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交換小説スレ

21/2:2016/10/11(火) 18:42:05 ID:SdAaggvs
青でも黒でもない空間、どこかもわからない空間で彼は浮かんでいる。

「………か」

掠れきった声がする。

「……し…」

彼は不機嫌さを隠すことなく吐き捨てる。
「三千世界(そうぞう)しい」
聞こえるはずのない声、内容も意味も目的もなにもかも不鮮明だが、それが彼にはたまらなく不快だった。
ふと目を向けると天井が見える。そして目覚まし時計の鳴る音がする。そう彼は目が覚めたのだ。
今日の昼にはこんな夢忘れているだろうな…などとぼんやりと思考を動かしながら彼は支度し家を出る。

32/2:2016/10/11(火) 18:42:29 ID:SdAaggvs
「……」
彼の名前こそ吠與驚異。彼のことを多く知る者はいなかったが、彼もまた他人の多くは知らなかった。
取り留めもない物思いに耽りながら歩を進める。なんてことはない此処に書く必要もないようなことだ。
進み続けていると唐突な爆音がし、アスファルトを思い切り踏みつけつつ足を止める。赤信号を伴った道路とその上を走る自動車の音であった。
彼はひかれてはたまらないと思い目の前の道路に意識を向ける。
「赦されてェ…」
彼は自分に言い聞かせるように呟き、そのまま赤が青になるのを大人しく待っていた。

4あの男:2016/10/11(火) 22:03:21 ID:PtaTtfeQ
――――なんてことない日常。ただの日常だった。

そんなもの、たった今、目前の「一撃」がその全てを屠った。
そういえばそうだったな。日常なんてほんの些細な一突きで形状を維持できない。酷く脆くて、そう、

「儚い」

と、聞き覚えのある声が、空気を押しのけてやってきた様に吠與は知覚したが、それもまた儚い。吠與は目の前の災禍に躰を屈め、冀わくは『奇蹟』様が死神(あのやろう)の邂逅を阻止給わらんことに必死で、とにかく必死なのだ。

(もうお終いだッ!! 助けッ…)

静止。吠與は周囲がセメントのように凝固したのを感じた。死の直前の所謂走馬灯か、智覚五感に潜伏している拡張機能の覚醒か。
いや、どちらにしても吠與の命は無いだろう。諦念(レジグナチオン)という終わりが全身を覆い尽し、アスファルトに臥すのみ。
――否、どれにも該当しない…!? 正に奇蹟様の気紛れか。それにしても一体どういうことだろうか、本当に世界は『動力を殺害されている』。

「…全く、本当に此処は三千世界(そうぞう)しいな」

頭上。人声?

「あっ」

同時期、世界は自転を赦された。即ち、動。
気になる吠與はと言うと、青光の信号機を背に、堂々と…聳立!

(あれ…俺、生きて居る。渡れたのか、いつの間に!?)

トン。左肩に重量。

「よォ、吠與」
「アッ、田丸君…」

吠與、脳の残念な処理能力が事態の呑み込みにノーを突き付けて居る。結局、何も起こらなかった。それが解で在って、それ以上は理解からぬ。理解ったところでどうすることも出来ないし、「関わるなかれ(ノータッチ・デプロイメント)」の信号の多さが、彼の大脳を説明するに十分だ。それで良い。


――――なんてことない日常。ただの日常だった。頼む、そうであってくれ。

5あの男:2016/10/11(火) 22:04:01 ID:PtaTtfeQ
改行多いと省略されるな。反省。

61/4:2016/11/01(火) 18:36:00 ID:7JBQaiw6
「田丸…君、これは、一体…?」
非日常への疑問が絶えることなく湧きあがり、
大脳新皮質が軋みシナプスが狼狽する。

「質問は…後だ」
少年は構える。左腕を引き半身で向かい合う。


「僕だよッォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

言語と形容するには余りにも粗暴で乱雑な音が何者かから発せられ、
と、同時「田丸」と呼ばれた少年に襲い掛かる。

72/4:2016/11/01(火) 18:36:52 ID:7JBQaiw6

「三下(わずらわ)しいンだよォッ!!愚物がァ!」

単純に掌底を殴打(ぶっこ)む。

衝撃、瞬間、

化物の皮下から虹色の光が発せられ、巫山戯たランタンのように周りを出鱈目に照らす。
一通り色の洪水が起こると、やはり塵は塵に、そこには何事も残らなかった。


「…田丸…君、あれは…なに…?」
辛うじて吠與は再度尋ねる。

83/4:2016/11/01(火) 18:39:21 ID:7JBQaiw6

『人類識別番号計画』

「えっ…」

「星はあるべき場所に、大陸はあるべき場所に、国はあるべき場所に、そして「人」もあるべき場所に
あらゆる物質を構成する素粒子に至るまで全てに番号を付け座標を固定する。それが人類識別番号計画だ」

「さっきの奴は…そうだな、計画実行のための兵隊であり、計画者の偽物(イミテーション)だ。
行き成りこんなこと話したって俄かに信じがてえとは思うがよ」

田丸は言葉を探しながら話を続ける。

「大方、固定の前段階の動力殺害を俺に邪魔されたから排除しに来たんだろうな。
まぁ偽物はあの程度の強さだ。殴りゃ死ぬ。倣ってオリジナルも大したこたァねぇと思うがね」
カラカラッと笑い彼は笑顔を見せる。

94/4:2016/11/01(火) 18:40:00 ID:7JBQaiw6
吠與は聞きなれない単語、全く未知の流れ、現在あらゆる事由を理解したくなかったがこれだけは口をついて出た。

「狂ってる…」

自分が認識している現実との乖離に思わず呻く。

「そう狂ってる、俺達の物差で測ればな。だがな物差じゃあ化物は切れねェし殺せねェ」

「吠與」
田丸が向き直る。

「お前が此処に居合わせたことも何かのあやかもしれねェ」
「近いうち…また会うかもな」

彼はどこか愉快そうに背中を向け去って行った。

101/3:2016/12/02(金) 01:59:34 ID:CPfLuebI
夜。自室にて吠與在り。
静かなる夜(こと)、迚もかくても豎子与に謀るに足らずに落ち。脳髄たるや曾てなく冴え冴えと懊悩せしめん。

「朝のアレは夢ということか?」

吠與の曰くは今朝の奇怪な出来事が猶猶悩ましいという嘆きだ。
而して「アレ」と代名詞(あらわ)す以外は実に凡夫窮まりない日常であったが故、その異質さが何より際立つ。

「本当(げ)に、虚像(ゆめ)か?」

「!?」

正に意表。知覚外からの奇襲。背後、その影在り。
吠與が振り向くと、そこに居たのは中華三昧(チャイナ)った装飾を凝らした武装兵隊が顕現していた。

112/3:2016/12/02(金) 01:59:51 ID:CPfLuebI
「天地万物逆旅(たしかめた)くはないか? 色相世界(ほんもの)か、魚目燕石(にせもの)か」

「ど、何方様で」

「識別番号(ナンバー)、739(ナサク)。格物致知(ドゥユアンダスタン)?」

「ナン…バー!?」

「唉(ああ)、傭兵部隊(ならずもの)だ」

「ヒッ」

吠與は身構える。

「まあ寝待月(ま)て。俺はお前の楚歌(てき)ではない。硝煙弾雨(あらそ)おうなんて気は更更皆無だ」

相変わらず吠與と言う男は疑問符を頭上に浮かべることしか出来ず、立ち尽くすだけだ。

「俺は過去、『彼奴ら』に識別番号を生殺与奪(あたえ)られた。だが、動力殺害(ファーストフェイズ)終了直前にある人に助けられた」

「…! それってまさか…」

123/3:2016/12/02(金) 02:00:23 ID:CPfLuebI
「唉、俺はお前と貉(おな)じ、欠陥座標(アントポス)だ。マルマルには感謝している。此処に来たのも同じ境遇の奴がいるとマルマルから聞いてやって来た」

「アン…トポス? いや、それよりマルマルって、ひょっとして田丸君のこと!?」

「そうだ。田丸丸夫はマルマルと呼称(よば)れている」

(田丸君って一体何者なんだ…)

「閑話休題(ところで)、俺が来たのは他でもない。お前に頼み事があって此処へ来た」

誰しもこの状況で頼み事と聞いて苦艱を推し量らぬ者は居ない事と同じくして吠與少年の顔面は一気に険しくなる。

「俺は、お前の座標能力(トポロジー)に全てを乾坤一擲(か)けた。だから…共に跳梁跋扈(たたか)ってくれ」


――ああ、これは悲劇の幕開けだ。

13『修行!?吠與、非日常(かけぬけ)る』  1/3:2017/02/15(水) 17:57:13 ID:ECavktlo
月。爛々と望月(かがや)くなか声(オト)響く。

「修行ぉ〜!?」

「確固不抜(そう)だ」 

頓狂に響く吠與に739(ナサク)は眉一つ動かさずに応答する。

「今天(いま)、一つの囲局(てん)を除いて俺とお前は貉(おな)じ。百世不磨(めざ)めているか、夢幻泡影(めざ)めていないかだ」

「つまり、だ 唉、お前には四書五経(まな)んでもらう。力を。そしてその打(つかいかた)を」

「それで…修行と」

14 2/3:2017/02/15(水) 18:01:20 ID:ECavktlo
「即是(これから)とある場所へ直往(い)き修行をしてもらう」

「時は疾走い。猶予はまだ幾許かはあるがやはり烏兎匆匆(もったい)ない。急げ吠」

一方的に言い放ち且つ準備を迫る。動揺はしているものの少しづつ飲み込んでいく。斯様な理不尽にも幾分は慣れたか。

必要…と思われるものをまとめ、鞄に押し込む。

「これならば羮に懲りて膾を吹く(昼には着く)。マルマルも向っているはずだ」

リンと冷える空気の中、変わり者二人が並ぶ。急ぐ様子で闇夜へと歩を進めた。


――時は移り 朝、学校にてホームルーム。少々ざわつく教室に出席をとる声がする。

15 3/3:2017/02/15(水) 18:02:25 ID:ECavktlo
「〜良知君、礼場君、和井田君。以上出席を取り終えます」

「欠席は二名。吠與君と田丸君ですか。よくない、これはよくないですねぇ」
 
「連絡は特になし。単なる遅刻ならいいのですがもしなにか事故に巻き込まれていたら…」

「もし二人の欠席についてなにか知っている人がいれば私のところへ来てください。」

と教師であろう男はホームルームを締め号令をかける。

(にしても…田丸君はともかく吠與君も無断欠席ですか…)

(どちらとも両親は不在。一体どこに連絡したらいいのやら)

(この良くない状況、あえて謂うなれば、“バッドガイ“といったところでしょうかねぇ…)

16『激闘!ナイスガイ先生VSオンドルーン』 1/6:2017/04/08(土) 22:17:06 ID:1A7paGIo
朝、陽光刺眼の天日たるや、天地を押し照りて蛙を渇かす。
井蛙、未だ深黒晦冥にして、その顛末(ひかり)の一端を窺見ること能はず。

「手前先生、いらっしゃいますか」

彼はナイスガイ。ナイスガイ先生と呼称(よ)ばれている。

「オウ、どうした?」

彼は手前先生。テメ先と呼称(よ)ばれている。

「私のクラスなんですが、次のHRの時間、頼んでもよろしいですか?
 少し『急用』ができてしまいましてねぇ」

「分かった。俺に任せろッ」

「ええ、すみません。頼みましたよ」

(さて、どうしたものか…私の予想(バッドガイ)が外れていれば良いのですがね…)

予想 (バッドガイ) 、とは即ち対面(てき)との交戦。ナイスガイはその天命を識っている。
生徒の居場所は皆目見当も付かぬが、徒ならぬ胸の騒めきが彼の足取りを一層疾走(はや)める。

「ん? 彼らは…」

172/6:2017/04/08(土) 22:17:51 ID:1A7paGIo
二人、居た。
それは確かに見覚えのあるカタチをしている。探していた生徒だ。
ナイスガイは心なしか疑雲に覆われながらも一先ず安堵した。

「途端に絶妙なタイミングで姿を現す。なんたって私はナイスガイですからッ!
 君達、こんなところで何をして居…」

「僕だよッーーーー!!!!」

「!?」

奇声と共に確かに生徒であったカタチから、忽ち奇怪な化け物(オデュ獣)へと変貌を遂げた。

「君は→ココッ←!!!!」

怒号(ドゴォ)!
突然(いかり)の拳(フィスト)。化け物(オデュ獣)の何たるや正に座標を固定せんとする拳(ぶっこみ)だ。
正に顔面消失の絶命直前、ナイスガイは緊急回避(バックステップ)により難を逃れる。

「吠(ほう)、なるほど! トラップですかッ
 詳しい事情は分かりませんが、生徒の身に危険が迫ろうと言うのならば…
 貴方には相応しい『報復』を受けて頂きましょうッ」

『報復』。それが意味するものとは、詠…唱?
否、その名は――社会構築。

「右に茜鳳蝶 左に黒鶫 桜花絢爛の宴 陽台の夢にて麗しく踊れ
 ――骸架の三十九『鳳蝶桜蘭幕』」

馬鹿轟音(バゴオォン)!
怒り、狂い、爆ぜる、暴君。愍然たる血潮は舞散り、塵芥諸共麗しく桜吹雪の様だという。
俗世の民衆共なれば死屍累々必至の惨たらしい煙幕。濛々と立ち籠める黒煙の中で影が一人、浮かぶ。
――無傷。全くの無傷だ。

183/6:2017/04/08(土) 22:18:22 ID:1A7paGIo
「オモシロッ オモシロッ」

カラカラッと朽ち果てた嗤いが耳朶を貪る。

「なるほど、子供騙し(トリックスター)程度では意味すら持たない、と。
 では、これでどうでしょうッ! ――骸架の五十二『膅中粉骨万力』」

構築破棄(インスタント・コンストラクション)だ!
念力による握撃で、身体内部の臓物全てを握り潰す凶悪な打(いちげき)!
人は内臓を鍛えられない。即ち、大ダメージといった単純明快且つ絶対真理の超必殺。
その上、だ。
あの骸架構築なしの上級構築術式を魅せつける程、彼の実力が相当なものである事は当然の帰結。
打(これ)を顔面(まとも)に喰らって耐えられるはずが――否、無傷。

「ダメだよッーーーー!!!!」

「!! …これは、中々に強敵(てごわ)いようですねぇッ」

途端、虚を穿つ両手刀がナイスガイに驀進(ストレート)。両肩に打(ダークネス)。

「ファックス」

「がああああああああああッ!!」

両腕切断。四肢中二肢大破。確死級致命傷。
号哭と共に血飛沫が目紛しく風景共々朱く染め上げる。

「ん゛んッ! セカイ獲得れるッ! 君の座標は…これだよッー!」

ナイスガイに成す暴(すべ)は無い。捥がれた両腕を口に穿孔(ぶっこ)まれる。
窒息死。失血死。ショック死。ナイスガイをバッドダイに仕上げていくには十分な程度だ。
だが、未だ眼は死んでいなかった。如何せん、それも乎(また)夢の中の夢か。
既に動力殺害の真っ只中では、ただ『座標』あるのみ。

(躰が言うことを聞かない!? 何故ですッ!
 ナイスガイは絶対に屈することはありませんッ…絶対に…!!)

194/6:2017/04/08(土) 22:18:37 ID:1A7paGIo
刹、目前に顕現ったのは、黒。
ただひたすらに黒い。死を具現化したと例えれば実(げ)にそうである。

「あ、貴方は…!?」

『情けない…骸架の称を佩く者が無様な五臓六腑(すがた)を曝すとは。
 …さて、Q(クエスチョン)、だ。目前の怪物に対して勝機は在るだろうか?』

『否』

『冥府行。』

咄(ズォン)。

「待ッ…!」

底の見えぬ断頭台(やいば)が天(点)を、断(たつ)。

死(ぶっぱ)。

良く似ている。薄気味悪く笑う斬首の鳴動は冥界の烏に。
悲痛な哀哭が虚しみを帯びて谺する深淵の先、彼は何を見た?
而して、それは咆吼を嘯きながら迫りくる黒(おわり)に対面(であ)った時のことであった。

ナイスガイ

ああ、ナイスガイ

ナイスガイ

辞世の句である。
直後(のち)、絶命に歿した。

205/6:2017/04/08(土) 22:18:55 ID:1A7paGIo
「どうだ? 手羽先ウィルスが効いてきただろうう? んんッ??
 アッ!? 死ン者った! 儚いッ! 人間儚いッ! …………何故?」

小刻みに震え出す。化け物(オデュ獣)とは、正に瞋恚の化身と云う異だ。
況や、狂気なる科学者(クリミナル・ウィザード)をや。

「否、そんなはずは無い。『儚いッ!』俺の見込んだ座標が
 『ニンゲン儚いよねッー!!』ウィルスに耐えられぬはずが無い。
 『雑草ッ!』奇妙(おか)しい。『ニンゲンってさぁッー!』第三者の介入か?
 『儚いよねッー!!』……本当は殺したくなかった。」

静かなる忿怒に躰を委ね、あの出鱈目な虹色を垂れ流し乍ら、風景を穿ち尽くして居る。
そして、愚弄者(ポリュフェモス)の如く同化(とけだ)した。
暫しの虚、顛末をじっと観測した黒(もの)はこう告げた。

『案ずるな。じき慣れる。骸架同胞よ。
 ――全ては一の為に、一は一の為に。
 “ジ・アブソーブ“』

死神装束《すなわち、エンジェルの対極に立つ》った者は、一齣の暗に消ゆ。

216/6:2017/04/08(土) 22:19:07 ID:1A7paGIo
――僻地(は)て。荒野に二人、居る。
彼らは無作為な風と共に無自覚に転がり続けて居る雑草がタンブル・ウィードと呼称ばれていることに気付いて居るか?
否、二人は既に修行のスタートラインに到着して、居た。

「彼方前方に拱手傍観(み)えるミナミア山脈を千キロ。唯我独尊(ただひたすら)に、僑軍孤進(はし)れ。」

「出来るわけないだろッ」

「焉んぞ来者の今に如かざるを知らんや(そのうち出来る)。維摩一黙(だま)って不撓不屈(や)れ、吠」

嗚呼、吠與の曰く何たる苦艱か!
一方、砂煙より先ほどから二人に近づく者在り。
その影は既にカタチを成し、視認できるまでに接近して居た。

「オウ、早速やってンじゃねェか。まずはテメーの座標能力(トポロジー)を調べねェと何も始まンねェからな」

「田丸君!?」

22あの男:2017/04/09(日) 20:47:31 ID:1YuXUjoc
6レスに分けたが、一部省略されてしまった
読みにくくてすまん

今更だが改めて読み返すと1話と2話が全く繋がってなくて草
俺はてっきり車に轢かれる展開だと勘違いしたんだろうな

23感想男:2017/04/10(月) 01:09:34 ID:WquDMpNk
たまたま携帯で見てたから省略が無効化されとったぞい
にしても大作だった 個人的には →ココッ← とか 打(ダークネス) とか 死(ぶっぱ) がかなり好き
8年ごしくらいに実際にファックスが打たれてるのも感動した
タンブルウィードの概念が刻まれているのも面白かった

24あっ繋がってる:2017/04/10(月) 01:12:03 ID:WquDMpNk
接合部に関してはアバウトでいいんじゃないかな それも一つの考えだ

25オンドルーンの本を読ませてあげる:2017/04/10(月) 20:16:02 ID:3FuxfX3.
こんなに長くなる予定はなかったんだがな
ナイスガイの死はオデュ史上あまりにも名シーン過ぎるので長くなってしまった

打(つかいかた)の汎用性の高さに喉を鳴らしざるを得なかった
個人的には何処にでも使える

次は貴様(あなた)だ…

26『行軍!?吠與赴く』:2017/10/22(日) 13:52:19 ID:1lWf0TaA
修行とはなにか…?


 魂を鍛える行い…


それすなわち尊きもの…


引用『歌劇"閃光"序幕:ピカの語り』より

271/8:2017/10/22(日) 13:53:21 ID:1lWf0TaA
ミナミア山脈に連なる男、吠與在り。現在この雪山に約25.5cmのスタンプを押そうと試みているのは吠與のみである。
友待つ雪――夏季に溶けられず残滓(のこ)った硬雪をトマトを踏み潰すが如く足で砕きながら吠與は行軍する。
彼の引く橇(そり)もまたゆるりと彼を追いかける。

「ン゛ッ」

薄霧の中から突然の怨(ボイス)、いい加減慣れたか吠與驚異。
出会っちまった災難(ハードラック)に凍った鼻毛を抜きつつ振り向く不遜(ロマン)で応える。

「ダメだよッーーーー!!!!」

「Mephistopheles(やかま)しい!」

欲望を満たさせることなく希望を奪うことしかできない出来損ないの悪魔へ裏拳を打(ダークナイト"神砕き")。

282/8:2017/10/22(日) 13:53:51 ID:1lWf0TaA

「モン゛…ンン゛ッ…」

「500キロ追加だッ!」

躯(カタチ)を現世に留めようとしている化物へ追撃の橇を俯瞰(うえ)から鉄槌(ぶっこ)む。爆音、雪煙が上がる。
重力的加速――地球から直輸入された暴力装置を存分に振るい、潰す。化物にとって今日は少々重力が強かったか。
雪煙が晴れるのを待ったのち橇の上で吠與は黙々と食料を補給する。
行軍を続けるためにはエネルギーがいる。そのため人体に存在する孤島、ランゲルハンスは体躯に活力を込めようとαへ伺いを立てる。

これが彼の狂(クルイ)、ホリックだ。朝も夜も無い螺旋の時間が 永劫に近い刻、繰り返す。
閑話休題(で)、だ ホー(苦艱を乗り越えんとする者に対する敬称)人物吠與が如何様にして此処に立つか?


