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信濃藩家中見聞 其の壱

28太ちゃん★:2017/03/01(水) 16:36:30
http://6027.teacup.com/situation/bbs/62924
其の二十七

城代「最近、“元藩士三人の暴露句(ぶろぐ)”なるものが出回り始めたと、頼綱より報告があったが誠か?」

勃樹「はい、どうも藩外追放された三人の元若侍が立ち上げた新手の瓦版のようで、小平、滝川、野口なるものが実名で書いているとのこと」

城代「小平、滝川、野、、、、、思い出したぞ。相模へ転属させた厄介者中村悪心溢狼(なかむら・あくしんいつろう)が、相模でも下手を打った為に、大騒ぎになったあの時の」

勃樹「さようでござる。例の巨額横領事件、パワハラ事件等々で失脚した化猫丹治(かねこ・たんじ)の一の子分、中村の引き起こした事件でございます」

城代「あの時は、あ奴中村の口車に乗せられて藩民の女性らを極刑に処したが、なに後で聞けば、発端は正教瓦版を一部減らしただけのこと。もし、そんなことが殿の耳にでも入ればこちらの身が危うくなるところだった。それで事件を隠蔽したのじゃが、、、」

勃樹「はい、ところが、三人の若手藩士が『不当な処分である』と訴え出おったために騒ぎが拡大して、、、」

城代「そうじゃ、ワシを始めとする藩重役たちにまでしつこく直訴をして来おった」

勃樹「あのまま放っておけば、いずれ殿の耳に入ってしまうと懸念して、そ奴ら三人も藩外追放にして口封じをしたのですが、それがまた今頃になって、、、」

城代「いったい、その“暴露句”とやらで何を言っておるのだ?」

勃樹「はい、あの事件の真相を詳細に暴露しているばかりか、最近の幕府追随のわが藩政を『殿の思想・藩政と違う』などと批判してございます」

城代「むう、、、、、」

勃樹「そればかりか、尾張の天野声達(てんのこえだっ!)とか申す一藩民が、藩民を扇動して、『最近の藩政は間違っている。幕府の悪政に従うな!』などと言って署名まで集めているとのこと」

城代「なにをー!」

勃樹「さ、さらには、、、」

城代「まだあるのか?!」

勃樹「はい、八王子学問所の“有志”なる連中が、同じく『安倍幕府の黒船国との武力協力に同調加担するのは、殿の平和思想に反するものだ』として藩政を強く批判しております」

城代「くそー、あっちもこっちも、、、、」

勃樹「まったく、あっちもこっちもです」

助兵衛「お呼びですか?」

城代「わっ! 脅かすな! 突然なんじゃ?」

助兵衛「てっきりお呼びかと、、、」

城代「おぬしなど呼んでおらん! いったいそこで何をしておる!?」

助兵衛「あ、いや、頼綱さまのご命令で、、、あ、いや、、、」

城代「なにー? 頼綱め、わしのことまで盗み聞きさせておるのか」

(キャイーン、キャイーン、キャイーン、、、、、)

城代「ともかくだ、歯向かう者は片っ端から処分、処分じゃー!」

勃樹「ははあー」

(つづく)

29太ちゃん★:2017/03/01(水) 16:38:11
http://6027.teacup.com/situation/bbs/62992
其の二十八

家臣A「おい、聞いたか?」

家臣B「なにをじゃ?」

家臣A「いよいよ、新しい教本が出るらしいぞ」

家臣B「らしいのう。藩律改正して間もなく一年じゃ。今頃になってどうするつもりかのう。どうもやってることがチグハグじゃわい。さっさと作って配ればいいものを」

家臣A「配る? とんでもねえ、新教本は有料だとの話ぞ」

家臣B「まことか? おのれ等で勝手に変えておいて、売りつけるのかえ?」

家臣A「いい商売よのう。しかもじゃ、今年もまた藩律の改正があるらしい」

家臣B「なに? まだやるのかえ? 殿の不在をいいことに、やりたい放題じゃのう」

家臣A「そればかりではない、同時に次席家老の正木八百の守を追い落とす準備が進められているとの噂じゃ」

家臣B「なんと。それでか、先日の学問所の同窓社中“学友会”に八百の守が初めて欠席されたのは」

家臣A「左様。しかも学問所副学頭で“学友会”社中長の寺西殿が、昨今の幕府追随の藩政を批判して、ご城代の逆鱗に触れたらしい」

家臣B「ほほう」

家臣A「その日、八百の守の代理で出席した長谷川坂田の守がご城代にチクッたとのこと」

家臣B「あの提燈持ちのアホの坂田がか」

家臣A「どうも八百の守の後釜を狙っているらしいぞ」

家臣B「で、寺西殿はいかがあいなった?」

家臣A「当然の如く、藩の学術長官の職を奪われたそうじゃ。“学友会”社中長、さらに学問所副学頭の解任も時間の問題だろう」

家臣B「恐ろしいのう」

家臣A「殿が期待した人材の方々がどんどん切られてゆく・・・」

家臣B「城下でも取り締まりが厳しくなって、皆、暗い顔をしとるわ」

家臣A「殿がお元気な頃が、懐かしいのう」

(つづく)

