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アラブ・中東の映画

1 さーひぶ :2002/07/18(木) 00:45
最近のアラブ・中東の映画について語りましょう。

27 アラビア語初級者 :2004/03/04(木) 19:25
第2弾より解りやすかったです>第3弾
でも第1弾が一番解りやすかった。
劇の評価じゃなくて、アラビア語そのものが。

28 のぶた :2004/03/11(木) 11:55
東京日仏学院で、アラブ映画特集をやってますね。
上述雷怒さんが言及されている「他人(al-akhar)」も
やるみたいです。サイードの演技を見に行ってきます。

http://www.ifjtokyo.or.jp/culture/cinema_j.html

29 さーひぶ。 :2004/03/12(金) 22:19
情報ありがとうございます。
日仏学院は、以前から旧仏領アフリカの映画をたびたび特集上映していますね。

日本のフランス語教育界も、最近は仏語圏諸国文化の紹介に力を入れだしてきているから、
これからもアラブ映画の上映など期待がもてます。

30 さーひぶ。 :2004/06/14(月) 00:42
「イラン映画祭2004」(国際交流基金フォーラム)
日曜までだったのに、つい見逃してしまいました。
来年はあるかなぁ。

31 さーひぶ。 :2004/09/06(月) 21:45
「アラブ映画祭2005 プレイベント」が9月2日〜4日、東京で催されました。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/jfsls2.html
「アレキサンドリアWHY?」「他者」「ガリレアの婚礼」を観ました。

ユーセフ・シャーヒーン監督は若者映画が得意ですね。
とくに「他者」は、インド映画みたいな面白さを感じました。
「三大宗教センター」が出現する妄想シーンには大笑い。
結末も意外で非常に良かったです。

「ガリレアの婚礼」は、実はビデオを持っているんですけど観てしまいました。
イスラエル占領下パレスチナ社会におけるイスラエル人とパレスチナ人の緊張感、
そしてパレスチナ社会における男と女の緊張感がよく描かれています。

「アラブ映画祭2005」は、来年2月の開催予定です。

32 さーひぶ。 :2005/02/15(火) 01:59:46
「アラブ映画祭2005 プレイベント2」が2月11日〜13日、東京で催されました。
http://www.jfforum.jpf.go.jp/event_sch/details/event_sch_detail.html#arab_film

2日目の映画『西ベイルート』を観てきました。
なかなか成熟した感じの映画で良かったです。
詳しくはまた後日

33 さーひぶ。 :2005/02/20(日) 22:15:12
『西ベイルート』(1998年、レバノン)監督=ジアド・ドゥエイリ
「地中海映画祭2000」でも上映された作品ですが、そのときは見逃していました。

舞台はレバノン内戦初期のベイルート。主人公はフランス系の学校に通う2人のアラブ人
、キリスト教徒少年タリク、イスラム教徒少年オマル、同じアパートの少女メイ。
内戦の開始によって、首都はイスラム教徒の西ベイルートとキリスト教徒の東ベイルート
に分断される。戦火の下で、性にめざめた3人は娼館(売春宿)に潜りこんだり騒動を起こ
し、青春を謳歌するが、激戦が街を覆ってゆく・・・。

米仏で映画を学んだ監督だけに、性の表現は欧米並みに洗練されていて、過激な表現もあり
ますがそれほど嫌らしくはありません。貫禄たっぷりの娼館の女主人が、異教徒の男が利用
したと知って激怒するシーンはユーモラスでさえあります。表では敬虔なムスリムの体裁を
繕うパレスチナ難民のおばちゃんが、家では亭主を激しく誘惑する場面には笑えます。
戦火の下で、宗教の壁・性の壁を越えて成長してゆく少年少女を描いた佳作です。

タリクの父が息子に「お前はアラブ人だろ!」というと「僕はフェニキア人だよ」と切り返し
たのにも感心! アラブ人キリスト教徒は、アラビア半島から来たイスラム教徒の遺伝的影響
を受けていないので、レバノン人キリスト教徒がフェニキア人の末裔であることは十分に考え
られますね。

34 さーひぶ。 :2005/03/20(日) 21:31:31
【リアル/アラブ映画祭】(http://www.geocities.jp/kebabmovie/
حقيقي/مهرجان الأفلام العربية
の2日目を観てきました(東京・お茶の水のアテネ・フランセ文化センター)

〔石原裕次郎主演『アラブの嵐』〕あとで、別スレに書きます。

〔レバノン映画短編集〕
『ベイルートの風』(هوا بيروت)
建物が老朽化しているベイルートのあるアパート。出勤前にシャワーを浴びていた男
ハリールは、窓から一陣の風が吹き込んで扉をロックし、シャワー室に閉じ込められる。
扉をドンドン叩くが外へは出られない。勤務先にケータイ電話しても、知人が訪ねてきても
ダメ。ついに窓から隣室のベランダへ出るが、タオル一枚の裸のために室内の隣人から怖がられて
あわてて外壁を反対方向へ。立ち往生するハリールは風でバスタオルを飛ばされ、道を歩く
人々からストリーキングと勘違いされる。やっと建物内へ脱出した彼は、警官に取り押さえ
られて安定剤を注射され、意識を失いながら超現実的な幻覚を視る。・・・

2003年ベイルート中東映画祭短編賞受賞。たった15分の小品ですが、とってもシュールで笑えました。
周囲の人々から勘違いされるというシチュエーションが次の『テロリズムとケバブ』と同じです。
>>35へ続く)

35 さーひぶ。 :2005/03/20(日) 23:03:02
>>34の続き)
〔長編〕
『テロリズムとケバブ』(الإرهاب والكباب)
エジプトの喜劇俳優アーデル・イマーム(عادل إمام)が主演の1992年のエジ
プト映画。テロリズムを笑い飛ばす喜劇「ケバブムービー」です。

公務員のアハマドは、子供たちの転校の許可を申請するために合同庁舎へと向かう
が、長い行列に待たされ、申請窓口では担当役人が不在。窓口の部屋では女性職員
が私用長電話、男性職員が礼拝ばかりをひたすら続けている。このあと彼の妻と二
人の子供との家庭生活、カイロでの生活が描かれる。仕事をなんとか都合つけて再
び役所を訪れるが、担当者がまたおらず、言われるままに外務省からホテル群へと
さんざん探し回るが見つからず、窓口で職員二人と口論、男性職員と喧嘩みたいに
なり、なんと女性職員が警察に電話通報してしまう。
どういうわけか警官隊がやってきてアハマドたちともみ合いになり、偶然から警官
の銃を掴んでしまう。バン、バン。なぜかあわてて逃げさる警官隊。彼をテロリス
トと勘違いした合同官庁の人々はパニック状態になって逃げ去り、残された人々は
「人質」に。いつのまにかテロリストにされてしまった彼の元には、都会に不満の
青年、自殺志望の男、娼婦容疑の客引き女たちが次々と「味方」として加わってい
く。
庁舎は内務相指揮下の特殊部隊に包囲される。「一味」ははしご車で寄ってくる隊
員を消火用ホースの放水で撃退。建物に近づく部隊をガスボンベの投下で爆撃!!
アハマド、お前は『ダイ・ハード』(1988年)のジョン・マクレーン刑事かぁ(笑。
内務相とトランシーバーで交渉の末に彼らが要求したのは「ケバブ」。「ケバブじ
ゃなく、ケンタッキー・フライドチキンをあげよう」という内務相に対し「一味」
も「人質」たちも「カバブがいい」の一点で同調する。
政府に対し要求をするということになり、一味は何を要求しようかと考え悩む。
「内閣を解散しろ」等あれこれ無茶苦茶を言っているうちに、内務相はアハマドを
「テロリスト」ではなく「気ちがい男」としてニュースに流し、明朝までに人質解
放をしないと踏み込むと迫る。驚いたことにテレビニュースは「事件は解決」と報
道、明朝までに「解放」しないと「人質」ともども全員射殺される。もう後がない。
アハマドら「一味」は「人質」らの前で何でこんなことになってしまったかのいき
さつを話し合い出す・・・。
明朝、部隊が庁舎の前を取り囲む中で、「人質」たちが「解放」されてぞろぞろ出
てきて、通りへ向かう。内務相の前を緊張しながら通りすぎるアハマド。部隊がい
っせいに庁舎へなだれ込む。どこを探しても「テロリスト」なんかいない。合同庁
舎を感慨深げに振り返りながら悠然と去ってゆくアハマドであった。(映了)

『勝利への脱出』(1980年米映画)みたいな脱出テクニック(?)でした。
近代デモクラシーとともに西ヨーロッパ発祥であるにも拘らず、アラブに結びつけ
られてしまった感のある「テロリズム」をコメディとして描けるのは、アラブ映画ならでは。
現代エジプト社会の停滞と暗部、政府の腐敗などを痛烈に風刺しながら、テロリズム
なるものを思い切り笑いとばしています。ある意味で『ダイ・ハード』よりも傑作かも(^^)

36 さーひぶ。 :2005/04/18(月) 00:33:39
【アラブ映画祭2005】

4月15日(金)〜24日(日)東京・赤坂の国際交流基金フォーラムで
遅れに遅れ、待ちに待った「アラブ映画祭2005」が開催中です。

アラブ映画祭公式サイト(国際交流基金)
TOPページ http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab.html
上映作品 http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab_2.html
スケジュール http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab_3.html

10日間にもわたって、ほぼ昼夜ぶっ続けで上映されるため、東京近辺に在
住の人でも、全作品を観るのは無理気味でしょうけど、自分のスケジュール
と財布に相談して、面白そうな作品を選んで観に行きましょう。

スタッフの会場発言によれば、「アラブ映画祭」は今後も繰り返し開催され
る模様。今回は、上映作品17本のほとんどが日本初公開だそうです。

37 さーひぶ。 :2005/04/18(月) 00:52:48
【『眠れぬ夜』2003年、エジプト】 <アラブ映画祭2005

現代エジプトの3組の若い男女が織り成す性愛の葛藤を描いた青春映画。
エジプトの2大若手人気女優、ハナーン・トルクとムナー・ザキーが主演。
たとえていえば、日本でもNHKで放映されたアメリカのテレビドラマ
『ビバリーヒルズ青春白書』をもっとシリアスで重厚にした現代エジプト映
画版という感じ。BGMもかなり重厚で、映画を重々しいものにしています。

要するに、痴話のドラマなのですが、描写がかなり赤裸々で、笑えます。
中東・アラブの映画でヒトの交尾シーンまで出てくるのはまだかなり珍しい
と思われます。ハリウッド映画や米テレビドラマの影響でしょうか。監督の
ハニー・ハリーファさんは30代。

レバノンの青春映画が、性描写を含めて、西欧・フランス風にサラッと垢抜
けた造り方をしているのと比べると、エジプト映画は米国ハリウッド映画風
で、かなり芝居がかっているし、非常に脂ぎった印象を受けます。(レバノン
映画は大衆にうけていないが、エジプト映画はうけているという見方もあり)

字幕監修は、NHKラジオ講座でおなじみの師岡イマーンさんです。

38 さーひぶ。 :2005/04/18(月) 01:31:10
【『カサブランカの天使』2004年、モロッコ・イタリア】

たいへん良質な映画、とても考えさせられる秀作映画です。
これまで、欧米がモロッコを描いた映画はいくつも紹介されてきましたが、
モロッコ側の視点から視るとこの国はこんなにもちがった貌(かお)を見せる
のかと、新鮮な印象を持ちました。カメラワークなど映画の造り方がなかな
か巧いのはイタリアが協力しているせいでしょうか。
主人公がベルベル人(自称:イマジゲン)役なのも非常に新鮮!
現代モロッコの大都会カサブランカで働く出稼ぎ労働者と仲間たちの悲哀に
満ちた貧しくて苦しい暮らしぶりを描いています。

モロッコの山奥(アトラス山脈?)の村で暮らすベルベル人のサイードは、
ある日、身重の妻の強い反対を押し切って、カサブランカに出稼ぎに出て、
レストランで働くようになる。村に一つ(?)の携帯電話で連絡を取る夫妻。

サイードのある同僚は、故郷の村に家族と馬を残し、馬のえさなど仕送り
を続けるが、やがて耐え切れなくなって、家族と馬の元に帰っていく。

ある同僚は、貧しいのにショーウィンドーで見た高価な靴にあこがれ、華や
かな結婚式を夢想し、悩みに悩んだあげくに靴を買うが、バスでは靴を踏ま
れ、車がはねた泥で汚され、工事現場で釘を踏んで・・・と高価な靴を買ったた
めに苦労の連続。
>>39へ続く)

39 さーひぶ。 :2005/04/18(月) 01:32:24
>>38から続く)
産後の肥立ちが悪いサイードの妻は倒れ、彼は長距離バスで帰郷する。バス
に同乗した隣の客は、出稼ぎで15年間フランスで働いたが、その間一度も
家族に会えず、現地では低く扱われ、もうフランスには戻らないと断言。
村に戻ったサイードは妻を大都会カサブランカの医者に診せようと、乗合タ
クシーで急ぐが・・・。

悲しい物語ですが、モロッコの都会と田舎の暮らしぶり、結婚式・民俗衣装
などさまざまな社会風俗、アラブに対するベルベル、都会や欧州への出稼ぎ
問題などをかなりリアルに見せ付けてくれます。
ベルベルはアラブに対する「先住民」とされますが、実際はモロッコのアラ
ブの大半は、ムスリム・アラブ化したベルベルの末裔なのだと思われます。
それにしても、どこの社会でも、弱者は薄情に扱われるものだなぁ。ぐすん(涙

40 さーひぶ。 :2005/04/20(水) 23:54:29
アラブ映画祭、その後も何本か観たのですが、なかなか映画評を書いている余裕が
ありません。とりあえず、上記2本のアラビア語の題名を記しておきます。

>>37 眠れぬ夜
سهر الليالي (夜毎の不眠)

>>38-39 カサブランカの天使
فوق الدار البيضاء..الملائكة لا تحلق
(カサブランカの上に天使たちは飛ばない)
この作品は、アラビア語名の表記にブレがあるようで、メディアによっては
次のようにも書かれていたりします。
الملائكة لا تحلق فوق الدار البيضاء
الملائكة لا تحلق في الدار البيضاء

続きは後日。

41 さーひぶ。 :2005/04/23(土) 03:05:45
>>37 大ヒットした『眠れぬ夜』の主役は(3組ではなく)4組の男女8人でした。
現代エジプトの若手スター勢ぞろいなので、以下に役名と俳優名を列挙しておきます。