時は遡る

293/8:2017/10/22(日) 13:54:40 ID:1lWf0TaA
――ミナミア山脈 Odysseaレーススタート地点


739(ナサク)の提示に呆然としている吠與にマルマルは言葉をかける。 

「安心しろ、お前は初級(ローテック)だ」

三つの橇(そり)をマルマルは持ってきていた。

「本来は橇を背負ってもらうがお前はロープか何かで引いてもいい」

「だが橇は壊すなよ。ぶッ壊しちまったらこの修行の意味がねェからな」

304/8:2017/10/22(日) 13:55:16 ID:1lWf0TaA
「は…」「アアそれと、だ」

焦る吠與の言葉を遮りマルマルは続ける。

「食料や水分、装備なんかの持ち込みもお前はOKだ。橇の上の保温箱に物資を乗せていくといい。箱開けッ放しにして迂闊に凍らすんじゃねェぞ」

「基本的に一本道だから迷うことはねェとは思うがもし迷ったら危険そうな、困難そうな方へ行け。大体そっちが正解だ」

「田丸君達は…?」

「俺と739は先に行ってゴールで待ってるぜ。一応レースだからな」

「ンじゃ・・・・流れ解散だ。吠與、死ぬなよ」

「吠、柳の下にいつもDS(でうす)はいない。気を戒驕戒躁(ひきしめ)ろ」

315/8:2017/10/22(日) 13:55:37 ID:1lWf0TaA
そう言葉を残し2名は彼方へと消えていった。
呆然と現状を確認する吠與。マルマル達の言葉が無作為に頭を廻っていた。

「逃げッ―」吐きかけた言葉を飲み込む。
この時点で吠與の思考は戻りつつあった。此処から逃げたところで何もない。襲い掛かってくる化物への対抗手段を得なくてはならない。
田丸君や739は守ってはくれるだろうが片時も離れず常に守ってもらうことなんてできない。
この修行と呼べるかわからない程無茶苦茶なことをすれば力を得られるのではないか…非日常への対抗策は非日常の中でしか得ることはできない。
吠與は腹を決め近くの山小屋へ向かい装備を整え始めた。夜明け前には装備を揃え終わり橇に積み、スタートラインに立つ。そして出発する。
吠與の修行が始まった。
日の入りの少し前なので周辺ははまだ薄暗い。しばらく歩いていたら日の入り、辺りに光が満ちる。

「――光だ!!」

周囲の雪に朝日が反射し今までにないほど壮麗な景色が浮かび上り、大きな感動に吠與は声を上げる。

326/8:2017/10/22(日) 13:56:12 ID:1lWf0TaA
「僕だよぉーッ!!!!!!!」

これは世の摂理か。

狂気なる科学者(クリミナル・ウィザード)の大義(エスノセントリズム)から生み出された偽物(イミテーション)が
反乱分子である吠與を排除するため強襲(おそいかか)る。

「ッ!!!!」

接敵。吠與は怯えながらも橇に積んである武器でもたつきながら臨戦態勢をとる。
俄か知識、山小屋で説明書を読んだだけという余りにも浅瀬でチャプついている武器素人(ニュービー)の吠與でも流石に引き金を引けば
弾丸が何とかしてくれることぐらいは分かる。
対応が遅れたのが幸いしたのか十分に引きつけることができ、イズマッシュのスマッシュ(12ゲージ)がぶち込まれ銃声が三千世界(なりひび)く。

337/8:2017/10/22(日) 13:56:47 ID:1lWf0TaA
「ン゛ッ!」

動きを止められふらつく。吠與は弾丸が抉った化物の傷にやけくそ気味に手榴弾を投げ込んだ。

ズグッ(吠與驚異的命中音)。

デッドボール。爆発する魔球だ。

直後爆発し化物は粉微塵になる。大撤退するが間に合わず衝撃に備えきれていない吠與も吹っ飛ばされた。

348/8:2017/10/22(日) 13:57:20 ID:1lWf0TaA
「何とかなったか…」

武器を用いる。人類を地球(ほし)の頂点に押し上げた要素はやはり何時であれTierが高い。
しかし忘れてはいけない。武器はこの場においては有限だ。いずれは肉体のみで相対しなければならない。
1000kmを踏破する中でその瞬間は確実に来る。吠與はどんな戦場が待っているのか恐怖を深めながらゴールへと橇を引き始めた。


私窩子乍(しかしながら)、だ。2521時間後(吠與の体感時間。実際は5日間程か)彼は戦闘狂(ワーカーホリック)の領域に身を掠らせることになる。

35メフィストフェレスはやかましかった…?:2017/10/22(日) 14:52:34 ID:ts92uVn6
三千大千世界(おもしれ)え…ッ
「重力が強かった」「ホー」「DS(でうす)」等の古文書の概念が刻まれているのがまた良い
イズマッシュのスマッシュ技がありなむ事から吠は遠距離型に地を固めるのだろうか
サイガ12S EXP-01――法執行機関向け――制裁、打(つかって)け。
こっから吠が徐々に覚醒していく展開になるのか、見ものであった
世は満悦した

36感想男:2017/10/22(日) 22:51:55 ID:1lWf0TaA
書くために久しぶりにwikiとか林檎とか見て面白かった
オデュ文は書いてて愉しい

37『決戦!マルマルVS偽物(イミテーション)』 1/11:2017/12/30(土) 16:32:47 ID:3kc0akF.
頂とは、常に一つしかなく。
青年マルマルは、そこに誰も居ないことを確認し、歓喜の第一声を挙げた。

「ッシャッ、非想非非想天(いちばん)乗りだッ」

踏(サクッ)。
次いで、また一つ、雪に烙印を捺すものが現した。
実(げ)に最鈍(おも)そうな中華三昧(よろい)を表皮とする二等兵。名は739(ナサク)。

「ほう、マルマル、今回はお前の初転法輪(か)ちだ」

「よお、俺はたった今到達したばかりだ。だが勝ちは頂いたっ」

マルマルは、前回覇者の傭兵にニヤリと煽りを加え立てる。

「よもや二河白道(みち)は違えど此処まで接戦になるとはな」

382/11:2017/12/30(土) 16:33:08 ID:3kc0akF.
…それにしても、静かだ!!
ミナミアの非想非非想天(てっぺん)は静を纏い、澱みなき青が全てある。
――否。

パァアン…

「…! 西方浄土(にしのほうがく)にて約186.41 マイル…恐らく声(じゅうせい)だ」

実(げ)に幾許か、微かな空気の震え。
それは、聞くに堪えない悍ましき憎悪の雄叫びに等しい。
奇しくも、その異変を先に感知したのは739(ナサク)のほうである。

「まさか、吠與(あいつ)か!?」

マルマルの顔面は、見る見るうちに焦燥へとカタチを歪ませる。

「回向発願心(む)かうぞ、マルマルッ」

「ああッ」

393/11:2017/12/30(土) 16:33:24 ID:3kc0akF.
(頼む、耐えていてくれ…ッ!)

『嫌な予感』ほど必中(ガー不)なものはないだろう。
最早、苦虫は幾度となく彼らの奥歯で噛み潰されることに異議を唱えないでいる。
そうして彼らも騙し騙し生き長らえてきたのだ。
戦場の歴。今はそれだけがこの地を這う足を運ぶ動機そのものになっていた。

その一方、吠の名を馳せる少年は金輪際訪れないであろう窮地に立たされていた。

「ンッ、ニンゲンッ」

偽物(イミテーション)だ。
おおよそ44時間前から視界から消えることはなく、生と死を繰り返す、永劫。
そんな異常が、彼に影響を及ぼさないはずがなかった。
吠與は、ほとんど狂っていた。

404/11:2017/12/30(土) 16:34:05 ID:3kc0akF.
「いい加減しつけぇッ」

迅雷放銃(イナズマッシュ)ッ!
横殴りの大弾雨がニセモンを一気通貫(バコ)ついている。
静止(生死)不能。手を緩めれば、死ぬ。必ず死ぬ。
意識が朦朧とする最中、ただただ「セイ」を繋ぎ止めることだけをやっている。
否、『やってのけている』。

「まだまだッ」

「ンッニンゲンッアッ死ン者っニンゲンッアッ死ン者ニンゲンッアッ死ニンッアッ」

絶えることのない死体(イミテーション)とあの虹色(でたらめ)の応酬により、
辺りは既に丸五日夜が明けていない。要するに、光だ。
ふと、吠與は他愛のない過去を思い出していた。

415/11:2017/12/30(土) 16:34:24 ID:3kc0akF.
トリシネート 36%、テトラセン 3%、硝酸バリウム 40%、硫化アンチモン11%、カルシウムシリコン10%

おじさんは、毎日毎日同じ言葉を、まだ幼い吠與に向かって話しかけていた。
吠與はその1%も理解ができなかった。
そういや、あのおじさんは誰だったか。火薬臭くてあまり好きではなかった。
――雷管は好きか? おじさんは吠與に問いかけた。
やっぱセンターファイア式は火力が違うね。あの焦げ付いた手の痺れが良いんだよ。
ほお、キョイも興味があるのか。ほれ、撃ってみろ。愉しいぞ、きっと。

パァンパァン――

リン化水素の悪臭と度し難き死の閃光に躰を委ねる少年は一人、浮かぶ。

「はは…」

笑…?

「はは、愉、しい」

それは、吠與が邂逅(めざ)めた一つの感情だった。

426/11:2017/12/30(土) 16:34:56 ID:3kc0akF.
「僕だよッーーーー!!!!」

突如、背後から化物が顕現する。
既に襤褸雑巾の如く疲弊しきった吠與は、振り向くことすら出来ず。

(後ろにも居ンのかよッ…クソ、避けらン…ねェッ!)

死(ぶっぱ)、来ますッ! 残り2センチッ!

「吠與ゥッ!」

間一髪、咆号諸共ぶっ込みを加える。
贋物(イミテーション)は耐えられるはずもなく、途端に灰燼と化す。

「田丸君!?」

437/11:2017/12/30(土) 16:35:16 ID:3kc0akF.
「危ねェところだったぜ。ケガは無ェか吠與」

「ああ、なんとか…でも、どうしてここが…」

「唉、声がしたのだ。吠の危機が迫っているのを感じた」

「お前ら…ありがとう。おかげで俺は」

「俺は」の次の言葉を発しようとした吠與は、
その手に持つ武器がとうの昔に玩具以下の鉄の塊であったことに気が付いた。
ではあの銃弾は一体何処から――?

「僕だよッーーーー!!!!」

またしても狂科学者の咆哮。

「しつけェ野郎だなァおい!」

448/11:2017/12/30(土) 16:35:36 ID:3kc0akF.
「マルマル、全力の、打、だ。你明白了吗(Understanded)?」

「完全把握(わー)ってる! 往くぞッ! 喰ゥらいなァッ! 『速拳(ラピッドファイア)』!」

最速い。
凡そ第三宇宙速度の拳と言えば理解が早いか。
火を見るよりも明らかに火を纏う。それが、マルマルの『打(こぶし)』。
故に必中。

「駄目だよッーーーー!!!!」

否、回避完了。

「避ッ!? そんなはずが…ッ!」

こいつ、明らかに以前より「成長している」。
マルマルは確信と同時に強烈な不快感を催した。

(貉じ打は通用(とお)らねェってか!?)

459/11:2017/12/30(土) 16:36:08 ID:3kc0akF.
「咄(チッ)、乾屎橛(クソ)がッ もう一段、火力上げるしかねェッ」

「骸架の五十二――」

(詠…唱…? 十六面楚歌(まず)い、何か、来航(く)るッ!)

739の確証的、気付き。

「流觴曲水(かわ)せ、マルマルッ」

「『膅中粉骨万

「ウッ千世界(セ)ェッ!!」

マルマル怒涛の疾風殴打。
化物(でたらめ)の顔面に掌底がメリメリと込み入る。

4610/11:2017/12/30(土) 16:36:24 ID:3kc0akF.
「んッ 消えるッ!…アッ、僕じゃないッーー!!!!」

消滅。即ち偽物が偽物と認識(わか)ったという気付き、だ。
そして、あの出鱈目な虹色を糞尿の如く撒き散らし、死んだ。

「…やった、やったよ田丸君! あいつを退けたぞ!」

「ああ、所詮は偽物(イミテーション) だ。
 ちッとばかし殴打ればこんな雑…魚ッ! ゴバッ」

途端、マルマルの口から老婆のトマトが如く血潮が吐瀉物(ふきで)る。
恐らくは五臓六腑(なかみ)を恐ろしく天上天下(シャカ)つかせたのだろう。

「た、田丸君ッ!?」

倒れこむマルマルを、ボロ雑巾同様の躰を無理矢理ねじ込ませ、なんとか持ち抱える。
その間も、ドクドクと血流が大袈裟に流れ落ちる。
そのあまりの現実に、吠與は既に自責の念で潰れかかっていた。

4711/11:2017/12/30(土) 16:36:43 ID:3kc0akF.
「すまねぇ…しくじッ…ちまッ…た…」

「田…丸…クソッ、マルマルゥッーーーー!!」

「吠! 光風霽月(おちつ)け。まだマルマルは救世闡提(たす)かる」

「けどッ、こんな状態じゃあマルマルは、死っ…」

致死量の赤は辺り一面を拡張し続けている。

「吠、修行は中止だ。 俺に蒼蠅驥尾に付して千里を致す(ついてこ)い」

「ついて来いったって、何処に」

「名医が居る。俺はその街を大図書館(し)っている」



「西へ約310.69 マイル。水都、”ウェストボートブリッジ”」

48苦虫は潰される、潰され続ける:2017/12/31(日) 01:08:13 ID:UwVNM4oA
迅ッ! 4から10まで至ったか…
マルマルの ウッ千世界(セ)ェッ!!と 喰ゥらいなァッ! の小さい ゥ と 完全把握(わー)ってる!が特に好き
吠與は最早普通に戦力(つよ)く育ったな 偽ドルーンも成長しているのが面白かった

49『邂逅!?病院にて』1/12:2018/08/25(土) 02:34:17 ID:NOO5v3Qk
――水都、“ウェストボートブリッジ” 北東区画・海神Ⅵ 中央病院

本塔401号室、マルマルの体は静かにベッドの上に横たわっていた。

「田丸君…ごめん僕のせいで…」

吠與は呟く。そこには戦闘中の鬼気迫るホリキシカルな姿はなく、容易く毟り取られてしまう雑草のようにくたびれた少年がいた。

不意に扉が開き、閉じた部屋に空気が入る。

「回々(もど)ったぞ、吠」

「あっ…」

739(ナサク)がするりと病室に入ってくる。

502/12:2018/08/25(土) 02:35:35 ID:NOO5v3Qk
「医者は…なんて、マルマルは助かるの!?」

「光風霽月(おちつ)け。まずはそれでも足食(くっ)ていろ」

鮸膠(にべ)も無く言い、739は売店で買ったであろう焼き菓子の入った袋を吠與へ押し付けた。

「で、だ マルマルの状態についてだが、医者に任せておけば間違いなく救世闡提(たす)かる。
 そんなに心配するな、マルマルは渇しても盗泉の水を飲まず(きじょう)だ。常人とはくぐった修羅場の数が違う」

739は自信があるようだ。確信を含めた表情で吠與に語る。

「是个(それにしても)…」

「この程度で済んで幸いだった、最近敵方の襲撃続きで空空漠漠(いそが)しかったとはいえ変わらず静功の鍛錬は万古不易(つづ)けているようだな」

513/12:2018/08/25(土) 02:36:39 ID:NOO5v3Qk
「この程度って…」

吠與は驚きだろうか、焦燥だろうか、はたまたあきらめだろうか、複雑な表情を浮かべ739の方を見た

「この程度だろうとも。もしお前に打(あ)たっていたら臓腑がジュースになった後全身が弾け飛んでいたぞ」

「吠、確かにお前は先の修行で以前とは比べ物にならないくらい強くなった。
私窩子乍(しかしながら)、だ あくまでこの修行は初歩に過ぎない
一字不説(ほんのさわり)だ。己のために四書五経(まな)ぶこと連なる山の如くに有る」

吠與は自らの苦艱ゲージが高まる様を口内の苦虫と共に眺めていた。
と同時にマルマルの打たれ強さについては気になっていた。常人が弾け飛ぶ一撃、一体どのように耐えて見せたのだろうか。

524/12:2018/08/25(土) 02:37:48 ID:NOO5v3Qk
そんな吠與の様子を見て739が口を開く

「『獅子転球』、静功における奇経八脈の一つ、衝脈。それを利用した防御技術らしい。
仔細はアイツが元気になったら提耳(き)くといい、流星光底長蛇(いいきかい)だ」

「…そうしてみる」

沈黙が流れる。吠與はこの間にでもマルマルが起き上がりいつものやかましい声を聞かせてくれはしないだろうかと思っていた。

「こうしていても夜に影を探すようなもの(きがめいる)だけだ。マルマルは俺が見ている、外に出て気分転換でもしてこい」

739に促されるままにフラフラと立ち上がり吠與は病室の外に出る。ここにいると罪悪感で押しつぶされるような感覚に陥るからであろうか。

535/12:2018/08/25(土) 02:38:23 ID:NOO5v3Qk
水都、“ウェストボートブリッジ”

水の都と言う名の通り海沿いに位置しておりまた河川も多く存在する。豊かな海の幸と河川を利用した水上庭園、

それらの活躍により国内有数の観光都市として人々に記憶されている。

ウェストボートブリッジ内でも最大の規模である中央病院では患者の精神的健康の向上のため敷地中に大規模な水上庭園を有していた。

吠與の足も多くの人と同様に壮麗な水上庭園へと自然に引き寄せられていた。

吠與は芝生に座り込みそれを眺める。噴水がおこすキラキラとしたしぶきと植えられている花々の芳香が吠與を迎えていた。

546/12:2018/08/25(土) 02:39:39 ID:NOO5v3Qk
「やぁまた会いましたね」

ふと声を掛けられる。視線を向けると杖をついた白髪の老人がそこに佇んでいた。

まるで見たことのない顔、聞いたことのない声だった。

「失礼ですが人違いではないですか…?」

誰だ?吠與は困惑しつつ老人の顔を見ながらもう一度自分の記憶の中で探していた。老人は見事な白髪、眉やひげまで真っ白だった。

「人違い?いやはやお恥ずかしい…年は取りたくないものですな。ところで吠與さん 此処、水都に来るのは初めてですかな?」

「え、ええ…まぁ」

557/12:2018/08/25(土) 02:40:45 ID:NOO5v3Qk
「ウェストボートブリッジにようこそチョップ」

「は?」

馬鹿轟音(バゴオォン)!

