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( ・∀・)パントマイムTHEヒーローのようです
1
:
31◇名無し
:2011/12/30(金) 21:09:04
白組 31◆名無しです
乱文、強引展開、どんとこい!って人だけどうぞ
2
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:10:32
歩を進めるにつれ、俺の背中から離れていく町。
北風が頬をなでる…
しかし、
……今回はちょっと長く止まり過ぎたな。
時間に比例して、大切なものも増える。
それは俺みたいな根無し草には必要のないものだ。
( ・∀・)「ま、悪い町じゃなかったがな。」
そんなふうに思い返し、一年近く滞在した町を振り返る
3
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:11:19
はたして、あの町にとってのヒーローになれたのだろうか。
そんな問いを自分にする。
厄介事に絡み、そのつどヒーローになろうともがいたのは、これで何度目になるだろうか。
一月……今年は夏に行けなかったから、今から行かないとな。
俺には取り決めがある。
一年に一度、『彼女』に会いに行くという、取り決め。
時期は外したが、今年も会いに行かねばなるまい。
俺が流浪人になるきっかけとなった、『彼女』に。
4
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:12:34
はたして、あの時の選択はプラスだったのか?
それは俺には分からない……
そんな流浪の身であり世間のモラルから外れた俺にも特技がある、
ソイツは『パントマイム』唯一俺が胸を張って言える特技らしい特技である。
俺はこんなビミョーな特技で数々の笑顔をすくってきた。
( ・∀・)「まぁ中々ヒーローにしちゃあ少々地味ではあるがな…」
5
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:13:18
( ・∀・)
冬の潮風がマントをなびかせる。
ここに来るのは実に一年半ぶりだ。
ここは町外れ、『彼女』の所までは少し遠い。
さすがに今日は疲れたし、もうすぐ日も暮れるからテントを張って……。
町を後にしてひたすら歩くこと二週間。
俺は規模としては以前の町と同じくらいの、海を臨む町についた。
冬の潮風がマントをなびかせる。
ここに来るのは実に一年半ぶりだ。
ここは町外れ、『彼女』の所までは少し遠い。
さすがに今日は疲れたし、もうすぐ日も暮れるからテントを張って……。
( ・∀・)「ん?」
6
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:13:55
( ・∀・)「……おい、君。」
从ー从そ「ふわっ!?」
幼女……(幼稚園小学校低学年くらいか)は俺の声に驚き、慌てて木陰に隠れる。
( ・∀・)「大丈夫、怪しいやつじゃないから。
まあ、変わり者ではあるけどな。」
少し怯えつつも、幼女は好奇の目で俺を見ている。
从'ー'从「おじさん……。」
幼女は警戒を解いたのか、近づいてきて、言う。
( ・∀・)「ん?」
从'ー'从「ホームレス?」
( ・∀・)「ぐをっ!」
7
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:14:35
从'ー'从「おしごとなくなっちゃったの?」
( ・∀・)「違う違う!
おじさんはな………………うん、旅芸人だ。
……そうだ!ほら、あのカラスみたいなもんさ。」
俺は電線に止まるカラスを顎でしゃくる。
从'ー'从「カラス……汚いってこと?」
( ・∀・)「ぐえああっ!?」
思わず頭を準備中のテントにぶつける。
从'ー'从「ゴミあさったりするの?うんち落としたりも?」
( ・∀・)「当たらずとも遠からずだけに痛いな……。」
俺は頭を抱えつつ、テントを張り終えた。
8
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:15:10
从'ー'从「ふうん、ずっとヒーローしてるひとなんだ。」
小一時間の説明を経て、少年……渡辺ちゃんは納得してくれたようだ。
( ・∀・)「ああそうだ。
もっとも、ちゃんとヒーローできてるかは自信がないがな。」
从'ー'从「ねえねえ、おじちゃん!
ヒーローならワルモノやっつけたりしたことあるの?」
( ・∀・)「うん、まあね。
そうだな、一ヶ月前なんかは……」
子供の夢を壊さないよう脚色を交えて俺は語る。
渡辺ちゃんは目を輝かせて聴き入る。
わりとこのぐらいの歳までは女であろうと男であろうと本気でヒーローに憧れているものみたいだ。
从'ー'从「へえ……すごいね!カッコイイ!」
9
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:16:16
( ・∀・)「それほどでもないさ。
お、魚が焼けたな。
渡辺ちゃんも食べるかい?おいしいぞ。」
从'ー'从「そのウミでとれたお魚は食べるとおなかがいたくなるんだよ。」
( ・∀・)「あっ、そう…………。」
……釣る前に言って欲しかったなあ。
しかし、背に腹は変えられない、鍛えぬかれた俺の鉄の胃袋で迎え撃ってやる。
从'ー'从「ねえねえ、おじちゃん。」
( ・・)「はぐはぐ……ん?」
从'ー'从「おじちゃんはどうしてヒーローになったの?」
どうしてヒーローに……か。
( ・∀・)「……そうだな。
それを話すにはまず、ちょっとばかり時間を遡らないといけないな。
その時におじちゃんはヒーローになったのさ」
10
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 21:17:16
( ・∀・)「始まりはな、女の子だ。」
从'ー'从「女の子?」
( ・∀・)「そう、ところでもうすぐ日が暮れるけど、大丈夫かい?」
从'ー'从「うん、あたしの家、すぐそこだし、ヒーローもいるからね。」
そう言って、彼は俺と同じ丸太に座る。
( ・∀・)「そうか。なら話そう。
――おじちゃんは、ヒーローになる前、この町で女の子にあったんだ。」
从'ー'从「どんな子?」
( ・∀・)「歳は君と同じくらいで
かわいくて、元気な子だったよ。
彼女は俺にとって、最初の……」
最初の……。
言葉に詰まる。
……いったいなんと言えばいいのだろうか。
ヒロイン?クライアント……ってのはちょっと違うな。
( ・∀・)「その子は……そう、おじちゃんがヒーローとして、始めて戦ったのが、その子のためだったんだよ。」
そして、俺が今もヒーローである理由なんだ。
11
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 23:24:48
うん、ルールをまず読むべきだったね
名乗っちゃ駄目だろ
12
:
紅白の名無しさん
:2011/12/30(金) 23:29:40
名乗っちゃったら特定できちゃうから禁止って書いてあったぞ
まぁやっちまったもんはしょうがない
面白いから続けたまえ
13
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 02:49:21
これはどんまい
14
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 10:54:38
すいませんでした…
続きを書いても良いですかね…?