妻:ペリー بيري  演:モナー・ザキー منى زكي
夫:ハーレド خالد 演:ファトヒー・アブドゥルワハーブ فتحي عبد الوهاب

妻:ファラ فرح  演:ハナーン・トルク حنان ترك
夫:アムル عمرو  演:アハマド・ヒルミー أحمد حلمي

妻:ムシーラ مشيرة 演:ジハーン・ファーディル جيهان فاضل
夫:アリー علي  演:ハーレド・アブルナグア خالد أبو النجا

女:イーナース إيناس  演:オラ・ガネム علا غانم
男:サーメハ سامح  演:シェリーフ・ムニール شريف منير

42 さーひぶ。 :2005/04/23(土) 04:07:03
【『ラシーダ』2002年、アルジェリア・フランス】 رشيدة

テロリズムの嵐が吹き荒れるアルジェリアを、テロにおびえながらもたくまし
く暮らしてゆく人々を、1人の女教師の生き様を通して描いた社会派ドラマ。
首都アルジェ近郊の小学校で教えている女教師ラシーダは、ある日の街中で
元生徒の過激派若者グループから学校に爆弾を持って行けと強要され、拒否
したために腹部を撃たれて重傷を負ってしまう。
首都のテロリストたちから逃れ、テロの恐怖に怯えながら、田舎の静かな村
で母と隠匿・療養しながら、彼女は少しずつ回復する。村で再び教壇に就く。
「授業のテーマ」(موضوع الدّرس)と黒板に書くラシーダ。都落ちした新任
女教師は生徒の間ですでに話題だ。
しかし、この村もテロの例外ではなくテロリストたちに襲われてゆく。拳銃
を腰に差した男を見かけただけで怯えて逃げさるラシーダ。
過激派グループに拉致され、辱められて妊娠し、逃げ出してきて保護された
ある若い娘を、封建的な老父は慰めるどころかこともあろうに「恥をかかし
おって、いっそ死んでくれた方がましだ。もう関わりたくない」と罵る。
村では、テロリストを親に持つそんな子供たちが幾人も養育されている有様。
そんな村の有様を知って嘆く母を、「親は選べない」とたしなめるラシーダ。
宴会の夜、再三テロが村を襲い、逃げる途中で拾った幼児を抱きしめながら
藪の中で朝まで震え続けるラシーダ。またも多くの村人が殺された。
恋人が殺された現場で泣き崩れる若い娘。「こんな地獄から早く立ち去ろう」
と声をかける村人に「地獄は心の中だけ」とやり返す娘。
放心状態から立ち直りながら、登校し、荒らされ尽くした教室で生徒たちを
迎えて授業を始めるラシーダ。いつものように「موضوع الدّرس」と板書する。
>>43へ続く)

43 さーひぶ。 :2005/04/23(土) 04:31:19
>>42の続き)
テロリズムの嵐が吹き荒れ続けてきたアルジェリアの作品だけに、日常生活
の中でテロが起こる有様を、被害者側の視点から非常にリアルに描いていま
す。テロの被害・恐怖から立ち直ってゆくラシーダは、テロに直面するアル
ジェリアの人々の「あるべき理想像」なのかも知れません。テロリズムに悩
む多くの国の人々に観て欲しい秀作です。

それにしても、これまで日本のメディアでは、パレスチナやイラクの紛争が
大きく報道されてきたのに比べて、アルジェリアの情勢はほとんど報道され
ませんでした。日本のメディアがアメリカ中心に世界を捉えているためでし
ょうか。パレスチナよりもアルジェリアの方がはるかに危険な状況であった
と思われますが。油田地帯や宗教の聖地と関係なければ、アフリカで多くの
人が殺されてもニュースにならないというのでしょうか?

44 さーひぶ。 :2005/04/23(土) 05:31:34
【『忘却のバグダッド』2002年、イラク・スイス・ドイツ】

「ユダヤVSアラブ」という20世紀国際社会のお決まりの「常識」が虚構
であることを暴き出してくれる重要なインタビュー・ドキュメンタリー映画。
登場するのは4人の「イラク系ユダヤ人」(=ユダヤ系イラク人)、および
イラク系ユダヤ人を両親に持つ在米の女性社会学者エラ・ショハット。
かつてイラクに住むユダヤ人たちは、アラビア語を母語とし、アラビア語の
文化に親しんで暮らしていた。しかし、現代イスラエルが建国されると、
シオニズムと反ユダヤ主義の高まりの中で彼らの立場は微妙なものになった。
シオニズム国家イスラエルは西洋のユダヤ人たちに移住を促したが、移住し
て来た西洋系ユダヤ人は思いのほか少なかった。そこで、パレスチナにおけ
るユダヤ人の人口的優位を築くためにも、東洋系ユダヤ人(ミズラーヒーム)
たちの移住を呼びかけた。
(他のアラブ諸国と同様)イラクのユダヤ人たちは祖国イラクを離れる意思
はなかったが、イラクのシオニストたちが当時のイラク政府と結託して起こ
したと見られるテロ事件が多発した。証拠はなかった。こういったテロ事件
の続発により、イラクのユダヤ人たちは祖国イラクを追われるようにしてイ
スラエルに移住した。イスラエルではなく欧米への移住を希望する者もいた。
イスラエルに移ったイラク系ユダヤ人たちは(まるでナチスに強制収容所に
連れて行かれるようにして)キブツへ連行され、強制的に肉体労働を強いら
れた。地獄のような日々だった、と回顧する人もいる。
イスラエルでは、アラブ系ユダヤ人(=ユダヤ系アラブ人)は「アラブ出身
の劣った、シラミがたかったような連中。悪いユダヤ人だ。」と蔑まれ、
徹底的な差別を受けてきた。現在、イスラエルの人口の過半数は東洋系だ。
このように、イラク系ユダヤ人たちと2世によって、今まで知られていなか
った西洋系「ユダヤ人」によるアラブ系「ユダヤ人」への差別の数々が証言
され、「ユダヤ人」VS「アラブ人」という虚構が解体されてゆく。
>>45へ続く)

45 さーひぶ。 :2005/04/23(土) 06:10:24
>>44の続き)
「ユダヤVSアラブ」という固定観念が国際的な「常識」のようになってい
ますが、この映画での証言が浮かび上がらせるのは、欧州で差別を受けてき
たユダヤ系[被差別ヨーロッパ人]がイスラエルを建国することによって、
中東アラブ諸国で共存してきた東洋系ユダヤ人が追放同然に祖国を追われ、
その結果としてパレスチナの地が[ユダヤ系の西洋人と東洋人の収容所]と
化し、さらにユダヤ系[西洋人]がユダヤ系[アラブ人]を差別・支配して
いるというシオニズム国家イスラエルの重大な矛盾です。こうしたユダヤ系
[亡命アラブ人]の存在は、「パレスチナ問題」の影に隠れ続けてきました。

この重要な映画を多くの人が観ることにより、「パレスチナ問題」ではなく、
イスラエルとは西洋人がアラブ人を植民地支配・差別する「イスラエル問題」
なのだということが明らかになることを切に望みます。

46 さーひぶ。 :2005/04/24(日) 23:28:28
【『ビバ! アルジェリア』2003年、フランス・ベルギー・アルジェリア】 Viva Laldjérie

政府がテロ終了宣言を出した直後の(2003年頃の)アルジェリアの首都アルジェで
生き抜く3人の女性の生き様を描くドラマ。

主人公のグセムは27歳の未婚女性で、既婚の医師アニスと不倫関係を続けている。
付き合って3年にもなるが、彼は離婚しようとはせず、グセムを悩ませ続ける。
グセムの母パピシャは未亡人で、元キャバレーのベリーダンサー。テロやイスラーム
化政策によりキャバレーはとうに閉鎖されたが、その思い出が忘れられず、閉店し
たキャバレーの再開に奔走し始める。(演じているのは国民的歌手のビュウナ)
この母子と同じ安ホテルに住む娼婦のフィフィはグセムの親友で、有力者に取り入る。
グセムはクラブに行き、アニスの息子ヤシーヌが男連れのところを見かけるが、
彼は自分がゲイであることを父には言わないでくれと頼む。

ある日、グセムがフィフィの客(秘密警察=公安?)の拳銃を持ち出してしまい、
フィフィは公安に問い詰められ、やがて行方不明になる。グセムは警察に捜索願い
を出しに行き、そこで喧嘩沙汰で連行されたヤシーヌを引き取り、襲いかかってくる
喧嘩相手に拳銃を向ける。ヤシーヌは「この国はだめだ」と絶望し、出国を告げる。
一方、公安に追われていたフィフィは、海岸で発見される・・・。

不倫の愛人、キャバレーの元ダンサー、売春婦と、ドラマの中心となる3人とも、
テロの標的になりそうな女性ばかりというのがミソなのでしょうか?
同じアルジェリアの上映作品『ラシーダ』は、監督が女性(有名監督の夫人)だっ
たためか、性的描写が皆無でした。これに対して本作品は、監督がフランス生まれ、
欧米で映画修行をした30代男性だったためか、性的描写が露骨で、映画の冒頭か
らいきなり交尾・全裸シーンが出てきます。(アルジェリアで大ヒットしたという
のは、このせい?)
>>47へ続く)

47 さーひぶ。 :2005/04/24(日) 23:42:37
>>46から続く)
台詞は、会話はすべてフランス語。監督・主役たちはフランスでも活躍しており、
おもな出資国も仏語圏。ただし、パピシャ役の大歌手ビュウナが唄うアラブ歌謡は
アラビア語アルジェ方言。フランスの影響が強い国ですが、反発心も強いようです。
劇中で出てくるいくつかの新聞は仏語紙で、「ビン・ラディン」の名が出てくる個
所は、仏語特有の鼻母音で「ベン・ラデン」(Oussama Ben Laden)となります。

丘から見下ろすカスバや紺碧の地中海の風景も見物です。
また本筋とは関係ありませんが、バイパスの傍らに「LG」の巨大な看板が!
LGグループは日本でも有名な韓国の大財閥で、旧称「ラッキー金星」。
韓国企業は、政情不安なアフリカ諸国にも次々と進出しているようで、その進取性
には頭が下がります。リスクを怖れてばかりいる日本企業には太刀打ちできない?

48 さーひぶ。 :2005/04/25(月) 00:15:49
【『ラミアの白い凧』2003年、レバノン・フランス】 Le Cerf-volant

レバノン・イスラエルの国境で分断されたドゥルーズ教徒(イスラーム教の分派)
の村で起こる結婚ドタバタ劇。イスラエル支配下での結婚を描いた映画には、
ミシェル・クレイフィ監督『ガリレアの婚礼』がありますが、こちらは女性監督で
しかも滅多に映画に採り上げられることのないであろうドゥルーズ教徒が題材。
国境の有刺鉄線でイスラエル・レバノンに分断されたドゥルーズ教徒の村。ある日、
国境のそばで子供たちと白い凧を上げていた16歳の少女ラミアは、凧がイスラエ
ル側鉄線まで風で飛ばされたのを取ろうとしてレバノン側の鉄線を越えてイスラエ
ル側にたどり着き、凧を拾うが、監視塔のイスラエル兵から威嚇射撃を受ける。
イスラエル側へ行ったということは「重大事」で、村の長老会議が開かれて、
ラミアをイスラエル側に住む従兄のサミーと結婚させることが決議される。
緩衝地帯を挟んで、拡声器で連絡を取り合うレバノン側とイスラエル側の親族たち。
意に反する結婚に抗議したものの、しかたなくラミアはイスラエル側へ輿入れする。
監視塔の上から眺めるイスラエルの下級兵士も、同じドゥルーズ教徒のアラブ人。
イスラエル側で暮らすことになったものの、夫をまったく拒否し、なじもうとしない
ラミア。さんざん悩んだ挙句、このゴタゴタを解消するために、イスラエル側の家族
はラミアを離婚して送り返すことにする。コイル状の有刺鉄線が張られた道をレバノ
ン側へ歩いていくラミア。塔の上からラミアに恋していたアラブ人イスラエル兵がラ
ミアに駆け寄る。塔の上から兵を銃で狙う上官。「こんなゴタゴタはもうたくさんだ」
ゴタゴタが終わった幻想的なラストシーン。ラミアは有刺鉄線を魔法のようにすり抜
け、イスラエル側へ歩いて行く。地雷が爆発。次の瞬間、塔の上に出現したラミアの
ゴースト(?)はアラブ人兵と見つめ合う。

国家による親族分断という厳しい現実を突きつけながらも、女性監督らしい(?)幻
想的な仕上がりになっています。レバノン映画は垢抜けている? 台詞はアラビア語
シリア・パレスチナ方言と思われますが、クレジット・字幕はすべてフランス語。

49 さーひぶ。 :2005/04/25(月) 23:14:45
【『ルート181 パレスチナ-イスラエルの旅の断章』2003年、仏・ベルギー・独】

第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)後のイスラエル・パレスチナ領内を、
1947年の国連パレスチナ分割議決181号によって境界に引かれた「ルート181」をた
どって、南から北へと住民にインタビューしながら縦断するドキュメンタリー。
ベルギー在住パレスチナ人ミシェル・クレイフィ監督と在仏イスラエル人エイアル
・シヴァン監督による共同制作作品。①南部、②中部、③北部の3部構成で、上映
時間は正味277分、休憩各10分なども入れると、実に5時間にも及ぶ長編映画。
こんなに長い映画を観たのは、ソ連映画『戦争と平和』(約9時間!)以来でした。
長いので細部はあまり覚えていませんが、印象的な場面を紹介します。

〔南部〕◆かつてパレスチナ人が住んでいた村の土地はユダヤ人に奪われ、地名も
アラビア語からヘブライ語に変えられている。「昔は隣人だったのに、喧嘩の仲裁
をしたり、良くしてやったのに。今は・・・」とこぼすパレスチナの老女と息子。
売店をやってるイエメン系ユダヤ中年女性は監督らに「あんたら、どうせアラブ寄
りだろ。あんな奴らなんか追放してしまえばいいんだ。」といきまく。
◆コイル状有刺鉄線の制作工場では、オスロ合意後の和平ムードのときはさっぱり
売れずに廃業や業種変えも考えたが、再インティファーダにより商売繁盛だという。
『ラミアの白い凧』(>>48)にも出てきたコイル状有刺鉄線ですが、コイル状に巻く
と乗り越えるのが困難なようです。イスラエルには平和になると困る業者が多そう!
◆政治的シオニズムの提唱者テオドール・ヘルツェルの肖像画が掲げられた「ヘル
ツェルの家」で、婚礼の宴で踊りまくる客たち。今のイスラエルはヘルツェルの理
想通りなのだろうか?
>>50へ続く)

50 さーひぶ。 :2005/04/25(月) 23:55:52
>>49の続き)
〔中部〕◆ロッド市。ユダヤ系エチオピア人の移民たちの歓迎式。「ヘブライ語は
わかりますかぁ?」と呼びかけるイスラエル人の声にポカンとする移民たち。
役所の前では、ユダヤ人とアラブ人による市民団体が、アラブ人の住宅権利を求め
てデモ行進。役所の中では、市議たちが住宅権について論争中。アラブ系ユダヤ人
議員の発言「私たちはモロッコから来たんじゃない。ここで生まれ育ったんだ。」
アラブ人居住区は「ゲットー」と呼ばれて蔑まれ、ユダヤ人の多くはすでに立ち退
いている。政治的理由で投獄されほとんど失明したアラブ女性は、激しくぶたれる
などの拷問でほとんど失明したのだと語る。彼女の兄弟は終身刑で服役中。
◆ゲゼル。どこの出身かと訊かれてはぐらかしながら、イスラエルに移住したこと
を悔やむユダヤ男性。父親がロシア出身。一方、ベドウィン(アラブ遊牧民)の青
年は、イスラエル兵役を心待ちにする。ユダヤVSアラブとは単純に割り切れない。
◆カランディヤの検問所。ビデオカメラで現場を撮影する監督を止めさせようとす
るイスラエル兵と監督の口論。「ここを写すのは止めろ」「取材の許可を得ている
んだ」しまいにカメラは天を仰ぐ。◆東エルサレム。自爆テロ実行者の家がイスラ
エル軍により破壊され、憤る遺族。
〔北部〕ここでもユダヤ人とアラブ人混合の市民団体がデモ行進。妨害しようとす
るイスラエル兵士たち。◆クファル・シャマイ。開拓者たちの碑が立つ。モロッコ
系の年配のユダヤ女性が語る。イスラエル工作員の指導で、イスラエル移住を勧誘
した。あの頃、イスラエルへの移住は流行のようなものだった。夢のような話を聞
かされて移住したが、ガラクダをつかまされてしまった。今なら(こんな紛争にな
ると判っていれば)移住はしないだろう、と。◆シェフェル。モロッコから来た老
人は「ここは嫌だ。故郷へ帰って死にたい。だがもう無理だ。金がかかる。」
モロッコとチュニジアから来た老夫婦は「ドイツ人はユダヤ人をたくさん殺したが、
故郷ではアラブ人とは隣人で仲が良かった。戦争で息子を失った。移住しなければ
良かった。でもいまさら故郷へ戻ることなど無理」と苦笑いする。
>>51へ続く)

51 さーひぶ。 :2005/04/26(火) 00:24:10
>>51の続き)
国際社会は「ユダヤVSアラブ」と単純に括ってしまいがちですが、当事者たち、
とくに目立たないアラブ系ユダヤ人たちやイスラエル国籍のアラブ人などの話を
聞かされると目から鱗が落ちます。
例えばモロッコにはかつて中東アフリカ最大のユダヤ人コミュニティーがあったと
いわれています。スペインのイスラーム文化は、ユダヤ人とアラブ人・ベルベル人
の合作によるものです。レコンキスタによって追い出されても、モロッコでユダヤ
人はアラブ人と良好な関係を保ち、反ユダヤ主義は見られなかったらしいです。
それが、パレスチナにおける「ユダヤ人」の頭数を増やすためだけに、うまく甘言
に乗せられて、反ユダヤの紛争地に放り込まれて悲惨な人生に・・・。
(かつて北朝鮮を共産主義の理想郷と信じ込んで渡海して行った人たちに似ている?)