噴水が真っ二つに両断された音だ!周りに大理石の破片と目的を失った哀れな水流が飛び散る。

かろうじて横跳びで良反応(ダッジ)していた吠與は唖然とした表情で老人を見る。

目が合った。

このとき吠與は老人の目に尋常ではない情が込められていることに今更ながら気が付いた。

568/12:2018/08/25(土) 02:41:31 ID:NOO5v3Qk
「何というか…ああ、恐れなければならないものはたった一つ。恐怖心そのものであり…」

「あなた!正気ですか!?いったい何を…」

「小手調べは終わりにしよう。君は吊られた男(ハングドマン)の首吊り死体(ストラップ)になるといい

――骸架の九『金絲刺』」

「!!!!」

粒の世界に#FFD700と定義された絲々による味見(ハラス)が吠與驚異を脅かす。

579/12:2018/08/25(土) 02:42:30 ID:NOO5v3Qk
1フレーム以下の幕間、吠與は瘋(おもいだ)す。狂気とは凶器であると、空手だったものにはサイガ12S EXP-01――法執行機関向け――

それは当然のごとく武装(にぎら)れ、指は引金に暴(あ)り。

「寝てろ」

開幕(はな)った散弾(ジャッジメント)は絲共をねじ伏せる打(Action is eloquence)。

「どうやら君を侮っていたようだねスティック」

怒風(ドオッ)! 杖による刺突(リベリオン)。

5811/12:2018/08/25(土) 02:43:43 ID:NOO5v3Qk
「遅ェッ!」

――刺突?あまりにも無礼(なめ)げ。直径18.4ミリの火と風による制裁に怯えるべきなのだ。弾丸による“圧”、杖を弾き抉りそして穿つ。

「不満は…灼熱の夏となり、秋と呼べるものは到底…」

「何を言っているんだ!?お前は誰なんだ!一体何のつもりだ!」

「私が何者であるかという問いにはただ一言“貴い人”だ。天皇陛下とは友人関係にある」

「え?」

「それにしても君…ああ吠與さんだったかな、農民には気を付けなければならんよ。彼奴らは道理というものを理解していない」

5911/12:2018/08/25(土) 02:44:43 ID:NOO5v3Qk
「どういう…」

「――骸架の十七『多根樹灯篭』」

地中からぶちまけられた爆炎が我が物顔で跳梁跋扈(はいまわ)り最後に見た色を血(あか)と定義付けようと戯(す)る。

「迅雷放銃(イナズマッシュ)ッ!」

応戦、両者の放つ強制力が相殺(ぶつか)り、地形はぐずりだしたかのように黒煙を返答(あげ)る。

6012/12:2018/08/25(土) 02:45:13 ID:NOO5v3Qk
「ッ!」

吠與は煙を吸い込まないよう息を止める。数秒後――黒煙が晴れた刻には、老人の姿はすでに消えていた。

「Shiting!(糞が!)」

何一つ理解(わ)からないふざけた現実に直面し、吠與は汚い言葉で大気を躾ける。口内で静観を決め込んでいた苦虫は遂に噛み潰された。

61感想マン:2018/08/25(土) 02:49:16 ID:NOO5v3Qk
名前欄の9/12の次が11/12なってるけど10/12として読んでくれ

申し訳ねえ!

62感想男2号:2018/08/25(土) 02:51:52 ID:NOO5v3Qk
書くために久しぶりにwikiとか林檎とか見て面白かった
オデュ文は書いてて愉しい

63所感男、口内に苦虫を飼う:2018/08/25(土) 11:42:31 ID:A1qxB55s
非想非非想処(やべ)えぐれえ三千大千世界(おもしろ)かった。
遂に公家おじさんが具現ったか…!
強キャラ感あり余剰る登場シーンにニヤケ面が止まら…ねェッ!
骸架教団の層の厚さが今後の展開に深みを与えていくであろう。
マルマルの経絡を利用した防御技術もなかなかに興味深(От любопытства кошка сдохла)い。
「私窩子乍」「Shiting」等、今回も随所にOdysseaのリスペクトを感じられとても良かった。
あの無礼げであった西船橋がヴェネツィアよろしく壮麗な水上都市として再構築されているのも良かった。

君子豹変す(それにしても)、だ。
1話から読み返したがあまりにも文章能力(オデュ豪)が上がりすぎて、居るぞ?
次の俺の回は稚拙な文章(拙文(まずい文章)がついてこれるかぁ?)で大変申し訳ねェ…

64あの男:2018/08/25(土) 15:41:12 ID:NOO5v3Qk
読んでもらえて実に恐悦至極い 10ヶ月も空けてすま…ねぇッ

漢の漢語録からなんか使おうと思ったけどサイトが崩御(し)んでた どうして…

65あの男:2018/08/25(土) 15:51:03 ID:NOO5v3Qk
今見たら生きてた odysseawikiのリンクが死んでただけだった 新しいのに変えとくわ

66気付いたら、死んだ。:2018/08/25(土) 18:31:13 ID:A1qxB55s
Odyssea大氷河期時代が余りにも長かったようだな…

67『予備軍!?新たな識別番号(ナンバー)現る!』1/8:2019/10/09(水) 21:15:49 ID:XJty5EVg
長針が0、短針が4。
程なくして大脳が記憶を斑消に喰い散らかし、夢と名の付いた糞尿を垂れ流す時間帯となる。

「吠與、大覚醒(お)きろ。出発の時間だ」

あまりにも重すぎる瞼によって踏み潰された根性骨が複雑骨折を繰り返し、
幾度も”落ち”そうになる寸の手前で強引に捻り開け眼球に光を宛がう。

「…今何時? まだ外は真っ暗だけど」

小覚醒(まぶたをこすりながらおもむろにからだをおこし)た吠與は、未だに昨日の道化(おか)しな老人が脳裏をよぎっていた。
それはたった数分の戦闘ではあったが、確実に”傷”の残滓はあった。
だが、老人のことについてはまだ皆には話していない。
あまりにも唐突(ぶっきら)に開幕まり、唐突(ぶっきら)に終幕わった。
それだけに話す気にもなれなかった。
如何せん、ただの耄碌(アルツハイマー)の暈けにしておくには聊か奇妙な点が多すぎるが。
何にしても切り替えてく、「しかない」ようだ。

682/8:2019/10/09(水) 21:16:12 ID:XJty5EVg
「我々は贋作(イミテーション)に狡兎三窟(お)われている身だ。
 これ以上貉(おな)じ場所に屠所の羊(とど)まることはできない。
 これからウェストボートブリッジ駅に向かい、次の目的地までは列車で移動する」

既に行先は決まっている。『学園都市サウザンドリーフ』だ――と739は云う。
私窩子乍(しかしながら)、いつまでも追われ続ける訳にはいかない状況になってきていた。
実(げ)に厄介なことに贋作(イミテーション)は死ぬ度に喰らった打(わざ)を憶え、『アップグレード』を繰り返す。
ただ贋作共を殺し続けるだけでは我々が次第に不利を壁際(せお)い、いずれはPolyphemus(はいぼく)する。
座標固定(そう)なる運命(まえ)に多くの共闘者を聚蚊成雷(あつ)め、本体を屠るしかないということだ。
次の行先であるサウザンドリーフであれば強大な能力者、或いは同じ境遇の――

「って、そういえば田丸君は」

「俺ならここに居るぜ?」

「!」

マルマルは既に完治していた。
今までの戦闘が別世界線(な)かったかのような完膚っぷりだ。

「水都(ここ)に名医が居たというのもあるが、驚異的な自然回復能力は『獅子転球』のおかげだ。
 マルマル、吠與にこの打(わざ)を四書五経(まな)ばせてくれるか?」

「ああ、もちろンだ。
 けど、コツを掴むまでは手前(てめえ)の躰そのものを理解る必要があるっつーか。
 色々準備が必要なンだけどよ。ま、移動しながらやっていくか」

693/8:2019/10/09(水) 21:16:31 ID:XJty5EVg
夜明け前。
未だ太陽は間抜けなことに地球の裏側を照らしたままの素人(ニュービー)でいるようだが、
社会(にんげんども)は馬鹿みたいに黄色(きいれ)ェ線の入ったトレインの『始発』を始動に3kの手堅いコンボをあしらう。
『ウェストボートブリッジ駅』。実に三千世界(さわが)しいこの駅は同市内最大規模を誇る巨大ターミナル駅だ。

――雷都、『ハーバー・ライスフィールド・スワンプ』往きが参ります。

と聞き拷問(な)れた吐瀉(ゲロ)ったれなファッキンワードが構内を嬲り周る。
なんと無情にも学園都市サウザンドリーフ往きは43日に一度しか出ない。
それを逃したら次は暗転(な)い。

「おい、今ハーバー何とかって言ってたが、サウザンドリーフ行きはいつ来るんだ? どこにもサウザンドリーフ行きが無ェぞッ」

「…いや、マルマル、”この列車”で問題ない。これはサウザンドリーフ行きということに”なる”。」

「は? 何言ってンだ」

――まもなく、学園都市、『サウザンドリーフ』行きが発車します。黄色い線の――

「ああ? なんなンだよ急に行先変えやがって。急いで乗るぞッ」

(――固有座標(トポロジー):第739番『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)。
 対象とするAとBが「ある条件」を満たした状態である時、邂逅する機会を永久に消滅(うしな)う。
 マルマルは大枠は識っているだろうが、対象が人間”以外”にも適用されることは把握っていないだろう。
 だが、今はそれを暴露(はな)すタイミングでは無い、か…)

704/8:2019/10/09(水) 21:16:50 ID:XJty5EVg
一同は運命(いきさき)が捻じ曲がった列車に乗り込む。
とりあえず間に合った、と吠與が一息を付いた束の間、

(なんだ…? 隣の車両がやけに三千世界がしいが…)

何か異様な雰囲気が立ち込めていた。
阿鼻叫喚(ギャアギャア)と喚き散らす乗客に、空中(エリアル)を跳梁跋扈(ダンス)する血潮、既にただ事ではないであろう事がおっ開戦(ぱじ)まっていた。

「まさか、贋作(イミテーション)かッ!」

「途(みち)を開闢月代曾我(あ)けろ。俺が荒神箒(かたづ)ける。三界首枷(じょうきゃく)は他に散れ」

739は稗浮塵子(パニッカー)共を散らせ、視界を開かせる。
すると血濡れた路に見覚えのない人影が一人、浮かぶ。
赤に預ける倨傲はただ邁往をし、前に顕現する者は殺害し這い擂っているらしい。

「赤口、赤口、赤口、赤口…」

「おい、行住坐臥(と)まれ」

「……ハァ、赤口っていうのはなァ、この上もなく大きな罪悪なンだ。大罪人ということだ。
 それはつまり全人類が罪を犯したという凶(コト)…穢(オレ)はそれが赦せないッッ」

(こいつ、何言ってンだ…?)

長髪に頭を垂れ、学生であろうか「HI-HI(ハイテック=ハイ)」の字を掌る紋章から窺える。
その衣は骭に至り袖腕に至る(くっきょう)な青年は小気味悪く震えながら9つのビニール傘を背に箙う。
如何程にも形容し難いその狂気は、幾重にも積み上げた大犯罪の血吐瀉(ゲロカス)であるということは登場人物の全員が完全把握(わか)っていた。

715/8:2019/10/09(水) 21:17:10 ID:XJty5EVg
「貴様何故乗客を大虐殺(ころ)し廻っている?名は何だ?」

「――識別番号(ナンバァ)、436(シイザル)」

「は、今ナンバーって…」

「訂正(いやッ)、最早識別番号では欠番(な)い!
 穢(オレ)はHT-HI(ハイテック=ハイ)在学、HH(ホンマイッショウ)落下傘部隊特別訓練生だァ!
 ――通称『予備軍(クラウドゼロッ)』」

「あ、なんなんだ? 予備軍だァ? この人殺しがよォ」

「ハァ…?」

学生は信じられない!という顔面をした。
顳顬の血管は著しく膨れ上がり、額には幾重にも皺を重ねていく。

「ハァーーッ…赤口赤口、今日は”赤口”ォッ!
 ……赤口っつー六曜(ひ)はよォ、こういう凶(こと)って決まってンだろうがッ。
 突突(きさま)らも突突突(とっとと)突突突突(し)ィねやッッ!!
 ――自由ノ太刀『九突鋭鋒(ここのつのきれあじ)』 」

死突王(ビュオウッ)!
コンビニで買ったであろう凡庸なビニール傘から同時間に九つの「突」を創生し、矛盾(アンチトマス)を世界に提起する。
その突(トツ)は王(ただひとつのいただき)であり死を戎衣と成(す)る。

「!! Shiting(クソがッ)、滅多矢鱈(よ)けらン――」

726/8:2019/10/09(水) 21:17:28 ID:XJty5EVg
斬空(ザクッ)。鈍痛が空間表象を貪る。
マルマルの躰中心から九つの血塗られた石突きが大車輪(どでけ)え風穴を覗かせていた。

「一二三四五六七八九(=ヒトツ)。終命(お)わりだァ」

マルマルから滴る血溜りがボタボタと専有面積を拡大していく。

「怏怏ァ、血湧肉躍(たのし)いねぇえ…赤口(つみぶか)いンだよ貴様らはッッ。
 さて、だ。次はァっと…じゃあ右の赤口(おまえッ)。
 ――束縛ノ太刀『沙翁丸(さおうまる

「いいや、俺で幕引(おわり)だ」

否、CANT(詠キャン)。

「…! 九傘(トツ)が抜けねェッ。
 キサマッ、わざと風穴(くら)ったのか」

「今だ、法執行(や)れ!吠與!」

『迅雷放銃(イナズマッシュ)ッ!!』

吠與の必殺技!
全視界は白く焼け爛れ、場内を法光(EXP-01)で葬り憎を駆逐するただひとつの『裁き』。
当然、――法執行機関向け――。

737/8:2019/10/09(水) 21:17:47 ID:XJty5EVg
「「痛ってえええええええええええええッ嗚呼あああああっ!」」

雷光が地を這いずり廻り、生をなめずるかのように死(ナイフ)をチラつかす。
pokeに堪え切れた座席シートは黒煙を煙々と吐瀉(は)き出し、凄惨な車両(すがた)を晒す。
マルマル諸共法執行された雷撃により学生は全身に黒い熱傷を負い、九傘は襤褸雑巾が如く朽ち、崩れ落ちた。

「た、田丸君、大丈夫!?巻き添えで喰らっちゃったけど…」

「…俺のことは奴隷大農園(きにすン)な。風穴雷撃ぐれェ”慣れている”からな。
 で、だ。このワケ理っ解ンねぇ糞野郎はどうする?」

学生は電撃を諸に喰らい過ぎたためか、だらりと項垂れ、既に楯突く気力は残っていないようだった。

「貴様、目的は何だ? 何の大義でこんなことをした? 回答(こた)えによってはこの場で命を絶つことになるが」

「………ッコウ…赤口、赤口!赤口ォッ!嗚呼、 HH(ホンマイッショウ)様ァァ!!」 

破闇慈(パァンッ)!!
学生は僅かに残された脚力を使役し車窓を貫穿、谷底の認識(み)えない無間奈落へと自ら下落した。

「…リバー・ドア・リバー・ブリッジ。この奈落の谷から落ちて助かる人間は居ねェよ」

「とりあえずは、天網恢恢疎にして漏らさず(かいけつ)、と視て良さそうだな」

(…だが、全く腑落(お)ちぬ。結局乗客を殺害し廻っていたのは何故だ?
 そもそも436(ヤツ)が本当に識別番号(ナンバー)であれば『固有座標(トポロジー)』を発動せずにここで容易く絶命わらせるか…?)

748/8:2019/10/09(水) 21:18:03 ID:XJty5EVg
朝明け。広大な沼地越しから見える日差しがより一層強まってきた。学園都市サウザンドリーフはもうすぐだ。
ふと、吠與が座席に目をやる。
すると、今まで全く気付かなかったがそこに一人の乗客が佇んでいた。
白いワイシャツに金色長髪のその青年は、先程の顛末を全て見届けていたのだろうか、全く気配がなかった。
青年はじっと吠與を見た後、少しばかりか目元が微笑んだ。

「君の『銃線』、良い光(すじ)してるね」

「え? じゅう…何ですか?」

『まもなく、サウザンドリーフ、サウザンドリーフーー』

場内アナウンスが響いた。
吠與が一瞬他に気を取られたその瞬間、座席の青年は既に姿を消していた。

751年2ヶ月越しの感想男:2019/10/09(水) 21:45:13 ID:XJty5EVg
随分と遅くなっちまった。すまねェ、すまねェ…
予備軍だの赤口だの大昔のネタを脳ミソの底から引っ張り出してきたが奴らは記憶えているか――?
たまにふと思い出してそいつらで話を展開させるのは本当に楽しかったし中々に感慨深いものがあった

76 1年2ヶ月越しの返信男:2019/10/14(月) 21:16:58 ID:TPmC3OjQ
全人類の緋想天(おもしろ)かった!
六曜とかの電辞書出身の奴らは最早 輩(ともがら)と呼べようか
一二三四五六七八九(=ヒトツ) 壁際(せお)い、いずれはPolyphemus(はいぼく)する こいつらの言い回しがOdyい
沙翁丸(シェイクスピア)は法おじさんに並ぶ可能性を感じる

77『潜入!?新天地その名は学園都市』:2020/02/28(金) 20:48:28 ID:t9.cVYYY
早朝。
会話、電子音、駆動音、その他諸々雑音(カクテルパーティ)共をBGMとし彼らは学園都市サウザンドリーフに並び降り立つ。

「わぁ…」

吠與は感嘆の声を上げる。田舎育ちではないとはいえどこのような大都会に来るのは初めての経験であったからだ。
兄弟姉妹、皆皆よ、照覧あれ眼前には高層ビルの群れが千葉(せんよう)の如し。

「弁東西(こっち)だ、蒼蠅驥尾に付して千里を致す(ついてこ)い」

739が道を示す。

「急急如律令(いそぐひつようがある)。谷底より多段傘男(ヤツ)の健体か重体か、願わくば死体が浮上(あが)れば間違いなく前覆後戒(けいかい)される」

「要するに谷下に流れる河が奴をここに運ぶまでがタイムリミットってわけか」

マルマルは不敵に微笑む。

78あの男:2020/02/28(金) 20:49:04 ID:t9.cVYYY
「ンじゃ確認すっぞ。今回の目的は二つだ」

「一つは同じ志を持つものを探し出す。つまりは仲間を増やす」

「そして二つ目が…」

739が懐から何かを人数分取り出し歩みを進めながら配っていく。

「頼まれていた梟首(しな)だ」

マルマルにそう告げる。

小さな透明な板。吠與はゲームのメモリーカードを思い浮かべた。

「おおきたきた。この短期間でよく準備したな」

「朝飯前だ。1時間あればChokhmah(それなり)に。1日でBinah(そこそこ)。1週間あればDa'at(かなり)だ」

「頼もしいこった」

79あの男:2020/02/28(金) 20:49:25 ID:t9.cVYYY
「739さん、田丸君これは…?」

吠與は透明な板を太陽に透かしながら興味深げに尋ねた。

「DIA(指向性情報集積装置)と呼ばれている」

「ぶっきらぼうに言っちまえば情報が入ってる端末にこれを差し込みゃ知りたい情報を取れるわけだ」

「そんなことしたらバレるんじゃ…?」

「敵の急所は我が急所(ああ)」

「間違いなくバレるだろうな」

表情を変えることなく2人は率直に述べる。

80あの男:2020/02/28(金) 20:50:07 ID:t9.cVYYY
吠與が口を開く前にマルマルは肩を組み、なにやらしたり顔で告げる。

「どうせ贋作(イミテーション)共に四六時中追い回されてンだ。追手が多少増えたところで変わんねェって」

どうやら励ましているつもりのようだ。

「話を戻すがもう一つの目的は情報だ。学園都市ほどの機関となれば少なからず贋作(イミテーション)共や他の識別番号(ナンバー)に関する情報を持ってンだろ」

マルマルは目的の総括をする。濁乱や緊張を微塵も感じさせない堂々とした語り口だ。

「で、だ マルマル?」

「問題ねェ」

739に応えマルマルは人数分のサングラスと免許証のようなカードを取り出した。

「偽造した入区証だ。顔写真は無論ホンモノだが個人情報は出鱈目、名前も偽名だ。今のうちに覚えとけよ」

「んでこっちはグラサン型映像記録装置だ。とりあえず気になったところを視とけ。あとで何かに使えるかもしれねェ」

「通信機能はつけてねェぞ。認可外通信妨害術式をすり抜けられるような上等な物にしたらトラックに載せてく羽目になるからな」

81あの男:2020/02/28(金) 20:51:02 ID:t9.cVYYY
「七縦(じゅうぶん)だ」

吠與は二人の手際の良さに舌を巻く。いつの前にこんなもの用意していたのであろうか…?