15
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 10:56:16
書くべきだと思うよ
後は運営さんの判断だし
16
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 10:57:06
(=)「必殺!ヒーローキック!!」
雄叫びと共に、俺は眼前の怪人に飛び蹴りを喰らわせる。
怪人は大きな呻きとともに、吹っ飛ぶ。
そしてそれぞれ怪人を倒してきた仲間達……ブルー、イエロー、ピンク、ブラックと合流し、ポーズをとる。
レッドである俺は五人の中央で叫ぶ。
(=)「正義は勝つ!
世紀末戦隊、ゴレンジャイ!」
同時に後ろで大きな爆発が起こり、俺達の勝利を彩った……。
17
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 10:58:24
(;・∀・)カポッ「ふー、あちー……。
次のショーは4時からだっけ?」
舞台を降りた俺はスーツを脱ぎ、大きく伸びをする。
('A`)「ああ、そうだな。
楽屋に弁当来てたし、しっかり栄養つけねえと。
……しかしやっぱり夏にヒーローショーなんてやるもんじゃあねえよな。」
そう言うのはさっきまでアカレンジャイの中に入っていた同僚だ。
( ФωФ)「でも夏がレジャーの書き入れ時だし、仕方ないっちゃ仕方ないがな。」
別の同僚がキレンジャイのスーツを脱ぐやいなや、スポーツドリンクをがぶ飲みしながら言う。
(;・∀・)「ま、それなりに稼ぎはいいけど、割に合う仕事じゃないな……。」
俺はあまりの熱さにめまいを覚えつつ、楽屋の畳にぶっ倒れる。
('A`)「大丈夫か、アカレンジャイ。
熱中症とかまじで洒落になんねーぞ。」
そう言って氷嚢を首に当ててくれるのはアカレンジャイ………ややこしっ!
遊園地の舞台で一日三回のショー。
代打は基本的に効かないので倒れるわけにはいかない。
( ・∀・)「おう、サンキューな。」
俺は仰向けにねっころがり、氷の冷たさと、自然風の心地好さを堪能した。
18
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 10:59:37
( ・∀・)
俺はモララー。
25歳、フリーターだ。
それ以上特に自分について説明することもないほど平凡な青年である。
そんな俺だが、働き口に困難していた今年の夏、稼ぎのいいバイトを探しているうちにこのヒーローショーのバイトと出会った。
募集要項として
『運動ができること、身体が丈夫であること』
とあったので、大学まで野球部でならしていた俺は飛びつき、週四回で世紀末戦隊ゴレンジャイのリーダー、アカレンジャイの中に入っている。
きついきついとは聞くが、さすがに野球部の鬼練習ほどはきつくないだろう、そんな軽い気持ちで始めた俺は興行初日で叩きのめされた。
高校まで空手の経験があるとしてリーダーに抜擢された俺ではあるが――
( ∀)
炎天の下で、一日二回、日曜日には三回のショーを半月続けたことにより、心身ともに生気を絞り取られてカラッカラの雑巾みたいな状態だった。
19
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:04:10
( ・∀・)「さて、午後のショーまでまだ3時間くらいあるな」
下準備を除いても2時間は自由時間だ。
体力があまってるわけではないが、こんなムシムシした楽屋にいたら逆に体力を奪われてしまう。
ちょっと散歩でもしてこよう。
楽屋を出て、遊園地を歩く。
平日だが夏休みなので、家族連れ、カップル共に賑わっている。
海に臨むこの遊園地は県下でも一、二を誇る規模だけあって夏には多くの客を呼ぶ。
バイトの優待券としてフリーパスを貰ったりするが、疲れきっている身体にはそれどころではない。
……歩いていても人混みで疲れるだけだな。
そんなふうに思い、俺は楽屋に戻ろうとした
………その時―――。
20
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:05:07
川 ゚ -゚)「あー!アカレンジャイだー!」
甲高い声に背筋を強張らせ、後ろを振り返ると――
川 ゚ -゚)「アカレンジャイ、アカレンジャイの中の人だー!」
ちっちゃな女の子が、俺を指差しながらぴょんぴょんはしゃいでいた。
というか、まずい。
方針上、正体がばれてはいけないのだ。
(;・∀・)「な、なにを言ってるのかな、お嬢ちゃん。
俺はアカレンジャイなんかじゃ……
というか中の人なんていない!」
川 ゚ -゚)「えー、うそうそ、いっつもあっちでアカレンジャイの服を干してるじゃん!
クー知ってるんだからね!
キレンジャイとかと一緒にー!」
クーと名乗った少女は手をぶんぶん振り回す。
21
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:06:57
(;・∀・)「いや、あれはアカレンジャイの……そう、お手伝いをしてただけなんだよ!
ユニフォームを洗ってあげてただけだよ!」
川 ゚ -゚)じとー「ふーん……?」
やばい、すごい訝しんでるよ。
川 ゚ -゚)「お給料どのくらいなの?」
(;・∀・)「ぶおっ!?」
クーちゃん……。
見たところまだ小学校低学年くらいなんだけど……。
それとも最近の子供達はみんなこんなもんなのかな……。
夢がないというか……そんなに夢が見れない世の中なんだろうか……。
彼女の質問攻めに俺が物悲しさを覚え始めた時。
(;・∀・)「ん?」
ポケットに入れていたケータイが振動する。
それを好機と見た俺は
( ・∀・)「あーゴメンね、クーちゃん!
