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【SS】梢「接吻欠乏症と、その変質」
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以前書いた定期的に美少女の接吻を受けなければ死ぬ梢先輩のルート分岐です
【SS】かほつづめぐ「接吻欠乏症?」梢「……ええ」
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/anime/11177/1697798731/
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さやか「……え? ……綴理先輩……慈先輩に、花帆さんも……梢先輩に、何を……」
梢「……あ……さやか、さん……」
綴理「……さや……」
花帆「ちょ……慈センパイ、鍵閉めてなかったんですか?」
慈「だ、だって梢がオートロック導入してくれなくて……」
花帆「梢センパイの部屋に!? そんなのできるわけないじゃないですか!」
さやか「……3人とも!!!」
かほつづめぐ「っ!」ビクッ
さやか「今すぐ梢先輩から離れてください! 今すぐに、です!」
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さやか「……なるほど。キスしないと死ぬ病気に、偶然3人同時にかかったと」
慈「そうそう! さやかちゃんって理解が早くてめぐちゃん先輩も助かっちゃう!」
花帆「あたしも、こんな利発で聡明な同級生がいるっていうのはもう誇りっていうか、さやかちゃん凄い!」
綴理「…………」
慈「ほら! 綴理もなんとか言って!」
綴理「ボクは諦めた。さやに小手先のごまかしは通用しない」
さやか「綴理先輩には理解頂けているようで良かったです」
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きたか
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さやか「まず、ひとつ言わせてください」
かほつづめぐ「……」
さやか「キスしないと死ぬ病気、でしたっけ。そんなものはこの世に存在しません」
花帆「いやそれはあるんだよ! 梢センパイは本当にその病気に罹ってて! ね、梢センパイ!」
梢「え、ええ……確かに私はその病気に罹っていたわ。もう治ったけれど」
さやか「いいんですよ、梢先輩。先輩は優しいからこの3人の肩を持ってしまうのかもしれませんが、こんな荒唐無稽な話にまで乗る必要はありません」
梢「あの、私は本当に…」
さやか「可哀想に……ストックホルム症候群ですね」
慈「なにそれ?」
花帆「被害者が加害者に同情しちゃうやつです」
慈「へー」
花帆「明日には忘れてそうですねw」
慈「いいじゃん別にw」
さやか「……」ダンッ!
かほめぐ「」ビクッ
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さやか「とにかく、こんなことは今日で終わりです。キスだって関係なくなってたじゃないですか。風紀を乱す真似は許しません」
花帆「何も言い返せません……」
慈「同じく……」
綴理「さやは怒ると怖い……」
さやか「今まで大変でしたね。もう大丈夫ですよ、梢先輩」
梢「え、ええ……」
梢(……良いこと、のはずよね)
梢(なのにどうして、こんなに落胆した気持ちになっているのかしら……)
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わずかな楽しみをも奪うような規則など定期
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【ノーマルエンド:なんですかその妄想の産物みたいな病気は】
【クリア後特典:村野さやかルートが開放されました】
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───
【梢罹患中、つづめぐが治療に参加してから約一週間後】
【夜、綴理の部屋】
さやか「スマホも充電した、明日の授業の教科書もまとめた……よし!」
さやか「それでは綴理先輩、そろそろ帰りますね」
綴理「ありがとう、さや。……そうだ、明日の朝は起こさなくて大丈夫だよ」
さやか「ああ……梢先輩の部屋に行く日でしたっけ」
綴理「うん。だから起きれる」
さやか「それで意外と本当に起きられるのが凄いですね……」
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さやか「では明日は朝練で。おやすみなさい綴理先輩」
綴理「うん、おやすみー」
ガチャリ
バタン
さやか「……」スタスタ
さやか(綴理先輩が自分で起きられるなんて、天変地異が起こると思ってたけど……過去2回は実際にできてた)
さやか(梢先輩になんの用があったのかも前回聞いたけど、教えてくれなかった……)
さやか(そして、綴理先輩だけじゃない。花帆さん、慈先輩……そして、梢先輩)
さやか(最近ずっと様子がおかしい。何かを隠されてる)
さやか(瑠璃乃さんだけは特に何を隠してるわけでもなさそうだけど……)
さやか(でも、何も言わないってことは隠したいことのはず。……わたしは、聞けない)
-
【翌朝】
さやか(……聞けない、んだけど)
綴理「……」スタスタ
さやか(こうして後ろをこっそり尾けているわたし……)
さやか(良くないというのはわかってるけど……やっぱり気になってしまう)
さやか(すみません、綴理先輩。何を隠してるのか、わたしに教えてください)
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綴理「……」コンコン
さやか(誰かの部屋のドアを叩いた……中に入っていく)
さやか(部屋の主は……)コソコソ
さやか(……本当に梢先輩だ)
さやか(梢先輩の部屋に行くのは嘘じゃなかったんだ)
さやか(……こんな朝早くから、梢先輩にどんな用事が……)
さやか(……ドアに耳当てたら、何が起きてるかわかるかな……)ソーッ
-
梢『……』
綴理『……』
さやか(だめ、何も聞こえない。……話し声すらないから何も話してないだけか)
さやか(……でも無音すぎる気もする。綴理先輩たちはいったい何を……)
慈「気になる?」
さやか「──っ!?」
-
さやか「な、んで……慈先輩が、ここに……」
慈「それがさ、今日私の順番だと勘違いしてたんだよね。だからいつもより早起きしたのにさやかちゃんがいるの見て、あっ綴理の番じゃん! って思い出した時の虚しさたるや……」
さやか「……説明に、なってないです」
慈「なんで梢の部屋を訪ねてきたか、って話だよね。……いずれ疑われるだろうなーとは思ってたし、しょうがないか。嘘ってわけでもないしね。実際に見るのが早いよ」ガチャ
さやか「えっ、ちょっと……!」
さやか(視界に飛び込んできたのは、ベッドで重なっている綴理先輩と梢先輩)
さやか(綴理先輩が上で、梢先輩をまるでベッドに押さえつけているかのよう。そして、あの顔の近さ。……間違いなく、2人はキスをしている)
-
綴理「……ん……さや? めぐも……」
慈「ハロめぐー! 今日も治療に専念してるねー」
梢「慈……!? さやかさんをどうして……」
さやか「あの、すみません……皆さんの様子がおかしくて、その……気になってしまって……」
綴理「……そっか。ならしょうがないね」
慈「梢もいいでしょ? 言っちゃっても」
梢「……ええ。ここまで来たら、隠すのも不誠実だもの」
-
慈「診断書ってどこ?」
梢「少し待ってね……綴理」
綴理「あ、こずに乗ったままだったね」スッ
梢「ありがとう。引き出しにしまってあるわ……はい、これ」
さやか「ありがとうございます……。……接吻欠乏症……本当に書いてある……」
慈「真面目な紙にそれが書いてあるの凄いよね」
さやか「そういえば、以前梢先輩が突然倒れたのって……」
梢「ええ。私が患った、【定期的に美少女の接吻を受けなければ死ぬ病】が発症したから」
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さやか「……冗談みたいなお話ですけど。この診断書……そして皆さんの顔を見たら……」
慈「冗談じゃないってわかってくれた?」
さやか「はい……。きっと花帆さんも、ですよね」
綴理「さやは本当にすごいね。うん、かほも協力してるよ」
慈「それでさ、さやかちゃんにお願いなんだけど……」
さやか「! ……はい……」
慈「お願い! るりちゃんには内緒にしてて!」
さやか「……、え?」
-
慈「るりちゃんはさ、この世の穢れを知らない天使みたいな子だから……できるだけこういうのとは距離を置いといてほしいの!」
綴理「こず、こういうのだって」
梢「私だって罹りたくて罹ったわけじゃ……」
さやか「……それだけ、ですか?」
慈「え?」
さやか「あ、ああいえ……はい、瑠璃乃さんには秘密にしておきます。どう説明すれば良いかもわかりませんしね」
慈「ありがとーさやかちゃん! ほんっとにお願いね!」
綴理「めぐってるりのことになると、かほに対するこずみたいになるよね」
梢「まあ確かに……え? 綴理、それってどういう……」
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───
【さやかの部屋】
さやか「…………」
さやか(気軽に暴いていい秘密じゃなかった……)
さやか(梢先輩が不治の病に罹っているという話も、3人が梢先輩のためにキスしているという話も……)
さやか(変な話と笑うべきなのか、梢先輩を心配して悲しむべきなのかもわからない……)
さやか(もし神様がこの病気を作ったんだとしたら……その神様は相当変態なんだと思う)
-
さやか(……瑠璃乃さんには黙っておくこと)
さやか(それがわたしがされたお願い。それ以外のことは何も言われてない)
さやか(誰かとキスしたいわけじゃないけど……一瞬、わたしも加わるように言われるのかと思った)
さやか(あの3人で梢先輩の治療を担当してくれるなら、それが適任だと思う。3人とも梢先輩ととても仲が良いから)
さやか(……なのに、どうしてこんなにモヤモヤするんだろう)
さやか(……梢、先輩)
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さやか(スクールアイドルクラブの部長で、スリーズブーケの一人)