そんな話を歩きながらしているうちに大通りへと出る。案内板によるとウイングメモリアルロードというらしい。

「ここで二手に分かれるぞ。俺と吠與は”学園区”。739は”企業区”だ」

ここ学園都市、『サウザンドリーフ』はいくつかの都市からなり、全域がビルで埋め尽くされている複合都市圏(メトロプレックス)だ。

それがまるで数え切れぬほどの葉のようだ、というのが名の由来になっている。

その中でも今回吠與達が降り立った位置は学園区と企業区の境目に当たる。複数の学園の学生達の能力を教育し競わせ、そして”採点”をして振るい分けていく学園区。

学園区に資金を提供し学園都市を卒業した学生の就職先や関係者の合同体である企業区。どちらも学園都市の中心たる区域だ。

82あの男:2020/02/28(金) 20:51:32 ID:t9.cVYYY
「二手って…!739さんは大丈夫なの?」

聖夜爆裂疾風(たの)もしい装備があるとはいえやはり危険とも思える作戦(ドラフト)。その中でさらに分散というスナーク狩り(リスク)を負うことに吠與は狼狽した。
私窩子乍(しかしながら)…だ、マルマルと739は顔を見合わせた後笑みさえ浮かべてみせた。

「おいおい!739(コイツ)ほど潜入と離脱に向いてる座標能力者(つかいて)を俺は知らねえぜ?何ら問題はねェな」

大げさな身振りでマルマルは語る。そして真面目な顔をして吠與に向き合った。

「むしろ心配されるのは俺達の方だ。いいか吠與ヤベェと思ったらすぐに逃げろ、命あっての物種だ。
学生区じゃあの傘野郎みたいな風紀委員(はねっかえり)が楚歌(うようよ)してやがる。気ィ張っていけ、引き際を見誤るなよ」

気迫こもる声に吠與も任務への恐怖を抑え応える。

「大丈夫…だよ。覚悟はできてる。」

「よし、ではまた後程伏魔殿(おちあ)おう。死せる仲達を走らせ続けろ(しぬなよ)二人共」

739はそう言い残し人込みへ紛れ、そして消えた。

83あの男:2020/02/28(金) 20:51:55 ID:t9.cVYYY
「俺達も行くぞ」

サングラスをかけ吠與達は歩き始める。そしてマルマルは任務内容を大まかに小声で伝える。

「いいか吠與、俺たちは学園都市に取材しに来た記者だ。適当に部活を取材してるふりして頃合いを見てフけるぞ
目指すは管理室だ。管理室に着くまでできるだけ戦闘は控えるぞ、着いたら居る奴ら全員ノして情報をいただく。
落ち合う場所は此処だハーバー・ライスフィールド・スワンプ駅前、座標4、12の92 ここに隠れ家がある」

「仲間の方は739が担当する。企業区の方で協力してくれそうな奴にあたりを付けてるはずだ。
まァ有力な学生を勧誘(さら)うのは流石にまじぃからな。そうなると奴らも本気で追ってくる」

学生である自分達が言うのもアレだがとマルマルは付け加えつつ来客党用入区関所前に着く。

「入区証出しとけ。とちるなよ」

おそるおそる吠與は受付機械像前に並ぶ。ギリシア様式の彫刻が並ぶ風景はどこか威圧的でありまた荘厳であった。そして吠與達の順番が来る。

「今日取材予定を入れていた円(まどか)だ。こっちはウィンクラー」

淀みなくマルマルは偽名を告げる。

「円様とウィンクラー様ですね。入区証の提示をお願いします。」

機械から電子音声が流れスキャナーが光る。吠與はばれないようにと祈るようにそっと偽造カードを置く。

84あの男:2020/02/28(金) 20:52:25 ID:t9.cVYYY
「認証しました。ようこそ学園都市へ」

「どうも」

無事受付を抜け吠與はほっと息をつく。第一段階クリアだ。

「なんだありゃ、学園都市の奴らは随分悪趣味だな。彫刻に喋らせて何が楽しいのかねェ」

マルマルは減らず口をききながら進む。そして第三十三校舎前に着くと黒い帽子をかぶった長身の男に呼び止められる。

「これはこれは!取材にいらした円様とウィンクラー様ですね。今日は遠路はるばるお越しいただきましてありがとうございます」

「そういう手…貴方は?」

「申し遅れました。私(わたくし)、罪罰 魃と申します。近しいものからは”バツバツ”と呼ばれております。以後お見知りおきを」

慇懃に一礼をし、言葉を続ける。

「僭越ながら今日は学園の案内係を務めさせていただきます。さあ部室棟まで案内いたしますよ」

そう告げられた吠與達はバツバツと名乗った男についていく。

85あの男:2020/02/28(金) 20:52:54 ID:t9.cVYYY
「(うさんくせェ野郎だな…)」

一先ず潜入に成功したものの自由に動くためにはこの男を撒かないといけない。タイミングを逃さぬようマルマルは気合を入れなおした。

「それで今日は部活取材とのことでしたがどこへ行くのかは決められているのですか?」

「まぁ…適当に運動部と文化部を見回って面白そうな活動をしている部を特集しようかと…」

マルマルは答える。我ながらいい加減な記者だ。

「素晴らしい!ではまず生徒会を取材しませんか?
正確に言えば部活ではありませんが全ての部活の予算を管理し運営する職務を行う場でもあるため色々な内情をお話しできると思いますよ」

「ああ、じゃあまずはそこに行こうかな。お前もそれでいいか?」

86あの男:2020/02/28(金) 20:53:21 ID:t9.cVYYY
吠與は頷きバツバツについていこうとし…「ちょっと待ってください!」

いつの間にか近くにいた少女が大声を上げる。皆驚いたように立ち止まる。

「あの!取材ということならば”図書部”を取材してくれませんか!」

「おやおや…誰かと思えば貴方でしたか」

「この小む…方は?」

ギリギリ言い直したマルマル

「ああこの方はサンク=メリット氏、図書部の部長ですよ。図書部に取材とは一体どういう…」

「あのうちは弱小ですけれどもやる気はあります!取材してもらってうちの良さを広めてもらって部員を獲得したいんです!
お願いします退屈はさせません!」

バツバツの言葉を遮り繰り返し頭を下げる少女。Where is thy lustre now?(嫌な予感がマルマルを貫いた との意であろう)。

「そうですねぇ…」

バツバツは少し考えこむ。

87あの男:2020/02/28(金) 20:54:26 ID:t9.cVYYY
「でしたら円様には生徒会をウィンクラー様には図書部を取材していただくという形でよろしいでしょうか?」

ここまでくれば吠與にも状況のハードラック(まず)さがよくわかる。

ザ・糞軍師シリーズ(ぶんさんからのこりつ)は死への飛翔へと同義だ。しかし断るにはあまりに不自然だ。

「分かった俺が生徒会へ行く。ウィンクラーはそっちを頼むぞ」

何事もないようにマルマルは受ける。内心は大きい舌打ち(V5)をしているだろう。

「う、うん」

動揺を隠しつつ頷くがやはり顔に少し焦りが見えるか吠與驚異。

「ありがとうございます!!こっちです来てください!」

少女に引きずられるように吠與は連れていかれる。

88あの男:2020/02/28(金) 20:54:59 ID:t9.cVYYY
「では…貴方は私と」

「…ああ」

…マルマルはバツバツについていく。

マルマルは現状況を分析する。イレギュラーな状況だがむしろチャンスとも言える。バツバツを撒くよりあの小娘を撒く方が遥かに容易だろう。

それに加え連れていかれたのが吠與だというのも幸いだ、もし逆だったら吠與は死んでいたかもしれない。

「(吠與、手前ェなら大丈夫だ…!)」

自分に言い聞かせるようマルマルは心の中で呟いた。

89あの男:2020/02/28(金) 20:55:21 ID:t9.cVYYY
「えっとですねぇ図書部の活動としましては…」

「ちょ、ちょっと待って…!」

引きずられながら立ち止まろうとする。

「周りに人もいて危ないからゆっくり行こうよ、ね」

「あ…ごめんなさい…」

「取材に来てくれたことがすごいうれしくて…えへへ」

改めて吠與はサンク=メリットと呼ばれていた少女を観察する。第一印象としてはなにやら不思議な格好をしている少女だということだ。

ゴスロリ…?であろうかあまり詳しくないが黒いフリフリの服と言えば多分そうだろう。それを彩るオレンジの髪。かなり目立つ方であろう。

「そういえばまだ自己紹介してませんでしたね、改めましてサンク=メリットです。高等科の一年生です!今日はよろしくお願いします!」

90あの男:2020/02/28(金) 20:55:46 ID:t9.cVYYY
元気よく喋る少女。人懐こい印象を受けるが油断しないようにしなくては… 吠與もそれを受け自己紹介する。

「フーゴー=ウィンクラーです。こちらこそお願いします」

「フーゴー=ウィンクラーさんですか…う〜ん」

なにやら考え込む。そしてすぐ答える。

「じゃあクララで!」

「は?」

吠與は思わず驚嘆の声を上げる。

「ウィンクラーさんだと堅苦しいしかわいい呼び方がいいな〜って…」

気恥ずかしい笑みを浮かべ期待するように目を向ける。

「わ、わかりました好きに呼んでください」

相手の要望をおとなしく聞いておいた方が後々やり易いだろうと考え承諾する。

どうせ仮初の名前だ。好きにあだ名でもなんでもつければいい。

91あの男:2020/02/28(金) 20:56:06 ID:t9.cVYYY
「やった!私のことはメリーって呼んでくれると嬉しいです」

「メリー?」

「…私ちょっと自分の名前が苦手で…名字の方もメリットだとなんか ん〜って感じだし」

「わかりましたじゃあメリーさん」

「呼び捨てにしてくださいよー メリーさんだとお化けみたいじゃないですかあの追いかけてくるやつ」

「わ、わかりましたよ!じゃあメリー」

名前を呼び捨てるとなんだかとても親しいようだなと思い今度は吠與が気恥ずかしい笑みを浮かべる。

「えへへありがとうございます… っと着きました!ここが図書部です」

どう呼ぶかなんてやり取りをしていたらいつの間にかに着いていたようだ。メリーの手によって扉は開かれ吠與の取材が始まった。

92あの男:2020/02/28(金) 20:56:26 ID:t9.cVYYY
―― 一方

生徒会室へと歩みを進めるバツバツへついていくマルマル。

ここまでの道のりで目立つものと言えば男の肖像だ。そして肖像に描かれている99という数字。

目を走らせると色々なところに飾られていることがわかる。

教師か、創立者か…?と思ったが服は学ランだ。学園都市で優秀な成績を収めた者への讃美か…?

しかしそれにしても異常だ。まるで肖像の彼が此処の支配者のようにマルマルの目に映った

「しかし面白いものですね記者というのは」

唐突にバツバツは立ち止まり神妙な顔をして振り返る。

「何がですか?」

怪訝に思いつつマルマルも立ち止まる。

93あの男:2020/02/28(金) 20:56:50 ID:t9.cVYYY
「何といいますかね…そんな糞ダセえサングラスをかけるような、ディスコ時代のサンタ以下のセンスを持つ輩でもなれるものなのかと思いましてね」

「あ?」

なんだこの馬鹿、喧嘩売ってんのか…?

理性でいろいろなものを抑えながらマルマルは言葉を考え絞り出す。

「それは…ちょっと…来客に対しておかしくないか?」

「おかしいのはあなたですよ円さん。私は生徒会で書記を担当しておりましてね人の仕事を無暗に増やすのはどうかご遠慮いただきたい」

「どういうことだ…?」

「書記の業務にですね日報の作成というものがあるんですよ。そこに侵入者2名捕縛、生徒会権限で処刑と記入しなくてはいけない、各種書類も添えて」

「手前ェ…」

「おやおや…怒らせてしまいましたか?これは失敬」

神妙な表情はいつの間にかに嘲笑へと変わっていた。

94あの男:2020/02/28(金) 20:57:17 ID:t9.cVYYY
「手前は仕事なんざしなくていいぜ。ここで寝てろ」

「心の駒に手綱許すなと言いますが、素晴らしい表現だと実感できますね。やはり何事も経験ということでしょうか」

「ほざいてろ…!」

――奇経八脈、帯脈。二十九難

「ほう!これはこれは」

「これで手前はここから脱兎(に)げられねェそれに増援(たす)けもこねェぞ?」

体を一周するように巡る帯脈。そこから気を放ち場に結界を張る。

逃走防止、人払い。マルマルは目の前の無礼(ふざけ)た馬鹿を確実に仕留めるつもりだ。

95あの男:2020/02/28(金) 20:57:44 ID:t9.cVYYY
「いやはや顔に似合わず随分と親切なのですね貴方は」

「あ?何言ってんだ手前ェ」

「ここ学園都市は実力至上主義。あらゆる行動が自らの得点に絡んできます。私一人で貴方の相手をすることは他の人間に差をつけることができるとてつもない幸運なのですよ」

「ンなことか寝言は寝て言えや」

「そんな貴方も幸運だ。私の方で良かったですね」

「寝言は寝て言え…ッつったよなァ!?」

廊下が馬鹿轟音(くだ)ける戦の鐘の音。初対面の人間、全くもって関りない人間同士が死合うような因縁をどのように抱くのであろうか…?

この両名が証明(The Living End)であろう。マルマルのバツバツへの戦闘(しゅざい)が始まった。

96あの男:2020/02/28(金) 20:58:04 ID:t9.cVYYY
「ささ、好きなところに座ってください!」
 
教室約二つ分程の空間に甘い匂いが漂う。柔らかそうな色とりどりのソファー、パチパチと楽し気に音を上げる暖炉、そして並び立つ本棚。思いかけず立派な室内に驚嘆しつつ適当なソファーを選び座った。

「紅茶をいれてお菓子を持ってきますからクララさんはそれまで適当にくつろいでいてください。あっ本も興味があるものがあればお好きに読んでくださいね」

矢継ぎ早に言葉を浴びせかけ台所があると思われる方へメリーは向かう。吠與は言われた通り面白そうな本を探す、ほどなくして背表紙が気になった一冊を取り机の上に広げた。

タイトルは現代学園史といういかにも龍安寺の石庭(かた)そうな本だった。少しでも情報を集めなくてはとパラパラとページをめくる。内容はサングラスに記録されるはずだ。



――学園都市の環境として懸念されていたのは泡沫組織の乱立による…


…転機が訪れたのは偶然にもHT-HI第99期生入学式からであり、アガスティアの葉と呼称された反体制組織を鎮圧することで顕著に…


…『99』この祝福されし完成は創立以来学園都市を完全統合したとして知られる唯一の人物である本間一…

97あの男:2020/02/28(金) 20:58:20 ID:t9.cVYYY
「できました!」

「うわぁ!」

突然声をかけられ読みふけり始めていた吠與は飛び上がった。

「わぁっ す、すみません…」

つられてメリーも驚く。

「夢中になる本をもう見つけたんですね」

少しうれし気にのぞき込んでくる。

「一体どんな…ってソレ学園史じゃないですか」

「え…まぁ変だよね…」

「いやよくそんな固そうな本を最初に選んだなぁ…って私も読んだことありますけど寝ちゃいそうでしたよ」

98あの男:2020/02/28(金) 20:58:36 ID:t9.cVYYY
「ま、まぁとにかく」

怪しまれないように話題を変えようとする。

「これすごくおいしそうだね!」

並べられた焼き菓子を指して吠與は言う。少し白々しいか…?などと思っていたが

「ほ、本当ですか…!?昨日焼いたやつの残りなんですけどもしよければ…」

部屋に入った時の甘い匂いはこれかと一人納得する。一つ手に取りつつ口に入れる。

「おいしい!」

口に入れるとサクサクとした触感から始まり、そのあとクランベリーだろうか?甘みとほのかな酸味で楽しませてくれる。

「ありがとうございます!一人で食べるのもいいですけど誰かと食べるのも幸せなんですよ〜 紅茶との相性も抜群ですよ」

といいつつ自分もつまむメリー。ふと目を上げ何かに注目する。

99あの男:2020/02/28(金) 20:58:59 ID:t9.cVYYY

「最近ソレめっちゃ流行ってますよね、ちょい悪ってやつ?」

唐突に言われ混乱する吠與。

「グラサンですよグラサン」

「あ、ああこれのことね。いやまぁその流行にのっとこうかなーって」

「何ですか〜それ」

クスクスと笑い声が響く。

「私にもちょっとかけさせてくださいよ」

メリーが急に手を伸ばす。

「いやこれは…」

吠與の心の中で警報が鳴り響く。吠與自身かけている感じや見た目からではわからないが相手がもし直に触れれば内蔵カメラを察知できる人間だったのならばかなりまずい事態になる。

100あの男:2020/02/28(金) 20:59:23 ID:t9.cVYYY
「いいじゃないですか避けないでくださいよ」

右手が伸びてくる。思わず吠與は手首をつかんでしまう。

「ぐぬぬ…」

メリーはくやしそうな表情を浮かべていると思えば急にいたずら気な表情に変わった。

「それならこうだ!」

空いている左手でわき腹をくすぐってくる。

「ちょっ…やめっフフッ」

くすぐられ思わず笑ってしまう

「いまだ!」

左手を伸ばしグラサンをつかもうとするが吠與は寸前のところで左手首を捕まえた。

101あの男:2020/02/28(金) 20:59:47 ID:t9.cVYYY
と同時にバランスを崩したメリーが吠與に倒れこんでくる。

「ぎゅ!」

その衝撃で声が漏れる。気が付けば抱き合うような形になってしまっていた。

「あ…」

「え、えへへ…」

二人の間でまるで時が止まったかのようになり気まずい沈黙が流れる。

吠與は今自分の顔がゆでだこのように赤くなっているのだろうなとふと思った。

102あの男:2020/02/28(金) 21:00:22 ID:t9.cVYYY

「オラァッどうしたァ!」

極悪怒号(ゴァドゴォ)!!些細な動きも見逃すな、桐一葉だ(とらえられるか)?支配的な推進力。気功の天地渾沌兆(しんずい)を顕現(み)せてやる。

刹(のち)、全身全霊で顔面を蹴り潰し抉り壊す(なで)る。単純であるが故の殺意(ラストワード)。

気を纏いジャックヴァルディ(まばゆ)いばかりに爛々(かがや)く壊し屋(みぎあし)をバツバツに打(ダークツーリズム)。

それは最果ての死(マグ・メル)に対する斬刑(グラウンド・ゼロ)の体現者であることの自負で灼(あ)ろうか? 

「やれやれ品のない技ですね」

秋を知り(さばき)、軽口を叩きながらバツバツの悠々回避(バックステップに淀みなし)。

「ほらこれとでも遊んでなさい」

バツバツはあたり周辺に散らばっている瓦礫を超常能力で浮かび上がらせ焼夷収束爆弾のようにモロトフのパン籠(ぶちまけ)る。

103あの男:2020/02/28(金) 21:00:45 ID:t9.cVYYY
マルマルも六徳(そくざ)に徹底抗戦(オープンファイア)。紅蓮(ひとり)、浮かぶのは武能であることの証左(true)。

「喰ゥらいなァッ! 『速拳(ラピッドファイア)』!」

万、非 (い)や、無限か?最速い殴打(ぶっこ)みの連打を選ばせて”あげる”。

「もしこれで限界なら貴方は少々運動不足のようですね」

バツバツの超常出力が俄かに上がりマルマルの苦艱(にがむし)を口内炎(ひきずりだ)そうとする。

「三度目だ。寝言は聞き飽きてンだよ!『蒼速拳(ロマンラピッドファイア)』!」

構え、正拳突き。その動作をした後、体内の気を操り、構えの状態に超速で戻す。

故に最速を涅槃寂静(こ)えた最速。DS(むろん)、バツバツの弾幕結界を粉砕(ぶちやぶ)る。

104あの男:2020/02/28(金) 21:01:06 ID:t9.cVYYY
「これで終わり(エンドラ)だ糞野(パッ…)…」

「それなんだと思います?」

着地地点に違和感(イスカリオテのユダ)。マルマルの足元に喰いかけすら起こり得ないパイナップルの鈍い光。

閃光、爆発、

流石のマルマルも意識外からの一撃(アウト・ロー)に足をふっとば…「小賢小癪(しゃらくせ)えェッッ!」

MK2破片手榴弾の爆発を錬気で捻じ伏せ特攻(ぶっこ)みを続行する。

「おやおや、ならばこれならどうでしょうか」

地雷…?否、空雷

設置即爆裂する不遜の塊がマルマルへ圧(すりよ)る。

105あの男:2020/02/28(金) 21:01:26 ID:t9.cVYYY
「許可なきUrgent Fury(おしとお)るッ!」

――奇経八脈、衝脈。五功五味

暗闇(し)に瀕したとき最後に頼(ラストバタリオン)るものとは何か…? 神(あのやろう)への祈り、追憶への哀愁、否、死。

味覚だ。血の味、経験と修羅の混合物(クリムゾン)は初めから答えを機知の終わり(し)っていた。当然の帰結だが掠りもせず空雷源を泳ぐ。

「死化粧に赤(しま)いだ」

射程距離に入った。完全捕捉(とら)える。そこから一撃必殺(くりだ)される拳(フィスト)。

バツバツの鳩尾(みぞおち)に深くめりこんだ拳(フィスティスト)。込めた気がバツバツを爆ぜさせるまでの執行猶予の刻印(とき)。

「が…あッ」

「ハッようやく手前のにやついた表情が歪…」

106あの男:2020/02/28(金) 21:01:50 ID:t9.cVYYY
気づき。なんと形容すればいいだろうか?模型を出鱈目に組み立てた後一瞬の笑いからの虚無?。はたまた首を柱に吊るす時代からジーンズを履かせあう時代への無慈悲な変遷?

