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ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです
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『樹海の進攻』
急速に拡大する森と、そこに住まう生物群の猛攻。
数千年の昔に発生したその大災害は、栄華を極めたヒトの前文明を徹底的に破壊した。
九割の人々が樹海に飲まれて命を落とし、九分の人々は飢えて死んだ。
旧世界の枠組みは滅び、混沌の時代に叩き込まれ、それでもヒトは滅びない。
底知れぬ苦難の中で、それでもヒトは生きる希望を無くさない。
人々は、勇気と知恵、そして『新たな力』を武器に樹海に挑む。
勝利は『生』を表し、敗北は『死』を表す。
全てのヒトの存亡を賭けた樹海との死闘が幕を開けた。
結末を知る者は、いない。
ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです
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……
lw´‐ _‐ノv「さて、今日は皆さんに幾つかニュースがあります
良いニュースと悪いニュースと悪いニュースと悪いニュース、どれから聞きたい?」
(;><)「ええ……」
左手の人差指、右手の親指から中指まで。
亡霊のように白く細長い指が、ミセリ達に突き付けられた。
素直別邸、数刻前。
ラウンジ最後の晩餐で、シューは『チェトレ』の三人とハイン、ジョルジュに切り出した。
シューの左後ろにはネーヨが控えていたが、右隣にはペニサスの姿は無い。
(*`ω` *)「……じゃあ、良いニュースからお願いするっぽ」
lw´‐∀‐ノv「いいのかい、そうすると後が怖いぜ?」
ミセ*゚ー゚)リ「……うん、大丈夫」
左手の人差指を畳み、咳払いを置いてから、もったいぶってシューが続ける。
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lw´‐ _‐ノv「一つ目。我々ヨツマの冒険者は、本日を以て任務終了となりました。
あとはヨツマにさっさと帰って、高めに報酬をふんだくるだけですね」
(*><)「え、本当なんですか!?」
_
( ゚∀゚)o「おー、もう帰っていいのか!」
ビロードが嬉しそうな声を上げた。
しかし、ミセリやハインの方は、返って眉間に皺を寄せていた。
ジョルジュがそれを不思議がる一方で、ぽっぽがシューに先を促す。
親指が畳まれ、残り二本。
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lw´‐∀‐ノv「悪い方の一つ目ー、これはその理由なんだけどね。ネーヨ」
( ´ー`)「ん」
ミセ*゚ー゚)リっ[巻]「皮紙……伝達書?」
ミセリはネーヨが差し出した巻物を受け取り、広げた。
細かい綴り文字で、その最上部には『スナオ』の文字が見て取れる。
視界の端で、文字に明るくないちんぽっぽが目をそらす。
lw´‐ _‐ノv「君達が護衛してた使節団の交渉は見事に失敗、先ほど騎士団もろとも追放されました。
要は、本日付けでラウンジがヨツマに宣戦布告をぶちまけたって話」
ミセ*゚ー゚)リっ[巻]「」
(*‘ω‘ *)「」
( ><)「」
まだまだあるぜ。
シューはどこか楽しそうに中指を畳んだ。
lw´‐ _‐ノv「一つ目。我々ヨツマの冒険者は、本日を以て任務終了となりました。
あとはヨツマにさっさと帰って、高めに報酬をふんだくるだけですね」
(*><)「え、本当なんですか!?」
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( ゚∀゚)o「おー、もう帰っていいのか!」
ビロードが嬉しそうな声を上げた。
しかし、ミセリやハインの方は、返って眉間に皺を寄せていた。
ジョルジュがそれを不思議がる一方で、ぽっぽがシューに先を促す。
親指が畳まれ、残り二本。
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lw´‐∀‐ノv「二つ目。ラウンジは我々冒険者に向けて子飼いの"犬"を何匹か放ちました。
騎士団は私達の回収を諦めたので、私達は自分で身を護る必要があります」
(;><)「い、犬? ラウンジは野犬まで飼いならしてるんですか!?」
(*; -ω-*)「……もうお前はいっそ、ずっとそのまま純粋なビロードで居ろっぽ……」
ジョルジュが顔を上げると、残念そうなハインと眼が合う。
……おいその顔やめろ、傷つくだろうが。ジョルジュは目で訴える。
lw´‐ _‐ノv「ペニから聞いてるぜい、ジョルジュ君。
君、すでに暗部の兵を――工作兵を三人も倒してるんだって?」
_
( ゚∀゚)o「ん……ああ、あの仮面か? 弱っちかったからな」
(∮´ー`)「……もう驚かねーよ」
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lw´‐ _‐ノv「ま、ともかく、次が最後の一つだ」
シューは左手を開いて、ヒラヒラと振った。
lw´‐ _‐ノv「……その工作兵とやらにやられたんだろうけど、既にヨツマの冒険者が殆ど連絡を絶ってる。
生き残ってるのはここの皆と、『クラン何ちゃら』のミルナ君だけだよ」
ミセリの目が驚きに開かれる。
ラウンジに来たの冒険者の中には、『クラン・ワイルドギース』の他にもう一つ"A級"ギルドがあったはずだ。
lw´‐ _‐ノv「……何を油断したのか知らないけど、『リンドウ』も消息不明だよ。
あの腐れ陰湿根暗ボッチ引籠り葉っぱ女め、どっかの馬の骨に負けたんだろうさ」
ミセ*゚−゚)リ「アイシスさんが……」
(;><)「……」
lw´‐ _‐ノv「ま、死んではいないんじゃない? たぶん生け捕り拷問コースだろうし」
それより、君たちの事だ。シューは平然と続ける。
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lw´‐ _‐ノv「君らは、どうするのさ。ここに隠れとくか、それとも逃げるか」
素直の貴族名があるから、ラウンジもここには手出しできないよ。
シューはミセリに問う。
ミセリは少しだけ考えたが、すぐに答えた。
lw´‐ _‐ノv「……ま、そうだろうね。そう思って、実は今日はゲストも呼んであるんだよ。
――おっと、ちょうど来たみたいだ」
_
( ゚∀゚)o「……」
そうして食堂の扉が開き、現れたのが。
('、`*川「シュー様。御客人をお連れしました」
( ゚д゚ )「失礼する」
A級傭兵ギルド『クラン・ワイルドギース』を取り仕切る、傭兵。
ミルナ・レヴィその人だった。
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……
_
( ゚∀゚)o「……はぁ。武人ならまずは、名乗りを上げろよ」
物思いに沈んでいたジョルジュは背中越しに突き付けられた切先に、溜息混じりに答えた。
気取られずに背後をとる豪胆さも、恐れの欠片の無い剣気も、決して悪くない。
ただ、感情を余分に込めすぎだ。折角の機会を棒に振ってどうする。
「……貴様に名乗るべき名など無い、ヨツマの殺戮者め……!」
_
( ゚∀゚)o「だったら、喋ってねぇで斬りかかれば良いだろうが。てめえは誰で、何の用だよ」
突き付けられた怒りの炎が、激しく勢いを増した気がした。
切先が離れた気配に、ジョルジュはゆっくりと首を回す。
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最初にジョルジュが見たのは、瞳に覗く憎悪だった。
それに、何百回も嗅いだ、鉄の臭い。
白い服を染める暗い赤と、画戟を握る手の同じ赤。
そして、彼女の姿は。
_
( ゚∀゚)「……嘘だろ……?」
ノリ*,,゚−゚)ilI]「……そこまで言うなら、名乗らせて貰う。
ラウンジ軍門守備隊隊長、ミリア・プラテル。宿舎で貴様らが殺した兵たちの、隊長だ!」
ジョルジュは、言葉を失くした。
彼女の憎悪の深さに、ではない。
己の内に噴き上がった憤怒にだ。
-
_
( ∀)o「俺はジョルジュ長岡。冒険者だ」
ノリ*,,゚−゚)liI]「……そうか。私と決闘しろ、ジョルジュ。武器を拾うんだ」
_
( ∀)o スッ
言われるがまま、ジョルジュは大剣を拾い上げる。
ミリアは流石に、驚きに目を見開いた。
大柄な男が両手で持つように作られたそれを、彼はまるでナイフでも拾うかの様に、片手で持ち上げ。
あろうことか、それを遠くに放り捨てたのだ
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すげー面白い展開になってきた
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ノリ*,,゚−゚)liI]「何のつもりだ?」
_
( ∀)o「良いから来いよ。用事がつっかえてるんだ」
ノリ*#,゚−゚)liI]「……貴、様……後悔するなよ……!」
ミリアは画戟を腰に構えた。
彼女の持つ、隊長の肩書きは飾りではない。
長柄の武器の心得には、人一倍の鍛練を積んだ。
素養があった親和も、武に応用できる程には高めた。
彼女が得た"武"はやがて、超高速の貫突として大成する。
しかし、それでも。
ノリ*#,゚д゚)=liI]「ぉああッ!」
鋭い踏み込みと共に、〜〜は画戟を突きだす。
……放たれた全身全霊の一撃は、常人に回避できる速度ではない。
しかし、それでも。ジョルジュは強すぎた。
-
ノリ*;,゚−゚)liI]「、な……?」
_
( ∀)o「……弱くは、ねえな。だが、足りねえ」
心臓を貫くはずだった彼女の最強の初撃は、ジョルジュの左腕であっさりと止まった。
掴まれても、弾かれてもいない。
ただその肉体に刺さらず、文字通り『止められた』。
_
( ∀)o「俺の身体に傷一つ付けられねえようなら、これ以上は無駄だ。下がってろ」
ノリ*;,゚−゚)liI]「な、何を……」
ジョルジュは画戟の刃を掴み、奪い取る。
〜〜は抵抗せずに得物を離し、その場にへたり込んだ。
ノリ*;,゚−゚)ilI]「なにを、バカな……まだ、まだ私は負けては……」
「いいや、茶番は終わりだ。もう殺すぞ?」
-
「いいや、茶番は終わりだ。もう殺すぞ?」
ミリアは力無く、その乱入者を見上げた。
( ゚д゚ )
全身から血の臭いを放つ彼は、無表情で彼女を見返す。
願わくば。
振り下ろされるナイフを見て、彼女は呆然と思った。
しかし。
ノリ*,,゚−゚)「……?」
( ゚д゚)「……どういうつもりだ?」
_
(#゚∀゚)o「どういう、じゃねぇよ……おいミルナ、まだ俺の決闘は終わってねえだろうが……!」
『岩食み』。
ミリアは知らなかったが、持ち主の代名詞として轟く、それが大振りのナイフの名だった。
傷一つ付けられなかったジョルジュの腕に、"彼"は容易く真っ赤な線を残す。
……目の前で滴り落ちる血を見て、彼女はようやく我に返った。
-
ノリ*,,゚−゚)liI]「え……あ……なんで……」
( ゚д゚ )「詭弁だな。もう明らかに勝敗は着いていただろう。なぜ敵を庇う?」
_
(#゚∀゚)o「……うるせえ。何故もクソもねえよ、この大馬鹿野郎!