お兄ちゃんちょっと大事な電話がかかってきたから、それじゃ!」
脱兎のごとく逃げ出した。
22
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:12:32
クーちゃんが追ってきていないのを確認すると、俺は携帯電話を取り出す。
……ふむ、買ったはいいが、やはり重量的にポケベルのほうが携帯連絡機器としては優れているかもしれない。
( ・∀・)「はい、もしもし。」
「よう、モララー。
俺だよ。」
電話から鳴り響く、低い男の声。
( ・∀・)「……ギコか。」
「おう、新しい仕事が来たからな。
今回のはお前も誘わねえとキツい。」
( ・∀・)「どんな内容だ?」
「そいつは後のお楽しみってことで、町外れの霊園そばの公園に夜12時集合、だ。」
( ・∀・)「あっ、おい……。」
電話は切れた。
ヤロウ……一方的に取り付けやがって……またロクでもない仕事持ってきたんじゃないだろな。
23
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:14:30
先程の電話の主、ギコとは大学以来の腐れ縁だ。
何をやらせてもそつなくこなす優秀なヤツではあるが、金に汚く、手段を選ばないのが玉にキズ。
学業も素晴らしく、どこで知り合ったのか得体の知れない人脈があったりして、就職先には困らないはずのギコだったが、何を思ったか卒業と同時に『トラブル解決屋』などといういかがわしい商売を始めたのだ。
腕っ節が立つということで、俺もその仕事を手伝わされることが多い。
金は取るが、法外な額をふんだくるわけじゃなく、良心的な値段で解決する。
基本、ヤツとその人脈を駆使すればできない仕事はないので、この町でギコのトラブル解決屋はかなりの評判になっていた。
24
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:29:52
深夜、公園。
( ゚Д゚)「ヒュー、相変わらずだねぇ。」
軽妙に口笛を吹きながらギコが言う。
( ・∀・)「さすがに二人で相手するには少しきつかったんじゃないか?」
今日の仕事は
『公園に毎夜訪れ、たむろする暴走族退治』
だった。
( ゚Д゚)「ま、あんな騒音撒き散らすガキどもに負けるほど俺もおまえもヤワじゃないだろ。」
( ・∀・)「まあ、おまえのことだからもしもの時の保険はかけといたんだろうけど。」
基本的にギコは危ない橋は渡らず、確実に利を得るタイプなので、今晩みたいな無茶はやらないのだ。
( ゚Д゚)「ご明察。
どんなのか知りたいかい?」
25
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:32:01
( ・∀・)「いや、別に。」
きっとろくでもない手段だと思う。
( ・∀・)「で、今回の依頼人は誰なんだ?」
( ゚Д゚)「ああ、そこにおられる方達だ。」
椿が俺の後方、公園の奥を顎でしゃくる。
そこには五、六個のテントやダンボールハウス。
つまり……
( ´∀`)「ああ、助かったよ。お兄さん達。」
ボロボロの服をまとった、いかにもな身なりの男性が現れる。
( ゚Д゚)「いんや、礼には及ばねえよ。
俺達はつねに弱い者の味方なのさ。」
いけしゃあしゃあとギコが言う。
( ´∀`)「んじゃ、今回の報酬だよ。」
( ゚Д゚)「ひい、ふう、みい……
へえ、ちゃんと払えるもんなんだねえ。
じゃあ、後はできるかぎりの知り合いに俺達のことを宣伝してくれや。」
ちゃっかりプロモーションも忘れない。
この辺の抜け目のなさも手伝って、ここ最近の繁盛具合は目覚ましいものだ。
26
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:34:28
( ゚Д゚)「結局、効率よく儲けれるか否かだよな。
人生なんてよ。」
本日の仕事場からの帰路、ギコが言う。
( ・∀・)「金だけあってもしょうがないだろ。
金は手段であって目的じゃない。」
( ゚Д゚)「月並みだねぇ、まあ俺にとっては目的だけどね。」
( ・∀・)「何か買いたいものでもあるのか?」
( ゚Д゚)「いいや、ねえよ。
買いたいものなんざねえ
ただ金をたくさん手に入れるのが俺の目的なのさ。
わかってないねえ、おたくも。」
そう言うとギコは小馬鹿にしたように笑う。
子供を扱うようなその仕草に俺は少しむっとする。
( ・∀・)「ますますわからねえよ。
たしかに金はいっぱいあって困るもんじゃねえけどさ。
もっとこう……人生の生きがいみたいなのはないのか?お前には。」
27
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:38:09
( ゚Д゚)「そうだねぇ……おまえはさ、人はなんのために生きると思ってる?」
唐突な問い。
どうもギコらしくない質問な気がしたが、おそらくギコらしい答えが用意されているに違いない。
28
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:43:17
しばらく考えて俺は答える。
( ・∀・)「ただ死なないために生きるってことか?
そもそも人生に意味があるなんて思うのは、人間の勘違いに過ぎない、とか。」
ギコはきょとんとした顔をした後、俺の意図を読み取ったらしく
( ゚Д゚)「それはおたくの答えじゃねえだろう。
おたくの想像する俺の答えだ。」
そう言った。
( ・∀・)「たしかにその通りだけど、違うのか?」
( ゚Д゚)「違うねえ、ま、考えのプロセスは悪くねえ。」
そして一呼吸置いてギコは言った。
29
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:43:36
( ゚Д゚)「人間ってのはな、いや、動物は快楽を得るために生きてるのさ。」
( ・∀・)「快楽、か。」
( ゚Д゚)「そうさ、快楽だ。気持ちいい、ってキモチだ。
人を愛するのも、それが自分にとって気持ちのいい行為だからだろ。
自分にとって気持ちの悪い行為を人間は絶対にしない。」
( ・∀・)「待てよ、慈善ボランティアなんかはどうなんだ。」
( ゚Д゚)「ボランティアしてる自分が好きなやつがやるんだろ。
『無償でイイことやってる自分が好き』
って気持ちよさ、さ。
実際、ボランティアやってる時って脳内麻薬がいっぱいでてるらしいぜ
麻薬を買ってるのと同じさ。」
だいたいコイツの言いたいことが見えてきた。
( ・∀・)「つまり、純粋な『他人のための行為』ってのはないってことだろ?」
( ゚Д゚)「冴えてるねえ、そして付き合いが長いだけあってよくわかってる。
人間の行動は全てさっき言った麻薬を買うための行為に他ならないのさ。」
街の夜景を見下ろしながら、ギコは皮肉っぽくそう言った。
30
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:45:49
( ゚Д゚)「次に大事なのは、だ。
この麻薬には人によって優先順位があるってことだな。
ギャンブルしてる時の麻薬が一番好きなやつもいれば、買い物してる時の麻薬が一番ってやつもいる。」
( ・∀・)「ギャンブル、買い物依存症ってのは、その麻薬に文字通り依存してることなんだな。」
( ゚Д゚)「その通り。
おたくみてえに正義の味方のまね事してる時が一番気持ちいいって言うお子様もいる。」
( ・∀・)「うるさい。」
( ゚Д゚)「言いたいのは善人、悪人の差なんて生まれ持った麻薬の嗜好が善に付随するか悪に付随するかくらいの違いはないってことさ。」
