したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

alpha-archive-09

1teacup.運営:2014/01/01(水) 19:01:58
掲示板が完成しました
ご利用ありがとうございます。

teacup.掲示板は
スレッド作り放題
画像・動画・音楽の投稿
ケータイ絵文字が使える
RSS対応
かわいいケータイテンプレ

足あと帳はコチラ
スレッド内容は管理画面内「スレッドの管理」から編集できます。

23α編集部:2017/10/18(水) 17:21:16
2016年エイプリルフール 
.

          2016年エイプリルフール 




オキシモーラン社による新商品のご案内その1

◆ニャン眠剤発売 
 さるNPO法人がまじめに統計をとったデータによると、先進国では97%の人が不眠
に悩んでいるという。その原因が配偶者・恋人、病気、リストラ、職場の人間関係、近
隣関係、社会体制にたいする不平・不満、憤りなどのルサンチマン的憎悪などがあげら
れる。途上国においては明日のコメにも事欠くあり様の生活を強いられている序民は、
一日中重労働にあるため横になれば即ち爆睡し、不眠の悩みどころではない。

 我が家の猫、ミラノ公ドヴィーコ・マリーア・スフォルツァ(通称イル・モーロ)は
私がソファに寝そべっていると、どこに寝ていても私の所へやってきて、体の上でぐう
ぐう眠るのがいつものパターンである。猫がよく眠るという事実は昔から知られていの
だが、それにしてもモロの睡眠時間は並ではない。

 Yahoo(ヤッホー)の『知屁袋』によれば、経典などをネズミから守る為に奈良時
代頃に中国から輸入され、古くは「禰古末(ネコマ)」と呼ばれていたことから、江戸時
代の学者達はこの語源について、いろいろ考証をしていたようである。
 ●「鼠子(ねこ=ネズミ)待ち」の略
 ●睡獣(ねむりけもの)=よく寝る動物の意
 ●ネエネエと鳴くけもの=鳴き声に由来する説。昔の人は、猫の鳴き声を「ネエネエ」
  と表現していたらしい。「こ」は小さいもの、身近なものという意味の解釈。
 ●「ねけもの」が転じて「ねこま」=これは、あの有名な滝沢馬琴が主張した語源ら
 しい。
 ●寝小魔(ねこま)=よく寝る小さな動物の意。魔は神でも人でもない有情生物を意
 味する原語で、動物の総称にも使われていた。

 ところで猫の睡眠時間はだいたい12〜16時間らしい。しかし我が家の猫は測定したと
ころ23時間17分13秒11の睡眠時間で、覚醒している時間はなんと一日わずか47分46秒49
なのであった。そこでオキシモーラン社の富士五湖駐在員の私としてはその特性を世の
ため人のためになる商品開発を思いたった。
 猫の縄張りを示すためのマーキングは尿スプレーと言われ、通常の排尿と違い少量の尿
を垂直な物に立ったまま後方に向かって噴射する行為で、強烈で独特な臭いがする。その
スプレー液を集め、神聖な富士山の湧き水、キツネノカミソリから抽出したアルカロイド
を少々、72時間煮沸攪拌凝縮常温冷却抽出形成方によって純度の高いエキスを睡眠剤と
して販売することである。ヒルティの『眠られぬ夜のために』に書かれている人生、人間、
神、死、愛などの深い思想による安心立命を得ての安眠ではないけれど、アーラヤ識のな
かに潜在的に蓄積された「眠りたい」という己のプラティカルな欲望を誘発させて眠りに
いたらしめる薬である。まずは「睡眠障害で一ヶ月の療養が必要」との医師の診断書をも
らい、表から姿を消した辛利氏にさし上げたい。
 人体への薬の治験はどうなされたかと問われれば、富士五湖駐在員の家族が半年間の実
験の知見のうえ、スマホ、パチンコ、アルコール・ニコチンなどの依存症、腎臓、肝臓、
骨髄などの器官の機能を障害するような副作用も全くない新薬であることをここに証明す
るものである。
 「深川いなせ大学」の滝沢馬券教授(滝沢馬琴より十五代目)によると、使用後の目覚
めは大穴を当てたときの至福感と、野に自由に遊ぶ仔猫のほどよい疲労感を覚えたすばら
しい睡眠薬だというコメントを残している。
 関係者からのお詫び、このたび滝沢馬券教授はニャン眠剤を少し多めに使用したため、
それ以来一度も目覚めることなく、笑気ガスを吸引した時のような、幸せそうなアルカイ
ックスマイルを口元にたたえて安眠中であります。この後のコメントについては滝沢馬券
氏の長男であり、現在「中山競馬大学」の滝沢馬糞准教授に依頼しています。
  ●価格:小瓶  2,980円(ニャンキュッパ)
      大瓶 11,131.719円(いいおとこ いさみ いなせ いき)まるで
         九鬼周造の『「粋」の構造』の神髄のような値段と評判である。
  ●電話:0120-373-2374(おおいにわだい みなさん ふみんなし)まで、いまから
      30分以内に電話を、テレフォンオペレーターを増員してお待ちしています。



オキシモーラン社による新商品のご案内その2

◆『明解宇宙語大辞典』の出版
 ところで皆さんは『亞書』というタイトルの本を知っているだろうか。それはギリシャ
文字がただランダムに並べられているだけで何の意味も持たない文章が書かれている本の
ことを指していて、著者はアレクサンドル・ミャスコフスキーという人物になっている。
 そこで少しwikipediaで調べてみると、「亞書刊行會」という会社から出されていて、
Amazonでしか販売されておらず、64,800円という高額で売りだされている。96巻まで売
りだされているが、全て1点ずつしか売り出されていないという。そして国会図書館に登録
されているという。正式名称は『Книга "?"』なのだそうだ。Книга は書物とい
う意味で、?はヘブライ語で「アレフ」だ。『アレフの書』と訳すことが出来る。
この本は2つの出版社が登録されている。出版社はユダ書院。ユダ書院からは各言語に翻訳
された聖書が出ている。もうひとつの出版社は、りすの書房である。
 さてこの『亞書』には2・3の疑問が生じている。
 ●一つは、書物と言えるかどうかという疑問である。全く意味をなさない表音文字を
  ランダムに並べることに意味があるのか、むしろ構図や記号や模様や装丁など、絵と
  しての芸術としての価値があると考えるのか。
 ●二つ目は、国会図書館法第十一章その他の者による出版物の納入の第二十五条に規定
  してあるからその義務をはたしたのか。
 ●三つ目は、一冊64,800円という価格が妥当かと言うことである。
  ギリシャ文字の一字をランダムに単純に並べているだけで、誤字・脱字等の校正作業
  である初校・再校・三校・著者校などの手間がまったく必要ない。また世の中には好
  事家が百人くらいはいるから一巻発行すると64,800×100=648,000円となり十分ペイ
  出来るのである。ましてや96巻まであるから62億2千80万円にもなるから驚きである。

