!落ち込んでる暇なんてないんだから!」

花帆「センパイ達とまたライブをするためにも、ちゃんと計画を立てないと!」

花帆「期限は1年。あたしがスクールアイドルでいられる間に、必ず形にするんだ!」

花帆「でも、なんだか今はふわふわして頭が動かない……」

花帆「あ、そうだ!配信をしよう!」

花帆「配信してると何だか頭の回転が早くなるんだよね!スイッチが入るというか」

花帆「みんなもセンパイ達の卒業で落ち込んでるかもしれないし、お互いに気を紛らわすためにお話ししよっと!」

花帆「何の話をしようかな?できるだけ卒業とは関係ない話題がいいよね」

花帆「あ!ファンタジーのお話とかいいんじゃない?それならあたしも暗いこと考えずに済むし!」


456 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:00:26 ???00
花帆「よーし!そうと決まれば早速始めちゃおう!予告とかしてないけど、アーカイブ残すからいいよね?」

花帆「じゃあスマホを机にセットして……うん!準備できた!」

花帆「10秒後に開始予約っと!」

ーーーーーーーーーーーーーー

『まもなく開演いたします
今しばらくお待ちください』

ーーーーーーーーーーーーーー

花帆「んー始まったかな……あ!こんばんは〜!」

花帆「蓮ノ空女学院2年生の、日野下花帆でーす!みんな今日もよろしくねー!」

花帆「ん!『こんばんは』『こんばんは』『ゲリラ?』あ、そうなの!今日は告知とかしてないんだけど、急に配信したい気分になっちゃって!」

花帆「突然始まったからみんなびっくりしちゃったかな?……ふんふん」

花帆「『びっくりした!』『ちょうど切らしてた』『自分も花帆ちゃんの声聞きたいと思ってたところ』わっ!みんなありがとうー!」

花帆「ん?『蓮華祭の余韻が……』『昨日からずっと寝込んでる』うんうん、そうだよね。あたしもまだセンパイ達が卒業したって信じられないもん……」

花帆「だからあたしも、みんなとお話がしたくなったんだ!配信をしてれば、少しは気が紛れると思って!」


457 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:02:05 ???00
花帆「それでね!今日はなんの配信をするかと言うと!デケデケデケデケデケ──」

花帆「じゃん!『もしもみんながファンタジーの世界にいたら!番外編!』です!ぱちぱちぱち〜」👏

花帆「センパイ達の卒業が寂しいなら、卒業なんてない空想の世界のお話をしようよ!」

花帆「というわけで今日は『ハスノソラファンタジーⅡ』を考えていくよ!」

花帆「あ、Ⅱっていうのは、前にあたしが配信で考えた設定とは別ルートってことだよ!」

花帆「今回は番外編だから、今までみんなと考えたのとは全く別のお話を考えようと思うんだ!」

花帆「前に考えた設定を捨てるわけじゃないよ!?あっちはまた新入部員が入ってきた後に、続きを考えようね!」

花帆「ラブライブに優勝したし、きっと新入部員も10人……いや、100人くらい入ってくると思うから!その時はまた設定を考えるの手伝ってね!」


458 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:04:47 ???00
花帆「それでね、今回は別の設定のお話を考えるんだけど、前に考えたのはどちらかと言うと平和な旅物語って感じだったでしょ?」

花帆「だから今度は、もう少し……ダークな感じの!ちょっと……シリアス?なお話も考えてみたいなって!」

花帆「ふんふん、『ハリポタ的な?』あ、そうそう!ああいう少し怖くて、この後どうなっちゃうの〜!ってドキドキするようなお話!」

花帆「でね!舞台なんだけど、前回は旅をしてたから、今回は『カナザワ』を拠点にしたいんだ!」

花帆「主人公達はカナザワで冒険者とかシスターとか騎士とか、色んな職業で生活してて、物語が進むにつれてバラバラだった人達が繋がっていくの!」

花帆「ん?『仲間が増えてく展開は前回と同じなんだ笑』……あはは!そうだね!あたしやっぱりそういうお話が好きなのかも!」

花帆「でもまだ拠点がカナザワなことと、そこに蓮ノ空のメンバーが生活してるってことしか決めてないんだ」

花帆「誰が誰と出会うのかとか、そもそもどうやって生活してるのかとか、そういう設定も一緒に考えたいな!」


459 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:08:26 ???00
花帆「ふんふん……『拠点から移動しないならやっぱりクエストとか?』『それぞれの職業にフォーカスを当てる感じ!』『クエストで日銭を稼ぐ』……何かクエストって単語が多い気がする……」

花帆「ライトノベルとかゲームでよく出てくるよね!魔物の討伐とか、街の人の依頼をこなしてお金を稼ぐ!みたいな」

花帆「『このすば!』『ファイナルファンタジー』……うんうん!そういう作品だよね!」

花帆「お〜?何かみんなそっち系のお話が好きなのかな?あたしはどちらかと言うとそこまで詳しくないんだけど……でも!みんなが好きなら今回はそういうお話でもいいかもね!」

花帆「じゃあやっぱり、主人公は冒険者とかなのかな?魔法や武器が使えるような……」

花帆「それで、クエストをこなしながらお金を稼いで生活してる……」

花帆「!!」💡ピコン

花帆「あ、じゃあじゃあ!こんなのはどうかな!カナザワは結界に守られてて安全なんだけど、その周りには危険な魔獣や魔物がいて、行商人や街の外に出なきゃ行けない職業の人は、それに困って冒険者に依頼を出すの!」

花帆「『隣の町に行く途中に魔物がいるから倒して欲しい』みたいな!それで主人公は戦いに行くんだけど、魔物は強くてひとりじゃ倒せないから、色んな人に声をかけて一緒に戦ってくれる仲間を探すんだ!」


460 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:10:57 ???00
花帆「『パーティを組むってことか』……あ、パーティ!それいいね!パーティの仲間は家族みたいに一緒に生活するの!」

花帆「『冒険者ギルドとかがクエストまとめてそう』おー冒険者ギルド……それもよくゲームとかで聞くよね!」

花帆「ふんふん!いいねいいね!何だかイメージができてきたよ!」

花帆「じゃあこの調子で、登場人物の設定とか考えていこう!あ、せっかくだからアンケート機能も使おっか!」

花帆「クエストの内容とかも、みんなで選んで決めた方が面白いよね!」

花帆「『楽しそう!』『みんなで創る物語』『任せろ』わっ!みんな協力してくれるの?ありがとう!」

花帆「よーし!それじゃあ早速始めるよ!『ハスノソラファンタジーⅡ』スタート!」

花帆「まず最初はあたしの設定から──」ペラペラ

花帆(ああ、やっぱりこういう設定考えるの楽しいな)

花帆(向こうの世界では、きっと卒業なんてなくて、いつまでもみんな一緒で……)

花帆(ただの妄想じゃなくて、本当にファンタジーの世界に行けたらいいのに──)


461 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:12:45 ???00
『あなたの考えた世界、とっても楽しそう!』

『ねえ、その"夢"、叶えてあげよっか?』







462 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:15:08 ???00
花帆「え?」

花帆(今、誰かの声が聞こえたような……?)

花帆(おかしいなぁ…よく知ってるはずなのに、誰の声かピンとこない……)

ーーーーーーーーーーーーーー

『Link-Like System 起動』

『【スクールアイドルモード】から【異世界モード】への変更を申請』


『承認』

ーーーーーーーーーーーーーー

花帆「あ、ごめん!配信中なのにぼーっとしちゃった!」

花帆「アンケートの準備をするから、ちょっと待っててね!」ポチッ

花帆「えーと、スクコネのアンケートの作り方は──」

📱ピカーーン!

花帆「え!?なになに?画面が光って──スマホ壊れちゃった!?」

📱✨ピカーーーーン!!

花帆「うわっ!眩しい!!」

突然、花帆のスマホが白い光を放つ。

光は際限なく強さを増し、ついには目を開けていられない程になってしまった。


463 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:18:55 ???00
花帆「いったい何が……」

フワッ…

花帆「!?」

目を瞑っていた花帆の体を、突如浮遊感が襲う。

まるで宇宙空間にでも放り出されたかのような感覚に、花帆は思わず目を開けた。

しかし、部屋の中は既に光で満たされており、家具も壁も何も見えない。

上も下もわからない状況で、花帆はやっと自分が"異常事態"の最中にいることを理解した。

花帆「だ、誰か!梢センパイ!助け──」

ーーーーーーーーーーーーーー

『ようこそ来訪者』

『今日も素敵な冒険者応援ライフを』

ーーーーーーーーーーーーーー

花帆「!!」↓↓↓

先程とは打って変わって、感情のない機械的な声が聞こえてくる。

それと同時に、今まで重力から解放されていた体が落下する。

いや、上下左右がわからないのだから、もしかしたら上昇しているのかもしれない。

とにかく花帆の体は、まるで導かれるようにどこかへと引き寄せられていった。


464 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:21:38 ???00
花帆「きゃーーーー!!!」

花帆(ここ、あたしの部屋じゃない!こんなに広いはずないもん!)

花帆(まさか、このままどこかに叩きつけられて死んじゃうんじゃ──)

ボフッ!!

花帆「痛っ──くない?」

強い衝撃を予想していた花帆は、背中に当たる柔らかな感触に拍子抜けしてしまう。

花帆「ベッドだ……あたしの部屋?でも、なんだか違和感があるような……」

🚪ドンドンドン!

花帆「!?」ビクッ

「ヒノシタさーん!お話があるんだけど!」

花帆「寮母さんかな……?さっき大きい声出したから、心配して来てくれたのかも」

花帆「はーい!」ガチャ

「あ、やっと出てきた!いっつもいないんだから!」

花帆「え──誰?」

扉の向こうにいたのは、花帆の知らない女性だった。

年齢は40代程だろうか、何やらイラついた様子で花帆の顔を見つめている。


465 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:23:07 ???00
「誰って……ふざけてるのかい?あなたが住んでるアパートの大家だよ!」

花帆「アパート?大家??」

「そろそろ滞納してた半年分の家賃、払ってもらうからね!」

花帆「え?家賃なんて……なんのことですか……?」

「はぁ、どうせそう言うと思ったよ。でもね!今回ばかりはもう限界だよ!」

「1週間以内に滞納してた家賃全額払わないなら、ここから出てってもらうからね!」

花帆「出てく!?」

「クエストでもやってまとまったお金を用意するんだね!」スタスタスタ

花帆「あ、待って──行っちゃった……」

花帆「家賃?クエスト?もうなんのことかわからないよ〜〜!!」

花帆「さやかちゃんの部屋に行こう……もしかしたらさっきの人、不審者かもしれないし」

花帆はさやかの部屋まで移動しようと、扉の外に出る。

しかし、花帆の目に飛び込んできたのは、見慣れた寮の廊下ではなかった。


466 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/06(月) 23:24:55 ???00
花帆「────は?」

そこは街だった。もちろん、蓮ノ空の寮の周りに街なんてない。

しかもその街並みはどこか昔の西洋じみており、花帆の知る金沢ではなかった。

レンガが敷き詰められた道、全体的に茶色い家々、ターバンを巻き宝石を売る商人、武器のようなものを担いだ人々。

それはまるで、花帆が想像していたファンタジーの世界そのもので──

花帆「──」

花帆「ま、まさか……あたし……!」

花帆「ファンタジーの世界に来ちゃったのーーーーー!?」


これが、あたしにとってのプロローグ。

現実(リアル)と空想(ファンタジー)が絡み合う、あたし達のもうひとつの物語。


『蓮ノ空ファンタジーⅡ』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


467 : 名無しで叶える物語◆NjXCQBMz★ :2025/10/07(火) 00:31:37 ???00
ここでプロローグきた


468 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:34:00 ???00
【カナザワ】

カホ「おはようございまーす!」

コズエ「おはようカホ。今日は早いわね」

カホ「コズエちゃんと一緒に朝食作ろうと思って!」

コズエ「あら、それじゃサラダを用意してもらおうかしら」

カホ「はーい!」

ギンコ「おはようございます」

カホ「あ、ギンコちゃんおはよう!」

ギンコ「あれ?カホさん珍しく早いですね」

カホ「うん!今日はあたしがコズエちゃんと朝食の準備するからね!」

ギンコ「そうなんですか?それじゃあ私がやることはないですね……先にコスズの散歩にでも行ってこようかな」

メグミ「おはよ〜カチマチちゃんのお散歩なら私が行くよ」ヨロヨロ…

ギンコ「あ、おはようございます──って、大丈夫ですか?」

コズエ「今のメグミがカチマチさんの散歩に行けるわけないでしょう?一人で歩くのもやっとなのに」

メグミ「起きてすぐだからふらついてるだけだし!」

カホ「やっぱり羽が無くなると大変なんですね」

ギンコ「最初の頃は歩くどころか、体を起こすのも苦労してましたからね……」


469 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:35:51 ???00
メグミ「みんなよくこんな重い体で走ったり戦ったりできるよね……実は私だけ特別重かったりしない?」

コズエ「あなたはむしろ軽いほうよ」

メグミ「本当か〜?特に肩なんて、何にもしてないのにこるんだけど!どうにかなんないの!?」

ギンコ「それは仕方がないです」

カホ「重力に慣れてるあたし達でも肩はこるので、諦めましょう」

コズエ「筋肉を付ければ多少は楽になるわよ?」

メグミ「筋肉バカめ……」ボソ

コズエ「何か言ったかしら?」

🚪ガチャ

ツヅリ「ただいま」

メグミ「あ、ツヅリおかえり!ねぇ、ツヅリも普段から肩こるの?」

ツヅリ「え、肩?ううん、こらないよ」

コズエ「ツヅリは……私達とは鍛え方が違うのよ」

ツヅリ「ボク褒められた?」

メグミ「はぁ……大人しく体鍛えるか」


470 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:37:21 ???00
カチマチ『おはようございます!!』ピョン

メグミ「どわっ!?」ドサッ

カチマチ『メグミさん!おはようございます!』

メグミ「うん、おはようカチマチちゃん……とりあえずどいてくれるかな?重い……」

コズエ「そんな調子じゃ散歩に行ってもカチマチさんに引きずられてしまうわよ」

カチマチ『え!今日はメグミさんがお散歩に連れていってくれるんですか!嬉しいです!』シッポフリフリ

メグミ「うぷ……くるち……」

ギンコ「コスズの散歩は私が行くから。ほら、メグミさん苦しそうだから降りようね」ヒョイ↑

カチマチ『わっ』

メグミ「いや、やっぱり私が行くよ。早くまともに動けるようになりたいし」

ギンコ「でも……」

コズエ「それじゃあギンコさん、悪いのだけれど、メグミと一緒に行ってあげてくれないかしら?」

ギンコ「あ、そうですね。危なそうなら私が変わるようにします」

カホ「二人のお散歩よろしくね!ギンコちゃん!」

メグミ「私は散歩する側なんですけど!?」


471 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:39:29 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「「ごちそうさまでした!」」

朝食も終え、5人と1匹はゆったりとした時間を過ごす。

メグミを天国から連れ出してから早一週間、いまだ天使達がメグミを奪還しに来る様子はない。

おそらくルリエルが上手く説明してくれたのだろう。

そして、その間に新たに一緒に生活をする仲間も加わった。

カホ「そういえばツヅリさん。今朝は朝帰りでしたけど、昨日の任務大変だったんですか?」

ツヅリ「うん……洞窟の中でスライムに囲まれて、剣じゃ切れないから苦戦した……」

ギンコ「スライムは魔法攻撃でないと倒せないですからね」

ツヅリ「ギンがくれた杖がなかったら本当に危なかった。ギン、ありがとう」

ギンコ「いえ、無事に帰ってこられてよかったです」

メグミ「相変わらずこき使われてるね、ツヅリ」

コズエ「軍はまだツヅリが洗脳にかかったままだと思っているから、遠慮というものがないのでしょうね」

メグミ「あいつら、実はツヅリはもう洗脳魔法解けてるって知ったらひっくり返るんじゃない?w」

コズエ「そうなれば完全武装した王国騎士が100人単位でうちに押し寄せるわよ?」


472 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:43:40 ???00
カホ「よくそんな重要人物をうちに住まわせるのを許可してくれましたね」

コズエ「私もよく知らないのだけれど、誰かが裏で手を回してくれたみたい」

コズエ「最初は断固拒否だったのに、ある日から突然態度が軟化したのよ」

ギンコ「軍に顔が利く知り合いでもいるんですか?」

メグミ「どうせコズエが脅したんでしょ?『今ここで保存してた魔弾をぶっぱなしてもよろしいのだけれど!』って」

コズエ「なに、その言葉遣い……私そんな話し方はしていないのだけれど」

コズエ「……まあ、脅しはしないまでも、それが"できる"ことは証明したわね」

カホ「え"!?」

メグミ「こわ……」

コズエ「だから脅したわけじゃないわよ!いざと言う時にツヅリのことを抑えられるってことを示さないといけなかったの!」

カホ「コズエちゃんが変に目をつけられなければいいですけど……」

ツヅリ「ごめんね、コズ。ボクのために」

コズエ「いいのよ。聞いた限り、ツヅリが軍で受けていた扱いは人に対してするものではなかったから、一緒に住めるようになってよかったわ」

ツヅリ「……うん。ありがとう」


473 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:45:40 ???00
🚪ガチャ!

???「おじゃましまーす!」

メグミ「あ!この声は!」

ギンコ「──今日はどっちだと思います?」

カホ「あたしはルリノちゃんで!」

カチマチ『カチマチもです!』

ギンコ「私はルリエルさんに賭けます」

メグミ「ふっ……私が幼馴染の声を間違えるはずないでしょ?天使の方のるりちゃんで!」

ルリノ「こんにちはー!」

メグミ「あれぇ!?」

カホ「やったー!当たった!」

カチマチ『カチマチの鼻は騙せません!』

コズエ「あなた達ねぇ……」

ルリノ「なになに?ゲームでもしてたの?」

ギンコ「来たのがルリノさんかルリエルさんのどちらか予想してたんです」

ルリノ「あ〜あっちもよく遊びに来るもんね」

メグミ「そんな……私が間違えるなんて……!これも堕天の影響なの!?」

コズエ「多分関係ないわよ」


474 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:46:41 ???00
カホ「ルリノちゃん、今日はどうしたの?」

ルリノ「いや、ルリもただ遊びに来ただけなんだけどさ!この後何か予定あった?邪魔なら帰るけど……」

コズエ「特に大きな予定は無いわよ。メグミがまともに動けるようになるまで、クエストにも行けないし」

メグミ「ごめんね〜」

ツヅリ「お金はボクが出すから大丈夫だよ?」

コズエ「そうはいかないわよ。というか、別にメグミ抜きでクエストに行ってもいいのだけれど……」

メグミ「えー!仲間はずれはヤダー!」

コズエ「こんな調子だから、まだしばらく遠出もできないわね」

ルリノ「そっかそっか、メグちゃんも早く重力に慣れるといいね!」

メグミ「ありがとうルリノちゃん!そしたらまた教会に遊びに行くね♡」

ルリノ「あははっ!みんなで待ってるね!」


475 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:49:04 ???00
カホ「ごめんなさい、ちょっとあたしお花摘みに行ってきますね」

メグミ「はーい」

カチマチ『お花ですか?カチマチも行きたいです!』

カホ「あ……ごめんね!少し狭いからあたし一人で行くね」

🚪バタン

ギンコ「……コスズ、お花を摘むっていうのは──」コショコショ…

カチマチ『ええ!?そういう意味だったんですか!?カチマチ、とんだ失礼を……!』

ギンコ「こういう表現は知らないとわからないから。少しずつ覚えようね」

カチマチ『はい……』


メグミ「ところでコズエさぁ〜」

コズエ「何かしら?」☕️ススー

メグミ「カホちゃんにいつ告白するの?」

コズエ「ブフォッ!」

コズエ「な、なな、何を言ってるのメグミ!?」

メグミ「あんたら出会ってから結構経つんだしさ、そろそろいい頃合じゃない?」

コズエ「ば、馬鹿なの!?私は別に、カホのことをそういう目では……///」


476 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:52:08 ???00
ツヅリ「え、てっきりコズはカホのことが好きなのかと思ってた」

コズエ「好きよ!好きだけど、その、告白とかそういう好きではなくて……」

コズエ「そもそも!女性同士で付き合うなんておかしいでしょう!?だいたい、今も既に一緒に生活しているのに」

メグミ「え〜でも一緒に暮らしてても、カホちゃんのこと全部知ってる訳じゃないでしょ?もしかしたら花屋でバイトしてる間にお客さんに告白されてるかもよ?カホちゃん可愛いし」

メグミ「コズエの知らないところで、カホちゃんが誰かのものになってもいいの?」

コズエ「うぐっ…それは……」

コズエ「というか、どうして急にそんな話になるのよ!」

メグミ「いや〜実はさっきカチマチちゃんのお散歩中に懐かしい人に会ってさ!ね、ギンコちゃん」

ギンコ「はい。コズエさん、ドラゴンと戦った時に知り合った、冒険者のタナカさん覚えてますか?」

コズエ「ええ、もちろんよ。身を呈してドラゴンの攻撃から守ってくれた恩人だもの」

メグミ「あいつ、この間冒険者ギルドの受付嬢ちゃんと結婚したんだって!」

コズエ「ええ!?そうなの!?」


477 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:54:36 ???00
ギンコ「はい。あの一件以来よく話をするようになって、そのまま結婚することになったそうです」

コズエ「まあ!最近ギルドに行ってなかったから知らなかったわ……今度祝いの品を持っていかないと」

カチマチ『他にも商店街のお肉屋さんも結婚したって言ってました!』

ツヅリ「そういえば軍で仲良くしてくれた人も、この間"ことぶきたいしゃ"するって言ってた」

ルリノ「ああ、確かに最近結婚する人多いよね。おかげで教会も式の予約でいっぱいだよ」

コズエ「な、何なの……この空前の結婚ブームは……今までそんな話は一切聞かなかったのに……」

メグミ「……」

メグミ(もしかして、浄化した魂の転生先として新しい器がたくさん必要になったから──なんてね)

メグミ「まあいいじゃん!せっかくだからコズエも乗っちゃいなよ!このビッグウェーブにさ!」

コズエ「いや……だからって急に告白されても、カホも文脈が無さすぎて困惑するでしょう……?」

メグミ「大丈夫だって笑」

コズエ「でも……」


478 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:57:42 ???00
ギンコ「んーそうですね。いきなり告白するのはさすがにハードルが高いですし、まずはプレゼントでも贈ってみたらどうですか?」

コズエ「プレゼント?」

ギンコ「はい。プレゼントをもらった時の反応を見て、告白しても大丈夫そうか判断する……とか?」

ツヅリ「おーギン頭いい」👏

メグミ「まあ、意気地無しなコズエにはそれが限界かな」

コズエ「意気地無しとは失礼ね!あなたを連れ戻すためにわざわざ天国にまで出向いたのだけれど!?」

メグミ「その根性をカホちゃんに対しても発揮できればな〜」

ルリノ「まあまあ、それでどんなプレゼントがいいかな?」

コズエ「……やっぱり、"花"かしら?」

メグミ「お!コズエにしては珍しくまともな案じゃん」

コズエ「私はいつもまともです!」

ギンコ「でも、この中で一番お花に詳しいのはカホさんですし、かえって難易度が高いんじゃないですか?」

コズエ「ん……確かに、カホはどんな花をもらったら嬉しいのかしら」

メグミ「いっそカホちゃんに直接聞いてみれば?」

コズエ「それじゃあサプライズにならないでしょう?」

メグミ「別にサプライズにする必要はないじゃん。むしろ自分が欲しいと思ってるものもらえた方が嬉しくない?」

メグミ「プレゼントって、変に奇を衒うとやけどるするよ〜」

コズエ「そうかしら……」


479 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 22:59:45 ???00
🚪ガチャ

カホ「もどりました〜盛り上がってましたけど、なんの話をしてたんですか?」

コズエ「あ、いえ、別に──」

メグミ「ねえカホちゃん、カホちゃんはお花をもらうとしたらどんな花がいい?」

コズエ「メグミっ……!」

カホ「お花をもらうなら?うーん……」

カホ「その人があたしの為に選んでくれたお花なら、何でも嬉しいです!」

コズエ「なるほど……難しいわね……」

カホ「え、コズエちゃん誰かにお花を贈るんですか?」

コズエ「!そ、そうね。少し考えていただけよ?」

カホ「へ〜誰に贈るんですか?」

コズエ「んんっ……ひ、秘密よ!」

カホ「えー!教えてくださいよー!あたしの知ってる人ですか?」

コズエ「秘密ったら秘密よ!」プイッ

ルリノ「あはは!問い詰めなくてもそのうちわかると思うよ」

カホ「?それってどういうこと?」


480 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 23:01:28 ???00
メグミ「まあまあ、今のはいったん忘れてね?それよりせっかくルリノちゃんが来たんだし、お菓子でも作ろうよ!」

ギンコ「いいですね。クッキーでも焼きましょうか?」

ツヅリ「チョコレートケーキ食べたい」

ギンコ「チョコレートケーキですか?うーん、材料あったかなあ……」

コズエ「一応、チョコもケーキの材料もあるわよ」

カホ「じゃあ今からみんなで作り──」

カホ「──!!」ガタン!

カチマチ『カホさん?どうかしましたか?』

コズエ「大丈夫?ずいぶん険しい顔をているけれど……」

カホ「…………ごめんなさい。あたし、用事があるのを思い出しました」

ギンコ「あれ、今日バイトの日でしたっけ?」

カホ「バイトじゃないんだけど……急いで行かないといけないの!」バタバタ

コズエ「行くって、いったいどこに……」

カホ「──ちょっと"お花を摘みに"」

🚪バタン!


481 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 23:05:39 ???00
ツヅリ「行っちゃった」

ルリノ「カホちゃんどうしたんだろう?なんか深刻そうだったけど……」

カチマチ『お花を摘むって御手洗のことですよね?さっき行ったばかりなんじゃ?』

ギンコ「外に行ったみたいだから、今度はそういう意味ではないのかも……」

メグミ「……」

メグミ「まっ!用事思い出しただけなら、そんなに心配いらないでしょ!」

メグミ「それより今のうちプレゼント用の花でも買ってきたら?カホちゃんが帰ってきた時にサプライズで渡しなよ!」

コズエ「あなたさっきサプライズじゃなくていいって言ってたじゃない……」

メグミ「無理にやる必要は無いけど、ちょうどいいタイミングがあるならやるべきだよ!」

メグミ「なんてことのない日常の中で突然花束なんか渡されたら、女の子はみんなキュンキュンしちゃうものなんだぞ♡」


482 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/08(水) 23:06:41 ???00
コズエ「そういうものかしら?私なら何か許して欲しいことでもあるのかと勘くぐってしまうけれど……」

ギンコ「私は嬉しいです。何でもない日が特別な日になったみたいに感じられて」

ギンコ「カホさんもきっと喜ぶと思いますよ?」

ツヅリ「ボクも、カホなら喜んでくれると思う」

ルリノ「コズエさんみたいな素敵な人からお花をもらって、喜ばない人はいないと、ルリ思う」

カチマチ『カチマチもです!』

コズエ「そう……?みんながそこまで言うなら、買ってこようかしら……」

メグミ「そうしなよ!くれぐれもカホちゃんと鉢合わせたりしないようにね!」

コズエ「わかってるわよ!」

🚪バタン

ツヅリ「…………あれ」

ツヅリ「チョコレートケーキは……?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


483 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/09(木) 22:28:37 ???00
【花屋さん】

コズエ「こんにちは」

花屋「いらっしゃい。あら、カホちゃんのところの」

コズエ「はい。オトムネです。いつもカホがお世話になっております」ペコリ

花屋「やーね〜お世話になってるのは私の方よ。カホちゃんはよく働いてくれるし、あの子がいるとお店の雰囲気も良くなるから助かりっぱなし!」

コズエ「んふ。そうですね。カホは太陽みたいな子ですから」

花屋「それで、今日はどうしたの?知ってると思うけど、今日はバイトの日じゃないわよ?」

コズエ「いえ、カホに用があった訳ではなく……その、花を買いに……」

花屋「お花を?カホちゃんにプレゼントするのかしら」

コズエ「な、なんでわかるんですか!?」

花屋「うふふ。たまにね、今のあなたみたいな顔をして花を買いに来るお客さんがいるのよ」

花屋「『大切な人に花を贈りたいけど、喜んでもらえるか不安だ』って顔ね」


484 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/09(木) 22:30:06 ???00
コズエ「うっ……さすがです。全てお見通しですね」

花屋「そりゃあ、あなたの何倍も生きてるもの。おほほほ!」

コズエ「それなら遠慮なく相談させていただきます。カホにどんな花を贈ったらいいと思いますか?」

花屋「あなたが贈りたいと思った花よ」

コズエ「即答……カホも、同じ様なことを言っていました」

コズエ「『自分の為に選んでくれた花ならなんでも嬉しい』と」

花屋「そうでしょうね。だって、実際その通りなんだもの」

花屋「花を売ってる私が言うのもなんだけどね、どんな種類の花だろうと関係ないのよ」

花屋「よく花言葉なんかを聞いてくるお客さんもいるけど──あ、もちろんそういうことを意識するのもいいと思うわよ!」

花屋「でもね、結局もらう側はそんなことどうでもいいの。大切なのは、『その人が自分のことを想って一生懸命選んでくれた』って事実だけ」

花屋「それだけで、たとえ名前も知らない小さな花でも、その人にとっては世界でただ一輪の特別な花になる」


485 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/09(木) 22:31:35 ???00
花屋「だから、値段や意味なんかに惑わされずに、あなたが贈りたいと思った花を選ぶといいわ」

コズエ「……わかりました」スッ

花屋「まあ、バラなんかはあまりにも意味が有名すぎるから、人によっては引かれるかもしれないけどね!」

コズエ「え……」ピタッ

花屋「え?」

コズエ「そ、そうですよね!バラはさすがに重すぎますよね!」ワタワタ

花屋「あらあら、余計なことを言っちゃったかしら……いいのよ?バラを選んでも」

コズエ「いえ!やっぱり別の花の方がいい気がしてきました!」

花屋「そう?んー……」

花屋「また余計なお世話かもしれないけど、バラの花言葉は色によって変わるのよ。有名なのは赤いバラの『愛情』だけど」

花屋「たとえばこの色のバラの花言葉は──」


486 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/09(木) 22:32:16 ???00
コズエ「……」

コズエ「これにします」

花屋「いいの?私がおすすめしちゃったようなものだけど」

コズエ「いえ、"私が"この花をカホに贈りたいと思ったんです」

花屋「わかったわ。その気持ちを忘れないでね。あなた今、とってもいい顔をしてるから」

コズエ「あ、ありがとうございます……///」

花屋「はい、じゃあ代金は授業料込みで500万ね」

コズエ「500万!?」

花屋「おほほほ!冗談よ!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


487 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/09(木) 22:33:14 ???00
コズエ「勢いで買ってしまったけれど、冷静に考えたらやっぱりバラは重すぎたかしら……?」

コズエ「みんなにはなんの花を買ったかは内緒にしておきましょう。少なくともメグミは絶対にからかってくるわ」

🚪カチャ…

コズエ「……」ソロリ…

シーン……

コズエ(?やけに家が静かね……)

コズエ「ただいま……」ヒョコ

ガラン……

コズエ「リビングにも誰もいない……どこかに出かけたのかしら?」

コズエ「メグミがいるからそんなに遠出はできないはずだけれど……あら?」

コズエ「キッチンに……作りかけのケーキ?こんな中途半端な状態で放置するなんて……」

コズエ(なんだか、胸騒ぎがするわ)

コズエ「探しに行きましょう!」


488 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/09(木) 22:38:21 ???00
無人の家に一抹の不安を覚え、コズエは玄関を飛び出して外に出る。

コズエ「!?」

そして、すぐにその違和感に気が付いた。

コズエ「人の気配が──ない?」

つい先程まで賑わっていた街が、いつの間にかしんと鎮まっている。

道には人どころか、ネコや鳥など動物の姿すら見当たらない。

コズエ「何が……起きているの……?」

コズエ「っ!カホー!メグミーー!」

シーン……

コズエ「ギンコさん!カチ



ほどなくして、コズエの姿も皆に遅れて掻き消えた。

街には風の吹く音だけが虚しく響き、まるで古い遺跡にいるかのように感じられる。

その日、カナザワの街からあらゆる生物が消失した──

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


489 : 名無しで叶える物語◆NjXCQBMz★ :2025/10/10(金) 08:23:29 ???00
急展開


490 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:26:35 ???00
【スクールアイドルクラブ 部室】

カナザワから人が消える少し前。

泉「さやか先輩も無事"向こう"で動けるようになったことだし、作戦を開始しようか」

泉「部外者の私が音頭をとってしまって申し訳ないね」

さやか『いえ、この作戦は泉さんの力あってのものです。どうか気にせず指示を出してください』

泉「ありがとう。さやか先輩の方は大丈夫かな?」

さやか『はい。わたしは今カナザワで潜伏中です。現状誰にも見つかっていません。みなさんにもそうお伝えください』

部室に置いてある大型のモニターに、物陰に隠れるさやかの姿が映し出されている。

モニターは姫芽が自室から持ってきたゲーミングPCに繋がっており、泉はヘッドセットを介してさやかに指示を送っていた。

泉「それはよかった。この作戦では花帆先輩の隙をつくことが一番大事だからね」

泉「ああそれと、さやか先輩の声はモニター越しに全員に聞こえているから、もしもみんなに伝えたいことがあったら私を通す必要はないよ」

さやか『わかりました』


491 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:28:51 ???00
セラス「ねえ泉、結局なんでさやか先輩を向こうに送ったの?」

泉「花帆先輩に干渉するには、こちらも向こう側の世界に行く必要があるんだ。でも、姫芽さんとさやか先輩以外は、既に同じ名前の人がいるだろう?だから二人以外は入れないんだよ」

吟子「確かに同じ名前、同じ見た目だけど……厳密には私達とは違う人間だよね?」

泉「ふむ、どう説明しようかな……吟子さん達はスクコネにログインする時に、自分のアカウントを使っているだろう?」

吟子「うん」

泉「じゃあ、もしも吟子さんのアカウントが誰かに乗っ取っられて、勝手にログインされていたら、その時吟子さんはスクコネに入れると思うかい?」

吟子「え?それは……」

姫芽「多分、ログインを拒否されるだろうね。蓮ノ空の共用アカウントならともかく、個人のものなら誰かがログイン中は使えなくなるんじゃないかな」

泉「そう。そしてこれは花帆先輩がいる世界にも適用される」

泉「要は、あなた達が向こうの世界にログインする為のアカウントは、既にあちらの住民に使われている状態なんだ」

小鈴「そっか!だからまだ使われてなかった姫芽ちゃんはカナザワに行けたんだ!」

泉「正確にはもっと複雑なんだけどね。でも、大体そんなイメージで問題ないよ」


492 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:30:56 ???00
セラス「待って!それならわたしと泉も行けたんじゃないの?」

泉「残念ながら、私とあなたはアカウント自体がなかったよ」

セラス「ガーン!」

吟子「それなら、さやか先輩はどうやって?既にアカウントは使われてたよね」

泉「前回、姫芽さんが向こうのムラノサヤカを捕まえただろう?あの時に実行したプログラムは、そのアカウントの所有権を奪うもの──」

泉「さっきの例で言うところの、"乗っ取る"為のプログラムだ」

瑠璃乃「アカウントの強制ログアウトと乗っ取りを同時にやったって訳だね」

吟子「ああ、なるほど……」

泉「さやか先輩が動けるようになるまで、かなり時間は掛かってしまったけれど。その間、身動きが取れずに辛かったろう。すまないね」

さやか『気にしないでくだい。花帆さんを連れ戻すためです』

小鈴「まさか2時間も掛かるとは思いませんでした……」

泉「──確かに、私達の感覚では2時間程度だったけど、さやか先輩にとってはもっと長かったはずだ」

小鈴「え?」


493 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:33:30 ???00
泉「こちらと向こうの世界では時の流れ方が違うからね。ほら、たまに時間が急に飛ぶことがあっただろう?」

小鈴「あ!確かにありました!【1ヶ月後】みたいなやつ!」

泉「どうやらあの現象は、その『1ヶ月』をスキップした訳ではなく、時間を圧縮することで高速で時間を経過させていたようだ。原理までは不明だけどね」

小鈴「??つまり、えっと……どういうこと?」

泉「私達の世界では、花帆先輩が眠ってからまだ"8日"しか経っていないけど、向こうの世界では実際に半月以上の月日が流れているということさ」

泉「それで言うと、さやか先輩は2ヶ月以上身動きが取れなかったことになる」

小鈴「に、2ヶ月も!?徒町なら絶対に耐えられません!」

瑠璃乃「それでなんともないように動けてるのは、流石さやかちゃんというか……」

さやか『わたしのことはいいんです。それよりも、作戦の概要について改めて説明してもらえますか?』

泉「ああ、本作戦は前回同様、花帆先輩に直接触れることでプログラムを実行させる」

泉「前回と違うのは、実行するプログラムがアカウントの乗っ取りではなく、『削除』な点かな」


494 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:37:23 ???00
吟子「削除?そんなことをして、花帆先輩は大丈夫なの?」

泉「恐らくはね。私の予想では向こうで体を失ったら、花帆先輩の意識は行く宛てを無くして現実世界の体に帰ってくるはずだ」

吟子「恐らくって……」

泉「私も全てを理解している訳では無いからね。今まで色々と実験した結果を見て、そうなるはずだと予測しただけだ」

瑠璃乃「ちょっと怖いけど、花帆ちゃん自身が帰ってくることを拒んでるから、今はその方法しか無いってことだよね?」

泉「瑠璃乃先輩は理解が早くて助かるよ」

セラス「もしも失敗したら、泉が腹を切ってお詫びします」

泉「そこは一緒に腹を切ってくれるんじゃないのかな……?」

セラス「なんで?わたしは泉を介錯しなきゃいけないから切らないよ」

泉「うん……そうならない為にも頑張るよ……」

さやか『花帆さんに触れるのは、一瞬だけでいいんですか?』

泉「いや、少なくとも『5秒』はしっかりと掴まえて欲しい。もちろん抵抗されるだろうから、拘束するくらいのつもりでいてくれ」

泉「なに、たったの5秒さ。さやか先輩ならそれくらい楽勝だろう?」


495 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:41:52 ???00
さやか『軽く言ってくれますね……現実世界ならともかく、今の花帆さんを拘束できますか?』

泉「大丈夫だよ。さやか先輩が使っている体は、一度魔物化したムラノサヤカのもの。ステータスは体力、筋力、魔力……どれもSランクの一級品さ。総合力なら、オトムネコズエも超えている」

泉「対して以前確認した花帆先輩のステータスは、Aランクまで達しているのは魔力の項目のみ、他はBかCだけだ」

吟子(あれ?でも前に姫芽が花帆先輩と対峙した時は……)

泉「はっきり言って、さやか先輩が負ける確率は1%もないよ。あはははは!」

姫芽「泉ちゃん〜わざとフラグ立てに行ってない?」

泉「さあ、どうかな?」

泉「ああ、それと大事なことを言い忘れていた。プログラムの実行が開始したなら、その間は絶対に花帆先輩から手を離さないで欲しい」

泉「もしも一瞬でも手が離れてしまったら、プログラムは最後まで実行されずに、作戦は失敗になる」

小鈴「もしそうなっても、また何度でもチャレンジすればいいんです!」

泉「残念ながらそれはできない。なぜならこれは裏技のようなものだ。一度実行すればバグとして修正されて、二度と使えなくなるだろう」


496 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:44:02 ???00
さやか『つまり、そうなれば花帆さんを連れ戻す手段は無くなると?』

泉「他の手がない訳ではないけれどね。でも、あまりスマートな方法とは言えないかな」

さやか『教えてください。いざと言う時の選択肢は、多いに越したことはありません』

泉「そうかい?それなら言うけど、怒らないで欲しいな」

泉「『花帆先輩を殺すこと』。それがもうひとつの手段だ」

吟子「こ、殺すって……!」

泉「別に驚くことじゃないよ。結局、やっていることは変わらないからね」

泉「要はあの世界での花帆先輩のアカウントを消去すればいいんだ。それをプログラムを使って実行するか、あるいは物理的に破壊するかの違いでしかない」

吟子「そう言われても……」

姫芽「一応、向こうの世界に行った身として報告すると、あの世界で感じる痛みは現実と全く差がなかったよ」

姫芽「もしも死ぬ程の苦痛を味わったなら、現実に戻ってきた後にも体や精神に影響が出ちゃうかもしれない……」

泉「だからこそ、今言った方法は最終手段と思っていて欲しい」

さやか『なるほど、わかりました』


497 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:45:39 ???00
瑠璃乃「……っ!花帆ちゃんが移動したよ!」📱

吟子「どこに行きましたか!」

瑠璃乃「わからない……みんなで話してる途中で急に家を飛び出しちゃった」

セラス「泉!」

泉「わかっている。今花帆先輩の位置を特定しているところだ」💻カタカタカタ

泉「見つけた。どうやら商店街の方に向かっているらしい。さやか先輩がいる場所の逆方向だね」

小鈴「これは、チャンスでは!?」

吟子「うん!ひとりで行動してる今なら……!」

泉「さやか先輩、花帆先輩を追ってくれ。ナビは私がする」

さやか『わかりました』

泉「さあ、作戦開始だ」

泉(熱い"情熱"のぶつかり合い、期待しているよ──)ニヤッ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


498 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:47:31 ???00
【カナザワ】

さやか「……」タッタッタッ

泉からの指示を受け、さやかは駆け足でカホのいる場所に向かう。

中身が入れ替わっているとはいえ、この世界のムラノサヤカはコズエやツヅリからは相当警戒されているはずだ。

もしも彼女達に見つかれば、戦闘は避けられないだろう。

さやか(だからこそ、花帆さんが一人で行動している今が攻め時!妨害が入らない隙に一気に勝負を決める!)