……たしかにそうかもしれない。
人殺しとか、窃盗や盗撮なんて反社会的なことに快楽を見出すやつらを理解しようとせず、頭ごなしに否定するのは生まれつきそうでなかった者達の勝手なのだろう。
つまり、ギコの金儲けそのものが目的っていうのは……
31
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 11:47:38
( ・∀・)「……お前にとってお金を手に入れた時が一番気持ちいいってことか。」
( ゚Д゚)「そういうこと。」
( ・∀・)「なら余った金は募金でもしろよ。」
( ゚Д゚)「おいおい、最初に言っただろ。
人間は気持ちの悪い行動は絶対にしないって。
募金なんて気持ち悪いこと誰がやるかよ。」
( ・∀・)「お前という人間がますますわかんなくなったよ。」
( ゚Д゚)「それでいい、ドゥユアビジネス。自分に理解できねえ人間がいんのはあたり前だ。」
ギコはおどけるように肩をすくめた。
( ゚Д゚)「俺にとっちゃ人生なんてゲームと一緒さ。
死ぬまでにどれだけ金を稼げるか、偉ぶってるやつの鼻をあかせられるか。それだけさ。」
32
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 22:37:41
ひねくれた友人と別れてしばらく、俺は当てもなく町を散歩していた。
ある程度歩いたところでコーヒーを一本買い、公園に入る。
この町は海に面した田舎町だ。
さっきの公園みたいに暴走族や不良の数は多いものの、都会のようにネオンが眩し過ぎたり、騒音に悩まされることがない。
高台にあるこの公園からは、海が見える。
仕事場である遊園地が見える。
この景色を眺めながら一杯やるのは中々悪くない。
( ・∀・)「ま、いい町だよな……本当。」
「本当だよねー。」
誰に向けたわけでもない呟きに返ってきた返事。
俺はギョッとして振り向く。
そこにいたのは……。
33
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 22:39:54
誰に向けたわけでもない呟きに返ってきた返事。
俺はギョッとして振り向く。
そこにいたのは……。
( ・∀・)「あ、君は昼間の……」
川 ゚ -゚)「こんばんは、アカレンジャイさん」
俺はゆーかちゃんに自販機でオレンジジュースを買ってきて、一緒にベンチに座った。
( ・∀・)「もう深夜だよ。帰らなくていいの?」
腕時計の針は11時30分を指している。
いくら最近子供達が夜型になったとは言え、小学校低学年の彼女が徘徊していい時間ではないだろう。
川 ゚ -゚)「おばあちゃんがね、お外に出とけって言うの。」
( ・∀・)「おばあちゃんが?お父さんやお母さんは?」
川 ゚ -゚)「いないの。」
しまった。
(;・∀・)「そ、そうか。
おばあちゃんと喧嘩でもしたのかい。」
両親のことを彼女はこともなげに返したが、土足で踏み込んでいい領域ではなさそうだ。
そう思い話を逸らす。
34
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 22:47:30
川 ゚ -゚)「ううん、おばあちゃんはとっても優しいよ。」
( ・∀・)「じゃあどうして?」
川 ゚ -゚)「お家の外でね、こわい人達がケンカ始めちゃったの。」
( ・∀・)「こわい人?」
川 ゚ -゚)「うん、てっぽうとかバクダン持ってる人達。」
なんだそりゃ?
ここは日本だぞ。
自衛隊?いや、この町に自衛隊基地はない。
( ・∀・)「ふうん……だから避難してるってわけか。」
川 ゚ -゚)「うん、おばあちゃんがそう言うから。」
なんか気になるけど、まるっきり子供の妄想でもなさそうだ。
しかし、深夜に小学生を放置することより危険なやつがこの町にいるのか?
( ・∀・)「いつもここにいるのか?」
川 ゚ -゚)「ちがうよ、うちのおばあちゃんね、わかるんだ。」
( ・∀・)「なにが?」
35
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 22:49:46
川 ゚ -゚)「こわい人達がバクダン使ったりする日が。」
クーちゃんの祖母はエスパーかなんかなのだろうか。
……もしかしたら借金取りとかだろうか?
実はゆーかちゃんの祖母は多額の借金を抱えていて、取り立ての現場を見せたくないからこんなウソを……。
考えても推測しか出ないな。
今度ギコにでも調べてもらうか。
それからというもの
彼女と夜の公園で遭うことが多くなり、心配ではあったが深刻なふうではなく彼女もあっけらかんとしていたので、その事情については深く踏み込み過ぎないようにした。
ヒーローショーのバイトやギコの手伝いをするうちに日々を流れていった。
一ヶ月後。
それは起こった。
36
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 22:55:04
======================
( ・∀・)「暗くなってきたな。
そろそろ帰らなきゃダメなんじゃないかい?」
从'ー'从「ええー、最後まで聞かせてよー。」
渡辺ちゃんはむくれる。
( ・∀・)「俺ならしばらくこの町に滞在するから大丈夫さ。
気になるなら、また明日聞きにおいで。」
从'ー'从「……うん、約束だよ!」
( ・∀・)「素直でいい子だ。素直なことはいいことだぞ。
人間死ぬまで素直で、馬鹿なほうがいい。」
从'ー'从「ははは、馬鹿だとだまされちゃうよ。」
( ・∀・)「……いいんだよ。
小賢しく立ち回るよりは、馬鹿で純粋に生きたほうが人間として立派だ。」
从'ー'从「じゃあ勉強しなくていいんだね。」
( ・∀・)「おいおい、それとこれとは……ああ、いや、それでいい。
ただ……そうだな、夢中になれるものくらいは見つけるんだぞ。」
从'ー'从「うん、またね!」
渡辺ちゃんは走り去った。
俺は黄昏れ時、公園に向かう。
37
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 22:56:24
親子連れ達が帰っていくのを尻目に、俺は公園に入る。
見渡すと、あの頃に比べてけっこう遊具が変わっている気がする。
一年半前も思ったことだが、一年という歳月は町を変えるに十分だ。
( ・∀・)「……この自販機は相変わらずか。」
俺はオレンジジュースとコーヒーを買う。
あの日と同じように。
そしてベンチに座る。
38
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:00:14
ふう……
彼女は、元気でやっているだろうか。
俺は元気でやってるよ。
だから……
「もぉーららさん。」
( ・∀・)「え?」
後ろから、声。
慌ててベンチを立ち、振り向く。
そこにいたのは。
「く、クーちゃん……!?」
( ・∀・)「久しぶり、何年ぶりくらいだっけ。」
俺をヒーローにしてくれた、少女がいた。
39
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:03:33
( ・∀・)「それにしても……驚いた。」
川 ゚ -゚)「何に?」
( ・∀・)「いろいろだよ。
あれから十年は経つ。
毎年この町に来ていたが、なんで今年になって君と会えたのか。」
川 ゚ -゚)「それは多分、モララーさんが本当のヒーローになれたからだよ。」
( ・∀・)「……それと、その容姿だ。
たしかに十年というのは長いもんだが。」
川 ゚ -゚)「あたしだって成長はするんだよ。」