 しかし国立国会図書館は、発売元から聴取を行い検討した結果、郵送された『亞書』各
巻1冊は、頒布部数が少なく、また、国立国会図書館法に列挙された出版物に該当せず、
国立国会図書館への納入義務の対象には当たらないものと判断したため、『亞書』を発売
元に返却するとともに、発売元に支払い済の納入出版物代償金の返金を求めることとした。
 国会図書館法の「納本制度」とは、図書等の出版物をその国の責任ある公的機関に納入
することを発行者等に義務づける制度のことで、わが国では、国立国会図書館法(昭和23
年法律第5号)により、国内で発行されたすべての出版物を、国立国会図書館に納入する
ことが義務づけられている。
 納本された出版物は、現在と未来の読者のために、国民共有の文化的資産として永く保
存され、日本国民の知的活動の記録として後世に継承されるのである。
 そして今回の『亞書』の問題は、「国会図書館に納品して"代償金" (通常、小売価格の
5割に相当する金額 ndl.go.jp/jp/aboutus/dep… )ゲットする詐欺的行為では?」という
憶測がなされた結果であるという噂もある。


転居30回の放浪人生のブロンズ像 Coppers早川作

いままでの記述は落語における枕にあたる。さてこれから『明解宇宙語大辞典』編纂の
歴史を紐解くとしよう。
三年前に、生まれた三ヶ月ばかりの仔猫が山の下の里村からはるばる登ってきて我が山荘
に居着いた。名をミラノ公ドヴィーコ・マリーア・スフォルツァ(通称イル・モーロ)に
ちなんでその諱を「モロ」とした。 山の奥にひっそりとたたずむ湖水の色のような、わ
ずかに鈍色の含まれるアクアマリンの色の瞳を向けながら、朝な夕なに話しかけてきた宇
宙語を私は手を抜かず全て収録した。そして母星から送られてくる指令の暗号を解読する
ことの役目をになったチーフのサカエ・ル・カミノをはじめ「物集班」の力でそしてその
データを基に、宇宙語を解読し辞書として編纂に至ったわけである。
  下記は母星から送られてくる「ミッション」の暗号文の一例
  5405401791 9477587214 6324863264 4983412604 8640409293
  1481967000 8996483727 2621990112 1910706012 6312782576
  0210369991 8366476103 5213752153 3872301503 7539398181

 私たちの『明解宇宙語大辞典』は『亞書』の場合と全く違い、無償で下記の図書館に寄
贈することにした。
  国名      名称        (現在の蔵書数+新しく加わる1冊)
日本    :国会図書館             (24,988,176+1冊)
バチカン  :バチカン図書館            (1,100,000+1冊)
アイルランド:トリニティ・カレッジ図書館   (5,000,000+1冊)
フランス  :ビブリオテーク・ナショナル   (10,000,000+1冊)

 この『明解宇宙語大辞典』を目にした「中山競馬大学」の滝沢馬糞准教授は、宇宙語は
皆目分からないが「今世紀の大穴を当てたようで、とてもすばらしい」と、意味不明の評
を書いて絶賛していたと聞く。

参照:「物集班」のメンバーは下記の小説『無限回廊』のなかの第一回の登場人物のな
  かでで紹介されている。
   http://2style.in/alpha/0-0.html


               

斜光21号 2017年10年10月



24α編集部:2018/10/17(水) 14:52:58
二〇一七年度エイプリルフール
.
    二〇一七年度エイプリルフール 






  富士山が消えた!!

 毎朝散歩に出かけ富士山を拝むのだが、ここ一週間ほど山が見えない。もっとも全体の
姿が見える日は年問約百日に過ぎないのであるから、私としてはさほどシリアスに考えて
いなかった。しかし今日は晴天で雲一つない青空の中に、普段は半分を占めるほどのおお
きな、雪を被った白い頂とクライン・ブルーの山肌が全く見えず、いつも占めている空間
からそっくり姿が消えたのである。
 そこで数年前、網膜症を手術したことがあり、自分の目が異常であるかもしれないと考
えた。周りの人から変な人だと思われないように、このことは自分だけの問題だろうから
人には漏らすまいと思った。しかし河口湖の北岸にある公園に行くと、子供達が富士山が
ないと騒いでいた。大人達も自分だけ異常と思っていたふしがあったようだが、子供の忌
憚ない意見を聞いて本当だと認識したらしい。
 そのニュースがTVで伝わると、いままで森友学園協奏曲はなかったように富士山の独
演会にとって代えられた。なにせ一億総評論家の時代だから、巷では虚実ないまぜに様々
な憶測が流れているという。侃々諤々、百家争鳴、誠に喧しくなった。富士山の消えた理
由についての論争の中で特に傑作なものは……。

◆花粉症説
  目にいいというブルーベリージャムの商品が全店舗から消えた。二OO九年豚インフ
  ルエンザの国内初感染で「マスクが買えない、薬局が空っぽ、ネッ卜では高値取引」
  などの再来か?

◆嫉妬説
  富七山の御神体として鎮まっている木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめ)が
  あまりの美しく高貴さに満ちているゆえ、嫉妬した浅間山や八ヶ岳などの神々の呪い
  の仕業で姿を隠したという説。ドラッグや毒薬、殺人請負などの危険な闇サイトでは、
  藁人形と五寸釘の需要が密かに増えているという。

◆不倫旅行説
  ペッキー、山本モナ、麻木久に子、桂文枝、渡辺謙、その他大勢の不倫に触発された
  木花之佐久夜毘売命は、一生に一度の火遊び(アバンチュール)にあこがれて宇宙の
  果てまで出かけていって、さるイケメンと逢っているのではないかと憶測する人もい
  た。しかし、もしハップル望遠鏡で覗けたとしても、フライデーに掲載されるのは百
  八十億年後だから、だれも知ることができない。

◆暗黒物質説
  富士山が暗黒物質(ダークマター)に覆われて光を発しなくなったから、我々の目に
  見えないのだという仮説を立てた人もいて、急遮、重力の異常を検知しようと機器類
  を持ちこみ始めたという。また一方では時空の歪みで時間が数十億年逆もどりしたか、
  未来にすっ飛んだかのどちらかだろうと憶測する人が出てきた。

◆UFO説
  UFOの秘密センター基地は富士山の噴火口の中にあったが、あまりにもくだらない
  日本の国の政治論争に呆れはてて、もっと高度な文明の惑星を探すことを中央から指
  令されたのだという。だから地球から去る時に母船から出た噴射ガスで山が粉々に吹
  き飛んだ。その現象を見たと主張する人が出てきた。

◆神罰説
  旧約聖書の「創世記」十一章にあらわれるバベルの塔のように「さあ、我々の街と塔
  を作ろう。塔の先が天に届くほどの。あらゆる地に散って、消え去ることのないよう
  に、我々の為に名をあげよう」。神はそのことに怒り、人々の言語を乱し、通じない
  違う言葉を話させるようにした。それと同じように、ゴミの放置や不法投棄や違法採
  取やマナー違反の登山者などの不敬等々、あまりにも霊峰富士山への冒瀆に木花之佐
  久夜毘売命が怒り、あらゆる人の視覚を狂わせようと考えた。