てめえこそ、それだけ強いのに、なんで兵達を殺す必要があった!」
( ゚д゚ )「……何を言っている?」
ジョルジュの咆哮に、ミルナは訳が分からないと言った様子で肩を竦めた。
( ゚д゚ )「殺す方が楽だから殺した。他にどう答えろというんだ?」
-
_
( ゚∀゚)o「……ああ、そうか。わかったよ。話すだけ無駄なんだな」
( ゚д゚ ) 「俺はそうは思わないが……まぁ、もっと手っ取り早いやり方もあるな」
ジョルジュは大剣を拾いに二人に背を向け。
ミルナは二人を見比べナイフを鞘に納める。
_
( ゚∀゚)o「ヨツマへ帰還してから。邪魔が入らない時に、思いっきりやろう」
( ゚д゚ )「……ほぉ、それは楽しみだ」
(;><)「じょ、じょるじゅさん……!」
_
(;゚∀゚)o「……あぁ!? ビロード、お前なんッ――!!」
ずぶ濡れの少年を見て、ジョルジュは焦りの色を浮かべた。
ミセリやぽっぽ、ハインと共に壁上に這いあがっていたはずの彼がここに居て、他の三人が居ない。
――壁上で何か、トラブルが有ったのか。
問い正そうとした丁度その時、ゆっくりと外橋が傾ぎ、轟音と共に倒れた。
-
吹き込んできた雨風は、門下の三人を等しく叩いた。
やがて、二つの影が落ちた跳ね橋に降り立つ。
从;-∀从「ジョルジュ、ミルナ! 手を貸してくれ!」
(*;`ω` *)「っぽ"!」
_
( -∀)o「……ミリア。この決闘は、俺に預けろ。
ミルナ、この女に手を出すんじゃねぇぞ」
(゚д゚ )「出さん。そんな必要もない」
ノリ*,, −)「……ッ」
通り過ぎる二人に武器を向けるだけの力が、ミリアには無かった。
これが壁内での攻防の顛末である。
ただ、補足するならば。
-
_
( ゚∀゚)o「ハイン、ぽっぽ! 何があった!?」
「ぽ、それが……!」
ノリ*,, −)「……待って、くれ……」
冒険者たちは南へと抜けて行く。
重木で造られた跳ね橋は彼らの手で斬り落とされ、深い濠の中に沈んでいった。
近接する壁門からの増援が駆け付けたのは、それから数刻も後だ。
雨はやがて上がり、分厚い雲の向こうに朝日が昇る。
彼女はその場に――異国の冒険者との決闘に、取り残されたままだった。
補足するならば。
このラウンジ脱出戦は。それぞれの因果の鎖は。
立ち会った誰もの中に引き継がれ、終わりを求めている。
-
乙!
-
……
('、`*川「へぇ。あの娘たち、あれを突破したんだ」
ネーヨの報告を聞きながら、ペニサスは面倒そうに水筒を傾けた。
巨大な"雨避け"の下で、カップから湯気が立ち上る。
まるで興味がないと言わんばかりの彼女の対応にネーヨは困惑し、下にいるペニサスを覗き込んだ。
(∮₤´ー`)「ずイぶンと、たンぱくなイイ回しじゃネーか。アイつ等を気にイってたンじゃネーのかヨ」
('、`*川「……んー、そりゃ気に入ってたわよ? でも、」
シューちゃんの命令には代えられないわ。
-
('、`*川「覚えてるわね、私達の役割」
(∮₤´ー`)"
ペニサスは満足げに頷き、カップを持ち上げた。
彼女に覆いかぶさるように翼を広げる、ドラゴンの口元へと。
('、`*川「……説得で済めば良いわね」
ペニサスはハルバートが収まった鞄を見やる。
はるか東南、黒く染まる森の縁で、一人と一頭の茶会は進む。
第二話『屍術師の事情』、前話 了
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しかしまぁ、もうスレの残りも少ないですね。
できればミセリの樹海はこっちで区切りたいんですが……
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乙!
ドラゴンきたー
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と、あと、今回もご支援とご静聴、ありがとうございました
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次回もすげー楽しみに待ってるから!
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乙
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乙!
やっぱおもしれーな
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乙!
おもしろかった!
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ミセ -−)リ『……』
从タ^ヮ^ノソ「あ、ミセリっちー! 偉いねぇ、今日もお手伝い?」
ミセ*・ー・)リ「うん、バタービールだよ!」
liiタ*゚ヮ゚ノソ「おー、良く出来ました。もう一人のちびっ子はどこだい?」
ミセ ・ー)リ「お部屋で文字のお勉強してるよ!」
彡从゚−゚ノミ「何だと、それは良くないな。それより剣を教えてやらねば……」
(゜д゜@「人の大事な娘達に変なこと教えないで頂戴! ほら、黒駒根菜の蒸し焼き!」
liiタ*;゚ヮ゚ノソ「ありゃ、アラヤダさん」
彡从゚−゚ノミ「そうは言っても、このご時世じゃ剣の一つも持てなきゃ話にならんだろ」
故郷の匂い、声。
纏亭で彼と過ごした日々は、今でも鮮明に覚えている。
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ミセ -−)リ『……』
从タ^ヮ^ノソ「あ、ミセリっちー! 偉いねぇ、今日もお手伝い?」
ミセ*・ー・)リ「うん、バタービールだよ!」
liiタ*゚ヮ゚ノソ「おー、良く出来ました。もう一人のちびっ子はどこだい?」
ミセ ・ー)リ「お部屋で文字のお勉強してるよ!」
彡从゚−゚ノミ「何だと、それは良くないな。それより剣を教えてやらねば……」
(゜д゜@「人の大事な娘達に変なこと教えないで頂戴! ほら、黒駒根菜の蒸し焼き!」
liiタ*;゚ヮ゚ノソ「ありゃ、アラヤダさん」
彡从゚−゚ノミ「そうは言っても、このご時世じゃ剣の一つも持てなきゃ話にならんだろ」
故郷の匂い、声。
纏亭で彼と過ごした日々は、今でも鮮明に覚えている。
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ミセ -−)リ『……』
(゜д゜#@「そんな事を言って、この娘たちが樹海に飲まれたりしたら、どうするのさ!」
从タ;゚ヮ゚ノソ「あー、うー……私ら冒険者にはきついね、それ」
彡从゚−゚ノミ「だから、喰われないように鍛えるんだよ」
liiタ*゚ヮ゚ノソ「うーん、娘さんが心配なのは分かるけどね」
ミセ;・ー)リ「……あぅ……おとーさん」
( )「そうだなー、こいつらの言うとおりだ」
(゜д゜#@「……あぁ!?」
( )「覚えとけ。冒険者って奴は皆、死ぬまで樹海に惹かれ続ける生物なんだよ」
十数年の喧騒は色あせ、輪郭を崩しながら。
それでも決して消えはしない。
-
ミセ -−)リ『……』
(゜д゜@「……アタシが心配してるのは、それだよ。
何人がちゃんと帰って来れるかも分からないのに、なんで命を捨てるような事を繰り返すんだか」
( )「命を捨てるつもりで挑む冒険者は居ない」
(゜д゜@「大事な娘達をそんな馬鹿者に育てたくないから言ってるのさ」
从タ;-ヮ-ノソ「……うーん」
彡从゚−゚ノミ「ま、私達が馬鹿者なのは否定しないがね」
liiタ*゚ヮ゚ノソ「私達は私達の為に頑張ってるんだよ」
( )「ま、たぶん遅かれ早かれ、コイツも樹海に引き寄せられるさ。俺の娘だからな」
ミセ ・ー)リ「……」ニマー
ヨツマは変わった。
議会が変わり、街並みが変わり、そして、冒険者も変わった。
-
ミセ -−)リ『……』
liiタ*゚ヮ゚ノソ「……んー……よしよし、チビ助。君には特別にこれを譲ろう」
liiタ ゚ヮ゚ノソっ*「これは特製の、幸運の髪飾りだ。きっと君を護ってくれるよ」
ミセ ・ー)リ「! いいの!?」
( )「おいおい、本当に良いのか?」
liiタ ゚ヮ゚ノソ「良いよ、またいつでも造れるし」
ミセ*・ー)リ「……えへへ、似合う?」
liiタ ^ヮ^ノソ「おう、バッチリだ! 私達が帰って来るまで付けておいてくれよ?」
6=(- д- @「はぁ……仕方ないわね……」
さくさんの事が、たくさんの大切な事が、変わっていった。
変わらないのは、思い出だけだ。
-
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ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです
第二話 屍術師の事情 後話
.