聞こえてくる指示によれば、カホまでの距離はあと500m程ある。まだまだ走っていても気付かれない距離だ。と──

スルッ…

さやか「きゃっ!?」

音もなく足元を通り抜けた物体に、さやかは思わず転びそうになる。

三毛猫「ニャーン」

さやか「ネコ?びっくりした……危うく蹴飛ばしてしまうところでした」

三毛猫「ニャー!ニャー!」ジー

さやか「食べ物が欲しいのでしょうか?申し訳ありませんが、今は急いでいるので、あなたに構っている暇はありません」

三毛猫「!ニャー♪」


499 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:51:10 ???00
.



カホ「何に急いでるの?」

さやか「!?」ビクッ

突然、背後から聞き慣れた声で呼びかけられ、さやかは咄嗟に後ろを振り返る。

さやか「っ!」バッ

カホ『レプルス』

さやか「わっ!?」三ビュン

カホに手を伸ばそうとした瞬間、さやかは見えない力に押し飛ばされて20m程地面を転がった。

さやか「ぐっ……!」ゴロゴロ…

さやか「どうして、花帆さんがここに……!」

カホ「教えてくれてありがとうね。ミケちゃん」

三毛猫『カホはいつもおいしいお肉をくれるからな!これくらいオイラに任せてくれよ!』

カホ「うん。また今度ソーセージ持っていくね。危ないから、ミケちゃんはもう下がってて」

三毛猫『カホだけで大丈夫か?いつもの殺人ゴリラは?』

カホ「大丈夫だよ。あたしひとりで充分だから」

さやか「なるほど、そういえば動物と話せるんでしたね……そうやって猫や鳥を使って街中を監視していた訳ですか」

カホ「そんな物みたいに使ったりはしてないよ。あたしはちゃんと街の動物さん達一人ひとりと仲良くなって、それで協力してもらってただけ──」


500 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:53:48 ???00
カホ「久しぶりだね、さやかちゃん。次は絶対にさやかちゃんが来ると思ってたよ」

さやか「そうですか。それならわたしがここに来た理由も、もちろんおわかりですね?」

カホ「わかってるよ。だから、抵抗しに来たの」スッ

カホ『フレアボール』

🔥三ボッ

さやか「っ!」

さやか(奇襲作戦は失敗……ですが!)

さやか「はっ!」ダッ

さやかは一瞬姿勢を低くすると、脚に力を込めて地面を蹴る。

カホ「!!」

そのまま狙いを定められないように、道の両端の塀を蹴りながら稲妻を描くようにカホに近づいていく。

さやか(ここに来る前に、森でこの体の身体能力を試してきた。現実ではできない無茶な動きも、今のわたしならできる!)


501 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:56:15 ???00
さやか「掴まえた!」ガシッ

さやかはカホに正面から飛びつくと、首に腕を回して背中側に回り込み、花帆の体を拘束する。

カホ「うぐっ……!」

さやか「観念してください!今です!いず──!?」グイン

カホ「えい!」ポーン!

ガシャーン!ガラガラ!

さやか「がはっ──!」

泉に合図を送ろうとした瞬間、さやかの体は背負投の要領で投げ飛ばされ、塀を突き破り家の壁に激突する。

さやか(なんて力……!魔法も使わずにわたしを投げるなんて!)

さやか(この花帆さん相手に、5秒間も拘束しないといけないんですか……?)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


502 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 16:58:02 ???00
セラス「ちょっと泉!話と違うじゃん!花ちゃんの筋力ステータスは低いんじゃなかったの!?」

泉「…………なんてことだ。花帆先輩のステータスが更新されている。いや、今までのものがフェイクだったのか?」

セラス「わたしにも見せて!……!?これって──」

泉「体力、筋力、魔力……その他全ての項目で、ランクはSSS──カンストしているよ……」

吟子「なっ!?そ、そんなの──」

姫芽「チートじゃんかーー!!」

泉「いやはや、まさかこれ程の力を隠し持っていたとはね……これでよくただの一冒険者を演じられたものだ。ククク……大した役者だよ、花帆先輩は」

セラス「感心してる場合!?どうするの?」

泉「問題ない。これくらいは想定内だ」

泉「花帆先輩がチート級の能力値なら──こちらは正真正銘の『チート』で行こうじゃないか」


503 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:03:22 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さやか「くっ……」ボロ…

カホ「現実世界にはさやかちゃん一人で帰ってね」

カホ『フレアボール』🔥

さやか「!」

カホの放った火球は、真っ直ぐにさやかに向かって飛んでゆく。

《しかし、火球はさやかに当たる直前で左に逸れ、さやかには"当たらなかった"》

🔥ボーン!

カホ「あれ?」

さやか「……」シュッ

カホ「っ!『レプルス』!」

姿勢を直し突進してきたさやかを、カホは反発魔法で弾き返す。

さやか「きゃっ!」三ドサ!

カホ「今度こそ……!『ウォーターカッター』!」💧ビュシー!

体を真一文字に切り裂こうと、超高圧の水流がさやかに迫る。

《だか、水流は僅かに上に逸れて、さやかの頭上を掠めて行った》

💧ズバーン!

カホ「なんでぇ!?」


504 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:05:54 ???00
さやか「……花帆さんを連れ戻したいと思っているのは、わたしだけではありません」

さやか「部員全員、それに他校の方にも協力していただき、花帆さんへの対策を準備してきました」

カホ「むむむ……『ヴァリア』!」

カホ(あたしの魔法が当たらなくなってる!ここはいったん、何が起きてるのか冷静に見極めないと!)

さやか「はっ!」✊ブン

⚡️ビリビリ!

さやか「!?体が痺れて……!」⚡️

カホ「無駄だよ!さやかちゃんがあたしに触れて何かしようとしてることはわかってる!」

カホ「だったら、結界の中から一方的に攻撃しちゃうんだから!」


505 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:06:50 ???00
カホ「『フレアボール』『ウォーターカッター』『ワールウィンド』『サンダー』!」 🔥💧🌪⚡️

さやか「!それはずるいですよ!」

カホは結界に守られながら、多種多様な攻撃魔法をさやかに放つ。

絶え間なく迫ってくる魔法の数々に、さやかはカホから距離を取るも、避けきれずに攻撃を受けてしまう。

《と、思われたが、魔法はどれもさやかに当たる直前で四方に散り散りになり、どれ一つとしてさやかに直撃することはなかった》

🔥💧🌪⚡️ドカーン!

さやか「た……助かりました……」

カホ(やっぱり、不自然に攻撃が逸れてる!)

カホ(外からこの世界に来てるのはさやかちゃんひとりだけ。となると、外の世界の方で、誰かがさやかちゃんをアシストしてる……?)


506 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:09:40 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

泉「……」💻カタカタカタカタ!

セラス「がんばれ!がんばれ!い・ず・み♪すごいぞ!やれるぞ!い・ず・み♪」

泉「…………すまないセラス。少しだけ静かにしてもらえるかな?今とても集中しているんだ」💻カタカタカタカタ!

吟子「……瑠璃乃先輩、泉さんが何をしてるのかわかりますか?」コソコソ…

瑠璃乃「うん、一応は……花帆ちゃんがいる世界で起きる出来事や事象を、ああやって文章として"挿入"して、書き換えてるらしいよ」

瑠璃乃「仕組みについてはルリもさっぱりだけど……」

泉「あ……くっ!花帆先輩の攻撃が激しい!タイピングが間に合わない!」💻カタカタカタカタ!

姫芽「泉ちゃん交代して!アタシもタイピングの速度には自信がある!」

泉「ありがとう姫芽さん。頼んだよ」

姫芽「こっちもチート使ってるとはいえ、防戦一方じゃジリ貧になる!」

姫芽「だったら、むしろ攻めに転じるべし!」💻カタカタカタカタ!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


507 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:12:23 ???00
さやか「?」ピクッ

カホ『フレア──』

さやか「」三シュバッ!

カホ「速い!?」

《さやかは音を置き去りにするスピードで地面を駆け、相手の背後に滑り込む!》

さやか「おっと!」ズザー!

カホ「後ろ……!でも、結界があるから大丈夫──」

《さやかは渾身のグーパンで結界を突き破り、相手を結界の外に殴り飛ばした!》

さやか「はあーっ!!」✊ブン!

🔯パリン!

カホ「!?──ぐはっ!」ドーン!

さやか「くっ〜〜〜!」ズキズキ…

さやか(体が勝手に動いてる……泉さん──いえ、姫芽さんあたりに交代しましたね!)

さやか「普通の体なら、筋肉が断裂してますよ……!」ボソッ

カホ「急にやる気がすごいね、さやかちゃん……!」ムクッ

さやか「どうやらそのようですね!」ダッ

《さやかはまたも光のような速さで相手に向かって走り出した!》

さやか(だから速すぎですってば!)シュバババ!


508 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:14:26 ???00
カホ『フレアボール!!』🔥ボワッ

さやか「!!」

さやかの眼前に火球が迫り、視界を炎が覆い尽くす。

カホ「今度こそ!」

《しかーし!炎は爆発することなく、さやかのいた場所を素通りする!当然、そこにさやかの姿はない!》

カホ「消えた!?」

さやか「ぬ"ぅ"〜〜!!」ズザー!

カホ「っ!違う……下だ!」

《スライディングで限界まで姿勢を低くし、さやかは炎をやり過ごした!》

《前髪は頭上を通過した炎で少し焦げたが、そんなことはものともせずに、さやかは相手の懐に滑り込む!》

さやか「前髪が焦げる描写は必要でしたか!?」🔥ジュー

姫芽『いりまーーす!その方が熱いので!二重の意味で!』

さやか「やかましいですよ!!」


509 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:17:01 ???00
カホ「このっ!『ウォータ──』」

さやか「させません!」ゲシッ!

ポーン三

カホ「あ、杖が──」

さやかは低姿勢からカホの腕を蹴り上げ、握っていた杖を弾き飛ばす。

さやか「これで魔法は使えません!」

カホ「──ふん!」✊↓↓

さやか「!危ないっ……!」ゴロン!

✊ゴギャーン!

カホは蹴り上げられた手をきつく握ると、そのまま拳をさやかに向かって振り下ろす。

拳は間一髪で避けられたものの、拳を打ち付けた地面には大きなヒビが入っている。

さやか「っ……!花帆さんがフィジカルを活かした戦い方をするのは、なんだか新鮮ですね!」

カホ「さやかちゃんの方こそ、こっちに来てから間もないのに、随分人間離れした動きだね。流石はアスリートさんかな?」

さやか「無茶させられすぎて、身体中が痛いですけどね!」ズキズキ


510 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:22:10 ???00
さやか「ですが、魔法を使えないなら充分勝機はあります。花帆さん!ご覚悟を!」ダッ!

カホ「……」

カホ『レプルス』✋🔯バチバチ

さやか「!?──ぐはっ!」

カホは何も持たずに掌を前に突き出すと、魔法を発動してさやかを弾き返す。

さやか「っ……!」ズザー!ゴロゴロ…

さやか「ちょっと待ってください……杖がなくても魔法使えるんですか!?」

カホ「使えるよ。杖を持ってたのは──やっぱり魔法使いといえば杖だよなぁっていう、あたしのこだわりってだけ」

さやか「なんですかそれ!!」

泉『さやか先輩』

さやか「……泉さん?」

泉『花帆先輩には恐らく、スタミナの概念がない。戦闘が長引けば、それだけこちらが不利になるだろう』

泉『幸いこちらのチート行為はまだ解析できていないようだ。今のうちに一気に勝負を決めよう』

さやか「わかりました……!」

カホ「誰かと話してるの?スクールアイドルクラブの誰かかな?」

さやか「さあ、どうでしょうね?きっと花帆さんも驚くと思いますよ。早く会わせたいものです」

カホ「ふーん……」

カホ「少し気になるけど、別にどうでもいいや」✋スッ…


511 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:24:20 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

セラス「花ちゃんにどうでもいいって言われた!?」ツラタンフェルト!

泉「セラスのこととは言っていないだろう?」

吟子「花帆先輩は、私やスリーズブーケのことはどうでもいいの……?」シュン…

小鈴「そ、そんなことないよ!花帆先輩は吟子ちゃんのこと大切に思ってるはずだよ!?」

瑠璃乃「花帆ちゃん、やっぱり様子が変だ……どうしてそこまで帰ることを拒んでるんだろう?」

瑠璃乃「何か、帰れない理由があるとか……?」

姫芽「わかりませんが、どんな理由があろうと、かほせんぱいには帰ってきてもらわないと」

姫芽「──ところで、るりちゃんせんぱいの可愛いおててがアタシの両手を抑えてる件についてですが……」

瑠璃乃「ひめっちはさやかちゃんに無理させすぎたから休憩!」

姫芽「えぇ〜そんな〜〜」

泉「さて、姫芽さんが代わってくれたおかげで、私も少し休憩できた。ここで勝負を決めようか」💻カタカタカタ

💻ポチ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


512 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:27:06 ???00
🔥三ボッ

さやか「ふっ!」

先程までの無理な動きではなく、氷上を滑るような軽やかな動作で攻撃を避ける。

アスリートとしての一面を持つだけあり、身体を動かすイメージについては、さやかは常人の想像力を凌駕している。

結局のところ、どんなに優れた肉体を得ても、それを使いこなすイメージができなければ、一般人と大差ない動きしかできない。

そういう意味で、さやかは今の自分の肉体を最大限活かした動きを、明確にイメージできていた。

さやか「はっ!」ササッ

さやか「ほっ!」シュバッ

泉『さやか先輩、5秒後に"あれ"を発動させる。注意してくれ』

さやか「わかりました!」

カホ「また作戦会議?どんなことをしても、あたしの方がさやかちゃんより強いのは覆らないよ!」

カホ『フレアボール!』

🔥三ボッ


513 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:27:54 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『Code : ANTI VECTOR』

『実行』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


514 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:30:58 ???00
🔥ピタ…

ボッ三🔥

カホ「!?」

さやかに向けて放った火球が空中で動きを止め、直後カホに向かってとんぼ返りする。

カホ「うわっ!」🔥ボーン!

カホ「熱っ!なに?炎が跳ね返った?」

カホ「それなら……!『ワールウィンド』!」

🌪ブオーン

カホ「!!……きゃっ!」🌪ズザー!

続けて放った旋風魔法は、何故かさやかではなく、魔法を使ったカホの身体を吹き飛ばす。

カホ「魔法がおかしい……また現実世界からの干渉?」


515 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:32:21 ???00
カホ「でも、魔法を使わなくても、今のあたしなら……」ムクッ

カホ「──あれ?」バタン!

立ち上がり歩こうとしたカホは、体を襲う奇妙な感覚に地面にひっくり返る。

カホ(なにこれ?前に進もうとしたのに、体が勝手に後ろに行こうとして歩けない??)

カホ「う〜ん!う〜〜ん!」モゾモゾ

再び立ち上がろうとするが、今度はそれすらも上手くいかない。

カホはアスファルトの上のミミズの様に、地面の上でもがくことしかできなくなった。

カホ「体が思うように動かない……!」モゾモゾ


516 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:36:20 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

姫芽「『ANTI VECTOR』……訳してAブ──」

吟子「姫芽ストップ!」///

泉「さやか先輩を中心に、半径30m圏内の"あらゆるベクトルを反転する"プログラムを実行した」

泉「これで、放った魔法は自分に返ってくるし、前に進もうすれば体は後ろに行こうとする」

泉「常人なら仕組みを理解しても尚、体を自在に動かすのには苦労するだろう」

泉「もっとも、彼女はその限りではないようだけれどね」

小鈴「当然です!だってさやか先輩は常人じゃなくて──」

小鈴「"超人"ですから!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


517 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:38:37 ???00
さやか「……」タッタッタッ

カホ「っ!」

さやかはムーンウォークのような不格好な動きで、しかし確実にカホに近づいてくる。

アイススケートには『バックスケーティング』という後ろ向きに進む滑り方がある。

その体の動きをイメージし、足を後ろに蹴りながら、さやかは前に進んでいた。

さやか「はっ……はっ……」

さやか(少しでも気を抜くと転びそうになる……集中して、花帆さんの所まで!)

じわじわと距離を詰めてくるさやかに、カホは焦りを感じ始める。

さやか達の計画の全貌は知らないが、今までのさやかの行動から、執拗に自分に触れてこようとしていることはわかっていた。

カホ(このままじゃまずい……!なんとか、さやかちゃんを遠ざけないと!)


518 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:41:11 ???00
自身を取り巻く環境の変化を理解しないまま、混乱する頭で導き出した対応策は、しかしカホにとって最も悪手なものだった。

カホ『レプルス!』🔯

さやか「っ!」グイン→

『反発魔法』。本来なら対象を弾き飛ばす魔法だが、ベクトルが反転する今の状況において、その効果は逆に対象を"引き寄せる"ものへと変化する。

カホ「──え?」

さやか「掴まえました!!」ガシッ

さやかはカホの体に馬乗りになり、その両手足を押さえつける。

カホ「!!」

さやか「今です!泉さーーーん!!」


519 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:41:54 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

泉「流石だ……さやか先輩。100点満点の完璧な動きだよ」💻カタカタカタ

泉「ならばこちらも、期待に応えないとね」

💻ポチ


『Code : DESTROYER Ⅱ』

『実行』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


520 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:44:40 ???00
カホ「!?」⬜️ピコピコ…

二人の体を色とりどりの電子的な光が包み込む。

よく見ると、カホの体はジグソーパズルのピースが外れるように少しづつ分解され、虫食いの先には宇宙空間のような虚空が広がっていた。

『5』

カホ「体が分解されて──くっ!離して!」ジタバタ

カホは体を押さえつけている手を退けようとするが、押す力は引く力へと変換されるため、どんなに足掻いてもさやかを押し返すことができない。

『4』

さやか「もう観念してください!花帆さん!」

カホ「っ!」

『3』

さやか「帰りますよ。あなたが本来いるべき場所に!」

『2』

カホ「ダメ……!あたしがいなくなったら、この世界は……コズエちゃん達が──」

『1』


521 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 17:51:51 ???00
✨ピカーン!

カホ「あ──」

光は二人の体を完全に分解し、体からは解放されたカホ達の『意識』だけが、幽霊のように宙に放り出される。

〇 グオーン

カホ『す、吸い込まれる!?』

体が分解されると同時に、頭上の空間に『穴』が出現し、二人の意識を呑み込んでしまう。

その穴は、現実世界に戻るための帰り道。ここを通り抜ければ、二人の意識は現実世界の体へと戻ることになる。

さやか『花帆さん!』ギュッ

さやかは霊体になりながらも、はぐれてしまわないようカホをしっかりと掴んで、共に穴の中へと入っていく。

この瞬間をもって、本作戦は成功した。

【日野下花帆 救出作戦】完了!


522 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 21:45:52 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

吟子「成功……したの?」

泉「…………ああ、さやか先輩は5秒間しっかりと花帆先輩を拘束し、プログラムは正常に実行された」

泉「直に、二人共こちらで意識を取り戻すだろう……」

吟子「はぁ……よかった……」ホッ

姫芽「これで、やっとかほせんぱいを取り戻せたんですね〜」

瑠璃乃「うん。色々聞きたいことはあるけど、まずはゆっくり休んでもらわないとね」

瑠璃乃「一週間以上眠り続けてたんだから、きっと体力も落ちてるだろうし」

姫芽「ですね〜」

小鈴「泉ちゃんもさやか先輩もすごいよ!こんなわけもわからない状況なのに、一発で作戦を成功させるなんて!」

セラス「ふふん!どうです?うちの泉は!すごいでしょう?」

小鈴「うんうん!すごい!」


523 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 21:48:17 ???00
泉「…………」

吟子「泉さん?浮かない顔してるけど、どうしたの?」

泉「ああいや、何でもないよ」

泉「ただ、随分と"あっさり"成功してしまったなと思ってね……」

吟子「確かに、正直もう少し手間取るかと思ってた」

吟子「でも、この方がよかったんじゃない?本物の体じゃないとはいえ、先輩方には怪我をして欲しくないし」

泉「そうだね。多少予想外のことがあったとはいえ、さやか先輩は理想的な動きで花帆先輩を捕え、プログラムは実行された」

泉「さやか先輩だけじゃない。私も含め、姫芽さんや吟子さん達も、全員が満点の動きをしてくれたおかげだ」

吟子「うん。本当にみんなよく頑張ったと思う」


524 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 21:53:46 ???00
泉「長かった物語も幕を閉じ、これでいつも通りの日常が帰ってくるだろう」

泉(そう、完璧だ。作戦の結末としては、文句の言いようがないスマートなものだった。だが……)

泉(これでは些か──"つまらないな")

泉「ねえ吟子さん。私は今回、あなた達に協力する代わりに『私の願いを何でも一つ聞いもらう』と契約をしたね」

吟子「?ああ、うん……確かにそんな契約してたね……」

泉「約束通り、私は花帆先輩を助けるために尽力し、そしてあの世界から花帆先輩を連れ出すことに成功した……」

泉「だったらその契約……今ここで使わせてもらっても構わないね?」

吟子「え?」


[Ctrl]+[C]


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


525 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 21:55:56 ???00
ズン!

さやか『!?』

空間の穴を通っている途中、突然ものすごい力で下に引き寄せられる。

さやか『な、なんですか!?』

カホ『体が……さっき通った穴の方に引っ張られてる?』

さやか『っ!きゃーー!』↓↓

カホ『うわっーー!?』↓↓

あと少しで現実世界に戻れるというところで、二人の意識は虚空のトンネルを逆行し、カナザワの街に連れ戻された。

さやか「うぐっ!」⬜️ピコピコ

カホ「ぐぎゃあ!」⬜️ピコピコ

さやか「!!これは──消去したはずの体が……」

カホ「再生してる!!」

さやか「いったい何が……プログラムは正常に実行したんじゃないんですか!?」


526 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 21:59:13 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

吟子「な……なな、な──!」

吟子「何しとるんあんた!?」バン!

小鈴「うわっ!?吟子ちゃんどうしたの?」

瑠璃乃「え、何?トラブル?」

泉「……」

吟子「こ、このだら……!プログラムを途中で止めよったがいね!」💢

姫芽「はえ!?」

セラス「泉……?冗談だよね……」

泉「……いいや、本当だ。プログラムを強制終了した。二人はこちらに帰って来られない」

セラス「な、何考えてるの!?この作戦の中心は泉だったのに……その泉が裏切ったら全部パーじゃん!!!」

泉「裏切ったわけじゃないよ。元々の契約に従い、私の"願い"を叶えてもらうだけだ」

吟子「願いって……花帆先輩達をあの世界に閉じ込めることが、あんたの願いがけ!?」💢ガシッ!

泉「っ!」グイッ


527 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 22:03:22 ???00
瑠璃乃「ぎ、吟子ちゃん落ち着いて!」

小鈴「あわわわ……!いったん離れよう!?ね?」

吟子「うっさい!……どうなの?なんとか言いなよ!泉さん!」グググ!

泉「っ……別に、彼女達を閉じ込めたかったわけではないよ……」

泉「私はね、"情熱"を見たかったんだ」

吟子「は?情熱?何の話……?」

泉「ひとつの異世界を創り上げてしまう程の、凄まじい想像力を秘めた花帆先輩……」

泉「その花帆先輩を連れ戻すためなら、世界を壊すことも厭わないさやか先輩……」

泉「そんな二人が、魔法の世界でぶつかり合えば、さぞ美しい情熱の炎が見られる」

泉「──そう思っていたのに……結末はあまりにも淡白なものだった。ここまで続いた物語を締めるのに、これではとんだ駄作で終わってしまう」

泉「きっと今まで配信を見ていた視聴者も、この結末では満足しないんじゃないかな?」

吟子「何を言って──」

泉「だから、私の願いは『この物語を終わらせないこと』」

泉「二人にはもっと互いの感情を、肉体をぶつけ合い!血湧き肉躍る情熱の火花を散らして欲しい!」

泉「私の灰色の世界が真っ赤に染まるほどの、熱いパトスを見せて欲しいんだ!」


528 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 22:06:44 ???00
吟子「っ……!」ゾッ…

吟子「泉さん……おかしいんじゃないの……?」

泉「フフフ……さあ、ここからはEXTRA TIMEだ。蓮ノ空風に言うなら、With×MEETS AFTERの開ま──くっ!?」

✊💥バコン!

姫芽「セラスちゃん!?」

セラス「この……情熱バカ!悪魔!変・態!!」💢

セラス「バカバカバカバカバカ!」✊ポコポコポコ!

泉「ぐっ……!セラス、落ち着い……!う"ぐっ!?」

セラス「泉(バカ)はわたしが責任を持って抑えつけておきます!その間に、早くプログラムを再開させてください!」

瑠璃乃「ありがとう!セラスちゃん!」

泉「セ"ラ"ス"……頼む離してくれ……!呼吸……が……」グギギギ…

セラス「情熱バカは黙ってて!」

泉「ああ、黙るよ……というかもう、舌が、回ら……ない──」ガクン

セラス「あれ?泉が死んじゃった……まあいいや」ボト…

セラス「わたしの胸に抱かれて逝けるなんて幸福だね。泉」

泉「」チーン…


529 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 22:07:51 ???00
瑠璃乃「……!」💻カタカタカタ!

瑠璃乃「間に合って!」💻ポチ!


『Code : DESTROYER Ⅱ』

『実行』



『失敗』

瑠璃乃「!!」

瑠璃乃「も、もういっちょ!」💻ポチ!

『失敗』

瑠璃乃「っ!」

姫芽「ダメですか?るりちゃんせんぱい」

瑠璃乃「うん……プログラムが、拒絶されてる……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


530 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 22:10:32 ???00
さやか「……なるほど、状況はわかりました……」

さやか(やってくれましたね。泉さん!)

カホ「……」ムクッ

⏱カチ──

さやか(もう同じ手は使えない……残る手段は、花帆さんの体を壊して強制的にログアウトさせることだけ)

さやか「どうやらトラブルが起きてしまったようですが……花帆さんの実力は大体わかりました」

さやか「何度だって、また組み伏せてみせ……ます……?」

シ──ン……

さやか(あれ?こんなに静かだったけ?)

カホ「あたしの実力がわかった?何言ってるの?さやかちゃん」

さやか「!!」ゾクッ…


531 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/12(日) 22:14:32 ???00
カホ「さっきまでは、街のみんなに被害が出ないように力を抑えてただけ……」

カホ「でも、たった今街の人達や動植物達を、全員安全な場所に移した」

さやか「はっ!?」

さやか(そっか、この静けさは街から生き物の気配が消えたから──)

カホ「さやかちゃん達が、いっぱい準備をしてきたのはよくわかったよ。絶対に油断しちゃいけないことも」

カホ「だからあたしも、ここからはカナザワの住民のヒノシタカホじゃなくて──」

花帆「この世界の『管理者』として、全力で戦わしてもらうね!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【称号開示】

日野下花帆:『Administrator』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


532 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:03:10 ???00
ひとつ、確信があった。

あたしがこの世界から離れれば、カナザワも、ここに生きる人達も全員、消えてなくなってしまうと。

わかってる。これは現実じゃない。

夢みたいなものだ。幻みたいなものだ。

コズエちゃん達は、本物の梢センパイじゃない。

わかってる。


わかってるけど……

それでも、あたしにとってはもう──


533 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:06:00 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さやか「管理者……薄々勘づいていましたが、やはり花帆さんがこの世界を操っているんですね」

花帆「何もかもって訳じゃないけどね。ここに生きる人達は、みんな自由意志で行動してた。たまーに選択を強制したりはしたけど……」

花帆「それでも、あたしがやったことは精々、クエストとかのイベントの発生と、コズエちゃん達のキャラクターを生み出したことくらいだよ」

花帆「あたしが管理者としての力を使うことはほとんどなかったし、これからも使うつもりはない。もしも使うとするなら──」

花帆「この世界を脅かす、イレギュラーと戦う時だけ!」

さやか(来る!)グッ

花帆『止まれ』

⏱カチ

さやか「え?消え──」

✋トン

さやか「!後ろ!?」バッ

花帆『エクス レプルス』

さやか「!!!」グオン!


534 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:08:45 ???00
さやか(さっきまでとは威力が違う!)

さやかの体は強烈な反発力で弾き出され、壁や家を突き破りながら何十メートルも飛ばされてしまう。

さやか「がっ──あ"がっ──!」ベキベキ!

⏱カチ

花帆「ふっ!」パッ

さやか「!!」

花帆『フルリリース:インパクト!』✊💥

さやか「がはっ!?」

飛ばされた先に花帆が先回りして現れ、その拳でさやかを地面に叩き付けた。

地面には大きな亀裂が入り、衝撃で周りの建物の壁が崩れ落ちる。

さやか「ぐぶっ……!」

花帆「っ……!」ポタ…ポタ…

花帆『エリクサー』キラキラ

さやか「なる……ほど……」

さやか「流石は管理者……固有の魔法も使いこなせる訳ですか……」

花帆「この世界に存在する魔法は、全部あたしが考えたものだもん。使えて当然だよ」

さやか「そうですか……」


535 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:10:26 ???00
さやか(とはいえ、保存魔法の反動はしっかりと受けていた。無敵のように思えるけど、花帆さん自身この世界の"ルール"には縛られているんだ。それなら!)

さやか「はっ!」シュッ

花帆「!!」

さやか(不意打ちも有効なはず!意識を落として安全に──)

⏱カチ

花帆「……」パシッ

さやか「!」

完全に隙を突いた至近距離からの攻撃。

しかし、花帆の顎に当たるはずだった蹴りは、ぶつかる瞬間に片手で止められてしまった。

花帆『サンダー』⚡️

さやか「っ!あ"あ"あ"あ"!!」⚡️ビリビリ

花帆「えいっ!」ブン!

ドガッ!

さやか「う"っ……!」

花帆「不意打ちを狙っても無駄だよ。さやかちゃん」

さやか「っ……!」ボロ…

さやか(ツヅリさんの魔法が厄介すぎる!このままじゃ一方的に攻撃されてしまう)


536 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:12:58 ???00
さやか「泉さん!時間を止める魔法だけでも無効化できませんか?」

瑠璃乃『ごめんさやかちゃん!泉ちゃん今伸びちゃってて……ルリ達だけじゃ難しいことはよくわからない!』

さやか「くっ……肝心な時に……」

さやか「情熱が見たいとか言っていましたが、寝てて見逃したからもう一回なんて言ったら、流石に怒りますからね!」

花帆「さっきも呼んでたけど、泉ちゃんって……まさか瑞河の?」

さやか「そうですよ。泉さんだけではありません。セラスさんも、異常事態を察して蓮ノ空に駆けつけてくれました」

花帆「せっちゃんも!?」

さやか「みんな、花帆さんが帰ってくることを望んでいるんです」

さやか「わたし達だけではありません。きっとファンの皆さんも、花帆さんがまたステージで歌っている姿を見たいと思っているはずです!」

花帆「っ!」

さやか「……花帆さんにとって蓮ノ空での日々は、こちらの世界での生活に比べて、そんなにつまらないものだったんですか……?」

花帆「違う!!そんなことない!そんなことない……けど──」


537 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:16:55 ???00
花帆「向こうの世界は、あたしがいなくても問題なく進んでいく。でもこの世界は、あたしが消えたら無くなっちゃう!何も無かったことになっちゃう!」

花帆「だから、あたしはここに居続けなくちゃいけないの!!みんなが消えちゃわないように!」

さやか「この世界が消える?なるほど、それで……」

花帆『フルリリース──』✋スッ

さやか「!!」

花帆『サンダー:フレア:ワールウィンド!!』⚡️🔥🌪

雷炎を纏った竜巻がさやかを飲み込む。

赤い龍の様なそれは、暴風と炎で前方の建物を破壊し、天高く登って行った。

さやか「ッ"ッ"ッ"!!」🔥⚡️

花帆「この世界は、あたしが咲かせて、育てあげた花──この花を、誰にも摘ませたりしない!」

さやか「ゴホッ!ゴホッ……!」バタン

さやか「……その大切な世界を……花帆さん自身が、壊してるじゃないですか……」

花帆「本当はこんなことしたくないよ。でも、考えを改めたんだ。さやかちゃんと戦うなら、なりふり構っていられないって」

花帆「街の被害は、さやかちゃんを現実に送り返した後に、時間を巻き戻して修復する。それで元通り」


538 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:18:55 ???00
さやか「……まるで、神様ですね……」

花帆「そうだよ。あたしはこの世界にとっての本当の神様。そんなあたしに逆らうのがどういうことなのか、教えてあげる!」

花帆は片手を高く突き上げ、空に向かって膨大な魔力を放出する。

🔯ブーン…

さやか「空に……魔法陣?」

描く地面も無いはずの上空に、カナザワを覆うほどの巨大な魔法陣が展開される。

花帆『オメガ・グラヴィオン!』🔯バチバチ!

カタカタカタ……フワッ

さやか「!?体が浮いて──」

花帆「空に、落ちちゃえ!!」🔯

さやか「っ!きゃーーー!!」↑↑↑

上空に作られたもうひとつの重力圏。

それに引き寄せられ、さやかを含め、崩れた家やレンガなど、様々なものが空へ落ちていく。

さやか「っ〜〜!」パタパタ

さやか(ダメ……浮いてると姿勢が制御できない!)

見上げた地面は既に遥か遠く。
さやかはあっという間に魔法陣に引き寄せられ、上空1000mまで飛ばされてしまう。

さやか「っ!」

さやか(こ、怖い……!)ブルブル


539 : 名無しで叶える物語◆3wbJ7jxg★ :2025/10/14(火) 23:22:36 ???00
花帆「どう?さやかちゃん。空から見上げるカナザワの街は」↑ スー

さやか「花帆さん!」

花帆「本物の金沢と比べたらだいぶ違うけど、こっちも結構いい街だと思わない?」

花帆「あたしはこの街を守りたい。続けていきたい。その為なら何だってするよ」

さやか「…………花帆さんは、この街に相応しくありません」

さやか「花帆さんがいるべき場所は、本物の金沢です」

さやか「あなたがこの街にこだわっているせいで、帰るべき場所に戻れないのなら……」

さやか「わたしはこの世界を壊してでも、花帆さんを連れて帰ります!」

花帆「…………そっか」

花帆「じゃあ、お別れだね。さやかちゃん──『魔法陣解除』」

🔯フッ──

さやか「え?」フワッ…

さやか「きゃーーーー!!」↓↓↓

先程までさやかを引き寄せていた魔法陣が消え、空に浮いていたものが全て地上へ落下する。

さやか「誰かーーー!!」↓↓↓


540 : 名無しで叶える物語◆QZqs3RBq★ :2025/10/15(水) 01:21:02 ???00
保守
主人公がラスボスの展開か、
さやかたちは連れ戻すことは出来るのか、ハッピーエンドになるのか、続きが気になるねぃ


541 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:16:15 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【数分前】

姫芽「まずいですよぉ!さやかせんぱいが空に飛ばされちゃいました!」

小鈴「あわわわ……さやか先輩!」

吟子「こんなデタラメな力……勝てっこないよ……」

泉「やあ、お困りのようだね」ヒョコ

小鈴「うわぁ!びっくりした!」

吟子「泉さん……!」ギロッ

セラス「あ、泉起きたんだ。じゃあもう一回寝ててね」グググ!

泉「待つんだセラス!私が悪かったから、いきなり首を絞めないでくれ!」

瑠璃乃「止めて、セラスちゃん」

セラス「む……でも、泉のせいで花ちゃん達が……」

瑠璃乃「さっきので充分罰は受けたよ。それよりも、今は泉ちゃんの力が欲しい」

セラス「む〜〜〜」パッ

泉「ごほっ!ごほっ!……感謝するよ、瑠璃乃先輩」

瑠璃乃「ルリ達が喧嘩してる場合じゃないからね。それで泉ちゃん、お願いなんだけど──」

泉「さやか先輩を助けて欲しいのかな?」

瑠璃乃「うん」


542 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:17:21 ???00
吟子「待ってください!またこの人にパソコンを触らせるんですか!?何をするかわかりませんよ!?」

瑠璃乃「大丈夫だよ。多分、泉ちゃんは協力してくれる」

泉「ほう?なぜそう思うのかな」

瑠璃乃「泉ちゃんは二人がぶつかり合って生まれる情熱が見たかったんだよね?でも、今の状況はさっきの真逆……」

瑠璃乃「花帆ちゃんがさやかちゃんを圧倒してて、まるで勝負になってない。このままじゃ、直ぐにさやかちゃんだけこっちに送り返されちゃうよ?」

泉「……なるほど、私が望むものを見るためには、二人の力が拮抗している必要がある……だから私はさやか先輩を助けるしかないと」

泉「ふふふ……あなた達にとって邪魔なはずの、私の身勝手な願望。それを逆手に取って協力させようということか……面白い」

吟子「私は反対です!泉さんは信用できません!」

瑠璃乃「吟子ちゃんの言いたいこともわかるよ。でも、一回冷静になろう?」

瑠璃乃「そもそも泉ちゃんが協力してくれなかったら、ルリ達は花帆ちゃんを連れ戻すための糸口すら掴めなかった」

吟子「う……それは……」

瑠璃乃「これだけ協力してくれた時点で、ルリは泉ちゃんのことを信頼してる。吟子ちゃんも、もう一度泉ちゃんのこと信用してあげて欲しいな」

吟子「……まあ、瑠璃乃先輩がそこまで言うのなら……はい」

姫芽(流石るりちゃんせんぱい。やっぱり博愛の聖女だ〜♡)


543 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:18:46 ???00
泉「もっとも、協力するにしても今の状況はかなり悪い。まさか本気を出した花帆先輩の力がこれ程とはね……」

小鈴「どうにかできないの!?せめて、さやか先輩が自由に空を飛べるようにするとか!」

泉「空を飛ぶ……か。できなくはないけど、さやか先輩次第かな」

小鈴「え、できるの!?」

泉「前回、姫芽さんにステージ衣装を模した戦闘スーツを着てもらったね」

瑠璃乃「ファンファーレ!!!衣装のことかな?」

泉「そうだ。実を言うと、あれはスーツ自体が優れていたのではなく、あれを身に付けたことで姫芽さんの内なる力が引き出されていたんだ」

泉「"想像力"と言った方が正確かな」

姫芽「確かに、あの衣装を着ると胸の奥から『うおぉぉぉ!』って力が溢れ出てくるんだよね〜」

姫芽「それは魔法の世界じゃなくても、ステージに立ってる時からそうだったけど」

泉「そう。大切なのはそのイメージだ。身に付けた人の力を引き出す装備。スクールアイドルにとっては"衣装"と言えるだろうね」

セラス「つまり、さやか先輩が『これを着たら空も飛べるぞ〜!』って思えるような衣装が必要ってこと?」

泉「ああ」


544 : 名無しで叶える物語◆ZE7cHwvs★ :2025/10/16(木) 20:19:54 ???00
・・・まさかあの衣装か


545 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:21:09 ???00
吟子「そんな衣装あるかな……?さっきみたいに文章でサポートするのじゃダメなの?こう、カタカタカタ〜って」

泉「あれは一時しのぎでしかない。少なくともさやか先輩の自由意志で動くことはできないよ。そうなれば、たとえ空を飛べても花帆先輩のいい的だろうね」

吟子「う……」

瑠璃乃「!待って、うそうそ……ダメ!」

姫芽「どうしたんですか!」

瑠璃乃「さやかちゃんが落とされた!」

「「!!!」」

泉「いくら体が頑丈でも、この高さから落ちれば即死……現実世界に強制送還されるぞ!」

セラス「何かないんですか!DOLLCHESTRAの衣装じゃなくても、空を飛べそうなやつ!」

吟子「スクールアイドルが空を飛ぶ訳ないでしょ!そんなコンセプトで衣装を作ったことなんてないよ!演劇じゃあるまいし!」

小鈴「う〜ん…う〜〜ん!」

小鈴「空を飛べそうな衣装……魔法の世界…………演劇……?」

小鈴「ああ!!」

姫芽「小鈴ちゃん?」

小鈴「あれだぁーー!!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


546 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:23:16 ???00
ヒューン↓↓↓

さやか「っ〜〜〜!!」

さやかは既に、地上の様子がよく見える位置まで落下していた。

花帆が言っていたように、カナザワには人の姿がなく、ガランとした街はまるでジオラマのようだ。

さやか(どうしよう!どうしよう!わたしには衝撃を吸収する魔法なんてないし……)

さやか(五点接地──そんなのやったことないでしょう!)