( ・∀・)「…………。
……本当に、会えるとはな。」
川 ゚ -゚)「……これって奇跡、かな?」
( ・∀・)「いや、前の町で同じような経験はある。
神様の気まぐれさ。」
川 ゚ -゚)「ロマンチストなんだね。」
( ・∀・)「じゃなきゃヒーローなんてやってられないさ。
……ほら、ジュース。」
彼女にオレンジジュースを手渡す。
そして手渡してから思う。
( ・∀・)「……今でも飲めるのか?」
川 ゚ -゚)「うん、問題ないよ。
美味しいからね、オレンジジュース。」
( ・∀・)「そういうことじゃなく…………まあ、いいか。
それじゃあ十年ぶりの再開だ、思い出話に花を咲かせよう。」
40
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:05:18
晩夏。
とは言えまだまだ暑い八月。
ヒーローショーのバイトを終えた俺は公園に向かっていた。
特に目的はないのだが、クーちゃんが来ている日だった場合を考えてのことだ。
不定期不規則に彼女は公園に現れる。
それは彼女の祖母が危険を察知し、彼女を家から避難させた日ということになる。
今だにその危険の正体……爆弾や鉄砲を持った怖い人というのが何かはわからないが、あんな小さな女の子を深夜の公園に放置するのは心配な話だ。
だから毎日俺はあの公園に通うようになったのだ。
41
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:07:48
道中、ふとひとつの公園が目に入った。
俺が通う公園ではなく、一ヶ月くらい前にホームレスの方々を暴走族から守ったあの公園だ。
あれからギコの依頼はなかったし、多分暴走族も来なくなったんだろうと思うが……。
どうしているのか気になり、彼らの家があった区域を見に行くことにした。
なかった。
そこにはなかった。
彼らの家が。
( ・∀・)「あ……れ?」
おかしい。
たしかに彼らのうち数人は社会復帰のため活動を続けていた。
それは覚えている。
しかし、あれだけの人数がこんな短期間にいっぺんに就職できるものだろうか。
42
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:11:10
もしかしたら他の公園に移住したのかもしれない。
そんな思考を遮り目に入る、黒い物。
これは燃えカス?なんの?
その奥のコンクリート塀に腰掛ける一人の男。
彼は……たしかあの時に報酬をギコに払っていた男だ。
話を尋いてみよう。
俺は男に話しかけた。
…………
……
…
43
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:15:04
(# ∀)「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいこっっっっっ!!」
俺はギコの根城に突入すると同時に、雄叫びながら椿に飛びかかった。
(# ∀)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
そのまま拳を叩き込み、粉砕する。
……やつの背後にある壁を。
顔面をかすった拳に対し、奴は涼しい顔だ。
その様にさらに怒りが込み上げる。
(# ∀)「……どういうことだ。」
(,,゚Д゚)「どういうことって、何がだよ。」
(# ∀)「とぼけるな!
……全部聞いたぞ、俺は。」
44
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:17:29
男は語った。
自分達の住家が一夜にして焼き払われたこと。
そしてその実行犯が、以前自分達を助けてくれたなんでも屋の男であったことを。
俺は拳を引き、部屋に置いてあった椅子に腰掛ける。
( ∀)「なんであんなことをした。」
(,,゚Д゚)=3「……さあね。
ああ、わかったわかった。
話すよ。話すからそんな顔しなさんな。
ウサギくらいなら殺せる顔してるぜ、おたく。」
ギコがふぅとため息をつく。
(,,゚Д゚)「市役所の知り合いから依頼がきたんだよ。
公園のホームレスがうぜぇってな。
いくら説得に行っても暖簾に腕押し、頑として聞かねえから俺に頼んでの強攻策ってわけさ。」
(# ∀)「おまえは……!!」
45
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:18:59
(,,゚Д゚)「ま、よかったんじゃねえの。
連中もさ、社会復帰へのいいふんぎりになっただろうし、けっこう苦情出てたらしいからな。
近隣のママさん方からさ。」
(# ∀)「おまえには、人としての情がないのか……!」
(,,゚Д゚)「はっ、たかだか一回依頼受けただけの仲だろう。
顔もろくに覚えちゃいない相手だぜ。
お役人だけあって払いもけっこうよかったしよ。
ああそうだ、分け前やるよ。嫌な気持ちにさせた慰謝料だ。」
立ち上がり、扇風機を蹴飛ばす。
壁にぶち当たって、首が折れ、壊れた。
46
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:20:38
( ∀)「言っておくが次、こんなことがあったら……。」
(,,゚Д゚)「おおこわ。
わーったよ、次はおまえから見えねえとこでやります。」
ドアノブを握り潰したくなる気持ちをおさえ、俺は去った。
( ∀)
47
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:21:59
俺はギコの根城を去り、いつもの公園に来ていた。
夕方5時、日はまだ高い。
セミが鳴いている。
木陰でさっき別れた即物主義者に思いをめぐらす。
たしかに皮肉屋ではあったものの、昔はああいう奴じゃなかった気がする。
じゃなきゃ、今みたいに水と油のごとく発しあうことはなかったはずだ。
…………たしか、出会ったころはもっと違う奴だった。
…………あれ?
出会ったころ……あいつと知り合ったのはいつだったけ?
大学?いや、高校のころから…………
まあいつだっていいか。
なんにせよ、変わったのはあいつのほうだ。……いつだったか、あいつは言っていた。
(,,゚Д゚)
『人間には心なんてないらしいぜ。
俺達が心だって勘違いしてるのは、あくまで脳みそという肉体の一部による反応の連続。
だってそうだろ?
十歳のころのおまえと、今のおまえの考え方は全然違うじゃねえか。
十歳のおまえの気持ちには戻れねえ、つまり十歳のおまえは死んだようなもんだ。
それを同一のものって考えるのは脳のダマしらしいぜ。
新陳代謝で身体の細胞がどんどん入れ代わるのと同じ。
昔のおまえと今のおまえに共通のものはもうないのさ。
だから過去の何かに対する思い入れや情なんてのはスッパリ切っちまえってこと。』
48
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:23:26
( ・∀・)「んなことできるかよ
……俺が俺でなくなるだろうが。」
自分が自分でなくなることへの嫌悪。
自己の一貫性がなくなる恐怖。
それすら脳のまやかしとわかっていても。
心を捨てた人は強さを持てない。
( ・∀・)「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ……。
……そういう者に私はなりたい、か。」
49
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:36:35
川 ゚ -゚)「なに言ってるの?」
( ・∀・)「ん……?