さやか(作曲ができて、衣装作りも上手で、絵も……いや絵は……、歌もダンスも上手で、他にも色々完璧みたいな人)
さやか(だけど選択は間違えやすくて、全部自分でなんとかしようとして、綴理先輩だけじゃなくて自分自身まで傷つけた人)
さやか(とても尊敬してはいるけど、キスしたい類いの好きかと言われたらそうじゃないと思う)
さやか(……でも、わたしだけ)
さやか(秘密を知る中で、わたしだけが梢先輩の役に立てていない……)
さやか(…………)
さやか「……わたしだって」
さやか「わたしだって、役に立ちたい……!」
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───
【部活終了後、部室】
花帆「…………」
綴理「…………」ポケーッ
慈「……私たち3人をさやかちゃんは残らせたわけだけど」
花帆「絶対例の件ですよね……」
綴理「この前、さやのお弁当をちょっと猫に分けちゃったから、それを怒ってるんだね……」
慈「どうでもよすぎる」
花帆「猫ちゃんがいたなんて聞いてないです!」
綴理「言ってなかったっけ。上品な毛並みとか振る舞いだったけど人懐っこくて、こずみたいだったよ」
花帆「ええーーいいーなあーー!」
慈「羨ましいけど! どうでもいいから!」
-
さやか「はい、そんな話じゃありません」ガチャ
花帆「あ、さやかちゃん!」
さやか「すみません、残ってもらったのにわたしがお手洗いに行ったせいで遅くなりました」
慈「別にそれはいいけど……」
綴理「こずねこの件?」
さやか「だから違いますって!」
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さやか「こほん……今回皆さんに残って頂いたのは、皆さんの予想通りだと思います」
さやか「……わたしも、梢先輩の治療に参加します」
慈「やっぱり……」
花帆「まさかさやかちゃんもライバルだったなんて……!」
さやか「は、はい? 仲間ですよね? 梢先輩を助けるための」
綴理「仲間だけどライバル、ライバルだけど仲間」
慈「なんか聞いたことあるフレーズだなー。んー、どう説明したらいいんだろ……」
さやか「梢先輩を助けたいという気持ちは、皆さんにも負けてません!」
慈「わ、いきなり大きく出てきた」
花帆「あたしの気持ちが一番強いもん!」
綴理「ううん、それはボク」
慈「負けず嫌いどもも反応した……私だって思ってるけど」
-
さやか「お願いします! わたしも梢先輩のために何かしたいんです!」
花帆「うっ、さやかちゃんのまっすぐな目……! あたしはこの目に弱い!」
綴理「ボクも……灰になりそうだ……」
慈「2人ともよわっ! とはいえ私も強くない……」
さやか「慈先輩……!」
慈「……あーもう、いいよ! 綴理も花帆ちゃんも負けちゃったみたいだし!」
さやか「……! ありがとうございます!」
花帆「さやかちゃんが純粋な気持ちすぎて、あたしがミジンコに思えてきました……」
綴理「そう? ボクは吸血鬼かな」
花帆「えっ強そうでずるいです!」
慈(さっきからうるさいなこの2人……)
-
───
【梢の部屋】
さやか「そういうわけなので、今日お試しでわたしがやってみて、美少女であればその後も担当していくことになりました!」
梢「そう……寝耳に水ね……」
さやか「……あれ? そういえば……わたし、梢先輩に話してませんでした……?」
梢「そうね……今日は慈が来ると思っていたから、さやかさんが入ってきたときはびっくりしたわ」
さやか「す、すみません! そういえばそうですよね、わたし梢先輩になんの相談もせずに……!」
梢「いいのよ! さやかさんが私を心配してくれている、という気持ちはとても伝わってきたから。嬉しいわ」
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梢「……それで、本当にいいのよね?」
さやか「はい。キスは初めてですが……治療行為であればノーカウント、と捉えることもできます」
梢「……つ、強いのね……」
さやか「梢先輩こそ、わたしにキスされたくないとかありませんか? もしそうなら今からでも……」
梢「いえ、そんな! 嬉しいわ、さやかさんも担当してくれて!」
さやか「……ありがとう、ございます……。……ふふっ、焦って変なこと言ってますよ」
梢「……本当ね……私はどこへ向かっているのかしら……。でも本当に、嫌ではないわ」
さやか「十分伝わりましたよ。……では、しましょう。目を閉じてください」
梢「……ええ」スッ
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瞼を下ろした梢先輩に顔を近付ける。少しだけ屈んでくれているから、背伸びしなくてもキスできそうだ。
ふわり、と花の香りがした。なんの花だろう。お花屋さんでこの香りが漂ってきたら、衝動買いしてしまいそうなほどには良い香りだった。
種類を花帆さんほど知らないのもあるけど、全然特定の花と結びつかない。これが梢先輩というお花の香りなのかも……なんて。
変なことを考えていないで、わたしも目を閉じる。少しだけ顔を傾けて角度を合わせ、気配のほうへと向かう。
わたしの、初めてのキス。でも治療だし、記憶もないくらい幼い頃にはきっと親や姉にされていただろうから、これもそこまで特別なものじゃない。自分に言い聞かせる。
唇が、触れた。……陶器みたいに滑らかで、絹みたいに柔らかい。これが梢先輩の唇。
ピリリ、と頭の奥で小さな電流が流れたような気がする。よくわからない感覚を無視して、顔を離して目を開く。
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梢先輩は既に目を開いていた。わたしを気遣うように眉を下げ、細められた瞳は少し潤んでいるように見える。とても、美しかった。
……わたしのものに、したい。
どくん、と心臓が強く鳴った。梢先輩から数歩離れる。どくん、どくん、どくん。心臓は強く鳴り続けている。それに、顔が熱い。どうして、これは、治療行為なのに。これは初めてのキスにはカウントされないはずなのに。
「さやかさん……?」
梢先輩の声が届いて、頭の中で反響する。
だめ、わたし、これ以上は。
「……失礼します!」
わたしは、逃げるように梢先輩の部屋を出て、走った。
身体中を駆け巡る熱を、全部放出したかった。
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───
【部室】
さやか「…………」ボーッ
慈「……ねえ、あの様子はさ……」
花帆「完全にやられましたね、梢センパイに……」
さやか「やられてません!」ガタッ
慈「いいんだよ、さやかちゃん……恥ずかしいことじゃないから。梢やばいよね」
さやか「わたしはただ治療しただけです! 梢先輩から良い香りがしても、唇の感触が柔らかくても、間近で見た顔が美しくても……!」
さやか「……っ///」カァァ
慈「やられてるね。まさかたった一回でやるとはね……」
花帆「恐るべしですね、梢センパイ……」
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さやか「ああ、わたし、わたしは……! 綴理先輩、わたしはどうしたら……!」
綴理「……さやも、こずが好きなの?」
さやか「……そう、では……いえ、そう、かも……いえ、その可能性は、あるかも、くらい、でしょうか……///」
花帆「可能性で済んでないですよね」ボソッ
慈「ね」ボソッ
綴理「……さやの、したいようにしたらいいと思うよ。こずを取られたくはないけど……さやを止めることも、ボクにはできないから」
さやか「……綴理先輩が言っていた、仲間だけどライバルというのは……こういうことだったんですね」
慈「あのフレーズ絶対聞いたことあるんだけどな……」
花帆「アニメですか?」
慈「アニメのようなリアルのような……」
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───
瑠璃乃「……うーん?」
瑠璃乃「最近めぐちゃんたちの様子がおかしかった気がしてたけど、とうとうさやかちゃんまでおかしくなったような……」
瑠璃乃「……なんかわからないけどルリ、仲間外れにされてる……?」
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【クリア後特典:大沢瑠璃乃ルートが開放されました】
【つづく】
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野良みかみてれんありがとう定期
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瑠璃乃ルートはどういう展開でキスまでなるんだろう…気になって仕事手がつかない
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こずハーが完成してしまう
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惚れ女村野…
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すっかり忘れポンチだったけどこずセンってスーパーハイスペックだったんだよな
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でもわたくしはお金持ちで容姿端麗文武両道だから無敵なのだけれど…
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>>5
このかほめぐ草
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>>19
さやか(もし神様がこの病気を作ったんだとしたら……その神様は相当変態なんだと思う)
おっ、そうだな
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神(みかみてれん)
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瑠璃乃ルート楽しみ
作者はさやかに変態って言われたかったんだな
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花丸よ!