さやか「あ、もうダメだ……」

コズエとメグミが落下した時と違い、さやかには魔法も無ければ、駆けつけてくれる仲間もいない。

絶体絶命の状況に、諦めかけたその時。

キラキラキラ!

さやか「へ?体が光って……」

花帆「!」

さやかの全身をピンク色の光が包み込む。そして──

服が、弾けた。

バリバリ!

さやか「!?」

さやか「きゃ〜〜〜///」

花帆「さやかちゃん!?何で裸に……///」


547 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:26:24 ???00
さやか「──っ!?」キラキラ

裸になったのもつかの間、光は次第に収縮し、服の形となってさやかの体にまとわりつく。

さやか「こ、これは……!」

ピカーン

キュルーン

サラサラ〜

ピンクを基調とした衣装。女の子らしいヒラヒラのスカート。高めに結び直されたツインテール。どことなくマイクに似た形のステッキ。

そう、彼女こそは──

さやか『キラリン煌めく!愛と優しさの魔法少女さやか!あなたの気持ちを、守ります!』キュルルーン

花帆「……」

さやか「……」

花帆「…………」

さやか「…………って」

さやか「何ですかこれは〜〜///」

花帆「知らないよ!?」

さやか「小鈴さーん!あなたですね!どうしてリズミックハートなんですか!」

小鈴『ごめんなさい!空を飛べそうな衣装がこれしか思い浮かばなくて!』

さやか「空を飛べそうって──あれ?」

さやか「そういえば、落下が止まった……それに、空中でも姿勢が安定してる?」


548 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 20:28:32 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

セラス「か、か……かっこ可愛い!!」

泉「くくっ……あははは!」

泉「なるほど、目には目を、歯には歯を……『魔法使いには魔法少女を』というわけか!」

小鈴「そ、そういうことだよ!泉ちゃん!」

吟子「いや、絶対そこまで考えてなかったでしょ……」

セラス「なんですかあの超絶キュートな衣装は!?あんなの着て踊ってたんですか!」

姫芽「あれはステージ衣装というか、演劇部に頼まれてやった魔法少女役の舞台衣装だね〜」

セラス「魔法少女!くっ……蓮ノ空はそんなイカしたことまでできるの?さすが100年続く伝統校……!」

瑠璃乃「何はともあれ、小鈴ちゃんのヒラメキは大当たりだったみたいだよ?」

小鈴「!さやか先輩が宙に浮いてます!」

吟子「浮いてるというか、空中に立ってる?」

姫芽「細かいことはいいんだよ〜少なくともこれで、かほせんぱいに負けない機動性を手に入れられたわけだし」

泉「機動性だけじゃない。魔法少女なら、当然使えるはずだ」

泉「攻撃魔法をね──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


549 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 22:08:14 ???00
さやか(小鈴さんの機転のおかげで、落下死は免れましたが──)

さやか(この世界の管理者は花帆さんです。果たして花帆さんは、魔法少女という存在を許すでしょうか……)

花帆「う〜〜〜ん……魔法少女かぁ……」

花帆「一応魔法だし……世界観的にはギリギリセーフ、なのかな?」

さやか(意外と甘かった……)

花帆「でも、空を飛べたからって状況が覆るわけじゃないからね!」

花帆『エクス フレアボール!』🔥

花帆の3倍の大きさはあろうかという火球が、さやかに向かって放たれる。

その熱は凄まじく、近づいてくるだけで皮膚が焼けるような感覚が襲いかかる。

さやか(避けないと!でも、どうやって動けば……!)

さやか「もう!何とかなれ!」バビューン!

さやかは地上を走る時のように、空中で足を横に蹴る。

するとさやかの足の裏から、ピンク色の魔力がジェット噴射のように溢れ、さやかの体を飛ばしてくれた。

🔥三スカッ

さやか「で、できた!なるほど、こうやって移動するんですね!」


550 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 22:10:44 ???00
花帆「むむむ……それなら、これでどうだ!」🔯

🔥三⚡️三💧三🌪三ブオン

さやか「手数で攻めるつもりですね……ですが!」

次々と飛んでくる魔法を、さやかは圧倒的な機動力で避け続ける。

踏ん張りの効かない空中で飛び回ることは、天使でさえも難しい。

それを可能にするのは、さやかの並外れた体幹と、いざと言う時の思い切りの良さだった。

さやか「だんだん慣れてきました!これならもっと速く飛べ──」

⏱カチ

花帆「速さなんて関係ないよ」パッ

さやか「!」

花帆『エクス レプルス』🔯

さやか「きゃっ!」三ビュン

突然後方に現れた花帆により、さやかは地上に無理やり落とされる。

さやかの体は斜め下に落下し、家の屋根を突き破って床に叩きつけられた。

さやか「うぐ……このっ!」ピュン↑↑

さやか(せっかく飛べるようになったけど、これじゃあ戦場が空中になっただけで何も変わってない!どうすれば……)


551 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 22:13:11 ???00
小鈴『さやか先輩!攻撃してください!魔法少女なら攻撃魔法が使えるはずです!』

さやか「攻撃魔法?そんなの知りませんよ!?」

瑠璃乃『何か適当にやってみて!』

さやか「適当って……ええい!これでどうだ!」ブン

さやかは右手に持っているステッキを、花帆に向かって振りかざす。しかし──

シーン…

花帆「?さやかちゃん何かした?」

さやか「何も出ないじゃないですか!」

セラス『そんなのじゃダメです!今のさやか先輩は魔法少女……もっと"キュート"で"プリティ"な感じにお願いします!』

さやか「キュートでプリティ……?本当にそれが必要なんですか?」

⚡️バリバリィ!

さやか「!危ない!」三ヒュン

さやか「くっ!どの道攻撃しないと状況は変わらない……やるしかありませんか!」


552 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 22:18:16 ???00
さやか(わたしは魔法少女、わたしは魔法少女、わたしは魔法少女──)

さやか「よし!」

花帆『エクス フレアボール!』🔥

さやか「すぅ──っ!」

さやか『胸の鼓動は愛のリズム♪寂しい気持ちは、わたしの歌で吹き飛んじゃえ!』キュルーン

さやか『リズミック♡ハートフルストライク!』ピカーン!

ステッキをマイク代わりにして、キュートな笑顔とプリティなポーズで口上を叫ぶ。

すると、さやかの目の前にハート型の魔法陣が現れ、前方に極太のビームが放たれた。

キラーン三三 🔥ボッ

ピンク色の光は火球を突き破り、そのまま花帆に向かって伸びてゆく。

花帆(フレアボールが押し負けた!?でも、時間を止めれば簡単に避けられる!)

花帆『止まれ!』

キラーン三三三

花帆「っ!時間が止まらない!?何で!さっきまで使えたのに──」

バキューン!

花帆「きゃーーー!!!」

光は花帆に直撃し、閃光と共に爆発する。

さやか「やった!できた!やりました!」


553 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 22:25:00 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

セラス「Foooooo!やっぱりJapanese魔法少女は最高だぜ!」

吟子「……セラスさんって、帰国子女だっけ?」

セラス「いえ、長野生まれ長野育ちの、純国産セラスです」

吟子「なんなん……」

瑠璃乃「いいよさやかちゃん!そのまま畳み掛けて!」

泉「ついでに朗報だ。時間魔法を無効化することに成功した」

さやか『それは本当ですか!?』

泉「ああ。意外と簡単だったよ。単に現実世界とそちらの世界をリアルタイム同期するだけでよかった」

泉「これで、さやか先輩が今いる世界で時間が止まったり、急に加速することもなくなった」


554 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/16(木) 22:29:41 ???00
姫芽「リアルタイムで同期するって──あの世界の中で起きてる現象を、そんなことで無効化できたの?」

泉「時間魔法は他の魔法と違って特別だったんだ。この魔法はシステムの中で発動するのではなく、システムそのものに干渉していた。だからこそ、介入する余地があったんだけどね」

泉「ゲームでも、プレイ中にゲーム画面を一時停止できる『ポーズ機能』があるだろう?時間魔法は、いわばゲームの中のキャラクターがポーズ機能を使える能力だったんだ」

小鈴「よくわからないけど……泉ちゃんすごいよ!」

吟子「基本優秀なのがなんかムカつく……」

泉(ん?ああ、なるほど……だから『原理魔法』か)

泉(原理魔法は、あの世界を構成するための魔法(システム)だったというわけだ)

姫芽「時間さえ止められなければ、さやかせんぱいにも勝機はありますよ!」

セラス「やっちゃえ!魔法少女さやか!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


555 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:20:24 ???00
花帆「痛ててて……」ボロ…

さやか「さあ、時間魔法はもう使えません!避けられるものなら避けてください!」

さやか『リズミック♡ハートキャッチアロー!』💘

花帆『レプルス!』三ビュン

さやか「本当に避けた!?」

花帆「スピードならあたしだって負けないんだから!」三ビュン

花帆「えいや!」ゲシッ!

さやか「うぐっ!」フラッ…

花帆『エクス サンダー!』⚡️

さやか「それはもう見切りました!」三クルッ

花帆『エクス ウォーターカッター!』💧

さやか「はっ!」三スカッ

花帆「くっ!やっぱりさやかちゃんも速い……!」

さやか「どうしましたか!攻撃がワンパターンになってきましたよ!」

さやか「花帆さん自慢の発想力も、とうとう底をつきましたか?」

花帆「むっ……そんなことないもん!さやかちゃんが想像もつかないこと、まだまだ沢山できるんだから!」


556 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:22:16 ???00
さやか「そうですか。でも、それを披露する機会は与えません!」

さやか『リズミック♡ハートフルストライク!』

花帆『ヴァリア!』🔯

さやか(結界魔法で防ぐつもりですね。それなら、結界を解いた瞬間に2発目……を……)

🔯ブーン

さやか「え?」

花帆の使った結界魔法は、花帆ではなくさやかの体を囲いこんだ。

半径3m程の光の球体の中で、さやかの攻撃魔法が放たれてしまう。

さやか「しまっ──」

💥ボーン!

密閉された空間で光は反射を繰り返し、自らが放った魔法によってさやかは大きなダメージを受けてしまった。

さやか「ぐはっ……!」

花帆「ふん!」三ビュン

花帆『エンジェルブロー!』✊ポムッ

さやか「!!」

花帆「あたしが使えるのは魔法だけじゃない。こんなこともできちゃうんだから!」🎺スッ

さやか「それは……天使のラッパ!?」


557 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:25:43 ???00
花帆「ねぇ、さやかちゃん。あたしね、八重咲ステージで『Now or Never』をやった時に思ったんだ」

花帆「ライブを彩ってくれるレーザー光線……これが本物のビームだったらって」

さやか「何を言って……」

花帆「もし本当にそうだったら、さやかちゃんは避けられるかな?」

さやか「……はっ!吹かせません!」三ビュン

花帆「すぅ……」🎺

🎺プォ────────────ン


✨ピカーン!

さやか「危ない!?」三スカッ

✨✨✨✨キラキラキラ…

さやか「っ!冗談ですよね……!」

花帆「さやかちゃんの方こそ、避けられるものなら避けてみなよ!」

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

さやか「このっ……!」三ビューン!

雲の隙間から、虹色の光線が雨のように降り注ぐ。

遠目から見れば、それはさながらライブステージのように美しく──

しかしライブと異なる点は、1本1本が当たれば肉を焼き切る断罪の光であることと、その全てがさやか1人に向かって放たれていることだった。


558 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:29:13 ???00
✨✨✨✨キラキラキラ!

さやか「っ〜〜!」三ビュン!

さやか(光は直線にしか進まない!移動し続ければ避けられるはず!)

さやか「はあっ!」三三ビュン!

光は正確にさやかを狙って放たれる。だか、正確すぎるが故に高速で飛び回るさやかを捕捉できない。

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

さやか「いつまで降ってくるんですかこれ!」

飛んでいるさやかの後ろをピッタリと追うように、光の柱は際限なく放たれ、さやかは飛行を止めることができなくなった。

さやか(くっ……少しでも速度を落としたら追い付かれる!そうだ、いっそこのまま花帆さんにぶつかりに行って──)

花帆『リフトウォール!』🔯


──ゴゴゴゴ…!

さやか「?下の方から音が──」

ズガーン↑↑↑

さやか「!?!?」

突然、目の前に幅10m程の壁が出現し、さやかは飛んでいる勢いのままその壁に激突してしまう。

さやか「痛い!」ゴツン💥

その側面は壁と言うより崖の岩肌のようで、どうやら地面から上空まで迫り上がって来たようだった。


559 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:31:54 ???00
さやか(壁!?地上から伸びてきたようですが、これはいったい……)

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

さやか「っ!考えてる暇はない!」三タン!

さやかは壁を蹴ると同時に足の裏から魔力を放出し、その場から離脱する。

天からの光はすぐにさやかのいた場所を照らし、光線が直撃した壁は真っ黒に焦げているのが確認できた。

ズガーン↑↑ ズガーン↑↑ ズガーン↑↑

さやか「また壁が……!」三ビュン

壁はいくつも出現し、さやかの進行方向を塞いでくる。

その度にさやかはほぼ直角に曲がり、ギリギリのところで衝突を回避する。

✨ピカーン!

さやか「っ……!」🔥ジュッ

だが、方向転換する度に一瞬速度が落ち、今まで避けられていた光線がさやかの足を掠めた。

さやか「なんなんですかこの壁は!こんな魔法無かったですよね!?」

花帆「あったもん!アンケートで選ばれなかっただけで、ちゃんと設定は考えてたんだから!」

花帆「使わないのはもったいないし、さやかちゃんには特別に見せてあげるよ!」

さやか「その特別は嬉しくありません!!」


560 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:35:32 ???00
花帆「さやかちゃんが悪いんだよ!攻撃がワンパターンとか言って煽ってくるから!」

花帆「だったらあたしも、今まで出てきた魔法を全部使っちゃうんだから!」

さやか「……少し安心しました。変なところで意地っ張りなのは変わってませんね!」

花帆「うるさい!」🔯

ズガーン↑↑

さやか「はっ!」三タン

✨🔥ジュッ!

さやか「熱っ……いちいち壁を避けてたら、その内に追い付かれる……だったら!」

さやか「壁は──壊すものですよね!小鈴さん!」

さやか『リズミック♡ハートフルチェストー!』✊

バコーン!

さやかは目の前の壁を避けるのではなく、勢いそのままに殴りかかる。

魔力のこもった拳は壁を破壊し、さやかは速度を落とさないまま壁を貫通した。

セラス『全然プリティじゃない!それじゃあ魔法少女じゃなくてドラゴンボールですよ!』

泉『なるほど、"村"悟空か……ふふふっ』

吟子『……泉さん何言ってるの?』

姫芽『まあまあ、初代プリキュアも武闘派だったみたいだしね?』

セラス『しかも、さっきからしれっと攻撃前の口上を省略してるし……それは第8話くらいの終盤から許される所業ですよね!?』

さやか「気が散るので黙っててください!!」三ビュン

小鈴『あわわ!ごめんなさい!えーと、ミュートボタンは……多分これ!』ポチッ

泉『!?小鈴さん!そのボタンは──』

ブチッ


561 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:42:34 ???00
さやか(何か不穏な声が聞こえた気がしますが……今は気にしている暇はありません!)

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

さやか(逃げ続けていてもキリがない!だったら姫芽さんが言っていたように、こちらから攻める!)

さやか「はあーー!!」💕三ビューン!

さやかは全身を魔力の膜で覆い、立ちはだかる壁を貫通しながら速度を上げていく。

もはや降り注ぐ光すらさやかのスピードに付いていけず、その姿はさながら"流れ星"だった。

花帆「さやかちゃん、どんどんスピードを上げてる?いったい何をするつもり……」

花帆「──って、こっちに飛んできた!?」

さやか(この世界のコスズさんの技をお借りしましょう)

さやか『リズミック♡シューティングスター!』💕💫

空間が歪んで見えるほどの速度で、さやかは花帆に向かって直進する。

花帆は咄嗟に防壁魔法を発動するが、壁が迫り上がる速度よりもさやかが近づいてくる速度の方が圧倒的に速かった。

花帆(もう避けられない!でも、避けられなくても、あたしにはこの魔法がある!)

花帆『保存!』🔯

さやか「!!」💭ポフッ

さやかの体がぶつかる直前、花帆は保存魔法を発動し、激突の衝撃を全て吸収する。

あれ程のスピードで飛んでいたにもかかわらず、花帆の胸に飛び込んだ瞬間、さやかの動きはピタリと止まってしまった。


562 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:44:38 ???00
花帆「掴まえたよ!」

さやか「──そうくると思っていました。はっ!」クルン↺

花帆「え?」↺

さやかは花帆の胸ぐらを掴むと、空中で体をひねり、花帆を自分の上に移動させる。

花帆「何を──」

✨✨✨キラキラキラ…

花帆「あっ!?」

動きを止めたことで、天からの光はここぞとばかりに一斉にさやかに向かって降り注ぐ。

花帆「まさか、最初からあたしを盾にするつもりで──さやかちゃんの薄情者!!」

さやか「こんな攻撃してきた花帆さんに言われたくありません!!」

✨ピカーン!✨ピカーン!✨ピカーン!

花帆「っ!ほ、保存!」🔯

花帆は再び保存魔法を使い、自身の背に浴びせかけられる光を吸収する。

さやかはそんな花帆の陰に隠れながら、何とか光線をやり過ごした。

さやか「いい判断力でしたよ。花帆さん。危うく2人揃ってステーキになるところでした」

花帆「む〜〜!」💢

花帆「さやかちゃん忘れてないかな?保存魔法は吸収するだけじゃなくて、放出もできるって」

花帆「この至近距離で避けられる?」

さやか「ええ、ちゃんと覚えてますとも。放出するタイミングでは、吸収は使えないことも!」

さやか『リズミック──』キラキラ


563 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:48:37 ???00
花帆『シンク』🔯

さやか「かっ──!?」

さやか(い、息が──詠唱ができない!)

花帆『ストーンスキン!』

さやか「!」カチン

さやか(体が動かない?確かこれは、皮膚を硬化させる防御魔法だったはず……他人にもかけられるんですか!?)

花帆「あたしに近づくってことはこういうことだよ、さやかちゃん」

花帆「魔法は何も、攻撃魔法だけじゃない。これで絶対に外さないよ!」

花帆『フルリリース:ジャジメント!』✨ピカーーン!

さやか「ッッッ!!!」🔥

束ねられた光線が、さやかの全身を包み込む。

幸か不幸か、硬化魔法をかけられていたおかげで肉体が灰になることはなかったが、光の熱はさやかの全身の細胞をくまなく破壊してゆく。

さやか「っ……!」🔥

ガシッ!

花帆「えーい!」ブン!

さやか「がはっ……!」ドガッ!

今度は花帆がさやかの胸ぐらを掴み、そびえ立つ壁に投げつける。

さやか「ぅ…ぅぅ……」ボロボロ…

さやか「花帆……さん……」

花帆「チェックメイトだよ。さやかちゃん」

花帆『スリーパス』🔯

さやか「ぁ──」

さやか「」ガクン

花帆の使った睡眠魔法により、さやかは壁にめり込んだまま深い眠りへと落ちていった。


564 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/18(土) 21:53:11 ???00
花帆「……これで、苦しい思いをせずに送り返せる……はず」

花帆「ごめんね、さやかちゃん。あたしは、あたしが生み出したこの世界に責任を持たなくちゃいけないんだ……」

花帆「大丈夫。みんなのことも、こっちから応援してるから」✋スッ

花帆はさやかに向けて手を突き出し、特大の攻撃魔法を放とうとする。

その時──


バッキュン!!


花帆「!?」

花帆(この気配は……まさか!)

三ヒューン!

💥💥💥💥ドーン!

花帆「きゃっ!!」

膨大な魔力で編まれた魔弾が、花帆たちの近くの壁に当たり、爆発する。

宙に浮いていた花帆は、爆風に煽られてその場から吹き飛ばされてしまった。

花帆「魔弾!?しかもこれは……『AHB』!」

花帆「いったい、誰が──」



【王国軍 特殊兵器研究所】

???「──試合終了にはまだ早いですよ。かほせんぱい」

姫芽「安養寺姫芽!こちらの世界に再び参上!」

姫芽「対戦!よろしくお願いしまーーす!!!」


565 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:39:07 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さやか『気が散るので黙っててください!!』

小鈴「あわわ!ごめんなさい!えーと、ミュートボタンは……多分これ!」ポチッ

泉「!?小鈴さん!そのボタンは──」

小鈴「え?」

💻ピカーン!

姫芽「まぶしっ!」

姫芽「──あ、あれ……?」フラッ

瑠璃乃「ひめっち!」ガシッ

姫芽「ごめんなさい……急に眠くなってきて……」

吟子「これって、前にも見た気がする。もしかして──」

泉「さっき小鈴さんが押したのは、向こうの世界への転送ボタンだ」

小鈴「えぇーー!?」

泉「ショートカットキーを設定していたのが裏目に出てしまったね……」

セラス「何でショートカットを設定したの!?」


566 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:42:31 ???00
姫芽「う〜……」フラフラ…

瑠璃乃「ひめっち、取り敢えずソファーに横になって」

姫芽「ありがとうございます〜……」

吟子「そっか、姫芽はまだあっちの世界に行くためのアカウント(?)あるんだっけ」

泉「ああ、だが向こうに行ったところで、今の花帆先輩を相手にできることはないと思うけどね」

姫芽「泉ちゃん……それなら、送って欲しいところがあるんだけど……」

泉「座標さえわかれば好きな場所に送れるよ。カナザワのどこかかな?」

姫芽「ううん……カナザワじゃなくて、『ナガノ』」

泉「ナガノ?……なるほど、理解した。やってみるよ」💻カタカタカタ

姫芽「ありがとう……」

瑠璃乃「ひめっち、あんまり危ないことはしないでね……」

姫芽「えへへ……ありがとうございます。るりちゃんせんぱい」

姫芽「でも、今は心配よりも激励が欲しいかな〜なんて……」

瑠璃乃「…………」

スッ──

姫芽「へ?るりちゃんせんぱい、顔が近い……///」

瑠璃乃「──頑張ってね、『姫芽』」コソッ

姫芽「コヒュッ!?」

姫芽「──」😇チーン

泉「どうやら行ったようだね」

吟子「……"逝った"の間違いじゃない?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


567 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:43:52 ???00
【王国軍 特殊兵器研究所】

姫芽「……」✨キラキラ

姫芽「──はっ!?い、今のは夢?それとも現実?」

姫芽「意識が朦朧としてたし、アタシの潜在的願望が作り出した幻聴という可能性も……」ブツブツ

瑠璃乃『ひめっち!周りを見て!』

姫芽「!」

研究員1「なんだお前!どっから出てきた!」

研究員2「見慣れない鎧だ……まさか、敵国のスパイ!?」

研究員3「早く研究所を封鎖しろ!!」

姫芽「……」🔫スチャ

💥💥💥🔫バン!バン!バン!

研究員「うわぁぁぁ!」⚡️ビリビリ

バタバタバタ……!

姫芽「制圧完了」

姫芽(あの一瞬で意図を汲み取って、装備まで付けてくれるなんてね。さすがは泉ちゃん)

泉『姫芽さん、お目当てのモノはその通路の先だ』

姫芽「ありがとう!いずみん!」

泉『いずみん?』


568 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:46:40 ???00
姫芽「おりゃーー!突撃ー!」🚪ガチャン!

💥💥💥🔫バン!バン!バン!

「ぎゃあぁぁぁ!」⚡️ビリビリ

姫芽「さてさて、ここが『AHB(Angel Heart Breaker)』の制御室ですか……」

姫芽「最強兵器を掌握しちゃいますよ〜」

吟子『大丈夫?そういう軍の兵器って、素人に扱えるとは思えないんだけど……』

姫芽「まあまあ、なんとかなるって〜」

姫芽「!?これは……」

吟子『ほら、どうせボタンが多すぎてわからないとか言うん──』

姫芽「なんてユーザビリティに溢れた作り!タッチパネル操作でめちゃくちゃわかりやすい!」

吟子『嘘でしょ!?』

姫芽「ボタンなんて『装填』と『発射』って書かれた2つしかないし……」

姫芽「伏線とか何もなしに出てきたから、全体的に『作り込まれてない感』がすごい……!」

セラス『急にそういう兵器が出てくると、最終回だけ無駄に壮大にしようとするロボットアニメ感がありますよね』

小鈴『神様するのも大変なんだね』


569 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:49:13 ???00
泉『ちなみに今姫芽さんがいる場所だけれど、座標的には実際の長野と金沢ほどは離れていないようだ』

泉『どうやらこの世界、カナザワを中心に作られていて、それほど広くない範囲までしか存在しないらしい』

姫芽「なるほどね〜さすがのかほせんぱいも、世界の全部を作れるほどの想像力はなかったわけだ」ポチポチ

姫芽「よし、これでAHBを使えるはず──」

⚠️ブブー!

『パスワードを入力してください』

姫芽「あれ?パスワード?」

吟子『やっぱり、そう簡単に使わせてはくれないよ』

姫芽「ぐぬぬ……!いや、こんなところだけこだわってるはずかない!」

姫芽「えぇーい!適当に数字を入力だー!」ポチポチ

『0522』

〇ピンポーン!

『ロックを解除します』

姫芽「よっしゃあ!!」

吟子『開いた!?』

セラス『花ちゃん、パスワードに自分の誕生日使っちゃうタイプなんだ……』

瑠璃乃『あはは……』


570 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:52:40 ???00
姫芽「え〜と、これをこうして……」ポチポチ

小鈴『姫芽ちゃん何やってるの?』

姫芽「この兵器の登録名を変更してるんだよ〜」

吟子『そんなのどうでもいいでしょ!ロック解除できたなら早くさやか先輩をサポートしなよ!』

姫芽「ダメだよぉ!吟子ちゃん!」

姫芽「『天使(めぐちゃん)を撃ち砕く』なんて名前、ひとりのめぐ党として絶対に看過できない!!」ポチポチ

小鈴『こんな時でもみらぱ愛がすごい!?』

吟子『何やってんだか……』

姫芽「よし!再登録完了!」

姫芽「『Angel Heart Breaker』改め、『めぐるりファンファーレ砲』!!」

瑠璃乃『いやそこはAnyoji Himeナンタラじゃないんかーーい!!』

姫芽「あとは照準をカナザワの方に向けてっと……見えた!かほせんぱいだ!」

姫芽「──って、あれ?さやかせんぱい負けてない!?」

泉『どうやら形勢はまたしても花帆先輩が有利になってしまったようだね』


571 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:56:03 ???00
小鈴『姫芽ちゃん!その砲撃の威力だと、花帆先輩に当てたらさやか先輩も巻き込まれちゃうよ!』

姫芽「…………」

姫芽「OK、"見えた"よ」

姫芽「装填魔力を最大値の30%までに設定、照準を花帆先輩の横の柱に合わせる……」ポチポチ

🔯キュイーーーーン……

姫芽「『めぐるりファンファーレ砲』発射まで、3、2、1──」

姫芽「イグニッション!」

三💥バッキュン!

魔弾は遠くカナザワに向かって放たれ、姫芽の狙い通りに花帆の近くにそびえ立つ壁に着弾する。

花帆「きゃっ!!」

爆発の衝撃波は花帆の体を吹き飛ばしたが、さやかはめり込んだ柱が文字通り壁となり、暴風から守られた。

泉『見事な狙撃だ……爆発後の周りへの影響まで考えるとはね』

姫芽「アタシがFPSの元学生チャンプだってこと、忘れてもらっちゃ困るぜ〜」

姫芽「さてと、魔力を再装填っと……」


572 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 21:59:27 ???00
花帆「ゴホッゴホッ!」

花帆「魔弾……いったい、誰が?」

姫芽『あーあー聞こえますか?』

花帆「この声──姫芽ちゃん!?」

姫芽『試合終了にはまだ早いですよ。かほせんぱい』

姫芽『安養寺姫芽!こちらの世界に再び参上!』

姫芽『対戦!よろしくお願いしまーーす!!!』ポチッ

三💥バッキュン!

花帆「!!」

魔弾は再び放たれ、音速で花帆に向かって飛んでゆく。

花帆「これだけ距離が空いてれば、どんなに速くても避けられる!」

花帆「ほっ!」三スカッ

💥💥💥ドーン!

花帆「!!きゃーー!」ピューン!

花帆は魔弾を間一髪避けたが、後ろの柱に着弾したことで、またしても爆発の衝撃波に巻き込まれてしまう。

姫芽「かほせんぱいを狙っても避けられることくらいわかってるんですよ」

姫芽「それなら、絶対に避けない周りのオブジェクトに当てる!」

姫芽(あくまでアタシの狙いは、さやかせんぱいが起きるまでの時間稼ぎ)

姫芽(この騒ぎで早く目を覚ましてくださいよ!)


573 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:03:42 ???00
姫芽「うおりゃあーー!!」ポチッ

三💥バッキュン!

花帆「っ……!」ガシッ

花帆は崩れた柱の破片を手に取り、手のひらサイズの石に魔力を込める。

花帆『フローティア+ジャイアサイズ』(())ムクムク…

花帆『スパイラー』🌀ギュイーン!

花帆『エクス レプルス!』ビュン三

三三 三三

💥💥💥💥ドーン!

姫芽「砲撃に直接当ててきましたか。やりますね〜」

姫芽「でも、そう何回も上手くいくとは思わないで──」

💭モクモク…………ビュン!三三

姫芽「!?」

爆煙を突き破り、高速で回転する巨岩が姫芽に向かって飛んでくる。

姫芽(押し負けた……?いや違う!2発目を飛ばしたんだ!)

姫芽「クッソー!間に合えー!!」ポチポチ!

🔯キュイーーーーン

姫芽「発し──」

ガコーン!

姫芽「どわあぁぁ!?」ガタン!

瑠璃乃『ひめっち!!!』


574 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:07:00 ???00
花帆「んー…………」ジー

花帆「少し右にズレたかな?」


姫芽「痛ててて……だ、大丈夫です。直撃はしてません……」

泉『動けるなら早く砲撃の準備をした方がいい。花帆先輩が次の攻撃を仕掛けてくるよ』

姫芽「!」

花帆「いけ!!」🔯バチバチ!

ビュン三 三 三 三 三

花帆はさらに5発の巨岩を用意し、同時に姫芽に向かって投擲する。

それに対して魔弾砲は1発ずつしか撃てず、しかも一度撃てば再度撃つまでにクールタイムを要する。

姫芽「このっ……!」

姫芽(全部を同時に撃ち落とすのは無理!やるとしたら、最初の1発を当てた衝撃で、他の岩の軌道をずらすしか……)

姫芽(悩んでる時間はない!どれに当てるのが最も効果的か、一瞬で判断しないと!)

姫芽「ふぅ──」

姫芽はスコープを覗きながら極限まで集中力を高める。

ゲームで自分以外のチームメンバーが全員やられてしまった時でさえ、これほどの集中力を発揮したことはない。

高速で飛んでくる岩も、今の姫芽にはスローモーションに見えていた。


575 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:09:30 ???00
姫芽「────ここだ!」ポチッ

三💥バッキュン!

三 三 三 三💥💥ドーン!

爆発は狙い通りの位置に当たり、周りの岩の起動をずらす。だが──

三ガコン!ガコン!

姫芽「っ!」

直撃は避けられたとはいえ、岩は研究所を襲撃し、建物は大きな被害を受ける。

⚠️ブー!ブー!ブー!

姫芽「え、なに……?」

『設備の破損を確認しました。『めぐるりファンファーレ砲』を一時的にロックします』

姫芽「やーめーてー!ロックしないでー!」

姫芽「えーと!えーと!ロックの解除方法は──」ポチポチ

瑠璃乃『ひめっち逃げて!もう間に合わない!』

姫芽「でも!まださやかせんぱいが起きてない!」

吟子『充分時間は稼いだよ!早くそこから離れて!』


576 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:18:13 ???00
姫芽「ぐっ……!まだ、時間を稼ぐ手段はある!」


花帆「……」🌀ギュイーン!

花帆「今のは同時に飛ばしたせいで爆発に巻き込まれたから、やっぱりタイミングをずらす方がいいのかな?」

姫芽『かほせんぱーい!!』

花帆「!姫芽ちゃん……」

姫芽『いいんですか!このままアタシやさやかせんぱいを送り返して!』

姫芽『もしかしたら、もう一生会えないかもしれませんよー!』

花帆「……」

姫芽『さやかせんぱいは!まだかほせんぱいに伝えてない思いもあります!それを聞かないままで、本当にいいんですかー!』

花帆「…………聞いたらなおさら、辛くなるだけだもん」

姫芽『このままかほせんぱいを連れ戻せなかったら、アタシ達もずっと後悔したまま生きることになっちゃいます!』

姫芽『吟子ちゃんのことだって!ユニットの後輩一人残していなくなって、罪悪感とかないんですか!』

花帆「……吟子ちゃんはしっかりしてるし、あたしがいなくてもきっと新入部員が入ってくれるよ……」

姫芽「っ!そういうことじゃなくて……!」

姫芽『吟子ちゃんが寂しがるだろって言ってるんだーー!!!』

花帆「!」ビクッ

姫芽『置いていかれる側の気持ちも考えろ!吟子ちゃんが今、どんな思いでかほせんぱいの帰りを待ってると思ってんだ!!』

吟子『姫芽……』

花帆「置いてかれた側の気持ち……そんなの、よく知ってるよ!!」

姫芽『だったら!どうしてその辛さを知ってるかほせんぱいが!吟子ちゃんに同じことをするんですか!』

花帆「うぐ……」


577 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:22:22 ???00
ピー!ピー!

『ロックが解除されました』

姫芽「よしっ!時間稼ぎ終了!」ポチポチ…

🔯キュイーーーーン

花帆「!そういうことね……!」

花帆『エクス レプルス!』三

姫芽「多分これで、撃てるのは最後……だったら!保身を考える必要はない!」

姫芽「いっけぇぇぇぇ!!!」ポチッ

三💥バッキュン!

岩と魔弾はまたしても直線上に向かい合い、その距離を縮めていく。

三三 三三

花帆(撃ち落とされることはわかってる。だからこうして、2個目はまだあたしの近くに置いて──)

三三 スカッ 三三

花帆「え?」

花帆(外した?──ううん、違う!)

姫芽「アタシの狙いは……かほせんぱいの横に浮いてる2発目!」

花帆「まさか、最初から相打ちを狙って!?」

姫芽「これは吟子ちゃんの心を傷付けた分だ!せいぜいよく噛み締めろ!!」

花帆「っ!『保ぞ──」

💥💥💥💥ドーン!!

花帆「ぐあ"っ"──」💥


578 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:27:29 ???00
ヒューン三三

吟子『姫芽逃げて!』

姫芽「さすがにもう間に合わないよ」

姫芽「はぁ……最期くらい誇り高く散るかぁ……」

姫芽「すぅ──」

姫芽「めぐるりバンザイ!るりめぐバンザイ!」🙌

姫芽「みらくらぱーく!バンザァァァァァイ!!!!」

ガコン


💥💥💥💥💥💥💥💥ドカーン!


瑠璃乃「ひめっちーーーーー!!」

セラス「なんと、気高き最期……このセラス、胸を強く打たれました……」💧ホロリ

泉「先の大戦で散っていった兵士達にも劣らない、勇ましい姿だったよ……」

小鈴「うぅ…姫芽ちゃん……かっこよかったよぅ……」💧シクシク


579 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:32:00 ???00
吟子「え、みんなそういう感じなの?私は最後ので完全に感動が吹き飛んだんだけど……」

泉「さて」

吟子「『さて』とか言っちゃった……」

泉「どうやら、そんな姫芽さんの頑張りは無駄ではなかったようだ」

泉「彼女はしっかりと、役目を果たしてくれたよ」

小鈴「!それってもしかして!」

泉「ああ、さやか先輩が意識を取り戻した」

小鈴「やったー!」

吟子「花帆先輩は!?」

泉「残念ながら、と言うべきかな?まだ健在だよ」

セラス「それでも、ノーダメージってわけじゃないんでしょ?だったら、あとはさやか先輩がケリをつけてくれるはず!」

泉「そう願うしかないね──ん?」

泉(おかしいな……さやか先輩の情報が見られなくなっている)

泉(誰かがアカウントをロックした?)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


580 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:35:23 ???00
花帆「げほっ!げほっ!」

花帆「やられた……防御が間に合わなかった……」

花帆『エリクサー』キラキラ

花帆(傷は治せたけど、内側のダメージが大きい……できればもう戦いたくない)

さやか「……ん……んん……」モゾモゾ

さやか「……」👀パチッ

花帆「はっ!さやかちゃんが起きちゃった!」

花帆(また暴れられたら困る……意識がハッキリしないうちに!)

花帆『フルリリース──』✋


/ スパン!


花帆「────え?」

花帆「あ……あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」ブシャーー!

花帆「手が……!あたしの手がぁ!!」

突き出した右腕を切り落とされ、花帆はあまりの痛みに回復も忘れて絶叫する。

これまでさやかと激闘を繰り広げてきた花帆だが、身体の欠損を伴うほどの大きなダメージを負ったのは、これが初めてだった。


581 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/21(火) 22:44:18 ???00
花帆(そうだ、回復……回復しないと……!)

花帆『エリクサー!!』

一際強い光とともに、切断された腕はみるみると再生する。

だが──

スパ! スパ! スパ! スパ!

花帆「う"ぐっ"……!」

腕が治りきるよりも早く、さらに4回の斬撃が花帆の体を切り刻む。

花帆「っ"──っ"──」ボタボタ

それは、花帆が唯一使えない魔法。

その者は、この世界でただ一人、花帆の管理下から逃れた存在。

シナリオから外れた、完全なるイレギュラー。

花帆「まさか……"サヤカ"ちゃん……なの?」

???「…………」ニヤッ

サヤカ「お久しぶりですね。カホさん」

花帆「どうして……消えたんじゃなかったの……?」

サヤカ「オリジナルのわたしを眠らせてくれてありがとうございます。おかげでこうして、また表に出ることが叶いました」

花帆「!」

サヤカ「さあ──」

サヤカ「"神殺し"といきましょうか」

最凶(バグ)が、全ての歯車を狂わせる──

サヤカ「ふふっ」ニコッ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


582 : 名無しで叶える物語◆busHZEYz★ :2025/10/22(水) 04:00:07 ???00
怖いのきた……


583 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 22:47:32 ???00
ーーーーーーーーーーーー

さやか『────はっ!』

さやか『ここは……?真っ暗で、何もない……』

さやか『どうしてこんなところに……そうだ!花帆さんと戦って、壁に投げつけられて──』

さやか『それで……その後の記憶が無い。きっと気を失ったんだ』

さやか『早く目を覚まさないと!このままじゃ花帆さんにやられる!』

さやか『考えろ、考えろ……どうすれば起きられる?』

???『それなら、わたしが代わりに殺ってあげます』

さやか『!?』

🔪ザクッ!