それから、ああやっぱりなと思ったイスラエル人の本音の発言。「先住民をあんな
風にできたアメリカはうらやましい。」「南アフリカが我々の手本だ。」etc.

和平への道はかなり遠いと思います。指導者はあまりあてになりません。しかし、
シオニズムを嫌い、アラブとの対立に反対しているユダヤ人も少なくありません。
和平をめざす草の根の市民平和運動、そしてユダヤ系西洋人の陰でさんざん苦痛
をあじあわされてきた東洋系・アラブ系のユダヤ人たちの声に、これからさらに
スポットライトが当てられ、民間からの和平が達成されることを願って止みません。

これからもユダヤ・アラブ共同によるドキュメンタリーが作られることでしょう!

52 さーひぶ。 :2005/04/30(土) 23:39:52
「アラブ映画祭2005」とっくに終わっていますが、まとめを書いていませんでした。
関連レスは>>36-51。採り上げた作品は、

 『眠れぬ夜』2003年、エジプト
★『カサブランカの天使』2004年、モロッコ・イタリア
 『ラシーダ』2002年、アルジェリア・フランス
☆『忘却のバグダッド』2002年、イラク・スイス・ドイツ
 『ビバ! アルジェリア』2003年、フランス・ベルギー・アルジェリア
 『ラミアの白い凧』2003年、レバノン・フランス
☆『ルート181 パレスチナ-イスラエルの旅の断章』2003年、仏・ベルギー・独

でした。2部構成でしたが、第1部のイラク編はあまり観られませんでした。
おもに第2部の現代アラブ映画を観ましたが、マグレブ映画、とくに今まで日本で
は紹介されることが少なかったアルジェリア・モロッコの作品を観られたのは大き
な収穫でした。
個人的には、★印の『カサブランカの天使』(モロッコ・イタリア)が金賞、☆印
の2作品がドキュメンタリー賞です。『カサブランカ〜』は、モロッコのベルベル
人を描いた新鮮さ、出稼ぎ労働者の貧苦の物語に打たれました。ドキュメンタリー
2作品は、ともにアラブ系ユダヤ人の存在を扱っていて重要な作品です。

アラブ映画祭、次の開催はいつになりますか。毎年あるといいですね。
中近東映画祭、地中海映画祭に続く今回も作品選びはなかなかタイイブ!
次回も期待しております。

53 さーひぶ。 :2005/05/05(木) 00:00:39
映画とはやや話がずれますが、>>47で指摘のように『ビバ!アルジェリア』
を観て、韓国企業がアルジェリアに進出していることが判ったのですが、
韓国の新聞「朝鮮日報(チョソン・イルボ)」の日本語サイトによれば、
韓国の大田(テジョン)市と首都アルジェ市が交流協力に調印した模様。
アフリカ諸国の復興を見越して官民一体で交流する韓国はすごいの一語!!

>「大田市、アルジェリアの首都アルジェ市と交流協力に調印」
> 大田(テジョン)市は4日、アフリカ・アルジェリアの首都アルジェ市と
>交流協力調印式を行い、両都市間の交流協力を増進していくことに合意した
>と発表した。
> アルジェ市を訪問中の廉弘竽(ヨム・ホンチョル)市長は同日、アルジェ
>市庁でモハメド・アルジェ市長と交流協力意向書を締結し、IT分野など先端
>科学技術情報の交流と経済、環境、文化芸術、体育などの分野に交流協力を
>増進していくことにした。
> チョソン・ドットコム

54 さーひぶ。 :2005/05/05(木) 00:03:44
↑URLを貼り忘れました。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/05/04/20050504000033.html

55 さーひぶ。 :2005/07/25(月) 23:41:45
使徒ムハンマドのイスラーム伝道を描いた【『ザ・メッセージ』(1976年映画)】が
DVDで発売されているのを見つけ、思わず買ってしまいました。家にある中古の
VHS版テープはとうにくたびれていましたし。主役であるはずのムハンマドは、
偶像禁止の教義により画面に登場しないということで、『アラビアのローレンス』
に出演したメキシコ人俳優アンソニー・クインがハムザという役で事実上の主演に
なっています。『釈迦』(1961年)で主演の本郷功次郎がどうどうと出演しているの
と対照的。主役が画面に出ないという演出法を観るだけでも一見の価値ありかも。

この映画(リビア・英・レバノン合作)はアラブでも有名らしく、子供向け(?)
のアラビア語教本か何かに الرسالة(アラビア語題名)と描かれたビデオのイラスト
みたいなのが描かれていました。

DVD発売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン㈱ 税込¥4,179

http://en.wikipedia.org/wiki/The_Message_%28film%29
http://www.imdb.com/title/tt0074896/

56 さーひぶ。 :2005/08/30(火) 01:19:04
9月3日(土)の晩に、池袋の新文芸坐でイラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ
特集のオールナイト上映をやるようです。

イラン映画ブームの先駆け アッバス・キアロスタミ
友だちのうちはどこ?(1987)
そして人生はつづく(1992)
オリーブの林をぬけて(1994)
桜桃の味(1997)
http://www.shin-bungeiza.com/allnight.html

いずれも私でさえ何回も観た有名な作品なので、いまさらという感じですが、
イラン映画をこれまで知らなかった人には入門編としておすすめです。

57 さーひぶ。 :2005/09/23(金) 23:32:07
【アジア中東映画ライブラリー】(9月22日〜9月24日、国際交流基金フォーラム)が開催中で、
9月23日(金・祝)は、「イラク&アラブ映画の豊饒」特集でした。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/jfsls5.html

もっとも、上映4作品のうち3作品は、先の「アラブ映画祭2005」の再映でした。
11:30 『乾き』(イラク/1972年/93分)監督:ムハンマド・シュクリ・ジャミール
14:00 『ジャッカルの夜』(シリア/1989年/102分)監督:アブドルラティフ・アブドルハミド
16:30 『ラジオのリクエスト』(シリア/2003年/91分)監督:アブドルラティフ・アブドルハミド
19:00 『露出不足』(イラク/2005年/70分)監督:ウダイ・ラシード

私の場合は間際になって偶然知ったので観に行けましたが、あまり宣伝して
いないのか、金曜(祝日)とはいえ、昼間の3作品は、会場ガラガラでした。
でも最後の『露出不足』は、夜の上映かつ米イラク侵攻のドキュメンタリー
的作品のためか、大入りの感じでした。
いずれも日本で劇場公開はされないだろうから、これからもちょくちょく再映
していただきたいものです。国際交流基金て貴重な存在ですね。

58 さーひぶ。 :2005/10/03(月) 23:40:13
【ミシェル・クレイフィ監督映画特集】
今月、クレイフィ監督の来日と映画上映が重なるようです。

①『ルート181 パレスチナ〜イスラエルの旅の断章』(クレイフィ&シヴァン監督)
 東京特別上映&監督来日トーク
・上映&監督舞台挨拶:10月14日(金)15時〜、東京経済大学E201教室(国分寺駅)、資料代別途
・上映&監督2人との公開シンポジウム:15日(土)13時半〜、東京日仏学院(飯田橋駅)、2500円、先着順
・上映&監督舞台挨拶:16日(日)13時半〜、東京都・ブレヒトの芝居小屋(西武・武蔵関駅)、1800円(前売)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/558/1026920718/49-51 で紹介しました。)

②ミシェル・クレイフィ監督特集(会場=御茶ノ水、アテネ・フランセ文化センター)
 作品A=『豊穣な記憶』(1980年)
 作品B=『マアルール村はその破壊を祝う』(1985年)
 作品C=『ガリレアの婚礼』(1987年)
 作品D=『石の賛美歌』(1990年)
・10月18日(火)上映 13:20〜 A+B、16:30〜 C、19:00〜 D
・10月19日(水)上映 13:40〜 D、16:00〜 C、18:30〜 A+B

いずれも、すでにたびたび上映された作品なので、いまさらの感もありますが、
これからパレスチナ映画に初めて出会う人にはおすすめです。

59 TAN-TAN :2005/10/22(土) 11:38:09
アラブ映画ね・・・・・・・・・・。(・ω・;)

60 さーひぶ。 :2005/11/07(月) 20:35:13
【アフガニスタン映画祭】

11月26日(土)・27日(日)の両日、東京・大田区池上会館にてアフガニスタン
の映画祭が催されるようです。

1- Stoning「石打ち刑」
2- Kabul Cinema「カブール・シネマ」
3- Sacrifice「いけにえ」
4- Shabnam「シャブナム」
5- Stranger「ストレンジャー」
  ※カンヌ映画祭2003 カメラドール受賞監督未公開作品
6- Land of Pamil  documentary
7- Woman and Cinema  documentary
8- Buzkashi (English version) documentary
9- Buzkashi (Dali version)  documentary
10- Kabul Triangle  documentary

アフガニスタンを扱った映画はこれまでにも日本でたびたび上映されてきま
したが、イランなど外国製作のものだったりしました。ようやく、アフガニ
スタン映画だけで映画祭が開けるようになったんですね。でも当のアフガニ
スタンでの人気は、やはりインド映画でしょうか。

61 さーひぶ。 :2005/11/07(月) 21:13:12
↑URLを貼り忘れました。
http://www.cross-arts.org/report/afghan_fes.html

62 さーひぶ。 :2005/12/29(木) 22:03:41
>>55の使徒ムハンマドのイスラーム伝道を描いた『ザ・メッセージ』(1976年映画)
のムスタファー・アッカード(مصطفى العقاد)監督(シリア系アメリカ人)が、
アンマン自爆テロ事件(11月9日)により11月11日に75歳で逝去されていたと知りました。
代表作は『砂漠のライオン』と『ザ・メッセージ』。ご冥福をお祈りします。

http://en.wikipedia.org/wiki/Moustapha_Akkad
http://en.wikipedia.org/wiki/Mohammad%2C_Messenger_of_God_%28film%29
http://en.wikipedia.org/wiki/2005_Amman_bombings

63 さーひぶ。 :2006/02/18(土) 15:15:27
【アラブ映画祭2006】
一昨年、昨年に続いてシリーズ化しつつある「アラブ映画祭 第2回」。
今年は、新作7本とアンコール3本、計10本の上映。
そして>>62でふれたアッカード監督追悼講演会もあります。
アンコール作品ではドキュメンタリー『忘却のバグダッド』がおすすめです。
期間:3月3日(金)〜3月11日(土)
会場:国際交流基金フォーラム 
映画祭公式サイト http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2006.html

アラブ映画新作パノラマ New Arab Cinema
 『夢』 2005年/イラク=英=蘭 監督:ムハンマド・アル=ダラージ
 『イラク、わが故郷 亡命者サマーワへ還る』 2005年/イラク=豪 監督:ハッディ・マフード
 『長い旅』 2004年/モロッコ=仏 監督:イスマエル・フェルーキ
 『天井の下で』 2005年/シリア 監督:ニダル・アル・ディブス
 『夢と現実の日々』 2005年/シリア 監督:ワーハ・アル=ラーヒブ
 『Waiting』 2005年/パレスチナ=仏 監督:ラシード・マシャラーウィ
 『消えゆく者たちの年代記』 1996年/パレスチナ=仏 監督:エリア・スレイマン
アラブ映画祭2005アンコール Encore of Arab Film Festival 2005
 『露出不足』 2005年/イラク=独 監督:ウダイ・ラシード
 『忘却のバグダッド』 2002年/イラク=スイス=独 監督:サミール
 『D.I.』 2002年/仏=パレスチナ 

ちなみに昨年の「アラブ映画祭2005」の模様が中東諸国で紹介されているようです。
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab_5.html

64 さーひぶ。 :2006/03/12(日) 10:32:31
「アラブ映画祭2006」が閉幕しました。
3月という年度末やら春闘やらの比較的に忙しい時期に、しかも平日昼間の
上映が多いとなると、首都圏在住であっても一般社会人にはなかなか鑑賞し
にくいと感じます。なぜか最近、この時期に中東・アラブ関連のイベントが
集中するようになりました。

シリアの2作品『夢と現実の日々』『天井の下で』を観ましたが、
国際関係(とくに対米関係)が厳しい割には、現代のシリアはかなり欧風に
垢抜けている印象です。『夢と現実の日々』では志願兵めいた内容もあり、
イランとイメージがダブります。
国別の上映配分はバランスが取れている感じですが、エジプト・チュニジア・
アルジェリアの作品は上映されませんでした。
日本で劇場公開されないと、映画祭作品の日本でのDVD化は難しいでしょうか。
今回、追悼されたアッカド監督の『ザ・メッセージ』は日本でDVD化されていますが。

65 匿名さん@サラーム :2006/05/09(火) 12:48:48
高知県で「シリア&イラク映画祭」があります。

6月10日(土) シリア映画
「魂のそよかぜ」「ジャッカルの夜」「ラジオのリクエスト」「欲」
6月11日(日) イラク映画
「アリアとイサーム」「乾き」「忘却のバグダッド」「露出不足」
会場:高知県立美術館ホール(高知市高須353−2)
http://kochi-bunkazaidan.or.jp/~museum/iraq/iraq.htm

66 アートネットワーク・ジャパン :2006/07/31(月) 18:46:07
【緊急企画】レバノンに捧ぐ短編映像作品上映&トーク

レバノンのアーティストや、日本の関係者の方々からの心温かいご協力のもと、
以下のような企画を急遽立ち上げることができました。
非常に急な告知となってしまい申し訳ありませんが、
ぜひ、ご参加ください! お待ちしています。
以下、ご自由にご転載・ご転送ください。

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■にしすがも創造舎 Camo-Cafe Vol.2

【緊急企画】ベイルート、真夏の夜の(悪)夢
       −レバノンに捧ぐ短編映像作品上映&トーク

日時:2006年8月5日(土)18時スタート
会場:にしすがも創造舎 Camo-Cafe (校舎2Fサロン)
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今世界で最もダイナミックなアートの胎動を遂げる都市のひとつベイルート。
しかし今、ベイルートを含むレバノン全土は、イスラエル軍による攻撃で
危機的状況に直面しています。

東京国際芸術祭2007では、在レバノンの気鋭のアーティスト、
ラビア・ムルエの新作(国際共同制作、世界初演)を計画中ですが、
このような危機的状況に対し、改めてレバノンのアーティストたちへの
連帯を表明すべく、日本のアーティストやアート関係者とともに、
Camo-Cafe 緊急企画を開催いたします。

世界の舞台芸術界のみならず現代美術界でも大きな注目を集める
気鋭のアーティスト・演出家ラビア・ムルエ、
東京フィルメックス2005など世界の映画祭で高い評価を受ける
映画監督ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュをはじめ、
レバノンが生んだ世界のトップ・アーティストの短編映像作品を特別上映。
日本初公開作品も含む必見の内容です。

特別ゲストには、つい先日まで戦火のベイルートで研究を続けていた
アラブ映画専門家・佐野光子さん、パレスチナの劇団とのコラボレーション
を経てますます世界にコミットするアーティスト・椿昇さん、
レバノン・ベイルートの様々な断片を写真におさめる写真家・松嶋浩平さんら、
中東・レバノン×アートの目撃者・活動家が集結。
最新映像&トークで、レバノンを語りつくします。

Camo-Cafeならではの、アラブ風ドリンク付。是非、お運び下さい!