-
ミセっ−)リ「……ん……」
頬を撫でる涼しい風に、ミセリは目を開けた。
穏やかな日差しが、仰向けに寝転んだ彼女を包んでいる。
時折、風に揺れる草の音が、心地良く駆け抜ける。
ミセっ−)リ「……んー……?」
目を擦りながら身を起こすと、眼前には広い湖が、穏やかな水面に陽光を煌めかせていた。
ミセっ−)リ「……んー?」
振り返ると、巨大な石の扉。
全面に細かな飾りが有る代わりに取っ手も枠も無い、二枚の石板が屹立している。
ミセ*っ-)リ「んー……」
ミセ*'−)リ「…………」
ミセ*'−)リ「……何故」
-
ミセ;゚ー゚)リ「え、なに、なんで? ここ、どこ?」
<_プー゚)フ「おー、やっと起きた?」
ミセ*゚ー゚)リ「あっれぇ、私……ラウンジで、確か……あっれぇ?」
左腕に手をやる。軽鎧の感触はなく、代わりに麻布の服の手触り。
手酷く痛めつけられたはずの腕には、傷痣も血痕も無い。
そして、何よりもまず、愛用の長剣が無い。
ミセ*゚ー゚)リ「……どうしたもんか」
<_プー゚)フ「おおい、ちょっと、聞いてるかい?」
最も大きな異常は、肌に触れる空気だ。
ミセリは聴覚を親和で引き上げた。
増幅器が無いにもかかわらず、効力は思いのほか大きい。
大気に混じった精霊の密度が、極めて高い。
-
ミセ*゚ー゚)リ「親和は……うん、親和そのものは異常なし、か。それどころじゃないけど……」
<_プo゚)フ「ちくしょう……」スゥーッ
風の音に、ミセリは耳を澄ませた。
今ならば数千歩先で落ちたコインの音すら聞き取れる気がする。
そして、その耳を。
<_プд゚)フ「人のはなし聞けやゴルァアアア!」
ミセ* д)リ ~゚゚
大音量の怒号が襲った。
-
……
ヨツマ・ラウンジ間の地理的な距離は、騎馬ならば三日とない程度。
実のところ、互いに反目しあう国家間として、極めて近いと言える。
街道は二本。
海沿いに伸びる一本と、あえて迂回するもう一本。
互いの国家が総力を挙げて要塞化した黒鉄の道と、樹海に程近い緑の道。
すなわち、ほぼ直線距離を結ぶ前者は現状では機能しておらず。
数倍もの道程を稼ぐ後者のみが、交易や流通を担う。
そして、この街道を離れた交通の前には。
この地方を駆け巡る水龍・ダット河の、その多頭が立ちはだかる。
-
从 ゚∀从「恐らく東の街道も封鎖されているだろう。俺たちの進路は、こっちだ」
シューに餞別として書き渡された略地図を、ハインが指し示す。
現在地は、ラウンジを突破し、横たわる龍頭の内の最北・クラシカ橋の手前。
街道はこの橋の向こうで東西に分かれ、一方が東へ折れる。
まず西の道、ヨツマへ直進する街道が選択肢から外れる。
ラウンジの主戦力と衝突するのは、流石に自殺にしかならない。
次に、東の道も好ましくない。
往路で至るまでに見てきたように、こちらも多くの関所があるし、裂かれた戦力はもう少なくはない。
とすると。自然と選択肢は限られる。
从 ゚∀从「クラシカ橋は渡らず、このまま東へ進もう。樹海を通り抜けることになるが、仕方ない」
-
(*‘ω‘ *)「……ん、アタシもそれが良いと思うっぽ」
(;><)「う……でも、ここは確か……」
ハインが指したのは、はるか東の名も無い橋。
ヨツマとラウンジを隔てる龍の、そこは言うなれば分岐する龍首の根元にあたり。
つまり、そこを渡ればもうヨツマの勢力圏に入る。
ただしその場所は樹海の深部に位置しており。
とりわけ橋の周囲の森は今や魔境と知られる。
すなわち――
从 -∀从「そうだな。例の悪名高い、『夜霧の湿林』の向こうだ」
――前戦争で最も激しい戦闘が起こり、最も多くの兵が命を落とした戦場。
_
( ゚∀゚)「……本当に大丈夫か、この状態のミセリを連れて行っても?」
( ゚д゚ )「俺は街道を突破する方が早いと思うがな」
ジョルジュはミルナを厳しく睨みつけた。
ミルナの方は意に介さず、地図の上の城塞を見つめる。
-
从 ゚−从「ミセリについては……正直、不安だ。確かに、今は落ち着いているが……」
ジョルジュの背中で、左腕をしっかり固定されたミセリが穏やかに呼吸を続けている。
出来る限りの処置は施したが、意識は一度も戻っていない。
話を聞く限りでは、傷そのものよりも"黒"の精霊が原因だろう。
(*‘ω‘ *)「それでも、追手を逃れるには、他に方法はないっぽ」
_
( ゚∀゚)o「……そうだな」
ジョルジュは南を見据えた。
雨上がりの重い雲の下、遠くクラシカ橋の要塞が見える。
後ろからの追手は無いが、あれだけ派手に門をブチ壊したのだ。
何も無いとは思えない。
_
( ゚∀゚)o「行こうぜ。いつラウンジの連中が来るかわからねぇ」
从 ゚−从「……待ってくれ。その前に、提案がある」
-
……
<_プー(#)フ「まさか幽霊を見ても驚かないばかりか、グーで殴るオンナノコが居るとはね」
ミセ*゚ー゚)リ「そりゃ普段から見慣れてるもん、今さら驚かないよ。……それで、私に何の用さ」
とはいえ、実際に当たるとは思っていなかったミセリは、内心では少し驚いていた。
目の前をフワフワと漂う白い"事象"幽霊は、不満げに弾んで見せる。
ミセリがこれまで見てきた幽霊とは、その姿は似付かない。
<_プー゚)フ「や、用っていうか、たまたま君が居たから話しかけただけというか……」
ミセ*゚ー゚)リ「……」グッ
<_フ;゚ー゚)フ「ちょ、待って殴らないで! 君こそ、いま困ってるでしょ!?」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
持ち上げた握り拳を、ミセリはゆっくり解く。
自称幽霊はホッとしたように静かに沈む。
-
ミセ*゚ー゚)リ「ここ、どこ?」
<_プー゚)フ「えーと……『根の国』って言ったら分かる?」
ミセ*゚ー゚)リ「ねのくに」
根の国。
古いお伽噺に度々登場する、岸の彼方の世界。
魂の種が再び樹海の大樹に芽吹く、再生の土地。
つまり、その意味するところは。
ミセ* ー)リ、「そっかぁ、私、ついに死んじゃったのかー……」
<_フ;゚ー゚)フ「待って、待って! 違う、そうじゃないよ!」
-
自称幽霊さんによると、この草原は『根の国』の入り口であるとのこと。
後ろに聳え立つ巨大な石板がいわゆる現世からの扉で、湖の向こうが本当の『根の国』。
ただ紛れこんで来ただけの生者ミセリは、まだこちらの住民と認められた訳ではない、と。
<_プー゚)フ「と、そういう訳で、今の君はただのお客さん」
ミセ*゚ー゚)リ「……なんだろう、納得できないけど、わかったよ」
それが分かれば。
ミセリは振り返り、重灰色の扉を見上げる。
取手も蝶番も無く、鍵穴も見当たらない。
ただ、全体が細かな紋様で覆われている。
親和を起動して精霊を集め。
ミセ#゚д゚)リ┌┛「うおりゃ!」
<_フ;゚д゚)フ「って、何してるんだお前えぇ!」
風が駆け抜け、草原が嘶く。
ミセリが蹴り付けた石扉は、僅かにも動いていなかった。
-
ミセ;゚ー゚)リ「……ですよねー」
<_プд゚)フ「……全くよぉ、"扉だ"っつってんのに蹴飛ばす馬鹿が何処に居るのさ!」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
<_フ;゚ー゚)フ「待って、待ってごめん! 今のはジブンが言い過ぎた!」
ミセリは溜息をついて親和を解いた。
慰めるように風が頬を撫でる。
ミセ*゚ー゚)リ「これ、どうやったら開くの」
<_プー゚)フ「必要な時に、だね。大抵は向こうから人が来るときなんだけど」
ミセ*゚ー゚)リ「ダメじゃん」
押しても引いても、扉はビクともしない。
裏側を覗いてみたが、そちらは紋様すら無いごつごつした岩の壁でしかなかった。
途方に暮れるミセリの前で、自称幽霊がフワフワと弾む。
-
<_プー゚)フ「ねぇ、する事が無いならちょっとジブンの話を聞いてよ」
ミセ*゚ー゚)リ「ごめんムリ。仲間が心配だから、すぐに帰らないと」
<_プー゚)フ「君の仲間なら無事に七号門を抜けたよ?」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