ともかく見間違いでなければバツバツは全くもって無傷であった。

「貴方の下らない手品の種なんて最初から分かっているんですよ」

そう告げるやいなやマルマルの正中線片側五分を貫手で打。

「…ゲッ…ガ…手…前ェ」

「気功使いの弱点は霊枢です。経絡が交わる所を正確に突けばなんのことはない」

「それと言ってませんでしたが、私も気功ぐらい使えますよ?故に貴方の攻撃は問題外であると言わざる負えません」

107あの男:2020/02/28(金) 21:02:15 ID:t9.cVYYY
「手前…なら…なんでこんな茶番…を」

「困った話であんまりにも早く貴方を処刑(かた)づけると荒事が得意だと思われて血生臭い前線(ハウンド)に回されてしまうんですよ。
血と硝煙の臭いはどうにも苦手でして」

「ふざけ…ッ…」

「ああ、もう黙ってくださって構いませんよ?」

めんどくさそうなバツバツの拳がマルマルの顎を揺らす。気絶への甘美なる誘い、暗転へのカウントダウンが始まる。

「(すま…ねェ…吠與、7…39…しくじ…っちまっ…)」

マルマルの意識は闇へと沈んだ。

108あの男:2020/02/28(金) 21:02:35 ID:t9.cVYYY
「さて、と もう一匹のドブネズミの方もさっさと捕まえてしまいますか。丁度いい撒き餌もここにありますし」

バツバツは気絶したマルマルを抱えどこかへ運ぼうとする。

「っと」

ふらつき。マルマルの拳(フィスト)は確かに傷跡を残していたのだ。

「…デスクワーク続きで鈍りましたかね?全く…人に運動不足とか言ってる場合じゃないかもしれませんね」

ふらつきながらもバツバツはマルマルをどこかへと運んでいった。

109あの男:2020/02/28(金) 21:02:50 ID:t9.cVYYY
「今日はありがとうございました!」

「い、いえこちらこそ…」

結局あの後、気まずさでまともに情報収集できなかった。だが、ここからは自由だ。管理室へ急いで向かおう。

「またいつでも来てくださいね♪。どうせ部員も私しか居ないから暇ですし…」

「ええ…ぜひ」

苦艱だ〜とどこからか聞こえそうだ。

110あの男:2020/02/28(金) 21:03:12 ID:t9.cVYYY
図書部を出るとなにやら騒がしい様子の学生たちのお喋りが途切れ途切れに聞こえた。

「おい聞いたかよ談話室で…」「…自動販売機に…」「…侵入者が?…」

聞こえてきた単語に体が震え心臓が早鐘のように打つ。

「(まさか田丸君が…?いやそんなわけ…)」

目的を遂げるのであれば今は好機であろう。注目は談話室へと集まっている、管理室までの道は手薄だ。

しかし吠與はマルマルにもしものことがあると思うといてもたってもいられなくなった。

嫌な予感=必中(ガー不)を必死に暗転無敵(おさ)えながら吠與は談話室へと急いだ。

111長文君:2020/02/28(金) 21:04:35 ID:t9.cVYYY
クッソ激烈に長くなっちゃった!(痛恨)
暇な時見てくれ

112感想男モロト・バージョン02:2020/02/28(金) 23:23:00 ID:x59HyJnU
――日課、喰いかけの林檎を百度踏揚(み)る。
嗚呼、何も虚ェくだらねぇ日常――否、交、換――の文…字?疾ッ!?

取り急ぎ全部読んだ。聖夜爆笑疾風弾(おもしれ)ェッ!!
あまりの引用の多さに一単語ずつ語源を調べながら読んだがトンでもねぇ知識量だ…
この語彙力は一体――?兎角、今回は実に力作だったし、熱量がすごかった!!

739の能力がチート過ぎるので如何せん二手に分かれ(一時退場)たな
発動条件を与えようとしたが何も思い浮かばなかったぜ…

ゴスロリ女サンクちゃん、来たか…!
実際俺も学園都市編になったら出そうとは思っていた識別番号筆頭キャラ
現状吠與も粛清対象(ポイント稼ぎ)っぽいがどうにかなって仲間になる流れかな?
あまりにもあざとムーブをかましたので抱きついた時に吠與に何か細工を施したと予想
(何れはどっかでマルマル煽りパートも来ると思われるので恐らくその時の知略であろう)

そして、対にバツバツの邂逅――拷問(インタビュー)してやる
見た目的に強キャラを醸し出しているとはいえ思った以上に実力差があったな
マルマルはOdysseaの歴史上かませとして識別っているが果たしてどこまで強くなれるだろうか…?
あと気功使いは割とポピュラーなのか…?如何せん奇経の知識がなさ過ぎて参考文献が把握ら…ねェッ

まだ1回しか読んでないので今後何度も読み返すぜッ
思っていた感想と違ったり色々と解釈が違ったらすまねえ…すまねえ…
次回の更新は…俺ェッ!?少々ハードルが上がりすぎているのではないだろうか

113ヴェープルシリーズ、”パイオニアモデル”:2020/02/29(土) 13:00:12 ID:vBecuRwU
感想男が疾風迅雷(は)ッ…えェッ! 読んでくれてまじでありがたい
書きたいこと詰め込めるだけ詰め込んだら激長奴になってた
ネットの故事ことわざ辞典がめっちゃ頑張ってくれたこいつはmvpすぎる
739はなんか一人でもいけそうだから別な方に回した。メイン3人の中じゃ一番手練れだと個人的に思ってる
サンクちゃんが識別番号筆頭キャラで認識が共通してたのは恐悦至極(めでた)い
マルバツ戦はあまりにも歴史的でここを際立たせたいがために吠與がクッソ平和に調査してるシーンを途中で挟みたかった
そのせいで激長奴になった(隼の剣)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed1982/37/1/37_1_61/_pdf
気功はこれに出てくる単語を好きに使ってる。俺も正直分からん…
一応 衝脈が防御 帯脈が感知 督脈任脈が攻撃っていう申し訳程度の設定を作った
次はキミの番ん゛ッ!

114ヴェープルシリーズ、”ハンターモデル”:2020/02/29(土) 13:16:48 ID:vBecuRwU
あとなんか対になる正経十二経脈とかいうのもあったからよりどりみどりだぜェ…?
技のデパートだ

115『学園崩壊!?新たな仲間との邂逅(であ)い』:2020/05/29(金) 00:20:24 ID:1cy8TvSY
「まさか…」

悪寒に充てられた嫌な額汗。不法滞在(オーバーステイ)を決め込んだ口内の苦虫に餌をやる。

「まさか…まさか!」

騒ぎに群がる雑草(NPC)を掻き分けた先にあった光景は、談話室というには余りにも石庭(ブルーカーテン)。
その中央にただ一つ、自動販売機という棺(カタチ)。そして、110円均一パックジュースと化した無惨な男の姿に一人、震える。

「マルマルウウウウウウウウウウウウッッ!!!」

全破壊を一身に受諾したマルマルに最早下半身と形容できるパーツは残っているか?――否、壊死。
地球重力(9.807 m/s²)に抗う力すらなく、ズルリと自販機から剥離し、堕(Slash)つ。

116あの男:2020/05/29(金) 00:20:42 ID:1cy8TvSY
――すま…ねェ…しくじ…っちまっ…た…
そう言い残したであろう。苦汁を最後の一滴までなめ切った口のカタチから想像に難くない。
こんな悲劇(こと)になるだなんて…ということは最初からここに来ることは『想定済み』だった?
吠與は周囲を一瞥するが、談話室には野次が増える一方で、対面したであろう罪罰(ドストエフスキヤツ)の姿が無い。
いや、鼠取(トラップ)だ。マルマルを磔にしているのはB級映画(ひんのない)演出であり、自分を引きずり出すためであろう。
このままここに居ては死霊と仲良く盆踊り(ダンシングハードラッカー)は既定路線か。
吠與に残された以下の選択肢、

A.管理室へ向かい任務を継続する
B.直ちに学園から脱出する

117あの男:2020/05/29(金) 00:20:57 ID:1cy8TvSY
「C.マルマルを…助けるッ!」

「ええ、よくぞ言いました! 彼には未だ息があります!
 頚動脈から幽かに鼓動を確認できることから彼は確実に生きています」

「!! それじゃあ田丸君は助かる…って、あなた誰です?」

黒縁眼鏡をクイとこれ見よがしに上げる。
高身長(ノッポ)、ガリ勉(ナード)風味の男が難解な数式を解かんとばかりに好奇の眼差しを向けてきた。

118あの男:2020/05/29(金) 00:21:09 ID:1cy8TvSY
「失敬、申し遅れました私、三郭山 革(みかくやま あらたまる)と申します。
 皆からはサンカクサンカクというあだ名で親しまれております。
 ええ、サンカクサンカクというあだ名の由来は苗字の三をサンと読みまして」

「ごめん! 今は自己紹介(それ)どころじゃないんだ!(聞いたのは僕だけど…)
 早く田丸君を蘇生させないと…」

「治癒(リジェネレーション)、ですか? それなら私の専門分野ですが」

「!」

119あの男:2020/05/29(金) 00:21:37 ID:1cy8TvSY
「ええ、簡単な話です。ここに一輪の喇叭水仙(ラッパズイセン)がありますね?
 これはかの有名な始まりの虚無僧が光栄讃詞後に行脚した痕跡から開花した名花と言われており」

「説明はいいから! とにかくやって下さい!」

「承知しました。ええ、それでは始めます。
 爾の名は何ぞ全地に大いなる、爾の光榮は諸天に超ゆ。
 天の鳥、海の魚、一切海に游ぐ者なり、彼に光榮と尊貴を冠らせ。
 ――光栄讃詞第八詠『ゲフの楽器』」

光るマルマル、ぐちゃついた老婆の吐瀉物(トマトを踏み潰す)のそれは再構築を余儀なくされ、
穿たれがちな彼の胸部は皮下組織の結合を繰り返し、その空洞を無き事と遡時計(す)る。
――マルマル、蘇生(ふたたび)。

120あの男:2020/05/29(金) 00:21:48 ID:1cy8TvSY
「…よう、吠與」

「田丸君…ッ!」

吠與はひとまず安堵し、そして歓喜に沸いた。
共に固唾を呑んでいた視聴者(オーディエンス)もドブ臭せえ茶番(スタンディングオベーション)を掻き鳴らしていた。
当事者目線からしてみれば場違いで気恥ずかしさに堪えず空嘔を漏らさずには居られない。一刻も早くここから立ち去ろう――
他方、サンカクサンカクは称賛を浴び、さぞ心地好い(ヒロイック・シンドローム)だろうと顔面を覗くが、意外にも愕然とした趣だ。

121あの男:2020/05/29(金) 00:22:00 ID:1cy8TvSY
「なんと…これはすごい。あの大怪我からこんな一瞬で…
 ええ、実を言うとこの光栄讃詞は下級呪歌でして…まだまだ術式が不十分でありますが故、
 肝心の再生部分は本人の基礎再生(リジェネレイト)能力に頼ってしまう部分があります。
 が、この男(かた)の自然治癒(それ)は、常人の域を完全に”脱”しているようで――」

「サンカクサンカク…だっけ? とにかく助かったぜ。ありがとよッ」

「ええ、礼には及びませんが、それより…彼方はなぜこんな惨事(こと)に?」

「あー、それはだな…」

122あの男:2020/05/29(金) 00:22:18 ID:1cy8TvSY
後方、コツコツコツコツ、とローファーから発するには余りにも音程が12ピーアンジ(たか)い。
敵襲? 否定。フリ…ル…?

「まるまるぅ〜って、なんですかぁ? 右回り? 左回り?」クスクス

「メリー……ちゃん?」

メリーと対象に選択した容姿(ファクト)と想像(ハルシネイション)の乖離、吠與は狼狽する他は無かった。
死神代行(オレンジ)の髪、白黒礼装(ゴスロリ)、そして、右手に雷霆魔槍(ケラウノス)、左手に魔導古書(グリモワール)。
学校で出会っちまうには余りにも完全武装(ぶっそう)なビジュアルだ。

123あの男:2020/05/29(金) 00:22:32 ID:1cy8TvSY
「あ? アンタは…インタビューを受けに来た図書部の」

少女はニコッ、と笑みを見せる。
含みのない表情。

「またお会いしましたね! ”まどか”さん」

いや、違う。
違いねェ。嫌でも把握っちまう。その奥にある紛うことなき、殺意――。

「早速ですけど、あなたがどっち『回り』か確かめてあげます」

124あの男:2020/05/29(金) 00:22:45 ID:1cy8TvSY
刺突――

(しまっ…間に合わ…ッ)

――ペルセール=プルミエ『黒鼠の舞踏会』

回(ロタシオン)。
穿つ(ペネトレイト)、速攻(アット)、貫通(ペネトレーション)――死(モール)。
アリストテレスの嘘(グラヴィタシオン・ユニヴェルセル)を暴いたのはニュートンただ一人。
その回転に終わりはあるのか? 否、掻い暮れ見当もつかず。

125あの男:2020/05/29(金) 00:22:58 ID:1cy8TvSY
「穿ガアアアアアアアアアッ!!」

雷霆を纏った魔力槍は削岩機さながらの轟哭で殷々と鼓室を震わす。
皮膚、皮下組織、筋膜、胸骨体、心臓を間もなく掘削。鈍痛が四肢頭頸部その末端までをも谺する。

「マルマルッ!!?!」

「アハッ、まるまるぅ〜って左回りなんですね〜」

「マルマルに一体何をしてッ…!?」

「『何をして』って? クララさんが教えてくれたんですよ」

126あの男:2020/05/29(金) 00:23:21 ID:1cy8TvSY
メリーの目線の照準は吠與のポケットに向けられた。
膨…らみ…? 何故? 人形の…頭部…?
いつからこんなものを? …ああ、『あの時』か。
なんだ、そういうことか。最初から『泳がされていた』のか。

「僕のことも最初から始末(そう)する気で…」

「! それは違います! クララさんは得点付与『対象外』ですので」

「は…」

127あの男:2020/05/29(金) 00:23:41 ID:1cy8TvSY
この気味の悪いフランス人形の頭は盗聴器のようなものだろう。
マルマルが生きていることを知り、得点を獲得するため真っ先に始末しに来たのか?
嗚呼、何たる間抜けなことか。

「さあ、もっと廻りませんか?」

――ペルセール=ドゥジエム『膿む国王の大洪祭』

マルマルは更にウィトルウィウス的人体図(まわ)る。取舵一杯旋回を繰り返す、永劫。
――否、リジェ…ネ…?

128あの男:2020/05/29(金) 00:23:55 ID:1cy8TvSY
「蓋此の神は我等の神にして世々に至り、彼は我等を導きて死の時に至らん。
 爾等紫音の周囲を行きて、之を環り、其の戍楼を数えよ。
 ――光栄讃詞第四十七聖詠『ファルシスの舟』」

サンカクサンカクの神聖(ホーリー)を御(シット)する閃光(ヘヴン)!
その弑逆的旋回を嘲笑うかの如く逆回転(せいし)した。

129あの男:2020/05/29(金) 00:24:06 ID:1cy8TvSY
「!?!? ちょっと! 邪魔しないでください!」

「いえ、邪魔されたのは私のほうです。せっかく修復したばかりなのに
 また穴が穿(あ)いてしまったので、これは治さなければいけませんから」

サンカクサンカクはもしかして天然…なのか?
もしくはわざと煽っているだけなのか?
何にしても、だ。冀くは味方(こちら)側であってくれ。

130あの男:2020/05/29(金) 00:24:26 ID:1cy8TvSY
「いい加減ン拷(い)ってえンだよッ! この小娘(ガキ)ィ!」

蛮王(バォウッ)!

マルマルのぶっきらぼうに放り出された蛮足(2D)。
如何せんただの足であるが、時に人体随一の太ってえ骨は簡易的(ガトリング)凶器(2D>236K)となりメリーの下腹部を神砕(ダークナイト)。
そのまま壁際まで約20フィート(6.096m)――飛べッ。

131あの男:2020/05/29(金) 00:24:40 ID:1cy8TvSY
「なんだか知らねえがいつもより力が溢れてくる気がするぜッ」

「上級です」

「?」

「私が今詠(か)けた呪歌は第四十七聖詠――
 治癒効果と同時に身体能力の向上を主体とした四十番台の実用特化型術式。
 下学年でのテキスト(聖1A)には載っていない範囲です。
 俗にいう『上級(聖2B)』ですよ。
 …正直に言って実戦での利用はこれが初めてなのですが、どうやら上手くいったようです」

132あの男:2020/05/29(金) 00:24:58 ID:1cy8TvSY
「よォ分からねえがありがてェぜ、サンカクサンカクッ!
 おい、図書野郎。よくもまあ不意打ちを喰らわしてくれたな?
 次穿(あ)けたらタダじゃおかねェぞ?」

三割(ワンコン)を喰らったメリーはもたつきつつも再びマルマルに対峙(ヘブンオアヘル)。

「…永遠に自販機に埋まっていればよかったものを」

「ほざけ。おとなしく寝てろ。今度はこっちから行くぞ?」

133あの男:2020/05/29(金) 00:25:10 ID:1cy8TvSY
――奇経八脈、帯脈。二十九難
大気の流動は全てマルマルの奴隷だ!
このまま1coin(タイマン)を申し込む所存だろう。

「この大気の震え――奇経八脈!? まさかあなた、気功使いなのですか!?」

「おう、その通りだ! ようやく理解のある奴が現れたか」

「ええ、そんな古風(ディスコサンタ)な気功術を現代で使っている人が居るとは!
 奇跡…? いや、化石としか言いようがない!」

「あァ!? ンだと手前(テメ)ェッ!!」

「田丸君三郭山君ッ! 内輪揉めはいいから! ――来ますッ」

134あの男:2020/05/29(金) 00:25:23 ID:1cy8TvSY
開いた本を魔槍に宛がい、呪歌をより強固なものへと二重詠唱(うわが)きしていく。
腰を据え、軸足を固定する。突の構え。刺突? 笑止。――死突。
流觴曲水に遇え、機鋒の欲するが儘に。

――ペルセール=ティエルス『塹壕のメリー・クリスマス』

呪歌の加護を受けた槍先は対象を穿孔するまで終わることのない旋回を与える。
ぱっくりと開いた心臓は見知らぬ空気口からヒューヒューと情けなく音を立てるだけの間抜けとなり、そして、生命活動を停止。死ぬのだ。

135あの男:2020/05/29(金) 00:25:35 ID:1cy8TvSY
「馬ァ鹿の一つ覚え(ワンパ)なンだよッ! 手前(テメ)ェが心臓(ここ)狙いなのは見え透いてンだよッ!」

誤謬(ゴビュ)ッ!
『速拳(ラピッドファイヤ)』を己に打ち付け…る!? 胸部を自ら刳り抜き、通り道を作ってあげる。当然吐血。
血迷ったか、マルマル――否。

「奇経八脈、衝脈。九鍼十二原」

136あの男:2020/05/29(金) 00:25:45 ID:1cy8TvSY
躰に纏わりつく圧縮圧縮空気圧縮(ちぢ)んだ大気は穂先の経路を流動、直撃を免れるよう滑らせたのだ。
選択対象を墓地(うしな)った魔槍はメリーの手をするりと抜け、そのままマルマルの後ろ風景にPolyphemus(と)けた。
当然勢いはそのままに壁という壁を串刺しに処刑(し)ていく。軋音が走り出す。

「あ? これ三途(まず)いンじゃねーの?」

137あの男:2020/05/29(金) 00:25:57 ID:1cy8TvSY
崩壊。
部屋の壁がバラバラと崩れ出す。噎び泣く亀裂音が破壊を執拗に説明する。
築55年RC造コンクリートの数多の吐血と汗と吐瀉物が滲んだシミも、
全て今Deus Ex Machina(おわら)せんと身勝手な餓鬼のまま噎び泣くのを止めることはない。
構造(カタチ)が無くなっていく。

「この建物はもう持たねェッ、今すぐ逃げ――

138あの男:2020/05/29(金) 00:26:09 ID:1cy8TvSY
「おやおや、これはこれは。
 得点稼ぎにしては少しばかり『出しゃばり過ぎ』ではありませんか?」

あ…

「学園の所有物を無暗に壊してはいけません、懲罰です。
 大腿骨切断、脊椎椎体骨折、膝前十字靭帯切除。この辺りで十字背負(いかが)ですか?」

斬首(ザシュ)ッ

「……メリー?」

139あの男:2020/05/29(金) 00:26:20 ID:1cy8TvSY
彼女を偶然にも眼底に写したるは、宙に血潮が咲く惨たらしい斬撃の最たる中、
臓物が零れ落ちるのを必死に抱え込みながら、懲罰を死の淵際まで業(うけいれ)る。
――死んだ。どう考えても肉塊(あれ)は死んだのだ。崩落した生れ果てに大脳は度し難いと判断を拒絶する。
吠與の絶望を横目に、その周囲には斬新な背景達が我が物顔で出現(エントリー)していた。

「これは…崩壊が止まった…のでしょうか? いや、『静止』している…?」

「ンだこりゃァ? よく見りゃ瓦礫一つ一つ全部ワイヤーでご丁寧に『固定』されてやがる…」

140あの男:2020/05/29(金) 00:26:37 ID:1cy8TvSY
十六面楚歌(すべ)てのワイヤーの根源を辿ると、そこに男が一人、浮かぶ。
黒燕尾を旗めかせ、第一正礼装の絹高帽を着した虚飾の手妻師(ペテン)。

「さて、皆皆様、改めまして。
 生徒会執行役員補佐(スイーパー)のバツバツと申します。
 この度は図書部員の身勝手な行動にお騒がせしてしまったこと、謹んでお詫び申し上げます。
 ――そして、今からこの鼠”3”匹を駆除致します。では皆さん、盛大な拍手を」

141あの男:2020/05/29(金) 00:26:47 ID:1cy8TvSY
傍観を決め込んだ観客共が沸き上がる。静寂な余生を送る苦虫はやはり噛みつぶされる。
くそったれな日常、なんてことはない、ただの日常――




「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」


「……は?」

142擱筆男:2020/05/29(金) 00:27:33 ID:1cy8TvSY
誓ってリョナをしたかったわけではない。
展開が早い、人物に解釈違い(主にメリー)等の意見があると思うが勢いで書いたから俺もよく把握らずに書いている…すまねえ…

143感想起筆奴:2020/05/30(土) 09:42:45 ID:A3A4PWcA
百度踏揚や 君の踏揚や 遊ぶ 清らや 又 下の世の主の 思い子の君の
(今日も喰いかけの林檎を見るか!)
交換小説が更新されている…? 