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───
【部活終了後、部室】
慈「青くて……モデルで……八丈島生まれで……」
さやか「慈先輩は何を呟いてるんですか……?」
綴理「ボクが前に言った言葉が誰かの台詞に似てたんだって」
さやか「はぁ……別の学校のスクールアイドルが言ってたのをたまたま聞いてたとかですかね」
花帆「あれ、梢センパイ帰らないんですか?」
梢「ええ、少しやることがあるから」
花帆「そうなんですね。そしたら、また後でセンパイのお部屋で!」
梢「ええ、後でね」フリフリ
パタン
-
梢「……さて。もう出てきて大丈夫よ」
瑠璃乃「…………」ノソノソ
梢「……充電が切れちゃったのなら、また後日の方がいいんじゃないかしら?」
瑠璃乃「あ、充電が切れてたわけではなくて! 今日はこう、隠れるために使ってたんで!」
梢「そういう用途にも使えるのね、それ……」
瑠璃乃「それで、その……」
梢「ええ。……相談があるのよね」
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梢「慈じゃなくて私にってことは、慈に関する相談かしら……それとも私に直接?」
瑠璃乃「えっと、めぐちゃんっていうか……みんなに関することっていうか……」
梢「みんなに……?」
瑠璃乃「……その、ルリ……仲間外れにされてる、気がして……」
梢「……! ……どういう時に、そう感じるの?」
瑠璃乃「お昼はそんなに感じないんですけど……朝練によく梢先輩が誰かと……同伴出勤? してきたり、部活が終わった後も誰かと同伴で帰ることが多い気がして……」
梢「……とりあえずその言い方はやめましょうか。誤解を生むから」
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誤解…?
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梢(……当然、気付かれてしまうわよね)
梢(今この部で、私の病気に関わっていないのは瑠璃乃さんだけなのだから)
梢(私は教えてあげたい、けれど……)
慈『お願い! ルリちゃんには内緒にしてて!』
梢(慈が嫌がっているのよね……)
梢(瑠璃乃さんに対して過保護だから……とはいえ無下にするわけにもいかないわ)
梢「たまたま最近、あの子たちの相談に乗る機会が多かったり、逆に私が相談することが多いだけよ。誰も瑠璃乃さんのことを仲間外れになんてしていないわ」
梢(不治の病だからこれからもずっと続くけれど……あまり目立つ行動は控えるように言うしかないわね)
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瑠璃乃「……本当ですか?」
梢「ええ。保証するわ」
瑠璃乃「……わかりました! ありがとーございます! ルリちょっとネガティブになってたかも!」
梢「ふふ。明るくなってくれてよかった」
梢(……この一年で、私も嘘をつき慣れたものね)
-
───
【3日後、部活終了後】
【寮への廊下】
花帆「はぁ、ひぃ、はぁ……つかれたぁ……」
さやか「今日の梢センパイはそんなに厳しかったんですか……?」
花帆「ううん……本読んで夜更かししてたら今日の体力が50%スタートだった……」
さやか「自業自得でしたか……」
瑠璃乃「わかるよ、花帆ちゃん……! 最大HPにデバフ食らった状態でゲームスタートって感じだよね!」
花帆「そうだけど共感の仕方がちょっと変……!」
-
瑠璃乃「……ところで、ちょっといい?」
さやか「どうかしました?」
瑠璃乃「あのね……ルリ、なんでかわかんないけど、タイミングを逃しちゃって……」
瑠璃乃「今、すっごくトイレ行きたい……」プルプル
花帆「ええ!? なんでもっと早く行かなかったの!?」
瑠璃乃「わかんない……会話が盛り上がってたのかも……」プルプル
さやか「ここちょうどトイレが少ない中間地点ですよ!? ええと、戻った方が近いかも!」
瑠璃乃「ありがと……ごめん、ちょっと戻るね……」プルプル
花帆「……瑠璃乃ちゃん、我慢した疲れで充電切れちゃいそう」
さやか「今日はそっとしてあげましょう……」
-
───
瑠璃乃「あ、危なかった……! もうちょっとでほんとにゲームオーバーだった……!」
瑠璃乃「なんで我慢しちゃったんだろーなー……充電減っちゃうからこういうの減らさなきゃ……」
「…………」
「…………」
瑠璃乃「……ん? 部室から声……梢先輩と……めぐちゃん?」
瑠璃乃「……怪しい」
瑠璃乃「何話してるんだろ……?」ソーッ
-
慈「なんかさー、最近梢ツレなくないー?」
梢「言ったでしょう、バレないようにもっと慎重にならないといけないって……だから離れて」
慈「……んー、そうだけどさ」
梢「慈……?」
慈「……んっ」
梢「んっ……ちょっと、慈……!」
慈「……わかってるよ、梢の言うことは。それにありがと。でも……ちょっと、寂しかっただけ」
梢「……慈……」
-
瑠璃乃「……!?」
瑠璃乃「え、あれ……音しか聞こえなかったけど……めぐちゃんと梢先輩……多分、キス、してたよね?」
瑠璃乃「なんか、すごくいい雰囲気だった……」
瑠璃乃「……おおー、付き合ってたんだあの2人……」
瑠璃乃「まったく、めぐちゃんも水臭いなあ。話してくれたらいいのに」シミジミ
瑠璃乃「スピードルリちゃんはクールに去るぜ……」スタスタ
瑠璃乃「……でも、同伴出勤? してたのめぐちゃんだけだったっけ?」
-
───
【翌日、朝】
【梢の部屋の前】
瑠璃乃(な、な……)
花帆『んっ……こずえ、センパイ……』ピチャピチャ
瑠璃乃(なんですとぉーー!!)
-
瑠璃乃(たまたま目が覚めちゃったから朝の散歩してたら、花帆ちゃんを偶然見かけて……)
瑠璃乃(特に理由もなく尾行ごっこしてみたら、梢先輩の部屋に入っていって……)
瑠璃乃(昨日のこともあったし、聞き耳を立ててみたら……)
花帆『はっ……もっと……センパイ……♡』
瑠璃乃(た、多分この二人もキスしてる……!)
瑠璃乃(しかもこの音……まさか、舌、入って……///)
瑠璃乃(めぐちゃん、だめだよ……梢先輩、浮気してる……!)フラフラ
-
【数分前、部屋の中】
「梢センパイ、今日もよろしくお願いしますね!」
「ええ、よろしくね花帆さん」
花帆さんの元気な挨拶を聞くと、これからする行為の内容も忘れて思わず明るい気分になってしまう。
けれど、これからするのはキス。もう何度もしたはずなのに未だに慣れない。
私の病気に付き合わせてしまっているという負い目があるからか、キスを忘れたら死ぬという恐怖からか、それともみんなが美少女だからなのか。
理由はわからないけれど、一番最後のだとはあまり思いたくない。
以前、背伸びした花帆さんが転びかけてしまってから、キスはベッドに腰掛けて行うようになった。
私を治してくれようと前のめりになっているのか、よくもたれかかって来るから、倒れてしまわないように少し気を付けている。
花帆さんが近付いてきたから目を閉じる。……唇に触れる感触。
何度も触れたはずなのに、とくんと微かに胸が高鳴る。花帆さんがもたれかかってきたから、転ばないように後ろに手をつく。
だけど、今日はそれで終わりじゃなかった。
-
ぬるり、という感触が唇の間から滑り込んできた。
驚くと同時に、背筋がゾクゾクと震えた。一瞬遅れて、この感触が何か理解する。
「んっ……こずえ、センパイ……」
これは、花帆さんの舌。
反射的に押し返そうとして、でも花帆さんに痛がらせてしまったらどうしようとためらって、行き場を失った手が宙に浮いた。
「はっ……もっと……センパイ……」
花帆さんが更にもたれかかってくる。後ろについた手も離してしまったから、花帆さんの体重を支え切れず、私たちはベッドに倒れた。
私の上にいる花帆さんの瞳は潤み、唇はどちらのものかわからない唾液にてらてらと光っていた。花帆さんは目を細めて、再び近付いてくる。2回目を、しようとしている。
ぐっ、と今度こそ私は花帆さんの肩を支えた。
-
梢「あ、ありがとう花帆さん! でも、その、舌……は、少しやり過ぎではないかしら?///」
花帆「……あ……その、ごめんなさい!/// えっと、キスで延命できるなら、舌とか入れたらもっと効果あるのかな、って思って///」
梢「そ、そう……/// 私のことを考えてくれたのよね。その気持ちはとても嬉しいわ///」
花帆「……そうです……///」
梢(びっくりしたけれど……花帆さんなりに考えてくれたのよね。ちゃんと感謝しないと)
-
───
【翌日、朝】
【梢の部屋の前】
瑠璃乃(な、な、な……)
さやか『んっ……こずえ、先輩……』ピチャピチャ
瑠璃乃(なんですとぉーーー!!!)
