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イラスト・SSスレ

1名無しさん:2011/06/08(水) 11:22:50
応援イラストやSSはこちらにどうぞ。

176フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 11:04:36
>>149-152 …うん、普通に面白かった。

>>153 3点 ちょっwwwwすげえwwwww

>>154-157 3点 むむ、これもすげえ。そしてオチは安(ry

>>158 3点

>>159 3点 詩的な芸術性のある作品

>>160-161 3点

>>162-163>>164 了解しました、差し替えておきます。

>>165-167 3点 >まあ、どちらもシロだったので 誰うまww

>>168-169 3点 蜂マジいい奴

>>170-171 かわいい→(゚Д゚≡゚Д゚) シュッシュッ  うーん…一体この後どうなる?

>>172 3点

>>174-175 お、続きもきてる 3点

177フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 11:08:06
メモ

>>175まで採点
現在合計215点
>>153から貼り付け再開

178朱音 多々喜:2011/06/18(土) 11:14:42
【最後のインターミッション】1/3

ここは新参陣営の本部。一年生たちはハルマゲドンを目の前に控え、各々自由に過ごしていた。書に集中し念を込める道之、頬を染め想い人を思う鶴崎、念入りにギターのチューニングをする阿野次、黙々と本を読む虚居……

そんな中、机の上に立ち上がった一人の女子生徒。埴井である。
「みんな!今から攻め込んで三年生に奇襲を仕掛けるわよ!」
「よっしゃあ!あの老害どもをブチ殺してやろうじゃねぇか!」
「やっと彼らに痛みの素晴らしさを教えることができるのですね!」
浦と伊丹が埴井の宣言に賛同し、立ち上がった。
「おとなしゅうしとかんかい!」
そんな三人に朱音のハリセンがスパパパァン!と叩き込まれた。

「うるさい、気が散る。ハルマエgドンでは一瞬の油断が命取り」
行方橋の構えるミットにパンチングマシーンであれば100とか出しそうなパンチを放ちながら武論斗さんが呟く。行方橋は武論斗さんのパンチを受け止めながら「いいよ、武論斗さん!そのパンチ惚れ惚れするよ!」などと言っている。
その隣では池田と左高が向き合っている。よく見ると、ものすごい速さで反復横跳びを繰り返す左高の間を縫うように池田がパンチを放っていた。

「おい、みれん」
部屋の中をふわふわと漂いながら携帯電話をいじっている梨咲を蝦夷威が呼び止める。
「はい?なんですか」
「生きて帰ってこいよ」
「……へ?」
「俺はまだお前を幽霊と認めた訳じゃねえ、だから生きて帰ってこい!」
ビシッ、と梨咲を指さしまた歩き出す蝦夷威。その後ろ姿を「もう死んじゃってるんですけど……」と見送った。

179朱音 多々喜:2011/06/18(土) 11:15:23
【最後のインターミッション】2/3

「紫野君と弐之宮君はどうしてハルマゲドンに?」
己木樹来が二人に聞く。
「僕かい?僕は……知りたいんだ。山乃端一人さんを誰がどうやって殺したのか。ハルマゲドンに参加すれば謎が解けるかもしれないと思ってね」
「俺は三年が希望崎学園を支配してるのが見てられねぇんだ。老害は淘汰されなきゃいけねぇ」
「でも、古典的なトリックもたまにはいいものだよ……」
紫野は呟き、物思いにふけるのだった。

「みんなー、大魂くんと和理ちゃんがごはんを作ってくれたよ」
寅貝が部屋へ入ってくる。その後ろについて来ている大魂と稲荷山の手には寿司とカルボナーラが山盛りに盛られた皿が乗っていた。
「これでも食って力付けな!」
「腹が減っては戦はできぬ、ってね。まだまだあるからどんどん食べちゃって」
「じゃあ頂くね。いっぱい食べて、いっぱい溜めなきゃ」
そう皿に手を伸ばすのは堀川。見る見るうちに寿司とカルボナーラを平らげていく。おは妖怪もいただきマウス!と料理を頬張っている。

腕を組み椅子に座ったままだった秋刀が口を開く。
「おう、ワシにも一貫貰えんかのう」
「オッケー応援団長!スシ食いっ、ねぇ!」
陽気な声でそれに応えたのは五郎丸。皿から寿司を一貫手に取って秋刀へ向かい大きく振りかぶり、投げる。寿司は形を崩すことなく銀色の軌跡を描き秋刀の口へとダイブした。
「……旨い」

180朱音 多々喜:2011/06/18(土) 11:15:59
【最後のインターミッション】3/3

「この戦い、どちらに正義があると思う?」
手に持った天秤を見つめたまま審刃津が緑風に尋ねた。天秤の皿は、何も乗っていないのにもかかわらず揺れている。
「しらねぇよ。まあ、どうしても気になるんなら“自分とその味方が正義、自分を殺そうとする奴が悪”ってことでいいんじゃねえの?少なくとも戦闘中はそう思っといてくれ」
「ふ、そうだったな。じゃあここに居る者は全員正義だ」
じゃあってなんだよ、と笑う緑風につられて審刃津も笑う。天秤の揺れはもう収まっていた。

「やっと見つけたよ巨堂君!」
部屋の隅でいつもより大きな動きで手を動かしている巨堂に夢追が話しかける。いきなり話しかけられたことの驚きで巨堂は肩をビクリと揺らした。
「な、なにかな?」
「ハルマゲドンの前にもう一度皆さんの能力を確認しておきたいと思いまして!さて巨堂君、あなたの能力は!?」
「えぇ、えっと……」
夢追ににじり寄られ、巨堂の能力が発動した。ラストスタンドアローン。怪鳥の声のような音が部屋に響いた次の瞬間、彼は夢追の前から姿を消していた。いや、夢追の前には居るのだが全てを拒絶する結界が彼を視認させることさえ拒絶していた。
「何処へ行ったんですか巨堂君!それが、それがあなたの能力なんですか巨堂くぅぅぅん!」

「お前はこの戦いが終わったらどうするんだ?」
D・P´0008が抑揚のない声で諸語須川に聞く。
「やらなきゃいけないことがあるの。だからこんな戦いでは死ねないわ」
「やらなきゃいけないことがある、か。ならお前が死んだ時は俺が生き返らせよう。ハルマゲドンの間は好きなだけ死ぬといい」
「そう、頼りにしておくわ」
諸語須川が微笑んだ。仮面をかぶっているがD・P´0008も少し笑っているように見えた。

「すみませーん。手だけでもいいんで解放してくださーい。ラノベを読ませてくださーい」
部屋の隅では、女子に余計な精神疲労をさせぬようにと一が縛られていた。

181行方橋ダビデ@モヤイ:2011/06/18(土) 11:18:13
行方橋ダビデのダンゲロス・覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)〜邂逅編〜

前回までのあらすじ: もうついたのか!はやい!きた!盾きた!メイン盾きた!これで勝つる!


「ひぃっ!ブ、武論斗さん!」
背後に立つ巨躯の男の姿に気づいてモヒカンザコの顔色が蒼ざめる。

「君も一年生かい?」
「なに気安く話しかけちゃってるわけ?」

ダビデの問いに対して鎧を纏った男、武論斗さんはリアルモンク的な憮然とした口調で返す。
「あいんsつにもそれなりにもっと丁寧のがあるでしょう?お前調子ぶっこき過ぎですよ」

「……ああ、そこに寝転んでる彼らの事?勘違いしないでくれよ、僕が先に彼らに襲われたんだ。正当防衛だよ」
武論斗さんが刺青のモヒカンザコをじろりと睨む。

「や、やだなあ武論斗さぁん……俺らなりの歓迎ってやつですよぉヒャッハー!」

「おまえ親のダイヤの結婚指輪のネックレスを指にはめてぶん殴るぞ?」
「ヒッ……お、オレ達ちょっと用事を思い出したんで今日はちょっと失礼しますヒャッハー!」

武論斗さんの放つリアルモンク的な覇気に気圧されたモヒカンザコは、気絶した仲間を載せてバイクに跨りあっという間に立ち去った。
あとに残ったのは砂煙と二人の男、行方橋ダビデと武論斗さんである。

「まったく……迷惑な連中だ。ところで君、相当できるみたいだねぇ……面白そうだ」
ダビデの口の端がニヤリと歪み、その瞳には殺気の火が灯っている。

「俺を強いと感じてしまってるやつは本能的に長寿タイプ」
それに気付いてか気付かずか、武論斗さんの表情は変わらない。

「いいねえ、気に入ったよ。戦 ら な い か」
ダビデが再び構えを作り、その体から闘気が立ち上る。

「おい、やめろ馬鹿。お前の人生は早くも終了ですね」
武論斗さんもダークパワーっぽいオーラの封印を解きそれに対峙する。

二人の魔人の間に静かな緊張が走る。


空気の膠着が臨界に達する刹那―――――

「なあぁにしてんねん!アホ!!」

スパァァァァァン!
ドゴォォォォォン!
「おいぃッ!?」

突如、武論斗さんの体が真横に吹っ飛ぶと同時に、派手な音を立てて爆炎に包まれる。
現れるなり突然に彼を殴り飛ばしたのは、巨大なハリセンを持った少女だった。

「武論斗さん!覇竜魔牙曇も近いっちゅうのに何道草食うてんねん!ん?誰やアンタ?ひょっとして助っ人さん?いやー助かるわあ!ウチ一年生の朱音多々喜!」
ハリセン少女改め、ツッコミ魔人・朱音多々喜はポカンとした表情のダビデに凄まじい早口で自己紹介した。

「……えっ、ああ、僕は行方橋ダビデ。覇竜魔牙曇に参加したくてこの希望崎に来たんだ。一応キミたちの助っ人って事になるのかな。さっきのはキミの能力かい?」

「せやでー。アホな能力やろ?ま、これからよろしゅう頼むわ。ホラ、行くで武論斗さん」

吹き飛ばされた武論斗さんには派手な爆発の割にダメージがほとんど無いが、顔中が煤で真っ黒に汚れている。

「ゲホッ……ゲホッ…お前マジでかなぐり捨てンぞ?」

「あぁ゛?なんやとコラ?」

「……今日のところはやめときてやrう…(こbの謙虚さが人気の秘訣)」
朱音はうつむく武論斗さんの手を引いて速足でその場から立ち去って行った。

「希望崎学園か、悪くない所じゃないか」
遠ざかる二人の後ろ姿を見ながらダビデはまた目を細めた。

つづく

182行方橋ダビデ@モヤイ:2011/06/18(土) 11:19:25
行方橋ダビデのダンゲロス・覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)〜BL編〜

前回までのあらすじ:武論斗さんがツッコまれて爆発した。


「で、後ろのキミはいつまで付いてくるつもりだい?」

ダビデがおもむろに校舎の方に振り返ると、渡り廊下の柱の陰から忍者装束の少年が姿を現した。
「……」
「何か用かい?もし良かったら校舎を案内して欲しいんだけど」

少年はダビデの前に出ると、いきなり深々と頭を下げた。
「せ、先生と呼ばせて下さいっす!」
「……は?」

頭を90度の角度に下げたまま少年は続ける。
「自分、希望崎学園忍者部所属一年生、名前を左高速右っつうケチな忍者っす!先ほどのモヒカンザコとの戦い、失礼と思いつつ一部始終、柱の陰から見せていただきました!」
「いやそれは知ってたけど。なんで僕が先生なんだい?」

「自分、恐縮ながら先生のような分身使いを目指してるんす!何卒お願いします!自分を弟子にしてほしいっす!」

「ふーん。なるほど」
それを聞いてダビデが納得したように頷く。
「いいよ。魔人拳法奥義・残影淅踊身、君に伝授しよう」
「マジっすか!ほ、本当にいいんすか?」
自分の悲願への扉が想像以上にあっさりと開かれた事に左高速右は目を輝かせながら顔を上げた。
「もちろんだよ。……ところでキミ、中々可愛い顔をしているね」
「へ?」
「いやぁ、こっちの話さ」
もしも左高がこの時ダビデの視線の中に潜む不穏な影に気づいていれば、彼はその後の残酷な運命も回避できたことだろう。

「君に奥義を伝授するとは言ったけれどもちろんタダって訳にはいかないなぁ。この能力は僕が中国の山奥で血のにじむ修行の末に手に入れた物だしねえ…」
「分身の術を体得できるなら、自分、なんでもするっす!」
「ん?今キミなんでもするって言ったかい?」
その不用意な言葉にダビデは野獣じみた歪な笑みを浮かべる。
「……先生、な、なんスかその目は……」
ようやく左高は自分の置かれている状況の危険さに気付いた。

しかし時すでに時間切れ。

「ふふふ、心配ないさ。優しくするからね……」
「え、いやいやいや!ちょ、ま、待って!そん……アッー!!」


・・・

「ふははは!どうだい左高くん!」
「分身にはこういう使い方もあるんだよ!」

「り、両方同時なんて、そんな……アッー!」


「ハァハァ……す、スゴいわ!」
カシャッ!カシャッ!
二人の男が校庭のど真ん中でヒートアップする様を、校舎の陰から夢中でシャッターを切る少女。
彼女の名は夢追中、希望崎学園報道部所属の新聞記者魔人である。
「ハァハァ……とりあえず明日分の記事はこれに決まりね。ああっ!そんな所までっ!」

しかし、その日彼女の書いた記事はあまりにも過激すぎる内容の為に、学園新聞に載る事は無かったという。

おわり

183緑風 佐座:2011/06/18(土) 11:50:48
『緑風 佐座』
※設定捏造及び、盛大な中二病注意。

 ――それは、たった一つの、ちいさな矛盾。
 一人の魔人が思い描いた、ささやかで、しかしけして叶わうことのない願い。

「……明日か」

 堕ちゆく夕陽が、教室を血のように赤く染め上げている。
 破壊学園ダンゲロスの一角にして極地、ハルマゲドン専用に構築された校舎。その一つにある新参陣営待機教室。
 学校の教室でありながら大学の講義室レベルの広さを持ち、ガス栓や冷蔵庫、台所から洗濯機まで常備された改造教室である。
 授業や実習はもちろん、避難所や籠城にまで使える代物だ。
 その一角では、のもじが伝説の白いギターの弦を確かめていたり、葦名が蜂達と戯れながら嫉妬を撒き散らしていたり、稲荷山は寿司職人の日課修行に精を出していたり。
 幽霊なぞいない! と蝦夷威もとじが幽霊少女であるみれん相手に語っていたり。
 大根と武論斗さんがリアルファイトしていたり、とにかくカオスな情景だ。
 その異常極まりない教室の一角で、ダンゲロスの魔人でありながらホックだけ外した詰め襟をごく普通に着こなす少年――至って特徴の無い、どこにでもいるような姿をした緑風佐座は、ひどく憂鬱そうに溜息をついた。

「スタメンとか……一般人には荷が重いんだよなあ……」
「お前のどこが一般人やねんっ!」
「ウボァー!?」

 黄昏れていた所に、後ろから唐突にハリセンの一撃が飛んでくる。
 机に頭からぶつかり、あいたたた、と赤くなった鼻を抑えながら立ち上がると、背後には快活に笑う関西風の少女。朱音だ。

「あたしの突っ込みに耐えられる奴が一般人なワケないやろが! スタメンの癖にうじうじうーじうじしとんなや」
「んなこと言われても……だったらアンタが代わってくれよ」
「増援で着いたら大暴れしたるさかい、覚悟しときぃや!」