■特別上映作品■
「Face A / Face B 」 by ラビア・ムルエ
「魂と血をもって」 by ラビア・ムルエ
「Rounds」* by ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ
「灰」* by ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ
ほか   * 日本未公開作品 

■Camo-Cafe トーク■
ゲストトーカー:
佐野光子(アラブ映画研究者/在ベイルート)
椿 昇 (アーティスト) (予定)
松嶋浩平(フォトグラファー)   ほか
ホストトーカー:
相馬千秋(ANJ/東京国際芸術祭 国際プログラム担当)

■Camo-Cafe メニュー■
レバノン産アニス酒、赤・白ワイン モロッコ風ミントティー etc. 各300円


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開催概要

▼日 時:2006年8月5日(土)18時スタート

▼会 場:にしすがも創造舎 Camo-Cafe (校舎2Fサロン)
     地図はこちらから http://sozosha.anj.or.jp/map/

▼入場料:1000円(1ドリンク付)

▼申込方法:なるべく事前にメールにてお申込下さい。c-soma@anj.or.jp 
タイトルは「Camo-Cafe Vol.2参加希望」とご明記ください。
        
▼お問合せ:NPO法人アートネットワーク・ジャパン 
tel : 03-5961-5200  fax : 03-5961-5207 c-soma@anj.or.jp (担当:相馬)

主催/NPO法人アートネットワーク・ジャパン 
協賛/松下電器産業株式会社

67 さーひぶ。 :2006/11/26(日) 22:36:42
【第7回東京フィルメックス 2006】映画祭
が閉幕しました。今年の中東映画は、イランが5作品、イスラエルが1作品。
私はイランの4作品を観てくることができました。評価は、
『半月』(バフマン・ゴバディ監督)         ★★★★
『オフサイド』(ジャファル・パナヒ監督)       ★★★
『メン・アット・ワーク』(マニ・ハギギ監督)      ★★
『スクリーム・オブ・アント』(モフセン・マフマルバフ監督)★
です。
 巨匠マフマルバフ監督の『スクリーム・オブ・アント』は、イランの夫婦が
新婚旅行でインドの聖者に会いにへ行く話ですが、かなり奇をてらいすぎ?
いままで彼と一家のアフガン作品を多く観てきただけに、違和感あり。

『メン・アット・ワーク』(マニ・ハギギ監督):高原をドライブ中の男たち
が、崖っぷちにそそり立つ細長い奇岩を倒そうと悪戦苦闘する話。たわいない
話ですが、通りがかる車の人たちを巻き込んでさまざまな人間模様が吹き出す。
たったそれだけの事を映画にしてしまうのは、大したもの。
>>68-69へ続く)

68 さーひぶ。 :2006/11/26(日) 23:00:03
>>67の続き)
【『オフサイド』(ジャファル・パナヒ監督)】 ★★★
サッカーを国民的スポーツとして愛好するイランのサッカー少女たちの奮闘。
ベルリン映画祭の銀熊賞受賞作。

イラン国内では、女性はサッカーのスタジアム観戦を禁じられている。しかし
毎回多くの少女たちが男たちに混じって観戦しようと躍起になる。ある少女が
男たちに混じって入場しようとして兵隊に拘束され、スタジアム裏の鉄柵の間
に連行される。そこへ、ボーイッシュな容貌の少女、兵隊の軍服で変装した少
女など数人のサッカー少女が連行されてくる。少女たちは、兵隊たちにあれこ
れ交渉して何とかして観戦しようと奮闘する。夕刻の試合後半になり、兵隊た
ちは少女らを車で分隊へ護送する。車中のラジオ観戦で興奮して騒ぐ少女たち。
ついにイランがバーレーンに勝利してW杯進出を決め、興奮した群集が街頭に
あふれると、車は停止。兵士が外に出た隙に、少女たちは逃げ出して興奮する
群集の間に姿を消す。

とにかく、サッカーに夢中になるイラン国民の熱気が伝わってくる作品です。
核開発問題で北朝鮮とともに難局にあることを感じさせない、というよりそん
なイラン像を吹き飛ばしてくれる快作です。
ベルリン銀熊賞は、欧州からのエールでしょうか。
>>69へ続く)

69 さーひぶ。 :2006/11/26(日) 23:37:00
>>68の続き)
『半月』(バフマン・ゴバディ監督) ★★★★
イラクのサッダーム・フセイン政権崩壊後も苦境が続くクルディスタンの現在
を躍動的に描く秀作。『亀も空を飛ぶ』のゴバディ監督の最新作。

あらすじ:イラクのサッダーム政権崩壊後のイラン領クルディスタン。著名な
クルド人音楽家のマモは、イラク領クルディスタンで数十年ぶりのコンサート
を開くため、息子たちを集めてバスで出発する。イランでは女性は歌手になれ
ず、山間に女性歌手1000人以上が流刑になった村がある。マモ一行はそこ
へ立ち寄り、番兵に袖の下を渡して女性歌手を連れ出す。女性をバスの床下に
隠して警察の検問を通過。ところが、イラク領へ近づくと、米兵が銃をぶっ放
していて危険であり越境できない。さらにバスで国境付近を行くと、再び検問。
女性歌手を連れ出したことが発覚したのだ。検問の警官により楽器は壊され、
歌手は連行される。楽器も歌手も失ってマモらは窮する。
一行の一人がパソコンでネット地図を調べ、西アゼルバイジャンからトルコと
の国境付近を通れば、イラク領へ行けると判明。楽器も調達できるかも。
クルド人警官に袖の下を掴ませて女性歌手を取り戻すが、不安に駆られた女性
歌手はトルコ国境付近で何者かに連れ去られる。マモの親しい音楽家に会おう
と近くの村に行くが、バスの運転手が携帯電話で知らせていたので、彼は親友
が来ると知り心臓発作で亡くなっていた。楽器も歌手も失い途方にくれる。
そこへ「ニェマン(半月)」と名乗る謎の美女が出現。イラク側のコンサート
会場で準備はできていると告げ、彼女と仲間が一行を個別に徒歩やソリで連れ
て行く。年老いて旅にも疲れたマモはついに力尽き、偽装用の棺桶に倒れこむ。
ニェマンが息子をマモの元に連れて戻ったときには、マモは永眠していた。
「わしが死んでも、舞台に上げてくれ」の言葉を残して。(完)

幾重にも積み重なっている困難。劇中の逆境はクルド人の状況そのもの。
しかし、クルドは負けずに前進する。そんな思いを伝えてくれる秀作でした。

70 さーひぶ。 :2007/01/23(火) 00:27:59
1月中旬に、東京・池袋の新文芸坐で特集「アジア映画の輝き」がありました。
すでに終わってしまいましたが、ちょっと紹介します。
中東関連映画としましては、
1月6日〜7日、クルド人バフマン・ゴバディ監督の
 『わが故郷の歌』(数年前に岩波ホールで上映済み)
 『亀も空を飛ぶ』(やはり少し前に上映済み)
1月19日、トルコ人女性監督らによるクルド差別をあつかった作品
 『少女ヘジャル』
 『遙かなるクルディスタン』
の4作品が上映されました。『少女ヘジャル』以外はなんとか観られました。

ここでは【遙かなるクルディスタン】を紹介します。
 トルコ人青年メフメトは、イスタンブールで働いているが、肌が浅黒いために
 クルド人だと思われて、喧嘩に巻き込まれたり解雇されたりとさまざまな差別
 に遭う。クルド人青年と知り合いになり、旅をするが、騒動に巻き込まれる。
 トルコ人青年は、棺を担いで、遙かなクルドの地へと向かう・・・。
トルコ人女性監督がトルコ人の目線からクルド人差別を直視した秀作です。
日本でもDVDが発売されているので、劇場に行けなくても観ることができます。

ちなみに、昨年後半に公開されたエドワード・サイードの記録映画も観てきた
のですが、ちょっと散漫な感じがして、内容を紹介しそびれました。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/558/1108135337/14の作品)
DVDも同時発売で、劇場で買ってきたのであとでゆっくり見返そうと思います。

71 さーひぶ。 :2007/03/03(土) 00:51:47
TBS系『筑紫哲也ニュース23』で先程、パレスチナ人監督が自爆攻撃を描いた
日本上映間近の『パラダイス・ナウ』を紹介していました。

テロ・テロリストを描いた映画が連日テレビや新聞で紹介されるのは、
9・11関連を除けば近年珍しいですね。

アラブやインドなど、テロに悩まされている国には秀作が少なくないです。

それにしても、日本人は、テロという言葉に過敏になりつつ、
赤穂浪士や新撰組というテロリスト集団を愛してやまないケッタイな国民ですよ。

72 うーん :2007/03/07(水) 15:34:08
赤穂浪士はテロリストだと思うけど、新撰組はいちおう体制派だから
テロリストって言うのかな? 大政奉還以降はテロリストかな・・・。
権力側の行為もテロなのかもしれないが、反体性サイドのほうがテロリ
ストは似合う。

73 さーひぶ。 :2007/03/07(水) 22:58:46
>>72 レス、ありがとうございます。
映画の話題からずれない程度にしたいと思います。

「テロ」とは、「テロル(Terror)、テロリズム(Terrorism)」の略ですが、
その概念のルーツはフランス革命で、革命政府が反対派を暴力で弾圧した
「恐怖政治(la Terreur ラ・テルール)」にあります。元々は体制側の行為です。
後に王政復古になったときの王政主義者によるものを「白色テロ」、
無政府主義者によるものを「黒色テロ」といいます。

英語のTerrorismは現在も「テロ行為」「恐怖政治」を意味します。
体制派・反体制派のいかんにかかわらず、暴力で反対派を弾圧する主義は、
テロリズムと呼びうるわけです。
この意味において、新撰組も勤皇志士も「テロリスト」と呼びうると思います。

ただ最近は、マスメディアが反体制派の行為のみを「テロ」と呼ぶ傾向があるので、
「テロ=反体制派の行為」という思い込みが広まっているのでしょう。
(某隣国による拉致をテロと呼ぶのは、言葉の濫用になります。)

74 さーひぶ。 :2007/03/11(日) 23:44:09
【アラブ映画祭2007】
今年で3年目となって恒例行事になった感がある「アラブ映画祭」が開幕しましたが、
国際交流基金フォーラムが3月末で閉館になるため、会場がゲーテ・インスティテュートになりました。
あいかわらず平日・土・日を貫いて一日中上映されるため、首都圏近郊に住んで
いても、勤め人には全作品を観るのは厳しいところです。しかもこの時期は春闘!
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2007.html
以下、観た作品から紹介。

『バーバ・アジーズ』(Bab ‘Aziz بابا عزيز)
チュニジア出身監督がイランで大半を撮影した幻想的な映像詩。
砂漠を旅する老人と孫娘、および遭遇する人たちの物語。
「アラブ映画」を期待して観に行った人には、ちょっと肩すかしかも知れません。
舞台・出演者とも、アラブというよりはイラン・中央アジアの風情。
監督自身もフランスで教育を受け、質疑応答もフランス語のみ。スタッフも西欧人。
フランス人がオリエントに抱く異国情緒感を映像にした作品のように思えました。
http://imdb.com/title/tt0395461/

『テロリズムとケバブ』(Terrorism & Kebab الإرهاب والكباب)
>>35で紹介済みですが、エジプトの喜劇王アーデル・イマーム(عادل إمام)主演で
エジプト社会の腐敗とテロリズムを風刺した90年代エジプト娯楽映画の傑作です。
映画ならではの現実を度外視した面はありますが、全編にわたって楽しめること請け合いです。
http://www.imdb.com/title/tt0107227/
http://en.wikipedia.org/wiki/Adel_Emam

75 さーひぶ。 :2007/03/12(月) 00:05:58
【第2回 アフガニスタン映画祭】
3月10日(土)〜3月11日(日):東京・蒲田の日本工学院専門学校
3月12日(月)〜3月16日(金):東京・渋谷のシネマ・アンジェリカ
http://www.cross-arts.org/international/

一昨年に催された(>>60)アフガニスタン映画祭が2回目を迎えました。
東京工学院での上映は、アフガンの学生作品と日本NPOのドキュメント作品が主。
アフガン情勢はいまだ予断を許しませんし、治安も悪く貧困も深刻なようですが、
テレビメディアは急激に伸びている模様。>>60で予想したように、アフガンでは
インドのテレビ・映画が大きな影響を持っているようです。

『中傷』(学生制作の作品)
田舎からカブールに上京して大学生活を送るタミル青年は、勉強に身が入らず、
バイクを乗り回して映画を観たりの放蕩生活。教師や級友たちにも迷惑のかけ
どおしで、ついに試験で不合格となる。
ある日、父親が上京して息子の寮を訪ねる。映画館から呼び戻されたタミルは
あれこれと言い訳を取り繕うが、寮友たちから不勉強と非行の実態を暴露される。
さんざん憤って叱ったあげくに、タクシーで去ってゆく父。タミルは悔いて後を
追いかける。縁を切ったはずの父も、運転手から都会の堕落を聞かされて諭される。
(ネタバレ有)。なんだか、日本の学生と変わらないのではと思わせられます(^^;

ドキュメンタリーなどを収録したDVD・CD・本のセット『アフガン・ドキュメント』
も販売されています。
渋谷での上映では、第1回の作品なども上映されるようです(>>60参照)。

76 さーひぶ。 :2007/03/19(月) 21:54:51
「アラブ映画祭2007」が閉幕しました。
今年は古典から新作まで、エジプト映画に力が入っていました。
この調子で毎年続くといいですね。

『歌姫ウンム・クルスームのファトマ』(Fatma)
20世紀アラブを代表する大歌手ウンム・クルスームが映画へ進出した6作
の最終作。ちょうどこの頃、日本では「蒲田調」といわれた松竹映画のメロドラマ
などがもてはやされた時期です。ウンム・クルスームの本作もそんな感じです。
貧しい看護婦がお大尽に見初められて結婚するが、後にもつれて裁判になります。
ほんとに松竹映画みたい。
Fatmah (1947) http://www.imdb.com/title/tt0237233/
Om Koultoum http://www.imdb.com/name/nm0467990/