-
瑠璃乃(こ、梢先輩……!? 嘘だよね、さやかちゃんとも浮気してるの……!?)
瑠璃乃(いやいやいやいやこれはぎるてぃだって! 三股ってこと!?)
瑠璃乃(さやかちゃんは知ってるのかな……こういうの嫌いそうなイメージなんだけど……)
瑠璃乃(2日連続でたまたま早起きして、こんな場面を目撃するなんて……見てはないけど)
瑠璃乃(……秘密にしなきゃ、秘密に……)フラフラ
-
【数分前、部屋の中】
「それでは、本日もなにとぞよろしくお願いします!」
ベッドに座ったさやかさんは深々と頭を下げた。4人の中ではもっとも真面目にこの治療を担当してくれていて、私としても気が引き締まる。
「こちらこそよろしくね、さやかさん」
私もさやかさんに負けないくらい頭を下げる。少しして頭を上げると、キリリとした瞳が私を捉えていた。綴理とは反対の青色の瞳に、モデルさんのような長い睫毛。
美しい子だと思う。今はまだあどけなさが残っているけれど、成長したら綴理とはまた違うベクトルで綺麗な雰囲気を更に纏うはず。ある意味では一番成長が楽しみな子、とも言えるかもしれない。
もちろん花帆さんや瑠璃乃さんの成長も一番楽しみだから、結局誰が一番なんてことは言えないのだけれど。
-
「そういえば、昨日花帆さんから聞きました」
いつもであれば真面目なさやかさんらしくすぐに治療の時間に入るけれど、今日は珍しく違った。花帆さんとなんのお話をしたのだろう。
「昨日は花帆さんの番でしたが……その……でぃ、ディープキス、をしたと……」
言い終える時にはさやかさんは真っ赤になっていた。可愛らしい……と、思う余裕はない。
「花帆さんが言ったのね……?」
ほぼわかりきったことを尋ねると、答えはもちろん頷きによる肯定だった。
「花帆さんから言ったというよりは、様子のおかしかった花帆さんをみんなで問い詰めて吐かせた、というのが正しいですが……先輩を治すためにできることはなんでもしたかった、と言っていました」
「確かにそう言っていたわね……」
「それで、梢先輩」
さやかさんが僅かに空いていたスペースを詰めてくる。横並びの腰が触れ合うほどに、羨ましく思っている睫毛の一本一本が見えるほどに。
「わたしも、同じ気持ちでいます」
-
言い終わるのが早いか、さやかさんが口付けてくる。私が言葉の意味を理解するのと同時に、昨日と同じく舌が入り込んできた。
さやかさんの舌の動きは力強かった。迷いなく動く舌が私の舌を捉え、逃げてもなお追いかけてきて、容赦なく蹂躙してくる。
「んっ……こずえ、先輩……」
さやかさんの蕩けた声に背中がピリピリする。下腹部が、疼く。
「……はっ……」
息が続かなくなったタイミングで、私たちは唇を離した。唇の間に銀色の橋がかかり、千切れた。
-
梢「……さやか、さん……」
さやか「……えっ、と。治りました?」
梢「え? え、ええ……いえ、どうかしら……時間が経ってみないと」
さやか「そうですよね、すみません……」
梢「いえ……いいのよ……」
梢(治療のはずなのに、内容が内容だからか、私たちは真っ赤になってお互い黙ってしまった)
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───
【翌日、朝】
【梢の部屋の前】
瑠璃乃(な、な、な……)
綴理『ん……こず……』ピチャピチャ
瑠璃乃(……なんとなく予想はついてた)
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瑠璃乃(綴理先輩だけ関係ない、っていうのはなさそうだし……)
瑠璃乃(梢先輩と付き合ってそうなの、花帆ちゃんか綴理先輩かな、とか最初は思ってたし……)
瑠璃乃(なんとなく、綴理先輩は浮気されてるって知ってても梢先輩のこと許しちゃいそうだな、って感じあったし……)
瑠璃乃(……四股かあ、梢先輩……)
瑠璃乃(……めぐちゃん、梢先輩はやめた方がいいよ……)フラフラ
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【数分前、部屋の中】
「あなた、よくこんなに早起きが長続きするわね」
今日も朝早くに部屋に来た綴理に対して、思わず挨拶も忘れてそんな第一声を放ってしまった。
「ボクえらい」
綴理は自慢げに胸を張った。高い背丈と綺麗な顔から発せられる言葉にしては随分無邪気で、こういうところも人を惹き寄せるのだと思う。
「そうね、偉いわ」
「それに、こずとキスするの好きだから」
そして時に、彼女の無邪気さはこうして意図しない角度から向けられることもある。高鳴った心臓を落ち着けながら、「そういう誤解を呼ぶ発言はやめなさい」と窘める。
「誤解……?」
「ほら、早く本題に入りましょう」
これ以上口を開かせても碌なことにならなそうだったから、申し訳なく思いつつも急かす。綴理は「そうだったー」と素直に受け入れてくれた。
キスのために普段通りにベッドに向かおうと踵を返す。……腕を掴まれた。
-
「綴理?」
「……んー、こっち向いて」
綴理が少しだけ位置を調節した。また何か思いついたのだろうか。意図はわからないけれど素直に従う。
「そしたら、こっち見たままバックして」
本当に意図がわからない。一応従って後ろ歩きをすると、「おーらい、おーらい」と車の誘導の真似事みたいなこともし始めた。
部屋も広いわけではないから、すぐに背中が壁についた。もしかして、と綴理の狙いがわかった気がした時には、既に綴理の手が私の顔のすぐ横、壁に付いていた。
「壁ドンだよ、こず」
綴理は薄い笑みを浮かべていた。至近距離で見下ろされ、壁に追い詰められて逃げ場はない。
この子にこんなことをされたらすぐ落ちてしまう子もいるだろう。私は……まだ踏み止まれている。
-
「……ちょっと、待って綴理」
けれど今このままキスされると……踏み外してしまう気がして、ストップをかける。綴理は首を傾げ、少しして、
「やだ」
と、キスをしてきた。
綴理を押し返そうと肩に手を当てる。けれど全然力がこもらない。本能が綴理を受け入れたがっているかのように。
「ん……こず……」
もはや当然のように舌が入ってくる。綴理の舌の動きはまるで遊んでいるかのようで、歯をなぞってきたと思ったら今度は上顎をなぞったり、突然興味を取り戻したように舌を弄んできたり、全く予想が付かなかった。
予想の付かない刺激は、ますます私の思考を侵していく。
足が震えて力が入らなくなっていく。綴理を押し返すはずだった手は、今や崩れ落ちないように縋る手に変わっている。
綴理の舌が、私の舌の裏側を根本から先まで舐め上げた。その瞬間、一際強く下腹部が疼くと共に全身が震えて、とうとう立っていられなくなった私は崩れ落ちてしまった。
-
梢「……は……はぁっ……」
綴理「……ぁ……ごめんね、こず。大丈夫……?」
梢「……大丈夫、では、ないわ……」
綴理「そう、だよね。ごめん……」
梢「……次から、気を付けてくれたらいいわ……。……お手洗いに、行きたいのだけれど……」
綴理「うん。肩貸すね」
-
───
【翌日、朝】
【梢の部屋の前】
瑠璃乃(…………)
慈『んっ……こずえ……』ピチャピチャ
瑠璃乃(なんか慣れちゃったな、これ……)
-
瑠璃乃(多分この向こうで、めぐちゃんは今も浮気されてると知らずに梢先輩と……)
瑠璃乃(ルリがここで真実を突きつければ、少なくともこれからもめぐちゃんが騙され続けることはなくなる……)
瑠璃乃(でも、しばらくはきっと悲しんじゃう……きっと他のみんなも同じ……)
瑠璃乃(スクールアイドルクラブは崩壊……ルリたちの楽しい時間もなくなっちゃう……)
瑠璃乃(…………)フラフラ
-
【数分前、部屋の中】
「おはよー……あー、ねむ……」
「また夜更かししたの?」
「んーちょっとだけ」
欠伸をしながら入ってきた慈は、直線でベッドに向かってそのまま寝転がった。キッチンで紅茶を注いでいる私には目もくれずに。
まるで自分の部屋かのような自由さ。去年であれば腹を立てていたかもしれないけれど、今はこれも慈なのだと受け入れられるようになった。
「ところで、今日の数学の宿題はやったのかしら?」
「毎日毎日勉強に関するコメントやめてー!」
「毎日言ってもやってないからでしょう。ファンのみんなにも心配されてるわよ」
「あれは心配してるんじゃなくて面白がってるだけだって!」