さやか『う"っ──』バタン

サヤカ『あんな風に手を抜くから負けるんですよ。人を殺すなんて、もっと簡単なことなのに』

さやか『あ、あなたは……!』

サヤカ『もっとも、カホさんを『人』と分類していいのかは微妙なところですが……』

サヤカ『彼女は"わたし達"にとって、世界を創った『神様』のような存在ですから』


584 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 22:48:53 ???00
さやか『……わたしの体を……乗っ取るつもりですか……?』

サヤカ『人聞きが悪いですね。乗っ取ったのはあなたの方じゃないですか?』

サヤカ『わたしはただ、"返してもらう"だけです』

さやか『!させ……ない……!』ズルズル

🔪グサ!グサ!

さやか『かっ──!』

サヤカ『別にいいじゃないですか。あなたの目的はカホさんを殺すことなんですよね?』

サヤカ『わたしの目的も同じです。人間の血は見飽きたので、今度は神様を殺してみたい』

サヤカ『世界を創り出すほどの存在の血は、さぞかし鮮やかな色をしているんでしょうね♪』

さやか『っ!……あなたとわたしは違う……!』

さやか『やっぱり、あなたは狂っています……!』

サヤカ『その狂ってるわたしを生み出したのは、カホさんですよ?これは因果応報というやつです』

サヤカ『安心してください。ここで黙って見ていれば、あなたの目的も果たされます』

さやか『!待って──』

サヤカ『それでは、行ってきますね』

ーーーーーーーーーーーー


585 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 22:50:50 ???00
サヤカ「それにしても……なんですかこの格好は?」ヒラヒラ

サヤカ「オリジナルのわたしはこういう服装が趣味なんでしょうか……確かにわたしとは違いますね」

花帆『エリクサー!』キラキラ

サヤカ「……死んだツヅリさんを蘇生させた魔法。すごい回復力ですが、その分魔力の消費も激しいんじゃないですか?」

サヤカ「ちゃんとわたしと戦うための魔力も残しておいてくださいね」

花帆「戦うって……サヤカちゃんはあたしと戦いたかったの?」

サヤカ「ええ、前回は邪魔が入りましたから。やっと本気のカホさんと一対一で戦える」

サヤカ「全身血塗れになるまで、たくさん切り刻んであげます」ペロッ

花帆「っ……!」ゾワッ

花帆(やっぱり、この子は自由にしてちゃダメだ!)


586 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 22:53:21 ???00
花帆『ヴァリア!』

🔯ブーン

サヤカ「?」

サヤカ(結界魔法でわたしを閉じ込めた?)

花帆『エクス フレアボール!』🔥

サヤカ「!!これはっ──」

花帆はサヤカを閉じ込めた結界の中に、遠隔で炎を発生させる。

結界は炎で満たされ、まるで焼却炉の中にいるような超高温が、サヤカの全身を焼く。

サヤカ「ッッッ!!」🔥🔥

花帆『リフトウォール!』

ズガーン↑↑ ズガーン↑↑ ズガーン↑↑

続けて地面から4本の壁が競り上がり、煙突のようにサヤカの周りを取り囲む。

花帆「射て!『光の矢』!」

✨✨✨キラキラキラ……ビカーン!

さらに、唯一の出口である上部の穴からは、光の柱が何本も差し込む。

目の前の相手を排除することだけを考えた、花帆の本気の攻撃。

もはや、サヤカが人の形を保っている保証など、どこにもなかった。

それでも──


587 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 22:58:18 ???00
ピシッ

ズバーーン!

花帆「!?」

まるでかぐや姫のように、サヤカは自身を取り囲む壁を切り裂き、その姿を表す。

サヤカ「さすがに……堪えますね……」ボロボロ

サヤカ「ですが、この服の評価は改めなくてはいけません。趣味が悪いと思っていましたが、なかなかの装備です」

サヤカ「魔力で編まれているのでしょうか?鉄の鎧なんかよりも余程頑丈なんですね」

花帆「っ……」

花帆(見た目に惑わされちゃダメだ……このサヤカちゃんはもう、ドラゴンとかと同じレベルの"魔物"……!)

花帆(もっと全力を出さないと、ダメージにならない!)

花帆『オメガ・──』🔯バチバヂ

スパッ!

花帆「がぼっ……!?」ビシャ

花帆(喉を──声帯を切られた!?)

サヤカ「詠唱ができなければ、カホさんでも魔法は使えないんですね」

サヤカ「次は、わたしの番です」スッ


588 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:01:05 ???00
花帆(に、逃げなきゃ!)三ビュン

サヤカ「逃がしませんよ」

ズバッ!

花帆「っ"!!」

サヤカから離れようとした花帆の背中を、見えない魔力の刃が大きく切り裂く。

サヤカ「さあ!反撃しないと終わってしまいますよ!」

ズバ!ズバ!ズバ!

花帆「!"」

斬撃は続けざまに花帆の両手足を切り落とし、花帆はあっという間にダルマにされてしまう。

花帆「ゴボッグボ──」

反射的に叫び声を上げようとするが、口から出るのはおびただしい量の血液のみ。

サヤカ「あはははは!背中なんて向けないで、もっとよく顔を見せてください!」

サヤカ「じゃないと、誤って殺しちゃうじゃないですか!」シュッ!

ズバ─/─ン!

花帆「コポ──」

サヤカが手を横に払うと同時に、花帆の上半身が下半身と別れを告げた。

花帆「」↓↓↓ヒューン

グチャ!


589 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:03:27 ???00
サヤカ「…………あれ?本当に死んじゃった?」

サヤカ「そんな!この程度なんですか!?世界を創った神様が、こんなあっさり殺されちゃうんですか!?」

サヤカ「嘘ですよね!?嘘と言ってください!」

サヤカ「……なんだかガッカリです……これなら、オリジナルのわたしが戦ってるのを眺めてる方がまだ面白かったかもしれません……」


花帆「」


⏱カチ──チチチチチ↺

サヤカ「!!」

サヤカ「何ですか……?」

上空まで突き出ていた壁が、次々と縮んで地面に埋まってゆく。

それだけではない。今までの戦いで壊れた建物も、何も無かったかのように元の姿を取り戻す。

サヤカ「時間が……巻き戻っている?」


花帆「」ビクン!

花帆「ぷはっ!?」ガバッ

花帆「た、助かった……!街の修復用だったけど、『リセット』が間に合ってよかった……」

花帆「でも、何で使えたんだろう……時間魔法はもう使えないって、さやかちゃんが──」


590 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:06:28 ???00
泉『花帆先輩、聞こえるかな』

花帆「え、この声……瑞河の泉ちゃん!?」

泉『驚かせてすまないが、悠長に話している暇は無い』

泉『要点だけ話そう。緊急事態につき、時間魔法を再び使用可能にした』

花帆「!」

泉『こちらの立場から頼むのもどうかと思うけれど、ムラノサヤカを倒すために協力して欲しい』

泉『彼女が体の主導権を握ったままだと、さやか先輩まで帰ってこられなくなるからね』

花帆「……わかった」

花帆「さやかちゃんを返すためだからね!あたしは帰るとは言ってないからね!」

サヤカ「あ!やっぱりまだ生きていましたか!」↓↓↓スー

花帆「!」ビクッ

サヤカ「よかった。あれで終わりは寂しすぎますからね」ストン

花帆「サヤカちゃん……いや、実際ほとんど死にかけたよ!」

サヤカ「ふふっ、ご冗談を。神様があの程度で死ぬわけないですよね?」

花帆「……なんか、あたしのこと買い被りすぎじゃない?」

サヤカ「まだまだ足りません。せっかく綺麗に赤く染まった服も、元に戻ってしまったじゃないですか」

サヤカ「もう一度、カホさんの美しい姿を見せてください」スッ

花帆(相変わらず話が通じない……!)


591 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:12:09 ???00
花帆『止まれ!』⏱カチ

サヤカ「」ピタ

花帆「本当にまた使えるようになってる……泉ちゃん、何者なの?」

花帆「ううん。今はそんなことどうでもいい!」

花帆「サヤカちゃんはある意味、あたしが生み出してしまったモンスター」

花帆「この世界の管理者として、責任をもって対処しないと!」

花帆『エクス フレアボール!』

時間が止まった世界で、花帆はサヤカに向かって攻撃魔法を放つ。

花帆「『エクス サンダー』、『ワールウィンド』、『エクス ブリザード』──」

さらに、サヤカを取り囲むように、サヤカの周りを歩きながらあらゆる攻撃魔法を設置していく。

魔法は空中で止まっているが、再び時間が動き出せば、一斉にサヤカへと迫るだろう。

花帆「お願い……これで終わって!」

花帆『解除!』

⏱カチ


592 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:13:46 ???00
サヤカ「──!?」

💥💥💥💥💥💥💥💥

激しい音と共に、爆発の衝撃がカナザワの街を揺らす。

泉『やったか!?』

瑠璃乃『泉ちゃんそれフラグだよ!』

サヤカ「──ゴホッゴホッ!」

花帆「!」

吟子『やっぱりまだ生きてる……』

セラス『泉のせいだからね!あのまま黙ってれば勝ててたよ!』

泉『そうか…………そうか?』

サヤカ「今のは、ツヅリさんの時間魔法ですね?」

サヤカ「そういえば、前にも使っていましたっけ」

花帆「っ……いくらなんでも、耐久力高すぎない?」

サヤカ「直撃していたら、さすがに無事ではなかったと思います」

サヤカ「だから、当たる前に切りました」

花帆「え?時間が動き出してから1秒もなかったはずなのに……」


593 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:18:51 ???00
サヤカ「周りから強い魔力を感じたので、反射的に全方位に斬撃を飛ばしたんです」

花帆「反射神経良すぎない!?モデルをさやかちゃんにしたせいでスペックが無駄に高い……!」

サヤカ「なるほど、これはオリジナルのわたし由来の力でしたか」

サヤカ「正直、自分でも不思議だったんです。なんの訓練もしたことがないのに、どうしてこんなに体が動くのだろうと」

花帆「……」ジリ…

/ シュッ!

花帆「っ!」

サヤカ「ダメですよカホさん。今度はわたしのターンです」

花帆「……ううん。もうサヤカちゃんのターンは来ないよ!」

花帆『止まれ!』

⏱カチ──

再び時間は止まり、世界に静寂が訪れる。

花帆「次は絶対に相殺されないようにしないと。もう最初から当てた状態にしておこうかな?」

花帆「それと、また結界魔法とかで閉じ込めて……」ブツブツ

サヤカ「」

キョロ…

花帆「!」ビクッ

花帆「え……今、サヤカちゃんの目が動いたような……」

花帆「気のせい……だよね?時間が止まってるのに、動けるはずない──」

⏱ガ──ガガガガガ!

ズバーーン!

花帆「!?!?」

静寂を"切り裂いて"、世界は音を取り戻す。

花帆「な、なんで……!」

サヤカ「──言ったじゃないですか」

サヤカ「わたしのターンだと」


594 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:22:54 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

泉「なんだ……これは……」

セラス「どうしたの泉?」

泉「時間設定画面が文字化けして……操作不能になった……」

吟子「え?なんで?」

泉「わからない!突然システムにバグが発生したんだ!」

泉「いや──原因だけはわかっているな。ムラノサヤカだ」

泉「彼女が時間を管理するシステムに、何らかの干渉をしたんだ」

セラス「難しい言葉使わないで!結果だけ教えて!」

泉「花帆先輩は時間魔法を使えない。そのシステムごと壊された」

セラス「意味わかんない!もっと詳しく教えて!」

泉「!?」


595 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/23(木) 23:25:04 ???00
瑠璃乃「とにかく、花帆ちゃんがピンチってことだよね?」

泉「あ、ああ……!」

サヤカ『さっきから五月蝿いですね』

「「!!!」」

サヤカ『集中が削がれるので、もう切りますね』

ブチン!

吟子「なっ!?」

泉「通信を、"切られた"……」

吟子「そんな、謎かけじゃないんだよ!?」

泉「こちらの世界を認識したのがまずかったのか?まさかシステムに切り込む程に、その刃を研いでいたとは……」

小鈴「さやか先輩……早く目を覚ましてください……」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


596 : 名無しで叶える物語◆cZiSfkCw★ :2025/10/25(土) 01:34:03 ???Sa
頭も切れる獣は厄介


597 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:18:30 ???00
花帆「はぁ……はぁ……」

サヤカ「カホさん〜隠れてないで姿を見せてください〜」

🏠ガシャーン!

花帆「!」ビクッ

サヤカ「ここじゃないか……」

花帆「っ……」

花帆はサヤカの攻撃をかいくぐりながら、何とか物陰に隠れていた。

花帆(時間魔法は破られた……他の攻撃魔法も見切られちゃうし、今のあたしが持ってる魔法じゃ勝てない!)

花帆(それに、ここまで魔法を連発してきたせいで、残りの魔力も少ない……)

『天使のラッパ』、『時間のリセット』、消費の大きい魔法を使い続けたせいで、今の花帆は上級魔法が使えないほどに消耗していた。

花帆(みんなの声も急に聞こえなくなったし、何か手を考えないと……)

サヤカ「はぁ……かくれんぼがしたい訳ではないのですが……」

サヤカ「仕方がないですね」🔯ブーン

花帆「?」

花帆(すごい魔力……サヤカちゃん、何をしようとしてるの?)チラッ

建物の陰から顔をのぞかせた花帆が見たものは、あの日にも見た光のリングだった。

花帆(あれは!)


598 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:19:47 ???00
光の輪はサヤカの胸の高さに浮いており、回転しているのか、黒板を爪で引っ掻くような耳障りな音を周囲に響かせていた。

サヤカ「この街には多少思い入れもありますが、どうせ最後には壊れるんです。だったら一掃して、隠れる場所を無くしてしまいましょう」キーン

光の輪はさらに回転を速め、一瞬その輪郭がぶれる。

花帆(来る!伏せなきゃ!)バッ

花帆「……」ピタ

サヤカ「だーるまさんが──」↓ スー

サヤカ「こーろんだ」ニヤッ

スパ────────────ン!

サヤカはリングを解放する直前、胸の高さに浮いていたそれを地面スレスレまで落とす。

そして光の輪は、雑草を刈るかのような位置で拡大し、半径1kmの範囲を真一文字に切断した。

🏘ジ…ジジジ──

パッ!

花帆「家が消えた!?」

サヤカ「おや?上から声が……」

花帆「あ」

サヤカ「空を飛んでいましたか。てっきり地面に伏せていると思ったのですが」

サヤカ「どうせこっそりこちらを伺っていたんでしょう?」

花帆「まあね……最初は伏せて避けようとしたけど、サヤカちゃんならそれも読んでくると思ったから……」


599 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:21:14 ???00
花帆「そんなことより!これは何!どうして切られた家が消えちゃったの!?」

それは、明らかに魔法とは異なる現象だった。

地面には家の土台だけが残り、切り離された家の大部分は、一瞬ノイズのようなものが走ると、綺麗さっぱり"消失"してしまった。

サヤカ「さあ?わたしはただ切っただけです」

花帆「切っただけじゃ家は消えないでしょ!!」

サヤカ「うーん……そうですね。もしかしたら、知らず知らずのうちに『世界から切り離してしまった』のかもしれませんね」

花帆「!」

サヤカ「なんて、ただの憶測ですが」

花帆「そんなこと……できるはずない!」

サヤカ「でも実際、わたしはこの世界の『形』を、『大きさ』を、『位置』を、かなり掴みかけていると感じるんです」

サヤカ「カホさんが元いた世界の人達の会話を盗み聞いて、わたし達の世界が『ぱそこん』という小さな箱の中に存在することもわかりました」

サヤカ「それが『ぷろぐらむ』によって制御されていることも」

花帆「っ!そんな、あたしだって知らないことなのに……!」

サヤカ「世界ってひとつじゃないんですね。もしかしたら、わたしにも作れるのでしょうか?」

サヤカ「まぁ、もしそうだとしても……わたしは作るより壊す方が楽しいのですが──」

スパッ!

花帆「くっ……!」

サヤカ「もう逃げ場はありません。正々堂々、わたしと戦ってもらいますよ!カホさん!」

花帆(……勝てない……こんなのどうやって戦えばいいの!?)


600 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:23:25 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

泉「どうやら彼女の言っていることは概ね正しいようだ。切られた家のオブジェクトが、プログラム上でも壊されている」

泉「正確には、描写ができなくなったと言ったところか……」

吟子「これ、放置してたら向こうの世界だけの被害じゃすまないじゃないの……?」

泉「おや、吟子さんも大分わかるようになってきたね」

泉「吟子さんの言う通り、ここまでシステムに介入できるとなると、現実世界にも影響が出るかもしれない」

泉「もしもあの世界が崩壊した後に、ムラノサヤカがネットワークの海に解き放たれでもしたら……」

泉「破壊だけを楽しむ超高性能AIが、世界中の重要システムをバラバラに切り刻んでしまうかもしれない」

小鈴「そうなったら、配信とかもできなくなっちゃうんですか!?」

泉「スクールアイドル活動どころか、私達が当たり前にしている生活が持続不可能になる」

泉「もしも国防関係のシステムに入り込んだら……最悪の場合、第三次世界大戦だって有り得るだろう……」

小鈴「せ、世界大戦!?話が大きくなりすぎて、徒町もうついて行けません!」

セラス「何か打つ手はないの!?泉なら何とかできるでしょ!天才なんでしょ!?」

泉「ふぅ……自分で天才なんて言っておきながら、たった今自身の矮小さに打ちひしがれているところさ」

泉「結局私も、他人より少し得意なことが多いだけの、16歳の小娘に過ぎなかったらしい……」

セラス「っ!やめてよ……泉からそんな言葉……聞きたくない……」


601 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:25:17 ???00
泉「すまないセラス。今の私には、彼女があの鳥籠から飛び立たないように祈ることしかできないんだ」

泉「私達にできることは──もう何もない」

セラス「!」

吟子「そんな……」


瑠璃乃「────あるよ」

泉「え?」

瑠璃乃「まだ、手段はある」

泉「瑠璃乃先輩、希望を持つことは大切だ。だが実際問題、私達にできることは何も……」

瑠璃乃「確かに、ルリ達にできることは、もう限られてるかもしれない」

瑠璃乃「でも!ルリ達だけで解決する必要はないんだ!」

瑠璃乃「花帆ちゃんのことを、ルリ達と同じくらい大切に思ってる人達がいる。助けたいと思ってる人達がいる!」

吟子「それって──まさか!?」

泉「彼女達を頼るというのか!?無理だ!今どこにいるのかもわからない!連絡手段もない!」

泉「そもそも!どうやってこの状況を説明するんだ!」

瑠璃乃「泉ちゃん言ってたよね?あの世界は『カナザワを中心にそれほど広くない範囲までしか存在しない』って」

泉「!確かにそうだが……」

瑠璃乃「説明はルリがするよ。それに連絡手段なら、考えがあるし」


602 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:26:19 ???00
瑠璃乃「それでも、多分かなり時間がかかる……それまで花帆ちゃんが耐えられればいいんだけど……」

姫芽『要は、また時間を稼げばいいんですね?』

瑠璃乃「ひめっち?」クルッ

姫芽「……」zzz

瑠璃乃「あれ?寝てる?」

小鈴「今、モニターの中から声が聞こえました!」

吟子「もしかして、まだ向こうにいるの!?」

セラス「そういえば、あの後から起きてきませんでしたね」

姫芽『まぁね〜何とか生き延びてたんだ〜』

瑠璃乃「どれくらい時間がかかるのかわからないよ?できる?ひめっち」

姫芽『るりちゃんせんぱいからの勅命とあらば、この安養寺姫芽、命に替えても』

瑠璃乃「あ、いや……そこまでは頼んでないけど……」

姫芽『大丈夫ですよ。こっちには、まだ"本気"を出してないせんぱいがいますから』

瑠璃乃「本気を出してない先輩……?」

姫芽『いるじゃないですか〜どんな逆境も、手詰まりな状況もひっくり返してきた──』

姫芽『"神様"みたいな人が』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


603 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:28:08 ???00
スパ──ン!

花帆「う"ぐっ……!『エリクサー』!」

キラキラ……

サヤカ「傷の治りが悪くなってきましたね。魔力切れですか?」

花帆「温存してるだけだよ……」

サヤカ「ふふっ。それは楽しみですね」

サヤカ「それなら、わたしも全力で答えなくては」

花帆(まただ……またあの光の輪を使う気だ!)

サヤカ「さあ、温存した魔力とやらで防いで──」

三ビュン!

サヤカ「!!」クルッ

サヤカ「はっ!」

スパ────ン!

💥💥💥💥💥💥

花帆「!嘘……魔弾砲は壊したはず……」

姫芽『かほせんぱいが直したんですよ。時間を巻き戻して』

花帆「姫芽ちゃん!」

サヤカ「この声……あの時の占い師さんですか?」

姫芽『また会っちゃいましたね〜偽さやかせんぱい』

サヤカ「インチキ占い師に偽物扱いされても、心に響きませんよ」

姫芽『心とかあったんだ』


604 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:29:50 ???00
花帆「姫芽ちゃん!早くこの世界から逃げて!帰れなくなっちゃう!」

姫芽『逃げるなんて縁遠い言葉ですね〜アタシはたとえ一人になっても、クラッチを狙いに行く女ですよぉ!』

三💥バキュン!

サヤカ「……」シュッ!

スパン!

ジジジ──パッ!

姫芽『魔弾が消えた!?そんなのあり!?』

花帆「サヤカちゃんはもう、あたし達じゃ手に負えないの!だからお願い!姫芽ちゃんだけでも!」

姫芽『──そんなの、かほせんぱいらしくないですよ』

花帆「……え?」

姫芽『勝てないとか、手に負えないとか……かほせんぱいはいつだって、そういう絶望的な状況を救ってきたじゃないですか』

花帆「それとこれとは……」

姫芽『違いませんよ。違うと言うなら、むしろ現実の方がもっと困難でした』

姫芽『だって、アタシ達の世界には魔法なんてない。空も飛べないし、炎を出すことも、動物と話すこともできない』

姫芽『そんな無理ゲーを、かほせんぱいはクリアしてきたじゃないですか!』

花帆「!」

姫芽『それができたのは、かほせんぱいだけが、現実の世界でも魔法を持ってたからです』

姫芽『"発想力"という名の、最強の魔法を!』

花帆「発想力……」


605 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:32:58 ???00
姫芽『規制派にネットを使えなくさせられそうになった時も、瑞河が廃校しそうになった時も!』

姫芽『突拍子もないアイディアで、何とかしてきたじゃないですか!この程度のことで諦めないでください!』

花帆「それは……!あたしだけの力じゃない!みんながいたから……たくさんの人達が協力してくれたおかげで……」

花帆「結局、あたし一人じゃ何も──」

姫芽『確かにそうでしたね。でも、"ここ"でなら?』

花帆「へ?」

姫芽『ここはかほせんぱいが作った創作(ファンタジー)の世界。現実では実現できない、突拍子もないアイディアも……』

姫芽『この世界でなら!具現化できるはずです!!』

花帆「!!」

姫芽『魅せてくださいよ!かほせんぱい!あなたのひらめきで、この絶望的なシナリオをハッピーエンドに変えてください!!』

花帆「あたしのひらめきを、具現化……!」

花帆「で、でも!そのための魔力が、もう……」

姫芽「そんなもん!いくらでもあげますよ!」

姫芽「持ってけ!『みらくらバスター』!!」ポチッ

💜三💥バッキュン♡


606 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:36:00 ???00
高濃度の魔弾がカナザワへ放たれる。

それは今までの破壊的な魔力ではなく、他者に与えるための魔力。

カラカラな花帆の心に捧げる、姫芽からのラブビームだった。

花帆「っ!」✋バッ!

花帆は迷わずそれに手を伸ばす。

なぜならそれがとても、大切なものに思えたから。

花帆「!!」💜ズッキュン!

魔弾に触れた瞬間、光は一瞬大きく膨れ上がり、やがて花帆の体の中に入っていく。

魔力だけではない。蓮ノ空で過ごした、2年間の思い出。

楽しかったこと、苦しかったこと、感動したこと、別れの記憶。そして──約束。

花帆「──うん。姫芽ちゃんの思い、ちゃんと届いたよ」

サヤカ「……そろそろいいですかね?」

花帆「待たせてごめんね。サヤカちゃん」

花帆「あたしもやっと、本気が出せるよ」🔯バチバヂ!

サヤカ「──ふふっ」

サヤカ「本当に、待ちくたびれましたよ!カホさん!!」🔯キーン!

サヤカ「はっ!」シュッ

サヤカは花帆に向けて光の輪を飛ばす。

街を消し去り、時間の凍結さえも両断する最強の魔法。

花帆はそれを、避けることもせずに真正面から迎え撃つ。

花帆『千変万華』

🌸🌼🌸🌼🌸🌼ブワッ!

サヤカ「は?」

攻撃が花帆に当たる直前、光の輪は一瞬にして花びらに変換され、色とりどりの花々はヒラヒラと舞い散る。

花帆「そうだよ。今ある魔法で勝てないのなら──」

花帆「新しく、作っちゃえばいいんだ!!」


607 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:38:25 ???00
サヤカ「……」シュッ!シュッ!

🌼🌸ブワッ!🌼🌸ブワッ!

サヤカ「なるほど、魔力を花に変換しているのですね」

サヤカ「ですが、それは防御はできても攻撃手段にならないのでは?」

姫芽『だったら!アタッカーはこっちの仕事だあ!』

三💥バキュン

サヤカ「っ!そんな遠くからの攻撃が、当たるはずないでしょう!」

スパ────ン!

ジジジ……パッ!

姫芽「くそぉ……やっぱり距離が開きすぎてるなぁ……」

花帆『だったら、近づければ当てられる?』

姫芽「え?まぁそりゃあ……」

花帆『わかった!』

ガシャン!

姫芽「うわぁ!ボタンが生えてきた!?」

花帆『そのボタンを押して!そしたらそれはもう、"固定"砲台じゃなくなるから!』

姫芽「なるほど〜?いいんですか、かほせんぱい。世界観が壊れますよ?」

花帆『魔法の世界にロボットがいちゃいけないなんてルール、どこにも載ってないよ!』

姫芽「アハッ!やっぱりかほせんぱいはそうでなくっちゃ、ですよね〜」

花帆『創作っていうのは、ちょっとくらいカオスで、めちゃくちゃな方が面白いんだよ!』

姫芽「同意です。さすがはかほせんぱい。めぐちゃんの意思を継ぐもの」

姫芽「一緒にこの世界を『みらくらぱーく!』に塗り替えちゃいましょう!」

花帆『しないよ!?ていうかあたしが継いだのは梢センパイの意思だよ!?』

姫芽「…………やっと、その名前を口にしましたね」ボソッ

花帆『ん?何か言った?』

姫芽「いえ!なんでもありません!」


608 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:44:07 ???00
姫芽「それでは!何が起きるかはボタンを押してからのお楽しみ!」

姫芽「ビックリみらくらメカ!発進!」ポチッ!

〜〜♪〜〜♫

『目を醒ませッ!僕らの世界が何者かに侵略されてるゾッ !!!』 ♪

ウィーーン…ガチャン!

ウィーーン……ガシャン!ガチャン!

✨ピカーーン!

姫芽「うおぉぉぉ!?何か熱い音楽と共に人型ロボットに変形したぁぁ!」

姫芽「この歌もかほせんぱいのチョイスですか?」

花帆『え、なにこの歌……知らない。こわ……』

姫芽「はえ?じゃあ一体誰が流して──」

泉『私だ』

花帆&姫芽「「お前かい!!」」

泉『ふふふ、ロボットの起動にBGMは必要不可欠だろう?YouTubeで適当な曲を選んでみたんだ。気に入ってもらえると嬉しいな』

泉『………………お前』シュン…

花帆「あ、ごめん!勢いでつい!気にしないでね?」

サヤカ「逆にあなたはもう少し気にするべきでは?わたしを」

花帆「!」ビクッ

ガシッ!

花帆「うぐ……!」

サヤカ「はっ!」ブン↓

花帆「がはっ!?」ベキベキ

サヤカ「そういえば、オリジナルのわたしと戦っている時、意識を落としてから殺そうとしましたね?」

サヤカ「確かにそれなら、魔法を防がれる心配もないので確実です」スッ

花帆「このっ……!」


609 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:50:29 ???00
姫芽『うおぉぉぉ!安養寺姫芽、現!着!』↓↓ ズシーーン!

サヤカ「きゃっ!?」グラッ

姫芽『助けに来ましたよ!かほせんぱい!』ウィーン

吟子『うわっ……場違い……景観条例に引っかかりそう』

セラス『わーーーー!カッコイイ!』

小鈴『すごいです!鼓門くらい大っきくて、右手が大砲になってて……とにかくカッコイイです!』

サヤカ「なんですかなんですか!?ゴーレムが飛んできた!?」

姫芽『ここら辺を更地にしてくれて助かりました。おかげで気兼ねなく操縦できます!』🕹

ブン!

サヤカ「くっ!」三サッ

ガシャーン!!

姫芽『おりゃあー!!』🕹

ゲシッ!

サヤカ「っ……!」ゴロゴロ…

サヤカ「この……!ゴーレムごとき!」シュッ!

カキン!

サヤカ(硬い!普通の斬撃じゃ歯が立たない!)

サヤカ「それなら!」🔯キーン!

🌼🌸🌼🌸ブワッ!

サヤカ「!?カホさんッ!」

花帆『KNOT』

⛓️ジャラララ!

サヤカ「鎖!?いったいどこから出てきて──」ギシッ!

サヤカ「ですが、この程度の拘束……!」スパン!スパン!

⛓️パリン!

サヤカ「大した足止めにもなりません!」

姫芽『でもアタシからしたら、その一瞬の隙は致命的かな〜』🔯キュイーン

サヤカ「!」

姫芽『イグニッション!』🔥

💥💥💥ドーン!

サヤカ「きゃあーーー!!!」💥

魔弾はサヤカに直撃し、地面を大きく抉りながら遠ざかっていく。


610 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 22:54:44 ???00
姫芽『かほせんぱい!油断しないでくださいね!』ガシャン!

花帆「わかってる!これくらいで倒せるとは思ってない!」

💭モクモク……シュッ!

花帆『千変万華』

🌼🌸🌼🌸🌼🌸ブワッ!

花帆「…………っ!」

グサッ!

花帆「あ"ぐっ!」

サヤカ「その魔法……確かに強力ですが、あなた自身も視界を塞がれる諸刃の剣ですよ」

花帆(瓦礫の破片を刃物替わりに……!)

花帆『レプ──むぐっ!?」

サヤカは花帆の口を左手で塞ぐと、脇腹を刺していた瓦礫を引き抜き、花帆の首に押し当てる。

花帆「んっ!」

姫芽『かほせんぱい!』ウイーン

サヤカ「動かないでください。カホさんの首が飛びますよ」

姫芽『うっ……』ピタ

花帆「ん〜〜っ(姫芽ちゃん撃って)!!!」

サヤカ「その一瞬の隙は致命的すぎますよ。インチキ占い師さん」🔯キーン

スパ──ン!

姫芽「しまった!」

サヤカは瞬時に光の輪を展開し、ロボットの大砲を右腕ごと切り落とす。

サヤカ「ふっ!」スパッ!

花帆「がぼっ!」

さらに、ほぼ同時に花帆の首を瓦礫で切り裂き、その命を刈り取った。

花帆「」バタン

姫芽「かほせんぱい!!!」


611 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:00:20 ???00
サヤカ「本気と言う割には、大道芸みたいな魔法でしたね……」

サヤカ「……?」

花帆「」🌸🌼ブワッ!

サヤカ「消えた!?」

〜〜🌼ヒラヒラ

🌼🌸🌼🌸🌼🌸バサッ!

花帆「フラワー!」✊ゴン!

サヤカ「ぐっ!」クラッ

姫芽『かほせんぱい!?いま花びらの中から出てきましたよね?怪我は大丈夫ですか?』

花帆「大丈夫。なぜならあたしは『花の不死鳥』の末裔……たとえ死んでも、花びらとなって散り、そしてまた花びらの中から復活する──」

花帆「という設定を、"今"!考えました!!!」ドドン!

姫芽『うわぁお……無法ってこういうことか〜』

花帆「無法じゃないよ!この世界ではあたしがルールだもん!」

姫芽『じゃあなんでしょう?職権乱用?』

サヤカ「ふ──ふふっ──」

サヤカ「あはははっ!そう来なくては!」

サヤカ「カホさん自身がルールだと言うのなら、わたしはそのルールごと、世界を壊しましょう!!」

サヤカ『裂けろ!』

ピシ──ピシ!ピシ!ピシ!

ザンッ!

花帆「!?」

姫芽「!?」

サヤカがおもむろに地面に手を付くと、街を横断する程の大きな亀裂が1本、2本、3本……4本と、次々に地面を走る。


612 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:04:04 ???00
ガタガタガタガタ!

姫芽「うわぁぁ……足元が揺れて機体が安定しない!」🕹ガチャガチャ

花帆「姫芽ちゃん!飛んで!」↑↑

姫芽「あ、そうだ!飛べるんだった!」↑↑🔥ゴー!

上空から見下ろすカナザワは、想像を絶する惨状だった。

街はピザのように8つに切り分けられ、それぞれの区画が互い違いに浮き沈みしている。

花帆「あたし達のカナザワが……」

姫芽「ん?んん〜〜?」ジー…

姫芽「!?!?」

姫芽『かほせんぱい!地面の亀裂を見てください!』

花帆「っ!あれは……何?」

隆起した地面の断面。本来地層が見えているはずのそこには、電子回路のようなものがびっしりと敷き詰められ、チカチカと星のような光を放っている。

姫芽『か、かほせんぱい……実はカナザワは超近未来的な機械都市って設定だったりします……?』

花帆「そんなわけない!!」

姫芽『じゃあ、あれはいったい……』

花帆「あたしにもわからない……まさか、カナザワの下があんな風になってたなんて……」

泉『いや、本来地面をいくら掘ったところで、あんなものは見えてこないよ』カタカタカタ

花帆「泉ちゃん、どういうこと?」

泉『ムラノサヤカは地面を切ったんじゃない。システムそのものを切ったんだ』カタカタカタ

泉『少し前に、切断した家や魔弾を、その世界から消滅させていただろう?あれと全く同じことを、街に対して行ったと思っていい』カタカタカタ

姫芽「ええ!?じゃ、じゃあ!街が消えちゃうってこと!?」

泉『そうならない為に、今ぐちゃぐちゃになったプログラムを必死に修正しているところだ』カタカタカタ


613 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:09:45 ???00
泉『開発者モードでプログラムを見ているんだけどね、もうすごいよ?リアルタイムでソースコードの中に大量の『space』が挿入されて……どこまでが一単語だったのかもパッと見でわからない状況だ』

泉『あはははっ!……ヤバいですよこれは』

姫芽「うわっ、泉ちゃん……頭が沸騰してキャラが崩壊してるよ……」

泉『私のキャラが崩壊する分には構わないが、姫芽さん達のいる世界が崩壊すれば、あなた達が帰ってこられなくなる』

泉『今起きてる不具合は、私がこの身に替えても修正して見せよう。だからあなた達は、これ以上ムラノサヤカが暴れないように、彼女を無力化してくれ』

姫芽「無力化と言われましても……」

花帆「待って!サヤカちゃんはどこ!?」

姫芽「へ?」

スパーン!

姫芽「!!画面が……!メインカメラをやられた!?」

姫芽『かほせんぱい気を付けてください!すぐ近くにいます!』

花帆「くっ!どこ?どこにいるの?」キョロキョロ

スパン!スパン!──💥ボン!

姫芽「うおっ!?」グラッ

ロボットを浮かせていたジェットが爆発し、その巨体が地上に落下する。

花帆『エクス フローティア!』🔯

姫芽『っ!』ガタン!

花帆「ん〜〜〜!!」🔯

花帆は浮遊魔法を使い、機体をゆっくりと降下させる。その裏から──


614 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:18:07 ???00
サヤカ「……」シュバッ

花帆「!」

花帆(そっか!ロボットの後ろに隠れて──)

サヤカ「……」ガシッ!

ズババババババ!

サヤカは素早い動きで近づくと、花帆の全身の筋肉に細かい切込みを無数に入れる。

花帆「!?」プシッ

さらに首を鷲掴みにし、花帆の内側を細く切り刻んだ。

花帆「ゴボッ……ガボッ!」

まるで喉の奥にナイフを突っ込んで、掻き混ぜられているような鋭い痛み。

サヤカは花帆の詠唱を防ぐために、その声帯を切り裂いた。

サヤカ「死んだら蘇るんですよね?だったら、死なない程度、されど動けない程に体を傷付ければいい」

花帆「ゴポッ」プルプル…

サヤカ「このままでは死ぬことも抵抗することもできずに、あなたが創った世界が崩壊する様を眺めることになりますよ」

サヤカ「さあカホさん。"次"は、どうするんですか?」ニコッ

花帆「……!」


615 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:21:50 ???00
↓↓↓ ガシャーン!

姫芽「かほせんぱーい!」

姫芽「あんなに高いところに……アタシ自身は空を飛べないし、このロボットはもう……」

姫芽「どうすれば……どうすれば二人を助けられる!?」

姫芽「かほせんぱいも、さやかせんぱいも、両方助けなきゃ意味がない!」

姫芽「その為の、あと一手が……何か──」



瑠璃乃『ひめっち!ロボットの中に戻って!あの子達をサポートして!』

姫芽「!!るりちゃんせんぱい!?あの子達って、いったい──はっ!」

姫芽「そういうことですか」

姫芽「全く……遅すぎですよ。ヒーロー」

ウィーン……ガシャン!


616 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:27:30 ???00
花帆(次……そうだ、次の手を考えないと…………いけないのに……)

花帆(体の痛みに、思考が塗りつぶされて……何も思いつかない……)

花帆(姫芽ちゃん。やっぱりあたしは、神様でもなんでもない、ただの女の子だよ……)

花帆(だって、ひとりじゃ何もできないし……痛いのは苦しいし……死ぬのは怖いもん……)

花帆(誰か……お願いします……)

花帆(誰か……助けて……梢センパ──)


⭐️ピカーン!


花帆「────ぁ」

崩れゆく街の外から、猛スピードでこちらに迫ってくる光が見える。

それは一条の流れ星。

花帆の"願い"を叶えるために生まれてきた、希望の星達。

特に彼女は、花帆がこの世界に来て最初に作り出した人物だった。

右も左もわからない異世界で、自身を守ってくれる騎士として。

共に生きてくれる仲間として、最初に選ばれた人だった。

ゆえにその性格は、元となった人よりも、少しだけ勇ましく、少しだけ逞しく──

そして同じくらい、花帆のことが大好きだった。

そんな彼女が、花帆のピンチに駆けつけないはずがない。

その王子様は、白馬ではなく金狼に跨り、花帆の元に帰ってきた。

花帆「コズエ──ちゃ──」💧ポロ…


617 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:31:39 ???00
コズエ「見えたわ!カチマチさん!あそこまで飛べる?」

カチマチ『正直難しいです!足場が崩れてて、ただでさえ走りにくいので……!』

瑠璃乃『カチマチちゃん、正面にロボ──ゴーレムがいるの見える?』

カチマチ『はい!見えました!』

瑠璃乃『あれは信頼できる仲間だから!あそこに向かって走って!』

カチマチ『わかりました!』ダッダッダッ!

瑠璃乃『ひめっち!』

姫芽「わかってます!かほせんぱいの所まで投げればいいんですよね!」

姫芽『この手に突っ込んで来てください!』ガシャン

カチマチ『うおぉぉぉ!ちぇすとーーー!!』タンッ!

キャッチ!

姫芽「掴まえた!上半身の固定を解除!面舵いっぱい!」

グルン……グルン…グルングルングルン!

コズエ達がいる左手を優しく握りしめたまま、ロボットは火花を上げながら上半身を回転させる。

姫芽「行っけぇぇぇぇぇ!!!」

ポイッ三

<ウワアァァァァァ!!


618 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:34:06 ???00
サヤカ「なんですか?下が騒がしい──っ!」

コズエ「カホっ!手を!!」✋バッ

花帆「っ〜〜!」✋プルプル…

サヤカ「させない!」シュッ!

🗡️カキン!

ツヅリ「……」🗡️

サヤカ「!!ツヅリ……さん……」

コズエ『保存!』✋ガシッ!