 なっはっは、と笑う朱音。しかし、自らの突っ込みに耐えられる人間が魔人しかいない、と認識しているあたり相当だ。
 つまりそれは、一般人を突っ込み殺したことがあるという証拠でもあるのだから。

「それに、俺は一般人だよ。――いや、一般人で無きゃ、いけないのさ」
「はぁ……?」

 席を立つ。確かに、選ばれてしまったことには違いない。
 妖怪ではないが、他のメンバーに挨拶に行っても良いだろう。
 たとえばホラ、今しがた教室に入ってきた、朱音 多々喜とか――

「……ふむ。やはり、それが貴様の“認識”か」
「……っ!?」

184緑風 佐座:2011/06/18(土) 11:52:38
「……ふむ。やはり、それが貴様の“認識”か」
「……っ!?」
 振り向く。
 朱音の声が、唐突に重く、冷たいものになる――否
 ・・・・・・・・・・
 それは朱音ではない!
 周囲の景色が凍る。まるで銀河の中にでも放り込まれたかのように、周囲の景色が一変する。
 色を失ったクラスメイトと――ただ一人、その中で動ける佐座を除いて。
「これはっ、刺客――いや、違う!?」
 この途方も無い能力規模。こんなものを持つ三年生がいたら、今頃自分たちの命なぞ在るはずもない。
 朱音だったはずの姿は、混沌の塊のような人影となっていて、その中身は読めない。
 ――一つだけ、可能性が脳裏に浮かぶ。
 この状況に加担しうる、途方も無い能力を持った、しかし新参でも古参でも無い誰か。

「……“転校生”……!」
「そうだ。――そういきり立つな。何も、蹂躙しに来たわけではない」
「?」
 佐座は首を傾げる。転校生の影は語る。
「緑風佐座。『自分は一般人である』という認識に縛られた『魔人』。
――この度し難い矛盾は、たった一つの意味を持つ。ある特別な意味を」
 すなわち、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「貴様は個人の能力のみで“転校生”に覚醒しうる。
 希有な存在だ。――端的に言おう。今ここで我らに加担する気は無いか。スパイがいれば、その分我々の仕事も楽になる」
「――っ!」
 息を呑む。
 転校生。それになる仕組みを、佐座も知っていた。戦闘破壊学園ダンゲロスのノベライズは、基本ライトノベルしか読まない彼もきっちり買っている。
 その可能性には気付いていた。自分が孕んだ、致命的な能力の矛盾。一般人という認識に縛られた魔人。
 魅力的な提案だ。転校生化は、あらゆる魔人が恐れ、また心の底で憧れることでもあるのだ。
 ――だが。
「お断りだ」
 即座に、佐座は首を横に振った。たとえこの場でこの相手に殺されようと、しかし、それだけは飲めない提案だった。
「俺は“一般人”なんだ。卑小で凡俗な、どこにでもいる、ね。――転校生になる気も無ければ、ダチを裏切る気もねぇよ」
 周囲で凍りついているクラスメイトを指して、冷や汗を浮かべながら佐座は笑って見せる。

185緑風 佐座:2011/06/18(土) 11:54:13
 ――彼は昔、ごく普通の、どこにでもいるような魔人だった。
 密偵の魔人。相手のHPを簒奪し、一瞬で2にする能力“瞬殺”。
 しかし彼は弱かった。名前に反して、対象を瀕死にすら出来ない能力を持つ彼を、使えない周囲は嗤った。
 挙げ句の果てに、彼のいる陣営があるハルマゲドンで盛大に敗北した時、彼は敵にまで貶された。

『――貴方のように平凡で、何の突出した所の無い人が……この場にいることに驚いています』

 ああ、そうかよ。
 だったら俺は、それでいいさ。

「計り知れないのは、人の想いの強さだ」
 そして彼は覚醒した――魔人から、一般人に。
「ここにいるのは、クソみてえな魔人どもだ。どいつもコイツも、馬鹿で、変態で、魔人的な、
だけどそれでも、一度たりとも俺をけなすことをしなかった、気の良い奴らだよ」
 拳を構える。かつて持っていた最強の短刀は、そこには無い。だが、それでいい。
「覚悟しろよ転校生(さいきょう)――俺の一般人(さいじゃく)は、ちっとばっか響くぞ」
「くっ……ははははははっ!」
 その口上を一頻り聞いた転校生が、腹を抱えて笑い出す。
「いいだろう――ならばハルマゲドン、我らも正々堂々三つ巴で入り乱れようではないか」
 ぱちん。
 指を弾いた瞬間、周囲の景色が元に戻る。再び動き出すクラスメイト達。
 転校生の気配など、どこにも無くなってしまっていた。
「っはぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜! やっべ、死ぬかと、思った……!」
 息を吐き、佐座はどっかと床に座り込む。
 その拍子に椅子を軽く倒して、隣で職人修行をしていた稲荷山に目を細められる。デリケートな食材を扱う彼女は埃が立つのを嫌った。
「どうした? ――ん、あれ、緑風、キミ、さっきまで座ってなかったか?」
「ああ……リーダー」
 怪訝そうに首を傾げ覗き込む少女を、晴れ晴れとした表情で、顔で佐座は見上げる。
「俺は戦うよ。この命、思う存分使い倒してくれ」
「――え? いや、それはそうだけど……そ、そんなこと……いいの?」
 首を傾げる稲荷山に、佐座は気安く笑い掛け。
「何だ、心配してくれるのか? いやあ俺いつの間にフラグ立てたのかなあ――」
「身の程をわきまえよ」
「スイマセンでした!」
 未だにトラウマはトラウマだった。

186審刃津 志武那@ははは:2011/06/18(土) 11:58:54
『血に染まる雪』


 幼い頃の審刃津 志武那は孤独な少年であった。
 理由は褐色の肌だ。志武那の母方にアラブ系の血が入っている為である。
 子供というのは純粋であり、それ故に残酷だ。
 分かりやすい皆と違うところがあるというだけで、子供は容赦なく攻撃するのだ。
「なんかお前、変な色だよなー」
 言ってる側としては攻撃という意思は無く、面白がってるだけかもしれない。
 だが言われた側としては別だ。少年がそんな言葉を受け流すことが出来るほど精神ができているわけはなく。
 結果として志武那は同年代の子供達と距離を取るようになった。
 そんな彼に転機が訪れる。家の隣にある家族が引っ越してきたのだ。
 新たな隣人は日本人と英国人の夫婦。そしてハーフの娘が1人。
 英国人である母親の血を濃く受け継いだ娘は、白い肌に金髪碧眼の見目麗しい少女であった。
 少女の名は古門 ソーリス。彼女もまた特異な見た目から、以前住んでいた場所では同年代の子供達から仲間外れにされていた。
 それ故に臆病となったソーリス。彼女が何に怯えているかを同じ立場の志武那は痛いほどに理解していた。
 そんな2人が仲良くなるのには、そう時間は必要なかった。

 そして時は流れ、2人は中学2年生になった。
 志武那は歳相応に成長し、また周囲も肌の色程度で差別するような事は減ったので、心許せる友人がソーリス以外にもできるようになった。
 ソーリスはソーリスで日本人離れした美貌は周囲の羨望を集め、一躍人気者となった。
 尤も、周囲からの扱いが変わるようになっても幼い頃から作り上げられた性格はそう変わることなく、ソーリスは常に志武那の保護を求めるように彼の後を追いかけるのだが。
 幼馴染の運命というやつか。2人は小学校に入学してから今に至るまで一度も違うクラスになったことはない。
 時期は冬。周囲がもうすぐ訪れるクリスマスに向けて浮き足立つ12月半ば。
「待ってよ、志武那ちゃ〜ん!」
 下校する為に志武那が靴をロッカーから取り出していると、慌てた様子で階段を下りているソーリスの姿が目に入る。
「あー、ソーリス。足元をちゃんと――」
 見ろよ、と志武那が言い終わるよりも先にソーリスは階段を踏み外して見事にこけてしまった。
 不幸中の幸いなのは、高さが殆どなかったことだ。酷い怪我にはならないだろう。
 ちなみに見えたパンツの色は白。その上に黒タイツを履いており、タイツに透けたパンツという中々に趣深いものを志武那は見ることができた――とはいっても彼にとってはある意味日常風景なのだが。
 志武那はため息を吐きながらソーリスの傍に寄り、手を伸ばす。
「全く……起きられるか?」
「うん、ありがとう――っ!?」
 志武那の手を取り、起き上がろうとしたソーリスだが足の痛みに顔を顰める。どうやら足を捻ってしまったようだ。
 ソーリスの表情と足を庇う仕草を見て、志武那も彼女の状態に気づく。
「保健室に行った方がいいかな‥‥。余計な手間をかけさせる」
「う、うぅ……ごめんね?」
「いつもの事だ。慣れている」
 ひょい、とソーリスを抱き上げる志武那。いわゆるお姫様抱っこというやつである。
「し、志武那ちゃん!?」
 下校時間とはいえ、学校にはまだ多くの生徒がいる。衆人観衆でお姫様抱っこという状況で、恥ずかしさからソーリスを顔を真っ赤にする。
「あうあう、皆に見られて‥‥こんなの恥ずかしいよー!」
「おんぶし直すのも面倒だ。俺は恥ずかしくないから我慢しろ」
「うぅ……はい……」
 元はといえば悪いのは自分だ。ソーリスは覚悟を決めて受け入れる。
 それに彼女としてもこのシチュエーションは悪くなかった。‥‥大好きな人にお姫様抱っこしてもらえるのだから。
「えへへ……」
 赤面したままだが、少し大胆に手を志武那の首に回すソーリス。そのまま体を志武那へと預け、密着度を上げる。
 柔らかな感触が志武那の胸板に伝わる。ん、と小さく志武那が声を洩らすがソーリスはあまり気にしていないようであった。

187審刃津 志武那@ははは:2011/06/18(土) 11:59:16
 それから、保健室で治療を受けたソーリスは志武那に背負われて帰宅することとなった。
「えと……その、重くない……?」
「重い、と言ったら軽くなるのか?」
「あぅ……ならないです……」
 こんな風に会話をしながら歩く2人。時々、2人の知り合いとすれ違う事もあったが、基本的には暖かい目で見られていた。
 何故なら皆知っているからだ――志武那とソーリスはなんだかんだで相思相愛であることを。
 ソーリスは志武那の背中に体だけでなく、心まで預け。
 志武那はソーリスの温かさに愛しさを覚える。……尤も、ツンデレ体質の志武那がその愛情を表に出すことは無いのだが。
 こんな幸せがいつまでも続くと思っていた。
 ――その時までは。
「きゃぁぁぁ!?」
 突如、辺りに響く女性の悲鳴。
 何事かとそちらを見やれば、悲鳴の主だろう女性が倒れている男性に駆け寄っていた。
「そんな……起きて、起きてよ!?」
 倒れている男性をよく見れば、胸……ちょうど心臓の辺りから、鮮血が流れているのが見える。
 そして、そんな2人を見下ろすように、傘を持った少年がすぐ傍に立っていた。
「まーったくよぉ、クリスマスが近いからってイチャついてんじゃねぇよ。許せねぇ、許せねぇよなぁ」
 傘の先端は――赤く染まっていた。
「なぁ、お前もそう思うよな?」
 傘を持った少年が志武那らを見る。
 直感的にやばいと判断した志武那は即座に逃げようと踵を返すが……何もかもが遅かった。
「まったく見せつけんじゃねぇよ!」
 少年が、傘を振るう。傘の先端は志武那への胸元に吸い込まれるように――
 突き刺さらなかった。
「――え?」
「し、ぶな……ちゃん……。逃げ、て……」
 危険を察したソーリスが無理矢理志武那を体勢を崩し、その結果――傘の先端が彼女の胸元へと突き刺さったのだ。
 直後、騒ぎを聞きつけたのだろう魔人警官が傘の少年を取り押さえる。
「あぁ、くそ……! 全然カップルどもを粛清してねぇのに……!」
 だが志武那にとっては傘の少年がどうなろうと最早どうでもよかった。
「おい、ソーリス……? なんの冗談だよ、これ……!?」
 彼の腕の中でソーリスの体がどんどん冷たくなっていく。
 愛しさを感じた温かみは……もう腕の中にはない。
「ソーリス……! ソーリスゥゥゥゥゥ!!!」
 雪が……降り始めた。
 降り積もる雪は、しかし血の赤を隠すことなく、赤く染まっていく。


 後日、ソーリス他数名を殺した傘の少年に対して裁判が行われることとなった。
 結果は無罪。刑法三十九条「魔人の犯罪は能力覚醒直後に限り不問とされる」によって、覚醒直後だった傘の少年は罪を問われることは無かったのだ。
 当然だが傍聴席にいた志武那は激怒し――そしてまた、彼も魔人として覚醒することとなった。
「あぁ、そうか。……裁きってのは不公平なものなんだな」
 先ほどまで何も持っていなかった筈の手に、天秤がある。
「では、俺が裁こう。……何、俺も罪に問われないんだろ?」
 天秤が――傾いた。

188フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 12:01:29
ただいまをもちまして、SS・イラストの提出締め切りとさせていただきます。

189鶴崎 一途@ひじ:2011/06/18(土) 12:16:59
よっし、こっちも書かねばな!

『AチームOPデモ』

=新参陣営総本部=
「なー、Bチームの連中知らねえ?」
「なんか、前哨戦だそうですよー」
「へー。んじゃ、俺等もいっとく?」
「そうはいっても、もうだいたい片付いちゃってますよ?」
「心配ゴム用。ほれ、第二波だ」

BGM:『恋の積尸気冥界波〜僕は魚座に恋をした(Ver.ReMIX)』



「支配を求めるのは、決まって古い人間ね」
皮膚が焼ける。肉が裂ける。頭蓋は砕け、脳漿が吹き出す。
…否。そこにあるのは、ただ痛みだけ。全くの無傷のまま、呻き、のたうち、事切れる。
「苦しいでしょう?辛いでしょう?あの子は、きっともっと辛かった」

【二之宮 晶】ーー保有痛覚『THE JUDGE』.



「ヒャッハァーー!死にやがれェー!!」
飛びかかる雑魚生徒、その数、十。
四方八方並びに上下、もはやそこに死角はない。はずだったがーー、
「うらうらうらうらぁぁーーーーーーー!!!!!!!!!」
包囲網に穴が開く。ひとつ。ふたつ。
やがて十の敗者が転がり、ひとり立っているのは、戦場に飢えた獣。
「うっひょー、いいねえ!どいつもこいつも、俺がブッ潰してやるよ」

【浦 優輝】ーー保有暴力『TNN(調子のんな)』.



「いいから野球しようぜ!」
ボールを投げる。当たる。ボールが返る。ボールを投げる。当たる。ボールが返る。
神掛かり的な一方的キャッチボールの末うまれた、九人の犠牲者。
「よっしゃあ、ゲームセット!ノーヒットノーラン、コールド勝ち!」
「…あ?おう、いいぜ!向こうの群れへ行くんだな?せーのっ」

【五郎丸 卒塔婆】ーー保有投法『魔人球』.



「ばーか、こっちじゃねえよ、五郎丸!」
突如飛んできた流れ球から、男が飛び出した。
二本の筆を振りかざし、その空間に芸術を作り出す。
美しい黒が、雑魚生徒の四肢を切り離した。
「あー、くさくさする。憂さ晴らしでもせんとやってらんねえぜ」
懐から引き抜いた書がはためく。
「離散」「爆散」「雲散霧消」
爆音と共に、周囲一帯のものが消し飛んだ。
「ひっひ、…あーあ、収まらねえなあ」

【道之せんとう】ーー保有書道『全方位不機嫌』.