-
慈は拗ねるように寝転がって向こう側を向いてしまった。まったくもう。キッチンから戻ってベッドに腰掛ける。
「ほら、早く済ませましょう」
慈の肩に手を当てて揺さぶるけれど、反応が薄い。それどころか抵抗が強くなった気がする。
「そういう事務的な感じ、いや」
「事務的な、って……」
慈の不機嫌な声にハッとする。確かに私のために来てくれているのに、日常になってしまって感謝も薄くなってしまっていたかもしれない。
「ごめんなさい、慈。いつも私のために早起きをして、治療に付き合わせてしまっているのよね。今の私は恩知らずになっていたわね……」
慈の反応はない。……このままキスを拒否される、ということもあるだろうか。死にたくはないけれど、多少苦しむくらいは私には必要かもしれない。
-
「そうじゃないけど、いいよ」
慈はこちらを向いた。笑顔ではないけれど、少なくとも許してくれたようだった。
「でも、梢からして」
慈は私に向かって腕を広げた。慈の長髪がベッドに散らばり、私を受け入れるように腕が伸ばされている。
一瞬、脳が誤解しそうになる。
自分を抑えつけながら、私は慈に覆い被さった。
「……ん……」
唇が触れ合う。背中に慈の腕が回される。きっと嫌われてはいない。いえ、それどころか……。
……どうして慈は、身勝手な私のことをそんなにも……。
ぬるり、と。
舌を、入れた。
-
「んっ……! こずえ……っ」
奥に逃げようとする舌を捉え、私の舌と絡めて引きずり出す。背中に回された慈の手が制服を掴む。
今まで舌を入れられることはあったけれど、入れる側に回ったのは初めてだった。薄く目を開けば、閉じた瞼から一筋涙を零れされる慈の顔。
その顔は、ひどく綺麗で。
「──っ!」
びくりと震えた慈に、我に帰った。
そして気付く。私の左手が、慈の太腿に撫でるように置かれていることに。
-
梢「──っごめんなさい!」ガバッ
慈「……ぁ……」
梢「その、最近みんなからね? ちょっと違う治療も試してみようと、その……舌を、入れられていたから。その癖で……本当にごめんなさい」
梢(……太腿の手のことは、気付かれていないわよね……?)
慈「……、ううん……花帆ちゃんたちから、話は聞いてたから……。……こっちこそ、さっきはごめん。なんか、めんどくさいこと言っちゃって」
梢「いえ……あれは当然のことだったわ」
-
慈「……あのさ、梢」
梢「……何かしら?」
慈「もしも、病気が治るようなことがあったらさ。その後は……その後は、私と──」
瑠璃乃「騙されちゃダメだめぐちゃーーーん!」バァーン
-
梢「!?」
慈「ちょ、えっ……るりちゃん!?」
瑠璃乃「梢先輩、今すぐめぐちゃんから離れろ! ガルルルルゥー!」
梢「お、落ち着いて瑠璃乃さん! 慈、どういうこと!?」
慈「私もわかんないって! るりちゃん、どうどう!」
瑠璃乃「バウ! バウ!」
慈「だめだ、私の声も届いてない!」
梢「仲良さそうね。ってそれどころじゃなくて!」
-
瑠璃乃「めぐちゃん、ルリは言うよ! いずれ崩壊するなら、今ルリが終わらせる!」
慈「あ……うん……?」
瑠璃乃「めぐちゃん……梢先輩……梢先輩は……」
瑠璃乃「浮気してるんだーーーっ!!」
慈「え、梢って今付き合ってる人いたの?」
梢「いえ……」
瑠璃乃「え……? ……まさか……全員、体の関係……!?」
梢「瑠璃乃さん!? さっきからどうしたの!?」
慈「……るりちゃんが何を勘違いしてるのかわかったかも」
-
慈「あのさ、るりちゃん。梢って病気なんだよ」
瑠璃乃「病気……? 複数人と体の関係を持ってないと耐えられない……頭の病気……?」
梢「慈! ものすごい勢いで瑠璃乃さんからの信頼度が下がっているのを感じるのだけれど!」
慈「あながちるりちゃんの言うことも……」
梢「慈!!!」
慈「冗談だって。診断書どこだっけ……これか」ガサゴソ
梢「他人の引き出しを勝手に漁らないで……」
慈「ほら、これ見て」
瑠璃乃「……診断書? ……接吻欠乏症?? ……ふぇいく???」
慈「くっ……w、嘘っぽいけど本当の病気なんだよ。梢が倒れたの覚えてる?」
瑠璃乃「あ……ああー! 確かに! これの日付も……多分一緒!」
-
瑠璃乃「……接吻欠乏症って、そんなに大変な病気なの?」
慈「……w、ほら、梢w」
梢「笑わないで……。そうね、瑠璃乃さん。私は【定期的に美少女の接吻を受けなければ死ぬ病】を患っているの。だから、一歩間違えたら私は死んでしまうのよ」
瑠璃乃「え……死……?」
慈「そうだよーるりちゃん。私たちは梢を死なせないために頑張ってたんだぞー?」
瑠璃乃「あ……ご……ごめんなさい! ルリ、梢先輩に酷いこと……!」
梢「いいのよ、わかってくれたら。あと下がってしまった信頼度も元通りにしてくれたら……」
瑠璃乃「戻ったっす! それどころか爆上がりっす! りありー、りすぺくと! っす!」
慈「よかったねえ梢」
梢「上がる理由はわからないけれど……そうね。ありがとう、2人とも」
-
瑠璃乃「……そっか……梢先輩、そんな目に……」
慈「……ん、この展開……」
瑠璃乃「……ねえ! ルリも──」
慈「はいダメ! ダメでーす!」
瑠璃乃「めぐちゃん!? まだ言ってないじゃん!」
慈「続くのはルリも手伝いたいー! でしょ? ダメ!」
瑠璃乃「なんで!」
慈「るりちゃんは天使だからこんなことに関わらなくていいの!」
梢「こんなこと?」
瑠璃乃「めぐちゃんは関わってるじゃん!」
慈「私は……梢が……とにかく私はいいの!」
梢「ねえ、今こんなことって……」
-
瑠璃乃「いやだー! ルリもめぐちゃんたちを手伝うんだー!」
慈「強情だなー……! 梢! ちょっと外して!」
梢「え……ここ、私の部屋……」
慈「早く!」
梢「……瑠璃乃さんが絡んだ慈は怖いわ……」スゴスゴ
バタン
慈「……ふー……」
瑠璃乃「……」ムムム
-
慈「……梢が絡んで冷静じゃなかったのは私か……?」
瑠璃乃「めぐちゃん……」
慈「……私は二度同じ手は食わない……同じ手は……」ブツブツ
瑠璃乃「お願いめぐちゃん! ルリも梢先輩のために、みんなのために何かしたい!」
慈「うぐううう!」
瑠璃乃「…………」ウルウル
慈「うううう……」
-
───
【放課後、部室】
慈「……はい。そういうわけで、るりちゃんも梢の治療のお手伝いに参加することになりました」
瑠璃乃「よろしくー! いえすいえす、ぐっもーにん!」
綴理「おおー。るりだー」パチパチ
梢「結局どういう話し合いをしたのか知らないけれど……よろしくね、瑠璃乃さん」
花帆「…………」
さやか「…………」
-
慈「……花帆ちゃんにさやかちゃん、何か意見でも?」
花帆「……最初はあたし一人だったのに……」
さやか「最終的に部の全員が梢先輩の病について知ることになりましたね」
梢「変に秘密を抱える必要もなくなって、私としては気が楽になったけれど……」
綴理「ボクも。るりを仲間外れにしてるみたいで、ちょっと辛かった」
花帆「それはまあ……確かに」
さやか「慈先輩は瑠璃乃さんに甘いですから、仲間外れにしてしまっているという罪悪感が一番強かったのかもしれませんね」
瑠璃乃「めぐちゃん……!」キラキラ
慈「ははは……まあ、ね……」
慈(さやかちゃんと同じ手口で押し切られたんだけどね……)
-
さやか「では、明日瑠璃乃さんが仮で担当して、美少女であれば正式に担当に加わるということで」
慈「いやるりちゃんは美少女だから。美少女であれば、とかそういう仮定は大丈夫」
さやか「はい!? いや確認は必要ですよね!?」
慈「さやかちゃん、私はるりちゃんと幼馴染なの。るりちゃんが、どれだけ美少女かっていうのは! 私が一番わかってるから!」
花帆「なんかあたしに対する梢センパイみたい……」
梢「花帆さん……?」
瑠璃乃「明日からよろよろーです、梢先輩!」
梢「あ、ええ。改めてよろしくね」
-
───
【翌朝、梢の部屋の前】
いつもの朝練よりもっと早い時間に起きて、ルリは梢先輩の部屋の前まで来た。
今までは偶然だったり、狙って尾行したりとあんまり褒められた理由では来ていなかったけど、今日は梢先輩を助けるためっていう誰にでも胸を張れる理由で来ている。
……あれ? よく考えたらめぐちゃん以外の上級生の部屋に来るの、初めてかも。しかも一人で。キスをしに。……キスをしに?