◆マジック説
  カカッパーフイールドの自由の女神消失、エッフェル塔消失などのマジックだと言う
  人もいて、種明かし大辞典を抱えて仕掛けの種を探しているマニアがいた。

 富士山が消えたことで世界中から物理学者、地理学者、地政学者、心理学者、宗教学者
政治学者、言語学者、気象学者、経済学者、教育学者、憲法学者、社会学者、民族学者人
類学者、地質学者、地震学者、 天文学者、医学者、 セイル学者、歴史学者、UFO学者
宇宙学者、および映両評論家、オーディオ評論家、音楽評論家、株式評論家、軍事評論家
経済評論家、芸能評論家。競馬評論家、建築評論家、航空評論家、自動車評論家、写真評
論家、政治評論家、美術評論家、風俗評論家、文芸評論家、野球評論家、鉄道評論家、服
飾評論家、舞踊評論家、マジッシャンそして拘摸師、詐欺師、強盗犯などのものすごく大
勢の人達で、富士山を取り巻く町は銀座並みの混雑を呈している。
 ところで、今回この現象の解説者として急遽来ていただき、中央競馬大学の滝沢馬糞准
教授のコメットをいただきました。「あくまでも私見ではありますが、今日の中山競馬場
ダービー卿CTは三枠のロジチャリスと十一枠のマイネルアウラートの連単をおすすめし
ます」。こりゃ駄目だ、私は競馬の予想を頼んだわけではないのだ。コメントの裏を読み
取ると、滝沢馬糞准教授はこの事件の真相について全く理解できていないということにつ
きるだろう。
 これは准教授が悪いというのではなく、私か慣れ親しんだ富士山の突然の喪失に周章狼
狽するあまり、解説者の選任ミスということだった。私は早く山荘に戻ってロラン・バル
トの『喪の日記』でも読んで、心の寄る辺なさを埋めるしか思いつかなかった。

(斜光23号掲載)

          



25α編集部:2019/10/24(木) 14:28:03
二○一八年度エイプリルフール
  二○十八年度エイプリルフール

 我が家の飼い猫『ミラノ公ルドヴィーコ・マリーア・スフォルツァ(通称イル・モロ)
の名前を付けられた−我が家では「モロ」』が外に出かけるときどこへ行くか訪ねると、
ちょっとアルバイトの相談に一?先の里まで山を降りてくるという。さては毎晩細君にね
だっている『いなばペットフードの「CIAOちゅ〜る」』代を自ら稼ぐ気になったか、 動
物だって自立することはいいことだと私は喜んだ。

 半月ばかりして火曜、木曜、土曜と週三回、朝の十時から午後の三時頃まで出かけてる
ようで、アルバイトが成立したらしい。どのような仕事が問い質したところ、ある晩、
『富士高天原王朝(ふじたかまがはらおうちょう)』の夢をみて神託を授かった。ここ富
士の地のためにどんな事でもいいから尽力を尽くせという、実に具体性がなく多義的で曖
昧模糊としたものだったという。丁度そんなとき、えさ台を独り占めして居座って腹一杯
食べている、「モロ」と仲良しの『田舎紳士風の山雀(やまがら)−エノケン君』からア
ルバイトの話があったという。いかにもうらぶれた『日月神社(にちげつじんじゃ)』で
パフォーマンスをやって神社の復興のために努力してみないかということだった。
 「山雀(やまがら)」という小鳥は「おみくじ引き」、「つるべ上げ」、「鐘つき」、
「かるたとり」、「那須の与一」、「輪ぬけ」など多彩な芸の持ち主である。一方「モロ」
はどのような芸を披露するのだろうかと私は思った。
 最近私と細君が街まで買い物に出かけるとき、やっと車がすれ違いのできるほどの隘路
(あいろ)は、三々五々と歩いている外人の旅行者で埋まっている。街の帰りに湖にそう
広い通りを右に曲がり、人をかき分け我が山荘に向かったところ、日月神社の広場で人の
混雑は終わっている。私達はちょっと先の空き地に車をとめて神社まで歩いて戻ってみた。

 これまでは広場は子供の遊具が申し訳程度にあり、鳥居は古色蒼然とした小さくてみ
すぼらしく、本殿に続く石段も今に崩れそうで、社務所さえなかった。それがいまで周
囲には御影石のピカピカの玉垣が出来、朱色鮮やかな大きな鳥居もでき、社務所には白い
小袖(白衣)に緋袴を着た美しい巫女が一人座っている。よく見るとそのそばに熊野古道
でみた不遇の王子達を祭ったような小さな祠(ほこら)があった。その中にしつらえられ
た台の上に『モロ』がこちらに尻を向けている。拝観客がお賽銭を上げると、玉串に見立
てて灰色の尻尾に垂(しで)や木綿(ゆう)をつけサッサッと鋭く動かし、拝観者のお祓
いをしているのである。その尾っぽ裁き、その切れ味、その荘厳さは見事というほかはな
く、確実のあらゆる罪穢れを徹底的に祓い浄めていることは確かである。
 一方『田舎紳士風の山雀(やまがら)−エノケン君』は奥に設えられている春日造(か
すがづくり)の小さな拝殿の扉を器用にくちばしで開け、おみくじを一本(いっぽん)く
わえ、戻ってきて客に渡して一礼をする。そして『モロ』は奥の右の穴に、『エノケン』
君は左の穴に同時に隠れるという一行程のパフォーマンスである。これが観光客には大い
に受けた。その画像は世界中発信され、平和に慣れ刺激を求めている退屈している人々に、
一度は行ってみたいという気持ちにさせたのは確かだ。

 しかし一方某国の厳しい動物愛護団体からクレームがきた。これは動物虐待ではないか、
弱いものを慈悲や救済で救うべき東洋の宗教が率先して動物の虐待を認めるのかというの
である。これに対してweb上で反論もなされた。それによると『モロ』も『エノケン君』
も己の意思で選んだ労働を誇りと思い喜んでいるのではないか、だから人間が考えるよう
な動物虐待には当たらないという論である。
 ここで中山競馬大学の滝沢馬糞准教授にコメントをもらうと・・・・・・。
 西洋ではシェイクスピアの時代からその数世紀後まで、貴族たちは愛玩用子犬や鳥たち
を熱愛する一方で、ほとんど飢え死にかけている雑種犬が街を徘徊していたり子供たちが
公衆の面前で猫を拷問していることは無視していたという。
 キリスト教では犬や猫などの動物は人格がなく、人間に奉仕する「物」としか認識して
いないとおもわれる。神の形に作られた人間は、それ以外の動物の支配者で、動物を殺し
て食べようと、労働の道具に使用しようと、動物に何をしてもいいというのがキリスト教
の動物観でだという。
 一方東洋では同じ生き物として共存しているという考えがある。それは今は人間として
生きていても来世は犬や猫に産まれる可能性があるという、仏教における輪廻転生の概念
が大きく影響している。だから仏教は、動物を含めたあらゆる生命を慈しみ尊重すること
を推奨している。殺生を生業とする人以外は、動物を傷つけても殺してもいけないと説い
ているのである。
 滝沢馬糞准教授はここまで述べて、私の本業である今年の桜花賞、皐月賞の馬や騎手や
馬場の状態を分析をして、生徒達に確率論から演繹した「大穴予想」を教示しなければな
らないので・・・・・・と言って急いで消えてしまった。
 そのご『モロ』と『エノケン君』は『日月神社』の正式な新官補として採用されたとい
う。めでたしめでたし。

