脳血管疾患はがん、心疾患に次ぐ死亡率第3位の病因である。特に75歳以上では脳血管疾患と心疾患を合わせた循環器系疾患のリスクが顕著に増加し、年齢を重ねるにつれ、がんによるリスクを上回っている。また、脳血管疾患の中でも脳梗塞は死亡者数において大きな割合を占める疾患であることが分かっている。また、罹患(りかん)後の後遺症は、まひ、運動不能を伴うなど日常生活に多大な支障を来し、患者のQOL(Quality Of Life)の低下を招くだけではなく介護者の心的ストレスも助長する。この脳梗塞の早期発見、予防法の開発は患者のQOLの向上に必要不可欠であるだけでなく、高度高齢化社会を迎える日本が抱える脳梗塞による人的、経済的負担を軽減するために極めて重要な課題である。
脳の皮質下にある直径1.5㎝以下の血管で起こる梗塞(小脳梗塞・ラクナ梗塞)は、ほとんどが無症状で、症状が出ても頭痛やしびれなどを感じる程度なので、見逃してしまいがちです。しかし、このような無症候性の脳梗塞によって、高齢になってからの記憶障害、認知症、アルツハイマー型認知症などのリスクが高まってしまうことが、ニューヨークのコロンビア大学医学部Adam M. Brickman博士らの研究によって明らかになり、2012年1月3日付のNeurologyに報告されました。