なんか、やばいかもしれない。今まで「梢先輩が大変だ」とか「仲間外れは嫌だ」とかに意識が行ってたけど、これからルリ、梢先輩とキスするの? ……マジか、マジか。ルリのふぁーすときす、梢先輩とになるんだ。
とにかく部屋に入らないと。梢先輩がきっと待ってる。ノックしようと腕を上げて、その腕がブルブル震えてるのに気付いた。ルリめっちゃ緊張してんじゃん!
ノックすると、コンコンというよりゴンゴン、って音が鳴った。ルリの力を制御できない……!
-
「お、大沢瑠璃乃です!」
声もガッチガチだった。はずい。めぐちゃんに聞かれてなくてよかった。
「開いているわ」
ドアの向こうから梢先輩の声。ドアノブを掴んで……あれどっち回しだっけ……左……いや右……あれ左……? あ、開いた。
「失礼します!」
入室してドアを閉める。それでまず感じたのは、紅茶の匂いだった。
「いい匂い……」
「ふふ、そうでしょう」
ぽつりと呟いたのを梢先輩に聞かれてた。梢先輩は紅茶をやけに高いところから注いでる。
「……すっげー!」
-
「ありがとう。今淹れているのはアールグレイと言ってね。有名だから瑠璃乃さんも知っているかしら。リラックス効果があるの」
「アールグレイ! はルリも知ってる!」
「よかったわ。勉強机しかないから、少し風情がね……ないのが申し訳ないけれど」
「大丈夫です! ルリ、風情とか気にしないんで!」
「ふふ、そう」
ちょっと返事間違った? と思ったけど、梢先輩はただ楽しそうに笑っただけだった。よかったー……。
梢先輩の隣の椅子に座って、空気と一緒に紅茶を飲む。熱々の紅茶を油断して飲もうとすると火傷する。部室で初めて梢先輩の紅茶を飲んだときにルリは学習したのだ。
「お砂糖はいる?」
そういえば。いつもだったらお砂糖のスティックを何本も空けて、花帆ちゃんに「梢先輩の紅茶の風味を……」なんて呆れたような態度を取られてるけど(花帆ちゃんだって砂糖入れてるじゃん)、いつもと状況が違うから入れ忘れてた。
「……大丈夫です! ルリ、梢先輩の紅茶なら無糖も好きです!」
「そう……無理はしないでね?」
-
梢先輩は物腰が柔らかくて優しいなあ。
めぐちゃんが前に「去年の梢はあれダメこれダメってほんっとうるさくて!」って愚痴ってたけど、そんな感じ全然しない。そう言ってるときのめぐちゃんも別に嫌そうじゃなかったから、話盛ってたのかな。
「……それで、その……私から催促するのは、心苦しいのだけれど……」
梢先輩は周囲に視線を彷徨わせ、少ししてまたルリを見た。
「……朝のキスを、頂けると……」
……そうだった。ルリが来たのってそのためじゃん。梢先輩の部屋がリラックスに満ち溢れてて完全に忘れてた。
「えっと、それじゃ梢先輩! 目をつぶってください!」
「……ええ」
すっ、と梢先輩は目を閉じた。
……やば、梢先輩、めっちゃ美人。向こうでもこんな人いなかったかも。
そんな人と、今からルリはキスするんだ。
-
……さっきまでリラックスできてたのに、一気に部屋に入る前みたいな緊張感に襲われ始めた。
どうしよう、ルリ、うまくできるのかな。これでルリが美少女じゃなかったら梢先輩が苦しんじゃうし、そもそもキスって判定されなかったらノーカンなの? どういうキスしたらオッケー?
頭の中がグルグルしてる。……わ、まずいかも。充電が一気に減ってる気がする。このままだとお昼休みまで保たないかも……いや、この調子だと1時間目にはもしかしたら……。
「……やっぱり、緊張するわよね」
いつの間にか目を開けた梢先輩が、困ったように眉を下げていた。
「で、できます! あい、きゃん! ただちょっと……」
「瑠璃乃さん。少し深呼吸しましょうか」
梢先輩がルリの肩とお腹に手を置いて、耳元に顔を近づけてきた。先輩の呼吸する音がルリの脳に直接響いてる気がする。
-
「私に合わせて呼吸して……すうーっ……」
「……すーっ……」
「はあーっ……」
「はーっ……」
「もう一度……すうーっ……」
「すーっ……」
「はあーっ……」
「はーっ……」
「……どうかしら?」
梢先輩は近い距離のまま尋ねてきた。……確かに、もう落ち着いてる。
だけど、これは深呼吸より……梢先輩の音というか、声で落ち着いた気もする。
「大丈夫そうね」
梢先輩の低く、静かな声。こくんと頷く。なんだろう、充電切れとはまた違う、脱力するこの感じ……。
-
「私からするから、少し動かないでいてね」
梢先輩の声。頭がぼーっとして、内容を半分くらいしか理解できなかった。とりあえず動かないようにって言われたのはわかった。
梢先輩がルリの耳元から離れた。けど顔はすぐ近く。……綺麗。だけどルリにとってはそれは眩しいような綺麗さじゃなくて、川とか海みたいな、落ち着けるような綺麗さで。
顔が近づいてきて、唇に唇が触れる。……キスされてる。
全然緊張しない。それどころか落ち着いていて、でも胸が、全身がポカポカする。
唇の感触はすぐに離れた。梢先輩はルリの顔を心配そうに覗き込む。
「ごめんなさい。できるだけ注意はしたけれど……やっぱり充電は切れてしまったかしら?」
充電……充電。そういえば。ルリの全身に今の充電が何%か確認してみる。
-
……全然減ってない。というか、朝起きたときよりある気がする。もしかしてこれ、100%超えてる?