『恐怖の大地』(Land of Dear;أرض الخوف)
2005年に55歳の若さで急逝したアハマド・ザキ(أحمد زكي)が主演した
重厚なスリラー・アクション。
警察の保安部門から麻薬組織への潜入捜査官に成りきることを命じられた男。
麻薬のブローカーとして成功しながら、情報を秘密裏に手紙で送り続ける。
ところが時を経て、上司は知らぬ間に姿を消し、連絡の手紙は宙に浮く。
彼を除いて麻薬組織は取り締まられたが、今度は麻薬組織から命を狙われることに・・・。
潜入捜査官の人生の悲哀を描いて、なかなか見応えがありました。
Ard al-Khof (1999) http://www.imdb.com/title/tt0233234/
Ahmed Zaki http://en.wikipedia.org/wiki/Ahmed_Zaki
>>77へ続く)

77 さーひぶ。 :2007/03/19(月) 22:08:43
>>76の続き) ↑訂正:Land of Fear

『長い旅』(Le Grand Voyage;الرحلة الكبرى)モロッコ=フランス
在仏モロッコ人の父親とフランスで生まれ育った息子が価値観のちがいに
いがみあいながらも、マッカ(メッカ)巡礼を遂げるまでを描いた秀作です。
フランスで生まれ育って現代フランス青年であるレダ(Réda)は、モロッコ
出身の父が車でマッカ巡礼をするという難事に運転手として駆り出され、
ときには決裂寸前になりながらも7カ国を横断してマッカにたどり着く。
そして結末は・・・。
フランスからイタリア、旧ユーゴ、トルコ、シリア、ヨルダン、サウジと
車での旅は見応えがあり、イスラームの聖地巡礼の様子は壮観の一語に尽きます。
ぜひ日本でも劇場上映・DVD化してほしい作品です。
Le Grand Voyage(2004) http://en.wikipedia.org/wiki/Le_Grand_Voyage

>>78へ続く)

78 さーひぶ。 :2007/03/19(月) 22:53:25
>>77の続き)

『ヤコービエン・ビルディング』(The Yacoubian Building ;عمارة يعقوبيان‎)エジプト
 『テロリズムとケバブ』のアーデル・イマーム(عادل إمام)、
『炎のアンダルシア』の名優ヌールッシェリーフ(نور الشريف)
というエジプトの二人の大物俳優を中心に、実在するビルの住人たちが織りなす
人間模様を描いた2時間45分の大作・問題作。
エジプト大都会の暗部をえぐり出して風刺した作品ですが、とにかくハリウッド
並みに性や暴力の描写がドギツイ。売春、秘密の重婚、同性愛、暴力による堕胎、
警察の取り調べでは同性(男性)の陵辱による拷問、麻薬、金権政治、過激派にかぶれる青年・・・。
これでもかこれでもかという激しい表現が続くので、子供には見せられません。

そんな問題作ですが、二つのポイントにふれます。
「パシャ」(Pasha;باشا)…オスマン帝国統治以来の高官の称号。劇中では、
 二人の大物がそれぞれ「パシャの家柄」だということを吹聴しようとします。
 本作にはイスラーム過激派組織も出てきますが、王政時代の名残である「パシャ」
 という称号はまったく正反対のイメージを書き立てます。
「フランス」…アーデル・イマームの主人公ザキはかつてフランスへ留学し、
 愛人もフランス女性。その愛人クリスティーヌが映画の中で2度にわたって
 エディット・ピアフのシャンソン「ばら色の人生」(La vie en rose)を
 熱唱し、ザキはピアフのレコードをかけて若い恋人とダンスを踊る。
 仏語紙Le Caireの編集長ラシードは、母親が浮気っぽいフランス女性で、
 母親の浮気などがトラウマになって、倒錯した同性愛に走る。

この二つのポイントが、エジプトが単純な「アラブ」「イスラーム」の社会
ではないことを暗示している、という印象を持ちました。
それにしても、エジプト映画には、ハリウッドのような激辛な表現に走らないでほしいです。

The Yacoubian Building(原作小説) http://en.wikipedia.org/wiki/The_Yacoubian_Building
The Yacoubian Building(映画) http://en.wikipedia.org/wiki/The_Yacoubian_Building_%28film%29

今回観られなかった作品が来年も上映されるといいなあ (^_^)

79 さーひぶ。 :2007/03/25(日) 00:56:16
【イスラエル映画祭 2007】
3月22日(木)〜24日(土):アテネ・フランセ文化センター(東京・お茶の水)
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/2007_03/israel.html

日本では上映される機会が少ないイスラエルの映画祭。国際交流基金が1992年
から始めて数えて6回目。私は第1回(?)を浜離宮朝日ホールで観た記憶があり
ますが、それから15年は経つわけですね。

今月は中東関係のイベントが目白押しでしたが、話題の『シリアの花嫁』を
見逃したほかは、3作品を観ることができました。

シンポジウムでのイスラエル映画基金のカトリエル・シホリ氏の話によると、
イスラエルは人口が少ないので、映画製作は常に国内と海外を想定しており、
海外からの出資による製作も少なくないそうです。ちなみに今回の『甘い泥』
には日本のNHKも出資しているようです。女性監督も増えてきています。
アラブ人との共同製作も増えてきている模様。
以下、『クロース・トゥ・ホーム』『ジェイムズ聖地へ行く』を紹介します。
>>80へ続く)

80 さーひぶ。 :2007/03/25(日) 01:32:26
>>79の続き)

『クロース・トゥ・ホーム』(Close to Home, 2005)
イスラエル国民は18歳になると男女とも兵役に就かなければならないが、
その実体験を元に、二人の女性監督が二人の女性兵士の生態で魅せる作品。
ヘブライ語の台詞には英語の字幕が、英語の台詞にはヘブライ語の字幕付き。

徴兵制度により、エルサレムのパトロール隊に配属された二人の若いギャル。
スマダルはただのギャルで、兵士としては怠け者で落ちこぼれ。ミリトは
勤務地が自宅に近すぎる(close to home)ので、転属を願っている女の子。
テロ事件が頻発するエルサレムでは、街を移動するアラブ人に職務質問をして
ID(身分証)を確認し、個人情報を書類に「登録」するのが欠かせない任務。
二人はユダヤ人とアラブ人をうまく見分けられず、さぼってばかりいるので
登録の成績はすっかり落ちこぼれ。上官(女性)から叱られてばかりいる。(以下略)

街を歩いていてアラブ人と見られるだけで、その都度、兵士から取り調べられ
るのではたまったものではないだろうと、その監視社会ぶりには驚かされます。

「食物持込禁止」と英語・ヘブライ語・アラビア語で書かれている所にアラブ女性
が食べ物を持ち込み、スマダルが口語アラビア語で注意するのですが、
肝心の「食物持込禁止」(ممنوع من الدخول مع أكل)という文語アラビア語表示
がそのアラブ女性には読めない、という体たらく(文盲率の高さのため)。
スマダルが女性から食物を奪い取って、ゴミ箱に捨てます。おそらく実体験でしょう。

イスラエルにおけるユダヤとアラブのコミュニケーション不全を浮き彫りにしていて、
その意味でも興味深い作品といえそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Close_to_Home_%28film%29

>>81に続く)

81 さーひぶ。 :2007/03/25(日) 02:12:06
>>80の続き)

『ジェイムズ聖地へ行く』(James' Journey to Jerusalem)
聖地巡礼にアフリカから来た牧師志望の黒人青年が、出稼ぎ労働者扱いされて
こき使われ、物欲の腐臭にまみれた「聖地」の現実を思い知るという、快作。

アフリカのある村から、村一番の優秀で純真な若者ジェイムズが次期司祭としての
期待を一身に担って、イスラエルに巡礼に来た。ところが入国審査の女性係官は、
ジェイムズをてっきり不法就労の外国人労働者だと決めつけてかかる。
「アメリカかドイツ、フランスへ行って働きなさい。ここは神に見離されているわ。」
と聖地らしからぬ秀逸(?)な一言(!)。
パスポートを押収されて留置所送りになったジェイムズ。同様の黒人が多数いる。
ある日、ジェイムズは釈放されて、トラックで仕事場に送られる。外国人労働者
の手配師シミが保釈金を払って、派遣労働者として雇ったのだ。
聖書の教えと「聖地」の資本主義的現実とのギャップに戸惑いながらも、ジェイムズ
は次第に都会の資本主義に慣れ、物欲と小賢しさを身に付け、巡礼を忘れてゆく。
(↓ネタバレです)
いつのまにか手配師シミに内緒で、黒人労働者たちの「内職」の裏ボスとなり、
驕り高ぶっているジェイムズ。物欲と良心がせめぎ合った末に、彼はついに
憤って物欲を捨てる。エルサレムの留置所へ。ついにエルサレムへ巡礼だ!

イスラエルで深刻になっている外国人労働者の問題をえぐりながら、この作品
は徹底した明るさとノリの良さで貫かれ、実にさわやかな秀作となっています。

物語のキーパーソンとなるシミの老父サラーをベテラン俳優アリー・エリアスが、
手配師のシミをアラブ人俳優サリーム・ダウ(سليم ضوء)が演じています。
http://en.wikipedia.org/wiki/James'_Journey_to_Jerusalem

82 さーひぶ。 :2007/03/25(日) 02:29:03
【クロッシング・ザ・ブリッジ〜サウンド・オブ・イスタンブール】
Crossing the Bridge: The Sound of Istanbul
2005年、トルコ=ドイツ(トルコ語・ドイツ語)

アラブ・アフガン・イスラエルと中東映画祭・劇場公開が目白押しの3月。
トルコの音楽映画が劇場公開となりました。

「西洋」と「東洋」が交差(クロッシング)するといわれる街イスタンブール。
現代西洋音楽、ロック・ラップ・ヒップポップなどの影響を受けながら、また
伝統的なトルコ音楽を守り伝えようという人たちもいるなかで、現代トルコの
音楽人たちがいかにトルコ独自の自分たちの音楽を創っていこうとしているか
を伝える音楽満載インタビュー作品です。アラブ音楽やクルド音楽についても
ふれられています。
とにかく、現代トルコ音楽の洪水に浸ってみてください。一聴の価値あり。
3月24日(土)から、東京・渋谷のシアターN渋谷にて。
http://en.wikipedia.org/wiki/Crossing_the_Bridge:_The_Sound_of_Istanbul
http://www.theater-n.com/movie_cross.html

83 さーひぶ。 :2007/07/17(火) 23:43:46
【イラク −狼の谷−】
2006年、トルコ映画/日本語公式サイト http://www.at-e.co.jp/ookami/

 話題の超問題作を紹介しようと思っているうちに、東京での上映は終わってしまいました。
トルコでは国民の15人に1人が観たほどの大ヒット作でしたが。
「アメリカ敗北」というおどろおどろしい宣伝文句に、ひいた人もいたかも知れません。
ハリウッドの『ランボー』は観ても、トルコ版の『ランボー』を観る日本人は
それほど多くないということでしょうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF_-%E7%8B%BC%E3%81%AE%E8%B0%B7-
詳細は↑のウィキペディアの記事に書きましたが、アメリカのイラク侵攻後の
米イラク占領を、トルコ人ヒーローの報復アクションものに仕立てて描いた作品です。
アメリカ人がほとんどみな悪役なので、当然アメリカ人は怒って観ませんが、
アラブやヨーロッパでは多くの人にイラク情勢を訴える内容となっているようです。
クルド人も「アメリカの手下」として準悪役に近い微妙な位置づけをされていて、
米司令官と「トルコは片付けた。次はアラブだ」などと扇情的な会話を交わす
ほどで、トルコとクルド人の微妙な関係を浮き立たせています。
 とくに、アブグレイブ捕虜虐待事件の再現シーンは必見。捕虜虐待の中心人物
リンディ・イングランド上等兵そっくりに扮装した女優が迫真の「虐待」を見せます。
このアブグレイブ捕虜虐待事件だけで、一つの劇映画でできるじゃないかぁ。
日本も出資して製作したらどうでしょう。「同盟国」として批判の義務がありますよ。
 「目(暴力)には目(暴力)を」という筋立てには、当然批判も強いでしょう。
しかし、横暴な米国にどの国も手綱を付けられない現状で、ムスリムの民衆に
暴力ではなく映画で溜飲を下げさせる「ガス抜き」としては格好な作品ではない
でしょうか。
 東京の「銀座シネパトス」では上映終了ですが、
 名古屋の「名古屋シネマテーク」(http://cineaste.jp/)にて
 8月16日〜8月24日にレイトショー公開予定です。

84 雷奴 :2008/01/03(木) 07:09:04
さーひぶ。さま、ご無沙汰で〜ス。
約2年前のあの忌まわしきアンマンでの「事件」で無念に落命された
故ムスタファー・アッカード監督(神がその墓土を潤されんことを!)
へのトリビュート・ドキュメンタリーを作ったそうだということで、
宣伝もかねてご紹介させて頂きます。

http://japanese.qatarinfo.net/topics/index.asp?cu_no=1&operation_type=6&item_no=3984&version=1&template_id=342&parent_id=330

85 >>84 :2008/01/03(木) 21:41:52
عفوا、
肝心のドキュメンタリーを作ったفاعل のことを
書き忘れておりました(リンクに飛んで頂ければ明らかですが、、、)。
あのカタルのアルジャズィーラの姉妹チャンネル
「アルジャズィーラ・ドキュメンタリー」です。
皆さんご覧になったことありますか?

86 さーひぶ。 :2008/01/06(日) 22:57:43
雷奴さま、あけおめ、ご無沙汰です。

アルジャズィーラ・ドキュメンタリー(الجزيرة الوثائقية)ですか。
ご活躍なによりです。オンラインで観られるようになるといいですね。
ウィキペディアに加えておきました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%A9_%28%E6%9B%96%E6%98%A7%E3%81%95%E5%9B%9E%E9%81%BF%29

それにしても、ムスタファー・アッカード(مصطفى العقاد)監督は無念な事でした。
かの『アッリサーラ』(الرسالة)は日本では『ザ・メッセージ』という題でDVDが出ています。
(VHSも持っていましたが、DVDも発売後まもなく購入しました。)
http://ar.wikipedia.org/wiki/%D9%81%D9%8A%D9%84%D9%85_%D8%A7%D9%84%D8%B1%D8%B3%D8%A7%D9%84%D8%A9

今年も雷奴さまのさらなるご活躍を期待しています。

87 雷奴 :2008/01/08(火) 03:51:29
さーひぶ。さま、كل عام وأنتم بخير
そして色々と有難うございました。
今後とも何卒宜しゅうお願い申し上げます。

と、書いて思ったのですが、
「宜しくお願いします」という表現の
巧いアラビア語訳ってあるのでしょうか?

88 さーひぶ。 :2008/01/08(火) 22:00:51
雷奴さま、كل عام وأنتم طيبون

って、いま新年の挨拶ということは、そろそろヒジュラ暦の新年が明ける頃ですか?

『新和英中辞典 第4版』(研究社)によると、
 「本年もどうぞよろしくお願いいたします」
 「(これは私の息子です.)どうぞよろしく」という表現は日本独特のあいさつで英語にはない。
そうです。
アラビア語なら أطيب تحياتي とかで通じるでしょうかね?

