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【書評】『つげ義春が語る マンガと貧乏』

1桃李庵主人(管理人):2025/08/10(日) 14:30:35
『つげ義春が語る マンガと貧乏』(筑摩書房、2024)

 インタビュアーが、自分が言いたいことをつげの口から言わせようとして次々に失敗する。
 これ、昔からつげ義春のインタビューはこうなのである。
 60年代の終わりにつげが本当にノンポリだったということがどうしても素直に認められないインタビュアーの頭の悪さが痛々しくて、笑っていいものかどうか迷う。可哀想な子なのかもしれないからだ。

 
つげは率直に-あるいはインタビュアーの誘導尋問に無頓着なのか-次々に否定していく。

「精神面じゃちがいはないですねえ」(14ページ、以下同じ)
「ないですね」(16)
「いや、思いませんね」(16)
「そうかな?」(22)
「なんとも思わないですね」(22)
「別に…」(24)
「いやそういうんじゃなくて、」(39)
「そうでもなかったですね」(41)
「いなかったですね」(41)
「そうでもないんですよね」(41)
「まったくないね」(42)
「ないんですね」(44)
「ないですね」(44)
「なかったですね」(46)
「そうでもないんですけどね」(49)
「とくに思わなかったですけど、」(80)
「いや、余り考えてないですね」(84)
「いやないですけれども」(85)
「なんとも思わない(笑)」(86)
「いや、まったくないですね」(87)
「それはまったくないですね」(87)
「まったくなかったし、」(87)

 今たまたま挙げたわずかなページでこんだけ次々に否定されてるのは、つげが偏屈だというより(いや、偏屈なのだが、それ以上に)インタビュアーの頭が固いのである。
 ”その方向それ以上掘っても何も出てこないよ”ということがわからなくて、自分が言いたいことをつげに代弁させようとして同じ質問何度もしつこく繰り返してるのだ。

 この令和の御代に今もつげにぶら下がって食うのは、それもよかろうけれども、憧れのつげ義春先生に自分の(全共闘時代以来の)思想やルサンチマンを代わりに(つげ御大のお言葉として)口にしていただこうという、それが余計だっていうのよ。それ、ほしい人あまりいないだろうよ(いろんな意味で。たとえば、人口統計学的な意味で「今では、そして今後ますます」。または、もっと何かこう、本質的な意味で「そもそも」)。

《米国の記者は一人で訪ねてきて、鋭い質問をしてくる。日本の記者は大勢で押しかけてきて、愚にも付かない事を聞いてくる》-イチロー。


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