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('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです
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避難所の皆様、初めまして。このスレッドは元々vipに投下していたのですが、設定ミスや誤変換を修正するために
こちらで改正版を投下させていただくことに決めました。
各まとめ様には大変ご迷惑をお掛けする事になりましたがよろしくお願いします。
また今回の東日本大震災で被災された全ての方々に、心から御見舞い申し上げます。
今回、改訂ということでまとめ様に影響があるため、早めに投下させてもらいますが
2話までの投下が終わりましたら、次話の投下はしばらく自粛させていただきます。
----俺の財布から飛び立った番いの鶴が少しでも皆様のお役に立ちますように----
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人間(にんげん)ヒト科サピエンス種サピエンス亜種――学術名:Homo sapiens
特筆すべき身体的特徴を持たず、純粋な自然界では淘汰されるべき存在。
体長は、性差によって僅かな差異があるが 凡そ160cm。
馬や豹のように強靭な脚を持つわけでもなく 全速力で駆けたところで時速30km程度。
敵を噛み砕く顎や、切り裂く爪、刺し貫く牙も持たない。
空を飛ぶことも出来ず、海に潜ることも出来ない。
そんな抹消たる存在が
そんな生態系の台座を担うべき存在が
如何にピラミッドの頂点に君臨する“彼ら”に抗うのか。
いや、その“彼ら”を淘汰し得る存在となるのかを―――皆はご存じだろうか。
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如何に我らが鉄を打ち どれ程迄に鍛え上げようとも
彼等にとってそれを折ることは 絶望的な迄に容易い
―――伝説の鍛冶職人 竜人キバリオン―――
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渓流。山に生い茂る木々を縫うように、非常に透明度の高い湧水が流れている。
比較的標高の高いこの場所では、まだ湧水となっているが、この水が下っていくにつれて集まりだし小川となり、川となり、海へと流れていく。
そんな山間部の、比較的なだらかな部分を最低限削り取った道とも言えぬ道に一台の車が走っていた。
その車を引いているのは、『ガーグァ』と呼ばれる鳥竜種である。
ガーグァは、この地方で独自の生態系を築いてきた
鳥竜種の中でも特に大人しいモンスターである。
そんな大人しい性格から、人間の生活にも大いに重宝され
秋には収穫物を運ぶ台車を引く動力として使われたり、クエストに向かうアイルー達の移動の足となったりと
特に人と関係を持つモンスターでもある。
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時折ガーグァは逃げだそうと特徴的な冠羽を震わせるのだが、その度にドクオはガーグァを宥め
車は、ゆっくりと目的地である『ユクモ村』を目指していた。
ガーグァを器用に扱うその男。
覇気のない目、幸薄そうな人相。
('A`)「……今日の晩までには着きそうだな」
身体のラインにフィットするように作られたインナー。
厚手ながらも柔軟性を失わず、保温性には優れないが運動性に優れた物で作られている。
それはこの地方で取れない素材で作られており、それから分かるように彼は元々この地方の出身ではない。
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('A`)「ドンドルマから、えらい遠くまで来ちまったな」
時折聞こえる獣の鳴き声も、聞き慣れないモノばかりである。
だからそれは事故である。
彼がこの地方に詳しく無かった事。
聞いた事のない鳴き声に、警戒心を抱かなかった事。
彼のいる今この場所こそがユクモ村ギルドが管理する『渓流エリア』である事を知らなかった事。
そういう不幸が重なった結果が
この地方での“彼ら”との初めての出会いとなったのだ。
('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです
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何かがおかしい、ドクオは車を引くガーグァの異変を的確に感じ取っていた。
小刻みに揺らされるガーグァの特徴的な冠羽。
今までコイツが怯えているのは、ドクオに対してだった。
しかし、この怯え方は何かが違う。
自分ではない何かに怯えている。
“何か”が自分達に迫っている。 ドクオはそう確信した。
それでも彼は慌てない。
(-A-)「………」
一度目を瞑り、心を落ち着け周囲の気配を探る。
ザワザワ、と草村から異質な音が聞こえるのに気付く。
('A`)「……なにかがいるな」
段々と近づいてくるその気配に、ドクオは警戒のレベルを一つ上げる。
周囲に人の気配は無く、十中八九これは人以外の物だ。
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('A`)「……それにしては」
小さい、気配は感じるのだが大きくないのだ。
野うさぎ程度の大きさしかないかもしれない。
('A`)「まぁいいか。丁度腹も減ってたし」
そう呟くと、ドクオは余計な思考を全て端に蹴り飛ばし背後に差していた二対の刀を構えた。
ザワザワ……ザワザワ……と草の揺れが近付いてくる。