……クーちゃんか。」
夏の夕日を背に、少女がベンチに寝っころがる俺を見下ろしていた。
( ・∀・)「……まだまだ俺も弱いって話だよ。
座っていいよ。」
起き上がり、彼女の座るスペースを空ける。
川 ゚ -゚)「レッドさんはつよいよ。
あんなに怪人やっつけてるじゃない。」
彼女が腰掛ける。
( ・∀・)「あれは怪人がやられてくれてるんだよ。」
川 ゚ -゚)「でも、あんなに飛んだり蹴ったりして、すごいよ。」
( ・∀・)「そんな強さ、社会に出てからは役に立たないさ。」
川 ゚ -゚)「そうだねえ、てっぽうでうたれたら一発だもんね。」
( ・∀・)「いや、そういう意味じゃない。」
川 ゚ -゚)「じゃあ、どういう意味なの?」
( ・∀・)「……わからないな。」
少なくとも、あのなんでも屋のようになることではないと思う。
何も感じなくなることは強さなんかじゃない。
……だが、あいつは俺より強い。
いったい俺はどんな強さを目指せばいいんだろう。
優しいことが強いのか、厳しいことが強いのか。
誰も傷つけないことが強いのか、どんな敵とも戦えることが強さなのか。
50
:
紅白の名無しさん
:2011/12/31(土) 23:46:07
( ・∀・)「ところでクーちゃんは、俺のショーはどのくらい観てくれてるんだ?」
川 ゚ -゚)「毎日!」
( ・∀・)「……本当に?」
川 ゚ ー゚)「うん!」
あそこの遊園地、入場だけはタダだからなあ。
しかし……
( ・∀・)「夏休みずっと遊園地に入り浸りかい?
もっと友達と遊ぶとかしたほうがいいよ。」
川 ゚ -゚)「……ともだち、いないの。」
(;・∀・)「あ、そうなのか。」
以外だな。明るい子だし、むしろいっぱいいそうなくらいなのに。
川 ゚ -゚)「……保育園のころのともだち、転校しちゃったから。」
51
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:11:26
( ・∀・)「そっか……。
でもま、すぐにできるよ、友達くらい。
ショーを観にきてくれるのはうれしいけど、できるだけ友達と遊ぶようにしないと、な。」
彼女の頭にポン、と手を置く。
川 ゚ -゚)「うん……。」
やばい、沈ませちゃったか。
ただでさえ大変な家庭なのにな。
切り替えるか。
( ・∀・)「ここに来たってことは、今日も怖い人達がなにかしてるのか?」
川 ゚ -゚)「うん、そうなの。
うちはその人達の隣だから、おばあちゃんが声とか聞こえちゃうんだー。」
( ・∀・)「ふうん……?」
川 ゚ -゚)「それでねえ、今日はべつのこわい人たちがこうげきしてくるみたい。」
( ・∀・)「別の怖い人?」
川 ゚ -゚)「うん、ちがう町からやってきて、この町のこわい人たちをこうげきしにくるの。」
なんだそれは……。
鉄砲や爆弾を持ってて、他のグループと抗争してる集団…………ああ、なるほど。
この町にもあったな、事務所が。
ゆーかちゃんの家はその隣だったのか。
たしかに、木造平屋の家があった気がする。
( ・∀・)「……引っ越しとか、考えてないのか。」
52
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:14:10
川 ゚ -゚)「うーん、おばあちゃんの思い出がいっぱいある家だから、引っ越しはしたくないって。」
( ・∀・)
難儀な話だなあ。
この町では表立った追放運動はしてないから、向こうが立ち去るのはあんまり期待できそうにないし……
その時、数台のパトカーが公園を横切った。
( ・∀・)そ
53
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:15:47
( ・∀・)「パトカー……珍しいな。」
パトライトを回転させ小さくなってゆくパトカーを目で追う。
すぐにハッとしてゆーかちゃんを見る。
今日は彼女の祖母が危険を察知した日だ。
彼女の家の隣で何か起きた危険性は十分にある。
見に行くべきか……?
この町では聞いたことはないが、発砲事件や手榴弾、火炎瓶を使った抗争事件はニュースなどでよく見る。
ゆーかちゃんの祖母が巻き込まれていない可能性は否定できない。
彼女も不安そうにパトカーをの行く先を見守っている。
( ・∀・)「……クーちゃん。」
視線での問い掛けに、彼女は頷いた。
54
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:22:01
案の定、現場に駆け付けるとそこには人だかりができていた。
警察が侵入防止措置と交通止めを行っているため、事務所及びクーちゃんの家はよく見えないが消防車も来ているようだ。
( ・∀・)「あのー、すみません。
これはなんの騒ぎなんでしょうか?」
仕方なく、やじ馬の一人に尋ねることにする。
ξ゚⊿゚)ξ「あー、なんかねえ、火炎瓶?手榴弾だっけ?がどーのとかであやうく火事になりかけるとこだったらしいわよ。
ここ、木岡組と仲悪いじゃない?
この前も駅前で発砲事件とかあって、あーこわいわあ。」
やじ馬のおばさんは少し大袈裟に両腕を抱える仕草をする。
( ・∀・)「えと、どのくらい燃えたとかわかりませんかね。」
ξ゚⊿゚)ξ「わからないわねえ、パトカーの音に気づいて出てきたらあの調子だったもの。」
( ・∀・)「そうですか……。」
落ち着くまで待つしかないのか……。
55
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:31:00
状況にめぼしい変化が見られなくなったからなのか、やがて人だかりは詮を抜かれた水貯めのように引いていった。
俺達は急いで事務所に近づく。
そこには。
( ・∀・)「…………ああ。」
よかった。
彼女の家に被害は出ていない。
事務所の外壁の一部がブルーシートに覆われているだけだった。
「クーちゃん。」
声に振り返ると、いかにも好々爺といった感じの老婆が立っている。
年齢は80くらいだろうか。
頭にタオルを巻いて、今まで畑仕事をしていたような身なりだが、不思議と落ち着いた印象を受ける。
川 ゚ -゚)「おばあちゃん!」
ゆーかちゃんは跳ねるように祖母に飛びついた。
('、`*川「ごめんねえ、心配したでしょ?