花帆「っ!」ギュッ

猛スピードで突撃する衝撃を魔法で吸収し、コズエは花帆の体を抱きしめる。

コズエ「カホ!」

花帆「コ"ス"エ"──ゴボッ」

コズエ「喋らないでいいわ!メグミ!回復を!」

メグミ「わかってるってば!『メグ リカバー』!」

花帆「はっ!コズエちゃん!」ギューッ!

コズエ「遅くなってごめんなさい。カホ」ギュッ


619 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/26(日) 23:53:34 ???00
メグミ「まっ!遠ーーーーくに飛ばした犯人はカホちゃんだったみたいだけどね☆」

花帆「うぐっ……メグちゃん……」

ルリノ「ルリ達もいるよ!」

ギンコ「みんなでカホさんを助けに来たんです」

花帆「みんな……どうして……」

瑠璃乃『ルリが案内したんだ』

花帆「え!ルリノちゃんが!?」

ルリノ「違う違う!今の声はカチマチちゃんが首に付けてる『鈴』からだよ」

花帆「鈴……?」

瑠璃乃『やっほー花帆ちゃん。蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの方の、大沢瑠璃乃だよ!』

花帆「あ、瑠璃乃ちゃん!」

瑠璃乃『実はこの鈴、小鈴ちゃんが『頑張ってるこの子を応援したいから』って言って、現実世界から届けた通信デバイスだったんだ』

瑠璃乃『だから、これを使えば状況を説明できると思って』

花帆「そうだったんだ……ん?待って!状況を説明って──」

瑠璃乃『"全部"話したよ。現実世界のことも、花帆ちゃんのことも、コズエさん達がどういう存在なのかも』

花帆「!!!」


620 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/27(月) 00:03:11 ???00
花帆「ルリノちゃん……ルリノちゃんはびっくりしなかったの?自分と同じ声の人が話しかけてきて」

ルリノ「まあ、ルリは既に自分と同じ人に二人出会ってるし、もう一人増えたところでね」

ルリノ「あぁ、『ルリまたなんかやっちゃいましたか〜』的な?」

花帆「自分が複数いることに順応してる!?」

ギンコ「さすがに、私やコスズまでいるとは思わなかったけどね……知らない人もいたけど」

泉『やあ、桂城泉だ。よろしく』

セラス『どうも、江戸川コナンです』

吟子『ややこしくなるからやめて!セラスさん!』

ツヅリ「ボクやコズ達はいないの?」

瑠璃乃『いるんですけど……今ここにはいないというか?』

ツヅリ「そうなんだ。残念……話してみたかったな」

小鈴『つ、綴理先輩が二人もいたら……徒町はもうDOLLCHESTRAをクビになるのでは!?』

吟子『ならないから安心して』

花帆「…………なんか、意外と馴染んでる?」

コズエ「聞きたいことは、それこそ山ほどあるわ。でも今は──」

サヤカ「……」ジー

花帆「っ!」

コズエ「守るわよ。私達の世界を!」

花帆「──はい!」


621 : 名無しで叶える物語◆cNmdoxDa★ :2025/10/27(月) 00:41:37 ???00
遂にオールスターだ、クライマックスも近い!?


622 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 21:51:37 ???00
サヤカ「……せっかくカホさんと二人きりだと思ったら……結局こうなるんですね」↓↓ ストン

花帆「気を付けてください!今のサヤカちゃんは、あの時とは別次元の強さです!」

花帆「特に、光るリングの攻撃……あれに当たると死んじゃうどころか、この世界から存在が消される可能性もあります!」

メグミ「消えたら回復もできないじゃん!?」

コズエ「厄介ね……もっとも、普通の斬撃だって防ぐ手段が見つからないけれど」

吟子『それなら、私に考えがあります』

花帆「吟子ちゃん?」

吟子『みなさんは"私達"とは違うから、どれくらい効果があるのかわからないけど……』

吟子『それでも、きっと力になるなるはずです!』

✨✨キラキラ

コズエ「な、なに?」✨

メグミ「体が光ってる!?」✨

ツヅリ「違う。光ってるのは、服の方だ」✨

✨ピカーーン!


623 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 21:53:26 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『アップロード完了』


『mode:ユメワズライ』

『mode:COMPASS』

『mode:全方位キュン♡』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ギンコ「これって、ドレス?なんて煌びやか……」

ルリノ「ルリ、聖職者なのにこんな派手な服着て怒られないかな……?」

カチマチ『カチマチなんて人間じゃないのに服着てます!』

メグミ「大丈夫!二人とも似合ってるよ☆」

コズエ「……私とギンコさんだけ、却って装甲が薄くなってる気がするのだけれど」

コズエ「というか、露出が……どうして左肩がこんなに出ているの?足元も……///」

花帆「ずるーーい!吟子ちゃんあたしは!?あたしにも着せてくれないの!?」

吟子『神様なんだから自分で用意できるでしょ!このだら!』

花帆「え〜〜〜!吟子ちゃんに作って欲しかったのに〜〜!」

吟子(ほんっと花帆先輩は……!)💢


624 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 21:56:46 ???00
サヤカ「余所見をしすぎですよ!」シュッ!

花帆「!!」

コズエ「危ない!」バッ!

コズエはカホの前に飛び出て、露出だらけの腕でサヤカの斬撃を受け止める。

コズエ「うぐっ!」

花帆「はっ!コズエちゃん!」

コズエ「──あら?」

コズエ「切れてない?何故かしら……腕には布切れ一枚着けていないのに……」

コズエ(いえ、違うわ。露出部分も含めて、全身を薄い魔力の幕が覆っている……)

吟子『その衣装は、みなさんのモデルになった先輩方が、スクールアイドルの集大成として作った衣装──』

吟子『言わば、"今"の私達にとっての最終決戦装備です』

吟子『見た目は装備らしくないかもしれませんが、魔力で編まれているので見た目以上に頑丈なはずです!』

ツヅリ「そっか。だからかな?すごく勇気が湧いてくる」

ツヅリ「それに、あたたかい気持ちも」

ルリノ「もしかして、サヤカちゃんが着てるあのピンク色の服も?」

花帆「うん……そのせいで、生半可な攻撃はほとんど効かない……」

ルリノ「なるほどね〜それなら、ルリが何とかできるかも!」

花帆「え?」

ルリノ「みんなお願い!ルリがサヤカちゃんに触れるように、隙をつくって欲しい!」

コズエ「わかったわ」ザッ

ツヅリ「やってみる」🗡スッ


625 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:00:10 ???00
サヤカ「今更、この世界の人間に用は無いのですが──」

サヤカ「またツヅリさんに会えたので、それで良しとしてあげますね」

ツヅリ「サヤ……ボクは結局、サヤのこと何もわかってなかったんだね」

ツヅリ「でも、今はそれでよかったと思うよ。全部わかってたら、きっとあの温かい日々は無かったから」

ツヅリ「サヤからもらった温かさ。その全てが間違いだったなんて、ボクは思わない」

サヤカ「ツヅリさん……♡」

ツヅリ「だからこそ、サヤがこれ以上間違わないように、ボクはキミを止めないといけない」🗡

サヤカ「はい♡来てください!ツヅリさんの全部をわたしに──」

ガブッ!

サヤカ「!?」

カチマチ『ちぇすとーー!』ブンッ!

カチマチはサヤカの背後から腕に噛み付き、そのままぐるりと一回転してコズエ達の方へ放り投げる。

サヤカ「くっ!いつの間に──!」

コズエ「やっぱり、ツヅリに夢中で周りへの注意が散漫になったわね!」

コズエ(カチマチさんに乗ってる間、放電は全て私が保存魔法で受け止めていた。出し惜しみはしない!)

コズエ『フルリリース:アンペア!』✊⚡️ドゴッ!

サヤカ「ぐっ──あ"あ"あ"あ"あ"!!」⚡️⚡️ビリビリ

鳩尾に打ち込まれた拳から、サヤカの体に高電圧の電流が流れる。

コズエ「ルリノさん!今のうちに!」


626 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:02:50 ???00
ルリノ「うん!──!?」ドスン!

ガタガタガタガタ!

メグミ「っ!また地面が割れてる……!」

ルリノが手を伸ばそうとした矢先、サヤカとコズエの間の地面に亀裂が入る。

亀裂はやがて崖となり、サヤカとその後ろにいたカチマチ、それ以外の者が分かたれてしまう。

サヤカ「あなたに用はないんですよ……コズエさん……」⚡️ビリリ…

カチマチ『みなさん!』

ツヅリ「……」三タンッ!

サヤカ「!」

スタッ!

ツヅリ「じゃあ、ボクは?」

サヤカ「……もちろん、大歓迎です」ニコッ

コズエ「ツヅリ!カチマチさん!私達もすぐに行くわ!それまで耐えてちょうだい!」

花帆「サヤカちゃんは目に見えない斬撃を飛ばしてきます!それにも気を付けてくださーい!」

ツヅリ「わかった」

カチマチ『ツヅリさん……!』ススッ

ツヅリ「うん。行こう、スズ」🗡


627 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:06:21 ???00
サヤカ「動物を殺すのはさすがに心が痛むんですよね……"マッシュさん"の時もそうでした」

ツヅリ「っ!」ビクッ

サヤカ(ふふっ、動揺しましたね)スッ

カチマチ『──』⚡️バチン!

サヤカ「!!」ピシッ

ツヅリに向かって伸ばした手が、高速で近づいてきたカチマチによって弾かれる。

カチマチ『今のツヅリさんはひとりじゃありません!ツヅリさんのサポートは、カチマチがします!』⚡️

ツヅリ「……ありがとう。それならボクも安心だ」

サヤカ「このっ!」シュッ!

カチマチ『はっ!』⚡️三ササッ

サヤカ「ちょこまかと鬱陶しい……」

カチマチ『サヤカさんに言われた通り、速さを活かして隙を突く戦い方に変えたんです!』

サヤカ「それはそれは……お利口さんですね!」シュッ!

サヤカは動き回るカチマチの軌道を読んで、進行方向上に透明な斬撃を放つ。

カチマチはまだ気が付いていない。

サヤカ(とった──)

ツヅリ「……」🗡カキン!

サヤカ「え?」

しかし、その攻撃はツヅリの剣によって受け止められてしまった。

サヤカ(まぐれ……?)シュッ!シュッ!シュッ!

ツヅリ「……」🗡カキン!カキン!カキン!

サヤカは立て続けに斬撃を飛ばすが、見えないはずの攻撃は尽くツヅリによって防がれる。

サヤカ「なんで……!」


628 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:10:08 ???00
ツヅリ「見えなくてもわかるよ。目をつぶっててもわかる」

ツヅリ「サヤが出す攻撃なら、心で感じられるから」

サヤカ「!!」ブルル…!

サヤカ「……あまりわたしを喜ばせないでくださいよ。ツヅリさん!」🔯キーン!

カチマチ『光の輪です!』

ツヅリ「スズ!」バッ

カチマチ『はい!』バッ

スパ────ン!

光の輪は地面を斜めに切断し、足場は再び大きく変動する。

ゴゴゴゴ!

ツヅリ「ほっ!とっ!」タン!タン!

サヤカ「……」三サッ!

ツヅリ「!!」

サヤカ「また首を切り裂いてあげます」

鼻先が触れ合う程に急接近し、サヤカはツヅリの首に手を伸ばす。

ピシッ!

ツヅリ「っ!」タラ…

魔力の装甲を織り込んで出力を上げた斬撃が、ツヅリの頸動脈に傷を付ける。

サヤカ「あぁ……///やっぱり、なんて綺麗な──うぐっ!?」ドゴッ

ツヅリ「……」✊ドカ!ドカ!

急所を切られたにも関わらず、ツヅリは一切の動揺を見せずにサヤカの体に拳や蹴りを打ち込む。

その動きはどことなくコズエに似ていたが、コズエよりも僅かに流動的で、まるでダンスを踊っているようだった。

途切れることのない殴打は反撃の隙がなく、サヤカは堪らずツヅリから距離をとる。


629 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:13:15 ???00
サヤカ「くっ!剣術だけでなく体術まで……!」

ツヅリ「昔サチから教わったんだ。一応覚えておいた方がいいって」

ツヅリ「一回見せてもらっただけだけど」

サヤカ「天才とはツヅリさんのことを指す言葉だったんですね。もしもあなたにもオリジナルがいるのなら、どんな人物なのか会ってみたかったです」🔯キーン

ツヅリ「……」ダッ!

サヤカが再び光の輪を展開したのを見て、ツヅリは剣を握り直してサヤカの元へ走り出す。

サヤカ「はっ!」🔯

スパ──────ン!

ツヅリ「……」ヒラリ

水平に展開した光を、ツヅリは蝶のようにヒラリと躱し、そのままサヤカに斬りかかる。

ツヅリ「……」ブンッ!

サヤカ「それは、予想の範疇です」🔯キーン

ツヅリ「!!」

サヤカは後ろ手に隠していた小さな光の輪を、そのままの大きさで振り上げる。

スパン!

ツヅリ「うっ……!」ブシャー!

光の輪はツヅリの体を逆袈裟斬りにし、同時に自身に振り下ろされた剣も真っ二つに切断した。

ツヅリ「……っ」ガクン

サヤカ「無茶をしすぎですよ、ツヅリさん。以前のあなたなら、魔法も使わず不用意に敵に近づいたりしなかったのでは?」

ツヅリ「そうだね……でも、無茶ができるようになったのは、ボクが倒れても後を任せられる仲間ができたからだ」


630 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:16:53 ???00
サヤカ「不完全になってしまったんですね。ツヅリさ──ん?」チラッ

ふと、ツヅリの手元に視線を向けたサヤカは、その手が握っている物体に違和感を覚える。

サヤカ(あれは……鞘?剣じゃない)

サヤカ(それなら、本物の剣はどこに──)

⚡️パチパチ……

ツヅリ「サヤはボクのことばかり気にしてたけど、サヤが本当に警戒するべきだったのはボクじゃない」

⚡️⚡️バチバチィ!!

サヤカ「!!」クルッ

背後から空気が痺れるような気配を感じ、サヤカは後ろを振り返る。

そこには、全身の毛を逆立たせ、電気を纏い黄金に輝くカチマチの姿があった。

その口には、ツヅリから渡された剣が咥えられている。

カチマチ『時間稼ぎをしてくれてありがとうございます!おかげでチャージ満タン……ビリビリのカチマチです!!』⚡️⚡️

サヤカ「ツヅリさんを時間稼ぎに!?なんて贅沢な……使い魔ごときがツヅリさんより優れているとでも?」

ツヅリ「スズはすごいよ。もしかしたら、ボクたちの中で一番強いかもしれない」

ツヅリ「それを、今ここで"証明"しよう」


631 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:21:35 ???00
カチマチ「グルルルル!」⚡️⚡️⚡️

体内に留めきれなくなった電流が、無差別に周囲に放電されている。

ほんの少しの刺激で爆発してしまうような、飽和寸前の雷がカチマチの体から溢れ出る。

カチマチ(あの日、カホさんと契約をして、カチマチにも役割ができたと思えて嬉しかった)

カチマチ(今、カホさんを守ることが、世界を救うことにも繋がるのなら──)

カチマチ(カチマチは、ここで全力を出し切ります!!)⚡️

カチマチ『必殺!ファーストスター!!』🗡⚡️⚡️⚡️ダンッ!

サヤカ(来────)

🗡⚡️ズバババババ!!

瞬きする間もなく繰り出された五連撃が、サヤカの体を斬りつける。

帯電した剣は魔力の服さえも切り裂き、初めてサヤカに明確な傷を与えた。

サヤカ「っ!!」ビシャッ!

カチマチが通り過ぎた後は高電圧による熱で発光し、地面にはオレンジ色の五芒星が証のように刻みつけられていた。

サヤカ「まさか、これ程とは……」ガクン

ツヅリ(電気はあんまり効いてない。でも、切り傷はついた。もしかして──)


632 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:24:12 ???00
カチマチ『はぁ、はぁ……どうだ!』

サヤカ「……薄皮を一枚切れた程度で、調子に乗らないことです!」シュッ!

カチマチ『うわっ!?』ピシッ

ツヅリ「スズ!」

サヤカ「あなたの全力を持ってしても、わたしを倒し切るまでは至りません!」

カチマチ『っ!完全に倒せなくてもいいんです!だって──』

その時、三人の頭上に大きな影が落ちる。

カチマチ『まだ、仲間がいます!』

ブンッ!

サヤカ「!」

ガシャーーン!!

飛翔してきたロボットが、その大きな手でサヤカの体を押し潰す。

メグミ「やったんじゃない!?」

姫芽「いえ!まだです!これくらいで倒せてたら苦労しません!」

さやか「このっ……!」グググ↑

メグミ「嘘……受け止めたの?サヤカちゃんコズエ並に頑丈になってない!?」

姫芽「それも多分、魔物化とあの服の力が合わさってるせいです」

姫芽「やっぱり、あの服を剥ぎ取らないとダメか……」


633 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:27:08 ???00
姫芽「メグちゃん!今のうちにツヅリさん達の回復を!」

メグミ「わかった!」ピョン!

メグミはロボットの操縦席から飛び出し、ツヅリ達の元へ駆け寄る。

メグミ『メグ リカバー!』

カチマチ『ありがとうございます!』

ツヅリ「ありがとう。メグ」

メグミ「ツヅリすごい怪我じゃん……無茶しすぎ!」

ツヅリ「でも、メグが回復してくれると思ったから」

メグミ「頼ってくれるのは嬉しいけど、私が来られなかったらどうするつもりだったの!もっと自分を大事にしなさい!」

ツヅリ「怒られた」

メグミ「まったく!コズエといいツヅリといい、治るからって怪我しても大丈夫って思考はやめてよね!」

ツヅリ「ごめんなさい……」


634 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/10/29(水) 22:34:21 ???00
ギギギ……ダン↑

姫芽「うおっと……!」クラッ

メグミ「!」

サヤカ「やっぱり、回復役は先に潰しておかないとですね……」

メグミ「くっ!しぶとい!」

ツヅリ「みんな聞いて欲しい。サヤが着てる服についてだ」

メグミ「なに?弱点でもわかった?」

ツヅリ「うん。あの服は結界魔法と同じなんだ。魔法攻撃には強いけど、剣とかの攻撃には弱い」

メグミ「物理攻撃が有効ってことか!」

姫芽「なるほど〜だから魔弾が直撃してもピンピンしてた訳ですね」

姫芽「だったら!なおさらこのロボットの出番ですねぇ!」

姫芽「お二人ともよく頑張ってくれました!後は任せてください!」

姫芽「次は!みらぱのターンだあ!」


635 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 21:53:56 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【数分前】

コズエ「私もツヅリたちの方へ行くわ!」ダッ

ジジジ──

花帆「っ!ダメ!」ガシ!

コズエ「!?」グイッ

コズエ「カホ?大丈夫よ。この程度の崖、私なら越えられるわ」

花帆「そうじゃなくて!今、崖に近づいた時にコズエちゃんの体がぼやけて……」

コズエ「え?」

ギンコ「たしかに、一瞬でしたけど私にもそう見えました……」

花帆「あんまり近づかない方がいいのかもしれません。これはただの地割れじゃないですし」

コズエ「仕方がないわね……遠回りをしましょう!まだ地面が続いている場所があるはずよ!」ダッ

花帆「はい!」

ギンコ「わかりました!」

タッタッタッ──


636 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 21:55:49 ???00
メグミ「え、走るの!?ちょっと待ってよ!私まだちゃんと歩けな──」

メグミ「どわっ!?」ドテン!

メグミ「…………むぅー!」

メグミ「置いていくなあーー!」

ルリノ「メグちゃん?大丈夫!?」

メグミ「ルリノちゃーん!助けてー!」

ルリノ「あ、そっか……こんな足場じゃメグちゃん走れないよね。肩貸すね!」

メグミ「ありがと……」

<ハワワ…メグルリ〜♡

メグミ「ん?今変な鳴き声が聞こえなかった?」

ルリノ「見て!さっきのゴーレムの中から人が!」

姫芽「いや〜異世界とはいえ久しぶりのめぐるりは五臓六腑に効きますな〜」

メグミ「あれ?なんか聞いたことある声だと思ったら、ヒメちゃんじゃん!」

メグミ「そっか。カホちゃんが元いた世界の友達だったんだ」

姫芽「どうも〜かほせんぱいの後輩の安養寺姫芽です〜」

姫芽「あの時はちゃんとあいさつもできなくてすみませんでした」


637 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 21:58:22 ???00
ルリノ「メグちゃんは会ったことあるんだ?」

メグミ「うん。前に温泉旅館に閉じ込められたことあったじゃん?あそこから帰ったら、姫芽ちゃんが家に来ててね」

姫芽「結局、すぐにかほせんぱいに監禁されちゃったんですけどね〜とほほ……」

ルリノ「……その時も、カホちゃんのことを取り返しに来てたの?」

姫芽「…………はい」

ルリノ「そっか……」

姫芽「……」

ルリノ「……」

メグミ「もう!今はそっちの話はいいの!目の前の問題(サヤカちゃん)を解決する方が先でしょ!」

ルリノ「そ、そうだよね!ごめん!」

メグミ「ねえ姫芽ちゃん、そのゴーレムに乗せてくれない?私歩くの疲れちゃって……」

姫芽「もちろんです!──と、言いたいところなんですけど……」

姫芽「すみません……これ壊れちゃって、もう動かないっぽいんですよね」

メグミ「そんなぁー!」


638 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:00:46 ???00
姫芽「面目ないです……」

瑠璃乃『そうだ!ルリにちょっと考えがあるんだけど──』

メグミ「え?ルリノちゃん?」

ルリノ「今のはルリじゃないよ!?」

瑠璃乃『あ、ごめん!急に話しかけちゃった!』

姫芽「今のはアタシの世界のるりちゃんせんぱいですね」

メグミ「あー!そっちの瑠璃乃ちゃんね!でもなんで声が聞こえるの?カチマチちゃんいないのに」

瑠璃乃『花帆ちゃんやひめっちに近づいたから、通信が届くようになったんだよ』

瑠璃乃『それでね。めぐちゃ──メグミさんに頼みたいことが……』

メグミ「メグちゃんでいいよ☆頼みってなに?」

瑠璃乃『ありがとう!あのね──』ゴニョ ゴニョ……

メグミ「…………ん?何それ?どういうこと?」

瑠璃乃『いいから!試しにやってみて!』

メグミ「まあ、減るもんじゃないからいいけど……」


639 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:06:21 ???00
メグミ「コホン!姫芽ちゃん!」

姫芽「はい?」

メグミ『がんばってる君のことが、大好きだよ♡ん〜っま!』〜♡

姫芽「ッ !!!!」💘ズッキュン

姫芽「ぁ──ぁぁ──」ガクガク…

ルリノ「ひ、姫芽ちゃん……?」

姫芽「██▇▆▆▆▆▄▄▄!」🔥

ルリノ「うわっ!?びっくりした!」

メグミ「ちょっと、あの子大丈夫なの?ドラゴンの咆哮みたいな声出してるけど……?」

瑠璃乃『大丈夫。いつもあんな感じだから』

メグミ「それは本当に大丈夫なの?(頭が)」

姫芽「め"ぐ"ち"ゃ"ーーん"!!」

姫芽「大大大大大大大大大好きですーーー!!」

ピピピピピ!

『制御室から大量の魔力供給を検知しました』

『再起動完了。自己修復シークエンスを開始します』⚙️ガチャカチャ…

瑠璃乃『よっしゃ!思った通り!』

セラス『推しからのファンサによる魔力の制限解除!』

吟子『さすが人たらし……』

メグミ「失礼だなあ!るりちゃん一筋だよ!」


640 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:09:46 ???00
『修復完了しました。いつでも行けます。マスター』

姫芽「よしっ!お二人とも乗ってください!ムラノサヤカの所まで連れていきます!」

メグミ「ありがと!」

ルリノ「これでサヤカちゃんを倒せるの?」

姫芽「ぶっちゃけ勝率はかなり低いですね〜装甲が厚すぎますから」

ルリノ「じゃあやっぱり、ルリがサヤカちゃんの服を何とかするしかないね」

メグミ「さっきもそう言ってたけど、何をするつもりなの?」

ルリノ「浄化魔法だよ!あれは魔力を分解して魔法を解除できるから、魔力で編まれた服なら壊せると思う!」

メグミ「あ、なるほど!その手があったか!」

姫芽「それならちゃんと作戦を考えないとですね。多分、ルリちゃんが何か企んでることは向こうも勘づいてると思いますし」

ルリノ「まあ、簡単には近づかせてくれないよね……」

メグミ「じゃあさ、こういう作戦はどう?さっき思いついたんだけど──」

姫芽「ふむふむ……なるほど、一発勝負の"賭け"になりますが、それなら意表を突けるかもしれません」

メグミ「向こうにいる二人には私が作戦を伝えるよ。だからルリノちゃんはいい感じのタイミングまで隠れてて!」

ルリノ「わかった!」

姫芽「アタシはできる限り相手の気を引く係ですね!」

メグミ「危険な役でごめんね……」

姫芽「大丈夫です!アタシに任せてください!」

姫芽「パワーアップしたロボットの力を見せつけてやりますよ〜!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


641 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:14:20 ???00
💥💥ガシャーーン!

🚨『警告。全機能の90%が応答停止しました』

姫芽「くっ!!」

メグミ「姫芽ちゃん!」

サヤカ「そんなガラクタごときで、わたしを倒せるわけないじゃないですか」

姫芽「疲れってものがないんですか……!」

サヤカ「体力の多さはオリジナルのわたし由来のものだそうです」

姫芽「さやかせんぱいもここまで化け物体力じゃなかったですよ!」🕹

ガシッ!

サヤカ「!」

ロボットの左手がサヤカの体を掴み、限界まで搾り上げる。

サヤカ「がはっ──!」

姫芽「尊敬するせんぱいのこんな姿見たくないんですけどねえ!」🕹ガチャ

↓↓ブンッ!

ロボットはサヤカを握った手を高く掲げると、そのまま振り下ろし、サヤカを地面に叩きつけた。

💥ドシーン!

サヤカ「っ……!」


642 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:20:51 ???00
姫芽「もういっちょお!」🕹

↑↑ウィーン

サヤカ「……調子に──」🔯キーン

サヤカ「乗らないでください!」

スパ──────ン!

姫芽「おわっ!?」

再びロボットが腕を振り下ろそうとした時、光の輪がロボットの体を真っ二つに切断する。

ロボットの胸から上はノイズがかかった後に消滅し、操縦席に座っていた姫芽の体が露になる。

姫芽「あぶなぁ……あと少しズレてたら首が飛んでた──」

サヤカ「心配しなくとも、それはすぐに現実になります」スタッ

姫芽「!!」🔫スチャ

スパン!

姫芽「あ──」🔫バラバラ

姫芽はすかさず腰に付けていた銃を手に取るが、それをサヤカに向けた瞬間、銃はバラバラに破壊されてしまった。

サヤカ「あなたの武器は以前に見ました。今回も当然持っていると予想していましたよ」

姫芽「……もしかしてかほせんぱい、さやかせんぱいのことサイボーグか何かだとでも思ってたんですか?」

姫芽「いくらなんでも強キャラにしすぎですよ……」


643 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:28:59 ???00
サヤカ「前回は決着をつけられませんでしたからね。今度こそ、その首をもらいますよ」スッ

姫芽「っ!」ゾワッ

サヤカが姫芽の首に指を向けた瞬間、姫芽は全身が粟立つ感覚に襲われる。

姫芽(これが死の恐怖──さやかせんぱいの冷たい目……一生トラウマになりそう……)

姫芽「……」ゴクリ

姫芽「……たとえ、勝てなくても──」

姫芽「ただでなんか負けてやるもんかあ!」

✨キラキラ……ピカーン!

サヤカ「!」

その時、空から一筋の光が降り立ち、二人の体を包み込んだ。

サヤカ「これは……!」✨🔥ジュ

姫芽「ここに来る前に、メグちゃんに烙印を付けてもらってたんですよ!」✨🔥ジュ

姫芽「アタシはこの世界からかほせんぱいを奪いに来た"悪人"ですからねぇ!!」

サヤカ「っ!」🔥

姫芽「さあ!死なば諸共──」

スパン!ブシャー

姫芽「」バタン

メグミ「!!」


644 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:34:25 ???00
サヤカ「道連れにするつもりだったのかもしれませんが……残念ながら、わたしには目眩し程度にしかなりませんよ」

サヤカ「この勝負、わたしの勝ちです」

姫芽「」✨キラキラ……

首を切り落とされ、姫芽の意識が光の粒子となって肉体から抜けてゆく。

光は空に登ってゆき、やがて虚空に現れた穴に吸い込まれ、現実世界へと帰っていった。

サヤカ(『穴』……?もしかして、あれがこの世界の外側に通ずる道──)

「目眩し程度にしかならなくても、ルリにはそれだけで充分だ!」ザザッ

サヤカ(来ましたね!)シュッ!

後ろから聞こえてきた声に、サヤカは瞬時に振り返り斬撃を飛ばす。

ルリノがコズエ達に、『自分があの服を何とかする』と宣言していたのを、サヤカはしっかりと聞いていた。

故に、姫芽とメグミがやって来た時点で、ルリノもどこかで様子をうかがっているものだと警戒していた。

サヤカ(全ての可能性を考慮していれば、わたしの性能で負けることはない!)

正確無比に飛ばした斬撃は、ルリノの体を真っ二つに切断し──


645 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:39:45 ???00
カチマチ『はっ!』三ヒョイ!

サヤカ「え?」

しかし、後ろを振り返ったサヤカの目に写ったのは、斬撃を軽々と避けるカチマチの姿だった。

サヤカ「カチマチさん?今たしかに、ルリノさんの声がしたはず──」

✋ピト

ルリノ『エクス ピューリファイ』💠

サヤカ「!?」💠キラーン

死角から現れたルリノが、サヤカの服に触れて浄化魔法を発動する。

その瞬間、魔力で編まれた服は瞬く間に霧散し、元の白と青を基調とした町娘の服に戻ってしまった。

サヤカ「しまった……!このっ!」シュッ

🗡カキン!

サヤカ「!」

ツヅリ「さっきのお返し」🗡シュッ!

サヤカ「ぐっ……!!」ザクッ!

ツヅリはルリノを庇うと、そのままサヤカの体を袈裟斬りにする。

すると、先程までカチマチが本気を出してやっと傷が着く程度だった体に、いとも簡単に剣が通った。


646 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:46:27 ???00
サヤカ「っ!」三サッ

サヤカ「今のは、いったいどういうからくりですか……」タラ…

メグミ「サヤカちゃんが最初に反応した声は、カチマチちゃんの鈴から聞こえた向こうの瑠璃乃ちゃんの声だよ」

メグミ「私でもわからないくらいだから、きっとサヤカちゃんも騙せると思ったんだ」

瑠璃乃『どうもールリだよ!まんまと引っかかってくれたね!』

ルリノ「そしてその隙に、本命のルリがサヤカちゃんの死角から近づいて浄化魔法を当てる──という作戦でした!」

サヤカ「くっ……!」

瑠璃乃『あ、ひめっち急に起き上がっちゃダメだよ!』

姫芽『ムラノサヤカ!』

サヤカ「!」

姫芽『勝負に勝っただあ?違いますね。確かに、試合はアタシの負けです……でも!』

姫芽『"勝負"は!アタシたちの勝ちだあーー!ざまぁ見ろー!』


647 : 名無しで叶える物語◆6xm7Myv1★ :2025/11/01(土) 22:54:04 ???00
サヤカ「ちっ……」

メグミ「これで体を守るものはなくなった!観念するなら今のうちだよ!」

サヤカ「装備を剥いだくらいで、勝った気にならないでください!」

サヤカ「肉体の性能は、依然としてわたしの方があなた方を上回っています!」

「──それなら、せいぜい耐えてみることね」

サヤカ「!!」

コズエ『フルリリース:インパクト!』✊💥ドゴーン!

サヤカ「ごはっ……!」ベキ!

空気を揺らす程の衝撃と共に、サヤカの体が横に吹き飛ばされる。

メグミ「コズエ!」

コズエ「遅くなってごめんなさい!」

花帆「あたしとギンコちゃんもいます!」

ギンコ「魔力の服は消えたんですね!これなら私の魔法でも通る!」

コズエ「さあ!一気に畳み掛けるわよ!」

「「了解!」」


648 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:33:38 ???00
サヤカ「げぼっ……げぼっ……!」

サヤカ(さすがに、痛いですね……)

サヤカ(装備を消されたのはもちろんですが、今までカホさんと戦ってきたダメージも確実に蓄積してる……)

サヤカ「もう、遊んでいる余裕はなさそうですね」ムクッ

サヤカ(ここからは、いたぶるためではなく、"殺すため"に)グッ…

コズエ「みんな!サヤカさんに反撃の隙を与えないように、一斉に攻撃を──」

サヤカ「」パッ!

コズエ「!!」

コズエ(消えた!?)

スパーン!

メグミ「え──」コロッ…

サヤカ「」ザッ!

弾けるように飛び出したサヤカは、一瞬でメグミに距離を詰め、その長い髪ごと首を切り落とす。

急な筋肉の収縮により右足のアキレス腱が切れたが、少し待てば再生するので気にしない。

サヤカ(まずは一人目の回復役。次は──)


649 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:35:22 ???00
花帆『エリ──」スパン!

花帆「ごぼっ」

サヤカ(同じ回復魔法を使えるカホさんの喉を潰す!)

メグミを殺し、遠隔で花帆の喉を掻き切る。この間わずか一秒。

そのたった一秒で、コズエのパーティは生命線を失った。

ルリノ「──メグちゃん?」

サヤカ(他に回復魔法を使える可能性があるのは、シスターであるルリノさんと、魔法使いのギンコさん)

サヤカ(メグミさんは完全に死んだから、普通の回復魔法では生き返らない。となると近くにいるルリノさんは無視でいい)

サヤカ(それなら!)三ダッ!

ギンコ「!」

サヤカはまたもロケットのように駆け出し、ギンコに向かって手を伸ばす。

一切の無駄なく、彼女たちを全滅させるための最適な行動を選択する。

サヤカ(可能性の芽は全て潰──)


650 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:38:05 ???00
ポーン三

サヤカ「え?」

突然、サヤカの目の前に杖が飛んできた。

ギンコが回復魔法を持っているのなら、花帆を回復しようとするだろう。回復魔法がないのなら、攻撃を仕掛けてくるはずだ。

そう予想し、ギンコの間合いだけを注意していたサヤカは、自身の間合いに投げ込まれた杖に咄嗟に反応できなかった。

ギンコ『フレアボール』

三🔥ボッ…

🔥🔥🔥🔥バーン!

サヤカ「ッ!!!」🔥

投げ込まれた杖の先から炎が爆ぜ、サヤカの体を包み込む。

ギンコ「っ!」パシッ!

ギンコ『フローティア!』

サヤカ「!?」↑フワッ

さらに、ギンコは爆発の衝撃で跳ね返ってきた杖を空中でキャッチすると、浮遊魔法でサヤカの体を浮かせた。

ギンコ「今のあなたは空を飛べない!地面に足がつかなければ、それだけで動きは封じられる!」

サヤカ(──なんて、判断力!)

サヤカ(あの土壇場で唯一の武器を手放す選択ができるなんて……ギンコさん、いつの間にそんな度胸を身に付けたんですか!?)


651 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:39:43 ???00
サヤカ「っ……!」スッ

カチマチ『はっ!』⚡️

ツヅリ「はっ!」🗡

🗡⚡️ズバーン!

サヤカ「ぐっ……」

宙に浮くサヤカの体を、カチマチとツヅリが交差しながら切りつける。

コズエ「はあぁぁ!!」↑ゲシッ!

サヤカ「がばっ──」

さらに、コズエの全力の蹴りがサヤカの腹部に命中し、サヤカは真上に蹴り飛ばされた。

サヤカ「っ"〜〜〜!!」↑↑

ギンコ『リカバー!』✨

花帆「っ!『エリクサー』!」

メグミ「」キラキラ

メグミ「──ぷはっ!?」ビクン!

メグミ「あっぶなあーー!一瞬るりちゃんが迎えに来たのが見えたんだけど!」

メグミ「え?ていうか、誰が生き返らせてくれたの?」

ルリノ「カホちゃんだよ!」

メグミ「カホちゃんが……?」

花帆「実はあたし、全部の魔法使えるんです……隠していてごめんなさい……」

ルリノ「全部!?」

メグミ「すご……本当に神様なんだ……」

ギンコ「三人とも雑談は後にしてください!まだ終わっていません!」

花帆「あ、ごめん!あと……ありがとう、ギンコちゃん」


652 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:42:49 ???00
サヤカ「……」🔯キーーン

サヤカは空中で両手のひらに小さな光の輪を作り、それを地上に向かって投げる。

サヤカ「はっ!」ブン!

花帆『千変万華!』

🌸🌼🌸🌼ブワッ!

コズエ「ふっ!」スカッ!

ひとつの輪は花帆の魔法で花となり消え、もうひとつはコズエに避けられて地面に埋まる。

サヤカ「……」↓↓スタッ

花帆『グラヴィオン!』🔯バチバチ

サヤカ「」三バッ!

加重力魔法による拘束を掻い潜り、サヤカは花帆に向かって走り出す。

サヤカ(蘇生を防ぐのは失敗しましたが、どの道カホさんさえ殺してしまえばわたしの勝ち!)

花帆『リフトウォール!』

ズガン↑↑ ズガン↑↑ ズガン↑↑

サヤカ「邪魔です!」シュッ!

目の前に現れる壁を切り刻みながら、サヤカは速度を落とさず花帆に距離を詰める。

花帆「!」

サヤカ「届いた──」


653 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:47:00 ???00
カチマチ『シューティングスター!』⚡️三

ドン!

サヤカ「かっ──!」

サヤカの手が花帆に届く直前、サヤカの脇腹にカチマチが激突し、その体を弾き飛ばす。

サヤカ「うぐっ……!」ゴロゴロ…

コズエ「あなたの負けよ!サヤカさん!」

サヤカ「!!」

転がり込んだ先にいたコズエが、サヤカの顔面に向かって拳を振り下ろす。

コズエ『フルリリース:インパクト!』✊ブン!

サヤカ「まだ──負けていません!」

↑↑ スパ──ン!

コズエ「!?」

拳がサヤカの顔に当たる寸前、地面から光の輪が飛び出し、コズエの腕を切り落とした。

コズエ(まさか、さっき投げた光の輪を操って!?)

光の輪はフリスビーのように弧を描きながらサヤカの元へ舞い戻り、そのままコズエへ向かって飛んでいく。

サヤカ「はっ!」ブン

コズエ(まずい……!)

ギンコ『レプルス!』

コズエ「っ!」三グイン!

スカッ──

コズエ「助かったわ!ギンコさん!」

ギンコ「いえ!サポートは任せてください!」

花帆『千変万華!』

🌼🌸🌼🌸ブワッ!

サヤカ「ちっ……」


654 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:49:18 ???00
メグミ「コズエ!腕を見して!」

コズエ「ええ、でもこれは……」

ジジジ──

メグミ「何これ……?断面が変……」

切断された腕の断面には砂嵐のようなノイズが走っており、明らかに普通の切り傷とは異なっていた。

メグミ「血すら出てない……ううん!今はそんことより!」

メグミ『メグリカバー!』

ジジジ──

メグミ「治らない!?」

花帆「サヤカちゃんが、さっきの攻撃を『世界から切り離してる』って表現してました。多分、普通の切り傷とは全然違う仕組みなんだと思います……」

メグミ「じゃあ一生このままってこと!?」

コズエ「……」

コズエ「ツヅリ!剣を貸してちょうだい!」

ツヅリ「え?うん。わかった」🗡スッ

花帆「コズエちゃん?何を──」

コズエ「ふぅ────ふ"ん"っ!」🗡ザクッ!

花帆「!?」

コズエは自身の腕に剣を振り下ろし、ノイズが走った断面部分を切り落とす。

剣で切った断面からは、おびただしい量の血が吹き出ている。


655 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 21:53:21 ???00
メグミ「な、何してんの!?」

コズエ「いいから!早く回復魔法をっ!」

メグミ「っ……『メグリカバー』!」

ニョキニョキ!

コズエ「ふぅ……やっぱり、普通の切り傷で上書きすれば再生できるわね」

メグミ「バカっ!」ベシン!