110円均一パックジュースと化したマルマルから始まる完璧なスタートだぁ…
最早伝統芸能と言えよう。

HERE COMES A NEW CHALLENGER!(新キャラ)来たな…
この状況で慌てふためくこともなく治療を申し出るサンカクサンカクはかなり大物風を感じる。
して使用術式は 光栄…讃詞…?
ナイスチョイス(正解だ錬金術師)…  極めれば最強(つえ)えぞ…?

メリーちゃんの初(そして最後の)戦闘だ!
ゴスロリ風の恰好からの『黒鼠の舞踏会』『膿む国王の大洪祭』『塹壕のメリー・クリスマス』
全部好きだが『黒鼠の舞踏会』が特に好き。
アリストテレスの嘘(グラヴィタシオン・ユニヴェルセル)を暴いたのはニュートンただ一人。って語りも良い。
人形の頭部が発信機だったり槍と魔本を組み合わせた全く新しい格闘術もキャラにめっちゃあってる気がする。
「!?!? ちょっと! 邪魔しないでください!」 ←かわいい 

「いい加減ン拷(い)ってえンだよッ! この小娘(ガキ)ィ!」 この切れ方はまじでマルマルすぎて笑ってしまった。
2D>236Kで3割も減るのは光栄讃詞のバフがいい感じに乗っているのであろうか
個人的にマルマルの236Kはスト4のまことの剣みたいのを想像した。
奇経八脈、衝脈。九鍼十二原は弾丸滑りと同じ凄みを感じた。

そしてバツバツの登場(エントリー)からの極刑(ジャッジメント)
メリー死んじゃったよ 貴重な軟派(ラブコメ)要員が…
バツバツは優等生だから学園都市で教えられている大体の能力(気功超能力火器召喚その他)も使えるし固有のワイヤー関係の力も使える
からかなり強そう。

まじでめっちゃ面白かった!技、言い回しの一二三四五六七八九(ひとつ)一二三四五六七八九がかっこいい! 
感想に解釈違いがあったらすまねェ…


次は僕の番ん゛ッ!

144解説回男:2020/05/30(土) 10:29:21 ID:HSxEk.Ew
サンクはフランス語で5を意味するからそうだフランスに関係するものにしてあげよう。
ペルセールはフランス語で「ドリル」
プルミエは「1」、ドゥジエムは「2」、ティエルスは「3」
それぞれの技名の元ネタは感染症から
『黒鼠の舞踏会』=黒死病(鼠の死体から広がったことから)
『膿む国王の大洪祭』=天然痘(ルイ15世の死因、「我が亡き後に洪水よ来たれ」の洪水)
『塹壕のメリー・クリスマス』=スペイン風邪(アメリカ兵が持ち込んだウィルスとされ、塹壕の中でクリスマスツリーを飾っていた)

メリーは肉塊のような状態――
方やサンカクサンカクはリジェネレイト能力を持つ。つまりはそういうことだ。
生かすか死ぬかは後の展開次第ということにしておこう…


次は君の番ん゛ん゛ん゛ん゛ッッッッ!!!!

145あの男:2021/11/25(木) 20:09:49 ID:NwSx6/og
「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」


「……は?」


「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」


「……は?」


「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」


「……は?」

突き刺さる怨嗟の雄たけびは永劫に近い刻、赤いカリカチュア(くりかえ)す。

メリー(人だったもの)の上にV2ロケット(ちゃくだん)した化け物の上に化け物はさらにV2改。腐りきった胎肉より神聖排泄物(おぞ)ましい肉塊を作り上げる。

146あの男:2021/11/25(木) 20:11:17 ID:NwSx6/og
――おはよう、お前ら

curiositéよりも速く肉塊は分離し初めからそこに連続性(い)たように四人のイミテーションはただ、揺蕩う。  

果てもなくなにもない静寂の中、マルマルは絞り出すように呟いた。

「なンだこりゃあ… 」

「モンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!」

突如化け物同士はProcrūstēsの如き“暴”。

異形が殴打(ぶっこ)み合う光景はスティルトンチーズのように怯える肌共の網膜に粘りつく。

無限と呼ばれた殴打み合いは刹那のうちに収まり一人、浮かぶ。

倒れ伏した三人は液体となりTHE・ONE(ひとり)へとアブソーブ(す)いこまれる。

忌まわしい残滓がまだ舞い踊っているよ! 

マルマル、バツバツ、サンカクサンカク、吠與そして多くの観衆は基本的な秩序が失われてしまったこの光景に釘付けとなっていた。

147あの男:2021/11/25(木) 20:12:19 ID:NwSx6/og
  Odyssea Haiku

fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck 



これは決して78 HMV B9606ではなく、冷ややかな13世紀の笛吹きでもない。

偉大なるホーおじさんがお前(F)は幸せであると言っていたことを覚えているだろう?

朗々とした怨(ボイス)で季語のみの俳句が宣告(よ)み上げられる中マルマルとバツバツは奇しくも同時に叫ぶ。

「「塹壕戦(ふ)せろおおッ!!!!!!」」

各々の方法で防壁(かみきれ)を展開し、目と耳(パラレル)、武能(エスノセントリズム)の到来に備える。

148あの男:2021/11/25(木) 20:12:47 ID:NwSx6/og

「ファックス」

そして世界は闇還る刻に(と)けあった。ワイヤー吊りのコンクリもリノリウムの床も雑草も110円均一の嗜好品共も全て。

肋骨の順番が入れ替わるほどの衝撃を受け意識を手放さざるを得なかった吠與は余りにも無垢な赤子のように横たわる。

「起きろ!どう考えてもやべェ!おい!さっさと逃げるぞ!」

ふき飛んだ吠與を回収し、頬をペチペチと叩きながら引きずるマルマル。度重なる振動でようやく吠與は時間感覚を取り戻した。

そして目の前のPolyphemus(けしき)に小さく悲鳴を上げた。

…ここはサタンの肛門か?肉と血で塗られた塊共が我が物顔で蠢き燻っている。絶叫と汚臭があらゆる感性に不快感を提供する。

一瞬の幕間で吠與は弱弱しく掲げた理性の灯に深灰の霧がかかるのを脳喰(かん)じた。

149あの男:2021/11/25(木) 20:13:20 ID:NwSx6/og
「この状況、ポール “アンジェ” アブリコ・ラ・チュリールが自らの死期を悟り残したといわれる言葉
“非力な者を人とするならば抗うのもまた人”といったところでしょうか」

「なに悠長に蘊蓄たれてやがる!黙って走れ!」

ひびの入った眼鏡を直しつつ、サンカクサンカクも足を光らせながら帯同する。推進力を得る術式であろう。

三人は走りながら後ろを気にするが追うものはいない。ただ談話室の中心(グラウンド・ゼロ)から悲鳴と衝撃、

学園の非常時防衛システムと化け物とのGargantua(ぶつかりあ)い、

それに巻き込まれる哀愁狂わしい雑草の叫び(マイナス=Lobachevsky)が流れ込んでくるだけであった。

「ここから先に緊急脱出ポイントがある!739もこの馬鹿騒ぎを聞いて向かってるはずだ。ついてこい急ぐぞ!」

若干の冷静さを取り戻しつつあるマルマル、談話室から南西に進路をとる。

150あの男:2021/11/25(木) 20:13:46 ID:NwSx6/og
「おおっと待ったぁ!」

「な!!」

「学園防衛隊参上ぉ〜」

真白いスーツに身を包み、脇差と大刀を腰に差し颯爽と推参(あらわ)れた男達はマルマル達の行く手を遮った。

「俺の名前は学園防衛隊第57治安維持部隊宇宙大将軍…」

「已己巳己(うる)せえェ!」

「ぎゃあああああ痛ってえええ!!!」

道化(なの)りを待たず回し蹴りで打(デアデビル)。

「手前ェらの遊びに付き合ってる場合じゃ…」

「赤口(もら)ったァ!」

「田丸君!」

151あの男:2021/11/25(木) 20:14:28 ID:NwSx6/og
茶番の隙を一二三四五六七八九(つ)く打(ダべック・ソロ)。傘は間違いなく深々と心臓に突き刺さっ…

否、私窩子乍(しかしながら)、だ 傘と皮との間に異物(Hànfú)あり。

「花発いて風雨多し(おそ)くなったな」

「739ゥ!」「739さん!」

その中華三昧(チャイナ)った傭兵(ならずもの)は寸前で傘を雲散霧消(と)めていた。

「赤口、赤口、赤口、赤口ゥ! くだらねェ大凶(じゃま)してンじゃねーぞ、貴様ァッ!」

「…あのリバー・ドア・リバー・ブリッジから追奔逐北(お)ってきたか。生命力だけは捲土(あ)り重来(あま)るようだな」

「ほンッ…とォに赤口(つみぶか)すぎて凶(ことば)も出ねえなァッ!屠(くさ)れ突(じ)ねやッッ!!
――解放ノ太刀『九十九刺死斬々(つくものさしきず)』 」

ビニ傘が揺らめき、開花(ひら)く。高速回転(ぶちまわ)した傘から無数の乱気流(オートノミー)が形成まれ、

致命をカタチ創造る。純然な原形質へのAlt(アルターエゴ)。

152あの男:2021/11/25(木) 20:16:06 ID:NwSx6/og
「傘男(おまえ)が識別番号(だれ)であろうが固有座標(な)んであろうが畳牀架屋(かんけいな)い。
『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)」

《罪 天 血 我》。既知のサンクション4。全媒体(カイテン)は唯只管に狼狽を歓迎し、

天文学的偶発性(パラダイムシフト)は歪(ゆる)やかに嗤(な)された。咄。咄。

「…相変わらずお前のそれ反則クセーよな」

「座標運命操作ですか…それも極めて高強度(ハイテック=ハイ)の。
非常に興味深い…よろしければ大まかな魔術体系だけでも伺いたいのですが」

「後にしろサンカクサンカク!脱出ポイントまでもう少しなンだよ!」

「彼你は?」

「三郭山君だよ。色々あって田丸君を助けてくれたんだ」

「ああこれは私としたことが自己紹介がまだでしたね。
三郭山 革(みかくやま あらたまる)と申します。サンカクサンカクというあだ名の由来は苗字の三を…」

「それはもういいンだよ!さっさと行くぞ!」

吠與一行は迅速にマルマルが指示したポイントへ足を進め、しばらくして到着した。

153あの男:2021/11/25(木) 20:16:40 ID:NwSx6/og
「ポイントは此処だ」

マルマルは学園の過疎地にある古い倉庫に入っていった。他の皆もそれに続く。

「田丸君この建物は…?」

「飛行戦闘訓練用の第五予備格納庫だ。今中央の方でドンパチやってンのは幸いだったぜ。おかげでノーマークだ」

マルマルは自嘲気味に笑いながらかっぱらうための戦闘機を品定めしていた。

「注油(ゆだん)するなよマルマル。」

「わーってるよ。学園の外に出てからが本番だろ? …うし!これにすっか」

並び立つ航空機から比較的マシそうなの(かつ四人で乗れそうなの)を選び皆で乗り込んだ。

154あの男:2021/11/25(木) 20:17:45 ID:NwSx6/og
「操縦は俺がやる。739は追手(そと)見ててくれ」

「白(あいわかった)」

「…本気でこれに乗って逃げるつもりですか?大型SE.212デュランダルRSで…?
遺憾(v5)ながら余りにも元老院(こっとうひん)と言わざるを得ません」

サンカクサンカクは怪訝そうに埃を被っている計器類をチェックしている。

「仕方ねーだろ!学園の非常防衛システムを正面切って突破できる奴がどこにいるんだ。
それにお前まで逃げる必要ねーンじゃねーのか?」

「私があなたを祝福(な)おしたのを生徒会の連中は間違いなく見ているでしょうね。
戻れば必然的に四肢切断(たたではすまな)いでしょう」

「…巻き込んじまって そのなんだ、すまなかったな」

気まずそうに謝るマルマル。

「お奴隷大農園(きになさらず)。ヒラヤの書曰く“知を求めることは最もシンプル化された本質である”
探求は場所を選ばないんですよ。あなた方に同行することは新たなる知見を得る助けになるでしょう」

「是(き)まりだな」

「よろしく三郭山君、田丸君を助けてくれて本当にありがとう」

戦闘機に乗り込む一行。吠與はサンカクサンカクに改めて感謝を述べた。

155あの男:2021/11/25(木) 20:18:18 ID:NwSx6/og
「おっしゃ飛ぶぞォ!」

格納庫から勢いよく飛び出し、そして戦闘機は空を駆けていた。目指すはハーバー・ライスフィールド・スワンプにある隠れ家だ。

飛行中の機内で学園に潜入してからのことをつらつらと思い返す吠與。

マルマルや739が言う潜った修羅場というのはこういうことをいうのかとどこか他人事のように思った。

「(…メリー)」

吠與は自ずとあの人形廻しの少女を思い浮かべていた。敵であったとはいえ、あの空間でのなんとなしのやり取りは失われたはずの貴重な日常だった。

斬刑に処された後化け物の下敷きとは儚い(むじょう)を感じずにはいられない結末(おわり)と言えよう。

156あの男:2021/11/25(木) 20:18:50 ID:NwSx6/og
『ビーーーーーーーーービーーーーーーーーー』

機内に甲高い爆音が響く。吠與は思考の糸くずを振り払い臨戦態勢(ホリックスタイル)をとる。

「敵襲!?」

「来やがったぜ、客(クレーマー)だ!739、数は?」

「二機だ。韋駄天(はや)いな、これでは鶴の巣籠(すぐにおいつかれる)」

「739さんの固有座標(あれ)でどうにかならないの…?」

「縹渺(ムリだな)。魔術的防衛陣が油油(は)られているだろうし何より対象座標が桐一葉(はやすぎる)」

「あれは恐らく《ハウンド》の殲撃-501でしょう。強力な電子走査アレイレーダーを載せた強襲型です。どう考えても逃げきれませんね」

サンカクサンカクは言わんこっちゃないと肩をすくめる。

157あの男:2021/11/25(木) 20:19:13 ID:NwSx6/og
「まァ見てろって!739、運転頼むぞ!」

運転を交代しつつ後部ハッチを開くマルマル。

「ど、どうするの田丸君!」

「俺が目(ねら)いを付ける。合図したらお前が引導(ぶちぬ)け!」

「!」

ハッチを開けたことによる激風を顔に浴びながらマルマルは集中する。

158あの男:2021/11/25(木) 20:19:58 ID:NwSx6/og
――奇経八脈、督脈。大鵬展翅

脈は奴延鳥を三千世界(えが)く。冥々の中(いつのまにか)激動(うちつ)ける風は大撤退(と)まっていたが、

それでも反叛する重力(おも)みは5ドルほどか。

惑溺(gank)を苦艱(う)ける小人に泥烏須(DS)如来の大慈大悲(ping)は無象(ひび)かず。 ――対象を暫定捕捉  

波羅葦増に不倶戴天(なかゆび)を突き立ててまでも脳髄の上に聖霊(人喰いゴブリン)を飼っているためであろうか。 ――重捕捉

鶏が鬨(わめきち)らし始めるのは当然のことだった。もはや渇仰は叶わずsukhāvatīは我他彼此に塗れ、愈々以て奇跡のカーニバルは開幕する。 
   
「完全捕捉(とら)えた」

『迅雷放銃(イナズマッシュ)!』《モージュール=プラス光学照準》。

制裁機構(EXP-01)は自由狂気(じざい)にカタチを歪め、吠與の長距離精密射撃(ミッション)に速やかに適合していた。

マルマルがPanharmonicon(くみあげ)た気の道を雷は疾走する。

159あの男:2021/11/25(木) 20:21:16 ID:NwSx6/og
「執行完遂(あ)たった」

静かに呟く。そして、遥か後方で爆音と黒煙が上がる。逃れようのない稲光の打(パーフェクト・ダークネス)を享受させて“あげる”。

「しゃあ!一機撃墜ッ!」

160あの男:2021/11/25(木) 20:21:51 ID:NwSx6/og

『ヴーーーーーーーーーヴーーーーーーーーー』

喜ぶ暇もなく、先ほどより数段低い警告音が機内を満たす。

「スキャッターミサイル、誘導(き)ます!」

残った一機が放つ避けらン…ねェッ殺意(はや)さで飛来する閃電-66(ARH式)。此処でボーッとしてるだけのBaby(おわ)ってみるか?

否。

「手前ェらァッ!俺に掴まれェ!」

マルマルの度重なる戦闘でボロ雑巾のようになった服や腕を掴む面々。

「もう一度飛ぶぞォ!」

そう叫ぶや否や床を震脚(ぶちぬ)くマルマル。機内から飛び降り、自由落下が始まり大気に晒される。

その瞬間、頭上でデュランダル(さっきまでいた場所)はミサイルが直撃し粉微塵になっていた。

161あの男:2021/11/25(木) 20:22:12 ID:NwSx6/og
「吠與ゥ!もう一度アレやるぞォ!」

「ああ!」

空中で気を放つマルマル。それを辿り射撃をする吠與。稲光が巻き起こり、もう一機(エネミー)も完全沈黙を受け入れた。

「気宇壮大(みごと)」

「まさか死傷者を出さず追手(ハウンド)を撃墜(ふりき)るとは…素晴らしい交戦結果です。…ここが上空15000mであることを除けばですが」

今日はよく晴れている。宇宙の蒼が見える。水平線が丸みを帯びており、地球とはどの様なものかを如実に教えてくれている。

「わぁ…」

「なに感動してやがる!いいか、俺が合図したらその方向に迅雷放銃(う)て!」

なにやら策があるマルマル。

162あの男:2021/11/25(木) 20:22:38 ID:NwSx6/og

「同一高度(level)2時の方向!」

轟!マルマルに掴まっている面々は迅雷を推進力にして空中で横に吹っ飛ぶ。

「上方(high)11時の方向!」

轟!さらに吹っ飛ぶ。そして眼下に広がるのは、広大な湖だった。

「なるほど、湖に着水して衝撃を軽減させるつもりですか」

「そういうこった!吠與、後はぎりぎりまで待ってから真下に全残弾(のこ)りをバースト(ぶっぱ)なせ!」

「わかった!」

タイミングを見計らう吠與。

「…瞬間(いま)だ!」

163あの男:2021/11/25(木) 20:23:29 ID:NwSx6/og
轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!

迅雷放銃をロケット噴射のように用い、ブレーキ代わりにする。そして…

馬鹿轟音捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨(バッシャアアアアアアアアアアアアアアン)!

