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交換小説スレ
100
:
あの男
:2020/02/28(金) 20:59:23 ID:t9.cVYYY
「いいじゃないですか避けないでくださいよ」
右手が伸びてくる。思わず吠與は手首をつかんでしまう。
「ぐぬぬ…」
メリーはくやしそうな表情を浮かべていると思えば急にいたずら気な表情に変わった。
「それならこうだ!」
空いている左手でわき腹をくすぐってくる。
「ちょっ…やめっフフッ」
くすぐられ思わず笑ってしまう
「いまだ!」
左手を伸ばしグラサンをつかもうとするが吠與は寸前のところで左手首を捕まえた。
101
:
あの男
:2020/02/28(金) 20:59:47 ID:t9.cVYYY
と同時にバランスを崩したメリーが吠與に倒れこんでくる。
「ぎゅ!」
その衝撃で声が漏れる。気が付けば抱き合うような形になってしまっていた。
「あ…」
「え、えへへ…」
二人の間でまるで時が止まったかのようになり気まずい沈黙が流れる。
吠與は今自分の顔がゆでだこのように赤くなっているのだろうなとふと思った。
102
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:00:22 ID:t9.cVYYY
「オラァッどうしたァ!」
極悪怒号(ゴァドゴォ)!!些細な動きも見逃すな、桐一葉だ(とらえられるか)?支配的な推進力。気功の天地渾沌兆(しんずい)を顕現(み)せてやる。
刹(のち)、全身全霊で顔面を蹴り潰し抉り壊す(なで)る。単純であるが故の殺意(ラストワード)。
気を纏いジャックヴァルディ(まばゆ)いばかりに爛々(かがや)く壊し屋(みぎあし)をバツバツに打(ダークツーリズム)。
それは最果ての死(マグ・メル)に対する斬刑(グラウンド・ゼロ)の体現者であることの自負で灼(あ)ろうか?
「やれやれ品のない技ですね」
秋を知り(さばき)、軽口を叩きながらバツバツの悠々回避(バックステップに淀みなし)。
「ほらこれとでも遊んでなさい」
バツバツはあたり周辺に散らばっている瓦礫を超常能力で浮かび上がらせ焼夷収束爆弾のようにモロトフのパン籠(ぶちまけ)る。
103
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:00:45 ID:t9.cVYYY
マルマルも六徳(そくざ)に徹底抗戦(オープンファイア)。紅蓮(ひとり)、浮かぶのは武能であることの証左(true)。
「喰ゥらいなァッ! 『速拳(ラピッドファイア)』!」
万、非 (い)や、無限か?最速い殴打(ぶっこ)みの連打を選ばせて”あげる”。
「もしこれで限界なら貴方は少々運動不足のようですね」
バツバツの超常出力が俄かに上がりマルマルの苦艱(にがむし)を口内炎(ひきずりだ)そうとする。
「三度目だ。寝言は聞き飽きてンだよ!『蒼速拳(ロマンラピッドファイア)』!」
構え、正拳突き。その動作をした後、体内の気を操り、構えの状態に超速で戻す。
故に最速を涅槃寂静(こ)えた最速。DS(むろん)、バツバツの弾幕結界を粉砕(ぶちやぶ)る。
104
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:01:06 ID:t9.cVYYY
「これで終わり(エンドラ)だ糞野(パッ…)…」
「それなんだと思います?」
着地地点に違和感(イスカリオテのユダ)。マルマルの足元に喰いかけすら起こり得ないパイナップルの鈍い光。
閃光、爆発、
流石のマルマルも意識外からの一撃(アウト・ロー)に足をふっとば…「小賢小癪(しゃらくせ)えェッッ!」
MK2破片手榴弾の爆発を錬気で捻じ伏せ特攻(ぶっこ)みを続行する。
「おやおや、ならばこれならどうでしょうか」
地雷…?否、空雷
設置即爆裂する不遜の塊がマルマルへ圧(すりよ)る。
105
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:01:26 ID:t9.cVYYY
「許可なきUrgent Fury(おしとお)るッ!」
――奇経八脈、衝脈。五功五味
暗闇(し)に瀕したとき最後に頼(ラストバタリオン)るものとは何か…? 神(あのやろう)への祈り、追憶への哀愁、否、死。
味覚だ。血の味、経験と修羅の混合物(クリムゾン)は初めから答えを機知の終わり(し)っていた。当然の帰結だが掠りもせず空雷源を泳ぐ。
「死化粧に赤(しま)いだ」
射程距離に入った。完全捕捉(とら)える。そこから一撃必殺(くりだ)される拳(フィスト)。
バツバツの鳩尾(みぞおち)に深くめりこんだ拳(フィスティスト)。込めた気がバツバツを爆ぜさせるまでの執行猶予の刻印(とき)。
「が…あッ」
「ハッようやく手前のにやついた表情が歪…」
106
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:01:50 ID:t9.cVYYY
気づき。なんと形容すればいいだろうか?模型を出鱈目に組み立てた後一瞬の笑いからの虚無?。はたまた首を柱に吊るす時代からジーンズを履かせあう時代への無慈悲な変遷?
ともかく見間違いでなければバツバツは全くもって無傷であった。
「貴方の下らない手品の種なんて最初から分かっているんですよ」
そう告げるやいなやマルマルの正中線片側五分を貫手で打。
「…ゲッ…ガ…手…前ェ」
「気功使いの弱点は霊枢です。経絡が交わる所を正確に突けばなんのことはない」
「それと言ってませんでしたが、私も気功ぐらい使えますよ?故に貴方の攻撃は問題外であると言わざる負えません」
107
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:02:15 ID:t9.cVYYY
「手前…なら…なんでこんな茶番…を」
「困った話であんまりにも早く貴方を処刑(かた)づけると荒事が得意だと思われて血生臭い前線(ハウンド)に回されてしまうんですよ。
血と硝煙の臭いはどうにも苦手でして」
「ふざけ…ッ…」
「ああ、もう黙ってくださって構いませんよ?」
めんどくさそうなバツバツの拳がマルマルの顎を揺らす。気絶への甘美なる誘い、暗転へのカウントダウンが始まる。
「(すま…ねェ…吠與、7…39…しくじ…っちまっ…)」
マルマルの意識は闇へと沈んだ。
108
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:02:35 ID:t9.cVYYY
「さて、と もう一匹のドブネズミの方もさっさと捕まえてしまいますか。丁度いい撒き餌もここにありますし」
バツバツは気絶したマルマルを抱えどこかへ運ぼうとする。
「っと」
ふらつき。マルマルの拳(フィスト)は確かに傷跡を残していたのだ。
「…デスクワーク続きで鈍りましたかね?全く…人に運動不足とか言ってる場合じゃないかもしれませんね」
ふらつきながらもバツバツはマルマルをどこかへと運んでいった。
109
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:02:50 ID:t9.cVYYY
「今日はありがとうございました!」
「い、いえこちらこそ…」
結局あの後、気まずさでまともに情報収集できなかった。だが、ここからは自由だ。管理室へ急いで向かおう。
「またいつでも来てくださいね♪。どうせ部員も私しか居ないから暇ですし…」
「ええ…ぜひ」
苦艱だ〜とどこからか聞こえそうだ。
110
:
あの男
:2020/02/28(金) 21:03:12 ID:t9.cVYYY
図書部を出るとなにやら騒がしい様子の学生たちのお喋りが途切れ途切れに聞こえた。
「おい聞いたかよ談話室で…」「…自動販売機に…」「…侵入者が?…」
聞こえてきた単語に体が震え心臓が早鐘のように打つ。
「(まさか田丸君が…?いやそんなわけ…)」
目的を遂げるのであれば今は好機であろう。注目は談話室へと集まっている、管理室までの道は手薄だ。
しかし吠與はマルマルにもしものことがあると思うといてもたってもいられなくなった。
嫌な予感=必中(ガー不)を必死に暗転無敵(おさ)えながら吠與は談話室へと急いだ。
111
:
長文君
:2020/02/28(金) 21:04:35 ID:t9.cVYYY
クッソ激烈に長くなっちゃった!(痛恨)
暇な時見てくれ
112
:
感想男モロト・バージョン02
:2020/02/28(金) 23:23:00 ID:x59HyJnU
――日課、喰いかけの林檎を百度踏揚(み)る。
嗚呼、何も虚ェくだらねぇ日常――否、交、換――の文…字?疾ッ!?
取り急ぎ全部読んだ。聖夜爆笑疾風弾(おもしれ)ェッ!!
あまりの引用の多さに一単語ずつ語源を調べながら読んだがトンでもねぇ知識量だ…
この語彙力は一体――?兎角、今回は実に力作だったし、熱量がすごかった!!
739の能力がチート過ぎるので如何せん二手に分かれ(一時退場)たな
発動条件を与えようとしたが何も思い浮かばなかったぜ…
ゴスロリ女サンクちゃん、来たか…!
実際俺も学園都市編になったら出そうとは思っていた識別番号筆頭キャラ
現状吠與も粛清対象(ポイント稼ぎ)っぽいがどうにかなって仲間になる流れかな?
あまりにもあざとムーブをかましたので抱きついた時に吠與に何か細工を施したと予想
(何れはどっかでマルマル煽りパートも来ると思われるので恐らくその時の知略であろう)
そして、対にバツバツの邂逅――拷問(インタビュー)してやる
見た目的に強キャラを醸し出しているとはいえ思った以上に実力差があったな
マルマルはOdysseaの歴史上かませとして識別っているが果たしてどこまで強くなれるだろうか…?
あと気功使いは割とポピュラーなのか…?如何せん奇経の知識がなさ過ぎて参考文献が把握ら…ねェッ
まだ1回しか読んでないので今後何度も読み返すぜッ
思っていた感想と違ったり色々と解釈が違ったらすまねえ…すまねえ…
次回の更新は…俺ェッ!?少々ハードルが上がりすぎているのではないだろうか
113
:
ヴェープルシリーズ、”パイオニアモデル”
:2020/02/29(土) 13:00:12 ID:vBecuRwU
感想男が疾風迅雷(は)ッ…えェッ! 読んでくれてまじでありがたい
書きたいこと詰め込めるだけ詰め込んだら激長奴になってた
ネットの故事ことわざ辞典がめっちゃ頑張ってくれたこいつはmvpすぎる
739はなんか一人でもいけそうだから別な方に回した。メイン3人の中じゃ一番手練れだと個人的に思ってる
サンクちゃんが識別番号筆頭キャラで認識が共通してたのは恐悦至極(めでた)い
マルバツ戦はあまりにも歴史的でここを際立たせたいがために吠與がクッソ平和に調査してるシーンを途中で挟みたかった
そのせいで激長奴になった(隼の剣)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed1982/37/1/37_1_61/_pdf
気功はこれに出てくる単語を好きに使ってる。俺も正直分からん…
一応 衝脈が防御 帯脈が感知 督脈任脈が攻撃っていう申し訳程度の設定を作った
次はキミの番ん゛ッ!