危ないからって、おまわりさんに保護してもらってたのよ。」
孫を抱き留めた老婆は、愛おしそうにそう言う。
本当に仲がいいんだな
56
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:55:18
やがて老婆は俺に気づいたようで
('、`*川「あら?もしかしてその方は……。」
クーちゃんを離し、こちらを見つめる。
「うん、アカレンジャイさん!」
('、`*川「ああ、この人がいつも言ってる……。
どうも、クールがお世話になっております。」
老婆はぺこりとおじぎする。
どうやらこっちの素性はクーちゃんを介して知られているらしい。
( ・∀・)「どうも、モララーです。」
('、`*川「立ち話もなんですし、ウチに寄って行きなさいな。」
話したいこともあるし、断る理由もないので、俺はお言葉に甘えることにした。
57
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:56:49
純和風……というより、まるで戦前からあるようなかなり年季の入ったお宅の茶の間。
クーちゃんは離れた子供用テーブルで学校の宿題をしている。
('、`*川「いつもクールの相手をしてやってありがとうございます。
隣家がこのとおりでして、本当に助かります。」
( ・∀・)「いえ、それは構いませんけど……
引っ越しとかは考えていないんですか?」
('、`*川「……そうですねえ、それも考えねばならんのでしょうが………………」
老婆は険しい顔つきになる。
( ・∀・)「なにか理由があるのですか?」
('、`*川「理由というよりは、私の甘えですねえ……。」
老婆は遠い目をし、ため息をついた。
58
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 04:58:45
老婆は少し息を吸い込み、語りだす。
('、`*川「この家は私の主人……あの子……クールにとっては祖父になりますか、その人の家なんです。
祖父はクールの母を生んでしばらくしたあと、特攻で死にました。
桜花という爆弾をご存知ですか。
人間爆弾という今から考えればとても非人道的な兵器でして。
主人はそれを目的地まで運ぶ飛行機のパイロットをしていたのですが、その作戦以降の消息がわからないのです。」
( ・∀・)「……ご主人を待っておられるのですか?」
老婆ははにかんだように笑う。
('、`*川「どこか期待をしているのかもしれませんねえ。
あの人が、もしかしたらどこかの島に不時着でもしていて、生きているのかもしれないと、ね……。」
( ・∀・)「…………。」
('、`*川「そしてなにより、ここはあの人との思い出が詰まっている家なんです。」
……気持ちはわかる。
この家を放棄したら、ゆうかちゃんの祖父が生きた証が消えてしまうからだ。
59
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:11:34
ややあって、老婆はしっかりとした目つきになった。
('、`*川「昔話が長くなりましたな……あの子をよろしく頼みます。」
( ・∀・)「……はい。」
('、`*川「友達がおらんものですからね。あなたに言われてから努力はしとるようですが……。
そして、私もなにがあるかわかりません
その時あの子はあなたしか頼る者がいなくなるでしょう
……なにより、あなたは強い方ですからね。」
( ・∀・)「強い、ですか。」
('、`*川「はい、あなたは強いと思います。とても強い。」
( ・∀・)
「……強い、ってなんでしょうか。」
つい、口をついて疑問が出ていた。
60
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:12:59
('、`*川「そうですねえ……。
強いというのは…………ひとの幸せを願えることではないでしょうか。
あなたからは、それを感じます。」
老婆はしばらく考えて、そう言った。
( ・∀・)「ひとの、幸せ……。」
('、`*川「ええ、すべてのひとの、幸せです。
好きなひとも、嫌いなひとも、知っているひとも、知らないひとも、みんなの幸せを願えることではないでしょうか。」
長い年月を生きてきた老婆のその言葉には不思議な重みが宿っている気がした。
さらにその後、彼女の家を去った後もずっと、その言葉は俺の中でうずまいていた。
61
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:17:32
晩夏、早朝、遊園地
クーちゃんの祖母との会合……つまり、木岡組による襲撃騒動から四日が経った。
あれから警察が付近を巡回したりするようになったものの、目立った抗争はなく、クーちゃんが公園に訪れることもなかった。
とは言え、ヒーローショーでは毎日会っているし、彼女について特に心配するでもなかった。
結局毎日見に来てるけど、友達はできたの?
と訊いたところ、はにかんでごまかされた。
そして
アカレンジャイさんが友達だからいいもん
と言われ、俺は怒るに怒れず閉口してしまった。
62
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:23:44
てなわけで、バイト。
俺は楽屋に入り、控え室を目指す。
( ・∀・)「おはようござーっす!」
元気よく挨拶をし、ドアを開く。
さて、今日も一日頑張…………ん?
ふと気づくと、みんなが俺に視線をよせている。
とても怪訝そうに。
まるで場違いななにかを見るように。
( ・∀・)「え……?」
よく見ると、控え室にいるのは見覚えのない奴らばかりだった。
いつもならこの時間帯、ゴレンジャイ組が入室して着替えているはずなのに。( ・∀・)「あの……もしかしてスケジュールの変更でもあったんですか?」
そんな話は聞いてないが、思い切って訊いてみる。
俺に尋ねられた男は驚いたように別の男と顔を見合わせた。
そして
(∵)「え、いや君……誰?」
と、返す。
( ・∀・)「ここのショーのアカレンジャイ役やってるモララーですけど……?」
(∵)「え?」
男はさらに驚いた様子を見せた。
( ・∀・)「なにか俺、おかしいこと言ってますかね?
あ、もしかしてヒーローショーの控え室が変わったとか……。」
(∵)「いや、ショーの控え室はずっとここだぜ……。」
( ・∀・)「じゃあ、なにが……。」
( ´Д`)「だ、だってよ、ショーのレッド役は……俺なんだけど……よ。
アンタ……誰だ?」
男ははそう言った。
63
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:26:03
( ・∀・)「は?」
俺は男をじっくり観察する。
たしかに、その手にはレッドのコスチューム一式がある。
そして周囲を見渡し、さらに驚愕した。
ブルー役、イエロー役、ブラック役……全ての役者が俺の知らない奴らに変わっていたからだ。
( ・∀・)「え……?
一斉に役者変えかなんかあったんですか?」
( ´Д`)「は?役者変えもなにも……俺達がずっとポケレンジャーショーをやってたんだが……?」
わけが、わからない。
なんだこれは。
ドッキリか?
いや、そんなわけはない。
64
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:28:18
( ・∀・)「し、失礼しました!」
俺は逃げるようにその場を去った。
( ・∀・)「なんだってんだよ……」
俺は楽屋を出て、観覧席に座り込んだ。
出る途中、今まで関わったさまざまな人達と会ったが、俺のことならびに今まで一緒にショーをしていた仲間のことは忘れられていた。
雇い主の座長にさえ、忘れられていた。
誰かの陰謀か?