くるくると八の字を描いて飛ぶ白い塊に、ミセリは咄嗟に手を伸ばした。
ひんやりした感触、白い風船は恥ずかしそうに両腕……突起で顔を覆う。
ミセ*゚ー゚)リ「それ、本当!? 皆はどうしてるの!?」
<_∩ー∩)「二手に分かれてヨツマに向かってるよ。
剣を背負った男の人と棍棒を持った小さな女の子が君を運んで東に向かってる」
ミセ*゚ー゚)リ「ジョルジュさんと、ぽっぽちゃん? ……なんで分かるの?」
<_∧゚ー)"
ミセ*゚ー゚)リ"「ん、何?」
風船は片手を持ち上げて上空を指し示す。
見上げると、澄み渡った青空の真ん中に、白く光を漏らす一点があると分かった。
-
┏┯┓
┠┼┨
┗┷┛
ミセ*'ー)リ「なに、あれ……窓?」
<_プー゚)フ「そ、天窓。アレの向こうも君達の世界だよ」
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃ、君達はいつでも帰って来れるの」
<_プー゚)フ「ん、いつでも遊びに行ける」
ミセ*゚ー゚)リ「……そっか」
幽霊は何でもないようにミセリの手を逃れ、湖の方へ流れてゆく。
ミセリは今一度、扉を振り返った。
二枚の石板は、ただ穏やかに佇んでいる。
ミセ*-ー)リ「……ねぇ」
<_プー゚)フ「ん?」
-
ミセ*-ー)リ「気が変わった。やっぱり教えてよ、君のこと」
ミセリの言葉に、幽霊は心底嬉しそうに跳ねる。
<_プー゚)フ「おー! 然らば語って進ぜよう、天才美少女氷術師・素直キュートちゃんの生きざまを!」
ミセ*-ー)リ「うん……ん、素直?」
<_プー゚)フ「ん、素直……うん?」
ミセ*゚ー゚)リ「え」
爽やかな風、穏やかな陽光。
扉に刻まれた紋様に、微かに銀の煌めきが走る。
-
……
支流クラシカは、ダット河から分かれる流れの中で、一際大きい部類に入る。
この流れを越える道は僅かに一本、その名をクラシカ橋。
豪雨に嵩増しされた龍の吐息を耐える、かつてのラウンジ市民が残した大きな石橋があるばかり。
かつて交通を支えた石橋の袂に、なおも戦場を支える古城が佇む。
从 ゚∀从「……変わり無い。流石に俺達が門を突破した事は伝わっていないらしいな」
( ゚д゚ )「まぁ、まだ数刻しか過ぎていないからな」
ハインの報告に、ミルナは顔色を変えずに頷く。
ラウンジ外壁の騒乱を越えた後では、目の前、林の向こうの古城はあまりに静かに見えた。
クラシカ橋の要塞は橋の両端に設えてあるが、その規模は南の方、ヨツマに向けた側に偏っている。
加えて、そもそも後衛に位置するこの城において、前線が緊張する現在、駐屯兵は多くない。
戦闘向きの冒険者であれば、後方からの奇襲であれば、三人でも陥落させるのも不可能ではない。
-
从 ゚∀从「連絡が回る前に叩きたい。急ごう」
( ゚д゚ )"「それは構わないが……」
( ><)「……」
ミルナは立木の根元に腰掛けた少年に目を向ける。
貧弱そうに見える『チェトレ』の子供らの中でも、事実もっとも弱そうに見えるのは、他ならぬ彼だ。
不満そうなミルナの意を知ってか知らずか、その視線は地面に向けられたまま動かない。
从 ゚∀从「足手纏いにはならない、こいつ自身がそう言ったはずだ」
( ゚д゚ )「……そうだな」
ミルナの顔から不信は消えなかったが、それでも、彼はそれ以上の追求を止めた。
傭兵たる彼にとっては、しょせん他者の力はもとより信頼に値しない。
ビロードの戦力を、更にはハインの戦力ですら、ミルナには"頼りにできない"ものだ。
単に無いものとして扱えばいいと、考え直したに過ぎなかった。
-
从 ゚∀从「予定通り、正面突破・制圧・橋の破壊の手順だ。それでいいな?」
( ゚д゚ )「ああ」
簡潔で短い答え。
踏み出したミルナは、思い出したように立ち止り、ハインに問い返した。
( ゚д゚ )「今回は、殺しは?」
从 -∀从「……しないでくれ。頼む」
( ゚д゚ )「ふん、お前も甘いものだな。いいだろう、確約は出来ないが、心に留めておく」
それだけ言うと、ミルナは腰のナイフを抜き放った。
赤の精霊に応じ、その瞳が輝いた。
『岩食み』は主の意を汲むように小さく震える。
( ゚д゚ )「ついて来い、道を作ってやる」
-
(∂"д")「ん、なんだ彼奴は……?」
木々の間を抜けて城壁に至るまでを駆け抜けるまでは十数秒ほど。
長くない距離の間で何層にも張り巡らされた防護柵が足止めの役。
ミルナの姿を見とめたクラシカの兵達が弓を構えるには、充分な時間があった。
(∂"д")「弓兵、放て! 寄せ付けるな!」
号令に応じ、守兵達は弓を引き絞る。
次々と放たれた矢は、しかし、ミルナが振るった『岩食み』に撃ち落とされる。
防護柵に辿りついた彼はナイフを振り下ろし、バターでも切るようにして道を開いた。
(∂;"д")「く、信号弾放て! 南城の守兵を呼ぶのだ!」
止めきれない。守兵の判断は迅速で、適切だった。
それでも、信号が上がる頃には既に、敵はすべての防護柵を切り崩していた。
ミルナはそのまま最短距離を走り、城壁に辿りつく。
肝を抜かれたのは、彼が城門を目指すと思っていた守兵だ。
-
長くない距離の間で何層にも張り巡らされた防護柵が足止めの役。
ミルナの姿を見とめたクラシカの兵達が弓を構えるには、充分な時間があった。
(∂"д")「弓兵、放て! 寄せ付けるな!」
号令に応じ、守兵達は弓を引き絞る。
次々と放たれた矢は、しかし、ミルナが振るった『岩食み』に撃ち落とされる。
防護柵に辿りついた彼はナイフを振り下ろし、バターでも切るようにして道を開いた。
(∂;"д")「く、信号弾放て! 南城の守兵を呼ぶのだ!」
止めきれない。守兵の判断は迅速で、適切だった。
それでも、信号が上がる頃には既に、敵はすべての防護柵を切り崩していた。
ミルナはそのまま最短距離を走り、城壁に辿りつく。
肝を抜かれたのは、彼が城門を目指すと思っていた守兵だ。(∂;"д")「な、まさか、あんな小さなナイフで」
(#゚д゚ )「……些少!」
ミルナは腕を大きく振りかぶり、突き出した。
――衝突音。
刺突を受けた石壁から、細かい破片が飛び散った。
その小さな傷を中心に蜘蛛の巣状の罅割れが走る。
(∂;"д")「ば……馬鹿な……」
『岩食み』が引かれ、再び同じ個所を打つ。
破片が舞い散り、城内への道が開ける。
岩を喰らう化物の前に、城壁は脆くも喰い破られた。
-
( ゚д゚ )「さて、次は……」
貫いた壁の先は、渡し廊下だった。
突然の侵入者に驚く城兵を殴り飛ばし、ミルナは再び目の前の壁に『岩食み』を振るう。
一撃で崩れ落ちた壁の向こうに、大広間が覗く。
( ゚д゚ )「……全く、殺さないのは本当に面倒だな」
とは言え、広間を横断する間に襲いかかる兵士は居なかった。
突然の事態に何が起こったかも分からないし、分かっても装備は付けていない。
ミルナは唖然とする状兵に目もくれず、広間を悠々と横断した。
唯一、無謀にも彼の行く先に立ちはだかったのは、広間の壁だけだった。
無謀にも彼の進路を妨げた勇敢な壁は、ミルナの一撃で容易く崩れ去る。
クラシカ橋の根元を囲む中庭は、彼の眼前に広がっていた。
-
从 ゚∀从「お疲れさん。この橋は落とせるか?」
( ゚д゚ )「邪魔が入らなければな。だが……」
石橋の向こうをミルナは指し示した。
既に信号弾を見た南城からの援軍が、橋に到達している。
守兵の対応は、予想したよりもずっと迅速だった。
ハインが小さく舌打ちする。
( ゚д゚ )「連中を追い払わん事には、中々に手間だな」
从 ゚∀从「仕方ないな、俺が足止めをするから――」
そこでハインは言葉を切った。
弓に伸ばした手を、横合いから掴む者があったからだ。
( ><)「ハイン、その役目は私が引き受けます」
-
从 ゚∀从「ビロード……?」
( ><)「彼らには引き返してもらいます。ハイン、ここは任せて良いですね?」
(;゚д゚ )「お前が何をするって……おい、待て!」
返事も聞かずに橋に足を向けた彼を、ミルナは慌てて追った。