◆参照(Wikipediaによる)
日月神社(にちげつじんじゃ)
村上天皇の御代、天暦年間(926-967)の創建された。江戸中期には御手洗浅間とあり、 身
を清め、浅間本宮(河口浅間神社)に参拝する前の公斎社として祀られていました。祭神
は御三体で木花開耶姫命(このはなのさくやひめ)、天照皇大神(あまてらすおおみかみ)、
月読命(つくよみのみこと)。

木花開耶姫命(このはなのさくやひめ)
天照大神(アマテラス)の孫であるニニギノミコト(瓊瓊杵尊、邇邇芸命の妻。オオヤマ
ツミ(大山積神、大山津見神、大山祇神)の娘で、姉にイワナガヒメ(石長比売、磐長姫)
がいる。ニニギノミコトの妻として、ホデリ(海幸彦)・ホスセリ・ホオリ(山幸彦)を
生んだ。

天照皇大神(あまてらすおおみかみ)
天岩戸の神隠れで有名であり、記紀によれば太陽を神格化した神であり、皇室の祖神(皇
祖神)とされる。神社としては伊勢神宮が特に有名。

月読命(つくよみのみこと)
天照大神(天照大御神・あまてらす)の弟神にあたり、須佐之男(建速須佐 之男命・た
けはやすさのお)の兄神にあたる。

◆ 富士高天原王朝(ふじたかまがはらおうちょう)
宮下文書(みやしたもんじょ)は、富士山の北麓、山梨県富士吉田市大明見(旧南都留郡
明見村)の旧家、宮下家に伝来する古記録・古文書の総称である。「富士古文書」「富士
古文献」などとも称される。神武天皇が現れるはるか以前の超古代、富士山麓 に勃興し
たとされる「富士高天原王朝」に関する伝承を含み、その中核部分は中国・秦から渡来し
た『徐福』が筆録したと伝えられている。だが、その信憑性については疑いがもたれてお
り、いわゆる古史古伝の代表例に挙げられる。
文体は漢語と万葉仮名を併用した記紀風のもので、筆者・成立事情は不明]。助詞の用例
や発音など言語的特徴から幕末期の成立であるとも考えられている。大正時代には宮下文
書をもとに美輪義熈『神皇記』が成立した。

「宮下文書」は、大きく分けて3つから成り立っています。
? 日本開びゃくから神々の時代を経て、第12代景行天皇に至るまでの古代日本史。
? 富士山の麓に栄えた高天原と、かつてそこにあった天皇の住む都・家基津のこと。
? 歴代の宮下家大宮司たちが書き残した日記類「寒用日記」。
この膨大な古文書を一冊にまとめたダイジェスト版「神皇紀」が、初めて世に出たのは
大正10年(1911)の事でした。
「宮下文書」の最大の特徴は、登場する神々は、神話的な存在ではなく、全て実在の人物
として描かれている点です。
さて、はるか昔、天地開びゃくの時まで話は遡ります。原初の神々は、まず蓬莱山上に噴
火と共に出現し、世界に散っていったと言います。中国に降臨し、そこに住み着いた神々
の子孫に、農作比古神(高皇産霊神タカミムスビノカミ)がいました。この神は別名「神
農」といい、古代中国の伝説的皇帝でもあり、現在でも中国人の間では農業・医薬の神と
して信仰されています。
「神農」は、そこから東海のはるか彼方に、世にも美しい形をした「蓬莱山」があると耳
にし、まず、御子である「国常立尊」にその地を捜し出すよう言いました。
ところが、いつまで待っても息子は帰って来ません。それもそのはず、彼は日本列島にた
どり着き、そこを気に入り、現在の淡路島に定住してしまっていました。
そうとは知らぬ「神農」は、もう一人の息子「国狭槌尊」を連れて、自ら日本列 島を目
指すことにしたのです。それは、眷属700人を従える大船団でした。
「神農」は、朝鮮半島を経由すると、まず対馬に、そして佐渡島・能登半島に上陸しまし
た。そこから陸路で飛騨山中に至った時に、はるか遠くに美しくそびえる蓬莱山を発見し
たのです。彼らはその位置を確認すると、再び船を出し、北九州から瀬戸内海、紀伊半島
を回り駿河湾にたどり着いたのでした。
(飛騨から陸路で行った方が早かったんじゃね?(笑))
そして蓬莱山、すなわち富士山に到着した「神農」は、その北麓を都と定め、「家基津(か
きつ)」と命名したのです。
その富士山北東あたりを、「阿祖谷」または「阿祖原」と呼び「高天原」として「富士王
朝」を築いていくのです。
だいぶ経ってから兄の「国常立尊」も富士山を捜し当て弟たちと再会するも、父の「神農」
は既に亡くなっていたそうです。その後ふたりは、富士高天原の「阿祖谷」の都を中心に、
日本を平定・統治していきます。
やがて、「国常立尊」の娘・イザナミノミコトと、「国狭槌尊」の息子・イザナギミコト
は夫婦となります。この夫婦の間に生まれたのが「天照大御神」です。



26α編集部:2020/12/02(水) 07:01:47
2019年エイプリルーフール/猫の労働争議
.
2019年エイプリルーフール/猫の労働争議



 ある日「モロ」は日月神社(にちげつじんじや)の神官補(ニューロン・カフェ:2018年
4月 1日エイプリルフール参照)としての一日の仕事を終わって山荘へ帰る途中、空き地
の草むらでW設備会社(この地域の水道の供給管理をしている会社)に飼われている「カ
ルキ」に呼び止められた。みると五、六匹のいろいろの模様の毛皮を着た猫たちが、車座
になって何か相談している様子だった。「モロ」の日月神社(にちげつじんじや)の神官補
については下記のURL参照。
  https://9330.teacup.com/alpha/bbs/5365