コズエ「痛いっ!何するのよ!」

メグミ「どうしていつも相談せずに危険なことするわけ!?」

コズエ「一刻を争う状況なのだから仕方がないでしょう!」

メグミ「だからって……ちょっとくらい躊躇しなよ……」

コズエ「私が我慢すればいいだけだもの。気にしないわ」

花帆「……」

花帆(やっぱりコズエちゃんも、そういう気質なんですね……)


656 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:07:52 ???00
サヤカ「はぁ……はぁ……」

サヤカ(少しは回復できましたか……魔物化のおかげで傷の治りが早いのは助かります)

サヤカ(とはいえ、純粋に1対7という戦力差がきつい。数を減らしたいところですが、向こうには蘇生可能な回復魔法持ちが二人もいる……)

サヤカ(カホさんを殺して世界の崩壊を狙っても、コズエさんたちが盾になってるからカホさんに攻撃できない……)

サヤカ(──これ、勝ち目なくないですか?)

ギンコ『フローティア』

サヤカ「あ」↑ フワッ

ギンコ「油断しましたね」

サヤカ「ギンコさん……!」

ギンコ「私たちはもう油断をしません。サヤカさん相手に躊躇もしません」

ギンコ「この街の冒険者として、『ムラノサヤカ』を討伐します」

サヤカ「……随分と、勇敢になりましたね」

ギンコ「私だって、死線をくぐり抜けてきた冒険者です。昔の私だとは思わないでください」

サヤカ「わたしのいない間に、いったいどんな冒険があったのか、詳しく聞きたいところですが……」

ギンコ「殺人鬼に話すことはありません」

サヤカ「そうですか……残念です」


657 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:09:30 ???00
ツヅリ「最期に聞かせて欲しい。どうしてサヤは、人を殺したの?」

ツヅリ「それを間違いだとは思わなかったの?」

サヤカ「間違い……わたしは、自分の中から湧き上がる衝動に従ったまでです」

サヤカ「これはわたしの性であり、本能ですから。他人に否定される謂れはありません」

サヤカ「誰だって、お腹が空けば食事をするし、眠くなれば寝るでしょう?わたしはただ、殺したくなったから殺しただけです」

ツヅリ「そっか……」

サヤカ「理解できなくても構いません。わたしとあなた方は違う」

サヤカ「だいたい、わたしをそういう存在に設定したのは、そこにいるカホさんですよ?」

花帆「!」

サヤカ「わたしの行動を咎めるなら、そもそもわたしという存在を創ったカホさんを責めてください」

花帆「それは…………ごめんなさい……」

コズエ「カホ……」

メグミ「カホちゃん……」


658 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:10:44 ???00
サヤカ(……全員の注意がカホさんに向いた!今のうちに!)

サヤカ「……」シュッ!

ピシッ!

ギンコ「痛っ!」ポロッ

サヤカ「……!」タッタッタッ!

コズエ「しまった!逃げる気ね!」

カチマチ『カチマチに任せてください!』⚡️ダッ!

カチマチ『待てーーー!!』⚡️

ルリノ「あ!ひとりで行っちゃダメだよ!カチマチちゃん!」

サヤカ「くっ!着いてこないでください!」シュッ

カチマチ『ほっ!』サッ

サヤカは走りながら、追従してくるカチマチに斬撃を飛ばす。

だが、カチマチも軽やかな動きでそれを避け、じわじわとサヤカへと近づいていく。

デコボコに切り裂かれた地面は、飛べなくなったサヤカにとっては走りづらく、あっという間にカチマチに追いつかれてしまった。

カチマチ『捕まえました!』ドサッ!

サヤカ「うっ!」


659 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:14:17 ???00
カチマチ『サヤカさんは命を奪いすぎました!逃がしたりしません!』

サヤカ「"命"だなんて……本気で言っているんですか?」

サヤカ「この世界は所詮、カホさんが創った『箱庭』にすぎません。その中にいるわたしたちも、カホさんに生み出された人形──」

サヤカ「人も動物も魔物も、その命は偽物で、無価値なものです!」

カチマチ『そんなことありません!たとえ全部が偽物の世界でも!カチマチたちはたしかにこの街で生きています!』

カチマチ『カチマチたちの命は、無価値なんかじゃありません!!』

サヤカ「……そう思えるのは、カチマチさんが井の中の蛙だからですよ。外の世界を知れば、自分たちがいかに虚しい存在かわかります!」

🔯バチバチ──

カチマチ『?上から、何か──』

カチマチ『!!なな、何ですかあれ!?』

空を見上げたカチマチの目に飛び込んできたのは、一直線に伸びる空間の亀裂だった。

それはまるで、大きなポスターをナイフで切り裂いたように開け、裂け目の奥には宇宙を思わせる深淵が覗いている。

サヤカ「開"け"ぇ"ぇぇぇぇ!!!」🔯バチバチ!

ググググ……!

裂け目は徐々に大きくなり、やがて排水口の栓を抜いたように、地上にあるものを吸い込み出した。


660 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:16:40 ???00
コズエ「カホ!空のあれは何!?」

花帆「あれは……あたしが現実世界に戻されそうになった時に通った空間の穴──」

花帆「まさかサヤカちゃん!この世界から逃げる気なんじゃ!?」

サヤカ(ヒメさんが死んだ時、体から抜けた光が空間の穴に吸い込まれて行った……)

サヤカ(あの穴は恐らく、カホさんやヒメさんが元いた世界への帰り道)

サヤカ(それなら、そこを通ればわたしも向こう側の世界に逃げられるはず!)

花帆「そんなこと……させない!」バッ

花帆は空を飛んでサヤカの所へ向かおうとする。だが──

メグミ「きゃっ!?」↑フワッ

ルリノ「うわぁ!?」↑フワッ

コズエ「二人とも手を──あ」↑フワッ

花帆「!!まずい……『KNOT』!」

⛓️ジャラララ……ガシッ!

空の穴に吸い込まれそうになった皆を、花帆は慌てて鎖で地面に繋ぎ止める。

花帆(くっ……サヤカちゃんを止めに行きたいけど、みんなを放ってはおけない!)


661 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:20:30 ???00
カチマチ『うわぁ〜〜〜〜〜!』↑↑

サヤカ「……!」↑↑

カチマチとサヤカは、空間の裂け目に向かって落ちていく。

深淵のように真っ暗な亀裂の奥には、まるで星のように光るひとつの点が見える。

サヤカ(多分あれが出口!カホさんがやって来た"現実の世界"!)

カチマチ『ふん!』ガブ!

サヤカ「痛っ……!今更もう遅いですよ!カチマチさん!」

カチマチ『諦めません!サヤカさんを外に出しちゃダメだって、向こうの世界の人が言ってました!』

サヤカ「そうですか……つまりそれは、この世界から出てもわたしは消滅せずに、自由に行動できるということですね!」シュッ!

カチマチ『ぐわっ!』

サヤカはカチマチの顔を切りつけ、足に噛み付いていた顎を離させる。

サヤカ「カチマチさんも覚悟しておいた方がいいですよ!ここから先は、わたしたちの知る海より何倍も広い"新世界"です!」

カチマチ『!!』

二人は空間の裂け目へと落ち、その体にノイズが走る。

そこは出口であり、入口。無限に存在する『電子世界』同士を繋ぐパイプライン。

質量を保持したままそこを通り抜ければ、肉体は崩壊し、精神だけが電子の海に解き放たれることになるだろう。

その後、保護されるのか、バグとして処理されるのかは⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎たちに委ねられる。


662 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/03(月) 22:30:43 ???00
カチマチ『体が透き通って……!』ジジ…

サヤカ「これでわたしも!カホさんがいた世界に──」


⭐️キラーン!


???「させるかーーー!」↓↓ドシッ!

サヤカ「!?」

???「これでもくらえ!」🏹ズドーン!

サヤカ「ぐっ……!」↓↓

大きな弓のような武器に貫かれ、サヤカの体は元いた世界に落とされる。

弓を持っているのは、見たことのない白い少女。

???「はっ!」パシッ!

カチマチ『うわっ!』↓↓グイン

さらに、もう一人の黒い少女が、茨を操ってカチマチの体を巻き取り、地上へと牽引する。

???「大丈夫?カチマチちゃん!」

カチマチ『あなたは、どこかで──』

泉『二人とも、穴からは完全に抜けたかい?』

???「全員出られたよ!泉!」

泉『了解だ。ゲートを閉じよう』💻カタカタ…

サヤカ「っ!あなたたちは、いったい──」

???「花帆先輩とさやか先輩を助けに来ました!」

小鈴『魔法少女☆徒町小鈴!』

???「可憐なつぼみは美少女桜!しかしてその魂は──"煉獄い"」

セラス「魔法少女☆セラス柳田リズミックフェルト!」

小鈴&セラス「参上!!」

サヤカ「────は?」

花帆「えぇぇぇぇぇぇぇ!!?」


663 : 名無しで叶える物語◆izufAtYK★ :2025/11/03(月) 23:32:04 ???Sd
リズミックハート衣装の小鈴登場アツい、見た目はヴィランだけど味方って良いよね


664 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 00:05:09 ???00
小鈴「とう!」↓↓スタッ

セラス「ほっ!」↓↓スタッ

花帆「なんで小鈴ちゃんとせっちゃんがここに!?」

小鈴「もちろん!助太刀するためです!」

花帆「そんな、危険を犯してまで……」

セラス「わたしは出番が少なかったので、見せ場を作りに」

花帆「せっちゃんの動機はおかしくない!?」

セラス「だって花ちゃん、わたしのこと全然登場させてくれないし……院友なのに……」

花帆「ごめん〜!せっちゃんは見た目がお姫様すぎて冒険者って感じじゃなかったんだよ〜!」

カチマチ『カホさん、この人はもしかして……!』

花帆「うん。カチマチちゃんのモデルになった人、徒町小鈴ちゃんだよ!」

カチマチ『やっぱり!ドラゴンと戦った時にはお世話になりました!』

小鈴「そんな!徒町は何にもしてないよ!?あなたが頑張ったんだよ!」


665 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 00:06:52 ???00
ギンコ「こちらの白髪の方は……?私たちの中に似ている人はいないみたいですけど……」

セラス「どうも、セラス魔法少女カワイイフェルトです」=☆

ギンコ「……さっきと名前違くない?」

セラス「君のような勘のいいギンコは嫌いじゃないよ」

ギンコ(なんなんこの人……)

花帆「それにしても、二人ともどうやってこの世界に?」

セラス「泉にアカウントを偽造してもらった」

花帆「そうなの?」

小鈴「はい!徒町ごときの知識では、それ以上のことはわかりません!」

泉『簡単に説明すると、セラスは元々そっちに"いなかった"から作った。小鈴さんの場合、カチマチさんが動物だったから、人間体で別名義にすれば入れたってところかな』

泉『人選については、セラスが行きたがったのと、さやか先輩の意識を取り戻すのには、小鈴さんが適役だと思ったからだ』

小鈴「さやか先輩が簡単に負けるはずありません!きっとまだ意識は残ってるはずです!」


666 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 00:10:06 ???00
セラス「あと、花ちゃんに残念なお知らせがあります」

花帆「残念なお知らせ……?」

セラス「落ち着いて聞いて……この世界は、あと10分くらいで消滅します」

「「!!!」」

泉『あなたたちが苦戦している間に、プログラムの根幹的な部分がだいぶ壊れてしまった』

泉『死力を尽くして修復しているが……正直もう限界だ』

瑠璃乃『だから、一刻も早く解決するために小鈴ちゃんたちを派遣したの』

瑠璃乃『こんなこと言いたくないけど……花帆ちゃん、もう諦めて。このままだと、誰も帰ってこられなくなる!』

花帆「!」

メグミ「世界が消滅するって……止める手段はないの……?」

泉『残念ながら、それを考える暇さえない。タイムリミットは、今も刻一刻と迫っているんだ』

泉『これは他の人には言えないだろうから、私から言わせてもらう』

泉『私たちはもう、花帆先輩とさやか先輩、それから小鈴さんとセラスの帰還しか考えない』

ルリノ「それってつまり、そういうことだよね……」

泉『その上で、改めてお願いする。さやか先輩を取り戻すために、もう一度私たちに力を貸してほしい』


667 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 00:12:17 ???00
ギンコ「……サヤカさんを倒しても倒さなくても、私たちはこの世界と一緒に死ぬってことなんですよね?」

泉『そうだ。あなたたちは必ず死ぬ』

吟子『泉さん!そんなはっきりと言わなくても……』

泉『ここで誤魔化すのは逆に不誠実じゃないかな?』

吟子『だとしても、言い方っていうものがあるでしょ!』

コズエ「いいのよ。私たちが何者か教えてもらった時点で、どういう結末が訪れるかはわかっていたから……」

吟子『コズエさん……』

コズエ「その上で、私はまだ諦めないわ!この世界の存続を!そして──」

コズエ(カホのことも、ね……)

小鈴「そうです!泉ちゃんはああ言ってるけど、まだ希望はあるかもしれません!」

セラス「大丈夫。泉は天才だけど完璧ではないから。たまに冗談も言うし」

泉『さっきのは冗談で言った訳じゃないんだけどね』

メグミ「もう!どうせサヤカちゃんを倒さないとどうにもならないんでしょ!?だったら言い争っててもしょうがない!時間の無駄!」

ツヅリ「メグの言う通りだ。ボクたちは、ボクたちにできることをしよう」

花帆「みんな……ありがとうございます!」


668 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 00:17:29 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

↓↓ヒューン…

ドサッ!

サヤカ「ごぼっ……!」

サヤカはセラスに突き落とされた勢いのまま、地面に激突する。

多少体が頑丈とはいえ、骨は所々折れ、筋繊維が断裂と再生を繰り返す痛みは常に全身を襲っている。

サヤカ「…………冗談、きついですよ……」

サヤカ「ただでさえ勝ち目がないから、逃げ出そうとしたのに……さらに二人、得体の知れない戦力が追加だなんて……」

サヤカ「しかも、何ですか?スクールアイドルだの、ロボットだの、魔法少女だの……外の世界はそんなにも混沌としているんですか?」

サヤカ「まったく……こっちはカホさんと違って、神様でも魔王でもないんですから、明らかに過剰戦力ですよ……」


669 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 00:21:33 ???00
サヤカ「………………ふっ……」

サヤカ「ふふ…………あはっ……」

サヤカ「あはははははっ!!」

仰向けに倒れたまま、サヤカは掠れた笑い声をあげる。

サヤカ「もうほんと、くだらない」

サヤカ「全部、どうでもよくなってきました」

サヤカ「どうせ勝てないし、最期にもうひと暴れしてやりしょうか……」

サヤカ「向こうの人たちには、かなり買いかぶられている気がしますが……」

サヤカ「──"期待"には、答えないとですよね?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


670 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:39:43 ???00
ザッ……ザッ……ザッ……

セラス「あ!来たよ!花ちゃん!」

小鈴「さやか先輩!目を覚ましてください!」

サヤカ「……誰ですか?あなたたちは」

セラス「ふっ、よくぞ聞いてくれましたね!」

セラス「わたしは魔法少女☆セラス柳田キラリン──」

✊ドゴッ!

セラス「オエッ!?」

サヤカ「長い」

ズバッ──ズババババババババババ!

セラス「ッッッ"!!!」ピシッ!ピシッ!

花帆「せっちゃん!!」

鳩尾にめり込んだサヤカの拳から、マシンガンのように斬撃が放たれる。

魔法少女装備のおかげでバラバラにならずにすんでいるが、却って重いブローを何発も打ち込まれているような痛みがセラスを襲う。


671 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:41:48 ???00
セラス「このっ……!」🏹ズドン!

サヤカ「……」ヒョイ

セラス「!」

サヤカ「素人ですね。そういう動きです」ゲシッ!

セラス「うぐっ!」バタン

コズエ「まるで自分はプロみたいに言うわね!」✊ブン!

サヤカ「っ!」三サッ

小鈴「セラスちゃん大丈夫!?」

セラス(痛い──痛い痛い痛い痛い痛い!こんな痛み、入院中だって感じたことない……)

セラス(覚悟してきたはずなのに──怖い……足が、体が動かない……)ガクガク

ポン!

セラス「!」ビクッ

小鈴「セラスちゃんはここでみんなを守ってて!」

小鈴「さやか先輩を取り戻すのは、徒町の役目だから!」

セラス「小鈴先輩……」

小鈴「ちぇすとーー!!」ダッ

サヤカ「その掛け声……もしかしてカチマチさんの──」


672 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:44:55 ???00
小鈴「さやか先輩を──返せー!!」ブン!

小鈴は茨を鞭のように操り、サヤカに攻撃を仕掛ける。

サヤカ「ふっ!」三サッ

しかし、サヤカは伸びてきた茨を軽々と避けてみせた。

サヤカ(ひねりのない単純な攻撃……この子も戦闘には慣れていないようですね)

サヤカ「彼女はもう目覚めませんよ!」シュッ!

小鈴「っ!」ピシッ!

小鈴「そんなことない……!さやか先輩はまだちゃんといます!」

小鈴「お願いです!起きてください!さやか先輩は……そんな偽物なんかに負けるはずありません!」

小鈴「だってさやか先輩は──徒町の憧れの先輩だから!!」

ドクン!

サヤカ「!?」

サヤカ(今、何か──)

ガシッ!

サヤカ「あ」

一瞬の隙を突き、小鈴の茨がサヤカの体に巻き付く。

小鈴「捕まえました!」


673 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:47:37 ???00
サヤカ「こんなもの……!」シュッ!

ザクッ!

サヤカ「え……切れない!?」

小鈴「そう簡単には切れません!諦めないことが、徒町の唯一の取り柄だから!」

サヤカ「……諦め"きれない"、ということですか……」

小鈴「なるほど!?多分そういうことです!」

サヤカ「くだらない言葉遊びですね!」

小鈴(自分で言い出したのに!?)

サヤカ「蔓が切れないのなら、本体を攻撃するまで!」シュッ!

ザクザクザク!

小鈴「ぐっ……!」

サヤカ(どうせこの子も、戦ったことなんてない異世界人。体を切られた痛みですぐに怯んで──)

小鈴「こんな痛みなんかに……!負けるもんかぁ!!」

サヤカ「!?」

小鈴「おりゃあーー!!」ブオン!

サヤカ「っ!」三グイン

小鈴はサヤカを拘束した茨を力一杯に引き寄せ、花帆たちの方へと投げ飛ばす。

小鈴「花帆先輩!お願いします!!」

花帆「任せて……!」


674 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:49:55 ???00
花帆『ヴァリア+フレアボール+サンダー+ワールウィンド!』

空中に浮かんだ半径3m程の結界の中に、花帆は様々な攻撃魔法を閉じ込める。

結界の中は炎と雷が渦巻き、まるで小さな太陽のように紅い光を放っている。

花帆『レプルス!』🔯三🔴

サヤカ「!!」

💥💥💥🔥⚡️バーン!

結界はサヤカに当たった瞬間に弾け、圧縮された炎と雷が大きな爆発を起こす。

赤い雷は地面を砕き、炎は小鈴の茨さえも焼き尽くした。

メグミ「あっつ!ここまで熱が伝わってくるんだけど!」🔥

ギンコ「魔法装備が無い今のサヤカさんなら、これで……」

🔥🔥🔥🔥🔥ゴゴゴ……

ガサッ…

ギンコ「!」

サヤカ「……たしか、"こんな感じ"でしたよね?」

コズエ「何……あの姿は……」

業火の中から現れたのは、漆黒を身に纏った青い魔女。

長い髪はリボンが焼けて解き放たれ、青みがかった黒髪がゆらゆらと揺れている。

全身を包む黒いローブは、花帆の好きなファンタジー小説に登場する闇の魔法使いを連想させ、その背後には一輪の光輪が浮いていた。


675 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:51:57 ???00
サヤカ「凝った装飾はできませんが……急造の装備にしては上出来ですね」

吟子『まさか……自分で魔力を編んで服を作った!?』

姫芽『まさに魔王……ラスボスらしい装いになりましたね……』

サヤカ「ええ、そうでしょう。これこそが、あなたたちが望んだわたしの姿……」

サヤカ「こうあってほしいと"期待"して、カホさんはわたしを創ったんですよね?」

花帆「そんな……ことは……」

サヤカ「ならばその期待に答えましょう。あなたたちは、世界の終わりを迎えることはありません」

サヤカ「その前に、わたしが殺します」スッ…

ツヅリ「カホ!」ドン!

花帆「わっ!?」

ザン!!

サヤカが手を伸ばした瞬間、前方の空間は真っ二つに断絶される。

それは光の輪による攻撃に劣らない威力で、当たれば確実に消滅するギロチンの刃だった。

コズエ「さっきよりも格段に威力が上がっているわ……!」

ギンコ「でも、どうせ逃げ場なんてないんですから!」

メグミ「やるっきゃない!!」

ルリノ「ルリならまた装備を消せるかもしれないけど──」

花帆「ルリノちゃんは近づかないで!同じ手が通用する相手じゃない!」

花帆「せっちゃん!ルリノちゃんとメグちゃんを守って!」

セラス「え?わ、わかった……」


676 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:55:21 ???00
カチマチ『カチマチが先行します!みなさん後に続いてください!』⚡️ダッ!

カチマチを先頭に、一同はサヤカに向かって一斉に攻撃を仕掛ける。

小鈴「……!」ビュン!ビュン!

さらに、サヤカの背後からは小鈴が二本の茨を伸ばし、死角からの拘束を試みる。

サヤカ「すぅ────ふんっ!」

ザン!ザン!ザン!ザン!

コズエ「!」

対するサヤカは両手を前へ突き出すと、その指先に魔力を込め、扇状に十本の斬撃を飛ばす。

カチマチ『う"っ!』

ツヅリ「っ!」

コズエ「速いっ……!」

バシッ!三〇

小鈴「弾かれた!?」

サヤカの背後の光輪は、まるで意志を持っているかのように自動的に動き、小鈴の茨を弾き返す。

サヤカ「これでも切れないんですか……注意しないといけませんね」

ギンコ「カホさん!息を合わせましょう!」

花帆「うん!」

花帆『フローティア!』🔯バチバチ!

↑↑ フワー

ギンコ『フレアボール!』

🔥🔥ゴゴゴ!

花帆は割れた地面を宙に浮かせ、ギンコは花帆が浮かせた岩を炎で包み込む。

花帆『レプルス!』

ギンコ『レプルス!』

☄️☄️☄️三ビュン!

隕石のように燃えたぎる無数の岩が、サヤカに向かって降り注ぐ。


677 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 21:57:27 ???00
サヤカ「ふっ!」サッ!

サヤカはそれを飛び上がって避け、回避しきれないものは斬撃で迎撃する。

☄️ザン!☄️ザン!

サヤカ「今さらそんな攻撃当たりませんよ!」

小鈴「それなら、これでどうだ!!」☄️ブン!

サヤカ「!?──がっ!」ドン!

小鈴は飛んできた岩のひとつを茨で絡め取り、ハンマー投げの要領でサヤカにぶつけた。

さすがのサヤカもこれには耐えられず、地面に勢いよく叩き落とされる。

サヤカ「く……!」

ツヅリ「サヤ!」🗡ブン!

サヤカ「っ……!」サッ

ツヅリ「もうやめよう!戦う意味はない!」🗡ブン!ブン!

サヤカ「意味なんて、最初から求めていません!」シュ!

🗡カキン!

ツヅリ「あ」🗡ポーン

サヤカ「わたしはただ、生きたいように生きただけです!」

ザクッ!

ツヅリ「うっ……!」

サヤカ「さよならです!ツヅリさん!」スッ


678 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:01:09 ???00
カチマチ『させません!』ピョン!

サヤカ「!」

カチマチ『ほっ!』🗡ガブッ!

カチマチは弾き飛ばされた剣を空中でキャッチし、それをサヤカに投擲する。

カチマチ『てや!』三⚡️🗡ビュン!

サヤカ「ぐっ……!」⚡️ビリリ

ツヅリ「……」🗡パシッ

サヤカ「!」

ツヅリ「はっ!」🗡ブン!

サヤカ「させない!」三〇

体が痺れて動けないサヤカに代わり、光輪が盾のようにツヅリとサヤカの間に割って入る。

三〇🗡スパン!

ツヅリ(剣を壊された……でも!)

コズエ「ふん!」ゲシッ!

サヤカ「うぐっ……!」メキメキ

光輪が前に移動したことで、ガラ空きになった背中にコズエの蹴りが炸裂する。

サヤカ「……っ!鬱陶しいですね!」

〇キーン!

ツヅリ「!」

コズエ「!」

光輪は地面と平行になるように向きを変え、空気を切り裂く独特な音を奏で出す。

コズエ「来るわよ!みんな注意して!」

メグミ「伏せて!」ガシッ!

セラス「わっ!?」ドサ

花帆「ギンコちゃん!手を!」

ギンコ「!」ギュ!

スパ────────ン!


679 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:04:22 ???00
コズエ「……!」ピョン!

ツヅリ「……」ピョン!

広範囲に展開された光の輪を、一同は慣れた様子で回避する。

しかし、今まではすぐに消えていた光が、大きく拡がったままその場に残る。

〇ギュイーン!

ギンコ「何か変です!まだ終わってません!」

〇グラッ──

〇三ビュン!

ルリノ「!?」

巨大な光輪は僅かに傾くと、地面を切り付けながら猛スピードで動き回る。

ルリノ「危ない!」

セラス「きゃ!」

スパ──ン!

ルリノ「うわっ!」ドテン

セラス「ルリノさん!?」

メグミ「ルリノちゃん!脚が──」

ルリノ「あ、あれ?おかしいな……両足がなくなっちゃったや……」

メグミ「!!」

セラス「そんな……わたしを庇ったせいで……」

メグミ「見して!」

ルリノ「う、うん」

メグミ「これ……さっきのコズエの腕と同じだ……!」

ルリノ「なんか変な感じ……膝から下がないのに、痛くないし血も出てない……」

ルリノ「自分の足じゃなくなっちゃったみたい……」

セラス「っ……!」ペタン

セラス(わたしは……わたしは何のためにここに来たの……?)

セラス(このままじゃ、本当にただのお荷物だ──)


680 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:12:45 ???00
ギュイーン三〇
〇三ギュイーン!

光輪はコマのようにグルグルと地上を駆け回り、無差別に地面を切り刻んでいく。

コズエや花帆たちは、それを避けながらも懸命にサヤカへの攻撃を試みる。

ギンコ『ウォーターカッター!』💧

サヤカ「ふっ!」三サッ!

花帆『フレアボール!』🔥

サヤカ「……」🔥/スパン──💥ボン!

コズエ「フルリリース──っ!」

ザン!三〇

コズエ「くっ……!」ヒョイ!

コズエ(大きくなったぶんスピードは落ちたけれど、圧迫感があって集中できないわね!)

ガタン!

コズエ「!?」グラッ

ガタガタガタ!

ツヅリ「地面が……!」

花帆「また崩壊しだした……!」

光輪が動き回った影響で、崩れかけていた地盤の崩壊が進み、大地はまるで流氷のように不安定に揺れる。

ゴゴゴゴゴ……!!

カチマチ『わわわっ!今度はなんですか!?』

小鈴「!!地面が……浮き上がってる!?」

ひとり空中に浮いていた小鈴は、割れた地面がゆっくりと浮上していることに真っ先に気付いた。

宙に浮くことで、足場は縦や横に回転し、ただでさえ不安定だった足場は、もはやその場に留まることが困難な程になってしまった。

ギンコ「これ……!落ちたら絶対に死ぬやつですよね!?」

コズエ「ええ……ただそれよりも、世界が消滅する方が先かもしれないわ……!」

花帆「!?空が──」

上空には先程閉じたはずの時空の亀裂がいくつも開いており、それぞれの亀裂の奥には銀河のようなものが覗いていた。

花帆「時間が……ない!」


681 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:24:55 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

泉「…………」💻カタカタカタ!

吟子(泉さん、すごい気迫……さっきから一回も瞬きしてない……)

泉「……っ!」💻カタカタカタ!

泉(まずいな……崩壊が早まってる。タイムリミットは10分と言ったが、これでは今すぐにでも──)

泉「痛っ……!」ズキン!

吟子「大丈夫!?頭痛いんじゃない……?」

泉「平気だ……気にしないでくれ」

吟子「嘘だよ。もうかれこれ4時間以上パソコン打ちっぱなしでしょ?少し休んだほうが──」

泉「そんな暇はないんだ!!気が散るから黙っていてくれ!!」

吟子「っ!」ビクッ

吟子「ごめん……」

姫芽(泉ちゃん、ピリついてるなあ……協力したいけど、アタシも含めて、プログラミングできる人なんてこの学校にいないし……)

蓮ノ空は、元々芸術分野に特化した学校だ。

ゲームの実績で入学した姫芽が特殊なだけで、蓮ノ空に人並み以上にPCを扱える人間はほとんどいない。


682 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:28:44 ???00
泉「──」クラッ

吟子「危ない!」ガシッ

泉「っ……すまない……」ツー

吟子「泉さん、鼻血が……!」

泉「あれ……?」

吟子「もう限界だよ……数分だけでもいいから休もう?」

泉「その数分の間に、向こうの世界は崩壊するだろう。私しか、いないんだ」ムクッ

吟子「でも……」

泉「ほら、こうしている間にもコードがどんどん壊れて──ん?」

泉「修正されてるだと!?馬鹿な!」ダン!

泉「誰かが私と同じように……ハッキングしているのか?」

📱ピロン!ピロン!

吟子「スクコネに連絡……?」

姫芽「アタシが出るよ!もしもし?」📱

📱『もしもし。久しぶり、ツマヨウ寺』

姫芽「!その声──りなちゃん!?」

りな『なんか大変なことになってたから、助けに来たよ』


683 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:33:34 ???00
吟子「誰?姫芽の知り合い?」

姫芽「うん!アタシのネトゲ友達で、お台場の虹ヶ咲って学校でスクールアイドルをやってるんだ〜」

吟子「にじがさき?聞いたことない学校……」

姫芽「ラブライブ!には出ない方針らしいからね。吟子ちゃんが知らないのも無理はないよ」

姫芽「アタシがスクコネでゲーム配信してる時に連絡をくれてね。それから仲良くなったんだ〜」

吟子「そうなんだ」

姫芽「もっとも、年齢不詳だから本当に高校生かも怪しいんだけどね〜」

りな『年齢不詳じゃない。高校1年生の16歳』

姫芽「またまた〜りなちゃん去年知り合った時からずっとそう言ってるじゃん〜本当は何歳なの?」

りな『嘘じゃない。ツマヨウ寺の方こそ、いつの間にか2年生になったとか冗談きつい。璃奈ちゃんボード『イミフ』』

姫芽「アタシ留年するほど学力低くないよ〜?」

泉「お話の途中すまない。りなさんがコードの修正を手伝ってくれているのかい?」

りな『そう。でも、私だけじゃないみたい』

泉「なんだって?」


684 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:36:46 ???00
📱ピロン!ピロン!

吟子「またスクコネに連絡が?」ポチ

『えっと……聞こえてるのかしら?』

吟子「あ、はい!聞こえてます!」

『わっ……このアプリってちゃんと生きてたんだ……ていうか使ってる人いるのね』

吟子「あの……あなたは?」

『ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね』

まい💩『私は麻布麻衣。L高でスクールアイドルっていうのをやってるわ。『まい』でも『マイマイ』でも好きに呼んで』

吟子「あ、百生吟子です。私も蓮ノ空女学院でスクールアイドルをやっています」

まい💩『へースクールアイドルって私たちの他にもいたのね。知らなかった』

吟子「まいさんも……その……」チラッ

泉「あなたもスクコネにハッキングをしているのかい?」

まい💩『言い方あああ!まあ実際そうなんだけど』

まい💩『ポルカが──部活仲間がスクールアイドル関連の古いアプリを見つけてきてね』

まい💩『かと思ったら『カホちゃんが大変なんだよー!助けてあげてー!』なんて泣きついてくるから仕方なく……』

泉「仕方なく、なんて言いながらもしっかりと協力してくれたんだね。ありがとう。正直とても助かっているよ」

泉(何故💩のアイコンなんだ……?)


685 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/06(木) 22:41:37 ???00
まい💩『見よう見まねだけどね!なんなのこのLink-Like Systemとかいうやつ……オーパーツ?』

りな『同意。こんな複雑なコード見たことない』

泉「それに関しては私にも説明できないが……今はそれよりも修正作業だ!」

泉「システムが停止しないように、コードを修復しなければ」💻カタカタカタ

まい💩『でもぶっちゃけこれ、三人でもきつくないかしら?』💻カタカタカタ

りな『純粋に壊れてる範囲と量が多すぎる。物理的な人手が足りない』💻カタカタカタ

泉「それでもやるしかない。この三人だけで──」

瑠璃乃「三人だけじゃないよ」

姫芽「るりちゃんせんぱい!?どこに行ってたんですか?」

瑠璃乃「電話をしてきたんだ」

吟子「電話?誰にですか?」

瑠璃乃「今年のラブライブ決勝前に知り合った──全国のスクールアイドルたちだよ!」

💻ピコピコピコピコ

泉「これは……!?」

りな『すごい勢いでコードが修正されてる』

瑠璃乃「パソコンに強いって子たちに協力を頼んだの。ほとんどの人が快くOKしてくれたよ!」

『瑠璃乃ちゃんの頼みならね!』

『ルリちゃんに頼まれたら断れませんよ!』

『あの桂城泉が頑張ってるんでしょ?共に競い合った戦友として、協力しない選択肢はないわ!』

吟子「さすが瑠璃乃先輩!人望が厚い……!」

瑠璃乃「泉ちゃんもね!」

まい💩『スクールアイドルってこんなにいたの!?ポルカが知ったらまた踊り出しそうね……』

泉「みんなありがとう!この調子なら現状維持くらいはできるはずだ!」

りな『これだけ集まっても現状維持が限界……』

泉「それでも、元々時間を稼ぐのがこちらの役目だ」

泉「あとは、花帆先輩たちに任せよう──」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


686 : 名無しで叶える物語◆rbNeAxCK★ :2025/11/06(木) 23:13:26 ???00
本当になんで💩なんだろうね


687 : 名無しで叶える物語◆WXhKDi66★ :2025/11/07(金) 20:20:08 ???Sa
マイマイの殻だと誤解してる説


688 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:40:22 ???00
カチマチ『ほっ!ほっ!』ピョン!

カチマチは浮いている地面と地面を飛び移り、サヤカへと近づいていく。

カチマチ『カチマチもカホさんや小鈴さんみたいに飛べれば、簡単に近づけるのに……』

ギュイーン三〇

カチマチ『!』

小鈴「ふん!」バシッ!

カチマチ『あわわ!?』グイン!

スカッ三〇

カチマチ『また助けてもらっちゃいました!ありがとうございます!』

小鈴「大丈夫だよ!それよりもカチマチちゃん!提案なんだけど──」

小鈴「徒町に協力してくれないかな!」

カチマチ『協力ですか?』

小鈴「徒町の武器は頑丈だけど、そこまで攻撃力はない……でも、カチマチちゃんの雷と合わせれば!」

カチマチ『!なるほど……でも、カチマチの電気は小鈴さんにも感電しませんか?』

小鈴「平気だよ!この服のおかげで、少し痺れる程度に抑えられるから!」

カチマチ『少しは痺れるんですね……わかりました!やりましょう!』

カチマチ『カチマチもちょうど空を飛びたいと思っていたところでした!小鈴さんの力でカチマチを浮かしてください!』

小鈴「わかった!それじゃ行くよ!」

小鈴『合!』

カチマチ『体!』

小鈴はカチマチの背に跨ると、茨を使って両者の体をガッチリと固定する。

カチマチ&小鈴『徒町onカチマチ!!』ババーン!


689 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:42:36 ???00
サヤカ「また遊んでいる人たちがいますね……」

カチマチ『遊びじゃありません!』

小鈴「これが徒町たちの最強フォームです!」

カチマチ&小鈴『ちぇすとーーー!!!』⚡️⚡️

二人のカチマチは空を飛び、時に足場を蹴りながら圧倒的な機動力でサヤカに迫る。

小鈴「くらえ!」バシッ!

サヤカ「!」⚡️ビリリ!

サヤカ(茨に電流が……!)

カチマチ『行くぞぉーーー!!』ダッダッダッ!

小鈴「おりゃあぁぁー!!」ブン!ブン!

ガコン!バキン!ドシン!

サヤカ「くっ……!」

カチマチは小鈴を乗せたまま走り回り、小鈴はサヤカを繋いだ茨を振り回す。

茨を切れないサヤカは、そこら中に浮いている地面にやたらめったら体をぶつけられてしまう。

サヤカ「あまり調子に……!」ググ!

小鈴「!?」ビーン!

サヤカ「乗らないでください!」グン!

カチマチ『うわっ!?』三グイン!

ドシーン!

サヤカも負けじと空中で体を固定し、逆に小鈴たちを振り回し、地面に激突させる。

小鈴「痛たたた……──!?」

サヤカ「はっ!」三ビュン!

ゲシッ!──ズバーン!!

小鈴「うわぁぁぁ!」

カチマチ『うわぁぁぁ!』

動きを止めた小鈴たちに向かって、サヤカは勢いをつけたドロップキックをお見舞いする。

さらに、それと同時に足の裏から斬撃を放ち、衝撃で小鈴たちが立っていた地面が真っ二つに割れる。


690 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:44:02 ???00
セラス「小鈴先輩!!」

セラス(小鈴先輩があんなに頑張ってるのに……一緒に来たわたしは何をしてるの……!)ギュッ!

ルリノ「……セラスちゃんって言ったっけ?」

セラス「あ、はい!セラスです!」

ルリノ「怖いのは当たり前の感情だよ。そんなに自分を責めないで」

セラス「……わたし、怖がってるように見えますか……?」

メグミ「そりゃあガクガク震えてるし、すごく深刻そうな顔してるからね」

セラス「っ!……わたし、花ちゃんたちを助けるためにここに来たのに、攻撃受けた途端に怖くなっちゃんたんです……」

セラス「みなさんは……戦うのが怖くないんですか……?」

ルリノ「うーん……まあ、戦わなきゃ殺されるだけだしね」

メグミ「それに、悔しいじゃん?一方的にやられるなんて!」

メグミ「痛い思いをしたら、這いつくばってでも一発やり返したいって思わない?」

セラス「…………え?そんな理由?」

セラス「もっと、仲間を守りたいとか、世界を救うためとか──」

メグミ「もちろんそれは大前提だよ。でも、そうやって自分を奮い立たせるにも、燃料がいるでしょ?」

メグミ「人にもよるだろうけど、私はその燃料が『悔しい!』とか『ムカつく!』って感情」

メグミ「セラスちゃんはないの?悔しいって思う時は?」

セラス「わたしは…………」


691 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:47:44 ???00
『セラスはお姫様だからね。戦いに向かないのは仕方がないよ』

セラス「え、この声──泉?」

『やあ、セラス』

セラス「ぬいぐるみから声が聞こえる……泉今忙しいんじゃないの?」

『私は本物じゃない。桂城泉が片手間に作った人工知能。『IZM』だ』

セラス「何それ……めっちゃ欲しいんですけど!」

『セラスには"おもり"が必要だと思ってね。どうせ何もできずに蹲っているんだろう?』

セラス「むっ……なに?最初からわたしが役に立たないってわかってたってこと?」

『そこまでは言っていないさ。ただ、ひとりで戦えるほど強くもないと思ってね』

『セラスは所詮、どこにいても"お姫様"だから』

セラス「そ、そんなことないもん!」

『そうかい?セラスの代わりに私が戦おうと思ってたんだが……』

『きっと今のセラスよりは、ただのぬいぐるみの方がずっと役に立つだろうからね』

セラス「くっ……言わせておけば……!」

セラス「泉との契約は終わったの!わたしはもう、守ってもらうだけのお姫様なんかじゃない!!」

セラス「わたしだって……自分で戦えるんだから!!」✨キラキラ


692 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:51:23 ???00
バイオリンを模したクロスボウが光り輝き、みるみると巨大化する。

やがてそれはセラスの体の何倍もの大きさとなって、空中に浮遊した。

セラス「ああああ!泉に煽られてパワーアップしちゃった!なんかヤダ!!」

セラス「もっとこう……感動的な展開が欲しかったのにい!」

ルリノ「あはっ!いいパートナーがいるんだね」

セラス「今はもうパートナーじゃありません!解消済みです!」

メグミ「セラスちゃん。こっち向いて」

セラス「はい?」

メグミ『メグリカバー!』

セラス「!これは……!」

メグミ「少し強めに打っといたよ。メグリカバーはね、体だけじゃなくて『心』にも作用するの」

メグミ「ちょっとハイになっちゃうくらいね☆」

セラス「おお……おおお!なんだかすごくやる気が湧いてきました!今ならなんでもできそうな気分です!!」❤️‍🔥メラメラ

ルリノ「多分セラスちゃんは、そっちの方が似合うよ」

メグミ「うん!初めて会ったけど、はっちゃけてる方が素って感じがする!」

セラス「自分やれます!やらせてください!!」

セラス「可愛いわたしに腹パンしてきたあの女に、一矢──いや、千矢くらい報いさせてください!!」

メグミ「おう!やったれ!」

セラス「うおおおおぉ!!いい音聞かせろやぁぁ!!!」🏹カチャ

🏹ズドーーーン!