やはり大きくない。
ファンゴ程の大きさもない。
しかし早い。凄まじいスピードだ。
一瞬頭の端に『迅龍』の姿が過るが、考えすぎだと頭を振る。
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影が飛び掛かってきたのは、その瞬間だった。
視界の隅にソレを捉えると、反射的に構えていた双剣を平に返す。
ゴン、とほどよい感触が双剣を通して掌に伝わってきた。
突っ込んで来た何かがぶつかったのだと分かった。
『いったぁいニャアァァァアアア!!!』
('A`)「………」
頭を押さえながら目に涙を一杯溜めているアイルーがそこにいた。
(*;∀;)「痛いニャー、痛いニャー!!」
('A`)「なんだ、メラルーか」
痛いという割りには、耳をヒクヒクと揺らしている。
(*ノ∀;)「メラルーじゃにゃいニャ!アイルーだニャ!」
アイルーかメラルーか、限りなく微妙な毛色の存在を見てドクオは構えていた双剣を隠すように横に置いていたカバンの中にしまう。
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('A`)「そうか。それは済まなかったな。 ところでそんなに急いでどうした?」
アイルーやメラルーは、食物連鎖の外に存在する珍しいモンスターだ。
肉食獣に縄張りを荒らされたり、居住を追いやられる事はあっても
捕食されたりする事は無いのだ。
そんなアイルーが慌てている理由に純粋に興味を持った。
『チリン』
('A`)「ん、お前野良アイルーじゃないのか」
アイルーの首元に付いている鈴に気付く。
これは、このアイルーが誰かに飼われているという証だ。
ひょい、とアイルーの首を掴んで出来るだけ優しく持ち上げる。
(*゚∀゚)「おー、オレっちはギルド所属のアイルーだニャ!」
ほー、っとドクオは思わず感嘆の声をあげた。
ギルド所属と聞くと真っ先にギルドナイトが思い浮かぶが、ギルドナイトに誰もがなれるわけでもない。
それはアイルーでも同じだ。
何かしらの実績を重ねた上で、ギルドから依頼される特別なクエストをこなす。
その結果を踏まえ、適正と判断されて初めてギルドに飼われる事なる。
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('A`)「そうか、それでギルド所属のアイルー様がどうかしたのか?」
(;*゚∀゚)「そうだったニャ!あんた様は商人かなんかかニャ!? ここはユクモギルド直轄の狩猟区域『渓流』だニャ!!凶暴なモンスターだって一杯いるニャ!! そんな中を、どっかの間抜けが荷台を引いてるって聞いたから飛んで来たんだニャ!!」
('A`)「ほー、ここはもうユクモ村に近いんだな」
なるほど、とドクオは納得したように手を打った。
(;*゚∀゚)「にゃにを悠長に構えてるニャ!!大型モンスターの発見情報はにゃかったけど、この時期は青熊獣“アオアシラ”が繁殖期に入っているんだニャ!!! 面倒な事ににゃる前にここから離れるニャ!」
('A`)「せいゆうじゅう?なんだそりゃ」
ドクオは聞き慣れぬ言葉に、首を傾げた。
それもそのはずだ。
ドクオが今まで暮していたドンドルマ近辺ではアオアシラなんてモンスターは居なかったのだから。
(*゚―゚)「……あんた様、アオアシラを知らないのかにゃ?」
('A`)「残念ながら聞き覚えがないな。俺は元々この辺りの出身じゃないんだ。だからここがギルド直轄地の狩場だとも知らなかったし、この地方独特のモンスターにも詳しくない」
(*゚∀゚)「……なるほどにゃ。事情は大体把握したにゃ。しかし、もしあんた様が商人だったとしても、この地方の事を知らないただの一般人だったとしても
あんた様は……」
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『命を粗末にする大馬鹿野郎だニャ』
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なるほど、とドクオは頷いた。 確かにギルド所属のアイルーだけある。
元々アイルーは知能の高い生き物だ。 いや、知性においては人間と同等と言って良い。
ある文献によれば、アイルーは人間と同等以上の知性を持っており
進化の過程もヒトと似通っている事から、ヒトの亜種だと主張する学者もいると聞いた。
確かにこのアイルーは、ヒトと同等の知性と感性、そして経験を持ち合わせているようだ。
('A`)(……伊達にギルドのオトモをしている訳ではない、か)
(*゚∀゚)「まぁ、反省は何時でも出来るニャ!とりあえずはまず、このエリアから出来るだけ離れるニャ!!」
('A`)「……分かった。従おう」
かくして、一人の人間と一匹のオトモの脱出ミッションが始まる。
AM10:00 MISSION Start
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(*゚∀゚)「ところで、あんた様は旅の人かにゃ?」
('A`)「そうだな。ユクモ村を目指していた。」
(*゚∀゚)「おぉ!湯治目的かにゃ!?ユクモの湯は確かに危険を犯してまで浸かる価値のある物だニャ!!」
ユクモ村という言葉を出した途端に目を輝かせるアイルー。
そんな様子に若干気圧されながらドクオは答える。
('A`)「そうだな、是非一度浴びてみたいもんだ」
(*゚∀゚)「ニャハハー、きっとクセになるニャ!! そういえば、結局あんた様はどこから来たのかにゃ?」
('A`)「ん、俺か?俺は……そうだな。ドンドルマ、で通じるか?」
(;*゚∀゚)「ニャ!?それはまた長旅だったニャ! よく生きてここまでこれたものだニャ!」