南城の先方は、既に半ばまでクラシカ橋を渡ってきていた。
加えて北城の守兵達も中庭に下りてきている。
ハインは僅かに躊躇ったが、やがて周りを囲む城に目を向け直す。
从 ゚∀从「……、橋は任せたぞ」
中庭の三方を囲む城壁は、それぞれ橋を渡る敵兵を掃射するトチカの役を果たすべく建てられている。
ミルナ達を狙う兵達を、速やかに削る。それが求められている役割だ。
-
从 -∀从スゥー・・・
親和。ハインは深く息を吸って"緑"の精霊を集める。
呼吸を止め、身体の隅々までを意識が支配する、その姿はしなやかな獣の如く。
長い雨でぬかるんだ地面を踏みしめ、ハインは一方の壁へ跳んだ。
城の上から今まさに弓を引こうとしていた一人の兵の、その驚愕に歪んだ顔が目の前に現れる。
(∫ッ∫;ツノタ「ひっ、速……」
从#゚∀从「おぉあああッ!」
彼らが反応するべくもない、圧倒的なスピード。
薙ぎ払うような蹴りが一人の弓兵を、その周囲に居た兵達をまとめて吹き飛ばす。
別の城壁に居た兵達の狙いが定まるよりもはるかに早く、ハインは着地した尖塔を蹴った。
しなやかな金髪の獣は翼が生えたように軽々と舞い、その身体を箱庭の中空へと投げ出す。
-
(∂;"д")「う……射て! 奴を射落とせ!」
長と見える守兵の号令に応じ、ぱらぱらと矢が降りかかる。
咄嗟の状況で素早く指示を下す彼の指揮力は、称賛に値すると言える。
……ただ、この状況について、その判断は確実に悪手だった。
方々から放たれた矢はいずれも、城壁を駆け下るハインの残影に追いつくことすらなく。
それどころか、それらの矢はかえって、中庭に押しかけた兵を襲う。
&;゚д゚)「ば、馬鹿野郎、下に向けて射つな! 味方に当たるだろうが!」
从 ゚∀从「ああ、良く言った」
壁上に怒鳴り付けたその兵士は、すれ違いざまに首元を打たれ、倒れ伏す。
降り注ぐ矢に逃げ惑う兵は、一人残らず暴れまわるハインの餌食となる。
クラシカ橋でミルナ達を挟撃しようとしていた兵達が、全滅の憂き目にあうまで、ものの数秒とかからなかった。
(∂;"д")「……こんな……」
从#゚∀从「どうした、この程度で終わりか!? 掛って来い!」
まるで勝負にすらならない。北城の兵達の間に、一気に恐慌が広がった。
-
……
(#゚┛┗゚)「この賊徒どもがァ! 覚悟は出来とるんだろうがやなァ!?」
ビロード達の姿を確認し、南城からの兵達は勢い込んで押し寄せる。
数はおよそ数十程度だろうか、それぞれが鎧と盾、弓で武装している。
これだけの物量が同時に跳びかかって来るとなると、相手するのは流石に骨だ。
躊躇うミルナを背に、ビロードは歩調を緩めすらしない。
( ><)「ミルナ、私の前には絶対に出ないで下さい」
(;゚д゚ )「何をするつもりだ?」
( ――)「……何、か。私にできるのは、一つだけです」
-
(#゚┛┗゚)「弓兵、ヤれやァ!」
先頭に立つ髭面の男が号令を下す。
攻めよせる兵達の二列目、盾持ちに隠れた一団から、数十を超える矢が一斉に放たれた。
ビロードを庇おうとしたミルナは、背筋を走る寒気に足を止めた。
目の前で橋桁の上の水溜りが、真白な煙を噴き上げている。
矢衾は二人の前に迫り――不自然に軌道を変えて、力無く落ちた。
(#゚┛┗゚)「……んだとァ……あァ?」
(;‘ハ`)「た、隊ちょ、何こ、あ、え」
(;゚д゚ )「……ッ!」
ミルナは思わず息を飲んだ。
目の前の空間が揺らぎ、高熱の風が吹きすさんで。
髭面が率いる先頭集団が足を留めて、苦しそうに倒れ始める。
( <−><●>)「私には、こうしてこの目に映る限りを焼き尽くすことしか出来ません」
-
(;゚┛┗゚)「ぎぃああああああァ、熱ぁあッァ!?」
(;ハ)「ぃいいい、眼、眼があぁあ」
(;゚д゚ )「……」
急激に熱せられた空気は兵達の肌を、鎧を、眼を、鼻孔を襲う。
苦しみに悶える彼らは踏み寄せる後続に突き倒され、倒れ伏す。
倒れた先鋒を踏み越えた集団も同じく熱の餌食となり、先んじて倒れた一団に合流する。
異変に気付いた者が踏み止まろうとする事さえ、さらに後ろを為す者からは許されない。
ある者は苦しみ悶え、ある者は欄干を越えてクラシカの流れに飛び込もうとさえする。
地獄絵図だった。
たった一瞥が、地獄絵図を描き上げた。
( <−><−>)「負傷者を連れて、引いて下さい。まだ戦うつもりなら、骨まで熔かし尽くします」
(;゚┛┗゚)「あ、あがが、ひ、引け、お前ら、全員引けァ!」
号令は雲を走る稲妻が如く全軍に伝わり、兵団は蜘蛛の子を散らすが如く逃げ帰る。
驚き、怯え、心が圧し折られる。
『熱』への恐怖を、人類は決して拭い去れないものだ。
橋を半ばまで引き返した守兵を見届けると、惨劇の主はゆっくりと振り返った。
-
( ――)「ミルナ、橋を破壊して下さい、撤退しましょう」
(;゚д゚ )「あ、ああ……」
ミルナは親和を起動し、『岩食み』を抜いた。
もし仮に、彼は考える。
もし仮に、彼と同じくこの男が殺しを厭わぬ修羅であったとしたら。
もし仮に、彼の前に――『クラン・ワイルドギース』の前に、この修羅が立ちはだかるとしたら。
この小柄な修羅を斬り伏せて進み続けることが、本当に出来るだろうか、と。
――『岩食み』はクラシカに掛る唯一の橋を喰い破り、その交易路としての長い歴史を激流の中に沈めた。
-
……
<_プー゚)フ「いやー、驚いたね。まさか既にジブンの妹を二人も知ってるなんてさ」
すっかり興奮した自称幽霊・キュートさんがしきりに跳ねまわる。
先ほどから、彼女の話を聞くつもりでいたはずのミセリの方がなぜか自分の経験を喋らされていた。
門に背中を預けて座るミセリを風が撫で、草原へと抜けてゆく。
ミセ*゚ー゚)リ「ふふん、次は幽霊さんの番だよ」
<_プー゚)フ「……よーし、何が聞きたい? 妹の事なら下着の色からスリーサイズまで何でも答えちゃう」
ミセ*゚ー゚)リ「幽霊さんは、どうして死んじゃったの?」
気を悪くしないだろうか、ミセリは内心では少しドキドキしていた。
しかし、幽霊さんの方は特に気にしていないように、宙返りを一つ。
わざとらしく口ごもる仕草を見せてから、もったいぶって語り出す。
「うーん、別に喋っても良いんだけど、……むしろ君が大丈夫?」ム(。ー。ム ̄>
-
ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫って、なにが?」
<_プー゚)フ「いやだからさ、グロ耐性とか胸糞許容量とかー?」
あくまで軽い調子。全身を横ロールさせながら、幽霊さんがフワフワと話す。
ミセリが手を伸ばすと、幽霊さんは同じ動きで腕の周りを歯車のように回る。
ミセ*゚ー゚)リ「んー、そんなに酷いの」
「うーん、ヨツマなら"金"か"銀"くらいには匹敵するんじゃない」ム(。ー。ム ̄>
ミセ*゚ー゚)リ「何さ、それー……」
ローリングをやめた幽霊さんは草原にぼってり落ちて、水溜りのように広がる。
まっ白い水溜りに、眼と口が浮かぶ。
( _ ゚ ー ゚ )「そうねぇ、ざっくり言うと……騙されて、仲間もろとも毒を盛られちゃいましてですね」
ミセ*゚ー゚)リ
( _ ゚ ー ゚ )「身体の自由を奪われた上に散々痛めつけられて辱められて、最後は拷問されて溺死に」
ミセ*゚ー゚)リ
-
ミセ*゚ー゚)リ
フワっと浮かび上がり、また風船型。
彼女は不満げにミセリの頬をつつく。
肌に走る冷たい感触が少し心地良い。
<_プд゚)フ「ちょっとー、何か言ってよ! せっかくジブンが喋ってるんだからさー!」
ミセ#゚ー゚)リ「や、だって仕方無いじゃん予想以上だったんだから!」
<_プー゚)フ「うへへ照れるぜ」
ミセ#゚ー゚)リ「うわぁ、うっぜぇ……!」
軽口を叩きながらも、ミセリは軽薄そうな幽霊さんの様子に少し安心した。
だから、もう少しだけ。不幸な幽霊さんが抱える事情に踏み込むと決めた。
ミセ*゚ー゚)リ「……それじゃ、もうちょっと聞いてもいい?」
<_プー゚)フ「ん、ええよ。なに?」
ミセ*゚ー゚)リ「君の仲間は、君みたいな幽霊にはなってないの?」
-