114
:
ヴェープルシリーズ、”ハンターモデル”
:2020/02/29(土) 13:16:48 ID:vBecuRwU
あとなんか対になる正経十二経脈とかいうのもあったからよりどりみどりだぜェ…?
技のデパートだ
115
:
『学園崩壊!?新たな仲間との邂逅(であ)い』
:2020/05/29(金) 00:20:24 ID:1cy8TvSY
「まさか…」
悪寒に充てられた嫌な額汗。不法滞在(オーバーステイ)を決め込んだ口内の苦虫に餌をやる。
「まさか…まさか!」
騒ぎに群がる雑草(NPC)を掻き分けた先にあった光景は、談話室というには余りにも石庭(ブルーカーテン)。
その中央にただ一つ、自動販売機という棺(カタチ)。そして、110円均一パックジュースと化した無惨な男の姿に一人、震える。
「マルマルウウウウウウウウウウウウッッ!!!」
全破壊を一身に受諾したマルマルに最早下半身と形容できるパーツは残っているか?――否、壊死。
地球重力(9.807 m/s²)に抗う力すらなく、ズルリと自販機から剥離し、堕(Slash)つ。
116
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:20:42 ID:1cy8TvSY
――すま…ねェ…しくじ…っちまっ…た…
そう言い残したであろう。苦汁を最後の一滴までなめ切った口のカタチから想像に難くない。
こんな悲劇(こと)になるだなんて…ということは最初からここに来ることは『想定済み』だった?
吠與は周囲を一瞥するが、談話室には野次が増える一方で、対面したであろう罪罰(ドストエフスキヤツ)の姿が無い。
いや、鼠取(トラップ)だ。マルマルを磔にしているのはB級映画(ひんのない)演出であり、自分を引きずり出すためであろう。
このままここに居ては死霊と仲良く盆踊り(ダンシングハードラッカー)は既定路線か。
吠與に残された以下の選択肢、
A.管理室へ向かい任務を継続する
B.直ちに学園から脱出する
117
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:20:57 ID:1cy8TvSY
「C.マルマルを…助けるッ!」
「ええ、よくぞ言いました! 彼には未だ息があります!
頚動脈から幽かに鼓動を確認できることから彼は確実に生きています」
「!! それじゃあ田丸君は助かる…って、あなた誰です?」
黒縁眼鏡をクイとこれ見よがしに上げる。
高身長(ノッポ)、ガリ勉(ナード)風味の男が難解な数式を解かんとばかりに好奇の眼差しを向けてきた。
118
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:21:09 ID:1cy8TvSY
「失敬、申し遅れました私、三郭山 革(みかくやま あらたまる)と申します。
皆からはサンカクサンカクというあだ名で親しまれております。
ええ、サンカクサンカクというあだ名の由来は苗字の三をサンと読みまして」
「ごめん! 今は自己紹介(それ)どころじゃないんだ!(聞いたのは僕だけど…)
早く田丸君を蘇生させないと…」
「治癒(リジェネレーション)、ですか? それなら私の専門分野ですが」
「!」
119
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:21:37 ID:1cy8TvSY
「ええ、簡単な話です。ここに一輪の喇叭水仙(ラッパズイセン)がありますね?
これはかの有名な始まりの虚無僧が光栄讃詞後に行脚した痕跡から開花した名花と言われており」
「説明はいいから! とにかくやって下さい!」
「承知しました。ええ、それでは始めます。
爾の名は何ぞ全地に大いなる、爾の光榮は諸天に超ゆ。
天の鳥、海の魚、一切海に游ぐ者なり、彼に光榮と尊貴を冠らせ。
――光栄讃詞第八詠『ゲフの楽器』」
光るマルマル、ぐちゃついた老婆の吐瀉物(トマトを踏み潰す)のそれは再構築を余儀なくされ、
穿たれがちな彼の胸部は皮下組織の結合を繰り返し、その空洞を無き事と遡時計(す)る。
――マルマル、蘇生(ふたたび)。
120
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:21:48 ID:1cy8TvSY
「…よう、吠與」
「田丸君…ッ!」
吠與はひとまず安堵し、そして歓喜に沸いた。
共に固唾を呑んでいた視聴者(オーディエンス)もドブ臭せえ茶番(スタンディングオベーション)を掻き鳴らしていた。
当事者目線からしてみれば場違いで気恥ずかしさに堪えず空嘔を漏らさずには居られない。一刻も早くここから立ち去ろう――
他方、サンカクサンカクは称賛を浴び、さぞ心地好い(ヒロイック・シンドローム)だろうと顔面を覗くが、意外にも愕然とした趣だ。
121
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:22:00 ID:1cy8TvSY
「なんと…これはすごい。あの大怪我からこんな一瞬で…
ええ、実を言うとこの光栄讃詞は下級呪歌でして…まだまだ術式が不十分でありますが故、
肝心の再生部分は本人の基礎再生(リジェネレイト)能力に頼ってしまう部分があります。
が、この男(かた)の自然治癒(それ)は、常人の域を完全に”脱”しているようで――」
「サンカクサンカク…だっけ? とにかく助かったぜ。ありがとよッ」
「ええ、礼には及びませんが、それより…彼方はなぜこんな惨事(こと)に?」
「あー、それはだな…」
122
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:22:18 ID:1cy8TvSY
後方、コツコツコツコツ、とローファーから発するには余りにも音程が12ピーアンジ(たか)い。
敵襲? 否定。フリ…ル…?
「まるまるぅ〜って、なんですかぁ? 右回り? 左回り?」クスクス
「メリー……ちゃん?」
メリーと対象に選択した容姿(ファクト)と想像(ハルシネイション)の乖離、吠與は狼狽する他は無かった。
死神代行(オレンジ)の髪、白黒礼装(ゴスロリ)、そして、右手に雷霆魔槍(ケラウノス)、左手に魔導古書(グリモワール)。
学校で出会っちまうには余りにも完全武装(ぶっそう)なビジュアルだ。
123
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:22:32 ID:1cy8TvSY
「あ? アンタは…インタビューを受けに来た図書部の」
少女はニコッ、と笑みを見せる。
含みのない表情。
「またお会いしましたね! ”まどか”さん」
いや、違う。
違いねェ。嫌でも把握っちまう。その奥にある紛うことなき、殺意――。
「早速ですけど、あなたがどっち『回り』か確かめてあげます」
124
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:22:45 ID:1cy8TvSY
刺突――
(しまっ…間に合わ…ッ)
――ペルセール=プルミエ『黒鼠の舞踏会』
回(ロタシオン)。
穿つ(ペネトレイト)、速攻(アット)、貫通(ペネトレーション)――死(モール)。
アリストテレスの嘘(グラヴィタシオン・ユニヴェルセル)を暴いたのはニュートンただ一人。
その回転に終わりはあるのか? 否、掻い暮れ見当もつかず。
125
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:22:58 ID:1cy8TvSY
「穿ガアアアアアアアアアッ!!」
雷霆を纏った魔力槍は削岩機さながらの轟哭で殷々と鼓室を震わす。
皮膚、皮下組織、筋膜、胸骨体、心臓を間もなく掘削。鈍痛が四肢頭頸部その末端までをも谺する。
「マルマルッ!!?!」
「アハッ、まるまるぅ〜って左回りなんですね〜」
「マルマルに一体何をしてッ…!?」
「『何をして』って? クララさんが教えてくれたんですよ」
126
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:23:21 ID:1cy8TvSY
メリーの目線の照準は吠與のポケットに向けられた。
膨…らみ…? 何故? 人形の…頭部…?
いつからこんなものを? …ああ、『あの時』か。
なんだ、そういうことか。最初から『泳がされていた』のか。
「僕のことも最初から始末(そう)する気で…」
「! それは違います! クララさんは得点付与『対象外』ですので」
「は…」
127
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:23:41 ID:1cy8TvSY
この気味の悪いフランス人形の頭は盗聴器のようなものだろう。
マルマルが生きていることを知り、得点を獲得するため真っ先に始末しに来たのか?
嗚呼、何たる間抜けなことか。
「さあ、もっと廻りませんか?」
――ペルセール=ドゥジエム『膿む国王の大洪祭』
マルマルは更にウィトルウィウス的人体図(まわ)る。取舵一杯旋回を繰り返す、永劫。
――否、リジェ…ネ…?
128
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:23:55 ID:1cy8TvSY
「蓋此の神は我等の神にして世々に至り、彼は我等を導きて死の時に至らん。
爾等紫音の周囲を行きて、之を環り、其の戍楼を数えよ。
――光栄讃詞第四十七聖詠『ファルシスの舟』」
サンカクサンカクの神聖(ホーリー)を御(シット)する閃光(ヘヴン)!
その弑逆的旋回を嘲笑うかの如く逆回転(せいし)した。
129
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:24:06 ID:1cy8TvSY
「!?!? ちょっと! 邪魔しないでください!」
「いえ、邪魔されたのは私のほうです。せっかく修復したばかりなのに
また穴が穿(あ)いてしまったので、これは治さなければいけませんから」
サンカクサンカクはもしかして天然…なのか?
もしくはわざと煽っているだけなのか?
何にしても、だ。冀くは味方(こちら)側であってくれ。
130
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:24:26 ID:1cy8TvSY
「いい加減ン拷(い)ってえンだよッ! この小娘(ガキ)ィ!」
蛮王(バォウッ)!
マルマルのぶっきらぼうに放り出された蛮足(2D)。
如何せんただの足であるが、時に人体随一の太ってえ骨は簡易的(ガトリング)凶器(2D>236K)となりメリーの下腹部を神砕(ダークナイト)。
そのまま壁際まで約20フィート(6.096m)――飛べッ。
131
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:24:40 ID:1cy8TvSY
「なんだか知らねえがいつもより力が溢れてくる気がするぜッ」
「上級です」
「?」
「私が今詠(か)けた呪歌は第四十七聖詠――
治癒効果と同時に身体能力の向上を主体とした四十番台の実用特化型術式。
下学年でのテキスト(聖1A)には載っていない範囲です。
俗にいう『上級(聖2B)』ですよ。
…正直に言って実戦での利用はこれが初めてなのですが、どうやら上手くいったようです」
132
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:24:58 ID:1cy8TvSY
「よォ分からねえがありがてェぜ、サンカクサンカクッ!
おい、図書野郎。よくもまあ不意打ちを喰らわしてくれたな?
次穿(あ)けたらタダじゃおかねェぞ?」
三割(ワンコン)を喰らったメリーはもたつきつつも再びマルマルに対峙(ヘブンオアヘル)。
「…永遠に自販機に埋まっていればよかったものを」
「ほざけ。おとなしく寝てろ。今度はこっちから行くぞ?」
133
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:25:10 ID:1cy8TvSY
――奇経八脈、帯脈。二十九難
大気の流動は全てマルマルの奴隷だ!