 W設備会社の「カルキ」、H工務店の「カンナ」、S薬局の「大麻」、E電気工事店の
「ボルト」、某農家の「エダマメ」・「モヤシ」・「シシトウ」の三匹の兄弟とその連中
である。
 「モロ」は生まれて数ヶ月の頃この近くで親と一緒に暮らしていた経験があった。その
後Blackberry Cottageという名の山荘の食客となって、『ミラノ公ルドヴィーコ・マリー
ア・スフォルツァ(通称イル・モロ)』にちなんだ名前をつけられ、巷では矢場徹吾のよ
うな哲学的寡黙・上品・優雅に暮らしている出世猫と噂されて一目置かれる存在だった。
Blackberry Cottageの持ち主である赤松次郎自体が若い頃自分の家が「梁山泊」となっ
て多数の食客を出入りさせていた環境もあったから、野良猫にたいしては「カトー」・
「キケロ」・「ペトロニウス」・「ギトン」などと、勝手に渾名(あだな)をつけて追い払
わずにからかって楽しんでいる。

◆道草その1:猫の名前 (wikipediaより)
 最近の猫の名前のランク1位から順にレオ、ソラ、コテツ、コタロウ、レオン、マル、
マロン、ムギ、フク、ハルということらしい。一昔前の白、黒、三毛が普通であった。
 流石に偉人や有名人の名前をつけた猫を調べても「モロ」は一匹もいない。まあ名前
 を持っている猫たちは、苦沙弥(くしやみ)先生から名前も付けてもらえなかった猫よ
 りはまだま しだろう。

◆道草その2:猫を愛した芸術家 (wikipediaより)
 ・大佛次郎は、生涯にわたり猫を500匹以上面倒をみた。
 ・池波正太郎は「猫のいない生活は考えられない」という。
 ・三島由紀夫は「猫を心の支えてとして生きていた」ほどのだった。
 ・幸田文は犬好きであった父親の幸田露伴が亡くなった後、猫を飼い始め、最後の飼
  い猫の名前は「阪急」といった。

 ・向田邦子は猫好きな作家で猫の名前はマミオといった。
 ・内田百?は猫の出奔(しゆつぽん)の悲しみを綴った『ノラや』は有名。
 ・ヘミングウェイは異常なる猫好き、キューバに建てた御殿はワンフロアに50匹の猫
  が暮らしていた。
 ・ヘルマン・ヘッセは、内向的な性格が猫を描く事によってかなり改善したと言いう。
 ・パブロ・ピカソ氏も猫好きの画家で、ミヌーという猫と暮らしていが、この猫は
  ピカソの膝から降りようとしなかったそうだ。
 ・サルバドール・ダリも猫好きで有名な画家で、オセロットという猫種のバブーとい
  う愛称の猫を飼っていた。
 ・ジャン・コクトーはフランスの猫好き作家。家族であったシャム猫の名前はマドレ
  ーヌだった。

 さて本題に戻ると、ここに集まった連中は不遇な環境の猫たちのために猫同盟を組織
して飼い主への猫権の確立、労働環境改善の要求をしようと画策しているというグルー
プなのだ。
 しかし猫と人間との関係は一般に労働契約とみなされるかという命題が成り立つだろ
うか。人間としてはそこまで真剣に考えて猫を飼っていないというだろうし、猫たちが
そこまで知能が発達していて目的意識を持っているとは夢にも思っていないだろう。そ
れはお互いに使用している言葉を理解しようとしないために起こる無理解さなのである。
 猫だって記憶力や判断力はある。猫は人間の子どもで言えば2歳 、イヌは人間の3歳、
チンパンジーは人間の4歳並みの知能があると言われている。
 だが猫たちが要求を突きつけても飼い主達が団体交渉に応じるかは疑問である。だか
ら遅看党(じみんとう)・利権眠酒党(りつけんみんしゆとう)・乞う鳴党(こうめいとう)
・似叛狂惨酸党(にほんきようさんとう)・痔有倒(じゆうとう)・斜界罠首刀(やかいみん
しゆとう)などの政治団体に相談するか、またはユニオンの関西ナマコに持ち込むかを討
議した。ただし、労働組合法第7条の二に使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉を
することを正当な理由がなくて拒むことをしてはならないとの条文はあるが、見ず知ら
ずの合同労組(ユニオン:関西ナマコ)等からの団体交渉の申し入れを無条件で受け入
れる法的義務は、まったくないとある。
 考慮の末、この問題は政治や合同労組に助けを求めることをせず、大石地区猫同盟自
らの力で直接飼い主達と交渉し解決することに決定した。

 要求内容は
1.ペット契約またはネズミ駆除等の労働契約をむすび正当な報酬をえること。
  2.猫は犬と違って人間を攻撃したりはしないので、恣意的に突然の解雇や駆除はし
   ないこと。
  3.肖像権及び生殖権を認めること。一方的に画像を公開したり去勢手術をしてはな
   らない。

  4. 居住環境の改善として、屋根の下で最低気温20°Cの眠る場所を確保すること。
  5.食の確保・改善として十分なペットフードを備え、一日に三回チャオチュール供
   与すること。
6.いくらペット契約したとしても、髭を切ったり眉を描いたり高所から落としてみ
   たり、帽子や洋服などといった華美な装いを妄り(みだり)に強いてはならないこ
   と。ただし首輪や鈴の装着はこの制限から除く。
  7.猫の就活や婚活などの悩み相談の機関を設置すること。
  8.病気の時は速やかに犬猫病院にて診察させること。
  9.団体交渉権の獲得をめざして都道府県労働局の紛争調整委員会に届けること。
  10.猫は本能として昼間は寝ることが仕事ということを認めさせること。寝てばかり
   いて気楽な商売だと揶揄されるいわれはない。夜はちゃんとネズミを捕ったり、
   家の周りを警戒したり、柱を磨いたり等仕事はちゃんとしていることを理解させ
   ること。
  11.以上の目的を達成するため、人・猫のコミニケーション促進のための「共通言語/
合図修得学校」を創設すること。

しかし労使交渉が解決しない場合の労働争議も頭の中に入れておかねばならない。そ
の戦術は・・・。
  1.ストライキ:労働法の争議権の行使として雇用側(使用者)の行動などに反対し
   て被雇用側(労働者、あるいは労働組合)が労働を行わないで抗議することであ
   る。日本語では「同盟罷業」という。
  2.ピケッティング: 労働者側がスト破りを防ぐために組合員が職場を見張って他の
   労働者を入れさせないようにし、ストライキなどの実効性を確保する行為である。

  3.サボタージュ:労働者が仕事の能率を著しく、又は会社にダメージを与えている
   ことが判る程度に落として会社に自分たちの労働条件の向上のメッセージを送る
   ことである。
  4.ボイコット: 労働者が自社製品の購買を控えるように訴え、使用者に経済的打撃
   を与え、自らの団体目的達成を目指す行為である。「不買運動」ともいう。原則と
   して合法であるが、取引先に不買を働きかける二次的不買運動は違法とされてい
   る。

 同じ船に乗って航海しているのに搾取する側と搾取される側という対立軸で考えるこ
とがそもそもおかしい。お互いに信頼関係がなくては船は真っ直ぐ進まないだろう。い
ずれ座礁して搾取側も搾取される側も死にいたるは目に見えている。マルクスの時代の
労使対立とは違うのだ。
 ともかく「モロ」の努力で朽ち果てそうな日月神社を大勢の外国からの参拝者を呼び
寄せここまで復興させた実績があり、飼い主側の代表として日月神社の木花(このはな)
宮司に頼む方がいいだろうとなった。
 さて、メーデーの日はどの結果になっているだろうか。「モロ」の飼い主としては大団
円を迎えることを望んでいるのだが・・・。

追:恒例の中山競馬大学の滝沢馬糞准教授のコメントを忘れていた。
「花粉症がひどダメに今回の糞灸(ふんきゆう)にたいするロン豹(ろんぴよう)ができず、
猫(ねこ)んでしまったので足(あし) からず」馬琴
とても知識人としての教養と見識を疑わせるような、河豚島水?(ふぐしまみずぽ)なみ
の誤字・脱字・意味不明だらけの駄文をよこしてきた。ここに掲載することを躊躇した
が、某マスゴミの−事実を伝えないという自由−は許されないといつも批判している立
場としては、コメンテーターの選択を間違えた恥を忍んで掲載することにした。
御免!!