ミセリの問いに、幽霊さんは困ったような顔で押し黙った。
話し方を探すように、答えを探すように、虚空を見つめる。
<_プ〜)フ「……あはは、厄介なこと聞いてくれるねー」
ミセ*゚−゚)リ「答えたくないなら、聞かないよ?」
<_プー)フ「だいじょぶ。ええと、結論から言うと、なってない。というか、こっちに来てもいないよ」
幽霊さんは虚空の一点から眼を離さない。
彼女の視線の先にあるのが『天窓』だと、ミセリは初めて気付いた。
<_プ−)フ「あたしのギルド『カロン』は、八年前に"死"んでからずっと現世に留まってる。
今も死に場所を求めて、あの『夜霧の湿林』を彷徨ってるんだ」
窓の向こうに、ミセリも眼を向けた。
『根の国』へと差し込む光は眩く、何故か今はまっすぐ見ていられなかった。
-
ミセ*゚−゚)リ「まぶしい」
<_プー)フ「そだね。それが君達の世界だよ。」
――ねぇ、ミセリちゃん。
フワフワと漂いながら、彼女は言う。
「君に……いえ、あなたと『チェトレ』に、あたしから二つ依頼があります」
ミセ*゚−゚)リ「……」
振り返ったミセリの眼をじっと見つめる、愛らしい少女の姿。
妹たちと揃いの艶やかな黒髪が、根の国を抜ける風になびく。
ミセ*゚−゚)リ「……言って」
ありがとう、小さな言葉が風に消える。
o川゚−゚)o「オサム達を……『カロン』を倒して。あたし達に満足できる"死"を下さい」
-
ミセ*゚ー゚)リ「……わかった、確かに請け負ったよ。もう一つは?」
o川゚−゚)o「もう一つは――――――――」
ミセ*゚−゚)リ「――ッ!」
-
ミセ*^ー^)リ、「――任せて。私が請け負うよ」
o川゚ー゚)o「……ありがと、ミセリちゃん」
ミセ*゚ー゚)リ「ん。でも……どうやって帰ろう」
o川゚ー゚)o「それは大丈夫だよ。君はもう、鍵を思い出してるはずだから」
背を向けていた巨大な石板を振り返る。
しっかりと閉ざされたままの扉、その表面の紋様に、銀色の光が走っていた。
ミセリは左手首を押さえた。同じ暖かい光が浮かび上がる。
ミセ*゚ー゚)リっ「これって……!」
「ね、ミセリちゃん。君がここに来てくれたの、きっと偶然じゃないよね」
ミセ*゚ー゚)リ「!」
穏やかな湖畔のどこにも、キュートの姿は無かった。
何かに呼ばれている気がして、ミセリは現世への扉を押す。
天窓の向こうに見えた柔らかい光が、岩戸の隙間から洩れ出てきた。
-
「あたしは天窓を通って先に行ってるね」
ミセ*゚ー゚)リ「……あ、ちょっと待って! 先に報酬の話!」
いずれ必ず、またここに来るから。
懐かしい湖畔に、ミセリはしばしの別れを告げた。
ミセ*゚ー゚)リ「先払いって事で一つ教えて欲しいんだけど――、――――!?」
「なんだ、それか。今日は――――だよ」
ミセ*゚ー゚)リ「ん、ありがと――――」
白い光の中に、一歩ずつ踏み出す。
後ろで扉が閉ざされる音。
ミセリはもう、振り返らなかった。
-
支援
-
ちょと休憩を 今日の分は残り半分くらいです
-
支援
-
……
ラウンジの南東一帯は、流石に国力の及ぶ所。
樹々は残らず倒され、結構な範囲で平原が広がっている。
獣の襲撃は無いとはいえ街道の外。ところどころ泥濘が酷く、足取りは思いのほか進まない。
ハイン達三人と別れてから、この平原の東端まで。
歩き終えた時には既に、陽は天頂にも差し掛かっていた。
そうして辿りついた、疎らに生えた木々の向こう。
_
ミセ*( ゚∀゚)o「ここからが、例の……」
(*‘ω‘ *)「『夜霧の湿林』……か」
鬱蒼と茂る細めの木々と、その合間をたゆたう薄ら靄。
広大な樹林が、重い雲の下にその深淵の枝葉を広げる。
-
(*;‘ω‘ *)「ま、まぁ、ビビってても仕方ないっぽ。『橋』は確か、この奥だったっぽね」
先に行け。
ぽっぽは顎をしゃくってジョルジュに示す。
ジョルジュは森の奥を覗き込み、笑って肩を竦めた。
点々と見える、枝に結わえられた道標の真っ赤なロープが、時折静かに揺れる。
手招きするような靄の奥に、風の声が低く唸った。
_
ミセ*(;゚∀゚)「……どうでも良いけど、ぽっぽ、お前ユーレイって信じる?」
(*;‘ω‘ *)「……どうでも良いなら聞くな……あんなのは全部、"黒"か"青"の親和のまやかしだっぽ」
いっそ背中のチビを揺すって叩いて、無理やり起こそうか。
ジョルジュは本気でそう考えた。
-
_
ミセ*((;゚∀゚)「……ははは、ぽっぽ、お前、怖いのか? 仕方ねぇなぁ、女の子だもんなぁ?」
(*#‘ω‘ *)「……そうっぽね。アタシ怖いなぁ、先に行ってよジョルジュさぁん?」
_
ミセ*(;゚∀゚)「ぐっ、しまった……」
(*;‘ω‘ *)「はは、策に溺れたな馬鹿め」
軽口を叩きながらも、ぽっぽは枝に赤いロープの付いた樹へと跳び乗った。
触れた幹は大人三人で抱えるほどの太さがあるのに、感触がまるで死に瀕した病人のそれで。
丈夫そうな枝を選んでも、それでも三人分の体重を一度に支えるかには自信が無い。
バックパックからワイヤーを取り出し、ジョルジュに投げる。
"p(‘ω‘ ;*)「ジョルジュ、やっぱりアタシが先行するっぽ。この命綱を腕に括りつけて、絶対に離すな」
-
_
ミセ*(;゚∀゚)d"「おいおい、良いのかよ」
p(‘ω‘ ;*)「……ビビってても仕方ないっぽ。それより、お前、絶対ソイツ落とすなよ?」
大雨の影響はここにも出ていたらしく、地面の泥濘はまるで底なし沼の様相を呈し。
一度でも沈み込んでしまえば、二度と浮き出られないような気がする。
樹海の脅威は住まう生物や探索する冒険者のみでなく、こうした樹海そのものでもある。
当前の事実だが、長く戦闘に身を置く内に、それを忘れてしまいそうになる。
_
ミセ*(;-∀-)d=3「わかってるよ。すまねぇ、頼むぜ」
p(*;‘ω‘ )「お、おう、任せろっぽ……はぁ……ミセリめ、肝心な時に役に立たねぇ……」
枝の間を伝いながら、彼女は愚痴をこぼす。
いっそジョルジュの背中のチビを揺すって叩いて、無理やり起こそうか。
ぽっぽもまた、本気でそう考えた。
-
……数刻程も進んだだろうか。
木々はさらに深まり、日差しはますます狭まる。
地面を覆う靄はその濃さを増し、風の唸り声もますます勢い込んだ。
(*;‘ω‘ *)「よ……っと、ジョルジュ、大丈夫か?」
_
ミセ*(;゚∀゚)d"「おう、まぁ流石にお前ほど身軽には動けねぇけどな」
ぽっぽは一度、大きな枝の上で足を止めた。
見上げると、相変わらずの重い雲が立ち込めているが、幸い雨の気配はない。
少し遅れて追い付いたジョルジュが、珍しく疲れた様子で息を吐く。
_
ミセ*(;゚∀゚)「ふぅ、こんな行軍は何年振りかね……」
(*;‘ω‘ *)「大陸でも、こんな事をしたっぽ?」
_
ミセ*( -∀-)「……まぁ、経験はある」
何気ないぽっぽの問いに、ジョルジュは言葉を濁した。
-
_
ミセ*( -∀-)「なんつうかさ、この……靄とか雰囲気とか、ソックリなんだよ」
(*‘ω‘ *)「……嫌な予感はするけど、聞かせて」
_
ミセ*( -∀-)「……『原始の五竜』は知ってるよな? 大陸西端で、黒竜の暴れた村が"こう"なった」
(*‘ω‘ *)「黒竜」
生者の死者の境を司るとされる、漆黒の竜。
旧世界を滅ぼした『樹海の進攻』に纏わる伝説の、最古の一つ。
その額に輝く単眼を覗いた生者は例外一つ無く絶え。
その肺を走る息吹を浴びた死者は例外一つ無く蘇る。
ジョルジュの口から出てきたその名は、ぽっぽには俄かには信じられなかった。
-
(*;‘ω‘ *)「……五竜なんて、そんなお伽噺が……」
_,
ミセ*( ゚∀゚)「何を言ってるんだ? ヨツマの樹海にも白竜が居るだろ?」
(*;‘ω‘ *)「……初耳だっぽ」
_
ミセ*-( ゚∀゚)「普通はそんなもんだ。とにかく、この森は何が起きるかわからん」
(*‘ω‘ *)「!」
_
ミセ*-д(;゚∀゚)"「それこそ、冗談じゃなく死霊が這いまわっていたり……するから……」
_
ミセ*-д((;゚∀゚))"「いつも以上に……慎重に……」
クアァァ・・・
-
.
うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ
.
-
_
"≡ミセ;゚д( ;∀;)「ひ、ひあ、ひぎゃああで、出たッ……ぽ、ぽっぽ、ちんぽ、助け……取ってぇー!」
「え、何、何事!?」
(*;‘ω‘ *)「ば、馬鹿野郎落ち着け、そりゃミセリだっぽ! おい暴れるな、命綱が絡まる!」
_
(;∀; )д゚;リシ 彡"「何、なんで!? ちょ、降ろして!」
「いやぁああだぁああーぁッ! 背中から離れないよぉーッ!」
(*;‘ω‘ *)「お前が背負ってるからだ、この馬鹿! 危なッ、枝から落ちるわ暴れんなって!」
_
ろ≡ミセ;;д"( ;∀) そ「あぁぁぁああああぁーーッ、じゃん、団ちょ、助けてくれぇーーッ……おァッ!?」
「嫌ァーーーーッ!」
(*;‘ω‘ *)「ミセリぃーーーーッ!?」
ぽっぽの健闘空しく、足を踏み外したジョルジュが、背負ったミセリもろとも枝の下の地面に落ちてゆく。
腕に巻かれた命綱で辛うじて中空にぶら下がった彼が正気に戻るまでには、やや暫くの時間が必要だった。
不気味な風の唸りが、ミセリの耳元で囁く。
-
……
(*‘ω‘ *)「それで、身体はどうっぽ?」
ミセ*゚ー゚)リ「この通り、左腕以外は平気だよ。それに……」
平気どころか、『根の国』の精霊の恩恵だろうか、左腕の痛みも随分と楽になっていた。
それに加えて。ミセリは親和を起動、精霊を身体に集める。
ミセリの瞳を見たぽっぽが、驚きの声を上げた。
(*;‘ω‘ *)「え……"黒"の親和か? どうして……!?」
ミセ*゚ー゚)リ「『根の国』で思い出したんだ」
(*‘ω‘ *)「ねのくに」
ちんぽっぽが顎に手を当て、言葉を探す。
ミセリは初めて開いた"眼"で、森から響く"声"の出所を見まわした。
予想通りというか期待外れというか、枝の下の地面を"それ"はうぞうぞと這いまわっていた。
-
/ .:∵:;;::∵::::::(・)∴::::::。:::::;;;;::∴;(゚);;;;∵::;・. ∵゚。・∵・… Oooooaooooaoooaeoooooooooooooo……..
<_プー゚)フ お 早速それ使ってみてるんだねー 気持ち悪いよね "それ"
ミセ*;゚ー゚)リ「……本ッ当、見なきゃよかった」
(*‘ω‘ *)「ねぇミセリ、寝ぼけてるならもうちょっと寝てても良いと思うっぽ?」
心配そうに声をかけるぽっぽに、ミセリは大丈夫だと言うようにヒラヒラと手を振って見せる。
二人には、それの姿は見えていないらしい。
見えないほうが幸せだ。心からそう思った。
ミセ*゚ー゚)リ「何、あの気持ち悪い……ドロドロに溶かした昆虫の群れみたいなのは」
<_プー゚)フ ヨツマ兵 のなれの果てってトコロかな 目を合わせちゃいけないよ
_
( ゚∀゚)o「……何言ってるんだ? 昆虫の群れ?」
至るところから飛び出した"目"を虚ろに動かしながら、"それ"はゆっくりと木々に身体を擦り付ける。
どうやらミセリ達を認識している訳ではないらしい。
"声"の発生源は三人が居る木を過ぎ、離れて行った。
-
ミセ*゚ー゚)リ「うへぇ……"黒"を持ってれば皆に見えるの?」
<_プー゚)フ そうでもないみたい "緑"持ちの誰でもが獣と話せる訳じゃないのと一緒だね
ミセ*゚ー゚)リ「成程」
(*;‘ω‘ *)「……!」
<_プー゚)フ ああ、あと全員に見える訳じゃないと言えば……
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
キュートと話すミセリは、全く気付いていなかったが。
ジョルジュとぽっぽが向ける視線は、精神が擦り切れた人へ向けるそれだった。
_
(;゚∀゚)o「あ、あのぉ、ミセリさん? お取り込み中のところ大変申し訳ないのですが……」
(*;‘ω‘ *)「先ほどからずっと、どなたと楽しくお喋りしていらっしゃるのでしょう?」
ミセ*゚ー゚)リ「」 小賢しい君なら当然気付いてると思ってたんだけどなー ム(。ー。ム ̄>
………….oooooooooooaaaAAaaaaaAaeOOAaaaoaaaooOooa…………..
痴者を嘲う愚者のように、地面を這う風の叫びは唸り上げる。
ミセリは頭を抱えた。
死者という厄介な連中は、揃って人を煽るのが大好きらしい。
……二人に弁解するのは面倒だし、それより。
"緑"の精霊を集め、ミセリはキュートを振り返った。
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ミセ*゚ー゚)リ「ねぇキュートさん。『カロン』の、オサムさん達の居場所は分かるよね?」
<_プー゚)フ そりゃもう 仲間だからね
_
( ゚∀゚)o「……オサムだと?」
愛用の長剣を腰に差し、キュートが示した樹海の一角に目を向ける。
『カロン』は相応の手練だと聞いている。
片腕が使えないのは大いに心細いが、ここで引くつもりは無い。
ミセ*゚ー゚)リ「ぽっぽちゃん、ジョルジュさん。信じられないかもしれないけど、聞いて」
-
七号門で"鎖"に意識を奪われてからの経緯を、ミセリは簡潔に話した。
二人はずっと半信半疑だったが、ミセリが"黒"を得た下りに至り――
(;;ノ゚;:;:;;;;し"・。っ,,,,。∫;;∵;;∀;;k∵;∴…eeeeeeeeeEEeeeoooooOoOOooooooooOoo………..