30太ちゃん★:2017/03/01(水) 16:45:44
http://6027.teacup.com/situation/bbs/63052
其の二十九

家臣A「ついに藩律の再改定が発表になったのう」

家臣B「ああ、驚いたことに、明年に任期切れが迫っていたご城代が、任期5年を4年に改定した上で3期目に。あと最低4年は藩政を担当することになった」

家臣C「対して、予想通り、八百の守がはずされて、坂田の守が次席家老に就きよったな」

家臣A「“若返り”でなくて“高齢化”だわな。それにしても露骨よのう」

家臣B「そればかりではない。こたびは、“主任老中”が新設された。城代や次席家老にもしものことがあったら職務の代行を行う重要な立場だ。その中に、あのゴマすりが抜擢されておる。元々、八百の守のお取り立てで偉くなったくせに、その八百の守を裏切って皆行の守に取り入ったとの話じゃ」

家臣C「金沢寝返太郎(かなざわ・ねがえるだろう)のことじゃな。金沢といえば、ある藩民から殿への喜捨献金を、浅見金作匠の守(あさみ・きんさくたくみのかみ)や、岡松殿様金窃(おかまつ・とのさまきんくすね)らと横領山分けしたと、例の『天鼓』で暴かれたあの金沢だろうが、、、」

家臣B「そうよ。浅見匠の守たあ、懐かしい名前じゃのう。唾を飛ばしてたら、自分が北に飛ばされ、今は墓守長をやっているとか、、、クスッ。」

家臣A「そうそう、金沢め、初めはその金作匠の守、次は八百の守、で今度は勃樹に寝返りやがった。しかし、主任老中が八人にもなると、いったい誰が次期城代の本命かわからんのう」

家臣C「そこだ! なるほど、、、読めたぞ」

家臣A「なにが?」

家臣C「いいか、普通は次席家老が次期城代の筆頭だが、今回その有力候補だった八百の守を外して、その席に次期城代にはなりえない年寄りの坂田の守を据えた」

家臣B「ふむふむ」

家臣C「そして、作ったのが“主任老中”だ」

家臣A「それで?」

家臣C「つまりだ、ご城代は、自分の下に次期城代候補を横並びにさせたのさ」

家臣A「だから?」

家臣C「まだわからんか。“主任老中”の顔ぶれを見てみろ。お世継ぎの博若様をはじめ、だれが次期城代になってもおかしくない顔ぶれだ。これまでは、八百の守か勃樹かなどと噂されてきたが、八百の守が失脚したことで、誰もが次期城代は皆行の守で決まりかと思っていたところに、一旦全て振り出し戻すため横並びにしたのが、この“主任老中”職の新設さ」

家臣A「なるほど。次期城代が明確になると、人心がどうしてもそちらへ移り、当代への求心力が落ちるからな。それで代替わり時期の先送りと横並び一線人事で、一度、家中の次期城代争いの火消しをして、ご自身の立場を安泰たらしめたわけだ」

家臣B「そうよ。ヘタをすると、黒船国の怒鳴花札(どなる・とらんぷ)と仮営舎小浜(ばらっく・おばま)の関係みたいになるからな、、、」

家臣A「納得だわ」

家臣C「しかし、城代の腹の中はそれだけではないようだ。今から話すことは、絶対に他言無用だぞ」

家臣A、B「 しかと、心得た」

家臣C「実は、藩律の再改定後、ある古参のお奉行が退任の挨拶に、ご城代と新次席家老・坂田の守殿のところへ別々に伺った折のこと。お奉行が何も聞かぬうちに、城代のほうから、こたびの人事の説明があったそうな。曰く、『八百の守もダメだが、皆行の守もダメだ。醜聞が多いし、人気がない。かといって北条婿の守らを城代や次席家老に抜擢すると、バランスが崩れる。皆行の守が黙っていないからな。だから、自分がしばらく城代職を務め、次席家老職も坂田の守にやってもらうしかなかったんだ』と。坂田の守も、全く同じ説明をなさったとか」