このまま1coin(タイマン)を申し込む所存だろう。
「この大気の震え――奇経八脈!? まさかあなた、気功使いなのですか!?」
「おう、その通りだ! ようやく理解のある奴が現れたか」
「ええ、そんな古風(ディスコサンタ)な気功術を現代で使っている人が居るとは!
奇跡…? いや、化石としか言いようがない!」
「あァ!? ンだと手前(テメ)ェッ!!」
「田丸君三郭山君ッ! 内輪揉めはいいから! ――来ますッ」
134
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:25:23 ID:1cy8TvSY
開いた本を魔槍に宛がい、呪歌をより強固なものへと二重詠唱(うわが)きしていく。
腰を据え、軸足を固定する。突の構え。刺突? 笑止。――死突。
流觴曲水に遇え、機鋒の欲するが儘に。
――ペルセール=ティエルス『塹壕のメリー・クリスマス』
呪歌の加護を受けた槍先は対象を穿孔するまで終わることのない旋回を与える。
ぱっくりと開いた心臓は見知らぬ空気口からヒューヒューと情けなく音を立てるだけの間抜けとなり、そして、生命活動を停止。死ぬのだ。
135
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:25:35 ID:1cy8TvSY
「馬ァ鹿の一つ覚え(ワンパ)なンだよッ! 手前(テメ)ェが心臓(ここ)狙いなのは見え透いてンだよッ!」
誤謬(ゴビュ)ッ!
『速拳(ラピッドファイヤ)』を己に打ち付け…る!? 胸部を自ら刳り抜き、通り道を作ってあげる。当然吐血。
血迷ったか、マルマル――否。
「奇経八脈、衝脈。九鍼十二原」
136
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:25:45 ID:1cy8TvSY
躰に纏わりつく圧縮圧縮空気圧縮(ちぢ)んだ大気は穂先の経路を流動、直撃を免れるよう滑らせたのだ。
選択対象を墓地(うしな)った魔槍はメリーの手をするりと抜け、そのままマルマルの後ろ風景にPolyphemus(と)けた。
当然勢いはそのままに壁という壁を串刺しに処刑(し)ていく。軋音が走り出す。
「あ? これ三途(まず)いンじゃねーの?」
137
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:25:57 ID:1cy8TvSY
崩壊。
部屋の壁がバラバラと崩れ出す。噎び泣く亀裂音が破壊を執拗に説明する。
築55年RC造コンクリートの数多の吐血と汗と吐瀉物が滲んだシミも、
全て今Deus Ex Machina(おわら)せんと身勝手な餓鬼のまま噎び泣くのを止めることはない。
構造(カタチ)が無くなっていく。
「この建物はもう持たねェッ、今すぐ逃げ――
138
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:26:09 ID:1cy8TvSY
「おやおや、これはこれは。
得点稼ぎにしては少しばかり『出しゃばり過ぎ』ではありませんか?」
あ…
「学園の所有物を無暗に壊してはいけません、懲罰です。
大腿骨切断、脊椎椎体骨折、膝前十字靭帯切除。この辺りで十字背負(いかが)ですか?」
斬首(ザシュ)ッ
「……メリー?」
139
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:26:20 ID:1cy8TvSY
彼女を偶然にも眼底に写したるは、宙に血潮が咲く惨たらしい斬撃の最たる中、
臓物が零れ落ちるのを必死に抱え込みながら、懲罰を死の淵際まで業(うけいれ)る。
――死んだ。どう考えても肉塊(あれ)は死んだのだ。崩落した生れ果てに大脳は度し難いと判断を拒絶する。
吠與の絶望を横目に、その周囲には斬新な背景達が我が物顔で出現(エントリー)していた。
「これは…崩壊が止まった…のでしょうか? いや、『静止』している…?」
「ンだこりゃァ? よく見りゃ瓦礫一つ一つ全部ワイヤーでご丁寧に『固定』されてやがる…」
140
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:26:37 ID:1cy8TvSY
十六面楚歌(すべ)てのワイヤーの根源を辿ると、そこに男が一人、浮かぶ。
黒燕尾を旗めかせ、第一正礼装の絹高帽を着した虚飾の手妻師(ペテン)。
「さて、皆皆様、改めまして。
生徒会執行役員補佐(スイーパー)のバツバツと申します。
この度は図書部員の身勝手な行動にお騒がせしてしまったこと、謹んでお詫び申し上げます。
――そして、今からこの鼠”3”匹を駆除致します。では皆さん、盛大な拍手を」
141
:
あの男
:2020/05/29(金) 00:26:47 ID:1cy8TvSY
傍観を決め込んだ観客共が沸き上がる。静寂な余生を送る苦虫はやはり噛みつぶされる。
くそったれな日常、なんてことはない、ただの日常――
「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」
「……は?」
142
:
擱筆男
:2020/05/29(金) 00:27:33 ID:1cy8TvSY
誓ってリョナをしたかったわけではない。
展開が早い、人物に解釈違い(主にメリー)等の意見があると思うが勢いで書いたから俺もよく把握らずに書いている…すまねえ…
143
:
感想起筆奴
:2020/05/30(土) 09:42:45 ID:A3A4PWcA
百度踏揚や 君の踏揚や 遊ぶ 清らや 又 下の世の主の 思い子の君の
(今日も喰いかけの林檎を見るか!)
交換小説が更新されている…?
110円均一パックジュースと化したマルマルから始まる完璧なスタートだぁ…
最早伝統芸能と言えよう。
HERE COMES A NEW CHALLENGER!(新キャラ)来たな…
この状況で慌てふためくこともなく治療を申し出るサンカクサンカクはかなり大物風を感じる。
して使用術式は 光栄…讃詞…?
ナイスチョイス(正解だ錬金術師)… 極めれば最強(つえ)えぞ…?
メリーちゃんの初(そして最後の)戦闘だ!
ゴスロリ風の恰好からの『黒鼠の舞踏会』『膿む国王の大洪祭』『塹壕のメリー・クリスマス』
全部好きだが『黒鼠の舞踏会』が特に好き。
アリストテレスの嘘(グラヴィタシオン・ユニヴェルセル)を暴いたのはニュートンただ一人。って語りも良い。
人形の頭部が発信機だったり槍と魔本を組み合わせた全く新しい格闘術もキャラにめっちゃあってる気がする。
「!?!? ちょっと! 邪魔しないでください!」 ←かわいい
「いい加減ン拷(い)ってえンだよッ! この小娘(ガキ)ィ!」 この切れ方はまじでマルマルすぎて笑ってしまった。
2D>236Kで3割も減るのは光栄讃詞のバフがいい感じに乗っているのであろうか
個人的にマルマルの236Kはスト4のまことの剣みたいのを想像した。
奇経八脈、衝脈。九鍼十二原は弾丸滑りと同じ凄みを感じた。
そしてバツバツの登場(エントリー)からの極刑(ジャッジメント)
メリー死んじゃったよ 貴重な軟派(ラブコメ)要員が…
バツバツは優等生だから学園都市で教えられている大体の能力(気功超能力火器召喚その他)も使えるし固有のワイヤー関係の力も使える
からかなり強そう。
まじでめっちゃ面白かった!技、言い回しの一二三四五六七八九(ひとつ)一二三四五六七八九がかっこいい!
感想に解釈違いがあったらすまねェ…
次は僕の番ん゛ッ!
144
:
解説回男
:2020/05/30(土) 10:29:21 ID:HSxEk.Ew
サンクはフランス語で5を意味するからそうだフランスに関係するものにしてあげよう。
ペルセールはフランス語で「ドリル」
プルミエは「1」、ドゥジエムは「2」、ティエルスは「3」
それぞれの技名の元ネタは感染症から
『黒鼠の舞踏会』=黒死病(鼠の死体から広がったことから)
『膿む国王の大洪祭』=天然痘(ルイ15世の死因、「我が亡き後に洪水よ来たれ」の洪水)
『塹壕のメリー・クリスマス』=スペイン風邪(アメリカ兵が持ち込んだウィルスとされ、塹壕の中でクリスマスツリーを飾っていた)
メリーは肉塊のような状態――
方やサンカクサンカクはリジェネレイト能力を持つ。つまりはそういうことだ。
生かすか死ぬかは後の展開次第ということにしておこう…
次は君の番ん゛ん゛ん゛ん゛ッッッッ!!!!
145
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:09:49 ID:NwSx6/og
「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」
「……は?」
「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」
「……は?」
「僕だよォォォォッッッッーーーー!!!!」
「……は?」
突き刺さる怨嗟の雄たけびは永劫に近い刻、赤いカリカチュア(くりかえ)す。
メリー(人だったもの)の上にV2ロケット(ちゃくだん)した化け物の上に化け物はさらにV2改。腐りきった胎肉より神聖排泄物(おぞ)ましい肉塊を作り上げる。
146
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:11:17 ID:NwSx6/og
――おはよう、お前ら
curiositéよりも速く肉塊は分離し初めからそこに連続性(い)たように四人のイミテーションはただ、揺蕩う。
果てもなくなにもない静寂の中、マルマルは絞り出すように呟いた。
「なンだこりゃあ… 」
「モンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!」
突如化け物同士はProcrūstēsの如き“暴”。
異形が殴打(ぶっこ)み合う光景はスティルトンチーズのように怯える肌共の網膜に粘りつく。
無限と呼ばれた殴打み合いは刹那のうちに収まり一人、浮かぶ。
倒れ伏した三人は液体となりTHE・ONE(ひとり)へとアブソーブ(す)いこまれる。
忌まわしい残滓がまだ舞い踊っているよ!
マルマル、バツバツ、サンカクサンカク、吠與そして多くの観衆は基本的な秩序が失われてしまったこの光景に釘付けとなっていた。
147
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:12:19 ID:NwSx6/og
Odyssea Haiku
fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck
これは決して78 HMV B9606ではなく、冷ややかな13世紀の笛吹きでもない。
偉大なるホーおじさんがお前(F)は幸せであると言っていたことを覚えているだろう?