ドンドルマとユクモには、計り知れない距離がある。これは形容ではなく、本当に分かっていないのだ。
お互いの存在は本や伝書で知っていたものの、気軽に交流を深められるような距離ではない、というのが第一の理由である。
乗り物と言えば、この辺りではガーグァしかない。
人間の何倍ものスピードで走り、人間の何十倍もの体力を有するガーグァ。
しかし、そのガーグァでさえ単独でドンドルマとユクモの距離を移動できるか、と聞かれれば答えは間違いなく『NO』であろう。
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単純に距離だけの問題では無いのだ。
行く手には様々なモンスターが生息している。
牙獣種や鳥竜種、万が一運が悪ければあの恐ろしい、この星の生態系の頂点に君臨する『飛竜種』に遭遇する可能性すら孕んでいる。
そんな過酷な旅をドクオはただ一人でしていたと言うのだ。
そしてもうゴールの目前まで迫っているのだ。
その事実はギルド所属のアイルーを驚かせた。
(*゚∀゚)「幸薄そうな顔をしているクセに、運の良い奴だニャ……」
('A`)「いや、いろいろ運の悪い事はあったぞ。 例えば、寝床に使っていた場所が轟竜の住みかだった事があった。
それに気付いて全力で洞窟まで避難したら、そこがフルフルの縄張りでな………」
(;*゚∀゚)「考えうる最悪の状況だニャー」
轟竜、又の名をティガレックス。
飛竜種に分類され性格は凶暴そのもの。純粋な攻撃性だけならば飛竜の中でもトップクラスだろう。
鋭い爪と牙を持ち、“人間程度”なら撫でるかの如く斬り殺す最凶の飛竜。
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('A`)「まぁ、それでも俺は生きてる。それで良い」
その時の瞳を、件のオトモアイルーは忘れられないと言う。
濁ったような目をしていた彼が、その一時だけ見せた輝き。
それこそが本質。
理性という名の仮面に隠された彼の本質なのだと、オトモは思った。
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(*゚∀゚)「それならこんなところで死んでられないニャ。オレっちが絶対にユクモの村にまで案内してみせるニャ」
('A`)「あぁ、よろしく頼むよ」
二人の、いや一人と一匹な手が重なる。
主人である狩人の為に、身を粉にして働くオトモだが、その関係は常に対等ではない。
ハンターはオトモの事をオトモとしか見ない。
それは常識であり、オトモに感情移入して冷静で無くなってはいけない、という先達からの教訓でもある。
しかし、ドクオはハンターには見えない。
だからこそオトモは、差し出された手を握る事に躊躇いは無かった。
初めての握手。
初めての対等。
不思議と自分の心が高揚していくのを感じていた。
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その様子を草葉の影から見つめる青い影に
二人が気付く事は、終ぞ無かった。
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以上1―1です。続けて1―2を投下します。
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一番重要なのは武器を鍛える事ではない。 真に必要なのは心を鍛える事。
それは狩人だけでなく、人間の終着点であり原点でもあるのだ。 鍛冶職人も例外ではない。
―――伝説の鍛冶職人 竜人キバリオン―――
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AM11:30
複雑に入り組んだ渓流を、オトモは的確な道運びでドクオを案内した。
出来るだけ目立たず、出来るだけ短距離で。 ギルドからの依頼を受け幾年もこの渓流を歩き続けたオトモにとって、それは簡単な事だった。
現在目下の問題となっている青熊獣【アオアシラ】は、繁殖期に入っている。
繁殖期というのは、どのモンスターも凶暴になる傾向がある。
その理由に挙げられるに、まず一つ目は巣、及び卵の死守である。
野生のモンスター達は、日々生存競争の中で生きている。 しかし、こと繁殖期においては一日とて身が休まる日がないのだ。
卵の破壊、子孫の死亡は即種の存亡に関わってくる問題なのだから。
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アオアシラは、二足歩行する生き物であるが
知識は持たない。
だが本能が、それを覚えているのだ。
飛竜等、圧倒的存在がいるこの世界で未だに淘汰されずに生き残ってきたモンスター達には
子孫を残す事こそが、生きる理由と言っても過言ではない。
そしてもう一つの理由として挙げられるのが、食料の確保だ。
子供達の分まで、食料を揃えるのは幾ら青熊獣【アオアシラ】と言えども容易い事ではない。
だからこそ、別の種と縄張りを争ってでも彼らは、食べ物を採りに行く。
その事を、このアイルーは誰よりも熟知していた。
だからこそ出来る限りハチの巣が出来やすいエリアを避けているのだ。
(*゚∀゚)「順調だニャ。やっとギルド規定の範囲内に入ったニャ。 ほれ、地図だニャ!」
('A`)「今は、この最北エリアか。この調子だと夜には支部のキャンプに入れそうだな」
(*゚∀゚)「ニャ!しかしここからがちと難解だニャ!アオアシラの巣がありそうなエリアがこの近くに二つあるニャ。 特に地図中央に示されたこのエリア。 ここが一番厄介だニャ」
('A`)「……なるほど。巣、か」
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