     



27α編集部:2020/12/15(火) 13:04:58
『31』  斜光25 コラム
          『31』??


??オルガ・トカルチュ著『逃亡派』を読み終えた。人生とは旅であるということらしく、
様々な人物がいろいろな時間・場所へと移動している。

 同人誌に掲載の『老いと詩境(7)』のなかで、北勲氏が自分の三つ子の魂は「縛られ
たくない」ではなかったかと語っていた。彼との付き合いは『斜光』の創刊からと言って
よいが、この「縛られたくない」は私の三つ子の魂とぴったりと一致している。このため
私は縛る要素が身の回りに生じると早々と動き出すのである。

 これまで私は30回の転居をし、今は標高千メートルの山中で暮らしている。たぶん今
まで述べたような放浪の姿は、身の回りにまとわりつく柵に「縛られたくない」という性
癖によるものと思われる。そしていずれ31回目の転居となるだろう。はたしてその先は
天国なのか地獄なのか無の世界なのか。本人には選ぶことが出来ず実に間尺に合わない話
であるが、素数愛好家としては31の数はまんざら悪くない。

(斜光25号 番外編 コラムより)


       



28同人α総務:2022/01/17(月) 13:06:03
2020年度エイプリルフール
.
      2020年度エイプリルフール


◆「モロ」の探偵家業??
 飼い猫『ミラノ公ルドヴィーコ・マリーア・スフォルツァ(通称イル・モロ)の名前を
付けられた「モロ」』は、日月神社の神官補、猫の労働組合の代表などの仕事をこなして
いて近隣の猫たちに信任されていた。ある日「兄貴この地域の情報収集に手を貸してくれ
ないか」と、件のW設備会社の「カルキ」、H工務店の「カンナ」、S薬局の「大麻」、
E電気工事店の「ボルト」、某農家の「エダマメ」・「モヤシ」・「シシトウ」の三匹の
兄弟達に要請された。そこで「モロ」も新型コロナウイルスの世界的な蔓延で、外国人の
日月神社への参拝客も激減して暇ができたのを幸いに、その気になってしまった訳だ。し
かももう一つのきっかけも大きかった。
 先日Blackberry Cottege の主人の仕事部屋で彼の日記帳を見つけた。もう既に何十
年も続けているらしく、全般は市販の小体なビジネス手帳、後半は26穴の黒い布張りの立
派なバインダーに閉じられていて、中には300ページにおよぶ年度のものもあった。この
記録類を見ていると山荘の主人は一目には「おーまん」のようであるが、実に几帳面で細
かい真面目な性格だったのではないかと思うだろう。しかし内容を読んでみると結構「オ
キシモーラン」的遊びを楽しんでいたようで、いたるとこに想像・妄想、諧謔・目くらま
し・なりすまし・擬態・欺しを飛ばしていて、どこまでが真実でどこまでが創作であるか
判然としない文も多かった。
 実はこの山荘に隠遁する主人Kは、以前、湯島聖堂をはさんだ斜向かいに「昌平坂探偵
事務所」を開業していたという。
 さて、Kが探偵家業を発起するにあたり、その願望は「もう一つの職業を選ぶとすれば、
私はフィリップ・マーローやエラリー・クインのような探偵家業をやってみたい」があっ
た。時には変装し、時にはカーチェイスをし、クライアントに依頼された捜索や謎ときを
はたしてなにがしかの金を手にするのだ。暴力的ではあっても「女性には優しく、男には
つれなく」なければいけない。ただ年を取ると例えば医者や弁護士のような、病気や恨み
や怒りや情のもつれなどの人生の負の部分に立ち入る職業は、結構時間も体力も気力にお
いても強靱さを要求され、その覚悟は半端ではない。世の中重労働に比例して報酬も高く
なるのだから、安くても適当にお茶を濁せる楽な仕事と天秤にかけると、結構人生のトー
タルのバランスはとれているように思えてくる。
 そして今更そのような難関の資格も取れないのと、もはや人々の人生の負を正してあげ
ようという正義感も高揚感も湧いてこないので、猫や犬などの迷ったり家出したペット達
を探す探偵業がよかろう。それは村上春樹の『海辺のカフカ』に出てくる猫探しを業とす
る少し頭の変な老人がモデルだ。急がず騒がずマイペースでまるで猫になったような気分
で気ままに生きるように。
 滅多に訪れる客も来ない探偵事務所の窓から、オレンジバーミリオン(国鉄朱色1号)
の中央線、カナリアイエロー(国鉄黄1号)の総武線、レッドの丸ノ内線の電車の行き交
う神田川を眺めながら過ごすことが多かったらしい。
 しかし2007年度の日記の内容では、ペット探しの合間に様々な看板や面白い情景を集め、
記録したようだ。いざ始めてみると、浮気調査などといった興味の尽きない好奇心や危険
を伴う「血湧き肉躍る」ような冒険心を満たす仕事は少なく、ペット探しなどと言った平
凡な仕事をしているうちに「面白い情景」に惹かれていったのではないだろうか。

その記録の内容は・・・??