朗々とした怨(ボイス)で季語のみの俳句が宣告(よ)み上げられる中マルマルとバツバツは奇しくも同時に叫ぶ。
「「塹壕戦(ふ)せろおおッ!!!!!!」」
各々の方法で防壁(かみきれ)を展開し、目と耳(パラレル)、武能(エスノセントリズム)の到来に備える。
148
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:12:47 ID:NwSx6/og
「ファックス」
そして世界は闇還る刻に(と)けあった。ワイヤー吊りのコンクリもリノリウムの床も雑草も110円均一の嗜好品共も全て。
肋骨の順番が入れ替わるほどの衝撃を受け意識を手放さざるを得なかった吠與は余りにも無垢な赤子のように横たわる。
「起きろ!どう考えてもやべェ!おい!さっさと逃げるぞ!」
ふき飛んだ吠與を回収し、頬をペチペチと叩きながら引きずるマルマル。度重なる振動でようやく吠與は時間感覚を取り戻した。
そして目の前のPolyphemus(けしき)に小さく悲鳴を上げた。
…ここはサタンの肛門か?肉と血で塗られた塊共が我が物顔で蠢き燻っている。絶叫と汚臭があらゆる感性に不快感を提供する。
一瞬の幕間で吠與は弱弱しく掲げた理性の灯に深灰の霧がかかるのを脳喰(かん)じた。
149
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:13:20 ID:NwSx6/og
「この状況、ポール “アンジェ” アブリコ・ラ・チュリールが自らの死期を悟り残したといわれる言葉
“非力な者を人とするならば抗うのもまた人”といったところでしょうか」
「なに悠長に蘊蓄たれてやがる!黙って走れ!」
ひびの入った眼鏡を直しつつ、サンカクサンカクも足を光らせながら帯同する。推進力を得る術式であろう。
三人は走りながら後ろを気にするが追うものはいない。ただ談話室の中心(グラウンド・ゼロ)から悲鳴と衝撃、
学園の非常時防衛システムと化け物とのGargantua(ぶつかりあ)い、
それに巻き込まれる哀愁狂わしい雑草の叫び(マイナス=Lobachevsky)が流れ込んでくるだけであった。
「ここから先に緊急脱出ポイントがある!739もこの馬鹿騒ぎを聞いて向かってるはずだ。ついてこい急ぐぞ!」
若干の冷静さを取り戻しつつあるマルマル、談話室から南西に進路をとる。
150
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:13:46 ID:NwSx6/og
「おおっと待ったぁ!」
「な!!」
「学園防衛隊参上ぉ〜」
真白いスーツに身を包み、脇差と大刀を腰に差し颯爽と推参(あらわ)れた男達はマルマル達の行く手を遮った。
「俺の名前は学園防衛隊第57治安維持部隊宇宙大将軍…」
「已己巳己(うる)せえェ!」
「ぎゃあああああ痛ってえええ!!!」
道化(なの)りを待たず回し蹴りで打(デアデビル)。
「手前ェらの遊びに付き合ってる場合じゃ…」
「赤口(もら)ったァ!」
「田丸君!」
151
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:14:28 ID:NwSx6/og
茶番の隙を一二三四五六七八九(つ)く打(ダべック・ソロ)。傘は間違いなく深々と心臓に突き刺さっ…
否、私窩子乍(しかしながら)、だ 傘と皮との間に異物(Hànfú)あり。
「花発いて風雨多し(おそ)くなったな」
「739ゥ!」「739さん!」
その中華三昧(チャイナ)った傭兵(ならずもの)は寸前で傘を雲散霧消(と)めていた。
「赤口、赤口、赤口、赤口ゥ! くだらねェ大凶(じゃま)してンじゃねーぞ、貴様ァッ!」
「…あのリバー・ドア・リバー・ブリッジから追奔逐北(お)ってきたか。生命力だけは捲土(あ)り重来(あま)るようだな」
「ほンッ…とォに赤口(つみぶか)すぎて凶(ことば)も出ねえなァッ!屠(くさ)れ突(じ)ねやッッ!!
――解放ノ太刀『九十九刺死斬々(つくものさしきず)』 」
ビニ傘が揺らめき、開花(ひら)く。高速回転(ぶちまわ)した傘から無数の乱気流(オートノミー)が形成まれ、
致命をカタチ創造る。純然な原形質へのAlt(アルターエゴ)。
152
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:16:06 ID:NwSx6/og
「傘男(おまえ)が識別番号(だれ)であろうが固有座標(な)んであろうが畳牀架屋(かんけいな)い。
『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)」
《罪 天 血 我》。既知のサンクション4。全媒体(カイテン)は唯只管に狼狽を歓迎し、
天文学的偶発性(パラダイムシフト)は歪(ゆる)やかに嗤(な)された。咄。咄。
「…相変わらずお前のそれ反則クセーよな」
「座標運命操作ですか…それも極めて高強度(ハイテック=ハイ)の。
非常に興味深い…よろしければ大まかな魔術体系だけでも伺いたいのですが」
「後にしろサンカクサンカク!脱出ポイントまでもう少しなンだよ!」
「彼你は?」
「三郭山君だよ。色々あって田丸君を助けてくれたんだ」
「ああこれは私としたことが自己紹介がまだでしたね。
三郭山 革(みかくやま あらたまる)と申します。サンカクサンカクというあだ名の由来は苗字の三を…」
「それはもういいンだよ!さっさと行くぞ!」
吠與一行は迅速にマルマルが指示したポイントへ足を進め、しばらくして到着した。
153
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:16:40 ID:NwSx6/og
「ポイントは此処だ」
マルマルは学園の過疎地にある古い倉庫に入っていった。他の皆もそれに続く。
「田丸君この建物は…?」
「飛行戦闘訓練用の第五予備格納庫だ。今中央の方でドンパチやってンのは幸いだったぜ。おかげでノーマークだ」
マルマルは自嘲気味に笑いながらかっぱらうための戦闘機を品定めしていた。
「注油(ゆだん)するなよマルマル。」
「わーってるよ。学園の外に出てからが本番だろ? …うし!これにすっか」
並び立つ航空機から比較的マシそうなの(かつ四人で乗れそうなの)を選び皆で乗り込んだ。
154
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:17:45 ID:NwSx6/og
「操縦は俺がやる。739は追手(そと)見ててくれ」
「白(あいわかった)」
「…本気でこれに乗って逃げるつもりですか?大型SE.212デュランダルRSで…?
遺憾(v5)ながら余りにも元老院(こっとうひん)と言わざるを得ません」
サンカクサンカクは怪訝そうに埃を被っている計器類をチェックしている。
「仕方ねーだろ!学園の非常防衛システムを正面切って突破できる奴がどこにいるんだ。
それにお前まで逃げる必要ねーンじゃねーのか?」
「私があなたを祝福(な)おしたのを生徒会の連中は間違いなく見ているでしょうね。
戻れば必然的に四肢切断(たたではすまな)いでしょう」
「…巻き込んじまって そのなんだ、すまなかったな」
気まずそうに謝るマルマル。
「お奴隷大農園(きになさらず)。ヒラヤの書曰く“知を求めることは最もシンプル化された本質である”
探求は場所を選ばないんですよ。あなた方に同行することは新たなる知見を得る助けになるでしょう」
「是(き)まりだな」
「よろしく三郭山君、田丸君を助けてくれて本当にありがとう」
戦闘機に乗り込む一行。吠與はサンカクサンカクに改めて感謝を述べた。
155
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:18:18 ID:NwSx6/og
「おっしゃ飛ぶぞォ!」
格納庫から勢いよく飛び出し、そして戦闘機は空を駆けていた。目指すはハーバー・ライスフィールド・スワンプにある隠れ家だ。
飛行中の機内で学園に潜入してからのことをつらつらと思い返す吠與。
マルマルや739が言う潜った修羅場というのはこういうことをいうのかとどこか他人事のように思った。
「(…メリー)」
吠與は自ずとあの人形廻しの少女を思い浮かべていた。敵であったとはいえ、あの空間でのなんとなしのやり取りは失われたはずの貴重な日常だった。
斬刑に処された後化け物の下敷きとは儚い(むじょう)を感じずにはいられない結末(おわり)と言えよう。
156
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:18:50 ID:NwSx6/og
『ビーーーーーーーーービーーーーーーーーー』
機内に甲高い爆音が響く。吠與は思考の糸くずを振り払い臨戦態勢(ホリックスタイル)をとる。
「敵襲!?」
「来やがったぜ、客(クレーマー)だ!739、数は?」
「二機だ。韋駄天(はや)いな、これでは鶴の巣籠(すぐにおいつかれる)」
「739さんの固有座標(あれ)でどうにかならないの…?」
「縹渺(ムリだな)。魔術的防衛陣が油油(は)られているだろうし何より対象座標が桐一葉(はやすぎる)」
「あれは恐らく《ハウンド》の殲撃-501でしょう。強力な電子走査アレイレーダーを載せた強襲型です。どう考えても逃げきれませんね」
サンカクサンカクは言わんこっちゃないと肩をすくめる。
157
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:19:13 ID:NwSx6/og
「まァ見てろって!739、運転頼むぞ!」
運転を交代しつつ後部ハッチを開くマルマル。
「ど、どうするの田丸君!」
「俺が目(ねら)いを付ける。合図したらお前が引導(ぶちぬ)け!」
「!」
ハッチを開けたことによる激風を顔に浴びながらマルマルは集中する。
158
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:19:58 ID:NwSx6/og
――奇経八脈、督脈。大鵬展翅
脈は奴延鳥を三千世界(えが)く。冥々の中(いつのまにか)激動(うちつ)ける風は大撤退(と)まっていたが、
それでも反叛する重力(おも)みは5ドルほどか。
惑溺(gank)を苦艱(う)ける小人に泥烏須(DS)如来の大慈大悲(ping)は無象(ひび)かず。 ――対象を暫定捕捉
波羅葦増に不倶戴天(なかゆび)を突き立ててまでも脳髄の上に聖霊(人喰いゴブリン)を飼っているためであろうか。 ――重捕捉
鶏が鬨(わめきち)らし始めるのは当然のことだった。もはや渇仰は叶わずsukhāvatīは我他彼此に塗れ、愈々以て奇跡のカーニバルは開幕する。
「完全捕捉(とら)えた」
『迅雷放銃(イナズマッシュ)!』《モージュール=プラス光学照準》。
制裁機構(EXP-01)は自由狂気(じざい)にカタチを歪め、吠與の長距離精密射撃(ミッション)に速やかに適合していた。
マルマルがPanharmonicon(くみあげ)た気の道を雷は疾走する。
159
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:21:16 ID:NwSx6/og
「執行完遂(あ)たった」
静かに呟く。そして、遥か後方で爆音と黒煙が上がる。逃れようのない稲光の打(パーフェクト・ダークネス)を享受させて“あげる”。
「しゃあ!一機撃墜ッ!」
160
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:21:51 ID:NwSx6/og
『ヴーーーーーーーーーヴーーーーーーーーー』
喜ぶ暇もなく、先ほどより数段低い警告音が機内を満たす。
「スキャッターミサイル、誘導(き)ます!」
残った一機が放つ避けらン…ねェッ殺意(はや)さで飛来する閃電-66(ARH式)。此処でボーッとしてるだけのBaby(おわ)ってみるか?