「フレ”エ”エ”エ”エ”エエェエェェェエェ、フレ”エ”エ”エ”エ”エェェェエェェエエエェエ、しいいいぃぃいいぃんんんんんざああああぁぁぁあぁぁああん!!!」
「うるせえェーーーーッ、黙りやがれッ、こんちくしょォーーーーッ!!」
「おう貴様、魂の応援を愚弄するんか、おぉ?」
その体躯、殴る為、蹴る為にあらず。
その体躯、他者を奮い立たせる為に在り。しかして、他者を奮い立たせる為に殴り蹴る時、その膝をつかぬ者などいない。
他数名を巻き込んで、雑魚生徒はバラバラに吹き飛んだ。
「お”お”お”おおおう、フレ”エ”エ”エ”エ”ェェェエエェェェエエェエエエエ」

【秋刀 魚広】ーー保有声援『他者を応援することを通し己を応援する。それが“応援”ッ!』.



190鶴崎 一途@ひじ:2011/06/18(土) 12:18:49


「いいねえ秋刀!よっしゃ、テンション上がってきたぜ!」
疾走する少年は、何かに躓き盛大に転んだ。多くの者を巻き込んで。
桃、桃、桃、時々あわび。
「む!これは…とんだTo LOVEる…!!」
何の因果であろうか、女性雑魚生徒の半数以上が、彼のもとに引き付けられていた。惹き、ではなく引き、である。コレ重要。
「きゃーー!!もう、これいったいなんなのよ!?」
周囲の男共がたまらず飛び込むが、流れ弾とか隕石とかに阻まれて、一向にたどり着く気配はない。
そこに男は彼一人。資格を持つ者のみ立ち入れる、桃色領域である。

【一 一】ーー保有ラブコメ『To LOVEるメイカー』



「ねえ君、その肩パッドすっごいお洒落だね♪」
「ありがとうございまッすゥゥゥ、これ友達料ッすゥゥゥ」
死体うずたかく積み上がる戦場で、不気味とさえ言える和やかな雰囲気があった。
狂信的にお布施を入れる雑魚生徒の顔面を蹴り飛ばしながら、愛想を振り撒く少女。
このような光景が、どうして和やかに見えるのだろう、しかし、そこにあるのは皆の笑顔だけである。
「本当ごめんね、友達なんだし、許してねー」

【寅貝 きつね】ーー保有コミュ力『友達屋』



「ははは、私は怪盗!魔人怪盗である!」
滑空するグライダーから颯爽と飛び出す白銀紳士。身構えるAチーム。
「あなた方の体の一部に魔人爆弾を仕掛けました!外せばボカン!外さずともボカン!うひゃひゃ、木っ端微塵になるがいいですよ!せーの、ボッカーン!」
戦場が静寂に包まれる。
「…ボッカーン!」
やはり何も起こらない。そこへ歩み寄る妙な男。歩を進める度に、可愛らしいリボンが上下に揺れる。
「やれやれ。紛い物の怪盗など、私にかかればただの阿呆だな」

【紫野 縁】ーー保有眼力『イビルアイ』




「うおおおい、あんなとこに薬草落ちてるぞーー!!!」
「よっしゃあああ、いっただきいいいい」
のそり。薬草が立ち上がり、こちらに向き直った。
「おうワレェ、ブリ大根食わねえかィ」
言うなり、雑魚生徒の口にブリ大根が突っ込まれる。
「うんめええええ、すっげええええなんだこれ!あ、お前死んどけええええええ!!!」
「ぎゃああああ、てめー味方に何すんだああああああ」
「…人を動かすものがなんだかわかるか?それは金でもなければ食いモンでもない。心、だよ」

【大魂】ーー保有人生『とろっとろにとろけたブリ大根食わせるぞワレェ!』



「はあああ痛い!ああ!痛い!あっ、あっ、はあああん」
目、脛、みぞおち、股間。敵の攻撃全てを、自身の急所で受け止める者がいた。
「いやー、ああ痛い!素晴らしいな!君達も一緒に行こう!幸福の世界へ!」
「うあっが、げぎゃあぁああぁぁっぁぁあっぁぁぁ!!!!!!」
その痛みで失神している一方で、その痛みで失禁している男。同じ痛みで、こうも差が出るものなのか。
彼もまた、新参陣営Aチームが一人である。

【伊丹 護】ーー保有信仰『繋がる世界』



「ねえ貴方!ふくしってさ。どういう意味だと思う?」
一見穏和そうな少女の問いに、ついつい返事をしてしまう。
「いきなり何言ってんだ…んー、ふざけんなクソヤロウ死んでしまえ、の略だな!なんつって。ひゃっh」
「あ?ふざけんなクソヤロウ死んでしまえ!!!」
何が彼女の琴線に触れたか、その刹那、彼の胴は三つに分かたれていた。
「て、てめぇー、俺の相棒に何しやがった!?ゆるさねェーッ」
問いかけ。捕捉の合図。彼女に声を掛けられれば、それすなわち絶命を意味する。
「ねえ!貴方はどう?ふくしってさ。どういう意味だと思う?」

【己木樹来貴生】ーー保有正義『ふくしってさ。』



191鶴崎 一途@ひじ:2011/06/18(土) 12:19:44


「はあっ!ふっはっ!」
右、左、そして右。目にもとまらぬ速さで道を阻む、忍者が一人。
「てててめェ、ここ通しやがれ!」
「ちくしょう、こうなりゃ強行突破だ!!」
特攻を試みた雑魚生徒の腕が吹き飛ぶ。
「ひっ、ヒィ!!!?」
「なっ、ならこいつで蜂の巣にしてやるッ!!」
「馬鹿!やめろォーーッ」
呼び声虚しく、跳弾に貫かれる雑魚生徒達。
凄まじき速度の反復横跳びは、何者をも受け付けぬ究極の壁となっていた。
「ふっはっ!とうっ!…ふう、325回か。うむ、今日は自己ベストが出せそうだ。そろそろ、俺の分身会得の日も近いかな」

【左高速右】ーー保有忍法『高速反復横跳び』



男の拳、そして男の拳。二つが混じり合った時、そこにうまれるのは真剣勝負である。
「へっ、てめえ…やるじゃねえか…」
「貴様こそ、ここまで骨のある奴だとは思わなかったぜ!いくぞ、タイグァー、アパカッ」
真剣勝負?否、これは戦争である。あらゆる手を尽くした者こそが、勝利の喜びを獲得する、非情な戦場。
「なっ、なんだァ、コレはッ…み、身動きが取れねぇ…!!」
「悪いがな、俺はもう格闘家じゃないんだ。あんたもストリートファイターだ、わかるだろ?」
「う、うわあーッ!こっちに来るんじゃねェーッ」

【ロッキー池田】ーー保有奥の手『溢れ出るこの思い』



一枚のフライングディスクが、戦場を横切る。
四肢を断ち、胴を断ち、その軌跡は死体によって彩られる。
「隙在りッ!!そこだァッ!!」
しかし雑魚生徒といえど、やはり三年。油断は禁物なのだ。心の臓を貫かれ、絶命する少年。
「ヒャッハー、一人ブッ潰したぜェーーーッ!」
「お、おいお前…後ろッ…」
「あァ?」
雑魚生徒の顔から生気が抜ける。取り殺された…!
駄目だ。逃げろ。
いや、既に遅い。そこにいた雑魚生徒は、もう、皆死んでいた。
「な、なんだよコレよー!俺、死んでんべ!?何コレ!得しちまったようっひょー!」

【蝦夷威もとじ】ーー保有怨念『限地の誘冥人』



「み、皆さん頑張って…!私に出来るのは、これだけだけど…!!」
無防備にも丸腰で、必死に祈り続ける少女がいた。
手柄を焦った外道雑魚生徒が群がる。
「こ、来ないで下さい!」
壁際に詰められた。下衆めいた笑みを浮かべ襲い来る雑魚生徒。しかし。
壁からの斬撃。一人の男が現れ、彼女に微笑みかけて、去っていく。
「…頑張って下さい…!!」
彼女は祈り続ける。戦地を駆ける、愛する人の為に。

【鶴崎 一途】ーー保有愛情『DressUp4U』



「ヒャッハァー!馬鹿共め!本拠地が丸腰だぜ!ブッ潰してやる!!」
「…留守番していて良かったよ。僕の能力に、今回出番は無さそうだが」
「グッギャァアアアーーーッ」
もぬけの殻となる総本部を、その双肩に担う者。
彼は何を思い、何を知るのだろう。

【D・P´0008】ーー保有宿命『完全蘇生』



タイトルデモ
『魁! ダンゲロス 新参Aチーム』
『38%の確率で野球しようぜ!』

朱音「なんやこのタイトル!38%ってなんや!しかも間にあっとらんやんけ!」
五郎丸「いいから野球しようぜ!」

192フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 13:08:42
>>178-180 3点

>>181 3点 あ(ry 武論斗さんシバかれるのこれで2度目じゃね?

>>182 2点

>>183-185 3点 ようやく転校生のおでましか。ちっとばっかし展開にテンションあがったぜ。

>>186-187 3点

193フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 13:11:40
メモ

>>187まで採点
現在合計229点
>>175まで貼り付け完了

194フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 13:32:22
まだ本戦が残ってるから時機尚早だけど、ここまでたくさんSS・イラスト描いてくださってありがとうございます!
みなさん本当にお疲れさまでした、本戦も頑張ってください!

195稲枝:2011/06/18(土) 19:55:12
>>194
ありがとございます お疲れさまでした!

196フランソワ(ε)【SS・イラスト採点】:2011/06/18(土) 20:07:39
GK陣からおすそわけ

●朱音
tp://www45.atwiki.jp/debutvselder?cmd=upload&act=open&pageid=101&file=sakigake007akane.png

●おは妖怪
tp://www45.atwiki.jp/debutvselder?cmd=upload&act=open&pageid=101&file=sakigake009ohayoukai.png

あんまり描けなくて申し訳ない

197稲枝:2011/06/19(日) 04:25:47
勝ちを確信した時点でアッシーナ描いたからここにも貼っとくー
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/38589/1308146214/l50

198稲枝:2011/06/19(日) 05:06:17
URL間違えてた…
http://pixiv.blogimg.jp/yu-nomi/imgs/1/e/1ec4d930.jpg

199一 一@minion:2011/06/20(月) 13:09:15
『先に駆けること──────sideA』

 「やらせねぇ…………ぞ」
 地面に倒れ伏した仲間を背に、道之せんとうは両手を広げて上級生に立ち塞がった。
 既に勝敗は決している。皆、激闘の末に力を使い果たし、戦える者はもう居ない。
道之自身でさえ同じだった。それでもふらふらと立ち上がった。
 体力など、一欠片も残っていない。精神力など、一滴も残っていない。それでも何故
立ち上がれるのか。自分にさえ分からなかった。精一杯の虚勢を張る。
 「へっ…………なんだか知らねぇが、立っちまうんだよ……」
 その答えは、意外なところから現れる。すなわち、彼ら1年生の敵…………3年生。
 「…………それが、希望崎学園魂だ」
 「希望崎学園…………魂……?」
 厳かで、しかし力強い言葉が轟く。
 「ただ今をもって我ら古参、新参1年生の入学を正式に認める!!」 
 「…………押忍、ごっつぁんです、先輩」
 一瞬呆けたような表情を浮かべたが、やがて不敵な笑みに顔を歪ませ…………。
 立ったまま、気絶した。
 「フッ…………思ったより骨のある奴だ。………………さぁ、1年生ども全員、第二
  保健室に運ぶぞ。”不可思議”蓮ならまだ間に合う」 
 「応!」
 対する3年生側も無論、無事ではない。ハリセンで叩き飛ばされた者。とろっとろに
とろけたブリ大根を食わされた者。痛い目を見て病院で栄養食を食べるハメになった者。
酷い者になると、「おはよう」とよく通る声で挨拶された者までいる。被害は甚大と
言えたが、上級生の貫禄か疲労を微塵も見せずにそれぞれ負傷者を担ぎ上げ運んでゆく。
残された古参が一人、ニヤリと笑った。
 「今年の新参はなかなか、活きが良い…………」
 骨肉の戦いを終え、運ばれてゆく1年生を見守るその瞳は既に、後輩を見る目だった。

 「江田島校長、ご報告申し上げます! 覇竜魔牙曇は3年生側の勝利で決着です!」
 ドタドタ、と足音を立てて校長室に飛び込んできた一人の教師。その報告を江田島は
年代物の湯呑みに淹れた熱い茶を飲みながら聞くと、意味ありげに頷いた。
 「予想通りだな…………これで漸く奴等を迎え撃てるというもの」
 「奴等…………?」
 事態を飲み込めない教師は首を捻る。ただ、とてつもなく嫌な予感だけはひしひしと
伝わる。
 「フッフフ…………東に希望崎学園あれば、西に羅漢学園あり」
 「ま、まさか…………!?」
 「今年の夏は、熱くなりそうじゃわい」
 校長室の窓から見上げた空には既に雲一つなく、ぎらぎらとした太陽の季節の到来を
予感させていた。


                               <了>


TIPS
※”不可思議”蓮…………通称”ワンダー”蓮。第二保健室の主である女医。白蓮刺繍
            のチャイナドレスに白衣を羽織った抜群のプロポーションを
            誇る美女。魔人能力「死亡確認!」は強力な死者蘇生術。
            魔人名「一 不可思議(にのまえ・ふかしぎ)」
※羅漢学園…………………西日本に位置する、言わばもう一つの希望崎学園。

200一 一@minion:2011/06/20(月) 13:12:09
『先に駆ける者──────sideB』

「…………覇竜魔牙曇、1年生側の勝利で決着です」
 一人の男の最終報告を、校舎内の一室にて聞く者たち。その数、十。何れもその容貌
は影に紛れ、杳として知れない。
「ご苦労だった、同志K」
 同志Kと呼ばれる男は身分を秘して新参陣営に潜入し、その内情を探る働きをしていた。
戦いに不慣れな新参の士気をそれと無く高めたり、実戦が初めてな者へ魔人同士の戦いの
なんたるかを最低限示したりすることで彼らの信用を得、陣営の情報を微に入り細に入り
把握していた。1年生の強みも弱みも、開戦前から丸裸であったと言えよう。
 そして、この部屋に集まる者たち。彼らは古参の中でも指折りの実力者であり、覇竜
魔牙曇の名目で新参の実力を測る計画を企てた希望崎学園の影の支配者──────
Government of Kibousaki──────GKと自らを呼称する者たちだった。
「さて…………では、希望崎学園の真の恐ろしさ。新参共に教えてやらねばなるまい」
 重々しい言葉で、GKの領袖である男が断を下す。
「奴等はようやく登りはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い希望崎学園坂をよ……」
「それ、打ち切りフラグですからね。我々の出番ないですよ、ボス」
「えっ」
「えっ」
「…………同志L。同志ε」
「はっ」
 名を呼ばれた二人は同志Kの肩を両側からがっし、と捕まえるとそのまま何処かへ
連れ去る。誰もが恐れる朗読室送りは同志Kには効果が薄い。恐らく別の懲罰室であろう。
 希望崎学園を支配するGK。その恐ろしさを新参が知るのには、今暫くの時を待つこと
になるであろう。