89 さーひぶ。 :2008/03/18(火) 23:13:57
【第4回 アラブ映画祭2008】

3月17日(月)〜25日(火)東京・赤坂で今年も開幕した「アラブ映画祭2008」。
いまや恒例となりつつありますが、今年の変則的な会期・会場設定や作品のラインナップ
などを見ると、毎年運営を続けるのは大変なんだろうなと感じます。

毎年、アラブのいろんな国から新作を豊富に取り揃えるのは難しいでしょう。
また首都圏在住の人でも、普通に社会生活をしていたら、スケジュール・予算的に
全作品を鑑賞するのは厳しいことでしょう。
その意味で、過去に上映されている人気作のアンコール上映が多くを占めるのは
仕方ありませんね。

私は、今年はあまり観られないかも知れませんが、初日の特別上映『BOSTA』は
観ておきました。すでに日本での劇場公開が決まっているようです。
>>90に続く)

90 さーひぶ。 :2008/03/18(火) 23:24:54
>>89の続き)

『BOSTA』は、内戦後の現代のレバノンで大ヒットした話題作です。
NHK教育テレビ「アラビア語会話」でも紹介された新進の女性監督
ナディーン・ラバキーがヒロイン役で女優としても売っています。
レバノンの伝統舞踊と現代西洋的なダンスをフュージョン(融合)させた
前衛的なダンス一座がバスでレバノン国内を巡回しながら、レバノンの
社会の現在を浮き彫りにしていく「レバノン賛歌」という趣きの作品。
主人公はフランス帰りという設定で、ラバキーがその恋人役。
フランスなどヨーロッパの影響を強く受けた現代世俗的な作風で、
性的描写などもかなりあけすけになっています。
世俗的で性的描写が多いという点はエジプト映画にも共通しますが、
ハリウッドの影響が強いエジプト映画ほどはギラギラしておらず、
いろんな意味でさばけているのがレバノン映画という印象です。


ところで、今の時期、アラブ映画祭に限らず、イラン・パレスチナ・
イスラエル・フランスなど中東関連の劇場映画公開が目白押しです。
いろいろ上映されていて、迷っているうちに終わってしまうと思いきや、
各地の劇場を巡回してロングランの作品も少なくありません。
スケジュール・予算的にうれしい悲鳴をあげる今日このごろです。

91 さーひぶ。 :2008/03/28(金) 23:29:11
『第4回 アラブ映画祭2008』 26日(水)で閉幕しました。

いろいろ重なっていたために、同時期にあった「アフガニスタン映画祭」や
「フランス映画際」には行けず。
今回のアラブ映画祭は、過去の人気作のアンコールが幅を利かせました。
佐藤真監督の追悼上映として遺作の『エドワード・サイード/OUT OF PLACE』
も上映されたようですが、すでにDVDを買っているので割愛。
エジプトでの大ヒット作『テロリズムとケバブ』や貴重なドキュメンタリー
『忘却のバグダッド』はそろそろDVDが出てほしいところです(内容は紹介済)。
新作では、上述『BOSTA』の他に、『デイズ・オブ・グローリー』と
『ヘリオポリスのアパートで』を観てきました。

>>92へ続く)

92 さーひぶ。 :2008/03/28(金) 23:30:19
>>91の続き)

『デイズ・オブ・グローリー』2006年 アルジェリア・仏・モロッコ・ベルギー
日本でのDVD発売を記念しての上映です。仏語の原題は「アンディジェヌ」
(Indigènes)で「現地人」の意味。アラビア語題もその音訳(إنديجان)ですが、
なぜか邦題は、フランス語でもアラビア語でもなく英訳題をカタカナにしたもの。
なお、監督はアルジェリア系フランス人で、台詞の大半は仏語。
 1943年、第二次大戦のフランス戦線を描いた戦争映画。フランスのアフリカ
植民地から徴兵されたアラブ・ベルベル・黒人の兵士たちが対独戦で遭遇した
体験に基づいています。「祖国フランスのために」と徴用されたアラブ人など
が慣れない軍事教練を経て、仏国歌をフランス語で歌いながら船で仏本土へ。
「祖国フランス」のために戦いながら、一方で「フランスから独立したい」
とも願う植民地の人間たちが、フランス女性と恋愛したり、差別されたりしな
がら戦いの果てに行き着く運命は?
現代の後日談として、アルザスの戦没者墓地が出てきますが、キリスト教徒の
墓はみな十字架なのに対して、ムスリム(イスラム教徒)の墓はモスクのドーム
を象った物でした。キリスト教徒もムスリムも協力してナチスと戦ったんだ。
これは単なる過去の戦争の映画ではなくて、キリスト教徒白人とムスリムの
アラブ・ベルベル・黒人らの協力の歴史を描いたと言えるでしょう。

ひるがえって、日本はどうか。アジア太平洋戦争で日本は多くの朝鮮人や
台湾人、そのほか多くの植民地・被占領地の人々を動員しました。
その中の多くの人が、日本の侵略戦争で死傷し、またB・C級戦犯として
日本の戦争犯罪を背負わされて処刑された人も少なくありません。
日本と近隣アジア諸国で「アンディジェヌ」のような作品をつくろう物なら、
先般の『靖国 YASUKUNI』のように、右翼議員が騒いで検閲しようとするでしょう。
いろんな意味で「後進国」の日本。フランスとアラブ・ベルベル・黒人との
関係から学ぶことは多いはずです。

>>93へ続く)

93 さーひぶ。 :2008/03/29(土) 00:19:04
>>92の続き)

『ヘリオポリスのアパートで』(In the Heliopolis Flat)2007年、エジプト
米アカデミー賞外国語作品部門のエジプト代表出品作。
田舎の20代女性音楽教師が、旅行のついでにカイロの高級住宅街ヘリオポリス
に住んでいるらしいかつての恩師を訪ね、その行方を探す間に起こる珍騒動の物語。
〔ネタバレ〕
恩師探しというのは物語のきっかけですが、本筋はひょんなことから遭遇した
男女が紆余曲折を経て近づいていくという一種のラブロマンス。
主人公の男女がお互いを探し訪ねるたびに行き違ってしまう「すれ違いメロドラマ」。
これは日本で言えば、昔流行った『愛染かつら』をぐっと縮めて現代風にした感じ。

前に述べたように、ハリウッドの影響を強く受けているエジプト映画では
暴力や性の描写がふんだんに出てくる作品が少なくなく、本作もそうなのですが、
ヒロインが田舎から来た生真面目な若い女性教師ということで、ちょっと抑えた
ロマンスの佳作になっている印象です。
〔アラビア語ミニ知識〕
アラビア語の原題は、エジプト方言では『Fi shaket Masr El Gedeeda』、
文語的には『フィー・シャッカ・ミスル=ル=ジャディーダ』(في شقة مصر الجديدة)。
ギリシア語名の「ヘリオポリス(Heliopolis)」は「太陽の町」の意味ですが、
アラビア語エジプト方言では「マスル=エル=ゲディーダ」、文語アラビア語では
「ミスル=ル=ジャディーダ」(مصر الجديدة)で、「新しいマスル(ミスル)」
すなわち「新しいカイロ」の意味になります。
マスルまたはミスル(مصر)とは、アラブ人が築いた軍営都市のことで、エジプト
の首都「フスタート」そしてカイロが「マスル」と呼ばれ、転じてエジプトの
国名を「マスル(ミスル)」と呼びます。

では、来年も「アラブ映画祭」がありますように、期待しましょう。

94 さーひぶ。 :2008/04/14(月) 00:06:14
↑少し訂正

〔アラビア語ミニ知識〕

文語的には『フィー・シャッカ(ティ)・ミスラ=ル=ジャディーダ』(في شقة مصر الجديدة)。

95 さーひぶ。 :2009/02/23(月) 18:45:11
【アラブ映画祭、2009年は開催せず】

今年は、2005年以来、毎年恒例のように続いてきた国際交流基金主催の
「アラブ映画祭」が開催されないようです。

ちょっと残念ですが、その代わりアラブに関連した映画作品の劇場公開が
何本かありますので、おいおい紹介してゆきたいと思います。

96 さーひぶ。 :2009/02/23(月) 19:10:02
【ナディーン・ラバキー監督・主演映画『キャラメル』】

>>90で紹介した『BOSTA』(2005年公開)に続く、レバノンの女性新鋭監督
ナディーン・ラバキー(نادين لبكي)の長編映画『キャラメル』(2007年)
が日本で劇場公開中(1月31日〜 )なので観て来ました。
 公式サイト:http://www.cetera.co.jp/caramel/

カンヌ映画祭の助成金を得たとかで、レバノン・フランスの合作ということで、
フランス人のアンヌ=ドミニク・ドゥーサン(Anne-Dominique Toussaint)が
プロデューサー。ラバキー監督の作品は元々フランスの影響が強い感じですが、
映像だけを見ればフランス映画とそう変わりませんし、今回の配給協力には
エールフランス航空やユニフランスが名を連ねています。

舞台は「中東のパリ」と称されるレバノンの首都ベイルート。とある美容院
をめぐって、性や加齢の悩みを抱える女性たちの人間模様の物語。

タイトルの『キャラメル』(Caramel)はアラビア語で『スッカル・バナート』
(سكر بنات)。砂糖(سكر)をレモン汁と水で熱してカラメル(キャラメル)
状のペーストにして、肌に押し付けて、むだ毛の脱毛をするアラブ女性の習慣
があるそうです。キャラメルの甘さと脱毛の痛さに、女性たちの人生模様を
たとえているようです。
>>97に続く)

97 さーひぶ。 :2009/02/23(月) 19:40:27
>>96の続き)
[あらすじ]
ラバキー演じる美容院オーナー・ラヤール(ليال)は30歳のキリスト教徒で、
妻のいる男との不倫の恋に悩んでいる。準ヒロインのニスリン(نسرين)は、
その美容院で働く結婚間近の美容師で、イスラム教徒なのに既に処女でない
ことを婚約者に隠しているために、処女膜再生手術をしようかとまで悩む。
シャンプー係のボーイッシュなリマ(ريما)は、女性に同性愛を感じ始めた
自分に気づく。etc.

パンフレットによれば、ラバキーを含む主要な女性キャスト7人のうち、
半分くらいはキリスト教徒、残りはイスラム教徒と宗教不詳。しかも、
ラバキー以外は映画初出演の素人。レバノン映画にありがちな特徴ですね。

言語は、アラビア語レバノン方言に、一部がフランス語、とチャンポン。
あいさつはアラビア語で「マルハバン」「アハラン」「サバーフ=ン=ヌール」。
フランス語で「ボンジュール」「サヴァ」、アラブなまりの「ボンジューレーン」など。
「ありがとう」も、アラビア語の「シュクラン」やフランス語の「メルシー」
が混在していました。
フランス語圏映画としての売りの部分もあるだろうけど、レバノン社会自体が
フランス語とアラビア語口語のチャンポンになっている感じがよく出ていました。

『BOSTA』と同様に、性的描写がかなりあけすけですが、フランス風にさばけて
いて、どぎつくはありません。女性映画としても、かなり洗練された作品に
仕上がっていると思いました。世界130カ国で上映され、評価が高いようです。

「キャラメル」映画公式サイト http://www.cetera.co.jp/caramel/
ウィキペディア記事
「キャラメル」アラビア語 http://ar.wikipedia.org/wiki/%D8%B3%D9%83%D8%B1_%D8%A8%D9%86%D8%A7%D8%AA
「ナディーン・ラバキー」アラビア語 http://ar.wikipedia.org/wiki/%D9%86%D8%A7%D8%AF%D9%8A%D9%86_%D9%84%D8%A8%D9%83%D9%8A

98 さーひぶ。 :2009/03/19(木) 22:34:05
【エラン・リクリス監督映画『シリアの花嫁』】

2月21日から公開されているイスラエル=仏=独の合作映画を観て来ました。
イスラエルのエラン・リクリス監督、アラブ女性スハ・アラフとリクリスの共同脚本。
英題 The Syrian Bride、アラビア語題 アルース・スーリーヤ(عَرُوس سورية)。

>>48で紹介した『ラミアの白い凧』(2003年、レバノン=仏)の翌2004年の作品で、
この両作品は、状況設定が非常によく似ています。
両作品の共通点は、イスラエル支配地とアラブ支配地の軍事境界線によって、
一族が分断されたドゥルーズ教徒(イスラームの分派)の村で、境界線を越え
て花嫁が輿入れする物語という点です。有刺鉄線を張り巡らされた緩衝地帯を
はさんで、親族どうしが拡声器で会話をする習慣があるのも同じ。

『ラミアの白い凧』はレバノン・イスラエル国境の話ですが、『シリアの花嫁』
の舞台は、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領してから実効支配して
いる、「占領地ゴラン高原(هضبة الجولان المحتلة)」の北部に位置している
マジュダル・シャムス村(قرية مجدل شمس)。標高約1200mの高原に住む村人
の多くは特異な宗派であるドゥルーズ教徒(字幕ではイスラム教ドゥルーズ派)。
とはいっても、とくに若い世代になるほど、欧米化の影響で世俗化しています。
イスラエルに併合されながらイスラエル国籍の取得を拒む村人たちは無国籍者。
本作は、占領地ゴラン高原の村からシリア本土へ嫁入りする当日の物語です。

『ラミア〜』では、イスラエル側での結婚に失敗してレバノン側へ戻るわけです
が、本作では一度シリア本土へ入ると「シリア国籍」が確定し、占領地の家族の
元へは二度と戻れないかも知れないわけです。

公式サイト(ヘブライ語) http://www.syrianbride.com/
     (英語) http://www.syrianbride.com/english.html
     (日本語;ビターズエンド) http://www.bitters.co.jp/hanayome/
>>99へ続く)

99 さーひぶ。 :2009/03/19(木) 23:27:41
>>98の続き)

〔あらすじ(ネタバレ)〕
時は西暦2000年、シリアのハーフェズ・アル=アサド大統領が他界し、息子の
バッシャール・アル=アサドが新大統領に就任した頃のマジュダル・シャムス村。
主人公アマル(آمال)の妹モナ(منى)が軍事境界線を越えてシリア本土の
親族へ嫁入りする一日の話。父のハメッド(حميد)は親シリア活動家のため、
かつてイスラエル当局によって拘留されていて、今も当局の保護観察中。
モナの婚礼の日だからと諌めても、新大統領を祝うデモに参加し、警察と
にらみ合う父。アマルは警察で、父が境界線での婚礼に参加することを懇願。
長男のハテム(حاتم)は弁護士で、ロシア人医師イヴリーナ(ايفيلين)と
結婚したため教徒の村から追放されていたが、妹の婚礼のために帰国する。
ドゥルーズの扮装をした村の長老たちは、ハテムを受け入れたら一家とは
絶縁だと父ハメッドに通告。ハメッドも帰国したハテム夫妻と息子を無視。
次男のマルワーン(مروان)はイタリアで商売をし、ゴランの国連事務所に
勤める国際赤十字委員会(ICRC)職員の仏人女性ジャンヌを愛人としていて、
やはり妹の婚礼のために帰国する。アマルの夫アミン(أمين)は封建的で、
イスラエルへの「内通者」よばわりされる男と娘が交際するのを抑圧する。
一方、テレビスターでドラマ収録中の花婿タレル(طلال)は、写真でしか
見たことがないゴラン高原の娘と今日、結婚するとスタッフに苦笑する。
テレビでしか見たことがない花婿の姿に強い不安を感じている花嫁モナ。

劇中ではこのように、イスラエル・シリア両国間の問題だけでなく、狭い村の
中における人間関係に押されて頑なになる封建的な男たちや、男たちの抑圧に
抵抗する女たち、愛人、イスラエル当局などの間の葛藤が描写されてゆきます。
>>100へ続く)