否。
「手前ェらァッ!俺に掴まれェ!」
マルマルの度重なる戦闘でボロ雑巾のようになった服や腕を掴む面々。
「もう一度飛ぶぞォ!」
そう叫ぶや否や床を震脚(ぶちぬ)くマルマル。機内から飛び降り、自由落下が始まり大気に晒される。
その瞬間、頭上でデュランダル(さっきまでいた場所)はミサイルが直撃し粉微塵になっていた。
161
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:22:12 ID:NwSx6/og
「吠與ゥ!もう一度アレやるぞォ!」
「ああ!」
空中で気を放つマルマル。それを辿り射撃をする吠與。稲光が巻き起こり、もう一機(エネミー)も完全沈黙を受け入れた。
「気宇壮大(みごと)」
「まさか死傷者を出さず追手(ハウンド)を撃墜(ふりき)るとは…素晴らしい交戦結果です。…ここが上空15000mであることを除けばですが」
今日はよく晴れている。宇宙の蒼が見える。水平線が丸みを帯びており、地球とはどの様なものかを如実に教えてくれている。
「わぁ…」
「なに感動してやがる!いいか、俺が合図したらその方向に迅雷放銃(う)て!」
なにやら策があるマルマル。
162
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:22:38 ID:NwSx6/og
「同一高度(level)2時の方向!」
轟!マルマルに掴まっている面々は迅雷を推進力にして空中で横に吹っ飛ぶ。
「上方(high)11時の方向!」
轟!さらに吹っ飛ぶ。そして眼下に広がるのは、広大な湖だった。
「なるほど、湖に着水して衝撃を軽減させるつもりですか」
「そういうこった!吠與、後はぎりぎりまで待ってから真下に全残弾(のこ)りをバースト(ぶっぱ)なせ!」
「わかった!」
タイミングを見計らう吠與。
「…瞬間(いま)だ!」
163
:
あの男
:2021/11/25(木) 20:23:29 ID:NwSx6/og
轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!轟!
迅雷放銃をロケット噴射のように用い、ブレーキ代わりにする。そして…
馬鹿轟音捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨捨(バッシャアアアアアアアアアアアアアアン)!
着水。左右の眼球が入れ替わりそうな衝撃と共に、口に泥水だの藻だのよくわからん細かいゴミだのが飛び込んでくる。
だが、吠與達は生きていた。
「全く。相変わらず大行は細瑾を顧みず(むちゃ)をする」
「でもうまくいったろ?」
よろよろと岸にたどり着き言葉を交わす。
「で、ごほっ だ ここから隠れ家に戻って早く情報交換がしてェ。突然合体して爆誕(で)きたとんでもねェオデュ獣(イミテーション)を見ちまった」
「グラサンに記憶されてるはずだ。…この衝撃で壊れてなきゃな」
歩きながら説明するマルマルと興味深げに聞く739。吠與達は生き残った達成感と再び相見えるだろう“死(マグ・メル)”に武者震いしながら隠れ家への歩を進めた。
164
:
投稿男
:2021/11/25(木) 20:24:09 ID:NwSx6/og
な…げェッ 暇な時見てくれ
165
:
雑感筆執男
:2021/11/25(木) 22:11:28 ID:cBNAkZ3k
嗚呼(ENTER)、function(なんてことのない日常) {"喰いかけを見る"};
……Console.error(は?) {"こう…しん…?"};
門
Odyssea Tanka
fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
fuck fuck fuck fuck fuck fuck fuck
Decameron(星夜爆裂疾風弾(ばくれつ)に星夜爆笑疾風弾(おもしろ)かった。
スピーディな展開とハラハラドキドキを与えてくれる戦闘シーンが過去一盛り上がった。
ウィキからの引用や細かい喰いかけネタがOdyssea愛を感じさせてくれた。
最初のイミテーション4連打とOdyssea Haikuが衝撃過ぎて次の行読むのに10分を要するくらい爆笑した。
今回で学園都市サウザンドリーフ編は一旦終わりということかな?
若干消化不良を残す生徒達のこれからの活躍も期待したいところ。
隠れ家での展開をどうするか非常に悩ましいのでリタロウが考えていた展開があれば教えてほしい。
改めて更新してくれて本当にありがとう。もう二度と更新されないんじゃないかと思っていたのでね…)
166
:
注釈奴
:2021/11/25(木) 22:45:40 ID:NwSx6/og
感想が爆走夢歌(は)ッ…えェッ!
書くために改めてodyウィキを眺めてるとやはり積み重なった歴史を感じられて楽しい。
展開についてはすきに書いてほしい。最後の方力尽きて俺も正直ここまでしか考えてないけど次やるなら修行か…?もちろんすきに書いてくれ(隼の剣)
生徒に関してはメリー生き返らせるより踏みつぶされた方が面白い(かわいい)のとバツバツは因縁の相手だからこれからも会えると思う。
一将関係は… …我々の小説が続けばいつかいい感じになるはず
1年半以上空白のゲーティア(ぶちあけて)ンのに読んでくれてかつ感想までくれるのはすげえうれしいしありがたい。
投稿してから気づいたけど閃電ってミサイルと航空機でどっちもあった。ここ(喰いかけの林檎)ではミサイルの方を意味しているのだ。
167
:
『巨大な老人!? キン=ゾック卿現る!』
:2023/12/16(土) 13:46:47 ID:wn0s58CQ
「…此処だ」
喧ましくクラクションが絶えず鳴り響くShiting Side Story(脱糞皐月蠅ェ町)の隙間に一つ、在り。
ハーバー・ライスフィールド・スワンプ駅前、座標4、12の92――隠れ家『民集う意思』。
何の変哲もない雑居ビル(コモン)の非常階段を下ると仰々しい門構えの地下空間(アンコモン)が立ちはだかる。
「今時、星夜爆裂疾風弾読込装置(グラサン・リーダー)なンて一世風靡爺(はや)ン前時代的三太九郎(ね)ェよなァ…?」
マルマルは衝突雑草(ぶつくさ)と文句を垂れながらも、記憶媒体として機能していたグラサンから
識別コード【2345-CBH】を読み込ませ――受け入れて――いる?――開門。
僅かな常夜灯の光源を頼りに隧道を通り抜けること10分――人影だ!
168
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:47:49 ID:wn0s58CQ
「――金属好きか――?」
開口一番に聞こえたのは唐突で不明不明黒黒(いみふめい)な問い。
薄暗い廊下の奥からぬるりと顕現したのは意気揚揚と語りかける巨大なシルエット。
出迎えたのは身丈にして九九寸(要するに118.11インチ)は優に超えるという如何して仲々に大柄な老躯だ。
「よォ、じいさン、元ン気にしてっか?」
「クク――金者(わし)はこの桃李(とお)りだ――金甌無欠(至って健康)、だ――」
「あ、貴方は――!?」
「金者(わし)か――? 金者(わし)の名は――キン=ゾック――
嘗ては”キン=ゾック卿”と尊称(よ)ばれて居た――だが、畏れることはない――
今はただの隠家『民集う意思』の管理人――隠居した退役軍人(ろうじん)だ――」
169
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:48:17 ID:wn0s58CQ
黄金の鉄の塊で出来た鋼鐵の鎧(金属で出来ている)を身に纏いし大老卿(エル・ドラド)は、吠與に顔面を正対(む)ける。
「さて、君は――吠與驚異君――だったかな? 君の叔父は元気にしているか?
――彼に銃整備(ガンスミス)の基礎を教えたのは金者(わし)だ――」
「叔父(おじ)さんは…消息不明です。恐らく死にました。現在吠與一族で生存しているのは僕と義姉の什麼(インモ)だけです」
「そう――か――要らぬことを聞いてしまったな――すまなかった――」
「いえ、全然…」
好々(りかいある)爺(かれ)はこれ以上聞くまいと最思量(おも)ン大開闢(パカ)った。
私窩子乍(しかしながら)、だ。吠與の顔面から3 o'clock high(三時方向、要するに右)半分に#000000(JET-BLACK)在り。
来週(ここ)から過去編突入か――!?
否――
170
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:48:41 ID:wn0s58CQ
「閑話(はなしを)休題(さえぎる)ようですまないが、早速、訥言敏行(ほんだい)に移る。是(これ)を尋花問柳(み)てくれ」
739とマルマルはグラサン型記録装置から映像を取り出し、複数の監視モニターにそれを展開した。
小型ながらも学園都市サウザンドリーフで南征北伐(たたか)ってきた様子が鮮明に映し出されている。
「鳴咫尺(なるほど)――贋作(イミテーション)同士の蠱毒合体(フュージョン)――か――
人類識別番号計画の完遂に向け急速に進行し始めたか――我々に残された時間はあまり無いのかもしれぬ――
少なくとも個々が対峙してまともに勝てる相手ではなくなっておる――」
そのために、と739は話を切り出す。
「休(さて)、ここで各自各々に烙印(やど)っている座標能力(トポロジー)について死灰独不復然乎(さいかくにん)しておこう。
まずは吠の技(トポロジー)、『迅雷放銃(イナズマッシュ)』からだ」
171
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:49:10 ID:wn0s58CQ
「ふむ――映像を解析するに――驚異君の固有座標能力(トポロジー)は”複製”だな――それもオリハルコン製限定の――」
「オリハルコン製…限定…?」
「君が手から取り出しているのはオリハルコン製のセミオート式散弾銃『サイガ12S EXP-01』――
金者(わし)が嘗て君の叔父に渡した着火(ブツ)だ――」
「叔父さんが持っていた銃…ですか?」
「それが何故君の手から出てきているのかは分からぬ――が、しかし――
複製の能力が過去の記憶に大きく影響を受けるのであれば――
或いは――構築物の分解及び潜在的な内部構造の理解か――」
老躯は衝突衝突(ぶつぶつ)と一齣呟きながら部屋の奥へと行き、何やら書棚から一冊の本を取り出してきた。
172
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:49:54 ID:wn0s58CQ
「驚異君――これを持っていきなさい――空いた時間に眼光紙背に徹す(よ)んでおくと良いぞ――
世界中の解剖学が一手にまとまっておる――」
「その本は…! 奇書、『ヤサジン』――分解と構築の歴史。解剖学では古典的名著の一つとして数えられる。
人体、生物、銃器、発動機、全世界のあらゆる内部構造が挿絵を交えながら懇切丁寧に描かれている。
タイトルは古代オデュロン語で「これは写すべき」の意…です!」
「か、解説ありがとう、三郭山君…」
私窩子(しかし)、吠與には現時点ではまるで説明不足大脳(りかいができなか)った。
この稀覯本を渡された真意とは――?