                               <了>


TIPS
※ボス…………GKの最高権力者である魔人。しかしGKはその時々で構成員の入れ替わり
       があり、一定ではない。正体は不明。
※同志L…………頭文字Lの名を持つ魔人。正体は不明。
※同志ε…………頭文字εの名を持つ魔人。正体は不明。挨拶が好きという噂がある。
※同志K…………頭文字Kの名を持つ魔人。正体は不明。朗読が好きという事実がある。

201みやこ@梨咲みれん:2011/06/21(火) 18:37:52
「新参陣営から見たBチーム各ターンの見せ場SS」


【濡れ場濡れ場の第1ターン】
―――――先に動いたのは新参陣営だった。
戦闘に自信のある新参魔人達が開幕直後から敵陣を目指し一直線に駆けだしたのだ。
ある者は自分が目立つ為にある者はまだ見ぬ敵の能力を記録するためにある者は自分の拳を示すために、それぞれが確固たる意志をもって歩を進めた。
そんなメンツの中でもひときわ強い覚悟を秘めて単身敵陣に向かう男がいた。
そう、その男こそ最強の一般人こと緑風佐座(みどりかぜ さざ)であった。

緑風の覚悟とは、すなわち自らの死に対する覚悟だ。

開戦前に行われたシミュレートの中で、緑風が単身突撃しなければ新参陣営に勝ち筋のないことが判明していた。
しかし単身突撃した際の彼の生存率はせいぜい1割程度であり、緑風の用法をめぐって作戦立案時の陣営内は荒れに荒れていた。

「…私だって『死ね』って言ってるんじゃないのよ? ただアンタが行かなきゃ勝てないってんなら…その…仕方ないっていうか…」

「『死ね』はやめましょうよ!!! 緑風さんが死んじゃったらすごく悲しいですよ!!? きっとみんなすごく後悔しちゃいますよ!!?」

「必要犠牲ならば止むを得ずだな。無論僕も陣営の為に死ぬ覚悟を有している。」

「私は戦略とか戦術とか難しいことはわかんないけど、佐座君には死んで欲しくないかなぁ…」

そんな終わりの無い舌戦を纏め上げたのは、他ならぬ緑風だった。
彼は自身の隠された能力である「認識を周りに強制する能力」を使い、作戦会議をしていた魔人達に「緑風はきっと死なない。緑風ならきっとなんとかしてくれる。」という希望的認識を植え付けたのである。
緑風はよく戦術を理解しており、自分の立ち位置の重要性を知っていたのだ。
故に自らが犠牲となる最善手を能力によって選びとり、これにより緑風特攻案は誰にも止められることなく当日決行されるに至ったのである。
なお、この緑風の決断の背景には彼が元から持っていた「ヒーロー願望」とでも呼ぶべき理念の影響も少なからずあったことを付け加えておく。

以上のような思惑の元、新参陣営は開幕と同時に攻めをかけたわけだが、この直後に「確固たる意志」も「死に対する覚悟」も邪悪なる古参陣営の前では何の意味も無かったと思い知らされることとなるのである。

202みやこ@梨咲みれん:2011/06/21(火) 18:38:56
―――――その陰惨な返し手は新参陣営内の事前シミュレートで予想済みのものであったが、予想するのと実際に体験するのは別物であり、新参達が直に体験したそれは想像を遥かに凌駕した邪悪なものであった。

返し手の核を担った古参魔人は「身操屋(みくりや)」の異名を持つ操身術士の一族、御厨一族の女性「御厨括琉(みくりや・くくる)」と月の力で精神力の低い対象を即死させる「月宮クズレ」両名であった。
特筆すべきは御厨の能力の凄惨さであろう。

彼女の能力「弄ばれた者の末路」は相手を操り奇行を行わせ、相手を社会的に殺す(=精神ダメージを与える)というものだ。
操身術士として決して能力の高くない彼女が他人を操れる数秒間を最大限に活かそうと工夫した結果生まれた能力がこれである。
しかし衆目に晒されている状況下では恐ろしいこの能力だが「人払いが行われているダンゲロス本戦中においては効力が薄れるのでは?」と新参魔人達は楽観視していた。
そしてその楽観視が見事に仇となったのである。

結果から言えば彼女の所持していた奇行アイディアメモの底は新参が考えていたよりずっとずっと深く、衆目がなくとも見事に血気盛んな新参アタッカー4名の精神を根こそぎ削ってのけたのである。
「確固たる意志」も「悲痛な覚悟」も彼女の手のひらの上で弄ばれて投げ捨てられた。


埴井葦菜は操られている数秒の間に自慰行為をさせられ、それを手下である無数のアシナガ蜂達に目撃された。
忠誠度の高い蜂達ははじめ葦菜のことを気遣い葦菜の痴態を見なかったことにして、黙していたのだがその不自然さを誰ならぬ葦菜が感じ取り、きつく詰問したのである。
数秒間意識が飛んだ後、何故か自分に余所余所しい態度をとるようになった手下達に対して不信感を抱いた葦菜を誰が責められよう。

「アンタ達、一体どういうつもりなの!? 私に隠し事なんて許されると思ってるの!?」

「「………」」

「…そう、何があったか教える気はないってわけね。 …わかったわ、上等じゃない!
不忠な手下なんていらないわ!
アンタ達なんて大っきらい!!」

「「……あの…とても言い辛いんですが…」」

「な、何よ。 今さら謝ったって遅いんだからね…?」

「「……『ひゃーん ひゃーん』…です。」」

「ひゃーん?」

こうして蜂達から事実を聞きだした葦菜の精神はゼロになった。


行方橋ダビデは自らの残像とホモセックスをさせられた。
彼に意識が戻ったとき、残像の質量を持ったイチモツが彼の内にずっぽりと収められていたのである。
いかに同性愛者のダビデといえど自身とウリ二つな残像との性交はこれがはじめてで、動揺せざるを得なかった。
なお、普段の同性との性生活において彼が男役であったことも動揺に拍車をかけた一因である。
こうしてダビデの精神はゼロになった。


夢追中は愛用のペンを遥か遠方に投げさせられ、トレードマークのスパッツを下着もろとも細切れにさせられた。
御厨は「愛用のペンを紛失したことによって発生する喪失感と衣服を失くしたことによって発生する羞恥心で彼女の精神を削ろう」という意図でこの行動をさせたのだが、その狙いはイマイチであった。
御厨ひとつめの誤算は鷲の存在である。
夢追が愛用のペンを放り投げたのを見て、上空で待機していた彼女の友達である大鷲がそれを拾いに行ったのである。これによりペンの消失は防がれた。
御厨ふたつめの誤算は彼女の羞恥心に関してだ。
もちろん一端の女の子である夢迫には一端の羞恥心があるのだが、彼女にはそれを遥かに上回る「特殊能力に対する探求心」があった。
能力が解けた夢迫は一瞬のうちに自分の変化に気づき、それが能力によるものであることを理解した瞬間、はあぁぁぁぁ〜〜〜ん!と嬌声に似た歓声を上げた。
その後、うっすらと湿り気を帯びた丸出しの下半身を隠そうともせず鷲から受け取った愛用のペンで特性のメモ帳にガリガリと何かを書き込みはじめたのである。

「はぁ…はぁ…
これが御厨先輩の能力『弄ばれた者の末路』
すごい…すごすぎます…
想像してたよりもずっとずっと立派な射程と精度です
何の前兆もなく気付いたら意識がトんでました…
はぁ…はぁ……
……もっと……! 古参のみなさん…聞こえていますか…?
もっとです!! もっと…もっと…もっと私にぃぃぃぃ!!!
特殊能力ぶっかけてぇーーーーーーーっ!!!」

こうして御厨の意図とは別に夢迫の精神はゼロになった。

203みやこ@梨咲みれん:2011/06/21(火) 18:39:12
そして緑風は―――――

意識を取り戻した彼は右手の親指の痛みと口の中に広がるほのかな鉄の味を感じた。
冷静な彼は今置かれている状況をすぐさま把握した。
自分が御厨の能力によって操作されたこと、そしてそれによってどうやら親指を少し噛み千切ってしまったということを。
そして彼は安堵した。
「事前に予想していた通り、御厨先輩の能力は衆目がなければ役に立つ代物ではなかったんだ。僕の精神を削る有効な奇行を思いつかず苦し紛れに指の先を噛みちぎったに違いない。どうせ噛みちぎるなら舌を切った方が強いだろうに先輩はマヌケだな」などと楽観的な考察をしたのだ。

だが楽観的とは言ったが、実際問題この時点で彼の精神は健全そのものであり、それ故に接近してきた古参魔人・月宮を鋭敏に感知することもできた。
事前のシミュレートではここで精神の枯れた緑風が月宮に討たれる算段だったのだが、今の精神状態の彼が月宮の精神攻撃にかかるはずもない。
緑風は自身の生存と陣営の優勢を確信し心の内でガッツポーズをした。
が、接近と同時に月宮が放った一言により事態は一変する。

「何そのTシャツ、ウケるwww」

一般人を装うために彼は普段から「一般人」と大きくプリントされた白地のお手製Tシャツを愛用していた。
「一般人」Tシャツは一般人を装うことを何よりも大切にする彼の性質を具現化したような代物だ。
ダンゲロス本戦当日の今日においてもその習慣に漏れはなく、…いや、むしろいつもより気合を入れておろしたての「一般人」Tシャツを着て陣営に参じた緑風であった。
その信念の象徴とも言えるTシャツをバカにされて緑風はムッとして言い返した。

「『一般人』Tシャツはカッコいいです。
むしろ先輩の格好の方が失笑ものですよ?」

「『一般人』Tシャツぅ?w 『魔人』Tシャツの間違いじゃないの?ww」

何を…と、自分のTシャツに視線を落とした緑風はこの時になってようやく気付いたのである。
自らのTシャツに刻まれた「一般人」の「一般」に血で派手なバッテンが描かれ、その横にやはり血で「魔」と大きく書かれていることに。
緑風にとってこれは耐えがたい羞辱であった。
例えるなら忍者に「忍者」と大きく金の刺繍を施した紫地のTシャツを着せるようなものである。
いや、コナン君に「僕は工藤進一です」と刺繍したTシャツを着せるという例えの方がこの時の緑風の心情に近いかもしれない。
兎にも角にも、これをもって緑風の精神はゼロになったのである。

「いやっ! これはちがくて! 俺マジ一般人だし!」

緑風のクールな仮面は既に剥がれおちており、動揺が見てとれた。
そんな隙だらけな彼を熟練の使い手である月宮が見逃すはずもなく、

「ファンタズムーン・ディバイン・キャッチ!」

というどこかで聞いたような必殺技名と共に緑風は即死したのであった。





緑風の死亡により新参陣営の連携に乱れが生じた。
それは緑風の能力により押しつけていた認識が消えたことに起因する
「なぜ誰も緑風の特攻を止めなかったのか?」
後悔と悲しみが新参陣営を襲う。
特に御厨の能力をまともに受けた上で緑風が死ぬところを目撃してしまった行方橋・埴井の両名は発狂寸前の精神状態に陥ってしまった。


→緑風を失った新参陣営に勝機はあるのか!?
次回! ドラゴンダビデな第2ターン!

204みやこ@梨咲みれん:2011/06/21(火) 18:39:30
【ドラゴンダビデな第2ターン】
開戦から約1時間後、沈黙を守っていた新参陣営の阿野次(あのじ)のもじがついに動いた。

「♪一つ積んでは君のため〜 HA! 」

能力によりのもじの歌がダンゲロスに参加しているすべての古参魔人の耳元で響き渡る。
聞き慣れた者にとっては戦意を鼓舞する軍歌のように聞こえるこの歌だが、聞きなれない者にとっては単なる騒音に過ぎない。
これにより古参陣営の精神力とSAN値はガリガリと音を立てて削られていった。





のもじの歌を反撃ののろしに攻勢にでる新参陣営。
ダンゲロス伝統のB廊下とD廊下の攻防がついに始まった。

D廊下を挟んで睨み合うは新参陣営の二枚盾がひとり「鉄壁絶壁幽霊少女(フラットロンリーガール)・梨咲(ありのみざき)みれん」と古参陣営の変態九大天王がひとり「私の彼は子宮住まい(ボーイミーツガール)・名戯(なざれ)まりあ」である。
D廊下は両陣営共に手薄な配備で、みれんとまりあ(&こう)による一騎打ちの様相を呈していた。

梨咲「ふぇーん、設定が高次元過ぎて怖いよー!! お願いだからこっちこないでー!!」

まりあ「こう君こう君! な、なんかあっちに幽霊さんがいるんだけど!?」
こう『うお…まじじゃん、こえーな』

…訂正、お互いがお互いの存在に怖気づいて震えていた。
結局名戯まりあがB廊下の攻防に備え引くこととなり、ここでの戦闘は行われなかった。





一方互いの主力が集結したB廊下周辺には一触即発の雰囲気が流れていた。
古参陣営は先ほどまでD廊下を守護していたまりあが最前線で睨みを利かせ、その横には開幕直後に緑風を葬った精神即死魔人の月宮が控えている。
さらにまりあのすぐ後ろには凶悪な攻撃性能を持った魔人たちが控えている陣形だ。

対する新参陣営も埴井や夢迫といった攻撃的能力者が控えているものの御厨による精神的ダメージが響いておりまともに殴り合うには分の悪い状況だった。
さらには能力休みになっている月宮が再び動き出すのも時間の問題で、それも旗色の悪くしている原因のひとつであった。
そんな押され気味の新参陣営の中で1番深刻なダメージを負いながらも自らの意思で最前線から動こうとしない男がいた。
それこそ新参陣営攻め手の要、行方橋ダビデであった。

ダビデの能力は質量をもった残像を生み出す能力である。
この残像はダビデ本人に準ずる攻撃力と耐久力を有し、手数を増やす能力として新参陣営内で重宝されていた。
そのダビデが今、鬼気迫る形相で残像と共にB廊下に陣取り古参の進軍を牽制している。

ダビデの負った傷は生易しいものではない。
残像を生み出すだけでもかなりの体力と精神力を要するというのに、そのあとに古参魔人・御厨の能力によって心身ともにボロボロにされ、泣き面に蜂とばかりに親友・緑風の死に様まで見てしまった。
本人は

「うおおおおお!!! こんなことで残像を消してたまるかァーーー!!」

と気力を振り絞って能力を維持しているが、傍でその様子を見ている新参魔人達の中には彼の見舞われた数々の不幸に同情の念から涙を浮かべているものさえいる。
十年ほど前にトランプが体に刺さり集中力が切れたために能力を維持できなくなった分身能力者がいたが、彼を比較対象として挙げるなら何故ダビデが能力を維持できているのか不思議なくらいなのだ。

そんなダビデの後ろで彼を見ていた新参陣営リーダーの稲荷山 和理(いなりやま にぎり)は後にこう語る。

「あの時のダビデ君の様子は今でも鮮明に覚えています。
…ダビデ君、緑風君と仲が良かったんですよ…。
雰囲気が似てたし、たぶんお互いどこか惹かれるところがあったんじゃないですかね。
そんな緑風君が死んじゃって、とても悲しかったんでしょう…。
あんな風に声を荒げて必死になっているダビデ君を見たのはあれが最初で最後でした…。
あの時のダビデ君からは頼もしさよりも怖さを感じてしまいましたね…。
手負いの虎というか…こう…逆鱗に触れられた龍のような荒々しさがありました。」


→「ドラゴン」という不吉な属性を得て生き残れるのか行方橋ダビデ!
次回! 死なせません!!私が死んでも守ります!!な第3ターン!