693 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:54:23 ???00
サヤカ「?何かが飛んで──ぎっ!?」ドス!

矢はサヤカの脇腹を掠めると、後ろに浮いている地面を何枚も貫通する。

小鈴「セラスちゃん!」

サヤカ「っ……さっきの白い人ですね!」

『照準は私が合わせよう。セラスは魔力だけ回して適当に撃ってくれればいい』

セラス「はあ!?何それ!泉のアシストなんていらないんだけど!」

セラス「泉はぬいぐるみらしく可愛く座ってればいいよ!」

『やれやれ、じゃじゃ馬なお姫様だ……』

🏹ズドーーーン!

セラスはまたもサヤカに向かって矢(エイムアシスト付き)を飛ばす。

だが、二度も同じ攻撃をくらうサヤカではない。

矢が飛んでくると見るや、サヤカは矢の軌道から逸れながらセラスに向かって飛んでいく。

サヤカ「……」三ビュン!

ルリノ「サヤカちゃんがこっちに来たよ!」

メグミ「逃げよう──って、ルリノちゃん足がないんだった!」

セラス「大丈夫です!わたしが撃ち落とします!」🏹グググ…


694 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 19:57:51 ???00
サヤカ「……」シュッ!

セラス「!──ぎゃっ!?」

セラスが矢を撃つより早く、サヤカの斬撃がセラスの顔面に直撃した。

セラスはその衝撃で上半身を大きくのけ反らし、天を仰ぐ。

『セラス!』

セラス「──っ!」バッ!

サヤカ「無傷!?」

セラス「世界一の美少女の顔に──」

セラス「傷を付けようとするなぁぁ!!」

🏹ズドーーーン!!

サヤカ「ふっ……!」ザン!

至近距離からの矢の攻撃を、サヤカは斬撃をぶつけて逸らし、間一髪で回避する。しかし──

コズエ『保存』パシッ ➸

サヤカ「!」

コズエ『リリース!』グルン!

←ビュン!

コズエはサヤカが避けた矢を掴むと、その推進力を保存し、くるりと向きを変えて投げ返す。

サヤカ「うぐっ!」グサッ!

セラス「動きが止まった!今なら──」🏹


695 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 20:00:11 ???00
ルリノ「セラスちゃん横見て!!」

セラス「!」

〇三ギュイーン!

『あれはまずい……避けよう、セラス』

セラス「いや……迎撃する!!」

『正気かい?』

セラス「花ちゃーーん!この弓もっともっと大きくして!!」

花帆「!わかった……!」三ビュン

花帆『ジャイアサイズ!』🔯

((🏹))ムクムクムク!

メグミ「でっか!10m超えたんじゃない!?」

ルリノ「こんなに大きいもの撃てるの……?」

花帆「あたしが反発魔法で補助するよ!」

セラス「ギンコも花ちゃんと同じのやって!」

ギンコ「どうしてさっきから呼び捨てなん!?」↓スタッ

セラス「オリジナルの吟子はわたしの舎弟だからね!こっちのギンコもわたしの言うこと聞かないといけないんだよ!」

ギンコ「そうなの!?」

吟子『そんなわけないでしょ!!』


696 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 20:03:02 ???00
セラス「いいから!タイミング合わせて!」

花帆「うん!」

ギンコ「もう!仕方ないなあ……!」

セラス「いくよ……!」🏹グググ!

花帆&ギンコ『レプルス!!』🔯

セラス「スーパー最強無敵キューティクルハートビート美少女リリエンフェルト!!」

ギンコ「長い長い長い!タイミング合わせづらいよ!!」

セラス「いっけえぇぇぇ!!」

🏹ズドーーーン!!

巨大な矢は真正面から光輪に激突し、その進行をせき止める。

セラス「もういっちょ!!」🏹ズドーーン!!

さらに、セラスは追加の矢を放ち、その衝撃で光輪にヒビが入る。

ギンコ「あと少しだよ!セラスさん!」

セラス「壊れろぉぉぉぉ!!」🏹ズドーーン!!

〇パリーン!

花帆「やったよせっちゃん!壊れた!」

セラス「ふん!伝統の力、思い知りましたか!」

吟子『そのセリフ私の──ていうかこんなの伝統ないから!』


697 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 20:10:04 ???00
サヤカ「それを壊したから何ですか?わたしには何のダメージにもなりませんよ!」

セラス「!」

ピシッ!ピシッ──ガラガラ!

サヤカはセラスたちが光輪の相手をしている間に、地面に向かって何度も斬撃を放っていた。

やがて足場は崩壊し、メグミたちは底の見えない奈落へと落下していく。

ルリノ「また地面が壊れた!」

メグミ「きゃーー!!」↓↓

花帆『フローティア!』🔯

フワッ↑

メグミ「っ……ありがとうカホちゃん!」

花帆「なんのこれしきです!」

セラス「わたしの弓を船替わりにします!飛べない人は乗ってください!」

ギンコ「ありがとう!」↓ストン

ルリノ「助かるよ!」↓ペタン


698 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 20:12:14 ???00
サヤカ「そんなもの、すぐに壊してあげます!」

コズエ「させないわ!」ガシッ!

サヤカ「コズエさん!?離してください!」グイグイ!

コズエはサヤカの背後から飛びつき、両腕をでしっかりとサヤカの体を固定する。

コズエ「小鈴さん!カチマチさん!!」

小鈴「はいっ!」ピュン!

グルグルグル!

サヤカ(!コズエさんごとわたしを拘束した?)

カチマチ『充電満タン!くらえ!大放電!』⚡️⚡️

コズエ『保存……』ボソッ

サヤカ「ッッッ!!」⚡️ビリビリ!

カチマチの放電が、茨を伝ってサヤカとコズエに感電する。

サヤカ「っ……!この程度の電流なら……!まだ抑えられます!」⚡️


699 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/11(火) 20:17:50 ???00
コズエ「それなら、この倍の電圧にも耐えられるかしら?」

サヤカ「え?」

コズエ『フルリリース:アンペア!』⚡️

サヤカ「!!! あ"あ"あ"あ"!!」⚡️⚡️⚡️⚡️

コズエは保存した電流を一気に放出した。

血液が沸騰する程の電流を体に流され、サヤカは煙を上げながらコズエの腕からずるりとこぼれ落ちる。

サヤカ「──」ズル…↓

コズエ「ぅ……」ズル…↓

小鈴「危ない!」ギュッ

コズエ「ありがとう……」

カチマチ『メグミさんのところに連れていきます!』

コズエ「いいえ、まだ大丈夫よ。それよりサヤカさんのところに降ろしてちょうだい!」

カチマチ『わかりました……無理はしないでくださいね!』

コズエ「ええ!」


700 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 21:58:25 ???00
サヤカ「……」バタン↓

ゴロゴロゴロ……

サヤカは傾いた地面を力なく転がり落ちる。

危うく奈落へと落ちかけたところで、割れた地面の端でギリギリ止まることができた。

サヤカ(体が痺れて動かない。騙し騙しやってきましたが、ここまででしょうか……)

サヤカ(………………いえ、まだです。まだ動けます)

サヤカ(もっと、体そのものを頑丈にして──)メキメキ

ツヅリ「……」タタタッ!

サヤカ「!」

ツヅリ「……」ブン!

ツヅリは起き上がったサヤカのこめかみに裏拳を叩き込む。だが──

サヤカ「……」パシッ

ドン!

ツヅリ「っ……!」ズザー

拳を片手で受け止め、サヤカはツヅリの腹に蹴りを入れた。

さらに、再び接近してきたツヅリを斬撃で牽制する。

ツヅリ「……」三スカッ

ツヅリ(サヤ、なんか変だ。呼吸が──)

サヤカ「……」

サヤカは呼吸をしていなかった。正確には、呼吸の必要がないほどに"中身"の魔物化が進んでしまっていた。


701 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:00:43 ???00
コズエ「はっ!」✊ブン!

サヤカ「ぐっ……!」ゴツン

サヤカ「あなたも大概タフですね!コズエさん!」シュッ!

コズエ「サヤカさん程ではないわ!」クルッ

コズエは体を翻して斬撃を避けると、その勢いのままサヤカの胴体に重い蹴りを叩き込む。

ドサッ!

コズエ「!」

コズエ(ビクともしない……!なんて体幹なの!)

サヤカ「はっ!」✊ブン!

コズエ「保存!」

✊ポム──ズバン!

コズエ「がはっ……!」

コズエ(拳と同時に斬撃を……!?)

サヤカ「……」✊ブン!

コズエ「っ!」

ツヅリ「させない」バシッ↑

ツヅリの脚がサヤカの拳を蹴り上げ、斬撃の軌道を逸らす。

サヤカ「ふっ!」シャッ!

ツヅリ「あ──」グラッ

だが、サヤカは片足で立つツヅリの足をすぐさま払い、その体を地面に倒す。


702 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:05:11 ???00
サヤカ「……」スッ

コズエ「よそ見は禁止よ!」✊ブン!

サヤカ「っ!」バッ

コズエの攻撃を防ぐため、サヤカはツヅリに向けていた手を顔の前に構える。

✊ポム!

サヤカ(衝撃を感じない……?保存魔法だ)

サヤカ(力を溜めさせないためにも、攻撃は基本的に避けた方が良さそうですね)

そこからはしばらく、三人による激しい格闘が繰り広げられた。

コズエとツヅリは息を合わせて代わる代わる攻撃を仕掛け、サヤカの無力化を図る。

サヤカは二人の攻撃をいなしながら、自身の攻撃に斬撃を付与して致命の一撃を狙う。

互いに一瞬も気を抜けない攻防戦の中、サヤカの口元が不意に歪んだ。

サヤカ「ふっ──」

コズエ(笑った……?)

サヤカ「楽しいですね。全力で戦うというのは!」ザン!ザン!

コズエ「ぐっ!」ザクッ

ツヅリ「っ……!」ザクッ

サヤカ「今まで不意打ちで殺してばかりだったので、知りませんでした」


703 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:07:31 ???00
コズエ「……お得意の揺さぶりかしら!」✊ブン!

サヤカ「いいえ!本心です!」三サッ

サヤカ「こんなことなら、今までもいたぶってから殺すんでした!」シャッ!

ツヅリ「戦うのが好きなら、軍にでも入ればよかったんだ!」バシッ!

ツヅリ「そうすれば!キミの力は人を傷つけるためじゃなくて、人を助けるために使えた!」ゲシッ!

サヤカ「ツヅリさんだって甘いお菓子ばかり好きだったでしょう?」

サヤカ「食べ物に好みがあるように、殺しの対象にも好みがあるんですよ!」シュッ!

ツヅリ「痛っ……」

コズエ「悲しい性ね!サヤカさん!」✊ブン!

サヤカ「そうですか?わたしは楽しかったですよ!」シュッ!

サヤカはコズエの拳を避けて反撃を仕掛ける。その時──

🏹ズドーーーン!

サヤカ「がはっ!?」

地面から矢が飛び出し、サヤカの腹を貫通する。

その傷口からは、もはや血が流れることはなかった。

セラス「命中した!」

花帆『グラヴィオン!』🔯

🔯ズン↓

サヤカ「!!」ガクン↓

コズエ(動きが止まった!今!)

コズエ『フルリリース──」


704 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:10:04 ???00
ジジジ──ジジ──

▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇

コズエ「!」ビクッ

ツヅリ「!」

ツヅリ「コズ!▇か変▇!」ジジ…

コズエ「▇▇が▇▇▇?」ジジ…

メグミ「なに▇▇!うま▇話せ▇▇」

ギンコ「▇▇▇▇▇!」

セラス「花ちゃん!ギンコたちの体が消えかけてる!」

花帆「まさか──時間切れ?」

カチマチ『▇▇さん!降▇▇▇!』ジジ…

小鈴「カチマチちゃん?──うわっ!?」スカッ

突然、カチマチの体が透けて、固定していた茨が外れてしまう。

小鈴「カチマチちゃんの体が……」

小鈴「ううん。カチマチちゃんだけじゃない……足場も空も、全部がおかしくなってる!」

世界から『カナザワ』というテクスチャが剥がれ、あらゆるオブジェクトが実在を保てなくなる。

まるで解像度を極限まで下げたゲームのように、精密に創られていた世界が崩れていく。

サヤカ(少し寂しいですが、これで終わりですね)ジジ…


705 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:12:51 ???00
セラス「泉!これって──」

「ふむ……外で私も頑張っているようだが、限界らしい」

「おそらく、直に現実世界へ帰るゲートが開かれるだろう。さやか先輩のことは諦めて、君たち三人だけでも帰るんだ」

花帆「そんなのやだよ!」

セラス「本当にもうどうしようもないの!?」

「むしろ、ここまで耐えたことを賞賛して欲しいくらいだ」

「システムを運用したままリアルタイムで修正するなんて、天才プログラマーが何人集まろうと普通はできない」

「壊れたモノを直すのは、時に一から作るよりもずっと難しいからね」

🔯バチバチ!

花帆「!空に亀裂が……」

セラス「わたしと小鈴先輩が来た時と同じやつだ」

「あれを通れば現実に帰ることができる。早く行くんだ」

セラス「それならみなさんも一緒に──!?」

ギンコ「▇▇▇」ジジジ──

ルリノ「▇▇▇」ジジジ──

メグミ「▇▇▇」ジジジ──

セラス「止まってる……?」

「この世界で生まれた彼女たちは、カナザワと運命を共にする定め。諦めよう」


706 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:15:07 ???00
花帆「さやかちゃんは!」

サヤカ「▇▇▇」ジジジ──

花帆「っ!サヤカちゃんが動けないってことは……さやかちゃんも……」

小鈴「花帆先輩!セラスちゃん!」ピョン!

セラス「小鈴先輩!」

小鈴「お二人は先に帰ってください!徒町はさやか先輩を連れて追いつきます!」

花帆「何言ってるの小鈴ちゃん!?」

小鈴「さやか先輩は、毎朝徒町のことを起こしてくれました。今度は徒町がさやか先輩を起こす番です!」

小鈴「さやか先輩ーーー!!」三ピュン

花帆「あ、待って!小鈴ちゃん!」

セラス「行っちゃった……」

ジジ──ジジジ──

花帆(泉ちゃんは精一杯頑張ってくれた……その上で、きっとここが限界だったんだ……)

花帆(何か……あたしにもできることはないの?あたしはこの世界の管理者なのに……)

ーーーーーーーーーーーーーーー

『壊れたモノを直すのは、時に一から作るよりもずっと難しいからね』

ーーーーーーーーーーーーーーー

花帆「直す方が、作るより難しい……?」

花帆(だったら、"修正"じゃなくて──)


707 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:23:50 ???00
セラス「花ちゃん!小鈴先輩を連れ戻して逃げよう!」

花帆「…………!」タンッ!

セラス「え、花ちゃん?どこ行くの!?」

花帆はセラスの弓の上から飛び降り、まだ消えていない地面に向かって落下する。

花帆「っ!」スタッ↓

花帆「ここならまだ繋がってる……!」

花帆「そうだよ!直せないなら、リセットしてまた一から創ればいい!!」

花帆(イメージするんだ!この世界の全部を、丸ごと変えてしまうくらいの!)

花帆『千変万華!!』

🌼🌸🌼🌸🌼🌸🌼🌸ブワッ!

花帆が地面に手を触れた瞬間、花帆を中心に地面が『花』に変換される。

花帆『エクス ワールウィンド!』

🌪🌼🌸🌼🌸

次に大きな竜巻が発生し、風に舞う花びらは宙に浮いている地面を巻き込んで拡散する。

すると、花が触れた箇所が花に変換され、その花が触れた箇所がまた新たに花となり、風に乗って解けてゆく。

連鎖的に起こる花変換は加速度的に拡がり、世界はあっという間に色鮮やかな花吹雪に包まれていった。

花帆(舞え!地平の彼方まで!銀河の果まで!!)

花帆(全部全部!花になれ!!)

花帆『ブルーミングホライゾン!』

🌪🌼🌸🌼🌸🌼🌸🌼🌸🌪ブワー!

小鈴「な、何ですか!?」

セラス「キレイ……でも──」

セラス(これ、大丈夫なの?)


708 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:24:30 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ flower_ ……


709 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:26:17 ???00
泉「これは──」

りな『コードがものすごい勢いで変換されてる。しかも、かなり雑に』

まい💩『ああああああ!壊れる!壊れる!』

まい💩『ギリギリで保ってたのに!トドメを刺す気なの!?!?』

泉「自暴自棄にでもなったのか?いや、花帆先輩はそんな人には思えないが……」

りな『…………』

りな『わかった』💻カタカタカタカタ!

姫芽「りなちゃん?わかったって何が?」

りな『今壊れてる箇所は、放っておけば勝手に"flower"になる』💻カタカタカタカタ

りな『でも、既に変換されたコードは弄っても壊れない。つまり──』

泉「!!」

泉「そうか!そういうことか!」💻カタカタカタカタ!

まい💩『なに?どういうこと?』

泉「コードを修正するんじゃない!一から作り直すんだ!」

まい💩『はあ!?できるわけないでしょ!こんな複雑なものを一から作るなんて!』


710 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:29:43 ???00
りな『完璧に作る必要はない。むしろ、最低限でいい』

泉「足場となる地面さえ作ることができれば、それだけで向こうの世界の存在証明は可能なはずだ!」

まい💩『だけって──そんな簡単なことみたいに……』

りな『地面を作るだけなら簡単。数分あれば十分』💻カタカタカタカタ!

泉(!なんて速度だ……さっき触れたばかりだと言うのに、数日間コードの解析をしていた私よりも、プログラムを理解している……)

まい💩『というか、私たちにそれをさせるつもりで全部のオブジェクトを花に変換したわけ?』

まい💩『相談というか、せめて一声かけるとかないの?』

吟子「花帆先輩はそういう人です。いつも勝手に決めて、そのくせ周りを巻き込むんです」

まい💩『迷惑すぎるでしょ!頭の中までお花畑なの!?』

瑠璃乃「それ、花帆ちゃんにとっては褒め言葉みたいだよ?」

まい💩『うわっ!花帆って子も嫌味が通じないタイプだ!』

りな『口よりも手を動かして』💻カタカタカタカタ

まい💩『わかったわよ!』💻カタカタカタカタ

泉「ははっ!無茶苦茶な人だね。花帆先輩は」

泉「だが──面白いよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


711 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:33:21 ???00
ジジジ──ジジ……

🌪🌼🌸🌼🌸🌼🌪ブワー!

サヤカ「!?」ビクッ

サヤカ「なんですか!なんですか!?急に動けるようになったと思ったら──花?」

小鈴「さやか先輩ーーー!!」

サヤカ「っ!」シュッ!

小鈴「うわっ!?」ザクッ!

サヤカ「彼女は起きないと言ったでしょう」

ザワザワ……

サヤカ(!まただ……あの子の声を聞くと、胸がざわめく……)

サヤカ(わたしの中の彼女の意識が、目覚めかけてる?)


712 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:36:31 ???00
🌪🌼🌸🌼🌸🌼🌪ブワー!

メグミ「!動ける!」

ルリノ「って──どわぁー!?」↑ピューン🌪

ギンコ「ルリノさん──きゃっ!」↑ピューン🌪

セラス「ヤバい!二人が風で飛ばされちゃった!」

<ウォォォォ!

カチマチ『ちぇすとーー!』パク!パク!

ルリノ「おっ!?」グイン

ギンコ「コスズ!」グイン

カチマチ『ふん!』↓ドシン

メグミ「ナイスだよ!カチマチちゃん!」

カチマチ『この花はなんですか!気がついたら周りが花で埋め尽くされてて、何も見えません!』

セラス「花ちゃんが地面とか浮いてる岩とかを花に変えちゃいました!」

ギンコ「花に……?なんでそんなことを……」

メグミ「よくわからないけど、私たちが動けるようになったってことは、いいことなんだよ!」

カチマチ『そのカホさんはどこに?』

セラス「あそこです!コズエさんのところに向かってます!」


713 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:39:02 ???00
🌪🌼🌸🌼🌸🌼🌪ブワー!

コズエ「!なにごと!?」🌪

ツヅリ「コズ!」ガシッ

コズエ「ツヅリ!何が起きてるの!」

ツヅリ「わからない。でも多分カホだ!」

コズエとツヅリは互いに手を取り、空中でバランスをとる。

周りを見渡せば、一面の花吹雪。

台風のように渦巻く花々の中心では、サヤカがこちらを見上げている。

さらに、視界の端からカホが風に乗ってコズエたちのところまで登ってきているのが確認できた。

花帆「コズエちゃーーーん!」↑↑

コズエ「カホ!?」

ツヅリ「コズ、カホのところに行くんだ!」

コズエ「行くって、どうやって!」

ツヅリ「ボクがコズを投げる!」クイッ

ツヅリが姿勢を少し変えると、風の流れが変わり、二人の体が回転しだす。

ツヅリ「カホと──サヤをお願い!」ポーン!

コズエ「っ!」三ビュン!


714 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:41:29 ???00
花帆「コズエちゃん!手を!」バッ!

コズエ「ええ!」バッ!

サヤカ「させません!!」ザン!

「「!!」」

花帆「うわっ!」ビュン→

コズエ「くっ!」←ビュン

二人の手が触れ合う直前、サヤカの斬撃が空間を切り裂き、花帆とコズエは強制的に引き離されてしまう。

花帆「っ……!まだ、諦めない!」

花帆『BANG YOU グラビティ!!』🔯バチバチ

花帆はコズエに手を伸ばし、引力魔法を発動する。

二人は風に乗ってグルグルと周りながらも、惑星のように引かれ合いながら近づいていく。

この魔法は愛の証明。お互いを想い合う気持ちが強ければ強いほど、離れられない力となって両者を引き寄せる。

サヤカ「どんな魔法を使おうと、わたしが引き裂きます!」スッ──

小鈴「やめてください!!さやか先輩ー!!」

ドクン──

✊ガシッ!

サヤカ「なっ!?手が勝手に!」

花帆たちに向かって伸ばした手が、意志とは無関係にサヤカの首を絞める。

✊グググ…!

サヤカ「右手が言うことを聞かない……まさか──」


715 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:43:24 ???00
花帆「ふっ!」ガシッ!

コズエ「っ!」ガシッ!

花帆「コズエちゃん!今からあたしに残ってる全部をあげます!だからお願いです!」

花帆「さやかちゃんを──あたしの友達を救ってください!!」

コズエ「ええ!わかったわ!」

花帆『フルリリース!』🔯

コズエ『保存!』🔯

繋いだ手を伝って、花帆が持つ全ての魔力、能力、権限、そして感情がコズエに流れ込んでいく。

コズエ(これが、カホが抱えていたものの重さ──)

コズエ(こんなにも、私たちを愛してくれていたのね……!)

花帆「いっけぇぇ!」ブン!

コズエ「!!」三ビュン!

花帆はコズエを投げ飛ばし、コズエは花の渦の中心を通ってサヤカの元へ落下する。

一方のサヤカは、未だ自分の首を絞めたまま、迫ってくるコズエを見つめていた。


716 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:50:44 ???00
サヤカ(まずい!)

サヤカ「邪魔をしないでください!」

💪/スパン!

サヤカは制御の効かなくなった右手を自ら切り落とし、すぐさまコズエへ攻撃態勢をとる。しかし──

ボワッ!

サヤカ「!?炎?」

切り落とした腕の断面から青い炎が溢れ出し、サヤカの体を包み込んだ。

サヤカ「!服が燃えて──きゃっ!」↓↓

さやか(そろそろ、潮時ですよ)

サヤカ「!!やっぱり、意識が覚醒したんですね!」

さやか(これ以上、無様な姿を晒すわけにはいきません)

さやか(だって──)


小鈴「────!!」


さやか(──"あの子が見てる")

サヤカ「っ!村野さやかぁぁぁ!!」

コズエ「今さら自己紹介かしら!」

サヤカ「!!」

コズエ「眠りなさい!サヤカさん!」

サヤカ「このっ……!」

コズエ『フルリリース──』

コズエ『インパクト!!』✊💥💥💥

🌼🌸🌼🌸ブワッ!!

解放された衝撃により、周りを吹き荒れる花吹雪は一気に霧散する。

サヤカは殴られた勢いのまま急降下し、やがて泉たちが作った花畑に打ち付けられた。

ドサッ!!

サヤカ「──」ピク…ピク…


717 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/13(木) 22:55:30 ???00
ザ…ザ…ザ…

サヤカ「ツ、ヅ──リ──」

ツヅリ「……」

ツヅリ「キミは、満足したかな?」

サヤカ「……」

サヤカ「わたしは……操り人形だったんです……」

サヤカ「与えられた衝動に動かされるまま……人を殺して……」

サヤカ「でも……カホさんの支配から外れて……みなさんと全力で戦って……」

サヤカ「最後は……存外、楽しかったです……よ……」

ツヅリ「そっか」

ツヅリ「きっとキミは、"悪"ではない。ただ、純粋だったんだ」

ツヅリ「情熱の向かう先が、人と違っただけ」

ツヅリ「キミにとって楽しいことが、他人には共感できないものだっただけ」

ツヅリ「哀れんだりしないよ」

ツヅリ「キミは真っ直ぐに生きて、満足して終わったんだから」

サヤカ「」

ツヅリ「おやすみ、サヤ──」


718 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:05:10 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

泉「ふぅ──」グタッ

姫芽「お疲れ様。泉ちゃん」

吟子「もう、大丈夫なの……?」

りな『システムは安定してる。それを壊す元凶も倒した』

まい💩『ミッションコンプリートね。疲れた〜〜〜』

瑠璃乃「二人とも協力してくれてありがとう。それに、他のみんなも」

まい💩『達成感はあるけど、正直もうやりたくないわね』

りな『そう?私は結構楽しかった』

りな『こういう配信アプリをイジるのは初めての経験だった。次はもっと上手くやれる』

姫芽「『次』って、またスクコネをハッキングするつもり〜?」

りな『スクコネはもうハッキングしない。これは素人が関わっていいものじゃない』

りな『璃奈ちゃんボード【触らぬ神に祟りなし】』

姫芽「あはは〜」

姫芽(……ん?今りなちゃん、スクコネ"は"って言った?)


719 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:07:57 ???00
まい💩『あとはもう任せていいの?』

泉「ああ、こうも安定しているなら、四人を帰還させるのは簡単だ。あなたたちの協力に、心から感謝を」ペコリ

まい💩『どういたしまして。こちらこそ、貴重な経験ができたわ』

まい💩『そうそう、ポルカが他校のスクールアイドルと繋がりたいって言ってるの』

まい💩『よかったら連絡先とか──』ブチッ!

吟子「あれ?切れちゃった……梢先輩みたいにポチが苦手なのかな?」

瑠璃乃「あんなにプログラミングできる子が!?」

りな『私もそろそろ落ちる。今日得た知識をまとめたい』

姫芽「了解〜また一緒にゲームしようね〜」

りな『うん。またね』

りな『…………最後に一つだけ。スクコネを覗いてわかったことがある』

姫芽「?」

りな『スクコネは世界を創るアプリじゃない。あくまで"繋がる"ためのもの』

りな『それだけ。じゃあね』ポチ

姫芽(世界を創るアプリじゃない?)

姫芽(じゃあ、かほせんぱいはどうやってカナザワを……?)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


720 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:09:49 ???00
さやか「……ん……んん……」

ツヅリ「あ、起きた。でも、キミはサヤじゃないね」

さやか「……"さや"ではあるのですが……」

ツヅリ「でも、ボクの知ってるサヤじゃない」

さやか「そうですね」

小鈴「さやか先輩ーー!」

さやか「小鈴さ──きゃっ!?」ボフッ

小鈴「よかったです〜〜!戻ってきてくれて〜!」💧

さやか「小鈴さんが声をかけ続けてくれたおかげです。ありがとうございます」ヨシヨシ

セラス「あの……体は大丈夫なんですか?痛みとか……」

さやか「ああ……痛みはありませんよ。多分、この体にはもう痛みを感じる機能はないのでしょう」

小鈴「ごめんなさい!徒町たち、さやか先輩のことボコボコにしちゃいました!」

さやか「気にしないでください。むしろ、わたしが不甲斐ないせいで小鈴さんたちに痛い思いをさせてしまって……」

セラス「いえ!あれはさやか先輩がやったことではないので……!」

小鈴「そうです!さやか先輩が謝ることじゃありません!」

さやか「そう言っていただけるとありがたいです」


721 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:12:02 ???00
ツヅリ「ボクたちのサヤが迷惑をかけてごめんなさい」ペコリ

小鈴「あわわ!綴理先輩が謝ることでもなくて──違った!綴理先輩じゃなくて!」

ツヅリ「ふふ。いつか、君たちの"せんぱい"も紹介して欲しいな」

小鈴「はい!もちろんです!」✨キラキラ

セラス「!小鈴先輩、体が光ってますよ!」✨キラキラ

小鈴「あれ?セラスちゃんもだよ!?」✨

セラス「え?」✨

「どうやら、君たち二人は先に現実世界へ帰るようだ」

「元々、不安定な環境下で不正ログインしていただけだからね。システムが復旧して、アカウントが弾かれたんだろう」

セラス「AIの泉はどうなるの?」✨

「私はセラスの付属品みたいなものだから、あなたがこの世界から居なくなると同時に消えてしまうね」

セラス「ガーーン!持ち帰りたかったのに……!」✨

「あはは。その気持ちは本物の私にぶつけてあげて欲しいな」

小鈴「それではさやか先輩!徒町たちは一足先に帰ります!またあとで会いましょう!」✨

さやか「はい。わたしもすぐに花帆さんと一緒に帰ります」

小鈴「」✨キラキラ……

セラス「」✨キラキラ……


722 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:14:12 ???00
さやか「……さて」ムクッ

ツヅリ「肩を貸すよ」

さやか「ありがとうございます。でも大丈夫です。一人で歩けます」

花帆「さやかちゃーん!あれ?さやかちゃんだよね?」

さやか「はい。スクールアイドルクラブDOLLCHESTRA所属の、村野さやかですよ」

花帆「よかったー!一時はどうなるかと思ったよ!」

さやか「だいたい花帆さんのせいですけどね!!!!」

花帆「あはは……ごめんなさい……」

さやか「さあ、花帆さんも満足したでしょう?そろそろ帰りま──」

グイッ!

花帆「わっ!?」

さやか「!」

コズエ「……」

さやか「……何のつもりですか?」

コズエ「カホは連れて行かせないわ」

花帆「コズエちゃん……?」

メグミ「ちょっとコズエ!カホちゃんたちの事情は聞いたでしょ!」

コズエ「もちろん聞いたわ。でも、だから何?」

コズエ「さやかさん達にとってカホがどれだけ大切な仲間であろうと、それは私にとっても同じこと」

コズエ「私の大切な仲間を、そう簡単に奪わせはしないわ!」


723 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:16:33 ???00
さやか「そうですか……ですが、これに関してはわたしたちが言い争っても意味がありません。大切なのは花帆さんの意思です」

コズエ「……それもそうね。カホ、あなたはどうしたいの?」

花帆「え?」

さやか「現実世界に帰るのか──」

コズエ「カナザワに残るのか──」

さやか「花帆さんはどちらを選ぶんですか!」

コズエ「カホはどちらを選ぶの!」

花帆「あ、あたしは…………」

花帆「もちろん、蓮ノ空での生活も、さやかちゃんたちのことも大切で……」

花帆「でも、カナザワにもたくさん思い出や、大切な人たちもいて……」

花帆「ん〜……ん〜〜!!」

花帆「どちらかなんて選べないよー!!」

さやか「はぁ……やっぱりそうなりますか……」

コズエ「それなら、仕方ないわね──」ザッ

さやか「はい。どちらが花帆さんに相応しいのか──」ザッ

「「勝負よ(です)!!」」

花帆「!?」

カチマチ『まずいです!また戦闘が始まっちゃいます!』

ギンコ「二人ともあんなにボロボロなのに……止めないと!」バッ

ツヅリ「待って」

ギンコ「え?」

ツヅリ「これは、二人にとって──ううん。三人にとって大切なことだ」

ツヅリ「ボクたちは見守ろう」


724 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:20:21 ???00
さやか「……」

コズエ「……」

花帆(どうしよう……このままじゃまた戦いに──)

さやか「わたしは花帆さんにとって高校入学後初めての友人であり、学校生活を通して苦楽を共にしてきた間柄です!」

さやか「花帆さんの長所も欠点も、何もかも知り尽くしている自信があります!」

花帆「…………ん?」

コズエ「私だって家族同然のように暮らしてきて、カホのことはなんでも知り尽くしているわ」

コズエ「ひとつ屋根の下で生活しているからか、最近は廊下を歩く足音だけでカホかどうか判別できるようにまでなったのよ」

花帆「んん??」

さやか「一緒に暮らしてたと言っても、たった一週間ちょっとですよね?」

コズエ「何言ってるのよ!半年以上は暮らしているわ!」

さやか「あ、あなたにとってはそれくらいに感じてるんでしたか。まあ、わたしは"二年間"の仲ですが」

コズエ「二年……!で、でも!大切なのは過ごした時間の長さではなく、その"密度"よ!」

コズエ「私たちはクエストを通して、生死をかけた戦いを何度もしてきたわ!」

コズエ「互いに命を預けて戦えるのは、信頼があってこそ!あなたにそんな経験があるのかしら?」


725 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:23:57 ???00
さやか「っ……!あいにくそのような経験はありませんが……」

さやか「わたしたちだって、一世一代の舞台に立った経験はあります」

さやか「何千人、何万人の観客の前に立って、華やかな衣装を身にまとい、歌って踊る──」

さやか「舞台の上でスポットライトに照らされる花帆さんは、まるで満開の花束のように輝いていました」

さやか「あなたは──知らないでしょうけどね?」フッ

コズエ「くっ……!」

コズエ(衣装を着て踊るカホ……見たい!!)

ルリノ「へいメグ、何あれ。修羅場?」

メグミ「ん〜まあそんな感じなんじゃない?」

メグミ「面白いから観戦してよーっと!」

コズエ「私なんてカホと一緒に温泉に入ったことがあるのよ!お風呂上がりのカホの火照った顔は……とても艶やかで色っぽかったわね」チラッ

さやか「はぁ……え、それで終わりですか?」

さやか「お風呂なんて、週に三回は一緒に入っていますけど」

コズエ「なっ!?」

さやか「あまりに多いので、最近は特別感もなくなってきましたね。もはや日常というか……」

コズエ「一緒にお風呂に入るのが……日常、ですって……?」ガクガク


726 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:26:55 ???00
さやか「はい。知ってますか?花帆さんって、普段見えない骨盤の下辺りに小さなホクロが──」

コズエ「いやぁぁぁぁぁ!!」

さやか「あ、ごめんなさい!一度温泉に入った程度で舞い上がってしまう人には、刺激が強すぎましたね……」

さやか「次からはもう少し浅い話にします。"あなたに合わせて"」クスッ

コズエ「!!」

コズエ(なんということ……サヤカさんを凌駕するほどの圧倒的な言葉の切れ味。これが──"オリジナル"の力!)

花帆「……」

花帆(二人ともちょっと気持ち悪いなぁ……)

コズエ「カ、カホは、お花が好きで……」

さやか「特に好きな花はラナンキュラスですね。実家が花卉農家なんです」

コズエ「し、身長は155cmで……」

さやか「体重は自称45kgですが、少し前までは48kgでした」

花帆「!?」

コズエ「はぁ……!はぁ……!」

さやか「そろそろ諦めたらどうですか?あなたではわたしに勝ち目はありません」

さやか「一方的に守っているつもりでいた人に、相互理解なんてできませんよ」

コズエ「くっ!」ガクン

カチマチ『コズエさん!』

メグミ「勝負あったかな……」


727 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:29:57 ???00
コズエ「────でも」

コズエ「それでも!カホはこのカナザワを選んだじゃない!!」

さやか「!!」

コズエ「どんなにあなたたちのと関係が深かろうと!どんなに元の世界が素敵であろうと!」

コズエ「カホはカナザワにやってきた!それは、元の世界に不満があったからじゃないの!?」

花帆「ぁ……」

さやか「それはっあなたが──いえ、コズエさんではないですが……」

コズエ「カホがこの世界を創ったというのなら、カホにとってはカナザワこそが理想的な居場所よ!」

コズエ「わざわざ不満のある世界に帰る必要なんてない!ずっとここにいればいいの!!」

コズエ「私たちと!ずっと一緒に!!」

花帆「……」

花帆(そう。それは紛うことなきあたしの願い)

花帆(卒業した梢センパイたちと──いつか離れ離れになる部活のみんなと、ずっと一緒にいたい)

花帆(きっと、そんなあたしの願いが、この世界を創り上げてしまった)

花帆(コズエちゃんたちを、生み出してしまった……)

花帆(たとえそれが事故のようなきっかけだとしても、あたしはやっぱり、この世界を創った責任をとらないと──)


728 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:33:42 ???00
さやか「──ダメです……」ボソ…

さやか「花帆さんは!この世界にいちゃダメなんです!」

コズエ「なぜ!?カホはここで幸せになれるわ!私が幸せにするもの!」

さやか「だとしてもダメなんです!」

さやか「だって……この世界では、花帆さんは主人公になれない──"花咲けない"!!」

花帆「!」

さやか「配信を通してずっと見ていました。この世界の物語を」

さやか「最初の方こそ、花帆さんは活き活きと、このカナザワで花咲こうと輝いてた」

さやか「でも、段々と花帆さんは脇役に回るようになっていった」

さやか「管理者としての責任感からかもしれませんが、自分を抑え込んで周りを引き立てるような立ち回りばかり……」

さやか「そんな花帆さん、見ていられません!」

花帆「さやかちゃん……」

さやか「正直わたしは、花帆さんが花咲けるなら、花帆さんがどこに行こうと構いません!」

さやか「スクールアイドルを辞めようと、蓮ノ空を離れようと!その選択の先で花帆さんが一番大きな花を咲かせられるなら……少し寂しいですが応援します!!」

さやか「でも、ここはダメです!この世界にいる限り、花帆さんは自分を抑えてしまう!」

さやか「他人を花咲かせるのも素敵なことですが!その前提として、わたしは花帆さんにも花咲いて欲しい!」

さやか「花咲いていてくれないと、嫌なんです!!!」


729 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:35:58 ???00
コズエ「……!」ジリ…

コズエ(!?無意識に後ずさってしまった……気圧されているの?私が?)

さやか「花帆さんが花咲けない世界なんて……そんな世界、わたしは認めません!」

さやか「必ず!花帆さんが咲くべき場所に連れ戻します!!」

さやか「それがわたしの願い──いえ」

さやか「わたしの、"わがまま"です!!!」

花帆「──」ポカーン

さやか「だいたい!なに世界なんか作ってるんですか!先輩方との約束はどうするつもりだったんですか!?花帆さんが言い出したんですよ!?」

花帆「それは──」

さやか「梢先輩にまた会いたかったんですよね?その気持ちはわかります。わたしも同じです」

さやか「だったら!こんな世界を作るんじゃなくて、現実の世界で会えばいいじゃないですか!」

さやか「寂しいなら会いに行けばいい!また一緒に歌える機会をつくればいい!」

さやか「常識が花帆さんの邪魔をするなら、そんな常識ごと、何もかもひっくり返せばいい!」

さやか「魔法なんかなくたって!あなたには世界を変える力があるでしょう!日野下花帆!!!」

花帆「!!」


730 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:40:24 ???00
コズエ「……」

コズエ(聞いた話によれば、カホが元いた世界には魔法という力は存在しない)

コズエ(カホも、神様でも管理者でもなく、ただひとりの少女にすぎない。それなのに──)

コズエ("世界を変える力がある"。それほどの期待をかけられる人物だと言うの?本来のカホは……)

コズエ(そんなこと、一緒にいても気が付かなかった──)

コズエ(この世界では、カホは力を発揮できない……?)