「そして、田丸君――君にはこれを託そう――」
「なンだこれ?」
173
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:50:27 ID:wn0s58CQ
「これは、オリハルコン製の拳鍔(ナックルダスター)――所謂、メリケンサックという俗称(ヤツ)だな――
君の速拳(ラピッド・ファイア)は映像を見る限り――どうも、ただ速く動いているだけには見えぬ――
対象のオリハルコンの磁場をターゲットに瞬間移動したようにも思える――」
「はァ…?」
「嘗て――彼国に於いて護国卿に就いた国家魔術師が居た――
自ら構築した術式によって振り上げられた握拳は必ずその賊軍を貫くと云われた――
その帝国軍人の大虐殺(な)は――”クロムウェル”、と――
――まあ、とにかく装備しておくと良いだろう――固有座標能力(トポロジー)の真価が発現するかもしれぬ――」
「お、おう。有難く受け取っとくぜ。その、クロム…何とかも憶えとくわ。
…つかよォ、さっきからじいさンの言及(い)ってるオリハルコン、オリハルコンって…一体何なンだ?」
「ああ――まさに――”それ”だよ――」
「…ぁ?」
174
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:50:57 ID:wn0s58CQ
「オリハルコン――君たちの使う固有座標能力(トポロジー)は全てこの金属、『オリハルコン』に関係している」
「どういうことです?」
「739(ナサク)君――君は理解しているね?」
「当然把握(ああ)…俺の固有座標(トポロジー)、『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)は
対象が邂逅する機会を永久に消滅(うしな)う座標運命操作能力。
…これを居敬窮理(せいかく)に言い換えるならば、オリハルコンの磁場方向を変える能力だ。
磁石の同極同士を想像すれば容易いだろう。適用されるのはオリハルコン製の物体に限定される」
「オリハルコン限定の座標運命操作能力…!?」
「いや、待て待て…そーだとしてもよォ、
仮に列車がオリハルコン製だったからダイヤを変えたってのはまだ五割理解(なんとなくわ)かンだけどよォ…
あの九傘男(クソやろう)にも能力が効いたのはどういう理屈だァ?」
「それは斉東野人(やつ)の躰がオリハルコンで完全構成(でき)ているからだ」
「は?」
175
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:51:20 ID:wn0s58CQ
「田丸君、君にはまだ説明不足だったか――
座標固定されるものは皆オリハルコンとなる――人類識別番号計画の根幹となる仕様だ」
「そして、座標固定を逃れた俺達のような欠陥座標(アントポス)の識別番号(ナンバー)は
固定されずとも皆既に躰の細胞が隅々までオリハルコンに疑似餌(おきか)わっているということだ」
「なン…だって…? そいつァ先代未聞(はつみみ)だぜ…俺ァ金属だったの…か…?」
「それも全てある一人の科学者から始まっている――
その人物は、狂科学者(クリミナル・ウィザード)と呼ばれている――
そして、彼が創造った数学史上最大の難問――それが――OH(オンドルーン予想)だ」
「O…H(オンドルーン…予想)?」
176
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:51:37 ID:wn0s58CQ
「OH(オンドルーン予想)…数学界における未解決(ミレニアム)問題の一つですね」
「履修済(し)っているのか!? サンカクサンカク!」
「ええ、当然ですよ。この問題に挑んだものは皆発狂し、自我を保てなくなる。有名な話です。
私もこの難問についてはいつか生涯を賭して挑戦してみたいと思っていたところですが…」
「そのOH(オンドルーン予想)こそが君たち――
いや、我々人類にとって密接に関係する計画――人類識別番号計画と繋がっている」
「ええっと…? 話を整理すると、つまり、狂科学者(クリミナル・ウィザード)という人物が
OH(オンドルーン予想)と贋作(イミテーション)を創造した人物であり…
人類識別番号計画を企てているってことですか…?」
「ああ、そうだ――贋作(イミテーション)が何故人類に識別番号を与え、座標を固定するのか――
その真意は創造した本人(クリミナル・ウィザード)にしか分からないが――
金者(わし)はそれが”来る日”に備えるための防衛システムなのではないかと思っている――」
「どういうことです?」
177
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:51:58 ID:wn0s58CQ
「彼(クリミナル・ウィザード)はOH(オンドルーン予想)を導き出し――
恐らく終末を算出(し)ってしまったのだろう――
隕石の衝突か――何らかの人類滅亡のシナリオが――」
「それで人類滅亡の日までに全人間を最硬金属(オリハルコン)にしちまおうってェのか!?」
「実(げ)に――まだ憶測の域ではあるがな――」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ…話が壮大過ぎて脳(りかい)が追い付かないのですが…」
「ああ、それと――更にもう一つ重要なワードがある――OH問題に挑んだものは皆――
発狂する直前に”ある言葉”にたどり着いている――それが――『ビヨンド{悲願
不和音(ブゥワアアアアアオオオオオオオオオオン)!!!!
178
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:52:22 ID:wn0s58CQ
「あ? なンだこのクソうるせェ警報音(=シャッタップ・ビーパー)は」
「まずい――何者かの侵入者だ――もうここも長くは持たん――早く次の場所へ行け――」
「次の場所と言及(お)っしゃられても…何処に?」
「『呻く運命(UNDER GROUND REVOLVER)』という者と邂逅(であ)うのだ――
彼は贋作(イミテーション)を創造った狂科学者(クリミナル・ウィザード)を知る数少ない人物であると言われている――
彼の捜索は困難を極めたが――どうやらある地下闘技場に毎年出場しているらしい――
君たちも地下闘技場にエントリーし――どうにか勝ち進んでくれ――それ以外で邂逅する手段は無い――
場所は城塞都市、帝都”ボース・カントリー”の『カントリー・スキル・パレス闘技場』だ――
さあ、今すぐこの裏口を使い落城(ここ)から出るのだ――」
「…じいさん、死ぬンじゃねェぞ?」
「無礼(ナメ)るなよ?――金者(わし)は第四族元素の専権支配者――『キン=ゾック卿』、だ――随分と南山不落(かた)いぞ?」
179
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:52:48 ID:wn0s58CQ
マルマル一同はその意図を汲み、僅かに口角を上げたまま古老を背に間もなく発った。
苦虫もまた、意味もなく歯間から漏れ出す僅かな光を求めた。何れ擂り潰されることも露知らず。
刻を同じくして、塁壁(クリストファー)は神砕(うちぬ)かれた。侵入者の位置、残り――2mッ!?
「三千大疑問世界(おか)しい――贋作(イミテーション)にしては侵攻が餘りにも疾すぎる――!?
これは一体――誰だ――!? ――――――否(いや)」
老い人は認識(し)っていた。その顔を。懐かしさすら――
「――骸架の三『浮岩沖天』」
180
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:53:06 ID:wn0s58CQ
跳躍。
『I(清)』
頭上…脚?
『am(掃)』
墜。
『done(完)』
形を拒絶する。
『erasing.(了)』
破壊(パカァ)。
裂(避)ける音。金地を熨(なめ)す。
正中を滑(なぞ)る大気の痣哂い遭い。
因って死、ぬか…
181
:
あの男
:2023/12/16(土) 13:53:22 ID:wn0s58CQ
さて、老人はただ脊椎骨を露出しただけの孑孑(し)たいになった。
否、少し慮(ばか)り意識はある、か……
「お主は――確か――彼のお孫さんだったか――」
「――彼をOH問題に導き――彼ら研究者達を狂わせ――
家族を死へと追いやったのは金者(わし)だ――本当にすまな――かっ――――」
土着(ドチャッ)。
ふう、と女教師は息を吐瀉(は)いた。
「……Eat humble pie(=今更謝)ったところで A drop in the ocean.(=何の意味もない)わ。」
「さて、彼らを教室へ連れ戻さないと」
「だって」
「担任だもの」
182
:
筆舌尽くし男
:2023/12/16(土) 13:53:49 ID:wn0s58CQ
執筆前に実況スレとサバイバーズギルトを思い出させてくれて『ありがとう、助かったよ…”壁”のおかげだ』。
私窩子乍(しかしながらだ)、オリハルコンが突如として頻出したのは彼らの能力について辻褄を合わせるためである。情けない…咄。咄。
――――以下、用語説明――――
【オリハルコン】:この世で最も硬い物質。とある狂科学者も文字通り喉から手が出るほどに求める逸品である。
【人類識別番号計画】:人間に識別番号を与え、座標固定する計画。その計画の根幹は人体を世界最硬物質であるオリハルコンに置き換えることであった。
【座標能力者(トポロジスト)】:識別番号(ナンバー)と俗称(い)われている者達。贋作(イミテーション)に座標を与えられつつも、何らかの外的要因によって固定を免れたことにより特殊能力を発現している。
【吠與驚異の固有座標能力(トポロジー)】:オリハルコン製の物体を複製する能力。そして、識別番号(ナンバー)は全てオリハルコンになっている、つまり――”ONE MAN ARMY”――だ!
【マルマルの拳鍔(ナックルダスター)】:オリハルコン製。クロムウェル卿の術式からヒントを得たことで『速拳(ラピッドファイア)』が強化され、後に彼の”名”を布くことになる――
【『一別雨ノ如死』(ヴァニタス・ヴァニタートゥム)】:オリハルコンの磁場方向を変える739の能力。運命操作が適用されるのはオリハルコン製の物体同士に限定される。
【OH(オンドルーン予想)】:数学界における未解決(ミレニアム)問題の一つ。これを解くと人類滅亡の顛末が証明されると謂われている。
【ビヨンド■■{悲願■■■ 【加工済み】
【地下闘技場】:帝都”ボース・カントリー”の”カントリー・スキル・パレス闘技場”で毎年開催されている。全国の戦闘狂(ワーカーホリック)共が集う。
【D-driver】:吠與驚異と田丸丸男の担任教師。OHに狂わされた祖父(公家おじさん)を持つ。骸架教団幹部。Odyssea級3体分の暴力を有する。
【骸架の三『浮岩沖天』】:少しの間自身又は対象を浮遊させる下級構築術式。幹部クラスであれば一桁台程度の構築破棄は論を俟たない。
183
:
番外編『海の者 カニオ』
:2025/02/27(木) 19:10:42 ID:OOuhFCCU
俺の名前はカニオ。歳は二十。数え年で二十二。地元じゃ負け知らずの力自慢さ。
今日は待ちに待った地下格闘大会が開催されるってえんだからさあ大変だ。こうしちゃあ居ても立ってもいられない。
俺ちゃんの強さがようやっと世間様に知れ渡ったっちまうなんてよ。楽しみで仕方ねえってんだ。
港町じゃあ筋骨隆々の漁師たちと力比べの相撲なんざしたって俺は百戦百勝の一騎当千ってわけさ。どうだ、強えだろ。
大の大人を持ち上げて地べたに突き落とすなんざあ御茶の子さいさい屁の河童だね。そうだろう?
「ははっ、違いねえぜ。」
「坊ちゃんは眉目秀麗、威風堂々、泣く子も黙る伊達男ってえ巷では評判でえ。よっ、色男!」
「ヤァ、よせやい。俺ちゃん照れちまいますぜ。」
184
:
あの男
:2025/02/27(木) 19:12:34 ID:OOuhFCCU
気恥ずかしいけどよ、俺には頼もしい仲間ってえやつがいる。海風のヤスと案山子ってんだが、ちいっとばかし曲者でよ。
気分屋ばかりで食えたもんじゃあねえ。今日のお天道占いみたいなモンさ。当たるも八卦、当たらぬも八卦、ってな。
た・だ・し、だ。負けず嫌いっつー芯だけは一切ブレねえ。ド根性で生やした木深い信念が鬱葱と聳え立ってんだ。
気合いなんてヤワなもんじゃあねえぜ。寄せ手が八百万の神様で囲まれようとも絶っ対えに“折れねえ”。そういった人選だ。
さて、と。一体相手さんはどんな荒暮れ者が来るってえんだ?