家臣A「ということは、ご城代の腹の中では、もはや勃樹への譲位は無理だと。意中の人物は別にありそうだな」

家臣B「北条婿の守とは、萩本瓢箪唐駒之輔(はぎもと・ひょうたんからこまのすけ)か。今や皆行の守を抜いて、次期城代候補の筆頭ともいうぞ」

家臣C「そうそう、城代の底意が漏れ広まっておるのであろう」

家臣A「となると、寝返太郎金沢あたりは、すでに瓢箪唐駒之輔にすり寄っておるかもな、、、」

31太ちゃん★:2017/03/01(水) 16:46:50

――その頃、城中奥座敷では――


頼綱「このたびも、うまく運びましたな」

城代「これで、八割方仕上がった」

頼綱「しかし、城代職の任期を短縮したあの改定には、さすがの拙者も感心仕りました」

城代「なに、城代など長くやらぬ方が良いのじゃ」

頼綱「またまたお戯れを。短くすると見せかけて、ご自身の任期を延長させたあの裏技は、お見事でござる」

城代「あれ、わかっちゃった? 考えてもみよ、やれ、次期城代は八百の守だ、皆行の守だと騒いでいたのは、殿が、自分と親子の年の差の世代に譲ると仰せだったからにほかならない。殿が倒れた今、それにこだわる理由がのうなった。皆行の守や北条婿の守ら還暦前後の世代には、まだ譲らん。七十五歳前後の頼綱殿、坂田の守殿、そして拙者の三人で、まだまだこれから5年、10年は引っ張ってゆけるだろう」

頼綱「仰るとおり」

城代「その間に、間違いなく、殿は目をつぶる。そうなれば、時の城代は即ち殿となろうぞ。そうなれば、世はわれらが思うままということじゃ。藩律や任期なんぞ、ただの形式に過ぎんからな。それまで、わずかの辛抱じゃ、、、」

頼綱「御意」

二人「はっはっはっ」

(つづく)

32太ちゃん★:2017/03/01(水) 16:51:37
http://6027.teacup.com/situation/bbs/63094
其の三十

頼綱「ご城代、大変でしたな」

城代「いやーまいったわ。古参の奥方衆がピーチクパーチクと五月蠅(うるそう)てかなわん」

頼綱「聞けば、坂口一文字来代(さか・くちいちもんじ・くるよ)を筆頭に、お局衆の八矢弓引子(はちや・ゆみひくこ)や、秋山蝶首帯妹子(あきやま・ちょうねくたいいもこ)までが揃ってご城代に詰め寄ったとか」

城代「そうよ、あの忌々しい婆どもめ」

頼綱「して、なにを騒ぎおるので?」

城代「先般の幕府の黒船国共闘戦略に我が藩が賛同追従したことや、八百の守の更迭の件やら、『わらわたちは、なにも聞かされておりませぬ! 奥方衆をつんぼさじきになさるのか? かような重大事をわらわたち奥方衆になんのご相談もなく進めなさるなど、これまでには無きこと! ご説明くださらぬかえ』などと申して・・・」

頼綱「なるほど、で、なんとお答えを?」

城代「決まっとるわ!『おなごが政事(まつりごと)に口をはさむな! 全て殿のご意向じゃ。文句あるか!』と、頭からかましてやったわい」

頼綱「ほほう、やりますな。で、奥方衆は素直に?」

城代「いや、『これまで殿は奥方衆を尊重されて・・・』などとグズグズ申しておったが、無視してやったわい」

頼綱「そりゃなんとも頼もしいことで。ですが、あの婆どもおとなしくなりますかのう」

城代「大丈夫じゃ、『本来なら、殿の意向に逆らう者として極刑申し付けるところだが、こたびだけは大目にみる。しばし蟄居謹慎にて勘弁する』と強く申し伝えた。これで静かになるじゃろう」

頼綱「お見事でござった。小うるさい舅女どもさえ黙らせれば、あとはお花畑の若奥方衆、高柳頬紅濃女(たかやなぎ・おてもやん)や、笠貫男転上手子(かさぬき・おとこころがしうまこ)しかおりませぬ」

城代「左様。かえって良い機会であったわい。あとはその空っぽ頭の若奥方衆をおだてておけば、万事安泰じゃ。まっ、そのうち異国旅にでも連れて行けば上機嫌でおるわい」

頼綱「しかり」

城代「それよりも頼綱、懸案になっておる“海外藩民”への対応はどうなっておる」

頼綱「ご心配なく。既に各国の代表の者に誓約書を書かせ、一切こちらには逆らえぬようさせ申した」

城代「ほう、いかなる仕組じゃ?」

頼綱「はい、これまでの各国への寄付金に条件を付けまして、逆らった場合には全額返納させるという誓約に判を押させましてござる」

城代「なるほど、それなら逆らえまい。これで完全に体制は整ったな。あとは静かに殿を棚上げして、藩律を絶対化すれば完成じゃ。明年はいよいよ仕上げの年じゃ」

頼綱「例の“信濃藩仏”作戦ですな」

城代「しっ! それはまだ口にするでない。おぬしと拙者のみ知る最終兵器じゃ」

頼綱「御意」

(参の巻 平成二十七乙未の年 おわり)


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