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倉工ファン

188名無しさん:2018/07/08(日) 16:00:22
「 甲子園の詩  ( 阿久悠 ) 」

1982年8月15日  二回戦  「 二球目 」


きみのために 達磨に黒々とした目を入れよう 勝利の祈願はならなかったけれど

敢闘への敬意だって 立派な理由になるだろう 

東京農大二高 阿井投手  きみは その日 入道雲のように大きかった


サイレンが鳴って 二球目  それは 少しばかり ユーモラスな光景だった 

打者の一撃がきみの足を直撃  鍵型に方向を変えたボールは 三塁手のグラブにおさまって 

記録は三塁フライ その幕あけに  五万の観衆の頬はゆるんだ 

二球目 不運な予感など誰も感じなかった  なぜなら きみが あまりにも悠然としていたから


きみの素晴しさは 敢闘を悲壮に美しく見せなかったこと きみへの不運を 人々に忘れさせていたこと

きみの記録は敗戦投手でも きみは甲子園で大きかった 


モクモクと湧く雲のように 底知れぬものを感じさせた きみのために 達磨に黒々とした目を入れよう 

いや 既にきみ自身の達磨には 目が入っているに違いない 



終戦記念日である。正午、六十秒間サイレンが鳴り、全員が黙とうをささげる。打席で、守備位置で、
頭を垂れ、目を閉じ、動かない少年を見ていると、時間が静止したように思えた。
ザワザワとした時代の流れの不安の中で、野球に熱中出来る幸福を思って見たものである。
六十秒は長く重い。

さて、二回戦が今日で終わり、十六校にしぼられた。 三試合それぞれに関東の学校が登場したが、
いずれも、九州、四国に敗れた。九州の学校が強いのが今年の特長であるが、技術的なことは別にして、
一試合で流した汗が次の試合の時には、少年たちの艶出しになっている気がする。

黒々とピカピカと光って来る生命力が九州の少年たちに感じられる。 そんな印象の中で、
東農大二の阿井投手は、まだまだこの先汗をタラタラとかかせて光らせてみたいと思った大きな少年だった。




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