鬼が出るか蛇が出るか。俺ぁもう既に武者震いが止まらねえぜ。
ここいらでちと堅苦しい話になるがよ、この大会では一度の対戦に“三人”まで出場可能だそうだ。
…んあ? そりゃあたよ、あたぼうってんで悪いが数の前では“全てが敵わねえ”。
「犬が西向きゃ尾は東」、だ。分かるかい? なあ、お前さんとこの言葉にはあるかい? 「北に近けりゃ南に遠い」、ってんだよ。
たった一人で勝とうなんざ意気込んだってそうは問屋が卸さねえってわけさ。実力が拮抗してるってんなら尚のことよ。
…でもよお、言いたいことは分かるぜ。もしも、もしもの御伽噺、だ。
仮に三人に対して一人で挑もうなんざ無謀な大馬鹿野郎が居たらよお、寄席の前で大っ恥かくだけだぜ?
今年一の大笑いにゃ間違いないね。そんな無鉄砲で世間知らずのド阿呆が居るわけが――
185
:
あの男
:2025/02/27(木) 19:13:56 ID:OOuhFCCU
*
居た。
それもあろうことか俺たちの眼前に。
「少年…?」
風に靡く金色の髪。弱々しく透き通る白い肌。その細作りの左手には一丁の拳銃が握られていた。
成程、面白え。そのブツ一つで俺たち『海の者』と渡り合おうって魂胆か。
チャカとダンビラ論争に一輪の彼岸花を手向けるにゃあ丁度良い頃合いよ。
「悪いけどよ。そういう武具も“想定済みだぜ”?
だよなあ、案山子!」
「あいよ、鉄扇円状展開!」
さあ、出ました!
初見さんは寄ってらっしゃい見てらっしゃい。からくり使いの傀儡師、案山子先生特注の鉄製和傘でえ!
こいつを盾にしちまって銃弾の雨あられなんざお構い無しに相手の懐まで突進しようって寸法さ。
「いくぜ手前らァ!
地獄の暴走列車に振り落とされんようしかと捕まんなあ!」
「「応!!」」
186
:
あの男
:2025/02/27(木) 19:16:19 ID:OOuhFCCU
猛進、猛進、猛進。
戦略などと呼称するにはあまりにも粗末。だが、実に有効。少年の焦り顔が鮮明に浮かぶ。
時間にして五秒弱。目標となる懐まで一寸すら満たない距離まで縮まった。
…ん、なんだ? そいつはあまりにも“早すぎる”ってことを言いてえのか?
仕方ねえ。今日はハレの日ってもんだから特別に絡繰りを教えてやる。
海風のヤスは、健脚だ。俺たち二人を背負っても何のその。速えんだ。
地元の港町では『海の韋駄天』なんつう呼び名が付いちまうくれえにな。
とてもじゃねえが“人間業とは思えねえ”。本当に恐ろしくってありゃしねえって。
ま、与太話はここいらにしとくよ。…ああ、お前さんの納得のいかなさは重々承知の上で、だ。
とにかく、俺たちは強え。ただそれだけだ。
「捉えた! 歯ァ食いしばりな!」
拳は既に凝の構え。
少年は面喰らいつつも、とっさの目先に銃口を向ける。
「遅えってんだよ!」
187
:
あの男
:2025/02/27(木) 19:19:07 ID:OOuhFCCU
馬鹿根気(バコオォンッ)!
顔面左頬に拳固一徹、右ストレート。決まった。
岸和田のだんじりが二台はあろうといった追突事故の如き拳撃で浮いた躯体は、会場壁面の目前まで滑空。
少年は成すすべもなくただ地面に突っ伏すのみ。終わった。闘いはこんなにも呆気なく。
「…ったく、馬鹿野郎が。その程度の実力で俺達に挑もうなんて気は二度と起こすんじゃねえぞ。
弱いものイジメしてるみてえで気分が悪いぜ。とっとと去りな。」
「全く、その程度の運命だ。」
「……は?」
「僕がこの地面に伏せられるという程度の運命なんてね、本当に些細なことなんだ。
例えば今この瞬間に誰かの髪の毛が一本抜け落ちようとも誰も気にしちゃあ居ない。そういう程度なんだ。」
こいつはさっきからぺちゃくちゃと何を言ってやがるんだ?
「勝負はとっくに着いてんだ。これ以上歯向かうってんなら次はキツーイお仕置きが待ってるぜ?
いいから帰んな。ガキんち――」
188
:
あの男
:2025/02/27(木) 19:20:04 ID:OOuhFCCU
パン。
一発、銃声、煙立。
空虚な青天に未練を残す斑雲。…空?
一体、何が起きた?
青年の眼球は抵抗もなく天を仰いでいた。全身の損傷は激しく、肩甲挙筋一つ満足に動かすことすら叶わない。
そんなことがとうの昔に過ぎ去っていたと知覚するように。
「…お、おい…まだ終わっちゃいねえってんだ…なあ…そうだろう?
手前らはそう簡単に折れ――」
青年はその先の言葉を紡ぐことがどんなに無意味で吹影鏤塵なことかを認識(わか)っていた。
こんなにも「負け」であることがただ只管当然の世界に実在(うか)んで居るかを――
「運命螺旋(ライフリング)」
少年は空間に一つ言葉を添えた。
「銃線っていうのはね、美しく、そして深く螺旋を描いている方が良いんだ。
銃砲身内に刻まれた運命螺旋(ライフリング)が良いものほど強く押し出される。より強い運命を、ね。
僕の運命装填(リボルバーリロード)に干渉出来るのはカタチをも拒絶する圧倒的な暴(ちから)か、あるいは――」
彼は物見客の歓声を聴くこともなく咄咄と出口の晦冥へと姿を眩(け)した。
189
:
だんびら男
:2025/02/27(木) 19:24:00 ID:OOuhFCCU
オデュッセイア外伝が良すぎたのでふと思い立って書いた駄文だ。
特に本筋には関係ない戦闘なので気にせず進めるもよし、
このまま本編に繋げるもよし、だ。
彼らの健闘を祈る。
190
:
オデュッセイア〜幻の翡翠王国への旅〜
:2025/03/02(日) 14:10:48 ID:duNFTHpk
あまりにもカニオ達(伊達男)の解像度が高すぎてたまげた。
傾奇者すぎだろこいつら…
私窩子乍(しかしながら)、だ Odyssea級は最強(つえ)えぞ…?
俺も書く しばし待たれよ
191
:
『開幕!? 地下闘技大会』
:2025/03/02(日) 14:38:11 ID:duNFTHpk
――――帝都”ボース・カントリー”
ボースカントリー…”領国”との別名で認識されている帝国始まりの国土だ。
諸歴1659年(万血2年)当時難攻不落と知られた国境城塞に対して武能共が南に流れるディープリバーに”橋”を架け両の国を繋いだ。
武能共は闇夜に乗じ瞬く間に城塞を占領。帝国の礎、「始まり」は奇妙ながら命知らず(The only impossible journey)の
蛮勇(LET’S Rock)によって築かれた。それからの歴史はこれを読んでいる諸兄らも知っての通りだろう。
192
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:38:38 ID:duNFTHpk
「此処がじいさンが言ってた『カントリー・スキル・パレス闘技場』か…」
弩馬鹿巨大(でけ)え、一同が感じとれたものは唯一それだけ。
鉄柱30800000000000000000000本と鉄材53800000000000000000tで建造された大屋根、
大鉄傘(HEAVEN or HELL)の愛称で呼ばれる建造物だ。
「呻く運命(UNDER GROUND REVOLVER)って奴(やっこ)は本当に此処に居ンのか?」
「今はあのご老人の言葉を信じるほかないでしょう。他に手がかりがないとも言えますが」
「OH(オンドルーン予想)に贋作(イミテーション)共の生みの親、アレに対する情報が少しでも得られるといいんだけど…」
「地下闘技場大会への歡聲高處怨聲高(出場、若しくは潜入)、天(とき)を急ごう」
一行は入口へと歩を進めた。
193
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:38:56 ID:duNFTHpk
――――『カントリー・スキル・パレス闘技場』 入口
超広大な場に一人、浮かぶものがいる。おそらく受付であろうか…?
臆することなくマルマルは声をかける。
「おィ」
――――武を示せ
「あァ…?」
――――武を示せ
194
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:39:12 ID:duNFTHpk
途端、暗転。空中で無茶苦茶に振り回される感覚。そして―――
無限に広がる灰色の壁に灰色の床、規則正しく等間隔で引かれた黒線。
そこにならず者共(チャレンジャー)が海水がにごると雨(たいりょう)に、居た。
一触即発(ノンハビタブル)の凍るような雰囲気の中、吠與達は中心に降り立つ。
「天天如此(ふむ)」
「へェ…純碁(シンプル)なのは好きだぜェ…?」
「どうやら彼らを全員倒せ…ということでしょうか」
吠與は周囲の殺気(活きのいいのが気に入った)を感じ取って
虚空(サイド)から手繰り寄せた引き金に無言で指をかける
195
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:39:33 ID:duNFTHpk
「なンだァこい…」
ならず者達は…
『迅雷放銃(イナズマッシュ)!』
怒轟(ドゴォ) 有無を言わさず轟雷を周囲にまき散らし鎮圧(ロードマスター)を遂行する。
「オイオイ、俺の獲物も残しとけよ」
「月出て蕎麦 花 雪の如し(はりきっているな)、吠」
「本戦がまだ残っています。皆さん省エネでいきましょう」
196
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:40:03 ID:duNFTHpk
吠與はOdysseaレース―――雪山で橇を引きながら贋作(イミテーション)共が四方八方から絶え間なく押し寄せる状況、
修行(リーサル)の日々を思いだしていた。私窩子乍(しかしながら)、だ これは安堵であろうか…?