「面白い情景」その1 
 いつもの散歩に出る。お茶の水橋を右に曲がり、アテネフランセを脇にみて飯田橋へ。
その途中にドキッとする看板を見た。「イノチシラズ印」の藍染の木綿の袢纏を売る店で
ある。たしかに昔は勇み肌の火消の衣装として命を張ったに違いない。それにしても「イ
ノチシラズ」とはよくも名付けたものだ。
 刺し子の施された袢纏は現在はウン十万もするほど高価なものとか。いまでは鳶や火消
しの袢纏姿はお祭りの時にしかみられないものだが、一度私も着て「おとこだて」の晴れ
がましい気持ちで歩いてみたいと思った。





「面白い情景」その2
 湯島天神下でなんとも意味不明な看板を見た。駐車禁止までは理解できるが、関係者厳
禁がどうも解せない。関係者以外の行きずりの車だったら勝手に駐車してもかまわないの
であろうか。





「面白い情景」その3
 西片の方へ下る菊坂の途中で変な看板を見付けた。どうも散髪屋らしく、ドライヤーを
拳銃に見立てて弾を発射しているらしい。その店の名前がCHAMPIONというのだろ
うが意味不明なのに、よくぞ命名したと思う。持ち主は理髪の技能のチャンピオンなのか、
それとも言葉の調子に惚れたのか。よく見るとご丁寧に発射音の衝撃を避けるべく、人差
し指で耳を塞いでいる。
間違って店の客になれば、かつての具志堅用高やパパイアのような爆発髪のアフロヘアー
に無理矢理させられるかもしれない。





「面白い情景」その4
 真砂図書館の傍、鐙坂(あぶみざか)と炭団坂(たどんざか)に挟まれた北斜面の閑静
な土地がある。1メートルくらいの通路は自動車も通らず、緑の多い散歩道だからよくそ
の道を通るのだが、一寸その雰囲気にそぐわないなものを見付けた。「中村さん・高島さ
ん土地返して」という看板である。自分の土地を浸食されたのであろうか、深刻そうであ
るのに「返せ」という命令口調ではなく「返して」とお願いしているところが、妙にとぼ
けた滑稽さ与えていてなかなかいい。
 以前に安部譲二だったと記憶するが「南進木」(なんしんぼく)という木が出てくる小
説を読んだことがある。どのような筋だったかは判然と記憶していないが、詐欺師の物語
だったように思う。自分の土地の南側の庭に隣地との境界を示すその「南進木」を植える
と、毎年少しづつ成長するに従ってその木は南に進むらしい。だから10年もたてば南側の
隣地を浸食してじぶんの土地が増えるといった内容で、確かに植物は太陽の方向に生長す
る性質を持っているから、ありそうでなさそな話である。
 依頼された建物を計画してもいざ建設しようとするとき、隣との地境で揉めることがあ
る。「境界はここではない、もっとそっちだ」などとお互いに主張し合い、何世代も前か
らの不満が一気に吹き出すことがある。長い間積もり積もった隣への不信感がたとえ数セ
ンチ数ミリのことなのに、もはや一家の存亡を掛けた戦いとなり簡単には解決しない場合
がある。共同住宅の音や、ペットの匂いや、嫉妬や妬みといった感情を起こしやすい相隣
関係はなかなか難しい問題だ。

      ??


「面白い情景」その5
 東京医科歯科大学の病院の裏手で、とても考えられない物同士が情熱的に抱擁している
ような情景をみた。自転車に巻き付いた昼顔は不思議な自分達だけの世界を作っているよ
うに私にはみえました。野暮なことはしないでこのままそっとしておきましょう。
      ??



「面白い情景」その6
 今日は神田明神まで行って、男坂を下り湯島天神まで回り道をする。最近は路地裏の猫
道」をよく歩く。そして野良猫の生態を観察すると結構面白い。
 野良猫は人間にたいして不信感があり警戒心が強く、なかなか近づけない。つねに車の
下や狭い塀の間の逃げ込む場を意識しながら行動している。いくら近所の人が餌を与えて
いる様子でも野生の性質が抜けなくて、人が近づくと物陰に走り込む。その点、仕官先の
庇護のもとに安定した暮らしと愛情をうけている飼い猫は人間を敵と見なさないので、近
づいて触れてもすぐに逃げ出すことはない。写真は家の中から余所の猫を見ている5匹の
飼い猫達。

      ??



「面白い情景」その7
 今朝は金木犀の香りが漂う春日通りを上野広小路、アメ横へと野良猫と面白い看板を探
しに出かけていった。そう言うわけではないがブルージ−ンズに鮮やかな金木犀の花の色
のポロシャツを着て・・・。
 どこからともなく漂ってくる清々しい微かな金木犀の香りを探して辺りを見回す散歩も
また乙なものだ。同じようなもので銀木犀という木がある。花は白色で形状と香りは全く
同じであるが、ヒイラギモクセイという種類は葉がヒイラギのようにぎざぎざしている。
この木も注意してみるとあちこちに植えてあることが多い。
 当節は金木犀の香りは子供に言わせると「トイレ」の匂いだという。確かに芳香剤によ
く使われるからだろう。そして私が昔は好きだったのだがその後嫌いになったものがある。
それは「百合の香り」である。
 夏目漱石の「それから」で、代助が友人の妻である三千代とともに生きる決意をする序
曲としての場面がある。そこにはむせるような強い魅惑的な百合の香りがあり、それをと
おして彼と彼女の情念の動きを記述しているようだ。
 しかし、近年とみに数を増した葬儀の祭壇に必ず飾られるようになってしまった花と香
りは、私が好きだった女性に対する魅惑の思いをかきたてさせるものから、喪失感や無常
観などの暗いイメージを想起するものへと変わってしまったから、百合の香りが漂って来
るときいつも陰湿な暗い気分になってしまう。
 さて今日の収穫は、盛り場で出されたゴミにカラスの数匹と二匹の子猫。それから「の
む蔵」と書かれた飲み屋の看板。湯島天神の前の「ウメヤ産業」の看板。まさか少子化を
憂えて「産めよ増やせよ地に満ちよ」とばかりにそのノウハウを商売にしているのでは・
・・。




「面白い情景」その8
 左の看板は何を表しているのか判然としない。今流行のリフレクソロジーという、足を
マッサージする店の広告であろうか?
 右の看板は字が反対の看板。念のため反対側を覗いてみると、やはりこちらの文字も反
対になっている。職人が右と左の面を間違えてとりつけたか。いやまてよ、意識的に宣伝
効果を狙った代物か?いささか観察者を悩ませる看板だ。




「面白い情景」その9
 この前昼飯に家に帰る前に後楽園から神田神保町を廻ってみた。秋晴れの気持ちの良い
日で面白い旗を見た。
 「ナンダかんだ西神田」というだじゃれの文字を表した垂れ幕というか、旗というか橙
色の目立つものが吊してあった。建設中の現場には「安全・安心」、労働運動には「団結」
などの文字を書いた布切れをやはり旗と呼ぶようである。
 神保町の交差点を駿河台下の方へ歩くと「神田古本祭り」をやっていた。今日が最終日
なのだろう、車道側の俄造りのベニヤの書棚はおおかた空になっていた。古本屋の店先に
うずたかく積んだ名のある文豪や思想家の紐で結わえられた全集物を見ながら私は歩いた。
 あれもこれも欲しいのだが、難しい物に挑戦するための時間と積ん読のための空間に難
があり、いつも諦めているのだ。しかしこれから歳を取るに従って、長時間にそして難解
な内容に耐えるだけの気力が残っているかが問題だ。お茶の水橋を渡って、順天堂病院の
脇を通って家へ、約一時間の散歩をした。