こんなことして誰に得がある?
ギコ?
いや、あいつでもありえない。
観覧席の長椅子にねっころがり、ステージを眺める。
そこには俺じゃないレッドが怪人達を薙ぎ倒していた。
特にやることもない、俺はその奇妙な風景をずっと鑑賞する。
この時間帯、客はまばら。
昼のショーに比べて半分くらいだ。
……あ、そういえば、今日はクーちゃん来てないんだな。
65
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:29:17
いつも朝一にここに座ってるのに……。
そうだ、彼女に訊けば確かめられる。
俺がレッドだった証拠を。
66
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:30:26
遊園地を出て、彼女を探す道中。
朝一でとても不可解な現象に襲われた俺。
なにが起こっているのか、その理由についても検討がつかない。
なぜ?
俺が異質なのか、あいつらが異質だったのか。
まったく見当はつかないし、今は考えても仕方のないことだ。
不安になるだけだから、なるだけ別のことについて考えよう。
クーちゃんの祖母が頭に浮かぶ。
ついで、老婆の言った『強さ』が頭に浮かぶ。
たしかに、みんなの幸せを願えることは強さだろう。
しかし、ある人にとっての幸せが、別の人にとっては不幸になる時もある。
それでもなお全員の幸せを目指すのは難しいことなのではなかろうか。
67
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:32:00
嫌いなやつの幸せを願う……つまり俺にとってはギコの幸せも願わなくてはならないということだ。
あいつの幸せは金を手に入れること、と言っていた。
しかもただ手に入れればいいわけじゃない。
あいつは金を得る過程を楽しんでいる。
ギコにとって金はゲームのスコアみたいなものなのだ。
あいつは、生まれながらにして歪んだことにしか幸せを見出だせない人間もいることの証明そのものだ。
……ならこのあいだ、ホームレスを襲撃した事件の時、俺はどんな行動をとるべきだった?
常識で考えればひねくれ者一人の余分な幸せより、無辜で多数の善人を守ることが正しいに決まっている。
つまりギコをぶちのめして、金を奪い、みんなに分け与えて、社会復帰の費用にすればよかったんだ。
しかし、これは本当に正しいのか。
( ・∀・)
まるで禅問答だ。
68
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:35:23
そんなふうに俺が思索していると、遠くから小さな女の子……クーちゃんが息を切らしながら走ってくるのが見えた。
( ・∀・)「クーちゃん!」
しかし、その姿に違和感。
こちらに走ってくるクーちゃんは、いつも元気に無邪気な笑顔の彼女ではない。
なにか鬼気迫る状況というか、そんな感じだ。
遠目に見てもただならぬ様子に不安を覚え、俺は彼女に駆け寄る。
( ・∀・)「どうしたの?」
川 -)「おばあちゃん……おばあちゃんっ……おばあちゃんをっ……!」
息を途切れ、言葉を途切れさせながら彼女は叫んだ。
川 ゚ -゚)「おばあちゃんを助けてっ!!」
69
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 05:37:06
( ・∀・)「おばあちゃんを……?
どういうことだい?」
川 ゚ -゚)「このままじゃおばあちゃんが死んじゃうのっ!だから助けてっ!」
( ・∀・)「落ち着いてクーちゃん。
ちゃんと話を説明してくれ。」
川 ゚ -゚)「あ、あたしもよくわかんないけど……おばあちゃんが、おばあちゃんがあ……。」
錯乱し、涙を浮かべている。
……これは直接本人に訊きに行ったほうが早いな。
( ・∀・)「……よしよし、大丈夫だ。
俺がなんとかするから。」
俺はクーちゃんと共に、彼女の家へ向かった。
70
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 08:26:39
彼女の家に上がると、老婆は床の間の真ん中にとても静かな面持ちで正座していた。
('、`*川「……。」
老婆はこちらに気づき、柔和な笑みとともに一礼する。
俺は入口に立ったまま、尋ねる。
( ・∀・)「……どういうことですか?」
('、`*川「この部屋では、隣の建物からの声がよう聞こえるんですよ。」
( ・∀・)「……なにが聞こえたんです?」
('、`*川「…………隣の方々は今日、自爆なさるようですねえ。」
( ・∀・)「は、はあ?!」
自爆。
突飛すぎる単語に耳を疑う。
('、`*川「今日、警察が強制捜査をするらしいんですそれで、捕まるくらいなら自爆しようということらしいです。」
71
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 08:28:17
そんな戦国時代じゃあるまいし……。
しかも強制捜査?警察にしてはえらく強行手段だ。
なにか証拠があがったわけでもないだろうし……。
……いや、木岡組からの圧力がかかったのか?
おそらく隣家のグループ……新・村上派はまだ弱小で政治・経済会とのパイプは弱い。
目障りになる前に公権力を使って潰そうという木岡組の判断なのかもしれない。
('、`*川「隣家にも警察の内情を知るための間諜はおるみたいですが、後手に回ってしまって、大事なもんを運び出す時間が作れんかったみたいです。」
たしかに、今この周辺は警察に徹底的にマークされている。
たった半日の猶予では、ブツを搬出するのに必要な手回しの時間としては不十分だろう。しかし、やはりひっかかるな。
だからと言って自爆というのは割に合わな過ぎるんだ。
72
:
紅白の名無しさん
:2012/01/01(日) 08:30:55
( ・∀・)「……とにかく逃げてください。
今あなたがいなくなったら、クーちゃんは一人になってしまいます。」
('、`*川「ええ、それは重々承知しとります。」
( ・∀・)「だったら!」
('、`*川「自爆と言っても、この家まで吹き飛ばすとは限りません。
しかし、火の粉が飛んでくることはあるやもしれないのです。私はこの家を守りたい。」
( ・∀・)「危険です!そんなことには消防にでも頼んで……。」
('、`*川「もし消火が遅れて、家が焼けたら悔やんでも悔やみきれません。」
( ・∀・)「じゃあ警察に捜査時間を前倒しにしてもらえば……!」
('、`*川「果たして老婆一人の言葉で、慎重な捜査を早めることはできるでしょうか?」
( ・∀・)「くっ……だからと言って……クーちゃんの未来はどうなるんです!」
73
:
紅白の名無しさん
:2012/08/03(金) 00:57:27
書いてよ。
74
:
紅白の名無しさん
:2012/08/03(金) 00:58:01
待ってるから
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