――今も奇妙な唸り声を上げて這いずっている"塊"に触れるに至って、渋々ながらようやく頷く。
(*;‘ω‘ *)「……『根の国』に『素直キュート』、『カロン』ね」
_
( ゚∀゚)o「その素直キュートちゃんってのは、今ここに居るんだよな」
<_プー゚)フ おー ばっちりだ
ぽっぽは眉間に皺を寄せる。
一度意思を決めたミセリを説得するのは、本ッ当に骨が折れるものだ。
本当なら面倒事は無視して、引き摺ってでもヨツマに帰りたいところ。
……しかし、ミセリの言葉通り、その面倒事が『チェトレ』への依頼となると話は別だ。
-
(*-ω- *)「なぁ、"リーダー"。依頼と言うなら、確認しなきゃならない事があるっぽ」
ミセ*゚ー゚)リ「遂行可能性、妥当な報酬、依頼の正義」
三つ目は良いとして、一つ目と二つ目は問題だっぽ。
キュートに問うつもりだろう。
あらぬ中空を見まわしながら、彼女は言葉を続ける。
(*‘ω‘ *)「アタシ達はこの先の橋でビロ達と合流する待つ手筈になってるっぽ。
その『カロン』とやらが遠くに居るようなら、手は貸せないぞ?」
<_プー゚)フ 橋って、朱言橋だよね それなら大丈夫だよ
ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫みたい」
_
( ゚∀゚)o「ふーん……じゃあ案内は任せても大丈夫だな」
ジョルジュは木々の間に視線を向ける。
道標に括られた赤いロープが、風の中で頼りなく揺れている。
……もっとも、"なに"がそれを揺らしているのかは彼には見えていないだろう。
_
( ゚∀゚)o「だったらよ」
-
_
( ゚∀゚)o「だったら、早く行こうぜ。時間が惜しい」
(*‘ω‘ *)「待て、まだ報酬の話は終わってないっぽ!」
<_プー゚)フ あ 忘れてた
幽霊が報酬なんて出せるのか、荷物を背負いながらもぽっぽが問う。
彼女の制止に、ミセリはキュートを振り返った。
白いフワフワは考えるように首を傾げる。
<_プー゚)フ 報酬は金貨で良いかな それなら200枚は出せたはず
ミセ*゚ー゚)リ「金貨200枚出せるって……え? 200?」
(*‘ω‘ *)「成程、金貨200枚なら……は? 200?」
ミセ*・ー・)リ「」(* ゚ω ゚ *)
ヨツマ北西区に家一軒建てられる。
ミセリとぽっぽが一気に青褪めた。
-
_
( ゚∀゚)o「おぉ、そりゃ中々だな。どうやって払うんだ?」
<_プー゚)フ 隠してあった『カロン』の軍資金 もう必要ないし 全部あげる
ミセ*;゚д゚)リ「『カロン』の軍資金、全部くれるって言ってる……あ、ちょっと待って!」
キュートの幽霊は、流されるように東へ泳ぐ。
ミセリは慌てて彼女を追った。
"緑"の脚力、"黒"の感知。
樹上の空を舞う彼女と離れないように。
樹下の地を這う彼らに寄らないように。
振り返ると、ぽっぽとジョルジュもそれぞれ着いて来ている。
ひとまず安堵するミセリに、キュートが気の無い声で声を掛けた。
<_プー゚)フ ね ミセリちゃん
ミセ*;゚д゚)リ「……ん、何?」
-
<_プー゚)フ ミセリちゃんは 冒険者しててしんどくなる時って無いの
ミセ*;゚д゚)リ「……」
ミセ*;゚ー゚)リ「……あるよ。何度かあった」
樹上を駆けながら、ミセリは答えた。
奇妙に唸る風は次第に強くなっているようで、枝下を覗く勇気はミセリには無い。
行く先に飛び移る枝が無い時にだけ這いまわる"影"を避けるように地面を走り、
次の枝との間にワイヤーを渡して、後続二人の足場を作った。
ミセ*;゚ー゚)リ「でも、私は今も樹海を旅してる。ずっと旅し続けると思う」
<_プー゚)フ そっか
風の音が、唐突に止んだ。
枝の下を這っていた者達の姿は無く、不気味な静寂が支配する。
ミセリの行く手に、一つの人影があった。
<_プー゚)フ それじゃあ覚えておいて いつか君が疲れて 旅がしんどくなった時には
アタシ達が、あなたを見ていてあげる。
キュートの透明な声が耳を掠め、儚く消えてゆく。
川д川
-
ミセリは樹下の地面に降り立った。
少し湿った土を踏みしめて、前へ。
ゆっくりと歩を進めるミセリの、その背後の枝に二人分の足音が降り立つ。
_
( ゚∀゚)o「ふう、やっと追い付いた……って」
<_プー)フ, また痩せたね サダコ
川д川「……」
木々の合間にまっすぐに立つ、長髪の人影。
臆せずに彼女に近付く、小柄な剣士の少女。
ぽっぽは慌てて枝を飛び降り、得物のワンドを構えて少女を追った。
-
(*;‘ω‘ *)「馬鹿、ミセリ! 待て!」
ミセ*゚ー゚)リ「ぽっぽちゃん」
【+ 】ゞ) (^o^) (_- )
ミセリは片手で、駆け寄るぽっぽを制する。
視線の先、長髪の人影の後ろには、三つの人影が木々にもたれ掛かって座っていた。
(*‘ω‘ *)「コイツらが『カロン』……?」
(;゚∀゚)o「……そうらしいな」
<_プー)フ 久しぶりだね 皆
キュートの言葉にも、四人は反応しない。
ミセリは静かに一歩を踏み出す。
足音が、樹海の闇に吸いこまれて消えた。
ぽっぽは息を飲んだ。
ミセリがゆっくりと口を開く。
-
ミセ*゚−)リ「……ミセリ・エメリア。ヨツマのギルド・『チェトレ』を率いています」
【+ 】ゞ)"
_
( ゚∀゚)o"「ッ!」
黒い、巨大な箱を携えた男が、僅かに動く。
ジョルジュは咄嗟に、大剣に手を伸ばした。
ペリドットの増幅器があしらわれた長剣を、ミセリは片手で引き抜き、真っ直ぐに突き付けた。
箱の男の隣に腰かけていた残り二つの人影も、彼女の剣に応じるように身を起こす。
(^o^) "(_- )
【+ 】ゞ)「……何用か」
<_プー)フ
重く響く声が応えて問う。
ミセリは答えを躊躇った。
-
ミセ*゚−)リ「……私は」
ミセ* −)リ「私は――」
朽ち果てた枯れ木のような彼らの影に、剣を振るう事を。
かつて倒れた冒険者の残り火を、その剣で斬り払う事を、ミセリは躊躇った。
包帯を巻き付けた左腕で、白銀のブレスレットが背中を押すように光る。
ミセ*゚−゚)リ「――私達は、あなた方を討伐しに来ました」
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かつて倒れた冒険者の残り火を、その剣で斬り払う事を、ミセリは躊躇った。
包帯を巻き付けた左腕で、白銀のブレスレットが背中を押すように光る。
ミセ*゚−゚)リ「――私達は、あなた方を討伐しに来ました」【+ 】ゞ)「……面白い」
箱の男が、立ち上がる。
ミセリは初めて、彼の持つ黒い箱が何か気付いた。
棺桶だ。
数多くの"死"をその中に閉じ込めた。
【+ 】ゞ゚)「伊藤"棺桶死"オサム、屍術を用いる。そして……」
棺から、"黒"の精霊が溢れだした。
呼応するように、三つの死体がそれぞれ動き出す。
川゚"д川
i!\(^o^)/!i
(-_-)[ ]"
ミセ*;゚−゚)リ「……!」
【+ 】ゞ゚)「見よ! これが我が『カロン』だ!」
死せる冥府の渡守と、生ける樹海の旅人と。
暗き森に剣戟が翻る。
-
щ"川д川",ш
ミセ*゚−)リ「ッ」
身体を斜めに捻り、ミセリは襲いかかる爪撃をかわした。
左腕のハンデは、想像していたよりもずっと重く。
屍達の敏捷さは、想像していたよりもずっと鋭い。
身体を半身に保ったまま、反転してくる女への迎撃の姿勢。
しかし彼女の予想に反し、双爪は彼女に返って来なかった。
十条の斬撃が代わりに向かった先は。
川゚д川
∃彡"
(*‘ω‘ ;*)「っぽぉぁあ!?」
今まさにミセリの援護に就こうとしていた、ぽっぽの懐だった。
-
ミセ*;゚ー゚)リ「な……!」
狙いを失った長剣は空を切り、ミセリはたたらを踏んだ。
してやられた、戸惑う間もなく追撃が迫る。
鮮やかな連係に、ミセリは舌を巻いた。
ミセ*;゚ー゚)リ「ッ!」
,,( へo)"彡'
仮面を付けた男、回転と共に振り下ろされた双の曲刀。
右の曲刀を受けたミセリの長剣は弾かれ、間髪いれずに襲う左は首筋を掠め抜けた。
体が崩れたミセリを、三本目、否、一回転して戻ってきた右の曲刀が軌道に捉えた。
ミセ*;゚д-)リ「わわ、」
途切れ目の無い、竜巻のような死線。
片腕のミセリは次第に押しこまれていった。
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<_プд)フ 落ち着いて ミセリ オワタ君の剣舞はいつも
ミセ#゚д)リ「うるさい黙れ!」
<_プд)フ そ
何度目かの回転で、ミセリは膝をついた。
曲刀は容赦なく降り注ぎ、迫る刃にミセリは死を覚悟する。
(oへ//
//
//
/
衝撃、浮遊感。
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ミセ*;-ー)リ「――ッありがと、ジョルジュさん!」
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( #゚∀゚)o「応!」\(^o^)/
ミセリを突き飛ばしたジョルジュが、双曲刀を正面から受けた。
突きぬけて頑丈な彼が手傷を負う事は無かったようだが、その手数は彼を圧する。
死地を脱したミセリは、その勢いで跳ぶ。
(-_-[H†H]
身を覆う程の盾を構えて迫る、三人目の男へ。
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ミセ#゚д゚)リ「おるぁああッ!」
(-_[H†H]"
最高速を乗せた渾身の跳び蹴りは、素早く動いた大盾に阻まれる。
大樹を蹴り付けたかのような感触、相手は僅かにも動いていない。
ミセリは顔を顰める。強化した脚力で地面を蹴り、距離を取った。
巨大な盾はそのまま倒れ込み、一瞬前まで居た地面を押しつぶす。
(-_-)
ミセ*;゚ー゚)リ「危ね、今のはビックリしたよ」
再び盾を構える男から、ミセリはバックステップで距離を取る。
見渡すと、双曲刀の仮面と双爪の女もそれぞれ、オサムの元に引き上げていた。
連携力、実行力。
歴戦のギルドの名は決して伊達では無い。
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