205みやこ@梨咲 みれん:2011/06/23(木) 04:06:18
【死なせません!!私が死んでも守ります!!な第3ターン】
行方橋ダビデの消耗は誰の目にも明らかだった。
B廊下に陣取ってから早一時間、目前に控える古参主力・名戯まりあと月宮クズレのプレッシャーを一身に受け続けているのだから無理もない。
ただ、彼が一瞬でもその場を離れれば瞬く間に敵がなだれ込んで来ることは想像に難くなく、安易に「引け」と言える状況ではなかった。

そうしたつばぜり合いのような緊張状態が長い時間続いていたのだが、ついに契機が訪れる。
今まで頑なに沈黙を守ってきた古参陣営リーダー・アキカンが能力を発動したのである。
アキカンの能力の禍々しさはその場にいた全ての新参魔人が知っていた。
味方の古参魔人を媒介として発現するアキカンの呪いは逆らう者全てに凄惨な死を与える。
この能力が発動された時、新参陣営には逃げる以外に有効な選択肢が無いのだ。

「おい、さがれ馬鹿 病院で栄養食を食べる事になる」

業を煮やした新参陣営の一人がダビデに撤退を促すが、ダビデは一切反応せずに残像の維持に集中を傾けている。
そんなダビデの努力をあざ笑うかのようにアキカンの能力を受けた古参魔人・重川がB廊下に飛び込み、ダビデの残像を拳で殴りつけた。
パンッと小気味のいい音を立ててはじけ飛ぶ残像。
残像の維持以外何も考えないことで発狂しそうな精神状態を抑え込んでいたダビデはこれにより心身虚脱に陥ってしまった

分身も消え、心身共に消耗しきり、もはや彼を守るものは何も無くなった。
「これが最前線に立つ者の定め」とばかりに間もなく訪れるであろう死を受け入れた様子でダビデは力なく座り込んでいる。
目前には分身を殴り消した古参魔人の重川、後詰めには名戯まりあや月宮クズレをはじめとする古参陣営の手練れが5名も控えている。
これをどうこうするのは例え万全な状態なダビデをもってしても不可能で、ましてや消耗しきった彼ではなおさらである。

「(最早ここまで…佐座(さざ)…速右(しゆう)…死ぬ前にもう一度…)」

「『死ぬ』はやめようよ!!!」

死を覚悟したダビデと重川の間に割って入るように一人の半透明な少女が現れた。
古参陣営の方を向き華奢な手足を目いっぱい広げて仁王立ちの構えでキッと重川を睨みつけている少女の名は梨咲(ありのみざき)みれん、新参陣営の二枚盾を冠する防御能力者である。
遠い昔に自殺した少女の幽霊である彼女は自殺後になって自らの愚かな行為を悔い、同じ過ちを犯そうとしている人間を見つけるとついつい諭したくなってしまうのだ。
また彼女は幽霊特有のスキルをいくつか習得しておりダビデの心を読んだのもそのスキルの一つである。

206みやこ@梨咲 みれん:2011/06/23(木) 04:06:37
「私が来たからもう大丈夫だよ!! ちょっと下がって見ててね!!」

そう言ったみれんに対して「余計なことを」とダビデは心中で毒づいた。
精神が枯れ切っているダビデはもはや生に対する意欲が薄く、むしろ死にたいとすら思っていたのだ。
自身の自身たる証である能力に犯され、親友を目の前で殺され、最後の精神的支えであった発動中の能力が消えた今、彼を支えるものは何も無かった。
元々陣営に対する忠義心は薄く、新参陣営の中で行われていた友情ごっこも弱り切った彼の生きる動機となるには足りなかった。
もうどうでもいいんだ、もう―――――
彼がその次の言葉を連想した瞬間、みれんは大声を張り上げた。

「『死ぬ』はっ!! 『死ぬ』はやめようよっ!!!」

それは何の代わり映えもしないいつも通りの台詞だったが、彼女の声は震えていた。

「私がファッション自殺しちゃったのは知ってます…よね…?
私は本当に下らない理由で死んじゃったんです。
はじめて好きになった男の子に勇気を出して告白したら手酷い振られ方をしちゃって…。
そのショックで…つい…。
…そんなのってありきたりで馬鹿馬鹿しいって思いますよね?
私もそう思います。
でも今の私はそう思えても当時の私はそうは思えなかったんです。
その時の私の頭の中はその男の子のことしかなくて、それがダメになったら全部がダメになったような気がしたんです…
だから今がダメだと思っても実は全然ダメじゃないっていうか…その…
うまく言えないんですけどとにかく『死ぬ』はダメなんですっ!」

みれんは拙い言葉を一生懸命紡ぎだし、ダビデを何とか説得しようと試みた。
しかし彼女の必死の説得が彼の心を打つことはなく、むしろ薄っぺらな内容の説得は彼の心をより一層冷やしてしまったのだ。
だが一周回ってそれは吉とでた。
死にたい死にたいと思っていたダビデの心はもう思考することすら面倒だという領域に突入したのだ。
その結果ダビデは煩い音から遠ざかりたいという原始的な欲求に素直に従うようになり、大声を放つみれんを嫌いズルズルと自陣営の奥へと下がっていったのである。

ダビデの心を読んでいたみれんは彼の精神が今なお世紀末な状態にあることを知っていた。
しかしそれでも、先程まで目にいっぱいの涙を貯めていた彼女の顔には安らかな笑みが浮かんでいる。
自分の想いが全く伝わっていなくても、たとえそれが一時しのぎの生だとしても、とにかく死なせなければ先に繋がることを彼女は知っていたのだ。

自分で捨てたもう無い先に未練を抱く、そんな辛いのは私だけで十分です。

ダビデはいずれ元気になって戻ってくる。
その未来に繋ぐため、まずは今この場を死守しなければいけない。
覚悟を決めたみれんは改めて重川と視線を合わせる。

みれんがダビデを説得している間、重川とて遊んでいたわけではない。
重川は精神を集中した状態で重川流格闘法の構えをとって幽霊の様子を静観していたのだ。
それは幽霊独特のただならぬ気配に押し込められたというわけではない。
彼女は長い戦闘経験から自分の会心の一撃を3発〜4発打ちこまなければ目の前の敵が沈まないであろうことを察知したのだ。
複数回拳を打ちこもうとすれば必然的に隙が発生する。
そして隙ができれば幽霊の後ろに控えている魔人に仕留められてしまう。
故に殴らず静観は武道家である重川らしい合理的な判断だったと言えよう。

そんな重川の様子を見てすぅっと深く息を吸ってから、みれんはありったけの大声を張りあげた。

「私がここにいる限りこれより先は無いと思って下さい!!!
誰ひとり通しません!! 誰ひとり死なせません!! 私が死んでも守ります!!」

こうして幽霊と古参主力達によるB廊下防衛戦がはじまったのである。
なお、この声を聞いた新参陣営ベンチから「ジブンもう死んどるんとちゃうんかーい!!」という関西弁がやまびこのように響いてきたことを追記しておく。

207みやこ@梨咲 みれん:2011/06/23(木) 04:06:57
新参陣営と古参陣営がB廊下を巡って火花散る攻防を繰り広げているそのさなか、「奴」は古参陣営の奥深くに現れた。
「奴」は所謂転校生と呼ばれる存在だった。
経験豊富なダンゲロスプレイヤーにとっては周知の事実だが、転校生というのはインベーダーゲームでいうところのボーナスUFOのような存在であり、出現と同時に各陣営にポイント目当てに命を狙われてしまう大変不憫な役割なのだ。
過去のある転校生は登場直後に瀕死にされた上に童貞を奪われ放置された。
またある転校生は焼きそばパンを食べさせられて瀕死になった上に隅っこで戦いが終わるまで放置された。
この瀕死からの放置プレイはダンゲロスの歴史を重ねるにつれ伝統芸能のように確立されていき、それに比例して当初「異界から召喚されし、圧倒的な戦闘力を持つ魔人」という触れ込みで一般魔人を震え上がらせていた転校生の威厳は地に落ちていったのである。

故に今日の新参対古参の戦いにおいても、両陣営共に転校生に対してそこまでの警戒心を抱いておらず、「まぁでてきたら殺してやろう」程度の認識しかなかった。
だが「奴」はその認識を真っ向から裏切り、両陣営に衝撃を与えたのだ。
「奴」の名は「HET壮九郎」といった。

HETとはハイパーエリート転校生の略である。
HET壮九郎は自身のようなハイパーエリート以外の者に生きる価値は無いという考えの元、視界内に入ったHHE(非ハイパーエリート)を片っ端から灼き尽くす特性を持った転校生であった。
なお、HET壮九郎の定める基準を満たすHEは希望崎学園内に存在していないため、つまるところ現在古参対新参に参加している全ての魔人が彼の抹殺対象となるのだ。

そのHETは実にHE然とした優雅な振る舞いで登場し、手始めにたまたま視界に入ったHHE魔人を殴り殺した。
この仕事の早さこそHETがHETたる所以である。
そしてその殴り殺されたHHE魔人というのが誰ならぬ古参陣営リーダー・アキカンであったことにより戦況は一変する。

阿野次のもじの歌によってただでさえ精神を削られていた古参魔人達は、突然のリーダーの死に直面して半狂乱状態に陥った。
さらに古参陣営にとって都合の悪い事にはアキカンが死んだことにより、アキカンが重川と六埜九兵衛(ろくのきゅうべえ)にかけていた能力が解除されたのだ。

一方、新参陣営も前線に出ていた重川の不気味な付与が霧散したことからアキカンの死を察して、今が好機と総攻撃をかけることを決意する。


→熱を帯びるB廊下の攻防! 戦いはいよいよ佳境へ!
次回! 激動波乱な第4ターン!

208みやこ@梨咲 みれん:2011/06/23(木) 18:50:26
【激動波乱な第4ターン】
一人孤独にB廊下防衛に勤しんだ幽霊少女は当初の宣言通り誰も通すことなく、約30分もの長い間この場所を守り通した。
その彼女の眼前には息遣いこそ荒くなったものの未だ凛とした構えを解かずにいる重川がいた。
重川はみれんと対峙して構えた瞬間から今まで、構えを崩さず睨み合いを続けていたのである。
しかしそこは人間と幽霊、多少の不意打ちを貰っても死にはしない幽霊に対して不意打ち一発で死んでしまう人間の方が危機感を持って対峙しなければならない。
後の後であろうと、とれさえすれば及第点が貰える幽霊と最低でも後の先をとらなくては落第の人間とでは比べるまでもなく後者の方が不利なのである。
そして如何に師範クラスの使い手といえど、気を充実させたまま構え続けるには大変な気力と体力を要するのだ。
それらの差が現在までに蓄積された疲労の差として如実に表れてきている。
あまり疲労の色が見えないみれんに対しずっと気を張り詰めてきた重川の全身からはおびただしい量の汗が噴き出ていた。
その汗ははじめうっすらと浮かんでいた程度だったのだが、10分、20分と経つにつれ徐々に粒状なり、やがて統合され流れへと収束していった。

そうして今、収束した一筋の汗が彼女の額から瞳に向かい流れだした。
これを拭うためやむなく重川は一足一拳の間合いから飛び退く。
離れて額を拭う重川を見て一瞬だけみれんは気を緩めた。
そして、これが勝負の分かれ目となったのである。

梨咲みれんの胸から下が爆ぜた。

209みやこ@梨咲 みれん:2011/06/23(木) 18:50:50
―――――増援として呼び出された古参魔人・錫原 呂々郎(すずはら ろろろ)は自らの不幸と、不幸ばかりを与えてくるどうしようもない世界を呪った。

はじめに、増援として呼び出された位置からして致命的に不幸だった。
よりにもよって新参陣営のど真ん中、しかも新参のリーダーである稲荷山和理の目の前に召喚されてしまったのだ。

新参の魔人達に囲まれ、魂を握る即死寿司職人・稲荷山を前にして、これはたまったものではないと自陣営を目指して遁走を計った呂々郎であったが、当然のように稲荷山が後を追いかけてきた。
それでも「きっと手薄なD廊下からなら自陣営に脱出できるはず」という希望にすがって呂々郎は逃走を続けていたのだが、その希望は儚く打ち砕かれることとなったのだ。

「またこんな役か…」

呂々郎唯一の脱出経路上には新参陣営の刺客が立ちふさがっていたのである。

「あなたにぴいぃぃぃぃ〜〜〜ったりな特殊能力!
見せてちょおおだあああぁあああああいいい!!!!」

まるでそれはお伽噺に出てくる怪物のような魔人だった。
魂を喰らう鬼、人を喰らう山姥、そんな怪物達が呂々郎の脳裏をよぎった。
生殖器や性本能を持ち合わせていない呂々郎の関心は向かなかったが、内腿にぬらぬらと輝いている淫蜜がその魔人の危険さを際立たせていた。

前門の痴女後門の寿司職人。
将棋やチェスでいうところのチェックメイトに嵌った呂々郎は、こうして世界を呪ったのであった。

210みやこ@梨咲 みれん:2011/06/23(木) 18:51:12
―――――重川が事態を理解した頃には、全てが終わっていた。

『私が飛び退いて汗を拭った瞬間、目の前の幽霊が爆ぜた。
そしてその爆発と同時に床スレスレの軌道を描きながら銀の閃光がこちらに向かって来て、
私が迎撃に繰り出した下段突きをかわしたその閃光は、
カウンター気味に私の水月に手刀を深々と差し込んだ、…か。
低い姿勢での高速移動技術とそれを支える強靭な足腰。
私の下段突きをものともしない良い目と勝負度胸。
この肉体を貫くほどに鍛えられた鋭利な手刀。
なるほどどうして―――――』

「―――――御美事(おみごと)!」

この一瞬の攻防を重川は回想し、そう一言だけ言い残して崩れ落ちた。
重川紗鳥、即死。

重川を刺した銀髪の少年は重川の中から血まみれの右手を引き抜く。
そして彼は死体となった重川を優しく寝かせると古参陣営の方に向かい肘から先をゆるやかに回し、半身の戦闘姿勢を取った。
彼は強者ぞろいの希望崎学園一号生の中でも屈指の拳法の実力を持つ痩身銀髪の美少年

「行方橋くん!!」

ようやく彼の正体に気付いたみれんが歓声を上げる。
そう、銀髪の少年の正体は数十分前にリタイアしたかと思われた行方橋ダビデだったのだ。
相変わらず精神的にも肉体的にもボロボロで言葉を発する余力は無いようだが、その眼には消えていた闘志が再び戻っていた。
(この脅威の復活劇の裏には彼の恋人である左高 速右(さたかしゆう)の活躍があったのだが、ここでは割愛する。)

「…って!!いくら私が幽霊だからってこんな乱暴なことしちゃだめですよ!!
私が死んじゃったらどうするんですか!? すごくびっくりして心臓止まるかと思いましたよ!!!」

と、自分が目暗ましとして使われたことに対してプンプンと腹を立てているみれんをダビデは片手で制した。
目前に、あの緑風を葬った精神即死魔人・月宮が迫ってきていたのだ。
多少回復したとはいえ未だダビデの精神はゼロであり、対する月宮は能力休みも解け万全の状態。
まともにぶつかったとき、どちらに軍配が上がるかは明らかだった。