「めっちゃ元気です!」
ルリは勢いよく立ち上がって、部屋の真ん中でグルグルしたり少し跳ねたりしてみた。充電があり余ってる。全然切れる気がしない。
「梢先輩、梢先輩! ルリ、落ち着ける場所また見つけたかも!」
「……え、ええ……この部屋のことかしら?」
梢先輩は首を傾げた。伝わってなさそうだけど、それでもいいや。
見つけたよ、めぐちゃん。一緒にいても充電が減らない……ううん、回復させてくれる人。
-
あぁ…脳が破壊と再生を繰り返している…
-
───
【放課後、部室】
慈「さやかちゃんとはちょっと方向性違うけどやっぱりるりちゃんもやられてるー!」ワアッ
さやか「わたしがやられたみたいな言い方しないでください!」
綴理「さや、すっごいやられてたよ」
瑠璃乃「全然充電切れる気しない! 見てめぐちゃん! ルリ、永久機関? になったかも!」
花帆「というか自分だって1年生の頃からやられてるのに、どうして瑠璃乃ちゃんがやられてそんな嘆くんですか?」
慈「だってるりちゃんは……こんな蓮ノ大五角とは距離を置いててほしかったから……」
さやか「今日で大六角になりましたね」
綴理「そのうち丸になりそうだね」
花帆「梢センパイが百人斬り始めるんだぁ……」ドヨーン
-
【全ルートクリア特典:ハッピーエンドが開放されました】
【つづく】
-
ありがとう
本当にありがとう
-
全ての美少女はわたくしのものなのだけれど
-
>>100
丸ってことは65537人も誑かすのか…
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控えめに言っても、最高です
-
筆が早い とても脳の健康に良いSS
-
>>99
これもう五条悟だろ…
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クールに去るスピードルリちゃん好き
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全員手籠にしてて草なのだけれど……
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神はいた。ありがとう。仲間外れが居なくて良かった。
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筆が早くて内容も神
非の打ち所が無さすぎて
金払いたいレベルなんだが?
-
さちせんルートも見たいぞ
-
あまりにも最高すぎて最高なんだが
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いっそ蓮ノ空の美少女全員わたくしのものなのだけれど…
-
───
梢(それから瑠璃乃さんも治療に加わって、数週間が経った)
梢(相変わらずみんなの舌を入れる治療は続いていて……最近では、瑠璃乃さんまでもが舌を入れてくるようになった)
梢(効果は……あるのかわからないけれど、最近身体が少し軽いようには感じている)
梢(今日は入院して以来の病院)
梢(本当はもっと頻繁に行くべきだったけれど……というか一ヶ月も空けるべきでは絶対になかったけれど……ライブの準備が重なったり、キスさえしていれば不調になることがないのもあって、言ってしまえばサボっていた)
梢(今日は久々に時間が空いたのもあって……といった感じ)
梢(……だけど、この判断が私の生活を再び一気に変えることになった)
-
医師「……治ってる」
梢「……え?」
医師「……信じられないことに、あなたの接吻欠乏症は治っています」
梢「……ええと……不治の病、のはずでは……?」
医師「そのはずです。いえ、そのはずでした。ですが現実として、あなたの病は治っています。いったいなぜ……?何か変わったことをしましたか?」
梢「いえ……特には……。……あ……」
医師「何かありますか?」
梢「……その……関係あるかはわかりませんが……私の周りには偶然5人の美少女がいて……そのみんなに、協力してもらって……///」
医師「なるほど……確かに、複数人の美少女とキスをしたケースはありません。そこまで美少女に好かれるケースもレアですから」
梢「はあ……」
医師「ありがとうございます、そしておめでとうございます。経過観察は必要ですが、あなたの病気は治ったと言って差し支えありません」
梢「あ、ありがとうございます……」
-
医師「……ですが、それ以外にもあるはずです」
梢「え……?」
医師「ただ治っただけ、ではありません。はっきり言います」
医師「あなたの病はプラスの方向へと変質し、美少女との性的興奮によって一時的に能力が上がる体質に変わっています」
梢「…………、……はい?」
医師「ただ複数人の美少女からキスをされただけでこうなることはありえません。正直に言ってください」
梢「……え、っと……その……。最近は、キスといっても……あの、舌を、入れたり、していて……///」
医師「5人の美少女全員とですか?」
梢「……はい……///」
医師「なるほど。わかりました」
-
医師「あなたも治療を通して体験した通り、美少女には知られざるいくつもの力があります」
梢「はあ……」
医師「5人の美少女とただキスをするだけではなく、ディープキスをしたとなれば……その効果もまた別の形で発現した、ということでしょう」
梢「……はあ」
医師「そしてここからが重要です。乙宗梢さん、あなたも恐らく美少女ですが……それが幸いして、性的興奮によって能力が上がるのは、あなただけではありません」
梢「…………??」
医師「あなたのその体質ですが、あなたと性的興奮を高める行為を行った美少女、その人自身の能力をも高める体質ということです。まとめると【美少女と性行為すると能力が上がる体質】ですね」
梢「…………」
医師「あなたが6人で乱交すれば、6人全員の能力が一時的に上がることでしょう。怪我の功名と言うべきでしょうか。よかったですね」
梢「そんなことしません!///」
-
この医者ちょっと頭おかしいよ
-
───
【蓮ノ空女学院、部室前】
梢(……とんでもないお話だったわね)
梢(……とりあえず、花帆さんたちには治ったことだけを伝えましょう。追加の説明は……しないほうがいい気がする……)ガチャ
花帆「梢センパイ! おかえりなさい!」ダキッ
梢「きゃっ……ただいま、花帆さん。みんな」ナデナデ
慈「おかえりー。どうだった?」
さやか「でも、不治の病なんですよね?」
瑠璃乃「この生活を続けましょうとか、大体そんな感じ?」
綴理「変わらない日々、だね」
-
梢「……いえ。私の接吻欠乏症……【定期的に美少女の接吻を受けなければ死ぬ病】は治ったわ」
花帆「…………」
さやか「…………」
瑠璃乃「…………」
慈「…………」
綴理「え? さやが今言ってたけど、不治の病なんでしょ?」
梢「ええ、だけどほら。一応診断書だって貰ったわ」
花帆「み、見せてください!」バッ
-
花帆「……ほんとに書いてある……接吻欠乏症、治っちゃった……」
梢「ええ。だから、そうね。今までみんな、私のためにありがとう。でもこれからは──」
瑠璃乃「ん、でも下にも色々書いてある……」
梢「……、……え?」
さやか「……この者と性的興奮を高めあった者、その両方の能力が一時的に上がる……」
慈「……【美少女と性行為すると能力が上がる体質】……」
綴理「……つまり、どういう意味?」
-
梢(しまった、書いてある内容まで見ていなかった……!)
梢「えっと、間違って書いてしまったんじゃないかしら! 返してほしいのだけれど!」バッ
慈「花帆ちゃん、羽交い締め!」
花帆「慈センパイに命令されるのは癪ですけど……!」ガッ
梢「っ……、離して、花帆さん……!」
梢(花帆さんに乱暴なことはできない……!)