着水。左右の眼球が入れ替わりそうな衝撃と共に、口に泥水だの藻だのよくわからん細かいゴミだのが飛び込んでくる。

だが、吠與達は生きていた。

「全く。相変わらず大行は細瑾を顧みず(むちゃ)をする」

「でもうまくいったろ?」

よろよろと岸にたどり着き言葉を交わす。

「で、ごほっ だ ここから隠れ家に戻って早く情報交換がしてェ。突然合体して爆誕(で)きたとんでもねェオデュ獣(イミテーション)を見ちまった」

「グラサンに記憶されてるはずだ。…この衝撃で壊れてなきゃな」

歩きながら説明するマルマルと興味深げに聞く739。吠與達は生き残った達成感と再び相見えるだろう“死(マグ・メル)”に武者震いしながら隠れ家への歩を進めた。

164投稿男:2021/11/25(木) 20:24:09 ID:NwSx6/og
な…げェッ 暇な時見てくれ

165雑感筆執男:2021/11/25(木) 22:11:28 ID:cBNAkZ3k
嗚呼(ENTER)、function(なんてことのない日常) {"喰いかけを見る"};
……Console.error(は?) {"こう…しん…?"};





  Odyssea Tanka
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fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck


Decameron(星夜爆裂疾風弾(ばくれつ)に星夜爆笑疾風弾(おもしろ)かった。
スピーディな展開とハラハラドキドキを与えてくれる戦闘シーンが過去一盛り上がった。
ウィキからの引用や細かい喰いかけネタがOdyssea愛を感じさせてくれた。
最初のイミテーション4連打とOdyssea Haikuが衝撃過ぎて次の行読むのに10分を要するくらい爆笑した。
今回で学園都市サウザンドリーフ編は一旦終わりということかな?
若干消化不良を残す生徒達のこれからの活躍も期待したいところ。
隠れ家での展開をどうするか非常に悩ましいのでリタロウが考えていた展開があれば教えてほしい。
改めて更新してくれて本当にありがとう。もう二度と更新されないんじゃないかと思っていたのでね…)

166注釈奴:2021/11/25(木) 22:45:40 ID:NwSx6/og
感想が爆走夢歌(は)ッ…えェッ! 
書くために改めてodyウィキを眺めてるとやはり積み重なった歴史を感じられて楽しい。
展開についてはすきに書いてほしい。最後の方力尽きて俺も正直ここまでしか考えてないけど次やるなら修行か…?もちろんすきに書いてくれ(隼の剣)
生徒に関してはメリー生き返らせるより踏みつぶされた方が面白い(かわいい)のとバツバツは因縁の相手だからこれからも会えると思う。
一将関係は… …我々の小説が続けばいつかいい感じになるはず
1年半以上空白のゲーティア(ぶちあけて)ンのに読んでくれてかつ感想までくれるのはすげえうれしいしありがたい。 
投稿してから気づいたけど閃電ってミサイルと航空機でどっちもあった。ここ(喰いかけの林檎)ではミサイルの方を意味しているのだ。

167『巨大な老人!? キン=ゾック卿現る!』:2023/12/16(土) 13:46:47 ID:wn0s58CQ
「…此処だ」

喧ましくクラクションが絶えず鳴り響くShiting Side Story(脱糞皐月蠅ェ町)の隙間に一つ、在り。
ハーバー・ライスフィールド・スワンプ駅前、座標4、12の92――隠れ家『民集う意思』。
何の変哲もない雑居ビル(コモン)の非常階段を下ると仰々しい門構えの地下空間(アンコモン)が立ちはだかる。

「今時、星夜爆裂疾風弾読込装置(グラサン・リーダー)なンて一世風靡爺(はや)ン前時代的三太九郎(ね)ェよなァ…?」

マルマルは衝突雑草(ぶつくさ)と文句を垂れながらも、記憶媒体として機能していたグラサンから
識別コード【2345-CBH】を読み込ませ――受け入れて――いる?――開門。
僅かな常夜灯の光源を頼りに隧道を通り抜けること10分――人影だ!

168あの男:2023/12/16(土) 13:47:49 ID:wn0s58CQ
「――金属好きか――?」

開口一番に聞こえたのは唐突で不明不明黒黒(いみふめい)な問い。
薄暗い廊下の奥からぬるりと顕現したのは意気揚揚と語りかける巨大なシルエット。
出迎えたのは身丈にして九九寸(要するに118.11インチ)は優に超えるという如何して仲々に大柄な老躯だ。

「よォ、じいさン、元ン気にしてっか?」

「クク――金者(わし)はこの桃李(とお)りだ――金甌無欠(至って健康)、だ――」

「あ、貴方は――!?」

「金者(わし)か――? 金者(わし)の名は――キン=ゾック――
 嘗ては”キン=ゾック卿”と尊称(よ)ばれて居た――だが、畏れることはない――
 今はただの隠家『民集う意思』の管理人――隠居した退役軍人(ろうじん)だ――」

169あの男:2023/12/16(土) 13:48:17 ID:wn0s58CQ
黄金の鉄の塊で出来た鋼鐵の鎧(金属で出来ている)を身に纏いし大老卿(エル・ドラド)は、吠與に顔面を正対(む)ける。

「さて、君は――吠與驚異君――だったかな? 君の叔父は元気にしているか?
 ――彼に銃整備(ガンスミス)の基礎を教えたのは金者(わし)だ――」

「叔父(おじ)さんは…消息不明です。恐らく死にました。現在吠與一族で生存しているのは僕と義姉の什麼(インモ)だけです」

「そう――か――要らぬことを聞いてしまったな――すまなかった――」

「いえ、全然…」

好々(りかいある)爺(かれ)はこれ以上聞くまいと最思量(おも)ン大開闢(パカ)った。
私窩子乍(しかしながら)、だ。吠與の顔面から3 o'clock high(三時方向、要するに右)半分に#000000(JET-BLACK)在り。
来週(ここ)から過去編突入か――!?

否――

170あの男:2023/12/16(土) 13:48:41 ID:wn0s58CQ
「閑話(はなしを)休題(さえぎる)ようですまないが、早速、訥言敏行(ほんだい)に移る。是(これ)を尋花問柳(み)てくれ」

739とマルマルはグラサン型記録装置から映像を取り出し、複数の監視モニターにそれを展開した。
小型ながらも学園都市サウザンドリーフで南征北伐(たたか)ってきた様子が鮮明に映し出されている。

「鳴咫尺(なるほど)――贋作(イミテーション)同士の蠱毒合体(フュージョン)――か――
 人類識別番号計画の完遂に向け急速に進行し始めたか――我々に残された時間はあまり無いのかもしれぬ――
 少なくとも個々が対峙してまともに勝てる相手ではなくなっておる――」

そのために、と739は話を切り出す。

「休(さて)、ここで各自各々に烙印(やど)っている座標能力(トポロジー)について死灰独不復然乎(さいかくにん)しておこう。
 まずは吠の技(トポロジー)、『迅雷放銃(イナズマッシュ)』からだ」

171あの男:2023/12/16(土) 13:49:10 ID:wn0s58CQ
「ふむ――映像を解析するに――驚異君の固有座標能力(トポロジー)は”複製”だな――それもオリハルコン製限定の――」

「オリハルコン製…限定…?」

「君が手から取り出しているのはオリハルコン製のセミオート式散弾銃『サイガ12S EXP-01』――
 金者(わし)が嘗て君の叔父に渡した着火(ブツ)だ――」

「叔父さんが持っていた銃…ですか?」

「それが何故君の手から出てきているのかは分からぬ――が、しかし――
 複製の能力が過去の記憶に大きく影響を受けるのであれば――
 或いは――構築物の分解及び潜在的な内部構造の理解か――」

老躯は衝突衝突(ぶつぶつ)と一齣呟きながら部屋の奥へと行き、何やら書棚から一冊の本を取り出してきた。

172あの男:2023/12/16(土) 13:49:54 ID:wn0s58CQ
「驚異君――これを持っていきなさい――空いた時間に眼光紙背に徹す(よ)んでおくと良いぞ――
 世界中の解剖学が一手にまとまっておる――」

「その本は…! 奇書、『ヤサジン』――分解と構築の歴史。解剖学では古典的名著の一つとして数えられる。
 人体、生物、銃器、発動機、全世界のあらゆる内部構造が挿絵を交えながら懇切丁寧に描かれている。
 タイトルは古代オデュロン語で「これは写すべき」の意…です!」

「か、解説ありがとう、三郭山君…」

私窩子(しかし)、吠與には現時点ではまるで説明不足大脳(りかいができなか)った。
この稀覯本を渡された真意とは――?

「そして、田丸君――君にはこれを託そう――」

「なンだこれ?」

173あの男:2023/12/16(土) 13:50:27 ID:wn0s58CQ
「これは、オリハルコン製の拳鍔(ナックルダスター)――所謂、メリケンサックという俗称(ヤツ)だな――
 君の速拳(ラピッド・ファイア)は映像を見る限り――どうも、ただ速く動いているだけには見えぬ――
 対象のオリハルコンの磁場をターゲットに瞬間移動したようにも思える――」

「はァ…?」

「嘗て――彼国に於いて護国卿に就いた国家魔術師が居た――
 自ら構築した術式によって振り上げられた握拳は必ずその賊軍を貫くと云われた――
 その帝国軍人の大虐殺(な)は――”クロムウェル”、と――
 ――まあ、とにかく装備しておくと良いだろう――固有座標能力(トポロジー)の真価が発現するかもしれぬ――」

「お、おう。有難く受け取っとくぜ。その、クロム…何とかも憶えとくわ。
 …つかよォ、さっきからじいさンの言及(い)ってるオリハルコン、オリハルコンって…一体何なンだ?」

「ああ――まさに――”それ”だよ――」

「…ぁ?」

174あの男:2023/12/16(土) 13:50:57 ID:wn0s58CQ
「オリハルコン――君たちの使う固有座標能力(トポロジー)は全てこの金属、『オリハルコン』に関係している」

「どういうことです?」

「739(ナサク)君――君は理解しているね?」

「当然把握(ああ)…俺の固有座標(トポロジー)、『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)は
 対象が邂逅する機会を永久に消滅(うしな)う座標運命操作能力。
 …これを居敬窮理(せいかく)に言い換えるならば、オリハルコンの磁場方向を変える能力だ。
 磁石の同極同士を想像すれば容易いだろう。適用されるのはオリハルコン製の物体に限定される」

「オリハルコン限定の座標運命操作能力…!?」

「いや、待て待て…そーだとしてもよォ、
 仮に列車がオリハルコン製だったからダイヤを変えたってのはまだ五割理解(なんとなくわ)かンだけどよォ…
 あの九傘男(クソやろう)にも能力が効いたのはどういう理屈だァ?」

「それは斉東野人(やつ)の躰がオリハルコンで完全構成(でき)ているからだ」

「は?」

175あの男:2023/12/16(土) 13:51:20 ID:wn0s58CQ
「田丸君、君にはまだ説明不足だったか――
 座標固定されるものは皆オリハルコンとなる――人類識別番号計画の根幹となる仕様だ」

「そして、座標固定を逃れた俺達のような欠陥座標(アントポス)の識別番号(ナンバー)は
 固定されずとも皆既に躰の細胞が隅々までオリハルコンに疑似餌(おきか)わっているということだ」

「なン…だって…? そいつァ先代未聞(はつみみ)だぜ…俺ァ金属だったの…か…?」

「それも全てある一人の科学者から始まっている――
 その人物は、狂科学者(クリミナル・ウィザード)と呼ばれている――
 そして、彼が創造った数学史上最大の難問――それが――OH(オンドルーン予想)だ」

「O…H(オンドルーン…予想)?」

176あの男:2023/12/16(土) 13:51:37 ID:wn0s58CQ
「OH(オンドルーン予想)…数学界における未解決(ミレニアム)問題の一つですね」

「履修済(し)っているのか!? サンカクサンカク!」

「ええ、当然ですよ。この問題に挑んだものは皆発狂し、自我を保てなくなる。有名な話です。
 私もこの難問についてはいつか生涯を賭して挑戦してみたいと思っていたところですが…」

「そのOH(オンドルーン予想)こそが君たち――
 いや、我々人類にとって密接に関係する計画――人類識別番号計画と繋がっている」

「ええっと…? 話を整理すると、つまり、狂科学者(クリミナル・ウィザード)という人物が
 OH(オンドルーン予想)と贋作(イミテーション)を創造した人物であり…
 人類識別番号計画を企てているってことですか…?」

「ああ、そうだ――贋作(イミテーション)が何故人類に識別番号を与え、座標を固定するのか――
 その真意は創造した本人(クリミナル・ウィザード)にしか分からないが――
 金者(わし)はそれが”来る日”に備えるための防衛システムなのではないかと思っている――」

「どういうことです?」

177あの男:2023/12/16(土) 13:51:58 ID:wn0s58CQ
「彼(クリミナル・ウィザード)はOH(オンドルーン予想)を導き出し――
 恐らく終末を算出(し)ってしまったのだろう――
 隕石の衝突か――何らかの人類滅亡のシナリオが――」

「それで人類滅亡の日までに全人間を最硬金属(オリハルコン)にしちまおうってェのか!?」

「実(げ)に――まだ憶測の域ではあるがな――」

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ…話が壮大過ぎて脳(りかい)が追い付かないのですが…」

「ああ、それと――更にもう一つ重要なワードがある――OH問題に挑んだものは皆――
 発狂する直前に”ある言葉”にたどり着いている――それが――『ビヨンド{悲願


不和音(ブゥワアアアアアオオオオオオオオオオン)!!!!

178あの男:2023/12/16(土) 13:52:22 ID:wn0s58CQ
「あ? なンだこのクソうるせェ警報音(=シャッタップ・ビーパー)は」

「まずい――何者かの侵入者だ――もうここも長くは持たん――早く次の場所へ行け――」

「次の場所と言及(お)っしゃられても…何処に?」

「『呻く運命(UNDER GROUND REVOLVER)』という者と邂逅(であ)うのだ――
 彼は贋作(イミテーション)を創造った狂科学者(クリミナル・ウィザード)を知る数少ない人物であると言われている――
 彼の捜索は困難を極めたが――どうやらある地下闘技場に毎年出場しているらしい――
 君たちも地下闘技場にエントリーし――どうにか勝ち進んでくれ――それ以外で邂逅する手段は無い――
 場所は城塞都市、帝都”ボース・カントリー”の『カントリー・スキル・パレス闘技場』だ――
 さあ、今すぐこの裏口を使い落城(ここ)から出るのだ――」

「…じいさん、死ぬンじゃねェぞ?」

「無礼(ナメ)るなよ?――金者(わし)は第四族元素の専権支配者――『キン=ゾック卿』、だ――随分と南山不落(かた)いぞ?」

179あの男:2023/12/16(土) 13:52:48 ID:wn0s58CQ
マルマル一同はその意図を汲み、僅かに口角を上げたまま古老を背に間もなく発った。
苦虫もまた、意味もなく歯間から漏れ出す僅かな光を求めた。何れ擂り潰されることも露知らず。
刻を同じくして、塁壁(クリストファー)は神砕(うちぬ)かれた。侵入者の位置、残り――2mッ!?

「三千大疑問世界(おか)しい――贋作(イミテーション)にしては侵攻が餘りにも疾すぎる――!?
 これは一体――誰だ――!? ――――――否(いや)」

老い人は認識(し)っていた。その顔を。懐かしさすら――


「――骸架の三『浮岩沖天』」

180あの男:2023/12/16(土) 13:53:06 ID:wn0s58CQ
跳躍。

『I(清)』

頭上…脚?

『am(掃)』

墜。

『done(完)』

形を拒絶する。

『erasing.(了)』

破壊(パカァ)。

裂(避)ける音。金地を熨(なめ)す。
正中を滑(なぞ)る大気の痣哂い遭い。
因って死、ぬか…

181あの男:2023/12/16(土) 13:53:22 ID:wn0s58CQ
さて、老人はただ脊椎骨を露出しただけの孑孑(し)たいになった。
否、少し慮(ばか)り意識はある、か……

「お主は――確か――彼のお孫さんだったか――」

「――彼をOH問題に導き――彼ら研究者達を狂わせ――
 家族を死へと追いやったのは金者(わし)だ――本当にすまな――かっ――――」

土着(ドチャッ)。

ふう、と女教師は息を吐瀉(は)いた。

「……Eat humble pie(=今更謝)ったところで A drop in the ocean.(=何の意味もない)わ。」

「さて、彼らを教室へ連れ戻さないと」

「だって」


「担任だもの」

182筆舌尽くし男:2023/12/16(土) 13:53:49 ID:wn0s58CQ
執筆前に実況スレとサバイバーズギルトを思い出させてくれて『ありがとう、助かったよ…”壁”のおかげだ』。
私窩子乍(しかしながらだ)、オリハルコンが突如として頻出したのは彼らの能力について辻褄を合わせるためである。情けない…咄。咄。

――――以下、用語説明――――

【オリハルコン】:この世で最も硬い物質。とある狂科学者も文字通り喉から手が出るほどに求める逸品である。
【人類識別番号計画】:人間に識別番号を与え、座標固定する計画。その計画の根幹は人体を世界最硬物質であるオリハルコンに置き換えることであった。
【座標能力者(トポロジスト)】:識別番号(ナンバー)と俗称(い)われている者達。贋作(イミテーション)に座標を与えられつつも、何らかの外的要因によって固定を免れたことにより特殊能力を発現している。
【吠與驚異の固有座標能力(トポロジー)】:オリハルコン製の物体を複製する能力。そして、識別番号(ナンバー)は全てオリハルコンになっている、つまり――”ONE MAN ARMY”――だ!
【マルマルの拳鍔(ナックルダスター)】:オリハルコン製。クロムウェル卿の術式からヒントを得たことで『速拳(ラピッドファイア)』が強化され、後に彼の”名”を布くことになる――
【『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)】:オリハルコンの磁場方向を変える739の能力。運命操作が適用されるのはオリハルコン製の物体同士に限定される。
【OH(オンドルーン予想)】:数学界における未解決(ミレニアム)問題の一つ。これを解くと人類滅亡の顛末が証明されると謂われている。
【ビヨンド■■{悲願■■■ 【加工済み】
【地下闘技場】:帝都”ボース・カントリー”の”カントリー・スキル・パレス闘技場”で毎年開催されている。全国の戦闘狂(ワーカーホリック)共が集う。
【D-driver】:吠與驚異と田丸丸男の担任教師。OHに狂わされた祖父(公家おじさん)を持つ。骸架教団幹部。Odyssea級3体分の暴力を有する。
【骸架の三『浮岩沖天』】:少しの間自身又は対象を浮遊させる下級構築術式。幹部クラスであれば一桁台程度の構築破棄は論を俟たない。

183番外編『海の者 カニオ』:2025/02/27(木) 19:10:42 ID:OOuhFCCU
俺の名前はカニオ。歳は二十。数え年で二十二。地元じゃ負け知らずの力自慢さ。
今日は待ちに待った地下格闘大会が開催されるってえんだからさあ大変だ。こうしちゃあ居ても立ってもいられない。
俺ちゃんの強さがようやっと世間様に知れ渡ったっちまうなんてよ。楽しみで仕方ねえってんだ。
港町じゃあ筋骨隆々の漁師たちと力比べの相撲なんざしたって俺は百戦百勝の一騎当千ってわけさ。どうだ、強えだろ。
大の大人を持ち上げて地べたに突き落とすなんざあ御茶の子さいさい屁の河童だね。そうだろう?