しかしダビデは一歩も引こうとしない。
親友・緑風を殺した魔人に、刺し違えてでも一発ブチ込んでやりたいという想いが彼に引くという選択肢を与えなかったのだ。
それを知ってか知らずか月宮はニッコリ笑うと月の力を秘めた即死ステッキを構え、一騎打ちを誘った。
むろんそれは遠間からの誘いであり、いかに拳法の達人といえども一瞬のうちに詰めることのできない距離がダビデと月宮の間に存在していた。
それでも不利を承知でダビデは駆けた。
対重川戦で見せたのと同じ閃光を思わせるほどの疾走ではあったが、ステッキを振りおろしきるまでにかかる時間はあまりに短く、行方橋ダビデぼ即死は避けられないかと思われた。
しかし、

「あまり調子に乗ってると裏 世 界 で ひ っ そ り 幕 を 閉 じ る」

月宮がステッキを振り終わるより早く、ある新参魔人の能力により月宮はいくえ不明になったのである。
月宮クズレ、永続戦線離脱。

「し、師匠!!!」

予想外の助太刀の主を視界に捉えたみれんがまたしても歓声を上げた。
彼女が師匠と呼び敬愛するその魔人は新参陣営の二枚盾が一人、名を「武論斗さん」と言った。
彼の能力はビビりが鬼なった貧弱一般人を全身からかもし出すプレシャーでズタズタにして、 病院送りにして栄養食を食べさせるという論理能力である。

「師匠が来てくれて心強いです!!」

「シレンは見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない」

お互いがお互いを認めあっている二枚盾の二人は、戦場での再会を心から喜んだ。
そしてついに並び揃った二枚盾の壮観さにあてられた新参魔人達は「きた!盾きた!」「メイン盾きた!」「これで勝つる!」と口々に持て囃し、大歓迎状態だった。

しかし、わいやわいやと浮足立った新参陣営を想像を絶する悲しみが襲った。
最初にそれに気付いたのは遅れて来たメイン盾だった。

「…この怒りはしばらくおさまる事を知らない」

彼が憤怒の炎を燃やす理由は視線の先にあった。
そこには先程まで獅子奮迅の働きを見せていた行方橋ダビデの死体があったのだ。


→さらばダビデ!マスター・チャイナ暁に死す!
次回! 大団円な第5ターン!

211稲枝:2011/06/30(木) 20:03:52
アッシーナ初夏のはちみつ朗読会 ジャケット 目次
ttp://pixiv.blogimg.jp/yu-nomi/imgs/0/7/07b0033a.jpg

212仲間同志:2011/06/30(木) 20:51:25
ヒャッハー!みやこさんのSS完結してないけど投下しちまえー!

諸君 私はハッピーエンドが好きだ
諸君 私はハッピーエンドが好きだ
諸君 私はハッピーエンドが大好きだ

友情が好きだ
共闘が好きだ
完勝が好きだ
仲直りが好きだ
お約束が好きだ
大団円が好きだ
無血開城が好きだ
甘い展開が好きだ
デウス・エクス・マキナが好きだ

教室で 廊下で
校庭で 屋上で
体育館で 保健室で
職員室で 秘術室で
媚術室で 死兆覚室で

この学び舎で起こりうる ありとあらゆるハッピーエンドが大好きだ


何が起こっても怯まない主人公が 必殺技と共に敵達を吹き飛ばすのが好きだ
指揮官を失った雑魚敵が 戦意喪失してちりぢりになった時など心がおどる

命を張って味方を助ける 心熱き漢が好きだ
どう考えても絶体絶命の状態で 巨大な爆弾の爆発と共に消えておきながら
なんだかんだで平然と復活したときなど胸がすくような気持ちだった

昨日の敵が今日の友となり 敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
かつて味方を苦しめた必殺技の数々が 新たな敵を 縦横無尽に蹴散らしている様など感動すら覚える

ライバルが主人公のピンチに駆けつける様などはもうたまらない
口では悪態をつきながら まるで10年来の親友のように
主人公とライバルが絶妙なコンビネーションを見せるのも最高だ

そうしたご都合展開を繰り広げ 冷静に考えて想定しうるあらゆる問題を闇に葬り去り
誰一人欠けることなく勝利の二文字を掲げて物語が決着した時など絶頂すら覚える

主人公が奈落の底に投げ出されるバッドエンドが嫌いだ
必死に守るはずだった仲間が蹂躙され 主人公が殺されるバッドエンドは とてもとても悲しいものだ

主人公に痛みを強制するトゥルーエンドが嫌いだ
何かを失い 悲しみを胸に明日へと進むトゥルーエンドは屈辱の極みだ


諸君 私はハッピーエンドを 幻想の様なハッピーエンドを望んでいる
諸君 私と共に先駆けた新参達
君達は一体 何を望んでいる?

更なるハッピーエンドを望むか?
情け容赦のない 糞の様なハッピーエンドを望むか?
ご都合主義の限りを尽くし 上等な料理に蜂蜜をぶちまけるが如き サッカリンの様な結末を望むか?


「ビッチ!! 触手!! 妹!!」


(´・ω・`)


……よろしい ならば応援だ

我々は満身の力をこめて今まさに書き込むボタンを押さんとする人差し指だ
だがこの蒸し暑い梅雨空の下で一ヶ月もの間 堪え続けてきた我々に ただの応援では もはや足りない!!

大応援を!! 一心不乱の大応援を!!

我らはわずかに31名 二戦制の規約に満たぬ新参にすぎない
だが諸君は 一騎当千の新強者だと私は信仰している
ならば我らは 諸君と私で総兵力2チームと1人の軍集団となる

我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし 眼を開けさせ思い出させよう
連中に魁の味を思い出させてやる
連中に我々のSS朗読の音を思い出させてやる

天と地のはざまには 奴らの経験では思いもよらない事があることを思い知らせてやる

31人の魔人の応援団で
本戦終了後も戦勝SSを投稿し尽くしてやる


「最後の2チーム+1名 陣営ラジオより全新参メンバーへ」


第二次魁!!ダンゲロス応援作戦 状況を開始せよ

征くぞ 諸君

213稲枝:2011/07/03(日) 00:42:19
SSに挿絵つけました (下のほう)
tp://pixiv.cc/yu-nomi/archives/1677489.html

214仲間同志:2011/07/03(日) 08:41:34
みやこさんのSS完結後に投下する予定だった戦勝SSだけどスリムサイズにして投下しちゃえ!
〜4ターン目先手終了後の分岐世界(パラレル・ワールド・エンド)〜 新参Bチーム戦勝記念SS

緑風「――んん……ん?」
梨咲「ああ!緑風さん!!」
緑風「あれ?梨咲?えーっと俺は……ここはあの世か?え?お前成仏したの?」
梨咲「何言ってるんですか。ここは保険室ですよ」
緑風「え?だって俺、古参のヤツに殺されちまったんだよな?」
梨咲「それがですね、あの後D・Pさんがやってきて緑風さんのこと治してくれたんですよ!」
緑風「え?」
梨咲「だから……緑風さんは今、ちゃんと生きてますよ!」
緑風「え?あれ?D・Pってアイツ女しか治せないんじゃなかったか?」
梨咲「なんでも時間と設備があれば男でも治せるとか言ってましたよ。戦闘中なんかじゃ女しか治せないけどな、って」
緑風「なんだそりゃ……あ!?ってことは覇竜魔牙曇(ハルマゲドン)は決着ついたのか!?」
梨咲「はい!緑風さんのおかげで、新参Bチームは皆無事です!覇竜魔牙曇は古参陣営の降参で決着しました!」
緑風「おお!ってことは俺たち新参陣営の勝利か!」
梨咲「はい!完勝です!」
緑風「いよっしゃあ!」
梨咲「本当に……緑風さんも助かってよかったです……私……すごく……」
ダビ「佐座!目を覚ましたか!」
緑風「ダビデ!お前も無事だったんだな!」
ダビ「ああ。と言っても俺も一度は死んだようなものだったけど……な」
緑風「あん?どういうことだ?」
ダビ「俺も古参のヤツに殺された、という記憶はあるが、気付いたときには殺される直前に古参陣営が降参していた」
緑風「は?何を言ってるかわからねーぞ」
夢追「事象の改竄……ですよ」
緑風「……誰?」
ダビ「俺の台詞を取るな。夢追」
緑風「夢追!?ああ、夢追か!……着物なんて着てるし眼鏡かけてねーし、髪型も違うからわからなかったぜ」
夢追「覇竜魔牙曇で服がボロボロになっちゃいましてね。大至急着替えたんです」
ダビ「ボロボロになったというか」
夢追「ストップ!服持ってきてくれた親友にも泣かれちゃいましたし、反省してるんですよ!」
ダビ「反省……ね」
夢追「と、とりあえず今度からもうちょっと破れにくいようスパッツじゃなくてハーフパンツにでもしようかと」
ダビ「ほう」
緑風「あ!アレは!?」
夢追「えっ!?なんですか!?」
緑風「……」
ダビ「……」
夢追「……」
緑風「よくわからねーがどうせ夢追がいつも通りのことやって、そしてさっぱり反省してないってことはわかった」
ダビ「ああ、そうだな」
夢追「は、反省はしているのですが条件反射で……というか話を本筋に戻しましょうよ!」
緑風「ああ、事象の改竄だっけ?」
夢追「はい。どうやら古参陣営には既に起こった出来事を時間を遡ってなかったことにする能力を持った魔人がいたようでして」
緑風「はあ!?無茶苦茶じゃねーか!」
夢追「まあ自由に使えるようなら無茶苦茶もいいところですが、どうやら改竄できるのは途中経過くらいで結果は変えられない能力のようです」
緑風「あー、つまり、古参陣営がこっぴどく負けた。事象改竄能力を使って時を戻し、こっぴどく負ける前にさっさと降参した。そういうことか」
ダビ「どうやらそのようだ。まあ、おかげで俺は無事に生き延びれたわけだが」
緑風「結局死んだのは俺だけかよ。格好つかねーな」
夢追「まさにD・Pさんの言った通りってわけですね」
緑風「ああ?D・Pのやつが何か言ってたのか?」
夢追「はい、彼の完全蘇生ですが……対価があることをお忘れですか?」
緑風「対価?……あぁ、そいつが死んでも成し遂げたかったこととかなんとかだっけか?」
夢追「そうです。命を賭したその理由、それを対価として蘇生させる能力です」
緑風「見たとこ俺には何の変化もねーけど……俺は何を支払ったんだ?」
夢追「“ヒーローの死という見せ場”です」
緑風「……は?」
夢追「D・Pくんは緑風くんの格好良く死ねる見せ場を対価に生き返らせてくれたんですよ」
緑風「……」
ダビ「クク……」
夢追「ふふ……」
緑風「……ぷっ!あっはっは!あー……なんだそりゃ。あいつそういうこと言うやつだったのか」

215仲間同志:2011/07/03(日) 08:43:42
のも「傑作だね!あるいはツンデレ!」
緑風「おお、阿野次」
ブロ「緑風お前の今回の活躍は見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない」
緑風「武論斗さん!」
ブロ「お前の活躍に免じてジュースをおごってやろう」
緑風「俺、そんなに活躍したのか?一人で突っ走ってさっさと死んじまっただけのような」
ブロ「活躍しようとして活躍するんじゃない活躍してしまうのがナイト」
ダビ「お前が囮になってくれた。それが今回の新参陣営の勝利につながった。それは事実だ」
のも「格好良かったよ!さっすが主人公!」
緑風「へへっ……そうか……って、なあ?あっちの隅っこで稲荷山は何やってるんだ?」
和理「……私の……究極の……握り寿司……」
ダビ「ああ、転校生の魂で究極の握り寿司が完成するはずだったんだが」
のも「私が転校生をひきつけてね」
ダビ「だがいざ寿司を握ろうという直前で古参が白旗をあげて」
のも「転校生もどっかいっちゃって」
和理「……完成すると……思ったのに……」
緑風「ああーなるほど……おい!稲荷山!」
和理「あ、緑風君。もう大丈夫?」
緑風「おう!お前もまあ寿司は残念だったが新参は完勝したんだろ!チームリーダーなんだからもっとシャキっとしろよ」
のも「そうそう!和理のこの通信機を使った戦術ラジオ作戦はすっごい役に立ったんだし、胸はっちゃいなよ!」
和理「そうね。できなかったことを悔やんでも仕方ないし、折角古参に勝ったんだからもっと喜ばないとね」
夢追「ということは当然、この後……?」
和理「ええ!転校生握りは出来なかったけど、とびっきりのお寿司をみんなに振舞ってあげるわ」
のも「やったあー!」
緑風「おおーっし!なんか安心したら腹も減ってきたし、思いっきり食うぜ!」
ダビ「待てよ佐座。ひとつ忘れているぜ」
緑風「あん?何をだ?」
夢追「ああ、そうですね」
ダビ「ほれ、お前を心配してくれていたヒロインに何か言ってやれよ」
梨咲「……」
緑風「あー……梨咲……」

216仲間同志:2011/07/03(日) 08:44:54
梨咲「緑風さん……」
緑風「なんか心配掛けさせてごめんな。一人だけ死んじまって、結局生き返って、ほんとD・Pの言うとおりかっこ悪く生き残っちまって」
のも「カーット!」
梨咲「えっ!?」
緑風「な、なんだよいきなり」
ダビ「おいおい佐座!お前の中二力はその程度だったのか?」
緑風「は?どういうことだよ?」
ブロ「おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?」
のも「聞こえてない」
夢追「何か言ったの?」
ダビ「俺のログには何もないな」
緑風「みんなしてなんだよ!?」
夢追「ほら!今は緑風くんの見せ場なんですよ!」
のも「心配するヒロインに掛ける主人公の台詞ってものがあるじゃん!」
緑風「……あー、なんかお前らの言いたいことが分かった……」
ダビ「ほれ、事象の改竄だ。もう一回」
のも「テイクツー!アクショーン!」
梨咲「え、ええっと?みなさん?」
緑風「あー……梨咲」
梨咲「あ、はい」
緑風「心配してくれてありがとうな。だが、俺のことなら心配無用ってやつだ」
梨咲「で、でも本当にあの時はもう駄目かと思って……すごく悲しくて……」
緑風「大丈夫だ。ほら、現にこうしてぴんぴんしているだろ」
梨咲「そうですけど……」
緑風「心配するなって。俺には主人公補正って奥の手だってあるんだ」
梨咲「ど、どういうことですか?」
緑風「つまり、だ」

緑風「主人公は何があっても死なないんだよ。だから俺のことはいつでも安心して見ていろ」

梨咲「…………はい!」

のも「ひゅー!」
夢追「熱いですね!」
ダビ「世話の焼けるやつだな」
緑風「っておい!そっちに話を持っていくなよ!折角格好良く決めたところじゃねーか!」
梨咲「そ、そんな、私、その、あの……」
緑風「梨咲もここで乗っかっちゃうの!?」
和理「みんな!お寿司ができたよ!」
ダビ「おっとそれじゃあ続きは寿司を食べながらだな」
夢追「それじゃお先に……って武論斗さんもう食べてる!?」
ブロ「もぐもぐ」
のも「はやい!」
夢追「メイン盾きた!……じゃなくて速さなら私も負けませんよー!」
のも「私も私もー」
緑風「……」
梨咲「……緑風さん?食べに行かないんですか?稲荷山さんのお寿司すっごく美味しいですよ?」
緑風「ああ……もちろん食べるぜ……ただ……な」
梨咲「どうかしたんですか?」
緑風「覇竜魔牙曇の前ではヒーローとして格好良く死のうなんて考えてて、結局生き延びて、まあ主人公だから当たり前だけど」
梨咲「はい」
緑風「実際、格好良く死ねなくて、無様に生き延びて、それでわかったけどさ……」
梨咲「……はい」
緑風「ありがとな」
梨咲「えっ?」
緑風「お前の『死ぬ』はやめようよ!って言葉と……あとは一級ツンデレ師のD・Pのおかげでわかったんだよ」
梨咲「……」
緑風「無様に生き延びるってのも偶にはいいもんだな!」
梨咲「!!……はいっ!」
緑風「さ、俺たちも行こうぜ」
梨咲「あ、そうですね!早くしないとお寿司がなくなっちゃいます!」


和理「それでは新参陣営完全勝利を祝しましてー」
一同「かんぱーい!」


さんきゅーおーるきゃらくたー
さんきゅーおーるぷれいやー
そして……さんきゅー魁!!ダンゲロス!