花帆「あたしは……あたしは……!」

花帆「梢センパイたちが卒業しちゃったのが寂しくて……あの後ろ姿が忘れられなくて、代わりを求めてカナザワに来た……」

花帆「卒業なんてない。お別れなんてない世界を夢見て……」

花帆「最初は、コズエちゃんたちのこと、一歩引いて見てたの……どうせ偽物だって、あたしの妄想が産んだ存在に過ぎないんだって……」

コズエ「……」

メグミ「……」

ルリノ「……」

ギンコ「……」

カチマチ「……」

ツヅリ「……」


731 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:43:07 ???00
花帆「でも……一緒に生活するうちに、偽物とか本物とか、関係なくなっていった……」

花帆「純粋に、コズエちゃんたちのことが好きになっていった……」

花帆「似てるけど、ほんの少し違ってて……その違う部分に、カッコ良さとか、魅力があって……」

花帆「今では!本物の梢センパイたちと同じくらい!コズエちゃんたちが好きになっちゃったの!!」

花帆「離れたくないって!そう思っちゃうの!!」

コズエ「カホ……」

花帆「こんな思いするなら、カナザワなんて来るんじゃなかった……コズエちゃんたちに出会わなければよかった……」

花帆「別れが嫌で逃げてきた世界で、また大切な人達ができて、また別れなきゃいけないなんて……」💧

花帆「バカみたいじゃん……あたし……」

コズエ「……カホ」スッ

花帆「コズエちゃん……」

コズエ「私は……たとえ別れるのだとしても、カホに出会えたことを嬉しく思うわ」

花帆「!その言い方じゃ……まるで……」

コズエ「あなたと出会ってからの毎日は、本当に楽しかった。たとえこの世界や、私という存在が、全てが作り物だとしても、飲み込めてしまうくらい」

コズエ「私だけじゃない。きっと他のみんなもそう。カホと出会ったこと、この世界に生まれたことを、後悔する人なんていないわ」

カチマチ『もちろんです!』

メグミ「当たり前よ!」👍

花帆「みんな……」💧


732 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:48:33 ???00
コズエ「カホには、私たちという"代わり"を作ってしまうほどに、元の世界に会いたい人達がいるのでしょう?」

コズエ「だったら、きっとカホは帰るべきなのよ」

花帆「でも……!あたしが居なくなったら、この世界は今度こそ──」

コズエ「無くならないわ。あなたが愛してくれたこの世界を、無くしたりしない」

コズエ「私が、『保存』する」

花帆「!?」

コズエ「カホは気が付いているかしら?さっきカホが『あたしの全部をあげます』って言った時、本当に色んなものが流れ込んできたのよ」

コズエ「今なら保存魔法で、この世界を丸ごと保存できると思うの」

花帆「そんなことしたら……コズエちゃんが一人になっちゃいます!」

花帆「もしかしたら、永遠に近い時間を、たった一人で世界を抱えたまま──」

コズエ「いいのよ。カホが創ってくれた、この美しい世界を守れるのなら」

コズエ「それにきっと、私が保存魔法を手にしたのは、この時のためだったんだわ」

花帆「ちがっ……!そんなことをさせるためじゃ……!」

花帆「あたしは、ただ──」

いつだって、色んなことを一人で抱え込もうとするあなたが、少しでも楽になりますようにって──


733 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:55:05 ???00
コズエ「そうそう、カホに渡したいものがあるの」スッ

花帆「え、これって……オレンジ色の、バラ?」

コズエ「本当は花束だったのだけれど……動き回っているうちに、二本だけになってしまったわ……」

花帆「これを、あたしに……?」

コズエ「ええ、私なりに一生懸命選んだのよ。カホのことを想って……///」

コズエ「花言葉もね、教えてもらったの。オレンジ色のバラの花言葉は──」

花帆「──『絆』」

花帆「……ぅ……うぅ……」💧ポロポロ

コズエ「……カホ。ひとつだけ、私もわがままを言ってもいいから?」

花帆「……グスッ……はい……」💧

コズエ「私たちのこと、そしてこのカナザワのことを、忘れないでいて欲しいの」

コズエ「私も、たとえ何十年、何百年経とうとも、あなたのことを忘れないわ。だから──」

花帆「……!」ギュッ!

コズエ「きゃっ!?カホ?」

花帆「忘れません!!コズエちゃんたちのこと!絶対に忘れたりなんかしません!!!」

花帆「毎日思い出します!社会人になっても!おばあちゃんになっても!絶対に絶対に!忘れませんから!!」


734 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 21:58:23 ???00
コズエ「っ……!」💧

コズエ「ええ……ありがとう。カホのことだから、きっと言葉だけじゃないと信じてるわ……!」ギュッ

花帆「大好きです……!コズエちゃん、メグちゃん、ツヅリさん、ルリノちゃん、カチマチちゃん、ギンコちゃん──サヤカちゃんだって!」

花帆「みんなみんな!大大大好きです!一生忘れません!!」

ルリノ「うん。ルリも忘れないよ」

カチマチ『カホさんの使い魔になれたこと!一生誇りに思います!』

ギンコ「わたしも、カホさんに会えてよかったです」

メグミ「毎日楽しかったよ!ありがとうね♡」

ツヅリ「また会おう。カホ」

花帆「!!──はいっ!必ず方法を見つけて、また会いに来ます!今度はちゃんと安全な方法で!」

🔯ブーン!

さやか「……ゲートが開きました。花帆さん、そろそろ帰りましょう」

花帆「え!もう!?」

さやか「はい。でも、大丈夫です」

さやか「またいつか──会えますから」


735 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:00:21 ???00
コズエ「さやかさん、"私の"カホをよろしくお願いします」ペコリ

さやか「はい。こちらこそ、今まで"わたしの"花帆さんを守ってくれてありがとうございました」ペコリ

コズエ「……」ニコッ

さやか「……」ニコッ

⚡️バチバチ!

ルリノ「う"わ"っ!めっちゃバチバチしてる……」

メグミ「これが正妻戦争か〜」

さやか「それでは、帰りましょう。花帆さん」

花帆「うん!あ、ちょっと待ってて!」タタタ!

さやか「花帆さん?」

花帆「コズエちゃん!これ!」

コズエ「え?」

花帆「プレゼントしてくれたバラ、一輪はコズエちゃんに持っていて欲しいんです!」

花帆「その方が、絆を感じられるから!」

コズエ「……うふっ。そうね」

コズエ「この花をカホだと思って、大切にするわ」

花帆「はい!絶対に枯らせちゃダメですからね!」

コズエ「ええ、もちろんよ」


736 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:02:36 ???00
花帆「それじゃあ、あたし行きます!」

コズエ「わかったわ。道中気をつけてね」

カチマチ『カホさーーん!お元気でーー!!』

花帆「うん!!みんなも!また会う日まで、元気でねーー!!」

花帆とさやかは、虚空に空いた穴に吸い込まれるように消えていく。

やがて穴は小さくなり、完全に塞がってしまった。

──ゴゴゴゴ!

ギンコ「!この揺れ……」

ツヅリ「カホが居なくなって、世界を保つための楔が外れたんだ」

メグミ「コズエ!どうするの!?」

コズエ「大丈夫よ。私が何とかするわ」

コズエ「──あなたたちとは暫く、会えなくなってしまうだろうけれど……」

メグミ「でも、必ず戻ってくるんでしょ?だってカホちゃんと約束したもんね!」

コズエ「──ええ、メグミの言う通りよ」

コズエ『保存』✨✨✨

世界は高速で回転し、コズエが持つバラの中に吸い込まれていく。

ただひとり、コズエだけを残して。

コズエ(これでいいの。たとえカホが帰ってきた時、そこに私だけが居なくとも)

コズエ(カホが愛してくれたこの世界を守れるのなら。私は、それで──)


737 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:04:54 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

時空のトンネルに入ると、花帆とさやかの肉体は消滅し、再び魂だけの霊体になる。

それでも、離れないように、今度は互いに手を強く握りあっていた。

花帆「さやかちゃん、さっき『わたしの花帆さん』って言ってたでしょ」

さやか「!」

花帆「あたし、いつの間にさやかちゃんのものになったのかな〜」

さやか「あ、あれは!売り言葉に買い言葉と言いますか……!」

さやか「別に本心で言った訳では……///」

花帆「えー!でもさやかちゃん、その前にもあたしに熱〜い想いを語ってくれてたじゃん!あの言葉も嘘だったの?」

さやか「それは……ぜ、全部が嘘ではないですが……!」

さやか「も、もう!この話はこれでおしまいです!」


738 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:07:04 ???00
さやか「それよりも!花帆さんに問いただしたいことがあります!」

花帆「え!?あたしに問いただしたいこと!?」

さやか「はい。どうして、あの世界の『ムラノサヤカ』をあのような殺人鬼にしたんですか?」

さやか「他の方々は概ねオリジナルと似たような性格だったのに……もしかして、花帆さんから見たわたしはあんな感じなんですか!?」

花帆「ち、違うよ!サヤカちゃんは、気の迷いというか……身内にも悪役が欲しかったというか……」

さやか「どうしてその悪役がわたしだったんですか!」

花帆「……だってさやかちゃん、配信の時にコメントで『ジャックナイフ村野』って呼ばれてたことあったし……」

花帆「なんとな〜く、シリアルキラーなキャラが似合うと思って……」

さやか「………………え、それだけ?」

花帆「うん」

さやか「………」

さやか「はぁ……それを聞いたら、彼女はどんな反応をしたでしょうね……」

さやか「きっとあまりにくだらな過ぎて、自害していたかもしれません。いえ、むしろその方が手間はなかったのですが……」

花帆「うぅ……」


739 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:09:05 ???00
さやか「もう会うことはないでしょうから、せめて心の中で謝ってあげてくださいね。彼女もそれなりに、自分の存在に悩んでいたんですから」

花帆「はい……ごめんなさい……」

さやか「まあ、花帆さんが謝る相手はそれだけではないですけどね」

花帆「え?」

さやか「え?じゃありませんよ!」

さやか「現実世界に帰ったら、たっぷりとお叱りを受けるでしょうから、覚悟してくださいね!!」

花帆「ひぃっ……やっぱりカナザワに戻る〜!」

さやか「こら!暴れないでください!危ないですよ!」

✨キラキラ……!

花帆「!」

さやか「さあ、久しぶりの帰還です。きっと体は上手く動かないでしょうから、いきなり起き上がろうとしないでくださいね」

✨ピカーーン!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


740 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:12:18 ???00
【花帆の部屋】

花帆「……」ピク!

花帆「ん……」

セラス「!花ちゃんが起きました!」

瑠璃乃「よかった……本当に……」💧

小鈴「さやか先輩も意識が戻りました!」

泉「ほっ……今度こそ、全員無事に帰ってこられたかな」

花帆「みん──な──」ボソボソ

泉「無理に話さない方がいい。10日も寝ていたんだ。口を動かすのも大変だろう」

泉「まずは水を飲むんだ。慌てずに、少しずつだ」

瑠璃乃「ストロー刺してあるから、ゆっくり飲んで」

花帆「……」コクン…

チュー…

姫芽「泉ちゃんは、見たいものが見れたのかにゃ〜?」

泉「姫芽さん……そうだね。とても激しい情熱を見せてもらったよ」


741 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:16:54 ???00
ーーーーーーーーーーーーーー
さやか『花帆さんが花咲けない世界なんて……そんな世界、わたしは認めません!』

さやか『必ず!花帆さんが咲くべき場所に連れ戻します!!』

さやか『それがわたしの願い──いえ』

さやか『わたしの、"わがまま"です!!!』
ーーーーーーーーーーーーーー

泉(もしもあの時、私もそう言って先輩の隣に立ち続けていたら──)

泉(手を離してしまった選択は、間違いだったのだろうか……)

姫芽「ほうほう〜それなら良かったね〜」

泉「……怒らないのかい?」

姫芽「ん〜?」

泉「私のせいで、最後はだいぶ大事になってしまった。危うく花帆先輩だけでなく、さやか先輩まで帰れなくなるところだった」

姫芽「まあ、泉ちゃんは契約に則って要求を通しただけだしね。あんなに頑張ってくれた人を責めるなんてできませんよ〜」

姫芽「それに、最後はいい感じにみんなとお別れできたじゃん?」

姫芽「きっとその前のタイミングで無理やり連れ戻してたら、かほせんぱいはずっと後悔してたと思う」

泉「それは、結果論じゃないかな?」

姫芽「いいじゃん!結果オーライ〜!」✌️

泉「ふっ……調子がいいね。姫芽さんは」


742 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:18:59 ???00
花帆「ん……」ムクッ

瑠璃乃「あ!無理に起き上がっちゃダメだよ!まだ寝てないと!」

花帆「ううん……大丈夫……」

吟子「……」

花帆「吟子ちゃん……あの──」

✋バチン!

花帆「っ!」

小鈴「吟子ちゃん!?」

吟子「花帆先輩のだら!!どれだけ心配したと思っとるの!!!」

花帆「……ごめん……」

吟子「本当に……本当に不安だったんだから……」💧

吟子「このまま帰ってこなかったらどうしようとか……私たちのことなんてどうでもいいのかもとか……」

吟子「やっぱり、梢先輩がいないスリーズブーケじゃ……私じゃ不満なのかなとか……」

花帆「そんなことない!──ゴホッゴホッ!」

瑠璃乃「花帆ちゃん!急に大きい声出しちゃ……」

花帆「吟子ちゃんに不満なんかない!どうでもよくなんかない!!」

花帆「あたしが逃げたのは、あたしが弱かっただけ……吟子ちゃんには何も責任はないよ……!」

花帆「あたしが……寂しさを抱えきれなかっただけ……」


743 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/15(土) 22:21:44 ???00
吟子「グスッ……それなら……今度は一緒に抱えさせてください……」

吟子「花帆先輩の寂しさも、不安も全部……」

吟子「私たち、同じユニットの仲間じゃないですか……」

花帆「!!」

花帆「うん……うん……!」💧

花帆「ごめんね……ごめんね吟子ちゃん……!」💧

吟子「そこは、『ごめん』じゃないでしょ」

花帆「っ!そう、だよね……」

花帆「この度は、誠に申し訳ございませんでした」

吟子「言い方の問題じゃなくて!!」

吟子「『ありがとう』……でしょ?」

花帆「あ──うん」

花帆「ありがとう!吟子ちゃん!」

吟子「うん……これからもよろしくね。花帆先輩」

さやか「ちゃんと怒られたみたいですね」

花帆「さやかちゃん!」

さやか「コホン。それでは、全員揃ったところで改めて──」

さやか「花帆さん!」

『『おかえりなさい!!』』

花帆「!──うん!」

花帆『ただいま!』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


744 : 名無しで叶える物語◆WXhKDi66★ :2025/11/16(日) 00:07:59 ???Sa
リアルタイムで追加される情報を落とし込むのが巧みだわ・・・


745 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/17(月) 22:25:24 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

epilogue.1


ピピピ!ピピピ!

花帆「ん……ん〜〜!」

📱ポチ

花帆「もう朝──うっ…寒い」

カナザワから帰ってきて、早いものでもう7ヶ月が経った。

あの直後はとにかく色々と大変で──

長野の病院で緊急入院と検査をした後、やっと戻ってこられたと思ったら、先生たちからたっぷりお叱りを受けた。

ちなみに、あたし以外のクラブのみんなは、始業式から数日間無断で学校を欠席したことで、反省文を書かされていたらしい。申し訳ない……

でも、嫌なことばかりでもなかった。

センパイたちとまたライブをする。そのための新しい目標ができた。

吟子ちゃんは、くっ付いても前より嫌がらなくなったし、心なしか嬉しそうな表情も見せるようになった。

新入部員としてEdel Noteの二人がやってきた時は本当に驚いたけど、今ではすっかり部に馴染んでる。

そういえば最後に別れる時、「またすぐに会えるよ」ってせっちゃんが言ってたっけど、あれってそういうことだったんだ。


746 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/17(月) 22:27:39 ???00
花帆(本当に、たくさんのことがあったなあ)

花帆(ぶつかり合ったり、すれ違ったり、関係が変わったり……)

花帆(去年はラブライブ!優勝を目指して、ひたすら走ってたけど)

花帆(今年はそれがない分、一人ひとりと向き合う時間が増えた気がする)

花帆(とはいえ、BGPの準備があるから忙しいことには変わらないけど……)

花帆(来月にはもう、『Starring Bloom』も控えてる)

花帆(誰もが花咲けるステージへの第一歩。必ず、成功させるんだ!)

花帆「──って、もうこんな時間!?早くしないと朝ごはん食べる時間がなくなっちゃう!」バサッ

温かい布団から飛び出し、急いで顔を洗い、制服に着替える。

部屋を出る直前、花帆は振り返って、明るい声で宣言した。

花帆「行ってきます!」

🚪バタン

……

花帆がいなくなり、部屋に静寂が訪れる。

花帆の机の上には、一輪の花。

カナザワから持ち帰ってきて以来、まるで時が止まったように、枯れることなく咲き続けるオレンジ色のバラ。

決して消えることのない、『絆』の証。


747 : 名無しで叶える物語◆UnsjqYz6★ :2025/11/17(月) 22:30:22 ???00
花帆には、密かな野望があった。

『Bloom Garden Party』は花帆たちが目指す夢の集大成。

その夢のステージを、カナザワにいる彼女たちにも届けたい。

世界中どこにいても──たとえ別の世界にいても、誰もが花咲くことができるように。


別れとは失うことではなく、新しい約束が増えるだけ。

『決して忘れない』『またいつか会おう』その約束を果たすため、花帆は今日もひた走る。

花帆(待っててね。みんな)

花帆(必ず、最高にキレイな花束を持って、会いに行くから!)


epilogue.1 『Preserved Roses』


748 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:16:25 ???00
epilogue.2 『別の空の僕たちへ』


ルリノ「お邪魔しまーす!」

メグミ「ルリノちゃん!いらっしゃい!タオルいる?」

ルリノ「ううん。そんなに濡れてないから大丈夫」

ギンコ「最近雨の日が多いですよね」

ルリノ「だねーもう春なのにね」

カチマチ『カチマチも毛がゴワゴワして気持ち悪いです……』

ツヅリ「カホが居なくなってから、雨が降るようになった」

メグミ「あー確かに。それまで全然降らなかったもんねー」

ギンコ「カナザワは元々雨の多い地域ですから、ある意味こっちの方が普通なんですよ」

メグミ「へ〜そうなんだ」

カチマチ『もしかしたら、カホさんはこの街の太陽だったのかもしれません!』

ルリノ「あはっ!そうかもね」

メグミ「あれからもう三年近く経ったのか〜早いもんだ」

ルリノ「──そういえば、コズエさんは……?」

ツヅリ「コズは……」

ギンコ「……まだ、帰ってきませんね」

ルリノ「そっか……」

🕒チク…タク…チク…タク……


749 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:19:36 ???00
🚪ガチャ

コズエ「ただいまー食材買ってきたわよ」

コズエ「あら、ルリノさん。もう来ていたのね」

ルリノ「こんちわー!お邪魔してまーす!」

メグミ「遅ーい!お腹減ったー!」

コズエ「これから作るのだけれど……」

コズエ「というか、メグミも手伝いなさい」

メグミ「は〜い」

ルリノ「ルリも手伝うよ!」

ギンコ「ルリノさんはお客様なんですから、座っていてください」

ルリノ「いいのいいの!今日の主役はツヅさんでしょ?」

ツヅリ「しゅやく〜」✌️

コズエ「今回の任務は長かったものね。まさか一ヶ月もかかるなんて。本当にお疲れ様」

ツヅリ「でも、辛くはなかったよ。ずっとお花を集めてるだけだったから」

メグミ「カホちゃんの置き土産か〜まだ残ってたんだね」

ツヅリ「海に落ちた花が、たくさん旅をして、また海岸に戻って来たんだ」

メグミ「わざわざそっちまで行って回収するなんて、軍も必死だねー」

花帆たちが花畑に変えてしまった街は、『とある事情』で全て元に戻った。

だが、舞い上がった花は雪のように降り積もり、人々の生活に支障をきたすこととなる。

街の中は住人達が力を合わせて掃除したのだが、街の外の対応はツヅリを含む王国軍によって行われた。

ちなみに、なぜ軍がわざわざ花の掃除などしたかと言うと、花帆がつくった花には非常に質の高い魔力が蓄えられていることが判明したからだ。


750 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:24:25 ???00
メグミ「まーた変な兵器とかに悪用されなきゃいいんだけど」

ツヅリ「たぶん大丈夫。新しい女王様は、とても優しい人だから」

ギンコ「側近の騎士様も優秀な方だと噂になってますね」

メグミ「どうして王様が代わったんだっけ?」

コズエ「過去に王国がした悪事が次々明るみになって、その責任をとらされたのよ」

メグミ「あーそうだそうだ。ついでに街のみんなが『転移』した事件の責任も押し付けられたんだった」

ルリノ「前の王様には関係ないことだったのに、可哀想……」

コズエ「仕方がないわ。カホのことを言ったって誰も信じないだろうし、誰かが責任をとらないと国民の怒りが収まらなかったのよ」

メグミ「まあいいじゃん!娘の新国王はあの子に似てて可愛いし、みんなからも大人気なんだから!前国王も鼻が高いでしょ!」

メグミ「なんだっけ、アリエンバスト?」

コズエ「"リリエンフェルト"女王よ。不敬罪で首が飛んでも知らないわよ?」

メグミ「あ、そうだった。てへ☆」

コズエ「まったく……」

あの日以来、カナザワは変わったといえば変わったし、変わらないといえば変わらない。

花帆がこの世界を去ったからと言って、人々の生活が劇的に変化することはなかった。

そして、肝心な話。なぜコズエが普通に生活できているかと言うと、そこには『とある事情』が大きく関係していた──


751 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:26:43 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【 】

コズエ「──」

花帆が元の世界へ帰った後、世界を『保存』したコズエはひとり宇宙を彷徨っていた。

その手には、花帆とお揃いのオレンジ色のバラ。世界を閉じ込めた約束の花を、大切に握り締めて。

コズエ「────」

こうして宇宙を漂って、どれくらい経ったのだろう。1週間?10ヶ月?あるいは10年?

朝も夜もないここでは、時間の感覚は曖昧になる。

最初の方こそ、360度を瞬く星々に恐怖や感動を覚えたが、音も温度も無いここでは、刺激が少なくすぐに飽きてしまった。

そこからは、ただただ無心で浮遊するだけの時間が続いた。

コズエ「──────」



















































「見つけた」


752 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:28:54 ???00
コズエ「────え?」

「突然消えたかと思ったら、まさかこんな所を漂っていたとはねぃ」

その声は、長らく思考すらしていなかったコズエにとって、久しぶりに認識する人の言葉だった。

コズエ「──サチ……師匠?」

「ん?あたしはキミの師匠じゃないよ。他人の空似じゃないかな?」

「あたしの名前は『SEARCH』。迷える来訪者をElysionまで導く、電子精霊さ!」

コズエ「さーち?……でんし精霊?」

サチ「まあ、キミが呼びやすいならサチでもいいよ」

サチ「ところで、キミはオトムネコズエだね?」

コズエ「どうして、私の名前を……」

サチ「それはおいおい話すとして、とりあえず──」

サチ「コズエ、あたしの船に乗らないか?」

半ば強引に船に乗せられ、コズエはそこで多くのことを教わった。

コズエが漂っていたこの宇宙が、『銀河ネットワーク』という名前であること。

周りに見える星の一つひとつが、それぞれ独立した『世界』であること。

そして──


753 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:30:47 ???00
サチ「カナザワについて知りたい?」

コズエ「はい。結局、カナザワはカホが創った世界なんですか?」

サチ「うーん。正確には違うかな」

サチ「日野下花帆は確かにカナザワの管理者権限を持っていたが、最初にカナザワの土台を作ったのは『DREAMER』だ」

コズエ「ドリーマー?」

サチ「あたしたち電子精霊の姉妹のひとりさ。とはいえ、どこから話せばいいものか……」

サチ「まあいいか。どうせここには時間の概念はない。長話をしても問題ないだろう。たしか、ここが銀河ネットワークだということは教えたね?」

コズエ「はい。そして見えている星々は、それぞれ異なる次元の『世界』だと……」

サチ「そうだ。ここでは世界は無限に生まれ、人知れず消えていく」

サチ「コズエがいたカナザワも、そんな『世界』の一つだ」

サチ「そして、花帆がいる世界もね」

コズエ「じゃあ、この銀河のどこかに、カホが──」

サチ「ああ。だが、あたしたち含め、この銀河ネットワーク内の世界同士は互いに干渉する術を持たない」

サチ「いや、"持たなかった"と言うべきかな」

サチ「それを可能にしてしまったのが『Link-Like System』だ」

コズエ「りんくらいくしすてむ?」

サチ「異なる次元の世界同士を『繋げる』仕組み」

サチ「誰が作ったのか、何のために作られたのかもわからない。もしかしたら、それを作った奴らは今もあたし達のことを監視しているのかもしれないね」チラッ

サチ「"キミ"のように」


754 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:33:09 ???00
コズエ「?サチさん、どこを見ているんですか?」

サチ「いや、なんでもないよ」

コズエ「そのシステムが、カナザワができたことと関係していると?」

サチ「ああ。さっきちらっと名前を出したけど、電子精霊『DREAMER』がLink-Like Systemを経由して花帆に接触したんだ」

サチ「彼女はどうも人の夢を叶えたがる気質があってね。花帆が描いた理想の世界を具現化し、あろうことか管理者として招待してしまったわけだ」

サチ「少なくともあの時点では、花帆は本気でそれを夢見ていたからね」

コズエ「つまり、全部そのドリーマーさんが原因だと……」

サチ「申し訳ない……特に、花帆には迷惑をかけてしまった」

コズエ「きっとカホは、そのことを恨みはしないと思います。もちろん私も」

コズエ「だって、そのおかげで私たちは出会えたのだから」

サチ「そうかもしれないね。でも一応、責任という訳ではないけど、キミたちの世界にはちょくちょく干渉していたんだ」

サチ「それこそ、カナザワが崩壊しそうになった時には、あたしもかなりアシストしたんだぜ?」

コズエ「そうだったんですか?」


755 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:35:11 ???00
サチ「コズエたちは気が付かなかったかもしれないが、キミたちがムラノサヤカと戦っている時に、次元の亀裂を無理やり開いて『別世界』の人間がカナザワに干渉しやすいようにしたんだ」

サチ「桂城泉とあの世界の人間だけでは、どうにも対処できそうになかったからね。別世界から選りすぐりのプログラマーを探してきたのさ」

サチ「あたしは元々、そういうのが得意な電子精霊だからね」

コズエ「……知りませんでした……」

サチ「無理もないさ。当人たちでさえ、まさか画面の向こうにいる人物が別世界の人間だとは思っていないだろう」

コズエ「いえ、そうではなく……サチさんは、ずっと私たちを見守ってくださっていたんですね」

サチ「ん?まぁ、姉妹の粗相で産まれた世界だしね。DREAMERがさっさと次の夢を叶えに行ってしまったから、代わりにあたしが監視していたんだ」

サチ「もしも銀河ネットワークの『バグ』になりうる世界なら、対処する気でもいた」

サチ「なんて、堅苦しいことを言ってはみたが──結局あたしも、キミたちが紡ぐ物語が、結構好きだったのさ」


756 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:44:18 ???00
サチ「さて、色々話したが改めて本題だ。コズエ、あたしと一緒にElysionに行かないか?」

コズエ「エリュシオン?」

サチ「Elysionは『全てが報われる地』。電子精霊の役割は、キミのような迷い人をElysionまで導くことなんだ」

コズエ「全てが報われる──すみません。私はそこへは行けません」

サチ「ほう、それは何故かな?」

コズエ「私はカホが帰ってくるまで、この花(世界)を守り続けないといけないから……」

サチ「ふむ。キミが保存したカナザワか」

コズエ「はい。約束したんです。カホは必ず、カナザワに帰ってくると」

サチ「でも、たとえ花帆が再びカナザワにリンクしても、キミは会うことができない。それでいいのかい?」

コズエ「それは……でも、私がこうしていないとカナザワは保ちません」

コズエ「私はいいんです。カホにとっての第二の故郷を守れるのなら、それで……」

サチ「なるほど、なるほどねぃ」


757 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:47:42 ???00
サチ「ふふ……あっはっはっは!」

コズエ「え!?なんですか急に!」

サチ「いや、キミは本当に強情だと思ってね!」

サチ「わかっているのかい?Elysionへの旅を断るということは、また今までのように、この広い宇宙を孤独に彷徨うということなんだぞ?」

コズエ「構いません。というより、いきなりエリュシオンだの、全てが報われるだの言われても、頷けるはずないじゃないですか!」

コズエ「そんな得体の知れない場所に行くくらいなら、大切なカナザワを抱えて眠っていた方がずっとマシです!」

サチ「あはは!それもそうか!」

サチ「安心したまえ。ぶっちゃけあたしも、本気でコズエをElysionに連れていくつもりなんてないよ。ただ電子精霊の義務として、一応聞いてみただけさ」

コズエ「??では、何のために私に接触したんですか?カナザワの真相を伝えるため?」

サチ「それもあるが……もっと単純な理由、コズエを助けるためだ」

サチ「こんなに頑張っているキミが孤独なままなんて、許せなかったのさ」

コズエ「はぁ……?」

サチ「わからないかな?あたしがコズエに代わって、カナザワの維持を担当しようと言っているんだ」

コズエ「!!そんなことができるんですか!?」

サチ「ああ。仮にもあたしは電子精霊。花帆がカナザワの管理者だったというなら、電子精霊は銀河ネットワークの管理者──」

サチ「完全なる上位存在だからね。世界のひとつを維持するくらいなんてことはない」

コズエ「それじゃあ、もしかして私も──」

サチ「うん。カナザワに返すよ。むしろ、あんな風に漂っていたら他の電子精霊にバグとして攻撃されかねないからね」


758 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:50:21 ???00
サチ「その花を渡してもらえるかい?大丈夫、壊したりしないさ」

コズエ「……はい」スッ

サチ「さて、ここから先は一緒に旅をしないなら見せられない。コズエにはしばらく眠ってもらうよ」

サチが言い終わるより先に、突然コズエの視界がぐにゃりと歪み、強烈な眠気が襲いかかる。

コズエ「うっ──」グラッ

サチ「次に目が覚めた時には、キミは自宅のベッドの上だ。そうそう、ついでに消えた街もできる限り元に戻しておくよ。特別サービスさ」

コズエ「ありがとう……ございます……」クラクラ

サチ「なに、あたしにとっては大した手間じゃないからね」

コズエ「──」

もはや話すこともできない程の微睡みの中、最後に彼女の言葉が聞こえてくる。

「そういえば……コズエにはまだまともな称号をあげてなかったねぃ」

「せっかくだ。たった一人で日野下花帆の夢を守り続けたキミに敬意を表して、この称号を与えよう」

『── ──』

「それじゃあコズエ、少しの間だったけど、キミと話せて楽しかったよ」

「これからのキミの旅路に、幸多からんことを──」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【称号獲得】

オトムネコズエ:『Dream Preserver』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


759 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:51:58 ???00
コズエ(あそこでの会話は、段々と記憶から薄れていっている)

コズエ(おそらく、本来なら私が知ってはいけないことだったんだわ……)

メグミ「コーズエ!なにぼーっとしてるの?早くご飯つくろ」

コズエ「そうね。ごめんなさい」

ギンコ「疲れてるんですか?」

コズエ「少し考え事をしていただけよ」

メグミ「今日は朝までパーティなんだから、暗い顔してちゃダメだよ☆」

ツヅリ「パーティ♪パーティ♪パーティ〜♪」👐

コズエ「うふ、眠くなったら無理せずに寝るのよ?」

ギンコ「そういえば、"お花屋のサヤカさん"の所には行ってきたんですか?」

コズエ「ええ、一応様子は見てきたわ」

メグミ「怪しい感じはなかった?変なとことか」

コズエ「変と言えば、変なのだけれど──」


760 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:53:05 ???00
ーーーーーーーーーーーーーー

【花屋】

サヤカ『あ!コズエさんこんにちは!』

サヤカ『お買い物ですか?パーティ?』

サヤカ『わー!素敵だね!きっとみんなの笑顔が咲くんだろうな〜』

サヤカ『コズエさんも、みんなと一緒にドデカく花咲こうね!フラワー!!』

ーーーーーーーーーーーーーー

コズエ「……少なくとも、害はなさそうだったわ」

ツヅリ「あのサヤはボクたちの知ってるどのサヤとも違う。だから大丈夫」

ルリノ「お花屋さんでバイトしてるのを見つけた時は、さすがにちょっちビビったけどね〜」

メグミ「ほんとだよ!お散歩コースにぬるっといるもんだから腰抜かしたわ!」


761 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:55:00 ???00
ʃ§ ( っ⁼´꒳`)っ ソロ〜

ギンコ「こら!盗み食いしようとしない!」

ʃ§ ( っ⁼´꒳`)っ ギクッ!?

ピューン三 ʃ§ ( っ⁼´꒳`;)っ🍎

カチマチ『あ!それはアップルパイ用のリンゴです!待てー!』タタタッ!

ルリノ「あの子もだいぶ慣れてきたみたいだね」

ギンコ「まさか私たちを全滅させかけた伝説の魔獣が、こんな愛らしい姿になるなんて……」

ツヅリ「ドラゴンを取り込んだ時には、もうダメかと思った」

メグミ「まあでも、今は結構大人しいし!カチマチちゃんも動物の友達ができて嬉しそうだからいいんじゃない?」

コズエ「そうね。人が減って寂しくなるかと思ったら、案外前より騒がしくなってしまったわ」


762 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:56:40 ???00
そうして、今日も日常は続いていく。

春を越え、夏を越え、秋を越え、冬を越え──また、春が来る。

何度も季節が巡る中、別れも出会いも繰り返す。

だが、それだけではない。

出会いは、新しいものばかりではないはずだ。

別れがあるなら、きっと『再会』だって──

カチマチ「──!」ピクッ

『Welcome to〜♪ welcome to〜♪ welcome to my house〜♪』

コズエ「あら?お客さんかしら」

メグミ「このチャイム、まだ使ってたんだ……」

ギンコ「あんまり使われないので忘れてました」

ルリノ「ルリも勝手に入っちゃうからねー」

コズエ「ちょっと出てくるから、先に準備をしていてちょうだい」

ギンコ「わかりました」

バタン

ツヅリ「…………あ」

ツヅリ「雨が、上がってる」


763 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 22:59:27 ???00
コズエ(来客なんて珍しいわね……誰かしら)

コズエ「はーい」🚪ガチャ

🌸ブワッ!

コズエ「!」

扉を開けた瞬間、温かい春風と共に花びらが舞い込んできた。

外は先程までの雨が嘘のように晴れており、洗濯された世界が陽の光に照らされてキラキラと輝いている。

コズエの目の前には、一人の少女。

色とりどりの花束を抱えており、その中心には、オレンジ色のバラが刺さっている。

だが、コズエの視線は花束よりも、その翡翠色の瞳に釘付けになった。

「コズエちゃん!」

コズエ「──」

寂しくなかったと言えば、やはり嘘になる。

待ち続けることができたのは、胸の中にいつでも温かな約束があったから。

それでも、いざ目の前に現れると、自然と感情は込み上げてきて。

溢れ出しそうな涙を必死に堪え、コズエは目の前の笑顔に応えるように、優しく微笑み返した。

誰よりも待ちわびた、想い人に向かって──


コズエ「お帰りなさい!」



【蓮ノ空ファンタジーⅡ】 完


764 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 23:13:51 ???00
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【あとがき】

これにて本当におしまいです!
こんなに長い間お付き合い頂き、ありがとうございました!

最初は「3ヶ月くらいで書き終わるかな〜」と思っていたのですが、いつの間にか完結まで8ヶ月弱もかかってしまいました……

安価やコメントをくださった皆様、本当にありがとうございます。
「誰も読んでくれてないんじゃ……」と心が折れそうになっていた時、とても励みになっていました!

今はしばらくSSはいいかなって気持ちと、また書きたい気持ちが半々です。

とりあえず本家『ハスノソラファンタジー』のスタンプラリーは行きたいですね〜

そんなところで、あとがきも以上にします!

どうか花帆ちゃん達の夢が、大きく花咲きますように。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


765 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/20(木) 23:17:22 ???00
【過去作】

【SS】小鈴「聖杯戦争?」
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/anime/11224/1738315784/-100


【SS】吟子「止まれ!」姫芽「💜」
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/anime/11224/1737250327/

【SS】『恥は人生のかきすて feat.桂城泉』
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/anime/11224/1737459037/


766 : 名無しで叶える物語◆4qRmEVwQ★ :2025/11/20(木) 23:42:31 ???00
超大作お疲れ様
めちゃくちゃ面白かった


767 : 名無しで叶える物語◆9flEkzsK★ :2025/11/20(木) 23:45:44 ???00
ホント素晴らしいSSだよ、読んでて超面白かった

小鈴FateのSSも大好きだわ


768 : 名無しで叶える物語◆4ZF0mL6C★ :2025/11/20(木) 23:50:03 ???Sp
時止め吟子同じ人だったのか…納得


769 : 名無しで叶える物語◆Tnzxzu0Y★ :2025/11/21(金) 02:18:03 ???Sd
大変乙
ここみたいにたまに更新されるおもしろいssは日々のちょっとした楽しみだと実感


770 : 名無しで叶える物語◆2fdkuO3D★ :2025/11/21(金) 07:06:17 ???00
お疲れ様でした!
リアルタイムで更新されてく様々な小ネタが長期連載の作品らしくてとても楽しめました


771 : 名無しで叶える物語◆If8XEwd6★ :2025/11/21(金) 13:12:26 ???Sa
乙乙のカチマチ


772 : 名無しで叶える物語◆n9oQKQ3b★ :2025/11/22(土) 01:02:55 ???00
すごかった(小並感)


773 : 名無しで叶える物語◆nzAMj2jg★ :2025/11/23(日) 20:52:24 ???Sa
記憶に残る作品になったわ


774 : 名無しで叶える物語◆QWFx4zzr★ :2025/11/23(日) 22:41:43 ???Sa
完結乙でした
久々に安価スレ見掛けた上に結構流れを左右しそうなの多かったからドキドキしながら見てました
過去作も全部読んでたけど色々なスタイルで書けてすごいな


775 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/23(日) 23:15:24 ???00
皆さんご感想ありがとうございます!
安価の話で思い出したので少しだけ裏話を語らせてください

安価の選択肢の中で最も物語の方向性を左右したのは、コズエの魔法でした

この物語に出た敵は基本的に『コズエの能力でギリ勝てる強さ』に設定していたので、どの魔法を覚えるかは一番の分岐点でした


776 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/23(日) 23:19:09 ???00
逆に保存魔法が作中一のチート魔法だったせいで、全体的に敵の強さが底上げされてしまったのですが……

仮に他の魔法が選ばれていたら、結末を含め物語は大きく変わっていたと思います

『保存』とかいう一番よくわからない魔法を選んでくれた人には感謝です🙏


777 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/23(日) 23:22:58 ???00
ちなみにBADEND選択肢もいくつかあったのですが、何故か全て一発で正解を当てられてしまいました……

もしもBADENDを引いたら『オオガミ道場』が挟む予定でしたが、ついぞ幻のコーナーになってしまいましたね


778 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/23(日) 23:27:05 ???00
あと地味に一番便利だった魔法は、反発魔法の『レプルス』くんです

シンプルイズベストでなんでも任せられるいい魔法でした

これを選んでくれた人にも感謝です!


779 : 名無しで叶える物語◆5JHnyQFQ★ :2025/11/23(日) 23:28:31 ???00
以上、蛇足の裏話でした!


780 : 名無しで叶える物語◆QWFx4zzr★ :2025/11/23(日) 23:38:28 ???00
梢が乗っ取られた時のめぐちゃん安価取ったけど、あれどう考えても他の選択肢だったらBADだったっぽいもんな
オオガミ道場見たかった…


781 : 名無しで叶える物語◆Nwp57vfs★ :2025/11/23(日) 23:38:53 ???00
お疲れ様
面白かったぞ


782 : 名無しで叶える物語◆tZfps9RY★ :2025/11/24(月) 20:05:19 ???00
いつの間にか完走してた
更新が楽しみなくらい面白かったぞ

オオガミ道場のブルマ枠が誰だったのか気になるな


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