さやか「……この文章。つまり、こういうことじゃないですか?」
さやか「たとえば、わたしが梢先輩と性行為をしたら。わたしたちのどちらも能力がその後数時間とか1日上がる、とか」
綴理「……そうなんだ」
-
梢(みんなの目が、一斉に私を向いたのを感じる。獲物を見つけたかのような、鋭い目)
梢「みんな、落ち着いてちょうだい! あるわけないじゃないそんなの!」
慈「じゃあこの文章は梢が自分で書いたの?」
花帆「こういうの、偽造したら犯罪になるんですよ。梢センパイは犯罪者なんですか?」
梢「そうではない、けれど……」
瑠璃乃「ルリの充電も、梢先輩としたらもっと……」
さやか「少し伸び悩みを感じていた時期だったんですよね。ちょうどいいかもしれません」
梢「待って! これは、そう、ドーピングよ! こんなことをしたらラブライブ失格になるわよ!」
綴理「こずは薬なの?」
梢「違うけれど、でもっ……」
花帆「……ねえ、梢センパイ。気付かないですか?」
-
梢「気付くって、何に……」
花帆「あたしたちみんな、理由を欲しがってるだけなんです。だから、能力が上がるとかそういうのは……ちょっとは魅力的ですけど……どうでもいいんです」
梢「……どういう、こと……?」
花帆「梢センパイ、きっとあたしたちみんな、もう我慢の限界なんです。だからハッキリ言いますね」
花帆「あたしたちはただ、梢センパイが好きで、梢センパイが欲しいだけなんですよ♡」
梢「……え……あ……」
慈「本当にそういう効果出るのか試したいしさ。今から梢の部屋行こっか♡」
綴理「こず、ついてきて♡」
梢(……私、は)
梢(いつから、どうして……)
-
───
「梢センパイ。開けてください」
ポケットから取り出した鍵を鍵穴に入れ、回す。カチャリ、とロックが外れた音。扉を開ける。
一瞬、扉をすぐに閉めてこの子たちを閉め出したらどうなるだろう、という案が思い浮かんだ。でもすぐに棄てた。きっと意味がないから。
私の後ろについてみんなが入ってくる。さやかさんが油断なく鍵を閉め直す。誰かに乱入されるのを防ぐために……それか、私を逃さないために。瑠璃乃さんがカーテンを閉めて外からの、外への視界を遮断する。
花帆さんが私の手を引いてベッドに誘導する。エスコートされているかのような優しい力で、けれど絶対に逃げられない圧力も感じていて。それは私の後ろにいる綴理と慈からも感じている。
目で促されて、私はベッドに腰掛けた。隣に花帆さんが同じように腰掛ける。ギシリ、とベッドのスプリングがやけに大きく鳴った気がした。
-
「梢センパイ。怖いですか?」
花帆さんの手が私の手に乗せられる。……反射的に、一瞬震えてしまった。これから起こることへの恐怖から……、……いえ、それとも……。
「あたしたちのこと、嫌いですか?」
「……いいえ」
「あたしたちのこと、好きですか?」
「……ええ」
「よかった。ね、あたしたちも同じなんです」
花帆さんが近づいてくる。その瞳の奥に映るのは私。私の表情は、……恐怖、にはとても見えず……むしろ……。
「好き同士で、好き同士がするようなことをするだけですよ。あたしの梢センパイ♡」
-
花帆さんの唇が私の唇に触れた。いつも通りの感触。けれど、その意味合いはこれまでと違う。綴理と慈もベッドに座り、私の身体に触れ始めた。
「梢ってやっぱり筋肉すごいよね。私たちのこと本気で振り払おうとしたらできちゃいそう」
「でも、こずはできないもんね」
見透かしたような綴理の言葉。だけどきっとその通り。花帆さんに対してだけじゃない、この中の誰も傷つけることなんてできない。
「ルリたちが入る隙間なくなっちゃった」
「あの3人は梢先輩にとって特別ですからね。最初は譲ってあげましょう」
2人の他人事みたいな会話が聞こえる。慈の手がスカーフを外して、綴理の手がスカートの裾に入り込む。
「こず、腰上げて」
「梢、ばんざーい」
綴理と慈に言われるがまま動く。あっという間に制服と靴下を脱がされる。
-
「こず、染みできてる」
綴理がパンツの上から私の"そこ"に軽くキスをした。甘い痺れが脳に響く、声が漏れる。
「梢の鳴き声かわいい♡」
慈のキスは首筋や肩に落とされ、弱くぞわぞわとした刺激が襲う。そして花帆さんは、私の胸元に唇を寄せ、
「……っ!」
強く、長く吸った。花帆さんが離れると、そこに咲くのは内出血の赤い花。
「えへへ……あたしの印ですね」
「いいなー。ボクも」
「私もつけたーい」
綴理が内腿を、慈が背中をそれぞれ強く吸った。花帆さんのキスで見えないけれど、きっと胸元にあるのと同じ花が咲いたはず。
-
「はい梢、ばんざーい」
慈に促されて簡単にキャミソールを剥ぎ取られる。残ったのはブラジャーと、パンツだけ。
慈の手がブラホックに、綴理の手がパンツにかかる。私の身体を隠す最後の衣服が取られようとしている。ここまで流されてきたけれど、さすがに恥ずかしくなって身体をひねって抵抗する。
「こず、脱がしにくい」
「今更羞恥心発揮しちゃってさ」
2人が不満げな声を上げるけれど、これ以上は進ませられない。
花帆さんが私をじっと見た。瞳の奥に映る私を見たくなくて目を逸らす。
-
「ふーん。そういう反応するんですね。梢センパイ」
花帆さんの冷たい声。怖い。ちらり、と花帆さんのほうを見る。
その瞬間、花帆さんの舌が私の口に入り込んできた。
ぴちゃぴちゃと水音が鳴る。花帆さんの舌は今までと違って容赦なく私の口内を蹂躙した。舌も歯も遠慮なんてまるでなくかき乱される。下腹部が甘く疼く。身体の力が抜ける。その隙を突いて、綴理と慈は私に残された最後の衣服を呆気なく脱がせた。
とうとう一糸まとわぬ裸になった私は、ベッドに仰向けに倒れた。身体を隠そうとしても、3人に押さえられてそれすらもままならない。
「梢センパイ、きれい……」
見下ろす花帆さんがうっとりと呟いた。今度は綴理が顔を近づけてくる。
「ボクもこずとキスしたい」
そして綴理の舌が入ってくる。口内の感覚と間近で見る綴理の顔に、「好きだよ、こず♡」という呟きに、私の中の女が否応なく悦びを覚える。
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「じゃああたしはー……こっち♡」
花帆さんが私の胸に口づけた。そして、先端を避けるように唇と舌でなぞる。もどかしい刺激に、身体が無意識に刺激の方向に先端を寄せようとする。
「だめですよ、梢センパイ。勝手に乳首触らせに来たら♡」
花帆さんは許してくれなくて、先端をひらひらと避けて、あくまで周りだけをいじめてくる。触ってほしい。刺激がほしい。涙が目の端から零れる。
花帆さんが上目遣いに私を見た。そして、ふっと目を細めた。
「いいですよ、梢センパイ♡」
花帆さんが私の胸の先端に、甘く歯を立てた。
頭から足先まで、甘い電流が走り抜けた。
腰が震える。蜜が溢れ出るのがわかる。
……みんなとディープキスをしている時に、ずっと欲しかった感覚。
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「もうぐちゃぐちゃだね、梢のここ♡」
慈が脚の間に顔を寄せる。私はもう、脚を閉じられない。
「ねえ、おねだりしてみてよ。そしたらもっと気持ちよくしたげる♡」
慈のはちみつのように甘い声が理性を溶かす。いえ、もう溶かされる理性なんて残ってなかったかもしれない。
「おねがい、めぐみ……」
「お願い? 何を?」
慈の息がかかる。その微弱な刺激さえ今の私には。そして、それ以上の刺激がほしい。
慈の目の前で、私はそこを指で広げた。
「わたくしの、ここをっ……めちゃくちゃに、して……♡」
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ごくり、と慈が生唾を飲んだのが見えた。
「……ずるいよね、ほんとにさ……」
慈が呟く。そして。
私のそこに、口を付けた。
「──っ!!」
今までで一番強い刺激が私を襲った。全身が痺れる。声を抑えられない。
慈の舌が割れ目の内側に入り込む。花帆さんも綴理も、舌で胸の先端や口内をめちゃくちゃにする。
もうこの快楽のことしか考えられない。もっと欲しい。もっと、みんなの愛を──。
「────っ♡♡♡♡♡」
視界が真っ白になった。全身が震えている。意識が飛ぶような快楽と、花帆さんと、綴理と、慈しか感じられない。
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段々震えが収まってきて、焦点がみんなに合い始める。3人とも私のことを……とても、愛おしそうに見つめていた。
「ほら、そろそろ代わってください! わたしたち待ちくたびれたんですから!」
「そうそう! ルリたちも我慢の限界ってやつ!」
視界にさやかさんと瑠璃乃さんも映る。
みんなの目が私を見ている。私を求めている。
私は、みんなを受け入れるように腕を広げた。
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【ハッピーエンド:大好きよ、みんな♡】
【おわり】
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えっろ
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梢センパイ総受け、ありがとう
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花丸よ!
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サンキュー神
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こんな展開でもやろうと思えば出来そうって思えるこずセンすげぇわ
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こんなおいしいところで終わるなんて…
神乙
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神
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これは野生のみ神てれん先生
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刺激的
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刺激的
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最高なのだけれど
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エッッッッッっエッッッッッ
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でもわたくし容姿端麗文武両道お金持ち精力絶倫天下無敵だから全員を幸せにできるのだけれど…
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えっちすぎんだろ…
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