――魁!!ダンゲロス――ハッピーエンド!!

217みやこ:2011/07/08(金) 05:48:43
【大団円な第5ターン】
「ああああああああああああ!!!!」

御厨括琉(みくりやくくる)、B.J.アキカン、そして重川紗鳥(しげかわさとり)。
相次ぐ仲間の死に直面し、古参魔人名戯(なざれ)まりあの未熟な精神は崩壊した。

『落ちつけ!』

最愛の彼の言葉も最早彼女には届かない。
名戯まりあの子宮内恋人・名戯肯(こう)は呼びかけと同時に子宮口を内側からやさしく撫で、まりあを落ち着かせようとしたが、その懸命の努力は実を結ばなかった。
頭をかきむしり、奇声を上げ、一通りの狂気的行動をとった後、彼女は感情のままに目の前の敵を殺さんと駆けだしたのである。

『ちぃぃぃぃっ!』

母体の暴走を受けて肯は能力を発動した。

彼女に襲われた新参魔人・行方橋ダビデは魔人拳法の達人だった。
拳の鍛錬の過程で彼が得た洞察眼は、一目敵を見ただけで弱点となる部位はもちろん対象が現在かかっている病気や総合的な戦闘能力まで見えてしまう冴えのある逸品だった。
その優れた目をもって彼は名戯を「戦闘力を持たないただの人間」と判断し、迅速に処理行動へと移った。
戦闘時の彼には油断も容赦もなく、それは間違いなく最適な動作で行われた最善の行動だった。
向かってきた名戯まりあの喉を貫かんと一歩踏み込んで、必殺の手刀を繰り出したのだ。
その手刀は先程重川を貫いた時と同等の威力を有しており、砂の詰まったドラム缶程度なら易々と貫通する。
だが、その手刀は彼女の命を奪えなかった。
名戯の喉は薄皮一枚傷つかず、それとは対照的にダビデの右手は指先から手首までが粉々に砕け折れた。

『母さんは俺の嫁』

ダビデは砕けた右手の痛みを感じる前に絶命した。
手刀とほぼ同じタイミングでまりあが放った平凡な平手打ちが、軽い破裂音と共にダビデの顔面の大部分を消し飛ばしたためである。
行方橋ダビデ・即死。

名戯まりあの能力「母さんは俺の嫁」は正確には彼女の能力ではない。
それは彼女の子宮の中で彼女と共存する魔人・名戯 肯(なざれこう)の能力である。
まりあのお腹に突然宿された胎児である肯は知能が異常に発達しており、胎内で精神が中二に達し魔人覚醒した。
そしてその肯の溢れ出る中二力によってまりあの肉体を保護し、本来貧弱な肉体を屈強なものに変えるというのが「母さんは俺の嫁」という能力の正体である。
ダビデの手刀がまさに突き刺さらんとした瞬間、まりあは肯によって強化され、これを撃退したのであった。

ドス黒い中二力を放出させながら、ダビデを一挙の元に葬った名戯が新参陣営を睨みつける。
その両目からはとめどなく涙が溢れ続けている。

「……ひぐっ…ぁ…ぁん…くっ…くくるさんっ…
アキカンさんっ……さ…ぐすっ…さとりちゃんっ……!
…ねぇ…返して…? 返してよォーーーッ!!!」

次の獲物を狙い再び走りだした名戯を新参陣営二枚盾の武論斗さんが組み伏せにかかる。
ブ厚い鉄の扉に流れ弾丸のあたったような音を響かせ、両者は激突した。

218みやこ:2011/07/08(金) 05:49:05



名戯の暴走は古参陣営にとって都合の悪い出来事だった。
というのも、古参陣営の参謀である負一 統色(ぜろまえ とうしき)は現在の絶望的な戦況を総合的に判断した上で降伏を検討していたのだ。
しかし、名戯が新参魔人を殺した上に暴れまわっている現状、白旗がすんなりと受け入れられるとは思えない。
最低限暴れている名戯を止めないことには交渉の余地はないだろうと考えた負一は使者を送ることにした。
彼が使者に選んだのは六埜九兵衛(ろくのきゅうべえ)という魔人だった。
六埜は女性に裏切られ続けた(と思い込んでいる)嫉妬深い性格の雰囲気イケメン魔人である。
交渉をするにあたって彼の不安定な性格を考えれば決して適切な配役であるとは言えなかったが、名戯の暴走を止められる戦闘能力を持った魔人はもう他におらず、彼に頼らざるを得なかった。
そうして六埜は降伏を申し出る為に最前線へと向かったのである。

前線へ到着した六埜はすぐさま組み合っていた武論斗さんと名戯の間に割って入った。
そして「六埜さんどいて! そいつ殺せない!」と激昂する名戯の下腹部に向かって叫んだ。

「肯ッ! 勝負はついた!
今すぐまりあの強化をやめてくれ!
俺たちは負けたんだ!」

まりあをダビデから守る為に仕方なく能力を発動していた肯は素直にその呼びかけに応じ、まりあの周囲に漂っていたドス黒いオーラは消失した。
自身の力の減退を感じ取ったまりあはより一層の混乱を見せる。

「どうしてこれじゃあ殺せない!! 肯くんっ!! 六埜さんっ!!
みんなみんな殺されちゃったんだよ!? どうして殺しちゃいけないのっ!!?」

錯乱する名戯の首に六埜はそっと自らの腕を密着させ、抱きしめるようにして絞め落とした。
そうして意識の無くなった名戯を床にそっと寝かせた六埜は流れるような動作で足を畳み、右手と左手を膝の前に揃えて地につけ、その人差し指と親指の間にできた空間に鼻を納めるようにして頭を下げた。
そう、土下座である。

219みやこ:2011/07/08(金) 05:49:22
「申し訳ありませんでした〜!
俺たち、ダンゲロスから足を洗ってハイパーエリートになります!」

と、六埜は古参陣営の総意を新参陣営に伝えた。
緑風佐座・行方橋ダビデというかげがえのない仲間を殺された新参魔人達の中には降伏に納得できず古参殲滅を望む者もいたが、そういった者達は六埜の後を追うようにゾロゾロと集まってきた古参魔人達による一糸乱れぬ土下座芸に毒気を抜かれ、不満そうな表情を浮かべながらも降伏宣言を受諾したのであった。

余力のあった新参魔人達は陣営の勝利を祝い喜んだ。
ある者は歓喜のシャウトを轟かせ、ある者はかくし芸である南京玉すだれを披露した。
戦いで消耗していた者達は安堵の表情を見せへたり込み、亡くしてしまった両名を良く知る者達は改めて彼らの為に声をあげて泣いた。

こうして、新参vs古参ダンゲロスは新参陣営の勝利で幕を閉じたかに思えたのだが…。

気の緩んだ新参たちを見て、一旦は敗北を認めた古参魔人達の心に暗い影がちらりとよぎる。
油断しているこいつらになら勝てるんじゃね?

「やっぱやーめた! エリート人生なんか糞食らえだ! 死ねぇ!」

プライドを捨て襲い掛かろうと頭を上げた古参たちの目に飛び込んで来たのは、ゲスな気配を一瞬で察知して即座に戦闘体制に戻った新参達の姿だった。

諸語須川てけりの怒りと共にざわめき逆立った髪の禍々しさは古参の戦意を根こそぎ削いだ。

審刃津志武那が持つ天秤の放つ威圧間は意気込んで上げた古参の頭を再び下げさせるほどであった。

阿野次のもじが死線に向けて中段に構えた伝説の白いギターと、夢追中のスラリと伸びた脚の先で練られた殺気は数秒先にある死の香りを強く匂わせ、古参を後ずさらせた。

埴井葦菜の操る空を覆い尽くさんばかりのアシナガ蜂達が奏でる羽音は「決して逃げられない」という絶望感を古参に与えた。

二枚盾の阿吽像のような立ち姿は大いなる存在を想起させ、古参に芽生えた反逆心をかき消した。

稲荷山和理の武術家のような握りの構えを直視した古参は己の魂の消失をイメージさせられ、ただただ震えるしかなかった。

彼らの様はまるで歴戦の勇者。

――あ、やっぱ無理だ
「すいませんでしたぁっ!」

一旦勢いで立ちあがった古参達はそのままはジャンピング土下座に移行した。
そんな彼らの姿は最高に格好悪かった。

≪新参陣営≫
・死亡(2名)
行方橋ダビデ
緑風 佐座
・負傷(4名)
武論斗さん
梨咲 みれん
夢追中
埴井葦菜

≪古参陣営≫
・行方不明(1名)
月宮クズレ
・死亡(4名)
御厨括琉
B.J.アキカン
重川紗鳥
真野望月
・負傷(4名)
名戯まりあ
負一 統色
六埜九兵衛
香川 雨曇

≪勝利陣営≫
新参陣営

〜魁!ダンゲロス・完〜


→新参陣営完全勝利!
次回!エクストラターン!

220みやこ:2011/07/08(金) 05:49:42
【エクストラターン】
新参と古参の戦いからちょうど一ヵ月後の今日、あの戦いから生還した新参魔人達は一所に集っていた。
彼らの集うそこは学園の敷地の隅に位置している雑木林の中で、横一列に並ぶ彼らの前には高さ3mほどの丸みを帯びた石があった。
大きく刻まれている「新参之墓」という文字が、その物体の意味するところを表している。
そう、本日新参魔人達は先の戦いで散った仲間を偲ぶために集まったのだ。

喪服を纏った彼らの顔には大なり小なり悲しみの色が浮かんでいる。
普段明るく元気な彼らもこの時ばかりはじっと佇み故人に想いを馳せていたのだ。

「あの時私が止めていたら」

「俺がもっと早く駆けつけていれば」

長い黙祷を経て、ぽつりぽつりと後悔と懺悔の言葉が漏れだした頃、その陰気な空気を打ち払うかのように彼らの背後から陽気な台詞が響いてきた。

「そんなことより野球しようぜ!」

やれやれどこの馬鹿野郎だと振り向いた新参達は自らの目を疑った。
声の主は先の戦いで死んだはずの緑風佐座であったのだ。
さらに驚くことに緑風の傍らには彼と同様に死んだはずの行方橋ダビデの姿もあった。

「緑風さん!! 行方橋くん!!」

いち早く一人の新参魔人が歓声を上げ彼らに駆け寄った。
それに続くように次々と歓声があがり、わらわらと二人を取り囲む。

「どうして! あの時確かに二人とも…!」

「あぁ、それは――――」

まるでテンプレート通りの質問に、緑風はニヤつきながら答えた。
あの時月宮の即死攻撃を受けた緑風の心臓は確かに停止したのだが、その代わりに魔人の核とでも呼ぶべき臓器が覚醒し彼の命を繋ぎとめたのだと。
ほら触ってみろよ、心臓はまだ止まったままなんだぜなどと無邪気に笑いながらに緑風は言った。

「じゃ、じゃあ行方橋くんは…!」

「死んだのは残像だ」

行方橋ダビデは平然と答えた。
残像使いとしてのスキルを極めた彼は、ついに自身と同じ容姿・思考・能力を持った残像を生み出すことに成功していたのだ。
彼は数年前に自身と完全に等しい7体の残像を生みだし、それを別々の場所に分けて安置していた。
そしてその完全なる残像は現在活動している「行方橋ダビデ」の消失をトリガーとし、新たなる「行方橋ダビデ」としてそれまでの記憶を引き継ぎ行動を開始するのだという。

二人の説明を聞き、新参達は更にヒートアップして矢継ぎ早に質問を投げつける。
「心臓て…緑風君月宮先輩の能力で爆散したんじゃなかったっけ…?」「ダビデお前は何人目だ?」「能力…その能力について詳しくお願いしますっ!!」「今までどこにいたのー?」「なんで二人は腕組んでるの? 死ぬの?」「スリーサイズは!?」「罵ってください!」

221みやこ:2011/07/08(金) 05:50:14
そんな弛緩しきった新参魔人達に突如異変は訪れた。
あれだけ騒がしかった新参魔人達の声がピタリと止んだのである。
声だけではない、動作もピタリと止まりそれはまるで見えない糸に括られたようであった。
常に冷静沈着な審刃津志武那(しんばつ しぶな)は現在の状況を整理した。

「(体が動かせない…! 皆も俺と同じような状態か…
…恐らくこれは、行動封印系能力者の仕業!
古参の意趣返しか…? いや、こんなことのできる能力者は古参陣営にはいなかったはず…
これはまさか…あの―――――)」

「御明察!」

フハハハハハハといかにもな笑い声を上げながらその男は墓石の上に現れた。
フードのついたマントをスタイリッシュに着こなすその謎の男は、行動不能に陥っている新参魔人達をまじまじと見下ろした後、愉悦に浸りながら演説を始めた。

「新参陣営諸君、先の戦い御苦労であった!
我々はGK10という陣営である!」

男の言葉をきっかけに墓石の後ろから10人の人影が現れた。
皆演説をしている男と同じデザインのフード付きマントを纏っている。

「まずは安心して欲しい!
動けない君達をこの場でどうこうしようというつもりはない!
本日我々は宣戦布告を目的にやってきたのだ!
君達は古参陣営を倒したことで少々増長しているようだが、彼らは所詮我々の残りカスに過ぎない!
我ら至高の10名こそこの学園の真の支配者なのだ!
圧倒的な能力と知略をその身に刻んでやろう!」

222みやこ:2011/07/08(金) 05:51:06
ワーワーと高慢な演説を持て囃すフードの男たち。
それに気を良くしたのか、墓石の上の男はフードを脱ぎ捨てた。
中から現れたのは声から連想できる通りの逞しい肉体を持つ漢臭い男だった。
その男は何を思ったのかフードを脱ぎ捨てたように帽子、学生服、Tシャツ、ズボンと順々に脱いでは捨てていった。
突然始まった誰ひとりとして得する者のいない脱衣所ショーに仲間達は唖然とした。
「あいつ、露出狂だったのか!?」「きっと汚い裸を見せつけることで新参の戦意を下げにいってるんだよ!高次元盤外戦術だよ!」「それにしても見苦しいなぁ…」
などと言っている間にその男の召し物はついに靴とブリーフのみになってしまった。
最後の砦たるブリーフに手をかけたとき、流石に仲間達も声を荒げて制止したのだがその声が彼に届くことはなかった。
こうして頭にブリーフ、足に靴のみを召した完成形変態が誕生したのである。