「ははっ、違いねえぜ。」

「坊ちゃんは眉目秀麗、威風堂々、泣く子も黙る伊達男ってえ巷では評判でえ。よっ、色男!」

「ヤァ、よせやい。俺ちゃん照れちまいますぜ。」

184あの男:2025/02/27(木) 19:12:34 ID:OOuhFCCU
気恥ずかしいけどよ、俺には頼もしい仲間ってえやつがいる。海風のヤスと案山子ってんだが、ちいっとばかし曲者でよ。
気分屋ばかりで食えたもんじゃあねえ。今日のお天道占いみたいなモンさ。当たるも八卦、当たらぬも八卦、ってな。
た・だ・し、だ。負けず嫌いっつー芯だけは一切ブレねえ。ド根性で生やした木深い信念が鬱葱と聳え立ってんだ。
気合いなんてヤワなもんじゃあねえぜ。寄せ手が八百万の神様で囲まれようとも絶っ対えに“折れねえ”。そういった人選だ。

さて、と。一体相手さんはどんな荒暮れ者が来るってえんだ?
鬼が出るか蛇が出るか。俺ぁもう既に武者震いが止まらねえぜ。
ここいらでちと堅苦しい話になるがよ、この大会では一度の対戦に“三人”まで出場可能だそうだ。
…んあ? そりゃあたよ、あたぼうってんで悪いが数の前では“全てが敵わねえ”。
「犬が西向きゃ尾は東」、だ。分かるかい? なあ、お前さんとこの言葉にはあるかい? 「北に近けりゃ南に遠い」、ってんだよ。
たった一人で勝とうなんざ意気込んだってそうは問屋が卸さねえってわけさ。実力が拮抗してるってんなら尚のことよ。
…でもよお、言いたいことは分かるぜ。もしも、もしもの御伽噺、だ。
仮に三人に対して一人で挑もうなんざ無謀な大馬鹿野郎が居たらよお、寄席の前で大っ恥かくだけだぜ?
今年一の大笑いにゃ間違いないね。そんな無鉄砲で世間知らずのド阿呆が居るわけが――

185あの男:2025/02/27(木) 19:13:56 ID:OOuhFCCU


居た。
それもあろうことか俺たちの眼前に。

「少年…?」

風に靡く金色の髪。弱々しく透き通る白い肌。その細作りの左手には一丁の拳銃が握られていた。
成程、面白え。そのブツ一つで俺たち『海の者』と渡り合おうって魂胆か。
チャカとダンビラ論争に一輪の彼岸花を手向けるにゃあ丁度良い頃合いよ。

「悪いけどよ。そういう武具も“想定済みだぜ”?
 だよなあ、案山子!」

「あいよ、鉄扇円状展開!」

さあ、出ました!
初見さんは寄ってらっしゃい見てらっしゃい。からくり使いの傀儡師、案山子先生特注の鉄製和傘でえ!
こいつを盾にしちまって銃弾の雨あられなんざお構い無しに相手の懐まで突進しようって寸法さ。

「いくぜ手前らァ!
 地獄の暴走列車に振り落とされんようしかと捕まんなあ!」

「「応!!」」

186あの男:2025/02/27(木) 19:16:19 ID:OOuhFCCU
猛進、猛進、猛進。
戦略などと呼称するにはあまりにも粗末。だが、実に有効。少年の焦り顔が鮮明に浮かぶ。
時間にして五秒弱。目標となる懐まで一寸すら満たない距離まで縮まった。
…ん、なんだ? そいつはあまりにも“早すぎる”ってことを言いてえのか?
仕方ねえ。今日はハレの日ってもんだから特別に絡繰りを教えてやる。
海風のヤスは、健脚だ。俺たち二人を背負っても何のその。速えんだ。
地元の港町では『海の韋駄天』なんつう呼び名が付いちまうくれえにな。
とてもじゃねえが“人間業とは思えねえ”。本当に恐ろしくってありゃしねえって。
ま、与太話はここいらにしとくよ。…ああ、お前さんの納得のいかなさは重々承知の上で、だ。
とにかく、俺たちは強え。ただそれだけだ。

「捉えた! 歯ァ食いしばりな!」

拳は既に凝の構え。
少年は面喰らいつつも、とっさの目先に銃口を向ける。

「遅えってんだよ!」

187あの男:2025/02/27(木) 19:19:07 ID:OOuhFCCU
馬鹿根気(バコオォンッ)!
顔面左頬に拳固一徹、右ストレート。決まった。
岸和田のだんじりが二台はあろうといった追突事故の如き拳撃で浮いた躯体は、会場壁面の目前まで滑空。
少年は成すすべもなくただ地面に突っ伏すのみ。終わった。闘いはこんなにも呆気なく。

「…ったく、馬鹿野郎が。その程度の実力で俺達に挑もうなんて気は二度と起こすんじゃねえぞ。
 弱いものイジメしてるみてえで気分が悪いぜ。とっとと去りな。」

「全く、その程度の運命だ。」

「……は?」

「僕がこの地面に伏せられるという程度の運命なんてね、本当に些細なことなんだ。
 例えば今この瞬間に誰かの髪の毛が一本抜け落ちようとも誰も気にしちゃあ居ない。そういう程度なんだ。」

こいつはさっきからぺちゃくちゃと何を言ってやがるんだ?

「勝負はとっくに着いてんだ。これ以上歯向かうってんなら次はキツーイお仕置きが待ってるぜ?
 いいから帰んな。ガキんち――」

188あの男:2025/02/27(木) 19:20:04 ID:OOuhFCCU
パン。
一発、銃声、煙立。
空虚な青天に未練を残す斑雲。…空?
一体、何が起きた?
青年の眼球は抵抗もなく天を仰いでいた。全身の損傷は激しく、肩甲挙筋一つ満足に動かすことすら叶わない。
そんなことがとうの昔に過ぎ去っていたと知覚するように。

「…お、おい…まだ終わっちゃいねえってんだ…なあ…そうだろう?
 手前らはそう簡単に折れ――」

青年はその先の言葉を紡ぐことがどんなに無意味で吹影鏤塵なことかを認識(わか)っていた。
こんなにも「負け」であることがただ只管当然の世界に実在(うか)んで居るかを――

「運命螺旋(ライフリング)」

少年は空間に一つ言葉を添えた。

「銃線っていうのはね、美しく、そして深く螺旋を描いている方が良いんだ。
 銃砲身内に刻まれた運命螺旋(ライフリング)が良いものほど強く押し出される。より強い運命を、ね。
 僕の運命装填(リボルバーリロード)に干渉出来るのはカタチをも拒絶する圧倒的な暴(ちから)か、あるいは――」

彼は物見客の歓声を聴くこともなく咄咄と出口の晦冥へと姿を眩(け)した。

189だんびら男:2025/02/27(木) 19:24:00 ID:OOuhFCCU
オデュッセイア外伝が良すぎたのでふと思い立って書いた駄文だ。
特に本筋には関係ない戦闘なので気にせず進めるもよし、
このまま本編に繋げるもよし、だ。
彼らの健闘を祈る。

190オデュッセイア〜幻の翡翠王国への旅〜:2025/03/02(日) 14:10:48 ID:duNFTHpk
あまりにもカニオ達(伊達男)の解像度が高すぎてたまげた。
傾奇者すぎだろこいつら… 

私窩子乍(しかしながら)、だ Odyssea級は最強(つえ)えぞ…?

俺も書く しばし待たれよ

191『開幕!? 地下闘技大会』:2025/03/02(日) 14:38:11 ID:duNFTHpk
――――帝都”ボース・カントリー”

ボースカントリー…”領国”との別名で認識されている帝国始まりの国土だ。

諸歴1659年(万血2年)当時難攻不落と知られた国境城塞に対して武能共が南に流れるディープリバーに”橋”を架け両の国を繋いだ。

武能共は闇夜に乗じ瞬く間に城塞を占領。帝国の礎、「始まり」は奇妙ながら命知らず(The only impossible journey)の

蛮勇(LET’S Rock)によって築かれた。それからの歴史はこれを読んでいる諸兄らも知っての通りだろう。

192あの男:2025/03/02(日) 14:38:38 ID:duNFTHpk
「此処がじいさンが言ってた『カントリー・スキル・パレス闘技場』か…」

弩馬鹿巨大(でけ)え、一同が感じとれたものは唯一それだけ。

鉄柱30800000000000000000000本と鉄材53800000000000000000tで建造された大屋根、

大鉄傘(HEAVEN or HELL)の愛称で呼ばれる建造物だ。

「呻く運命(UNDER GROUND REVOLVER)って奴(やっこ)は本当に此処に居ンのか?」

「今はあのご老人の言葉を信じるほかないでしょう。他に手がかりがないとも言えますが」

「OH(オンドルーン予想)に贋作(イミテーション)共の生みの親、アレに対する情報が少しでも得られるといいんだけど…」

「地下闘技場大会への歡聲高處怨聲高(出場、若しくは潜入)、天(とき)を急ごう」 

一行は入口へと歩を進めた。

193あの男:2025/03/02(日) 14:38:56 ID:duNFTHpk
――――『カントリー・スキル・パレス闘技場』 入口

超広大な場に一人、浮かぶものがいる。おそらく受付であろうか…?

臆することなくマルマルは声をかける。

「おィ」

――――武を示せ

「あァ…?」

――――武を示せ

194あの男:2025/03/02(日) 14:39:12 ID:duNFTHpk
途端、暗転。空中で無茶苦茶に振り回される感覚。そして―――

無限に広がる灰色の壁に灰色の床、規則正しく等間隔で引かれた黒線。

そこにならず者共(チャレンジャー)が海水がにごると雨(たいりょう)に、居た。

一触即発(ノンハビタブル)の凍るような雰囲気の中、吠與達は中心に降り立つ。

「天天如此(ふむ)」

「へェ…純碁(シンプル)なのは好きだぜェ…?」

「どうやら彼らを全員倒せ…ということでしょうか」

吠與は周囲の殺気(活きのいいのが気に入った)を感じ取って

虚空(サイド)から手繰り寄せた引き金に無言で指をかける

195あの男:2025/03/02(日) 14:39:33 ID:duNFTHpk
「なンだァこい…」

ならず者達は…

『迅雷放銃(イナズマッシュ)!』 

怒轟(ドゴォ) 有無を言わさず轟雷を周囲にまき散らし鎮圧(ロードマスター)を遂行する。

「オイオイ、俺の獲物も残しとけよ」 

「月出て蕎麦 花 雪の如し(はりきっているな)、吠」

「本戦がまだ残っています。皆さん省エネでいきましょう」

196あの男:2025/03/02(日) 14:40:03 ID:duNFTHpk
吠與はOdysseaレース―――雪山で橇を引きながら贋作(イミテーション)共が四方八方から絶え間なく押し寄せる状況、

修行(リーサル)の日々を思いだしていた。私窩子乍(しかしながら)、だ これは安堵であろうか…?

引き金がいつもより軽かった。

で、だ

有象無象共を全タテ(の)してひと段落着く。

「これで全員かな」

「ッたく…準備運動にもなりゃしねーな」

「有理贏無理輸(まったくだ)」

「皆さん無傷のようですね。恐ろしく丈夫な人たちです」

197あの男:2025/03/02(日) 14:40:19 ID:duNFTHpk
「おおっと待ったぁ!」

「な!!」

「学園防衛隊参上ぉ〜」

真白いスーツに身を包み、脇差と大刀を腰に差し颯爽と推参(あらわ)れた男達はマルマル達の行く手を遮った。

「本間一将様のおっしゃった通りだ! 此処をはってりゃ奴らが現れる、流石の頭脳『ブレイン』だぜェ〜」

「奴らは今連戦で消耗しているッ!一気にかかっ…」

「已己巳己(うる)せえェ!」

「「「「「ぎゃあああああ痛ってえええ!!!」」」」」

198あの男:2025/03/02(日) 14:40:37 ID:duNFTHpk
「これで全員かな」

「ッたく…準備運動にもなりゃしねーな」

「有理贏無理輸(まったくだ)」

「皆さん無傷のようですね。恐ろしく丈夫な人たちです」

などと談笑していると灰色の壁、地面が消え、いつの間にかごく普通の部屋に居た

「予選突破ということでよろしいのでしょうか…?」

「是久(そのはずだ)」

199あの男:2025/03/02(日) 14:40:52 ID:duNFTHpk
遠くから地響きのような歓声が聞こえる。それが闘技大会の開幕(駆二逐万雷一声動レ山)を知らせていた。

とするならばどうやら此処は控室(サブ)の様だ。

しいて言うならば、何もない殺風景な部屋の真ん中に分厚い本が置かれている。

「なんだァこりゃ」

「ルールブック…ですかね」

『ブリタニカ』 石庭(白い本に題名のみ)という形(カタチ)であった。

200あの男:2025/03/02(日) 14:41:11 ID:duNFTHpk
中をめくると、

武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ

武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 

武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ

武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ


複雑? いや単純なはず(只管に同じ言葉が書かれている)。

201あの男:2025/03/02(日) 14:41:28 ID:duNFTHpk
「どうやらクソ(V5)の役にも立たないようですね」

「…そうだね」

溜息をつく2人。

「事(それ)よりもマルマル」

「…あァ」

「隠す気もねェ馬鹿でけえ”力”をいくつも感じやがる…こりゃあ一筋縄じゃいかねェぞ」

「皆、了徳(わかっている)と思うがこれまで以上に過酷な打(戦闘)が続く。兵来れば将遠し、水来れば土掩す(気を引き締めろ)」

202あの男:2025/03/02(日) 14:41:46 ID:duNFTHpk
「で、だ そんでよォサンカクサンカク…」

「わかってます。セコンドに付けというんでしょう」

「実地試験の機会を逃すのは惜しいのですが今は情報の入手が最優先。
 唯一回復術式が使える私が控えに回るのは当然の結論です」

「お…おお ありがとな。相変わらず物分かりはえーなお前」

「お奴隷大農園(きになさらず)。イースト・アドバンス曰く“為すべきこととは過去と未来にあらず“
 常に“今“を選び取る努力は尊いことなのですよ」

「徳有る者、必ず言有り(恩に着る) サンカクサンカク」

「ありがとう!三郭山君!」

203あの男:2025/03/02(日) 14:42:06 ID:duNFTHpk
ギィ 静かに音が鳴り 部屋の扉が開く

「時間だってよ」

「皆さんの健闘を祈ります」

「星星之火,可以燎原」 

「…往こう」

204あの男:2025/03/02(日) 14:42:24 ID:duNFTHpk
――――『地下闘技場』 

われんばかりの歓声の中、一人の男 ”実況” デューク・エイセスが立つ。

地下闘技場でも滅多にない大人数形式(人は何故争うのか)の舞台。

観客の爆発と熱風 時代を越えてそう I got you(ボルテージは最高潮に達していた)。




「全選手入場です!!!!」

205あの男:2025/03/02(日) 14:42:41 ID:duNFTHpk
世界最古の使い魔は生きていたッ!!
弱きを救済(たす)け、強きを打破(くじ)き1200年ッ!!!
義賊(アウト・ロー)、ロビンフッドッ!!!


研ぎ澄まされた頭脳からはじき出された勝利の方程式に驚きやがれッ!
偏差値(マニュアル)という枷をぶち破った漢ッ!!
計測不能(カンスト)、本間一将ッッ!!!


現役DBI捜査官参上ッ!―――超級逮捕術の使い手ッ!
戦士としての格の違いを見せつけてやるッ!!
第7機動隊(バ・カテス)、ブレイブルー先生の登場だッ!!!

206あの男:2025/03/02(日) 14:42:55 ID:duNFTHpk
侵略しだい燃やしまくってやるッ!!
トロイは全部俺のものッッ!!
ゼウスの直系、トロイア戦争総大将(ヘッド)、アガメムノンッ!!!


この漢、何者にも縛られないッ!
突っ切り、打(ぶちかます)ッッ!!!
1000tトラック級、超自由人(ロマネスク)、タケゾウッッ!!!


―――この漢、あまりにも神出鬼没
颯爽と現れ、瞬く間に勝利をかっさらっていくッ!!
「雷皇」、イーナン=トゥーカの来航だッ!!!

207あの男:2025/03/02(日) 14:43:09 ID:duNFTHpk
―――あまりに不純(ウィキチ)、あまりに混合体(キメラ)
誰がコイツを止められるというのかッ!!
奈落(ボトム)からの使者、桂羽シドだッ!!!


その微笑の下には何が隠れているのかッ!
最適(かる)いッ!最速(はや)いッ!最強(つよ)いッッ!!!
悪魔傭兵(ロマノフ)ッ!!――ジョシュ!!!!


国政はどうしたァァァ!!!今日は民草にもお忍びだ!!!
ウガンダ4585万分の1の核弾頭(おとこ)ッ!!!
暴君(キング・オブ・ウガンダ)、アミンッッ!!!!

208あの男:2025/03/02(日) 14:43:23 ID:duNFTHpk
この漢の圧倒的プレッシャーはなンだァッ!
立ち技あり、組み技あり、投げ技あり、飛び道具ありッッ!!
神速のガンマン―――バターフィールドッッ!!!


―――真理に到達した暁の賢者
その曇りなき眼(まなこ)でなにを見定めるのかッ!
一声の伝道師(アンチバンジー)、イシバラッッッ!!!


オデュの称号(なまえ)は軽くねェぞ…?
路上のカリスマ、ストリートなら絶対敗けん!!
オデュッオデュッオデュッ―――――オデュフィの登場だ!!!

209あの男:2025/03/02(日) 14:43:38 ID:duNFTHpk
新世代ギャングスターの登場だァァァ!!
ディスコ時代のサンタ(時代遅れ)共は引っ込んでやがれッ!!
ダニー・“クリスタル”・クリアッッ!!!!


異形の刺客、人類の天敵ッ!
これから始まるのは飢えに飢えた怪物の食事の時間だッッ!!
悪食(モンスター・パニック)、人喰いゴブリンッ!!


さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい満員御礼大入袋ッ!
未来へつなぐ千人力の金剛力!知らざあ言って聞かせやしょう偉丈夫の伝説を!
海の者(シーシャイン)、カニオッッ!!!!

210あの男:2025/03/02(日) 14:43:56 ID:duNFTHpk
―――狂気を纏いし、ビニール傘の奏者
業(カルマ)を踏みつぶす特攻野郎ッ!!
予備軍(クラウドゼロ)、436ゥ!!!


『おじさんシリーズ』の原点(ファースト)にして頂点(エンド)ッ!
今もなお、全ての勝利の傍らには法おじさんがいるッッ!!
独立と自由(ジェノサイダー)、ホー・チ・ミンの登場だッ!!


殴り合い(ケンカ)は場数がものをいうッ!
潜った修羅場の数なら数え切れ…ねェッ!!
気功革命 秘伝奥義集大成(ジャック・ヴァルディ)、―――マルマル!!!

211あの男:2025/03/02(日) 14:44:12 ID:duNFTHpk
特殊軍事指導官殿に敬礼ッッ!
話せる武術、使える武術にもっとうを置くSSS級実践派ッ!
ICEE覇者、安河内コーチ先生ッッ!!


可憐な無差別駆逐型殺戮傀儡(ホロコーシスト)ッ!!
――――ただ、ひたすらに『壊』す、儚い、なんて儚いのだろう!!
粛聖幼女神鎮魂歌(モナド・ギア)、ロリドルーンッッ!!!


―――Sempre caro mi fu quest'ermo colle. (我が愛しい丘よ)
―――Each moment, now night. (ここに、夜は訪れる)
今に最も相応しい詩を吟じ上げようッ、ナンバー『3』、北米の詩客の登場だッ!!!

212あの男:2025/03/02(日) 14:44:26 ID:duNFTHpk
慇懃無礼の仮面を被りし奇術師ッ!!
今宵はどんな懲罰(ショー)が開幕するのかッ!!
執行官(スイーパー)、―――バツバツ!!!


冥界からの挑戦者(ヴェンデッタ)ッッ!
文字通り死線を潜り抜けた怨霊(ダークネス)ッ!
死して尚麗しく、ナイスダイ先生だァァァ!!!!


経歴一切不明、なにを我々に見せつけてくれるのかッ―――739ッッッ!!!

213あの男:2025/03/02(日) 14:44:41 ID:duNFTHpk
―――ダ・メェダ(Die Méda)、全然ダ・メェダ(Die Méda)
お前ら全くなっちゃいないッッ、訓戒するぞ訓戒するぞ訓戒するぞ!!!
聖闘狂(エル・カンターレ)、ナギヒラヤ先生だ―――!!!


デカァァァァァいッ説明不要!!
巨人(ドワーフ)、ダムトッ!!!!!


―――丁(noob)と出るか半(supernova)と出るか
皆様、今宵新たな闘士(グラップリスト)が誕生しましたッッッ!!
可能性の一人大隊(ワンマン・アーミー)、吠與ッ驚異!!!!

214あの男:2025/03/02(日) 14:44:59 ID:duNFTHpk
―――清掃完了(Iam done erasing.)
我々はただその言葉を耳にするのみッッッ!!
規格外中の規格外、処刑人(リジェクター)、D-driver!!!!


勝利の美酒に酔いしれ続け飽き飽きしているのかッ!!
―――「修羅」の具現体、「永愛」の求道者、「非想非非想天」の頂点ッ!!
まさかこの漢がきてくれるとはッッ!!改変超視力師匠の登場だッ!!!!


魔界総合闘技場覇者、超弩級の戦闘狂(ワーカーホリック)ッッ
俺だけのOdyssea崩しを魅せてやるッッ
「無上皇帝」、―――――カイザーケイスケッッ!!!

215あの男:2025/03/02(日) 14:45:14 ID:duNFTHpk
伝説の地下闘技場覇者が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ 不敗の戦闘狂(ワーカーホリック)ッッ
俺達は君を待っていたッッッ
呻く運命(UNDER GROUND REVOLVER)の登場だ――――――――ッ!!!


……ッッ  どーやらもう一名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ

216あの男:2025/03/02(日) 14:45:35 ID:duNFTHpk
「アリガトォオオ」
「アリガトオオッ」
「サイコーだ〜〜〜〜」
「アリガトオオッ」
「アリガト―――ッ」
「アリガトオオッ」

選手たちの放つ圧倒的存在感に対し、観客たちのシュプレヒコールが飛び交う。

――――こうして吠與達の激闘が幕を開けた。

217あとがき奴:2025/03/02(日) 14:48:03 ID:duNFTHpk
まっこと まっこと遅くなり申した

トーナメントでもチーム戦でも大乱闘でも好きに調理するのだ
ちなみに俺はアミンの優勝に全財産賭けてる

218随感男:2025/03/02(日) 16:19:30 ID:Oyz7UIVo
まっこと真に幕とも殆ど面目を一憂するまでに作り遊し好。今日という日を待ちわびたぜ候。
既に何回か読み直しているが一人で全部のネタを拾い切るのは不可能なので一度話がしたい。
それでもやはり大圧巻の全選手入場で舌を羅刹しざるを得なかった。
ダムターが例の紹介文の為に駆り出されてて笑った。
有象無象の雑草も多い中で桂羽シドとかいう初出すぎる人物が
ボトムズの蠱毒で生み出されたody獣だと気づいた時が一番大爆笑コーラだった。


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