◆「神田の街をうろつく“目利きのノラ”ではないか。観察力表現力もたいしたものだ」
「モロ」はこの記録を読み終わった後、主人Kがまた職業を変えるのではないかと思った。
そうならない前に、経験談と技術と装備品、及び報告書、請求書の書き方などKから詳し
く伝授してもらわなければならない。
 この一ヶ月、朝夕の散歩や夜薪ストーブの前のくつろぎの時間にKから聞き取った話を
「モロ」はレポートにまとめた。

? 実際の探偵の業務は、「調査」と「工作」に大別される。
 素行調査・浮気調査・家出人探し・債務者探し・裁判の証拠収集・ストーカー対策・
 過去調査・特殊工作・別れさせ工作・リストラ工作・統合失調症工作・痴漢冤罪工作な
 どである。
 そしてその経費はどれくらい掛かるだろうか。
  素行調査・・・・・10万〜500万
  浮気調査・・・・・50万
  家出人探し・・・・50万〜500万
  裁判の証拠収集・・50万
  ストーカー対策・・40万
  別れさせ工作・・・200万
  リストラ工作・・・150万

? 探偵が常に携帯している7つ道具とは、テープレコーダー・小型懐中電灯・折りたたみ
 傘・日よけの帽子・メガネ・単眼鏡・ビニール袋・現金と運転免許証・ピンホールビデ
 オカメラ・CCDカメラ・暗視スコープ・盗聴器・盗撮カメラ発見キット・ 盗聴プリケ
 イ等など。

?ペット探しに携帯するもの
??上記の道具の他に、鰹節とかマタタビ・猫じゃらし・潜望鏡。
 その他猫の鳴き声も練習する必要がある。猫の集まる場所の地図等も追々作らなければ
 ならない。

?追加資料:差し馬をこよなく愛するKの長年の友人不忠(ふちゅう)競馬大学名誉教授
 の滝沢馬刺(ばさし)氏が「モロ」の探偵稼業にギャロップで送られてきた応援レター
 は下記の通りである。

「元来探偵という職業は相手に気取られずに情報を得ることが大事である。その点、猫で
あるモロ君は漆黒の闇でも目的物が見えるし、抜き足差し足忍び足と音を立てずに近づけ
るし、木にも登れるし、天井裏にも小さな穴にも身を潜める、一番の利点は身近にいても
何ら不信感を抱かせない。猫自身の機能を駆使すれば、人の使用する二十数種の探偵用具
のうち、カメラとテープレコーダー以外は不要である。だから目的物の足下まで近づき、
鮮明な写真や明確な会話の録音データを得ることが出来て証拠として貴重である。だから
適性としては大いに有望であるから今後の活躍を期待する。

追伸:モロ君に4月12日の「桜花賞」に出馬する馬達の調査を大阪までいってくれないだ
ろうか」以上


◆最後に、「モロ」は山荘の主人Kから一番大事な「パラダイム」を申し渡された。
 それはカエサル自らが書いた『ガリア戦記』にある。
  第1巻(紀元前58年) - ヘルウェティイ族との戦闘、アリオウィストゥス率いるゲル
             マニア人との戦い
????第2巻(紀元前57年) -??ガリア北東部(ベルガエ人たちの居住地)への遠征
????第3巻(紀元前56年) -??大西洋岸諸部族との戦争
????第4巻(紀元前55年) -??第一次ゲルマニア遠征、第一次ブリタンニア遠征
????第5巻(紀元前54年) -??第二次ブリタンニア遠征、ガリア遠征初の大敗
????第6巻(紀元前53年) -??第二次ゲルマニア遠征
????第7巻(紀元前52年) - ウェルキンゲトリクス率いるガリア人の大反攻、アレシアの
             戦い
??カエサルは文中において自己に言及するときは「カエサル」もしくは三人称で書かれて
いること。このように探偵「モロ」の報告書も調査対象に同情したり、惚れたり、憎んだ
りといった感情的に偏ることなく、依頼者に予断を持たせないように事実だけを正確に報
告することを旨とすることを肝に銘じなければならないと・・・。

  参考:差し馬のトップテン(Wikipediaより)
??????1位 ディープインパクト
??????2位 ウオッカ
??????3位 オルフェーヴル
??????4位 ロードカナロ
??????5位 ドゥラメンテア
??????6位 ブエナビスタ
??????7位 レイデオロ
??????8位 モーリス
??????9位 メジロドーベル
???? 10位 トゥザヴィクトリー

  猫の脳化指数について??(Wikipediaより)
   「脳化指数という値で、生物の賢さを考えた時よく使われます。これは、動物の体
   重に占める脳の割合に一定の値をかけたものです。
   脳化指数=定数×脳の重量÷体重2/3
   脳化指数は、上記のような式で算出されます。この数値は比較するために使うので
   定数は任意で決められます。
   例えば、猫の脳化指数が1.0とすると、ヒトの脳化指数は7.4、ちなみに犬は1.2と
   なります。」 以上。


◆「モロ」は自分の先祖をたどると漱石が飼っていた猫の直系にあたるという話を祖父か
ら聞いたことがある。さらに祖父は「絶対に口外してはならない、あれを書いたのは実は
その飼い猫なのじゃ」と小さな声で付け加えたことを思い出した。
 どうにかレポートを書き上げ、尾っぽ筆を下ろした「モロ」の横で、主人Kが大きなあ
くびをしながら全身を伸ばし、また丸くなって居眠りを始めた。

???????????????????? おわり

(斜光26号 2021)



29同人α総務:2022/01/19(水) 14:00:51
The Long Goodbye
The Long Goodbye

????????????????????

 小生、若い頃より今まで、文学・音楽・絵画を誰にも師事することなく、ずっと自己流で楽
しんできた。だからこの冊子に掲載された挿絵の作者の皆様のように、絵にたいする精進や研
鑽はしていなくて、言ってみれば手慰み、道楽と言っていいでしょう。だから少々気恥ずかし
い心情ではあります。
??今回編集委員より挿絵の依頼をされたとき考えたことは、二十数年前この冊子発行の言い出
しっぺ(田辺悟朗君、田村道子さんそして小生の三人)として関わったことへの、一つのけじ
めとして喜んで受けることにした。
 そこで、これまで住まいの設計を生業とした以上、線や空間や時間、そして己にまつわる今
までの出来事を表現できる手法はないだろうかと考えた。その結果、過去の作品の設計図をベ
ースに写真や点景等をCADとPhotoshopを駆使して、全てパソコンのなかで創作しようと思った
わけだ。
  無給のままこの冊子で散々モデルにされた我が家の飼い猫「モロまたの名のサルトル佐助」
が、そばでこっそり花魁ことばで「もうよござんしょう」と呟いたのを耳にした。小生も「そ
うだなぁ〜」、この辺が幕を下ろしどころかと考えた。
 そして私立探偵フィリップ・マーロウの 「The Long Goodbye」や太宰治の「グッド・バイ」
ではないが、小生もこの冊子の舞台から退場しようと思ってる。長い間楽しませていただきあ
りがとうございました。「終わりよければ全てよし」、ではさようなら・・・。
(斜光26号 裏表紙 掲載)


       挿絵原画 より
??    




新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板