100 さーひぶ。 :2009/03/20(金) 00:15:34
>>99の続き)
午後3時、境界線の両側でそれぞれ祝宴を済ませた親族たちが検問所のたもとに
集まる。イスラエルの係官がモナのパスポートにイスラエル出国印を押印する。
件の国連職員ジャンヌがシリア側へそのパスポートを持参するが、シリア側の
係官は、ゴラン高原はシリア領なのでイスラエルの出国印は受け付けられない
と拒絶する。婚礼の承認まではもう何か月も待たされた。次はいつになるのか
わからない。絶対に今日じゃなくてはだめだ、とアマルらはジャンヌに頼む。
だが、イスラエル官庁にも、シリア政府側にも連絡が取れない。
窮余の策として、イスラエル係官が修正液で出国印を消すが………。
ついに意を決したモナは、検問所の扉から決然とシリアへ歩みだす。(了)

モナは無事にシリア本土へ嫁入りできたのか、不明瞭な結末です。
ひょっとしたら兵士に銃殺されるかも? 結婚できてもうまくゆかないかも?
そうした不安を越えて、希望(أمل)を意味する名前の主人公は笑みをたたえます。
あたかも、これは単なる一人の娘の嫁入りにとどまらず、ゴラン高原の将来、
果てはイスラエルとアラブの将来への希望を込めた笑みのようにも感じられました。

この物語の背景には実にシリアスなテーマが横たわっていますが、要所要所に
コミカルなやり取りが挿入されていて、全体としては辛さと甘さが混じったような
ほど良く味わい深い作品となっています。

登場人物の大半は、ゴラン高原のドゥルーズ教徒という設定ですが、彼らを
実際に演じているのは、主人公アマル役のヒアム・アッバス(هيام عباس)、
父役のマクラム・J・フーリ(مكرم خوري)とモナ役クララ・フーリ(كلارا خوري)
の父娘など、イスラエル国籍のアラブ人(عرب إسرائيل)が多いようです。
ロシア人の妻やフランス人の愛人が登場することに意味があるのかと疑問が
湧きそうですが、もともとイスラエルは国内映画市場が小さいために、常に
海外での上映を考慮せざるを得ない事情のためと思われます。
初公開から5年も経っての日本での上映ですが、文部科学省選定作品の割りに、
あまり宣伝されていないためか、客足はそれほどではありませんでした。
東京・神保町の岩波ホールで4月17日まで上映し、全国を巡回する予定です。

ウィキペディア英語版 http://en.wikipedia.org/wiki/The_Syrian_Bride

101 さーひぶ。 :2009/03/28(土) 21:29:28
↑4月17日まで上映中の『シリアの花嫁』について追記。

シリア政府は、ゴラン高原はシリア領だと強硬な態度を取っているわけですが、
軍事境界線のシリア側には
「シリアへようこそ」(Welcome to Syria اهلا بك في سورية)
という看板が立っていたので、ちょっと気になりました。
イスラエル側にも「イスラエルへようこそ」(Welcome to Israel)という
看板が立っていたので、対抗したものでしょうが。

102 さーひぶ。 :2009/10/19(月) 18:38:04
【第22回 東京国際映画祭 「エジプト映画パノラマ」ほか】

毎年10月頃に開催されている恒例「東京国際映画祭」も今年で22回目。
「アジアの風」という部門では「アジア中東パノラマ」として、
中国・韓国から中東まで幅広い作品が紹介されています。

毎年、観に行こうかな?とは思っていたのですが、会場が六本木ヒルズという
不慣れな人には取っ付きにくい場所だったり、来場者の混雑が予想されるため、
なかなか足が向きませんでした。

今年は【2009日本におけるエジプト観光振興年】記念事業として、
「エジプト映画パノラマ - シャヒーン自伝4部作と新しい波」
という特集上映が催されているので、観て来ました。

昨年7月に亡くなったエジプトのユーセフ・シャヒーン監督の自伝的な
アレクサンドリア4部作やエジプトの新作などを上映しているようです。
すでに上映済みだったり、平日昼間に上映される予定の作品もあったり、
多くの作品は観られませんが、
なんとか、『エジプトの物語』という作品だけ見て来ました。

エジプト以外にも、パレスチナもの、イラン、トルコ・クルド、イスラエル
など幅広い国・地域の作品があるようです。
>>103へ続く)

103 さーひぶ。 :2009/10/19(月) 19:28:46
>>102の続き)
第22回 東京国際映画祭 アジアの風【シャヒーン監督『エジプトの物語』】

ユーセフ・シャヒーン(يوسف شاهين)の自伝的アレクサンドリア4部作から
『エジプトの物語』(英題:An Egyptian Story)、アラビア語の原題は
『ハッドゥータ・ミスリーヤ』(حدوتة مصرية)を観て来ました。
シャヒーン自身の投影である主演ヤヒヤー役は、エジプトを代表する名優の
ヌール=ッ=シャリーフ(نور الشريف)。シャヒーン監督とのコンビで
いくつもの名作を生んでいます。

あらすじ:エジプトを代表する俳優・脚本家・映画監督のヤヒヤー(يحيى)は
新作を撮影中に心臓発作で倒れ、医師の勧めにより、ロンドンの病院へ飛ぶこ
とになった。家族たちは冷淡で、誰も同行しない。ロンドンの病院で、心臓の
バイパス手術をすることになった。家族の冷淡さを嘆き、死を覚悟するヤヒヤー。

手術中に、血管の中に不思議な少年が現われ、ヤヒヤーの手術を失敗させよう
とする。ヤヒヤーの体内で裁判が始まった。少年はヤヒヤーと名乗り、家族たち
同席のもとで、ヤヒヤーの生い立ちが回顧される。
エジプト王政下で駐留イギリス軍に抵抗する少年ヤヒヤー、映画監督として
カンヌ映画祭に出席するヤヒヤー、アルジェリア独立戦争に遭遇するヤヒヤー。
当時の実写映像と交えて、ヤヒヤーの半生と家族が辿った物語がつづられる。

内臓を縫合した糸を切ろうとする小さなヤヒヤーを、執刀医のメスが血栓とと
もに除去する。手術は成功。病室のベッドに横たわる老いたヤヒヤーの前に、
あの小さな少年ヤヒヤーが等身大になって現われて孤独を訴える。こうして、
老いたヤヒヤーから分裂した幼いヤヒヤーの自我は、老いた自分と合体する(了)。

老いたシャヒーン監督が、心臓手術をきっかけに、自らの半生を顧みながら、
自らの葛藤と孤独により分裂した心を取り戻してゆく物語、というところでしょうか。

104 さーひぶ。 :2009/11/25(水) 22:50:00
【イランのバフマン・ゴバディ監督『ペルシャ猫を誰も知らない』】

映画祭「第10回 東京フィルメックス」で公開されたイランのクルド人である
バフマン・ゴバディ(بهمن قبادی ;Bahman Ghobadi)監督の2009年の最新作
『ペルシャ猫を誰も知らない』(کسی از گربه‌های ایرانی خبر نداره ;
No One Knows About Persian Cats)を観て来ました。
 ゴバディ監督はこの映画祭の常連で、これまでも『亀も空を飛ぶ』や
>>69で紹介した『半月』など、クルド社会を描いた秀作を演出してきました。
今回の『ペルシャ猫〜』は首都テヘランで撮影した異色作です。

イランの現体制下では、欧米的なポピュラー音楽を公然と演奏したり聴いたり
する事は固く禁じられており、コンサートの参加者は厳しく処罰される。
だから、ポピュラー・ミュージシャンは非合法な地下活動を強いられている。
本作は、バンド活動を夢見るイランの若者たちの理想と苦悩を活写しています。

アシュカーン(اشکان)とネガール(نگار)は男女二人のミュージシャンで、
自国でロックバンドを結成するために、コンサートを聴く目的で海外へ密出国
しようと計画している。パスポートとビザを偽造する闇業者にも何とか依頼。
出国前にコンサートを催そうとあちこちのミュージシャンを訪ねて歩く。
あるヘビメタ・バンドは、近所から追い出され、牛小屋の中で演奏をしている。
牛は通報しないからだという。牛小屋で感染症に罹り、病院へ行く。
ある男は、映画の海賊版ビデオを大量に所持していたため、当局の取調べを
受け、高額の罰金と鞭打ち刑に処せられるところを何とか言い逃れる。
出発間際の日、パスポートとビザを偽造していた老人が検挙された。
コンサートの当夜、アシュカーンは連絡の取れなかったある仲間を探しに
別のコンサート会場に辿り着くが、仲間は泣きじゃくっている。彼は当局に
密告していて、参加者は次々に捕らえらる。アシュカーンは窓から飛び降りる…。
>>105へ続く)

105 さーひぶ。 :2009/11/25(水) 23:39:19
>>104の続き)

『ペルシャ猫を誰も知らない』という題名は、このように音楽の地下活動を
追求する現代イランのミュージシャンたちを指すのでしょう。
本作の撮影も、わずか17日間で当局に知られないように行われたそうです。
本作は、実際の出来事に基づいた内容だそうで、ドキュメンタリードラマの
ようですが、ドラマの筋を縫うように、ロック風のBGMと前衛的な映像表現が
盛り込まれ、まるで彼らのプロモーション・ビデオ(PV)を観ているかのよう
な印象を受けました。

マルジャン・サトラピ監督のアニメ映画『ペルセポリス』(2007年、フランス)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/558/1114010077/37-39
でも、当局に隠れて欧米のロックなどを聴く若者たちが描かれていましたから、
こういった若者がアングラで音楽を聴くのは一般的なのでしょうか。

この『ペルシャ猫を誰も知らない』は、カンヌ映画祭で特別賞を受賞しました
が、本作を発表したことによりゴバディ監督はイラン現政権から国外追放処分
の憂き目に合わされたとのことです。

欧米や日本のマスメディアが報道するイランのイメージとはまったく異なる
生き生きとしたイランの若者像には感嘆させられます。

11月27日(金)の10:40からもう一度だけ上映予定。ぜひ劇場公開もして欲しい。

ペルシャ猫を誰も知らない http://en.wikipedia.org/wiki/No_One_Knows_About_Persian_Cats
バフマン・ゴバディ監督    http://en.wikipedia.org/wiki/Bahman_Ghobadi
東京フィルメックス公式サイト http://www.filmex.net/

106 さーひぶ。 :2009/12/02(水) 21:22:43
東京フィルメックスのコンペティション部門で『ペルシャ猫を誰も知らない』
が、最優秀作品賞に次ぐ「審査員特別賞」に輝いたとのこと、おめでとうございます。
http://www.filmex.net/2009/compe.htm

イラン大統領選の混乱を描いたハナ・マフマルバフ監督の『グリーン・デイズ』、
テロの後遺症を描いたイスラエルのオムリ・ギヴォン監督の『天国の七分間』は
残念ながら観に行けませんでした。

107 さーひぶ。 :2009/12/17(木) 22:00:31
【『キャラメル』と『シリアの花嫁』が再上映】

今年2月に日本で劇場公開されたレバノン映画とイスラエル映画が再上映されるようです。

>>96-97で紹介したナディーン・ラバキー監督・主演映画『キャラメル』(2007年、レバノン)

>>98-101で紹介したエラン・リクリス監督映画『シリアの花嫁』(2004年、イスラエル・仏・独)

の2本です。

12月28日(月)、東京・池袋の新文芸坐で、交互に上映される予定。

キャラメル(2007/レバノン=仏/セテラ)         11:35/15:20/19:00
シリアの花嫁(2004/イスラエル=仏=独/ビターズ・エンド)9:45/13:30/17:10/20:55(終映22:30)

http://www.shin-bungeiza.com/schedule.html

109 イサム :2010/05/26(水) 21:33:45
最近アラビア語、中近東の社会に興味を持ち始めたものです。
ファーディ・ヒンダッシュ監督の『ノット・クワイト・ザ・タリバン』(Not Quite the Taliban)というドキュメンタリー映画を、この前オランダ旅行中にたまたまやっていた映画祭で見に行ったら興味深かったので紹介しようと思いました。ドバイ社会の薄っぺらい西洋ぶりの若者は実は昔風のアラブ人より視野が狭いという話なのですが、ストーリーの進め方がなかなか面白く、映画中に映画自体の制作工程も記録している感じです。もっと言いますと、リベラルに見えるドバイで、社会の真相を暴く映画を制作、公開をしようとしたらどんな反応を招くのかという流れに変わります。近東と欧米の接触や女性の権利やら現代のアラブ社会やら、色々と勉強になる映画でした。
公式サイトは多少けち臭くて情報が少ないしトレーラーも短いですが、個人的に見れてよかったと思える映画です。日本でも上映されればと思います。
http://notquitethetaliban.netai.net

110 さーひぶ。 :2010/06/02(水) 20:55:11
イサムさん、興味深い映画を紹介していただき、ありがとうございます。

>ドバイ社会の薄っぺらい西洋ぶりの若者は実は昔風のアラブ人より視野が狭いという話なのですが、
西洋近代化された若者が昔気質の人より視野が狭い、というのは日本などにも当てはまりそうですね。

ぜひ観てみたいとは思いますが、日本では9・11や米イラク侵攻直後のアラブ系作品上映の潮が引いた感じで、
商業上映はなかなか難しいかも知れません。
東京フィルメックス映画祭とかで上映してくれるといいのですが。

111 さーひぶ。 :2010/09/15(水) 22:00:38
【バフマン・ゴバディ監督『ペルシャ猫を誰も知らない』が劇場公開中!】

>>104-106で紹介した第10回東京フィルメックス「審査員特別賞」受賞作の
『ペルシャ猫を誰も知らない』が8月7日から東京・渋谷のユーロスペースで
劇場公開され、日本各地の映画館で順次上映される予定です。

バフマン・ゴバディ監督は、昨年の映画祭での公開時にはビザ取得が間にあ
わずに来日をキャンセルしましたが、今回の公開前の6月のプロモーション
来日でもパスポートの更新が許可されずに来日を断念したことが報道されて
いました。ゴバディ監督はもともと故郷クルディスタンとクルド人の社会を
描いた秀作をいくつも世に出して来ましたが、台詞がペルシア語ではなく、
クルド語で映画を制作しているので(イランからの)クルド分離主義者だな
どとイラン当局からにらまれていて、映画撮影許可が下りなくなってしまっ
たようです。
投げやりになっていたところに今回のアングラ・ミュージシャンたちと出会
って、当局の目を逃れてゲリラ的に撮影を刊行。カンヌ映画祭で評価された
後で一度はイランに帰国しましたが、拘束されたりして身の危険を感じて、
現在はイラクのクルド自治区に在住。イラクのイラン大使館に何度も頼んで
みましたが、パスポートの更新はイラン国内でと言われて、断念したようです。

主演のアシュカンとネガルもアングラ・ミュージシャンで、ロックを演奏して
いただけで投獄され、釈放されて、出国しようとしているところを監督が依頼
して彼らのセミ・ドキュメンタリーのようにして制作したとのこと。
現在はロンドンを拠点として「テイク・イット・イージー・ホスピタル」
(Take it easy hospital)として活躍、ネット上で彼らが演奏している動画
などを視聴できます。他の出演ミュージシャンたちの多くも海外で演奏している
ようです。いずれは、体制が変化して、自国で演奏できると良いですね。
 公式サイト http://persian-neko.com/
 テイク・イット・イージー・ホスピタル http://en.wikipedia.org/wiki/Take_It_Easy_Hospital
 ペルシャ猫を誰も知らない http://en.wikipedia.org/wiki/No_One_Knows_About_Persian_Cats