引き金がいつもより軽かった。
で、だ
有象無象共を全タテ(の)してひと段落着く。
「これで全員かな」
「ッたく…準備運動にもなりゃしねーな」
「有理贏無理輸(まったくだ)」
「皆さん無傷のようですね。恐ろしく丈夫な人たちです」
197
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:40:19 ID:duNFTHpk
「おおっと待ったぁ!」
「な!!」
「学園防衛隊参上ぉ〜」
真白いスーツに身を包み、脇差と大刀を腰に差し颯爽と推参(あらわ)れた男達はマルマル達の行く手を遮った。
「本間一将様のおっしゃった通りだ! 此処をはってりゃ奴らが現れる、流石の頭脳『ブレイン』だぜェ〜」
「奴らは今連戦で消耗しているッ!一気にかかっ…」
「已己巳己(うる)せえェ!」
「「「「「ぎゃあああああ痛ってえええ!!!」」」」」
198
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:40:37 ID:duNFTHpk
「これで全員かな」
「ッたく…準備運動にもなりゃしねーな」
「有理贏無理輸(まったくだ)」
「皆さん無傷のようですね。恐ろしく丈夫な人たちです」
などと談笑していると灰色の壁、地面が消え、いつの間にかごく普通の部屋に居た
「予選突破ということでよろしいのでしょうか…?」
「是久(そのはずだ)」
199
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:40:52 ID:duNFTHpk
遠くから地響きのような歓声が聞こえる。それが闘技大会の開幕(駆二逐万雷一声動レ山)を知らせていた。
とするならばどうやら此処は控室(サブ)の様だ。
しいて言うならば、何もない殺風景な部屋の真ん中に分厚い本が置かれている。
「なんだァこりゃ」
「ルールブック…ですかね」
『ブリタニカ』 石庭(白い本に題名のみ)という形(カタチ)であった。
200
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:41:11 ID:duNFTHpk
中をめくると、
武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ
武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ
武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ
武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ 武を示せ
…
複雑? いや単純なはず(只管に同じ言葉が書かれている)。
201
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:41:28 ID:duNFTHpk
「どうやらクソ(V5)の役にも立たないようですね」
「…そうだね」
溜息をつく2人。
「事(それ)よりもマルマル」
「…あァ」
「隠す気もねェ馬鹿でけえ”力”をいくつも感じやがる…こりゃあ一筋縄じゃいかねェぞ」
「皆、了徳(わかっている)と思うがこれまで以上に過酷な打(戦闘)が続く。兵来れば将遠し、水来れば土掩す(気を引き締めろ)」
202
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:41:46 ID:duNFTHpk
「で、だ そんでよォサンカクサンカク…」
「わかってます。セコンドに付けというんでしょう」
「実地試験の機会を逃すのは惜しいのですが今は情報の入手が最優先。
唯一回復術式が使える私が控えに回るのは当然の結論です」
「お…おお ありがとな。相変わらず物分かりはえーなお前」
「お奴隷大農園(きになさらず)。イースト・アドバンス曰く“為すべきこととは過去と未来にあらず“
常に“今“を選び取る努力は尊いことなのですよ」
「徳有る者、必ず言有り(恩に着る) サンカクサンカク」
「ありがとう!三郭山君!」
203
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:42:06 ID:duNFTHpk
ギィ 静かに音が鳴り 部屋の扉が開く
「時間だってよ」
「皆さんの健闘を祈ります」
「星星之火,可以燎原」
「…往こう」
204
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:42:24 ID:duNFTHpk
――――『地下闘技場』
われんばかりの歓声の中、一人の男 ”実況” デューク・エイセスが立つ。
地下闘技場でも滅多にない大人数形式(人は何故争うのか)の舞台。
観客の爆発と熱風 時代を越えてそう I got you(ボルテージは最高潮に達していた)。
「全選手入場です!!!!」
205
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:42:41 ID:duNFTHpk
世界最古の使い魔は生きていたッ!!
弱きを救済(たす)け、強きを打破(くじ)き1200年ッ!!!
義賊(アウト・ロー)、ロビンフッドッ!!!
研ぎ澄まされた頭脳からはじき出された勝利の方程式に驚きやがれッ!
偏差値(マニュアル)という枷をぶち破った漢ッ!!
計測不能(カンスト)、本間一将ッッ!!!
現役DBI捜査官参上ッ!―――超級逮捕術の使い手ッ!
戦士としての格の違いを見せつけてやるッ!!
第7機動隊(バ・カテス)、ブレイブルー先生の登場だッ!!!
206
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:42:55 ID:duNFTHpk
侵略しだい燃やしまくってやるッ!!
トロイは全部俺のものッッ!!
ゼウスの直系、トロイア戦争総大将(ヘッド)、アガメムノンッ!!!
この漢、何者にも縛られないッ!
突っ切り、打(ぶちかます)ッッ!!!
1000tトラック級、超自由人(ロマネスク)、タケゾウッッ!!!
―――この漢、あまりにも神出鬼没
颯爽と現れ、瞬く間に勝利をかっさらっていくッ!!
「雷皇」、イーナン=トゥーカの来航だッ!!!
207
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:43:09 ID:duNFTHpk
―――あまりに不純(ウィキチ)、あまりに混合体(キメラ)
誰がコイツを止められるというのかッ!!
奈落(ボトム)からの使者、桂羽シドだッ!!!
その微笑の下には何が隠れているのかッ!
最適(かる)いッ!最速(はや)いッ!最強(つよ)いッッ!!!
悪魔傭兵(ロマノフ)ッ!!――ジョシュ!!!!
国政はどうしたァァァ!!!今日は民草にもお忍びだ!!!
ウガンダ4585万分の1の核弾頭(おとこ)ッ!!!
暴君(キング・オブ・ウガンダ)、アミンッッ!!!!
208
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:43:23 ID:duNFTHpk
この漢の圧倒的プレッシャーはなンだァッ!
立ち技あり、組み技あり、投げ技あり、飛び道具ありッッ!!
神速のガンマン―――バターフィールドッッ!!!
―――真理に到達した暁の賢者
その曇りなき眼(まなこ)でなにを見定めるのかッ!
一声の伝道師(アンチバンジー)、イシバラッッッ!!!
オデュの称号(なまえ)は軽くねェぞ…?
路上のカリスマ、ストリートなら絶対敗けん!!
オデュッオデュッオデュッ―――――オデュフィの登場だ!!!
209
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:43:38 ID:duNFTHpk
新世代ギャングスターの登場だァァァ!!
ディスコ時代のサンタ(時代遅れ)共は引っ込んでやがれッ!!
ダニー・“クリスタル”・クリアッッ!!!!
異形の刺客、人類の天敵ッ!
これから始まるのは飢えに飢えた怪物の食事の時間だッッ!!
悪食(モンスター・パニック)、人喰いゴブリンッ!!
さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい満員御礼大入袋ッ!
未来へつなぐ千人力の金剛力!知らざあ言って聞かせやしょう偉丈夫の伝説を!
海の者(シーシャイン)、カニオッッ!!!!
210
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:43:56 ID:duNFTHpk
―――狂気を纏いし、ビニール傘の奏者
業(カルマ)を踏みつぶす特攻野郎ッ!!
予備軍(クラウドゼロ)、436ゥ!!!
『おじさんシリーズ』の原点(ファースト)にして頂点(エンド)ッ!
今もなお、全ての勝利の傍らには法おじさんがいるッッ!!
独立と自由(ジェノサイダー)、ホー・チ・ミンの登場だッ!!
殴り合い(ケンカ)は場数がものをいうッ!
潜った修羅場の数なら数え切れ…ねェッ!!
気功革命 秘伝奥義集大成(ジャック・ヴァルディ)、―――マルマル!!!
211
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:44:12 ID:duNFTHpk
特殊軍事指導官殿に敬礼ッッ!
話せる武術、使える武術にもっとうを置くSSS級実践派ッ!
ICEE覇者、安河内コーチ先生ッッ!!
可憐な無差別駆逐型殺戮傀儡(ホロコーシスト)ッ!!
――――ただ、ひたすらに『壊』す、儚い、なんて儚いのだろう!!
粛聖幼女神鎮魂歌(モナド・ギア)、ロリドルーンッッ!!!
―――Sempre caro mi fu quest'ermo colle. (我が愛しい丘よ)
―――Each moment, now night. (ここに、夜は訪れる)
今に最も相応しい詩を吟じ上げようッ、ナンバー『3』、北米の詩客の登場だッ!!!
212
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:44:26 ID:duNFTHpk
慇懃無礼の仮面を被りし奇術師ッ!!
今宵はどんな懲罰(ショー)が開幕するのかッ!!
執行官(スイーパー)、―――バツバツ!!!
冥界からの挑戦者(ヴェンデッタ)ッッ!
文字通り死線を潜り抜けた怨霊(ダークネス)ッ!
死して尚麗しく、ナイスダイ先生だァァァ!!!!
経歴一切不明、なにを我々に見せつけてくれるのかッ―――739ッッッ!!!
213
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:44:41 ID:duNFTHpk
―――ダ・メェダ(Die Méda)、全然ダ・メェダ(Die Méda)
お前ら全くなっちゃいないッッ、訓戒するぞ訓戒するぞ訓戒するぞ!!!
聖闘狂(エル・カンターレ)、ナギヒラヤ先生だ―――!!!
デカァァァァァいッ説明不要!!
巨人(ドワーフ)、ダムトッ!!!!!
―――丁(noob)と出るか半(supernova)と出るか
皆様、今宵新たな闘士(グラップリスト)が誕生しましたッッッ!!
可能性の一人大隊(ワンマン・アーミー)、吠與ッ驚異!!!!
214
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:44:59 ID:duNFTHpk
―――清掃完了(Iam done erasing.)
我々はただその言葉を耳にするのみッッッ!!
規格外中の規格外、処刑人(リジェクター)、D-driver!!!!
勝利の美酒に酔いしれ続け飽き飽きしているのかッ!!
―――「修羅」の具現体、「永愛」の求道者、「非想非非想天」の頂点ッ!!
まさかこの漢がきてくれるとはッッ!!改変超視力師匠の登場だッ!!!!
魔界総合闘技場覇者、超弩級の戦闘狂(ワーカーホリック)ッッ
俺だけのOdyssea崩しを魅せてやるッッ
「無上皇帝」、―――――カイザーケイスケッッ!!!
215
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:45:14 ID:duNFTHpk
伝説の地下闘技場覇者が帰ってきたッ
どこへ行っていたンだッ 不敗の戦闘狂(ワーカーホリック)ッッ
俺達は君を待っていたッッッ
呻く運命(UNDER GROUND REVOLVER)の登場だ――――――――ッ!!!
……ッッ どーやらもう一名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ
216
:
あの男
:2025/03/02(日) 14:45:35 ID:duNFTHpk
「アリガトォオオ」
「アリガトオオッ」
「サイコーだ〜〜〜〜」
「アリガトオオッ」
「アリガト―――ッ」
「アリガトオオッ」
選手たちの放つ圧倒的存在感に対し、観客たちのシュプレヒコールが飛び交う。
――――こうして吠與達の激闘が幕を開けた。
217
:
あとがき奴
:2025/03/02(日) 14:48:03 ID:duNFTHpk
まっこと まっこと遅くなり申した
トーナメントでもチーム戦でも大乱闘でも好きに調理するのだ
ちなみに俺はアミンの優勝に全財産賭けてる
218
:
随感男
:2025/03/02(日) 16:19:30 ID:Oyz7UIVo
まっこと真に幕とも殆ど面目を一憂するまでに作り遊し好。今日という日を待ちわびたぜ候。
既に何回か読み直しているが一人で全部のネタを拾い切るのは不可能なので一度話がしたい。
それでもやはり大圧巻の全選手入場で舌を羅刹しざるを得なかった。
ダムターが例の紹介文の為に駆り出されてて笑った。
有象無象の雑草も多い中で桂羽シドとかいう初出すぎる人物が
ボトムズの蠱毒で生み出されたody獣だと気づいた時が一番大爆笑コーラだった。
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