「あの…見苦しいのでせめてその粗末なものを隠して頂けませんか?」

見かねた一人のフードの男がそう言って白い布を墓上の男に向かって投げた。
その布をいそいそと身に纏う彼であったが、その行動がフード軍団にさらなる衝撃を与えた。
その投げ渡された布というのが丈の短いフリフリのエプロンであったのだ。
ヘッドブリーフ、フリフリエプロン、陰部丸出し、アクセントの靴という格好になってしまった彼は、もはや完成形変態の域を超えており、完了形変態と言っても過言ではない有様であった。

「…ぷっ! あははー 私だったら死んでるなー」

その言葉にようやくフード衆は集団の中に敵がいることに気付いた。
そう、墓上の男は操られていたのだ。
フードを脱ぎ捨てたその女は「身操屋(みくりや)」の異名を持つ操身術士――――

「―――――貴様はッ! 御 厨 括 琉 ッ!」

「Yes, I am !」

フードの男たちはここにきてようやく臨戦態勢に入ったのだが、もうその時には手遅れであった。
ガションガションとミリタリーファンが泣いて喜ぶようなリロード音が新参魔人達の遥か後方からこだました次の瞬間

「ムーンライト・ミラージュ・バスター!!!」

というどこかで聞いたような必殺技名と同時に射出されたエネルギー奔流によって、墓上の男は昇華して気体になったのである。
能力を放ったのは月の力で戦う美少女古参魔人・月宮クズレであった。

予想だにしていなかった古参の強襲に対しフードの集団内には混乱が生じ、新参陣営を縛っていた能力が緩んだ。
それを機に一気に戦闘態勢を整える新参魔人達。

いよいよ危機的状況に陥ってしまったフード衆を「あらあらなんだか大変そうですねー がんばって下さーい」とニヤつきながら煽る御厨。
そんな忌々しい存在を叩き切ろうと一人の男が腰に刺していた魔剣を引き抜いた瞬間、その男の上半身は消し飛んだ。

「―――――重闘法:威蛮(じゅうとうほう:いはん)」

男を消し飛ばしたそれは、武道家古参魔人・重川紗鳥が用いる重川流格闘法の奥義であった。
武器を持った相手を遠当てにより遠距離から攻撃するのがその奥義の概略である。

「な、なんで! なんでおまえらが新参陣営に味方する!?」

もう余裕もへったくれもないフードの男は思ったことをそのままに叫んだ。
それに対して御厨が少し悩んでから答えた。

「『どうして新参に味方するのか』…ですか。
動機の言語化はあまり得意ではないのですが…。
…そうですね、至極単純に言ってしまえば、私たちが新参のことを気に入っているからです。
普段は使いっ走りに行かせたりたかったりしてイジメていても、いざという時は守ってあげたいって思うんです。
古参(せんぱい)ってそういうものではありませんか?」





GK10を血祭りにあげた後、新参陣営と古参陣営が共闘して真・GK10と戦うことになるのだが、それはまた次のキャンペーンで。


→見せ場SSやっとこさ完結!
次回! 「アッシーナによる晩夏のはちみつ朗読会」 お楽しみに!

223仲間同志:2011/07/08(金) 15:12:53
「納得いかないわ……」

地の底から響き渡るような、底冷えのする声音に、勝利の祝杯を飲まんとしていた新参陣営の面々は凍りついた。
この声、このシチュエーション、このパターンは、
皆が皆、どす黒い予感を胸に、油の切れたロボットのようにぎこちない動きでギギギ……と声のした方へ首を向けると――

――あれ?このお話ってハッピーエンドじゃなかったの?
――結局、格好良く終わらせてはくれないの?
この物語の主人公である――否、先程まで主人公であった緑風は、疑問と諦観をないまぜにした気持ちで不穏な空気の発生源へと振り返ると――

はたして、嫉妬の炎を身にまとう、緑眼の怪物がそこにいた。


〜4ターン目先手終了後の分岐世界(パラレル・ワールド・エンド)〜 新参Bチーム戦勝記念SS もうちょっとだけ続くんじゃ


埴井「なんで!?どうして!?なに緑風ばっか目立ってるの!?」
和理「は、埴井さん、あなたもすっごく活躍してたわよ?あなたが睨みを利かせてくれていたお陰で」
埴井「なによ!それじゃ私がヒロインポジにならないのはなんで!?あたしなんて、その……ゴニョゴニョ……してまで戦ったのに!」
ダビ「落ち着け埴井。俺もまだケツが痛いんだ。アレは野良犬にでも噛まれたと思って忘れろ」
夢追「わ、私も親友に泣かれちゃいましたし、皆さん頑張ったってことで」
埴井「うるさいうるさいうるさーい!みんなそうやってあたしの恥ずかしいところ思い出して笑ってるんでしょ!」
緑風「すまねぇけど誰か俺にも話の流れを教えてくんない?」
埴井「もういいわ!あんた達!こいつらみんなやっちゃいなさい!」
ブロ「おい馬鹿やめろ」
和理(どうするの?この事態?)
ダビ(いつものパターンから考えるとやばいな)
緑風(え?ハッピーエンドじゃなくて全滅エンドフラグ?俺が死んでる間に何があったの?)
夢追(話すと長いんです)
のも(よし!ここは私にまかせて!いいこと思いついた!)
夢追(阿野次ちゃん!頼もしい!)
和理(何する気?)
のも(まあまあ見ていてちょうだい)
埴井「なによ!?」
のも「落ち着いてアッシーナ!皆アッシーナが一番目立ってたって思ってるんだよ!」
埴井「適当なこと言わないでよ!私が黙っててもみんな無視して話進めてた癖に!」
のも「そりゃあアッシーナのことはわざわざ言うまでもないくらい目立ってたからだよ」
埴井「後から調子のいいこと言ったって騙されないわよ!あんた達!さっさと」
のも「ちゃんと証拠もあるよ!」
埴井「証拠……?」
のも「アッシーナが一番目立ってたし、これからもアッシーナが一番目立つって証拠」
埴井「ふ、ふーん?そんなものがあるなら見せてみなさいよ。3分待ってあげるわ」
のも「じゃじゃーん!新参Bチーム戦術ラジオー!」
埴井「覇竜魔牙曇のときの通信機じゃない。そんなのがなんだっていうのよ」
のも「うふふ……これには実は録音機能もあるのでしたー!だ・か・ら」
和理「ちょ」
ダビ「おま」
緑風「?」
ブロ「おいィ!?」
のも「ぽちっとな」

裏声『ひゃーん』

のも「……ぁやぁだ///」
埴井「なっ……」
のも「ほら!コイツをユメにでも頼んでお昼の放送で流せば全校生徒の半分……いや、4分の3は一発でアッシーナのファンになるね!」
埴井「……」
のも「あれ?アッシーナ?」
埴井「……」
のも「もしもーし?」
埴井「……」
のも「返事が無い、ただの屍のようだ?」
埴井「……」

――よくよく考えてみたら阿野次ちゃんにまかせた時点でこの結末は分かりきってましたね……
――誰だよ、阿野次にまかせたやつ……
――俺の寿命がストレスでマッハなんだが……
――お寿司とっても美味しいです♪
――喜んでくれるのは嬉しいけど梨崎さん、お願いだから状況に気付いて……
――未だに状況がよく掴めてねーけど、一個だけわかったことがある……

――これ、ハッピーエンドでも全滅エンドでもねーわ……
――この物語のオチは……





こうして新参陣営総本部は爆発した。

fin

224かりあげ:2011/10/07(金) 22:19:38
この物語は英語でいうとフィクションであり、実在のモヤイさん及びオツカレーさんとは一切関係ないんだが?

 孤高のナイトなおれがひさひさにダンゲロスにやってきたのはいわば運命。
 いっておくがおれはパンチングマシンで100だすからよく覚えておけ。
 さてダンゲロスにやってきたわけだがなぜおれがやってきたのかというとあまりにも明白なはなしを話されたのだった。
 おれは紳士なナイト(紳士ナイト)だから当然人気者→もてる→人気者。もてるループから抜け出すことはおれにも無理難題(リアル話)。
 だからごく自然な普通さでおれはもてるから困っているのだ。
 しかしおれがもてるのは当然のことといえるのであったのだったがおれよりもてないやつがもてるのは理解がしがたい。
 そのもてないやつというのが大銀河とかいうやつ。
 なんでも自分のガール友達をフレンドに分け与えるというはなしであった。
 分け与えるというのはバラバラに引き裂いて分割したわけではないと改めて言っておく必要があるが誤解であると改めて言っておく。
 では一体なにを分けてやってるのかと訊くとやつはどうやら乙女の敵であるらしいことが理解したのであった。
 おれは紳士だから大銀河の悪行マジ許すまじ。
 というわけでダンゲロスにやってきたのだ(リアル話)。
 大銀河はダンゲロス最強を名乗っているらしいが調子に乗っているとバラバラに引き裂いてやろうと思ったこともある。
 そもそも最強はナイトに違いが間違いないのだがおれは謙虚ナイトでリアルモンクだから自ら最強だと言うような真似はしないが周りの連中がおれをほめたたえることもあったはずなのでおれが最強なのでやつは最強ではないQED。
 つまり大銀河をぶちのめす理由がダブルに倍化したので4倍つまり400パンチかなぐり捨てると決めるのだったのであった。

 おれは人工的に淘汰されなかったから格が違うおれの封印が解けられた瞬間に大銀河とかいう暗黒を見つけたのは見事な仕事だった。
 やつはヒ弱な一般ひとをぴょうんぴょんちゃりんちゃりんして小金を稼ぐ小金持ちの仕事はあもりにもヒキョウすぎるでしょう?
 つまりいわゆる不良が体育館裏でかりあげとかいう金銭強奪はチンピラな行為は汚いなさすが大銀河きたない。
 おれはすぐさま雷属性の左をジョーにヒットさせるイメージトレーニングをしながら紳士的に語りかけることもあった。
「おいィ? お前が大銀河とかいうアワレな野郎なら地獄の宴に参加していくえ不明になるなら今のうちだぞ?」
 すると大銀河が3回連続で見つめられた瞬間に英語でいうとほんの少しビビッた。 
 なぜならやつはボルカニックの射程内から既にバックステッポで逃げ出しすのは黄金の鉄の塊で出来ているナイトに歯向かうマネはしなかったから本能的に長寿タイプ。
 しかし時既に時間切れ。
 見事なカウンターで痛い目をみせたらやつは「そこにいたのにいなかった」という表情になった。
「おまえが大銀河だということはいくら謙虚でもナイトにはお見通しだということが分かるには9秒あれば十分だと思ったがその通りおれがナイトであることは一目瞭然。つまり大銀河がおまえであるとおれは分かる」
 論理的な説明で大銀河は観念したらしく逃げ出すこともしないでおれの顔を見ているがおれはリアルモンクなので死角はない。
「聞くところは耳で聞いたがのだが大銀河の噂は良くないと聞いた。なぜならよくない噂を聞いたのだ」
「なんでそうなるのか理解不能状態。おれは不良だから喧嘩も強いしバイクもヘルメットかぶらないで乗る」
「馬鹿か? 不良だからなんでも許されると思ったらおれが許さないという真理を知らないのかよ。おまえが十萌ちゃんにしでかした罪は間接的とはいえ殺人罪と同様だろ」
「ふざけるなよお前。大体そう言うお前は十萌と関係があるのかよ。見ろ、見事なカウンターで返した。調子に乗ってるからこうやって痛い目に遭う」
 なるほど。関係ないといえばあもり関係はないが浅はかさ愚かしい。
「おれはLSメンバーから信頼されているから恋のお悩み相談にも乗って上げる親切さも兼ね備えているときに十萌ちゃんたる存在が悪い男に騙されているつまりお前に騙されていると相談を持ちかけられたので見事解決してみせると決定したのは決定事項」
「完全に論破したので終了したのでこの会話は終了」
 ビビって話を斬りあげるふいんきを醸し出した瞬間におれはおれと大銀河じゃない存在に声を掛ける瞬間に新たなる会話が成立した。

225かりあげ:2011/10/07(金) 22:20:39
「お前はそれでいいのか?」
 大銀河のそばにいたのは他ならぬ十萌に違いない。
 彼女は大銀河の顔色(肌色)を眼をそらしながら見たり見なかったりまた見たりしていたようだがオロオロしていた。
「あ、あの……、その……」
「おいィ? お前は俺にイラストを捧げたんだよな? 女に二言があるとは聞いていないぞ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 大銀河が睨むことによって十萌は意気消沈。
 図に乗っているやつが鼻高い鼻をへし折ってやりたい衝動に駆られた。
 やつはぬけぬけしている。
「俺は十萌を愛しているからこの女ももちろんイラストも全て俺のものなんだよナイトおよびでない」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 oh……。
 おれの雷属性のショック療法でも十萌ちゃんの目玉を目覚めさせることは難しいかもしれないが不可能を可能にすることがナイトの本領発揮でしかない。
 さて肝心の十萌がぜんzえん盲目なノーアイズなのでおれは仕事量が爆発した。
「十萌ちゃんの眼がさめていないことは決定的に明らか。こんなチンピラがもてるわけがわけわからない」
 するとやつはニヤリと笑ったのでバラバラに引き裂きたくなったがこらえた。
「もてない野郎の僻みは浅はか愚かしいなら俺に作戦がないでもない」
「なんだというのだ」
「おい十萌。このアワレなナイトにイラストしてやれ」
「え……」
 大銀河の提案は信じられがたい提案という案を提していた。
 十萌の顔がブルーに蒼くなっていたがやがて重い口ぶりで開口一番に閉口したので沈黙が舞い降りた。
「お前はジョブを選ばないでイラストする心の広さをアピールして気持ちいいだろ」
「でも……この前も他の人のイラストして、その前も、その前もずっと他のイラストばかりで……」
「イラストの素晴らしさをこの雑魚狩り専門のナイトに教えてやるのが俺の優しさだ」
 ふたりはイラストするしないと論じ合っているときにおれはイラストしてくれると嬉しいと思っていた。
 だが突然にも突如として十萌が大銀河マジかなぐり捨てた。
「馬鹿! 私が求めていたイラストはだたのイラストじゃない……。あなたのイラストを求めていたのに……」
 おれにイラストする気はないようだ。
 しかし大銀河の高圧的命令には従わざるを得ない→ナイトイラスト→素敵→こぞってイラスト→超素敵→ナイト素敵。
 孤高の騎士が究極最強未来永劫の伝説騎士になる日も近いと思ったがおもわぬ土壇場でひっくり返った。
「おれは甘えていたということに気付いた瞬間にまさに今。そして同時にお前を愛していたと気付いた瞬間がこれから。愛している。イラストしてくれ」
「遅いのよ、ばか……っ」
 ふたりはそう言っていつの間にやらイラストしていたのでおれはバックステッポで俊足の後退りをした。
 つまりナイトがイラスト化されない→チームにやる気がなくなる→チームが終わる。
 なるほど。
 どうやらナイトの出番は無用の長い物だったようだと気付いた。
 しかしダンゲロスのヌードメーカーと同じ時代を生きる真のナイトは思わずナイトをしてしまってる真のナイトだからもててるのだという事実。
 そして最強かつ最高のナイトの存在が知らしめられる歴史が永遠に不滅だと語り継がれるに違いない。

  終。英語でいうとfin.


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