112 さーひぶ。 :2010/10/31(日) 20:15:32
【パレスチナ映画・マシャラーウィ監督『ハイファ』】

第23回 東京国際映画祭(TIFF)が10月23日(土)〜31日(日)と、本日まで開催
されています。トルコ、イラン、イスラエル、ウズベキスタンと、中近東周辺
の映画だけでも観たい作品はいくつも上映されましたが、わずか9日間で平日
昼間の上映が多いこの映画祭は、よほどの有閑な人でもない限り、数多く観る
のはたやすくはないと思います。

というわけで、アラブ圏ではパレスチナの作品が1作だけ上映されたので、
観てきました。今年は、日本を代表する黒澤明監督の生誕100年に当たるので、
「[ディスカバー亜州電影]生誕100周年記念〜KUROSAWA魂 in アジア中東」
と銘打って、黒澤作品に触発されたアジア中東諸国の4本が上映されました。
パレスチナ人ラシード・マシャラーウィ(Rashid Masharawi رشيد مشهراوي)
監督の1996年作品『ハイファ』(Haifa حيفا)(パレスチナ・ドイツ・オランダ製作)。
イスラエル=パレスチナ和平にこぎつけると思われた1993年のオスロ合意を控え、
ガザの難民キャンプの人々が日常の暮らしを送る群像ドラマ。
物語の主役級として、ハイファと呼ばれる心を病んだ中年男が、イスラエルに
占領された地名を「ヤッファ、ハイファ、アッカ!」と叫びながら道化の役回り
を果たし、難民たちの和平への期待と不安の入り混じった葛藤を浮き彫りに
するという話のようです。紛争による難民という「非日常」生活を長く続ける
庶民たちがさまざまな「日常」生活を生きながら、近い将来の平和に希望と
不安を抱くというテーマは、敗戦直後の庶民の生き生きとした姿を描いた
日本の映画作品を想い起こさせてくれました。
パレスチナのアラファトPLO議長とイスラエルのラビン首相がクリントン米
大統領の前で調印する式のテレビ中継を観たガザの人々が街頭に繰り出して
練り歩くシーンは感動的でしたが、この作品が公開された1996年には崩壊して
しまうオスロ合意への想いが反映されていたのでしょうか。
主演のモハメド・バクリ(Mohammad Bakri محمد بكري)は、役作りに当たって
監督と一緒に黒澤の『どですかでん』を繰り返し観たそうです。
(『どですかでん』については、未見なのでコメントを控えます。)

113 さーひぶ。 :2010/12/31(金) 19:39:15
【イスラエル映画、サミュエル・マオス監督『レバノン』】

ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得して、欧米各国でも絶賛されている
イスラエル・フランス・ドイツ制作の戦争映画『レバノン』(לבנון)が
日本でも12月11日から東京・渋谷のシアターNで上映中。
   http://www.theater-n.com/movie_lebanon.html
1月7日には早くもDVDが発売&レンタル開始のようです。

1982年6月に勃発した、イスラエルのレバノン侵攻における戦場の悲惨さを、
自身も従軍したサミュエル・マオス(שמואל מעוז)監督が独特な手法で描写
した反戦的な作品です。(以下、ネタバレ)

冒頭とラストで印象的なひまわり畑が出てくるのを除いて、ほとんどの映像は
4人のイスラエル青年兵と上官たちが戦車内部で交わすやりとり・通信、または
戦車の大砲の照準器(スコープ)から見える光景に限られる斬新な映像です。

レバノンへ侵攻した青年兵たち戦車や狙撃兵たちは、テロリストと呼んでいる
レバノン兵を射殺し、空爆で壊滅したサン・トロペズ(St. Tropez)の街で
残党狩りを行なう。戦車のスコープには、炎上する市街、射殺された人たち
(手足を吹きとばされたり、首がない遺体)、途方にくれている民間人たち
や腹を裂かれて息も絶え絶えに泣いているロバ、などが映しだされる。
 戦車はいつの間にかシリア軍の占領地域に踏み込んでしまい、シリア兵の
放った対戦車弾の直撃によりエンコしてしまう。シリア兵が捕虜となって
戦車に運び込まれるが、方言訛りの強いアラビア語を話すのみで、アラビア語
を解すイスラエル兵にも理解できない。イスラエルに味方するレバノンの
キリスト教右派政党「ファランヘ党」(アラビア語でカターイブ)の兵士が
やって来るが、捕虜のシリア兵を連れ出そうとするかのようにも見えて、
当てになるのかどうかは分からない。
>>114へ続く)

114 さーひぶ。 :2010/12/31(金) 20:18:56
>>113の続き)
故障した戦車の中で、苦悶する青年兵たち。ある青年は、あと2週間で除隊の
はずなのに、兵役期間を延長されてしまう。上官との連絡が滞り、友軍である
はずのファランヘ兵も当てにならない中、戦車の青年兵たちは禁断の「冥王」
回線にアクセスして、自分たちが置かれた窮状を認識する。
敵の襲撃を受ける中を突破して、ひまわり畑に帰り着くが、運転士の青年
イーガルは絶命していた(了)。

ほとんど全編が戦車の鋼鉄の内部に閉じ込められた閉塞状態で進行するという
前衛的な反戦劇です。娘を射殺されて泣き叫び、火だるまのあげく裸にされる
レバノン女性を戦車のスコープが大写しになる場面も強烈。

イスラエルでは適齢期の全国民に兵役の義務が課せられており、イスラエルの
青年たちが体験する悲惨な戦争の惨禍が主眼となっています。しかしながら、
戦車に指令を下す上官は、ジャミルというアラブ系の名前。友軍であるはずの
ファランヘ党の兵士もアラビア語と英語を話すアラブ人、捕虜はシリア人と、
敵兵も、被害を受ける民間人も、味方にもアラブ系の人間がいて複雑です。
被害をこうむるのも、アラブ人も多いが、イスラエル人も死傷します。
 イスラエルVSアラブという先入観の枠を越えて、戦争の悲惨さを描かれて
いると思いますが、この作品の描写はアラブ諸国では不評かも知れません。

イスラエル版の「ベトナム戦争映画」というところのようです。むごたらしい
場面が少なくないので、戦争映画や暴力映画が苦手な人にはおすすめしません。
この作品により、イスラエルの若者に厭戦感情が広がるように願います。
 レバノン      http://en.wikipedia.org/wiki/Lebanon_(2009_film)
 サミュエル・マオス http://en.wikipedia.org/wiki/Samuel_Maoz
 1982年レバノン侵攻 http://en.wikipedia.org/wiki/1982_Lebanon_War

では、来年は平和な年でありますように。良いお年をお迎えください。

115 さーひぶ。 :2010/12/31(金) 21:05:52
>>113-114の追記) 映画『レバノン』について、書き落とし。

劇中では
「国際法違反の白リン弾を使うが、これを“火を吐く煙”と呼ぶように」
と、上官ジャミルが隠蔽しようとする場面があります。

白リン弾(白燐弾、White phosphorus、略称WP)とは、非人道的な兵器と
して近年、批判されている砲弾で、イラクではアメリカ軍が使用したとされ、
昨年のガザ攻撃でもイスラエル軍が使用したとされ、危険な化学兵器であるか
否か、激しい論争になっています。どちらかといえば、反戦主義者は危険な
兵器だとし、軍備肯定派はそれを打ち消そうとしているように見えます。
 白リン弾(قنابل الفسفور الأبيض) 
  http://en.wikipedia.org/wiki/White_phosphorus

では、戦争のない平和で良い年を迎えられますように。

122 さーひぶ。 :2013/12/15(日) 22:04:51
【サウジ初の女性監督による長編劇映画デビュー作『少女は自転車にのって』】

サウジアラビアが生んだ初めての女性映画監督ハイファ・アル=マンスール
(Haifaa al-Mansour/هيفاء المنصور)による長編映画・劇映画としては
最初の作品である2012年公開の映画作品『ワジダ』(Wadjda/وجدة)、邦題は
『少女は自転車にのって』が、この12月7日から日本での公開が始まりました。

日本語公式サイト ttp://shoujo-jitensha.com/(予告編の動画があります)

映画館の設置が法律で禁止され(!!)、映画産業と呼べるものも存在しない
サウジからどうやって女性映画監督が誕生したのか? 彼女は、進歩的な母の
もとで育って、海外の映画のビデオを見まくり、エジプトやオーストラリアへ
留学して映画を学び、アメリカ人の外交官と結婚して現在はバーレーン在住。
進歩的な家庭に育って、留学・国際結婚をすれば、こういう女性も出るんですね。

製作国は「サウジアラビア・ドイツ」となっていて、彼女が脚本・監督を担当し、
他のスタッフたちはドイツ人風の名前です。サウジ政府が欧米から民主化を
求められる中で、全撮影をサウジ国内で行なった初めての映画作品となり、
サウジアラビア政府の検閲も無事に通過して、2014米アカデミー賞外国語映画賞
のサウジアラビア代表に選ばれ、各国の映画祭で受賞している優秀作品です。

あらすじ・感想などは、また後ほど

123 さーひぶ。 :2013/12/17(火) 22:07:01
>>122の続き) 『少女は自転車にのって』のサウジ予備知識

 この作品は、一見すると、少女と自転車のほのぼのとした他愛ない話のよう
にも見えますが、その実、男尊女卑の因習が支配するサウジ部族社会の問題を示唆する描写が細かくちりばめられているようにも思えます。
この作品を観るために必要と思われる予備知識をいくつか挙げてみます。

 サウジの女性は、月経が始まる10歳くらいから、家族以外の男性がいる場
所では、アバーヤ(عباءةまたはعباية)という黒いガウンを羽織って身体
を隠し、ヒジャーブ(حجاب)やブルカ(ブルクウ برقع)というヴェールで
頭部や髪の毛、両眼を除く顔面をすっぽり隠さなくてはなりません。
肌を隠すだけではなく、声を男性に聞かれるのも戒められます。

 公的な場所において、男女が同席することは非常に避けられており、
学校教育が男女別学なのはもちろん、結婚式でも男女は別々に集います。
家族以外の未婚の男女が会うこともご法度で、男女の密会がばれれば、
宗教警察によって逮捕され、罰せられます。
(この作品のサウジ国内の撮影現場では、女性である監督と男性スタッフ
たちとの同席は許されないため、監督は現場から離れた車(バン)の中から
モニターを見ながら無線を使って現場に指示を出していたそうです!!)

 少女婚(児童婚)の習慣があり、10歳くらいの幼い少女が、10歳以上
年上の大人(ときには老齢の)の男性に嫁がされることもあります。
夫婦の事をさせられた幼い少女が出血多量で死亡することもあります。
 男性は、同時に4人まで妻を持つことが許されていますが、女性の重婚
は禁止。夫は妻を一方的に離婚できますが、妻にはできません。

 女性は、車の運転を法律で禁じられています。女性の一人旅も不可。
今回の映画の中では、自転車も女の子に好ましくないと描写されており、
学校の校長が「自転車は危ないわ。信心深い娘にはね。」と言います。
>>124へ続く)

124 さーひぶ。 :2013/12/17(火) 22:24:02
>>123の続き) 『少女は自転車にのって』のあらすじ
 ワジダ(وجدة)は、首都リヤド郊外に住む10歳の気ままでお転婆な少女。
女子だけの小学校へ通っているが、制服の下はジーンズとスニーカー姿、しかも
ヒジャーブで髪と顔を隠さずに通学するので、戒律に厳しい女校長ヒッサ(حصّة)
からは問題児扱いされている。ワジダは校長から、体を隠すアバーヤで登校しろ
と言われてへこむが、母親は10歳のワジダが「そろそろ嫁がせる時期」(児童婚)
になったと気づいて微笑む。
 ワジダは、自転車を持っている近所の少年アブドゥッラー(عبدالله)と競争して
勝ちたいと思い、ある日見かけた800リヤル(約22,000円相当)の緑色の自転車が
無性に欲しくなる。母親が、女の子が自転車なんてダメと買ってくれないので、
自分でお金を稼いで貯めることにする。手作りのミサンガを売ったり、上級生の
アビールが「兄」(実はボーイフレンド)と密会するのを仲介して報酬をもらった
りして自転車代を稼ぐ。
 上級生アビールが男と密会して宗教警察に逮捕されたというので、手伝った
ワジダは校長から退学させられそうになるが、母が謝罪して助かる。
 足にマニキュアを塗っていたファーティマ(فاطمة)とファーテン(فاتن)
は、校長から「罪深い行為をした」と全校生徒の前で断罪される。
 学校でコーラン暗唱コンクール(مسابقة تحفيظ القرآن الكريم)
が催されることになる。優勝賞金1,000リヤル(約27,000円相当)に目の色が
変わったワジダは、改心して宗教クラブに入部すると校長に言い、コーラン
は苦手だったが、コーラン学習テレビゲームを買って猛勉強を始める。
 ワジダの母は、車で3時間の職場まで通っていたが、女性は車の運転が
禁じられているため、南アジア系の不法滞在労働者とおぼしき乗合自動車
運転手イクバール(إقبال)を雇って通勤や買い物に出かけていた。
ある日、イクバールが辞めたので困り果て、レイラ(ليلى)が勤め始めた病院
職員への転職を思い立つが、顔を隠さずに男性と一緒に働くので、諦める。
 ワジダの父は、たまにしか家に帰って来ない。父の母(ワジダの祖母)
は、ワジダの母が後継ぎの男子を生まないので、第2夫人になる花嫁候補
を探している。家系図は立派だが、女であるワジダは外されている。
>>125へ続く)

125 さーひぶ。 :2013/12/17(火) 22:33:28
>>124の続き)
 いよいよ、コーラン暗唱コンクール。宗教語彙や啓示の口頭審問の後、
コーランの朗唱(節(ふし)を付けて、歌うように暗唱する)。

(これより、ネタバレ!)
 朗唱の得意な新婚のサルマー(سلمى)らを押さえて、ワジダが優勝。
校長「賞金は何に使うの?」  ワジダ「自転車を買います。」
あきれた校長は「賞金はパレスチナの同胞に寄付しましょう。」
自転車の夢が消えて、落胆するワジダ。
 ワジダの父と第2夫人の結婚式。それを遠くから眺めつつ、ワジダの母
は泣きながら、ワジダと母娘2人だけで暮らす決意を娘に告げる。
 母から贈られた最高の宝物とともに、ワジダは風を切って疾走する。(了)
         *         *
 かつて、子どもを主人公にしたイラン映画作品が日本でもちょっとした
ブームになりました。宗教や政治体制に抑圧された社会の複雑なテーマを
散りばめながらも、子どもの視点を中心軸にすえることによって、検閲を
くぐり抜けつつ、メッセージ性の強い秀作群になりました。
 ワジダを主人公にした本作も同様に、宗教・部族的な男尊女卑の因習に
よって抑圧されている社会を描いた、サウジの秀作といえるでしょう。
現実の厳しいサウジ社会よりは、かなり理想化されているかも知れません。
しかしながら「アラブの春」が完全に潰されてしまったサウジにおいて、
映画という手段が社会をより良い方向へ変えて行く可能性を示したことは
とてつもない意味があると信じています。
         *         *
12月14日(土)から東京・神保町の岩波ホールで新春ロードショー。
国内各地の劇場で順次公開予定。文部科学省特別選定作品。

ウィキペディア記事
ワジダ ttp://en.wikipedia.org/wiki/Wadjda
ハイファ・アル=マンスール ttp://en.wikipedia.org/wiki/Haifaa_al-Mansour

126 匿名さん@サラーム :2014/01/04(土) 20:56:23
ここで語ろう
ttp://jbbs.shitaraba.net/study/9419/


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